H21年度 海外制度調査 インドネシアの不動産利用制度

2016年加工

 H21年度 海外制度調査

インドネシアの不動産利用制度

2010年1月

ジェトロ・ジャカルタセンターより

目次

1.不動産の権利関係3

1-1.所有権

1-2.事業権

1-3.建設権

1-4.使用権

1-5.運用権

1-6.ストラータ・タイトル

2.外国人の不動産手続きの留意点

2-1.外国人の定義

2-2.不動産登記手続きの流れ

2-3.不動産法制度の現状と問題点

インドネシアでは外国人(法人を含む)の不動産所有は認められていない。従って、外国人は不動産の利用権等を取得することでそのニーズを満たしているが、外国人(現地法人を設立した外国法人等)の範囲が曖昧であったり、不動産登記制度等についても不明確な点が多く、これら不動産利用に関する留意点について整理する。

1.不動産の権利関係

土地・建物から成る不動産については、1960年9月24日付第5号「土地基本法」がいまだ有効である。同法第16条1項には土地に係わる権利として以下を挙げている。

(1)所有権(hak milik)

(2)事業権(hak guna-usaha)

(3)建設権(hak guna-bangunan)

(4)使用権(hak pakai)

(5)借地権(hak sewa)

(6)開墾権(hak membuka tanah)

(7)林産物徴収権(hak memungut-hasil hutan)

(8)その他 (hak-hak lain yang tidak termasuk dalam hak-hak tersebut diatas yang akan ditetapkan)

このうち土地台帳に登記され、権利書が発行されるのは(1)~(4)のほか、運用権、ストラータ・タイトル(区分所有権)がある。

1-1.所有権

所有権とは個人で土地を所有する権利であり、土地基本法による所有権は土地に対して人が有し得る最も強い、代々相続される権利とされている。

(1)権利の保有者:

所有権が設定された土地を有することができる者は「インドネシア国籍者のみ」とされており、外国人は不可。また、インドネシア国籍のほかに他の国籍を有する二重国籍者も所有権の土地を有することは認められていない。

また、所有権が設定された土地を有することのできる法人については、その条件とともに政府が定めることになっており、1963年6月19日付第38号政令は所有権が設定された「土地を有することのできる法人」として政府系銀行、農業組合連合、宗教・社会団体を挙げている。国内外資本の別にかかわらず、一般の会社を含むこれら以外の法人は所有権が設定された土地を有することができない。一般の会社は事業権、建設権、あるいは使用権が設定された土地を取得することになる。

外国人や二重国籍者、または政府が定めた法人以外の法人に所有権が設定された土地が譲渡される土地取引は法的に認められないとされている。

また、遺言書の無い相続や婚姻による資産の共有により外国人が所有権を有することになった場合、または所有権者がインドネシア国籍を喪失した場合は、これら事項が発生した時点から1年以内に譲渡などの方法により所有権を手放さなければならない。

(2)所有権の有効期限は、原則的に永久に有効。

(3)譲渡・担保権:

所有権は売買、交換、贈与、遺言や慣習に基づく供与など、他者へ譲渡したり譲渡されたりすることが可能。また、抵当権を設定することにより、借入保証にすることもできる。

(4)義務規定:

土地基本法では、土地に係る全ての権利は社会的機能を有すると定められており、例えば道路建設のような公共目的のために所有する土地の一部を政府に提供するよう求められた場合、当該土地所有者はこれに応じなければならない(補償あり)。

この義務は以下全ての権利に共通する。

(5)権利の消滅:以下の場合に所有権は消滅する。

Ø 公共目的(国や国民)のため、補償を伴う接収が行なわれる場合

Ø 土地所有者が自主的に移譲する場合

Ø 土地が放置された場合

Ø 遺言書の無い相続や婚姻による資産の共有により外国人が所有権を有することになった場合、あるいは所有権者がインドネシア国籍を喪失した場合、これら事項が発生した時点から1年以内に譲渡などの方法により所有権を手放さなければならないにも係わらず、1年以内に手続きが行われなかった場合

Ø 土地が処分された場合

1-2.事業権

事業権、建設権、使用権については土地基本法のほか、1996年6月17日付第40号政令に詳しく規定されており、同細則として1997年第3号土地担当国務大臣/国土庁長官規定がある。

