信託契約書のチェックポイント―金融機関―

・信託口口座の開設にあたり、受託者と預金取引が可能かにつき、信託契約内容の事前チェック

 チェックにおいては、形式面でのチェックのみならず、受託者が正しく信託事務を遂行できるかという観点。

・受託者に関するチェック内容

信託法に定める受託者の義務の免除の有無

自己執行義務

善管注意義務・忠実義務の免除、義務を軽くする規定の有無

信託事務や信託財産に関する帳簿等の作成の免除規定の有無

信託終了時の最終計算の承認を求める義務の免除規定の有無

受託者の辞任、解任規定

信託事務処理の第三者への委託

受託者が全ての信託事務処理を第三者に委託することは、信託の本質に反し信託の有効性に疑義が生じ得るとの見解があるため、信託事務の一部を委託する旨に修正すべき。

不可条文例(信託事務処理の第三者への委託)

受託者は、信託事務の全部を受託者の責任において選任する第三者に委託することができる。

信託法28 条

 「分業化・専門化が著しく進んだ現代社会においては、信託事務のすべてを受託者が自ら処理すべきことを前提とするのは現実的ではなく、むしろ、相当な場合には信託事務の処理を第三者に委託できることとした方が、より迅速に信託事務を処理できることになり、受益者の利益に資するもの。」と考えられる[1]。 2

善管注意義務

不可条文例(受託者の善管注意義務)

受託者の善管注意義務を全て免除する。

信託法29 条2 項ただし書

「信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる注意をもってこれをするものとする。」

 受託者の善管注意義務の規定が任意規定であるといっても、信託が、委託者および受益者の受託者に対する信認義務を基礎とする財産管理制度であることに鑑みると信託行為の定めをもってしても、受託者の善管注意義務を完全に免除することは、信託の本質に反し許されない[2]。受託者の注意基準としては原則として、「自己の財産に対すると同一の注意」では足りないという判断。

 忠実義務

(受託者の忠実義務) 信託法30条

 「受託者は、受益者のため忠実に信託事務の処理その他の行為をしなければならない。」と規定。信託の受託者が、受益者の利益のため行動すべき義務を負う。忠実義務は、受託者の最も基本的な行動指針であり「もっぱら受益者の利益を最大限に図るべし」[3]とされ、善管注意義務とともに受託者の義務の両輪であるとされる[4]。信託法31 条2 項、32 条2 項の規定は、忠実義務も善管注意義務と同様に任意規定として理解されている[5]

 分別管理義務

不可条項(公示義務の免除・省略)

受託者は、信託財産につき、信託の登記・登録または信託財産の表示・記載を省略する。

信託法34条2項は、信託財産と受託者の固有財産又は他の信託財産と分別して管理する義務を定めている。14 条の信託の登記又は登録をする義務は、これを免除することができない。

信託事務や信託財産に関する帳簿等の作成等、報告及び保存義務の免除

 帳簿の作成等、報告及び保存の義務   

 信託法37 条1項、2項は、強行規定として受託者による書類の作成義務に関する規定を定めている(強行規定。)。3項は受託者の受益者に対する積極的情報提供義務に関する規定で任意規定。別段の定めを設けることによって、報告義務を軽減または免除することも可能。

清算受託者の職務の終了等

(受託者の職務の終了等) 信託法184条1項は、清算受託者は、その職務を終了したときは、遅滞なく、信託事務に関する最終の計算を行い、信託が終了した時における受益者(信託管理人が現に存する場合にあっては、信託管理人)及び帰属権利者のすべてに対し、その承認を求めなければならないと規定している。 信託終了時の最終計算の承認を求める義務が免除されていることがあるが、信託法184 条は任意規定とされていないため、有効性に疑義がある。

受託者の辞任

不可条文例

(受託者の辞任) 受託者の任務は、下記の事由に該当したときに終了する。

(1)信託法第56条1項各号に掲げる事由

(2)後継受託者の同意を得て辞任したとき

 信託法57条1項本文では、受託者は、委託者及び受益者の同意を得て辞任できる旨規定されているが、信託契約にこれとは異なる規定がある場合、受託者は、委託者及び受益者の同意を得た場合には辞任できず、後継受託者の同意を得た場合にのみ辞任できるのか、それとも、委託者及び受益者の同意を得た場合だけでなく、後継受託者の同意を得た場合にも辞任できるのかが不明確。補足文言の追加を検討する必要あり。

参考:東京地裁平成30年10月23日判決

 委託者兼受益者の合意による信託の終了の主張が認められなかった事例。信託法164条3項により同条1項の適用は排除されたため、委託者兼受益者が任意の時期に同信託を終了させることができない。

受託者の解任

不可条文例

(受託者の解任) 受益者は、次の各号に定める事由に該当するときは受託者を解任することができる。

 (1)受託者が本契約に定める義務に違反し、受益者の是正勧告から30日を経過しても、相当の理由もなく是正されないとき。

 (2)受託者に破産手続又は民事再生手続その他これらと同種の手続の申立てがあったとき。

 (3)その他受託者として信託事務を継続しがたい重大な事由が発生したとき。

 信託法58条1項は、委託者及び受益者は合意によりいつでも受託者を解任できる旨規定されているが、信託契約にこれとは異なる規定がある場合、委託者及び受益者が合意した場合には受託者を解任できず、信託事務を継続しがたい重大事由が発生した場合にのみ受益者が解任できるのか、それとも、委託者及び受益者が合意した場合だけでなく、当該事由に該当した場合にも受益者が解任できるのかが不明確。補足文言の追加を検討する必要あり。

・受益者

チェック内容

受益者の特定・指定

不可条文例(受益者への給付)

 受託者は、受益者及びその被扶養者の生活に必要な資金として次のとおり実際の必要に応じて随時に、信託財産から受益者又は第三者に対し給付する。

 受益者との文言が用いられない場合でも、このような定めを前提にすると、その被扶養者も受益者と解釈される可能性が否定できない。給付の請求権限は受益者に限り有する必要がある。受託者は信託財産を受益者に給付するが、受益者の指示がある場合には、受託者は、受益者の親族等の第三者に直接信託財産の支払いを行うことができる等の規定であれば可。

 受益者連続型

チェック内容

 後継受益者の死亡の先後によって受益権の承継に不具合が生じないか(例:第三受益者が第二受益者より先に死亡していた場合の取扱いの規定がない)。→第三受益者が第二受益者より先に死亡していた場合の取扱いの規定がない場合、第二受益者死亡後、受益権がどのように承継されるかが不明確になる。

 信託契約に記載されている最終の受益者が死亡した後の受益権の承継について規定の有無

 終了事由の問題。受益者連続型の信託契約において、受益者死亡による信託終了の定めがない場合又は信託期間の定めがない場合に、半永続的に信託が継続することにならないか。受益権が相続され、受益者が数次にわたって登場し、権利関係が複雑化する恐れがある。

信託の終了事由

チェック内容

委託者の死亡が信託の終了事由

 法定の信託法163条に定める終了事由。民事信託では、受託者は一般の方であり明記することが望ましい。

帰属権利者

チェック内容

委託者死亡時に遺留分の侵害が生じないか[6]

例外的な取り扱い

残余財産の帰属

信託財産としての清算

信託不動産の取り扱い

 遺留分侵害

チェック内容

 遺留分を侵害していても信託契約は可能ではあるが、将来の紛争性が高いため、取り扱わない。ただし、信託財産以外の財産で遺留分が確保できている場合、遺留分被侵害者が当該信託の内容に明確に承諾していることを組成する士業が直接確認できている場合は、口座の提供を検討する。

 帰属権利者等

残余財産の帰属

不可条文例

(残余財産の帰属)委託者の死亡により本件信託が終了した場合、残余の信託財産については、委託者の一般財産たる遺産と同様に、委託者の遺言書が存在する場合は遺言書に委ね、委託者の遺言書が存在しない場合は法定相続人全員による遺産分割協議に委ねるものとする。

 信託財産は委託者の相続財産ではないため、遺言によって処分することができず、また遺産分割協議の対象にもならない。そのため、残余財産の帰属先は信託契約書上で明記することが望ましい。帰属割合等を信託契約書外の公正証書等で別途定めるような実務上の取り扱いを認めていない。

不可条文例

(残余財産の帰属)本信託が終了したときの残余財産の帰属権利者は、乙及び丙とし、本件信託金銭については、それぞれ2分の1ずつの割合にて取得する。本件信託不動産については、信託終了時に処分されずに残存していた場合、乙に取得させ、乙において信託不動産を売却換価の上、同換価金につき、処分に要する諸費用を控除した残余金を、帰属権利者にそれぞれ2分の1ずつの割合で取得させる。

 乙が一度取得した信託不動産の換価金を丙に交付することは贈与にあたると考えられるため、乙に帰属させることとするか、清算事務として信託不動産を換価処分した上で帰属させるなどの対応が必要となると考える。

・その他チェック内容

 残余財産の帰属についての定め

 残余財産の帰属について定めがない場合、信託法182条2項[7]が適用されることとなるが、不動産の移転登記等の問題もあることから、あらかじめ帰属を定めることが望ましい。

委託者兼受益者が存命中に信託が終了した場合の定め

委託者の意思に応じて、その場合の残余財産の取り扱いを明確にする。

・その他補足

チェック内容

停止条件付き信託契約(信託法4条4項)

 停止条件を手続上、明確にできれば、理論的には可能。しかし、例えば、判断能力低下を停止条件とする場合、不動産実務上、移転登記[8]・信託登記は困難である。また、銀行実務においても、長期での案件・顧客管理は困難。条件にもよるが、信託口口座開設は条件成就の時が現実的である。

信託内借入を伴う信託契約書(今回の範囲外、信託法21条)

東京地裁令和3年9月17日判決(家庭の法と裁判第35号(2021年12月)

 信託契約書内容の事前擦り合わせ(資格者専門職と金融機関) 。司法書士に対する損害賠償訴訟。

貸出実務について

• 自動送金関係

 最近、銀行において包括的な代理人による預金取引をするところもあるため、本人の意思能力喪失後も自動送金が継続される可能性がある。信託の追加は、新規の信託設定と信託の併合[9]。本人の意思能力喪失後の追加信託の設定は、問題あり。

