20220719連発0541号 司法書士倫理の一部改正

新旧が見つからない。私が参照した会員必携の司法書士倫理が 古いかもしれません。

○司法書士行為規範

司法書士の使命は、国民の権利を擁護し、もって自由かつ公正な社会の形成に寄与することにある。

その使命を自覚し、自らの行動を規律する規範を明らかにするため、司法書士行為規範を制定する。

我々は、これを実践し、社会の信頼と期待に応えることをここに宣言する。

第1章基本倫理

(使命の自覚)

第1条司法書士は、使命を自覚し、その達成に努める。

(基本姿勢)

第2条司法書士は、その職責を自覚し、自由かつ独立の立場を保持して、司法書士としての良心に従い行動する。

(信義誠実)

第3条司法書士は、信義に基づき、公正かつ誠実に職務を行う。

(品位の保持)

第4条司法書士は、常に、人格の陶冶を図り、教養を高め、司法書士としての品位を保持する。

(法令等の精通)

第5条司法書士は、法令及び実務に精通する。

(資質の向上)

第6条司法書士は、自ら研鑚するとともに、その所属する司法書士会及び日本司法書士会連合会(以下「司法書士会等」という。)が実施する研修に参加し、資質の向上に努める。

(自治の維持及び発展)

第7条司法書士は、司法書士自治の維持及び発展に努める。

(法制度への寄与)

第8条司法書士は、法制度が国民に信頼され、国民が利用しやすいものとなるようにその改善及び発展に寄与する。

(公益的活動)

第9条司法書士は、その使命にふさわしい公益的な活動に取り組み、実践するように努める。

第2章一般的な規律

意思の尊重)

第10条司法書士は、依頼者の意思を尊重し、依頼の趣旨に沿って、その業務を行わなければならない。

2司法書士は、意思の表明に困難を抱える依頼者に対して、適切な方法を用いて意思の表明を支援するように努めなければならない。

(秘密保持等の義務)

第11条司法書士は、業務上知り得た秘密を保持しなければならず、又は利用してはならない。司法書士でなくなった後も同様とする。

2前項の規定にかかわらず、次に掲げる場合は、その必要の限度において、秘密を開示することができる。

(1)本人の承諾がある場合

(2)法令に基づく場合

(3)司法書士が自己の権利を防御する必要がある場合

(4)前3号に掲げる場合のほか、正当な事由がある場合

(不当誘致等)

第12条司法書士は、不当な方法によって事件の依頼を誘致し、又は事件を誘発してはならない。

2司法書士は、依頼者の紹介を受けたことについて、いかなる名目によるかを問わず、その対価を支払ってはならない。

3司法書士は、依頼者の紹介をしたことについて、いかなる名目によるかを問わず、その対価を受け取ってはならない。

(非司法書士との提携禁止等)

第13条司法書士は、司法書士法その他の法令の規定に違反して業務を行う者と提携して業務を行ってはならず、またこれらの者から事件のあっせんを受けてはならない。

2司法書士は、第三者に自己の名義で司法書士業務を行わせてはならない。

3司法書士は、正当な事由がある場合を除き、その業務に関する報酬を司法書士又は司法書士法人でない者との間で分配してはならない。

(違法行為の助長等)

第14条司法書士は、違法若しくは不正な行為を助長し、又はこれらの行為を利用してはならない。

(品位を損なう事業への関与)

第15条司法書士は、品位を損なう事業を営み、若しくはこれに加わり、又はこれに自己の名義を使用させてはならない。

(相手方等からの利益授受等)

第16条司法書士は、取り扱っている事件に関し、相手方又は相手方代理人等から利益の供与若しくは供応を受け、又はこれを要求し、若しくはその約束をしてはならない。

2司法書士は、取り扱っている事件に関し、相手方又は相手方代理人等に対し、利益の供与若しくは供応をし、又はその約束をしてはならない。

(広告又は宣伝)

第17条司法書士は、虚偽の事実を含み、又は誤認を生じさせるおそれがある広告又は宣伝をしてはならない。

2司法書士は、品位又は信用を損なうおそれがある広告又は宣伝をしてはならない。

(記録の作成等)

第18条司法書士は、受任した事件の概要、金品の授受に関する事項その他重要と考えられる事項に関する記録を作成し、保管しなければならない。

2司法書士は、前項の記録を保管するに際しては、業務上知り得た秘密及びプライバシーに関する情報が漏洩しないように注意しなければならない。廃棄するに際しても同様とする。

補助者に対する指導及び監督)

第19条司法書士は、常に、補助者の指導及び監督を行わなければならない。

2司法書士は、補助者をしてその業務を包括的に処理させてはならない。

3司法書士は、補助者に対し、その者が業務上知り得た秘密を漏洩し、又は利用しないように指導及び監督しなければならない。

第3章依頼者との関係における規律

(依頼の趣旨の実現)

第20条司法書士は、依頼の趣旨を実現するために、的確な法律判断に基づいて業務を行わなければならない。

(受任の際の説明)

第21条司法書士は、事件を受任するにあたり、その処理の方法その他依頼の趣旨を実現するために必要な事項について説明しなければならない。

(報酬の明示)

第22条司法書士は、事件を受任するにあたり、報酬及び費用の金額又はその算定方法を明示し、かつ、十分に説明しなければならない。

2司法書士は、その報酬については、依頼者の受ける経済的利益、事案の難易、その処理に要した時間及び労力その他の個別具体的事情に照らして、適正かつ妥当なものとしなければならない。

契約書の作成)

第23条司法書士は、事件を受任するにあたり、依頼の趣旨並びに報酬及び費用に関する事項を記載した契約書を作成するように努めなければならない。

(事件の処理)

