「成年後見制度の課題と民事信託の連携の可能性」

月報司法書士[1]の記事です。

第1はじめに

第2成年後見制度の概要(任意後見と法定後見)

第3成年後見制度の現状(必要とする人の5分の1から6分の1の人しか制度にアクセスできていない状況、成年後見制度支援信託等の投入)

第4基本計画の概要(成年後見制度の利用の促進に関する法律に基づく基本計画など)

第5成年後見制度の課題

1制度全般の課題

障害者権利条約に沿う制度へ。

家庭裁判所の監督体制の限界。

2基本計画達成のための課題

本人の意思決定支援過程の基準の変換

地域連携ネットワーク

移行型任意後見契約の乱用防止

第6民事信託の概要

1信託とは

2民事信託とは

第7 我が国の民事信託の現状

公的監督制度を持たない

イギリスでは公的監督の必要性の議論が始まっている

第8 成年後見制度と民事信託連携の可能性

1 シンガポールのSNTC

非営利特別支援信託会社が受託者、法務省の局がバックアップ。成年後見制度との連携を併用。

2制度の連携に向けて

シンガポールのように、国の機関による直接のバックアップが受けられる民事信託の運用を実現することが理想的である。

理想を実現するまでの過渡期においては、民事信託会社が信託業務を兼営する金融機関の協力(バックアップ)を得て受託者となる民事信託と、成年後見制度を融合させた仕組みを利用。

第9 おわりに

成年後見制度と司法書士(と(公社)リーガルサポート)との関係、歴史。

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第3成年後見制度の現状(必要とする人の5分の1から6分の1の人しか制度にアクセスできていない状況、成年後見制度支援信託等の投入)について。

私の肌感では、本来利用した方が良い人が利用できない、してないことが多いというのはあると思います。また、利用せざるを得ない状況になってから、少し後悔しつつ決められた事だから仕方なく従う、というような人が一定数いると感じます。

第7 我が国の民事信託の現状

公的監督制度を持たない。イギリスでは公的監督の必要性の議論が始まっている、について。

信託開始当初から、常時公的監督をして欲しい、というニーズは一定程度あるのかもしれないと思います。

https://www.gov.uk/trusts-taxes/types-of-trust

第8 成年後見制度と民事信託連携の可能性

1 シンガポールのSNTC

非営利特別支援信託会社が受託者、法務省の局がバックアップ。成年後見制度との連携を併用。

2制度の連携に向けて

シンガポールのように、国の機関による直接のバックアップが受けられる民事信託の運用を実現することが理想的である。

理想を実現するまでの過渡期においては、民事信託会社が信託業務を兼営する金融機関の協力(バックアップ)を得て受託者となる民事信託と、成年後見制度を融合させた仕組みを利用、について。

シンガポールの信託制度が日本にとって理想的とは思えませんでした。2の制度の連携に出てくる民事信託会社は、(一社)民事信託士協会が中心となって設立予定の信託会社を想起させてしまいます。そうでなかったらすみません。

選択肢としてあっても良いとは思いますが、記事の中ではっきり記載してもらった方がすっきりします。


[1] 日本司法書士会連合会2020.7 №581 P23~

遠藤英嗣「家族民事信託の現状と展望」

月報司法書士[1]に、遠藤英嗣弁護士が寄稿されていました。

第1 家族民事信託の現状

1 一時の勢いはなくなりつつある家族民事信託の利用

2 民事信託は認知症対策とともに資産承継機能への転換期に入る

  • 後見的な財産管理機能の役割(認知症対策)
  • 資産承継機能の役割とその重要性(遺産分割協議不要、後継ぎ遺贈型受益者連続)

3信託組成者によるいわゆる「やっつけ仕事」が多く、紛議性の高い信託契約書等が数多く世に出回っていること

  • 奔放野放図な家族信託の組成(受託者(残余財産の帰属権利者など)の思いを過度に反映させるもの)
  • 意味が変わりつつある「信託の登記をすれば、あとは安心」(信託契約書に、受益権の内容が記載されていない)

4 より慎重になりつつある金融機関

  • 民事信託利用の趨勢は金融機関の信託口座の開設にかかっている
  • 信託口座を開設する金融機関の責任は重い

5 隠れて作られている「信託もどき口座」

  • 公正証書で作成しない信託契約書
  • 「信託口座もどき口座」の開設でごまかす(屋号口座の危険性)

