令和4年商業登記倶楽部静沖縄支部セミナー・法人登記をめぐる諸問題

2022年12月10日

一般社団法人商業登記倶楽部代表理事・主宰者、公益社団法人成年後見センター・リーガルサポート理事、一般社団法人日本財産管理協会顧問、日本司法書士会連合会顧問

神﨑満治郎

Ⅰはじめに

1 司法書士を取り巻く現在の環境

  • デジタル化の推進とメタバース及びアバター(9月23に東京大学にメタ

バース工学部誕生、沖縄からもオンラインで受講可能。)

https://www.t.u-tokyo.ac.jp/meta-school

  • 原則転勤なし、メタバース事業の展開を目指すNTTグループ

地域共創推進に向けた「TENGUN Ogijimaプロジェクト」発足

~IOWNで実現されるフォトリアルな「男木島」メタバースによる、関係人口創出・拡大をめざした共同検討を開始~

https://group.ntt/jp/newsrelease/2022/11/15/221115b.html

(3)日本の1人当たり名目GDPが、2027年韓国と逆転し、2028年に台湾と逆転する理由は。行政手続きのデジタル化の遅れ

(4)河野大臣の就任とオンライン申請の推進

(5)電子署名制度の活用は、司法書士の新しい未来を拓く(法務省の登記化

の歴史を顧みて)

(6)AIの活用と司法書士業務(AIの研究・活用は、司法書士の新しい未来を拓く)

(7)高齢化の進展と司法書士業務(高齢化社会においては、司法書士は最高の職業)

(8)人権デューデリジェンスと司法書士業務

(9)地球温暖化対策(ESG・TCFD情報の開示)

(10)その他(令和5年7月1日は、商業登記倶楽部創設30周年)

2 何故、今、法人登記か

法人登記の申請代理権は、司法書士に許容されているが、どのように考えるか。

3 法人登記の件数

法務省のホームページに登録されている令和3年の「登記統計」。

https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00250002&tstat=000001012460&cycle=7&year=20210&month=0&tclass1=000001012461

一般社団法人47.687件

一般財団法人16.484件

宗教法人10.851件

農業協同組合6.755件

水産業協同組合2.780件

中小企業等協同組合27.384件

その他の法人183.006件

合計294.947件

 なお、不動産登記は12.563.060件、商業登記1.283.196件、法人登記全体の件数は、不動産登記や商業登記に比べ圧倒的に少ない。

法人登記を考える

1 民法33条、36条の意義

2 法人の設立根拠法

(1)商業登記の場合、会社は、会社法、個人商人(自然人たる商人)の場合は、商法。

(2)法人登記の場合、各種法人は、一般法人法等187の法律。

3 各種法人の登記手続法令

(1)会社と個人商人は、商業登記法。

(2)各種法人は15の法律と4つの政令。

(3)商業登記法は制定されているのに、法人登記法は制定されていない。

4 商業登記と法人登記の差異

 商業登記は、商人、4種類の会社(根拠法は会社法。)と自然人たる商人(個人商人。根拠法は商法。)に関する登記であり、登記手続に関する法律として商業登記法が制定されている。法人登記は、会社以外の各種法人に関する登記であり、各種法人の種類は254種類、設立根拠法は187。登記手続について法人登記法は制定されていない。

5 主務官庁とモデル定款例の位置づけ

 原則として、地方自治法245条の4第1項に基づく「技術的助言」又は245条の9に基づく法定受託事務を処理するための「よるべき基準」として、主務官庁等が示したもの。

地方自治法

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000067

第二条1項9号

9 この法律において「法定受託事務」とは、次に掲げる事務をいう。

一 法律又はこれに基づく政令により都道府県、市町村又は特別区が処理することとされる事務のうち、国が本来果たすべき役割に係るものであつて、国においてその適正な処理を特に確保する必要があるものとして法律又はこれに基づく政令に特に定めるもの(以下「第一号法定受託事務」という。)

二 法律又はこれに基づく政令により市町村又は特別区が処理することとされる事務のうち、都道府県が本来果たすべき役割に係るものであつて、都道府県においてその適正な処理を特に確保する必要があるものとして法律又はこれに基づく政令に特に定めるもの(以下「第二号法定受託事務」という。)

(技術的な助言及び勧告並びに資料の提出の要求)

第二百四十五条の四 各大臣(内閣府設置法第四条第三項若しくはデジタル庁設置法第四条第二項に規定する事務を分担管理する大臣たる内閣総理大臣又は国家行政組織法第五条第一項に規定する各省大臣をいう。以下本章、次章及び第十四章において同じ。)又は都道府県知事その他の都道府県の執行機関は、その担任する事務に関し、普通地方公共団体に対し、普通地方公共団体の事務の運営その他の事項について適切と認める技術的な助言若しくは勧告をし、又は当該助言若しくは勧告をするため若しくは普通地方公共団体の事務の適正な処理に関する情報を提供するため必要な資料の提出を求めることができる。

2 各大臣は、その担任する事務に関し、都道府県知事その他の都道府県の執行機関に対し、前項の規定による市町村に対する助言若しくは勧告又は資料の提出の求めに関し、必要な指示をすることができる。

3 普通地方公共団体の長その他の執行機関は、各大臣又は都道府県知事その他の都道府県の執行機関に対し、その担任する事務の管理及び執行について技術的な助言若しくは勧告又は必要な情報の提供を求めることができる。

(処理基準)

第二百四十五条の九条1項 各大臣は、その所管する法律又はこれに基づく政令に係る都道府県の法定受託事務の処理について、都道府県が当該法定受託事務を処理するに当たりよるべき基準を定めることができる。

・モデル定款に沿った定款で設立登記申請を行い、その後の定款変更で法人に合った変更を行う方が、許可官庁内部の決済手続き等の面でベター。

Ⅲ法人登記の学び方を考える

1 まず、各種法人の設立根拠法を把握し、理解する。

2 次に、254種類の各種法人を登記の手続法令に従って分類すると、次のようになる。そこで、各種法人の登記手続法令を把握する。

(1)法人設立の根拠法に規定されている法人(37)

一般社団法人、一般財団法人、宗教法人等37種類の法人

(2)組合等登記令に規定されている法人(87)

医療法人、社会福祉法人、学校法人、管理組合法人、農業協同組合、司法書士会、司法書士法人等87種類の法人

組合等登記令

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=339CO0000000029

(設立の登記)

第二条 組合等の設立の登記は、その主たる事務所の所在地において、設立の認可、出資の払込みその他設立に必要な手続が終了した日から二週間以内にしなければならない。

2 前項の登記においては、次に掲げる事項を登記しなければならない。

一 目的及び業務

二 名称

三 事務所の所在場所

四 代表権を有する者の氏名、住所及び資格

五 存続期間又は解散の事由を定めたときは、その期間又は事由

六 別表の登記事項の欄に掲げる事項

・代表権を有する者のみ

別表(第一条、第二条、第六条、第七条の二、第八条、第十四条、第十七条、第二十条、第二十一条の三関係)

