遺言者が亡くなったことをどうやって知るか

あるメールマガジンの記事です。

■■ 「キケンを察知」は、法律も同じ

遺言や信託、任意後見は、事前対策。

「このまま行くと、キケンかもしれないからこのような対策をしておきましょう!」と提案しますよね。

自動車保険や、火災保険も同じですよね。

事前対策をしておけば、認知症になったとき、相続のとき、すごいパワーを発揮しますよね。

認知症対策は、もしかしたら不要になるかもしれませんが、相続は100%起こります。事前対策としては必要度が高いと言えると思います。

遺言を作成する場合、専門家が遺言執行者になることもありますよね。

■■ 遺言執行者になるケース

相続人が遺言執行をしづらいときですよね。具体的には、銀行の解約して、お金を渡すことでしょう。相続登記はオンラインでできますので、近くの司法書士に頼めばできます。

分解するとこの2つ。

1.現地での作業が難しい

2.お金を渡すことが難しい

つまり

1.のケースは

・相続人がみんな遠隔地にいる

・近くにいても相続人の体が弱い(認知症)

2.のケースは

・相続人間で仲違いをしている

・前妻(前夫)との間に子がいる

などがあります。

このようなケースは、遺言執行者になることを提案してみてくださいね。きっと喜ばれます。

■■ 遺言執行の実務の進め方

そして、遺言執行の実務ですよね。

書籍を見れば、執行の段取りや、様々な書式が出てきます。

1,2冊あれば十分でしょう。

研修会も多数開催されているので、みなさんも1度や2度はそのような研修会を受けたことがあると思います。

■■ 実務で見落とされがちな問題点

さて、ここまで見れば、遺言執行、そんなに困難はないと思います。相続人間でトラブルがあるときの連絡くらいでしょうか。

でも、1点、見落とされがちなことがあります。このメルマガの読者なら、もうわかりますよね。

「どうやって、亡くなったことを知るか」

もう一度いいますよ。

「どうやって、遺言者が亡くなったことを知るか」

です。

遺言のことを知っている相続人とつながっていればもちろん問題ないでしょう。

ただ

・遺言者が遺言のことを家族に話していない

・唯一の相続人が認知症や知的障がい、小さい子供

・遺言者の相続人や施設と連絡を取り合っていない

つまり、遺言者が亡くなっても誰も連絡してくれなそうなとき。どうやって遺言者が亡くなったことを知るのでしょうか?実務では超重要なのに、ほとんどあっさり流される。(苦笑)だって、本を書いた人や研修会の講師も、おそらくこの部分を「仕組」で解決できていないからです。

実際難しいんです。

■■ ある、外資系の保険会社の人のケースです

家族は、母と子の二人だけ。

子には障がいがある。

母は子のために生命保険に加入。

その時、その担当者は母から言われたそうです。

「私が亡くなったことを、御社はどうやって知るのですか?」

ワオ!

まさにそのとおり!

その会社では、1年に一回は、契約者に電話等で連絡して、存命かどうかを確認することになっているそうです。

組織的に対応でき、資金が潤沢な保険会社ですら、このやり方なんですよね。

つまり、マメに連絡するしかない。

■■ 遺言執行者の責任は重い

民法 第899条の2

相続による権利の承継は、遺産の分割によるものかどうかにかかわらず、

次条及び第九百一条の規定により算定した相続分を超える部分については、

登記、登録その他の対抗要件を備えなければ、第三者に対抗することができない。

つまり、遺言は、先に登記されると負けます。(第三者に対しては)

実際この条文が適用になることは実務では少ないでしょうが、執行者の責任としては、亡くなったら速やかに遺言執行をしないとまずいですよね。

遺言執行者になるとマメに連絡は、絶対必要です。遺言執行者になる = マメに連絡

■■ でもどうやって?

遺言執行も1,2件くらいだと把握はできます。しかし、5年、10年事務所をやって、遺言執行の案件が10件もあると大変です。遺言の作成も数十件していると、どの人の遺言が執行者になるか訳分からなくなります。

しかも普段忙しくて、本来業務でないことは、おろそかになりがち。

気がついたら、93歳の人の遺言を、8年間放置(現在101歳!)

なんてことも

あ、これ私のことね。(汗)

先日のメルマガでも書きました。気になる人はバックナンバー見れるので探してみてください。(20年11月14日のメルマガ)

そのために作ったのが、「人を大事にするシステム」遺言執行の案件を検索すると、該当する案件が一覧で表示され、遺言のコピーや、連絡すべき人がすぐ確認できます。

その間10秒くらい。

このシステムのおかげで、101歳の方の関係者に、時々連絡を取るのがとても楽になりました。(今もお元気です!)