6 取組みに積極的な司法書士、慎重な弁護士、税理士

  • いわゆる「立ち位置」が難しい家族信託支援業務(利益相反など)
  • 信託口座開設に関わる多くの司法書士

7 家族信託の専門家を名乗る者に大きな衝撃を与えた平成30年9月の東京地裁判決

8 家族信託の課題を解決する当面の方策

  • 信託実務能力を有する専門家に家族信託支援業務を依頼することの大事さ(ネットワークを持っている専門家)
  • 信託関係人に特異な信託を理解してもらうこと
  • 公証人に頼るのは難しい

9 民事信託支援業務における専門職の責任

  • 専門職が株式会社の名で民事信託支援業務を始める(株式会社を設立して会社名で受任)
  • 信託契約書の事前リーガルチェックの依頼(多くなっている)

第2 家族民事信託の展望

1 家族民事信託の新たな大きな役割

民法899条の2(登記が第三者対抗要件となる)の存在により、家族民事信託は今後広がっていく。

2 専門職による信託専門分業化(出来ることを出来ないことを依頼者に伝える)

3 「危うい信託」の自然淘汰

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というような内容でした。第1 家族民事信託の現状については、たしかにそのような傾向があるかもしれないと思わされました。原因が東京地判平成30年9月の判決なのかは私には分かりません。また、この判決は最高裁ではないからまだ100%決まったわけではない、という方もいらっしゃいます。これは確かに100%ではないですね。私は訴訟になるのが嫌で、最高裁まで争う気力もないので、そこまでは出来ないです。

奔放野放図な家族信託の組成(受託者(残余財産の帰属権利者など)の思いを過度に反映させるもの)、意味が変わりつつある「信託の登記をすれば、あとは安心」(信託契約書に、受益権の内容が記載されていない)、については、受益権の内容が記載されていない、の部分は一定の量であると思いますが、相続人による遺産の囲い込み、というのは私の周りではあまりないので実感がわきませんでした。

隠れて作られている「信託もどき口座」、について屋号口座は県外では聞きます。信託契約書で特定しておけば大丈夫、民事信託専用の口座でなければいけない、など半々な感じを受けています。沖縄県内の地銀は、全て信託専用口座を作成してくれるので、この面では恵まれていると思います。

取組みに積極的な司法書士、慎重な弁護士、税理士、というのはどうなのでしょう。県内と、私が知る限りの県外では消極的、慎重な士業を見つけるのが難しい

というのが体感です。

特に不動産会社と提携のある士業と一部の金融機関が過度に積極的という印象を現時点で持っています。

専門職が株式会社の名で民事信託支援業務を始める(株式会社を設立して会社名で受任)、は初めて聞きましたが、ここまで露骨ではなくても近いようなことは確かにあります。一般社団法人を設立して受任する、法人の中には入っていないけれど、その法人の家族信託に関してはセミナー、コンサルティング、実務を行い実質的に法人の業務を全て行っている(または名前をちらつかせる)。違法なのかはグレーだと考えますが、責任は関わった分取ることになるのだと思います。

第2 家族民事信託の展望、については遠藤弁護士の展望の通りになってくれたら良いなぁと思います。

他に個人的に思うことは、地方の公証人には理解のある方がいて、公証人会連合会で決められているからといって断るのではなく、理詰めで話せば分かってくれる方がいます。ただ、今は少し待っていて、と言われています。

また一部の金融機関に関して、不可解な理由で信託口口座の開設を認めないといわれることがあります。それが公正証書作成の前日だったりするので、このようなことが無くなって欲しいと思います。


[1] 日本司法書士会連合会2020.7№581、P16~

新井誠「成年後見制度と民事信託のハイブリッド活用法」

月報司法書士[1]の記事に、新井誠中央大学教授の記事が掲載されていました。

障害者権利条約[2]が考えていく基本となっています。12条を転載します。

第十二条 法律の前にひとしく認められる権利

1締約国は、障害者が全ての場所において法律の前に人として認められる権利を有することを再確認する。

2締約国は、障害者が生活のあらゆる側面において他の者との平等を基礎として法的能力を享有することを認める。

3締約国は、障害者がその法的能力の行使に当たって必要とする支援を利用する機会を提供するための適当な措置をとる。

4締約国は、法的能力の行使に関連する全ての措置において、濫用を防止するための適当かつ効果的な保障を国際人権法に従って定めることを確保する。当該保障は、法的能力の行使に関連する措置が、障害者の権利、意思及び選好を尊重すること、利益相反を生じさせず、及び不当な影響を及ぼさないこと、障害者の状況に応じ、かつ、適合すること、可能な限り短い期間に適用されること並びに権限のある、独立の、かつ、公平な当局又は司法機関による定期的な審査の対象となることを確保するものとする。当該保障は、当該措置が障害者の権利及び利益に及ぼす影響の程度に応じたものとする。