・資産の総額など

・医療法人の資産の総額の登記申請、役員変更の登記申請。社団型の場合の社員総会、理事会。理事長が任期中に死亡した場合の、理事が登記されていないので、登記からは分からない。社員総会で選任され、就任承諾し、理事会開催日において理事を辞任していないこと、解任されていないこと。誰が理事として理事会を開催し、医師免許を所持している理事長を選定したのかを証する情報。

登記申請における添付情報として、理事長の就任承諾書に加えて、理事の就任承諾書を求める法務局がある。

理事長重任の登記申請において、医師免許証の写しが要求される理由・・・年間何名か医師免許がなくなる人がいるので、確認。

医療法第四十六条の五、第四十六条の六、第四十六条の六の二など。

・任期について、

医療法第四十六条の五9 役員の任期は、二年を超えることはできない。ただし、再任を妨げない。

医療法附則 (平成一八年六月二一日法律第八四号)

(役員の任期に関する経過措置)

第十一条 この法律の施行の際現に医療法人の役員である者の任期は、新医療法第四十六条の二第三項の規定にかかわらず、この法律の施行の際におけるその者の役員としての残任期間と同一の期間とする。

組合等登記令(変更の登記の申請)

第十七条 第二条第二項各号に掲げる事項の変更の登記の申請書には、その事項の変更を証する書面を添付しなければならない。ただし、代表権を有する者の氏、名又は住所の変更の登記については、この限りでない。

・登記研究の質疑応答の位置付け

法務局民事局商事課長の決裁を取っている。先例と同じ位置付け。今も?

(3)独立行政法人等登記令に規定されている法人(127)

1 独立行政法人通則法2条1項に規定する独立行政法人(87種類の法人)

独立行政法人通則法

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=411AC0000000103

(定義)

第二条 この法律において「独立行政法人」とは、国民生活及び社会経済の安定等の公共上の見地から確実に実施されることが必要な事務及び事業であって、国が自ら主体となって直接に実施する必要のないもののうち、民間の主体に委ねた場合には必ずしも実施されないおそれがあるもの又は一の主体に独占して行わせることが必要であるもの(以下この条において「公共上の事務等」という。)を効果的かつ効率的に行わせるため、中期目標管理法人、国立研究開発法人又は行政執行法人として、この法律及び個別法の定めるところにより設立される法人をいう。

2国立大学法人及び大学共同利用機関法人(2種類の法人)

3独立行政法人等登記令別表の名称の欄に掲げる38種類の法人

独立行政法人等登記令

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=339CO0000000028

別表(第一条、第二条、第六条関係)

(4) 弁講士会登記令に規定されている法人(2)

(5) 労働組合法施行令に登記手続が規定されている法人(1)

・定款の保管の確認。監督官庁はどこですか。定款がない場合、監督官庁に保管されているので、もらってくることを依頼。

Ⅳ法人登記の登記申請構造を考える

1 登記事項

(1) 法律に規定

一般法人法、弁護士法等

(2)政令に規定

組合等登記令、独立行政法人等登記令。労働組合法施行令

2 申請人

(1) 法律に規定

一般法人法、弁護士法等

(2)政令に規定

組合等登記令、独立行政法人等登記令。労働組合法施行令

3添付書類

(1) 法律に規定

(2)政令に規定

組合等登記令、独立行政法人等登記令。弁護士会登記令、労働組合法施行令

(3)添付書面としての「登記事項の変更を証する書面」(組登令17条1項)をどう解釈するか

各種法人の書面決議制度

1 コロナ禍と書面決議制度活用の推進

2 書面決議制度とバーチャルオンリー総会

・会社法298条1項一号 株主総会の日時及び場所との関係

・書面決議と書面による議決権行使の違い

会社法第三百十九条と第三百十一条

・書面による議決権行使は、株主20名くらいが限界?

・バーチャルオンリー総会

産業競争力強化法第六十六条

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=425AC0000000098

金融商品取引法第二条第十六項に規定する金融商品取引所に上場されている株式を発行している株式会社(以下この条において「上場会社」という。)は、株主総会(種類株主総会を含む。以下この項及び次項において同じ。)を場所の定めのない株主総会(種類株主総会にあっては、場所の定めのない種類株主総会。以下この項及び次項において同じ。)とすることが株主の利益の確保に配慮しつつ産業競争力を強化することに資する場合として経済産業省令・法務省令で定める要件に該当することについて、経済産業省令・法務省令で定めるところにより、経済産業大臣及び法務大臣の確認を受けた場合には、株主総会を場所の定めのない株主総会とすることができる旨を定款で定めることができる。

3書面決議の要件

(1) 法律に規定の要否

会社法(取締役会の決議の省略)

第三百七十条 取締役会設置会社は、取締役が取締役会の決議の目的である事項について提案をした場合において、当該提案につき取締役(当該事項について議決に加わることができるものに限る。)の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたとき(監査役設置会社にあっては、監査役が当該提案について異議を述べたときを除く。)は、当該提案を可決する旨の取締役会の決議があったものとみなす旨を定款で定めることができる。

・取締役会開催前に定められた、決議の目的である事項のみ。

・学校法人

文部科学省 学校法人のガバナンス改革に関するQ&A(令和4年5月版)

1 目的

2 基本的な考え方について

3 学校法人における意思決定について

4 理事・理事会について

5 評議員・評議員会について

6 監事について

7 会計監査について

8 内部統制システムの整備について

9 その他

https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/shiritsu/mext_00001.html

(2)定款に定めの要否

近時における法人登記関係改正の動き

1社会福祉連携推進法人制度の新設(令和4年4月1日施行)

令和4年3月1日民商第75号商事課長通知

監督官庁のない一般社団法人が、所轄庁の認定を受ける。

社会福祉法

(社会福祉連携推進法人の認定)

第百二十五条 次に掲げる業務(以下この章において「社会福祉連携推進業務」という。)を行おうとする一般社団法人は、第百二十七条各号に掲げる基準に適合する一般社団法人であることについての所轄庁の認定を受けることができる。

一 地域福祉の推進に係る取組を社員が共同して行うための支援

二 災害が発生した場合における社員(社会福祉事業を経営する者に限る。次号、第五号及び第六号において同じ。)が提供する福祉サービスの利用者の安全を社員が共同して確保するための支援

三 社員が経営する社会福祉事業の経営方法に関する知識の共有を図るための支援

四 資金の貸付けその他の社員(社会福祉法人に限る。)が社会福祉事業に係る業務を行うのに必要な資金を調達するための支援として厚生労働省令で定めるもの

五 社員が経営する社会福祉事業の従事者の確保のための支援及びその資質の向上を図るための研修

六 社員が経営する社会福祉事業に必要な設備又は物資の供給

2特許業務法人から弁理士法人へ(令和4年4月1日施行)

令和4年2月22日民商第68号商事課長通知

弁理士法

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=412AC0000000049

附 則 (令和三年五月二一日法律第四二号)

