民事信託の登記の諸問題(16)

登記研究[1]の記事、渋谷陽一郎「民事信託の登記の諸問題(16)」からです。

信託法を審議した2006年の第165回国会では、次のような、民事信託支援業務に取り組む資格者代理人の人々が注意しておくべき参議院法務委員会の附帯決議が付されている。1つは、福祉型信託に関する附帯決議の抜粋である。

 高齢者や障害者の生活を支援する福祉型の信託については、特にきめ細やかな支援の必要性が指摘されていることにも留意し・・・

「特にきめ細やかな支援の必要性」という表現に着目したい。信託条項の雛型や定型書式の盲目的な利用には注意しなければならない。

リンクを貼っておきます。

参議院

第165回国会 (平成18年9月26日~平成18年12月19日)

法務委員会

信託法案及び信託法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案に対する附帯決議 (平成18年12月7日)

https://www.sangiin.go.jp/japanese/gianjoho/ketsugi/165/futai_ind.html

 特にきめ細やかな支援の必要性が指摘されていることにも留意、が信託条項の雛型や定型書式の盲目的な利用を指しているのか、分かりませんでした。

また、登記によって、実体法、手続法共に法的効果等を全く生じない無意味な情報などが過剰に並ぶ信託原簿が存在していた。

 受益者取消権(旧信託法31条)による、直接、受託者の権限外処分による取消権の対抗要件となる信託原簿から、一歩後退している信託目録になっていますが、現在の信託目録の方が記録として分かりやすくなっているのではないかと感じます。それは、信託目録の記録内容について、様々な情報があり議論がなされているからだと思います。私は信託原簿の時代に司法書士ではありませんでしたが、信託原簿が空洞化したのは、実務情報が公開されることが少なく、取り扱う専門家が一部であったことが原因なのかなと想像します。

むしろ、民事信託の登記の分野に限っていえば、従来の廃止論の経緯を忘却し、信託の専門家を称する資格者代理人の一部が「信託目録の作成は資格者代理人の腕の見せ所」や「創意工夫」などとして、法務局に対して、第三者のための公示ではなく、依頼者の利益代表としての過剰情報を提供する反面、必要情報が提供されないないなど、信託原簿時代以上に問題は深刻化しつつあるようだ(資格者代理人の法令実務精通義務違反を構成しよう)。過去の営業信託のために登記から生じた不幸が再現されないよう祈るほかない。

 法令実務精通義務違反は、司法書士法上、懲戒処分の対象となるので、もう少し明確な基準が必要じゃないかなと思います。例えば、過剰情報を提供する場合(親族など内部の個人情報に関わる。)と、必要情報が提供されない場合(第三者への公示としての登記が、意味をなさなくなる。)では、基準が異なってくるのではないかなと感じます。


[1] 898号、令和4年12月、テイハン、P134~

加工相続土地国庫帰属法施行規則

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00460.html

○法務省令第一号

相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律(令和三年法律第二十五号)第二条第三項第四号、第三条、第四条第二項、第九条、第十条第二項及び第三項、第十三条第四項並びに第十五条第一項並びに相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律施行令(令和四年政令第三百十六号)第四条第一項第二号及び第七条の規定に基づき、相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律施行規則を次のように定める。

令和五年一月十三日

法務大臣齋藤健

相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律施行規則

(承認申請書等の提出方法)

第一条相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律(以下「法」という。)第三条第一項の規定による承認申請書及び添付書類の提出は、

承認申請に係る土地の所在地を管轄する法務局又は地方法務局の長(以下「管轄法務局長」という。)に

対して行わなければならない。

ただし、承認申請に係る隣接する二筆以上の土地の管轄法務局長が

二以上あるときは、

そのいずれかに対して提出すれば足りる。

(承認申請書の記載事項)

第二条承認申請書には、法第三条第一項各号に掲げる事項のほか、

次に掲げる事項を記載し、

承認申請者又はその代表者若しくは法定代理人(以下「承認申請者等」という。)が

記名押印しなければならない。

ただし、承認申請者等が署名した承認申請書について公証人又はこれに準ずる者の認証を受けたときは、承認申請書に記名押印することを

要しない。

一承認申請者が法人

であるときは、その代表者の氏名

二法定代理人

によって承認申請をするときは、当該法定代理人の氏名又は名称及び住所並びに法定代理人が法人であるときはその代表者の氏名

三承認申請に係る土地の表題部所有者(不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)第二条第十号に規定する表題部所有者をいう。第十三条第一項において同じ。)

又は所有権の登記名義人(同法第二条第十一号に規定する登記名義人をいう。第十三条第一項において同じ。)の

氏名又は名称及び住所

2 承認申請書には、前項各号に掲げる事項の

ほか、次に掲げる事項を記載するものとする。

一承認申請者又は法定代理人の電話番号その他の連絡先

二手数料の額

三承認申請の年月日

四承認申請書を提出する管轄法務局長の表示

3 承認申請書には、第一項の規定により記名押印した者の

印鑑に関する証明書(住所地の市町村長(特別区の区長を含むものとし、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十九第一項の指定都市にあっては、市長又は区長若しくは総合区長とする。)又は登記官が作成するものに限る。)を

添付しなければならない。

ただし、次に掲げる場合は、この限りでない。

一会社法人等番号

(商業登記法(昭和三十八年法律第百二十五号)第七条(他の法令において準用する場合を含む。)に規定する会社法人等番号をいう。以下この号及び次条第三号において同じ。)を有する法人の代表者又は代理人が記名押印した者である場合において、その会社法人等番号を承認申請書に記載したとき。

二承認申請者等が記名押印した承認申請書について

公証人又はこれに準ずる者の認証を受けたとき。

三裁判所によって選任された者が

その職務上行う承認申請の承認申請書に押印した印鑑に関する証明書

であって、裁判所書記官が最高裁判所規則で定めるところにより作成したもの

が添付されているとき。

(添付書類)

第三条承認申請書には、

次に掲げる書類を添付しなければならない。

一承認申請者が相続又は遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)により承認申請に係る土地の所有権又は共有持分を取得した者であるときは、

当該者であることを証する書面(当該者であることが登記記録(不動産登記法第二条第五号に規定する登記記録をいう。)から明らかであるときを除く。)

二法定代理人によって承認申請をするときは、

戸籍事項証明書その他その資格を証する書面

三承認申請者が法人であるときは、

当該法人の代表者の資格を証する書面(当該法人が会社法人等番号を有する法人である場合において、その会社法人等番号を承認申請書に記載したときを除く。

四承認申請に係る土地の位置及び範囲を明らかにする図面

五承認申請に係る土地の形状を明らかにする写真

六承認申請に係る土地と当該土地に隣接する土地との境界点を明らかにする写真

七法第十一条第一項の規定により承認申請に係る土地の所有権が国庫に帰属した場合には

当該土地の所有権が国庫に帰属したことを原因とする国が登記権利者となる所有権の移転の登記を官庁が嘱託することを承諾したことを証する書面(承認申請者等が記名し、承認申請書に押印したものと同一の印を用いて押印したもの又は前条第一項ただし書の認証を受けたものに限る。)

(承認申請書の作成)

第四条承認申請書は、

土地の一筆ごとに

作成しなければならない。

ただし、同一の承認申請者等が二筆以上の土地についての承認申請を

同時にするときは、この限りでない。

(手数料の納付方法等)

第五条法第三条第二項の規定による手数料の納付は、

承認申請書に手数料の額に相当する額の

収入印紙を貼り付けてするものとする。

2 前項の手数料は、

これを納付した後においては、返還しない。

(承認申請の却下の通知方法等)

第六条法第四条第二項の規定による承認申請を

却下したことの通知は、

承認申請者ごとに、

決定書を交付して行うものとする。

2 前項の規定による交付は、

決定書を送付する方法によりすることが

できる。

3 管轄法務局長は、承認申請の却下があったときは、

添付書類を還付するものとする。

ただし、偽造された書面その他の不正な承認申請のために用いられた疑い

がある書面については、この限りでない。

(承認申請の取下げ)

第七条承認申請の取下げは、

承認申請を取り下げる旨を記載した書面(第二十三条第四項第一号において「取下書」という。)を

管轄法務局長に提出する方法

によってしなければならない。

2 承認申請の取下げは、法第五条第一項の承認がされた後は、

することができない。

3 管轄法務局長は、

承認申請の取下げがされたときは、

添付書類を還付するものとする。

この場合においては、前条第三項ただし書の規定を準用する。

(承認申請書等の訂正等)

第八条承認申請者等は、

承認申請書その他の相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属の承認に関する書面につき

文字の訂正、加入又は削除をしたときは、

その旨及びその字数を欄外に記載し、

又は訂正、加入若しくは削除をした文字に括弧その他の記号を付して、

その範囲を明らかにしなければならない。

この場合において、

訂正又は削除をした文字は、なお読むことができるようにしておかなければならない。

2 承認申請者等は、

承認申請書が二枚以上であるときは、

各用紙に当該用紙が何枚目であるかを記載すること

その他の必要な措置を講じなければならない。

(承認申請書等の送付方法)

第九条承認申請者等が

承認申請書及び添付書類を送付するときは、

書留郵便

又は民間事業者による信書の送達に関する法律(平成十四年法律第九十九号)第二条第六項に規定する一般信書便事業者若しくは同条第九項に規定する特定信書便事業者(以下この項及び次条第六項において「信書便事業者」と総称する。)による同法第二条第二項に規定する信書便(次条第六項及び第七項において「信書便」という。)の役務であって当該信書便事業者において引受け及び配達の記録を行うもの

によるものとする。

2 前項の場合には、

承認申請書及び添付書類を入れた封筒の表面に

承認申請書が在中する旨を

明記するものとする。

(添付書類の原本の還付請求)

第十条承認申請者等は、

承認申請書の添付書類の

原本の還付を請求することができる。

ただし、第二条第三項本文及び同項第三号の印鑑に関する証明書

並びに第三条第七号の書面については、

この限りでない。

2 前項本文の規定により

原本の還付を請求する承認申請者等は、

原本と相違ない旨を記載した謄本を

提出しなければならない。

3 管轄法務局長は、第一項本文の規定による請求があったときは、

承認申請に係る審査の完了後、

当該請求に係る書類の原本を還付

しなければならない。

この場合には、前項の謄本と当該請求に係る書類の原本を照合し、

これらの内容が同一であることを確認した上、

同項の謄本に原本還付の旨を

記載しなければならない。

4 前項前段の規定にかかわらず、

管轄法務局長は、

偽造された書面その他の不正な承認申請のために用いられた疑いがある書面については、

これを還付することができない。

5 第三項の規定による原本の還付は、

承認申請者等の申出により、

原本を送付する方法によることができる。

この場合においては、承認申請者等は、

送付先の住所をも申し出なければならない。

6 前項の場合における書類の送付は、

同項の住所に宛てて、

書留郵便

又は信書便の役務であって信書便事業者において引受け及び配達の記録を行うものによって

するものとする。

7 前項の送付に要する費用は、

郵便切手又は信書便の役務に関する料金の支払のために使用することができる証票であって法務大臣が指定するものを

提出する方法により納付しなければならない。

8 前項の指定は、告示してしなければならない。

(承認申請の受付)

第十一条管轄法務局長は、

承認申請書が提出されたときは、

受付帳に承認申請の受付の年月日及び受付番号並びに承認申請に係る土地の所在及び地番を

記録しなければならない。

2 管轄法務局長は、

前項の規定により受付をする際、

承認申請書に承認申請の

受付の年月日及び受付番号を記載しなければならない。

3 受付番号は、

一年ごとに更新するものとする。

(承認申請者から所有権を取得した者の取扱い)

第十二条法第十一条第一項の規定による負担金の納付がされるまでの間に、

承認申請者から承認申請に係る土地の所有権の全部又は一部を取得した者(法第二条第一項又は第二項の承認申請をすることができる者に限る。以下この条において「新承認申請権者」という。)があるときは、

新承認申請権者は、

その取得の日から六十日以内に限り、

管轄法務局長に申し出て、

承認申請手続における承認申請者の地位を

承継することができる。

2 前項の申出は、

新承認申請権者が

申出書及び添付書類を

提出して行わなければならない。

3 前項の申出書及び添付書類については、

第二条(第二項第二号を除く。)及び第三条(第一号から第三号まで及び第七号に係る部分に限る。)の規定を準用する。

この場合において、

「承認申請書」とあるのは「申出書」と、「承認申請者」とあるのは「申出人」と、「承認申請者等」とあるのは「申出人等」と、「承認申請を」とあるのは「申出を」と、「承認申請に係る土地の表題部所有者」とあるのは「申出に係る土地の表題部所有者」と、「承認申請の」とあるのは「申出の」と、「承認申請者が相続又は遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)により承認申請に係る土地の所有権又は共有持分を取得した者であるときは、当該者」とあるのは「申出人が新承認申請権者」と

読み替えるものとする。

(隣接地所有者への通知)

第十三条管轄法務局長は、

承認申請があったときは、

その旨を記載した通知書に、

第三条第四号から第六号までの書類の写しを添付して、

承認申請に係る土地に

隣接する土地の表題部所有者又は所有権の登記名義人に

送付するものとする。

2 前項の規定による通知は、

前項の表題部所有者又は所有権の登記名義人の

登記簿上の住所に宛てて発すれば足りる。

(法第二条第三項第四号の特定有害物質の基準)

第十四条法第二条第三項第四号に規定する法務省令で定める基準は、

土壌汚染対策法施行規則(平成十四年環境省令第二十九号)第三十一条第一項及び第二項の基準とする。

(農地の地積に応じた負担金が算定される区域)

第十五条相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律施行令(以下「令」という。)第四条第一項第二号に規定する法務省令で定める事業は、次に掲げる要件を満たしている事業とする。

一次のいずれかに該当する事業(主として農地の災害を防止することを目的とするものを除く。)であること。

イ農業用用排水施設の新設又は変更

ロ区画整理

ハ農地の造成(昭和三十五年度以前の年度にその工事に着手した開墾建設工事を除く。)

ニ埋立て又は干拓

ホ客土、暗きよ排水その他の農地の改良又は保全のため必要な事業

二次のいずれかに該当する事業であること。

イ国又は地方公共団体が行う事業

ロ国又は地方公共団体が直接又は間接に経費の全部又は一部につき補助その他の助成を行う事業

ハ農業改良資金融通法(昭和三十一年法律第百二号)に基づき公庫から資金の貸付けを受けて行う事業

ニ公庫から資金の貸付けを受けて行う事業(ハに掲げる事業を除く。)

(隣接する二筆以上の土地の負担金算定の特例の申出方法)

第十六条令第五条第一項の規定による申出は、

次に掲げる事項を記載した申出書を

管轄法務局長に提出して行わなければならない。

ただし、隣接する二筆以上の承認申請に係る土地の

管轄法務局長が二以上あるときは、

そのいずれかに対して提出するものとする。

一申出をする者の氏名又は名称及び住所

二申出に係る隣接する二筆以上の承認申請に係る土地の所在及び地番

三承認申請の受付の年月日及び受付番号(承認申請と併せて申出をする場合を除く。)

四令第五条第二項の規定により共同して申出をするときは、その旨

(承認等の通知方法)

第十七条法第九条の規定による承認をしたことの通知は、

その旨を記載した書面を

承認申請者ごと

に交付して行うものとする。

2 法第十条第二項の規定による負担金の額の通知は、

前項の通知と併せて、

負担金の額を記載した書面を

承認申請者ごとに交付して行うものとする。

3 前二項の規定による交付は、

前二項に規定する書面を

送付する方法によりすることができる。

4 法第九条の規定による承認を

しないことの通知については、

第六条の規定を準用する。

(承認に関する意見聴取方法)

第十八条法第八条の規定による財務大臣及び農林水産大臣からの意見の聴取は、

各大臣の意見及びその理由を記載した

書面の提出を受けることにより行うものとする。

(負担金の納付方法)

第十九条法第十条第一項の規定による負担金の納付の手続は、

会計法(昭和二十二年法律第三十五号)第四条の二第三項に規定する歳入徴収官が発した

納入告知書又は納付書によってしなければならない。

(国庫帰属に伴う関係資料の送付)

第二十条管轄法務局長は、

承認申請に係る土地の所有権が国庫に帰属したときは、

相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属の承認に係る手続に関する書類(第二十三条第四項第一号において「手続書類」という。)の写しを、

財務大臣(当該土地を農林水産大臣が管理するときは、農林水産大臣)に

送付するものとする。

(承認の取消しの通知の方法)

第二十一条法第十三条第四項の規定による承認の取消しの通知は、

決定書を法第五条第一項の

承認を受けた者ごとに

交付して行うものとする。

2 前項の規定による交付は、

同項に規定する書面を送付する方法によりするこ

とができる。

(権限の委任)

