法制審議会信託法部会第6回~第10回

2016年加工編 

                      法制審議会信託法部会

                        第6回会議 議事録

第1 日 時  平成16年12月3日(金)  自 午後1時00分

                       至 午後5時00分

第2 場 所    法務省第1会議室

第3  議 題

   信託法の見直しに関する検討課題(4)について

第4 議 事   (次のとおり)

                              議    事

● それでは,1時になりましたので,法制審議会信託法部会を開催したいと思います。

  今日もたくさんのテーマがございますので,適宜区切って説明してまいりたいと思いますけれども,これについて,では,○○幹事からお願いします。

● それでは,今日の進行についてでございますが,まず,全体を六つに分けてやりたいと思います。1番最初は,受託者の解任・辞任等に関する前回の積み残しの問題があります。

続きまして,資料で言いますと第40,第41になりますが,受託者が欠けた場合の取扱いと受託者の交代の問題をやらせていただきまして,3番目に,第44でございますが,信託財産の管理人の問題を扱いたいと思います。

そのあたりでいったん休憩といたしまして,4番目に,受託者が複数の信託の問題,5番目に,受託者が倒産した場合の問題,最後に,委託者の問題と遺言信託の問題ということで,全体を六つに分けてやりたいと思いますので,よろしくお願いいたします。

  それでは,早速,受託者の解任・辞任の問題,それから合併・会社分割による受託者の変更問題について,概要を御説明したいと思います。

  まず,第37でございますが,これは,受託者の解任・辞任及び新受託者の選任に関する提案でございまして,提案内容は信託法制研究会報告書の記述とほとんど変わるところはございませんので,簡単にその趣旨を再び申し上げたいと思います。

  まず,1ないし4というのは,受託者の解任に関する提案でございます。

このうち,1ないし3というのは,受託者を交代させるためにいったん信託本体を終了させてしまうというのでは余りにもロスが大きいということから,特約のない限り,委託者と受益者の合意をもって,理由の有無いかんを問わず受託者を解任できることとし,解任された受託者に損害が生ずれば,別途その損害はてん補するとしたものでございます。

  2というのは,このような受託者の損害のてん補につきまして,委任に関する民法651条2項の規律に倣ったものでございます。

もっとも,ここで言います「不利な時期」ですとか「損害」の意味につきましては,民法の解釈上もいささか判然としないところがあるようでございますので,ここでは,民法の解釈に委ねるべく,民法651条2項の文言をそのまま引用するにとどめているところでございます。

  最後に,4でございますが,このような合意による解任ができない場合に備えまして,受託者がその任務に違反したことその他重要な事実があるときにおける委託者又は受益者の解任請求権を認める現行法47条の規律を維持したというものでございます。

  次に,5でございますが,これは,受託者の辞任に関する提案でございまして,信託は受託者に対する信頼関係を基礎といたしますので,受託者が勝手に辞任することができないとするのが委託者及び受益者の意思に合致すると考えられます。

現行法43条,46条におきましては,受託者が辞任できる場合というのを3点,すなわち,信託行為に別段の定めがある場合,受益者及び委託者の承諾がある場合,それから,やむことを得ない事由があるために裁判所の許可を得た場合に限っておりますが,提案におきましてもこの規律を維持したものでございます。

  最後に,6,7でございますが,これは,新受託者の選任に関する提案でございます。

現行法49条は,利害関係人が裁判所に対して新受託者の選任を請求することができると規定しております。

提案では,7におきまして現行法49条の規律を維持することとした上で,私的自治の観点からは,裁判所の関与を経ずとも,委託者及び受益者の合意によって新受託者を選任することが可能であるということを明らかにすべく,その旨を6で明文化したものでございます。

  続きまして,第38の「合併又は会社分割による受託者の変更について」という提案について簡単に御説明いたします。

  まず,受託者たる会社が合併した場合につきまして,現行法42条1項によりますと,「受託者タル法人カ解散シタルトキ」に当たり,受託者の任務が終了することとされております。

しかし,会社の合併の場合には,新設合併であれ,吸収合併であれ,消滅会社の契約上の地位は存続会社にすべて包括承継されることになるわけですので,消滅会社の方が受託者であった場合においても,契約上の地位である受託者の任務が合併により消滅してしまうと解する必要はなくて,やはり存続会社の方に包括承継されて引き継がれると解すればよいものと考えられます。

そこで,1の第1文では,このような考えに基づきまして,現行法を改める規律を設けることを提案するものでございます。

  また,現行法につきましては,株式会社であった受託者が会社分割され,信託財産が設立会社あるいは承継会社の方に移転された場合におきまして,受託者たる地位はどうなるかが明らかではございません。

しかし,この点につきましても,会社分割は合併の場合に類似しまして,被分割会社の営業を新会社に部分的包括承継させるものでございますので,新会社に移転される営業の中に信託が含まれている場合には,受託者の任務もこれとあわせて新会社の方に包括承継されるものと解すればよいものと考えられます。

そこで,2の第1文で,このような考え方を明記した規律を設けることを提案するものでございます。

  なお,受託者の合併の場合であれ,会社分割の場合であれ,信託行為自体は,受託者が変わるということ以外には変わりございません。

すなわち,信託財産は,信託の併合の場合のように信託行為自体が変更されて他の信託財産と統合されてしまうわけではなくて,あくまで独立性を保ったまま新たな受託者のもとに承継されるにすぎないものでございます。

したがいまして,信託財産のみを責任財産とする債権,つまり受益債権ですとか前回の会議で説明いたしました有限責任債権につきましては,合併又は会社分割自体による信託財産の承継によってその利益を害されるものではないと考えられます。

そこで,1及び2のそれぞれ第2文とアステリスクの2のとおり,これらの債権につきましては,商法上の債権者保護手続の対象とはならないというふうにしたものでございます。

もちろん,受益者の有する債権でありましても,いわゆる受益債権ではなくて,受託者の固有財産に対する損害賠償請求権のようなものにつきましては,商法上の債権者保護手続の対象となるものと考えられます。

  以上でございます。

● それでは,第37と第38について,いかがでしょうか。いずれも,受託者がいわばそこで交代するというような場面ですが。

● それでは,第37,第38について,2点申し上げたいと思います。

  まず,1点目の第37の受託者の解任・辞任のところの受託者の解任についてでございますが,解任について信託の終了の要件と一致させるということについて,これがまあ自然だろうと。

それと,この規定は当然任意規定ということでございますので,受託者の承諾というのを要件の一つに入れてもいいということもございますので,基本的には原案に賛成というのが多数ではございますが,一方で,現行法において,解任というのが,任務の懈怠があって,任務の違背があって,なおかつ裁判所の許可が要ると,そういう状況のもとで解任されるということと,あと,今回の規律で第40の4の解任されたときの受託者の権利義務のところの書きぶり等を見ますと,ほとんど何もできないような状況になっていると,そういうところから,ちょっとある程度心象的なところなのですけれども,もともと終了するよりも解任の方が非常に重いのではないかというような意見もありまして,そういった意味合いで反対するという意見であるとか,あと,経済的な効果でいきますと,例えば,信託財産に対して補償請求権を持っているような場合に,信託財産を売却してそれに充てようというような状況のもとで,いきなり解任されてしまいましたと,そういうようなときに,信託財産管理人が選任されるまでの間の,例えば信託財産が相場物であったような場合については変動リスク,そういうのを負う可能性があるということで,ここについてもちょっと慎重な検討をいただきたいというような意見がございました。

ただ,前半に申し上げたように,多数的な意見としては,原案でいいのではないかというようなことでございます。

  次に,第38の合併又は会社分割による受託者の変更のところでございますが,合併と会社分割の際に受益債務が商法上の債権者保護の対象とならないこと,この部分につきましては,実は私自身,会社の合併と分割,両方とも経験いたしておりまして,この部分で非常に悩みまして,兼営法と信託法と商法,この関係というのがよく分からなかったということで,いろいろな解釈論を立ててやっていったのですが,そういうことがこの規律によってすべて解消できるかなということもありまして,非常に実務に即した有り難い規定だなというふうに考えております。

それとあわせまして,ここでアステリスクの1と2に書いてありますように,減資のときとか法定準備金の減少の際の問題であるとか,信託の有限責任の債務についても同様の規律を是非とも入れていただきたいというふうに考えております。

  それと,本席の議論にはなじまないことかもしれないのですけれども,この規律がもしも入れられるとしますと,当然,業法と兼営法というのが変わってくると思います。

その際に,あわせて--今は,信託兼営銀行,要するに銀行と呼ばれるところが営業譲渡をやるときの話なのですけれども,現行の銀行法からいきますと,営業譲渡のときには商法の債権者保護手続と同じような手続をしなさいというふうになっているのですね。

実際に,譲渡する営業の対象になっている分については多分更迭の手続になるのだと思うのですが,営業譲渡の対象になっていないところの営業に係る債権の債権者であるとか,営業を譲り受ける方の債権者であるとか,それに対しても債権者保護手続をとりなさいという規律になっておりまして,ここで言われているような規律が採用されるというふうになりますと,ここの部分についても,同様の理屈で債権者保護手続というのは必要でなくなるのではないかというふうに考えておりまして,多分この信託法の中に入れるというのはそぐわない話だと思うのですけれども,この点についてもちょっとテークノートしておいていただけたらなと思います。

● 第37の方に関しては,今の御発言に少しありましたように,従来の規定との比較で言いますと,信託の終了と受託者の解任というのは少し違ったルールになっておりまして,今回,それを終了の方に少し合わせている。

そうしますと,解任に関しましては,受託者からすると従来より解任されやすくなっているというところがあるわけですね。ここら辺をどう見るかというのが一つの問題だということです。

  それから,第38の方は,これはちょっと,債権者保護手続の対象としないところがポイントなわけですが,今の御指摘にありましたように,兼営法とか銀行法とか,いろいろなところと関連しておりまして,問題自体は非常に複雑なところがあるのだろうと思います。

この辺についても,いろいろお詳しい方がおられると思いますので,もし御意見をいただければと思いますが,いかがでしょうか。

● 今の点に詳しいということではなくて,細かいことなのですけれども,第37の解任・辞任のところで,2の規定で,不利な時期の解任の場合に損害を賠償しなければいけないという部分ですが,これは,先ほど,民法の考え方に委ねるというような御説明をいただきました。

36ページの下の方に,2の趣旨として,受託者が報酬を頼りにしている場合というのを最初に挙げておられるのですけれども,民法の解釈としては報酬の定めとは切り離しているのではないかなと思います。

信託法の教科書の中では報酬と結びつけているのもありますが,恐らく民法の考え方からいくと,委任の不利な時期というのと報酬の支払いというのは別のことではないかと。

とりわけ,第36の「報酬請求権について」というところの3の(2)で,中途終了の場合に割合的な報酬が支払われるということもございますので,ここで報酬を最初に出してくるというのはかえってミスリーディングではないかという気がいたします。

● 確かにそういう面がありますね。

● 補足いたしますが,確かに資料には報酬が前面に出ておりますが,私が口頭で説明したところでは一歩引いているというのは,○○委員からも御指摘がありましたが,例えば,信託の教科書を見ますと,信託行為において受託者に対して一定期間報酬を支払うべきことを定めた場合に,その期間中に信託を解除したときは,委託者や相続人は受託者に対し損害賠償として残存期間に対する信託報酬の支払いをしなければならないというようなコンメンタールの記載ですとか,あるいは四宮先生の教科書にも,受託者の損害として,報酬の減少というのが例として挙げられているのですが,他方,「注釈民法」などを見ますと,有償委任であっても,その中途解約の場合に,不利な時期における解除の損害賠償として報酬を請求し得るものではないというふうに解されておりますので,そういうこともあって判然としないというところで,民法の規定に委ねるということにしたいと思っておりますので,この点は,御指摘のとおり,報酬を前面に出すことについては控えるべきかなと考えております。

● ほかに,いかがでしょうか。

● 私もそれほど詳しくはないのですけれども,○○委員がおっしゃられた点についてちょっとつけ加えさせていただきますと,金融機関の場合の破たん処理の中で受託者が交代するというときに考えなければならない法律として,預金保険法132条の信託業務の承継における受託者更迭手続の特例ということがございます。

これについても,同じく,あわせて検討しておく必要があるのではないかというところをちょっとテークノートしていただきたいというふうに思います。

● 先ほど,銀行法とか,そういうほかの法律との関係のことを指摘されたわけですが,私もよく分かりませんけれども,信託法でここに書いてある債権者保護手続の対象にしないということがどういうインパクトを持つのかというのは,恐らくここではなかなか決めかねるのですかね。

やはりそちらの,銀行法だったら銀行法の解釈の問題として解決されるのではないかという気がいたしますけれども,どうなんでしょうか。むしろ○○委員がこれは一番お詳しいし……。

● 多分,商法のところを修正するために今回の信託法によって規律されるというのは修正が可能だと思うのですけれども,当然,銀行法という一つの特別法のところを信託法でもって修正というのはできないことだと思いますので,基本的には,銀行法であるとか--多分,業務上の問題からすると,兼営法のところで特例を認めていただいて,ここにあるような規律で,受益債務についてはその対象としないというようなことの規律を設けていただくのが,一番有り難い方法ではないかというふうに思います。

● それでは,ほかに,今の第37,第38はよろしゅうございますか。大体御賛同いただけたということでしょうかね。

  それでは,先に行きましょう。

● それでは,先ほど御説明いたしました順序に従いまして,第40と第41,受託者が欠けた場合の取扱いと受託者の交代についての説明に移らせていただきます。今回お配りした資料でございます。

  まず,第40の方でございますが,これは,受託者が欠けた場合の取扱いに関する提案でございまして,現行法で申し上げますと42条2項ですとか45条に相当する規律についてでございます。

  なお,報告書では,信託法48条の信託財産管理人の選任に関する規律もここであわせて提案しておりましたが,この部分については,第44においてまとめて御提案することとしたいと考えております。

  まず,1の(1)でございますが,これは,受託者の死亡,解散,破産手続の開始などによりまして受託者の任務が終了した場合には,現行法42条2項の趣旨を維持しまして,新受託者,信託財産管理人又は信託財産法人の管理人が事務の処理をすることができるようになるまで,相続人,清算人,破産管財人等に信託財産の保管及び引継ぎに必要な行為をする義務を課すものでございます。

これは,受託者の任務終了によりまして信託財産に不測の損害が生ずることを回避するため,いわば緊急避難的に保管義務を課すものでございます。

  次に,1の(2)でございますが,これは,相続人等が信託財産の保管等のために支出した費用につきましては,新受託者,信託財産管理人又は信託財産法人の管理人に対して請求することができることを規定したものでございます。

  なお,信託財産管理人等は,その固有財産で責任を負うものではないと考えられますので,このような費用償還請求につきましては,信託財産のみをもって負担することになると考えております。

  次に,2でございますが,これは,現行法44条は削除するという提案でございます。

特定の資格を有する者を受託者とすることとされた信託におきましては,受託者となった者がその資格を喪失したときにはその任務が終了するということになりますが,これは,信託行為において受託者の任務終了事由を定めたものと解すれば足りると考えられるからでございます。

  なお,信託行為にそのような定めがある場合につきましては,次の3の規律によることとなります。

3と4でございますが,これは,1の(1)に該当しない場合,すなわち,辞任ですとか任期の満了,解任などによりまして受託者の任務が終了した場合には,信託財産を管理する者が不在となる事態を避けるために,新受託者等が事務の処理をすることができるようになるまで,前受託者に引き続き信託財産の管理をさせるものでございまして,現行法45条の趣旨を維持しつつ,その適用を拡大したものでございます。

  ただし,4でございますが,解任の場合には,前受託者に信託財産の管理を行わせることは望ましくないという事情もあると思われますので,その権利義務を,信託財産の保管と信託事務に関する計算及び信託事務の処理を行うのに必要な事務の引継ぎというこの3点,2ページの4の①から③のものに限定して弊害が生じないようにしているところでございます。

  なお,この第40の提案全般に言えることでございますが,共同受託者の一人又は数人についてその任務が終了した場合におきましては,ここで言う「受託者が欠けた場合」には該当しないものとしております。

その場合には,前受託者が有する信託に関する権利義務は他の受託者に帰属することになるからでございます。

ただし,提案では,これはあくまでデフォルト・ルールでございますので,他の受託者が前受託者の権利義務を承継しないということも,信託行為でその旨を定めればあり得ることになるわけでございますが,その場合につきましては,後ほど第41にて改めて説明いたしますが,結論的には,ここでの規律に準じた取扱いをすればよいのではないかと考えているところでございます。

  では,続きまして,第41の受託者の交代の方に移らせていただきます。

  第41でございますが,これは,受託者の交代に伴う信託財産の帰属,権利義務の承継,事務の引継ぎ等に関する提案でございまして,現行法では50条から55条に相当するものでございます。

