中小企業庁
事業承継ガイドライン令和4年3月16日改訂
https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/index.html
定期同額給与・事前確定届出給与
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5211.htm
2022年10月28日
明治大学商学部山本昌弘教授
事業承継5ヶ年計画までの施策
2006年6月「事業承継ガイドライン―中小企業の円滑な事業承継のための手引き―」
2014年7月「事業承継を中心とする事業活性化に関する検討会中間報告」
2015年3月「事業引継ぎガイドライン―M&A等を活用した事業承継の手続き―」
2016年12月事業引継ぎガイドライン制定を受け、「事業承継ガイドライン(第2版)」
2017年7月「中小企業の事業承継に関する集中実施期間について」中小企業庁
2021年度までの5ヶ年計画、2017年10月に10年に延長(2025年度まで)
地域の支援体制の確立:事業承継ネットワーク
早期事業承継へのインセンティブ付け:事業承継補助金
小規模M&Aマーケットの育成:ノンネームデータベース(NNDB)の整備
サプライチェーン・地域における事業統合支援
経営人材の活用:商工会・商工会議所、地域金融機関、士業等専門家
2019年12月「第三者承継支援総合パッケージ」中小企業庁
今後10年間で集中実施すべき第三者承継支援総合パッケージ
政府の中小企業政策
2019年6月21日閣議決定「成長戦略実行計画」
2019年11月15日内閣府未来投資会議
事業承継の3類型
親族内承継
従業員承継(役員承継を含む)
社外への引継ぎ(M&A等)第三者承継を含む。中小M&Aガイドラインに委ねる。
事業承継の3つの構成要素
人(経営)の承継
経営権、後継者の選定、後継者教育等
資産の承継
株式、事業用資産(設備・不動産等)、資金(運転資金・借入等)
知的資産の承継
経営理念、従業員の技術や技能、ノウハウ、経営者の信用、取引先との人脈、顧客情報、知的財産権(特許等)、許認可等
株式会社と個人事業主
事業承継≠株式の承継+経営者の交代、廃業も取り扱う
事業承継ガイドライン、2022、P27
事業承継ガイドライン改訂ガイドラインでは、旧ガイドラインの第四章を、第二章~第四章として拡充
事業承継に向けた5ステップ
ステップ1:事業承継に向けた準備の必要性の認識
ステップ2:経営状況・経営課題等の把握(見える化)、会社の経営状況の見える化、事業承継課題の見える化
ステップ3:事業承継に向けた経営改善(磨き上げ)ここまでがプレ承継。本業の競争力強化、経営体制の総点検、経営強化に資する取組、業績が悪化した中小企業における事業承継
ステップ4-1:事業承継計画の策定(親族内・従業員承継の場合)
(1) 事業承継計画策定の重要性
(2) 事業承継計画策定の前に
(3) 事業承継計画の策定
ステップ4-2:M&Aの工程の実施(社外へ引継ぎの場合)
ステップ5:事業承継・M&Aの実行その後ポスト事業承継
親族内承継における課題と対応策
(1)人(経営)の承継
後継者の選定・育成、親族等との調整、関係者との事前協議、経営の承継の実行
(2)財産の承継、税負担の対応
暦年課税贈与(生前贈与)、相続時精算課税贈与(相続時精算課税制度)、法人版事業承継税制、小規模宅地等の特例、個人版事業承継税制、退職金
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4124.htm
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/jigyo-shokei/kojin.htm
(3)財産の承継―株式・事業用資産の分散防止
生前贈与、安定株主の導入(役員・従業員持ち株会、投資育成会社、金融機関、取引先等)、遺言の活用、遺留分に関する民法特例
(4)債務・保証・担保の承継
経営者保証に関するガイドラインに即した対応
https://www.chusho.meti.go.jp/kinyu/keieihosyou/
(5)資金調達
事業承継時の金融支援(経営承継円滑化法)について
事業承継の円滑化に資する法務
種類株式の活用
議決権制限種類株式―後継者以外の相続人に
配当優先権種類株式
取得条項付種類株式―株主死亡時に会社が買い取り
拒否権付種類株式
種類株式は相続税法上・会社法上の評価が困難になる可能性
信託の利用
民事信託と商事信託
遺言代用(型)信託
他益信託と自益信託
議決権行使指図権
生命保険の活用
持株会社の活用
法的整理
・民事再生手続き・会社更生手続き
私的整理
・特定調停・中小企業再生支援協議会・事業再生ADR
従業員承継における資金調達問題
(1)従業員承継における課題
(2)人(経営)の承継
後継者の選定・育成、番頭さん
種類株式の活用
(3)後継者による資金調達(MBO・EBO)
ファンドやベンチャーキャピタル
中小企業投資育成
経営承継円滑化法による日本政策金融公庫融資
https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/jigyoukeisyou_t.html
(4)株式の分散の防止
(5)債務・保証・担保の承継
経営者保証ガイドラインによる経営者保証の解除
経営者保証に依存しない資金調達
事業承継ネットワーク
事業承継ガイドライン、2022、P120
中小企業成長促進法2020年6月12日成立
事業承継の推進、中堅企業への成長環境の整備、海外展開支援の強化、経営者保証解除スキーム
事業承継時に経営者保証を求めない(経営承継借換関連保証)
第三者承継において経営者保証を求めない(経営承継準備関連保証)
経営者保証ガイドライン
事業承継支援体制整備
認定支援機関(商工会議所等)に、①親族内承継支援、②経営者等個人の保証債務整理支援
M&Aによるみなし中小企業(原則5年間)
中小企業等経営強化法の改正による中小企業範疇の緩和へ
上記の業務を中小企業基盤整備機構に追加
事業引継ぎ支援センターに、事業承継ネットワーク、経営者保証を組織統合(2021年4月1日)
産業競争力強化法に基づく国の事業承継支援
(1)事業承継引継ぎ支援センター
産業競争力強化法128条に基づき各都道府県(東京は立川にも)に設立(旧産活法、産業活力の再生及び産業活動の革新に関する特別措置法)
後継者人材バンク事業
事業引継ぎ支援全国本部とアドバイザリーボード
全国本部から全国の中小企業へダイレクトメール
(2)中小企業活性化協議会(旧再生支援協議会)
各都道府県・全国本部・アドバイザリーボード
事業再生に向けた相談助言
専門家チーム等による再生計画の推進
債権放棄、DES・DDS等の抜本的再生支援
経営改善支援センターを設置
(3)よろず支援拠点
各都道府県・全国本部・アドバイザリーボード、総合的・先進的な経営アドバイス、チームの編成を通じた支援、的確な相談機関の紹介、ミラサポ(インターネットポータルサイト)と連携
経営承継円滑化法(2008年)
(1)自社株などの承継に関する民法の遺留分による制約
遺留分算定基礎財産から除外(除外合意)
遺留分算定基礎財産に算入する価額を合意時の時価に固定(固定合意)
所在不明株主からの買取りを5年から1年に短縮(2021年)
(2)事業承継時の資金調達の困難性
・先代経営者からの株式や事業用資産の買取り資金
・相続に伴い分散した株式や事業用資産の買取り資金
・先代経営者の所有する株式や事業用資産にかかる相続税の支払い資金
・事業承継後に経営改善や経営革新を図るための投資資金
経営承継円滑化法第13条「中小企業信用保険法の特例」に基づく信用保証協会の保証枠の別枠整備と、同法第14条「株式会社日本政策金融公庫法及び沖縄振興開発金融公庫法の特例」に基づく日本政策金融公庫の融資
(3) 事業承継時の相続税負担(事業承継税制)
法人版事業承継税制(2018年度に大幅緩和)
個人版事業承継税制(2019年度に創設)
司法書士の役割
司法書士は,商業登記,不動産登記等の実務家として,事業承継における株式及び事業用不動産の承継,M&A,種類株式及び民事信託の活用,担保権の処遇等についてサポートしている。また,日本司法書士会連合会においては,商業登記・企業法務対策部,民事信託等財産管理業務対策部等を設置して事業承継に関する支援事業を行っている。
最寄りの司法書士会(各都府県に1箇所と北海道に4箇所に所在)又は日本司法書士会連合会
日本司法書士会連合会℡:03-3359-4171
概算要求(2023年度)
中小企業活性化・事業承継総合支援事業225億円(157.7億円)
中小企業活性化協議会による事業再生支援
事業承継・引継ぎ支援センターによる円滑な事業承継・引継ぎ支援
事業承継・引継ぎ支援事業20.0億円(16.3億円)
事業承継・引継ぎ(M&A)後の経営革新やM&A時の専門家活用、事業承継・M&Aに伴う廃業に係る費用等を支援
後継者支援ネットワーク事業4.0億円(新規)
後継者同士の切磋琢磨できる場を創出し、家業を活かした新規事業アイデアを競うイベントを実施
https://www.meti.go.jp/main/yosangaisan/fy2023/pdf/04.pdf
中小M&Aガイドライン~第三者への円滑な事業引継ぎに向けて~
https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/index.html
中小企業庁令和2年3月
中小M&A大手仲介5社事業承継・引継ぎ支援センター
※「中小企業M&A仲介大手5社」とは、日本M&Aセンター、ストライク、M&Aキャピタルパートナーズ、オンデック、名南M&Aを指す。
中小企業白書2022、I-97頁
事業承継・引継ぎ支援センター
統括責任者、引継ぎ支援のPMが兼務、数名のSM
承継コーディネーター
数名のエリアコーディネーター
認定支援機関(商工会議所等)に、親族内承継支援、経営者等個人の保証債務整理支援
経営者保証コーディネーター
県の財団、商工会議所
掘起こし事業
研修・人材育成
事業承継ネットワーク 事業引継ぎ支援センター
認定支援機関(産競法)