第二十二条法第十五条第一項の規定により、

次に掲げる法務大臣の権限は、

法務局又は地方法務局の長に委任する。

ただし、第二号、第四号、第五号、第九号、第十四号及び第十五号に掲げる権限については、

法務大臣が自ら行うことを妨げない。

一法第二条第一項の規定による承認申請を受け付ける権限

二法第四条第一項の規定による承認申請の却下

三法第四条第二項の規定による通知

四法第五条第一項の承認をする権限

五法第五条第一項の承認をしない権限

六法第六条第一項の規定により職員に事実の調査をさせる権限

七法第六条第三項の規定により職員に他人の土地に立ち入らせる権限

八法第六条第四項の規定による通知

九法第七条の規定による協力の求め

十法第八条の規定による意見聴取

十一法第九条の規定による通知

十二法第十条第二項の規定による通知

十三法第十一条第二項の規定による通知

十四法第十三条第二項の規定による意見聴取

十五法第十三条第三項の規定による同意の取得

十六法第十三条第四項の規定による通知

十七令第五条第一項の規定による特例の申出を受け付ける権限

十八令第五条第三項の規定による負担金の算定

(帳簿)

第二十三条法務省には、

次に掲げる帳簿を備えるものとする。

一法務省決定原本つづり込み帳

二審査請求書類等つづり込み帳

2 法務局又は地方法務局には、

次に掲げる帳簿を備えるものとする。

一受付帳

二承認申請書類つづり込み帳

三決定原本つづり込み帳

四各種通知簿

3 法務省が備える次の各号に掲げる帳簿には、

当該各号に定める書類をつづり込むものとする。

一法務省決定原本つづり込み帳法務大臣が作成した法第四条第一項の規定による承認申請の却下、法第五条第一項の承認をしないこと又は法第十三条第一項の規定による承認の取消しに係る決定書の原本及び法第五条第一項の承認をしたこと又は法第十条第二項の規定による

負担金の額の通知に係る書面の原本

二審査請求書類等つづり込み帳審査請求書その他の審査請求事件に関する書類

4 法務局又は地方法務局が備える次の各号に掲げる帳簿には、当該各号に定める書類をつづり込むものとする。

一承認申請書類つづり込み帳

承認申請書及び添付書類、取下書その他の手続書類(前項第一号又は次号の規定によりつづり込むものを除く。)

二決定原本つづり込み帳管轄法務局長が作成した

法第四条第一項の規定による承認申請の却下又は法第五条第一項の承認をしないことに係る

決定書の原本及び同項の承認をしたこと又は法第十条第二項の規定による負担金の額の通知に係る書面の原本

(保存期間)

第二十四条法務省が備える次の各号に掲げる帳簿の

保存期間は、当該各号に定めるとおりとする。

一法務省決定原本つづり込み帳これにつづり込まれた

決定書又は書面に係る処分の年の翌年から十年間

二審査請求書類等つづり込み帳これにつづり込まれた

審査請求に係る裁決又は決定の年の翌年から五年間

2 法務局又は地方法務局が備える次の各号に掲げる帳簿の

保存期間は、当該各号に定めるとおりとする。

一受付帳受付の年

の翌年から十年間

二承認申請書類つづり込み帳法第四条第一項の規定による

承認申請の却下、法第五条第一項の承認をしたこと、同項の承認をしないこと

又は第七条第一項の規定による承認申請の取下げの年

の翌年から十年間

三決定原本つづり込み帳これにつづり込まれた決定書又は書面に係る処分の年

の翌年から十年間

四各種通知簿通知の年

の翌年から一年間

(帳簿の廃棄)

第二十五条第二十三条第一項に規定する帳簿を廃棄するときは、法務大臣の認可を、同条第二項に規定する帳簿を廃棄するときは、管轄法務局長の認可を受けなければならない。

附則

この省令は、法の施行の日(令和五年四月二十七日)から施行する。

相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律施行規則

案に関する意見募集の結果について

法務省民事局民事第二課

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00460.html

  省令案第1条関係

(別紙)

1  省令案第1条但書について、

いずれかの管轄法務局長に対して承認申請書が提出されたときは、

当該提出がされた管轄法務局長が

その後の審査を取り扱うものと考えられるが、

その具体的な在り方については、

通達等で明らかにすべきである。

省令案第1条第1項但書の場合の

取扱いは御認識のとおりです。

この点については

通達や法務省ホームページ等で明らかにする予定です。

2 省令案第1条及び第2条について、

承認申請に係る法務局は、

原則としてその本局のみを予定しているものと考えられるところ、

例えば、本局以外の管轄内にある

承認申請に係る土地の実地調査や

承認申請者又はその代表者若しくは法定代理人(以下「承認申請者等」という。)に対する事実の聴取については、

例えば、事実の調査に係る現地立会い等において

任意代理人等の承認申請者等が別途選任する者の参加を許容する、

あるいは、承認申請者等の住所等最寄りの

法務局における事情聴取を可能とする等の

運用等を整備すべきである。

現地での立会い等が必要になる場合には、

承認申請者のほか

承認申請者が指定する者の

同行を認めることとしており、

この点については

通達や法務省ホームページ等で明らかにする予定です。

3  帰属法、帰属政令と

本省令案の規定からすると

申請代理人による承認申請を想定していないと思慮するが、

一方、国庫帰属承認手続は専門家の関与が必要な手続であることから

そのサポートも必要であると考える。

このため本省令案で法務局に対する手続であることが定められたことから、

法務局に提出する書類の作成及びその相談を業として行う事が可能な士業に

申請の際の同行、

申請人が出頭できない場合の提出代行など

の申請代行手続を認めるべきではないか。

相続土地国庫帰属制度における

専門家の活用等の考え方については、

法務省ホームページで明らかにしています。

省令案第2条関係

4    省令案によれば、本手続は

書面申請を前提にしているが、

将来的には電子申請、費用の電子納付が採用されることを希望する。

今後の制度の運用実態を把握・検証した上で、検討してまいります。

5     共有地について

国庫帰属の承認申請を行う場合、

記名押印は1枚の承認申請書にしなければならないか。

省令案第2条第1項但書の場合を除き、

承認申請書は一筆ごとに一通作成することになりますが、

共有者の押印を

同一の用紙にする必要まではありません。

6     省令案2条第1項について、帰属法第3条第

1項第2号に代わる情報として不動産番号の記載及び当該記載による承認申請に係る土地の所在、地番、地目及び地積の記載の省略を許容すべきである。

本制度は不動産登記制度とは

異なる制度であるため、

不動産番号の記載によって記載を省略することは困難です。

7     記名共有地等が

権利能力なき社団を構成している場合、

承認申請は可能という理解でよいか。

その場合、承認申請書には

権利能力なき社団の代表者を

承認申請者として記載すればよいか。

承認申請権者は

相続等により土地の所有権を取得した者

とされているので(帰属法第2条)、

当該要件に該当する者であれば承認申請をすることは可能です。

8    省令案第2条第1項第2号の

「法人であるときはその」は同項第1号と同様に

「法人であるときは、その」の方がよい。

また、第2条第1項第2号の「住所」は、

法人であるときは「主たる事務所の所在地」を

記載すべきではないか。

原案のとおりとさせていただきます。

9     破産管財人が承認申請をすることは可能か。 

法令の要件に該当すれば可能であると考えます。

10   法定代理人としては、

親権者、成年後見人、不在者財産管理人、相続財産管理人及び相続財産清算人を念頭に置いているという理解でよいか。

御指摘の親権者等は、「法定代理人」に当たるものと考えられます。

11   士業による代理申請を認めるべきである。

   相続土地国庫帰属制度における専門家の活用等の考え方については、法務省ホームページで明らかにしています。

12   承認申請の法的書類の作成を依頼している弁護士その他の士業の連絡先を記載することは可能か。

任意的記載事項として記載することは可能です。

13   印鑑証明書の添付が必要な場合、

法人の代表者が登記所に印鑑を提出しているときは

登記所提出印を、

法人の代表者が登記所に印鑑を提出していないときは

市町村登録印を押印することになるはずである。

省令案第2条第3項第1号により、

会社法人等番号を記載した場合には、

登記所に印鑑を提出しているか否かにかかわらず、

一切の印鑑証明書が不要となる。

登記所に印鑑を提出していない場合であって、

会社法人等番号を記載した場合には、

印鑑の照合は不可能であり、

照合はしないということになる。

印鑑の照合をしないような書面について

押印を求めるのは、

行政手続における押印の見直し方針に反している。

印鑑の照合を行うのであれば

会社法人等番号の記載によって

添付省略のできる印鑑証明書を

登記所発行のものに限るべきであり、

印鑑の照合を行わないのであれば

会社法人等番号の記載によって

押印自体を不要とすべきである。

本制度では

印影の同一性を確認することにより

申請内容の真実性を確認することを

予定しており、

省令案第2条第1項において

法人の代表者の記名押印(印鑑は登記所に届け出たもの)を

必要としています。

14   省令案第2条第3項本文及び同項第1号につき、

商業登記法第12条の印鑑の提出をしていない法人が

承認申請者等となるときの

省令案第2条第3項本文の

印鑑に関する証明書の取扱いとしては、

例えば、法人の代表者本人に係る本条第3項本文の

印鑑に関する証明書の添付をもって足りるとする等、

当該取扱いに係る運用等を整備すべきである。

本制度では印鑑の照合を行うため、

省令案第2条第1項において

法人の代表者の記名押印を必要としています。

15  省令案第2条第3項第2号につき、

承認申請者等が外国人であるときの

当該承認申請者に係るいわゆるサイン証明は、

同号の「公証人又はこれに準ずる者の認証」として

取り扱うこととすべきである。

いわゆるサイン証明については、

省令案第2条第3項第2号の「公証人又はこれに準ずる者の認証」として取り扱うこととしており、この点については通達や法務省ホームページ等で明らかにする予定です。

16  省令案第2条第3項第3号につき、

相続財産清算人、不在者財産管理人及び成年後見人につき

裁判所が発行する印鑑証明書は、

所有者不明土地管理人のそれと同様に、

同号の印鑑証明書として取り扱うこととすべきである。

相続財産清算人、不在者財産管理人及び成年後見人につき裁判所が発行する印鑑証明書は、

省令案第2条第3項第3号の印鑑証明書として取り扱うこととしていますが、この点については通達や法務省ホームページ等で明らかにする予定です。

省令案第3条関係

17   省令案に規定する添付書類では、

調査が困難であると思い、

添付書類(案)を提案します。

(添付書類)

第三条

・位置図、現況案内図

・境界が確定している旨の図面(※地積更正登記済か地積更正登記ができる図面)

(地積測量図、国土調査図面、筆界確認書等)

※地積測量図は、現地復元性があるものに限る。

・現況地目が把握できる写真等

・公図(地図訂正が必要な場合は土地所在図)

・隣接土地の登記簿

・隣接土地の地積測量図(写し)

土地の位置及び範囲を示すための図面は、

測量した成果により作成したものである必要はないことから、

原案どおりとさせていただきます。

18  承認申請手続時における、

承認申請者の負担を軽減し、

円滑な承認申請手続が行われるよう、

添付書類について、

具体的な記載例、記載事項等を早期に示されたい。

通達や法務省ホームページ等で明らかにすることを予定しています。

19   省令案第3条には添付書類が規定されているが、

これ以外に添付書類は要求されないのか。

また通常多くの許認可申請では

申請人側に要件具備のエビデンスを求められることや

帰属法第6条で事実の調査を

国が行うことができることとなっているが、

承認申請者側としては

承認されることを望んで承認申請を行うことから、

法務局側の調査を待たず

承認申請者側でエビデンス等資料を

提出したいと考えるケースがあると考えられる。

このような場合に承認申請者側で

資料等の提出は可能か。

また提出した場合に調査の省略などを検討されるのか。

 調査の過程で調査のために

必要な資料等が生じた場合には、

管轄法務局長は帰属法第6条の規定により

承認申請者に対して

資料の提供を求める場合がありますが、

法令で規定された添付書類以外の

資料について任意で提出することは可能であり、

これらの資料の内容によっては、

調査の一部を迅速に行うことが

可能になる場合があると思われます。

20   省令案第3条第1号によれば、

相続登記未了の土地であっても、

本件手続の承認申請が可能となるようである。

数次相続が発生して、

相続人調査が困難な案件でも

承認申請を認めるとの配慮に基づくものと考える。

その一方で、 相続人の範囲が明確で

共同相続の登記が申請容易な物件でも

相続登記未了のまま承認申請が認められることは、

相続登記の義務化と矛盾するともいえる。

本手続による登記手続がどのようになるか

(被相続人→相続人→国という権利移転の経過が反映されるのか、又は被相続人→国という中間省略的な登記になるのか)にもよるが、

仮に、権利移転の経過が反映されるのであれば、

相続登記部分の登記費用を負担させるなどの処置を

考える必要があるのではないか。

いずれにせよ、

国民目線からみた「公平感」は、

幅広い施策を横断的に導入した

所有者不明土地問題の

全体的解決の視点から重要ではないかと考える。

相続等を原因として

土地の所有権を取得した者は、

帰属法第2条第1項の規定に基づき、

登記の有無に関わらず承認申請権限を有しているため、

原案のとおりとしています。

なお、登記名義人に限らず

相続等により土地を取得した土地の所有者に

承認申請権限を認めることにより、

所有者不明土地の発生防止という

本制度の目的に沿った結果を

期待することができるものと考えます。

21   省令案第3条第1号について、

承認申請に係る土地については、

承認申請の前までに

相続による所有権の移転の登記又は所有権の保存の登記を

完了することが推奨されるものの、

それらの完了を

必ずしも承認申請の前提要件としていないと考えられる。

この考え方については、通達等で明らかにすべきである。

取扱いについて通達や法務省ホームページ等で明らかにする予定です。

22   国庫帰属は承継取得であることから、

嘱託の移転登記の前提として、

代位で相続又は遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)の登記を

国においてすることを

念頭に置いているという認識でよいか。

御理解のとおりです。

23   相続登記未了の土地についても

承認申請を認める場合、

省令案第3条第1号の書面として

法務省発行の法定相続情報一覧図を添付することでもよいか。

御理解のとおりです。

24   相続登記未了の土地についても

承認申請を認める場合、

表題部所有者が承認申請する場合(とりわけ、住所の表示がないなどの理由で表題部の記載だけでは直ちに所有者が特定できない場合)は、

何を添付すればよいか。

省令案第3条第1号に規定する相続等により

承認申請に係る土地の所有権を

取得した者であることを証する書面を

添付いただくことになりますが、

事案によって異なるため一概にお示しすることは困難です。

25   省令案第3条第1号について、

同号の「当該者であることを証する書面」に

該当する具体的な添付書類の内容は、

不動産の相続の登記に係る

登記原因証明情報と同様と考えられるところ、

当該内容については、通達等で明らかにすべきである。

取扱いについて通達や法務省ホームページ等で明らかにする予定です。

26   相続人ではない包括受遺者による承認申請は可能か。

承認申請をすることはできません。

27   相続人ではない包括受遺者による承認申請を認めない場合、登記原因は遺贈になっているため、登記だけでは判別できない。したがって遺贈の場合、戸籍の添付が必要になるのか。

御理解のとおりです。

28  省令案第3条第3号関係について、

基本的に括弧書きで

会社法人等番号を記載することになると思われるが、

本号は外国会社の場合を念頭に置いており、

外国会社に資格証明書を求めるという理解でよいか。

省令案第3条第3号は、

会社法人等番号を有しない法人の

添付書類を規定したものです。

29 省令案第3条第4号の図面としては、

いわゆる不動産登記法14条地図、

地図に準じる図面、

地積測量図が該当するという理解でよいか。

他に何が該当するか。

不動産登記法第14条第1項地図

及び同条第4項地図のほか、

国土地理院が公開する地理院地図等が該当します。

土地の位置及び範囲が明らかであれば、

図面の種類は問いません。

30  省令案第3条第4号について、

同号の図面としては

必ずしも確定測量図等の精度の高いものに

限られるわけではないと考えられるところ、

同号の図面として許容されるものの在り方については、

例えば、インターネット地図の写しの利用を可とする等、

一般国民において

準備可能な程度に柔軟なものとした上で、

その具体的な内容を通達等で明らかにすべきである。

省令案第3条第4号の図面は、

著作権関係法令に抵触しない限り

いわゆるインターネット上の

地図を活用していただく形でも差し支えありません。

詳細の取扱いについては、

通達や法務省ホームページ等で明らかにする予定です。

31   省令案第3条第4号から第6号までについて、

図面又は写真に記載された情報を

電磁的記録に記録して

CD-ROM、USBメモリその他の読込可能な媒体に格納したものの

提供をもって、

本条第4号から第6号までの各号の書類の添付に

代えることができるようにすべきである。

省令案第3条第4号から第6号までの添付書類については、

承認申請者に

過度な負担を課すものではないため、

書面による提出を前提としています。

32   省令案第3条第4号の図面について、

放棄された土地の

将来の利用も視野に入れて

問題ない物件かを審査する必要があると思う。

よって以下の図面条件を意見する。

1  図面作成者は土地家屋調査士を条件として場所の特定をさせる。

2  図面には推定筆界を明示し越境物がないことを図示する。

省令案第3条第4号の

土地の位置及び範囲を示すための図面は、

測量した成果により作成したものである

必要はないことから、

原案のとおりとさせていただきます。

33   省令案第3条第5号の写真については、

国土地理院で取得できる航空写真でよいか。

航空写真も含まれますが、

建物や工作物の有無などを確認するために

必要な書類であるため、

最新の現況が判る写真を提出していただく必要があります。

34   省令案第3条第5号の写真について、

撮影時期について

承認申請から3か月以内といった期限はないか。

撮影時期の制限はありませんが、

建物や工作物の有無などを確認するために

必要な書類であるため、

最新の現況が判る写真を

提出していただく必要があります。

35   省令案第3条第5号の写真について、

インターネットで取得できる写真

(Google マップの航空写真やGoogle ストリートビュー)