基本的には現行法の趣旨を変更するものではなく,むしろ,現行法の規定からは明らかではない点を明確にしようとするものでございます。

  まず,1でございますが,これは,受託者の全員につきまして任務が終了した場合の信託財産等の承継に関する規律を提案するものでございます。

  まず,(1)でございますが,受託者の任務終了事由が生じた後,新受託者が選任されるまでの間の信託財産の帰属者を明確にするものでございます。

現行法50条1項を見ますと,新受託者が選任されたときに,前受託者の任務終了時にさかのぼって前受託者から新受託者に信託財産が承継されたこととしております。

この規律は,新受託者が選任される限りにおいては特段の問題を生じさせないわけですが,前受託者の任務終了事由が生じた場合に必ず新受託者が選任されるとは限りませんので,例えば新受託者が選任されないまま信託が終了するということもあり得るわけでございます。

そうしますと,前受託者の任務終了事由が生じた後に信託財産がだれに帰属するかについて明確にする必要があると考えるものでございます。

  現行法では,前受託者の任務終了後に信託財産がだれに帰属するかにつきまして明文の規定を置いてはおりませんが,先ほど言いました50条1項の規律からいたしますと,新受託者が選任されるまでは前受託者に信託財産は帰属しているものと解するのが自然であると思われます。

もっとも,前受託者が死亡したという場合には,もはや前受託者,死者に信託財産が帰属しているとすることは適当ではないと思われますし,かといいまして,受託者の相続人に信託財産が帰属していると解することも,信託財産が前受託者の相続財産に含まれないという原則に照らせば,適当ではないと考えられます。

  そこで,(1)では,信託財産は,新受託者が就任しない限り前受託者に帰属することを明らかにするとともに,前受託者が死亡したという場合には,相続人のあることが明らかではない場合における相続財産の規律を参考にいたしまして,信託財産をもって法人と擬制するということにしております。

  次に,(2)でございますが,これは,(1)ただし書によって存立した信託財産法人につきまして,新受託者が就任したときには,当初から存立しなかったとみなすものでございます。

もっとも,このように当初から存立しなかったものといたしますと,信託財産法人の管理人,すなわち信託財産法人の機関として信託財産の管理権限を行使する者の行為の効果が信託財産に結局帰属しないということになると解されかねないおそれがございます。

そこで,新受託者が就任するまでの間に法人の管理人がその権限内で行った行為は,新受託者が就任したとしてもその効力を失わないということにしたものでございます。

  なお,報告書におきましては,信託財産法人の管理人の制度の詳細についてはなお検討事項としておりましたが,信託財産法人の管理人というのは,受託者が不在の間における臨時の信託財産の管理者であるという点におきまして信託財産管理人と共通する性格を有すると言えますので,6ページのアステリスクの1に記載しておりますとおり,その権限義務等につきましては,後ほど説明いたします信託財産管理人と  同様にすることを提案するものでございます。

 次に,(3)でございますが,これは,新受託者が就任した場合には,前受託者の任務が終了したときにさかのぼって新受託者は前受託者より信託に関する権利義務を承継したものとみなすと規定するものでございまして,現行法50条1項の趣旨を維持するものでございます。

  ところで,現行法は,新受託者が前受託者から承継する対象を信託財産としておりますが,前受託者が信託事務処理に当たって第三者と締結した契約についての契約上の地位ですとか信託債務についても承継の対象となるということを明確にするために,「前受託者より信託に関する権利及び義務を承継」するものと書いているところでございます。

ここで「信託に関する権利及び義務」としておりますのは,前受託者が固有財産のみで有し,あるいは責任を負担する権利や義務は承継しないということを含意しているものでございまして,例えば,いわゆる受益債務であれば,新受託者が承継する対象に含まれると思われますが,損失てん補債務のように前受託者がその固有財産のみで負担する債務は含まれないと考えております。

また,当然のことではございますが,前受託者が固有財産として有します補償請求権や報酬請求権も承継の対象には含まれないと考えております。

  なお,資料12ページの(注2)に記載してあるところでございますが,新受託者というのは,当然に,すなわち契約上の地位の譲渡とは異なりまして,取引相手方の同意がなくても前受託者の地位を承継するということになりますと,受託者の契約の相手方の権利を害することにもなりかねません。

この点は,後に説明いたします3の規律で提案いたしますように,新受託者が選任された場合にも,前受託者は任務終了時までに生じた債務については新受託者と併存的に負担するとすることによって,かなりの程度解決されることになると思われます。

ただ,継続的な取引契約における当事者の地位も当然承継されるといたしますと,取引の相手方に想定していない不利益を強いることもあり得ると考えております。

例えば,無限責任の信託取引で,特に受託者の信用力を当てにしていてもやむを得ないと言えるような場合など,取引相手方を特に保護すべき事情がある場合には,受託者が交代したことをもって取引の相手方に解除権や損害賠償請求権が生じるというような規律を設けるという考えもあり得るかと思われますが,この点につきましては特に御意見を賜れればというふうに思っております。

  続きまして,2でございますが,これは,受託者が複数の信託におきまして受託者の一部の任務が終了した場合の規律に関するもので,現行法50条2項の規律をほぼ維持しております。

ただし,次のような原則,すなわち,共同受託者の一部の者の任務が終了した場合には,当該者が受託者として有する権利義務は,任務の終了していない方の受託者に帰属し,任務の終了していない他の受託者のみで信託事務を処理するという原則,このような原則を画一的に適用いたしますと,その任務の内容いかんによっては,他の受託者に酷な場合等の不都合が生ずるおそれがあると考えております。

そこで,2におきましては,信託行為に別段の定めを置くことができるものといたしまして,現行法に比して柔軟に対処できるように手当てしております。

ここで言う信託行為の別段の定めといいますのは,例えば,信託行為の定めによりまして共同受託者のうちの特定の受託者が信託財産の単独名義を有するとした上で,信託財産の名義を有する受託者の任務が終了した場合には,任務の終了した受託者から新たに就任する受託者に直接信託財産の名義を移転することを定めるというようなことですとか,あるいは,職務分掌の定めのある信託におきまして,一方の受託者の任務が終了したとしても,他方の受託者がその任務を承継しないことを定めるというようなことが考えられます。

  なお,この後者のような定めを設けた場合でございますが,これは,資料13ページの(注3)というところに書かせていただいておりますが,共同受託者のうちの一人の任務が終了した場合,例えば,運用を行う受託者と保管を行う受託者とがいる場合におきまして,保管を行う受託者の任務が終了した場合には,後任の受託者が選ばれるまでのいわばつなぎ役を務める者,今の例で言いますと信託財産の保管をすべき者を定めておく必要があると考えられるところでございます。

この点につきましては,先ほど第40の最後で述べましたように,第40の規律を準用することが適当だと考えておりますが,この点につきましても御意見をいただければと考えております。

  次に,3でございますが,これは,受託者の交代時におきまして前受託者及び新受託者が負担すべき責任の範囲などについて提案するものでございます。

(1)でございますが,これは,前受託者の任務終了時に現に存した債務のうち固有財産でも責任を負うものにつきましては,受託者の交代後も前受託者が債務とともに責任も負い続けるというものでございます。

また,前受託者が共同受託者の一人である場合には,前受託者が固有財産でも責任を負担していた部分の債務については引き続き責任を負い続けるというものでございます。

  (2)でございますが,これは,前受託者の任務終了時に存在する信託財産に属する債務につきましては,新受託者は信託財産の限度において責任を負うとしたものでございます。

  以上申しましたものは,いずれも現行法52条3項の規定の趣旨を維持するものでございます。

  なお,今申し上げましたことのいわば反対解釈といたしまして,前受託者の任務終了時には存せず,任務終了後に生じた債務,例えば利息債務ですとか所有者責任による債務,あるいは信託財産管理人の負担した債務などにつきましては,これは新受託者が固有財産で負担するというふうに考えております。

新受託者は,その就任に当たりまして,信託債務の存在を認識して引き受ける以上は,その負担を課しても酷ではないというふうに考えるからでございます。

  次に,4は,前受託者の費用,損害の補償又は報酬の支払いを受ける権利に関するものでございます。

(1)及び(2)では,前受託者に費用,損害の補償又は報酬を支払う必要がある場合には,例えば,任務終了前に費用を支出し,損害を受けたものの,その補償を受けていない場合ですとか,任務終了後に信託債務の弁済を行った場合ですとか,こういう場合におきましては新受託者又は信託財産管理人等から補償を受けるというふうにしているところでございます。

なお,現行法第54条1項を見ますと,前受託者が補償請求権又は報酬請求権に基づいて信託財産に対して強制執行できるというふうに規定してるわけでございますが,このような規定がなくても前受託者は新受託者に対する債務名義を取得いたしまして,新受託者の所有に係る信託財産に執行することができるというふうに考えられるわけでございます。

また,現行法におきましては,受託者の任務終了後は補償請求権の優先権は失われると解されておりますが,信託財産に関する補償請求権の優先性の根拠は,支出者の属性ではなくて,債権の発生原因そのものに求めておりますので,前受託者の補償請求権の信託財産に対する優先権は任務終了後においても効力を維持すると考えております。

  次に,(3)でございますが,これは前受託者が補償請求権等を行使するために前受託者に信託財産の留置権を認めるものでございまして,現行法54条2項の規律を維持するものでございます。

  それから,(4)と(5)でございますが,これは前受託者が受益者から補償を受ける権利の行使に関するものでございまして,受益者に対する補償請求権の有無ですとか,あるいは受益者に対する補償請求権行使の順序につきましては,先日御提案申し上げました補償請求権一般に関する規律と同様の規律を提案しているものでございます。

  最後に,5でございますが,これは,前受託者の任務終了後における計算義務,それから事務の引継ぎを行う義務,みなし承認及び承認の効果などにつきまして提案しているものでございます。

  現行法55条との違いは,まず,引継ぎの相手方として新受託者のほか信託財産管理人を加えたこと,受益者の立会いを要しないとしたこと,それからみなし承認に関する規律を新たに設けたということがございます。

  なお,この規律の対象となります前受託者というのは,先ほど説明申し上げました,辞任若しくは任期の満了等により任務が終了した前受託者又は解任により任務が終了した前受託者というものを考えております。

これに対しまして,42条2項の規定する信託財産の保管義務者,相続人ですとかそのようなものですが,そういう者にも計算義務があるとの解釈も存します。

しかし,このような臨時の信託財産保管義務者の行う計算と,前受託者の課された計算義務における計算の範囲・程度は異なると考えられます。

すなわち,臨時の信託財産保管義務者の行う計算は,前受託者が残した資料,信託財産から残存信託財産の内容の報告程度で足りると解されるのに対しまして,前受託者の行う計算は,当初の信託財産から事務引継ぎに当たり引き渡す信託財産への変遷が明らかになるようなもの,すなわち,過去の事務処理までさかのぼって信託取引の内容が明らかになるようなものまで作成することを要し,そのような内容の報告であればこそ,計算承認に責任解除の効果が付与されてしかるべきであると思われるからでございます。

 以上で終わります。

● なかなか複雑な部分でございますけれども,いろいろ理論的には問題がありますので,御議論いただければと思います。

  簡単に言えば,要するに,受託者が交代するときに,すぐ新しい受託者がそこで選任されれば,それでもいろいろ複雑な問題がありますけれども,そう問題はないのですけれども,すぐに新しい受託者が選任されるとは限らず,前の受託者と新受託者の間に一定の期間があると,そんなことからいろいろ複雑な問題が生じているということでございます。

  いかがでございましょうか。

● 第40の4について,先ほど○○委員も軽く触れられたことでございますけれども,それに敷えんしてお話ししたいと思います。

ここで,受託者の解任の場合には,受託者の権利義務というのは3点に限られるということでございますけれども,この点についてもデフォルト・ルールでよいのではないかという意見を述べたいと思います。

  実務のニーズにおいては,今後,信託業法の改正により受託者の担い手が拡大するものですので,そういうことを踏まえまして,やはり信託契約において,特に商事信託においては,あらかじめ第37の規律に従って解任のルールを決めておくことが考えられます。

例えば,受託者の格付が一定以下に下がった場合に受託者を交代させるということがあると思います。

こうした場合に,実際には,予防的に,完全にその信任関係が崩れる前にある一定の解任をしておこうと。

その後,新受託者が選任されるまで,なお,解任を前提とするけれども,一定の受託義務ということはやらせておこうと,こういうニーズがあると思います。

特に不動産信託の場合には,修繕であるとか賃料の収受であるとか,考えようによっては保存行為あるいは改良行為も必要だと思いますけれども,それは間断なく実行される必要があると思います。

そこにおいて,もう一つ,管理制度というのがありますけれども,そこまで移行するのもまた実務的にも困難だと思いますので,そうしたときに ,新受託者がこの3点の行為しかできないということになると,やはり実務的に難しいのではないかというふうに思っております。

  したがいまして,やはりここも,第37,理論的にも解任の手続自体がデフォルト・フォールになるわけですので,この解任の場合の受託者の権利義務,その残った受託義務についてもやはりデフォルト・ルールで任意に決められるということにしたらどうかというふうに思います。

● 今のは,第40の4に関してですね。

  ほかに。

  よろしいですか,○○幹事。

● 確かに,委託者,受託者がそれで合意していれば,これにプラスする方向というのはあり得ると思います。逆に,これを減らすというのはちょっと難しいということですので,片面的な強行規定といいますか,そういうことであれば,まあそれでいいのかなという感じがしております。

● ほかに,いかがでしょうか。かなりテクニカルな問題もたくさんあるのですが。

● 第41に移ってよろしいでしょうか。

  受託者の交代のところでございますが,基本的には,受託者の交代の規定をいろいろと盛っていただいておりますが,おおむね賛成の方向ということでございます。

  その中でも,(注3),(注4)というのを,先ほど○○幹事の方からもお話がありましたけれども,職務分担型の共同受託が一般化してきたときには,こういうような規律が必要になるのではないかと思いますので,そういう方向でお願いできたらなというふうに考えております。

  ただ,少数意見なのですけれども,ここの2のところの規律,それと,後のところで議論されることになっていますけれども,第43の共同受託のところの規律でございますが,この二つの部分は,現在ここで検討されております法改正の以前に設定されたものについては適用されないという形での整理をお願いしたいと。

そこについては多分経過措置の問題で,後になって議論されるのだと思うのですけれども,特にここの部分についてはそういう形での御対応をお願いしたいという意見もございましたので,あわせてつけ加えておきます。

● 特に気になっている部分はどこでしょうか。今の場合。

● 例えば,受託者が複数いて,それで解任になりましたというときに,その信託財産が--例えば,3人受託者がいて,一人が解任されましたと。それが,その二つのところに信託財産が行くというのがデフォルト・ルールで,契約があればそれは別に構いませんよということなのですけれども,多分そういう契約体系に今はなっていないと思うのですね。

そうすると,いきなり新法ができたときにそういう状況になってしまうと,対応ができなくなるということではないかと思います。

● 恐らく,それはそう対応すべきだと思いますね。

  ほかに,この辺はいかがでしょうか。

● 第40の1の(1)なのでございますが,そこに,引継ぎの事務処理をする人として,受託者の相続人,清算人,破産管財人,成年後見人又は保佐人というのが並列的に並んでいるわけですが,破産管財人というのは,今まだ御説明いただいていない第42とか第39のところとも密接に関連しますし,そもそも破産管財人について第三者性というのを認められると仮定しますと,例えば信託財産に公示がないといったときに,成年後見人や相続人は,公示がないことを理由にして,この財産は信託財産でないというふうに言う権利は持っていないと思うのですが,それに対して,破産管財人というのは持ち得るわけですよね。

もちろん,解釈論として,持ち得ない,やはり破産管財人もそのまま受託者の権利義務を引き継ぐだけであって,仮に公示が欠けていてもそのことについて主張はできないのだというのもあり得るかもしれませんが,それは恐らくは一般的な破産法のほかのところの解釈と整合性が出なくなると思うのです。

そうなりますと,破産管財人というのはもうここの第40から外してしまって,別の,受託者の破産の特別な条文というところに入れ込んだ方がいいのではないかという気がするのですが。

ちょっと私が十分に理解できていないだけかもしれませんが。

● 確かに,破産管財人というのは受託者のその他の債権者の利益を代表するところでもあり,ただ,事実上信託財産を管理しやすい立場にもある,そういう意味でちょっと二面性があるわけですね。確かに,おっしゃるのも一つの……。

● なお考えなければいけないと思いますが,現段階では,今の○○幹事のような解釈論はむしろとらないということになるのではないかと思います。

破産管財人が第三者性を持つのは,破産財団を管理する機構としての地位であって,ここではそうではなくて,いわば事務処理を引き継ぐというのですか,保管し,引継ぎに必要な行為をするだけの地位ではないかと思いますので,換価して清算する対象ではない財産について第三者性はないというふうに解釈することになるのではないでしょうか。

