民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)の改正等に関する要綱案

民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)の改正等に関する要綱案

http://www.moj.go.jp/shingi1/housei02_00302.html

目次

第1部 民法等の見直し ……………………………………………….. 1

第1 相隣関係 ……………………………………………………….. 1

隣地使用権 ……………………………………………………… 1

竹木の枝の切除等 ………………………………………………… 1

継続的給付を受けるための設備設置権及び設備使用権 ……………………. 1

第2 共有等 …………………………………………………………. 2

共有物を使用する共有者と他の共有者との関係等 ……………………….. 2

共有物の変更行為 ………………………………………………… 2

共有物の管理 ……………………………………………………. 3

共有物の管理者 ………………………………………………….. 3

変更・管理の決定の裁判の手続 ……………………………………… 4

裁判による共有物分割 …………………………………………….. 4

相続財産に属する共有物の分割の特則 ………………………………… 5

所在等不明共有者の持分の取得 ……………………………………… 5

所在等不明共有者の持分の譲渡 ……………………………………… 6

相続財産についての共有に関する規定の適用関係 ……………………… 7

第3 所有者不明土地管理命令等 ………………………………………… 7

1 所有者不明土地管理命令及び所有者不明建物管理命令 …………………… 7

(1) 所有者不明土地管理命令 ………………………………………… 7

(2) 所有者不明土地管理人の権限 …………………………………….. 8

(3) 所有者不明土地等に関する訴えの取扱い ……………………………. 9

(4) 所有者不明土地管理人の義務 …………………………………….. 9

(5) 所有者不明土地管理人の解任及び辞任 ……………………………… 9

(6) 所有者不明土地管理人の報酬等 …………………………………… 9

(7) 所有者不明土地管理制度における供託等及び取消し …………………… 9

(8) 所有者不明建物管理命令 ……………………………………….. 10

2 管理不全土地管理命令及び管理不全建物管理命令 ……………………… 11

(1) 管理不全土地管理命令 …………………………………………. 11

(2) 管理不全土地管理人の権限 ……………………………………… 11

(3) 管理不全土地管理人の義務 ……………………………………… 12

(4) 管理不全土地管理人の解任及び辞任 ………………………………. 12

(5) 管理不全土地管理人の報酬等 ……………………………………. 12

(6) 管理不全土地管理制度における供託等及び取消し ……………………. 12

(7) 管理不全建物管理命令 …………………………………………. 12

第4 相続等 ………………………………………………………… 13

相続財産等の管理 ……………………………………………….. 13

(1) 相続財産の管理 ………………………………………………. 13

(2) 相続の放棄をした者による管理 ………………………………….. 13

(3) 不在者財産管理制度及び相続財産管理制度における供託等及び取消し……. 13

相続財産の清算 …………………………………………………. 14

(1) 相続財産の清算人への名称の変更 ………………………………… 14

(2) 民法第952条以下の清算手続の合理化 …………………………… 14

遺産分割に関する見直し ………………………………………….. 14

(1) 期間経過後の遺産の分割における相続分 …………………………… 14

(2) 遺産の分割の調停又は審判の申立ての取下げ ……………………….. 14

(3) 遺産の分割の禁止 …………………………………………….. 15

第2部 不動産登記法等の見直し ……………………………………….. 16

第1 所有権の登記名義人に係る相続の発生を不動産登記に反映させるための仕組み. 16

1 相続登記等の申請の義務付け及び登記手続の簡略化 ……………………. 16

(1) 所有権の登記名義人が死亡した場合における登記の申請の義務付け……… 16

(2) 相続登記等の申請義務違反の効果 ………………………………… 16

(3) 相続人申告登記(仮称)の創設 ………………………………….. 17

(4) 遺贈による所有権の移転の登記手続の簡略化 ……………………….. 17

(5) 法定相続分での相続登記がされた場合における登記手続の簡略化……….. 17

2 権利能力を有しないこととなったと認めるべき所有権の登記名義人についての符号

の表示 …………………………………………………………. 18

第2 所有権の登記名義人の氏名又は名称及び住所の情報の更新を図るための仕組み. 18

1 氏名又は名称及び住所の変更の登記の申請の義務付け ………………….. 18

2 登記所が氏名又は名称及び住所の変更情報を不動産登記に反映させるための仕組み

………………………………………………………………… 18

第3 登記所が他の公的機関から所有権の登記名義人の死亡情報や氏名又は名称及び住所

の変更情報を取得するための仕組み ………………………………….. 18

第4 登記義務者の所在が知れない場合等における登記手続の簡略化…………… 19

1 登記義務者の所在が知れない場合の一定の登記の抹消手続の簡略化……….. 19

2 解散した法人の担保権に関する登記の抹消手続の簡略化 ………………… 19

第5 その他の見直し事項 …………………………………………….. 20

1 登記名義人の特定に係る登記事項の見直し …………………………… 20

2 外国に住所を有する登記名義人の所在を把握するための方策 …………….. 20

(1) 国内における連絡先となる者の登記 ………………………………. 20

(2) 外国に住所を有する外国人についての住所証明情報の見直し…………… 20

3 附属書類の閲覧制度の見直し ……………………………………… 20

4 所有不動産記録証明制度(仮称)の創設 …………………………….. 21

5 被害者保護のための住所情報の公開の見直し …………………………. 21

第3部 土地所有権の国庫への帰属の承認等に関する制度の創設 ………………. 23

第4部 その他 ……………………………………………………… 26

第1部 民法等の見直し

第1 相隣関係

隣地使用権

民法第209条の規律を次のように改めるものとする。

① 土地の所有者は、次に掲げる目的のため必要な範囲内で、隣地を使用することができる。ただし、住家については、その居住者の承諾がなければ、立ち入ることはできない。

ア 境界又はその付近における障壁、建物その他の工作物の築造、収去又は修繕

イ 境界標の調査又は境界に関する測量

ウ 2③の規律による枝の切取り

② ①の場合には、使用の日時、場所及び方法は、隣地の所有者及び隣地を現に使用している者(③及び④において「隣地使用者」という。)のために損害が最も少ないものを選ばなければならない。

①の規律により隣地を使用する者は、あらかじめ、その目的、日時、場所及び方法を隣地の所有者及び隣地使用者に通知しなければならない。ただし、あらかじめ通知することが困難なときは、使用を開始した後、遅滞なく、通知することをもって足りる。

④ ①の場合において、隣地の所有者又は隣地使用者が損害を受けたときは、その償金を請求することができる。

 竹木の枝の切除等

民法第233条第1項の規律を次のように改めるものとする。

① 土地の所有者は、隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは、その竹木の所有者に、その枝を切除させることができる。

② ①の場合において、竹木が数人の共有に属するときは、各共有者は、その枝を切り取ることができる。

③ ①の場合において、次に掲げるときは、土地の所有者は、その枝を切り取ることができる。

ア 竹木の所有者に枝を切除するよう催告したにもかかわらず、竹木の所有者が相当の期間内に切除しないとき。

イ 竹木の所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき。

ウ 急迫の事情があるとき。

継続的給付を受けるための設備設置権及び設備使用権

継続的給付を受けるための設備設置権及び設備使用権について、次のような規律を設けるものとする。

① 土地の所有者は、他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用しなければ電気、ガス又は水道水の供給その他これらに類する継続的給付(以下①及び⑧において「継続的給付」という。)を受けることができないときは、継続的給付を受けるため必要な範囲内で、他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用することができる。

② ①の場合には、設備の設置又は使用の場所及び方法は、他の土地又は他人が所有する設備(③において「他の土地等」という。)のために損害が最も少ないものを選ばなければならない。

③ ①の規律により他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用する者は、あらかじめ、その目的、場所及び方法を他の土地等の所有者及び他の土地を現に使用している者に通知しなければならない。

④ ①の規律による権利を有する者は、①の規律により他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用するために当該他の土地又は当該他人が所有する設備がある土地を使用することができる。この場合においては、前記1の①ただし書及び②から④までの規律を準用する。

⑤ ①の規律により他の土地に設備を設置する者は、その土地の損害(④において準用する前記1の④に規律する損害を除く。)に対して償金を支払わなければならない。ただし、1年ごとにその償金を支払うことができる。

