民事信託支援業務のための執務指針案100条(8)

市民と法[1]の記事、渋谷陽一郎「民事信託支援業務のための執務指針案100条(8)」を基に考えてみたいと思います。

45 家族信託とは複数の者の利害が絡む「しくみ」である―そのリスクの源泉

 私の理解では、最初に信託法という仕組みがあり、それを親族の財産承継にどうにかして使えないかと当てはめ始めた。当初は受託者に就任出来ないのか、受託者法人の役員に就任出来ないか、震災復興支援、農地関連など手探りでした。その後、民事信託支援業務という、記事での前段事務(司法書士法3条)と信託登記の代理申請という後段事務とされている事務に法的根拠を求め始めた、というようなものです。司法書士法施行規則31条が法的根拠であるという司法書士もいるかと思います。

46 司法書士が信託分野に果たした功績とその意義

 私が司法書士試験に合格した年の新人合同研修では、七戸克彦教授が信託法改正について言及していたことを未だ覚えています。司法書士はこれから、簡裁訴訟代理等関係業務を中心としてプチ弁護士として生きていくのか、信託法改正を契機として民事信託分野、債権・動産譲渡登記を扱って生きていくのかの分岐点に在る、というような内容だったと思います。2007年のことです。成年後見業務を中心に行うと決めていた私は、民事信託や債権・動産譲渡登記を将来扱っていきたいと考えていました。

47 民事信託支援業務の「支援」とは前段事務を意味する

業務の低廉、高品質については、私にはどのような基準なのか分かりませんでした。成年後見人として遺産分割調停の代理や訴訟代理、強制執行は行いましたが、本人訴訟支援業務の経験件数が少ないからだと思います。記事での低廉、高品質というレベルは、過払金返還請求訴訟を除く本人訴訟支援業務における低廉、高品質を指しているのだと思います。

成年後見業務における低廉、高品質を私の理解するレベルで行うと、事務所経営は出来ません。

ただし、最近は民事信託専門、家族信託専門コンサルタントを肩書にしていた司法書士が民法や社会福祉法改正を受けて、相続や成年後見業務に重心を移してきているようです。1年で成年後見人に30件就任したという記事を読み、私なら不可能だと感じました。

48 前段事務と実体関与は異なる

完全な訴状、瑕疵のない準備書面を作成し続けるのは、弁護士でも難しいのではないかなと考えますが、どうなのでしょうか。報酬は、おそらく報酬自由化の前の報酬基準が目安になるのかなと思います。

49 最近の気になること

司法書士会内における批判の声の高まりについて、私は過払金返還請求の際の宣伝や報酬とは、2点異なるものを感じます。宣伝や報酬については、日本司法書士会連合会で基準を作成することが可能であり、宣伝については既にあります。

1点目は、司法書士が、司法書士を始めとする士業やその他の専門家に対してビジネスを始めたことです。司法書士間で対価を授受するという行為を通して上下関係が出来たことです。

2点目は、1点目と重複する部分がありますが、対価を受け取る側のビジネスを展開している側に対して批評を行うと、その集団から排除されることです。私は、一般社団法人民事信託推進センターから、除名されました。この事実は今後、残念な形で残り続けると思います。著作権法違反が主な理由のようですが、裁判手続きに載せない事実、懲戒処分の申立てもされていない事実を併せると、批評をすると多数決で排除される、という構図が残ります。今後は信託の学校と共に、排他的な法人として存続は難しいのかなと思います。

 「○○という誤った条項を見かけることがありますが、」「分かっていない専門家が多くみられますが、」から始まり、少数での勉強会内で固まった考えを正しいと広めるのもどうなのかなと感じます。

(2)東京地判令和2年12月24日と日司連会長挨拶

東京地判令和2年12月24日については、司法書士が信託監督人に就任したことと辞任しなかったこと、信託期中に少し中に入り過ぎたのではないかという印象を持ちました。

日司連会長挨拶については、実態との乖離を感じるので記事に記載されているような感銘を受けることはありませんでした。

50 指針案のあてはめの実践編について

51 裁判例の事実認定の検討と分析

一部の親族(推定相続人)の利益となるであろうことを想定しながら、信託組成を支援したか?

推定相続人の利益を平等にしたい場合は、法定相続分によるか全員等価で分けることが最善な方法だと思います。一部の親族(推定相続人)の利益になることは、信託組成の支援において優先的な判断基準にはならないのかなと思います。

私なら遺言作成を始めに説明したかもしれません。

潜在的紛争性のある事件として、弁護士への相談を助言しただろうか?

連絡が取れるのであれば、長男を含めた関係者全員に、それぞれ弁護士への相談を助言したと思います。

長男と親族との間で紛争を生ずる蓋然性を予測できただろうか?

出来なかった可能性があります。

潜在的な紛争可能性を予測すべきであっただろうか?

信託の終了方法に、少し幅を持たせても良かったかなとは思います。

「提案」と「情報提供」との差異は何か?

「意思決定支援を踏まえた後見事務のガイドライン」について(意思決定支援ワーキング・グループ)2020年(令和2年)10月30日

https://www.courts.go.jp/vc-files/courts/2021/20201030guideline.pdf

「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン解説編」

人生の最終段階における医療の普及・啓発の在り方に関する検討会 改訂 平成30年3月

https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-10802000-Iseikyoku-Shidouka/0000197702.pdf

の範囲を超えないことが、提案と事実認定されないために必要だと考えます。


[1] №130、2021.8.P21~民事法研究会