● 恐らく受託者のそういう事務を引き継ぐわけですが,しかし,同じ破産管財人が,受託者の債権者の利益というか,破産管財人としては利益を代弁しなければいけないというので,○○幹事が例を挙げられたように,信託財産について公示がなかったときにどういう行動をとるべきかと,そういうところが恐らく問題なのだろうと思いますけれども。

  あるいは,○○幹事の方で何か。

● 確かに,破産管財人は事務の引継ぎとかをする義務があるわけですが,恐らく,最初に○○幹事がおっしゃった趣旨は,公示がないものについてどうするかという御趣旨かと思いますので,そうすると,やはり,私もそんなに破産に詳しいわけではないのですが,公示がない財産については,破産管財人はそれを破産財団だと主張することが,受託者の債権者の利益を代弁するという立場からはあり得るのではないかという気がいたしますので,やはり第三者性というのは否定できないような気がいたします。

  そうしますと,これは第42の1のところで破産管財人については特出しして規律を書いているわけでございますが,この中では唯一,このような二面性のある立場に属する者だということで,特別に規律を特出しするという考えもあり得るかと思うところでございますが,まだ事務局の中で,この破産管財人を特別に別途規律すべきかどうかとかいうところまで詰めているわけではございませんが,直感的にはそういう印象でございます。

● 恐らく,この第40でもって積極的に第三者性を否定したというわけではないということなのですね。

ですから,○○幹事のような--○○幹事御自身の積極的な御意見ではないのかもしれませんけれども,仮に第三者性を否定するということがあったときに,それで破産との関係は大丈夫なのかということはどうでしょうね。

● 受託者の管財人が第三者性を持つのは,受託者の固有財産が破産財団になって,それとの関係だと思うのです。

信託財産というのは,要するに実質的には自分のものではないわけですから,ここに書いてあるとおり,正に保管をし,事務の引継ぎに必要な行為をするだけであって,人の財産を預かっているだけですから,その局面では第三者性の問題は出てこないのではないかと思うのです。

先ほど申し上げたのはそういう趣旨なのですが。

  ですから,矛盾するところではない,つまり,この原案のままでも別に構わないのではないかというのが,私の今日の段階での理解ですけれども。

● 前のときにちょっと議論がありましたが,破産管財人というのは一方的に受託者の固有債権者の利益ばかり図ってはいけないのであって,中立的な立場にいなければいけないとすると,例えば,今,○○幹事のおっしゃるのは,公示がなくても,それが信託財産である以上は,これは信託財産だというふうに認めなければいけない,いや破産財団だなどという主張をしてはならないという趣旨が破産管財人に課されていると。

● そうです。固有財産の中で対抗要件のないものが相手方にあれば,それは第三者として頑張らなければいけない義務を負うわけでしょうけれども,信託財産を保管,引継ぎするための必要な行為をするだけだったら,これはただ受託者としての事務の引継ぎをやっているだけではないかと,そういう理解になるのではないでしょうか。

● 実は,私,現行法の解釈論については,今,○○幹事のおっしゃったものと同じ立場をとっているのですが,必ずしも私がそう思っていることをみんなもそう思っているということではなかったような気がするのですね,現在。

  私の解釈論の基礎というのは,相続人,清算人,管財人,後見人と,こういうふうに並べられていて,一人だけ第三者で,そもそも公示がないときに信託財産性というものを否定できるというのはおかしくて,ただ単に受託者の義務を引き継いでやるだけだろうと,それが並行に並んでいるのだろうというふうに私は現行法は解釈しているのですけれども。

  いずれにせよ,そのあたりのところは現行法の解釈論として明確になっていたわけではないような気がいたしますので,そういうふうなあいまいなものをそのまま引き継ぐよりも,第三者性を否定するのか--「第三者性」という言葉がいいかどうか分かりませんけれども,公示がないと,公示の欠缺というものを主張し得ないというふうに解するのか,それとも,やはり主張し得るというふうに解するのかというのは,これを機会にやはり明らかにしておいた方がいい問題ではないかというふうに思います。

● それは確かにそうですね。

● 私も,○○幹事の方の感覚に賛成します。

  やはり信託法というのは,こういう利益相反的な状況あるいはそのおそれがある場合に対して敏感であるべきであって,○○幹事の言うことも分からないではないですけれども,結局,本当のところで問題になるのは,これは信託財産である,固有財産であると頭の中でクリアに分かれて,しかもそれが現実にはっきりしている場合は何の問題もないでしょうけれども,現実には,これはどうなんだろうという話が問題になってきたときに,あんたどうするのと言われるわけですよね。そのときに,こちらの利益もある,しかしこうやってこういう立場もあるというのが正に利益相反的な状況なので,やはりそういうのを一緒に並べておくのはいかがなものかという感触です。

● ほかにも何か御示唆をいただければ。

  確かにそういう両面はあるのですけれども,現実問題としては,恐らく破産管財人に事務を引き継がせるということは必要なんだと思いますけれども,そのときのルールですね,どういう考え方に基づいて,破産管財人としては何をしなくてはいけないか,その指針を明らかにするということだと思いますが。

  条文にするときに,破産管財人については別にするということももちろんあり得るし,ここら辺は,また事務局の方で検討してもらうということでよろしいでしょうか。

● 実質に関することはなくて,複数の規定相互間の関係についての理解をお伺いしたいというものであります。

  先ほどいたしました第38の合併又は会社分割における受託者の変更と,今の第41の受託者の交代の関係について,少しお伺いさせてください。

  第38の方は,任務を承継するというのが基本的な考え方になろうかと思います。

そして,第41の方は,任務がいったん終了し,新たな任務を新しい受託者が負うという形で対比・対照できるのではないかと思います。

しかし,第41の方も,信託行為の変更がない限り,新受託者が負う任務は旧受託者が負っていた任務と基本的に同一の内容になるのだろうと思います。

しかし,そこを,旧の任務は終了し,新の任務が新たに成立というか,発生というか,創設されたと考えることの具体的な意味が何かあるかどうかということを伺えればと思います。

それは単に,第38の世界では,第41の新受託者への事務の引継ぎ等,あるいはその前提としての新受託者の選任が必要ない,そして,特に分割の場合では受託者の法人格が変わるわけですが,そのときに新受託者への事務の引継ぎ等がないということを意味していると考えれば足りるのか,それとも,それに加えて,一つの任務が承継されるのと,いったん任務が終了して新たな任務が成立するという第38と第41との違いが何かもう少し実質的な意味を持つのか,お教えいただければと思います。

● なかなか難しいですね。

  ○○幹事御自身はどうお考えですか。

● 私は,同じなのかなと。

  そうすると,任務が承継するというのは,第38のところで一つ強調していただいたところですけれども,それ自体は,任務が終了しないということを意味しているにすぎないのかなと感じたところですが,いかがでしょうか,○○幹事。

● おっしゃったように新受託者の選任云々ということだと,債務の承継なんかが,場合によっては,包括承継ですと全部移転するのが,この受託者交代の規律ですと有限責任の限度しか承継しないというようなところが違うのかなという気がいたします。

  ただ,我々が前から分からないのは,この受託者の交代というのはいわゆる包括承継なのか特定承継なのかというところがちょっと分からなくて,もし特定承継だったら,登記の問題とか第三者性の問題が出てきますが,包括承継でしたら,例えば登記をしなくても二重譲渡の問題等は生じないので,もしも包括承継的に受託者のことを考えるのですと,微細な点は違うとしても,おっしゃるとおり,余り第38の規律とは違ってこないと。

  むしろ,そこら辺をどう考えているのかというところを教えていただければと思っているところです。

● 引き続き考えてきます。ちょっと今はよく分かりません。

● ここら辺は余り議論の蓄積があるところではないので,むしろ,これからどう考えていったらいいかという観点から御議論いただければと思いますけれども。

● これも質問で,申し訳ありませんが,先ほど,恐らく○○委員のお話の中に営業譲渡の話が少し出てきたと思うのですが,信託財産を含む営業譲渡を信託銀行なり信託会社がするときは,これは第41の世界で考えると。

● そうですね。任務終了して,新たな受託者と,そういうことになります。

● そして,そのときに信託財産とか権利義務とかを移転するけれども,それが特定承継なのか包括承継なのかというようなことが……。

● それはそういうことですね。

  ただ,恐らくそれは民法上の債務引受け,債権譲渡と同じような話なので,そう考えると,特定承継なんでしょうかね。

でも,特定承継だと,対抗要件を具備していなければいけないんでしょうか,前受託者から交代した新受託者は。

そうしないと,前受託者から譲渡を受けた人に対抗できないとかいうことになるのも不自然な気もいたしまして,よく分からないところでございます。

● ちょっと違う話ですけれども,第41の「受託者の交代について」のところで,4の「前受託者の補償を受ける権利等」というところ,これは多分,前の受託者の受益者に対する補償請求権のところとも同じ議論がここで持ってこられて,甲案,乙案というふうに7ページの方で分けられていると思うのですが,書きぶりが若干違うので,その辺,何か異なって扱う趣旨があるのかという質問なのですが。

  例えば,この(5)に,「(4)の権利は,(1)又は(2)の権利を行使することによっても補償を受けられない場合に限り,行使することができる」というふうに書いてあって,12ページのこの説明の方を見ますと,12ページの上から7行目ですか,「新受託者等が信託財産を責任財産とする補償請求に応じない場合」という書き方になっているのですね。

ですから,この応じないとき,責任財産として信託財産があるのだけど補償請求に応じないよという場合も含まれてしまうような書き方になっていて。前のところでは,「弁済に不足する」とか,そういう条件だったと思います。この辺はいかがでしょうか。

● ちょっと私は気がつかなかったけれども,そんなに違える趣旨はなかったかと思いますけれども,どうですかね。

● (5)の書きぶりですが,ここが書きぶりが違うというのは,実は事務局でも少し感じてはいたところでございますが,さほど積極的な理由でもないのでございますけれども,一般的な補償請求権の局面では,信託財産の維持を図るべき待機義務というものもかかっておりますので,より受益者に行きやすくしてあげた方が受託者のためではないかと。

しかし,この局面では,もはや信託任務が終了しておりますので,より受益者に行ける場合を限定していいのではないかというようなニュアンスで考えているところでございまして,繰り返しますと,信託継続中の補償の方がより受益者に対しても行けてしかるべきではないかということをにおわせていると言えば言えるということでございます。

● 余り別に解しない方がいいかなというのが私の意見でございます。

● 別にというのは,どちらかにそろえるという意味ですか。それとも,積極的にどちらかにそろえた方がいいと。

● それは,前の補償請求のところの記載の方が受益者に行きにくいのではないですか。

● 前は,「補償請求権の弁済に不足する場合,又は弁済を受けることができなくなる蓋然性が高い場合に限り」ですから,危なっかしかったら行けるという意味で言えば,より行きやすいのです。

● 受けられないというのは,もっと厳しいということですね。

● 判明しないとだめなので,厳しいです。

● では,さっきの補償請求に応じないというのは,あれはまたちょっと違うと。

● そこら辺の書きぶりは余り詰めていませんが。

● そういう意味では,○○委員の御意見は,こちらにそろえた方がいいと。

● そうです。

● ほかに,いかがでしょうか。--よろしゅうございますか。

  あるいは事務局の方で,この点は是非聞いておきたいという点がありますか。

● 先ほど申し上げました(注2)のところでしょうか,かつての研究会でも議論になりましたが,当事者が交代したときに,相手方の,特に継続的契約取引の相手方に対して何らかの保護措置を与えるべきか。

一般的な有限責任取引であれば,受託者が変わったからといって保護してやる必要は乏しいと思うのですが,特に信託の受託者の資力を当てにして契約をしていたような状況が認められるときには,何らかの,解除権とかが発生するという考え方をとる余地があるかどうかというあたりの御意見がもしあればというふうに思っているところでございます。

● 私は,一般的なルールにゆだねておいていいのではないかなという印象を持ちました。

特に,受託者の固有財産を当てにしているのであれば,それに対応するような特約なりを結ぶという方法もあるでしょうし,そういう特約を結んでいない場合に,受託者が交代したという場合であっても,一般的な,例えば期限の定めがない場合には,解約申入れをするとか,あるいは不安の抗弁を主張するとかということで対応できるかなと思います。

  それからもう一つは,特別の契約類型を切り出すということは実際上はなかなか難しいのではないかなという印象を持ちまして,結論としては,一般ルールにゆだねていいのではないかと思います。

● もう一つは,13ページの(注3)のところで,先ほど○○委員もおっしゃっていましたが,共同受託者のうちの一人の者が任務を終了したと。

そうすると,名義は当然,残りの方に行きますが,任務についても行く,しかしそれが酷な場合については任務は行かないということで並立はしておいて,しかし,ここの(注3)の提案では,そういう場合には,事務引継ぎをする者は,第40の規律のように,例えば前受託者がそのままとりあえずやるとか,あるいは共同受託者の一人の者が破産した場合には破産管財人がやるとか,そういう規律を持ってきてはどうかということを提案しているところでございますが,それについてはこのような考え方をとるということで,特によろしゅうございますでしょうか。

● まあ,そんなに不合理なルールではないと思いますので,特に御反対がなければ……。では,そういうことにいたしましょう。そういうことにいたしましょうというのは,皆さんの大方の賛成は得られたということですね。

  では,次に行きましょうか。

● では,続きまして,信託財産の管理人の説明,第44に移らせていただきます。

  信託財産管理人とは,受託者が欠けた場合におきまして受託者のかわりに信託財産を管理する者を言いますが,現行法のもとでは,信託財産の管理人を選べる場合というのが限られておりまして,一つは,46条で,受託者の辞任を裁判所が許可した場合,それから47条で,裁判所が受託者を解任した場合,それでこれらの場合には,裁判所は受託者がいなくなったことが分かりますので,裁判所が職権で信託財産管理人を選任するとしております。

  この規律に対しましては,信託財産管理人の選任を今の二つの場合に限定することは信託財産保護の観点から狭きに失するのではないかという指摘ですとか,あるいは,信託財産管理人の法的地位につきましては特に規定がありませんので,その地位が不明確ではないかという批判がございます。

  ところで,信託がこれからますます使われるようになりますと,受託者が欠けることも今より増えることが予想されますので,一時的な信託財産の管理者として信託財産管理人の必要性も高まることが予想されます。そこで,信託財産管理人に関する規律の整備を提案したものでございます。

  以下,簡単に各提案内容を御説明申し上げます。

  まず,1でございますが,これは,信託財産管理人が選任される場合について検討したものでございます。

この選任につきましては,大きく分けて3点ほど,現行法の規律を改めておりまして,その3点といいますのは,一つは,受託者の任務終了事由に限定を設けず,信託財産管理人の選任余地をずっと広げたということ,第2点といたしまして,受託者の全部が欠けた場合だけではなくて,一部が欠けた場合にも選任の余地を認めたこと,3番目に,職権で裁判所が選任するのではなくて,利害関係人による請求があった場合に選任されるとしたことでございます。

  特に,第2点目の,受託者の全部だけではなくて,受託者の一部が欠けた場合にも信託財産管理人の選任の余地を認めたという点について御説明いたします。

  先ほどのお話にも重複してまいりますけれども,第41の2で提案いたしましたとおり,共同受託者の一部が欠けた場合には,欠けた受託者の権利義務は残りの受託者が引き継ぐことになるのがデフォルト・ルールでございます。

しかしながら,信託行為によって運用を行う受託者と管理を行う受託者が定められている場合などには,残りの受託者に対して欠けた受託者の事務を引き継がせることが,信託財産保護の観点から適当ではない場合も想定されるところでございます。

そこで,受託者の全部が欠けた場合ではなくて,一部が欠けた場合にも,信託財産保護の観点から必要があると認められるときには,裁判所が信託財産管理人を選任できることを明らかにしたものでございます。

  なお,受託者の一部が欠けた場合,全部が欠けた場合に信託財産管理人の選任の余地を認めるということにつきましては,これは任務が終了した場合を前提としているわけでございますが,信託財産の保護の観点から言いますと,信託財産管理人を選任する必要があるのは必ずしも受託者が欠けた場合に限られないと考えられるところでございます。

このような観点から,33ページのアステリスクの1と,38ページの(注1)というところでございますが,ここで,受託者の任務が終了した場合だけではなくて,「受託者の一部又は全部について,職務を執行することが困難又は不適当な者がある場合」,例は38ページに三つほど詳しく書かせていただきましたが,そのような場合にも,信託財産管理人が選任される余地を認めてはどうかという点について考え方を示しているところでございまして,このような考え方の当否について,是非とも御意見を賜れればというふうに思っているところでございます。

続きまして,2でございますけれども,これは,信託財産管理人の権限について検討しているものでございます。現行法では信託財産管理人の権限が明確ではございませんので,その点の明確化を図ろうとするものでございます。

