【解説】信託法の一部改正

平成二十九年六月二日公布

法律第四十五号

民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律

(信託法の一部改正)

第五十一条

信託法(平成十八年法律第百八号)の一部を次のように改正する。

第十一条第一項中「害すべき事実を知って」を「害することを知って」に、「第四百二十四条第一項の規定による取消しを裁判所に請求する」を「第四百二十四条第三項に規定する詐害行為取消請求をする」に改め、ただし書を次のように改める。

ただし、受益者が現に存する場合においては、当該受益者(当該受益者の中に受益権を譲り受けた者がある場合にあっては、当該受益者及びその前に受益権を譲り渡した全ての者)の全部が、受益者としての指定(信託行為の定めにより又は第八十九条第一項に規定する受益者指定権等の行使により受益者又は変更後の受益者として指定されることをいう。以下同じ。)を受けたことを知った時(受益権を譲り受けた者にあっては、受益権を譲り受けた時)において債権者を害することを知っていたときに限る。

第十一条第二項中「請求」を「詐害行為取消請求」に、「害すべき事実」を「害すること」に改め、同項ただし書中「取消し」を「詐害行為取消請求」に改め、同条第四項中「第四百二十四条第一項の規定による取消しを裁判所に請求する」を「第四百二十四条第三項に規定する詐害行為取消請求をする」に改め、ただし書を次のように改める。

ただし、当該受益者(当該受益者が受益権を譲り受けた者である場合にあっては、当該受益者及びその前に受益権を譲り渡した全ての者)が、受益者としての指定を受けたことを知った時(受益権を譲り受けた者にあっては、受益権を譲り受けた時)において債権者を害することを知っていたときに限る。

第十一条第七項中「害すべき事実」を「害すること」に改める。

【改正後】

(詐害信託の取消し等)

第十一条  委託者がその債権者を害することを知って信託をした場合には、受託者が債権者を害することを知っていたか否かにかかわらず、債権者は、受託者を被告として、民法 (明治二十九年法律第八十九号)第四百二十四条第三項に規定する詐害行為取消請求をすることができる。

ただし、受益者が現に存する場合においては、当該受益者(当該受益者の中に受益権を譲り受けた者がある場合にあっては、当該受益者及びその前に受益権を譲り渡した全ての者)の全部が、受益者としての指定(信託行為の定めにより又は第八十九条第一項に規定する受益者指定権等の行使により受益者又は変更後の受益者として指定されることをいう。以下同じ。)を受けたことを知った時(受益権を譲り受けた者にあっては、受益権を譲り受けた時)において債権者を害することを知っていたときに限る。

2  前項の規定による詐害行為取消請求を認容する判決が確定した場合において、信託財産責任負担債務に係る債権を有する債権者(委託者であるものを除く。)が当該債権を取得した時において債権者を害することを知らなかったときは、委託者は、当該債権を有する債権者に対し、当該信託財産責任負担債務について弁済の責任を負う。ただし、同項の規定による取消しにより受託者から委託者に移転する財産の価額を限度とする。

3 前項の規定の適用については、第四十九条第一項(第五十三条第二項及び第五十四条第四項において準用する場合を含む。)の規定により受託者が有する権利は、金銭債権とみなす。

4  委託者がその債権者を害することを知って信託をした場合において、受益者が受託者から信託財産に属する財産の給付を受けたときは、債権者は、受益者を被告として、民法第四百二十四条第三項に規定する詐害行為取消請求をすることができる。

ただし、当該受益者が、受益者としての指定を受けたことを知った時(当該受益者が受益権を譲り受けた者である場合にあっては、当該受益者及びその前に受益権を譲り渡した全ての者)において債権者を害することを知っていたときに限る。

5 委託者がその債権者を害することを知って信託をした場合には、債権者は、受益者を被告として、その受益権を委託者に譲り渡すことを訴えをもって請求することができる。この場合においては、前項ただし書の規定を準用する。

6 民法第四百二十六条 の規定は、前項の規定による請求権について準用する。

7 受益者の指定又は受益権の譲渡に当たっては、第一項本文、第四項本文又は第五項前段の規定の適用を不当に免れる目的で、債権者を害することを知らない者(以下この項において「善意者」という。)を無償(無償と同視すべき有償を含む。以下この項において同じ。)で受益者として指定し、又は善意者に対し無償で受益権を譲り渡してはならない。

8   前項の規定に違反する受益者の指定又は受益権の譲渡により受益者となった者については、第一項ただし書及び第四項ただし書(第五項後段において準用する場合を含む。)の規定は、適用しない。

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第11条

1項

委託者が債権者からの返済を逃れようと信託を設定した場合、債権者は詐害行為取消請求で、信託の設定を取り消すことができるようになります。請求の際、債権者は受託者が委託者の意図を知っていたかは、証明する必要がありません。

 ただし、債権者は信託設定時から請求をするまでの全ての受益者が、受益者として指定されたときに、委託者の意図を知っていたことを証明しなければなりません。

 上の場合において、受益者が受益しているときは、債権者は受益者を被告として詐害行為取消請求を行い、信託の取消しを請求することができます。

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第十二条第一項中「受けた者」の下に「が、その行為の当時」を加え、

「、「これによって利益を受けた受益者の全部又は一部」を

「「受益者が現に存する場合においては、当該受益者(当該受益者の中に受益権を譲り受けた者がある場合にあっては、当該受益者及びその前に受益権を譲り渡した全ての者)の全部が信託法第十一条第一項に規定する受益者としての指定を受けたことを知った時(受益権を譲り受けた者にあっては、受益権を譲り受けた時)において」と、

「知らなかったときは、この限りでない」とあるのは

「知っていたときに限る」に改め、

同条第三項中「受けた者」の下に「が、その行為の当時」を加え、

「、「これによって利益を受けた受益者の全部又は一部」を

「「受益者が現に存する場合においては、当該受益者(当該受益者の中に受益権を譲り受けた者がある場合にあっては、当該受益者及びその前に受益権を譲り渡した全ての者)の全部が信託法(平成十八年法律第百八号)第十一条第一項に規定する受益者としての指定を受けたことを知った時(受益権を譲り受けた者にあっては、受益権を譲り受けた時)において」と、

