加工令和5年3月22日付け相続登記の申請義務化の施行に向けたマスタープラン

令和5年3月22日

法務省 相続登記の申請義務化の施行に向けたマスタープラン

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00343.html

第1 はじめに

社会問題となっている所有者不明土地の発生を予防するため、民法等の一部を改正する法律(令和3年法律第24 号。以下「一部改正法」という。)により不動産登記法(平成16年法律第123 号。以下「法」という。)が改正され、令和6年4月1日から、相続登記の申請が義務化される。

本マスタープランは、相続登記の申請義務化に伴う新制度が、所有者不明土地問題の解決に効果的につながることが期待される一方、幅広い国民層に相当大きな影響を及ぼすものであることから、相続登記の申請義務化の施行1年前の現段階において、法務省として、新制度の開始に向けた環境整備策や予定している運用上の取扱い等を明らかにすることにより、国民に新制度の十分な理解と適切な対応を促すことを目的とするものである。

第2 本マスタープランの前提(一部改正法で規定された新しいルール)

1 相続登記の申請義務化の概要

⑴ 相続等により不動産を取得した相続人は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該不動産を取得したことを知った日から3年以内に、相続登記を申請しなければならない(法第76 条の2第1項)。

⑵ 遺産分割により不動産を取得した相続人についても、遺産分割の日から3年以内に、相続登記を申請しなければならない(法第76 条の2第1項前段、第2項、第76条の3第4項)。

⑶ 正当な理由がないのに、上記⑴又は⑵の申請を怠ったときは、10 万円以下の過料の適用対象になる(法第164 条)。

⑷ 相続登記の申請義務化は、令和6年4月1日から施行される。

⑸ 令和6年4月1日より前に開始した相続によって不動産を取得した場合であっても、相続登記をしていない場合には、相続登記の申請義務の対象となる。ただし、3年間の猶予期間が設けられており、猶予期間中に相続登記を行えば、過料2の適用対象となることはない(一部改正法附則第5条第6項)。

2 相続人申告登記制度の概要

相続登記の申請義務を履行するための簡易な方法として、相続人申告登記という制度が新設された。相続人申告登記の申出をした者は、上記1⑴の申請義務を履行したものとみなされる(法第76 条の3第1項、第2項)。もっとも、上記1⑵の申請義務(遺産分割後の申請義務)については相続人申告登記の申出によって履行することはできない(法第76 条の3第2項括弧書)。

第3 相続登記の申請義務化に向けて進める環境整備

相続登記の申請義務化は、国民に新たな負担を課すものであるため、令和6年4月からの円滑な新制度開始に向けて、国民の負担軽減のための環境整備をあらかじめ進めていくことが重要である。このような環境整備策として、次の1から4までの取組を進め、国民目線に立ったその他の方策も順次講ずるものとする。

1 相続登記を促進するため、令和4年4月1日から、①評価額が100 万円以下の土地に係る相続登記の申請や、②相続により土地を取得した者が相続登記をせずに死亡した場合の当該相続登記の申請については、その登録免許税の免税措置が講じられている(免税期間は令和7年3月31 日まで)(租税特別措置法(昭和32 年法律第26号)第84 条の2の3)。この免税措置について、国民への周知・広報を引き続き実施し、比較的価値の低い土地や数代にわたって相続登記が放置された土地について、相続登記の申請を積極的に促す。

2 相続登記の申請手続に係る国民の不安を解消し負担を軽減する観点から、相続登記の申請のために必要な準備や申請書の記載方法等を利用者目線で分かりやすくまとめた「登記申請手続のご案内」(登記手続ハンドブック)を法務省で作成して、令和4年12 月から法務局ホームページで公開している。今後も、遺言の有無など相続手続の違いを踏まえ、登記手続ハンドブックの類型化や内容の充実を図ったり、典型的な相続のケースにおいて通常想定される必要な対応を示したりする(別紙参照)など、引き続き、登記申請手続についてきめ細やかな情報発信を進める。

3 相続登記の申請義務化への対応として登記申請を検討する国民の増加が見込まれることを踏まえ、全国の法務局・地方法務局で、電話・ウェブ会議・対面の各方式を用いた相続登記の手続案内を効果的に実施する。

また、司法書士・土地家屋調査士を始めとする専門資格者及びその団体と連携し、国民に対し、相続登記その他の登記申請に関する相談先等の情報を提供する。

4 上記第2の2の相続人申告登記は、相続登記の申請義務を自ら速やかに履行したいと考える国民にとって、簡便な手続として選択肢になるものであり、利便性の高い手続となるよう、令和6年4月1日の施行に向けて準備を進める。

相続人申告登記は、対象となる不動産を特定した上で、①所有権の登記名義人について相続が開始した旨及び②自らがその相続人である旨を申し出ることによって、相続登記の申請義務を履行したものとみなす制度であり、申出がされた場合には、登記官が所要の審査をした上で、登記簿に、申出をした者の氏名、住所等を職権で登記する(申出に係る登録免許税は、非課税)。

相続人申告登記は、相続人が複数存在する場合でも、他の相続人の関与なく単独

で行うことが可能であって、例えば、相続登記の申請義務の履行期限が迫っている場合などに、その義務を果たすための簡易な方法として利用可能である。もっとも、相続人申告登記は、相続登記とは異なり、相続人の氏名、住所等の公示に特化した登記であり、不動産についての権利関係を公示するものではないから、効果が限定的であることに留意を要する。