⑥ ①の規律により他人が所有する設備を使用する者は、その設備の使用を開始するために生じた損害に対して償金を支払わなければならない。

⑦ ①の規律により他人が所有する設備を使用する者は、その利益を受ける割合に応じて、その設置、改築、修繕及び維持に要する費用を負担しなければならない。

⑧ 分割によって他の土地に設備を設置しなければ継続的給付を受けることができない土地が生じたときは、その土地の所有者は、継続的給付を受けるため、他の分割者の所有地のみに設備を設置することができる。この場合においては、⑤の規律は、適用しない。

⑨ ⑧の規律は、土地の所有者がその土地の一部を譲り渡した場合について準用する。

第2 共有等

共有物を使用する共有者と他の共有者との関係等

共有物を使用する共有者と他の共有者との関係等について、次のような規律を設けるものとする。

① 共有物を使用する共有者は、別段の合意がある場合を除き、他の共有者に対し、自己の持分を超える使用の対価を償還する義務を負う。

② 共有者は、善良な管理者の注意をもって、共有物の使用をしなければならない。

共有物の変更行為

民法第251条の規律を次のように改めるものとする。

① 各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。②において同じ。)を加えることができない。

② 共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有者の請求により、当該他の共有者以外の他の共有者の同意を得て共有物に変更を加えることができる旨の裁判をすることができる。

共有物の管理

民法第252条の規律を次のように改めるものとする。

① 共有物の管理に関する事項(共有物に2①に規律する変更を加えるものを除く。②において同じ。)は、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。共有物を使用する共有者があるときも、同様とする。

② 裁判所は、次に掲げるときは、ア又はイに規律する他の共有者以外の共有者の請求により、当該他の共有者以外の共有者の持分の価格に従い、その過半数で共有物の管理に関する事項を決することができる旨の裁判をすることができる。

ア 共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき。

イ 共有者が他の共有者に対し相当の期間を定めて共有物の管理に関する事項を決することについて賛否を明らかにすべき旨を催告した場合において、当該他の共有者がその期間内に賛否を明らかにしないとき。

③ ①及び②の規律による決定が、共有者間の決定に基づいて共有物を使用する共有者に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない。

④ 共有者は、①から③までの規律により、共有物に、次のアからエまでに掲げる賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利(次のアからエまでにおいて「賃借権等」という。)であって、次のアからエまでに定める期間を超えないものを設定することができる。

ア 樹木の栽植又は伐採を目的とする山林の賃借権等 10年

イ 前号の賃借権等以外の土地の賃借権等 5年

ウ 建物の賃借権等 3年

エ 動産の賃借権等 6箇月

⑤ 各共有者は、①から④までの規律にかかわらず、保存行為をすることができる。

共有物の管理者

共有物の管理者について、次のような規律を設けるものとする。

① 共有者は、3の規律により、共有物を管理する者(②から⑤までにおいて「共有物の管理者」という。)を選任し、又は解任することができる。

②共有物の管理者は、共有物の管理に関する行為をすることができる。ただし、共有者の全員の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。③において同じ。)を加えることができない。

③ 共有物の管理者が共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有物の管理者の請求により、当該共有者以外の共有者の同意を得て共有物に変更を加えることができる旨の裁判をすることができる。

④ 共有物の管理者は、共有者が共有物の管理に関する事項を決した場合には、これに従ってその職務を行わなければならない。

⑤ ④の規律に違反して行った共有物の管理者の行為は、共有者に対してその効力を生じない。ただし、共有者は、これをもって善意の第三者に対抗することができない。

変更・管理の決定の裁判の手続

変更・管理の決定の裁判の手続について、次のような規律を設けるものとする。

① 裁判所は、次に掲げる事項を公告し、かつ、イの期間が経過しなければ、2②、3②ア及び4③の規律による裁判をすることができない。この場合において、イの期間は、1箇月を下ってはならない。

ア 当該財産についてこの裁判の申立てがあったこと。

イ 裁判所がこの裁判をすることについて異議があるときは、当該他の共有者等(2②の当該他の共有者、3②アの他の共有者又は4③の当該共有者をいう。)は一定の期間までにその旨の届出をすべきこと。

ウ イの届出がないときは、裁判所がこの裁判をすること。

② 裁判所は、次に掲げる事項を3②イの他の共有者に通知し、かつ、イの期間が経過しなければ、3②イの規律による裁判をすることができない。この場合において、イの期間は、1箇月を下ってはならない。

ア 当該財産についてこの裁判の申立てがあったこと。

イ 3②イの他の共有者は裁判所に対し一定の期間までに共有物の管理に関する事項を決することについて賛否を明らかにすべきこと。

ウ イの期間内に3②イの他の共有者が共有物の管理に関する事項を決することについて賛否を明らかにしないときは、裁判所がこの裁判をすること。

③ ②イの期間内に裁判所に対し共有物の管理に関する事項を決することについて賛否を明らかにした他の共有者があるときは、裁判所は、その者に係る3②イの規律による裁判をすることができない。

(注)これらの裁判に係る事件は当該裁判に係る財産の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に属するものとするなど、裁判所の手続に関しては所要の規定を整備する。

裁判による共有物分割民法第258条の規律を次のように改めるものとする。

① 共有物の分割について共有者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、その分割を裁判所に請求することができる。

② 裁判所は、次に掲げる方法により、共有物の分割を命ずることができる。

ア 共有物の現物を分割する方法

イ 共有者に債務を負担させて、他の共有者の持分の全部又は一部を取得させる方法

③ ②に規律する方法により共有物を分割することができないとき、又は分割によってその価格を著しく減少させるおそれがあるときは、裁判所は、その競売を命ずることができる。

④ 裁判所は、共有物の分割の裁判において、当事者に対して、金銭の支払、物の引渡し、登記義務の履行その他の給付を命ずることができる。

相続財産に属する共有物の分割の特則

相続財産に属する共有物の分割の特則について、次のような規律を設けるものとする。

① 共有物の全部又はその持分が相続財産に属する場合において、共同相続人間で当該共有物の全部又はその持分について遺産の分割をすべきときは、当該共有物又はその持分について6の規律による分割をすることができない。

② 共有物の持分が相続財産に属する場合において、相続開始の時から10年を経過したときは、①の規律にかかわらず、相続財産に属する共有物の持分についての規律による分割をすることができる。ただし、当該共有物の持分について遺産の分割の請求があった場合において、相続人が当該共有物の持分について6の規律による分割をすることに異議の申出をしたときは、この限りでない。

③ 相続人が②ただし書の申出をする場合には、当該申出は、当該相続人が6①の規律による請求を受けた裁判所から当該請求があった旨の通知を受けた日から2箇月以内に当該裁判所にしなければならない。

所在等不明共有者の持分の取得

所在等不明共有者の持分の取得について、次のような規律を設けるものとする。

(1) 要件等

① 不動産が数人の共有に属する場合において、共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有者の請

求により、その共有者に、当該他の共有者(以下「所在等不明共有者」という。)の持分を取得させる旨の裁判をすることができる。この場合において、請求をした共有者が2人以上あるときは、請求をした各共有者に、所在等不明共有者の持分を請求をした各共有者の持分の割合で按分してそれぞれ取得させる。

② ①の請求があった持分に係る不動産について6①の規律による請求又は遺産の分割の請求があり、かつ、所在等不明共有者以外の共有者が①の請求を受けた裁判所に①の裁判をすることについて異議がある旨の届出をしたときは、裁判所は、①の裁判をすることができない。

③ 所在等不明共有者の持分が相続財産に属する場合(共同相続人間で遺産の分割をすべき場合に限る。)において、相続開始の時から10年を経過していないときは、裁判所は、①の裁判をすることができない。

④ 共有者が所在等不明共有者の持分を取得したときは、所在等不明共有者は、当該共有者に対し、当該共有者が取得した持分の時価相当額の支払を請求することができる。

⑤ ①から④までの規律は、不動産の使用又は収益をする権利(所有権を除く。)が数人の共有に属する場合について準用する。

(2) 手続等

① 裁判所は、次に掲げる事項を公告し、かつ、イ、ウ及びオの期間が経過しなければ、(1)①の裁判をすることができない。この場合において、イ、ウ及びオの期間は、3箇月を下ってはならない。

