田中和明「信託における遺留分の侵害と相続法の改正」

「市民と法」[1]の記事からです。

1はじめに

2旧民法化における信託の設定における遺留分の減殺請求についての学説

  • 信託の設定における遺留分の侵害の有無と減殺請求の対象・減殺の順序j
  • 遺言代用信託における遺留分侵害行為
  • 遺留分減殺請求の相手方
  • 遺留分の減殺請求の対象となる財産と減殺の行使の方法
  • 遺留分が発生する時点
  • 遺留分の減殺請求に関する問題点

A信託行為減殺説

信託の設定行為が遺留分減殺請求の対象となる。

B受益権減殺説

受益権が遺留分減殺請求の対象となる。

3 相続法(民法)改正における遺留分制度に関する見直し

  • 遺留分減殺請求権の効力及び法的性質の見直し

A 見直しの必要性

B 遺留分に関する主な改正の内容

C 受遺者または受贈者の請求による金銭債務の支払いに係る期限の許与

  • 遺留分の算定方法の見直し

A 見直しの必要性

B 遺留分を算定するための財産の価額に関する規律

4 改正民法の信託設定に関する遺留分侵害の問題への影響

  • 実務上のニーズへの影響
  • 遺留分侵害額に相当する金銭債権と請求の相手方
  • 改正民法の信託設定に関する遺留分侵害の問題への影響

A信託行為減殺説

B受益権減殺説

5 結びにかえて

という構成になっています。実務としては、信託行為時に遺留分を侵害しないようにすること。遺留分を払えるお金を何かの方法で準備すること。例えば遺言(民法1047条1項2号但し書きの利用を含む)、保険など。

私の考えは受益権減殺説に傾いています。理由は実務で機能しやすいのではないかと思うことと、遺留分というものが財産を目的とするものだからです。

第2次の受益者への対応は、民法上の相続関係の範囲内に収まると思います。


[1] 2020年8月 №124号 p9~

「情報交換と会費」記事について

 時々、お問い合わせいただくことがあります。専門家が、長期にわたり信託を見ていったり、監督人になるのは将来が心配。監督人協会が引き継いでくれれば安心だが、どうしたらいいか?僕がまさに、監督人協会を作った理由です。しかし、監督人業務を本格スタートするには、様々な障がいがありました。

■■ まずは案件の管理をどうするか?

扱う案件が5件くらいなら、別にいいのですが、100件くらいになるともう一件一件把握するのは不可能です。いや、20件でも不可能です。

 あなたも、5年前の相続手続きの案件、全て覚えています?一人で把握していたら、その一人がいなくなったら、もう最悪です。誰も分からない。そのために、案件を管理するための「データベース・システム」が必要だったんですね。顧客管理システムや、案件管理システムですね。

 実は、監督人協会を立ち上げてから、システムの必要性に気づきました。なんたる、アホさ加減。(苦笑)しかし、その後、様々な試行錯誤をへて、このシステムが完成したんですね!ふーッ。2年かかりました。

 私の事務所でも、同じシステムを構築して使っていますが、これがもうチョー便利。(笑)案件の内容や関係者の連絡先が、PCからもスマホからもすぐアクセスでき、お客さんに連絡したいときもワンタッチで電話できる。案件の内容も、クラウドにデータがあるので、すぐ確認できます。しかも端末には一切データは保管されないから、万一、端末を紛失しても安心です。僕がいなくなっても、事務所のスタッフは案件の内容や経緯がすぐ分かるんですね。もちろん、スタッフごとに、アクセスできるデータに制限をかけることも可能です。やっと、管理システムの問題はクリアしました。

さらりと書いていますが、それなりのお金と、開発のための時間、労力、をつぎ込み、多くの失敗を乗り越えてできたシステムなんですよ!

