民事信託のあれこれメモ

信託契約書作成

委託者 父A

受託者 長男〇(信託設時に委託者の既存債務を引き受ける)

受益者 父A

信託行為 信託契約

信託財産 金銭,不動産(居住用,賃貸用)

信託の終了 受益者父Aの死亡

帰属権利者 長男〇,二男△

(第二次受益者 長男〇及び二男△両名)の場合

 信託事務処理の第三者への委託

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=418AC0000000108

(信託事務の処理の第三者への委託)

第〇条 受託者は,信託財産目録記載の建物の管理を第三者に委託することができる。

・信託法28条1項1号に基づく条項

・「第三者」には委託者や受益者も含まれるが,それらの者に対する委託によって,信託の実質が失われるような場合には許されない(信託として認められない場合がある)。例えば,全ての信託事務の処理を第三者へ委託することは認められない。

例2

(信託財産の管理方法)

第〇条 

〇 受託者は、信託事務の一部について必要があるときは、受託者と同様の管理方法を定め、第三者へ委託することができる[1]

(善管注意義務)

第〇条 受託者は,信託財産の管理,処分その他の信託事務について善良な管理者の注意をもって処理しなければならない。

信託法29条2項に基づく条項

・信託法と同内容の規定を信託契約書に記載すること。信託法29条2項ただし書きに基づく条項については、慎重。

例2(信託財産の管理方法)

第○条

〇 受託者は、善良な管理者の注意をもって、受益者のために忠実に職務を遂行する[2]

(分別管理義務)第〇条 受託者は,信託財産に属する金銭及び預貯金と受託者の固有財産とを,以下の各号に定める方法により,分別して管理しなければならない。

  • 金銭 信託財産に属する財産と受託者の固有財産とを外形上区別することができる状態で保管する方法

(2)預貯金 信託財産に属する預貯金専用の口座を開設し、当該口座で管理する方法

信託法34条1項2号ロによる分別管理方法を,同条1項ただし書きの「別段の定め」により,変更した条項

・金銭を預貯金債権で管理する場合には,受託者に信託口口座の開設を義務付ける。

・趣旨は,①信託財産であることの証明を容易にするため,②受託者が忠実義務違反行為を起こす際の心理的バリアになる(条解280頁)。

例2

(信託財産の管理方法)

第○条

(2)受託者は信託金銭について、次の信託事務を行う。

□信託に必要な表示又は記録等[3]

□受託者個人の財産と分けて、性質を変えずに管理[4]

(帳簿等の作成等,報告及び保存の義務)

第〇条 本信託の計算期間は,毎年1月1日から同年12月31日までとする。ただし,第1期の計算期間は,信託開始日から令和〇年12月31日までとする。

2 受託者は,信託事務に関する計算並びに信託財産に属する財産及び信託財産責任負担債務の状 況を明らかにするため,信託財産に係る帳簿その他の書類又は電磁的記録を作成しなければならない。

3 受託者は,前項の帳簿等に基づき,第1項の計算期間に対応する信託財産目録及び収支計算書を当該計算期間が満了した月の翌月末までに作成しなければならない。

4 受託者は,前項記載の信託財産目録及び収支計算書の内容について,受益者に報告しなければ ならない。

5 受託者は,第2項に基づき作成した帳簿等は作成の日から10年間,第3項に基づき作成した信託財産目録及び収支計算書は信託の清算の結了の日までの間,保存しなければならない。

・信託法37条に基づく条項

・民事信託では,極めて重要な条項。

・信託法37条3項に基づいて,受託者が受益者に報告しなければならない対象 は,同条2項の「財産状況開示資料」(貸借対照表(財産目録),損益計算書(収支計算書))であり,同条1項「帳簿」は報告の対象となっていない(信託法37条3項)。

受託者の辞任・解任

(受託者の辞任)

第○条 受託者は,委託者及び受益者の同意を得て,辞任することができる。

(受託者の解任)

第○条 委託者及び受益者は,いつでも,その合意により,受託者を解任することができる。

信託法57条1項本文,58条1項に基づく条項

 受託者の解任を制限する条項の可否。委託者、受益者の意思のみによって解任可能な信託に関する法定安定性と、受託者候補の心証。信託行為の説明時に正確に可能か。・・・委託者、受託者それぞれ意思のみで受託者の解任が可能な信託にするのであれば、受託者のみの意思で受託者を辞任可能にして清算条項を付けないと、受託者としても職務執行しずらいと感じます。

例2

第〇条 (受託者)

□受託者の任務は、次の場合に終了する。

 □ただし、信託法58条1項は適用しない。

□受益者の同意を得て辞任したとき。

□受託者が、受益者からの報告請求に対して2回続けて報告を怠った場合。

□受益者と各受託者が合意したとき[5]

□【受託者が○○歳になったとき・                

□受託者が唯一の受益者となったとき。ただし、1年以内にその状態を変更したときを除く。

□その他信託法で定める事由が生じたとき。

信託費用の償還

(信託費用の償還)

第〇条 受託者は,信託事務処理に要する費用を,直接,信託財産から償還を受けることができる。

2 受託者は,信託財産から,信託事務処理に要する費用の前払を受けることができる。

信託法48条1項,2項に基づく条項

 信託法上,受益者に義務は課せられていない。受益者から(本条項は,「信託財産」から)費用償還又は前払いを受けるには,受託者と受益者の「個別合意」が必要。

例⒉

第〇条(信託財産の管理方法)

□ 受託者は、本信託契約に記載のない特別の支出が見込まれる場合は、本信託の目的に従い受益者の承諾を得て、支出することができる[6]

□ 受託者は、各受益者と信託事務処理費用を受益者の負担とする合意をすることができる。ただし、受託者に就任して1年を経過した場合は合意があるものとみなす。

第〇条(信託事務処理に必要な費用)

□ 受託者が信託事務の処理に必要な費用に関して、【金額】円を超える場合、事前に信託金銭の中から支払いまたは事後に信託金銭から償還を受けるときは、受益者に対してその額のみを通知する。ただし、算定根拠を明らかにすることを要しない。

信託報酬

(信託報酬)

第〇条 受託者は,無報酬とする。

(信託報酬)

第〇条 受託者は,毎月末限り,月額〇万円の信託報酬を受ける。

・信託法54条1項に基づく条項(信託行為に受託者が信託財産から信託報酬を 受ける旨の定めがある場合に限り,信託財産から信託報酬を受けることができる)。

・民事信託では,受託者は無報酬であることが多い。

・信託法54条1項により,民法648条2項(委任における受任者の報酬の支払時期)が準用されている結果,報酬は後払いとなる(受託者の信託事務が終了しなければ報酬を受け取れない)。

例⒉

受託者の報酬の定めを置かない。無報酬の定めも置かない。

(受益者)

第〇条 本信託の当初受益者は,委託者〇とする。

2 前項の当初受益者が死亡したとき,同人の有する受益権は消滅する。

3 前項の場合には,第二次受益者として〇及び△が,以下のとおり,新たな受益権を取得する。

〇 信託財産目録記載2(土地)及び同(自宅)2の不動産に係る受益権

△ 同1(土地)及び同2(アパート)の不動産に係る受益権

・後継ぎ遺贈型受益者連続信託にする場合には,受益者の死亡により受益権は消 滅すると明記する(受益権が相続の対象とならないことを明確にする)。

例⒉

第〇条(受益者)

(1)本信託の第1順位の受益者は、次の者とする。

  【住所】【氏名】【生年月日】

(2)受益者の死亡により受益権が消滅した場合、受益権を原始取得する者として次の者を指定する。

   第2順位

  【住所】【氏名】【生年月日】

 □【住所】【氏名】【生年月日】

 □ 第3順位

  【住所】【氏名】【生年月日】

 □【住所】【氏名】【生年月日】

□次の順位の者が既に亡くなっていたときは、さらに次の順位の者が受益権を原始取得する。

□受益権を原始取得した者は、委託者から移転を受けた権利義務について同意することができる[7]

□受益者に指定された者または受益権を原始取得した者が、受益権を放棄した場合には、さらに次の順位の者が受益権を原始取得する。

□受益者に指定された者が、指定を知ったとき又は受託者が通知を発してから1年以内に受益権を放棄しない場合には、受益権を原始取得したとみなす。

□【委託者氏名】は、【委託者以外の受益者氏名】が受益権を取得することを承認する。

(受益権、受益債権の内容)

第○条 受益者は,受益権として,以下の内容の権利(以下「受益債権」という。)及びこれを確保する ために信託法の規定に基づいて受託者その他の者に対し一定の行為を求めることができる権利を有する。

(1)信託財産目録記載の信託不動産を生活の本拠として使用する権利

(2)信託財産目録記載の信託不動産を第三者に賃貸したことによる賃料から給付を受ける権利

(3)信託財産目録記載2の信託不動産が処分された場合には,その代価から給付を受ける権利

(4)信託財産目録記載1の金銭から給付を受ける権利

(受益権の譲渡,質入れの禁止)

第○○条 受益者は,受益権を譲渡又は質入れすることはできない。

・信託法2条7項の受益権とは、信託行為に基づいて受託者が受益者に対し負う債務であって信託財産に属する財産の引渡しその他の信託財産に係る給付をすべきものに係る債権(以下「受益債権」という。)と規定している。

・残余財産受益者の指定したとき、「本信託が終了したときの残余財産の帰属すべき者として,本信託終了時の受益者を指定する。」には,この受益債権の内容が影響するので注意。

・信託法93条2項,96条2項に基づく条項

・趣旨は,委託者の親族以外の者が当該信託に関わることを防止するため。

例⒉

第〇条(受益権)

1 次のものは、元本とする。

□(1)信託不動産。

□(2)信託金銭。

□(3)遺留分推定額。

【修繕積立金、敷金・保証金等返還準備金・        】

□(4)上記各号に準ずる資産。

2 次のものは、収益とする。

(1)信託元本から発生した利益。

(2)□【賃料・             】

(3)元本又は収益のいずれか不明なものは,受託者がこれを判断する。

(4)受益者は、信託財産から経済的利益を受けることができる。

(5)【受益者氏名】は、【医療、入院、介護その他の福祉サービス利用に必要な費用の給付・生活費の給付・教育資金・      】を受けることができる。

 受益者は、事前に□【受託者・信託監督人】の書面による同意を得なければ、受益権の全部または一部を□【譲渡・質入れ・担保設定・その他の処分】することができない。ただし、受託者の書面による同意は、信託財産または受益権に金融機関による担保権が設定[8]されているときは、あらかじめ当該金融機関の承認を受ける[9]

(6)受益者は、遺留分侵害額請求があった場合は、受託者に事前に通知のうえ受益権(受益債権は金銭給付を目的とする。)を分割、併合および消滅させることができる[10]

(7)受益権は、受益権の額1円につき1個とする[11]

(8)【任意後見人の事務について同意する事項(    )・        】

信託監督人

(信託監督人)

第〇条 次の者を,信託監督人として指定する。

住 所

氏 名

職 業

2 信託監督人は,受益者及び受託者の同意を得て辞任することができる。

3 信託監督人の報酬は,以下のとおりとする。

事務処理1時間当たり 〇万円(消費税込)

(受益者代理人)

第〇条 次の者を,当初受益者の受益者代理人として指定する。

住 所

氏 名

職 業

2 受益者代理人は,受益者及び受託者の同意を得て辞任することができる。

3 受益者代理人の報酬は,以下のとおりとする。

月額〇万円(消費税込)

・民事信託では,士業のサポートなしに信託を適切に運営することはできない。

タイムチャージ方式か,月額方式かについては,事務内容に照らして判断する。

・監督される立場の受託者が,監督する立場の受益者代理人を選任できるとすることは明らかに不適切。

例⒉

第〇条(受益者代理人など)

□1

(1)本信託の受益者【氏名】の代理人は次の者とし、□【本信託の効力発生日・

受益者が指定した日・受益者に成年後見開始または成年後見監督人選任の審判が開始したとき・    】から就任する。

(2)本信託の信託監督人は次の者とし、□【本信託の効力発生日・受益者が指定した日・        】から就任する。

  【住所】【氏名】【生年月日】【職業】

(3)受益者(受益者の判断能力が喪失している場合で、受益者代理人が就任していないときは受託者)は必要がある場合、受益者代理人、信託監督人を選任することができる。

(4)受益者代理人および信託監督人の変更に伴う権利義務の承継等は、その職務に抵触しない限り、本信託の受託者と同様とする。

第〇条(受益者の代理人が行使する権利)

□1 受益者代理人が就任している場合、受益者代理人は受益者のためにその権利を代理行使する[12]

□2 受益者に民法上の成年後見人、保佐人、補助人または任意後見人が就任している場合、その者は受益者の権利のうち次の代理権および同意権を有しない。ただし、任意後見人、保佐人および補助人においては、その代理権目録、代理行為目録および同意行為目録に記載がある場合を除く[13]

□3 受託者の辞任申し出に対する同意権[14]

□4 受託者の任務終了に関する合意権[15]

□5 後任受託者の指定権[16]

□6 受益権の譲渡、質入れ、担保設定その他の処分を行う場合に、受託者に同意を求める権利。

□7 受益権の分割、併合および消滅を行う場合の受託者への通知権。

□8 受託者が、信託目的の達成のために必要な金銭の借入れを行う場合の承諾権[17]

□ 9受託者が、信託不動産に(根)抵当権、その他の担保権、用益権を(追加)設定する際の承諾権[18]

□10 受託者が、本信託契約に記載のない特別の支出が見込まれる場合に、本信託の目的に従い費用を支出するときの承諾権。

□11 受託者が、各受益者と信託事務処理費用を受益者の負担とする場合の合意権[19]

□12 受託者が、本信託契約に記載のない特別の支出が見込まれる場合に、本信託の目的に従い費用を支出するときの承諾権。

□13 受託者が、各受益者と信託事務処理費用を受益者の負担とする場合の合意権。

□14 本信託の変更に関する合意権[20]

□15 残余財産の帰属権利者が行う、清算受託者の最終計算に対する承諾権[21]

本信託の終了に関する合意権[22]

□16 信託監督人が就任している場合、受益者の意思表示に当たっては事前に信託監督人との協議を要する。

(信託の変更)

第〇条 信託法149条1項から3項の規定に代えて,信託の目的に反しないこと及び受益者の利益に適合することが明らかであるときに限り,受託者は,信託監督人の同意を得て,書面又は電磁的記録による意思表示により信託を変更することができる。

・信託法149条4項の「別段の定め」

・別段の定めとして,元の信託法の規定に信託条項を付加するのか,元の 信託法の規定と信託条項を入れ代えるのかを明確にする。

・・・・信託の変更に受益者が関わることを想定していない?元の信託法の規定に信託条項を付加する場合には,「信託法○○条のほかに」元の信託法の規定を信託条項に入れ代える場合には, 「信託法○○条に代えて」などと規定する。元の信託法の規定に信託条項を付加する場合、最終項に、その他信託法に規定する場合、を記録すれば足りるのではないかと思います。

例⒉

第〇条(信託の変更)

□1 本信託の変更は、次の各号に掲げる方法による。ただし、信託財産が金融機関に担保提供されている場合、受託者はあらかじめ当該金融機関の承認を受ける。

□(1)信託法149条1項に代えて、信託目的の範囲内において、受託者と受益者による合意[23]

□(2)その他信託法が定める場合。

□2 信託法149条のほかに、受益者が受益権を分割、併合および消滅させたときは、信託の変更とする。

【                       】

(信託の終了)

第〇条 本信託は,以下の各号に該当する事由が生じたときは終了する。

(1) 委託者〇が死亡したとき。

(2)その他信託法が定める信託終了の原因があるとき。

・本条1号は,信託法163条9号に基づく条項

・「終了事由」(信託法163条各号)と「終了の原因」(信託法164条以下も含む)との使い分け。

例⒉

第〇条(信託の終了)

□1 本信託は、次に掲げる各号のいずれかの場合に終了する。

□(1)【氏名】が亡くなったとき。

□(2)信託の目的に従って受益者と受託者の合意があったとき[24]

□(3)信託財産責任負担債務につき、期限の利益を喪失したとき[25][26][27]

□(4)受益者と受託者が、○○県弁護士会の裁判外紛争解決機関を利用したにも関わらず、和解不成立となったとき。ただし、当事者に法定代理人、保佐人、補助人または任意後見人がある場合で、その者が話し合いのあっせんに応じなかった場合を除く[28]

□(5)受託者が受益権の全部を固有財産で有する状態が1年間継続したとき。

□(6)受託者が欠けた場合であって、新受託者が就任しない状態が1年間継続したとき。

□(7)信託財産が無くなったとき。

□(8)その他信託法で定める事由が生じたとき。

□(9)本信託において、信託法164条1項は適用しない[29]

□(10)【                       

(帰属権利者等)

第〇条 本信託が本信託契約書〇条(信託の終了)1号に定める(委託者〇の死亡)により終了したときの残余財産の帰属すべき者を,以下のとおり指定する。

(1)別紙信託財産目録記載1の土地,同1の建物(自宅),同2の土地及び同22の建物(アパート)については,△を帰属権利者として指定する。

(2)信託財産である金銭については,□を帰属権利者として指定する。

(3)上記(1)及び(2)に記載のほか,信託終了時の信託財産につき,不動産については△を帰属権利者として指定し,金銭等その余の財産については,□を帰属権利者として指定する。

2 本信託が本信託契約第〇条(信託の終了)2号(その他信託法が定める信託終了の原因)の定めにより本信託が終了したときの残余財産の帰属すべき者として,本信託終了時の受益者を指定する。

・受益者の死亡終了とそれ以外の原因での信託終了で,残余財産の帰属先を分ける。

・民事信託においては,信託の終了時の処理は非常に重要(不動産の単独所有or不動産の共有など)。

・信託終了時の課税関係にも細心の注意を払う。例えば,小規模宅地の特定の適用範囲など。

例⒉受益者の死亡終了とそれ以外の原因での信託終了で,残余財産の帰属先を分けない例

第〇条(信託終了後の残余財産)

□(1)本信託の終了に伴う残余財産の帰属権利者は、本信託の清算結了時の【受益者・受益者の相続人・【氏名】・        】とする[30]

□(2)清算結了時に信託財産責任負担債務が存する場合で金融機関が求めるときは、合意により残余財産の帰属権利者は、当該債務を引き受ける[31]

(管轄裁判所)

第○○条 本契約に定める権利義務に関して争いが生じた場合には,○○地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。

・委託者(委託者の地位を承継した者を含む。)と受託者の間で効力が生じる。

例⒉管轄裁判所を定めない例。

第〇条(契約に定めのない事項の処理)

□1 本信託の条項に定めのない事項は、信託法その他の法令に従い、受益者及び受託者の協議により処理する。

□2 受益者及び受託者のみでは協議が整わない場合で、意見の調整を図り信託の存続を希望するときは、○○県弁護士会の裁判外紛争解決手続を利用する。

□3【                】

援用方式の信託目録

東京法務局不動産部門首席登記官 横山亘登記官の見解(登記情報712号15頁以下など)

・信託目録に,「令和○年○月○日○○○○作成に係る公正証書第○条のとおり」

と記載することの是非

2 FATF金融活動作業部会対応(FATF第4次対日相互審査報告書)

https://www.fsa.go.jp/inter/etc/20210830/20210830.html

・審査報告書概要から抜粋

「国内外の信託,特に信託会社によって設立されていない,あるいは管理されていない信託の透明性に関しては,課題がある。法執行機関は,より複雑な法的構造を有する実質的支配者情報を備えるために必要な手段を有していないようであり,法人や法的取極めに関連するリスクは十分に理解されていない。」

・審査結果を受けた国の行動計画

項目:民事信託・外国信託に関する実質的支配者情報の利用・正確性確保

行動内容:信託会社に設定・管理されていない民事信託及び外国信託に関する実質的支配者情報を利用可能とし、その正確性を確保するための方策を検討し、実施する。

民事信託契約の公証実務

判例タイムズ2021年6月号~10月号

民事信託の例(後継ぎ遺贈型受益者連続信託)

信託契約の方式

・書面性は要求されておらず、公正証書による法的必要もないが・・・金融機関(信託口口座)との関係

・代理人による締結(とりわけ、委託者)

・東京地裁令和3年9月17日判決(家庭の法と裁判2021年12月第35号134頁)・・・代理人により作成された信託契約につき、金融機関から信託口口座開設を拒絶されたこと等を理由とする、作成に関与した司法書士に対する損害賠償請求訴訟

・公正証書作成の場合の例外的取扱い

・「家族信託実務ガイド」第23号22頁以下

次男

受託者について

・停止条件付き信託契約

以下のような条項はどうか?

・本信託は、委託者が精神上の障害により後見相当となったときに開始する。

・・・難しい。

登記手続能力に注意?

・「本信託は、医師により、委託者が精神上の障害により保佐又は補助相当となったと診断されたときに開始する。」・・・難しい。

・「本信託は、医師2名以上により、委託者が精神上の障害により保佐又は補助相当となったと診断され、2通目の診断書が作成されたときに開始する。」

補助→保佐→後見とのグレードとの関係・・・難しい。後見でも難しい

信託目的と条項との関係

 利害対立の諸相・受益者の生活の安定と、財産の承継

・遺言代用信託が遺留分を侵害しているか否かについては、受益権割合によって判断する(多数説)と東京地裁平成30年9月12日判決(金融法務事情2104号78頁)。

目的条項の機能

・受託者が信託事務を行う際の指針

・受託者が信託財産についてある行為をしようとする場合に、それが権限内の行為か否、ある結果につき受託者の善管注意義務違反があったか否かを判断する基準

・信託終了の判断基準(163条1号)

・信託の変更(149条2項)・追加信託の基準など

以下のような条項で大丈夫?

「受託者は、信託不動産の瑕疵により生じた損害につき、賠償の責を負わない。」

「受託者は、信託不動産の瑕疵担保責任を免れるものとする。」・・・民法717条、民法562条など

条項例についての提言

ア 「受託者が、本信託の期間中及び本信託終了後、信託不動産の瑕疵に関して固有財産から支出したとき、及び信託不動産の瑕疵により生じた損害の責任を負い第三者に賠償したときは、委託者に対して求償することができる。」(判例タイムズ1483号31頁)

あるいは、

「・・・第三者に賠償したときは、受託者に任務懈怠がある場合を除き、委託者に対して求償することができる。」

後継ぎ遺贈型受益者連続信託(91条)

・ 受益権を「承継」する旨規定する条項

・期間制限に注意(ペット信託など)

民事信託と任意後見の比較

・信託:財産についての管理、処分

・任意後見:財産の管理・処分+身上監護

・老人ホーム入居契約、医療契約等の場合に違いが出る

・新たにローンを組む場合には信託の方が適している・・・任意後見契約の代理権目録に記録可能。金融機関と事前調整出来るのでは?

・信託の方が裁量の幅が大きい

民事信託と任意後見の併用の有用性

・追加信託の際にも委託者に意思能力必要→信託単体だと、委託者の判断能力が低下すると信託の変更・追加信託等はできない・・・信託法146条との関係と、根拠規定が分かりませんでした。

・追加信託時に医師2名以上の診断書を取って保管しておく・・・公正証書作成と比較して、どのような意味があるのか分かりませんでした。金融機関との関係も考える必要があるように思います。

(3)任意後見契約と併用(任意後見契約の代理権目録に、「信託契約における受益権の行使に関する事項」、「信託契約の変更に関する事項」のように明記する)・・・代理権目録と、信託行為との整合性を予めチェックしたいと思います。

自動送金について

・併用の場合の留意点

・受託者(とりわけ、帰属権利者でもある場合)が任意後見人を兼ねることができるか・・・原則として可能と考えます。

・任意後見監督人の役割(現在の家庭裁判所実務は主に横領防止)

・親族の中からの任意後見人の確保

・信託+法定後見の場合の東京家裁の運用

・信託監督人・受益者代理人の活用・・・・・個別具体的な運用が望ましいとは思いますが、家庭裁判所の受け入れ容量もあるので、当事者で予め決められるところは、たとえ後から受け入れられなくても決めておいた方が良いと思います。

金融機関での信託契約書のチェックポイント

• 自己執行義務

• 善管注意義務・忠実義務の免除

• 信託事務や信託財産に関する帳簿等の作成の免除

• 信託終了時の最終計算の承認を求める義務の免除

・受託者の辞任、解任の規定

・信託法28条(前提:自己執行義務)

・信託法29条2項ただし書、信託法31条1項、32条1項、信託法31条2項、32条2項

・信託法34条2項

・信託法184条1項、信託法184条

・不可条文例(受託者の辞任) 受託者の任務は、下記の事由に該当したときに終了する。

(1)信託法第56条1項各号に掲げる事由

(2)後継受託者の同意を得て辞任したとき

 信託法57条1項本文では、受託者は、委託者及び受益者の同意を得て辞任できる旨規定されているが、信託契約にこれとは異なる規定がある場合、受託者は、委託者及び受益者の同意を得た場合には辞任できず、後継受託者の同意を得た場合にのみ辞任できる(=信託法の原則的な規定を排除する趣旨)のか、それとも、委託者及び受益者の同意を得た場合だけでなく、後継受託者の同意を得た場合にも辞任できる(=信託法の規定に加えて事由を付加する趣旨)のかが不明確である。補足文言の追加を検討する必要あり。・・・その他信託法で定める場合、と追加すれば良いのではないかと思います。受託者の解任についても同じ。

東京地裁平成30年10月23日判決金融法務事情2122号

・受益者連続型の信託契約において、受益者死亡による信託終了の定めがない場合又は信託期間の定めがない場合に、半永続的に信託が継続することにならないか。・・・信託法164条1項で終了などで終了可能だと考えられます。

チェック内容

・遺留分を侵害している場合、取り扱わない金融機関もある。・・・金融機関の自由なので、依頼者が望めば変更。

 金融機関が、預金者が高齢等により意思能力を喪失したことを知ることが出来る場合は支払停止の措置・・・窓口業務の場合、郵便物が届かない場合以外で、どのようなタイミングで知ることが出来るのか、教えて欲しいと感じました。預金者の生活に必須な公共料金等については、例外的な対応は可能な金融機関もあるとのことですが、棲み分ける根拠は何なのだろうと感じます。


[1]信託法28条1項1号、35条

[2] 信託法29条、30条。

[3]「倒産隔離」については、大垣尚司ほか編『民事信託の理論と実務』2016日本加除出版P255注18の見解を採り使用しない。貸金庫と銀行預金を例として説明するものとして、桐生幸之介『不動産の信託による都市創生』2017実務出版P231

[4] 信託法34条。『家庭の法と裁判』35号、2021年2月日本加除出版P141、P142「【1】受託者を預金者とし、【2】外観上、当該受託者個人の名義と区別できる表示が付され、【3】当該金融機関において、内部システム上、当該受託者の個人名義の預金口座(固有財産に属する預金口座に係るCIF(Customer Information File。顧客ファイル)コードとは別異のCIFコードが備えられる、内部手続上、当該預金口座とは異なる取扱いがされる旨の規定が設けられるなど、当該預金口座から分離独立した取扱いがされる預金口座)。」

[5] 信託法56条1項7号。

[6]信託法26条但し書

[7] 信託法91条の読み方として、道垣内弘人『信託法』2017有斐閣P385、道垣内弘人『条解信託法』2017弘文堂P476、477、法制執務委員会『ワークブック法制執務』2007ぎょうせいP642