ア 所在等不明共有者の持分について(1)①の裁判の申立てがあったこと。

イ 裁判所が(1)①の裁判をすることについて異議があるときは、所在等不明共有者は一定の期間までにその旨の届出をすべきこと。

ウ (1)②の異議の届出は、一定の期間までにすべきこと。

エ イ及びウの届出がないときは、裁判所が(1)①の裁判をすること。

オ (1)①の裁判の申立てがあった所在等不明共有者の持分について申立人以外の共有者が(1)①の裁判の申立てをするときは一定の期間内にその申立てをすべきこと。

② 裁判所は、①の公告をしたときは、遅滞なく、登記簿上その氏名又は名称が判明している共有者に対し、①(イを除く。)の規律により公告すべき事項を通知しなければならない。この通知は、通知を受ける者の登記簿上の住所又は事務所に宛てて発すれば足りる。

③ 裁判所は、①ウの異議の届出が①ウの期間を経過した後にされたときは、当該届出を却下しなければならない。

④ 裁判所は、(1)①の裁判をするには、申立人に対して、一定の期間内に、所在等不明共有者のために、裁判所が定める額の金銭を裁判所の指定する供託所に供託し、かつ、その旨を届け出るべきことを命じなければならない。この裁判に対しては、即時抗告をすることができる。

⑤ 裁判所は、申立人が④の規律による決定に従わないときは、その申立人の申立てを却下しなければならない。

⑥ (1)①の裁判の申立てを受けた裁判所が①の公告をした場合において、その申立てがあった所在等不明共有者の持分について申立人以外の共有者が①オの期間が経過した後に(1)①の裁判の申立てをしたときは、裁判所は、申立人以外の共有者による(1)①の裁判のその申立てを却下しなければならない。

(注)(1)①の裁判に係る事件は、当該裁判に係る不動産の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に属するものとするなど、裁判所の手続に関しては所要の規定を整備する。

所在等不明共有者の持分の譲渡

所在等不明共有者の持分の譲渡について、次のような規律を設けるものとする。

(1) 要件等

① 不動産が数人の共有に属する場合において、共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有者の請求により、その共有者に、当該他の共有者(以下「所在等不明共有者」という。)以外の共有者の全員が特定の者に対してその有する持分の全部を譲渡することを停止条件として所在等不明共有者の持分を当該特定の者に譲渡する権限を付与する旨の裁判をすることができる。

② 所在等不明共有者の持分が相続財産に属する場合(共同相続人間で遺産の分割をすべき場合に限る。)において、相続開始の時から10年を経過していないときは、裁判所は、①の裁判をすることができない。

③ ①の裁判により付与された権限に基づき共有者が所在等不明共有者の持分を第三者に譲渡したときは、所在等不明共有者は、譲渡をした共有者に対し、不動産の時価相当額を所在等不明共有者の持分に応じて按分して得た額の支払を請求することができる。

④ ①から③までの規律は、不動産の使用又は収益をする権利(所有権を除く。)が数人の共有に属する場合について準用する。

(2) 手続等

① 8(2)①ア、イ及びエ、④及び⑤の規律は、(1)①の裁判に係る事件について準用する。

② 所在等不明共有者の持分を譲渡する権限の付与の裁判の効力が生じた後2箇月以内にその裁判により権限に基づく所在等不明共有者の持分の譲渡の効力が生じないときは、その裁判は、その効力を失う。ただし、この期間は、裁判所において伸長することができる。

(注)(1)①の裁判に係る事件は、当該裁判に係る不動産の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に属するものとするなど、裁判所の手続に関しては所要の規定を整備する。

相続財産についての共有に関する規定の適用関係

相続財産についての共有に関する規定の適用関係について、次のような規律を設けるものとする。

相続財産について共有に関する規定を適用するときは、民法第900条から第902条までの規定により算定した相続分をもって各相続人の共有持分とする。

第3 所有者不明土地管理命令等

1 所有者不明土地管理命令及び所有者不明建物管理命令

所有者不明土地管理命令及び所有者不明建物管理命令について、次のような規律を設けるものとする。

(1) 所有者不明土地管理命令

① 裁判所は、所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない土地(土地が数人の共有に属する場合にあっては、共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない土地の共有持分)について、必要があると認めるときは、利害関係人の請求により、その請求に係る土地又は共有持分を対象として、所有者不明土地管理人(④の所有者不明土地管理人をいう。以下同じ。)による管理を命ずる処分(以下「所有者不明土地管理命令」という。)をすることができる。

② 所有者不明土地管理命令の効力は、当該所有者不明土地管理命令の対象とされた土地(共有持分を対象として所有者不明土地管理命令が発令された場合にあっては、共有物である土地)にある動産(当該所有者不明土地管理命令の対象とされた土地又は共有持分を有する者が所有するものに限る。)に及ぶ。

③ 所有者不明土地管理命令は、所有者不明土地管理命令が発令された後に当該所有者不明土地管理命令が取り消された場合において、当該所有者不明土地管理命令の対象とされた土地又は共有持分及び当該所有者不明土地管理命令の効力が及ぶ動産の管理、処分その他の事由により所有者不明土地管理人が得た財産について、必要があると認めるときも、することができる。

④ 裁判所は、所有者不明土地管理命令をする場合には、当該所有者不明土地管理命令において、所有者不明土地管理人を選任しなければならない。

(注) 第3の1の規律による非訟事件は、裁判を求める事項に係る不動産の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に属するものとし、また、土地所有者のための手続保障に関し、次のような規律を設けるものとするなど、裁判所の手続に関しては所要の規定を整備する。

裁判所は、次に掲げる事項を公告し、かつ、イの期間が経過しなければ、所有者不明土地管理命令をすることができない。この場合において、イの期間は、1箇月を下ってはならない。

ア 所有者不明土地管理命令の申立てがその対象となるべき土地又は共有持分についてあったこと。

イ 所有者不明土地管理命令をすることについて異議があるときは、対象となるべき土地又は共有持分を有する者は一定の期間までにその旨の届出をすべきこと。

ウ 前号の届出がないときは、裁判所が所有者不明土地管理命令をすること。

(2) 所有者不明土地管理人の権限

① (1)④の規律により所有者不明土地管理人が選任された場合には、所有者不明土地管理命令の対象とされた土地又は共有持分及び所有者不明土地管理命令の効力が及ぶ動産並びにその管理、処分その他の事由により所有者不明土地管理人が得た財産(以下「所有者不明土地等」という。)の管理及び処分をする権利は、所有者不明土地管理人に専属する。

② 所有者不明土地管理人が次に掲げる行為の範囲を超える行為をするには、裁判所の許可を得なければならない。ただし、この許可がないことをもって善意の第三者に対抗することができない。

ア 保存行為

イ 所有者不明土地等の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為

(注) 管理人の選任の公示に関し、次のような規律を設けるものとする。

① 所有者不明土地管理命令があった場合には、裁判所書記官は、職権で、遅滞なく、所有者不明土地管理命令の対象とされた土地又は共有持分について、所有者不明土地管理命令の登記の嘱託をしなければならない。

② 所有者不明土地管理命令を取り消す裁判があったときは、裁判所書記官は、職権で、遅滞なく、所有者不明土地管理命令の登記の抹消を嘱託しなければならない。

(3) 所有者不明土地等に関する訴えの取扱い

所有者不明土地管理命令が発せられた場合には、所有者不明土地等に関する訴えについては、所有者不明土地管理人を原告又は被告とする。

(注) 訴訟手続の中断・受継に関し、次のような規律を整備するものとする。

① 所有者不明土地管理命令が発せられた場合には、所有者不明土地等に関する訴訟手続で当該所有者不明土地等の所有者を当事者とするものは、中断する。この場合においては、所有者不明土地管理人は、訴訟手続を受け継ぐことができる。

② 所有者不明土地管理命令が取り消されたときは、所有者不明土地管理人を当事者とする所有者不明土地等に関する訴訟手続は、中断する。この場合においては、所有者不明土地等の所有者は、訴訟手続を受け継がなければならない。

(4) 所有者不明土地管理人の義務

① 所有者不明土地管理人は、所有者不明土地等の所有者(その共有持分を有する者を含む。)のために、善良な管理者の注意をもって、その権限を行使しなければならない。

② 数人の者の共有持分を対象として所有者不明土地管理命令が発せられたときは、所有者不明土地管理人は、当該所有者不明土地管理命令の対象とされた共有持分を有する者全員のために、誠実かつ公平にその権限を行使しなければならない。