今はモニターの方に大事システムを使っていただいて、さらにシステムをいいものにしています。春くらいになったらモニターを再募集しますので、気になれば応募してくださいね。

 

■■ ただし、条件が!

システムに入力が大変なので、大変でも入力する意思のある人でも、これって、

お客さんとの打合せのメモや、お客さんの氏名や住所などは何らかの形で、今までも残していたでしょうから、実は作業はあまり増えないんですよね。

 

遺言を含め、財産管理系の業務は、専門家の仕事の仕方を変えるかもしれませんね。やったら終わり、ダメ。

お客さんとマメに連絡することを継続することが、求められるようになってきました。

専門家から連絡を取るという意味では役員変更の時期に法人に連絡するのと同じではないかな、と思いました。私なら火事や脳梗塞などが怖いので見守りサービスなどを外注します。

日本郵便(株)みまもり訪問サービス

[blogcard url=”https://www.post.japanpost.jp/life/mimamori/tel.html”]

[blogcard url=”https://www.post.japanpost.jp/life/mimamori/visit.html”]

セコム(株)親の見守りプラン

[blogcard url=”https://www.secom.co.jp/homesecurity/plan/seniorparents/”]

「信託で円滑な事業承継を実現するために司法書士ができること」他

家族信託実務ガイド[1]の記事からです。

(1)有価証券管理等信託設定契約書の作成

 私はこのような題名の契約書を観る度に感じるのが、「有価証券管理等」という言葉をいれる必要があるのかなということです。この記事では株式会社の株式(評価額は記事では不明)と金銭5000万円が信託財産に属する財産として設定されています。金銭に関して、少ないとはいえない額です。管理等の中に入っていると思いますが、遺言のような承継機能を持った設計になっています。信託契約書に財産の種類や信託事務の態様などを記載してしまうと、違法でなく実務で認められていれば自由に信託設定が出来る財産の幅を狭め、信託設定時に多様な組み合わせが可能な信託事務の幅を狭めてしまわないかなと感じます。

依頼者Mの希望

―中略―

自分が元気なうちは、A社に対する決定権は自分が持っておきたいし、今後も、会社経営が順調な間は、毎年配当金を受け取りたい。

―中略―

議決権行使指図人:M

 任意後見契約の締結は見送ったと記載されていたので、Mの議決権行使の指図権がどのような条件で消滅するのか気になりました。

植野直孝「育てた事業を次世代に遺す実子以外の親族への事業承継」

 上の記事に関して印象に残ったのは、2019年12月に相談を受けて、抹消されていなかった抵当権の抹消登記を済ませ、2020年3月に公証役場で信託契約書を作成したスピード感でした。現在、私は公証役場の予約も半年待ちです。予約前に手遅れになってしまった件もあります。地域性があるのかなと思うと同時に、金融機関などの協力があれば信託契約書を公正証書化しなくても信託口口座を作成できるように実務を組み立てる必要もあるのかなと思いました。その後に受託者と受益者代理人か次順位の受益者でその時の信託契約を確認するため公正証書を作成する、というようなやり方もあるかもしれません。

オリックス銀行(株)吉田紀美子×家族信託実務ガイド編集部

 上の記事では、信託口口座の開設を、非対面(郵送とネット)で可能にしたという箇所です。今後、場所を問わなくなってくるのかなと感じます。

斎藤竜「顧客目線で考える専門家サービスを商品化する方法とは?」

取引先開拓で意識しておくべきは、エンドユーザーと取引先の悩みは違うということです。ここを間違えていると取引先の課題を解決できないばかりか、お客さんを紹介してほしいという、仕事だけを求める下請け的なポジションとなってしまいます。

 私には良く分かりませんでした。取引先には業務支援の顧問型商品、エンドユーザーには課題解決の提案、というような内容のようです。問題解決という範囲では同じなのかなと思いました。事業と家計の違いをいっているのかもしれません。

[1] 2021.2第20号日本法令

「信託契約公正証書作成の留意点」

浅草公証役場公証人 澤野芳夫

 