[8] 「信託受益権担保」「質権と国税との優先関係」『金融機関の法務対策5000講Ⅳ』2017きんざい

[9] 不動産所有権について、伊藤眞ほか『不動産担保 下』2010金融財政事情研究会P131~。改正民法466条から468条まで。

[10]債権・動産担保について、伊藤眞ほか『債権・動産担保』2020金融財政事情研究会P78~85。株式会社の株式について会社法180条から182条の6、183条、184条。

[11] 村松秀樹他『概説新信託法』2008金融財政事情研究会P255。道垣内弘人『信託法』2017有斐閣P351。

[12] 信託法139条。

[13] 任意後見契約に関する法律第2条1項1号。成年後見制度の利用の促進に関する法律11条1項5号。民法13条、17条。平成28年12月20日第6回成年後見制度利用促進委員会議事次第P7。成年後見制度利用促進基本計画2017年、3成年後見制度の利用の促進に向けて総合的かつ計画的に講ずべき施策(4)制度の利用促進に向けて取り組むべきその他の事項①任意後見等の利用促進。

[14] 信託法57条1項但し書。委託者および受託者が本信託のために定めた条項であり、法定後見人および代理権目録に記載のない任意後見人の権限は及ばないと考えられる。

[15] 信託法56条1項7号。

[16] 信託法62条2項の新受託者への就任催告を行うことは出来る(信託法92条1項16号)。

[17] 受託者の行う借入れに対して差し止め請求することは可能(信託法44条、92条1項11号)。

[18] 受託者の行う担保設定に対して差し止め請求することは可能(信託法44条、92条1項11号)。

[19] 信託法48条5項。

[20] 合意が可能な見解として、遠藤英嗣『家族信託契約』P32

[21] (清算中の)信託財産の現状報告請求、書類の閲覧請求は可能(信託法92条1項7号、8号)。

[22] 信託法166条の利害関係人には、法定後見人および代理権目録に記載のない任意後見にも含まれると考える。

[23] 信託法149条1項1号。

[24] 信託法164条3項。

[25] 参考改正民法542条。

[26] 渋谷陽一郎『信託目録の理論と実務』2015民事法研究会P393~

[27] 中村克利ほか「不動産信託受益権質権実行に関する法律と実務」『事業再生と債権管理』2010きんざいP29~P38

[28] 信託法163条1項9号、166条、信託業法85条の7。

[29] 信託法164条1項但し書。

[30] 信託法182条、183条。

[31] 信託法181条。

商業登記関連改正メモ

令和4年6月17日月刊登記情報誌面刷新記念オンラインスクール

柴富公行司法書士「商業登記 最新の注目論点と展望」

  • 近年の商業登記に関連する取扱いの変更(令和元年改正会社法を除く)

令和4年6月13日法務省民商第286号について

会社法34条、同法578条(合同会社は適用がない)

第1 テレビ電話会議を利用した定款認証

1.概要

 株式会社等の設立における公証人の定款認証について、従来は、認証を受ける際に公証人に提供する情報の全てについてオンラインで提供しなければ、テレビ電話会議による定款認証を受けることはできなかったが、改正により、「指定公証人が相当と認めるとき」は、テレビ電話会議によることができることとなった。

 これによって、例えば、委任状や発起人の印鑑証明書などの添付書面を事前に公証人に郵送するなどして、出頭することなく定款認証を受けることができるようになった。

2.手続き

(1)公証人に定款案及び実質的支配者の申告書をFAX又はメールで送信し確認を受け、テレビ電話会議での定款認証を受けたい旨を伝える。

(2)添付書面を送付する。

【株式会社において通常想定される添付書面等】

・委任状(定款全文を合綴し発起人が実印を押印したもの)

・発起人の印鑑証明書(3か月以内のもの)

・(発起人が法人の場合は)発起人の履歴事項全部証明書等

・定款の同一情報の交付申請書

・実質的支配者の申告書及びその添付書面

・返信用封筒

(3)定款認証日時(テレビ電話会議の日時)の予約をする。

(4)申請用総合ソフトで定款認証の申請をする。

(5)公証人指定の銀行口座に認証費用を振り込む。

(6)公証人指定のURLにアクセスし、テレビ電話会議で公証人と面談する。ブラウザは、PCではchromeであることが必要。マイクロソフトedgeでは接続できない。スマートフォンの場合は、Face Hubのアプリを使用する。

・代理人の運転免許証等の身分証明書を準備しておく。公証人が当該身分証明書と代理人が映った画面を記録する。

(7)認証後の定款の同一情報及び実質的支配者の申告受理証明書等が郵送されてくる。認証後の定款(電磁的記録)は申請用総合ソフトからダウンロードする。

3.施行日

令和2年5月11日

4.その他の情報

 令和2年5月1日法務省令第36号によって、指定公証人の行う電磁的記録に関する事務に関する省令(平成13年法務省令第24号)第9条第7項が改正されたもの。

第2 定款認証における実質的支配者の申告

1.概要

 株式会社、一般社団法人又は一般財団法人の設立における公証人の定款認証に際して、その実質的支配者となる自然人を申告し、公証人の確認を受けなければならない。

2.手続

 株式会社等の設立における公証人の定款認証に際して、嘱託人は、実質的支配者となるべき者の申告書(下記参照)を提出しなければならない(公証人法施行規則第13条の4第1項)。なお、申告書の「暴力団員等該当性」欄の記入に代えて、実質的支配者作成にかかる表明保証書を提出することもできる。

添付書面(根拠資料)の内容は、公証人の裁量に任されている

・実質的支配者を疎明するための書面

・実質的支配者の住所氏名生年月日の確認できる公文書の写し、が実務上求められているようである(平成30年11月13日法務省民総第829号第2の3参照)。

3.実質的支配者(犯罪収益移転防止法施行規則第11条第2項)

(1)議決権の過半数を直接・間接に保有する自然人がいる場合はその自然人

(2)議決権の25%超を直接・間接に保有する自然人がいる場合はその自然人

(3)出資、融資、取引その他の関係を通じて事業活動に支配的な影響を有する自然人がいる場合はその自然人

(4)法人を代表し業務を執行する自然人

※国、地方公共団体、上場会社等は自然人とみなされる。

※ただし、(1)、(2)に該当する自然人であっても、当該法人の事業経営を実質的に支配する意思又は能力を有していないことが明らかな場合は除かれる。

日本公証人会連合会HP(https://www.koshonin.gr.jp/news/nikkoren/20210726.html)参照

4.施行日

平成30年11月30日

5.その他の情報

 平成30年法務省令第26号によって、公証人法施行規則が改正されたもの。公証人法施行規則第14条の4が新設された。通達として、平成30年11月13日法務省民総第829号。

第3 定款認証手数料の改定

1.内容

定款認証手数料が下記のように改定された(公証人手数料令第35条)。

・定款に記載された資本金の額等が300万円以上の場合 金5万円

・定款に記載された資本金の額等が100万円以上の場合 金4万円

・定款に記載された資本金の額等が100万円未満の場合 金3万円

 なお、定款に資本金の額等の記載がない場合は、金5万円となる。設立に際して出資される財産の最低額のみの記載のある定款は、資本金の額等の記載がないものと取り扱われる。

2.施行日

令和4年1月1日

第4 商業登記所における実質的支配者リスト制度

1.概要

 株式会社の申出により、商業登記所が、当該株式会社が作成した実質的支配者リストについて、所定の添付書面により内容を確認して、その写しを発行する制度

日本公証人連合会HP(https://www.koshonin.gr.jp/chg_teikanfee)

2.対象

 株式会社(特例有限会社を含む)が利用。合同会社は利用できない。

第5 商業登記の添付書面における押印義務の緩和(令和3年1月29日法務省民商第10号)

1.概要

 商業登記及び法人登記の添付書面について、原則として、法令に押印の定めのない書面については、押印の有無を審査の対象としないこととした。

2.法令に基づき押印が必要となる書面の例

・登記申請書(商業登記法第17条第2項)

・登記申請委任状(商業登記規則第35条の2第2項)

・取締役会議事録(会社法第369条第3項)

・非取締役会設置会社における取締役又は取締役会設置会社の代表取締役(又は代表執行役)の就任承諾書(商業登記規則第61条第4項、第5項)

・代表取締役を選定する旨の決議を証する株主総会議事録又は取締役の互選書(商業登記規則第6項第1号、第2号)

・登記所に印鑑届出をしている代表取締役又は代表執行役の辞任届(商業登記規則第61条第8項)

・登記所に印鑑届出をしている者がいない会社における代表者の辞任届(商業登記規則第61条第8項)

・原始定款(会社法第26条第1項)

・印鑑届出書(商業登記規則第9条第1項)

3.法令に明確な規定はないが例外的に押印が必要となる書面の例(令和3年1月29日法務省民商第10号第4の3)

・取締役の一致を証する書面

・不正防止申出書及び取下書

・登記された事項につき無効の原因があることを証する書面

4.押印の有無につき審査の対象としない書面の例

・株主総会議事録(上記を除く)

・就任承諾書及び辞任届(いずれも上記を除く)

・株主リスト

・原始定款以外の定款

・登記簿の附属書類の閲覧の申請書

・事業を廃止していない旨の届出

・印紙再使用証明申出書

 「法令」には、法律上の定義がないので、その範囲がどこまでなのか厳密には不明であるが、憲法、法律、政令、勅令、府省令、規則を指しているものと考えられ、通達は含まれないと考える。?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

憲法は法令には入らない

https://www.toben.or.jp/manabu/kouza.html

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・合併契約書、吸収分割契約書及び新設分割計画書

・払込みがあったことを証する書面

・債権者保護手続を行ったことを証する上申書

・原本還付をする場合における謄本(ただし、「原本に相違ない」旨の記載は必要(商業登記規則第49条第2項))

5.訂正印(令和3年1月29日法務省民商第10号第4の3(5))

 訂正について法令に基づく規定がある場合(例:登記申請書につき商業登記規則第48条第3項)を除き、訂正印の有無につき審査をしない。

6.契印(令和3年1月29日法務省民商第10号第4の3(6))

 契印について法令に基づく規定がある場合(例:登記申請書につき商業登記規則第35条第3項、第4項)を除き、契印の有無につき審査をしない。

7.司法書士の職責

【司法書士倫理】(実体関係の把握)第57条 司法書士は、登記手続を受任した場合には、議事録等の関係書類を確認する等して、実体関係を把握するように努めなければならない。

2 司法書士は、議事録等の書類作成を受任した場合には、その事実及び経過等を確認して作成するように努めなければならない。

第6 印鑑提出の任意化

1.内容

 商業登記における印鑑提出義務を廃止(旧商業登記法第20条を削除)し、印鑑提出を任意とした(商業登記規則第9条第1項)。ただし、本人申請の場合であって書面で登記を申請する場合は、あらかじめ印鑑を提出して申請書に当該印鑑を押印しなければならない(商業登記規則第35条の2)。

 また、代理人申請の場合であって登記申請代理人への委任状が書面で作成されている場合は、あらかじめ印鑑を提出して委任状に当該印鑑を押印しなければならない(商業登記規則第35条の2)。

 押印は必ずしも必要ではないが、貼付した収入印紙に消印をする必要がある(印紙税法第8条第2項、印紙税法施行令第5条)。

第7 電子証明書

1.概要

 商業登記申請の場面においては、それぞれ、登記申請書情報及び添付書面情報に行う電子署名に付与することができる電子証明書が決まっている。書面情報の種類とこれに使用できる電子証明書の種類の詳細は、法務省HPを参照。

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji60.html

2.商業登記規則第61条第6項の適用のある場合

 「例えば、添付書面情報が代表取締役の選任(重任を含む。)を証する情報(取締役会議事録等)である場合、変更前の代表取締役が(1)商業登記電子証明書、(2)公的個人認証サービス電子証明書又は(3)特定認証業務電子証明書(ア~コ)を記録すれば、他の取締役は(6)その他の電子証明書を記録すれば足ります。」(法務省HP)

3.その他

 例えば、商業登記所電子証明書を取得することなく、公的個人認証サービス電子証明書のみで登記を申請することも可能。また、書面でいうところの認印を押印すれば足りるものについては、いわゆるクラウド型の電子証明書の事業者でも可能なものがある。

 ただし、電磁的記録とは、「電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるもの」(電子署名法第2条第1項、会社法第26条第2項)全般を指す用語であるから、厳密にいうと、「商業登記法第19条の2に規定する電磁的記録」というべきであろう。?

第2部 令和元年改正会社法(原則令和3年3月1日施行)

第1 概要

1.主に下記の事項について改正。

・株主総会資料の電子提供

・株主提案権の制限

・取締役の報酬、補償契約、D&O 保険

・社外取締役の活用

・社債の管理

・株式交付制度の創設

・成年被後見人等の取締役等の欠格事由の見直し

・支店所在地における登記の廃止

・新株予約権の登記

2.成立の過程

(1)平成29年2月9日法務大臣が法制審議会へ諮問(諮問第104号)

https://www.moj.go.jp/shingi1/shingi03500028.html

(2)平成31年2月14日法制審議会が法務大臣へ要綱を答申

https://www.moj.go.jp/shingi1/shingi03500033.html

(3)令和元年10月18日臨時国会(第200回国会)へ法案の提出

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00252.html

(4)令和元年11月26日衆議院可決

(5)令和元年12月4日参議院可決、改正法等成立

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00252.html

(6)令和元年12月11日公布

(7)令和3年3月1日原則施行

なお、株主総会資料の電子提供及び支店所在地における登記の廃止については、和4年9月1日施行

第2 株主総会資料の電子提供

1.概要

 株主総会資料の電子提供制度は、取締役が株主総会資料を自社のホームページ等に掲載し、株主総会の招集通知にそのアドレス等を記載等して株主に通知したときは、(株主の個別の同意を要せずに)株主に対して株主総会資料を適法に提供したものとする制度

2.上場会社に対しての義務付け

 上場会社などの振替株式を発行する会社については、株主総会資料の電子提供制度の採用が義務付けられる(振替法159条の2第1項)。

定款の定め

・株主総会参考書類等の電子提供制度を採用するには、定款にその旨を定めることが必要となる(会社法325条の2)。

・定款には、具体的なアドレスを規定する必要はなく、単に電子提供措置をとる旨を定めれば足りる(会社法325条の2柱書後段)。

【定款条項例】

(株主総会参考資料等の電子提供措置)

第〇条 当会社は、会社法第325条の2第1項各号に定める資料の内容である情報について、電子提供措置をとる。

・当該定款の定めは、登記事項となる(会社法911条3項12号の2)。なお、具体的なアドレスは登記事項とならない(参考文献1の46頁)とされ、この点は、電子公告と異なる。

 既存の上場会社などの振替株式を発行する会社については、当該改正法の施行日において、電子提供措置をとる旨の定款の定めを設ける定款の変更の決議をしたものとみなすとされており(整備法10条2項)、この場合は、施行日から6か月以内に登記をしなければならない(整備法10条4項)。

3.電子提供措置の対象となる情報(参考文献の2、6-7頁参照)

 電子提供措置をとる場合にその対象となる情報は下記のとおり(会社法325条の3第1項各号)。

・会社法298条1項各号に定める事項

・株主総会の日時及び場所

・株主総会の目的である事項があるときは、当該事項

・株主総会に出席しない株主が書面によって議決権を行使することができることとするときは、その旨

・株主総会に出席しない株主が電磁的方法によって議決権を行使することができることとするときは、その旨

法務省令(会社法施行規則63条)で定める事項

・書面による議決権の行使を認める場合には、株主総会参考書類及び議決権行使書面に記載すべき事項

・電磁的方法による議決権行使を認める場合には、株主総会参考書類に記載すべき事項

・株主からの議案要領通知請求(会社法305条1項)があったときは、その議案の要領

・計算書類及び事業報告(監査報告又は会計監査報告を含む)の内容(取締役会設置会社における定時株主総会の場合)

・連結計算書類の内容(会計監査人設置会社であって取締役会設置会社における定時株主総会の場合)

・上記の修正をしたときは、その旨及び修正前の内容

 会社法325条の2の定款の定めをした会社は、上記の情報は、原則として電子提供措置をしなければならず、株主に対して書面で交付したからといって、電子提供措置をとらないとすることはできない(参考文献1の17頁)。

 ただし、書面による議決権行使を認める場合の議決権行使書面は、例外として書面を交付すれば、電子提供措置をとらないことができる(会社法325条の3第2項)。実務上は、この例外を適用することになると予想されている(参考文献2の7頁参照)。

4.電子提供措置の期間及び方法

(1)電子提供措置の期間は、株主総会の開催日の3週間前の日(それより前に招集通知を発した場合は、招集通知の発送日)から株主総会の開催日後3か月を経過するまで(会社法325条の3第1項柱書)。

(2)電子提供措置について、調査機関の調査を受ける必要はない(参考文献1の45頁)。

(3)金融商品取引法に基づき有価証券報告書を提出しなければならない会社が、電子提供の開始日までに、上記3.の情報を含む有価証券報告書をEDINETによって開示した場合は、電子提供措置をとることを要しない(会社法325条3第3項)。

5.電子提供措置をとった場合の招集通知

(1)電子提供措置をとった場合、招集通知には下記の事項を記載する(会社法325条の4第2項)。なお、本制度によって招集通知そのものを電子提供することはできない(参考文献2の10頁)。

・会社法第298条第1項第1号から第4号に掲げる事項(通常の招集通知の記載事項のうち、会社法施行規則63条部分を除くもの)

・電子提供措置をとっている旨(会社法325条の4第2項1号)

・有価証券報告書を開示用電子情報処理組織(EDINET)を用いて提出したときは、その旨(同2号)

・情報を掲載したWEBのアドレス(会社法施行規則95条の3第1項1号)

(2)電子提供措置をとった場合、招集通知は、株主総会の日の2週間前までに発送しなければならない(会社法325条の4第1項)。

6.書面交付請求

・議決権行使書面には、対象株主の氏名及び議決権数を記載する必要があり(会社法施行規則第66条第1項第5号)、電子提供措置をとるとしたら、株主ごとに分けて掲載しなければならなくなるため、株主が多数の会社においては困難である。

・ただし、取締役会設置会社、書面又は電磁的方法による議決権行使を認める場合、のいずれかの場合

(1)会社法325条の2の定款の定めをした会社であっても、株主が請求した場合は、その情報を記載した書面を株主に交付しなければならない(会社法325条の5第1項)。

(2)当該書面交付請求は、基準日を定めたときは基準日までに(会社法325条の5第2項)、それ以外のときは株主総会招集通知の発送までに(参考文献1の33-34頁)しなければならない。

7.種類株主総会

 現に数種の株式を発行している種類株式発行会社における種類株主総会についても当該規定は適用があり、会社法325条の2の定款の定めをした会社は、種類株主総会についても参考書類等を電子提供しなければならないと解されている(参考文献2の28頁)。

8.既存の制度との関係

(1)会社法325条の2の定款の定めをした会社であるか否かに関わらず、株主の個別の同意に基づく招集通知の電磁的方法による提供(会社法299条3項)は可能である。

(2)現行法において、株主総会参考書類に記載するべき事項の一部等をWEB で開示することにより、書面の記載を省略する旨の定款で定めることができ(いわゆる「ウェブ開示制度」、会社法施行規則94条、133条3項、)、同制度は、改正後の電子提供措置と両立し得る(参考文献2の2-3頁、18-19頁)。ただし、改正法施行前後の適用関係は複雑となる(参考文献3の14-17頁)。

第3 株主提案権

1.概要

 株主提案権のうち、株主総会議案の事前提案権(会社法305条1項)について、株主1人あたりの提案する議案数は10個以内に制限される(会社法305条4項)。

2.議案の個数の考え方

(1)実質的な内容に着目して数える(参考文献1の54頁)。

(2)役員等の選任に関する議案については、まとめて一つの議案とみなす(会社法305条4項1号)。解任についても同じ(同2号)。

・電子提供措置を定める会社においては、ウェブ開示の適用の余地がなくなるとする見解(邉英基「株主総会資料の電子提供制度への実務対応」(旬刊商事法務2230号(2020年5月5日・15日合併号))54頁)もあるが、理論上は両立し得る。書面交付請求があったときの交付すべき書面の内容に差が生じることになる。

・例えば、取締役と監査役をそれぞれ選任する議案であっても、まとめて一つの議案となる(参考文献1の55頁)。

(3)会計監査人を再任しないことに関する議案は、会計監査人の数に関わらず、まとめて一つの議案とみなす(同3号)。

(4)定款の変更に関する2以上の議案について、異なる議決がされたとすれば、当該議決の内容が相互に矛盾する可能性がある場合には、これらを一つの議案とみなす(同4号)。

 例えば、取締役会を廃止する旨の定款変更、株式の譲渡制限に関する規定の変更その他の取締役会廃止に伴う定款変更については、どちらか一つが可決されて他が否決されると、矛盾することになる。この場合は、まとめて一つの議案とされる。なお、商号をAとする議案とBとする議案は、どちらか一つが可決されて他が否決されても矛盾しないので、二つの議案である(参考文献1の62頁)。

3.その他

(1)取締役が株主総会に提案する議案の個数に制限はない(参考文献1の59頁)。

(2)株主の議題提案権(会社法303条)、株主総会の席上における議案提案権(会社法304条)については従前と変更がなく、今回の改正で制限が課されることはない。

第4 取締役の報酬等

1.取締役の個別の報酬額の決定の委任

 改正前会社法下における実務上、取締役の個別報酬額の決定について、株主総会決議によって取締役会に委任し、取締役会決議によって特定の取締役に再委任することが認められているが、改正会社法では、条文にこれを前提とする規定が置かれ(会社法361条7項、会社法施行規則98条の5第6項)、法的な安定性が高まった。

2.個人別の報酬等の内容についての決定に関する方針の決定

(1)取締役の報酬等の内容の決定手続等に関する透明性を向上させる観点から、上場会社等の取締役会は、取締役の個人別の報酬等の内容が定款又は株主総会の決議により定められている場合を除き、取締役の個人別の報酬等の内容についての決定に関する方針として一定の事項を決定しなければならないとされた(会社法361条7項、会社法施行規則98条の5)。

・取締役(監査等委員である取締役を除く。)の個人別の報酬等(下記の業績連動報酬等及び非金銭報酬等を除く。)の額又はその算定方法の決定に関する方針

・取締役の個人別の報酬等のうち、業績連動報酬等がある場合には、当該業績連動動報酬等に係る業績指標の内容及び当該業績連動報酬等の額又は数の算定方法の決定に関する方針

・明文規定は上場会社等についてのものであることから、中小企業等においても実務慣行が認められるのか若干の疑義がないではない。

・取締役の個人別の報酬等のうち、非金銭報酬等がある場合には、当該非金銭報酬等の内容及び当該非金銭報酬等の額若しくは数又はその算定方法の決定に関する方針

・上記①の報酬等の額、業績連動報酬等の額又は非金銭報酬等の額の取締役の個人別の報酬等の額に対する割合の決定に関する方針

・取締役に対し報酬等を与える時期又は条件の決定に関する方針

・取締役の個人別の報酬等の内容についての決定の全部又は一部を取締役その他の第三者に委任することとするときは、次に掲げる事項

イ 当該委任を受ける者の氏名又は当該株式会社における地位若しくは担当

ロ イの者に委任する権限の内容

ハ イの者によりロの権限が適切に行使されるようにするための措置を講ずることとするときは、その内容

・取締役の個人別の報酬等の内容についての決定の方法(上記⑥の事項を除く。)

・その他取締役の個人別の報酬等の内容についての決定に関する重要な事項

 なお、業績連動報酬等とは、取締役(監査等委員である取締役を除く。)の個人別の報酬等のうち、利益の状況を示す指標、株式の市場価格の状況を示す指標その他の当該株式会社又はその関係会社(会計規2③二十五)の業績を示す指標(業績指標)を基礎としてその額又は数が算定される報酬等のことをいうとされた(改正会施規98 の5 二)。

 また、非金銭報酬等とは、取締役(監査等委員である取締役を除く。)の個人別の報酬等のうち、金銭でないものであって、これには、募集株式又は募集新株予約権と引換えにする払込みに充てるための金銭を取締役の報酬等とする場合における当該募集株式又は募集新株予約権を含むものとされた(改正会施規98 の5三)。

(2)個人別の報酬等の内容についての決定に関する方針の決定は、重要な業務執行の決定(会社法362条4項)であり、当該方針の決定を取締役に委任することはできないと解される(参考文献1の82頁、監査等委員会設置会社においては、会社法399条の13第5項第7号)。

(3)個人別の報酬等の内容についての決定に関する方針の決定を義務付けられた会社が、当該方針を決定せず、又は、決定した当該方針に反して取締役の個人別の報酬等を決定した場合は、当該報酬の決定は違法であり、無効であると解される(参考文献1の77-78 頁)。

(4)個人別の報酬等の内容についての決定に関する方針の決定については、特別な経過措置は設けられていないので、上場会社等は、改正会社法施行日以降に当該方針を決定しなければならないと解される。もっとも、改正会社法施行日前に、既に要件を満たしている取締役会決議が存在するのであれば、施行日以後に改めて同じ内容の決議をする必要はない(参考文献3の94頁)。

3.取締役の報酬等に関する株主総会における説明義務

 改正前会社法では、取締役は、取締役の報酬等であって、不確定額である報酬等又は金銭以外の報酬等に関する事項を定め又は改定する株主総会の議案を提出する場合は、当該事項を相当とする理由を説明しなければならないとされる(旧会社法361条4項)一方で、確定報酬額を定める議案を提出するときは、取締役の説明義務が条文上明示されていない。

 改正会社法では、取締役の報酬等の内容の決定手続に関する透明性を向上させるため、確定額を定める場合を含め、取締役の報酬等に関する事項を定め、又は改定する議案を株主総会に提出した取締役は、当該事項を相当とする理由を説明しなければならないとされた(会社法361条4項)。

4.金銭以外による報酬等

(1)株式を報酬等とする場合に決定すべき事項

 現行会社法上、金銭でないものを取締役の報酬等として付与する場合は、定款又は株主総会決議によって、その具体的な内容を決定しなければならないとされている(会361①三)。ところが、金銭以外の報酬の具体的な内容とはどのようなものかは解釈に委ねられており、必ずしも明確ではないため、特に株式及び新株予約権を報酬等とする場合は、明確にするべきであるとの要請があった(参考文献1の84頁)。

 そこで、改正会社法は、株式を報酬等とする場合について、定款又株主総会決議で定めなければならない事項を下記のとおりとして明確化した(改正法3611三、改正会施規98 の2)。

報酬等のうち当該株式会社の募集株式については、当該募集株式の数(種類株式発行会社にあっては、募集株式の種類及び種類ごとの数)の上限(改正法3611三)及び下記事項

・一定の事由が生ずるまで当該募集株式を他人に譲り渡さないことを取締役に約させることとするときは、その旨及び当該一定の事由の概要(改正会規98 の2一)

・一定の事由が生じたことを条件として当該募集株式を当該株式会社に無償で譲り渡すことを取締役に約させることとするときは、その旨及び当該一定の事由の概要(改正会規98 の2 )

・取締役に対して当該募集株式を割り当てる条件を定めるときは、その条件の概要(改正会規98 の2 三)

(2)株式を報酬とする場合の払込みの要否

 現行会社法上、株式会社が募集株式の発行又は募集自己株式の処分をするときは、募集株式の払込金額又はその算定方法を定めなければならない(会199二)ため、その株式引受人は、必ず当該募集株式等と引換えに1 円以上の財産を払込み又は給付しなければならない(会208)こととされている。

