米国での相続について

特定非営利活動法人 渉外司法書士協会 令和3年10月2日(土)第5回東京定例会

講師:本郷法律事務所 (Hongo Law Office, LLLC)弁護士 本郷友香(ホンゴウ ユカ)

アメリカのトラストとは?

• トラスト(信託)とは、資産をトラストという「箱」に入れることにより、プロベート(検認手続き)を回避することができる、遺言書のような文書。

Probate(プロベート)とは?

• アメリカでは相続に際し、厄介なプロベート制度を設けている。

• プロベート・・・裁判所を通じて、亡くなった方の財産をどのように分配するかを決定するプロセス。

• 相続人が誰なのかを確認し、任命される遺言執行人が税の支払い、債務の返済等をした上で、残った資産を相続人に受け渡す作業

・裁判所のスケジュールに基づいて実施される・時間(6ヶ月~1年。)。

・プロベートに立ち会ってもらう弁護士も雇用するため、お金が掛かる。

 遺言書を裁判所で開封して、相続人が誰なのかを確認するまでは、日本の自筆証書遺言の検認と似ている。

民法(遺言書の検認)

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089

第千四条 遺言書の保管者は、相続の開始を知った後、遅滞なく、これを家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければならない。遺言書の保管者がない場合において、相続人が遺言書を発見した後も、同様とする。

2 前項の規定は、公正証書による遺言については、適用しない。

3 封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人又はその代理人の立会いがなければ、開封することができない。

法務局における遺言書の保管等に関する法律

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=430AC0000000073

(遺言書の検認の適用除外)

第十一条 民法第千四条第一項の規定は、遺言書保管所に保管されている遺言書については、適用しない。

Probate(プロベート)を通過する場合・回避できる場合

• プロベートを通過する場合

1)遺言書だけを作成していた場合

2)トラストやTransfer on Death Deed (TODD)等のプロベートを回避するための文書のいずれも作成していなかった場合

3)遺言書やその他プロベートを回避するための文書を何も作成していなかった場合

• プロベートを回避できる場合

1)トラストを生前作成しておいた場合

2)Transfer on Death Deed (TODD) を生前作成しておいた場合・・・不動産のみ

・トラストの構成

人物構成

1)Grantor/Settlor(委託者) 被相続人で、トラストに入れる資産の所有者。

2)Trustee(受託者) トラストの資産を管理し、被相続人の死後、資産をトラストに指定される受益者に分配する役割を持つ。

3)Beneficiary(受益者) トラスト上の資産の受取人。

居住地が州にない人が、トラストを作成するするのは難しい。

・トラストの作成方法

 受託者や受益者を誰に指定するか等を決めた後、トラスト文書を作成。基本的には、誰にどの資産を、どの割合で分配するのかを指定。トラスト文書には色々な条項を設けることができる。受益者のそれぞれに、どの資産を、どの割合で、被相続人の死後、分配するのか。

・トラスト作成後の名義変更手続き

トラスト文書を作成後、トラストに入れたい資産を、トラストの名義に変更する手続き。名義変更手続きをすることによって、資産をトラストの一部にする。

 トラストに入れる資産として、不動産が最も重要な資産となる場合が多い。元々の所有者からトラストに指定したトラスティー(受託者)に所有名義を譲渡させるための譲渡証書を作成し、不動産登記をする登記所(ハワイではBureau Conveyances)に登記 することによって、不動産の名義をトラスト名義に変更し、トラスト 資産の一部にすることができる。・・・トラスト名義・・・受託者名義。

その他の資産の名義変更手続き

• 生命保険、アメリカでの退職貯蓄金 (IRA、401(K))、銀行口座、車等は、トラストに入れなくとも、プロベートを回避できる場合が多い。トラストに入れなくても良い場合もある。生命保険、退職貯蓄金や銀行口座等においては、それぞれの機関の受取人用紙において、生前受取人を指定しておきますと、受取人は被相続人の死後、死亡証明書を提示することによって、プロベートを通過せず、お金をそれぞれの機関から直接受け取ることが可能です。車もプロベートを通過せず、書類手続きのみで、被相続人の死後、受取人は承継可能。

 生命保険、アメリカでの退職貯蓄金 (IRA、401(K))、銀行口座、車などは、トラストに入れることも出来るが、入れなくても生前に受取人を指定しておくことが出来る。死亡証明書(日本でいえば除籍抄本など。)を提出して引継ぎ。日本でもあると良いなと思います。預金に関してはTotten trust(トッテントラスト)。

トラストに付随する文書等

1.Pour-Over Will(注ぎ込み遺言書)

  生前トラストに入れ忘れた資産が、トラスト資産に含まれるよう、指定。・・・特殊な遺言書。注ぎ込み信託・遺言に似ている。

2.Durable Power of Attorney(財産管理に関する委任状)

 被相続人が判断能力を失った場合、財政的な手続き(税務申告の代理作成・署名等)をしてくれる代理人を指定。

https://www.lawhelp.org/hi/resource/hawaii-general-durable-power-of-attorney-template

3.Advance Health Care Directive(医療に関する委任状)

  被相続人が判断能力を失った場合、医療に関する決断等をしてもらえる代理人を指定。臓器提供等についての指示も指定することもできる。

https://www.queens.org/the-queens-medical-center/patients-and-visitors/patient-tools-resources/advance-directive-qmc

4.HIPAA(医療保険の相互運用性と説明責任に関する法律)ヒッパ

 法律によって、病院の診断書等は本人以外の方には開示してはいけませ んが、HIPAA承認書類を作成することによって、病院は指定する代理人に、 診断書を開示することが可能。

https://medquest.hawaii.gov/en/members-applicants/rights-and-responsibilities/HIPAA.html

トラストに付随する文書等・・・トラスト作成と同時に作ることがほとんど。

 Durable Power of Attorney(財産管理に関する委任状)・・・日本の成年後見制度に似ている。

 Advance Health Care Directive(医療に関する委任状)・・・日本の「意思決定支援等に係る各種ガイドラインの比較について」の医療分野に関する部分に似ているが、1人を決める?ことについては違う。

https://www.mhlw.go.jp/content/000689414.pdf

トラストに関する誤解-節税対策ではないこと

• トラストはプロベートを回避するために作成し、節税対策のために作成するものではない。

遺産税の免除額(2018年~2021年)