「知らなかったときは、この限りでない」とあるのは「知っていたときに限る」に改める。

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【改正後】

(詐害信託の否認等)

第十二条   破産者が委託者としてした信託における破産法 (平成十六年法律第七十五号)第百六十条第一項の規定の適用については、同項各号中「これによって利益を受けた者が、その行為の当時」とあるのは、「受益者が現に存する場合においては、当該受益者(当該受益者の中に受益権を譲り受けた者がある場合にあっては、当該受益者及びその前に受益権を譲り渡した全ての者)の全部が信託法第十一条第一項に規定する受益者としての指定を受けたことを知った時(受益権を譲り受けた者にあっては、受益権を譲り受けた時)においてこれによって利益を受けた受益者の全部又は一部」とする。

2   破産者が破産債権者を害することを知って委託者として信託をした場合には、破産管財人は、受益者を被告として、その受益権を破産財団に返還することを訴えをもって請求することができる。この場合においては、前条第四項ただし書の規定を準用する。

3   再生債務者が委託者としてした信託における民事再生法 (平成十一年法律第二百二十五号)第百二十七条第一項 の規定の適用については、同項 各号中「これによって利益を受けた者が、その行為の当時」とあるのは、「受益者が現に存する場合においては、当該受益者(当該受益者の中に受益権を譲り受けた者がある場合にあっては、当該受益者及びその前に受益権を譲り渡した全ての者)の全部が信託法(平成十八年法律第百八号)第十一条第一項に規定する受益者としての指定を受けたことを知った時(受益権を譲り受けた者にあっては、受益権を譲り受けた時)において」とする。

4   再生債務者が再生債権者を害することを知って委託者として信託をした場合には、否認権限を有する監督委員又は管財人は、受益者を被告として、その受益権を再生債務者財産(民事再生法第十二条第一項第一号 に規定する再生債務者財産をいう。第二十五条第四項において同じ。)に返還することを訴えをもって請求することができる。この場合においては、前条第四項ただし書の規定を準用する。

5   前二項の規定は、更生会社(会社更生法 (平成十四年法律第百五十四号)第二条第七項 に規定する更生会社又は金融機関等の更生手続の特例等に関する法律 (平成八年法律第九十五号)第百六十九条第七項 に規定する更生会社をいう。)又は更生協同組織金融機関(同法第四条第七項 に規定する更生協同組織金融機関をいう。)について準用する。この場合において、第三項中「民事再生法 (平成十一年法律第二百二十五号)第百二十七条第一項 」とあるのは「会社更生法 (平成十四年法律第百五十四号)第八十六条第一項 並びに金融機関等の更生手続の特例等に関する法律 (平成八年法律第九十五号)第五十七条第一項 及び第二百二十三条第一項 」と、「同項 各号」とあるのは「これらの規定」と、前項中「再生債権者」とあるのは「更生債権者又は更生担保権者」と、「否認権限を有する監督委員又は管財人」とあるのは「管財人」と、「再生債務者財産(民事再生法第十二条第一項第一号 に規定する再生債務者財産をいう。第二十五条第四項において同じ。)」とあるのは「更生会社財産(会社更生法第二条第十四項 に規定する更生会社財産又は金融機関等の更生手続の特例等に関する法律第百六十九条第十四項 に規定する更生会社財産をいう。)又は更生協同組織金融機関財産(同法第四条第十四項 に規定する更生協同組織金融機関財産をいう。)」と読み替えるものとする。

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破産手続き中の人が委託者として信託した場合、信託の効力発生時から全ての受益者が受益したものの全部または一部を否認されることがあります。

民事再生手続きに入っている人も同様です。

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第二十三条第二項ただし書を削り、同条第三項中「第十一条第七項」を「第十一条第一項ただし書、第七項」に改める。

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【改正後】

(信託財産に属する財産に対する強制執行等の制限等)

第二十三条   信託財産責任負担債務に係る債権(信託財産に属する財産について生じた権利を含む。次項において同じ。)に基づく場合を除き、信託財産に属する財産に対しては、強制執行、仮差押え、仮処分若しくは担保権の実行若しくは競売(担保権の実行としてのものを除く。以下同じ。)又は国税滞納処分(その例による処分を含む。以下同じ。)をすることができない。

2   第三条第三号に掲げる方法によって信託がされた場合において、委託者がその債権者を害することを知って当該信託をしたときは、前項の規定にかかわらず、信託財産責任負担債務に係る債権を有する債権者のほか、当該委託者(受託者であるものに限る。)に対する債権で信託前に生じたものを有する者は、信託財産に属する財産に対し、強制執行、仮差押え、仮処分若しくは担保権の実行若しくは競売又は国税滞納処分をすることができる。

3  第十一条第一項ただし書、第七項及び第八項の規定は、前項の規定の適用について準用する。

4   前二項の規定は、第二項の信託がされた時から二年間を経過したときは、適用しない。

5   第一項又は第二項の規定に違反してされた強制執行、仮差押え、仮処分又は担保権の実行若しくは競売に対しては、受託者又は受益者は、異議を主張することができる。この場合においては、民事執行法 (昭和五十四年法律第四号)第三十八条 及び民事保全法 (平成元年法律第九十一号)第四十五条 の規定を準用する。

6   第一項又は第二項の規定に違反してされた国税滞納処分に対しては、受託者又は受益者は、異議を主張することができる。この場合においては、当該異議の主張は、当該国税滞納処分について不服の申立てをする方法でする。

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第四十三条の見出し中「損失てん補責任等」を「損失塡補責任等」に改め、同条第二項を次のように改める。

