宮田浩志「受託者の任務終了事由と予備的受託者」

「家族信託実務ガイド」の記事[1]から、気になった部分です。

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「受託者の判断能力が低下したとき」「受託者が認知症と診断されたとき」というような受託者の任務終了事由もみかけることがあります。(略)受託者の意思表示を待たずに自動的に任務を終了させたい意図は理解できますが、信託不動産の実務については、後継受託者の名前を登記簿に記載する手続きに際して、旧受託者と新受託者が協力して登記手続きを行う必要があるので、旧受託者が自主的に「辞任」することと手続き上何ら変わりはないものと考えます。

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現在「登記簿」はないというところは措きます。

「受託者の判断能力が低下したとき」「受託者が認知症と診断されたとき」という条項を私は置かないのですが、判断能力の低下は徐々に進み、認知症も軽いうちに診断されるという理解です。その際に不動産登記申請の意思表示が出来なくなるかというと、信託行為に記載していることと照らして、当然出来ないという判断は出来ないと思いました。信託行為の当事者ではない第2次、第3次受託者に関しても、信託行為に同意の上で就任してもらうので、この考え方は変わりません。

不動産登記の申請手続きについて、受託者の辞任と解任では、手続き上変わりがあると思いました(信託法57条1項、58条1項)。

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また、予備的受託者の有無に左右されないように、受託者が単独の判断で辞任できるような条項を置くことも検討に値するでしょう。

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このような場合に不動産登記申請手続き上、どのようになるのかなと感じました。

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予備的受託者として指定されたとしても、その方に順番が回ってくるまでは、

何らの責任も義務も生じませんし、嫌ならその時点で就任を拒絶することも可能ですので、信託契約書で指定されること自体にリスクは全く生じません。

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法律上は妥当なのかなと思いますが、社会生活上、心理的な圧迫を受ける可能性があると思います。

受託者の固有財産が少ない信託が効力を発生した後、信託財産責任負担債務が増加した場合で受託者の任務が終了したとき、就任承諾前でも信託債権の債権者や受益者は、予備的受託者に指定されている人に請求するか、債務引受を求めるか、信託財産管理命令を申し立てるかを行うと思います。リスクは全く生じない、ということはないのではないかと感じます。

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家族信託の組成にかかわった法律専門職を信託契約書の中で予備的な清算受託者として指定していくことが現実的でしょう。

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ここは私も分かりませんが、清算受託者に法律専門職が就任することが出来る根拠条文を示した方が良いのではないかと思いました。

会社の清算人に司法書士が就任出来ること(会社法478条)と比較して、信託の場合、信託財産に不動産があると登記記録上、受託者として法律専門職の住所氏名が記録されることになります。清算の文字は付かないので、信託業法2条違反ではないことの根拠が必要ではないかと感じます。信託財産である預貯金口座についても、受託者〔司法書士氏名〕になると思うのですが、一旦自身の氏名に変更するのか気になります。


[1] 2020年11月第19号、P60~