の写真でもよいか。

著作権関係法令に抵触しない限り、

いわゆるインターネット上の

地図を活用いただく形でも

差し支えありませんが、

建物や工作物の有無などを

確認するために必要な書類であるため、

最新の現況が判る写真を

提出していただく必要があります。

36   省令案第3条第5号について、

山林等の広大な土地の場合、

航空写真以外では、

土地の全体を映すことができないが、

土地の全体が分かる写真である必要があるか。

取扱いについて

通達や法務省ホームページ等で明らかにする予定ですが、

建物や工作物の有無などを確認するために必要な書類であるため、

最新の現況が判る写真を提出していただく必要があります。

37  省令案第3条第5号について、

本号の書類に一見明白な不備がない限り、

直ちには却下にならず、

法務局職員の現地調査の結果

不足している写真が収集できれば、

承認申請当初に

本号の書類が添付されていなかった点を

もって却下されることはないという理解でよいか。

取扱いについて通達や法務省ホームページ等で明らかにする予定です。

38   省令案第3条第5号について、

相続人には高齢の方も多く、

頻繁に相続した土地の現地調査を

行うことは不可能である。

仮に士業による申請代理を認めないのであれば、

本号の審査を無用に厳格化するのではなく、

不備については法務局職員による現地調査で

柔軟に対応できるようにするべきである。

御指摘も踏まえ、運用を検討してまいります。

39   省令案第3条第6号について、

本号は筆界を示す境界標のみを

指しているわけではなく、

境界標があればそれで足りるが、

境界標がなくても、

所有権界を示す物の写真があれば足りるという理解でよいか。

御理解のとおりです。

40  省令案第3条第6号について、

隣地境界線があいまいになっていることは、

実際に多々あり、

放置されているケースもあると聞く。

また、解決しようとしてトラブルになり、

解決までに長期の時間を要する場合もあると聞くが、

これに関しての特別措置や救済措置はあるのか。

隣接地が山などの場合、

境界がどこかが

容易にはわからないことも少なくないと思うし、

隣地所有者が行方不明の場合等もあると思う。

この添付書類が

提出できない時は、

承認申請不可となってしまうのか。

隣地境界線に関するトラブル等は

巷ではよくあるケースで、

他でも問題になっている事案でもあるので、

これだけのために

承認申請不可であったりするのであれば

特別措置や救済措置等が必要だと思う。

本制度を利用するには、

境界が明らかでない土地

その他の所有権の存否、

帰属又は範囲について争いがある土地に

該当しない土地である必要があります(帰属法第2条第3項第5号)。

これに該当するか否かは

事案ごとに判断することになります。

なお、隣地所有者が所在不明であっても、

本制度の利用は可能とされています。

41  省令案第3条第6号について、

地図に準ずる図面しかない土地の場合、

当該図面上、境界点の数が明確ではないことがあるが、

この場合、

承認申請者が認識する所有権界を前提に

当該所有権界の境界点の数だけ

写真を添付すればよいか。

御理解のとおりです。

42  省令案第3条第6号に

規定されている承認申請に係る土地と

当該土地に隣接する土地との境界点を

明らかにする写真の添付は不要である。

また、仮に添付を要するとしても、

「境界付近の写真」と定めるなど、

不動産登記法上求められる境界点としての

精密さを要求するものではないことを

条文上明らかにした内容とすべきである。

土地の位置及び範囲が

不明な場合には、

国が帰属した土地を管理することが困難ですので、

原案のとおりとさせていただきます。

43  省令案第3条第6号について、

同号の写真の添付の趣旨が、

承認申請に係る土地が

帰属法第2条第3項第5号の要件に

該当しないことを証するためのものであると

考えられるところ、

省令案第3条第4号の図面との関係性の明示

及び省令案第3条第6号の写真として

許容されるものの在り方については、

例えば、

写真上に距離や座標等の記載を要しないものとする等、

一般国民において準備可能な程度に柔軟なものとした上で、

その具体的な内容を通達等で明らかにすべきである。

省令案第3条第6号の写真は、

写真上に距離や座標の記載を求めるものではありませんが、

取扱いについて通達や法務省ホームページ等で明らかにする予定です。

44   省令案第3条第7号について、書面のひな形等、その具体的な内容を一般国民に周知すべきである。

通達や法務省ホームページ等で明らかにすることを予定しています。

45  省令案第3条第7号について、相続登記未了の土地について承認申請をした場合は、追加の書類が必要になるのか。

相続登記を申請する場合と同様の資料が必要になります。

46   省令案第3条第7号について、相続登記未了の土地について国庫への帰属が承認された場合、国が嘱託登記を行う際に法定相続又は遺産分割の代位登記を行うという理解か。

御理解のとおりです。

省令案第4条関係

47   省令案第4条但書に、

帰属政令第5条2項に規定する

隣接する二筆以上の

承認申請に係る土地の所有者が

異なる場合において、

これらの者が共同して承認申請をする場合を

加えるべきである。

所有者が異なる場合に

一の承認申請書による承認申請を

認めるとすると、

承認申請に係る審査が

煩雑となることから、原案のとおりとさせていただきます。

省令案第5条関係

48   将来的には、オンラインによる

手数料の納付

可能となるようにすべきである。

今後の制度の運用実態を把握・検証した上で、検討してまいります。

49  承認申請の審査開始前に当該承認申請が却下された場合、

登録免許税等における過誤納金の還付同様に、

手数料を還付すべきである。

手数料の還付は予定していないため、

原案のとおりとさせていただきます。

50   手数料の額は、極力、低廉なものとすべきである。

御意見も踏まえ、引き続き検討してまいります。

省令案第6条関係

51   省令案第6条第3項の

「その他の不正な承認申請のために

用いられた疑いがある書面」について、

その立法趣旨及び当該書面の具体的内容を、

通達等で明らかにすべきである。

 その他の不正な承認申請のために

用いられた疑いがある書面としては、

盗用されたもの、

不正な方法で交付を受けたもの等が

該当しますが、取扱いについて

通達や法務省ホームページ等で明らかにする予定です。

省令案第7条関係

52 省令案第7条第2項について、

承認申請と同時に

売却を並行して進めることがあり得るが、

承認決定が出る際は

承認申請書に記載した連絡先に

事前に連絡をすべきではないか。

売却の可能性があるものまで

国庫帰属させるのは望ましくない。

承認後に負担金を支払うことにより

土地を国庫に帰属させるかどうかは、

承認申請者の意思に委ねられています。

省令案第8条関係

53  省令案第8条第 1 項について、

承認申請書提出後に

訂正・補正が必要なことが判明した場合、

承認申請書類が返還され、

同項の訂正方法をとる必要があるのか。

実務的にどのような訂正フローになるか。

具体的な取扱いについては、

通達や法務省ホームページ等で明らかにする予定です。

54   省令案第8条第2項について、

ページ番号を記載するだけで足り、

契印は必要ないという理解でよいか。

御理解のとおりです。

55   省令案第8条第2項の

「その他の必要な措置」について、

その具体的内容を通達等で明らかにすべきである。

その他の必要な措置としては、

承認申請書が散逸しないよう、

ステープラー等でとじることなどが該当しますが、

取扱いについては通達や法務省ホームページ等で明らかにする予定です。

省令案第9条関係

56   省令案第9条第1項について、

許容される信書便の具体的内容を通達等で明らかにすべきである。

日本郵便株式会社が取り扱う

レターパックプラスなどが想定されますが、

取扱いについては

通達や法務省ホームページ等で明らかにする予定です。

省令案第10条関係

57   省令案第10条第1項から第3項について、

原本還付をすることができる添付書類については、

可能な限り、

いわゆる窓口還付の

取扱いを許容すべきである。

承認申請者から

早期の

原本還付が求められた場合などにおいては、

審査に支障のない範囲内で

柔軟な対応を取ることも想定されますが、

具体的な取扱いについては

通達や法務省ホームページ等で明らかにする予定です。

58   省令案第10条第1項について、

共有地の場合は誰に還付するのか。

承認申請者として

連絡先が記載されている方に

連絡して調整することになります。

省令案第11条関係

59   承認申請者は

受付番号をどうやって知るのか。

受理した旨の書類が届くのか。

受付番号を知りたい方には、

受付時に受付番号を

お知らせする予定です。

省令案第12条関係

60   負担金納付後から

嘱託登記までに

承認申請者が死亡した場合、

どのような処理になるのか。

帰属法第11条第1項により、

負担金を納付した時点

所有権が国庫に帰属します。

61   申出の期間について、

60日は短い。

60日より後に地位を承継したいと思った場合に、

再度承認申請が必要になるが、

そうなると法務局にも

承認申請者にも二度手間ないし

負担になるだけである。

また、共有地の承認申請の場合、

共有者の死亡を

他の共有者が知り得ない場合がある。

承認申請者には高齢者も

少なくないため、

共有地の場合、

複数の者が死亡する可能性もある。

手続を一定期間以上

不確定な状態とすることは

適切ではないことから、

原案のとおりとさせていただきます。

62   承認申請中に

共有持分を取得した法人も

本条の手続を利用できるという理解でよいか。

当該法人が帰属法第2条第2項の承認申請をすることができる者に

該当する場合は、

省令案第12条の承継の申出をすることが可能です。

63   省令案第12条第3項について、

申出の添付書類については、

基本的に相続関係を示す書類があれば足りると思われるが、

本項特有の書類(通常の場合と異なる追加的な資料)はあるか。

事案によって異なるため、

一概にお示しすることは困難です。

64  省令案第12条について、

承認申請者が負担金を納付するまでに

死亡等した場合、

新承認申請権者の申出可能期間を

「取得の日」としている点を

「取得したことを知った日」と

定めるべきである。

客観性等の観点から

原案のとおりとさせていただきます。

65  省令案第12条について、新承認申請権者からの申出が期間内に行われなかった場合の取扱いを明らかにすべきである。

御意見等を踏まえ検討します。

66   省令案第12条について、

共有土地についての承認申請である場合において、

共有者の一人に生じた死亡等の理由により

新承認申請権者からの申出が

期間内に行われなかった場合、

他の共有者全部の承認申請

あるいは承認の効力が喪失することにつき

何らかの救済制度を設けるべきである。

土地が数人の共有に属する場合には、

承認申請は共有者の全員が共同して行うときに限り

することができるとされていることから(帰属法第2条第2項)、

原案のとおりとさせていただきます。

67   省令案第12条第1項について、

承認申請から負担金の納付までの期間が

なるべく短期になるよう、

帰属制度における審査等の運用を

整えるべきである。

いただいた御意見については、

今後の運用の検討に当たって参考とさせていただきます。

68   省令案第12条第1項について、

例えば、承認申請に係る土地についての

住居表示実施等による地番の変更等、

本条第1項が想定する承認申請者の相続の開始

以外の事情変更についても、

本条第1項(又はそれに類似する制度)の対象とする等して救済すべきである。

御指摘の変更については、

省令案第3条第1号の疎明資料として

住民票の写し等を提出いただくこと

承認申請に係る土地の同一性を判断することが

可能であると考えます。

69   省令案第12条第1項について、

承認申請の後に

当該承認申請に係る

土地の所有権者に相続が発生した場合の

本条第1項の申出をすることができる者は、

その相続人の全員又は当該相続によって

終局的に当該土地を承継取得した者に限るべきである。

省令案第12条第1項の規定により

申出をすることができる者は、

帰属法第11条第1項の規定による

負担金の納付がされるまでの間に

承認申請者から所有権の全部又は一部を取得した者であって、

帰属法第2条第1項又は第2項の

承認申請をすることができる者とされています。

70   省令案第12条第1項について、

帰属法第10条第3項の負担金の納付の期限が

省令案第12条第1項の申出期間の終期よりも

前に到来するときは、

当該期限を当該終期まで伸長すべきである。

承認申請者に死亡等の承継事由が発生した場合には、

速やかに管轄法務局に連絡するよう、

通達や法務省ホームページ等で周知する予定であり、

納付期限の伸長は予定していません。

71 省令案第12条第1項について、

所有権の登記名義人が被相続人のままである土地について

その相続人全員が承認申請を行い、

その後の遺産分割や相続放棄等に基づき

相続人が当該土地の一部又は全部を

終局的に承継取得した場合における

本条第1項の申出の要否を、

通達等で明らかにすべきである。

通達や法務省ホームページ等で明らかにする予定です。

省令案第13条関係

72 承認申請書に

省令案第13条第1項に規定する者の

記名押印がある境界確認書を添付したときは、

本条第1項の通知等の省略を許容すべきである。

いただいた御意見については、

今後の運用の検討に当たって参考とさせていただきます。

73   承認申請後に補正があった場合や追完があった場合、

現地調査で承認申請書と異なる事実が判明した場合にも、

隣接地所有者への通知をするべきである。

御指摘を踏まえ運用を検討してまいります。

74  省令案第13条により、

省令案第3条第4号から第6号までの

書類の写しが隣接地所有者に送付され、

異議が出た場合も、

当該隣接地所有者との間で

当該異議を解消する旨の合意書が提出された場合は、

帰属法2条3項5項の要件は満たさないという理解でよいか。

御理解のとおりです。

省令案第15条関係

75   省令案の「第十五条相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律施行令(以下「令」という。)第四条第二号に規定する…」の箇所については、正しくは『第四条第一項第二号に規定する…』となるのではないか。

御指摘のとおり修正いたします。

省令案第16条関係

76  省令案第16条第2号につき、同号に代わる情報として不動産番号の記載及び当該記載による承認申請に係る土地の所在、地番、地目及び地積の記載の省略を許容すべきである。

本制度は不動産登記制度とは別の制度であるため、不動産番号の記載によって記載を省略することは困難です。

省令案第17条関係

77   承認申請者が2人以上であるときは、次のとおりとすべきである。

(1)承認申請者への負担金の割付けに係る運用等を整備すべきである。

(2)例えば、省令案第17条第2項の通知の際に承認申請者全員から納入告知書又は納付書の送付先を別途届け出させる等、負担金が二重納付とならない運用等を整備すべきである。

(1) 負担金の分担割合については、承認申請者間で調整いただくことになります。

(2)  御指摘を踏まえ、二重納付とならないような運用となるよう検討してまいります。

省令案第20条関係

78   承認申請後の承認前・承認後のそれぞれの場面で、自治体への情報提供はどのようになされるのか。

 本意見照会の対象外ではありますが、自治体への情報提供については、承認申請者に意思を確認した上で承認前に行う運用を予定しています。

省令案第22条関係

79   委任しているものとそうでないものの違いは何か。また、但書はどのような場面で想定されているか。

性質上委任することが可能と考えられる権限について委任しています。但書は、法務大臣が自ら対応することが適当な事案がある場合に、対応が可能な権限を明示したものです。

省令案第23条関係

80 各種書類が法務省、法務局等に備えられるが承認実例の検証のために情報開示請求の対象になるのか。また、もし開示対象にならない場合でも、承認実例は承認申請手続を行う際に参考になるため、法務省で積極的に実例の情報提供などを検討してほしい。

本制度に関する行政文書は、情報公開法に基づく開示請求の対象となります。なお、承認事例を公表することについては、御意見も踏まえ検討してまいります。

81   法務省決定原本つづり込み帳及び承認申請書類つづり込み帳につづり込まれた書類については、承認申請等のオンライン化を待つまでもなく早期にデジタル化に着手すると共に、当該デジタル化した情報については、その保管期限を永久とすべきである。

今後の制度の運用実態を把握・検証した上で、検討してまいります。

省令案第24条関係

82   保存期間はどれも10年以上とすべきと考える。

また、電磁的記録を作成し、電磁的記録については基本として永年保存(あるいはとりあえず150年等(それくらい保存するなら永年保存でよいと考えるが。))を行うべきと考える(親族が見つからなかったり、関係者が知らない間に不適切な処理がされた場合の回復性については確保を行っておくべきと考える。)。

御意見等を踏まえ、引き続き検討してまいります。

その他

83   一筆一地目が原則であるが、一筆複数地目がある場合の手続きが設けられていない(通常は、分筆が必要。それぞれの地目面積が分かる図面)。

帰属政令第4条第1項各号のいずれかの土地の区分となりますので、原案のままとさせていただきます。

84  

帰属政令第3条第4項第4号「所有権が国庫に帰属した後に法令の規定に基づく処分により国が通常の管理に要する費用以外の費用に係る金銭債務を負担することが確実と認められる土地」について、どのような土地が該当するか省令で具体的に記載されるかと期待したのですが、含まれていませんでした。

