デジタル化と司法書士

九州ブロック司法書士会協議会令和3年度会員研修会

〔講演第1部〕デジタル化で司法書士は生き残れるか

九州大学大学院法学研究院教授   七戸克彦 令和3年9月4日

1. 平成期の「司法書士の危機」 ワープロの登場。東芝。

1-1. 平成14年:簡裁代理権

1-2. 平成16年:現行不動産登記法制定

1-3. 平成19年:長瀬訓令(業務停止2年 有期懲戒の最長)

1-4. 平成28年:債務整理最高裁判決

1-5. 令和 2 年:調査説明義務最高裁判決

1-5. 従来の判例理論

(1)調査確認義務(原則と3つの例外)

・【原則】委任者から交付された関係書類の適式性の限りで確認すれば足りる。

・【例外】①登記申請の委任者から関係書類の真否等についてとくに調査を依頼された場合、②司法書士が却下事由の存在を知っていた場合や書類の記載の不合理が一見して明白な場合、③登記義務者の本人性や書類の偽造につき疑念性があるにもかかわらず追加的な調査・確認を行わなかった場合

(2)説明(助言・警告・注意喚起)義務

・委任者以外の第三者との関係では説明義務は負わない。

1-5.令和2年最高裁判決

最(2小)判令和2・3・6民集74巻3号149頁

・A→B→X→Cの物権変動のうち、A→B登記の前件申請を弁護士D、B→C登記(中間省略登記)の後件申請を司法書士Yが受任したが、前件取引がAの成りすましによる不動産詐欺であったことから、無効となったB→(X)→Cの後件取引の中間者XがYに対して不法行為責任(説明(警告)義務違反)を追求した事案。

1-5. 令和2年最高裁判決【判旨①】

・ 登記申請等の委任を受けた司法書士は、その委任者との関係において、当該委任に基づき、当該登記申請に用いるべき書面相互の整合性を形式的に確認するなどの義務を負うのみならず、当該登記申請に係る登記が不動産に関する実体的権利に合致したものとなるよう、上記の確認等の過程において、当該登記申請がその申請人となるべき者以外の者による申請であること等を疑うべき相当な事由が存在する場合には、上記事由についての注意喚起を始めとする適切な措置をとるべき義務を負うことがあるものと解される。

1-5. 令和2年最高裁判決【判旨②】

・ 登記申請の委任を受けた司法書士は、委任者以外の第三者が当該登記に係る権利の得喪又は移転について重要かつ客観的な利害を有し、このことが当該司法書士に認識可能な場合において、当該第三者が当該司法書士から一定の注意喚起等を受けられるという正当な期待を有しているときは、当該第三者に対しても、上記のような注意喚起を始めとする適切な措置をとるべき義務を負い、これを果たさなければ不法行為法上の責任を問われることがあるというべきである。

2. 電子契約と司法書士

・ 不動産取引が〈電子契約〉化した場合、司法書士の①書類確認と、②契約締結および決済への立会業務(いわゆる前段業務)は、どのように変化するのか?

・最(2小)判令和2・3・6民集74巻3号149頁が電子契約だった場合、どのようになるのか。

2-2. 電子署名及び認証業務に関する法律

(定義)第2条〔第1項〕この法律において「電子署名」とは、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)に記録することができる情報について行われる措置であって、次の要件のいずれにも該当するものをいう。

一 当該情報が当該措置を行った者の作成に係るものであることを示すためのものであること。〔「本人性」要件〕

二 当該情報について改変が行われていないかどうかを確認することができるものであること。〔「非改ざん性」要件〕

2-2.電子署名及び認証業務に関する法律

第2章 電磁的記録の真正な成立の推定

第3条 電磁的記録であって情報を表すために作成されたもの(公務員が職務上作成したものを除く。)は、当該電磁的記録に記録された情報について本人による電子署名(これを行うために必要な符号及び物件を適正に管理することにより、本人だけが行うことができることとなるものに限る。)が行われているときは、真正に成立したものと推定する。

民事訴訟法と対応

民事訴訟法228条4項 私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正なものと推定する。

2-3. 印判の由来

・日本の印判の歴史には3つの系統がある。

1 封印・封字の系譜

福岡市博物館 金印

http://museum.city.fukuoka.jp/gold/

外務省 わかる国際情勢

https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/pr/wakaru/topics/vol12/index.html

(2)公印・職印の系譜

宮内庁 御璽・国璽

https://www.kunaicho.go.jp/about/seido/seido09.html

一家に一本、ネジザウルス!をめざす社長ブログ 

http://blog.livedoor.jp/engineerjpmaster/

(3)印鑑の系譜

踏む(押す)という所作

長崎 踏み絵 聖パウロ女子修道会(女子パウロ会)

https://www.pauline.or.jp/historyofchurches/history05.php

平戸松浦家の名宝と禁教政策―投影された大航海時代―

http://www.seinan-gu.ac.jp/museum/wp-content/uploads/2014/12/pr-2013hirado.pdf

新潟県 三行半

新潟日報 貞心尼に新説 実像に迫る

https://www.niigata-nippo.co.jp/news/local/20210830638771.html

国税庁 地券

https://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/sozei/tokubetsu/h15shiryoukan/a.htm

(電子署名)

第12条 電子情報処理組織を使用する方法により登記を申請するときは、申請人又はその代表者若しくは代理人は、申請情報に電子署名(電子署名及び認証業務に関する法律(平成12年法律第102号)第2条第1項に規定する電子署名をいう。以下同じ。)を行わなければならない。

2 電子情報処理組織を使用する方法により登記を申請する場合における添付情報は、作成者による電子署名が行われているものでなければならない。

3. 電子署名・電子証明書と登記業務

3-1. 不動産登記令(平成16年政令第379号)

第14条 電子情報処理組織を使用する方法により登記を申請する場合において、電子署名が行われている情報を送信するときは、電子証明書(電子署名を行った者を確認するために用いられる事項が当該者に係るものであることを証明するために作成された電磁的記録をいう。)であって法務省令で定めるものを併せて送信しなければならない。

3-2. 署名→電子署名、押印→電子証明書

4. 不登法の真実性担保手段の欠陥

4-1. 他部局・他府省の保有する情報(戸籍・住民票・不動産課税台帳等)との連携が取れていないこと

4-2. 添付情報(とくに登記原因証明情報)に関する実質的審査が行われていないこと

4-1. 他部局・他府省の電子情報との連携

(情報の提供の求め)第151条 登記官は、職権による登記をし、又は第14条第1項の地図を作成するために必要な限度で、関係地方公共団体の長その他の者に対し、その対象となる不動産の所有者等(所有権が帰属し、又は帰属していた自然人又は法人(法人でない社団又は財団を含む。)をいう。)に関する情報の提供を求めることができる。

令和3年改正不動産登記法151条(新設)

(所有権の登記名義人についての符号の表示)

第七十六条の四 登記官は、所有権の登記名義人(法務省令で定めるものに限る。)が権利能力を有しないこととなったと認めるべき場合として法務省令で定める場合には、法務省令で定めるところにより、職権で、当該所有権の登記名義人についてその旨を示す符号を表示することができる。

自然人を想定(法人はGビズID)。権利能力を有しないこととなった、は遺族感情を踏まえての表現。職権。条文上は、書面でも電子情報でも。要綱では、電子情報が予定されている。「検索」の記載有。

https://www.moj.go.jp/content/001340751.pdf

マイナンバーカードではなくて、住民基本台帳ネットワークを利用する理由。

戸籍法部会資料 戸籍事務へのマイナンバー制度導入のための主な検討事項

https://www.moj.go.jp/content/001340751.pdf

4-1. 他部局・他府省の電子情報との連携

第3 登記所が他の公的機関から所有権の登記名義人の死亡情報や氏名又は名称及び住所の変更情報を取得するための仕組み

相続の発生や氏名又は名称及び住所の変更を不動産登記に反映させるための方策を採る前提として、登記所が住民基本台帳ネットワークシステムから所有権の登記名義人の死亡情報や氏名又は名称及び住所の変更情報を取得するため、次のような仕組みを設けるものとする。

(2)法制審議会答申(要綱)第2部

4-1. 他部局・他府省の電子情報との連携

① 自然人である所有権の登記名義人は、登記官に対し、自らが所有権の登記名義人として記録されている不動産について、氏名及び住所の情報に加えて、生年月日等の情報(検索用情報)(注)を提供するものとする。この場合において、検索用情報は登記記録上に公示せず、登記所内部において保有するデータとして扱うものとする。

(2)法制審議会答申(要綱)第2部第3(続)

4-1. 他部局・他府省の電子情報との連携

② 登記官は、氏名、住所及び検索用情報を検索キーとして、住民基本台帳ネットワークシステムに定期的に照会を行うなどして自然人である登記名義人の死亡の事実や氏名又は名称及び住所の変更の事実を把握するものとする。

(2)法制審議会答申(要綱)第2部第3(続)

4-1. 他部局・他府省の電子情報との連携

(注) 上記の新たな仕組みに係る規定の施行後においては、新たに所有権の登記名義人となる者は、その登記申請の際に、検索用情報の提供を必ず行うものとする。当該規定の施行前に既に所有権の登記名義人となっている者について

は、その不動産の特定に必要な情報、自己が当該不動産の登記名義人であることを証する情報及び検索用情報の内容を証する情報とともに、検索用情報の提供を任意に行うことができるものとする。

(2)法制審議会答申(要綱)第2部第3(続)

4-2. 電子契約と添付情報の真実性担保

* 判例の【原則】と【3つの例外】は、電子契約の場合には、どのようになるか?

・【原則】委任者から交付された関係書類の適式性の限りで確認すれば足りる。

・【例外】①関係書類の真否等についてとくに調査を依頼された場合、②司法書士が却下事由の存在を知っていた場合や書類の記載の不合理が一見して明白な場合、③登記義務者の本人性や書類の偽造につき疑念性がある場合

4-2. 電子契約と添付情報の真実性担保

【原則】委任者から交付された関係書類の適式性の限りで確認すれば足りる。

・ 電子契約では、関係書類はすべて電子情報になっている。

・ 電子契約の関係書類(情報)の「適式性」審査の具体的内容は、どのようなものになるのか?

デジタルによる本人確認方法や電子署名の方法について、対面でアドバイスを行い仕事にする方法の可能性。

参考

2020年12月電子契約・電子署名の活用に関する諸問題(契約実践編)

法人間で締結される電子契約の証拠力を中心に

弁護士 宮川 賢司 / 弁護士 西 愛礼 / 弁護士 辻 勝吾/弁護士 望月 亮佑 / 弁護士 一圓 健太

https://www.amt-law.com/asset/pdf/bulletins14_pdf/201130.pdf

・ 電子契約の場合の〈本人確認〉は、どのような方法になるのか?

