信託の分割について

司法書士さんのメールマガジンからです。

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最近、完全に在宅ワークになってきました。打ち合わせはZoomでできるし、

業務の情報はクラウドで利用する案件システム、顧客システムがあるので、

自宅にいても、事務所とのやりとりも問題がないです。

5年前の案件でも、一発で、検索できて、家族関係やスキームの内容も把握でき、どのようなやりとりがあったかも全部分かります。事務所に行く必要があまりない。名付けて「人を大事にするシステム」士業って(特に司法書士)、その案件が終わったら、依頼者とはあまり連絡を取らないじゃないですか。相続登記とか、終わった後、放置していません?

でも、お父さんの相続登記をするということは、お母さんもそれなりの年齢で、

今後の対策がいろいろ必要でしょうし、相続人(子供)の配偶者にも親がいます。

ですから、関係を切らないように時々連絡すれば、ドンドン業務が広がって、

追加の依頼も来やすくなるはずなんですよね。仕事が終わったら「はい、次!」ではなく仕事が終わったら、「これからも長くお付き合いしますよ。大事にしますよ」という感じでお客さまと長く付き合うことができるようにするためのシステムです。

あ、このシステム、監督人協会のサービスでリリース予定です。今週末、監督人協会の役員会ですので、そこでリリースについて協議する予定です!

■■ 長く付き合うといいつつ、今日は信託の分割の話し(笑)

唐突ですが、信託の分割って使っています?そんな制度があるのは分かるけど、あまり関係ない、と感じている人が多いのでは。実は、僕は最近、信託の分割をよく使うようになったんですね。なぜか?

■■ アパート2棟を信託する場合

お母さんは、アパートを2棟持っています。最近、身体も弱くなったので、子供に信託することにしました。

登場人物は3人・お母さん・息子・娘

信託財産は・アパートA(近く大きな修繕を予定)・アパートB・修繕できる程度のお金

親としては、自分が亡き後は子供にアパートを一棟ずつ渡したい。

アパートAは息子。アパートBは娘。

でも、相続税のことを考えると、途中で贈与もあり。

相続時精算課税を使って贈与します。賃料は贈与を受けた子供が受け取れるので、相続財産が増えることが防げる。

■■ 一棟ずつ、別々な信託を組むのはちょっと問題

アパートAは息子、アパートBは娘にそれぞれ別々の契約書で、信託すればいいと考えられます。でも、これの問題点は、損益通算ができなくなる点。

損益通算とは、アパートAの収支とアパートBの収支を合算して、所得税を計算しますよというもの。

アパートAが200万赤字でアパートBが300万黒字なら合算して所得100万で所得税を計算します。これが損益通算。でも、信託契約書を分けるとこれができなくなります。

アパートAが200万赤字 ⇒ 所得0

アパートBが300万黒字 ⇒ 所得300万

つまり、第一受益者のお母さんは300万の所得で所得税を計算することになります。これって、ちょっと損ですよね。しかもアパートAは修繕の見込みがあるので、今後赤字になる可能性があります。

■■ アパートBの受益権だけ贈与はできる?

アパートAと、アパートBを息子に信託しました。受益者はお母さん

この場合、アパートBの受益権だけを娘に贈与できるでしょうか?

これは僕もよくわかりません。信託しているから、アパートAからの収益もアパートBからの収益も一つの権利になって、受益権を1/2だけ娘に贈与というのはあると思います。しかし、アパートBの分の受益権は、どのように特定すればいいのでしょうか?

信託登記の登記事項証明にどう書く?

もちろん、アパートBの物件その物を、娘に贈与するという考えもあります。

そうすれば、アパートBは信託されていない、所有権で娘に帰属させられます。

しかし、障がいがあるとか、何らかの事情で、信託はやめたくない場合はどうでしょう。

信託を最初から分けると損益通算ができなくなる。分けないと、受益権の贈与が難しい。

■■ ここで登場するのが信託の分割

財産が複数ある場合、将来的に財産の行き先が分かれる場合があります。

このような場合は、信託の分割(新設分割)ですね。え?信託の分割?

