遠藤英嗣弁護士の書籍に質問してみました。
1)152ページ「他の信託の不動産取得との損益を通算することはできない。」について
⇒ 損益計算は信託契約ごとに考えるため、全く別の信託の関係を指します。一つの信託であれば、損益計算は可能だと考えられます。
なお、遠藤先生の場合、別個に信託を設定することはなく、したがって事例もないそうですが、同じ委託者で、単独所有と共有を分けて複数の信託を組成している方はいるようだ、とのことでした。ただし、その事例も多くはないと思われるとのことです。
2) 32ページの(2)「(成年後見人)の権限は監視監督や信託給付の請求等に限られる。」と、286ページの事例24「受益者の成年後見人も含むことになり、この者がいかなる対応を取るか大きな不安定要素が残る。」の矛盾について
⇒ 監視監督や信託給付の請求「等」とし、2つに限定していませんので、矛盾はしないと考えています。
なお、この成年後見人と信託当事者の問題は、大変難しい問題を含んでいます。添付ファイルの信託フォーラム128-129ページをご参照いただけますでしょうか。
この「等」の範囲は、信託フォーラム128ページのように考えれば、広くもなります。また、「監視監督権」の究極のかたちは、「信託終了の合意に関する権限あり」という考えもあり得ると思います。
3) 277ページの3行目で「本信託の委託者の地位は、相続により承継しない、とすべき」について
⇒ 家族民事信託では、「委託者の地位は、相続により承継しない」が基本です。しかし、登録免許税法7条を適用したいという人のために、224ページの文例の3項において、「ただし、税法上の扱いについては除く。」という文言を追加していただき、1000分の4にしたい人は、試みられては如何かとしたのです。
もちろん、この「ただし、租税法上の扱いは除く」で、税当局が納得するかどうかはこれからの問題です。