4-2. 電子契約と添付情報の真実性担保

【例外①】関係書類の真否等についてとくに調査を依頼された場合には、調査確認義務・説明義務(助言忠告義務)が加重される。

・ 電子契約の締結ならびに決済への〈立会業務〉の具体的な内容は、どのようなものになるのか?

e-KYCについて

平成30年11月30日金融庁「犯罪による収益の移転防止に関する法律施行規則の一部を改正する命令」の公表について

https://www.fsa.go.jp/news/30/sonota/20181130/20181130.html

・ 電子契約・決済への立会を依頼された司法書士が負う加重的な調査確認義務・説明義務(助言忠告義務)の具体的内容は、どのようなものか?

4-2. 電子契約と添付情報の真実性担保

【例外②】司法書士が却下事由の存在を知っていた場合や書類の記載の不合理が一見して明白な場合、司法書士は債務不履行ないし不法行為に基づく損害賠償責任を負う。

電子契約の場合に、却下事由の存在に関する〈悪意〉あるいは〈過失〉とは、具体的にはどのようなものになるのか?

4-2. 電子契約と添付情報の真実性担保

【例外③】登記義務者の本人性や書類の偽造につき疑念性がある場合には、調査確認義務・説明義務(助言忠告義務)が加重される。

・ 電子契約の場合に、ⓐ本人性あるいはⓑ情報の偽造につき〈疑念性がある場合〉とは、具体的にはどのようなものになるのか?

5. 電子契約と司法書士

「第3部 パネルディスカッション」に向けて――

・ 不動産取引が〈電子契約〉化した場合、司法書士には、①電子契約の有効性確認のスキルが必要となる一方、②対面での本人確認・意思確認ができなくなる時代が来る。

DX不動産推進協会

https://www.dxppa.or.jp/

(所有不動産記録証明書の交付等)

改正不動産登記法第百十九条の二 何人も、登記官に対し、手数料を納付して、自らが所有権の登記名義人(これに準ずる者として法務省令で定めるものを含む。)として記録されている不動産に係る登記記録に記録されている事項のうち法務省令で定めるもの(記録がないときは、その旨)を証明した書面(以下この条において「所有不動産記録証明書」という。)の交付を請求することができる。

2 相続人その他の一般承継人は、登記官に対し、手数料を納付して、被承継人に係る所有不動産記録証明書の交付を請求することができる。

3 前二項の交付の請求は、法務大臣の指定する登記所の登記官に対し、法務省令で定めるところにより、することができる。

4 前条第三項及び第四項の規定は、所有不動産記録証明書の手数料について準用する。

→相続人申告登記と、一部遺産分割(例えば、10筆あるうちの宅地のみ行えば、相続登記の義務化は免れれる。)を行って相続登記義務化を免れることが可能?

法定相続情報証明制度について

法務局 「法定相続情報証明制度」について

https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/page7_000013.html

名古屋法務局チャンネル 法定相続情報証明制度について

https://www.youtube.com/watch?v=djhtquCGvZc

日本司法書士会連合会 新しい相続手続「法定相続証明制度」とは

https://www.shiho-shoshi.or.jp/html/hoteisozoku/

不動産登記規則(平成十七年法務省令第十八号)施行日: 令和三年四月一日(令和三年法務省令第十四号による改正)

第六章 法定相続情報

(法定相続情報一覧図)247条、248条

・不動産登記事務取扱手続準則(平成17年2月25日付け法務省民二第456号民事局長通達)

・不動産登記規則の一部を改正する省令の施行に伴う不動産登記事務等の取扱いについて(平成29年4月17日付け法務省民二第292号民事局長通達)

・法定相続情報証明制度に関する事務の取扱いの一部改正について(平成30年3月29日付け法務省民二第166号民事局長通達)

・不動産登記規則等の一部を改正する省令の施行に伴う法定相続情報証明制度に関する事務の取扱いについて(通達)〔令和3年3月29 日付法務省民二第655 号民事局長通達〕

1・何が出来るか。

2020(令和2)年10月26日~各種年金等手続(例:遺族年金,未支給年金及び死亡一時金等の請求に係る手続)

https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/tetsuduki/kyotsu/jukyu/20140731-01.html

2018(平成30)年4月1日~国税局・税務署

https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sozoku/shikata-sozoku2017/pdf/h30kaisei.pdf

・「戸籍の謄本」で被相続人の全ての相続人を明らかにするもの

・ 図形式の「法定相続情報一覧図の写し」(子の続柄が、実子又は養子のいずれであるかが分かるように記載されたものに限ります。)(注)

・上のどちらかをコピー機で複写したもの

(注) 被相続人に養子がいる場合には、その養子の戸籍の謄本又は抄本(コピー機で複写したものも含みます。)の添付も必要です。

預貯金は?

2021年7月版 (一社)全国銀行協会 全国銀行個人信用情報センター

https://www.zenginkyo.or.jp/fileadmin/res/abstract/pcic/open/kaiji_succession.pdf

○法務局発行の「法定相続情報一覧図の写し」(登記官の認証文言付きの書類原本)を提出いただく場合は、開示対象者の死亡を証する資料および法定相続人であること(続柄等)を証する資料の提出は「原則」不要。

ゆうちょ銀行 預貯金の相続に必要な書類

https://www.jp-bank.japanpost.jp/kojin/kyuyo_nenkin/nenkin/kj_kyn_nk_souzoku3.html

被相続人さまの相続関係のわかる戸(徐)籍謄本または法定相続情報一覧図の写し

※銀行、信用金庫各種金融機関によっては、未だ扱いが統一されていないようです。

(一社)生命保険協会 生命保険契約照会制度

https://www.seiho.or.jp/contact/inquiry/decease/

提出情報(照会対象者の法定相続人の場合)

・照会者の本人確認書類

・法定相続情報一覧図 または 相続人と被相続人の関係を示す戸籍等

・照会対象者の死亡診断書

2・費用は無料

物件費をもとにした大まかなコスト(税金)・・・1通200円。

出典 第198回国会 参議院 法務委員会 第15号 令和元年5月23日

https://kokkai.ndl.go.jp/#/detail?minId=119815206X01520190523&current=5

3・Q&A

Q 法定相続情報一覧図の写しの再交付の申出があった場合、法務局での保存期間(5年間)が延長されるか。

A されない。

Q 法定相続情報一覧図につづり込まれた書面については,情報公開請求出来るか。

A 不動産登記法第153条及び第155条の適用はないので、情報開示請求を行うことが出来る(行政機関が有する情報の公開に関する法律4章。)。

Q 嫡出子であってもなくても、法定相続分を同じとした平成25年9月4日以前に開始した相続について。

 被相続人の子が複数いる場合,法定相続情報証明の写しが提供された法定相続に基づく権利の移転の登記の申請等があったときは、嫡出子・嫡出でない子の法定相続分の確認のため,別途戸除籍謄抄本を求める必要があるか(民法の一部を改正する法律(平成25年法律第94号)。)。

A 法定相続情報一覧図で判明しない場合には、別途戸籍謄抄本を求める(関連問19参照)。H25.12.11民二781局長通達及び民事第二課補佐官事務連絡「民法の一部を改正する法律の施行に伴う不動産登記等の事務の取扱いについて」

Q 兄弟姉妹が相続人の場合、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹と、父母の双方を同じくする兄弟姉妹がいる場合について、一覧図の写しが提供された法定相続に基づく権利の移転の登記の申請等があったときは、法定相続分の確認のため,別途戸除籍謄抄本が必要か(民法900条1項4号。)。

A 法定相続情報一覧図で判明しない場合には、別途戸籍謄抄本が必要。

信託を用いた高齢者による金融商品の運用

会報信託[1]の記事、三井住友信託銀行法務部加賀田俊将「信託を用いた高齢者による金融商品の運用」から考えてみたいと思います。

安心サポート信託<ファンドラップ型>

https://www.smtb.jp/personal/entrustment/civil

ファンドラップ?

・・・投資対象が投資信託に限定されている「ラップ口座」のこと。ラップ口座とは金融機関と投資一任契約を結び、金融商品への投資を金融機関に一任する取引口座、ひいてはそのサービス自体を指す。投資対象が投資信託に限定されていないラップ口座では、有価証券など(株や債券、投資信託)に対して投資が行われる。

ラップ口座?

・・・金融機関と投資一任契約を結び、金融商品への投資を金融機関に一任する取引口座、ひいてはそのサービス自体のこと。最低預け入れ金額は金融機関によって異なる。

(一社)投資信託協会 用語集

https://www.toushin.or.jp/words/keyword/2611/

投資一任契約?

・・・投資運用業者が金融商品の価値等の分析に基づく投資判断に基づいて投資者の財産を有価証券等に対する投資により運用する。

(一社)日本投資顧問業協会 投資運用業および投資助言・代理業入門

https://www.jiaa.or.jp/komon/

一般社団法人 安心サポートセンター

https://www.annshinn-sc.jp/

 身上保護機能を顧客に提供する。所在地が鹿児島県。依頼があれば、財産管理契約(民法643条~の委任契約)の受託者、任意後見契約(任意後見契約に関する法律3条に基づく契約)の受任者になることが可能。死後事務委任契約(民法873条の2、最高裁判所平成4年9月22日判決など。)も締結可能。

投資一任契約上の地位の信託譲渡?

・・・顧客の契約上の地位と、投資信託受益権という財産(信託法2条3項)を、受託者の三井住友信託銀行に譲渡(信託法3条1項1号)。

指定運用の包括信託?