 このことから、実務では、株式を取締役の報酬としようする場合は、会社が取締役に対して金銭報酬を支払う決定をし、これによって取締役が会社に対して有することとなる報酬支払請求権を現物出資する方法によって、取締役を引受人とする募集株式の発行等を行い、株式を交付することが行われている(いわゆる現物出資構成)。

 しかし、このような方法は、技巧的であることや株式を発行した場合における計算が明確でないことから、金銭の払込みを要しないで株式を交付することができるようにするべきであると指摘されていた(参考文献1の88 頁)。

 そこで、改正法では、上場会社(本稿においては、金融商品取引法第2条第16 項に規定する金融商品取引所に上場されている株式を発行している株式会社をいう。)に限定して、取締役の報酬等として株式の発行又は自己株式の処分をする場合、当該募集株式と引換えにする金銭の払込み又は現物出資財産の給付を要しない旨を定めることができるものとした(改正法202の2一)。

 なお、改正会社法施行後においても、上場会社であるか否かに関わらず、現在行われているような現物出資構成による株式の交付は可能である。この場合は、改正会社法361 条1 項3 号又は5 号には該当しないと考えられる。

(3)株式の取得に要するための資金としての金銭を取締役の報酬等とする場合現行会社法上、取締役の報酬等として、株式の取得に要するための資金の金銭を支給する場合であっても、会社法上は特別な規定が置かれておらず、通常の取締役の報酬支給手続きと、募集株式の発行等の手続きを行っていた。

 改正法では、この場合、定款又は株主総会決議で下記の事項を定めなければならないこととされた(改正法361、改正会施規98の4)

・取締役が引き受ける当該募集株式の数(種類株式発行会社にあっては、募集株式の種類及び種類ごとの数)の上限(改正法361)

・一定の事由が生ずるまで当該募集株式を他人に譲り渡さないことを取締役に約させることとするときは、その旨及び当該一定の事由の概要(改正会施規98 の4)

・一定の事由が生じたことを条件として当該募集株式を当該株式会社に無償で譲り渡すことを取締役に約させることとするときは、その旨及び当該一定の事由の概要(改正会施規98の4)

・取締役に対して当該募集株式と引換えにする払込みに充てるための金銭を交付する条件又は取締役に対して当該募集株式を割り当てる条件を定めるときは、その条件の概要(改正会施規98の4)

(4)新株予約権を報酬等とする場合における決定すべき事項

 改正会社法は、株式と同様に、新株予約権を取締役の報酬等とする場合について、定款又は株主総会決議で定めなければならない事項を下記のとおりとして明確化した(改正法361、改正会規98 の3)。報酬等のうち当該株式会社の募集新株予約権については、当該募集新株予約権の数の上限(改正法361)及び下記事項

・当該新株予約権の目的である株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)又はその数の算定方法(改正会規98の3、会236)

・当該新株予約権の行使に際して出資される財産の価額又はその算定方法(改正会規98の3、会236)

・金銭以外の財産を当該新株予約権の行使に際してする出資の目的とするときは、その旨並びに当該財産の内容及び価額(改正会規98 の3 一、会236①三)

・当該新株予約権を行使することができる期間(改正会規98 の3 一、会236①四)

・一定の資格を有する者が当該募集新株予約権を行使することができることとするときは、その旨及び当該一定の資格の内容の概要(改正会規98 の3 二)

・当該募集新株予約権の行使の条件を定めるときは、その条件の概要(改正会規98の3三)

・譲渡による当該新株予約権の取得について当該株式会社の承認を要することとするときは、その旨(改正会規98の3四、会236)

・当該新株予約権について、当該株式会社が一定の事由が生じたことを条件としてこれを取得することができることとするときは、会社法236 条1 項7 号に規定する事項の内容の概要(改正会規98 の3 五、会236)

・取締役に対して当該募集新株予約権を割り当てる条件を定めるときは、その条件の概要(改正会規98 の3 六)

これは、新株予約権を取締役の報酬等とする場合は、その新株予約権の内容のうち主要なものについて、予め株主総会決議によって決定しておかなければならないことしたもの。

(5)新株予約権を取締役の報酬等とする場合におけるその行使の際の払込みの要否

 現行会社法上、募集新株予約権の発行をするときは、引換えに金銭の払込みを要しないとすることができる(会238)が、新株予約権の行使にあたっては、金銭の払込み等をしなければならないものとされている(会236)。

 このことから、実務では、新株予約権を取締役の報酬としようする場合において、行使価額を1円とするなどの方法(いわゆる1円ストック・オプション)が行われてきたが、株式を取締役の報酬とする場合と同様の理由で、払込み等を要しない新株予約権が望まれていた。

 そこで、改正法では、上場会社に限定して、取締役の報酬等として新株予約権を発行する場合(報酬としての金銭をもって新株予約権と引換えにする金銭の払込みに充てる場合を含む。)、当該新株予約権の行使に際して金銭の払込み又は現物出資財産の給付を要しないものとすることができることとされた(改正法236 の3)。

(6)新株予約権と引換えにする払込みに充てるための金銭を報酬等とする場合

 新株予約権の発行に際しての払込みに充てるための金銭を報酬とすることもでき、この場合は、株主総会において下記の事項を決議する(改正法361)。

・取締役が引き受ける当該募集新株予約権の数の上限及び下記事項(改正法361)

・当該新株予約権の目的である株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)又はその数の算定方法(改正会施規98 の4、会236)

・当該新株予約権の行使に際して出資される財産の価額又はその算定方法(改正会施規98の4、会236)

・金銭以外の財産を当該新株予約権の行使に際してする出資の目的とするときは、その旨並びに当該財産の内容及び価額(改正会施規98 の4、会236)

・当該新株予約権を行使することができる期間(改正会施規98 の4、会236)

・一定の資格を有する者が当該募集新株予約権を行使することができることとするときは、その旨及び当該一定の資格の内容の概要(改正会施規98 の4)

・当該募集新株予約権の行使の条件を定めるときは、その条件の概要(改正会施規98 の4)

・譲渡による当該新株予約権の取得について当該株式会社の承認を要することとするときは、その旨(改正会施規98 の4、会236)

・当該新株予約権について、当該株式会社が一定の事由が生じたことを条件としてこれを取得することができることとするときは、会社法236 条1 項7 号に規定する事項の内容の概要(改正会施規98 の4、会236)

・取締役に対して当該募集新株予約権と引換えにする払込みに充てるための金銭を交付する条件又は取締役に対して当該募集新株予約権を割り当てる条件を定めるときは、その条件の概要(改正会施規98 の4)

・新株予約権の発行の手続きは、通常のものに加えて、上場会社においては、新株予約権の行使に際して払込み又は現物財産の給付を要しない旨の定めをすることもできる(改正法236)。

 なお、新株予約権の発行に際しての払込みに充てるための金銭を取締役の報酬等とする旨の定めは置かれたが、新株予約権の行使に際しての払込みに充てるための金銭を報酬等とすることについての特別な規定は置かれていない。

(7)株式又は新株予約権の発行時における有利発行の該当性

 取締役の報酬等として株式を発行するときに、金銭の払込み等を要しないとする場合であっても、有利発行(会199、201)に該当しないと解されている。その理由として、発行される株式は取締役の職務執行の対価として交付されるものであるから、特に有利な条件に該当しないことや、株主総会決議による報酬決定(会361)の中で、発行する株式数の上限等を決定し、希釈化される株主の意志を確認していることが挙げられている(参考文献1の94 頁)。

 なお、取締役の報酬等として新株予約権を発行する場合における有利発行の該当性については、有利発行規制の適用の可能性自体はあり得るものの、上記株式の発行等における考え方に照らすと、実際上は、有利発行となる余地はほとんどなくなるとする見解が有力である(参考文献1の95 頁)。

(8)報酬等として株式を発行したときの資本金又は準備金として計上すべき額

 取締役等の報酬として株式を交付する場合であって、払込みを要しないとした場合の資本金及び資本準備金の計上は、下記のとおりである。

・株式報酬において、募集株式を発行する場合(事前交付型)

 取締役等の報酬として新たに募集株式を発行し、割当日後の取締役等の役務をその対価とする場合(事前交付型)は、割当日(=募集株式の発行の効力発生日)においては資本金及び資本剰余金の額は変動せず、その後の各事業年度の末日において、下記のとおり計上する。

【資本金等増加限度額】(改正会計規42 の2)

下記アからイを引いた額

ア 割当日以降各事業年度の末日までに対象の取締役等が提供した役務であって募集株式を対価とする部分の公正な評価額

イ 会社法199 条1 項5 号に定める事項として募集株式の交付に係る費用の額のうち、株式会社が資本金等増加限度額から減ずるべき額と定めた額

上記イは、当分の間、零とされている(会計規14、同附則11一)ため、実質的にはアのみである。なお、自己株式の処分を併せて行う場合は、募集株式の発行部分の割合を乗じて計算する。株主資本等増加限度額の2 分の1 を超えない額は、資本金として計上しないことができ(改正会計規42 の2)、この場合、資本金として計上しなかった額は、資本準備金としなければならない。

・株式報酬において、募集株式を発行する場合(事後交付型)

取締役等の報酬として新たに募集株式を発行し、割当日前の取締役等の役務をその対価とする場合(事後交付型)は、割当日(=募集株式の発行の効力発生日)において、下記のとおり計上する。

【資本金等増加限度額】(改正会計規42 の3、54 の2)

下記アからイを引いた額

・割当日までに対象の取締役等が提供した役務であって募集株式を対価とする部分の公正な評価額として株式引受権の額に計上された額

・会社法199 条1 項5 号に定める事項として募集株式の交付に係る費用の額のうち、株式会社が資本金等増加限度額から減ずるべき額と定めた額

上記アについて、割当日までの取締役等の役務の評価額を「株式引受権」として一旦計上し、その額がそのままアの額となる(改正会計規54 の2)。

上記イについては、上記と同じ。

なお、自己株式の処分を併せて行う場合、資本金として計上しない部分については、上記と同じ。

 募集株式と引換えにする払込みに充てるための金銭を取締役の報酬等とする場合は、通常の募集株式の発行と同じである。つまり、当該払込金額から募集株式の交付に係る費用の額を引いた額が資本金等増加限度額となる。

第5 補償契約

1.補償契約(会社法430条の2)

 補償契約とは、役員等がその職務の執行に関し、法令の規定に反したことが疑われ、又は責任の追及に係る請求を受けたことに対処するために支出する費用や第三者に生じた損害を賠償する責任を負う場合における損失の全部または一部を、株式会社が当該役員等に対して補償することを約する契約をいう(参考文献1の102頁)。

2.補償対象となり得るもの

(1)役員等が、その職務の執行に関し、法令の規定に違反したことが疑われ、又は責任の追及に係る請求を受けたことに対処するために支出する費用(いわゆる「防御費用」、会社法430条の2第1項1号)

(2)役員等が、その職務の執行に関し、第三者に生じた損害を賠償する責任を負う場合における次に掲げる損失(同2号)

イ  当該損害を当該役員等が賠償することにより生ずる損失

ロ  当該損害の賠償に関する紛争について当事者間に和解が成立したときは、当該役員等が当該和解に基づく金銭を支払うことにより生ずる損失

3.補償対象とならないもの

(1)防御費用のうち、通常要する費用を超える部分(会社法430条の2第2項1号)

(2)株式会社が第三者に対して損害の賠償等をした場合に当該役員等が当該株式会社に対して損害賠償責任(会社法423条1項)を負う場合には、第三者に対する損害等のうち当該責任に係る部分

(3)役員等がその職務を行うにつき悪意又は重大な過失があったことにより第三者に対して損害賠償の責任等を負う場合には、損害賠償等の全部(会社法430条の2第2項3号)。この場合であっても、防御費用は補償することができる(参考文献1の112 頁)。

(4)罰金や課徴金等(参考文献1の116頁)

4.補償の手続

(1)補償契約の内容の決定

 取締役会設置会社においては取締役会決議によって決定する。非取締役会設置会社においては、株主総会決議(普通決議)で決定する。

(2)補償の決定

 補償の決定については、条文上、特別な規定は置かれていない。会社の重要な業務執行の決定(会社法362条4項柱書)として、取締役会設置会社においては、取締役会決議が必要になる事例もあると解されている(参考文献1の109頁)。

5.報告及び開示

(1)公開会社では、補償契約を締結した場合及び補償の実行を行った場合は、一定の事項を事業報告に記載し開示しなければならない(会社法施行規則121条3号の2から3号の4、125条2号から4号、126条7号の2から7号の4)。

(2)補償契約に基づいて補償をした取締役及びを受けた取締役は、遅滞なく、当該補償についての重要な事実を取締役会に対して報告しなければならない(会社法430条の2第5項)。

6.その他

(1)補償契約に基づく補償は、取締役の報酬等とは異なると解されているようである。

(2)補償契約の締結については、利益相反取引の規定を適用しない(会社法430条の2第7項)。

(3)損害等が発生した後に、補償契約を締結し補償をすることは、条文上禁止されているわけではないが、「補償する側の取締役の善管注意義務の観点から実務上のハードルが高い」(参考文献3の101頁、参考文献2の84-85頁)と解されている。

第6 D&O保険

※典型的な事例では、会社に損害が発生し、その損害を填補することが想定されている。

1.D&O保険とは、会社と保険会社(保険者)が締結し、役員等が被保険者である保険契約であって、役員等が損害賠償等をしなければならないときに、保険金でその填補をしてくれるもの(会社法430条の3第1項参照)。

2.会社法430条の3第1項に規定するD&O保険契約の内容を決定するにあたっては、取締役会設置会社においては取締役会決議、非取締役会設置会社においては、株主総会決議(普通決議)によらなければならない(会社法430条の3第1項)。

 例えば、取締役会設置会社において取締役の全員について取締役会決議をする場合は、特別利害関係人の問題から決議ができないのではないかとの疑念が生じるが、各人ごとに保険契約の内容を決定する決議をそれぞれ行うことによって、対象となる取締役を除く取締役で決議を行うことができると解されている(参考文献1の146頁)。

3.公開会社が、会社法430条の3第1項に規定するD&O保険契約を締結した場合は、事業報告において一定の事項を開示しなければならない(会社法施行規則119条2号の2、121条の2)。

第7 社外取締役

1.社外取締役を置くことの義務付け

 上場会社等(監査役会設置会社(公開会社であり、かつ、大会社であるものに限る。)であって金融商品取引法の規定によりその発行する株式について有価証券報告書を内閣総理大臣に提出しなければならない会社)は、社外取締役を置かなければならないこととされた(会社法327条の2)。

2.社外取締役への業務執行の委託

(1)一定の場合において、社外取締役が、会社の業務を執行することができるものとされた(会社法348条の2第1項)。

(業務の執行の社外取締役への委託)

第348条の2 株式会社(指名委員会等設置会社を除く。)が社外取締役を置いている場合において、当該株式会社と取締役との利益が相反する状況にあるとき、その他取締役が当該株式会社の業務を執行することにより株主の利益を損なうおそれがあるときは、当該株式会社は、その都度、取締役の決定(取締役会設置会社にあっては、取締役会の決議)によって、当該株式会社の業務を執行することを社外取締役に委託することができる。

2 指名委員会等設置会社と執行役との利益が相反する状況にあるとき、その他執行役が指名委員会等設置会社の業務を執行することにより株主の利益を損なうおそれがあるときは、当該指名委員会等設置会社は、その都度、取締役会の決議によって、当該指名委員会等設置会社の業務を執行することを社外取締役に委託することができる。

3 前2項の規定により委託された業務の執行は、第2条第15号イに規定する株式会社の業務の執行に該当しないものとする。ただし、社外取締役が業務執行取締役(指名委員会等設置会社にあっては、執行役)の指揮命令により当該委託された業務を執行したときは、この限りでない。

(2)会社法348条の2第1項の規定に基づいて、社外取締役が業務の執行を行った場合、当該業務の執行は、社外取締役としての地位に影響を与えないこととされた(会社法348条2第3項)。

第8 株式交付

1.制度概要

(1)ある株式会社(株式交付親会社)が、別の株式会社(株式交付子会社)を子会社とすることを目的として、株式交付子会社の株式を取得するための制度

(2)株式交付親会社が、株式交付子会社の株主から株式交付子会社の株式を取得する。その対価は、株式交付親会社の株式であるが、当該株式に加えて、金銭等も対価とすることができる。

(3)株式交付子会社の株主に対して株式交付親会社の株式を交付するにあたっては、募集株式の発行等の手続きによらず、独自の手続きが定められている。

(4)株式交付子会社の株主は、株式交付によってその所有する株式を株式交付親会社に譲渡するか否か、任意に決定できる。

(5)上記の結果、株式交付親会社が株式交付子会社を子会社とするだけの株式を取得できない場合は、手続き全体の効力が発生しない(会社法774条の3第2項、774条の10)。

2.手続き概要

(1)株式交付計画の作成

株式交付計画の内容(会社法774条の3第1項)

・株式交付子会社の商号及び住所

・株式交付親会社が株式交付に際して譲り受ける株式交付子会社の株式の数(株式交付子会社が種類株式発行会社である場合にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)の下限

・株式交付親会社が株式交付に際して株式交付子会社の株式の譲渡人に対して当該株式の対価として交付する株式交付親会社の株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)又はその数の算定方法並びに当該株式交付親会社の資本金及び準備金の額に関する事項

・株式交付子会社の株式の譲渡人に対する株式交付親会社の株式の割当てに関する事項

・株式交付親会社が株式交付に際して株式交付子会社の株式の譲渡人に対して当該株式の対価として金銭等(株式交付親会社の株式を除く。)を交付するときは、当該金銭等についての次に掲げる事項

イ  当該金銭等が株式交付親会社の社債(新株予約権付社債についてのものを除く。)であるときは、当該社債の種類及び種類ごとの各社債の金額の合計額又はその算定方法

ロ  当該金銭等が株式交付親会社の新株予約権(新株予約権付社債に付されたものを除く。)であるときは、当該新株予約権の内容及び数又はその算定方法

ハ  当該金銭等が株式交付親会社の新株予約権付社債であるときは、当該新株予約権付社債についてのイに規定する事項及び当該新株予約権付社債に付された新株予約権についてのロに規定する事項

ニ  当該金銭等が株式交付親会社の社債及び新株予約権以外の財産であるときは、当該財産の内容及び数若しくは額又はこれらの算定方法

・前号に規定する場合には、株式交付子会社の株式の譲渡人に対する同号の金銭等の割当てに関する事項

・株式交付親会社が株式交付に際して株式交付子会社の株式と併せて株式交付子会社の新株予約権(新株予約権付社債に付されたものを除く。)又は新株予約権付社債(以下「新株予約権等」と総称する。)を譲り受けるときは、当該新株予約権等の内容及び数又はその算定方法

・前号に規定する場合において、株式交付親会社が株式交付に際して株式交付子会社の新株予約権等の譲渡人に対して当該新株予約権等の対価として金銭等を交付するときは、当該金銭等についての次に掲げる事項

イ  当該金銭等が株式交付親会社の株式であるときは、当該株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)又はその数の算定方法並びに当該株式交付親会社の資本金及び準備金の額に関する事項

ロ  当該金銭等が株式交付親会社の社債(新株予約権付社債についてのものを除く。)であるときは、当該社債の種類及び種類ごとの各社債の金額の合計額又はその算定方法

ハ  当該金銭等が株式交付親会社の新株予約権(新株予約権付社債に付されたものを除く。)であるときは、当該新株予約権の内容及び数又はその算定方法

ニ  当該金銭等が株式交付親会社の新株予約権付社債であるときは、当該新株予約権付社債についてのロに規定する事項及び当該新株予約権付社債に付された新株予約権についてのハに規定する事項

ホ  当該金銭等が株式交付親会社の株式等以外の財産であるときは、当該財産の内容及び数若しくは額又はこれらの算定方法

・前号に規定する場合には、株式交付子会社の新株予約権等の譲渡人に対する同号の金銭等の割当てに関する事項

・株式交付子会社の株式及び新株予約権等の譲渡しの申込みの期日

・効力発生日

(2)株式交付親会社による通知

株式交付親会社は、株式の申込みをしようとする者(株式交付子会社の株主)に対して、下記の事項を通知する(会社法774条の4第1項)。

・株式交付親会社の商号

・株式交付計画の内容

・法務省令(会社法施行規則179条の2)で定める事項

・対価についての参考となるべき事項、株式交付親会社の計算書類

(3)譲渡の申込み人からの申込み

申込者は、申込期日までに事項を記載した書面を株式交付親会社に交付しなければならない。

・申込みをする者の氏名又は名称及び住所

・譲り渡そうとする株式交付子会社の株式の数(株式交付子会社が種類株式発行会社である場合にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)

(4)株式交付親会社の株式の割当(会社法774条の5第1項)

申込の中から、割り当てる株式の数を減少させることができる。

(5)割当通知

株式交付親会社は、効力発生日の前日までに、申込者に対し、当該申込者から当該株式交付親会社が譲り受ける株式交付子会社の株式の数を通知しなければならない(会社法774条の5第2項)。

(6)譲渡承認

 譲渡の対象の株式が譲渡制限株式の場合は、効力発生日の前日までに、株式交付子会社の譲渡承認を受けなければならないと解されている(会社法774条の7第2項、参考文献1の202頁、参考文献2の259-260頁参照)。

(7)株式の交付

 株式交付子会社が株券発行会社の場合は、効力発生日の前日までに、株券の交付を受けなければならない(参考文献1の217頁)。

(8)株主総会決議

 株式交付親会社は、効力発生日の前日までに、株主総会の特別決議によって株式交付計画の承認を受けなければならない。なお、簡易な株式交付の制度もある。

(9)債権者保護手続

 一定の場合のみ債権者保護手続が必要となる(会社法816条の8)。債権者保護手続が必要な場合は、対価として交付する株式交付親会社の株式以外の財産の価額が、対価として交付する株式交付親会社の株式の価額の20分の1以上の場合である(会社法施行規則213条の7)。債権者保護手続の内容は、組織再編の一般的なものと同じ。

(10)効力が発生しない場合(会社法774条の11第5項)

・効力発生日において、債権者保護手続が終了していない場合

・効力発生日において、株式交付親会社が株式交付計画に定められた株式の給付を受けられなかった場合

・効力発生日において、株式交付親会社の株主となる者がいない場合

(11)株式交付子会社

 株式交付子会社においては、特別な機関決定は必要ではない。譲渡の対象株式が、譲渡制限株式である場合は、譲渡承認をするか否かが問題となる。

(12)登記

・登記すべき事項

株式を発行した場合は、発行済株式総数の変更(種類株式を発行した場合は発行済種類株式総数の変更)

株式を発行した場合は、資本金の額

新株予約権を発行した場合は、新株予約権に関する事項

※ 対価として新規に株式を発行せず、自己株式の交付のみを行うことも可能である。この場合は、登記事項に変更がないため、登記を要しない。

添付書面

・株式交付計画書

・株式の譲渡しの申込みを証する書面(又は総数譲渡契約書)

・株主総会議事録又は取締役会議事録(簡易な株式交付の場合)

・株主リスト

・債権者保護手続を行った場合は、これに関する書面

・資本金の計上に関する証明書

・委任状

・登録免許税

増加する資本金の額の1000 分の7(ただし3万円に満たない場合は3万円)

第9 取締役等の欠格事由の変更

  • 成年被後見人及び被保佐人であっても、取締役等の欠格事由に該当しないこととなった(会社法331条1項、2号、335条1項、402条4項等)。

2.成年被後見人が取締役等に就任する場合の手続

成年被後見人が取締役等へ就任する場合は、下記の全ての手続が必要となる(会社法331条の2第1項)。

・成年被後見人の同意

・後見監督人がいる場合は、その同意

・成年後見人が成年被後見人に代わってする就任承諾

※成年被後見人の同意が必要なので、全く意思能力を欠いた人は取締役等に就任することができない。同意に必要な意思能力の程度が問題となるが、明確ではない。

3.被保佐人が取締役等に就任する場合の手続き

被保佐人が取締役等へ就任する場合は、下記のいずれかの手続が必要となる。

・被保佐人による就任承諾に加えて、保佐人の同意(会社法331条の2第2項)

・保佐人が代理権を付与されている場合は、保佐人の就任承諾に加えて、被保佐人の同意(同3項)

4.成年被後見人又は被保佐人が取締役等の資格に基づいてした行為は、行為能力の制限によっては取消すことができない(会社法331条4項)。

・「行為能力の制限」によって取り消すことができないだけであって、意思能力がない場合の法律行為の無効(民法3条の2)まで主張できないわけではないと解される。

・代表取締役として第三者との間で法律行為をしたときも、行為能力の制限によって取り消すことはできないとする見解(参考文献1の261-262頁)がある。

・未成年者で取締役等への就任が可能な程度(おおむね15歳程度)だが、そうすると、就任が可能な成年被後見人はわずかとなってしまう。

5.成年被後見が取締役等である場合、成年後見人はその職務を代理して行うことはできない(参考文献1の260頁)。

6.現に取締役等であった者が後見開始の審判を受けた場合は、委任の終了事由(民法653条3項)に該当し、取締役等を退任する。一方で、保佐開始の審判を受けても、委任の終了事由に該当しないため退任しない。

第10 支店所在地における登記の廃止

支店所在地における支店登記については、廃止されることとなった(改正前会社法930条から932条を削除)。

令和4年9月1日施行

第11 新株予約権に関する登記事項の見直し

新株予約権の発行に際して、募集事項の決定の際に、新株予約権の対価として、一定の算定式を定めていた場合であっても、登記申請の時までに確定額が定まった場合は、確定額を登記することになった(会社法911 条3 項12 号へ)。

第3部 商業登記の展望

第1 脱ハンコ=デジタル化

・政府の方針と司法書士の役割

商業登記版登記原因証明情報制度の創設は?

FATF対応と商業登記、代理人確認情報制度の創設?

