登記研究912号(令和6年2月号)

登記研究912号(令和6年2月号)テイハン

【論説・解説】

■「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律の施行に伴う相続土地国庫帰属手続に関する事務の取扱いについて(通達)」の解説(6)

法務省民事局民事第二課補佐官 三 枝 稔 宗

法務省民事局民事第二課補佐官 河 瀬 貴 之

法務省訟務局訟務企画課訟務調査室法務専門官(前法務省民事局民事第二課法務専門官) 手 塚 久美子

法務省民事局民事第二課不動産登記第四係長 清 水 玖 美

第2 本要領の概要

 10 第10節 承認申請の審査

  ⑶ 第3 調査事項(承前)

 申請土地が急傾斜地崩壊危険区域等に含まれていたとしても、それをもって直ちに不承認要件に該当するものではない。

 竹。松くい虫。

  ⑷ 第4 承認、却下又は不承認の判断

  ⑸ 第5 標準処理期間

 現状、全国一律8時間。

■「法務局における遺言書の保管等に関する省令及び法務局及び地方法務局の支局及び出張所設置規則の一部を改正する省令の施行に伴う遺言書保管事務の取扱いについて(令和5年5月12日付け法務省民商第100号法務省民事局長通達)」の解説

法務省大臣官房司法法制部司法法制課法制審議会係長(前法務省民事局商事課遺言書保管第一係長) 新 谷 英 斗

法務省民事局商事課遺言書保管第一係長 菅 野 裕 紀

第1 はじめに

令和2年7月10日施行

法務局における遺言書の保管等に関する省令及び法務局及び地方法務局の支局及び出張所設置規則の一部を改正する省令(令和5年法務省令第27号)、令和5年5月12日施行。

第2 添付書類の有効期間の廃止

 3か月以上前の書類でも、移動がない場合などもあり、支障がない場合が多いと考えられます。また遺言者や受遺者などに移動があったとしても、ある時において一致していれば有効とした方が、受遺者などが多数の場合や外国に受遺者がいる場合であっても書類の取り直しなどが起こりにくく、合理的だと思います。

第3 法人でない社団又は財団による手続の明確化

第4 遺言書情報証明書の交付等の請求書の記載省略要件の改正

第5 遺言書保管所の管轄の拡大

  遺言書情報システムでは、管轄区域に基づいて遺言書保管申請制度利用の可否判断を行っている。

法務局及び地方法務局の支局及び出張所設置規則

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=413M60000010012_20240226_506M60000010003

第四条 法務局、地方法務局又は支局の戸籍及び公証の事務に関する管轄区域は、別表第一の支局欄(同欄中括弧のつけてあるものは、本庁を示すものとする。)及び管轄区域欄によって示されるとおりとし、法務局、地方法務局、支局又は出張所の登記の事務(動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律(平成十年法律第百四号)第五条第一項(同法第十四条第一項において準用する場合を含む。)及び後見登記等に関する法律(平成十一年法律第百五十二号)第二条第一項の事務を除く。)に関する管轄区域は、同表の出張所欄(同欄中括弧のつけてあるものは、本庁又は支局を示すものとする。)及び管轄区域欄によって示されるとおりとし、法務局、地方法務局、支局又は出張所の法務局における遺言書の保管等に関する法律(平成三十年法律第七十三号)に定める遺言書の保管に関する事務に関する管轄区域は、別表第二の官署欄及び管轄区域欄によって示されるとおりとする。

■Q&A不動産表示登記(88)

(一社)テミス総合支援センター理事 都城市代表監査委員 新 井 克 美

第三章 建物(非区分建物)

 第二節 各種の登記の申請

  Q257  いずれも未登記の建物が合体した場合はどのような登記を申請するのか。

合体後の建物について、表題登記の申請(不動産登記法47条)。

建物図面、各階平面図・・・合体後の建物。

所有権証明情報・・・合体前の各建物に関するもの及び増築工事による場合はその工事に関するもの。

■民事信託の登記の諸問題(29)

渋 谷 陽一郎

 父が委託者兼受益者であり、長男が受託者となっている民事信託で、受託者である長男が経営する会社の債務を担保するため、信託不動産に抵当権を設定するケース。父は長男が経営する会社の元経営者。

 信託の目的の範囲内である場合で、信託法31条1項4号の行為を同法31条2号で許容できるときを想定します。抵当権設定登記の申請時、登記原因証明情報上、受託者、そして委託者兼受託者と、債務者との利害関係人性に関する事実(事情)を記す必要があるか。・・・記載しなかった場合に却下事由になることはないと考えます(不動産登記法25条、昭和41年5月16日 民事甲第1179号民事局長回答「信託の登記ある不動産についての抵当権設定登記申請の受理について」)。

 信託の目的が、父の生活・介護・医療の支援である場合、受託者を経営者とする会社の債務を担保するための抵当権設定行為は、信託の目的の範囲内の受託者の行為となるのであろうか。について・・・本来は、会社の元経営者であった委託者兼受益者の意思を信託の目的に反映させる方が望ましいと思われます。ただし、信託の目的は信託行為全体を総合的に考慮して判断されるものであり、信託目録の信託の目的欄に記載がないことを理由に、信託目録の体系上の整合性がない、と判断される可能性は低いのではないかと考えます。

 会社は信託の受益者ではないにも関わらず、かような信託財産の管理方法(受託者が代表取締役である会社の債務を担保するための信託不動産に対する抵当権設定およびその登記申請)を設定し得るのだろうか。について・・・設定し得ると考えます(信託法26条)。信託行為時の株主(社員)が誰なのか、は専門家が確認しておくべき事項だと思います。

 登記手続上、形式判断を可能とするためには、受託者の権限は、昭和41年登記先例の事案(信託原簿)のような包括的なものでは足らず、具体的な権限として、その許容性が明確化されている必要がないだろうか。について

・・・同意です。

 本来、当該第三者(会社)を受益者であるとすべきであるかもしれない。について・・・信託法2条7項の、その他の信託財産に係る給付、の中に担保設定が含まれるのであれば、受益者に該当すると考えます。

会社法施行下で使える登記先例──実務の便覧──(5)

平成20年10月2日法務省民商第2654号民事局商事課長通知「金融商品取引業者の登録に必要な資本金の額を満たしていないものの、金融商品取引業を行う旨を目的に掲げる株式会社の設立の登記の取扱いについて」

