四谷 司法書士総合研究所 面談

11月8日、東京まで日帰りで行ってきました。

羽田空港からいつも通り電車でおろおろした後に四ツ谷駅で降りて、

司法書士会館で面談です。

面談を受けると、登録研究員という者になることができます。

去年は地域ごとにやるということで福岡でした。今年は東京だったので何故なんだろうと聞いたら、西日本で立候補する人がいなかった、ということでした。

納得。

研究テーマは、プログラミングを勉強して司法書士業務に関するアプリケーションを作成する、というようなものです。

研究所の人「具体的にどんなものを作るのですか。」

僕「まだ決まっていないのですが、法定後見の申立て書・財産目録の作成、任意後見契約書の作成など、ある程度様式が決まっている書類の作成を考えています。」

研究所の人「プログラミングの素養とかはあるのですか。」

僕「ないです。7月から勉強を始めました。」

研究所の人「来年の3月末までに報告をお願いします。」

僕「はい。」

研究所の人「なぜやろうと思ったのですか。」

僕「司法書士自身がやっているのは、僕が知る限りいないからです。大きい法人だとエンジニアを入れてやっているところもあると思います。期限を切って進めて、駄目だったら止めようと思います。」

ということで、概ね応援されているような雰囲気で終わりました。

研究所の人も司法書士です。恐らく先輩です。自信の業務もある中、面談などに時間を割いていただき、ありがとうございました。

緊急ではない投稿が流れてきました。

このような文章が流れてきました。以下、全文です。気になるところは私が下線を引いています。

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-緊急寄稿-信託に関わる裁判判例について

信託法が改正されて12年、商事信託ではない信託いわゆる「民事信託、家族信託®、親愛信託®」と呼ばれるものの普及が広がってきています。認知症対策や事業承継の手段や不動産管理や売買の場面などで、これまでの民法のしくみでは解決できなかったものを解決できる素晴らしい仕組みとして活用されています。

そのような素晴らしい仕組みであるにもかかわらず、普及が遅いのにはいくつか理由がありますが、その一つに判例が少ないということと、裁判所がどのような判断をするのかがわからないということで、敬遠している専門家が多くいるということだと思います。

信託法は、民法などの大陸法とは違い英米法に基づいて作られたものです。日本人にはあまりなじみのないもので、改正後の信託法の解釈についても定まっていない部分も多くあるのも事実です。

英米法は、法律では最低限のことが決められており、あとはその法律を使って、事案に応じて判例を重ねていき自分達の使いやすい法律に一般市民が作っていくような形になります。昨年の9月に裁判があり、判決が出ました。その後に控訴されているにもかかわらずいろいろな噂が飛び交い、当事者ではない方がその判決を解説するセミナーが行われるようなこともあり、誤解も多くあるようで、金融機関や専門家などに影響を与えていました。

実際その判決が出たのちに、「やはり信託は不安定なので、関わるのは辞めよう」という専門家の声も聞かれました。この度、この裁判は和解により終結したとの情報を、この件に関係していた司法書士の河合保弘氏から得ましたので、早い段階で皆さんに正しい情報を知ってもらうために緊急情報として寄稿することになりました。

そもそも今回の訴訟は「遺留分減殺請求訴訟」と思っている方もいらっしゃるようですが、そのこと自体が間違いで、そうではなく「信託契約及び死因贈与契約無効確認訴訟」だということです。

一審判決では、信託契約及び死因贈与契約は全て有効、ただし信託契約の対象財産の一部分(収益を生まないと判断された自宅不動産)に限り、「遺留分潜脱目的で民法90条により公序良俗違反」との理由で、自宅不動産を対象とした部分のみの信託契約を無効と判断しました。

そしてこの判決には、原告、被告の双方が、納得がいかずに、双方控訴しています。原告は信託契約自体を無効にしたかったわけですし、被告はすべて有効と主張しており、当たり前のことですが、自宅部分のみ無効とするのは当事者ではなくてもしっくり納得できませんので、当事者としてはなおさらです。自宅も十分不動産としての価値はあり、当然売却すれば金銭に変わりますし、通常の相続でも自宅を含めて遺産分割協議をするわけですので、自宅だけが収益を生まないという理由のみで無効になるのは非常に理解に苦しむところです。