2 第四十一条の規定による責任に係る債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。

一受益者が当該債権を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。

二当該債権を行使することができる時から十年間行使しないとき。

第五十四条第四項中「第三項」の下に「並びに第六百四十八条の二」を加える。

第九十三条第二項を次のように改める。

2 前項の規定にかかわらず、受益権の譲渡を禁止し、又は制限する旨の信託行為の定め(以下この項において「譲渡制限の定め」という。)は、その譲渡制限の定めがされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった譲受人その他の第三者に対抗することができる。

第九十六条第二項を次のように改める。

2 前項の規定にかかわらず、受益権の質入れを禁止し、又は制限する旨の信託行為の定め(以下この項において「質入制限の定め」という。)は、その質入制限の定めがされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった質権者その他の第三者に対抗することができる。

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【改正後】

(損失塡補責任等に係る債権の期間の制限)

第四十三条   第四十条の規定による責任に係る債権の消滅時効は、債務の不履行によって生じた責任に係る債権の消滅時効の例による。

2第四十一条の規定による責任に係る債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。

一受益者が当該債権を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。

二当該債権を行使することができる時から十年間行使しないとき。  

3 第四十条又は第四十一条の規定による責任に係る受益者の債権の消滅時効は、受益者が受益者としての指定を受けたことを知るに至るまでの間(受益者が現に存しない場合にあっては、信託管理人が選任されるまでの間)は、進行しない。

4 前項に規定する債権は、受託者がその任務を怠ったことによって信託財産に損失又は変更が生じた時から二十年を経過したときは、消滅する。

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受託者が個人の場合、任務を怠って信託財産に損が出たら、受益者は損を回復する措置を受託者に請求することができます。期間は受益者が損を知ってから5年間です。 また損が出たときから10年間請求しなかったときは請求できなくなります。

受託者が法人の場合も同様です。

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第五十四条第四項中「第三項」の下に「並びに第六百四十八条の二」を加える。

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【改正後】

(受託者の信託報酬)

第五十四条   受託者は、信託の引受けについて商法 (明治三十二年法律第四十八号)第五百十二条 の規定の適用がある場合のほか、信託行為に受託者が信託財産から信託報酬(信託事務の処理の対価として受託者の受ける財産上の利益をいう。以下同じ。)を受ける旨の定めがある場合に限り、信託財産から信託報酬を受けることができる。

2   前項の場合には、信託報酬の額は、信託行為に信託報酬の額又は算定方法に関する定めがあるときはその定めるところにより、その定めがないときは相当の額とする。

3   前項の定めがないときは、受託者は、信託財産から信託報酬を受けるには、受益者に対し、信託報酬の額及びその算定の根拠を通知しなければならない。

4   第四十八条第四項及び第五項、第四十九条(第六項及び第七項を除く。)、第五十一条並びに第五十二条並びに民法第六百四十八条第二項及び第三項並びに第六百四十八条の二の規定は、受託者の信託報酬について準用する。

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受託者の信託報酬に関しては、やった分の報酬がもらえる、途中で信託が終わった場合に終わるまでの分はもらえる、と特約することができます。

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第九十三条第二項を次のように改める。

2 前項の規定にかかわらず、受益権の譲渡を禁止し、又は制限する旨の信託行為の定め(以下この項において「譲渡制限の定め」という。)は、その譲渡制限の定めがされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった譲受人その他の第三者に対抗することができる。

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【改正後】

(受益権の譲渡性)

第九十三条   受益者は、その有する受益権を譲り渡すことができる。ただし、その性質がこれを許さないときは、この限りでない。

2 前項の規定にかかわらず、受益権の譲渡を禁止し、又は制限する旨の信託行為の定め(以下この項において「譲渡制限の定め」という。)は、その譲渡制限の定めがされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった譲受人その他の第三者に対抗することができる。

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受益権の譲渡について信託行為で制限をすることができる。制限があるのに譲り受けた人に対しては、

(1)その人が制限を知っていたか、

(2)ちゃんと調べることなく制限を知らなかった場合、

受益権の譲渡はなかったことにすることができる。

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(信託法の一部改正に伴う経過措置)

第五十二条

施行日前にされた信託の詐害行為取消請求、否認並びに受益権の譲渡し及び返還の請求については、なお従前の例による。

2 施行日前にされた信託に係る信託財産に属する財産に対する強制執行等の制限等については、前条の規定による改正後の信託法(第四項において「新信託法」という。)第二十三条第二項及び第三項の規定にかかわらず、なお従前の例による。

3施行日前に前条の規定による改正前の信託法(以下この条において「旧信託法」という。)第四十一条又は第二百五十四条第一項の規定による責任に係る債権が生じた場合におけるその債権の消滅時効の期間については、なお従前の例による。

4 施行日前にされた信託に係る受託者の信託報酬については、新信託法第五十四条第四項において 準用する新民法第六百四十八条第三項及び第六百四十八条の二の規定にかかわらず、なお従前の例による。

