受益者代理人の代理権

 受益者代理人の代理権 

1、代理権を制限する方法
□1 本信託における受益者代理人は、次の各号に掲げる代理権を有しない。
□(1)本信託の変更権のうち、受益者代理人の代理権、□【信託の目的、残余財産の帰属権利者、信託の変更方法】を変更する権利。
□(2)別紙信託財産目録□【1・2・3】を売却に関する同意権。
□(3)信託法92条1項各号の権利。


2、代理権を限定する方法
□2 本信託における受益者代理人は、次の各号に掲げる代理権のみを有する。
□(1)受益者が受ける□【医療、入院、介護その他の福祉サービス利用に必要な
費用の給付・生活費の給付・教育資金】を受託者へ請求する権利。
□(2)別紙信託財産目録□【1・2・3】を売却する権利。
□(3)本信託の終了に関する合意権。

参考

信託法139条1項但し書、4項。

金融機関が家族信託に取り組んで変わったこと

金融機関が家族信託に取り組むことで変わったこと

沖縄県においては、(株)琉球銀行が2018年1月4日に、(株)沖縄銀行が2018年5月15日に家族信託のサービスを開始しました。

https://www.ryugin.co.jp/corporate/news/9268/

http://www.okinawa-bank.co.jp/news_release/2018051500019/

また、(株)沖縄海邦銀行では、信託の機能を備えた信託口口座を作成することが出来ます。

金融機関が家族信託サービスを開始して、私の事務所で変わったことを挙げます。

1、セカンドオピニオンが取りやすくなった
今までだと、相談に来る方に「他の専門家の意見も聞いてみたらどうですか?」と助言するしかなかったのですが、「銀行口座はどこの銀行ですか?それなら銀行の提案も聞いてみたらどうですか?」と言えるようになりました。
 士業よりも銀行の窓口の方が敷居が低いと感じる方もいらっしゃり、地域金融機関を案内出来ることは、選択肢が広がります。
 また今までの金融機関の対応についても、事実を依頼者に伝えることが出来ます。
2015年に門前払いされたこと、2017年に東京の団体と金融機関を繋いだことなど失敗の方が多いですが。

2、セカンドオピニオンを行う機会が増えた
 逆もあり、金融機関の話を聞いて私の事務所にくる方もいます。「銀行の担当者からはこのような話を聞いたんですが、どうなんですか?」というような感じです。

3、共同研究は不可能
 県内地銀三行の信託担当者へ、学会などへの共同研究の呼びかけをしましたが、反応はありませんでした。目的は沖縄発の、沖縄型の商品・サービス開発に結び付けるためです。他の士業にも呼びかけましたが同じく反応なしでした。
 県内地銀三行ともに、自行で契約した家族信託は提携している士業としか業務を行わないのでお互い競争関係にあるからかもしれません。他士業にしても同様かもしれません。
 東京から来たコンサルタントにセミナーの講師を任せて、夜に接待する時間があれば、自分の頭で研究した方が良いと思うのですが、そんなことを考えているから反応がないのかもしれません。

20230329追記

「りゅうぎん家族de信託」の取り扱い開始について 2018/01/04

https://www.ryugin.co.jp/corporate/news/9268/

「お金の信託」取り扱い開始について2023/02/13

https://www.ryugin.co.jp/corporate/news/60856/

当事務所の顧客が家族信託を利用としたところ、相談を行った支店ではOKでしたが、本店から担当行員が来て、琉球銀行の取引のある司法書士じゃないと駄目だと言われ、別の司法書士が行うこととなりました。対価を支払っているのは誰なのでしょうか。

金融庁 顧客本位の業務運営に関する原則(改訂版)令和3年1月15日

https://www.fsa.go.jp/policy/kokyakuhoni/kokyakuhoni.html

 

チェック方式の自己信託設定証書(案)

自己信託設定証書
 
前文

 委託者【氏名】は、その所有する財産を信託財産とし、自己を受託者として信託を設定する(以下、「本信託」という。)。本信託はこれにより効力を生じる。

第1章 総則

第1条 (信託の目的)
□1 信託の目的は、次の各号に掲げるとおりとする。受託者は、信託の目的に従い信託財産を管理、運用、処分およびその他の目的達成のために必要な行為を行う。
□(1)受益者とその扶養義務者の安定した暮らし。
□(2)財産の円滑な管理および承継。
□(3)【                       】
□(4)【                       】
□2 信託目的の優先順位【                】

第2条 (信託財産)
□1 本信託における財産は、次の第1号から第2号までとする。本信託の翌日以降に生じた第3号から第5号までの財産も、その種類に応じた信託財産に帰属する。
□(1)別紙記載の不動産(以下、「信託不動産」という。)。
□(2)別紙記載の金銭(以下、「信託金銭」という。)。
□(3)信託財産に属する財産の管理、運用、処分、滅失、損傷その他の事由によ
     り受託者が得た財産。
□(4)受益者が信託目的の達成のために行う、自己が所有する金銭、不動産、
    債権およびその他の財産を信託財産とする追加信託。
□(5)その他の信託財産より生じる全ての利益。
□2 委託者は、本信託について特別受益の持ち戻しを免除する。
□3 本信託設定日における信託財産責任負担債務は、別紙記載のとおりとする。
□4 【                  】

第3条 (信託設定者)
□1 自己信託を設定する者は、次のとおりとする。
住所【                】  
氏名【             】生年月日【       】
□2 受託者の任務は、次の場合に終了する。
 □ただし、信託法58条1項は適用しない。
□(1)受託者の死亡。
□(2)受益者の同意を得て辞任したとき。
□(3)受託者に成年後見人または保佐人が就いたとき。
□(4)受託者が法人の場合、合併による場合を除いて解散したとき。
□(5)受託者が、受益者からの報告請求に対して2回続けて報告を怠った場合。
□(6)受益者と各受託者が合意したとき。
□(7)【受託者が○○歳になったとき・                】
□(8)受託者が唯一の受益者となったとき。ただし、1年以内にその状態を変更
     したときを除く。
□(9)その他信託法で定める事由が生じたとき。
□3 受託者の任務が終了した場合、後任の受託者は次の者を予定する。
   【住所】【氏名】【生年月日】【委託者との関係】
 □(後任の)受託者の任務が終了した場合、新たな受託者を次の順位で予定する。
  第1順位:任務終了前の受託者が、あらかじめ書面により指名した者。
  第2順位:信託監督人が書面により指定した者。
  第3順位:その他信託法に基づいて選任された者。
□4 任務が終了した受託者(その相続人のほか、信託財産を管理すべき者を含む。)
   は、後任の受託者が信託事務の処理を行うことができるようになるまで、受益
   者への通知、信託財産の保管その他の必要な事務を行う。
□5 受託者に指定された者が、本信託の利害関係人による催告から1か月以内
   に受託者に就任しない場合は、受益者は新たな受託者を定める。
□6 後任受託者は、前任の受託者から受託者としての権利義務を承継し、次の各
   号に記載する必要な事務を行う。
□(1)債務の弁済、費用の清算。
□(2)前受託者の任務終了が辞任による場合を除いて、必要な場合の債務引受け。
□(3)その他の信託財産の引継ぎおよび信託事務を処理するための受託者の変
     更に伴う必要な手続。
□7 【                       】

第4条 (受益者)
□1 本信託の第1順位の受益者は、次の者とする。
  【住所】【氏名】【生年月日】
□2 受益者の死亡により受益権が消滅した場合、受益権を原始取得する者として
   次の者を指定する。
   第2順位
  【住所】【氏名】【生年月日】
 □【住所】【氏名】【生年月日】
 □ 第3順位
  【住所】【氏名】【生年月日】
 □【住所】【氏名】【生年月日】
□3 次の順位の者が既に亡くなっていたときは、さらに次の順位の者が受益権を
   原始取得する。
□4 受益権を原始取得した者は、委託者から移転を受けた権利義務について同意
   することができる。
□5 受益者に指定された者または受益権を原始取得した者が、受益権を放棄した
   場合には、さらに次の順位の者が受益権を原始取得する。
□6 受益者に指定された者が、指定を知ったとき又は受託者が通知を発してから
  1年以内に受益権を放棄しない場合には、受益権を原始取得したとみなす。
□7 【委託者氏名】は、【委託者以外の受益者氏名】が受益権を取得することを承
   認する。


第5条 (受益権)
□1 次のものは、元本とする。
□(1)信託不動産。
□(2)信託金銭。
□(3)遺留分推定額。
□(4)【修繕積立金、敷金・保証金等返還準備金・        】
□(5)上記各号に準ずる資産。
□2 次のものは、収益とする。
□(1)信託元本から発生した利益。
□(2)□【賃料・             】
□3 元本又は収益のいずれか不明なものは,受託者がこれを判断する。
□4 受益者は、信託財産から経済的利益を受けることができる。
□5 【受益者氏名】は、【医療、入院、介護その他の福祉サービス利用に必要な費
   用の給付・生活費の給付・教育資金・      】を受けることができる。
□6 受益者は、事前に□【受託者・信託監督人】の書面による同意を得なければ、受益権の全部または一部を□【譲渡・質入れ・担保設定・その他の処分】することができない。ただし、信託財産または受益権に金融機関による担保権が設定されているときは、あらかじめ当該金融機関の承認を受ける。
□7 受益者は、遺留分請求があった場合は、受託者に事前に通知のうえ受益権(受益債権は金銭給付を目的とする。)を分割、併合および消滅させることができる。
□8 受益権は、受益権の額1円につき1個とする。
□9 【任意後見人の事務について同意する事項(    )・        】

第6条 (受益者代理人など)
□1
□(1)本信託の受益者【氏名】の代理人は次の者とし、□【本信託の効力発生日・
  受益者が指定した日・受益者に成年後見開始または成年後見監督人選任の審判が開始したとき・    】から就任する。
□(2)本信託の信託監督人は次の者とし、□【本信託の効力発生日・受益者が指定した日・        】から就任する。
  【住所】【氏名】【生年月日】【職業】
□2 受益者(受益者の判断能力が喪失している場合で、受益者代理人が就任していないときは受託者)は必要がある場合、受益者代理人、信託監督人を選任することができる。
□3 受益者代理人および信託監督人の変更に伴う権利義務の承継等は、その職務
   に抵触しない限り、本信託の受託者と同様とする。


第7条 (委託者の地位)
□1 委託者は、次の各号の権利義務を受益者に移転する。
□(1)信託目的の達成のために追加信託をする権利義務。
□(2)受益権の放棄があった場合に、次の順位の受益者または残余財産の帰属権
    利者がいないとき、新たな受益者を指定することができる権利。
□2 委託者は、受益者を変更する権利およびその他の権利を有しない。
□3 委託者の地位は、受益権を取得する受益者に順次帰属する。
□4 委託者が遺言によって受益者指定権を行使した場合、受託者がそのことを知
   らずに信託事務を行ったときは、新たに指定された受益者に対して責任を負わ
   ない。

第2章 受託者の信託事務

(信託財産の管理方法)
第○条
□1 受託者は、信託不動産について次の信託事務を行う。
□(1)所有権の移転登記と信託登記の申請。
□(2)本信託の変更により、信託不動産に関する変更が生じる場合の各種手続き。
□(3)信託不動産の性質を変えない修繕・改良行為。
□(4)信託財産責任負担債務の履行。
□(5)受託者がその裁量において適当と認める方法、時期及び範囲で行う次の事務。
  □売買契約の締結および契約に付随する諸手続き。
  □賃貸借契約の締結、変更、終了、契約に付随する諸手続き及び契約から生じる
   債権の回収および債務の弁済。
  □使用貸借契約の締結、変更、終了および契約に付随する諸手続き。
  □保険契約の締結または名義変更、契約の変更および解除。
  □保険金及び賠償金の請求及び受領。
  □リフォーム契約の締結。
  □境界の確定、分筆、合筆、地目変更、増築、建替え、新築。
  □その他の管理、運用、換価、交換などの処分。
  □【                  】
  □ただし、以下の事項については、□【受益者・信託監督人・       】
   から事前に書面(電磁的記録を含む。)による承認を得なければならない。
  □【                  】
  □【                  】
  □【                  】
□(6)その他の信託目的を達成するために必要な事務。
□2 受託者は信託金銭について、次の信託事務を行う。
□(1)信託に必要な表示又は記録等。
□(2)受託者個人の財産と分けて、性質を変えずに管理。
□(3)信託財産責任負担債務の期限内返済および履行。
□(4)本信託の目的達成に必要な場合の、信託財産責任負担債務の債務引受。
□(5)受託者がその裁量において適当と認める方法、時期及び範囲で行う次の事務。
□受益者への定期的な生活費の給付、医療費、施設費などの受益者の生活に必要な費用の支払い。
□金融商品の購入、変更および解約。
□不動産の購入、賃借。
□受益者の送迎用車両その他の福祉用具の購入。
□受益者所有名義の不動産に対する擁壁の設置、工作物の撤去などの保存・管理に必要な事務。
 □【                            】
 □その他の信託目的を達成するために必要な事務。
 □ただし、以下の事項については、□【受益者・信託監督人・       】
   の書面(電磁的記録を含む。)による事前の承認を得なければならない。
  □【○○万円を超える支出・       】
  □【                  】
□3 受託者は、信託目的の達成のために必要があるときは、受益者の承諾を得て金銭を借入れることができる。受託者以外の者が債務者となるときは、借り入れた金銭は信託財産に属する。
□4 受託者は、受益者の承諾を得て信託財産に(根)抵当権、質権その他の担保権、用益権を(追加)設定し、登記申請を行うことができる。
□5 受託者は、信託事務の一部について必要があるときは、受託者と同様の管理方法を定め、第三者へ委託することができる。
□6 受託者は、本信託契約に記載のない特別の支出が見込まれる場合は、本信託の目的に従い受益者の承諾を得て、支出することができる。
□7 受託者は、各受益者と信託事務処理費用を受益者の負担とする合意をすることができる。
□8 受託者は、受益者(受益者代理人、信託監督人、法定代理人および任意後見人が就任している場合は、それらの者を含む。)から信託財産の管理状況について報告を求められたときは、1か月以内に報告しなければならない。
□9 受託者は、計算期間の末日における信託財産の状況を、信託財産に応じた方法によって受益者(受益者代理人、信託監督人、法定代理人、任意後見人が就任している場合は、それらの者を含む。)へ報告する。
□10 受託者は、受益者から追加信託の通知があった場合、その財産に信託の目的をはじめとした契約内容に適合しない財産がある場合は、追加信託の設定を拒否することができる。
□11 受益者に対して遺留分請求があった場合、遺留分の額が当事者間で確定しないときは、受託者は調停調書その他の権利義務が確定する書面を確認するまで、履行遅滞の責任を負わない。
□12 受託者は、善良な管理者の注意をもって、受益者のために忠実に職務を遂行する。
□13 受託者は、土地への工作物などの設置により他人に損害を与えることのないように管理する。
□14 受託者は、信託行為に記載のある事務および受益者の事前同意を得た事務に関して、信託期間中及び信託終了後、信託財産に関する瑕疵及び瑕疵により生じた損害について責任を負わない。
□15 本条項に記載のない事項は、信託法その他の法令に従う。

第8条 (信託事務処理に必要な費用)
□1 信託事務処理に必要な費用は次のとおりとし、受益者の負担により信託金銭
   から支払う。信託金銭で不足する場合には、その都度、またはあらかじめ受益
   者に請求することができる。
□(1)信託財産に対して課せられる公租公課。
□(2)信託不動産の維持、保全、修繕および改良に必要な費用。
□(3)損害保険料。
□(4)信託監督人、受益者代理人およびその他の財産管理者に対する報酬・手数
     料。
□(5)弁護士等の士業その他の第三者へ委託した場合の手数料又は報酬。
□(6)受託者が信託事務を処理するに当たり、過失なくして受けた損害の賠償。
□(7)その他の信託事務処理に必要な諸費用。
□(8)【                  】
□2 受託者が信託事務の処理に必要な費用に関して、【金額】円を超える場合、事前に信託金銭の中から支払いまたは事後に信託金銭から償還を受けるときは、受益者に対してその額のみを通知する。ただし、算定根拠を明らかにすることを要しない。

第3章 信託の終了と清算

第9条 (信託の終了)
□1 本信託は、次に掲げる各号のいずれかの場合に終了する。
□(1)【氏名】が亡くなったとき。
□(2)信託の目的に従って受益者と受託者の合意があったとき。
□(3)信託財産責任負担債務につき、期限の利益を喪失したとき。
□(4)受益者と受託者が、○○県弁護士会の裁判外紛争解決機関を利用したにも
    関わらず、和解不成立となったとき。ただし、当事者に法定代理人、保佐人、
    補助人または任意後見人がある場合で、その者が話し合いのあっせんに応じ
    なかった場合を除く。
□(5)受託者が受益権の全部を固有財産で有する状態が1年間継続したとき。
□(6)受託者が欠けた場合であって、新受託者が就任しない状態が1年間継続し
     たとき。
□(7)信託財産が無くなったとき。
□(8)その他信託法で定める事由が生じたとき。
□(9)【                       】
□2 本信託において、信託法164条1項は適用しない。

第10条 (清算受託者及び手続)
□1 清算受託者は、本信託が終了したときの受託者とする。
□2 清算受託者は、本信託の受託者として行っている職務を終了し、次の清算手
   続きを行う。
□(1)信託財産に属する債権の回収および信託債権に係る債務の弁済。
□(2)受益債権に係る債務の弁済。ただし、残余財産の給付を内容とするものを
     除く。
□(3)清算手続きに必要がある場合、残余財産の帰属権利者に通知のうえ、財産の処分、担保設定および残余財産の帰属権利者による債務引受けの催告。ただし、債権者があるときはその承諾を必要する。
□(4)信託事務に関する最終の計算。
□3 残余財産の帰属権利者から最終計算の承認がされ、清算受託者が残余財産を帰属権利者に引き渡したとき(残余財産の帰属権利者による債務引受けが必要な場合は、事前に債務引受けを行うことを要する。)に清算手続きは終了し、信託財産の所有権は移転する。
□4 清算受託者は、清算結了時の現状有姿(債務引受けの状態を含む。)でもって残余財産を残余財産の帰属権利者に引き渡す。
□5 清算受託者による登記、登録、届け出および通知が必要な残余財産がある場
   合は、その手続きを行う。
□6 清算受託者の変更に伴う権利義務の承継等は、本信託の受託者と同様とする。


第11条 (信託終了後の残余財産)
□1 本信託の終了に伴う□【残余財産の受益者・残余財産の帰属権利者】は、次の順位により指定する。
第1順位
住所 ○○県○○市○○町〇―〇―〇
氏名 ○○○○
生年月日 昭和〇年〇年〇月〇日
第2順位
住所 ○○県○○市○○町〇―〇―〇
氏名 ○○○○
生年月日 昭和〇年〇年〇月〇日
第3順位
住所 ○○県○○市○○町〇―〇―〇
氏名 ○○○○
生年月日 昭和〇年〇年〇月〇日
□【                  】
□2 次の順位の者がすでに亡くなっていたときは、さらに次の順位の者を残余財産の帰属権利者に指定する。
□3 残余財産の帰属権利者に指定された者が当該権利を本信託の受益権と共に放棄した場合には、さらに次の順位の者を残余財産の帰属権利者に指定する。
□4 清算結了時に信託財産責任負担債務が存する場合で金融機関が求めるときは、合意により残余財産の帰属権利者は、当該債務を引き受ける(信託法181条)。


第4章 その他

第12条 (受益者の代理人が行使する権利)
□1 受益者代理人が就任している場合、受益者代理人は受益者のためにその権利
   を代理行使する。
□2 受益者に民法上の成年後見人、保佐人、補助人または任意後見人が就任して
   いる場合、その者は受益者の権利のうち次の代理権および同意権を有しない。
   ただし、任意後見人、保佐人および補助人においては、その代理権目録、
   代理行為目録および同意行為目録に記載がある場合を除く。
□(1)受託者の辞任申し出に対する同意。
□(2)受託者の任務終了に関する合意権。
□(3)後任受託者の指定権。
□(4)受益権の譲渡、質入れ、担保設定その他の処分を行う場合に、受託者に同
     意を求める権利。
□(5)受益権の分割、併合および消滅を行う場合の受託者への通知権。
□(6)受託者が、信託目的の達成のために必要な金銭の借入れを行う場合の承諾
    権。
□(7)受託者が、信託不動産に(根)抵当権、その他の担保権、用益権を(追加)
     設定する際の承諾権。
□(8)受託者が、本信託契約に記載のない特別の支出が見込まれる場合に、本信
    託の目的に従い費用を支出するときの承諾権。
□(9)受託者が、各受益者と信託事務処理費用を受益者の負担とする場合の合意
    権。
□(10)受託者が、本信託契約に記載のない特別の支出が見込まれる場合に、本
     信託の目的に従い費用を支出するときの承諾権。
□(11)受託者が、各受益者と信託事務処理費用を受益者の負担とする場合の合
     意権。
□(12)本信託の変更に関する合意権。
□(13)残余財産の帰属権利者が行う、清算受託者の最終計算に対する承諾権。
□(14)本信託の終了に関する合意権。
□3 信託監督人が就任している場合、受益者の意思表示に当たっては事前に信託監督人との協議を要する。

 
第13条 (信託の変更)
□1 本信託の変更は、次の各号に掲げる方法による。ただし、信託財産が金融機関に担保提供されている場合、受託者はあらかじめ当該金融機関の承認を受ける。
□(1)信託目的の範囲内において、受託者と受益者による合意。
□(2)その他信託法が定める場合。
□2 受益者が受益権を分割、併合および消滅させたときは、信託の変更とする。
□3 【                       】

第14条 (信託の期間)
 本信託の期間は、契約日から本信託が終了した日までとする。
□【                       】

第15条 (公租公課の精算)
 本信託の税金や保険料などは、本信託設定の前日までは委託者、以後は信託財産から支払う。

第16条 (計算期間)
□1 本信託の計算期間は、毎年1月1日から12月31日までとする。
□2 最初の計算期間は契約の日から12月31日までとし、最後の計算期間は1月1日から本信託の終了した日までとする【受益者が法人の場合は事業年度】。

第17条 (契約に定めのない事項の処理)
□1 本信託の条項に定めのない事項は、信託法その他の法令に従い、受益者及び
   受託者の協議により処理する。
□2 受益者及び受託者のみでは協議が整わない場合で、意見の調整を図り信託の
   存続を希望するときは、○○県弁護士会の裁判外紛争解決手続を利用する。
□3 【                        】

特約
□1 【遺留分権者の確認                  】
□2 【遺留分権者への対応                     】
□3 【信託変更の場合の届出                    】
□4 【受益者指定権者等の有無                   】
□5 【委託者による購入済みの保険、投資信託、株式の確認と今後の対応】
□6 【受託者の報酬                        】
□7 【受益者の指図権  無・有(                )】
□8 【受託者が指図に従わなくても良い場合】
□9 【法人がある場合の履歴事項証明書・規約・出資者名簿・     】
□10 【受益者・推定相続人に外国籍、日本以外の住所、居所がある方がいる場合【国名】     】
□11 【信託財産が日本以外にある場合【国名】         】
□12 【準拠法の選択【日本】・             】
□13 【任意後見人の事務について同意する事項(    )】

以上


別紙
信託財産目録

第1 不動産【自宅・貸地・貸家・墓地・         】
所在 地番 地目 地積       
所在 家屋番号 種類 構造 床面積 

第2 金銭  
【金額】円

第3 その他
【仏壇・位牌・     】
以上

別紙
信託財産責任負担債務目録

□ 1 金銭債務
    (連帯)債務者 【住所氏名】
    債権者    【金融機関本店】【金融機関名】【取扱店】
    【契約年月日・契約の種類】に基づく残債務の全て
    【当初金額】万円
    【利息】【損害金】

□2 保証債務
   (連帯)保証人 【住所氏名】
   (連帯)債務者 【住所氏名】
   債権者     【本店】【商号】【取扱店】
   【契約年月日・契約の種類】に基づく残債務の全て
   【当初金額】万円【利息】【損害金】

□3 担保権
(1)担保権者 【本店】【商号】【取扱店】
(2)【年月日】設定の【担保権の名称】
(3)登記 【法務局の名称】【年月日】【受付年月日・受付番号】
(4)被担保債権及び請求債権
   【年月日】付【契約名】に基づく残債務の全て
   【当初金額】万円 【利息】【損害金】
(5)(連帯)債務者 
   【住所】【氏名】
(6)不動産 
   所在 地番 地目 地積 共同担保目録第【番号】号
   所在 家屋番号 種類 構造 床面積 共同担保目録第【番号】号