自動送金取り扱い

 金融機関が、預金者が高齢等により意思能力を喪失したことを知った場合、預金口座は支払停止の措置をとるため、他行に自動送金しているもの、公共料金の引き落とし、クレジットカードの引き落とし等はできなくなる。ただし、一定の要件の下、預金者の生活に必須な公共料金等については、例外的な対応は可能。

 信託契約書は、委託者のご意向、関係者の想いに直接接している士業がサポートいただきたい。信託契約締結以降、金融機関への届出事項として、委託者の死亡、受益者の変更、受託者の任務終了、信託契約の変更、信託の終了等がある。信託契約の締結以降も、継続的なサポートが必要。

 手続きを行う主体としては、信託口口座を利用する受託者のみ。代理人による取引を希望される場合に、信託契約に第三者に信託事務を委託することができる旨の定めがあること、かつ金融機関の代理人取引ルール(委任状の提出、受託者本人への電話確認等)に則ってお手続きする必要がある。


[1] 寺本昌弘著 『逐条解説新しい信託法〔補訂版〕』(商事法務2008 年)P109

[2] 寺本昌弘著 『逐条解説新しい信託法〔補訂版〕』(商事法務2008 年)P113

[3] 新井誠 『信託法〔第4 版〕』P 256

[4] 井上聡編著『新しい信託30 講』(弘文堂、2007 年)P 59

[5]  「すべてが任意規定化されたからといって、完全に自由であるわけでなくて、…緩和の限界が存在するはずだ。」道垣内弘人「信託法改正と実務」『ジュリストNO.1322』2006 年 P 13

[6] 東京地裁平成30年9月12日判決。遺留分制度を潜脱する意図でされた信託の効力

[7] 委託者又はその相続人その他の一般承継人を帰属権利者とみなす。

[8] 不動産登記令16条2項、3項 3か月以内の印鑑証明書

[9] 道垣内弘人 『信託法(現代民法別巻)』(有斐閣,2017年)P398

相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律施行令案(仮称)に関する意見募集の結果について

 

https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/Public

案件番号300080275

結果の公示日2022年9月29日

提出意見数59

所管省庁法務省

番号

御意見の概要

御意見に対する考え方

政令案第1条関係

・政令案第1条のとおり規定することに賛成する。

・本政令案への賛同意見として承ります。

・承認申請は、申請人の予測可能性が担保されるよう、限定的かつ明確に規定する必要があると考えるため、賛成する。

・本政令案への賛同意見として承ります。

3    

・承認申請ができない通路について、「現に」用途に供されている土地とすることに賛成する。

・本政令案への賛同意見として承ります。

4    

・通路と崖は国で引き取ることができるようにすべきである。

・通路に関する御意見については、法律の規定についての内容であり本意見照会の対象外ではありますが、御意見として承ります。崖に関する御意見については、法第5条第1項第1号(政令案第3条第1項)の要件に該当しない崖であれば、国庫への帰属が承認される場合もあります。

・原野・山林などの一部に、現に通路に使用されている部分があることだけで、承認申請ができないとされることがないようにしてほしい。

・原野・山林にある道には様々なものが想定されますが、法律の趣旨に従って個別の事案ごとに通路の該当性が判断されることが想定されます。

・「現に通路の用に供されている土地」について、町村道、県道、国道の相互を繋ぐ『公衆用道路』は、積極的に国庫への帰属ができるようにするべきである。

・「現に通路の用に供されている土地」は、当該土地が公衆用道路であっても、国の管理又は処分に当たって、土地の使用者との調整が必要となり、過分の費用又は労力を要する土地であることから承認申請ができない土地に該当します。いただいた御意見については、今後の参考とさせていただきます。

7    

・政令案第2条第1号及び第4号の通路、水道用地、用悪水路について、現に当該用途に供されている土地と定めることに賛成する。同条第2号及び第3号の墓地及び境内地について、各法令に規定する土地と定めることに賛成する。

・本政令案への賛同意見として承ります。

8    

・政令案第2条第2号及び第4号について、現にその用途に供されているか否かを判断基準としている点について賛成し、これに関連して法第5条第1項第2 号の不承認要件の適用判断においても、現に供されている用途に基づいて判断すべきである。

・本政令案への賛同意見として承ります。法第5条第1項第2号の不承認要件の適用判断については、本意見照会の対象外ではありますが、いただいた御意見については、今後の検討の参考とさせていただきます。

9     

・政令案第2条第1号、第4号の「現に」の判定はどのように行うのか。とりわけ通路やため池は現地調査をしても外観だけではわからないのではないか。具体的な想定があれば公開すべきである。

・政令案第2条第1号及び第4号の該当性については、法第6条に規定する事実の調査や、法第7条に規定する資料の提供要求等によって、判断を行うことを予定しています。

10    

・境内地についても、現に境内地として使用されているものに限定すべきである。

・境内地は、宗教法人法(昭和26年法律第126号)第3条第2号から第7号までに掲げるような宗教法人の目的のために必要な固有の土地をいい、基本的には宗教上の儀式行事のため(同条第4号)や庭園(同条第5号)などとして用いられている土地が想定されています。

11    

・政令案第2条第4号のため池については、現に当該用途に供されている土地と定めることに賛成する。ただし、所有者以外の者による使用が予定されていないものは、本規律の対象外とすべきである。

・本政令案への賛同意見として承ります。なお、ため池については現に第三者がその土地を利用していない場合は、国庫帰属後も第三者による使用が予定されないため、政令案第2条第4号の要件に該当しないこととなります。

政令案第3条関係

12   

・政令案第3条第1項の崖の基準は、傾斜地法で急傾斜地崩壊危険区域の基準の一つとなるものであり、妥当なものと考える。

・本政令案への賛同意見として承ります。

13

・崖の要件該当性はどのように判断するのか。現地確認では正確な状況を確認できるのか。具体的な想定があれば公開すべきである。

・崖の基準の該当性については、法第6条に規定する事実の調査によって、判断を行うことを予定しています。実際の審査における計測の方法やその周知方法については、引き続き検討してまいります。

14

・崖の傾斜の具体的な計算方法を知りたい(崖が2筆以上にまたがる場合、階段となっている場合など)。

・崖の基準の該当性については、法第6条に規定する事実の調査によって、判断を行うことを予定しています。実際の審査における計測の方法やその周知方法については、引き続き検討してまいります。

15

・崖地と併せて、平坦地を帰属させる場合には、 政令案は、崖の基準を明らかとするものであり、これに該当する一部に崖地を含んでいても、承認できるようにしてほしい。

・崖がある土地のうち、通常の管理に当たり過分な費用又は労力を要するものについて、承認することができないものとされています(法第5条第1項第 1 号)ので、同号の要件に該当しない崖であれば、国庫への帰属が承認される場合もあります。

16

・政令案第3条第2項各号の要件該当性はどのように判断するのか。公図を基礎に現地調査で判断するという理解でよいか。具体的な想定があれば公開すべきである。

・政令案第3条第2項各号の該当性については、法第6条に規定する事実の調査や、法第7条に規定する資料の提供要求等によって、判断を行うことを予定しています。また、地図や地図に準ずる図面も、審査における資料として活用することを予定しています。要件該当性の具体的な判断方法やその周知方法については、引き続き検討してまいります。

17

・政令案第3条第2項各号の要件該当性はどのように判断するのか。公図を基礎に現地調査で判断するという理解でよいか。具体的な想定があれば公開すべきである。

・「民法第210条第1項に規定する他の土地に囲まれて公道に通じない土地」であったとしても、現に同条の規定による通行が妨げられていない場合は、政令案第3条第2項第1号には該当しないことから、本規定は公道に通じない土地を一律に承認対象から除外するものではありません。そのため、政令案については、原案どおりとさせていただきます。

18

・政令案第3条第2項第2号の妨害の程度について、軽微であることはどのように判断されるのか。軽微なものを除くのではなく、本号本文において妨害の程度が重大であることを明示すべきではないか。

・所有権に基づく使用又は収益が現に妨害されている場合は、基本的には土地の通常の管理又は処分を阻害するものに該当すると考えられますが、妨害の程度が軽微なものについては、土地の通常の管理又は処分を阻害するものではないと考えられることから、軽微なものを除くこととしています。軽微であることの具体的な判断方法や例などについては、引き続き検討してまいります。

19

・政令案第3条第2項第2号について、相隣関係の規定の改正により、樹木の越境がある場合でも簡易迅速に問題が解消できることとなったことを踏まえ、ガイドライン等で「妨害」の中にこのように簡易に解消できる樹木の越境については含まないことを明確にしてほしい。

簡易に解消できるような樹木の越境といったケースについては、個別の事案にもよりますが、妨害の程度が軽微なものに該当し、政令案第3条第2項第2号に基づく不承認事由には該当しないと考えられます。

20

・政令案第3条第3項第1号の「その他の土地の状況に起因する災害」とある部分について、「その他周辺土地の状況に起因する災害」という表記が分かりやすいと思う。

・政令案第3条第3項第1号の「その他の土地の状況」とは、周辺土地のみならず、申請対象土地において土砂の崩壊等が発生している場合も含めた状況を指すことから、原案どおりとさせていただきます。

21

政令案第3条第2項第2号、第3項第1号及び同項第2号の各括弧書きにおいて、その程度が軽微なものを除く旨の規定がされることについて賛成する。

本政令案への賛同意見として承ります。

22    

・政令案第3条第3項1号及び2号の軽微性はどのように判断されるのか。具体的な判断方法を規定すべきである。軽微なものを除くのではなく、第1号本文において重大な変更を加える措置であることを、第2号本文においてその程度が重大であることを明示すべきではないか。

・政令案第3条第3項第1号及び第2号の要件に規定する土地については、基本的には通常の管理又は処分に当たり過分の費用又は労力を要する土地に該当すると考えられますが、その程度が軽微なものについては、通常の管理又は処分に当たり過分の費用又は労力を要するものではなくなると考えられることから、軽微なものを除くこととしています。

23    

・政令案第3条第3項各号の要件該当性をどのように判断するのか。とりわけ、申請者は申請時に各号への該当性をどのように確認すればよいか。審査手数料の無駄を避ける観点からも、判断基準・判断資料を通達等で明示するべきである。

