家族信託実務ガイド[1]の記事からです。
利益相反行為のと事例
(1)略
(2)略
利益相反行為
(3)第三者との間において信託財産のためにする行為であって、自己が第三者の代理人となって行うもの
具体的な事例
信託財産たるマンションを受託者が代表を務める会社に売却するケース
法的効果
有効!
⇒取引当事者である第三者が知っていた場合、または知らなかったことについき重大な過失があった場合は、取消可能
具体的事例の場合、知らないということは同一人物なのであり得ないと思います。有効、取消可能の両方のケースでも信託法40条が適用されることにも触れた方が良いのかなと感じました。
(4)信託財産に属する財産につき固有財産に属する財産のみをもって履行する責任を負う債務に係る債権を被担保債権とする担保権を設定することその他第三者との間において信託財産のためにする行為であって受託者またはその利害関係人と受益者との利益が相反することになるもの
具体的事例
受託者個人が借りている銀行のアパートローンの担保として、信託財産を担保提供するケース
法的効果
有効!
⇒取引当事者である第三者が知っていた場合、または知らなかったことについき重大な過失があった場合は、取消可能
銀行など金融機関が担保設定する場合に、信託財産であることを知らないということはほぼないのではないかと感じました。信託法40条の適用は(3)と同じです。
利益相反取引はその都度受益者の同意を得るのが原則
―略―
一つ目は、「受益者代理人」を置き、受益者に代わって受益者代理人がその都度承諾をするという方策です。
―略―
受益者代理人にも一定の同意要件を置く必要があるのかなと思いました。
利益相反行為はその都度受益者の同意を得るのが原則
―略―
利益相反取引については具体的に記載する
信託契約書の条項において、単に「受託者は利益相反行為(自己取引)をすることができる」旨だけを置くケースを見かけることが少なくありません。
地域性かもしれません。私は「受託者は利益相反行為(自己取引)をすることができる」という直球の条項をみたことがありません。怖くないのかな、委託者(兼)受益者に説明したときに理解を得られるのかなと思ってしまいます。
利益相反取引については、具体的に記載する
記載されている規定は省略します。信託行為で予め定める想定がされていますが、大枠だけ決めておいて(または決めずに)、取引の都度決めても良いのかなと感じます。
受益者に利益相反行為をしたことを報告するのが大原則
―略―ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによると定められているため、信託契約書に「信託法31条3項による受託者から受益者への通知は、要しないものとする」との条項を設ければ、受益者への通知を省略することが可能となります。
ここでいう報告、通知は、受託者から受益者への利益相反行為後の事後の報告、通知です。信託法31条3項但し書きを規定する場合(私はしませんが)に一本補助線を引く必要があると考えます。例えば、通知の対象となる利益相反行為が信託財産の大部分を占めるものではないこと、受託者の負担軽減になること、信託財産に損害がないこと、などになるのかなと思います。ただし、受託者の負担軽減になること、という要件は利益相反行為が頻繁にある信託であるということを意味するので、そのような信託類型は限定されて要件にはなり得ないのかもしれません。
[1] 2021.2第20号日本法令P63~