(5) 所有者不明土地管理人の解任及び辞任

① 所有者不明土地管理人がその任務に違反して所有者不明土地等に著しい損害を与えたことその他重要な事由があるときは、裁判所は、利害関係人の請求により、所有者不明土地管理人を解任することができる。

② 所有者不明土地管理人は、正当な事由があるときは、裁判所の許可を得て、辞任することができる。

(6) 所有者不明土地管理人の報酬等

① 所有者不明土地管理人は、所有者不明土地等から裁判所が定める額の費用の前払及び報酬を受けることができる。

② 所有者不明土地管理人による所有者不明土地等の管理に必要な費用及び報酬は、所有者不明土地等の所有者(その共有持分を有する者を含む。)の負担とする。

(7) 所有者不明土地管理制度における供託等及び取消し

① 所有者不明土地管理人は、所有者不明土地管理命令の対象とされた土地又は共有持分及び所有者不明土地管理命令の効力が及ぶ動産の管理、処分その他の事由により金銭が生じたときは、その所有者(その共有持分を有する者を含む。)のために、当該金銭を所有者不明土地管理命令の対象とされた土地(共有持分を対象として所有者不明土地管理命令が発令された場合にあっては、共有物である土地)の所在地の供託所に供託することができる。この場合において、供託をしたときは、法務省令で定めるところにより、その旨その他法務省令で定める事項を公告しなければならない。

② 裁判所は、管理すべき財産がなくなったとき(管理すべき財産の全部が供託されたときを含む。)その他財産の管理を継続することが相当でなくなったときは、所有者不明土地管理人若しくは利害関係人の申立てにより又は職権で、所有者不明土地管理命令を取り消さなければならない。

③ 所有者不明土地等の所有者(その共有持分を有する者を含む。)が所有者不明土地等の所有権(その共有持分を含む。)が自己に帰属することを証明したときは、裁判所は、当該所有者の申立てにより、所有者不明土地管理命令を取り消さなければならない。この場合において、所有者不明土地管理命令が取り消されたときは、所有者不明土地管理人は、当該所有者に対し、その事務の経過及び結果を報告し、当該所有者に帰属することが証明された財産を引き渡さなければならない。

(8) 所有者不明建物管理命令

① 裁判所は、所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない建物(建物が数人の共有に属する場合にあっては、共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない建物の共有持分)について、必要があると認めるときは、利害関係人の請求により、その請求に係る建物又は共有持分を対象として、所有者不明建物管理人(④の所有者不明建物管理人をいう。以下同じ。)による管理を命ずる処分(以下「所有者不明建物管理命令」という。)をすることができる。

② 所有者不明建物管理命令の効力は、当該所有者不明建物管理命令の対象とされた建物(共有持分を対象として所有者不明建物管理命令が発令された場合にあっては、共有物である建物)にある動産(当該所有者不明建物管理命令の対象とされた建物又は共有持分を有する者が所有するものに限る。)及び当該建物又は共有持分を有するための建物の敷地に関する権利(賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利(所有権を除く。)であって、当該所有者不明建物管理命令の対象とされた建物又は共有持分を有する者が有するものに限る。)に及ぶ。

③ 所有者不明建物管理命令は、所有者不明建物管理命令が発令された後に当該所有者不明建物管理命令が取り消された場合において、当該所有者不明建物管理命令の対象とされた建物又は共有持分並びに当該所有者不明建物管理命令の効力が及ぶ動産及び建物の敷地に関する権利の管理、処分その他の事由により所有者不明建物管理人が得た財産について、必要があると認めるときも、することができる。

④ 裁判所は、所有者不明建物管理命令をする場合には、所有者不明建物管理命令において、所有者不明建物管理人を選任しなければならない。

⑤ (2)から(7)までの規定は、所有者不明建物管理命令について準用する。

(注) 所有者不明建物管理命令に関する規律は、建物の区分所有等に関する法律における専有部分及び共用部分については、適用しないものとする。

2 管理不全土地管理命令及び管理不全建物管理命令

管理不全土地管理命令及び管理不全建物管理命令について、次のような規律を設けるものとする。

(1) 管理不全土地管理命令

① 裁判所は、所有者による土地の管理が不適当であることによって他人の権利又は法律上保護される利益が侵害され、又は侵害されるおそれがある場合において、必要があると認めるときは、利害関係人の請求により、当該土地を対象として、管理不全土地管理人(③の管理不全土地管理人をいう。以下同じ。)による管理を命ずる処分(以下「管理不全土地管理命令」という。)をすることができる。

② 管理不全土地管理命令の効力は、当該管理不全土地管理命令の対象とされた土地にある動産(当該管理不全土地管理命令の対象とされた土地の所有者又はその共有持分を有する者が所有するものに限る。)に及ぶ。

③ 裁判所は、管理不全土地管理命令をする場合には、当該管理不全土地管理命令において、管理不全土地管理人を選任しなければならない。

(注) 第3の2の規律による非訟事件は、裁判を求める事項に係る不動産の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に属するものとするなど、裁判所の手続に関しては所要の規定(裁判所は、管理不全土地管理命令等の一定の裁判をする場合には、その対象とされた土地の所有者の陳述を聴かなければならないが、裁判所が管理不全土地管理命令をする場合において、その陳述を聴く手続を経ることによりその申立ての目的を達することができない事情があるときはこの限りでない旨の規定や、これらの裁判に対する即時抗告の規定を含む。)を整備する。

(2) 管理不全土地管理人の権限

① 管理不全土地管理人は、管理不全土地管理命令の対象とされた土地及び管理不全土地管理命令の効力が及ぶ動産並びにその管理、処分その他の事由により管理不全土地管理人が得た財産(以下「管理不全土地等」という。)の管理及び処分をする権限を有する。

② 管理不全土地管理人が次に掲げる行為の範囲を超える行為をするには、裁判所の許可を得なければならない。ただし、この許可がないことをもって善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。

ア 保存行為

イ 管理不全土地等の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為

③ 管理不全土地管理命令の対象とされた土地の処分についての前項の許可をするには、その所有者の同意がなければならない。

(3) 管理不全土地管理人の義務

① 管理不全土地管理人は、管理不全土地等の所有者のために、善良な管理者の注意をもって、その権限を行使しなければならない。

② 管理不全土地等が数人の共有に属する場合には、管理不全土地管理人は、その共有持分を有する者全員のために、誠実かつ公平にその権限を行使しなければならない。

(4) 管理不全土地管理人の解任及び辞任

① 管理不全土地管理人がその任務に違反して管理不全土地等に著しい損害を与えたことその他重要な事由があるときは、裁判所は、利害関係人の請求により、管理不全土地管理人を解任することができる。

② 管理不全土地管理人は、正当な事由があるときは、裁判所の許可を得て、辞任することができる。

(5) 管理不全土地管理人の報酬等

① 管理不全土地管理人は、管理不全土地等から裁判所が定める額の費用の前払及び報酬を受けることができる。

② 管理不全土地管理人による管理不全土地等の管理に必要な費用及び報酬は、管理不全土地等の所有者の負担とする。

(6) 管理不全土地管理制度における供託等及び取消し

① 管理不全土地管理人は、管理不全土地管理命令の対象とされた土地及び管理不全土地管理命令の効力が及ぶ動産の管理、処分その他の事由により金銭が生じたときは、その所有者(その共有持分を有する者を含む。)のために、当該金銭を管理不全土地管理命令の対象とされた土地の所在地の供託所に供託することができる。この場合において、供託をしたときは、法務省令で定めるところにより、その旨その他法務省令で定める事項を公告しなければならない。

② 裁判所は、管理すべき財産がなくなったとき(管理すべき財産の全部が供託されたときを含む。)その他財産の管理を継続することが相当でなくなったときは、管理不全土地管理人若しくは利害関係人の申立てにより又は職権で、管理不全土地管理命令を取り消さなければならない。