  信託財産管理人は,新たな受託者が選任されるまでの間,受託者にかわって信託財産を管理処分する者ですので,信託財産管理人の権限は任務が終了した受託者と同一であるとすることが適当だと考えられるところでございます。

しかし,他方で,信託財産管理人は暫定的に置かれるものであり,しかも,受託者とは異なりまして,その固有財産では責任を負わないなどの違いがありますので,前受託者と同一の権限を自由に行使できるとすることは相当でないとも考えられます。

そこで,2の(1)におきましては,信託財産管理人は  前受託者と同一の権限を有するとしつつも,民法103条の定める権限,すなわち,「保存行為」ですとか,「目的タル物又ハ権利ノ性質ヲ変セサル範囲内ニ於テ其利用又ハ改良ヲ目的トスル行為」,このような行為を超える権限を行使する場合には裁判所の許可を受けなければならないとしております。

  また,信託財産管理人が選任されますのは,前受託者や受託者の相続人等に事務処理を委ねることが適当ではないという場合ですので,選任された場合におきましては,前受託者等が有していた権限は信託財産管理人に専属するということが相当であると考えられます。そこで,(2)におきまして,このような趣旨を明らかにしているところでございます。

  さらに,現行法上は,信託財産管理人が選任された場合の信託財産に関する訴訟の帰趨が明らかではありませんので,(3)におきまして,信託財産に関する訴えにおきましては,信託財産管理人が選任されれば,その者が原告又は被告になるということを明らかにしております。

  次に,3でございますが,これは信託財産管理人の義務について検討するものでございます。

  信託財産管理人は,新受託者が選任されるまでに置かれる臨時の受託者としての性格を有しますので,信託財産管理人が負う義務につきましては原則として受託者と同様であるとすることが相当であると,先ほども申し上げたところでございます。

しかし,他方で,33ページのアステリスク3に記載いたしましたとおり,信託財産管理人は裁判所によって選任され,信託財産の所有者にはならないなど,受託者とは異なる性格を有しますので,例えば,信託財産管理人が第三者に対してその事務を自由に委任できるとすることは相当ではないと考えられます。

そこで,40ページの(注6)に記載いたしましたとおり,信託財産管理人がその職務をかわって行う者を選任するためには裁判所の許可を受けなければならないというふうにしております。

  なお,このほかにも,受託者と異なる規律を設ける必要があるか否かにつきましては,なお検討したいと思っておりまして,その趣旨は,38ページの上の方に書いてあるとおり,例えば利益取得行為の禁止に関する義務を課さないこととしてはどうかとか,こういうことを今後検討していきたいと考えているところでございますが,何か御指摘があれば,是非とも賜りたいというところでございます。

  続きまして,4でございますが,これは,信託財産管理人がその職務を行うため必要と認めるべき費用については,信託財産の中からその前払い又は支出額の償還を受けることができるといたしまして,また,相当な報酬につきましても信託財産の中から受けられるというように,規律の明確化を図っております。

  また,信託財産管理人の任務終了事由につきましては,40ページの(注7)に書いてございますけれども,受託者の許可辞任,すなわち裁判所の許可を得ての辞任に関する規律に準じた辞任の規律,それから解任,これは受託者の解任と同じような並びでございますが,そのような規律を設けるほか,その臨時的な地位にかんがみまして,新受託者が正式に選任された場合にも任務が終了するというようなことを定めて,規律を整備していきたいと考えているところでございます。

  以上でございます。

● それでは,信託財産管理人というのについて,いかがでしょうか。

● 1の「信託財産の管理人の選任」のところでございますが,現行法と比較いたしまして,許可辞任のときであるとか,解任を許可したとき,それ以外のものにも認めるということについては賛成だと。特に,受託者の一部が欠けた場合にも認めるということについては,結構使い勝手がよくなったのではないかなというふうに  考えておりまして,賛成いたします。

それと,先ほど○○幹事からもお話がありましたが,アステリスク1のところの,「受託者の一部又は全部について,職務を執行することの困難又は不適当な者がある場合にも」認めると,こういう場合も結構出てくるのではないかと思いますので,これについても是非ともお願いしたいというふうに考えております。

  それと,これは法定化する話では全然ないのですけれども,こういう規律が法定化された際には,信託財産の管理人の選任というのをより迅速にするというようなことが一番重要ではないかと思いますので,直接は関係ないのですけれども,是非ともお願いしたいと思います。

● 現在は余り使われることはないんですかね。これからこうやって少し広げると,それなりに使い方が便利になってくると思いますので,更に一層使われるようになりますが,そういうことを考えたときに,こういう権限ですとか義務ですとか,こういうことでいいのかどうかというあたりの御感触をいただければと思いますが  。

● 権限や義務の本体の問題ではなく,33ページの1のアステリスクの1で書かれている点なのですけれども,こういう対処が必要な場合も出てくるかなという気はしているのですけれども,(注1)のところで,38ページ以下に挙げられております例えば第1の例や第3の例,第1ですと,受託者にやむを得ない事情が生じて,自らは職務を遂行できないという場合,あるいは,辞任するような事情があるのだけれども,その手続に時間がかかって,やはり自ら職務をとれないというような場合は,現行法のもとですと,やむを得ない事由があるということで,他人に事務を委託するという形で処理をしていたのではないかと。

それは,受託者の責任において選任と監督を行う形で対応していたということになるかと思うのですけれども,そういうふうにこの信託財産管理人を入れるということは,そこの部分を,受託者の選任・監督の責任のもとに対応するということではなく,利害関係人のイニシアチブによって裁判所の選任・監督によるというものとするということを含んでいるのかどうか,その関係が少し気になっておりまして。

それとも,相変わらず受託者は本来自分で手当てをすべきで,そこが適切にされないと善管注意義務違反というような話になってくるのか,ちょっと整理として気になりますので,お考えを聞かせていただければと思います。

● 信託管理人をだれのイニシアチブで選ぶかという,そういった基本的な原則に関連する問題かと思いますけれども。

● やはり,裁判所が選んだ場合には裁判所が監督することになるのではないかという気がしておりますので,信託財産管理人の場合には裁判所で,おっしゃったような委託の場合には受託者が選任・監督ということで,ちょっと主体は変わってくるというのが今の考えでございます。

● よろしいですか。

● ですので,現行法の下ですと,それも含めてすべて受託者の責任でやるというお話ではなかったかと思うのですが。

● だれが申立てをするかとか,そういう点ですね。特に,職務を執行することが困難,不適当であるという場合には,自分でやるのではなくて,周りの利害関係人が申し立てるという形になるので,言ってみれば,受託者本人からするとその意思に反してということもあるかもしれないし,そこら辺は少し難しい問題を含んでいるかもしれませんね。

● 十分調べてはおりませんが,やはり,イニシアチブをとったのが利害関係人であるといたしましても,裁判所が選任している以上は裁判所が選任--まあ,選任は当然ですが--監督するのではないかという感じがいたしますけれども。

● その部分については何ら疑問を挟んでおりません。

● 恐らく,現行法での信託財産の管理人というのは,そもそも今までの受託者というのが解任されたり,要するにもう受託者ではないという状態で選任されるので,これはもう利害関係人が選ぶので全く問題ないわけですね。

だけど,このようにアステリスクの1のように広げると,一応受託者として存続しているけれども,職務を行うことができないというので,自分が選んでほしいというのだったら問題ないけれども,そのときにほかの利害関係人が信託財産管理人を選んでくれと申し立てるということがどうかという,そういう問題ですね,○○幹事が言われているのは。

  どうですか。

● 一度検討して,後で御回答させていただきたいと思います。

● 広げることによって少し新しい問題が入ってきたということは十分我々としても理解しているというふうに思いますけれども,ではどういうふうにしたらいいかということについてもうちょっと検討してもらうということにしましょうか。

● 信託財産管理人の権限についてなのですが,また私が御説明を聞き落としているだけだと大変恐縮なのですけれども,これは,基本的に民法103条に定められた権限の範囲内でやればいいのだけれども,超えることもあり得るよねという話なのか,それとも,前受託者,任務が終了した受託者がやるべきであったことはすべてやるという義務があって,しかし,そのやるという際に民法103条の範囲を超える場合には裁判所に聞かなければならないという趣旨なのかということなのですが,仮に後者だとしたときに,果たしてそれは可能なのか,妥当なのかという感じがするわけでありまして,まず,可能なのかということから考えますと,信託の受託者の権限とか権限行使の態様というのは,この御説明の途中にも出てまいっておりますけれども,信託財産の所有権を有しているというところと密接に結びついているわけでありまして,例えば,信託財産を売却をするというときも自分の名前で売却するわけですよね。

しかるに,信託財産管理人というものはではどうやって売却できるのかというと,当然には代理権限が与えられているというふうには読めないような気もいたしますし,代理権限を与えられているというときも,ではだれの代理人なのかということになりますと,それもよく分からないのですね。

前受託者が例えば欠けた場合なんて考えますと,その前受託者の代理人というわけでもないといたしますと,これはよく分からない。そこらあたりのことについてどうお考えなのか,どう考えるべきなのかということをお教え願いたいというのが,1点。

  2点目,簡単な話ですが,先ほど出ました38ページの(注1)の問題なのですが,第3というのは本当に可能なのかというのが,読んでいて若干気になるのですが。

つまり,受託者は同意がなければ辞任できないのだけれども,すぐに解放してやることが必要な場合もあると。

それはいいのですが,解放してやるという条文というのはあるのでしたっけ。つまり,私は同意がないから辞任できないけれども,解放を受けるだけの事情があるので,私はもうしなくていいというふうに認めてくれと言わなければ,その人は義務を負い続けることになるような気がするのですが,解放すべきときに解放するということが本当にできるのかということについてお教えいただければと思うのですが。

● ○○幹事の第1点と同じ点なのですが,1点だけ,○○幹事の御質問に追加して,私も一緒に,同じ問題ですので,聞かせていただければと思いますが。

  私も,このただし書の制約が場合によっては信託の価値を毀損する場合があるのではないかと。

すなわち,103条に定められた権限ではやや狭過ぎる場合があるような気がいたしまして,この信託がいろいろな商事目的のようなものも含まれているということにかんがみますと,例えば商法の70条ノ2におけます業務代行者の権限のように,この商法の条文では「会社ノ常務ニ属セサル行為」という制限を付しておりますけれども,もし商事目的,様々な目的の信託があることを前提とするのであれば,通常の信託の当該信託事務の処理に属する行為かどうかという,そういう基準を採用することも考え得ると思うのですけれども,なぜ民法103条に定められた権限に限定しているのかというのを,○○幹事の御質問と関連して,ついでにお聞きできればと存じます。

● まず,信託財産管理人の権限の御質問の関係でございますが,ここはやはり原則として信託財産管理人がその前受託者と同一のことができるというわけではなくて,裁判所が命じた範囲でできるのであると。

ただ,それが103条に定められた権限を超える場合については初めて許可が要ると,こういうような考え方によっているところでございます。

  民法28条の不在者の財産管理人と同じ規律と,あと現行法でも同じような解釈がとられているということでございますので,それに基づいてそのような制限を設けたということでございます。

  それからもう一つ,○○幹事の方からありました任務の解放の話でございますが,これは,前受託者が解任された後,任務を解放されるためには,信託財産管理人の選任があってそこで初めて任務が解放されるということになるかと考えているところでございます。

● ○○幹事の御意見は,むしろ,こういう規定を置いても本当にできるのかというような御趣旨だったような……。

そもそも処分権限がない,というか,信託財産の帰属しない信託財産管理人に例えば処分をするということができるのだろうか,前受託者と同じようにと,そういうことですね。

単純に考えると,裁判所の許可によって,先ほどの○○幹事の挙げられた商法70条ノ2ですか--○○幹事と○○幹事とは,ちょっと方向が違うのですね。

むしろ逆なのですね。同じ問題を論じてはおられるけれども。

だから,こういうような規定が商法70条ノ2のような規定なのだと,まあ,それが適当かどうかは別として,そういうふうに考えれば,裁判所の許可によって特別に処分はできるようになるということなんでしょうかね。

● それによって処分権限のようなものが付与されるということですね。

● まあ,そうですね。

● 信託財産管理人の権限は,先ほど言いましたように専属することになりますので,そこで責任を免れるということになります。第44の2の(2)で,「前受託者の権限は,信託財産管理人に専属」いたしますので,そこをもって切りかわるという趣旨でございます。

● よろしゅうございますか。

● 私からは,権限に対応する義務についての質問をさせていただきたいのですが,権限の部分がぶれますと,それに応じてまた変わってくるという問題はあって,ちょっと連動していると思います。

お話しいただいた中で言いますと,33ページ及び38ページの上の方で,義務を若干軽減する可能性があるのではないかという点についてですが,考え方はよく分かるところではありますけれども,若干整理を幾つかしておく必要があるのではないかなと思います。

  まず,権限の方で103条が一応ベースラインになりますと,保存行為あるいは性質を変ぜざる範囲での利用改良行為に仮に原則として限定されるとして,どのような場合にこの利益取得行為というのが考えられるのか,どういう例を想定してこのような形でお書きになっているのかというのをまずお聞かせいただきたい。

  それから,もう一方では,「103条に定められた権限を超える行為をするには,裁判所の許可を得なければならない」となっていて,裁判所が必要と認めて,これこれこういうことをせよということが命ぜられた場合に,なおかつ義務はやはり軽減されるというお考えなのか,それはどういうふうに考えておられるのかというのがもう一つの質問です。

そして,一番最後に,恐らく一番よく考えておかないといけないポイントといいますのは,受託者の義務について新たな規定を置くというのが,そして具体的な内容としては忠実義務以下いろいろな御提案をしていただいているわけですけれども,これは信託の受託者固有の義務であって,信託の受託者以外についてはこのような義務が当然に当てはまるわけではないという考え方を恐らくは前提にしておられるのかなという感覚があるのですけれども,これはいろいろな考え方があるところでして,人の財産を管理する人間については一般的にこれこれこういう義務があって,信託法にはその考え方があらわれているというような考え方もあり得るであろうと思われます。

そうしますと,こういう形で,受託者とは異なる,若干義務を軽減するというようなことをもし書くとしますと,信託の受託者固有の義務というのはどの範囲で,それ以外については一体どういう義務が一般的にはあり得るのかということまで視野に入れて,軽減するかしないか,あるいはどこまでするのかということを考えていく必要があるのではないかなと思います。それが第3点目です。

● なかなか難しい問題ですね。確かに,原案は比較的区別してというのでしょうか,忠実義務とか信託本来の義務は受託者の義務であって,それ以外の例えば信託財産管理人になると,当然にはそういう義務が及んでこないという考え方ではあるのですけれどね。

● まず,利益取得行為はどういうものを想定しているかといいますと,例えば信託財産を保管している中で知った情報を利用して利得を得る行為ですとか,あるいは信託財産の処分行為をする過程で何らかのリベートを受け取るとか,そういう行為というのがあり得るのではないかという気がいたします。

  それから,裁判所の命令を受けてやったときには義務が軽減されるのかということですが,裁判所の命令があった場合にはそういう行為をする権限及び義務が付与されるわけですが,それに基づいてやるべき注意義務がそれによって軽減されるという感じはいたしませんので,やはり,義務は付与されるけれども,やるべき注意義務の基準というのは変わらないのではないかという感じがいたします。

  それから,もう一つおっしゃったのは,どこまで受託者の義務が信託財産管理人に付与されるか,これは正に我々がどこまでと考えたらいいのかなというところを皆様に伺いたいところでございまして,ここに書いてありますように,例えば自己執行義務といいますか,信託事務処理の委託に関しては,義務ととらえるかどうかはともかく,少し性質が違うのだろうなという気はいたしますが,忠実義務のようなものにつきましては,信託財産管理人といっても,基本的には受益者に対して忠実に義務を執行すべき義務があるでしょうし,善管注意義務もやはり当然,裁判所の選任によるとはいえ,かかってくるというような気がいたしますので,確かに受託者を念頭に置いて我々は義務を提案いたしておりますが,その多くのものは,信託財産管理人というのは臨時の受託者であるということにかんがみますと,及んでくるのではないかなという気がしております。

むしろ,どこを落としていいのかというところをお伺いできればというふうに考えております。

● これはまたアメリカの例の紹介なので,参考までにということなのですが,アメリカで,いわゆるフィデュシャリーという概念を立てておいて,受託者が典型ですけれども,それ以外の人,今お話に出たような人の財産を管理しているような人が一般的にフィデュシャリーだという話になって,ある判例があるのです。

それは遺言執行者なのですけれども,英米の相続制度だと,遺産をとりあえず遺産管理人あるいは遺言執行者のところへ預けるような形になっている。

それで,もちろん,その間というのは短期を想定しているわけですね。

その遺言執行者,遺産管理人は銀行が行うこともできますので,受託者が銀行になっている場合もあるので,同じように財産を預かっているよというのと比較ができるのです。

  それで,これが問題になった判例というのがあって,そこでは,今,○○幹事がおっしゃったように忠実義務等の一般的な義務はかかってくる。

したがって,片方は利得を図っていいよという話はない。

ただ,受託者の方は,プルーデント・インベスター・ルールというので,今の考え方では,むしろ積極的な財産運用を--ただ持っていればいいよという話ではなくなっていますね。

