渋谷陽一郎「民事信託の登記の諸問題(19)」

登記研究[1]の記事、渋谷陽一郎「民事信託の登記の諸問題(19)」からです。

信託目録に記録すべき情報(抜粋)

信託条項 信託財産の管理方法

受託者の権限 受益者以外の第三者の債務を被担保債権とする信託不動産に対する抵当権の設定および抵当権設定登記申請の手続

このような情報を、信託目録に記録すべき情報の信託条項として申請できるであろうか。果たして、信託法上、許容される有効な信託条項なのだろうか。あるいは、信託法上、類型的に、有効となる要件が存在するのだろうか。

信託目録に記録すべき情報の信託条項として申請できるであろうか。

→却下事由(不動産登記法25条各号)に該当する、とは考えられませんでした。

信託法上、許容される有効な信託条項なのだろうか。

→例えば、信託財産である土地に受益者の親族の居住用建物を建築する場合を考えてみます。信託行為においても、委託者の希望として親族の居住用建物の建築には、担保設定など許容しているケースです。

 居住用建物を建築計画が具体的になり、土地への担保設定が必要になることが分かったときに、親族を受益者に加えることが考えられます。また、委託者兼受益者の判断能力がある間であれば、信託財産から該当する不動産を外す、ということも考えられます。

 記事に、二回目テスト、という用語が使用されています。1回目の信託目録への記録がテストされる機会(後続登記申請時など)を指しているようです。地震についての比喩がありますが、登記申請がされないとしても、終了しない信託があるのか、分かりませんでした。

将来的に遡行的審査の基準が類型化され、登記実務家の間に共有されることができれば、状況は変化していくだろう。

 時間の経過や実務の蓄積によって、書籍の出版や通達の発出などにより、類型化されていくのではないかと思います。登記官、実務家双方にとって、異なる類型の信託目録を読み解いて処理していくのは、難しくなっていくのではないかと考えられるからです。

後続登記申請時における厳格なテストを成功させるためには、当初登記申請時における信託目録に記録すべき情報を具体化・詳細化しておくのがよい。しかし、当初時点における後続登記申請の予測は、あくまで想定であるという限界もある。

 日時や期間、固有名詞などは、確定している事項を除いて、詳細な記載は不要だと感じます。また、~する、を~することができる、とするなど、受託者の裁量に幅を持たせることが必要な場合もあるのかなと思います。

信託法上、受託者に対して、信託行為の定めなしに、当然に完全な処分権限が与えられているのか否か、という問題がある。

 受託者は、信託法上、信託法2条1項、2項5項、26条から55条まで、などに縛られることになると考えられます。委託者の終了権に関わる合意権、という用語が出てきますが、どのような権利なのか分かりませんでした。

参考

昭和44年8月16日 民事甲第1629号 民事局長回答 信託の登記ある不動産を目的とする抵当権設定登記申請の受否について

要旨 信託原簿記載の信託条項に「信託財産の運用及び処分方法は受託者において自由に実行し得るものとする」旨の信託の登記ある不動産について、「受託者は受益者の債権者に対する債務全額を担保するため、受託者所有の不動産につき債権者のため抵当権を設定することとし、直ちに債権者に対し右抵当権設定登記手続きをする」旨の和解調書を添付して抵当権設定登記申請があった場合、これを受理してさしつかえない。


[1] 902号、令和5年4月、テイハン、P71~

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