相続人申告登記は、相続登記の申請義務を履行する簡易な方法として、相続人本

人であっても容易に申し出ることができるよう、その申出手続は、申出の真正を確保しつつ、相続登記の申請手続と比べて簡略化したものとする。その具体の手続等を規定する法務省令及び通達は追って公表する予定であるが、その基本的方向性として、次の⑴から⑶までのとおりとする。

⑴ 相続人申告登記の申出は、書面による方法(管轄法務局の窓口に提出する方法又は管轄法務局に郵送する方法)と、管轄法務局宛てにオンラインで送信する方法を認める。オンラインによる申出は、Web ブラウザ上での負担の軽い手続を可能とし、単純な相続の事案では、オンライン上で申出を完結することができるものとする。

⑵ 申出をする本人の意思確認の方法として、書面による申出の場合の提出書面に対する押印や、オンラインによる申出の場合の提供情報に対する電子署名の付与は不要とし、それに代わる負担の軽減された確認方法を用いることとする。

⑶ 申出に必要となる基本的な添付情報は、次のアからウまでのとおりであるが、

行政間の情報連携等を効果的に用いることにより、可能な限り、添付省略や写し

(コピー)等の提供で足りる取扱いを認めることとする。

ア 申出をする者の本人確認情報

イ 相続があったことを証する情報

戸籍関係書類として、申出をする者が登記簿上の所有者(被相続人)の相続人

であることを確認することができる範囲で足りるものとし、相続登記の申請手続とは異なり、被相続人の出生から死亡に至るまでの戸籍関係書類までは要しないこととする。

さらに、今後運用が開始されることになる戸籍電子証明書の活用により、戸籍関係書類の提出を不要とする方策についても、速やかに検討を進める。

ウ 申出をする者の住所を証する情報

申出をする者が、申出の際に、その生年月日等の検索用情報(登記官において住民基本台帳ネットワークシステム(以下「住基ネット」という。)から情報を取得するために必要な情報)を法務局に提供して、登記官が住基ネットとの連携によりその住所を確認することができる場合には、住民票の写しの提供を不要とすることとする。

第4 相続登記の申請義務化の運用方針の決定

相続登記の申請義務化に伴う運用の在り方については、国民に自発的な申請を可能な限り促しつつ、新制度に関する予見可能性の確保と不安の解消を図るよう、法務局における運用の透明性及び公平性を十分に確保する。そのような観点から、今後、具体の運用や手続を規定する法務省令及び通達を早期に定めて公表することとするが、運用の方針として、以下のとおりとする。

1 過料通知及びこれに先立つ催告

登記官は、相続登記の申請義務に違反したことにより過料に処せられるべき者があることを職務上知ったときは、遅滞なく、管轄地方裁判所にその事件を通知するものとする(以下「過料通知」という。)。過料通知を受けた管轄地方裁判所は、過料決定に関する判断を行うことになる。

ただし、登記官が過料通知を行うのは、過料に処せられるべき要件を充足すると合理的に判断される場合に限るものとする。具体的には、登記官が過料通知を行うのは、申請義務に違反した者に対し、相当の期間を定めてその申請をすべき旨を催告したにもかかわらず、正当な理由なく、その申請がされないときに限ることとし、また、当該催告に応じて登記の申請がされた場合には、それ以前の正当な理由の有無にかかわらず、過料通知は行わないものとする。

2 登記官による相続登記の申請義務に違反した者の把握方法

登記官が行う催告の前提となる、相続登記の申請義務に違反した者の把握は、運用の統一性・公平性とともに国民の納得感を確保する観点から、登記官が登記申請の審査の過程等で把握した情報により行うこととする。

登記官による相続登記の申請義務違反の把握の端緒としては、例えば、次のような場合が想定される。

⑴ 相続人が遺言書を添付して遺言内容に基づき特定の不動産の所有権の移転の登記を申請した場合において、当該遺言書に他の不動産の所有権についても当該相続人に遺贈し、又は承継させる旨が記載されていたとき。

⑵ 相続人が遺産分割協議書を添付して協議の内容に基づき特定の不動産の所有権の移転の登記を申請した場合において、当該遺産分割協議書に他の不動産の所有権についても当該相続人が取得する旨が記載されていたとき。

3 「正当な理由」があると認められる場合

⑴ 上記1の催告をしたにもかかわらず、当該催告に係る登記の申請が相当の期間内にされない場合であっても、当該登記の申請をしないことに「正当な理由」があると認められるときには、過料通知は行わない。

「正当な理由」の有無は、登記官が、個別の事案における具体的な事情に応じて判断するものとし、上記1の催告手続においては、「正当な理由」の有無やその内容について申告することを求めるものとする。

⑵ 一般的に、例えば、次のアからオまでのような事情がある場合には、相続登記の申請をしていないことにつき「正当な理由」があると考えられる。もっとも、

「正当な理由」があると認められるのは、これらの場合に限定されるものではないため、「正当な理由」についての判断は、登記官において、相続登記の申請義務を負う者の具体的事情を丁寧に確認した上で行うものとする。