• $11,180,000 (2018)• $11,400,000 (2019)• $11,580,000 (2020)• $11,700,000 (2021)

*2025年以降は、以前の$5,490,000に戻る、と言われている。政治の影響も受ける。

トラストを作成するメリット

• トラストを作成することで、Probate(プロベート)を回避し、時間とお金を節約することができる。

• プライバシーを守ることができる。(遺言書はプロベートを通過するため、内容は公になるが、トラストは誰にも開示する必要がなく、被相続人の死後、自己処理ができ、内容を他人に知られることはない。)。

• 資産をあげたい人に、あげることができる。(アメリカでは、法定相続人のルールはない。トラストを作成して誰を受益者として指定しても良い。プロベートの場合は、決まった相続人の順番において、資産を分配する必要がある。)

注:ハワイでは、Elective Share等のルールがあり、結婚暦に応じて、生 存配偶者は、故人の資産をもらう権利を主張する権利等を有しま すので、基本的に故人は好きな方に資産を残しても良いのですが、 この様なルールによって、それが制限される場合もあります。

参考

・Transfer on Death Deed (TODD)

 Transfer on Death Deed (TODD)とは、特殊な譲渡証書において、所有者が亡くなった後、指定する受取人に、不動産をプロベートを通過せず、譲渡させることを可能にする文書。共有持分については不可。

特徴

1)所有者が亡くなった時点で、初めて所有権が受取人に移転する。(生前、 元々の所有者が不動産の所有権を維持します。)

2)Transfer on Death Deed (TODD)は、登記所に登記。

3)所有者は生前、いつでもTransfer on Death Deed (TODD)を撤回することができる。

4)トラストと同様に、プロベートを回避することができる。

 日本の遺言信託に似ていると思います。研修の議論では、死因贈与契約のようです。相続税がどうなるのか気になりました。

 非居住者(例えば、日本に居住しているが、ハワイ州に不動産を持っている場合)には、使いやすい。州によって取扱いが違う。特殊な遺言書。原則として受贈者が1人で手続きが可能。100%の所有権が必要。生前に名義変更する。

-5  Transfer on death deed authorized.

https://www.capitol.hawaii.gov/session2010/bills/SB2799_.HTM

信託法

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=418AC0000000108

(信託の方法)第三条 信託は、次に掲げる方法のいずれかによってする。

二 特定の者に対し財産の譲渡、担保権の設定その他の財産の処分をする旨並びに当該特定の者が一定の目的に従い財産の管理又は処分及びその他の当該目的の達成のために必要な行為をすべき旨の遺言をする方法

(信託の効力の発生)

第四条 前条第一号に掲げる方法によってされる信託は、委託者となるべき者と受託者となるべき者との間の信託契約の締結によってその効力を生ずる。

2 前条第二号に掲げる方法によってされる信託は、当該遺言の効力の発生によってその効力を生ずる。

費用の目安

• トラスト作成1式 $5,000 (プラスGE税4.712%)

• Transfer on Death Deed1件 $3,400 (プラスGE税4.712%)

• Probate(プロベート)1件 $6,000 (プラス$2,300の経費分)、

*報酬の$6,000にはGE税4.712%が課税。

 トラストは登録されるか。・・・登録する義務はない。金庫に入れておいても良い。

 トラストの付随する文書 Pour -Over Willには、包括的記載も可能なのでしょか。例えば、「トラストに記載のない私の持つ資産、またこれから持つ資産はすべてトラスト資産とする。」というような書きっぷりです。  Advance Health Care Directiveには、全権委任のような書きっぷりは許されるか。例えば、「私が脳死状態になった場合の臓器提供の可否については○○に委任する。」 「私が自律的に栄養補給ができなくなったり、呼吸ができなくなった場合の生命維持装置の装着の可否については○○に委任する。」というようなものが許されるか。・・・・包括的な記載が可能。特定不要。

 Elective Shareについて、これは離婚している元配偶者も請求できるものでしょうか。婚姻40年で離婚して、離婚後1年で亡くなった場合など、元配偶者から主張する権利があると怖い。

 トラストを組んでいなくてプロベート手続きにはいるときに、手続を進める弁護士に相続人から委任状が必要か。・・・依頼者から弁護士に委任状は必要ない。 本人支援業務のような仕事かな。

 弁護士に依頼している場合、プロベートに入った場合に相続人から提出するものやサインなどはない。弁護士が執行者として書類の提出・サインなどを行う。アメリカでは法定相続人のルールはないが、プロベートの場合は決まった相続人の順番において資産分配する。・・・州法で決まっている。

 Trustに法人格はあるか、つまりTrust自体が権利義務の主体となれるか?・・・トラスト自体が法人格を持つという意味で、法人格はある。権利義務の主体は、受託者Trustee(トラスティ―)個人の名前。氏名.Trustee.○○トラスト.

 日本で登記する場合、受託者 氏名 +信託の登記と信託目録。

 Trusteeは会社が多い印象だが、Trusteeになるためには、何らかのLicenseが必要か?・・・資格はない。弁護士等が業として行う場合、利益相反になる可能性が高い。グレー。全て日本に居住する日本人でハワイ州の不動産を目的にトラストを組んだ司法書士。ハワイ州の弁護士指導の下でも、司法書士の責任。

 Trustに属する金銭で不動産等の財産を取得することもできると思うが、その場合は、取得した財産はTrustに属することになるか?・・・可能と考えられる。

 委託者が死亡した後の処理は、受益権が承継される?信託が解除される?・・・受益者連続信託のようなことは基本的にしない。受益者に分配して終了。

トラストアドインステーション?

