社長が、持っている株式を贈与した後、後継者が5年間雇用と貰った株式を守った場合は、納税猶予されていた贈与税が免除になるように、というもの。
要望が実現したときは、指図権などを利用しない場合、株式(持分)の信託と似たような効果を作ることができます。
株式の信託を利用しようと検討している方の相談には、説明しておく必要があると思います。
社長が、持っている株式を贈与した後、後継者が5年間雇用と貰った株式を守った場合は、納税猶予されていた贈与税が免除になるように、というもの。
要望が実現したときは、指図権などを利用しない場合、株式(持分)の信託と似たような効果を作ることができます。
株式の信託を利用しようと検討している方の相談には、説明しておく必要があると思います。
1 条文
(信託財産責任負担債務の範囲)
第二十一条 次に掲げる権利に係る債務は、信託財産責任負担債務となる。
一 省略
二 信託財産に属する財産について信託前の原因によって生じた権利
三 信託前に生じた委託者に対する債権であって、当該債権に係る債務を信託財産責任負担債務とする旨の信託行為の定めがあるもの
―以下、省略―
1―1 信託設定前の抵当権は、信託財産責任負担債務(21条1項2号)
「信託財産に属する財産について信託前の原因によって生じた権利」として、信託設定前の抵当権が挙げられています 。
その理由については、記載されている書籍などを見つけることは出来ませんでした。
1―2 信託設定前の抵当権は、21条1項2号の信託財産責任負担債務ではない
これに対して、信託設定前の抵当権は、少なくとも信託法21条1項2号の信託財産責任負担債務ではない、という考えがあります 。理由としては、
(1)信託の設定のために財産が委託者から受託者に移転されても抵当権が存続するのは、抵当権が登記されており、受託者に対抗することができるから。
(2)抵当権が存在しているからといって受託者が債務を負うわけではない(債務は債務者が負い、最終的には抵当権の目的となっている物が負う。)。
結論は、抵当権の負担の付いた不動産が信託財産に属する不動産になっている、というものです。
2 信託財産責任負担債務(信託法21条1項2号の場合)
2―1 要件
(1)信託行為の効力が発生することにより、当然に信託財産責任負担債務になる(1項本文)。
(2)信託設定する財産に関する債務
(3)信託設定前の原因によって生じた債務
2―2 信託財産責任負担債務とは
(1)信託財産から履行する債務(信託法2条1項9号)
(2)信託財産責任限定負担債務(信託法21条2項)ではない信託財産責任負担債務は、受託者が個人の財産から履行する可能性がある。履行後は、受益者との信託内部の関係となる 。
3 抵当権
3―1 抵当権とは何か(民法369条~)
法定の担保物権である抵当権の特徴を以下に示します。
(1)占有を抵当権者に移転せず、設定者が利用する(非占有担保権)。
(2)抵当権者イコール債権者。
(3)第3者に対抗するためには、登記が必要。
(4)債務者イコール設定者、とは限らない。
(5)設定者が債務者ではない場合、設定者自身は債務を負担していない。債務者が債務を返済できないとき、抵当権が実行されると設定者は抵当権の目的である物を失う。実質は保証人と同様の地位に立つ(物上保証人とも呼ばれる) 。
3―2 抵当権の権利は、何か。
性質としては、付従性や随伴性などがありますが、直接の権利としては、1つしか考えられませんでした。
(1)債務不履行があった場合に、目的物の売却代金から優先弁済を受ける権利。
4 信託設定前の抵当権は、信託法21条1項2号の信託財産責任負担債務か
4―1 2-1(要件)への当てはめ
4―1―1 (1)信託行為の効力が発生することにより、当然に信託財産責任負担債務になる(1項本文)。信託行為の効力が発生することにより、抵当権が付いている不動産の所有権は、当然に受託者へ移転します。登記前は、委託者の債権者へ、登記後は委託者、受託者の債権者へ対抗することができます。
所有権の移転、第3者への対抗と、信託財産責任負担債務になることは関係がないので、(1)の要件は満たしていないと考えられます。
4―1―2 (2)信託設定する財産に関する債務。信託設定する土地に抵当権がある場合を考えてみます。委託者からみると、債務者の債務不履行があった場合に、土地の売却代金から優先弁済をする、停止条件付きの債務となります。停止条件付の債務は、まだ行使されておらず、債務者が債務を全て弁済すると債務は消滅し、抵当権も付従性により消滅します。
4―1―3 (3)信託設定前の原因によって生じた債務。抵当権の被担保債権は、信託設定前の原因によって生じています。このように考えていくと、「債務」が停止条件付の債務を含むのか、を判断する必要があります。
5 信託設定前の原因によって生じた債務は、停止条件付の債務を含むか。
5―1 相続税法
保証人の場合、原則として相続税の評価に含まない 。
5―2 所得税法
保証人の場合、原則として、所得控除の対象とならない 。
5―3 抵当権の実行
(実体上の要件)
(1)抵当権が存在していること
(2)被担保債権が存在し、その弁済期が到来していること
6 結論
信託設定前の原因によって生じた債務は、停止条件付の債務を含むのか。判断基準は、以下の要件に該当する場合に、債務に含めるとするのが妥当と考えらえます。
(1)信託設定時に、抵当権の被担保債権が履行遅滞になっていること。
以上
2017年11月17日付 週刊「かふう」よく分かる不動産相続Q&A
認知症など判断能力を喪失した場合の対策
著者中村敦司法書士
週刊「かふう」の編集長から電話があり、訂正があるものと思っていました。訂正はないようなので前回までの記事は、正確な記事であり誤りはないという認識を執筆者および編集長が持っている、と受け止めさせてもらいます。
今回の家族構成は、夫婦と子供2人。
最初の受益者は、夫のみです。でも家族信託契約の中で、妻の身上介護などに必要な費用を信託財産から給付すること、を内容としています。
このままでは、契約通りに妻の介護費用などを支出することは難しくなります。
やり方としては、
1、妻を扶養義務の範囲内で受益者に加える、信託の変更を行う。
2、信託契約には妻のことは書かないで、夫の個人財産から給付する。
(2の場合は、夫が亡くなると妻への援助が出来なくなるので、2次受益者に加えなくてはなりません。)
任意後見制度では、後見人が就任すると基本的には夫の財産は事実上凍結する、とあります。
事実上凍結、凍結などよく聞くのですが本当でしょうか。任意後見制度でも本人のためになら利用することが出来ます。権限を明確に定めなくても使えます。本人のために利用することを凍結、というのであれば違うのではないかと思いませんか?