ア 数次相続が発生して相続人が極めて多数に上り、かつ、戸籍関係書類等の収集や他の相続人の把握等に多くの時間を要する場合

イ 遺言の有効性や遺産の範囲等が争われているために不動産の帰属主体が明らかにならない場合

ウ 相続登記の申請義務を負う者自身に重病等の事情がある場合

エ 相続登記の申請義務を負う者がDV被害者等であり、その生命・身体に危害が及ぶおそれがある状態にあって避難を余儀なくされている場合

オ 相続登記の申請義務を負う者が経済的に困窮しているために登記に要する費用を負担する能力がない場合

第5 相続登記の申請義務化に向けた周知・広報

相続登記の申請義務化に向けては、負担軽減のための環境整備策を含めた制度の内容や具体的ルールについて、関連する制度改正(例えば、令和5年4月から始まる具体的相続分による遺産分割の期間制限)等と併せ、国民一般に分かりやすく十分な周知を、引き続き図ることが重要である。

法務省では、これまでも、①法務局・地方自治体の窓口や、法務省ホームページ、パンフレット、動画等を用いた情報提供のほか、②地方自治体や専門資格者団体等と連携した説明会・相談会の開催等を進めてきたところであるが、新制度開始1年前の現時点で、国民の認知・理解が十分に進んでいる状況にはない。

今後、国民各層の認知度を一層向上させるため、従前の取組から一歩進めて、国民の幅広い層に必要な情報が確実に届けられるよう、住民に身近な各地の地方自治体、公共的団体(自治会等)、各種資格者団体、福祉団体及び経済団体等とも連携し、一段ときめ細やかな、幅広い周知・広報に取り組む。

その観点から、政府を挙げた省庁横断的な広報対応や、関係機関・団体の幅広いサポートを得た周知活動、国民各層の年齢・環境に応じて多様な広報ツール・手法を用いた情報発信等について、法務省を挙げて、国民の理解の増進と協力の確保に全力で取り組んでいく。

以 上

読んでみて

・相続人申告登記を申請する場合は、抵抗がなければ、同時に生年月日の提供を行う。

・戸籍電子証明書について

・・・オンラインで発行する場合、マイナポータルからマイナンバーカードに戸籍に関する識別情報を付与してもらう。

対面で発行してもらう場合、役所などにマイナンバーカードを提出して、戸籍に関する識別情報を付与してもらう。

参考

法務省 戸籍法部会資料 12戸籍法の改正に関する要綱案

https://www.moj.go.jp/content/001387519.pdf

5 電子的な戸籍証明情報(戸籍電子証明情報)の発行

(1) 本人等による戸籍証明書又は除籍証明書の交付の請求は,戸籍証明書又は除籍証明書の交付に代えて,戸籍電子証明情報(戸籍証明書に係る電磁的記録を

いう。)又は除籍電子証明情報(除籍証明書に係る電磁的記録をいう。)の発行についてすることができるものとする(注1)。

(2) 前記4(1)後段及び同(2)の規定は,(1)の場合に準用するものとする。

(3) 戸籍電子証明情報又は除籍電子証明情報の発行の方法(注2)その他(1)及び(2)の規定の実施に関し必要な事項は,法務省令で定めるものとする。

(注1)戸籍電子証明情報等は,前記4の広域交付に係る戸籍証明書又は除籍証明書についても発行することができるものとする。

(注2)戸籍電子証明情報等の交付に当たっては,マイナンバー制度におけるマイナポータルの仕組みを活用し,オンラインにより交付請求を行うことも可能とすることを想定している。

戸籍法

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000224_20230401_503AC0000000037

第百二十一条の三 法務大臣は、行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(平成二十五年法律第二十七号)第十九条第八号又は第九号の規定による提供の用に供する戸籍関係情報(同法第九条第三項に規定する戸籍関係情報をいう。)を作成するため、第百十九条の規定により磁気ディスクをもつて調製された戸籍又は除かれた戸籍の副本に記録されている情報を利用することができる。

行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=425AC0000000027_20230401_504AC0000000026

(利用範囲)

第九条(1項2項略)

3 法務大臣は、第十九条第八号又は第九号の規定による戸籍関係情報(戸籍又は除かれた戸籍(戸籍法(昭和二十二年法律第二百二十四号)第百十九条の規定により磁気ディスク(これに準ずる方法により一定の事項を確実に記録することができる物を含む。)をもって調製されたものに限る。以下この項及び第四十五条の二第一項において同じ。)の副本に記録されている情報の電子計算機処理等(電子計算機処理(電子計算機を使用して行われる情報の入力、蓄積、編集、加工、修正、更新、検索、消去、出力又はこれらに類する処理をいう。)その他これに伴う政令で定める措置をいう。以下同じ。)を行うことにより作成することができる戸籍又は除かれた戸籍の副本に記録されている者(以下この項において「戸籍等記録者」という。)についての他の戸籍等記録者との間の親子関係の存否その他の身分関係の存否に関する情報、婚姻その他の身分関係の形成に関する情報その他の情報のうち、第十九条第八号又は第九号の規定により提供するものとして法務省令で定めるものであって、情報提供用個人識別符号(同条第八号又は第九号の規定による特定個人情報の提供を管理し、及び当該特定個人情報を検索するために必要な限度で第二条第五項に規定する個人番号に代わって用いられる特定の個人を識別する符号であって、同条第八項に規定する個人番号であるものをいう。以下同じ。)をその内容に含むものをいう。以下同じ。)の提供に関する事務の処理に関して保有する特定個人情報ファイルにおいて個人情報を効率的に検索し、及び管理するために必要な限度で情報提供用個人識別符号を利用することができる。当該事務の全部又は一部の委託を受けた者も、同様とする。

