宅地建物取引業者による人の死に関する心理的瑕疵の取扱いに関するガイドライン(案)について

宅地建物取引業者による人の死に関する心理的瑕疵の取扱いに関するガイドライン(案)について

https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=155210315&Mode=0

令和3年○月 国土交通省 不動産・建設経済局 不動産業課

i

1 目 次

2 1.本ガイドライン制定の趣旨・背景 ……………………………….. 1

3 (1)本ガイドライン制定の背景 ………………………………….. 1

4 ① 不動産取引におけるいわゆる心理的瑕疵の取扱い ………………… 1

5 ② 不動産取引における心理的瑕疵に係る課題 ……………………… 1

6 ③ ガイドライン制定の必要性 ………………………………….. 2

7 (2)本ガイドラインの位置づけ ………………………………….. 2

8 ① 宅地建物取引業者の責務の判断基準としての位置づけ …………….. 2

9 ② 民事上の責任の位置づけ ……………………………………. 3

10 2.本ガイドラインの適用範囲 …………………………………….. 3

11 (1)対象とする事案 …………………………………………… 3

12 (2)対象とする不動産の範囲 ……………………………………. 3

13 3.告げるべき事案について ………………………………………. 4

14 (1)他殺、自死、事故死その他原因が明らかでない死亡が発生した場合  4

15 (2)自然死又は日常生活の中での不慮の死が発生した場合 …………….. 5

16 4.調査について ……………………………………………….. 5

17 (1)調査の対象・方法 …………………………………………. 5

18 (2)調査に当たっての留意事項 ………………………………….. 6

19 5.告知について ……………………………………………….. 7

20 (1)賃貸借契約について ……………………………………….. 7

21 ① 告げるべき内容 …………………………………………… 7

22 ② 告げるべき範囲 …………………………………………… 7

23 (2)売買契約について …………………………………………. 8

24 ① 告げるべき内容 …………………………………………… 8

25 ② 告げるべき範囲 …………………………………………… 8

26 (3)留意事項………………………………………………… 8

27 6.結び ………………………………………………………. 9

28

1

1 1.本ガイドライン制定の趣旨・背景

2 (1)本ガイドライン制定の背景

3 ① 不動産取引におけるいわゆる心理的瑕疵の取扱い

4 不動産取引においては、取引の対象となる不動産にまつわる嫌悪すべき歴史的

5 背景1がある場合に、いわゆる心理的瑕疵があるといわれ、とりわけ住宅として用

6 いられる不動産において、過去に他殺、自死、事故死など、人の死が発生した場

7 合、当該不動産が心理的瑕疵を有するか問題となる。

8 こうした事案は、買主・借主にとって不動産取引において契約を締結するか否

9 かの判断に重要な影響を及ぼす可能性があることから、売主・貸主は、把握して

10 いる事実について、取引の相手方である買主・借主に対して告知する必要があり、

11 過去の判例に照らせば、取引目的、事案の内容、事案発生からの時間の経過、近

12 隣住民の周知の程度等を考慮して、信義則上、これを取引の相手方に告知すべき

13 義務の有無が判断されている。

14 また、売主である宅地建物取引業者や、媒介又は代理を行う宅地建物取引業者

15 は、宅地建物取引業法上、取引条件に関する事項であって、宅地建物取引業者の

16 相手方等の判断に重要な影響を及ぼすこととなるものについて、故意に事実を告

17 げず、又は不実のことを告げる行為が禁じられており、こうした事案の存在が宅

18 地建物取引業者の相手方等の判断に重要な影響を及ぼすと考えられる場合には、

19 宅地建物取引業者は、宅地建物取引業法上、当該事案の存在について事実を告げ

20 る必要がある。

21 ② 不動産取引における心理的瑕疵に係る課題

22 不動産取引における心理的瑕疵については、買主や借主の個々人の内心に関わ

23 る事項であり、他殺、自死、事故死などの人の死に関する事案をどの程度嫌悪し、

24 それが取引の判断にどの程度の影響を与えるかについては、当事者ごとに異なる

25 ものである。しかし、どの程度の心理的瑕疵を当該不動産取引において許容する

26 かということについて、契約当事者間で明文をもって合意することは、通常行わ

27 れているとは言えない。

28 このため、個々の不動産取引に際し、心理的瑕疵に該当する事案の存在が疑わ

29 れる場合において、それが買主や借主に対して告知すべき事案に該当するか否か

30 が明確でなく、告知の要否、告知の内容についての判断が困難なケースがある。

31 不動産取引の実務においては、取引の対象となる不動産において過去に人の死が

32 発生した場合に、取り扱う宅地建物取引業者によって対応が異なり、中には、人

33 の死に関する事案の全てを買主・借主に告げているようなケースもあり、心理的

34 瑕疵に係る対応の負担が過大であると指摘されることもある。

35 また、不動産取引に際し、買主・借主に対し、当該不動産において過去に生じ

36 た人の死に関する事案の全てを告げる対応を行うことによって、賃貸住宅の入居

1 の場面において、貸主が、入居者が亡くなった場合、亡くなった理由の如何を問

2 わずその事実を告知対象にしなければならないと思い、特に単身高齢者の入居を

3 敬遠する傾向があるとの指摘もある。

4 ③ ガイドライン制定の必要性

5 上記のような背景の下、不動産取引に際して、当該不動産において過去に人の

6 死が発生した場合における対応の判断に資するよう、一定の考え方を示すことが

7 求められている。

8 これを踏まえ、令和2年2月より、国土交通省において「不動産取引における

9 心理的瑕疵に関する検討会」(座長:中城康彦 明海大学不動産学部長)を開催し、

10 不動産において過去に人の死が生じた場合において、当該不動産の取引に際して

11 宅地建物取引業者がとるべき対応に関し、宅地建物取引業者が宅地建物取引業法

12 上負うべき責務の解釈について、学識経験者による議論を行い、その結果を本ガ

13 イドラインとして取りまとめたものである。

14

15 (2)本ガイドラインの位置づけ

16 ① 宅地建物取引業者の責務の判断基準としての位置づけ

17 不動産取引に際し、当該不動産における心理的瑕疵の存在については、買主・

18 借主が契約を締結するか否かの判断に重要な影響を及ぼす可能性がある事案につ

19 いて、売主・貸主による告知が適切に行われることが重要である。

20 しかしながら、実際の取引においては、不動産取引の専門家である宅地建物取

21 引業者が売主となる、又は媒介3をするケースが多数であり、買主・借主は、契約

22 を締結するか否かの判断に重要な影響を及ぼす可能性がある事項について、宅地

23 建物取引業者を通じて告げられることが多数を占める。

24 宅地建物取引業者が自ら売主・貸主となる場合はもちろんのこと、宅地建物取

25 引業者が媒介を行う場合には、契約の成立に向けて総合的に調整を行う立場とし

26 て、不動産取引の実務において極めて大きな役割を果たしており、売主・貸主が

27 把握している情報が買主・借主に適切に告げられるかは、宅地建物取引業者によ

28 るところが大きい。

29 一方で、既に述べたとおり、不動産取引の実務においては、告知の要否、告知

30 の内容についての判断が困難なケースがあるため、取り扱う宅地建物取引業者に

31 よって対応が異なる状況があり、不動産の適正な取引や居住の安定の確保を図る

32 上での課題となっている。

33 このような点を踏まえ、本ガイドラインは、不動産において過去に人の死が生

34 じた場合において、当該不動産の取引に際して宅地建物取引業者がとるべき対応

35 に関し、宅地建物取引業者が宅地建物取引業法上負うべき責務の解釈について、

36 トラブルの未然防止の観点から、現時点において判例や取引実務に照らし、一般

37 的に妥当と考えられるものを整理し、とりまとめたものである。

3

1 不動産取引に際し、当該不動産において過去に人の死が生じた場合における対

2 応については、人の死が生じた建物が取り壊された場合の土地取引の取扱いや、

3 隣接住戸や前面道路で生じた事案の取扱い、搬送先の病院で死亡した場合の取扱

4 いなど、一般的に妥当と整理できるだけの判例や不動産取引の実務の蓄積がない

5 ものも数多くあるが、これらについては本ガイドラインの対象とせず、今後の事

6 例の蓄積を踏まえ、適時にガイドラインへの採用を検討するものとする4。

7 過去に人の死が生じた不動産の取引に際し、宅地建物取引業者が本ガイドライ

8 ンで示した対応を行わなかった場合、そのことだけをもって直ちに宅地建物取引

9 業法違反となるものではないが、宅地建物取引業者の対応を巡ってトラブルとな

10 った場合には、行政庁における監督に当たって、本ガイドラインが考慮されるこ

11 ととなる。

12 ② 民事上の責任の位置づけ

13 個々の不動産取引において、心理的瑕疵の存在に関し紛争が生じた場合の民事

14 上の責任については、取引当事者からの依頼内容、締結される契約の内容等によ

15 って個別に判断されるべきものであり、宅地建物取引業者が本ガイドラインに基

16 づく対応を行った場合であっても、当該宅地建物取引業者が民事上の責任を回避

17 できるものではないことに留意する必要がある。

18 しかしながら、宅地建物取引業者が、一般的な基準として本ガイドラインを参

19 照し、適切に対応することを通じて、不動産取引に際し、当該不動産において過

20 去に生じた人の死に関する事案について、買主・借主が十分な情報を得た上で契

21 約できるようにすることにより、取引当事者間のトラブルの未然防止とともに、

22 取引に関与する宅地建物取引業者との間のトラブルの未然防止が期待される。

23 また、本ガイドラインは、宅地建物取引業者のみならず、取引当事者の判断に

24 おいても参考にされ、トラブルの未然防止につながることが期待される。

25

26 2.本ガイドラインの適用範囲

27 (1)対象とする事案

28 心理的瑕疵については、他殺、自死、事故死などの人の死に関する事案以外にも、

29 周辺環境や過去の使用用途等が該当することが考えられるが、特に人の死に関する

30 事案をめぐって、取引上の課題となるケースが多いことから、本ガイドラインにお

31 いては、取引の対象となる不動産において生じた人の死に関する事案を取り扱うこ

32 ととする。

33

34 (2)対象とする不動産の範囲

35 住宅として用いられる不動産(居住用不動産)とオフィス等として用いられる不

36 動産を比較した場合、居住用不動産は、人が継続的に生活する場(生活の本拠)と

4

1 して用いられるものであり、買主・借主は、居住の快適性、住み心地の良さなどを

2 期待して購入又は賃借し、入居するため、他殺、自死、事故死など、人の死に関す

3 る事案は、その取引の判断に影響を及ぼす度合いが高いと考えられることから、本

4 ガイドラインにおいては、居住用不動産を取り扱うこととする。

5 なお、隣接住戸や前面道路など、取引の対象となる不動産以外において発生した

6 事案については、本ガイドラインの対象外とするが、集合住宅の取引においては、

7 買主・借主が居住の用に供する専有部分・貸室に加え、買主・借主が日常生活にお

8 いて通常使用する必要があり、集合住宅内の当該箇所において事案が生じていた場

9 合において買主・借主の住み心地の良さに影響を与えると考えられる部分をも対象

10 に含むものとする。

11

12 3.告げるべき事案について

13 宅地建物取引業者は、媒介活動又は販売活動に伴う通常の情報収集等の業務の中で、

14 売主・貸主や管理業者から人の死に関する事案の存在を知らされた場合や、自らこれ

15 らの事案の存在を認識した場合(例えば、売主である宅地建物取引業者が物件を取得

16 する際に事案の存在を把握した場合等)には、当該事案の存在を買主・借主に告げる

17 必要があるかを判断しなければならない。宅地建物取引業者が業務の中で人の死に関

18 する事案を認識した場合において、その存在を買主・借主に告げるべき事案は、以下

19 のとおりとする。

20 なお、告げるべき内容及び範囲については、後記5.に示すとおりである。

21 (1)他殺、自死、事故死その他原因が明らかでない死亡が発生した場合

22 不動産取引に際し、当該不動産において、過去に他殺、自死、事故死が生じた場

23 合には、買主が売主に対して説明義務違反等を理由とする損害賠償責任を巡る多く

24 の紛争がみられる。

25 このため、前記2.(2)の対象となる不動産において、過去に他殺、自死、事故

26 死(後記(2)に該当するものを除く。)が生じた場合には、買主・借主が契約を締

27 結するか否かの判断に重要な影響を及ぼす可能性があるものと考えられるため、原

28 則として、これを告げるものとする。

29 なお、対象となる不動産において、過去に原因が明らかでない死が生じた場合(例

30 えば、事故死か自然死か明らかでない場合等)においても、買主・借主の判断に重

31 要な影響を及ぼす可能性があるものと考えられるため、原則として、これを告げる

32 ものとする。

33

5

1 (2)自然死又は日常生活の中での不慮の死が発生した場合

2 老衰、持病による病死など、いわゆる自然死については、そのような死が発生す

3 ることは当然に予想されるものであり、統計においても、自宅における死因割合の

4 うち、老衰や病死による死亡が9割8を占める一般的なものである。

5 また、判例においても、自然死について、心理的瑕疵への該当を否定したもの9が

6 存在することから、買主・借主の判断に重要な影響を及ぼす可能性は低いものと考

7 えられ、2.(2)の対象となる不動産において過去に自然死が生じた場合には、原

8 則として、これを告げる必要はないものとする。

9 このほか、事故死に相当するものであっても、自宅の階段からの転落や、入浴中

10 の転倒事故、食事中の誤嚥など、日常生活の中で生じた不慮の事故による死につい

11 ては、そのような死が生ずることは当然に予想されるものであり、これが買主・借

12 主の判断に重要な影響を及ぼす可能性は低いと考えられることから、自然死と同様

13 に、原則として、これを告げる必要はないものとする。

14 ただし、自然死や日常生活の中での不慮の死が発生した場合であっても、取引の

15 対象となる不動産において、過去に人が死亡し、長期間にわたって人知れず放置さ

16 れたこと等に伴い、室内外に臭気・害虫等が発生し、いわゆる特殊清掃等が行わ

17 れた場合においては、買主・借主が契約を締結するか否かの判断に重要な影響を及

18 ぼす可能性があるものと考えられるため、原則として、これを告げるものとする。

19

20 4.調査について

21 (1)調査の対象・方法

22 宅地建物取引業者は、販売活動・媒介活動に伴う通常の情報収集を行うべき業務

23 上の一般的な義務を負っている。ただし、前記3.に掲げる事案が生じたことを疑

24 わせる特段の事情がないのであれば、前記3.に掲げる事案が発生したか否かを自

25 発的に調査すべき義務までは宅地建物取引業法上は認められない。他方で、販売活

26 動・媒介活動に伴う通常の情報収集等の調査過程において、売主・貸主や管理業者

27 11から、過去に、前記3.に掲げる事案が発生したことを知らされた場合や自らこ

28 れらの事案が発生したことを認識した場合(例えば、売主である宅地建物取引業者

29 が物件を取得する際に事案の存在を把握した場合等)には、宅地建物取引業者は、

30 後記5.に示すところにより、買主・借主に対してこれを告げなければならない。

31 なお、媒介を行う宅地建物取引業者においては、売主・貸主に対して、告知書(物

32 件状況等報告書)その他の書面(以下「告知書等」という。)に過去に生じた事案に

33 ついての記載を求めることにより、媒介活動に伴う通常の情報収集としての調査義

6

1 務を果たしたものとする。この場合において、告知書等に記載されなかった事案の

2 存在が後日に判明しても、当該宅地建物取引業者に重大な過失がない限り、前記3.

3 に掲げる事案に関する調査は適正になされたものとする。

4 調査の過程において、照会先の売主・貸主あるいは管理業者より、事案の有無及

5 び内容について、不明であると回答された場合、あるいは回答がなかった場合であ

6 っても、宅地建物取引業者に重大な過失がない限り、照会を行った事実をもって調

7 査はなされたものと解する。

8 前述のとおり、取引の対象となる不動産における事案の有無に関し、宅地建物取

9 引業者は、原則として、売主・貸主・管理業者以外に自ら周辺住民に聞き込みを行

10 ったり、インターネットサイトを調査するなどの自発的な調査を行ったりする義務

11 はないと考えられる。仮に調査を行う場合であっても、近隣住民等の第三者に対す

12 る調査や、インターネットサイトや過去の報道等に掲載されている事項に係る調査

13 については、正確性の確認が難しいことや、遺族のプライバシーに対する配慮が必

14 要であることから、特に慎重な対応を要することに留意が必要である。

15

16 (2)調査に当たっての留意事項

17 媒介を行う宅地建物取引業者においては、売主・貸主から確認した事実関係を明

18 確にし、トラブルの未然防止を図るため、心理的瑕疵が疑われる事案の存在につい

19 ては、告知書等への記載を求めることにより照会を行うことが望ましい。

20 この際、媒介を行う宅地建物取引業者は、売主・貸主による告知書等への記載が

21 適切に行われるよう必要に応じて助言するとともに、売主・貸主に対し、事案の

22 存在について故意に告知しなかった場合等には、民事上の責任を問われる可能性が

23 ある旨をあらかじめ伝えることが望ましい。

24 また、告知書等により、売主・貸主からの告知がない場合であっても、前記3.

25 に掲げる事案の存在を疑う事情があるときは、売主・貸主に確認して、買主・借主

26 に情報提供する必要がある。

27 なお、取引の対象となる不動産において過去に人の死が生じた事実について、媒

28 介を行う宅地建物取引業者は、契約後、引渡しまでに知った場合についても告知義

29 務があるとする判例があることに留意すべきである。

30 後日トラブルとなり、訴訟等に発展した場合でも証拠資料になり得るため、媒介

31 を行う宅地建物取引業者は、売主・貸主に対して告知書等への適切な記載を求め、

32 これを買主・借主に交付することが、トラブルの未然防止とトラブルの迅速な解決

33 のためにも有効であると考えられる。また、媒介を行う宅地建物取引業者が、買主・

34 借主から、「売主・貸主が宅地建物取引業者に告知した事案について、宅地建物取引

35 業者が買主・借主に告げなかった」等と指摘され、トラブルに発展することの未然

7

1 防止にも繋がるものと考えられる。

2

3 5.告知について

4 不動産取引の中でも、売買契約と賃貸借契約とでは、一般に、賃貸借契約に比べて

5 売買契約は取引金額やトラブルが生じた場合の損害が高額になり、買主が被る損害は

6 借主に比し多大なものとなりやすいなど、双方の契約に係る事情が異なる。双方の事

7 情に応じ、宅地建物取引業者が買主・借主に告げるべき内容・範囲は、以下のとおり

8 とする。

9 なお、以下で示す点については、前記4.の調査を通じて判明した点について実施

10 すれば足り、売主・貸主から不明であると回答された場合、あるいは無回答の場合に

11 は、その旨を告げれば足りるものとする。

12 (1)賃貸借契約について

13 ① 告げるべき内容

14 取引の対象となる不動産において、過去に、前記3.(1)に掲げる事案が発生

15 している場合には、これを認識している宅地建物取引業者が媒介を行う際には、

16 事案の発生時期、場所及び死因(不明である場合にはその旨)について、借主に

17 対してこれを告げるものとする。

18 ここでいう事案の発生時期、場所及び死因については、前記4.で示す調査に

19 おいて貸主・管理業者に照会した内容をそのまま告げるべきである。

20 ② 告げるべき範囲

21 事案が発生してから期間を経過している場合、いつまで事案の存在を告げるべ

22 きかについては、その事件性、周知性、社会に与えた影響等により変化するもの

23 と考えられるが、過去の判例においても、

24 ・ 住み心地の良さへの影響は自死等の後に第三者である別の賃借人が居住した

25 事実によって希薄化すると考えられるとされている事例(東京地裁平成 19.8.10

26 判決、東京地裁平成 25.7.3 判決)

27 ・ 賃貸住宅の貸室において自死が起きた後には、賃貸不可期間が1年、賃料に

28 影響が出る期間が2年あると判断されている事例(東京地裁平成19.8.10判決、

29 東京地裁平成 22.9.2 判決等)

30 等の事例があるほか、公的賃貸住宅においても、事案発生後の最初の入居者が退

31 去した後には、通常の住戸として募集する運用が長らく行われているところであ

32 る。

33 これらを踏まえ、前記3.(1)に掲げる事案が発生している場合には、特段の

34 事情がない限り、これを認識している宅地建物取引業者が媒介を行う際には、上

35 記①に掲げる事項について、事案の発生から概ね3年間は、借主に対してこれを

36 告げるものとする

8

1 なお、取引の対象となる不動産において、前記3.(2)に掲げる事案が発生し

2 ている場合には原則としてこれを告げる必要はないが、人が死亡し、長期間放置

3 されたこと等に伴い、特殊清掃等が行われた場合においては、これを認識してい

4 る宅地建物取引業者が媒介を行う際には、上記①に掲げる事項並びに発見時期及

5 び臭気・害虫等が発生した旨について、前記3.(1)と同様に、特段の事情がな

6 い限り、事案の発生から概ね3年間は、借主に対してこれを告げるものとする。

7

8 (2)売買契約について

9 ① 告げるべき内容

10 取引の対象となる不動産において、過去に、前記3.(1)に掲げる事案が発生

11 している場合には、これを認識している宅地建物取引業者は、事案の発生時期、

12 場所及び死因(不明である場合にはその旨)について、買主に対してこれを告げ

13 るものとする。

14 ここでいう事案の発生時期、場所及び死因については、前記4.で示す調査に

15 おいて売主・管理業者に照会した内容をそのまま告げるべきである。

16 ② 告げるべき範囲

17 売買契約の場合、事案の発生後、当該事案の存在を告げるべき範囲について、

18 一定の考え方を整理するうえで参照すべき判例や取引実務等が、現時点において

19 は十分に蓄積されていない。

20 このような状況を鑑み、当面の間、過去に前記3.(1)に掲げる事案が発生し

21 ている場合には、宅地建物取引業者は、上記①に掲げる事項について、前記4.