第2 登記事項の見直し等

役員の任期の規定を登記事項に

役員が利義務になっているのか、任期が継続しているのか分からない。

第3 商業登記の重要性の再確認

・商業登記は、中小企業における重要な法的インフラである。

中小企業においては、商業登記の申請によって株主総会等の手が履されている側面がある。

【参考資料】

1 竹林俊憲編著「一問一答令和元年改正会社法」(商事法務、2020)

2 田中亘・齊藤真紀他編著「Before/After 会社法改正」(弘文堂、2021)

3 神田秀樹・竹林俊憲他「令和元年改正会社法の考え方」(旬刊商事法務2230 号(2020 年5月5日・15 日合併号))

4 日本弁護士連合会編「実務解説改正会社法〔第2版〕」(弘文堂、2021)

5 大阪司法書士会会員研修会レジュメ「令和元年改正会社法」

6 大阪司法書士会会員研修会レジュメ「改正会社法に伴う商業登記」

7 土井万二編代「会社議事録・契約書・登記添付書面のデジタル作成実務Q&A」(日本加除出版、2021)

8 日本司法書士会連合会商業登記・企業法務対策部編「令和元年改正会社法及び令和3年商業登記規則の理論と実務・書式」(LABO、2022)

令和3年9月17日東京地方裁判所判決平成31年(ワ)第11035号損害賠償請求事件を踏まえた相談業務と委任契約書について

相談シート(民事信託支援業務)

氏名フリガナ                        

氏名                             

住所                               

電話番号 (     )                      

その他の連絡先(写真やファイルを添付送信可能なメールアドレスなど) 

                                     

                                   

目的(例)

□ ご自身の認知症や疾病への備え。

□ 障がいを持つ子どもや孫の生活保障のため。

□ 共有の不動産があり、管理・処分を1本化したい。

  • その他                        

ご自身が所有する財産

種類種類備考(金額等)
不動産  
預貯金  
保険  
   
   

ご自身が負担中の負債等

項目金額備考(借入先等)
借入金  
連帯保証  
   
   

ご自身の月別収支

収入項目金額支払い項目金額
    
    
    
    
    
    
合計 合計 

1、スケジュール

その1 現状把握

 確認検討
自身の財産・健康状態□ 健康状態
□ 資産の種類と現状
□ どのように活かす
□ 将来の具体的な課題
家族・親族関係□ これまでの関係資産を託せる人  
□個人  
□家族で法人設立  
□信託銀行・信託会社

その2 今後に向けて

 10年前10年後20年後
自身の生活
不動産・お金の行方

その3 他の方法と比較

方法メリット留意点
法定後見・家庭裁判所の監督・本人のための制度
・家族のための制度ではない
任意後見・予め代理する範囲を決めることができる。
・後見監督人の監督
・家庭裁判所の監督  
・本人のための制度
・家族のための制度ではない
ゆいごん・亡くなるまで、資産を動かす必要がない
・遺留分減殺の順序を定めることが可能
・金銭で遺留分を支払うことが可能
・手続に時間がかかる可能性がある。

2、設定手続

 手続の順番設定手続に関わる人専門家
家族信託の説明□ 他の方法や何もしないことと比べて、今後の方向性をつかむ                      □ 司法書士が業務として可能な範囲の説明
□ 他の方法の紹介
□ 他の方法への移行、併用
□ 遺留分の確認
□ 信託口口座開設の状況説明
□ 課題の有無
□ 課題別に他の専門家の紹介・連携 
情報の収集・子どもや孫の生活保障に充てる予定の資産の資料で、現状を把握
□ 金銭(      )   
不動産(     )   
□登記事項証明書   
□固定資産評価証明書

□ 保険
□ 必要書類・情報を確認
□ 道路や建築年数が古い建物、形状が複雑な土地など現地確認
□ 関係者と面談  
・必要な時は変更
□ 他の方法を利用
□ 他の方法を併用
見積書□ 項目についての説明□ 実費
□ 専門家報酬

↑ 相談毎に、

無償の場合、相談者と司法書士事務所との情報の共有。事務所で持つ情報については相談者の署名。

有償の場合、項目毎に請求書・領収書の発行。

民事信託・家族信託を利用するかの判断 □委任契約書(相談業務の終了)

設計案□ 生活の節目ごとに確認・想定される場面ごとに説明
□ 図面(委託者・受託者・受益者・信託財産に属する財産の変更に伴う信託口口座・登記・保険等の財産所有名義、財産管理上の手続き名義の変更)
□ 書式
契約書(案)□ 読み合わせ
□ 分からない箇所
□ 表現を変えたい箇所
□ 修正      
関係機関□ 金融機関
□ 公証センター・公証人役場
□ 保険会社など
□ 口座開設・借入れ予定等について事前確認
□ 事前確認の報告、説明
□ 同行
契約書(案)の最終確認□ 事前確認に基づく修正
・民事信託支援業務の委任契約終了
□ 契約書の読み合わせ
□ 関係者全員の同意
  □ 意思確認
公証人役場 公証センター
□ 公正証書
□ 契約書の保全
□ 高齢者の場合、判断能力の有無に関する一定の予防
□ 同行
関係機関へ 手続き →スタート□ 必要書類準備
□ 金融機関での通帳作成
□ 不動産について登記申請
□ 計算の開始
□ 登記手続き
□ 運営支援
      
      

委任契約書(例)[1]

 【依頼者氏名】、【受託司法書士氏名】は、以下の通り、委任契約を締結する。

第1条(受任の範囲)

 【依頼者氏名】は【受託司法書士氏名】に対し次の事務(以下「本件民事信託支援業務」という。)の処理を委任し、【受託司法書士氏名】はこれを受任した。

(1)民事信託[2]契約書(案)の作成

(2)民事信託契約書(案)に基づく公証人との公正証書作成の調整[3]及び支援[4]

(3)民事信託契約書(案)に基づく信託口口座[5]開設の調整[6]

(4)信託契約公正証書に基づく、不動産登記代理申請及び商業法人登記代理申請

(5)信託契約公正証書に基づく、信託財産に属する財産の受託者への名義変更手続きの支援[7]

(6)前各号の事務処理のため必要な戸籍謄抄本、住民記載事項証明書、固定資産評価証明書等官公署等の発行に係る証明書類の請求および受領

(7)上記に付随する一切の業務

  

第2条(司法書士報酬等)

  【依頼者氏名】は、【年月日】見積書の定めに合意した。

 2 本件委任事務の処理に関する費用は、【依頼者氏名】の負担とする。

第3条(情報の提供、説明および保持)

 1 【受託司法書士氏名】は、本件民事信託支援業務を遂行するにつき【依頼者氏名】対して、次の情報を提供する。

(1)民事信託契約書(案)に基づく公証人との公正証書作成の調整において、公証人から修正案などが示された場合の情報

(2)民事信託契約書(案)に基づく信託口口座開設の調整その他の信託内融資など信託の目的、受託者の権限に対する金融機関の対応について、金融機関からの返信に関する情報

(3)信託契約公正証書に基づく、信託財産に属する財産の受託者への名義変更手続きの支援について、【受託司法書士氏名】に対して連絡が来た場合の情報

(4)その他の本件民事信託支援業務を遂行するにつき必要な戸籍謄本、住民票写し、固定資産評価証明書等、官公署等の発行に係る証明書類を受領した場合の情報

2 【受託司法書士氏名】は、本件民事信託支援業務に関して知り得た秘密を、正当な理由なく第三者に漏らしてはならない。

第4条(契約の終了)

 1 依頼者氏名】、【受託司法書士氏名】は、いつでも本契約を終了させることができる。

 2 本契約は、次の事由により終了する。

   (1)【依頼者氏名】または【受託司法書士氏名】の死亡

   (2)【依頼者氏名】または【受託司法書士氏名】が補助、保佐、後見開始の審判を受けたとき

第5条(契約終了後の措置)

1 契約終了後は、【依頼者氏名】、【受託司法書士氏名】ともに権利義務を清算する。

2 費用の清算については、【年月日】見積書の項目について業務が完了している項目について【依頼者氏名】が【受託司法書士氏名】に対して支払う。

3 業務が完了していない項目については、次の場合、【依頼者氏名】が【受託司法書士氏名】対して支払う。

(1)【受託司法書士氏名】が立替払いしている費用

(2)【受託司法書士氏名】が書類作成、相談、関係機関同行などで時間を費消しているもの【年月日】見積書に定める時間・書類ごとの報酬

 4 契約終了が【受託司法書士氏名】の情報提供義務、説明義務違反に基づく場合、【依頼者氏名】は、前各号に基づく項目について費用を支払う義務を負わない。

第6条(契約に定めのない事項)

本契約に記載のない事項は、【依頼者氏名】と【受託司法書士氏名】が協議の上、これを決定する。

 【依頼者氏名】と【受託司法書士氏名】は、本委任契約の合意内容を十分に理解したことに相互に確認し、その成立を証するため本契約書2通を作成し、それぞれ保管する。

   年   月  日

依頼者

住   所 〒                               

氏   名                               

電話番号                                

    (その他の連絡先)                        

生年 月日          年     月   日 

司法書士

   所 在 〒                   

   氏 名 司法書士                   

参考

『家庭の法と裁判』 2021年12月号vol.35日本加除出版         


[1] 他に任意後見契約、遺言公正証書などを併用する場合でも、契約終了時点を明確にするため、委任契約書は別に作成する。

[2] 大垣尚司、新井誠『民事信託の理論と実務』平成28年日本加除出版P2「委託者以外の物が尾受託者となる信託行為(他社信託)のうち、信託(受託者)の引受けが営業としてなされる結果商行為となる信託行為(協議の商事信託または営業信託【商法502条1項13号】)以外のもの(民事他者信託)と委託者が受託者となる信託行為(自己信託)のうち、信託業法に基づく登録(信託業法50の2条)が不要なもの(民事自己信託)、ならびに、営業として信託の引受けにあたるが、信託業法に基づく免許・登録(信託業法3条、同法7条)が不要なもの(適用除外信託、信託業法2項1項括弧書、信託業法施行令1の2条)の3つの信託の思総称。

[3] メールによる文言などの調整を指す。

[4] 公証センター(公証人役場)への同席を指し、嘱託代理を含まない。

[5] 令和3年9月17日東京地方裁判所判決平成31年(ワ)第11035号損害賠償請求事件において示されている【1】受託者を預金者とし【2】外観上、当該受託者の名義と区別できる表示が付され、【3】当該金融機関において、内部システム上、当該受託者の個人名義の預貯金口座(固有財産に属する預貯金口座)に係るCIF(Customer Information File。顧客情報ファイル)コードとは別異のCIFコードが備えられる、内部手続上、当該預金口座とは異なる取扱いがされる旨の規定が設けられるなど、当該預金口座から分離独立した取扱いがされる預金口座、の要件を満たす口座。

[6] 信託口口座開設予定の金融機関が利用可能な手段(メール・FAX等)での事前調整、同行支援を指す。信託口口座開設手続の代理を含まない。

[7] 手続方法の説明、手続情報作成の支援、手続が必要な機関への同行を指す。手続代理を含まない。

戸籍附票システム標準仕様書(案)【第1.0版】

https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/kenkyu/jichitaishisutemu_hyojunka/02gyosei04_04000127_00014.html

 資料2

戸籍附票システム標準仕様書(案)

【第1.0版】

令和4年(2022年)XX月XX日

自治体システム等標準化検討会

(住民記録システム等標準化検討会)

凡例

実務上は、住民・職員への分かりやすさ等の観点から、法令用語でない用語が用いられることがあるが、本仕様書の機能要件の記載上は、原則として法令用語を用いている。

なお、機能要件の構成は、必ずしも本仕様書のとおりとしなければならないことを意味するものではなく、本仕様書に従う限り、実務上の使い勝手を考慮してメニューを再構成することも可能である。

住民基本台帳法(昭和42年法律第81号)····························法

住民基本台帳法施行令(昭和42年政令第292号)··················令

住民基本台帳法施行規則(平成11年自治省令第35号)············規則

戸籍法(昭和22年法律第224号)·····························戸籍法

情報通信技術の活用による行政手続等に係る関係者の利便性の向上並びに行政運営の簡素化及び効率化を図るための行政手続等における情報通信の技術の利用に関する法律等の一部を改正する法律(令和元年法律第16号)······················································デジタル手続法

地方公共団体情報システムの標準化に関する法律(令和3年法律第40号)···········標準化法

住民基本台帳事務処理要領(昭和42年10月4日自治振第150号等自治省行政局長等から各都道府県知事あて通知)······················事務処理要領

住民基本台帳ネットワークシステム····················住基ネット

コミュニケーションサーバー··································CS

住民基本台帳ネットワークシステムシステム構築手引書戸籍附票システム改造仕様書(第0.5版)(令和3 年5 月)·········戸籍附票システム改造仕様書

目次

第1章本仕様書について……………………..8

背景…………………..9

2.目的………………………11

3.対象……………….15

4.本仕様書の内容……………..17

第2章標準化の対象範囲………………..21

標準化の対象範囲………………………22

第3章機能要件…………………..23

1管理項目…………………………..24

1.1戸籍の附票データ…………………25

1.2異動履歴データ………………………..39

1.3その他の管理項目…………………42

2検索・照会・操作………………..45

2.1検索……………………….46

2.2照会…………………………….49

2.3操作………………………..51

3抑止設定…………………………….52

4異動……………………………………56

4.1職権……………………………..60

4.2異動の取消し…………………..63

5証明…………………………64

6統計69

7連携………………………………………71

7.1CS連携………………………..72

7.2 庁内他業務連携……………………….74

8実装してもしなくても良い機能 ……………………….76

8.1 本人通知…………………………………..77

9 バッチ…………………………79

10 共通………………………82

11 エラー・アラート項目……………….91

第4章様式・帳票要件………………104

20.1 戸籍の附票の写し等……………………..113

20.2 その他………………………….136

20.3 住民基本台帳関係年報の調査様式………………….142

第5章データ要件……………….143

第6章非機能要件……………………..145

第7章用語…………………….147

別紙1業務フロー

別紙2ツリー図4 / 161

目次(詳細)

凡例…………………………1

第1章本仕様書について…………………………8

1.背景…………………………..9

2.目的…………………………11

(1)目指す姿…………………………..11

(2)本仕様書の目的…………………………12

3.対象………………………….15

(1)対象自治体…………………………15

(2)対象分野……………………………..15

(3)対象項目…………………15

デジタル社会を見据えた対応………………….16

4.本仕様書の内容……………………..17

(1)本仕様書の構成……………………….17

(2)標準準拠の基準………………………17

(3)想定する利用方法…………………..18

(4)本仕様書の改定……………………..18

各自治体の調達仕様書の範囲との関係…………..19

第2章標準化の対象範囲……………………..21

標準化の対象範囲………………………22

第3章機能要件………………………….23

1管理項目……………………………24

1.1戸籍の附票データ……………………25

1.1.1戸籍の附票データの管理………………………………..25

1.1.2改製………………………………………………..27

1.1.3戸籍の附票の除票の管理………………………………..28

1.1.4改製不適合戸籍の附票の管理…………………………….29

1.1.5空欄………………………………………………..30

1.1.6年月日の管理…………………………………………31

1.1.7年月日の表示…………………………………………32

1.1.8在外選挙人名簿及び在外投票人名簿登録市区町村名…………..32

1.1.9本籍・筆頭者…………………………………………33

1.1.10戸籍附票宛名番号、附票番号……………………………33

1.1.11備考……………………………………………….34

1.1.12メモ……………………………………………….35

1.1.13支援対象者管理………………………………………35

1.1.14郵便番号……………………………………………38

1.1.15フリガナ……………………………………………38

1.2異動履歴データ…………………….39

1.2.1異動履歴の管理……………………………………….39

1.2.2異動事由…………………………………………….39

1.3その他の管理項目…………………….42

1.3.1入力場所・入力端末……………………………………42

1.3.2住所辞書管理…………………………………………42

1.3.3和暦・西暦管理……………………………………….43

1.3.4公印管理…………………………………………….43

1.3.5交付履歴の管理……………………………………….43

1.3.6認証者………………………………………………44

2検索・照会・操作…………………….45

2.1検索…………………………………46

2.1.1検索機能…………………………………………….46

2.1.2検索文字入力…………………………………………46

2.1.3基本検索…………………………………………….47

2.2照会……………………….49

2.2.1異動履歴照会…………………………………………49

2.2.2交付履歴照会…………………………………………49

2.2.3文字コード照会等……………………………………..49

2.2.4支援対象者照会……………………………………….50

2.3操作………………………………51

2.3.1キーボードのみの画面操作………………………………51

3抑止設定……………………………..52

3.1異動・発行・照会抑止……………………………………53

3.2支援措置………………………………………………53

異動………………………..56

4.0.1異動者………………………………………………57

4.0.2異動日・処理日……………………………………….57

4.0.3審査・決裁…………………………………………..58

4.0.4入力確認・修正……………………………………….59

4.0.5一括入力…………………………………………….59

4.1職権………………………..60

4.1.1戸籍届出等に基づく戸籍の附票の職権記載等………………..60

4.1.2在外選挙人名簿及び在外投票人名簿登録市区町村の異動……….60

4.1.3CSから受信した戸籍の附票記載事項通知及び本籍転属通知の取込..61

4.1.4 誤記修正 …………………………………………….62

4.2異動の取消し………………………..63

4.2.1異動の取消し……………………….63

5証明…………………………………………….64

5.1証明書記載事項…………………………………………65

5.2同一の戸籍の附票の者の並び順…………………………….66

5.3方書の記載…………………………………………….66

5.4発行番号………………………………………………67

5.5公印・職名の印字……………………………………….67

5.6公用表示………………………………………………68

5.7文字溢れ対応………………………………………….69

6.1統計………………………………………………….70

7連携…………………………71

7.1CS連携…………………………72

7.1.1CSへの自動送信……………………………………….72

7.1.2附票本人確認情報との整合性確認…………………………73

7.2 庁内他業務連携…………………………74

7.2.1住民記録システムとの連携……………………74

7.2.2個人番号カードによる証明書等の交付……………………..74

8実装してもしなくても良い機能 …………….76

8.1 本人通知……………………………………77

8.1.1登録管理…………………………………………….77

8.1.2画面表示…………………………………………….77

8.1.3通知書出力…………………………………………..77

9 バッチ………………………………….79

9.1バッチ処理………………………………..80

9.2抑止対象者…………………………………………….81

 共通…………………………………………82

10.1EUC機能ほか…………………………………………..83

10.2アクセスログ管理………………………………………85

10.3操作権限管理………………………………………….87

10.4操作権限設定………………………………………….88

10.5ヘルプ機能……………………………………….88

10.6中間標準レイアウト仕様での出力………………………….89

10.7印刷…………………………………………………89

10.8CSV形式のデータの取込(P)……………………………….90

11 エラー・アラート項目………………………..91

11.1エラー・アラート項目………………………….92

第4章様式・帳票要件…………………………104

20.0.1様式・帳票全般……………………………………..105

20.0.2各項目の記載……………………………………….106

20.0.3備考欄(異動履歴)の記載…………………………….107

20.0.4備考欄(異動履歴)の記載の修正……………………….110

20.0.5備考欄(編製年月日等)の記載…………………………111

20.0.6備考欄(その他)の記載………………………………111

20.1 戸籍の附票の写し等………………………..113

20.1.1戸籍の附票の写し…………………….113

20.1.2戸籍の附票の除票の写し……………………125

20.2 その他………………………….136

20.2.1支援措置期間終了通知………………………………..136

20.2.2在外選挙人名簿及び在外投票人名簿登録者の戸籍又は戸籍の附票の変更通知書137

20.3 住民基本台帳関係年報の調査様式………………142

20.3.1住民基本台帳関係年報の調査様式第4表及び第5表…………142

第5章データ要件…………………………………..143

30.1データ構造…………………………….144

30.2文字(P)……………………………….144

第6章非機能要件…………………………145

第7章用語……………………………………..147

別紙1業務フロー

別紙2ツリー図

第1章本仕様書について

1.背景

自治体の情報システムは、これまで各自治体が独自に構築・発展させてきた結果、その発注・維持管理や制度改正対応などについて各自治体が個別に対応しており、人的・財政的負担が生じている。特に人口規模が一定以上の自治体を中心に、同一ベンダのシステムを利用する自治体間でもシステムの内容が異なることが多く、クラウド上のサービスを利用する方式への移行の妨げとなっている。さらに、自治体ごとに様式・帳票が異なることが、それを作成・利用する住民・企業・自治体等の負担に繋がっている。

また、中長期的な人口構造の変化に対応した自治体行政に変革していくためにも、自治体の情報システムに係る重複投資をなくして標準化・共同化を推進し、自治体行政のデジタル化に向けた基盤を整備していく必要がある。

そうした問題意識から、自治体行政のデジタル化に向け、自治体の情報システムや様式・帳票の標準化等について、自治体、ベンダ及び国が協力して具体的な検討を行う場として、令和元年(2019年)8月から、総務省において、自治体システム等標準化検討会(座長:庄司昌彦武蔵大学社会学部教授)が開催され、更に詳細な議論を行う場として分科会(分科会長:後藤省二株式会社地域情報化研究所代表取締役社長)が開催されている。

令和2年9月11日に住民記録システム標準仕様書【第1.0版】が公表されて以降、デジタル・ガバメント閣僚会議の下で開催された「マイナンバー制度及び国と地方のデジタル基盤抜本改善ワーキンググループ」における議論も踏まえ、令和2年12月25日の「デジタル・ガバメント実行計画」では、地方公共団体の主要な17業務について、システムの標準仕様を作成すること、地方公共団体の情報システムの標準化・共通化を実効的に推進するための法律案を令和3年通常国会に提出すること、標準化の目標時期を令和7年度とすることなどが閣議決定された。このことを受けて、第204回通常国会では、標準化法が可決成立した。

また、令和3年12月24日に閣議決定された「デジタル社会の実現に向けた重点計画」では、基幹業務システムを利用する原則全ての地方公共団体が、目標時期である令和7年度(2025年度)までに、ガバメントクラウド上に構築された標準化基準に適合した基幹業務システムへ移行する統一・標準化を目指すこととされた。標準化対象事務は、標準化法の趣旨を踏まえ、情報システムによる処理の内容が地方公共団体において共通しているかという観点等から、累次の閣議決定において示されてきた17業務に、印鑑登録及び戸籍、戸籍の附票事務の3業務を加えることとされた。また、戸籍の附票は、住民票と戸籍の情報をつなぎ合わせ、もって住民票の記載の正確性を担保する機能を果たすとともに、在外選挙人名簿への登録等の選挙事務に伴う公証事項のほか、デジタル手続法による改正後の法では、住民票コードなどが戸籍の附票の記載事項に追加され、国外転出者の本人確認情報の公証を担うこととなり、市区町村間の情報連携手法がデジタル化されることから、このことを前提とした機能の整備を進める必要がある。こうしたことを踏まえ、戸籍附票システム標準仕様書(以下「本仕様書」という。)は、戸籍の附票を規定する法及び事務処理要領を基礎にしつつ、「住民記録システム標準仕様書(第2.0版)」を参考に、策定されたものである。

2.目的

(1)目指す姿

本仕様書が目指す姿は、「複数のベンダがガバメントクラウド上でシステムのアプリケーションサービスを提供し、各自治体は、原則としてカスタマイズせずに利用し、ほとんど発注・維持管理や制度改正対応の負担なく、業務を行える姿」

とする。

〔各主体にとってのシステム標準化のメリット〕

〇住民・企業等のサービス利用者

自治体に対して異なる手続で実施していた申請等が統一的に実施可能となり、手続の簡素化や合理化を実現する。

○自治体

限られた人材や専門的な知識・ノウハウを共有することで、自治体のシステム調達や法令改正対応等の業務及び調整に係るコストが減少し、本来自治体職員が行うべき業務に人材を充当できるようになる。また、財政面においては、カスタマイズの抑制、システムの共同化による割り勘効果を生むことで、導入・維持管理の費用や法令改正時の費用を削減する。

○ベンダ

個別のカスタマイズ要望が減ることにより、個別自治体との調整やカスタマイズのためのプログラミングの負担が減少し、人口減少下で稀少化するシステムエンジニアの人員をAI・RPA等の攻めの分野に投入し、創意工夫により競争することが可能となる。

さらに、各主体のメリットのみならず、国・国民全体として、事務の迅速化・正確性の向上や、データ利活用の促進等のメリットがある。

(2)本仕様書の目的

我が国の自治体が中長期的な人口構造の変化に直面する中にあっても、住民サービスを維持・向上させ続けるためには、クラウド化等を通じた自治体の職員負担の削減、ベンダの負担の削減やベンダ間での円滑なシステム更改等を通じた自治体の財政負担の削減を進める必要がある。また、デジタル社会において実現・普及する技術を取り入れることで、自治体は、デジタル社会に対応した住民サービスを提供することが求められる。

それを実現する手段として、システムの標準化を進めることとし、その基礎となる標準仕様書の作成を通じて、以下の3つの目的を実現する。

(目的1)カスタマイズを原則不要にする

今あるカスタマイズの中で、普遍的に有用性が認められるものは標準的に実装すべき機能として標準仕様書に盛り込み、そうでないものは実装しない機能とすることで、「人口規模が大きな団体でも、標準準拠パッケージであればカスタマイズなしで支障なく業務が行える」ようにして、カスタマイズを原則不要にする。

(目的2)ベンダ間での円滑なシステム更改を可能にする

ベンダ間共通の標準装備すべき機能やデータの標準等を定めることで、ベンダ移行時の円滑なシステム更改を可能にする。

(目的3)自治体行政のデジタル化に向けた基盤整備を行う

デジタル社会に必要な機能のうち現段階で普遍的に有用性が認められるものを搭載することで、自治体行政のデジタル化に向けた基盤整備を行う。

具体的には、目的1(カスタマイズを原則不要にする)に関して、現時点で実装されているカスタマイズのうち、標準的に実装すべき機能と実装しない機能の仕分けを行うことにより、

・カスタマイズについての自治体内、自治体間、自治体・ベンダ間の調整コストの削減、導入・維持管理や制度改正時の負担(重複投資)の削減

・自治体間の調整コストの削減による、自治体間のシステム共同化の円滑化

・カスタマイズについてのシステムエンジニアのプログラミングの負担の削減

を、目的2(ベンダ間での円滑なシステム更改を可能にする)に関して、異なるベンダ間において、データの標準や、標準装備すべき機能を定めることにより、

・ベンダが異なる自治体間も含めたクラウド化

・ベンダロックインの防止による健全な競争の促進

を、目的3(自治体行政のデジタル化に向けた基盤整備を行う)に関して、デジタル社会に必要な機能を搭載することにより、

・住民の利便性向上

自治体のデータ入力の負担の削減

を目指している。

今あるカスタマイズのうち標準仕様書に盛り込む機能と盛り込まない機能を仕分け異なるベンダ間において、データ移行における移行ファイルの標準や、標準装備すべき機能を設定

カスタマイズについての自治体内、自治体間、自治体・ベンダ間の調整コストの削減

調達時、制度改正時の負担(重複投資)を削減

自治体間の調整コストを削減し、自治体間のシステム共同化が容易に

カスタマイズについてのSEのプログラミングの負担の削減

自治体・ベンダ間の調整コストの削減

ベンダロックインを防ぎ、健全な競争を促進

サーバの構築・維持管理負担の削減

調達時、制度改正時の負担(重複投資)を削減

自治体・ベンダ間の調整コストの削減

ベンダから見たシステムの原価を削減

時間外勤務等の削減

マイナンバーカードの活用やデータ利活用等の、デジタル社会に必要な機能を搭載

紙媒体の申請書をシステムに入力する作業が不要に

各自治体がデジタル社会に必要な機能について個別にベンダと協議することが不要に

住民サービスの向上のために人材を集中

住民サービスの向上のために財源を集中

住民の利便性向上

スケールメリットを生かしたハードウェアの導入・維持費用の削減

現在、ベンダが異なる自治体間でも共同クラウド化

目的2ベンダ間での円滑なシステム更改

ベンダの負担の削減

治体の財政負担の削減

人口減少社会・デジタル社会における住民サービスの維持・向上

目的1カスタマイズを原則不要に

自治体の職員負担の削減

標準仕様書の作

クラウド化

目的3自治体行政のデジタル化に向けた基盤整備

3.対象

(1)対象自治体

本仕様書の対象自治体は、全ての市区町村とする。

なお、本仕様書における「市区町村」の区とは、特別区のことであるが、法令で指定都市の区及び総合区が市と、区長及び総合区長が市長とみなされる場合は、法令と同様の扱いとする。ただし、本文中の各項目に記載のとおり、以下の区分に応じて異なる要件としているものもある。

・指定都市

・一般市区町村

また、指定都市においては、第3章機能要件の中で示す5(証明)については区を越えた処理を可能とする。

(2)対象分野

本仕様書が規定する対象分野は、地域情報プラットフォーム標準仕様における戸籍ユニットのうち戸籍附票に関連する箇所とする。

・自治体業務アプリケーションユニット標準仕様V3.5

なお、概ね住民基本台帳制度上の戸籍の附票事務と対応しているが、一部については本仕様書において規定していない。例えば、法第19条第1項に基づく通知のうち住基ネット回線を通じて実施する部分については、別途「戸籍附票システム改造仕様書」に基づく仕様があることから本仕様書の対象外とする。