戸籍法施行規則

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322M40000010094

第七十七条 戸籍事務を電子情報処理組織によつて取り扱う場合には、戸籍の記録をするごとに、市町村長又はその職務を代理する者は、その識別番号を記録しなければならない。

令和5年4月1日施行法務省令第六号不動産登記規則等の一部を改正する省令

法務省 不動産登記規則等の一部を改正する省令(令和5年法務省令第6号)(令和5年3月20日公布)

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00501.html#mokuji3

〇法務省令第六号

民法等の一部を改正する法律(令和三年法律第二十四号)及び不動産登記令等の一部を改正する政令(令和四年政令第三百十五号)の施行に伴い、並びに関係法令の規定に基づき、及び関係法令を実施するため、不動産登記規則等の一部を改正する省令を次のように定める。

令和五年三月二十日 法務大臣 斎藤健

不動産登記規則等の一部を改正する省令

(不動産登記規則の一部改正)

第一条  不動産登記規則(平成十七年法務省令第十八号)の一部を次のように改正する。

次の表により、改正前欄に掲げる規定の傍線を付した部分をこれに順次対応する改正後欄に掲げる規定の傍線を付した部分のように改め、改正前欄及び改正後欄に対応して掲げるその標記部分に二重傍線を付した規定(以下「対象規定」という。)は、その標記部分が同一のものは当該規定を改正後欄に掲げるもののように改め、その標記部分が異なるものは改正前欄に掲げる対象規定を改正後欄に掲げる対象規定として移動し、改正後欄に掲げる対象規定で改正前欄にこれに対応するものを掲げていないものは、これを加える。

改正後

(法第七十条第二項の相当の調査)第百五十二条の二

 法第七十条第二項の法務省令で定める方法は、次の各号に掲げる措置をとる方法とする。

一法第七十条第二項に規定する登記の抹消の登記義務者(以下この条において単に「登記義務者」という。)が自然人である場合

イ 共同して登記の抹消の申請をすべき者の調査として次の(1)から(5)までに掲げる措置

(1) 登記義務者が記録されている住民基本台帳、除票簿、戸籍簿、除籍簿、戸籍の附票又は戸籍の附票の除票簿(以下この条において「住民基本台帳等」という。)を備えると思料される市町村の長に対する登記義務者の住民票の写し又は住民票記載事項証明書、除票の写し又は除票記載事項証明書、戸籍及び除かれた戸籍の謄本又は全部事項証明書並びに戸籍の附票の写し及び戸籍の附票の除票の写し(以下この条において「住民票の写し等」という。)の交付の請求

(2)(1)の措置により登記義務者の死亡が判明した場合には、登記義務者が記録されている戸籍簿又は除籍簿を備えると思料される市町村の長に対する登記義務者の出生時からの戸籍及び除かれた戸籍の謄本又は全部事項証明書の交付の請求

(3)(2)の措置により登記義務者の相続人が判明した場合には、当該相続人が記録されている戸籍簿又は除籍簿を備えると思料される市町村の長に対する当該相続人の戸籍及び除かれた戸籍の謄本又は全部事項証明書の交付の請求

(4)(3)の措置により登記義務者の相続人の死亡が判明した場合には、当該相続人についてとる(2)及び(3)に掲げる措置

(5)(1)から(4)までの措置により共同して登記の抹消の申請をすべき者が判明した場合には、当該者が記録されている住民基本台帳又は戸籍の附票を備えると思料される市町村の長に対する当該者の住民票の写し又は住民票記載事項証明書及び戸籍の附票の写し((1)の措置により交付の請求をしたものを除く。)の交付の請求

ロ  共同して登記の抹消の申請をすべき者の所在の調査として書留郵便その他配達を試みたことを証明することができる方法による次の(1)及び(2)に掲げる措置

(1)登記義務者の不動産の登記簿上の住所に宛ててする登記義務者に対する書面の送付(イの措置により登記義務者の死亡及び共同して登記の抹消の申請をすべき者が所在すると思料される場所が判明した場合を除く。)

(2)イの措置により共同して登記の抹消の申請をすべき者が所在すると思料される場所が判明した場合には、その場所に宛ててする当該者に対する書面の送付

二  登記義務者が法人である場合

イ  共同して登記の抹消の申請をすべき者の調査として次の(1)及び(2)に掲げる措置

(1)  登記義務者の法人の登記簿を備えると思料される登記所の登記官に対する登記義務者の登記事項証明書の交付の請求

(2)の措置により登記義務者が合併により解散していることが判明した場合には、登記義務者の合併後存続し、又は合併により設立された法人についてとる(1)に掲げる措置

ロ  イの措置により法人の登記簿に共同して登記の抹消の申請をすべき者の代表者(共同して登記の抹消の申請をすべき者が合併以外の事由により解散した法人である場合には、その清算人又は破産管財人。以下この号において同じ。)として登記されている者が判明した場合には、当該代表者の調査として当該代表者が記録されている住民基本台帳等を備えると思料される市町村の長に対する当該代表者の住民票の写し等の交付の請求

ハ    共同して登記の抹消の申請をすべき者の所在の調査として書留郵便その他配達を試みたことを証明することができる方法による次の(1)及び(2)に掲げる措置

(1) 登記義務者の不動産の登記簿上の住所に宛ててする登記義務者に対する書面の送付(イの措置により登記義務者が合併により解散していること及び共同して登記の抹消の申請をすべき者が所在すると思料される場所が判明した場合を除く。)