そのあとに高等裁判所にて、原告被告共に信託及び死因贈与契約を有効と認めた上で、原告に割り当てられた信託受益権割合につき、被告が時価で買い取り、信託財産以外の財産については死因贈与契約に対応する遺留分相当割合の金銭を被告が原告に支払う、と概ねこのような内容で和解となったようです。

また、この判決では、一審判決では公序良俗違反を理由としたものの、控訴審では一審判決の維持は困難と考えられることもあったのではないかと思われます。高裁は信託に関する判断を回避し、当事者双方も実利を取る選択をしたものだとも言える結果になったと思います。

この判決で、わかることは信託契約自体が無効にすることは非常に難しいということです。

そして、表面上で「遺留分侵害」をしている信託契約だったとしてもその契約自体が無効になるわけではなく、受益権に対しての遺留分請求の可否が今後の裁判で判断されることになるということです。

今回の裁判の内容を、解説用に大きくデフォルメして以下に示します。

・家族関係→父(信託委託者)、長男(原告)、次男(被告)、長女

父の世話は全て次男と長女がしており、自宅及び収益不動産の管理等も全て「跡継ぎ」である次男が担当し、長男は次男と長女に対して決して協力的ではなかった。

・財産→広大な自宅(仮に時価2億円とする)、収益不動産(同、4億円とする)、その他の財産(同、6000万円とする)。

・契約の経緯→父は胃癌の末期状態であると診断され、遺言書の作成を考えた際、信託銀行による遺言書作成と司法書士法人による信託契約を比較検討した上で信託契約を選択、その際に司法書士より信託財産以外に関しての死因贈与契約を合わせて薦められる。

信託及び死因贈与契約書は面談当日に私文書にて作成、数日後に公証人に病床に出張してもらい、宣誓認証を実施。

信託契約(不動産など主要財産が対象)→父(委託者兼当初受益者)、次男(受託者)、二次受益者は次男6分の4、長女及び長男各6分の1、三次受益者は次男の子が全部取得。

・死因贈与契約→不動産部分については信託と同様の取得割合(信託契約と内容重複)、

その他財産部分については次男3分の2、長女3分の1の割合で取得

・一審判決

→自宅不動産部分の信託契約のみ無効で、他の契約は全て有効。

自宅不動産部分については死因贈与契約の有効性を認め、信託登記を抹消し、長男の共有持分登記を求める。

収益不動産部分については信託契約を有効と認め、特に変更を求めない。

その他財産の部分については遺留分相当の金銭給付を求める。

・判決への疑問

1、全体として有効に成立した契約の一部分を「公序良俗無効」と断定する理論が構築されていない。

→民法90条の適用については相当に限定されており、「遺留分潜脱目的」を公序良俗違反と判断することには無理があり、一般的な遺言制度との比較(遺留分権者を完全に外した遺言も無効とはならない)からも、解釈の濫用と考える法律家が多かった。

2、自宅不動産は直ちに直接的な収益を生まないものの、不動産自体の価値は高く、かつ換価性もあり、「無価値な財産」とは言えない。

→実際に自宅を取り壊して有効活用する予定が以前からあったが、信託無効判決により、かえって受託者である次男が有効活用の判断をすることができなくなった。

3、原告にとっても信託無効部分の共有持分登記名義を得るだけで、直接的な利益が何もなく、かつ信託有効部分については原告死亡によって受益権が次男の子に移動することになり、訴訟した意味を為さない。

→死因贈与契約有効により、結果的に原告は遺留分相当割合を超える財産の取得が確定的に不可能となった。

・和解内容

→信託契約、死因贈与契約有効により、全ての不動産の受益権は次男6分の4、長女及び長男各6分の1を取得、その他財産は次男3分の2(4000万円)、長女3分の1(2000万円)の割合で取得。

