会報「信託」第293号「遺言代用信託における受益者の権利―予定受益者は惨事における受益権の取扱いを中心として―」、「後見制度支援信託の受益者雄死亡により終了した場合における残余財産の帰属」

会報「信託」第293号、令和5年2月、(一社)信託協会についてのメモです。

・商事信託研究会報告「遺言代用信託における受益者の権利―予定受益者は惨事における受益権の取扱いを中心として―」

裁判所HP

最高裁判所第一小法廷平成28年4月28日判決

破産手続開始前に成立した第三者のためにする生命保険契約に基づき破産者である死亡保険金受取人が有する死亡保険金請求権は,破産法34条2項にいう「破産者が破産手続開始前に生じた原因に基づいて行うことがある将来の請求権」に該当するものとして,上記死亡保険金受取人の破産財団に属する。破産法34条2項,保険法42条

https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=85854

遺言代用信託(信託法90条1項1号・2号)における予定受益者の破産時における受益権の取扱いについて

問・・・委託者の死亡前に予定受益者の破産手続が開始され、破産手続の終了前に委託者(兼当初受益者)が死亡した場合、破産者である予定受益者が受益者となり、受益権を取得する。取得した受益権は、破産手続開始の時点において「破産者が破産手続開始前に生じた原因に基づいて行うことがある将来の請求権(破産法34条2項)」に該当するか。

破産法(破産財団の範囲)

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=416AC0000000075

第三十四条 破産者が破産手続開始の時において有する一切の財産(日本国内にあるかどうかを問わない。)は、破産財団とする。

2 破産者が破産手続開始前に生じた原因に基づいて行うことがある将来の請求権は、破産財団に属する。

―3項以下略―

信託法90条1項1号の予定受益者と、信託法90条1項2号の予定受益者の権利の違い

信託行為における文言

信託契約日から委託者に相続が開始するまでの間は、委託者を受益者とする。委託者に相続が開始した時以後は、●●を受益者とする。

・・・1号に該当し、委託者が死亡した時から受益者となる。

最高裁判所第一小法廷平成28年4月28日判決との比較

最高裁判所第一小法廷平成28年4月28日判決

・判決の事実

受取人が保険金を受領し、保険金支払請求権は、すでに実現して権利となっている。

・判決の判断の枠組み

  • 破産手続開始前(保険契約の成立時)に、抽象的保険金請求権として成立しているか。
  • 抽象的保険金請求権の発生を認めた場合でも、「将来の請求権」に当たらず、破産者たる保険金受取人の自由財産(新得財産)になるか。

・裁判所の判断

破産手続開始時には現実化していない保険受取人の権利が破産財団に帰属することについて、肯定。

信託法90条1項1号の想定事例

1 委託者と受託者(信託銀行)が信託契約締結。委託者兼当初受益者。委託者に相続が開始した場合、指定する受取人(予定受益者)が、残余財産を一時金または定時定額払いの形で受け取ることが可能。

2 予定受益者が破産手続の開始

3 委託者の死亡

・最高裁判所第一小法廷平成28年4月28日判決の判断の枠組み(1)の観点から

信託財産にかかる給付を受ける権利について、委託者の死亡時まで取得せず、かつ、信託法90条2項により委託者が死亡するまでは、受託者としての権利(受託者に対する監督上の権利等)を有さないものと理解されている。

よって、1号信託の場合、信託行為成立の時点では、抽象的な権利としての受益権を取得したと考えることは難しい。受益権の発生、帰属を分ける場合も同じ結論。判決における停止条件付請求権と評価することは、難しい。

2号信託に関して、受益権の取得を前提としている場合でも、受益権そのものを取得していない段階で、何らかの受益債権を取得していると考えることは難しい。

・遺贈との比較

遺贈と比較して、1号信託の場合は少なくとも信託行為(信託契約)の効力は発生しているので、予定受託者への受益権の将来における帰属可能性が高い。もっとも、信託行為の定め方によって、帰属可能性が低いと評価される場合もある。予定受益者が受け取る受益権(財産の額)が、予想しずらい定めになっている場合、委託者がいつでも単独で信託を終了することができる定めるがある場合(信託法164条1項本文、3項など)。遺言の撤回可能(民法1023条)の規定と同様の評価がされる可能性。

・結論

1号信託である想定事例の場合、当該権利は、破産法32条2項の将来の請求権として破産財団に帰属する。

・委託者が破産手続終了までに死亡していない場合で、処分が困難であるとき

破産管財人としては、一定の金銭を財団に組み入れる、権利を財団から放棄する、自由財産の拡張の対象とする、というような選択肢。

・予定受益者に、破産手続開始決定がされたときの受託者の対応

受託者において、受益者の破産手続開始決定を知ることが出来る仕組みが必要。

・遺言代用信託における委託者の意図の実現の方策

受益者の変更(信託法90条1項本文)。

信託の終了事由として、受益者の破産手続開始決定を定める(信託法163条1項9号)。

受益権取得の条件として、破産手続開始申立てをしていない場合、を定める。

「後見制度支援信託の受益者雄死亡により終了した場合における残余財産の帰属」

・後見制度支援信託の契約約款に、残余財産受益者、帰属権利者という文言を使用した規定がない場合に、残余財産の給付を受ける権利が本人である委託者兼受益者の相続財産に含まれるかについて

残余財産受益者、帰属権利者という文言を使用した規定がない場合でもあっても、専門職後見人と金融機関の信託契約締結時に、本人(成年被後見人)を残余財産受益者とする黙示の指定があったとみなされることによって、残余財産受益権が相続財産となる。

理由

・預貯金債権に類似していること。

・本人(成年被後見人)の意思決定に反する介在を極力減らすこと。本人(成年被後見人)に遺言を作成して残余財産受益者を指定する機会を残すこと。

・信託法181条1項1号の規定。

・明示的に残余財産受益者を指定する方法

特定の個人名、受益者、受益者またはその相続人その他の一般承継者に交付する。

・残余財産受益者権の相続

受益者(成年被後見人)による遺言の取扱い(民法966条、973条)。履行できるかの確認。

・共同相続の場面における、残余財産受益権の当然分割の有無

参考判例 裁判所HP

最高裁判所第二小法廷平成26年12月12日判決

https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=84688

共同相続された委託者指図型投資信託の受益権につき,相続開始後に元本償還金又は収益分配金が発生し,それが預り金として上記受益権の販売会社における被相続人名義の口座に入金された場合,上記預り金の返還を求める債権は当然に相続分に応じて分割されることはなく,共同相続人の1人は,上記販売会社に対し,自己の相続分に相当する金員の支払を請求することができない。

参照法条 民法427条,民法898条,民法899条,投資信託及び投資法人に関する法律6条3項

当然分割を否定することも可能。

相続人による残余財産受益権の行使方法

・遺産分割協議(民法909条の2、家事事件手続法200条3項)

「受託者の権限および義務に関する法的考察―第三者委託―」

加工 『社会資本整備審議会 住宅宅地分科会 空き家対策小委員会におけるとりまとめの方向性(案)』に関するパブリックコメントの結果の概要について

https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCM1040&id=155220726&Mode=1

『社会資本整備審議会 住宅宅地分科会 空き家対策小委員会におけるとりまとめの方向性(案)』

に関するパブリックコメントの結果概要

■ 実施期間:令和4 年12 月27 日(火)から令和5 年1 月11 日(水)(16 日間)

■ 意見数:42の個人・団体から合計115件

「3.空き家対策に係る課題・問題意識(2)発生抑制や活用促進に係る課題」関係パブリックコメントにおける主なご意見 見解・対応等

1 空き家の残置物が活用や除却に対する課題となっているため課題として記載すべき。

・・・ご指摘の点については、3.(2)「空き家問題を生じさせないようにするためには、相続時の迅速な対応が重要だが、相続前の話し合い不足や多数の相続人の存在、所持品の処分などにより、活用に係る意思決定に時間を要している現状がある。」において「所持品の処分」として記述されております。

2 スペースシェアという空き家活用の新しい選択肢が、空き家の所有者やその家族、空き家対策に携わる自治体・NPO 等の関係者において十分に認識されていないことも課題として指摘すべきである。

・・・今後の空き家対策のあり方全体を議論する本小委員会のとりまとめにおいて、すべての活用手法について取り上げることは困難ですが、頂いたご意見については、今後の施策の検討・立案において参考とさせて頂きます。

「3.空き家対策に係る課題・問題意識(3)適切な管理や除却の促進に係る課題 ② 地方自治体の抱える課題」関係

3 空き家所有者が生活保護受給者の場合、固定資産税の住宅用地特例の解除をしても減免申請ができてしまうという制度的な課題がある。

・・・頂いたご意見については、今後の施策の検討・立案において参考とさせて頂きます。

4 空き家の全部または一部を住宅以外の用途に活用する場合、空き家の床面積の過半以上を住宅以外の用途として活用してしまうと住宅用地特例の適用が受けられなくなってしまうことが、活用を阻害している要因の一つとなっているのでないか。

・・・固定資産税の住宅用地特例は、居住の安定確保という観点から住宅の敷地について税負担を軽減するものであるため、その性質を失った敷地について特例を継続適用することは、難しいと考えております。

「4.今後の空き家対策の方向性・取組(1)今後の空き家対策の基本的方向性」関係

5 全体を通じ、民間活力の活用をさらに進めるため、中心市街地の活性化や地域の商工業へ空き家の活用を推し進める施策について、ふれていただきたい。

・・・ご指摘の点については、4.(1)の基本的方向性として、「地域経済や・・・の活性化に繋げる。」とされるとともに、4.(3)②ⅲ)の取組として「・地域特性等を踏まえた一定のエリアにおける重点的な活用を促進する仕組み(所有者への働きかけや重点支援、接道・用途規制の合理化など)を設ける。」とされております。加えて、ご指摘を踏まえ、4.(3)②ⅱ)の取組について「・地方自治体やNPO 等を含む民間事業者が、【中心市街地活性化】、観光振興、移住・定住促進などの地域活性化や福祉対応、地域コミュニティの維持強化といった地域のニーズに即した需要を掘り起こし、マッチングする等の活動を促進する。」(【】は修正箇所)と追記しました。

「4.今後の空き家対策の方向性・取組(2)発生抑制を図る取組」関係

6 空家法の制定以降、自治体の役割が増大し、特定空家等に対する相談・苦情対応や所有者確知、除却補助金の交付等に対する人員・財政負担が年々増加している。人口減が進み空き家の活用ニーズが低い地方部では、特に空き家の発生抑制に関して抜本的対策を施す必要がある.

こうした観点からは、地域の不動産業者や司法書士が中心となって活動できる仕組みを構築することが有効だと思われる。指導という立場ではなく、第三者的に所有者の立場での意見も反映され、進展につながりやすいと考える。

・・・4.(2)に「・地方自治体や空き家対策に取り組むNPO 等が、不動産、建築、法務等の専門家と連携してセミナー・相談会の開催や相談員の派遣等を行い、高齢の所有者に不足している情報を補完する。」と記述されています。頂いたご意見については、本とりまとめに基づく取組を具体化する段階の参考とさせて頂きます。

7 空き家になる前に所有者やその家族への情報提供は重要と考えますが、意識の希薄な所有者等に対する有効なアプローチ・情報提供が難しいため、有効な対応方法を検討すべき。

・・・ご指摘に関しては、4.(2)に「・地方自治体や空き家対策に取り組むNPO 等が、不動産、建築、法務等の専門家と連携してセミナー・相談会の開催や相談員の派遣等を行い、高齢の所有者に不足している情報を補完する。」、「・空き家担当部局と福祉部局等とが連携して、高齢の所有者に対し、住まいの終活を呼びかけるなどの対応を促進する。」等様々なアプローチが記述されています。

8 空き家問題は発生前からの予防が重要であり、その観点から、小学校時から住教育を行う、又は一定年齢以上の住宅所有者を対象に、自宅は適切に管理する必要があることや空き家問題に関する教育する必要がある。

・・・ご指摘を踏まえ、4.(2)に「・【住宅を適切に管理し長く使っていくことや、空き家が周囲の生活環境や地域コミュニティに悪影響を及ぼさないようにすることの重要性、さらには、空き家の発生抑制、早期活用、管理・除却の取組などに関する】住教育を充実する。」(【】は追記箇所)と追記し、住教育の内容を明確化しました。

また、4.(2)に「・地方自治体や空き家対策に取り組むNPO 等※が、不動産、建築、法務等の専門家と連携してセミナー・相談会の開催や相談員の派遣等を行い、高齢の所有者に不足している情報を補完する。」と記述されています。

9 空き家問題は、ハード面からソフト面まで包含するものであり、いわゆる縦割り行政では対応できない。空き家問題は終活の一つとして捉え、そうした視点から横断的な対応ができる体制を構築する必要がある。

・・・4.(2)に「・空き家担当部局と福祉部局等とが連携して、高齢の所有者に対し、住まいの終活を呼びかけるなどの対応を促進する。」と記述されています。さらに、ご指摘を踏まえ4.(3)②に「・所管を越えた空き家の利活用を促進するため、省庁間や地方自治体の部局間の連携体制の強化、市区町村が設置する空き家対策協議会の構成員の拡大を促進する。」の取組を追加しました。

10 福祉部局との連携は重要と考えていますが、福祉部局への協力を依頼しても、住宅政策は住宅部局(国交省)の事業であるとの主張から協力を得ることが難しい状況です。住宅政策は福祉政策でもあるとの相互理解を深める政策が必要です。

・・・頂いたご意見については、本とりまとめに基づく取組を具体化する段階の参考とさせて頂きます。

11 身寄りや扶養義務者のいない生活保護受給者や長期施設入所者等については、経済的な問題に加え意思決定等の問題もあり家屋の適切なメンテナンスを実施することが困難な場合が多く管理不全の空き家となる可能性が高い、このため、行政内の生活保護部局と空き家部局の連携を深め、情報の共有を進めるとともに、長期施設入所者のケースワーカー等から空き家担当部局に当該入所者の所有する家屋の情報の提供を可能とするべきではないか。

・・・ご指摘を踏まえ、3.(2)発生抑制や活用促進に係る課題として、「・地方自治体内の空き家担当部局と福祉、産業振興やまちづくり等の他の担当部局との連携が限定的となっており、空き家の発生抑制や活用の取組は、必ずしも総合的なものとなっていない。」を追加しました。

また、4.(2)に「・空き家担当部局と福祉部局等とが連携して、高齢の所有者に対し、住まいの終活を呼びかけるなどの対応を促進する。」と記述されています。頂いたご意見については、本とりまとめに基づく取組を具体化する段階の参考とさせて頂きます。

12 4.(2)の取組「空き家担当部局と福祉部局等が連携して高齢の住宅所有者への住まいの終活を呼びかけるなどの対応を促進」について、住まいの終活は、高齢の所有者が生前に住まいを今後どうするのか身内と話し合うきっかけになり、空き家になる前の活用を考えることから、空き家の発生抑制に効果があるものと考えています。そこで他都市の取組みを集約し、情報提供していただければ、ありがたい。

・・・4.(1)今後の空き家対策の基本的方向性に「その際、地方自治体やNPO、民間事業者、自治会等の先行・優良事例について、横展開を推進する。」と記述されております。頂いたご意見については、本とりまとめに基づく取組を具体化する段階の参考とさせて頂きます。

13 空き家の問題はそもそも当事者意識が低く、空き家の所有者以外は他人事ととらえていることが問題だと考えます。具体的な取組は市町村が取り組むべきと考えますが、その前に、情報発信力のある国が、全国規模で、国民全体が空き家問題に関心を持てるような取組をすべき。

・・4.(1)今後の空き家対策の基本的方向性として、「法制度、予算、税制、ガイドライン等の様々な政策ツールを活用しつつ、官民が連携して総合的に取組を進める。」と記述されています。頂いたご意見については、本とりまとめに基づく取組を具体化する段階の参考とさせて頂きます。

14 1 『継続的に検討する』という項目にありますが、高齢化が進む中、意思決定能力への対応に必要な検討が欠けています。相続人にも認知機能に課題があり、相続登記もままならず対応が進まない空き家が増えています。

個人の権利にかかわるところですが、相続人も困っている状況があり、今後の検討ではなく早急な対策が求められます。

・・・ご指摘の点については、憲法に定める財産権に関わる慎重に検討すべき課題であり、継続的に検討する取組として整理されています。

15 高齢、生活保護、健康状態等によって所有者等が対応することが不可能な事例がある。その場合、所有者等に代わって管理責任を全うすべき者を設定するなどの仕組みは検討できないか。

・・・ご指摘の点は、4.(2)継続的に検討する取組とされた「意思決定能力に欠ける所有者への対応はどうあるべきか。」に含まれております。

「4.今後の空き家対策の方向性・取組(3)活用促進に向けた取組 ① 相続等により空き家を取得した段階での取組」関係

16 4.(3)の「相続人への意識啓発・働きかけや相続時の譲渡等の促進」に関し、相続よりも前の段階からの啓発が必要である。また、国民の関心を捕らえ、危機感を感じてもらうためには、こうした意識の啓発にあたり、都道府県や国が広く広報に務めるべきである。

・・・ご指摘の点については、4.(2)「所有者やその家族の意識の醸成」において「所有者の生前で、かつ、判断能力が十分なうちから、その家族も含め、「住宅を空き家としない」との意識が醸成されるよう、「終活」の一環としての「空き家対策」の重要性や空き家のリスク等について、所有者等への啓発や働きかけを促進する。」と記述されています。また、4.(1)今後の空き家対策の基本的方向性として、「法制度、予算、税制、ガイドライン等の様々な政策ツールを活用しつつ、官民が連携して総合的に取組を進める。」と記述されています。頂いたご意見については、本とりまとめに基づく取組を具体化する段階の参考とさせて頂きます。

17 第一回資料5 の「相続が行われず、権利関係が錯綜している物件について、全国的課題とされている」という意見に賛成です。権利者全員が相続放棄して、責任者がいない場合はさらに対応が難しいので、「危険な空き家を誰が管理するのか」「危険でない空き家だったら誰が管理するのか」というところの明文化を求めます。特に、民法940条「相続の放棄をした者による管理」の規定の解釈の指針を示してほしい。

・・・空き家の管理については、空家法第3 条に「空家等の所有者又は管理者は周辺の生活環境に悪影響を及ぼさないよう、空き家等の適切な管理に努めるものとする」と規定されています。また、4(4)①所有者の主体的な対応を後押しする取組として「所有者の責務の強化」が記述されています。

ご指摘の民法第940 条については、「『空家等対策の推進に関する特別措置法』に関する御質問について(平成27 年12月25日付 国土交通省住宅局住宅総合整備課・総務省地域力創造グループ地域振興室から都道府県・政令市あて事務連絡)」において「民法第940条義務を負うこととなる「最後に相続を放棄した者」は、まず空家法第3条の努力義務を負うこととなりますが、民法第940条義務はあくまで「相続人間のものであり、第三者一般に対する義務ではない」ことから、「最後に相続を放棄した者」については、そのような民法第940条第1項により義務付けられた範囲以上の努力義務を空家法上負うことはない。」としています。なお、令和5年4月1日施行の民法ではさらに、「その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは」と限定されています。

18 具体的な取組「市町村の死亡や相続等に係る手続きの中で、相続人に対して空き家のリスクや相談先を周知し、早期の決断を促進」について、市区町村での死亡時の手続は多数あるため申請者は余裕がなく、また、死亡時は所有者が確定していないため、登記事務を行う法務局を中心に取り組んでもらいたい。

頂いたご意見については、本とりまとめに基づく取組を具体化する段階の参考とさせて頂きます。

→未登記は?

19 具体的な取組「市区町村の空き家担当部局が戸籍担当部局等と連携して相続人を把握し、空き家バンクへの登録を働きかけ。」について、過去に戸籍担当部局へ情報提供を求めたところ、空家法は税に関する情報提供のみを定めたもの、との理由・解釈により、断られたことがあります。このため、国において情報提供に係る明確な基準を定めてもらいたい。

・・・「「特定空家等に対する措置」に関する適切な実施を図るために必要な指針(ガイドライン)」第1 章3.に「空家法第10 条により、市町村長は、固定資産税の課税その他の事務のために利用する目的で保有する情報であって氏名その他の空き家の所有者等に関するものについては、法の施行のために必要な限度において内部利用できる」とされており、税に関する情報提供のみを定めたものでありません。引き続き周知して参ります。

20 具体的な取組「相続した空き家を耐震改修又は除却して譲渡した場合の譲渡所得の特別控除制度の延長・拡充による空き家の早期譲渡を促すインセンティブの拡大。」について、非常に重要かつ効果的な取組である一方で、相続時に認知している者がすくないため、相続人や不動産関連事業者への周知を進めてもらいたい。

・・・ご指摘を踏まえ4.(3)①について「相続した空き家を耐震改修又は除却して譲渡した場合の譲渡所得の特別控除制度について、その延長・拡充により、空き家の早期譲渡を促すインセンティブを拡大【するとともに、制度をわかりやすく周知する。】」と修正します。

21 取組「市区町村の死亡や相続等に係る手続きの中で、相続人に対して空き家のリスク(使わないと早く傷み資産価値も低減する、管理不全になると住宅用地特例が不適用となる可能性等)や相談先を周知し、早期の決断を促進。」について、相続人への早期の働きかけは重要と考える一方で、死亡手続きに来られる遺族に対して、空き家のリスク周知や早期の決断を促すような対応は慎重に行うべきであると考えます。

・・・頂いたご意見については、本とりまとめに基づく取組を具体化する段階の参考とさせて頂きます。

「4.今後の空き家対策の方向性・取組(3)活用促進に向けた取組 ② 空き家状態となった後の取組 ⅰ) 所有者へ活用を促す取組」関係

22 空き家対策は地域性が出るものになります。市街地と郊外、山野で周囲への影響や地価、土地の需要に差があります。山野にある周囲への影響がない建物を解体する必要があるのでしょうか?解体費は所有者が負担すべきものであり、補助をしてまで解体を進める必要はありません。また、市街地の空き家も活用すべき、という内容もありますが、直していつまで使えるか、そこにどこまで費用をかけるかという視点がかけています。

・・・ご指摘の趣旨もふまえ4.(3)②の冒頭において「都市部・地方部など地域を取り巻く状況を踏まえた取組の展開を促進する。」と記述されているところです。また、4.(3)に記述されている活用方策だけでなく、4.(4)に「特定空家など利活用が難しい空き家の除却を更に円滑化する。」とされているように、空き家の適切な管理や除却の促進についても取組を整理しております。

23 空き家の残置物が活用や解体の課題となっており、残置物の処分に対する支援を行うべき。

・・・4.(3)②の具体的な取組ⅲ)活用を促進する仕組みや支援の充実として「・空き家活用に係るモデル的な取組への支援を強化するとともに、当該取組の横展開を図る。」が記述されてり、残置物の処分を含めたモデル的な取組に対して支援を行ってまいります。

24 取組「地域レベルで空き家をそのままにしない意識の醸成・地域コミュニティの担い手である自治会等から、所有者への働きかけ」や「 NPO 等の民間主体や地域コミュニティの活動を促進する取組」を行う自治体への支援制度を構築して頂きたい。

・・・4.(3)②の具体的な取組ⅲ)活用を促進する仕組みや支援の充実として「・空き家活用に係るモデル的な取組への支援を強化するとともに、当該取組の横展開を図る。」が記述されており、モデル的な取組に対して支援を行ってまいります。

25 取組「地域コミュニティの担い手である自治会等から、所有者への働きかけを促進。」について、遠方にすむ所有者に対しては有効に作用しないのではないか。

・・・もともと居住していたが引っ越した場合など、遠方に居住する所有者に対しても一定の効果はあるものと考えます。なお、4.(3)にご指摘の自治会等からの働きかけも含め、各種取組が記述されているところであり、総合的に取り組む必要があると考えられます。

26 取組「地域コミュニティの担い手である自治会等から、所有者への働きかけを促進。」について、所有者が遠隔地に居住する場合は限界があるため、人口の多い都市部の自治体との連携などをすすめる必要があるのではないか。