(3)対象項目

本仕様書では、以下の項目について規定する。

・標準化の対象範囲(第2章)

・機能要件(第3章)

・様式・帳票要件(第4章)

・データ要件(第5章)(※)

・非機能要件(第6章)

以下の項目については原則として規定しない。ただし、カスタマイズの発生源になっている場合等についてはこの限りでない。

・画面要件

・ヘルプやガイドの具体的内容等、業務遂行に必須ではなく専ら操作性に関する機能

このうち、機能要件、様式・帳票要件及び連携要件(※)は、カスタマイズの発生源になっている部分であるため、「2(2)本仕様書の目的」に示した目的1(カスタマイズを原則不要にする)から本仕様書の対象とすることとした。また、機能要件、データ要件及び連携要件(※)は、ベンダ間での円滑なシステム更改を阻害している部分であるため、目的2(ベンダ間での円滑なシステム更改を可能にする)から本仕様書の対象とすることとした。さらに、目的3(自治体行政のデジタル化に向けた基盤整備を行う)から、デジタル社会に必要な機能については、これらの要件の中に反映した。

※データ要件及び連携要件については、「地方自治体の業務プロセス・情報システムの標準化の作業方針の見直しについて」(旧内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室(以下「IT総合戦略室」という。現デジタル庁)に基づき、デジタル庁を中心に検討が行われており、その検討を踏まえ、本仕様書における記載ぶりについても見直しを行うこととする。

なお、様式・帳票要件では、戸籍附票システムを標準化するという観点から、多くの自治体において戸籍附票システムから出力する様式・帳票(例:戸籍の附票の写し)について規定することとし、多くの自治体において戸籍附票システムから出力するとは限らない様式・帳票(例:戸籍の附票の写しの請求書)については規定しないこととした。

また、非機能要件では、自治体を通じて共通して規定すべきもの(例:セキュリティ)については規定し、共通して規定すべきでないもの(例:研修)については規定しないこととした。したがって、各自治体の情報システムの調達において、本仕様書に規定されていない非機能要件を設けることを妨げるものではない。

デジタル社会を見据えた対応

本仕様書は、これからのデジタル社会においてあるべき姿(電子化・ペーパーレス化)を視野に標準を設定するとしつつも、これからのデジタル社会においてあるべき姿にそのまま即したものには必ずしもなっていない。例えば、本仕様書において、紙の証明書について規定しているが、バックヤードでのデータ連携が進めば、今後、必要性が低下していくものと考えられる。また、データ構造や文字についても、直ちにあるべき姿に移行するとせずに、経過措置を設けている。

また、これからのデジタル社会を見据えれば、実務やシステムの前提となる制度自体を見直すべきという考え方もあり得る。しかし、そうした制度自体の検討については、一朝一夕にできるものではなく、あまりにも現在の実務から遊離した仕様書となれば、実効性が失われる。

そこで、本仕様書としては、電子化・ペーパーレス化も含め、これからのデジタル社会においてあるべき姿を視野に入れつつ、現行制度の下で、多くの自治体が支障なく対応できるものについて、できる限り盛り込むこととした。

他方、デジタル社会を見据え、様々な社会環境の変化に対応するためには、本仕様書の作成後、実務やシステムの前提となる制度を随時見直していくことが重要であり、制度の見直しとともに本仕様書を改定していくことが求められる。

4.本仕様書の内容

(1)本仕様書の構成

第1章では、本仕様書の背景、目的、対象及び内容について記載している。

第2章では、標準化の対象範囲を記載している。

第3章、第4章、第5章及び第6章では、それぞれ、戸籍附票システムが備えるべき機能要件、様式・帳票要件、データ要件及び非機能要件について記載している。「(2)標準準拠の基準」にあるように、これらの章は、パッケージシステムが本仕様書に準拠するための判断基準となるものであり、言わば本仕様書の本体部分である。

第7章では、本仕様書において用いている用語について、解釈の紛れがないよう、定義している。

また、別紙に業務フロー及びツリー図を記載している。業務フローは、第3章で規定する機能要件が業務上どのように位置づけられ、有効に機能するのかについて自治体及び事業者の共通理解を促すため、それらに対応したモデル的な業務フローを示している。ここで示した業務フローは、実際の各自治体における業務フローを拘束するものではないが、現在の業務フローでは、本仕様書における機能要件どおりの機能で業務を行うことが難しいと考える自治体は、現在の業務フローを本仕様書に示す業務フローに寄せる(BPR)ことで、本仕様書における機能要件どおりの機能で業務を行うことが期待される。ツリー図は、戸籍の附票に係る業務における機能要件の一覧性を高め、標準化の対象となる業務を明確化するため、業務フローに紐づいた形式で記載している。

(2)標準準拠の基準

本仕様書の対象は地域情報プラットフォーム標準仕様における戸籍ユニットのうちの戸籍附票に関連する箇所の定義を基本としており、この対象範囲において定義すべき機能について、【実装すべき機能】【実装しない機能】【実装してもしなくても良い機能】の3類型に分類した。可能な限り3類型のいずれに該当するか分類をした上で、定義すべき機能の範囲内で分類されていない機能は、カスタマイズ抑制、ベンダ間移行の円滑化の観点から、実装しない機能と同様のものとして位置付ける。

パッケージシステムが本仕様書に準拠するためには、第3章、第4章及び第5章に規定する【実装すべき機能】をいずれも実装し、【実装しない機能】及び分類されていない機能をいずれも実装しないことが必要である。ただし、分類されていない機能のうち、自治体やベンダの創意工夫により新たな機能をシステムに試行的に実装させて機能改善の提案を行う場合は、当該試行についてあらかじめ公表し、当該試行を本仕様書に盛り込む提案となることを条件にして実装することを可能とする。【実装してもしなくても良い機能】は、実装しても、実装しなくても、実装した上で自治体が利用を選択できることとしても、いずれも差し支えない。

また、本仕様書に準拠しているかどうかは、「3(1)対象自治体」で示した指定都市及び一般市区町村の類型ごとに判断される。特に明記しない限り、2類型全てに当てはまる要件として記載しており、必要に応じて、「指定都市においては、~~」、「(一般市区町村においては、実装してもしなくても良い。)」のように記載している。

なお、実装すべき機能のうち、法令上必ず使用しなければならない機能と必ずしも使用しなくてもよい機能があり、個別に判断する必要がある。

(3)想定する利用方法

標準化法第8条第1項では、「地方公共団体情報システムは、標準化基準に適合するものでなければならない。」とされており、本仕様書を基礎として、各所管大臣は、標準化法第6条に基づき標準化基準を策定することが想定される。したがって、本仕様書については、

・今後、整備予定の「ガバメントクラウド」上において、各ベンダが、本仕様書に準拠しているシステムを提供する

・各自治体は、本仕様書に準拠しているパッケージシステムをカスタマイズすることなく利用することを想定している。

自治体においては、人口減少による労働力の供給制約の中、システムについて十分な知見がなくても、負担なくシステムを調達し、利用できることが望ましい。自治体としては、標準化後にシステム更改を行う際は改めて本仕様書に示した個別の要件を一々提示してRFI (request for information)やRFP (request for proposal)、更にはFit & Gap分析を行って調達するのではなく、単に、本仕様書に準拠しているパッケージシステムであることを要件に付するだけで、調達を行うことができ、カスタマイズをすることなく利用できることを想定している。本仕様書は、本仕様書における機能さえあればカスタマイズなしで支障なく業務が行えるようになるよう、実装すべき機能と実装しない機能をその理由とともに整理したものである。そのため、自治体内での検討や自治体・ベンダ間の協議の際に、仮に本仕様書における機能と異なる機能が必要ではないかという議論があった場合、限られた人員、財源の中で、果たして当該自治体だけ特別に必要な機能なのか、本仕様書が想定する業務フローを参照し、効率的な業務運用への見直しが必要ではないか、という観点から、本仕様書における必要/不要の整理を知るための資料として参照することも想定している。

(4)本仕様書の改定

本仕様書については、制度改正時のほか、戸籍情報システムの標準仕様書(法務省所管)に変更が生じた場合、自治体やベンダからの創意工夫によるシステムの機能改善等の提案がある場合や新たな技術が開発されるなどデジタル化の進展等がみられる場合にも、関係者の関与の下で改定することを想定している。とりわけ、制度改正により本仕様書を改正する必要がある場合は、制度の施行時期を勘案して改定する。改定後の本仕様書に基づいて、ベンダがクラウド上で一括してシステムを改修することにより、制度改正等のたびごとに個々の自治体が個別にベンダと協議して改修を行う必要がなくなると想定される。

各自治体の調達仕様書の範囲との関係

本仕様書を用いることにより、戸籍の附票事務を運用することは可能であり、本仕様書の対象範囲については本仕様書に記載された内容で調達する必要がある。

しかしながら、各自治体においては、本仕様書の対象範囲外の機能や戸籍情報システムなどと併せて調達すること、また本仕様書に規定されていない非機能要件を設けること等も想定され、各自治体の調達仕様書の範囲と標準仕様書の範囲は必ずしも一致しないと考えられる。この場合であっても、各自治体の情報システムの調達において、本仕様書の範囲の業務について本仕様書に記載された内容で調達する限りにおいては、このような対応も許容される。

また、戸籍附票システムについては、戸籍情報システムに同梱されたパッケージを調達することが主流となっているため、戸籍情報システムとアプリケーションモジュールやデータベースなどを共有するシステム構成とすることも考えられるが、戸籍の附票事務の独立性が確保される限り、このようなシステム構成についても許容される。例えば、審査・決裁機能について同じアプリケーションモジュールを活用し、同時に処理を実施することは許容するが、戸籍情報システムの審査・決裁機能を以て戸籍附票システムの審査・決裁機能とすることは許容しない。また、データベースについても、戸籍情報システムで管理する情報を参照する場合は共通項目としても問題ないが、戸籍附票システムにて独自に管理・更新が必要な項目については個別に実装する必要がある。

【戸籍情報システムとシステム構成を共有することを許容する項目】

第4章機能要件

1.1.5空欄

1.1.6年月日管理

1.1.7年月日の表示

1.1.9本籍・筆頭者

1.1.15フリガナ

1.3.1入力場所・入力端末

1.3.2住所辞書管理

1.3.3和暦・西暦管理

1.3.4公印管理

1.3.5交付履歴の管理

1.3.6認証者

2.1.1検索機能

2.1.2検索文字入力

2.2.1異動履歴照会

2.2.2交付履歴照会

2.2.3文字コード照会等

2.3.1キーボードのみの画面操作

3.1異動・発行・照会抑止

4.0.3審査・決裁

5.5公印・職名の印字

5.6公用表示

5.7文字溢れ対応

10.2アクセスログ管理

10.3操作権限管理

10.4操作権限設定

10.5ヘルプ機能

10.7印刷

30.2文字

第6章非機能要件

第2章標準化の対象範囲

標準化の対象範囲

戸籍附票システムの標準化の対象となる範囲は、本仕様書において、実装すべき機能及び実装してもしなくても良い機能として規定している機能要件や、非機能要件、データ要件・連携要件等の共通要件とする。

本仕様書に準拠する戸籍附票システムにより処理する事務は、概ね住民基本台帳制度上の戸籍の附票事務と対応しているが、必ずしも1対1で対応しているわけではない。

本仕様書は、地域情報プラットフォーム標準仕様における戸籍ユニットのうちの戸籍附票に関連する箇所を基本として、今あるカスタマイズの中で、普遍的に有効性が認められるものは標準機能として標準仕様書に盛り込み、そうでないものは盛り込まないことで実装しない機能として整理し、策定した。

第3章機能要件

1 管理項目

1.1 戸籍の附票データ

1.1.1 戸籍の附票データの管理

【実装すべき機能】

戸籍の附票に記載されている者(消除となった者も含む)について、以下の項目を管理すること。

また、以下の項目の一部(戸籍の表示(本籍・筆頭者)、氏名、生年月日、性別等)については、戸籍情報システム等の戸籍附票システム以外のシステムでのデータベースの構築も可能とするが、その場合でも、30.1(データ構造)に規定する最新データの保持と、戸籍附票システムの端末画面上でデータベースを確認できる機能を有すること。

【戸籍の附票記載事項に当たる項目(法第17条各号及び第17条の2第1項関係)】

・戸籍の表示(本籍・筆頭者)

・氏名

・生年月日(和暦で管理すること。)

・性別

・住所(方書を含む。)

・住所を定めた年月日

・住民票コード

・国外転出者である旨(国名等)、転出予定年月日

・在外選挙人名簿登録市区町村名

・在外投票人名簿登録市区町村名

【戸籍の附票の除票固有の記載事項に当たる項目(法第21条の2関係)】

・消除事由(消除、改製)

・事由の生じた年月日

【戸籍の附票のその他の項目】

・戸籍附票宛名番号

・附票番号

・同一の戸籍の附票の者の並び順(5.2参照)

・異動履歴として管理する各項目(1.2.1参照)

・住所(方書を含む。)の履歴

・住所を定めた年月日の履歴

証明書の交付履歴(1.3.5参照)

・抑止フラグ

・備考(1.1.11参照)

・メモ(1.1.12参照)

・氏名のフリガナ(1.1.15参照)

・住所コード

・住所の郵便番号

・編製年月日

・改製記載年月日(改製記載の場合)

・再製記載年月日(再製記載の場合)

・個人番号未付番者についてCSとの連携のために設定される符号

・利用者証明用電子証明書シリアル番号

戸籍の附票の除票固有のその他の項目】

・改製消除年月日(改製消除の場合)

【実装しない機能】

消除となった者における項目の記載・消除・修正ができること。

【考え方・理由】

戸籍の表示(本籍・筆頭者)は、戸籍情報システムで管理されている内容と同一の内容を管理すること。

氏名は、該当する戸籍に記載されている氏名と同一の字形で記載ができること。

また、生年月日は該当する戸籍に記載されている生年月日と同じ内容とし、住民記録システムに準じ和暦で管理すること。ただし、データベースに保持する形式として西暦も許容するが、入出力において和暦に変換する機能を有すること。

性別について、戸籍情報システムに記録されている実父母(又は養父母)との続柄や夫又は妻の情報等から変換された性別とすること。

戸籍附票宛名番号は、戸籍附票システム内で採番された個人を特定できる一意な番号を指す。附票番号とは、戸籍の附票単位で振られた番号を指す。

同一の戸籍の附票の者の並び順は、該当する戸籍に記載されている者と一致すること。

個人番号未付番者については、戸籍の附票に住民票コードが記載されないところ(デジタル手続法附則第4条第3項)、CSとの連携のため、住民票コードに代わる符号を設定し、記載すること。

世帯主氏名は、分科会における議論の結果、使用実態及び今後のニーズが確認できなかったことから、不要と判断した。

消除となった者又は戸籍の附票の除票について本人からの申出等による誤記修正を行った場合又は戸籍の訂正があった場合は、記載事項を修正せず、誤記等である旨又は誤記等の修正後の記載について備考欄に記載されることとし、記載・消除・修正は実装しない機能とした。

なお、消除となった後に消除となった者と同一戸籍の氏変更があった場合等においても、消除となった者については消除となった際の情報を保持すること。ただし、消除となった者が当該戸籍の筆頭者である場合、身分事項としての氏の変更は許容しないが、戸籍届出等による修正により戸籍の表示としての筆頭者氏名欄の氏(戸籍の附票のインデックスとしての氏)の変更を認める。

再製については滅失された戸籍の附票に対して行われるものであることから、再製消除年月日については記録できる戸籍の附票の除票が存在しないため、管理項目としていない。

1.1.2 改製

【実装すべき機能】

戸籍の附票は、欄の大きさの上限(履歴を保持できる上限回数のこと。)を設けず、満欄による自動改製は行わないこと。

戸籍の附票は、任意のタイミングで手動改製ができること。

改製を行った年月日を管理できること。

また、戸籍法第11条の2に基づき戸籍が再製された場合においては、戸籍の附票を改製すること。

【考え方・理由】

法においては、市区町村長の判断により改製が可能であることから、任意改製の機能を設けることとする。

戸籍情報システムに同梱して構築された場合においても、戸籍の附票単独で改製が必要となることが想定されるため、戸籍附票システム単独で改製を実施できる機能を想定している。

戸籍附票システムにおいては、戸籍情報システムにおける訂正に係る事項の記載のない戸籍の附票の再製という概念が存在しないことから、戸籍法第11条の2に基づき、戸籍において虚偽の届出等、錯誤による届出等又は市町村長の過誤の訂正に係る事項の記載のない戸籍の再製の申出があり、戸籍の再製が行われた際には、改製することとする。戸籍の全部又は一部が滅失等した場合の戸籍法第11条に基づく戸籍の再製が行われた際には、戸籍附票システムにおいても再製で対応することを想定している。

また、「市町村長は、戸籍の附票を改製する場合には、当該戸籍の附票の消除前又は修正前の記載(法第16条第2項の規定により磁気ディスクをもって調製する戸籍の附票にあっては、記録)の移記を省略することができる」(令第21条第2項の規定により読み替えて準用する令第13条の2)とされていることから、改製する場合においても最新の履歴以外を移行することは許容されている。

1.1.3 戸籍の附票の除票の管理

【実装すべき機能】

戸籍の附票に記載された者全員を消除したとき、又は戸籍の附票を改製したときは、戸籍の附票の除票とすること。

消除又は改製を実施した日(消除の事由が生じた年月日又は改製消除年月日)より150年間保存を行うこと。

保存期間を経過した戸籍の附票の除票の廃棄を行えること。

法第21条の2に規定する戸籍の附票の除票の記載事項及び備考欄に誤記があることが判明した場合、備考欄に誤記である旨及び正しい記載を入力すること。

テキストデータ化が実施できていない戸籍の附票の除票に関してはイメージデータで管理できること。イメージデータの解像度は400dpiとするが、標準準拠システム移行前に当該解像度以外で読み取ったイメージデータについては、そのままの解像度で差し支えない取扱いとする。

読み取った戸籍の附票の除票はBMP形式又はBMP形式に可逆変換できること(例:TIFF)。

読み取った戸籍の附票の除票に対してイメージ処理が行えること(例:文字追加、線描画など)。

スキャナでの戸籍の附票の除票読み込み時に濃度が調整できること。

スキャナで読み込んだ戸籍の附票の除票を回転させ、体裁を整えることができること。

スキャナの読み取り位置を設定できること。

戸籍の附票の除票のイメージデータに変更が発生した場合、システム上で誤記修正・保存処理を実施できること。

デジタル手続法第10号施行日以前の戸籍の附票の除票については、イメージデータを検索するための項目として、氏名・生年月日・戸籍の表示(本籍・筆頭者)・住所・消除事由(職権消除、改製等)・事由の生じた年月日を登録できること。また、その項目を基に検索が実施できること。

【考え方・理由】

令34条に基づき、戸籍の附票の除票は150年保存が可能な形式とする。

デジタル手続法による改正後の法により、住民票の除票と同様、戸籍の附票の除票が公証基盤として法令上明確に位置づけられた。これにより、戸籍の附票の除票となった時点の情報を確実に記録しておくことが必要であることから、戸籍の附票の除票の記載事項は修正しないこととされた。よって、万が一、誤記が判明した場合は、戸籍の附票の除票の記載事項を直接修正せず、戸籍の附票の除票の備考欄に誤記である旨及び正しい記載等を入力することとする。

また、戸籍の附票の除票の記載事項でない事項に誤記があることが判明した場合も、備考欄に誤記である旨及び正しい記載等を入力できること。

戸籍情報システム電算化前の戸籍の附票の除票は紙での管理、イメージデータでのシステム管理の2つの管理形態が存在しており、様式については規定されていないため様々な様式が存在している。

また、ペーパーレス化の観点や、デジタル手続法第9号施行日以降、本籍・筆頭者等の省略に対応するための手処理運用の煩雑さを考慮すると、紙運用よりもシステムで運用できることが望ましいため、テキストデータ化ができない戸籍の附票の除票についてはイメージデータのシステム管理ができる機能を定義している。イメージデータ管理の機能は、システム移行時も考慮し、解像度やデータ形式なども定義している。また、データ形式の変換及びイメージデータの回転は、イメージデータに変更を加えないまま実施することを想定しており、改ざんに当たらない。濃度調整についても、元の戸籍の附票の除票の内容を損なうような調整にならないものを指している。

1.1.4 改製不適合戸籍の附票の管理

【実装すべき機能】

電子データ(テキスト)及びイメージデータとして管理すること。

イメージデータの解像度は400dpiとするが、標準準拠システム移行前に当該解像度以外で読み取ったイメージデータについては、そのままの解像度で差し支えない取扱いとする。

読み取った改製不適合戸籍の附票はBMP形式又はBMP形式に可逆変換できること(例:TIFF)。

読み取った改製不適合戸籍の附票に対してイメージ処理が行えること(例:文字追加、線描画など)。

スキャナでの改製不適合戸籍の附票の読み込み時に濃度が調整できること。

スキャナで読み込んだ改製不適合戸籍の附票を回転させ、体裁を整えることができること。

スキャナの読み取り位置を設定できること。

改製不適合戸籍の附票のイメージデータに変更が発生した場合、システム上で職権記載、職権消除及び職権修正・保存処理を実施できること。編集機能として、文字情報の追加・消除、編集内容の確認画面と承認機能を有すること。

電子データ(テキスト)としては、1.1.1(戸籍の附票データの管理)に規定する項目を管理すること。また、規定した項目を基に検索ができること。

【考え方・理由】

改製不適合戸籍の附票とは戸籍情報システムの電算化において、「誤字を使用することができず、本人が文字の変更を認めない場合や確認が取れない場合」等に戸籍がテキストデータ化されないことに伴い戸籍の附票においてもテキストデータにされずに紙やイメージデータのまま管理がされている戸籍の附票を指す。

現在も改製不適合戸籍の附票を管理している団体が存在しており、紙又はイメージデータによるシステム管理の2つの管理形態が存在する。

戸籍については、平成26年7月4日付け法務省民一第740号民事局第一課長回答にて、「電子情報処理組織の取り扱いに適合しない戸籍の画像情報処理方式による磁気ディスク化について、差支えないとされた事例」とあり、必ずしもシステムで管理を行うべきという回答ではないため、紙での管理も残っている状況であり、戸籍の附票も戸籍に準じ紙での管理が残っている。デジタル化3原則やデジタル手続法第10号施行日以降の運用を見据えると、原則標準準拠システム移行時には改製不適合戸籍の附票についても附票本人確認情報の通知等が必須となるためテキスト化すべきと考えるが、本人の同意を得られない、連絡が取れない等様々な理由によりテキスト化が困難で、現行の運用を継続せざるを得ない状況も考えられることに加え、戸籍情報システムにおいてイメージデータの管理を継続し、情報連携等に必要な情報のみテキストデータ化する方向であることを踏まえ、戸籍附票システムにおいても電子データ(テキスト)での管理とイメージデータの管理機能を併用する。

イメージデータ管理の機能は、システム移行時も考慮し、解像度やデータ形式なども定義している。また、データ形式の変換及びイメージデータの回転は、イメージデータに変更を加えないまま実施することを想定しており、改ざんに当たらない。濃度調整についても、元の改製不適合戸籍の附票の内容を損なうような調整にならないものを指している。

1.1.5 空欄

【実装すべき機能】

1.1.1(戸籍の附票データの管理)に規定する項目のうち、以下の項目は、空欄を許容しないこと。その他の項目は、空欄を許容すること。

【空欄を許容しない項目】

・ 戸籍の表示(本籍・筆頭者)

・ 生年月日(デジタル手続法第9号施行日以前に消除となった者を除く。)

【考え方・理由】

氏名については、出生届において氏名が未定であり、空欄となる場合があることから、空欄が許容される。

また、出生届は14日以内に届け出る必要があり、性別が空欄の戸籍ができることがある。戸籍の記載において性別が空欄となっている場合は、原則としては、戸籍の取扱いに準ずることとなるため、戸籍届出上許容されている場合は、確定し次第、職権で修正する。また、デジタル手続法第9号施行日前に消除となった者についても、消除となった時点で記載項目とされていないため、空欄が許容される。

住所については、住所不明者についてのみ空欄を許容するが、住基ネットの本人確認情報の検索等の手段を用いても住所を特定できない場合に住所不明者とすることが適切である。(例えば、最終住所地市区町村で調査の結果職権消除となった者で、どこの市区町村にも転入又は職権記載がされていなかった場合は住所不明者となる。)

住民票コードについては、住基ネット稼働後に一度も住民基本台帳に記録されたことがない者等は未付番者となるため、空欄が許容される。また、デジタル手続法第10号施行日前に消除となった者についても、消除となった時点で記載項目とされていないため、空欄が許容される。

生年月日については、出生届提出時に確定している項目であり、基本的には空欄が許容されない。ただし、性別同様、デジタル手続法第9号施行日前に消除となった者については、空欄となり得るため、その場合においては空欄が許容される。

1.1.6 年月日の管理

【実装すべき機能】

年月日は、暦上日で管理すること。ただし、1.1.1(戸籍の附票データの管理)に規定する項目のうち生年月日、住所を定めた年月日及び1.2.2(異動事由)に規定する項目のうち戸籍届出等による記載又は戸籍届出等による消除に係る異動日については、暦上日以外の年月日(例:うるう年でない年における2月29日)も許容するとともに、以下に規定する不詳日を許容すること。また、1.1.1(戸籍の附票データの管理)に規定する編製年月日、改製記載年月日、改製消除年月日又は再製記載年月日についても以下の不詳日を許容すること。戸籍附票システム内部の年月日の入力や管理については、1.1.1(戸籍の附票データの管理)の生年月日を除き、和暦・西暦どちらを用いても差し支えない。

【不詳日入力一覧】

・「令和○○年

・「令和○○年○月頃」

・「令和○○年〇月〇日頃」

・「推定令和○○年○月○日」

・「推定令和○○年○月」

・「令和○○年

・「令和○○年○月上旬」

・「令和○○年○月中旬頃」

・「年月日不詳」

・「令和○○年月日不詳」

・「令和○○年○○月日不詳」

・「令和○○年○○月○日から○○月○日頃までの間」

・「令和○○年○○月推定○日から○日までの間」

・「令和○○年○○月○日頃から○日頃までの間」

暦上日以外の年月日(例:うるう年でない年における2月29日)、明治45年7月30日及び大正15年12月25日の設定も許容する。

【実装しない機能】

みなし生年月日等を作成できること。

【考え方・理由】

住所を定めた年月日等住民記録システムから反映されるデータについての不詳日は、住民記録システムに準ずる。生年月日についても、戸籍において不詳日となっている者も存在することから、不詳日の設定を許容することとした。

また、編製年月日、改製記載年月日、改製消除年月日及び再製記載年月日について原則不詳日は認められないが、古くから記録されている戸籍の附票において不詳となっている場合が考えられるため、不詳日の設定を許容することとした。

1.1.7 年月日の表示

【実装すべき機能】

年月日は、戸籍の附票の写し等の証明書及び画面表示において、和暦で記載・表示すること。上記の記載・表示のため1.3.3(和暦・西暦管理)による適切な変換機能を有していること。