・政令案第3条第3項各号の該当性については、法第6条に規定する事実の調査や、法第7条に規定する資料の提供要求等によって、判断することを予定しています。要件該当性の具体的な判断方法やその周知方法については、引き続き検討してまいります。

24    

・政令案第3条第3項2号の被害については、被害の生ずるおそれがあるものまで含めてしまうと、ほとんど全ての山林や原野などが対象になる可能性があるため、現に被害が生じている土地に限定すべきである。

・政令案第3条第2項第2号の「被害が生ずるおそれ」とは、具体的な危険性があることをいい、抽象的な危険性があるにすぎないものは含まれません。そのため、政令案については、原案どおりとさせていただきます。

25    

・政令案第3条第3項2号の要件については、土地の通常の管理又は処分を阻害しないと認められるものを除くということはもちろん、相当程度重篤な被害の場合に適用するようにお願いしたい。

運用に関する御意見として承ります。

26

・政令案第3条第3項第3号について、個人が所有する森林の場合、適切な造林や間伐、保育ができていないことが通常である。そもそも自治体において、市町村森林整備計画の内容が所有者に広報されていたのか、その実施促進の取組がなされていたのかという疑問がある。この要件についても、相当に柔軟な適用をする必要があると考える。

運用に関する御意見として承ります。

27    

・政令案第3条第3項第3号の森林について、追加的に造林、間伐又は保育を実施する必要があると認められるものであっても、地域の森林組合等が主体となって造林、間伐又は保育を無償で実施している森林などで、国にその負担が生じないものは、国庫帰属の対象とするべきである。

・帰属後の土地については国が管理することになるため、追加的に造林、間伐又は保育を実施する場合の費用は国が負担することになることから、政令案第3条第3項第3号の要件に該当することになると考えます。その場合、そのような森林を国庫帰属の対象とすることは困難と考えます。

28    

・所有権を放棄したい森林とは、木材の搬出、製材の不採算性等による国内全体の林業の衰退により、管理が不十分または放棄された山林であることが多いものと想定され、このような状況で、政令案第3条第3項第3号をもって法第5条第1項第5号に該当することとしては、承認を過度に抑制しうるものであると考える。また、現状すでに十分な管理がされていない山林を民有林のままとすることは、さらなる放置により後年の土砂災害等を誘発する温床となりうる。したがって、政令案第3条第3項第3号を「市町村森林整備計画(中略)に掲げる事項に適合していないことにより、当該土地又は周辺の土地に存する人の生命若しくは身体、農作物、樹木、又は施設に被害が(現に)生じており、これを防止するため(直ち)に追加的に造林、間伐、保育又は被害の防除施設の設置を実施する必要があるもの」など限定的な表現とし、法務大臣による承認を緩和し、国有林としての管理を促進するよう改められたい。

・管理が不十分又は放棄された山林などについては、通常の管理又は処分をするに当たり過分の費用又は労力を要することとなり、承認することは困難であるため、政令案については、原案どおりとさせていただきます。なお、所有者による経営管理が行われていない森林については、森林経営管理法(平成30年法律第35号)に基づき、市町村が所有者の意向を確認した上で、経営管理を行うことが必要かつ適当な森林を市町村が公的に管理する又は林業経営者に繋ぐ仕組みが措置されているところです。

29    

・「適切な造林・間伐・保育」についての判断を明確にしてほしい。また、適切な造林・間伐・保育が実施されてこなかった山林においても、国庫帰属を行えるルールを新設してほしい。適切な造林・間伐・保育を行ってきた山林であれば、第三者への売却が可能であることから、特に今回の国庫帰属を検討すべき対象は「適切な造林・間伐・保育を行っていない山林」と考える。当該ケースを「帰属の承認ができない土地」とするのであれば、山林に関して結局のところ国庫帰属はほぼできない法律施行令案になっていると感じる。また、相続により山林を取得した場合、当該山林の場所すら分からないケースが多い。更に適切な造林・間伐・保育を過去に実施しているかなどは相続人が知りえない可能性が高い。相続人が地番以外の何も分からない場合、どういう事務処理となるのか、また、「適切な造林・間伐・保育」の実績を誰が確認・判断するのか、明確にしてほしい。

適切な造林・間伐・保育を行っていない山林は、通常の管理又は処分をするに当たり過分の費用又は労力を要することとなり、承認をすることは困難であるため、政令案については、原案どおりとさせていただきます。なお、所有者による経営管理が行われていない森林については、森林経営管理法(平成30年法律第35号)に基づき、市町村が所有者の意向を確認した上で、経営管理を行うことが必要かつ適当な森林を市町村が公的に管理する又は林業経営者に繋ぐ仕組みが措置されているところです。

また、山林を取得した相続人が当該山林の場所を把握していないような場合については、法第2条第3項第5号の「境界が明らかでない土地」に該当するものとして、承認申請ができない可能性があります。

・なお、要件の有無についての判断は、法務大臣において行いますが、政令案第3条第3項第3号の該当性を判断するに当たっては、法第6条に規定する事実の調査において林野庁に調査協力を依頼したり、法第7条に基づいて地方公共団体に資料の提供要求等をしたりすることを予定しています。

30    

・政令案第3条第3項1号から3号までのような危険な土地こそ、国の管理において、災害の発生や人の生命若しくは身体又は財産に生ずる被害等の拡大又は発生の防止に努めるべきである。

・いただいた御意見については、今後の検討の参考とさせていただきます。

31    

・政令案第3条第3項第4号は「国が通常の管理に要する費用以外の費用に係る金銭債務を負担することが確実と認められる土地」と定めているが、通常の管理に要する費用以外の費用があればわずかなものでも不承認事由になるとすれば、法第5条第5号が「過分」と規定していることから妥当とは言えないので、政令案第3条第3項第4号についても、過分な金銭債務を負担するものでないものは除くこととすべきではないか。「通常の管理に要する費用以外の費用(軽微なものを除く)」とするべきではないか。

・土地の管理については費用がかかるところ、通常の管理に要する費用以外の費用に係る金銭債務をさらに負担することは、それがわずかなものであっても、通常の管理に要する費用を上回る負担となり、過分な費用を要することとなると考えられるため、「(軽微なものを除く。)」といった適用除外規定を設けていません。そのため、政令案については、原案どおりとさせていただきます。

32    

・政令案第3条第3項第4号及び第5号の対象となる土地を例示的に列挙するなどして、国民が事前に予測できる程度に具体的に明示すべきである。

・要件該当性の具体的な判断方法やその周知方法については、引き続き検討してまいります。

33    

・別荘地等の民間の管理費等の金銭債務の負担のある土地については、その実際の管理状況を踏まえて判断すべきである。管理費等を要する別荘地等であることをもって直ちに政令案第3条第3項第4号や第5号の不承認事由になるわけではないという理解でよいか。

管理費等を要する別荘地であることをもって、直ちに政令案第3条第3項第4号や第5号の不承認事由に該当するものではないと考えます。その上で、法第2条第3項各号の却下事由又は法第5条第1項各号の不承認事由に照らして、承認の可否が判断されることとなります。

34    

・政令案第3条第3項第5号に「国が法令の規定により当該金銭債務を承継することとなるもの」とあるが、これは法第5条第5号の具体化と言えないのではないか。また、仮に具体化であるとした場合は、法律同号に「過分」とあることから、政令案第3条第3項第4号についても、過分な金銭債務を負担するものでないものは除くこととすべきではないか。「当該金銭債務(金銭債務の額が軽微なものを除く)」とするべきではないか。

・土地の管理については費用がかかるところ、国が法令の規定により承継した金銭債務をさらに負担することは、それがわずかなものであっても、通常の管理に要する費用を上回る負担となり、過分な費用を要することとなると考えられるため、「(軽微なものを除く。)」といった適用除外規定を設けていません。そのため、政令案については、原案どおりとさせていただきます。

35    

・土地改良区内の農地(賦課金がないもの)は、その点をもって直ちに政令案第3条第3項第4号の不承認事由にならないという理解でよいか。

・御理解のとおりです。

36

土地改良区内の農地で賦課金の支払が近い将来必要となる土地は政令案第3条第3項第4号に該当するという理解でよいか。土地改良区内の農地で賦課金の支払が現に必要な土地は政令案第3条第3項第5号に該当するという理解でよいか。

・御理解のとおりです。

37    

・土地改良区の賦課金がかかるとしても、弁済後は、本件制度が利用できるようにしてほしい。また、一時的債務があったとしても、弁済後は、本件制度が利用できるようにしてほしい。

・土地改良区の賦課金が発生する土地であっても、国庫への帰属申請前にこれらの金銭債務が弁済されている場合は、政令案第3条第3項第5号には該当しないものと判断されます。

38    

・仮差押、仮処分、仮登記、買戻特約、譲渡担保権設定登記等の甲区に特殊な登記がある土地を法第5条第1項第4号の対象とする必要はないか。

・御指摘のような土地については、法第2条第3項第2号や政令案第3条第2項第2号に該当し得るものと考えられます。

39    

・農用地土壌汚染防止法上の農用地土壌汚染対策地域内の農地を法第5条第1項第5号の対象とする必要はないか。

・農用地土壌汚染防止法上の農用地土壌汚染対策地域内の農地は、国による通常の管理又は処分をするに当たり過分の費用又は労力を要する土地ではないことから、特に必要はないと考えます。

40    

・「その他の通常の管理又は処分をするに当たり過分の費用又は労力を要する土地」について、登記簿上の「原野」のうちどのような状態のものが該当するのか、判断基準を示していただきたい。

・「その他の通常の管理又は処分をするに当たり過分の費用又は労力を要する土地」としてどのような土地が該当するかについては、政令案3条第3項各号に規定しています。この基準は、登記記録上の地目が「原野」であるか否かによって変わるものではありません。

政令案第4条関係

41    

・政令案第4条第1項第1号の「直ちに建物の敷地の用に供することができると認められる土地」は、建築ができる土地(建築基準法上の道路に接し、間口が2m以上ある土地)をいうのか。宅地に建物がない場合は、「雑種地」となるのではないか。