・・・ご意見を踏まえ、4.(3)②の具体的取組ⅰ)に「・地方自治体やNPO 等による相談窓口の設置を促進するとともに、【遠隔地の所有者にも対応可能なオンライン相談等の取組を促進する。】」(【】は追記部分)を追加しております。

27 所有者の修繕費用の負担が空き家の流通に係る課題となっている現状に鑑み、個人でリフォームしなくても売却できる仕組みの推進が有効ではないか。

・・・現状の空き家の流通において、リフォームは売主、買主どちらが実施する場合もあると認識しています。また、4.(3)①の取組として記載している「相続した空き家を耐震改修又は除却して譲渡した場合の譲渡所得の特別控除制度」においては、空き家所有者ではなく買主が耐震改修を行う場合も対象とするよう拡充したところです。

28 近年、シェアリングエコノミーの普及により、空き家・空き店舗などの使わないスペースを、マッチングサービスを通じて、時間貸し、民泊、多拠点居住などの用途で活用する事例が多く生まれている。こうしたスペースシェアを含めた多様な選択肢の存在を、空き家の所有者やその家族、空き家対策に携わる自治体・NPO 等の関係者が認識し、連携して活用を促していくことが重要ではないか。

・・・頂いたご意見については、今後の施策の検討・立案において参考とさせて頂きます。

29 「(2)発生抑制を図る取組」「(3)活用促進に向けた取組」「(4)適切な管理の確保・除却の促進に向けた取組」において、空き家所有者やその家族、空き家対策に携わる自治体・NPO 等の関係者に対し、スペースシェアを含む多様な選択肢(上記提言資料P9 参照)を啓発し、その活用を促進する旨を追加すべきである。

・・・今後の空き家対策のあり方全体を議論する本小委員会のとりまとめにおいて、すべての活用手法について取り上げることは困難ですが、頂いたご意見については、今後の施策の検討・立案において参考とさせて頂きます。

「4.今後の空き家対策の方向性・取組(3)活用促進に向けた取組 ② 空き家状態となった後の取組 ⅱ)活用需要喚起と活用希望者の判断に資する情報提供の充実」関係

30 行政と専門家が連携し合いながら運営する相談窓口の充実は必要。特に不動産価格の安い地域になればなるほど、専門家の収益性が乏しいため、それに対する行政側からの永続的な補助も必要

・・・相談窓口の充実に関するご意見については、4.(3)②ⅰ)の取組として「・地方自治体やNPO 等による相談窓口の設置を促進するとともに、遠隔地の所有者にも対応可能なオンライン相談等の取組を促進する。」が記述されています。行政支援に関してのご意見については、相談窓口の運営のあり方も含め、とりまとめに基づく取組を具体化する段階の参考とさせていただきます。

31 「具体的な取組」において、以下の追加を検討いただきたい・空き家対策と活用(居住支援、創業支援 etc)の一体的対応(ワンストップ化)とコーディネート(関係機関をつなぐ人)

・空き家対策協議会と居住支援協議会の一体化

・・・空き家対策と活用の一体的対応及びコーディネートについては、4.(3)②ⅱ)の取組として「・地方自治体やNPO 等を含む民間事業者が、中心市街地活性化、観光振興、移住・定住促進などの地域活性化や福祉対応、地域コミュニティの維持強化といった地域のニーズに即した需要を掘り起こし、マッチングする等の活動を促進する。」が記述されています。また、空き家等対策協議会と居住支援協議会については、一体的な運用や連携の強化していくことは現状でも可能であり、頂いたご意見については、取組を具体化する段階において参考とさせていただきます。

32 「地域における空き家の利用ニーズを集約し公開する取組を促進。」について重要な取組であり、ニーズの集約にあたり不動産団体等民間事業者の活用や協力が必要と考えます。このため、具体的な取組手法などガイドラインの整備をお願いします

・・・頂いたご意見は、本とりまとめに基づく取組を具体化する段階において参考とさせて頂きます。

「4.今後の空き家対策の方向性・取組(3)活用促進に向けた取組 ② 空き家状態となった後の取組 ⅲ) 活用を促進する仕組みや支援の充実」関係

33 相続関係が問題で処分が進まない場合、専門家が権利関係の処理、除却・売却などを行い、その費用を回収するシステムが構築できれば、かなりの需要があると思われる。

・・・4.(3)②の具体的な取組ⅲ)活用を促進する仕組みや支援の充実として「・空き家活用に係るモデル的な取組への支援を強化するとともに、当該取組の横展開を図る。」が記述されています。頂いたご意見は、モデル的な取組に対する支援など、本とりまとめに基づく取組を具体化する段階において参考とさせて頂きます。

34 「・地域特性を踏まえた一定のエリアにおける重点的な活用を促進する仕組み(所有者への働きかけや重点支援、規制の合理化など)」は重要と考えます。一定のエリアには、中心市街地や観光地のみならず、例えば第1種低層住居専用地域などこれまでに良好な住環境が形成され、立地適正化計画等で居住誘導を行うエリアなどを含むことにより空き家対策に有効と考えます。また、そのエリア内で空き家を購入した者などへの税制優遇なども空き家解消への効果があると考えます。

・・・ご指摘の記述にある「一定のエリア」には、中心市街地や観光地だけでなく郊外の住宅団地なども含まれると考えております。

35 「・地域特性を踏まえた一定のエリアにおける重点的な活用を促進する仕組み(所有者への働きかけや重点支援、規制の合理化など)」に関し、空き家が年々増える中、建築当初の用途に縛られない空き家の利活用を模索する動きが目立っているが、空き家を宿泊施設や飲食店へ活用する場合、例えば第一種低層住居専用地域では用途の制限があり現実的に困難であることから、空き家の利活用が進む規制緩和が必要。また、市街化調整区域内の空き家を自己が居住する専用住宅や店舗へ活用する場合は、都市計画法第43 条に基づく用途変更の申請が必要となるが、届け出制とするなど手続きの簡素化が必要。

・・・頂いたご意見は、本とりまとめに基づく取組を具体化する段階において参考とさせて頂きます。

36 「地域特性等を踏まえた一定のエリアにおける重点的な活用を促進する仕組み」について、都市部では山間部とは違い土地価格により解体費が負担できるため、建替えを促す仕組みを期待する。(特に昭和55年以前の耐震不足の建物)。一方で、古い街並みも多く残っており、エリアを絞り、こうした街並みを観光資源としたまちづくりが可能な、空き家施策の仕組みを期待する。

・・・ご指摘いただいた点は、「地域特性等を踏まえた」「重点的な活用」に含まれうるものであり、本とりまとめに基づく取組を具体化する段階において、参考とさせて頂きます。

37 「地域特性等を踏まえた~重点的な活用を促進する仕組み」について本市では、斜面地など防災面や接道条件に課題を抱えた地域において多数の空き家が存在していることから、これらの空き家の活用・建て替えを促進するための重点支援や規制の合理化を可能とする仕組みを整備していただきたい。

・・・ご指摘いただいた点は、「地域特性等を踏まえた」「重点的な活用」に含まれうるものであり、本とりまとめに基づく取組を具体化する段階において、参考とさせて頂きます。

38 空き家が発生する原因の一つに、街区や土地の形状が悪い場合があるが、それらの要因は空き家の所有者が単独で解決することが難しいため、空き家が集積しやすい。そこで、このような原因が考えられる地区については、行政が介入し道路の幅員・形状、土地の形状・接道要件を改善する制度を創設するなど根本的な問題の解決を図る必要がある。

・・・4.(3)②ⅲ)の取組として「・地域特性等を踏まえた一定のエリアにおける重点的な活用を促進する仕組み(所有者への働きかけや重点支援、接道・用途規制の合理化など)を設ける。」と記述されています。いただいたご意見については、本とりまとめに基づく取組を具体化する段階において、参考とさせて頂きます。

39 3.(3)①「所有者に解体後の土地の活用イメージがない。」について、宅地に限らず土地の付加価値を高め土地利用を促す仕組みを整備していただきたい。また、都市基盤がぜい弱な斜面地等と平地部では必要な対策が異なるため、それぞれの特性に応じた仕組みを整備していただきたい

・・・4.(3)②ⅲ)の取組として「・地域特性等を踏まえた一定のエリアにおける重点的な活用を促進する仕組み(所有者への働きかけや重点支援、接道・用途規制の合理化など)を設ける。」と記述されています。いただいたご意見については、本とりまとめに基づく取組を具体化する段階において、参考とさせて頂きます。

40 土地の流通を促進するためには、5 ページ目4(3)①4つ目の・「譲渡所得の特別控除制度の延長・拡充」及び6 ページ目4(3)②ⅲ)4つ目の・「低未利用地の長期譲渡所得の延長・拡充」が有効な取組みと思われるため、継続して拡大等に取組んでいただきたい。

・・・頂いたご意見については、今後の施策立案等の参考にさせていただきます。

41 空き家が増加する≒住宅が余る状況においては、居住目的以外への活用につなげていくことが重要だと考えます。そのためには、地域活性化に資する取組に対する、改修費補助等の適用条件の緩和や、税の軽減措置(固定資産税の住宅用地特例と同等の扱いとする等)の適用対象とすることが有効と考えます。

・・・4.(3)②ⅲ)「・地域活性化に資する空き家活用の取組(空き家活用に必要な耐震改修、省エネルギーやバリアフリー改修等を含む。)に対し、支援を行う。」と記述しているところです。頂いたご意見については今後の施策立案等の参考にさせていただきます。

「4.今後の空き家対策の方向性・取組 (4)適切な管理の確保・除却の促進に向けた取組 ① 所有者の主体的な対応を後押しする取組」関係

42 第一回の意見まとめの「所有者にインセンティブを渡すより罰則が有効」という意見に賛成であり、(4)①の取組として「罰則の強化」を明記してほしい。

・・・「罰則の強化」については国民の権利・義務に大きく影響することから慎重な検討が必要であり、本とりまとめに記述すること困難ですが、4.(4)①の取組「所有者の責務を強化し、行政が講ずる施策への協力を促進する。」のほか、「所有者に対し、空き家のリスク(使わないと早く傷み資産価値も低減する、管理不全になると住宅用地特例が不適用となる可能性等)を周知する。」、同②の取組「そのまま放置すれば特定空家等の状態となるおそれのある空き家について、所有者に対し、市区町村が適切な管理を促すことを可能とする仕組みを検討する(固定資産税の住宅用地特例の解除の検討を含む。)。」が記述されているところです。

43 「所有者の責務の強化、行政の施策への協力促進」について、空き家の適切な管理が所有者の責務であることは当然だと考えます。所有者自身も自分の財産であるとの意識は納税をする点からもあると考えますが、納税さえしていれば、といった考えや遠方にあるため管理が面倒くさいといった考えが生じることになると思います。そのためにも責務の強化は重要であると考えますが、罰則的なものとの対の施策が必要ではないかと考えます。

・・・「罰則の強化」については国民の権利・義務に大きく影響することから慎重な検討が必要であり、本とりまとめに記述すること困難ですが、4.(4)①の取組「所有者の責務を強化し、行政が講ずる施策への協力を促進する。」のほか、「所有者に対し、空き家のリスク(使わないと早く傷み資産価値も低減する、管理不全になると住宅用地特例が不適用となる可能性等)を周知する。」、同②の取組「そのまま放置すれば特定空家等の状態となるおそれのある空き家について、所有者に対し、市区町村が適切な管理を促すことを可能とする仕組みを検討する(固定資産税の住宅用地特例の解除の検討を含む。)。」が記述されているところです。

44 空き家解体や家財を処分する費用が高いという点が、空き家を放置する一つのきっかけになっている。建物解体の補助や家財処分の補助なども必要ではないか。

・・・4.(4)①の取組「・除却までに必要な手続、建物や敷地条件等に応じた効率的な除却手法、除却に要する費用など、所有者が除却の実施等に関する判断を適切に行えるようにするための情報提供を充実する。」及び「・所有者が行う活用困難な空き家の除却への支援を強化する(予算、税制の運用改善等)。」が記述されているところです。

「4.今後の空き家対策の方向性・取組 (4)適切な管理の確保・除却の促進に向けた取組 ② 市区町村の積極的な対応を可能とする取組」関係

45 行政代執行や固定資産税の住宅用地特例解除など、率先してやって行くべき。そうすることで住民の危機意識が上がり、自ずと空き家問題への対応をして頂ける環境になると考える。

・・・4.(4)②に市区町村の積極的な対応を可能とする取組が記述されているところです。

46 登記簿等から所有者判明せず数年管理されていない空き家の所有者や相続人を司法書士や弁護士などが調査できるようにする、相続放棄された物件は購入したい人からの申し立てで財産管理人を立てられるようにする、又は相場の価格を法務局に供託することで取得できるようにするなど、活用が進む政策をお願いしたいです。

・・・4.(4)②市区町村の積極的な対応を可能とする取組として、「・市区町村が所有者探索に活用できる情報を拡大するとともに、取得の円滑化を図る(市区町村の空き家担当部局が戸籍担当部局に公用請求し、戸籍情報連携システムを利用して戸籍情報を取得することが可能となること等による空き家所有者等の調査の円滑化、電力会社等にある所有者情報の市区町村への提供円滑化など)。」、また、「・相続人が不存在の場合等、空き家の適切な管理が見込まれない場合に、市区町村による財産管理制度の利用を円滑化する仕組みを設ける。」等が記述されているところです。頂いたご意見については今後の施策立案等の参考にさせていただきます。

47 示された方向性(案)はいずれももっともですが、相続人の意識向上に依存する部分が大きく、そのままでは十分な効果が期待できるか疑問も持たざるを得ません。施策が効果を上げるためには、空き家を放置しないインセンティブを高めるよう、相続登記しない場合のペナルティが段階的に強化される制度の導入や不動産に限定した相続放棄制度の創設などを実施する必要があるのではないか。

・・・空き家を放置しないインセンティブが高まるよう4.(4)②市区町村の積極的な対応を可能とする取組として「・そのまま放置すれば特定空家等の状態となるおそれのある空き家について、所有者に対し、市区町村が適切な管理を促すことを可能とする仕組みを検討する(固定資産税の住宅用地特例の解除の検討を含む。)。」が記述されています。いただいたご意見については、今後の施策の参考とさせて頂きます。

48 権利者が多数いる場合は、空き家の解体等は全員の同意が必要となるため、解体が進まない実態がある。このため、特定空家等については、一部の相続人の判断で解体できるようにしていただきたい。

・・・他の権利者の財産権を侵害することになる可能性があると考えます。ご指摘のケースについては財産管理制度の活用が考えられます。また、4.(4)②において「・相続人が不存在の場合等、空き家の適切な管理が見込まれない場合に、市区町村による財産管理制度の利用を円滑化する仕組みを設ける。」が記述されております。

49 放棄された空き家は自治体で対応するほか手がないため、利活用可能な建物も含めて、財産管理人制度を利用しやすいような法整備や補助金が望まれる。

・・・ご指摘の点については、4,(4)②の取組として、「・相続人が不存在の場合等、空き家の適切な管理が見込まれない場合に、市区町村による財産管理制度の利用を円滑化する仕組みを設ける。」が記述されております。また、財産管理制度を活用した場合の回収不能な費用について空家対策総合支援事業で支援対象としています。

50 特定空家となる前に所有者に適切な管理を促すには、国税徴収法で認められている財産調査権などを付与し、市区町村の空き家担当職員の権限を強化する必要がある。(具体的には、現在の内容では空き家所有者の情報が住民票で知れる情報などに限られ、住民票を移していないなどの理由で所有者にたどり着かないケースがある。例えば、これが所有者の勤務先を調査できるようになれば、勤務先に問い合わせ在籍確認や転職先、最新の居所を知ることができるようになる。また、財産管理人選任の申し立てをしなければならない場合に、財産調査権があれば、予納金が必要であるか否か、申し立て前にある程度状況を予測することができ、場合によっては不必要な予算を措置しなくても良くなる。

・・・4.(4)②の取組として「・市区町村が所有者探索に活用できる情報を拡大するとともに、取得の円滑化を図る。」及び「・そのまま放置すれば特定空家等の状態となるおそれのある空き家について、所有者に対し、市区町村が適切な管理を促すことを可能とする仕組みを検討する(固定資産税の住宅用地特例の解除の検討を含む。)。」が記述されており、頂いたご意見については、本とりまとめに基づく取組を具体化する段階の参考とさせていただきます。

51 現在の空家特措法では「空家等の所有者等に関するもの」の情報を税務担当かから取得できますが、取得できるのは所有者の情報であり法定相続人全ての情報ではありません。そのため、法定相続人探索が必要になった場合には、独自で一から捜索を行う必要があり、戸籍情報は電子化していないことから捜索に多大な時間を要しております。税務担当課が納税通知者を捜索した情報(法定相続人調査情報)を取得出来るように、法文の中の「所有者等」に含むものとする総務省通知を出来ないでしょうか。

・・・頂いたご意見については、本とりまとめに基づく取組を具体化する段階の参考とさせていただきます。

52 空家法による税部門からの情報提供は有効で、所有者探索に活用できる情報の入手先の拡大及び円滑化は重要であると考えます。空家法に基づく空き家の所有者に基づき、他市へ所有者に関する情報提供の依頼を行った際、個人情報であることから、所有者から情報提供に対する了解を得られた場合のみ情報提供を受けられました。このことから、情報の取得の円滑化は課題であり、取組の強化は有効と考えます。

ご指摘の税務情報のほか、令和4 年に改正された住民基本台帳法に基づき、住基ネットを利用できる事務に空家法等の調査事務を追加しました。また、「令和4年の地方からの提案等に関する対応方針」(令和4年12 月20 日閣議決定)において「市区町村が法令の定める事務を遂行するための情報提供の求め等に係る規定に基づいて行う戸籍謄本等の請求及び交付については、戸籍情報連携システムの運用開始後において、戸籍謄本等に記載されている者の本籍地にかかわらず、当該事務が同一市区町村内で完結できることとする。」とされております。今後、戸籍情報連携システムを利用して戸籍情報取得することが可能となる予定であり、市町村による所有者等の調査を円滑化するための措置が講じられているところです。

53 「・市区町村が所有者探索に活用できる情報の拡大や取得の円滑化。」について、現在の法定相続人が相続放棄をすることで、新たな相続人が100名以上になる場合がある。このような場合、戸籍の郵送による請求には時間がかかり、所有者確知まで、かなりの時間を要することになる。また、このような案件は、相続登記の義務化では対応されることは想定されにくいため、今後も、対象案件の増加が懸念される。

住基ネットが活用可能となったのと同様に、戸籍情報についてもシステムの閲覧が可能となるよう検討をお願いしたい。加えて、住基ネットについても住所のみでの検索や氏名のみでの検索をできるようにする等、所有者調査の初動にも対応できるように、利便性の向上を検討していただきたい。

・・・「戸籍情報」に関しては、「令和4年の地方からの提案等に関する対応方針」(令和4年12 月20 日閣議決定)において「市区町村が法令の定める事務を遂行するための情報提供の求め等に係る規定に基づいて行う戸籍謄本等の請求及び交付については、戸籍情報連携システムの運用開始後において、戸籍謄本等に記載されている者の本籍地にかかわらず、当該事務が同一市区町村内で完結できることとする。」とされております。また、「住基ネット」については、関係省庁にもご意見を共有し、今後の参考にさせていただきます。

54 現在の「空家等対策の推進に関する特別措置法」では、空家等に限って必要な調査をすることができるとされているが、いわゆる「空き家予備軍」に関しては、調査権がないため、情報入手手段がない。「市区町村が所有者探索に活用できる情報の拡大や取得の円滑化」を具体的な取組に挙げているため、調査権の強化についても具体的に盛り込んで欲しい。(特に高齢者単身世帯、高齢者夫婦のみの世帯など、本人等が認知症の発症や急な入院等で不在となり、そのまま空き家になってしまう前に、親族等の調査ができれば、空き家の発生を未然に防ぐことができる。)

・・・ご指摘いただいている点については、4.(2)に「・空き家担当部局と福祉部局等とが連携して、高齢の所有者に対し、住まいの終活を呼びかけるなどの対応を促進する。」が記述されているように、空き家部局と福祉部局の連携の強化による対応が考えられます。

「調査権の強化」についてのご意見については、個人情報保護の観点から慎重に検討すべき課題であり、今後の施策検討の際の参考とさせていただきます。

55 「市区町村が特定空家等となる前の段階で所有者に適切な管理を促すことを可能とする仕組み」について、特定空家等への指定は、最終的に市が公費を投入し、代執行を行うに値する大義名分が必要となるためハードルが高い。特定空家等となる前段階で、所有者に対し適切な管理をするよう勧告が可能な仕組みがあれば、その効果は大きいと思われる。

・・・頂いたご意見については、本とりまとめに基づく取組を具体化する際の参考とさせていただきます。

56 空家特措法に特定空家よりも軽度な老朽空き家を指定する制度をつくることができないか。個人の財産権が関わる行政代執行は行政にとってハードルが高く、それを理由にして特定空家の指定が進んでいないと推測される。そこで「準特定空家」のような制度を新設し、固定資産税の減免撤廃もしくは前述の建物への課税額引き上げと行政は助言・指導のみを行うような担当部署の負担をあまり増やさず指定しやすい仕組みにできないか。

・・・4.(4)②に「・そのまま放置すれば特定空家等の状態となるおそれのある空き家について、所有者に対し、市区町村が適切な管理を促すことを可能とする仕組みを検討する(固定資産税の住宅用地特例の解除の検討を含む。)。」が記述されております。頂いたご意見については、本とりまとめに基づく取組を具体化する際の参考とさせていただきます。

57 住宅用地特例の解除等、特定空家等になる前の段階から、早期のうちに適切な管理や除却がされるような仕組みが作られることが望ましいと考えます。特に、空家の適切な管理は所有者の責務であるため、所有者の主体的な対応を後押しする取組が重要です。

・・・4.(4)②に「・そのまま放置すれば特定空家等の状態となるおそれのある空き家について、所有者に対し、市区町村が適切な管理を促すことを可能とする仕組み」が記述されております。

58 具体的な取組として、「特定空家等となる前段階での固定資産税の住宅用地特例の解除の検討」が示されたが、これまでは勧告まで至らなければ不利益が生じないことがあったため、認定に踏み切っているケースもあると思われる。今後、上記の検討を進める際には、既に認定した物件に対する対応についても適用の取扱いを示して頂きたい。

・・・頂いたご意見については、本とりまとめに基づく取組を具体化する段階の参考とさせていただきます。

59 「・市区町村が特定空家等となる前の段階で所有者に適切な管理を促すことを可能とする仕組み。(固定資産税の住宅用地特例の解除の検討を含む)。」について、固定資産税の住宅用地特例の解除はかなりの成果があると予想される。特別なものだけを判断するとなると形骸化する恐れがあるため、基準は単純なものかつ広く対象とすることが望ましい。

・・・頂いたご意見については、本とりまとめに基づく取組を具体化する段階の参考とさせていただきます。

60 「・市区町村が特定空家等となる前の段階で所有者に適切な管理を促すことを可能とする仕組み(固定資産税の住宅用地特例の解除の検討を含む)。」において、税の公平性を鑑み、国において一定(空家の期間や、不良度、周辺への危険性(樹木を含む))の基準を設定することをお願いしたい。空家の所有者は、遠方に住むことが多く、空家所在地と、所有者等の居住地域での取り扱いに差が出た場合、所有者に対し説明が難しくなる。

・・・頂いたご意見については、本とりまとめに基づく取組を具体化する段階の参考とさせていただきます。

61 法施行以来、管理不全な空家等への対策が進み、内容が「建築物の老朽化」から「樹木の繁茂」へ移行している。樹木について特定空家等とした場合は剪定の代執行となり、一時的に解決するだけでまた繁茂は繰り返され、自治体が継続して管理を代行してあげる結果となり根本的な解決に至らない。固定資産税が上がってもそのまま払い続ける所有者は一定数いると思われ、現行法の特定空家等という手段とは別の、管理しない所有者への措置が必要と感じている。(例:管理不全通知に対応しない段階での、所有者住所氏名の掲示など。)