・・・委託者が指定した範囲で運用する、2個以上の財産を一つの信託行為により引き受ける信託。

 最低信託金額3000万円。信託期間は、第三受益者(残余財産を交付する者)が受益権を取得した日から起算して2年を経過した日の属する月の末日まで。もし、2021年1月23日に取得すると、2023年1月31日まで。毎年顧客(受益者?)の意思確認を行う。

社団等・・・(一社)安心サポートのことか不明でした。

 メリットとして、死亡時に有価証券の時価が下落していた場合には顧客は損失を被るが、この商品を利用すると死亡時に投資一任契約は終了しない。

・・・第2次受益者死亡時に有価証券の時価が下落していた場合、損失を被るので、メリットとはいえないのではないかと感じました。

 信託法20条3項3号・4号により、三井住友信託銀行は、受託者として、顧客の意向に従って運用・換価する債務、顧客に対して預かったお金(有価証券)を返す債務がある。顧客が三井住友信託銀行に対して、有価証券の運用・換価などを求める債権を三井住友信託銀行が持ったとしても、混合(債権と債務が同じ人に帰属したから、意味がないので消える、民法520条。)せずにサービスを続けることが出来る。信託を利用する特徴だと感じます。

適合性の確認?・・・金融商品取引法(昭和二十三年法律第二十五号)

(適合性の原則等)第四十条 金融商品取引業者等は、業務の運営の状況が次の各号のいずれかに該当することのないように、その業務を行わなければならない。

一 金融商品取引行為について、顧客の知識、経験、財産の状況及び金融商品取引契約を締結する目的に照らして不適当と認められる勧誘を行つて投資者の保護に欠けることとなつており、又は欠けることとなるおそれがあること。

二 前号に掲げるもののほか、業務に関して取得した顧客に関する情報の適正な取扱いを確保するための措置を講じていないと認められる状況、その他業務の運営の状況が公益に反し、又は投資者の保護に支障を生ずるおそれがあるものとして内閣府令で定める状況にあること。

 基本的には、受託者(三井住友信託銀行)の知識、経験、信託財産及び信託目的を基準に適合性を判断という箇所に、違和感があります。

善管注意義務?・・・金融商品取引法(昭和二十三年法律第二十五号)

(善管注意義務)第四十三条 金融商品取引業者等は、顧客に対し、善良な管理者の注意をもつて有価証券等管理業務を行わなければならない。

 受託者の裁量は、運用財産の解約面について部分的に有するのみの構成。法定後見人が選任された場合、裁判による信託の終了(信託法165条)以外に法定後見人が信託の終了を行うことが出来ない仕組み。私も信託契約書、任意後見契約書案の作成では、信託を優先するような条項を原則として入れています。

 ただ、法的に確実とはいえないと考えていたので、言い切っていることに関して、何かしら根拠があるのだと想像します。

 このような商品構成だと、第2次受益者も任意後見契約を締結する義務のようなものがあるのかなと思いました。

 受益者が意思能力を喪失した場合、―中略―信託契約上、社団は任意後見人就任以降において受益者の信託契約に基づく全ての権利の行使及び全ての義務の履行を行うことができるものとされている。

 任意後見人の監督の下(任意後見契約に関する法律7条)ではないかなと感じました。またこの商品において、信託監督人の設置が可能とされていますが、信託銀行を監督する者として、親族、専門職、福祉関係、どのような方を想定しているのか分かりませんでした。

 利益相反関係(民法108条、顧客の相続人である代理人が得をして、顧客が損をしてしまう仕組み)、を回避するための方法として、原則として受託者の裁量で信託財産から払い出しを行う。

 総合的に、身寄りがいない方で現預金が5,000万円以上ある方にとっては、検討しても良い商品だと感じました。


[1] 287号2021年8月(一社)信託協会P4~

会社法特例(所在不明株主の株式の競売及び売却に関する特例)を読みながら。

加工

中小企業経営承継円滑化法申請マニュアル

「会社法特例」(所在不明株主の株式の競売及び売却に関する特例)

令和3年8月中小企業庁財務課

https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/shoukei_enkatsu.htm

目次

 会社法特例の概要 ……………………………………….. 2

(1)経営承継円滑化法の概要 ……………………………. 2

(2)会社法特例の手続の概要 ………………………………. 2

2 都道府県知事の認定の内容 ……………………………………………… 4

(1)対象者(法第12条第1項第1号柱書、同号ホ) ……………….. 4

①中小企業者(法第2条、施行令第1条、施行規則第1条第1項)………… 4

②上場会社等(施行規則第1条第12項、法第12条第1項第1号柱書参照) .5

(2)要件(法第12条第1項第1号ホ) ……………………. 5

①経営困難要件 ………………………………………………. 5

②円滑承継困難要件 …………………………………….. 6

3 都道府県知事の認定の申請手続……………………………. 12

(1)認定申請書の記載要領(様式第6の4) …………………. 12

①経営困難要件 ……………………………………. 14

②円滑承継困難要件 ……………………………………….. 15

(2)添付書類(施行規則第7条第1項) ……………….. 20

(3)申請先(法第17条、施行令第2条) …………… 23

4 その他都道府県知事の認定に関する諸事項 ……………………….24

(1)認定の通知及び有効期間(施行規則第7条第14項、第8条第9項) ..4

(2)認定の取消し(施行規則第9条第1項第4~6号) …………… 24

5 都道府県知事の認定後の手続(参考) ………………… 25

(1)会社法特例における異議申述手続 …………………….. 25

(2)裁判所における手続 ……………………….. 28

1 会社法特例の概要

 一般的に、株主名簿に記載はあるものの会社から連絡が取れなくなり、所在が不明になってしまっている株主を「所在不明株主」といいます。ここでは本マニュアルが対象とする所在不明株主に関する会社法特例の概要について説明します。

(1)経営承継円滑化法の概要

「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」(以下「法」といいます。

中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律(平成二十年法律第三十三号)2021(令和2)年10月1日施行

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=420AC0000000033

中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律施行令(平成二十年政令第二百四十五号)施行日: 平成二十九年四月一日

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=420CO0000000245_20170401_429CO0000000013

中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律施行規則(平成二十一年経済産業省令第二十二号)施行日: 令和元年七月一日

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=421M60000400022_20190701_501M60000400017

また、法の施行令(政令)と施行規則(省令)を、単にそれぞれ「施行令」と「施行規則」といいます。)は、

  • 遺留分に関する民法の特例、②事業承継時の金融支援措置、③事業承継税制の基本的枠組みを盛り込んだ事業承継円滑化に向けた総合的支援策の基礎となる法律で、平成20年10月1日(①遺留分に関する民法の特例に係る規定は平成21年3月1日)から施行されています。

 ここに、令和3年の第204回通常国会において成立した④所在不明株主の株式の競売及び売却に関する特例(以下「会社法特例」といいます。)が4つ目の措置として追加され、令和3年8月2日から施行されています。

本マニュアルは、④会社法特例の申請等に関するマニュアルです。

(2)会社法特例の手続の概要

会社法上、株式会社は、所在不明株主に対して行う通知等が5年以上継続して到達せず、当該所在不明株主が継続して5年間剰余金の配当を受領しない場合、その保有株式の競売又は売却(自社による買取りを含め、以下「買取り等」といいます。)の手続が可能です(会社法第197条、第198条)。他方で、「5年」という期間の長さが、事業承継の際の手続利用のハードルになっているという面もありました。

そこで、この点を踏まえ、非上場の中小企業者のうち、事業承継ニーズの高い株式会社に限り、経済産業大臣の認定を受けることと一定の手続保障を前提に、この「5年」を「1年」に短縮する特例を創設することとなりました。

なお、会社法特例に関する経済産業大臣の権限に属する事務は、中小企業者の主たる事務所の所在地を管轄する都道府県知事が行うこととされております(法第17条、施行令第2条)。そのため、実際の会社法特例の適用においては都道府県知事の認定が必要とされることになり、認定の申請手続も都道府県において行うことになります。以下では、これを前提に説明します。

2 都道府県知事の認定の内容

【法第12条第1項柱書、同項第1号柱書、同号ホ】(抜粋)

(経済産業大臣の認定)

第十二条 次の各号に掲げる者は、当該各号に該当することについて、経済産業大臣の認定を受けることができる。

一 会社である中小企業者(金融商品取引法第二条第十六項に規定する金融商品取引所に上場されている株式又は同法第六十七条の十一第一項の店頭売買有価証券登録原簿に登録されている株式を発行している株式会社を除く。以下この項において同じ。) 次のいずれかに該当すること。

イ~ニ (略)

ホ 当該中小企業者(株式会社に限る。)の代表者が年齢、健康状態その他の事情により、継続的かつ安定的に経営を行うことが困難であるため、当該中小企業者の事業活動の継続に支障が生じている場合であって、当該中小企業者の一部の株主の所在が不明であることにより、その経営を当該代表者以外の者(第十六条第二項において「株式会社事業後継者」という。)に円滑に承継させることが困難であると認められること。

(1)対象者(法第12条第1項第1号柱書、同号ホ)

会社法特例についての認定の対象者は、株式会社のうち、①中小企業者に該当し、かつ、②上場会社等に該当しない者です。

①中小企業者(法第2条、施行令第1条、施行規則第1条第1項)

法の対象となる中小企業者の範囲は、下表のとおり中小企業基本法上の中小企業者を基本とし、既存の中小企業支援法と同様に業種の実態を踏まえ施行令(政令)によりその範囲を拡大しており、その営む業種により以下のような会社又は個人とされています2。なお、医療法人や社会福祉法人、外国会社は法における中小企業者には該当しません。

②上場会社等(施行規則第1条第12項、法第12条第1項第1号柱書参照)

 会社法特例の対象となる中小企業者については、金融商品取引所に上場されている株式又は店頭売買有価証券登録原簿に登録されている株式を発行している株式会社が除かれます。この適用対象外となる会社を施行規則では「上場会社等」と定義しています3。

(2)要件(法第12条第1項第1号ホ)

①経営困難要件

[申請者の代表者が年齢、健康状態その他の事情により、継続的かつ安定的に経営を行うことが困難であるため、会社の事業活動の継続に支障が生じている場合であること]

・申請者の代表者の「年齢」が満60歳を超えている場合

・申請者の代表者の「健康状態」が日常業務に支障を生じさせている場合

・「その他の事情」が認められる場合(例えば、以下のような場合)

代表者以外の役員(例えば、代表者の配偶者や子息が就任していることもあります。)や幹部従業員(例えば、基幹工場の工場長や、いわゆる「番頭」等が該当します。)が病気や事故で倒れてしまったり、突然失踪してしまったりしたため、急に継続的かつ安定的に経営を行うことが困難となったような場合

・ 外部環境の急激な変化により突然業績が悪化し、急に継続的かつ安定的に経営を行うことが困難となったような場合(なお、当面の間、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を理由とする場合には、令和2年1月以後の任意の3月間における売上高又は販売数量(売上高等)が前年4同期の3月間における売上高等の80%以下に減少した、又は減少することが見込まれるケースその他経営の承継を伴う事業の再生や転業を要するケース等を想定しています。)

②円滑承継困難要件

[一部株主の所在が不明であることにより、その経営を当該代表者以外の者(株式会社事業後継者)に円滑に承継させることが困難であること]

例えば、以下のいずれかの基準を満たす場合には、この要件を満たし得るものと考えられます。なお、以下でいう「議決権割合」は、申請者の総株主等議決権数5(a)に占める割合を意味します6。

❶認定申請日時点において株式会社事業後継者が定まっている場合

 特定の手法による事業承継が合意されており、株式会社事業後継者が当該手法を特段の支障なく遂行するために一定の議決権数が必要となるときに、所在不明株主が存在するために当該議決権数を満たせないことにより、当該事業承継を円滑に行えないことがあります。このようなケースにおいて会社法特例を利用することで当該議決権数を満たせるようになるときには、円滑承継困難要件を満たし得ることになります。