第24条司法書士は、事件を受任した場合には、速やかに着手し、遅滞なく処理しなければならない。

2司法書士は、依頼者に対し、事件の経過及び重要な事項を必要に応じて報告し、事件が終了したときは、その経過及び結果を遅滞なく報告しなければならない。

(公正を保ち得ない事件)

第25条司法書士は、業務の公正を保ち得ない事由がある事件については、業務を行ってはならない。

(公務等との関係)

第26条司法書士は、公務員又は法令により公務に従事する者として取り扱った事件については、業務を行ってはならない。

2司法書士は、仲裁人として取り扱った事件又は裁判外紛争解決手続において手続実施者その他これに準ずる者として関与した事件については、業務を行ってはならない。

(公正を保ち得ないおそれ)

第27条司法書士は、業務の公正を保ち得ない事由が発生するおそれがある場合には、事件を受任するにあたり、依頼者に対し、その事由の内容及び辞任の可能性があることについて説明しなければならない。

(不正の疑いがある事件)

第28条司法書士は、依頼の目的又はその手段若しくは方法に不正の疑いがある場合において、合理的な方法により調査を行ってもなおその疑いが払拭できないときは、その事件を受任してはならない。

(特別関係の告知)

第29条司法書士は、事件の受任に際して、依頼者の相手方と特別の関係があるために、依頼者との信頼関係に影響を及ぼすおそれがあるときは、依頼者に対しその事情を告げなければならない。

(受任後の措置)

第30条司法書士は、事件を受任した後に前5条に該当する事由があることを知ったときは、依頼者に対し速やかにその事情を告げ、事案に応じた適切な措置をとらなければならない。

(利益相反の顕在化)

第31条司法書士は、同一の事件で依頼者が複数ある場合において、その相互間に利益相反が生じたときは、各依頼者に対してその旨を告げ、事案に応じた適切な措置をとらなければならない。

(他の司法書士の参加)

第32条司法書士は、受任している事件について、依頼者が他の司法書士又は司法書士法人に、相談又は依頼をしようとするときは、正当な理由なくこれを妨げてはならない。

(受任司法書士間の意見の不一致)

第33条司法書士は、同一の事件を受任している他の司法書士又は司法書士法人がある場合において、その処理に関して意見の不一致により依頼者に不利益を及ぼすおそれがあるときは、依頼者に対しその事情を説明しなければならない。

(依頼者との信頼関係の喪失)

第34条司法書士は、受任している事件に関し、依頼者との信頼関係が失われ、かつ、その回復が困難である場合には、辞任する等適切な措置をとらなければならない。

(預り書類等の管理)

第35条司法書士は、受任している事件に関し、依頼者から預かった書類等を、善良な管理者の注意をもって管理しなければならない。

(預り金の管理等)

第36条司法書士は、受任している事件に関し、依頼者から又は依頼者のために金員を受領した場合には、自己の金員と区別し、預り金であることを明確にして管理しなければならない。

2司法書士は、受任している事件に関し、依頼者のために金品を受領した場合には、速やかにその事実を依頼者に報告しなければならない。

(受任の継続不能)

第37条司法書士は、受任している事件の処理を継続することができなくなった場合には、依頼者が損害を被ることがないように、事案に応じた適切な措置をとらなければならない。

(係争目的物の譲受け)

第38条司法書士は、係争事件の目的物を譲り受けてはならない。

(依頼者との金銭貸借等)

第39条司法書士は、特別の事情がない限り、依頼者と金銭の貸借をし、又は自己の債務について保証をさせ、若しくは依頼者の債務について保証をしてはならない。

(賠償保険)

第40条司法書士は、依頼者を保護するために、業務上の責任について賠償責任保険に加入するように努めなければならない。

(事件の終了後の措置

第41条司法書士は、受任した事件が終了したときは、遅滞なく、金銭の精算、物品の引渡し及び預かった書類等の返還をしなければならない。

(依頼者との紛議等)

第42条司法書士は、依頼者との信頼関係を保持し紛議が生じないように努め、紛議が生じた場合には、協議により円満に解決するように努めなければならない。

第4章不動産登記業務に関する規律

(基本姿勢)

第43条司法書士は、不動産登記業務を行うにあたり、登記の原因となる事実又は法律行為について調査及び確認をすることにより登記の真正を担保し、もって紛争の発生を予防する。

(実体上の権利関係の把握等)

第44条司法書士は、不動産登記業務を受任した場合には、依頼者及びその代理人等が本人であること及びその意思の確認並びに目的物の確認等を通じて、実体上の権利関係を的確に把握しなければならない。

2司法書士は、前項の確認を行った旨の記録を作成し、保管しなければならない。

(公平の確保)

第45条司法書士は、不動産登記業務を受任した場合には、当事者間の情報の質及び量の格差に配慮するなどして、当事者間の公平を確保するように努めなければならない。

(登記手続の中止又は登記申請の取下げ)

第46条司法書士は、当事者の一部から、不動産登記手続の中止又は不動産登記申請の取下げの申出を受けた場合においては、他の当事者の利益が害されることのないように当事者全員の意思を確認し、適切な措置をとらなければならない。

(補助者による立会の禁止)

第47条司法書士は、不動産取引における立会を、補助者に行わせてはならない。

(複数の代理人が関与する登記手続)

第48条司法書士は、複数の代理人が関与する不動産登記業務を受任した場合には、依頼者の依頼の趣旨を実現するために必要な範囲において他の代理人と連携するように努めなければならない。

第5章商業・法人登記業務に関する規律

(基本姿勢)

第49条司法書士は、商業・法人登記業務を行うにあたり、登記原因及び添付書面等の調査及び確認をすることにより真正な登記の実現に努め、もって取引の安全と商業・法人登記制度の信頼の確保に寄与する。

(実体関係の把握)