・・・ご指摘のケースについては財産管理制度の活用が考えられ、4.(4)②において「・相続人が不存在の場合等、空き家の適切な管理が見込まれない場合に、市区町村による財産管理制度の利用を円滑化する仕組みを設ける。」が記述されております。頂いたご意見については、本とりまとめに基づく取組を具体化する段階の参考とさせていただきます。

62 「・市区町村が特定空家等となる前の段階で所有者に適切な管理を促すことを可能とする仕組み(固定資産税の住宅用地特例の解除の検討を含む)。」について、特定空家等になる前段階での住宅用地特例の解除については、管理意識の希薄な所有者の対応を後押しする取組として有効であると考えるものの、国による統一的な基準等を示していただきたいと考えます。また、特定空家等に関わらず、空き家が住宅用地特例を受けるためには申告制 にするなどの、抜本的な見直しが重要と考えます。

・・・頂いたご意見については、本とりまとめに基づく取組を具体化する段階の参考とさせていただきます。

63 「市区町村が特定空家等となる前の段階で所有者に適切管理を促すことを可能とする仕組み。(固定資産税の住宅用地特例の解除の検討を含む)。」について、空き家を除却する前に固定資産税の住宅用地特例の解除を行った場合に、除却後も住宅用地特例が適用外となるため所有者のメリットがなく空き家を放置することが考えられる。「地域の実情に応じ、市区町村の条例等により一定の空き家を除却した場合の固定資産税等に係る負担軽減が可能であることの周知、横展開。」の記載もあるが、固定資産税等の軽減措置は国として制度設計がなされるべき。

・・・住宅用地特例の解除が空き家所有者の対応にどのような影響を及ぼすかについては、都市部、地方部等、地域の実情のほか権利関係や所有者の状況等によっても異なるため、様々な取組の選択肢が必要であることから、住宅用地特例に関する取組だけでなく、4.(4)に様々な取組が記述されているところです。頂いたご意見については、本とりまとめに基づく取組を具体化する段階の参考とさせていただきます。

64 ・「管理不全となると住宅用地特例を不適用にする」という取り組みがいくつか見受けられるが、住宅用地の特例はあくまでも土地所有者に対するもので、土地と住宅の所有者が異なる場合には何の効果もない。住宅用地特例が解除されることをちらつかせることに効果があるのか検証が必要ではないか。また当該小委員会に制度所管の総務省がいないなかで、「特定空家等となる前段階で所有者に適切な管理を促すことを可能とする取り組み」として住宅用地特例の解除を挙げていることに違和感を感じるし、具体的にどのように実施するつもりなのか、わからないので不安。

・・・住宅用地特例の解除が空き家所有者の対応にどのような影響を及ぼすかについては、権利関係のほか、所有者の状況、地域の実情等によっても異なるため、様々な取組の選択肢が必要であることから、住宅用地特例に関する取組だけでなく、4.(4)に様々な取組が記述されているところです。なお、本小委員会には、オブザーバーとして総務省自治税務局固定資産税課も参加しているところです。

65 固定資産税評価額の安価な地域については、住宅用地特例を解除しても、金銭的な影響は少ないと考えられ、効果は限定的である。また、固定資産税の住宅用地特例の解除は、所有者が一旦それを容認すれば、次の打つ手がない。空家が活用され、放置空家にならないためには、さらなる対応が必要ではないか。例として、固定資産税の住宅用地特例の解除は、早い段階で適応し、特定空家等の勧告時は、固定資産税の税率の上乗せなどが考えられる。なお、税の取り扱いについては、住宅用地特例の解除が空き家所有者の対応にどのような影響を及ぼす

かについては、都市部、地方部等、地域の実情のほか権利関係や所有者の状況等によっても異なるため、様々な取組の選択肢が必要であることから、住宅用地特例に関する取組だけでなく、所管省より市区町村の税務担当に、確実な周知をお願いしたい。

・・・4.(4)に様々な取組が記述されているところです。頂いたご意見については、本とりまとめに基づく取組を具体化する段階の参考とさせていただきます。

66 財産管理人専任の申立を市区町村が行うことにより、管理が行われていない空き家の解消につながると思いますが、相続人がいなくなって年月がそれほど経過していない空き家は特定空家等とはみなせず、申立を認められないケースがあると思われます。相続人不存在の空き家は空き家の状態の良し悪しに関わらず申立てが認められるようにしていただきたいと思います。

・・・4.(4)②に「・相続人が不存在の場合等、空き家の適切な管理が見込まれない場合に、市区町村による財産管理制度の利用を円滑化する仕組みを設ける。」が記述されております。頂いたご意見については、本とりまとめに基づく取組を具体化する段階の参考とさせていただきます。

67 市区町村の取組のうち、緊急時の代執行等の制度を創設する場合は、所有者責務とのバランスや、緊急と判断される状態、費用徴収等の課題について、先行して条例等に基づき実施している自治体へのヒアリングなどにより、本制度が各自治体において適切に運用されるよう制度設計がされることを期待しています。

・・・第2 回小委員会(2022 年11 月22 日)において、緊急時の代執行制度を運用する2 つの自治体から、その効果・課題等についてヒアリングがなされています。頂いたご意見については、本とりまとめに基づく取組を具体化する段階の参考とさせていただきます。

68 緊急時にも代執行ができる仕組みは有効であると考えます。通常の手続きと緊急時の手続きの違い、相違点や流れ等をガイドライン等により判断基準を明確に示していただきたいと考えます。

・・・4.(4)②の取組として「・緊急時の代執行など、市区町村が特定空家を対象に行う措置をより円滑化する仕組みについて検討する。」が記述されています。頂いたご意見については、本とりまとめに基づく取組を具体化する段階の参考とさせていただきます。

69 「・緊急時の代執行など市区町村による特定空家の所有への円滑な措置を促進する仕組み」について、代執行を行うにあたっては、特措法第14 条の規定に基づき順を追って手続きを進める必要があり、時間と手間を要する。降雪による建物倒壊のおそれや台風などの突風による瓦の落下など、具体的な危険が間近に迫った場合、自治体が緊急的に対応できる規定を特措法に明文化することが必要。

・・・頂いたご意見については、本とりまとめに基づく取組を具体化する段階の参考とさせていただきます。

70 「緊急時の代執行など~円滑な措置を促進する仕組み」について通行の障害となるなど、緊急に除却等の対応を行う必要がある空き家に対する対応に苦慮しており、簡便な手続きによる緊急時の代執行が行えるような仕組みを整備していいただきたい。

・・・頂いたご意見については、本とりまとめに基づく取組を具体化する段階の参考とさせていただきます。

71 「活用困難な空き家の除却への支援強化」について、活用困難とは、特定空家等や不良住宅などの老朽危険空き家を指すものと推察されるが、空き家の状態にかかわらずその跡地は活用困難な状態にある。現在の支援において、不良住宅、特定空家等以外に課されている跡地要件を全面的に撤廃していただきたい。

・・・頂いたご意見については、今後の施策の検討・立案において参考とさせて頂きます。

72 「・活用困難な空き家の除却への支援強化。」について重要であると考えます。活用困難な空き家であっても、線引き以前に建てられた市街化調整区域内の既存住宅は、当該地に新たな住宅を建築するための許可要件に伴う影響から除却に至らないケースが見受けられます。住宅を除却しても新たな住宅の建築が可能な土地であることを証明するための制度等が必要と考えます。

・・・頂いたご意見については、今後の施策の検討・立案において参考とさせて頂きます。

73 所有者等に対応能力がないと判断できる場合はその親族(1 親等や配偶者などの近い親族)へ代執行費用を請求できるよう検討していただきたい。行政が行政代執行を行う際、最も懸念する点は費用の回収である。特定空家等の所有者等は支払い能力がない場合が多く、差押等でも費用の回収は困難である。

・・・所有者以外の者に費用請求を行うことは困難と考えます。また、4.(4)②に「・活用困難な空き家の除却に対する支援を強化する(予算、税制の運用改善等)。」が記述されております。頂いたご意見については、本とりまとめに基づく取組を具体化する段階の参考とさせていただきます。

74 危険空家を行政代執行で解体した後の債権回収の際、所有者が当該物件(土地、家屋)以外の資産を保有していない場合は行政代執行法に基づき当該物件を公売することとなるが、物件に抵当権が設定されている場合は、それに比べ代執行費用が劣後するため債権の回収が困難となり、代執行費用の予算化の障害となる。また、抵当権者の立場からすると、債務者が多額の費用を負担し当該物件を補修するより、行政代執行によって家屋が解体されたほうが物件の価値が上昇するため、空き家等を活用せず放置することが有利となる場合も考えられる。

よって、危険空家の解体に係る行政代執行に関しては、抵当権等の民間債権に優先して代執行費用の回収を可能とする制度が必要である。

・・・頂いたご意見については、今後の施策の検討・立案において参考とさせて頂きます。

75 「地域の実情に応じ、市区町村の条例等により一定の空き家を除却した場合の固定資産税の負担軽減が可能であることの周知、横展開」について、可能とする根拠や事例をぜひ紹介してください。また、更地となった土地が買い手もなく住宅が建つ見込みもない場合、山林や農地に地目変更する方法など相談できる機関があると解体が進むと思います。

・・・頂いたご意見については、本とりまとめに基づく取組を具体化する段階の参考とさせていただきます。

76 除却の意思はあるものの、費用が高く資金の工面ができない所有者や、除却後の土地が活用できないために除却することをためらっている所有者も一定数いることから、除却後も住宅用地特例が一定期間適用される激変緩和措置など所有者等の状況への配慮も必要。

・・・4.(4)①に「・除却までに必要な手続、建物や敷地条件等に応じた効率的な除却手法、除却に要する費用など、所有者が除却の実施等に関する判断を適切に行えるようにするための情報提供を充実する。」「・所有者が行う活用困難な空き家の除却への支援を強化する(予算、税制の運用改善等)。」、同②に「・地域の実情に応じ、一定の空き家を除却した場合の固定資産税等に係る負担軽減が市区町村の条例等により可能であることを周知するとともに、事例の横展開を図る。」が記述されております。頂いたご意見については、本とりまとめに基づく取組を具体化する段階の参考とさせていただきます。

77 固定資産税については、市町村において減免等が可能であるが、市町村としても歳入の減少となるとなかなか踏み出せない状況にあるため、一定の条件のもと、交付税措置等により市町村の負担を軽減する等、支援の検討をお願いしたい。

・・・頂いたご意見については、今後の施策の検討・立案において参考とさせて頂きます。

78 地域の実情に応じて空き家を除却した場合の固定資産税等の負担軽減が可能とのことだが、課税の公平性としてモラルハザードを起こしかねない記述だと感じる。一部自治体で確かに実施していることだと思うが、これをスタンダードとしてよいのかは疑問。住宅用地特例は適用されることが「当たり前」になっており、更地にしたら「税金が上がる」という印象になっている。難しいとは思うが、むしろ総務省には、住宅供給過多の今の時代にあわない宅用地特例・新築住宅に対する減額などを取りやめ・縮小させ、むしろ中古住宅(空き家含む)の流通・改修して長期的に利用することを誘導するような税優遇を検討してほしい。

・・・住住宅用地特例の解除が空き家所有者の対応にどのような影響を及ぼすかについては、都市部、地方部等、地域の実情等によって異なるため、「地域の実情に応じ、」と記述されているところです。頂いたご意見については、今後の施策の検討・立案において参考とさせて頂きます。

79 市町村がマンパワーや専門的知識の不足により十分な対応ができていない状況は課題等として記載されておりますが、これらを支援する方針を記述していただきたい。

・・・4.(4)②に「・ノウハウ・専門的知識が不足する小規模な地方自治体に対し、先行地方自治体の対策計画・事例・ノウハウを共有するとともに、職員への指導が可能な人材を紹介するなどにより人材育成の機会を提供する。」が記述されております。

80 空き家対策では小規模な自治体が少ない人員でノウハウも蓄積もなく対応し(疲弊し)ているのが現状であり、担当職員への負担が大きい。国が直轄で複数の小規模自治体の空き家対策、特に所有者(相続人)の確定と除却促進する体制づくりが必要と考える。現場では、税、相続、建築など多岐に亘る事務能力が必要となり負担が過大となっている。

・・・地方自治体の人材確保の取組として4.(4)②「・ノウハウ・専門的知識が不足する小規模な地方自治体に対し、先行地方自治体の対策計画・事例・ノウハウを共有するとともに、職員への指導が可能な人材を紹介するなどにより人材育成の機会を提供する。」が記述されております。また、地方自治体を補完する取組として4.(5)①「・NPO 等が地方自治体と連携し、空き家の所有者に対して空き家の早期活用や適切な管理、活用が難しい場合の除却を働きかける取組を促進する。」が記述されております。頂いたご意見については、本とりまとめに基づく取組を具体化する段階の参考とさせていただきます。

81 空家特措法に基づく、空家等の定義と住宅・土地統計調査(総務省)での定義に相違があることは示して頂きたい。特措法では、一棟全体を一つの建築物として判断するため、共同住宅の一部で居住や使用がされている場合(空き室)は対象外となり、空家等として取り扱えないものと考えます。

・・・空き家特措法に基づく空家等の定義と住宅土地統計調査の空き家の定義の違いについては、本とりまとめの趣旨に影響がないため記載しておりません。本とりまとめは、空家法に基づく空家を主に対象となっていますが、長屋等の一部が空き家となった場合の対応については、4.(4)②の継続的に検討する取組として「・長屋等の空き住戸の適切な管理等を促進する方策はどうあるべきか。」が記述されています。

「4.今後の空き家対策の方向性・取組(5)NPO 等の民間主体や地域コミュニティの活動を促進する取組 ① NPO 等の民間主体の活動を促進する取組」関係

82 スペースシェアという空き家活用の選択肢の認知を広げるためには、自治体・NPO 等の空き家対策に携わる関係者の理解促進及びスペースシェア事業者との連携促進が欠かせないことから、「(5)NPO 等の民間主体や地域コミュニティの活動を促進する取組」において、空き家等対策に携わる地域の関係者とスペースシェア事業者との連携促進を図る旨を追加すべきである。

・・・今後の空き家対策のあり方全体を議論する本小委員会のとりまとめにおいて、すべての活用手法について取り上げることは困難ですが、頂いたご意見については、今後の施策の検討・立案において参考とさせて頂きます。

83 「NPO 等の民間主体や地域コミュニティの活動を促進する取組」に全国で活動する民間企業との連携の促進について記載してはいかがでしょうか。NPO 等を含む民間事業者の中でも特に、全国の空き家対策にノウハウを持つ不動産業者などと協力することも重要と考えます。

・・・4.(5)①「NPO 等の民間主体の活動を促進する取組」にNPO 等の民間主体との連携について記述されています。また、NPO 等の民間主体に全国で活動する民間事業者も含まれています。

84 地方自治体が民間事業者と連携する際には「営利」という壁があるため、中間組織・団体を活用した民間事業者との連携や中間組織の位置づけの明確化などが必要ではないか。また、空き家対策においては県の位置づけが不明瞭となっているのではないか。

・・・NPO 等の中間組織が活動しやすい環境の整備を進める観点から、4.(5)①「・NPO 等が、所有者に寄り添って空き家の活用・管理に係る相談対応や所有者と活用希望者とのマッチング等の活動をしやすくなるよう、環境整備を推進する(公的位置づけの付与、市区町村からNPO・社団法人等への所有者情報の円滑な提供、活動への支援等)。」が記述されています。

都道府県については、空家法第8 条において「都道府県知事は、空家等対策計画の作成及び変更並びに実施その他空家等に関しこの法律に基づき市町村が講ずる措置について、当該市町村に対する情報の提供及び技術的な助言、市町村相互間の連絡調整その他必要な援助を行うよう努めなければならない。」と規定されております。

85 「・空き家の管理を専門的に行う事業者の育成」は重要な取組と考えます。空き家所有者の負担が生じることから、所有者または管理を行う事業者に対する支援が必要と考えます。また、現在、多くの市町でシルバー人材センターによる管理も行われています。民間事業者より低額で、所有者の負担軽減にも有効であると考えており、シルバー人材センターの活用に対する支援も重要であると考えています。

・・・頂いたご意見については、本とりまとめに基づく取組を具体化する段階の参考とさせていただきます。

「4.今後の空き家対策の方向性・取組(5)NPO 等の民間主体や地域コミュニティの活動を促進する取組 ② 地域コミュニティにおける取組」関係

86 「・地域レベルで空き家をそのままにしないとの意識の醸成。」の取組は重要と考えます。行政に対策を求める主旨とならないようガイドライン等による地域による空き家活用方法などを示す必要があると考えます。

・・・頂いたご意見については、本とりまとめに基づく取組を具体化する段

階の参考とさせていただきます。

○ とりまとめの方向性(案)に直接関係しないが空き家対策に関連するご意見とそれらに対する考え方

パブリックコメントにおける主なご意見 見解・対応等

87 新築を抑制する制度設計を考慮してほしいです。人口が減っていますが、新築は減少の一途ではありません。新しい家が増え、さらに空き家も増えていけば、対処療法では解決が難しいのではないでしょうか?増えている空き家の利活用はもちろんですが、新築を抑制しなければ、いつまでも空き家は減らないはずです。新築への抑制策なくして、空き家の解消はできないと考えています。ぜひ、空き家の価値がつくような新築抑制策をご検討いただければと思います。

・・・頂いたご意見については、今後の施策の検討・立案において参考とさせて頂きます。

88 空き家が解体されず放置されるリスクを低減するために、個人が住宅を建築する際には、自動車のリサイクル料金のように構造や面積等に応じて、一定の負担金を徴収し、公益財団法人等が積み立てて、いざ個人所有者が建物を解体するときに空き家かどうかは関わらず、積立金の中から解体費用の一部助成が受けられるような制度作りが必要と考えます。御省には、そういった制度設計が可能かどうかの検討を実施して頂きたいと考えます。

・・・頂いたご意見については、今後の施策の検討・立案において参考とさせて頂きます。

89 空き家発生の原因の一つに新築住宅(一戸建て、アパート、マンション)が、未だに需要より多く販売されていることが挙げられる。仮称新築購入税や建物リサイクル税等を創設し、新築建物購入者にも一定の空き家対策負担を求められないか。ハウスメーカー等事業者負担も並行して検討してはどうか。

・・・頂いたご意見については、今後の施策の検討・立案において参考とさせて頂きます。

90 空き家を放置する理由として、所有者が高齢で身内もなく、管理する費用もなく、借地であり売却したいが売れないなど、費用の面で放置される事例が多い。この場合は、最終的には行政代執行まで行く可能性が高い。そこで、住宅の所有者に管理費や解体費用を強制的に徴収できるような、家電や自動車のリサイクル費用のように、事前に徴収する制度等を検討いただけないか。

・・・頂いたご意見については、今後の施策の検討・立案において参考とさせて頂きます。

91 東京都の23区内の物件について、建物所有者が分からない、相続人が数代にわたり数十人と多くなり区役所ではすぐに相続人を把握できないケースでも都税事務所は相続人代表者に通知を送り課税ができている場合がある。しかし都税事務所は空き家特措法の特定空き家案件以外では個人情報を盾に区役所にもほとんど情報を出さない。所有者代表を把握する間に老朽化が進んでしまうことが多く、都税事務所と区役所の情報共有を強化し管理不全状態を早期に解決できないか。

・・・空家法第10 条第2 項に「2 都知事は、固定資産税の課税その他の事務で市町村が処理するものとされているもののうち特別区の存する区域においては都が処理するものとされているもののために利用する目的で都が保有する情報であって、特別区の区域内にある空家等の所有者等に関するものについて、当該特別区の区長から提供を求められたときは、この法律の施行のために必要な限度において、速やかに当該情報の提供を行うものとする。」と規定されているところであり、本規定の趣旨を周知して参ります。

92 市税部門との連携の強化も必要と考える。管理不全であり、市税の滞納もあるような空家であれば、公売へすすめるといった対応が可能となる。

・・・空家法第10 条の趣旨を踏まえ、空き家担当部局と税担当部局の連携を促進して参ります。

93 相続人が不存在となる理由の一つとして相続放棄が挙げられますが、空き家が相続放棄されていることが空き家所有者調査において判明するころには、当該空き家は長期間放置され、もはや活用が見込まれない状態になっている事例が散見されます。一方で課税担当部局は、空き家の発生情報を早期に把握することが可能な立場にあるため、課税担当部局と空き家担当部局の間で相続財産法人に関する情報のやりとりが可能となるような法制度の改正が望ましいと考えます。

・・・空家法第10 条の趣旨を踏まえ、空き家担当部局と税担当部局の連携を促進して参ります。

94 第一回の意見まとめの中の、財産権の配慮について、「空家法について(中略)見直しが必要」という意見に賛成です。法改正等により、代執行手続きの改善をしたり、責任の所在を明確にしたりといった対応をしてほしいので、とりまとめ案の〈継続的に検討する取組〉として、「空家法の見直し案の検討」などを盛り込んでほしいと思います。

・・・本とりまとめ、5.おわりにとして「国においては、本とりまとめに基づき、法制度、予算・税制等を含め、必要な措置を講じるとともに、今後も空き家及び対策の状況を継続的に把握・検証し、今回継続的に検討する取組とした事項も含め、必要な検討及び政策立案等に取り組むことを強く期待したい。」が記述されており、国において継続的に空き家及びその対策の状況を把握・検証していくこととしています。

95 空家等対策の推進に関する特別措置法は、施行後5 年で見直すということであったはずであったが、早7 年が経過し、行政の空き家対策についても民間の空き家対策についても、そろそろ臨機応変に実施できるよう法改正に踏み込んでいくべきではないか。同法は議員立法で制定されたものであるため、有識者の方からも取りまとめの方向性に法改正に向けた検討が必要であることを記載すべき。

・・・本とりまとめ、5.おわりにとして「国においては、本とりまとめに基づき、法制度、予算・税制等を含め、必要な措置を講じるとともに、今後も空き家及び対策の状況を継続的に把握・検証し、今回継続的に検討する取組とした事項も含め、必要な検討及び政策立案等に取り組むことを強く期待したい。」が記述されており、国において継続的に空き家及びその対策の状況を把握・検証していくこととしています。

96 第一回資料6 の「借地上の特定空家等除却により発生する便益の調整」について、土地所有者という利害関係人が存在しながら、その土地上の特定空家を代執行などで税金を投入して壊すのは不公平だと思います。方向性をとりまとめて追記してほしいです。

・・・借地上であっても、特定空家等は周囲に悪影響を及ぼすものであり、早急に対処する観点から、代執行等の手段で除却等を行うことはやむを得ないケースがありますが、頂いたご意見については、今後の施策の検討・立案において参考とさせて頂きます。

97 旧借地借家法による借地(旧法借地)の老朽空き家の場合、建物と土地の所有者が違うため、空き家を特定空家に指定し空家特措法による固定資産税の減免の撤廃をしても土地の所有者が負うことになり建物所有者への直接的な効果がない。土地の固定資産税の減免の撤廃ではなく特定空家の建物自体への固定資産税を懲罰的に高額に上げることに変更できないか。

・・・住宅用地特例の解除が空き家所有者の対応にどのような影響を及ぼすかについては、権利関係のほか、所有者の状況、地域の実情等によっても異なるため、様々な取組の選択肢が必要であることから、住宅用地特例に関する取組だけでなく、4.(4)に様々な取組が記述されているところです。頂いたご意見については、今後の施策の検討・立案において参考とさせて頂きます。

98 借地上の建築物については、土地所有者の理解や承諾が得られないために、修繕すらも行えないケースがあり、こうした要因で改善が進まないものもあり課題として示すべき。

・・・一般的には、借地上の建築物についても、通常の修繕であれば土地所有者の承諾なく行うことができるとされております。頂いたご意見については、今後の施策の検討・立案において参考とさせて頂きます。

99 建築基準法のセットバックした場合でも、セットバック用地が私用で占有された結果、道路として利用されず、狭隘道路の先が空き家となっているのではないか。セットバック用地を確実に道路として利用できる様な法整備が必要。

