加工担保法制の見直しに関する中間試案のたたき台第2案⑵

担保法制部会資料 26

https://www.moj.go.jp/shingi1/shingi04900001_00173.html

目次

(前注) …………………………………………..2

第1 個別動産を目的財産とする新たな規定に係る動産担保権の実体的効力 …………..3

1 担保権の効力の及ぶ範囲 …………………………..3

2 果実に対する担保権の効力 …………………………..4

3 被担保債権の範囲 …………………………………4

4 担保の目的物の使用収益権限 ………………………..4

5 使用収益以外の設定者の権限 …………………………4

6 担保権者の権限 …………………………………..5

7 物上代位 ………………………………………..6

8 その他 …………………………………………6

9 根担保権 …………………………………..7

第2 個別債権を目的財産とする譲渡担保の実体的効力 …………..8

第3 集合動産・集合債権の担保化 ………………………….9

1 動産の集合体に対する新たな規定に係る動産担保権の設定の可能性 ………………..9

2 集合動産を目的とする担保を設定した設定者の権限 ……………………….. 10

3 集合動産の構成部分である動産の設定者による処分 ………….. 10

4 集合債権を目的とする担保を設定した設定者の権限 ………. 13

5 担保価値維持義務・補充義務 ……………………… 13

6 集合動産を目的とする担保権における物上代位等 ………………. 14

第4 新たな規定に係る動産担保権の対抗要件等 …………….. 14

1 新たな規定に係る動産担保権の対抗要件等(2の留保所有権の場合を除く。) ……….. 14

2 留保所有権の対抗要件等 ……………………………. 15

第5 新たな規定に係る動産担保権と他の担保物権との優劣関係 ……………. 18

1 動産質権と新たな規定に係る動産担保権との優劣関係 ………… 18

2 先取特権と新たな規定に係る動産担保権との優劣関係 ………….. 18

3 一般先取特権と新たな規定に係る動産担保権との優劣関係 ……….. 18

第6 債権譲渡担保権の対抗要件等の在り方 …………………. 18

1 債権譲渡担保権の対抗要件等 ………………………… 18

2 債権譲渡担保権相互の優劣 …………………… 19

3 一般先取特権と債権譲渡担保権との優劣関係 ……………… 19

第7 動産・債権譲渡登記制度の見直し ………………………… 20

担保法制部会資料26

(前注)

1 動産を目的財産とする非占有型の担保制度や債権を目的財産とする担保制度の規律を設ける方法としては、①債権債務を担保する目的でされた一定の類型の契約を適用の対象として、その契約の効力を定める方法(以下「担保目的取引規律型」という。)、②質権、抵当権等と並ぶ担保物権を新たに設ける方法創設す方法(以下「担保物権創設型」という。)が考えられる。

担保目的取引規律型は、仮登記担保契約に関する法律(以下「仮登記担保法」という。)が「金銭債務を担保するため、その不履行があるときは債権者に債務者又は第三者に属する所有権その他の権利の移転等をすることを目的としてされた代物弁済の予約、停止条件付代物弁済契約その他の契約で、その契約による権利について仮登記又は仮登録のできるもの」の効力等について民法等の特則を設けているのと同様の方法である。動産や債権を目的財産とする担保法制についてこのような方法で規定を設ける場合は、例えば、債務を担保する目的で動産の所有権を移転する契約、債務を担保する目的で動産の所有権を売主に留保する売買契約の効力等について民法等の特則を設けることが考えられる。動産や債権を目的財産とする担保取引としては、現行法においては、債務を担保するため動産の所有権を移転したり(動産譲渡担保)、留保したり(所有権留保)するなどの取引形式が用いられており、このような形式との連続性がある点で実務上も受け入れられやすいと考えられる。

担保物権創設型は、抵当権や質権等と並ぶ新たな担保物権を創設するものであるから、この方法によって設けられた規定は、債務を動産譲渡担保する目的でや所有権を移転する留保の形式が用いられた取引(譲渡担保)などには、直接には適用されないことになる。

しかし、そうすると非典型担保が残ることになり、担保取引に関する法律関係を明確化するという点では不十分な結果となりかねない。そこで、担保物権創設型による場合には、担保物権を創設するだけでなく、債務を担保する目的で動産の所有権を移転する契約、債務を担保する目的で動産の所有権を売主に留保する売買契約などの担保取引については、新たな担保物権を設定する契約とみなすなどの規定を併せて設ける必要がある。

担保物権創設型についてこのようなみなし規定を設けるとすれば、担保目的取引規律型と担保物権創設型は規定の方法の違いにすぎず、ほぼ同様の実質を規律することができるとも考えられる(ただし、動産譲渡担保は形式的には目的財産である動産の所有権を移転する契約であるから、例えば民法第178条が適用されることになる。これに対して新たな担保物権を創設し、対抗要件を引渡しとする場合には、同条は当然には適用されないから、別途規定を設ける必要がある。このように、同じ実質を実現するとしても、必要となる規定が異なる場合がある。)。

2 この中間試案においては、①と②のいずれによって規定を設けるかは法制的な観点からの検討に委ねることとし、担保取引に関する実質的なルールの内容についての試案を示すこととし、特段の言及のない限り、担保目的取引規律型によるか担保物権創設型によるかは中立的に表現することとしている。ただし、債権は現行法上も質権の目的となり得るため、担保物権創設型による場合には、債権質と区別された新たな担保権を創設する必要性自体が問題となり得る(新たな担保権を創設するのではなく、債権質に関する規定を修正するにとどめることもあり得る。)。そこで、この中間試案においては、債権を目的とする担保に関するルールを示すときは、差し当たって担保目的取引規律型によることを前提としてルールの内容を示すこととしている。

このような観点から、担保取引によって債権者が得ることとなる権利を指す用語として、「新たな規定に係る担保権」という文言を用いる。①の方法特による動産を目的財産とする場合について言及する際は、「新たな規定に係る動産担保権」という。

「新たな規定に係る動産担保権の設定」とは、担保物権創設型によれば、新たに創設されることになる動産担保権を設定することをいい、担保目的取引規律型によれば、債務を担保する目的で一定の類型の契約を締結すること(例えば、担保目的で動産の所有権を移転する取引を「契約を締結すること)をいう。

「留保所有権」「債権譲渡担保」「債権譲渡担保権」など、担保目的取引規律型を前提とする表現を用いる場合もある。「留保所有権」とは、売主が売買代金等を担保するために所有権を留保する取引(以下「所有権留保(売買契約)」と呼び、譲渡担保いう。)によって債権者が得る権利をいう。「債権譲渡担保」とは、担保「目的で債権を譲渡する取引をいい、「債権譲渡担保権」、所有権留保とは、債権譲渡担保によって債権者が得る担保を「留保所有権」と呼ぶ。新たに規定を設けた場合の「譲渡担保」「所有権留保」と区別して、特に現行法における「譲渡担保」「所有権留保」について述べる場合は、「現行法の譲渡担保」などと呼ぶ権利をいう。

 (説明)

分かりやすさの観点から表現振りを改めたものである。なお、本文2では、債権を目的とする担保権について、担保目的取引規律型による場合の債権譲渡担保権に関するルールのみを中間試案に記載する理由を追記している。また、本文2では、中間試案における用語について、担保物権創設型、担保目的取引規律型それぞれの立場から意義を明確にしておくことが望ましいものについて記載している。

第1 個別動産を目的財産とする新たな規定に係る動産担保権の実体的効力

1 担保権の効力の及ぶ範囲

新たな規定に係る動産担保権は、目的物に従として付合した物及び設定との先後を問わず設定者が目的物に附属させた従物(注1、2)に及ぶものとする。

ただし、設定行為に別段の定めがある場合及び債務者の行為について民法第424 条第3項に規定する詐害行為取消請求をすることができる場合は、この限りでないものとする。

(注1) 本文において担保権の効力が及ぶとされる物をどのように表現するかについては、「付加一体物」という表現を用いることの可否も含めて今後検討する。

(注2) 設定後に附属させられた従物については解釈に委ねるべきであるとの考え方がある。

(説明)

部会資料21 から実質的変更はない。なお、従物に及んだ主物に対する担保権の効力と従物に設定された担保権との優劣については、補足説明に記載することを予定している。

2 果実に対する担保権の効力

新たな規定に係る動産担保権の担保権者は、その担保する債権について不履行があったときは、目的物の果実から優先弁済を受けることができるものとする。

(説明)

部会資料21 から変更はない。

3 被担保債権の範囲

新たな規定に係る動産担保権は、元本、利息、違約金、担保権の実行の費用及び債務の不履行によって生じた損害の賠償を担保するものとする。

ただし、設定行為に別段の定めがあるときは、この限りでないものとする。

(説明)

部会資料21から実質的変更はない。

4 担保の目的物の使用収益権限

新たな規定に係る動産担保権は、その内容に使用収益権限を含まず、設定者が目的物の使用収益をすることができるものとする。

(説明)

部会資料21 から変更はない。

5 使用収益以外の設定者の権限

⑴ 新たな規定に係る動産担保権は、同一の目的物の上に重複して設定することができるものとする。

⑵ 新たな規定に係る動産担保権の設定者が担保権者の同意なく目的物を真正に譲渡すること(注1)ができるかどうかについては、次のいずれかの案によるものとする。

【案1.5.1】担保権者の同意なく目的物を真正に譲渡することができるものとする(注2)。

【案1.5.2】目的物を真正に譲渡することはできないものとする(注3)。

(注1)ここで、「目的物を真正に譲渡する」は、担保権を消滅させる形で目的物の完全な所有権を譲渡することではなく、担保権を存続させたままで、設定者の有する権利(担保目的に制限された所有権を除いた所有権又は担保権に制約された所有権)を譲渡することを意味する。担保権者35 の同意を得てその担保権を消滅させ、目的物の所有権を譲渡することができることは当然の前提としている。

(注2)【案1.5.1】を採る場合であっても、所有権留保という類型を設けるときは、所有権留保については【案1.5.2】を採るという考え方もあり得る。

(注3)このとき、担保権者の同意を得て、「担保権を存続させたままで設定者の有する権利を移転すること」ができることを前提とする。

⑶ 新たな規定に係る動産担保権の設定者は、目的物の占有を第三者に妨害されるおそれがあるときはその第三者に対する妨害の予防を、目的物の占有を第三者が妨害しているときはその第三者に対する妨害の停止を、目的物を第三者が占有しているときはその第三者に対する返還を、それぞれ請求することができるものとする。

(説明)

⑵において、「目的物を真正に譲渡する」の意義等を(注)に記載した。また、⑶において、設定者が妨害予防請求ができることを明示することとした。

6 担保権者の権限

⑴ 新たな規定に係る動産担保権の担保権者は、その担保する債権について不履行があるまでは、目的物を第三者に譲渡すること(目的物の完全な所有権を第三者に移転させること)ができないものとする(注1)。

(注1)新たな規定に係る動産譲渡担保権の被担保債権を譲渡することに伴う場合に伴って被担保権者が有する権利が移転することは、この限りあるが、これは別の問題ではないある。