 日本人と婚姻して日本に住むアメリカ人で子供がいない場合、トラストを作成していない場合、相続につき相続人は出身州法で定まるか。・・・相続財産がある州の法律。法の適用に関する通則法などの当てはめ。

 日本で作ったトラスト契約書は、アメリカの財産についてなにか効力を否定されたり違う取扱を受けるのでしょうか。・・・アメリカの財産についてなにか効力を否定されたり違う取扱を受ける可能性もある。税務。受託者について、州の居住者が無難。

 日本で公証人の公証を受けたトラストを保持していれば、それをアメリカで行使できるか・・・州法に基づいた英語のトラストを日本の公証人の交渉を受けたトラストは可能(根拠法は分かりませんでした。司法書士の経験談。)。

公証人は資格を取得した州外で公証することはできるのですか。海外ではどうですか。・・・不可能。州ごと。

 委託者(被相続人)の最後の居住地が日本であれば、日本法が適用出来る。遺産分割協議が出来る。某司法書士。

・その他の気になる規定

Rule 110.   Conversion to trust; funding trust.

https://www.courts.state.hi.us/docs/court_rules/rules/hpr.htm#Rule%2038

⽂字情報基盤のIPAmj明朝フォント

文字情報技術促進協議会

IPAmj明朝フォント・・・人名の表記等で、細かな字形の差異を特別に使い分ける必要のある業務等での活用を想定したフォントです。また、同フォントを十分に活用するためには、対応したアプリケーションソフトが必要となります。通常の文書作成等では、JIS X 0213:2012に準拠したIPAexフォントのご利用をお勧めします。

・なぜ必要か。

現在、行政手続について使うことが可能な文字が異なる。

戸籍に使える文字・・・戸籍統一文字

https://houmukyoku.moj.go.jp/KOSEKIMOJIDB/M01.html

登記に使える文字・・・戸籍統一文字に加えて、記号などが入る。

https://www.touki-kyoutaku-online.moj.go.jp/cautions/kankyo/charaset.html

 

JIS第1及び第2水準のほか,以下の文字が使用できます(以下に代表的なものを例示)。不動産登記関係手続においては,「①②③④」が使用できます。

各種記号 ※    !”#$%&’()

英数字 ※        ABCDEFGH123456

かな      あいうえおかきくけこ

カナ      アイウエオカキクケコ

囲み文字(不動産関係手続のみ)          ①②③④

※ 全角及び半角が使用できます。

※ 申請用総合ソフトの漢字検索機能により,不動産登記,商業・法人登記手続においては全ての登記統一文字を,成年後見登記手続においては戸籍統一文字を入力することができます。

使用できない文字について

 登記・供託オンライン申請システムにおいては,JIS第3及び第4水準の文字は,使用できません。

 また,上記以外の文字についても,登記・供託オンライン申請システムにおいて正しく取り扱うことができない文字等(以下に代表的なものを例示)が入力されていた場合には,情報ダイアログが表示されることがありますので,漢字検索機能を使用して入力するか,代替文字を入力して下さい。

※ 登記・供託オンライン申請システムにおいて正しく取り扱うことができない文字の例

※ 動産譲渡登記関係手続において使用することができない文字については,「動産譲渡登記 オンライン申請データ仕様」及び「動産譲渡登記 オンライン証明書請求データ仕様」を参照してください。

※ 債権譲渡登記関係手続において使用することができない文字については,「債権譲渡登記 オンライン申請データ仕様」及び「債権譲渡登記 オンライン証明書請求データ仕様」を参照してください。

・今後の方針

政府CIOポータル

https://cio.go.jp/node/2708

文字情報基盤の民間移行 2020.8.26

 氏名、法人名、土地等を表記するのに、一般のコンピュータでは扱うことが難しい外字を用いることがありますが、それにより、行政システムの相互運用性が損なわれるのはもちろんのこと、開発や運営のコストが上がり、更には、民間との情報交換においても多くの問題が生じてきました。情報システムの基本である文字およびそのコードにおいて相互運用が担保されていないのは日本だけでしたが、2011年から進めてきたコンピュータ上の文字の統一プロジェクトである文字情報基盤事業が完了し、健全なIT活用が促進される基盤が整いました。日本の情報システム環境の整備において、文字情報基盤整備事業の果たした役割は非常に大きいと評価されています。

 今後、戸籍連携システム、自治体情報システム(住民記録システム・印鑑登録システム・固定資産税システム等)、不動産ID等との連携を行うために、文字が統一されているか、一旦コード(英数字の列など)に入れ替えて、表示する必要が出てくる。

文字情報基盤を入れてみる。

ダウンロード


ipamjm.tffファイルをインストール



ワードでは表示されました。他のソフトで試してみます。NotionをGoogleクロームででは表示されませんでした。

https://extns.notion.site/Npedia-9851b488b96846c3b04c691cd3419326

受託者の権限

家族信託実務ガイドの記事、(一社)家族信託普及協会代表理事 宮田浩志「受託者の権限」[1]からです。

「家族信託では受託者にどんなころを任せるかが肝」

この段落では、依頼者のニーズに合わせて受託者の権限を決める、というようなことが記載されています。

家族信託の契約書における受託者の権限についての条項で、「受託者は、信託財産の管理、運用、処分をすることができる」とだけ記載してある契約書を見かけることがあります。

 私が知る限りでは、家族信託支援業務の初期から、受託者の権限について、この条項だけを記載している書籍や資料などはないので驚きでした。一般の方が作成した契約書なのでしょうか。

実際にあった事案として、商事信託の契約書を流用したばかりに、家族信託の受託者に信託不動産の売却権限が明記されていなかったというケースがあります。売却権限が明記されていなければ、委託者(兼受益者)は受託者に売却する権限を与えたとは解釈出来ません。

 誤りです。売却権限が明記されていなくても、委託者(兼受益者)は受託者に売却する権限を与えたと解釈することができます(信託法26条)。

 実務レベルにおいて、信託行為に受託者による不動産の売却権限が記録されていない場合に、売買契約を締結することが出来ない場合が多い、ということです。記事の字数制限の問題でもないと思われるので、不思議に感じます。

不測の事態・やむを得ない事情があることを受託者以外の客観的立場で判断できるように、「信託監督人」や「受益者代理人」を置いて、売却時にはその同意を必要とすることも良策となり得ます。

 委託者は存命中は自宅を売却したくない、受託者は原則として委託者の意思を尊重して売却しないが、やむを得ない事情がある場合は売却したい、というような事例における対応例です。信託監督人や受益者代理人を置く前に、やむを得ない事情の基準や定義を記録することが必要だと思います。