22 の調査を通じて判明した範囲で、買主に対してこれを告げるものとする。

23 なお、取引の対象となる不動産において、前記3.(2)に掲げる事案が発生し

24 ている場合には原則としてこれを告げる必要はないが、人が死亡し、長期間放置

25 されたこと等に伴い特殊清掃等が行われた場合においては、これを認識している

26 宅地建物取引業者は、上記①に掲げる事項並びに発見時期及び臭気・害虫等が発

27 生した旨について、前記3.(1)の場合と同様に、前記4.の調査を通じて判明

28 した範囲で、買主に対してこれを告げるものとする。

29

30 (3)留意事項

31 上記(1)(2)が原則的な対応となるが、これにかかわらず、取引の対象となる

32 不動産における事案の存在に関し、買主・借主からの依頼に応じて追加的な調査を

33 行った場合や、その社会的影響の大きさから買主・借主において特別に把握してお

34 くべき事案があると認識した場合等には、宅地建物取引業者は、前記4.の調査を

35 通じて判明した点を告げる必要がある。この場合においても、調査先の売主・貸主

36 や管理業者から不明であると回答されたとき、あるいは無回答のときには、その旨

37 を告げれば足りるものとする。

9

1 なお、亡くなった方の遺族等、関係者のプライバシーに配慮する必要があること

2 から、氏名、年齢、住所、家族構成や具体的な死亡原因、発見状況等を告げる必要

3 はない。

4 また、買主・借主に事案の存在を告げる際には、後日のトラブル防止の観点から、

5 書面の交付等によることが望ましい。

6

7 6.結び

8 前記のとおり、本ガイドラインは、近時の判例や取引実務等を考慮の上、不動産に

9 おいて過去に人の死が生じた場合における当該不動産の取引に際して宅地建物取引

10 業者が果たすべき責務について、トラブルの未然防止の観点から、現時点において妥

11 当と考えられる一般的な基準をとりまとめたものである。

12 一方、個々の不動産取引においては、買主・借主が納得して判断したうえで取引が

13 行われることが重要であり、宅地建物取引業者においては、トラブルの未然防止の観

14 点から、取引に当たって、買主・借主の意向を事前に十分把握し、いわゆる心理的瑕

15 疵の存在を重要視することを認識した場合には特に慎重に対応することが望ましい。

16 また、本ガイドラインは、あくまで宅地建物取引業者が果たすべき責務について整

17 理したものであるが、宅地建物取引業者のみならず、消費者、賃貸事業者等の取引当

18 事者の判断においても参考にされ、トラブルの未然防止につながることが期待される。

19 なお、本ガイドラインはあくまで、現時点で妥当と考えられる一般的な基準であり、

20 将来においては、本ガイドラインで示した基準が妥当しなくなる可能性も想定される。

21 本ガイドラインは、新たな判例や取引実務の変化を踏まえるとともに、社会情勢や

22 人々の意識の変化に応じて、適時に見直しを行うこととする。

1 横浜地判平成元年9月7日判時 1352 号 126 頁

2 高松高判平成 26 年6月 19 日判時 2236 号 101 頁、東京地判平成 22 年3月8日WJ、大阪高判平成 26 年9月18 日判時 2245 号 22 頁等

3 代理についても、本ガイドライン上、媒介に準じて取り扱うものとする。

4 現時点において、これらの不動産を取引する際には、取引当事者の意向を踏まえつつ、適切に対処する必要がある。

5 オフィス等として用いられる不動産において発生した事案については、それが契約締結の判断に与える影響が一様でないことから本ガイドラインの対象外としているものであり、これらの不動産の取引においては、取引当事者の意向を踏まえつつ、適切に対処する必要がある。

6 例えば、ベランダ等の専用使用が可能な部分のほか、共用の玄関・エレベーター・廊下・階段のうち、買主・借主が日常生活において通常使用すると考えられる部分が該当するものと考えられる。

7 また、地震等の大規模な災害により、対象となる不動産において人の死が生じたか明らかでないような場合には、その旨を告げれば足りるものとする。

8 人口動態統計(令和元年)における「自宅での死亡者数(188,191 人)」から、「傷病及び死亡の外因(16,174人)」を控除した死亡者数が占める割合。

9 東京地判平成 18 年 12 月6日WJほか。

10 自死や孤独死などが発生した住居において、原状回復のために消臭・消毒や清掃を行うサービス(「遺品整理のサービスをめぐる現状に関する調査結果報告書」(令和 2 年 3 月 総務省行政評価局)))

11 管理業者から提供される情報の範囲については、管理業者と管理組合との間で締結された管理受託契約や、分譲マンションの管理規約等により定められている。

12 売買契約については、主要な不動産関係団体の提供する告知書(物件状況等報告書)において、既に、事件・事故・自死等の事案に係る項目が含まれている。

13 告知書(物件状況等報告書)においても、適切な記載例が分かりやすく示されていることが望ましい。

14 高松高判平成 26 年6月 19 日判時 2236 号 101 頁

15 本ガイドラインにおいては、他殺・自死・事故死の別を指すものとする。

16 例えば、(独)都市再生機構では、入居者が物件内等で死亡した住宅を特別募集住宅として募集している。(https://www.ur-net.go.jp/chintai/tokubetsu)

17 交換契約においても、本ガイドライン上、売買契約に準じた扱いとする。

相続等により取得した不動産の登記義務などについての民法の改正について

 相続等により取得した不動産の登記義務などについての民法の改正について

民法等の一部を改正する法律

可決成立日 令和3年4月21日

公布日    令和3年4月28日

官報掲載日 令和3年4月28日

施行日    原則として公布の日から2年以内

第204回国会 衆議院 法務委員会 第6号 令和3年3月23日

https://kokkai.ndl.go.jp/#/detail?minId=120405206X00620210323&spkNum=3&single

・持分の過半数の共有者の所在が分からない場合の管理行為

 共有者の一部が不特定又は所在不明である場合に、裁判所においてそのことを確認し、かつ公告を実施するなどの手続を取った上で、管理人の選任を経ることなく、所在等不明共有者以外の共有者全員の同意により、又はその持分の過半数の決定によって共有物の変更又は管理を可能とする仕組みを創設。

・共有者の一部の所在等が不明である場合の変更・処分行為について

 共有物分割訴訟には、共有者全員を当事者としなければならないなどの手続上の負担があることも踏まえまして、共有者の一部の所在等が不明である場合に、訴訟手続ではなく非訟手続の下で、共有者全員を当事者とすることなく、他の共有者が適正な代価を支払った上で所在等不明共有者の持分を取得したり譲渡したりすることができる仕組みを創設。

・所在不明な共有者、相続人の探索方法について

 一般論として、例えば共有者の所在を知ることができないと認められるときには、登記簿や住民票といった公的記録を調査し、その住所に当該共有者が居住しているのかを調査してその所在が不明であることを立証。共有者が死亡して相続が開始しているケースでは、相続人やその所在を確認するため、戸籍や相続人の住民票などの調査が必要となるほか、当該不動産の利用状況を確認したり、他に連絡を取ることができる相続人がいればその相続人に確認してみるなど。

・誰々ほか十六名のような不動産登記記録の表題部記載について

 表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律に基づいて対応することが可能・登記官において探索等を行ってもその共有者が不明なケースでは、裁判所が管理命令を発し、その選任した管理人がその共有持分の管理、処分を行うことができる。

 所有者等不明共有者の持分の取得、譲渡の制度も表題部所有者不明土地について適用することが可能。申立人が、表題部所有者不明土地の共有者が不明であることを立証し、裁判所が命ずる金銭を供託するなど所要の手続を取れば、管理人の選任を経ることなく持分の取得、譲渡をすることができる。

・登記名義人が五十年以上前に死亡している土地について、子供の兄弟が三人いることが分かっている、二人についてはやっと連絡が取れました、でも、残り一人についてはどうも外国で亡くなっているらしい、相続人がどれだけいるかも分からない。この土地を譲り受けたい、あるいは処分したいという場合

 制度を利用し、遺産分割を経ることなく、他の相続人が当該土地の持分を取得するなどして譲渡することも可能。

・ごみ屋敷への管理不全建物管理命の適用可能性について

 ごみ屋敷についても、他人の権利利益の侵害の状況等によっては管理不全建物管理命の要件を満たす場合はある。

・相続人申告登記がされた後に遺産分割があったケースについて

遺産分割成立の日から三年以内に遺産分割の内容を踏まえた登記申請をする義務を負う。

・遺言が作成されていた場合

 遺言により不動産を取得すると定められた者は、所有権を取得したことを知った日から三年以内にその旨の所有権の移転の登記の申請か、相続人申告登記の申出をする義務を負う。

・相続人申告登記の添付書面について

 申出をする相続人が、被相続人の相続人であることが分かる当該相続人の戸籍謄本を提出。

・相続登記申請をするための登録免許税(現行は不動産の固定資産税評価額の0.4%)について

令和四年度税制改正において必要な措置を検討。

・住所等の変更登記に当たって、他の公的機関との情報連携について

自然人・・・所有権の登記名義人から、その氏名、住所のほか、生年月日等の情報を提供してもらい、これを検索キーとして法務局側で定期的に住基ネットに照会して情報の提供を受けることにより、住所等の変更の有無を確認。

法人・・・省内のシステム間連携による対応が可能。法人の住所等に変更が生じた場合には、不動産登記システム側からの定期的な照会を要さずに、商業・法人登記のシステムから不動産登記システムにその変更情報を通知することにより、住所等の変更があったことを把握。登記官が職権的に住所等の変更の登記を行うことになる。

・改正法の施行日前に相続の開始等があった場合

 原則として適用。施行日前に既に相続が開始した場合又は住所等の変更があった場合であっても、登記の申請に必要な期間を確保する観点から、少なくとも施行日から三年間又は二年間の猶予期間を置く。

 施行日前に相続が開始した遺産の分割について、長期間が経過している場合には、法定相続分等の割合により分割を行うことを可能とすべく、改正法を適用。施行日前に生じた相続について、改正後の規定を適用することとしつつ、少なくとも施行日から五年間は具体的相続分による遺産分割の請求を求めることができる。

・管理不全土地管理の制度について地方公共団体の長などを請求権者としなかった理由

 管理不全土地管理制度について権利利益を侵害されるなどの利害関係の有無に関係なく地方公共団体に申立て権を付与することは、現行の所有者不明土地特措法で定められた目的の範囲を超えており、その是非については、同法の趣旨、目的や、同法における管理不全土地対策の位置づけも踏まえ、国土管理の観点から、別途検討すべき課題と整理された。

・管理不全土地、管理不全建物管理命令の申立て権者である利害関係人について

例えば公共事業の実施者などの土地の利用、取得を希望する者。隣地に擁壁が設置されている場合、劣化して倒壊して、それによる土砂崩れが生ずるおそれがあるというようなケースで、そのことを主張するその隣地の所有者など。

 ごみ屋敷状態で、草が生えて獣が入って悪臭が漂うとか、具体的な意味での隣地に対する影響が出ていればこれに該当する可能性はあるが、町内会あるいは自治体も含めて申立て権を認めるかどうか、利害関係に含めるかどうかは、引き続き議論をして検討。

・相続登記申請と住所変更登記申請義務について、過料の制裁を科さない正当な理由がある場合

 相続が数次にわたって何度も発生して、相続人が数十人を超えるなど極めて多数に上る場合。戸籍謄本等の必要な資料の収集や他の相続人の把握に時間を要するケース。遺言の有効性、遺産の範囲等が争われているケース。

 申請義務を行う相続人自身が病気で入院している場合。登記費用を負担する能力がないケースについては、その財産状況や具体的な生活環境にもより、正当な理由があるとされる場合もある。

・DV被害者等の住所等の情報に係る部分について

 課長通知に基づく実務運用として、既に本人以外の者に対しては閲覧を制限する措置が取られているが、今回法制化。

20211004追記 改正後不登法第76条の6関係

Q 改正後に所有権を取得した人は、全員が検索用情報を提供するか。

A 現在、登録のある人は全員提供している。法務局が住民基本台帳ネットワークシステムに照会する基準をどのように設けるのかの問題。住民基本台帳法別表第一(三十一) 

Q改正前に所有権を取得して検索用情報を提供していない人は過料の対象となるか。

A 施行日前に既に住所等の変更があった場合であっても、少なくとも施行日から三年間又は二年間の猶予期間を置く。

Q 住所変更登記申請義務について、過料の制裁を科さない正当な理由がある場合とは

A 申請義務を行う相続人自身が病気で入院している場合。登記費用を負担する能力がないケースについては、その財産状況や具体的な生活環境にもより、正当な理由があるとされる場合もある。

Q 他の公的機関との情報連携について(自然人の場合)

A 所有権の登記名義人から、その氏名、住所のほか、生年月日等の情報を提供してもらい、これを検索キーとして法務局側で定期的に住基ネットに照会して情報の提供を受けることにより、住所等の変更の有無を確認。

第204回国会 衆議院 法務委員会 第7号 令和3年3月24日

https://kokkai.ndl.go.jp/#/detail?minId=120405206X00720210324&spkNum=5&single

・登記官が他の公的機関から所有権の登記名義人の死亡情報を取得をして、これに基づいて不動産登記にその旨を符号によって表示する制度の情報源

 住民基本台帳、また固定資産課税台帳のほか、長期相続登記等未了土地や表題部所有者不明土地の解消事業、また登記所備付け地図作成事業など。

・所有者不明土地、所有者不明建物管理人が、裁判所の許可を得て土地、建物を売却等した場合の不服申し立てについて

 借地借家人等の利害関係者を含めて、不服を申し立てることができない。

・沖縄県の大戦によって不動産登記とか公図とか戸籍が全て焼失してしまっている場合。今まで、その焼失等によって生じた沖縄の所有者不明土地について、沖縄の復帰に伴う特別措置法に基づき沖縄県又は市町村が管理するという便宜的な対応をしている。この不動産について、相続人があることが明らかでないときは相続財産法人となるが、その近隣に居住する者は戸籍謄本を確認することができないので、それが相続財産法人となっているかどうかすら確認ができないが、所有者不明土地管理の制度を利用することについて

 利用可能。

・沖縄県にある不動産登記簿にについて、表題部の所有者欄に所有者名の記載がない空欄、又は不明地と記載されていて、便宜的に県とか市町村の名前が記載されている。本来の所有者は不明であるが、その管理を地方自治体が行えることが沖縄の特別措置法によって担保されている。管理をしている地方自治体が利害関係人に含まれ、申立てをすることができるのか。

 沖縄県又はその市町村が管理している不動産について、所有者が不特定又は所在不明なものであることから、個別の事案における裁判所の判断に委ねられる。裁判所が選任する管理人による管理の必要性が認められる場合には、所有者不明土地管理命令が発令されるケースもあり得る。

 沖縄の復帰に伴う特別措置に関する法律第六十二条に基づいて現に土地の管理を行っている地方公共団体が、利害関係人として所有者不明土地管理命令を請求することができるかについては、個別の事案ごとの判断による。事案によっては利害関係が認められるケースもあり得る。

・外国籍の方の遺族年金等の請求について

 請求者との婚姻や親子関係などを明らかにすることができる書類として、戸籍謄本又は抄本の提出。外国籍の方の場合は、戸籍に代えて、請求者等の属する国の公的機関の発行した出生証明書や婚姻証明書などを提出。

 請求者等の属する国の公的機関が発行した証明書で、いつから婚姻されていたかなどの必要な確認ができない場合は、外国人登録原票を提出するケースもある。

第204回国会 衆議院 法務委員会 第8号 令和3年3月30日

https://kokkai.ndl.go.jp/#/detail?minId=120405206X00820210330&spkNum=3&single

・居住者がいる建物がごみ屋敷となった場合

 居住者が、発令後に管理不全建物管理人の管理を妨げる行為をすることが見込まれるときは、管理人を選任したとしても、結局、訴訟を起こさざるを得ず、実効的な管理をすることが困難となる可能性が高いことから、権利利益を侵害されている者としては、この管理不全建物管理命令を求めるよりも、訴訟を提起して物権的請求権等を行使することが適当である場合もある。

 建物がいわゆるごみ屋敷状態となった場合、その居住者が管理人による管理を妨げる行為をすることが見込まれているケースでは、利用することが難しい。

 建物所有者が建物をごみ屋敷状態としたまま遠方に移住しており、建物を放置し居住者もいない、は居住者がいても管理人の求めに応じて任意に退出することが見込まれるようなケースでは、この制度の利用が想定される。

・利害関係人があらかじめ費用や報酬に見込まれる予納金を支払った場合

 管理人はその予納金から費用や報酬を受け取ることになり利害関係人は、別途、最終的な費用の負担者である土地の所有者に対して求償することになると考えられる。

・相続開始後、遺言がなく遺産分割も直ぐには調わない場合の最初の登記について

 法務省としては、法定相続分での相続登記ではなく、より簡易な手続である相続人申告登記が利用されて相続登記の申請義務が履行されるようになることを想定。

・管理人による共有持分の処分、共有物の分割協議、持分の全部を取得

 裁判所の許可を得て、所在が明らかな共同相続人との間で可能。

・選任される管理人の要件について

 専門職という縛りはない。

・所有者不明建物管理人が自ら建物を取り壊すことについて

 基本的には許されない。建物の管理を続けるのが困難なケースにおいて、所有者の出現可能性や建物の所有者に生ずる不利益の程度などを考慮した上で、建必要かつ相当と認められる場合には、管理人が、裁判所の許可を得た上で、建物を取り壊すことも可能。

・遺言がある場合で、2つの不動産のうち1つの不動産について相続登記を申請した場合の3年以内の起算日

 相続人が遺言書を添付して特定の不動産についての登記の申請をした際に、遺言書が他の不動産の所有権についても当該申請人に移転する旨を内容とするものであった場合に登記官が通知したとき。

・相続登記等の申請期間の最初の日

 原則として、当事者の主観。

・相続登記等の申請期間について

 相続人申告登記の申出が可能。

 遺産分割がされたケースについては、遺産分割が相続開始に伴う登記申請義務の三年以内にされた場合には、登記の申請をすることになります。

 遺産分割が三年以内にされないケースは、相続人申告登記をすることで義務の履行。その後、遺産分割が現に調ったケースは、遺産分割の日から三年以内に登記の申請。

 遺言が作成されていた場合、遺言により不動産を取得する者は、所有権を取得したことを知った日から三年以内。

・隣の土地を所有している人、住んでいる人が不明な場合に立ち入る際の事前通知について

 立ち入る際に隣地の所有者等の所在が不明な場合、事前の通知は不要。立ち入って隣地を使用した後に所有者の所在が明らかになった場合、所在が明らかになった所有者に対して事後的に通知する必要がある。

第204回国会 参議院 法務委員会 第7号 令和3年4月13日

https://kokkai.ndl.go.jp/#/detail?minId=120415206X00720210413&spkNum=4&single

・相続人申告登記の申出をした後、遺産分割が調わない場合

  遺産分割が調うまで、申告登記のままで可能。期間は問わない。

・数次相続がある場合の相続登記等の申請期間について

 相続開始時から十年を経過するまでに家庭裁判所に遺産分割の請求をしなかった場合には、原則として具体的相続分による遺産分割を求めることができない。遺産分割は法定相続分又は指定相続分によりする。

 数次相続のケースは、個々の相続ごとにこの十年の期間の経過が問題となり、その開始時から十年を経過した遺産の分割については、原則として具体的相続分による遺産分割を求めることはできなくなる。改正法の七十六条の二は、二次相続、三次相続の場合も含む。

 家庭裁判所は、相続開始時から十年を経過した後に遺産分割の申立てがされた場合には、特別受益や寄与分については考慮せずに法定相続分又は指定相続分によって遺産の分割をすることになる。

・申告登記をした相続人が亡くなった場合、この場合には二次相続人は申告登記できるか。

 可能。

第204回国会 参議院 法務委員会 第9号 令和3年4月20日

https://kokkai.ndl.go.jp/#/detail?minId=120415206X00920210420&spkNum=4&single

・自己に相続があったことを知ったことについて

相続人において、相続が開始した事実を知らないケース、不動産の存在自体を知らないケース、具体的な土地の地番等までは把握していないなどといったケースは、この要件を満たすことはなく、相続登記の申請義務は生じない。

20210906追記 民法・不動産登記法部会資料 57

民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)等の改正に関する要綱案 (案) (2)

https://www.moj.go.jp/content/001339375.pdf

所有不動産記録証明書(仮称)の代理交付請求について

 郵送による本人申請請求の場合・・・本人確認書類の写しを送付させた上で、対象不動産の登記に記録された本人の住所地(所有権の登記名義人の相続人その他の一般承継人による交付請求の場合にはその本人の住所証明書類の原本に記載された住所地)宛てに送付するなどして、請求者本人が確実にその書類を取得するように配慮することが考えられる。

 代理申請の場合・・・委任者の実印が押印された委任状及び印鑑登録証明書(例えば、3か月以内に取得したものに限定する。)の提供がある場合には、受任者宛ての送付を可能とするといった手法を併用することも考えられる。

・相続放棄で遡及的に持分を失った人も、持分を取得した人が登記申請を行うまでは申請義務は免れないか・・・免れる。
民法・不動産登記法部会資料 60民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)等の改正に関する要綱案 (案) (5)p2
https://www.moj.go.jp/content/001340118.pdf

民法 第209条(隣地の使用)

 同条第1項中「境界又はその付近において障壁又は建物を築造し又は修繕する」を「次に掲げる目的の」に、「の使用を請求する」を「を使用する」に改め、同項ただし書中「隣人」を「住家については、その居住者」に改め、「その住家に」を削り、同項に次の各号を加える。

  1 境界又はその付近における障壁、建物その他の工作物の築造、収去又は修繕

  2 境界標の調査又は境界に関する測量

  3 第233条第3項の規定による枝の切取り

 第2項中「前項」を「第1項」に、「隣人」を「隣地の所有者又は隣地使用者」に改め、同項を同条第4項とし、同条第1項の次に次の2項を加える。

 2 前項の場合には、使用の日時、場所及び方法は、隣地の所有者及び隣地を現に使用している者(以下この条において「隣地使用者」という。)のために損害が最も少ないものを選ばなければならない。

 3 第1項の規定により隣地を使用する者は、あらかじめ、その目的、日時、場所及び方法を隣地の所有者及び隣地使用者に通知しなければならない。ただし、あらかじめ通知することが困難なときは、使用を開始した後、遅滞なく、通知することをもって足りる。

 第213条の2(継続的給付を受けるための設備の設置権等)

 土地の所有者は、他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用しなければ電気、ガス又は水道水の供給その他これらに類する継続的給付(以下この項及び次条第1項において「継続的給付」という。)を受けることができないときは、継続的給付を受けるため必要な範囲内で、他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用することができる。

 2 前項の場合には、設備の設置又は使用の場所及び方法は、他の土地又は他人が所有する設備(次項において「他の土地等」という。)のために損害が最も少ないものを選ばなければならない。

 3 第1項の規定により他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用する者は、あらかじめ、その目的、場所及び方法を他の土地等の所有者及び他の土地を現に使用している者に通知しなければならない。

 4 第1項の規定による権利を有する者は、同項の規定により他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用するために当該他の土地又は当該他人が所有する設備がある土地を使用することができる。この場合においては、第209条第1項ただし書及び第2項から第4項までの規定を準用する。

 5 第1項の規定により他の土地に設備を設置する者は、その土地の損害(前項において準用する第209条第4項に規定する損害を除く。)に対して償金を支払わなければならない。ただし、1年ごとにその償金を支払うことができる。

 6 第1項の規定により他人が所有する設備を使用する者は、その設備の使用を開始するために生じた損害に対して償金を支払わなければならない。

 7 第1項の規定により他人が所有する設備を使用する者は、その利益を受ける割合に応じて、その設置、改築、修繕及び維持に要する費用を負担しなければならない。

 第213条の3

 分割によって他の土地に設備を設置しなければ継続的給付を受けることができない土地が生じたときは、その土地の所有者は、継続的給付を受けるため、他の分割者の所有地のみに設備を設置することができる。この場合においては、前条第5項の規定は、適用しない。

 2 前項の規定は、土地の所有者がその土地の一部を譲り渡した場合について準用する。

 第233条(竹木の枝の切除及び根の切取り)

 第1項中「隣地」を「土地の所有者は、隣地」に改め、同条第2項を同条第4項とし、同条第1項の次に次の2項を加える。

 2 前項の場合において、竹木が数人の共有に属するときは、各共有者は、その枝を切り取ることができる。

 3 第1項の場合において、次に掲げるときは、土地の所有者は、その枝を切り取ることができる。

 1 竹木の所有者に枝を切除するよう催告したにもかかわらず、竹木の所有者が相当の期間内に切除しないとき。

 2 竹木の所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき。

 3 急迫の事情があるとき。

 第249条(共有物の使用)

 次の2項を加える。

 2 共有物を使用する共有者は、別段の合意がある場合を除き、他の共有者に対し、自己の持分を超える使用の対価を償還する義務を負う。

 3 共有者は、善良な管理者の注意をもって、共有物の使用をしなければならない。

 第251条(共有物の変更)

 中「変更」の下に「(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。次項において同じ。)」を加え、同条に次の1項を加える。

 2 共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有者の請求により、当該他の共有者以外の他の共有者の同意を得て共有物に変更を加えることができる旨の裁判をすることができる。

 第252条(共有物の管理)

 中「は、前条の場合を除き」を「(次条第1項に規定する共有物の管理者の選任及び解任を含み、共有物に前条第1項に規定する変更を加えるものを除く。次項において同じ。)は」に改め、同条ただし書を削り、同条に後段として次のように加える。

 共有物を使用する共有者があるときも、同様とする。

 2 裁判所は、次の各号に掲げるときは、当該各号に規定する他の共有者以外の共有者の請求により、当該他の共有者以外の共有者の持分の価格に従い、その過半数で共有物の管理に関する事項を決することができる旨の裁判をすることができる。

 1 共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき。

 2 共有者が他の共有者に対し相当の期間を定めて共有物の管理に関する事項を決することについて賛否を明らかにすべき旨を催告した場合において、当該他の共有者がその期間内に賛否を明らかにしないとき。

 3 前2項の規定による決定が、共有者間の決定に基づいて共有物を使用する共有者に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない。

 4 共有者は、前3項の規定により、共有物に、次の各号に掲げる賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利(以下この項において「賃借権等」という。)であって、当該各号に定める期間を超えないものを設定することができる。

  1 樹木の栽植又は伐採を目的とする山林の賃借権等 10年

  2 前号に掲げる賃借権等以外の土地の賃借権等 5年

  3 建物の賃借権等 3年

  4 動産の賃借権等 6箇月

 5 各共有者は、前各項の規定にかかわらず、保存行為をすることができる。

 第252条の2(共有物の管理者)

 共有物の管理者は、共有物の管理に関する行為をすることができる。ただし、共有者の全員の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。次項において同じ。)を加えることができない。

 2 共有物の管理者が共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有物の管理者の請求により、当該共有者以外の共有者の同意を得て共有物に変更を加えることができる旨の裁判をすることができる。

 3 共有物の管理者は、共有者が共有物の管理に関する事項を決した場合には、これに従ってその職務を行わなければならない。

 4 前項の規定に違反して行った共有物の管理者の行為は、共有者に対してその効力を生じない。ただし、共有者は、これをもって善意の第三者に対抗することができない。

 第258条(裁判による共有物の分割)

 同条第1項中「とき」の下に「、又は協議をすることができないとき」を加え、同条第2項中「の場合において、」を「に規定する方法により」に改め、「の現物」を削り、同項を同条第3項とし、同条第1項の次に次の1項を加える。