平成11年1月27日 法務省民四第137号民事局第四課長通知「債権管理回収業に関する特別措置法の施行に伴う登記事務の取扱いについて」

【法 令】

商業登記規則等の一部を改正する省令(令和5年6月12日法務省令第31号)

【訓令・通達・回答】

▽商業・法人登記関係

〔6219〕商業登記規則等の一部を改正する省令の施行に伴う商業・法人登記事務の取扱いについて(令和5年6月12日付け法務省民商第113号法務局長、地方法務局長宛て法務省民事局長通達)

 有限責任事業組合を無限責任組合員とする投資事業有限責任組合契約の効力発生の登記の申請は、投資事業有限責任組合契約書に当該有限責任事業組合を当該無限責任組合員として記載している場合に限り、受理。

〔6220〕商業登記等事務取扱手続準則の一部改正について(令和5年6月12日付け法務省民商第114号法務局長、地方法務局長宛て法務省民事局長通達)

〔6221〕商業・法人登記における印鑑関係事務取扱要領の一部改正について(令和5年6月12日付け法務省民商第115号法務局長、地方法務局長宛て法務省民事局長通達)

▽電子認証関係

〔6222〕「商業登記法等の一部を改正する法律等の施行に伴う電子認証事務の取扱いについて(平成12年9月29日付け法務省民四第2274号民事局長通達)」の一部改正について(令和5年6月12日付け法務省民商第116号法務局長、地方法務局長宛て法務省民事局長通達)

渋谷陽一郎『Q&A 家族信託大全』第6章民事信託の支援者(専門職) 

  • 渋谷陽一郎『Q&A 家族信託大全』2023年、日本法令。
  • 第6章 民事信託の支援者(専門職) 

P223、士業者の業務拡大のための民事信託組成の受注競争もあり、士業者だけによる民事信託の規律の維持は難しいかもしれない。―中略―地域金融機関こそ民事信託センターとなる可能性がある。との記載があります。地域金融機関にも受注競争はあり、どちら中心センターを担うのに相応しいか、という問題ではなく、依頼者が選択肢を持てることが大切だと考えます。

P225、書面作成だけで事足りる遺言書の作成等とは異なる。について・・・遺言は執行があるので、書面作成だけで事足りるとはいい難いのかなと思いました。

P230、(司法書士が代理申請の付随業務として、不動産事業者の作成した信託契約書を修正する場合もあるかもしれない)、について・・・不動産事業者が作成した信託契約書をみたことがなかったので、そういう場合にも対処できるようにしたいと思いました。併せて不動産事業者が信託の権利義務関係の図(スキーム等といわれるもの)ではなくて、信託契約書(信託財産に属する財産は金銭と不動産になるかと思います。)を作成できる根拠は、宅地建物取引業法になるのか分かりませんでした。

P233、民事信託の会計ソフトや管理ソフトも開発されつつある、について・・・

ファミトラ

https://www.famitra.jp/

980円(税込 1,078円)/月

P214、そこで、民事信託組成支援における最大の問題点の1つは、民事信託組成を支援する士業者の多くは、信託法の理論は知り得ても(これは書籍等で勉強可能である)、信託実務の実際の内容は知り得ないということだ。について・・・知り得ない、というか体験し得ない、というところではないかと思います。法律が禁止している事項について、最大の問題点の一つ、として指摘できるのか、分かりませんでした。信託会社や受託者経験者に訊く、など手探りでも最善を目指してやっていくことでは足りないのか、分かりませんでした。

P237、信託監督人は、信託監督人自体が、適切に監督され、何らかの形で支援される立場である必要がある(信託監督人が受託者と結託して不正を働き、あるいは、監督を懈怠さればどうなるか)。について・・・信託監督人は、何らかの形で支援される立場である必要がある、という箇所が、誰から、どのような支援を受ける立場なのか、根拠は何か、分かりませんでした。

P240、多数の士業による開かれたネットワークが必要である、に同感です。ただし、実務上逆の方向に行っているので、これを修正するのは困難だと感じます。士業報酬の低廉化の流れに同感です。金融機関の民事信託報酬が一種の基準として働くと考えます。

P246、司法書士を監督する司法書士会の監督・監視体制を早急に整備・充実させる必要がる。について・・・反対です。日本司法書士会連合会も司法書士行為規範に民事信託に関する条項を入れたあと、日本弁護士連合会のようなガイドライン作成の動きはありません。指針は個々の司法書士事務所(司法書士法人)ごとで作成するしかないと思います。問題が起きた場合は、懲戒委員会などにゆだねることが現状取り得る実務だと思います。

 研修に関しては少し力を入れる必要があるとは思います。参考にするとすれば、(公益)成年後見センター・リーガルサポートの研修体制かなと思います。

 東京地判平成28年7月25日判タ1435号215頁について。

 Q222民事信託の任意団体、について。民事信託について公的団体は存在しない、という事実はもっと知られていいと思います。その結果、どの団体に属していようと、民事信託に関して責任を取るのは、個々の民事信託支援者ということになります。

 運営主体者役員などを確認することで、それら任意団体の公益性の有無を見抜きたい、の記載について。任意団体なので、広義の公益性は多少どの団体にもあるのでしょうが、公益籍の軽重を見抜いたとして、直接責任を負うのは、利用者に直接接する専門家なので、委任契約書や見積書の説明を聞きながら判断することが妥当だと考えます。

P301、不動産の賃貸や売買などの場合と同様、宅建士の人々による信託不動産重要事項説明書のようなものが、リーズナブルな費用で取得できるようになるのが、信託不動産の流通にとって望ましいかもしれない。の記載について同感です。

『月刊登記情報』2024年3月号(748号)

『月刊登記情報』2024年3月号(748号)一般社団法人 金融財政事情研究会

https://store.kinzai.jp/public/item/magazine/A/T/

CONTENTS

 法窓一言 今年始まる新制度と司法書士の対応

東京司法書士会会長 千野隆二

 司法書士が法的支援だけではなく、IT面のサポート役としても機能していくこと。犯罪による収益移転防止法の改正により、確認項目が多くなる取引が増えるケースがあること、相続登記申請の義務化への対応。