5締約国は、この条の規定に従うことを条件として、障害者が財産を所有し、又は相続し、自己の会計を管理し、及び銀行貸付け、抵当その他の形態の金融上の信用を利用する均等な機会を有することについての平等の権利を確保するための全ての適当かつ効果的な措置をとるものとし、障害者がその財産を恣意的に奪われないことを確保する。

次に、条約に影響を与えたといわれる欧州評議会勧告[3]について言及し、次の2つが重要としています。

・本人を代行して意思決定をするのではなく、本人が自ら意思決定出来るように支援すること。

・次に、後見人の支援を受けてもなおできない場合に限り、本人に代行した意思決定が許されること。

意思決定の代理が先ではなく、支援が先という考えだと思います。その上で、現在の日本の民法上の成年後見制度について、補助に一元化することを提案しています。本人にとって一番制約の少ない補助から開始して、本人の状態に合わせて補助人に同意権や代理権を付与したり外したりすることで、障害者権利条約に沿った制度となるという考えです。

私も同意します。新井教授が以前から指摘していたことです。実務で機能させるためには、次の改善がされる必要があると考えます。

・補助人が家庭裁判所に同意権、代理権を付けたり外したりする手続きが今より簡単になること。

・家庭裁判所の担当職員が増えるか、事務効率を良くすること。

現在、親族が成年後見人になっている場合でも年に一度の報告書作成に戸惑っている方をみていると、補助はより複雑に感じるので親族の負担が減らないと主体的に利用してみよう、とはならないと感じます。また、家庭裁判所は今の事務量でも容量を超えているように感じます。人を増やすかコンピュータで効率化するかしないと負担が大きくなります。

 士業を利用するか、というところでは出来るだけ利用しない方向で進めるのがベストだと感じます。親族としても本人としても、あまりお金をかけたくない、という方が多いような印象を受けます。士業を利用するとしても書類作成のみ、またはピンポイントでの相談のみに絞るのが利用者にとっても士業にとっても良いと感じます。士業が監督人などになったとしても、出来ることは限られています。また報酬が毎年発生することに抵抗がある方もいらっしゃいます。

次に民事信託の活用可能性について、アメリカの撤回可能な生前信託と統一財産管理信託法を参考にしながら、記述されています。特徴は次の通りです。

・裁判所を通さずに、譲渡証書のサンプルを利用して財産を受託者に移転することで、統一財産管理信託法に服する信託が成立すること。

・成年後見制度との親和性が高い(受益者の能力喪失時にも受託者の信託事務処理の監督的規定が置かれているなど)。

具体的活用方法

・夫婦二人が金銭信託契約を信託銀行を受託者として設定する。

・信託設定と同時に、夫婦二人が同じ公的機関を任意後見人として、任意後見契約を締結する。

・信託銀行と公的機関はお互い連携できる状態にしておく。

・任意後見人に指図権を行使させる。

・特約付定期払い金銭信託

新井教授が想定する民事信託と任意後見のハイブリッド活用法は、機能すると考えます。公的機関は何を想定しているのか、図に載っていない任意後見監督人は就任するのか、信託銀行(会社)が近くにない都道府県はどうするのか、というところは措いておきます。私には公的機関が思い浮かびません。

原則的な民事信託として、受託者に親族ではなく、信託銀行を置いているのは、新井教授なりの考えがあるのだと感じました。


[1] №581 2020.7日本司法書士会連合会P4~

[2] https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/jinken/index_shogaisha.html

[3] 1999 Recommendations for the protection of incapacitated adults

東京オフィス解約の記事

あるメールマガジンの記事です。
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家族信託専門コンサルタント司法書士

このメルマガは、家族信託の実務家向けです。一般の人はちょっと難しいかも。

「このメルマガいらないな」、と思ったら、以下から。面倒な操作は不要で、2,3回クリックするだけで解除できます。先週の月曜日はバズ・ダラ会でした。

前回は、監督人協会のメンバーから、近況や、最近の面白い事例のお話しをしてもらいました。僕の報告は、最近、ちょっと後ろ向きの決断をしたこと。実は、東京のオフィス兼アパートを解約しました。いや〜、これには悩みました。「これから行くぞ〜!」って決断は、気持ちも高ぶるし、アドレナリンもでますが、(笑)「退却〜!」って決断は、後ろ向きだし、テンションも下がりますね。

