民事信託の登記の諸問題(17)

登記研究[1]の記事、渋谷陽一郎「民事信託の登記の諸問題(17)」からです。

権利の帰属を示すという意味は、権利者が誰であるかを示すことである。所有権の信託であれば、所有権者が誰なのか、ということである。そして、これは、民法177条に基づく対抗要件としての権利の登記である。

 私なら、所有権者が誰なのか、の部分は、信託行為による制限を受けた所有権者は誰なのか、とすると思います。

この点、信託の内容の登記は、実体法の領域に一番近いような印象がある(例えば司法書士の民事信託支援業務の法的根拠としての信託目録という側面ではそうである)。しかし、実体法上の法的根拠に乏しいとすれば、信託の内容の登記は、むしろ、それは極めて手続法的な領域にある、という逆説が存在することになる。

 読み取りが難しかったです。信託の内容の登記、という用語を私が理解していないからかもしれません。信託の内容の登記の大部分は、信託目録の記録内容を、構成や文言を実体法に即して考える必要があるから、実体法の領域に一番近いような印象がある、というような意味なのかなと感じます。

信託は泣いているとして知られる裁判例(注256溜箭将之「信託が潜在能力を発揮するには」信託法研究45号6~7頁)であるが、本誌読者のなかにも、違和感を感じる人がいるかもしれない。かような違和感は、信託は契約という方法で設定されるが、その実質として信託は契約なのか否か、という視点に関わる問題でもある。

 信託法3条1項1号による信託行為は、契約です。実質がない条文だとすると、利用しない方がよい、廃止する方がよい、となるので、現在のところ、実質がある契約だと考えられます。契約は両当事者が対等とみるのが原則で(民法521条)、当事者の属性、契約締結時前後の状況、その他の事情によって、個別具体的に判断されるものだと思います。

 裁判例(東京地裁平成30年10月23日判決)に関しては、父親が信託行為をしたいと考えたとき、受託者に就任する人が二男しかいなかったという可能性もあり、判決文を読む限り、父親である委託者が一方的に不利だったのか、分かりませんでした。

信託の関係は、弱者と強者の関係であり、そこで、弱者に対する後見的役割を果たし、公的介入を行うのがエクイティ裁判所である(かような後見的役割の不在こそエクイティ裁判所の伝統がない日本における課題である)注260、樋口 範雄『入門・信託と信託法』2007、弘文堂P27、P52。

信託法

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=418AC0000000108

(受託者の権限違反行為の取消し)

第二十七条 受託者が信託財産のためにした行為がその権限に属しない場合において、次のいずれにも該当するときは、受益者は、当該行為を取り消すことができる。

一 当該行為の相手方が、当該行為の当時、当該行為が信託財産のためにされたものであることを知っていたこと。

二 当該行為の相手方が、当該行為の当時、当該行為が受託者の権限に属しないことを知っていたこと又は知らなかったことにつき重大な過失があったこと。

2 前項の規定にかかわらず、受託者が信託財産に属する財産(第十四条の信託の登記又は登録をすることができるものに限る。)について権利を設定し又は移転した行為がその権限に属しない場合には、次のいずれにも該当するときに限り、受益者は、当該行為を取り消すことができる。

一 当該行為の当時、当該信託財産に属する財産について第十四条の信託の登記又は登録がされていたこと。

二 当該行為の相手方が、当該行為の当時、当該行為が受託者の権限に属しないことを知っていたこと又は知らなかったことにつき重大な過失があったこと。

3項、4項略


[1] 899号、令和5年1月、テイハン、P93~

信託登記における錯誤・遺漏による更正登記リスク

家族信託実務ガイド[1]の記事、渋谷陽一郎「信託登記における錯誤・遺漏による更正登記リスク」からです。

それでは、登記官にとって信託法182条1項2号の特約が存在しないことになってしまうと、どうなるのでしょうか。登記手続上、同条2項の委託者または委託者の相続人が帰属権利者に指定する定めがあるものとみなすと、登記官に判断されてしまう可能性はないでしょうか。