⑵ 新たな規定に係る動産担保権について、他の債権の担保とすることができるもの(以下「転担保」という。)する。

⑶ 新たな規定に係る動産担保権については、順位の変更、担保権の譲渡・放棄及び順位の譲渡・放棄(以下「新たな規定に係る動産担保権の処分」という。)及び順位の変更(新たな規定に係る動産担保権の処分と併せて「新たな規定に係る動産担保権の処分等」という。)の全部又は一部をすることができるものとするか、これらのうち一部をすることができるものとする場合、その範囲をどのように考えるかについては、引き続き検討する(注2)。

(注2)できるものとする範囲については、実務上のニーズや公示の観点から、引き続き検討する。

⑶ ⑵でできるものとされた新たな規定に係る動産担保権の処分等の対抗要件等については、次のとおりとする。

ア(ア) 新たな規定に係る動産担保権の処分は、債務者に当該処分を通知し、又は債務者がこれを承諾しなければ、これをもって債務者、保証人、担保権設定者及びこれらの者の承継人に対抗することができないものとする。

(イ) 新たな規定に係る動産担保権の処分は、登記をしなければ、これをもって第三者に対抗することができないものとする。

(ウ) 担保権者が数人のために新たな規定に係る動産担保権の処分をしたときにおける処分の利益を受ける者の権利の順位は、新たな規定に係る動産担保権の処分についての登記の前後によるものとする。

イ 新たな規定に係る動産担保権の順位の変更は、登記をしなければ、その効力を生じないものとする。

(説明)

本文⑴について、「目的物を第三者に譲渡すること」の意味内容が不明確であるとの意見があったことから、これを明記することとした。

本文⑵については、部会資料25 及び前回の議論内容を踏まえて、新たな規定に係る動産担保権の処分等の一部に限ってすることができるものとする考え方を併記することとし、新たな規定に係る動産担保権の処分等の対抗要件等についての記載を本項に移すこととした。

7 物上代位

⑴ 新たな規定に係る動産担保権は、その目的物の売却、賃貸、滅失又は損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物に対しても行使することができるものとする。

⑵ 新たな規定に係る動産担保権の担保権者は、⑴に基づいて金銭その他の物に対して権利を行使するときは、その払渡し又は引渡しの前に差押えをしなければならないものとする。

⑶ 新たな規定に係る動産担保権に基づく物上代位とその目的債権を目的財産とする担保との優劣関係について、次のいずれかの案によるものとする。

【案 1.7.1】物上代位とその目的債権を目的財産とする担保との優劣は、⑵の差押えがされた時点と、その目的債権を目的財産とする担保が対抗要件を具備した時点との前後によるものとする。

【案1.7.2】物上代位とその目的債権を目的財産とする担保との優劣は、物上代位を生じさせた目的物元物に設定された担保権が対抗要件を具備した時点と、その目的債権を目的財産とする担保が対抗要件を具備した時点との前後によるものとする(注)。

(注)原則として【案1.7.1】の規律によるが、目的債権を目的財産とする物に設定された新たな規定に係る動産担保権の設定について登記がされたときは、譲渡登記の時点を基準とする(引渡しのみの場合には物上代位が優先する)という考え方がある。

(説明)

本文⑶の(注)について改めて整理を行った。すなわち、新たな規定に係る動産担保権については、対抗要件が必ずしも明らかでない場合もあるため、原則として【案1.7.1】の規律によることとしつつ、当該担保権の設定について登記がされたときは、登記の時点を基準とする考え方がある旨を明記することとした。他方で、目的債権を目的財産とする担保権については、登記まで求めることとするのは過大とも考えられることから、譲渡登記の時点を基準とすることとはしていない。

8 その他

民法第296 条(担保権の不可分性)及び第351 条(物上保証人の求償権)の規定を新たな規定に係る動産担保権について準用するものとする。

(説明)

部会資料21 から変更はない。

9 根担保権

⑴ 新たな規定に係る動産担保権の設定は、【一定の範囲に属する】不特定の債権を担保するためにもすることができるものとする。

⑵ 極度額を定めることの要否については、引き続き検討する。

⑶ 個別の被担保債権について譲渡や債務の引受け、債権者又は債務者の交替による更改があった場合について、譲渡された債権などについて対して担保権を行使することができないものとする。

⑷ 元本の確定前に根担保権者又は債務者について相続開始、合併又は会社分割があった場合について、次のような規定を設けるものとする。

ア 元本の確定前に根担保権者又は債務者について相続開始があった場合には、次のいずれかの案によるものとする。

【案1.9.1】根担保権者又は債務者について相続が開始したときは、担保すべき元本は、確定するものとする。

【案1.9.2】次の(ア)から(エ)までの規定を設けるものとする。

 (ア) 根担保権者について相続が開始したときは、根担保権は、相続開始時に存在する債権及び相続人と設定者との合意により定めた相続人が相続開始後に取得する債権を担保する。

(イ) 債務者について相続が開始したときは、根担保権は、相続開始時に存在する債務及び根担保権者と設定者との合意により定めた相続人が相続開始後に負担する債務を担保する。

(ウ) 上記(ア)(イ)の合意については、後順位の担保権者その他の第三者の承諾を得ることを要しない。

(エ) 上記(ア)(イ)の合意について相続の開始後6か月以内に登記をしないときは、担保すべき元本は、相続開始時に確定したものとみなす。

イ(ア) 根担保権者について合併があったときは、根担保権は、合併時に存在する債権及び合併後存続する法人又は合併によって設立された法人が合併後に取得する債権を担保する。

(イ) 債務者について合併があったときは、根担保権は、合併時に存在する債務及び合併後存続する法人又は合併によって設立された法人が合併後に負担する債務を担保する。

(ウ) 設定者は、根担保権者又は債務者について合併があったときは、合併があったことを知った日から2週間かつ合併から1か月以内に、担保すべき元本の確定を請求することができる。ただし、債務者について合併があった場合で、債務者が設定者であるときは、この限りでない。

(エ) (ウ)の請求があったときは、担保すべき元本は、合併の時に確定したものとみなす。

ウ(ア) 根担保権者を分割をする会社とする分割があったときは、根担保権は、分割の時に存在する債権並びに分割をした会社及び分割により設立された会社又は当該分割をした会社がその事業に関して有する権利義務の全部又は一部を当該会社から承継した会社が分割後に取得する債権を担保する。

(イ) 債務者を分割をする会社とする分割があったときは、根担保権は、分割の時に存在する債務並びに分割をした会社及び分割により設立された会社又は当該分割をした会社がその事業に関して有する権利義務の全部又は一部を当該会社から承継した会社が分割後に負担する債務を担保する。

(ウ) 設定者は、根担保権者又は債務者を分割をする会社とする分割があったときは、分割があったことを知った日から2週間かつ分割から1か月以内に、担保すべき元本の確定を請求することができる。ただし、債務者を分割をする会社とする分割があった場合で、債務者が設定者であるときは、この限りでない。

(エ) (ウ)の請求があったときは、担保すべき元本は、分割の時に確定したものとみなす。

⑸ 根担保権の全部譲渡、一部譲渡(注)については、これを公示するための制度を設けることができるか否かを含めて、引き続き検討する。

(注)分割譲渡については、これを公示するための制度を設けることができるか否かのほか、極度額の設定の要否と関連して、引き続き検討する。

⑹ 債務者又は設定者が破産手続開始決定を受けたこと、設定から一定期間経過した後に設定者の請求があったことなど(注1)(注2)を被担保債権の元本の確定事由とするものとする。

(注1)担保権者等による実行の着手を元本確定事由とするか否かについては、実行に関する規律(後順位担保権者による実行の可否及びその場合の先順位担保権の消長等)や集合動産を目的とした担保の規律との関係も踏まえて、引き続き検討する。

(注2)元本確定事由に関するその他の規律については、根抵当権に関する規律を参考にして、引き続き検討する。

(説明)

部会資料25 及び前回の議論内容を踏まえて、本文⑷アについて、【案1.9.1】を併記することとした。その他の部分に変更はない。

第2 個別債権を目的財産とする譲渡担保の実体的効力

1 前記第1の2(果実に対する担保権の効力)、3(被担保債権の範囲)、5(使用収益以外の設定者の権限)⑴、6(担保権者の権限)⑴、7(物上代位)、8(その他)及び9(根担保)は、債権譲渡担保権にも適用されるものとする。

2 債権譲渡担保権が設定され【、債務者対抗要件が具備され】た場合、①第三債務者は設定者に対し弁済をすることが制限され、②設定者は、担保権の目的財産である債権について、放棄、免除、相殺、更改など当該債権を消滅させる行為をすることができないものとする。

3⑴ 債権譲渡担保権について、転担保、担保権の譲渡・放棄及び順位の譲渡・放棄(以下「債権譲渡担保権の処分」という。)及び順位の変更(債権譲渡担保権の処分と併せて「債権譲渡担保権の処分等」という。)の全部又は一部をすることができるものとするか、これらのうち一部をすることができるものとする場合、その範囲をどのように考えるかについては、引き続き検討する(注)。

(注)できるものとする範囲については、実務上のニーズや公示の観点から、引き続き検討する。

⑵ ⑴でできるものとされた債権譲渡担保権の処分等の対抗要件等については、次のとおりとする。

ア(ア) 債権譲渡担保権の処分は、債務者に当該処分を通知し、又は債務者がこれを承諾しなければ、これをもって債務者、保証人、担保権設定者及びこれらの者の承継人に対抗することができないものとする。

(イ) 債権譲渡担保権の処分は、登記をしなければ、これをもって第三債務者以外の第三者に対抗することができないものとする。

(ウ) 債権譲渡担保権の処分は、その登記がされたことについて第三債務者に登記事項証明書を交付しなければ、これをもって第三債務者に対抗することができないものとする。

(エ) 担保権者が数人のために債権譲渡担保権の処分をしたときにおける処分の利益を受ける者の権利の順位は、債権譲渡担保権の処分についての登記の前後によるものとする。

イ 債権譲渡担保権の順位の変更は、登記をし、かつ、その登記がされたことについて第三債務者に登記事項証明書を交付しなければ、その効力を生じないものとする。

(説明)

本文3⑴については、部会資料25 及び前回の議論内容を踏まえて独立して項目を設けることとした。また、⑵については、債権譲渡担保権の処分等の対抗要件等についての記載を本項に移すこととした。

第3 集合動産・集合債権を目的とする担保権の実体的効力の担保化

1 動産の集合体に対する新たな規定に係る動産担保権の設定の可能性

新たな規定に係る動産担保権は、種類、所在場所、量的範囲の指定その他の方法により特定された範囲(以下「特定範囲」という。)に属する動産の集合体(設定後に新たに動産がその集合体に加入(個別動産が特定範囲に新たに入ることをいう。)をすることが予定されているものを含む。)を一括して目的とすることができるものとする(注)。

(注)集合体として一括して担保権の目的となるためには、単に複数の動産によって構成されているだけでなく、経済的又は取引上の一体性など、一体として扱うことを正当化するための何らかの要件が扱われるための適格性に関する何らかの要件(経済的若しくは取引上の一体性又は「取引上の社会通念に照らし、構成部分が変動しても集合体としての同一性を維持して存続すると認められる」ことなど)を必要であるというとする考え方がある。

(説明)

部会資料25 及び前回の議論内容等を踏まえて表現を改めた。

2 集合動産を目的とする担保を設定した設定者の権限

新たな規定に係る動産担保権の目的物が特定範囲に属する動産の集合体であって、設定後に新たに動産がその集合体に加入することが予定されているもの(以下「集合動産」という。)である場合における設定者の処分権限や担保権者の権限について、次のような規定を設けるものとする。

