【事例3】改正相続法施行以前に発生した相続について遺留分減殺請求権が行使された場合

事案から学ぶ 履行困難な遺言執行の実務

著者:遺言・相続実務問題研究会/編集 野口大・藤井伸介/編集代表『事案から学ぶ 履行困難な遺言執行の実務遺言作成後の事情変更、解釈の難しい遺言への対応』2023,日本加除出版

https://www.kajo.co.jp/c/book/05/0501/40936000001

•親族関係

事実関係

〇年〇月〇日Aが自筆証書遺言作成

「長男Bにも次男Cにもこれまでいろいろ贈与してきたが、長男Bへの贈与が多いから、一切の遺産を次男Bに贈与する。遺言執行者として、以前お世話になった弁護士Dを指定する。」

2019(令和元)年6月30日A死亡

2020(令和2)年6月15日、長男Bから次男Cに対して内容証明郵便が届く。

「遺言者Aの自筆証書遺言に対しては、遺留分請求権を行使する。」

設問1 自筆証書遺言に基づいて登記申請する前提として、まずは何をするべきでしょうか。

・戸籍収集後、遺言書検認の申立て(民法1004条1項)

設問2 「一切の遺産を次男Cに贈与する」との遺言に基づき相続登記ができますか。

・「贈与する」と記載された遺言書に基づき登記する際は、遺贈を登記原因とします。昭和38年11月20日 民事甲第3119号 民事局長電報回答「遺言の効力等について」登記研究194号P58

設問3 遺贈の登記申請をするにつき相続人全員の協力が得られない場合どうしますか。

・遺言執行者選任申立て。2023(令和5年)年4月1日以降、受遺者である相続人が単独申請可能(不動産登記法63条3項)

・・・登記申請時点

・・・法定相続登記と遺贈登記の競合、登記原因証明情報の相違。

設問4

遺言執行者選任申立書に司法書士Eを候補者とすれば認められますか。

・差し支えない。認められる可能性が高い。

設問5

遺言執行者に選任されたEは、遺産不動産につき、次男Cとの共同申請により、遺贈を原因とする所有権移転登記申請をしてよいでしょうか。

・遺留分減殺請求の意思表示がなされていても、一旦は、遺贈を登記原因として所有権移転を経由するのが相当。

設問6

その他の遺産について、Eは、どのように遺産執行業務を進めるべきですか。

・財産目録を作成し、相続人に交付

・長男Bに対して、遺言執行が完了した後に遺留分請求をすべきことを説明し、同意を得て、業務完了後報告書を提出。・遺留分権利者による価格弁償請求をしてもらえれば、権利者は現物返還請求権を喪失し、価格弁償請求権を確定的に取得する。最判H20.1.24判時1999.73

設問7

遺言者の死亡が令和元年7月1日以後であった場合は、どのように進めるべきでしょうか。

・遺留分権利者を無視して遺言執行を完了する。

平成7年12月4日法務省民三第4344号民事局第三課長通知「相続を証する書面として検認を経ていない自筆証書遺言が申請書に添付された所有権移転の登記の申請の受否について」

平成7年12月4日法務省民三第4344号民事局第三課長通知「相続を証する書面として検認を経ていない自筆証書遺言が申請書に添付された所有権移転の登記の申請の受否について」

1983年9月30日登記研究429号
質疑応答6323遺言に基づく登記の登記原因」

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