(A) 総株主等議決権数の1/10等を目安とする基準

 例えば、株式譲渡の手法による事業承継が合意されているとき7には、株式会社事業後継者が要求している議決権数(株式会社事業後継者が既に申請者の一部株式を保有する場合には、当該株式に係る議決権数を含みます。)を満たす必要があります。そのため、所在不明株主の保有株式に係る議決権数が、総株主等議決権数から株式会社事業後継者が要求している議決権数を控除した数を超えるときには、必要な株式集約に支障が生じ、将来の事業承継を円滑に行えないことがあります。このようなケースにおいて会社法特例を利用することで当該議決権数を満たせるようになるときには、円滑承継困難要件を満たし得ることになります。

 ただし、総株主の議決権の9/10以上を有する特別支配株主の株式等売渡請求8によるスクイーズ・アウト9が可能な場合には、これによる株式集約を検討し得ることから、円滑承継困難要件を満たすのは、所在不明株主が存在するために当該請求が不可能となっているとき、すなわち所在不明株主の保有株式に係る議決権割合が1/10を超えるときに限ります。

<具体的な基準>基準の内容(ⅰ~ⅳの全てを満たす場合)

図式

(ⅰ)全ての所在不明株主の保有株式に係る議決権数の合計(b)が、総株主等議決権数(a)から株式会社事業後継者が要求する議決権数等(d)を控除した数を超えていること・・・[b>a-d]

(ⅱ)会社法特例による株式買取り等の手続の完了後に残る所在不明株主の保有株式に係る議決権数(b-c)が、総株主等議決権数(a)から株式・・・[b-c≦a-d]

会社事業後継者が要求する議決権数等(d)を控除した数以下であること

(ⅲ)株式会社事業後継者が要求する議決権数等(d)が総株主等議決権数(a)の過半数であること・・・[d>a×1/2]

(ⅳ)全ての所在不明株主の保有株式に係る議決権数の合計(b)に係る議決権割合が、1/10を超えていること・・・[b>a×1/10]

例・基準を満たすケース:a=1000、b=150、c=150、d=900

・基準を満たさないケース:a=1000、b=50、c=50、d=900(所在不明株主の議決権割合が、10分の1を超えていないから。)

(B) 総株主等議決権数の1/3を目安とする基準

 一方、前述の(A)に記載したような手法以外の手法によるとき、例えば、事業譲渡や会社分割、新株発行10等といった原則として株主総会特別決議11に基づく手法による事業承継が合意されているときには、株主総会特別決議を安全に行うことができる議決権割合として総株主等議決権数の2/3を確保する必要があります12。

 そのため、所在不明株主の保有株式に係る議決権割合が1/3を超えるときには、必要な株式集約に支障が生じ、将来の事業承継を円滑に行えないことがあります。このようなケースにおいて会社法特例を利用することで当該議決権割合を満たせるようになるときには、円滑承継困難要件を満たし得ることになります13。

<具体的な基準>基準の内容(ⅰかつⅱを満たす場合)

(ⅰ)全ての所在不明株主の保有株式に係る議決権数の合計(b)に係る議決権割合が、1/3を超えていること・・・[b>a×1/3]

(ⅱ)会社法特例による株式買取り等の手続の完了後に残る所在不明株主の保有株式に係る議決権数(b-c)に係る議決権割合が、1/3以下であること・・・[b-c≦a×1/3]

例 ・要件を満たすケース:a=1000、b=400、c=400

・要件を満たさないケース:a=1000、b=300、c=300(株式買い取り等の手続き前の所在不明株主の議決権割合が3分の1を超えている。)

❷認定申請日時点において株式会社事業後継者が未定の場合14

認定申請日時点において株式会社事業後継者が未定であって、事業承継のための特定の手法が定まっていない場合であっても、所在不明株主が存在するために必要な株式集約に支障が生じるおそれがあって、将来の事業承継を円滑に行えないことがあり、そのようなケースにおいて会社法特例を利用することで当該株式集約が可能になるようなときには、円滑承継困難要件を満たし得ると考えられます。例えば、以下のようなケースを想定しています。

(C) 総株主等議決権数の1/3を目安とする基準(❷原則)

 株式集約のためスクイーズ・アウトを行う際、株主総会特別決議に基づく手法15を選択するときには、株主総会特別決議を安全に行うことができる議決権割合として総株主等議決権数の2/3を確保する必要があります。そのため、所在不明株主の保有株式に係る議決権割合が1/3を超えるときには、必要な株式集約16に支障が生じるおそれがあって、将来の事業承継を円滑に行えないことがあります。このようなケースにおいて会社法特例を利用することで当該議決権割合を満たせるようになるときには、円滑承継困難要件を満たし得ることになります。

<具体的な基準>基準の内容(ⅰかつⅱを満たす場合)

(ⅰ)全ての所在不明株主の保有株式に係る議決権数の合計(b)に係る議決権割合が、1/3を超えていること・・・[b>a×1/3]

(ⅱ)会社法特例による株式買取り等の手続の完了後に残る所在不明株主の保有株式に係る議決権数(b-c)に係る議決権割合が、1/3以下であること・・・[b-c≦a×1/3]

例・要件を満たすケース:a=1000、b=400、c=400

・要件を満たさないケース:a=1000、b=300、c=300

(D) 総株主等議決権数の1/10等を目安とする基準(❷例外)

 株式集約のためスクイーズ・アウトを行う際、総株主の議決権の9/10以上を有する特別支配株主の株式等売渡請求を選択するときには、所在不明株主が存在するために当該9/10を満たせないとき、すなわち所在不明株主の保有株式に係る議決権割合が1/10を超えるときには、必要な株式集約に支障が生じるおそれがあって、将来の事業承継を円滑に行えないことがあります。このようなケースにおいて会社法特例を利用することで当該議決権割合を1/10以下にできるときには、円滑承継困難要件を満たし得ることになります。

 ただし、申請者の代表者又は代表者であった者並びにそれらの親族17(以下「経営株主等」といいます。)のみで既に総株主等議決権数の過半数を有しており、既に申請者の支配権を確保できている場合に限るものとします。

また、本基準において円滑承継困難要件を満たし得るのは、必要な株式集約に支障が生じることで将来の事業承継を円滑に行えない相当程度の蓋然性が認められるときに限ります。

特別支配株主の株式等売渡請求を行う蓋然性が相当程度認められるときであること、具体的には、経営株主等の保有株式に係る議決権数の合計に(会社法特例の適用対象となる)所在不明株主の保有株式に係る議決権数の合計を加算すると、その議決権割合が9/10以上となることが必要です18。 将来の事業承継の蓋然性が相当程度認められるときであること、具体的には、株式会社事業後継者が未定ではあるものの、その候補先の選定に向けて支援機関19への具体的な相談を複数回していること20が必要です。

<具体的な基準>基準の内容(ⅰ~ⅴを全て満たす場合)

(ⅰ)全ての所在不明株主の保有株式に係る議決権数の合計(b)に係る議決権割合が、1/10を超えていること・・・[b>a×1/10]

(ⅱ)会社法特例による株式買取り等の手続の完了後に残る所在不明株主の保有株式に係る議決権数(b-c)に係る議決権割合が、1/10以下であること・・・[b-c≦a×1/10]

(ⅲ)経営株主等の保有株式に係る議決権数の合計(z)に係る議決権割合が過半数であること・・・[z>a×1/2]

(ⅳ)経営株主等の保有株式に係る議決権数の合計(z)及び会社法特例による株式買取り等の手続を適用する所在不明株主の保有株式に係る議決権数の合計(c)の合計に係る議決権割合を足した数が9/10以上であること・・・[z+c≧a×9/10]

(ⅴ)株式会社事業後継者が未定ではあるものの、その候補先の選定に向けて支援機関への具体的な相談を複数回していること

・基準を満たすケース:a=1000、b=150、c=150、z=800

・基準を満たさないケース:a=1000、b=200、c=200、z=680(経営株主等の保有株式に係る議決権数が少ない。)

(注1)「株式会社事業後継者が定まっている場合」の判断について

 厳密には株式会社事業後継者以外の他者が株式譲渡の譲受人等となるケースも存在しますが、株式会社事業後継者により当該他者が指定されているような場合21は、「❶認定申請日時点において株式会社事業後継者が定まっている場合」に該当するものとして判断します。

なお、株式会社事業後継者は、申請者の経営者の親族の場合(親族内承継)も、それ以外の第三者の場合(第三者承継)も、いずれもあり得るものとします。

(注2)自己株式に係る議決権について(会社法第308条第2項)

 会社法特例により申請者が所在不明株主の保有株式を買い取ることで当該株式が自己株式となる場合には、申請者は当該株式について議決権を有しないこととなります(会社法第308条第2項)。しかし、円滑承継困難要件の認定に関しては、会社法特例により申請者が買い取ることで自己株式となることを見込んでいる所在不明株主の保有株式についても、議決権を有するものとみなして判断することとします。これは、会社法特例の認定審査の時点では株式の買取り又はそれ以外の売却や競売のいずれを行うか選択することが求められておらず、基準の明確化という観点から一律に取り扱う趣旨によるものです。

 なお、認定申請日時点において申請者が保有する自己株式については、同項の規定どおり議決権を有しないことを前提に判断します。

3 都道府県知事の認定の申請手続

(1)認定申請書の記載要領(様式第6の4)

【様式記載事項についての補足説明】

「1 申請者に係る以下の事項」について以下のとおり記載してください。

「(1) 主たる事業内容」には、認定申請日において営んでいる事業内容(一般機械製造業、繊維・衣服等卸売業、一般飲食店等)を記載してください。

「(2) 資本金の額又は出資の総額」には、認定申請日における(株式会社である)申請者の資本金の額を記載してください。

「(3) 常時使用する従業員の数」には、認定申請日における申請者が常時使用する従業員の数を記載してください。

①経営困難要件

(提出書類)

・申請者の代表者の「年齢」を示すための当該代表者の生年月日を公的に示す書類等(マイナンバーカード表面22や運転免許証の写し、住民票等)

・申請者の代表者の「健康状態」を示すための医師の診断書

・ 申請者の役員や幹部従業員が退職した経緯等を示すための報告書等

・ 申請者の業績が外部環境の急激な変化により突然悪化したこと等を示すための書類(令和元年12月以前の期間を含む確定申告書・法人事業概況説明書その他の過去の業績を示すための書類及び令和2年1月以後の3月間の売上台帳等)の写し等

②円滑承継困難要件【様式第6の4(別紙2)】

【様式記載事項についての補足説明】

  「①株主名簿に記載又は記録がされた氏名又は名称及び住所」には、所在不明株主の株主名簿上の氏名又は名称及び住所を記載してください。

 「②保有株式の数(種類株式発行会社にあっては、保有株式の種類及び種類ごとの数)」には、所在不明株主の株主名簿上の保有株式数(種類株式発行会社にあっては、所在不明株主の株主名簿上の保有株式の種類及び種類ごとの数)を記載してください。