和解により、長男の受益権6分の1相当を時価1億円で次男が買い取り、遺留分給付として次男が長男に1000万円支払う。

結局のところ、信託と遺留分の関係については一切判断の対象とされず、結論は今後の訴訟に委ねられたということです。

この裁判の他にも信託契約についての訴訟を2件ほど紹介します。

※東京地裁H30.10.23判決(控訴なく確定)

【信託契約無効確認訴訟】→親子間で締結された信託契約につき、錯誤無効、詐欺取消、目的不達成による信託終了、委託者及び受益者による終了を受託者が容認した等の主張をもって無きものにすべく親側が提訴。

・原告側の事情→当初は被告であり受託者である子を信頼していたが、他の子(養子2名)からの突き上げがあったのか、被告を信頼できないと考えるようになり、契約の無効や取消を図ったものと考えられる。

また、被告も養子の一人と暴力沙汰を引き起こして逮捕勾留されたことがあるなど、性格的に多少の問題がある人物であった。

・判決→原告の主張を全て認めず、信託契約は有効であると判断。

すなわち、一度有効に締結された信託契約は、事後に各種の事情変更や委託者側の変心、受託者の個人的非行等があったとしても、容易には覆せないことが証明された判決と言える。

※東京地裁H31.1.25判決(未確定)

・株式管理処分信託契約有効確認訴訟

→委託者被告妹、受託者原告兄の間で締結された、香港所在の外国会社株式を対象とする信託契約につき、兄が妹に対して信託契約の有効性を確認する訴訟を提起し、妹側は錯誤無効、別段の定めに関しての公序良俗違反による無効や合意管轄違反等を主張して対立している事案。

・判決

→被告の主張を全て認めず、信託契約は有効であると判断。

裁判所は、信託法において別段の定めが許されている部分などを明確に有効であると判示し、信託契約の効力が強力であることが、改めて証明された判決と言える。

・評価

→信託契約を死因贈与契約(民法554条により遺贈と見做される)と類似と見て、信託を相続と同等と考える学説があったが、一連の判決によって、信託契約は一方的には取り消すことができず、一方的な取消が可能な死因贈与契約と類似ではない(=相続ではない)との考えが明確になった。

今後も判決が相次ぐことが予想されますが、少なくとも信託契約が遺言や死因贈与とは異なり、片方の当事者から一方的に解除できるものではない、極めて強い効力を持つ契約であるということを裁判所が保証したということになるのではないかと思われ、今後ますます信託の普及が進むことは間違いないでしょう。

協同組合親愛トラスト

   代表 松尾陽子

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以上、全文です。

私見

1、判決文について

・一般の方向けなのかもしれませんが、もし専門家向けなら判決全文を掲載した方が良いのではないかと感じます。

2、「民事信託、家族信託®、親愛信託®」と呼ばれるものの普及が広がってきています。 について

・親愛信託という言葉は、少なくとも実務で私は聞いたことがありません。

3、そもそも今回の訴訟は「遺留分減殺請求訴訟」と思っている方もいらっしゃるようですが、そのこと自体が間違いで、そうではなく「信託契約及び死因贈与契約無効確認訴訟」だということです。

共有権確認等請求事件と記載があります(登記情報687号、P64)。

4、原告は信託契約自体を無効にしたかったわけですし、被告はすべて有効と主張しており、当たり前のことですが、自宅部分のみ無効とするのは当事者ではなくてもしっくり納得できませんので、当事者としてはなおさらです。自宅も十分不動産としての価値はあり、当然売却すれば金銭に変わりますし、通常の相続でも自宅を含めて遺産分割協議をするわけですので、自宅だけが収益を生まないという理由のみで無効になるのは非常に理解に苦しむところです。