・・・セットバックした用地については、建築基準法上の道路として使用することが必要です。

○ その他のご意見

パブリックコメントにおける主なご意見 見解・対応等

100 相続人不存在である建物が年々増加しており、現在誰でも安易に相続放棄ができてしまう状況であり、これを抑制する方法・相続放棄のあり方を検討すべきである。

・・・相続放棄は民法に基づき認められた権利であり、空き家問題だけの仕組みではないため、本小委員会の検討対象とすべきではないと考えます。頂いたご意見については、今後の施策の検討・立案において参考とさせて頂きます。

101 相続放棄に伴い相続人が不存在となる際の相続財産管理人選任申立ての義務化。自治体が代行しているのが現状だが、所有者の責務として申立てるべきと考える。

・・・頂いたご意見については、今後の施策の検討・立案において参考とさせて頂きます。

102 空き家対策関係者におけるスペースシェアの認知向上、空き家相談の人材育成の観点から、次のような具体的方策を例示として挙げることも検討頂きたい。

– スペースシェア化を選択肢に入れた「空き家利活用ハンドブック」を作成し、自治体・NPO 等の空き家対策関係者への周知、空き家相談窓口での配布等に活用すること

– 民間の専門家を中心に「国交省 空き家利活用アドバイザー」を認定し、スペースシェアを含めた空き家の多様な利活用方法を全国の自治体・NPO 等と連携して啓発すること

・・・今後の空き家対策のあり方全体を議論する本小委員会のとりまとめにおいて、すべての活用手法について取り上げることは困難ですが、頂いたご意見については、今後の施策の検討・立案において参考とさせて頂きます。

103 本とりまとめにおいて上記のような記載を盛り込むにとどまらず、「空き家等に関する施策を総合的かつ計画的に実施するための基本的な指針」を改正し、空き家等対策に携わる地域の関係者とスペースシェア事業者との連携促進を図って頂きたい。

・基本指針の性質上、すべての活用手法について取り上げることは困難と考えます。頂いたご意見については、今後の施策の検討・立案において参考とさせて頂きます。

104 売却困難な相続人不存在の空き家は売却ができず放置される可能性が高いのではないかと考えますが、空き家が解体されて空き地となれば、民法で規定されている国庫に帰属して適正に管理されていくのでしょうか。

・・・相続人不在の場合は、相続財産管理制度等の活用が想定され、その場合、利害関係者等の請求により裁判所が選任した管理人が管理、処分を行っていくことになります。財産管理制度についは、4.(4)②において「・相続人が不存在の場合等、空き家の適切な管理が見込まれない場合に、市区町村による財産管理制度の利用を円滑化する仕組みを設ける。」と記載しております。頂いたご意見については、本とりまとめに基づく取組を具体化する段階の参考とさせていただきます。

105 空き家でも健全な状態で不動産市場にのるものは対策する必要はありません。反対に老朽化し近隣へ悪影響があれば人が住んでいても対策は必要になります。突きつめると、空き家対策として指導が必要な状況は存在せず、老朽家屋対策を混在させているから指導勧告代執行が必要となる状況です。方針を見直す中では十分に検討し定義の再設定を求めます。

・・・空き家問題は、家屋が適切に管理されないまま放置される結果、周辺へ悪影響を及ぼすこととなる問題と考えます。本小委員会では、こうした問題に対して、空き家の発生抑制、活用、適切な管理・除却の促進方策を検討してまいりました。

106 とりまとめの方向性(案)に記載のとおり、空き家問題は様々な分野の問題を含んでおり、各分野の制度・法律等に基づいた対応が必要となるため煩雑となっている。このため、「空き家」を主軸において、統一的な仕組みを作ることはできないか

・・・頂いたご意見については、今後の施策の検討・立案において参考とさせて頂きます。

107 住居系の用途でも、空き家が多い地域については、産業誘致や企業立地が可能な用途に見直すなど、用途地域の見直しを柔軟に行うことができる法整備・環境作りを行うべき。

・・・頂いたご意見については、今後の施策の検討・立案において参考とさせて頂きます。

108 令和3 年の民法、不動産登記法の改正については、空き家対策の観点

からも非常に有意義な改正であったと考えるが、一方で、改正から1年半あまりが経過した現在も改正の内容について物件所有者の認知が進んでいるとは言い難い。国はマスメディアなどを使って周知徹底に努める必要がある。

・・・頂いたご意見については、今後の施策の検討・立案において参考とさせて頂きます。

https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCM1040&id=155220726&Mode=1

社会資本整備審議会 住宅宅地分科会

空き家対策小委員会とりまとめ~今後の空き家対策のあり方について~

2023年2月

目 次

1.はじめに ………………………………………………………………………………………… 2

2.空き家の現状 ………………………………………………………………. 3

(1)空き家の現状 …………………………………………………………………………………….. 3

(2)空き家の所有者の現状 …………………………………………………………….. 3

(3)空き家対策を行う地方自治体の現状や制度的な対応を求める声 ……….. 4

① 取組の現状 …………………………………………………………………………………………………. 4

② 制度的対応を求める地方自治体の声 ………………………………………………………………….. 4

3.空き家対策に係る課題・問題意識 …………………………………………………………………. 5

(1)基本的問題意識 …………………………………………………………………………………………………. 5

(2)発生抑制や活用促進に係る課題 ……………………………………………………………………….. 5

(3)適切な管理や除却の促進に係る課題 ………………………………………………………….. 6

① 所有者の抱える課題 ……………………………………………………………………………………………. 6

② 地方自治体の抱える課題 …………………………………………………………………………………….. 6

4.今後の空き家対策の方向性・取組 ……………………………………………………………………….. 7

(1)今後の空き家対策の基本的方向性 ……………………………………………………………………. 7

(2)発生抑制を図る取組 …………………………………………………………………………………… 7

(3)活用促進に向けた取組 ………………………………………………………………………….. 8

① 相続等により空き家を取得した段階での取組 …………………………………………….. 8

② 空き家状態となった後の取組 ……………………………………………………………………………… 9

(4)適切な管理の確保・除却の促進に向けた取組 …………………………………………………

① 所有者の主体的な対応を後押しする取組 ……………………………………………………… 11

② 市区町村の積極的な対応を可能とする取組(対応力の強化) ……………………… 12

(5)NPO 等の民間主体や地域コミュニティの活動を促進する取組 ………….13

① NPO 等の民間主体の活動を促進する取組 …………………………………………………13

② 地域コミュニティにおける取組 ……………………………………………………………….. 13

5.おわりに ……………………………………………………………………………………………. 14

1.はじめに

我が国の空き家の総数は平成30 年時点で849 万戸あり、そのうち、二次的利用、賃貸用又は売却用の住宅を除いた空き家で、居住目的がないため管理不全となるおそれが比較的高いと考えられる「その他空き家」(以下「居住目的のない空き家」という。)は349 万戸となっており、いずれも増加傾向にある。直近のトレンドによれば居住目的のない空き家は令和12 年に470 万戸程度まで増加すると見込まれている。

こうした状況を受け、令和3 年に策定された住生活基本計画(全国計画)においては、空き家の状況に応じた適切な管理・除却・利活用の一体的推進が位置付けられるとともに、成果指標として、居住目的のない空き家数を令和12 年時点で400 万戸程度に抑えること等が定められた。

空き家対策を巡っては、平成27 年に「空家等対策の推進に関する特別措置法

(平成26 年法律第127 号)」(以下「空家法」という。)が施行され、市区町村による空家等対策計画の策定や著しく保安上危険、衛生上有害等の状態にある等のいわゆる特定空家等1の除却等の取組は、より優先度の高い取組として進展しているが、今後、居住目的のない空き家が増加する見通しであることを踏まえれば、対策の充実・強化が不可欠である。

不適切な管理による周辺への悪影響(負の外部性)をもたらすこととなってからの対応は限界に近づいており、より早い段階での対応についても強化が必要である。さらに、地域の遊休空き家を地域のニーズに応じて活用することで、社会的な付加価値を創出し、地域経済やコミュニティの活性化に繋げていく観点も必要である。

こうした観点から、令和4 年10 月に社会資本整備審議会住宅宅地分科会の下に空き家対策小委員会が設置され、主に空き家の発生抑制、利活用、適切な管理・除却に向けた取組の強化等、空き家対策のあり方を中心に議論を行った。

本「とりまとめ」は、空き家対策小委員会における議論の結果として、空き家対策のあり方についてとりまとめたものである。

1 そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態又は著しく衛生上有害となるおそれのある状態、適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態にあると認められる空き家等をいう(空家等対策の推進に関する特別措置法第2 条第2 項)。

2.空き家の現状

(1)空き家の現状

・ 居住目的のない空き家の数がこの20 年間で約1.9 倍に増加しており、うち一戸建てが7 割以上、腐朽・破損のあるものは101 万戸となっている。また、新耐震基準導入前の昭和55 年以前に建築されたものが約4分の3を占めている。

・ また、居住目的のない空き家が空き家総数に占める割合は、全国平均で5.6%と上昇傾向にあり、地域差も大きい。

(2)空き家の所有者の現状

・ 空き家の取得原因は、相続が55%となっている。また、所有者の約3 割は車、電車等で1 時間を超える遠隔地に居住しており、3 時間を超える遠隔地に居住している所有者も約13%にのぼっている。

・ 空き家所有者の28%は、空き家のままにしておくとの意向であり、さらに、将来、当該空き家を賃貸・売却する意向を持っている23%の所有者も、その約4割近くが賃貸・売却等に向けて何ら活動をしておらず、除却意向を持つ13%の所有者も、その約3 割が除却費用の用意について未定であるとしている。将来的な利用意向を回答した所有者も、具体的な活動に入っているかどうかは不明であり、全体としてみれば、「そのままにされている空き家」が相当数に上ると推察される。

・ 空き家にしておく理由として、「解体費用や労力・手間をかけたくない」「更地にしても使い道がない」との消極的な理由のほか、「特に困っていない(問題と認識していない)」とする所有者も少なくない。また、賃貸・売買する上での課題として「買い手・借り手の少なさ」「住宅の傷み」などがあげられている。

・ 空き家の日頃の管理は、専門家である不動産会社等が行っているものは4%弱にとどまっており、全く行われていないものが3%程度、所有者自身、親族・親戚又は友人・知人・隣人が行っているものが90%程度となっているが、管理の内容にはばらつきがあり、必ずしも十分な管理内容とはなっていない。また、所有者の居住地が遠隔地になるほど、管理頻度は低くなっている。

(3)空き家対策を行う地方自治体の現状や制度的な対応を求める声

① 取組の現状

・ 空家等対策計画の策定済み市区町村は8割、策定予定も含めると9割超となっている。

・ 市区町村がこれまで把握した管理不全の空き家は、累計約50 万件である。このうち約14 万件は、空家法に基づく措置や市区町村独自の対策により除却や修繕等がされたものの、約2万件の特定空家等や、約24 万件にのぼるその他の管理不全の空き家は、今なお現存している(約10 万件は状況不明。)。また、市区町村が所有者特定事務を行った管理不全の空き家など52.8 万件のうち、約9%にあたる4.7 万件は、所有者が判明するに至っていない。

・ 空き家の所有者が不明の場合、民間事業者等がその空き家を有効活用しようとしても、交渉等を行うことが難しく、また、市区町村が管理や除却等を所有者に行わせることも難しい等の課題がある。

・ 市区町村による空き家の所有者に対する支援は、国の空き家対策総合支援事業の活用実績によれば、除却が9割超、活用が1 割未満となっており、活用の取組を拡大していく余地は大きい。

・ 中心市街地や観光地など一定の地域に空き家が集中していることも多く、そのような地域は、市区町村が空き家の利活用を促進したいと考える地域と概ね一致している。また、何らかの形で空き家の利活用に資する取組を行っている市区町村は約8割で、移住・定住や二地域居住の促進、地方創生、中心市街地活性化、観光の振興等を目的として取り組む自治体が多い。

・ 市区町村が民法に基づく財産管理制度を利用する案件は増加傾向にあり、うち9 割近くが相続財産管理制度を利用している。一方で、どのような場合に市区町村が利害関係人として財産管理人の選任申し立てができるかが不明確との意見がある。

・ 市区町村の6 割前後が、空き家担当部局のマンパワー不足・専門的知識の不足を課題としており、3分の1を超える市区町村で空き家対策の業務をアウトソーシングしている。また、空き家対策の業務において、民間の団体等を活用したいとするニーズは高い。

② 制度的対応を求める地方自治体の声

地方自治体からは、以下のような制度的な対応を求める声がある。

・ 空き家活用のための区域を絞った重点的な対策(規制緩和を含む。)や民間主体の活用。

・ 所有者等による管理責任の強化、特定空家等の発生予防、財産管理人の選任申立て権の市区町村への付与、緊急時の代執行や所有者探索のさらなる円滑化。

3.空き家対策に係る課題・問題意識

空き家の現状を踏まえると、空き家問題に対し、次のような問題意識を持つべきである。

(1)基本的問題意識

・ 空き家は個人財産である一方、管理不全状態となると防災・防犯、衛生、景観などの面で悪影響を与える外部性を有するに至るため、空き家問題は個人の問題にとどまらず地域・コミュニティの問題でもある。

・ 居住目的のない空き家は今後も増加する見込みであり、既に危険な特定空家等となっている空き家だけでなく、将来的に特定空家等となる空き家も増加していくおそれが大きい。

・ しかしながら、地方自治体のマンパワー不足等により、除却を中心とした対応や危険な特定空家等になってからの対応では限界がある。

・ 一方で、特定空家等となる前の段階での発生抑制、活用促進及び適切な管理等を促進するこれまでの取組は不十分である。

(2)発生抑制や活用促進に係る課題

・ 空き家の半数以上が相続に伴って発生しており、高齢化の進展に伴い住宅の相続が増加している。住宅の所有者には、将来的に活用する相続人がいない場合であっても、「自分が生きているうちに処分方法も含めて準備する」との意識が乏しく、また、所有者が高齢であるなど、管理や活用の情報を取得するのが困難な場合もある。

・ 空き家問題を生じさせないようにするためには、相続時の迅速な対応が重要だが、相続前の話し合い不足や多数の相続人の存在、所持品の処分などにより、活用に係る意思決定に時間を要している現状がある。また、遠隔地に居住する相続人が住宅を取得した場合、活用されず管理不全となる可能性が大きい。さらに、

活用意向がない相続人が管理せずに空き家を放置したり、活用意向はあっても利用可能な相談先が少なく、買い手・借り手がみつからないまま放置するおそれもある。

・ 中心市街地や観光地等、地域の拠点となるエリアでの空き家の集中は、当該地域の本来的機能を低下させるおそれがある。こうした地域の空き家には、接道規制などにより活用に至らない例も存在している。

・ 地方自治体内の空き家担当部局と福祉、産業振興やまちづくり等の他の担当部局との連携が限定的となっており、空き家の発生抑制や活用の取組は、必ずしも総合的なものとなっていない。

(3)適切な管理や除却の促進に係る課題

① 所有者の抱える課題

・ 所有者の管理意識が必ずしも十分とは言えない状況にある。また、所有者が適切な管理の方法や除却に係る情報を容易に入手し、相談できる環境が少なく、仮に所有者が、市区町村から管理せよと言われた場合であっても、方法がわからない状況となっている。遠方に居住する所有者にとっては、管理すること自体が困難である。この結果、空き家が管理不全状態となり、その状態で放置されると、腐朽・破損が発生し利活用が困難となる上、管理不全状態が一層進行し、特定空家等となるおそれがある。

・ 管理状態を問わず空き家が建っていれば固定資産税の住宅用地特例が適用されるとすると、空き家がそのまま温存されるおそれがあり、居住の安定を確保するため居住の用に供する敷地の課税負担を軽減するという本来の趣旨にもそぐわないものと思われる。一方で、解体費用や解体後に土地の固定資産税が上がる負担を懸念して解体を躊躇する場合がある。また、所有者に解体後の土地の活用イメージがないため、活用が進まない。

② 地方自治体の抱える課題

・ 所有者探索の手間が大きく、また、所有者探索にあたり活用できる情報が限定的となっている。さらに、マンパワーや専門的な知識が不足しており、所有者への働きかけが十分にできない状況にある。

・ 管理不全の状態にある空き家を市区町村が特定空家等として扱う際は、将来的な代執行まで視野に入れる必要があるため、市区町村が特定空家等と判断することを躊躇する場合があるなど、現行の空家法では、特定空家等のハードルが高くなっている。一方で、空家法には特定空家等と評価されるレベルまで状態が悪化する前の段階で、管理不全の空き家の所有者に対して適切な管理を働きかける仕組みが規定されていないため、市区町村が条例に基づき指導等をしても、反応がある空き家所有者は限定的である。また、特定空家等に該当しなければ、固定資産税の住宅用地特例の解除は事実上困難である。このように、特定空家等の要件に当てはまるほど状態が悪化する前の段階での措置は不十分である。

・ 財産管理制度や代執行制度などについては、手続き負担、費用回収への懸念、ノウハウ不足等により、市区町村が制度の活用を躊躇する場合がある。

4.今後の空き家対策の方向性・取組

(1)今後の空き家対策の基本的方向性

3.で整理した基本的問題意識及び課題を踏まえ、今後の空き家対策については、

従来から進めてきた活用困難な空き家の除却等の取組をより加速化・円滑化するとともに、「空き家はなるべく早い段階で活用する」との考え方を基本に、所有者や活用希望者の判断を迅速化する取組を進め、特定空家等の状態になる前の段階から、空き家の発生抑制、適切な管理や活用を促進し、地域経済やコミュニティの活性化に繋げることを基本的方向性として取り組むべきである。

こうした考え方の下、法制度、予算、税制、ガイドライン等の様々な政策ツールを活用しつつ、官民が連携して総合的に取組を進める。その際、地方自治体やNPO、民間事業者、自治会等の先行・優良事例について、横展開を推進する。

(2)発生抑制を図る取組

所有者の死後もなるべく空き家にしないため、自宅の取扱いを検討し、それを家族に共有することの重要性について、高齢の所有者に対して意識啓発を図ることを基本的方針として、空き家の発生抑制を図るための取組を進める。

○ 所有者やその家族の意識の醸成

所有者の生前で、かつ、判断能力が十分なうちから、その家族も含め、「住宅を空き家としない」との意識が醸成されるよう、「終活」の一環としての「空き家対策」の重要性や空き家のリスク等について、所有者等への啓発や働きかけを促進する。

<具体的な取組>

・ 「終活」としての「我が家の空き家対策」を一般化し、親が元気なうちに対処方針を話し合うことの重要性を啓発する。

・ 所有者が生前に対処方針を決めておく方法(遺言、民事信託、生前贈与)やリスク(使わないと早く傷み資産価値も低減する、管理不全になると住宅用地特例が不適用となる可能性等)についての情報提供を充実する。

・ 住宅を適切に管理し長く使っていくことや、空き家が周囲の生活環境や地域コミュニティに悪影響を及ぼさないようにすることの重要性、さらには、空き家の発生抑制、早期活用、管理・除却の取組などに関する住教育を充実する。

・ 地方自治体や空き家対策に取り組むNPO 等※が、不動産、建築、法務等の専門家と連携してセミナー・相談会の開催や相談員の派遣等を行い、高齢の所有者に不足している情報を補完する。

・ 空き家担当部局と福祉部局等とが連携して、高齢の所有者に対し、住まいの終活を呼びかけるなどの対応を促進する。

・ 上記の活動に活用可能な汎用ツールを作成・普及する。

<継続的に検討する取組>

・意思決定能力に欠ける所有者への対応はどうあるべきか。

※NPO 等:NPO 法人及び地域に根ざした活動を行う不動産、建築、法務等の分野の事業者団体又は資格者団体等。以下、同じとする。

〇 所有者のニーズに応じ死後に空き家としない仕組みの普及所有者によっては、自宅を生前に担保化・現金化し自らの生活資金として活用するニーズもあり、この場合、所有者の死後も住宅が空き家となる可能性は低い。こうしたニーズに応じた仕組みの活用を円滑化する。

<具体的な取組>

リバースモーゲージやハウスリースバックなど、住宅を資産として活用しつつ居住を継続する仕組みについて、契約を巡るトラブルの発生を避け、住宅所有者が十分な制度的理解の下で適切に利用を拡大できるよう、分かりやすい周知を促進する。

(3)活用促進に向けた取組

空き家は早期に活用されれば、空き家である期間の短縮により空き家の抑制に

繋がり、管理不全のまま放置されて周辺や地域へ悪影響を与えることも防げることになる。このため、所有者に寄り添って「空き家は早期に活用する」との意識を醸成するとともに、周囲に悪影響が及ぶ段階に至っていない空き家についても施策対象に位置づけ、所有者・活用希望者双方の早期の決断を促し、活用を促進する取組を進める。

① 相続等により空き家を取得した段階での取組

〇 相続人への意識啓発・働きかけや相続時の譲渡等の促進

相続が空き家発生の最大の要因であることから、相続後なるべく早期に空き家の活用等がなされるようにすることが重要である。このため、相続人に寄り添って、その意思決定を促すため、地方自治体・NPO 等の民間主体から相続人に対する働きかけや相談対応、相続した空き家の早期譲渡を促すインセンティブの拡大等の取組を促進する。

<具体的な取組>

・死亡や相続等に際して市区町村で必要となる届出等の行政手続の際に、空き家の管理負担(固定資産税、往復交通費、草木の手入れ等)やリスク(使わないと早く傷み資産価値も低減する、管理不全になると住宅用地特例が不適用となる可能性等)、相談先などの情報を相続人に周知し、自らによる活用や第三者への譲渡に係る早期の決断を促進する。

・市区町村の空き家担当部局が戸籍担当部局等と連携して相続人を把握し、空き家バンクへの登録等を働きかける。

・地方自治体や空き家対策に取り組むNPO 等が、不動産、建築、法務等の専門家と連携してセミナー・相談会の開催、相談員の派遣等を行い、空き家の発生抑制について相続人に不足している情報を補完する。

・相続した空き家を耐震改修又は除却して譲渡した場合の譲渡所得の特別控除制度について、その延長・拡充により、空き家の早期譲渡を促すインセンティブを拡大するとともに、制度をわかりやすく周知する。

② 空き家状態となった後の取組

〇 空き家の流通・活用を促進する取組

空き家となった住宅が早期に活用されるよう、所有者への働きかけ、活用需要の掘り起こし、所有者と活用希望者とのマッチング等を促進するとともに、空き家の活用を促進する仕組みや支援を充実する。

活用需要については、手頃な価格の住宅としての活用のほか、中心市街地活性化、観光振興、移住・定住促進などの地域活性化や福祉の増進、地域コミュニティの維持強化といった地域の状況に応じた空き家活用ニーズを積極的に掘り起こす。

さらに都市部・地方部など地域を取り巻く状況を踏まえた取組の展開を促進する。人口動態や地域特性などを踏まえ、重点的に活用を促進する地域を設定する仕組みも検討する。

<具体的な取組>

ⅰ) 所有者へ活用を促す取組

・ 地方自治体やNPO 等を含む民間事業者が参画・連携した会議やまちづくり協議会の場などを活用し、関係者間でまちの将来像を共有すること等によって、空き家をそのままにしないとの意識を地域レベルで醸成する。

・ 地域コミュニティの担い手である自治会等から、所有者への働きかけを促進する。

・ 地方自治体やNPO 等から所有者に対し、空き家の活用(部分的な活用を含む。)等を積極的に働きかける。

・ 賃貸による空き家の活用を促すため、定期借家制度、DIY 賃貸、サブリースや終身賃貸借といった様々な活用手法、想定される賃料、必要となる改修費など、貸し手として行う判断に資する情報提供を充実する。

・ 市区町村が保有する空き家所有者情報が、より多く、空き家の活用を希望するNPO を含む民間事業者等に提供されるよう、民間事業者等への情報提供に先立って市区町村が行うこととなっている所有者本人からの同意取得手続について、マンパワーが不足する市区町村から外部委託して進めることや、より早期の活用が求められる管理不全の空き家を重点的に対象とすることなどの工夫に取り組み(外部提供ガイドラインの充実、周知)、民間事業者等から所有者に対し、空き家バンクへの登録など空き家の活用を働きかける。また、空き家バンクの登録手続のオンライン化等を促進する。