7条11項 特例特許業務法人が施行日から起算して一年を経過する日までに前項の名称の変更をしないときは、当該特例特許業務法人は、その日が経過した時に解散したものとみなす。

3電子提供制度の創設及び従たる事務所の所在地における登記の廃止

令和4年8月3日民商第378号通達

会社法325条の2から325条の7,466条、911条3項12号の2、商業登記規則1条2項、別表第五章合区など。社債、株式等の振替に関する法律(電子提供措置に関する会社法の特例)第百五十九条の二。

4労働者協同組合制度の新設(令和4年10月1日施行)

令和4年9月21日民商第493号商事課長通知

5弁護士・外国法事務弁護士共同法人(令和4年11月1日施行)

令和4年10月13日民商第460号商事課長通知

近時における商業登記関係改正の動き

1令和4年8月3日民商第378号通達

(1)電子提供制度の創設

(2)支店所在地における登記の廃止

令和4年8月25日民商第411号通達

会社法附則(令和四年八月三日法務省令第三四号)

(施行期日)

1 この省令は、会社法の一部を改正する法律附則第一条ただし書に規定する規定の施行の日(令和四年九月一日)から施行する。

(商業登記規則等の一部改正に伴う経過措置)

2 登記官は、この省令の施行の際現にされている会社の支店の所在地における登記の登記記録を閉鎖しなければならない。

3 登記官は、前項の規定により登記記録を閉鎖するときは、登記記録にこの省令の規定により閉鎖した旨を記録しなければならない。

4 前二項の規定は、会社を除くその他の法人であってこの省令の施行の際現に登記されているものの支店又は従たる事務所の所在地における登記について準用する。

5 第二項及び第三項の規定は、この省令の施行の際現に登記されている投資事業有限責任組合契約に関する法律(平成十年法律第九十号)第二条第二項に規定する投資事業有限責任組合又は有限責任事業組合契約に関する法律(平成十七年法律第四十号)第二条に規定する有限責任事業組合の従たる事務所の所在地における登記について準用する。

その他

・公益重視会社形態の創設

公益法人インフォメーション

新しい時代の公益法人制度の在り方に関する有識者会議

https://www.koeki-info.go.jp/regulation/koueki_meeting.html

・労働者協同組合

令和4年9月21日法務省民商第439号通知

労働者協同組合法

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=502AC1000000078

厚生労働省 労働者協同組合の概要資料

司法書士による民事信託(設定)支援業務の法的根拠論の目的

 市民と法[1]の記事、金森健一弁護士・駿河台大学特任准教授「司法書士による民事信託(設定)支援業務の法的根拠論の目的」からです。

信託契約書の作成を登記原因証明情報の作成ととらえる司法書士法3条説の難点は、同条により弁護士法72条違反の回避という受任者たる司法書士を防御することを主たる狙いとするために、依頼者に対する関係での行為規範を導きづらい点にあると思われる。

 司法書士法3条を根拠とすることが、弁護士法72条違反の回避を主たる狙いとするものなのか、分かりませんでした。依頼者に対する関係では、司法書士法を根拠とすることで2条、24条等とともに、どこまでやってもいいのか、どこからはだめなのか、規範を定立しやすくなるのではないかと感じました。

 また、同時に司法書士法改正の議論は必要だと思います。

つまり、自らが行う業務がどのような法的根拠に基づくのかについて無頓着であることが、自らの業務の内容、特に依頼者に対し提供するべき法的サービスの内容を曖昧にし、それが、依頼者(多くの場合は、その曖昧さを問い詰めることのできない一般消費者である)の利益を害し、かつ、自身が損害賠償責任などの法的責任を負うことに繋がると考えるのである。問いたいのは、「業際問題」ではなく「消費者問題」なのである。

 消費者問題が問われるのは、民事信託信託(設定)支援業務がビジネスとして成り立っているということを示していると考えられます。

司法書士行為規範81条に民事信託支援業務についての規律が制定されたことは、何もないところで規範がうまれたという面では大きな一歩といいうるものの、問題の本質との関係では、その一歩を“前進”ととらえていよいかは疑問が残る。

 私にも分かりません。司法書士行為規範81条がどのような議論を得てあの文言になったのか、公表されていないからです。

活動が大きくなればなるほど、その遠心力は大きくなり、その力に持ち堪えるだけの頑強な「礎」が必要になる。法的根拠論は、まさに「礎」を築くための議論である。ここを曖昧にしたまま、活動ばかりが大きくなったとき、信義則上の義務といった予測不能な義務が司法書士に課されるのである。

 信義則上の義務違反に問われるとすれば、行為規範を作った機関ではなく、行為規範をそのまま自分で解釈するしかない会員だと思います。


[1] 138号、2022年12月、民事法研究会P84~

民事信託支援業務と懲戒規範

市民と法[1]の記事、渋谷陽一郎「民事信託支援業務と懲戒規範」からです。

当初は、誰が考え出したのだろうか、信託財産の〇%という宅地建物取引業者的な報酬算定方法に対する苦情が聞かれた(結果として過剰報酬となれば品位保持義務違反の領域となる)。

誰から聞いたのか分かりませんでした。

昨今は、民事信託を取り扱う司法書士が急増するに伴い報酬額が低廉化してきたが、その業務内容の品質と方法・態様に関する苦情も聞かれる。

誰から聞かれたのか分かりませんでした。報酬算定方法は、業務の積み上げ式で見積書や委任契約書に報酬算定方法を明記することでバランスを取るかなと考えます。

それゆえ、懲戒機関も危機感を強めているのではないかとも推察される。かような裁判例のトレンドを後追いする形で、今後、懲戒機関によって、民事信託支援業務を行う司法書士に対する懲戒機関によって、民事信託支援業務を行う司法書士に対する懲戒処分が行われ、公表されていくのではないか、とも噂される。

どこからの噂なのか分かりませんでした。

本懲戒事例の事案では、当該家族信託の設定が違法(横領)であるとの判断が前提となっている。1、成年後見人の立場を利用した成年後見人の職務違反という違法判断に対して、他の推定相続人を廃除し、2、受託者らの自己の利益のために濫用的な家族信託を組成したことについて、本事案の違法判断は、どの程度の比重があるのだろうか。

成年後見人の立場を利用しなければ、有効な信託の設定は不可能であり、成年後見人の立場を利用した成年後見人の職務違反の比重が高いと考えられます。

司法書士によって教示された信託の内容自体は普通の信託に関する知識であったが、それは形式的にそうであるにすぎない。このあたりは、当該司法書士における信託に対する誤解があった、といわざるを得ない。

 他の推定相続人を廃除する目的、という場合に信託を教示することが、誤解、という認識が分かりませんでした。

そのような場合、司法書士は、どのようにして真の動機を知るのか、知りうべきか、知ることができるのか(そのメルクマークは何か)。

 成年後見が発効しているのに、成年後見人から、他の相続人を廃除したいという話を聴いた時点だと思います(民法858条、859条)。

それから、約3年半の後、地方検察庁は、B夫妻が信託契約を締結し、信託登記をしたことが、被処分者抜きでは考えられない巧妙なスキームであり、被処分者に業務上横領幇助、背任幇助の各事実の存在が認められるとして立件した。

