・信託事務を遂行しがたいと二次受託者が判断したとき、という定めは妥当か?
受託者の任務終了事由として、「信託事務を遂行しがたいと二次受託者が判断したとき」という定めは妥当でしょうか。二次受託者の主観的な判断で決められてしまうのではないか、という懸念が残ります。法定事由以外では、受託者が、受益者からの報告請求に対して2回続けて報告を怠った場合、受託者が○○歳になったときなど具体的に定める必要があると思います。
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・法定されている事項(受託者の任務終了事由など)でも信託行為に記載する必要があるか?あるとすればどの程度か?
理由としては、受託者は専門家ではないから、法定されているから書かなくても良いという事にはならない、ということのようです。少なくとも受託者の任務が終了する場合くらいは記載が必要ではないか、という指摘です。私は信託法56条1項、57条1項については、解任を除いて記載しています。
その他に法定されている事項でも、信託行為に記載する必要があると感じるのでは、信託行為の効力発生時期、信託の変更、信託の終了などでしょうか。
・清算受託者に士業が就任することは可能か。
ある信託銀行の方の指摘では、清算受託者に士業が就任することは不可能ということでした。指摘のとおり、清算受託者も受託者であり、信託業法2条に抵触すると考えられます。士業が参画するとすれば、第三者委託の受託者だと考えます。
・「残余財産の帰属権利者は令和○○年○○月○○日第○○号の公正証書遺言による。」という規定は有効か。
規定自体は有効です(信託法182条)。信託口口座を開設する金融機関からすると、遺言をチェックしなければならず、このような規定がある信託契約書で信託口口座を作成するのは難しいとのことです。ただ、その前に金融機関はどのような根拠で残余財産の帰属権利者の特定をすることが認められているのかが分かりませんでした。私も信託契約書は公正証書にする前に金融機関のチェックを受けますが、信託契約書の中には長男、次男などの家族関係、所有不動産の詳細、第2次受益者の住所、氏名、生年月日などの個人情報が入っています。金融機関が信託口口座を開設する際にチェックする条項に、所有不動産の詳細、第2次受益者の住所、氏名、生年月日などが必要なのか疑問です。借入れの有無にもよりますが、原則として信託金銭の額、委託者・受託者・受益者の個人情報、信託の目的、信託の効力発生・変更・終了事由、受託者の任務終了事由と財産管理方法で良いのではないでしょうか。
私はこのような規定は利用せず、信託財産については信託行為の中で全て完結するようにしています。当事者も分かりやすいと思います。
・法定代理人(成年後見人など)の権限を略奪するものは無効か。
私は制限(略奪?)しています。例えば法定後見人は受託者の辞任申し出に対する同意をすることは出来ない、などです。何故制限しているのかというと、適切な判断が出来ず、成年後見人が困るのではないかと考えているからです。この場合、受益者が判断能力を喪失している場合は、受益者の同意を得ての辞任は出来ないことになり、他の任務終了事由で任務終了することになります。または受益者の成年後見人開始の審判が発効した場合に受益者代理人が就任するという条項にチェックを付けている場合は、受益者代理人の同意を得て辞任することになります。受益者代理人も法定代理人なので、成年後見制度と抵触することはなく、信託と成年後見、任意後見それぞれの制度趣旨とも合致すると考えています。
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・委託者名義の口座に入金された年金を、信託口口座に定期定額で送金(振替など)を行うことは可能か?
可能という信託銀行はあります。この方法だと、追加信託を公正証書にするのは1回で良いという意味もあるのかもしれません。私は、受託者が定期定額で自動的に信託口口座に送金されるような仕組みを作るのは少し違うような気がします。身上監護を主とする成年後見制度と抵触すると考えるからです。やるとすれば、1年の終わりに1回、来年の身上監護にかかる費用も考えて、余裕のある金額を信託口口座に移す、という方法ではないかと思います。成年後見人等が就任している場合、家庭裁判所にもその方が理解が得られやすいのではないかと考えています。
・必要な財産(例:自宅のみ、老後のお金のみ)だけ信託する。その後、必要な度に(追加)信託するという紹介、営業方法は有効か?
4,5年前から、自宅の他に、例えば葬儀費用のみ信託して、信託口口座だけまずは作ってみるというような紹介の方法はあったので、目新しいことはないと思います。