□4 その他の債務
  不動産の賃貸借契約にかかる債務
  【管轄法務局名・受付年月日・受付番号】登記済み
  【賃料】
  □【存続期間・支払時期】
  □【賃借権の譲渡許可・賃貸物の転貸許可】
  □【敷金】
  □【賃貸人が財産の処分につき行為能力の制限を受けた者・財産の処分の権限
    を有しない者】
   □【土地の賃借権設定の目的が建物の所有】
   □【土地の賃借権設定の目的が事業用建物の所有】
   □【借地借家法22条前段・23条1項・38条1項前段・39条1項・高
     齢者の居住の安定確保に関する法律52条・大規模な災害の被災地にお
     ける借地借家に関する特別措置法第7条1項】

 □地役権の目的となっている承役地【所在 地番 地目 地積】
  【管轄法務局名・受付年月日・受付番号】登記済み
  【要役地】【地役権設定の目的】
   □【地役権の付従性の制限】
   □【工作物の設置義務等】
   □【図面確認】

 □地上権の目的となっている土地
 【管轄法務局名・受付年月日・受付番号】登記済み
  【地上権設定の目的】【地代又は支払い時期の定め】□【存続期間・借地借家法
  22条前段の定期借地権・借地借家法第23条第1項の事業用借地権・大規模
  な災害の被災地における借地借家に関する特別措置法第7条2項】の定め
  □【地上権設定の目的が事業用】
  地下又は空間を目的とする地上権の場合□【地下の上限の範囲・空間の上下
  の範囲】□【土地への制限】

□ 信託不動産の各賃貸借契約にかかる各敷金返還債務

□ 信託不動産の各賃貸借契約にかかる各保証金等の預り金についての返還債務

□【                        】

以上

信託目録
1 委託者に関する事項 □【住所】【氏名】
2 受託者に関する事項 □【住所】【氏名】・【本店】【商号】
3 受益者に関する事項等 □【住所】【氏名】
□【受益者氏名】の受益者代理人
 【受益者代理人の住所・氏名】
□【受益者代理人の住所・氏名】
□【受益の指定に関する条件】
□【受益者を定める方法】
4 信託条項 □ 【年月日】【公証人所属法務局名】公証人【公証人氏名】作成に係る信託契約公正証書(【年月日】第【○○】号)
【全部・第2次、第3次受益者のみ・     】

1信託の目的
□【信託契約書第   条   項   号 】

2信託財産の管理方法
□【信託契約書第   条   項   号 】

3信託の終了事由
□【信託契約書第   条   項   号 】

4その他信託条項
□【信託契約書第   条   項   号 】

その他の信託条項は、【年月日】付信託契約書及び変更契約書記載の通り。

備考 □【受託者が法人であるので、法人の構成員全員の住所氏名と、不動産を売却するには全員の署名および実印がある承諾書(3か月以内の印鑑証明書添付)が必要なことを信託目録に記載する】

□【どの不動産が信託財産か分かるように、信託した他の不動産を信託目録に記録する。】

□【                          】

以上

本人又は第三者の同意(承諾)を要する旨の特約目録(任意後見契約公正証書)


別紙
本人又は第三者の同意(承諾)を要する旨の特約目録
(任意後見契約公正証書・附録第1号様式に基づく)

□1 代理権目録記載事項のうち、次の事項については【年月日】締結の民事信託契約に関連して、事前に□【受託者・受益者(受益者代理人)・信託監督人】の同意を得なければならない。
【A  B  C  D  E  F  G  H  I  J  K  L M  N  】

□2 代理権目録記載事項のうち、【年月日】締結の信託契約に関連して信託財産に属した財産は受益者代理人などの信託関係者が優先する。
【A  B  C  D  E  F  G  H  I  J  K  L M  N  】

以上

法制審議会信託法部会第26回~30回,国会

第26回、第29回は入っていません。
2016年加工編
法制審議会信託法部会
第27回会議 議事録

第1 日 時  平成17年12月16日(金)  自 午後1時04分
                        至 午後5時05分

第2 場 所  法務省第1会議室

第3 議 題  信託法の見直しについて
   
第4 議 事  (次のとおり)



議        事
● それでは,これから信託法部会を開催したいと思います。
  今日は,○○幹事の方で,また適宜分けて議論していくことになります。
  それでは,分け方,資料等について説明してください。


● 今回資料が直前になりまして,大変御迷惑をおかけしまして恐縮でございます。
  資料,全部で項目は多数ございますが,1個1個がそれほど多岐にわたるものでもないこともございまして,よろしく御協力をお願いしたいと思っております。
 

 分け方といいましても,今日の場合はばらばらとしておりますので,前から淡々と進めていきたいと思いますので,よろしくお願いいたします。
● それでは,お願いします。
● では,一番最初が,脱法信託と訴訟信託の問題でございます。
  脱法信託の禁止につきましては,パブリック・コメントのすべての意見が現行法10条を維持する試案に賛成意見でございましたので,そのとおりとするものでございます。


  訴訟信託の禁止につきましては,パブリック・コメントでは,現行法11条を維持すべきとの意見と,セキュリティ・トラストの利用局面にかんがみまして,正当な理由のある場合を例外基準として明記するか,あるいは現行法11条自体を削除すべきであるという意見とが示されております。
  

しかし,懸念が示されておりますセキュリティ・トラストにつきましては,主たる目的の解釈等によりまして有効と解することができると思われますことにもかんがみまして,現行法11条を維持することによって事案に応じた妥当な解決が図られると考えるものでございまして,このように提案させていただきます。
  以上でございます。

● それでは,脱法信託と訴訟信託について,御意見をいただければと思います。いかがでしょうか。
  ○○委員。


● 訴訟信託の禁止についてのこの規定については,この形で賛成でございますけれども,ちょっとだけ要望を言わせていただきたいと思います。


  解説の中に,正当な理由がある場合については,この主たる目的の解釈,脱法行為性,反公序良俗性にかんがみた個別判断で対応できますよということで書いてあるんですけれども,御承知のとおり,この関係で,弁護士法の潜脱がされないようにということがあると思うんですけれども,


皆さん御承知の,最高裁の平成14年1月22日の弁護士法違反かどうかの判断の際には,国民の法律生活上の利益に対する弊害が生じる恐れがなく,社会経済的に正当な業務の範囲内と認められる場合には,弁護士法73条に違反しないというのがございますので,このあたりを解説等に書いていただきたいなというふうに思います。


  特に,流動化の関係で,この73条の例外として,サービサー法でもって権利の実効のための債権の譲り受けというのが認められているわけなんですけれども,最近ちょっとサービサー協会の会報に載っている文なんですけれども,破産事件でサービサーが破産の申立て適格を有するかどうかというところでも同様に,相手方はサービサーの免許を持たないSPCが申立てするのは不適格だという形で対抗していたんですけれども,東京地裁の方でも,この最高裁の判断基準に基づいてSPCの方で,申立て適格があるということを認めております。
 


 それについても,平成17年1月22日,東京高裁でもその部分が維持されているということもございますので,このあたり,かなり考え方については定着しているのかなというふうに思いますので,ぜひ解釈等で,そういう解釈であれば問題ないんだというところを明確にしていただければ,実務上の指針になるのではないかなと思いますので,よろしくお願いしたいと思います。
● 何か,コメントがありますか。


● 御指摘の点でございますけれども,特に御懸念なのはサービサーにつきましては法律があるのでいいとしまして,セキュリティ・トラストの関係かと思うんですけれども,個人的な感触といたしまして,セキュリティ・トラストがそもそも訴訟信託に当たるのかと。担保権を取得するわけでございますが,それは常に執行行為を,最終的には意図しているとしても,任意売却という方法もあるわけでございますし,主目的とまで言えるのかどうかという点は,個人的にはどうかなという気がするわけでございます。

  しかし,仮にそれが訴訟信託,訴訟を主たる目的とする信託に当たるといたしましても,四宮先生の教科書,あるいは前に日弁連からいただいた資料,あるいはそれをおまとめになられた○○委員の御意見などを見ましても,正当な理由がある場合には,これは許容されていいのではないかということは解釈で対応できるということで,我々としても,そこはそういう方向で行きたいと思っておりまして,その一環といたしまして,今○○委員の方から御指摘のございました最高裁の判例の説示につきましても,解釈基準を明らかにする中で言及していきたいというふうに考えているところでございます。


● ほかに。
  ○○委員。

● ○○委員と同じ趣旨を述べ上げるわけですけれども,銀行界としては,御説明あるとおり,セキュリティ・トラストの観点から今そこお話ありましたように,正当な目的で取引をする場合には,規制が障害にならないようにということで,法律上の明確化をパブリック・コメントでも要望していたところでございます。


  もちろん,法律上の明確化というのは望ましいわけなんですが,立法上の困難ないしは解釈上の対応で可能ということであれば,○○委員もおっしゃったように,ぜひとも今後の運営で使いやすいようにという観点から,立法時の解説等で,この点を明らかにしていただきたいと思っております。
  以上です。


● そこは,そのように対応させていただきたいと思います。
● ほかにいかがでしょうか。--よろしいですか。
  どうぞ,○○委員。


● 立場上,○○幹事の御発言どおりのことで,あえてもう1度繰り返させてお時間的に申しわけないんですけれども,訴訟信託の禁止の信託法,現状の11条というのは,別に弁護士会にとって,もちろん関連は深いところではありますけれども,種々,多々の判例等もございますし,また判例の蓄積で主たる目的が何かというところで既に解決されている問題があって,もともと権利濫用無効の議論でありますし,また以前,かなり以前の議論に立ち戻ると,任意的訴訟担当との関連での正当理由という議論ではありましたから,ですから,すべて繰り返す議論は時間的にもったいないんですけれども,このただし書きいれるということは種々,いろいろ問題ありますから,現状のままでよろしくお願いしますということ。

  ○○委員も,また○○委員も,現状のまま,ただし最高裁の判例云々ということだったと思うんですけれども,あの判例自体はまさしく最高裁の判例で,弁護士法73条の関連で,読み方といいますか,正当業務性ということなので,違法阻却のような視点というふうに考えるんですけれども,それは別にこの条文だけではなくて,すべての法理に当てはまる問題だと思います。


  ですから,11条に関して最高裁の判例が特に強く当てはまるとか,または当てはまらないという議論では,特にないかと思います。
  以上です。

● どうもありがとうございました。
  それでは,脱法信託,訴訟信託については,これでよろしいでしょうか。
  それでは,次行きましょうか。


● 次は,第12,信託財産に対する強制執行等についてというところでございます。

  これは第22回部会で御議論いただきましたが,その提案から実質的な変更があった部分についてのみ,2点御説明いたします。

  第1に,受託者が信託事務を処理するに当たりましてした不法行為に基づく損害賠償請求権を有する債権者が,信託財産に掛かっていけるかという問題が従来よりあったわけでございまして,結局これは,受託者の無資力のリスクを受益者と被害者のいずれが負担するのが妥当かという問題であると位置づけられると思います。


  そのように位置づけた上でパブリック・コメントの多数意見なども踏まえまして,結論としては,事実的不法行為であるか取引的不法行為であるかを問わず信託財産に掛かっていけるとしてはどうかと提案したものでございます。


  これに対しましては,受託者の行為が信託財産のために行われた場合に,たまたま相手方がそれによって被害を受けたときに,受託者が無資力であるからといって信託財産に全然掛かっていけないというのはおかしいのではないかという指摘もございまして,前回に引き続きましてこのような提案をしたということになります。


  次に,第2に,4のいわゆる信託宣言によって信託が設定された場合の信託財産に対する強制執行の権利の特則に関しまして,期間制限を設けるべきであるという指摘があったことを踏まえまして,ここでは4の②のとおり,信託設定のときから2年間の期間制限を設けることとしております。


  以上でございます。
● それでは,この第12につきまして,いかがでしょうか。
  ○○委員。


● 先に,信託宣言の新たな規定の御提案についてございます。2年間ということについて意見を述べたいと思います。

  信託宣言の強制執行等の特例について,期間制限をどれぐらいの期間に設定すべきかというのは議論があると思います。多分,会社設立無効の関係かなとは思いますけれども,この2年という期間を設定した理由についてちょっとお尋ねしたいわけなんですけれども。


  では,それはさておき立法論としてこの2年が妥当かどうかということを考えますと,証券化の立場からは,取引安定性を考えると短ければ短い方がいいなということもありますし,ただ債権者の立場からすると,保全の可能性ということがあると長ければ長い方がいいかなということのバランスで悩むところでございます。

  そういうことでございまして,一概に決めるのは難しいというふうには認識しております。ただ,一応銀行として債権者の立場から考えますと,少なくとも債務者を通常モニタリングをしていて,詐害的な信託設定がないかどうかということ,また,そう認識したときに対応が可能な期間を確保したいという,そういう期間がどれくらいなのかなというふうに考えますと,実務上,通常少なくとも1年ごと債務者の決算書を聴取して,どういう財政状況なのかということをモニタリングをしますものですから,このモニタリングの間隔を考えれば,あとそれを認識して詐害信託への対応準備期間を考えれば,この御提案のとおりに2年は最低限必要だなというふうには思っております。

  ということを述べたいと思います。
  以上です。

● 詐害行為取り消しの場合2年ですから,それに合わせてという。
● ただ,この場合は,知ってからではなくてという話なので……。

● もちろんそうです。ちょっと早くなりますけれどもね。
● 念のためですけれども,この特別な規律に基づく強制執行は,設定のときから2年という客観的な時点から起算されますが,仮に2年が経過してこの権利が失われましても,一般の詐害行為取消権,あれは知ったときから2年ですから,そちらの方で訴訟を提起して取り消していくという方法は残るということを付言させていただきます。

● ですから,一応特例としてやりやすいというのを,設定してから2年間にするのか3年にするのかという,そういう議論が今なされていると思っていますけれども,その2年間といった,その設定の理由というのうが,もちろん詐害行為取消権の2年というのもあるんですけれども,あれは認識してからという話ですから,それを,設定してから2年間という,一種の特例を求めるときの期間として今回御提示があったというふうに理解しているわけですので,その2年間というのはどういう理由からなされたのかということをお尋ねしたいと,そういう趣旨でございます。


● それにつきましては,ただいま○○委員から御指摘がありました会社の設立無効の訴えですか,古い条文ですと商法428条で会社法ではどこに行ったかちょっとすぐにはわからないんですが,それにつきましては,成立の日より2年内に訴えをもって主張することができると,これを基本的に参考にしているということでございます。

● ほかに。
  ○○委員。


● この12の部分について,ちょっと私,議論を必ずしも十分フォローしていないのであれなんですが,1の信託財産に対する強制執行等の禁止で(8)の部分に下線が引いてあって,さっき御説明伺いましたが,ちょっとはっきりした自信はありませんが,これは英米信託法のルールとは異なるものだということだけは,やっぱりテークノートしておく必要があって,受益者と無実の被害者とどっちを保護するんだというときに,比較考慮すると当然こうだというのは,幾らでも本当は反論の余地があるということだけ申し上げさせていただきます。

● おっしゃるとおり,伝統的な信託法の理論とは違うということですね。


● そうですね。
● この不法行為によって生じた権利を含めるということについては,今○○委員から御指摘もありあましたように,いろいろ御意見があり得るところだというふうには,もちろん認識しております。

  ただ,アメリカ法がどうかというのをここでまた一から議論するというのは適当ではないと思いますけれども,英米法の中でも,今言いましたように,伝統的な法理は確かに不法行為債権は信託財産に係っていけないといいますか,当てにできないわけですけれども,たしかUTCなんかでは,それを少し修正する方向に動いているのではなかったかというふうにも記憶しておりますが,しかし伝統的な法理でないことは確かですね。


  ですから,皆さんから御意見がなければ,時間の節約で,私がちょっと感じたことを申し上げますと,信託事務を処理するについてという,一応枠といいますか,そういう行為を受託者がするについてした不法行為ということで,ちょうど715条とか,あるいは44条とかああいうところの規定の仕方と同じにそろえてあるわけですが,ちょっと気になりましたのは,信託財産に欠陥があるという,工作物責任が問題となるような場面なんですが,恐らく715条とか44条の場合には,これ問題は生じなくて,つまり717条で責任を追及するときには,被用者を通ってから使用者に行くというルートをとらないで,いきなり使用者,その財産の所有者に対して係っていくんだと思うんですね。それは法人の44条の場合も同じなんですが。

  そういうことで,44条とか715条の場合には生じない問題ですけれども,信託の場合には,工作物に欠陥があったときに,恐らく原案の趣旨は,それはこの条文でいけるという趣旨なんでしょうけれども,715条の文言と同じような文言であるために,そこが,こっちの方が広いんだという理解の仕方をすればいけると思いますけれども,通常715条そのものだといけない可能性があるのかなということをちょっと思いました。

● そこは文言を修正してということで……。
● 文言修正するのがいいのか,そこは……。


● この文言でいけるのではないかと,我々としては思っているわけでございますけれども。


● ですから,そこは明確にしておいた方がいいと思いますけれども。
  715条だと,恐らくいけない。


● 715条ではいけない。
● 恐らくいけないのね。
  あそこと同じように信託事務を処理するについてという表現なので,ここは工作物責任の場合にもいけるという趣旨であるということを明確にした方がいいと思うんですね。

  先に,○○委員でいいですか。

● ちょっと確認だけなんですけれども,信託財産に属する工作物による責任についてのお話が今ございました。

  それ以外に,受託者の被用者についてどうなるのかということが,(8)では必ずしも明確ではないように思うんですが,その場合の715条とか自賠法3条は,(9)に入ると読んでよろしいんでしょうか。


● 被用者が直接の責任を負うわけですか。被用者が実際に,現実に違法行為を行って,その背後に受託者がいるという場合に,被用者は直接普通の709条の責任を負っていくということになるのではないんでしょうか。


● 信託財産に係っていくことはできるかどうかということなんです。

● それは,一応受託者に責任が715条を経由して係っていくことによって信託財産にいけるのではないかというのが,その715条と同じような考え方でこちらはいるわけでございますが。


● そうすると,(8)で,今のは含まれるという理解ですね。
● はい。
● わかりました。


● ですけれども,ちょっと表現が,このままでいければいいと思いますし,今のような工作物責任とか,715条を通って受託者にいくときも,この(8)で含まれるようにということを明確にした方がいいということだと思いますね。
  ほかに。


  ○○幹事。
● 先ほどの○○委員のおっしゃった工作物責任の件なんですが,念頭に置いていらっしゃる例をちょっと確認したいんですが,2通りありまして,信託財産として引き渡されたときに既に瑕疵があって,それによって何かが生じたと,それは土壌汚染なんかの場合によくそういうような問題起こるわけですが,それでもう1つ,信託事務の処理として,例えば建物を建てるというときに,それに瑕疵があって工作物責任が生じたという場合とあると思うんですけれども,後者がこの(8)に含まれることは明らかであろうという気がするんですが,前者も含まれるという御趣旨で今議論がされたんでしょうか。

● 私はそのつもりで申し上げて,普通の715条だとそういうのは入ってこなくなるけれども,ここでは信託財産に責任を負わせていいのではないかという前提で,そういうのを含むというふうに申し上げたつもりです。


  それが適当かどうかという御意見でしょうか。
● 適当かどうかという感じがしますけれどもね。
● 典型的には,今のように土壌汚染も委託者の段階から汚染があって,そういうのを引き受けた。だけれども,これはしかし工作物責任というよりは,あるいは別な法律の責任かもしれませんけれども,信託事務の処理というのを介さないで当然に無過失責任を負わされるような場合があったときに,それが不法行為責任だとして,この(8)でやはりいけるべきではないだろうかという。


● 2通り話がありまして,工作物責任とか土壌汚染の責任とかを,どちらかといえば,所有者という個人が負うというものよりも何か土地自体の債務みたいに考えるということですと,その信託財産に係っていけるという結論は,それはそれなりにわかるところはあるんですけれども,もしそれがそうならば,それを(8)で読むというのはかなり無理があって,先ほど○○委員がおっしゃったように,この不法行為の問題において,信託事務を処理するについてしたという文言というのは極めて大切なんだと思うんですね。

  つまり,受託者という人が勝手に何かをやったということになりますと,それが取引であって,全く信託の事務の範囲に属さないようなことを勝手にやったということになりますと,それは信託に帰属しないという結論が導かれるのに対して,それが不法行為であるならば必ず帰属するということにはならないはずで,英米の伝統的な法理というのは,恐らく,不法行為であるとそれが信託の本旨に従っているわけはないのだから帰属しないという,こういう枠組みなのではないかというふうに思うんですね。

  そうしたときに,しかし信託事務の処理についてした場合には,やはり不法行為でも負わせるべきではないか。

もちろん,取引的不法行為の場合には,錯誤等でいけば当然に信託財産が差し押さえ得るのに,不法行為構成でいくといけないというのはそれはおかしいというのは,これはよくわかるわけで,しかし,勝手に受託者がやった行為について何らかの形で受益者に負担がいくというわけではないわけであって,まさにそれは信託事務を処理するについてしたというところの解釈の問題であって,そこの解釈を,あまりあいまいといいますか拡大をして,工作物責任なんかもここで読めるのだという形でもっていくというのは,今後この文言が,これがそのまま条文になるとは限らないわけですけれども,これが,例えばこのままの形で条文になったときに,この文言の解釈というものが無限定になる恐れというものを感じてしまうのですが。

● まさにそういう,無限定というのとはちょっと違うかもしれませんけれども,この文言で,果たして今のような工作物責任が入るのかどうかというのは私も疑問だったので,どうですかということを皆様に申し上げたつもりでございます。


  どんな対応が可能なのか,もし○○幹事の方で,結論はいいんだけれどもということであれば,何か御提案をいただけるとありがたいんですが。


● 聞かれると困るんですが。
● 結論はよろしいという御意見ですか。土地工作物責任に関しては。少なくとも。

● それはそうなんだと思いますけれどもね。
● むしろ信託財産自身が負うべきだというぐらいの議論があるわけだから,信託財産でいけないというのは,何かおかしい感じはしますよね。
● また,受託者が別個,受益者に対して何らかの責任を負うかどうかという問題を,一応わきに置いて考えて,土壌汚染や工作物責任によって被害を受けたものとの関係で言えば,その財産について差押え等ができても,それはおかしくはないというふうに思いますけれども。

● どうですか。
● 結論はおっしゃるとおり,信託財産自体に瑕疵があってという場合に,やはり信託財産が責任を負うというのは御指摘のとおり,実質的判断としてはよろしいと思いまして,我々は,あとそれが果たして(8)で読めるかというところにつきましては,読めるのではないかという気がしておったわけでございますが,今○○幹事がおっしゃったように,この(8)が無限定に広がるという懸念があるという御指摘も踏まえて,ちょっと書きぶりなどは検討させていただきたいと思っております。
● これ,工作物責任だけに限定されるんだったら,恐らく大したことないのかもしれませんけれども,似たようなものがあるというときになかなか書きにくいかもしれませんね。
  ちょっと書きぶりは検討させていただくとして,何か御意見が,どなたか手を挙げられましたか。
  


土壌汚染なんかも,土壌汚染対策法上の責任が何なのかというのもあまりはっきりしないですよね。不法行為なのかどうかということも含めて。
  ○○幹事。


● 詰めてはいないんですけれども,(8)で工作物責任のようなものが読めるかという点については,やはり読みにくいのではないかという気はいたします。
 


 ただ,それに対する対応を,(8)の文言を少し広げる,あるいは読み込めるような形で図るのか,この文言はやはり限定機能があるので,それは生かした上で,例えばまたはで何かつなぐとか,もう1つ号を立てるとか,そういうやり方もあるのではないかと。
  


どちらがいいのかと言うと,私自身は,これとは別にもう1つの概念として,信託財産によって生じた損害に対する権利だとか,何か文言の工夫ができるのであれば,ここの部分をただ単に広げる形で盛り込むよりは,まだそちらの方がいいのではないかと思います。

● 恐らくその方がよさそうな気がいたします。
  どうぞ,○○委員。


● ちょっとすみません。私,今の話と関係なくて。
  土地工作物責任のお話は,実際には信託財産が不動産である場合も多いので,非常に大きな問題ですね。アメリカであれ,日本であれ。だから,そこで問題がこうやって議論されるのはいいことだと思うんですが,前の一般論のところで,ちょっと先ほど○○委員の方も一言おっしゃってくださったので,少し敷衍だけ。

  つまりこういう例なんですけれども,例えば,私が車運転していますね。受託者もやっているんですね。あるとき受益者のもとへ,何らかの報告義務か何だか,この信託についての説明文書を持って駆けつける途中で人をはねます。不法行為ですね。