⑴ 設定者は、通常の事業の範囲内で、集合動産の構成部分である動産について、担保権の負担のないものとしての処分をし、又は集合動産から逸出(特定範囲に含まれていた個別動産が、事実の問題として特定範囲から出ることをいう。)をさせる権限を有する。ただし、設定行為に別段の定めがあるときは、その定めに従う。

 ⑵ 設定者が⑴の権限の範囲(以下「権限範囲」という。)を超えて集合動産の構成部分である動産について、担保権の負担のないものとしての処分をし、を処分し、又は逸出をさせるおそれがあるときは、担保権者は、その予防を請求することができる。

(説明)

部会資料25及び前回の議論内容等を踏まえて表現を改めた。

3 集合動産の構成部分である動産の設定者による処分

⑴ 設定者が、その権限範囲を超えて、集合動産の構成部分である動産を、担保権の負担のないものとしての処分をした場合に、当該処分を受けた者が、その動産が担保権の目的物であることを知らないで、かつ、知らないことに過失がなかったときには、民法第192 条の適用によって保護されるものとする(注1)。

⑵ 設定行為に設定者の処分権限について別段の定めがない場合において、設定者が、集合動産の構成部分である動産を、通常の事業の範囲を超えて、担保権の負担のないものとしての処分をした場合には、当該処分を受けた者は、その処分が設定者の通常の事業の範囲に含まれると信じるについて正当な理由があるときは、その動産について担保権の負担のない権利を取得するものとする。

⑶ 設定行為に設定者の処分権限を制約する別段の定めがある場合において、設定者が、通常の事業の範囲内で、かつ、制約された権限範囲を超えて、担保権の負担のないものとしての処分をした場合には、当該処分を受けた者は、制約された権限範囲を超えていることを知らなかったとき(注2)は、その動産について担保権の負担のない権利を取得するものとする(注3)。

⑷ 設定行為に設定者の処分権限を制約する別段の定めがある場合において、設定者が、通常の事業の範囲及び制約された権限範囲を超えて、担保権の負担のないものとしての処分をした場合には、当該処分を受けた者は、設定者による当該処分が通常の事業の範囲に含まれると信じるについて正当な理由があり、かつ、制約された権限範囲を超えることを知らなかったとき(注2)は、その動産について担保権の負担のない権利を取得するものとする。

⑸ 設定行為に設定者の処分権限を拡大する別段の定めがある場合において、設定者が、通常の事業の範囲及び拡大された権限範囲を超えて、担保権の負担のないものとしての処分をした場合には、当該処分を受けた者は、設定者による当該処分が通常の事業の範囲又はその拡大された権限範囲に含まれると信じるについて正当な理由があるときは、その動産についての担保権の負担のない権利を取得するものとする。

⑴ 設定者が、通常の事業の範囲内で、かつ、権限範囲を超えて、集合動産の構成部分である動産を処分した場合については、次のいずれかの案によるものとする。

【案3.3.1.1】 処分を受けた者は、その動産について権利を取得するものとする。

【案3.3.1.2】 処分を受けた者は、設定者による処分が権限範囲を超えていることを知らなかった場合には、その動産について権利を取得するものとする。

【案3.3.1.3】 処分を受けた者は、設定者による処分が権限範囲を超えていることを知らず、かつ、知らなかったことにつき過失がないときは、その動産について権利を取得するものとする。

⑵ 設定者が、権限範囲を超えて、かつ、通常の事業の範囲を超えて、集合動産の構成部分である動産を処分した場合については、次のいずれかの案によるものとする。

【案3.3.2.1】 処分を受けた者は、設定者による処分が通常の事業の範囲であると信じていた場合には、その動産についての権利を取得するものとする。

【案3.3.2.2】 規律を設けず、処分を受けた者は、即時取得が成立するときに限り、保護されるものとする。

⑹ 前記2⑴及び3並びに⑴から⑸まで及び⑵で処分を受けた者が集合動産の構成部分である動産について権利を取得しない場合に担保権者のとり得る手段については、引き続き検討する。

(注1)集合動産から逸出をした動産の処分については別異に考えるべきであるという考え方がある。

(注2)知らなかったことにつき過失がないことが必要であるという考え方、重過失がないことが必要であるという考え方がある。

(注3)相手方が権利を取得するために、目的物が集合物から逸出をすることが必要であるかどうかについては、引き続き検討する。

(説明)

1 前記2のとおり、集合動産を目的とする新たな規定に係る担保権の設定者は、原則として、通常の事業の範囲内又は当事者が定めた権限の範囲内で、構成部分である動産の処分権限を有する。本項の本文は、設定者がその範囲を超えて、担保権の負担がないものとして構成部分を処分した場合に、その相手方が担保権の負担のない権利を取得するかどうかについての規律を設けようとするものである。通常の事業の範囲や当事者が合意した権限範囲との関係で、行われた処分がどのように位置づけられるかについては、次のようなパターンが考えられる。

A:通常の事業の範囲に含まれているが、当事者が合意によって制約が加えられており、合意された権限範囲には入っていない。

B:通常の事業の範囲に含まれており、当事者間で合意された権限範囲にも含まれる。

C:通常の事業の範囲内に含まれていないが、当事者が権限範囲を拡大する方向で合意しており、合意された範囲に含まれている。

D:通常の事業の範囲に含まれておらず、当事者が合意した範囲にも含まれていない。

2 具体的な規律内容

本文⑴は、権限外で処分が行われた場合についての原則を明らかにしたものであり、設定者の権限を超えた処分がされた以上、原則として第三者は権利を取得することができないが、即時取得が成立する場合には第三者は担保権の負担のない権利を取得するというものである。

本文⑵は、設定者の処分権限について別段の定めがない場合(したがって、設定者が通常の事業の範囲内での処分権限を有する場合)に関するものである。この場合に、通常の事業の範囲を超えた処分(上図のC、D)がされたときでも、相手方がその処分が通常の事業の範囲内でされたと信じる正当な理由があるときは、相手方は担保権の負担のない権利を取得するとするものである。正当な理由があるときとは、そのように信じるについて過失がないという趣旨である。法律上のデフォルトルールとして、設定者が通常の事業の範囲内では処分権限を有することとされているため、権限内で処分がされたと過失なく信じた相手方を保護しようとするものである。

本文⑶は、当事者間で設定者の処分権限について別段の定めがされ、設定者が、通常の事業の範囲内よりも狭い範囲でのみ処分権限を有するとされた場合に関する規定であり、通常の事業の範囲内で、当事者が合意した権限を超えた処分がされた場合(A)を扱っている。

 通常の事業の範囲内では設定者は処分権限を有するのが原則であり、これに加えられた制約は第三者にとっては認識しにくいものであるから、当事者としては、その処分について設定者が権限を有すると信頼してもやむを得ない。そこで、この場合には、当事者の合意した権限を超えている場合でも、即時取得に必要な主観的要件を緩和して相手方を厚く保護することが考えられる。そこで、本文⑶では、当事者の合意によって制約された権限を超えていることについて相手方が善意でさえあれば、相手方は保護されることとしている。これに対しては、無過失が必要であるという見解や、無重過失が必要という見解も主張されているため、これらを(注)に記載している。

本文⑷も、本文⑶と同様に、当事者間で設定者の処分権限について別段の定めがされ、設定者が、通常の事業の範囲よりも狭い範囲でのみ処分権限を有するとされた場合に関する規通常の事業の範囲 当事者が合意した範囲A B CD定であり、通常の事業の範囲を超え、かつ、当事者が合意した権限を超えた処分がされた場合に関するもの(D)を扱っている。この場合、その処分が通常の事業の範囲内でされたと信じる正当な理由があるときは、相手方の信頼を保護してその処分が通常の事業の範囲内でされたのと同様に扱い(本文⑵と同様)、その上で、通常の事業の範囲というデフォルトルールに加えられた制約は相手方にとって認識しにくく、通常の事業の範囲内にあると正当に信頼した者は、合意による権限を超えていても相手方には処分権限があると信頼するのが通常であるから、本文⑶と同様に、合意による権限を超えていることについて善意でさえあれば、相手方を保護して担保権の負担のない権利を取得することとしている。

本文⑸は、本文⑶⑷とは逆に、設定者の処分権限を拡大する別段の定めがある場合についての規律であり、通常の事業の範囲及び拡大された権限範囲を超えた処分がされた場合に(D)、相手方が、設定者による当該処分が通常の事業の範囲又はその拡大された権限範囲のいずれかに含まれると信じるについて正当な理由があるときは、その信頼を保護しようとするものである。

4 集合債権を目的とする担保を設定した設定者の権限

⑴ 譲渡担保の目的債権が債権発生年月日の始期及び終期並びに債権発生原因等特定範囲によって特定され、特定された範囲に現に発生していない債権を含むもの(以下「集合債権」という。)である場合においては、設定者は、通常の事業の範囲内で、その特定された範囲に含まれる債権の取立て【、譲渡及び相殺、免除その他の債権を消滅させる行為】をする権限を有するものとする。ただし、設定行為に別段の定めがあるときはその定めに従うものとする。

⑵ 設定者が⑴の権限の範囲を超えて取立て【、譲渡、免除等】をした場合の譲受人及び第三債務者の保護に関する特別の規定を設けないものとする。

(説明)

本文⑴の集合債権の要件について、表現ぶりを改めた。

なお、本文⑴の「取立て」には取立金を利用する権限まで含まれることについては、補足説明に明記する予定である。

5 担保価値維持義務・補充義務

前記2⑴及び4⑴に規定する場合について、担保価値維持義務や、特定された範囲に含まれる動産又は債権について担保権の負担のないものとしての処分が処分がされ、又は逸出をさせたときの補充義務に関する規定(注)を設けるか否かについて、引き続き検討する。

 (注)例えば、「新たな規定に係る動産担保権の目的財産が集合動産又は集合債権である場合には、正当な理由がある場合を除き、設定者は、通常の事業が継続されれば当該集合動産又は当該集合債権が有すると認められる価値を維持しなければならない」という趣旨の規定が考えられる。

(説明)

二読資料から変更はない。

6 集合動産を目的とする担保権における物上代位等

⑴ 新たな規定に係る動産担保権の目的物が集合動産である場合には、当該担保権は、設定者が通常の事業を継続している間は、特定範囲に含まれる動産の売買、滅失又は損傷によって設定者が受けるべき金銭その他の物に対し、行使することができないものとする。

⑵ 前記⑴につき、次のような例外を設けるかは、引き続き検討する。

ア 当事者が別段の合意をした場合

イ 権限範囲を超える処分がされた場合

⑶ 第三者が特定範囲に含まれる動産を滅失又は損傷させた場合における担保権者独自の損害賠償請求権については、特段の規定を設けないものとする。

(説明)

部会資料21から変更はない。

第4 新たな規定に係る動産担保権の対抗要件等

1 新たな規定に係る動産譲渡担保権(又は新たに創設する担保権。以下併せて「動産譲渡担保権等」という。)の対抗要件等(2の留保所有権の場合を除く。)

 ⑴ 新たな規定に係る動産譲渡担保権の対抗要件

ア 個別動産を目的とする新たな規定に係る動産譲渡担保権(以下「個別動産担保権」という。)の設定は、当該個別動産の引渡し(占有改定を含む。以下同じ。)がなければ、これをもって第三者に対抗することができないものとする。