[1]2021.11第23号P61~日本法令

民事信託の登記の諸問題(2)

登記研究の記事、渋谷陽一郎「民事信託の登記の諸問題(2)」[1]からです。

本紙の読者の皆さんは、不動産登記法97条1項各号の定めだけを導きとして、信託契約書の中から、如何なる情報を選択し、登記事項として抽出すべきであると思われるだろうか。

 原則として、不動産登記法とその関連法令で定められている事項と、信託行為の目的を果たすための後続登記の申請がスムーズに行われるための事項だと考えます。

不動産登記規則

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=417M60000010018

附 則(信託目録)

第十二条 信託目録に関する事務について第三条指定を受けていない登記所(以下「信託目録未指定登記所」という。)においては、信託目録つづり込み帳を備える。

―中略―

6 旧細則第十六条ノ四第一項、第四十三条ノ六から第四十三条ノ九まで、第五十七条ノ十及び第五十七条ノ十一の規定は、信託目録未指定登記所の信託目録について、なおその効力を有する。この場合において、旧細則第十六条ノ四第一項中「信託原簿」とあるのは「信託目録」と、「申請書」とあるのは「申請ノ」と、旧細則第四十三条ノ六中「信託原簿」とあるのは「信託目録ニ記録スベキ情報ヲ記載シタル書面」と、「附録第十号様式」とあるのは「不動産登記規則(平成十七年法務省令第十八号)別記第五号様式」と、旧細則第四十三条ノ七及び第四十三条ノ八中「信託原簿用紙」とあるのは「信託目録ニ記録スベキ情報ヲ記載シタル書面ノ用紙」と、旧細則第四十三条ノ九中「第四十三条ノ三」とあるのは「新規則附則第九条第五項ノ規定ニ依リ仍其ノ効力ヲ有スルモノトサレタル第四十三条ノ三」と、「信託原簿」とあるのは「信託目録ニ記録スベキ情報ヲ記載シタル書面」と、旧細則第五十七条ノ十及び第五十七条ノ十一中「信託原簿」とあるのは「信託目録」とする。

 この規定は、初めて知りました。著者の「旧信託原簿には、登記官の作成という概念がなかったのではないか、」という考えも、そうなのかもしれないなと思いました。ただ、平成17年の不動産登記法改正の前の時代に実務を経験していない身としては、肌感覚では分かりませんでした。

そして、資格者代理人の慣行として、登記原因証明情報として信託契約書そのものが提供されない場合がある(資格者代理人の間では信託契約書を閲覧に供さないことが推奨される場合もある)。

そうなのかな、と意外に感じました。私が他の人の実務を知らないだけかもしれません。

「信託の目的」に関する信託条項が、信託登記の登記事項に該当することは、不動産登記法97条1項の条文上、最も明白で、やさしい。もっとも、条文の「小見出し」は便宜的なものなので、「小見出し」に関わらず、実質的な「信託の目的を」を見つけることが重要である。

 不動産登記法97条1項の信託の目的が、小見出しであるということはよく分かりませんでした。

信託契約書から信託目録に変換するための最大の問題は、不動産登記法97条1項各号の規定の内容が、抽象的・一般的であることである。そして、その一方、信託なるものは、案件それぞれの個別性が高いことである(それが信託の柔軟性と称される特色である。)そこで、資格者代理人は、不動産登記法97条1項各号について「当てはめ」のための具体的な規範(要件)分析を行い、実際に「当てはめ」を行う必要が生じるわけである。

 私は少し異なる考えです。信託目録にそのまま抜き出せる条項を信託行為の中に入れます。そのため、登記申請時に要約や当てはめを行うことはなく、信託行為の中から、信託目録に記録する条項を抜き出す必要が生じます。

 最後に、記事の注釈が22から始まっているのですが、こういうことは時々あることなのでしょうか。あとで書籍にすることが目的で注釈を連番で付けているのかな、と感じました。


[1] 登記研究883、令和3.9テイハン

eKYC

本人確認手段としての eKYC と今後の発展

日本電気株式会社 シニアエキスパート デジタルアイデンティティWG リーダー宮川 晃一

https://www.jnsa.org/jnsapress/vol48/JNSA_Press_No48.pdf

顧客の受け入れに対して明確な方針と手続きを持ち、それらの方針と手続きに沿って新規に顧客が口座開設を行う際はその顧客がどんな人物なのか、十分な身元確認を行う業務を一般的にKYC(Know Your Customer)と呼ぶ。eKYCは、オンラインによる非対面本人確認

行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=425AC0000000027

(定義)第二条8 この法律において「特定個人情報」とは、個人番号(個人番号に対応し、当該個人番号に代わって用いられる番号、記号その他の符号であって、住民票コード以外のものを含む。第七条第一項及び第二項、第八条並びに第四十八条並びに附則第三条第一項から第三項まで及び第五項を除き、以下同じ。)をその内容に含む個人情報をいう。

別表第一(第九条関係)

UDID・・・UniversallyUnique Identifierの略で、アプリごとに使用40文字の英数字コード。識別子。

IMEI・・・携帯電話機の製造番号

ソルト・・・パスワードを暗号化する際に付与されるデータ。

 例えばメールアドレスとパスワードでアカウント登録を要求されるようなサービスにおいて、メールアドレスをSaltに含め、パスワードをハッシュ化して保存するといった使い方をします。パスワードを捨ててパスワードハッシュを保存し、さらに保存されたハッシュは非可逆でパスワードを復元できないことが重要となります。もしサーバーのrootに第三者が侵入したとしてもパスワードの漏洩を防げるからです。

 また、この方法は総当り攻撃を阻止することを意図していて、攻撃が意図的に遅くなるように設計されているのが特徴で、ストレッチング(1000回ハッシュ計算を繰り返して計算に時間がかかるようにする)という方法と併せてよく使用されます。そのため、Saltは秘密であることを重要視していないですが、いくつかの条件があります。

・ユーザーごとに異なるSaltであること (漏洩時のリスクを最小限にする為)

・ある程度の長さを確保すること (推測されにくくする為)

