民事信託の登記の諸問題(2)

登記研究の記事、渋谷陽一郎「民事信託の登記の諸問題(2)」[1]からです。

本紙の読者の皆さんは、不動産登記法97条1項各号の定めだけを導きとして、信託契約書の中から、如何なる情報を選択し、登記事項として抽出すべきであると思われるだろうか。

 原則として、不動産登記法とその関連法令で定められている事項と、信託行為の目的を果たすための後続登記の申請がスムーズに行われるための事項だと考えます。

不動産登記規則

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=417M60000010018

附 則(信託目録)

第十二条 信託目録に関する事務について第三条指定を受けていない登記所(以下「信託目録未指定登記所」という。)においては、信託目録つづり込み帳を備える。

―中略―

6 旧細則第十六条ノ四第一項、第四十三条ノ六から第四十三条ノ九まで、第五十七条ノ十及び第五十七条ノ十一の規定は、信託目録未指定登記所の信託目録について、なおその効力を有する。この場合において、旧細則第十六条ノ四第一項中「信託原簿」とあるのは「信託目録」と、「申請書」とあるのは「申請ノ」と、旧細則第四十三条ノ六中「信託原簿」とあるのは「信託目録ニ記録スベキ情報ヲ記載シタル書面」と、「附録第十号様式」とあるのは「不動産登記規則(平成十七年法務省令第十八号)別記第五号様式」と、旧細則第四十三条ノ七及び第四十三条ノ八中「信託原簿用紙」とあるのは「信託目録ニ記録スベキ情報ヲ記載シタル書面ノ用紙」と、旧細則第四十三条ノ九中「第四十三条ノ三」とあるのは「新規則附則第九条第五項ノ規定ニ依リ仍其ノ効力ヲ有スルモノトサレタル第四十三条ノ三」と、「信託原簿」とあるのは「信託目録ニ記録スベキ情報ヲ記載シタル書面」と、旧細則第五十七条ノ十及び第五十七条ノ十一中「信託原簿」とあるのは「信託目録」とする。

 この規定は、初めて知りました。著者の「旧信託原簿には、登記官の作成という概念がなかったのではないか、」という考えも、そうなのかもしれないなと思いました。ただ、平成17年の不動産登記法改正の前の時代に実務を経験していない身としては、肌感覚では分かりませんでした。

そして、資格者代理人の慣行として、登記原因証明情報として信託契約書そのものが提供されない場合がある(資格者代理人の間では信託契約書を閲覧に供さないことが推奨される場合もある)。

そうなのかな、と意外に感じました。私が他の人の実務を知らないだけかもしれません。

「信託の目的」に関する信託条項が、信託登記の登記事項に該当することは、不動産登記法97条1項の条文上、最も明白で、やさしい。もっとも、条文の「小見出し」は便宜的なものなので、「小見出し」に関わらず、実質的な「信託の目的を」を見つけることが重要である。

 不動産登記法97条1項の信託の目的が、小見出しであるということはよく分かりませんでした。

信託契約書から信託目録に変換するための最大の問題は、不動産登記法97条1項各号の規定の内容が、抽象的・一般的であることである。そして、その一方、信託なるものは、案件それぞれの個別性が高いことである(それが信託の柔軟性と称される特色である。)そこで、資格者代理人は、不動産登記法97条1項各号について「当てはめ」のための具体的な規範(要件)分析を行い、実際に「当てはめ」を行う必要が生じるわけである。

 私は少し異なる考えです。信託目録にそのまま抜き出せる条項を信託行為の中に入れます。そのため、登記申請時に要約や当てはめを行うことはなく、信託行為の中から、信託目録に記録する条項を抜き出す必要が生じます。

 最後に、記事の注釈が22から始まっているのですが、こういうことは時々あることなのでしょうか。あとで書籍にすることが目的で注釈を連番で付けているのかな、と感じました。


[1] 登記研究883、令和3.9テイハン

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