前回投稿分が無視されていますが、無視された事実も含めて相談者へ説明する必要があるので指摘させていただきます。
1、「契約や遺言で行うもので」は、誤りです。信託宣言(自己信託)(信託法第3条第1項第3号)があります。適切な受託者を見つけることができない方や、自己信託を利用した方が有効な方もいらっしゃいます。
2、「そして、将来父親が亡くなったら、家族信託契約時に受託者である子を次の受益者(二次受益者)として決めておけば、契約に従い子が賃料を受領する。という内容で家族信託の契約を締結することができます。」は、誤りです。その状態が一年間続けば信託は終了します(信託法163条)。
3、「信託財産であるアパートについては、成年後見人の権限は及ばず」は誤りです。
法定後見人の場合、法定代理人として受益者が持つ権限のうち信託法27条、31条、36条、38条、40条、41条、44条、45条、92条などは、行使することができます。
任意後見人の場合、一般的に包括的な代理権が与えられます。受益者が持つ権限のうち法定後見人が行使できる権利は、任意後見人も行使することができます
(受益者代理人が就いていても同じです。)。
4、「委託された」は、託された、又は信託設定されたの誤りです。委託されていません。
5、「生前にあるいは受益者死亡後に受益権の移動があった場合には贈与税や相続税の課税対象となる場合があります」について、相続税の課税対象となる場合があるのでしょうか?
最近、家族信託・民事信託の信託契約書(案)を金融機関へ送信した際、このような指摘がありました。
「受託者が、第2次受益者となっていますが、そうすると信託が終了してしまうのではないですか。」
「受託者は、後任の受託者に代えようと思っています。」
「ただ、宮城さんが対応してくださると思うのですが、もしかしたら当事者が分からなくてトラブルになってしまうかもしれないので、その辺を契約書に入れてもらえませんか。」
なるほど、と思いました。
委託者(兼当初受益者)が亡くなると信託は終了する予定なのですが、委託者の死亡を信託の終了事由とはしていません。
金融機関のおっしゃる通り、受託者が唯一の受益者である状態が1年間続くと、信託は知らない間に終わってしまいます。
そこは契約書に「その他信託法に定める事由が生じたとき。」としか書いていなかったので、当事者(特に受託者)が知らなかった場合や忘れている場合はあり得ます。
金融機関の方がおっしゃるように、私がフォローするつもりでいたのですが、受託者の任務終了事由と信託の終了事由は、裁判所を通す場合を除いて信託法の文言をきちんと入れるべきだなと気づきました。
金融機関で任意代理契約の通帳が作成出来ません(親族間です)。
事前に公正証書の案を出してOKもらっていたのに。家族信託契約、遺言、任意後見契約とセットです。
信託専用口座のことで一杯な感じです。
信託専用口座だけでは今回のケース、意味がないのです。
金融機関が自宅まで来てくれるはずもなく、依頼者と何度も支店窓口まで行ったり電話やメールで検討のお願いをしたり。
最後に副支店長から返ってきた言葉が、「本部の弁護士が言っているから駄目です。あとはそちらで管理して下さい。」です。
これは理由にはなりません。
ただ、金融機関が駄目と言う場合、理屈を問わず駄目なので無力感に襲われないように少しずつ検討してもらう方向で行きます。
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参考:『CSのための金融実務必携』2015きんざいP390~P399など。
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2017年12月14日
その後、本店の方と話しました。
代理人口座の開設が可能か。
受益者代理人の権限の解釈について。
私としては、民事信託・家族信託契約における委託者、任意代理契約・任意後見契約における委任者が金融機関窓口に来なくても良い方法であれば、どんな形でも良いということ言いました。
そこは分かっていただけて収穫です。
金融機関からすると、代理人口座を作成した場合、任意後見監督人を選任するタイミング(任意後見人が就任する時期)が分からないので、少し検討させて欲しいとのこと。
受益者代理人の権限に関しては、解釈と預金取り扱いの実務を整合できるか、これも少し検討したいとのこと。
なぜ出来ないのか、理由を聞くことが出来ました。そうすれば、どこを改善すれば良いのか、考えることが出来ます。