 約3年半の間、成年後見人Bは、家庭裁判所に対してどのような報告をしていたのか気になりました。

親族後見人等が存在しない場合で、親族受託者が信託組成を行うような事例では、どうであろうか。要するに、成年後見制度を利用していない場合であっても、受託者等の濫用意図(動機の不法)に応じて、信託の濫用事例として、同等の違法性の評価を生じうるのだろうか。

 信託法8条、29条、30条、31条、民法90条、415条、709条等に反すると評価される可能性があると思います。

しかし、医師でもない司法書士に、認知症患者であると医師に診断された高齢者に対して、積極的な意思能力の有無を判断する責任を負えるのだろうか。

 積極的な意思能力、という用語の意味が分かりませんでした。医師の判断は、重要な判断基準ですが、医師は司法書士ではないので、信託を設定できるかの正確な判断は出来ず、最終的に責任を負う専門家士業が判断を行うのではないかと考えられます。

一方、福祉型信託という概念は、福祉型信託の泰斗である新井誠教授の言葉であるが(家族信託なる用語も新井教授らによる翻訳語である)、過去の信託法学会における論戦の軌跡に鑑みると、道垣内教授と新井教授は、信託の本質論をめぐるスタンスが先鋭的に対立しているようにみえる。しかし、上記シンポジウムには新井教授の登壇はない。

司法書士集団は、新井教授の教説の立場から民事信託支援業務を生成し、実務化してきたので、新井教授の声が聞かれないのは寂しいという司法書士実務家の声も聞かれ、信託法学会等においても、福祉型信託(民事信託)がテーマとなれば、新井教授の存在抜きでは始まらないのではないか、との諸先輩の声も聞かれる。―中略―近時、一部の若い司法書士が、新井教授を批判する場合があると聞くが、司法書士制度の恩人に対して到底許されるものではない。

 諸先輩が分かりませんでした。新井誠教授と道垣内弘人教授が、司法書士制度を専門としているのか、私が今まで調べた限りでは分かりませんでした。肩書などによって自由な批評が制限されるのであれば、今後の実務の進展はないと思います。ただ、それは現に始まっています。私は、信託の学校を批評したことで悪意を持たれました。その後、民事信託推進センターを除名されました。信託の学校、日司連民事信託推進委員、民事信託推進センターの役員、いずれかに私が所属していたら、死ねと同義の除名処分はなかったと考えられます。

 現在の民事信託に関しての実務論は、法律論ではなく、ビジネスや承認欲求的なものだと考えると、良い悪いは措いてすっきりします。谷口毅司法書士も日司連民事信託推進委員と民事信託推進センターへの不満を口にしていましたが、一旦承認されて表舞台に立てば、不満は無くなりましまた。活躍することで、信託の学校の有料会員も増える可能性があります。

 民事信託推進センターも、公開で批評されるよりは、官庁の認可を得て信託会社を設立したり、役員の方々の進めたい方向で進める方が、ある士業にとっては利益が出る可能性が高くなります。

 道垣内弘人先生が選ばれた経緯は、公開されていないので分かりませんが、到底許されるものではない、とは思いませんでした。また反論に対して、許すまじ、とも思いませんでした。人格否定は、建設的ではなく、議論が進まないからです。司法書士業界は谷口毅司法書士の私物でもありません。

Webシンポジウム「民事信託支援業務の更なる推進に向けて~権利擁護使命の実践としての福祉型信託の展開~」

第1部 基調講演

テーマ:福祉型信託の課題と展望

講 師:道垣内弘人(専修大学大学院法務研究科教授、東京大学名誉教授)

第2部 司法書士の民事信託実践報告

テーマ:司法書士による福祉型信託の実践

講 師:谷口毅(日本司法書士会連合会民事信託等財産管理業務対策部部委員)

第3部 パネルディスカッション

テーマ:権利擁護としての福祉型信託の推進

「こころの通う福祉型信託の在り方について」

パネリスト:

道垣内弘人(専修大学大学院法務研究科教授、東京大学名誉教授)

伊庭潔  (弁護士/日弁連信託センター長、中央大学研究開発機構教授)

山﨑芳乃 (司法書士/ふくし信託株式会社専務取締役)

髙尾昌二 (日本司法書士会連合会常任理事/民事信託等財産管理業務対策部副部長)

コーディネーター:

春口剛寛 (日本司法書士会連合会民事信託等財産管理業務対策部部委員)

『民事信託の実務と書式〔第2版〕─信託準備から信託終了までの受託者支援』

http://www.minjiho.com/shopdetail/000000001186/

はしがきより

山北英仁司法書士、山﨑芳乃司法書士からは、民事信託分野の黎明期と生成期の証言を、初めて活字にしていただいた。

民事信託・家族信託の徹底活用

http://www.tsubasa-trust.net/2017/10/blog-post.html

さて、私は、渋谷陽一郎先生の「民事信託の実務と書籍」を読み始めたところです。なかなか、他に類書のない書籍であると思っています。

どうしても、私達実務家は、「信託のスキームを構築する」とか、「信託契約書を作成する」とかいうことに目を奪われがちなのですが、著者に言わせれば、それは、所詮は信託の入り口に過ぎないとのことです。
信託が財産管理の仕組みである以上、信託の中核を担うのは受託者であり、その受託者を支援できるかどうかが、健全な信託の発展の鍵であると考えています。
信託の受託者が信託事務を遂行する上で必要な書式類を豊富に準備している、という点に、この本のユニークなところがあると思います。

また、著者は司法書士の制度論に対して、非常に深い造詣を有しています。
司法書士の制度論の中で、民事信託の支援業務が適切な位置づけを見つけることができるのか、という点について、多角的に問題提起をされています。
ちょっと外れますが、雑誌「市民と法」のここ3回の連続記事も、かなり過激な問題提起で面白いです。

「どんどん信託を進めるんだ!司法書士法施行規則31条業務だから大丈夫!コンサル業務と同じで誰でもできるはず!」という、勢いのよい信託実務家にとっては、かなり厳しい指摘が並んでいます。
民事信託を巡る紛争は、まだ件数が多いとはいえませんが、これから徐々に顕在化してくることは間違いありません。
そのような中、専門家がどのような立場から、どのようなアドバイスをしたのかも、問われてくる時代が確実に到来するものと考えられます。

そういうわけで、信託の実務を担おうとするみなさまには、多面的な見方を育てるという観点から、一読することをお勧めいたします。


[1] 138号、2022年12月、民事法研究会、P26~

長期相続登記等未了土地に関する相談対応Q&A(第2版)

日本司法書士会連合会

令和4年11月28日

 長期相続登記等未了土地に関する相談対応Q&A(第2版)

日本司法書士会連合会

凡例

法:所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法

令:所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法施行令

省令:所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法等に規定する不動産登記法の特例に関する省令

通達:所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法等の施行に伴う不動産登記事務の取扱いについて(通達)

関連情報

国土交通省人口減少時代における土地施策の推進~所有者不明土地等対策~

https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/totikensangyo_tk2_000099.html

法務局 所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法について

https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/page7_000022.html

Q1法務局は何を調査しているのか?