・政令案第4条第1項第1号における宅地である「直ちに建物の敷地の用に供することができると認められる土地」の該当性については、登記記録上の地目だけでなく、その現況及び従前の使用状況に照らして判断することを想定しています。

42    

・政令案第4条第1項第2号の「主に農地として利用されている土地」とは現に耕作されている農地を指すという理解でよいか。相続したが耕作や草刈り等の管理を行っていない農地はここに該当しないという理解でよいか。

・政令案第4条第1項第2号の「主に農地として利用されている土地」の該当性については、法第6条に規定する事実の調査や、法第7条に規定する資料の提供要求等によって、判断することを予定していますが、必ずしも現に耕作されている農地に限定するものではありません。

43    

・政令案第4条第1項第3号の「主に森林として利用されている土地」とは地目にかかわらず、現況で判断するという理解でよいか。また、相続人が管理を行っておらず、森林として利用していない山林は含まれないという理解でよいか。

・政令案第4条第1項第3号の「主に森林として利用されている土地」の該当性については、法第6条に規定する事実の調査や、法第7条に規定する資料の提供要求等によって、判断することを予定しています。相続人が管理を行っていない山林についても、調査等の結果、政令案第4条第1項第3号の「主に森林として利用されている土地」に該当する可能性もあります。

44    

・1筆複数地目がある場合の地目区分はどうなるのか。また、面積について、登記面積と現況面積が異なる場合、どうするのか。地積測量図の作成時期により精度が異なるのであるが、現地復元性が乏しい地積測量図でも面積として認めるのか。

・具体的な判断方法やその周知方法については、引き続き検討してまいります。

45    

・政令案の負担金算定表による負担金額は、相当であり、費用面では利用しやすいと評価できる。その一方で、必ずしも要件を充足しない申請案件が急増し、人員不足等により、真に国庫帰属されるべき土地の要件審査等の手続が遅延しないか懸念される。手続を担当する職員等の体制整備も急務であろう。

・本政令案への賛同意見として承ります。また、本意見照会の対象外ではありますが、土地の要件審査等の手続を担当する職員等の体制整備についても、引き続き検討してまいります。

46    

・負担金額をさらに減額すべきである。

・政令案における負担金額は、法律の規定に基づき、国有地の種目ごとにその管理に要する10年分の標準的な費用の額を考慮して規定したものであり、原案どおりとさせていただきます。

47    

・負担金については上限を設ける等の措置を講ずるべきである。

・政令案における負担金額は、法律の規定に基づき、国有地の種目ごとにその管理に要する10年分の標準的な費用の額を考慮して規定したものであり、上限を設けることは適当でないため、原案どおりとさせていただきます。

48    

・土地の評価額に応じた負担金額の設定とすべきではないか。

・負担金額の算定は、土地の種目や地域の性質に応じてそれぞれ管理に要する標準的費用を踏まえたものとなっており、当該管理に要する費用は土地の評価額に応じて上下するものではないため、原案どおりとさせていただきます。

49    

・政令案第4条第1項第4号も一律20万円ではなく、面積に応じた負担金額の設定とすべきではないか。

・政令案第4条第1項第4号に該当する粗放的管理行為で足りる土地の場合、標準的な管理行為は巡回であり、当該管理に要する費用は面積に応じて上下するものではないため、原案どおりとさせていただきます。

50    

・市街化区域や用途地域内、農用地区域内の土地がその他の土地より負担金を高く設定されていることに消極である。帰属後の土地の売却等を考えると指定区域内の土地の方が需要があり、売却しやすく、早めの処分が可能である。過疎地域の指定区域外の土地は、ほとんど利用価値がなく、その管理が半永久的に続き、管理費用が嵩むと考える。

・市街化区域や用途地域、農用地区域内に存する土地は、それらの指定区域の性質に鑑み、周辺住民の生活環境に支障を生じさせないようにする要請等が強いことから、これらの指定区域以外の土地と異なり、草刈りなどの管理行為が必要となります。そのため、これらの管理に要する費用として、国有地の管理に要する標準的な費用等を踏まえ、地積の区分に応じて負担金の額を算定しています。

51    

・農業振興地域の整備に関する法律第8条第2項第1号に規定する農用地区域内及び土地改良法第2条第2項に規定する土地改良事業などの区域内の農地の負担金については、政令案第4条第1項第3号又は第4号の負担金と同程度とするべきである。

・農用地区域内や土地改良事業の施行区域内に存する土地は、良好な営農条件を備えた優良農地が周辺に存するために病害虫の発生等による周辺農地の営農条件に支障が生じないよう細心の注意を払うことを要する区域であることから、これらの指定区域以外の土地と異なり、草刈りなどの管理行為が必要となります。そのため、これらの管理に要する費用として、国有地の管理に要する標準的な費用等を踏まえ、地積の区分に応じて負担金の額を算定しています。

52    

・管理費については仕方のない面はあるとは思うが、所有者不明土地問題の解決という問題の解決を考えるなら、申請人の資力や年齢、法定相続人の関係による負担の軽減や、そもそもの要件の緩和などが必要であると思う。

・負担金の納付については、賛同意見として承ります。その他の御意見については、今後の参考とさせていただきます。

53    

・国が行う管理内容の明示がないため、負担金の額の多寡については、判断できない。耕作放棄地や原野化した空き家除却後の跡地のような更地であれば、年2回程度の草刈りは最低限必要と思われるが、概ね10年の管理費用としては、不足を生ずるのではないか。土地評価額に着目せず管理費用を設定したことは、国民に分かりやすく評価できるが、一律費用を20万円よりも高額に設定したうえで、換価価値に応じ負担軽減を図る仕組みとした方が、利用者の納得性を得られるのではないか。この制度により国庫帰属する土地は、基本的に利用の需要が低く、国が永続的に管理しなければならないものが想定されています。他方、承認を受けた者は、国庫帰属がなければ負担すべきであった土地の管理費を免れることができることになります。このような構造に鑑みれば、負担金を求める年数については、数十年とすることも考えられますが、それでは制度自体が利用されない懸念があるため、国の負担を軽減させつつ、承認を受けた者の負担を適正な程度とする趣旨から、10年分とされたものです。

・負担金額の算定は、土地の種目や指定地域の性質に応じてそれぞれ管理に要する標準的費用を踏まえたものとなっており、当該管理に要する費用は土地の換価価値に応じて上下するものではないため、原案どおりとさせていただきます。

54    

・表示登記の変更は、所有者申請により簡易に変更可能なため、相続前に手続きし、負担金の軽減を図ることが推察される。宅地から雑種地へ、田・畑から原野への変更が容易なため、市街化区域又は農用地区域内の加算については、雑種地・原野についても適用すべきではないか。

・負担金算定に当たっての種目の判断は、登記記録上の地目のみで判断されるものではありません。市街化区域又は農用地区域内の雑種地・原野について、同区域内の宅地等と同様に草刈り等が必要な場合もあり得ますが、円滑な制度運営の観点から可能な限り定型的で簡明な算定方法とするため、一律20万円としたところです。

55    

・申請者が市街化区域に該当するか、土地改良区に該当するか等を調査することは相応に煩雑さが伴うことが予想されるため、一般的な照会方法やチェックリストを整理し、法務局にて公開・備置するべきである。

・いただいた御意見については、今後の運用の検討に当たって参考とさせていただきます。

政令案第5条関係

56    

・隣接する2筆以上の土地については軽減のため申請金が軽減される仕組みとなっているが、隣接土地以外も同じ地名の地域であれば良いとするといったような柔軟な方法を検討してほしい。

・いただいた御意見については、今後の運用の検討に当たって参考とさせていただきます。

57    

・隣接する二筆以上の承認申請において、土地の所有者が異なる場合も含め、二筆以上の承認申請に係る土地を一筆の承認申請に係る土地とみなして負担金を算定するべき旨の申出ができるとすることに賛成する。本規律の申出の終期については、法務大臣による承認又は不承認、若しくは却下の時とすべきである。また、撤回についても同様とすべきである。

・本政令案への賛同意見として承ります。なお、政令案第5条第1項の申出は、法務大臣による承認又は不承認、若しくは却下の時まで可能であり、申出の撤回についても同様と考えています。

58    

・政令案第5条第2項の共同申請の場合、審査手数料は1申請分になるのか。

・本意見照会の対象外ではありますが、共同申請の場合の審査手数料は、引き続き検討を行ってまいります。

その他

59    

・隣接する二筆以上の承認申請において、土地の主な利用状況が一団であると評価しうる場合には、法第2条第3項各号及び法第5条第1項各号の土地の該当性については、隣接する二筆以上の土地を、一筆の土地とみなして判断すべき旨の承認申請ができるようすべきである。

・一筆の土地とみなすことによって、本来であれば承認可能な土地が、他の土地に問題があるために承認できなくなることも考えられるため、御提案については慎重な検討が必要と考えます。

60    

・いわゆる原野商法により不自然に細分化された山林等については、その点をもって直ちに却下・不承認事由にならないという理解でよいか。

・御理解のとおりです。

61    

・土地の国庫帰属の申請権者は相続人に限る必要はなく、相続開始前であっても、被相続人が申請を行うことができるとすべきである。相続人が承継したがらない不動産を相続財産から除外できるようにすることにより、相続手続の予見性を高めることができる。遺留分侵害その他相続人の権利を害する事例への配慮は、推定相続人全員の同意を必要とする等の措置が考えられる。

・法律の規定についての御意見であり、本意見照会の対象外ではありますが、今後の参考とさせていただきます。

62    

・国庫に帰属された土地はどのように処理されていくのか。負担金は必要だと思うが、その土地の活用を十分に行えば負担以上に収益も見込めると思う。最低限の管理でなく、資産として活用できる体制の整備も求める。