地域の土地改良区で整備した農地については、年間の排水設備費等の管理費を土地改良組合に払うことが通常です。国策として開墾した農地についても国庫への帰属が出来なければ法の目的を達することができません。 このような農地についても対象となることを、明記することが必要と考えます。

本意見照会の対象外ではありますが、年間の排水設備費等の管理費を要する土地については、帰属政令第3条第3項第4号に該当し、承認することができないものと考えられます。

いただいた御意見については、今後の運用の見直しに当たっての参考とさせていただきます。

85   1.森林に係る国庫帰属承認申請の段階において、以下の手続・対応を取るべき。

国は、承認申請権者に対し森林経営管理制度の概要を説明するとともに、承認申請に係る土地が属する市町村に対し承認申請者の情報を提供すること。

国から情報提供を受けた市町村は、承認申請権者に対し、森林経営管理法に基づく経営管理の委託について意向の有無を聴取すること。

承認申請権者が経営管理の委託に応じる場合にあっては、森林経営管理制度に基づき、市町村が公的に管理もしくは、経営管理権を設定し林業経営者に再委託の手続を行うこと。

承認申請に係る土地が属する市町村を管轄する森林組合に情報を提供し、経営管理権設定意向の有無について聴取すること。

隣接地所有者への通知の際に、森林施業の集約化等に係り当該相続土地の譲渡・寄附受け等意向の有無について聴取すること。

国庫に帰属した森林については、当該帰属森林の属地状況をホームページ等で開示するとともに、当該帰属森林が属する市町村、森林組合等に情報を提供し、森林施業の集約化等に係り当該森林の譲渡・買い受け等を希望する者に対して、簡易・簡便な手法で譲渡等を可能とする制度を設けること。

国庫帰属森林の売払いにあたっては、国庫帰属財産の性格に鑑み、一般競争入札ではなく、最低売払い価格を公表した随意契約を可能な制度とする等、買い受け希望者が容易に取得できる環境を整えること。

本意見照会の対象外ではありますが、本制度における国庫への帰属に先立ち、地方公共団体に情報提供を行うなど、土地の有効活用を検討するための運用についても、引き続き検討してまいります。

関連

https://souzokutochi-kokkokizoku.com/enforcement-regulation/

加工担保法制の見直しに関する中間試案のたたき台第2案⑵

担保法制部会資料 26

https://www.moj.go.jp/shingi1/shingi04900001_00173.html

目次

(前注) …………………………………………..2

第1 個別動産を目的財産とする新たな規定に係る動産担保権の実体的効力 …………..3

1 担保権の効力の及ぶ範囲 …………………………..3

2 果実に対する担保権の効力 …………………………..4

3 被担保債権の範囲 …………………………………4

4 担保の目的物の使用収益権限 ………………………..4

5 使用収益以外の設定者の権限 …………………………4

6 担保権者の権限 …………………………………..5

7 物上代位 ………………………………………..6

8 その他 …………………………………………6

9 根担保権 …………………………………..7

第2 個別債権を目的財産とする譲渡担保の実体的効力 …………..8

第3 集合動産・集合債権の担保化 ………………………….9

1 動産の集合体に対する新たな規定に係る動産担保権の設定の可能性 ………………..9

2 集合動産を目的とする担保を設定した設定者の権限 ……………………….. 10

3 集合動産の構成部分である動産の設定者による処分 ………….. 10

4 集合債権を目的とする担保を設定した設定者の権限 ………. 13

5 担保価値維持義務・補充義務 ……………………… 13

6 集合動産を目的とする担保権における物上代位等 ………………. 14

第4 新たな規定に係る動産担保権の対抗要件等 …………….. 14

1 新たな規定に係る動産担保権の対抗要件等(2の留保所有権の場合を除く。) ……….. 14

2 留保所有権の対抗要件等 ……………………………. 15

第5 新たな規定に係る動産担保権と他の担保物権との優劣関係 ……………. 18

1 動産質権と新たな規定に係る動産担保権との優劣関係 ………… 18

2 先取特権と新たな規定に係る動産担保権との優劣関係 ………….. 18

3 一般先取特権と新たな規定に係る動産担保権との優劣関係 ……….. 18

第6 債権譲渡担保権の対抗要件等の在り方 …………………. 18

1 債権譲渡担保権の対抗要件等 ………………………… 18

2 債権譲渡担保権相互の優劣 …………………… 19

3 一般先取特権と債権譲渡担保権との優劣関係 ……………… 19

第7 動産・債権譲渡登記制度の見直し ………………………… 20

担保法制部会資料26

(前注)

1 動産を目的財産とする非占有型の担保制度や債権を目的財産とする担保制度の規律を設ける方法としては、①債権債務を担保する目的でされた一定の類型の契約を適用の対象として、その契約の効力を定める方法(以下「担保目的取引規律型」という。)、②質権、抵当権等と並ぶ担保物権を新たに設ける方法創設す方法(以下「担保物権創設型」という。)が考えられる。

担保目的取引規律型は、仮登記担保契約に関する法律(以下「仮登記担保法」という。)が「金銭債務を担保するため、その不履行があるときは債権者に債務者又は第三者に属する所有権その他の権利の移転等をすることを目的としてされた代物弁済の予約、停止条件付代物弁済契約その他の契約で、その契約による権利について仮登記又は仮登録のできるもの」の効力等について民法等の特則を設けているのと同様の方法である。動産や債権を目的財産とする担保法制についてこのような方法で規定を設ける場合は、例えば、債務を担保する目的で動産の所有権を移転する契約、債務を担保する目的で動産の所有権を売主に留保する売買契約の効力等について民法等の特則を設けることが考えられる。動産や債権を目的財産とする担保取引としては、現行法においては、債務を担保するため動産の所有権を移転したり(動産譲渡担保)、留保したり(所有権留保)するなどの取引形式が用いられており、このような形式との連続性がある点で実務上も受け入れられやすいと考えられる。

担保物権創設型は、抵当権や質権等と並ぶ新たな担保物権を創設するものであるから、この方法によって設けられた規定は、債務を動産譲渡担保する目的でや所有権を移転する留保の形式が用いられた取引(譲渡担保)などには、直接には適用されないことになる。

しかし、そうすると非典型担保が残ることになり、担保取引に関する法律関係を明確化するという点では不十分な結果となりかねない。そこで、担保物権創設型による場合には、担保物権を創設するだけでなく、債務を担保する目的で動産の所有権を移転する契約、債務を担保する目的で動産の所有権を売主に留保する売買契約などの担保取引については、新たな担保物権を設定する契約とみなすなどの規定を併せて設ける必要がある。

担保物権創設型についてこのようなみなし規定を設けるとすれば、担保目的取引規律型と担保物権創設型は規定の方法の違いにすぎず、ほぼ同様の実質を規律することができるとも考えられる(ただし、動産譲渡担保は形式的には目的財産である動産の所有権を移転する契約であるから、例えば民法第178条が適用されることになる。これに対して新たな担保物権を創設し、対抗要件を引渡しとする場合には、同条は当然には適用されないから、別途規定を設ける必要がある。このように、同じ実質を実現するとしても、必要となる規定が異なる場合がある。)。

2 この中間試案においては、①と②のいずれによって規定を設けるかは法制的な観点からの検討に委ねることとし、担保取引に関する実質的なルールの内容についての試案を示すこととし、特段の言及のない限り、担保目的取引規律型によるか担保物権創設型によるかは中立的に表現することとしている。ただし、債権は現行法上も質権の目的となり得るため、担保物権創設型による場合には、債権質と区別された新たな担保権を創設する必要性自体が問題となり得る(新たな担保権を創設するのではなく、債権質に関する規定を修正するにとどめることもあり得る。)。そこで、この中間試案においては、債権を目的とする担保に関するルールを示すときは、差し当たって担保目的取引規律型によることを前提としてルールの内容を示すこととしている。

このような観点から、担保取引によって債権者が得ることとなる権利を指す用語として、「新たな規定に係る担保権」という文言を用いる。①の方法特による動産を目的財産とする場合について言及する際は、「新たな規定に係る動産担保権」という。

「新たな規定に係る動産担保権の設定」とは、担保物権創設型によれば、新たに創設されることになる動産担保権を設定することをいい、担保目的取引規律型によれば、債務を担保する目的で一定の類型の契約を締結すること(例えば、担保目的で動産の所有権を移転する取引を「契約を締結すること)をいう。

「留保所有権」「債権譲渡担保」「債権譲渡担保権」など、担保目的取引規律型を前提とする表現を用いる場合もある。「留保所有権」とは、売主が売買代金等を担保するために所有権を留保する取引(以下「所有権留保(売買契約)」と呼び、譲渡担保いう。)によって債権者が得る権利をいう。「債権譲渡担保」とは、担保「目的で債権を譲渡する取引をいい、「債権譲渡担保権」、所有権留保とは、債権譲渡担保によって債権者が得る担保を「留保所有権」と呼ぶ。新たに規定を設けた場合の「譲渡担保」「所有権留保」と区別して、特に現行法における「譲渡担保」「所有権留保」について述べる場合は、「現行法の譲渡担保」などと呼ぶ権利をいう。

 (説明)

分かりやすさの観点から表現振りを改めたものである。なお、本文2では、債権を目的とする担保権について、担保目的取引規律型による場合の債権譲渡担保権に関するルールのみを中間試案に記載する理由を追記している。また、本文2では、中間試案における用語について、担保物権創設型、担保目的取引規律型それぞれの立場から意義を明確にしておくことが望ましいものについて記載している。

第1 個別動産を目的財産とする新たな規定に係る動産担保権の実体的効力

1 担保権の効力の及ぶ範囲

新たな規定に係る動産担保権は、目的物に従として付合した物及び設定との先後を問わず設定者が目的物に附属させた従物(注1、2)に及ぶものとする。

ただし、設定行為に別段の定めがある場合及び債務者の行為について民法第424 条第3項に規定する詐害行為取消請求をすることができる場合は、この限りでないものとする。

(注1) 本文において担保権の効力が及ぶとされる物をどのように表現するかについては、「付加一体物」という表現を用いることの可否も含めて今後検討する。

(注2) 設定後に附属させられた従物については解釈に委ねるべきであるとの考え方がある。

(説明)

部会資料21 から実質的変更はない。なお、従物に及んだ主物に対する担保権の効力と従物に設定された担保権との優劣については、補足説明に記載することを予定している。

2 果実に対する担保権の効力

新たな規定に係る動産担保権の担保権者は、その担保する債権について不履行があったときは、目的物の果実から優先弁済を受けることができるものとする。

(説明)

部会資料21 から変更はない。

3 被担保債権の範囲

新たな規定に係る動産担保権は、元本、利息、違約金、担保権の実行の費用及び債務の不履行によって生じた損害の賠償を担保するものとする。

ただし、設定行為に別段の定めがあるときは、この限りでないものとする。

(説明)

部会資料21から実質的変更はない。

4 担保の目的物の使用収益権限

新たな規定に係る動産担保権は、その内容に使用収益権限を含まず、設定者が目的物の使用収益をすることができるものとする。

(説明)

部会資料21 から変更はない。

5 使用収益以外の設定者の権限

⑴ 新たな規定に係る動産担保権は、同一の目的物の上に重複して設定することができるものとする。

⑵ 新たな規定に係る動産担保権の設定者が担保権者の同意なく目的物を真正に譲渡すること(注1)ができるかどうかについては、次のいずれかの案によるものとする。

【案1.5.1】担保権者の同意なく目的物を真正に譲渡することができるものとする(注2)。

【案1.5.2】目的物を真正に譲渡することはできないものとする(注3)。

(注1)ここで、「目的物を真正に譲渡する」は、担保権を消滅させる形で目的物の完全な所有権を譲渡することではなく、担保権を存続させたままで、設定者の有する権利(担保目的に制限された所有権を除いた所有権又は担保権に制約された所有権)を譲渡することを意味する。担保権者35 の同意を得てその担保権を消滅させ、目的物の所有権を譲渡することができることは当然の前提としている。

(注2)【案1.5.1】を採る場合であっても、所有権留保という類型を設けるときは、所有権留保については【案1.5.2】を採るという考え方もあり得る。

(注3)このとき、担保権者の同意を得て、「担保権を存続させたままで設定者の有する権利を移転すること」ができることを前提とする。

⑶ 新たな規定に係る動産担保権の設定者は、目的物の占有を第三者に妨害されるおそれがあるときはその第三者に対する妨害の予防を、目的物の占有を第三者が妨害しているときはその第三者に対する妨害の停止を、目的物を第三者が占有しているときはその第三者に対する返還を、それぞれ請求することができるものとする。

(説明)

⑵において、「目的物を真正に譲渡する」の意義等を(注)に記載した。また、⑶において、設定者が妨害予防請求ができることを明示することとした。

6 担保権者の権限

⑴ 新たな規定に係る動産担保権の担保権者は、その担保する債権について不履行があるまでは、目的物を第三者に譲渡すること(目的物の完全な所有権を第三者に移転させること)ができないものとする(注1)。

(注1)新たな規定に係る動産譲渡担保権の被担保債権を譲渡することに伴う場合に伴って被担保権者が有する権利が移転することは、この限りあるが、これは別の問題ではないある。

⑵ 新たな規定に係る動産担保権について、他の債権の担保とすることができるもの(以下「転担保」という。)する。

⑶ 新たな規定に係る動産担保権については、順位の変更、担保権の譲渡・放棄及び順位の譲渡・放棄(以下「新たな規定に係る動産担保権の処分」という。)及び順位の変更(新たな規定に係る動産担保権の処分と併せて「新たな規定に係る動産担保権の処分等」という。)の全部又は一部をすることができるものとするか、これらのうち一部をすることができるものとする場合、その範囲をどのように考えるかについては、引き続き検討する(注2)。

(注2)できるものとする範囲については、実務上のニーズや公示の観点から、引き続き検討する。

⑶ ⑵でできるものとされた新たな規定に係る動産担保権の処分等の対抗要件等については、次のとおりとする。

ア(ア) 新たな規定に係る動産担保権の処分は、債務者に当該処分を通知し、又は債務者がこれを承諾しなければ、これをもって債務者、保証人、担保権設定者及びこれらの者の承継人に対抗することができないものとする。

(イ) 新たな規定に係る動産担保権の処分は、登記をしなければ、これをもって第三者に対抗することができないものとする。

(ウ) 担保権者が数人のために新たな規定に係る動産担保権の処分をしたときにおける処分の利益を受ける者の権利の順位は、新たな規定に係る動産担保権の処分についての登記の前後によるものとする。

イ 新たな規定に係る動産担保権の順位の変更は、登記をしなければ、その効力を生じないものとする。

(説明)

本文⑴について、「目的物を第三者に譲渡すること」の意味内容が不明確であるとの意見があったことから、これを明記することとした。

本文⑵については、部会資料25 及び前回の議論内容を踏まえて、新たな規定に係る動産担保権の処分等の一部に限ってすることができるものとする考え方を併記することとし、新たな規定に係る動産担保権の処分等の対抗要件等についての記載を本項に移すこととした。

7 物上代位

⑴ 新たな規定に係る動産担保権は、その目的物の売却、賃貸、滅失又は損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物に対しても行使することができるものとする。

⑵ 新たな規定に係る動産担保権の担保権者は、⑴に基づいて金銭その他の物に対して権利を行使するときは、その払渡し又は引渡しの前に差押えをしなければならないものとする。

⑶ 新たな規定に係る動産担保権に基づく物上代位とその目的債権を目的財産とする担保との優劣関係について、次のいずれかの案によるものとする。

【案 1.7.1】物上代位とその目的債権を目的財産とする担保との優劣は、⑵の差押えがされた時点と、その目的債権を目的財産とする担保が対抗要件を具備した時点との前後によるものとする。

【案1.7.2】物上代位とその目的債権を目的財産とする担保との優劣は、物上代位を生じさせた目的物元物に設定された担保権が対抗要件を具備した時点と、その目的債権を目的財産とする担保が対抗要件を具備した時点との前後によるものとする(注)。

(注)原則として【案1.7.1】の規律によるが、目的債権を目的財産とする物に設定された新たな規定に係る動産担保権の設定について登記がされたときは、譲渡登記の時点を基準とする(引渡しのみの場合には物上代位が優先する)という考え方がある。

(説明)

本文⑶の(注)について改めて整理を行った。すなわち、新たな規定に係る動産担保権については、対抗要件が必ずしも明らかでない場合もあるため、原則として【案1.7.1】の規律によることとしつつ、当該担保権の設定について登記がされたときは、登記の時点を基準とする考え方がある旨を明記することとした。他方で、目的債権を目的財産とする担保権については、登記まで求めることとするのは過大とも考えられることから、譲渡登記の時点を基準とすることとはしていない。

8 その他

民法第296 条(担保権の不可分性)及び第351 条(物上保証人の求償権)の規定を新たな規定に係る動産担保権について準用するものとする。

(説明)

部会資料21 から変更はない。

9 根担保権

⑴ 新たな規定に係る動産担保権の設定は、【一定の範囲に属する】不特定の債権を担保するためにもすることができるものとする。

⑵ 極度額を定めることの要否については、引き続き検討する。

⑶ 個別の被担保債権について譲渡や債務の引受け、債権者又は債務者の交替による更改があった場合について、譲渡された債権などについて対して担保権を行使することができないものとする。