事業権とは、農業用・水産及び畜産用に最小5ha以上、最大25haの国有地を使用する権利(但し、法人は25ha以上も可能)。事業権が設定される土地は国有地のみである。

(1)権利の保有者:

事業権は、インドネシア国籍者またはインドネシアの法律に則り設立されインドネシアに所在する法人(外国投資会社PMAも含む)に与えられる。

但し、当該事業権者がそのステータスを変更した場合は、1年以内に条件を満たした者に権利を譲渡する必要があり、譲渡しない場合その土地は政府に戻される。

(2)有効期限:

事業権の有効期間は最長35年(土地基本法では最長25年間、法人の場合は最長35年)であるが、土地の維持管理が適切であれば25年の延長が可能。

その後の更新もケースバイケースで認められることになっている。延長/更新は期限の2年前までに行う必要がある。投資面の便宜を図るため、延長・更新時の納入金を最初の権利設定時に一括納付することもできる。(建設権・使用権も同様)

(3)譲渡・担保権:

事業権は売買、交換、資本参加、贈与、相続という方法で譲渡が可能。また、抵当権を設定することにより借入保証にすることもできるが、抵当権は事業権の消滅と同時に失効する。

(4)義務規定:事業権者には主に以下の義務がある。

Ø 国への納入金支払い

Ø 事業権供与決定の記載に従い、農業、農園、水産業、畜産業を営むこと

Ø 定められた要件に従って適正に事業を行うこと

Ø 周辺施設・設備の建設・維持

Ø 土地の肥沃さの維持、天然資源の破壊回避、環境能力の管理

(土地がその地形上、環境上から他の土地、道路や水路を閉じ込める結果となった場合には、何らかの解決策をとらなくてはならない。また、地域社会の利害にも十分に配慮する必要もある)

Ø 使用状況について年1回報告すること

Ø 権利消滅後は速やかに国へ土地を返還すること

Ø 権利消滅後の権利書の土地管理当局への返却すること

すみれ

「権利書だ。」

(5)権利の消滅:

以下の場合に事業権は消滅し、土地は国へ返還される。

Ø 事業権の有効期間満了

Ø 条件を満たさない/あるいは、上記義務の不履行/あるいは、裁判所の判決による/あるいは、1961年9月26日付第20号土地とその上物の権利取消法に基づき/あるいは、公共目的のため期間途中で事業権が取り消された場合

Ø 期間途中で事業権者が自主的に手放した場合

Ø 土地が放置された場合

Ø 土地が処分された場合

Ø 事業権者がそのステータスを変更した場合、その事業権は1年以内に条件を満たした者に譲渡する必要があるにも係わらず、譲渡しなかった場合

事業権が放棄され、延長や更新がなされなかった場合は、その最終権利保有者は土地にある建造物を取り壊し、土地を国に返還しなければならない。当該土地上の建造物や作物/物件が引き続き必要とされる場合は、大統領決定で規定される形態と金額で補償が与えられる。

1-3.建設権

国有地、運用権(1-5.参照)が供与された土地、または個人所有の土地の上に建物を建設し所有する権利である。

(1)権利の保有者:

インドネシア国籍者またはインドネシアの法律に則り設立されインドネシアに所在する法人(外国投資会社PMAも含む)。建設権者がそのステータスを変更した場合は、1年以内に条件を満たした者に譲渡する必要があり、譲渡しない場合その土地は政府に戻される。

また、個人所有権の土地の建設権は、建設権者と所有権者との間の合意を土地証書作成官(PPAT、公証人が兼任)の下で証書化する必要がある。

(2)有効期限:

建設権の有効期間は最長30年で、さらに最長20年の延長が可能。運用権が供与された土地の建設権の延長は運用権者の事前同意が必要で、当初契約設定時と同額の費用が必要である。更新も許可される場合がある。

(3)譲渡及び担保権

建設権は売買、交換、資本参加、贈与、相続という方法で譲渡が可能。また、抵当権を設定することにより借入保証にすることもできるが、抵当権は建設権の消滅と同時に失効する。

(4)義務規定:建設権者の義務としては主に以下のとおり。

Ø 建設権供与決定に記載された金額と支払方法での納入金の支払い

Ø 建設権供与決定並びに供与契約に定められた使途と条件に従い土地を利用

Ø 土地・建物を良好な状態に維持し環境を保護すること

(土地がその地形上、環境上から他の土地、道路や水路を閉じ込めるような結果になった場合は何らかの解決策をとらなくてはならない。また、地域社会の利害にも十分に配慮する必要がある)