・本意見照会の対象外ではありますが、いただいた御意見については、今後の運用の検討に当たって参考とさせていただきます。

63

・国庫に帰属した後、農地の管理管轄はどこになるのか。帰属後の農地が外国資本に渡ったり、太陽光パネルが立てられたりすることがないようにしてほしい。

・本意見照会の対象外ではありますが、国庫に帰属した農地の管理管轄は農林水産大臣となります。

64    

・法第2条第3項各号の承認申請ができない事由に該当するもの以外ならば、千差万別の土地形態や位置の土地の申請が予測される。この時をチャンスと捉え、多くの業者(中には悪徳業者と言われるものまで)が困った相続人達を目当てに営業をかけてくることが既にみられるところである。新たな被害者を出さない施策が必要と考える。対処案としては、かつて土地を先行取得した土地開発公社のような公的専門機関を国土交通省と協力して窓口、ないしは管理者とし、その仲介者はこの法律の国家資格のある専門業者に当たらせ、土地の管理をすべきとすることである。現在でも森林の価値が見直され、全国的に多くの業者が取得に走っている。この中で最も危惧されるのが外国人(当初は日本人が取得)投資家等の行動である。外国の所有者が多くなるのは時代の趨勢だが、所有者不明予備軍でもあり、国土保全、領土の安全保障問題にもなりかねず、既に地域的にはいわゆる風紀問題も起こっており、将来のために秩序ある土地管理が国の手で導かれるよう期待する。

・意見照会の対象外ではありますが、いただいた御意見については、今後の運用の検討に当たって参考とさせていただきます。

65    

・要件さえ満たせば国は必ず引き取ってくれるのであるから、相続した土地の管理に手が回らず、土地を所有していることに負担を感じ、お金を払ってでも、その“いらない土地”を手放したいと考えている方にとって、いらない土地・希望した土地だけを国に引き取ってもらえることを含め、ニーズに応える制度だと思う。

・本制度への賛同意見として承ります。

66    

・要件審査・承認に先立ち、法務局による実地調査があると予測される。この調査費用を手数料名目で申請者に負担させるのは適切ではない。申請手数料は定額かつ低廉にしてほしい。利用者負担という面もあるとは思うが、この制度を利用するほとんどの人が、税金を払うのに困っている人たちであると思うので、そのあたりを十分考慮しなければ、国の制度としては欠陥ということになると思う。

・本意見照会の対象外ではありますが、いただいた御意見については、申請手数料の検討に当たって参考とさせていただきます。

67

・国が申請を却下・不承認とできる期間を限定し、その期間内に当該処分がなされない場合は、自動的に承認されたものとみなされる(それ以前に承認することも可能)というものにすべきである。相続人が相続放棄・限定承認をしようとする場合、原則として相続を知ってから3か月以内に家庭裁判所への申述をしなければならない。国庫帰属の申請が却下、不承認とされるリスクがいつまでも残ると、相続人が相続放棄・限定承認の判断をすることが難しくなるケースも考えられる。

・法律の規定についての御意見であり、本意見照会の対象外ではありますが、可能な限り早期に処理ができるよう、検討してまいります。

68    

・政令案第3条に規定されている土地はいわば売却が困難な土地である。売却不可能な土地にこそ、この制度を使えるようにすべきである。法律の規定についての御意見であり、本意見照会の対象外ではありますが、いただいた御意見については、今後の検討の参考とさせていただきます。

69    

・法第2条第3項第1号の「建物の存する土地」について、空き家が存在する場合、一律に本制度の利用ができないこととするのではなく、空き家の規模・状態・解体費用の多寡によっては、費用を予納すること等により、本制度を利用できるようにしてほしい。

・建物があっても土地の利活用の余地が少しでもあるものであれば承認され得るように、例外規定又は建物が存する土地の中である範囲のものとの条件を付した規定を加えるべきと考える。法律の規定についての御意見であり、本意見照会の対象外ではありますが、今後の検討の参考とさせていただきます。

70    

・法第2条第3項第2号の「担保権又は使用及び収益を目的とする権利が設定されている土地」について、相続した送電線下の土地の地役権については、権利や実物の撤去の難しさ、そのインフラとしての有用性、土地を国が所有・利用する際、現状変更や特段の金銭負担がないことなどを考慮して、実情に応じ、国庫帰属制度の申請を認める検討をお願いしたい。

・法律の規定についての御意見であり、本意見照会の対象外ではありますが、具体的な判断方法やその周知方法については、引き続き検討してまいります。

71    

・法第2条第3項第5号の「境界が明らかでない土地」について、隣地所有者との境界確認書を必要とせず、境界について具体的争いがない場合には国庫帰属を可能としてほしい。政令案において具体的要件を明確にしてほしい。

・本意見照会の対象外ではありますが、「境界が明らかでない土地」の具体的な判断方法やその周知方法については、引き続き検討してまいります。

72    

・法第2条第3項各号及び法第5条第1項各号がどのようなものを指すのか、基準を明らかにするか、それが困難な場合には、事案の例を示すなどして、明確にしてほしい。

・本意見照会の対象外ではありますが、具体的な判断方法やその周知方法については、引き続き検討してまいります。

73    

・当該制度は、不動産の処分に困っている方には、大変ありがたい制度である。法第2条第3項第1号の「建物の存する土地」については、建物がある場合、全て解体し更地にすれば承認されるということで間違いないか。法第2条第3項第5号の「境界が明らかでない土地その他の所有権の存否、帰属又は範囲について争いがある土地」については、専門家を交え、境界線確定が完了していれば、承認されるということで間違いないか。

・本制度への賛同意見として承ります。なお、本意見照会の対象外ではありますが、法第2条第3項第1号の「建物の存する土地」については、当該建物が解体され更地になった場合、その他の法第2条第3項各号の却下事由又は法第5条第1項各号の不承認事由に該当しないと判断されれば、帰属が承認されることとなります。また、法第2条第3項第5号の「境界が明らかでない土地」の具体的な判断方法やその周知方法については、引き続き検討してまいります。

74    

・事前に国庫帰属ができるかどうかはっきりさせる仕組みにしてほしい。

・本意見照会の対象外ではありますが、個別の事案における法第2条第3項各号の却下事由又は法第5条第1項各号の不承認事由の有無について、可能な範囲で事前に確認することができるようにするための相談窓口を設置することを予定しています。

75    

・省令及び通達を定めるにあたっては、司法書士等の実務専門家の意見を取り入れた上で、早期にその内容を定めていただくよう求める。

・本意見照会の対象外ではありますが、具体的な運用の検討に当たっては、広く国民の皆様の意見を聞きながら検討を進めてまいります。

76    

・申請手続代理を行うことができる士業の範囲を示されたい。

・本意見照会の対象外ではありますが、申請代理に関する考え方とその周知方法については、引き続き検討してまいります。

77    

・本制度の利用の要件や手続について、国民に分かりやすく広報することは極めて重要であるから、要件や手続について法令の内容を具体化したガイドラインを作成するとともに、具体的事案や申請方法を例示したパンフレットなどを作成して広報してほしい。

加えて、自治体関係者の理解を深めるために、自治体が取得を希望した場合には負担金がかからない点なども含めて、本制度を利用するための要件や手続について、自治体関係者向けの説明資料を作成して公表してほしい。

・本意見照会の対象外ではありますが、本制度を国民に皆様に広く理解・活用していただけるよう、地方公共団体や関係団体も含めた効果的な周知・広報の対応について、引き続き検討してまいります。

78    

・相続人が複数存在し、その一部に行方不明者がいる場合、所在等不明共有者の持分取得制度を利用するなどして行方不明者の持分を取得することにより、共有者全員(所在等判明者全員)が共同して申請することにより、本制度を利用できることを広報してほしい。

・本意見照会の対象外ではありますが、本制度を国民の皆様に広く理解・活用していただけるよう、所在等不明共有者の持分取得制度を併せて利用できることも含め、効果的な周知・広報の対応について、引き続き検討してまいります。

80    

・相続放棄の方法がある以上、負担金を高くしたり、要件を厳しくしても意味がなく、かえって長期間にわたり不動産の効率的な利用を阻害したり、登記懈怠や事実上の所有権放棄の事例を生み出すおそれがある。不動産の国庫帰属へのハードルを低くしつつ、国庫に帰属した不動産に関する情報を公開し、それら不動産を集約して再開発することについて民間企業が提案、参画できる制度をつくることにより、新規ビジネスの創設や土地の効率利用を促すことができる。

・法律の規定についての御意見であり、本意見照会の対象外ではありますが、今後の運用の参考とさせていただきます。

81    

・申請された物件を民間の希望者が取得できるよう情報公開の仕組みを整備するべきである。

・本意見照会の対象外ではありますが、今後の運用の検討に当たって参考とさせていただきます。

22021209追記

月刊 登記情報

2022年12月1日号(733号)

相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律施行令の解説

法務省民事局付 森下宏輝
法務省民事局民事第二課補佐官 三枝稔宗
法務省民事局民事第二課法務専門官 手塚久美子
法務省民事局民事第二課法務専門官 河瀬貴之
法務省民事局民事第二課不動産登記第三係長 清水玖美

民事信託契約の公証実務上の留意点

1 信託契約公正証書はどのようにして作られるか

・嘱託人または士業者からの依頼

・・・私人(個人又は会社その他の法人)で、公証人に公正証書作成をお願いする人。

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji30.html

・まず信託契約書案を送信

PDFではなく、Wordか一太郎

・・・メールにファイル添付が前提。修正できるから。

・事前準備資料について

 この段階では写し(できればPDF)をお送りいただければよく、原本を送る必要なし。委託者・受託者の本人確認資料(公証人法28条2項)

・・・JPG、JPEG、PNG形式のファイルでも、私が提出する公証センター(公証人役場)では受け付けてくれます。

公証人法(明治四十一年法律第五十三号)

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=141AC0000000053

第二十八条 公証人証書ヲ作成スルニハ嘱託人ノ氏名ヲ知リ且之ト面識アルコトヲ要ス

2 公証人嘱託人ノ氏名ヲ知ラス又ハ之ト面識ナキトキハ官公署ノ作成シタル印鑑証明書ノ提出其ノ他之ニ準スヘキ確実ナル方法ニ依リ其ノ人違ナキコトヲ証明セシムルコトヲ要ス

3、4略

・発行後3か月以内の印鑑登録証明書、または顔写真付きの公的身分証明書(運転免許証・マイナンバーカード・パスポート等)

・・・印鑑証明書について、最初に提出して公正証書を作成するまで3か月以上かかる場合もあるので、ここでは信託契約書案の提出時に3か月以内であることを想定しているものだと思われます。