第50条司法書士は、商業・法人登記業務を受任した場合には、会社若しくは法人の代表者又はこれに代わり依頼の任に当たっている者(以下「代表者等」という。)が本人であること、依頼の内容及び意思の確認をするとともに、議事録等の関係書類の確認をするなどして、実体関係を把握するように努めなければならない。

2司法書士は、議事録等の書類作成を受任した場合には、代表者等にその事実及び経過等を確認して作成しなければならない。

(法令遵守の助言)

第51条司法書士は、商業・法人登記業務を受任し、又はその相談に応じる場合には、会社及び法人の社会的責任の重要性を踏まえ、依頼者に対して、法令を遵守するように助言しなければならない。

第6章供託業務に関する規律

(基本姿勢)

第52条司法書士は、供託業務を行うにあたり、実体上の権利関係を的確に把握し、登記手続、裁判手続その他の関連する手続を踏まえて供託の目的を達成させる。

(供託が関係する相談)

第53条司法書士は、供託が関係する相談に応じる場合には、相談者が置かれている状況を的確に把握したうえで、供託手続の役割、内容及び方法について説明及び助言をしなければならない。

第7章裁判業務等に関する規律

(基本姿勢)

第54条司法書士は、裁判の公正及び適正手続の実現に寄与する。

(紛争解決における司法書士の役割)

第55条司法書士は、依頼者が抱える紛争について、正確な知識及び情報を提供し、最善の方法をもって業務を遂行することにより、依頼者の正当な権利の擁護及びその利益の実現に努めなければならない。

(裁判書類作成関係業務)

第56条司法書士は、裁判書類作成関係業務を受任した場合には、依頼者との意思の疎通を十分に図り、事案の全容を把握するように努め、依頼者にその解決方法を説明するなどして、依頼者自らが訴訟等を追行できるように支援しなければならない。

(簡裁訴訟代理等関係業務)

第57条司法書士は、簡裁訴訟代理等関係業務を受任した場合には、代理人としての責務に基づき、依頼者の自己決定権を尊重して、業務を行わなければならない。

(業務を行い得ない事件)

第58条司法書士は、裁判業務(裁判書類作成関係業務及び簡裁訴訟代理等関係業務をいう。以下同じ。)に係る次の事件については、裁判業務を行ってはならない。ただし、第4号に掲げる事件については、受任している事件の依頼者が同意した場合は、この限りでない。

(1)相手方の依頼を受けて行った事件又は相手方から受任している事件

(2)相手方の協議を受けて賛助し、又はその依頼を承諾した事件

(3)相手方の協議を受けた事件で、その協議の程度及び方法が信頼関係に基づくと認められるもの

(4)受任している事件の相手方からの依頼による他の事件

(5)受任している事件の依頼者を相手方とする他の事件

(6)その他受任している事件の依頼者と利益相反する事件

2司法書士は、かつて司法書士法人の社員等(社員又は使用人司法書士をいう。以下同じ。)であった場合は、裁判業務に係る次の事件(自ら関与したものに限る。)については、裁判業務を行ってはならない。

(1)社員等として業務に従事していた期間内に、当該司法書士法人が相手方の依頼を受けて行った事件

(2)社員等として業務に従事していた期間内に、当該司法書士法人が相手方の協議を受けて賛助し、又はその依頼を承諾した事件

(3)社員等として業務に従事していた期間内に、当該司法書士法人が相手方の協議を受けた事件で、その協議の程度及び方法が信頼関係に基づくと認められるもの

(受任の諾否の通知)

第59条司法書士は、簡裁訴訟代理等関係業務の依頼に対し、その諾否を速やかに通知しなければならない。

(法律扶助制度等の教示)

第60条司法書士は、依頼者に対し、事案に応じて法律扶助制度又は訴訟救助制度を教示するなどして、依頼者の裁判を受ける権利が実現されるように努めなければならない。

(見込みがない事件の受任の禁止)

第61条司法書士は、依頼者が期待するような結果を得る見込みがないことが明らかであるのに、あたかもその見込みがあるかのように装って事件を誘発し、受任してはならない。

(有利な結果の請け合い等の禁止)

第62条司法書士は、受任した事件について、依頼者に有利な結果を請け合い、又は保証してはならない。

(偽証等のそそのかし等)

第63条司法書士は、偽証又は虚偽の陳述をそそのかしてはならない。

2司法書士は、虚偽と知りながらその証拠を提出し、又は提出させてはならない。

(裁判手続の遅延)

第64条司法書士は、不当な目的のために又は職務上の怠慢により、裁判手続を遅延させてはならない。

(相手方本人との直接交渉等)

第65条司法書士は、受任している事件に関し、相手方に法令上の資格がある代理人がいる場合は、特別の事情がない限り、その代理人の了承を得ないで相手方本人と直接交渉してはならない。

2司法書士は、受任している事件に関し、相手方に法令上の資格がある代理人がいない場合において、相手方が代理人の役割について誤解しているときは、その誤解に乗じて相手方を不当に不利益に陥れてはならない。

第8章司法書士法第3条に定めるその他の業務に関する規律

(審査請求手続)

第66条司法書士は、審査請求手続を受任した場合には、審査請求の意義を依頼者に説明し、依頼者の権利が実現されるように努めなければならない。

(国籍に関する書類の作成)

第67条司法書士は、国籍に関する書類の作成を受任した場合には、その要件等を依頼者に説明及び助言をし、依頼者や関係者のプライバシー等の人権に配慮して、業務を行うように努めなければならない。

(検察庁に提出する書類の作成)

第68条司法書士は、検察庁に提出する書類の作成を受任した場合には、関係者の人権に配慮して、正義の実現に努めなければならない。

第9章成年後見業務等に関する規律

基本姿勢)

第69条司法書士は、成年後見業務等を行う場合には、本人の意思を尊重し、その心身の状態並びに生活及び財産の状況(以下「心身の状態等」という。)に配慮する。

法定後見等に関する相談)