 先例、通達、判例、裁判例が出ていない現状では、個々の登記官の判断に委ねられる可能性はあると考えます。

受託者の法務一郎が、後続の登記を申請する際に、当該特約(信託行為による定め)を称する登記原因証明情報として、信託設定時から存在している信託契約書を提供すれば足りる、と考えてもよいのでしょうか。

「・・・・登記原因証明情報として当該契約書を提供すれば足りると考えているようですが、このような取扱いは、信託目録の否定だけではなく、信託登記の公示制度の役割そのものを否定することになってしまいます。」(横山同書16頁)

 当該特約の登記がないにもかかわらず、信託契約書を提供することで、後続の登記の申請を行うようなことはできないということのようです。

 登記の申請構造としては納得できます。横山亘先生の見解が、そのまま全国共通の登記実務となるのか、結論付ける根拠でいいのか、位置付けが分かりませんでした。登記情報の連載が、「(元)登記官による~」などの書籍になると、根拠として扱っていいのか分かりません。

昭和41年5月16日付民事甲第1179号民事局長回答

信託の登記ある不動産についての抵当権設定登記申請の受理について

【要旨】受任者が第三者の債務の担保として信託財産に抵当権を設定しその登記の申請があった場合、委託者及び受益者の承諾があるときでもその申請は受理すべきでない。

この通達は、委託者と受益者が承諾した情報を添付することによって、受託者が登記義務者として、信託目録を変更更生せずに、抵当権設定登記の申請を行うことが出来るかを問うものであり、信託契約書が添付されている場合とは分けて考える必要があるのではないかと思います。

参考

登記研究554号P99~

カウンター相談43 信託原簿の受益者の記載の変更の申請書に添付すべき「変更を証する書面」について

問 不動産の管理を目的とする信託の登記がされ、代物弁済により質権者が受益権を取得したので、信託原簿の受益者の記載の変更の申請をしようと思いますが、申請書に添付すべき「変更の書面」がありません。この場合、申請書副本のみを添付すればよいでしょうか。

答 「変更を証する書面」をも添付する必要があります。

昭和27年8月23付民事甲第74号民事局長回答

甲が乙に売渡したる不動産の所有権移転登記を為さず死亡したので、乙が甲の相続人と共に右売買による所有権移転登記申請を為さんとするも相続人三名の内一名がその登記手続に応じない為め他の相続人と共に右登記申請を為したるとき受理して差支ありませんか。

回答

本月5日附日記第3434号をもって問い合わせのあった標記の件については、相続人全員が登記義務者として申請すべきものと考える。

任意後見契約が存在しないまま、委託者兼受益者が、認知症に罹患して、判断能力を喪失してしまえば、成年後見人の選任が求められるリスクはないでしょうか。もちろん、それは、登記官が、錯誤更生の申請時、更生を証する情報として、委託者兼受益者の名義関与を求めた場合の話です。

 成年後見人の選任が求められるのは、リスクなのか、分かりませんでした。当初から成年後見制度を利用しないための信託であれば、それはリスクかもしれません。

 登記に関係なく、認知症に罹患して福祉、医療、保険などの各種契約が求められる場面では成年後見人の選任が求められる可能性があります。記事に記載のあるように、民事信託支援業務に携わる士業の説明義務という点では同感です。


[1] 28号、2023年2月、P80~

民事信託の登記の諸問題(15)

登記研究[1]の記事、渋谷陽一郎「民事信託の登記の諸問題(15)」からです。

受託者は、信託目的達成に必要な行為である処分しかできない、という内在的制約がある。しかしながら、受託者による当該処分が、信託目的達成のために必要な行為であるか否か、一義的な判断は難しい。登記の形式主義の下、いかにして当該処分の有効性を判定すればよいのだろうか。