 2 裁判所は、次に掲げる方法により、共有物の分割を命ずることができる。

 1 共有物の現物を分割する方法

 2 共有者に債務を負担させて、他の共有者の持分の全部又は一部を取得させる方法

 4 裁判所は、共有物の分割の裁判において、当事者に対して、金銭の支払、物の引渡し、登記義務の履行その他の給付を命ずることができる。

 第258条の2

 共有物の全部又はその持分が相続財産に属する場合において、共同相続人間で当該共有物の全部又はその持分について遺産の分割をすべきときは、当該共有物又はその持分について前条の規定による分割をすることができない。

 2 共有物の持分が相続財産に属する場合において、相続開始の時から10年を経過したときは、前項の規定にかかわらず、相続財産に属する共有物の持分について前条の規定による分割をすることができる。ただし、当該共有物の持分について遺産の分割の請求があった場合において、相続人が当該共有物の持分について同条の規定による分割をすることに異議の申出をしたときは、この限りでない。

 3 相続人が前項ただし書の申出をする場合には、当該申出は、当該相続人が前条第1項の規定による請求を受けた裁判所から当該請求があった旨の通知を受けた日から2箇月以内に当該裁判所にしなければならない。

 第262条の2(所在等不明共有者の持分の取得)

 不動産が数人の共有に属する場合において、共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有者の請求により、その共有者に、当該他の共有者(以下この条において「所在等不明共有者」という。)の持分を取得させる旨の裁判をすることができる。この場合において、請求をした共有者が2人以上あるときは、請求をした各共有者に、所在等不明共有者の持分を、請求をした各共有者の持分の割合で按分してそれぞれ取得させる。

 2 前項の請求があった持分に係る不動産について第258条第1項の規定による請求又は遺産の分割の請求があり、かつ、所在等不明共有者以外の共有者が前項の請求を受けた裁判所に同項の裁判をすることについて異議がある旨の届出をしたときは、裁判所は、同項の裁判をすることができない。

 3 所在等不明共有者の持分が相続財産に属する場合(共同相続人間で遺産の分割をすべき場合に限る。)において、相続開始の時から10年を経過していないときは、裁判所は、第1項の裁判をすることができない。

 4 第1項の規定により共有者が所在等不明共有者の持分を取得したときは、所在等不明共有者は、当該共有者に対し、当該共有者が取得した持分の時価相当額の支払を請求することができる。

 5 前各項の規定は、不動産の使用又は収益をする権利(所有権を除く。)が数人の共有に属する場合について準用する。

 第262条の3(所在等不明共有者の持分の譲渡)

 不動産が数人の共有に属する場合において、共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有者の請求により、その共有者に、当該他の共有者(以下この条において「所在等不明共有者」という。)以外の共有者の全員が特定の者に対してその有する持分の全部を譲渡することを停止条件として所在等不明共有者の持分を当該特定の者に譲渡する権限を付与する旨の裁判をすることができる。

 2 所在等不明共有者の持分が相続財産に属する場合(共同相続人間で遺産の分割をすべき場合に限る。)において、相続開始の時から10年を経過していないときは、裁判所は、前項の裁判をすることができない。

 3 第1項の裁判により付与された権限に基づき共有者が所在等不明共有者の持分を第三者に譲渡したときは、所在等不明共有者は、当該譲渡をした共有者に対し、不動産の時価相当額を所在等不明共有者の持分に応じて按分して得た額の支払を請求することができる。

 4 前3項の規定は、不動産の使用又は収益をする権利(所有権を除く。)が数人の共有に属する場合について準用する。

 第264条(準共有)

 中「この節」の下に「(第262条の二及び第262条の3を除く。)」を加える。

 第264条(準共有)

 中「この節」の下に「(第262条の二及び第262条の3を除く。)」を加える。

 第264条の3(所有者不明土地管理人の権限)

 前条第4項の規定により所有者不明土地管理人が選任された場合には、所有者不明土地管理命令の対象とされた土地又は共有持分及び所有者不明土地管理命令の効力が及ぶ動産並びにその管理、処分その他の事由により所有者不明土地管理人が得た財産(以下「所有者不明土地等」という。)の管理及び処分をする権利は、所有者不明土地管理人に専属する。

 2 所有者不明土地管理人が次に掲げる行為の範囲を超える行為をするには、裁判所の許可を得なければならない。ただし、この許可がないことをもって善意の第三者に対抗することはできない。

 1 保存行為

 2 所有者不明土地等の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為

 第264条の4(所有者不明土地等に関する訴えの取扱い)

 所有者不明土地管理命令が発せられた場合には、所有者不明土地等に関する訴えについては、所有者不明土地管理人を原告又は被告とする。

 第264条の5(所有者不明土地管理人の義務)

 所有者不明土地管理人は、所有者不明土地等の所有者(その共有持分を有する者を含む。)のために、善良な管理者の注意をもって、その権限を行使しなければならない。

 2 数人の者の共有持分を対象として所有者不明土地管理命令が発せられたときは、所有者不明土地管理人は、当該所有者不明土地管理命令の対象とされた共有持分を有する者全員のために、誠実かつ公平にその権限を行使しなければならない。

 第264条の6(所有者不明土地管理人の解任及び辞任)

 所有者不明土地管理人がその任務に違反して所有者不明土地等に著しい損害を与えたことその他重要な事由があるときは、裁判所は、利害関係人の請求により、所有者不明土地管理人を解任することができる。

 2 所有者不明土地管理人は、正当な事由があるときは、裁判所の許可を得て、辞任することができる。

 第264条の7(所有者不明土地管理人の報酬等)

 所有者不明土地管理人は、所有者不明土地等から裁判所が定める額の費用の前払及び報酬を受けることができる。

 2 所有者不明土地管理人による所有者不明土地等の管理に必要な費用及び報酬は、所有者不明土地等の所有者(その共有持分を有する者を含む。)の負担とする。

 第264条の8(所有者不明建物管理命令)

 裁判所は、所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない建物(建物が数人の共有に属する場合にあっては、共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない建物の共有持分)について、必要があると認めるときは、利害関係人の請求により、その請求に係る建物又は共有持分を対象として、所有者不明建物管理人(第4項に規定する所有者不明建物管理人をいう。以下この条において同じ。)による管理を命ずる処分(以下この条において「所有者不明建物管理命令」という。)をすることができる。

 2 所有者不明建物管理命令の効力は、当該所有者不明建物管理命令の対象とされた建物(共有持分を対象として所有者不明建物管理命令が発せられた場合にあっては、共有物である建物)にある動産(当該所有者不明建物管理命令の対象とされた建物の所有者又は共有持分を有する者が所有するものに限る。)及び当該建物を所有し、又は当該建物の共有持分を有するための建物の敷地に関する権利(賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利(所有権を除く。)であって、当該所有者不明建物管理命令の対象とされた建物の所有者又は共有持分を有する者が有するものに限る。)に及ぶ。

 3 所有者不明建物管理命令は、所有者不明建物管理命令が発せられた後に当該所有者不明建物管理命令が取り消された場合において、当該所有者不明建物管理命令の対象とされた建物又は共有持分並びに当該所有者不明建物管理命令の効力が及ぶ動産及び建物の敷地に関する権利の管理、処分その他の事由により所有者不明建物管理人が得た財産について、必要があると認めるときも、することができる。

 4 裁判所は、所有者不明建物管理命令をする場合には、当該所有者不明建物管理命令において、所有者不明建物管理人を選任しなければならない。

 5 第264条の3から前条までの規定は、所有者不明建物管理命令及び所有者不明建物管理人について準用する。

 第264条の9(管理不全土地管理命令)

 裁判所は、所有者による土地の管理が不適当であることによって他人の権利又は法律上保護される利益が侵害され、又は侵害されるおそれがある場合において、必要があると認めるときは、利害関係人の請求により、当該土地を対象として、管理不全土地管理人(第3項に規定する管理不全土地管理人をいう。以下同じ。)による管理を命ずる処分(以下「管理不全土地管理命令」という。)をすることができる。

 2 管理不全土地管理命令の効力は、当該管理不全土地管理命令の対象とされた土地にある動産(当該管理不全土地管理命令の対象とされた土地の所有者又はその共有持分を有する者が所有するものに限る。)に及ぶ。

 3 裁判所は、管理不全土地管理命令をする場合には、当該管理不全土地管理命令において、管理不全土地管理人を選任しなければならない。

 第264条の10(管理不全土地管理人の権限)

 管理不全土地管理人は、管理不全土地管理命令の対象とされた土地及び管理不全土地管理命令の効力が及ぶ動産並びにその管理、処分その他の事由により管理不全土地管理人が得た財産(以下「管理不全土地等」という。)の管理及び処分をする権限を有する。

 2 管理不全土地管理人が次に掲げる行為の範囲を超える行為をするには、裁判所の許可を得なければならない。ただし、この許可がないことをもって善意でかつ過失がない第三者に対抗することはできない。

 1 保存行為

 2 管理不全土地等の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為

 3 管理不全土地管理命令の対象とされた土地の処分についての前項の許可をするには、その所有者の同意がなければならない。

 第264条の11(管理不全土地管理人の義務)

 管理不全土地管理人は、管理不全土地等の所有者のために、善良な管理者の注意をもって、その権限を行使しなければならない。

 2 管理不全土地等が数人の共有に属する場合には、管理不全土地管理人は、その共有持分を有する者全員のために、誠実かつ公平にその権限を行使しなければならない。

 第264条の12(管理不全土地管理人の解任及び辞任)

 管理不全土地管理人がその任務に違反して管理不全土地等に著しい損害を与えたことその他重要な事由があるときは、裁判所は、利害関係人の請求により、管理不全土地管理人を解任することができる。

 2 管理不全土地管理人は、正当な事由があるときは、裁判所の許可を得て、辞任することができる。

 第264条の13(管理不全土地管理人の報酬等)

 管理不全土地管理人は、管理不全土地等から裁判所が定める額の費用の前払及び報酬を受けることができる。

 2 管理不全土地管理人による管理不全土地等の管理に必要な費用及び報酬は、管理不全土地等の所有者の負担とする。

 第264条の14(管理不全建物管理命令)

 裁判所は、所有者による建物の管理が不適当であることによって他人の権利又は法律上保護される利益が侵害され、又は侵害されるおそれがある場合において、必要があると認めるときは、利害関係人の請求により、当該建物を対象として、管理不全建物管理人(第3項に規定する管理不全建物管理人をいう。第4項において同じ。)による管理を命ずる処分(以下この条において「管理不全建物管理命令」という。)をすることができる。

 2 管理不全建物管理命令は、当該管理不全建物管理命令の対象とされた建物にある動産(当該管理不全建物管理命令の対象とされた建物の所有者又はその共有持分を有する者が所有するものに限る。)及び当該建物を所有するための建物の敷地に関する権利(賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利(所有権を除く。)であって、当該管理不全建物管理命令の対象とされた建物の所有者又はその共有持分を有する者が有するものに限る。)に及ぶ。

 3 裁判所は、管理不全建物管理命令をする場合には、当該管理不全建物管理命令において、管理不全建物管理人を選任しなければならない。

 4 第264条の10から前条までの規定は、管理不全建物管理命令及び管理不全建物管理人について準用する。

 第392条(共同抵当における代価の配当)第1項中

 「按分する」を「按分する」に改める。

 第897条の2(相続財産の保存)

 家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、いつでも、相続財産の管理人の選任その他の相続財産の保存に必要な処分を命ずることができる。ただし、相続人が1人である場合においてその相続人が相続の単純承認をしたとき、相続人が数人ある場合において遺産の全部の分割がされたとき、又は第952条第1項の規定により相続財産の清算人が選任されているときは、この限りでない。

 2 第27条から第29条までの規定は、前項の規定により家庭裁判所が相続財産の管理人を選任した場合について準用する。

 第898条(共同相続の効力)

 に次の1項を加える。

 2 相続財産について共有に関する規定を適用するときは、第900条から第902条までの規定により算定した相続分をもって各相続人の共有持分とする。

 第904条の3(期間経過後の遺産の分割における相続分)

 前3条の規定は、相続開始の時から10年を経過した後にする遺産の分割については、適用しない。ただし、次の各号のいずれかに該当するときは、この限りでない。

 1 相続開始の時から10年を経過する前に、相続人が家庭裁判所に遺産の分割の請求をしたとき。

 2 相続開始の時から始まる10年の期間の満了前6箇月以内の間に、遺産の分割を請求することができないやむを得ない事由が相続人にあった場合において、その事由が消滅した時から6箇月を経過する前に、当該相続人が家庭裁判所に遺産の分割の請求をしたとき。

 第907条(遺産の分割の協議又は審判等)

 の見出し中「審判等」を「審判」に改め、同条第1項中「次条」を「次条第1項」に改め、「場合」の下に「又は同条第2項の規定により分割をしない旨の契約をした場合」を加え、同条第3項を削る。

 第908条(遺産の分割の方法の指定及び遺産の分割の禁止)

 に次の4項を加える。

 2 共同相続人は、5年以内の期間を定めて、遺産の全部又は一部について、その分割をしない旨の契約をすることができる。ただし、その期間の終期は、相続開始の時から10年を超えることができない。

 3 前項の契約は、5年以内の期間を定めて更新することができる。ただし、その期間の終期は、相続開始の時から10年を超えることができない。

 4 前条第2項本文の場合において特別の事由があるときは、家庭裁判所は、5年以内の期間を定めて、遺産の全部又は一部について、その分割を禁ずることができる。ただし、その期間の終期は、相続開始の時から10年を超えることができない。

 5 家庭裁判所は、5年以内の期間を定めて前項の期間を更新することができる。ただし、その期間の終期は、相続開始の時から10年を超えることができない。

 第918条(相続人による管理)」

 同条第2項及び第3項を削る。

 第926条(限定承認者による管理)

 第2項中「、第650条第1項」を「並びに第650条第1項」に改め、「並びに第918条第2項及び第3項」を削る。

 第936条(相続人が数人ある場合の相続財産の管理人)

 (見出しを含む。)中「管理人」を「清算人」に改める。

 第940条(相続の放棄をした者による管理)

 第1項中「によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで」を「の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は第952条第1項の相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間」に、「の管理を継続しなければ」を「を保存しなければ」に改め、同条第2項中「、第650条第1項」を「並びに第650条第1項」に改め、「並びに第918条第2項及び第3項」を削る。

 第952条(相続財産の管理人の選任)

 の見出し及び同条第1項中「管理人」を「清算人」に改め、同条第2項中「管理人」を「清算人」に、「これ」を「、その旨及び相続人があるならば一定の期間内にその権利を主張すべき旨」に改め、同項に後段として次のように加える。

   この場合において、その期間は、6箇月を下ることができない。

 第953条(不在者の財産の管理人に関する規定の準用)

 第954条(見出しを含む。)及び第955条ただし書中「相続財産の管理人」を「相続財産の清算人」に改める。

 第956条(相続財産の管理人の代理権の消滅)

 の見出し及び同条第1項中「相続財産の管理人」を「相続財産の清算人」に改め、同条第2項中「相続財産の管理人」を「相続財産の清算人」に、「管理の」を「清算に係る」に改める。

 第957条(相続債権者及び受遺者に対する弁済)

 第1項中「後2箇月以内に相続人のあることが明らかにならなかった」を削り、「相続財産の管理人は、遅滞なく、すべて」を「相続財産の清算人は、全て」に、「一定の」を「2箇月以上の期間を定めて、その」に、「2箇月を下ることができない」を「同項の規定により相続人が権利を主張すべき期間として家庭裁判所が公告した期間内に満了するものでなければならない」に改める。

 第958条を削る。

 第958条の2(権利を主張する者がない場合)

 中「前条」を「第952条第2項」に、「相続財産の管理人」を「相続財産の清算人」に改め、同条を第958条とする。

 第958条の3(特別縁故者に対する相続財産の分与)

 第2項中「第958条」を「第952条第2項」に改め、同条を第958条の二とする。

二不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)(第二条関係)

改正案

現行

目第次四章(略)

第一節・第二節(略)

第三節(略)

第一款(略)

第二款 所有権に関する登記(第七十三条の二―第七十七条)

第三款~第八款(略)

(登記することができる権利等)

第三条(略)

一~九(略)

十採石権(採石法(昭和二十五年法律第二百九十一号)に規定する採石権をいう。第五十条、第七十条第二項及び第八十二条において同じ。)

(当事者の申請又は嘱託による登記)

第十六条(略)

2第二条第十四号、第五条、第六条第三項、第十条及びこの章(この条、第二十七条、第二十八条、第三十二条、第三十四条、第三十五条、第四十一条、第四十三条から第四十六条まで、第五十一条第五項及び第六項、第五十三条第二項、第五十六条、第五十八条第一項及び第四項、第五十九条第一号、第三号から第六号まで及び第八号、第六十六条、第六十七条、第七十一条、第七十三条第一項第二号から第四号まで、第二項及び第三項、第七十六条から第七十六条の四まで、第七十六条の六、第七十八条から第八十六条まで、第八十八条、第九十条から第九十二条まで、第九十四条、第九十五条第一項、第九十六条、第九十七条、第九十八条第二項、第百一条、第百二条、第百六条、第百八条、第百十二条、第百十四条から第百十七条まで並びに第百十八条第二項、第五項及び第六項を除く。)の規定は、官庁又は公署の嘱託による登記の手続について準用する。

(申請の却下)

第二十五条(略)

一~六(略)

七申請情報の内容である登記義務者(第六十五条、第七十六条の五、第七十七条、第八十九条第一項(同条第二項(第九十五条第二項において準用する場合を含む。)及び第九十五条第二項において準用する場合を含む。)、第九十三条(第九十五条第二項において準用する場合を含む。)又は第百十条前段の場合にあっては、登記名義人)の氏名若しくは名称又は住所が登記記録と合致しないとき。

八~十三(略)

(権利に関する登記の登記事項)

第五十九条権利に関する登記の登記事項は、次のとおりとする。

一~五(略)

六 共有物分割禁止の定め(共有物若しくは所有権以外の財産権について民法(明治二十九年法律第八十九号)第二百五十六条第一項ただし書(同法第二百六十四条において準用する場合を含む。)若しくは第九百八条第二項の規定により分割をしない旨の契約をした場合若しくは同条第一項の規定により被相続人が遺言で共有物若しくは所有権以外の財産権について分割を禁止した場合における共有物若しくは所有権以外の財産権の分割を禁止する定め又は同条第四項の規定により家庭裁判所が遺産である共有物若しくは所有権以外の財産権についてした分割を禁止する審判をいう。第六十五条において同じ。)があるときは、その定め

七・八(略)

(判決による登記等)

第六十三条(略)

2(略)

3遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)による所有権の移転の登記は、第六十条の規定にかかわらず、登記権利者が単独で申請することができる。

(買戻しの特約に関する登記の抹消)

第六十九条の二買戻しの特約に関する登記がされている場合において、契約の日から十年を経過したときは、第六十条の規定にかかわらず、登記権利者は、単独で当該登記の抹消を申請することができる。

(除権決定による登記の抹消等)

第七十条登記権利者は、共同して登記の抹消の申請をすべき者の所在が知れないためその者と共同して権利に関する登記の抹消を申請することができないときは、非訟事件手続法(平成二十三年法律第五十一号)第九十九条に規定する公示催告の申立てをすることができる。

2前項の登記が地上権、永小作権、質権、賃借権若しくは採石権に関する登記又は買戻しの特約に関する登記であり、かつ、登記された存続期間又は買戻しの期間が満了している場合において、相当の調査が行われたと認められるものとして法務省令で定める方法により調査を行ってもなお共同して登記の抹消の申請をすべき者の所在が判明しないときは、その者の所在が知れないものとみなして、同項の規定を適用する。

3前二項の場合において、非訟事件手続法第百六条第一項に規定する除権決定があったときは、第六十条の規定にかかわらず、当該登記権利者は、単独で第一項の登記の抹消を申請することができる。

4(略)

(解散した法人の担保権に関する登記の抹消)

第七十条の二 登記権利者は、共同して登記の抹消の申請をすべき法人が解散し、前条第二項に規定する方法により調査を行ってもなおその法人の清算人の所在が判明しないためその法人と共同して先取特権、質権又は抵当権に関する登記の抹消を申請することができない場合において、被担保債権の弁済期から三十年を経過し、かつ、その法人の解散の日から三十年を経過したときは、第六十条の規定にかかわらず、単独で当該登記の抹消を申請することができる。

第二款 所有権に関する登記

(所有権の登記の登記事項)

第七十三条の二 所有権の登記の登記事項は、第五十九条各号に掲げるもののほか、次のとおりとする。

一 所有権の登記名義人が法人であるときは、会社法人等番号(商業登記法(昭和三十八年法律第百二十五号)第七条(他の法令において準用する場合を含む。)に規定する会社法人等番号をいう。)その他の特定の法人を識別するために必要な事項として法務省令で定めるもの

二 所有権の登記名義人が国内に住所を有しないときは、その国内における連絡先となる者の氏名又は名称及び住所その他の国内における連絡先に関する事項として法務省令で定めるもの

2 前項各号に掲げる登記事項についての登記に関し必要な事項は、法務省令で定める。

(相続等による所有権の移転の登記の申請)

第七十六条の二 所有権の登記名義人について相続の開始があったときは、当該相続により所有権を取得した者は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から三年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)により所有権を取得した者も、同様とする。

2 前項前段の規定による登記(民法第九百条及び第九百一条の規定により算定した相続分に応じてされたものに限る。次条第四項において同じ。)がされた後に遺産の分割があったときは、当該遺産の分割によって当該相続分を超えて所有権を取得した者は、当該遺産の分割の日から三年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。

3前二項の規定は、代位者その他の者の申請又は嘱託により、当該各項の規定による登記がされた場合には、適用しない。

(相続人である旨の申出等)

第七十六条の三 前条第一項の規定により所有権の移転の登記を申請する義務を負う者は、法務省令で定めるところにより、登記官に対し、所有権の登記名義人について相続が開始した旨及び自らが当該所有権の登記名義人の相続人である旨を申し出ることができる。

2 前条第一項に規定する期間内に前項の規定による申出をした者は、同条第一項に規定する所有権の取得(当該申出の前にされた遺産の分割によるものを除く。)に係る所有権の移転の登記を申請する義務を履行したものとみなす。 

3 登記官は、第一項の規定による申出があったときは、職権で、その旨並びに当該申出をした者の氏名及び住所その他法務省令で定める事項を所有権の登記に付記することができる。

4 第一項の規定による申出をした者は、その後の遺産の分割によって所有権を取得したとき(前条第一項前段の規定による登記がされた後に当該遺産の分割によって所有権を取得したときを除く。)は、当該遺産の分割の日から三年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。

5 前項の規定は、代位者その他の者の申請又は嘱託により、同項の規定による登記がされた場合には、適用しない。

6 第一項の規定による申出の手続及び第三項の規定による登記に関し必要な事項は、法務省令で定める。

(所有権の登記名義人についての符号の表示)

第七十六条の四 登記官は、所有権の登記名義人(法務省令で定めるものに限る。)が権利能力を有しないこととなったと認めるべき場合として法務省令で定める場合には、法務省令で定めるところにより、職権で、当該所有権の登記名義人についてその旨を示す符号を表示することができる。

(所有権の登記名義人の氏名等の変更の登記の申請)

第七十六条の五 所有権の登記名義人の氏名若しくは名称又は住所について変更があったときは、当該所有権の登記名義人は、その変更があった日から二年以内に、氏名若しくは名称又は住所についての変更の登記を申請しなければならない。

(職権による氏名等の変更の登記)

第七十六条の六 登記官は、所有権の登記名義人の氏名若しくは名称又は住所について変更があったと認めるべき場合として法務省令で定める場合には、法務省令で定めるところにより、職権で、氏名若しくは名称又は住所についての変更の登記をすることができる。ただし、当該所有権の登記名義人が自然人であるときは、その申出があるときに限る。

(登記事項証明書の交付等)

第百十九条(略)

2~5(略)

6 登記官は、第一項及び第二項の規定にかかわらず、登記記録に記録されている者(自然人であるものに限る。)の住所が明らかにされることにより、人の生命若しくは身体に危害を及ぼすおそれがある場合又はこれに準ずる程度に心身に有害な影響を及ぼすおそれがあるものとして法務省令で定める場合において、その者からの申出があったときは、法務省令で定めるところにより、第一項及び第二項に規定する各書面に当該住所に代わるものとして法務省令で定める事項を記載しなければならない。

(所有不動産記録証明書の交付等)

第百十九条の二何人も、登記官に対し、手数料を納付して、自らが所有権の登記名義人(これに準ずる者として法務省令で定めるものを含む。)として記録されている不動産に係る登記記録に記録されている事項のうち法務省令で定めるもの(記録がないときは、その旨)を証明した書面(以下この条において「所有不動産記録証明書」という。)の交付を請求することができる。