・ 地方自治体やNPO 等による相談窓口の設置を促進するとともに、遠隔地の所有者にも対応可能なオンライン相談等の取組を促進する。

・ 空き家の管理負担(固定資産税、往復交通費、草木の手入れ等)やリスク(使わないと早く傷み資産価値も低減する、管理不全になると住宅用地特例が不適用となる可能性等)、相談先などの情報を所有者に周知し、自らによる活用や第三者への譲渡に係る早期の決断を促進する。

・ 地方自治体や空き家対策に取り組むNPO 等が、不動産、建築、法務等の専門家と連携してセミナー・相談会の開催、相談員の派遣等を行い、空き家の早期活用について所有者に不足している情報を補完する。

借地上の空き家について、借地権と共に売買が可能であること等の対応方策を分かりやすく情報提供する。

・ 地方自治体の施策への協力を促進する。

ⅱ)活用需要喚起と活用希望者の判断に資する情報提供の充実

・ 空き家の活用希望者が探索しやすく、空き家への魅力も感じられるよう空き家バンク掲載情報を充実し、活用を促進する。

・ 移住施策に取り組む地方部だけでなく都市部も含め、空き家の活用希望者が全国の空き家情報を検索可能な「全国版空き家・空き地バンク」に多くの地方自治体が参加するよう促す。

・ 買い手の判断に資する物件価格・改修費に係る情報の提供を充実させる。

・ 地方自治体やNPO 等による相談窓口の設置やセミナー等の開催を促進する。

・ 地方自治体やNPO 等を含む民間事業者が、中心市街地活性化、観光振興、移住・定住促進などの地域活性化や福祉対応、地域コミュニティの維持強化といった地域のニーズに即した需要を掘り起こし、マッチングする等の活動を促進する。

・ 地域における空き家の利用ニーズを集約し、公開する取組を促進する。

・ 所管を越えた空き家の利活用を促進するため、省庁間や地方自治体の部局間の連携体制の強化、市区町村が設置する空き家対策協議会の構成員の拡大を促進する。

ⅲ) 活用を促進する仕組みや支援の充実

・ 地域特性等を踏まえた一定のエリアにおける重点的な活用を促進する仕組み(所有者への働きかけや重点支援、接道・用途規制の合理化など)を設ける。

・ 地域活性化に資する空き家活用の取組(空き家活用に必要な耐震改修、省エネルギーやバリアフリー改修等を含む。)に対し、支援を行う。

・ 空き家活用に係るモデル的な取組への支援を強化するとともに、当該取組の横展開を図る。

・ 手頃な価格の住宅としての活用を促す買取再販税制等のインセンティブを確保する。

・ 低未利用地(土地上の空き家を含む。)の長期譲渡所得の特別控除制度を延長・拡充し、低未利用地の活用を促すインセンティブを拡大する。

・ 地域の共感・資金を得て空き家を活用する小規模不動産特定共同事業等の活用を促進する。

<継続的に検討する取組>

・新耐震基準を満たしていない空き家をセーフティネット登録住宅としての活用や、その方策はどうあるべきか。

(4)適切な管理の確保・除却の促進に向けた取組

空き家の増加が見込まれる中、活用に適した状態を維持する観点及び周辺に悪影響を与えないようにする観点から、所有者に管理の意識を醸成し、適切な管理を促進するとともに、空き家の具体的な活用や処分に至るまでの間、さらには、周辺に悪影響を与える特定空家等になる前の段階で、所有者に適切な管理の実施や特定空家等とならないための具体の措置を促す。

また、特定空家など利活用が難しい空き家の除却を更に円滑化する。

① 所有者の主体的な対応を後押しする取組

空き家の適切な管理が所有者の責務であるとの意識を醸成するとともに、所有者が適切に管理を行い、又は除却を行えるような環境を整備する。

<具体的な取組>

・所有者が空き家を適切に管理する際の拠り所となる指針等を作成する。

・所有者に対し、空き家のリスク(使わないと早く傷み資産価値も低減する、管理不全になると住宅用地特例が不適用となる可能性等)を周知する。

・空き家をそのままにしないとの意識を地域レベルで醸成する。

・所有者が空き家の管理や除却を適切に行うよう、地方自治体やNPO 等を含む民間事業者が連携した会議や協議会、地域コミュニティの担い手である自治会等から所有者に対して行う働きかけを促進する。

・除却までに必要な手続、建物や敷地条件等に応じた効率的な除却手法、除却に要する費用など、所有者が除却の実施等に関する判断を適切に行えるようにするための情報提供を充実する。

・所有者が行う活用困難な空き家の除却への支援を強化する(予算、税制

運用改善等)。

・所有者の責務を強化し、行政が講ずる施策への協力を促進する。

② 市区町村の積極的な対応を可能とする取組(対応力の強化)

市区町村が特定空家等の所有者への措置を更に円滑に行えるようにして除却等を促進するとともに、特定空家等の状態になる前に所有者に適切な管理を促す。

<具体的な取組>

・市区町村が所有者探索に活用できる情報を拡大するとともに、取得の円滑化を図る(市区町村の空き家担当部局が戸籍担当部局に公用請求し、戸籍情報連携システムを利用して戸籍情報を取得することが可能となること等による空き家所有者等の調査の円滑化、電力会社等にある所有者情報の市区町村への提供円滑化など)。

・そのまま放置すれば特定空家等の状態となるおそれのある空き家について、所有者に対し、市区町村が適切な管理を促すことを可能とする仕組みを検討する(固定資産税の住宅用地特例の解除の検討を含む。)。

・活用困難な空き家の除却に対する支援を強化する(予算、税制の運用改善等)。

・地域の実情に応じ、一定の空き家を除却した場合の固定資産税等に係る負担軽減が市区町村の条例等により可能であることを周知するとともに、事例の横展開を図る。

・相続人が不存在の場合等、空き家の適切な管理が見込まれない場合に、市区町村による財産管理制度の利用を円滑化する仕組みを設ける。

・緊急時の代執行など、市区町村が特定空家を対象に行う措置をより円滑化する仕組みについて検討する。

・ノウハウ・専門的知識が不足する小規模な地方自治体に対し、先行地方自治体の対策計画・事例・ノウハウを共有するとともに、職員への指導が可能な人材を紹介するなどにより人材育成の機会を提供する。

<継続的に検討する取組>

・長屋等の空き住戸の適切な管理等を促進する方策はどうあるべきか。

(5)NPO 等の民間主体や地域コミュニティの活動を促進する取組空き家の発生抑制、早期の活用促進及び適切な管理・除却の促進に向けては、NPO 等の民間主体や地域コミュニティを活用することで、より効果的な取組が期待できる。このため、NPO 等の民間主体が行う所有者へのきめ細かな対応や市区町村の取組を補完する取組を促進する。また、地域コミュニティを巻き込んだ空き家対策を促進する。

① NPO 等の民間主体の活動を促進する取組

所有者に寄り添ったきめ細かな対応を通じ、所有者に早期の判断を促し、活用や適切な管理・除却に繋げるとともに、マンパワーや専門的知識が不足する市区町村の取組を補完するため、NPO 等の民間主体の取組やその育成を促進する。

地方自治体と空き家対策に取り組むNPO 等の民間主体との連携を起点として、福祉の増進や地域活性化など、より多様な分野における民間主体の参画と連携を実現することで、空き家の発生抑制、活用や適切な管理等を促進する。

<具体的な取組>

・ NPO 等が、所有者に寄り添って空き家の活用・管理に係る相談対応や所有者と活用希望者とのマッチング等の活動をしやすくなるよう、環境整備を推進する(公的位置づけの付与、市区町村からNPO・社団法人等への所有者情報※の円滑な提供、活動への支援等)。※ 事前に所有者同意・ NPO 等が地方自治体と連携し、空き家の所有者に対して空き家の早期活用や適切な管理、活用が難しい場合の除却を働きかける取組を促進する。

・ 地方自治体やNPO 等を含む民間事業者が連携した会議やまちづくり協議会の場などを活用し、関係者間でまちの将来像を共有すること等によって、空き家をそのままにしないとの意識を地域レベルで醸成しつつ、空き家への需要の掘り起こしや活用方策について検討する。

・ 空き家の管理を専門的に行う事業者を育成する。

② 地域コミュニティにおける取組

空き家を放置することのないよう地域レベルで意識を醸成するとともに、所有者がコミュニティにおける評判も気にすることを踏まえ、地域から所有者への働きかけを推進する。

<具体的な取組>

・ 地方自治体やNPO 等を含む民間事業者が連携した会議やまちづくり協議会の場などを活用し、関係者間でまちの将来像を共有すること等によって、空き家をそのままにしないとの意識を地域レベルで醸成する。

・ 地域コミュニティの担い手である自治会等による所有者への働きかけ、コミュニティ活動等の機会を通じた空き家の把握・見守りや地域のニーズに応じた空き家利用などの先進的な取組について横展開する。

・ 地方自治体やNPO 等が、空き家所有者と地域コミュニティにおける空き家活用ニーズとをマッチングする等の活動を促進する。

5.おわりに

今後の空き家の増加に伴い、空き家対策は、ますます重要になるとともに、所有者の高齢化が進むことを踏まえれば、可能な限り早急な対応が求められる。

本とりまとめにおいては、空き家の現状及び課題を踏まえ、空き家の発生抑制、活用促進、適切な管理・除却の促進、NPO 等の民間主体や地域コミュニティの活動の促進のそれぞれの観点から、今後取り組むべき空き家対策について提言した。

ここで示した対策は、様々な政策分野に関連することから、空家法を所管する国土交通省及び総務省をはじめ、各種政策を所管する省庁間の緊密な連携の下で進められるべきものである。また、国、地方公共団体、関係業界・団体、NPO 等の民間主体といった多くの関係者との連携が不可欠である。

国においては、本とりまとめに基づき、法制度、予算・税制等を含め、必要な措置を講じるとともに、今後も空き家及び対策の状況を継続的に把握・検証し、今回継続的に検討する取組とした事項も含め、必要な検討及び政策立案等に取り

組むことを強く期待したい。その際は、空き家の所有者や活用希望者、地方自治

体や関連する活動を行うNPO 等の民間主体が空き家対策に円滑に取り組むことができるよう、多くの地方自治体や関連団体で構成される全国空き家対策推進協議会の場をはじめとして様々な場をフル活用し、施策の徹底した周知に特に留意して欲しい。

本とりまとめが、関係者による空き家対策の実践につながり、空き家の発生抑制、活用促進等が進み、生活環境の保全、コミュニティの活性化、地域の経済活性化が現実のものとなることを確信している。

社会資本整備審議会 住宅宅地分科会 空き家対策小委員会

委員名簿

(委員は 50 音順・敬称略)

委員長 中川 雅之 日本大学経済学部教授

委員長代理 齊藤 広子 横浜市立大学国際教養学部教授

上田 真一 NPO 法人空家・空地管理センター代表理事

大久保 恭子 (株)風 代表取締役

大月 敏雄 東京大学大学院工学系研究科教授

北村 喜宣 上智大学法学部教授

小出 譲治 千葉県市原市長

汐見 明男 京都府井手町長

沼尾 波子 東洋大学国際学部教授

増山 昌章 栃木県栃木市副市長

~ 16 ~

社会資本整備審議会 住宅宅地分科会 空き家対策小委員会

(オブザーバー、関係省庁・部局)

オブザーバー

公益社団法人 全国宅地建物取引業協会連合会

公益社団法人 全日本不動産協会

一般社団法人 不動産協会

一般社団法人 不動産流通経営協会

一般社団法人 全国住宅産業協会

関係省庁・部局等

国土交通省 不動産・建設経済局 土地政策課

不動産業課

国土交通省 都市局 都市計画課

まちづくり推進課

国土交通省 住宅局 住宅企画官付

住宅経済・法制課

住宅総合整備課・住環境整備室 【事務局】

住宅生産課

市街地建築課

総務省 地域力創造グループ 地域振興室

自治税務局 固定資産税課

法務省 民事局

内閣府 地方創生推進事務局

渋谷陽一郎「裁判例・懲戒事例に学ぶ民事信託支援業務の執務指針」第7章

渋谷陽一郎「裁判例・懲戒事例に学ぶ民事信託支援業務の執務指針」、2023年1月、民事法研究会、第7章民事信託支援業務と司法書士の使命

前提として、私の解説では、組成という用語を使わないようにしています。引用としては利用します。

P440

司法書士が、法3条業務として民事信託支援業務を行うことの制度的意義は、司法書士が、私人間の法律関係の規律に直接的にかかわることである。市民の相談役として、国民の権利を擁護する法律事務の専門家にふさわしい。過去の一部の司法書士業務にみられたような公的機関の権威を背景にしない(私人対公的機関という構図ではない)、司法書士自らの法律知識・技術と倫理観を頼りに、市民の相談役として、私人間の水平的な関係にかかわる業務となる。

→過去の一部の司法書士業務にみられたような公的機関の権威を背景にしない(私人対公的機関という構図ではない)業務、とは何か、私には分かりませんでした。法定後見人などの業務のことを指しているのでしょうか。

 制度的意義については、必要とされていること、司法書士が出来ることについて、私なりにもっと考える必要があると感じます。

しかし、実体法で、かつ、司法の基本法の研究に正面から取り組む機会は、そう多くないのではあるまいか(会社法の研究は商業登記法を介する形で行われ、民法は不動産登記法の枠組みを介することで凝縮され緻密化した)。

→信託法においても、専門である信託目録を含む信託に関する登記を介して研究に取り組む方が、司法書士にとっては理解が速いのではないかと思います。また、遺言書(案)作成、成年後見制度、任意後見制度に関わってきた経験も活きる場面です。

P443

家族信託の泰斗である遠藤英嗣弁護士は、一部の専門家による家族信託の組成業務(業務誘致)それ自体に関して、消費者被害の懸念があるとして警告を発している。報酬の高額性も指摘する。

 

→法令で確定していること以外、確かな、確実な、絶対に、などの文言を控えることが必要なのかと感じました。

 報酬の高額性について、遠藤英嗣弁護士の最低手数料は28万円となっています。その下に、価格0.50%の目安の事例、などが列記されています。

http://www.kazokushin.jp/publics/index/43/

 こられが、弁護士が民事信託支援業務を行う際の、参考と考えていいものなのでしょうか。司法書士としてはこの料金と比較して、どのくらい低ければよいのでしょうか。財産に一定割合をかけた報酬額をしない、ということがまず挙げられるかもしれません。ただ、司法書士の旧報酬基準でも、例えば抵当権設定登記の債権額が高額である場合、加算しています。作成する書類は同じで、書きこまれている数字が違うだけです。割合加算と何が違うのか、私には分かりませんでした。

 旧報酬基準との関係でいえば、枚数加算は利用しやすいのではないかと思います。例えば、受託者の権限に関する条項のメニューを1枚作成したから、○○円、と個別に計算し、積み上げていく方式は、今までの司法書士業務と馴染むのではないかと思います。相談回数や書類のやり取りが多いほど報酬が高くなりますが、その時には、一般的に委託者の理解も進む可能性が高く、納得感も得られるのではないかと考えます。

P445

成年後見制度導入段階の平成11年、日司連理事であった斎木賢二司法書士は、成年後見業務を人権問題であると明言しているが、同様に、認知症対策をうたう家族信託も人権問題であることを忘れてはならない。

→成年後見業務も、家族信託も人権問題であることを知りませんでした。

P468

司法書士にとっての「支援」という言葉は、一般用語としての支援とは異なる。司法書士職務としての公益性・公平性・庶民性などの正義の概念を含む歴史的概念である。それは司法書士の報酬の思想にも深く関連しているのである。

→初めて知りました。司法書士行為規範には、利用されています(10条など。)。

P470

そこで、司法書士試験をもって、信託法の知識・思考を試験する国家試験とすべきである。厳しい受験勉強の過程こそが法律(信託法)を体系的に万篇なく身に付ける最良の機会なのだ(実務家としての学習は摘まみ食い的となり、体系性と網羅性が足りなくなりがちだ。司法書士実務家向けの信託研修では、受験予備校の民法や会社法の講座のような信託法の体系的講義を行う時間はない)。

→司法書士試験に、信託法を入れることには基本的に賛成です。ですが、試験勉強だけが勉強ではありません。実務に出てからでも勉強の場はあります。学会に入会して論文を書く、近くの大学で信託法の研究者がいる場合は、単位履修生などで聴講する、など他に方法はあります。また、受験予備校の講座を受けることが前提になっているように読めますが、私は受験予備校の講座を受けていません。私のような司法書士もいると思います。

最後に

 七戸克彦九州大学教授に関する記述が、私が読んだ限り、1か所(P447)だったのが気になりました。現在の研究者の中では、司法書士制度・土地家屋調査士制度に詳しい方だと思います。

 大垣尚司青山学院大学教授に関する記述がなかったのも気になりました。現在の民事信託の類型(認知症対応など)の7割近くは、大垣尚司教授の考えによるものだと考えています(平成24年9月1日、司法書士会館地下1階「日司連ホール」、「民事信託をいかに推進させるか」基調講演講師、大垣尚司「個人間信託と専門家の役割」など。)。

加工 労働者協同組合に関する研修会「新しい法人類型『労働者協同組合』の制度と登記実務」

日本司法書士会連合会

労働者協同組合法

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=502AC1000000078

労働者協同組合法施行令

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=504CO0000000209

労働者協同組合法施行規則

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=504M60000100089

厚生労働省

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_14982.html

労働者協同組合法のポイント

○ 組合の基本原理に基づき、組合員は、加入に際し出資をし、組合の事業に従事する者とする。

〇 出資配当は認めない(非営利性)。剰余金の配当は、従事分量による。

○ 組合は、組合員と労働契約を締結する(組合による労働法規の遵守)。

○ その他、定款、役員等(理事、監事・組合員監査会)、総会、行政庁による監督、企業組合又はNPO法人からの組織変更、検討条項(施行後5年)等に関する規定を置く

日本労働者協同組合(ワーカーズコープ)連合会

https://jwcu.coop/

ワーカーズ・コレクティブネットワークジャパン=WNJ

国際協同組合同盟(International Cooperative Alliance)

https://www.ica.coop/

出資は任意団体で運用。

第2部新しい法人類型「労働者協同組合」の制度と登記実務

商業登記・企業法務対策部部委員立花宏司法書士

(1)労働者協同組合の組織の概要

労働者協同組合は、出資持分を有する組合員という構成員(所有者)が存在する社団型の法人

→労働者協同組合の法人としてのあり方を決定するのは、構成員である組合員。なお、組合員が労働者協同組合の業務を行うわけではない。理事会が業務を決定し、理事会で選定された代表理事が、代表権を行使し、業務を執行する。

労働者協同組合の組織(機関)の概要

労働者協同組合の組織(機関)構成は次の3パターンである。

総会+ 理事会(理事+監事)

総会+ 理事会(理事+組合員監査会)

総会+ 総代会+ 理事会(理事+監事)

つまり、総会と理事、理事会が必置機関である。

組合員(資格)

定款で定める個人。法人である組合員は認められない。定款に定める内容は、個々の労働者協同組合の内容等に応じて定めることになる(労協法6条)。

なお、資格要件に該当する自然人が加入しようとする場合、原則として、拒否することはできない(労協法12条1項)。

(議決権(共益権))

組合員は、その有する出資口数にかかわらず、平等に議決権・選挙権を有する(労協法3条2項3号)。

(出資)

組合員は、出資1口以上を有しなければならない。

しかし、一組合員の出資口数は、原則として出資総口数の100分の25を超えることができない(労協法9条3項)。

出資口数に限らず、共益権は平等なのに、なぜ?→4名以上必要。

総会

総会は、労働者協同組合の構成員である組合員全員により組織される会議体である。総会には、毎事業年度1回招集しなければならない通常総会と、必要があるときは、定款で定めるところにより、いつでも招集することができる臨時総会がある(労協法58条、59条)。

(権限)

法律で定められた事項及び定款で定められた事項を決定する。労働者協同組合の最高意思決定機関といえる。

(議決)

通常の議決のほか、特別の議決がある。

【議決】

定款に特別の定めがある場合を除き、出席者の議決権の過半数で決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。議長は、組合員として総会の議決に加わる権利を有しない(労協法64条)。

【特別の議決】

総組合員の半数以上が出席し、その議決権の3分の2以上の多数により決する(労協法65条)。

(総会の形式)

会議体によることが原則。ただし、役員や組合員が、WEBやテレビ電話システム等により出席することが認められている。なお、開催場所を設けない、いわゆるバーチャルオンリーも可能。

→定款の定めなしで?

ただし、決議・報告の省略は、労働者協同組合法に規定がないため、認められないものと考えられる

総代会

労働者協同組合は、定款で定めるところにより、総会に代わるべき総代会を設けることができる(労協法71条1項)。

(総代会とは)

総会は、全組合員が議決権行使等を行う重要な機関だが、組合員が多数になる場合も想定され、会場の確保等、物理的に開催が困難な場合も想定される。そのようなことを鑑み、定款に定めることにより、総会に代わる意思決定機関として設けることが可能とされた。

(権限)

総会に関する規定は、総代会について準用されている(労協法71条6項)。ただし、総代の選挙(補欠総代の選挙を除く)や、解散、合併及び事業の譲渡については、議決することができない(労協法71条7項)。

(設置要件)

組合員の総数が200人を超える場合に、定款で定めるところにより設置可能。(労協法71条1項)。

(総代)

総代は、定款で定めるところにより、組合員のうちから、その住所等に応じて公平に選挙されなければならない(労協法71条2項)。定数は、組合員の10分の1(2千人を超える場合は200人)を下ってはならない(労協法71条3項)。総代の任期は、3年以内において定款で定める期間。

(総代会の形式)

総会に関する規定が準用されており、会議体による。役員や組合員が、WEBやテレビ電話システム等により出席することが認められている。いわゆるバーチャルオンリーも可能。しかし、総会と同様に、決議・報告の省略は認められないものと考えられる。

役員等

労働者協同組合には、業務の決定等を行う理事会の構成員として、理事が置かれ、理事の職務の執行を監査する監事が置かれる。

理事

(資格)

理事は組合員でなければならず(労協法32条4項)、組合員以外のものが理事となることは認められない。定数は3人以上。法人は理事になることができないほか、心身の故障のため職務を適切に執行することができない者として厚生労働省令で定める者等の一定の欠格要件が定められている(労協法35条)。

(権限)

理事は理事会の構成員として、業務の執行の決定(労協法39条3項)や代表理事の選定(労協法42条1項)に関与する。

なお、労働者協同組合と利益相反取引を行う場合は、理事会の承認が必要(労協法44条)。

(代表理事)

労働者協同組合を代表する理事を代表理事という。代表理事は理事会で選定され(労協法42条1項)、組合の業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する(労協法42条2項)。

(選出方法)

原則として、総会において選挙により選出される。定款で定めることにより、総会で選任することができる(労協法32条3項、12項)。

選挙・・・投票、選任・・・多数決(議案の議決)

(任期)

原則として、2年以内の定款で定める期間。定款によって、任期中の最終の決算期に関する通常総会の終結の時まで伸長することができる(労協法36条)。ただし、設立当時の理事の任期は、創立総会において定める期間であり、1年を超えることができない(労協法36条4項)。NPO法人から組織変更する場合に、理事の任期を引き継ぐことは避けたほうが無難。

監事

(資格)

理事と異なり、組合員である必要はない。理事又は組合の使用人と兼ねることができない(労協法43条)。理事と同様の欠格要件がある(労協法35条)。

(権限)

理事の職務の執行を監査し、監査報告を作成する(労協法38条2項)。また、理事会に出席する権限を有し、義務を負う。

(選出方法)

理事と同様、原則として、総会において選挙により選出され、定款で定めることにより、総会で選任することができる(労協法32条3項、12項)。

(任期)

原則として、4年以内の定款で定める期間。定款によって、任期中の最終の決算期に関する通常総会の終結の時まで伸長することができる(労協法36条)。

ただし、設立当時の監事の任期は、創立総会において定める期間であり、1年を超えることができない(労協法36条4項)。

組合員監査会

小規模の労働者協同組合は、監事を外部に求めることが難しいことも少なくない。しかし、内部(組合員)に監事を求めると、当該監事は理事又は組合の使用人と兼ねることができないため、当該組合の労働者として働くことができない。