(7) 管理不全建物管理命令

① 裁判所は、所有者による建物の管理が不適当であることによって他人の権利又は法律上保護される利益が侵害され、又は侵害されるおそれがある場合において、必要があると認めるときは、利害関係人の請求により、当該建物を対象として、管理不全建物管理人(③の管理不全建物管理人をいう。)による管理を命ずる処分(以下この条において「管理不全建物管理命令」という。)をすることができる。

② 管理不全建物管理命令は、当該管理不全建物管理命令の対象とされた建物にある動産(当該管理不全建物管理命令の対象とされた建物の所有者又はその共有持分を有する者が所有するものに限る。)及び当該建物を所有するための建物の敷地に関する権利(賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利(所有権を除く。)であって、当該管理不全建物管理命令の対象とされた建物の所有者又はその共有持分を有する者が有するものに限る。)に及ぶ。

③ 裁判所は、管理不全建物管理命令をする場合には、当該管理不全建物管理命令において、管理不全建物管理人を選任しなければならない。

④ (2)から(6)までの規定は、管理不全建物管理命令について準用する。

(注) 管理不全建物管理命令に関する規律は、建物の区分所有等に関する法律における専有部分及び共用部分については、適用しないものとする。

第4 相続等

相続財産等の管理

(1) 相続財産の管理

相続財産の管理について、次のような規律を設けるものとし、民法第918条第2項及び第3項並びに第926条第2項及び第940条第2項のうちこれらを準用する部分を削るものとする。

① 家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、いつでも、相続財産の保存に必要な処分を命ずることができる。ただし、相続人が一人である場合においてその相続人が相続の単純承認をしたとき、相続人が数人ある場合において遺産の全部の分割がされたとき又は民法第952条第1項の規定により相続財産の清算人が選任されているときは、この限りでない。

② 民法第27条から第29条までの規定は、①の規律により家庭裁判所が相続財産の管理人を選任した場合について準用する。

(2) 相続の放棄をした者による管理民法第940条第1項の規律を次のように改めるものとす。

相続の放棄をした者が、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は民法第952条第1項の相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない。

(3) 不在者財産管理制度及び相続財産管理制度における供託等及び取消し不在者財産管理人による供託等に関し、次のような規律を設けるとともに、不在者の財産の管理に関する処分の取消しの規律を見直し、管理すべき財産の全部が供託されたときをその処分の取消事由とした上で、本文(1)①により選任される相続財産管理人についてもこれらの規律を準用するものとする。

① 家庭裁判所が選任した管理人は、不在者の財産の管理、処分その他の事由により金銭が生じたときは、不在者のために、当該金銭を不在者の財産の管理に関する処分を命じた裁判所の所在地を管轄する家庭裁判所の管轄区域内の供託所に供託することができる。

② 家庭裁判所が選任した管理人は、①の規律による供託をしたときは、法務省令で定めるところにより、その旨その他法務省令で定める事項を公告しなければならない。

相続財産の清算

(1) 相続財産の清算人への名称の変更

民法第936条第1項及び第952条の「相続財産の管理人」の名称を「相続財産の清算人」に改める

(2) 民法第952条以下の清算手続の合理化

民法第952条第2項及び第957条第1項の規律をそれぞれ次のように改め、第958条を削るものとする。

① 民法第952条第1項の規定により相続財産の清算人を選任したときは、家庭裁判所は、遅滞なく、その旨及び相続人があるならば一定の期間内にその権利を主張すべき旨を公告しなければならない。この場合において、その期間は、6箇月を下ることができない。

② ①の公告があったときは、相続財産の清算人は、全ての相続債権者及び受遺者に対し、2箇月以上の期間を定めて、その期間内にその請求の申出をすべき旨を公告しなければならない。この場合において、その期間は、①の規律により相続人が権利を主張すべき期間として家庭裁判所が公告した期間が満了するまでに満了するものでなければならない。

遺産分割に関する見直し

(1) 期間経過後の遺産の分割における相続分

遺産の分割について、次のような規律を設けるものとする。

民法第903条から第904条の2までの規定は、相続開始の時から10年を経過した後にする遺産の分割については、適用しない。ただし、次の①及び②のいずれかに該当するときは、この限りでない。

① 相続開始の時から10年を経過する前に、相続人が家庭裁判所に遺産の分割の請求をしたとき。

② 相続開始の時から始まる10年の期間の満了前6箇月以内の間に、遺産の分割を請求することができないやむを得ない事由が相続人にあった場合において、その事由が消滅した時から6箇月を経過する前に、当該相続人が家庭裁判所に遺産の分割の請求をしたとき。

(2) 遺産の分割の調停又は審判の申立ての取下げ

遺産の分割の調停又は審判の申立ての取下げについて、次のような規律を設けるものとする。

遺産の分割の調停の申立て及び遺産の分割の審判の申立ての取下げは、相続開始の時から10年を経過した後にあっては、相手方の同意を得なければ、その効力を生じない。

(3) 遺産の分割の禁止

遺産の分割の禁止の定め及び遺産の分割の禁止の審判の規律を次のように改めるものとする。

① 共同相続人は、5年以内の期間を定めて、遺産の全部又は一部について、その分割をしない旨の契約をすることができる。ただし、その期間の終期は、相続開始の時から10年を超えることができない。

② ①の契約は、5年以内の期間を定めて更新することができる。ただし、その期間の終期は、相続開始の時から10年を超えることができない。

③ 民法第907条第2項本文の場合において特別の事由があるときは、家庭裁判所は、5年以内の期間を定めて、遺産の全部又は一部について、その分割を禁ずることができる。ただし、その期間の終期は、相続開始の時から10年を超えることができない。

④ 家庭裁判所は、5年以内の期間を定めて③の期間を更新することができる。ただし、その期間の終期は、相続開始の時から10年を超えることができない。

第2部 不動産登記法等の見直し

第1 所有権の登記名義人に係る相続の発生を不動産登記に反映させるための仕組み

1 相続登記等の申請の義務付け及び登記手続の簡略化

(1) 所有権の登記名義人が死亡した場合における登記の申請の義務付け

不動産の所有権の登記名義人が死亡し、相続等による所有権の移転が生じた場合における公法上の登記申請義務について、次のような規律を設けるものとする。

① 不動産の所有権の登記名義人について相続の開始があったときは、当該相続(注1)により当該不動産の所有権を取得した者は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から3年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない(注2)。遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)により所有権を取得した者も、同様とする(注3)。

② 前記①前段の規定による登記(民法第900条及び第901条の規定により算定した相続分に応じてされたものに限る。後記(3)④において同じ。)がされた後に遺産の分割があったときは、当該遺産の分割によって当該相続分を超えて所有権を取得した者は、当該遺産の分割の日から3年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない(注4)。

③ 前記①及び②の規定は、代位者その他の者の申請又は嘱託により、当該各規定による登記がされた場合には、適用しない。

(注1)ここでいう「相続・・・による」所有権の取得には、特定財産承継遺言による取得も含まれる。

(注2)遺産の分割がされた場合には、当該遺産の分割の結果を踏まえた相続登記の申請をすることで申請義務が履行されたこととなる。また、遺産の分割がされる前であっても、法定相続分での相続登記(民法第900条(法定相続分)及び第901条(代襲相続人の相続分)の規定により算定した相続分に応じてする相続による所有権の移転の登記をいう。以下同じ。)の申請をした場合にも、相続による所有権の移転の登記の申請義務が履行されたこととなる。さらに、後記(3)の相続人申告登記(仮称)の申出をした場合にも第1の1(1)①の申請義務を履行したものとみなすものとする(後記(3)②参照)。

(注3)相続人に対する遺贈による所有権の移転の登記について、登記権利者(受遺者である相続人)が単独で申請することができる旨の規律を設けることについて、後記(4)参照。

(注4)後記(3)の相続人申告登記(仮称)の申出をした者が、その後の遺産の分割によって所有権を取得したときは、当該遺産の分割の日から3年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない(後記(3)④参照)。