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システム開発でお金を時間がかかった、という話です。お金がかかったというのは外注したからじゃないかな、と思います。

クラウドでGoogleDriveやMicrosoftOnedriveの容量制限を超える場合、民間のAmazonwebserviceなどを利用するなら、月や年単位で課金されるので、その資金も必要、ということだと思います。

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■■ 次は価値ある会員サービス

長期にわたり案件をサポートするには、どうしても運営資金が必要です。

そのために、監督人協会では、これまでセミナーを何回も開催してきました。しかし、セミナーだけで資金を集めるには限界があります。一方で、僕が絶対やりたくなかったことが一つあります。

 それは、「資格ビジネス」「信託○○士」みたいな民間士資格を作って、資金を集めることは絶対にしたくなかったんですね。だって、資格があっても、仕事が来るわけでないし。しかも、すでに、その類いの民間資格はいくつもあります。

 もし、僕がそのような類いの資格を作ったら、イヤでしょ?(笑)僕が、「イヤだな」と思うことはやらない。そうすると、どうしても会員制を作るしかありません。では、会費を納めていただく「価値」のあるサービスはどのようなものか?

ここ、けっこう悩みました。それで、まずは、無料の情報提供と言うことで

 バズ・ダラ会をはじめました。なかなか内容が定まらず、回ごとに方向性が違ったりしていることは、僕も認識しています。毎回、実験でした。無料だからできることですよね。付き合っていただいた皆さん、どうもありがとうございます。

 それでようやく方向性が見えてきました。案件の事例の紹介です。実際の案件ですが、いま、監督人協会の理事の橋本司法書士(+もう一人、新人の司法書士)と、信託内借り入れの案件をしてまして、(それなりに大きな案件)銀行の説明のために、これまで経験した事例(信託内借り入れ)の紹介を、墨消しした登記簿を見せながらしたんですね。ここでした説明、興味ありません?

 セミナーでも、登記簿は、墨消ししてもなかなかお見せできません。でも、クローズドの中だったらどうか?クローズドの中だったら、画面上ならお見せできるかも。ということで、無料のバズ・ダラ会では、事例の概要。コアな部分は、クローズドの会員のみの会合で紹介。これなら価値があるかなと思います。

 つまり会費を支払う価値を感じていただけるのではないでしょうか。バズ・ダラ会は、公開していますし、録画もYouTubeで見れるようにしています。(前回は録画に失敗しました。すいません。)公開だと、あまり、とんがったことはできない。でも、会員制のクローズドの空間なら、事例のとんがった紹介もできますし、深い議論も可能です。もちろん、とんがった議論も録画して、会員は見れるようにするつもりです。クローズドの会は、情報の交換が主な目的です。

 情報をもらうだけでなく交換。ですから、それなりに案件をやった人だけが対象になるでしょう。実務上のコアな情報を、それぞれの実務経験から議論し合う。監督人協会の理事のメンバー間では日常的にしていることですが、これを、もう少し広げようという考えです。

・信託内借り入れの、実際の登記簿や金銭消費貸借の内容 そして、銀行への説明方法

・信託金銭で、不動産を購入する場合の信託登記の入れ方

・信託終了時の、登記申請書の書き方や、その登記簿

などなどは、墨消ししたとしてもなかなか出しづらいですよね。それから、

・案件後の、事後対応。そこから来る、追加案件の流れ

 なんかは、ちょっとマニアックな部分もあり、一般的に募集するセミナーでは取り扱いにくい分野ですね。でも、事務所経営的にはチョー重要。追加の依頼が来る流れができるんですから。ここにも会費を支払う価値がありますよね。

 実際に案件をやって、ある程度共通の考え(長期にお客様をサポートしていきたい)をしている会員ならとても興味がある内容と思います。ですから、会員は、

・ある程度の業務経験がある人

・自分の事例も話せる人(もちろん個人情報は隠して)

というのが条件になってきます。こういった人たちでお互いに情報交換できる場は、価値があるのかなと思います。

■■ ということで、バズ・ダラ会のおしらせ

 次回のバズ・ダラ会では、監督人協会の橋本理事(司法書士)から事例の紹介をしてもらいます。内容は、信託内借り入れについての事例をお話しいただく予定です。(変更する場合もありますので、その際はご了承ください)費用は無料。あなたの参加をお待ちしていますね!