5 施行日前に旧信託法第九十三条第二項に規定する別段の定めがされた場合における受益権の譲渡 については、なお従前の例による。

6 施行日前に旧信託法第九十六条第二項に規定する別段の定めがされた場合における受益権の質入れについては、なお従前の例による。

新旧対照表

(詐害信託の取消し等) 第十一条  委託者がその債権者を害することを知って信託をした場合には、受託者が債権者を害することを知っていたか否かにかかわらず、債権者は、受託者を被告として、民法 (明治二十九年法律第八十九号)第四百二十四条第三項に規定する詐害行為取消請求をすることができる。 ただし、受益者が現に存する場合においては、当該受益者(当該受益者の中に受益権を譲り受けた者がある場合にあっては、当該受益者及びその前に受益権を譲り渡した全ての者)の全部が、受益者としての指定(信託行為の定めにより又は第八十九条第一項に規定する受益者指定権等の行使により受益者又は変更後の受益者として指定されることをいう。以下同じ。)を受けたことを知った時(受益権を譲り受けた者にあっては、受益権を譲り受けた時)において債権者を害することを知っていたときに限る。       2  前項の規定による詐害行為取消請求を認容する判決が確定した場合において、信託財産責任負担債務に係る債権を有する債権者(委託者であるものを除く。)が当該債権を取得した時において債権者を害することを知らなかったときは、委託者は、当該債権を有する債権者に対し、当該信託財産責任負担債務について弁済の責任を負う。ただし、同項の規定による取消しにより受託者から委託者に移転する財産の価額を限度とする。   3 前項の規定の適用については、第四十九条第一項(第五十三条第二項及び第五十四条第四項において準用する場合を含む。)の規定により受託者が有する権利は、金銭債権とみなす。     4  委託者がその債権者を害することを知って信託をした場合において、受益者が受託者から信託財産に属する財産の給付を受けたときは、債権者は、受益者を被告として、民法第四百二十四条第三項に規定する詐害行為取消請求をすることができる。 ただし、当該受益者が、受益者としての指定を受けたことを知った時(当該受益者が受益権を譲り受けた者である場合にあっては、当該受益者及びその前に受益権を譲り渡した全ての者)において債権者を害することを知っていたときに限る。     5 委託者がその債権者を害することを知って信託をした場合には、債権者は、受益者を被告として、その受益権を委託者に譲り渡すことを訴えをもって請求することができる。この場合においては、前項ただし書の規定を準用する。   6 民法第四百二十六条 の規定は、前項の規定による請求権について準用する。   7 受益者の指定又は受益権の譲渡に当たっては、第一項本文、第四項本文又は第五項前段の規定の適用を不当に免れる目的で、債権者を害することを知らない者(以下この項において「善意者」という。)を無償(無償と同視すべき有償を含む。以下この項において同じ。)で受益者として指定し、又は善意者に対し無償で受益権を譲り渡してはならない。   8   前項の規定に違反する受益者の指定又は受益権の譲渡により受益者となった者については、第一項ただし書及び第四項ただし書(第五項後段において準用する場合を含む。)の規定は、適用しない。     (詐害信託の否認等)        第十二条   破産者が委託者としてした信託における破産法 (平成十六年法律第七十五号)第百六十条第一項 の規定の適用については、同項各号中「これによって利益を受けた者が、その行為の当時」とあるのは、「受益者が現に存する場合においては、当該受益者(当該受益者の中に受益権を譲り受けた者がある場合にあっては、当該受益者及びその前に受益権を譲り渡した全ての者)の全部が信託法第十一条第一項に規定する受益者としての指定を受けたことを知った時(受益権を譲り受けた者にあっては、受益権を譲り受けた時)においてこれによって利益を受けた受益者の全部又は一部」とする。   2   破産者が破産債権者を害することを知って委託者として信託をした場合には、破産管財人は、受益者を被告として、その受益権を破産財団に返還することを訴えをもって請求することができる。この場合においては、前条第四項ただし書の規定を準用する。   3   再生債務者が委託者としてした信託における民事再生法 (平成十一年法律第二百二十五号)第百二十七条第一項 の規定の適用については、同項 各号中「これによって利益を受けた者が、その行為の当時」とあるのは、「受益者が現に存する場合においては、当該受益者(当該受益者の中に受益権を譲り受けた者がある場合にあっては、当該受益者及びその前に受益権を譲り渡した全ての者)の全部が信託法(平成十八年法律第百八号)第十一条第一項に規定する受益者としての指定を受けたことを知った時(受益権を譲り受けた者にあっては、受益権を譲り受けた時)において」とする。   4   再生債務者が再生債権者を害することを知って委託者として信託をした場合には、否認権限を有する監督委員又は管財人は、受益者を被告として、その受益権を再生債務者財産(民事再生法第十二条第一項第一号 に規定する再生債務者財産をいう。第二十五条第四項において同じ。)に返還することを訴えをもって請求することができる。この場合においては、前条第四項ただし書の規定を準用する。   5   前二項の規定は、更生会社(会社更生法 (平成十四年法律第百五十四号)第二条第七項 に規定する更生会社又は金融機関等の更生手続の特例等に関する法律 (平成八年法律第九十五号)第百六十九条第七項 に規定する更生会社をいう。)又は更生協同組織金融機関(同法第四条第七項 に規定する更生協同組織金融機関をいう。)について準用する。この場合において、第三項中「民事再生法 (平成十一年法律第二百二十五号)第百二十七条第一項 」とあるのは「会社更生法 (平成十四年法律第百五十四号)第八十六条第一項 並びに金融機関等の更生手続の特例等に関する法律 (平成八年法律第九十五号)第五十七条第一項 及び第二百二十三条第一項 」と、「同項 各号」とあるのは「これらの規定」と、前項中「再生債権者」とあるのは「更生債権者又は更生担保権者」と、「否認権限を有する監督委員又は管財人」とあるのは「管財人」と、「再生債務者財産(民事再生法第十二条第一項第一号 に規定する再生債務者財産をいう。第二十五条第四項において同じ。)」とあるのは「更生会社財産(会社更生法第二条第十四項 に規定する更生会社財産又は金融機関等の更生手続の特例等に関する法律第百六十九条第十四項 に規定する更生会社財産をいう。)又は更生協同組織金融機関財産(同法第四条第十四項 に規定する更生協同組織金融機関財産をいう。)」と読み替えるものとする。     (信託財産に属する財産に対する強制執行等の制限等)   第二十三条   信託財産責任負担債務に係る債権(信託財産に属する財産について生じた権利を含む。次項において同じ。)に基づく場合を除き、信託財産に属する財産に対しては、強制執行、仮差押え、仮処分若しくは担保権の実行若しくは競売(担保権の実行としてのものを除く。以下同じ。)又は国税滞納処分(その例による処分を含む。以下同じ。)をすることができない。   2   第三条第三号に掲げる方法によって信託がされた場合において、委託者がその債権者を害することを知って当該信託をしたときは、前項の規定にかかわらず、信託財産責任負担債務に係る債権を有する債権者のほか、当該委託者(受託者であるものに限る。)