公正証書に係る一連の手続のデジタル化―令和5年改正公証人法等の解説

法務省大臣官房会計課長(前法務省民事局総務課長) 村松秀樹

法務省民事局付兼総務課登記所適正配置対策室長 遠藤啓佑

法務省民事局総務課法務専門官 植月結可

法務省民事局総務課公証係長 山内 一

令和5年6月14日公布

民事関係手続等における情報通信技術の活用等の推進を図るための関係法律の整備に関する法律について

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00336.html

令和5年3月公証実務のデジタル化に関する実務者との協議会

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji03_00062.html

 公証人法施行規則の改正待ち。

 公正証書遺言の証人もウェブ参加可能。

保証医師宣明公正証書については例外(民法465条の6など。)。

「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律の施行に伴う

相続土地国庫帰属手続に関する事務の取扱いについて(通達)」の解説⑶

法務省民事局民事第二課補佐官 三枝稔宗

法務省民事局民事第二課補佐官 河瀬貴之

法務省訟務局訟務企画課訟務調査室法務専門官

(前民事局民事第二課法務専門官) 手塚久美子

法務省民事局民事第二課不動産登記第四係長 清水玖美

 条例などに基づき、金銭の支払債務(下水道事業受益者負担金等)が発生しており、所有権の移転によって当該債務が承継することとなる土地について

みなし墓地について

墓地、埋葬等に関する法律

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=323AC0000000048_20220617_504AC0000000068

第二十六条 この法律施行の際現に従前の命令の規定により都道府県知事の許可をうけて墓地、納骨堂又は火葬場を経営している者は、この法律の規定により、それぞれ、その許可をうけたものとみなす。

商業登記規則逐条解説 第15回

法務省民事局商事課長 土手敏行

商業登記法

(登記記録の閉鎖等)

第五十四条 次に掲げる登記は、登記記録区にしなければならない。

一 商号廃止の登記

二 商号の登記をした者の営業所が登記所の管轄区域外に移転した場合において、旧所在地においてする営業所移転の登記

三 会社の商号以外の商号の登記の抹消

2 前項各号に掲げる登記をしたときは、その登記記録を閉鎖しなければならない。

用紙から記録へ。

 閉鎖・・・それ以降当該登記記録に何らの登記もしないことを明らかにする(片岡貞敏「商業登記規則逐条解説(29)」商事法務1381号42頁)。

第五十五条 次に掲げる登記は、登記記録区にしなければならない。

一 未成年者又は後見人に関する消滅の登記

二 未成年者又は後見人の営業所が登記所の管轄区域外に移転した場合において、旧所在地においてする営業所移転の登記(登記所の管轄区域内に他の営業所がある場合を除く。)

2 前項各号に掲げる登記をしたときは、その登記記録を閉鎖しなければならない。

 後見人が退任(辞任・解任含む)して新たな後見人が選任された場合の新後見人の登記は、新後見人について新たな後見人の登記をすべきであり、退任後見人の登記に変更することはできない。・・・属人的な登記。

(数人の支配人の登記)

第五十六条 会社以外の者から数人の支配人の登記の申請があつたときは、各支配人について各別の登記記録に登記をしなければならない。

 事業の種類・・・選択できる商号の数・・・営業主である商人が、支配人に委任した商号の数・・・・登記できる支配人の登記の数。

(登記記録の閉鎖等)

第五十七条 会社以外の者の支配人に関する次に掲げる登記は、登記記録区にしなければならない。

一 支配人の代理権の消滅の登記

二 支配人を置いた営業所が登記所の管轄区域外に移転した場合において、旧所在地においてする営業所移転の登記(登記所の管轄区域内にその支配人を置いた他の営業所がある場合を除く。)

2 前項各号に掲げる登記をしたときは、その登記記録を閉鎖しなければならない。

 破産法258条1項

(個人の破産手続に関する登記の嘱託等)

第二百五十八条 個人である債務者について破産手続開始の決定があった場合において、次に掲げるときは、裁判所書記官は、職権で、遅滞なく、破産手続開始の登記を登記所に嘱託しなければならない。

一 当該破産者に関する登記があることを知ったとき。

二 破産財団に属する権利で登記がされたものがあることを知ったとき。

(会社の支配人を置いた営業所の移転等の登記)

第五十八条 会社の支配人を置いた本店又は支店について移転、変更又は廃止があつたときは、本店又は支店に関する移転、変更又は廃止の登記の申請と支配人を置いた営業所に関する移転、変更又は廃止の登記の申請とは、同時にしなければならない。

 本店の移転などの登記と、支配人を置いた営業所の移転等の登記の同時申請義務の規定。住居表示の実施も含む。

特定目的会社登記規則

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=410M50000010037

(商業登記規則の準用)

第三条 商業登記規則(昭和三十九年法務省令第二十三号)第一条の二第一項及び第二項、第二条から第六条まで、第九条第一項、第三項から第七項まで及び第十一項から第十三項まで、第九条の二から第九条の四まで、第九条の五第一項から第三項まで、第五項及び第六項、第九条の六から第十一条まで、第十三条から第二十二条まで、第二十七条から第四十五条まで、第四十八条から第五十条まで、第五十三条、第五十八条から第六十条まで、第六十一条第一項から第八項まで、第六十五条、第六十六条第一項、第六十七条第一項、第六十八条、第七十条から第七十二条まで、第七十四条、第七十五条、第八十条から第八十一条の二まで、第九十三条、第九十八条から第百四条まで、第百五条の二から第百九条まで、第百十一条、第百十二条、第百十四条、第百十七条並びに第百十八条の規定は、特定目的会社の登記について準用する。この場合において、同規則第一条の二第一項中「登記所及び次の各号に掲げる区分」とあるのは「登記所」と、同規則第六十一条第一項中「定款の定め」とあるのは「定款若しくは資産流動化計画の定め」と、「、定款」とあるのは「、定款、資産流動化計画」と、同規則第九十三条中「会社法第九百三十三条第五項」とあるのは「資産の流動化に関する法律第百三十四条第四項(同法第百四十四条第二項において準用する場合を含む。)」と読み替えるものとする。

(会社の支配人の登記の抹消)

第五十九条 会社の支配人の登記は、会社の解散の登記をしたときは、抹消する記号を記録しなければならない。

 清算会社について、会社法489条2項、6項3号、482条2項。

 破産的続き開始決定がされ、その旨の登記がされた後の支配人の印鑑証明書交付について。

(準用規定)