第70条司法書士は、法定後見又は任意後見に関する相談に応じる場合には、本人のほか、親族、福祉、医療及び地域の関係者等の支援者(以下「支援者」という。)から、その意見、本人の心身の状態等を聴取するなどしたうえで、適切な助言をしなければならない。

(後見等開始申立書類の作成)

第71条司法書士は、後見等開始申立書類を作成する場合には、本人、申立人及び支援者の意見を聴取するなどしたうえで、本人の権利を擁護し、心身の状態等に適した内容になるよう配慮しなければならない。

(任意後見契約の締結等)

第72条司法書士は、自己を受任者とする任意後見契約の締結を依頼された場合には、見守り契約等の任意後見契約に関連する契約の必要性を検討したうえで、本人の権利を擁護し、心身の状態等に適した契約になるように配慮しなければならない。

2司法書士は、前項の任意後見契約及びこれに関連する契約を締結する場合には、本人の心身の状態等に配慮し、本人が理解できるように適切な方法及び表現を用いて契約内容を説明しなければならない。

3司法書士は、第1項の任意後見契約を締結した場合において、精神上の障害により本人の事理弁識能力が不十分になったときは、本人及び支援者の意見を聴取するなどしたうえで、任意後見契約の効力を生じさせるなど、遅滞なく適切な措置をとらなければならない。

(支援者との連携)

第73条司法書士は、成年後見人等に就任した場合には、支援者と連携を図るように努めなければならない。

2前項の場合において、司法書士は、本人のプライバシーに配慮しなければならない。

第10章財産管理業務に関する規律

(基本姿勢)

第74条司法書士は、他人の財産を管理する場合には、自己の財産又は管理する他者の財産と判然区別することが可能な方法で各別に保管するなど、善良な管理者の注意をもって行う。

(委任による財産管理)

第75条司法書士は、委任により他人の財産を管理する場合には、委任者が適切な手続を選択することができるように説明しなければならない。

2司法書士は、前項の場合には、委任者と利益相反する行為をしてはならない。

3司法書士は、財産管理の状況について、定期的に委任者に報告しなければならない。委任者から報告を求められたときも、同様とする。

(法律の定めによる財産管理)

第76条司法書士は、法律の定めにより他人の財産を管理する者に選任された場合には、その目的を達するため誠実に財産管理を行わなければならない。

(遺言執行)

第77条司法書士は、遺言執行者に就任した場合には、遺言の内容を実現するため直ちに遺言執行事務に着手し、善良な管理者の注意をもってその事務を遂行しなければならない。

2司法書士は、遺言執行者に就任している場合において、遺言者の相続財産(遺言が相続財産のうち特定の財産に関する場合には、その財産に限る。)に係る事件であって、相続人又は受遺者の依頼により、他の相続人又は受遺者を相手方とする裁判業務を行ってはならない。遺言執行者でなくなった後も、同様とする。

(遺産承継業務)

第78条司法書士は、遺産承継業務を受任する場合には、委任契約書を作成するなどして、依頼者に対し、受任事務の内容及び範囲を明らかにしなければならない。

2司法書士は、前項の場合においては、事案に応じて、依頼者に対し、業務の中断又は終了に関する事由を明らかにしなければならない。

(事件の終了)

第79条司法書士は、他人の財産の管理を終了したときは、遅滞なく、その管理する財産を委任者など受領権限がある者に引き渡さなければならない。

第11章民事信託支援業務に関する規律

(基本姿勢)

第80条司法書士は、民事信託支援業務を受任したときは、信託目的の達成に向けて、委託者、受託者、受益者その他信託関係人の知識、経験、財産の状況等に配慮して業務を行う。

(適正な民事信託の支援)

第81条司法書士は、民事信託の設定を支援するにあたっては、委託者の意思を尊重し、かつ、信託法上の権利及び義務に関する正確な情報を提供するように努めなければならない。

2司法書士は、民事信託の設定後においては、受託者の義務が適正に履行され、かつ、受益者の利益が図られるよう、必要に応じて、継続的な支援に努めなければならない。

第12章共同事務所における規律

(遵守のための措置)

第82条複数の司法書士が事務所を共にする場合(以下「共同事務所」という。)において、その共同事務所を監督する立場にある司法書士があるときは、当該司法書士は、共同事務所に所属する全ての司法書士(以下「所属司法書士」という。)が、法令、会則等を遵守するために必要な措置をとらなければならない。

(秘密保持の義務)

第83条所属司法書士は、正当な事由がある場合を除き、他の所属司法書士が業務上知り得た秘密を保持しなければならず、又は利用してはならない。所属司法書士でなくなった後も同様とする。

(共同事務所における業務を行い得ない事件)

第84条所属司法書士は、他の所属司法書士(所属司法書士であった者を含む。)が業務を行い得ない事件については、業務を行ってはならない。ただし、業務の公正を保ち得る事由があるときは、この限りでない。

(所属司法書士であった者が裁判業務を行い得ない事件)

第85条所属司法書士であった司法書士は、所属司法書士であった期間内に、他の所属司法書士が取り扱った裁判業務に係る事件で、自らこれに関与していた事件については、その事件の相手方の依頼を受けて裁判業務を行ってはならない。

(受任後の措置)

第86条所属司法書士は、事件を受任した後に第84条本文に該当する事由があることを知ったときは、依頼者に対し、速やかにその事情を告げ、事案に応じて適切な措置をとらなければならない。

(業務を行い得ない事件の受任防止

第87条所属司法書士は、共同事務所として、当事者情報の確認その他必要な措置をとるなどをして、業務を行い得ない事件の受任を防止するように努めなければならない。

第13章司法書士法人における規律

(遵守のための措置)