事業者が匿名加工情報の具体的な作成方法を検討するにあたっての参考資料

(「匿名加工情報作成マニュアル」)Ver1.0平成28年8月経済産業省

ハッシュ化・・・暗号化とは異なり、入力値から誰でも計算できる種類の処理である。不可逆的な(一方向の)変換ではあるが、識別可能な値を生成する。

https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/privacy/downloadfiles/tokumeikakou.pdf

HMAC・・・メッセージ認証符号の一つであり、鍵(メッセージ認証符号のことです)とデータとハッシュ関数を元に計算されたハッシュ値を持つ。

認証と改竄検出のために使われるアルゴリズムで、HMACにより算出された値をMAC (Message Authentication Code) 値。

HMACは基本的に暗号チェックサムであり、攻撃者がメッセージを改竄したことを検出するために使用。鍵は秘密である必要があり、可能な限り高速となるように設計されている。

電子証明書を使う際に必要となる暗証番号・・・署名用電子証明書については6桁~16桁の英数字、利用者証明用電子証明書は4桁の数字を設定

https://www.soumu.go.jp/kojinbango_card/kojinninshou-01.html

署名用暗証番号・・・?

署名用パスワード・・・6~16桁の英数字のパスワード。インターネット等で電子文書を作成・送信する際に利用

(例)特別定額給付金(10万円)の申請、e-Tax等の電子申請、銀行口座開設、不動産取引(住宅ローン)

https://www.kojinbango-card.go.jp/jpki/

第5回インフラ海外展開懇談会

https://www.meti.go.jp/shingikai/external_economy/infura_kaigaitenkai/005.html

日本で唯一の次世代デジタルIDアプリ「xID」

xID株式会社2020年10月2日

5. マイナンバーカード読み取り、署名用電子証明書を読み取り

「何に対して」(どんな内容の文書(電磁的記録)に対して)署名しようとしているのか。

8. 公的個人認証

社会保障・税番号大綱―主権者たる国民の視点に立った番号制度の構築―政府・与党社会保障改革検討本部2011/06/30

https://www.soumu.go.jp/main_content/000141660.pdf

P34(注2)「番号」を一定の関数、手順等を用いて変換することで(複数回にわたって変換することを含む。)、新たに符号を生成した場合であって、生成した符号が「番号」と一対一に対応する関係にあるときは、生成した符号についても、「番号」に該当することとする。

xID株式会社

2021.9.24 ソーシャルメディア等で頂いているxIDアプリに関するご意見について

https://xid.inc/home

現在開発中で年内リリース予定の次期バージョンでは個人番号入力を伴う手順を廃止するよう進めております。

高木浩光@自宅の日記 ID番号は秘密ではない。秘密でないが隠すのが望ましい。なぜか。2012年03月03日

http://takagi-hiromitsu.jp/diary/20120303.html

ID番号は秘密にすべき情報ではない。他人に知られるとなりすましの被害に遭う番号ではない。そのように社会の側が構成されているべきである。しかし、ID番号が目的外で使用されたり、事業者をまたがって広範に共通して用いられる場合には、プライバシーの問題が生じてくる。そのため、消費者は、安易にID番号を提供することは避けるよう注意した方がいい。

我々が、ネットに自分のID番号を含む写真やログデータなどを掲載するときは、ID番号部分を隠す処置を施すことが多い。例えば、MACアドレスやUDID、IMEIを含むデータを掲載する場合などだ。実際のところこの処置は必須ではないのだが、たいていそうしている。そうする理由は、(1)万が一どこかにそのID番号でなりすましを許してしまう欠陥サービスがあった場合に備えた、念のための警戒として、(2)万が一どこかでそのID番号でトラッキングされている場合に、それが自分だとバレないようにするため、この2点である。

特に、他人のID番号を掲載する場合は、隠す処置を施すのは必須であろう。どこかで、そのID番号が誰のものであるか知っている者(本人以外の)がいる可能性があるからだ。

符号・・・?

電子署名等に係る地方公共団体情報システム機構の認証業務に関する法律

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=414AC0000000153

(署名用電子証明書又は利用者証明用電子証明書の発行の番号の利用制限等)

第六十三条 機構、署名検証者等、署名確認者又は利用者証明検証者以外の者は、何人も、業として、署名用電子証明書の発行の番号又は利用者証明用電子証明書の発行の番号の記録されたデータベース(自己以外の者に係る署名用電子証明書の発行の番号又は利用者証明用電子証明書の発行の番号を含む当該自己以外の者に関する情報の集合物であって、それらの情報を電子計算機を用いて検索することができるように体系的に構成したものをいう。以下この項において同じ。)であって、当該データベースに記録された情報が他に提供されることが予定されているものを構成してはならない。

2 総務大臣は、前項の規定に違反する行為が行われた場合において、当該行為をした者が更に反復して同項の規定に違反する行為をするおそれがあると認めるときは、当該行為をした者に対し、当該行為を中止することを勧告し、又は当該行為が中止されることを確保するために必要な措置を講ずることを勧告することができる。

3 総務大臣は、前項の規定による勧告を受けた者がその勧告に従わないときは、その者に対し、期限を定めて、当該勧告に従うべきことを命ずることができる。

署名用電子証明書の発行の番号・・・?

利用者証明用電子証明書の発行の番号・・・?

利用者証明用電子証明書のシリアル番号・・・利用者証明用電子証明書には、基本4情報(氏名、住所、性別及び生年月日)は登録されていませんが、 シリアル番号、有効期限等が記録。一般的にシリアル番号とは、製品などを一つ一つの個体として識別するために割り当てられる固有の番号。

https://www.e-tax.nta.go.jp/kojin/mycd_login.htm

暗号論的ハッシュ関数・・・?