【考え方・理由】

市区町村によって和暦と西暦が異なると、システムが複雑になる上、QRコード化やOCR読込みに支障が出るため、全て和暦で表示することとする。

なお、これは証明書等で表示する際のルールであり、入力やデータの持ち方としては、和暦と西暦のどちらを用いても、記載・表示する際や他システム連携の際に適切に変換できれば差し支えない。

1.1.8 在外選挙人名簿及び在外投票人名簿登録市区町村名

【実装すべき機能】

在外選挙人名簿及び在外投票人名簿登録市区町村名を戸籍の附票へ記載できること。

必要に応じ、戸籍情報システムに対して、在外選挙人名簿及び在外投票人名簿登録者の戸籍又は戸籍の附票の変更通知書を作成する際に必要な情報(在外選挙人名簿及び在外投票人名簿登録者氏名、在外選挙人名簿及び在外投票人名簿登録市区町村名等)を連携できること。

【考え方・理由】

在外選挙人名簿登録市区町村名、在外投票人名簿登録市区町村名については、都道府県名についても省略せずに管理すること。ただし、市区町村名(指定都市にあっては、市名及び区名又は総合区名)までの管理でよい。

戸籍情報システムで在外選挙人名簿及び在外投票人名簿登録者の戸籍又は戸籍の附票の変更通知書を作成する場合に、在外選挙人名簿及び在外投票人名簿登録者氏名や当該帳票の送付先市区町村名を提示・連携できる機能を備えた。

1.1.9 本籍・筆頭者

【実装しない機能】

本籍・筆頭者欄は、「なし」又は「不明」と記載できること。

【考え方・理由】

法第16条で「市町村長は、その市町村の区域内に本籍を有する者につき、その戸籍を単位として、戸籍の附票を作成しなければならない。」としていることから、本籍・筆頭者は必ず存在するため、いずれの項目においても「なし」又は「不明」の取り扱いにはなり得ない。

1.1.10 戸籍附票宛名番号、附票番号

【実装すべき機能】

戸籍附票宛名番号、附票番号は、自動付番できること。

戸籍附票宛名番号と附票番号は、それぞれ戸籍情報システムで管理されている戸籍個人番号、戸籍番号と紐づけて管理することができること。

同一自治体内で番号が重複しないようにすること。

指定都市においては、行政区ごとに番号を管理し、区間転籍の際には新規付番できること。

【考え方・理由】

戸籍附票宛名番号は個人を特定できる一意な番号を指し、個人を単位で付番される番号を指す。附票番号は戸籍の附票を特定できる一意な番号であり、戸籍の附票単位で付番される番号を指す。

なお、本仕様書としては、戸籍附票システムにおいて自動付番する分野別番号とするものの、戸籍情報システムにおいては、戸籍を構成する個人単位で付番される戸籍個人番号、戸籍単位で付番される戸籍番号が存在していることから、それらの番号と同一番号で管理することを妨げるものではない。

指定都市においては、行政区ごとに戸籍を管理しており、区間転籍の際には新たに付番していることから、同機能を実装することとした。

1.1.11 備考

【実装すべき機能】

備考に異動履歴を入力できること。

異動履歴については、20.0.3(備考欄(異動履歴)の記載)により自動で作成され、備考欄に記載すること。

また、備考に個人を単位として、自由入力できる備考欄(その他)(20.0.6参照)を設けること。備考欄(その他)(20.0.6参照)の削除・修正について履歴管理されること。

備考に入力されたものについては、必要に応じ戸籍の附票の写し等の証明書に出力することができること。

消除となった者の記載事項及び備考欄に誤記があることが判明した場合、備考欄に誤記である旨及び正しい記載等を入力し、証明書に出力すること。ただし、特別の請求又は必要である旨の申出に基づき表示する項目に関する誤記である旨及び正しい記載等については、デフォルトでは省略とし、市区町村長の判断で当該項目を表示して交付する場合にのみ出力すること。

【考え方・理由】

戸籍の附票の写し等の証明書には本人等及び国又は地方公共団体の機関による特別の請求又は第三者及び特定事務受任者による必要である旨の申出があった場合に、異動履歴の記載等を行っている市区町村があること、また、消除となった者に誤記があることが判明した場合に誤記である旨及び正しい記載等を記載する必要があること(1.1.3戸籍の附票の除票参照)から、それらを記録する機能も必要であると想定されるため、当該機能を設けた。

消除となった者又は戸籍の附票の除票について本人からの申出等による誤記修正を行った場合又は戸籍の訂正があった場合は、記載事項を修正せず、誤記等である旨及び誤記等の修正後の記載について備考欄に記載されるものとする。

証明書における備考欄は、特別の請求又は必要である旨の申出を受けてプライバシー保護の観点等から市区町村長の判断により記載するかしないかを選択し、記載を選択した場合、当該項目を表示して交付する。ただし、消除となった者又は戸籍の附票の除票について本人からの申出等による誤記修正を行った場合又は戸籍の訂正があった場合、その誤記等である旨及び正しい記載等について表示されないことで、第三者による悪用等のリスクも想定されるため、当該内容については必ず備考欄に記載することとした(20.0.5及び20.0.6参照)。ただし、特別の請求又は必要である旨の申出に基づき表示する項目に関する誤記である旨及び正しい記載等については、デフォルトでは省略とし、市区町村長の判断で当該項目自体を表示して交付する場合にのみ記載すること。

また、戸籍届出等による修正により戸籍の表示としての筆頭者氏名欄の氏の変更を許容するが、構成員としての筆頭者の欄(「附票に記載されている者」の欄)は消除されて以降の変更を許容しないことから、当該戸籍の表示の筆頭者氏名欄と構成員欄の消除された筆頭者が同一人物であることを担保するため、特別の請求又は必要である旨の申出を受けて、市区町村長の判断により記載するかしないかを選択し、戸籍の表示が表示された場合に、備考欄に戸籍の表示における筆頭者氏名欄の氏変更の異動履歴を必ず記載することとする(20.0.3参照)。

編製年月日、改製記載年月日又は再製記載年月日については、戸籍の附票の連続性を確かめる必要性がある戸籍の附票の写し等の交付を求める者の便宜を図る観点より、必ず備考欄に記載することとする(20.0.5参照)。

1.1.12 メモ

【実装すべき機能】

個人を単位とし、記載事項を限定しないメモ入力が可能であること。

メモを入力した者の操作者ID及び日時が記録されること。

メモの削除・修正について履歴管理されること。

メモ入力されたものについては、戸籍の附票の写し等の証明書に出力されないこと。

【考え方・理由】

メモ機能については、証明書に出力しない事項について、限定せずに記載できる機能とした。

なお、個人情報保護の観点にも十分留意の上で記載することが重要である。

1.1.13 支援対象者管理

【実装すべき機能】

支援措置の実施に当たっては、支援対象者の戸籍の附票及び戸籍の附票の除票に支援対象者である旨の表示ができるとともに、戸籍附票システム内に以下に掲げる項目のデータベースを構築し、戸籍の附票及び戸籍の附票の除票の上記表示から画面遷移し、支援措置責任者の了承を得て又は支援措置責任者のみが端末画面上でデータベースを確認できること。

<データベース上の項目>

○支援対象者に関する項目

①現本籍地市区町村の場合

・氏名及びフリガナ

・戸籍附票宛名番号

・附票番号

・生年月日

・性別

・住所

・前住所等

・本籍

・前本籍等

・連絡先(電話番号、携帯電話番号、メールアドレス等)

・その他(任意の文言を登録できること。)

②前本籍地市区町村等の場合

・氏名及びフリガナ

・戸籍附票宛名番号

・附票番号

・生年月日

・性別

・住所

・前住所等

・連絡先(電話番号、携帯電話番号、メールアドレス等)

・その他(任意の文言を登録できること。)

○併せて支援措置を求める者に関する項目

・氏名及びフリガナ

・戸籍附票宛名番号

・附票番号

・生年月日

・性別

・住所

・前住所等

・本籍

・前本籍等

・支援対象者との関係

・その他(任意の文言を登録できること。)

○加害者に関する項目

・氏名及びフリガナ

・戸籍附票宛名番号(同一市区町村の場合に限る。)

・附票番号(同一市区町村の場合に限る。)

・生年月日

・性別

・住所

・その他(任意の文言を登録できること。)

○支援対象者より支援を求められている事務

・戸籍の附票の写し等の交付(本籍、前本籍等)

・住民基本台帳の閲覧(現住所)

・住民票の写し等の交付(現住所、前住所)

○転送情報

①当初受付市区町村が対応するもの

・転送先市区町村

・転送年月日

②当初受付市区町村から転送を受けた他の市区町村(以下「転送受付市区町村」という。)が対応するもの

・転送された支援措置申出書の受付年月日

・支援の必要性がないことを確認したときの申出者への連絡年月日

○支援措置の期間

・支援措置の開始年月日

・支援措置の終了年月日

○仮支援措置

・仮支援措置の有無

・仮支援措置の開始年月日

・当初受付市区町村(転送受付市区町村の場合に限る。)

なお、支援対象者の氏名及び戸籍附票宛名番号並びに併せて支援措置を求める者の氏名及び戸籍附票宛名番号、支援を求められている事務並びに支援措置の期間以外の項目については、戸籍附票システム以外のシステムでのデータベースの構築も可能とするが、その場合でも戸籍の附票の支援対象者である旨の表示から画面遷移し、端末画面上でデータベースを確認できる機能を有すること。

【考え方・理由】

総務省通知(平成16年5月31日総行市第218号)で「住民基本台帳事務における支援措置申出書」の様式例を示し(平成18年10月4日総行市第136号及び平成24年9月26日総行市第89号様式変更)、申出書に記載する事項を例示しており、上記の項目を抜粋した。

戸籍の附票及び戸籍の附票の除票においては、最新住所を含む住所の履歴に現住所が表示される可能性があり、データベース上で確認できる必要がある。

支援措置においては、申出がなされてから、支援措置の必要性を確認し、実際に支援措置を開始するまでの間も、被害者保護のために、仮支援措置が必要となる場合があり得、仮支援措置の有無についてもデータベース上確認できる必要がある。

10.3(操作権限管理)において、利用者ごとの表示・閲覧項目及び実施処理の制御ができることとしており、各市区町村の支援措置に係る事務の実情に合わせて、データベースの閲覧権限や閲覧項目、閲覧を実施する際の処理などについて、管理できるものである。

本籍地について、住所の変更がない場合であっても本籍地が複数回変更することがあり得ることから、現住所が記載されている戸籍の附票又は戸籍の附票の除票の写しを保存している全ての市区町村で支援措置を講ずる必要がある。

なお、支援対象者及び併せて支援措置を求める者の氏名及び戸籍附票宛名番号、戸籍附票システム上のデータベースのほか支援を求められている事務並びに支援措置の期間以外の項目については、住民記録システムに準じて、戸籍附票システム以外のシステムでのデータベース構築を可能とした。

1.1.14 郵便番号

【実装すべき機能】

住所の郵便番号を管理すること。

【考え方・理由】

郵送のニーズが一定以上あると想定されるため、便宜的に管理項目とする。実装方法として、住民記録システムと戸籍附票システム共通で持つことは問題ないと考える。

1.1.15 フリガナ

【実装すべき機能】

氏名については、フリガナを管理すること。

【考え方・理由】

住民記録システムに準じて管理を行う。

また、現在、法務省において、戸籍における「氏名の読み仮名」の法制化について検討が進められている。その検討を踏まえ、法における「氏名の読み仮名」の取扱い及び戸籍附票システムにおける取扱いを決めていくこととなるので、フリガナに係る本仕様書の記載については、関係法令が制定される際に修正を行う予定である。

1.2 異動履歴データ

1.2.1 異動履歴の管理

【実装すべき機能】

1.1.1(戸籍の附票データの管理)に規定する異動履歴は、以下の項目を管理すること。

・異動者(4.0.1参照)

・異動事由として管理する項目(1.2.2参照)

・異動日(4.0.2参照)

・処理日(4.0.2参照)

・入力場所(1.3.1参照)

・入力端末(1.3.1参照)

また、別途管理している操作者ID及び操作日時(10.2参照)については、異動履歴と紐づけることができること。

また、異動したデータ自体については、以下のとおり、時点ごとに全項目の履歴データを持つ方式により管理すること。

・戸籍の附票に記載する各項目を1列とし、全項目を1行で保持する。

・データキーは、戸籍附票宛名番号と履歴番号でユニークとする。履歴番号は1からの単純連番とする。

履歴は、データキーの履歴番号をカウントアップし、項目内容の変更有無に係わらず、全項目の内容を保持する。

履歴番号が最大のデータを1件セレクトすることで、その個人の直近データの全項目を取得する。

【考え方・理由】

異動履歴の管理項目は基本的に住民記録システムに準ずる。ただし、届出日や申出日等、戸籍附票システムにおいて必要のない項目については削除した。

1.2.2 異動事由

【実装すべき機能】

システムが管理する異動事由コード及び付随する区分により、以下の区分が行えること。また、以下の区分からシステムが管理する異動事由コード及び付随する区分にマッピングができること。

異動事由は、以下のとおり区分すること。

〇記載の事由

・戸籍届出等による記載

改製(戸籍法第11条の2に基づく戸籍の再製に伴う改製を指す)

改製(その他の戸籍の附票における改製を指す)・再製(戸籍の附票における再製を指す)

・異動の取消し(増)

〇消除の事由

・戸籍届出等による消除

・改製(戸籍法第11条の2に基づく戸籍の再製に伴う改製を指す)

・改製(その他の戸籍の附票における改製を指す)

・再製(戸籍の附票における再製を指す)

・異動の取消し(減)

〇修正の事由

・戸籍届出等による修正

転入等

・転出

・転居

・職権修正等(住民票における職権記載・消除・修正等を指す)

・誤記修正

・その他職権修正

・異動の取消し(修正)

【考え方・理由】

データ連携を前提として、改造仕様書に定義されている異動事由を基に項目を設けた。

前提として、本仕様書において異動事由”コード”というデータベースの物理的な異動事由コードのラインナップは定義されていない。本仕様書の「区分すること。」は、各社のパッケージの異動事由コード及び付随する区分が、本仕様書の論理的な区分にマッピングできることと考える。

また、修正の事由の「職権修正等」については、住基ネット回線を通じて連携される住民記録システムにおける住民票に対する「職権記載等」、「職権消除等」及び「職権修正等」がマッピングされる異動事由を指す。戸籍附票システムにおける職権修正は「その他職権修正」とし、在外選挙人名簿及び在外投票人名簿登録市区町村名の変更等に伴う職権修正は「その他職権修正」に含まれる。

戸籍において虚偽の届出等、錯誤による届出等又は市町村長の過誤によって記載が行われ、戸籍法第11条の2に基づき、その記載について訂正がされた場合には、戸籍附票システムにおいては戸籍届出等による記載、消除又は修正の異動事由で対応するものとする。また、戸籍法第11条の2に基づき、当該訂正に係る事項の記載のない戸籍の再製の申出があり、戸籍の再製が行われた際には、戸籍附票システムにおいては改製を行い、異動事由は「改製(戸籍法第11条の2に基づく戸籍の再製に伴う改製を指す)」で対応するものとする。

1.3 その他の管理項目

1.3.1 入力場所・入力端末

【実装すべき機能】

システムログや証明書発行管理に使用するため、戸籍附票システムを使用する場所として、本庁、支所、出張所、戸籍附票システム利用課等の入力場所及び入力端末等の登録管理ができること。

指定都市においては、行政区を管理できること。

【考え方・理由】

システムログや証明書発行管理に使用するための戸籍附票システムを使用する場所(本庁・支所・出張所・戸籍附票システム利用課等の入力場所)及び入力端末等を管理する機能が必要。

1.3.2 住所辞書管理

【実装すべき機能】

必要に応じ速やかに、最新の住所情報に更新すること。国名については、毎年、最新の情報に更新すること。ただし、住所等の(旧)町名等が入力できること。

住所情報は、職員でも容易に修正できること。

住所辞書については全国的に提供されるものを使用し、住所コードは全国地方公共団体コードを使用した11桁の値とすること。構成は、都道府県(2桁)+市区町村(3桁)+大字(3桁)+小字(3桁)とすること。

なお、都道府県コードはJIS X 0401に、市区町村コードについてはJIS X 0402に準拠すること。大字、小字は規定しない。

所カナ入力(例えば、東京都日野市神明の場合であれば、「トヒシ」のように、住所の頭の数文字を入力することをいう。)をすることで、郵便番号及び住所が自動で入力されること。また、郵便番号を入力することで、住所が自動で入力されること。

住所及び本籍について都道府県名→市区町村名→大字→小字の順に一覧表より順番に選択していくことで住所辞書からの引用ができること。

【考え方・理由】

住民記録システムに準ずる。

1.3.3 和暦・西暦管理

【実装すべき機能】

和暦と西暦の対応及び変換のためのマスタ情報が管理できること。

また、元号が改正された場合、パラメータ設定による元号変更対応が可能であること。

【考え方・理由】

住民記録システムに準ずる。

1.3.4 公印管理

【実装すべき機能】

市区町村長及び職務代理者の公印が管理できること。

【考え方・理由】

住民記録システムに準ずる。

また、指定都市の場合は他区長及びその職務代理者の公印を管理できることも含む。

1.3.5 交付履歴の管理

【実装すべき機能】

1.1.1(戸籍の附票データの管理)に規定する証明書の交付履歴(20.1.1.(戸籍の附票の写し)、20.1.2.(戸籍の附票の除票の写し))は、市区町村が定める期間、以下の項目を管理すること。

・交付年月日時

・交付場所

・交付対象者

・証明書の種別

交付区分(本人等請求、公用請求、第三者請求)

・記載事項

・枚数

発行番号

端末名、操作者ID

・処分情報(誤って発行した証明書を処分した場合にはその旨の記録。)

また、上記交付履歴の項目について、コンビニで交付された場合も同様に管理すること。

【実装しない機能】

市区町村が定める期間内に、交付履歴データを削除できること。

【考え方・理由】

住民記録システムに準ずる。

1.3.6 認証者

【実装すべき機能】

証明書等の認証者は、市区町村長と職務代理者の2件について、職名・氏名の管理ができること。

また、期間等事前に登録した条件によって、自動的に切り替わることができるよう職務代理者期間の管理ができること。

指定都市においては、他区長及びその職務代理者の職名・氏名を管理できることも含む。

【実装しない機能】

証明書等の認証者を「○○長公印」のように氏名空欄とできること。

【考え方・理由】

住民記録システムに準ずる。

2 検索・照会・操作

2.1 検索

2.1.1 検索機能

【実装すべき機能】

システム利用者(ID単位)ごとに、一度検索ダイアログ等で設定した値(検索履歴)については、自動的にその設定値が、一定の件数保存されること。

また、それら検索履歴を選択することにより、同じ条件による再検索及び検索履歴を活用した新たな検索にも対応できること。

【考え方・理由】

住民記録システムに準ずる。

2.1.2 検索文字入力

【実装すべき機能】

フリガナを登録している場合は、カタカナで入力及び検索できること。

以下のあいまい検索ができること。

・清音、濁音、半濁音による違いを無視できること。

例「ヂ」と「ジ」、「ズ」と「ヅ」、「ワ」と「ハ」、「ヴァ」と「バ」、「ヴィ」と「ビ」、「ヴ」と「ブ」、「オ」と「ヲ」、「ヒ」と「ピ」

・拗音、促音の小文字と大文字による違いを無視できること。

例「ッ」と「ツ」、「ャ」と「ヤ」、「ュ」と「ユ」、「ョ」と「ヨ」

・氏名(カナ)等で文字列一致検索(完全一致・部分一致)ができること。

・氏名(漢字)等で一部の文字を「*」で代替した検索ができること。

・名(氏名の名)のみの検索ができること。

・氏と名との間のスペースを無視した検索ができること。

・氏名フリガナ検索について、2文字目以降が「ウ」の場合で、その直前の文字が「オ段」の場合、「ウ」を「オ」に変換して検索できること。

長音の有無を無視できること。

入力ゆらぎ対応として、「ー(全角長音)」と「―(全角ダッシュ)」と「-(全角マイナス)」と「‐(全角ハイフン)」、「ー(半角長音)」と「-(半角ハイフン、マイナス)」、「全角スペース」と「半角スペース」を区別せず検索条件として指定でき両方が該当として処理されること。

・検索文字から、異体字や正字も包含した検索ができること。

例:検索文字の例

「辺」で検索時は「邊」、「边」、「邉」、「𨘢」等、

「浜」で検索時は「濱」、「頻」、「濵」、「滨」等、

藤」で検索時は「」、「籘」、「籐」等が検索対象文字となる。

・外字を登録する際に、異体字を合わせて登録した場合は、それも包含して検索できること。

なお、一般市区町村においては、あいまい検索の機能として異体字検索は、実装してもしなくても良い機能とする。

実装しない機能】

(株)や(有)等の記号を入力及び検索できること。

【考え方・理由】

住民記録システムに準ずる。

2.1.3 基本検索

【実装すべき機能】

氏名・氏名のフリガナ・生年月日(西暦・和暦)・性別・本籍・筆頭者・住所・住所コード・住民票コードから検索できること。また、消除となった者の備考欄に含まれる、誤記があることが判明した場合の記録のうち、正しい記載である氏名・氏名のフリガナ・生年月日について検索できること。

指定都市においては、区からも検索できることとし、操作者の所属により管轄区を自動判定し、検索画面上の区を既定値として検索できること。なお、他区の選択も可能とすること。

年月日を指定して複数条件検索、項目内部分検索ができること。

異動履歴の検索においては、氏名及び住所、住民票コードについては過去履歴を含めて検索し、対象者を特定できること。

上記項目に関し、データ未入力項目を含めて検索できること。

外字検索、検索文字選択のためのサポート機能が提供されていること。具体的には外字を選択するための手書き入力、手書き入力による文字選択等が想定されるが、具体的な実装方法は規定しない。

また、西暦と和暦はそれぞれ対応する年に置き換えられ検索がされること。

氏名及び住所の検索は、過去のものも横断的に検索できること。

「検索」は、対象者を選択するため、画面から検索用項目を画面入力して、マッチするものを探す操作をいう。「照会」は、既に特定した対象者の詳細な情報について、データベースに問い合わせる操作をいう。

【実装してもしなくても良い機能】

対象者を検索、選択後、該当者の1.1.1(戸籍の附票データの管理)のデータをCSV形式で出力する機能を有すること。

【実装しない機能】

異動者一覧を表示している状態で、検索条件を加えての再検索(絞込み)ができること。

【考え方・理由】

住民記録システムに準ずる。

2.2 照会

2.2.1 異動履歴照会

【実装すべき機能】

個人や同一の戸籍の附票の者を特定した後に、1.2.1(異動履歴の管理)に規定する異動履歴を照会できること。

1.2.1(異動履歴の管理)に規定する項目を用いて対象者の異動履歴を照会できること。

【実装しない機能】

複数の戸籍の附票にまたがる同一個人を単位として履歴が照会できること。

【考え方・理由】

新しい戸籍を作った者について、元の戸籍に基づく戸籍の附票を照会する等といった、複数の戸籍の附票にまたがる同一個人を単位とした履歴の照会までは不要と考え、実装しない機能とした。

2.2.2 交付履歴照会

【実装すべき機能】

個人を特定した後に、1.3.5(交付履歴の管理)に規定する証明書の交付履歴(20.1.1.(戸籍の附票の写し)、20.1.2.(戸籍の附票の除票の写し)について、照会できること。

なお、照会に当たっては、1.3.5(交付履歴の管理)に規定する項目から行えること。

また、コンビニで交付された場合も同様に照会できること。

【考え方・理由】

住民記録システムに準ずる。

2.2.3 文字コード照会等

【実装すべき機能】

漢字文字の入力・照会については、拡大して入力・照会ができるとともに、文字コードの照会ができること。

【考え方・理由】

住民記録システムに準ずる。

2.2.4 支援対象者照会

【実装すべき機能】

照会した支援対象者(併せて支援を求める者を含む。)の戸籍の附票データを確認する場合において、支援措置期間中又は仮支援措置期間中である旨が明示的に確認でき、1.1.13(支援対象者管理)の支援措置のデータベースに連携して、当該データベースの支援対象者の詳細情報が確認できること。

【考え方・理由】

住民記録システムに準ずる。

2.3 操作

2.3.1 キーボードのみの画面操作

【実装すべき機能】

端末のセキュリティを確保しながら、キーボードのみでも画面操作が可能であること。

【考え方・理由】

住民記録システムに準ずる。

3 抑止設定

3.1 異動・発行・照会抑止

【実装すべき機能】

支援対象者に対する抑止、排他制御(10.3参照)、その他の抑止を管理できること。

各抑止機能について、異動入力、証明書発行、照会などの処理ごとに、個人及び同一の戸籍の附票単位で、抑止(エラー、アラートは表示されるが、処理可又は処理可(抑止なし))の開始日及び終了日設定が可能であること。抑止が終了していない者について、抑止の一時解除ができること。また、抑止の一時解除については、庁内各システムで誤って本解除として扱われないように、コンビニ交付システムを含む庁内各システムへのデータ連携は不要とすること。

一時解除後、必要な処理が完了したら手動で一時解除を元に戻し、失念していた場合は一定時間経過後に自動で抑止状態に戻ること。

抑止状態に戻るまでの時間を設定できること。

抑止・解除、又は一時解除できる権限は個別に設定できること。

なお、抑止の終了日を経過しても、抑止は自動的に終了しないこと。

戸籍情報システムから情報を連携させている場合は、戸籍情報システムにおいて戸籍届出による記載や修正等の処理を実施している際、異動中であるといった情報が連携され、抑止が実施されること。

検索結果の表示の際、抑止対象であることが明らかとなること。

抑止事由(支援措置、外字作成中、戸籍異動中等)を選択できること。

抑止については複数設定することができ、設定ごとに、抑止する処理・抑止レベル(エラー・アラート)の設定ができること。

証明書発行の抑止設定及び解除情報については、コンビニ交付に対しても自動連携されること。

【考え方・理由】

支援措置(3.2参照)の他、戸籍情報システムにおいて異動処理を実施している(戸籍異動中)等の事由の際、戸籍附票システムにおいても対となる戸籍の附票への抑止機能が必要となることから、個別に書き込むのではなく、まとめて整理した。

抑止設定及び解除については、個人単位又は同一の戸籍の附票単位いずれにも対応できることとし、市区町村が選べるようにすることとした。

3.2 支援措置

【実装すべき機能】

支援対象者(併せて支援を求める者を含む。以下同じ。)が含まれる戸籍の附票の写し等の交付を実施しようとする際に、エラーとすることができること。また、支援措置責任者は、1.1.13(支援対象者管理)の支援措置のデータベースに連携して、当該データベースの支援対象者の詳細情報が確認できること。審査の結果、戸籍の附票の写し等の交付を行う場合には、エラーを解除できること。

戸籍附票システムとして支援措置に関する情報を得た場合には、戸籍附票システムから戸籍情報システムへ支援措置情報を連携できること。

また、戸籍の附票事務として支援措置の申出を受けた際、住所地と本籍地が同一市区町村である場合は、戸籍附票システムから住民記録システムへ連携できること。

支援措置の期間設定は、1年とし、支援措置の開始年月日を入力すると、支援措置の終了年月日が自動的に設定及び表示され、必要に応じて修正できること。

例)開始年月日が令和2年4月1日の場合、終了年月日が令和3年3月31日に自動的に設定される。

支援措置の延長については、支援措置の期間終了日の1か月前から、支援措置期間の延長処理を行えることとするともに、延長後の支援措置の期間は、延長前の支援措置の期間の終了日の翌日から起算して1年間設定できること。