⑷ 元本の確定前に根担保権者又は債務者について相続開始、合併又は会社分割があった場合について、次のような規定を設けるものとする。

ア 元本の確定前に根担保権者又は債務者について相続開始があった場合には、次のいずれかの案によるものとする。

【案1.9.1】根担保権者又は債務者について相続が開始したときは、担保すべき元本は、確定するものとする。

【案1.9.2】次の(ア)から(エ)までの規定を設けるものとする。

 (ア) 根担保権者について相続が開始したときは、根担保権は、相続開始時に存在する債権及び相続人と設定者との合意により定めた相続人が相続開始後に取得する債権を担保する。

(イ) 債務者について相続が開始したときは、根担保権は、相続開始時に存在する債務及び根担保権者と設定者との合意により定めた相続人が相続開始後に負担する債務を担保する。

(ウ) 上記(ア)(イ)の合意については、後順位の担保権者その他の第三者の承諾を得ることを要しない。

(エ) 上記(ア)(イ)の合意について相続の開始後6か月以内に登記をしないときは、担保すべき元本は、相続開始時に確定したものとみなす。

イ(ア) 根担保権者について合併があったときは、根担保権は、合併時に存在する債権及び合併後存続する法人又は合併によって設立された法人が合併後に取得する債権を担保する。

(イ) 債務者について合併があったときは、根担保権は、合併時に存在する債務及び合併後存続する法人又は合併によって設立された法人が合併後に負担する債務を担保する。

(ウ) 設定者は、根担保権者又は債務者について合併があったときは、合併があったことを知った日から2週間かつ合併から1か月以内に、担保すべき元本の確定を請求することができる。ただし、債務者について合併があった場合で、債務者が設定者であるときは、この限りでない。

(エ) (ウ)の請求があったときは、担保すべき元本は、合併の時に確定したものとみなす。

ウ(ア) 根担保権者を分割をする会社とする分割があったときは、根担保権は、分割の時に存在する債権並びに分割をした会社及び分割により設立された会社又は当該分割をした会社がその事業に関して有する権利義務の全部又は一部を当該会社から承継した会社が分割後に取得する債権を担保する。

(イ) 債務者を分割をする会社とする分割があったときは、根担保権は、分割の時に存在する債務並びに分割をした会社及び分割により設立された会社又は当該分割をした会社がその事業に関して有する権利義務の全部又は一部を当該会社から承継した会社が分割後に負担する債務を担保する。

(ウ) 設定者は、根担保権者又は債務者を分割をする会社とする分割があったときは、分割があったことを知った日から2週間かつ分割から1か月以内に、担保すべき元本の確定を請求することができる。ただし、債務者を分割をする会社とする分割があった場合で、債務者が設定者であるときは、この限りでない。

(エ) (ウ)の請求があったときは、担保すべき元本は、分割の時に確定したものとみなす。

⑸ 根担保権の全部譲渡、一部譲渡(注)については、これを公示するための制度を設けることができるか否かを含めて、引き続き検討する。

(注)分割譲渡については、これを公示するための制度を設けることができるか否かのほか、極度額の設定の要否と関連して、引き続き検討する。

⑹ 債務者又は設定者が破産手続開始決定を受けたこと、設定から一定期間経過した後に設定者の請求があったことなど(注1)(注2)を被担保債権の元本の確定事由とするものとする。

(注1)担保権者等による実行の着手を元本確定事由とするか否かについては、実行に関する規律(後順位担保権者による実行の可否及びその場合の先順位担保権の消長等)や集合動産を目的とした担保の規律との関係も踏まえて、引き続き検討する。

(注2)元本確定事由に関するその他の規律については、根抵当権に関する規律を参考にして、引き続き検討する。

(説明)

部会資料25 及び前回の議論内容を踏まえて、本文⑷アについて、【案1.9.1】を併記することとした。その他の部分に変更はない。

第2 個別債権を目的財産とする譲渡担保の実体的効力

1 前記第1の2(果実に対する担保権の効力)、3(被担保債権の範囲)、5(使用収益以外の設定者の権限)⑴、6(担保権者の権限)⑴、7(物上代位)、8(その他)及び9(根担保)は、債権譲渡担保権にも適用されるものとする。

2 債権譲渡担保権が設定され【、債務者対抗要件が具備され】た場合、①第三債務者は設定者に対し弁済をすることが制限され、②設定者は、担保権の目的財産である債権について、放棄、免除、相殺、更改など当該債権を消滅させる行為をすることができないものとする。

3⑴ 債権譲渡担保権について、転担保、担保権の譲渡・放棄及び順位の譲渡・放棄(以下「債権譲渡担保権の処分」という。)及び順位の変更(債権譲渡担保権の処分と併せて「債権譲渡担保権の処分等」という。)の全部又は一部をすることができるものとするか、これらのうち一部をすることができるものとする場合、その範囲をどのように考えるかについては、引き続き検討する(注)。

(注)できるものとする範囲については、実務上のニーズや公示の観点から、引き続き検討する。

⑵ ⑴でできるものとされた債権譲渡担保権の処分等の対抗要件等については、次のとおりとする。

ア(ア) 債権譲渡担保権の処分は、債務者に当該処分を通知し、又は債務者がこれを承諾しなければ、これをもって債務者、保証人、担保権設定者及びこれらの者の承継人に対抗することができないものとする。

(イ) 債権譲渡担保権の処分は、登記をしなければ、これをもって第三債務者以外の第三者に対抗することができないものとする。

(ウ) 債権譲渡担保権の処分は、その登記がされたことについて第三債務者に登記事項証明書を交付しなければ、これをもって第三債務者に対抗することができないものとする。

(エ) 担保権者が数人のために債権譲渡担保権の処分をしたときにおける処分の利益を受ける者の権利の順位は、債権譲渡担保権の処分についての登記の前後によるものとする。

イ 債権譲渡担保権の順位の変更は、登記をし、かつ、その登記がされたことについて第三債務者に登記事項証明書を交付しなければ、その効力を生じないものとする。

(説明)

本文3⑴については、部会資料25 及び前回の議論内容を踏まえて独立して項目を設けることとした。また、⑵については、債権譲渡担保権の処分等の対抗要件等についての記載を本項に移すこととした。

第3 集合動産・集合債権を目的とする担保権の実体的効力の担保化

1 動産の集合体に対する新たな規定に係る動産担保権の設定の可能性

新たな規定に係る動産担保権は、種類、所在場所、量的範囲の指定その他の方法により特定された範囲(以下「特定範囲」という。)に属する動産の集合体(設定後に新たに動産がその集合体に加入(個別動産が特定範囲に新たに入ることをいう。)をすることが予定されているものを含む。)を一括して目的とすることができるものとする(注)。

(注)集合体として一括して担保権の目的となるためには、単に複数の動産によって構成されているだけでなく、経済的又は取引上の一体性など、一体として扱うことを正当化するための何らかの要件が扱われるための適格性に関する何らかの要件(経済的若しくは取引上の一体性又は「取引上の社会通念に照らし、構成部分が変動しても集合体としての同一性を維持して存続すると認められる」ことなど)を必要であるというとする考え方がある。

(説明)

部会資料25 及び前回の議論内容等を踏まえて表現を改めた。

2 集合動産を目的とする担保を設定した設定者の権限

新たな規定に係る動産担保権の目的物が特定範囲に属する動産の集合体であって、設定後に新たに動産がその集合体に加入することが予定されているもの(以下「集合動産」という。)である場合における設定者の処分権限や担保権者の権限について、次のような規定を設けるものとする。

⑴ 設定者は、通常の事業の範囲内で、集合動産の構成部分である動産について、担保権の負担のないものとしての処分をし、又は集合動産から逸出(特定範囲に含まれていた個別動産が、事実の問題として特定範囲から出ることをいう。)をさせる権限を有する。ただし、設定行為に別段の定めがあるときは、その定めに従う。

 ⑵ 設定者が⑴の権限の範囲(以下「権限範囲」という。)を超えて集合動産の構成部分である動産について、担保権の負担のないものとしての処分をし、を処分し、又は逸出をさせるおそれがあるときは、担保権者は、その予防を請求することができる。

(説明)

部会資料25及び前回の議論内容等を踏まえて表現を改めた。

3 集合動産の構成部分である動産の設定者による処分

⑴ 設定者が、その権限範囲を超えて、集合動産の構成部分である動産を、担保権の負担のないものとしての処分をした場合に、当該処分を受けた者が、その動産が担保権の目的物であることを知らないで、かつ、知らないことに過失がなかったときには、民法第192 条の適用によって保護されるものとする(注1)。

⑵ 設定行為に設定者の処分権限について別段の定めがない場合において、設定者が、集合動産の構成部分である動産を、通常の事業の範囲を超えて、担保権の負担のないものとしての処分をした場合には、当該処分を受けた者は、その処分が設定者の通常の事業の範囲に含まれると信じるについて正当な理由があるときは、その動産について担保権の負担のない権利を取得するものとする。

⑶ 設定行為に設定者の処分権限を制約する別段の定めがある場合において、設定者が、通常の事業の範囲内で、かつ、制約された権限範囲を超えて、担保権の負担のないものとしての処分をした場合には、当該処分を受けた者は、制約された権限範囲を超えていることを知らなかったとき(注2)は、その動産について担保権の負担のない権利を取得するものとする(注3)。

⑷ 設定行為に設定者の処分権限を制約する別段の定めがある場合において、設定者が、通常の事業の範囲及び制約された権限範囲を超えて、担保権の負担のないものとしての処分をした場合には、当該処分を受けた者は、設定者による当該処分が通常の事業の範囲に含まれると信じるについて正当な理由があり、かつ、制約された権限範囲を超えることを知らなかったとき(注2)は、その動産について担保権の負担のない権利を取得するものとする。

⑸ 設定行為に設定者の処分権限を拡大する別段の定めがある場合において、設定者が、通常の事業の範囲及び拡大された権限範囲を超えて、担保権の負担のないものとしての処分をした場合には、当該処分を受けた者は、設定者による当該処分が通常の事業の範囲又はその拡大された権限範囲に含まれると信じるについて正当な理由があるときは、その動産についての担保権の負担のない権利を取得するものとする。

⑴ 設定者が、通常の事業の範囲内で、かつ、権限範囲を超えて、集合動産の構成部分である動産を処分した場合については、次のいずれかの案によるものとする。

【案3.3.1.1】 処分を受けた者は、その動産について権利を取得するものとする。

【案3.3.1.2】 処分を受けた者は、設定者による処分が権限範囲を超えていることを知らなかった場合には、その動産について権利を取得するものとする。

【案3.3.1.3】 処分を受けた者は、設定者による処分が権限範囲を超えていることを知らず、かつ、知らなかったことにつき過失がないときは、その動産について権利を取得するものとする。

⑵ 設定者が、権限範囲を超えて、かつ、通常の事業の範囲を超えて、集合動産の構成部分である動産を処分した場合については、次のいずれかの案によるものとする。

【案3.3.2.1】 処分を受けた者は、設定者による処分が通常の事業の範囲であると信じていた場合には、その動産についての権利を取得するものとする。

【案3.3.2.2】 規律を設けず、処分を受けた者は、即時取得が成立するときに限り、保護されるものとする。

⑹ 前記2⑴及び3並びに⑴から⑸まで及び⑵で処分を受けた者が集合動産の構成部分である動産について権利を取得しない場合に担保権者のとり得る手段については、引き続き検討する。

(注1)集合動産から逸出をした動産の処分については別異に考えるべきであるという考え方がある。

(注2)知らなかったことにつき過失がないことが必要であるという考え方、重過失がないことが必要であるという考え方がある。

(注3)相手方が権利を取得するために、目的物が集合物から逸出をすることが必要であるかどうかについては、引き続き検討する。

(説明)

1 前記2のとおり、集合動産を目的とする新たな規定に係る担保権の設定者は、原則として、通常の事業の範囲内又は当事者が定めた権限の範囲内で、構成部分である動産の処分権限を有する。本項の本文は、設定者がその範囲を超えて、担保権の負担がないものとして構成部分を処分した場合に、その相手方が担保権の負担のない権利を取得するかどうかについての規律を設けようとするものである。通常の事業の範囲や当事者が合意した権限範囲との関係で、行われた処分がどのように位置づけられるかについては、次のようなパターンが考えられる。

A:通常の事業の範囲に含まれているが、当事者が合意によって制約が加えられており、合意された権限範囲には入っていない。

B:通常の事業の範囲に含まれており、当事者間で合意された権限範囲にも含まれる。

C:通常の事業の範囲内に含まれていないが、当事者が権限範囲を拡大する方向で合意しており、合意された範囲に含まれている。

D:通常の事業の範囲に含まれておらず、当事者が合意した範囲にも含まれていない。

2 具体的な規律内容

本文⑴は、権限外で処分が行われた場合についての原則を明らかにしたものであり、設定者の権限を超えた処分がされた以上、原則として第三者は権利を取得することができないが、即時取得が成立する場合には第三者は担保権の負担のない権利を取得するというものである。

本文⑵は、設定者の処分権限について別段の定めがない場合(したがって、設定者が通常の事業の範囲内での処分権限を有する場合)に関するものである。この場合に、通常の事業の範囲を超えた処分(上図のC、D)がされたときでも、相手方がその処分が通常の事業の範囲内でされたと信じる正当な理由があるときは、相手方は担保権の負担のない権利を取得するとするものである。正当な理由があるときとは、そのように信じるについて過失がないという趣旨である。法律上のデフォルトルールとして、設定者が通常の事業の範囲内では処分権限を有することとされているため、権限内で処分がされたと過失なく信じた相手方を保護しようとするものである。

本文⑶は、当事者間で設定者の処分権限について別段の定めがされ、設定者が、通常の事業の範囲内よりも狭い範囲でのみ処分権限を有するとされた場合に関する規定であり、通常の事業の範囲内で、当事者が合意した権限を超えた処分がされた場合(A)を扱っている。

 通常の事業の範囲内では設定者は処分権限を有するのが原則であり、これに加えられた制約は第三者にとっては認識しにくいものであるから、当事者としては、その処分について設定者が権限を有すると信頼してもやむを得ない。そこで、この場合には、当事者の合意した権限を超えている場合でも、即時取得に必要な主観的要件を緩和して相手方を厚く保護することが考えられる。そこで、本文⑶では、当事者の合意によって制約された権限を超えていることについて相手方が善意でさえあれば、相手方は保護されることとしている。これに対しては、無過失が必要であるという見解や、無重過失が必要という見解も主張されているため、これらを(注)に記載している。

本文⑷も、本文⑶と同様に、当事者間で設定者の処分権限について別段の定めがされ、設定者が、通常の事業の範囲よりも狭い範囲でのみ処分権限を有するとされた場合に関する規通常の事業の範囲 当事者が合意した範囲A B CD定であり、通常の事業の範囲を超え、かつ、当事者が合意した権限を超えた処分がされた場合に関するもの(D)を扱っている。この場合、その処分が通常の事業の範囲内でされたと信じる正当な理由があるときは、相手方の信頼を保護してその処分が通常の事業の範囲内でされたのと同様に扱い(本文⑵と同様)、その上で、通常の事業の範囲というデフォルトルールに加えられた制約は相手方にとって認識しにくく、通常の事業の範囲内にあると正当に信頼した者は、合意による権限を超えていても相手方には処分権限があると信頼するのが通常であるから、本文⑶と同様に、合意による権限を超えていることについて善意でさえあれば、相手方を保護して担保権の負担のない権利を取得することとしている。

本文⑸は、本文⑶⑷とは逆に、設定者の処分権限を拡大する別段の定めがある場合についての規律であり、通常の事業の範囲及び拡大された権限範囲を超えた処分がされた場合に(D)、相手方が、設定者による当該処分が通常の事業の範囲又はその拡大された権限範囲のいずれかに含まれると信じるについて正当な理由があるときは、その信頼を保護しようとするものである。

4 集合債権を目的とする担保を設定した設定者の権限

⑴ 譲渡担保の目的債権が債権発生年月日の始期及び終期並びに債権発生原因等特定範囲によって特定され、特定された範囲に現に発生していない債権を含むもの(以下「集合債権」という。)である場合においては、設定者は、通常の事業の範囲内で、その特定された範囲に含まれる債権の取立て【、譲渡及び相殺、免除その他の債権を消滅させる行為】をする権限を有するものとする。ただし、設定行為に別段の定めがあるときはその定めに従うものとする。

⑵ 設定者が⑴の権限の範囲を超えて取立て【、譲渡、免除等】をした場合の譲受人及び第三債務者の保護に関する特別の規定を設けないものとする。

(説明)

本文⑴の集合債権の要件について、表現ぶりを改めた。

なお、本文⑴の「取立て」には取立金を利用する権限まで含まれることについては、補足説明に明記する予定である。

5 担保価値維持義務・補充義務

前記2⑴及び4⑴に規定する場合について、担保価値維持義務や、特定された範囲に含まれる動産又は債権について担保権の負担のないものとしての処分が処分がされ、又は逸出をさせたときの補充義務に関する規定(注)を設けるか否かについて、引き続き検討する。