 「③保有株式に係る議決権の数(以下「議決権数」という。)」には、所在不明株主の株主名簿上の議決権数を記載してください。

 「④保有株式につき株券が発行されているときは、当該株券の番号」には、所在不明株主の保有株式につき株券が発行されているときにその株主名簿上の株券番号を記載してください。

  「⑤本特例による競売及び売却に関する手続の適用」には、本特例を適用して株式買取り等に関する手続を進める場合には「適用有り」と記載してください。

 「⑥所在が不明となった経緯」には、所在不明株主の所在が不明となった経緯を記載して下さい。特に次の点は必ず記載してください。

 申請者が当該所在不明株主から最後に連絡を受け取った時期及び連絡方法

 申請者が当該所在不明株主に対して最後に発した通知又は催告の時期及び方法

株式会社事業後継者が定まっている場合はa~d)の情報を記載

a:申請者の総株主等議決権数

b:全ての所在不明株主の保有株式に係る議決権数の合計

c:本特例による競売及び売却に関する手続を適用する所在不明株主の保有株式に係る議決権数の合計

d:株式会社事業後継者が要求する議決権数

  「a: 申請者の総株主等議決権数」には、総株主(株主総会において決議をすることができる事項の全部につき議決権を行使することができない株主を除きます。)の議決権の数23を記載してください。

  「b:全ての所在不明株主の保有株式に係る議決権数の合計」には、全ての所在不明株主の保有株式についての議決権数の合計24を記載してください。

  「c:本特例による競売及び売却に関する手続を適用する所在不明株主の保有株式に係る議決権数の合計」には、本特例を適用して株式買取り等に関する手続を進める所在不明株主の保有株式についての議決権数の合計25を記載してください。

 「d:株式会社事業後継者が要求する議決権数等」には、株式会社事業後継者が定まっている場合、チェックボックスを埋めた上で(□に☑等と記載した上で)、株式譲渡が予定されているときには株式会社事業後継者が要求している議決権数26(事業譲渡等が予定されているときには「a×2/3」という文言)を記載してください。

3 円滑承継困難要件に該当する事実関係等

(A)又は(B)の基準については、「❶認定申請日時点において株式会社事業後継者が定まっている場合」であることを示すため、承継に係る明確な合意があることを証する書類(例えば、承継に係る基本合意書や株式譲渡契約書の写し等)を添付し、具体的な承継手法が明記されている部分が分かりやすいように適宜加工して提出してください。なお、基本合意書の時点では具体的な承継手法まで明記しない場合もありますが、その場合は(A)又は(B)の基準としては審査できませんので、留意してください。(D)の基準については、以下の対応をしてください。

  経営株主等の保有株式に係る議決権数の合計(z)及びその内訳を明記してください。その中に代表者であった者が含まれる場合には、代表者であったことが分かる申請者の登記事項証明書(閉鎖事項証明書を含みます。)を、代表者又は代表者であった者の親族が含まれる場合には、親族関係を証するための戸籍謄本等27及び親族関係図等を添付してください28。なお、(D)の基準を満たすかどうかの判定に影響を及ぼさない場合は、これらの明記及び書類の添付を省略することが可能です29。

  株式会社事業後継者が未定ではあるものの、その候補先の選定に向けて支援機関への具体的な相談を複数回していることについて、少なくとも次の点を明記して報告してください30。

・相談先の支援機関の名称、所在地及び電話番号 ・相談の日時及び場所 ・相談の具体的な内容及びそれに対する具体的な助言内容 。ただし、当該支援機関からこれらの点について明記した書類が発行された場合には、当該書類の写しを添付することで代えることが可能です。以上を踏まえて「3 円滑承継困難要件に該当する事実関係等」を記載する場合の具体例は以下のとおりです。

・ 例

A基準・株式譲渡:別添株式譲渡契約書○条○項参照

B基準・事業譲渡:別添基本合意書第○条○項参照

C基準

D基準

【経営株主等に関する記載】

・z=800

(内訳)

・500(代表者○○)・200(前代表者○○)・100(代表者○○の母・前代表者○○の配偶者)

【支援機関に関する報告】

・支援機関への具体的な相談の経緯は以下のとおり。

①2021年4月22日13:00~14:00株式会社○○(代表取締役:○○、所在地:○○、電話番号:○○)において、担当者○○との間で以下のとおり1回目の相談を行った。

  • 2021年5月1日14:00~15:00○○センター(所在地:○○、電話番号:○○。以下「○○センター」という。)において、担当者○○との間で以下のとおり2回目の相談を行った。
  • 2021年6月5日10:00~11:00○○センターにおいて、担当者○○との間で以下のとおり3回目の相談を行った。
  • 2021年6月5日15:00~16:00○○センターにおいて、担当者○○との間で以下のとおり4回目の相談を行った。

(2)添付書類(施行規則第7条第1項)

①認定申請書の写し 実際に提出する認定申請書のコピー

②申請者の登記事項証明書 認定申請日の前3月以内に作成されたもの

③申請者の定款の写 認定申請日におけるもの(原本証明付き

④申請者の株主名簿の写し 認定申請日におけるもの(原本証明付き)

⑤申請者の誓約書 申請者が上場会社等に該当しない旨

⑥その他参考となる書類

事案ごとに異なり、具体例は以下のとおり(前述の「(1)認定申請書の記載要領(様式第6の4)」参照)

(ⅰ)経営困難要件関係

・ 申請者の代表者の「年齢」を示す書類

・申請者の代表者の生年月日を公的に示す書類等(マイナンバーカード表面や運転免許証の写し、住民票等)

・申請者の代表者の「健康状態」を示す書類

・ 申請者の代表者の「健康状態」を示すための医師の診断書等

・「その他の事情」を示す書類

・申請者の役員や幹部従業員が退職した経緯等を示すための報告書等

・申請者の業績が外部環境の急激な変化により突然悪化したこと等を示すための書類(令和元年12月以前の期間を含む確定申告書・法人事業概況説明書その他の過去の業績を示すための書類及び令和2年1月以後の3月間の売上台帳等)の写し等

(ⅱ)円滑承継困難要件関係

<(A)又は(B)の基準>

・承継に係る明確な合意があることを証する書類

・承継に係る基本合意書や株式譲渡契約書の写し等(具体的な承継手法が明記されている部分が分かりやすいように適宜加工して提出)

<(D)の基準>

・ 経営株主等の中に代表者であった者が含まれる場合にその者が代表者であったことを証するための書類

・その者が代表者であったことが分かる申請者の登記事項証明書(閉鎖事項証明書を含む。)

・経営株主等の中に代表者又は代表者であった者の親族が含まれる場合に親族関係を証するための書類

・戸籍謄本等及び親族関係図等

・認定申請書に記載されている経営株主等のうち保有株式に係る議決権割合が過半数である株主がいる場合、当該株主が申請者以外の一定の法人を通じて間接的に株式を保有していることを証するための書類

・ 当該法人の登記事項証明書、定款の写し及び株主名簿の写し

・株式会社事業後継者の候補先の選定に向けて支援機関への具体的な

・ 認定申請書に「別添報告書のとおり」等と記載する場合は任意の形式で記載した報告書等(ただし、支援機関から必要事項について明記した書類が発行された場合は当該相談を複数回していることを報告する書類(書類の写しの添付で代えることが可能)※ 基準の判定に影響を及ぼさない場合、省略可

各添付書類について、以下、留意点を説明します。

① 認定申請書の写し

 記入した認定申請書(別紙1及び別紙2を含みます。)の写しを提出してください。実際に提出する認定申請書をコピーしてください。

② 申請者の登記事項証明書

 申請者の「履歴事項全部証明書」等を提出してください。ただし、認定申請日の前3か月以内に作成されたものに限ります。

③ 申請者の定款の写し

 認定申請日時点における有効な内容を確認する必要があるため、認定申請日付けの原本証明付きの写しをご提出ください。なお、原本証明として最低限、❶当該書類に記載された内容が原本と相違ない旨の文言、❷認定申請日の日付、❸会社・代表取締役の氏名・名称を記載してください。

④ 申請者の株主名簿の写し

 会社法第121条が定める株主名簿記載事項を記載している株主名簿を提出してください。認定申請日時点における有効な内容を確認する必要があるため、認定申請日付けの原本証明付きの写しをご提出ください。なお、原本証明として最低限、❶当該書類に記載された内容が原本と相違ない旨の文言、❷認定申請日の日付、❸会社・代表取締役の氏名・名称を記載してください。

【会社法第121条】(抜粋)

(株主名簿)

第百二十一条 株式会社は、株主名簿を作成し、これに次に掲げる事項(以下「株主名簿記載事項」という。)を記載し、又は記録しなければならない。

一 株主の氏名又は名称及び住所

二 前号の株主の有する株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)

三 第一号の株主が株式を取得した日

四 株式会社が株券発行会社である場合には、第二号の株式(株券が発行されているものに限る。)に係る株券の番号

⑤ 申請者の誓約書

 申請者が上場会社等に該当しない旨の誓約書を提出してください。当該誓約書には、例えば、「当社は、金融商品取引法第2条第16項に規定する金融商品取引所に上場されている株式又は同法第67条の11第1項の店頭売買有価証券登録原簿に登録されている株式を発行している株式会社に該当しない旨を誓約します。」等と記載してください。

⑥ その他参考となる書類

・ 前述の「(1)認定申請書の記載要領(様式第6の4)」において添付書類として要求する書類を提出してください。

・前述のとおり、「資本金の額」だけでは判断できず「常時使用する従業員の数」(従業員数)の精査を要すると思われる場合等には、参考となる書類として、例えば以下のような書類の提出を求めることがあります(施行規則第1条11項に定める「従業員数証明書」参照)。

厚生年金保険・健康保険の標準報酬月額決定通知書及びその発行後の変動についての被保険者資格取得(喪失)確認通知書の写し

・被保険者縦覧照会回答票の写し

(3)申請先(法第17条、施行令第2条)

法に基づく申請等の受付は、主たる事務所が所在している都道府県31にて行っております。都道府県の担当課については、中小企業庁HPをご覧下さい。

(https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/shoukei_enkatsu.htm)

中小企業庁 → 事業承継 → 経営承継円滑化法による支援

4 その他都道府県知事の認定に関する諸事項

(1)認定の通知及び有効期間(施行規則第7条第14項、第8条第9項)

都道府県知事は、認定をした際には、申請者に対して認定書を交付します。

 認定の有効期限は原則として認定を受けた日(認定書の日付)の翌日から起算して2年を経過する日となります。ただし、当該2年を経過する日までに裁判所に会社法特例に基づく株式買取り等に係る事件の申立てがされた場合には、有効期限は当該株式買取り等が行われた日となります。 したがって、本マニュアルによって申請した認定を受けた後、その翌日から2年以内には裁判所に対して必要な手続の申立てを行う必要があります。