  それと関係なく私が人をはねます。はねられた人がやってきて,関係ない場合は私に掛かってくるだけですね。当たり前ですけれども。


  前者の場合にだけ,たまたまいろいろ発見してみたら,とにかく受託者であると。信託財産であると。それがあるではないかと。○○委員はもう破産もしていると。

これで,このはねられた人が保護されるという法理は,英米にはありませんので。UTCであれ,何であれ。
  だからそれは,はねてくれというふうにだれもお願いしてはいないんだし。それから使用者責任との大きな違いは,受益者には指揮権,監督権もないというのが原則ですので。

  そうすると,これで何で,つまりかわいそうな受益者とかわいそうな被害者がいて,これは,当然この被害者だよという話にはならないということだけ,ちょっと申し上げておきたいということです。

● 何かありますか。
● ○○委員からは,これまでそのような御教示をちょうだいしたところでございますが,一応今2つ挙げられた事例で,一方と他方で責任財産異なるというのは,通常の例えば民法の44条とか715条の行うについての「ついて」というところで,同じように起こり得るような,一般的に見ればそういう話なのだと思います。

  それで,受益者は指揮監督権はないだろうというのは,それはそういうことなのかもしれませんけれども,そういう理屈で推論していきますと,例えば株式会社であっても別に株主は業務執行権があるわけではないと。

それで,取締役がその職務について何か損害を与えましたというときに,株主はその損害を負わなくていい,すなわち会社財産は責任財産にならなくていいというような結論にはなっておりませんので,損失をどちらが負担するかという点から考えたときは,その契約関係によって利益を得ているのはだれかと,それによって,ここで言うと,受託者の無資力リスクというのをどちらが負うべきであろうかという観点から考えたときには,一定程度の考え方として成立するのではないかというのが,これまでの部会での議論ではなかったかなというふうに思いますので,ちょっと改めて確認させていただきたいと思います。


● ○○委員の挙げられた具体的な例がどうかというのは,信託事務の処理をするについてした,まさに今のような,取引的な不法行為でない場面の限界というのが多少問題であるというのはこの場でも議論されてまいりまして,今まで,したがって取引的な不法行為に限定した方がいいという意見まで強いものがあったかどうか,ちょっと今記憶しておりませんが,それに近い意見もあったのかと思います。

  ただ,取引的な不法行為かそうでないかという区別もなかなか実際に難しい場合もあって,多くは,しかし実際上ここで生じるのは取引的な場面で,取引的でない今のような場面についてどこで区切るかというのは,やはりこの信託を処理するについてという,その文言で切るしかないわけですけれども,信託の趣旨を考えてというんでしょうか,そこは適切に裁判所で判断してもらうということかと思います。


  ○○委員。
● しつこいんですが確認ですけれども,今出ている715条と信託との関係と,それから先ほど申し上げました受託者の被用者について信託財産に係っていくことができるかというのは,2つの異なるレベルの問題ですと。


● そうですね。
● 後者については,715条の責任を代位責任だというように理解した場合には,必ずしも受託者がした不法行為とは言いにくいのではないかと思います。


ですから,もし717条との関係で(8)を明確化するのであれば,715条も入り得るということは明確にしていただければと思いますが。


● 結論は,ここも全く私は異論がないんですが,どういうふうに……。ちょっと,すみません。歯切れの悪いこと言っているんですけれども,何を気にしているかというと,限定責任信託などの場面で,受託者が,少なくとも709条自身の不法行為を負ったときには,これは限定責任という利益を享受できなくて無限責任を負うと。

  恐らくそこは了解ができていると思うんですけれども,そこで715条の,つまり受託者の被用者が不法行為責任を行って715条の責任を負わされたときに,限定責任の方はどうなるかという問題はあまり,多少念頭には皆さん置かれたと思いますけれども,そう明確に議論されていないところはございまして,それへの影響というのを,ちょっと今どうなるかということを懸念したものですから,少し今慎重な言い回しをしております。


  これについては,○○委員,もしその2つ念当に置きながら議論すると,どういうことになるでしょう。


● 限定責任信託についても715条,717条がどうなるかということは,たしか事務局の方から,何かコメントを当時いただいていたと思いますので,またそれを参照していただいて,平仄のとれた形になればと思いますけれども。


● では715条は,ここではとにかく信託財産に係っていけるという意味での結論が明確になるように,表現等は少しこちらで任せていただくということでよろしいでしょうか。


  それでは,特にほかに御意見がなければ。--よろしゅうございますか。
  ○○委員の御指摘の点も踏まえまして,ここで,議事録には十分残るということになると思います。


  それでは,次に参りましょうか。
● では,次は忠実義務の問題でございまして,ここは第23回で部会で御議論いただきましたが,そこに引き続きまして,利益取得行為にかかる部分は除きまして,それ以外のところ,利益相反行為と競合行為の禁止のところにつきまして御審議をいただければと思っております。


  これは,ポイントとして6点ほど簡単に御説明いたします。
  第1に,提案の1でございますが,忠実義務の射程が信託財産の計算でする行為のみならず,固有財産の計算でする行為,典型的には競合行為でございますが,そこにも及ぶことを明らかにする表現を用いることが望ましいという指摘がございました。そこで,今回は「信託事務の処理」という後に「その他の行為」というのをつけ加えることを提案するものでございます。

  次に第2点といたしまして,提案2の(1)のウのところ,二重線引いてございますが,そこに関しまして,受託者と受益者との利益が相反する第三者との取引類型でございますが,この場合の利益相反関係というのが厳密な意味での受託者個人が利益を得る場合に限らず,間接的に受託者が利益を得る場合も含むことを明確にすべきであるという御指摘を踏まえまして,この「受託者」の後に「又はその利害関係人」ということを加えて,その趣旨を文言上明らかにしたというつもりでございます。

  第3に,(2)の③の二重線でございますが,これは禁止の例外に関しまして,現行法の22条2項の趣旨を維持するとしたものでございます。


  次に第4点といたしまして,④のところでございますが,これは試案の段階におきましては,ここで言いますと前段でございますが,「受益者の利益を害しないことが明らかであって,かつ,受託者がその行為をすることについて合理的な必要性が認められるとき」としておりまして,他方,前回提案のときにおきましては,後段の方でございますが,そのときの文言としては「信託の目的,その行為の性質及び対応,その行為をするに至った経緯その他の事情に照らして受託者がその行為をすることについて正当な理由があると認められるとき」という文言としておりました。


  ここでは,いわばそれを合体させました上で,その考慮事情といたしまして,前の事情と若干かえまして,ここでは受託者と受益者または信託財産との間の利害関係により着目した要素を具体的な考慮事情として挙げることとしたものでございます。

  続きまして,5番目でございますが,提案3の競合行為の禁止のところでございまして,前回の提案におきましては,2案提示しておりまして,1つは,自己または第三者の利益を図る目的であったか否かという,受託者の主観的要件をもって競合行為の正否を判断するという案と--これを甲案と申しますが--それからもう1つは,信託事務の処理として行うべき行為であったか否かによって競合行為の正否を判断すると。その上で正当な理由があるときには例外になるという要件を併せて設定するという考え方--これを乙案と言いますが--そのように提案しておりました。


  これに対しまして,甲案に対しましては,受託者の主観的目的を受益者が立証するのは困難である上に,禁止対象が狭すぎるのではないか等の批判がされまして,他方,乙案に対しましては,その「べき」というところで結局規範的要件を設定する以上,これに加えて,さらに正当な理由という規範的な例外要件を設ける必要はないのではないか等の批判がされました。
  


その上で,部会におきましては,この両案の収れんの方向性といたしまして,客観的判断によるべきものとしつつ,受託者と受益者との間の利益相反的な要素を組み込んでいくことで解決する方向性が示されたところでございます。

  ここでは,この最後の見解に従いまして,2つの要素,すなわち,1つは受託者が受託者として有する権限に基づいて信託事務として処理することができる行為をすることという純客観的な要件と,それからもう1つは,その行為をしないことが受益者の利益に反するという,客観的ではありますが規範性を含む要件と。この2つの要件を満たした場合に,初めて忠実義務違反に反する競合行為に当たるのだとしてはいかがかということを提案するものでございます。


  第6に,(注1)に関しましてでございますが,前回までの提案におきましては,受託者の受益者に対する通知義務は,正当な理由を根拠として利益相反行為が,あるいは競合行為がされた場合に限っていたわけでございますが,この通知義務が,受託者の形式的に利益相反行為,または競合行為に該当する行為を行った場合には,いずれの例外に該当するかを問わず,常に課されるべき義務であるという指摘がありましたことを踏まえまして,そのように改めているものでございます。

  最後に,前回の提案におきましては,受益者と第三者の利益が相反する場合は,善管注意義務の問題となるという整理をいたしましたところ,これは(※5),一番最後8ページのところに係るところを説明しているわけでございますが,このような善管注意義務違反という整理を是としながらも,任務懈怠等の単純な善管注意義務違反行為については損失てん補の問題にとどまるとしても,例えば第三者の利益を図るような善管注意義務違反の行為については,代理人の権限濫用に関する一般法理,具体的には民法93条ただし書きの類推適用によって行為の無効を来すとの考え方との平仄を図るべきではないかという指摘がございました。

  このような指摘を踏まえまして,(※5)におきましては,このような一般法理の適用があり得るということの理解を前提とすることとしたことを明らかにしたものでございます。
  以上でございます。

● それでは,忠実義務について,いかがでしょうか。
  ○○委員。


● それでは,何点か御意見等を申し上げたいと思います。
  まず最初に,間接取引の禁止のところで,2の(1)のウ,これについて,信託財産のためにする行為というものが入ったということについては,これは前回申し上げたことでもありますので,入れていただいたことについて感謝申し上げます。


  それとの半面で,利害関係人という言葉が入っておりまして,これについては,多分配偶者とか子供ということを前提にしたワードだと思うんですけれども,ちょっと利害関係人というと,例えば債権者みたいなものも入ってくるということも考えられますので,最終的には解釈論ということになるかもしれませんけれども,この辺について明確化していただきたいということが1つ。
  


それともう1つは,これは前回申し上げて,ひょっとして回答いただいたのかもしれないんですけれども,(2)のところの②の,「受益者の承認に代えて」,「他の受託者によって決する」というところがあるんですけれども,これは他の受託者によって決することができるけれども,受益者が承認すればそれでいいというふうに理解していたんですけれども,前回多分お聞きして回答いただいたのかどうかあまり記憶が定かでないので,これを再度御回答いただきたいということ。

  それと,最後にもう1つ,競合行為のところなんですけれども,ここについては前々から,信託銀行については生まれたときから銀行勘定と信託勘定で基本的には競合的な取引をやっているということで御配慮いただきたいということで,それに対して7ページのところで,象徴的な例であります競合貸付的なところの部分について,競合行為には当たらないというような形での御説明文がありまして,これについても非常にありがたいというふうに思っておるんですが,それがあらわれるような本文のところの書きぶりというのを,もう少し明確な形で御配慮いただけないかなということ。
  


それと,あともう1つ,通知のところなんですけれども,もちろん先ほどの競合貸付的なところが明確に競合取引ではないということであればそもそも問題ないんですけれども,先ほど申し上げたように,信託銀行というのは両方の取引を恒常的に行っておりますので,その辺の危険性というかそういうものが非常に多くありますので,そうしますと,競合行為的なところで通知を常に行わないといけないということになりますと,あらゆることを考えないといけないということもありますので,この辺のところの御配慮をいただけないかというところであります。

  以上です。

● では,順次お答えいたしますが,まず第1点目の利害関係人というところにつきましては,おっしゃるとおり解釈論と考えておりますが,我々が典型的に想定しておりましたのは,実質的に受託者と同視できるもの,すなわち,おっしゃったとおり妻とか子供と,そういうものでございまして,債権者のようなものは含まれないというふうに考えております。その点は,説明等で明らかにしていきたいというふうに考えております。
  


2点目の「代えて」につきましてですが,これは前回御質問があったことは認識しておりましたが,恐縮ながら回答はしておりませんので,今日初めて回答するということになるわけでございます。


  このときの理解といたしましては,現在でも同じでございますが,受益者はいるわけでございますが,受託者が複数いるときには,理念的には,その場合受託者が前面に出ていくのが信託のある姿ではないか。


  あと,会社法をごらんになっていただければおわかりのとおり,例えば利益相反取引とか競合取引につきましても取締役会が承認するということになっておりまして,これは実質的には共同受託者が承認するというものと同視できるのではないかということから,このようにしているわけでございます。
 


 そうすると,この場合,受益者がいても,その同意というのはこの②の規定によると無視されることになりまして,受託者の承認のみが対象となるわけでございますが,しかし,例えば職務分掌があるような場合につきまして,他の受託者よりも受益者の方が承認するのが的確ではないかというようなことも想定し得るのではないかと思います。


  そういうことを考えますと,それに対応するには,例えば①のところで,信託行為で許容する場合の条件として,受益者の承認があった場合にはその行為をすることができるとか,そのような定め方をすることによって対応していくことができるのではないかというふうに考えているところでございます。


  それから,最後に通知義務でございますが,おっしゃる趣旨は,本文中に書いた競合貸付を外していただいたことは実質的にありがたいと言っていただいたことは,まことにありがたいわけでございますが,ただ文言に反映するというのはなかなか難しいかなと思っております。


  それは,しかし,結局は通知を課されるのが常に義務になるというところの御懸念かというふうに拝察するわけでございますが,御承知のとおり,これただし書きがございますので,もしもそういう御懸念があるということであれば,ただし書きをもって通知を不要というふうに定めれば対応できますので,我々としては,競合行為の文言についてはこのままとした上で,もしも御懸念があれば,通知についてはそのような信託行為での対応が望ましいと考えているところでございます。

● では,いかがでしょうか。
  ○○委員。


● 御説明いただきましてありがとうございます。
  最後にお願いなんですけれども,今申し上げたように,競合的な取引というのは非常に信託銀行にとって重要な問題ですので,文言に反映できないということであれば,変な話ですけれども,あらゆるところで書いていただくとか,この場において今そういう回答をいただきましたので,常にそういう形の解釈をお願いしたいというふうに思います。


● そのところは十分対応したいですし,議事録も残っておりますので,そこは大丈夫だと思います。


● どうぞ,○○委員。
● 今○○委員がおっしゃったこと,ちょっとこだわりの話になるかもしれませんが,もちろん解釈等で解決するのであれば,そのように明確にしていただきたいんですが,この条文をちょっと並べたことを考えたときに,2の(2)の④のところで,実質的な解釈基準というものを含めた規律がありながら,3の競合行為のところで,実際には7ページの御説明の判断基準というのは大分かぶっているところがあるわけなんですけれども,そこについては解釈論であるということになりますと,ちょっとバランスがよくないのかなと。


  そうすると,反対解釈もされる余地もあるのかなと,ちょっと心配的な,そういうレベルの話でございますけれども,そういうことも踏まえて,もし解釈論でいくということであれば,その旨明確に御配慮いただければというふうに思っています。


● そこはその方向で,解釈論の方向で対応したいと考えております。
● ○○委員。


● せっかく○○委員が言ってくださって,私もそうかなと思ったんですけれども,2の(2)の②のところで,だから,受益者の承認を得たときというのが,これは普通ですね。しかしその後は,それは,共同受託者の場合は要らないよということですね。

● ええ。共同受託者の場合には,受託者が承認権あって受益者の承認は関係なくなるというのが,ここの考え方でございます。


● 共同受託者を置くのは,取締役会と同じだという会社法との類推をしているわけですか。


● 発想として似たところがあるのではないかと。任務遂行に当たって慎重にやるということとか機動的な運用とかあるわけでございますが,会社法にもそのように,ある取締役が利益相反行為をしたときには,それを除く取締役会で承認決議をするということがありますので,ここも,共同受託者がいる場合には,その者で承認決議をしていればいいのではないかというふうに考えているわけでございます。

● ここでの考え方といいますのは,共同受託の場合というのは,受託者間で相互に監視していると,要するに1人の受託者が悪いことをしないように他の受託者はいると,そういうことを委託者は期待しているというような考え方が前提になっておりますので,そうだとすると,受益者の承認にかえて他の受託者がその承認をするということについても,合理的な理由があるのではないかというふうに考えているというのを付言させていただきます。

● 御趣旨はわからないでもないですが,受益者の承認にかえてという,それこそ○○委員がおっしゃったように,④のところで,すごく一般的なこういう外す規定を一方で置きながら,今度は手続き的なところで,②で,そういう形でも外しておくということなんですね。

  だから2面で,とにかく忠実義務を外しやすいようにしているというふうに考えてよろしいわけですね。


● ②自体は,本来は受益者の承認という,非常に明確な解除事由ですよね。②自体は。
● ただ,ちょっとすみません,共同受託者というのが,○○関係官がおっしゃったように,まさに,結局モニタリングのシステムを--一種のガバナンスですよね--信託にガバナンスがあるかという議論があって,共同受託者というのはガバナンスの足らざるところを補うために置いておくものだという話なんですが,それを逆手にとって,ここで,忠実義務の免除をこういう形でやれるんですよというのが,ある趣旨で置かれているものをちょうど逆の方向に使っているという印象をぬぐえないということだけ,ちょっと一言申し上げます。

● これに関連してちょっと議論が出れば,私も個人的な意見を申し上げようと思ったんですけれども,今たまたま○○委員の意見が出ましたので。
  

私も,個人的にはちょっと大丈夫なのかなということを感じていまして,それは,共同受託者ですので,例えば自己取引なんかをするときにも,その財産がいわば合有の形になっていて,そのときに利害関係のある合有の1人を外して,例えば3人いたときに,ほかの2人でもって行為ができるのかというのはちょっと気になったんですね。


  それで,そのときに,受益者が承諾しているので,その当の利害関係のある受託者も含めて3人で自己取引としての信託財産を利害関係のある受託者に,例えば移転するというのはできると思いますけれども,それを外してしまってできるかどうかと。


  取締役会の場合には,個々の理事は別にそういう処分権限そのものを持っているわけではないので,そっちはあまり問題ないと思うんですが,信託の場合,果たして大丈夫かなということだけ,ちょっと気になったものですから,もし,何か。


● そこのところは解釈論に結局はなってしまうのかもしれませんけれども,例えば3人受託者がいて,1人の受託者に対して信託財産を売却するという場合に,だれが意思決定をするのかというのが1つ問題になり得て,その場合には利害関係のある受託者以外の受託者で意思決定をして,もう1人の受託者に対して信託財産を売却すると,そういう形になるのであれば,結局利害関係のある受託者というのは信託財産の売却の意思決定については登場してきませんので,結局利害関係のない受託者2人で意思決定をして売却をするという形になる。

それによって,ここで言っているところの受託者の承認というのがあったということになるのではないかと思います。
 


 ただ,もう1点,ここの(注2)のところに書いてあるんですけれども,要するに受益者の承認にかえて受託者の承認でいいということについて,信託行為でそういうことはいけませんよと,やはり受益者の承認にしてくださいというのは,先ほど○○幹事が申し上げたことと重複するんですけれども,そういうことはできますので,委託者の方でそういう形にしたいのであればそういうことができるというようには,一応なっております。
● そうですね。
  ○○幹事。

● 共同受託者は危ないという問題もあるのですが,それ以前に,他の受託者が承認する場合にはよいというのは,これは機能的には証明責任を転換する機能しか持たないわけですよね。


  つまり,他の共同受託者が不当な承認をしたということになると,その時点で善管注意義務違反の問題がさらに生じてくるということで,つまり,自己取引であるというふうに受益者が主張して責任の追及をしたときに対して,共同受託者の承認を得ているというふうに言えば,それが不当であるということを個別に立証しなければならないという,こういう形になる条文だと理解してよろしいんでしょうか。

  そして,それがそうだと仮に仮定したときに,それがいいのかというのがありまして,④というふうなのがあるんだから,受託者に,これは適切なんだというふうに証明させればそれでいいではないかというのもあり得ると思いますし,さらに,仮によいといたしましても,その証明責任の転換ということが妥当であるとしましても,そうすると①から④までの中でかなり異質なものになってしまうんですよね。②の第2文というのは。


  それを,ほかのものは,例えば④の事情というのとか③の事情というのは,そのことが立証できれば,もはや善管注意義務違反は問われないという結論を導くのに対して,②の後段だけがちょっと特殊な内容を持つことになって,それを並べていいのかなという気も若干するんですが。


● どうぞ。
● 確かにおっしゃるようなところもあるような気がいたすんですが,例えば①の信託行為にその行為をすることを許容する旨の定めがあるときというものについても,自己取引することはできますよと書いてあっても,あとは価額について善管注意義務の問題ということはあります。

● その限りでは,似たような構造がここでもあると。
  ほかにいかがでしょうか。


● そうすると,ちょっと前半申し上げた,他の共同受託者の承認が不当であるということは,もちろん主張して責任を追及することができるということですよね。


● はい,そうです。
● 責任の追及というか,他の受託者の承諾が承諾としての意味を持たないと,自己取引が解除されないわけですね。


● いや,そこは難しい。
● 承諾があれば自己取引の問題はクリアされて,あとは受託者の責任の問題が,別途善管注意義務違反として生じてくるのではないかという考えをしております。


● どうぞ。
● 結構難しいんですよね。

  そして自己取引違反自体も善管注意義務違反として処理をするということですから,自己取引義務違反としての善管注意義務違反と,自己取引避止義務違反ではないのだが,そのときの判断の善管注意義務違反というものとがあり得るというふうに,善管注意義務の中で2段階になってしまっているということですよね。


● 僕自身が勘違いしているのかもしれない。
  自己取引自体は善管注意義務違反に,今位置づけているの。

● いや。
● それは違うでしょう。


● 自己取引は善管注意義務違反の問題ではないです。
  それ自体は承認があれば,有効,無効の問題では……。


● 有効,無効の問題になるわけですよ,それは。
● はい。ただし,それと別途善管注意義務違反の問題は,別の類型としてあり得ますのでと。


● ごめんなさい。申しわけございませんでした。
● どうぞ。


● そうすると,今のは,行為の効力自体は有効であって,それを否定することはできないという御趣旨ですか。


● 受益者であればインフォームド・コンセントの問題になると思うんですが,受託者が承諾をしていれば,一応そこで行為の有効性はクリアされて,ただ受託者の承認が注意義務違反だということで,受託者の責任を問うていくという順番になるのではないかと思っておりますが。


  受託者が承認しているのもかかわらず,その承認が不当だったから行為が無効というのは難しいのではないかなという気がしているんですけれども。


● 完全な第三者ではなくて,自己取引だとすると,受託者の1人が信託財産を譲り受けるという場面ですよね。


● はい。他の1人ですね。そうすると,それが,善管注意義務違反が,いわば行為の有効,無効を左右するものにまで昇格するというようなことがあり得るという。


● 善管注意義務違反が問題なのか。
  要するに,本来受益者の承諾が必要なんだけれども,それにかわってこういう場合には,ほかの受託者の決定でいいと。それが結局,本来不当な決定だということになると,この②の要件といいますか②自体が落ちてしまって,自己取引がだめになるというふうに,ちょっと私はそう考えたんだけれども。


● 不当な承諾というのが,例えば知らずに承諾したとか,そういう場合でございますか。

  受益者だと,重要な事実を開示して承認を受けるというのが必要で,重要な事実も知らずに承認したら,これはだめだと。受託者が承認しているときにもかかわらず,その承認が承認としての意味を持たないというのは,どういう場合だろうかなとは。

● ②の中にちょっと違うタイプが入っている……。
  どうぞ,○○関係官。


● 例えば,利害関係のある受託者が他の受託者を支配しているような状況があって,他の受託者が承認をしたというような場合であれば,受託者による承認というのが行為の有効,無効に影響するということもあり得るのに対して,そういう別に状況にない中で他の受託者が承認をした場合であれば,有効とした上で,あとは善管注意義務違反,要するに,価額が適当でなければ善管注意義務違反の問題になるというようなことではないかというふうに考えておりますが。


● どうぞ,○○幹事。

● ちょっと感想的な意見を言って恐縮なんですけれども,共同受託者の場合に会社と同じように考えるというのは,会社の場合には機関としてしっかりしていますし,諸制度整っているというものと同じように扱うことは,ちょっとできないのではないかなという感じがするのと,それからもう1つ,やはり「受益者の承認に代えて」という言い方というのは,ちょっとやっぱりあまり軽々に用いるべきではないのではないかという気がしておりまして,もしこういった形で共同受託者の承認ということを制度として持つ場合にも,「代えて」というのとは,ちょっとやっぱり別のものというふうに考えるべきなのではないかと思うんですけれども。

● さっきのような結論だと,ちょっと結論も大分違うし,少し……。といって,独立の項目になるのかどうかよくわかりませんけれどもね。
  何かほかに御意見がございましたら。
  ○○幹事。


● 会社法の話題が出てまいりましたので,会社法と今問題となっております第19の(2)の②との局面との相違点について,一言申し上げさせていただきたいと思うのですが。