 (注)例えば、「新たな規定に係る動産担保権の目的財産が集合動産又は集合債権である場合には、正当な理由がある場合を除き、設定者は、通常の事業が継続されれば当該集合動産又は当該集合債権が有すると認められる価値を維持しなければならない」という趣旨の規定が考えられる。

(説明)

二読資料から変更はない。

6 集合動産を目的とする担保権における物上代位等

⑴ 新たな規定に係る動産担保権の目的物が集合動産である場合には、当該担保権は、設定者が通常の事業を継続している間は、特定範囲に含まれる動産の売買、滅失又は損傷によって設定者が受けるべき金銭その他の物に対し、行使することができないものとする。

⑵ 前記⑴につき、次のような例外を設けるかは、引き続き検討する。

ア 当事者が別段の合意をした場合

イ 権限範囲を超える処分がされた場合

⑶ 第三者が特定範囲に含まれる動産を滅失又は損傷させた場合における担保権者独自の損害賠償請求権については、特段の規定を設けないものとする。

(説明)

部会資料21から変更はない。

第4 新たな規定に係る動産担保権の対抗要件等

1 新たな規定に係る動産譲渡担保権(又は新たに創設する担保権。以下併せて「動産譲渡担保権等」という。)の対抗要件等(2の留保所有権の場合を除く。)

 ⑴ 新たな規定に係る動産譲渡担保権の対抗要件

ア 個別動産を目的とする新たな規定に係る動産譲渡担保権(以下「個別動産担保権」という。)の設定は、当該個別動産の引渡し(占有改定を含む。以下同じ。)がなければ、これをもって第三者に対抗することができないものとする。

イ 集合動産を目的とする新たな規定に係る動産譲渡担保権(以下「集合動産担保権」という。)等(以下「集合動産譲渡担保権等」という。)の設定は、その構成部分であるとして現に存在する動産の引渡しがなければ、これをもって第三者に対抗することができないものとする。この場合には、当該設定後に集合動産に加入した個別動産に及ぶ当該担保権の効力についても、第三者に対抗することができるものとする。

ウ 個別動産担保権又は集合動産担保権を目的とする動産譲渡担保権等の設定については、登記をすることができることとし、登記がされたときは、目的物である個別動産又は集合動産の構成部分であるとして現に存在する動産について引渡しがあったものとみなすものとする。

⑵ 新たな規定に係る動産譲渡担保権相互の優劣

ア 同一の個別動産又は集合動産ついて数個の個別動産譲渡担保権が設定されて競合したときは、その順位は、原則として、当該担保権について対抗要件を備えた時これをもって第三者に対抗することができるようになった時の前後によるものとする。

イ 同一の集合動産に数個の集合動産担保権が設定されて競合したとき(その一部が重なり合って競合する場合を含む。)は、その順位は、原則として、集合動産担保権について対抗要件を備えた時の前後による(注1)。

ウ 集合動産に一個の集合動産担保権が設定されており、その設定後に、個別動産担保権が設定された個別動産が加入したときは、集合動産担保権(が当該個別動産に及ぶ効力)と個別動産担保権との順位については、原則として、次のいずれかの案によるものとする。

【案 4.1.1】個別動産担保権について対抗要件を備えた時と集合動産担保権について対抗要件を備えた時の前後による。

【案4.1.2】個別動産担保権について対抗要件を備えた時と当該個別動産が集合動産に加入した時の前後による。

アからウまでにかかわらず、登記により対抗要件を備えた新たな規定に係る動産譲渡担保権は、占有改定により対抗要件を備えた新たな規定に係る動産譲渡担保権等に優先するものとする(注2)。

(注1)集合動産担保権の設定後に集合動産に加入した個別動産(加入時に、当該個別動産を目的とする個別動産担保権は設定されていない。)があるときであっても、集合動産担保権同士の競合が問題となる場面においては、設定後に加入した個別動産についても、その順位は、原則として、集合動産担保権について対抗要件を備えた時の前後による。

(注2)集合動産譲渡担保権に限ってエの規律を適用する考え方がある。

(説明)

部会資料 23 では、担保目的取引規律型及び担保物権創設型の双方を包含する形で「動産譲渡担保権等」と定義していたが、分かりにくさもあったことから、「新たな規定に係る動産担保権」とし、実質的ルールの異なる留保所有権の場合を除くこととした。

本文⑴イについては、集合動産の構成部分である個別動産が現には存在しないものの、近いうちに存在することとなるのが確実といえるような場合にも、集合動産を目的とする新たな規定に係る動産担保権の対抗要件を具備する余地を認めるべきとの意見があったことを踏まえて、「その構成部分である動産」という文言に修正することとした。また、本文⑴イについて、集合動産を目的とする新たな規定に係る動産担保権の設定についての第三者対抗要件の効力が、当該設定後に集合動産に加入した個別動産にも及ぶ旨を明記した。

本文⑵では、部会資料 25 及び前回の議論内容を踏まえて新たな規定に係る動産担保権が競合する場面とその規律を整理し、ウにおいて設定時説と加入時説を併記することとした。

2 留保所有権(又は新たに創設する担保権のうち目的物の売買代金債権のみを被担保債権とするもの。以下併せて「留保所有権等」という。)の対抗要件等

⑴ 留保所有権の対抗要件の要否

留保所有権を第三者に主張するために対抗要件を必要とするかどうかについては、次のとおりいずれかの案によるものとする。

ア 目的物の代金債権を担保する留保所有権(以下「狭義の留保所有権」という。)は、これを第三者に主張するために対抗要件を必要とするかどうかについては、次のいずれかの案によるものとする(注1、2)。

【案4.2.1.1】目的物の代金債権を担保する留保所有権(以下「狭義の留保所有権」という。)(又は新たに創設する担保権のうち目的物の売買代金債権のみを被担保債権とするもの。以下「狭義の留保所有権等」という。)は、これを第三者に主張するために、特段の要件を必要としないものとする(注31、2)。

【案4.2.1.2】狭義の留保所有権等を含む)留保所有権等は、その動産の引渡しがなければ、これをもって第三者に対抗することができないものとする。

イ (目的物の代金債権及び)目的物の代金債権(注1)以外の債権を担保する留保所有権(以下「拡大された留保所有権」という。)は、その動産の引渡しがなければ、これをもって第三者に対抗することができないものとする(注2)。

(注1)動産を購入するための資金の融資に基づく債権など、目的物である動産と密接な関連性を有する一定の債権を被担保債権とする留保所有権についても、狭義の留保所有権に含める等と取り扱う考え方がある。これに関連して、このような密接な関連性を有する一定の債権を被担保債権とする動産譲渡担保権が設定された場合には、当該動産譲渡担保権についても、狭義の留保所有権と同様に取り扱う考え方がある。

担保物権創設型によると、目的物の代金債権【及び上記債権】を担保する新たな規定に係る動産担保権について、狭義の留保所有権と同様に取り扱うことが考えられる。

(注2)担保目的取引規律型による場合には、狭義の留保所有権以外の留保所有権(以下「拡大された留保所有権」という。)は、動産譲渡担保権等と同様に取り扱うものとする。

(注2)留保所有権については、登記できるとすることが考えられる。

(注3)【案4.2.1.1】によっても、(代位弁済等により)目的物の売主以外の者が狭義の留保所有権を有する場合には、その動産の引渡しがなければ、これをもって第三者に対抗することができないものとする考え方がある。

 ⑵ 留保所有権と新たな規定に係る動産担保権との優劣関係

【案4.2.2.1】狭義の留保所有権等は、他の新たな規定に係る動産担保権に当然に優先するものとする(【案4.2.1.1】を前提とする。)。

【案4.2.2.2】留保所有権等と競合する他の新たな規定に係る動産担保権との優劣は、これをもって第三者に対抗することができるようになった時の前後によるものとする(【案30 4.2.1.2】を前提とする。)。

ア 【案4.2.2.3】留保所有権と競合する他の新たな規定に係る動産担保権との優劣は、留保所有権が目的物の代金債権以外の債権を担保する限度では、原則として、これをもって第三者に対抗することができるようになった時の前後によるものとする(注4)。

イ ただし、留保所有権は、【【案 4.2.1.2】によると引渡しがされていることを前提として、】等がその目的物の代金債権を担保する限度では、他の競合する新たな規定に係る動産担保権に当然に優先するものとする(注5、6)(【案4.2.1.2】を前提とする。)(注3、4)。

(注4)この場合には、前記1⑵エと同様のルール(登記優先ルール)を採用することが考えられる。

(注5)なお、拡大された留保所有権について、目的物の代金債権を担保する部分と目的物の代金債権以外の債権を担保する部分がある場合には、これと競合する他の新たな規定に係る動産担保権との優劣は、本文⑵イにより目的物の売買代金を担保する限度では拡大された留保所有権が優先し、それ以外の部分については、原則として、それぞれが対抗要件を具備した時の前後による

ものとなる。

(注6)他の新たな規定に係る動産担保権に優先するための要件として、一定期間内に登記を備えることを求める考え方がある。

(注3)【案4.2.2.3】を採る場合には、留保所有権等がその目的物の代金債権を担保する限度で競合する新たな規定に係る動産担保権に優先するためには、留保所有権等について第三者対抗要件を備えていることが必要(ただし、競合する他の担保権の対抗要件具備より後でもよい。)となる。

(注4)【案4.2.2.3】を採る場合には、拡大された留保所有権と競合する他の新たな規定に係る動産担保権との優劣は、本文⑵により目的物の売買代金を担保する限度では留保所有権が優先し、それ以外の部分については、原則として、それぞれが対抗要件を具備した時の前後によるものとなる。【案4.2.2.1】を採る場合の拡大された留保所有権の取扱いも、同様とすることが考えられる。

(説明)

留保所有権の登記できる範囲を明確化するなどの表現の見直しを行ったほか、部会資料から実質的変更はない。なお、狭義の留保所有権について登記を要求する意見があったが、(注6)の記載で足りるものと考えられ、特段の追記は行っていない。

3 新たな規定に係る動産担保権の処分等の対抗要件等

⑴ア 新たな規定に係る動産担保権の処分は、債務者に当該処分を通知し、又は債務者がこれを承諾しなければ、これをもって債務者、保証人、担保権設定者及びこれらの者の承継人に対抗することができないものとする。

イ 新たな規定に係る動産担保権の処分は、登記をしなければ、これをもって第三者に対抗することができないものとする。

ウ 担保権者が数人のために新たな規定に係る動産担保権の処分をしたときにおける処分の利益を受ける者の権利の順位は、新たな規定に係る動産担保権の処分についての登記の前後によるものとする。

⑵ 新たな規定に係る動産担保権の順位の変更は、登記をしなければ、その効力を生じないものとする。

(説明)

実体的効力に項目を移すこととした。

第5 新たな規定に係る動産担保権と他の担保物権との優劣関係

1 動産質権と新たな規定に係る動産担保権との優劣関係

⑴ 動産質権と新たな規定に係る動産担保権とが競合する場合は、動産質権については設定時(引渡時)を基準とし、新たな規定に係る動産担保権については第三者に対抗することができるようになった時を基準とし、優劣はその前後によるものとする。

⑵ 動産質権と留保所有権とが競合する場合は、動産質権については設定時(引渡時)を基準とし、第4の2⑵と同様に取り扱うこととする。

⑵ 狭義の留保所有権は、その目的物の代金債権を担保する限度では、特段の要件なくして競合する動産質権に優先するものとする。

2 先取特権と新たな規定に係る動産担保権との優劣関係

⑴ 先取特権と新たな規定に係る動産担保権は競合するものとし、その優劣関係については新たな規定に係る担保権を民法第330 条に規定する第1順位の先取特権と同一の効力を有するものと取り扱うものとする。

⑵ 新たな規定に係る動産担保権者については、民法第330 条第2項前段の規定を適用しないこととし、担保権設定時に第2順位又は第3順位の先取特権者があることを知っていたとしても、これらの者に対して優先権を行使できるものとする(注)。

(注)動産質権についても、民法第330 条第2項前段の規定を適用しないようにすることが考えられる。

3 一般先取特権と新たな規定に係る動産担保権との優劣関係

雇用関係の先取特権を含む一般先取特権に、新たな規定に係る動産担保権に対する一定の優先権を認めるかについては、担保法制全体に与える影響も考慮しつつ、新たな規定に係る動産担保権に優先し得る一般先取特権の範囲(雇用関係の先取特権に限るか、その他の一般先取特権にも優先権を認めるか)、新たな規定に係る動産担保権の範囲(その目的物の性質等によって区別するか)、優先権の具体的な内容、優先権を行使するための要件等を引き続き検討する。

(説明)

本文1⑵については、動産質権と留保所有権とが競合する場合の優劣関係の基準については、新たな規定に係る動産担保権と留保所有権とが競合する場合と同様に取り扱うべきことを明記した。その他は部会資料23から変更はない。

第6 債権譲渡担保権の対抗要件等の在り方

1 債権譲渡担保権の対抗要件等

⑴ア 債権を目的とする譲渡担保権(以下「債権譲渡担保権」という。)の設定は、設定者から第三債務者に対する通知又は第三債務者の承諾(以下「通知又は承諾」という。)がなければ、これをもって第三債務者に対抗することができないものとする。

イ 債権譲渡担保権の設定は、確定日付のある証書による通知又は承諾がなければ、これをもって第三債務者以外の第三者に対抗することができないものとする。

⑵ア 債権譲渡担保権の設定については、登記をすることができることとし、登記がされたときは、第三債務者以外の第三者については、確定日付のある証書による通知があったものとみなすものとする。

イ 債権譲渡担保権の設定の登記がされたことについて設定者又は担保権者が第三債務者に登記事項証明書を交付して通知をし、又は当該第三債務者が承諾をしたときは、当該第三債務者についても、確定日付のある証書による通知があったものとみなすものとする。

2 債権譲渡担保権相互の優劣関係

⑴ 同一の債権について数個の債権譲渡担保権が設定されたときは、その順位は、原則として、これをもって第三者に対抗することができるようになった時の前後によるものとする。

⑵ 登記により対抗要件を備えた債権譲渡担保権と、通知又は承諾により対抗要件を備えた債権譲渡担保権との優劣関係について、特別の規定を設けないものとする(注)。

(注)登記により対抗要件を備えた債権譲渡担保権は、通知又は承諾により対抗要件を備えた債権譲渡担保権に優先するものとする考え方がある。

 3 一般先取特権と債権譲渡担保権との優劣関係

雇用関係の先取特権を含む一般先取特権に、債権譲渡担保権に対する一定の優先権を認めるかについては、第5の3と同様に、引き続き検討する。

3 債権譲渡担保権の処分等の対抗要件等

⑴ア 債権譲渡担保権の処分は、債務者に当該処分を通知し、又は債務者がこれを承諾しなければ、これをもって債務者、保証人、担保権設定者及びこれらの者の承継人に対抗することができないものとする。

イ 債権譲渡担保権の処分は、登記をしなければ、これをもって第三債務者以外の第三者に対抗することができないものとする。

ウ 債権譲渡担保権の処分は、その登記がされたことについて第三債務者に登記事項証明書を交付しなければ、これをもって第三債務者に対抗することができないものとする。

エ 担保権者が数人のために債権譲渡担保権の処分をしたときにおける処分の利益を受ける者の権利の順位は、債権譲渡担保権の処分についての登記の前後によるものとする。

⑵ 債権譲渡担保権の順位の変更は、登記をし、かつ、その登記がされたことについて第三債務者に登記事項証明書を交付しなければ、その効力を生じないものとする。

(説明)

本文2について、債権譲渡担保権についても登記優先ルールを採用する考え方があることを(注)に記載した。

また、本文3について、一般先取特権と債権譲渡担保権との優劣関係の問題を引き続き検討する旨を明記することとした。

なお、債権譲渡担保権の処分等の対抗要件等については、実体的効力に項目を移している。

第7 動産・債権譲渡登記制度の見直し

1 同一の動産又は債権を目的とする新たな規定に係る担保権に関する権利関係を一覧的に公示する仕組みの導入の要否

【案 7.1.1】同一の動産又は債権を目的とする新たな規定に係る担保権に関する権利関係を一覧的に公示させる仕組みは、設けないものとする。

【案7.1.2】新たに関連担保目録制度を導入し、同一の動産又は債権を目的とする新たな規定に係る担保権に関する権利関係を関連担保目録にできる限り一覧的に公示させるものとする。

2 新たな規定に係る担保権の処分等を登記できるようにすることの要否及びその範囲並びにその公示方法

新たな規定に係る動産担保権の処分、新たな規定に係る動産担保権の順位の変更、債権譲渡担保権の処分及び債権譲渡担保権の順位の変更(以下「新たな規定に係る担保権の処分等」という。)を登記できるようにすることの要否及びその範囲について、実務上のニーズや公示の分かりやすさの観点等を踏まえて、引き続き検討する。その上で、登記できるとされた新たな規定に係る担保権の処分等の公示方法については、以下のとおりとする。