Q1 What is the Legal Department investigating?

A1 登記官は、起業者(土地収用法第8条第1項)その他の公共の利益となる事業を実施しようとする者からの求めに応じて調査した結果、当該事業を実施しようとする土地が「特定登記未了土地(Q2参照)」に該当し、かつ、所有権の登記名義人の死亡後30年を超えて相続登記等がされていないと認めるときは、当該土地(「長期相続登記等未了土地」といいます。)の所有権の登記名義人となり得る者を探索しています(法第44条。所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法の一部を改正する法律(令和4年法律第38号)により、第40条から改正。)。法第44条では、死亡後の期間を10年から30年とされていますが、令第13条では10年と定められています。

A1 The registrar conducts an investigation upon request from an entrepreneur (Article 8, Paragraph 1 of the Expropriation of Land Act) or any other person who intends to implement a project that will benefit the public. As a result, if the officer finds that the land on which the project is to be implemented falls under the category of “specified unregistered land (see Q2)” and that the inheritance has not been registered for more than 30 years since the death of the registered owner of the title, the officer will search the land (“long-term unregistered inheritance land”). In this case, the landowner is searched for a person who could be the registered owner of the land (Article 44 of the Law.). Article 40 has been revised by the Act on Partial Revision of the Act on Special Measures Concerning Facilitation of Use of Land of Unknown Owner (Act No. 38 of 2022)). Article 44 of the Law Article 44 of the law defines the period of time after death as 10 to 30 years, while Article 13 of the Order defines it as 10 years.

Q2 Q1の特定登記未了土地とは?

A2「特定登記未了土地」とは、所有権に係る相続登記等がされていない土地であって、収用適格事業の実施その他の公共の利益となる事業の円滑な遂行を図るために、当該土地の所有権の登記名義人となり得る者を探索する必要があるものを言います(法2条4項)。

Q2 What is the “specified unregistered land” in Q1?

A2 “Specified unregistered land” refers to land that has not been registered for inheritance pertaining to ownership, etc., and for which it is necessary to search for a person who can be the registered owner of the ownership of the land in order to ensure the smooth implementation of expropriation-eligible projects and other projects that benefit the public (Article 2, paragraph 4 of the Act).

Q3 調査の実態は?

A3 各法務局は、入札等を経て公共嘱託登記司法書士協会等に調査業務を委託し、受託者は、法務局から対象土地の一覧及び当初の戸籍等(被相続人の死亡時の戸籍等)を入手して、法定相続人を探索し、法定相続人情報(省令第1条)【資料1】を作成して、戸籍等とあわせて納品します。

Q3 What is the actual situation of the survey?

A3 Each Legal Affairs Bureau consigns research work to a public commissioned registration judicial scrivener association, etc. through bidding, etc.

The commissioned party obtains a list of the subject land and the initial family register, etc. (family register, etc. at the time of the decedent’s death) from the Legal Affairs Bureau, searches for the legal heir, prepares information on the legal heir (Ministerial Ordinance Article 1) [Ref. 1], and delivers it together with the family register, etc.

Q4 調査完了後の流れは?

A4 法定相続人情報には、作成番号が付されて法務局に保管されます。また、登記官は職権で、「所有権の登記名義人の死亡後長期間にわたり相続登記等がされていない土地である旨」の付記登記(Q5参照)を行います。法務局は事前調査により同一登記名義人の土地を把握しており、同一登記名義人が所有(共有)する土地には全て付記登記がなされることになります。なお、登記名義人の完全な名寄せが行われているわけではありませんので、後日、同一登記名義人が所有(共有)する土地が判明する場合があります。

Q4 What is the process after the research is completed?

A4 Legal heir information is assigned a creation number and stored at the Legal Affairs Bureau. The registrar will, ex officio, register a supplementary note (see Q5) stating that the land has not been registered as inherited for an extended period of time after the death of the registered owner of the title.

The Legal Affairs Bureau conducts a survey in advance to identify land owned by the same registered owner. All land owned (co-owned) by the same registered owner is subject to supplementary registration. There is no complete name identification of registered owners. There are cases where land owned (co-owned) by the same registered owner is identified at a later date.

Q5 所有権の登記名義人の死亡後長期間にわたり相続登記等がされていない土地である旨の登記とは?

Q5 What is the registration of land that has not been registered as inherited for a long period of time after the death of the registered owner of the title?

A5 登記の目的欄には「長期相続登記等未了土地」、権利者その他の事項欄には法定相続人情報の「作成番号」及び「登記年月日」が付記登記でなされます【資料2】。調査しても相続人(の全部又は一部)が判明しなかった場合には、「(相続人の全部(又は一部)不掲載)」と登記されます。登記例の詳細は通達に記載されています。

A5 “Land for which long-term inheritance registration, etc. has not been completed” is registered in the “Purpose of registration” column, and “creation number” and “date of registration” of the legal heir information are registered in the “Right holder and other matters” column by supplementary registration [Ref. 2].

If the heirs (in whole or in part) could not be found after the investigation, the registration is made as “(Heirs not listed in whole or in part)”. The details of the registration examples are described in the Notice.

Q6相続人にはどのような通知が行くのですか?

Q6 What kind of notice will be sent to the heirs?

A6法務局は付記登記を行った後に、「長期間にわたり相続登記等がされていないことの通知(お知らせ)」【資料3】を相続人のうちの1名に送ります。通知を受ける相続人は、法で定められておらず、「長期相続登記等未了土地解消作業仕様書【仕様書別添】長期相続登記等未了土地解消作業事務処理要領(第10-2(1))」により、次の順番とされています。

第1順位固定資産課税台帳上の所有者又は納税義務者

第2順位当該土地の居住者

第3順位当該土地の近郊(当該土地と同一都道府県内)の居住者

第4順位その他の者

A6 After the supplementary registration is made, the Legal Affairs Bureau will send a “Notice (Notification) of Long-Term Unregistered Inheritance Registration, etc. (Attachment 3)” [Ref. 3] to one of the heirs.

 The heirs to be notified are not stipulated by law, but are listed in the following order according to the “Guidelines for the Administrative Processing of the Work to Resolve Long-Term Unregistered Inheritance (10-2(1))” in the “Specifications for the Work to Resolve Long-Term Unregistered Inheritance (Attachment to Specifications)”.

The first priority is the owner or taxpayer on the fixed asset taxation registry.

The second priority goes to the resident of the land.

The third is the residents in the vicinity of the land (in the same prefecture as the land).

The fourth rank is other persons.

Q7 法定相続人情報の閲覧権限は誰にありますか?

Q7 Who can view legal heir information?

A7「所有権の登記名義人の相続人」及び「公共の利益となる事業を実施しようとする地方公共団体等の利害関係人」にあります(不動産登記法第121条第2項)。

A7: It is available to “heirs of the registered owner of the title” and “interested parties such as local governments that intend to implement projects of public interest” (Article 121, Paragraph 2 of the Real Property Registration Law).