自宅部分の受益権を無効にしたのは、理由付けは裁判官それぞれだと思いますが、自由心証(民事訴訟法247条)の範囲だと感じました。結果に対しては妥当だと感じました。

5、この判決で、わかることは信託契約自体が無効にすることは非常に難しいということです。

私には分かりませんでした。信託契約の一部取り消しというのは、判決文としては、結果的にそう書かざるを得ないのではないか、と思いました。何故かというと、不動産登記の問題があるからです。不動産登記は信託契約につき1度の登記ではなくて、不動産1個につき1件の登記です。1つの信託契約について13件の不動産登記を申請することもあります。よって、実質は一部の受益権について無効と判断しても、信託契約の一部取り消しと読めてしまうような判決文になるのではないかと考えます。

6、そして、表面上で「遺留分侵害」をしている信託契約だったとしてもその契約自体が無効になるわけではなく、受益権に対しての遺留分請求の可否が今後の裁判で判断されることになるということです。

同意です。ただし、書籍などで以前から受益権説の方が優位だったのではないかと思います。今回の訴訟で明らかになったのは、受益権説で判断する裁判官がいる、という事実が1つ積みあがった、ということだと思います。

7、・和解内容

妥当だと感じます。

8.→信託契約を死因贈与契約(民法554条により遺贈と見做される)と類似と見て、信託を相続と同等と考える学説があったが、一連の判決によって、信託契約は一方的には取り消すことができず、一方的な取消が可能な死因贈与契約と類似ではない(=相続ではない)との考えが明確になった。

今後も判決が相次ぐことが予想されますが、少なくとも信託契約が遺言や死因贈与とは異なり、片方の当事者から一方的に解除できるものではない、極めて強い効力を持つ契約であるということを裁判所が保証したということになるのではないかと思われ、今後ますます信託の普及が進むことは間違いないでしょう。

一連の判決によって、信託契約は一方的には取り消すことができず、一方的な取消が可能な死因贈与契約と類似ではない(=相続ではない)との考えが明確になった、とはいえないと思います。また裁判所が保証したということにはならないと思います。

信託法上(163条から166条)でも信託契約の中に一方的な終了を認めることが保証されています。どちらかというと、今後受託者の損害補償などが争いになるような気がします。

以上

追加信託について

追加信託について

民事信託実務研究会のメールマガジン記事(2019/08/02、2019/08/23)から、少し考えてみたいと思います。

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引用

おはようございます。

民事信託実務講座メルマガです。

本日は、私、鳥取の谷口がお送りしますね。

民事信託契約書を作成する中で、必ずといっていいほど盛り込むのは、追加信託の条項です。

信託が開始した後になって、追加で、別の財産を信託する必要性が生まれた場合に、この条項が生きてきます。

しかし、追加信託という言葉、気軽に使ってはいるものの、結構、難しいところもあるのです。

追加信託という言葉は、信託法に規定がありません。

信託法の原則では、1回1回契約するたびに、別個の信託が新しく組成されるという規定ぶりになっています。

1度成立した信託に、後から財産を追加するような規定は、法律のどこを読んでも存在しません。

引用終

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私の考えは少し違います。

追加信託の条項は、必ずといっていいほど盛り込む条項ではないし、信託が開始した後になって、追加で、別の財産を信託する必要性が生まれた場合に、この条項が生きてくるとは考えていません。

なぜなら、記事の中にもあるように、信託法に規定がないからです。信託法、民法その他の法律に規定がない条項は、あってもなくても良いと考えています。

 ただし、私が作成する信託契約書には追加信託の条項が出てきます。何故かというと、追加信託する権利を委託者から受益者に移転するためです(信託法145条、同法146条)。