難しそう。

そう思うかも知れませんね。でも条文は新設分割なら、159条〜162条と、たった4条しかありません。一度、目を通してみるといいと思います。

最初は一つの信託契約書で信託します。そうすれば損益通算が可能。そして、贈与したいタイミングが来たら、アパートAとアパートBに信託を分割します。

その時点の受益者はお母さんなので、余計な税金はないですよね。

分割は、基本は、委託者、受託者、受益者の合意です。(信託法159条1項)

でも信託契約に定めておけば、分割の可否を誰が判断するか決めることができます。(信託法159条3項)そして、分割した後、アパートBの受益権を娘に贈与です。もちろん、その時お母さんが、認知症になっているかも知れませんので、認知症になっても大丈夫なような手当はしておきましょう。受益者代理人をおくとか、任意後見をしておくとかですね。

このように複数の財産を信託するときは、将来、信託の分割を想定して信託契約を組んでおくと、何かと便利ですよ。こんな感じで、制度の使い方を分かっておくと、イザというとき役に立ちますね。

■■ 民事信託の初学者向けのセミナー

最近、バズ・ダラ会のお知らせばかりしていたので、たまにはセミナーのお知らせをしますね。このセミナーは、民事信託の初学者が対象です。民事信託の基礎を、事例を使って解説するセミナーです。ネットで見れる録画版なので、いつでも、どこでも、何度でも見ることができますよ。もちろん、川嵜プレゼンツなので、法律の勉強なのに【楽しさ】満載!

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アパートAを修繕した後に、信託の分割を行うということなんでしょうか。

私はこのような場合、信託の分割をせずにアパートBの受益権だけ贈与という形を採っています。

「アパートBの受益権だけを娘に贈与できるでしょうか?」

・信託行為に定めることで可能だと考えます。

「信託しているから、アパートAからの収益もアパートBからの収益も一つの権利になって、受益権を1/2だけ娘に贈与というのはあると思います。しかし、アパートBの分の受益権は、どのように特定すればいいのでしょうか?」

・信託行為に定めることで特定可能だと考えます。割合で書くと価値の変動により難しくなると感じます。個数で書いて信託行為またはその都度受益権の数を決めるなら、可能だと思います。

「信託登記の登記事項証明にどう書く?」

全部事項証明書は、不動産毎に分かれているので、アパートB(建物?)にに関して、娘さんを母と一緒に受益者に定めることで可能だと考えます。

参考(夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除の場合)

・確定日付をもらうか公正証書にします。なお、実際に行う場合は税理士に事前確認をお願いします。

信託受益権の対価を証する書面

【氏名】と〔氏名〕は、【年月日】付信託契約書(以下「本信託」という。)に基づく信託受益権(以下「本受益権」という。)について範囲と対価を定め、契約の種類について合意する(以下「本合意」という。)する(所得税法33条、法人税法第22条、相続税法9条の2、相続税法21条の5、21条の6、相税法規則9条、租税特別措置法70条の2の4)。

第1条(本信託契約との関係)

1 本書面は、本受益権の範囲と対価、契約の種類を定めることを目的とする。信託受益権の内容、各関係当事者の地位ないし権利義務、その他本信託契約に関連する一切の事項については、本信託の定めるところによる。

第2条(対価と契約の種類)

1、      本受益権の範囲と対価、契約の種類は、以下のとおり。

(1)受益権の範囲 【信託財産の種類】の受益権の価額のうち、○○万円〔○○個〕

(2)本受益権の対価 無償

(3)契約の種類 贈与契約

第3条(夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除の適用要件)

1、      〔氏名〕と〔氏名〕は、【年月日】に婚姻しており、〔年月日〕(または信託契約締結日)において婚姻期間は20年以上である。

2、      【氏名】が〔氏名〕から取得する受益権は、居住用不動産を信託財産に属する財産とするものである。

本契約の証として、本書2通を作成し記名押印の上各自1通を保有する。

【年月日】

住所 氏名 印

住所 氏名 印

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 HPを観た限りでは、信託の分割には新しい信託行為を設定するとの同じ位の費用、または損益通算で得られる利益くらいの費用が掛かるのかなという印象を持ちました。信託契約書のチェックは、公表している分良いのかなと感じます。

参考:信託契約書のチェック 約10万円

 契約書のチェック→ご自分で作成された契約書を、こちらもチェックします。Zoom 等を用いて、契約書の内容や信託目録を一条ずつ読み合わせをします。依頼者との業務委任契約書には、当法人は押印しません(共同受任は押印ありのようです)。HPで分かる範囲では、信託の分割で新しい信託行為を設定するのと同じ位の費用が掛かるのかなと思います。

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関係ないのですが、熱気が凄そうです。

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000205.000012242.html