(組合員監査会とは)

監事を置くことが難しい小規模な労働者協同組合のニーズに応えるため、一定の小規模な労働者協同組合においては、監事に代えて、組合員監査会を置くことができるものとされた(労協法54条2項)。

(設置要件)

組合員の総数が20人を超えない労働者協同組合は、定款で定めることにより設置することができる。つまり、総代会と組合員監査会が両方設置されることはない。

(構成員)

理事以外の全ての組合員で組織する(労協法54条1項)。構成員は、3人以上でなければならない(労協法54条2項)。

(権限)

組合員監査会は、理事の職務の執行を監査し、監査報告を作成する(労協法54条3項)。構成員(監査会員)は、理事会における意見陳述権(労協法56条1項)等が認められている。監査の独立性を確保するため、労働者協同組合は、監査会員に対して、監査会の職務執行に関する業務上の命令等を行ってはならない(労協法56条4項)。

理事会

理事会は、すべての理事で組織される(労協法39条)。監事、監査会員は、理事会に出席する権限を有する。

(権限)

理事会は、労働者協同組合の業務の執行を決定する(労協法39条3項)。また、理事の中から代表理事を選定する(労協法42条1項)。

(決議)

議決に加わることができる理事の過半数(定款で加重できる)が出席し、その過半数(定款で加重できる)をもって行う。決議に特別の利害関係を有する理事は、議決に加わることができない。

(理事会の形式)

会議体で行うのが原則。なお、定款で定めるところにより、理事は書面又は電磁的方法により議決に加わることができる。WEBやテレビ電話システム等により出席することが認められている。

開催場所を設けない、いわゆるバーチャルオンリーも可能。また、定款で定めることにより、決議の省略も認められ、いわゆる報告の省略の制度も認められている(労協法40条)。

(議事録)

理事会の議事については、議事録の作成が義務付けられており、書面をもって作成されているときは、出席した理事及び監事は、これに署名し、又は、記名押印しなければならない(労協法41条1項)。定款で定めても、いわゆる、議事録署名人の制度は認められないものと思われる。組合員監査会を設置している場合は、出席した監査委員。

労働者協同組合の登記の概要

根拠法

労働者協同組合の法人登記の根拠法は、組合等登記令である(労協法5条、組合等登記令1条)。なお、企業組合とNPO法人は、労働者協同組合に組織変更をすることができるが、この登記については、労働者協同組合法施行令附則3条、4条に規定されている。

登記事項(組合等登記令2条2項、別表)

ア.目的及び業務

イ.名称

ウ.事務所の所在場所(主たる事務所、従たる事務所)

エ.代表権を有する者の氏名、住所及び資格

オ.存続期間又は解散の事由を定めたときは、その期間又は事由

カ.出資1口の金額及びその払込みの方法

キ.出資の総口数及び払い込んだ出資の総額

ク.公告の方法

ケ.電子公告を公告方法とする旨の定めがあるときは、電子公告関係事項

登記義務

登記事項に変更が生じたときは、原則として、2週間以内に、変更の登記をしなければならない。なお、出資の総口数、払い込んだ出資の総額の変更の登記は、毎事業年度末日現在により、当該末日から4週間以内に登記すれば足りる(組登令3条2項)。

登録免許税

労働者協同組合の法人登記については、登録免許税は課されない。

設立

設立のほか、施行後3年以内に限り認められている、企業組合とNPO法人からの組織変更の登記とする。

設立手続のフロー

定款の作成→創立総会の日時、場所及び定款の公告→創立総会の開催→発起人から理事への事務引継→出資の第1回の払込み→設立の登記

定款の作成

労働者協同組合を設立するには、組合員となろうとする者3人以上が発起人となり、定款を作成しなければならない(労協法22条、23条1項)。

公告

発起人は、定款及び会議の日時等を公告して、創立総会を開かなければならない。この公告の方法については、労働者協同組合法では特に規定されていない。組合の事務所の店頭に掲示する方法、新聞に掲載する方法等適宜の方法により行えばよい。

創立総会

創立総会においては、定款の承認、事業計画の設定や役員の選挙、その他設立に必要な事項の決定等を行う。定款を修正することもできるが、組合員の資格に関する事項については修正することができない(労協法23条3項、4項)。創立総会の議事は、出席者の議決権の3分の2以上で決する。

発起人から理事への事務の引継

発起人は、創立総会において理事を選任したときは、遅滞なく、その事務を当該理事に引き渡さなければならない(労協法24条)。引継ぎ後の設立事務は、理事が行う。

出資の第1回の払込み

理事は、事務の引継ぎを受けたときは、遅滞なく、出資の第1回払込みをさせなければならない(労協法25条)。設立に同意した者が出資の全額の払込みをしないときは、労働者協同組合の成立時の組合員たる地位を取得しないことになる。

設立の登記

設立の登記は、出資の払込みその他設立に必要な手続きが終了した日から2週間以内にしなければならない(組登令2条1項)。労働者協同組合は、主たる事務所の所在地において、設立の登記をすることにより成立する(労協法26条)。

添付書面

根拠規定

ア.定款及び労働者協同組合を代表すべき者の資格を証する書面(組登令16条2項)

イ.登記すべき事項を証する書面(組登令16条3項)

具体的な添付書面

ア.定款

イ.代表理事の資格を証する書面

創立総会、理事会の議事録、代表理事の理事、代表理事への就任承諾書

ウ.出資の総口数及び払い込んだ出資の総額を証する書面

出資引受書及び代表理事の作成による出資金領収書(控)等

エ.公告方法が電子公告である場合は、電子公告関係事項を証する書面

委任状にURLが記載されていれば足りると考えられる。

添付書面以外

代表理事が印鑑提出をする場合は印鑑届書及び印鑑カード交付申請書の準備も行う。

組織変更

労働者協同組合法施行後3年間は、企業組合とNPO法人から、労働者協同組合に組織変更をすることが認められている。

労働者協同組合の性質を持つ団体が、これまで、企業組合やNPO法人の法人格を利用してケースがあったからである。ここからは、この組織変更の実体手続と登記手続を確認する。

企業組合

企業組合は、中小企業等協同組合法に基づく法人である。労働者協同組合の組織としての法制度は、この企業組合の法制度と類似している点も少なくない。まずは、この企業組合からの組織変更を確認する。

組織変更手続フロー

組織変更計画の作成→総会での組織変更計画の承認→組織変更の議決等の内容及び貸借対照表を公告→債権者異議申述公告及び債権者への催告→効力発生→企業組合員への出資の割当て→代表理事選定理事会→組織変更の登記

組織変更計画の作成

組織変更計画に必要的記載事項は以下のとおり(労協法附則5条4項)。

一 企業組合の組織変更後の組合(以下この条から附則第十三条までにおいて「組織変更後組合」という。)の事業、名称及び事務所の所在地

二 前号に掲げるもののほか、組織変更後組合の定款で定める事項

三 組織変更後組合の理事の氏名

四 組織変更後組合の監事の氏名(組織変更後組合が監査会設置組合である場合にあっては、その旨)

五 組織変更をする企業組合の組合員が組織変更に際して取得する組織変更後組合の出資の口数又はその口数の算定方法

六 組織変更をする企業組合の組合員に対する前号の出資の割当てに関する事項

七 組織変更がその効力を生ずる日(以下「効力発生日」という。)

八 前各号に掲げる事項のほか、厚生労働省令で定める事項

組織変更計画の承認

作成した組織変更計画について、企業組合において、総会の特別の議決により、その承認を受けなければならない(労協法附則5条1項、2項)

公告

組織変更の議決を行ったときは、2週間以内に、議決の内容及び貸借対照表を公告しなければならない(労協法附則6条1項)。この公告は、企業組合の定款に定める公告方法により行う。

債権者保護手続

企業組合は、以下の事項を官報に公告し、かつ知れている債権者には各別にこれを催告しなければならない(労協法附則6条3項)。

・組織変更をする旨

・債権者が一定の期間内に異議を述べることができる旨(期間は、1月を下ることができない)

いわゆるダブル公告をした場合は、各別の催告は省略することができる(労協法附則6条4項)。

効力の発生

組織変更をする企業組合は、効力発生日に労働者協同組合となる(労協法附則11条1項)

組合員の確定

組織変更をする企業組合の組合員は、効力発生日に、組織変更計画の定めるところにより、組織変更後の労働者協同組合の出資の割当てを受け(労協法附則8条1項)、労働者協同組合の組合員となる。ただし、組織変更に反対し、持分の払戻しを請求した者(労協法附則7条1項)は、出資の割当てを受けない。

代表理事選定理事会

組織変更の効力発生後、登記申請までの間に、労働者協同組合の理事が理事会を開催して、代表理事を選定する。なお、理事会で決定せず、組織変更計画において、定款で定める事項として代表理事の氏名を記載して選定することも可能である。

組織変更の登記

組織変更の効力が生じたら、2週間以内に、企業組合については、解散の登記をし、労働者協同組合については、設立の登記をしなければならない(労協法施行令附則3条1項)。

登記事項

労働者協同組合の設立の登記の登記事項は、通常の設立の登記事項と同様。登記記録に関する事項は、「年月日企業組合〇〇を組織変更し設立」となる。企業組合の解散の登記の登記すべき事項は、登記記録に関する事項として、「年月日〇県〇市〇町〇丁目〇番〇号労働者協同組合〇〇に組織変更し解散」とする。

添付書面

労働者協同組合法施行令附則3条

ア.組織変更計画書

イ.定款

ウ.代表権を有する者の資格を証する書面

エ.債権者保護手続関係書面

(参考)

なお、条文には組織変更計画を承認した総会議事録が触れられていないが、

令和4年9月21日法務省民商第439号では、理事の選任を証する書面と

して、総会議事録を添付するものとされている。これが実質的に、組織変更

計画の承認を証する書面となっている。

添付書面以外

代表理事が印鑑提出をする場合は印鑑届書及び印鑑カード交付申請書の準備も行う。

NPO法人から労働者協同組合への組織変更の実体手続と登記手続は、企業組合からの組織変更と共通している部分が多いため、ここでは、相違する部分のみを説明する。

企業組合の手続との相違

NPO法人には出資(持分)が存在しないため、組織変更にあたり、社員に対する出資の割当てはない。そのかわり、組合員となろうとする者からの出資の手続が必要となる。

組織変更計画の作成→総会での組織変更計画の承認→組織変更の議決等の内容及び貸借対照表を公告→債権者異議申述公告及び債権者への催告→効力発生→組合員となる者の出資の第1回払込み→代表理事選定理事会→組織変更の登記

【相違点1】組織変更計画の作成

NPO法人は出資(持分)が存在しないため、社員に対する出資の割当てはない。よって、企業組合の組織変更計画の記載事項であった「⑤組織変更をする企業組合の組合員が組織変更に際して取得する組織変更後組合の出資の口数又はその口数の算定方法」と「⑥組織変更をする企業組合の組合員に対する前号の出資の割当てに関する事項」は不要(労協法附則16条4項)。

【相違点2】組合員となる者の出資の第1回払込み

理事は、組織変更計画の承認がなされたときは、遅滞なく出資の第1回の払込みをさせなければならない(労協法附則17条1項)。企業組合と異なり、組合員になろうとする社員に出資をさせる必要がある。

払込みは効力発生後に行う。登記事項である出資の総口数と払込済出資総額は、効力発生後、登記申請までに払込みがあったものを登記する。

労働者協同組合施行令4条で、企業組合の規定が準用されているが、企業組合からの組織変更にはない、出資の手続が行われる。出資関係の書面については、根拠法令に規定がなく、さらに登記通達にも記載がないが、司法書士が代理人として申請する場合には、出資の総口数及び払込済出資総額を証する書面を添付して申請するのが望ましいだろう。

加工 商業登記受託促進研修会第2部

日本司法書士会連合会

第2部4.変更登記・組織再編編

4-1 期間計算の基礎知識

(1)概説

法定の期間の定めに違反すると

◆ 決議取消しの原因

◆ 手続の無効原因

◆ 会社法や一般法人法に期間の計算方法の規定はない

◆ 期間の計算方法は、法令若しくは裁判上の命令に特別の定めがある場合又は法律行為に別段の定めがある場合を除き、この章の規定に従う(民法138条)。

その他、発信主義、到達主義、擬制到達についての確認も必要

(2)会社法の期間の定め方

会社法の期間の定め方については、いろいろな表現がある

1〇日前まで、〇週間前まで、〇月前までのように「~前まで」とするもの

国税徴収法

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=334AC0000000147

(公売公告)

第九十五条 税務署長は、差押財産等を公売に付するときは、公売の日の少なくとも十日前までに、次に掲げる事項を公告しなければならない。ただし、公売に付する財産(以下「公売財産」という。)が不相応の保存費を要し、又はその価額を著しく減少するおそれがあると認めるときは、この期間を短縮することができる。―以下略―

20日以内、0週間以内、0月以内のように「~以内」とするもの

民法

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089

附 則 (令和四年一二月一六日法律第一〇二号) 抄

(施行期日)

第一条 この法律は、公布の日から起算して一年六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。

3〇箇月を下ることができない(会社法449条2項等)

4効力発生日から6箇月間(会社法182条の6第2項等)

5定時株主総会の日の〇週間前の日から〇年間(会社法442条1項・2項)

6株主総会の日の2週間前の日(会社法782条2項)

7受領した日から〇週間を経過した日(会社計算規則124条1項1号イ等)

8株券喪失登録日の翌日から起算して1年を経過したとき(会社法225条1項)

9株券喪失登録日の翌日から起算して1年を経過した日(会社法228条1項)

10定時株主総会の終結の日後5年を経過する日まで(会社法440条3項)

※「経過した日」とは、特定の日を指し、「経過したとき」は、「時」ではなく「とき」とされていることから、「経過した場合」という意味であり、「経過した日以後」を意味する

(みずほ信託銀行証券代行部「企業再編手続ガイドブック」199頁、商事法務、2007年)。

(3)現時点から将来に向けての規定例

現時点から将来に向けては、次のようなものがある

1基準日を定める場合には、基準日から3箇月以内(会社法124条2項)

2議決権の10分の1以上の賛成を得られなかった日から3年を経過していない場合(会社法304条)

3株主総会の日から3箇月間(会社法310条6項、311条3項)

4選任後4年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで(会社法336条1項)

5定時株主総会の日の1週間(取締役会設置会社にあっては、2週間)前の日から5年間(会社法442条1項1号)

6吸収合併契約等備置開始日から吸収合併等がその効力発生日後6箇月を経過する日まで(会社法782条1項)

7効力発生日から60日以内(会社法786条1項)

8株主総会等の決議の日から3箇月以内(会社法831条1項)

(4)現時点から遡るものの規定例

現時点から遡るものとしては、次のようなものがある

1        当該基準日の2週間前まで(会社法124条3項)

2        当該行為の効力が生ずる日の1箇月前まで(会社法219条1項)

3        株主総会の日の2週間前まで(会社法299条1項)

4        総株主の議決権の100分の1以上の議決権又は300個以上の議決権を6箇月前から(会社法303条2項)

5        株主総会の日の8週間前まで(会社法303条2項)

6        株主総会の日の3日前まで(会社法313条2項)

7        株主総会の日の2週間前の日(会社法782条2項)

8        効力発生日の20日前まで(会社法785条3項)

9        効力発生日の20日前の日から効力発生日の前日まで(会社法116条5項等)

(5)直ちに、速やかに、遅滞なく(期限) 会社法では、遅滞なくが多い。

◆ 「発起人は、第1項各号に掲げる事項について変更があったときは、直ちに~」(会社法59条5項。その他会社法条文内に28か所の規定)

「遅滞なく」に比べて、一切の遅滞が許されず、また、「速やかに」に比し急迫の程度が高い(法令用語研究会「有斐閣 法律用語辞典[第5版]」763頁、有斐閣、2020年)。

◆ 「株式会社が電子提供措置の中断が生じたことを知った後速やかに~」(会社法325条の6 。その他会社法条文内に1か所の規定)

「直ちに」、「遅滞なく」に比し中程度の近接性を求めるもので、「できるだけ」、

「できる限り」などを付けて又はそのままで訓示的な意味で用いられる(法令用語研究会「有斐閣 法律用語辞典[第5版]」664頁、有斐閣、2020年)。

◆ 株式会社は、法務省令で定めるところにより、定時株主総会の終結後遅滞なく、貸借対照表(大会社にあっては、貸借対照表及び損益計算書)を公告しなければならない(会社法440条1項。その他会社法条文内に98か所の規定)。

→時間的即時性を強く表す場合に用いられる語であるが、「直ちに」とは異なり、正当な又は合理的な理由による遅滞は許されるものと解されている。(法令用語研究会「有斐閣 法律用語辞典[第5版]」781頁、有斐閣、2020年)。

→「速やかに」は、訓示的な意味で用いるので、遅滞があった場合にも直ちに違法ということにはならないが、「直ちに」と「遅滞なく」は、遅滞があった場合には、違法の問題にまで発展することが多い、といわれる(石毛正純「法制執務詳解≪新版Ⅲ≫」629頁、ぎょうせい、2020年)。

期間の起算点について

◆ 日、週、月又は年によって期間を定めたときは、初日不算入(民法140条)

2月1日(午前零時を除く)から1箇月間の場合、2月2日から起算する。

◆ ただし、その期間が午前零時から始まるときは、初日参入(民法140条但書)

2月1日(午前零時から)から1箇月間の場合、2月1日から起算する。

◆ 原則として、「通知」や「催告」の起算点は、到達した日(民法97条)

  意思表示は、その通知が相手方に到達した時からその効力を生ずる。

◆ 「〇週間前までに~通知を発し~」とするものは、発した日(会社法299条1項等)

→株主総会招集通知、各種会議体の招集通知等(発信主義・到達主義・到達擬制)

・期間の満了点について

◆ 日、週、月又は年によって期間を定めたときは、期間はその末日の終了をもって満了する(民法141条)。

→2月1日(午前零時を除く)から1箇月間の場合、3月1日の終了をもって期間が満了する。

◆ 期間の末日が日曜日、国民の祝日に関する法律(昭和23年法律第178号)に規定する休日その他の休日に当たるときは、その日に取引をしない慣習がある場合に限り、期間は、その翌日に満了する(民法142条)。

→2月21日(午前零時を除く)から1箇月間の場合、3月22日の終了をもって期間が満了する。

◆1月2日・3日は「その他の休日」に該当する

  東京法務局商業登記研究会編「商業法人登記速報集」330頁、日本法令、1996年

◆12月29日~31日は「その他の休日」に該当しない(最判昭43年1月30日民集22巻1号81頁、最判昭43年9月26日民集22巻9号2013頁、最判昭43年4月26日民集22巻4号1055頁)

◆ 民法142条の「休日」というのはそれほど厳格な意味でなく、すべての一般的な休日を指すものとして解してよい。たとえば土曜日、12月29日~31日、1月2日、3日などもこれに入りうると考えてよいという見解(我妻榮ほか「我妻・有泉コンメンタール民法ー総則・物件・債権ー〔第8版〕」287頁、日本評論社、2022年)

◆ 土曜日は「その他の休日」に該当しない(森・濱田松本法律事務所「新・会社法実務問題シリーズ・8 会社の計算(第2 版)」203頁、中央経済社、2015年)

◆ 土曜日も「休日」に該当するものとして取り扱うのが実務対応としては安全(内田修平「実務問答会社法第21回 組織再編と期間計算」73頁、旬刊商事法務2166号)

◆ 土曜日を休日扱いとする法令手形法第87条及び小切手法第75条の規定による休日を定める政令(昭和58年政令第147号)(12月31日も休日扱い)、民事訴訟法95条3項(1月2日・3日、12月29~31日も休日扱い)

◆ 現時点から遡る期間の計算について、民法142条を類推適用することは適当でない。

1大阪株式懇談会「会社法 実務問答集Ⅱ」(商事法務、2018年)41頁

2内田修平「実務問答会社法第21回 組織再編と期間計算」73頁、旬刊商事法務2166号(逆算による期間計算において、形式的な民法140条以下の適用を否定)

◆ 「効力発生日の20日前の日から効力発生日の前日まで」とする規定効力発生日の前日が休日である場合に、民法142条が適用されるとする見解と、適用されないとする見解とがある。

→適用されると考えた方が、実務上安全ではないか。

記文献1は適用される、2は適用されないとする見解

◆ 「効力発生日の20日前までに通知しなければならない」とする規定

通知を発した日と効力発生日を算入せず、その間に20日が存在する必要がある。(松井信憲「商業登記ハンドブック[第4版]」243頁、商事法務、2021年)

◆ 暦による計算について、週、月又は年によって期間を定めたときは、その期間は暦にしたがって計算する(民法143条1項)。

  本年2月1日(午前零時)から1箇月といった場合は、2月28日の終了で満了する。

◆ 週、月又は年の初めから期間を起算しないときは、その期間は、最後の週、月又は年においてその起算日に応答する日の前日に満了する(民法143条2項)本年2月1日(午前零時を除く)から1箇月といった場合は、2月2日が起算日となり、最後の月である3月の起算日に応答する3月2日の前日(3月1日)の終了で満了する。

◆ 月又は年によって期間を定めた場合において、最後の月に応当する日がないときは、その月の末日に満了する(民法143条2項但書)。

  12月31日起算日の2箇月後の応当日である2月31日は無いため、2月末日となる。

(7)期間計算の仕方の具体例―「日」をもって―

「日」をもって定められている場合の具体例

◆ 請求があった日から5日以内に~(会社法366条3項)  

→本年2月1日に請求があったとすると、2月2日から起算して5日間となる、2月6日の終了が満了の時となるため、2月6日までとなる。

◆ 効力発生日から30日以内に~(会社法786条2項)

→本年2月1日が効力発生日だとすると、初日を参入するので(効力発生日の午前零時に効力が生じるため)、2月1日から30日目の日である3月2日の終了が満了の時となるため、3月2日までとなる。

◆ 「20日前の日から~」(会社法785条5項)「20日前までに~」(会社法116条3項)

→「~前の日」は当該日、「~〇日前までに~」は、当該日の前となり、当該日の前日となる。効力発生日が本年2月28日の場合、20日「前の日」は、2月8日、20日「前までに」は、2月7日となる。

(8)期間計算の仕方の具体例~「週」をもって~

「週」をもって定められている場合の具体例

◆ 株主総会の2週間前までに~(会社法299条1項)  

通知の発信日と会日を算入せず、その間に2週間以上あるという意味(大判昭和10 年7月15日民集14巻1401頁)。本年2月17日が株主総会の日であれば、2月2日午後12時までには発送を完了させる必要がある。

◆ 定時株主総会の日の1週間前の日から5年間(会社法442条1項)、株主総会の日の2週間前の日(会社法782条2項等)  

招集通知の発送日と計算書類等の備置開始日との間に1日の差があるところ(旧商法では平仄がとられていた)、実務的には招集通知の発送日に計算書類等の備置きを開始することが安全という見解もある(みずほ信託銀行証券代行部「企業再編手続ガイドブック」199頁、商事法務、2007年)。

(8)期間計算の仕方の具体例~「週」をもって~

「週」をもって定められている場合の具体例

◆ 計算書類の全部を受領した日から4週間を経過した日までに、●●に対し●●の内容を通知しなければならない(会社計算規則124条1項等)。

  計算書類の受領日が2月1日の場合、4週間目は、3月1日午後12時が満了の時となりますが、経過した日までとあるので、その翌日である3月2日中に通知(到達主義)すればよい。

◆ その請求があった日から2週間以内の日を取締役会の日とする取締役会の招集の通知が発せられない場合には~(会社法366条3項等)

2月1日に請求があった場合、2週間目は、2月15日午後12時が満了の時となる。このような期間の場合も、民法142条の適用はあると考えられる(みずほ信託銀行証券代行部「企業再編手続ガイドブック」199頁、商事法務、2007年)。

(9)期間計算の仕方の具体例~「月」「年」をもって~

「月」をもって定められている場合の具体例

◆ ただし、●●の期間は、1箇月を下ることができない(会社法449条2項等)。

           1箇月を下ることができないとは、1箇月以上の期間があればよいが、1箇月未満では足りないという意味である(江頭憲治郎「株式会社法 第8版」(商事法務、 2021年)730頁、森・濱田松本法律事務所「新・会社法実務問題シリーズ・8会社の計算(第2版)」202頁、中央経済社、2015年)。