(2) 相続登記等の申請義務違反の効果

相続登記等の登記申請義務違反の効果として、次のような規律を設けるものとする。

前記(1)又は後記(3)④の規定による申請をすべき義務がある者が正当な理由がないのにその申請を怠ったときは、10万円以下の過料に処する(注)。

(注)裁判所に対する過料事件の通知の手続等に関して法務省令等に所要の規定を設けるものとする。

(3) 相続人申告登記(仮称)の創設

死亡した所有権の登記名義人の相続人による申出を受けて登記官がする登記として、相続人申告登記(仮称)を創設し、次のような規律を設けるものとする(注1)。

① 前記(1)①の規定により所有権の移転の登記を申請する義務を負う者は、法務省令で定めるところにより、登記官に対し、所有権の登記名義人について相続が開始した旨及び自らが当該所有権の登記名義人の相続人である旨を申し出ることができる(注2)。

② 前記(1)①に規定する期間内に前記①の規定による申出をした者は、前記(1)①に規定する所有権の取得(当該申出の前にされた遺産の分割によるものを除く。)に係る所有権の移転の登記を申請する義務を履行したものとみなす。

③ 登記官は、前記①の規定による申出があったときは、職権で、その旨並びに当該申出をした者の氏名及び住所その他法務省令で定める事項を所有権の登記に付記することができる(注2)。

④ 前記①の規定による申出をした者は、その後の遺産の分割によって所有権を取得したとき(前記(1)①前段の規定による登記がされた後に当該遺産の分割によって所有権を取得したときを除く。)は、当該遺産の分割の日から3年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。

⑤ 前記④の規定は、代位者その他の者の申請又は嘱託により、同④の規定による登記がされた場合は、適用しない。

(注1)これは、相続を原因とする所有権の移転の登記ではなく、①の各事実についての報告的な登記として位置付けられるものである。

(注2)この場合においては、申出人は当該登記名義人の法定相続人であることを証する情報(その有する持分の割合を証する情報を含まない。)を提供しなければならないものとする。具体的には、単に申出人が法定相続人の一人であることが分かる限度での戸籍謄抄本を提供すれば足りる(例えば、配偶者については現在の戸籍謄本のみで足り、子については被相続人である親の氏名が記載されている子の現在の戸籍謄抄本のみで足りることを想定している。)。

(4) 遺贈による所有権の移転の登記手続の簡略化

相続人に対する遺贈による所有権の移転の登記手続を簡略化するため、共同申請主義(不動産登記法第60条)の例外として、次のような規律を設けるものとする。

遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)による所有権の移転の登記は、不動産登記法第60条の規定にかかわらず、登記権利者が単独で申請することができる。

(5) 法定相続分での相続登記がされた場合における登記手続の簡略化

法定相続分での相続登記がされた場合における登記手続を簡略化するため、法定相続分での相続登記がされている場合において、次に掲げる登記をするときは、更正の登記によることができるものとした上で、登記権利者が単独で申請することができるものとし、これを不動産登記実務の運用により対応するものとする。

① 遺産の分割の協議又は審判若しくは調停による所有権の取得に関する登記

② 他の相続人の相続の放棄による所有権の取得に関する登記

③ 特定財産承継遺言による所有権の取得に関する登記

④ 相続人が受遺者である遺贈による所有権の取得に関する登記

2 権利能力を有しないこととなったと認めるべき所有権の登記名義人についての符号の表示

死亡情報を取得した登記所が相続の発生を不動産登記に反映させるための方策として、住民基本台帳制度の趣旨等に留意しつつ、次のような規律を設けるものとする。

登記官は、所有権の登記名義人(法務省令で定めるものに限る。)が権利能力を有しないこととなったと認めるべき場合として法務省令で定める場合には、法務省令で定めるところにより、職権で、当該所有権の登記名義人についてその旨を示す符号を表示することができる。

第2 所有権の登記名義人の氏名又は名称及び住所の情報の更新を図るための仕組み

1 氏名又は名称及び住所の変更の登記の申請の義務付け

氏名又は名称及び住所の変更の登記の申請に関し、次のような規律を設けるものとする。

① 所有権の登記名義人の氏名若しくは名称又は住所について変更があったときは、当該所有権の登記名義人は、その変更があった日から2年以内に、氏名若しくは名称又は住所についての変更の登記を申請しなければならない。

② 前記①の規定による申請をすべき義務がある者が正当な理由がないのにその申請を怠ったときは、5万円以下の過料に処する(注)。

(注)裁判所に対する過料事件の通知の手続等に関して法務省令等に所要の規定を設けるものとする。

2 登記所が氏名又は名称及び住所の変更情報を不動産登記に反映させるための仕組み

登記官が住民基本台帳ネットワークシステム又は商業・法人登記のシステムから所有権の登記名義人の氏名及び住所についての変更の情報を取得し、これを不動産登記に反映させるため、次のような規律を設けるものとする。

登記官は、所有権の登記名義人の氏名若しくは名称又は住所について変更があったと認めるべき場合として法務省令で定める場合には、法務省令で定めるところにより、職権で、氏名若しくは名称又は住所についての変更の登記をすることができる。

ただし、当該所有権の登記名義人が自然人であるときは、その申出があるときに限る。

第3 登記所が他の公的機関から所有権の登記名義人の死亡情報や氏名又は名称及び住所の変更情報を取得するための仕組み

相続の発生や氏名又は名称及び住所の変更を不動産登記に反映させるための方策を採る前提として、登記所が住民基本台帳ネットワークシステムから所有権の登記名義人の死亡情報や氏名又は名称及び住所の変更情報を取得するため、次のような仕組みを設けるものとする。

① 自然人である所有権の登記名義人は、登記官に対し、自らが所有権の登記名義人として記録されている不動産について、氏名及び住所の情報に加えて、生年月日等の情報(検索用情報)(注)を提供するものとする。この場合において、検索用情報は登記記録上に公示せず、登記所内部において保有するデータとして扱うものとする。

登記官は、氏名、住所及び検索用情報を検索キーとして、住民基本台帳ネットワークシステムに定期的に照会を行うなどして自然人である登記名義人の死亡の事実や氏名又は名称及び住所の変更の事実を把握するものとする。

(注)上記の新たな仕組みに係る規定の施行後においては、新たに所有権の登記名義人となる者は、その登記申請の際に、検索用情報の提供を必ず行うものとする。当該規定の施行前に既に所有権の登記名義人となっている者については、その不動産の特定に必要な情報、自己が当該不動産の登記名義人であることを証する情報及び検索用情報の内容を証する情報とともに、検索用情報の提供を任意に行うことができるものとする。

第4 登記義務者の所在が知れない場合等における登記手続の簡略化

1 登記義務者の所在が知れない場合の一定の登記の抹消手続の簡略化

(1) 不動産登記法第70条第1項及び第2項に規定する公示催告及び除権決定の手続による単独での登記の抹消手続の特例として、次のような規律を設けるものとする。

不動産登記法第70条第1項の登記が地上権、永小作権、質権、賃借権若しくは採石権に関する登記又は買戻しの特約に関する登記であり、かつ、登記された存続期間又は買戻しの期間が満了している場合において、相当の調査が行われたと認められるものとして法務省令で定める方法により調査を行ってもなお共同して登記の抹消の申請をすべき者の所在が判明しないときは、その者の所在が知れないものとみなして、同項の規定を適用する。

(2) 買戻しの特約に関する登記の抹消手続の簡略化として、次のような規律を設けるものとする。

買戻しの特約に関する登記がされている場合において、契約の日から10年を経過したときは、不動産登記法第60条の規定にかかわらず、登記権利者は、単独で当該登記の抹消を申請することができる。

2 解散した法人の担保権に関する登記の抹消手続の簡略化

解散した法人の担保権に関する登記の抹消手続を簡略化する方策として、次のような規律を設けるものとする。

登記権利者は、共同して登記の抹消の申請をすべき法人が解散し、前記1(1)に規定する方法により調査を行ってもなおその法人の清算人の所在が判明しないためその法人と共同して先取特権、質権又は抵当権に関する登記の抹消を申請することができない場合において、被担保債権の弁済期から30年を経過し、かつ、当該法人の解散の日から30年を経過したときは、不動産登記法第60条の規定にかかわらず、単独で当該登記の抹消を申請することができる。

第5 その他の見直し事項

1 登記名義人の特定に係る登記事項の見直し

所有権の登記の登記事項に関し、次のような規律を設けるものとする。

所有権の登記名義人が法人であるときは、会社法人等番号(商業登記法(昭和38年法律第125号)第7条(他の法令において準用する場合を含む。)に規定する会社法人等番号をいう。)その他の特定の法人を識別するために必要な事項として法務省令で定めるものを登記事項とする。