第88条司法書士法人は、その社員等が法令、会則等を遵守するための必要な措置をとらなければならない。

(秘密保持の義務)

第89条社員等は、正当な事由がある場合を除き、司法書士法人、他の社員等が業務上知り得た秘密を保持しなければならず、又は利用してはならない。社員でなくなった後も同様とする。

(司法書士法人が業務を行い得ない事件)

第90条司法書士法人は、裁判業務に係る次の事件については、裁判業務を行ってはならない。ただし、第4号に掲げる事件については、受任している事件の依頼者が同意した場合はこの限りでない。

(1)相手方の依頼を受けて行った事件又は受任している事件

(2)相手方の協議を受けて賛助し、又はその依頼を承諾した事件

(3)相手方の協議を受けた事件で、その協議の程度及び方法が信頼関係に基づくと認められるもの

(4)受任している事件の相手方からの依頼による他の事件

(5)受任している事件の依頼者を相手方とする他の事件

(6)その他受任している事件の依頼者と利益相反する事件

(司法書士法人が社員等の関係で業務を行い得ない事件)

第91条司法書士法人は、裁判業務に係る次の事件については裁判業務を行ってはならない。

(1)社員等が相手方から受任している事件

(2)第25条、第26条若しくは第58条第1号から第6号まで又は第92条第2項第1号から第3号までに掲げる事件として社員の半数以上(簡裁訴訟代理等関係業務に係る事件については特定社員の半数以上)の者が裁判業務を行ってはならないこととされる事件

(社員等が司法書士法人との関係で業務を行い得ない事件)

第92条社員等は、裁判業務に係る次の事件については、裁判業務を行ってはならない。ただし、第2号に掲げる事件については、司法書士法人が受任している事件の依頼者の同意がある場合は、この限りでない。

(1)司法書士法人が相手方から受任している事件

(2)司法書士法人が受任している事件の相手方の依頼による他の事件

2社員等は、かつて別の司法書士法人(以下「その司法書士法人」という。)の社員等であった場合は、裁判業務に係る次の事件(自ら関与したものに限る。)については、裁判業務を行ってはならない。

(1)その司法書士法人の社員等として業務に従事していた期間内に、その司法書士法人が相手方の依頼を受けて行った事件

(2)その司法書士法人の社員等として業務に従事していた期間内に、その司法書士法人が相手方の協議を受けて賛助し、又は依頼を承諾した事件

(3)その司法書士法人の社員等として業務に従事していた期間内に、その司法書士法人が相手方の協議を受けた事件で、協議の程度及び方法が信頼関係に基づくと認められるもの

(社員等が他の社員等との関係で業務を行い得ない事件)

第93条社員等は、他の社員等が業務を行い得ない事件については、業務を行ってはならない。ただし、業務の公正を保ち得る事由があるときは、この限りでない。

(受任後の措置)

第94条司法書士法人は、事件を受任した後に、第90条又は第91条の規定に該当する事由があることを知ったときは、依頼者に対し、速やかにその事情を告げ、事案に応じて適切な措置をとらなければならない。

2社員等は、事件を受任した後に、前2条の規定に該当する事由があることを知ったときは、依頼者に対し、速やかにその事情を告げ、事案に応じて適切な措置をとらなければならない。

(業務を行い得ない事件の受任防止

第95条司法書士法人は、業務を行い得ない事件の受任を防止するために、当事者情報の確認その他必要な措置をとるように努めなければならない。

(準用)

第96条第1章から第11章まで(第4条、第5条、第6条、第11条第1項、第26条第2項及び第58条を除く。)、第14章及び第15章の規定は、司法書士法人について準用する。

第14章他の司法書士との関係における規律

(名誉の尊重)

第97条司法書士は、他の司法書士(司法書士法人を含む。以下、本章において同じ。)との関係において、相互に名誉と信義を重んじる。

(他の事件への介入)

第98条司法書士は、他の司法書士が受任している事件に関して、不当に介入してはならない。

(相互協力)

第99条司法書士は、他の司法書士と共同して業務を行う場合には、依頼者とそれぞれの司法書士との間の委任関係を明確にして、依頼の趣旨の実現に向け、相互に協力しなければならない。

2司法書士は、事件処理のために復代理人を選任する場合には、依頼の趣旨の実現に向け、復代理人と十分な意思疎通を図らなければならない。

第15章司法書士会等との関係における規律

(規律の遵守)

第100条司法書士は、自治の精神に基づき、司法書士会等が定める規律を遵守する。

(組織運営への協力)

第101条司法書士は、司法書士会等の組織運営に積極的に協力する。

(事業への参加)

第102条司法書士は、司法書士会等が行う事業に積極的に参加する。また、司法書士会等から委嘱された事項を誠実に遂行する。

附則(令和4年6月23日・24日第87回定時総会承認)

この規範は、令和5年4月1日から施行する。

Tsuyoshi Taniguchi

これ見てる人全員アウトー!!