・マイナンバーカードの裏側は送らない

・信託財産を特定する資料

不動産登記全部事項証明書など

・・・株式の場合、法人の履歴事項証明書など。

・信託財産の価格を裏付ける資料

不動産の場合は、固定資産税評価証明書または直近の固定資産税納付通知書

・代理人で作成する場合は稀

コロナで怖い、は不可能。

代理人についての本人確認資料

嘱託人本人の印鑑登録証明書(発行後3ヶ月以内)

携帯電話で本人確認

・・・代理人による作成は、令和3年9月17日東京地方裁判所判決平成31年(ワ)第11035号損害賠償請求事件の後は不可能だと考えていたので意外でした。信託契約書案の段階で、事前の意思能力確認をビデオ通話(zoomなど)で行う公証センター(公証人役場)はあります。

・嘱託人、関係者の職業情報を提供(公証人法36条2号)

第三十六条 公証人ノ作成スル証書ニハ其ノ本旨ノ外左ノ事項ヲ記載スルコトヲ要ス

一 証書ノ番号

二 嘱託人ノ住所、職業、氏名及年齢若法人ナルトキハ其ノ名称及事務所

・ドラフトについての検討・修正について、よくある民事信託条項

目的条項と信託事務の矛盾

  目的条項において単に信託事務を羅列

・・・信託事務の詳細がどのようなものか分かりませんが、私も円滑な財産の承継、受益者の安定した生活、など具体的に記載していません。

後継ぎ遺贈型受益者連続信託(信託法91条)で、「当初受益者が死亡したときは、第二次受益者がその受益権を承継する」・・・消滅する

・あるペット信託のドラフト例

目的条項の記載

信託契約に死後事務委任契約が混在

ペットが受益者

 受益債権の構成:信託法2条6項「信託財産に属する財産の引渡しその他の信託財産に係る給付をすべきものに係る債権」

・・・死後事務委任契約は別で作成。

・作成日程の調整

老人ホーム等への出張の場合、出張について(公証人法18条2項)

原則:公証役場で職務を行う

例外:事件の性質がこれを許さざる場合(健康上の理由で役場に来所できない等)

法令に別段の定め(遺言につき、公証人法57条)ある場合

公証人法17条

公証人は、所属する法務局の管轄区域内でのみ職務を行うことができる。

・・・沖縄から東京に来ても良い。

・手数料の算定・お知らせ

 主に信託財産の価額を基礎として算定する(公証人手数料令9条)→事前に価額の資料をお出しいただく

 公証人手数料令25条(枚数加算)

 書記(公証人法24条1項)による検算

 書記による案文の最終チェック・印刷(原本と謄本の準備)

作成当日

・当日の持ち物

 事前提出資料との関係

 証明書としての資料(本人確認資料)、当日原本

 案文の正確性チェックのための資料(登記現在事項証明書、車検証等)

 手数料算定のための資料(固定資産税納付通知書等)

  もし代理人によって作成する場合には、代理人の運転免許証等の確認資料、委任状、本人の印鑑登録証明書の各原本

  上記のほか、印鑑(公証人法39条3項)

 本人確認を印鑑登録証明書で行う場合は実印

 それ以外は認め印で可(スタンプ印は不可)

外国人の場合は印鑑不要

・・・日本に住所がある場合で印鑑証明書不要(其ノ他之ニ準スヘキ確実ナル方法として、運転免許証で本人確認)、認印で公正証書作成が可能なことは初めて知りました。

・当日の流れ

本人確認

運転免許証等:コピーを取って返却

印鑑登録証明書:原本を提出、公証役場で綴って保存

原本還付について

・・・印鑑証明書について、事前申出すれば原本還付出来るとのことでしたが、根拠が分かりませんでした。

公正証書の読み上げ

高齢の方への確認のポイント

 署名・捺印

自署ができない場合には事前にお知らせいただく→公証人による代署(公証人法39条4項)。公正証書の当事者欄(本旨外要件)の書き方も異なる。

・・・代筆でも可能が原則

第三十九条 公証人ハ其ノ作成シタル証書ヲ列席者ニ読聞カセ又ハ閲覧セシメ嘱託人又ハ其ノ代理人ノ承認ヲ得且其ノ旨ヲ証書ニ記載スルコトヲ要ス

2、3省略

4 列席者ニシテ署名スルコト能ハサル者アルトキハ其ノ旨ヲ証書ニ記載シ公証人之ニ捺印スルコトヲ要ス

・謄本又は正本の交付

・手数料のお支払

・信託契約公正証書における特有の留意点

信託口口座との関係で、最初のドラフトの段階で、銀行(証券会社)と十分協議

後継受託者の定め

2 信託契約公正証書の構成

 登簿番号、日付、表題、「本公証人は、当事者の嘱託により、次の法律行為に関する当事者の陳述の趣旨を録取して、この証書を作成する。」

・本旨

 頭書

 条項

 信託の目的、信託財産、受託者(受託者の任務終了事由や後継受託者の定めを含む)、帳簿の作成を含む受託者の信託事務や義務(分別義務や善管注意義務など)、費用の負担や受託者の報酬、受益者(第二次受益者以降も含む)、受益権の内容、信託の終了事由と清算事務、信託終了後の財産の帰属(帰属権利者の定め等)

・本旨外要件

委託者及び受託者の住所、氏名、職業及び生年月日

・当事者及び公証人の署名

・公正証書のデジタル化について

 規制改革推進会議の令和4年5月27日答申「公正証書の作成に係る一連の手続のデジタル化

・・・令和7年度上期の施行を目指す。公正証書の作成手続がデジタル化された場合の想定。公証センター(公証人役場)に、行くことなく公正証書を作成。それが良いかは分かりません。不動産登記申請における本人確認と比較(不動産登記法23条、24条、不動産登記規則72条。)。公正証書謄本は、公証人が電子署名を行いメールなどで受け取り、USBメモリなどに保存。銀行など提出先が紙での提出を求める場合は、印刷して提出。

https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/meeting/meeting.html#kaigi2

民事信託支援業務

・相談を受ける際の留意点

依頼者の意思確認・・・信託契約の締結に関する業務を受任した場合の依頼者。

  依頼者は委託者。民事信託に関する相談は、依頼者は委託者の推定相続人(多くの場合は,受託者兼帰属権利者)から受けることが多い背景。

 依頼者は委託者及び受託者と考えた場合の問題点・・・受託者も依頼者と考える場合には,受託者との間でも委任契約を締結しなければならず,受託者からも報酬を受領することになるか?・・・民法648条。

 遺言の一種である遺言による信託の場合には、受託者兼推定相続人から依頼を受けることがないことと対比可能か?・・・依頼は受けないが、受託者就任の可否は遺言による信託の場合でも設定時に聴く。聴かない場合があるのは遺言と同じ。

 受託者から依頼を受けて信託を設定して、受託者を監督する立場(信託監督人や受益者代理人)に就任することは、職務執行の公正を疑わせることになり、利益相反行為となるか?・・・外観上、職務執行の公正を保つのは難しいように思えます。

 委託者から依頼を受けた場合は良いのか?・・・民事信託に関する相談は、依頼者は委託者の推定相続人(多くの場合は,受託者兼帰属権利者)から受けることが多い背景から考えると、当然に可能とすることは難しいと感じます。例えば裁量型信託(受託者の裁量が広く認められている場合)について、信託監督人や受益者代理人の権限が弱い場合。個別具体的な判断になると感じます。

具体的な対応

 受託者の希望に応じて、委託者と受益者の合意による受託者の解任権(信託法58条1項)や委託者と受益者の合意による信託の終了権(信託法164条1項)を制限すべきではない。ただし,委託者との代理人として、受託者との間で、受託者の義務の程度や信託事務の内容を協議することは問題ないか?

・・・受託者の解任権を制限しない場合、当初委託者兼受益者は、(理由を問わず、1人の判断で)いつでも、その合意により、受託者を解任することができるので受託者は安心して職務を行うことが出来なくなる可能性があり、案件による。もし制限しない場合、受託者への損害賠償規定を詳しく定める必要があると考えます。委託者との代理人、というのはどのような地位で職務を指しているのか、分かりませんでした。

依頼者の意思確認の方法

  委託者と面談し、委託者の意思能力及び信託設定意思を確認する。予防措置として、委託者が親族等から不当な影響を受けたと疑われるような状況を排除するために配慮する。委託者が親族に伴われて相談に来た時には、親族の同席なしに個別に意思確認をする機会を設けることなどを工夫する。

民事信託以外の選択肢(併用も含む)の検討

・どのような心配事があるか。解決したい課題は何か。

・相談者の判断能力に問題はないか→問題があるケースでは法定後見の利用を検討。

・財産管理の問題か。財産承継の問題か。 財産管理は任意後見、民事信託。財産承継は遺言、民事信託。

・身上保護の必要性はあるか。 必要性がない場合は民事信託可。必要性がある場合は、家族の支援を受けられるか検討

・・・身上監護の必要性がない場合、というのがどのような場合なのか分かりませんでした。

家族の支援を受けられるか。

受けられる場合は民事信託可。受けられない場合は、任意後見。・・・受けられない場合は、任意後見受任者には、専門職が就任することを想定しているのかなと思いました。

信託を予定する財産に農地、年金受給権、地主が譲渡承諾をしない借地権

などがあるか。

ない場合は民事信託可。ある場合は任意後見。

・・・年金受給権がないという方のみが民事信託可とすると、ほとんど使われない制度になるのかなと思います。

・財産の積極的活用を望むか。

望む場合は民事信託。望まない場合は任意後見。

・・・任意後見でも、あらかじめ活用方法が決まっている場合は代理権目録に記録することにより、目的を達成することも可能なのかなと感じます。積極的活用、の個別具体的な状況によると思いました。

・借入れを予定しているか。

予定している場合は民事信託。予定していない場合は。任意後見。

・・・借入れについては金融機関の裁量に拠るところが大きいので、はっきり分かりませんが、任意後見でも代理権目録に記録されている場合、借入れは出来ないのか、任意後見監督人の監督があるので、金融機関も民事信託より貸しやすい、ということはないのか、気になりました。