ITをめぐる法律問題について考える 弁護士水町雅子のIT情報法ブログ

eKYCの犯収法上の確認要件を振り返る

犯罪による収益の移転防止に関する法律

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=419AC0000000022

第二章 特定事業者による措置

(取引時確認等)第四条

犯罪による収益の移転防止に関する法律施行規則

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=420M60000f5a001

(顧客等の本人特定事項の確認方法)

第六条 法第四条第一項に規定する主務省令で定める方法のうち同項第一号に掲げる事項に係るものは、次の各号に掲げる顧客等の区分に応じ、それぞれ当該各号に定める方法とする。

一 自然人である顧客等(次号に掲げる者を除く。) 次に掲げる方法のいずれか

イ 当該顧客等又はその代表者等から当該顧客等の本人確認書類(次条に規定する書類をいう。以下同じ。)のうち同条第一号又は第四号に定めるもの(同条第一号ハからホまでに掲げるものを除く。以下「写真付き本人確認書類」という。)の提示(同条第一号ロに掲げる書類(一を限り発行又は発給されたものを除く。ロ及びハにおいて同じ。)の代表者等からの提示を除く。)を受ける方法

6条1号イは、写真付き本人確認書類の提示を受ける方法(対面)

ロ 当該顧客等又はその代表者等から当該顧客等の本人確認書類(次条第一号イに掲げるものを除く。)の提示(同号ロに掲げる書類の提示にあっては、当該書類の代表者等からの提示に限る。)を受けるとともに、当該本人確認書類に記載されている当該顧客等の住居に宛てて、預金通帳その他の当該顧客等との取引に係る文書(以下「取引関係文書」という。)を書留郵便若しくはその取扱いにおいて引受け及び配達の記録をする郵便又はこれらに準ずるもの(以下「書留郵便等」という。)により、その取扱いにおいて転送をしない郵便物又はこれに準ずるもの(以下「転送不要郵便物等」という。)として送付する方法

6条1号ロは、本人確認書類の提示&書留郵便等で転送不要郵便物等として送付する方法(対面後郵送)

ハ 当該顧客等若しくはその代表者等から当該顧客等の本人確認書類のうち次条第一号ハに掲げるもののいずれか二の書類の提示を受ける方法又は同号ハに掲げる書類及び同号ロ、ニ若しくはホに掲げる書類若しくは当該顧客等の現在の住居の記載がある補完書類(次項に規定する補完書類をいう。ニ及びリにおいて同じ。)の提示(同号ロに掲げる書類の提示にあっては、当該書類の代表者等からの提示に限る。)を受ける方法

6条1号ハは、保険証等2種類の本人確認書類等の提示を受けるの方法(対面)

ニ 当該顧客等又はその代表者等から当該顧客等の本人確認書類のうち次条第一号ハに掲げるものの提示を受け、かつ、当該本人確認書類以外の本人確認書類若しくは当該顧客等の現在の住居の記載がある補完書類又はその写しの送付を受ける方法

6条1号二は、保険証等の本人確認書類の提示&他の本人確認書類等の写しの送付(対面・郵送)

通常の対面確認の方法も、犯収法施行規則6条で定められています。6条1号ホへトチヲワカが、オンラインと関係ありますね。

以下は、金融庁のPDF図です。6条1号ホへトしか図には出ていませんが、チはオンライン+郵送なので、図から割愛されたのでしょう、ヲワカは電子署名だから割愛されたんですかね。。。

https://www.fsa.go.jp/news/30/sonota/20181130/01.pdf

ホ 当該顧客等又はその代表者等から、特定事業者が提供するソフトウェアを使用して、本人確認用画像情報(当該顧客等又はその代表者等に当該ソフトウェアを使用して撮影をさせた当該顧客等の容貌及び写真付き本人確認書類の画像情報であって、当該写真付き本人確認書類に係る画像情報が、当該写真付き本人確認書類に記載されている氏名、住居及び生年月日、当該写真付き本人確認書類に貼り付けられた写真並びに当該写真付き本人確認書類の厚みその他の特徴を確認することができるものをいう。)の送信を受ける方法

6条1号ホ「本人確認書類の画像送信+本人の容貌の画像送信」

金融機関等(特定事業者)が提供するソフトウェアを使用して、本人確認用画像情報の送信を受ける方法です。

そのソフトウェアを使用して撮影をさせた当該顧客等の容貌及び写真付き本人確認書類の画像情報であって、当該写真付き本人確認書類に係る画像情報が、当該写真付き本人確認書類に記載されている氏名、住居及び生年月日、当該写真付き本人確認書類に貼り付けられた写真並びに当該写真付き本人確認書類の厚みその他の特徴を確認することができるものでなければなりません。

ヘ 当該顧客等又はその代表者等から、特定事業者が提供するソフトウェアを使用して、本人確認用画像情報(当該顧客等又はその代表者等に当該ソフトウェアを使用して撮影をさせた当該顧客等の容貌の画像情報をいう。)の送信を受けるとともに、当該顧客等又はその代表者等から当該顧客等の写真付き本人確認書類(氏名、住居、生年月日及び写真の情報が記録されている半導体集積回路(半導体集積回路の回路配置に関する法律(昭和六十年法律第四十三号)第二条第一項に規定する半導体集積回路をいう。以下同じ。)が組み込まれたものに限る。)に組み込まれた半導体集積回路に記録された当該情報の送信を受ける方法

6条1号ヘ「ICチップ情報+本人の容貌の画像送信」

金融機関等(特定事業者)が提供するソフトウェアを使用して、本人確認用画像情報と、ICチップの情報の送信を受ける方法です。

ICチップ情報は、写真付き本人確認書類(氏名、住居、生年月日及び写真の情報が記録されている半導体集積回路が組み込まれたものに限る。)に組み込まれたもので、具体的にはマイナンバーカードやIC免許証、IC在留カード等とのことです。

ト 当該顧客等又はその代表者等から、特定事業者が提供するソフトウェアを使用して、本人確認用画像情報(当該顧客等又はその代表者等に当該ソフトウェアを使用して撮影をさせた当該顧客等の本人確認書類のうち次条第一号又は第四号に定めるもの(同条第一号ニ及びホに掲げるものを除き、一を限り発行又は発給されたものに限る。以下トにおいて単に「本人確認書類」という。)の画像情報であって、当該本人確認書類に記載されている氏名、住居及び生年月日並びに当該本人確認書類の厚みその他の特徴を確認することができるものをいう。)の送信を受け、又は当該顧客等若しくはその代表者等に当該ソフトウェアを使用して読み取りをさせた当該顧客等の本人確認書類(氏名、住居及び生年月日の情報が記録されている半導体集積回路が組み込まれたものに限る。)に組み込まれた半導体集積回路に記録された当該情報の送信を受けるとともに、次に掲げる行為のいずれかを行う方法(取引の相手方が次の⑴又は⑵に規定する氏名、住居及び生年月日の確認に係る顧客等になりすましている疑いがある取引又は当該確認が行われた際に氏名、住居及び生年月日を偽っていた疑いがある顧客等(その代表者等が氏名、住居及び生年月日を偽っていた疑いがある顧客等を含む。)との間における取引を行う場合を除く。)