(2)イの措置により共同して登記の抹消の申請をすべき者が所在すると思料される場所が判明した場合には、その場所に宛ててする当該者に対する書面の送付

ニ  イ及びロの措置により共同して登記の抹消の申請をすべき者の代表者が判明した場合には、当該代表者の所在の調査として書留郵便その他配達を試みたことを証明することができる方法による次の(1)及び(2)に掲げる措置

(1)共同して登記の抹消の申請をすべき者の法人の登記簿上の代表者の住所に宛ててする当該代表者に対する書面の送付

(2)イ及びロの措置により当該代表者が所在すると思料される場所が判明した場合には、その場所に宛ててする当該代表者に対する書面の送付

改正前

【条を加える。】

改正後

(申請人以外の者に対する通知)第百八十三条

【一・ニ略】

三 法第六十九条の二の規定による申請に基づく買戻しの特約に関する登記の抹消を完了した場合

当該登記の登記名義人であった者

【2・3略】

4 登記官は、民法第九百条及び第九百一条の規定により算定した相続分に応じてされた相続による所有権の移転の登記についてする次の各号に掲げる事由による所有権の更生の登記の申請(登記権利者が単独で申請するものに限る。)があった場合には、登記義務者に対し、当該申請があった旨を通知しなければならない。

一 遺産の分割の方法の指定として遺産に属する特定の財産を共同相続人の一人又は数人に承継させる旨の遺言による所有権の取得

二 遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)による所有権の取得

   改正前

(申請人以外の者に対する通知)第百八十三条同上

  一・二 同上

号を加える

2・3 同上

改正後

(登記事項証明書の交付の請求情報等)第百九十三条【略】

2 法第百二十一条第三項又は第四項の規定により土地所在図以外の登記簿の附属書類の閲覧の請求をするときは、前項第一号及び第二号に掲げる事項のほか、次に掲げる事項を請求情報の内容とする。

【一〜三略】

四    法第百二十一条第三項の規定により土地所在図等以外の登記簿の附属書類の閲覧の請求をするときは、閲覧する部分及び当該部分を閲覧する正当な理由

五    法第百二十一条第四項の規定により土地所在図等以外の登記簿の附属書類の閲覧の請求をするときは、閲覧する附属書類が自己を申請人とする登記記録に係る登記簿の附属書類である旨

3 前項第四号の閲覧の請求をするときは、同号の正当な理由を証する書面を提示しなければならない。この場合において、登記官から求めがあったときは、当該書面又はその写しを登記官に提出しなければならない。

4 第二項第五号の閲覧の請求をするときは、同号の閲覧する附属書類が自己を申請人とする登記記録に係る登記簿の附属書類である旨を証する書面を提示しなければならない。この場合において、登記官から求めがあったときは、当該書面又はその写しを登記官に提出しなければならない。

􅩋 􅩋7略

改正前

(登記事項証明書の交付の請求情報等)第百九十三条【同上】

2  法第百二十一条第二項の規定により土地所在図等以外の登記簿の附属書類の閲覧の請求をするときは、前項第一号及び第二号に掲げる事項のほか、次に掲げる事項を請求情報の内容とする。

【一〜三同上】

四    法第百二十一条第二項ただし書の利害関係を有する理由及び閲覧する部分

【号を加える】

3 前項の閲覧の請求をするときは、同項第四号の利害関係がある理由を証する書面を提示しなければならない。

4・5・6同上

改正後

(登記事項証明書の受領の方法)第百九十七条の二

第百九十四条第三項前段の規定により登記事項証明書の交付を請求した者が当該登記事項証明書を登記所で受領するときは、法務大臣が定める事項を当該登記所に申告しなければならない。

改正前

(登記事項証明書の受領の方法)第百九十七条の二

第百九十四条第三項前段の規定により登記事項証明書の交付を請求した者が当該登記事項証明書を登記所で受領するときは、法務大臣が定める情報を当該登記所に提供しなければならない

改正後

(手数料の納付方法)第二百三条

法第百十九条第一項及び第二項、第百二十条第一項及び第二項並びに第百二十一条第一項から第四項までの手数料を収入印紙をもって納付するときは、請求書に収入印紙を貼り付けてしなければならない。

2【略】

改正前

(手数料の納付方法)第二百三条

法第百十九条第一項及び第二項、第百二十条第一項及び第二項並びに第百二十一条第一項及び第二項の手数料を収入印紙をもって納付するときは、請求書に収入印紙を貼り付けてしなければならない。

2【同上】

改正後

(電子情報処理組織による登記事項証明書の交付の請求等の手数料の納付方法)第二百五条

 法第百十九条第四項ただし書(法第百二十条第三項及び第百二十一条第五項並びに他の法令において準用する場合を含む。)の法務省令で定める方法は、第百九十四条第二項及び第三項に規定する方法とする。

【2・3 略】

改正前

(電子情報処理組織による登記事項証明書の交付の請求等の手数料の納付方法)

第二百五条法第百十九条第四項ただし書(法第百二十条第三項及び第百二十一条第三項並びに他の法令において準用する場合を含む。)の法務省令で定める方法は、第百九十四条第二項及び第三項に規定する方法とする。