 この条項は、委託者や受益者に法定後見人や任意後見人が就いた場合、受益差に受益者代理人が就いた場合、第2次受益者が現れた場合に活用するために導入しています。

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引用

しかし、昔から実務上、追加信託は普通に行われてきました。

そうでないと、投資信託で次から次へとお客さんが新たに投資していくような行為を説明できませんね。

このような追加信託を、理屈上、どのように説明するのか。

1つの説明の仕方は、「新たな信託の設定と併合を黙示のうちに行うものだ」という考え方です。

1000万円の金銭信託があって、さらに1000万円を追加信託して2000万円の信託にします。

この場合、今までの1000万円の信託が存在して、次に、別個の1000万円の信託が新たに組成されます。

そして、この2つの信託は、一瞬だけ、別々に存在したかと思うと、すぐに合体して1つの信託になってしまう、という考え方です。

他の説明の仕方は、「信託財産を変更するという信託の変更の一種である」という考え方です。

今までの信託は、1000万円を元本とするものだった。

これを合意により変更し、2000万円を元本とするという信託の変更をする。

いずれの説明の仕方を取るにせよ、追加信託は、信託財産を大きく増やします。

そうすると、受託者の責任も重たくなりますし、委託者から受託者への財産の所有権の移転も起きます。

従って、委託者と受託者が明確に合意した上でないと、追加信託という重大な行為は危険であると考えられます。

引用終

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 追加信託の理屈に関する私の理解は、信託行為毎に異なる、というものです。それが不動産であれば、原則として新たな信託の設定(不動産登記法97条、同条98条、不動産登記規則176条)となります。しかし、信託設定時に予め追加で信託する予定の不動産として信託契約書に記載しておけば、理屈の上では信託の変更となります。

 また、当初の信託財産と追加で信託するお金の割合、受益者の固有財産と追加で信託する財産の割合、受託者と受益者、推定相続人、遺言を書いているなら遺言との関係など、関連性の中で決まってくると考えます。

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引用

最近、他の方が作った信託契約書の案を拝見するにつけ、下記のような内容が増えてきたと感じます。

1 委託者は、本件信託財産に金銭を追加信託することができる。

2 前項の追加信託をする場合、委託者は、受託者指定の銀行口座への入金により行うものとし、当該入金の事実をもって追加信託の合意があったものとする。

3 受託者は、前項の入金を受けとたきは速やかに追加信託を受けた旨の書面を委託者に対し交付する。

しかしながら、私は、このような案は望ましくないと考えています。

まず、このような案は、委託者と受託者の合意がなくても追加信託が可能になっています。

委託者が受託者の銀行口座に入金すれば、合意があったものとみなすという規定ぶりは、強引であると考えます。

合意がないにもかかわらず、合意があったものとみなすというのは、危険ではないでしょうか。

例えば、受託者が知らないうちに、委託者が1000万円を口座に振り込んでいた。

受託者も知らないうちに、自分が管理処分すべき財産が増え、責任も加重されてしまう。

ちょっと乱暴ですね。

そして、もしも受託者が入金の事実に気づかないうちに、信託の終了事由が発生したら、どうなってしまうのでしょう。

この追加信託は有効に成立した上で、信託は終了して清算手続に組み入れられるのでしょうか?

それとも、受託者が気づいておらず、実体は合意が成立していないので、追加信託は成立しないで、清算手続から除外されるのでしょうか?

このような疑問が生ずる、不安定な法律関係を招来します。

従って、追加信託をする際には、必ず、委託者と受託者が明確な合意をした後に行うべきだ、と考えています。

追加信託を、ATMに入出金する時のように気軽にとらえると、思わぬトラブルを招来することになるかもしれないので、注意しましょう。

引用終

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追加信託について、委託者と受託者の合意は必須か。これに対する私の考えは、信託行為毎に変わる、です。

 

委託者(私の場合は受益者)の合意が必要な信託行為(追加信託)もあれば、必要のないものもあると思います。

 

必要な例としては、追加信託が予定されていない不動産の追加信託。

必要のないものとしては、信託設定時に定められている受益者の自宅のバリアフリー化に伴う工事が挙げられます。

 

 

渋谷陽一郎「受益者の登記とは何か」×谷口毅「権利能力なき社団を当事者とする信託」

渋谷陽一郎「受益者の登記とは何か」×谷口毅「権利能力なき社団を当事者とする信託」

谷口毅司法書士の「権利能力なき社団を当事者とする信託」 を読んだ際、このような方法があるんだな、税金上の対策だと思うけどよく考えついたな、条文を読んでも確かに書いてあるな、と感じていました。