なお、それに先立ち20.2.1.の支援措置期間終了通知を出力できること。また、支援措置の期間終了日の1か月前から、支援対象者の戸籍の附票を参照する際には、1か月以内に支援措置の期間が終了する旨のアラートを表示できること。

支援措置の期間が終了しても延長されないときは、支援対象者の戸籍の附票を表示する端末画面において、支援措置の期間が終了している旨のアラートを表示できること。

支援対象者から支援の終了を求める旨の申出を受けたとき、支援措置の期間を経過し、又は延長がされなかったときその他市区町村長が支援の必要性がなくなったと認めるときは、支援措置を終了できること。

申出がなされてから、支援措置の必要性を確認し、実際に支援措置を開始するまでの期間も、被害者保護のために、仮支援措置として支援対象者が含まれる戸籍の附票の写し等の交付を実施しようとする際に、エラーとすることができること。

また、仮支援措置については、自動的に解除されるものではないが、仮支援措置の状態のまま自治体の指定した日数を超過した対象者が存在する場合には、常時又は戸籍附票システム終了前にその旨を表示できること。

【実装してもしなくても良い機能】

支援の必要性について確認後、申出者に支援措置を開始する旨の通知を出力できること。

【考え方・理由】

支援対象者に係る戸籍の附票の写し等の交付は、慎重に行われる必要があるため、エラーを基本とし、必要な審査を実施した上で、エラーを解除できることとする。要領第5-10-キで、支援措置の期間終了の1か月前から、支援措置の延長の申出を受ける旨規定されており、延長漏れを防止するため、延長受付期間にアラートを表示する機能を設けることとする。

また、3.1(異動・発行・照会抑止)にあるように、抑止の終了日を経過しても、抑止は自動的に終了しないこととしている。

なお、10.3(操作権限管理)において、利用者ごとの表示・閲覧項目及び実施処理の制御ができることとしており、各市区町村の支援措置に係る事務の実情に合わせて、利用者ごとに端末画面上での住所非表示とすることも妨げられていない。

また、要領5-10-ウの、申出者へ支援の必要性の確認の結果の連絡については、市区町村における支援措置の方針や処理件数により取るべき手段が異なることから、実装してもしなくても良い機能とした。

戸籍情報システムとの支援措置情報の連携については、住民記録システムから支援対象者管理データが連携された場合も含め、戸籍の附票で抑止措置がかかっている者であることを戸籍情報システムに連携することで、戸籍事務における証明書の発行の際の注意喚起につなげるため、連携できることを機能に盛り込んだ。

また、実態として、支援措置の申出の多くが住民記録事務として受理されると想定されるが、住所地と本籍地が異なる市区町村である場合には、戸籍の附票事務として受理するケースが想定される。さらに、住所地と本籍地が同一の市区町村の場合であっても戸籍の附票事務として受理する可能性があり、その場合には戸籍附票システムから住民記録システムへ支援措置情報を連携する必要があることから、住民記録システムに連携する機能を設けた。なお、住民記録システムから戸籍附票システム等への「住民記録データ(支援対象者管理データを含む)」の連携については、住民記録システム標準仕様書に規定されている。

4 異動

4.0.1 異動者

【実装すべき機能】

戸籍の附票の異動処理においては、当該異動処理の対象者の戸籍の附票が既に存在する場合については、対象者を戸籍の附票データから選択できること。その際、基本検索により個人又は戸籍の附票単位で検索できるものとし、戸籍の附票を検索し対象者を選択する場合は、戸籍の附票の全部(当該戸籍の附票の全員を異動者とすることをいう。)又は一部(当該戸籍の附票の一部を異動者とすることをいう。)を選択できること(対象者の選択から全部又は一部を自動判断することを含む。)。一部を選択する場合には、一人又は複数人の対象者を選択できること。

戸籍の附票の異動処理において、当該異動処理の対象者の戸籍の附票が存在しない場合については、異動者の情報を入力できること。

指定都市においては、異動者を操作者の属する行政区に戸籍の附票を置く者に限定することができること。

【考え方・理由】

戸籍の附票の異動については個人が単位であることから、個人単位で異動者を選択できること。また、戸籍の附票の全部や一部についても選択できることも必要である。

新規に戸籍の附票を作成する場合など、対象者の戸籍の附票が存在しない場合については、戸籍情報システムにおける戸籍の情報を確認しながら異動者の情報入力等を実施することを想定している。

4.0.2 異動日・処理日

【実装すべき機能】

異動処理においては、異動日及び処理日を入力できること。

異動日は、初期表示としては空欄とすること。

異動日は、転出を除き処理当日以前の日のみを入力できること。

処理日は、処理当日が自動入力されること。

【実装しない機能】

処理当日以外を処理日として入力できること。

【考え方・理由】

異動日・処理日の考え方は住民記録システムと同様であるため、住民記録システムに準ずる。

4.0.3 審査・決裁

【実装すべき機能】

異動処理の仮登録及び本登録を行えること。

異動入力した内容は仮登録状態として、審査(決裁)により本登録とする。

仮登録状態の情報では、取消・修正等ができ、異動処理・証明発行・住基ネット回線を通じた連携については、抑止されること。

仮登録一覧は、画面に表示され、異動者が選択できること。また、常時又は戸籍附票システム終了前に仮登録状態の者が存在することを表示できること。

また、仮登録一覧は、全部、一部(選択異動者及び入力支所等を単位とした一部)ごとに表示・本登録できること。ただし、全部本登録については、件数に上限を掛けることができることとする。

【仮登録状態】

・ 異動情報がシステムに入力され、その内容がいったんシステム上に保存されているが、未審査又は審査中のため本登録状態に至っておらず、法上、戸籍の附票にまだ記載されていない状態

・ 異動処理が確定されておらず、異動履歴とならない状態

・ 戸籍の附票の写し発行時には、戸籍附票システムや他業務システム、又は、証明書のコンビニ交付において、仮登録中のデータに基づく証明書は発行できないようにする。

【本登録状態】

・ 異動情報がシステムに入力され、審査(決裁)を経てその内容がシステム上に保存されており、法上、戸籍の附票に記載されている状態

・ 異動処理が確定され、異動履歴となる状態

・ 確定情報となるため、証明書、住基ネット回線を通じた連携等に反映される。

【考え方・理由】

住民記録システムと同様、仮登録状態の情報については取消・修正が可能である。

ただし、仮登録状態の情報は取消・修正できることとしているが、戸籍情報システムにおいては取消事由(例:重婚や不適齢婚等)が含まれる届出を誤って受理した場合には当該届出の情報を取り消すことができないとされているため、戸籍情報システムとシステム構成を共有している場合において、戸籍情報システムにて取り消すことができない場合には戸籍附票システムにおいても同様の扱いとする。

住民票の写し等と比べ、記載事項が限られることや証明書の発行数が相対的に少ないことから、誤記のおそれが少ないため、審査(決裁)機能を設けなくともよいとの意見もいただいたが、責任者の審査(決裁)がないまま登録することは自治体による公証制度である以上想定されず、一定のプロセスや組織としての意思決定が必要であることから、審査(決裁)機能は実装すべき機能とする。

なお、審査(決裁)を実施する方法について本仕様書では規定しないが、仮登録の内容が妥当であるか責任者が確認するプロセスを経ること、また記録することで、「職員が単独で登録を完了する」ことが発生しない運用とすることが肝要である。審査(決裁)の実施者についても、不在時や繁忙期時等を想定し、システム上での処理は代決者が行うことも許容する。

4.0.4 入力確認・修正

【実装すべき機能】

更新前(仮登録状態)には、20.0.1(様式・帳票全般)に定める確認用帳票を画面確認又は印刷でき、入力内容を修正できること。

【考え方・理由】

住民記録システムと同様、審査・決裁機能を設けたことに伴い、当該機能を設ける。

また、「デジタル化に向けた基盤整備を行う」という本仕様書の目的(第1章2(2)参照)を踏まえ、入力内容の確認はペーパーレスで行うことを原則とする。ただし、繁忙期や非常時等、紙での照合が必要となる場面もあることを想定し、基本はペーパーレス対応を推奨するが、紙での出力機能も実装することとした。

4.0.5 一括入力

【実装すべき機能】

同一のシステム利用者が、同一の戸籍の附票に記録されている複数人に同一の内容を入力する場合、対象を選択後、一括で入力できること。

異動日と異動履歴は自動的に適用されること。

本機能は、一般市区町村においては、実装してもしなくても良い。

【考え方・理由】

同一の戸籍の附票に記録されている複数人に同一の内容を入力する場合、一括入力することができることにより、入力作業を省力化する。

なお、権限及び情報セキュリティ等の観点から、履歴は、システム利用者(ID単位)ごとに保持することとする。(2.1 (検索機能)参照)

4.1 職権

法第18条に規定する職権による戸籍の附票の記載等に関する機能について記載する。

4.1.1 戸籍届出等に基づく戸籍の附票の職権記載等

【実装すべき機能】

戸籍届出等に基づき、戸籍届出等による記載、消除又は修正として、職権記載、職権消除及び職権修正の処理が行えること。

なお、戸籍法第24条第2項、第113条、第114条又は第116条の規定によって戸籍の記載が訂正された場合も、同様に職権記載、職権消除及び職権修正の処理が行えること。

【考え方・理由】

戸籍の附票の記載、消除又は記載の修正は、職権で行うものとする(法第18条)。

戸籍の附票は戸籍を単位に作成されているため、戸籍の異動に伴い戸籍の附票についても職権で記載、消除及び修正を行うことが考えられるため。

戸籍の附票においては消除となった者(戸籍の附票の除票を含む。)に関しての修正は許容しないため、戸籍情報システムにおいて除籍者について訂正がなされた場合は備考のその他欄に戸籍において訂正がなされた旨を記載すること(記載方法については20.0.6を参照のこと。)。

また、戸籍の附票においては戸籍における訂正概念が存在しないため、戸籍法第24条第2項、第113条、第114条又は第116条の規定によって戸籍の記載が訂正された場合には、職権記載、職権消除及び職権修正の処理が行えるものとしている。

4.1.2 在外選挙人名簿及び在外投票人名簿登録市区町村の異動

【実装すべき機能】

市区町村の選挙管理委員会からの法第17条の2第2項の通知や本籍地市区町村からの通知に基づき、在外選挙人名簿登録情報及び在外投票人名簿登録情報について職権記載等できること。

また、戸籍の附票への国内住所地の追加等に伴い、在外選挙人名簿登録情報又は在外投票人名簿登録情報の変更があった場合には、その旨を在外選挙人名簿登録市区町村又は在外投票人名簿登録市区町村に通知するための在外選挙人名簿及び在外投票人名簿登録者の戸籍又は戸籍の附票の変更通知書(20.2.2参照)を出力できること。

国民投票日の翌日に、当該国民投票のために登録された在外投票人名簿情報を戸籍の附票から削除することができること。

【実装してもしなくても良い機能】

在外選挙人名簿及び在外投票人名簿に登録されている者の一覧について出力できること。

【考え方・理由】

在外選挙人名簿又は在外投票人名簿への登録、移転、抹消等が発生した場合には、登録情報についての記載等が必要である。また、公職選挙法第30条の13第1項及び日本国憲法の改正手続に関する法律第43条第1項に基づき、在外選挙人名簿登録市区町村又は在外投票人名簿登録市区町村に通知するための通知書を作成する機能も必要である。なお、戸籍附票システムから出力する通知書については、国内住所地の追加等の戸籍の附票に起因する異動が発生した場合を想定している。

法第17条の2第1項の規定に基づく通知を受けて、戸籍の附票には、在外投票人名簿に登録された旨を記載しなければならないこととされている。しかし、国民投票の終了後、戸籍の附票において在外投票人である旨等の記載を保持し続ける必要性は乏しいことから、投票日翌日に各市町村で職権消除することが適当であると判断した。なお、本取扱いについては、国民投票が実際に行われることとなった場合に、総務省から各市区町村長宛てにその趣旨を通知することとする。

在外選挙人名簿及び在外投票人名簿に登録されている者の一覧は、国内に住所を戻した際の通知の発行管理等に使用する市区町村も存在することから、実装してもしなくても良い機能とした。

4.1.3 CSから受信した戸籍の附票記載事項通知及び本籍転属通知の取込

【実装すべき機能】

CSから戸籍の附票記載事項通知(法第19条第1項)及び本籍転属通知(法第19条第3項)を受信した場合、職員の手を介することなく自動で通知を取り込むことができること。その際、通知の内容や自動で処理されない文字化け、オーバーフロー等の対応を職員が確認し、修正できること。

また、受信した通知に対する戸籍の附票記載事項通知取込エラー一覧表及び本籍転属通知取込エラー一覧表を作成・出力できること。

CSから受信した戸籍の附票記載事項通知及び本籍転属通知に外字が設定されていた場合、外字の字形や文字情報を出力できること。出力先は、戸籍の附票記載事項通知取込一覧表や本籍転属通知取込一覧表への出力、画面への出力など方法は指定しないが、職員の手を介することなくシステムで出力できること。

なお、受信し、反映されたデータの修正が必要な場合には、適宜修正を行えること。

【考え方・理由】

戸籍の附票記載事項通知に加え、デジタル手続法の施行に伴い戸籍照合通知(法第19条第2項)及び本籍転属通知についても電文としてCSから連携されるため、取込機能は必須。

職員の手を介することなく自動で取り込めるとは、CSから戸籍の附票記載事項通知又は本籍転属通知を受信した後、取込処理ボタン等を押すことにより、通知を1件ずつ処理するのではなく、取り込んだ通知の情報を一括して仮登録する機能を想定している。

4.1.4 誤記修正

【実装すべき機能】

誤記があった場合、職権修正として、修正ができること。

異動事由は、「誤記修正」とすること。

誤記があった異動の異動履歴は上書き修正せず、誤記修正の異動履歴とともに、異動履歴データとして保持すること。

【実装しない機能】

異動履歴を残さない上書き修正ができること。

【考え方・理由】

住民記録システムに準ずる。

4.2 異動の取消し

4.2.1 異動の取消し

【実装すべき機能】

4.1.3に規定する異動処理の取消しができること。そのため、取消しの対象となる異動処理を異動履歴データから選択できること。その際、4.0.1の例により、全部又は一部の区分により、対象者を選択できること。

異動の取消し機能は、最新履歴を削除する機能ではなく、履歴を上積みして、元の状態に復元できる機能とすること。復元した後、データ項目を追加する必要がある場合にあっては、その他職権修正により対応する。

具体的には、住民記録システムからCSを通じて連携される、戸籍に記載されている者の増減を伴わない記載事項の修正を実施する機能(異動の取消し(修正))を有すること。

取消処理については、それ自体を1つの異動処理として取り扱うこととし、「4異動」を適用するほか、取り消された異動処理及び取消処理を、ともに異動履歴データとして保持すること。

【考え方・理由】

住民記録システムからCSを通じて連携される異動の取消し(増・減・修正)については、戸籍附票システムにおいてはすべて異動の取消し(修正)に集約することができることから、異動の取消し(修正)の機能を設けることとした。

なお、4.1.1(戸籍届出等に基づく戸籍の附票の職権記載等)のとおり、戸籍法第24条第2項、第113条、第114条又は第116条の規定によって戸籍の記載が訂正された場合には、異動の取消しを行うのではなく、職権記載、職権消除及び職権修正の処理が行えるものとしている。

5 証明

5.1 証明書記載事項

【実装すべき機能】

証明書(戸籍の附票の写し及び戸籍の附票の除票の写し)を発行する際は、同一の戸籍の附票の全員分又は一部の者について選択できること。

また、本籍・筆頭者、住民票コード、在外選挙人名簿登録市区町村名、在外投票人名簿登録市区町村名等はデフォルトで省略とすること。

支援措置対象者に係る住所(必要な手続を経て抑止の一時解除をし、支援対象者を含む戸籍の附票の写し等を出力する場合)等の省略ができること。イメージデータにて管理している場合においても、本籍・筆頭者、在外選挙人名簿登録市区町村名、支援措置対象者に係る住所(必要な手続を経て抑止の一時解除をし、支援対象者を含む戸籍の附票の写し等を出力する場合)等を省略(マスキング)ができること。

特別の請求又は必要である旨の申出がある場合には記載の選択ができること。(特別の請求又は必要である旨の申出を受けて、市区町村長の判断により記載するかしないかを選択し、記載を選択した場合の記載方法については、20.0.3(備考欄(異動履歴)の記載)を参照すること。)

消除となった者の記載事項及び備考欄に誤記があることが判明した場合、備考欄に誤記である旨及び正しい記載等を入力し、証明書に出力すること。ただし、特別の請求又は必要である旨の申出に基づき市区町村長の判断で表示する項目に関する誤記である旨及び正しい記載等については、デフォルトでは省略とし、市区町村長の判断で当該項目自体を表示する場合にのみ出力すること。また、消除となった者が筆頭者であり、当該者が消除された後に戸籍届出等による修正により戸籍の表示としての筆頭者氏名欄の氏に変更が生じた場合、特別の請求又は必要である旨の申出に基づき市区町村長の判断で戸籍の表示(本籍・筆頭者)について表示する際には、備考欄に戸籍の表示における筆頭者氏名欄の氏変更の異動履歴を必ず記載すること(記載方法については、20.0.3(備考欄(異動履歴の記載)を参照すること。))。

証明書には、認証文(第4章に記載のもの)、電子公印及び発行番号を出力すること。

証明書の様式については、第4章に定める様式とすること。

証明書が複葉にわたる場合は、最終ページのみに認証文が印字されること。

また、生年月日は和暦で出力すること。住所を定めた年月日について、証明書出力時は和暦で出力すること。

なお、デジタル手続法第9号施行日前に消除となった者において、戸籍の附票の写し等に性別及び生年月日を記載しないこと。また、デジタル手続法第10号施行日前に消除となった者について、戸籍の附票の写し等に住民票コードを記載しないこと。

【考え方・理由】

認証文の位置については、「当該戸籍の附票の写しの末尾に原本と相違ない旨を記載しなければならない」(令第21条第2項の規定により読み替えて準用する令第15条)と明記されているため、最終ページのみに印字されることとしている。

5.2 同一の戸籍の附票の者の並び順

【実装すべき機能】

戸籍の附票の写しにおいて、同一の戸籍の附票の者の記載順序は、戸籍に記載されている順序と同一となること。

戸籍の記載順序については、戸籍法第14条にて定められたとおり。

第十四条氏名を記載するには、左の順序による。

第一夫婦が、夫の氏を称するときは夫、妻の氏を称するときは妻

第二配偶者

第三子

②子の間では、出生の前後による。

③戸籍を編製した後にその戸籍に入るべき原因が生じた者については、戸籍の末尾にこれを記載する。

【実装しない機能】

同一の戸籍の附票の者の記載順序を変更可能とすること。

【考え方・理由】

戸籍の附票の写しの記載順序については、従来より戸籍と同時に管理されていたことから、戸籍と同じ並び順となるため、戸籍の記載順序と同一となることとしている。

5.3 方書の記載

【実装すべき機能】

住所に方書が含まれる場合は、省略せず、証明書に記載すること。

【考え方・理由】

住民記録システムにおいて方書を含めて証明書に記載していることから、戸籍の附票の写しにおいても同様とする。

5.4 発行番号

【実装すべき機能】

枚葉(まいよう、全部のページの意味)に発行年月日、市区町村名、発行端末番号、発行された順に付された番号、ページ番号及び総ページ数を証明書に記載できること。

【実装しない機能】

発行場所を証明書に記載できること。

【考え方・理由】

数葉にわたる証明書の加除を防止するための必要な措置として、総務省質疑応答(平成18年1月24日総行市第12号)にて、戸籍の附票の枚葉に発行年月日、市町村名、発行端末番号、発行番号、ページ番号及び総ページ数を印刷することとして差し支えないとされた。

なお、発行場所を証明書に記載する機能については、市区町村名と発行端末番号により発行場所が分かるため不要とする。

5.5 公印・職名の印字

【実装すべき機能】

システムから出力される公印印字に対応する証明書等には、証明書ごとに、市区町村長又は職務代理者の職名・氏名、公印印字の有無及び公印の種類(市区町村長又は職務代理者の印)が選択できること。また、市区町村長又は職務代理者の職名を印字する場合は、指定都市・特別区の場合も含め、都道府県名を印字すること。

なお、公印は電子公印に対応し、種類(市区町村長又は職務代理者の印、証明書専用の印、カード券面用の印)が選択できること。また、「公印省略」「この印は黒色です」等の任意の固定文言が印字できること。

【考え方・理由】

各市区町村では文書管理規程等により、公文書には公印を押印することが定められており、戸籍の附票の写しは公文書に当たるため、公印が必要。磁気ディスクをもって調製された戸籍の附票の写しには電子印の使用が認められているので、戸籍の附票の写しに押印する電子印の管理機能が必要となる。

また、公印の種類は2種類以上管理できることとした方が良い(証明書専用印など有り)。

5.6 公用表示

【実装すべき機能】

証明書に「公用」の表示(印字)ができること。

【実装しない機能】

証明書に「規定により免除」と表示できること。

【考え方・理由】

証明書に「公用」と表示(印字)することは、本人等の請求や第三者からの申出による証明書等の交付と区別する上で必要といえるため実装すべき機能とした。

5.7 文字溢れ対応

【実装すべき機能】

システムから出力される証明書等の出力項目に文字溢れが発生した場合は、文字の大きさを調整するなどして、文字超過とならないようすること。

なお、文字数が多くやむをえず文字溢れが生じる場合や、未登録外字が含まれる場合は、アラートを表示して注意喚起するとともに、文字超過リストを出力して、文字溢れした情報を確認できるようにすること。ただし、証明書については、出力時に文字溢れしている旨のアラートを表示し、パラメータ設定によって、該当項目を限界まで出力させるか空白で出力するか選択できること。

【考え方・理由】

証明書のみ中間標準レイアウトに準拠した文字超過表記とする旨とした。

証明書に正しく印字されない文字溢れや未登録外字については、職員に注意喚起し、手動で修正や確認等、個別に対応する必要があるため。

6 統計

6.1 統計

【実装すべき機能】

毎年、総務省通知(平成26年12月25日付け総行住第136号)に基づき総務省が実施している「住民基本台帳関係年報」の調査項目である、戸籍の附票事務処理状況及び戸籍の附票の写し(戸籍の附票の除票の写しを含む)の通数の算出やその検証のための統計機能を有していること。

システム移行においては、標準準拠システム稼働月以降の集計ができること(標準準拠システム稼働月以前の集計は、従来のシステムで行うこと。)。

【考え方・理由】

住民記録システムに準じ、総務省の実施する「住民基本台帳関係年報」の調査に対応するための統計機能を実装すべき機能とした。

7 連携

7.1CS連携

7.1.1 CSへの自動送信

【実装すべき機能】

職権による記載等の異動時等に、「戸籍附票システム改造仕様書」の電文仕様に基づき、各電文がCSに自動送信されること(4.1.3(CSから受信した戸籍の附票記載事項通知及び本籍転属通知の取込等)参照)。

なお、送信方法(回線や媒体)や送信のタイミングは定めないが、異動の時系列は担保されること。

住基ネット共同利用に対応し、住基ネットCSサーバ(附票AP)で受信した電文を、構成自治体に振り分ける機能を有すること。

その他、以下について実行できること。

・CSに対する符号の生成要求の自動送受信ができること

・送信した附票本人確認情報、住民票コード照会情報、戸籍照合通知(法第19条第2項)情報、本籍転属通知(法第19条第3項)情報の照会及び一覧表への印字ができること(指定都市においては、一覧表は行政区単位で分割できること)

・送信した附票本人確認情報、住民票コード照会情報、戸籍照合通知情報、本籍転属通知情報の再送信、再送信の際は異動事由を変更して送信できること

・CSとの疎通状況を確認できること

・送信データを手入力でも補完でき、送信できること

・一時的に手動連携に切り替えることができること

住民基本台帳ネットワークシステム統一文字(以下「住基ネット統一文字」という。)との変換が管理できること

・CSへ連携できなかった場合のエラー表示ができること・その他、戸籍附票システム改造仕様書最新版に記載されている機能を実行できること

【考え方・理由】

CSへの連携方式として、自動連携方式と手動連携方式があるが、標準仕様書では自動連携方式を想定する。

指定都市においては、作業の効率化の観点から、一覧表について行政区単位で分割できることとする。

CSとの接続構成は、J-LISより示されている接続構成パターンに準じた形を想定する。

7.1.2 附票本人確認情報との整合性確認

【実装すべき機能】

CS側の附票本人確認情報との整合性を、定期的に確認できること。

【考え方・理由】

戸籍附票システム改造仕様書において「戸籍附票システムが送信した附票本人確認情報登録通知電文及び附票本人確認情報更新要求電文の送信件数と、附票APで左記電文を受信し附票本人確認情報を更新した処理件数を比較チェックする」こととされているため、機能を規定した。

7.2庁内他業務連携

7.2.1 住民記録システムとの連携

【実装しない機能】

本籍地と住所地が同一の市区町村の者管内住所人の異動時において、住所情報や住民票コードの情報を住民記録システムから直接受信できること。

【考え方・理由】

住民記録システムが戸籍附票システムと直接連携している市区町村と、CSを介して戸籍附票システムと連携している市区町村があるが、デジタル手続法第10号施行日以降は、戸籍附票システムはCSからデータを受信することができる機能(4.1.3、7.1.1参照)があれば十分なので、住所情報及び住民票コードが住民記録システムから直接戸籍附票システムに連携されることのできる機能は実装しないこととする。

なお、本籍地と住所地が同一の市区町村の者について、戸籍の附票の記載事項と住民票の記載事項の整合性を確認する方法としては、戸籍附票システムと住民記録システムそれぞれのEUC機能(戸籍附票システムのEUC機能は10.1(EUC機能ほか)参照)を用いて、本籍地と住所地が同一の市区町村の者の情報を抽出し、突合することを想定している。また、住民記録システムから本籍地が同一の市区町村の者の最新の情報を戸籍附票記載事項通知の形でCSを通じて送信し、それをCSから戸籍附票システムでデータを受信しデータベースと突合することにより行うことも想定される。

7.2.2 個人番号カードによる証明書等の交付

【実装すべき機能】

広域交付システムインタフェース仕様書に基づく端末における証明書交付に対応していること。当該端末における証明書交付履歴を管理できること。

公的個人認証サービスを用いた証明書等の電子申請に対応していること。

【考え方・理由】

コンビニ交付をはじめとする個人番号カードによる証明書等の交付に対応するため、戸籍附票システムから電子申請受付システムにデータ連携を行う機能又は戸籍附票システム側で広域交付システムインタフェース仕様書に基づいた電文、証明書PDFを出力する機能を有することとする。

また、コンビニ交付以外のオンラインによる証明書等の申請に対応するため、公的個人認証サービスを用いた電子申請に対応できる機能を有することとする。なお、当該機能を有するシステムを別途、構築している場合には、当該システムと必要な情報を連携できる機能を有することとする。

8 実装してもしなくても良い機能

8.1本人通知

8.1.1 登録管理

【実装してもしなくても良い機能】

「本人通知」の申出内容について、登録・管理できること。

また、登録期間が満了する者について、本人通知期間満了のお知らせが出力できること。

対象の証明書は、窓口で交付した「戸籍の附票の写し」及び「戸籍の附票の除票の写し」とし、証明書を発行する際に、交付記録として発行日・交付請求者区分(本人、代理人、第三者)・証明書種別・枚数の記録(登録)ができること。また、証明書発行後に修正(交付請求者の選択誤りを修正)ができること。