第六十条 第五十二条の規定は、会社以外の者の支配人の登記について準用する。

 会社以外の支配人の登記申請時における。追加的な添付書面の定め。

(添付書面)

第六十一条 定款の定め又は裁判所の許可がなければ登記すべき事項につき無効又は取消しの原因が存することとなる申請については、申請書に、定款又は裁判所の許可書を添付しなければならない。

2 登記すべき事項につき次の各号に掲げる者全員の同意を要する場合には、申請書に、当該各号に定める事項を証する書面を添付しなければならない。

一 株主 株主全員の氏名又は名称及び住所並びに各株主が有する株式の数(種類株式発行会社にあつては、株式の種類及び種類ごとの数を含む。次項において同じ。)及び議決権の数

二 種類株主 当該種類株主全員の氏名又は名称及び住所並びに当該種類株主のそれぞれが有する当該種類の株式の数及び当該種類の株式に係る議決権の数

3 登記すべき事項につき株主総会又は種類株主総会の決議を要する場合には、申請書に、総株主(種類株主総会の決議を要する場合にあつては、その種類の株式の総株主)の議決権(当該決議(会社法第三百十九条第一項(同法第三百二十五条において準用する場合を含む。)の規定により当該決議があつたものとみなされる場合を含む。)において行使することができるものに限る。以下この項において同じ。)の数に対するその有する議決権の数の割合が高いことにおいて上位となる株主であつて、次に掲げる人数のうちいずれか少ない人数の株主の氏名又は名称及び住所、当該株主のそれぞれが有する株式の数(種類株主総会の決議を要する場合にあつては、その種類の株式の数)及び議決権の数並びに当該株主のそれぞれが有する議決権に係る当該割合を証する書面を添付しなければならない。

一 十名

二 その有する議決権の数の割合を当該割合の多い順に順次加算し、その加算した割合が三分の二に達するまでの人数

4 設立(合併及び組織変更による設立を除く。)の登記の申請書には、設立時取締役が就任を承諾したこと(成年後見人又は保佐人が本人に代わつて承諾する場合にあつては、当該成年後見人又は保佐人が本人に代わつて就任を承諾したこと。以下この項において同じ。)を証する書面に押印した印鑑につき市町村長の作成した証明書を添付しなければならない。取締役の就任(再任を除く。)による変更の登記の申請書に添付すべき取締役が就任を承諾したことを証する書面に押印した印鑑についても、同様とする。

5 取締役会設置会社における前項の規定の適用については、同項中「設立時取締役」とあるのは「設立時代表取締役又は設立時代表執行役」と、同項後段中「取締役」とあるのは「代表取締役又は代表執行役」とする。

6 代表取締役又は代表執行役の就任による変更の登記の申請書には、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、それぞれ当該各号に定める印鑑につき市町村長の作成した証明書を添付しなければならない。ただし、当該印鑑と変更前の代表取締役又は代表執行役(取締役を兼ねる者に限る。)が登記所に提出している印鑑とが同一であるときは、この限りでない。

一 株主総会又は種類株主総会の決議によつて代表取締役を定めた場合 議長及び出席した取締役が株主総会又は種類株主総会の議事録に押印した印鑑

二 取締役の互選によつて代表取締役を定めた場合 取締役がその互選を証する書面に押印した印鑑

三 取締役会の決議によつて代表取締役又は代表執行役を選定した場合 出席した取締役及び監査役が取締役会の議事録に押印した印鑑

7 設立の登記又は取締役、監査役若しくは執行役の就任(再任を除く。)による変更の登記の申請書には、設立時取締役、設立時監査役、設立時執行役、取締役、監査役又は執行役(以下この項及び第百三条において「取締役等」という。)が就任を承諾したこと(成年後見人又は保佐人が本人に代わつて承諾する場合にあつては、当該成年後見人又は保佐人が本人に代わつて就任を承諾したこと)を証する書面に記載した取締役等の氏名及び住所と同一の氏名及び住所が記載されている市町村長その他の公務員が職務上作成した証明書(当該取締役等(その者の成年後見人又は保佐人が本人に代わつて就任を承諾した場合にあつては、当該成年後見人又は保佐人)が原本と相違がない旨を記載した謄本を含む。)を添付しなければならない。ただし、登記の申請書に第四項(第五項において読み替えて適用される場合を含む。)又は前項の規定により当該取締役等の印鑑につき市町村長の作成した証明書を添付する場合は、この限りでない。

8 代表取締役若しくは代表執行役又は取締役若しくは執行役(登記所に印鑑を提出した者がある場合にあつては当該印鑑を提出した者に限り、登記所に印鑑を提出した者がない場合にあつては会社の代表者に限る。以下この項において「代表取締役等」という。)の辞任による変更の登記の申請書には、当該代表取締役等(その者の成年後見人又は保佐人が本人に代わつて行う場合にあつては、当該成年後見人又は保佐人)が辞任を証する書面に押印した印鑑につき市町村長の作成した証明書を添付しなければならない。ただし、登記所に印鑑を提出した者がある場合であつて、当該書面に押印した印鑑と当該代表取締役等が登記所に提出している印鑑とが同一であるときは、この限りでない。

9 設立の登記又は資本金の額の増加若しくは減少による変更の登記の申請書には、資本金の額が会社法及び会社計算規則(平成十八年法務省令第十三号)の規定に従つて計上されたことを証する書面を添付しなければならない。

10 登記すべき事項につき会社に一定の分配可能額(会社法第四百六十一条第二項に規定する分配可能額をいう。)又は欠損の額が存在することを要するときは、申請書にその事実を証する書面を添付しなければならない。

11 資本準備金の額の減少によつてする資本金の額の増加による変更の登記(会社法第四百四十八条第三項に規定する場合に限る。)の申請書には、当該場合に該当することを証する書面を添付しなければならない。

 1項2項、3項、10項は通則的な定め。4項から9項、11項は具体的な登記申請ごとの定め。

 

目で見る筆界の調査・認定事例第5回 既提出の地積測量図により筆界を認定した事案

名古屋法務局総括表示登記専門官 角間隆夫(日本土地家屋調査士会連合会業務部協力)

 隣接土地の所有者に相続が発生しており、相続人がいない事例。

 人証・・・分筆当時の土地所有者の供述。

 物証…ブロック塀、L字型側溝。

 相続財産管理人を選任しなくても、表示に関する登記における筆界確認情報の取扱いに関する指針(令和4年4月14日付け法務省民二第536号依命通知)に該当する事案であれば、登記官が筆界認定することができる。