やはり普通にプルーデントに,場合によっては財産を管理・運用もするのだと,そういう話がデフォルトで出てきていますけれども,こちらの一時的な預かりという人たちは,同じ銀行でも,本当に低利か何か,とにかくただ安全にという話で持っていればそれで十分だという話になっていて,そういう違いがあるということを明言している判決があります。御参考までに。

● 確かに,そういう臨時の財産管理人である信託財産管理人などについては今の遺言執行者と似たような地位にあって,積極的に財産を運用するというような義務は恐らくかかるべきではないので,おっしゃるとおりのところはありますね。

  ただ,やはり問題は忠実義務,これは基本的に及んでいくのだというふうにしたときに,利益吐き出しの部分だけは違いますよと。

ここら辺は,感覚としては分かるけれども,理論的に説明しようとすると,どういうふうに言ったらいいかというところはもうちょっと詰めなければいけないのかもしれませんね。

● 信託法のことだけ考えていればいいのかもしれませんけれども,仮に,ここで例として挙げられていますように利益取得行為の禁止については課さないとなりますと,例えば,他の領域,一番分かりやすいのは委任者ですね,これも,委任者についてはこのような形での利益取得行為の禁止というのがかかるのか,かからないのか,少なくとも利益の吐き出しというのは認められないということになるのか,あるいは法定代理人だったらどうなのかなどなど,こういう区別をすることによって何かほかの問題を考えるときの手掛かりになる可能性もありますので,少なくともそこまでよく考えた上で決めるべきだろうなと,そういう問題だということだけは申し上げて  おきます。

● これは,○○幹事,何か一言あるんじゃないですか。

● いや,別にありませんが,○○委員が感覚的には分かるんだけれどねとおっしゃったのが感覚的には分からないなというのが私の感想だと。吐き出しは全員にかかるだろうなと。

● 同じ責任といいますか権限といいますか,役割が小さいので余り重い責任を負わすべきではないというぐらいの感覚です。私も○○幹事と同じように,同じ責任だから同じようにかぶるのかなというふうにも思いますけれどね。

● 全く同じ,その感想というところなのですけれども,先ほど,権限との関係がやはり重要だという御指摘があったと思いますけれども,利得禁止のところの利得禁止という行為規範自体は当然--利得禁止のところで挙がっていた話というのは,信託財産を活用して不当な利得を得るという話ですとか,わいろを取るとか,情報を利用するとか,そういうことだったと思いますので,そういうことをしてはいけないというレベルでは当然だと思うのですけれども,そもそも権限や監督等の関係でそういうことができる権限を与えられているのかというのと,かつ,これは裁判所の選任監督がかかって逐一許可にかからしめられるというような行動であるときに,こういうルールを必要とするような管理人なのかというと,そこがそうではないのではないかというところが,感覚的にということの内容なのかなというふうに私は理解しておりましたが。

● そもそも,そういう裁量権限の幅も狭いし,その範囲内でもって……。

● 権限がなければ悪いことをしないというのは,極めてナイーブな発想に思えますが。チャンスがあるというだけで十分なわけですから。権限だけの世界なら信託法は要りません。

● 恐らく○○幹事が言われようとしたのは--私が代弁する必要はないけれども--この信託財産管理人は,少なくとも103条の範囲を超える行為については一々裁判所の許可が必要で……。

● だから,許可をとらないでやればいいじゃないですか。

● それは完全な違反の問題になって,そっちはその問題として処理すればいいということなのではないですか。

つまり,忠実義務などが典型的に問題になるように,一定の権限の範囲内なんだけれども受益者に損害を与えるような行為があったときに,それを忠実義務違反として一定の責任を負わせようと。

そもそも,そういう場面に至る前に,信託財産管理人については狭い範囲の権限しか与えられないので,権限の中でもって受益者の利益を害するような行為が行われるということがないのではないかということなのではないですか。

  済みません,勝手な代弁をして。

  ○○委員がおっしゃることはもちろんそのとおりで。ですから,権限の範囲外のことをやればね。

● もしかしたら,私の方がナイーブに過ぎるのかもしれない。

● 恐らくそんなに違うわけではないと思います,考え方として。

  よろしゅうございますでしょうか。皆様のいろいろな御意見は大体分かったような気がいたしますけれども。

● 済みません,事務局の方から,一,二点,教えてほしいことがあります。

  信託財産管理人の権利義務の点につきましては,御承知のとおり,現行法の非訟事件手続法71条ノ6というところでは,委任の規定をむしろ準用してやっているわけでございますが,我々の提案では,受託者と同一の議論ということで,権利も基本的には受託者と同じ方向の権利ということになっておりまして,この点について何か御意見があれば,是非教えていただきたいという点がございますが,いかがでしょうか。

● 委任の規定を準用しているというのは,受託者そのものではないので,やはり信託法のいろいろな権利義務が当然に及んでくるわけではないと。それで,一番近いのは委任だろうということで,委任になっているのですかね。

● だと思いますが。

● まあ,単純な委任よりは,やはり受託者に近づけてというような方がそこはいいような気がしますけれども,どうでしょうか。

● ○○幹事がおっしゃったことに関連して申しますと,委任の規定を準用することにしてしまうというのは,ソフトランディングなんですよね,恐らく。

受託者の規定を準用して何かを外すということになりますと,それは通常の管理人には適用されない規定なのだという何か実質的な判断をするということになるわけですが,委任の規定を準用するというのは,民法の委任の条文の解釈によるだけであって,それについては一切触っていないという話になる可能性があるのだと思いますね。

  もう一つ,権限の範囲という問題はまた別個の問題としてもちろんあるわけで,委任の規定を準用したからといって権限の範囲が定まるわけではなくて,それは,その受託者の権限の範囲であるという規定はあったって,別に委任の規定を準用することの妨げになるわけではないと思いますが。

ある意味では議論を先送りするための一つの方法なのかなとは思いますが。

● そういう点もちょっとあるかもしれないですね。

  まあ,もうちょっと検討するということでよろしいですか。

● もう1点,よろしいでしょうか。

  最初に○○委員がおっしゃいましたことですけれども,欠けた場合だけではなくて,困難又は不適切な者がある場合についても認められるといいだろうというようなお話があったかと思いますが,そういう場合に,この注の中で書かせていただいております例えば職務執行停止・代行者選任の仮処分とか,そういうものとの重複ということがあり得るわけですが,それはどちらの方がよいというか,両方あった方がいいのか,何かそこら辺の御意見というか,御感触はあるのでしょうか。

● これは,信託の方のこういう新しい制度を設けると,一般的な制度である職務執行停止の仮処分とか,そういうのが排除される関係にはならないのでしょうね。

● それは,民事保全法がある以上はできるので。

  ただ,民事保全法があるのだから管理人の処分は要らないというような考えもあるでしょうしと。

  やはり,民事保全法だけでは足りないというか,要件がまず違いますので,権利関係に争いがあるとか,保全の必要性というあたりは違ってまいりますので。

まあ,必要性あたりは全くないのに信託財産管理人を選ぶということはないと思うのですけれども,要件が多少違うので,別に両方あっても問題はないということもあり得ると思いますが,何か,いい点,悪い点というか,御指摘があれば後日でも結構でございますので,また教えていただければというふうに思います。

● そうですね。実務的な感覚からの御意見をまた後でいただければと思います。

  それでは,この点についてはこれでよろしいでしょうか。

  それでは,ここで休憩にいたしましょう。

            (休     憩)

● それでは,再開したいと思います。

  最初に,先ほど来議論されていた何点かにつきまして,○○幹事の方から補足の説明があります。

● 先ほど御質問がありました,○○幹事,それから○○幹事の関係で,事務局で休憩時間中に検討したことについて御回答したいと思います。

  一つは,○○幹事がおっしゃったのは,私,先ほど十分に理解できなくて失礼いたしましたが,欠けた場合以外の,例えば職務を執行することが困難な事態について,例えば辞任する事情があるとか,解任する事情というときについて,現行であれば,第26条第1項で「已ムコトヲ得サル事由」がある場合に当たるとして,受託者が第三者を選んできて,しかし,その後,選任監督責任を負うはずであると。

しかし,今回の我々の提案であると,受託者は,こういうときに信託財産管理人の選任請求をすれば,あとは裁判所が選任監督の責任をとってくれるので,責任を免れるということになるのではないかと。

そうするとバランスを欠くのではないかという御趣旨だということで認識いたしまして,ここまでの私が申し上げたところは事務局と同じ考えでございまして,やはり受託者が選任請求をすれば,受託者はその後責任を免れるということになると考えております。

  ○○幹事の御質問の趣旨は,それが果たしてどういう根拠に基づくのかというところかと思うのですが,実はそこは,検討しましたが,なかなか名案が見つからないというところでございまして,果たして,第26条の規律による場合と,この信託財産管理人の選任請求による場合とで受託者の責任が違っていいのか,違ったとしてそれがどのような根拠に基づくのかというところにつきましては,もう少々時間をいただいて検討させていただければと思いますが,以上のようなことでよろしゅうございますでしょうか。

それから,先ほど○○幹事,それから○○幹事もちょっと関係してお尋ねがありました信託財産管理人の権限の関係でございますが,私は先ほどちょっと不正確なことを申しましたけれども,信託財産管理人の権限というのは,この提案にございますように,前受託者と同一の権限を有するということが原則でございますので,同じものを引っ張ってくるということになります。

ただ,それが,我々の提案では,103条を超えるようなものについては行使に制約がかかっている,裁判所の許可というような条件がかかっていると。

103条の範囲内であれば同じように権限行使していいわけですが,そういうものについては裁判所の許可を条件とする意味において,権限はあるけれども,その行使の仕方に制約がかかっているというような理解の仕方をしているということで説明し直させていただきたいと思います。よろしゅうございますでしょうか。

● よろしいですか。

  ○○幹事,もし何かあれば。

● それで権限はよろしいのですが,その権限をフルに使って前と同じ状態を保つというのが信託財産管理人の義務なのか,それとも,103条に定められた権限を超える場合には裁判所の許可を得なければならないというところに端的にあらわれているように,基本的には保存行為だけを行って,どうしても必要な場合に103条を超えた行為を行うというのが行為規範なのかという点については,いかがでしょうか。

  ○○幹事は,それに対して,広く,前と同じような行為をさせるということが大切なのではないかというお立場を示されたわけですが。

● 御質問の点につきましては,恐らく,権限がある以上は義務もあるというふうな考えに基づきまして,やはり前の受託者と同じような権限を行使すべき義務もあるのではないかという気がいたしております。

したがいまして,103条を超えるようなものをしなければならないということになりましたときは,裁判所の許可を得るべき義務も管理人は負うというふうに考えるところでございます。

● なかなか難しいところですよね。

基本的な考え方は,今,○○幹事の説明にあったとおりだと思います。

  それで,この臨時的な,というのでしょうか,次の受託者が選ばれるまでの信託財産管理人の時期というのでしょうか,どのぐらいの間こういう臨時的な状態なのかとか,その間に従来と同じような信託行為ができないと--信託行為というか,受託者の行為ができないと信託財産に対して損害を与える可能性もあるし,そういう意味で基本的に前受託者と同じ権限をという考え方だというふうに理解しますけれども。

● 一見すると重そうですが,利害関係人として嫌だったら,新受託者の選任請求をすればよいという気もいたします。そうすれば責任は免れます。

● まだ幾つか御意見があるかもしれませんけれども,一応,問題点といいますか,考え方はある程度明らかになったと思いますので,次のテーマの方に移ってよろしいでしょうか。

● では,続きまして,第43の「受託者が複数の信託に関する規律について」,いわゆる共同受託者といわれている問題でございますが,そちらの説明に移らせていただきます。

現行法で言いますと24条,25条に当たるところでございます。少々複雑ですので,ちょっとお時間をいただいて御説明させていただきます。

  信託におきましては,1個の信託行為により複数の者が受託者として選任されることがあるわけですが,現行法では,受託者が複数の信託に関しましては,ただいま申しました2個の条文だけがあるわけでして,信託財産の帰属,事務処理の方法,受託者の責任について規定を置いているのみであって,十分であるとは言い難いところでございます。

そこで,受託者が複数の信託に関する規律の整備を比較的詳細に提案するものでございます。

まず,1でございますが,これは,共同受託の財産関係について検討しております。

  信託財産は,受託者に所有権が移転しますが,受託者は信託財産を自由に処分できないなど,信託目的に拘束された財産であると言うことができるかと思います。

そして,受託者は信託財産に対して固有の利益を有していないと考えられますので,各受託者は信託財産に対して持分を有しておらず,その結果,各受託者は信託財産の分割請求をすることもできず,持分の譲渡もできないなど,共同受託者による信託財産の所有形態は,民法上の共有とは異なる性格を有すると考えられます。

  このような内実を含む概念として,信託法上,「合有」という概念を用いることには意味があると考えられますことから,共同受託者による信託財産の所有形態は,今のような内実を含むものということで合有であるとして,現行法の規律を維持するというふうに考えております。

  なお,このように共同受託者による信託財産の所有形態を合有と考えましたときには,信託行為の定めにより共同受託者間で職務分掌の定めがある場合についてどのように考えるべきかが問題となりますが,ここでは,資料の23ページ以下に記載いたしましたような理由から,信託行為の定めにより,受託者間で職務分掌がされている場合においても,やはり信託財産は合有となる,名義を有する受託者と,名義を有しない受託者との合有になると考えるものでございます。

  次に,2でございますけれども,これは,共同受託者による信託事務処理の方法について検討したものでございます。

  共同受託者の信託事務処理に関しましては,一つは,事務処理に必要な意思決定をだれがどのように行うかという対内的な職務執行の問題と,決定された事項の執行をだれがどのように行うかという対外的な職務執行の問題について,それぞれ分けて検討する必要があると思われるところでございます。

  現行法のもとでは,この点につきまして,いずれも信託行為に別段の定めがない限り全員一致という規律を設けているわけですが,このような規律に対しましては,効率的な事務処理の観点から妥当ではないということなどの批判がされておりますので,このような批判を踏まえまして,信託事務処理について規律の合理化を検討したものでございます。

  まず,2の(1)でございますが,これは,共同受託者による原則的な信託事務処理の在り方に関して明らかにしております。

  まず,アの(ア)でございますが,これは,信託違反行為の防止を図りつつ効率的な信託事務処理を実現するという観点から,信託事務の処理は,信託行為に別段の定めがない限り,共同受託者の過半数で決定するというふうにしております。

  また,(ア)のただし書では,不在等の一定の事情がある場合には,当該事情の存する限りにおいて,信託事務の処理は残りの受託者の過半数で決定することができるとしております。

  次に,このように共同受託者の過半数で決定された事項について,対外的な執行行為が必要とされる場合に,だれがどのように執行すべきかという点でございますが,これは,25ページの(イ)に書いてございますとおり,信託行為の定めにより複数の受託者が選任されている場合には,各受託者は相互に代理権を授与されているものとみなすことによって,受託者は,決定された事項について,それぞれ単独で対外的な執行をすることができるということにしております。

したがって,対外的な執行行為をする受託者は,一つは,意思決定をしたすべての共同受託者の名において取引をするという方法とか,第2に,受託者の代表である旨を明示して取引をする,このような方法で執行行為をすることによりまして,信託財産に効果が帰属するだけではなくて,各受託者の固有財産にもその効果が帰属することになります。

  他方で,対外的な職務執行を行う受託者が,第三者との間で自己の名のみにおいて取引をした場合には,当該行為の効果は信託財産には帰属しますが,他の受託者の固有財産には帰属しないということになると考えております。この点は後ほどまた御説明をするところでございます。

  なお,以上は,過半数の賛成に基づいて行われた職務執行の効果でございますが,これに対し,過半数の賛成がないにもかかわらずなされた信託事務処理の効果については,19ページのアステリスク1のところに記載いたしましたとおり,受託者の権限外行為と同様に考える甲案と,共同代表取締役が単独で行為をなした場合と同様に,原則として無効であるが善意無過失の相手方は保護されるというように考える乙案とが考えられるところでございます。

  続きまして,イの保存行為でございますが,保存行為につきましては,信託行為に別段の定めがない場合にも各受託者が単独で行うことができることとしております。

これは,保存行為につきましては,その性質上迅速な処理を必要とするものが多く,過半数で行わなければならないとすることは適当でないと考えられますし,単独で保存行為を行うことができるとしても,受益者の利益にこそなれ,受益者を害するおそれは少ないと考えられるからでございます。