M&A・マッチング支援、金融機関・仲介事業者への取次ぎ
後継者人材バンク等
気づきの機会の提供(事業承継診断)
専門家派遣による経営改善、セミナーの実施、経営者保証解除に向けた専門家支援等
事業承継・引継ぎ支援のワンストップ体制によって円滑な事業承継・引継ぎを推進
※主に親族内承継を支援
※第三者承継を支援統合
1.情報収集・意思確認(一次対応)
(1)事業者情報の収集
(2)面接
(3)データベース登録―ノンネーム閲覧
本社所在地、事業内容、営業地域、従業員数、年商、経常利益、譲渡理由、希望形態、事業の特徴
全センター及び全国本部は全登録企業の閲覧可能
NNDB 事業引継ぎガイドライン公表直後の2015年4月1日より稼働、2019年9月2日よりバージョンアップ
2.登録機関に橋渡し(二次対応)
双方の面談の設定(2社以上)、仲介者・アドバイザーを活用する際の手続きへ
3.センターによる取り扱い(三次対応)
社外専門家等の選定
外部専門家等との契約締結
事業承継・引継ぎ支援センターの実績
全国48(東京のみ千代田区に加えて立川に独立のセンター)の事業引継ぎ支援センター(2011年10月スタート)。事業引継ぎ支援センターでは、地域金融機関OBや、公認会計士・税理士・中小企業診断士・弁護士等の士業等専門家といった、中小M&Aの知見を有する専門家が、プロジェクトマネージャー(PM)やサブマネージャー(SM)として常駐。中小企業基盤整備機構内に、事業(承継・)引継ぎ支援全国本部及びアドバイザリーボードを設置。センター及びセンターの登録支援機関(496、280の地域金融機関と216の仲介業者等)には中小M&Aガイドライン順守を義務付け。
https://www.oki-hikitsugi.go.jp/
2018年度相談者数11,477、相談回数26,377、成約件数923
2019年度相談者数11,514、相談回数33,732、成約件数1,176
2020年度相談者数11,686、相談回数41,750、成約件数1,379
累計相談者数60,191、相談回数150,014、成約件数4,956
中小企業がM&Aを躊躇する要因
M&Aに関心がなく、進め方が分からない
M&A業務の手数料等の目安が見極めにくい
M&A支援に対する不信感
M&A業者の数が年々増加すると、事業承継問題を抱える中小企業者にとって適切なM&A支援機関を判別することがむしろ困難になりかねないので、事業承継をより一層推進するためにも、最新の動向を織り込んだガイドライン改訂
国の事業引継ぎ支援センター中心から民間のM&A支援機関主導へ
M&A専門業者の行動指針とプラットフォーマーの言及
有用な中小M&Aの事例
小規模企業・個人事業主において中小M&Aが成立した事例(5事例)
経営状況が良好でない中小企業において中小M&Aが成立した事例(2事例)
親族内承継の頓挫から中小M&Aに移行し成立した事例
意思決定のタイミングが中小M&Aの成立内容に影響を与えた事例
譲り渡し側の条件の明確化が中小M&Aの成立に寄与した事例(2事例)
従業員の反対にもかかわらず成立した事例
廃業を予定していたものの中小M&Aが成立した事例(2事例)
何らかの理由により中小M&Aが成立しなかった事例(4事例)
中小M&Aガイドライン~第三者への円滑な事業引継ぎに向けて~P11~
仲介とFA
小規模な中小M&Aについては、FAよりも仲介者の方が多く用いられる傾向にあるが、業務形態により留意すべき事項が異なるため、いずれの業務形態であるか確認しておく必要がある。(P30~)
着手金(主に仲介契約・FA契約締結時に支払う)
月額報酬(主に一定額を毎月支払う)
中間金(例えば基本合意締結時等、案件完了前の一定の時点に支払う)
成功報酬(主にクロージング時等の案件完了時に支払う)
秘密保持、専任条項、テール条項(契約終了後の手数料請求条項)などの契約内容を確認。
参考資料には、仲介契約書、秘密保持契約書、基本合意書、株式譲渡契約書、事業譲渡契約書などのサンプルが掲載
仲介者・FAを選定せず、工程の多くの部分を自ら行う場合には、以下で取り上げるM&Aプラットフォームや事業引継ぎ支援センターを活用
(1)仲介契約書(M&A 仲介業務委託契約書)サンプル
譲り渡し側株主が仲介者との間で締結する仲介契約を前提としている。
(2)秘密保持契約書サンプル
譲り渡し側と譲り受け側が直接締結する場合の秘密保持契約を前提としている。
(3)基本合意書サンプル
株式譲渡を前提に、譲り渡し側株主(1名)と譲り受け側が締結する基本合意を前提としている。
(4)株式譲渡契約書サンプル
譲り渡し側株主(1名)と譲り受け側が締結する株式譲渡契約を前提としている。
(5)事業譲渡契約書サンプル
譲り渡し側と譲り受け側が締結する事業譲渡契約を前提としている。
参考
日本弁護士連合会・日弁連中小企業法律支援センター編「事業承継法務のすべて」(きんざい、平成30年発刊)
https://store.kinzai.jp/public/item/book/B/13963/
M&Aプラットフォーマー
役割
マッチング機会の提供、後継者不在の中小企業に対する中小M&Aに係る意識醸成。現在、譲り渡し側について、M&Aプラットフォームを利用したマッチングに関し、一切の手数料が発生しないケースが多い。
一方、譲り受け側については、マッチング後のクロージング時点で成功報酬が発生する形(いわゆる完全成功報酬型)が多い。この場合、着手金・月額報酬・中間金等は発生しないケースが多い。譲り受け側における手数料は、譲渡額等の数%程度とされることが多い(最低手数料を設けるところもあれば、設けないところもある。)事例として、譲渡額2,000万円に対し買い手の成功報酬66万円といったケース
留意点
サービス内容の明確化、掲載案件の信頼性、他の支援機関との連携
トランビ、バトンズ、M&Aサクシードが事業承継・引継ぎ支援ンターと連携
M&A専門業者
具体的な行動指針を記載(P53~)
(1)意思決定
・当該中小M&Aにおいて想定される重要なメリット・デメリットを知り得る限り、相談者に対して明示的に説明すること
・相談者の企業情報の取扱いについても善良な管理者の注意義務(善管注意義務)を負っていることを自覚すること
(2)仲介契約・FA契約の締結
・譲り渡し側・譲り受け側の両当事者と契約を締結し双方に助言する仲介者、一方当事者のみと契約を締結し一方のみに助言するFAの違いとそれぞれの特徴
・提供する業務の範囲・内容、手数料に関する事項
・秘密保持に関する事項・専任条項・テール条項・契約期間
・依頼者が、仲介契約・FA契約を中途解約できることを明記する場合には、当該中途解約に関する事項
・(仲介者の場合)依頼者との利益相反のおそれがあるものと想定される事項
(3)バリュエーション
・あくまで確定的なバリュエーションを実施したものではなく、参考資料として簡易に算定したものであるということ
・当該簡易評価の際に一方当事者の意向・意見等を考慮した場合、当該意向・意見等の内容
・必要に応じて士業等専門家等の意見を求めることができること
以下(4)譲り受け側の選定から(10)クロージング後(ポストM&A)まで
司法書士の役割
(9)クロージング
中小M&Aの最終段階であり、株式等の譲渡や譲渡対価の支払を行う。特に譲り受け側から譲渡対価の全部又は一部が確実に入金されたことを確認することが必要である。仮に事業譲渡の手法を選択し、承継対象財産の中に不動産が含まれる場合には、クロージング後速やかに登記手続を行う必要があるため、クロージングにおいて登記必要書類を授受することが通常である。
そのような場合には、司法書士等とも日程調整の上、クロージングに向けた具体的な段取りの準備を進める。金融機関からの借入金や不動産等への担保設定がある場合は、担保解除(及びこれに伴う担保抹消登記手続)につき、取引金融機関との調整が予め必要となることがあり、その場合には、自ら調整を行うか、仲介者・FA や士業等専門家の指示に従い、必要な手続を進めることが必要である(事業承継ガイドライン、2022、P37)。
また、事業譲渡等の承継対象財産に不動産を含む場合や、会社分割・合併等の場合、クロージング後速やかに登記手続が必要になるため、最終契約締結前の早い時期に、司法書士に対し当該契約に係る契約書等その他の登記必要書類につき、照会・確認しておくことが望ましい(中小M&Aガイドライン、2020、P83)。
センターの後継者人材バンク事業
2019年度には全センターで整備
1.情報提供・収集
譲り渡し側小規模事業者と譲り受け側起業家
地域おこし協力隊
2.マッチング
(1)小規模事業者との面談―引継ぎ条件の確認3回
(2)起業家との面談―ノンネーム情報関心者との面談
(3)当事者同士の面談
3.引継ぎまで
(1)外部専門家等を活用したフォローアップ
廃業、開業、物品売買契約、不動産賃貸契約等の支援
(2)後継者としての試用期間
2021年3月末に登録者4,000件
中小M&A推進計画と新たな工程表
2021年4月28日
事業承継のみのM&A施策から規模や意図に応じたM&A施策
事業承継・引継ぎ支援センターの強化と連携推進
中小M&Aガイドラインの普及啓発・遵守
M&A支援機関登録制度(2021.08.24、2,823件)
一般社団法人M&A仲介協会(2021.10.01、16社)
事業承継ガイドラインの再改訂とPMIガイドラインの制定
人材育成、許認可の引継ぎ、表明保証保険、工程表完了まで検討会がアドバイザリーボードとして存続、税制・補助金・法律によるさらなる支援、成長戦略実行計画・成長戦略フォローアップ(2021.06.18、閣議決定)に採用
事業承継に関する制度と司法書士への期待
令和4年10月
中小企業庁財務課
経営者年齢のピークは、2000年に「50歳~54歳」であったのに対して、2015年には「65歳~69歳」となっており、経営者年齢の高齢化が進展。また、高齢の経営者における後継者不在率も改善しているが、依然として高い水準。経営者の高齢化と後継者不在率の高止まり。
近年、我が国における休廃業・解散数は新型コロナウイルス感染症の影響もあって増加傾向。黒字廃業の比率が約6割を占める状況が続いており、後継者不在の中小企業は、仮に黒字経営であっても廃業等を選択せざるを得ない状況。