【考え方・理由】

住民記録システムに準ずる。

8.1.2 画面表示

【実装してもしなくても良い機能】

「本人通知」の事前登録者の戸籍の附票の写し等が交付される際、画面確認できること。

【考え方・理由】

住民記録システムに準ずる。

8.1.3 通知書出力

【実装してもしなくても良い機能】

証明書発行履歴を基に本人あて又は申請者あての戸籍の附票の写し等の交付通知書(発行日・請求者区分・証明書種別・枚数)が出力できること。

なお、出力条件として、「本人通知の事前登録者への交付」、「本人通知の事前登録者への交付(申請者が本人の交付記録は除く)」、「事前登録に関わらず申請者情報(第三者への交付や委任状による交付)による判定」が選択可能であること。

【考え方・理由】

住民記録システムに準ずる。

9 バッチ

9.1 バッチ処理

【実装すべき機能】

バッチ処理の実行(起動)方法として、直接起動だけでなく、年月日及び時分、毎日、毎週○曜日、毎月XX日、毎月末を指定した方法(スケジュール管理による起動)が提供されること。スケジュール管理にソフトウェア製品を利用する場合は名称、メーカー、バージョンなどについて、発注者からの要求があった場合、提示すること。

また、バッチ処理の実行時は、前回処理時に設定したパラメータが参照されること。

なお、前回設定のパラメータは、一部修正ができること。修正パラメータ個所については、修正した旨が判別し易くなっていること。

大量処理を行う場合でもオンライン処理に影響が出ないこと。

全てのバッチ処理の実行結果(処理内容や処理結果、処理時間、処理端末名称、正常又は異常の旨、異常終了した際はOSやミドルウェア等から出力されるエラーコード等)が出力されること。また、異常終了した場合の警告を戸籍附票システム内又は自治体が別途利用する他の通報システムに連携できること。

また、例えば6.1で記載した統計についてバッチの実行結果から一連の作業で最終的な提出物をXLSX形式等で作成する場合等には、自動実行する仕組みを用意すること。

【考え方・理由】

バッチ処理の実行方法には、直接起動方法のほか、ジョブスケジューラーから実行される「同期実行」、イベント駆動型である「非同期実行」がある。

戸籍附票システムにおいては、他システム間連携等のイベント発生による実行(非同期実行)は一般的に用いられないことから、全てのバッチ処理が「同期実行」できることが必要となる。

また、バッチ処理で異常が発生した場合はリカバリが必要となることから、リカバリを効率化するための実行結果の出力は必須である。

製品によっては、システムによりExcel形式で作成可能なものや、CSVだけ作成し、あとはオペレーションで行うものもあるため、機能要件を合わせるために記載。

なお、ベンダは、構築環境等によらず提供製品についての情報を顧客である市区町村に開示、説明する義務があり、市区町村側もミドルウェアの情報に限らず把握しておく必要がある。

修正パラメータ個所は判別しやすい必要があるが、アクセシビリティの観点から、色での識別等の方法は規定しない。

9.2 抑止対象者

【実装すべき機能】

抑止対象者一覧を作成できること。

【考え方・理由】

住民記録システムに準ずる。

10 共通

10.1 EUC機能ほか

【実装すべき機能】

EUC専用のデータソースが整備されていること。データソースは、戸籍の附票の異動履歴や除票データを含む戸籍附票システムで取り扱う全てのデータを対象とすること。

これらの機能等によって、データの抽出・分析・加工及びそれらの出力等について、以下のとおり提供されること。

【データソース】

「中間標準レイアウト仕様(戸籍)」の「データ項目一覧表」に記載のあるデータ項目のうち、戸籍附票システムで取り扱うものに限って、データソースとして参照できること。

各データ項目については、「データ項目一覧表」における「データ項目名称」として参照できること。

また、各データ項目の「データ型」、「桁数」、「外字使用(外字使用の有無)」、「コード」の仕様については、「データ項目一覧表」の記載内容(各データ項目の仕様)に従うこと。

「中間標準レイアウト仕様(戸籍)」の「データ項目一覧表」に記載のないデータ項目であっても、1(管理項目)において管理し、又は2(検索・照会・操作)において検索・照会・操作できることとしている項目(例:異動履歴、証明書の交付履歴)については、データソースとして参照できること。

これらのデータソースは、物理的なEUC専用のデータソース又は仮想的なデータソース等として提供すること。

【データ抽出・分析・加工】

データソースに対しては、検索条件が指定できるとともに、当該条件によるデータの抽出ができること。また、その検索条件を履歴として残すことができ、一部の条件を変更して再利用ができること。さらに、一般的な演算子(+,=,>,!=,&,++,–他、各種演算を表わす記号・シンボル)及び一般的に流通している表計算ソフトウェアやデータベースソフトウェアで用いられる一般的な関数を用いたデータの抽出・分析・加工等ができること。また、大量抽出等した場合であっても、オンライン処理に影響が出ないこと。

なお、一般的な演算子や関数を用いる方式については、演算子等を直接記述・指定するもののほか、特別の知識のない職員であってもデータの抽出・分析・加工等ができるよう(設定項目を提示して選択や入力を促し)、対話的に処理を進める操作方式(ウィザード)も提供すること。

抽出については、指定した条件に該当する者の情報(氏名、本籍等)、該当者数、該当する戸籍の附票数いずれも対応可能であること。

【データ出力】

抽出・分析・加工したデータに対して、XML形式やCSV形式として、データの出力ができること。

また、リスト形式及び宛名形式でのディスプレイや紙等への出力(ディスプレイ表示、プリンターでの印刷等)及びPDF形式でのファイル保存もできること。

これらのデータ並びにリスト形式及び宛名形式での出力については、大量処理の場合であっても、オンライン処理に影響が出ないこと。

そして、特別の知識のない職員であってもデータ並びにリスト形式及び宛名形式での出力に関わる操作ができるよう(設定項目を提示して選択や入力を促し)、対話的に処理を進める操作方式(ウィザード)も提供すること。

なお、データ項目を出力する際は、30.2(文字)に規定する要件に従うこと。

【考え方・理由】

戸籍附票システムをノンカスタマイズ前提に標準化するためには、全ての市区町村で求められる機能を実装することが理想である。一方で、自治事務である戸籍の附票事務においては(団体ごとの多様性があることから)、全国の市区町村が求める機能の全てを網羅することは、コスト等の観点から現実的ではない。

そこで、EUC機能によって、非定型業務(戸籍附票システム標準仕様で当該機能が提供されていない業務)、市区町村ごとの独自業務及び各都道府県で実施する独自の統計調査や整合性確認等に対して、ノンカスタマイズで対応できるようにすることは、以下標準仕様の目的(自治体システム等の標準化を推進する目的)にも資する。

(目的1)カスタマイズを原則不要にする。

⇒非定型業務及び独自業務等によるシステムのカスタマイズが抑制できる。

(目的2)ベンダ間での円滑なシステム更改を可能にする。

⇒システム移行に関わる元データの確認・検査等のコストが縮減できる。

(目的3)自治体行政のデジタル化に向けた基盤整備を行う。

⇒オープンデータ等に対応するコストが縮減できる。

なお、デジタル庁を中心に検討中の「データ要件・連携要件」の検討次第で本規定については見直しを行う。

戸籍附票システム自体に実装を求めるものはないが、操作方式については、操作説明書(オペレーションマニュアルの類)によって別途提供されることが必要である。その際、以下の帳票を作成することを操作例として含めるよう留意すること。

・支援対象者の一覧

・選択した個人の証明書発行履歴の一覧

○技術的基準

第8戸籍の附票システムの安全な管理等

3戸籍の附票システムの管理

(2)ファイルの不当な使用の防止等

ファイルの使用者の資格を明確に定めることとし、資格を持たない者による使用を制限すること等、ファイルの使用の管理及び不当な使用の検知について必要な措置を講ずること。

(3)データ等の取扱い及び管理に際してのエラー及び不正行為の防止

データ、プログラム及びドキュメントについては、特定の者が管理すること、定められた場所に保管すること、受渡し及び保管に関し必要な事項を記録すること、使用、複写、消去及び廃棄は責任者の承認を得て行うとともにその記録を作成すること等その取扱い及び管理の方法を明確にすること。

○技術的基準

第8戸籍の附票システムの安全な管理等

4端末機操作の管理

(2)端末機の操作者の確認

ア戸籍の附票システムの運用に際しては、パスワード、識別カード又はこれらと同等以上のものと認められる方法により資格の確認を行うこと。

イ(略)

(3)ファイルに対する利用制限

端末機の操作者ごとに利用可能なファイルを設定する等、ファイルの利用を制限する方法を定めること。

(4)(略)

(5)強制的に終了する機能

端末機には、複数回のアクセスの失敗に対して、強制的に終了する機能を設けること。

10.2 アクセスログ管理

【実装すべき機能】

<ログの取得>

個人情報や機密情報の漏えいを防ぐために、システムの利用者及び管理者に対して、以下のログを取得すること(IaaS事業者がログについての責任を負っている場合等、パッケージベンダ自体がログを提供できない場合は、IaaS事業者と協議する等により、何らかの形で本機能が市区町村に提供されるようにすること)。

・ 操作ログ

取得対象:①照会、②帳票発行、③異動入力(履歴追加)、④異動入力(履歴修正)、⑤異動入力(履歴削除)、⑥バッチ処理(帳票作成)、⑦バッチ処理(データ更新)、⑧画面ハードコピー、⑨データ抽出(EUC)

※③から⑤までについては、仮登録及び本登録両方の操作ログを取得できること。

記録対象:操作者ID、日時、ファイル名、端末名、オンラインの場合は対象となったレコード(処理対象者等)・機能名・画面名、バッチについては処理名、処理・交付場所

・ 認証ログ

ログイン及びログインのエラー回数等

・ イベントログ

戸籍附票システム内で起こった特定の現象・動作の記録。異常イベントやデータベースへのアクセス等のセキュリティに関わる情報

・ 通信ログ

WebサーバやWebアプリケーションサーバ、データベースサーバ等との通信エラー等

・ 印刷ログ

印刷者ID、印刷日時、対象ファイル名、印刷プリンタ(又は印刷端末名)、タイトル、枚数、公印出力の有無、出力形式(プレビュー、印刷、ファイル出力等)、証明書の場合には発行番号等の情報

・ 設定変更ログ

管理者による設定変更時の情報

・ エラーログ

戸籍附票システム上でエラーが発生した際の記録。管理者による設定変更時の情報

取得したログは、市区町村が定める期間保管するとともに、オンラインでの検索・抽出・照会が簡単にできること。

なお、システム利用者や第三者によるログの改ざんがされないよう、書き込み禁止等の改ざん防止措置がされること。

<ログの分析>

システムの利用者及び管理者のログについては、以下の分析例の観点等から分析・ファイル出力が作成できること(IaaS事業者がログについての責任を負っている場合等、パッケージベンダ自体がログを提供できない場合は、IaaS事業者と協議する等により、何らかの形で本機能が市区町村に提供されるようにすること)。

[分析例]

・深夜・休業日におけるアクセス一覧

・ログイン失敗一覧

・ID別ログイン数一覧

・大量検索実行一覧

・戸籍附票宛名番号等から該当者の検索実行一覧

【考え方・理由】

ログの保管期間は、各市区町村の開示請求の対応期間と同じであることが望ましい。ログの容量は大きくなるため、期間が長いほどディスク容量を占めることになる。

保管期間を指定する理由を明示することによって、クラウド環境下等において長期的にログを残したい自治体に対する追加課金等の理由も明確になる。

なお、印刷ログについては、プリンタ名では印刷場所の特定が困難な場合があるため、その場合は省略することも、印刷端末名をもって代えることも可とすることとした。

10.3 操作権限管理

【実装すべき機能】

発注者のシステム操作権限ポリシーに基づき、システムの利用者及び管理者に対して、個人単位でID及びパスワード、利用者名称、所属部署名称、操作権限(異動処理や表示・閲覧等の権限)、利用範囲及び期間が管理できること。

職員のシステム利用権限管理ができ、利用者とパスワードを登録し利用権限レベルが設定できること。

操作者IDとパスワードにより認証ができ、パスワードは利用者による変更、システム管理者による初期化ができること。認証に当たっては、シングル・サイン・オンが使用できること。

アクセス権限の付与は、組織単位、利用者単位で設定できること。

アクセス権限の設定はシステム管理者により設定できること。

アクセス権限の付与も含めたユーザ情報の登録・変更・削除はスケジューラ―に設定し、事前に準備ができること。

また、事務分掌による利用者ごとの表示・閲覧項目及び実施処理の制御ができること。

他の職員が戸籍附票情報の入力・異動作業をしている間は、同一個人の情報について、閲覧以外の作業ができないよう、排他制御ができること。

なお、操作権限管理については、操作権限一覧表での管理及びそれらに基づく利用者別の各種制御ができること。

例:1.1.13(支援対象者管理)、2.2.4(支援対象者照会)、9.1(バッチ処理)、

10.1(EUC機能他)、10.2(アクセスログ管理)10.3(操作権限管理)、10.4(操作権限設定)の操作権限は、それぞれ独立して制御ができること。

操作権限はバッチ処理で一括メンテナンスできること。

IDパスワードによる認証に加え、ICカードや静脈認証等の生体認証を用いた二要素認証に対応すること。

複数回のアクセスの失敗に対して、アクセス禁止状態にできること。

【実装しない機能】

職位・職権単位でアクセス権限を設定できること。

【考え方・理由】

個人情報や機微情報を取り扱う戸籍附票システムでは、システムの利用者及び管理者の個人単位での操作権限の管理が必要であるとともに、なりすまし利用を防止するため二要素認証を利用可能とする(グループ利用や非常勤職員等が同一IDを共用することは禁止)。

操作権限は、個々のシステムの利用者及び管理者を特定することが必要となるため、必ず、利用者個人を単位としたID及びパスワードを付与する。なお、全ての操作権限は、個々のIDに紐づくことになる。

アクセス権限を利用者単位で設定できれば、職位・職権単位でも設定できるため、独自の機能として職位・職権単位で設定できる機能は不要。

なお、人事異動の際のメンテナンスの負荷軽減を考慮し、操作権限はバッチ処理で一括メンテナンスできることとする(テキストデータを元にシステムで一括更新可能など)。

操作権限管理(認証等含む)は戸籍情報システムの一部として戸籍の附票が管理されている場合は、戸籍附票システム独自の機能として実装することが難しく、戸籍情報システムの機能を利用する想定としている。

10.4 操作権限設定

【実装すべき機能】

システムの利用者及び管理者に対する個人単位での操作権限においては、異動・証明を含む全ての画面にて、「戸籍の表示(本籍・筆頭者)」、「住民票コード」の項目を表示又は非表示に設定できること。(支援対象者の権限設定については10.3(操作権限設定)を参照)

【考え方・理由】

戸籍の附票の記載事項には住民票コード、戸籍に関する情報が含まれているが、これらの項目については、処理担当者によっては必ずしも必要な情報ではないため、照会画面において、これらを利用することができるシステムの利用者及び管理者といった権限者に応じて、個人単位で一定の操作権限設定を行えることとする。

10.5 ヘルプ機能

【実装すべき機能】

システムの操作方法や運用方法等について、マニュアルを有していること。

また、ヘルプ機能として、操作画面上から、当該画面の機能説明・操作方法等が確認できるオンラインマニュアル(画面上に表示されるマニュアル類)が提供されること。

【実装しない機能】

システムの操作方法や運用方法等について、冊子のマニュアルを有していること。

【考え方・理由】

市区町村によっては冊子のマニュアルが使用されているが、オンラインマニュアルで代替できるため、不要とする。

オンラインマニュアルは、システムの操作中に、キーワード検索などによって、知りたい情報に容易にアクセスできる。

オンラインマニュアルの一部として、Q&A(よくある質問&回答)集が提供されることが望ましい。

10.6 中間標準レイアウト仕様での出力

【実装すべき機能】

「中間標準レイアウト仕様(戸籍)」で定義された表形式(移行ファイル構成表、移行ファイル関連図、データ項目一覧表、コード構成表、コード一覧)、XML形式又はCSV形式(レイアウト仕様)に準拠したデータ抽出機能が提供されること。また、中間標準レイアウト仕様以外で保有するデータがある場合は、同様に提供されること。

なお、システム契約期間の終了時には、その時点での「中間標準レイアウト仕様(戸籍の最新バージョン)」で定義された表形式、XML形式又はCSV形式でデータ提供ができること。なお、中間標準レイアウトにおいて法改正等に対して未反映部分が存在する場合は、未反映部分を補い、データ提供ができること。

【考え方・理由】

住民記録システムに準ずる。

戸籍の附票は中間標準レイアウトの戸籍ユニットに含まれるものの、戸籍の附票単独でデータ移行することは考えづらいため、戸籍の移行と合わせて中間標準レイアウト仕様でデータを抽出することを想定している。なお、デジタル庁を中心に検討中の「データ要件・連携要件」の検討次第で本規定については見直しを行う。

10.7 印刷

【実装すべき機能】

証明書を発行する際にプリンタやトレー(ホッパ)の指定ができること。

出力部数を設定できること。

帳票発行時にプレビュー機能を保有すること。

帳票発行時にPDFか紙出力が指定でき、プリンタが指定できること。なお、デフォルトでPDFか紙出力かを設定できることとしても可能とする。

戸籍附票システム内部でアクセスログの取得が可能な形で、表示画面のハードコピー機能及びハードコピーの印刷機能を有すること。

氏名や住所等の印刷域桁数を超過したものについては、帳票発行時に超過内容を記載したリストを出力できること。

【実装しない機能】

アクセスログが取得できないOS独自の印刷ができること。

【考え方・理由】

住民記録システムに準ずる。

10.8 CSV形式のデータの取込(P)

【実装すべき機能】

証明書の発行処理を行う際、CSV形式で提供された以下のデータを取り込めること。その際、任意の方法でCSV形式になったデータを取り込むことができればよい。

・戸籍の附票の写し等の証明書の交付申請書に記載されたデータ

【考え方・理由】

今後、マイナポータルからのオンライン申請が戸籍の附票の写しにも拡充されていった場合等における、申請情報の取込機能を想定している。

11 エラー・アラート項目

11.1 エラー・アラート項目

【実装すべき機能】

論理的に成立し得ない入力その他の抑止すべき入力等(少なくとも「エラー項目一覧」に記載のもの)は、エラー(※)として抑止すること。エラーは、当該内容で本登録することを抑止することが目的であり、その実装方法として、エラーメッセージを表示し、次の画面に進めないようにすることも、エラーメッセージの表示によらず、そもそも入力不可とすることで対応することも差し支えない。また、仮登録段階でエラーメッセージを表示して抑止することも、本登録段階でエラーメッセージを表示して抑止することも、いずれもエラーの実装方法として許容される。

論理的には成立するが特に注意を要する入力等(少なくとも「アラート項目一覧」に記載のもの)は、アラート(※)として注意喚起すること。

※エラー:論理的に成立し得ない入力その他の抑止すべき入力等について、抑止すべき原因が解消されるまで、当該入力等を確定(本登録)できないもの

※アラート:論理的には成立するが特に注意を要する入力等について、注意喚起の表示を経た上で、当該入力等を確定できるもの

エラー・アラートとする場合は、原因となったエラー・アラート項目と理由・対応方法を入力者に適切に伝えること。

戸籍情報システムのエラー・アラート機能のうち、戸籍附票システムにおいても該当する項目についてはそれに準拠すること。

【考え方・理由】

標準化に当たっては、論理的に成立し得ない入力その他の抑止すべき入力等を抑止するためのものをエラー、論理的には成立するが特に注意を要する入力等に注意喚起するものをアラートとし、その両方について、抑止・注意喚起すべき場面を整理して、標準仕様書に盛り込む。ただし、具体的なエラーメッセージの文言やそれを表示する場面等、エラー・アラートをシステム入力者等に伝える方法については、画面遷移の体系や入力確認の方法等によっても異なるため、標準仕様として規定しない。

戸籍附票システムでは戸籍情報システムと同様のデータ項目や機能を扱っている部分があり、エラーやアラートについても同様のものが必要であるため、それらのデータ項目や機能で戸籍附票システムにおいても該当する項目については戸籍情報システムで定義されているエラー・アラート項目に準拠することとした。

○エラー項目一覧エラー番号エラー項目(参考)表示メッセージ例 ※本仕様書では規定しないが参考までに一例を示す関係する 機能要件 番号
1戸籍附票システム内のデータにおいて、住民票コードが一致する者がいた場合住民票コードが既に登録されています。住民票コードの入力ミス又は二重戸籍等特殊な状況にある可能性があります。確認してください。1.1.1
2消除となった者について内容の変更をする場合消除となった者については情報の変更ができません。誤記等が判明した場合は備考欄に追記してください。1.1.1
3住民票コードのチェックデジットが不正の場合住民票コードのチェックデジットが違います。1.1.1
4異動入力において、必須項目を入力せずに確定する場合○○が入力されていません。1.1.5
5異動事由が消除の事由又は修正の事由で対象者が存在しない場合異動対象者が存在しません。異動内容を確認してください。1.2.2
6他の文字を入力せずに「*」(ワイルドカード)のみ入力して検索を実行した場合「*」のみで検索はできません。他の文字を入力したうえで実行してください。2.1.1
7抑止対象者を選択した場合抑止対象者です。選択できません。3.1
8抑止対象者を特定する検索をした場合取扱注意者、又はその同一戸籍の者の情報ですので表示できません。 抑止対象者であり、証明書等発行する場合は戸籍担当まで連絡してください。また発行後は再度連絡をお願いします。3.1

民事信託支援業務と司法書士の責任―東京地裁令和3年9月17日判決を題材に

市民と法[1]の記事、橋谷聡一大阪経済大学教授「民事信託支援業務と司法書士の責任―東京地裁令和3年9月17日判決を題材に―」からです。

一方、本件において、Yは自らが説明すべき事実について認識していた、あるいは認識し得たのかについて疑問が残る。換言すれば、その専門性に基づく知見や自ら負う義務についての認識がーあくまでも結果論にすぎないがー欠如していたことを認識していたのであろうか。

 私見ですが、この点は認識していなかった可能性が高いのではないかと思います。理由としては、民間の民事信託・家族信託系の資格を持っている(研修を受けている)ので、講師からの情報を基に、これなら大丈夫と考えながら、自分の目の前の具体的な事件に対して、当てはめることをしなかっただけではないかなと感じます。

 例えば、信用金庫提携の士業が研修講師であれば、事前確認しなくとも、多少間違っていても、口座を開設出来るのではないか、などと考えてしまったのかなと思ったりします。

すなわち、形式ではなく実質をみるならば、相談・助言の段階から本件第1委任契約を含む「民事信託支援業務」の履行が開始されていた、あるいは少なくとも本件第1委任契約に直接つながる司法書士の相談業務が開始されていたとみるべきではないか。

 私は委任契約前の相談・助言と、その他の民事信託支援業務の切り離しは可能だと思います。ただし、個別具体的事件に当てはめたとき、実質的に一体と評価される可能性はあり得ると考えます。

しかし、信託について専門性を有するというYは、本件判決でいうところの信託口口座(広義)、信託口口座(狭義)について、いかなるものであり、何を目的としてどのように開設するのか、両者のメリット・デメリットをXに説明し、その意思を確認したうえで信託契約の締結を支援する義務を負っていたのではないか。

 義務を負っていたと思います。特にデメリット面に関して、平成30年当時は金融機関の口座は、事前確認をしていても、実際に開設をするまで分からない、ということは説明していても良かったのかなと思います。

ただ、本件では、AがXの意向を汲みつつではあるが、Xの意向がYに伝えられていた。裁判所はどの程度契約の内容が確定されていることを求めるのかとの点でいささか厳格にすぎる判断を下したとみえる。

 個人的には、原告の主張立証との関係が影響しているのではないかなと感じます。ただ、現時点で上手く言語化出来ません。

また、不法行為と構成しようが債務不履行と構成しようが、ある特定の司法書士が他の司法書士等、つまり、本件ならば、司法書士のみならず弁護士、行政書士等のように広狭あれども競合する業務を行う可能性がある他の専門職よりも自らの能力が高く、提供する業務の品質が優良であると依頼者が認識しうる広告をし、あるいは肩書を用いているなら、依頼者からの信頼に対する責任がさらに加重されることはやむを得ない。

私も名刺に、民事信託、と記載しているので責任は自覚しています。同時に、(一社)民事信託推進センターから除名処分された者でもあります(公開しています。)。そのことを踏まえて、依頼者は私に委任してくださっています。

あるいは、弁護士および司法書士等隣接法律専門職種がイニシアチブをとり信託が設定されるという状態が福祉型の信託を含む民事信託で生じているなら、それこそが背後に存在する重大な問題である。

 同意しますが、民事信託について知らない市民の場合、どのような情報提供に留めるのか、バランスの問題なのかなと思います。

今後、このような課題が顕在化した場合、重大な問題となるだろう。たとえば、受益者の依頼により民事信託支援業務を行う弁護士や司法書士等法律専門職種が、依頼者に対する説明とその理解の確認すらないままに信託契約において受託者の義務をあらかじめ軽減したり、一方では受益者のために信託監督人の地位にありながら受託者に利益が生じ忠実義務違反ともなりかねない信託事務の遂行について相談・助言等を行うという状況が生じないと断言できようか。

 この辺は、難しい点だと感じます。

例えば、一般社団法人民事信託監督人協会という法人がありますが、法人内部の士業が民事信託支援業務を行った民事信託について、法人が信託監督人になっている場合、記事のような点についてどのような整理がされているのか、分かりません。司法書士会内部での声を聴いたこともありません。

https://info.gbiz.go.jp/hojin/Search

 民事信託支援業務を行った士業個人が信託監督人に就く場合もあると思います。委託者からの信頼が厚く、請われて就任した場合もあると思います。このような場合、当初は委託者兼受益者のために業務を行うことが可能だと思います。しかし、受益者の判断能力が衰えてきたとき、信託の終了が近づいてきたとき、相続に向けてどのように財産を残すか受託者(兼残余財産の帰属者・残余財産の帰属権利者)が判断をするとき、第2次受益者の要望と受託者の判断が異なるとき、どのような立ち位置を取るのが適切なのか、分かりません。人間関係に引きずられる、受益者の要望や信託の目的ではなく、信託財産に属する財産全体の帰属先(出口)のことを考えて損か得かを助言してしまう、ということは私にも充分あると思います。

私は現在のところ、信託監督人への就任は断らせていただいています。

しかし、このように厳密に解釈すると、依頼の趣旨に沿い書類作成のために法律的に整序する相談を有償で行えるとしか解することができない。整序にとどまると考えると、司法書士が専門職としてよりよい方法を「提案」することを通じ、依頼者の要請に応えることはできないか、極めて狭い範囲にとどまり、かえって依頼者の利益を損なう可能性がある。

同意します。

貸金業法

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=358AC1000000032

このような観点からは、無理にコンサルティング業務を進めるのではなく、上述の専門家らとともに相互補完的に民事信託支援業務にかかわるべきであろう。

同意です。

まぁ、あの論争のど真ん中で振り回されてる立場としては疲れますよ、正直。

今回は橋谷先生、渋谷陽一郎さん、いずれもいい味を出していました。


[1] 135号、2022年6月、民事法研究会、P22~

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