【案7.2.1】新たな規定に係る担保権の処分等に関する登記を、例えば個々の動産・債権譲渡登記に付記するような形でできるものとする(【案7.1.1】を前提とする。)。

【案7.2.2】関連担保目録に登記された動産・債権譲渡登記に係る新たな規定に係る担保権の処分等のみを登記できることとし、当該新たな規定に係る担保権の処分等に関する登記は関連担保目録上に行うものとする(【案7.1.2】を前提とする。)。

3 登記をすることができる動産若しくは債権の譲渡人又は新たな規定に係る担保権の設定者の範囲登記をすることができる動産若しくは債権の譲渡人又は新たな規定に係る担保権の設定者の範囲を、商号の登記をした商人にも拡大することについて、引き続き検討する。

(説明)

部会資料23 から変更はない。なお、登記手続に関するより詳しい説明は、補足説明に明記する予定である。

加工 担保法制部会資料25 担保法制の見直しに関する中間試案のための検討メモ

https://www.moj.go.jp/shingi1/shingi04900001_00167.html

1 新たな規定に係る担保権の処分等について(部会資料21 第1の6⑵及び⑶、第2の1に5 ついて)

部会資料21 の第1の6⑵及び⑶に、以下の案を併記することについて、どう考えるか。

新たな規定に係る担保権についての転担保、順位の変更、担保権の譲渡・放棄及び順位の譲渡・放棄については、その一部に限ってできるものとする(注)。

(注)できるものとする範囲については、実務上のニーズや公示の観点から、引き続き検討する。

(説明)

部会資料23 では、登記することができる新たな規定に係る担保権の処分等について、公示の分かりやすさの観点から、一部のものに限定する案を示した(部会資料23 第7の(説明)3参照)。また、電子記録債権法(平成19 年法律第102 号)は、電子記録債権を目的とする質権について、順位の変更(同法第39条)及び転質(同法第40条)のみを認めており、質権又はその順位の譲渡又は放棄を認めていない(同法第36 条において民法の規定が準用されていない)。これらを踏まえると、実体法上、新たな規定に係る担保権の処分等をすることができるものとするかどうかについても、その一部に限ってできるものとする案を設けることとするのが相当と考えられるため、これを併記することを提案するものである。

なお、できるものとするか否かについては、

①実務上のニーズがあるか(例えば、ニーズがあると指摘されているものとして、順位の変更など)

②(物的に編成されていない動産・債権譲渡登記においても)公示を適切に行うことができるか(公示を比較的適切に行えると考えられるものとして、例えば、転担保、担保権の譲渡・放棄(=他の担保権の存在が問題とならない担保権の処分))などを参考に検討することが考えられる。

根担保権の元本の確定前に根担保権者又は債務者について相続があった場合について(部会資料21 第1の9⑷ア、第2の1について)

部会資料21の第1の9⑷アに、以下の案を併記することについて、どう考えるか。

根担保権者又は債務者について相続が開始したときは、担保すべき元本は、確定するものとする。

(説明)

部会資料 21 の第1の9⑷アでは、根担保権者又は債務者について相続があった場合について、根抵当権と同様に、相続の開始後6か月以内に合意の登記がされた場合に限り、相続人が相続の開始後に取得する債権/債務を担保することを提案していた。しかし、動産・債権譲渡登記においては、債務者は登記事項とされていない上、登記できる譲渡人も(商号登記をした商人に拡大しない限りは)法人に限られるため、債務者について相続があった場合を念頭において合意の登記のような制度を設ける必要性は乏しいと考えられる。また、自然人である根担保権者又は債務者の相続人との間の新たな債権を根担保権によって担保しなければならない必要性は高くないと考えられる。加えて、「合意の登記」のようなものを動産・債権譲渡登記に設けることにより、公示が分かりにくくなるおそれもある。

以上を踏まえると、端的に、根担保権者又は債務者について相続が開始したことを元本確定事由とすることも考えられることから、これを併記することを提案するものである。

関連 民法398条の8、398条の10。昭和46年10月4日付け民事甲第3220号民事局長通達、昭和46年12月27日付け民事三発第960号民事局第三課長依命通知。登記研究312号P43からP47、319号P50、369号P81、370号P72、533号P156、559号P152、649号P195、795号P104。

3 集合動産を構成する動産の「逸出・加入」及び「処分」の概念等について(部会資料21 第3の1から3までについて)部会資料21 第3の1及び2の「加入」とは、「個別動産が、種類、所在場所、量的範囲の指定その他の方法により特定された集合体の範囲(以下「特定範囲」という。)に新たに入ること」をいい、同2の「逸出」とは、集合物を目的とする担保権が及ばなくなるという法的な効果をいうものではなく、「集合体の特定範囲に含まれていた個別動産が、事実の問題として特定範囲から出ること」という趣旨で用いているが、そのような理解でよいか。また、これらの趣旨を表す文言としてよりよいものはあるか。

また、同2及び3の「処分」を「担保権の負担のないものとしての処分」と改めた上で、これを「集合動産の構成部分である個別動産の所有権を、新たな規定に係る担保権の負担がないものとして第三者に移転させること」をいうものと考えて良いか。

(説明)

部会資料21 の第3の1から3までの「逸出・加入」及び「処分」の概念について、集合動産に関する論点を検討する前提として、その意味内容についての認識を共有しようとするものである。なお、「逸出・加入」の用語については、集合動産の特定に当たり、場所的要件を不要とする、又は柔軟化する考え方によると、必ずしも当てはまらない場合もあり得るが、分かりやすさの観点から、「逸出・加入」に統一することとしている。また、「処分」については、分かりやすさの観点から「担保権の負担のないものとしての処分」という名称に改め、その意味内容を明記している。いずれも他の論点を議論する前提として認識を共有する趣旨で記載したものである。

4 集合動産の構成部分である動産を設定者が処分した場合における第三者保護(部会資料21第3の3⑴及び⑵について)

部会資料 21 第3の3⑴及び⑵の記載を、次のとおり修正することについて、どう考えるか。

⑴ 設定行為に設定者の処分権限を制約する別段の定めがある場合において、設定者が、通常の事業の範囲内で、かつ、制約された権限範囲を超えて、担保権の負担のないものとしての処分をした場合には、当該処分を受けた者は、制約された権限範囲を超えていることを知らなかったときに限り、その動産について権利を取得するものとする(注1)。

(注1)これに加えて、知らなかったことにつき過失がないことを求める考え方がある。

⑵ 設定者が、通常の事業の範囲及び権限範囲を超えて、担保権の負担のないものとして処分をした場合については、当該処分を受けた者は、設定者による当該処分が通常の事業の範囲であると信じていた場合には、その動産についての権利を取得するものとする(注2)。

(注2)この場合において、当該処分を受けた者が、設定者による当該処分が通常の事業の範囲であるとは信じていなかったとき(例えば、設定者による処分は通常の事業の範囲を超えているが、拡大された権限範囲内であると信じていたときや、そもそも集合動産譲渡担保権等が設定されていたことを知らなかったときなど)は、即時取得が成立するときに限り、保護されることになると考えられる。

(説明)

⑴について、ここで問題となる別段の定めを「処分権限を制約する別段の定め(処分権限をデフォルトルールから狭める定め)」に限定することを明記している。なお、部会資料21では、「処分を受けた者は、その動産について権利を取得するものとする」案(部会資料 21の【案 3.3.1.1】)や、「処分を受けた者は、設定者による処分が権限範囲を超えていることを知らず、かつ、知らなかったことにつき過失がないときは、その動産について権利を取得するものとする」案(部会資料21 の【案 3.3.1.3】)を併記していたが、第13 回部会の議論では、「処分を受けた者は、設定者による処分が権限範囲を超えていることを知らなかった場合には、その動産について権利を取得するものとする」案(部会資料21の【案 3.3.1.2】)に支持が多かったことから、これを本文に記載することとし、部会資料21 の【案 3.3.1.3】を(注)に記載することとした。なお、「処分を受けた者は、その動産について権利を取得するものとする」案(部会資料21 の【案 3.3.1.1】)については、悪意の者を保護すべき実質的理由もないことから、本文には記載しないこととした。以上の整理について、どう考えるか。

 ⑵について、当該処分を受けた者の主観に応じて第三者保護の規律を分けることを提案している。すなわち、設定者が、通常の事業の範囲及び権限範囲を超えて、担保権の負担のないものとしての処分をした場合については、当該処分を受けた者は、設定者による当該処分が通常の事業の範囲であると信じていた場合には、その動産についての権利を取得するものとし(この場合には、即時取得の要件を緩めることになる。)、それ以外の場合(例えば、設定者による処分は通常の事業の範囲を超えているが、拡大された権限範囲内であると信じていたときや、そもそも集合動産譲渡担保権等が設定されていたことを知らなかったときなど)については、原則どおり即時取得の規律によることになると考えられる。

このような整理が適当かについて、御意見を伺いたい。

5 動産譲渡担保権等相互の優劣について(部会資料23の第4の1⑵について)

次の⑴及び⑵を前提として、⑶の場合の規律について、どう考えるか。

⑴ 同一の個別動産に数個の個別動産譲渡担保権等が設定されて競合したときは、その順位は、原則として、個別動産譲渡担保権等について対抗要件を備えた時の前後による。

※いわゆる登記優先ルールの適用あり。

⑵ 同一の集合動産に数個の集合動産譲渡担保権等が設定されて競合したとき(その一部が重なり合って競合する場合を含む。)は、その順位は、原則として、集合動産譲渡担保権等について対抗要件を備えた時の前後による。

この場合において、集合動産譲渡担保権等の設定に集合動産に加入した個別動産(加入時に、当該個別動産を目的とする動産譲渡担5 保権等は設定されていない。)があるときであって、集合動産譲渡担保権等同士の競合が問題となる場面においては、設定後に加入した個別動産について、その順位は、原則として、集合動産譲渡担保権等について対抗要件を備えた時の前後による。

※いわゆる登記優先ルールの適用あり(登記優先ルールの適用範囲をこの場面に限定する考え方がある。)。

⑶ 集合動産に一個の集合動産譲渡担保権等が設定されており、その設定後に、個別動産譲渡担保権等が設定された個別動産が加入したときは、集合動産譲渡担保権等(が当該個別動産に及ぶ効力)と個別動産譲渡担保権等との順位は、次のいずれの立場によって決するのが相当と考えるか。

【甲案】個別動産譲渡担保権等について対抗要件を備えた時と集合動産譲渡担保権等について対抗要件を備えた時の前後による(設定時説)。

【乙案】個別動産譲渡担保権等について対抗要件を備えた時と当該個別動産が集合動産に加入した時の前後による(加入時説)。

※いわゆる登記優先ルールの適用あり

(説明)

前回の部会では、個別動産譲渡担保権等が設定された個別動産が集合動産譲渡担保権等が設定された集合動産に加入した場合の優劣の基準について議論が行われたが、いわゆる加入時説と設定時説の対立が問題となる場面設定をより明確にした上で、改めて問題提起するものである。

まず、

①個別動産譲渡担保権等と個別動産譲渡担保権等が競合する場合

②集合動産譲渡担保権等と集合動産譲渡担保権等が競合する場合

について、原則として対抗要件具備の先後により順位を決することに争いはない。なお、集合動産譲渡担保権等の設定後に(個別動産譲渡担保権等が設定されていない)個別動産が加入した場合であっても、集合動産譲渡担保権等同士の競合が問題となる場面では、設定後に加入した個別動産を含めて、上記②と同様の規律により順位を決すべきことになる(この場面で設定時説と加入時説の対立が問題となるわけではない。)。

これに対し、③個別動産譲渡担保権等と集合動産譲渡担保権等が競合する場合

すなわち、個別動産譲渡担保権等が設定された個別動産が、集合動産譲渡担保権等が設定された集合動産に加入した場合には、設定時説と加入時説の対立が問題となる。上記を前提に、設定時説と加入時説のいずれを採用すべきと考えるか。

なお、登記優先ルールは、上記①から③までのいずれについても適用されることになると考えられる(登記優先ルールの適用範囲を限定する立場によれば、上記②の場合に限って適用されることになる。)。

6 留保所有権の対抗要件等(部会資料23 の第4の2について)

部会資料23 の第4の2の記載を、分かりやすさの観点から、次のとおり修正することについて、どう考えるか。

2 留保所有権の対抗要件等 ※以下では留保所有権の対抗要件等に関する実質的規律について記載するものであり、担保目的取引規律型又は担保物権創設型の立場から厳密な記載を行うものではない。

 ⑴ 留保所有権の対抗要件の要否

ア 目的物の代金債権を担保する留保所有権(以下「狭義の留保所有権」という。)は、これを第三者に主張するために対抗要件を必要とするかどうかについては、次のいずれかの案によるものとする(注1)。

【案4.2.1.1】狭義の留保所有権は、これを第三者に主張するために、特段の要件を必要としないものとする(注2)。

【案4.2.1.2】狭義の留保所有権は、その動産の引渡しがなければ、これをもって第三者に対抗することができないものとする。

イ (目的物の代金債権及び)目的物の代金債権(注1)以外の債権を担保する留保所有権(以下「拡大された留保所有権」という。)は、その動産の引渡しがなければ、これをもって第三者に対抗することができないものとする(注3)。

(注1)動産を購入するための資金の融資に基づく債権など、目的物である動産と密接な関連性を有する一定の債権を担保する留保所有権についても、狭義の留保所有権に含める考え方がある。

これに関連して、このような密接な関連性を有する一定の債権を被担保債権とする動産譲渡担保権等が設定された場合には、当該動産譲渡担保権等についても、狭義の留保所有権と同様に取り扱う考え方がある。

(注2)【案4.2.1.1】によっても、(代位弁済等により)目的物の売主以外の者が狭義の留保所有権を有する場合には、その動産の引渡しがなければ、これをもって第三者に対抗することができないものとする考え方がある。

(注3)留保所有権についても、登記できるとすることが考えられる。

⑵ 留保所有権等と新たな規定に係る動産担保権との優劣関係

ア 留保所有権と競合する他の新たな規定に係る動産担保権との優劣は、留保所有権が目的物の代金債権以外の債権を担保する限度では、これをもって第三者に対抗することができるようになった時の前後によるものとする(注4)。

イ 留保所有権は、【案4.2.1.2 によると引渡しがされていることを前提として、】目的物の代金債権を担保する限度では、他の新たな規定に係る動産担保権に当然に優先するものとする(注5、6)。

(注4)この場合には、前記4の1⑵ウと同様のルール(登記優先ルール)を採用することが考えられる。

(注5)なお、拡大された留保所有権について、目的物の代金債権を担保する部分と目的物の代金債権以外の債権を担保する部分がある場合には、これと競合する他の新たな規定に係る動産担保権との優劣は、本文⑵イにより目的物の売買代金を担保する限度では拡大された留保所有権が優先し、それ以外の部分については、原則として、それぞれが対抗要件を具備した時の前後によるものとなる。

(注6)他の新たな規定に係る動産担保権に優先するための要件として、一定期間内に登記を備えることを求める考え方がある。

(説明)

留保所有権の対抗要件等について、分かりやすさの観点から、表現振りを修正したものである(担保目的取引規律型又は担保物権創設型からの厳密な記載ではなく、実質的な規律内容を記載することとした。)。

実質的な規律内容に変更がある点として、(注2)で代位弁済等により目的物の売主以外の者が狭義の留保所有権を有する場合に対抗要件の要否についての規律を変える考え方があることを明記した。また、部会資料23 の【案4.2.2.2】では、前記の「加入時説」と採ることを前提に、留保所有権が目的物の代金債権を担保する限度であっても、当然には優先しない(原則どおり、対抗要件の先後による)案も提示していたが、当然に優先する立場を支持する意見が多かったことから、これを本文から削ることとしている。

なお、(注6)として、他の新たな規定に係る動産担保権に優先するための要件として、一定期間内に登記を備えることを求める考え方を明記することについて、どう考えるか。

〇〇県〇〇市〇〇町1-1-1全部事項証明書: The certification of all recording matters. (土地):The land.
表題部:The heading section.
(土地の表示):The description of the land. 調整
: The prepared. 令和〇〇年〇月〇日
: The prepared date. 不動産番号
: The real property number. 12345567890123
地図番号
: The map number. A11―1 筆界特定
: The parcel boundary demarcation.       余白:The blank.
【所在】
: The location. 〇〇県〇〇市〇〇町〇〇  余白: The blank
①地 番
: The parcel number.
②地 目
:The land category
(current state of the Land) ③地  積 ㎡
:The parcel area (area of the Land) 原因及びその日付
: The cause for recording and date thereof.
【登記の日付】:The recording date.
9999番3 宅地
: The presidential land.     :100.00㎡ ①9999番1から分筆
: Subdivision of the Parcel Number.9999-1.
【令和〇〇年〇月〇日】
所有者:
The owner.
〇〇市〇〇丁目〇番〇号 E: The name and address of Owner.

 権 利 部(乙区): The rights section (The section B).(所有権以外の権利に関する事項): Matters concerning the owner.
順位番号
: The rank number. 登記の目的
: The purpose of recording. 受付年月日・受付番号
: The recording date and number. 【権利者その他の事項】
: The holder of rights and other particulars.