家族信託実務ガイド[1]の記事からです。

公正証書作成件数推移の概況

以下、日本公証人連合会が正規に公表しているもの以外は概数で表示しています。

―略―

民事信託件数

平成30年1月~6月計 1000件

平成31(令和元)年1月~6月計 1200件

令和2年1月~6月計 1400件

日本公証人連合会が全国の民事信託件数の概数を把握していることに驚きました。

[blogcard url=”http://www.koshonin.gr.jp/news/nikkoren/%e4%bb%a4%e5%92%8c%e5%85%83%e5%b9%b4%ef%bc%88%e5%b9%b3%e6%88%90%ef%bc%93%ef%bc%91%e5%b9%b4%ef%bc%89%e3%81%ae%e9%81%ba%e8%a8%80%e5%85%ac%e6%ad%a3%e8%a8%bc%e6%9b%b8%e4%bd%9c%e6%88%90%e4%bb%b6%e6%95%b0.html”]

私が平成31年に那覇公証センターに照会したときには、そのような調査はしていないという回答だったからです。数字をみると、現実的な数字かなと感じます。遺言公正証書の作成件数と比較すると約2%~3%ですが、決して少なくないという印象を私は持ちました。業界内で大きく取り上げてられている割に少ないというズレも何となく納得です。

信託契約公正証書作成の留意点

―略―

金銭の追加信託についても、例えば「信託口座への入金をもって信託財産の追加とみなす」という文言は、①委託者の意思能力がなくなった場合にも追加信託として認められるかという問題点や、②前記の学説のように追加信託も契約とみると、委託者、受託者の関与がない追加信託を認めて良いかという問題点があるので避けたほうがよいと思われます。

私が考え得る方法

方法1、信託法26条の範囲で、受託者から受益者に信託事務に必要な費用として金銭を信託財産に属する財産として追加してもらう構成にする。

 

方法2、信託法146条を利用して、委託者の地位を追加信託の権限に限定して受益者に移転する。受益者の意思能力がなくなった場合に備えて受益者代理人を選任しておく(または選任できる規定を定めておく。)。不動産の場合、信託法上は有効ですが、不動産登記法の構成上、登記が出来ません。

[blogcard url=”https://miyagi-office.info/%e8%bf%bd%e5%8a%a0%e4%bf%a1%e8%a8%97/”]

(2)委託者の意思確認の重要性

―略―

この関係で、信託契約の中に終了事由として「受益者は、受託者の合意により、本件信託を終了することができる」との条項(以下、「本件条項」という)があった場合、それが上記別段の定めにあたるとして、委託者兼受益者が信託を終了するには、受託者との合意を要すると解される余地があるので注意を要します。(東京地裁平成30年10月23日判決金融法務事情2122号85頁参照)。本件条項は上記別段の定めにあたり、委託者兼受益者が信託を終了させるには、受託者との合意が必要となると解さざるを得ないと思いますが、そうすると、遺言では、遺言者の最終意思を尊重するということで撤回が自由とされている(民法1022条)のに、資産の承継という目的を有する点で遺言と同様の目的をも有する信託においては、委託者兼受益者が自由に撤回(終了)できなくなるのが妥当といえるのかという問題が生じます。

・上記別段の定めにあたるとして、委託者兼受益者が信託を終了するには、受託者との合意を要すると解される余地があるので注意を要します。(東京地裁平成30年10月23日判決金融法務事情2122号85頁参照)。について

「受益者は、受託者の合意により、本件信託を終了することができる」との条項を入れたとしても、「その他信託法で定める場合」と信託行為に定めている場合は信託法164条1項の委託者は単独で信託を終了することが出来ます。

 

・遺言では、遺言者の最終意思を尊重するということで撤回が自由とされている(民法1022条)のに、資産の承継という目的を有する点で遺言と同様の目的をも有する信託においては、委託者兼受益者が自由に撤回(終了)できなくなるのが妥当といえるのかという問題が生じます。について

委託者兼受益者が自由に撤回(終了)できる信託を設定すると、受託者に就任する人が少なくなると思われるので、避けたほうがよいのかなと感じます。本当に委託者や受益者と受託者の関係が悪くなった場合には、信託法163条1項1号か同法165条により信託を終了せざるを得ないのかなという印象を持ちました。

[blogcard url=”https://miyagi-office.info/%e4%bf%a1%e8%a8%97%e3%81%ae%e7%b5%82%e4%ba%86-2/”]

信託契約の条項において、「本信託は、委託者が事理を弁別し判断能力が不十分になったときに効力を発生する」(判断に客観性を持たせるために医師2名以上の診断書を必要とすることなどが考えられます)などとすることにより、―中略―停止条件付信託契約はこのような不都合を生じるおそれがありますので、注意をする必要があります。