イ 集合動産を目的とする新たな規定に係る動産譲渡担保権(以下「集合動産担保権」という。)等(以下「集合動産譲渡担保権等」という。)の設定は、その構成部分であるとして現に存在する動産の引渡しがなければ、これをもって第三者に対抗することができないものとする。この場合には、当該設定後に集合動産に加入した個別動産に及ぶ当該担保権の効力についても、第三者に対抗することができるものとする。

ウ 個別動産担保権又は集合動産担保権を目的とする動産譲渡担保権等の設定については、登記をすることができることとし、登記がされたときは、目的物である個別動産又は集合動産の構成部分であるとして現に存在する動産について引渡しがあったものとみなすものとする。

⑵ 新たな規定に係る動産譲渡担保権相互の優劣

ア 同一の個別動産又は集合動産ついて数個の個別動産譲渡担保権が設定されて競合したときは、その順位は、原則として、当該担保権について対抗要件を備えた時これをもって第三者に対抗することができるようになった時の前後によるものとする。

イ 同一の集合動産に数個の集合動産担保権が設定されて競合したとき(その一部が重なり合って競合する場合を含む。)は、その順位は、原則として、集合動産担保権について対抗要件を備えた時の前後による(注1)。

ウ 集合動産に一個の集合動産担保権が設定されており、その設定後に、個別動産担保権が設定された個別動産が加入したときは、集合動産担保権(が当該個別動産に及ぶ効力)と個別動産担保権との順位については、原則として、次のいずれかの案によるものとする。

【案 4.1.1】個別動産担保権について対抗要件を備えた時と集合動産担保権について対抗要件を備えた時の前後による。

【案4.1.2】個別動産担保権について対抗要件を備えた時と当該個別動産が集合動産に加入した時の前後による。

アからウまでにかかわらず、登記により対抗要件を備えた新たな規定に係る動産譲渡担保権は、占有改定により対抗要件を備えた新たな規定に係る動産譲渡担保権等に優先するものとする(注2)。

(注1)集合動産担保権の設定後に集合動産に加入した個別動産(加入時に、当該個別動産を目的とする個別動産担保権は設定されていない。)があるときであっても、集合動産担保権同士の競合が問題となる場面においては、設定後に加入した個別動産についても、その順位は、原則として、集合動産担保権について対抗要件を備えた時の前後による。

(注2)集合動産譲渡担保権に限ってエの規律を適用する考え方がある。

(説明)

部会資料 23 では、担保目的取引規律型及び担保物権創設型の双方を包含する形で「動産譲渡担保権等」と定義していたが、分かりにくさもあったことから、「新たな規定に係る動産担保権」とし、実質的ルールの異なる留保所有権の場合を除くこととした。

本文⑴イについては、集合動産の構成部分である個別動産が現には存在しないものの、近いうちに存在することとなるのが確実といえるような場合にも、集合動産を目的とする新たな規定に係る動産担保権の対抗要件を具備する余地を認めるべきとの意見があったことを踏まえて、「その構成部分である動産」という文言に修正することとした。また、本文⑴イについて、集合動産を目的とする新たな規定に係る動産担保権の設定についての第三者対抗要件の効力が、当該設定後に集合動産に加入した個別動産にも及ぶ旨を明記した。

本文⑵では、部会資料 25 及び前回の議論内容を踏まえて新たな規定に係る動産担保権が競合する場面とその規律を整理し、ウにおいて設定時説と加入時説を併記することとした。

2 留保所有権(又は新たに創設する担保権のうち目的物の売買代金債権のみを被担保債権とするもの。以下併せて「留保所有権等」という。)の対抗要件等

⑴ 留保所有権の対抗要件の要否

留保所有権を第三者に主張するために対抗要件を必要とするかどうかについては、次のとおりいずれかの案によるものとする。

ア 目的物の代金債権を担保する留保所有権(以下「狭義の留保所有権」という。)は、これを第三者に主張するために対抗要件を必要とするかどうかについては、次のいずれかの案によるものとする(注1、2)。

【案4.2.1.1】目的物の代金債権を担保する留保所有権(以下「狭義の留保所有権」という。)(又は新たに創設する担保権のうち目的物の売買代金債権のみを被担保債権とするもの。以下「狭義の留保所有権等」という。)は、これを第三者に主張するために、特段の要件を必要としないものとする(注31、2)。

【案4.2.1.2】狭義の留保所有権等を含む)留保所有権等は、その動産の引渡しがなければ、これをもって第三者に対抗することができないものとする。

イ (目的物の代金債権及び)目的物の代金債権(注1)以外の債権を担保する留保所有権(以下「拡大された留保所有権」という。)は、その動産の引渡しがなければ、これをもって第三者に対抗することができないものとする(注2)。

(注1)動産を購入するための資金の融資に基づく債権など、目的物である動産と密接な関連性を有する一定の債権を被担保債権とする留保所有権についても、狭義の留保所有権に含める等と取り扱う考え方がある。これに関連して、このような密接な関連性を有する一定の債権を被担保債権とする動産譲渡担保権が設定された場合には、当該動産譲渡担保権についても、狭義の留保所有権と同様に取り扱う考え方がある。

担保物権創設型によると、目的物の代金債権【及び上記債権】を担保する新たな規定に係る動産担保権について、狭義の留保所有権と同様に取り扱うことが考えられる。

(注2)担保目的取引規律型による場合には、狭義の留保所有権以外の留保所有権(以下「拡大された留保所有権」という。)は、動産譲渡担保権等と同様に取り扱うものとする。

(注2)留保所有権については、登記できるとすることが考えられる。

(注3)【案4.2.1.1】によっても、(代位弁済等により)目的物の売主以外の者が狭義の留保所有権を有する場合には、その動産の引渡しがなければ、これをもって第三者に対抗することができないものとする考え方がある。

 ⑵ 留保所有権と新たな規定に係る動産担保権との優劣関係

【案4.2.2.1】狭義の留保所有権等は、他の新たな規定に係る動産担保権に当然に優先するものとする(【案4.2.1.1】を前提とする。)。

【案4.2.2.2】留保所有権等と競合する他の新たな規定に係る動産担保権との優劣は、これをもって第三者に対抗することができるようになった時の前後によるものとする(【案30 4.2.1.2】を前提とする。)。

ア 【案4.2.2.3】留保所有権と競合する他の新たな規定に係る動産担保権との優劣は、留保所有権が目的物の代金債権以外の債権を担保する限度では、原則として、これをもって第三者に対抗することができるようになった時の前後によるものとする(注4)。

イ ただし、留保所有権は、【【案 4.2.1.2】によると引渡しがされていることを前提として、】等がその目的物の代金債権を担保する限度では、他の競合する新たな規定に係る動産担保権に当然に優先するものとする(注5、6)(【案4.2.1.2】を前提とする。)(注3、4)。

(注4)この場合には、前記1⑵エと同様のルール(登記優先ルール)を採用することが考えられる。

(注5)なお、拡大された留保所有権について、目的物の代金債権を担保する部分と目的物の代金債権以外の債権を担保する部分がある場合には、これと競合する他の新たな規定に係る動産担保権との優劣は、本文⑵イにより目的物の売買代金を担保する限度では拡大された留保所有権が優先し、それ以外の部分については、原則として、それぞれが対抗要件を具備した時の前後による

ものとなる。

(注6)他の新たな規定に係る動産担保権に優先するための要件として、一定期間内に登記を備えることを求める考え方がある。

(注3)【案4.2.2.3】を採る場合には、留保所有権等がその目的物の代金債権を担保する限度で競合する新たな規定に係る動産担保権に優先するためには、留保所有権等について第三者対抗要件を備えていることが必要(ただし、競合する他の担保権の対抗要件具備より後でもよい。)となる。

(注4)【案4.2.2.3】を採る場合には、拡大された留保所有権と競合する他の新たな規定に係る動産担保権との優劣は、本文⑵により目的物の売買代金を担保する限度では留保所有権が優先し、それ以外の部分については、原則として、それぞれが対抗要件を具備した時の前後によるものとなる。【案4.2.2.1】を採る場合の拡大された留保所有権の取扱いも、同様とすることが考えられる。

(説明)

留保所有権の登記できる範囲を明確化するなどの表現の見直しを行ったほか、部会資料から実質的変更はない。なお、狭義の留保所有権について登記を要求する意見があったが、(注6)の記載で足りるものと考えられ、特段の追記は行っていない。

3 新たな規定に係る動産担保権の処分等の対抗要件等

⑴ア 新たな規定に係る動産担保権の処分は、債務者に当該処分を通知し、又は債務者がこれを承諾しなければ、これをもって債務者、保証人、担保権設定者及びこれらの者の承継人に対抗することができないものとする。

イ 新たな規定に係る動産担保権の処分は、登記をしなければ、これをもって第三者に対抗することができないものとする。

ウ 担保権者が数人のために新たな規定に係る動産担保権の処分をしたときにおける処分の利益を受ける者の権利の順位は、新たな規定に係る動産担保権の処分についての登記の前後によるものとする。

⑵ 新たな規定に係る動産担保権の順位の変更は、登記をしなければ、その効力を生じないものとする。

(説明)

実体的効力に項目を移すこととした。

第5 新たな規定に係る動産担保権と他の担保物権との優劣関係

1 動産質権と新たな規定に係る動産担保権との優劣関係

⑴ 動産質権と新たな規定に係る動産担保権とが競合する場合は、動産質権については設定時(引渡時)を基準とし、新たな規定に係る動産担保権については第三者に対抗することができるようになった時を基準とし、優劣はその前後によるものとする。

⑵ 動産質権と留保所有権とが競合する場合は、動産質権については設定時(引渡時)を基準とし、第4の2⑵と同様に取り扱うこととする。

⑵ 狭義の留保所有権は、その目的物の代金債権を担保する限度では、特段の要件なくして競合する動産質権に優先するものとする。

2 先取特権と新たな規定に係る動産担保権との優劣関係

⑴ 先取特権と新たな規定に係る動産担保権は競合するものとし、その優劣関係については新たな規定に係る担保権を民法第330 条に規定する第1順位の先取特権と同一の効力を有するものと取り扱うものとする。

⑵ 新たな規定に係る動産担保権者については、民法第330 条第2項前段の規定を適用しないこととし、担保権設定時に第2順位又は第3順位の先取特権者があることを知っていたとしても、これらの者に対して優先権を行使できるものとする(注)。

(注)動産質権についても、民法第330 条第2項前段の規定を適用しないようにすることが考えられる。

3 一般先取特権と新たな規定に係る動産担保権との優劣関係

雇用関係の先取特権を含む一般先取特権に、新たな規定に係る動産担保権に対する一定の優先権を認めるかについては、担保法制全体に与える影響も考慮しつつ、新たな規定に係る動産担保権に優先し得る一般先取特権の範囲(雇用関係の先取特権に限るか、その他の一般先取特権にも優先権を認めるか)、新たな規定に係る動産担保権の範囲(その目的物の性質等によって区別するか)、優先権の具体的な内容、優先権を行使するための要件等を引き続き検討する。

(説明)

本文1⑵については、動産質権と留保所有権とが競合する場合の優劣関係の基準については、新たな規定に係る動産担保権と留保所有権とが競合する場合と同様に取り扱うべきことを明記した。その他は部会資料23から変更はない。