Ø 権利消滅後は速やかに国/運用権者/所有権者へ土地を返還すること

Ø 権利消滅後の権利書の土地管理当局への返却すること

(5)権利の消滅:

次の場合、建設権は消滅し、土地は国/運用権者/所有権者へ返還される。

Ø 建設権の有効期間満了

Ø 条件を満たさない/あるいは、上記義務の不履行/あるいは、裁判所の判決による/あるいは、1961年9月26日付第20号土地とその上物の権利取消法に基づき/あるいは、公共目的のため期間途中で事業権が取り消された場合

Ø 期間途中で事業権者が自主的に手放した場合

Ø 土地が放置された場合

Ø 土地が処分された場合

Ø 建設権者がそのステータスを変更した場合その建設権は1年以内に条件を満たした者に譲渡する必要があるにも係わらず、1年以内に譲渡しなかった場合

建設権が放棄され延長や更新がなされなかった場合は、その最終権利保有者は土地にある建 造物を取り壊し土地を国に返還しなければならない。当該土地の上に建つ建造物や作物/物件が引き続き必要とされた場合には、大統領決定で規定される形態と金額で補償が与えられる。

1-4.使用権

国有地、運用権が供与された土地、個人所有権の土地を使用する権利である。

(1)権利の保有者:

使用権を取得できるのは、インドネシア国籍者、インドネシアの法律に則ってて設立されインドネシアに所在する法人、中央政府機関と地方政府、宗教・社会団体、インドネシアに居住する外国人、インドネシアに代表部を有する外国法人、国際機関と外国政府のインドネシア代表部。

使用権者がそのステータスを変更した場合、その使用権は条件を満たした者に譲渡する必要があり、1年以内に譲渡しない場合その土地は政府に戻される。

(2)有効期限:

国有地、運用権が供与された土地の場合、同一目的に使用される限り、原則最長25年、さらに最長20年の延長が可能であり更新も可能。個人所有権者の土地上の使用権は最長25年で延長はできないが、証書化した合意により新規の使用権として更新することはできる。

(3)譲渡・担保権:

使用権は売買、交換、資本参加、贈与、相続という方法で譲渡が可能。但し、個人所有権者の土地上の使用権は、土地使用契約書に規定する場合に限り譲渡可能。

また、全ての使用権は抵当権を設定することにより借入保証にすることができるが、抵当権は使用権の消滅と同時に失効する。

(4)義務規定:使用権者の義務は主に以下のとおり。

Ø 建設権供与決定、運用権の土地使用契約書、所有権者との使用権供与契約に記載された金額と支払方法での納入金の支払い

Ø 建設権供与決定、運用権の土地使用契約書、所有権者との使用権供与契約に定められた使途と条件に従って土地を利用

Ø 土地とその上に建つ建物を良好な状態に維持し環境を保護すること

Ø 権利消滅後は速やかに国/運用権者/所有権者へ土地を返還すること

Ø 権利消滅後の権利書の土地管理当局への返却すること

(5)権利の消滅:

次の場合、使用権は消滅し、土地は国/運用権者/所有権者へ返還される。

Ø 使用権の有効期間満了

Ø 条件を満たさない/あるいは、上記義務の不履行/あるいは、裁判所の判決による/あるいは、1961年9月26日付第20号土地とその上物の権利取消法に基づき/あるいは、公共目的のため期間途中で事業権が取り消された場合

Ø 期間途中で事業権者が自主的に手放した場合

Ø 土地が放置された場合

Ø 土地が処分された場合

Ø 使用権者がそのステータスを変更した場合その使用権は1年以内に条件を満たした者に譲渡する必要があるにも係わらず、1年以内に譲渡しなかった場合

使用権が放棄され延長や更新がなされなかった場合は、その最終権利保有者は土地にある建造物を取り壊し土地を国に返還しなければならない。当該土地の上に建つ建造物や作物/物件が引き続き必要とされた場合には、大統領決定で規定される形態と金額で補償が与えられる。

1-5.運用権

上記のほか、土地台帳に登記され、権利書が発行される権利として次のものがある。

運用権は、1965年12月6日付第9号土地大臣規定で追加されたもので、国が省庁や総局など政府機関に提供した土地を、その利用のために当該政府機関が第三者に提供する場合に、その土地について当該政府機関に土地管轄大臣が供与する権利である。ジャカルタのアンチョール(娯楽施設)やバタム島などがその一例である。