2 相続人その他の一般承継人は、登記官に対し、手数料を納付して、被承継人に係る所有不動産記録証明書の交付を請求することができる。

3 前二項の交付の請求は、法務大臣の指定する登記所の登記官に対し、法務省令で定めるところにより、することができる。

4 前条第三項及び第四項の規定は、所有不動産記録証明書の手数料について準用する。

(地図の写しの交付等)

第百二十条(略)

2(略)

3 第百十九条第三項から第五項までの規定は、地図等について準用する。

(登記簿の附属書類の写しの交付等)

第百二十一条(略)

2何人も、登記官に対し、手数料を納付して、登記簿の附属書類のうち前項の図面(電磁的記録にあっては、記録された情報の内容を法務省令で定める方法により表示したもの。次項において同じ。)の閲覧を請求することができる。

3何人も、正当な理由があるときは、登記官に対し、法務省令で定めるところにより、手数料を納付して、登記簿の附属書類(第一項の図面を除き、電磁的記録にあっては、記録された情報の内容を法務省令で定める方法により表示したもの。次項において同じ。)の全部又は一部(その正当な理由があると認められる部分に限る。)の閲覧を請求することができる。

4前項の規定にかかわらず、登記を申請した者は、登記官に対し、法務省令で定めるところにより、手数料を納付して、自己を申請人とする登記記録に係る登記簿の附属書類の閲覧を請求することができる。

5(略)

(法務省令への委任)

第百二十二条この法律に定めるもののほか、登記簿、地図、建物所在図及び地図に準ずる図面並びに登記簿の附属書類(第百五十四条及び第百五十五条において「登記簿等」という。)公開に関し必要な事項は、法務省令で定める。

(筆界特定の申請)

第百三十一条(略)

2~4(略)

5 第十八条の規定は、筆界特定の申請について準用する。この場合において、同条中「不動産を識別するために必要な事項、申請人の氏名又は名称、登記の目的その他の登記の申請に必要な事項として政令で定める情報(以下「申請情報」という。)」とあるのは「第百三十一条第三項各号に掲げる事項に係る情報(第二号、第百三十二条第一項第四号及び第百五十条において「筆界特定申請情報」という。)」と、「登記所」とあるのは「法務局又は地方法務局」と、同条第二号中「申請情報」とあるのは「筆界特定申請情報」と読み替えるものとする。

(筆界特定書等の写しの交付等)

第百四十九条 何人も、登記官に対し、手数料を納付して、筆界特定手続記録のうち筆界特定書又は政令で定める図面の全部又は一部(以下この条及び第百五十四条において「筆界特定書等」という。)の写し(筆界特定書等が電磁的記録をもって作成されているときは、当該記録された情報の内容を証明した書面)の交付を請求することができる。

2・3(略)

第七章 雑則

(情報の提供の求め)

第百五十一条 登記官は、職権による登記をし、又は第十四条第一項の地図を作成するために必要な限度で、関係地方公共団体の長その他の者に対し、その対象となる不動産の所有者等(所有権が帰属し、又は帰属していた自然人又は法人(法人でない社団又は財団を含む。)をいう。)に関する情報の提供を求めることができる。

(登記識別情報の安全確保)

第百五十二条(略)

2(略)

(行政手続法の適用除外)

第百五十三条(略)

(行政機関の保有する情報の公開に関する法律の適用除外)

第百五十四条(略)

(削る)

(秘密を漏らした罪)

第百五十九条 第百五十二条第二項の規定に違反して登記識別情報の作成又は管理に関する秘密を漏らした者は、二年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。

(虚偽の登記名義人確認情報を提供した罪)

第百六十条 第二十三条第四項第一号(第十六条第二項において準用する場合を含む。)の規定による情報の提供をする場合において、虚偽の情報を提供したときは、当該違反行為をした者は、二年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

(検査の妨害等の罪)

第百六十二条 次の各号のいずれかに該当する場合には、当該違反行為をした者は、三十万円以下の罰金に処する。

一 第二十九条第二項(第十六条第二項において準用する場合を含む。次号において同じ。)の規定による検査を拒み、妨げ、又は忌避したとき。

二 第二十九条第二項の規定による文書若しくは電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの提示をせず、若しくは虚偽の文書若しくは電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものを提示し、又は質問に対し陳述をせず、若しくは虚偽の陳述をしたとき。三 第百三十七条第五項の規定に違反して、同条第一項の規定による立入りを拒み、又は妨げたとき。

(過料)

第百六十四条 第三十六条、第三十七条第一項若しくは第二項、第四十二条、第四十七条第一項(第四十九条第二項において準用する場合を含む。)、第四十九条第一項、第三項若しくは第四項、第五十一条第一項から第四項まで、第五十七条、第五十八条第六項若しくは第七項、第七十六条の二第一項若しくは第二項又は第七十六条の三第四項の規定による申請をすべき義務がある者が正当な理由がないのにその申請を怠ったときは、十万円以下の過料に処する。

2第七十六条の五の規定による申請をすべき義務がある者が正当な理由がないのにその申請を怠ったときは、五万円以下の過料に処する。

三 非訟事件手続法(平成二十三年法律第五十一号) (第三条関係)

目次

第三編(略)

第一章 共有に関する事件(第八十五条―第八十九条)

第二章土地等の管理に関する事件(第九十条―第九十二条)

第三章供託等に関する事件(第九十三条―第九十八条)

第一章共有に関する事件

第一章(共有物の管理に係る決定)

第八十五条 次に掲げる裁判に係る事件は、当該裁判に係る共有物又は民法(明治二十九年法律第八十九号)第二百六十四条に規定する数人で所有権以外の財産権を有する場合における当該財産権(以下この条において単に「共有物」という。)の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に属する。

一 民法 第二百五十一条第二項、第二百五十二条第二項第一号及び第二百五十二条の二第二項(これらの規定を同法第二百六十四条において準用する場合を含む。)の規定による裁判

二 民法第二百五十二条第二項第二号(同法第二百六十四条において準用する場合を含む。第三項において同じ。)の規定による裁判

2 前項第一号の裁判については、裁判所が次に掲げる事項を公告し、かつ、第二号の期間が経過した後でなければ、することができない。この場合において、同号の期間は、一箇月を下ってはならない。

一 当該共有物について前項第一号の裁判の申立てがあったこと。

二 裁判所が前項第一号の裁判をすることについて異議があるときは、当該他の共有者等(民法第二百五十一条第二項(同法第二百六十四条において準用する場合を含む。)に規定する当該他の共有者、同法第二百五十二条第二項第一号(同法第二百六十四条において準用する場合を含む。)に規定する他の共有者又は同法第二百五十二条の二第二項(同法第二百六十四条において準用する場合を含む。)に規定する当該共有者をいう。第六項において同じ。)は一定の期間内にその旨の届出をすべきこと。

三 前号の届出がないときは、前項第一号の裁判がされること。

3 第一項第二号の裁判については、裁判所が次に掲げる事項を当該他の共有者(民法第二百五十二条第二項第二号に規定する45当該他の共有者をいう。以下この項及び次項において同じ。)に通知し、かつ、第二号の期間が経過した後でなければ、することができない。この場合において、同号の期間は、一箇月を下ってはならない。

一 当該共有物について第一項第二号の裁判の申立てがあったこと。

二 当該他の共有者は裁判所に対し一定の期間内に共有物の管理に関する事項を決することについて賛否を明らかにすべきこと。

三 前号の期間内に当該他の共有者が裁判所に対し共有物の管理に関する事項を決することについて賛否を明らかにしないときは、第一項第二号の裁判がされること。

4前項第二号の期間内に裁判所に対し共有物の管理に関する事項を決することについて賛否を明らかにした当該他の共有者があるときは、裁判所は、その者に係る第一項第二号の裁判をすることができない。

5第一項各号の裁判は、確定しなければその効力を生じない。

6第一項第一号の裁判は、当該他の共有者等に告知することを要しない。

(共有物分割の証書の保存者の指定)

第八十六条 民法第二百六十二条第三項の規定による証書の保存者の指定の事件は、共有物の分割がされた地を管轄する地方裁判所の管轄に属する。

2 裁判所は、前項の指定の裁判をするには、分割者(申立人を除く。)の陳述を聴かなければならない。

3 裁判所が前項の裁判をする場合における手続費用は、分割者の全員が等しい割合で負担する。

4 第二項の裁判に対しては、不服を申し立てることができない。

(所在等不明共有者の持分の取得)

第八十七条 所在等不明共有者の持分の取得の裁判(民法第二百六十二条の二第一項(同条第五項において準用する場合を含む。次項第一号において同じ。)の規定による所在等不明共有者の持分の取得の裁判をいう。以下この条において同じ。)に係る事件は、当該裁判に係る不動産の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に属する。

2 裁判所は、次に掲げる事項を公告し、かつ、第二号、第三号及び第五号の期間が経過した後でなければ、所在等不明共有者の持分の取得の裁判をすることができない。この場合において、第二号、第三号及び第五号の期間は、いずれも三箇月を下ってはならない。

一 所在等不明共有者(民法第二百六十二条の二第一項に規定する所在等不明共有者をいう。以下この条において同じ。)の持分について所在等不明共有者の持分の取得の裁判の申立てがあったこと。

二 裁判所が所在等不明共有者の持分の取得の裁判をすることについて異議があるときは、所在等不明共有者は一定の期間内にその旨の届出をすべきこと。

三 民法第二百六十二条の二第二項(同条第五項において準用する場合を含む。)の異議の届出は、一定の期間内にすべきこと。

四 前二号の届出がないときは、所在等不明共有者の持分の取得の裁判がされること。

五 所在等不明共有者の持分の取得の裁判の申立てがあった所在等不明共有者の持分について申立人以外の共有者が所在等不明共有者の持分の取得の裁判の申立てをするときは一定の期間内にその申立てをすべきこと。

3 裁判所は、前項の規定による公告をしたときは、遅滞なく、登記簿上その氏名又は名称が判明している共有者に対し、同項各号(第二号を除く。)の規定により公告した事項を通知しなければならない。この通知は、通知を受ける者の登記簿上の住所又は事務所に宛てて発すれば足りる。

4 裁判所は、第二項第三号の異議の届出が同号の期間を経過した後にされたときは、当該届出を却下しなければならない。

5 裁判所は、所在等不明共有者の持分の取得の裁判をするには、申立人に対して、一定の期間内に、所在等不明共有者のために、裁判所が定める額の金銭を裁判所の指定する供託所に供託し、かつ、その旨を届け出るべきことを命じなければならない。

6 裁判所は、前項の規定による決定をした後所在等不明共有者の持分の取得の裁判をするまでの間に、事情の変更により同項の規定による決定で定めた額を不当と認めるに至ったときは、同項の規定により供託すべき金銭の額を変更しなければならない。

7 前二項の規定による裁判に対しては、即時抗告をすることができる。

8 裁判所は、申立人が第五項の規定による決定に従わないときは、その申立人の申立てを却下しなければならない。

9 所在等不明共有者の持分の取得の裁判は、確定しなければその効力を生じない。

10 所在等不明共有者の持分の取得の裁判は、所在等不明共有者に告知することを要しない。

11 所在等不明共有者の持分の取得の裁判の申立てを受けた裁判所が第二項の規定による公告をした場合において、その申立てがあった所在等不明共有者の持分について申立人以外の共有者が同項第五号の期間が経過した後に所在等不明共有者の持分の取得の裁判の申立てをしたときは、裁判所は、当該申立人以外の共有者による所在等不明共有者の持分の取得の裁判の申立てを却下しなければならない。

(所在等不明共有者の持分を譲渡する権限の付与)

第八十八条 所在等不明共有者の持分を譲渡する権限の付与の裁判(民法第二百六十二条の三第一項(同条第四項において準用する場合を含む。第三項において同じ。)の規定による所在等不明共有者の持分を譲渡する権限の付与の裁判をいう。第三項において同じ。)に係る事件は、当該裁判に係る不動産の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に属する。

2 前条第二項第一号、第二号及び第四号並びに第五項から第十項までの規定は、前項の事件について準用する。

3所在等不明共有者の持分を譲渡する権限の付与の裁判の効力が生じた後二箇月以内にその裁判により付与された権限に基づく所在等不明共有者(民法第二百六十二条の三第一項に規定する所在等不明共有者をいう。)の持分の譲渡の効力が生じないときは、その裁判は、その効力を失う。ただし、この期間は、裁判所において伸長することができる。

(検察官の不関与)

第八十九条 第四十条の規定は、この章の規定による非訟事件の手続には、適用しない。

第二章 土地等の管理に関する事件

(所有者不明土地管理命令及び所有者不明建物管理命令)

第九十条 民法第二編第三章第四節の規定による非訟事件は、裁判を求める事項に係る不動産の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に属する。

2 裁判所は、次に掲げる事項を公告し、かつ、第二号の期間が経過した後でなければ、所有者不明土地管理命令(民法第二百六十四条の二第一項に規定する所有者不明土地管理命令をいう。以下この条において同じ。)をすることができない。この場合において、同号の期間は、一箇月を下ってはならない。 

一 所有者不明土地管理命令の申立てがその対象となるべき土地又は共有持分についてあったこと。

二 所有者不明土地管理命令をすることについて異議があるときは、所有者不明土地管理命令の対象となるべき土地又は共有持分を有する者は一定の期間内にその旨の届出をすべきこと。

三 前号の届出がないときは、所有者不明土地管理命令がされること。

3 民法第二百六十四条の三第二項又は第二百六十四条の六第二項の許可の申立てをする場合には、その許可を求める理由を疎明しなければならない。

4 裁判所は、民法第二百六十四条の六第一項の規定による解任の裁判又は同法第二百六十四条の七第一項の規定による費用若しくは報酬の額を定める裁判をする場合には、所有者不明土地管理人(同法第二百六十四条の二第四項に規定する所有者不明土地管理人をいう。以下この条において同じ。)の陳述を聴かなければならない。

5 次に掲げる裁判には、理由を付さなければならない。

一 所有者不明土地管理命令の申立てを却下する裁判

二 民法第二百六十四条の三第二項又は第二百六十四条の六第二項の許可の申立てを却下する裁判

三 民法第二百六十四条の六第一項の規定による解任の申立てについての裁判

6 所有者不明土地管理命令があった場合には、裁判所書記官は、職権で、遅滞なく、所有者不明土地管理命令の対象とされた土地又は共有持分について、所有者不明土地管理命令の登記を嘱託しなければならない。

7 所有者不明土地管理命令を取り消す裁判があったときは、裁判所書記官は、職権で、遅滞なく、所有者不明土地管理命令の登記の抹消を嘱託しなければならない。

8 所有者不明土地管理人は、所有者不明土地管理命令の対象とされた土地又は共有持分及び所有者不明土地管理命令の効力が及ぶ動産の管理、処分その他の事由により金銭が生じたときは、その土地の所有者又はその共有持分を有する者のために、当該金銭を所有者不明土地管理命令の対象とされた土地(共有持分を対象として所有者不明土地管理命令が発せられた場合にあっては、共有物である土地)の所在地の供託所に供託することができる。この場合において、供託をしたときは、法務省令で定めるところにより、その旨その他法務省令で定める事項を公告しなければならない。

9 裁判所は、所有者不明土地管理命令を変更し、又は取り消すことができる。

10 裁判所は、管理すべき財産がなくなったとき(管理すべき財産の全部が供託されたときを含む。)その他財産の管理を継続することが相当でなくなったときは、所有者不明土地管理人若しくは利害関係人の申立てにより又は職権で、所有者不明土地管理命令を取り消さなければならない。

11 所有者不明土地等(民法第二百六十四条の三第一項に規定する所有者不明土地等をいう。以下この条において同じ。)の所有者(その共有持分を有する者を含む。以下この条において同じ。)が所有者不明土地等の所有権(その共有持分を含む。)が自己に帰属することを証明したときは、裁判所は、当該所有者の申立てにより、所有者不明土地管理命令を取り消さなければならない。この場合において、所有者不明土地管理命令が取り消されたときは、所有者不明土地管理人は、当該所有者に対し、その事務の経過及び結果を報告し、当該所有者に帰属することが証明された財産を引き渡さなければならない。

12 所有者不明土地管理命令及びその変更の裁判は、所有者不明土地等の所有者に告知することを要しない。

13 所有者不明土地管理命令の取消しの裁判は、事件の記録上所有者不明土地等の所有者及びその所在が判明している場合に限り、その所有者に告知すれば足りる。

14 次の各号に掲げる裁判に対しては、当該各号に定める者に限り、即時抗告をすることができる。

一 所有者不明土地管理命令利害関係人

二 民法第二百六十四条の六第一項の規定による解任の裁判利害関係人

三 民法第二百六十四条の七第一項の規定による費用又は報酬の額を定める裁判所有者不明土地管理人

四 第九項から第十一項までの規定による変更又は取消しの裁判利害関係人

15 次に掲げる裁判に対しては、不服を申し立てることができない。

一 民法第二百六十四条の二第四項の規定による所有者不明土地管理人の選任の裁判

二 民法第二百六十四条の三第二項又は第二百六十四条の六第二項の許可の裁判

16 第二項から前項までの規定は、民法第二百六十四条の八第一項に規定する所有者不明建物管理命令及び同条第四項に規定する所有者不明建物管理人について準用する。

(管理不全土地管理命令及び管理不全建物管理命令)

第九十一条 民法第二編第三章第五節の規定による非訟事件は、裁判を求める事項に係る不動産の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に属する。

2 民法第二百六十四条の十第二項又は第二百六十四条の十二第二項の許可の申立てをする場合には、その許可を求める理由を疎明しなければならない。

3 裁判所は、次の各号に掲げる裁判をする場合には、当該各号に定める者の陳述を聴かなければならない。ただし、第一号に掲げる裁判をする場合において、その陳述を聴く手続を経ることにより当該裁判の申立ての目的を達することができない事情があるときは、この限りでない。

一 管理不全土地管理命令(民法第二百六十四条の九第一項に規定する管理不全土地管理命令をいう。以下この条において同じ。)管理不全土地管理命令の対象となるべき土地の所有者

二 民法第二百六十四条の十第二項の許可の裁判管理不全土地管理命令の対象とされた土地の所有者

三 民法第二百六十四条の十二第一項の規定による解任の裁判管理不全土地管理人(同法第二百六十四条の九第三項に規定する管理不全土地管理人をいう。以下この条において同じ。)

四 民法第二百六十四条の十三第一項の規定による費用の額を定める裁判管理不全土地管理人

五 民法第二百六十四条の十三第一項の規定による報酬の額を定める裁判管理不全土地管理人及び管理不全土地管理命令の対象とされた土地の所有者

4 次に掲げる裁判には、理由を付さなければならない。

一 管理不全土地管理命令の申立てについての裁判

二 民法第二百六十四条の十第二項の許可の申立てについての裁判

三 民法第二百六十四条の十二第一項の規定による解任の申立てについての裁判

四 民法第二百六十四条の十二第二項の許可の申立てを却下する裁判

5 管理不全土地管理人は、管理不全土地管理命令の対象とされた土地及び管理不全土地管理命令の効力が及ぶ動産の管理、処分その他の事由により金銭が生じたときは、その土地の所有者(その共有持分を有する者を含む。)のために、当該金銭を管理不全土地管理命令の対象とされた土地の所在地の供託所に供託することができる。この場合において、供託をしたときは、法務省令で定めるところにより、その旨その他法務省令で定める事項を公告しなければならない。

6 裁判所は、管理不全土地管理命令を変更し、又は取り消すことができる。

7 裁判所は、管理すべき財産がなくなったとき(管理すべき財産の全部が供託されたときを含む。)その他財産の管理を継続することが相当でなくなったときは、管理不全土地管理人若しくは利害関係人の申立てにより又は職権で、管理不全土地管理命令を取り消さなければならない。

8 次の各号に掲げる裁判に対しては、当該各号に定める者に限り、即時抗告をすることができる。

一 管理不全土地管理命令利害関係人

二 民法第二百六十四条の十第二項の許可の裁判管理不全土地管理命令の対象とされた土地の所有者

三 民法第二百六十四条の十二第一項の規定による解任の裁判利害関係人

四 民法第二百六十四条の十三第一項の規定による費用の額を定める裁判管理不全土地管理人

五 民法第二百六十四条の十三第一項の規定による報酬の額を定める裁判管理不全土地管理人及び管理不全土地管理命令の対象とされた土地の所有者

六 前二項の規定による変更又は取消しの裁判利害関係人

9 次に掲げる裁判に対しては、不服を申し立てることができない。

一 民法第二百六十四条の九第三項の規定による管理不全土地管理人の選任の裁判

二 民法第二百六十四条の十二第二項の許可の裁判

10 第二項から前項までの規定は、民法第二百六十四条の十四第一項に規定する管理不全建物管理命令及び同条第三項に規定する管理不全建物管理人について準用する。

(削る)

供託等に関する事件(適用除外)

第九十二条 第四十条及び第五十七条第二項第二号の規定は、この章の規定による非訟事件の手続には、適用しない。

第三章 供託等に関する事件

四 家事事件手続法(平成二十三年法律第五十二号)(第四条関係)

改正案

目次

第二編(略)

第二章(略)

第十二節 相続の場合における祭具等の所有権の承継者の指定の審判事件(第百九十条)

第十二節の二 相続財産の保存に関する処分の審判事件(第百九十条の二)

(相続に関する審判事件の管轄権)

第三条の十一(略)

2(略)

3 裁判所は、第一項に規定する場合のほか、推定相続人の廃除の審判又はその取消しの審判の確定前の遺産の管理に関する処分の審判事件(別表第一の八十八の項の事項についての審判事件をいう。第百八十九条第一項及び第二項において同じ。及び相続人の不存在の場合における相続財産の清算に関する処分の審判事件(同表の九十九の項の事項についての審判事件をいう。以下同じ。)について、相続財産に属する財産が日本国内にあるときは、管轄権を有する。

4・5(略)

(家事審判の申立ての取下げ)

第八十二条(略)

2(略)

3 前項ただし書、第百五十三条(第百九十九条第一項において準用する場合を含む。)及び第百九十九条第二項の規定により申立ての取下げについて相手方の同意を要する場合においては、家庭裁判所は、相手方に対し、申立ての取下げがあったことを通知しなければならない。ただし、申立ての取下げが家事審判の手続の期日において口頭でされた場合において、相手方がその期日に出頭したときは、この限りでない。

4・5(略)

(家事審判の申立ての取下げの擬制)

第八十三条 家事審判の申立人(第百五十三条(第百九十九条第一項において準用する場合を含む。)及び第百九十九条第二項の規定により申立ての取下げについて相手方の同意を要する場合にあっては、当事者双方)が、連続して二回、呼出しを受けた家事審判の手続の期日に出頭せず、又は呼出しを受けた家事審判の手続の期日において陳述をしないで退席をしたときは、家庭裁判所は、申立ての取下げがあったものとみなすことができる。

(管理人の改任等)

第百四十六条(略)

2家庭裁判所は、民法第二十五条第一項の規定により選任し、又は同法第二十六条の規定により改任した管理人及び前項の規定により改任した管理人(第四項及び第六項、次条並びに第百四十七条において「家庭裁判所が選任した管理人」という。)に対し、財産の状況の報告及び管理の計算を命ずることができる。同法第二十七条第二項の場合においては、不在者が置いた管理人に対しても、同様とする。

3(略)

4 家庭裁判所は、管理人(家庭裁判所が選任した管理人及び不在者が置いた管理人をいう。次項及び第百四十七条において同じ。)に対し、その提供した担保の増減、変更又は免除を命ずることができる。

5・6(略)

(供託等)

第百四十六条の二 家庭裁判所が選任した管理人は、不在者の財産の管理、処分その他の事由により金銭が生じたときは、不在者のために、当該金銭を不在者の財産の管理に関する処分を命じた裁判所の所在地を管轄する家庭裁判所の管轄区域内の供託所に供託することができる。

2 家庭裁判所が選任した管理人は、前項の規定による供託をしたときは、法務省令で定めるところにより、その旨その他法務省令で定める事項を公告しなければならない。

(処分の取消し)

第百四十七条 家庭裁判所は、不在者が財産を管理することができるようになったとき、管理すべき財産がなくなったとき(家庭裁判所が選任した管理人が管理すべき財産の全部が供託されたときを含む。)その他財産の管理を継続することが相当でなくなったときは、不在者、管理人若しくは利害関係人の申立てにより又は職権で、民法第二十五条第一項の規定による管理人の選任その他の不在者の財産の管理に関する処分の取消しの審判をしなければならない。

第十二節の二

相続財産の保存に関する処分の審判事件

第百九十条の二 相続財産の保存に関する処分の審判事件は、相続が開始した地を管轄する家庭裁判所の管轄に属する。

2 第百二十五条第一項から第六項まで、第百四十六条の二及び第百四十七条の規定は、相続財産の保存に関する処分の審判事件について準用する。この場合において、第百二十五条第三項中「成年被後見人の財産」とあるのは、「相続財産」と読み替えるものとする。