に対する債権で信託前に生じたものを有する者は、信託財産に属する財産に対し、強制執行、仮差押え、仮処分若しくは担保権の実行若しくは競売又は国税滞納処分をすることができる。               3   第十一条第一項ただし書、第七項及び第八項の規定は、前項の規定の適用について準用する。   4   前二項の規定は、第二項の信託がされた時から二年間を経過したときは、適用しない。   5   第一項又は第二項の規定に違反してされた強制執行、仮差押え、仮処分又は担保権の実行若しくは競売に対しては、受託者又は受益者は、異議を主張することができる。この場合においては、民事執行法 (昭和五十四年法律第四号)第三十八条 及び民事保全法 (平成元年法律第九十一号)第四十五条 の規定を準用する。   6   第一項又は第二項の規定に違反してされた国税滞納処分に対しては、受託者又は受益者は、異議を主張することができる。この場合においては、当該異議の主張は、当該国税滞納処分について不服の申立てをする方法でする。         (損失塡補責任等に係る債権の期間の制限)   第四十三条   第四十条の規定による責任に係る債権の消滅時効は、債務の不履行によって生じた責任に係る債権の消滅時効の例による。   2第四十一条の規定による責任に係る債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。 一受益者が当該債権を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。 二当該債権を行使することができる時から十年間行使しないとき。     3 第四十条又は第四十一条の規定による責任に係る受益者の債権の消滅時効は、受益者が受益者としての指定を受けたことを知るに至るまでの間(受益者が現に存しない場合にあっては、信託管理人が選任されるまでの間)は、進行しない。   4 前項に規定する債権は、受託者がその任務を怠ったことによって信託財産に損失又は変更が生じた時から二十年を経過したときは、消滅する。     (受託者の信託報酬) 第五十四条   受託者は、信託の引受けについて商法 (明治三十二年法律第四十八号)第五百十二条 の規定の適用がある場合のほか、信託行為に受託者が信託財産から信託報酬(信託事務の処理の対価として受託者の受ける財産上の利益をいう。以下同じ。)を受ける旨の定めがある場合に限り、信託財産から信託報酬を受けることができる。   2   前項の場合には、信託報酬の額は、信託行為に信託報酬の額又は算定方法に関する定めがあるときはその定めるところにより、その定めがないときは相当の額とする。   3   前項の定めがないときは、受託者は、信託財産から信託報酬を受けるには、受益者に対し、信託報酬の額及びその算定の根拠を通知しなければならない。   4   第四十八条第四項及び第五項、第四十九条(第六項及び第七項を除く。)、第五十一条並びに第五十二条並びに民法第六百四十八条第二項及び第三項並びに第六百四十八条の二の規定は、受託者の信託報酬について準用する。     (受益権の譲渡性) 第九十三条   受益者は、その有する受益権を譲り渡すことができる。ただし、その性質がこれを許さないときは、この限りでない。   2 前項の規定にかかわらず、受益権の譲渡を禁止し、又は制限する旨の信託行為の定め(以下この項において「譲渡制限の定め」という。)は、その譲渡制限の定めがされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった譲受人その他の第三者に対抗することができる。     (信託法の一部改正に伴う経過措置) 第五十二条 施行日前にされた信託の詐害行為取消請求、否認並びに受益権の譲渡し及び返還の請求については、なお従前の例による。 2 施行日前にされた信託に係る信託財産に属する財産に対する強制執行等の制限等については、前条の規定による改正後の信託法(第四項において「新信託法」という。)第二十三条第二項及び第三項の規定にかかわらず、なお従前の例による。   3施行日前に前条の規定による改正前の信託法(以下この条において「旧信託法」という。)第四十一条又は第二百五十四条第一項の規定による責任に係る債権が生じた場合におけるその債権の消滅時効の期間については、なお従前の例による。     4 施行日前にされた信託に係る受託者の信託報酬については、新信託法第五十四条第四項において 準用する新民法第六百四十八条第三項及び第六百四十八条の二の規定にかかわらず、なお従前の例による。     5 施行日前に旧信託法第九十三条第二項に規定する別段の定めがされた場合における受益権の譲渡 については、なお従前の例による。     6 施行日前に旧信託法第九十六条第二項に規定する別段の定めがされた場合における受益権の質入れについては、なお従前の例による。       (詐害信託の取消し等) 第十一条   委託者がその債権者を害することを知って信託をした場合には、受託者が債権者を害すべき事実を知っていたか否かにかかわらず、債権者は、受託者を被告として、民法 (明治二十九年法律第八十九号)第四百二十四条第一項 の規定による取消しを裁判所に請求することができる。ただし、受益者が現に存する場合において、その受益者の全部又は一部が、受益者としての指定(信託行為の定めにより又は第八十九条第一項に規定する受益者指定権等の行使により受益者又は変更後の受益者として指定されることをいう。以下同じ。)を受けたことを知った時又は受益権を譲り受けた時において債権者を害すべき事実を知らなかったときは、この限りでない。             2   前項の規定による請求を認容する判決が確定した場合において、信託財産責任負担債務に係る債権を有する債権者(委託者であるものを除く。)が当該債権を取得した時において債権者を害すべき事実を知らなかったときは、委託者は、当該債権を有する債権者に対し、当該信託財産責任負担債務について弁済の責任を負う。ただし、同項の規定による取消しにより受託者から委託者に移転する財産の価額を限度とする。   3   前項の規定の適用については、第四十九条第一項(第五十三条第二項及び第五十四条第四項において準用する場合を含む。)の規定により受託者が有する権利は、金銭債権とみなす。   4   委託者がその債権者を害することを知って信託をした場合において、受益者が受託者から信託財産に属する財産の給付を受けたときは、債権者は、受益者を被告として、民法第四百二十四条第一項 の規定による取消しを裁判所に請求することができる。ただし、当該受益者が、受益者としての指定を受けたことを知った時又は受益権を譲り受けた時において債権者を害すべき事実を知らなかったときは、この限りでない。         5   委託者がその債権者を害することを知って信託をした場合には、債権者は、受益者を被告として、その受益権を委託者に譲り渡すことを訴えをもって請求することができる。この場合においては、前項ただし書の規定を準用する。   6   民法第四百二十六条 の規定は、前項の規定による請求権について準用する。   7   受益者の指定又は受益権の譲渡に当たっては、第一項本文、第四項本文又は第五項前段の規定の適用を不当に免れる目的で、債権者を害すべき事実を知らない者(以下この項において「善意者」という。)を無償(無償と同視すべき有償を含む。以下この項において同じ。)で受益者として指定し、又は善意者に対し無償で受益権を譲り渡してはならない。   8   前項の規定に違反する受益者の指定又は受益権の譲渡により受益者となった者については、第一項ただし書及び第四項ただし書(第五項後段において準用する場合を含む。)