運用権を認められた者には次のような権限が認められる。

(1)当該地の用途・使用目的を計画すること

(2)当該地を用途・使用目的の為に使用すること

(3)当該地の一部を第三者に対し6年間の使用権で委任すること

(4)収入・賠償・年次納入金の形で資金を受領

特に(3)については次のような規制が設けられている。

Ø 委任できる面積は最大1千平方メートル

Ø 被委任者はインドネシア国籍者およびインドネシアの法律に従い設立されインドネシアに所在する法人に限り、委任は1回だけ認められる。

登記が定められているのは有効期間が5年を超える運用権で、有効期間について特に定めのない場合は5年以上と見なされる(登記規定については1966年1月5日付第1号土地大臣規定に定めがある。

すみれ

「使用権と運用権があるんだ。」

1-6.ストラータ・タイトル

アパートなどで建物全体を入居世帯で分割し、そのユニット・ロットを所有する形態では、ストラータ・タイトル(Strata Title)が採用されている。法令では「共同所有地の権利とその上の建築物の区分所有」(Hak atas Tanah Kepunyaan Bersama dan Pemilikan Bagian-Bagian Bangunan Yang Ada di Atasnya)に相当する。

ストラータ・タイトルの権利書発行については、1975年12月3日付第14号内務大臣規定で、「共同所有地の権利」とは、2人以上/2つ以上の法人が共同で所有する土地の権利とされており、このような土地の上に建つ建築物が区分所有される場合に、これら各所有についての権利書を発行することとなっている。

登記手順については、1977年10月29日付第4号内務大臣規定に定めがある。

2.外国人の不動産手続きの留意点

2-1.外国人の定義

1996年第40号政令から解釈すると、外国人(個人)とはインドネシア国籍ではなく外国籍を有する者のことで、インドネシアに居住する外国籍者、さらに1985年12月31日付第16号アパート法第8条(1)の注釈によれば、インドネシア国籍のほかに外国籍も有する二重国籍者もまた外国人に含まれる。例えば、インドネシア人と結婚してインドネシア国籍を取得した外国人は、元の外国籍を完全に手放してインドネシア国籍のみになっていれば外国人とはならないが、元の外国籍が残っていれば二重国籍になるので外国人の範疇となる。

また、「外国法人」とはインドネシアの法律に則り設立されたものでない、つまり外国の法律に則り設立された会社等を指すもので、インドネシアに駐在員事務所などを有して会社が「外国法人」と見なされる。逆に、株式会社PTの形で設立された外国投資(PMA)会社はインドネシアの法律に則り設立された会社であるので、外国法人ではなくインドネシア法人である。インドネシアの法律に従って設立されたかどうかがポイントであって、出資比率は基準とはならない。

外国人/法人が所有できるのは原則、使用権の付された土地のみ。アパートの所有も、アパートが建つ土地の権利が使用権でない限り認められない。1996年6月17日付第41号政令、1996年10月7日付第7号土地担当国務大臣/国土庁長官決定(1996年10月15日付第8号土地担当国務大臣/国土庁長官決定で一部変更)に詳しく規定されている。

なお、国際機関のインドネシア事務所や大使館のような在インドネシア外国代表部も外国人の範疇であるが、使用権の有効期間は使用に供される限りなど特別措置がある。

2-2.不動産登記手続きの流れ

不動産登記制度は、1997年7月8日付第24号政令及び実施細則1998年第37号政令、1997年10月1日付第3号土地担当国務大臣/国土庁長官規定に基づいている。

(1)関連書類の審査

希望の土地・建物が決まると、土地の権利書、土地所有/占有者によって納められる土地保有税(PBB)の納付証明(少なくとも過去5年間)、所有者の身分証明書(KTP)/家族証明(KK、土地の売買には配偶者の同意が必要)/婚姻証明(以上 所有者が個人の場合)

すみれ

「夫婦の物か。」

/会社定款/当該土地売却について決議した株主総会議事録(RUPS)/事業許可(SIUP等)/商業省の会社登録証(TDP)、以上 所有者が法人の場合/納税者番号(NPWP) 個人・法人共通、その他 電気・水道・電話代の支払い証明(最新月のもの)など必要書類を提示のうえ、チェックを受ける。