【2・3 同上】

改正後

(準用)第二百四十一条

第二百二条の規定は筆界特定手続記録の閲覧について、第二百三条第一項の規定は法第百四十九条第一項及び第二項の手数料を収入印紙をもって納付するときについて、第二百四条の規定は請求情報を記載した書面を登記所に提出する方法により第二百三十八条第一項の交付の請求をする場合において前条第三項の規定による申出をするときについて、第二百五条第二項の規定は第二百三十九条第二項に規定する方法により筆界特定書等の写しの交付の請求をする場合において手数料を納付するときについて、それぞれ準用する。この場合において、第二百二条第二項中「法第百二十条第二項及び第百二十一条第二項」とあるのは「法第百四十九条第二項」と、第二百三条第一項中「法第百十九条第一項及び第二項、第百二十条第一項及び第二項並びに第百二十一条第一項から第四項まで」とあるのは「法第百四十九条第一項及び第二項」と、第二百四条第一項中「第百九十三条第一項」とあるのは「第二百三十八条第一項」と、「第百九十七条第六項(第二百条第三項及び第二百一条第三項において準用する場合を含む。)」とあるのは「第二百四十条第三項」と読み替えるものとする。

改正前

(準用)第二百四十一条

第二百二条の規定は筆界特定手続記録の閲覧について、第二百三条第一項の規定は法第百四十九条第一項及び第二項の手数料を収入印紙をもって納付するときについて、第二百四条の規定は請求情報を記載した書面を登記所に提出する方法により第二百三十八条第一項の交付の請求をする場合において前条第三項の規定による申出をするときについて、第二百五条第二項の規定は第二百三十九条第二項に規定する方法により筆界特定書等の写しの交付の

請求をする場合において手数料を納付するときについて、それぞれ準用する。この場合において、第二百二条第二項中「法第百二十条第二項及び第百二十一条第二項」とあるのは「法第百四十九条第二項」と、第二百三条第一項中「法第百十九条第一項及び第二項、第百二十条第一項及び第二項並びに第百二十一条第一項及び第二項」とあるのは「法第百四十九条第一項及び第二項」と、第二百四条第一項中「第百九十三条第一項」とあるのは「第二百三十八条第一項」と、「第百九十七条第六項(第二百条第三項及び第二百一条第三項において準用する場合を含む。)」とあるのは「第二百四十条第三項」と読み替えるものとする。

・読んでみて

・休眠担保権の登記の抹消申請について(参考、不動産登記69条、69条の2、70条。)

供託して抹消登記申請(不動産登記法70条3項、戸籍調査など要求されてない)・・・所有権以外の物権、債権(賃借権のみ)、買戻しの特約がある登記。
供託しないで抹消(不動産登記法70条2項、戸籍・住所調査など要求)・・・地上権、永小作権、質権、賃借権、採石権、買戻しの特約登記。抵当権、根抵当権は該当なし。
→占有があって邪魔だから。登記記録上、存続期間で分かる権利があるから。買戻しの特約は、お金を払ったのが本当か分からないから、一応通知します。


登記義務者が自然人の場合

・戸籍、住所を追って、配達証明付き書留郵便を送った(けれど反応がなかった。)ことを証明する情報を提供。

登記義務者が法人の場合

・法人の登記記録、法人の代表者住所を追って、不動産登記記録上の法人の本店所在地・代表者の住所に、配達証明付き書留郵便を送った(けれど反応がなかった。)ことを証明する情報を提供。

・申請人以外の者に対する通知について

・不動産登記記録上の住所に、通知がされる場合

・買戻しの特約に関する登記の抹消を完了した場合の登記名義人。参考として不動産登記令7条3項1号。

・相続により法定相続分で登記された後(戸籍関係のみが添付されている。)、権利を得る登記権利者が単独で更生の登記申請をした場合。理由は、2つのみ。一つ目が、遺産の分割の方法の指定として遺産に属する特定の財産を共同相続人の一人又は数人に承継させる旨の遺言による所有権(持分)の取得。二つめが、遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)による所有権(持分)の取得。参考として不動産登記法63条3項。

→考えられること。不意打ちを避けるための手続き保障。

磯崎 哲也『起業のファイナンス ベンチャーにとって一番大切なこと 増補改訂版』 第6章 資本政策の作り方

資本政策の位置付けとサイクル

→現金の回り方の計算書・予定書→株主価値→資本政策→事業計画→

資本政策表に必要な情報

・発行済株式の総数(会社法37条)

・株主名(会社法50条、102条、121条、124条、209条、282条、会社計算規則2条3項20号など)

・株式の種類(会社法2条、106条、107条、245条など)

・資金調達の額(会社法445条など)

・出資比率・持株比率(会社法121条、商業登記所における実質的支配者情報一覧の保管等に関する規則など)

資本政策の策定手順(設立後3年の企業が、3年後に上場を目指す場合)

・上場時の時価総額の検討
・時価総額と前提条件の1売買単位金額から上場時発行済株式数を検討
・上場時の、公募株式数の検討
・上場時の、売出株式数の検討
・公簿増資前における、発行済株式数の検討
・上場時売出株式数の検討
・公簿増資前の、発行済株式数の検討
・株式分割幅の検討
・従業員持株会への割当方式数と、ストックオプション付与株数の検討
・上場前の資金調達の検討
・安定株主比率の検証
・上場基準を充たしているかの確認

株主構成、持ち株比率のチェックポイント

□必要となる資金がちゃんと調達できるか?(企業価値や株価は適正か?)