  まず第1点は,○○幹事が御指摘されましたように,会社の場合は,やはり取締役会という機関決定になっていると。利害関係のある取締役を除いて,やはり機関としての取締役会が決定をしているというのであって,多分共同の受託者が何人もいても,それでボードを構成しているわけではないので,状況が違うのではないかと。


つまり,会社法の方でも,取締役会が存在しないときには,このような利害関係の,利益相反が起こった場合の承認というのは社員総会にいくというのが原則だと思いますので,その点が1つ違うのかと思います。


  それからもう1点は,これは実質論なのですけれども,やはり会社の場合に,なぜこういった利益相反取引について,ボードがあれば,利害関係がある者を除いたボードの判断にゆだねているかというと,利益相反行為が非常に多種多様なものが含まれるようになって,会社にとってプラスになるものも多いと。

  特に企業結合関係が非常に複雑な形になってまいりますと,形式的にはこの利益相反に当たるけれども,会社にとってはプラスになるというのが,そういったたぐいの行為が出てきまして,それについての,いわばビジネスジャッジメントを行うという,そういう趣旨だと思います。


  信託においても,恐らく商事的な側面では,ビジネスジャッジメントを働かせるという局面が大いに考えられるとは思うのですけれども,信託法がカバーしているすべての局面において,そのようなジャッジメントを他の受託者にゆだねることを想定しているだろうかと。逆に,典型的な民事信託だったらば,他の受託者がいたら,むしろノーと言わなければいけないのが普通の注意義務ではないかという気もするのですが。


  そのあたり,第2点目の方はちょっと御質問も含まれますけれども,典型的な,例えば民事信託において利益相反の状況があったときに,他の共同受託者はどういうふうに行動するのが善管注意義務にのっとった承認の付与と言えるのかどうか,その点についての感触といいますか,お考えをお聞かせいただければと思います。

● 感触でございますが,○○委員がおっしゃられましたように,ビジネスジャッジメントでしょうか,形式的には自己取引あるいは利益相反取引になるけれども,それをする方が,信託財産ないしは受益者のために利益になるだろうという場合はあると思われますので,そういう事情を考慮して承認するのであれば,善管注意義務違反には違反しないと。


  しかし,それがむしろ否定した方が信託財産のためだというときであれば,これを承認すれば,これは少なくとも善管注意義務違反の問題にはなるだろうという,一般論でございますが,そういう考え方をしておるわけでございます。


● なかなか,判断自体はいろいろ難しい。かなり裁量性もあるかもしれませんね。ほかの受託者の。

  正当な市場価格で売却される場合であっても,望ましくないのでだめだということもあり得るんですね。

● それもあり得ると思いますね。
  やはりケースバイケースとしか言いようがないという感じはいたします。

● ほかにいかがでしょうか。
  どうぞ。

● 実質的なお話になるかもしれませんが,受益者の承認にかえて他の受託者等の決定にゆだねたときに,受益者の承認にゆだねるのが,常に受託者にとって義務が易しいことなのかどうかというのは,ちょっと実質問題わからないようなところもありまして,例えば,合理的無関心と言うとちょっと言い過ぎかもしれませんが,受益者の承認を得たということを一種の隠れみの的な形で運用されるという場合もあり得るところ,受託者が責任をとりなさいというふうにした上で,事後的にそれははっきりしてくるわけですから,そのときに何かあったら,だれか受益者がおかしいと,1人だれかが言えば,ひょっとしたら責任を問われなければいけないという厳しいプレッシャーの中で,他の受託者は判断しなければいけないということになるかもしれないと。


  そういう点も考えますと,実際の運用で見たときに,常に受益者の承認を得たというところに一本化すればそういう利益相反的な行為を防止できるかどうかというのは,ちょっと一概には明らかではないかなというような気がいたします。

  例えば,会社でも従来,損益計算書とか貸借対照表というのは,全部株主総会の承認だという話だったんですが,それが隠れみの的にというようなお話の中で,取締役会で決めなさいと,しかしその後,決めた後で何かおかしなことがあったら,それは決定権者たるあなたたちが責任を負いなさいということで,責任の所在を明確化することによってそれぞれの利益を確保しようとしていったというような流れの中もございますので,他の受託者に考えさせるというか承認の権限を与えたということをもって,直ちに受益者の利益がということでは必ずしもないのではないかという,それはちょっと実質的な判断で,法制的な議論ではないかもしれませんけれども,その点もいかがかなというふうにも思っております。

● いろいろなレベルの議論がありますけれども,根源的な議論は○○委員から言われている問題ですけれども,ちょっとそれはさておく--さておくというのは無視するという意味ではありませんけれども--易しい方からという。


  これは,先ほどから会社の場合と必ずしも同じではないのではないかという御議論もあり,必ずしも,共同受託者の場合,受益者の承認というのを原則として排除するというほどではなくていいのではないかという感じもするんですけれども,そこは会社法との平仄上,あるいは共同受託という考え方からおかしいということですか。

● ここでは受益者が多数になるような場合もあり得ますので,そういう意味では,受託者が複数の場合にはそちらの受託者の決定というのを優先してもいいのではないかというようなことと,確かに○○幹事おっしゃるように,会社の場合には取締役会というボードがあるのに対して,信託の場合は特にそういうボードはないと。


  そうは言いましても,ここでの考え方というのは,共同受託の場合には,原則としては複数の受託者で意思決定をして執行をしていくという意味では,実質的にはボードがあるのと同じではないかというように考えると,会社法と同じようなアナロジーで考えていくというのが適当ではないかというような考え方からつくったものではあるんですけれども。

● いかがでしょう。

● もう1点,民事信託におきましても,先ほど○○関係官の方が申し上げたことと重なるのかもしれませんけれども,受益者の中には無関心な者もおりますし,十分な意思能力がないような者もいると。そういうようなケースにおいて,委託者があえて複数の受託者を選任しているというのは,先ほど申し上げましたとおり,相互監視義務等もありますし,受託者というのは重い義務を受益者に対して負っていますので,そういう前提のもとであれば,他の受託者の意思決定によって自己取引等を解除するということを第1原則としてもいいのではないかと。

  そう考えますと,商事であっても民事であっても同じルールにのっとらせてもいいのではないかというふうに考えてきたということであります。

● 他の受託者が決定するという,○○委員のように多少問題はあるかもしれませんけれども,そのルールが,特に受益者が多いときなんかには確かに必要でしょうし,他の受託者が決めるということはいいとして,それが第1原則になるかどうかというところあたりですかね。1つはね。


  それからもう1つ,ちょっと今話を伺っていて,逆に受益者の同意というときにどうなるかということが気になったんですけれども。共同受託者の場面ですよね。


受益者の同意を得ると……何を同意するんだろう。つまり,同意を得ても,結局3人の共同受託者だったら3人の共同受託者で決定するんですよね。


  ですから,受益者の同意があると,通常はほかの受託者がもちろんそれに従うんでしょうけれども,受益者の同意があってもほかの受託者がだめだという余地はあるのかな。


● 条文の書きぶりでございますが,「代えて」ですから,ここでは言ってみれば受益者の同意は無関係であると。受益者の同意があろうがなかろうが,他の受託者,例えば3人いれば1人と利益相反行為が生じますので,残りの2人の受託者がオーケーと言えば,それだけでいいと。

● このルールはね。
● はい。
● 共同受託者の場合にも受益者の同意で構わないという……。
● そういう規定を置けばいいですが,このルール自体はそういうものではないですね。


● 多分,○○委員がおっしゃっているのは,受益者の承認に加えて他の受託者の承認も必要だということでしょうか。

● という場面が出るかどうかということ。
● そういう場面が出るとすれば,もちろん他の受託者がオーケーと言っていても受益者がだめと言えばだめですし,受益者がオーケーと言っても,そっちは他の受託者がだめと言ったら……。

● 普通は従うでしょうけれどもね。
● ええ。従うんだと思いますけれども,受益者が,例えばちょっと浪費家で,何でもオーケーしてしまうような人だった場合には,やはり善管注意義務というのを受託者は負っていますから,その場合にはノーと言うべきであるということだと思います。

● さて,いろいろな御意見が出ましたけれども,何か御感触があれば。
  ○○委員。


● すみません。こんな大議論になるとは思いませんでしたけれども。
  極めて実務的な形で落として考えますと,1つは,非常に軽微なものであったら共同受託者の同意を得て行うというのが,信託事務の円滑化のためには必要だろうなと思います。

  ただ,今度は逆に,割と重い話であったとしたら,同意を受ける方の側に立ってみると,これはやはり受益者の意見を聞いてくださいとか,同意をとってくださいというのが行動パターンになるのではないかなというふうに思いまして,そういう観点からいきますと,同意というのも,共同受託者の他の受託者の同意というものに加えて,受益者の一般の承認というものも加えていただけたらなと思います。

  共同受託者で同意する場合については,当然監視義務とか善管注意義務とかを踏まえた形で回答することになりますので,その辺については,1つの責任が加わるということになると思いますので,それはそれで意味があるのではないかと思いますし,軽微なものについても円滑化の観点から意味があると思いますので,共同受託者の同意というのも,なくするということではなくて,加えて受益者の承認というものも入れていただけたらなというふうに思います。

● いかがでしょうか。
  現在の案のままですと,今のようなことをしようとすると,信託行為に,そういう形で承認を求めるということを規定しなくてはいけないということになって,信託行為に書いていないとできなくなる。

● 受益者が複数の場合に,想定していない場面が出てきて,なかなか受益者の承認を得るのが大変だというのは,今回の信託法改正の大きなポイントの1つですよね。


だからそのために,受益者集会とか,あるいは受益者代理とか,いろいろな受益者側の方の仕組み,信託管理人であるとか,いろいろな仕組みをつくってという話を,ここで急に,今度は受託者サイドのところでもこれでいいんですよというのが,何だか非常に,私にとっては違和感があるということです。
  だから受益者複数の場合についてはこういう形で対処したではないですかという話の方へ持っていくのが普通なのではないんでしょうか。


● ○○委員の御意見はよく理解しているつもりでございます。
  ちょっといろいろ温度差のある御意見があると思いますが,○○委員の意見に完全に沿う形ではありませんけれども,この②の,受益者の承認にかえて決するという第1ルールを,もし必ずしも第1ルールにしないで--しないでというか,しないときにどうなるかというのは,まだちょっとさっき言ったように少し疑問を感じているんですけれども--やっぱり受益者の承認を得るというのが大原則であり,共同受託者の場合にも,受益者の承認を--書きにくいのかな。


以外とそれは--受益者の承認を得るというのを……。
  僕もちょっとまとめにくいんだけれども。共同受託者の場合にも,受益者の承認を原則として排除するのではなくて,受益者の承認があればできるようにすると。これは○○委員が言われたことなんだと思いますけれども。


  それだけだと,まだ○○委員の御懸念には十分には対応できないんですが,ただ受託者としては,多くの場合,特に重要な問題であれば受益者の承認を得るであろうし,また得ないと後でもって責任を負わされる可能性もあるわけですから,不安定なので,多くの場合は受益者の承認を得るであろうということになると,事実上,○○委員の御心配もかなりの部分はカバーできる。

  それでも困ると。受益者の承認を得ないでほかの受託者だけで決めてしまう可能性があり得て,これも選択肢としてはそういう方法でもって承諾するということはあるわけですけれども,それをとられては本当に困るというときには,今度はこれは,信託行為でもってそういうのはだめだということを明確にしてもらうというふうにすれば,最後のところでは○○委員の御意見というのも,ある程度は考慮される。


● すみません。本当に。私も,時間を,時宜に遅れているかもしれないことでこうやって引き延ばしても申しわけないんですが,今のような,本当にそういう場合は④で対処できるようなことなのかと思いますのでね。どうもという感じが,どうもつきまとうということなんです。

● ④は,最後の手段みたいな--最後の手段と言うとちょっと正確ではないかもしれませんけれども--受益者の利益を害しないことが非常に明確だというようなタイプについて対応しようというものですよね。④はね。


  ②はやっぱり,ちょっとそういうものではなくて,もうちょっと重要なもので,実質的に判断が必要で重要な事実を開示して,やはり受益者が承諾するということが望ましいというタイプで,そこはオーバーラップする場合もあるかもしれませんけれども,②と④は,一応この際それぞれ独立の意義があるという前提で考える。その上で②の中身としてどんなのがいいかということなんだと思いますが。


● そうですか。
  例えばですが,○○委員おっしゃったように,共同受託者の場合もやっぱり受益者の承認を得るということが原則であると。しかし受益者の承認を得ることが著しく困難である場合とかという場合には,共同受託者の中で利害関係のない他の受託者による判断にするとか,そういう補充的な話は……。


  言ってみたということですけれども。申し上げてみたという。

● 条文化という観点からすると,どういう場合に著しく困難なのかというのがなかなか難しいのではないかなという気がいたしますけれども。


● どうぞ,○○委員。

● 言葉だけの問題ですが,著しくというのが不明確だとしましても,この2の(2)の②のところに,「受益者の承認に代えて,受益者の利益と相反する関係にない他の受託者によって決することができるものとする」というように入れれば,受益者の承認があればそれでよいと。


それがない場合であっても他の受託者によって決することができるというようにしておいて,他の受託者が決する場合に不当な決定をした場合には,善管注意義務に反するという責任を問うということだと,少しは○○委員のお考えが入るのかなと思うんですが。

● 私もちょっとごたごた言ったのは,今○○委員がきれいにまとめてくださった,そういう趣旨のつもりなんですが。
  ○○幹事。


● もし受託者の承認でこの忠実義務が解除されるとしましたらば,他の受益者の利益と相反する関係にないというだけではやはり不十分で,当該受託者と,問題となる取引を行おうとしている受託者からの独立性という要件が,やはり最低限必要になるのではないかと思いますし,さらに詰めるべき点があると思います。

  ただ,繰り返しになりますが,やはり基本は受益者の意思というのが問題となるはずであって,私は先ほど御質問したのを,もう1度時間をとって恐縮ですが,言いかえますと,受益者がその取引はだめだと言っているのに承認をした受託者が,自分は善管注意義務を果たした承認をしたんだというときに,一体どこまで何を立証すればいいのかということだと思うのですけれども,やはり受託者として承認をする場合には,むしろ普通に考えると,非常に承認することが難しいというふうに考えるのが普通ではないかと思います。

  ですから,かえってこのような規定を置くと,むしろ正当な利益相反行為みたいなものもブロックされてしまうという,そういう恐れがかえって出てくるのではないかというような気さえするぐらいで,先ほどのようなことを申し上げたのですけれども,やはり受益者の意思が,まず第1の基本になるということだと思います。


● いかがでしょうか。
  どうぞ,○○委員。

● 今の○○幹事の意見と似たような意見になるんですけれども,利益相反行為ですからやってはいけないというところでスタートしている行為で,それについて受益者の承認がないのにほかの受託者が決められるという,そういう制度は,よくよく考えるとやっぱりよくないのではないかと。


  この④があるので,それで,合理的に必要とか利害を害しないとか,そういうこともできることになっているわけですから,ここはやはり「受益者の承認に代えて」という,この制度はつくらないようにした方がいいのではないかというふうに,私は思いました。


● ○○委員の御意見に近い御意見だと思いますけれども,他方で,いろいろな条件があるかもしれませんけれども,とにかく受益者の承諾を常に得なくてはいけないということになると,非常に多数の受益者がいたようなときに非常に困ることも生じ,利害関係のない受託者だけで決定できるという制度を残しておくことは,さらに,○○幹事の言われたように,いろいろな条件が必要かどうかということは検討する必要があるかもしれませんけれども,ほかの受託者だけでも決定できるという制度はあること自体は,それなりに必要なのではないかという感じはちょっとするんですね。私としては。

  ただ,受益者の承諾というのが原則であるといいますか,少なくともそれを求めるようにし--その後の条件が難しいんですが--それが難しいときとかいうときに,利害関係のない,それ以外の受託者で決定できるという方法でも構わない。

  せめて,何か2本立てにして,それでその両者を結びつける条件はちょっとなかなか難しいので,

うまくいい方法があるかどうか。
  ○○委員。


● ちょっと当たり前過ぎて,発言はばかってしまっているんですけれども,デフォルト・ルールをあくまで議論しているんであって,なおかつ問題があるかもしれないと言っているのは,いわゆる民事信託のような小規模な信託ではなくて,大規模な商事信託の事例だと思いますから,ですから信託行為に定めがあったとしても,もともと潜在的に利害関係がある共同受託者の承認にかえるような信託行為の定めというのは有効なんだろうかという,もし多少疑義があるとしたら,そこだけ払拭するようなことをして,デフォルト・ルールは,やっぱり○○委員がおっしゃったよりか皆さんが議論しているようなところに落としても,○○委員がおっしゃるような問題はないのかなと。

  それはそうだけれどもという議論なのかもしれませんけれども。信託行為の議論があまり出てこなかったもので,ちょっと発言させていただいたんですが。

● まだいろいろな……。
  何か,○○関係官,意見がありますか。


● 確かにおっしゃるとおり,これはデフォルト・ルールの問題ですので,原則としては受益者の承認を必要とするというふうに②を書いておいて,①のところで,他の受託者の承認というのもできますよというふうにするというのも当然あり得る話だと思いますし,この④のところで正当な理由というものもありますので,このようなことを,この部会での審議も踏まえてもう1度ちょっと検討させていただいて,もう1度御意見をお伺いしたいというふうに思いますけれども,それでよろしいでしょうか。

● よろしいでしょうか。皆様の御意見を一応……。
  どうぞ。


● 今の点なんですけれども,①の方は,その行為をすることというふうになっていて,行為はある程度限定する必要があるという前提ですよね。要するに,共同受託者が同意をすればそれで足りるというのは,抽象的なのでだめだという前提でよろしいか。

● 1つの行為について,他の受託者が承認をすればオーケーですよというふうに定めを置くことができるという趣旨です。


● おっしゃるとおりです。
  それでは今の御意見を踏まえて……。


● ちょっと一たん引き取らせていただいて,再度御意見を,いろいろ出ましたので,踏まえてもう1回提示いたします。


● ほかに,忠実義務に関してはいかがでしょうか。
  どうぞ,○○委員。

● 確認というかちょっと教えていただきたいんですけれども,説明でいきますと8ページの(※5)の部分ですけれども,民法の93条の心裡留保の議論ということなんですが,ちょっと確認というか理解のために御質問させていただくんですが,これは間接取引の場合で,受託者がみずから,または利害関係人に利益を図る意図で第三者と取引をした場合だという前提だと思うんですけれども,そうすると,後ほど議論するところの31の権限外行為と極めて類似の状況というか,同じ状況なのかなと思うんですけれども--間違っていればちょっと教えていただきたいんですけれども--仮に同じ状況だといたしますと,権限外行為の方は第三者の故意,重過失を問うというところで取引の安全を期待していると思うんですけれども,こちらの方の,仮に権限外行為であっても,受託者が自分の利益を得るような行為であるということを相手は過失によって知らなければ,こっちの方では過失責任であると,こういうような切り分けをしたという趣旨なのか,それとも私が何か根本的に理解が間違っているのかとか,その辺をちょっと,両者の関連を教えていただければと思うんですが。

● (※5)でよろしいですか。
● はい。

● ここは,まず前提といたしまして,受託者が全くの第三者と取引をして,その場合に,その第三者の利益を図るということを考えていましたと。それについて第三者の方が知り,または知り得べきだったと。実際に売却する内容はどういうものかというと,権限内だけれども価額が不適当であったという話ですので,受託者が自分の利益を図るということを,原則は前提にしてはいないということですけれども。

● すみません。そういうのは権限外なのか内なのかと,結構微妙だと思いますし……。
● 微妙ではあると思います。

● 内であれば,より第三者が保護されるべきような気がする……気がするというか,第31の議論との関連ですと。


● 前回の部会のときもそういう議論はたしか出たかと思うんですけれども,やはり第三者の方が受託者の意図というのを知っている以上は,そのような第三者は保護する必要はないのではないのかと。それについては,代理とのアナロジーでいけば,同じように考えていけばいいのではないかというふうな考えではあるんですけれども。

● 恐らく,権限内かどうかという問題で言えば権限内ではあるが,まさに濫用的な場合については,権限濫用と同じように単なる善管注意義務違反の単純な問題にはなりませんよと。これは代理の場合と同じですよね。

  代理の場合も,いわゆる権限濫用というのは,一応善管注意義務違反の問題ですけれども,心裡留保の規定が類推適用されるような場合には,単に損害賠償の問題ではなくて効果にも影響することがあると。それをここで持ってきただけ,だけと言うとあれですけれども,ここでも持ってくるということで民法の理論と一応平仄を合わせたということなんですが。

  ですから,完全な権限外の問題は,やっぱり31条の方の問題になってくるわけですよね。

  そこの間で,非常に連続的なものなので,そういう意味で平仄が合っているのかどうかというのは注意しなくてはいけないんだろうとは思います。
  ○○幹事,どうぞ。


● ○○委員がおっしゃったことに関連して2点あるんですが,先ほど○○委員の説明は○○委員の御疑問に十分に答えていないのではないかというふうに思うのは,代理の場合には,権限外のときには,相手方が権限内であるというふうに信じることに正当な理由があったというふうに,みずからの方で立証しなくてはいけないと。それが権限内のときには,本人の側が,お前は当該代理人の権限濫用を知り,または知り得べきであったではないかというふうに立証しなくてはいけない。

  つまり,やっぱり権限内のときの方が,本人は保護されにくいシステムになっているのに対して,こちらの場合には,両方とも,逆に権限内の方が厳しくなり得るのではないか。


31条の悪意,重過失というものの立証責任も受益者サイドにあると仮定すると,そこでバランスが崩れているのではないかということですので,代理ではバランスはとれているんだけれども,ここでは崩れているという御指摘ではないかというふうに思うのが第1点です。


  それも大変鋭い御指摘だと思うんですが,第2点は,私前回このことについて発言させていただいて,多少,私混乱したことを申し上げてしまったんですが,ここには受益者の利益と第三者との利益が相反する場合という話だけが書いてあるんですが,これ,自己取引で,例えば当該取引をやってもよいということが信託行為には書いてあると。

しかし,当該取引をするのに当たって自分の利益を図ろうというふうに,または第三者の利益を図ろうというふうに受託者が思っており,そしてそのことについて相手方が知り,または知り得べきであったということになりましても,これは同じく93条ただし書きを類推適用されるのではないかと思うんですね。


  だから,この(※5)の書き方をこのままやりますと,これは受益者の利益と第三者の利益が相反する場合についてだけはこうなんですよみたいなことになっているんですが,これは一般法理として適用される話ではないかという気がするのが第2点です。

● では,○○関係官。
● そこは,この(※5)につきましては,解釈問題と考えておりますけれども,確かに事務局内でも,そのように自分の利益を図る目的を第三者が知っている場合であっても同じではないかというような議論が出まして,そのあたりも確かにそうだなと,今○○幹事がおっしゃっていたのもそのことだろうと思いますけれども。

● 前半の御指摘もそのとおりだと思いますね。
  いずれにせよ,いずれにせよと何か逃げるようですけれども……。


● 少なくとも,どちらも受益者が本件では立証責任があって,しかし権限外だと重過失が必要だと。権限内だと軽過失でも無効と言えるというのは確かにバランスが崩れてはいるわけですが,しかし,片や31条の規律をちょっとこれから動かすというのは難しいところがございますし,こちらは民法の一般論ということなので,あとは解釈によって対応していくしかないのかなという気がするところでございます。

  93条ただし書きが軽過失になっているので難しいんですが,例えば信託の局面では重過失でなくてはだめとか,そういう手段を講じるという方法でバランスをとるというようなことかな。一般論ですと,そういうことも不可能ではないと思っております。

● いろいろ問題点があることは承知しておりますけれども,一応条文に出る部分に関連してはよろしゅうございますでしょうか。
  ○○幹事。


● 今の点はそれ以外なくて,あとは解釈論の世界だろうということは思います。


  条文に関しましては,1点だけ,2の(2)の④の一般条項的なものの書き方なんですが,一般条項だからいろいろな事情が考慮されるんだし,どう書いてもそう変わらないではないかと思われるかもしれませんけれども,やはりよく使われる可能性がなくはありませんので,考え方は整理して書くべきだろうと思うわけです。


  具体的に言いますと,④だけをそのまま見ましても,最初に「合理的に必要と認められ」と,この「合理的」というのは一体何によって決まってくるのかということが明確ではありませんし,次が,「利益を害しないことが明らかであるとき,その他」云々とあって,正当な理由があるときですが,何に正当な理由があるときというのが必ずしも明確ではないなど,ちょっとまだまだ洗練する余地があるのではないかなと思います。