第6 債権譲渡担保権の対抗要件等の在り方

1 債権譲渡担保権の対抗要件等

⑴ア 債権を目的とする譲渡担保権(以下「債権譲渡担保権」という。)の設定は、設定者から第三債務者に対する通知又は第三債務者の承諾(以下「通知又は承諾」という。)がなければ、これをもって第三債務者に対抗することができないものとする。

イ 債権譲渡担保権の設定は、確定日付のある証書による通知又は承諾がなければ、これをもって第三債務者以外の第三者に対抗することができないものとする。

⑵ア 債権譲渡担保権の設定については、登記をすることができることとし、登記がされたときは、第三債務者以外の第三者については、確定日付のある証書による通知があったものとみなすものとする。

イ 債権譲渡担保権の設定の登記がされたことについて設定者又は担保権者が第三債務者に登記事項証明書を交付して通知をし、又は当該第三債務者が承諾をしたときは、当該第三債務者についても、確定日付のある証書による通知があったものとみなすものとする。

2 債権譲渡担保権相互の優劣関係

⑴ 同一の債権について数個の債権譲渡担保権が設定されたときは、その順位は、原則として、これをもって第三者に対抗することができるようになった時の前後によるものとする。

⑵ 登記により対抗要件を備えた債権譲渡担保権と、通知又は承諾により対抗要件を備えた債権譲渡担保権との優劣関係について、特別の規定を設けないものとする(注)。

(注)登記により対抗要件を備えた債権譲渡担保権は、通知又は承諾により対抗要件を備えた債権譲渡担保権に優先するものとする考え方がある。

 3 一般先取特権と債権譲渡担保権との優劣関係

雇用関係の先取特権を含む一般先取特権に、債権譲渡担保権に対する一定の優先権を認めるかについては、第5の3と同様に、引き続き検討する。

3 債権譲渡担保権の処分等の対抗要件等

⑴ア 債権譲渡担保権の処分は、債務者に当該処分を通知し、又は債務者がこれを承諾しなければ、これをもって債務者、保証人、担保権設定者及びこれらの者の承継人に対抗することができないものとする。

イ 債権譲渡担保権の処分は、登記をしなければ、これをもって第三債務者以外の第三者に対抗することができないものとする。

ウ 債権譲渡担保権の処分は、その登記がされたことについて第三債務者に登記事項証明書を交付しなければ、これをもって第三債務者に対抗することができないものとする。

エ 担保権者が数人のために債権譲渡担保権の処分をしたときにおける処分の利益を受ける者の権利の順位は、債権譲渡担保権の処分についての登記の前後によるものとする。

⑵ 債権譲渡担保権の順位の変更は、登記をし、かつ、その登記がされたことについて第三債務者に登記事項証明書を交付しなければ、その効力を生じないものとする。

(説明)

本文2について、債権譲渡担保権についても登記優先ルールを採用する考え方があることを(注)に記載した。

また、本文3について、一般先取特権と債権譲渡担保権との優劣関係の問題を引き続き検討する旨を明記することとした。

なお、債権譲渡担保権の処分等の対抗要件等については、実体的効力に項目を移している。

第7 動産・債権譲渡登記制度の見直し

1 同一の動産又は債権を目的とする新たな規定に係る担保権に関する権利関係を一覧的に公示する仕組みの導入の要否

【案 7.1.1】同一の動産又は債権を目的とする新たな規定に係る担保権に関する権利関係を一覧的に公示させる仕組みは、設けないものとする。

【案7.1.2】新たに関連担保目録制度を導入し、同一の動産又は債権を目的とする新たな規定に係る担保権に関する権利関係を関連担保目録にできる限り一覧的に公示させるものとする。

2 新たな規定に係る担保権の処分等を登記できるようにすることの要否及びその範囲並びにその公示方法

新たな規定に係る動産担保権の処分、新たな規定に係る動産担保権の順位の変更、債権譲渡担保権の処分及び債権譲渡担保権の順位の変更(以下「新たな規定に係る担保権の処分等」という。)を登記できるようにすることの要否及びその範囲について、実務上のニーズや公示の分かりやすさの観点等を踏まえて、引き続き検討する。その上で、登記できるとされた新たな規定に係る担保権の処分等の公示方法については、以下のとおりとする。

【案7.2.1】新たな規定に係る担保権の処分等に関する登記を、例えば個々の動産・債権譲渡登記に付記するような形でできるものとする(【案7.1.1】を前提とする。)。

【案7.2.2】関連担保目録に登記された動産・債権譲渡登記に係る新たな規定に係る担保権の処分等のみを登記できることとし、当該新たな規定に係る担保権の処分等に関する登記は関連担保目録上に行うものとする(【案7.1.2】を前提とする。)。

3 登記をすることができる動産若しくは債権の譲渡人又は新たな規定に係る担保権の設定者の範囲登記をすることができる動産若しくは債権の譲渡人又は新たな規定に係る担保権の設定者の範囲を、商号の登記をした商人にも拡大することについて、引き続き検討する。

(説明)

部会資料23 から変更はない。なお、登記手続に関するより詳しい説明は、補足説明に明記する予定である。

加工 担保法制部会資料25 担保法制の見直しに関する中間試案のための検討メモ

https://www.moj.go.jp/shingi1/shingi04900001_00167.html

1 新たな規定に係る担保権の処分等について(部会資料21 第1の6⑵及び⑶、第2の1に5 ついて)

部会資料21 の第1の6⑵及び⑶に、以下の案を併記することについて、どう考えるか。

新たな規定に係る担保権についての転担保、順位の変更、担保権の譲渡・放棄及び順位の譲渡・放棄については、その一部に限ってできるものとする(注)。

(注)できるものとする範囲については、実務上のニーズや公示の観点から、引き続き検討する。

(説明)

部会資料23 では、登記することができる新たな規定に係る担保権の処分等について、公示の分かりやすさの観点から、一部のものに限定する案を示した(部会資料23 第7の(説明)3参照)。また、電子記録債権法(平成19 年法律第102 号)は、電子記録債権を目的とする質権について、順位の変更(同法第39条)及び転質(同法第40条)のみを認めており、質権又はその順位の譲渡又は放棄を認めていない(同法第36 条において民法の規定が準用されていない)。これらを踏まえると、実体法上、新たな規定に係る担保権の処分等をすることができるものとするかどうかについても、その一部に限ってできるものとする案を設けることとするのが相当と考えられるため、これを併記することを提案するものである。

なお、できるものとするか否かについては、

①実務上のニーズがあるか(例えば、ニーズがあると指摘されているものとして、順位の変更など)

②(物的に編成されていない動産・債権譲渡登記においても)公示を適切に行うことができるか(公示を比較的適切に行えると考えられるものとして、例えば、転担保、担保権の譲渡・放棄(=他の担保権の存在が問題とならない担保権の処分))などを参考に検討することが考えられる。

根担保権の元本の確定前に根担保権者又は債務者について相続があった場合について(部会資料21 第1の9⑷ア、第2の1について)

部会資料21の第1の9⑷アに、以下の案を併記することについて、どう考えるか。

根担保権者又は債務者について相続が開始したときは、担保すべき元本は、確定するものとする。

(説明)

部会資料 21 の第1の9⑷アでは、根担保権者又は債務者について相続があった場合について、根抵当権と同様に、相続の開始後6か月以内に合意の登記がされた場合に限り、相続人が相続の開始後に取得する債権/債務を担保することを提案していた。しかし、動産・債権譲渡登記においては、債務者は登記事項とされていない上、登記できる譲渡人も(商号登記をした商人に拡大しない限りは)法人に限られるため、債務者について相続があった場合を念頭において合意の登記のような制度を設ける必要性は乏しいと考えられる。また、自然人である根担保権者又は債務者の相続人との間の新たな債権を根担保権によって担保しなければならない必要性は高くないと考えられる。加えて、「合意の登記」のようなものを動産・債権譲渡登記に設けることにより、公示が分かりにくくなるおそれもある。

以上を踏まえると、端的に、根担保権者又は債務者について相続が開始したことを元本確定事由とすることも考えられることから、これを併記することを提案するものである。

関連 民法398条の8、398条の10。昭和46年10月4日付け民事甲第3220号民事局長通達、昭和46年12月27日付け民事三発第960号民事局第三課長依命通知。登記研究312号P43からP47、319号P50、369号P81、370号P72、533号P156、559号P152、649号P195、795号P104。

3 集合動産を構成する動産の「逸出・加入」及び「処分」の概念等について(部会資料21 第3の1から3までについて)部会資料21 第3の1及び2の「加入」とは、「個別動産が、種類、所在場所、量的範囲の指定その他の方法により特定された集合体の範囲(以下「特定範囲」という。)に新たに入ること」をいい、同2の「逸出」とは、集合物を目的とする担保権が及ばなくなるという法的な効果をいうものではなく、「集合体の特定範囲に含まれていた個別動産が、事実の問題として特定範囲から出ること」という趣旨で用いているが、そのような理解でよいか。また、これらの趣旨を表す文言としてよりよいものはあるか。

また、同2及び3の「処分」を「担保権の負担のないものとしての処分」と改めた上で、これを「集合動産の構成部分である個別動産の所有権を、新たな規定に係る担保権の負担がないものとして第三者に移転させること」をいうものと考えて良いか。

(説明)

部会資料21 の第3の1から3までの「逸出・加入」及び「処分」の概念について、集合動産に関する論点を検討する前提として、その意味内容についての認識を共有しようとするものである。なお、「逸出・加入」の用語については、集合動産の特定に当たり、場所的要件を不要とする、又は柔軟化する考え方によると、必ずしも当てはまらない場合もあり得るが、分かりやすさの観点から、「逸出・加入」に統一することとしている。また、「処分」については、分かりやすさの観点から「担保権の負担のないものとしての処分」という名称に改め、その意味内容を明記している。いずれも他の論点を議論する前提として認識を共有する趣旨で記載したものである。

4 集合動産の構成部分である動産を設定者が処分した場合における第三者保護(部会資料21第3の3⑴及び⑵について)

部会資料 21 第3の3⑴及び⑵の記載を、次のとおり修正することについて、どう考えるか。

⑴ 設定行為に設定者の処分権限を制約する別段の定めがある場合において、設定者が、通常の事業の範囲内で、かつ、制約された権限範囲を超えて、担保権の負担のないものとしての処分をした場合には、当該処分を受けた者は、制約された権限範囲を超えていることを知らなかったときに限り、その動産について権利を取得するものとする(注1)。

(注1)これに加えて、知らなかったことにつき過失がないことを求める考え方がある。

⑵ 設定者が、通常の事業の範囲及び権限範囲を超えて、担保権の負担のないものとして処分をした場合については、当該処分を受けた者は、設定者による当該処分が通常の事業の範囲であると信じていた場合には、その動産についての権利を取得するものとする(注2)。

(注2)この場合において、当該処分を受けた者が、設定者による当該処分が通常の事業の範囲であるとは信じていなかったとき(例えば、設定者による処分は通常の事業の範囲を超えているが、拡大された権限範囲内であると信じていたときや、そもそも集合動産譲渡担保権等が設定されていたことを知らなかったときなど)は、即時取得が成立するときに限り、保護されることになると考えられる。

(説明)