  続きまして,(2)でございますけれども,これは信託行為に受託者間の職務分掌の定めがある場合について検討するものでございます。

  現行の信託実務におきましても受託者間で職務分掌の定めをされることがあると伺っておりますが,このような職務分掌の定めがある場合につきましては,委託者は,各受託者が分掌された職務の限度において独立して事務を処理することを期待していると考えられます。

したがいまして,信託行為の定めにより受託者間で職務分掌をすることができること,及び,各受託者が分掌された職務の限度において単独で意思決定をし,かつ対外的な職務執行を行うことができることということを,この(2)において明らかにしております。

  続きまして,3は,共同受託者の責任について検討したものでございます。

  まず,(1)でございますが,これは受益者に対する責任でございまして,大別いたしまして,アの受益債権に関する責任と,イの信託違反行為をした場合の損失てん補責任とが考えられます。

  このうち,アの受益債権に対する受託者の責任でございますが,この受益債権に対する責任というのは,信託財産のみをもって履行の責めを負うとする内容の物的有限責任であるということは前回御説明いたしましたところでして,このことは共同受託者の場合にも同様に当てはまると考えられるところでございます。

そこで,アでは,受託者が複数の場合においても,受託者が受益者に対して負う受益債権についての責任が物的有限責任であることを確認的に明らかにしております。

  次に,イでございますが,これは,共同受託者の全部又は一部が信託違反行為をした場合における他の受託者の責任について検討するものでございます。

受託者の損失てん補責任等は,信託違反行為について故意又は過失のある受託者に対して信託財産に生じた損失等をてん補させるものですので,これらの責任を負う受託者は当該違反行為に関与した受託者に限ることが相当であって,信託違反行為に全く関与していない受託者にまで連帯して責任を負わせることは相当ではないと考えられます。

そこで,イにおきましては,信託違反行為に関与した受託者,具体的には意思決定又は対外的な執行行為をした受託者が連帯責任を負うということを明らかにしております。

  次に,(2)でございますが,これは,受益者以外の第三者に対する共同受託者の責任についてのものでございます。

  共同受託者の第三者に対する責任には,一つは信託財産を引当てにする責任というものと,もう一つは固有財産を引当てにする責任とが考えられるところでございます。

  まず,信託財産を引当てとする責任の方でございますが,信託財産は共同受託者の合有となりますので,受託者が信託事務の処理をすることによって信託財産に属することとなった債務は,信託財産を引当てにする責任という限度で共同受託者の合同債務となるものと考えられます。

そして,そのことは,受託者が共同して信託事務を処理した場合であるか,あるいは信託行為に職務分掌の定めがあり各受託者が単独で事務を処理した場合であるかを問わないと考えられます。

したがいまして,例えば,信託行為に職務分掌の定めがある場合におきまして,受託者Aの信託事務処理によって生じた信託財産に属する債務に係る債権を有する債権者,信託債権者は,受託者Bの単独名義となっている信託財産にも執行していくことができるというふうに考えられます。

これに対しまして,第三者に対して共同受託者が固有財産で負う責任につきましては,これから述べるような方向で考えております。

  まず,複数の受託者が共同して信託事務を決定している場合におきましては,各受託者は相互に代理権を授与されているとみなされますので,対外的な職務執行を自らするか否かにかかわらず,意思決定をした受託者は取引相手方に対して責任を負うものと考えております。

ただし,過半数の意思決定に反対した受託者も固有財産で責任を負うのかが問題となるところではございまして,この点につきましては,20ページのアステリスク2のところに記載しておりますが,反対者は対外的な責任を負わないとする考え方と,対外的責任は負うものとし,あとは内部的な損失分担の問題で処理するという考え方とがあり得るところでございます。

  次に,各受託者が保存行為を行った場合におきましては,保存行為を行う限度において各受託者は相互に代理権を授与されているものとみなされますので,保存行為を実際に行ったか否かにかかわらず,各受託者は保存行為の相手方に対して責任を負うものと考えております。

これに対しまして,信託行為に職務分掌の定めがある場合におきましては,各受託者は分掌された職務の限度において独立して事務を処理することになりますので,当該職務を行った受託者のみが第三者に対して固有財産で責任を負うことになると考えております。

  要するに,1番目と2番目の場合におきましては,すなわち,意思決定が過半数で行われた場合と,それから,保存行為の場合には,各受託者全員が固有財産をもって責任を負うけれども,職務分掌の定めがある場合には,職務を行った受託者のみが固有財産をもって責任を負うという違いが出てくるわけでございまして,このような帰結につきましては,21ページのアステリスク3のところで具体例をA・B・Cで挙げておりますけれども,そこに示されているところを後で御覧いただければ,提案の内容が具体的にお分かりいただけるかと思います。

  次に,4でございますが,これは,共同受託における受託者間の信託事務処理の委託について検討したものでございます。

ここでは,各受託者は,信託行為に別段の定めがない限り,他の受託者に対して信託事務処理の委託をすることはできないとしております。

信託行為で複数の者を受託者に指名した委託者の意思といたしましては,複数の受託者が関与することによって慎重な意思決定がされることを期待していると考えられますので,それにもかかわらず受託者が他の受託者に対して自由に委託をすることができるというのでは,慎重な意思決定の実現という委託者の合理的意思が害されますので,特に定めのない限り,委託できないという規律を設けているところでございます。

  それから,5でございますけれども,これは,共同受託の場合における受託者に対する意思表示の効力について検討したものでございます。

  受託者に対する意思表示には,一つは受益者の受託者に対する意思表示,(1)でございますが,もう一つは取引相手方などの第三者の受託者に対する意思表示,(2)でございますが,が考えられるところであります。

  まず,(1)につきましては,信託行為で複数の者が受託者に指名されている場合には,受託者間には相互に連絡関係があると考えられることなどを考慮いたしまして,受益者が受託者の一人に対して意思表示をすれば,特にだれかに対して意思表示をしてほしいというような信託行為の定めがない限り,その効果は他の受託者にも及ぶとしております。

  それから,(2)でございますが,第三者は受託者のだれか一人に対して意思表示をすれば,その効果は他の受託者にも及ぶとしております。

  これに対しまして,職務分掌の定めがある場合でございますが,これについては(2)のただし書に書いてあるところでございますけれども,各受託者は独立して職務を執行しておりますので,各受託者は他の受託者がだれとどのような取引をしているかは通常は認識し得ないと考えられるところでございます。

そうだとしますと,これらの場合におきましては,取引の相手方は実際に取引をした受託者に対して意思表示をしなければ,その意思表示の効果は及ばないものと考えることが相当であると考えられます。

そこで,ただし書におきましては,信託行為の定めにより職務分掌がされている場合におきましては,第三者は取引をした受託者に対して意思表示をしなければならないということを明らかにしております。

  最後に,6でございますが,これは,共同受託者の一部について任務が終了した場合には,残存者を受託者として存続させても,当事者の意思に反しない場合にはその方が便宜なので,これを認めようとしたと,いわゆる残存者の原則といわれる考え方を敷えんしたものでございまして,信託行為により複数の者が受託者として指名された場合において,当該者の一部が信託の引受けを拒絶し,又は引受けをすることができなかったときには,信託財産は原則として引受けを承諾した他の受託者に帰属するとしております。

共同受託にする目的の一つは,だれか一人が欠けても,それで信託を終了しないようにさせるということにもあるということを考慮して,このような規律を設けたということでございます。

  以上で説明を終わります。

● それでは,この複数の受託者について,御意見をいただければと思いますが,いかがでしょうか。 

  現行の規定と比べると,先ほど説明がありましたように,この職務分掌の場合については積極的に条文で明確にするということで,現在でも合意である程度はやっていたかもしれませんけれども,合意だけですとちょっと不安定ですので,そういう意味で規定を設けるということでございます。

● 今回の御提案につきましては,例えば財産の分属型の共同受託,例えば年金信託なんかによくあるのですけれども,そういったものの場合を想定しますと,ある受託者が債務を負担した場合に,それによって別の受託者が単独名義で所有している信託財産にかかっていくと,そういうところでは若干違和感があるなという感じがいたしますが,そこについても,例えば財産を限定する特約をつけるとか,そういうことで十分に対応できるのではないかと思いますので,基本的にこれはこれでいいのかなというふうに考えております。

  そのほかの部分につきましては,基本的にいろいろと実務上の御配慮をいただいておりまして,それぞれについて実務がワークするような形で御検討いただいているように思いますので,賛成したいと考えております。

● 非常に細かいことで恐縮なのですが,共同受託者の責任のところが結構難しくて,私も十分に理解できていないところがあるのですが,例えば,共同受託者のうちの一人で,ある財産の名義人であると,しかしながら他に共同受託者がいて,その人は別の財産の名義人になっているというときに,どのような形で債務名義をとって,どのような形で執行していくのかというのが,いま一歩,私,イメージがわかない。

実体的な責任関係はこうなるというのはまだ分かるのですけれども,ちょっとイメージがわかないところがあるのですが,もしその御検討あられましたら,お教えいただければと思うのですが。

● 執行の仕方については,原則としては,先ほどの特に信託財産に対して執行していくという場合につきましては,これは合同ということで,合有債務ということになりますので,固有必要的共同訴訟であって,受託者全員に対して訴えを起こして,債務名義をとって,それに基づいて信託財産に執行していくというやり方が一つ考えられるかと思います。

  あと,組合の規律についての説明を参考にいたしますと,もう一つの方法,これも二つありますが,一つは,例えば各受託者に対してそれぞれ債務名義をとって,例えば3人なら3人分債務名義をとって,それを三つまとめて信託財産に執行していくというのが一つあるようでございます。

もう一つの考え方は,不可分債務と同じように考えまして,ある一人の受託者に対して,信託財産全部にかかっていけるというような債務名義を取得することができるという考え方もあると聞いております。

 この点につきましては,むしろ,どのような執行をしていいのかというところ,特に,受託者が全員の名前を表示して,それによって信託財産と各受託者の固有財産全部に執行していけるという場合におきまして,信託財産に対して果たしてどのように執行していけるのか,それから,各受託者の有する固有財産についてどのように執行していけるのかという執行の方法について,もう少し我々も検討したいと思っておりますが,何かお知恵をいただければと考えているところでございます。

● いかがでしょうか。

● 何か私に考えがあってということではないのですが,ある財産の名義上の帰属人が,自己の名前である債務を負ったということになったときに,固有財産に対して執行していくときの債務名義と,信託財産に対して執行していくときの債務名義はかなり違ったものを用意しなければいけないというのは,何となくおかしいんじゃないかという感じがすると。

そこら辺をうまく処理できるような形で実体法的にも仕組まなければいけないのかなという気がしたものですから,もし検討の結果があられましたらというつもりで伺わせていただいた次第です。

別に何か考えが私にあったわけではございません。済みません。

● 各受託者の固有財産に行く限度であれば,それは恐らくその受託者に対してだけ債務名義をとればいいと思うのですが,もしも,最初に言いましたように,信託財産に対してかかっていくのは固有必要的共同訴訟であるということになりますと,今,○○幹事がおっしゃったように債務名義のとり方が違ってくるというおそれはありますので,もし同じにするのだとすると,不可分債務だとか,あるいは,債務名義を複数とって合わせて執行していくというようなやり方の方が手間は省けるという気はいたしますが。

● この問題については余り考えていないのですけれども,組合の話を少しここに使うことができるならば,大まかには次のように考えます。

  ○○幹事のおっしゃったのと大体重なるのですけれども,一つ違う点は,訴訟と執行を分けて考える必要があるのだろうと。

執行の局面で複数受託者の信託財産に対して執行するときには,複数受託者全員に対する,それこそ債務者としている債務名義が必要だと。それはある種の固有必要的な執行になるのだろうと思います。

  しかし,その執行をするために必要な債務名義をそろえるために訴訟を--まあ,ほかの方法でも債務名義はとれるのかもしれませんが,確定判決で債務名義を取得するところを考えた場合に,その訴訟が要するに固有必要的共同訴訟なのかどうかというところは考え方が分かれるのだろうと思います。

共同で起きたときには類似必要的共同訴訟という考え方もあるのかもしれませんが,それぞれ別々に,訴訟は複数の受託者一人ずつに対しても起こせるという考え方もあろうかと思います。

  そして,○○幹事の話につなげるならば,固有財産をねらう場合も,信託財産をねらう場合も同じ債務名義になって,その債務名義の中を見て信託の債務であるということが明らかであれば,信託財産に対しても,そろえばできるけれども,信託財産であるということがその債務名義の中で明らかにならなければ--これは複数であることの問題ではなくて,一般の問題ですけれども--信託財産には強制執行できないと。

しかし,固有財産に対しては,判決の理由のところで,いかなる債務であっても固有財産には強制執行できると,そういうことになるかなと思います。

  二つに分けるというところを申し上げたいと思いまして,それから,分けた上で判決をとるとり方が二つ考え方があろうかと思うのですが,どちらが望ましいのか,あるいは組合とそろえるとすると組合がどうなのかというのはまだちょっとよく分かりません。

● なかなか難しい問題ですね。組合自身についても余りはっきりしていないところがあるのでね。

● 私,非常にジェネラルな質問をしてしまったものですから,いろいろ難しいことになってしまっているような気がするのですが,私がひどく気になっているのは1点だけで,共同受託者の中にAという人がいて,Aが信託財産のある種のものについて自己名義で登記をしていると。

しかしながら,実体法的には,A,B,C3人が共同受託者だったならば,そのA,B,Cの合有であるというのがございますね。

そして,Aは受託者として第三者と取引をして,債権者Gという者が登場したと。GはAに対して支払えという訴訟を起こして,判決をとったわけなのですが,そのときに,A名義になっている財産を差し押さえていったら,いや,これは信託財産だというふうに言われたと。

いや,でもA名義でしょう,私,Aに対する債務名義をとっているんですよというふうに言ったときに,なお,これは合有なんだという実体法的な効果を差押債権者に対して言っていけるだろうかどうなんだろうかという話で,結局,A名義の財産を差し押さえるときに必要な債務名義は,A,B,C3人を名あて人にした債務名義なのか,それとも,Aを名あて人にした債務名義で足りるのかというのが,ちょっと急には分からなかったものですから--急にというか,時間をかけても分からないかもしれませんが--お聞きした次第だったのです。問題を特定いたしませんで申し訳ございませんでした。

● 信託債権者,信託に対してそもそも持っている債権者がどういう形で判決を取得するかという問題と,それから,今,差押債権者のことを言われましたか。

● いえ,信託債権者が債務名義をとって差押えをしたという事例です。

● 不動産であることを考えると,そのとき個人の名義で登記されていても,やはり信託の登記がされているということなんでしょうね。

だから,そういう形で信託財産であることが分かる。

だけど,ほかに受託者がいるかどうかというのは登記で分かるのかな。共同受託者の一人であるかどうかというのは。

● 受託者も信託原簿の方には書かれるはずですので,信託原簿を見れば……。

● とにかく,一番最初の出発点は,○○幹事が言われたことが比較的穏当な考え方だと思いますけれども,債務名義をとるときの名あて人の問題と,執行のところを一応分けて,その判決をとるところは,これは○○幹事の問題とつなげると,受託者個人の責任も一方で発生しているときに,同じ判決でもって両方行けないとおかしいような気がするのですね。

一方で信託財産の方にかかっていこうという場合と,受託者個人の責任を追及する場合で債務名義をそれぞれ別にとってこいというのは,ちょっとやはり合理的ではないので,そうすると,どっちにも行けるという形の判決あるいは訴訟がなされるべきだと。

あと,財産に行くときにはまた別な考慮で考えればいいというのが,大筋としてはよさそうな気がしますけれどね。

  何かございますか。

● 実体的には,先ほど議論が出ておりますように,もちろん権限の範囲で顕名をちゃんとした場合ですが,信託財産にも固有財産にも効果が及んでいるというのが前提といたしまして,ではどういうふうに判決をとって執行していくかということにつきまして,確かに債権者が債務名義を2種類とらなければいけないというのはいかんせん負担が大きいということになると,恐らく,一つの考え方は,A,B,Cがいれば,A,B,C3人に対する必要的共同訴訟としてその債務名義をとって,信託財産にも行けるし,それに基づいて固有財産にも行けるとするか,あるいは不可分債務のように考えて,例えばAならAに対する債務名義をとれば,A個人の固有財産にも行けるし,しかし信託財産にもそれをもって不可分的に行けるというふうにするか,どちらかでいかないといけないかなという気はしております。

ただ,どっちがいいのかとか,あるいはこの考え方自体が正しいのかというところは,ちょっとまだ十分検討したわけではございませんので,もし御指摘があれば,いただければ。

● 今,最後に○○幹事がおっしゃったのには,もう一つ考え方があると思うのですが。

訴訟は複数の受託者一人一人に対して起こせると。それで,その債務名義一つだけならば,固有財産にしか強制執行できないと。

しかし,全員に対する債務名義がそろえば,そして,信託が原因になっているといいますか,信託の取引だということが明らかな債務名義が複数の受託者全員そろえば,そこで初めて信託財産に対して強制執行することができると。