法律業務が楽になる心理学の基礎

第 6 回 心理的アセスメント

弁護士(認定心理士) 渡部友一郎

 観察法、が印象に残りました。もっというと観察が必要だと思いました。

中小企業とともに歩む企業法務のピントとヒント

第59話 会社のたたみ方②~解散・清算手続のポイント

司法書士法人鈴木事務所 司法書士 鈴木龍介

 期限付き解散の可否、清算人の権限、清算期間、税務上の解散事業年度など、

犯罪収益移転防止法の大改正と司法書士の実務⑹

司法書士 末光祐一

 ハイリスク取引への対応について。別途本人確認情報などの補完。

投資契約書雛形『ANGELs』みなし優先株式

投資契約書雛形『ANGELs』みなし優先株式

https://bambooincubator.jp/template/angels

誤りがあれば、指摘願います。修正します。

・臨時株主総会議事録

 議案として、募集株式(みなし優先株式)発行及び総数引受契約承認の件。

 募集株式の数(会社法199条1項1号)として、当会社普通株式(みなし優先株式)の株数。

 割当方法は、別紙「投資契約書」において割り当て、総数引受契約(会社法205条)により行う。

 議案として、定款一部変更の件。定款附則において優先株式に転換することを予定している株式であることを定める。

・株主名簿

備考欄に、みなし優先株式であることの記載。

・投資契約書

契約書名にみなし優先株式であることを明記。

 定義条項に、みなし優先株式の定義記載。発行会社により一定の要件を満たす優先株式(発行会社の普通株式以外の種類株式をいう。以下同じ。)の発行が行われた場合に、全株主の合意により当該優先株式と同種の優先株式に転換されることを予定している普通株式

本件株式の発行及び取得条項

 本件株式がみなし優先株式に該当する場合には、の記載。普通株式と併せて発行することも想定されているのかなと思いました。

他は、投資契約書(普通株式)と同じ。

みなし優先株式に関する株主間合意書

 みなし優先株主に関する定義がされています。投資契約書で定義されているみなし優先株式を取得した者として、参加契約書とみなし優先株式に関する株主間合意書、当事者一覧及び連絡先にみなし優先株主と記載されている者、とされています。

 新規株主等について、定義がされています。株主間合意書以外の者で、新たに発行会社の株主等になる者、とされています。

 適格株式発行の定義がされています。いくつか要件があります。適格株式発行の要件となる最低調達額は1億円と設定されています。

 適格株式発行の定義がされています。募集株式の発行(会社法199条~)に要件がいくつか追加されています。次回の種類株式による資金調達時を想定した設定になっているようです。

 議決権有、参加型、取得請求権付株式(会社法2条1項18号)、後から発行する優先株式よりもみなし優先株式の払込み価格が低く設定され、みなし優先株主が有利であること。

 主要みなし優先株主の定義がされています。みなし優先株式の議決権総数の過半数を有する1、または2以上のみなし優先株主、とされています。過半数を有する2人以上のみなし優先株主というのがどのような状態なのか、個人Aと法人がみなし優先株主で、法人の代表者兼100%株主が個人Aの場合なのかな、と思いました。

 買取の定義がされています。

財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=338M50000040059

第八条 3項以外略

3 この規則において「親会社」とは、他の会社等の財務及び営業又は事業の方針を決定する機関(株主総会その他これに準ずる機関をいう。以下「意思決定機関」という。)を支配している会社等をいい、「子会社」とは、当該他の会社等をいう。親会社及び子会社又は子会社が、他の会社等の意思決定機関を支配している場合における当該他の会社等も、その親会社の子会社とみなす。

第2条

優先株式への転換条項です。1項は株式等の発行による資金調達を行うことになった場合のみなし優先株主への通知義務です。

 2項は、発行会社が適格株式発行を行うこととなった場合のみなし優先株主の手続協力義務と発行会社と経営株主がみなし優先株主の代理人となって手続きできることを規定しています。

 3項は、みなし優先株式が優先株式に転換される場合の計算です。みなし優先株式の数を、適格株式発行として発行された優先株式の、定款で定めた残余財産分配額で割った数が優先株式に転換されます。

 4項は、適格株式発行の要件を満たさない株式発行の場合の、主要みなし優先株主の権利に関する規定です。

第3条

 投資関連契約の締結です。適格株式発行がされる場合に、みなし優先株主と発行会社が投資関連契約を締結しているときは、適格株式発行に必要な手続に協力(契約内容変更や破棄。)やする義務があると定められています。

第4条

 株式等の譲渡制限です。譲渡機関は主要みなし優先株主となっています。株式を譲渡しようとする場合、株式の譲渡制限が定められているとき(会社法107条1項1号)、であれば、定款・登記記録上の承認機関とともに、主要みなし優先株主の承認も必要となってきます。譲渡人が経営株主、非経営株主等及びみなし優先株主と会社法上の種類株式とは区別されて限定されているので、登記事項になるのか、私はならないような感触を持ちましたが(会社法108条1項4号)、分かりませんでした。

第5条

 後から新規株主等が生じた場合の規定です。発行会社は、契約当事者という立場に加えて、この契約書でみなし優先株主の代理人として、新規株主等と参加契約を締結する定めとなっています。

 また発行会社以外の他の株主が株式を他の者に譲渡する場合、この契約書に従った契約をすることが条件となっています。

第6条

 発行会社によるみなし優先株式の買取請求権の規定です。株主総会の決議は不要ですが、全部取得条項付株式(会社法108条1項6号)と似たような構造になっているという印象を受けました。

第7条

 発行会社の株主に対する株式売却を、一定の条件が生じた場合に強制する条項です。発行会社の発行済株式総数の3分の2以上を保有する株主(複数名で3分の2以上の保有比率となる場合を含む。)の承諾と、事前通知が条件となっています。

第8条

1項

 経営株主以外の特定の者並びにその者の子会社及び関連会社が、発行会社の発行済株式の議決権総数の過半数を保有することとなる発行会社の株式の譲渡が行われた場合の規定です。