□上場後も安定した株主構成となるか?

□創業者や投資家の苦労に報いるだけのキャピタルゲインは出るか?

□上場基準は満たしているか。

□創業者以外の者・法人で50%を超える割合の株式を持つことになる場合、単独で株主総会普通決議を行うことが出来なくなる(会社法309条1項)ので、考えることが必要。

□上の50%と同じく、3分の1を超える割合の株式を持つこととなる場合、単独で株主総会の特別決議を行うことが出来なくなる(会社法309条2項)ので、考えることが必要。例:(募集事項の決定)会社法199条2項など。

□投資契約における拒否権

会計の持株比率への影響

・外部投資家の持ち株比率が20%、40%、50%を超える場合の影響・・・持分法適用会社となり、出資を受けた持分を投資した企業の決算に反映させる可能性、連結決算が必要な企業に該当する可能性が出てくる。

参考
日本公認会計士協会
連結財務諸表における子会社及び関連会社の範囲の決定に関する監査上の取扱い
https://jicpa.or.jp/specialized_field/post_701.html

財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則8条
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=338M50000040059_20210924_503M60000002061

連結財務諸表原則第4.8
https://www.fsa.go.jp/p_mof/singikai/kaikei/tosin/1a902f5.html

会社計算規則2条3項26号

ストックオプション(新株予約権、会社法236条~)

・発行量(会社法238条1項1号)、発行済株式の総数並びに種類及び数に対する比率。

・誰に渡すのか、何人に渡すのか(会社法241条から246条。)。

・多数の人に分散している場合に、数名に集めることは出来るか(会社法254条から266条。)。

・ストックオプションを行使する資金を、調達することは出来るか(会社法246条。)
・大きな問題とならないとされる量は、発行済株式の総数並びに種類及び数の10%から20%。

参考・税制適格ストックオプション
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1540.htm

・企業価値を、設立時資本金の額から何倍になった、という視点だけで考えない。目的のために、いつ、いくら必要なのか、そのために今どの位の価値で評価されることが妥当なのか調整。

・共同創業者や家族が株主の場合の、けんかの危険。

分からなかったところなど

□持ち株比率が上場後も安定した株主構成となるか、の安定とは?創業者、または設立時の株主がが過半数を持っている状態?その他にもありますか?
・・・みらいワークス、カラダノート
あるっちゃある。
創業者の範囲を広げる。資産管理会社、上場時に薦められる。Iの部。取引先(株式の持ち合い)。財団法人(奨学金関係など)で、資産を減らしたうえで、配当を原資にする。
研究開発型スタートアップだと、持ち株比率は減る(ユーグレナなど。)。

分からなかったところなど

□上場時の新株予約権の割合は、10%位が目安の根拠(山岡 佑『実践スタートアップ・ファイナンス 資本政策の感想戦』P272など)

・・・日本の慣習、米国20%あり。VCに抵抗感があるので、説明が求められる。説明出来れば良い。過渡期。メルカリなど。
https://signal.diamond.jp/articles/-/1583

欧米型のストックオプションは、優先株調達のステージごとに、調達直前の株式数にストックオプション用の株式数が新たに追加された上で、1株あたりの価格が決められる。そしてそれがステージごとに繰り返される。つまり、調達時のプレマネー時価総額に、ストックオプションの発行が織り込まれている(潜在株式によって時価総額は変わらない)ということだ。投資家にとってみると、潜在株式が多いほど投資時の株価が下がるので、そのステージのストックオプションは多いほどよい。起業家は、ステージごとにストックオプションの量が設定されるので、採用計画に合わせてオプションの付与計画も建てやすい、という具合だ。その結果、欧米では総発行株式数の20〜25%のストックオプションが発行されるのが通常だ。

参考
・2019/08/14株式会社Coral Capital Yohei Sawayama
「国内スタートアップの資金調達相場レポート「Japan Startup Deal Terms」2019年夏版をリリースします」https://coralcap.co/2019/08/deal-terms-2019summer/
・(一社)日本経営調査士協会 監修 「IPO・内部統制の基礎と実務(第3版)」2017年、同文館出版
・経済産業省「スタートアップの成長に向けた ファイナンス に関するガダファイナンス」2022年4月
・金融庁「コーポレートガバナンス・コード【基本原則1-3.資本政策の基本的な方針】」
・明治大学専門職大学院グローバル・ビジネス研究科木村哲「ベンチャー企業の株式価値評価のための期待リターンと資本政策の研究」
・FoundX Review「共同創業者間での株式の分け方 (Michael Seibel)」
・山岡 佑『実践スタートアップ・ファイナンス 資本政策の感想戦』2021年、日経BP
・2021年6月15日日本証券業協会「非上場株式の発行・流通市活性化に関する検討懇談会」報告書

2023(令和5)年4月1日施行民法改正(相続放棄、940条)

施行日 2023(令和5)年4月1日

対象となる人

相続放棄の申述申立てを、家庭裁判所に対して行ったときに、相続放棄した財産を現に占有している人。

現に占有って?