Q8 法定相続人情報の請求方法は?

Q8 How can I request information on legal heirs?

A8 法定相続人情報は令和4年10月3日までは閲覧のみ認められていました。閲覧請求をすると、法定相続人情報の内容を書面で出力して閲覧に供されますが(不動産登記規則第202条第2項)、あくまで閲覧であり、公印は押されません。

なお、閲覧は当該土地を管轄する法務局の窓口で請求する方法しかなく【資料4、5】、1件につき450円の手数料がかかります(登記手数料令第5条第1項)が、長期相続登記等未了土地解消作業に基づく法定相続人情報を出力した書面の提供のみを請求した場合は、法務局の成果物の有効利用ということで、全国どこの登記所でも、無料で交付が受けられ、また郵送による請求も可能となりました。法定相続人情報の閲覧と一覧図のみの出力の違いをまとめると以下のとおりです。

A8: Until October 3, 2022, only inspection of information on legal heirs was permitted.

When a request for inspection is made, the contents of the information on legal heirs can be printed out in writing for inspection (Article 202, Paragraph 2 of the Real Property Registration Regulations), but the official seal is not affixed.

The only way to request inspection is to make a request at the Legal Affairs Bureau with jurisdiction over the land in question [Ref. 4, 5]. 450 yen per case will be charged (Article 5, Paragraph 1 of the Registration Fee Order), but if you only request the provision of a written output of the legal heir information based on the work to resolve land that has not been registered for long-term inheritance registration, etc., the Legal Affairs Bureau’s results (Article 5, Paragraph 1 of the Registration Fees Order), the document can be delivered free of charge to any registry office in Japan, as it is an effective use of the Legal Affairs Bureau’s deliverables.

Requests can now also be made by mail. The differences between viewing legal heir information and outputting only a list are summarized as follows.

法定相続人情報の閲覧(戸籍等を含む)

対応法務局:当該土地を管轄する法務局のみ

押印:なし

手数料:450円

郵送請求対応:不可

法定相続人情報一覧図のみの出力

対応法務局:当該土地を管轄する法務局以外の他の法務局でも可

押印:なし

手数料:無料

郵送請求対応:可

Q9法定相続人情報はどのように利用できますか?

Q9 How can I use legal heir information?

A9表題部所有者又は登記名義人の相続登記を申請するに際して、法定相続人情報の作成番号を提供すれば、戸籍謄本等の相続を証する情報の提供をする必要はありません(ただし、相続人の全部又は一部が判明しなかった場合(Q5参照)は除きます)。また、表題部所有者の相続人が所有権保存の登記をする場合や、登記名義人の相続人が相続による権利の移転の登記を申請する場合は、同作成番号を提供すれば、住民票等の住所証明情報の提供が不要となるケースがあります(省令第8条)。

また、登記官による付記登記がされていない同一登記名義人の土地があることが判明した場合(法定相続人情報を保管している法務局以外の法務局の管轄不動産を含む。)にも利用できます。さらに、法定相続人情報の内容に、二次相続や三次相続が記録されている場合、その二次相続人や三次相続人が登記名義人となっている土地の相続登記を申請する際に、当該法定相続人情報が利用できます。

ただし、法定相続人情報は、法定相続情報一覧図とは異なり公印もありませんので、例えば銀行手続等における証明書として利用することはできません。

A9 When you apply for registration of inheritance of the titleholder or registered owner, you are not required to provide information evidencing inheritance, such as a copy of the family register, if you provide the creation number of the legal heir information. However, this excludes cases where all or part of the heirs were not identified (see Q5).

In addition, when the heir of the titleholder applies for registration of preservation of ownership or when the heir of the registered owner applies for registration of transfer of rights due to inheritance, there are cases where the provision of address proof information such as a residence certificate is not required if the creation number of the legal heir information is provided (Article 8 of the Ministerial Ordinance).

 This information can also be used when it is found that there is the land of the same registered owner that has not been registered as appended by the registrar. This includes real estate under the jurisdiction of a Legal Affairs Bureau other than the Legal Affairs Bureau that keeps the information on legal heirs.

 If secondary or tertiary inheritance is recorded in the contents of the legal heir information, the legal heir information can be used when applying for inheritance registration of land for which the secondary or tertiary heir is the registered owner.

However, unlike a list of legal heirs, the information of legal heirs does not have an official seal, so it cannot be used as a certificate in banking procedures, for example.

Q10どのような相談が寄せられることになるのか?

Q10 What kind of consultation does the Legal Affairs Bureau receive?

A10法務局は、通知書受領者に対して説明会を開催している場合もありますが、必ず全員が説明会に参加しているわけではありません。

法務局の調査の結果、長期相続登記等未了土地とされ、「長期間相続登記等がされていないことの通知」を受領した相続人が、自分で、又は他の相続人と一緒に司法書士に相談に訪れることが予想されます。

相続人の手元には、基本的に通知書しかありませんので、情報が極めて不足しています。そのため、①その通知書にはどのような意味があるのか、②その土地がどこにあるのか、③他の相続人は誰であるか、④具体的に何をすれば良いのか、という基本的なことから説明する必要があります。

A10 In some cases, legal affairs bureaus hold explanatory meetings for notice recipients. However, not all of them always attend the explanatory meeting.

It is expected that heirs who have received a “Notice of Long-Term Unregistered Inheritance, etc.” as a result of the Legal Affairs Bureau’s investigation and the land is considered to be a long-term unregistered inheritance, etc., or who visit a judicial scrivener for consultation together with other heirs.

Basically, heirs have only the notice in their hands. Therefore, information is extremely scarce.

The specialist needs to explain to the heirs the basics of what the notice means, where the land is located, who the other heirs are, and what exactly they need to do.

Q11通知書の持つ意味は?

Q11 What is the meaning of a notice from the Legal Affairs Bureau to an heir?

A11通知書は、【資料3】にあるとおり、基本的には相続登記等を促す意味しかなく、それを放置することによる罰則等はありません。しかし、民法等の一部を改正する法律(令和3年法律第24号)による不動産登記法改正のうち、相続登記の義務化に関する規律の施行日が令和6年4月1日となっています(令和3年12月17日政令による決定)。そして、同改正法附則(経過措置)では、施行期日において、現に相続登記未了となっている不動産も相続登記の義務化の対象とされ、相続人は「自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日又は施行日のいずれか遅い日」から3年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない」こととなり、「正当な理由がないのにその申請を怠ったときは、10万円以下の過料に処せられる」ことになります。したがって、相続登記の義務化を含む新しい制度に関しても正確な情報と適切なアドバイスの提供が必要となります。

また、そもそも当該土地は、地方自治体等が何かしらの事業を実施しようとしており、その対象土地であるために調査がなされています。したがって、相談が寄せられた段階で、根本的な解決に向けて取組みが開始されることが望ましいといえるでしょう。

A11 As shown in [Ref. 3], a notice letter basically only has the meaning of encouraging inheritance registration, etc., and there are no penalties for neglecting to do so.