1,当該譲渡を行った者のみが発行会社の株主と仮定する。

2,譲渡の対価の層が鵜を残余財産の総額とみなす。

3、定款に定める規定に従って、残余財産の分配を行うことに、みなし優先株主は同意する。

定めになっています。

2項

 発行会社が消滅会社となる合併又は子会社となる株式交換、株式移転又は株式交付(但し、これらの組織再編直前の発行会社の総株主が、存続会社又は完全親会社の発行済株式の議決権総数の過半数を保有することとなる場合を除く。について、1項と同じ規定です。

3項

 残余財産の分配が金銭以外の場合の評価方法です。合理的かつ客観的な評価を行うと定められていますが、詳細な方法は分かりませんでした。

4項

 発行会社の事業の全部又は重要部分を第三者に譲渡する事業譲渡、吸収分割、新設分割等を行われる場合、主要みなし優先株主は、発行会社に対して解散請求することが出来ると定められています。

 発行会社に反対する権利はなく、解散及び清算手続きを行うと定められています。

5項

 8条に基づく残余財産の分配や発行会社の解散が行われる場合の、各当事者の手続協力義務が定められています。

6項

みなし規定が2つあります。

1つ目

 みなし優先株式は、適格株式発行のイに該当する募集株式の発行に該当するという定款の定めがあるとみなす規定です。

第1条第6号(イ)②「適格株式発行」とは、以下の条件を全て満たす募集株式の発行をいう。

ア  募集株式の発行による払込金額の合計額が100,000,000円 以上であること

イ  以下の要件を全て満たす優先株式の発行であること

① 議決権を有すること

② 発行会社の解散時に、残余財産から当該株式の払込金額相当額が普通株主に先立って分配され、同分配後の残余財産の分配についても、転換比率を調整のうえ計算した額で普通株式の株主と共に参加する内容の残余財産の分配を受ける権利が規定されていること

③ 取得請求権付株式(当該株式を取得するのと引換えに株主に対して発行会社の普通株式を交付する条項を含むものに限る。)であること

④ 優先株式の1株当たりの払込金額が、みなし優先株式の1株当たりの払込金額よりも高いこと

2つ目

 適格株式発行のイに該当する募集株式の発行より発行された株式については、残余財産の分配について1,優先株主、2、普通株主、3優先株主・普通株主の同順位、の順で受け取る、と定められています。

 また、主要みなし優先株主に権利が与えられています。

主要みなし優先株主は、上の2つのみなし規定に関して疑義があるときに、発行会社に対して、発行会社が発行したみなし優先株式の全てを、適格株式発行の要件を満たす優先株式に転換することを請求できる権利が付与されています。

第9条

 主要みなし優先株主の発行会社に対する、決算情報などの情報提供請求権が規定されています。

第10条

契約の各当事者が表明保証を行う定めです。

第11条

 契約の各当事者が秘密保持義務を負う規定です。

第12条

 契約の各当事者への通知先に関する定めです。

第13条

 他の契約との関連性を定める規定です。2項で、抵触する場合はこの契約が優先することが規定されています。契約日の前後を問わない規定です。

第14条

 費用は、原則として発行会社が負担するという規定です。

第15条

 契約の終了、契約の効力停止の定めです。

第16条

 準拠法は日本法、第一審の管轄は発行会社の本店所在地を管轄する地方裁判所とする定めです。

株式の内容の変更に関する株主全員の合意書・同意書

・株主全員でなくても良い。

・発行会社が代理権構成を取ることも可能であるが、法令、先例通達がないため分からないことが説明されています。・・・みなし優先株主にとって不利になることはないこと、民法108条の規定から可能である可能性が高いと思われます。

参考

中小企業庁

中小企業者のためのエクイティ・ファイナンスの基礎情報令和4年12月22日更新

https://www.chusho.meti.go.jp/kinyu/shikinguri/equityfinance/index.html

規制改革推進会議スタートアップ・イノベーションWG11回令和5年4月11日(火)

https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/meeting/wg/2210_01startup/230411/startup11_agenda.html

令和5年度不動産登記研修会「相続登記申請義務化に関する研修会」

令和5年度不動産登記研修会「相続登記申請義務化に関する研修会」日本司法書士会連合会

令和6年(2024年)3月2日(土)

第1講 「相続登記申請義務化へ向けての司法書士の役割~」

講師 早稲田大学大学院法務研究科教授 山野目 章夫

第2講 「相続登記申請義務化と相続人申告登記の概要」

講師 法務省民事局民事第二課長 大谷 太

第3講「鼎談 大相続登記時代に向けて、相続登記義務化における司法書士としての使命について」

登壇者 山野目 章夫(早稲田大学大学院法務研究科教授)

里村 美喜夫(不動産登記法改正等対策部部長)

今川 嘉典(不動産登記法改正等対策部部委員)

「相続登記申請義務化へ向けての司法書士の役割」

早稲田大学教授 山野目 章夫

目次

第1 法体系における不動産登記制度の意義

第2 いまさらながらの復習

1 起算点は2つの事実

2 義務化の二段階の構造

3 あること証明とないこと証明

4 新しい不動産登記法164条の2つの項

第3 相続登記の実務

第4 司法書士制度の展望

第1 法体系における不動産登記制度の意義

権利に関する登記であるにもかかわらず、なぜ義務化されるか?

対抗要件にすぎない、と難ずる者が今もある。・・・ 表示の登記(不動産登記法36条、47条)。

画期をなす改革

令和3年法律第24号により不動産登記法が改正された。

法務省 民法等の一部を改正する法律(令和3年法律第24号)

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00501.html

不動産登記法を今の姿にした平成16年法律第123号にとって特筆すべき改正

明治からの不動産登記制度の発展のなかで眺めてみても、画期をなす改革とみなければならない。

慟哭と共に三陸の浜に立つ

土地政策の一つ

対抗要件にすぎないという言説を考える

不動産登記法は、決して私法、民法の附属法ではない。

あらためて政府答弁を読む

「不動産登記は、権利を取得した者がその権利を保全する対抗要件としての機能を有するものでございますが、対抗要件制度のためのみに存在するものでもございません。特に、近時におきましては、国土の管理や有効活用という側面から、土地の所有者情報を始めとして、土地の基本的な情報を公示する台帳としての役割を有する点が指摘されております」(法務省の小出邦夫民事局長〔当時〕、2021年3月24日、衆議院法務委員会)。

https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/000420420210324007.htm

第2 いまさらながらの復習

相続登記の義務化ということの意義

受験論点のような話のいくつか

1 起算点は2つの事実

不動産登記法76条の2第1項前段。

  • 2つの事実とは何か?