信託契約ではなく自己信託にして、受託者が後継受託者を誰からみても正常な状態で指名しない限り信託が終了するような仕組みにすれば良いのではないかなと感じました。

(4)「受託者は、信託不動産の瑕疵及び瑕疵により生じた損害につき責任を負わない」という条項について

著者も民法上の責任を負うなど注意喚起していますが同意します。またこのような条項を入れることにより、受託者にとってより不都合な解釈がされるのでないかと思います(例えば、信託設定時から損害が生じることを知っていたのではないか、など)。

 

[1] 2021.2第20号P2~日本法令

「利益相反取引の容認条項」

家族信託実務ガイド[1]の記事からです。

 

利益相反行為のと事例

(1)略

(2)略

利益相反行為

(3)第三者との間において信託財産のためにする行為であって、自己が第三者の代理人となって行うもの

具体的な事例

信託財産たるマンションを受託者が代表を務める会社に売却するケース

法的効果

有効!

⇒取引当事者である第三者が知っていた場合、または知らなかったことについき重大な過失があった場合は、取消可能

具体的事例の場合、知らないということは同一人物なのであり得ないと思います。有効、取消可能の両方のケースでも信託法40条が適用されることにも触れた方が良いのかなと感じました。

 (4)信託財産に属する財産につき固有財産に属する財産のみをもって履行する責任を負う債務に係る債権を被担保債権とする担保権を設定することその他第三者との間において信託財産のためにする行為であって受託者またはその利害関係人と受益者との利益が相反することになるもの

具体的事例

受託者個人が借りている銀行のアパートローンの担保として、信託財産を担保提供するケース

法的効果

有効!

⇒取引当事者である第三者が知っていた場合、または知らなかったことについき重大な過失があった場合は、取消可能

 

銀行など金融機関が担保設定する場合に、信託財産であることを知らないということはほぼないのではないかと感じました。信託法40条の適用は(3)と同じです。

 

利益相反取引はその都度受益者の同意を得るのが原則

―略―

一つ目は、「受益者代理人」を置き、受益者に代わって受益者代理人がその都度承諾をするという方策です。

―略―

受益者代理人にも一定の同意要件を置く必要があるのかなと思いました。

利益相反行為はその都度受益者の同意を得るのが原則

―略―

利益相反取引については具体的に記載する

信託契約書の条項において、単に「受託者は利益相反行為(自己取引)をすることができる」旨だけを置くケースを見かけることが少なくありません。

地域性かもしれません。私は「受託者は利益相反行為(自己取引)をすることができる」という直球の条項をみたことがありません。怖くないのかな、委託者(兼)受益者に説明したときに理解を得られるのかなと思ってしまいます。

利益相反取引については、具体的に記載する

記載されている規定は省略します。信託行為で予め定める想定がされていますが、大枠だけ決めておいて(または決めずに)、取引の都度決めても良いのかなと感じます。

受益者に利益相反行為をしたことを報告するのが大原則

―略―ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによると定められているため、信託契約書に「信託法31条3項による受託者から受益者への通知は、要しないものとする」との条項を設ければ、受益者への通知を省略することが可能となります。

ここでいう報告、通知は、受託者から受益者への利益相反行為後の事後の報告、通知です。信託法31条3項但し書きを規定する場合(私はしませんが)に一本補助線を引く必要があると考えます。例えば、通知の対象となる利益相反行為が信託財産の大部分を占めるものではないこと、受託者の負担軽減になること、信託財産に損害がないこと、などになるのかなと思います。ただし、受託者の負担軽減になること、という要件は利益相反行為が頻繁にある信託であるということを意味するので、そのような信託類型は限定されて要件にはなり得ないのかもしれません。

[1] 2021.2第20号日本法令P63~

信託法31条3項但し書き、42条、89条4項但し書きが記載されている信託契約書を読みました。

初めてみる信託契約書の条項でした。

信託法31条3項但し書きが利用されている条項

  • 自己取引の規定
  • 前項の場合、信託法第31条第3項による受託者から受益者への通知は、要しないものとする。

委託者兼受益者が信託行為時に理解している場合は良いのかもしれませんが、第2次受益者に対しては明らかに不利になる可能性もあり、私は利用しないと思います。承認や同意ではなく通知なので、この条項があるだけで知らせたくもないのかな、と考えさせられて、たとえそのつもりがなくても誤解を招きかねないからです。