(1) 他の特定事業者が令第七条第一項第一号イに掲げる取引又は同項第三号に定める取引を行う際に当該顧客等について氏名、住居及び生年月日の確認を行い、当該確認に係る確認記録を保存し、かつ、当該顧客等又はその代表者等から当該顧客等しか知り得ない事項その他の当該顧客等が当該確認記録に記録されている顧客等と同一であることを示す事項の申告を受けることにより当該顧客等が当該確認記録に記録されている顧客等と同一であることを確認していることを確認すること。

(2) 当該顧客等の預金又は貯金口座(当該預金又は貯金口座に係る令第七条第一項第一号イに掲げる取引を行う際に当該顧客等について氏名、住居及び生年月日の確認を行い、かつ、当該確認に係る確認記録を保存しているものに限る。)に金銭の振込みを行うとともに、当該顧客等又はその代表者等から当該振込みを特定するために必要な事項が記載された預貯金通帳の写し又はこれに準ずるものの送付を受けること。

6条1号ト(1)「銀行等への照会」

これを使える事業者が限られそうなので、説明割愛

6条1号ト(2)「少額振込」

これを使える事業者が限られそうなので、説明割愛

チ 当該顧客等又はその代表者等から当該顧客等の本人確認書類のうち次条第一号若しくは第四号に定めるもの(以下チ並びにリ及びヌにおいて単に「本人確認書類」という。)の送付を受け、又は当該顧客等の本人確認書類(氏名、住居及び生年月日の情報が記録されている半導体集積回路が組み込まれたものに限る。)に組み込まれた半導体集積回路に記録された当該情報若しくは本人確認用画像情報(当該顧客等又はその代表者等に特定事業者が提供するソフトウェアを使用して撮影をさせた当該顧客等の本人確認書類(次条第一号イからハまでに掲げるもののうち一を限り発行又は発給されたものに限る。)の画像情報であって、当該本人確認書類に記載されている氏名、住居及び生年月日並びに当該本人確認書類の厚みその他の特徴を確認することができるものをいう。)の送信(当該本人確認用画像情報にあっては、当該ソフトウェアを使用した送信に限る。)を受けるとともに、当該本人確認書類に記載され、又は当該情報に記録されている当該顧客等の住居に宛てて、取引関係文書を書留郵便等により、転送不要郵便物等として送付する方法

6条1号チ「本人確認書類又はICチップ情報若しくは画像情報の送信+書留郵便等により転送不要郵便物等として送付」

①ー1本人確認書類の送付を受ける

①ー2又は当該顧客等の本人確認書類(氏名、住居及び生年月日の情報が記録されている半導体集積回路が組み込まれたものに限る。)に組み込まれたICチップ情報

①ー3若しくは本人確認用画像情報(当該顧客等又はその代表者等に特定事業者が提供するソフトウェアを使用して撮影をさせた当該顧客等の本人確認書類の画像情報であって、当該本人確認書類に記載されている氏名、住居及び生年月日並びに当該本人確認書類の厚みその他の特徴を確認することができるものをいう。)の送信を受けるとともに、

②住居に宛てて、取引関係文書を書留郵便等により、転送不要郵便物等として送付する方法

リ 当該顧客等又はその代表者等から当該顧客等の現在の住居の記載がある本人確認書類のいずれか二の書類の写しの送付を受け、又は当該顧客等の本人確認書類の写し及び当該顧客等の現在の住居の記載がある補完書類(次項第三号に掲げる書類にあっては、当該顧客等と同居する者のものを含み、当該本人確認書類に当該顧客等の現在の住居の記載がないときは、当該補完書類及び他の補完書類(当該顧客等のものに限る。)とする。)若しくはその写しの送付を受けるとともに、当該本人確認書類の写し又は当該補完書類若しくはその写しに記載されている当該顧客等の住居(当該本人確認書類の写しに当該顧客等の現在の住居の記載がない場合にあっては、当該補完書類又はその写しに記載されている当該顧客等の住居)に宛てて、取引関係文書を書留郵便等により、転送不要郵便物等として送付する方法

ヌ 次の(1)若しくは(2)に掲げる取引又は当該顧客等との間で(2)に掲げる取引と同時に若しくは連続して行われる令第七条第一項ム若しくはヰに掲げる取引を行う際に当該顧客等又はその代表者等から当該顧客等の本人確認書類の写しの送付を受けるとともに、当該本人確認書類の写しに記載されている当該顧客等の住居に宛てて、取引関係文書を書留郵便等により、転送不要郵便物等として送付する方法

(1) 令第七条第一項第一号イに掲げる取引のうち、法人(特定事業者との間で行われた取引の態様その他の事情を勘案してその行う取引が犯罪による収益の移転の危険性の程度が低いと認められる法人に限る。)の被用者との間で行うもの(当該法人の本店等又は営業所に電話をかけることその他これに類する方法により給与その他の当該法人が当該被用者に支払う金銭の振込みを受ける預金又は貯金口座に係るものであることが確認できるものに限る。)

(2) 令第七条第一項第一号リに掲げる取引(特定事業者が行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(平成二十五年法律第二十七号)第十四条第一項の規定により当該顧客等から同法第二条第五項に規定する個人番号の提供を受けている場合に限る。)

ル その取扱いにおいて名宛人本人若しくは差出人の指定した名宛人に代わって受け取ることができる者に限り交付する郵便又はこれに準ずるもの(特定事業者に代わって住居を確認し、写真付き本人確認書類の提示を受け、並びに第二十条第一項第一号、第三号(括弧書を除く。)及び第十七号に掲げる事項を当該特定事業者に伝達する措置がとられているものに限る。)により、当該顧客等に対して、取引関係文書を送付する方法