(2)価格・条件等の交渉

取引価格や支払い方法、完済時期のほか、売主の所得税・買主の名義変更料の負担をどうするか、土地譲渡証書を作成する土地証書作成官は誰にするかなどを決定する。(売主・買主どちらかでも法人の場合、特に交渉・決定内容を覚書の形で残しておくことが望ましい)

(3)土地証書作成官による土地権利書の確認

土地権利書が土地証書作成官に預けられ、権利書に不正や不足がないかどうか、当該の土地を管轄する国土庁事務所にてチェックされる。

(4)所得税・名義変更料の納付

権利書が真正であることが確認された後、所得税・名義変更料を納める。課税基礎額は実際の土地取引価格または政府が毎年定める土地課税対象販売価格(NJOP)のうち高い方が適用される。税率は所得税・名義変更料とも5%で、名義変更料は当該地域の定める非課税額(ジャカルタの場合は現在Rp60,000,000)を控除した額に5%をかける。

(5)土地譲渡証書の作成

所得税・名義変更料の納付証明を確認後、土地譲渡証書(AJB)が作成される。

Ø 代金の完済

Ø 証書署名(完済が確認されて初めて土地譲渡証書に双方が署名し、売買成立)

Ø 権利書の名義変更

土地譲渡証書と土地権利書、土地保有税の過去5年間の納付証明コピー等を当該土地を管轄する国土庁事務所で名義変更する。土地譲渡証書を作成した土地証書作成官に依頼するのが一般的で、費用は土地取引代金の1%前後が多いが、地価や取引面積などによる。所要期間は最低でも1ヶ月。

なお、上記は代金一括完済の場合の手順であり、分割払いの場合は、土地権利書が国土庁事務所にて真正であることを確認後に、土地売買契約証書(土地譲渡証書は完済後)に売主・買主双方が署名する。分割払い回数は通常3~5回。完済後に所得税・名義変更料を納めて、初めて土地譲渡証書への署名となり、権利書名義変更手続きに移る。

2-3.不動産法制度の現状と問題点

土地基本法(1960年制定)ほか一連の土地建物に関する法令は古いものが多く、投資に関しても未だ2007年4月26日付第25号投資法で失効となった1967年第1号外国投資法を参照したままで、新投資法と古い土地関連法令との整合性の欠如が指摘されている。

例えば、1980年3月20日付第23号大統領令でインドネシア出資者と外国出資者との合弁による外国投資(PMA)企業の場合、事業権取得の申請はインドネシア側出資者が行い、インドネシア側出資者の名義で権利登記され、この名義人が合弁事業に対し土地使用委任の形をとることで事業に使用することができるとされているが、これは100%外資企業が認められなかった時代の法令であり、100%外資企業設立が認められている今日では、事業権が外国投資(PMA)企業に上記条件で認められるかどうか、法的裏付けが求められる。

また、2007年第25号投資法では、外国投資と国内投資に対する土地取得の便宜について次のように定めており、土地基本法ほか関連法令との整合性に不安が残るとされている。

第22条

1) 土地に対する権利の取得は、下の2)の条件を満たす場合には事前に延長/更新分を一括して供与ができ、投資家の申請に応じて再更新も受けることができる。

a. 事業権は、事前に延長分を含め60 年で取得し、さらに35 年更新の方法で、合計95年供与できる

b. 建設権は、事前に延長分を含め50 年で取得し、さらに30年更新の方法で、合計80年供与できる

c. 使用権は、事前に延長分を含め45 年で取得し、さらに25 年更新の方法で、合計70年供与できる

2) 上記の土地に対する権利の延長分まで一括供与できるのは、以下の条件による。

a. 長期的でインドネシアの競争力を高める経済構造変化に関連する投資

b. 投資分野に応じ、投資回収に長期間を要するリスクレベルにある投資

c. 広いエリアを必要としない投資

d. 国有地に対する権利を利用する投資

e. 社会の公平感を阻害せず、公益を害しない投資

3) 土地の権利の一括付与・更新に関して、投資会社が土地の利用に違反した場合、これを停止又は取り消すものとする。

憲法裁判所はこれら上記の一括権利供与を違憲とする判決を下している(2008年3月)が、その後の法規定改正等は行われていない。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

すみれ・ポリー・番人

「お疲れ様でした。」

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