司法書士行為規範 (品位の保持) 第4条 司法書士は、常に、人格の陶冶を図り、教養を高め、司法書士としての品位を保持 する。

Tsuyoshi Taniguchi

非弁と言われる可能性は数年前まではかなり悩んでましたが、今はほとんど意識しなくなりましたかね。 「信託は魔法のツール」ってやりたい放題やってた時期はいつ誰が刺されるかとドキドキしてました。 司法書士行為規範に民事信託を盛り込んで、「目指すべき適正な形」を明文化したのは大きかった。

https://x.com/Hamuuuuuuuuuuu/status/1714521896757407774?s=20

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信託財産の「管理」と「処分」1

家族信託実務ガイド[1]の渋谷陽一郎「連載登記先例解説 第6回信託財産の「管理」と「処分」(1)」からです。

登記を通じて公示された内容が、日本の取引社会の不可欠な基本情報となります。そこで、登記手続によって公示することが許容され、かつ、その必要がある情報のみが、登記所に提供される必要があります。

 必要がある情報のみが、について同感です。

信託登記も、信託法によって、受託者の分別管理義務の内容として、受託者に強制しています(信託法34条1項1号、2項)。これを懈怠すると信託違反となります。直近では相続登記の義務化が議論されてきましたが、法令上、義務化されるということは、その必要性の強度(公序)を示します。

 信託違反を信託法違反と修正します。信託登記における受託者の分別管理義務に関しては、記事にある利益(法律効果)が現在のところ機能しているからだと考えます。必要性の強度(公序)も示していると思います。

 それに対して、相続登記の義務化に関しては、今まで義務ではなかった登記申請手続が罰則を伴うという意味で、実質的に義務になるということは、必要性の強度(公序)とともに、利益(法律効果)が現在のところ機能していない面もあるのではないかと思います。

しかし、実は、信託を考えるうえでは、日頃、信託を組成するに際して、あたり前であると思われている基本的な概念が難しい。

 私が見落としているのかもしれませんが、令和3年9月17日東京地方裁判所判決平成31年(ワ)第11035号損害賠償請求事件では、組成という用語は使われていないので、現在のところは利用しない方が良いのかなと感じました。

信託目録第10号

四 信託条項 2 信託財産の管理方法 

        受託者の権限 財産管理

 私なら、財産管理という用語を利用することはないと思います。上位項目(不動産登記法97条1項9号)で財産、管理という用語が既に使われており、二重に公示することになるからです。

「受託者への給付および管理的処分行為および信託終了後の帰属権利者への移転行為は別として、信託行為の定めがなければ、受託者は、処分行為(例、売却・担保権設定)がなしえないが、信託目的遂行上処分行為が必要と考えられる場合には、その処分行為をなすべき権限が与えられたものと解すべきである。」

―中略―「信託財産の「管理又は処分」は、受託者の職務権限の象徴的例示にすぎない。

 四宮和夫『信託法〔新版〕』有斐閣1989年P217、P207の引用です。信託目的遂行上処分行為が必要と考えられる場合には、その処分行為をなすべき権限が与えられたものと解すべきである、に関しては、後続登記の登記原因証明情報への記録や第三者の承諾を証する情報の添付で対応するのかなと思いました。

「信託財産の「管理又は処分」は、受託者の職務権限の象徴的例示にすぎない、に関して同感です。

例えば、下のような記載のうち、現在公示すべき事項と後続登記申請に必要な事項について信託目録に記録する、という考え方もあると思います。

□(5)受託者がその裁量において適当と認める方法、時期及び範囲で行う次の事務。

□本信託の変更により、信託不動産に関する変更が生じる場合の各種手続き。

□信託不動産の性質を変えない修繕・改良行為。

□売買契約の締結および契約に付随する諸手続き。

□賃貸借契約の締結、変更、終了、契約に付随する諸手続き及び契約から生じる債権の回収および債務の弁済。

□境界の確定、分筆、合筆、地目変更、増築、建替え、新築。

□その他の管理、運用、換価、交換などの処分。

□【                  

  □ただし、以下の事項については、□【受益者・信託監督人・       

   から事前に書面(電磁的記録を含む。)による承認を得なければならない。

□その他の信託目的を達成するために必要な事務。

□受託者は、信託目的の達成のために必要があるときは、受益者の承諾を得て金銭を借入れることができる。受託者以外の者が債務者となるときは、金銭債務は信託財産責任負担債務とする 。

□受託者は、受益者の承諾を得て信託財産に(根)抵当権、質権その他の担保権、用益権を(追加)設定し、登記申請を行うことができる。

 また本記事を読み、受託者が処分行為を行うことが認められている場合があるのに、信託財産の管理方法(不動産登記法97条1項9号)と法律で定めているのは、改正が必要なのではないかなと思いました。

 私が改正するのなら、信託財産に対する権限、にします。

認知症対策のような福祉的な信託の目的中、不動産に関して、果たして「運用」という目的が必要なのか否か、その内容は「管理」や「処分」と何が違うのでしょうか。

 私は、運用はお金の利用の意味で使われているという認識でした。

(一社)信託協会 信託の分類

https://www.shintaku-kyokai.or.jp/trust/more/classification.html

ちなみに、家族信託の目的が、不動産に関して「確実な遺産の承継」や「円滑な財産の承継」のみであるような場合を考えてみてください。承継に至るまでの間、特定物の管理として、処分行為は認められない、ということになるのでしょうか。また、財産を承継させるまで、受託者は、当該財産の管理行為を行うべきでしょうが(その価値の維持や保存などは如何なる義務となりうるのか、その内容・程度などが問題となります)、当該財産を承継すると指定された者に対して、特定物の引渡し義務を負う者と同一の責任を負うと考えるのでしょうか。

ところで、信託目録に記録すべき情報の中でも、受託者の「処分」権限に関する定めをどのように公示すべきか、司法書士の悩みどころです。

 承継に至るまでの間、特定物の管理として、処分行為は認められない、ということにはならないのではないかなと思います。遺産、財産が信託財産に属する不動産を特定物と捉えているとは読み取ることが出来ないからです。

 信託目録に記録すべき情報の中でも、受託者の「処分」権限に関する定めをどのように公示すべきか、については、3つくらい考え方があるのかなと思います。最初から登記申請が必要な行為について、受益者の同意などを条件として全て信託目録に記録する方法。他に、信託行為時に予測できる範囲で記録しておき、予測できない事態が起きた場合には、信託の変更、信託目録の変更登記申請、登記原因証明情報の記載で対応する方法。また、信託の目的に沿って、処分行為を行う必要が出てきた場合のみ、信託の変更、信託目録の変更登記申請、登記原因証明情報の記載で対応する方法です。