裁判所の監督を希望するか。

希望する場合は任意後見。希望しない場合は民事信託。

途中で利用を止める希望はあるか。

ある場合は民事信託。ない場合は任意後見。

数世代に渡る財産の承継を希望するか。

希望する場合は民事信託。希望しない場合は任意後見。

・・・希望しない場合は、遺言になるのかなと思います。

依頼者らに説明すべき事項

・依頼者(委託者)に説明すべき事項

法律効果

 信託を設定することにより、いかなる財産が対象となるのか、その財産がいかなる目的で、誰によって、どのように管理又は処分されるのか、依頼者の推定相続人にどのように承継されるのかなど、いかなる法律効果が生じるのかについて説明。

・受託者に説明すべき事項

受託者の義務,信託事務

 受益者に対し,受託者は各種の義務(善管注意義務,忠実義務など)を負っていること,受託者として行わなければならない信託事務の内容を説明。

・信託契約書等の作成手数料

適正金額の手数料

 依頼者の無知に付け込み,過大な手数料を請求しない。非定型の契約書又は遺言の作成に準じるという基準。信託財産に属する財産の価額に対して〇%をかけていく。公正証書にする場合に加算。

・信託契約書作成の際の留意点

信託契約の条項検討

信託に関係する諸法令

 信託法、信託法施行令、信託法施行規則、信託計算規則、信託業法のほか民法,不動産登記法に加えて税法(所得税法、相続税法、財産評価基本通達など)の枠組みの理解。

東京地判平成30年10月23日(金融法務事情2122号85頁)

 委託者兼受益者である親と受託者である子との間の信託契約について、委託者兼受益者によって、詐欺取消、錯誤無効、債務不履行解除、信託目的の不達成又は委託者兼受益者の合意による信託終了の主張がなされたが、いずれも認められなかった事例。

 信託条項の、受益者は、受託者との合意により、本件信託の内容を変更し、若しくは本件信託を一部解除し、又は本件信託を終了することができる。の解釈(信託法164条3項の「別段の定め」に該当し,同条1項に優先するか。)。

信託条項間において矛盾のあるもの。

受益者の死亡により受益権が消滅すると規定し、その受益権を遺産分割の対象としているケースなど。

・文例の利用

 信託契約書を作成する際に、文例の利用は有用。参考資料として用いることは問題ない。事案の特徴を理解し文例を事案に当てはめる。

・遺留分への配慮

遺留分の規定適用

民法の遺留分に関する規定は強行規定であり,信託契約にも適用される。

・遺留分に配慮する必要性

 遺留分を侵害する内容の信託契約締結した場合、遺留分侵害額請求の対象や効果が確定しておらず、仮に裁判なった場合は解決まで相当の時間が掛かること予想される。・・・信託設定時だけではなく、信託期中、信託終了時に渡って遺留分を侵害しないことが必要だと感じます。

東京地判平成30 年 9月 12 日(金融法務事情2104 号 78 頁)

推定法相続人である兄弟間で信託設定の効力が争われ、一部の信託設定が遺留分制度を潜脱する意図でなされたものであるとされ、公序良俗に反して無効であるとされた事例。

継続的支援

不祥事を許容するなら不要。許容しないなら必要。

・・・バランスの問題ではないかと思います。ゼロか1かで考えると、民事信託は一切利用することは出来ない、という結論に流れやすいと感じます。

信託監督人は使いやすい?・・・私は利用したことがないので、分かりませんでした。

信託監督人は、受託者と身分関係がある者は不適切?・・・個別具体的な事案によると思います。

依頼者があえて遺留分を侵害する内容の信託契約を締結することを希望する場合には,希望を実現することはあり得る。

任意後見契約の代理権目録に、受益者に関する項目を記録。

・コーディネーターとしての役割

・信託契約の締結に関与する専門職の役割

 信託契約を締結する際には,公証人、金融機関、司法書士及び税理士などとの間で、コーディネーターとしての役割を果たすことが求められる。

・・・コーディネートとコンサルティングと支援業務に、違いがあるのか、分かりませんでした。

・信託契約書作成の手順

 公証人との打ち合わせ

 信託口口座開設予定の金融機関との打ち合わせ

東京地判令和3年9月17日(家庭の法と裁判35号135頁)

 専門職が信託契約書の案文の作成等を受任したが、作成した信託契約書では信託口口座の開設や民事信託融資を受けられなかったことから、依頼者(委託者)が当該専門職を訴えた事例。当該専門職には,情報提供義務及びリスク説明義務違反があるとして不法行為責任が認められた。事後的に評価すると,専門職の説明提供義務及びリスク説明義務違反ということになるが、重要なことは信託契約書作成の手順を守ること。

司法書士との打ち合わせ

  事前に、信託契約書のドラフトを送り,権利移転の登記及び信託の登記が可能か確認する。登録免許税、司法書士の手数料、本人確認等に必要な資料の確認を行う。

税理士との打合せ

  必要に応じて,信託税制に詳しい税理士に相談する。

公正証書の作成

 委託者及び受託者と共に公証役場へ赴き,公正証書の作成をサポートする。

・信託契約書の作成後の留意点

 信託口口座の開設

  受託者が信託財産に属する金銭を預金で管理する場合には,信託口口座を開設して管理するようにする(信託法34条1項2号ロに基づく「その計算を明らかにする方法」を,民事信託に適した分別管理方法に変更する)。受託者と共に金融機関に出向き,信託口口座の開設をサポートする。・・・信託契約書案の段階で関わることが必要だと思います。

・信託財産の対抗要件の具備等

財産の譲渡,担保権の設定その他の財産の処分

 信託を設定するにあたり、委託者は、受託者に対し、財産の譲渡、担保権の設 定その他の財産の処分を行う(信託法3条。)。

・譲渡の対抗要件

  財産の譲渡を第三者に対抗するには,民法等に定められた一般的な物権変動の対抗要件を具備する必要がある(民法177条等。)。

・信託の対抗要件

  登記又は登録しなければ権利の得喪を第三者に対抗することができない財産 については,財産の譲渡の対抗要件に加え。譲渡された財産が信託財産に属することを公示するための対抗要件を具備する必要がある(信託法14条。)。不発行株式などは、登記又は登録しなければ権利の得喪を第三者に対抗することができない財産ではないが、信託を対抗するためには一定の公示を要求することが個別の法律で定められている(会社法154条の2第。)。

  その他の財産は,信託財産であることを証明できれば,当該財産が信託財産に属する財産であることを第三者に対抗できる。

・分別管理義務との関係

 会社法154の2

  株式については、当該株式が信託財産に属する旨を株主名簿に記載し、又は記録しなければ、当該株式が信託財産に属することを株式会社その他の第三者に対抗することができない。

 社債、株式等の振替に関する法律142条

 振替株式については、第129条第3項第5号の規定により当該振替株式が信託財産に属する旨を振替口座簿に記載し、又は記録しなければ、当該株式が信託財産に属することを第三者に対抗することができない。

 受託者は,信託財産に属する財産と固有財産とを分別して管理する義務を負っている(信託法34条1項本文)。そして,上記信託の登記または登録をすることができる財産については,分別管理の方法として信託の登記または登録によらなければならない(同項1号)。

いわゆる「登記留保」の問題

 登記又は登録しなければ権利の得喪を第三者に対抗することができない財産 については,信託法14条の信託の登記又は登録をする義務を免除することができない(信託法14条2項)。

 信託運営中の留意点

  専門職による継続的な関与の必要性

・基本的な考え方

  継続的な財産管理を行う場合,第三者による適切な監督が行わなければ、一定数の不祥事が発生する。 このような一定数不祥事発生を許容するかどうかの価値判断。

・民事信託では委託者及び受益者による受託者の監督は期待できない

 信託法では,受益者又は委託者が監督することを予定している。しかし、民事信託においては委託者や受益者は受託者の親族であることが一般的であり、また委託者や受益は高齢であることが多く、委託者や受益は高齢であることが多く、受託者に対する監督を期待できない。

・・・私は受託者を監督、という面と受益者が自身の権利を守ること両面を予定している、と読んでいます。

・民事信託で活用すべき監督機関

  信託法は,受託者に対する監督機関として,信託監督人(信託法131条以下)又は受益者代理人(信託法138 条以下)を用意している。 民事信託と任意後見を併用する場合には,任意後見人による監督もあり得る(ただし、任意後見人と受託者が別である場合に限る。)。 併用する際には, 任意後見契約の代理権目録記載事項には注意を要する。

・民事信託における監督機関の適任者

  民法850条は「後見人の配偶者、直系血族及び兄弟姉妹監督となることができない。」、任意後見法5条は、「任意後見受者又人の配偶者、直系血族及び兄弟姉妹は任意後見監督人となるこができない。」と後見監督人及び任意後見監督人の欠格事由を定めている。

 民事信託でも,受託者と一定の身分関係がある者による実効性ある監督は期待できないのではないか。監督業務及び法律に精通している専門職が受託者の監督に当たることが望ましい。・・・個別具体的な案件ごとに決めることが望ましいのではないかと思います。

・信託監督人及び受益者代理人への就任

 受託者に対する監督の考え方

 信託契約の締結に関する業務を受任した場合の依頼者は委託者であることを前提に、信託監督人又は受益者代理人に就任した場合には、委託者(兼受益者)が望んでいる信託を適切に運営し、委託者(兼受益者)の利益を保護するために、受託者を監督すると考える。

・信託法への精通と信託契約に対する正しい理解

 受託者が信託法を遵守し、信託契約に従い適切に信託事務処理を行うことが必要であり、その受託者を監督する専門職も、信託法に精通し、信託契約の内容及び趣旨を十分に理解しておく必要がある。

・・・精通、というのがどの程度なのか分かりませんでしたが、信託の目的が達成できるくらい、と理解して良いのかなと思いました。

・民事信託における監督実務

 信託監督人は,信託契約に別段の定めがある場合を除き,受託者の監督のための権利(信託法92条各号(17号,18号,21号及び23号を除く。)に掲げる権利)を行使する権限を有する(信託法132条1項)。