  考えてみますと,多分,大きく分けると2つのパターンがあるのではないかと思います。1つは,受益者の利益を害さないものだから許されるというパターンと,もう1つは,受益者の利益を,一見すると害するように見えるんだけれども,しかし受託者の側がそのような行為を行うことに正当な利益がまさにあるという2つのパターンが,やはりこの中には含まれているのではないかなと思います。

  としますと,やはりそのことが明確になるような書き方をしていただく方が,解釈の指針が与えられるのではないか。そうしますと,恐らくは一番最初にある「合理的に必要と認められ」というのが,今言いました,受託者の側にそのような行為をすることについて正当な利益があるという場合の中に吸収されていくのではないかなという気がいたします。


  ですので,受益者の利益を害さないということ,並びに受託者の側にそのような行為をすることについて正当な利益がある場合と,書き方はここから先より洗練していただいたらよろしいと思うんですけれども,そのような整理をもとに書いていただくというのはいかがだろうかという提案です。

● いかがでしょうか。
  どうぞ。


● 今の御指摘を踏まえて,ちょっと書きぶりについては検討したいと思います。


● それでは,大変いろいろ御議論いただきましたけれども,今検討するというふうに申し上げた点を別として,それ以外の点については御承認いただいたということでよろしゅうございますか。


● 細かい話で恐縮です。
  ○○委員が冒頭質問されたことで,ちょっと確認をさせていただきたいんですが,2の(1)のウの間接取引のところで,利害関係人ということで,これは解釈論問題であるということでございまして,先ほど事務局の方から,経済上,実質上同視できるものということが御提示されました。


  ちょっとこの解釈に当たっては,もうちょっとなるべく明確化を望みたいという趣旨で発言するわけなんですけれども,すなわちここで例として述べられているのは個人であって,その例として配偶者,子供ということが例示がありました。


生計を同一する者であればそれはわかりやすいと思いますけれども,個人の場合でも,では孫はどうなんだとか,ほかの地縁あるものはどうなんだといろいろなものがあるわけでして,そういう状況があるわけでもそういう解釈ということだと思っております。


  御質問したいところは,では法人の場合はどうなのかということでございまして,例えば受託者の100%子会社ということであればどうなのか。例えば,受託者の100%子会社のために物上保証を信託財産において行うという場合は,これは経済実態上も同視されるものということとみなされそうでございますけれども,では50%子会社はどうなのかとか,では役員が同じであればどうなのか,これもいろいろ議論がございます。

  そこで,ここの議論というのは,そういう解釈で解決されるものだと思いますけれども,やはりこれは一応禁止されるというルールでございますので,それが当たるかどうかということについての基準というのを,なるべく明確化する基準を提示していただきたいと,そういうことでございます。
● 何かありますか。


● 最終的には解釈によらざるを得ないわけですが,直感的には,100%子会社はいいのではないかというか,これに入るのではないかという気がいたします。あとは,では50%はどうかとか,役員が共通だったらどうかというのは,言ってみれば法人格否認の法理と同じような局面で,形骸化事例とか濫用事例とか,そういうものに当たると実質的に判断されれば,ここで受託者同視できるのではないかということで,あれが1つの解釈指針になるかなという気がしておりますが,具体的には,やはり受託者と同視できるようなものであって受益者の利益に反するという観点から,このようなものに利益を共有させるのは,結局受託者との利益相反と同視できるんだというのが最終的な基準になるのではないかという気がしております。

● どうもありがとうございました。
  それでは,次に行きましょうか。

● では,次は分別管理義務でございまして,ちょっと飛びますけれども,10ページでございます。


  この点でございますが,この件は,第21回部会で提案しておりましたが,そのときは信託財産の性質に応じた個別具体的な分別管理の方法につきましては,信託法に定めを置くよりも,法務省令の定めによる方法によるとすることの方が,明確かつ柔軟な対応が可能となると思われるとの観点で,考え方自体は試案と変更はなかったんですが,「受託者は信託財産が適切に確保される方法として,法務省令に定める方法により分別して管理しなければならない」という趣旨の規定を提案しておりました。

  これに対しまして,そのときの部会では,分別管理義務は非常に重要な義務でありまして,基本的な管理方法については法律レベルで書いておいて,あとの細かいところは法務省令で対応できるとの規定にする方が望ましいという意見が,比較的多数出されました。


  そこで,今回の提案におきましては,登記登録できる財産ですとか動産,金銭,債権などに関する原則的な管理方法を法律上明文で規定しまして,保振機構を利用する場合など,それ以外の場合につきましては,法務省令の定めにゆだねるとすると。


  それから,あと分別管理義務の方法については,1の本文にありますただし書きのとおり,信託行為をもって別段の定めを設けることはできると。しかし2にありますとおり,登記登録義務を完全に免除してしまうことまではできないというところまでは,法律上明文で規定することを再度提案するものでございます。

  もっとも規定ぶりの問題にとどまるものでございまして,実質的な考え方自体は,試案段階から終始変更はしていないということだけは申し添えさせていただきます。

  以上でございます。

● それでは,これについて御議論お願いします。
  ○○委員。


● それでは1点だけ確認ということで,前回の提案から実質的な変更はないという御説明でしたので安心はしておるんですけれども,くどくて恐縮なんですけれども,2のところで,信託の登記または登録をする義務について免除できないというふうな形での記載がありますけれども,これについては前回の提案同様,信託行為に受託者が経済的な窮境に至ったときには,遅滞なく信託の登記または登録をする義務があるとされていると認められている限りにおいては,分別管理義務は課せられているというふうに解してよいということでよろしいでしょうか。

● そのように解していただいて結構でございます。
● ほかに。
  ○○幹事。


● すみません。分別管理義務について,ちょっと何点かあるんですが。
  まず,前回の議論を経て,今回具体的な規定を置いていただいた点は非常にありがたいというふうに考えております。その上でということなんですけれども,1つありますのは,預金について,できればこれは口座を別にすべきということを明示するということは御検討いただけないかと。

  これは,特に民事信託等を考えた場合には,やはり将来的に弁護士がやる場合もありましょうし,また一般の方が受託者になるという場合もあり得るかという気もするんですけれども,そういうふうな場合に,やはり預金口座は別であるということは,それを確保するということはやはり重要なことではないかというふうに考えておりまして,その点を条文上も明らかにするということはお願いできないだろうかと。


  この点については,強行法規とまでするかどうかについては議論があり得ると思いますので,そこは実務上の商事信託等の必要性にかんがみてということでよろしかろうかと思うんですけれども,少なくとも条文上そういった原則を明らかにするということを御検討いただけないかというのが第1点です。


  それから,この間の議論の中で,ちょっと私の理解があまり十分ではなかったのかもしれないんですが,この御提案の中で,1の②のロの中の金銭はいいんですが,その他のイに掲げる財産ですから動産以外の財産ということになろうかと思うんですけれども,これについても,基本的な考え方としては,これまでの議論としては,どちらかというとイに書いてある「信託財産に属する財産と固有財産及び他の信託の信託財産と外形上区別することができる状態で保管する方法」というのが,むしろ原則的な管理の方法なのかなというふうに理解をしておったんですけれども,


債権や有価証券等がこのその他の財産に当たるということになろうかと思うんですけれども,デフォルト・ルールとして,原則的な規定の仕方としては,やはりこれはロではなくてイの方に含めるべきなのではないかという感じがしております。


  それから,あと,これは若干ちょっと意見を述べさせていただいたところでもあるんですが,1のただし書きのところなんですが,「信託行為に別段の定めがあるときは,その定めるところによる」とあって,これは2の規律と合わせ読みますと,免除することもできるというようなふうに読めるかなという気がするんですが,やはり全く免除を認めるというところまではちょっと行き過ぎなのではないかという気がしておりまして。

  この表現ですと,例えば金銭についてはその計算を明らかにする方法が規律されておりますけれども,これも,では免除できることになるのかということになりますと,他方で規定されております帳簿作成義務等との関係でも,ちょっと誤解を与えかねないような表現になっているのではないかという気もしておりまして,ちょっとこの辺のところはぜひ御検討いただけないかというふうに考えております。


  具体的には,この信託行為の別段の定めというのはもう少し限定をして,例えば別段の定めの範囲を,分別管理の方法について別段の定めとか,そういった形で規律するということをお願いできないかというふうに考えています。


  この分別管理については,いろいろな消費者事件等の関係では,かなりこれが守れないためにいろいろな被害が拡大しているという事情もありますので,ぜひそういった事情もちょっとおくみいただいて,規律について御配慮いただけないかということです。


  以上です。
● どうぞ,○○関係官。
● 最後に御指摘いただいたところにつきましては,私どもとしましては,これは○○幹事当然御認識のとおりで,当部会においてそれ以外の理解をする人はいないと理解していますけれども,当然計算を明らかにする方法と書いてあって,信託行為に別段の定めがあるとしても帳簿作成義務みたいなものは当然に係ってまいりますので,それまでしなくていいと,それで帳簿作成義務については--帳簿等作成義務と言った方がいいかもしれませんが--あれ自体は強行規定で外すことはできないということですので,法制上はそれで当然であるというふうに理解しておりましたので,誤解する余地があるかないかどうか,書きぶりの工夫があるかないかどうかというのは,最後は法制的な整理としてこちらの方で考えさせていただければというふうに思います。


  それから,前段のロの物理的分別が原則ではないかという御指摘ですけれども,例えば債権というものを物理的分別と言ったとしても,それは何か物があるわけではございませんので,そういうのは通常は帳簿で明らかにするということなのではないかというふうに思います。


  物理的に外形上区別することができるような,動産のようなものについてはそれはそうですけれども,そうでないものについては,帳簿等で明らかにするということ以外に,金銭債権を物理的に分別するといっても,それが何のことを言っているのかわからないかと思いますので,それは,そういうものは,むしろロの計算を明らかにする方法ということなのではないかというふうに思います。


  預金債権を口座を別にしろというのを,一応基本法の中で,金融機関に預けている債権とかそんなふうに特出しして書くかどうかですけれども,それはむしろ,一応,金銭とかその他のイに掲げる財産以外の財産は計算を明らかにする方法というところを,これを原則としまして,それでその余の財産について,社会的な事情に照らして,①,②以外の方法よりももう少し適切な方法があれば省令で個別に列挙して書いていくという方向で,ちょっと検討させていただければというふうに思いますけれども。

● いかがでしょうか。
● 今の点なんですが,このイの外形上区別というのは,物理的なものと,それから例えば債権や何かの場合には口座を別にするとか,外形上何らかの形でとれる場合あるのではないかという気がちょっとしておるんですけれども。
  


できるだけ,別にしておくことをきちんと法文上はデフォルトとして定めておいた方がよろしいのではないかという趣旨の意見なんですけれども。


● 同じようなことかもしれませんが,我々としては物理的分別はもちろん1つの方法なんですが,やはり財産の形態に応じて最も適切な方法をとるというのがいわば本当の原則でございまして,そうすると,動産であれば物理的分別,有価証券も,これは動産ですかね,だから物理的分別,金銭債権であれば帳簿というのは,むしろ,それはそれぞれの財産によって原則であって,別に物理的分別がすべての原則とまでは考えていないというものでございますので,このように並列して書いていても,それは権利の種類に応じて最も適切な方法を明らかにしているという御理解でいいのではないかなという気がするところでございます。


  あと,口座によって分けるというのは,これ前も議論がございましたが,なかなかそれは現実的な対応が難しいというところもございまして,もし口座を別にすることが特に民事信託なんかで必要であれば,それはただし書きによって定めるということで対応することができるのではないかなという気がするところではございますので,ちょっと付言させていただきました。

● ほかに,御意見ございますか。
  ○○委員。


● 今のに関連しますが,ちょっと素朴な読み方の問題なんですけれども,2で,1の①に掲げる財産については免除できないという書き方をしているので,そうすると1の①以外は免除できるんだと。そうすると,1の②のロで,計算を明らかにすることを免除できると,そう読めることはそうですよね。


  そうすると,これはどういう意味なのかというのがちょっとわからないんですけれども。
● それは先ほどお答えしたとおりですけれども,これは考え方としては○○幹事のおっしゃったとおりで,帳簿等の作成義務というのは当然係ってきますので,そちらの方から考えたときに,信託財産の計算を,どういう収支があってというようなことは帳簿等作成義務の方から読めるのではないかと,とりあえずは考えていたと。


● だったらば,これは1の②のロは免除できないことにすればいいかなという,それだけのことなんですけれどもね。


● わかります。要するに帳簿作成義務の方から来るんではなくて,分別管理の問題として最低限計算はしなくてはいけない。そこは免除できない。

  実質は同じことになるんだと思いますけれども,理論的な説明としてどうするかということですね。

  これは,計算というのは,ほかにもこのロの計算だけではなくて,債権なんかも最低限計算は必ず必要なんでしょうし,それをうまくまとめて,そういうものは最低限しなくてはいけないということは,書こうと思えばできるかもしれないね。


● 書きぶりで,ちょっと調整をさせていただきたいと思うんですが。
● ほかに,よろしいでしょうか。
  これは,いろいろな財産の多様性も考えながら,そういう意味で柔軟な対応--柔軟というのは別に基準を緩くするという意味ではなくて--それぞれの財産の特徴に合わせて必要な分別管理義務を定めたいということと,それから法律の中では基本的なことを書きたいというのをうまく調和させるというのがねらいですけれども,多少ここに書いていない,今の預金などの問題というのは出てくるかもしれませんけれども,これも,場合によっては法務省令の方でうまく書けるのであれば書くということで対応したいというふうに考えておりますが。

  よろしゅうございますか。
  ○○幹事。


● 随分煮詰ってからこんな発言をするのはまことに恐縮なんですが,○○幹事がおっしゃったことにも関連するんですけれども,現行法の条文というのは分別管理しなさいと。金銭に関しては計算を明らかにすることでもよいと。これは,計算を明らかにするというのが,推奨されている分別方法なんですかね。

  だから,取り分けて物理的にしておくということが不可能な場合が多々あるというのは十分にわかるんですが,原則形態を,計算を明らかにするというところにするというところに,恐らく○○幹事がおっしゃっていた違和感があるのではないかという気がするんですけれども。


● これはしかし,パブリック・コメントで,金銭については計算ということで,パブリック・コメントを経た上で,特段の反対もなくというか現代的事情ではこうだという中で,一応できているというふうに理解はしているんですけれども。


● どうぞ。
● 現金は少ないと思いますので,あまり問題ではないかもしれませんが。
● どうぞ,○○幹事。


● 私も金銭はおっしゃるとおりだと思うんですけれども,金銭以外のものについては,やはり推奨する管理のあり方をもう少し書いた方がいいのではないかなという気がしておるんですけれども。


● できるだけそういう御意見を,今少なくとも法務省令のレベルではできるということだと思いますけれども,法律の中にうまく書けるかどうかということですね。これも併せて少し検討いたしますけれども,基本的には,この現在の線を,少なくともここに書いてあることは御承認いただけるとありがたいと思います。

  ○○委員。

● この金銭に計算という言葉は合うと思うんですけれども,金銭債権以外のものの場合には,法務省令がもしこの計算という言葉に多少拘束されてしまうと,なかなか書きづらいような気もするんですけれども,何となく信託財産であることを明らかにするような表示をするとか,何か,この計算という言葉が信託法における解釈ではそういう趣旨なんだという理解で議論は進んでいるのかと思うんですが,その辺は最後なので,もともとちょっと違和感があったんですけれども,ちょっと細か過ぎるかなと思っていたんですが。

● どうですか。
● 計算の意味につきましては,財産の帰属と収支を明らかにするという意味で,ここではそういう用語で用いておりまして,それで法務省令で定めるものは,管理する方法としてということですから,別に分別管理の方法ということであれば,財産の形態によりますけれども,省令として書く方法は柔軟に対応可能かなというふうには思っております。

● わかりました。
● 何とか対応できる。
  それでは,分別管理のところも御承認いただいて,あと法務省令などで定めるときの定め方などは引き続き検討させていただくと。しかし法律レベルでは,これを御承認いただくということにしたいと思います。


  それでは,少し休憩いたしましょう。

          (休     憩)

● それでは,再開したいと思います。
  では,○○幹事,お願いします。


● では続きまして,第26の消滅時効のところにつきまして,御説明いたします。

  この問題につきましては,第23回部会のときには,時間がせいていたこともあって最後に極めて短時間で終わってしまったというところがあり,そのときは試案のとおりだったんですが,今般改めて規律をかなり見直しまして,改めて提案するものでございます。

  まず,提案1でございますが,これは損失てん補責任等を基本的に債務不履行責任と位置づけた上で,その消滅時効の起算点を,民法166条1項に従い権利を行使することができる時,すなわち受託者の任務違反行為により信託財産に損失または変更が生じたときとしまして,その消滅時効期間については,167条1項に従いまして原則として10年間,ただし営業信託では5年間とするものでありまして,これは試案及び前回の提案から変更はございません。

  次に提案2は,受益者が損失てん補請求権を有する場合の特則,受益者についての特則を定めたものでございます。

  まず(1)でございますけれども,消滅時効の起算点につきましては,自己が受益者として指定されたことを知るに至るまで時効の進行は開始しないとするものでございまして,この点は試案及び前回の提案から変更はございません。


  これに対しまして,変更した点でございますけれども,消滅時効が進行を開始するためには,さらに受益者において受託者が任務違反行為があったことを知ったことをも要するとしていた点でございます。


つまり,今回の提案の考え方によりますと,消滅時効の起算点につきましては,受益者として指定されたことを知るに至るまでの間は進行しないという要件は付加されるわけですが,それ以外は民法166条1項に従いまして,「権利を行使することができる時」,つまり受託者の任務違反行為によって信託財産に損失または変更が生じたときとの要件に従うことになりまして,受益者がこの事実を認識するに至ることまでも必要とするかは解釈にゆだねることとしてはどうかと考えるものでございます。

  そもそもこのような問題意識が生じた発端といいますのは,受益者に後者の認識をも要求した上で,さらに10年間という消滅時効の期間を認めるとなりますと,消滅時効の完成まで非常に長期を要することにもなり得るわけでして,現行法にも例が見当たりませんし,いわば受益者にとっては,知るまでは進行しないし,かつ10年間と,いわばいいとこ取りをするような結果になってしまうので,問題はないかという懸念があったことでございます。


  部会におきましても,認識を必要とするかわりに,例えば3年とか5年とか期間を短縮できないかとの指摘もあったと記憶しておりますが,不法行為責任と位置づけるのであれば,例えば3年とすることもあり得るわけですが,債務不履行責任と位置づける以上は,期間を短縮化するといっても,その基準もなく難しいと言わざるを得ないところでございます。

  ところで,御承知のとおり,通説や従来の判例によりますと,この「権利を行使することができる時」の意義については,権利を行使する上で法律上の障害,例えば履行期の未到来等のないことを意味し,権利を行使することができるということを権利者が知らなかった等の事実上の障害は時効の進行を妨げないと解されてきておりました。しかし,近時は,この権利を行使することができることを現実に期待または要求することができる時期まで起算点を遅らせる裁判例や学説が見られるようになってきております。


  このように,受益者以外の権利者一般につきましては,民法166条1項の条文を前提とした上で,事案に応じて解釈により権利者の保護を図るという方法がとられている中で,ただ,受益者についてのみ,この民法166条1項の条文から離れまして,法文上の要件として常に任務違反行為による損害の発生の認識まで必要とするのは,解釈によるのであればともかく,実際に法文化するとなると,バランス上も妥当性を欠くように思われるわけでございます。


  そこで,前回の提案を改めまして,今回の提案のように,いわば民法一般の条文や解釈と同様のオーソドックスな方向に改めたものでございます。


  次に,2の(2)でございますが,試案及び前回の提案では,受益者に限らず他の受託者や委託者が損失てん補等請求権を有する場合についても除斥期間を設けることとしておりましたが,これを改めまして,消滅時効の起算点をその主観的認識に係らしめる受益者が権利者にある場合についてのみ,いつまでたっても消滅時効が起算点に至らない可能性があることを踏まえまして,権利関係の安定性の観点から,除斥期間の規定を併せて導入することとするものでございます。

  最後に(注2)でございますが,法人役員が連帯責任を負うこととなる損失てん補等責任についても,消滅時効及び除斥期間の規定を設けることとするものでございまして,消滅時効期間についてのみ信託類型を問わず一律に10年間とするほかは,提案1及び2の規定がそのまま当てはまることになるものと考えているところでございます。


  以上でございます。
● それでは,この時効に関連していかがでしょうか。
  ○○委員。


● 適用関係を教えてほしいんですけれども,損失補てん責任等の「等」なんですが,原状回復義務とか,あと一番関心のあるところですと利益吐き出し責任。そうすると,今申し上げたいずれの類型につきましても債務不履行責任ではないという整理,もともと発端は債務不履行責任かもしれませんけれども,利益吐き出し責任ですと,それは不当利得返還請求とか,原状回復不能であれば形成権かもしれませんけれども,物権的な請求権に近いものかと思うんですけれども,この「等」はどこまでカバーされているという理解なんでしょうか。


● 「等」は,我々の理解では損失てん補と原状回復は当然と。利益吐き出しは,なおペンディングですので,これは,もし入ればここに入ってくるし,その規律は同じことになると思うんですが,そこまで含んでおります。


  今おっしゃったところですが,我々の理解では,損失てん補と原状回復は基本的に受益者に対する信託事務遂行義務の不履行の問題で,債務不履行の責任ではないかと。


仮に利益吐き出し責任が入るとしても,これも信託の受託者として果たすべき債務の不履行によって生ずるものと認識しておりまして,それであれば同じ債務不履行という考え方でいけるのではないかと思っているところでございます。
● どうぞ。
● その趣旨は理解できるんですけれども,結構先鋭な対立があるのは,損害とみなすのか違うのかというところで,そうすると,債務不履行と性格づけられるからという理由づけになりますと,逆に利益吐き出し責任の方の甲案に近い議論が,ここで何か1つ形成されてしまうのかなというようなちょっと懸念もありまして,もちろん数字を持ってくるときに何らかの根拠が必要だということがあって,それは,そういう趣旨で述べているということはわかるんですけれども,その債務不履行と性格づけられるところは,利益吐き出し責任との関連ではちょっと強過ぎる趣旨ではないのかなと思って,ちょっと懸念があるんですけれども。


● 何かありますか。
● 利益吐き出し責任につきましては,まだ検討結果が出ておりませんので,そこまで厳密に詰めたわけではないので,これである立場をにおわせているわけでは全くないんですけれども,「等」と書いたのは,単純に原状回復は入りますねという趣旨は込めているということでございまして,利益吐き出し責任については(注1)に書いてありますとおり,なお検討事項ということですので,それがもし利益吐出しが入るということになった暁には,どのような規律が必要かというのはまた別途考える必要があるかなという気はしますが,何か基本的にはこれで問題ないのではないかという気がするわけですが,そこだけ不法行為にした方がいいという御趣旨でございますか。

● いや。法的な性格づけをあえてしなくてもという趣旨なんですけれども。
● そうすると,結論的には,この規律の対象で10年間,それはよろしい。

● そうですね。結論については特に。
● わかりました。
  書きぶりのところで,債務不履行と言ってしまうということですか。


● そうです。はい。
● それでは,そういう点は注意した方がいいということでいきたいと思います。


  ほかにはいかがでしょうか。
  ○○幹事。

● 適用がどういうことになるかということだけを確認させていただきたい趣旨なんですけれども,受益者が有するものの消滅時効は,信託管理人が選任されていて受益者自身がまだ存在しないというような場合は,どのようなことになるのでしたでしょうか。


  すみません。消滅時効の規律の内容を確認したいという趣旨なのです。

● 信託管理人がいれば,やはり法定代理人がいた場合と同じようになるんですかね。基本的には受益者が生まれて知るに至るまでは進行しないということでしょうか。


  法定代理人がいたら,法定代理人が知ったら消滅時効進行するということであれば,もしかすると信託管理人が選任されたときから進行するという発想もあり得るかなと,今ちょっと思っているところですが,ちょっと十分分析していなくて,むしろお伺いしていて恐縮なんですけれども。

● 申しわけありません。まさに両方の考え方があるのではないかと思ったものですから,明らかにしておかなくていいだろうかという問題関心でお伺いをしました。


● どちらの方が合理的だと,○○幹事としては思いますか。代理人的に考えるのか,別途に……。


● 受益者が,例えば未存在というような例のときに,信託管理人によって権利行使をさせるということからすると,権利行使の機会は確保されているということからすると,消滅時効が進行してもいいのかなというふうには思ってはいるのですけれども。


● 何か結論としては,やっぱり信託管理人がいて,本来損失てん補請求できる状況で,あるいは受託者の方からしても,未存在,将来の受益者の権利を保護する立場から今のような損失てん補請求するという権限を持っている信託管理人がいて,その状態のもとで時効期間が完成すると,受益者についてもなくなるというのが,何かわかりやすいですよね。