[1] 2022.8第26号日本法令P84~

7月相談会のご案内ー家族信託の相談会その45ー

お気軽にどうぞ。

2022年7月22日(金)14時~17時
□ 認知症や急な病気への備え
□ 次世代へ確実に引き継ぎたいものを持っている。
□ 家族・親族がお金や土地の話で仲悪くなるのは嫌。
□ 収益不動産オーナーの経営者としての信託 
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その他:
・共有不動産の管理一本化・予防
・配偶者なき後、障がいを持つ子の親なき後への備え

1組様 5000円
場所
司法書士宮城事務所(西原町)

要予約
司法書士宮城事務所 shi_sunao@salsa.ocn.ne.jp

民事信託における監督機関の設置の意義

月報司法書士[1]の一般社団法人民事信託推進センター・代表理事押井崇司法書士・民事信託士「民事信託における監督機関の設置の意義」からです。

日本司法書士会連合会 月報司法書士

https://www.shiho-shoshi.or.jp/gallery/monthly_report/

一般社団法人民事信託推進センター

https://www.civiltrust.com/

「あなたの判断能力が低下した場合に備えて民事信託を活用し、今から信頼できる家族に託しておきませんか。」「そうしておかないと、硬直的な後見制度に依拠しなければなりませんよ。」おおよそこのような謳い文句で集客をはかる司法書士等のホームページが散見される。

 前段に異論はない。まさに民事信託を活用する積極的な理由である。問題は後段である。あたかも民事信託を活用しなければ取り返しがつかなくなるといった誤った認識を喧伝し、民事信託へミスリードする。この種の喧伝を行う司法書士等は、後見業務に携わっていない者が多いのではないか。後見業務の実務に精通し、誠実に業務に従事している者は、このような認識を持ちえないからである。

「あなたの判断能力が低下した場合に備えて民事信託を活用し、今から信頼できる家族に託しておきませんか。」「そうしておかないと、硬直的な後見制度に依拠しなければなりませんよ。」のような謳い文句で集客を図る司法書士のホームページがどこにあるのか分かりませんでした。

 問題は後段である。あたかも民事信託を活用しなければ取り返しがつかなくなるといった誤った認識を喧伝し、民事信託へミスリードする、については、書き方や捉え方の問題だと感じました。選択肢として、(任意)後見制度を民事信託と同列に載せるか、民事信託を上位に置くかの提案になるので、司法書士法3条上も意見が分かれる、というところが個人的には問題になるのかなと感じました。著者が問題だとしているあたかも民事信託を活用しなければ取り返しがつかなくなるといった誤った認識を喧伝し、民事信託へミスリードする、という事に関しては司法書士法2条(業務精通義務)に入ると考えられますが、私の認識とは違うと感じました。

 この種の喧伝を行う司法書士等は、後見業務に携わっていない者が多いのではないか。後見業務の実務に精通し、誠実に業務に従事している者は、このような認識を持ちえないからである、については、私は後見業務を専門で行っていた時期もありますが、どのような根拠で「このような認識を持ちえない」、と書かれているのか分かりませんでした。

「委託者が、信託契約などに基づき、受託者に対し、信託財産を移転し、受託者は、委託者が設定した信託目的に従って、受益者のために、信託財産の管理及び処分などを行う制度」

 信託財産、は財産に訂正(信託法2条1項)。委託者が設定した、は委託者及び受託者が設定した、に訂正(信託法2条、記事では信託契約が主とされているため。)。管理及び処分、は管理又は処分に訂正(信託法2条1項。実務では管理のみという民事信託は少ないので、及びを利用している可能性があります。)

「信託口口座」とは、受託者で名寄せされるが受託者固有の財産とはならない口座のことで、倒産隔離機能を有する口座である。

受託者で名寄せされる、という箇所が、よく分かりませんでした。

参考

令和3年9月17日東京地方裁判所判決平成31年(ワ)第11035号損害賠償請求事件

当該金融機関において、内部システム上、当該受託者の個人名義の預貯金口座(固有財産に属する預貯金口座)に係るCIF(Customer Information File。顧客情報ファイル)コードとは別異のCIFコードが備えられる、内部手続上、当該預金口座とは異なる取扱いがされる旨の規定が設けられるなど、当該預金口座から分離独立した取扱いがされる預金口座、の要件を満たす口座。

信託口口座を開設する予定の金融機関から契約書案のゴーサインが得られ次第、公正証書作成のために契約書案を公証役場に提示する。

 色々な方法があるのだなと感じました。私は契約書案を、公証人役場(公証センター)と金融機関に提示するのは、同時です。公正証書作成の日付を決めておいて(予定が変われば変更します。)、金融機関に提示することで返答が欲しい日もお願いすることが出来ます。公証人役場(公証センター)、金融機関、その他の機関全て同時進行になります。この場合は、1つの機関から指摘があって契約書案が変更になる場合は、他の全ての機関に連絡することが重要となります。

ただし、そのためには信託の知識だけではなく、遺言、後見、基礎的な税務に関する知識や経験が必要である。

 経験、に関しては経験者に訊くことで解決出来るのではないかと思います。経験を必要条件としてしまうと、民事信託支援業務を行う司法書士は、極端にいうといない、という事になります。また経験者の立場から書いているとすれば、今後、民事信託支援業務を行う司法書士は出てこない、という意味なのか、いずれにしても無理があると感じます。

そこで、私(司法書士)が信託監督人に就任します、と提案しても快諾されるケースは稀である。先に申し上げたように、民事信託を組成する目的の一つが「後見制度の回避」だからである。