 登記の形式主義というのは、必要な情報が提供されていれば、登記される、ということだという理解で進めてみたいと思います。登記申請の代理業務において、事実と実体法上の確認・判断は資格者代理人により行われ、登記された後で納得できない方には、権利行使の機会があるように設計されているのだと考えます(信託法8条、27条、40条、58条、92条に列挙されている事項、163条から166条、民法1条、90条、415条、709、858条から866条など)。

△整合性の解釈が難しい要約例

4信託条項

信託の目的 高齢者の生涯に亘る住居の安定的な提供

信託財産の管理方法

受託者の権限 高齢者の居住する信託不動産を売却することができる。

 特定の不動産を指しているわけではないので、新しい住居を用意した上での売却するであれば、問題にはならないのではないかと考えられます。

賃貸物件からの収益を受益債権として定期給付する信託目的に対して、その収益源である当該賃貸物件を売却することは、信託目的の達成に必要な行為とはならない、と評価できそうである。

 何十年という期間にわたり存続する可能性がある信託行為の目的で、生涯に亘る、などの用語の使うのは、難しいのではないかと感じます。ただし、委託者の意思が、生涯、が条件でありそれが達成できないのであれば、信託を終了する、という信託行為であれば良いのかなと思います。


[1] 令和4年11月、897号、テイハン、P51~

民事信託の登記の諸問題(16)

登記研究[1]の記事、渋谷陽一郎「民事信託の登記の諸問題(16)」からです。

信託法を審議した2006年の第165回国会では、次のような、民事信託支援業務に取り組む資格者代理人の人々が注意しておくべき参議院法務委員会の附帯決議が付されている。1つは、福祉型信託に関する附帯決議の抜粋である。

 高齢者や障害者の生活を支援する福祉型の信託については、特にきめ細やかな支援の必要性が指摘されていることにも留意し・・・

「特にきめ細やかな支援の必要性」という表現に着目したい。信託条項の雛型や定型書式の盲目的な利用には注意しなければならない。

リンクを貼っておきます。

参議院

第165回国会 (平成18年9月26日~平成18年12月19日)

法務委員会

信託法案及び信託法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案に対する附帯決議 (平成18年12月7日)

https://www.sangiin.go.jp/japanese/gianjoho/ketsugi/165/futai_ind.html

 特にきめ細やかな支援の必要性が指摘されていることにも留意、が信託条項の雛型や定型書式の盲目的な利用を指しているのか、分かりませんでした。

また、登記によって、実体法、手続法共に法的効果等を全く生じない無意味な情報などが過剰に並ぶ信託原簿が存在していた。

 受益者取消権(旧信託法31条)による、直接、受託者の権限外処分による取消権の対抗要件となる信託原簿から、一歩後退している信託目録になっていますが、現在の信託目録の方が記録として分かりやすくなっているのではないかと感じます。それは、信託目録の記録内容について、様々な情報があり議論がなされているからだと思います。私は信託原簿の時代に司法書士ではありませんでしたが、信託原簿が空洞化したのは、実務情報が公開されることが少なく、取り扱う専門家が一部であったことが原因なのかなと想像します。

むしろ、民事信託の登記の分野に限っていえば、従来の廃止論の経緯を忘却し、信託の専門家を称する資格者代理人の一部が「信託目録の作成は資格者代理人の腕の見せ所」や「創意工夫」などとして、法務局に対して、第三者のための公示ではなく、依頼者の利益代表としての過剰情報を提供する反面、必要情報が提供されないないなど、信託原簿時代以上に問題は深刻化しつつあるようだ(資格者代理人の法令実務精通義務違反を構成しよう)。過去の営業信託のために登記から生じた不幸が再現されないよう祈るほかない。

 法令実務精通義務違反は、司法書士法上、懲戒処分の対象となるので、もう少し明確な基準が必要じゃないかなと思います。例えば、過剰情報を提供する場合(親族など内部の個人情報に関わる。)と、必要情報が提供されない場合(第三者への公示としての登記が、意味をなさなくなる。)では、基準が異なってくるのではないかなと感じます。