(2)認定の取消し(施行規則第9条第1項第4~6号)都道府県知事の認定は、一定の場合に取り消されることがあります。

【施行規則第9条第1項】(抜粋)

第9条 都道府県知事は、法第12条第1項の認定(第6条第1項第7号及び第8号の事由に係るものを除く。)を受けた中小企業者(以下「認定中小企業者」という。)が、次に掲げるいずれかに該当することが判明したときは、その認定を取り消すことができる。

四 当該認定中小企業者が特例株式会社である場合にあっては、次のいずれかに該当すること。

イ 法第十二条第一項第一号ホに該当する者として同項の認定を受けたにもかかわらず、法第十五条に定める所在不明株主の株式の競売及び売却に関する特例の適用のための手続をしないこと。

ロ 裁判所に第十五条の二第一号に掲げる特例対象株式の競売又は売却に係る事件の申立てがされた場合において、当該申立てが取り下げられ、又は却下されたこと

五 偽りその他不正の手段により当該認定を受けたこと。

六 当該認定中小企業者から第十八項の申請があったこと。

5 都道府県知事の認定後の手続(参考)

(1)会社法特例における異議申述手続

【会社法第196条~第198条】(抜粋)

(株主に対する通知の省略)

第百九十六条 株式会社が株主に対してする通知又は催告が五年以上継続して到達しない場合には、株式会社は、当該株主に対する通知又は催告をすることを要しない。

2 前項の場合には、同項の株主に対する株式会社の義務の履行を行う場所は、株式会社の住所地とする。

3 前二項の規定は、登録株式質権者について準用する。

(株式の競売)

第百九十七条 株式会社は、次のいずれにも該当する株式を競売し、かつ、その代金をその株式の株主に交付することができる。

一 その株式の株主に対して前条第一項又は第二百九十四条第二項の規定により通知及び催告をすることを要しないもの

二 その株式の株主が継続して五年間剰余金の配当を受領しなかったもの

2 株式会社は、前項の規定による競売に代えて、市場価格のある同項の株式については市場価格として法務省令で定める方法により算定される額をもって、市場価格のない同項の株式については裁判所の許可を得て競売以外の方法により、これを売却することができる。この場合において、当該許可の申立ては、取締役が二人以上あるときは、その全員の同意によってしなければならない。

3 株式会社は、前項の規定により売却する株式の全部又は一部を買い取ることができる。この場合においては、次に掲げる事項を定めなければならない。

一 買い取る株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)

二 前号の株式の買取りをするのと引換えに交付する金銭の総額

4 取締役会設置会社においては、前項各号に掲げる事項の決定は、取締役会の決議によらなければならない。

5 第一項及び第二項の規定にかかわらず、登録株式質権者がある場合には、当該登録株式質権者が次のいずれにも該当する者であるときに限り、株式会社は、第一項の規定による競売又は第二項の規定による売却をすることができる。

一 前条第三項において準用する同条第一項の規定により通知又は催告をすることを要しない者

二 継続して五年間第百五十四条第一項の規定により受領することができる剰余金の配当を受領しなかった者

(利害関係人の異議)

第百九十八条 前条第一項の規定による競売又は同条第二項の規定による売却をする場合には、株式会社は、同条第一項の株式の株主その他の利害関係人が一定の期間内に異議を述べることができる旨その他法務省令で定める事項を公告し、かつ、当該株式の株主及びその登録株式質権者には、各別にこれを催告しなければならない。ただし、当該期間は、三箇月を下ることができない。

2 第百二十六条第一項及び第百五十条第一項の規定にかかわらず、前項の規定による催告は、株主名簿に記載し、又は記録した当該株主及び登録株式質権者の住所(当該株主又は登録株式質権者が別に通知又は催告を受ける場所又は連絡先を当該株式会社に通知した場合にあっては、その場所又は連絡先を含む。)にあてて発しなければならない。

3 第百二十六条第三項及び第四項の規定にかかわらず、株式が二以上の者の共有に属するときは、第一項の規定による催告は、共有者に対し、株主名簿に記載し、又は記録した住所(当該共有者が別に通知又は催告を受ける場所又は連絡

先を当該株式会社に通知した場合にあっては、その場所又は連絡先を含む。)にあてて発しなければならない。

4 第百九十六条第一項(同条第三項において準用する場合を含む。)の規定は、第一項の規定による催告については、適用しない。

5 第一項の規定による公告をした場合(前条第一項の株式に係る株券が発行されている場合に限る。)において、第一項の期間内に利害関係人が異議を述べなかったときは、当該株式に係る株券は、当該期間の末日に無効となる。

【会社法施行規則第39条】(抜粋)

(公告事項)

第三十九条 法第百九十八条第一項に規定する法務省令で定める事項は、次に掲げるものとする。

一 法第百九十七条第一項の株式(以下この条において「競売対象株式」という。)の競売又は売却をする旨

二 競売対象株式の株主として株主名簿に記載又は記録がされた者の氏名又は名称及び住所

三 競売対象株式の数(種類株式発行会社にあっては、競売対象株式の種類及び種類ごとの数)

四 競売対象株式につき株券が発行されているときは、当該株券の番号

【法第15条】(抜粋)

(所在不明株主の株式の競売及び売却に関する特例)

第十五条 第十二条第一項第一号ホに該当することについて同項の認定を受けた者(この条及び次条第五項において「特例株式会社」という。)についての会社法(平成十七年法律第八十六号)第百九十七条の規定の適用については、同条第一項第一号中「前条第一項又は第二百九十四条第二項の規定により通知及び催告をすることを要しない」とあるのは「する通知又は催告が一年以上継続して到達しない」と、同項第二号中「五年間」とあるのは「一年間」と、同条第五項第一号中「前条第三項において準用する同条第一項の規定により」とあるのは「当該登録株式質権者に対してする」と、「をすることを要しない」とあるのは「が一年以上継続して到達しない」と、同項第二号中「五年間」とあるのは「一年間」とする。

2 前項の規定により読み替えて適用する会社法第百九十七条第一項の規定による競売又は同条第二項の規定による売却をする場合には、特例株式会社は、同法第百九十八条第一項に定める手続に先立ち、前項の規定により読み替えて適用する同法第百九十七条第一項の株式の株主その他の利害関係人が一定の期間内に異議を述べることができる旨その他経済産業省令で定める事項を公告し、かつ、当該株式の株主及びその登録株式質権者(同法第百四十九条第一項に規定する登録株式質権者をいう。)には、各別にこれを催告しなければならない。ただし、当該期間は、三箇月を下ることができない。

3 次の各号のいずれかに該当する場合には、第一項の規定は適用しない。

一 前項の期間が満了していない場合

二 前項の期間内に利害関係人が異議を述べた場合

三 前項の規定による催告が同項に規定する株式の株主又はその登録株式質権者に到達した場合

4 会社法第百九十八条第二項から第四項までの規定は、第二項の規定による催告について準用する。

【施行規則第15条の2】(抜粋)

(法第十五条の経済産業省令で定める事項)

第十五条の二 法第十五条第二項の経済産業省令で定める事項は、次に掲げるものとする。

一 法第十五条第一項の規定により読み替えて適用する会社法第百九十七条第一項の株式(以下この条において「特例対象株式」という。)の競売又は売却をする旨

二 特例対象株式の株主として株主名簿に記載又は記録がされた者の氏名又は名称及び住所

三 特例対象株式の数(種類株式発行会社にあっては、特例対象株式の種類及び種類ごとの数)

四 特例対象株式につき株券が発行されているときは、当該株券の番号

(2)裁判所における手続

東京地方裁判所民事第8部(商事部非訟係)ホームページ

「所在不明株主の株式売却許可申立事件についてのQ&A」

(https://www.courts.go.jp/tokyo/saiban/dai8bu_osirase/fumei_kabunusi/index.html)

※以下は令和3年8月2日時点におけるホームページの記載を抜粋したものであり、同日以降の改訂等を反映しておりませんので、ご了承ください。

Q1. 所在不明株主の株式売却許可申立事件とは?

A 株式について,下記(1)及び(2)の要件が備わったときは,株式会社は,当該株式を競売することができます。

原則競売ですが,市場価格のある株式は,会社法施行規則38条で定める方法によって算定された額で,市場価格のない株式は,裁判所の許可を得ることによって売却することもできます。

「所在不明株主の株式売却許可申立事件」とは,裁判所に対して,この許可決定を求める申立てです。

(1)株主に対してする通知又は催告が,5年以上継続して到達しなかったとき (2)その株主が,継続して5年間剰余金の配当を受領しなかったとき

*会社法施行規則38条(略)

1号:市場において行う取引によって売却する場合 当該取引によって売却する価格 2号:前号に掲げる場合以外の場合 次に掲げる額のうちいずれか高い額

イ 売却日における当該株式を取引する市場における最終の価格(当該売却日に売買取引はない場合又は当該売却日が当該市場の休業日に当たる場合にあっては,その後最初になされた売買取引の成立価格)

ロ 売却日において当該株式が公開買付け等の対象であるときは,当該売却日における当該公開買付け等に係る契約における当該株式の価格

Q2. 申立ての手続はどのようにするのですか?

A

1. 申立人・・・その株式を発行した株式会社です。取締役が2名以上いるときは,取締役全員の同意が必要です。

2. 申立手数料・・・収入印紙1000円です(民事訴訟費用等に関する法律3条1項,別表第1 16項)。申立書に貼付してください。割印はしないでください。

3. 予納郵券・・・決定謄本を裁判所の窓口で受領する場合は不要です。決定謄本を郵送にて受領したい場合のみ,通常郵便料金分が必要になります。重量によって異なりますので,事前に重さを量った上で,予納してください(目安:申立書+15グラム)。

4. 管轄・・・東京都の区部(23区)及び島嶼(伊豆諸島・小笠原諸島)に本店所在地がある株式会社は,東京地方裁判所(千代田区霞が関一丁目1番4号)です。それ以外の東京都の地域に本店所在地があるときは,東京地方裁判所立川支部(郵便番号190-8571 東京都立川市緑町10番地の4)に申立てをしてください。

Q3. どんな疎明資料が必要ですか?

A (1)履歴事項全部証明書,(2)株主名簿,(3)5年間分の株主総会招集通知書及び返戻封筒,(4)5年間分の剰余金配当送金通知書及び返戻封筒,(5)(取締役会設置会社で株式会社が買い取る場合は)取締役会議事録,(6)(当該株式会社以外の者が買い取る場合は)買受書,(7)官報(公告),(8)催告書及び発出したことが判る資料,(9)株価鑑定書,(10)(取締役が2名以上いるときは)全取締役の同意書

Q4. 申立ての際に,注意すべき点は何ですか?