⑴について、ここで問題となる別段の定めを「処分権限を制約する別段の定め(処分権限をデフォルトルールから狭める定め)」に限定することを明記している。なお、部会資料21では、「処分を受けた者は、その動産について権利を取得するものとする」案(部会資料 21の【案 3.3.1.1】)や、「処分を受けた者は、設定者による処分が権限範囲を超えていることを知らず、かつ、知らなかったことにつき過失がないときは、その動産について権利を取得するものとする」案(部会資料21 の【案 3.3.1.3】)を併記していたが、第13 回部会の議論では、「処分を受けた者は、設定者による処分が権限範囲を超えていることを知らなかった場合には、その動産について権利を取得するものとする」案(部会資料21の【案 3.3.1.2】)に支持が多かったことから、これを本文に記載することとし、部会資料21 の【案 3.3.1.3】を(注)に記載することとした。なお、「処分を受けた者は、その動産について権利を取得するものとする」案(部会資料21 の【案 3.3.1.1】)については、悪意の者を保護すべき実質的理由もないことから、本文には記載しないこととした。以上の整理について、どう考えるか。

 ⑵について、当該処分を受けた者の主観に応じて第三者保護の規律を分けることを提案している。すなわち、設定者が、通常の事業の範囲及び権限範囲を超えて、担保権の負担のないものとしての処分をした場合については、当該処分を受けた者は、設定者による当該処分が通常の事業の範囲であると信じていた場合には、その動産についての権利を取得するものとし(この場合には、即時取得の要件を緩めることになる。)、それ以外の場合(例えば、設定者による処分は通常の事業の範囲を超えているが、拡大された権限範囲内であると信じていたときや、そもそも集合動産譲渡担保権等が設定されていたことを知らなかったときなど)については、原則どおり即時取得の規律によることになると考えられる。

このような整理が適当かについて、御意見を伺いたい。

5 動産譲渡担保権等相互の優劣について(部会資料23の第4の1⑵について)

次の⑴及び⑵を前提として、⑶の場合の規律について、どう考えるか。

⑴ 同一の個別動産に数個の個別動産譲渡担保権等が設定されて競合したときは、その順位は、原則として、個別動産譲渡担保権等について対抗要件を備えた時の前後による。

※いわゆる登記優先ルールの適用あり。

⑵ 同一の集合動産に数個の集合動産譲渡担保権等が設定されて競合したとき(その一部が重なり合って競合する場合を含む。)は、その順位は、原則として、集合動産譲渡担保権等について対抗要件を備えた時の前後による。

この場合において、集合動産譲渡担保権等の設定に集合動産に加入した個別動産(加入時に、当該個別動産を目的とする動産譲渡担5 保権等は設定されていない。)があるときであって、集合動産譲渡担保権等同士の競合が問題となる場面においては、設定後に加入した個別動産について、その順位は、原則として、集合動産譲渡担保権等について対抗要件を備えた時の前後による。

※いわゆる登記優先ルールの適用あり(登記優先ルールの適用範囲をこの場面に限定する考え方がある。)。

⑶ 集合動産に一個の集合動産譲渡担保権等が設定されており、その設定後に、個別動産譲渡担保権等が設定された個別動産が加入したときは、集合動産譲渡担保権等(が当該個別動産に及ぶ効力)と個別動産譲渡担保権等との順位は、次のいずれの立場によって決するのが相当と考えるか。

【甲案】個別動産譲渡担保権等について対抗要件を備えた時と集合動産譲渡担保権等について対抗要件を備えた時の前後による(設定時説)。

【乙案】個別動産譲渡担保権等について対抗要件を備えた時と当該個別動産が集合動産に加入した時の前後による(加入時説)。

※いわゆる登記優先ルールの適用あり

(説明)

前回の部会では、個別動産譲渡担保権等が設定された個別動産が集合動産譲渡担保権等が設定された集合動産に加入した場合の優劣の基準について議論が行われたが、いわゆる加入時説と設定時説の対立が問題となる場面設定をより明確にした上で、改めて問題提起するものである。

まず、

①個別動産譲渡担保権等と個別動産譲渡担保権等が競合する場合

②集合動産譲渡担保権等と集合動産譲渡担保権等が競合する場合

について、原則として対抗要件具備の先後により順位を決することに争いはない。なお、集合動産譲渡担保権等の設定後に(個別動産譲渡担保権等が設定されていない)個別動産が加入した場合であっても、集合動産譲渡担保権等同士の競合が問題となる場面では、設定後に加入した個別動産を含めて、上記②と同様の規律により順位を決すべきことになる(この場面で設定時説と加入時説の対立が問題となるわけではない。)。

これに対し、③個別動産譲渡担保権等と集合動産譲渡担保権等が競合する場合

すなわち、個別動産譲渡担保権等が設定された個別動産が、集合動産譲渡担保権等が設定された集合動産に加入した場合には、設定時説と加入時説の対立が問題となる。上記を前提に、設定時説と加入時説のいずれを採用すべきと考えるか。

なお、登記優先ルールは、上記①から③までのいずれについても適用されることになると考えられる(登記優先ルールの適用範囲を限定する立場によれば、上記②の場合に限って適用されることになる。)。

6 留保所有権の対抗要件等(部会資料23 の第4の2について)

部会資料23 の第4の2の記載を、分かりやすさの観点から、次のとおり修正することについて、どう考えるか。

2 留保所有権の対抗要件等 ※以下では留保所有権の対抗要件等に関する実質的規律について記載するものであり、担保目的取引規律型又は担保物権創設型の立場から厳密な記載を行うものではない。

 ⑴ 留保所有権の対抗要件の要否

ア 目的物の代金債権を担保する留保所有権(以下「狭義の留保所有権」という。)は、これを第三者に主張するために対抗要件を必要とするかどうかについては、次のいずれかの案によるものとする(注1)。

【案4.2.1.1】狭義の留保所有権は、これを第三者に主張するために、特段の要件を必要としないものとする(注2)。

【案4.2.1.2】狭義の留保所有権は、その動産の引渡しがなければ、これをもって第三者に対抗することができないものとする。

イ (目的物の代金債権及び)目的物の代金債権(注1)以外の債権を担保する留保所有権(以下「拡大された留保所有権」という。)は、その動産の引渡しがなければ、これをもって第三者に対抗することができないものとする(注3)。

(注1)動産を購入するための資金の融資に基づく債権など、目的物である動産と密接な関連性を有する一定の債権を担保する留保所有権についても、狭義の留保所有権に含める考え方がある。

これに関連して、このような密接な関連性を有する一定の債権を被担保債権とする動産譲渡担保権等が設定された場合には、当該動産譲渡担保権等についても、狭義の留保所有権と同様に取り扱う考え方がある。

(注2)【案4.2.1.1】によっても、(代位弁済等により)目的物の売主以外の者が狭義の留保所有権を有する場合には、その動産の引渡しがなければ、これをもって第三者に対抗することができないものとする考え方がある。

(注3)留保所有権についても、登記できるとすることが考えられる。

⑵ 留保所有権等と新たな規定に係る動産担保権との優劣関係

ア 留保所有権と競合する他の新たな規定に係る動産担保権との優劣は、留保所有権が目的物の代金債権以外の債権を担保する限度では、これをもって第三者に対抗することができるようになった時の前後によるものとする(注4)。

イ 留保所有権は、【案4.2.1.2 によると引渡しがされていることを前提として、】目的物の代金債権を担保する限度では、他の新たな規定に係る動産担保権に当然に優先するものとする(注5、6)。

(注4)この場合には、前記4の1⑵ウと同様のルール(登記優先ルール)を採用することが考えられる。

(注5)なお、拡大された留保所有権について、目的物の代金債権を担保する部分と目的物の代金債権以外の債権を担保する部分がある場合には、これと競合する他の新たな規定に係る動産担保権との優劣は、本文⑵イにより目的物の売買代金を担保する限度では拡大された留保所有権が優先し、それ以外の部分については、原則として、それぞれが対抗要件を具備した時の前後によるものとなる。

(注6)他の新たな規定に係る動産担保権に優先するための要件として、一定期間内に登記を備えることを求める考え方がある。

(説明)

留保所有権の対抗要件等について、分かりやすさの観点から、表現振りを修正したものである(担保目的取引規律型又は担保物権創設型からの厳密な記載ではなく、実質的な規律内容を記載することとした。)。

実質的な規律内容に変更がある点として、(注2)で代位弁済等により目的物の売主以外の者が狭義の留保所有権を有する場合に対抗要件の要否についての規律を変える考え方があることを明記した。また、部会資料23 の【案4.2.2.2】では、前記の「加入時説」と採ることを前提に、留保所有権が目的物の代金債権を担保する限度であっても、当然には優先しない(原則どおり、対抗要件の先後による)案も提示していたが、当然に優先する立場を支持する意見が多かったことから、これを本文から削ることとしている。

なお、(注6)として、他の新たな規定に係る動産担保権に優先するための要件として、一定期間内に登記を備えることを求める考え方を明記することについて、どう考えるか。

〇〇県〇〇市〇〇町1-1-1全部事項証明書: The certification of all recording matters. (土地):The land.
表題部:The heading section.
(土地の表示):The description of the land. 調整
: The prepared. 令和〇〇年〇月〇日
: The prepared date. 不動産番号
: The real property number. 12345567890123
地図番号
: The map number. A11―1 筆界特定
: The parcel boundary demarcation.       余白:The blank.
【所在】
: The location. 〇〇県〇〇市〇〇町〇〇  余白: The blank
①地 番
: The parcel number.
②地 目
:The land category
(current state of the Land) ③地  積 ㎡
:The parcel area (area of the Land) 原因及びその日付
: The cause for recording and date thereof.
【登記の日付】:The recording date.
9999番3 宅地
: The presidential land.     :100.00㎡ ①9999番1から分筆
: Subdivision of the Parcel Number.9999-1.
【令和〇〇年〇月〇日】
所有者:
The owner.
〇〇市〇〇丁目〇番〇号 E: The name and address of Owner.

 権 利 部(乙区): The rights section (The section B).(所有権以外の権利に関する事項): Matters concerning the owner.
順位番号
: The rank number. 登記の目的
: The purpose of recording. 受付年月日・受付番号
: The recording date and number. 【権利者その他の事項】
: The holder of rights and other particulars.

付記1号

付記2号 根抵当権設定
: The revolving mortgage.
令和〇〇年〇月〇日
第〇〇〇〇号 略
the scope of claims to be secured and the maximum amount;
債務者: The name and address of obligor .
○○県〇〇市〇〇丁目〇番〇号:
E
根抵当権者:The name and address of obligor .
○○県〇〇市〇〇丁目〇番〇号:
A銀行
1番根抵当権変更
:The modification of revolving mortgage No. 1. 令和〇〇年〇月〇日
第〇〇〇〇号 原因:
When and for what cause obligor was acquired.
令和○年〇月〇日相続: The Inheritance date.
債務者:The names and addresses of debtor’s heirs
○○県〇〇市〇〇丁目〇番〇号:B
○○県〇〇市〇〇丁目〇番〇号:C.
1番根抵当権変更
:The modification of revolving mortgage No. 1. 令和〇〇年〇月〇日
第〇〇〇〇号 原因The date of agreement.
令和○年〇月〇日合意
指定債務者 B
※下線のあるものは抹消事項であることを示す。
The underlines indicate delated matters. The filing Number:00000000000 (1/1)                  

これは登記記録に記録されている事項の全部を証明した書面である。
: This document evidences all of the entries made in the registry.