(申立ての取下げの制限)

第百九十九条(略)

2 第八十二条第二項の規定にかかわらず、遺産の分割の審判の申立ての取下げは、相続開始の時から十年を経過した後にあっては、相手方の同意を得なければ、その効力を生じない。

第二百一条 相続の承認及び放棄に関する審判事件(別表第一の九十の項から九十五の項までの事項についての審判事件をいう。)は、相続が開始した地を管轄する家庭裁判所の管轄に属する。

2(略)

3 家庭裁判所(抗告裁判所が限定承認の申述を受理した場合にあっては、その裁判所)は、相続人が数人ある場合において、限定承認の申述を受理したときは、職権で、民法第九百三十六条第一項の規定により相続財産の清算人を選任しなければならない。

4~9(略)

(管轄)

第二百三条

次の各号に掲げる審判事件は、当該各号に定める家庭裁判所の管轄に属する。

一 相続人の不存在の場合における相続財産の清算に関する処分の審判事件相続が開始した地を管轄する家庭裁判所

二 相続人の不存在の場合における鑑定人の選任の審判事件(別表第一の百の項の事項についての審判事件をいう。)相続人の不存在の場合における相続財産の清算に関する処分の審判事件において相続財産の清算人の選任の審判をした家庭裁判所

三(略)

(特別縁故者に対する相続財産の分与の審判)

第二百四条 特別縁故者に対する相続財産の分与の申立てについての審判は、民法第九百五十二条第二項の期間の満了後三月を経過した後にしなければならない。

2(略)

(意見の聴取)

第二百五条 家庭裁判所は、特別縁故者に対する相続財産の分与の申立てについての審判をする場合には、民法第九百五十二条第一項の規定により選任し、又は第二百八条において準用する第百二十五条第一項の規定により改任した相続財産の清算人(次条及び第二百七条において単に「相続財産の清算人」という。)の意見を聴かなければならない。

(即時抗告)

第二百六条 次の各号に掲げる審判に対しては、当該各号に定める者は、即時抗告をすることができる。

一 特別縁故者に対する相続財産の分与の審判申立人及び相続財産の清算人

二(略)

2 第二百四条第二項の規定により審判が併合してされたときは、申立人の一人又は相続財産の清算人がした即時抗告は、申立人の全員に対してその効力を生ずる。

(相続財産の換価を命ずる裁判)

第二百七条 第百九十四条第一項、第二項本文、第三項から第五項まで及び第七項の規定は、特別縁故者に対する相続財産の分与の審判事件について準用する。この場合において、同条第一項及び第七項中「相続人」とあり、並びに同条第二項中「相続人の意見を聴き、相続人」とあるのは「相続財産の清算人」と、同条第三項中「相続人」とあるのは「特別縁故者に対する相続財産の分与の申立人若しくは相続財産の清算人」と、同条第四項中「当事者」とあるのは「申立人」と、同条第五項中「相続人」とあるのは「特別縁故者に対する相続財産の分与の申立人及び相続財産の清算人」と読み替えるものとする。

(管理者の改任等に関する規定の準用)

第二百八条 第百二十五条の規定は、相続人の不存在の場合における相続財産の清算に関する処分の審判事件について準用する。この場合において、同条第三項中「成年被後見人の財産」とあるのは、「相続財産」と読み替えるものとする。

(家事調停の申立ての取下げ)

第二百七十三条 家事調停の申立ては、家事調停事件が終了するまで、その全部又は一部を取り下げることができる。

2 前項の規定にかかわらず、遺産の分割の調停の申立ての取下げは、相続開始の時から十年を経過した後にあっては、相手方の同意を得なければ、その効力を生じない。

3 第八十二条第三項及び第四項並びに民事訴訟法第二百六十一条第三項及び第二百六十二条第一項の規定は、家事調停の申立ての取下げについて準用する。この場合において、第八十二条第三項中「前項ただし書、第百五十三条(第百九十九条第一項において準用する場合を含む。)及び第百九十九条第二項」とあるのは「第二百七十三条第二項」と、同法第二百六十一条第三項ただし書中「口頭弁論、弁論準備手続又は和解の期日(以下この章において「口頭弁論等の期日」という。)」とあるのは「家事調停の手続の期日」と読み替えるものとする。

別表第一(略)

事項

根拠となる法律の規定

(略)

相続財産の保存

八十九

相続財産の保存に関する処分

民法第八百九十七条の二第一項及び第二項

相続の承認及び放棄

九十

相続の承認又は放棄をすべき期間の伸長

民法第九百十五条第一項ただし書

(略)

九十四

限定承認を受理した場合における相続財産の清算人の選任

民法第九百三十六条第一項

(略)

九十九

相続人の不存在の場合における相続財産の清算に関する処分

民法第九百五十二条及び第九百五十三条

百一

特別縁故者に対する相続財産の分与

民法第九百五十八条の二第一項

(略)

別表第二(略)

事項

根拠となる法律の規定

(略)

十三

遺産の分割の禁止

民法第九百八条第四項及び第五項

(略)

(不動産登記法の準用)

第八条 不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)第七条から第十一条まで、第十三条、第十六条第一項、第十八条、第二十四条、第二十五条第一号から第九号まで及び第十二号、第六十七条第一項から第三項まで、第七十一条、第百十九条(第六項を除く。)、第百二十一条第三項から第五項まで、第百五十三条から第百五十六条まで、第百五十七条第一項から第三項まで、第五項及び第六項並びに第百五十八条の規定は、夫婦財産契約に関する登記について準用する。この場合において、同法第十八条中「政令」とあるのは、「法務省令」と読み替えるものとする。

附 則

  (施行期日)

第一条 この法律は、公布の日から起算して二年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。

 一 第二条中不動産登記法第百三十一条第五項の改正規定及び附則第三十四条の規定 公布の日

 二 第二条中不動産登記法の目次の改正規定、同法第十六条第二項の改正規定、同法第四章第三節第二款中第七十四条の前に一条を加える改正規定、同法第七十六条の次に五条を加える改正規定(第七十六条の二及び第七十六条の三に係る部分に限る。)、同法第百十九条の改正規定及び同法第百六十四条の改正規定(同条に一項を加える部分を除く。)並びに附則第五条第四項から第六項まで、第六条、第二十二条及び第二十三条の規定 公布の日から起算して三年を超えない範囲内において政令で定める日

 三 第二条中不動産登記法第二十五条第七号の改正規定、同法第七十六条の次に五条を加える改正規定(第七十六条の四から第七十六条の六までに係る部分に限る。)、同法第百十九条の次に一条を加える改正規定、同法第百二十条第三項の改正規定及び同法第百六十四条の改正規定(同条に一項を加える部分に限る。)並びに附則第五条第七項の規定 公布の日から起算して五年を超えない範囲内において政令で定める日

 (相続財産の保存に必要な処分に関する経過措置)

第二条 この法律の施行の日(以下「施行日」という。)前に第一条の規定による改正前の民法(以下「旧民法」という。)第九百十八条第二項(旧民法第九百二十六条第二項(旧民法第九百三十六条第三項において準用する場合を含む。)及び第九百四十条第二項において準用する場合を含む。次項において同じ。)の規定によりされた相続財産の保存に必要な処分は、施行日以後は、第一条の規定による改正後の民法(以下「新民法」という。)第八百九十七条の二の規定によりされた相続財産の保存に必要な処分とみなす。

2 施行日前に旧民法第九百十八条第二項の規定によりされた相続財産の保存に必要な処分の請求(施行日前に当該請求に係る審判が確定したものを除く。)は、施行日以後は、新民法第八百九十七条の二の規定によりされた相続財産の保存に必要な処分の請求とみなす。

 (遺産の分割に関する経過措置)

第三条 新民法第九百四条の三及び第九百八条第二項から第五項までの規定は、施行日前に相続が開始した遺産の分割についても、適用する。この場合において、新民法第九百四条の三第一号中「相続開始の時から十年を経過する前」とあるのは「相続開始の時から十年を経過する時又は民法等の一部を改正する法律(令和三年法律第24号)の施行の時から五年を経過する時のいずれか遅い時まで」と、同条第二号中「十年の期間」とあるのは「十年の期間(相続開始の時から始まる十年の期間の満了後に民法等の一部を改正する法律の施行の時から始まる五年の期間が満了する場合にあっては、同法の施行の時から始まる五年の期間)」と、新民法第九百八条第二項ただし書、第三項ただし書、第四項ただし書及び第五項ただし書中「相続開始の時から十年」とあるのは「相続開始の時から十年を経過する時又は民法等の一部を改正する法律の施行の時から五年を経過する時のいずれか遅い時」とする。

 (相続財産の清算に関する経過措置)

第四条 施行日前に旧民法第九百三十六条第一項の規定により選任された相続財産の管理人は、施行日以後は、新民法第九百三十六条第一項の規定により選任された相続財産の清算人とみなす。

2 施行日前に旧民法第九百五十二条第一項の規定により選任された相続財産の管理人は、新民法第九百四十条第一項及び第九百五十三条から第九百五十六条までの規定の適用については、新民法第九百五十二条第一項の規定により選任された相続財産の清算人とみなす。

3 施行日前に旧民法第九百五十二条第一項の規定によりされた相続財産の管理人の選任の請求(施行日前に当該請求に係る審判が確定したものを除く。)は、施行日以後は、新民法第九百五十二条第一項の規定によりされた相続財産の清算人の選任の請求とみなす。

4 施行日前に旧民法第九百五十二条第一項の規定により相続財産の管理人が選任された場合における当該相続財産の管理人の選任の公告、相続債権者及び受遺者に対する請求の申出をすべき旨の公告及び催告、相続債権者及び受遺者に対する弁済並びにその弁済のための相続財産の換価、相続債権者及び受遺者の換価手続への参加、不当な弁済をした相続財産の管理人の責任、相続人の捜索の公告、公告期間内に申出をしなかった相続債権者及び受遺者の権利並びに相続人としての権利を主張する者がない場合における相続人、相続債権者及び受遺者の権利については、なお従前の例による。

5 施行日前に旧民法第九百五十二条第一項の規定により相続財産の管理人が選任された場合における特別縁故者に対する相続財産の分与については、新民法第九百五十八条の二第二項の規定にかかわらず、なお従前の例による。

 (不動産登記法の一部改正に伴う経過措置)

第五条 第二条の規定(附則第一条各号に掲げる改正規定を除く。)による改正後の不動産登記法(以下「新不動産登記法」という。)第六十三条第三項、第六十九条の二及び第七十条の二の規定は、施行日以後にされる登記の申請について適用する。

2 新不動産登記法第七十条第二項の規定は、施行日以後に申し立てられる公示催告の申立てに係る事件について適用する。

3 新不動産登記法第百二十一条第二項から第五項までの規定は、施行日以後にされる登記簿の附属書類の閲覧請求について適用し、施行日前にされた登記簿の附属書類の閲覧請求については、なお従前の例による。

4 第二条の規定(附則第一条第二号に掲げる改正規定に限る。)による改正後の不動産登記法(以下「第二号新不動産登記法」という。)第七十三条の二の規定は、同号に掲げる規定の施行の日(以下「第二号施行日」という。)以後に登記の申請がされる所有権の登記の登記事項について適用する。

5 登記官は、第二号施行日において現に法人が所有権の登記名義人として記録されている不動産について、法務省令で定めるところにより、職権で、第二号新不動産登記法第七十三条の二第一項第一号に規定する登記事項に関する変更の登記をすることができる。

6 第二号新不動産登記法第七十六条の二の規定は、第二号施行日前に所有権の登記名義人について相続の開始があった場合についても、適用する。この場合において、同条第一項中「所有権の登記名義人」とあるのは「民法等の一部を改正する法律(令和三年法律第24号)附則第一条第二号に掲げる規定の施行の日(以下この条において「第二号施行日」という。)前に所有権の登記名義人」と、「知った日」とあるのは「知った日又は第二号施行日のいずれか遅い日」と、同条第二項中「分割の日」とあるのは「分割の日又は第二号施行日のいずれか遅い日」とする。

7 第二条の規定(附則第一条第三号に掲げる改正規定に限る。)による改正後の不動産登記法(以下この項において「第三号新不動産登記法」という。)第七十六条の五の規定は、同号に掲げる規定の施行の日(以下「第三号施行日」という。)前に所有権の登記名義人の氏名若しくは名称又は住所について変更があった場合についても、適用する。この場合において、第三号新不動産登記法第七十六条の五中「所有権の登記名義人の」とあるのは「民法等の一部を改正する法律(令和三年法律第24号)附則第一条第三号に掲げる規定の施行の日(以下この条において「第三号施行日」という。)前に所有権の登記名義人となった者の」と、「あった日」とあるのは「あった日又は第三号施行日のいずれか遅い日」とする。

 (第三号施行日の前日までの間の読替え)

第六条 第二号施行日から第三号施行日の前日までの間における第二号新不動産登記法第十六条第二項の規定の適用については、同項中「第七十六条の四まで、第七十六条の六」とあるのは、「第七十六条の三まで」とする。

 (家事事件手続法の一部改正に伴う経過措置)

第七条 第四条の規定による改正後の家事事件手続法(以下この条において「新家事事件手続法」という。)第百九十九条第二項及び第二百七十三条第二項の規定は、施行日前に相続が開始した遺産の分割についても、適用する。この場合において、新家事事件手続法第百九十九条第二項中「十年を経過した後」とあるのは「十年を経過した後(相続開始の時から始まる十年の期間の満了後に民法等の一部を改正する法律(令和三年法律第24号)の施行の時から始まる五年の期間が満了する場合にあっては、同法の施行の時から五年を経過した後)」と、新家事事件手続法第二百七十三条第二項中「十年を経過した後」とあるのは「十年を経過した後(相続開始の時から始まる十年の期間の満了後に民法等の一部を改正する法律の施行の時から始まる五年の期間が満了する場合にあっては、同法の施行の時から五年を経過した後)」とする。

2 施行日前に旧民法第九百五十二条第一項の規定により相続財産の管理人が選任された場合における特別縁故者に対する相続財産の分与の審判については、新家事事件手続法第二百四条第一項の規定にかかわらず、なお従前の例による。

3 施行日前に旧民法第九百五十二条第一項の規定により選任された相続財産の管理人は、新家事事件手続法第二百五条から第二百八条までの規定の適用については、新民法第九百五十二条第一項の規定により選任された相続財産の清算人とみなす。

20220502追記

『登記研究』886号、887号、888号、889号、890号(株)テイハン

法務省民事局総務課長 村松秀樹、法務大臣官房参事官 大谷太、法務省民事局参事官脇村真治、東京地方検察庁検事 川畑憲司、法務省民事局付 芳賀朝哉、法務省民事局付 宮崎文康、東京地方裁判所判事 渡辺みどり、弁護士 小田智典、法務省民事局付 中丸隆之、法務省民事局付 福田宏晃「令和3年民法・不動産登記法等改正及び相続土地国庫帰属法の解説1~5」

相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律について

公布日 令和3年4月28日

施行日 公布から2年以内

・承認申請窓口について

第204回国会 衆議院 法務委員会 第7号 令和3年3月24日

https://kokkai.ndl.go.jp/#/detail?minId=120405206X00720210324&spkNum=5&single

<相続土地国庫帰属法案に規定されている法務大臣の権限につきましては、全国に所在する法務局及び地方法務局の長にその一部を委任することとしております。したがいまして、承認の申請は法務局の窓口においてすることを想定しております。

・司法書士業務に該当するかについて

「民法等の一部を改正する法律案」及び「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律案」に対する附帯決議 (令和3年4月20日)

https://sangiin.go.jp/japanese/gianjoho/ketsugi/204/f065_042001.pdf

<所有者不明土地等問題の地域性や土地等の種類に応じ、それぞれの実情を踏まえた解決に向けて、効率的な管理と申立人の負担の軽減を趣旨とする所有者不明土地等の新たな財産管理制度の諸施策を実施するに当たっては、司法書士や土地家屋調査士等の専門職者の積極的な活用を図るとともに、制度の趣旨及び請求が可能な利害関係人や利用ができる事例等について周知を図ること。

・承認申請について、代理が出来るかどうかは分かりませんでした。法務局における遺言書の保管等に関する法律第4条第6項のように「自ら出頭して行わなければならない」の文言は、相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律にはありません。

第204回国会 衆議院 法務委員会 第7号 令和3年3月24日

https://kokkai.ndl.go.jp/#/detail?minId=120405206X00720210324

・第1条の「知れない」とは、

一般的に単に公示送達の申立人がこれを知らないだけではなく、通常の調査方法を講じても判明しないという客観的なものであることを要する。

・電子申請や電子納付について

制度の開始当初はオンライン方式による申請を認めることとはしてない。

・相続の放棄をする人がいた場合についての負担金の額について

共同相続人が共同して土地を国庫に帰属させるケースにおきましては、それぞれの持分の割合で負担金を負担することも考えられ、共同相続人の中に相続の放棄をする者がいるときは、事案によっては一人当たりの負担額がより大きくなることがある

・生活保護との関係について

生活保護の申請に係る事務を担当している者などがこの相続土地の国庫帰属制度の内容を誤解したり、また、それによって不適切な対応が生じたりといった事態が生ずることはあってはならない。

・利用されるのか、について

令和二年に法務省が実施したニーズ調査では、土地を所有する世帯のうち、土地を手放して国庫に帰属させる制度の利用を希望する世帯の割合は約二〇%と推計。制審議会の民法・不動産登記法部会の中間試案における要件設定を前提として、利用希望世帯の約五%、土地を所有する世帯全体の約一%。帰属させることができない土地の数について、具体的な見込みを計算するのは困難。

・死因贈与によって土地を取得した場合について、

相続又は遺贈により土地を取得した者には当たりませんので、この相続土地国庫帰属制度における国庫帰属の承認申請権がなく、制度の対象外。

第204回国会 衆議院 法務委員会 第6号 令和3年3月23日

https://kokkai.ndl.go.jp/#/detail?minId=120405206X00620210323&spkNum=3&single

・制度の意義

農地について、利用権を設定できる、あるいは農地中間管理機構を介して賃借権を設定できるといった制度の活用も視野に入れた制度。

 法務局の窓口に住民から問合せがあった際には、いきなり、土地を手放すということ、国庫へ帰属させるという前に、既存の仕組みを利用したり、その情報を市町村にも地元の自治体にも共有をしたり、何か活用策があれば自治体の方で寄附として受け入れ。

 いきなり国庫に権利を全部帰属させるというものではなく、国の負担が過大にならないように、国民にモラルハザードを起こさない限度において、最終的な手段としての国庫帰属制度。プロセスにおいて、国と地方自治体、そして省庁間で政策連携が図られる。その意味では、今回の制度というのは大きなチャンス。

・地方公共団体への寄付について

本制度の審査機関、法務局で、この国庫帰属の承認をする前に、その土地の所在する地方公共団体に対して当該土地の情報を通知し、当該団体が土地の取得を希望する場合には土地所有者と直接交渉して贈与契約を締結、寄附を可能とする方向で検討を進めている。

・廃屋について

それがいまだ建物としての状態を保っている場合には二条三項一号の建物の存ずる土地に該当することになり、屋根が崩落するなどして、もはや建物とは言えなくなっている場合には、通常は第五条第一項第二号の土地の通常の管理又は処分を阻害する工作物が地上に存する土地に該当することになるものと考えられ、国庫帰属の要件を満たさないことになる。

・土壌汚染対策法に定める特定有害物質により汚染されている土地について

汚染が土地所有者の行為に起因するものであるか否かを問わず、国庫帰属の対象外。

第204回国会 参議院 法務委員会 第7号 令和3年4月13日

https://kokkai.ndl.go.jp/#/detail?minId=120415206X00720210413&spkNum=4&single

・相続税の物納との違い

相続税の物納は、金銭による納付が困難な場合に、納税者に代わって国が財産を売却することによってそれを国家の収入とするもの。基本的にその財産を換価することが予定されている。これに対して相続土地国庫帰属制度は、土地の換価の可能性をその要件において考慮していない点で物納とは異なる。

・所有者以外の者による使用が予定されない農業用ため池について

決壊により周辺土地に損害を発生させないように、必要な措置を講ずる必要があるため、管理又は処分に過分の費用又は労力を要する土地として、相続土地国庫帰属法五条一項五号に基づき、政令で国庫帰属の対象外とすることを想定。

・果樹園の樹木について

個別の事案にもよるが、一般に、放置しておくと鳥や獣や病害虫の被害の発生要因となる。草刈り等の通常の管理に加えまして、定期的に果実を含めた枝の剪定や農薬の散布などの作業が必要になる。そのため、果樹園は基本的に通常の管理又は処分を阻害する樹木が存する土地に該当し、国庫帰属の対象外になることが想定されます。

第204回国会 参議院 法務委員会 第9号 令和3年4月20日

https://kokkai.ndl.go.jp/#/detail?minId=120415206X00920210420&spkNum=4&single

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

所有者不明土地等対策の推進に関する基本方針

令和3年6月7日所有者不明土地等対策の推進のための関係閣僚会議

抜粋

https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/shoyushafumei/dai8/kettei1.pdf

・今後、改正法の円滑な施行に向けて、法務局の体制整備や不動産登記システムと住民基本台帳ネットワークシステム等との円滑な連携を可能とする実効性のあるシステム整備を進める。

・行政機関等に対して戸籍情報を電子的に提供する戸籍情報連携システムの整備を着実に進め、令和5年度中に運用を開始する。

・所有者不明農地のより円滑な利活用に向けて、民法の共有制度等の見直しを踏まえ、土地改良事業等における所有者不明農地の一層の利活用を図る措置を検討し、その結果に基づいて令和5年までに必要な措置を講ずる。

・共有私道ガイドラインの更なる周知と、民法の共有制度の見直しを踏まえた同ガイドラインの改訂を行う。

・土地売却に伴う分筆登記や地積更正登記等を円滑化し、土地利用を促進するため、隣地所有者が不明の場合などに対応する観点から、一定の要件の下で隣地所有者の立会いがなくとも法務局の調査に基づき筆界認定を行い、分筆登記等を可能とする仕組みを検討し、令和4年度中に導入する。

所有者不明土地等対策の推進のための関係閣僚会議(第8回)議事次第

日時:令和3年6月7日(月)

所有者不明土地等問題 対策推進の工程表

法律第二十五号(令三・四・二八)

◎相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律

https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/gian/204/meisai/m204080204056.htm

目次

第一章 総則(第一条)

第二章 相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属の承認に係る手続(第二条-第十一条)

第三章 国庫帰属地の管理(第十二条)

第四章 雑則(第十三条-第十六条)

第五章 罰則(第十七条)

附則

第一章 総則

(目的)

第一条 この法律は、社会経済情勢の変化に伴い所有者不明土地(相当な努力を払ってもなおその所有者の全部又は一部を確知することができない土地をいう。)が増加していることに鑑み、相続又は遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)(以下「相続等」という。)により土地の所有権又は共有持分を取得した者等がその土地の所有権を国庫に帰属させることができる制度を創設し、もって所有者不明土地の発生の抑制を図ることを目的とする。

第二章 相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属の承認に係る手続

(承認申請)

第二条 土地の所有者(相続等によりその土地の所有権の全部又は一部を取得した者に限る。)は、法務大臣に対し、その土地の所有権を国庫に帰属させることについての承認を申請することができる。

2 土地が数人の共有に属する場合には、前項の規定による承認の申請(以下「承認申請」という。)は、共有者の全員が共同して行うときに限り、することができる。この場合においては、同項の規定にかかわらず、その有する共有持分の全部を相続等以外の原因により取得した共有者であっても、相続等により共有持分の全部又は一部を取得した共有者と共同して、承認申請をすることができる。

3 承認申請は、その土地が次の各号のいずれかに該当するものであるときは、することができない。

一 建物の存する土地

二 担保権又は使用及び収益を目的とする権利が設定されている土地

三 通路その他の他人による使用が予定される土地として政令で定めるものが含まれる

土地

四 土壌汚染対策法(平成十四年法律第五十三号)第二条第一項に規定する特定有害物

質(法務省令で定める基準を超えるものに限る。)により汚染されている土地

五 境界が明らかでない土地その他の所有権の存否、帰属又は範囲について争いがある土地

(承認申請書等)

第三条 承認申請をする者(以下「承認申請者」という。)は、法務省令で定めるところにより、次に掲げる事項を記載した承認申請書及び法務省令で定める添付書類を法務大臣に提出しなければならない。

一 承認申請者の氏名又は名称及び住所

二 承認申請に係る土地の所在、地番、地目及び地積

2 承認申請者は、法務省令で定めるところにより、物価の状況、承認申請に対する審査に要する実費その他一切の事情を考慮して政令で定める額の手数料を納めなければならない。