信託法89条4項但し書きが利用されている条項

3、受益者変更権者の規定

4、前項の場合、信託法89条4項による受託者からの通知は、要しないものとする。

この条項を入れた場合、旧受益者は自身が受益者ではなくなったことを、定期給付があればそれがなくなったときに知ることになります。または受託者による計算報告がないことをもって知ることになります。また信託法270条1項の過料規定もあります[1]。旧(現)受益者に不利な内容であり、委託者兼受益者が信託行為時にこれを理解していたのか、第2次受益者などから受託者に対して不満が出たとき、説明が出来ないからです。

その他

6.受託者は、受託者が第〇条の善管注意義務に違反した場合を除き、事由の如何を問わず、本件信託財産について生じた価格の下落、その他信託事務の遂行に関連して生ずる費用又は損害について、これを受託者自身により負担又は補填する責任を負わないものとする。

信託法42条を信託行為に記載したもなのかなと思います。事前の受託者責任免除は不可能という書籍もあります[2](参考として信託法21条、40条、41条、53条。)。委託者兼受益者に不利な条項ですが、機能しないと思います。

受託者

氏名【民事信託・家族信託団体の役員】

信託業法2条。

(定義)

(Definitions)

第二条 この法律において「信託業」とは、信託の引受け(他の取引に係る費用に充てるべき金銭の預託を受けるものその他他の取引に付随して行われるものであって、その内容等を勘案し、委託者及び受益者の保護のため支障を生ずることがないと認められるものとして政令で定めるものを除く。以下同じ。)を行う営業をいう。

Article 2 (1) The term “trust business” as used in this Act means the business of accepting trusts (other than the acceptance of a trust which constitutes the receipt of deposits of money that will be allocated to cover the costs of other transactions and other than that which is incidental to other transactions, and is specified by Cabinet Order as the acceptance of a trust that, in consideration of the details thereof and other factors, is found not to compromise the protection of the settlor or beneficiary; the same applies hereinafter).

信託法

(信託財産責任負担債務の範囲)

(Scope of Obligations Covered by the Trust Property)

第二十一条 次に掲げる権利に係る債務は、信託財産責任負担債務となる。

Article 21 (1) Obligations pertaining to the following claims are the Obligations Covered by the Trust Property:

一 受益債権

(i) a Distribution Claim as a Beneficiary;

二 信託財産に属する財産について信託前の原因によって生じた権利

(ii) a right arising with respect to property that comes under Trust Property from a cause that occurred prior to the creation of the Trust;

三 信託前に生じた委託者に対する債権であって、当該債権に係る債務を信託財産責任負担債務とする旨の信託行為の定めがあるもの

(iii) a claim arising against the Settlor prior to the creation of the Trust, for which it is provided by the Terms of Trust that the obligation pertaining to said claim is an Obligation Covered by the Trust Property;

四 第百三条第一項又は第二項の規定による受益権取得請求権

(iv) a Beneficiary’s right to demand that the Trustee acquire the Beneficial Interest under the provisions of Article 103, paragraph (1) or paragraph (2);

五 信託財産のためにした行為であって受託者の権限に属するものによって生じた権利

(v) a right arising from an act which is conducted in the interest of the Trust Property and which falls within the scope of the Trustee’s powers;

六 信託財産のためにした行為であって受託者の権限に属しないもののうち、次に掲げるものによって生じた権利

(vi) a right arising from any of the following acts which is conducted in the interest of the Trust Property and which does not fall within the scope of the Trustee’s powers;

イ 第二十七条第一項又は第二項(これらの規定を第七十五条第四項において準用する場合を含む。ロにおいて同じ。)の規定により取り消すことができない行為(当該行為の相手方が、当該行為の当時、当該行為が信託財産のためにされたものであることを知らなかったもの(信託財産に属する財産について権利を設定し又は移転する行為を除く。)を除く。)

(a) an act that may not be rescinded pursuant to the provisions of Article 27, paragraph (1) or paragraph (2) (including cases where these provisions are applied mutatis mutandis pursuant to Article 75, paragraph (4); the same applies in (b)) (excluding cases where the other party to said act did not know, at the time of said act, that said act was being conducted in the interest of the Trust Property (excluding the act of establishing or transferring a right with respect to property that comes under Trust Property));

ロ 第二十七条第一項又は第二項の規定により取り消すことができる行為であって取り消されていないもの

(b) an act that may be rescinded pursuant to the provisions of Article 27, paragraph (1) or paragraph (2) but has not yet been rescinded;

七 第三十一条第六項に規定する処分その他の行為又は同条第七項に規定する行為のうち、これらの規定により取り消すことができない行為又はこれらの規定により取り消すことができる行為であって取り消されていないものによって生じた権利