[1] 898号、令和4年12月、テイハン、P134~

【文書回答事例】信託契約における残余財産の帰属権利者として取得した土地等の譲渡に係る租税特別措置法第35条第3項に規定する被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除の特例の適用可否について

税務に関する記事です。最終判断は税理士・公認会計士に相談をお願いします。

https://www.nta.go.jp/about/organization/tokyo/bunshokaito/joto-sanrin/221220/01.htm#a01

1 事前照会の趣旨

 照会者(受託者)は、照会者の母(委託者兼受益者。以下「母甲」といいます。)との間で母甲の居住用家屋及びその敷地(以下「本件物件」といいます。)を信託財産とする信託契約(以下、「本件信託契約」といい、本件信託契約に係る信託を「本件信託」といいます。)を締結していたところ、本件信託は受益者の死亡を信託終了事由としていたことから、母甲の相続開始により本件信託は終了し、残余財産となった本件物件は、残余財産の帰属権利者である照会者及びその弟(以下「照会者ら」といいます。)に帰属することとなりました。

 照会者らは、母甲の相続開始日が属する年の翌年に本件物件を譲渡しましたが、その譲渡に係る譲渡所得の計算上、租税特別措置法第35条第3項《居住用財産の譲渡所得の特別控除》に規定する特例(以下「本件特例」といいます。)を適用するに当たり、本件物件が本件信託の残余財産として照会者らに帰属したこと(以下「本件帰属」といいます。)は、同項に規定する取得(相続又は遺贈(贈与者の死亡により効力を生ずる贈与を含みます。以下同じです。)による被相続人居住用家屋及び被相続人居住用家屋の敷地等(以下「被相続人居住用家屋等」といいます。)の取得。)に該当すると解し、その他の要件を満たす限りにおいて、本件特例の適用を受けることができると解してよいか照会します。

2 事前照会に係る取引等の事実関係

(1) 照会者らは、いずれも母甲の相続人です。

(2) 照会者は、令和2年〇月〇日、母甲との間で、委託者兼受益者を母甲、受託者を照会者、信託財産を本件物件及び金銭、本件信託の終了事由を母甲の相続開始等、本件信託終了時の残余財産の帰属権利者を照会者らとする旨の本件信託契約を締結しました。

(3) 本件信託契約においては、その信託期間を契約締結のときから委託者兼受益者が死亡したときまでとし、かつ信託期間が満了した際には信託が終了する旨定められていたため、当該契約に基づき、令和3年〇月〇日、母甲の相続開始により本件信託は終了し、残余財産となった本件物件は、照会者らへ帰属しました。

(4) 照会者らは、令和4年〇月〇日、本件物件を譲渡しました。

3 事前照会者の求める見解となることの理由

 本件特例は、譲渡をした者が「相続又は遺贈による被相続人居住用家屋等の取得」をした相続人(包括受遺者を含みます。以下同じです。)であることを要件の一つとしています。

 また、相続税法第9条の2第4項《贈与又は遺贈により取得したものとみなす信託に関する権利》では、受益者の死亡に基因して終了する信託に係る残余財産の帰属は、適正な対価の負担があるもの及び信託終了の直前において当該信託の受益者であった者に対するものを除いて、遺贈により取得したものとみなす旨規定されています。

 そして、本件特例が適用対象者を「相続又は遺贈による被相続人居住用家屋等の取得」をした相続人としているのは、相続人がその意思の如何にかかわらず、相続により被相続人居住用家屋等の取得をし、その後の適正管理の責任を負うことになるためと考えられますが、照会者らは、これと同様の状況にあるということができます。

 したがって、本件物件は、相続税法上のいわゆるみなし相続財産に該当すること及び照会者らは本件特例の趣旨と同様の状況にあることから、本件帰属は、本件特例に規定する「相続又は遺贈による被相続人居住用家屋等の取得」に該当すると考えます。