事業承継に期待される効果
事業承継によって経営者が若返ることで、生産性向上等につながる可能性あり。例えば、若い経営者層では売上高が増加する傾向にあるとの調査もある。
ポストコロナに向け、事業再構築などの新たな取組の重要性が高まっている。経営者年齢が若いほど、新たな販路開拓や新商品サービスに取組むとの調査もある。中小企業におけるM&Aのイメージについて10年前と比較すると約9割がプラスのイメージ。抵抗感が薄れつつある。
中小M&Aの実施件数は右肩上がりで増加しており、足下では年間3~4千件程度実施されていると推計。新型コロナウイルス感染症の影響により承継時期を後ろ倒しにする傾向にあり、事業承継税制の申請ペースも鈍化。
新型コロナウイルス感染症の事業承継への影響
コロナの影響で売上が減少した事業者ほど事業承継を後ろ倒しにしている。
事業承継ネットワークによるプッシュ型の事業承継診断により、事業承継・引継ぎの課題を発掘、支援(年間20万件超の事業承継診断)
事業承継診断事業承継・引継ぎ補助金(設備投資、販路開拓等)
事業承継やM&A後の設備投資や販路開拓等を支援
R3年度補正予算では、生産性革命推進事業に位置付け、年間を通じた機動的かつ柔軟な支援を実施。
経営資源集約化税制(設備投資)
M&Aに係る投資額の10%を税額控除又は即時償却
(参考)H29年度補正:797件H30年度補正:797件、R元年度補正:468件R2年度3次補正:354件、R3年度当初:75件R4年度当初:50件
各都道府県の事業承継・引継ぎ支援センターで、事業承継の相談、M&Aに係るマッチング支援等を実施。R4年度当初予算で大幅拡充。
事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用)
M&A時の専門家活用を支援(仲介手数料、DD費用等)
R3年度補正予算では、生産性革命推進事業に位置付け、年間を通じた機動的かつ柔軟な支援を実施。
経営資源集約化税制(準備金)
M&A後のリスクに備えるため、据置5年の準備金を措置
M&A実施時に、投資額の70%以下の金額を損金算入
M&A後のリスクへの備え
M&A時の費用負担軽減
事業承継税制(法人版、個人版)
事業承継時の相続税・贈与税を実質負担ゼロに
R4年度税制改正において、法人版の特例承継計画の確認申請の期限を1年延長。
事業承継時の相続税・贈与税の実質負担ゼロ
(参考) H20~H30年度:2,500件、R1年度:3,451件、R2年度:2,776件
(参考) R2年度1次補正:1,639件、R2年度3次補正:676件、R3年度当初:236件、R4年度当初:172件。
○円滑な事業承継やM&Aを進めるための指針
M&A支援機関の登録制度
「事業承継・引継ぎ補助金」による補助対象を、登録支援機関による支援に限定(登録事業者:2,823者R4年3月時点) M&A支援機関に係る自主規制団体
自主規制団体において、適切なルールの徹底、M&A支援人材の育成、苦情相談等を実施。
中小PMIガイドライン
譲受側がM&A後の統合作業(PMI)の取組を適切に進めるための「型」等を提示。平成29年度から早期・計画的な事業承継に対する経営者の「気付き」を促すため、全都道府県に、商工会・商工会議所、金融機関等の身近な支援機関から構成される「事業承継ネットワーク」を構築。プッシュ型の事業承継診断による経営者の事業承継に係る課題やニーズの掘り起こしは過去5年間累計で約76万件実施。
事業承継・引継ぎ支援センターによるワンストップ支援
全国47都道府県に設置した「事業承継・引継ぎ支援センター」では、親族内承継・第三者承継問わず、支援ニーズの掘り起こしからニーズに応じた支援までワンストップで実施。
事業承継・引継ぎ支援センターの相談件数・成約件数ともに増加傾向で、令和3年度には相談件数が20,841件、成約件数が2,557件に達した。
事業承継・引継ぎ補助金
事業承継・M&A後の新たな取組(設備投資、販路開拓等)、M&A時の専門家活用
(仲介・ファイナンシャルアドバイザー、デューデリジェンス等)、廃業・再チャレンジの取組を支援。
先代経営者 後継者
「事業引継ぎ時」等にかかる費用を補助
(M&A)
【対象経費の例】
・M&A仲介業者やFAへの手数料(着手金/成功報酬)
・価値算定費用
・デューデリジェンス費用
「承継後の取組」にかかる費用を補助
【対象経費の例】
・(事業に従事する従業員の)人件費
・新築・改築工事費用
・機械装置の調達費用
(注)廃業を伴うケースにおいては、廃業費も補助対象
M&Aが対象親族内承継、M&A、経営資源引継ぎ型創業等が対象
専門家活用 経営革新
令和3年度補正予算では、中小企業生産性革命推進事業に新たに位置付け。
年間を通じて機動的かつ柔軟な支援が可能に。事業承継・M&A後の新たな取組(設備投資、販路開拓等)、M&A時の専門家活用(仲介・ファイナンシャルアドバイザー、デューデリジェンス等)、廃業・再チャレンジの取組を支援。
事業承継・引継ぎ補助金(令和3年度補正)
支援類型補助率補助額
事業承継・M&Aを契機とする新たな取組に係る費用の補助
経営革新2/3 ~400万円、1/2 400~600万円
M&A時の士業等専門家の活用に係る費用の補助
専門家活用2/3 ~600万円
事業引継ぎ時や事業承継・引継ぎ後の新たな取組に関する廃業費用等の補助
廃業・再チャレンジ2/3 ~150万円
<補助率・補助額>(R3年度補正)
<要件・経費>(R3年度補正)
支援類型要件経費
経営革新経営資源引継ぎ型創業や事業承継、M&Aを過去数年以内に行った者、又は補助事業期間中に行う予定の者。
人件費、店舗等借入費、設備費、原材料費、産業財産権等関連経費、謝金、旅費、外注費、委託費、広報費。
専門家活用補助事業期間に経営資源を譲り渡す、又は譲り受ける者謝金、旅費、外注費、委託費、システム利用料、保険料
廃業・再チャレンジ事業承継やM&Aの検討・実施等に伴って廃業等を行う者廃業支援費、在庫廃棄費、解体費、原状回復費、リースの解約費、移転・移設費用(併用申請の場合のみ)
2021年8月にM&A支援機関登録制度を創設、2021年度中に2,823社のファイナンシャル・アドバイザー(FA)及び仲介業者を登録。現在、登録M&A支援機関から2021年度の中小M&Aの支援実績報告を受け付けているところ。事務局にてとりまとめ後、中小M&A市場の現状を把握する情報として公表予定。
登録制度の対象
M&A支援機関のうち、ファイナンシャルアドバイザー(FA)業務又は仲介業務を行う者
※業種を問わない。例えば仲介業務を行っている金融機関も対象。
逆に、デューディリジェンス(DD)のみを行う士業等専門家などは対象ではない。
主な登録要件
中小M&Aガイドラインの遵守を宣誓することを登録要件
具体的には、中小M&Aガイドラインにおいて定める事項のうち、
具体的な行動が規定されているもの(「必要」「すべき」等)
利益相反、専任条項、テール条項に関するもの
はガイドラインそのままの遵守
訓示的な内容(「望まれる」「留意すべき」「必要に応じて」等)はガイドラインの趣旨に則った遵守事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用型)において、FA又は仲介に係る手数料は、登録FA・仲介業者に係るもののみを補助対象(令和3年度当初予算から)
登録FA・仲介業者は2,823件。仲介業務とFA業務の両方を提供している割合は約8割。業種としては専門業者が多く、仲介業者が22.6%、FAが15.8%となっている。また、税理士(21.3%)や公認会計士(10.0%)も多いほか、地域金融機関(4.9%)も多い。
事業承継に伴う税負担の軽減や民法上の遺留分への対応をはじめとする事業承継円滑化のための総合的支援策を講ずる「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」が平成20年5月に成立。
経営承継円滑化法の概要
1.事業承継税制
事業承継の円滑化
地域経済と雇用を支える中小企業の事業活動の継続
2.遺留分に関する民法の特例
後継者が、遺留分権利者全員との合意及び所要の手続を経ることを前提に、遺留分に関する以下の特例を措置
生前贈与株式等・事業用資産の価額を除外(除外合意)
生前贈与株式等の評価額を予め固定(固定合意)
生前贈与した株式等(※会社)・事業用資産(※個人事業)の価額が、遺留分を算定するための財産の価額から除外されるため、相続後の遺留分侵害額請求を未然に防止
後継者の貢献による株式等価値の上昇分が、遺留分を算定するための財産の価額に含まれないため、後継者の経営意欲を阻害しない(※個人事業は利用不可)
事業承継の際に必要となる資金について、都道府県知事の認定を受けることを前提に、融資と信用保証の特例を措置
株式会社日本政策金融公庫法及び沖縄振興開発金融公庫法の特例
(融資)
対象:中小企業者の代表者(※)、事業を営んでいない個人
中小企業信用保険法の特例(信用保証)
対象:中小企業者及びその代表者(※)、事業を営んでいない個人
※中小企業者[会社]の代表者
事業承継に伴う幅広い資金ニーズに対応(M&Aにより他社の株式や事業用資産を買い取るための資金等も含む)
事業承継に伴う税負担を軽減する特例を措置
非上場株式等に係る贈与税・相続税の納税猶予制度
都道府県知事の認定を受けた非上場中小企業の株式等の贈与又は相続等に係る贈与税・相続税の納税を猶予又は免除
個人の事業用資産に係る贈与税・相続税の納税猶予制度
都道府県知事の認定を受けた個人事業主の事業用資産の贈与又は相続等に係る贈与税・相続税の納税を猶予又は免除
4.所在不明株主に関する会社法の特例
都道府県知事の認定を受けること及び所要の手続を経ることを前提に、所在不明株主からの株式買取り等に要する期間を短縮する特例を新設【令和3年8月施行】
会社法上、株式会社は、株主に対して行う通知等が「5年」以上継続して到達しない等の場合、当該株主(所在不明株主)の有する株式の買取り等の手続が可能
本特例によりこの「5年」を「1年」に短縮
※ 詳細は中小企業庁HP「経営承継円滑化法による支援」(https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/shoukei_enkatsu.htm)