付記1号

付記2号 根抵当権設定
: The revolving mortgage.
令和〇〇年〇月〇日
第〇〇〇〇号 略
the scope of claims to be secured and the maximum amount;
債務者: The name and address of obligor .
○○県〇〇市〇〇丁目〇番〇号:
E
根抵当権者:The name and address of obligor .
○○県〇〇市〇〇丁目〇番〇号:
A銀行
1番根抵当権変更
:The modification of revolving mortgage No. 1. 令和〇〇年〇月〇日
第〇〇〇〇号 原因:
When and for what cause obligor was acquired.
令和○年〇月〇日相続: The Inheritance date.
債務者:The names and addresses of debtor’s heirs
○○県〇〇市〇〇丁目〇番〇号:B
○○県〇〇市〇〇丁目〇番〇号:C.
1番根抵当権変更
:The modification of revolving mortgage No. 1. 令和〇〇年〇月〇日
第〇〇〇〇号 原因The date of agreement.
令和○年〇月〇日合意
指定債務者 B
※下線のあるものは抹消事項であることを示す。
The underlines indicate delated matters. The filing Number:00000000000 (1/1)                  

これは登記記録に記録されている事項の全部を証明した書面である。
: This document evidences all of the entries made in the registry.

(〇〇地方法務局管轄)〇〇Legal Affairs Bureau.

〇〇年〇〇月〇〇日 Date
〇〇Legal Affairs Bureau   登記官 〇〇  Registrar’s name: 〇〇

※下線のあるものは抹消事項であることを示す。
Underlines indicate delated matters. Filing Number:00000000000 (1/1)                   

【文書回答事例】信託契約における残余財産の帰属権利者として取得した土地等の譲渡に係る租税特別措置法第35条第3項に規定する被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除の特例の適用可否について

税務に関する記事です。最終判断は税理士・公認会計士に相談をお願いします。

https://www.nta.go.jp/about/organization/tokyo/bunshokaito/joto-sanrin/221220/01.htm#a01

1 事前照会の趣旨

 照会者(受託者)は、照会者の母(委託者兼受益者。以下「母甲」といいます。)との間で母甲の居住用家屋及びその敷地(以下「本件物件」といいます。)を信託財産とする信託契約(以下、「本件信託契約」といい、本件信託契約に係る信託を「本件信託」といいます。)を締結していたところ、本件信託は受益者の死亡を信託終了事由としていたことから、母甲の相続開始により本件信託は終了し、残余財産となった本件物件は、残余財産の帰属権利者である照会者及びその弟(以下「照会者ら」といいます。)に帰属することとなりました。

 照会者らは、母甲の相続開始日が属する年の翌年に本件物件を譲渡しましたが、その譲渡に係る譲渡所得の計算上、租税特別措置法第35条第3項《居住用財産の譲渡所得の特別控除》に規定する特例(以下「本件特例」といいます。)を適用するに当たり、本件物件が本件信託の残余財産として照会者らに帰属したこと(以下「本件帰属」といいます。)は、同項に規定する取得(相続又は遺贈(贈与者の死亡により効力を生ずる贈与を含みます。以下同じです。)による被相続人居住用家屋及び被相続人居住用家屋の敷地等(以下「被相続人居住用家屋等」といいます。)の取得。)に該当すると解し、その他の要件を満たす限りにおいて、本件特例の適用を受けることができると解してよいか照会します。

2 事前照会に係る取引等の事実関係

(1) 照会者らは、いずれも母甲の相続人です。

(2) 照会者は、令和2年〇月〇日、母甲との間で、委託者兼受益者を母甲、受託者を照会者、信託財産を本件物件及び金銭、本件信託の終了事由を母甲の相続開始等、本件信託終了時の残余財産の帰属権利者を照会者らとする旨の本件信託契約を締結しました。

(3) 本件信託契約においては、その信託期間を契約締結のときから委託者兼受益者が死亡したときまでとし、かつ信託期間が満了した際には信託が終了する旨定められていたため、当該契約に基づき、令和3年〇月〇日、母甲の相続開始により本件信託は終了し、残余財産となった本件物件は、照会者らへ帰属しました。

(4) 照会者らは、令和4年〇月〇日、本件物件を譲渡しました。

3 事前照会者の求める見解となることの理由

 本件特例は、譲渡をした者が「相続又は遺贈による被相続人居住用家屋等の取得」をした相続人(包括受遺者を含みます。以下同じです。)であることを要件の一つとしています。

 また、相続税法第9条の2第4項《贈与又は遺贈により取得したものとみなす信託に関する権利》では、受益者の死亡に基因して終了する信託に係る残余財産の帰属は、適正な対価の負担があるもの及び信託終了の直前において当該信託の受益者であった者に対するものを除いて、遺贈により取得したものとみなす旨規定されています。

 そして、本件特例が適用対象者を「相続又は遺贈による被相続人居住用家屋等の取得」をした相続人としているのは、相続人がその意思の如何にかかわらず、相続により被相続人居住用家屋等の取得をし、その後の適正管理の責任を負うことになるためと考えられますが、照会者らは、これと同様の状況にあるということができます。

 したがって、本件物件は、相続税法上のいわゆるみなし相続財産に該当すること及び照会者らは本件特例の趣旨と同様の状況にあることから、本件帰属は、本件特例に規定する「相続又は遺贈による被相続人居住用家屋等の取得」に該当すると考えます。

関係する法令条項等 租税特別措置法第35条

信託法第183条

回答年月日 令和4年12月20日

回答者 東京国税局審理課長

回答内容 標題のことについては、下記の理由から、貴見のとおり取り扱われるとは限りません。

 なお、この回答内容は、東京国税局としての見解であり、事前照会者の申告内容等を拘束するものではないことを申し添えます。

(理由)

租税特別措置法(以下「措置法」といいます。)第35条第3項に規定する特例(以下「本件特例」といいます。)は、相続又は遺贈(贈与者の死亡により効力を生ずる贈与を含みます。以下同じです。)による被相続人居住用家屋及び被相続人居住用家屋の敷地等(以下「被相続人居住用家屋等」といいます。)の取得をした相続人(包括受遺者を含みます。以下同じです。)が、一定の譲渡をした場合に、その譲渡所得の計算上、本件特例の適用を受けることができる旨規定しています。

 ところで、信託契約などにより信託の受益権を取得する行為や、信託が終了し残余財産が権利者に移転した場合などについては、法律上の「贈与」又は「遺贈」には該当しないものの、実質的には贈与又は遺贈と同様の効果をもたらすことから、相続税法においては、これらの取得又は移転などについて贈与又は遺贈による取得とみなして相続税又は贈与税の課税対象とする措置が講じられています(相続税法第9条の2)。

 この点、本件特例は、例えば措置法第39条《相続財産に係る譲渡所得の課税の特例》に規定する特例のように、相続税法の規定により遺贈等による財産の取得とみなされる場合を対象に含む旨は規定していません。 

また、本件特例は、相続人が、相続により、その意思の如何にかかわらず、被相続人居住用家屋等の適正管理の責任を負うこととなることを踏まえた趣旨の下、適用対象者を相続人に限定し、かつ、「相続又は遺贈による被相続人居住用家屋等の取得」をした場合に限り適用すると規定したものであると考えられるところ、信託終了による残余財産の取得は法律上の相続又は遺贈には当たらず、受託者(照会者)は信託行為の当事者であること、信託行為の当事者ではない帰属権利者は、その権利を放棄することができること(信託法183③)を踏まえると、上記本件特例の趣旨の下では、帰属権利者による残余財産の取得を相続人による相続又は遺贈による財産の取得と同様に取り扱うことは相当ではないと考えられます。

 以上のことから、信託契約に基づき、委託者兼受益者の相続開始という信託終了事由の発生により信託が終了したことに伴い、当該信託に係る残余財産を帰属権利者が取得したことは、本件特例に規定する相続人による「相続又は遺贈による被相続人居住用家屋等の取得」に該当するとは認められず、また、死因贈与契約に基づき当該残余財産を取得したとする事情も認められませんので、当該残余財産の譲渡に係る譲渡所得の計算上、本件特例の適用を受けることはできません。

 私には、信託契約により、当事者の意思で決めたのだから、相続・遺贈と同視することはできず、特例を認めることは出来ない、という趣旨に読めました。しかしこの指摘は、受託者兼残余財産の帰属権利者である照会者には当てはまりますが、照会者の弟は残余財産の帰属権利者であることを知らなかった可能性もあり、その点はどうするのだろうか、と考えてしまいました。残余財産の帰属権利のみを放棄することが出来る点が、全ての積極財産、消極財産を放棄することが出来る相続放棄と異なる点です。この点は、残余財産の帰属権利者が2人いる照会者の弟にとって、通常の相続・遺贈と異なり管理責任(令和5年4月1日施行)を逃れることができる点は有利といえるのかなとも思いました。

20230305追記

参考 『月刊登記情報2023年3月号(736号)』税理士白井一馬「自宅を信託財産にした場合における相続後の「空き家譲渡特例」の適用可否」

https://store.kinzai.jp/public/item/magazine/A/T/

租税特別措置法

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=332AC0000000026&keyword=%E7%A7%9F%E7%A8%8E%E7%89%B9%E5%88%A5

第三十五条 個人の有する資産が、居住用財産を譲渡した場合に該当することとなつた場合には、その年中にその該当することとなつた全部の資産の譲渡に対する第三十一条又は第三十二条の規定の適用については、次に定めるところによる。

一 第三十一条第一項中「長期譲渡所得の金額(」とあるのは、「長期譲渡所得の金額から三千万円(長期譲渡所得の金額のうち第三十五条第一項の規定に該当する資産の譲渡に係る部分の金額が三千万円に満たない場合には当該資産の譲渡に係る部分の金額とし、同項第二号の規定により読み替えられた第三十二条第一項の規定の適用を受ける場合には三千万円から同項の規定により控除される金額を控除した金額と当該資産の譲渡に係る部分の金額とのいずれか低い金額とする。)を控除した金額(」とする。

二 第三十二条第一項中「短期譲渡所得の金額(」とあるのは、「短期譲渡所得の金額から三千万円(短期譲渡所得の金額のうち第三十五条第一項の規定に該当する資産の譲渡に係る部分の金額が三千万円に満たない場合には、当該資産の譲渡に係る部分の金額)を控除した金額(」とする。

2 前項に規定する居住用財産を譲渡した場合とは、次に掲げる場合(当該個人がその年の前年又は前々年において既に同項(次項の規定により適用する場合を除く。)又は第三十六条の二、第三十六条の五、第四十一条の五若しくは第四十一条の五の二の規定の適用を受けている場合を除く。)をいう。

一 その居住の用に供している家屋で政令で定めるもの(以下この項において「居住用家屋」という。)の譲渡(当該個人の配偶者その他の当該個人と政令で定める特別の関係がある者に対してするもの及び所得税法第五十八条の規定又は第三十三条から第三十三条の四まで、第三十七条、第三十七条の四若しくは第三十七条の八の規定の適用を受けるものを除く。以下この項及び次項において同じ。)又は居住用家屋とともにするその敷地の用に供されている土地若しくは当該土地の上に存する権利の譲渡(譲渡所得の基因となる不動産等の貸付けを含む。以下この項及び次項において同じ。)をした場合

二 災害により滅失した居住用家屋の敷地の用に供されていた土地若しくは当該土地の上に存する権利の譲渡又は居住用家屋で当該個人の居住の用に供されなくなつたものの譲渡若しくは居住用家屋で当該個人の居住の用に供されなくなつたものとともにするその敷地の用に供されている土地若しくは当該土地の上に存する権利の譲渡を、これらの居住用家屋が当該個人の居住の用に供されなくなつた日から同日以後三年を経過する日の属する年の十二月三十一日までの間にした場合

3 相続又は遺贈(贈与者の死亡により効力を生ずる贈与を含む。以下第五項までにおいて同じ。)による被相続人居住用家屋及び被相続人居住用家屋の敷地等の取得をした相続人(包括受遺者を含む。以下この項において同じ。)が、平成二十八年四月一日から令和五年十二月三十一日までの間に、次に掲げる譲渡(当該相続の開始があつた日から同日以後三年を経過する日の属する年の十二月三十一日までの間にしたものに限るものとし、第三十九条の規定の適用を受けるもの及びその譲渡の対価の額が一億円を超えるものを除く。以下この条において「対象譲渡」という。)をした場合(当該相続人が既に当該相続又は遺贈に係る当該被相続人居住用家屋又は当該被相続人居住用家屋の敷地等の対象譲渡についてこの項の規定の適用を受けている場合を除く。)には、第一項に規定する居住用財産を譲渡した場合に該当するものとみなして、同項の規定を適用する。

一 当該相続若しくは遺贈により取得をした被相続人居住用家屋(当該相続の時後に当該被相続人居住用家屋につき行われた増築、改築(当該被相続人居住用家屋の全部の取壊し又は除却をした後にするもの及びその全部が滅失をした後にするものを除く。)、修繕又は模様替に係る部分を含むものとし、次に掲げる要件を満たすものに限る。以下この号において同じ。)の政令で定める部分の譲渡又は当該被相続人居住用家屋とともにする当該相続若しくは遺贈により取得をした被相続人居住用家屋の敷地等(イに掲げる要件を満たすものに限る。)の政令で定める部分の譲渡

イ 当該相続の時から当該譲渡の時まで事業の用、貸付けの用又は居住の用に供されていたことがないこと。

ロ 当該譲渡の時において地震に対する安全性に係る規定又は基準として政令で定めるものに適合するものであること。

二 当該相続又は遺贈により取得をした被相続人居住用家屋(イに掲げる要件を満たすものに限る。)の全部の取壊し若しくは除却をした後又はその全部が滅失をした後における当該相続又は遺贈により取得をした被相続人居住用家屋の敷地等(ロ及びハに掲げる要件を満たすものに限る。)の政令で定める部分の譲渡

イ 当該相続の時から当該取壊し、除却又は滅失の時まで事業の用、貸付けの用又は居住の用に供されていたことがないこと。

ロ 当該相続の時から当該譲渡の時まで事業の用、貸付けの用又は居住の用に供されていたことがないこと。

ハ 当該取壊し、除却又は滅失の時から当該譲渡の時まで建物又は構築物の敷地の用に供されていたことがないこと。

4項以下略

信託法

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=418AC0000000108

(帰属権利者)

第百八十三条 信託行為の定めにより帰属権利者となるべき者として指定された者は、当然に残余財産の給付をすべき債務に係る債権を取得する。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。

2 第八十八条第二項の規定は、前項に規定する帰属権利者となるべき者として指定された者について準用する。

3 信託行為の定めにより帰属権利者となった者は、受託者に対し、その権利を放棄する旨の意思表示をすることができる。ただし、信託行為の定めにより帰属権利者となった者が信託行為の当事者である場合は、この限りでない。

4 前項本文に規定する帰属権利者となった者は、同項の規定による意思表示をしたときは、当初から帰属権利者としての権利を取得していなかったものとみなす。ただし、第三者の権利を害することはできない。

5 第百条及び第百二条の規定は、帰属権利者が有する債権で残余財産の給付をすべき債務に係るものについて準用する。

6 帰属権利者は、信託の清算中は、受益者とみなす。

関連

国税庁法令解釈通達

土地信託に関する所得税、法人税並びに相続税及び贈与税の取扱いについて 別紙

第2 所得税に関する取扱い

(居住用財産の譲渡所得の特別控除の適用)

2-54 措置法第35条第1項((居住用財産の譲渡所得の特別控除))に規定する「その居住の用に供している家屋」又は「その敷地の用に供されている土地若しくは当該土地の上に存する権利」には、個人の有する信託財産の構成物でこれらの資産に該当するもの(以下この項において「信託居住用財産」という。)が含まれるのであるが、この場合における同条の規定の適用については、次の諸点に留意する。

(1) 信託居住用財産の譲渡には、信託受益権の譲渡によるものが含まれること。

(2) 譲渡された信託財産である家屋が同条第1項に規定する「その居住の用に供している家屋」に該当するかどうかは、当該家屋の受益者について、措置法通達35-2又は35-3に定めるところにより判定すること。

(3) 措置法令第23条第1項((特例の対象となる家屋の範囲))に規定する「その者が主としてその居住の用に供していると認められる一の家屋」の判定の基礎には、その者の有する信託居住用財産が含まれること。

(4) 信託居住用財産の譲渡が措置法第35条第1項に規定する「特別の関係がある者に対してするもの」に該当するかどうかは、その譲渡に係る信託居住用財産の受益者について判定すること。

(5) 同項に規定する「その年の前年又は前々年において既にこの項又は第36条の2若しくは第36条の5の規定の適用を受けている」かどうかの判定の基礎には、その者の有する信託居住用財産の譲渡が含まれること。

20230619追記

『月刊登記情報』2023年6月号(739号)「信託契約の対象不動産を検討する際の実務上の留意点~令和4年12月20日東京国税局回答を受けて~」JFD司法書士法人 司法書士 福田秀樹

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