横山亘「照会事例から見る信託の登記実務(5)」

登記情報[1]の記事です。

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1つの信託契約に属する信託受益権を量的に分割することを「受益権の分割」といい、受益権を分割して譲渡することを「受益権の分割譲渡」と呼ぶことがあります。

この場合でも、信託契約は、あくまでも1つでであり、受益者ごとに信託契約が複数存在するわけではありません。したがって、信託目録に記録される受益者は、信託契約上の受益者をすべて記録すべきであって、不動産ごとに割り当てられた(分割された)受益者のみが記録されるものではないと考えられます。

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「この場合でも、信託契約は、あくまでも1つでであり、受益者ごとに信託契約が複数存在するわけではありません。」から、「信託目録に記録される受益者は、信託契約上の受益者をすべて記録すべきであって、不動産ごとに割り当てられた(分割された)受益者のみが記録されるものではない」という結論が導かれるものではないと考えます。

信託行為における受益権の内容により、不動産ごとに受益権を割り当てることは可能ですし(信託法88条)、不動産登記法の技術上も可能です。また、受益権を持っていない不動産の信託目録に受益者として記録されると、税務上、実体と異なる解釈をされる可能性があります。

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上記の事例で、A不動産につき信託を一部合意解除する場合には、一部合意解除の当事者は、受託者と受益者全員となるのであって、A不動産の信託受益権を享受しているaのみが当事者たる受益者となるものではないと解されます。

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一部合意解除、を信託の変更を読み替えます(信託法149条)。受託者と受益者全員となるかどうかは、信託行為の定めによります。

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 しかしながら、何人も届出されすれば、自益者になることができるという①の解釈は、実際問題として考えにくいことから、②の解釈が相当と思われますが、さらにこの場合には、だれが指定権を有しているのかが判然としません。そこで、前後の文脈から、「所定の様式による届出書を受託者に提出することにより、(受託者が)指定することができる。」と解するのが妥当のように思われます。

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私は、受益者の相続人全員が受益権を誰が取得するか協議して(遺産分割協議とは異なります。)受益権を取得するとされた者が受益者となる、と読みました。受託者が指定するとは読むことが出来ませんでした。

もし私にこのような定めのある信託目録が持ち込まれたら、信託行為と照合して、信託の変更で出来るのであれば信託の変更(信託目録のその他の事項欄の変更登記申請)と受益者の変更(登記申請)を行うと思います。

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したがって、受益者の変更の登記原因証明情報については、その申請が単独申請であるにもかかわらず、別表に個別列挙されなかったことで、特別な配慮をする必要はなく、原則に従った登記原因証明情報を提供すれば足りるものと考えます。つまり、受益者の変更の登記の申請には、報告的な内容の登記原因証明情報が認められるべきであり、旧不動産登記法の申請書副本の提出の比較において、登記申請人が登記原因を確認した書面を作成するのであれば負担にはならないという点を考慮し、登記申請人である受託者がその作成者となり、登記の原因となる事実又は法律行為があったことを積極的に承認するというレベルまでの証明をすれば、最低限の目的を達すると考えられます。

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受益者の変更の登記原因証明情報の作成は、受託者のみで報告的な内容の登記原因証明情報が認められる、の部分が何故なのか分かりませんでした。信託行為に、信託法149条2項2号について、具体的に「受益権の売買による受益者の変更」が記載されており、受託者の信託事務に、変更にかかる登記原因正目情報の単独作成が記載されていれば、可能かもしれません。

立会に関して触れられている箇所もありますが、登記されることとは別に、お金が動く場合は、新旧受益者の受益権売買契約に関して代金決済時の納得感が必要なのかなと感じます。


[1] 708号 2020年11月号 きんざいP58~