関係する法令条項等 租税特別措置法第35条

信託法第183条

回答年月日 令和4年12月20日

回答者 東京国税局審理課長

回答内容 標題のことについては、下記の理由から、貴見のとおり取り扱われるとは限りません。

 なお、この回答内容は、東京国税局としての見解であり、事前照会者の申告内容等を拘束するものではないことを申し添えます。

(理由)

租税特別措置法(以下「措置法」といいます。)第35条第3項に規定する特例(以下「本件特例」といいます。)は、相続又は遺贈(贈与者の死亡により効力を生ずる贈与を含みます。以下同じです。)による被相続人居住用家屋及び被相続人居住用家屋の敷地等(以下「被相続人居住用家屋等」といいます。)の取得をした相続人(包括受遺者を含みます。以下同じです。)が、一定の譲渡をした場合に、その譲渡所得の計算上、本件特例の適用を受けることができる旨規定しています。

 ところで、信託契約などにより信託の受益権を取得する行為や、信託が終了し残余財産が権利者に移転した場合などについては、法律上の「贈与」又は「遺贈」には該当しないものの、実質的には贈与又は遺贈と同様の効果をもたらすことから、相続税法においては、これらの取得又は移転などについて贈与又は遺贈による取得とみなして相続税又は贈与税の課税対象とする措置が講じられています(相続税法第9条の2)。

 この点、本件特例は、例えば措置法第39条《相続財産に係る譲渡所得の課税の特例》に規定する特例のように、相続税法の規定により遺贈等による財産の取得とみなされる場合を対象に含む旨は規定していません。 

また、本件特例は、相続人が、相続により、その意思の如何にかかわらず、被相続人居住用家屋等の適正管理の責任を負うこととなることを踏まえた趣旨の下、適用対象者を相続人に限定し、かつ、「相続又は遺贈による被相続人居住用家屋等の取得」をした場合に限り適用すると規定したものであると考えられるところ、信託終了による残余財産の取得は法律上の相続又は遺贈には当たらず、受託者(照会者)は信託行為の当事者であること、信託行為の当事者ではない帰属権利者は、その権利を放棄することができること(信託法183③)を踏まえると、上記本件特例の趣旨の下では、帰属権利者による残余財産の取得を相続人による相続又は遺贈による財産の取得と同様に取り扱うことは相当ではないと考えられます。

 以上のことから、信託契約に基づき、委託者兼受益者の相続開始という信託終了事由の発生により信託が終了したことに伴い、当該信託に係る残余財産を帰属権利者が取得したことは、本件特例に規定する相続人による「相続又は遺贈による被相続人居住用家屋等の取得」に該当するとは認められず、また、死因贈与契約に基づき当該残余財産を取得したとする事情も認められませんので、当該残余財産の譲渡に係る譲渡所得の計算上、本件特例の適用を受けることはできません。

 私には、信託契約により、当事者の意思で決めたのだから、相続・遺贈と同視することはできず、特例を認めることは出来ない、という趣旨に読めました。しかしこの指摘は、受託者兼残余財産の帰属権利者である照会者には当てはまりますが、照会者の弟は残余財産の帰属権利者であることを知らなかった可能性もあり、その点はどうするのだろうか、と考えてしまいました。残余財産の帰属権利のみを放棄することが出来る点が、全ての積極財産、消極財産を放棄することが出来る相続放棄と異なる点です。この点は、残余財産の帰属権利者が2人いる照会者の弟にとって、通常の相続・遺贈と異なり管理責任(令和5年4月1日施行)を逃れることができる点は有利といえるのかなとも思いました。

20230305追記

参考 『月刊登記情報2023年3月号(736号)』税理士白井一馬「自宅を信託財産にした場合における相続後の「空き家譲渡特例」の適用可否」

https://store.kinzai.jp/public/item/magazine/A/T/

租税特別措置法

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=332AC0000000026&keyword=%E7%A7%9F%E7%A8%8E%E7%89%B9%E5%88%A5

第三十五条 個人の有する資産が、居住用財産を譲渡した場合に該当することとなつた場合には、その年中にその該当することとなつた全部の資産の譲渡に対する第三十一条又は第三十二条の規定の適用については、次に定めるところによる。

