損益通算が駄目だという点は、注意すべき点なのか。

アパートなど、大規模修繕をしてたくさんの費用がかかった場合、その年の所得と合わせて所得を減らすことができない(税金が安くならない)から注意。

よく分からないことで、説明はする必要があると思うんですが、注意しないといけない点なのかと考えてしまいます。

修繕のための積立をしていると思うので、所得の分は払うか、所得税の分まで積み立てるかしておけば良いのかなと。軽く考え過ぎでしょうか。

損益通算が出来ない理由は、受益者が事業に関与する度合いが低いからだとされています。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

租税特別措置法41条の4の2

(特定組合員等の不動産所得に係る損益通算等の特例)

第四十一条の四の二   特定組合員(組合契約を締結している組合員(これに類する者で政令で定めるものを含む。以下この項において同じ。)のうち、組合事業に係る重要な財産の処分若しくは譲受け又は組合事業に係る多額の借財に関する業務の執行の決定に関与し、かつ、当該業務のうち契約を締結するための交渉その他の重要な部分を自ら執行する組合員以外のものをいう。)又は特定受益者(信託の所得税法第十三条第一項 に規定する受益者(同条第二項 の規定により同条第一項 に規定する受益者とみなされる者を含む。)をいう。)に該当する個人が、平成十八年以後の各年において、組合事業又は信託から生ずる不動産所得を有する場合においてその年分の不動産所得の金額の計算上当該組合事業又は信託による不動産所得の損失の金額として政令で定める金額があるときは、当該損失の金額に相当する金額は、同法第二十六条第二項 及び第六十九条第一項 の規定その他の所得税に関する法令の規定の適用については、生じなかつたものとみなす。

2   この条において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

一   組合契約 民法第六百六十七条第一項 に規定する組合契約及び投資事業有限責任組合契約に関する法律第三条第一項 に規定する投資事業有限責任組合契約並びに外国におけるこれらに類する契約(政令で定めるものを含む。)をいう。

二   組合事業 各組合契約に基づいて営まれる事業をいう。

3   前項に定めるもののほか、第一項の規定の適用に関し必要な事項は、政令で定める。

議決権行使に関する指図権

信託契約書の中に、

(議決権行使に関する指図権)

第○条 

1 本株式の議決権行使にあたり、委託者兼受益者は、指図権者として受託者に指図することができる。

2 委託者兼受益者の指図がない場合、受託者は自らの裁量に従って議決権を行使することができる。

まとめると、

・委託者兼受益者は、実質的に議決権を行使することができる。

・委託者兼受益者が議決権を行使しない場合は、原則に戻り、受託者が議決権を行使する。

他に、決めておいた方が良いことはあるのでしょうか。

指図権者は、受託者に指図しない場合、株主総会の何日前までに指図しないことを伝えるか。例えば、7日前までに、など。

受託者は、指図権が行使されるのか、されないのかいつまで待てば良いか分からなくて不安定な状況に置かれます。

指図がない場合は、今後も受託者が議決権を行使していいのか、それとも株主総会ごとに指図があるかどうか待つのか。契約書とは別に覚え書や別紙などで最低限定めておく必要があると考えます。

また、受託者が指図に従わなくても良い場合を定めることも考えられます。

・議決権には独立した金銭的価値がなく、

それのみを独立した信託財産とすることはできないし、

受益権の内容とすることもできない、

という考えは取れるのでしょうか。

 信託行為の設定時であれば委託者と受託者、信託開始後であれば、委託者と受託者、受益者との間で金銭的価値を認めることは、契約自由の原則からして可能です。国税庁は原則として金銭的価値を認めていません。

 議決権のみを独立した信託財産とすることはできません。理由としては、信託当事者以外の人に対しての換金可能性の低さ、議決権のみの移転・処分が困難なことが挙げられます。

 議決権のみを受益権の内容とすることはできない、というのは独立した信託財産とすることができない以上、できないと考えられます。上の文章が議決権は受益権の内容とすることはできない、という意味であれば、それは信託行為によって株主が持っている権利の一部として、実質的に受益権の内容とすることはできる、といえます。