ですから,不可分債務と言わない第3の解決があるのではないかなと。私は,それが適切な解決ではないかなと思いますが,しかし十分には自信がありませんので,三つ目の選択肢としてあり得るということだけ,発言をさせていただきたいと思います。

  それで,今のことと関連するのですが,一つ別なことなのですけれども,○○幹事のおっしゃったことについては,私,答えを持っていないのですけれども,正にそれに直接関連するのですが,第43の2の(2)の職務分掌がなされているときにも,これは1の合有というのは維持されていると思うのです。

そうすると,その職務分掌のときの取引の相手方,債権者が差押えをしようとするときに,財産の名義の問題が最後に出てくるのかもしれませんが,私としてスペシファイしたいのは,そのときにも,やはり基本的には複数の受託者全員に対する債務名義がそろわないと信託財産に対して強制執行できないということになるように思うのですが,それは実質的にうまく動くのでしょうか。

職務分掌の一番極端なものですと,22ページの④の例ですけれども,不動産と債権と有価証券を分けているときに,不動産に関する取引の相手方というのは,受託者はその職務分掌している人のみと見ていることもあり得るわけですね。

不動産の場合には信託原簿を見ればいいのかもしれませんが,有価証券とか債権になりますと,何かその受託者さえつかまえて信託財産に対して強制執行しようというふうに考えるのがどうも自然かなと思うのですが,そこが,受託者全員に対する債務名義をそろえないといけないということになるならば,やや,私は違和感が残るように思います。

● 今のも,しかし,職務分掌でもって,だれか単独の受託者の名義でもって登記されていても,なお合有だということを言ってしまうと,同じことになってしまうのですね。同じというか,○○幹事の最初の原則どおり,3人の。

● この書き方ですと,1が残りそうですので,ですから,残すのが不適切な場合があるのではないかなと。

● 残さないようにするとすると,どうするんですかね。合有のところをまた外すのですか。

● いや,そこが……。

● なかなか難しいですね。

  何か御意見があれば。

  ○○委員のは受託者の側からなので,相手方の債権者の立場からとはちょっと違うので,御意見が特にこれについてはないかもしれないけれども。

  何かありますか。

● 先ほど○○幹事がおっしゃったのは,債務名義を集めて執行するという方法ですが,今のお話ですと,その方法はしかし職務分掌のときにはいささか現実味がないということだとすると,○○幹事御自身の推薦パターンというのは,やはりだれか一人に集めてとったら不可分債務という考え方がいいということでございましょうか。

● 今の視点からの簡明な解決は,その財産は職務分掌を受けたその受託者の信託財産という解決が簡明だと思うのですね。しかし,それは多分,いろいろなところに派生するのだろうと思うので,ちょっと自信を持ってはそれを推奨の解決と申し上げられない。

● おっしゃる趣旨は,それは合有ではなくて。

● そうですね。

● 単独処理になってしまうと。

  そこは,やはり合有というやり方にしておりますが……。

● だから,合有であっても,合有だという主張ができるのかというのは分からないのですが……,あ,やめましょう。動産や債権ですとできますからね。

  だから,自分に対する債務名義で自分名義の財産を差し押さえられているときに,信託債権者ではない人に対してこれは信託財産であると言うのは,異議事由,抗弁事由になると思うのですけれども,そして,それに対して,いや,私は信託事務の執行に関連する債権を持っているのであるというふうに相手方が言ったときに,なお,それはそうなんだが,形式的には合有なんだから,債務名義がこれでは足りないという更なる抗弁が本当に認められるのが妥当なのかというのがちょっと分からなくて,そんなのは不要なんじゃないかなと思うのですが。

それをまた実体法上どういうふうに仕組むかと言われますと,何か名案があって発言しているわけではありませんので,申し訳ない次第なのですが。

● 単独で執行できるというふうにしてしまえばいいのでしょう。

● まあ,そうなんですが。

● 不可分債権と。先ほどの説明によると。

● 第43の2の(1)のアの「保存行為以外の信託事務」のただし書のところですね,「不在,病気その他のやむを得ない事情があるために,信託事務の処理に関与することが困難な受託者があるときは」というところの特則について,実務家の観点から意見と質問があるのですけれども。

 これは19ページの下の甲案,乙案の話にも及ぶことなのですが,受託者の立場からについては○○委員からお話がありましたけれども,片や取引者等の観点から,この例外があった場合に,実際にその代理権が本当にあるのかどうかということを確認する必要が出てくると思います。

そうしたときに,このただし書の「困難な受託者があるときは」ということのメルクマールというのが私にはちょっと不明確だなということがあります。

不在,病気ということであったとしても,何らかの意思決定ができるとか,電話をかけるとか,そういった場合には,もちろん内容によっては処理することができる場合もありますし,外部から見て実際に受託が困難かどうかということは非常に見えにくいということがあると思います。

  そもそも,なぜこのただし書の除外規定をこういう形で置いたのか,ここの多数決のルールを,こういう,実際にできない,困難であるということとしたのはどういう理由なのかということを次に質問したいわけですけれども,考えるに,意思決定ですから,単純に意思を表示することができることを要件とすればよろしいわけだと思いますけれども,ここで,そうではなくて,いわゆる受託処理能力ということをメルクマールにしたのはどういうことなのかと。

考えてみるに,ある意味,そういう人は信託事務処理に要する意思決定に責任を持てないわけだから,一種特別利害関係人だということで配慮するということなのか,又は,そもそもそういうことに対して不適格なのかということで,そういう理屈づけはあるかもしれませんけれども,いずれにしても,この(イ)のところで,何らかの意思決定ができるのであれば,単独で他の受託者を代理することができるのであれば,取引としては,その意思決定の内容が正しいのであれば,別にその当該受託者が処理能力があるかどうかということは無関係であるということも考え得ると思います。

そうしたときに,どうしてこういうメルクマールを置いたのかということがちょっと分からなくなったわけです。

  なぜこのような疑問かといいますと,もとに戻りますけれども,この甲案,乙案のところで,特に甲案で「重大な過失により知らなかったとき」ということがあるわけですけれども,取引相手方としては,例えば共同受託者の一部だけの者が来て,この者は困難だから,我々の決定で過半数とったから取引してくださいと言われたときに,重大な過失の内容は幾らでもありますけれども,一応の調査等をしなければならない場合もあると思います。

そうしたときに,この困難な状態というのが一体どうなのかということを検索しなければいけないこともあると思いまして,そこで,実務上,そのメルクマールが不明確であれば取引に差し障るのではないかなというふうに思っております。

  あと,非常に瑣末な話になるかもしれませんが,実務的には重要だと思うのですけれども,そうしたときに,今度は登記面ですけれども,実際に不動産を処理するときに,登記としては,一部を除いて過半数であるということを証明する書類を出す必要が出てくるのかどうかと。

もしそういう書類が必要だということになると,今度は登記実務からすると非常に困難な書類をつくらざるを得ないという,そういう状況もありますので,そこら辺をどう手続上乗せていくのかということが,検討すべき論点なのかなというふうに思います。

● なぜ「困難な受託者」を入れたかということでございますが,これは,「信託事務の処理に関与することが困難」ということですから,意思決定ができれば,困難なこの事情に当たりませんので,意思決定もできないような事情があるときにはということでございますけれども,そういう前提で,何か更に,もしもそれでも解釈上不明確だと言われれば……。しかし,このぐらいの条文を設けることはあるのではないかと思いますが,意思決定には関与できれば,この場合には当たらないという趣旨でございます。

  登記実務上の話はちょっとよく分かりませんが,何かその書面が要るということはちょっと想定し難いのですが。要するに,甲案であれ,乙案であれ,有効に契約が成立していれば,それに基づいて登記を請求するだけの話でありまして,共同受託者の過半数の意思決定があったかどうかというようなことを,あるいは困難な受託者がいたので残りの過半数でやったかというようなことを何か書面で証明しないと移転登記ができないとか,そういうことはちょっと……。登記実務には詳しくないのですが,そういうことは普通はないのではないかと思いますけれども。

  もしもそれで問題が生ずれば,訴訟で移転登記の紛争になるというだけでございまして,単に普通の移転登記請求をするだけではないかなという気がいたしますけれども。共同申請するか,あるいは判決による申請をするということになると思いますが。

● 何かございますか。

● 私も詳しくは調べていないのですけれども,これで信託財産が売却されたような場合は,受託者が登記義務者となって,買主の方が登記権利者となって共同申請ということになるのですけれども,登記簿上,受託者が仮に3人登記されていれば,その3人全員が登記義務者として申請しなければなりませんので,そのうちの二人しか申請人になっていないと,登記はやはり難しいと思うので,その3人のうちの一人欠けた人については代位をしてやるとか。代位であれば,代位原因があることを証明する書類なり何なりをつけていただかないと,登記としては受けられないと思いますので,こういう契約が成立したからそれでいいということではないのではないかなというふうに認識しておりますが。

● ただ,2の(1)のアの(イ)のところで,実体法上は少なくとも代理することができるというふうになっているわけですけれども,その代理権が当然実体法上あるということをもって3人のうち二人しか登記していないという場合でも,やはり登記実務上は3人の共同申請であるということですか。

● 実体法上代理権があるということが明らかであって,その代理権があるのであれば,その代理権があるということを証明するものをつけていただかないと,登記の方では,本当に代理権があってやっているのかというのが分からないので。

● そこで代理権があるかどうかを確認する場合に,過半数で決定しているかどうかということの証明が必要になってくるということだと思うのですけれども,そこで私の問題提起というのは,やむを得ない事情のあった場合にその者を外したといったときに,その証明というのはなかなか難しいのではないかという,そういうお話です。

● 分かりました。もう少し検討させていただければと思います。

  便乗するようであれですが,甲案,乙案につきましてはどちらがいいかとか,何かお考えはございますでしょうか。

● ちょっとこれは組合せがございまして,実務上の観点から,余り過大なものはよろしくないなというのがございますけれども,少なくとも過失要件というのは外してほしいなというのがございます。

● 甲案の場合ですね。

  これは,31条と同じような規律を設けているわけで,しかも重過失ですから,過失要件というか,悪意に準ずるようなものということですが,これでも問題がありますか。

● 必ずしもそういうわけではございませんけれども,そもそも困難な状態というのは一体どうなのかということが分からないうちに,では一体どういう注意義務というのが出てくるのかということが分からなかったものですので,ちょっと御質問したわけでございます。

● ほかに,いかがでしょうか。

● この共同受託者の責任の中で,受益者に対する責任のところで確認をしておきたいのですけれども。

  共同受託者のところで--今日は,もう当たり前ということになっていて,余りそこは触れられていないと思いますけれども,従来,共同受託者については,合手的行動の義務というのでしたっけ,とにかく全員一致でというので,相互監視というか,間違ったことをしないようにという極めて消極的な態度がとられていたのが,今回はそうじゃないですよということですよね。

まず過半数ルールというのをつくり,それは分掌のない場合であって,分掌がある場合には,それぞれのところでちゃんと一人ずつでやれますよという形で,信託財産の管理運用をやりやすいようにという方に一歩を踏み出す,あるいは二歩も三歩も踏み出すということになると,共同受託者の間の責任の関係がどうなるのだろうかという話で,やはりバランスのとり方というのがあるような気がするのですけれども。

  ここで受益債権についての責任の方はいいのですけれども,後の方の損失てん補責任のところで,これは,まず二つ確認なのですが,分掌してある場合は,実際には,分掌してあるので,相互監視なんていうことは難しいと思うのですね。

だから,これは本当に机上の空論なのかもしれませんけれども,しかし理屈の上では何らかの監視義務というのはやはりあるんだよということなのかどうか。

  二つ目は,過半数ルールのところで反対すれば,もう責任はないような感じで読めるのですけれども,しかし,明らかに--もちろん反対もするけれども,明らかにこれは多数派が信託違反行為だという場合には,もちろんそれ以上のアクションに出る義務はあるのだと。

その義務に出ないで反対だけしておきましたよというので責任を免れることはない。

これは善管注意義務かどこか別のところで書いてあったかもしれないのですけれども,ちょっと確認をしておきたいのですが。

● 御質問の趣旨について十分に理解できているかどうか分かりませんが,お答えします。

  まず,職務分掌があった場合でございますけれども,その場合には,分掌された職務の限度で独立して職務を執行することになりますので,ある受託者による職務執行が信託違反行為とされた場合については,当該受託者のみが責任を負うことになるのではないかというふうに考えております。

それから,意思決定に反対した者が損失てん補責任を負うかどうかというところでございますけれども,損失てん補責任というのは,御承知のとおり,故意過失による場合の責任でございますので,基本的に反対の意思を表示した受託者というのは,それについて特に故意過失がないと評価されるのが普通ではないかと。

特に明々白々な違反行為について,認識していながら放置していたというようなときは,特段の事情があって責任を負うということもあり得ると思うのですが,原則として,意思決定に反対していれば過失がないというところで,こちらの損失てん補責任の方は切れるのではないかという気がしております。

過失があるという理由では切れないというのは第三者に対する債務の方でして,こっちの方は悩ましいところでございますが,損失てん補責任は,意思決定に反対していれば責任がないという結論を導き出しやすいのではないかという気がしております。

● そういう普通のケースと,今おっしゃられたように,反対だけではやはりそれでは過失があるよという場合はあり得るということですね。

● 特段の事情があれば,あり得ると思います。

● だから,同じことは前者についても言えますね。分掌してあっても,たまたま私が了知する範囲に入ってきたというわけです,その人がとんでもないことをしていると。

だから共同受託者はやはり放っておけないということは,常識と言えば常識なのですが。

● 職務分掌されておりましても,絶対に責任がないというわけではなくて,やはりそこは,特段の事情があれば,過失があるということで責任を負うということはあると思います。あくまで過失責任の場合についてはそのような構成が可能かと考えております。

● 前に差止めのところも少し議論したと思いますけれども,あれは,ほかの共同受託者に差止めの権利を与えるかどうかというのは今後検討するというふうになっているのでしたっけ。

● 前に問題提起はしましたが,その点は今後なお検討するということで考えております。

● まあ,そういうのもちょっと関係しますね。

  よろしゅうございますか。

● また細かいことなのかもしれないのですが,確認させていただきたいのですが,第三者に対する債務の受託者の責任の在り方のところで,固有財産による責任の負い方が分割責任なのかどうかということでして,こちらの資料は,基本的に分割責任であるということを前提に書かれているのだと思います。

特に資料の26ページの記述などは,そういう前提で3段落目の「なぜなら,」以下などが書かれているのではないかと思うのですけれども,一方で,A,B,C3者の受託者が,A,B,Cの名で意思決定もして,そして対外的に行動して負う債務が分割ということが果たして適切なのかというのはちょっと気になっておりまして,分割債務の原則は,民法上原則といっても,認定は非常に慎重にというふうに言われておりますし,民法上の組合の分割責任ということについても立法論的にはいろいろ議論があるようでございますので,分掌もしていなくてA,B,C3者で意思決定をしているというときに,固有財産の責任の在り方が分割でいいのかどうか,念のために,この時期にもう一度確認させていただきたいのですが。

● この固有財産の責任が分割か連帯かというのは,事務局内でもいろいろ検討はいたしましたけれども,そこは基本的には民法の原則に委ねるということで,ここでも金銭債権だから分割というふうに考えているわけでして,債権の種類によりましては不可分債務になるようなこともあるかと思います。

ただ,どのようなものについて可分で,どのようなものについて不可分になるかというのは,正にそれは,信託法の世界というよりは,民法で共同で債務者になった場合にそれが分割になるのか連帯になるのかというところに合わせて考えていきたいというふうに考えております。

● 金銭債務であっても,受託者として共同で行って債務を負っているというときには,それゆえに一般的に金銭債務で分割債務になるとしても,違う種類ということがあり得るのではないかというふうに,ちょっとそこが疑問に思っているのですけれども,そういう考え方はとらないということですか。

● それは,民法でそういう考え方もあるのであれば,とり得るかと思いますが。

  例えば,何か連帯の意識が当事者間にあったような場合ということですか。

● はい。

● 普通は,金銭債務であれば分割になってしまうと思うのですが,私,どういう金銭債務が連帯債務になるのか,不可分債務になるのかというのは,ちょっと……。不可分的に負った対価としての債務とか……。

● 単純な借入れについて。

● それはなかなか……,やはり分割になってしまうのではないかなという感じで考えておりましたけれども。あくまで全員として表示した場合でございます。そういう場合には,分割でもそれは相手も分かっているので,いいのではないかということで,分割債務になるという民法の原則に従うべきではないかという考え方でございます。

● どこまで民法の原則でどうなるかということも余りはっきりしないところもありますけれども,仮に信託目的で借入れした場合,そのときの受託者の個人の責任がどうなるかですよね。