However, among the amendments to the Real Property Registration Law made by the Law Partially Amending the Civil Code, etc. (Law No. 24 of 2021), the date of enforcement of the regulation regarding mandatory inheritance registration is April 1, 2024 (decided by Cabinet Order on December 17, 2021).

In addition, the Supplementary Provision (transitional measure) of the Amendment Act provides that real estate for which inheritance registration has not yet been completed as of the effective date is also subject to the mandatory registration of inheritance.

 Heirs must apply for registration of transfer of ownership within three years from the date on which they learned that inheritance had commenced for them and that they had acquired such ownership, or the enforcement date, whichever is later.

Failure to make such an application without justifiable reason will be punishable by a non-penal fine of up to 100,000 yen. Therefore, it is necessary to provide accurate information and appropriate advice regarding the new system, including the mandatory registration of inheritance.

In addition, the land is being surveyed because the local government, etc., intends to implement some kind of project and the land is subject to such a project.

Q12 対象土地の所在場所は?

Q12 Where is the subject land located?

A12 相談者は、対象土地の場所を知らない可能性があります。近隣に住んでいない場合や、同一都道府県に居住している場合であっても、とりわけ農地・山林等については、その傾向が高いでしょう。そのため、各種地図を利用して場所の特定を行い、また、固定資産評価証明書等の評価を確認する等の調査をすることで、土地の現状や価格について相談者に情報を提供し、今後の対応の検討に役立ててもらう必要があります。

ブルーマップや住宅地図、14条地図や公図、登記情報提供サービスの地番検索サービス、固定資産課税台帳附属地図、農地及び農地に関する地図(農地法)、林地台帳や森林の土地に関する地図(森林法)あるいはGoogle map等のオンラインサービスを利用することになるでしょう。また、次のページも参考にしてください。

※全国農地ナビ https://www.alis-ac.jp/

※全国地価マップhttps://www.chikamap.jp/chikamap/Portal

A12 The consultant may not know the location of the subject land. Even if he/she does not live nearby or resides in the same prefecture, this is highly possible with regard to agricultural land, forests, etc.

Therefore, it is necessary to identify the location using various maps and conduct research such as checking the valuation of fixed asset valuation certificates, etc., to provide the consultant with information on the current status and value of the land and help him or she consider future actions.

The following online services are to be used: blue maps, residential maps, Article 14 maps, and public maps, the land number search service of the Registration Information Service, maps attached to the Fixed Property Taxation Registry, maps related to agricultural land and farmland (Agricultural Land Law), forest land registry and maps related to forest land (Forest Law) or Google maps.

Reference.

*National Agricultural Land Navigator

https://www.alis-ac.jp/

*Nationwide land price map: https://www.chikamap.jp/chikamap/Portal

Q13 相談者以外の相続人は?

Q13 What should heirs other than the consulting party do?

A13 「長期間相続登記等がされていないことの通知」を受領して相談に訪れた相続人は、自分以外の誰が相続人であるのかを把握していない場合が少なくありません。そのため、まずは法定相続人情報を取得して相続関係を明らかにする必要があります。必要に応じて、司法書士が代理人となり法定相続人情報を取得し、相続関係について説明をすべきです。相続関係は事案によって異なり、容易に遺産分割協議ができない事案も少なくないと思われます。

また、長期に渡り相続登記がされていない土地は、財産的価値が高くない場合もあり、当該土地に対して相続人が関心を示さないケースも多いと思われます。ただし、A11でも述べたように、今後の相続登記の義務化等も踏まえて考えれば、登記未了のまま放置することや、安易に法定相続分による登記を行うことは避けて、なるべく遺産分割協議により確定的な所有者名義で登記をする方向で解決を図ることが望ましいと考えられます。

A13  Heirs who come for consultation upon receipt of a notice that their inheritance has not been registered, etc. for a long period of time often do not know who other than themselves are their heirs.

Therefore, it is necessary to first obtain information on legal heirs to clarify the inheritance relationship.

If necessary, a judicial scrivener should act as a representative to obtain legal heir information and explain the inheritance relationship.

Inheritance relations vary from case to case, and there are many cases in which it is not possible to easily discuss the division of the estate.

Land that has not been registered as inherited for a long period of time may not have high property value.

In many cases, the heirs show no interest in the land in question. However, as mentioned in A11, taking into consideration the future mandatory registration of inheritance, it is necessary to avoid leaving the land unregistered or easily registering the land according to the legal inheritance. It is considered a good idea to resolve the issue by registering the property in the name of the owner determined by the inheritance division agreement as much as possible.

Q14「起業者その他の公共の利益となる事業を実施しようとする者」を確認する方法は?

Q14 How do you identify an entrepreneur or other entity that intends to conduct a business of public interest?

A14「起業者その他の公共の利益となる事業を実施しようとする者」としては、地方公共団体のみならず民間事業者、NPO、地域コミュニティ等の幅広い主体が想定されています。法務局は地方公共団体に対して説明会等を開催して、地方公共団体等からの要請を受付け、その中から調査対象土地を選定しています。

長期相続登記等未了土地に関する調査がどの地方公共団体や公共の利益となる事業を実施しようとする者の依頼によって調査対象となったかについては、相談を受ける司法書士として気になるところではありますが、法務局から情報提供を受けることはできません。そのため、対象土地の地目や利用状況等から推測するしかなく、個別に地方公共団体等に問合せをして判明することもあるとは思いますが、その可能性は必ずしも高くないと思われます。

A14 Entrepreneurs and other persons who intend to implement a business of public interest are expected to be a wide range of entities, including not only local public entities but also private businesses, NPOs, and local communities.

The Legal Affairs Bureau accepts requests from local governments, etc., by holding explanatory meetings, etc., for local governments, and selects lands to be surveyed from among them.

As a judicial scrivener who receives consultations, it is of concern to us which local governments or persons who intend to implement projects of public interest were the subject of surveys concerning land that has not yet been registered for long-term inheritance registration, etc. However, we cannot receive information from the Legal Affairs Bureau.

Therefore, we can only speculate based on the land title and use of the subject land, etc. Although it may be found out by making individual inquiries to local public entities, etc., the likelihood of such an inference is not necessarily high.

1. 所有権の保存の登記
(1) The registration of preservation of ownership.

〇〇県〇〇市〇〇町〇〇〇〇―〇     

全部事項証明書: The certification of all recording matters. (土地): The land.

 権 利 部(甲区): The rights section (Section A).        

(所有権に関する事項): Matters concerning the owner.
順位番号
: The rank number. 登記の目的
: The purpose of recording. 受付年月日・受付番号
: The recording date and number. 【権利者その他の事項】
: The holder of rights and other particulars.