 被相続人が死亡した事実、および被相続人が不動産を所有していた事実の双方を知った場合において、双方の事実を知った日から3年以内に、相続による所有権の移転の登記を申請。

  • 特定財産承継遺言の場合はどのように考えるか?

  被相続人人が甲土地を特定の相続人に、相続させる旨の特定財産承継遺言をしていた場合において、相続人は、相続による所有権の移転の申請をしなければならない。その根拠も76条の2第1項前段この場合において、他の相続人は、相続登記の義務を課せられない。 

  • 土地のみならず建物も義務づけられるか?

 相続登記の義務が課せられる場面は、土地または建物を目的とする相続である(76条の2は、不動産の一般に関する規定である)。土地のみということではない。

  • 根抵当権の債務者変更なども義務づけられるか?

 相続登記の義務が課せられる場面は、所有権の登記に限られる(76条の2は、所有権の登記に関する規定である)。配偶者居住権は、もともと相続による権利変動を観念すること余地がない。

登記地目が墓地の場合

本橋寛樹「祭祀承継者指定の審判と民法第897条による承継登記」登記情報20242月号〔通巻747号〕、山野目「墓地などの土地の承継と相続登記の義務」NBL1244号〔2023年〕

  • 法律を知らない一般の人びとを非難しない

 知った時から3年という起算点の「知った時」の意義は、過失により知らなかった場合を含まない。気づかなかったことについて相続人に落度があっても、3年は進行しない。

2 義務化の二段階の構造

 相続によるA→B・C・Dの法定相続分を持分とする甲土地の所有権の移転の登記が未だされていない場合において、B・C・Dの協議または家庭裁判所の審判によりBが甲土地を所有する旨の遺産の分割が成立した場合においては、Bが、相続によるA→Bの所有権の移転の登記を申請しなければならない。この場合において、C・Dは、相続登記の義務を課せられない。

また、法定相続分による登記がされた後・・・法定相続分による登記、原因は相続、申請人は相続人全員がされた場合でも、更生登記が出来る、ということ?

で同旨の遺産の分割が成立した場合において、Bは、その遺産の分割が成立した日から3年以内に、B・C・Dを所有権の登記名義人とする登記をBのみが登記名義人になる登記に更正する登記を申請しなければならない(76条の2第2項)。この更正により相続によるA→Bの所有権の移転の登記がされることとなる。 

  • 法定相続分という言葉が法文に出てくるか?

 76条の2第1項が主題とする登記のうち、法定相続分による登記とよばれるものは、精密に述べると、76条の2第2項が謳うとおり、「民法第900条及び第901条の規定により算定した相続分に応じてされた」登記。

 この法定相続分による登記がされている場合において、「遺産の分割があったとき」は、その遺産の分割によって法定相続分を超えて所有権を取得した者は、その遺産の分割の日から3年以内に、所有権取得の登記を申請しなければならない(同項)。

  • 指定相続分はどのように考えるか?

  遺言で相続分の指定がされた局面も検討を要する。この局面は、76条の2第2項に基づく相続登記の義務づけの外に置かれる。同項は、その括弧書において民法900条・901条を掲げ、半面、902条を掲げない。

 AがBの相続分を半分とし、C・Dの相続分をそれぞれ4分の1と相続分を定める遺言をしていた場合において、これらの指定相続分に即して持分を登記するA→B・C・Dの所有権の移転の登記で相続によるものをしたときに、その後に甲土地(の全部)をBが取得する旨の遺産の分割が調うとしても、Bは、その旨を公示する所有権の更正の登記を申請する義務を負わない。むろん、その旨の登記を申請することは、望まれる。しかし、公法上の義務づけをしてまで当該登記の申請を求めることは要請されないとする政策が、ここでは採られる。

 指定相続分による登記がされたの遺産の分割を反映する登記を義務づける政策の採用を躊躇させる考慮要素として、相続分を指定する遺言というものの実態がある。とりわけ自筆証書遺言で相続分の指定がされる場合において、その指定の意思の表示は、相続分や指定という法律表現を用いてされるとは限らず、民法902条に言及されるとも限らない。

 その結果として、現実にされる遺言において表示される遺言者の意思の解釈において、相続分の指定であるか遺産分割方法の指定であるか、判断が難しい事例も想像される。

 実子である女と養子である男が推定相続人であり、これらの子が婚姻をしている場合において、「私の財産は夫が3分の2、妻が3分の1の割合で夫婦に継がせる」という遺言がされた場合において、一筆の土地がほぼ唯一の「私の財産」であるときに、この意思表示が相続分の指定であるとする理解のほか、示された割合を持分とする遺産分割方法の指定(終局的に夫婦が当該土地を共有していって欲しいと望む処分であり、厳密に述べると、相続分の指定を伴う遺産分割方法の指定である)であるとする理解も成りたつ。後者の理解を前提として共有の登記がされる場合において、後日に土地を夫が単独で所有する旨の夫婦の協議が調うときに、それは遺産の分割でなく共有物分割になる。その共有物分割による登記は義務づけられない。このように複数の遺言理解がなりたつ場合において、特定の理解を前提として義務づけがされる可能性を生じさせることは相続人を困惑させる

 この結果は避けられるべきであり、遺言で指定された相続分について相続登記の義務づけをしない76条の2第2項の規定は、このような観点からも理解される。

  • 更正の登記の根拠規定は? 登記原因は?

 更正の登記は、単独で申請することができる(63条2項が根拠となる)。この更正の登記は、登記原因を「遺産分割」としてBが単独で申請することができる(民事局長通達令和5年3月28日民二538号)。

3 あること証明とないこと証明

 不動産登記法76条の3が定める手続。

 相続人申告登記という言葉が法文に出てくるか?

  同条の法文において言葉そのものが現われるものではないが、同条が主題とする登記は、おおづかみに相続人申告登記とよばれる。

 相続人を網羅的に知ることができる登記ではないけれども、相続人申告登記により、相続開始の事実に加え、誰が相続人であるか全く判明していないものではない、という状態が登記上形成される。このような登記の状態は、相続人申告登記が簡易な手続による申出によりされるから、迅速な実現も期待される。

  • 法定相続分による登記をする場合と何が異なるか?