平成21年度に、経営承継円滑化法に基づく経済産業大臣の認定を前提に、事業承継時の税負担を猶予する「事業承継税制」を創設。
平成30年度改正では事業承継時の税負担を実質ゼロにする抜本拡充を実施し、さらに、平成31年度改正では新たに個人事業主を対象とした個人版事業承継税制も創設。
事業承継税制の内容と主な改正経緯
※以上のほか、相続時精算課税制度の適用範囲の拡大及び所要の措置を講じる。
税制適用の入り口要件を緩和~事業承継に係る負担を最小化~
税制適用後のリスクを軽減~将来不安を軽減し税制を利用しやすく~
○納税猶予の対象になる株式数には2/3の上限があり、相続税の猶予割合は80%。後継者は事業承継時に多額の贈与税・相続税を納税することがある。
○税制の対象となるのは、一人の先代経営者から一人の後継者へ贈与・相続される場合のみ。
○対象株式数の上限を撤廃し全株式を適用可能に。また、納税猶予割合も100%に拡大することで、承継時の税負担ゼロに。
○親族外を含む複数の株主から、代表者である後継者(最大3人)への承継も対象に。中小企業経営の実状に合わせた、多様な事業承継を支援。
○税制の適用後、5年間で平均8割以上の雇用を維持できなければ猶予打切り。人手不足の中、雇用要件は中小企業にとって大きな負担。
○後継者が自主廃業や売却を行う際、経営環境の変化により株価が下落した場合でも、承継時の株価を基に贈与・相続税が課税されるため、過大な税負担が生じうる。
○5年間で平均8割以上の雇用要件を未達成の場合でも、猶予を継続可能に(経営悪化等が理由の場合、認定支援機関の指導助言が必要)。
○売却額や廃業時の評価額を基に納税額を計算し、承継時の株価を基に計算された納税額との差額を減免。経営環境の変化による将来の不安を軽減。
土地・建物(土地は400㎡、建物は800㎡まで)
機械・器具備品(例)工作機械・パワーショベル・診療機器等
車両・運搬具
生物(乳牛等、果樹等)
無形償却資産(特許権等)等
生前贈与による早期の事業承継準備を支援
2019年1月1日~2028年12月31日の間に行われる相続・贈与が対象
後継者の承継時の現金負担をゼロに
(参考)個人版事業承継税制の創設
個人事業者の事業承継を促進するため、10年間限定で、多様な事業用資産の承継に係る相続税・贈与税を100%納税猶予する「個人版事業承継税制」を創設。
事業承継税制の活用手続
事業承継税制の特例承継計画等の策定・確認申請の期限は、以下のとおり。
• 法人版事業承継税制: 2024年3月31日まで(※令和4年度税制改正により1年延長)
• 個人版事業承継税制: 2024年3月31日まで
法人版事業承継税制に係る手続
税務申告後5年以内、税務署へ3年に1度報告。申告認定書の写しとともに、贈与税の申告書等を提出。6年目以後、都道府県及び税務署へ毎年報告。税務申告後税務署へ3年に1度報告。(参考;令和4年度税制改正大綱)事業承継税制における所要の措置(相続税・贈与税)
事業承継税制は、事業承継時の贈与税・相続税負担を実質ゼロにする時限措置。(※法人版:平成30年度抜本拡充、個人版:平成31年度新設)
新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえ、法人版の特例承継計画の確認申請の期限を1年延長する。
○法人版事業承継税制における特例承継計画の確認申請の期限を1年延長
事業承継を円滑に行うための遺留分に関する民法の特例
相続人には原則として「遺留分」があるため、先代経営者(例えば父) が、生前贈与や遺言によって後継者(例えば長男) に自社株式・事業用資産を集中させ、会社や個人事業の経営を承継させようとしてもうまくいかない場合がある。
推定相続人が複数いる場合、後継者に自社株式・事業用資産を集中させて承継させようとしても、遺留分を侵害された相続人から遺留分侵害額に相当する金額の支払いを求められた結果、自社株式や事業用資産を処分せざるを得なくなり、それらが分散してしまうなど、事業承継にとっては大きなマイナスとなる場合がある。
「遺留分」とは
原則として、自分の財産はどのように処分するのも自由だが、民法は、遺族の生活の安定や最低限度の相続人間の平等を確保するために、相続人(兄弟姉妹及びその子を除く。) に最低限の相続の権利を保障している(遺留分)。
他の相続人が過大な財産を取得したため自己の取得分が遺留分よりも少なくなってしまった(つまり遺留分が侵害された)場合には、遺留分侵害額に相当する金額の支払を請求することが可能。各相続人の遺留分の額は、遺留分を算定するための財産の価額(相続財産額に一定の生前贈与財産額を加え、負債額を差し引いた金額)に遺留分の割合(原則2分の1。父や母だけが相続人の場合は3分の1) を掛け、さらに法定相続分を掛けて算出される。
遺留分の問題に対処するため、経営承継円滑化法は、「遺留分に関する民法の特例」(以下「民法特例」という。)を規定。
民法特例を活用すると、後継者を含めた先代経営者の推定相続人全員の合意の上で、先代経営者から後継者に贈与等された自社株式・事業用資産の価額について、遺留分を算定するための財産の価額から除外(除外合意)、または、遺留分を算定するための財産の価額に算入する価額を合意時の時価に固定(固定合意) をすることが可能(両方を組み合わせることも可能。)。
除外合意
後継者が先代経営者から贈与等によって取得した自社株式・事業用資産の価額について、他の相続人は遺留分の主張ができなくなるので、相続紛争のリスクを抑えつつ、後継者に対して集中的に株式を承継させることが可能。
固定合意※会社のみ利用可能
自社株式の価額が上昇しても遺留分の額に影響しないことから、後継者の経営努力により株式価値が増加しても、相続時に想定外の遺留分の主張を受けることがない。
不動産・自社株式・事業用資産
民法特例を利用するには、会社の経営の承継の場合と個人事業の経営の承継の場合の別に応じて、それぞれの要件を満たした上で、「推定相続人全員及び後継者の合意」を得て、「経済産業大臣の確認」及び「家庭裁判所の許可」を受けることが必要。
合意
経済産業大臣の確認
家庭裁判所の許可
合意の効力発生
1ヶ月以内に申請(後継者が単独)
個人事業者の方
経済産業大臣の確認事項
・当該合意が経営の承継の円滑化を図るためになされたこと。
・申請者が後継者の要件に該当すること。
・合意対象の株式を除くと、後継者が議決権の過半数を確保することができないこと。(会社のみ)
・後継者が経営者でなくなった場合などに後継者以外の者が取れる措置の定めがあること。
家庭裁判所の許可の要件
・合意が当事者全員の真意によるものであること
合意の対象とした事業用資産が、贈与の直前まで先代経営者の事業の用に供されていたこと及びその資産を後継者が事業の用に供すること。
推定相続人全員及び後継者の合意
・民法特例を利用するためには、先代経営者の推定相続人全員(但し、遺留分を有する者に限る)及び後継者で合意をし、合意書を作成することが必要。
会社の経営の承継の場合
会社
• 中小企業者であること。
• 合意時点において3年以上継続して事業を行っている非上場企業であること。
先代経営者(旧代表者)
• 過去又は合意時点において会社の代表者であること。
後継者(会社事業後継者)
• 合意時点において会社の代表者であること。
• 先代経営者からの贈与等により株式を取得したことにより、会社の議決権の過半数を保有していること。※推定相続人以外も対象。
個人事業の経営の承継の場合
先代経営者(旧個人事業者)
• 合意時点において3年以上継続して事業を行っている個人事業者であること。
• 後継者に事業の用に供している事業用の全てを贈与したこと。
後継者(個人事業後継者)
• 中小企業者であること。
• 合意時点において個人事業者であること。
• 先代経営者からの贈与等により「事業用資産」を取得したこと。
経営承継円滑化法による金融支援(融資・保証制度)(令和2年度改訂)
(1)日本政策金融公庫等の融資制度
承継に伴って資金ニーズが生じたとして認定を受けた中小企業者(会社)の代表者個人やこれから承継を行うために資金ニーズが生じているとして認定を受けた個人の方は、日本政策金融公庫等の融資制度が利用可能。
(2)信用保証協会の信用保証制度
認定を受けた中小企業者(会社及び個人事業主)又は個人の方が、承継等に伴う資金ニーズが生じ、金融機関から借り入れる場合には、信用保証協会の通常の保証枠に加えて別枠が利用可能。
通常の信用保証枠
普通保険【2億円】
無担保保険【8,000万円】
別枠+2億円+8,000万円+
「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」(経営承継円滑化法)では、都道府県知事の認定を受けることを前提として、事業承継の際に必要となる様々な資金について、融資制度と信用保証の特例によって支援。
必要となる資金の類型支援の対象者支援形態
融資信用保証
・経営を承継した後に必要となる資金
• 後継者が自社の株式や事業用資産を買い取るための資金
• 後継者が相続・贈与で自社株式や事業用資産を取得する際の相続税・贈与税の納税資金
• 仕入先の取引条件や取引先金融機関の借入条件が厳しくなったことにより必要となる資金
(信用保証のみ)等
(参考)日本政策金融公庫の融資( ステージごとの資金活用イメージ)
事業承継前事業承継時/安定的な経営権の確保事業承継後
お客さまのニーズ(例)
• 収益・財務基盤を強化したうえで、後継者に事業を引き継ぎたい。
• 後継者のために、予め会社の資産・負債関係を整理しておきたい。
• 後継者やそれを補佐する社員等に対する教育を充実させたい。
• 事業の更なる成長を図るため、優れた技術力を持った企業を買収したい。
• 将来的な株式分散を避けるために、持株会社に株式を集約したい。
• 承継円滑化法の認定を受け、役員や親族に後継者候補がいない中小企業の事業を承継したい。
• 承継円滑化法の認定を受け、分散した株式を代表者に集約化し、経営の安定性を高めたい。
• 先代の時代とは異なる事業にチャレンジし、会社を大きく成長させたい。