(〇〇地方法務局管轄)〇〇Legal Affairs Bureau.

〇〇年〇〇月〇〇日 Date
〇〇Legal Affairs Bureau   登記官 〇〇  Registrar’s name: 〇〇

※下線のあるものは抹消事項であることを示す。
Underlines indicate delated matters. Filing Number:00000000000 (1/1)                   

【文書回答事例】信託契約における残余財産の帰属権利者として取得した土地等の譲渡に係る租税特別措置法第35条第3項に規定する被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除の特例の適用可否について

税務に関する記事です。最終判断は税理士・公認会計士に相談をお願いします。

https://www.nta.go.jp/about/organization/tokyo/bunshokaito/joto-sanrin/221220/01.htm#a01

1 事前照会の趣旨

 照会者(受託者)は、照会者の母(委託者兼受益者。以下「母甲」といいます。)との間で母甲の居住用家屋及びその敷地(以下「本件物件」といいます。)を信託財産とする信託契約(以下、「本件信託契約」といい、本件信託契約に係る信託を「本件信託」といいます。)を締結していたところ、本件信託は受益者の死亡を信託終了事由としていたことから、母甲の相続開始により本件信託は終了し、残余財産となった本件物件は、残余財産の帰属権利者である照会者及びその弟(以下「照会者ら」といいます。)に帰属することとなりました。

 照会者らは、母甲の相続開始日が属する年の翌年に本件物件を譲渡しましたが、その譲渡に係る譲渡所得の計算上、租税特別措置法第35条第3項《居住用財産の譲渡所得の特別控除》に規定する特例(以下「本件特例」といいます。)を適用するに当たり、本件物件が本件信託の残余財産として照会者らに帰属したこと(以下「本件帰属」といいます。)は、同項に規定する取得(相続又は遺贈(贈与者の死亡により効力を生ずる贈与を含みます。以下同じです。)による被相続人居住用家屋及び被相続人居住用家屋の敷地等(以下「被相続人居住用家屋等」といいます。)の取得。)に該当すると解し、その他の要件を満たす限りにおいて、本件特例の適用を受けることができると解してよいか照会します。

2 事前照会に係る取引等の事実関係

(1) 照会者らは、いずれも母甲の相続人です。

(2) 照会者は、令和2年〇月〇日、母甲との間で、委託者兼受益者を母甲、受託者を照会者、信託財産を本件物件及び金銭、本件信託の終了事由を母甲の相続開始等、本件信託終了時の残余財産の帰属権利者を照会者らとする旨の本件信託契約を締結しました。

(3) 本件信託契約においては、その信託期間を契約締結のときから委託者兼受益者が死亡したときまでとし、かつ信託期間が満了した際には信託が終了する旨定められていたため、当該契約に基づき、令和3年〇月〇日、母甲の相続開始により本件信託は終了し、残余財産となった本件物件は、照会者らへ帰属しました。

(4) 照会者らは、令和4年〇月〇日、本件物件を譲渡しました。

3 事前照会者の求める見解となることの理由

 本件特例は、譲渡をした者が「相続又は遺贈による被相続人居住用家屋等の取得」をした相続人(包括受遺者を含みます。以下同じです。)であることを要件の一つとしています。

 また、相続税法第9条の2第4項《贈与又は遺贈により取得したものとみなす信託に関する権利》では、受益者の死亡に基因して終了する信託に係る残余財産の帰属は、適正な対価の負担があるもの及び信託終了の直前において当該信託の受益者であった者に対するものを除いて、遺贈により取得したものとみなす旨規定されています。

 そして、本件特例が適用対象者を「相続又は遺贈による被相続人居住用家屋等の取得」をした相続人としているのは、相続人がその意思の如何にかかわらず、相続により被相続人居住用家屋等の取得をし、その後の適正管理の責任を負うことになるためと考えられますが、照会者らは、これと同様の状況にあるということができます。

 したがって、本件物件は、相続税法上のいわゆるみなし相続財産に該当すること及び照会者らは本件特例の趣旨と同様の状況にあることから、本件帰属は、本件特例に規定する「相続又は遺贈による被相続人居住用家屋等の取得」に該当すると考えます。

関係する法令条項等 租税特別措置法第35条

信託法第183条

回答年月日 令和4年12月20日

回答者 東京国税局審理課長

回答内容 標題のことについては、下記の理由から、貴見のとおり取り扱われるとは限りません。

 なお、この回答内容は、東京国税局としての見解であり、事前照会者の申告内容等を拘束するものではないことを申し添えます。

(理由)

租税特別措置法(以下「措置法」といいます。)第35条第3項に規定する特例(以下「本件特例」といいます。)は、相続又は遺贈(贈与者の死亡により効力を生ずる贈与を含みます。以下同じです。)による被相続人居住用家屋及び被相続人居住用家屋の敷地等(以下「被相続人居住用家屋等」といいます。)の取得をした相続人(包括受遺者を含みます。以下同じです。)が、一定の譲渡をした場合に、その譲渡所得の計算上、本件特例の適用を受けることができる旨規定しています。

 ところで、信託契約などにより信託の受益権を取得する行為や、信託が終了し残余財産が権利者に移転した場合などについては、法律上の「贈与」又は「遺贈」には該当しないものの、実質的には贈与又は遺贈と同様の効果をもたらすことから、相続税法においては、これらの取得又は移転などについて贈与又は遺贈による取得とみなして相続税又は贈与税の課税対象とする措置が講じられています(相続税法第9条の2)。

 この点、本件特例は、例えば措置法第39条《相続財産に係る譲渡所得の課税の特例》に規定する特例のように、相続税法の規定により遺贈等による財産の取得とみなされる場合を対象に含む旨は規定していません。 

また、本件特例は、相続人が、相続により、その意思の如何にかかわらず、被相続人居住用家屋等の適正管理の責任を負うこととなることを踏まえた趣旨の下、適用対象者を相続人に限定し、かつ、「相続又は遺贈による被相続人居住用家屋等の取得」をした場合に限り適用すると規定したものであると考えられるところ、信託終了による残余財産の取得は法律上の相続又は遺贈には当たらず、受託者(照会者)は信託行為の当事者であること、信託行為の当事者ではない帰属権利者は、その権利を放棄することができること(信託法183③)を踏まえると、上記本件特例の趣旨の下では、帰属権利者による残余財産の取得を相続人による相続又は遺贈による財産の取得と同様に取り扱うことは相当ではないと考えられます。

 以上のことから、信託契約に基づき、委託者兼受益者の相続開始という信託終了事由の発生により信託が終了したことに伴い、当該信託に係る残余財産を帰属権利者が取得したことは、本件特例に規定する相続人による「相続又は遺贈による被相続人居住用家屋等の取得」に該当するとは認められず、また、死因贈与契約に基づき当該残余財産を取得したとする事情も認められませんので、当該残余財産の譲渡に係る譲渡所得の計算上、本件特例の適用を受けることはできません。

 私には、信託契約により、当事者の意思で決めたのだから、相続・遺贈と同視することはできず、特例を認めることは出来ない、という趣旨に読めました。しかしこの指摘は、受託者兼残余財産の帰属権利者である照会者には当てはまりますが、照会者の弟は残余財産の帰属権利者であることを知らなかった可能性もあり、その点はどうするのだろうか、と考えてしまいました。残余財産の帰属権利のみを放棄することが出来る点が、全ての積極財産、消極財産を放棄することが出来る相続放棄と異なる点です。この点は、残余財産の帰属権利者が2人いる照会者の弟にとって、通常の相続・遺贈と異なり管理責任(令和5年4月1日施行)を逃れることができる点は有利といえるのかなとも思いました。

20230305追記

参考 『月刊登記情報2023年3月号(736号)』税理士白井一馬「自宅を信託財産にした場合における相続後の「空き家譲渡特例」の適用可否」

https://store.kinzai.jp/public/item/magazine/A/T/

租税特別措置法

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=332AC0000000026&keyword=%E7%A7%9F%E7%A8%8E%E7%89%B9%E5%88%A5

第三十五条 個人の有する資産が、居住用財産を譲渡した場合に該当することとなつた場合には、その年中にその該当することとなつた全部の資産の譲渡に対する第三十一条又は第三十二条の規定の適用については、次に定めるところによる。

一 第三十一条第一項中「長期譲渡所得の金額(」とあるのは、「長期譲渡所得の金額から三千万円(長期譲渡所得の金額のうち第三十五条第一項の規定に該当する資産の譲渡に係る部分の金額が三千万円に満たない場合には当該資産の譲渡に係る部分の金額とし、同項第二号の規定により読み替えられた第三十二条第一項の規定の適用を受ける場合には三千万円から同項の規定により控除される金額を控除した金額と当該資産の譲渡に係る部分の金額とのいずれか低い金額とする。)を控除した金額(」とする。

二 第三十二条第一項中「短期譲渡所得の金額(」とあるのは、「短期譲渡所得の金額から三千万円(短期譲渡所得の金額のうち第三十五条第一項の規定に該当する資産の譲渡に係る部分の金額が三千万円に満たない場合には、当該資産の譲渡に係る部分の金額)を控除した金額(」とする。

2 前項に規定する居住用財産を譲渡した場合とは、次に掲げる場合(当該個人がその年の前年又は前々年において既に同項(次項の規定により適用する場合を除く。)又は第三十六条の二、第三十六条の五、第四十一条の五若しくは第四十一条の五の二の規定の適用を受けている場合を除く。)をいう。

一 その居住の用に供している家屋で政令で定めるもの(以下この項において「居住用家屋」という。)の譲渡(当該個人の配偶者その他の当該個人と政令で定める特別の関係がある者に対してするもの及び所得税法第五十八条の規定又は第三十三条から第三十三条の四まで、第三十七条、第三十七条の四若しくは第三十七条の八の規定の適用を受けるものを除く。以下この項及び次項において同じ。)又は居住用家屋とともにするその敷地の用に供されている土地若しくは当該土地の上に存する権利の譲渡(譲渡所得の基因となる不動産等の貸付けを含む。以下この項及び次項において同じ。)をした場合

二 災害により滅失した居住用家屋の敷地の用に供されていた土地若しくは当該土地の上に存する権利の譲渡又は居住用家屋で当該個人の居住の用に供されなくなつたものの譲渡若しくは居住用家屋で当該個人の居住の用に供されなくなつたものとともにするその敷地の用に供されている土地若しくは当該土地の上に存する権利の譲渡を、これらの居住用家屋が当該個人の居住の用に供されなくなつた日から同日以後三年を経過する日の属する年の十二月三十一日までの間にした場合

3 相続又は遺贈(贈与者の死亡により効力を生ずる贈与を含む。以下第五項までにおいて同じ。)による被相続人居住用家屋及び被相続人居住用家屋の敷地等の取得をした相続人(包括受遺者を含む。以下この項において同じ。)が、平成二十八年四月一日から令和五年十二月三十一日までの間に、次に掲げる譲渡(当該相続の開始があつた日から同日以後三年を経過する日の属する年の十二月三十一日までの間にしたものに限るものとし、第三十九条の規定の適用を受けるもの及びその譲渡の対価の額が一億円を超えるものを除く。以下この条において「対象譲渡」という。)をした場合(当該相続人が既に当該相続又は遺贈に係る当該被相続人居住用家屋又は当該被相続人居住用家屋の敷地等の対象譲渡についてこの項の規定の適用を受けている場合を除く。)には、第一項に規定する居住用財産を譲渡した場合に該当するものとみなして、同項の規定を適用する。