■■ 東京に出た経緯

昨年(2019年)から、東京の仕事がすごく増えて、年が明けたら東京で本格的にやっていこうと思っていたんですよ。東京には、月に4,5回往復。毎月10泊位していたと思います。昨年の話しね。当時は、外国人旅行者がすごかったですからね。年間3000万人が訪日です。慢性的なホテル不足で、宿泊代も高騰。

1万円では泊まれませんでした。しかも予約がなかなか取れない。カプセルホテルですら、7000円くらいしていましたよ。泊まったことないけど。さらに追い打ちをかけるように、オリンピックが近づいてくる。去年(2019年)のことですよ。「2020年になったらオリンピックもあるし、ホテルなんて絶対取れなくなる。だったら、アパート借よう」となったんですね。で、1月に契約しました。今から考えると最悪な時期でしたね。(笑)2月中は、机や家具をそろえて、準備していました。3月くらいから、ようやく住めるようになったら、コロナ・・・

3月後半は、感染者が増え始めていた時期。今でも覚えています。3月24日の夜、東京の中華屋さんで夕ご飯を食べながらテレビを見ていました。そうしたら小池知事が「オリンピックを延期します」「とうとう来た。こりゃヤバい。東京ロックダウンもあり得る。電車も止まるかも」僕は、次の日の始発の新幹線で新潟に戻りました。そのときの決断は早かった(笑)そして・・・新潟に戻ったら、2ヶ月東京に行けなくなりました。

■■ 2ヶ月で状況が大きく変化

そうしたら、その2ヶ月で状況が大きく変化したんですね。打ち合わせのオンライン化が進みましたね。対面しないでオンラインで、打ち合わせや相談も普通に行われるようになりました。「Zoomで打ち合わせ」ちょっと前までは、「Zoomってなんですか?」という反応だったのが、今では、普通に「了解です」って感じです。お客様もZoomで打ち合わせOKな感じですよね。このように、オンライン化があっという間に進みました。

■■ ホテルもガラガラに

3000万人来ていた外国人がほとんど来なくなりましたからね。今まで、なかなか取れなかったホテルがガラガラになりました。価格も半分くらいにはなったでしょうか。

■■ 東京に拠点がある必要性は?

見事になくなったんですね。そもそも、打ち合わせはオンライン。どうしても会わなければいけないときだけ、行けばいい。宿泊するにしても、ホテルはすぐ取れるし、安い。しかも、僕は各地域に協力者がいますので、地元で、具体的な動きが必要なときは、その協力者にお願いすればいい。ですから、東京の拠点は当面は必要なくなったんですね。ということで、撤退することに決めました。いや〜、悩みましたよ。拠点を持って、1,2年もたっていれば、もう少し容易に決断ができたかもしれませんが、出したばかりでしたからね。悩みました。でも決めたらスッキリしました。

■■ 今回学んだこと

撤退の難しさですね。サンクコスト(※)の、精神的負担感。

※サンクコスト

事業や行為に投下した資金・労力のうち、事業や行為の撤退・縮小・中止をしても戻って来ない資金や労力のこと。By Wikipedia

でも、いい経験になったと思います。あのままずるずる行っていたら、もっと損失を広げることになったでしょうから。それにしても、ベッドが無駄だった。まだ、数えるほどしか、寝ていないのに。マットレスも新品同様です。運び賃を考えたら、廃棄するしかありません。取りに来ていただければ、無料で差し上げますので、興味がある人はこのメールに連絡を(笑)

■■ お詫び

話変わります。先週のバズ・ダラ会ですが、機材の関係で録画ができませんでした。移動中だったので、スマホからの参加。上手く録画ができなかったんですね。申し訳ありませんでした。前回のバズ・ダラ会では、某みどりの信託銀行の信託口座に関する、最新動向の話しもされましたよ。あれは、衝撃的でした。簡単に言うと、いい加減な専門家が多いから、信託口座の開設は、慎重にするというもの。せっかく口座を開いても、信託されたお金が入金されないなどの事例が多数報告されているようです。これは、我々専門家も襟を正していかなければなりません。信託は作ったら終わりでなく作ったら始まりです。専門家の永いサポートが必要です。監督人協会を立ち上げたのも、その理由。専門家を含め、信託全体を永くサポートしていきたいというのが想いです。本格稼働がまだできておらず、申し訳ないです。早く本格稼働を始めて、信託をしっかりサポートしていきたいと考えています。

■■ バズ・ダラ会に質問も募集中です

質問はこのメールに返信すれば届きます。監督人協会のメンバーが鋭く回答しますよ!