事業承継計画関連⇒現経営者が後継者(候補者を含む。)と共に事業承継計画を策定している方が対象
・付加価値向上計画を策定し、新たな雇用が見込まれるM&A(認定経営革新等支援機関などの支援を受けて同計画を策定している場合は基準利率-0.65%)
・後継者不在企業または新型コロナウイルス感染症の影響を受け事業継続が困難となっている企業のM&A(買収先が小規模事業者の場合は特別利率②または基準利率-0.65%)
・株主からの株式等の取得
・持株会社による株式取得
代表者個人関連(特別利率)
中小企業経営承継円滑化法第12条第1項第1号の認定を受けた中小企業の代表者、同法第12条第1項第2号の規定に基づき認定を受けた個人である中小企業者または同法第12条第1項第3号の規定に基づき認定を受けた事業を営んでいない個人が対象
承継第二創業関連(特別利率)⇒事業承継後に新たな取組を行う方が対象
想定される資金使途
• 円滑な事業承継のための老朽化設備更新資金
• 現経営者への債務返済資金
• 事業承継計画に基づく支払手形削減等の財務健全化に必要な資金等
• M&A資金
• 自己株式や株主等が所有する事業用資産の取得資金
• 持株会社による株式取得資金等
• 新たな事業で必要となる設備資金や運転資金
• 代表者による親族等からの株式買取資金等
ポイント
• 融資後7年以内の代表者交代見込みが要件
• 事業承継計画に基づき必要となる資金が対象
<事業承継関連>
• 代表者交代見込みを必ずしも要件としない。
<代表者個人関連>
• 承継円滑化法に基づく認定を受けた日の翌日から起算して1年を経過する日までの方が対象
<代表者個人関連>
• 対象となる個人が事業を営んでいないことが要件
<承継第二創業関連>
• 承継後5年以内に開始した新たな事業が対象
【事業承継関連】
・M&Aの実施に必要な資金
(※1)他に「経営者個人保証免除関連」あり(※2)特別利率の適用は4億円まで(4億円超は基準利率)
事業承継時に経営者保証は大きな課題。⇒ 信用保証の一般枠(2.8億円)の範囲内で、事業承継時に経営者保証を不要とする新たな信用保証制度を創設(令和2年4月より開始)。【事業承継特別保証】
上記に加え、一般枠ではカバーできない融資に対して、経営者保証を不要とする信用保証の特別枠(最大2.8億円)を法律上措置。【経営承継借換関連保証】
現行法制下での対応
今回の法改正による措置
【主に想定される事例】
• 中小企業A社の現経営者aは引退を検討。経営者候補bが存在するものの、事業承継を行った場合、現経営者aの経営者保証の存在により、経営者候補bに対しても経営者保証が徴求される可能性があった。
• このため、経営者の経営者保証付き融資について、新制度を活用して、経営者保証なし融資への借換えを実施。これにより、経営者候補bの心理的な負担が軽減し、事業承継が実現。一定の要件を満たす企業に対しては、信用保証協会による経営者保証の徴求なし
※ 令和2年4月からの新制度では一般枠(2.8億円)の範囲内の適用に留まる経営者保証が引き継がれる心配なくスムーズな承継が実現
法改正により、既存の信用保証枠とは別の特別枠(+2.8億円)を措置
経営承継借換関連保証の創設(令和2年10月~)
事業承継特別保証経営承継借換関連保証
開始時期令和2年4月1日改正法施行時(令和2年10月1日)
根拠法中小企業信用保険法(法改正なし、運用によるもの)
経営承継円滑化法(法改正後)
対象者
3年以内に事業承継を予定する法人
事業承継日から3年を経過していない法人、3年以内に事業承継を予定する法人
対象資金
・事業承継前の真水資金
・事業承継前の経営者保証付き融資の借換資金
プロパー融資の借換可(既に無保証人の融資は除く)
保証限度額【一般枠】2億8千万円(うち無担保8千万円) 【特別枠】2億8千万円(うち無担保8千万円)
保証人徴求しない、保証期間10年以内、責任共有対象(8割保証)
保証料率0.45%~1.90%(リスク区分に応じた弾力化料率)⇒経営者保証コーディネーターによる確認を受けた場合、0.20%~1.15%に大幅軽減
令和2年1月1日から令和7年3月31日までに事業承継を実施した法人であって、承継日から3年を経過していないもの。
事業承継時に財務要件を充足していなくとも、承継後3年以内に充足すれば当該制度を一部利用可とする利便性向上措置。経営承継借換関連保証は、要件の充足の認定により別枠を付与するものであるため、同措置は適用不可。
「保険料率の軽減」及び「損失補償の対象」により実現。予算事業の継続期間に紐付く時限措置。
会社法上、株式会社は、株主に対して行う通知等が5年以上継続して到達しない等の場合、当該株主(所在不明株主)の有する株式の買取り等の手続が可能。
「5年」という期間の長さが事業承継のハードルになっていることを踏まえ、承継ニーズの高い中小企業(非上場)に限り、経済産業大臣の認定を受けることと一定の手続を前提に、「1年」に短縮する特例を創設(経営承継円滑化法)。
所在不明株主に関する会社法の特例
<買取り等の手続>
【認定の要件】
代表者が年齢、健康状態その他の事情により、継続的かつ安定的に経営を行うことが困難であるため、会社の事業活動の継続に支障が生じていること
一部株主の所在が不明であることにより、その経営を当該代表者以外の者(株式会社事業後継者)に円滑に承継させることが困難であること
【手続保障(異議申述手続)】
利害関係人が一定期間(3か月以上)内に異議を述べることができる旨等を公告し、所在不明株主等に個別催告することで、手続保障を担保。
現行制度
5年以上の通知不到達・配当不受領
取締役会決議(取締役会設置会社の場合)
公告・個別催告
裁判所の売却許可
株式買取り
特例(認定を受けた場合)
1年以上の通知不到達・配当不受領
取締役会決議(取締役会設置会社の場合)
公告・個別催告[会社法]
裁判所の売却許可
株式買取り
公告・個別催告[特例]
(参考)所在不明株主の取扱い
【問題の所在】
中小企業においては、株主数が比較的少数で個々の株主の保有する議決権割合が多い傾向にある。そのため、株主名簿に記載はあるが連絡の取れない株主(所在不明株主)が存在する場合には、この存在が円滑な事業承継(特にM&Aの場合)の妨げとなるケースもある。仮に所在不明株主の議決権割合が多くない場合でも、中小企業のM&Aでは全株式について株式譲渡を行うことが多いことから、そのようなM&Aの障害となるケースがある。
所在不明株主が発生する理由は個別の事案によって異なるが、相続が主な理由の一つ。つまり、旧株主からの相続により株主となった者は、その会社の経営への関心が薄いことがあり、所在不明株主となることがある。当該旧株主が名義株主であるケースも見受けられる。所在不明株主の議決権割合(最大)は10%以上も30%を占める。
参考
(https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/kenkyukai/shigenshuyaku/210125shigenshuyaku.html)
中小企業の経営資源の集約化に資する税制(令和3年度税制改正創設)
経営資源の集約化(M&A)によって生産性向上等を目指す、経営力向上計画の認定を受けた中小企業が、計画に基づいてM&Aを実施した場合に、以下の措置が活用可能。
-設備投資減税(中小企業経営強化税制)
-準備金の積立(中小企業事業再編投資損失準備金)
なお、賃上げ促進税制の上乗せ措置は、M&A後雇用者全体の給与等支給額が一定以上増加する場合に活用可能(令和4年度税制改正後は経営力向上計画の認定が不要)。経営力向上計画に基づき、以下いずれかの要件に該当する一定の設備を取得等した場合、投資額の10%を税額控除※ 又は全額即時償却。
※資本金3000万円超の中小企業者等の税額控除率は7%
設備投資減税準備金の積立
事業承継等事前調査に関する事項を記載した経営力向上計画の認定を受けた上で、計画に沿ってM&Aを実施した際に、M&A実施後に発生し得るリスク(簿外債務等)に備えるため、投資額の70%以下の金額を、準備金として積み立て可能(積み立てた金額は損金算入)。
※簿外債務が発覚し、減損等が生じた場合等には、準備金を取り崩して益金に算入。
準備金積立申請の流れ中小企業庁HP「経営資源集約化税制の活用について」参照
2021年8月~2022年6月の11ヶ月間で125件の認定。
https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/kyoka/shigenshuyaku_zeisei.html
事業承継ガイドラインにおける司法書士に関する記載
〇事業承継のサポート機関として、司法書士を紹介
司法書士は、商業登記、不動産登記等の実務家として、事業承継における株式及び事業用不動産の承継、M&A、種類株式及び民事信託の活用、担保権の処遇等についてサポートしている。
また、日本司法書士会連合会においては、商業登記・企業法務対策部、民事信託等財産管理業務対策部等を設置して事業承継に関する支援事業を行っている。
〇本文中において、事業承継のプロセス等に応じ、専門家としての司法書士の活用に触れている。
第三章事業承継の類型ごとの課題と対応策
1.親族内承継における課題と対応
人(経営)の承継、経営の承継の実行
会社形態であれば、代表取締役の交代による経営権の承継と、株式の移転による支配権(議決権)の承継
個人事業主の場合には、一般的には現経営者が税務署に対して「廃業届」を提出し(この届に、後継者の名称を記載することができる)、後継者は「開業届」を提出。いずれの形態であっても、これらの手続を法律面・税務面からも円滑に実行するため、弁護士・司法書士や税理士等の士業等専門家等への相談・依頼を行うことが有用。
財産の承継-株式・事業用資産の分散防止、遺言の活用
遺言のほか、死因贈与によることも同様の効果があるので、適切な手法や手続等について、弁護士や司法書士等の士業等専門家等に相談することが有益である。
従業員承継における課題と対応策
人(経営)の承継、後継者の選定・育成
種類株式の活用