の規定は、適用しない。     (詐害信託の否認等)        第十二条   破産者が委託者としてした信託における破産法 (平成十六年法律第七十五号)第百六十条第一項 の規定の適用については、同項各号中「これによって利益を受けた者が、その行為の当時」とあるのは、「受益者が現に存する場合においては、当該受益者(当該受益者の中に受益権を譲り受けた者がある場合にあっては、当該受益者及びその前に受益権を譲り渡した全ての者)の全部が信託法第十一条第一項に規定する受益者としての指定を受けたことを知った時(受益権を譲り受けた者にあっては、受益権を譲り受けた時)においてこれによって利益を受けた受益者の全部又は一部」とする。   2   破産者が破産債権者を害することを知って委託者として信託をした場合には、破産管財人は、受益者を被告として、その受益権を破産財団に返還することを訴えをもって請求することができる。この場合においては、前条第四項ただし書の規定を準用する。   3   再生債務者が委託者としてした信託における民事再生法 (平成十一年法律第二百二十五号)第百二十七条第一項 の規定の適用については、同項 各号中「これによって利益を受けた者が、その行為の当時」とあるのは、「受益者が現に存する場合においては、当該受益者(当該受益者の中に受益権を譲り受けた者がある場合にあっては、当該受益者及びその前に受益権を譲り渡した全ての者)の全部が信託法(平成十八年法律第百八号)第十一条第一項に規定する受益者としての指定を受けたことを知った時(受益権を譲り受けた者にあっては、受益権を譲り受けた時)において」とする。   4   再生債務者が再生債権者を害することを知って委託者として信託をした場合には、否認権限を有する監督委員又は管財人は、受益者を被告として、その受益権を再生債務者財産(民事再生法第十二条第一項第一号 に規定する再生債務者財産をいう。第二十五条第四項において同じ。)に返還することを訴えをもって請求することができる。この場合においては、前条第四項ただし書の規定を準用する。   5   前二項の規定は、更生会社(会社更生法 (平成十四年法律第百五十四号)第二条第七項 に規定する更生会社又は金融機関等の更生手続の特例等に関する法律 (平成八年法律第九十五号)第百六十九条第七項 に規定する更生会社をいう。)又は更生協同組織金融機関(同法第四条第七項 に規定する更生協同組織金融機関をいう。)について準用する。この場合において、第三項中「民事再生法 (平成十一年法律第二百二十五号)第百二十七条第一項 」とあるのは「会社更生法 (平成十四年法律第百五十四号)第八十六条第一項 並びに金融機関等の更生手続の特例等に関する法律 (平成八年法律第九十五号)第五十七条第一項 及び第二百二十三条第一項 」と、「同項 各号」とあるのは「これらの規定」と、前項中「再生債権者」とあるのは「更生債権者又は更生担保権者」と、「否認権限を有する監督委員又は管財人」とあるのは「管財人」と、「再生債務者財産(民事再生法第十二条第一項第一号 に規定する再生債務者財産をいう。第二十五条第四項において同じ。)」とあるのは「更生会社財産(会社更生法第二条第十四項 に規定する更生会社財産又は金融機関等の更生手続の特例等に関する法律第百六十九条第十四項 に規定する更生会社財産をいう。)又は更生協同組織金融機関財産(同法第四条第十四項 に規定する更生協同組織金融機関財産をいう。)」と読み替えるものとする。     (信託財産に属する財産に対する強制執行等の制限等)   第二十三条   信託財産責任負担債務に係る債権(信託財産に属する財産について生じた権利を含む。次項において同じ。)に基づく場合を除き、信託財産に属する財産に対しては、強制執行、仮差押え、仮処分若しくは担保権の実行若しくは競売(担保権の実行としてのものを除く。以下同じ。)又は国税滞納処分(その例による処分を含む。以下同じ。)をすることができない。   2   第三条第三号に掲げる方法によって信託がされた場合において、委託者がその債権者を害することを知って当該信託をしたときは、前項の規定にかかわらず、信託財産責任負担債務に係る債権を有する債権者のほか、当該委託者(受託者であるものに限る。)に対する債権で信託前に生じたものを有する者は、信託財産に属する財産に対し、強制執行、仮差押え、仮処分若しくは担保権の実行若しくは競売又は国税滞納処分をすることができる。ただし、受益者が現に存する場合において、その受益者の全部又は一部が、受益者としての指定を受けたことを知った時又は受益権を譲り受けた時において債権者を害すべき事実を知らなかったときは、この限りでない。   3   第十一条第七項及び第八項の規定は、前項の規定の適用について準用する。   4   前二項の規定は、第二項の信託がされた時から二年間を経過したときは、適用しない。   5   第一項又は第二項の規定に違反してされた強制執行、仮差押え、仮処分又は担保権の実行若しくは競売に対しては、受託者又は受益者は、異議を主張することができる。この場合においては、民事執行法 (昭和五十四年法律第四号)第三十八条 及び民事保全法 (平成元年法律第九十一号)第四十五条 の規定を準用する。   6   第一項又は第二項の規定に違反してされた国税滞納処分に対しては、受託者又は受益者は、異議を主張することができる。この場合においては、当該異議の主張は、当該国税滞納処分について不服の申立てをする方法でする。         (損失てん補責任等に係る債権の期間の制限)   第四十三条   第四十条の規定による責任に係る債権の消滅時効は、債務の不履行によって生じた責任に係る債権の消滅時効の例による。   2   第四十一条の規定による責任に係る債権は、十年間行使しないときは、時効によって消滅する。             3   第四十条又は第四十一条の規定による責任に係る受益者の債権の消滅時効は、受益者が受益者としての指定を受けたことを知るに至るまでの間(受益者が現に存しない場合にあっては、信託管理人が選任されるまでの間)は、進行しない。   4   前項に規定する債権は、受託者がその任務を怠ったことによって信託財産に損失又は変更が生じた時から二十年を経過したときは、消滅する。   (受託者の信託報酬) 第五十四条   受託者は、信託の引受けについて商法 (明治三十二年法律第四十八号)第五百十二条 の規定の適用がある場合のほか、信託行為に受託者が信託財産から信託報酬(信託事務の処理の対価として受託者の受ける財産上の利益をいう。以下同じ。)を受ける旨の定めがある場合に限り、信託財産から信託報酬を受けることができる。   2   前項の場合には、信託報酬の額は、信託行為に信託報酬の額又は算定方法に関する定めがあるときはその定めるところにより、その定めがないときは相当の額とする。   3   前項の定めがないときは、受託者は、信託財産から信託報酬を受けるには、受益者に対し、信託報酬の額及びその算定の根拠を通知しなければならない。   4   第四十八条第四項及び第五項、第四十九条(第六項及び第七項を除く。)、第五十一条並びに第五十二条並びに民法第六百四十八条第二項 及び第三項 の規定は、受託者の信託報酬について準用する。       (受益権の譲渡性) 第九十三条   受益者は、その有する受益権を譲り渡すことができる。ただし、その性質がこれを許さないときは、この限りでない。   2  前項の規定は、信託行為に別段の定めがあるときは、適用しない。ただし、その定めは、善意の第三者に対抗することができない。