  そうではないと,全く別の,信託管理人と受益者の関係をどういうふうに理解するのかという,また難しい問題になりそうな気がするけれども。

  何か,皆さん,この中で御意見があれば,伺いたいと思いますけれども。い
かがでしょうか。


  基本的には,今のような受益者未存在の場合の受益者の利益は信託管理人が図るという立場だとすると……。

● 信託管理人が選任されたときから進行を始めるということですかね。
● それがわかりやすいけれどもね。それでは不十分だという点が,もしあるとするとどんな点かということですね。


  ○○幹事としては,今のでよろしいですか。


● 明確になることが望ましいのではないかというふうに考えておりまして,基本的には今のようなことでどうかと思っているのですが,もちろん,実は別の考え方をとったとしても,あとは20年でいくんだというのも十分あり得ることだと思いますので,どちらであるかが明らかになればいいのではないかと思っております。

● それであれば,基本的には○○幹事がおっしゃったことについて皆さん黙示の同意があるのかなという気がしますので,そちらの方向で考えてみますが,最終的には,どちらかに決めて,お諮りしたいと思っております。


● ほかにいかがでしょうか。
  今まで○○委員が,いろいろ時効に関連しては御発言もございましたけれども,このような案で。


● 権利を法律上行使できるときからという一般的な時効の規律と,それから任務違反が受益者にわかりにくいからディスカバリールールをとるということとの兼ね合いで,こういう本日の御提案が出ているかと思います。これはこれで1つのあり方かなというふうに思います。


  ただ,1点だけ確認したい点なんですけれども,26の1で「債務の不履行によって生じた責任に係る債権の消滅時効の例による」という原則を立てて,それで解説の中で,11ページの1,提案1についての第3パラグラフのところで,「「権利を行使することができる時」,すなわち,受託者の任務違反行為により信託財産に損失又は変更が生じた時」と置きかえているわけですが,これは直ちに置きかえられるかどうかについては議論があり得ると思います。

  ですから,むしろ端的に,説明文の方の規律を表に出していただいた方が紛れがないのではないかなというふうに思います。現に,除斥期間のほうについては,2の(2)に表に出しているわけですから,その方が疑義がないかなというふうに思います。


● いかがでしょう。
● 解釈は御支持いただいたと思いますが,ここでの起算点というのは,任務違反行為によって結果生じたときというふうに考えておりますが,あとは,そうすると,要綱案あるいは条文案の中にどういう書きぶりをするかというところですので,御指摘の趣旨も踏まえて,できるかどうかちょっとわかりませんが,書きぶり検討したいというふうに思います。


● と申しますのは,債務不履行によって生じた責任と書きますと,例えば不作為による任務違反などについては,ややあいまいになってくるかなという感じがいたしますので,今申し上げたようなことでございます。
● そうですね。

  今のような対応でよろしいのではないでしょうか。
  ほかにいかがでしょうか。
  もうちょっと細かい点で,解釈問題だと思いますので,これ以上ここで条文という形で対応する必要はないんですけれども,受託者が法人であるときの法人自身の消滅時効と,それから役員が連帯責任を負うというときの,その役員の連帯責任の時効期間が,一応,今(注2)というところですが,法人自身の方は,受託者自身の方は5年の商事の消滅時効というのがあり得るわけで,そのときに,この役員の方の消滅時効の期間というのは,ここでは一応今10年間とするということが書いてあるんですが,これがどういう関係になるのかということだけは,これは後で解釈問題として解決すればいいんだと思いますけれども,簡単に言えば,法人の方は5年でもって時効は完成しているときに,役員の責任が残るのか残らないのか。あるいは時効の絶対効,連帯責任ですから,負担部分についての絶対効ということでどうなるのかと。

  どっちが負担部門を追っているのかということから始まって,ちょっと(注2)がどうなるかというのは,少し個人的には気になっております。ただ,解釈で解決すればいいことかなというふうには思いますが。


  ほか,よろしいでしょうか。これ自体はいじる必要はないと。
  それでは,時効の部分は終えまして,次に移りましょう。


● では次は,第31の権限違反行為の取り消しでございます。

  4に関してのみですが,取り消しの原因を知ったときから1か月という期間制限,通説は除斥期間と解されておるんですが,四宮先生は短期消滅時効期間と言っておりまして,我々も時効によって消滅するということで明記しているわけでございますが,1か月は短過ぎるという批判が,当部会でもパブ・コメでも四宮先生も言われているところでございまして,3か月に延長することを提案するものでございます。
  以上でございます。

● これはいかがでしょうか。
  ここでは,一応期間制限,もちろんほかのことについて議論してはいけないという趣旨ではありませんけれども,他の点は一応固まったという前提のもとで,この権利行使の期間について,時効の期間だけ。
  ○○委員,どうぞ。

● 前も発言したと思うんですが,弁護士の感覚で言うと,こういう権限違反行為があったということを知った人が相談に来るまで1か月,2か月たってからで,それからすぐに弁護士が行動するというのは無理な場合が多くて,3か月というのはきついなというのが多くの弁護士の感想でした。


  半年ならしようがないかというぐらいの感覚的なものはあるので,それはお伝えしておきたいと思います。


● いかがでしょうか。今のに関連して。
  受託者サイドなんて言っては申しわけないけれども,○○委員,独立の見解として。


● これは前回も申し上げたところですけれども,商事信託での受託者という立場で考えますと,基本的には1か月でも長いということで,日々刻々信託財産が動いている中にあっては,1か月でも非常に厳しいのではないかなというふうに考えておりますが。


  今回御提案3か月ということで,これについては基本的には反対したいところなんですけれども,○○委員ほか御意見等がございましたのでいたし方ないのかなというふうに思っておりますが,これが6か月とか1年とかそうなると,やっぱりどうしても,なかなか巻き戻しというのは苦しい話になってしまいますので,3か月というところ以上はどうしても勘弁していただきたいなというふうに思います。

● ほかに。
  では,○○幹事。

● 今の意見の後に申し上げるのはちょっと気が引けるところあるんですけれども,多少,ちょっと弁護士会の方で意見が出ていたのが,ほかの法律の規律との関係でバランスがどうなんだろうという意見が出ていました。


  それで,民法の規律を拝見しますと,取り消しの行使期間は,追認できるときから5年と,行為のときから20年とか長いんですけれども,瑕疵担保責任でも,知りたるときから1年,行為のときから10年というようなことになっていて,やはりこの3か月,1年というのはかなり短いのではないかという感じがしております。


  今御指摘の信託が日々動いているという問題あるんですけれども,少なくとも受益者の犠牲のもとに,悪意,重過失の第三者が免責される期間としては,やはり3か月,1年というのは短いのではないかと。


  ちなみに,日弁連の意見書の中では,知ったときから1年,行為のときから10年という意見を挙げさせていただいているんですけれども,こういった期間というのもあり得るのではないかというふうに,個人的には考えております。

● ほかに,御意見ございますか。
  これもいろいろ御意見があるところ,まさに対立する御意見があるところですが,一応,現在の法律の1か月というのはとにかく変えようということで,今両端からの御意見がありましたけれども,多少両方が歩み寄れるところとして,今のところ3か月,これでももちろん短いという御意見,よくわかります。私も,個人的には6か月ぐらいはどうかというふうに思いますけれども,しかしみんなが合意できそうなというところで,3か月ぐらいで御承認いただければそうしたいというふうに思いますが,いかがでしょうか。

  それでは,弁護士会からの御意見はわかりますけれども,3か月で,とりあえず今回は少しは延ばしたということで,若干のプラス方向に動いたということで御承諾いただければと思います。

  信託法が,今後どのぐらい先にまた見直されるかわかりませんけれども,ベースが大分進歩したということであれば,また次回なりに,いろいろそのときの関係者の方々の御努力で改正されることもあるのではないかと思います。


  それでは,第31につきましても御承認いただいたということで,次に行きたいと思います。

● では次は,第32と,ここだけ第33と2つ併せて御説明をしたいと思います。

  まず第32でございますが,提案内容自体には変更ありません。
  2でございますけれども,本件につきましては第24回部会で取り上げておりましたが,受託者の費用前払請求権の行使可能時期との関連で,理論的にはこの請求権が民法649条によるのか民法460条によるのかと,どちらの性質によると見るのが妥当かというような御指摘と,あと前払いを受けることのできる時期についてはどのように考えるべきかという,解釈問題とは思いますが,その2点についての御指摘がございました。

  まず前者でございますが,前払請求権の性質につきましては,受託者というのは信託財産から直接支出することができまして,自己の固有財産で立替払いをすべき義務を負っているというわけではないという受託者の義務内容,権限の内容ですとか,受託者は信託との関係で信用を供与すべき立場にあるとまでは言えないという実質的な観点にかんがみますと,受託者は保証人とはやはり性質の異なるものでありまして,他人のために事務処理をするものに当たるものとして,この前払請求権は,民法649条の受任者の前払請求権の性質を有すると見るのが素直ではないかと思うところでございます。

  後者の行使可能時期でございますが,これも解釈の問題と申し上げたところでございますが,民法460条のように厳格に解する必要はなくて,債務が弁済期になくても,弁済期まで待っていたのでは信託財産から弁済できなくなる蓋然性があるというような場合であれば,行使できるのではないかというふうに思っているということを記載させていただきました。

  次に,第33の報酬請求権についてでございますが,これも提案内容自体は変更はございません。


  前回提案に御指摘があったのは,受託者が信託報酬を受ける前の受益者に対する通知義務について,任意規定という提案をしていましたけれども,これに対しましては,受益者または委託者に対する通知義務を強行規定とすべきではないかという御意見をいただきました。

  その結果,検討いたしまして,資料に記載いたしましたとおりでございまして,受益者に対し一定の条件,すなわち信託行為で報酬の額とか算定根拠を定めていない場合については,通知義務は強行規定とすると。

通知したくなければそういうことを定めればいいわけでございまして,そういうふうに改めるとともに,委託者に対する通知については特段の規定は設けないこととしてはどうかと考えるものでございます。
  以上でございます。


● それでは,今の第32と第33につきまして,いかがでしょうか。
  これは,提案自体は変更ございません。同じ提案のもとでの考え方を示したものでございます。

  それでは,よろしければ,次行きましょうか。

● では,第34でございます。
  まず,これは受託者が複数の信託に関する問題で,第25回部会で御審議いただいたところでございますが,今回はそこから提案内容に変更があった点についてのみ,3点御説明いたしたいと思います。


  まず第1に,1と書いてございますところですが,職務分掌がない一般の共同受託の場合におきまして,ある受託者が,他の受託者を顕名することなく対外的な執行行為を行った場合につきまして,これまでの提案では,その行為者の固有財産のほか信託財産にも効果が及ぶとしておりました。しかし,組合の場合には,他の組合員を顕名していない場合には,その他の組合員の固有財産はもちろんのこと,組合財産にも効果が帰属しないと解されております。

  そうすると,信託の場合にも同様に,信託財産にも効果は帰属せず,当該行為者の固有財産のみに効果が帰属すると考えることが相当と思うものでして,これは従来の考え方をここで変更させていただいたという点が第1点目でございます。

  第2に,(注4)についてと書いてあるところでございますが,受託者の複数の信託で,3人のうち1人が欠けて2人になったというような場合におきまして,1人補充するというときでございますが,残りの受託者の合意をデフォルト・ルールとしてではありますが,必要とするかについて,前回部会では両案併記しておりました。

  この点につきましては,この資料中にるる書かせていただきました理由から,デフォルト・ルールとしては,委託者と受益者の合意のみによって,欠けた受託者の分の新受託者の選任を認めることとしてはどうかと考えるものでございます。

  第3に,(注5)についてと長く書かせていただいたところでございますが,これは前からいろいろ問題になっているところでございまして,信託債権者が,信託債権に関して,共同受託者の1人に対して取得した債務名義をもって信託財産に掛かっていけるかという点につきまして,前回の提案におきましては,職務分掌の有無にかかわらず,受託者全員に対する債務名義を取得する必要があるという見解を展開いたしましたところ,特に職務分掌の定めがある場合につきまして,取引をするときには1人でいいけれども,執行するためには全員に対する債務名義を取らなければならないというのは,本来執行の局面で担保されているはずの取引上の権利が,実は担保されていないことになって,整合性を欠くのではないかという指摘がございました。

  この点につきまして,資料の3,(注5)についてというところで書かせていただきましたとおり,職務分掌型の信託の場合には,分掌された職務に関する管理処分権は分掌された職務を執行する受託者に専属しますので,当該受託者は,他の受託者のための法定訴訟担当者となるものと構成した上で,あとは執行文付与のあり方を検討するというアプローチも十分あり得るところであると思われます。

  そこでまずは,このように,ある受託者を他の受託者のための法定訴訟担当と考えることの是非につきまして,ぜひ御意見を賜れればと思っております。


  なお,以上はあくまでも職務分掌型の共同受託の場合でございまして,一般の共同受託の場合につきましては,ある受託者に専属的な管理処分権が帰属していると言うことはできませんので,法定訴訟担当という構成は無理でございまして,また,顕名しない限り実体的な効果も信託財産に帰属しない以上は,信託財産に係っていくためには受託者全員に対する債務名義を要求しても,取引相手方にとって酷ではないと思われますので,組合と同様に,受託者全員に対する債務名義を要するものと考えております。

  ということで,職務分掌のある場合についての法定訴訟担当と考えることの是非について御意見を賜れればと思っております。
  以上でございます。

● それでは,この部分について,いかがでしょうか。
  非常に込み入った議論も若干ございますけれども。
  ○○幹事,どうぞ。


● 最後の職務分掌型信託の場合の訴訟法上の取り扱いですけれども,結論としては,この資料にありますとおり,訴訟担当として構成するということでよろしいのではないかと思います。
 

 訴訟追行権というのは,実体法上の管理処分権を軸にして考えることになると思いますけれども,職務分掌型の信託の場合には,当該受託者というのは当該職務については管理処分権を実体法上与えられているということだと思いますので,それを訴訟手続に反映させれば,訴訟追行権あるいは訴訟担当として考えることになるんだろうと思います。


  執行のあり方が問題になるわけですけれども,これは今ここで議論した方がよろしいですか。それとももう少し……。


● いただければ,ぜひ。
● そうですか。

  考え方としては,単純執行文でいいのか承継執行文が要るのかというあたりが問題になるんだろうと思います。


特に信託財産が不動産の場合には,これ合有登記がされているわけですので,受託者1人の名前で債務名義ができているときに,それに対して強制執行できるのかということが問題になるんでしょうが。

  単純執行文でいければいいのかもしれませんが,仮に承継執行文が必要だとしても,民事執行法の27条の2項で,簡易にそれは出せるのかどうかということが問題になるんでしょうが,ここまでは信託事務処理のために債務名義上の実体法上の請求権が発生したんだということさえ言えればいいわけで,近い例で申しますと,民事訴訟規則の15条で,訴訟行為を必要とするのに必要な授権というのは書面で証明しなければならないとなっていますが,この程度の証明があれば執行分が出せるというふうに考えるのであれば,仮に承継執行文が必要だとしても,十分執行手続としてワークするのではないかと思います。
  以上です。

● どうもありがとうございました。
  ほかに,よろしいでしょうか。今までの御議論をかなり取り入れてはいると思いますが。
  よろしいですか。
● 今の執行以外の点でよろしいんですか。
● はい。

● 非分掌型の場合に,顕名がないと信託財産にも効果が帰属しないという点についてなんですが,この場合の相手方の保護はどうなるのかについてを確認したいんですが,権限違反行為の場合との比較ですとか,あるいは職務分掌型だと誤信した場合とか,相手方の保護も考えるべき場面があるのではないかと。
  特に,組合の場合にも表見代理を認めるという考えがあるものですから,それとの関係でどうなるのかということです。

● それでは,お願いします。○○関係官。
● そのあたりは組合と同じように考えておりまして,組合についても解釈によって第三者の保護をというのを図っていると。一般的に顕名主義というのになっていて,第三者が,民法の100条とか112条とか111条とか,あのあたりで保護されていると。
  それと同じようなことはここでも考えられるのではないかというふうに考えておりまして,それ以上に明文の規定を置く必要というのはないのではないかというふうに考えております。

● よろしいですか。
● 相手方が保護され得る場合があるということはわかりました。
  例えばですが,今の例で,職務分掌型だと誤信したという場合,どうなるんでしょうかね。つまり,単独でできると思っていた。

● そのあたりも,ちょっとこれは個人的な考え方ですけれども,そのように考えることについて正当な理由があって,それが民法の一般的な原則に従って第三者が保護されるべき場合に当たるのであれば,保護される場合もあり得るということだと思います。

● 今の場合の保護も,表見代理ということですか。
● だと思います。
● でしょうね。
● 顕名していないということですね。代理権踰越だったら110条とかですね。顕名でなかったら100条の方でいくのではないかと思いますが。


● 他の受託者を明らかにせずにやっているわけですね。
  非分掌型なんですけれども,相手は職務分掌型だというふうに思っていて,したがって,その人が単独でできるというふうに考えていたという場合ですね。組合ですと,その常務を単独でできるとか,それを越えたらどうなるかという,そういう話なんですが。

● 今のは単純な非顕名ではなくて,積極的にといいますか,分掌型だというふうに信頼したということに十分な理由があれば,そうするとやっぱり表見代理でいけますかね。

● そうですね。表見代理で帰責事由と正当理由とのバランスということになってくるかなと思います。
● そうすると,表見代理とそれから顕名の場合の100条とかの法理と両方が係ってくるという理解でよろしいですか。


● そういう場合もあると思います。そこは,どういうふうに行為者がやったのかということによって適用条文は変わってきますが,いずれにしても一定の場合に第三者が保護される余地は,民法の原則によって残っているというふうに考えております。

● ○○委員。
● また執行のところでちょっと質問なんですけれども,ちょっと私の理解が間違っているかもしれませんが,職務分掌型というものが大分以前の議論ですと,いわゆる適格年金のようなもので議論したと思うんですが,たしか前回ぐらいの議論のときに,そういうものはある意味では,この共同受託の規律以外のものになるよというような整理の仕方になっていたと思うんですけれども。
  


それはそれとして,そうすると,今日の議論でも,何となく私の中での理解でも,職務分掌というのは共同受託のある特定の方が,信託財産を信託行為上も実質においても扱っているような感じで何となく認識してはいるんですけれども,ただ,職務分掌というのは必ずしもそういう規律では議論されていなかったというか,ちょっと前にも言っていたんですが,別に職務分掌は職務分掌と言っているだけでして,信託財産の帰属,実質管理とはまた別の議論だったような気がするんですけれども。


  そうすると,信託財産と切り離して職務分掌というものがあり得るとすると,その職務分掌になった--いろいろな職務分掌それぞれがしているんですけれども--その人1人をつかまえて,信託全体に法定訴訟担当が及ぶと。


及ぶのが適切な場合もあるし,適切ではないような職務分掌もあるような気もしますし,なおかつ信託財産を,特に管理する職務分掌になっていないある受託者が法定訴訟担当で行為をし,先ほどの○○幹事の議論のように,承継執行文を得るというのは,何となくちょっと頭の中の整理がしがたいところがあるんです。

  要するにぐじゃぐじゃ言って申しわけないんですが,信託財産と職務分掌の関係が,もう1つ規律として何か必要なのではないのかなということを,ちょっと思った次第です。

  あと,不動産の場合ですと,一応合有登記がなされているという前提ですけれども,不動産以外のものですと,特に職務分掌があっても合有という整理なんでしょうが,ただ,名義は別の人の完全な名義になっていると。

  要するに,A,B,Cという受託者3名いて,A,B,Cがそれぞれ異なった形での職務分掌になっていて,あるBさんの名義になっている預金があるとかBさんの名義になっている何か財産があると。でも信託法上は合有であって,Aさんあての訴訟を起こして,職務分掌型であって法定訴訟担当で承継執行文ですというのは,果たして,そんなに執行わかりませんけれども,先ほどの○○幹事のおっしゃったような規則の15条で簡単にもらえるものなのかどうかと,その辺もちょっと教えていただければと思うんですけれども。

● どなたか。では,○○関係官。

● まず,執行の点につきましては,今検討中ということでございまして,果たしてそういうようなことができるのかどうか。単純執行文という形でできるのかどうか,それとも承継執行文というのが適当なのかどうかについては,もうちょっとお時間をいただいて検討させていただきたいというふうに思っております。


  ○○委員の1点目の,職務分掌のものというのはどういうものがあるのかというのは,ここでまず,原則形態というか一般的に想定しておりましたのは,例えばAという信託財産とBという信託財産があって,それが受託者1,2,3の合有になっていると。


Aという信託財産については,受託者1が単独で意思決定をし売却等もするというようなものを考えておりまして,その場合は,確かに信託財産自身は合有にはなっているけれども,売却という権限については受託者1が単独で意思決定をしているので,実体法上の管理処分権というのも受託者1が持っていると言うことができるのではないかと。


  そうだとすると,重複してしまいましたけれども,実体法上の,管理処分権は受託者1が持っている以上,法定訴訟担当として構成して,その受託者に対して債務名義を取れば,他の受託者にも既判力,執行力は及ぶと考えてもいいのではないかというふうに,今回は考え方を改めた次第ではあるんですけれども。


  十分答えたかどうかわかりませんけれども。
● ほとんどの側面答えていただいたので。
  では,今の事例ですと,受託者Aに対して職務分掌があるからといって,Bが実際に職務分掌で管理している信託財産に対しては係ってはいけない。あくまで職務分掌というのは信託財産と密接に関連していて初めて意味が出てくるという。

● 今のは不動産の売却の話をしましたけれども,例えば借入権限というのを受託者1が持っているというようなケースであれば,受託者1を被告として債務名義を取りますと。ほかの受託者が管理している信託財産にも執行することはできますと。それはなぜかと言うと,信託財産自体は共同受託者3名の合有ですから,そういう観点からはいけますということになると思いますが。

  そういうことが適当でないと思われる信託については,先ほど○○委員がおっしゃいましたとおり,年金信託のように別々のものであるというふうにしておけば足りるのではないか。要するに,共同受託にして信託財産が合有であるという前提をとる以上は,職務分掌型の信託で他の受託者が信託事務処理を独立してやっていたとしても,信託財産の限度では,他の受託者がやったことについても信託財産は責任を負わなければいけないというように考えている次第です。

● 今のでもちろん理解してはいるんですが,職務分掌というものが,いろいろな執行とか訴訟の面でも極めて重要になってくるメルクマールになっているんですけれども,職務分掌自体が--その言葉自体で解釈論で物語ってしまうのかもしれませんけれども--訴える場合でも訴えられる場合でも,共同受託なのか職務分掌なのかというのが必ずしも十分議論されていないと。かつては適格年金で議論しましたが,あれは別だということになってしまったところで,ちょっとわかりにくくなっているのかなと。それによって訴訟法的手続にも随分影響してしまうという点は大丈夫なのかなと,ちょっと思う次第なんですけれども。

● そこのところは,事務局としても意識してはいるところなんですけれども,なかなか信託の場合は,登記,商業登記みたいなものもないところもありますので,やはり信託行為を見て,署名して,訴訟上もということにならざるを得ないのかなというふうには思っていますけれども。


● ○○委員。
● 確かに,職務分掌という言葉が何か厳密に定義されているわけではないので議論がしにくいのかもしれませんが,スペクトラムの中に位置づけておくと,一番端っこには多分全く別々の信託が合って,受託者1が信託財産Aを信託で受けていて,受託者2が信託財産Bを受けていて,これは全然別でということであれば,もちろん受託者1に対して判決とったとしても,財産Bに対して強制執行できないのは当たり前ですね。これは一番ばらばらがはっきりしている場合で。

  それからもう片方では,共同受託で,しかも職務分掌も非排他的な管理処分権しかない。つまりお互いにみんなで決めるしかなくて,1人の人間を相手にして何か訴訟をやっても全員に対しては効力が及ぼさないと。こういう場合には,ここの資料で言いますと,20ページの下の方の(※2)で,非分掌型の信託と考えざるを得ない。

  職務分掌型というのは,その真ん中でして,共同受託なんだけれども,全体に対して効果を及ぼすには1人をつかまえればいいというものなんだろうと思います。これは今御説明があったとおり,それは何か特定の文言さえ信託行為の中から引っ張り出せば自動的に決まるというものではなくて,共同受託で受けている信託財産に対する管理処分権がだれに帰属するのかということを,信託行為の中から読み込んでいく行為にならざるを得ないのではないかという気がいたします。

  以上です。

● よろしいでしょうか。
  恐らく今のような御説明でよろしいのではないかというふうに思いますが。
  それでは,共同受託といいますか,共同受託全体というよりは今ここで御説明申し上げた点につきましても,御承認いただいたということでいきたいと思います。