従業員承継に向けて、従業員後継者と関係者の調整等のために、議決権制限種類株式、配当優先種類株式や拒否権付種類株式等の種類株式を活用するケースも見られ、会社法や商業登記を踏まえた設計という観点から弁護士や司法書士等の士業等専門家等への相談を行うことも有用である。
第四章事業承継の円滑化に資する手法
種類株式の導入手続
株主総会の特別決議による定款変更が必要である。希望する種類株式の内容が会社法上適法か否か、そして登記可能か否かの問題があり、また、種類株式の承継等に関する税務上の取扱いが明確でない部分も存在するため、早期に弁護士、司法書士、税理士等の士業等専門家等に相談すべきである。
信託の利用方法
民事信託又は商事信託のいずれを採用するかによっても異なるが、いずれにしても法務及び税務両面からの具体的な検討を、事前に行うことが不可欠である。また、民法、不動産登記法その他の法令との関係や税務上の取扱いが明確でない部分も存在するため、早期に司法書士、弁護士、税理士等の士業等専門家や、信託会社の窓口等に相談すべきである
平成27年3月、中小企業経営者のM&Aに対する理解促進のため、M&Aに関する基礎知識等を紹介するM&Aの「手引き」として、「事業引継ぎガイドライン」を公表。公表から5年が経過する中、中小企業のM&Aは着実に進展しつつあるものの、未だ第三者に会社を譲り渡すことを躊躇している中小企業経営者は数多く存在していることから、同ガイドラインを全面改訂し、「中小M&Aガイドライン」を策定。
事業承継の実例の紹介と司法書士の係わり
(事業承継ガイドラインと事業承継・引継ぎ支援センターの事例から)
独立行政法人中小企業基盤整備機構
中小企業事業承継・引継ぎ支援全国本部
1.事業承継への初期的な対応
(対応についての考え方:事業承継ガイドラインより)
2.具体的な対応策と考察
(事業承継ガイドライン:司法書士が係わる可能性が高い項目を中心に)
・会社法上の制度活用と対応
・事業承継に関連する税制
・経営者保証ガイドライン(特則)について
3.事業承継・引継ぎ支援センターの概要と支援例
1.事業承継への初期的な対応(対応についての考え方:事業承継ガイドラインより)
事業承継とは、次世代の後継者に事業経営そのものやその裏付けとなる事業財産(株式等)を引継がせることで、事業を継続し発展させること。
事業経営・・・経営そのものの承継。代表権など対外的なものから実際に運営に必要となるノウハウ・人脈・技術・経営理念などの付加価値源泉も含む。(ノウハウ・人脈などは知的資産として分離して考えることもある)
事業財産・・・事業や会社の代表権の裏付けとなる財産を承継すること。会社の株式や事業用資産など。この中には保証債務などの負の財産も含む。
・後継者は事業財産と共にノウハウ等(知的資産)の付加価値源泉を含めた事業経営を承継しなければ事業を継続し発展させることは出来ない。
・また、中小企業においては事業経営そのものとその裏づけとなる事業財産を後継者が保有することでスピーディで能動的な経営が可能となる。(所有と経営の一致)
事業承継の構成要素(3つに分けた場合)
事業承継における資産の承継は、事業承継のごく一部に過ぎない。人(経営)と知的資産(ノウハウ、付加価値源泉)の承継もあわせて検討が必要。
中小企業庁:「事業承継ガイドライン(改訂版)」より
自社の特長・価値源泉の把握
譲受側(後継者含む)に自社の特長や価値源泉を理解してもらうためには、まずは自社の特長や価値源泉となる経営資源を適切に把握することが重要。更に価値源泉となる経営資源や会社の特長を強くすることで、「のれん」を強化できる可能性もある。
価値源泉の事例
・技術力
・人材
・営業力
・取引先(取引口座)
・納期、製造能力など
利益を生む源泉
内閣府:「経営デザインシート(解説編)」より
事業承継の選択肢(会社を誰に引き継ぐか)
会社を取り巻く利害関係者(株主、従業員、取引先、債権者、地域社会等々)の満足度を一番高くできる主体に引継ぐことが本来は望ましいはず。←誰が経営するかで企業(事業)の価値は変わる。中小企業は、まずは子息への承継を望むケースが依然として多い。一方で、少子化、都市部への経済圏の集中、個の尊重等を背景に子息への承継の困難度は上昇し、より広く引継ぎ先を考える必要性がますます高まっている。⇒第三者によるの引継ぎのポジティブな側面
親族内承継
・親族ということで、関係者から引継の正当性について理解をえられやすい
・早い時期から引継ぎへの合意があれば対策を立てやすい
・経営者の資質がない者が後継者になるリスク
・相続人が複数いる場合、親族間の対立を生み経営権の集中が難しくなることがある。
・計画的に承継を行わないと円滑に承継が進まないケースがある。
役員・従業員承継
・会社や先代経営者を熟知した社内の人材が引継ぐことで経営の一体性を保ちやすい
・早い時期から引継ぎへの合意があれば対策を立てやすい
・「経営者」と「役員・従業員」の意識差の克服が必要
・他の経営者、従業員からのやっかみ
・株式取得資金の調達が難しいことがある
・先代経営者の個人保証を引継ぐことへの抵抗感
第三者承継(M&A)
・広い選択肢からより良い引継ぎ先を選択できる可能性あり
・会社の安定・成長をより確かにできる可能性あり
・創業者利益を確保出来る可能性がある
・経営者保証が外れる
・希望にあう相手がみつかる保証はなく、相手先の探索から始めるので時間がかかることが多い
・仲介会社等を利用した場合費用がかかる
事業承継に向けた準備
円滑な事業承継の実現のためには、5つのステップを経ることが重要である旨を明記。
○事業承継に向けた準備の必要性の認識
事業承継の早期・計画的な準備を促すため、「事業承継診断」を通じた支援機関と経営者との対話。
○経営状況・経営課題等の把握(見える化)
会計要領等のツールを活用し、経営状況等の「見える化」に取り組む。
○事業承継に向けた経営改善(磨き上げ)
本業の競争力強化等を図ることで、後継者が後を継ぎたくなるような経営状態へ引き上げる。
○事業承継計画策定(親族内・従業員承継)
株式等の事業用資産や代表権の承継時期等を記載した事業承継計画を後継者とともに策定し、事業承継の円滑化を図る。
○M&A等によるマッチングの実施(社外への引継ぎ)
M&A等を活用した後継者マッチングの実施。※詳細は「事業引継ぎガイドライン」参照
○ポスト事業承継
後継者による、新たな視点での事業の見直し等への挑戦を促進。
<各ステップの概要>
経営状況・経営課題等の把握(見える化)
経営課題、事業承継課題を把握し、改善策を講ずる。
会社の経営状況の見える化
「経営の見える化」は、経営者自らの理解促進に留まらず、関係者に自社の状態を開示すること。
【取り組み事例】
・経営者所有の不動産に係る事業利用の有無、経営者と会社間の貸借関係、経営者保証の有無等会社と個人の関係の明確化。
・「中小企業の会計に関する指針」や「中小企業の会計に関する基本要領」等による適正な決算処理の点検。
・保有する自社株式数の確認と株価評価。
・商品毎の月次の売上・費用(部門別損益)の分析、製造ラインの課題の把握、在庫の売れ筋・不良の把握。
・「ローカルベンチマーク」を活用した自社の客観評価。
・経営力向上を図る「経営力向上計画」の策定。
事業承継課題の見える化
事業承継の課題の見える化が早期の対応につながる。
【取り組み事例】
・後継者候補の有無の確認。候補がいる場合は、候補者の能力、適性等の精査。いない場合は、社内外における候補者の検討。
・候補者に対して、親族内や取引先等から異論が生じる可能性がある場合は、その対応策の検討。
・親族内承継の場合は、相続財産の特定、相続税額の試算、納税方法等の検討。
事業承継に向けた経営改善(磨き上げ)
磨き上げを通じ、魅力ある事業に引き上げる。承継前に経営改善を行い、後継者が後を継ぎたくなるような経営状態まで引き上げておくことが大切。「磨き上げ」の対象は、業績改善や経費削減の他、商品やブランドイメージ、優良な顧客、金融機関や株主との良好な関係、優秀な人材の育成、知的財産権や営業上のノウハウ、法令遵守体制等。
【取り組み事例】
本業の競争力強化、「強み」を作り、「弱み」を改善する。自社のシェアの高い商品・サービス等の拡充、技術力を活かした製品の高精度化・短納期化、人材育成や新規採用等を通じた人的資源の強化。取引先やマーケットの偏りの是正による事業リスクの分散。
経営体制の総点検
社内の風通しを良くし社員のやる気を向上、役職員の職制・職務権限の明確化と業務権限の委譲、各種規定類・マニュアルの整備によるガバナンス・内部統制の向上。事業に必要のない資産、滞留在庫の処分、余剰負債の返済による経営資源のスリム化。
経営強化に資する取組
足下の財務状況のタイムリー・正確な把握(財務経営力の強化)、財務情報の取引先への開示(資金調達力の強化、取引拡大の可能性)。
業績が悪化した中小企業における事業承継
事業承継のタイミングは事業再生を行う契機でもあり、まずは弁護士等の専門家に相談し、適切な再生スキームの選択や金融機関等との交渉方針について助言を得ることが有益。いわゆる再生プロセスを経るべき場合は、裁判所が関与する法的整理(民事再生、会社更生)、私的整理(特定調停、再生支援協議会、事業再生ADR)の活用の検討が必要。
【事例1】本業の競争力強化による事業承継の成功事例(新規事業開発を通じた業容拡大により、後継者が戻ってきたケース)
電化製品の小売業を営んでいた中小同族会社の社長A(70 歳)には、後継者候補として大都市圏の大学を卒業し、そのまま同地の同業者に就職した子Bがいた。Bは自社の将来性を悲観しており、現在の勤務先を退職して地元に帰るのではなく、そのまま大都市圏に住み続けることを決めていた。
事業の存続をあきらめきれなかったAは、一念発起して後継者が継ぎたくなるような会社にしようと自社の磨き上げに着手した。これまでは電化製品の小売のみで事業収益性が低かったことから、大型製品の販売から据付工事まで一貫した対応を開始したところ、引き合いが増加。丁寧なアフターフォローが評判となり、今ではこれまでの数倍の売上高や従業員数を誇るまでに至った。
帰省した際に自社の変貌ぶりに驚いたBは、自分が関与することにより事業拡大の可能性が高いことを実感した。こうした経緯からBは地元に帰ってくることを選択し、今では二代目経営者として自社の事業拡大に尽力している。
(親族内・従業員承継):事業承継計画の策定