(出典:官報2017年6月2日)

執行役員社長

上場会社では、「執行役員社長」という役職が登場しているようです[1]

取締役に決まる予定だが、株主総会の時期の関係でまだ取締役ではない。

でも会社の代表である社長に就くという会社の事情がある。

取締役という名前が使えないので執行役員社長。

沖縄の会社で「代表取締役会長」と「取締役社長」という肩書きが一社にあるのをみたことがあるのですが、これも外からだと少し分かりにくい印象をもちました。会社の代表は「取締役社長」です。

「執行役員社長」の記事を読んで思ったのは、取締役になってからでも遅くないのに、取締役にもなっていないのに社長を任せて大丈夫なんだな、色んな会社があるんだな、この人は取締役会にも出るんだろうな、ということでした。

 またこの肩書は合同会社でも使えると思うのですが、紹介したら使う人はいるかな、など。以前、有限会社を経営している方が新しく合同会社を設立したとき、「取締役」という肩書きを使えないことを少し残念がっていたのを思い出します。その時は、代表社員を「社長」または「代表執行者」、業務執行社員を「執行役員」と呼ぶのはどうですかと聞いてみました。

 「執行役員社長」は聞き慣れないからか、何か言いづらいような、覚えにくいような。現在の取扱いとしては、(1)臨時の処置に留めること、(2)会社との関係を雇用契約から委任契約に変更すること(3)任期や仕事の内容を具体的に決めておくこと、などで対応していくようです。


[1] 倉橋雄作「執行役員社長の登場と実務対応」商事法務Number.2132

家族信託の融資について、受託者(債務者)が亡くなって変更になった場合、後任の受託者が就任を承諾すると、債務はその時点で自動的に後継受託者に移るのか。

(1)信託行為後の融資(金3000万円)

(2)受託者は信託財産のためにする意思で融資を受けた

(3)連帯保証人は受益者

(3)融資は受託者の権限内の行為

(4)融資された金銭は信託財産責任負担債務となる

(5)信託口口座へ入金がされている

(6)限定責任信託ではなく、責任財産限定特約もされていない

(7)亡くなった受託者の相続人はA,B,Cの3名、そのうちのAが新受託者

(1)から(7)の事実を前提とします。

1、受託者(債務者)が死亡した場合、後任の受託者が就任を承諾すると、債務はその時点で自動的に後継受託者には移らないと考えることができます。後継受託者は、自らが債務者となって債務を負ったわけではないからです。

2、債務は死亡した受託者の相続人に及びます(信託法76条、民法896条)。

3、債権者は、死亡した受託者の相続人A,B,Cに対して金1000万円ずつ債務の履行を請求することができます。

4、B,Cが自身の財産から債権者に対して債務の履行を行った場合、後任の受託者Aや信託財産法人管理人に、信託財産からの償還を請求することができます(信託法75条6項)。

後任の受託者Aが、自身の財産から債権者に対して債務の履行を行った場合、Aは履行した金額について信託財産から自身の財産へ移すことが可能です。信託財産が足りない場合、(1)受益者へ通知して返してもらう(返してもらえなければ受益権の停止、信託の終了)、(2)不動産などがある場合は売却(信託行為に別段の定めがない場合)、などの措置を取ることができます(信託法49条、50条)。

・ただし、受益債権など、信託財産に属する財産のみを持って履行する責任を負う債務については、前受託者は履行責任を負いません。

5、新受託者は、信託財産の帰属主体となり、責任財産を信託財産に限定しながらも、重畳的な債務引受をして、債務者となったことになると考えることができます(信託法75条8項)[1]

したがって、債務金3000万円のうち、金1000万円については、債務者A(責任財産は信託財産とAの財産)、金1000万円については、債務者B(責任財産は信託財産とBの財産)、金1000万円については、債務者C(責任財産は信託財産とCの財産)ということになります。

6、連帯保証人は受益者のままであり、債権者は請求・執行が可能です。

受益者が自身の財産から信託財産を通さないで直接、債権者に対して債務を履行した場合、債務は消滅し受益者とA、B、Cの関係は民法上の保証人の求償関係になると考えられます。


[1] 道垣内弘人『信託法』P287~

信託フォーラムVol.7「信託口口座をめぐる実務と課題」の整理

 