A 下記(1)~(7)の事実の疎明,競売に代えて売却することの相当性,売却価格の相当性といった点に注意して,申立書及び添付書類を提出してください。 なお,『5年間継続して到達しなかった』事実の疎明は重要であり,当庁では,(代表)取締役の陳述書などの代替書面による疎明は認めていませんので,必ず5年間継続分の返戻封筒を疎明資料として提出してください。

 *会社法施行規則39条(略)

1号:競売対象株式について,競売又は売却をする旨 2号:競売対象株式の株主として株主名簿に記載又は記録がされた者の氏名又は名称及び住所 3号:競売対象株式の数(種類株式発行会社にあっては,競売対象株式の種類及び種類ごとの数) 4号:競売対象株式につき株券が発行されているときは,当該株券の番号

以上

1 中小企業庁が開催した第3回「中小企業の経営資源集約化等に関する検討会」配付資料1(事務局説明資料)6ページ(抜粋)(https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/kenkyukai/shigenshuyaku/210125shigenshuyaku.html

2 「資本金の額」だけでは判断できず「常時使用する従業員の数」(従業員数)の精査を要すると思われる場合等には、参考となる書類として、例えば以下のような書類の提出を求めることがあります(施行規則第1条11項に定める「従業員数証明書」参照)。

厚生年金保険・健康保険の標準報酬月額決定通知書及びその発行後の変動についての被保険者資格取得(喪失)確認通知書の写し

 被保険者縦覧照会回答票の写し

3 なお、法では「上場会社等」という用語を定義しておりません。

4 当面の間、令和3年1月以後の任意の3月間(令和3年内の月を含む3月間に限ります。)については、「前年」を「前々年」と読み替えることを可能とします。

5 株式会社の「総株主等議決権数」とは、総株主(株主総会において決議をすることができる事項の全部につき議決権を行使することができない株主を除きます。)の議決権の数をいいます(施行規則第1条第14項第6号イ参照)。

6 以下、a~dは、認定申請書(様式第6の4)における次の事項と対応しています。

a:申請者の総株主等議決権数

b:全ての所在不明株主の保有株式に係る議決権数の合計

c:本特例による競売及び売却に関する手続を適用する所在不明株主の保有株式に係る議決権数の合計

d:株式会社事業後継者が要求する議決権数等

7 以下、株式会社事業後継者が申請者の総株主等議決権数の過半数を取得することで申請者の支配権を確保するケースを前提とします。

8 以下、特別支配株主の株式等売渡請求(会社法第179条以下)を意味します。

9 一般的に「スクイーズ・アウト」とは、会社やその支配株主が、各種の手法により、他の少数株主の株式を、その承諾なく強制的に金銭等を対価として取得し、当該少数株主を排除することを意味します。

10 株主総会特別決議が不要となる場合もあります(事業譲渡について会社法第468条等、会社分割について会社法第784条等、新株発行について第201条第1項等参照)が、基準の明確化という観点から一律に取り扱います。

11 事業の全部の譲渡等をはじめとする重要事項については、通常の株主総会決議より慎重に判断する趣旨で、特別決議として、「当該株主総会において議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(三分の一以上の割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の三分の二(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上に当たる多数をもって行わなければならない」(会社法第309条第2項)とされます。

12 (A)の基準に係る手法及び(B)の基準に係る手法の両手法を併用する場合、原則として(A)及び(B)の両基準を満たす必要があります。例えば、株式譲渡及び新株発行を同時併用する場合、既存株式の株式譲渡について(A)の基準を満たし、新株発行について(B)の基準を満たす必要があります。具体例として、既存株式についてa=1000、b=400、c=400、d=800、X(新株発行した株式に係る議決権数)=100というケースを挙げますと、A及びBの両基準においてXを考慮せずに(a=1100、b=400、c=400、d=900という数字を前提とせずに)a=1000、b=400、c=400、d=800という数字を前提にして判断します。

13 なお、株式会社事業後継者が定まっている場合であれば、株式譲渡の手法を選択するときにおいて株式会社事業後継者が申請者の総株主等議決権数の過半数を取得しないケース(いわゆるマイノリティ投資)等についても、(B)の基準での申請を認めることとします。

14 多数の申請があった場合、「❶認定申請日時点において株式会社事業後継者が定まっている場合」の認定申請に関する審査を優先する可能性がありますので、ご了承ください。

15 株式の併合(会社法第180条以下)等の手法が選択されることがあります。

16 前述の(B)に記載したような株主総会特別決議に基づく手法による事業承継を行う場合にも、同様に支障が生じるおそれがあります。

17 6親等内の血族、配偶者及び3親等内の姻族(民法第725条参照)をいいます。

18 認定申請書に記載されている経営株主等のうち保有株式に係る議決権割合が過半数である株主がいる場合、当該株主は特別支配株主となる蓋然性が特に高いことから、当該株主が申請者以外の一定の法人を通じて間接的に保有している株式に係る議決権数も含めることを認めることとします。当該法人は、具体的には、特別支配株主完全子法人(会社法第179条第1項本文、同法施行規則第33条の4参照)の考え方を踏まえ、以下の法人α及び法人βに限るものとします。

㈠ 経営株主等がその持分の全部を有する法人(法人α)

㈡ 経営株主等及び法人α、又は法人αがその持分の全部を有する法人(法人β)

19 「支援機関」は認定経営革新等支援機関(施行規則第3条第2項第2号ホ)に限定されるものではなく、例えば、マッチング支援等を業とするM&A専門業者やオンラインでマッチングの場を提供するM&Aプラットフォーマー、金融機関、商工団体、士業等専門家(公認会計士、税理士、中小企業診断士、弁護士等)、全国48か所に設けられた事業承継・引継ぎ支援センター等、民間機関・公的機関を問わず、事業承継・M&Aの支援機関を広く含みます。

20 少なくとも同一の支援機関に具体的な相談を複数回して、具体的な助言を得ていることを要します。

21 例えば、個人Xが株式会社事業後継者となり、Xが一定数の株式を保有するY社が株式譲渡の譲受人となるような場合が該当します。

22 裏面にはマイナンバー(個人番号)が記載されておりますが、会社法特例の認定審査には不要ですので、裏面の写しは提出しないでください。

23 前述のとおり、自己株式に係る議決権の数も除きます(会社法第308条第2項)。

24 全ての所在不明株主の「③保有株式に係る議決権の数(以下「議決権数」という。)」の合計です。

25 「⑤本特例による競売及び売却に関する手続の適用」に「適用有り」と記載のある全ての所在不明株主の「③保有株式に係る議決権の数(以下「議決権数」という。)」の合計です。

26 前述のとおり、株式会社事業後継者が既に申請者の一部株式を保有する場合には、当該株式に係る議決権数を含みます。

27 「戸籍謄本等」とは、「戸籍の謄本若しくは抄本又は戸籍に記載した事項に関する証明書及び除かれた戸籍の謄本若しくは抄本又は除かれた戸籍に記載した事項に関する証明書」をいいます(施行規則第1条第9項参照)。なお、必要に応じて「法定相続情報一覧図」(施行規則第1条10項参照)で代えることも可能です。

28 前述のとおり、認定申請書に記載されている経営株主等のうち保有株式に係る議決権割合が過半数である株主がいる場合、当該株主が申請者以外の一定の法人を通じて間接的に保有している株式に係る議決権数も含めることを認めています(注18参照)。その際には、当該法人の登記事項証明書、定款の写し及び株主名簿の写しも添付してください。

29 例えば、代表者及び代表者であった者の議決権数だけで(これらの者の親族の議決権数まで含めなくとも)、(D)の基準を満たしているような場合には、これらの者の親族についての明記並びに戸籍謄本等及び親族関係図等の添付を省略することが可能です。

30 様式第6の4(別紙2)「3 円滑承継困難要件に該当する事実関係等」には「別添報告書のとおり」等と記載し、任意の形式で記載した報告書等を別途、添付して頂く形でも結構です。

31 申請者の本店が所在する都道府県であり、登記上の「本店」欄により判断します。

32 所在不明株主の株式売却許可申立事件における管轄裁判所は、「会社の本店の所在地を管轄する地方裁判所」(会社法第868条第1項)です。

33 株式の競売の場合にも裁判所における手続が必要となりますが、株式の売却(買取りを含みます。)の場合とは異なり、株券が発行されている場合には、当該株券が所在する場所を職務執行区域とする執行官に対して申立てを行い、株券が発行されていない場合には、相手方(所在不明株主)の普通裁判籍の所在地を管轄する地方裁判所に申立てを行うことになると考えられます。なお、人の普通裁判籍は、住所により、日本国内に住所がないとき又は住所が知れないときは居所により、日本国内に居所がないとき又は居所が知れないときは最後の住所により定まるものとされます(民事訴訟法第4条第2項)。

中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律に係る所在不明株主の株式の競売又は売却に関する特例に基づく異議申述の公告

https://kanpo-ad.com/syozaifumei2.html

20221116追記

参考

登記情報2022年11月号(732号)、(一社)金融財事情研究会、司法書士酒井恒雄、司法書士野入美和子「登記から一歩先へ経営法務を深化させる実務家対談―株式管理編―第7回所有者不明株問題」

戸籍法の一部を改正する法律について(令和元年法律第十七号による改正)

戸籍法の一部を改正する法律について(令和元年法律第十七号による改正)

令和元年5月31日 法務省民事局

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji04_00082.html

法律(令和元年5月24日成立、令和元年5月31日公布)

https://www.moj.go.jp/content/001295588.pdf

新旧対照条文

https://www.moj.go.jp/content/001295589.pdf

改正の概要

https://www.moj.go.jp/content/001295590.pdf

戸籍法が改正されてできるようになること

法務省民事局HP

今までの戸籍についてのQ&A

https://www.moj.go.jp/MINJI/koseki.html

戸籍のABC(Q1~Q5)

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji04_00031.html

戸籍のABC(Q6~  )

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji04_00032.html

国際結婚,海外での出生等に関する戸籍Q&A

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji15.html

戸籍の記録事項証明書のコンビニエンスストアでの交付について

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji04_00029.html

戸籍法施行規則の一部を改正する省令の制定について パブリックコメントより(戸籍法86条、131条、戸籍法施行規則68条)

https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000219262

・仕組みを導入すると判断された市区町村から運用が開始

Q 死亡の届書に添付することが規定される診断書又は検案書について、市町

村長が、これらの書面により確認すべき事項に係る情報を入手し、又は参照することができる場合とは具体的にどのような場合か。

A 死亡届とは別に電子的に作成・送付された死亡診断書等の内容を市区町村長が確認できる場合を想定。

Q 市区町村長が、診断書又は検案書などの書面により確認すべき事項に係る情報を入手し、又は参照することができる場合、死亡届出をしたとき、死亡診断書を含めた記載事項証明書を必要とする場合の取扱いについて,

A 診断書又は検案書の添付省略が可能な場合であっても,死亡診断書の内容が証明可能となるように対応。

Q 死亡診断書などの提出が不要になる取扱いは、全国一斉に実施するのか?