10年後の事業展開を思い描く。自社や自社を取り巻く状況を整理し、会社の10年後を見据え、いつ、誰に、何を、どのように承継するのかを考える。
中長期目標の設定
自社の現状とリスクの把握を行い、中長期的な方向性・目標を設定。併せて組織体制のあり方や、必要な設備、投資計画等を検討し、売上や利益、マーケットシェア等の具体的指標に落とし込む。
事業承継計画の策定
設定した目標を踏まえ、資産・経営の承継の時期を盛り込んだ事業承継計画を策定。現経営者と後継者間で意識の共有化を図ることが重要。
ア)自社の現状分析
現状をもとに、次世代に向けた改善点や方向性を整理。
イ)今後の環境変化の予測と対応策・課題の検討
今後の環境変化を予測し、適切な対応策を検討。
ウ)事業の方向性の検討
現行事業の継続・事業転換について検討を行い、実現プロセスの具体的なイメージを固める。
エ)具体的な目標の設定
売上や利益、マーケットシェア等の具体指標毎の目標値を設定。
オ)円滑な事業承継に向けた課題の整理
後継者を中心とした経営体制へ移行する際の具体的課題を整理。
親族承継への対応
事業承継に向けての対応の最初のステップは自社の状況の把握が重要である。自社の概要を付加価値源泉を含めて把握し、その上で後継者候補に価値源泉を将来的に承継出来る能力や適性があるのかを見極めた上で、承継についての意思確認をすることが必要である。
会社概況の把握(現状と将来の見込み、キャッシュ・フロー、知的資産等)
株主、親族関係の把握
個人財産の概要把握(個人名義の土地・建物、個人の負債、個人保証等)
親族内の後継者候補の有無、従業員内の後継者候補の有無
後継者候補の能力・適性の検討
後継者候補への意思確認
中長期の経営計画に、事業承継の時期、具体的な対策を盛り込んだ「事業承継計画」を作成する。
【作成するための検討項目】
・後継者教育、役職(部署ローテーション)、関係者(社内・外部)の理解、株式の移転
・親族内の理解(法定相続人の人間関係把握・理解、相続財産の把握、相続方法・納税方法等)
特に留意する必要がある点は「株式の集約化」と「事業を承継しない相続人への配慮(遺留分)」
事例2(計画的な取組による成功例)
○後継者への移行に必要となる期間は3年以上は必要と言われている中で、計画を策定し、それを実行している割合は3割程度。計画の策定とともに実際に計画を実行に移していく必要がある。
中小同族会社の創業者である社長A(72 歳)は、後継者である子Bに社長職を譲った上で引退することを考えていた。株式保有比率は、Aが80 %、Aの妻が20 %で、今後段階的にBに対して譲渡していくことにしていた。
Bは後継者として将来社長職に就くことを了解していたが、営業担当者として営業活動に従事していたものの、経営管理に関する知識に乏しく、実務にも携わっていなかった。Aは社長職をBに譲ることはまだしも、株式を譲渡することにより会社運営の決定権を渡すことは絶対できないとして悩んでいた。
その後、相談に赴いた事業承継・引継ぎ支援センターの助言も踏まえ、AはBを含む家族内で話し合いを行い、解決のためには事業承継を進めるための事前準備を行う必要があるとの結論に至った。そして、社長交代や株式譲渡の時期、後継者教育などについて、今後数年間をかけて徐々に進めていくために事業承継計画を策定することとした。
税理士等の支援機関の支援を得ながら計画を策定する中で、以前からBが経営管理業務の習得を望んでいたことが判明したため、社内での実務習得に加え、社外の研修等を受講し始めた。こうした行動の変化に安心したAは、3年後に社長職をBに譲り、5 年後までに全株式をBに集中することを盛り込んだ事業承継計画をBとともに策定した。策定した計画については、主要取引先や金融機関などにも開示し、その賛同を得ている。
現在AとBは、社長業の引継ぎを行うと同時に、Bを中心として事業承継計画に盛り込んだ新規事業に着手するなど、二人三脚で事業承継計画を実行に移しており、業績も順調に推移している。
具体的な対応策と考察
(事業承継ガイドライン:司法書士が係わる可能性が高い項目を中心に)
会社法上の制度活用と対応
名義株の整理
1990年の商法改正前は、株式会社の設立には最低7人の発起人が必要であり、各発起人は1株以上の株式を引き受けねばならなかった。このため、名義上の株主と実質的な株主が異なる、いわゆる「名義株」が多発。
名義株を放置しておくと、突然、名義上の株主から、権利が主張され、紛争となることがあることから、事業承継に先立ち、名義上の株主と合意を結ぶなど、権利関係を明確にしておく必要あり。
→特に創業者が存命中であれば、早期に名義上の株主から「名義株承諾書」や「念書」等で実質的な株主でない旨の確認書を入手しておくことが重要。
所在不明株主の整理
名義株や、相続による人間関係が希薄化等から、株主名簿上の株主の所在不明事案が頻発。突然株主権が主張されるリスクや、全株主の同意が必要な場合等に備え、株主の所在の把握は不可欠。(特にM&Aの場合には100%の株式譲渡が求められることが多い)なお、5年以上継続して会社からの通知が到達しない株主が所有する株式は、一定の手続きを経て会社が処分(競売・売却・自社株買い)することが可能(会社法第197条)。
→他方で「5年」という期間の長さが、事業承継の際の手続きのハードルになっているという指摘を踏まえ、2021年の経営承継円滑法改正(会社法特例)により、非上場の中小企業者のうち、事業承継ニーズの高い株式会社に限り、都道府県知事の認定を受けることと一定の手続保障を前提に「5年」を「1年」に短縮する特例が創設された。
会社法上、株式会社は、株主に対して行う通知等が5年以上継続して到達せず、継続して5年間剰余金の配当を受領されない場合、当該株主(所在不明株主)の有する株式の買取り等の手続が可能である。
「5年」という期間の長さが事業承継のハードルになっていることを踏まえ、承継ニーズの高い中小企業(非上場)に限り、認定を受けることと一定の手続保障を前提に、例えば「1年」に短縮する特例を創設。(会社法の特例として、経営承継円滑化法を改正)
会社法上の制度活用と対応
相続人等に対する売渡請求(会社法第174条)
あらかじめ定款に定めることにより、相続等の一般承継で株式が移転した場合、会社から相続人に対して、会社への売り渡しを請求することができる制度。(会社定款に定める)
・請求期限:相続等があったことを知った日から1年以内に、株主総会の特別決議を経て請求。
・売買価格:株式の売買価格協議が調わない場合、裁判所に価格決定の申立てが可能(申立ては売渡請求の日から20日以内。)。
・財源規制:会社の純資産から資本及び法定準備金等を控除した額(分配可能額)の範囲内でのみ株式の買取が可能。
・後継者に対する買取請求の可能性:非支配株主の主導による後継者に対する買取請求が行われる可能性がある。
(相続クーデター)
特別支配株主による株式等売渡請求(会社法第179条)
株式会社の総株主の議決権の90%以上を有する株主は、他の株主の全員に対し、その保有するその会社の株式の全部を自己に売り渡すことを請求することが可能。
後継者に対する買取請求の可能性(相続クーデター)
社長, 51%
息子, 16%
専務, 20%
A社は社長と息子で計67%の株式を保有し、特別決議に必要な2/3以上を保有。将来、非同族の専務と常務の株式が分散することを防ぐために、会社法174条の相続人等に対する売渡請求制度を導入した。ところが社長が急逝し、日頃社長一族と折り合いが悪かった専務が常務と連携して臨時株主総会を招集し、相続予定の51%の株式について売渡請求を要求。なお、相続人である息子は会社法の規定(利害関係株主)に基づき、議決権を行使することが出来ない。
結果として、後継者が取得した株式について買取請求が行われ、支配権を失ってしまう恐れがある。(当然に財源規制による制限は有り)。相続人等に対する売渡請求制度の導入にあたっては、上記の例のように相続クーデターが起こる可能性があるような株主構成時の時には慎重な対応が必要。また、後継者がいる場合には早めに後継者の持分比率を高めて、相続クーデターの可能性を排除することも一考。
また、「遺贈する」(特定承継)との遺言書を作成し、「遺贈により取得した者の株式は会社が承認したこととみなす」と定款に定めるなどの対応で、売渡請求の対象から外すことも考えられます。
牧口晴一、齋藤孝一著非公開株式譲渡の法務・税務、中小企業庁「事業承継ガイドライン(第3版)」令和4年3月改訂
事業承継における種類株式の主な活用法(事業承継ガイドラインより)
種類株活用方法留意点(私見)
議決権制限種類株式
先代経営者の相続財産の大部分を株式が占める場合、後継者に株式を集中させると、他の相続人から遺留分侵害額請求の主張が行われる可能性があり、当該請求に係る支払のために後継者が承継した自社株式を売却せざるを得ない事態等も生じうる。
そのため、後継者には普通株式を承継させ、他の相続人には無議決権株式を承継させることで、遺留分に関する紛争や議決権の分散のリスクの低減等を図り、ひいては会社経営の安定化を目指すことが考えられる。会社運営に携わらない株主からすれば、多額の相続税を払ってまで議決権の無い株式を保有する意味がない。
配当優先種類株式
後継者以外の相続人に議決権制限種類株式を取得させる場合、当該相続人から不満が出ないようバランスをとるために、議決権が制限される種類株式に配当優先条項を加える等の工夫をすることが考えられる。
取得条項付種類株式
一般に、経営者以外の株主が死亡した場合、相続により株式が分散してしまうことがある。そこで、「株主の死亡」を取得条項における条件としておくことで、株主が死亡した場合には会社がこれを買い取ることとし、株式の散逸を防止することができる。ただし、取得対価は分配可能額による財源規制を受けるため、注意が必要である。取得時には買取価格を協議する必要がある。また、財源規制を受けることに留意。
拒否権付種類株式
(黄金株)
例えば、後継者が成長して単独で経営に関する意思決定を適切に行えるようになるまでの間、先代経営者が一定の重要な決議事項(例えば、取締役や監査役の選任・解任や報酬の決定、多額の投資、事業譲渡や合併といったM&A、重要な資産の譲渡等)について拒否権を保有し、後継者による会社経営を監督できるようにする場合等に活用することが考えられる。