● すみません。もう1点だけよろしいでしょうか。
● どうぞ。
● すみません。ごく短く済ませますが。
  記録に残すというだけの趣旨なんですけれども,受託者Aを,受託者の1人をつかまえて債務名義つくっても,それが信託財産に対して強制執行していいかどうかは,さっき言ったように,特に共同受託の場合には問題になることがあり得るわけですが,仮に限定責任信託ならば,給付訴訟の給付文言の中に信託財産の限度でというのがもし入っていれば,それは,その信託の財産に対して執行できるということは非常に明らかなので,そういう場合には,なるべく,そういう信託財産の限りでという責任財産を明示するような判決主文,これはちょうど限定承認なんかでも似てくるわけですけれども,すべきなんだろうと思います。

  これは,ない場合は確かに問題で,その債務名義で受託者の固有財産に対しても執行できるわけですから,この場合は確かに問題になるんですが,その場合には,先ほど言った承継執行文の問題にするか,さもなければ信託財産と固有財産の両方に係っていけるということをどこかで事実判断していく。信託財産にも係っていけるということを手がかりにして,強制執行していくということになるんだろうと思います。


  以上です。すみません。
● どうもありがとうございました。
  よろしいですか。

  それでは,次に参りましょう。
● では続きまして,受益権取得請求権についてでございますが,資料で言いますと22ページからでございますが,これは,これまでいろいろ御議論いただいた中身につきましては決まったものと考えておりまして,今回は手続等,請求手続と取得価額の決定手続に関する提案でございまして,基本的には新設合併とか,あるいは一般的な株式買取請求権に関する会社法の806条とか807条,あるいは116条,117条あたりの内容を参考にした上で,ここではそれも踏まえつつ,しかし独自に意思決定日とか,取得請求日という2つの基準日を設けまして,合理的と思われる流れを設定した趣旨でございます。
  以上です。


● 手続的な流れを明確にしたということですが。
  ○○委員。

● 4のところの,受益権の取得価格の決定等のところなんですけれども,この規律というのは基本的に強行規定だと思うんですけれども,これについて任意規定化というようなことはできないんでしょうか。

  特に,価格の決定のところの部分について,非常に単純な信託であれば,例えば額面とか,そういうようなものであればそれだけで終わってしまうような気がしまして,そこの時点でまた協議を行ってというのはかなり迂遠なところもありますので,そういうことができないかどうかということと,あと,こっちの方は難しいかもしれませんけれども,信託財産というのも非常にいろいろな種類のものがありますので,換価処分するのに時間がかかるとか,60日というのでどこまでいけるかという部分もありますので,そういう意味合いも兼ねて,任意規定化というのができるのであればお願いできないかなということですが。


● いかがですか。


● 任意規定というところでございますが,そうすると受託者と委託者で決めてしまうということでございますが,やはりここは受益者の協議に参加するということも重要ではないかと思っておりますし,あと,例えば客観的な価額があるようなものであれば,それは協議と書いてあっても事実上それで決まるのではないかと,それほど協議がもめてということもないのではないかと思われますので,ここは,やはり協議は必要という強行規定でいければと考えておりますし,日数につきましても,これもほかの規律を参考にしているわけでございまして,なかなかこれを任意規定にするのは,やはり手続の流れですので明確に法律にしておいた方がスムーズに処理できて,いたずらに遅滞することがなくてよいのではないかというふうに思っております。


  逆に,短期間に設定し過ぎますと受益者の利益を害しますし,長期ですと手続が遷延しますので,そういう意味でも,このような期間を強行規定として定めることで御理解いただければというふうに思っております。


● ○○委員。
● 期間のところについてはなかなか難しいのかなというふうに思っているんですけれども,価格の決定のところの部分について,自益信託であらかじめそういうことを決めておくというような考え方で,信託契約に書くことによって,仮に事前に決めておくといいますか,そういう考え方というのはとれないんでしょうか。


● ○○関係官,どうぞ。
● そこのところは,先ほど○○幹事申し上げましたとおり,受益者の保護ということもありますし,事前に決めておくといっても,どういう形で決めるのかというところもあるし,さらに受益権取得請求というのが認められるのは,前からここで議論していただきましたとおり,非常に限られたものであるということを考えますと,なかなかそこで,信託行為にこういうふうに書いてあるからそれでいいではないですかということは言いづらいということと,実際に受益権の取得価格というのは,意思決定がされて,そのころの時価というふうな考え方になりますので,その時価というのを事前に決めておくというのが果たして合理的なのかどうかというのは,ちょっと疑問があるところではないかと思いますけれども。

● よろしいですか。
  多少簡易化というのができればありがたいという御趣旨の発言ではございましたけれども,取得価格についてこういう手続でもってきちんと決めるというのは,やはり原則にしたいということで御承認いただければと思います。
  ○○幹事。


● 2つあって,1つはあるいは確認になるのかもしれませんが,まず4(1)の協議が整ったということの意味ですけれども,これは受益者と受託者で,例えば仲裁契約を結んで第三者の決定に従いますということにした場合には,協議が整ったというのは,いわば仲裁判断が出た,第三者が決断を下したというふうに理解してよろしいんでしょうね。ここは。

● それはそうだと考えております。
● そうすると,もう1歩進んで,先ほどの御発言の問題意識につながるわけですが,事前に仲裁契約をしておく,例えば,信託行為の中で第三者の決定に従いますということをあらかじめ書き込んであるのはできないというのが,今の事務局の御趣旨でしょうか。

● そこのところは,解釈問題だと思うんですけれども,自益信託であればできてもいいのかもしれませんが,他益信託は少なくともだめではないかと思うんですね。信託行為の同意者に受益者は入っておりませんので。


  そのあたりは,今すぐには何とも。
● つまり,4の(2)で,必ず裁判所の手を煩わせないといけないのか,何かほかの道があるのかという問題意識です。
  すみません。これで,以上です。


● 何か,名案がありますか。
● 仲裁というのは,不服申立てとかもできるんですよね。
● むしろ一審限りで終わるから仲裁のメリットがある。


● 一審限りで終わる。
● もちろん,仲裁判断の取り消しの事由があれば別ですけれども,そういうものがなければ,それでおしまいというのが。


● 協議というと,やはり結論が出ないと協議が整ったと言えないのではないかという気がいたしまして,信託行為で仲裁判断にゆだねますよと書いてあるだけで協議が整ったというのはちょっと厳しいのではないかなという気が,今の時点ではしております。


● 先ほどお尋ねしたのは,4の(1)の方です。
  要するに,価格の決定が問題になりますという具体的なシチュエーションの出た後に仲裁の合意をすれば,それはよろしいのではないかと。


● その後で合意をして,しかしまだ判断は出ていないという段階。
● 協議が整ったというのは,要するに,第三者が……。
● 仲裁しますよという協議が整った。
● その仲裁判断が出たときには,それから起算して60日。それはよろしいんですか。

● それは大丈夫です。そっちは大丈夫です。
  仲裁契約をした段階でいいかと言われると,それはちょっと……。
● それは,まだ額が決まっていないので,起算点が来たと考えようもないと思うんですけれども。

● よろしいですか。
  どうもありがとうございました。
  それでは,これも以上のような御議論ございましたけれども,基本的に御承認いただけたというふうに思います。
  それでは,次に参りましょう。
● では次に,信託の変更につきまして,5に関してのみ,裁判所による信託行為の変更についての規定についてでございます。


  現行法におきましては,信託財産の管理方法に限定されている変更対象の範囲についてでございますが,ここでは実務上の具体的ニーズですとか,受益者の利益に適合しないと観念しやすいものであるかどうか,あるいは,性質上,裁判所の判断になじみ得るものかどうか等の観点から,信託事務の処理の方法,現行法にある信託財産の管理方法の変更はもちろん含まれると考えておりますが,あとは,例えば信託事務処理の委託が禁止されている場合に,それを解除するとか,それから信託財産の処分が禁止されている場合に,その禁止を解除するとか,こういうものを念頭に置いているわけでございまして,この限度にまで広げることとしております。


  また,このように裁判所の判断の対象事項を現行法よりも広げる以上は,変更後の内容について多様な選択肢もあり得るということになりますので,どのような内容の変更を求めるのかを申立人が特定して請求しなければ,裁判所による現実的,実効的な判断が困難となりまして,それは翻って,申立人を初めとする信託関係者の本来の意図,あるいは利益にも反することになりかねないと思われます。
 

 そこで,この変更の申立てをするに当たっては,申立人は変更後の信託行為の定めを明らかにしてしなければならないこととしたものでございます。
  以上です。


● それでは,これについて御議論ください。
  これも,いろいろな御意見ございまして,もっと広く変更できるようにすべきであるという意見から,それは難しいという両方の御意見がございまして,何とか妥協できるといいますか皆さんが合意できる,そういう部分を,一応今書いたものでございます。


  ○○幹事。
● 質問で,今ひょっとしておっしゃったのかもしれませんけれども,5の②で,定めを明らかにして申立てはする。裁判所の側の主観としては,これを認めるか認めないかどちらかにしてほしいということだったので,それはいいのかもしれませんけれども,しかし,事実を見ていくうちに,申立てではこういう内容の信託行為の変更を申立ててはいるんだけれども,しかしそれとは異なる方が公平にかなうのではないかというときに,この申立てとは異なる内容の変更は,命じられるという前提なんでしょうか。そうでないということなんでしょうか。


● そこは,申立ての中に含まれていると考えられればできると思いますし,あるいは訴訟運営の過程では,裁判所と当事者の間で協議をしていくうちに,当事者が申立てを変更することによって当然対応できるではないかというようなことで,現実的にはそのような方向で対応していけば大丈夫ではないかというふうに考えているわけです。

● これ,前のときに私申し上げたような記憶がちょっとあるんですが,同様の制度の1つとして民法上では事情変更の原則というのがあって,事情変更の原則については,もちろん細かい点では争いがあるのかもしれませんけれども,一般的な理解としては,あくまでも変更した事態に対応した契約内容が公平にかなうものとしてあるわけであって,それを裁判所は宣言するというようなイメージでとらえているのではないかと思います。

  ですので,当事者が変更の内容を明らかにして求めるということも必要ではありませんし,仮にそういうことを当事者が明らかにしていても,裁判所は何らそれに拘束されるのではなくて,変更した事態に即して,信義則かどうかわかりませんけれども,公平にかなった変更内容を明らかにするという理解だと思うわけですね。


  こういう理解をとるのか,それともやっぱり私的自治であって,当事者がこういう内容で変更してほしいというのを求める,そちらをやはり優先するのかという,制度のたて方としては,考え方としてはこういう2通りがあると思うんですよね。


  そのどちらをとるかというときに,今日の,今の御提案というのは,信託契約なんだから,あくまでも当事者が契約内容をこういうふうにしてほしいというのを決めることができるわけであって,他人は,裁判所はそれを押しつけることはできないという理解を前提にしたというふうに考えてよろしいんでしょうか。

  これは,事情変更法理にもかかわる非常に重要な立場決定の1つだと思いますので,確認をさせていただければと思います。
● 押しつけることはできないと言えばそういうことでして,そういうことを言えば,本当は何でも裁判所にやってくれと言われて,では裁判所で決めるという制度もあり得るとは思うんですが,ここでは,裁判所は現実的な判断の可能性ですとか,あと,それがどういうふうな変更をするのか,これ1人でできますので,どのような変更をすることがむしろ当事者の利益にかなうのかという観点からしますと,やはり変更後の信託行為の定めを申立ての趣旨として明らかにすることが目的にかなうのではないかということと,あとそれから,それについては,申立ての趣旨を前提として裁判所が判断していくという方向が,基本的にですが,いいのではないかというふうに考えているわけでございます。


● 苦心してお答えいただいているのは非常によくわかるわけなんですけれども,ポイントはやはり,当事者の申立てに裁判所は拘束されるかされないかだと思うのですね。


  拘束されるという制度の立場をとるのか,それとも,明らかにしないと判断できないので明らかにしてくれと,しかし拘束はされないという立場をとるのか,どちらなのかはやはりはっきりしておく必要があるのではないでしょうか。


  どちらもそれぞれ理由は立つのだろうと私は思います。ただ,事情変更法理で,今まで裁判所で実際の変更を認めたものというのが少なくとも最上級審レベルで全然ありませんので,現実には問題になっていないのですけれども,しかし勝本先生以来の理論においては,裁判所が決めるものだという理解--ドイツの理解を前提にしてだと思いますけれども--とられている中で,ではどうするという問題だろうと思うんですね。


  すみません。問い詰めるようで本当に申しわけないんですけれども,ちょっと気になるものでして。

● 拘束というと言葉が非常にかたいわけでございますが,やはり幅を持って,それを前提として判断するということがここの制度の考え方でございまして,両極端,もちろん,非訟なんだからという考え方もあれば,裁判所としての判断の可能性,あるいはそれの当事者への利益の適合性という両方の視野があるわけでございますが,その中で,このように申立ての趣旨を前提として,もちろん一言一句を拘束されるわけではございませんし,例えば申立ての趣旨で2つ,主位的,予備的とあれば,その間をとるというようなことは,それは実質的に申立ての中に含まれているということでできるというふうに思うので,そこまでだめだということは言う必要はないと思うんですが,例えば売却を求めているところについて賃貸にしろと,そういうところまではやはり難しいのではないかなというのが,この提案の考え方でございます。


● これは裁判所の方,どんなお考えなんですか。


● 基本的に裁判所に対する変更の申立てというのは,当事者間で変更についての協議を重ねたけれどもどうしてもデッドロックに乗り上げてしまった,その事態を何とか打開しようというのが基本にあるように思いまして,合意ではどうしても解決できない部分について,申立てをベースに裁判所がその当否を判断するというのが,裁判所の判断方法としては,現実的に機能するという意味では一番適切なのではないかというふうに考えているところです。

● 別に私の方でも問い詰めるわけではありませんけれども,とにかくきちんとこういうふうに変更してほしいという当事者の申立てがあって,裁判所はそれを認めるか認めないかの判断をするのが通常といいますか,それは判断の仕方としても簡単である。だけれども,たまたま裁判所がもうちょっと違うことを判断したいというときに,その自由はない方がいいと,そういう……。


  要するに○○幹事が言われたのは,そういうときに裁判所の実質的な判断で,当事者の申立てに拘束されないでちょっと違った判断ができるという立場もあり得るのではないかということを言われたわけですね。それに対しては,裁判所の自由が少し広がるわけですけれども,あまり広がると困るという御趣旨が含まれておりますか。先ほどの御意見の中に。


● それが広がり過ぎてしまいまして,どんな選択肢を選ぶのかというところについても裁判所が適切に判断するということになってしまいますと,なかなか判断ができないような場面というのが生じるのではないかというふうに考えております。


  現実的には,先ほど○○幹事おっしゃったように,こちらの方がいいのではないかというような心証を抱いたようなケースは,適切な訴訟指揮の中を通じて申立て等を適宜直していただくような形で対応して,あまり困った事態にならないような形で運用できるのではないかというふうに考えております。


● これは,事情変更の原則との関係で言うと,事情変更の原則に基本的には依拠しているかもしれないけれども,そのままではない--という言い方はちょっとあいまいだけれども--事情変更の原則の一般的な法理に事実上影響を与える可能性はあるけれども,それ自体を変更するものではないんだと。

● 事情変更の原則の昔からある通説的な理解が本当にそれでいいのかどうかということ自体,実は大きな問題でして,そういう意味では,こういうお立場をとった1つの制度ができるというのは,むしろ理論に影響を与えるという○○委員の御指摘というのはそのとおりかなという気がいたします。


  これがいいとか悪いとかいう問題ではなく,理論の方に波及するかなという気がいたします。


● ほかによろしいでしょうか。
● 質問なんですけれども,これ例えば,委託者の方から,申立てが変更後の信託行為の定めを明らかにしてされた場合に,それに対する対案と言いますか,そういうのを受託者とか受益者というのは出すことができるものなんでしょうか。

● それは,出して併合して審理するんですかね。
  事件のたてつけは,非訟事件手続法の方のそれを信託法の方に入れて考えるんですが,実際には意見を聞いたりすることもあるでしょうし……。

● 非訟事件手続法の一般的な法理に従うということになりますので,裁判所が職権で,例えば受託者なり受益者の意見を聞くということも当然できて,その中で受託者とか受益者が,こういうふうな対案がいいですと言うことはできると思います。

  先ほど○○幹事が申し上げましたとおり,そのような対案が出てきたら,それをまた申立ててもらって,その中で判断していくということはあり得るんだろうとは思っていますけれども。それも非訟事件手続法の総則の規律に従うことになります。


● よろしいですか。
  では,○○委員。


● すみません。大した話ではないんですけれども,私,借地非訟事件の鑑定委員等やっていまして,そういう裁判所の機能を,やはり形だけではなくて本当に重視しようという趣旨で,なおかつ裁判所はみずから判断できないではないかといったときに,当事者がちゃんとやってくれれば訴訟事件と同様大丈夫かもしれませんけれども,当事者非訟であって,本来だったら信託銀行の方の意見も聞きたいとか信託法の学者の方の意見も聞きたいと思ったときに,ツールが何もないことになってしまうのではないのかなと,ちょっと懸念もあるので,借地非訟のように大げさではなくても,また頻繁でもないかもしれませんけれども,そういうような意見を求め,それを参照しながら裁判所は判断する--最後はフリーハンドですけれども--というようなたてつけも,せっかくだから--大した話ではなくて恐縮ですけれども--検討してもよろしいのかなと思った次第です。

● いかがですか。
● その点については,先ほど申し上げたところにも関連するかと思うんですけれども,裁判所は必要に応じて職権で調べることができるということに加えてというお話でしょうか。


● そうです。
  あの場合には,普通の一般の人と鑑定士と弁護士と必ず3名で意見を出しますけれども,この場合でも,恐らく,いろいろなものあるでしょうけれども,事案に即して信託銀行の方と学者の方と普通の感覚を持った方みたいな,そうすると,ある意味では裁判所負担の軽減という趣旨もあるかもしれませんけれども,より公平--公平なのかわかりませんけれども--の判断ができるのではないのかなと。


  通常,非訟事件法にゆだねるだけではなくて,何か特別法があってもよいのかなと思った次第ですけれども。


● そのあたりは,職権で裁判所が信託銀行の人を聞くとか,そういうことも当然できると思いますので,そういう形で一般的に解決可能ではないかというふうに思いますけれども。


● おっしゃっているのは,現行法ですと11条で,裁判所は職権をもって事実の探知,及び必要と認める証拠調べをなすべしと,この辺の関係でございますれば……。

● 借地非訟の場合,ちょっと特別かもしれませんけれども,まず,すごいたてつけができ上がっていますよね。

● これで別に,裁判所が自分で必要と思えば証拠調べをすれば,○○委員がおっしゃるような信託の事案であれば,それに即した人から事情を聞くということはこの規定をもって対応できるので,それはこの運用ではないかなという気がいたしますが。それでもしよろしければ……。


● いや,いいんです。裁判所,いつも困るという話があったので,どうしたら困らないのかなと思った次第なんですけれども。

● ここで今のような御意見が出ましたので,今後は非訟事件手続法の中で,今のような職権で調べるときに○○委員が提案されたようなことをしてくれればいいということですね。


● はい。
● きちんとしたたてつけができていなくても。
  それでは,この信託の変更につきましても御了解いただいたということで,次に参りましょうか。
● では次は,第62の,いわゆる後継ぎ遺贈型の受益者連続の問題でございます。

  この問題につきましては,その有効性につきましてパブリック・コメントと第24回部会での結果がございましたが,それを総じて申しますと,遺留分制度の潜脱は認められないと,それから一定の期間に係る制限を設けると,その2点を前提とすれば,その有効性を認めていいのではないかという意見がほとんどであったと言うことができます。


  まず期間制限の点でございますが,一定の年数で区切るというのは必ずしも信託の目的の実現に沿わない可能性があることですとか,あと胎児の相続権に関する規定を受益者に準用している民法の規定などにもかんがみますと,胎児も含む現存する,信託行為のときに既に生きている,あるいは胎児を受益者とするものであれば可能と考えるのが無難ではないかと思われるわけでございます。
  


また,遺留分制度との関係につきましては,当然のことながらその潜脱は認められないと考えているわけでございます。
  もっとも,このテーマにつきましては当部会で十分な議論を尽くしたとは言いがたいところでございまして,将来個々のケースにおきまして,相続法等に照らして問題がないことを個別に確認していくのではないかと思われるところでございます。

  そこで結論といたしましては,信託行為において,先に述べました考え方を基本とする一定の期間制限を設けるとともに,遺留分減殺の対象とすることで一般に有効に成立するものであるという解釈を明確にしつつ,あとはこの新たな信託法において特段の規定を設けることとはせず,個々のケースの具体的判断にゆだねることとしてはどうかと考えるものでございます。


  以上です。
● それでは,これについて御意見を伺いたいと思います。いかがでしょうか。
  ○○委員。
● これは随分議論してきたところですし,事務局としても,恐らくはかなり力を入れてきたところだと思うんですが,恐らく今まで議論してきた趣旨は,解釈論を明確にするという視点よりも,そうした解釈論を--というのは解釈論ですから必ず反対説もありますし--ですからそういう解釈論だけではやっぱり制度設計では不十分だというところで,条文化しましょうという趣旨もこれまであったのではないのかなと思う次第なんですけれども,やっぱり今回解釈論にゆだねるというような結論に至ったのは,ちょっと何となくぴんと来ないところもありますし。


  あと期間のところも,これは,幾らここでこういう解釈論があると言っても,できるできない以上に,期間はどこまでかというのは今後ともどの説をとっても有力説になり得ないと言いますか--というのは論理的根拠がどれもないわけでして,永久はだめという以外はないわけですが--この辺の,特に期間の点については,せっかく信託法ができるわけですから,やっぱり制度設計としては何か入れないと解釈論にゆだねようがないのではないのかなとも思うんですけれども。

  何か少しでも足がかりになるような,手がかりになるような規定を--もちろん多くの側面においては解釈論にゆだねることになるんでしょうけれども--入れることはできないんでしょうかという質問。

  また,なぜこういう結論になったのかというあたりなんですが,いかがでしょうか。


● この問題につきましては,御承知のとおり,試案におきまして有効性について問うということにしたわけでございまして,事務局としては,その時点では少なくとも有効か無効かという判断は分かれ得るんだということと,決して条文化を見越したというわけではなくて,そのときの議論の次第によっては,今後の条文化をするのか,それとも解釈にゆだねるのか,あるいは否定だというふうになるのかを考えたいと思っていたわけでございまして,決して最初から条文に落とすことを念頭に置いてやっていたというわけではないのです。


  ここで一定の解釈指針を示すと,それだけでも非常に積極的な意義はあると思うんですが,部会において一応の有効性を確認し,かつ遺留分減殺の対象にはなるでしょうということと,期間制限は必要であろうということは,コンセンサスをいただければ,それは今後の実務での指針にはなると思うのでございますが,


ただ,現在なかなか,実務上こういう受益者連続型の,後継ぎ遺贈型の信託というのが必ずしも世の中にまだ発展していないという我が国の事情ですとか,あと形態によってやっぱりいろいろな類型があるのではないかと。


  例えば,生活保障のために賃貸借の上がりを給付するというようなものもあれば,言ってみれば,家を自由に使っていいと,所有権ではないですけれども非常にそれに匹敵するような利用権を与えるような受益者連続の形態もあるだろうと。

さまざまな形態がある中で,やはりそれによってどのような期間を設定するのがいいかというのも決められていくのがしかるべきではないかと思いますし,あと,遺留分の考え方につきましても,いつの時点で移転があったと見るのかというのも,その受益者連続の信託の設定の仕方によって違ってくるのではないかという気もするわけでございます。


  前回,最初の人が死亡したときに算定するのが適当ではないかという御意見もいただいておりまして,それはなるほどと十分思っているわけでございますが,それ以外の方法が果たしてあり得ないのかどうかというところも現時点では十分わからないというところがございまして,そうすると,かえって十分な議論を尽くさないまま規定を設けるというのは,逆に言うと,将来の発展の可能性というのもそこに羈束されるということもございまして,現時点では,最低限こういう条件を満たせば有効だと思われるというところをコンセンサスをいただいた上で,あと今後の実務の発展を見つつ,必要な時期にまた必要な対応をとるというのが現実的ではないかなというふうに考えている次第でございます。

● ほかにいかがでしょうか。
  これは私の個人的な意見で,多数意見でないことを前提の上で申し上げますけれども,私は,こういうものの規定ができれば,とりあえずそれはいいのではないかというふうに思います。その際に,しかし何がどういう形で規定ができるのかというところが結構難しい。