一 第三十一条第一項中「長期譲渡所得の金額(」とあるのは、「長期譲渡所得の金額から三千万円(長期譲渡所得の金額のうち第三十五条第一項の規定に該当する資産の譲渡に係る部分の金額が三千万円に満たない場合には当該資産の譲渡に係る部分の金額とし、同項第二号の規定により読み替えられた第三十二条第一項の規定の適用を受ける場合には三千万円から同項の規定により控除される金額を控除した金額と当該資産の譲渡に係る部分の金額とのいずれか低い金額とする。)を控除した金額(」とする。

二 第三十二条第一項中「短期譲渡所得の金額(」とあるのは、「短期譲渡所得の金額から三千万円(短期譲渡所得の金額のうち第三十五条第一項の規定に該当する資産の譲渡に係る部分の金額が三千万円に満たない場合には、当該資産の譲渡に係る部分の金額)を控除した金額(」とする。

2 前項に規定する居住用財産を譲渡した場合とは、次に掲げる場合(当該個人がその年の前年又は前々年において既に同項(次項の規定により適用する場合を除く。)又は第三十六条の二、第三十六条の五、第四十一条の五若しくは第四十一条の五の二の規定の適用を受けている場合を除く。)をいう。

一 その居住の用に供している家屋で政令で定めるもの(以下この項において「居住用家屋」という。)の譲渡(当該個人の配偶者その他の当該個人と政令で定める特別の関係がある者に対してするもの及び所得税法第五十八条の規定又は第三十三条から第三十三条の四まで、第三十七条、第三十七条の四若しくは第三十七条の八の規定の適用を受けるものを除く。以下この項及び次項において同じ。)又は居住用家屋とともにするその敷地の用に供されている土地若しくは当該土地の上に存する権利の譲渡(譲渡所得の基因となる不動産等の貸付けを含む。以下この項及び次項において同じ。)をした場合

二 災害により滅失した居住用家屋の敷地の用に供されていた土地若しくは当該土地の上に存する権利の譲渡又は居住用家屋で当該個人の居住の用に供されなくなつたものの譲渡若しくは居住用家屋で当該個人の居住の用に供されなくなつたものとともにするその敷地の用に供されている土地若しくは当該土地の上に存する権利の譲渡を、これらの居住用家屋が当該個人の居住の用に供されなくなつた日から同日以後三年を経過する日の属する年の十二月三十一日までの間にした場合

3 相続又は遺贈(贈与者の死亡により効力を生ずる贈与を含む。以下第五項までにおいて同じ。)による被相続人居住用家屋及び被相続人居住用家屋の敷地等の取得をした相続人(包括受遺者を含む。以下この項において同じ。)が、平成二十八年四月一日から令和五年十二月三十一日までの間に、次に掲げる譲渡(当該相続の開始があつた日から同日以後三年を経過する日の属する年の十二月三十一日までの間にしたものに限るものとし、第三十九条の規定の適用を受けるもの及びその譲渡の対価の額が一億円を超えるものを除く。以下この条において「対象譲渡」という。)をした場合(当該相続人が既に当該相続又は遺贈に係る当該被相続人居住用家屋又は当該被相続人居住用家屋の敷地等の対象譲渡についてこの項の規定の適用を受けている場合を除く。)には、第一項に規定する居住用財産を譲渡した場合に該当するものとみなして、同項の規定を適用する。

一 当該相続若しくは遺贈により取得をした被相続人居住用家屋(当該相続の時後に当該被相続人居住用家屋につき行われた増築、改築(当該被相続人居住用家屋の全部の取壊し又は除却をした後にするもの及びその全部が滅失をした後にするものを除く。)、修繕又は模様替に係る部分を含むものとし、次に掲げる要件を満たすものに限る。以下この号において同じ。)の政令で定める部分の譲渡又は当該被相続人居住用家屋とともにする当該相続若しくは遺贈により取得をした被相続人居住用家屋の敷地等(イに掲げる要件を満たすものに限る。)の政令で定める部分の譲渡