一 当該相続若しくは遺贈により取得をした被相続人居住用家屋(当該相続の時後に当該被相続人居住用家屋につき行われた増築、改築(当該被相続人居住用家屋の全部の取壊し又は除却をした後にするもの及びその全部が滅失をした後にするものを除く。)、修繕又は模様替に係る部分を含むものとし、次に掲げる要件を満たすものに限る。以下この号において同じ。)の政令で定める部分の譲渡又は当該被相続人居住用家屋とともにする当該相続若しくは遺贈により取得をした被相続人居住用家屋の敷地等(イに掲げる要件を満たすものに限る。)の政令で定める部分の譲渡

イ 当該相続の時から当該譲渡の時まで事業の用、貸付けの用又は居住の用に供されていたことがないこと。

ロ 当該譲渡の時において地震に対する安全性に係る規定又は基準として政令で定めるものに適合するものであること。

二 当該相続又は遺贈により取得をした被相続人居住用家屋(イに掲げる要件を満たすものに限る。)の全部の取壊し若しくは除却をした後又はその全部が滅失をした後における当該相続又は遺贈により取得をした被相続人居住用家屋の敷地等(ロ及びハに掲げる要件を満たすものに限る。)の政令で定める部分の譲渡

イ 当該相続の時から当該取壊し、除却又は滅失の時まで事業の用、貸付けの用又は居住の用に供されていたことがないこと。

ロ 当該相続の時から当該譲渡の時まで事業の用、貸付けの用又は居住の用に供されていたことがないこと。

ハ 当該取壊し、除却又は滅失の時から当該譲渡の時まで建物又は構築物の敷地の用に供されていたことがないこと。

4項以下略

信託法

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=418AC0000000108

(帰属権利者)

第百八十三条 信託行為の定めにより帰属権利者となるべき者として指定された者は、当然に残余財産の給付をすべき債務に係る債権を取得する。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。

2 第八十八条第二項の規定は、前項に規定する帰属権利者となるべき者として指定された者について準用する。

3 信託行為の定めにより帰属権利者となった者は、受託者に対し、その権利を放棄する旨の意思表示をすることができる。ただし、信託行為の定めにより帰属権利者となった者が信託行為の当事者である場合は、この限りでない。

4 前項本文に規定する帰属権利者となった者は、同項の規定による意思表示をしたときは、当初から帰属権利者としての権利を取得していなかったものとみなす。ただし、第三者の権利を害することはできない。

5 第百条及び第百二条の規定は、帰属権利者が有する債権で残余財産の給付をすべき債務に係るものについて準用する。

6 帰属権利者は、信託の清算中は、受益者とみなす。

関連

国税庁法令解釈通達

土地信託に関する所得税、法人税並びに相続税及び贈与税の取扱いについて 別紙

第2 所得税に関する取扱い

(居住用財産の譲渡所得の特別控除の適用)

2-54 措置法第35条第1項((居住用財産の譲渡所得の特別控除))に規定する「その居住の用に供している家屋」又は「その敷地の用に供されている土地若しくは当該土地の上に存する権利」には、個人の有する信託財産の構成物でこれらの資産に該当するもの(以下この項において「信託居住用財産」という。)が含まれるのであるが、この場合における同条の規定の適用については、次の諸点に留意する。

(1) 信託居住用財産の譲渡には、信託受益権の譲渡によるものが含まれること。

(2) 譲渡された信託財産である家屋が同条第1項に規定する「その居住の用に供している家屋」に該当するかどうかは、当該家屋の受益者について、措置法通達35-2又は35-3に定めるところにより判定すること。

(3) 措置法令第23条第1項((特例の対象となる家屋の範囲))に規定する「その者が主としてその居住の用に供していると認められる一の家屋」の判定の基礎には、その者の有する信託居住用財産が含まれること。

(4) 信託居住用財産の譲渡が措置法第35条第1項に規定する「特別の関係がある者に対してするもの」に該当するかどうかは、その譲渡に係る信託居住用財産の受益者について判定すること。

(5) 同項に規定する「その年の前年又は前々年において既にこの項又は第36条の2若しくは第36条の5の規定の適用を受けている」かどうかの判定の基礎には、その者の有する信託居住用財産の譲渡が含まれること。

20230619追記

『月刊登記情報』2023年6月号(739号)「信託契約の対象不動産を検討する際の実務上の留意点~令和4年12月20日東京国税局回答を受けて~」JFD司法書士法人 司法書士 福田秀樹

家族信託の相談会その51

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2023年1月27日(金)14時~17時

□ 認知症や急な病気への備え
□ 次世代へ確実に引き継ぎたいものを持っている。
□ 家族・親族がお金や土地の話で仲悪くなるのは嫌。
□ 収益不動産オーナーの経営者としての信託 
□ ファミリー企業の事業の承継
その他:
・共有不動産の管理一本化・予防
・配偶者なき後、障がいを持つ子の親なき後への備え

1組様 5000円

場所 司法書士宮城事務所(西原町)

要予約

司法書士宮城事務所 shi_sunao@salsa.ocn.ne.jp

後援  (株)ラジオ沖縄

信託財産の「管理」と「処分」(2)―質疑応答7097登記研究508号173頁―

 家族信託実務ガイド[1]の記事、渋谷陽一郎「信託財産の「管理」と「処分」(2)―質疑応答7097登記研究508号173頁―」からです。

【7097】信託財産の所有権移転登記と信託条項

〔要旨〕信託財産について所有権移転登記の申請をする場合、信託条項に「受託者は受益者の承諾を得て管理処分をする」旨記載されているときには、受益者の承諾書の添付を要する。

実は「信託口口座」と命名されたからといって、それを倒産隔離することは容易ではないのではないか、という厳しい指摘がなされています(仮にそうである場合には「信託口口座」の費用や報酬の正当性の問題を議論する必要があり、景表法的な消費者誤認を避けるという問題も考慮する必要があります)。

 現在、私自身の業務は、金融機関との信託口口座開設の調整です。信託契約書案をFAX・メール送信する際に、次のような内容を記載します。返信が書面やメールなどで来たことはありませんが、送信した記録は残ります。現状は、この記録を残しておくぐらいしか出来ていません。

要件

(1)受託者個人の口座が差押えを受けたとしても、信託専用の口座はその影響を受けないこと

(2)受託者が亡くなった際、相続を証する書面を不要として、受託者 の死亡が分かる書類と就任承諾書の提出および身分証明書の提示で受託者の変更ができること

(3)受益者が亡くなった際、相続を証する書面を不要として、受益者の死亡が分かる書類と受益者の身分証明書の掲示をもって受益者の変更ができること

(4) キャッシュカードの発行

問い合わせ

  • 復代理人は、委任状と身分証明書の掲示で銀行窓口業務に対応してもらえるのでしょうか。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

あたかも、会社法の世界で、世界のトヨタの株主総会と、町の法人成り家族経営の商店の株主総会(家族会議)が、同一の規律で扱われているようなものでしょう(そこで、機関設計を選択し得る会社法が制定されました)。現行の信託法が目指したのは、前者のような国際的な大規模信託にも耐えられる信託の規律かもしれません。

 そのような面もあると思います。私は、会社法と信託法は、選択して組み立てることが可能な面が多く、類似点の方が多いのではないかと感じます[2]。また信託業法が適用される信託に関しては、細かな規律を守る必要があります。

書式1 信託目録 調整

番号 受付年月日・受付番号 予備

四 信託条項

1 信託の目的

高齢者の生活および介護の支援

2 信託財産の管理方法

受託者の権限

 高齢者の介護支援のための信託不動産の売却処分

特約 信託不動産の処分は受益者の承諾を得て行う(以下省略)

 高齢者の介護支援のための信託不動産の売却処分、の「高齢者の介護支援のための」については、信託目録に記録するのであれば登記原因証明情報にも記載が必要になってくるのか、気になりました。特約、という表現に関しては、条文上制限しか認めておらず(信託法26条)、拡大はないので、制限と記録してもよいのかなと思いました。

さらには、旧法では、受益者取消権の相手方として転得者まで明記されていましたが、改正法では、削除されてしまいました。どうしてでしょうか。

 受託者の行為の相手方に取消しの意思表示を行えば、転得者にもその効果が及ぶからではないかと思います[3]

参考

旧信託法

第四条

受託者ハ信託行為ノ定ムル所ニ従ヒ信託財産ノ管理又ハ処分ヲ為スコトヲ要ス

第三十一条

受託者カ信託ノ本旨ニ反シテ信託財産ヲ処分シタルトキハ受益者ハ相手方又ハ転得者ニ対シ其ノ処分ヲ取消スコトヲ得但シ信託ノ登記若ハ登録アリタルトキ又ハ登記若ハ登録スヘカラサル信託財産ニ付テハ相手方及転得者ニ於テ其ノ処分カ信託ノ本旨ニ反スルコトヲ知リタルトキ若ハ重大ナル過失ニ因リテ之ヲ知ラサリシトキニ限ル

信託法

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=418AC0000000108

(受託者の権限の範囲)

第二十六条 受託者は、信託財産に属する財産の管理又は処分及びその他の信託の目的の達成のために必要な行為をする権限を有する。ただし、信託行為によりその権限に制限を加えることを妨げない。

(受託者の権限違反行為の取消し)

第二十七条 受託者が信託財産のためにした行為がその権限に属しない場合において、次のいずれにも該当するときは、受益者は、当該行為を取り消すことができる。

一 当該行為の相手方が、当該行為の当時、当該行為が信託財産のためにされたものであることを知っていたこと。

二 当該行為の相手方が、当該行為の当時、当該行為が受託者の権限に属しないことを知っていたこと又は知らなかったことにつき重大な過失があったこと。

2 前項の規定にかかわらず、受託者が信託財産に属する財産(第十四条の信託の登記又は登録をすることができるものに限る。)について権利を設定し又は移転した行為がその権限に属しない場合には、次のいずれにも該当するときに限り、受益者は、当該行為を取り消すことができる。

一 当該行為の当時、当該信託財産に属する財産について第十四条の信託の登記又は登録がされていたこと。

二 当該行為の相手方が、当該行為の当時、当該行為が受託者の権限に属しないことを知っていたこと又は知らなかったことにつき重大な過失があったこと。

3 二人以上の受益者のうちの一人が前二項の規定による取消権を行使したときは、その取消しは、他の受益者のためにも、その効力を生ずる。

4 第一項又は第二項の規定による取消権は、受益者(信託管理人が現に存する場合にあっては、信託管理人)が取消しの原因があることを知った時から三箇月間行使しないときは、時効によって消滅する。行為の時から一年を経過したときも、同様とする。

民法

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089

(取消しの効果)

第百二十一条 取り消された行為は、初めから無効であったものとみなす。


[1] 2022年11月、第27号、日本法令、P74~

[2] 2012年9月1日立命館大学大垣尚司教授「私人間信託と専門家の役割」。

[3] 道垣内弘人編著『条解信託法』、2017年、弘文堂、P151.民法121条。

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