ヲ 当該顧客等から、電子署名及び認証業務に関する法律(平成十二年法律第百二号。以下この項において「電子署名法」という。)第四条第一項に規定する認定を受けた者が発行し、かつ、その認定に係る業務の用に供する電子証明書(当該顧客等の氏名、住居及び生年月日の記録のあるものに限る。)及び当該電子証明書により確認される電子署名法第二条第一項に規定する電子署名が行われた特定取引等に関する情報の送信を受ける方法

6条1号ヲ「電子署名」

電子署名法第四条第一項に規定する認定を受けた者が発行し、かつ、その認定に係る業務の用に供する電子証明書及び当該電子証明書により確認される電子署名法第二条第一項に規定する電子署名が行われた特定取引等に関する情報の送信を受ける方法

ワ 当該顧客等から、電子署名等に係る地方公共団体情報システム機構の認証業務に関する法律(平成十四年法律第百五十三号。以下この号において「公的個人認証法」という。)第三条第六項の規定に基づき地方公共団体情報システム機構が発行した署名用電子証明書及び当該署名用電子証明書により確認される公的個人認証法第二条第一項に規定する電子署名が行われた特定取引等に関する情報の送信を受ける方法(特定事業者が公的個人認証法第十七条第四項に規定する署名検証者である場合に限る。)

6条1号ワ「電子署名」

公的個人認証法第三条第六項の規定に基づき地方公共団体情報システム機構が発行した署名用電子証明書及び当該署名用電子証明書により確認される公的個人認証法第二条第一項に規定する電子署名が行われた特定取引等に関する情報の送信を受ける方法(特定事業者が公的個人認証法第十七条第四項に規定する署名検証者である場合に限る。)

カ 当該顧客等から、公的個人認証法第十七条第一項第五号に掲げる内閣総理大臣及び総務大臣の認定を受けた者であって、同条第四項に規定する署名検証者である者が発行し、かつ、当該認定を受けた者が行う特定認証業務(電子署名法第二条第三項に規定する特定認証業務をいう。)の用に供する電子証明書(当該顧客等の氏名、住居及び生年月日の記録のあるものに限り、当該顧客等に係る利用者(電子署名法第二条第二項に規定する利用者をいう。)の真偽の確認が、電子署名及び認証業務に関する法律施行規則(平成十三年総務省・法務省・経済産業省令第二号)第五条第一項各号に掲げる方法により行われて発行されるものに限る。)及び当該電子証明書により確認される電子署名法第二条第一項に規定する電子署名が行われた特定取引等に関する情報の送信を受ける方法

二 法第四条第一項第一号に規定する外国人である顧客等(第八条第一項第一号に掲げる特定取引等に係る者に限る。) 当該顧客等から旅券等(出入国管理及び難民認定法(昭和二十六年政令第三百十九号)第二条第五号に掲げる旅券又は同条第六号に掲げる乗員手帳をいい、当該顧客等の氏名及び生年月日の記載があるものに限る。)であって、第八条第一項第一号に定める事項の記載があるもの又は同法第十四条の二第四項に規定する船舶観光上陸許可書(その交付に際して当該交付を受ける者の同法第二条第五号に掲げる旅券の写しが貼り付けられたものに限る。次条第一号イ及び第三号において単に「船舶観光上陸許可書」という。)の提示を受ける方法

三 法人である顧客等 次に掲げる方法のいずれか

イ 当該法人の代表者等から本人確認書類のうち次条第二号又は第四号に定めるものの提示を受ける方法

ロ 当該法人の代表者等から当該顧客等の名称及び本店又は主たる事務所の所在地の申告を受け、かつ、電気通信回線による登記情報の提供に関する法律(平成十一年法律第二百二十六号)第三条第二項に規定する指定法人から登記情報(同法第二条第一項に規定する登記情報をいう。以下同じ。)の送信を受ける方法(当該法人の代表者等(当該顧客等を代表する権限を有する役員として登記されていない法人の代表者等に限る。)と対面しないで当該申告を受けるときは、当該方法に加え、当該顧客等の本店等に宛てて、取引関係文書を書留郵便等により、転送不要郵便物等として送付する方法)

ハ 当該法人の代表者等から当該顧客等の名称及び本店又は主たる事務所の所在地の申告を受けるとともに、行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律第三十九条第四項の規定により公表されている当該顧客等の名称及び本店又は主たる事務所の所在地(以下「公表事項」という。)を確認する方法(当該法人の代表者等と対面しないで当該申告を受けるときは、当該方法に加え、当該顧客等の本店等に宛てて、取引関係文書を書留郵便等により、転送不要郵便物等として送付する方法)

ニ 当該法人の代表者等から本人確認書類のうち次条第二号若しくは第四号に定めるもの又はその写しの送付を受けるとともに、当該本人確認書類又はその写しに記載されている当該顧客等の本店等に宛てて、取引関係文書を書留郵便等により、転送不要郵便物等として送付する方法

ホ 当該法人の代表者等から、商業登記法(昭和三十八年法律第百二十五号)第十二条の二第一項及び第三項の規定に基づき登記官が作成した電子証明書並びに当該電子証明書により確認される電子署名法第二条第一項に規定する電子署名が行われた特定取引等に関する情報の送信を受ける方法

6条1号カ「電子署名」

公的個人認証法第十七条第一項第五号に掲げる総務大臣の認定を受けた者であって、同条第四項に規定する署名検証者である者が発行し、かつ、当該認定を受けた者が行う特定認証業務の用に供する電子証明書及び当該電子証明書により確認される電子署名法第二条第一項に規定する電子署名が行われた特定取引等に関する情報の送信を受ける方

 

難しいです。

 犯罪による収益の移転防止に関する法律4条1項、同法施行規則6条の要件を満たす場合、同法令の範囲内の本人確認の方法として有効となる。

 司法書士法関連法令と司法書士会の会則・規定による本人確認は、本人確認が必要な場面と、犯罪による収益移転防止法関連法令より少し細かな記載(日本司法書士会連合会、司法書士執務調査室執務部会「司法書士にとっての犯罪収益移転防止法Q&A」令和2年8月など。)。

 個人情報保護法とその関連法令、行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律とその関連法令は、本人確認を行う相手の権利を不必要に奪わないように定められている、という理解で良いのか。

 

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