2 外国に住所を有する登記名義人の所在を把握するための方策

(1) 国内における連絡先となる者の登記

所有権の登記の登記事項に関し、次のような規律を設けるものとする。

所有権の登記名義人が国内に住所を有しないときは、その国内における連絡先となる者の氏名又は名称及び住所その他の国内における連絡先に関する事項として法務省令で定めるものを登記事項とする(注1)(注2)。

(注1)連絡先として第三者の氏名又は名称及び住所を登記する場合には、当該第三者の承諾があること、また、当該第三者は国内に住所を有するものであることを要件とする。

(注2)連絡先となる者の氏名又は名称及び住所等の登記事項に変更があった場合には、所有権の登記名義人のほか、連絡先として第三者が登記されている場合には当該第三者が単独で変更の登記の申請をすることができるものとする。

(2) 外国に住所を有する外国人についての住所証明情報の見直し

外国に住所を有する外国人(法人を含む。)が所有権の登記名義人となろうとする場合に必要となる住所証明情報については、次の①又は②のいずれかとするものとする。

① 外国政府等の発行した住所証明情報

② 住所を証明する公証人の作成に係る書面(外国政府等の発行した本人確認書類の写しが添付されたものに限る。)

3 附属書類の閲覧制度の見直し

登記簿の附属書類(不動産登記法第121条第1項の図面を除く。)の閲覧制度に関し、閲覧の可否の基準を合理化する観点等から、次のような規律を設けるものとする。

① 何人も、登記官に対し、手数料を納付して、自己を申請人とする登記記録に係る登記簿の附属書類(不動産登記法第121条第1項の図面を除く。)(電磁的記録にあっては、記録された情報の内容を法務省令で定める方法により表示したもの。後記②において同じ。)の閲覧を請求することができる。

② 登記簿の附属書類(不動産登記法第121条第1項の図面及び前記①に規定する登記簿の附属書類を除く。)(電磁的記録にあっては、記録された情報の内容を法務省令で定める方法により表示したもの)の閲覧につき正当な理由があると認められる者は、登記官に対し、法務省令で定めるところにより、手数料を納付して、その全部又は一部(その正当な理由があると認められる部分に限る。)の閲覧を請求することができる。

4 所有不動産記録証明制度(仮称)の創設

相続人による相続登記の申請を促進する観点も踏まえ、自然人及び法人を対象とする所有不動産記録証明制度(仮称)として、次のような規律を設けるものとする。

① 何人も、登記官に対し、手数料を納付して、自らが所有権の登記名義人(これに準ずる者として法務省令で定めるものを含む。後記②において同じ。)として記録されている不動産に係る登記記録に記録されている事項のうち法務省令で定めるもの(記録がないときは、その旨)を証明した書面(以下「所有不動産記録証明書(仮称)」という。)の交付を請求することができる。

② 所有権の登記名義人について相続その他の一般承継があったときは、相続人その他の一般承継人は、登記官に対し、手数料を納付して、当該所有権の登記名義人の所有不動産記録証明書(仮称)の交付を請求することができる。

③ ①及び②の交付の請求は、法務大臣の指定する登記所の登記官に対し、法務省令で定めるところにより、することができる。

④ 不動産登記法第119条第3項及び第4項の規定は、所有不動産記録証明書(仮称)の手数料について準用する。

  • (注1)ただし、現在の登記記録に記録されている所有権の登記名義人の氏名又は名称及び住所は過去の一定時点のものであり、必ずしもその情報が更新されているものではないことなどから、請求された登記名義人の氏名又は名称及び住所等の情報に基づいてシステム検索を行った結果を証明する所有不動産記録証明制度(仮称)は、飽くまでこれらの情報に一致したものを一覧的に証明するものであり、不動産の網羅性等に関しては技術的な限界があることが前提である。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

何に使うのでしょうか。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

(注2)①及び②の規律は、代理人による交付請求も許容することを前提としている。

5 被害者保護のための住所情報の公開の見直し

不動産登記法第119条に基づく登記事項証明書の交付等に関し、次のような規律を設けるものとする。

登記官は、不動産登記法第119条第1項及び第2項の規定にかかわらず、登記記録に記録されている者(自然人であるものに限る。)の住所が明らかにされることにより、人の生命若しくは身体に危害を及ぼすおそれがある場合又はこれに準ずる程度に心身に有害な影響を及ぼすおそれがあるものとして法務省令で定める場合において、その者からの申出があったときは、法務省令で定めるところにより、同条第1項及び第2項に規定する各書面に当該住所に代わるものとして法務省令で定める事項を記載しなければならない。

第3部 土地所有権の国庫への帰属の承認等に関する制度の創設

次のような規律を内容とする、相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する制度(以下「本制度」という。)を創設するものとする。

1① 土地の所有者(相続又は遺贈(相続人に対する遺贈に限る。以下同じ。)によりその土地の所有権の全部又は一部を取得した者に限る。)は、法務大臣に対し、その土地の所有権を国庫に帰属させることについての承認を求めることができる。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

上は一部を取得した者は承認を求めることができるで、下は共有の場合は全員が共同して行う時に限り、というのは。

・・・・・・・・・・・・・・・

② 土地が数人の共有に属する場合においては、①の法務大臣に対する承認の申請(以下「承認申請」という。)は、共有者の全員が共同して行うときに限り、することができる。この場合において、相続等以外の原因により当該土地の共有持分の全部を取得した共有者は、相続等により共有持分の全部又は一部を取得した共有者と共同して行うときに限り、①の規律にかかわらず、承認申請をすることができる。

2 1の承認申請をする者(以下「承認申請者」という。)は、承認申請に対する審査に要する実費の額を考慮して政令で定める額の手数料を納めなければならない。

3 法務大臣は、承認申請に係る土地が次のいずれにも該当しないと認めるときは、その土地の所有権の国庫への帰属についての承認をしなければならない。

① 建物の存する土地

② 担保権又は使用及び収益を目的とする権利が設定されている土地

③ 通路その他の他人による使用が予定される土地として政令で定めるものが含まれる土地

土壌汚染対策法第2条第1項に規定する特定有害物質(法務省令で定める基準を超えるものに限る。)により汚染されている土地

境界が明らかでない土地その他の所有権の存否、帰属又は範囲について争いがある土地

崖(勾配、高さその他の事項について政令で定める基準に該当するものに限る。)がある土地のうち、その通常の管理に当たり過分の費用又は労力を要するもの

⑦ 土地の通常の管理又は処分を阻害する工作物、車両又は樹木その他の有体物が地上に存する土地

⑧ 除去しなければ土地の通常の管理又は処分をすることができない有体物が地下に存する土地

⑨ 隣接する土地の所有者その他の者との争訟によらなければ通常の管理又は処分をすることができない土地として政令で定めるもの

⑩ ①から⑨までに掲げる土地のほか、通常の管理又は処分をするに当たり過分の費用又は労力を要する土地として政令で定めるもの

4 3の承認は、土地の一筆ごとにするものとする。

5① 法務大臣は、承認申請に係る審査をするため必要があると認めるときは、その職員に事実の調査をさせることができる。

② ①により事実の調査をする職員は、承認申請に係る土地又はその周辺の地域に所在する土地の実地調査をすること、承認申請者その他の関係者からその知っている事実を聴取し又は資料の提出を求めることその他承認申請に係る審査のために必要な調査をすることができる。

③ 法務大臣は、①の事実の調査を行うため必要があると認めるときは、関係行政機関の長、関係地方公共団体の長、関係のある公私の団体その他の関係者に対し、資料の提供、説明、事実の調査の援助その他必要な協力を求めることができる。

④ 法務大臣は、その職員が②により承認申請に係る土地又はその周辺の地域に所在する土地の実地調査をする場合において、必要があると認めるときは、その必要の限度において、その職員に、他人の土地に立ち入らせることができる。

6 法務大臣は、次に掲げる場合には、承認申請を却下しなければならない。

① 承認申請が申請の権限を有しない者の申請によるとき

② 申請書の内容に不備があるとき

③ 承認申請者が2の手数料を納付しないとき

④ 承認申請者が、正当な理由がないのに、5の調査に応じないとき

7 承認申請者は、3の承認があったときは、承認に係る土地につき、国有地の種目ごとにその管理に要する10年分の標準的な費用の額を勘案して政令で定めるところにより算定した額(以下「負担金」という。)を納付しなければならない。