・指図権はそもそも委託者が持っているのか、受益者が持っているのか、信託行為で誰に与えるか、委託者と受託者が決めることができるのか。

採れる考え方

 指図権者は契約関係にはないが、受益者に対する信認義務を負っていることを前提とします。

→本来委託者にある権限が信託行為によって、指図権者に移転する。

→信託行為の中で、指図権者と委託者または受託者との委任契約を締結する。

・合併や増資、解散する場合の株主総会決議は、指図権を行使するのに基準があるのでしょうか。

 考えられる備え

  (1)協議

  (2)協議が整わない場合は、信託契約の終了

・信託目的が、指図権を行使する指針の一つとなるか。 

  考えられる備え

(1)信託目的に優先順位をつける

・取引先や従業員に対する説明はどういう風に行うのが良いのでしょうか。あるいは実質的に代表者は変わらないと判断して、説明しない方が良いのでしょうか。

・役員構成はどういうタイミングで代える判断するのが良いのでしょうか。

1、信託行為と同じタイミングで受託者を代表取締役にする。取締役の変更も考える。

2、指図権を受益者が持っていて、行使ができる状態の間は、変えない。

参考

・商事信託法研究会報告「指図型信託における指図権者の位置づけ」

・須田力哉「指図を伴う信託事務処理に関する法的考察―不動産信託を例として―」

・山田裕子「事業承継目的の株式信託について」

・会社法311条

・信託を活用した中小企業の事業承継円滑化に関する研究会「中間整理―信託を活用した中小企業の事業承継の円滑化に向けて」

・資産評価企画官情報第1号 資産課税課情報第6号 審理室情報第1号

平成19年3月9日 国税庁課税部資産評価企画官資産課税課審理室「種類株式の評価について(情報)」

・信託法35条

受益権の放棄に制限を付けることができるか。

例えば、信託契約書にこのような定めがあった場合

受益者は、受託者の書面による承諾を得た場合に限り、その受益権の分割、放棄、譲渡その他の担保設定を行うことができる。

受益権は、受益債権+受益者としての地位です。

委託者が、最初の受益者となる場合、その受益者は信託法に基づいて受益権を放棄することが出来ません。委託者は信託行為の当事者で、自らの意思で受益者になったからです。

委託者、受託者以外の人が受益者として指定された場合、受益権の放棄は自由です。

この場合の受益者は、自分で進んで受益権を取得したわけではないので、もらう権利もあれば、もらわない権利もあります。

ただし、信託法に基づく受益権の放棄は、さかのぼって効力を発生させる、最初からなかったことになるので、受益権が放棄されて困る人がいる場合は、受益権の放棄は出来ません。困る人がいる場合というと受益者として受益権に担保を設定した後、受益権を放棄すると、担保設定者は困るので出来ません。

それでも放棄した場合、詐害行為取消しの対象になるかは、見解が分かれています。

ということで、受益権の放棄に、「受託者の書面による承諾を得た場合に限り」などの制限を付けることはできません。

・・・・・・・・・・・・・

参考

寺本昌広「逐条解説 新しい信託法」

能見善久他「信託法セミナー3」

民事信託・家族信託契約をするときに、委託者の能力はどのくらい必要か。

委託者が3つの認識ができること必要です。

1、信託する財産がどれか、特定されている。

2、信託すると、信託した財産の所有者ではなくなるが、所有者とほぼ同じ権利持ち、その権利が侵されたときの救済を求めることが出来る。

3、信託すると、信託した財産は受託者が、受託者自身の財産とは別扱いで管理する。

民法上

権利能力

 生まれたときから持っている、とされる権利です(民法3条)。

行為能力

意思能力が取引成立の前提であるとすれば、行為能力は、その取引が自身にどのような意味を持つのか、土地を1億円で売ると決めたが、相手が値下げして欲しいと言ってきた場合、100万円値下げすると決めるか、これからもっと土地の値段は上がるかもしれない、下がるかもしれない、自身にとって値下げは有利か、不利か、といったことをある程度判断する能力。プロでも100%正確な判断は出来ないと思いますので、ある程度、です(民法7条など)。