(承認申請の却下)

第四条 法務大臣は、次に掲げる場合には、承認申請を却下しなければならない。

一 承認申請が申請の権限を有しない者の申請によるとき。

二 承認申請が第二条第三項又は前条の規定に違反するとき。

三 承認申請者が、正当な理由がないのに、第六条の規定による調査に応じないとき。

2 法務大臣は、前項の規定により承認申請を却下したときは、遅滞なく、法務省令で定めるところにより、その旨を承認申請者に通知しなければならない。

(承認)

第五条 法務大臣は、承認申請に係る土地が次の各号のいずれにも該当しないと認めるときは、その土地の所有権の国庫への帰属についての承認をしなければならない。

一 崖(勾配、高さその他の事項について政令で定める基準に該当するものに限る。)がある土地のうち、その通常の管理に当たり過分の費用又は労力を要するもの

二 土地の通常の管理又は処分を阻害する工作物、車両又は樹木その他の有体物が地上に存する土地

三 除去しなければ土地の通常の管理又は処分をすることができない有体物が地下に存する土地

四 隣接する土地の所有者その他の者との争訟によらなければ通常の管理又は処分をすることができない土地として政令で定めるもの

五 前各号に掲げる土地のほか、通常の管理又は処分をするに当たり過分の費用又は労力を要する土地として政令で定めるもの

2 前項の承認は、土地の一筆ごとに行うものとする。

(事実の調査)

第六条 法務大臣は、承認申請に係る審査のため必要があると認めるときは、その職員に事実の調査をさせることができる。

2 前項の規定により事実の調査をする職員は、承認申請に係る土地又はその周辺の地域に所在する土地の実地調査をすること、承認申請者その他の関係者からその知っている事実を聴取し又は資料の提出を求めることその他承認申請に係る審査のために必要な調査をすることができる。

3 法務大臣は、その職員が前項の規定により承認申請に係る土地又はその周辺の地域に所在する土地の実地調査をする場合において、必要があると認めるときは、その必要の限度において、その職員に、他人の土地に立ち入らせることができる。

4 法務大臣は、前項の規定によりその職員を他人の土地に立ち入らせるときは、あらかじめ、その旨並びにその日時及び場所を当該土地の占有者に通知しなければならない。

5 第三項の規定により宅地又は垣、柵等で囲まれた他人の占有する土地に立ち入ろうとする職員は、その立入りの際、その旨を当該土地の占有者に告げなければならない。

6 日出前及び日没後においては、土地の占有者の承諾があった場合を除き、前項に規定する土地に立ち入ってはならない。

7 第三項の規定による立入りをする場合には、職員は、その身分を示す証明書を携帯し、

関係者の請求があったときは、これを提示しなければならない。

8 国は、第三項の規定による立入りによって損失を受けた者があるときは、その損失を受けた者に対して、通常生ずべき損失を補償しなければならない。

(資料の提供要求等)

第七条 法務大臣は、前条第一項の事実の調査のため必要があると認めるときは、関係行政機関の長、関係地方公共団体の長、関係のある公私の団体その他の関係者に対し、資料の提供、説明、事実の調査の援助その他必要な協力を求めることができる。

(承認に関する意見聴取)

第八条 法務大臣は、第五条第一項の承認をするときは、あらかじめ、当該承認に係る土地の管理について、財務大臣及び農林水産大臣の意見を聴くものとする。ただし、承認申請に係る土地が主に農用地(農地法(昭和二十七年法律第二百二十九号)第二条第一項に規定する農地又は採草放牧地をいう。以下同じ。)又は森林(森林法(昭和二十六年法律第二百四十九号)第二条第一項に規定する森林をいう。以下同じ。)として利用されている土地ではないと明らかに認められるときは、この限りでない。

(承認の通知等)

第九条 法務大臣は、第五条第一項の承認をし、又はしないこととしたときは、法務省令で定めるところにより、その旨を承認申請者に通知しなければならない。

(負担金の納付)

第十条 承認申請者は、第五条第一項の承認があったときは、同項の承認に係る土地につき、国有地の種目ごとにその管理に要する十年分の標準的な費用の額を考慮して政令で定めるところにより算定した額の金銭(以下「負担金」という。)を納付しなければならない。

2 法務大臣は、第五条第一項の承認をしたときは、前条の規定による承認の通知の際、法務省令で定めるところにより、併せて負担金の額を通知しなければならない。

3 承認申請者が前項に規定する負担金の額の通知を受けた日から三十日以内に、法務省令で定める手続に従い、負担金を納付しないときは、第五条第一項の承認は、その効力を失う。

(国庫帰属の時期)

第十一条 承認申請者が負担金を納付したときは、その納付の時において、第五条第一項の承認に係る土地の所有権は、国庫に帰属する。

2 法務大臣は、第五条第一項の承認に係る土地の所有権が前項の規定により国庫に帰属したときは、直ちに、その旨を財務大臣(当該土地が主に農用地又は森林として利用されていると認められるときは、農林水産大臣)に通知しなければならない。

第三章 国庫帰属地の管理

(土地の管理の機関)

第十二条 前条第一項の規定により国庫に帰属した土地(以下「国庫帰属地」という。)のうち、主に農用地又は森林として利用されている土地(国有財産法(昭和二十三年法律第七十三号)第四条第二項に規定する国有財産の所管換がされたもの又は他の法令の規定により農林水産大臣が管理することとされているものを除く。)は、農林水産大臣が管理し、又は処分する。

2 前項の規定により農林水産大臣が管理する土地のうち主に農用地として利用されているものの管理及び処分については、農地法第四十五条、第四十六条第一項、第四十七条及び第四十九条の規定を準用する。この場合において、同条第一項中「農林水産大臣、都道府県知事又は指定市町村の長」とあるのは「農林水産大臣」と、「この法律による買収その他の処分」とあるのは「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律第十二条第二項において準用する第四十六条第一項の規定による売払い又は同法第十二条第二項において準用する第四十七条の規定による売払い、所管換若しくは所属替」と、同条第三項中「農林水産大臣、都道府県知事又は指定市町村の長」とあるのは「農林水産大臣」と、同条第五項中「国又は都道府県等」とあるのは「国」と、「場合には、政令で定めるところにより」とあるのは「場合には」と読み替えるものとする。

3 前項において準用する農地法第四十六条第一項又は第四十七条の規定による農用地の売払いを原因とする所有権の移転については、同法第三条第一項本文の規定は、適用しない。

4 第一項の規定により農林水産大臣が管理する土地のうち主に森林として利用されているものの管理及び処分については、国有林野の管理経営に関する法律(昭和二十六年法律第二百四十六号)第二章(第七条を除く。)の規定を準用する。

第四章 雑則

(承認の取消し等)

第十三条 法務大臣は、承認申請者が偽りその他不正の手段により第五条第一項の承認を受けたことが判明したときは、同項の承認を取り消すことができる。

2 法務大臣は、国庫帰属地について前項の規定による承認の取消しをするときは、あらかじめ、当該国庫帰属地を所管する各省各庁の長(当該土地が交換、売払い又は譲与(以下この項及び次項において「交換等」という。)により国有財産(国有財産法第二条第一項に規定する国有財産をいう。次項において同じ。)でなくなっているときは、当該交換等の処分をした各省各庁の長)の意見を聴くものとする。

3 法務大臣は、第一項の規定による承認の取消しをしようとする場合において、当該取消しに係る国庫帰属地(交換等により国有財産でなくなっている土地を含む。以下この項において同じ。)の所有権を取得した者又は当該国庫帰属地につき所有権以外の権利の設定を受けた者があるときは、これらの者の同意を得なければならない。

4 法務大臣は、第一項の規定により第五条第一項の承認を取り消したときは、法務省令で定めるところにより、その旨を同項の承認を受けた者に通知するものとする。

(損害賠償責任)

第十四条 第五条第一項の承認に係る土地について当該承認の時において第二条第三項各号又は第五条第一項各号のいずれかに該当する事由があったことによって国に損害が生じた場合において、当該承認を受けた者が当該事由を知りながら告げずに同項の承認を受けた者であるときは、その者は、国に対してその損害を賠償する責任を負うものとする。

(権限の委任)

第十五条 この法律に規定する法務大臣の権限は、法務省令で定めるところにより、その一部を法務局又は地方法務局の長に委任することができる。

2 この法律に規定する農林水産大臣の権限は、農林水産省令で定めるところにより、その全部又は一部を地方農政局長又は森林管理局長に委任することができる。

3 前項の規定により森林管理局長に委任された権限は、農林水産省令で定めるところにより、森林管理署長に委任することができる。

(政令への委任)

第十六条 この法律に定めるもののほか、この法律の実施のために必要な手続その他の事項については、政令で定める。

第五章 罰則

第十七条 第十二条第二項において読み替えて準用する農地法第四十九条第一項の規定による職員の調査、測量、除去又は移転を拒み、妨げ、又は忌避したときは、その違反行為をした者は、六月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。

2 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務又は財産に関して前項の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して同項の罰金刑を科する。

附 則

(施行期日)

1 この法律は、公布の日から起算して二年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。

(検討)

2 政府は、この法律の施行後五年を経過した場合において、この法律の施行の状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。

(法務・財務・農林水産・内閣総理大臣署名)

詳しいサイト

弁護士による『相続土地国庫帰属制度』解説専門サイト

荒井達也弁護士 

https://souzokutochi-kokkokizoku.com/

民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)の改正等に関する要綱案

民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)の改正等に関する要綱案

http://www.moj.go.jp/shingi1/housei02_00302.html

目次

第1部 民法等の見直し ……………………………………………….. 1

第1 相隣関係 ……………………………………………………….. 1

隣地使用権 ……………………………………………………… 1

竹木の枝の切除等 ………………………………………………… 1

継続的給付を受けるための設備設置権及び設備使用権 ……………………. 1

第2 共有等 …………………………………………………………. 2

共有物を使用する共有者と他の共有者との関係等 ……………………….. 2

共有物の変更行為 ………………………………………………… 2

共有物の管理 ……………………………………………………. 3

共有物の管理者 ………………………………………………….. 3

変更・管理の決定の裁判の手続 ……………………………………… 4

裁判による共有物分割 …………………………………………….. 4

相続財産に属する共有物の分割の特則 ………………………………… 5

所在等不明共有者の持分の取得 ……………………………………… 5

所在等不明共有者の持分の譲渡 ……………………………………… 6

相続財産についての共有に関する規定の適用関係 ……………………… 7

第3 所有者不明土地管理命令等 ………………………………………… 7

1 所有者不明土地管理命令及び所有者不明建物管理命令 …………………… 7

(1) 所有者不明土地管理命令 ………………………………………… 7

(2) 所有者不明土地管理人の権限 …………………………………….. 8

(3) 所有者不明土地等に関する訴えの取扱い ……………………………. 9

(4) 所有者不明土地管理人の義務 …………………………………….. 9

(5) 所有者不明土地管理人の解任及び辞任 ……………………………… 9

(6) 所有者不明土地管理人の報酬等 …………………………………… 9

(7) 所有者不明土地管理制度における供託等及び取消し …………………… 9

(8) 所有者不明建物管理命令 ……………………………………….. 10

2 管理不全土地管理命令及び管理不全建物管理命令 ……………………… 11

(1) 管理不全土地管理命令 …………………………………………. 11

(2) 管理不全土地管理人の権限 ……………………………………… 11

(3) 管理不全土地管理人の義務 ……………………………………… 12

(4) 管理不全土地管理人の解任及び辞任 ………………………………. 12

(5) 管理不全土地管理人の報酬等 ……………………………………. 12

(6) 管理不全土地管理制度における供託等及び取消し ……………………. 12

(7) 管理不全建物管理命令 …………………………………………. 12

第4 相続等 ………………………………………………………… 13

相続財産等の管理 ……………………………………………….. 13

(1) 相続財産の管理 ………………………………………………. 13

(2) 相続の放棄をした者による管理 ………………………………….. 13

(3) 不在者財産管理制度及び相続財産管理制度における供託等及び取消し……. 13

相続財産の清算 …………………………………………………. 14

(1) 相続財産の清算人への名称の変更 ………………………………… 14

(2) 民法第952条以下の清算手続の合理化 …………………………… 14

遺産分割に関する見直し ………………………………………….. 14

(1) 期間経過後の遺産の分割における相続分 …………………………… 14

(2) 遺産の分割の調停又は審判の申立ての取下げ ……………………….. 14

(3) 遺産の分割の禁止 …………………………………………….. 15

第2部 不動産登記法等の見直し ……………………………………….. 16

第1 所有権の登記名義人に係る相続の発生を不動産登記に反映させるための仕組み. 16

1 相続登記等の申請の義務付け及び登記手続の簡略化 ……………………. 16

(1) 所有権の登記名義人が死亡した場合における登記の申請の義務付け……… 16

(2) 相続登記等の申請義務違反の効果 ………………………………… 16

(3) 相続人申告登記(仮称)の創設 ………………………………….. 17

(4) 遺贈による所有権の移転の登記手続の簡略化 ……………………….. 17

(5) 法定相続分での相続登記がされた場合における登記手続の簡略化……….. 17

2 権利能力を有しないこととなったと認めるべき所有権の登記名義人についての符号

の表示 …………………………………………………………. 18

第2 所有権の登記名義人の氏名又は名称及び住所の情報の更新を図るための仕組み. 18

1 氏名又は名称及び住所の変更の登記の申請の義務付け ………………….. 18

2 登記所が氏名又は名称及び住所の変更情報を不動産登記に反映させるための仕組み

………………………………………………………………… 18

第3 登記所が他の公的機関から所有権の登記名義人の死亡情報や氏名又は名称及び住所

の変更情報を取得するための仕組み ………………………………….. 18

第4 登記義務者の所在が知れない場合等における登記手続の簡略化…………… 19

1 登記義務者の所在が知れない場合の一定の登記の抹消手続の簡略化……….. 19

2 解散した法人の担保権に関する登記の抹消手続の簡略化 ………………… 19

第5 その他の見直し事項 …………………………………………….. 20

1 登記名義人の特定に係る登記事項の見直し …………………………… 20

2 外国に住所を有する登記名義人の所在を把握するための方策 …………….. 20

(1) 国内における連絡先となる者の登記 ………………………………. 20

(2) 外国に住所を有する外国人についての住所証明情報の見直し…………… 20

3 附属書類の閲覧制度の見直し ……………………………………… 20

4 所有不動産記録証明制度(仮称)の創設 …………………………….. 21

5 被害者保護のための住所情報の公開の見直し …………………………. 21

第3部 土地所有権の国庫への帰属の承認等に関する制度の創設 ………………. 23

第4部 その他 ……………………………………………………… 26

第1部 民法等の見直し

第1 相隣関係

隣地使用権

民法第209条の規律を次のように改めるものとする。

① 土地の所有者は、次に掲げる目的のため必要な範囲内で、隣地を使用することができる。ただし、住家については、その居住者の承諾がなければ、立ち入ることはできない。

ア 境界又はその付近における障壁、建物その他の工作物の築造、収去又は修繕

イ 境界標の調査又は境界に関する測量

ウ 2③の規律による枝の切取り

② ①の場合には、使用の日時、場所及び方法は、隣地の所有者及び隣地を現に使用している者(③及び④において「隣地使用者」という。)のために損害が最も少ないものを選ばなければならない。

①の規律により隣地を使用する者は、あらかじめ、その目的、日時、場所及び方法を隣地の所有者及び隣地使用者に通知しなければならない。ただし、あらかじめ通知することが困難なときは、使用を開始した後、遅滞なく、通知することをもって足りる。

④ ①の場合において、隣地の所有者又は隣地使用者が損害を受けたときは、その償金を請求することができる。

 竹木の枝の切除等

民法第233条第1項の規律を次のように改めるものとする。

① 土地の所有者は、隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは、その竹木の所有者に、その枝を切除させることができる。

② ①の場合において、竹木が数人の共有に属するときは、各共有者は、その枝を切り取ることができる。

③ ①の場合において、次に掲げるときは、土地の所有者は、その枝を切り取ることができる。

ア 竹木の所有者に枝を切除するよう催告したにもかかわらず、竹木の所有者が相当の期間内に切除しないとき。

イ 竹木の所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき。

ウ 急迫の事情があるとき。

継続的給付を受けるための設備設置権及び設備使用権

継続的給付を受けるための設備設置権及び設備使用権について、次のような規律を設けるものとする。

① 土地の所有者は、他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用しなければ電気、ガス又は水道水の供給その他これらに類する継続的給付(以下①及び⑧において「継続的給付」という。)を受けることができないときは、継続的給付を受けるため必要な範囲内で、他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用することができる。

② ①の場合には、設備の設置又は使用の場所及び方法は、他の土地又は他人が所有する設備(③において「他の土地等」という。)のために損害が最も少ないものを選ばなければならない。

③ ①の規律により他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用する者は、あらかじめ、その目的、場所及び方法を他の土地等の所有者及び他の土地を現に使用している者に通知しなければならない。

④ ①の規律による権利を有する者は、①の規律により他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用するために当該他の土地又は当該他人が所有する設備がある土地を使用することができる。この場合においては、前記1の①ただし書及び②から④までの規律を準用する。

⑤ ①の規律により他の土地に設備を設置する者は、その土地の損害(④において準用する前記1の④に規律する損害を除く。)に対して償金を支払わなければならない。ただし、1年ごとにその償金を支払うことができる。

⑥ ①の規律により他人が所有する設備を使用する者は、その設備の使用を開始するために生じた損害に対して償金を支払わなければならない。

⑦ ①の規律により他人が所有する設備を使用する者は、その利益を受ける割合に応じて、その設置、改築、修繕及び維持に要する費用を負担しなければならない。

⑧ 分割によって他の土地に設備を設置しなければ継続的給付を受けることができない土地が生じたときは、その土地の所有者は、継続的給付を受けるため、他の分割者の所有地のみに設備を設置することができる。この場合においては、⑤の規律は、適用しない。

⑨ ⑧の規律は、土地の所有者がその土地の一部を譲り渡した場合について準用する。

第2 共有等

共有物を使用する共有者と他の共有者との関係等

共有物を使用する共有者と他の共有者との関係等について、次のような規律を設けるものとする。

① 共有物を使用する共有者は、別段の合意がある場合を除き、他の共有者に対し、自己の持分を超える使用の対価を償還する義務を負う。

② 共有者は、善良な管理者の注意をもって、共有物の使用をしなければならない。

共有物の変更行為

民法第251条の規律を次のように改めるものとする。

① 各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。②において同じ。)を加えることができない。

② 共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有者の請求により、当該他の共有者以外の他の共有者の同意を得て共有物に変更を加えることができる旨の裁判をすることができる。

共有物の管理

民法第252条の規律を次のように改めるものとする。

① 共有物の管理に関する事項(共有物に2①に規律する変更を加えるものを除く。②において同じ。)は、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。共有物を使用する共有者があるときも、同様とする。

② 裁判所は、次に掲げるときは、ア又はイに規律する他の共有者以外の共有者の請求により、当該他の共有者以外の共有者の持分の価格に従い、その過半数で共有物の管理に関する事項を決することができる旨の裁判をすることができる。

ア 共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき。

イ 共有者が他の共有者に対し相当の期間を定めて共有物の管理に関する事項を決することについて賛否を明らかにすべき旨を催告した場合において、当該他の共有者がその期間内に賛否を明らかにしないとき。

③ ①及び②の規律による決定が、共有者間の決定に基づいて共有物を使用する共有者に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない。

④ 共有者は、①から③までの規律により、共有物に、次のアからエまでに掲げる賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利(次のアからエまでにおいて「賃借権等」という。)であって、次のアからエまでに定める期間を超えないものを設定することができる。

ア 樹木の栽植又は伐採を目的とする山林の賃借権等 10年

イ 前号の賃借権等以外の土地の賃借権等 5年

ウ 建物の賃借権等 3年

エ 動産の賃借権等 6箇月

⑤ 各共有者は、①から④までの規律にかかわらず、保存行為をすることができる。

共有物の管理者

共有物の管理者について、次のような規律を設けるものとする。

① 共有者は、3の規律により、共有物を管理する者(②から⑤までにおいて「共有物の管理者」という。)を選任し、又は解任することができる。

②共有物の管理者は、共有物の管理に関する行為をすることができる。ただし、共有者の全員の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。③において同じ。)を加えることができない。

③ 共有物の管理者が共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有物の管理者の請求により、当該共有者以外の共有者の同意を得て共有物に変更を加えることができる旨の裁判をすることができる。

④ 共有物の管理者は、共有者が共有物の管理に関する事項を決した場合には、これに従ってその職務を行わなければならない。

⑤ ④の規律に違反して行った共有物の管理者の行為は、共有者に対してその効力を生じない。ただし、共有者は、これをもって善意の第三者に対抗することができない。

変更・管理の決定の裁判の手続

変更・管理の決定の裁判の手続について、次のような規律を設けるものとする。

① 裁判所は、次に掲げる事項を公告し、かつ、イの期間が経過しなければ、2②、3②ア及び4③の規律による裁判をすることができない。この場合において、イの期間は、1箇月を下ってはならない。

ア 当該財産についてこの裁判の申立てがあったこと。

イ 裁判所がこの裁判をすることについて異議があるときは、当該他の共有者等(2②の当該他の共有者、3②アの他の共有者又は4③の当該共有者をいう。)は一定の期間までにその旨の届出をすべきこと。

ウ イの届出がないときは、裁判所がこの裁判をすること。

② 裁判所は、次に掲げる事項を3②イの他の共有者に通知し、かつ、イの期間が経過しなければ、3②イの規律による裁判をすることができない。この場合において、イの期間は、1箇月を下ってはならない。

ア 当該財産についてこの裁判の申立てがあったこと。

イ 3②イの他の共有者は裁判所に対し一定の期間までに共有物の管理に関する事項を決することについて賛否を明らかにすべきこと。

ウ イの期間内に3②イの他の共有者が共有物の管理に関する事項を決することについて賛否を明らかにしないときは、裁判所がこの裁判をすること。

③ ②イの期間内に裁判所に対し共有物の管理に関する事項を決することについて賛否を明らかにした他の共有者があるときは、裁判所は、その者に係る3②イの規律による裁判をすることができない。

(注)これらの裁判に係る事件は当該裁判に係る財産の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に属するものとするなど、裁判所の手続に関しては所要の規定を整備する。

裁判による共有物分割民法第258条の規律を次のように改めるものとする。

① 共有物の分割について共有者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、その分割を裁判所に請求することができる。

② 裁判所は、次に掲げる方法により、共有物の分割を命ずることができる。

ア 共有物の現物を分割する方法

イ 共有者に債務を負担させて、他の共有者の持分の全部又は一部を取得させる方法

③ ②に規律する方法により共有物を分割することができないとき、又は分割によってその価格を著しく減少させるおそれがあるときは、裁判所は、その競売を命ずることができる。

④ 裁判所は、共有物の分割の裁判において、当事者に対して、金銭の支払、物の引渡し、登記義務の履行その他の給付を命ずることができる。

相続財産に属する共有物の分割の特則

相続財産に属する共有物の分割の特則について、次のような規律を設けるものとする。

① 共有物の全部又はその持分が相続財産に属する場合において、共同相続人間で当該共有物の全部又はその持分について遺産の分割をすべきときは、当該共有物又はその持分について6の規律による分割をすることができない。

② 共有物の持分が相続財産に属する場合において、相続開始の時から10年を経過したときは、①の規律にかかわらず、相続財産に属する共有物の持分についての規律による分割をすることができる。ただし、当該共有物の持分について遺産の分割の請求があった場合において、相続人が当該共有物の持分について6の規律による分割をすることに異議の申出をしたときは、この限りでない。

③ 相続人が②ただし書の申出をする場合には、当該申出は、当該相続人が6①の規律による請求を受けた裁判所から当該請求があった旨の通知を受けた日から2箇月以内に当該裁判所にしなければならない。

所在等不明共有者の持分の取得

所在等不明共有者の持分の取得について、次のような規律を設けるものとする。

(1) 要件等

① 不動産が数人の共有に属する場合において、共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有者の請

求により、その共有者に、当該他の共有者(以下「所在等不明共有者」という。)の持分を取得させる旨の裁判をすることができる。この場合において、請求をした共有者が2人以上あるときは、請求をした各共有者に、所在等不明共有者の持分を請求をした各共有者の持分の割合で按分してそれぞれ取得させる。

② ①の請求があった持分に係る不動産について6①の規律による請求又は遺産の分割の請求があり、かつ、所在等不明共有者以外の共有者が①の請求を受けた裁判所に①の裁判をすることについて異議がある旨の届出をしたときは、裁判所は、①の裁判をすることができない。