 受益者代理人は,別段の定めがある場合を除き,受益者が有する信託法上の一切の権利(信託法42条に定める責任の免除に係るものを除く。)を行使する権限を有する(信託法139条1項)。善良な管理者の注意をもって,受益者のために誠実かつ公平に与えられた権限を行使しなければならない(信託法133条,140条)。民事信託実務において、受託者に対する監督方法に関して定まった考え方はないが、財産管理で共通する後見実務を参考に、適切な監督を実践していくことになる。・信託の変更

 信託の変更に関与した場合には、その信託の変更が信託法の規定や別段の定めを規定している信託契約の条項に合致しているかを確認する。

・信託税務等

税務に関する基本的な知識の習得

・依頼者(委託者)に説明すべき事項

法律効果

信託を設定することにより,いかなる財産が対象となるのか,その財産がいかなる目的で,誰によって,どのように管理又は処分されるのか,依頼者の推定相続人にどのように承継されるのかなど,いかなる法律効果が生じるのかについて説明する。

・届出や申告等への助言

 信託存続中の信託収益に関する所得税の申告や信託の終了時における相続税の申告など,受託者や受益者が適切に届出や申告等が行えるよう、助言することが望ましい。

・マネー・ロンダリング対策

FATF第4次対日相互審査報告書概要

 「国内外の信託、特に会社よって設立されていない信託の透明性に関しては、課題がある。

FATF第4次対日相互審査報告書を受けた行動計画

 信託会社に設定・管理されていない「民事信託」及び外国信託に関する実質的支配者情報を利用可能とし、その正確性を確保するための方策を検討し、実施する(時期:令和4年秋)。

「非訟事件手続法第九十条第八項及び第九十一条第五項並びに家事事件手続法第百四十六条の二第二項の規定による公告の方法等を定める省令案」に関する意見募集

https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=300080279&Mode=0

非訟事件手続法第九十条第八項及び第九十一条第五項並びに家事事件手続法第百四十六条の二第二項の規定による公告の方法等を定める省令案に関する意見募集

所有者不明土地の解消に向けた民法等の一部を改正する法律(令和3年法律第24号)において財産管理制度の見直しが行われ、財産管理人による供託の規定が整備されて、所有者不明土地・建物管理人、管理不全土地・建物管理人、不在者の財産の管理人又は相続財産の管理人が供託したときは法務省令で定めるところにより、その旨その他法務省令で定める事項を公告しなければならないとされた(非訟事件手続法(平成23年法律第51号)第90条第8項、第16項、第91条第5項、第10項、家事事件手続法(平成23年法律第52号)第146条の2第2項、第190条の2第2項)。そこで、本省令案は、これらの各規定に基づき、公告の方法及び公告事項を定めるものである。

意見募集要領

1 意見募集期間

令和4年9月1日(木)~令和4年9月30日(金)

所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直し(民法・不動産登記法等一部改正法・相続土地国庫帰属法)

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00343.html

非訟事件手続法(平成二十三年法律第五十一号)

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=423AC0000000051_20230401_503AC0000000024

(所有者不明土地管理命令及び所有者不明建物管理命令)

第九十条

8 所有者不明土地管理人は、所有者不明土地管理命令の対象とされた土地又は共有持分及び所有者不明土地管理命令の効力が及ぶ動産の管理、処分その他の事由により金銭が生じたときは、その土地の所有者又はその共有持分を有する者のために、当該金銭を所有者不明土地管理命令の対象とされた土地(共有持分を対象として所有者不明土地管理命令が発せられた場合にあっては、共有物である土地)の所在地の供託所に供託することができる。この場合において、供託をしたときは、法務省令で定めるところにより、その旨その他法務省令で定める事項を公告しなければならない。

16 第二項から前項までの規定は、民法第二百六十四条の八第一項に規定する所有者不明建物管理命令及び同条第四項に規定する所有者不明建物管理人について準用する。

(管理不全土地管理命令及び管理不全建物管理命令)

第九十一条

5 管理不全土地管理人は、管理不全土地管理命令の対象とされた土地及び管理不全土地管理命令の効力が及ぶ動産の管理、処分その他の事由により金銭が生じたときは、その土地の所有者(その共有持分を有する者を含む。)のために、当該金銭を管理不全土地管理命令の対象とされた土地の所在地の供託所に供託することができる。この場合において、供託をしたときは、法務省令で定めるところにより、その旨その他法務省令で定める事項を公告しなければならない。

10 第二項から前項までの規定は、民法第二百六十四条の十四第一項に規定する管理不全建物管理命令及び同条第三項に規定する管理不全建物管理人について準用する。

家事事件手続法(平成二十三年法律第五十二号)

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=423AC0000000052_20240401_504AC0000000066

(供託等)

第百四十六条の二

2 家庭裁判所が選任した管理人は、前項の規定による供託をしたときは、法務省令で定めるところにより、その旨その他法務省令で定める事項を公告しなければならない。

第十二節の二 相続財産の保存に関する処分の審判事件

第百九十条の二

2 第百二十五条第一項から第六項まで、第百四十六条の二及び第百四十七条の規定は、相続財産の保存に関する処分の審判事件について準用する。この場合において、第百二十五条第三項中「成年被後見人の財産」とあるのは、「相続財産」と読み替えるものとする。

非訟事件手続法第九十条第八項及び第九十一条第五項並びに家事事件手続法第百四十六条の二第二項の規定による公告の方法等を定める省令案の概要

第1 趣旨

非訟事件手続法(平成二十三年法律第五十一号)第九十条第八項(同条第十六項において準用する場合を含む。)及び第九十一条第五項(同条第十項において準用する場合を含む。)並びに家事事件手続法(平成二十三年法律第五十二号)第百四十六条の二第二項(同法第百九十条の二第二項において準用する場合を含む。)の規定に基づく公告の方法及び公告事項については、法務省令に委任することとされている。

そこで、これらの各規定に基づき、公告の方法及び公告事項を定める省令を制定するものである。

第2 内容

1 非訟事件手続法第九十条第八項(同条第十六項において準用する場合を含む。以下同じ。)及び第九十一条第五項(同条第十項において準用する場合を含む。以下同じ。)並びに家事事件手続法第百四十六条の二第二項(同法第百九十条の二第二項において準用する場合を含む。以下同じ。)の規定による公告は、官報により行うものとすること。

2 非訟事件手続法第九十条第八項の法務省令で定める事項は、①所有者不明土地管理命令の対象とされた土地(共有持分を対象として所有者不明土地管理命令が発せられた場合にあっては、共有物である土地)又は所有者不明建物管理命令の対象とされた建物(共有持分を対象として所有者不明建物管理命令が発せられた場合にあっては、共有物である建物)に係る所在事項、②供託所の表示、③供託番号、④供託した金額、⑤裁判所の名称、件名及び事件番号とすること。

3 非訟事件手続法第九十一条第五項の法務省令で定める事項は、①管理不全土地管理命令の対象とされた土地又は管理不全建物管理命令の対象とされた建物に係る所在事項、②供託所の表示、③供託番号、④供託した金額、⑤裁判所の名称、件名及び事件番号とすること。

4 家事事件手続法第百四十六条の二第二項の法務省令で定める事項は、①不在者の氏名、住所及び出生の年月日又は被相続人の氏名、最後の住所並びに出生及び死亡の年月日、②供託所の表示、③供託番号、④供託した金額、⑤民法第二十五条第一項の規定による管理人の選任又は同法第八百九十七条の二第一項の規定による相続財産の管理人の選任に係る家庭裁判所の名称、件名及び事件番号とすること。

第3 施行期日

令和5年4月1日

省令案

○法務省令第 号

非訟事件手続法第九十条第八項及び第九十一条第五項並びに家事事件手続法第百四十六条の二第二項の規定による公告の方法等を定める省令案

非訟事件手続法(平成二十三年法律第五十一号)第九十条第八項(同条第十六項において準用する場合を含む。)及び第九十一条第五項(同条第十項において準用する場合を含む。)並びに家事事件手続法(平成二十三年法律第五十二号)第百四十六条の二第二項(同法第百九十条の二第二項において準用する場合を含む。)の規定に基づき、非訟事件手続法第九十条第八項及び第九十一条第五項並びに家事事件手続法第百四十六条の二第二項の規定による公告の方法等を定める省令を次のように定める。

令和四年 月 日

法務大臣 ●● ●●

非訟事件手続法第九十条第八項及び第九十一条第五項並びに家事事件手続法第百四十六条の二第二項の規定による公告の方法等を定める省令

(公告の方法)

第一条 非訟事件手続法第九十条第八項(同条第十六項において準用する場合を含む。以下同じ。)及び第九十一条第五項(同条第十項において準用する場合を含む。以下同じ。)並びに家事事件手続法第百四十六条の二第二項(同法第百九十条の二第二項において準用する場合を含む。以下同じ。)の規定による公告は、官報により行うものとする。

(公告事項)

第二条 非訟事件手続法第九十条第八項の法務省令で定める事項は、次のとおりとする。

一 所有者不明土地管理命令の対象とされた土地(共有持分を対象として所有者不明土地管理命令が発せられた場合にあっては、共有物である土地)又は所有者不明建物管理命令の対象とされた建物(共有持分を対象として所有者不明建物管理命令が発せられた場合にあっては、共有物である建物)に係る所在事項

二 供託所の表示

三 供託番号

四 供託した金額

五 裁判所の名称、件名及び事件番号

2 非訟事件手続法第九十一条第五項の法務省令で定める事項は、次のとおりとする。

一 管理不全土地管理命令の対象とされた土地又は管理不全建物管理命令の対象とされた建物に係る所在事項

二 供託所の表示

三 供託番号

四 供託した金額

五 裁判所の名称、件名及び事件番号

3 家事事件手続法第百四十六条の二第二項の法務省令で定める事項は、次のとおりとする。

一 不在者の氏名、住所及び出生の年月日又は被相続人の氏名、最後の住所並びに出生及び死亡の年月日

二 供託所の表示

三 供託番号

四 供託した金額

五 民法第二十五条第一項の規定による管理人の選任又は同法第八百九十七条の二第一項の規定による相続財産の管理人の選任に係る家庭裁判所の名称、件名及び事件番号

附 則

この省令は、令和五年四月一日から施行する。

PAGE TOP