イ 当該相続の時から当該譲渡の時まで事業の用、貸付けの用又は居住の用に供されていたことがないこと。

ロ 当該譲渡の時において地震に対する安全性に係る規定又は基準として政令で定めるものに適合するものであること。

二 当該相続又は遺贈により取得をした被相続人居住用家屋(イに掲げる要件を満たすものに限る。)の全部の取壊し若しくは除却をした後又はその全部が滅失をした後における当該相続又は遺贈により取得をした被相続人居住用家屋の敷地等(ロ及びハに掲げる要件を満たすものに限る。)の政令で定める部分の譲渡

イ 当該相続の時から当該取壊し、除却又は滅失の時まで事業の用、貸付けの用又は居住の用に供されていたことがないこと。

ロ 当該相続の時から当該譲渡の時まで事業の用、貸付けの用又は居住の用に供されていたことがないこと。

ハ 当該取壊し、除却又は滅失の時から当該譲渡の時まで建物又は構築物の敷地の用に供されていたことがないこと。

4項以下略

信託法

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=418AC0000000108

(帰属権利者)

第百八十三条 信託行為の定めにより帰属権利者となるべき者として指定された者は、当然に残余財産の給付をすべき債務に係る債権を取得する。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。

2 第八十八条第二項の規定は、前項に規定する帰属権利者となるべき者として指定された者について準用する。

3 信託行為の定めにより帰属権利者となった者は、受託者に対し、その権利を放棄する旨の意思表示をすることができる。ただし、信託行為の定めにより帰属権利者となった者が信託行為の当事者である場合は、この限りでない。

4 前項本文に規定する帰属権利者となった者は、同項の規定による意思表示をしたときは、当初から帰属権利者としての権利を取得していなかったものとみなす。ただし、第三者の権利を害することはできない。

5 第百条及び第百二条の規定は、帰属権利者が有する債権で残余財産の給付をすべき債務に係るものについて準用する。

6 帰属権利者は、信託の清算中は、受益者とみなす。

関連

国税庁法令解釈通達

土地信託に関する所得税、法人税並びに相続税及び贈与税の取扱いについて 別紙

第2 所得税に関する取扱い

(居住用財産の譲渡所得の特別控除の適用)

2-54 措置法第35条第1項((居住用財産の譲渡所得の特別控除))に規定する「その居住の用に供している家屋」又は「その敷地の用に供されている土地若しくは当該土地の上に存する権利」には、個人の有する信託財産の構成物でこれらの資産に該当するもの(以下この項において「信託居住用財産」という。)が含まれるのであるが、この場合における同条の規定の適用については、次の諸点に留意する。

(1) 信託居住用財産の譲渡には、信託受益権の譲渡によるものが含まれること。

(2) 譲渡された信託財産である家屋が同条第1項に規定する「その居住の用に供している家屋」に該当するかどうかは、当該家屋の受益者について、措置法通達35-2又は35-3に定めるところにより判定すること。

(3) 措置法令第23条第1項((特例の対象となる家屋の範囲))に規定する「その者が主としてその居住の用に供していると認められる一の家屋」の判定の基礎には、その者の有する信託居住用財産が含まれること。

(4) 信託居住用財産の譲渡が措置法第35条第1項に規定する「特別の関係がある者に対してするもの」に該当するかどうかは、その譲渡に係る信託居住用財産の受益者について判定すること。

(5) 同項に規定する「その年の前年又は前々年において既にこの項又は第36条の2若しくは第36条の5の規定の適用を受けている」かどうかの判定の基礎には、その者の有する信託居住用財産の譲渡が含まれること。

20230619追記

『月刊登記情報』2023年6月号(739号)「信託契約の対象不動産を検討する際の実務上の留意点~令和4年12月20日東京国税局回答を受けて~」JFD司法書士法人 司法書士 福田秀樹

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