 記事中の、「そうしておかないと、硬直的な後見制度に依拠しなければなりませんよ。」おおよそこのような謳い文句で集客をはかる司法書士等のホームページが散見される。前段に異論はない。まさに民事信託を活用する積極的な理由である。問題は後段である。あたかも民事信託を活用しなければ取り返しがつかなくなるといった誤った認識を喧伝し、民事信託へミスリードする。、との整合性が分かりませんでした。また、記事後半では民事信託に関して信託監督人や受益者代理人の設置を検討する必要があるだろう、と記載がありますが、具体的にどのような方法で設置するのか、分かりませんでした。

令和4年4月1日、一般社団法人民事信託士協会と一般社団法人民事信託推進センターが合併し、新たに一般社団法人民事信託推進センターが誕生した。民事信託支援業務の専門家である「民事信託士」の育成に引き続き注力しつつ、民事信託に関する研鑽を深め、健全な民事信託の発展に寄与する所存である。

民事信託推進センターで民事信託士の育成に注力するため、ということでしょうか。

1. 議題 宮城直会員除名の件 35/45 35人承認可決

https://miyagi-office.info/?s=%E9%99%A4%E5%90%8D


[1] 2022年6月、604号、日本司法書士会連合会P34~

民事信託の登記の諸問題(10)

登記研究[1]の記事、渋谷陽一郎「民事信託の登記の諸問題(10)」について、考えてみたいと思います。

この点、準物権的救済(受益者取消権等)の実効性の確保や受託者権限に対する規範性(拘束性)に鑑み、信託の目的を鈍化・峻別し、明確化して公示することが大切である。信託の目的は、信託が終了するか否か(信託法163条1号)や信託の変更権者の選択(信託法149条2項1号、2号、3項2号)その他の具体的な基準ともなる現実的なものである。

 例えば、受益者の介護その他の生活支援・受益者が現在の住居を離れなくてはならなくなった場合の、不動産の売却、などのように一定程度信託の当事者間で明確になっているのならば、信託目録の信託の目的欄への記録も可能だと思います。介護その他の生活支援の場合は、受益者の死亡により信託の終了、不動産の売却の場合は、売却時に金銭信託なども終了して清算に移るのか、その後も他の信託財産に属する財産について信託を続けるのかは最初に検討、という形を採るのかなと思います。

受託者の権限として「財産の管理又は処分」が記されているが、それは、それ自体が独立した権限とされて、後の「及び」で、その他の必要な行為が付加されている形の文の構造となっているのだろうか。あるいは、「財産の管理又は処分」は、直後の「及び」という接続詞で「その他の」と並列にされ「信託の目的の達成のために必要な行為」の例示とされているのだろうか。

財産の管理又は処分それ自体が独立した権限とされて、後の及びで、その他の必要な行為が付加されている形の文の構造となっているのだと考えます。[2]

また、信託法26条の文言は、「管理又は処分」と「or」で結び、択一的に記しているところ、「管理及び処分」と(and)で結ぶのは、法令上の文言とは異なる(その効果の差異は何か)。

  受託者が、信託財産に属する財産の管理も処分も行う、と信託行為で決めた、ということだと思います。効果は管理、処分、信託の目的を達成するために必要な行為のうち、管理と処分行為については第三者対抗要件を備えるということになると考えられます(不動産登記法177条)。

信託不動産の賃貸借契約の締結や解除は管理行為とされるので(民法252条参照)、管理権限に限定された受託者でも、収益物件の信託が可能かもしれないが、処分権限を有しない受託者による賃貸借は短期賃貸借に限られることはないのか否か(民法602条)、借地借家法の適用関連も含めて確認しておきたい(ちなみに、兼営法の規定上、信託財産の貸借は、処分と同分類である)。

 処分権限を有しない受託者による賃貸借は、民法602条の短期賃貸借に限られると考えます。例えば、受託者を貸主として、第三者と土地の賃貸借契約(期間5年)を締結した場合、借地借家法の適用を受けません(借地借家法9条。)。受託者を貸主として、受益者と建物の賃貸借契約(期間3年)を締結した場合、借地借家法が適用されます(借地借家法29条~。)。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

また、残余財産の帰属権利者への帰属は、信託の終了後に生じるので、それが信託期中における弱者保護を重視する福祉型信託の目的たり得るのか否か、という論点がある(重要な問題である)。

 資産(財産)承継と福祉型信託の目的は両立し得ると思います。ただし、信託財産に属する財産の現在の状況どのようなものか、どのように承継したいのか、各親族の意思など個別具体的な状況によるのだと思います。このような場合、財産の状況や親族の意思によっては、信託を利用しない、という選択になることもあり得ると思います。

それでは、「(3)高齢者の変わらぬ住居の維持」という信託の目的からは、受託者による自宅不動産の売却が許容されるのだろうか。売却が許容される基準は何だろうか。そのような判断を形式的に行うのは容易ではない。

許容される基準や要件は、信託行為で定めておけばよいのではないかなと思います。

将来の資産残高を減らさないため、高齢者に対する余計な支出を避けたい、と信認義務を忘れて短絡する場合もあろう(受託者自らが承継人の一人となっていれば猶更だ)。

 この辺りは、信託を利用しなくても、同居の親族であればやる人はやると思うので、任意後見、法定後見制度との併用を考えておく必要があると考えます。

しかしながら、信託終了・清算の結果としての資産承継を、高齢者の認知症対策であり、生活支援の福祉型信託において、受託者が達成すべき「信託の目的」として、信託期中の目的と同列にし得るのか、よく考えてみたい。

 私は現在のところ、このような目的は利用していませんが、当事者が望めば両立可能だと思います。その際注意する点は、福祉型信託において守る財産と資産承継において守る財産を分けることです。


[1] 892号、令和4年6月、(株)テイハン、P34~

[2] 法制執務委員会『ワークブック法制執務』平成19年ぎょうせい、P672、P742

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