1、信託口預金口座と預金口座と信託口座がある[1]

(1)預金口座・・・金銭消費寄託契約により開設される。信託財産の独立性が担保できない。

(2)信託口座・・・信託行為により開設される。信託財産の独立性が担保できる。委託者の判断能力の衰えや、死亡による主観的事情に左右されない。

(3)信託口預金口座・・・預金契約上の預金契約者と、信託行為上の受託者としての当事者の二面制を持つ。法的には預金契約。分別管理され、帳簿上も信託財産と明示され、受託者がコントロール権を持つ場合、信託としての機能を持つ。

2、(3)について、信託財産の独立性を担保するための要件

(ア)物理的に他の資金管理口座から分別管理されている。

(イ)預金債権が帳簿上も信託財産に帰属されることが明らかにされている。

(ウ)受託者が、預金をコントロールする権利を持っている。

(ア)、(イ)、(ウ)全てがそろえば、信託財産の独立性は担保される[2]

(ア)についてですが、名義が同じだと物理的に分けて管理されていても、差押えは執行されるのではないかと考えます。

(イ)についても同様で、帳簿は債権者から見えないので、支払いが滞って差押えができる状態であれば、とりあえず申し立てるのではないかと考えます。そして差押え申し立ては通り執行されるのではないかと考えます。

(ウ)についても受託者が本当にコントロール権を持っているのかは債権者から分かりません。

成年後見人就任に際して、「本人氏名成年後見人成年後見人氏名」と通帳の表紙に記載され、通帳の表紙をめくると本人氏名のみがカタカナ表記されている金融機関があります。キャッシュカードも同じです。

(3)の信託口預金口座という名称についての説明で私が疑問に思うのは、まず信託契約があり契約した後に金融機関で口座を開設します。信託契約をした後は、受託者として信託事務を処理するための義務の1つとして口座を開設するのであって、寄託者というのは銀行からみた場合ということになります。

そうすると、寄託者というのは金融機関からみた場合のある1面を指しているに過ぎず、当事者の二面制というよりは、受託者としての付随的な面と捉える(受託者であるが、金融機関からみると寄託者でもある。)方が、理解が進むのではないかと考えます。

3、管理口座の課題

(1)誰のための口座か

受益者のための口座となります。

(2)信託を構成するために、議論すべき事柄

(ア)対象となる受託者の範囲

(イ)信託契約上の位置付け

(ウ)書式の統一化

(エ)信託法上、信託財産の独立性が認められるための要件

   (オ)「信託口」口座のために最低限必要なとなる民事信託の仕組みや要件   

(カ)受託者の分別管理義務、善管注意義務の履行がどこまで必要か

   (キ)「信託口」口座を開設するための金融機関にとって確認すべき事項や確認の方法

   (ク)現実の信託事務処理に支障や中断等を生じさせないための予防的かつ手続き的な問題(金融機関に対する事務委託やその内部手続の問題)    (ケ)「信託口」口座が開設されて以後、金融機関はどのような方法で、どこまで民事信託のコンプライアンスを監視するか。

・他の方法

(1)預金契約に特約を付ける[3]

(2)信託監督人を付ける[4]


[1]澁谷彰久「信託口預金口座の法的性質と課題」『信託フォーラムvol.7』日本加除出版 P53―

[2] 前掲澁谷P54

[3] 吉原毅「家族信託の発展と金融機関の対応について」新井誠編『高齢社会における信託制度の理論と実務』2017日本加除出版 P131~

[4] 渋谷陽一郎「民事信託の実務における新局面」『信託フォーラムvol.7』日本加除出版 P31―

事業承継ネットワーク構築事業

(出典)中小企業庁HP 2017年6月14日閲覧

中小企業庁では、地域における事業承継支援体制の強化に向けて、各都道府県に拠点を置く支援機関等による、地方自治体等と連携した、地域における事業承継支援のためのネットワーク(事業承継ネットワーク)の構築に取り組みます。

 この度、都道府県や地域の支援機関等と連携して事業承継支援の中核を担う「地域事務局」を19の県において採択しました。

1.採択した地域事務局

今回採択した地域事務局は、以下の地域に本拠を置く19の団体です。

都道府県

採択事業者

岩手県 盛岡商工会議所

宮城県 (公財)みやぎ産業振興機構

栃木県 宇都宮商工会議所

群馬県 (公財)群馬県産業支援機構

千葉県 (公財)千葉県産業振興センター

神奈川県 (公財)神奈川県産業振興センター

静岡県 静岡商工会議所

愛知県 (公財)あいち産業振興機構

岐阜県 (公財)岐阜県産業経済振興センター

三重県 (公財)三重県産業支援センター

石川県 (公財)石川産業創出支援機構

福井県 (公財)ふくい産業支援センター

広島県 広島商工会議所

山口県 (公財)やまぐち産業振興財団

徳島県 徳島商工会議所

香川県 (公財)かがわ産業支援財団

愛媛県 (公財)えひめ産業振興財団

熊本県 熊本商工会議所

大分県 大分県商工会連合会

2.独自事業として本事業と同様の事業を実施する地域

本事業は都道府県単位で事業承継支援体制の構築を図るものですが、一部の地域においては本事業と同様の取組が県の独自事業として実施されております(下図参照)。このような地域を含めて全国協議会を組成し、各地のベストプラクティスの横展開などにより、全国的な支援体制の構築を図ります。

(図:今年度採択事業及び独自事業の実施地域)

3.事業承継ネットワーク構築事業の概要

各地域事務局は、地域における事業承継支援の強化に向けて、主に以下の事業を行います。

1. 事業承継ネットワークの組成・地域における事業承継支援方針の策定

2. 普及・広報・調査活動

3. 事業承継診断※の実施準備・実施状況の集約

4. 課題・状況に応じた事業承継支援を受けられるアクセス環境の整備に向けた取組

5. 実施期間中の全国事務局への情報提供等

6. 事業承継ネットワークの事業終了後の自立的な運営の実現に向けた取組

7. 報告書の作成

8. その他

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