「年」をもって定められている場合の具体例

◆ 株券喪失登録の翌日から起算して1年を経過した日に無効となる(会社法228条1項等)。

株券喪失登録日が2月1日の場合、翌日の2月2日から起算して、翌年の2月1日で満了することとなる。株券が無効となり、名義書換の効力が生じるのは、その翌日の2月2日となる。

(10)期間計算の仕方の具体例~その他~

「効力発生日後●箇月を経過するまでの間」としている場合の具体例

◆ 効力発生日後6箇月を経過する日までの間(会社法782条1項等)。

  効力発生日の翌日の午前零時が起算点となる。効力発生日が本年2月1日の場合、8月1日の終了に満了する(みずほ信託銀行証券代行部「企業再編手続ガイドブック」201頁、商事法務、2007年)。

「●年継続して●●しない場合」としている場合の具体例

◆ 5年以上継続して到達しない場合(会社法196条1項等)。

最初の不到達から5年継続して到達しなかった場合を意味する。したがって、招集通知の発送日から2~3日後から5年間の期間を計算することとなる(みずほ信託銀行証券代行部「企業再編手続ガイドブック」201頁、商事法務、2007年)。

(1)登記期間の計算の方法

登記期間の計算は民法の期間に関する規定を適用する

◆ 登記期間の計算は、民法の原則に従う(大正8・12・13法曹会委員会第1科決議(大7)第175号、森本滋=山本克己「会社法コンメンタール20ー雑則(2)」242頁(松井秀征)商事法務、2016年)。

◆ 2週間の末日が日曜日にあたるときは日曜日は登記所の休日であるから、その翌日をもって期間の満了するものと解するのを相当とする(大決大10・9・29民録27・1556)。

◆ 株式会社の設立の登記は、その本店の所在地において、次に掲げる日のいずれか遅い日から2週間以内にしなければならない(会社法911条1項)。

1設立時取締役の調査終了日

2発起人が定めた日(午前零時から起算する場合かどうか

→1月1日と定めた場合、1月13日の24時まで。

◆ 前項の規定にかかわらず、第57条第1項の募集をする場合には、前項の登記は、次に掲げる日のいずれか遅い日から2週間以内にしなければならない(会社法911条2項)。

1 創立総会の終結の日

2        第84条の種類創立総会の決議をしたときは、当該決議の日

3        第97条の創立総会の決議をしたときは、当該決議の日から2週間を経過した日

4        第100条第1項の種類創立総会の決議をしたときは、当該決議の日から2週間を経過した日

5        第101条第1項の種類創立総会の決議をしたときは、当該決議の日

◆ 持分会社の設立の登記をなすべき期間については、会社法に規定がない(会社法912 条、913条、914条)

  定款の作成後、「相当の期間内」になすべきものと解される(森本滋=山本克己「会社法コンメンタール20ー雑則(2)」290頁(今泉邦子)商事法務、2016年)

◆ 会社において第911条第3項各号又は前3条各号に掲げる事項に変更が生じたときは、2 週間以内に、その本店の所在地において、変更の登記をしなければならない(会社法915条1項)。

1 効力発生日(定款変更の効力発生日を別に定めた場合を含む)の場合は、初日参入(午前零時から起算するため)

2 募集株式発行の払込期日の場合は、払込期日の前日までに出資の履行をした株主の場合は初日参入となり、払込期日の当日に出資の履行をした株主の場合は初日不算入となると考えられる。

◆ 会社法915条1項の規定にかかわらず、第199条第1項第4号の期間を定めた場合における株式の発行による変更の登記は、当該期間の末日現在により、当該末日から2週間以内にすれば足りる(会社法915条2項)。

  払込期間の満了点は、当該期間の末日の午後12時となるから、「当該末日から」とあるのは、当該末日の翌日から起算して2週間以内と考えられる。

(1)基準日について

◆ 「期日」は、一般には、一定の日(特定の日)を意味するもので、ある法律行為の効力の発生や消滅等を、一定の日にかからしめる場合等に使用されます(橋本副孝ほか「新版会社法 実務スケジュール」1頁、新日本法規出版、2016年)。

  基準日も一定の日であるから、休日の場合に翌日となることはない。

◆ 基準日を定める場合には、株式会社は、基準日株主が行使することができる権利(基準日から3箇月以内に行使するものに限る。)の内容を定めなければならない(会社法124条2項)。

  3月31日を基準日とした剰余金の配当において、6月30日が日曜日となる場合で実際の支払開始が7月1日となる場合、効力発生日は6月30日とし、支払開始日を7月1 日と決議してよいかとの設問に対し、3箇月以内に「会社から交付を受ける」意味に解する場合と「配当決議がなされる」意味に解する場合とで別れるとしつつ、6 月30日までに配当決議を実施していればよいという見解(大阪株式懇談会「会社法実務問答集Ⅰ(上)」147頁(前田雅弘)商事法務、2017年)。

(2)基準日の設定方法

◆ 株式会社は、基準日を定めたときは、当該基準日の2週間前までに、当該基準日及び前項の規定により定めた事項を公告しなければならない。ただし、定款に当該基準日及び当該事項について定めがあるときは、この限りでない(会社法124条3項)。

遡って計算するケースとなる(参考:会社法299条1項)。定款に基準日を定めれば基準日公告を行わなくてもよいことから、基準日を定款で定めれば、1日で株式分割を行うことも可能とする見解もあるが(相澤哲ほか「論点解説 新・会社法」187頁、商事法務、2006年)、東京地判平成26年4月17日(アムスク株主総会決議取消請求事件)では、基準日公告に代わる定款の定めについて「当該定款の定めは、基準日の2週間前までに存在することが必要であると解するのが相当である」と判示し、東京高判平成27年3月12日(アムスク株主総会決議取消請求事件控訴審判決)においても同様に解されている。

(1)取締役、会計参与、監査役、執行役、会計監査人の任期

◆ 取締役・会計参与の任期は、選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。ただし、定款又は株主総会の決議によって、その任期を短縮することを妨げない(会社法332条1項、334条1項)。

◆ 監査等委員会設置会社の取締役(監査等委員であるものを除く。)についての第1項の規定の適用については、同項中「2年」とあるのは、「1年」とする(会社法332条3 項)。

◆ 監査等委員である取締役の任期については、第1項ただし書の規定は、適用しない(会社法332条4項)。

※ 任期満了の規定(会社法332条7項・334条・336条4項・338条3項・402条8項等)補欠・増員規定については説明省略

(1)取締役、会計参与、監査役、執行役、会計監査人の任期

◆ 指名委員会等設置会社の取締役についての会社法322条1項の規定の適用については、同項中「2年」とあるのは、「1年」とする(会社法332条6項)。

◆ 監査役/会計監査人の任期は、選任後4/1年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする(会社法336条、338条)。

◆ 執行役の任期は、選任後1年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結後最初に招集される取締役会の終結の時までとする。ただし、定款によって、その任期を短縮することを妨げない(会社法402条7項)。

  任期の起算点である選任時とは、事実行為としての株主総会の選任決議を意味し、選任決議の効力発生時期を遅らせても、それに左右されない(相澤哲ほか「論点解説 新・会社法」286頁、商事法務、2006年)。

(2)任期満了後の後任者の予選が認められる期間

任期満了後の後任者の予選が認められる期間

◆ 一般的には、前任者の任期満了までの期間が比較的短く、予選につき合理的理由があり、かつ、その期間中に新株発行等により株主の権利に著しい変化がないような場合には有効であるとされ、例えば、就任日の1箇月程度前に予選決議をすることは差し支えないとされている(昭和41年1月20日民事甲271号回答、登記研究221号46頁)。

照会事例は2箇月前の予選決議であった。また、上記登記研究221号48頁において、「取締役の予選がされてから、現在の取締役が退任するまでの間に新株発行が予定されている等株主にいちじるしい変動を生ずることが予測される場合とか、期間が6箇月以上にもわたる等相当長期の場合には、取締役を予選することが許されないのではなかろうか」と解説されている。

(2)任期満了後の後任者の予選が認められる期間

任期満了後の後任者の予選が認められる期間

◆ A株式会社を吸収合併存続会社とし、B株式会社を吸収合併消滅会社とする吸収合併を行うため、両者は吸収合併契約を締結し、平成19年6月20日に開催されたそれぞれの定時株主総会において当該吸収合併契約の承認を受けた。A社は当該定時株主総会において「X氏(B社の現任取締役のうちの1名)を本件合併の効力発生日(平成20年4月1日)付けでA社の取締役に選任する」旨の選任決議をすることができるか。これが可能な場合、A社における取締役Xの任期は、どの時点から起算することになるか。

このような決議には、通常合理性があるものと解されるため選任可能であり、選任決議時から起算する(相澤哲「Q&A会社法の実務論点20講」58頁、金融財政事情研究会、2009年)。なお、このように決議の内容(選任)に条件又は期限を付した場合、その条件又は期限に合理性がある限り有効であると考えられるところ、合理性の判断は、実質的な判断を要し、役員の選任に係る登記申請等の場面において当該選任決議の有効性について争いの生ずる余地があることに留意すべきであると解説されている。

変則事業年度の場合

3月決算の会社が臨時総会で、9月末決算とし当期を18箇月決算とした場合

◆ 2007年1月10日の臨時総会において、上記定款変更決議を行った場合、2006年6月の定時総会で選任された、会計監査人の任期はいつ満了するか。

  事業年度の変更の効力が生じた日(定款で特段の経過措置がない限り、2007年1月10日)に会計監査人の任期が終了するため、これを前提として、2007年1月10日の臨時株主総会で新たな会計監査人の選任(再任を含む)が必要となる(相澤哲編著「Q&A会社法の実務論点20講」56頁、金融財政事情研究会、2009年)。

  考え方のポイント

1.会計監査人を選任(重任)した後に事業年度を変更した場合には、選任時からその事業年度の終了までを任せていないことになるから、変更後の事業年度が選任後1年以内に終了しないときには、当該事業年度の変更の効力が発生した時点で退任する(桜庭倫「東京法務局における商業・法人登記の相談事例の紹介等(上)」11頁、登記研究770号)。

2.みなし再任の規定は定時株主総会となっている(会社法338条2項)。

12月決算の会社が定時総会で、3月末決算とし当期を15箇月決算とした場合

◆ 2020年3月の定時総会において、上記定款変更決議を行った場合、2019年3月の定時総会で選任された、監査等委員である取締役の任期はいつ満了するか。

 2020年3月総会の終結の時に任期が満了するため、これを前提として、2020年3月の定時総会において役員等の選任決議の上程が必要となる(渡辺邦広「実務問答会社法第39回 事業年度の末日の変更に伴う変則事業年度と役員等の任期」46頁、旬刊商事法務2221号)。

  考え方のポイント

  • 変則事業年度を15箇月とする定款附則の定めは有効(会社計算規則59条2項)。

会社計算規則

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=418M60000010013

(各事業年度に係る計算書類)

第五十九条 1項略

2 各事業年度に係る計算書類及びその附属明細書の作成に係る期間は、当該事業年度の前事業年度の末日の翌日(当該事業年度の前事業年度がない場合にあっては、成立の日)から当該事業年度の末日までの期間とする。この場合において、当該期間は、一年(事業年度の末日を変更する場合における変更後の最初の事業年度については、一年六箇月)を超えることができない。3項略

2.設問の場合、2020年1月1日に開始する事業年度は、2020年12月31日ではなく、2021年3月31日に終了することとなる。

3.選任後2年内に終了する事業年度のうち最終のものは、2019年1月1日から同年12月31日までの事業年度となる。

12月決算の会社が定時総会で、3月末決算で当期を15箇月決算とした場合

◆ 前記と同様の条件の場合で、2020年3月総会で新たに選任される会計監査人又は同総会で再任されたものとみなされた会計監査人の任期はいつ満了するか。

  当該定款附則において同総会で選任又は再任されたとみなされる会計監査人の任期を本変則事業年度に関する定時総会の終結の時までとする旨の規定が定められれば当該定めは有効と考えられる(渡辺邦広「実務問答会社法第39回 事業年度の末日の変更に伴う変則事業年度と役員等の任期」47頁、旬刊商事法務2221号)。

  考え方のポイント

1.変則事業年度を認めないとする帰結は相当でないと考えられる。

2.初年度である変則事業年度についてのみ、株主総会の意思の下に会社計算規則が許容する範囲で1年を超える任期を認めたとしても会社法の趣旨に反しない。

3.株主総会の意思を明確にする観点から、定款附則に、当該株主総会で選任又は再任されたものとみなされる会計監査人の任期を、変則事業年度に関する定時株主総会の終結の時までとする旨の規定を設けておくことが望ましい。

12月決算の会社が定時総会で、3月末決算とし当期を15箇月決算とした場合

◆ 前記と同様の条件の場合で、 2020年3月の定時総会で選任される、監査等委員でない取締役の任期はいつ満了するか。

  当該定款附則において同総会で選任される監査等委員でない取締役の任期を本変則事業年度に関する定時総会の終結の時までとする旨の規定が定められれば当該定めは会計監査人の場合と同様に有効と考えられる(渡辺邦広「実務問答会社法第39回事業年度の末日の変更に伴う変則事業年度と役員等の任期」49頁、旬刊商事法務2221号)。

  考え方のポイント

1.会計監査人の場合と同様の考え方となる。

2.監査等委員でない取締役の任期が1年とされている趣旨に照らし、株主総会の意思の下に会社計算規則が許容する範囲で1年を超える任期を認めたとしても会社法の趣旨に反しない。

公告・通知

(1)概説(官報掲載までの事務フロー)

事前準備 掲載日程の確認・公告原稿の作成

内容チェック 掲載申込み・校正原稿のチェック

掲載     公告掲載

事前準備 掲載日程の確認・公告原稿の作成

◆        掲載日を決める(前述のとおり、正確・安全に期間計算を行う)

◆        掲載予定日から逆算して申込期限を確認

◆        ゲラ拝(校正原稿の確認)は必ず行う(ゲラ拝あり・なしで日程が若干異なる場合もあり)

◆        会社が原稿を作成する場合は、申込前に司法書士側でチェック

内容チェック 掲載申込み・校正原稿のチェック

◆        申込手続の実施

◆        申込みは取次所にて行う(全国どこでも可。取次所を通して申し込む)

→インターネット上から申込みは可能。その後のやり取りは、各取次所。

https://www.gov-book.or.jp/koukoku/

◆        料金は会社に直接支払ってもらう方がよい

◆        ゲラチェック、修正があれば連絡

◆        訂正公告については、後述及び松井信憲「商業登記ハンドブック〔第4版〕」246頁、商事法務、2021 年を参照。

◆ 掲載 公告掲載

◆        掲載紙は掲載日に発送(早ければ翌日到着)

◆        内容はインターネット版官報で当日確認可(無料)

◆        登記に使用する場合は、司法書士が掲載紙を預かる

◆        申込みはFAX、メールいずれか確認

公告の内容、枠or行、登記の添付書面、掲載紙

決算公告、枠、×、号外

合併公告など(決算公告別掲載)※1  行、○、本紙

合併公告など(BS要旨同時掲載)※1 枠、○、号外

株券提供公告※2、行、○、本紙

定款変更等通知公告※3、行、△、本紙

解散公告、行、×、号外(行の場合は、通常本紙、通常より長い。)

※1 合併等組織再編、資本金の額の減少など(いわゆる債権者保護手続)

※2 株式譲渡制限規定の設定など

※3 株券を発行する旨の定めを廃止する場合など(登記の添付書面になるものもある)

法務省HP

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji60.html

9 インターネット版官報は、官報に代わるべき添付書面情報として利用することができます。

枠組公告と行公告

枠組公告 ⇒ 掲載料金 1枠あたり 33,787円(税抜)

申込みから掲載までの所要日数:2週間前後

行公告 ⇒ 掲載料金 1行あたり 3,263円(税抜)

申込みから掲載までの所要日数:1週間程度

本紙と号外

◆        「行公告=本紙掲載」,「枠組公告=号外掲載」が原則

◆        解散公告は例外的に「行公告、号外掲載」⇒ 掲載までに時間がかかる(要注意

Cf.外国会社の日本における代表者の退任公告は本紙掲載

(1)概説(日刊新聞紙掲載までの事務フロー)

事前準備 掲載日程の確認・公告原稿の作成

◆        掲載日を決めることやスケジュールの確認については、官報の場合と同様

◆        掲載紙ごとに代理店が存在するため、前もって掲載紙の代理店を検索し、入稿~掲載までのスケジュールを確認する

◆        日刊新聞紙は平日に休刊日が存在するものもあるため、掲載日について代理店に事前確認する。

◆        例:日刊工業新聞の場合は、掲載日の8営業日前までに申し込み必要、遅くとも申し込みから2営業日内にゲラ・見積書のご連絡、掲載日の4営業日前(当日17:30)までに最終校了が必要となる。当該掲載紙は郵送される。

内容チェック、掲載申込み・校正原稿のチェック

◆        申込手続の実施(申込方法・必要書類・支払方法・掲載紙の入手方法の事前確認)

◆        ゲラチェック、修正があれば連絡

掲載     公告掲載

◆        掲載紙の当日分購入が必要な場合は忘れず購入する(代理店によって取扱い不明)

◆        登記に使用する場合は、司法書士が掲載紙を預かる又は購入しておく

(1)概説(電子公告調査依頼の事務フロー)

事前準備 公告日程の確認・公告原稿の作成

◆        公告調査開始日を決めることやスケジュールの確認については、官報/日刊新聞紙の場合と同様

◆        公告調査会社は5社存在する(2022年12月現在)ため、必要書類、事務フロー、サービスメニュー、費用などから調査会社を検討する

◆        例:電子公告調査株式会社の場合は、公告調査開始の4営業日前までに申し込みが必要となり、申し込み後、調査会社にて登記情報を取得され、公告内容について精査される。また、公告期間や根拠条文についてアドバイスいただけるとのこと。掲載日の翌日零時から1時間に1回の掲載チェックを実施される

(初日不算入・民法140条)。

内容チェック 調査申込み・調査の事前チェック

◆申込手続の実施(申込方法・必要書類・支払方法・報告書の様式の事前確認) ◆事前チェック、問題があれば連絡

掲載 電子公告掲載/調査開始

◆調査報告について、電磁的記録又は書面で交付を受けるか事前にお客様に確認しておく

登記に使用する場合は、司法書士が調査報告を預かる

 (1)概説(訂正公告)

◆ 株式の譲渡制限のための株券提供公告において、商号を「クイン商事株式会社」とすべきところ、「タイン商事株式会社」と誤って公告した後、後日訂正公告をなし、訂正公告後1箇月を経過して登記申請があった場合には、これを受理して差し支えない(昭和44年8月15日民四733回答、登記研究262号71頁)。

◆ 株式の譲渡制限に関する規定の設定による変更登記申請書に添付された「公告をしたことを証する書面」により、株券提供期間が1箇月に満たないことが明らかである場合には、改めて1箇月を下らない期間公告をし直さなければ、当該申請は受理できない(昭和41年12月23日民四772号回答、登記研究231号65頁)。

◆ 官報公告に印刷誤りがあった場合において、誤った公告がされてから合理的な期間内(関係者が直ちに訂正の申し入れを行い、官報に正誤表が掲載されるのに必要な期間内)に当該公告が訂正されているときは、原稿誤りの場合とは異なり、当初から正しい公告がされたものとして取り扱って差し支えない(平成14年7月30日民商1831号回答、登記研究658号202頁)。

(2)決算公告

2月27日(月)        定時株主総会/原稿作成          ※1

2月28日(火)        公告申込          ※2

3月16日(木)        決算公告掲載日          

1、株式会社は、法務省令で定めるところにより、定時株主総会の終結後「遅滞なく」、貸借対照表(大会社にあっては、貸借対照表及び損益計算書)を公告しなければならない(会社法440条1 項)。

2、電子公告制度が広く利用される以前は、上場会社において、定時株主総会の翌日に決算公告が掲載されるように、※2の公告申込が※1の定時株主総会の前に行われるスケジュールであった。

3、公告申込から公告掲載日までのスケジュールについては、各媒体の代理店に確認が必要である。

4、決算公告については、電子公告調査を要しないが(会社法941条)、公告は必要である。

5、決算公告掲載後、連続して各種公告(減資、組織再編等)を入稿する場合にも、各媒体の代理店にスケジュールの事前確認が必要である。

1、     会社法116条1項各号の行為(発行する全部の株式の内容として譲渡制限を設ける場合、ある種類の株式の内容として譲渡制限又は全部取得条項を設ける場合、ある種類株式の内容として会社法322条2項の別段の定めがある場合に株式の併合等により種類株主に損害を及ぼすおそれがある場合)をしようとする株式会社は、当該行為が効力を生ずる日の20日前までに、同項各号に定める株式の株主に対し、当該行為をする旨を通知しなければならない。前項の規定による通知は、公告をもってこれに代えることができる(会社法116条3項・4項)。

2        会社は、組織再編の効力発生日の20日前までに(新設型組織再編においては、株主総会の決議の日から2週間以内に通知が必要であり、買取請求期間は通知・公告から20日間である。なお、株主総会の前に通知も可能。)、株式買取請求の対象となる株式の株主に対し、当該組織再編を行う旨並びに相手方会社・設立会社の商号及び住所等を通知し又は公告しなければならない(会社法785条3項・4項・797条3項・4項・806条3項・4 項・816の6条3項・4項)。

3        決議日と公告掲載の順序は問われないため、決議前に通知・公告を実施することも可能である(相澤哲ほか「論点解説 新・会社法」544頁・663頁、商事法務、2006年、相澤哲=細川充「新会社法の解説(15)組織再編行為〔下〕」39頁、旬刊商事法務1753 号)。

4        吸収型再編については、効力発生日までに株主総会等の決議、株式等買取請求手続、債権者保護手続がいずれも終了していることが必要となっている(会社法750条・752 条・759条・761条・769条・774条の11)。

5        新設型再編については、登記日=効力発生日となるため、事前に効力発生日の特定ができないことから、登記の要件として、株主総会等の決議、株式等買取請求手続、債権者保護手続がいずれも終了していることが必要となっている(会社法922条・924条・925 条)。

6        新設型組織再編手続において、株式買取請求権を行使しようとする株主が株主総会の承認決議における議決権を有する場合、行使された株式買取請求権が適法なものであるか否かは、当該承認決議(承認決議における反対の議決権行使)を待たなければ確定しないことから、新設型組織再編における株式買取請求権の行使期間は、行使期間満了前に承認決議が終了するように(同日でも可)設定する必要がある。したがって、株式買取請求権に係る株主宛の通知・公告も承認決議日の20日前よりも前に行うことができない(「質疑応答7857新設型組織再編行為に係る契約・計画の承認決議の翌日から20日を経過しないで申請された当該新設型組織再編行為にかかる登記の可否」219頁、登記研究715号)。

7        組織再編手続では、消滅株式会社において吸収合併等又は新設合併等により交付を受ける財産に持分等が含まれる場合(会社法783条2項・804条2項)、吸収分割において分割会社が簡易分割の要件を満たす場合(会社法784条2項・805条)、略式合併等における特別支配会社の場合(会社法785条3項かっこ書・797条3項かっこ書)について、取得条項付株式・新株予約権においては、取得手続における一定事項の通知・公告をした場合(会社法170条3項・275条4項)について、株主等への通知・公告が不要となる場合がある。

8        株主に対して通知しなければならないとする規定には、公告をもって通知に代えることができるとしている規定が多くみられるが(会社法116条4項等)、自己株式取得の際の取得事項通知(会社法158条2項)、事業譲渡の際の通知(会社法469条4項)、吸収合併等の際の株主通知(会社法785条4項・797条4項)、株式交付の際の株主通知(会社法816条の6第4項)については、公告によって通知に代えることができる場合が限定されている。