③ 所在等不明共有者の持分が相続財産に属する場合(共同相続人間で遺産の分割をすべき場合に限る。)において、相続開始の時から10年を経過していないときは、裁判所は、①の裁判をすることができない。

④ 共有者が所在等不明共有者の持分を取得したときは、所在等不明共有者は、当該共有者に対し、当該共有者が取得した持分の時価相当額の支払を請求することができる。

⑤ ①から④までの規律は、不動産の使用又は収益をする権利(所有権を除く。)が数人の共有に属する場合について準用する。

(2) 手続等

① 裁判所は、次に掲げる事項を公告し、かつ、イ、ウ及びオの期間が経過しなければ、(1)①の裁判をすることができない。この場合において、イ、ウ及びオの期間は、3箇月を下ってはならない。

ア 所在等不明共有者の持分について(1)①の裁判の申立てがあったこと。

イ 裁判所が(1)①の裁判をすることについて異議があるときは、所在等不明共有者は一定の期間までにその旨の届出をすべきこと。

ウ (1)②の異議の届出は、一定の期間までにすべきこと。

エ イ及びウの届出がないときは、裁判所が(1)①の裁判をすること。

オ (1)①の裁判の申立てがあった所在等不明共有者の持分について申立人以外の共有者が(1)①の裁判の申立てをするときは一定の期間内にその申立てをすべきこと。

② 裁判所は、①の公告をしたときは、遅滞なく、登記簿上その氏名又は名称が判明している共有者に対し、①(イを除く。)の規律により公告すべき事項を通知しなければならない。この通知は、通知を受ける者の登記簿上の住所又は事務所に宛てて発すれば足りる。

③ 裁判所は、①ウの異議の届出が①ウの期間を経過した後にされたときは、当該届出を却下しなければならない。

④ 裁判所は、(1)①の裁判をするには、申立人に対して、一定の期間内に、所在等不明共有者のために、裁判所が定める額の金銭を裁判所の指定する供託所に供託し、かつ、その旨を届け出るべきことを命じなければならない。この裁判に対しては、即時抗告をすることができる。

⑤ 裁判所は、申立人が④の規律による決定に従わないときは、その申立人の申立てを却下しなければならない。

⑥ (1)①の裁判の申立てを受けた裁判所が①の公告をした場合において、その申立てがあった所在等不明共有者の持分について申立人以外の共有者が①オの期間が経過した後に(1)①の裁判の申立てをしたときは、裁判所は、申立人以外の共有者による(1)①の裁判のその申立てを却下しなければならない。

(注)(1)①の裁判に係る事件は、当該裁判に係る不動産の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に属するものとするなど、裁判所の手続に関しては所要の規定を整備する。

所在等不明共有者の持分の譲渡

所在等不明共有者の持分の譲渡について、次のような規律を設けるものとする。

(1) 要件等

① 不動産が数人の共有に属する場合において、共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有者の請求により、その共有者に、当該他の共有者(以下「所在等不明共有者」という。)以外の共有者の全員が特定の者に対してその有する持分の全部を譲渡することを停止条件として所在等不明共有者の持分を当該特定の者に譲渡する権限を付与する旨の裁判をすることができる。

② 所在等不明共有者の持分が相続財産に属する場合(共同相続人間で遺産の分割をすべき場合に限る。)において、相続開始の時から10年を経過していないときは、裁判所は、①の裁判をすることができない。

③ ①の裁判により付与された権限に基づき共有者が所在等不明共有者の持分を第三者に譲渡したときは、所在等不明共有者は、譲渡をした共有者に対し、不動産の時価相当額を所在等不明共有者の持分に応じて按分して得た額の支払を請求することができる。

④ ①から③までの規律は、不動産の使用又は収益をする権利(所有権を除く。)が数人の共有に属する場合について準用する。

(2) 手続等

① 8(2)①ア、イ及びエ、④及び⑤の規律は、(1)①の裁判に係る事件について準用する。

② 所在等不明共有者の持分を譲渡する権限の付与の裁判の効力が生じた後2箇月以内にその裁判により権限に基づく所在等不明共有者の持分の譲渡の効力が生じないときは、その裁判は、その効力を失う。ただし、この期間は、裁判所において伸長することができる。

(注)(1)①の裁判に係る事件は、当該裁判に係る不動産の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に属するものとするなど、裁判所の手続に関しては所要の規定を整備する。

相続財産についての共有に関する規定の適用関係

相続財産についての共有に関する規定の適用関係について、次のような規律を設けるものとする。

相続財産について共有に関する規定を適用するときは、民法第900条から第902条までの規定により算定した相続分をもって各相続人の共有持分とする。

第3 所有者不明土地管理命令等

1 所有者不明土地管理命令及び所有者不明建物管理命令

所有者不明土地管理命令及び所有者不明建物管理命令について、次のような規律を設けるものとする。

(1) 所有者不明土地管理命令

① 裁判所は、所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない土地(土地が数人の共有に属する場合にあっては、共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない土地の共有持分)について、必要があると認めるときは、利害関係人の請求により、その請求に係る土地又は共有持分を対象として、所有者不明土地管理人(④の所有者不明土地管理人をいう。以下同じ。)による管理を命ずる処分(以下「所有者不明土地管理命令」という。)をすることができる。

② 所有者不明土地管理命令の効力は、当該所有者不明土地管理命令の対象とされた土地(共有持分を対象として所有者不明土地管理命令が発令された場合にあっては、共有物である土地)にある動産(当該所有者不明土地管理命令の対象とされた土地又は共有持分を有する者が所有するものに限る。)に及ぶ。

③ 所有者不明土地管理命令は、所有者不明土地管理命令が発令された後に当該所有者不明土地管理命令が取り消された場合において、当該所有者不明土地管理命令の対象とされた土地又は共有持分及び当該所有者不明土地管理命令の効力が及ぶ動産の管理、処分その他の事由により所有者不明土地管理人が得た財産について、必要があると認めるときも、することができる。

④ 裁判所は、所有者不明土地管理命令をする場合には、当該所有者不明土地管理命令において、所有者不明土地管理人を選任しなければならない。

(注) 第3の1の規律による非訟事件は、裁判を求める事項に係る不動産の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に属するものとし、また、土地所有者のための手続保障に関し、次のような規律を設けるものとするなど、裁判所の手続に関しては所要の規定を整備する。

裁判所は、次に掲げる事項を公告し、かつ、イの期間が経過しなければ、所有者不明土地管理命令をすることができない。この場合において、イの期間は、1箇月を下ってはならない。

ア 所有者不明土地管理命令の申立てがその対象となるべき土地又は共有持分についてあったこと。

イ 所有者不明土地管理命令をすることについて異議があるときは、対象となるべき土地又は共有持分を有する者は一定の期間までにその旨の届出をすべきこと。

ウ 前号の届出がないときは、裁判所が所有者不明土地管理命令をすること。

(2) 所有者不明土地管理人の権限

① (1)④の規律により所有者不明土地管理人が選任された場合には、所有者不明土地管理命令の対象とされた土地又は共有持分及び所有者不明土地管理命令の効力が及ぶ動産並びにその管理、処分その他の事由により所有者不明土地管理人が得た財産(以下「所有者不明土地等」という。)の管理及び処分をする権利は、所有者不明土地管理人に専属する。

② 所有者不明土地管理人が次に掲げる行為の範囲を超える行為をするには、裁判所の許可を得なければならない。ただし、この許可がないことをもって善意の第三者に対抗することができない。

ア 保存行為

イ 所有者不明土地等の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為

(注) 管理人の選任の公示に関し、次のような規律を設けるものとする。

① 所有者不明土地管理命令があった場合には、裁判所書記官は、職権で、遅滞なく、所有者不明土地管理命令の対象とされた土地又は共有持分について、所有者不明土地管理命令の登記の嘱託をしなければならない。

② 所有者不明土地管理命令を取り消す裁判があったときは、裁判所書記官は、職権で、遅滞なく、所有者不明土地管理命令の登記の抹消を嘱託しなければならない。

(3) 所有者不明土地等に関する訴えの取扱い

所有者不明土地管理命令が発せられた場合には、所有者不明土地等に関する訴えについては、所有者不明土地管理人を原告又は被告とする。

(注) 訴訟手続の中断・受継に関し、次のような規律を整備するものとする。

① 所有者不明土地管理命令が発せられた場合には、所有者不明土地等に関する訴訟手続で当該所有者不明土地等の所有者を当事者とするものは、中断する。この場合においては、所有者不明土地管理人は、訴訟手続を受け継ぐことができる。

② 所有者不明土地管理命令が取り消されたときは、所有者不明土地管理人を当事者とする所有者不明土地等に関する訴訟手続は、中断する。この場合においては、所有者不明土地等の所有者は、訴訟手続を受け継がなければならない。

(4) 所有者不明土地管理人の義務

① 所有者不明土地管理人は、所有者不明土地等の所有者(その共有持分を有する者を含む。)のために、善良な管理者の注意をもって、その権限を行使しなければならない。

② 数人の者の共有持分を対象として所有者不明土地管理命令が発せられたときは、所有者不明土地管理人は、当該所有者不明土地管理命令の対象とされた共有持分を有する者全員のために、誠実かつ公平にその権限を行使しなければならない。

(5) 所有者不明土地管理人の解任及び辞任

① 所有者不明土地管理人がその任務に違反して所有者不明土地等に著しい損害を与えたことその他重要な事由があるときは、裁判所は、利害関係人の請求により、所有者不明土地管理人を解任することができる。

② 所有者不明土地管理人は、正当な事由があるときは、裁判所の許可を得て、辞任することができる。

(6) 所有者不明土地管理人の報酬等

① 所有者不明土地管理人は、所有者不明土地等から裁判所が定める額の費用の前払及び報酬を受けることができる。

② 所有者不明土地管理人による所有者不明土地等の管理に必要な費用及び報酬は、所有者不明土地等の所有者(その共有持分を有する者を含む。)の負担とする。

(7) 所有者不明土地管理制度における供託等及び取消し

① 所有者不明土地管理人は、所有者不明土地管理命令の対象とされた土地又は共有持分及び所有者不明土地管理命令の効力が及ぶ動産の管理、処分その他の事由により金銭が生じたときは、その所有者(その共有持分を有する者を含む。)のために、当該金銭を所有者不明土地管理命令の対象とされた土地(共有持分を対象として所有者不明土地管理命令が発令された場合にあっては、共有物である土地)の所在地の供託所に供託することができる。この場合において、供託をしたときは、法務省令で定めるところにより、その旨その他法務省令で定める事項を公告しなければならない。

② 裁判所は、管理すべき財産がなくなったとき(管理すべき財産の全部が供託されたときを含む。)その他財産の管理を継続することが相当でなくなったときは、所有者不明土地管理人若しくは利害関係人の申立てにより又は職権で、所有者不明土地管理命令を取り消さなければならない。

③ 所有者不明土地等の所有者(その共有持分を有する者を含む。)が所有者不明土地等の所有権(その共有持分を含む。)が自己に帰属することを証明したときは、裁判所は、当該所有者の申立てにより、所有者不明土地管理命令を取り消さなければならない。この場合において、所有者不明土地管理命令が取り消されたときは、所有者不明土地管理人は、当該所有者に対し、その事務の経過及び結果を報告し、当該所有者に帰属することが証明された財産を引き渡さなければならない。

(8) 所有者不明建物管理命令

① 裁判所は、所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない建物(建物が数人の共有に属する場合にあっては、共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない建物の共有持分)について、必要があると認めるときは、利害関係人の請求により、その請求に係る建物又は共有持分を対象として、所有者不明建物管理人(④の所有者不明建物管理人をいう。以下同じ。)による管理を命ずる処分(以下「所有者不明建物管理命令」という。)をすることができる。

② 所有者不明建物管理命令の効力は、当該所有者不明建物管理命令の対象とされた建物(共有持分を対象として所有者不明建物管理命令が発令された場合にあっては、共有物である建物)にある動産(当該所有者不明建物管理命令の対象とされた建物又は共有持分を有する者が所有するものに限る。)及び当該建物又は共有持分を有するための建物の敷地に関する権利(賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利(所有権を除く。)であって、当該所有者不明建物管理命令の対象とされた建物又は共有持分を有する者が有するものに限る。)に及ぶ。

③ 所有者不明建物管理命令は、所有者不明建物管理命令が発令された後に当該所有者不明建物管理命令が取り消された場合において、当該所有者不明建物管理命令の対象とされた建物又は共有持分並びに当該所有者不明建物管理命令の効力が及ぶ動産及び建物の敷地に関する権利の管理、処分その他の事由により所有者不明建物管理人が得た財産について、必要があると認めるときも、することができる。

④ 裁判所は、所有者不明建物管理命令をする場合には、所有者不明建物管理命令において、所有者不明建物管理人を選任しなければならない。

⑤ (2)から(7)までの規定は、所有者不明建物管理命令について準用する。

(注) 所有者不明建物管理命令に関する規律は、建物の区分所有等に関する法律における専有部分及び共用部分については、適用しないものとする。

2 管理不全土地管理命令及び管理不全建物管理命令

管理不全土地管理命令及び管理不全建物管理命令について、次のような規律を設けるものとする。

(1) 管理不全土地管理命令

① 裁判所は、所有者による土地の管理が不適当であることによって他人の権利又は法律上保護される利益が侵害され、又は侵害されるおそれがある場合において、必要があると認めるときは、利害関係人の請求により、当該土地を対象として、管理不全土地管理人(③の管理不全土地管理人をいう。以下同じ。)による管理を命ずる処分(以下「管理不全土地管理命令」という。)をすることができる。

② 管理不全土地管理命令の効力は、当該管理不全土地管理命令の対象とされた土地にある動産(当該管理不全土地管理命令の対象とされた土地の所有者又はその共有持分を有する者が所有するものに限る。)に及ぶ。

③ 裁判所は、管理不全土地管理命令をする場合には、当該管理不全土地管理命令において、管理不全土地管理人を選任しなければならない。

(注) 第3の2の規律による非訟事件は、裁判を求める事項に係る不動産の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に属するものとするなど、裁判所の手続に関しては所要の規定(裁判所は、管理不全土地管理命令等の一定の裁判をする場合には、その対象とされた土地の所有者の陳述を聴かなければならないが、裁判所が管理不全土地管理命令をする場合において、その陳述を聴く手続を経ることによりその申立ての目的を達することができない事情があるときはこの限りでない旨の規定や、これらの裁判に対する即時抗告の規定を含む。)を整備する。

(2) 管理不全土地管理人の権限

① 管理不全土地管理人は、管理不全土地管理命令の対象とされた土地及び管理不全土地管理命令の効力が及ぶ動産並びにその管理、処分その他の事由により管理不全土地管理人が得た財産(以下「管理不全土地等」という。)の管理及び処分をする権限を有する。

② 管理不全土地管理人が次に掲げる行為の範囲を超える行為をするには、裁判所の許可を得なければならない。ただし、この許可がないことをもって善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。

ア 保存行為

イ 管理不全土地等の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為

③ 管理不全土地管理命令の対象とされた土地の処分についての前項の許可をするには、その所有者の同意がなければならない。

(3) 管理不全土地管理人の義務

① 管理不全土地管理人は、管理不全土地等の所有者のために、善良な管理者の注意をもって、その権限を行使しなければならない。

② 管理不全土地等が数人の共有に属する場合には、管理不全土地管理人は、その共有持分を有する者全員のために、誠実かつ公平にその権限を行使しなければならない。

(4) 管理不全土地管理人の解任及び辞任

① 管理不全土地管理人がその任務に違反して管理不全土地等に著しい損害を与えたことその他重要な事由があるときは、裁判所は、利害関係人の請求により、管理不全土地管理人を解任することができる。

② 管理不全土地管理人は、正当な事由があるときは、裁判所の許可を得て、辞任することができる。

(5) 管理不全土地管理人の報酬等

① 管理不全土地管理人は、管理不全土地等から裁判所が定める額の費用の前払及び報酬を受けることができる。

② 管理不全土地管理人による管理不全土地等の管理に必要な費用及び報酬は、管理不全土地等の所有者の負担とする。

(6) 管理不全土地管理制度における供託等及び取消し

① 管理不全土地管理人は、管理不全土地管理命令の対象とされた土地及び管理不全土地管理命令の効力が及ぶ動産の管理、処分その他の事由により金銭が生じたときは、その所有者(その共有持分を有する者を含む。)のために、当該金銭を管理不全土地管理命令の対象とされた土地の所在地の供託所に供託することができる。この場合において、供託をしたときは、法務省令で定めるところにより、その旨その他法務省令で定める事項を公告しなければならない。

② 裁判所は、管理すべき財産がなくなったとき(管理すべき財産の全部が供託されたときを含む。)その他財産の管理を継続することが相当でなくなったときは、管理不全土地管理人若しくは利害関係人の申立てにより又は職権で、管理不全土地管理命令を取り消さなければならない。

(7) 管理不全建物管理命令

① 裁判所は、所有者による建物の管理が不適当であることによって他人の権利又は法律上保護される利益が侵害され、又は侵害されるおそれがある場合において、必要があると認めるときは、利害関係人の請求により、当該建物を対象として、管理不全建物管理人(③の管理不全建物管理人をいう。)による管理を命ずる処分(以下この条において「管理不全建物管理命令」という。)をすることができる。

② 管理不全建物管理命令は、当該管理不全建物管理命令の対象とされた建物にある動産(当該管理不全建物管理命令の対象とされた建物の所有者又はその共有持分を有する者が所有するものに限る。)及び当該建物を所有するための建物の敷地に関する権利(賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利(所有権を除く。)であって、当該管理不全建物管理命令の対象とされた建物の所有者又はその共有持分を有する者が有するものに限る。)に及ぶ。

③ 裁判所は、管理不全建物管理命令をする場合には、当該管理不全建物管理命令において、管理不全建物管理人を選任しなければならない。

④ (2)から(6)までの規定は、管理不全建物管理命令について準用する。

(注) 管理不全建物管理命令に関する規律は、建物の区分所有等に関する法律における専有部分及び共用部分については、適用しないものとする。

第4 相続等

相続財産等の管理

(1) 相続財産の管理

相続財産の管理について、次のような規律を設けるものとし、民法第918条第2項及び第3項並びに第926条第2項及び第940条第2項のうちこれらを準用する部分を削るものとする。

① 家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、いつでも、相続財産の保存に必要な処分を命ずることができる。ただし、相続人が一人である場合においてその相続人が相続の単純承認をしたとき、相続人が数人ある場合において遺産の全部の分割がされたとき又は民法第952条第1項の規定により相続財産の清算人が選任されているときは、この限りでない。

② 民法第27条から第29条までの規定は、①の規律により家庭裁判所が相続財産の管理人を選任した場合について準用する。

(2) 相続の放棄をした者による管理民法第940条第1項の規律を次のように改めるものとす。

相続の放棄をした者が、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は民法第952条第1項の相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない。

(3) 不在者財産管理制度及び相続財産管理制度における供託等及び取消し不在者財産管理人による供託等に関し、次のような規律を設けるとともに、不在者の財産の管理に関する処分の取消しの規律を見直し、管理すべき財産の全部が供託されたときをその処分の取消事由とした上で、本文(1)①により選任される相続財産管理人についてもこれらの規律を準用するものとする。

① 家庭裁判所が選任した管理人は、不在者の財産の管理、処分その他の事由により金銭が生じたときは、不在者のために、当該金銭を不在者の財産の管理に関する処分を命じた裁判所の所在地を管轄する家庭裁判所の管轄区域内の供託所に供託することができる。

② 家庭裁判所が選任した管理人は、①の規律による供託をしたときは、法務省令で定めるところにより、その旨その他法務省令で定める事項を公告しなければならない。

相続財産の清算

(1) 相続財産の清算人への名称の変更

民法第936条第1項及び第952条の「相続財産の管理人」の名称を「相続財産の清算人」に改める

(2) 民法第952条以下の清算手続の合理化

民法第952条第2項及び第957条第1項の規律をそれぞれ次のように改め、第958条を削るものとする。

① 民法第952条第1項の規定により相続財産の清算人を選任したときは、家庭裁判所は、遅滞なく、その旨及び相続人があるならば一定の期間内にその権利を主張すべき旨を公告しなければならない。この場合において、その期間は、6箇月を下ることができない。

② ①の公告があったときは、相続財産の清算人は、全ての相続債権者及び受遺者に対し、2箇月以上の期間を定めて、その期間内にその請求の申出をすべき旨を公告しなければならない。この場合において、その期間は、①の規律により相続人が権利を主張すべき期間として家庭裁判所が公告した期間が満了するまでに満了するものでなければならない。

遺産分割に関する見直し

(1) 期間経過後の遺産の分割における相続分

遺産の分割について、次のような規律を設けるものとする。

民法第903条から第904条の2までの規定は、相続開始の時から10年を経過した後にする遺産の分割については、適用しない。ただし、次の①及び②のいずれかに該当するときは、この限りでない。

① 相続開始の時から10年を経過する前に、相続人が家庭裁判所に遺産の分割の請求をしたとき。

② 相続開始の時から始まる10年の期間の満了前6箇月以内の間に、遺産の分割を請求することができないやむを得ない事由が相続人にあった場合において、その事由が消滅した時から6箇月を経過する前に、当該相続人が家庭裁判所に遺産の分割の請求をしたとき。

(2) 遺産の分割の調停又は審判の申立ての取下げ

遺産の分割の調停又は審判の申立ての取下げについて、次のような規律を設けるものとする。

遺産の分割の調停の申立て及び遺産の分割の審判の申立ての取下げは、相続開始の時から10年を経過した後にあっては、相手方の同意を得なければ、その効力を生じない。

(3) 遺産の分割の禁止

遺産の分割の禁止の定め及び遺産の分割の禁止の審判の規律を次のように改めるものとする。

① 共同相続人は、5年以内の期間を定めて、遺産の全部又は一部について、その分割をしない旨の契約をすることができる。ただし、その期間の終期は、相続開始の時から10年を超えることができない。

② ①の契約は、5年以内の期間を定めて更新することができる。ただし、その期間の終期は、相続開始の時から10年を超えることができない。

③ 民法第907条第2項本文の場合において特別の事由があるときは、家庭裁判所は、5年以内の期間を定めて、遺産の全部又は一部について、その分割を禁ずることができる。ただし、その期間の終期は、相続開始の時から10年を超えることができない。

④ 家庭裁判所は、5年以内の期間を定めて③の期間を更新することができる。ただし、その期間の終期は、相続開始の時から10年を超えることができない。

第2部 不動産登記法等の見直し

第1 所有権の登記名義人に係る相続の発生を不動産登記に反映させるための仕組み

1 相続登記等の申請の義務付け及び登記手続の簡略化

(1) 所有権の登記名義人が死亡した場合における登記の申請の義務付け

不動産の所有権の登記名義人が死亡し、相続等による所有権の移転が生じた場合における公法上の登記申請義務について、次のような規律を設けるものとする。

① 不動産の所有権の登記名義人について相続の開始があったときは、当該相続(注1)により当該不動産の所有権を取得した者は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から3年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない(注2)。遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)により所有権を取得した者も、同様とする(注3)。

② 前記①前段の規定による登記(民法第900条及び第901条の規定により算定した相続分に応じてされたものに限る。後記(3)④において同じ。)がされた後に遺産の分割があったときは、当該遺産の分割によって当該相続分を超えて所有権を取得した者は、当該遺産の分割の日から3年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない(注4)。

③ 前記①及び②の規定は、代位者その他の者の申請又は嘱託により、当該各規定による登記がされた場合には、適用しない。

(注1)ここでいう「相続・・・による」所有権の取得には、特定財産承継遺言による取得も含まれる。

(注2)遺産の分割がされた場合には、当該遺産の分割の結果を踏まえた相続登記の申請をすることで申請義務が履行されたこととなる。また、遺産の分割がされる前であっても、法定相続分での相続登記(民法第900条(法定相続分)及び第901条(代襲相続人の相続分)の規定により算定した相続分に応じてする相続による所有権の移転の登記をいう。以下同じ。)の申請をした場合にも、相続による所有権の移転の登記の申請義務が履行されたこととなる。さらに、後記(3)の相続人申告登記(仮称)の申出をした場合にも第1の1(1)①の申請義務を履行したものとみなすものとする(後記(3)②参照)。

(注3)相続人に対する遺贈による所有権の移転の登記について、登記権利者(受遺者である相続人)が単独で申請することができる旨の規律を設けることについて、後記(4)参照。

(注4)後記(3)の相続人申告登記(仮称)の申出をした者が、その後の遺産の分割によって所有権を取得したときは、当該遺産の分割の日から3年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない(後記(3)④参照)。