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 情報交換会をするので、参加する人は会費を払ってくださいということです。運営する人は、システム開発、運用費用を回収する必要があるので払いません、ということです。読む限り、会費がzoomの利用料を超える分は、運営の方々が作ったシステムに回されることになると思います。お金の流れを追う限り、セミナーとどう違うんだろう、資格ビジネスと違う部分はどこなんだろう、と考えてみましたが分かりませんでした。

 クローズドの会だから、一般には公表しずらい情報を公開するとして、スクリーンショットを撮られたら、守秘義務の面でどうなるんだろう、と思いました。

 コロナ禍で、オープンデータの価値が高まっています。その中で司法書士がクローズしていく世界観は、専門性を高めることになるのか、その逆に働くのか、どうなるのか私も分かりません。

オープンデータについての参考

「なぜ東洋経済オンラインではデータ可視化コンテンツのソースコードをGitHubで公開するのか?」

https://note.com/kazukio/n/n7e6d7915dee5

合同会社の社員、業務執行社員、代表社員の変更(試訳)

業務執行社員、代表社員:法人(株式会社)

The executive employees, The representative employees: The Corporation

【合同会社の社員、業務執行社員、代表社員の変更(職務執行者が社員、業務執行社員、代表社員になる)】

【Changing of executive officers, representative employees, and executive officers of the GK(Executors become The employees, The executives, and The representatives)]

総社員の同意書

The consent form of all employees.

1.社員【退社社員 商号A】は、その持分の全部である【持分の価額】円を【加入社員X・氏名】に譲渡して本会社を退社し、これを譲り受けた【加入社員X・氏名】は、同時に加入すること。

1. The employee [leaving employee, The trade name A] transferred the entire [The equity value] yen to [The participating employee X/name], left the company, and took over [The joining employee X/name]. To join at the same time.

  新加入社員の氏名、住所、出資の目的及び価額

The name, address, purpose of investment and price of new employee.

  【加入社員X・住所】

[The participant X/Address]

 【加入社員X・氏名】  【出資の価額】円  全部履行

[Participating employee X/Name] [Value of investment] Yen.

1.定款第○条の【退社社員 商号A】を削除

定款第○条に次の事項を加えること。

1. Deleted [Leaving employee trade name A] in Article ○Article of Articles of The Incorporation

Add the following items to Article ○ of the Articles of The incorporation.

【加入社員X・住所】

[The participant X/Address]

有限責任社員 【加入社員X・氏名】  【出資の価額】円

The limited Liability Employee [The Enrolled Employee X/Name] [The value of cntribution] Yen.

1.定款第○条を変更。

Changed Article ○ of the Articles of The incorporation.

  第○条 社員【加入社員X・氏名】は、業務執行社員とし、当会社の業務を執行する。

Article ○ The employee [Enrolled The employee X/Name] shall be the executive officer and execute the business of the company.

  • 代表社員【退社社員・商号A】が退社、退任

定款第○条を変更。

1. The representative employee [Leaving rhe employee, trade name A] leaves the company and retires.

Changed Article ○ of the Articles of the incorporation.

第○条 当会社の代表社員は、【社員X・氏名】とする。

Article ○ The representative employee of this company shall be [The employee X/Name].

② 代表社員は社長とし、当会社を代表する。

② The representative employee is the president and represents the company.

私たちは、全てに同意する。

We agree with everything.

