受託者が、指図権者の指図に従わなかった場合の法律関係の整理

1、取締役会を設置していない株式会社において、現経営者を委託者兼受益者、後継者を受託者として、会社の全株式を信託する。

2、指図権(指図権者は受益者)の定めを信託行為に記載し、株主総会での議決権の行使は、現経営者が元気なうちは、その指図に従う。

3 株主総会の際、受託者が受益者の指図に従わず、自らの意思で議決権を行使した(例えば現経営者を解任し、自らを経営者に選任した)。株主総会収集通知の議題は、計算書類の報告および承認の件。指図権は、信託行為に定められている基準の通り適正に行使され、受託者も理解している。

・株主総会の決議は、無効や取消の対象になるか?

株主総会の決議は有効に成立しますが、決議の不存在、無効、取消しの対象にはなり得ると考えます。

信託法上、指図権者(受益者)は、受託者に対する債権者であり、会社との直接の関係はありません。

会社法上、現経営者は会社の代表取締役であり、信託行為によって株式の所有権は受託者に移転しているので、会社の株主は後継者です。このような前提から、 

(1)株主総会の決議の方法が著しく不公正なとき。

(2)株主総会の決議について手続的な不適切の度合いが著しく、決議が存在するとは認められないような場合。

(3)株主総会の決議が法令に違反する場合。

のいずれか、または双方に当てはまる可能性があると考えます(会社法830条から834条)。

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