被相続人名義の建物に住んでいる(下の土地も占有)、通帳を持っている、家具や遺品を持っているなど。Nintendo Switchなど。

観念的承継は含まないって?[1]

→被相続人名義が、自己名義の畑を耕していた場合、そのことは知っていたけれど、行ったことはないとき、など。


[1] 村松 秀樹 (著, 編集), 大谷 太 (著, 編集)『Q&A令和3年改正民法・改正不登法・相続土地国庫帰属法』、2022、P235

改正の効果

・次の順位の相続人が存在しない場合にも適用される。

・相続放棄の時点で、相続財産に属する財産を現に占有している人だけが、保存義務を負う。→相続放棄をした他の相続人は、義務を負わない。

・相続財産の保存義務を負う相手方

他の相続人、相続財産の清算人。

→近隣の人や、自治体からこの条文を根拠に責任を問われることはない。

保存義務が終わるとき

→相続人、法定相続人全員が放棄した場合は相続財産の管理人・相続財産の清算人などに対して当該財産を引き渡したとき。供託(民法494条、497条)が利用される可能性はあるか。現金?

改正の影響

・相続財産の清算人の選任請求(民法952条)の促進の可能性。

令和3年12月14日(火)定例閣議案件

民法等の一部を改正する法律の施行期日を定める政令(決定)

https://www.kantei.go.jp/jp/kakugi/2021/kakugi-2021121401.html

法務省  「民法等一部改正法・相続土地国庫帰属法の概要」【令和4年11月28日掲載】

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00343.html

民法

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089

改正前

(相続の放棄をした者による管理)

第九百四十条 相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない。

2 第六百四十五条、第六百四十六条、第六百五十条第一項及び第二項並びに第九百十八条第二項及び第三項の規定は、前項の場合について準用する。

改正後

(相続の放棄をした者による管理)

第九百四十条 相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は第九百五十二条第一項の相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない。

2 第六百四十五条、第六百四十六条並びに第六百五十条第一項及び第二項の規定は、前項の場合について準用する。

渋谷陽一郎「裁判例・懲戒事例に学ぶ民事信託支援業務の執務指針」第1章

渋谷陽一郎「裁判例・懲戒事例に学ぶ民事信託支援業務の執務指針」、2023年1月、民事法研究会第1章

http://www.minjiho.com/shopdetail/000000001380/

・刊行に寄せて

東北大学大学院法学研究科 吉永一行教授

市民と法掲載の「執務指針案」を4つに分類。

  • 民事信託支援業務の提供自体に関わる義務

委任契約と請負契約との区分。区分に伴って異なる結果となる、事務と完成物の品質水準・注意水準。

  • 民事信託支援業務の準備・環境整備としての付随的義務。

職員による事務処理など。

  • 説明義務

義務違反により、独自に損害賠償義務(令和3年9月17日東京地方裁判所判決平成31年(ワ)第11035号損害賠償請求事件など。)の根拠となる。

  • 民事信託支援業務にあたる法律専門職が追う社会的使命として位置づけられるべき行為規範

司法書士法、施行規則、行為規範、会則との関係。

・刊行に寄せてー司法書士制度と民事信託支援業務ー

日本司法書士会連合会名誉会長 斎木賢二司法書士

司法書士は―中略―民事信託を開発し―中略―信託組成-。民事信託とは、専門家ではない、一般の市民が、その担い手(受託者)となって行う「本人信託」である。

→民事信託を開発したのが司法書士なのか、本書にも記載がありますが、信託組成とは何なのか、本人信託とは本人訴訟との類似性を強調するために使っているのか、分かりませんでした。

はしがき

自由かつ緻密な論争の存在こそが民事信託支援業務の規律化とさらなる展開のための希望である。

→私も同感です。著者はどうなのでしょうか。

(4)規則31条業務としての信託監督人

 原則として成年後見人は誰でもなれる(市民後見人。家庭裁判所の選任を要するが。)

→本人の親族でない人が、家庭裁判所の成年後見人選任要件を満たすには、実質的には行政の許認可ほどの要件があり、誰でもなれる、とはいえないのではないかと思います。

司法書士が信託監督人として規則31条業務を行う方向性は、平成18年の信託法改正直後から主張されてきた。

→文献、資料などがあれば教えていただきたいと思います。平成18年前後に、私は聴いたり読んだりしたことがありません。

民事信託分野の弊害である「われこそ専門家」症候群や、民事信託を踏み台にしてなり上がってやろうという過剰な自意識を抑えて情報の共有を行いー中略ー

→司法書士各々が事業者である以上、仕方がない面もあると思います。法令に違反しないように気を付けるのは当然として、です。それは著者も御存じです。ただ、批評すると組織から排除するのは、止めて欲しいと考えます。

3 民事信託支援業務の執務指針

そこで、民事信託支援業務の執務指針を策定する場合、単に既存の登記代理、本人訴訟支援、簡裁訴訟支援、債務整理などの他業務類型を想定した会則や指針を流用し、それらに上書きして、形だけの抽象的な指針としてしまうことは避けたい。

→意欲的な都道府県会が策定するのではないでしょうか。沖縄県会に関しては、昨年、本人確認に関する指針について、変更を要望しましたが却下だったので無理だと思います。結果として、先に策定した都道府県会の指針が公表されて、他の都道府県、日本司法書士会連合会に広がっていく流れではないかと予想します。

 ただし、指針を策定することで司法書士の業務がやりやすくなるのか、依頼者・司法書士共に護られることになるのかは、分かりません。策定が目的になるならば、各司法書士が司法書士法の解釈から自身で最低限の指針を作成して、委任契約書に記載した方が良いのかもしれません。

PAGE TOP