   【同意日付】

[The agreement date]

     【商号】

[The trade name]   

   社  員  【退社社員A・商号A】   (印)

The company employee [The leaved employee A/The trade name A] (mark)

  加入社員  【加入社員X・氏名】   (印)

The enrollment employee [The enrollment employee X/Name] (mark)

「司法書士による民事信託支援業務の実際―成年後見制度・遺言と併用検討―」

嵐田志保「司法書士による民事信託支援業務の実際―成年後見制度・遺言と併用検討―」

日本司法書士会連合会民事信託支援業務推進委員会委員

月報司法書士の記事[1]を読みました。各事例の紹介があって、「こんな利用方法もあるんだ。」と感じました。

・自動車事故で意識不明になり成年後見制度を利用したが、意識が戻ったので後見開始の審判が取り消され、民事信託の利用に切り替えた。

・金銭を追加信託する旨の確認書を作成した。

・民事信託の受託者を、委託者の親族と交流のある、委託者が経営する会社の後継者にした。

松井秀樹「シンガポールにおける信託を利用した障害者等への財産管理サービス」

日本司法書士会連合会後見制度対策部利用促進WT部委員

同じ月報司法書士の記事です。シンガポールの信託会社SNTCへの視察の報告です。

https://www.sntc.org.sg/Pages/sntc_about.aspx?MainMenu=What%20Drives%20Us

・公的受託者がお金を管理して、直接サービスパロバイダーにお金が流れるので、SNTCにお金が通ることはない(委託者や受益者に、財産管理状況を報告する)。

・信託の運用開始したものは20件程度(2008年設立)。

公的受託者とは誰なんだろう、サービスプロバイダーは何をするんだろう、と感じました。

後見制度支援信託と少し似ている気がします。

記事でも触れられていますが、健康保険、介護保険、年金など社会保障費が増加している現在の日本で、政府が80~90%の補助をするスペシャルニーズトラストは、当事者の声が多くないと厳しいのかなと感じます。


[1] 日本司法書士会連合会2020.7 №581 P42~

「司法書士による福祉型信託の活用と成年後見制度融合の魅力―司法書士による民事信託支援業務の現状と課題―」

日本司法書士会連合会民事信託支援業務推進委員会 委員   後見制度対策部 部員

上の記事[1]について、考えてみたいと思います。気になった部分だけ抜粋します。

 読みながら、司法書士法が一回も出てこないのかな、と思っていたら、最後の方に出てきました。司法書士法第1条第1項の使命規定です。民事信託支援業務を推進するために、司法書士が意識すべきことに使命規定が挙げられています。

 福祉型信託と成年後見制度の決定的な差は、権利擁護(身上監護)機能の有無であること。

 平成31年に、民事信託業務モデル策定ワーキングチームから、民事信託支援業務推進委員会へと組織体を変更したこと。

 民事信託支援業務の現状を知るためには、銀行などの統計を用いることが有用である。三井住友信託銀行のデータによれば、司法書士が1位。

 銀行の統計は、有効だと思います。ただ、三井住友銀行のデータ(現在のところ、私もこのデータしか知りませんが)が全てに当てはまるかというと、分かりません。メガバンク1行のデータでは地方までカバー出来ないのかなと感じます。

 ここに関しては、私は公証センター(公証人役場)が統計に協力していただけたら良いのかなと感じます。自社株式の民事信託などは、民事信託専用の口座を作成しない場合があります。また、民事信託専用の口座は1つしか作成しないが、信託契約書は複数作成している場合があるからです。

 民事信託支援業務における課題について、間違いのない信託契約書の作成技術、とあるのですが、間違っても後で変更が不可能になるような信託契約書の作成技術が必要になると思います。間違いのない、と使うと初めて業務を行う人は出来ません。結果、共同受任、コンサルタントに流れると思います。

 誇大な宣伝広告、過大な報酬請求は行わない、とありますが、私なら、宣伝広告は司法書士会の公告に関する規則に倣う、報酬には根拠を示す、ぐらいの表現になると思います。

 今後の課題として、日司連における民事信託支援業務に関する情報共有ツールの設置、とあるのですが、どのようなものを想定しているのか、興味を持ちました。


[1] 月報司法書士2020.7 №581 P33~

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