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1月契約で6月か7月解約。私だったらどうするんだろう。恐らく金銭的にマイナスになったという話ではないと思います。家賃支援給付金などもあるので、2か月オフィスを使わなかった家賃分はそれほどマイナスになっていないと考えられます。東京に行って会って、日帰りでは出来ない仕事をする必要がある大事な人が何名いるか、を基準にすると思います。記事では、ほとんど居なかったということだと思います。

自己委託型と自己信託について

金融法研究第36号に「高齢者の金融取引と自己決定権」[1]という記事がありました。

  • 高齢者の金融取引の支援の必要性

a 国連障害者権利条約[2]

b 1人暮らしの高齢者の増加

  • 高齢者の判断能力の漸減

高齢者の金融取引能力

  • 民法の能力制度

a 行為能力

  • 定型的・類型的判断 民法に基づく判断
  • 能力漸減への対応の困難さ

ア 高齢者単独での日常的な預金取引

イ 高齢者が投資取引を望んだ場合

b 意思能力

  • 個別具体的判断
  • 意思能力無効の拡大解釈による対応の問題
  • 事業者の勧誘規制等

a 適合性の原則[3][4]

  • 取引資格要件としての適合性の原則
  • 適用範囲の狭さという問題

b その他

  • 消費者契約法
  • 高齢顧客向け勧誘ガイドライン[5]
  • まとめ

金融取引に関する一元的な指標の必要性―管理と運用に連続的な指標

「金融取引能力」の制定

3 金融取引の支援と自己決定

  • 事前のアレンジメントの重要性

a 個別具体的な支援の困難さ

  • 様々な考慮要素
  • 様々な取引類型

b 事前アレンジメントの類型

  • 第三者委託型アレンジメント

財産管理委任契約、任意後見契約、信託契約、あるいはこれらを組み合わせた方法。任意後見監督人の就任、指図権者の活用・留保、信託監督人の活用。

(b)自己委託型アレンジメント(試論)

第三者の代わりに、将来の自分を、金融取引の委託先として指定する。

  • アレンジメントにおける監督の在り方

a 第三者委託型の場合

b 自己委託型の場合―信託型を参考にした見守りアレンジメント?

2つの方法

  • 高齢者の金融取引能力が低下した後も、本人が一貫した取引目的を設定できる限りは、本人の意思により取引目的を自由に変更可能であるとするアレンジメント。
  • アレンジメント時点で取引目的が固定され、金融取引能力低下後はその目的に沿った金融取引しか許されない。

2を中心的に考える。本人の金融取引能力をチェックする監督機関を設置する必要がある。監督機関の例として、裁判所などの中立的な第三者機関が望ましい。

要点

高齢者が単独で金融取引を行う場合の問題の中には、過去の自分の自己決定と、現在の自分、将来の自分が、あたかも別人格であるかのように考えた上で、過去の自分があらかじめ設定した財産管理目的に従って、将来の自分の利益を考慮しながら、現在の自分が財産管理を行うという関係は、信託類似の関係であると考えることができるのであり、その限りで信託法は参考に値する、と考えているわけです。

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自己委託型というものが、どのような形なのか私の理解が誤っているかもしれません。

自分で自分に委託する、ということは、自己信託が宣言であるのに対して自分と自分が委託契約を締結する、ということだと思うのですが、難しいのではないかと思います。投資商品を販売する金融機関等は、この契約書で取引を進めるのでしょうか。

また監督機関の設置は必要だと感じます。ただし、裁判所に任せるのは無理だと感じます。また中立の第三者機関で判断するにしても、利用者としては納得できないこともあるのではないかな、と感じます。

信託業法に基づいて事業を営む法人に対しては、あっせん委員会[6]という機関が存在しますが、(一社)信託協会の中にある機関なので、私なら相談しません。

消費者相談センターか金融庁に資料を送付かメールすると思います。

私の考えは、ガイドラインはあるとして、ケースバイケースで対応することです。

金融機関にはカメラも設置されているので、音声も撮れるようになると思います。利用者は時計や携帯電話などにセンサーを付けて、データを貯めているかもしれません。

結果、超高齢化の社会においても紛争の数は大きくは変化しないと思います。


[1] 学習院大学教授 山下純司 金融法学会2020、P69~

[2] https://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/rights/adhoc8/convention131015.html

[3] https://www.fsa.go.jp/common/law/guide/kinyushohin/03.html

[4] 金融商品取引法第40条第1号

[5] https://www.jsda.or.jp/about/gaiyou/gyouhou/13/1311/koureisyakisoku.pdf

[6] https://www.shintaku-kyokai.or.jp/consultation/issue.html

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