 ほかに相続人がない事実を戸籍上証明することは不要。

 相続人申告登記をして申告人として付記登記をされた者は、氏名や住所が変更した場合において、付記登記の変更の申出をすることができる。できるけれども、しなくてもよい。

4 新しい不動産登記法164条の2つの項

 過料は、金銭罰であり、その点では罰金や科料と似る。しかし、罰金や科料は、刑事罰であり、これらに処する裁判は、刑事訴訟法に従い行なわれる。

  • 過料って何?

 秩序罰であるということの意義は、行政施策の達成が妨げられ、しかも、違反行為を罰しないことにより、その施策の遂行に係る規律が実質的に損なわれることにある。相続登記の義務づけも、不動産登記行政を的確に執行し、登記簿に適時、的確に権利関係が公示される成果の確保に趣旨が見出される。

 不動産登記法164条1項は、正当な理由がある場合において過料を科さないとしており、そこにいう正当な理由も、それがあるときに控えられる過料の秩序罰としての性格を踏まえ、その存否が見定められる。

  • いきなり、とはならない

 まず、相続登記が義務づけられたところに従い履践されていない事案を認知した登記官は、申請の義務を負う者に対し相続登記の申請の履践を促す。この促す過程を省いて短兵急に過料の制裁を要請することは、適正な手続と見ることはできない(不動産登記規則187条1号参照)。

不動産登記規則(裁判所への通知)

第百八十七条 登記官は、次の各号に掲げる場合には、遅滞なく、管轄地方裁判所にその事件を通知しなければならない。

一 法第百六十四条の規定により過料に処せられるべき者があることを職務上知ったとき(登記官が法第七十六条の二第一項若しくは第二項又は第七十六条の三第四項の規定による申請をすべき義務に違反した者に対し相当の期間を定めてその申請をすべき旨を催告したにもかかわらず、その期間内にその申請がされないときに限る。

 もちろん、これらの場合であっても、それぞれの困難がなくなったと認められる段階において相続登記をすべきであり、いったん正当な理由があるとされる事案が、事態の推移にかかわりなくずっと正当な理由があるとされるものではない。申請人が重篤な疾病に悩まされている場合などにおいて、やむをえない事情があるものとして、過料に処さない解決が望まれるが、これも、申請人の疾病が治癒した後に登記申請を促す手順が想定される。

  • 個人の便宜を口実にされても困る

余命が小さいとみられる相続人が死亡する時を待って登記をしようとしている間に3年を経たという事例は、正当な理由があるとはみられない。登記を困難にしている事情が何ら存しないからである。

  • 謙抑的な運用という基本精神

「3年経過時の過料の対象の時点で例えば重病であった、正当事由があった場合に、その重病であった状態を脱して、要するに病気が治癒した場合について、3年前は正当事由で過料は免れました、4年後に病気は治っていましたというときに、果たしてそれは遡ってまた義務や過料の対象になるのか、3年前に病気であればもうその後も過料は免れるような形になるのか、このようなところも非常に曖昧であるというふうに問題意識を持っておりますので、この辺り、やはり公平性を持った形で今後の議論がされることを切望しておりますし、我々も今後、引き続き問題意識を発言していきたいというふうに思っております」(阿部健太郎・発言・参議院法務委員会、2021415日)。

https://kokkai.ndl.go.jp/simple/detail?minId=120415206X00820210415

 過料は刑事罰でないから、刑法の諸理論・・・罪数を厳密に用いるということにならない。とはいえ、50筆の土地を有していて死亡した者があるとき、3年を経ると500万円の過料を科することは、いかにも機械的である。また、3年を経て10万円をいったん科せられた者が、それでも依然として登記をしない場合において、再び10万円を科する扱いは、適正手続の観点に照らし、理論的にも検討課題が残る。

第3 相続登記の実務

アドバイザーとしての司法書士

1 いずれを勧めるか――76条の2の第1項と第2項

2 いずれを勧めるか――76 条の2 と76 条の3

法務省のウェブサイトを御自分で見てみて、そのうえで御来訪ください、と案内する手順は、ひとつの工夫であるかもしれない。

 登記の手続登記の態様B による不動産の処分の登記B の住所が変更したならば
B・C・D の法定相続分による登記単独申請 戸籍の “ないこと証明”主登記 持分が登記される。B の持分の処分の登記が可能。住所の変更の登記が義務づけられる。
B を申告人とする相続人申告登記申出→職権 戸籍の “あること証明”付記登記 持分が登記されない。依然として登記名義人はA。できる。 しなくてもよい。

第2講 「相続登記申請義務化と相続人申告登記の概要」

講師 法務省民事局民事第二課長 大谷太

相続人申告登記

 法定相続情報番号(法定相続情報一覧図の番号)を提出すれば、戸籍謄本の添付は不要。不動産登記規則37条の3

 不動産登記規則158条の2第1項8号、第158条の3、158条の5、158条の8(不動産登記令12条、電子証明書不要)、158条の9、158条の10(不動産登記令16条)、158条の19(追加的記載事項)、158条の20(添付情報の省略)、

第3講 相続登記の申請義務化と司法書士業務について 個別テーマ一覧

  • 法制審議会での相続登記義務づけ議論について

 調査をすれば分かる、というのは司法書士の言い分。

 登記記録から所有者が分かる、ということが大切。

今後が大切。

  • 申請義務化が適用された場合、司法書士業務はどのように変化するか

 登記情報を最新に保つ使命・・・所有権については。  

3.いわゆる二段の申請義務が発生する場合はどのようなときか

4.相続人申告登記をする場合は、どのようなときか

・・・相続人申告登記は司法書士発(山野目章夫教授。初めて知りました。

持分を取得した分ではないことを説明する必要。

・・・付記1号の付記1号相続人申告登記も可能か。相続人申告登記を申請した相続人が亡くなった場合。

5.相続登記の申請の義務が免れる場合と過料の適用はどのようになるか

6.国庫帰属制度にどのように対応していくのか

7.登記事項のいくつかの変更

法人識別事項・国内連絡先

所有権登記名義人の旧姓併記

外国人が所有権の登記名義人となる場合のローマ字併記

DV被害者等の保護のための住所の代替措置

8.外国に住所を有する外国人等の住所証明情報の取扱いについて

9.遺産分割協議への関与はどのようにすべきか

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