  1つは期間制限であり,もう1つは遺留分の減殺請求権なんですが,期間制限の方は,ここにきょうも,これも解釈の1つということなんだと思いますけれども,現存する者,胎児も含む,その者の間でならば,そういう者を連続受益者とするならば,期間制限の問題はクリアできる。つまりむやみに長い期間の信託が設定されるわけではないので,それで構わないのかなというふうに思います。

  さらに,これもまたちょっと私の個人的な意見で申しわけないけれども,ただ場合によってはそれでも少し短いという場合があるかもしれませんが,それは,委託者が生存中に,自分が死ぬまでの間に新たに出現した関係者というのがいれば,それを加えるぐらいというのがあり得るかなという感じではあります。これは信託の変更という形をとるのか,それはいろいろありますが。
  期間制限については,○○委員が言われたように,ちょっと1つの立場をとってしまうのは,もしかしたら信託の設定範囲を狭くしてしまう可能性もありますけれども,1つの,今申し上げた③の立場をとるということで割り切ってしまえばそれでいいのかなと。

  もう1つは,やっぱり遺留分減殺請求権については,どの段階でどうするかというのが,これは今○○幹事から説明ありましたように,いろいろな場合があり得るかもしれなくて,遺留分減殺請求権は潜脱できませんということは最低限明らかになるけれども,それだけで規定がうまくできるのかどうかというところが少し気になっております。


  うまい形での御提案と言いますか規定の仕方が皆さんの議論の中で出てくれば規定はできるのかもしれませんけれども,なかなか,遺留分減殺請求権は潜脱はできないというだけただ書くという規定でいいのかどうかという,そこら辺ですね。そこら辺がちょっと何かあいまいな感じの規定になるので,そういう規定をつくるという側からすると,少し気になるということでございます。

  それから,もう1つは,これは物の本などにも多少議論されている点でございますけれども,信託の種類によっては,実際上所有権とあまり変わらなくて,条件つきの所有権というものを転々と承継させるというタイプとほとんど変わらなくなってくるという場面があるので,それとの区別。信託は理論上は所有権そのものではなくて受益権なので,理論上ははっきりしているんですが,しかし実際上,所有権と同じような形で連続受益者がつくられるということに対する批判が出てきたときに,それにどの程度対応できるのかというような点も少し詰めなくてはいけない。


  今の,最後の点については,これも簡単に言えるかどうかわからないけれども,受益者の方の指図とか,受益者の方から信託財産を処分するということまではイニシアチブをとって言えないというところに最低限信託の縛りというのが係っていて,その点で条件つきの所有権を,あるいは期限つきの所有権を承継させるというのとは違うという説明が出来るかなというぐらいには思っております。


  ただ,ちょっといろいろなことを申し上げましたけれども,うまい規定ができるのかどうかというあたりについて御意見が伺えればと思うわけです。そこがうまくいかないと,最低限この解釈でもってこういうのができますということを言うことにもそれなりに意味はあると思いますが。そんなところですね。
  ほかに,何か御意見があれば。
  ○○委員。

● 解釈にゆだねるという場合に,期間制限の方なんですが,③の考え方を基本とするということで結構だと思うんですけれども,そこから大きく外れるものについては,信義則に照らして無効とするという,ここがよくわからないんです。

  大きく外れるものというのは,例えば現存するものなんだけれども,3代,4代にわたって指定するということがあり得るのではないかと思います。高齢者が自分の配偶者,息子,孫,ひ孫というように。それもやっぱり大きく外れるに入るのかなというような気がしますが,それ以外のことを考えていらっしゃるのかどうかと。


  それからもう1つは,信義則がここで出てくるというのは,ちょっとどうかなという感じがしまして,むしろ公序の問題なのではないかと思いますが,いかがでしょうか。


● いかがでしょうか。
● おっしゃるとおり,後段の部分につきましては,相続法とか,それから世襲財産を認めるかとかの,そういう問題の関連ですので,確かに信義則と言うともうちょっとパーソナルな問題なので,公序ということでいいのではないかなという気がしております。


  前段は,しかしどういう信託かにも,生活保障を目的としたのか家業承継を目的としたのか類型によっても違うと思うんですが,たとえ3代,4代であっても,別に現存しているものであれば,ここでは,それは大きく外れるというようには言えないのではないかなというふうに思っているわけでございますが,何代もいるとまずいという,また問題があれば教えていただきたいんですけれども,ここでの考え方は,現存しているということさえ言えればいいのではないかなというふうに考えているわけでございます。
  

逆に,そうしないと,メルクマールがあまりにも不明確になるのもいけないのではないかという気がしているわけでございます。
● あまり何代も拘束するべきではないのではないかなという,直感的な感覚があるわけです。それは,あまり拘束すべきでないということと,それから複雑化するということと両方ございまして,今3代,4代と申し上げましたけれども,同世代であればもっともっと可能になるかもしれません。それは,やっぱりちょっと長過ぎるのではないかなという気がいたしましたので。

  ただ,もちろんそれを書くということではなくて,大きく外れるということの解釈にゆだねるということでよろしいかと思いますが。私は,個人的にはそういう感覚を持っているということだけです。


● これはただ,同世代の場合には,まず普通の生前の場合にはできるわけですね。問題なく。生前信託というんでしょうか,途中に相続が絡まないような形で連続受益者を定めるということ自体は,一般論としてできると。途中に相続が入って,次の世代,次の世代とどんどん後の後まで決めるというのはどうもまずいということで。

  ですから同世代の場合には実際上はあまり問題にならないのかなという感じ。
● 実際にはないんだと思いますけれども,例えば10年置きぐらいの年齢差の人に対して順番に指定していく。もしそれが,先に死んだらこうなるとか,いろいろ複雑なことをすべて可能にするというのは,どうも適当ではないのではないかということなんです。
● ○○委員,どうぞ。

● 先ほどの○○委員の意見に対してなんですけれども,先ほど私が申し上げたように,何か足がかりがあれば,これも立法する非常に参考になると思うんですけれども。ですから,この信託はできますとか,そういう規定自体が,もともと解釈の議論なのかもしれませんけれども。

  ○○委員おっしゃったように,2つ,遺留分の点と,あと永久信託の禁止の点です。遺留分の方は,それもまた解釈論かもしれませんけれども,この後継ぎ遺贈型信託を認める考え,または非常にやや問題だという考え,いずれにしましても永久信託の禁止との関連だと思うんですけれども。

  まず最初の質問としましては,そもそも一般論として,永久信託禁止のような規定が今回の信託法改正の中で規定されるのかどうかということと,規定されるのであれば,その中で,一見制限的なんですけれども,それはできることを前提としての条文のような形で,後継ぎ遺贈型とはっきり言う必要はないとは思うんですけれども,現存しない受益者を対象にするとか許容しないとか,何らかの,制限的であるんだけれども,それはできることを前提として永久信託を禁止したという趣旨のものが入れば,それはできることを前提としての条文ですという議論ができると思うんですけれども。


  特にその永久信託の点は,どんなような,今考えでいらっしゃるのか教えていただければと思うんですが。
● 永久信託禁止のような規律を入れるということは,当面予定しておりませんので,あとは,公序良俗とかで判断するしかないのかなというふうに思っているわけでございます。

  ただ,目的信託につきましてのみ,この前御審議いただいたように,20年間という制限を設ける方向で考えておりますが,それ以外については,特段規定はないということでございます。今の検討状況ですが。

● すみません。そうすると,解釈論でこれが一応法制審における議論だということでは残るとは思うんですけれども,解釈論で現存する人だけに限るというのが,果たして公序というところまで議論が持っていけるのかなと思わないわけではないんですけれども。

  それは,いずれにしても,これを認めるような足がかり,ほとんど解釈論にゆだねることは全然構わないと思うんです。できることだけは解釈論にゆだねられて,できることを前提として,その後のことは制度設計で今詰めるわけにもいかないので,解釈論にゆだねるということでいいと思うですけれども。


  ですから,今後立法作業,また現在もそうかもしれませんけれども,いろいろな条文でこれを考えたときには,この条文が,ある意味では濫用されてもいけないとか思うものがあれば,そこで制限的な規定を入れていただくとか。何か,すべて解釈論ですというのは何となく……。その手がかりは何かありませんかというのは○○委員の御質問なんでしょうけれども,永久信託のあたりで何か入れられないかなというのは,私の方のお願いなんですけれども。


● すみません。今,○○委員のお話を伺っていてちょっと。
  恐らく,あまりに長期間の財産処分をさせてはいけませんよというお話というのは一般的にある。これはもちろん,皆さん御異論はないわけですが,恐らくそれも,信託の目的とか信託財産の内容とか,そういったものとの関係で,果たして公序良俗違反だと言わなくてはいけないのかそうでないのかということは決まってくるような性質の話ではないかという前提でこちらはとらえておりまして,そうすると,一般的に条文化というのはなかなか難しいのではないか。


  つまり,信託の形態,信託財産の内容,使われ方等々によって決まってくる話ですので,信託の期間設定について,目的信託のようにまた別の政策判断から短いところでというのはともかくとしまして,ある種のものについては長いものもいいでしょうし,ある種のものについてはあまり長いのは望ましくない。
  

恐らく,この後継ぎ遺贈型の受益者連続と言われるものは,相続法との関係があるので,どちらかというと短めの方がいいのかなというような判断があるところなんだろうと思うんですが,では,この後継ぎ遺贈型の受益者連続というものに着目して,一体どのような解釈のよすがとなるようなものを入れたらいいのかというのは,こちらとしてもなかなかいい妙案がございませんで,もう少しそのあたり,どういった条文であれば,あるいはどういった規範を書けば過不足なくうまくいくのかというところだと思うんですね。


  つまり,短くし過ぎるのも問題だ。これはもちろん言われるところでしょうし,長過ぎるのも問題だと言われるところでして,そのあたり,事務局の方も知恵を出せたらいいなというのはもちろんあるんですが,非常に難しいあたりの議論なのかなと思っておりまして。
  すみません。感想だけ。

● そういう状況で,一応原案はこういう形になっておりますが。
  ○○委員。
● 立法化の問題まで,いろいろ難しいハードルがあるんだと思いますが,ここに書かれている考え方の確認だけなんですけれども,③の現存する受益者であればという,これがよいという見解が示されていますが,この受益者というのは法人も含むという,そういうお考えでしょうか。その点はどうか。

● ここでは,相続法との関係でこういうものを限定するという趣旨で,実は今議論になりました永久権禁止の原則とかそういう問題になったので,法人の話も,出なければちょっと私も申し上げようと思ったんですけれども。


  受益者が法人であるという場合には,かなり長いものつくれるわけですよね。かなり長いといいますか,法人が続く限りというのもできなくはない。それに対して,それはこういう相続と全く関係ない場面で非常に長期の信託ができるわけですが,それをまさに禁止するかどうかという。

  永久権禁止のというのは必ずしも法人を念頭に置いていませんけれども,あまり長期なものは望ましくないので何かルールを設けるかというときには,まさに法人というのが一番長いものができると。それをどうするかという非常に難しい問題が出てきて,それは,しかしここでは直接扱わないという……。

● 考えていないという,入らないというそういう御趣旨ですかね。

● はい。
● よくあるのは,相続的な発想でいけば,自分が亡くなったら妻を相続人として,妻が亡くなったら,その後妻の親族にはやりたくないと,公益のどこかの法人にやりたいよと,その先までコントロールしたいという,そういう需要というのはあるんですけれども,そういう場合は,ここでは想定されていない。


● それはまた,ちょっと別な問題だと思いますが,私益信託と公益信託を結びつけるようなタイプですね。
● あるいはその先が,2番目の受益者が公益でない法人ということがあり得るかという……。


● それも,ここでは少なくとも念頭には置いていなかった。
  法人を受益者にする場合には,何か固有のやっぱり問題があると思いますので,それはそれで,どこかで本来議論した方がよかったのかもしれませんけれども,あまり期間制限そのものについてはここでは設けないという--目的信託以外は--そういう考え方できましたので,今まで,法人が受益者であるために長くなるという問題については議論してこなかったんですね。

  これも,仮に長くなったとしても,現在の信託法は,恐らくそれは当然に無効にするわけではなくて,公序良俗に反するというような何か理由があれば無効になることがあり得るということですかね。あるいは一部無効という形で,どこかで期間制限かぶってくると。しかし,それは解釈の問題にゆだねたいという。

  何か,御意見。
  どうぞ,○○幹事。

● ○○委員の発言と少し異なりますが,第62でございますけれども,事務局の提案のままであれば特に申し上げることはないのかもしれませんが,③を基本とする方向でというところに,1つ疑問というか教えていただきたいことがあります。

  現存する受益者であれば可能ということですが,これは受益者連続のタイプの信託においては現存する受益者であれば可能というふうに理解したらいいのか,それとも一般論として,信託の受益者は現存する受益者に限るという趣旨なのか。

● それではまずいですよね。

● 日本では行われているのかどうかわかりませんが,英米であると聞かれる,まだ生まれていない子供を,あるいは孫を受益者とするというのを,今こういう議論の余波で封じてしまうのは適当ではないだろうなと思いますので,ルールをつくらないならば,そういうことも将来の解釈論の中で明らかにしていくということになるかもしれませんが,受益者連続の第2次受益者以降とか何かそういう趣旨なのかなと思うんですが,そう理解してよろしゅうございますでしょうか。


● 我々の理解は,ここは現存,胎児も含んでいるわけでございますので,実質的には似てくるんですが,現存する受益者に限っているのは,当然この受益者連続タイプでの期間を限るための規律でございますので,一般の信託は当然現存していることは要しないということになります。

● そうすると,受益者連続というのは何なのかということですが,複数の受益者がいて,縦につながっているというんでしょうか,1人の受益権が終わったところで2人目の受益権が生ずるものと,そういうふうに考えたらよろしいですか。


● 縦に。ええ,そういうことですが。
● わかりました。
● ちょっといろいろな議論が発生しますけれども,もちろん連続受益者自体は,一般論として信託で許容していると。ですから,ここで議論しているのも,相続というのが,あるいは途中で死亡という形である受益者の受益権が消滅し,次の,その後死亡をきっかけとして次の受益者に移っていくという,そういうタイプのものに限っての限定であるということなのではないでしょうか。

● そうしますと,ちょっとあまりいい発言でないかもしれませんが,今○○委員が最後におっしゃったところは,確かに後継ぎ遺贈という問題をとらえていると思うんですけれども,死亡を原因とせずに受益権が終了するタイプの受益者連続であれば,現存する受益者,胎児を含む,でなくてもいいということになりますでしょうか。

● それはちょっと正面から議論していないと思いますけれども……。
● 理屈上は,ちょっと私,先ほどのポイントを得た発言だったかどうかわかりませんが,後継ぎ遺贈型の受益者連続の期間というのを限るためにこうしているわけですので,一般の受益者連続では別に構わないわけですから,単に受益者を縦につなげているということであれば,こういう現存を要するというような制限はかぶってこないということになります。


● 脱法的なのはありますよ。80歳になったら次に移るとかね。変なことをやろうとしたらできるかもしれないけれども。

  どうぞ,○○幹事。
● この解釈論にゆだねるというのは,それでよろしいかどうかという問題はちょっと置くとしまして,問題は,公序違反であろうというときに,今までの議論も,通常の議論及びこの部会での議論も,そこで言う公序というときにイメージするのは,やっぱり相続秩序というものがあって,それに反するような形での信託の使われ方をするのはよくないであろうというイメージだっただろうと思います。

  そして,そういう側面があるというのもまさしくそのとおりだろうと私も思いますが,今の議論を見ましても,ちらほらと,それで相続秩序そのものとはちょっと違う意味での公序もかかわっているという気が私自身はしていて,むしろそっちの方が重要ではないかなと思っている部類です。


  相続秩序だけですと,遺言制度がまさに認められているわけでして,そしてまた遺留分制度が認められているわけですので,民法が定める法定相続そのものとは異なった扱いというのが認められているというのがありますので,秩序といいましても少し緩やかな秩序かなと思います。


  しかし,もう一方にあり得る公序というのは,やはり所有権を初めとする財産権のあり方でして,それがやはりそれぞれの所有者,あるいは財産権の有する者がそれぞれの総意によってその使い方を決めていくことによって,世の中というのはうまく回っていくんだというのがあると。そして自然人の場合ですと,その自然人が,やっぱり寿命がありあますので,その人がかわっていくことによって,その時代,そのときに応じた使われ方をしていくので世の中うまくいくと,こういう意味での,広い意味での財産権秩序というのがあるんだろうと思います。

  それを,ある世代の人間がその後の財産の使われ方を決めてしまって,その後の人間がそれにのみ拘束されて,それがついてくる。永久である必要はありませんけれども,それが人の寿命を超えて長期に使われていくことによって,やはり本来予定されている財産権秩序が崩されてしまうと。そこに公序違反というのがあるという側面があり,かつ私はこちらの方がむしろ重要ではないかなという気がいたします。


  そういう観点から,ここで言う公序違反のあり方というのは決められるという側面もあろうかという気がいたします。そういう意味では,現存する受益者であれば可能というのが,今のような意味での公序とどうつながっているのか,つながっていないのかというようなことが問題になってくるかと思います。


  しかし,これはやはり,ちょっと当面はまだ解釈論にゆだねて,議論が熟すのを待つしかないのかなという気が,個人的にはいたしますが。
  以上です。

  こういう公序のイメージがあるということを,ちょっとやはり議事録に残しておくのも意味があろうかなと思っただけです。


● 今おっしゃった点はまさにそのとおりでして,○○委員がお帰りになったので私の説明が正しいかどうかも御判断できないかもしれませんけれども,いわゆる死手法というんでしょうか,一方で,死亡した人間が後々の財産のあり方を拘束するというのは好ましくないという考え方があって,しかし他方で,ある程度自分の財産の自由な承継の仕方というものも,あるいは利用の仕方というものも財産を持っているものが決めることができるという,その自由と,それからあまり長く拘束させるのは適当でないというものの,いわばバランスをどこにとるかという問題で,これはまさに1つの公序の問題なんだろうと思いますね。

  具体的に,それに合うためにどういうルールがそこから導かれるのかとか,あるいはどういう期間制限であれば,今のような観点からの公序の問題をクリアできるのかというのは,あまり今までそんなに議論されているわけではありませんので,そういう点は,確かにこれから詰めて議論しなくてはいけないというところだと思います。

  ただ,そこがそういう意味で,あまり議論としてもいろいろな可能性があるがために,逆にここで,こういう立場いいだろうというときも,相当根拠づけをしっかりしておかないと,将来,裁判官にあまり参考にしてもらえないということがあるかもしれない。

● この議論,これ以上は,すみません,一言。
  ○○幹事おっしゃるのは広い意味でわかりますけれども,もともとは福祉的な意味でも使われることが念頭に置かれていると思うんですよね。


  ある資産家が,ずっと自分の財産をどうこうしようというのに対して,我々も含めて,それはすばらしいことだという議論ではなくて,次の世代で,やはり自分で管理能力が十分ないところでだまされたりとかお金なくしたりとか,そういう福祉型について,ある程度これが役立っていくのではないかという視点なので,それも広い意味で--狭いのかもしれませんが--もう1つの大事な世の中の秩序だし,公序だと思うんですよね。


  ですから,それが広い意味での財産権秩序であって,というところから,そういう福祉型が全部否定的に扱われる,または議事録に今の○○幹事の発言が残っていることによって,結局分かれていたでしょうという議論で,せっかく設定したものが無効だとか言って,また紛争事になるというのも非常に寂しいことであるし,○○委員おっしゃったように,そういう議論がある以上,やはりできるというところで,でも濫用型はいけないよとか,ある意味では制限的な形でも,何か書いていただければ足がかりになると思うんですけれども。


  同じこと何度も繰り返して,これで最後にしますけれども。


● ○○幹事の発言を私の自分の方に引きつけての理解は,そういう問題から見るべきであるけれども,生存者間の間であればまあまあいいのではないかという--行き過ぎですか--御意見だったようにも理解できました。
  それでは,ほかに御意見がなければ……。
  どうぞ,○○委員。

● すみません。内容のことではなくて恐縮なんですけれども,最終的には,結論的としてというところに書かれているので,一定の条件があって一般には有効に成立するものであるという解釈を明確にしつつというふうに書かれているんですけれども,これはどういう形で解釈を明確にしていただけるんでしょうかということなんですが。


● どうですか。
● この時点,この場での皆さんの,基本的にこの考え方でいいのではないかというような……。
● があって,それで--すみません。これから後の手続的な問題というのはよくわからないんですけれども--要綱案とかというものがあって,例えばそういうものに書かれるというようなことなんでしょうか。そうではなくて……。
● 要綱としては出てこないですね。規律にしない予定ですので要綱案としては出ませんが,議事録とか,今後の運用の参考にということでございます。

● というのは,要するに,この場の議論でこういうような議論があって,方向性が何となくこんな感じでしたねということが,ここで言う解釈とことになりますかね。
● ええ,そういうことです。
● どうぞ,○○幹事。
● もしそうであれば,念のため確認させていただきたいのですけれども,③の考え方を基準とするということの意味なんですけれども,例えば,生存中は配偶者で,配偶者が死亡した場合には子供にというので打ちどめの信託を設定すると。ただ,その子供はまだ生まれていないと,例えば婚姻をしてすぐぐらいにこれはこういうことでというふうに,それはだめという理解なんでしょうか。


● それはできるのではないんでしょうか。現存している奥様と,生まれてくるであろう……。
● 胎児ではないので。
● ではだめですね。
● なので,③を基本とするというのは,③がぎりぎり外枠で必ずきっちりというわけではなくて,そこにさらに相当性の判断が入るという理解でよろしいでしょうか。


● 基本はこれですが,若干の幅とかは,もちろんその目的によってあり得るのではないかという気がいたしますので,今おっしゃったような例は,解釈の範囲ですが,生まれてくる子供のためにというのは,無効とまでしなくてもいいのではないかなという気はいたしますけれどもね。
● 若干③を広げるという方向でのあれですね,合理性があれば。
● 両方あり得る……。
● 両方あり得るかもしれませんが。
● もう一つというのは,したがって,比較的考え方を根幹に据えつつという程度のことかなと。


● そのぐらいですね。
  それでは,大分長く御議論いただきましたけれども,一応,以上の原案でまとめたいと思います。
  それでは,最後ですか。

● 公益信託についてでございます。
  公益信託につきましては,前回の部会におきまして,現行の主務官庁制を廃止すること,ただしその時期については公益法人法制の改正の動向及び内容を踏まえて,来年度以降のしかるべき時期として,それまでの間は,あくまでも暫定的にではございますが,主務官庁制を初めとする現行法の実質を変えないとすること,ただし私益信託分の全面改正を踏まえまして,実質を変えないために最低限必要となる調整規定を設けるとすることについて,御了解をいただいたところでございます。


  このような御了解を踏まえまして,今回の改正におきましては,公益信託のいわば上位概念として,20年間の期間制限のもとでの目的信託制度を導入される方向であるということに伴いまして,まず,公益信託については,一定の公益目的を有するとしてその存立を主務官庁が許可した目的信託を言うものとすること。それから第2点目として,公益信託については期間制限を設けないとすること。2に書いてございますが。この2点を規律として設ける必要が出てくるかと思います。

  それ以外の点については,私益信託の改正に応じまして,必要な限度で所要の規定を整備することとしたいと。基本的には現行法を当面維持していくことを提案するものでございます。
  以上です。
● これはある意味の基本的な方針についての御意見ということですが,いかがでしょうか。
  応急措置的なもので,公益法人制度の方の公益性の認定についての枠組みができた段階で,しかるべき改正をするということで。
  これは,よろしいですね。ほかに,なかなかちょっとありようがありませんので。
  それでは,これも御承認いただいたということで,めでたくというか一応終わったということになりますか。


● では次回の予定ですが,次回は1月20日と言いたいところなんですが,なお,いくつかの論点が残っておりますので予備日を設定いたしました。
  一応2つ設定しまして,1つは……出られる方だけでやむを得ないです。申しわけないですが……1月12日木曜日に,1時から5時まで,法曹会館の高砂の間でございます。
  それからもう1つが,1月17日火曜日に1時からやはり5時まで,これは17階の東京高検会議室というところでございます。
  あとは1月20日の金曜日にここの場所でということでございまして,一応予備日2回とあわせて3回あるわけでございますが,3回やるか2回やるかは次回の進行を見てというところでございます。

  では,今年はこれで終わりますので,どうもありがとうございました。
● 予備日2回あるうち,1つ減らすことがあるかもしれないけれども,12日の方はとにかくやるということですね。
● ええ。12日はやらせていただきまして,そこで万が一積み残しが出てしまったら17日ということもあります。ちょっとそこは,12日の様子を見て検討したいと思います。
● それでは,今日は,どうもありがとうございました。
  これで本日の会議を終わります。
-了-

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