8 承認申請者が負担金を納付したときは、その納付の時において、3の承認に係る土地の所有権が国庫に帰属する。

9 3の承認に係る土地について当該承認の時において3のいずれかに該当する事由があったことによって国に損害が生じたときは、当該事由を知りながら告げずに3の承認を受けた者は、国に対してその損害を賠償する責任を負う。

① 法務大臣は、承認申請者が偽りその他不正の手段により3の承認を受けたことが判明したときは、3の承認を取り消すことができる。

② 法務大臣は、①の取消しをしようとするとき(承認申請に係る土地が8の規律により国庫に帰属している場合に限る。)は、8の規律により国庫に帰属した土地(以下「国庫帰属地」という。)を所管する各省各庁の長(当該土地が交換、売払い又は譲与により国有財産でなくなったときは、当該交換等が生じた時に当該土地を所管していた各省各庁の長)の意見を聴くものとする。

③ 法務大臣は、国庫帰属地が交換等により国有財産でなくなった場合又は国庫帰属地につき貸付け、信託又は権利の設定がされた場合において、①の取消しをしようとするときは、国庫帰属地の所有権を取得した者(転得者を含む。)及び国庫帰属地に係る所有権以外の権利を取得した者の同意を得なければならない。

11 本制度における法務大臣の権限は、法務省令で定めるところにより、その一部を法務局又は地方法務局の長に委任することができる。

(注1)民法に所有権の放棄に関する新たな規律は設けないこととする。

(注2)国は、3の承認がされた場合には、土地の所有権を所有者から承継取得する(承認申請者が無権利者であった場合には、承継の効果を生じない。)。

(注3)法務大臣は、3の承認をしようとするときは、あらかじめ、当該承認に係る土地の管理について、財務大臣及び農林水産大臣の意見を聴くものとする。ただし、主に農用地又は森林として利用されている土地ではないと明らかに認められる場合は、この限りではないものとする。

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固定資産評価証明の現況地目?

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(注4)5については、事前の通知など、立入りの手続に関する規律を設ける。

(注5)8につき、3の承認後に、承認申請者が負担金を一定期間内に納付しないときは、承認はその効力を失うものとする。

(注6)10 の取消しの規律は、法務大臣が、承認を取り消し、土地所有権の国庫への帰属(承継)を遡及的に無効とすることができることを前提にしている。

(注7)その他国庫に帰属した土地の管理に関する所要の規律を設ける。

第4部 その他

その他所要の規定を整備するものとする。

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20211004追記

Q指定相続分の登記があった後に遺産分割があった場合の登記申請義務・・・なし。

Q包括遺贈によって法定相続分と異なる遺産共有の登記がされた後に、遺産分割があった場合の登記申請義務・・・なし。

https://www.moj.go.jp/shingi1/shingi04900001_00044.html

民法・不動産登記法部会資料 57

民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)等の改正に関する要綱案 (案) (2)

P6~

4 相続人申告登記(仮称)がされた後に遺産分割があった場合(本文④)について

(1) 第23回会議においては、法定相続分での相続登記がされた後に遺産分割があった場合における申請の義務付けの問題と同様に、再度の申請義務を課すことに消極的な意見も見られた。しかし、前記第1の1(1)(補足説明)2にも記載したとおり、相続人申告登記(仮称)がされた後に遺産分割があった場合についても、当該遺産分割の結果を踏まえた相続登記の申請をすべき公法上の義務を課す必要があると考えられる。

 そこで、本文④では、このような場合についても、引き続き、当該遺産分割の結果を踏まえた相続登記の申請義務を課することとしているが、どうか。

(2) これに関連して、第23回会議においては、所有権の登記名義人について相続が開始された場合において、㋐遺産分割がされた後に相続人申告登記(仮称)がされたときは、当該遺産分割の結果を踏まえた登記申請義務が設けられていないから、その結果を不動産登記に反映しないまま放置することが許容されるのに対し、㋑相続人申告登記(仮称)がされた後に遺産分割がされたときは、当該遺産分割の結果を踏まえた登記申請義務が課されることとなり、バランスに欠けるのではないかとの指摘がされた。

 確かに、遺産分割が相続人申告登記(仮称)の前であるか後であるかで規律を大きく変えることは合理性に乏しいと考えられ、かつ、遺産分割がされた場合には、実際上、相続人中において権利者の集約が図られることも多いと考えられ、そのような結果を登記に反映させることができれば、その後の土地の管理・処分に当たって便宜であるといえることに照らすと、上記㋐の場合においても、当該遺産分割の結果を踏まえた登記の申請を義務付けることが相当であると考えられる。

 そのため、部会資料53の第1の1(3)②では、特段の限定を付さずに「前記(1)①の規定により所有権の移転の登記を申請する義務を履行したものとみなす。」としていたが、本文②では、「前記(1)①に規定する所有権の取得(当該申出の前にされた遺産の分割によるものを除く。)に係る所有権の移転の登記を申請する義務を履行したものとみなす。」として、その文言を修正している。これにより、相続人申告登記(仮称)の申出をした者は、遺産分割により所有権を取得したときは、当該遺産分割が相続人申告登記(仮称)の前後いずれの時点でされたかにかかわらず、当該遺産分割の日から3年以内に、当該遺産分割の結果を踏まえた所有権の移転の登記を申請しなければならないことになる(この部分は前記第1の1(1)①で表現がされている。)。なお、相続開始の日から2年10か月後に遺産分割があったという事案において、相続開始から3年内に相続人申告登記(仮称)の申出をしたときは、相続開始の日から3年以内にすべき相続登記の申請義務を履行したこととなり、さらに、当該遺産分割の日から3年以内に改めて当該遺産分割の結果を踏まえた登記の申請をする義務を負うことになると考えられる。(注1)(注2)

(注1)なお、遺産分割がされた後に法定相続分での相続登記がされた場合については、①相続開始により法定相続分での相続登記の申請をすべき義務が生ずるとともに、②その後の遺産分割により当該遺産分割の結果を踏まえた所有権の移転の登記の申請をすべき義務が生ずることとなるため(この部分は前記第1の1(1)①で表現がされている。)、上記①の登記申請義務の履行として法定相続分での相続登記がされたとしても、これとは別に上記②の登記申請義務として遺産分割の結果を踏まえた所有権の移転の登記の申請をする義務が課されることとなるものと整理している。

 これにより、遺産分割がされた後に法定相続分での相続登記がされた場合と相続人申告登記(仮称)がされた場合のいずれにおいても、遺産分割の結果を踏まえた登記申請義務が課されることとなる。

(注2)このような問題は、特定財産承継遺言や相続人に対する遺贈についても同様に生じ得るところであり、所有権の登記名義人が特定財産承継遺言や相続人に対する遺贈を内容とする遺言をした場合において、当該所有権の登記名義人の相続人から相続人申告登記(仮称)の申出がされたときは、当該遺言の内容を踏まえた登記がされないまま放置されるおそれがあるとも考えられる。

 もっとも、遺言者は、いつでも遺言の撤回をすることができるとされていることや新たに有効な遺言が発見されることもあるため、ある遺言の内容を踏まえた登記をした後にこれを修正する登記が必要になることも想定される。また、相続人全員の合意があれば遺言の内容と異なる分割は可能であるし、そうでなくとも、遺贈についてはその放棄が可能であるから、いずれにしても遺言の内容と異なる分割が後に行われる可能性もある。そうすると、所有権の登記名義人の相続人に対し、相続人申告登記(仮称)の申出のみならず、更に当該遺言の内容を踏まえた登記の申請を義務付けることは、個別の事例によっては過剰な負担をもたらすおそれもあると考えられる。加えて、遺言がある場合には、遺言の内容を踏まえた登記の申請をすることなどにより権利関係を整理すればよいことから、遺産分割の場合のように相続人間の権利関係の集約の結果を登記に反映させておく実際上の必要性に乏しい面もあるものと考えられる。

 そこで、本部会資料においては、特定財産承継遺言や相続人に対する遺贈との関係では、従前と同様の規律を維持することとしている。

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