また、社会状況によって行為能力が衰えた人を保護するための法律や判例も変わってきます。(高齢化社会、多様な取引形態、本人の自己決定権の尊重と保護のバランスなど)。

行為能力の有無や衰えの程度は、法定後見等の開始の審判がされる基準になります。事理を弁識する能力(民法7条等)は、行為能力のことを指しているといえます。

契約書に住所と名前を書くように、権利能力+行為能力+住所で契約をすることが出来ると考えることができます。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

その他、色々な名前の能力

意思能力

 この本を2,000円で買おう、この土地を1億円で売ろう、などの意思を表示することができる知識と能力。本を買う、という取引と土地を売るという取引では、土地を売るという取引の方がより高い意思能力が必要とされます。考えることが多いからです。この土地は売った方が良いのか、貸した方が良いのか、いくらなら買い手がつくか、仲介業者はどこにしようか、売った後の税金はいくらか、など。

1、意思能力があるとはいえない事例

2歳の幼児がジュースを飲みたい、お菓子を食べたいという意思表示。

→ジュースを100円で買おう、お菓子をお母さんから貰おうという意思の表示が必要。

2、意思能力がなかった場合の効果

意思能力を欠く人の意思表示は、明治時代から無効のようです(大判明治38年5月11日)。

任意後見契約を締結するとき

判断能力が必要とされています。

ここでいう判断能力とは、自身の判断能力が衰えたときに行われる後見事務の内容を認識していること、後見事務を行う任意後見人を自らの意思で決めることだといえます。

公正証書遺言を作成するとき

15歳になると、遺言を作成することができます。

また遺言者は、遺言を作成するときにおいて、遺言能力を持つことが必要とされています。遺言能力とは、意思能力のことを指します。

金融機関との取引

預金

複数の行職員による、意思能力と行為能力の確認。

本人から自署・捺印を受け、同居の家族や医師の確認をとったり、推定相続人の同意をとる。

借入れ

預金と同様の確認。

借入れの必要性の検討

返済

記述なし。

意思能力がなくても金融機関は、返済を受け続けることは出来るのでしょうか。よく分かりませんでした。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

参考

信託法1条、34条

一般社団法人金融財政事情研究会編著「CSのための金融実務必携」(株)きんざい P52-P55、P122-P126

新井誠他編「信託法制の展望」(株)日本評論社 P21-P30

任意後見契約に関する法律第2条

(社)成年後見センター・リーガルサポート「任意後見実務マニュアル

Q&Aと契約条項例」新日本法規出版(株)P14-P15

東京地判平成17年9月29日

民法961条、963条

内田貴「民法4」(財)東京大学出版会 P471-P473、「民法1」P91-P121

信託の終了事由

条文の読み方、間違っていました。

司法書士谷口毅先生の研修資料に、ご自身が作成された信託契約書を研修用にみせていただきました。

(信託の終了)の条項に、「ただし、信託法164条1項は適用しない」の記載がありました。

最初はこの記載はなくても良いだろう、と考えていました。信託行為によって別のことを定めることで、回避できると理解していたからです。

谷口先生も契約書に、信託が終了する別のことを記載していました。

あとで条文を読んでみると、

信託行為に他の終了の方法を定めたら、「その定めるところによる」とあって、「除く(他の終了方法は無くなる)」とはなっていません。

立法担当者解説も、信託行為によって、他の終了方法を排除することも「選択できる」、というような記載があります。

ということで、私の条文読み間違い。

「ただし、信託法164条1項は適用しない」は信託行為に記載した方がよい条項です。理由は現在の税制だと、委託者と最初の受益者は同じ人が多いので、実質1人で信託を終了することが出来るからです。

金融機関など、第3者との関係でも必要だと考えられます。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

参考

(委託者及び受益者の合意等による信託の終了)

第百六十四条   委託者及び受益者は、いつでも、その合意により、信託を終了することができる。

2   委託者及び受益者が受託者に不利な時期に信託を終了したときは、委託者及び受益者は、受託者の損害を賠償しなければならない。ただし、やむを得ない事由があったときは、この限りでない。

3   前二項の規定にかかわらず、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。

4   委託者が現に存しない場合には、第一項及び第二項の規定は、適用しない。

・寺本昌弘『逐条解説 新しい信託法』商事法務 P366

PAGE TOP