(2) 相続登記等の申請義務違反の効果

相続登記等の登記申請義務違反の効果として、次のような規律を設けるものとする。

前記(1)又は後記(3)④の規定による申請をすべき義務がある者が正当な理由がないのにその申請を怠ったときは、10万円以下の過料に処する(注)。

(注)裁判所に対する過料事件の通知の手続等に関して法務省令等に所要の規定を設けるものとする。

(3) 相続人申告登記(仮称)の創設

死亡した所有権の登記名義人の相続人による申出を受けて登記官がする登記として、相続人申告登記(仮称)を創設し、次のような規律を設けるものとする(注1)。

① 前記(1)①の規定により所有権の移転の登記を申請する義務を負う者は、法務省令で定めるところにより、登記官に対し、所有権の登記名義人について相続が開始した旨及び自らが当該所有権の登記名義人の相続人である旨を申し出ることができる(注2)。

② 前記(1)①に規定する期間内に前記①の規定による申出をした者は、前記(1)①に規定する所有権の取得(当該申出の前にされた遺産の分割によるものを除く。)に係る所有権の移転の登記を申請する義務を履行したものとみなす。

③ 登記官は、前記①の規定による申出があったときは、職権で、その旨並びに当該申出をした者の氏名及び住所その他法務省令で定める事項を所有権の登記に付記することができる(注2)。

④ 前記①の規定による申出をした者は、その後の遺産の分割によって所有権を取得したとき(前記(1)①前段の規定による登記がされた後に当該遺産の分割によって所有権を取得したときを除く。)は、当該遺産の分割の日から3年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。

⑤ 前記④の規定は、代位者その他の者の申請又は嘱託により、同④の規定による登記がされた場合は、適用しない。

(注1)これは、相続を原因とする所有権の移転の登記ではなく、①の各事実についての報告的な登記として位置付けられるものである。

(注2)この場合においては、申出人は当該登記名義人の法定相続人であることを証する情報(その有する持分の割合を証する情報を含まない。)を提供しなければならないものとする。具体的には、単に申出人が法定相続人の一人であることが分かる限度での戸籍謄抄本を提供すれば足りる(例えば、配偶者については現在の戸籍謄本のみで足り、子については被相続人である親の氏名が記載されている子の現在の戸籍謄抄本のみで足りることを想定している。)。

(4) 遺贈による所有権の移転の登記手続の簡略化

相続人に対する遺贈による所有権の移転の登記手続を簡略化するため、共同申請主義(不動産登記法第60条)の例外として、次のような規律を設けるものとする。

遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)による所有権の移転の登記は、不動産登記法第60条の規定にかかわらず、登記権利者が単独で申請することができる。

(5) 法定相続分での相続登記がされた場合における登記手続の簡略化

法定相続分での相続登記がされた場合における登記手続を簡略化するため、法定相続分での相続登記がされている場合において、次に掲げる登記をするときは、更正の登記によることができるものとした上で、登記権利者が単独で申請することができるものとし、これを不動産登記実務の運用により対応するものとする。

① 遺産の分割の協議又は審判若しくは調停による所有権の取得に関する登記

② 他の相続人の相続の放棄による所有権の取得に関する登記

③ 特定財産承継遺言による所有権の取得に関する登記

④ 相続人が受遺者である遺贈による所有権の取得に関する登記

2 権利能力を有しないこととなったと認めるべき所有権の登記名義人についての符号の表示

死亡情報を取得した登記所が相続の発生を不動産登記に反映させるための方策として、住民基本台帳制度の趣旨等に留意しつつ、次のような規律を設けるものとする。

登記官は、所有権の登記名義人(法務省令で定めるものに限る。)が権利能力を有しないこととなったと認めるべき場合として法務省令で定める場合には、法務省令で定めるところにより、職権で、当該所有権の登記名義人についてその旨を示す符号を表示することができる。

第2 所有権の登記名義人の氏名又は名称及び住所の情報の更新を図るための仕組み

1 氏名又は名称及び住所の変更の登記の申請の義務付け

氏名又は名称及び住所の変更の登記の申請に関し、次のような規律を設けるものとする。

① 所有権の登記名義人の氏名若しくは名称又は住所について変更があったときは、当該所有権の登記名義人は、その変更があった日から2年以内に、氏名若しくは名称又は住所についての変更の登記を申請しなければならない。

② 前記①の規定による申請をすべき義務がある者が正当な理由がないのにその申請を怠ったときは、5万円以下の過料に処する(注)。

(注)裁判所に対する過料事件の通知の手続等に関して法務省令等に所要の規定を設けるものとする。

2 登記所が氏名又は名称及び住所の変更情報を不動産登記に反映させるための仕組み

登記官が住民基本台帳ネットワークシステム又は商業・法人登記のシステムから所有権の登記名義人の氏名及び住所についての変更の情報を取得し、これを不動産登記に反映させるため、次のような規律を設けるものとする。

登記官は、所有権の登記名義人の氏名若しくは名称又は住所について変更があったと認めるべき場合として法務省令で定める場合には、法務省令で定めるところにより、職権で、氏名若しくは名称又は住所についての変更の登記をすることができる。

ただし、当該所有権の登記名義人が自然人であるときは、その申出があるときに限る。

第3 登記所が他の公的機関から所有権の登記名義人の死亡情報や氏名又は名称及び住所の変更情報を取得するための仕組み

相続の発生や氏名又は名称及び住所の変更を不動産登記に反映させるための方策を採る前提として、登記所が住民基本台帳ネットワークシステムから所有権の登記名義人の死亡情報や氏名又は名称及び住所の変更情報を取得するため、次のような仕組みを設けるものとする。

① 自然人である所有権の登記名義人は、登記官に対し、自らが所有権の登記名義人として記録されている不動産について、氏名及び住所の情報に加えて、生年月日等の情報(検索用情報)(注)を提供するものとする。この場合において、検索用情報は登記記録上に公示せず、登記所内部において保有するデータとして扱うものとする。

登記官は、氏名、住所及び検索用情報を検索キーとして、住民基本台帳ネットワークシステムに定期的に照会を行うなどして自然人である登記名義人の死亡の事実や氏名又は名称及び住所の変更の事実を把握するものとする。

(注)上記の新たな仕組みに係る規定の施行後においては、新たに所有権の登記名義人となる者は、その登記申請の際に、検索用情報の提供を必ず行うものとする。当該規定の施行前に既に所有権の登記名義人となっている者については、その不動産の特定に必要な情報、自己が当該不動産の登記名義人であることを証する情報及び検索用情報の内容を証する情報とともに、検索用情報の提供を任意に行うことができるものとする。

第4 登記義務者の所在が知れない場合等における登記手続の簡略化

1 登記義務者の所在が知れない場合の一定の登記の抹消手続の簡略化

(1) 不動産登記法第70条第1項及び第2項に規定する公示催告及び除権決定の手続による単独での登記の抹消手続の特例として、次のような規律を設けるものとする。

不動産登記法第70条第1項の登記が地上権、永小作権、質権、賃借権若しくは採石権に関する登記又は買戻しの特約に関する登記であり、かつ、登記された存続期間又は買戻しの期間が満了している場合において、相当の調査が行われたと認められるものとして法務省令で定める方法により調査を行ってもなお共同して登記の抹消の申請をすべき者の所在が判明しないときは、その者の所在が知れないものとみなして、同項の規定を適用する。

(2) 買戻しの特約に関する登記の抹消手続の簡略化として、次のような規律を設けるものとする。

買戻しの特約に関する登記がされている場合において、契約の日から10年を経過したときは、不動産登記法第60条の規定にかかわらず、登記権利者は、単独で当該登記の抹消を申請することができる。

2 解散した法人の担保権に関する登記の抹消手続の簡略化

解散した法人の担保権に関する登記の抹消手続を簡略化する方策として、次のような規律を設けるものとする。

登記権利者は、共同して登記の抹消の申請をすべき法人が解散し、前記1(1)に規定する方法により調査を行ってもなおその法人の清算人の所在が判明しないためその法人と共同して先取特権、質権又は抵当権に関する登記の抹消を申請することができない場合において、被担保債権の弁済期から30年を経過し、かつ、当該法人の解散の日から30年を経過したときは、不動産登記法第60条の規定にかかわらず、単独で当該登記の抹消を申請することができる。

第5 その他の見直し事項

1 登記名義人の特定に係る登記事項の見直し

所有権の登記の登記事項に関し、次のような規律を設けるものとする。

所有権の登記名義人が法人であるときは、会社法人等番号(商業登記法(昭和38年法律第125号)第7条(他の法令において準用する場合を含む。)に規定する会社法人等番号をいう。)その他の特定の法人を識別するために必要な事項として法務省令で定めるものを登記事項とする。

2 外国に住所を有する登記名義人の所在を把握するための方策

(1) 国内における連絡先となる者の登記

所有権の登記の登記事項に関し、次のような規律を設けるものとする。

所有権の登記名義人が国内に住所を有しないときは、その国内における連絡先となる者の氏名又は名称及び住所その他の国内における連絡先に関する事項として法務省令で定めるものを登記事項とする(注1)(注2)。

(注1)連絡先として第三者の氏名又は名称及び住所を登記する場合には、当該第三者の承諾があること、また、当該第三者は国内に住所を有するものであることを要件とする。

(注2)連絡先となる者の氏名又は名称及び住所等の登記事項に変更があった場合には、所有権の登記名義人のほか、連絡先として第三者が登記されている場合には当該第三者が単独で変更の登記の申請をすることができるものとする。

(2) 外国に住所を有する外国人についての住所証明情報の見直し

外国に住所を有する外国人(法人を含む。)が所有権の登記名義人となろうとする場合に必要となる住所証明情報については、次の①又は②のいずれかとするものとする。

① 外国政府等の発行した住所証明情報

② 住所を証明する公証人の作成に係る書面(外国政府等の発行した本人確認書類の写しが添付されたものに限る。)

3 附属書類の閲覧制度の見直し

登記簿の附属書類(不動産登記法第121条第1項の図面を除く。)の閲覧制度に関し、閲覧の可否の基準を合理化する観点等から、次のような規律を設けるものとする。

① 何人も、登記官に対し、手数料を納付して、自己を申請人とする登記記録に係る登記簿の附属書類(不動産登記法第121条第1項の図面を除く。)(電磁的記録にあっては、記録された情報の内容を法務省令で定める方法により表示したもの。後記②において同じ。)の閲覧を請求することができる。

② 登記簿の附属書類(不動産登記法第121条第1項の図面及び前記①に規定する登記簿の附属書類を除く。)(電磁的記録にあっては、記録された情報の内容を法務省令で定める方法により表示したもの)の閲覧につき正当な理由があると認められる者は、登記官に対し、法務省令で定めるところにより、手数料を納付して、その全部又は一部(その正当な理由があると認められる部分に限る。)の閲覧を請求することができる。

4 所有不動産記録証明制度(仮称)の創設

相続人による相続登記の申請を促進する観点も踏まえ、自然人及び法人を対象とする所有不動産記録証明制度(仮称)として、次のような規律を設けるものとする。

① 何人も、登記官に対し、手数料を納付して、自らが所有権の登記名義人(これに準ずる者として法務省令で定めるものを含む。後記②において同じ。)として記録されている不動産に係る登記記録に記録されている事項のうち法務省令で定めるもの(記録がないときは、その旨)を証明した書面(以下「所有不動産記録証明書(仮称)」という。)の交付を請求することができる。

② 所有権の登記名義人について相続その他の一般承継があったときは、相続人その他の一般承継人は、登記官に対し、手数料を納付して、当該所有権の登記名義人の所有不動産記録証明書(仮称)の交付を請求することができる。

③ ①及び②の交付の請求は、法務大臣の指定する登記所の登記官に対し、法務省令で定めるところにより、することができる。

④ 不動産登記法第119条第3項及び第4項の規定は、所有不動産記録証明書(仮称)の手数料について準用する。

  • (注1)ただし、現在の登記記録に記録されている所有権の登記名義人の氏名又は名称及び住所は過去の一定時点のものであり、必ずしもその情報が更新されているものではないことなどから、請求された登記名義人の氏名又は名称及び住所等の情報に基づいてシステム検索を行った結果を証明する所有不動産記録証明制度(仮称)は、飽くまでこれらの情報に一致したものを一覧的に証明するものであり、不動産の網羅性等に関しては技術的な限界があることが前提である。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

何に使うのでしょうか。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

(注2)①及び②の規律は、代理人による交付請求も許容することを前提としている。

5 被害者保護のための住所情報の公開の見直し

不動産登記法第119条に基づく登記事項証明書の交付等に関し、次のような規律を設けるものとする。

登記官は、不動産登記法第119条第1項及び第2項の規定にかかわらず、登記記録に記録されている者(自然人であるものに限る。)の住所が明らかにされることにより、人の生命若しくは身体に危害を及ぼすおそれがある場合又はこれに準ずる程度に心身に有害な影響を及ぼすおそれがあるものとして法務省令で定める場合において、その者からの申出があったときは、法務省令で定めるところにより、同条第1項及び第2項に規定する各書面に当該住所に代わるものとして法務省令で定める事項を記載しなければならない。

第3部 土地所有権の国庫への帰属の承認等に関する制度の創設

次のような規律を内容とする、相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する制度(以下「本制度」という。)を創設するものとする。

1① 土地の所有者(相続又は遺贈(相続人に対する遺贈に限る。以下同じ。)によりその土地の所有権の全部又は一部を取得した者に限る。)は、法務大臣に対し、その土地の所有権を国庫に帰属させることについての承認を求めることができる。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

上は一部を取得した者は承認を求めることができるで、下は共有の場合は全員が共同して行う時に限り、というのは。

・・・・・・・・・・・・・・・

② 土地が数人の共有に属する場合においては、①の法務大臣に対する承認の申請(以下「承認申請」という。)は、共有者の全員が共同して行うときに限り、することができる。この場合において、相続等以外の原因により当該土地の共有持分の全部を取得した共有者は、相続等により共有持分の全部又は一部を取得した共有者と共同して行うときに限り、①の規律にかかわらず、承認申請をすることができる。

2 1の承認申請をする者(以下「承認申請者」という。)は、承認申請に対する審査に要する実費の額を考慮して政令で定める額の手数料を納めなければならない。

3 法務大臣は、承認申請に係る土地が次のいずれにも該当しないと認めるときは、その土地の所有権の国庫への帰属についての承認をしなければならない。

① 建物の存する土地

② 担保権又は使用及び収益を目的とする権利が設定されている土地

③ 通路その他の他人による使用が予定される土地として政令で定めるものが含まれる土地

土壌汚染対策法第2条第1項に規定する特定有害物質(法務省令で定める基準を超えるものに限る。)により汚染されている土地

境界が明らかでない土地その他の所有権の存否、帰属又は範囲について争いがある土地

崖(勾配、高さその他の事項について政令で定める基準に該当するものに限る。)がある土地のうち、その通常の管理に当たり過分の費用又は労力を要するもの

⑦ 土地の通常の管理又は処分を阻害する工作物、車両又は樹木その他の有体物が地上に存する土地

⑧ 除去しなければ土地の通常の管理又は処分をすることができない有体物が地下に存する土地

⑨ 隣接する土地の所有者その他の者との争訟によらなければ通常の管理又は処分をすることができない土地として政令で定めるもの

⑩ ①から⑨までに掲げる土地のほか、通常の管理又は処分をするに当たり過分の費用又は労力を要する土地として政令で定めるもの

4 3の承認は、土地の一筆ごとにするものとする。

5① 法務大臣は、承認申請に係る審査をするため必要があると認めるときは、その職員に事実の調査をさせることができる。

② ①により事実の調査をする職員は、承認申請に係る土地又はその周辺の地域に所在する土地の実地調査をすること、承認申請者その他の関係者からその知っている事実を聴取し又は資料の提出を求めることその他承認申請に係る審査のために必要な調査をすることができる。

③ 法務大臣は、①の事実の調査を行うため必要があると認めるときは、関係行政機関の長、関係地方公共団体の長、関係のある公私の団体その他の関係者に対し、資料の提供、説明、事実の調査の援助その他必要な協力を求めることができる。

④ 法務大臣は、その職員が②により承認申請に係る土地又はその周辺の地域に所在する土地の実地調査をする場合において、必要があると認めるときは、その必要の限度において、その職員に、他人の土地に立ち入らせることができる。

6 法務大臣は、次に掲げる場合には、承認申請を却下しなければならない。

① 承認申請が申請の権限を有しない者の申請によるとき

② 申請書の内容に不備があるとき

③ 承認申請者が2の手数料を納付しないとき

④ 承認申請者が、正当な理由がないのに、5の調査に応じないとき

7 承認申請者は、3の承認があったときは、承認に係る土地につき、国有地の種目ごとにその管理に要する10年分の標準的な費用の額を勘案して政令で定めるところにより算定した額(以下「負担金」という。)を納付しなければならない。

8 承認申請者が負担金を納付したときは、その納付の時において、3の承認に係る土地の所有権が国庫に帰属する。

9 3の承認に係る土地について当該承認の時において3のいずれかに該当する事由があったことによって国に損害が生じたときは、当該事由を知りながら告げずに3の承認を受けた者は、国に対してその損害を賠償する責任を負う。

① 法務大臣は、承認申請者が偽りその他不正の手段により3の承認を受けたことが判明したときは、3の承認を取り消すことができる。

② 法務大臣は、①の取消しをしようとするとき(承認申請に係る土地が8の規律により国庫に帰属している場合に限る。)は、8の規律により国庫に帰属した土地(以下「国庫帰属地」という。)を所管する各省各庁の長(当該土地が交換、売払い又は譲与により国有財産でなくなったときは、当該交換等が生じた時に当該土地を所管していた各省各庁の長)の意見を聴くものとする。

③ 法務大臣は、国庫帰属地が交換等により国有財産でなくなった場合又は国庫帰属地につき貸付け、信託又は権利の設定がされた場合において、①の取消しをしようとするときは、国庫帰属地の所有権を取得した者(転得者を含む。)及び国庫帰属地に係る所有権以外の権利を取得した者の同意を得なければならない。

11 本制度における法務大臣の権限は、法務省令で定めるところにより、その一部を法務局又は地方法務局の長に委任することができる。

(注1)民法に所有権の放棄に関する新たな規律は設けないこととする。

(注2)国は、3の承認がされた場合には、土地の所有権を所有者から承継取得する(承認申請者が無権利者であった場合には、承継の効果を生じない。)。

(注3)法務大臣は、3の承認をしようとするときは、あらかじめ、当該承認に係る土地の管理について、財務大臣及び農林水産大臣の意見を聴くものとする。ただし、主に農用地又は森林として利用されている土地ではないと明らかに認められる場合は、この限りではないものとする。

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固定資産評価証明の現況地目?

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(注4)5については、事前の通知など、立入りの手続に関する規律を設ける。

(注5)8につき、3の承認後に、承認申請者が負担金を一定期間内に納付しないときは、承認はその効力を失うものとする。

(注6)10 の取消しの規律は、法務大臣が、承認を取り消し、土地所有権の国庫への帰属(承継)を遡及的に無効とすることができることを前提にしている。

(注7)その他国庫に帰属した土地の管理に関する所要の規律を設ける。

第4部 その他

その他所要の規定を整備するものとする。

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20211004追記

Q指定相続分の登記があった後に遺産分割があった場合の登記申請義務・・・なし。

Q包括遺贈によって法定相続分と異なる遺産共有の登記がされた後に、遺産分割があった場合の登記申請義務・・・なし。

https://www.moj.go.jp/shingi1/shingi04900001_00044.html

民法・不動産登記法部会資料 57

民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)等の改正に関する要綱案 (案) (2)

P6~

4 相続人申告登記(仮称)がされた後に遺産分割があった場合(本文④)について

(1) 第23回会議においては、法定相続分での相続登記がされた後に遺産分割があった場合における申請の義務付けの問題と同様に、再度の申請義務を課すことに消極的な意見も見られた。しかし、前記第1の1(1)(補足説明)2にも記載したとおり、相続人申告登記(仮称)がされた後に遺産分割があった場合についても、当該遺産分割の結果を踏まえた相続登記の申請をすべき公法上の義務を課す必要があると考えられる。

 そこで、本文④では、このような場合についても、引き続き、当該遺産分割の結果を踏まえた相続登記の申請義務を課することとしているが、どうか。

(2) これに関連して、第23回会議においては、所有権の登記名義人について相続が開始された場合において、㋐遺産分割がされた後に相続人申告登記(仮称)がされたときは、当該遺産分割の結果を踏まえた登記申請義務が設けられていないから、その結果を不動産登記に反映しないまま放置することが許容されるのに対し、㋑相続人申告登記(仮称)がされた後に遺産分割がされたときは、当該遺産分割の結果を踏まえた登記申請義務が課されることとなり、バランスに欠けるのではないかとの指摘がされた。

 確かに、遺産分割が相続人申告登記(仮称)の前であるか後であるかで規律を大きく変えることは合理性に乏しいと考えられ、かつ、遺産分割がされた場合には、実際上、相続人中において権利者の集約が図られることも多いと考えられ、そのような結果を登記に反映させることができれば、その後の土地の管理・処分に当たって便宜であるといえることに照らすと、上記㋐の場合においても、当該遺産分割の結果を踏まえた登記の申請を義務付けることが相当であると考えられる。

 そのため、部会資料53の第1の1(3)②では、特段の限定を付さずに「前記(1)①の規定により所有権の移転の登記を申請する義務を履行したものとみなす。」としていたが、本文②では、「前記(1)①に規定する所有権の取得(当該申出の前にされた遺産の分割によるものを除く。)に係る所有権の移転の登記を申請する義務を履行したものとみなす。」として、その文言を修正している。これにより、相続人申告登記(仮称)の申出をした者は、遺産分割により所有権を取得したときは、当該遺産分割が相続人申告登記(仮称)の前後いずれの時点でされたかにかかわらず、当該遺産分割の日から3年以内に、当該遺産分割の結果を踏まえた所有権の移転の登記を申請しなければならないことになる(この部分は前記第1の1(1)①で表現がされている。)。なお、相続開始の日から2年10か月後に遺産分割があったという事案において、相続開始から3年内に相続人申告登記(仮称)の申出をしたときは、相続開始の日から3年以内にすべき相続登記の申請義務を履行したこととなり、さらに、当該遺産分割の日から3年以内に改めて当該遺産分割の結果を踏まえた登記の申請をする義務を負うことになると考えられる。(注1)(注2)

(注1)なお、遺産分割がされた後に法定相続分での相続登記がされた場合については、①相続開始により法定相続分での相続登記の申請をすべき義務が生ずるとともに、②その後の遺産分割により当該遺産分割の結果を踏まえた所有権の移転の登記の申請をすべき義務が生ずることとなるため(この部分は前記第1の1(1)①で表現がされている。)、上記①の登記申請義務の履行として法定相続分での相続登記がされたとしても、これとは別に上記②の登記申請義務として遺産分割の結果を踏まえた所有権の移転の登記の申請をする義務が課されることとなるものと整理している。

 これにより、遺産分割がされた後に法定相続分での相続登記がされた場合と相続人申告登記(仮称)がされた場合のいずれにおいても、遺産分割の結果を踏まえた登記申請義務が課されることとなる。

(注2)このような問題は、特定財産承継遺言や相続人に対する遺贈についても同様に生じ得るところであり、所有権の登記名義人が特定財産承継遺言や相続人に対する遺贈を内容とする遺言をした場合において、当該所有権の登記名義人の相続人から相続人申告登記(仮称)の申出がされたときは、当該遺言の内容を踏まえた登記がされないまま放置されるおそれがあるとも考えられる。

 もっとも、遺言者は、いつでも遺言の撤回をすることができるとされていることや新たに有効な遺言が発見されることもあるため、ある遺言の内容を踏まえた登記をした後にこれを修正する登記が必要になることも想定される。また、相続人全員の合意があれば遺言の内容と異なる分割は可能であるし、そうでなくとも、遺贈についてはその放棄が可能であるから、いずれにしても遺言の内容と異なる分割が後に行われる可能性もある。そうすると、所有権の登記名義人の相続人に対し、相続人申告登記(仮称)の申出のみならず、更に当該遺言の内容を踏まえた登記の申請を義務付けることは、個別の事例によっては過剰な負担をもたらすおそれもあると考えられる。加えて、遺言がある場合には、遺言の内容を踏まえた登記の申請をすることなどにより権利関係を整理すればよいことから、遺産分割の場合のように相続人間の権利関係の集約の結果を登記に反映させておく実際上の必要性に乏しい面もあるものと考えられる。

 そこで、本部会資料においては、特定財産承継遺言や相続人に対する遺贈との関係では、従前と同様の規律を維持することとしている。

司法書士白書 2020 年版 会社登記事件数・法人登記等の登記事件数(総数)の推移等

資料:法務省「民事・訟務・人権統計年報」、国税庁「国税庁統計年報書」 2010年以降の会社数は、確定申告のあった事業年度数を指す。 https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet…

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