9        振替株式の発行会社(上場会社)では、株主等への通知(会社法116条3項・158条1項・168条2項・169条3項・170条3項・172条2項・179条の4第1項・179条の6第4項・181条1項・195条2項・201条3項・206条の2第1項・240条2項・244条の2第1項・469条3項・776条2項・783条5項・785条3項・797条3項・804条4項・806条3項・816条の6第3 項の通知)について、公告によることが強制されており(社債、株式等の振替に関する法律161条2項)、買取口座の公告も必要となる場合がある(社債、株式等の振替に関する法律155条2項)。

10     具体的な通知の内容を示したうえで、株式買取請求権を行使しうる株主全員から期間短縮や権利放棄の同意を得ることにより、(ⅰ)株式買取請求権の行使期間を短縮し、短縮後の期間に対応した時期に通知・公告を行うことも許されると解すべきとする見解(土手敏行「商業登記実務Q&A(4)」99頁、月刊登記情報554号)、(ⅱ)株式買取請求権を放棄して株主等への通知・公告が不要となると解されるとする見解がある(辰巳郁「実務問答会社法第8回 吸収合併における株主に対する通知・公告の期間短縮・省略と簡易合併・略式合併」43頁、旬刊商事法務2127号)。

11     逆算による期間計算の場合は、基本的に「丸〇日」や「丸〇箇月」を置く必要がある(内田修平「実務問答会社法第21回 組織再編と期間計算」76頁、旬刊商事法務2166 号)。

12     電子公告により午前零時から公告を開始する場合には、公告日を「丸1日」として計算に入れることができるため(相澤哲編著「Q&A会社法の実務論点20講」222頁、金融財政事情研究会、2009年)、公告日から効力発生日の前日の間(両日を含む)で、「丸〇日」、「丸〇箇月」が確保されていれば足りる(内田修平「実務問答会社法第21回組織再編と期間計算」74頁、旬刊商事法務2166号)。

13     機関決定は、組織変更及び吸収型組織再編については効力発生日の前日まで、新設型組織再編及び会社法116条の場合は、登記の前までに実施が必要となる。

14     株式譲渡制限規定の設定に係る株主総会の決議後その効力発生前に、募集株式の募集行為を行い増資の効力が生じた場合には、募集株式の発行による変更登記は受理されるが、株式譲渡制限規定の設定の登記は受理されない(松井信憲「商業登記ハンドブック[第4版]」246頁、商事法務、2021年)。

15     株式譲渡制限規定の設定に係る株主総会決議後、募集株式の募集決議を行い、株式譲渡制限規定の設定の効力の発生後に増資の効力が生じた場合には、株式譲渡制限に係る事項が通知されていない限り(会社法施行規則41条)、募集株式の発行による変更の登記は受理されない(松井信憲「商業登記ハンドブック[第4版]」246頁、商事法務、2021年)。

※1 公告申込から公告掲載日までのスケジュールについては、各媒体の代理店に確認が必要である。

※2 逆算による期間計算の場合は、基本的に「丸〇日」や「丸〇箇月」を置く必要がある。なお、通知は到達主義のため、この時期に通知が到達していることを想定して通知を発することとなる。

※3 電子公告の場合は、午前0時から調査開始となるため、20日前の日(上記例の場合、2月8日)の調査開始でも問題ない。

(4)株券提出の通知・公告

株券提出に関する通知・公告のスケジュール

◆ 会社法219条(株券の提出に関する公告等)株券発行会社は、次の各号に掲げる行為をする場合には、当該行為の効力が生ずる日(第4号の2に掲げる行為をする場合にあっては、第179条の2第1項第5号に規定する取得日。以下この条において「株券提出日」という。)までに当該株券発行会社に対し当該各号に定める株式に係る株券を提出しなければならない旨を株券提出日の1箇月前までに、公告し、かつ、当該株式の株主及びその登録株式質権者には、各別にこれを通知しなければならない。ただし、当該株式の全部について株券を発行していない場合は、この限りでない。

1        株式譲渡制限の定めを設ける定款の変更          全部の株式(種類株式発行会社にあっては、当該事項についての定めを設ける種類の株式)

2        株式の併合 全部の株式(種類株式発行会社にあっては、併合する種類の株式)

3        全部取得条項付種類株式の取得 当該全部取得条項付種類株式

4        取得条項付株式の取得  当該取得条項付株式(想定外事由の場合は効力発生日との関係で要注意)

4の2 対象会社による特別支配株主の株式等売渡請求の承認  売渡株式

5        組織変更 全部の株式

6        合併(合併により当該株式会社が消滅する場合に限る。)        全部の株式

7        株式交換 全部の株式

8        株式移転 全部の株式

(4)株券提出の通知・公告

※1 公告申込から公告掲載日までのスケジュールについては、各媒体の代理店に確認が必要である。

※2 通知は到達主義のため、余裕をもって計画したほうが安全である。

※3 逆算による期間設定の場合は、基本的に「丸〇日」や「丸〇箇月」を置く必要がある。

※4 電子公告の場合は、午前0時から調査開始となるため、1箇月前の日(上記例の場合、2月28 日)の調査開始でも問題ない。

(5)株券廃止の通知・公告

◆ 会社法218条(株券を発行する旨の定款の定めの廃止)株券発行会社は、その株式(種類株式発行会社にあっては、全部の種類の株式)に係る株券を発行する旨の定款の定めを廃止する定款の変更をしようとするときは、当該定款の変更の効力が生ずる日の2週間前までに、次に掲げる事項を公告し、かつ、株主及び登録株式質権者には、各別にこれを通知しなければならない。

1        その株式(種類株式発行会社にあっては、全部の種類の株式)に係る株券を発行する旨の定款の定めを廃止する旨

2        定款の変更がその効力を生ずる日

3        前号の日において当該株式会社の株券は無効となる旨

株券発行会社の株式に係る株券は、前項第2号の日に無効となる。

第1項の規定にかかわらず、株式の全部について株券を発行していない株券発行会社がその株式(種類株式発行会社にあっては、全部の種類の株式)に係る株券を発行する旨の定款の定めを廃止する定款の変更をしようとする場合には、同項第2号の日の2 週間前までに、株主及び登録株式質権者に対し、同項第1号及び第2号に掲げる事項を通知すれば足りる。

前項の規定による通知は、公告をもってこれに代えることができる。

第1項に規定する場合には、株式の質権者(登録株式質権者を除く。)は、同項第2号の日の前日までに、株券発行会社に対し、第148条各号に掲げる事項を株主名簿に記載し、又は記録することを請求することができる。

※なお、必要となる通知や公告を期限前に実施していれば、株主総会決議により直ちに株券廃止の効力を生じさせることも可能と解されている(松井信憲「商業登記ハンドブック[第4版]」262頁、商事法務、2021年)。

※1 公告申込から公告掲載日までのスケジュールについては、各媒体の代理店に確認が必要である。

※2 株主総会の招集通知と会社法218条1項の通知を兼ねて実施する例が多いと思われる。

※3 逆算による期間設定の場合は、基本的に「丸〇日」や「丸〇週間」を置く必要がある。

※4 電子公告の場合は、午前0時から調査開始となるため、2週間前の日(上記例の場合、2月14 日)の調査開始でも問題ない。

債権者異議申述催告・公告のスケジュール

1        資本金・準備金の額の減少手続(会社法449条・627条)、組織再編手続(会社法779 条・799条・781条・789条・810条・816条の8)、持分会社における各種手続(会社法635条・670条)では、それぞれの規定において、債権者が異議を述べることができる場合は、「一定の事項を官報に公告し、かつ、知れている債権者には、各別にこれを催告しなければならない。ただし、債権者が異議を述べることができる期間は、〇箇月を下ることができない。」としている。

2        定款所定の公告方法を官報以外の公告方法(時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙又は電子公告)と定めている場合には、官報に公告することに加え、定款所定の公告方法により公告をした場合(いわゆる「二重公告」を行った場合)には、知れている債権者に対する個別催告を省略することができる。

債権者異議申述催告・公告のスケジュール

3        会社分割を行う場合の分割会社の不法行為債権者に対する個別催告(会社法789条3項、 810条3項)、合名・合資会社が消滅持分会社となる合併・会社分割の手続(会社法793 条2項)、合名・合資会社が株式会社となる組織変更手続き(会社法781条2項)、合同会社の持分払戻額が当該合同会社の純資産額を超える場合(会社法635条3項)では、二重公告をすることで、知れたる債権者に対する個別催告を省略することができない。

4        個別催告は到達主義となるため、期間計算を行う場合には、到達すべき時期を想定しつつスケジュール策定を行う必要がある。

5        二重公告のそれぞれの掲載日又は官報公告掲載日の翌日と電子公告調査開始日とが異なることで、それぞれの異議申述期間が異なることとなっても、2つの公告のすべての期間を異議申述期間としてとらえていれば、債権者にとって不利益はなく問題ないと考えられる(土井万二「債権者保護手続における二重公告について」10頁、月刊登記情報591号)。

6        定款所定の公告方法を官報と定めている会社が二重公告を実施する場合には、公告方法を官報以外に変更する必要があるが、この公告方法変更登記は、債権者保護手続の公告がされるまでに申請すべきとされている(堀恩惠「合併制度の整備に係る商法等の改正に伴う商業・法人登記事務の取扱い〔上〕」26頁、旬刊商事法務1477号、亀井愛子『実務相談室 合併における「知れたる債権者」に対する各別の催告の省略の可否』37 頁、旬刊商事法務1481号)。

7        新設型組織再編については、登記日=効力発生日となるため、事前に効力発生日の特定ができないことから、登記の要件として、株主総会等の決議、株式等買取請求手続、債権者保護手続がいずれも終了していることが必要となっている(会社法922条・924 条・925条)。

8        吸収型組織再編については、効力発生日までに株主総会等の決議、株式等買取請求手続、債権者保護手続がいずれも終了していることが必要となっている(会社法750条・752 条・759条・761条・769条・774条の11)。

9        公告方法を官報としていて決算公告を実施していない会社が、債権者保護手続において決算公告と貸借対照表の要旨を同時公告した場合(損益計算書の公告が必要となる大会社の場合を除く)、現状の登記実務では、催告書に記載する「計算書類に関する事項」は、「年月日付官報(号外第〇号)〇頁」としてよいと判断されているが、公告の内容と催告の内容との間に差異があることは想定されていないため、先になされているものの内容に、後でされるものが合わせなければならないとする有力な説(弥永真生「コンメンタール会社法施行規則・電子公告規則[第3版]」765頁、商事法務、2021年)もあるため、安全に実施するのであれば、催告書にも貸借対照表の要旨を記載するか、決算公告を債権者保護手続公告より先に実施したうえで、催告書に記載する「計算書類に関する事項」を、「年月日付官報(号外第〇号)〇頁」と記載する方法を検討する必要がある。

10     組織再編の場合には、債権者保護手続にかかる公告と同時に株主等への公告も併せて実施するかどうかについてもあらかじめ確認しておく(電子公告は調査会社と検討)。

11     資本金・資本準備金の額の減少の効力発生日を変更する場合(会社法449条7項)は、株式会社の内部規律に従い、業務執行の決定機関により定めることが可能(株主総会決議も必要とされていない)であり、この場合には、特に変更の公告等を行う必要はない

(相澤哲ほか「論点解説 新・会社法」543頁、商事法務、2006年)。

12     組織変更及び吸収型組織再編手続において、効力発生日を変更するためには、変更前の効力発生日の前日までに、変更後の効力発生日を公告しなければならない(消滅会社等のみの規定だが、存続会社等でも必要とする見解もあり)(会社法780条・781条・790 条)。なお、変更後の効力発生日が変更前の効力発生日の前の日となる場合には、変更後の効力発生日の前日までに公告をする必要がある(森・濱田松本法律事務所編「新・会社法実務問題シリーズ・9組織再編(第3版)」347頁、中央経済社、2022年)。また、株式交付の変更後の効力発生日は、株式交付計画において定めた当初の効力発生日から 3箇月以内の日でなければならず(会社法816条の9第2項)、株式交付の効力発生日や申込みの期日を変更した場合には、株式交付親会社は、直ちに、申込者に対して通知しなければならない(会社法774条の4第5項)。

13 組織再編手続において、債権者保護手続である公告や個別催告を実施した後、効力発生日までの間に、対価、資本金・準備金に関する事項、承継対象債務の変更があった場合に、一定の事項の場合には、それぞれ債権者保護手続をやり直すことが必要となる場合があるとする見解(内田修平「実務問答会社法第27回組織再編の条件等の変更と債権者異議手続」58頁、旬刊商事法務2185号)。

※1 公告申込から公告掲載日までのスケジュールについては、各媒体の代理店に確認が必要である。

※2 催告は到達主義のため、郵送の場合は余裕をもって計画したほうが安全である。

※3 掲載日の翌日(3月1日)起算の1箇月の応当日(4月1日)の前日に期間が満了する。

※4 電子公告の場合は、午前0時から調査開始となるため、3月1日の調査開始、3月31日の調査終了として問題ない。

※1 公告申込から公告掲載日までのスケジュールについては、各媒体の代理店に確認が必要である。

※2 登記実務で認められる方法を採用した場合、公告掲載内容を確認してからの催告書送付となる。

※3 催告は到達主義のため、起算日については余裕をもって計画することが望ましい。

※4 催告が2月28日に到達したことを前提とした期間計算である。

(7)電子公告

◆ 会社法における時的な概念である「公告の日」(会社法170条1項2号等)とは、電子公告による公告をする場合にあっては、電子公告の公告期間中のいずれの日をも指すのではなく、電子公告を開始した日を指す(相澤哲「Q&A会社法の実務論点20講」216頁、金融財政事情研究会、2009年)。

◆ 会社法940条1項では、会社がすべき公告に係る規定を4つの類型に区分した上、それぞれの類型についての電子公告の公告期間を規定している(詳細は前記文献参照)。

◆ 前記文献における「●日前までの日」、「●週間前までの日」、「異議申立期間の初日までの日」などとしている電子公告期間の初日は、当該期間の初日の午前零時から電子公告による公告を開始する場合にあっては、当該日を含むこととなる(相澤哲「Q&A会社法の実務論点20講」216頁、金融財政事情研究会、2009年)。

◆ 株券又は新株予約権証券の提出期間は各行為の効力発生日までであるが(会社法219条 1項・293条1項)、株券を発行する旨の定款の定めを廃止する場合とともに、登記申請手続との関係上、電子公告による公告は効力発生日の前日まで継続すれば足りると解されている(相澤哲「Q&A会社法の実務論点20講」221頁、金融財政事情研究会、2009 年)。

◆ 電子公告採用会社が公告方法を電子公告以外に変更した場合、計算書類についての電子公告は継続する必要があるが、変更後の公告方法で当該計算書類の公告を行うことにより、それ以後、当該計算書類についての電子公告を行わないことも許容されるとする見解、②吸収合併消滅会社の電子公告について、吸収合併の効力発生後は、電子公告を継続する必要はないとする見解がある(渡辺邦広「実務問答会社法第57回公告方法の変更または吸収合併と計算書類の電子公告」58頁、旬刊商事法務2277号)。

(1)スケジュール案の作成

組織再編スケジュール案の作成における主な検討事項

1        機関決定(簡易又は略式手続の採用可否)

2        株主等通知(株式又は新株予約権の買取請求手続が想定されるか否か)

3        株券提供公告等(現実に株券が発行されているか否か)

4        債権者保護手続(二重公告を実施するか否か)

5        事前備置書類の備置

6        登記申請(吸収型再編と新設型再編)

7        事後備置書類の備置

8        関連するその他法令(許認可、労働法、金商法、独禁法など)及び取引所規則等の要件

9        登記・登録を要する資産等の名義変更の手続及び締結済契約等の見直し

※1 上記2~4の各種手続を行う順序については定めがないため、同時並行も含め自由に設定可能である。

※2 実務上は、各種契約・計画の確定時期を可能な限り遅く設定することが望まれるため、まず希望する効力発生日を確定させ、そこから債権者保護手続の必要期間を逆算して、事前備置書類の備置開始日を調整して機関決定のスケジュールも含め各種日程を定めている。

(2)効力発生日

◆ 効力発生日は、確定日を定める必要があり、一定期間のうちで「存続会社の代表取締役が定めた日」と定めることはできない(相澤哲ほか「論点解説 新・会社法」703頁、商事法務、2006年)。

◆ 当事会社が組織再編の効力発生日だけでなく、効力発生の時間を定めることは、組織再編契約の組織法的な側面に反せず、当事会社間の合意として有効であるという見解(黒田裕「実務問答会社法第42回Ⅰ吸収分割の効力発生時間の指定」87頁、旬刊商事法務

2230号)。

◆ 効力発生日における効力発生時を、承継会社が分割対価を支払ったときと定めることはできないという見解(黒田裕「実務問答会社法第42回Ⅰ吸収分割の効力発生時間の指定」89頁、旬刊商事法務2230号)。

(2)効力発生日

◆ 「吸収合併の効力発生日を●月●日とする。この日までに●●が終了していなければ、吸収合併の効力は生じないこととする」という定めは可能であるが、「吸収合併の効力発生日を3月3日とする。この時刻までに●●が終了していなければ、3月4日とする」という定めはできず、別途効力発生日の変更手続きを要するという見解(森・濱田松本

法律事務所「新・会社法実務問題シリーズ・9組織再編(第3版)」345頁、中央経済社、2022年)

◆ 複数の吸収型組織再編を並行して行う場合、効力発生日を同日としつつも組織再編相互間の先後関係を定めることもできるという見解(森・濱田松本法律事務所「新・会社法実務問題シリーズ・9組織再編(第3版)」345頁、中央経済社、2022年)。なお、株式交付については、効力発生日において譲渡人から給付を受けた株式交付子会社の株式の総数が下限の数以上であることをもって、効力が生じることとなり、他の吸収型再編の効力発生時期(効力発生日の午前零時)と異なる。

5-1 概説

◆ 印紙税法2条では、「別表第1の課税物件の欄に掲げる文書には、この法律により、印紙税を課する。」としており、同法3条では、「別表第1の課税物件の欄に掲げる文書のうち、同法第5条の規定により印紙税を課さないものとされる文書以外の文書の作成者は、その作成した課税文書につき、印紙税を納める義務がある。」としている。

◆ 印紙税法別表第1には、課税物件表が定められており、1号から20号まで課税物件と定義、課税標準と税率が定められている。課税文書には、不動産の譲渡に関する契約書や請負に関する契約書、合併契約書などが規定されおり、紙でそれらの契約書を作成する場合には、所定の印紙税が課せられることとなり、文書の作成者は、印紙税を納める義務がある。

◆ 電子的に作成された文書(電磁的記録)であって、その文書に課税物件表に掲げられた課税事項が記載(電磁的に記録)されていたとしても、書面としての文書の作成がない限り、印紙税の課税の対象とはならない(佐藤明弘「令和3年7月改訂印紙税実用便覧」214頁、法令出版、2021 年)。

5-1 概説

◆ 印紙税法(印紙による納付等)第8条 課税文書の作成者は、次条から第12条までの規定の適用を受ける場合を除き、当該課税文書に課されるべき印紙税に相当する金額の印紙を、当該課税文書の作成の時までに、当該課税文書にはり付ける方法により、印紙税を納付しなければならない。

2 課税文書の作成者は、前項の規定により当該課税文書に印紙をはり付ける場合には、政令で定めるところにより、当該課税文書と印紙の彩紋とにかけ、判明に印紙を消さなければならない。

◆ 印紙税法施行令(印紙を消す方法)第5条 課税文書の作成者は、印紙税法第8条第2項の規定により印紙を消す場合には、自己又はその代理人(法人の代表者を含む。)、使用人その他の従業者の印章又は署名で消さなければならない(その他、印紙税法基本通達64条・65条も参照)。

◆ いずれも、印紙税法別表第1の課税文書の欄に掲げられていないため、課税対象とならない。ただし、文書の内容に課税文書に該当する文言(例えば第17号)が示されている場合は、課税対象となりえるため注意を要する。

◆ いずれも、印紙税法別表第1第17号の非課税文書である「営業に関しないもの」に該当するため、課税対象とならない(印紙税法基本通達別表第1第17号文書32、国税庁タックスアンサー「会社がその本業以外の行為に関連して作成する受取書」

https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/inshi/19/22.htm)。なお、金融機関が発行する上記領収証については、課税対象となる。

◆ 株券等は課税文書に該当する(印紙税法別表第1第4号)。

◆ 次に掲げる券面金額(券面金額の記載のない証券で株数又は口数の記載のあるものにあつては、1 株又は1口につき政令で定める金額に当該株数又は口数を乗じて計算した金額)の区分に応じ、1 通につき、次に掲げる税額とする(印紙税法別表第1第4号)。

500万円以下のもの 200円、500万円を超え1000万円以下のもの 1000円、1000万円を超え5000万円以下のもの 2000円、5000万円を超え1億円以下のもの 1万円、1億円を超えるもの 2万円

◆ 印紙税法別表第1第4号の課税標準及び税率の欄に規定する政令で定める金額は、当該株券に係る株式会社が発行する株式の払込金額(株式1株と引換えに払い込む金銭又は給付する金銭以外の財産の額をいい、払込金額がない場合にあっては、当該株式会社の資本金の額及び資本準備金の額の合計額を発行済株式(当該発行する株式を含む。)の総数で除して得た額)(印紙税法施行令24条)。

◆ 印紙税法施行令第24条第1号に規定する「払込金額」とは、次に掲げる株券の区分(一部抜粋)に応じ、それぞれ次に掲げる金額が該当する(印紙税法基本通達第4号文書8)。

(1)・(2)・(4)記載省略

(3) 会社法第199条第1項《募集事項の決定》に規定する募集株式(株式を発行するものに限る。)に係る株券 同項第2号《募集事項の決定》に規定する募集株式の払込金額

◆ 印紙税法施行令第24条第1号に規定する「払込金額がない場合」に該当する株券は、例えば次のもの(一部抜粋)が該当する。(印紙税法基本通達第4号文書9)

(1)株式の併合をしたときに発行する株券、(2)株式の分割をしたときに発行する株券、(3)株式の無償割当てをしたときに発行する株券、(4)~(6)記載省略、 (7)株券の所持を希望していなかった株主の請求により発行する株券、(8)株券喪失登録がされた後に再発行する株券、(9)取得条項付新株予約権の取得と引換えに交付するために発行する株券、(10)持分会社が組織変更して株式会社になる際に発行する株券、(11)合併、吸収分割、新設分割、株式交換又は株式移転に際して発行する株券

◆ 印紙税の課される定款は、株式会社、合名会社、合資会社、合同会社及び相互会社の設立のときに作成される原本に限られる(印紙税法基本通達第6号文書1 )。

◆ 株式会社又は相互会社の定款のうち、公証人法第62条ノ3第3項(定款の認証手続)の規定により公証人の保存するもの以外のものは、非課税である(印紙税法別表第1第6号の非課税物件)。

◆ 公証人の認証を要しない合名会社、合資会社及び合同会社の定款を数通作成した場合についても、そのうちの原本1通のみが課税の対象になり、その他のものは課税されない(国税庁「課税される定款の範囲」https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/inshi/24/01.htm)。

◆ 組織再編によって設立された株式会社・持分会社の定款に関する論点。

◆ 変更定款に関する課税関係は、印紙税法基本通達第6号文書2を参照。

◆ 合併契約書又は吸収分割契約書若しくは新設分割計画書は課税文書に該当する(印紙税法別表第1 第5号)。事業譲渡契約書は、課税文書に該当する(印紙税法別表第1第1号)。

◆ 株式交換契約書、株式移転計画書、株式交付計画書、組織変更計画書は課税文書に該当しない(印紙税法別表第1第5号参照)。

◆ 吸収分割契約書に記載されている吸収分割承継会社が吸収分割会社から承継する財産のうちに、例えば不動産に関する事項が含まれている場合であっても、当該吸収分割契約書は第1号の1文書(不動産の譲渡に関する契約書又は営業の譲渡に関する契約書)には該当しない(印紙税法基本通達第5号文書3 )。

◆ 印紙税法別表第1第5号文書の効力発生日の変更契約書は、第5号の課税文書に該当する(横田宏

「令和3年6月改訂 印紙税取扱いの手引」424頁、清文社、2021年)。

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