・当該種類株式(黄金株)の消却について、事前に協議をしておかないと後継者のモチベーションに影響を与える。
・相続等により後継者以外に黄金株が渡ると会社経営が害される恐れがある。
・事業承継税制が活用出来ない。
株主ごとの異なる取扱い
(種類株式ではない)
ある特定の株主についてのみ、1 株1 議決権の原則の例外を定める。(A株主が所有している株式については1株100議決権とする、など)。また、最近では認知症等により現経営者の判断能力が低下した場合への対応策としても注目されている。
・定款に記載することで株主毎に1株当たりの議決権数を異なるように定めることが出来る。
(例:先代経営者が株主である限り、1株の議決権を100個とする)
・認知症等の対策として、後見開始の審判を受けた場合には議決権を1個にするなどの定めを置くこともできる。
・ただし、後継者のモチベーションに影響を与えることには留意。
出典:中小企業庁「事業承継ガイドライン(第3版)」令和4年3月改訂
遺留分に関する民法特例
遺留分は、民法上、相続人(兄弟姉妹及びその子を除く。)に保証された最低限の相続の権利であり、遺留分の存在が後継者への株式集約の障害となり得ることから、民法特例が整備された。
除外合意
贈与された株式等を遺留分算定基礎財産から除外する旨の合意。
現経営者の生前に、経済産業大臣の確認を受けた後継者が、遺留分権利者全員との合意内容について家庭裁判所の許可を受けることで、現経営者から後継者へ贈与された自社株式その他一定の財産について、遺留分算定の基礎財産から除外することが可能。
これにより、遺留分減殺請求と、それによる株式等の分散を未然に防止することが可能。贈与された株式等の評価額を予め固定する旨の合意。贈与後に、後継者の貢献により株式価値が上昇した場合、遺留分の算定時には上昇後の評価で計算される。このため、経済産業大臣の確認を受けた後継者が、遺留分権利者全員との合意内容について家庭裁判所の許可を受けることで、生前贈与株式の価額を当該合意時の評価額で予め固定することが可能。これにより、経営意欲が阻害されることなく承継が行われる。
1.会社法上の制度活用と対応④
2.事業承継に関連する税制①
(1)財産の承継(税負担への対応)
暦年課税贈与
暦年毎にその年に贈与された価額の合計に対して贈与税が課税。年間110万円の基礎控除があるが、税率は10%~55%の累進税率。(近年、改正が検討されているため、制度の継続について留意)
<参考>贈与税の税率
○一般贈与財産用(一般税率)
※兄弟間、夫婦間、親子間で子が未成年者の場合等に適用される。
○特例贈与財産用(特例税率)
※直系尊属(祖父母や父母など)から、その年の1月1日において20歳以上の者(子・孫など)への贈与税の計算に適用される。
相続時精算課税贈与
生前贈与は、暦年課税贈与が原則だが、受贈者が「相続時精算課税制度」を選択することが可能。
【制度の概要】
・対象者は、贈与者が60歳以上の父母又は祖父母であり、受贈者が20歳以上で贈与者の推定相続人である子又は孫に該当する場合(年齢は贈与の年の1月1日現在のもの)。
・累積で2500万円までは非課税(特別控除)。
・2500万円を超えた部分について一律20%課税。
・贈与財産の価額は、相続発生時に、相続財産の価額に合算され、相続税で精算(納付済みの贈与税は、相続税額から控除。)。
【留意点】
一旦、相続時精算課税制度を選択すると、暦年課税制度に切替えできない。
相続時には、贈与時の価額が相続財産に合算されるため、贈与財産の価額が相続時に上昇した場合は有利に、下落した場合には不利に働く。
2.事業承継に関連する税制
みなし配当課税の特例(自己株式買取の相続時の特例)
・非上場株式を発行会社に金庫株(自社株)として取得してもらう場合、対価のうち利益部分はみなし配当として総合課税されてしまい、その累進課税の最高税率は55%(住民税込)。
・一方、相続税を納付しなければならない相続人に対しては、相続開始から3年10か月以内に相続税対象の株式を譲渡すれば譲渡所得として税率20%とする特例。(相続税の取得費加算特例との併用可)
(例)資本金・・・1,000万円、利益積立金19,000万円、合計2億円うち半分(1億円)を自社株買い
(特例適用時)
(総合課税時)
・売却資金・・・1億円
・課税対象・・・9,500万円
・税額・・・約1,900万円
・手残り・・・約8,100万円
・売却資金・・・1億円
・課税対象・・・9,500万円
・税額・・・約4,750万円
・手残り・・・約5,250万円
ただし、配偶者は配偶者控除があるため、特例が適用できないケースが想定される。(適用するためには相続税の発生が要件)
2.事業承継に関連する税制
特例事業承継税制とその問題点(留意:特例承継計画の提出は令和6年3月まで)
・(特例)事業承継税制は、令和6年3月31日までに特例承継計画を都道府県に申請し令和9年12月31日までに特例申請された株式を一定数贈与又は相続した場合に、贈与税及び相続税の全額の支払いを繰延べる制度。
・既存制度が過去10年間で2,000件程度の申請であったが、特例制度は年間で3,000件を超える申請数。
・特に相続財産全体に占める株式の割合が大きい場合、当該株式を相続する者は相続税を繰延べされるが、株式を相続しない相続人は相対的に税の負担感が高くなりやすい。また、遺留分を侵害しないよう留意する必要がある。
中小企業庁「事例でみる経営者保証解除~課題解決のポイントとその効果」2022年9月20日
事業承継・引継ぎ支援センターの概要と支援例
センターにおける支援の流れ
相談対応(一次対応)
・相談対応を通じ、事業引継ぎ支援の実施の可否を判断。
登録機関への橋渡し(二次対応)
・相談案件をセンターの登録機関(仲介業者、金融機関等)に取り次ぐ。
センターによるマッチング(三次対応)
・マッチング相手がいる場合や登録機関の不調案件をセンターが士業法人等を活用してマッチングを実施。
支援スキーム
事業引継ぎ支援センター(データベース)マッチング
(希望条件が合致した場合)
事業引継ぎ実現
・後継者不在
中小企業等・譲受希望企業等
○後継者不在の中小企業の事業引継ぎを支援するため、平成23年度より、中小企業のM&Aを行う事
業引継ぎ支援事業を開始し、平成28年度までに事業引継ぎ支援センターの全国展開を実現。統合効果もあり新規相談件数20,841件(前年比178.3%)となり、過去最高を更新。成約件数は2,557件(うち譲渡成約1,514件、前年度比109.8%、親族内承継成約1,043件)の実績
【後継者人材バンク】
■創業希望者にとってのメリット
有形・無形の経営資源(顧客、ブランド力、経営ノウハウ、店舗、在庫他)の承継
一般的に資金負担も少なめ
結果的に起業リスクを軽減できる可能性が高い
UIJターンにおける就業の選択肢になりえる
特に小規模事業者
後継者不在中小企業等
(売り手)
創業希望者
譲受希望企業等
(買い手)
【後継者人材バンク】
●県事業引継ぎ支援センター
相談 相談
創業支援機関
【事業引継ぎ支援事業】
■小規模事業者のメリット
買い手が現れ、事業、雇用等を維持できる可能性
「後継者人材バンク」スキーム(小規模事業者の『承継支援』×創業志望者に対する『創業支援』)
事業引継ぎ支援センターでの対応内容
譲受希望者の紹介、マッチングの実施。許認可引継ぎ他M&Aの進め方に関する助言。事業承継関連補助金等に関する助言
引継ぎ対象:栄林自動車㈲(自動車整備業)
譲渡者:林敏延(73歳)
譲受者:園田純也(後継者人材バンク36歳)
譲渡方法: 株式譲渡
引継ぎ期間:令和2年3月~令和2年6月
支援方法: 3 次対応
事業引継ぎ概要
事業引継ぎまでの経緯
・栄林自動車㈲は、自動車整備業として1977年に林敏延元社長が創業し、43年間地域に根ざした事業を行ってきた。
・林元社長は、75歳までは会社を継続していくつもりだったが、2年前に熊本県事業引継ぎ支援センターを紹介されたことをきっかけに、後継者が居ないことや熊本地震の影響、自身の体調を考え、同センターに相談し、事業存続のために譲り渡し先を探し始めた。
・園田社長は20代の頃から独立を目指し、カーショップで勤務後、県内のディーラーで整備の技術を身に着けてきた。独立を検討するに際して、商工会から熊本県事業引き継ぎ支援センターの活用を勧められ、当センターに相談し、後継者人材バンクに登録した。
・当センターにおいて、園田氏の希望条件に近いと思われる当社を紹介し、令和2年3月に当社事務所でトップ面談を実施した。
・園田社長は、「場所も事務所も整備場も全て一目惚れ」と迷わず引継ぎを決断。林元社長も園田氏の熱意を受け、株式譲渡により園田氏をサポートしていくことを決意。初回面談から3ヶ月後の6月1日に株式譲渡および代表者交代を行い、同時に社名を栄林自動車㈲から㈲Fellows(フェローズ)に変更して引継ぎが完了し、これまでの顧客へのサービスも継続できることになった。
・支援事例(熊本県事業引継ぎ支援センター)
※日本経済新聞(東京版)2022年1月19日朝刊
唯一の株主、唯一の役員が死亡した場合の民法上、会社法上の取扱い、手続きや見通しの説明。相続財産管理人申立て、及び、株式買取交渉のための弁護士の紹介。
裁判所の株式売却許可決定に必要な株価査定書作成のための会計士の紹介。株式買取資金等調達のための金融機関の紹介。
事業承継・引継ぎ支援センターでの対応内容
記事の概要
・H社の社長が病気のため急逝。子供がおらず、死亡時には法定相続人もいない状況であった。
・将来の後継者候補含みで同社に入社していたS氏が後継者候補として事業の継続を希望。今後の対応が判らず、地域の事業承継・引継ぎ支援センターへ相談に訪れたもの。
・引継ぎ支援センターでは、亡くなった先代社長の株式を後継者であるS氏が引き取るためには相続財産管理人を申し立てて対応する必要があると判断。
弁護士を紹介する。
・同時に先代社長とH社間の貸付金等の整理や株価算定など、半年ほどの時間をかけて整理を行う。
・最終的に後継者であるS氏が相続財産管理人から株式を買い取り、無事に事業を承継することが出来た。