(vii) a right arising from a disposition or any other act prescribed in Article 31, paragraph (6) or from an act prescribed in paragraph (7) of said Article, which may not be rescinded pursuant to these provisions or which may be rescinded pursuant to these provisions but has not yet been rescinded;

八 受託者が信託事務を処理するについてした不法行為によって生じた権利

(viii) a right arising from a tort committed by the Trustee in the course of the administration of Trust affairs; and

九 第五号から前号までに掲げるもののほか、信託事務の処理について生じた権利

(ix) in addition to what is listed in item (v) to the preceding item, a right arising in the course of the administration of Trust affairs.

2 信託財産責任負担債務のうち次に掲げる権利に係る債務について、受託者は、信託財産に属する財産のみをもってその履行の責任を負う。

(2) With regard to obligations pertaining to the following rights which fall within the scope of Obligations Covered by the Trust Property, a Trustee is liable to perform said obligations only by using property that comes under Trust Property:

一 受益債権

(i) a Distribution Claim as a Beneficiary;

二 信託行為に第二百十六条第一項の定めがあり、かつ、第二百三十二条の定めるところにより登記がされた場合における信託債権(信託財産責任負担債務に係る債権であって、受益債権でないものをいう。以下同じ。)

(ii) a Trust claim (meaning a claim pertaining to an Obligation Covered by the Trust Property, other than a Distribution Claim as a Beneficiary; the same applies hereinafter) in cases where the Terms of Trust contain the provision set forth in Article 216, paragraph (1) and a registration has been made as provided for in Article 232;

三 前二号に掲げる場合のほか、この法律の規定により信託財産に属する財産のみをもってその履行の責任を負うものとされる場合における信託債権

(iii) in addition to those listed in the preceding two items, a Trust claim in cases where the Trustee is deemed to be liable to satisfy said claim only by using property that comes under Trust Property pursuant to the provisions of this Act; and

四 信託債権を有する者(以下「信託債権者」という。)との間で信託財産に属する財産のみをもってその履行の責任を負う旨の合意がある場合における信託債権

(iv) a Trust claim in cases where there is an agreement between the Trustee and the holder of the Trust claim (hereinafter referred to as the “Trust Creditor”) to the effect that the Trustee is to be liable to satisfy said claim only by using property that comes under Trust Property.

(利益相反行為の制限)

(Restriction on Acts that Create Conflict of Interest)

第三十一条 受託者は、次に掲げる行為をしてはならない。

Article 31 (1) A Trustee is not allowed to carry out the following acts:

3 受託者は、第一項各号に掲げる行為をしたときは、受益者に対し、当該行為についての重要な事実を通知しなければならない。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。

(3) The Trustee must, when having carried out any of the acts listed in the items of paragraph (1), give notice of the material facts concerning said act to the Beneficiary; provided, however, that if the Terms of Trust otherwise provide for, such provisions prevail.

(損失てん補責任等の免除)

(Release from Liability to Compensate for Losses)

第四十二条 受益者は、次に掲げる責任を免除することができる。

Article 42 A Beneficiary may grant a Trustee a release from the following liabilities:

一 第四十条の規定による責任

(i) liability under the provisions of Article 40; and

二 前条の規定による責任

(ii) liability under the provisions of the preceding Article.

(受益者指定権等)

(Right to Designate or Change Beneficiary)

第八十九条 受益者を指定し、又はこれを変更する権利(以下この条において「受益者指定権等」という。)を有する者の定めのある信託においては、受益者指定権等は、受託者に対する意思表示によって行使する。

Article 89 (1) In the case of a Trust with provisions on the persons who have the right to designate or change a Beneficiary (hereinafter referred to as the “Right to Designate or Change a Beneficiary” in this Article), the Right to Designate or Change a Beneficiary is exercised by a manifestation of intention to do so to the Trustee.

4 受託者は、受益者を変更する権利が行使されたことにより受益者であった者がその受益権を失ったときは、その者に対し、遅滞なく、その旨を通知しなければならない。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。

(4) When the person who was the Beneficiary has lost the Beneficial Interest as a result of the exercise of the right to change a Beneficiary, the Trustee must notify said person to that effect without delay; provided, however, that if the Terms of Trust otherwise provide for, such provisions prevail.


[1] 道垣内弘人編著「条解信託法」弘文堂p461~

[2] 道垣内弘人編著「条解信託法」弘文堂p327~

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