ただ今回、渋谷陽一郎「受益者の登記とは何か」を読んで、自分に欠けている点を見つけた。
それは、改めて通達や登記の歴史について勉強し、ちょっと気にかかるときに調べて自分の目で、頭で100%の納得を得ようとする姿勢。

谷口司法書士の事例は、地縁団体ではない権利能力なき社団が委託者兼受益者となり、信託目録の記録のうち、受益者の欄を「受益者を定める方法の定め 」とするもので、これにより代表者に課されていた健康保険料が軽くなり、委任の終了を原因と所有権移転登記をせずによくなる。
一般社団法人や認可地縁団体を設立して法人に不動産の所有権を移転するよりも登録免許税が5分の1に抑えられ、不動産取得税、譲渡取得税が原則として課されない。

谷口司法書士の受益者欄の記載に関する部分を引用
―今回は、委託者兼受益者である権利能力なき社団が受託者に通知することで、信託目録に記録すべき受益者を変更できる、という旨の定めを置いた(不動産登記法97条1項2号)。この定めを「受益者を定める方法の定め」として信託目録に記録し、具体的な受益者の住所氏名を公示しないことが可能となった。―

なぜか鉛筆でバツが付いているが、記憶がない。
渋谷陽一郎「受益者の登記とは何か」 では、旧信託法との関係、登記先例、立法担当者の説、有力な学説、受益者の法的意味の歴史的な変化について解説がされている。
私なりにまとめると、次のようになる。
1 旧信託法との関係では、信託登記の抹消申請に影響するので、信託原簿には受益者の住所・氏名が記載されている必要があった。旧法の均衡。
2 登記先例によれば、受益者には登記能力を要する、としている。
3 近年の実務において、商業登記において取締役の本人確認が出来る情報が必要になった ことと、受益者の特定をしないで登記することとの均衡
4 現在の信託法は、改正前と比べて明らかに受益者の地位を強化していること 。
5 香川保一元最高裁判事の考えは、原則として特定可能な受益者を登記する義務がある。例外として、具体的な受益者が定まっていない場合は一時的な処置として「受益者を定める方法の定め」を登記することが可能だが、特定可能になった段階で受益者変更登記が必要。

6 立法担当者の見解は条文通りに「受益者を定める方法の定め」を登記することが可能であるし、変更は受託者または受益者の任意。

7 不動産登記実務研究会は、5の考えに近い

8 改正不動産登記法の立案担当者によれば、受益者を定める方法の定めを登記している場合、後で受益者を特定することが出来たと、受益者の住所氏名等を「併せて」登記しても「差し支えない」。

1から8までを読み、考えた上で私が谷口司法書士なら次のようにします。
受益者欄には、「委託者兼受益者である権利能力なき社団が受託者に通知することで、信託目録に記録すべき受益者を変更できる」と定め、信託契約に賃料を受け取っている人全員の氏名住所を記録する 。
受益者が変わる度、受益者変更登記を行う。

信託を利用することによって、代表者の健康保険料が高額な問題と代表者の変更による所有権移転登記(登録免許税)、不動産の買取資金の負担はすでに解消されています。

不動産取得税、譲渡取得税については税務判断なので詳しい記載は控えますが、事実関係を読む限りでは、これらの税は課されないのではないか、課されるとしても、受け取っている賃料と比較したとき過大な請求にはならないのではないかと思っています。

以上、渋谷先生の記事を読んで色々と考えることを書きましたが、私が今回一番気になったのは、谷口司法書士のような登記をしてしまうと、登記が登録に近づいていくのではないか、というところです。
 どうせ登記には方法しか書かれていないし、その方法にしても読んだだけでは分からない、だったら登記なんで意味がない、まぁ登録のようなもので埋めておけば良い、ということになると自分の首を絞める結果になるのかな、と考えます。

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