付記1号
Appendix I. 所有権保存
: The preservation of ownership.
○○年○○月○○日
第〇〇〇〇号 所有者: The name and address of owner.
住所〇〇市〇〇丁目〇番〇号:
氏名○○

長期相続登記等未了土地

: The long-term sequential registration and another outstanding land. 余白
: The empty column. 作成番号 第0000-0000-0000号
○○年○○月〇日付記
The number: 0000-0000-0000.
The year, month, and date of registration.
※下線のあるものは抹消事項であることを示す。
The underlines indicate delated matters. The filing Number:00000000000 (1/1)                  
これは登記記録に記録されている事項の全部を証明した書面である。
: This document evidences all of the entries made in the registry.
(〇〇地方法務局管轄)〇〇Legal Affairs Bureau
〇〇年〇〇月〇〇日 Date
〇〇県〇〇市〇〇町〇〇〇〇―〇             

全部事項証明書: The certification of all recording matters. (土地): The land.

これは登記記録に記録されている事項の全部を証明した書面である。
: This document evidences all of the entries made in the registry.

(〇〇地方法務局管轄)〇〇Legal Affairs Bureau

〇〇年〇〇月〇〇日 Date
〇〇Legal Affairs Bureau   登記官 〇〇  Registrar’s name: 〇〇

※下線のあるものは抹消事項であることを示す。
Underlines indicate delated matters. Filing Number:00000000000 (1/1)   

 

(相続人の全部又は一部が判明しないとき)
When all of the heirs are not known.
(2) When some of the heirs are not known.
〇〇県〇〇市〇〇町〇〇〇〇―〇     

全部事項証明書: The certification of all recording matters. (土地): The land.

 権 利 部(甲区): The rights section (Section A).        

(所有権に関する事項): Matters concerning the owner.
順位番号
: The rank number. 登記の目的
: The purpose of recording. 受付年月日・受付番号
: The recording date and number. 【権利者その他の事項】
: The holder of rights and other particulars.

付記1号
Appendix I. 所有権保存
: The preservation of ownership.
○○年○○月○○日
第〇〇〇〇号 所有者: The name and address of owner.
住所〇〇市〇〇丁目〇番〇号:
氏名○○

長期相続登記等未了土地

: The long-term sequential registration and another outstanding land. 余白
: The empty column. 作成番号 第0000-0000-0000号
(相続人の全部(又は一部)不掲載)
○○年○○月〇日付記
The number: 0000-0000-0000.
The non-publication or partial non-publication of heirs in whole or in part.
The year, month, and date of registration.
※下線のあるものは抹消事項であることを示す。
The underlines indicate delated matters. The filing Number:00000000000 (1/1)                  
これは登記記録に記録されている事項の全部を証明した書面である。
: This document evidences all of the entries made in the registry.

(〇〇地方法務局管轄)〇〇Legal Affairs Bureau

〇〇年〇〇月〇〇日 Date
〇〇県〇〇市〇〇町〇〇〇〇―〇             全部事項証明書: The certification of all recording matters. (土地): The land.

これは登記記録に記録されている事項の全部を証明した書面である。
: This document evidences all of the entries made in the registry.

(〇〇地方法務局管轄)〇〇Legal Affairs Bureau

〇〇年〇〇月〇〇日 Date
〇〇Legal Affairs Bureau   登記官 〇〇  Registrar’s name: 〇〇

※下線のあるものは抹消事項であることを示す。
Underlines indicate delated matters. Filing Number:00000000000 (1/1)

  

2 所有権の移転の登記(単有)

The registration of transfer of ownership (single ownership).
〇〇県〇〇市〇〇町〇〇〇〇―〇     

全部事項証明書: The certification of all recording matters.

(土地): The land.  権 利 部(甲区): The rights section (Section A).        (所有権に関する事項): Matters concerning the owner.
順位番号
: The rank number. 登記の目的
: The purpose of recording. 受付年月日・受付番号
: The recording date and number. 【権利者その他の事項】
: The holder of rights and other particulars.

付記1号
Appendix I. 所有権移転
: The transfer of ownership.
○○年○○月○○日
第〇〇〇〇号 原因 年月日売買
The cause Date of purchase and sale.
所有者: The name and address of the owner.
住所〇〇市〇〇丁目〇番〇号:
氏名○○
長期相続登記等未了土地
: The long-term sequential registration and another outstanding land. 余白
: The empty column. 作成番号 第0000-0000-0000号
○○年○○月〇日付記
The number: 0000-0000-0000.
The year, month, and date of registration.
※下線のあるものは抹消事項であることを示す。
The underlines indicate delated matters. The filing Number:00000000000 (1/1)                  
これは登記記録に記録されている事項の全部を証明した書面である。
: This document evidences all of the entries made in the registry.

(〇〇地方法務局管轄)〇〇Legal Affairs Bureau

〇〇年〇〇月〇〇日 Date

3 所有権の移転の登記(共有)
The registration of transfer of ownership (co-ownership).
〇〇県〇〇市〇〇町〇〇〇〇―〇     

全部事項証明書: The certification of all recording matters. (土地): The land.
 権 利 部(甲区): The rights section (Section A).        

(所有権に関する事項): Matters concerning the owner.
順位番号
: The rank number. 登記の目的
: The purpose of recording. 受付年月日・受付番号
: The recording date and number. 【権利者その他の事項】
: The holder of rights and other particulars.

付記1号
Appendix I.

付記1号
Appendix I.
所有権移転
: The transfer of ownership.
○○年○○月○○日
第〇〇〇〇号 原因 年月日売買
The cause Date of purchase and sale.
所有者: The name and address of the owner.
住所〇〇市〇〇丁目〇番〇号:
氏名○○
2番共有者乙某につき長期相続登記等未了土地
: The land with no long-term inheritance registration, etc. completed in the name of co-owner No. 2. 余白
: The empty column. 作成番号 第0000-0000-0000号
○○年○○月〇日付記
The number: 0000-0000-0000.
The year, month, and date of registration.
2番共有者乙某につき長期相続登記等未了土地
: The land with no long-term inheritance registration, etc. completed in the name of co-owner No. 2. 余白
: The empty column. 作成番号 第0000-0000-0000号
○○年○○月〇日付記
The number: 0000-0000-0000.
The year, month, and date of registration.
※下線のあるものは抹消事項であることを示す。
The underlines indicate delated matters. The filing Number:00000000000 (1/1)                  
これは登記記録に記録されている事項の全部を証明した書面である。
: This document evidences all of the entries made in the registry.

(〇〇地方法務局管轄)〇〇Legal Affairs Bureau

〇〇年〇〇月〇〇日 Date

      

          

              

12月相談会のご案内―家族信託の相談会その50―

お気軽にどうぞ。

2022年12月23日(金)14時~17時
□ 認知症や急な病気への備え
□ 次世代へ確実に引き継ぎたいものを持っている。
□ 家族・親族がお金や土地の話で仲悪くなるのは嫌。
□ 収益不動産オーナーの経営者としての信託 
□ ファミリー企業の事業の承継
その他:
・共有不動産の管理一本化・予防
・配偶者なき後、障がいを持つ子の親なき後への備え
1組様 5000円
場所
司法書士宮城事務所(西原町)

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