A 現在、対応可能な市区町村が限られているため、仕組みを導入すると判断された市区町村から運用が開始されることを想定。

Q 時間外窓口で提出されたときは、死亡診断書の添付の要不要は確認できないと思われるがどうするのか。

Q 診断書や検案書を市区町村にて参照するとあるが、市区町村の端末で情報を閲覧するのみなのか、データが出力できるのか。

Q 死亡診断書を参照する場合、氏名、生年月日、性別のみで個人を特定することになるのか。

A 市区町村に対して適宜連絡・周知をする予定(今から決める。)。

戸籍法24条 2020年(令和2年)5月1日から施行

Q 市町村長が、管轄法務局長等の許可を得て、戸籍の訂正をすることができる場合

A 戸籍の記載、届書の記載その他の書類から市町村長において訂正の内容及び事由が明らかであると認めるとき。

Q 市町村長が、管轄法務局長等の許可を得ないで、戸籍の訂正をすることができる場合

A 戸籍の訂正の内容が軽微なもので、戸籍に記載されている者の身分関係についての記載に影響を及ぼさない場合・・・ 出生年月日を誤記、出生届書の子の出生の場所を誤記、認知届の認知者、子の氏名を誤記、養子縁組の代諾者の資格の記載を誤記、夫・妻について婚姻事項の記載を遺漏、外国で成立した離婚の裁判の報告的離婚届がされたのに,協議離婚と記載をした場合、死亡年月日を誤記など。(法制審議会戸籍法部会第5回会議(平成30年3月9日開催)参考資料16 戸籍訂正手続きについて

https://www.moj.go.jp/shingi1/shingi04600020.html

戸籍法87条 2020年(令和2年)5月1日から施行

Q 死亡の届出を提出する者の範囲は、どのように変わったのか。

A 改正前・・・同居の親族、その他の同居者、、家主、地主、家の管理人、同居の親族以外の親族、後見人、保佐人、補助人。

改正後・・・任意後見人と任意後見受任者が追加。

戸籍法118条

Q 戸籍のシステムって何。

A 現在、東日本の市区町村の戸籍の副本は西日本、西日本の市区町村の戸籍の副本は東日本でというふうに全国二カ所においてバックアップを行っている。この戸籍副本データ管理システムにつきましては、市町村とつながっていることはつながっている。この戸籍の副本を保存するというバックアップとしての機能を有するにとどまっていた。市町村において戸籍副本データ管理システムに保存された情報を参照することが可能となっていない。市町村と国との間のシステム上の連携は行われていないという状況。これを、行政機関の間で戸籍に関する情報を参照することができる機能を持たせるようにする。令和5年度中に運用可能にするために、令和三年度中にプログラム開発を終えることを予定。

・日本加除出版株式会社 戸籍情報システム標準仕様書

https://www.moj.go.jp/content/001321623.pdf

・日本加除出版株式会社 戸籍情報オンラインシステム標準仕様書

https://www.moj.go.jp/content/001321624.pdf

Q 除籍簿など、画像管理をしている戸籍(手書きのもの)は、対象か。

A コンピューター化以前の除籍や改製原戸籍については、画像データとして保存。戸籍情報がテキストデータ化されていない。情報連携に使う場合、画像データ化された除籍について、手作業でテキストデータ化の整備を行う必要。

 平成二十七年十月以前に死亡した方にはマイナンバーが付番されていないということから、情報連携の対象とはならない。

 児童扶養手当の受給申請に対応するために、情報連携を開始する時点で未成年である者に係る戸籍については、改製原戸籍、除籍について全てテキストデータ化することを検討している。

Q マイナンバーから戸籍の情報が漏えいすることはあるか。

A 戸籍とマイナンバーを直接ひもづけない方策をとる。

戸籍法120条の3

Q 電子戸籍証明書(戸籍電子証明情報)

A 1から19までの数字、記号、アルファベットを組み合わせたXML 形式のファイル。

備考:現在、戸籍謄本、戸籍抄本等を取ると、発行番号が記載されています。

参考:戸籍手続オンラインシステム構築のための標準仕様書P185(5-42)

https://www.moj.go.jp/content/001321624.pdf

Q 戸籍のデータは個人単位で作られるのか、世帯単位か?

A 個人単位で身分関係情報を作成。

出典 第198回国会 法務委員会 第15号(令和元年5月10日)

https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/000419820190510015.htm

Q 情報提供用個人識別符号って。

A 既に付番されているマイナンバーから、違う番号に加工されて、市区町村が戸籍副本システム、戸籍オンラインシステムと連携する。情報提供用個人識別符号から、マイナンバーを特定することは出来ない。

行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(平成二十五年法律第二十七号)(情報提供用個人識別符号の取得)第二十一条の二 (戸籍関係情報作成用情報に係る行政機関個人情報保護法の特例)第四十五条の二

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=425AC0000000027

Q 全国の市区町村の戸籍実務担当者、民間委託を受けているところであればその受託業者の社員など、全国あらゆる戸籍情報にアクセスすることができるようになるのか?

A 可能。

 戸籍事務での検索機能を可能にしたい。結果、市区町村以外の戸籍情報にも接することはできる。現行法の下、アクセス記録の保存。新しいシステムでは、不正閲覧の疑いがある場合には、警告表示をして、それを法務省において把握できるような対応等も取ることを予定。不正に取得された戸籍情報を不当に第三者に提供するなどした者に対して一年以下の懲役を含む罰則を設けた。

Q 改製原戸籍等が画像データ化されて磁気ディスクに保存されている場合には、テキストデータ化されていなくても、本籍地以外の市町村の窓口で戸籍証明書等を交付することが可能か。

A 可能。

出典 第198回国会 参議院 法務委員会 第15号 令和元年5月23日

https://kokkai.ndl.go.jp/#/detail?minId=119815206X01520190523&current=5

戸籍法120条の2

Q 電子戸籍証明書、本籍地以外で戸籍謄本などの取得が可能になったことにより、郵送請求や代理人請求ができなくなるのか。

A 可能。そのような記載はない。

Q 戸籍をオンラインシステムにする場合、難しい氏名の文字などはどうなるのか。

A 新たに戸籍統一文字に存在しない文字が発生した場合(変換テーブルに存在しない文字)は、正字等又は俗字等であるならば、戸籍統一文字に追加された後、文字を変換テーブルに追加し、オンライン側に送信。

戸籍手続オンラインシステム構築のための標準仕様書P73(2-11)

https://www.moj.go.jp/content/001321624.pdf

Q 本籍地以外の市区町村の役所(役場)で取得することが出来る戸籍の種類は、何か。

A 本籍地の市区町村の役所(役場)が戸籍手続オンラインシステムに登録した書類全て(戸籍・改正原戸籍・改正原除籍・除籍謄抄本、戸籍・改正原戸籍の附票、戸籍・改正原戸籍の附票の除票。)。

・日本加除出版株式会社 戸籍情報システム標準仕様書P1132(6-1-2)

https://www.moj.go.jp/content/001321623.pdf

Q 戸籍証明書と電子戸籍証明書の違いは。

A 戸籍証明書は、磁気ディスクの戸籍に記録されている書面。役所、コンビニで取得。電子戸籍証明書はファイル。行政機関間での取得連携を想定。

・戸籍法の改正に関する要綱案P4

https://www.moj.go.jp/content/001284725.pdf

Q オンラインで取ることが出来る戸籍関係のの種類は。

A 戸籍手続オンラインシステム構築のための標準仕様書P22(1-8)

https://www.moj.go.jp/content/001321624.pdf

Q オンラインで可能になる届出手続は。

A 出生、認知、養子縁組、特別養子縁組、養子離縁、特別養子離縁、離縁又は縁組取消しの際に称していた氏を称する、婚姻、離婚、離婚又は婚姻取消しの際に称していた氏を称する、親権、未成年後見、死亡、失踪、復氏、姻族関係終了、推定相続人廃除(取消)、入籍、分籍、国籍取得、帰化、国籍喪失、国籍選択、外国国籍喪失、氏の変更、名の変更、転籍、就籍、戸籍の訂正(申請による訂正)。

戸籍法施行規則(昭和二十二年司法省令第九十四号)別表第四(第七十九条の二第二項関係)

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322M40000010094

戸籍手続オンラインシステム構築のための標準仕様書P20、21(1-2から1-6)

https://www.moj.go.jp/content/001321624.pdf

Q 不在籍証明書・不在住証明書について

A 不在籍証明は、請求時点において、その人が市区町村内の本籍に、請求期間に在籍した記載がないことを証明。除籍謄本が出ているかどうかとは無関係。除籍謄本の作成日かその人の入籍日以前に在籍してなかったことを証明するから。

・不在住証明は、請求時点において、住民票、住民票の除票において,表示の住所に、請求期間に在住した記載がないことを証明。住民票の除票が出ているかとは無関係。住民票の除票による転入以前において、在住していないことを証明するから。

備考

・法定相続証明情報の物件費をもとにした大まかなコスト・・・200円。

・コンピューター化の指定を受ける以前に既に除籍として保存したものを、画像データ化して保存した市町村・・・約七六%。

・不適合戸籍として紙で管理・・・約一万四千通(大きな原因として、戸籍に記載されている方の氏名に、各市町村の戸籍情報システムでは使用されない文字が含まれていること。)。

https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/000419820190510015.htm

・行政機関等や事業者においてマイナンバーの漏えい事案。

平成二十七年度から平成三十年度上半期までの総計・・・発生した漏えい事案等の累計が七百七十九件

・政令第二百三十八号

戸籍法の一部を改正する法律の一部の施行期日を定める政令

戸籍法の一部を改正する法律附則第一条第三号に掲げる規定の施行期日は、令和三年九月十三日

戸籍法 附 則 (令和元年五月三一日法律第一七号) 抄

(施行期日)第一条

三 目次の改正規定(「特例」を「特例等」に改める部分に限る。)、第六章の章名の改正規定及び同章に三条を加える改正規定(第百二十一条の三に係る部分に限る。)並びに附則第十三条の規定公布の日から起算して三年を超えない範囲内において政令で定める日

第百二十一条の三 法務大臣は、行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(平成二十五年法律第二十七号)第十九条第七号又は第八号の規定による提供の用に供する戸籍関係情報(同法第九条第三項に規定する戸籍関係情報をいう。)を作成するため、第百十九条の規定により磁気ディスクをもつて調製された戸籍又は除かれた戸籍の副本に記録されている情報を利用することができる。

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000224_20220530_501AC0000000017

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