● おっしゃる趣旨は,こういう共同受託の場合については,民法の原則を離れて,やはり連帯,金銭についても連帯にするのが妥当ではないかと。

● それが民法の原則を離れているかどうか自体,そこは理解が別途あり得ると思うのですけれども,信託財産に関する事務処理ですとか保存ですとか,そういうもののために借入れを3者が意思決定をして,共同で,行為者としても名前を出してやっているときに,単純に分割なのかという,そういう疑問なのですが。

  さらに,そこからすると,名前を出さなかったときに--名前を出すということは分割にするということなので,名前を出さなかったときは違う処理だというところにつながっていきますので,大もとが違ってくると,そこの処理も違うように思うものですから。

  ただ,全く疑問のないところなのであれば……。

● そんなことはありません。テークノートさせていただいて……,ちょっと難しいところですので。

  まあ,直感的には,みんなでやっているんだからみんなでというのもあり得るのかなという気はいたしておりますが,いかんせん,民法の一応の原則が金銭債務は分割となっておりますので,そちらによるのかなと考えておりましたけれども,共同受託の場合についてなお考慮を働かすべきかどうかというところについては,もう少し検討を深めたいというふうに思っております。

● 恐らく,民法とちょっと違うかもしれないのは,民法の場合は,3人が一緒に,連帯ではないけれども,3人がいて借入れをするというと,分割の原則が適用されてもいいのかもしれないけれども,ここは信託で,借入れの目的が最初から一つ,その信託のためというふうに一つに限定されているので,そういう一つの目的のために3人が借入れという--3人というか,その中の一人が全員の名前を出して借り入れたと,そういうときには,場合によっては,まあこれは民法の原則の問題として,そっちの方でも連帯……,まあ不可分なのかな。

● 性質上の不可分性ということはいかがですか。

● そういうのが可能性がないわけではないだろうという感じはするけれども,私も自信がないな。

  普通の民法の場面とちょっと違う信託の構造ゆえに。

借り入れて何に使うかという,その借入れはすべて信託のために使うという点が普通の民法の世界とちょっと違う点があって,民法の原則を適用するのだけれども,連帯というか,不可分……,連帯は推定しないとすると,不可分ですかね……。いや,反対がありそうだから。

● 近い問題ですけれども,確認の質問だけさせていただきます。

この第三者に対する債務,20ページの部分ですね,対外関係で考え方はこれでいいのかどうかの確認だけなのですが,信託財産に対して行く場合と固有財産に対して行く場合があって,信託財産の方はまあ分かるわけですけれども,固有財産に対して行けるかという問題に関して,実際に行為をした者に対するのもいいのですが,実際の行為をしていない者の固有財産に対してかかっていく前提として,どういう債務名義をとればいいのかというときに,これを見ていますと,過半数の意思決定を行い,かつ他の受託者の名前を挙げた代理をしているということが言えるか,あるいは,保存行為であり,かつ他の受託者の名前を出した代理行為をしているか,どちらかである場合に限って,実際に行為をしていない者たちの固有財産にもかかっていけるという理解でよろしいのでしょうかということですね。

  もし仮に本当にそうだとすると,(ウ)の,職務分掌されている場合に固有財産で職務を執行した受託者のみが固有財産で責任を負うというのは全くそのとおりなのですが,職務分掌している場合に,先ほどの二つの場合があり得るのかと。

つまり,実際に行為をしていない者の固有財産にかかっていく場合というのが,過半数の意思決定プラス代理,あるいは保存行為プラス代理というときに,職務分掌の問題というのは,言わずとももう当然なのかなという感じがちょっとしたので。

ただ,前提が間違っているかもしれないので,確認だけさせていただければということです。

● 前提はそのとおりの理解でございます。

 その原則からすると,職務分掌の場合も自明ではないのでしょうか。

● むしろ,ほかの人の,全員の固有財産に行くべきではないかと。

● というか,先ほどの二つの要件がある場合にのみ,二つの場合にのみ他の受託者の固有財産にかかっていけるとするならば,このルールさえあれば職務分掌の場合はもう言うまでもなく当然行けないはずではないかなと。

  ですから,結論はそのとおりなのですけれども,言うまでもないかなという感じがしただけで。言うとかえって混乱してきますので,質問だけさせていただいただけです。

● おっしゃる趣旨は,恐らくそういうことかなと。職務分掌の場合はいろいろなところに取り出しておりますので,なるべく規律を書いた方が分かりやすいかと思いましたが,御趣旨としては,(ア)と(イ)でそういうことであれば,(ウ)はなくても自明かなという気はいたします。

● 恐らく先ほどの問題があるというのは,そのとおりなのですが。

● 大分議論が錯綜しておりまして,私も混乱してきたのですけれども,今日の整理は,信託財産との関係では合有であって,合有的債権債務関係があるということから何か話があるように理解しておりました。

ところが,固有財産については,共有的債権債務関係を前提として,それで分割になるのか連帯になるのかというような話になっているように思います。

ところが,信託財産についても不可分債務であるというような可能性の検討がされたりもしておりまして,恐らく,その合有という概念がかえって混乱を来しているのではないかなというふうにも思います。

特に,組合との比較をする際に,組合の方を合有と見るのか見ないのかというところでも議論があると思いますし,それから,今回の案では,持分がないということと,合有ということとをくっつけているようですけれども,そこも必ずしも論理必然ではないだろうと。そうしますと,今日出たような議論を整理する際に,最終的に合有ということでも結構なのですけれども,合有的債権債務関係ということを前提にしてしまうと,かえって整理しにくいのではないかなというふうに思いました。印象だけです。

● そこはもうちょっと検討した方がいいかもしれませんね。

  ほかにも若干まだ残っておりますので,特に御意見がなければ,このぐらいでよろしいでしょうか。

  それでは,次の項目に行きましょうか。

● 次は,第39と第42の倒産関係のところについての御説明をさせていただきます。

  まず,第39は,任務終了事由と倒産手続の開始の関係でございまして,現行法では42条1項に対応するとともに,受託者の不適格事由を定めた現行法5条にも関連するものでございます。

 42条1項によりますと,受託者に破産手続が開始したときは当然の任務終了事由となるものと解されておりまして,しかも,5条におきまして,破産者であることは受託者の不適格事由とされておりますので,破産手続の開始にもかかわらず任務が終了しないとの特約は有効ではないと解されるものと思われます。

しかし,第3回会議のときに提案いたしましたが,受託者の不適格事由から破産者を除くことといたしますと,受託者につき破産手続が開始されたとしてもその任務を終了させないという特約を置くことは許容されてよいものと考えられます。そこで,民法の委任に関する653条--資料には「654」と書いてあったかと思いますが,「653」でございます--の解釈と同様に,破産手続の開始をもって原則として任務終了事由としながら,任務が終了しない旨の別段の定めを信託行為に設けることを許容するという提案をするものでございます。

 なお,破産手続の開始の場合とは逆に,再生手続等の再建型倒産処理手続が開始されたとしても,現行と同様に当然に任務終了事由となるわけではございませんが,信託行為の定めをもって任務終了事由とする,信託行為の定めで任期とかを定めるのと同じように考えるわけでございまして,その定めによって任務終了事由とすることは可能であると解するものでございます。

  次に,第42の「受託者倒産の場合における信託財産の取扱い等について」,資料14ページのところからの説明に移らせていただきます。

  このポイントでございますけれども,2点ございまして,第1は,42条2項と同様に,受託者の破産管財人に信託財産の保管義務及び信託事務の引継ぎ義務を課すものとしたこと,これは先ほどからいろいろ議論になっているところでございます。

第2に,受託者破産の場合において,明文の規律をもって,受益者にも一定の限度で信託財産を確保するための手段を付与することとした点でございます。

  まず,第1の点でございますけれども,受託者について破産手続が開始された場合を考えてみますと,17ページの(注1)に記載いたしましたとおり,先ほどからいろいろ議論がある点でございますけれども,受託者の破産管財人は受託者の固有財産に係る債権者の利益を代表するものであるから,信託財産との関係では,登記・登録をもって対抗されるべき第三者,こういう意味で少なくとも第三者に当たると解される上に,信託財産は破産財団に属しませんので,本来,受託者の破産管財人の権限の及ぶところではないと思われるわけでございます。

しかしながら,そうしますと,信託財産を管理すべき受託者が不在となってしまうことからの不都合がありますので,この不都合を解消するためのいわば便宜的な観点から,1の(1)のとおり,破産管財人に対して,あくまでも一時保管の限度にとどまる義務のみを課すことを提案するものでございます。

  次に,第2の信託財産確保の手段の点でございますが,破産手続の開始によりまして受託者の任務が終了し,受託者の全部が欠けることになった場合には,新受託者の選任がされるわけでございますが,この任務終了後,選任までの間は,旧受託者の破産管財人が信託財産の保管義務を負うことになるわけでございます。

しかし,信託の中心的な機能である受託者の倒産からの隔離機能の問題となる場面であることに加えまして,信託財産が名義上は受託者の財産であるがゆえに,受託者の固有財産,つまり破産財団と一体なものとして取り扱われやすいということを考慮いたしますと,受益者にも信託財産を確保するための手段を認めることが望ましいと思われるところでございます。

この点につき,学説上は,受託者破産の場合については受益者が取戻権を有するとの解釈が有力でございますが,受益者は信託財産について所有権等の物権を有するものではございませんので,一体いかなる権利に基づいて,いかなる訴訟を提起できるのかが不明でありますし,信託財産の管理運用は受託者にゆだねられるのが信託でございまして,受益者が信託財産を自己の手元にとどめ置く筋合いのものではございませんので,信託財産の受益者への引渡しまで認める必要性があるかは疑問でございます。

  そこで,2の(1)のとおり,受益者は,新受託者が選任されるまでの間に限ってでございますが,破産管財人を被告として,当該財産が信託財産であることの確認の訴えを提起することができる旨の明文規定を置くことを提案するものでございます。

  なお,この確認の訴えの関係では,受益者が複数の場合をいかに規律すべきかがむしろ問題になりまして,14ページの2の(3)のところに書いてございますけれども,一つは,単独の訴訟提起権プラス他の受益者への訴訟告知の枠組みをとるという甲案,それから,複数受益者の必要的共同訴訟とする乙案とが考えられるところでございます。

甲案による場合には,しかし,送達以外の方法による特別の訴訟告知の方法を認めない限りワークしないのではないか,乙案によるときは,事実上,受益者全員による訴訟提起は困難ではないかというような問題点があることにつきまして,16ページから17ページに書かせていただいたところでございます。

  以上で終わります。

● それでは,この倒産関係に関して,いかがでしょうか。先ほど少し,関連することを議論していただきましたが。

● 今,二つポイントがあると言った第2点の方ですね。第1点の方は先ほど既に出てきまして,これはつけ加えることはございませんので,第2点の方について何点か申し上げます。

御提案の理由は非常によく分かるのですが,まず,問題になる局面というのは,特に,破産管財人がこれは信託財産ではなくて固有財産であると言って例えば処分しようとしているときではないかと思うのですが,一番シビアに問題になるのは。

  一つ目の問題ですけれども,新受託者とか何かが選任されるまでの間に訴えを起こせるということですけれども,事実上間に合わないのではないかと。判決が確定しない限りは既判力を生じませんから。というのが一つ。

  それから,それに関連して,二つ目の問題点ですが,こういう確認の訴えで仕組むとして,何か保全処分というのは観念できるのだろうかと,処分禁止みたいなですね。

多分,そういうところまで手当てしないとワークしないのではないかと。

だから,確認訴訟を本案とする処分禁止の仮処分みたいなことが考えられるかどうかという,今まで余り考えたことがない問題を考えなければいけないような気がします。

  以上はワンセットの問題です。

  それから,甲案,乙案に関してですが,乙案は非常に重たいなと。

特に,甲案,乙案共通の問題ですが,受益権が有価証券化されていてどこに行ってしまっているか分からないような場合には,どっちにしてもワークしない,甲案も乙案もワークしないということが考えられないかなというのが気になるところでありまして,例えば公告で済ますとか……。

単独で提起できて,公告をして,入ってきた人はおいでというあたりぐらいまでしないと,ワークしない,もしこういう仕組みを作るのであればワークしないのかなというのが,受けた印象です。

しかし,公告だけでほかの受益者の手続保障は足りるのかというと,これまた,会社関係の訴訟を考えれば,足りるような気もするのですが,それと同じように考えていいのかどうかはちょっとよく分からないところです。

● いかがですかね。なかなか……。

  さっきの,確認訴訟でもって処分禁止の仮処分というのは,私もちょっとよく分からないけれども。何かそういうものがないと,とにかく間に合わないということですよね。それは確かに何か迅速な手続というのは必要かもしれませんね。

● 今の意見に関連することなのですけれども,同じく第42の2のことなのですけれども,ちょっとこれは知識不足で恐縮なのですけれども,直截に給付訴訟を申し立てるという枠組みがつくれないかどうかということなのですけれども。

  例えば,その状況として,破産管財人が財団のものと思っている,それでそれを確認すると。

その制度を設けること自体はよろしいのですけれども,やはり直截に,破産管財人から,今後生じるところの,選任されるところの信託財産管理人ないし新受託者に対してそれを渡せというような訴訟ということを展望することができないのかと。

現行法でできないのであれば,そういう訴訟を可能とするような枠組みを,どうせ確認の訴えということができるのであれば,この機会にここで定めることができないのかということを,質問といいましょうか,コメントしたいと思います。

二つ目は,甲案,乙案という話ですけれども,この資料の中身を見ますと,やはり困難であるということがありまして,17ページの第2段落目にありますけれども,信託財産管理人を選んだらどうかとかいう話がありましたけれども,むしろそういうことは必要でない,それより以前にやりたいということですので,円滑な提起をしたいということの観点からは,やはり乙案というのは非現実的であって,少なくとも甲案ということであります。

そして,甲案であったとしても,やはり告知というのは非常に難しいという観点からは,○○幹事がおっしゃられた公告とか,そこら辺の手続にして簡易にすべきだというふうに思います。

● 直截な給付というのも,私もよく分からないけれども。まだ給付すべき相手がいないわけですよね。

● それは厳しいのではないかと。受益者に対する給付というのは,また新受託者に戻さなければいけないのでおかしいですし,新受託者が選ばれれば,その人は直接所有権に基づいて給付請求できますが,まだだれがなるか分からないけれどもというのは,ちょっと……。

● 実務的には余り考えられませんけれども,嫌がる破産管財人に対して確認訴訟があったとしても,なお抗する場合には給付訴訟でワンショットでやれるので便利ではないのかということでございます。

● 御指摘の中では,特に迅速な手続が必要だというのは正に皆様のおっしゃるとおりだと思いますので,そこは考えてみたいと思いますが,引き渡すというのは……。せいぜい保全処分で執行官保管にするかとか,その程度のことぐらいしか考えられないのかなという気はいたしますけれども。

● 受益者多数の方はどうですかね。

● 甲案,乙案というお話ですけれども,私どもの信託銀行ということをベースに考えますと,どうしても,どちらもどうしようもないのかなと。要するに,両方ともワークはしないのだろうということだろうと思います。

  もちろん,時限性の問題があって,信託財産管理人を選任してとかという方法を基本的に考えられているのだと思うのですけれども,基本的に,受託者が破たんしたときの受益者保護というか,信託財産の確認の訴えというのはこうあるべきだよというのはやはり法律できちっと書いていただいて,それがワークするという形でないと,私ども,受託者としてお客さんなり受益者に説明するに際して,こういうことで安心なんだよということは,この状態だったら言いづらいかなという感じがいたしますので,何らかの手当て,先ほど来出ております,例えば公告--もちろん,問題があることも承知はしておりますけれども,公告をするであるとか,もう少し……,例えば,迅速に,信託財産管理人が,訴えが起こされたらすぐに選任されて,何らかの形で手当てできるとか,そういうことをちょっと御検討賜れればというふうに思います。

● 課題は比較的明確なんだけれども,なかなかうまい手段が見つからないという,そういう問題ですね。なお検討させていただくことにいたしましょうか。

  よろしいですか。もし御意見がなければ,次に行きましょうか。

● では,最後に,委託者と遺言信託の関係のところに移らせていただきます。

  まず,第55でございますが,これは,私益信託における委託者の信託上の権利義務に関する提案でございまして,第2回会議で御説明したところから基本的には変わっておりません。

すなわち,法律関係の当事者としての委託者の地位を強調して,信託関係における各種の権利義務を認めるといたしますと,法律関係を錯綜させ,委託者と受益者との間に意見対立が生じ,受託者による信託事務の円滑な処理にも支障を来すおそれがありますところ,このような問題を解消するためには,原則として,信託の利益を直接享受する受益者に判断権を委ねるのが合理的であると考えられることから,信託関係の当事者としての委託者の地位は後退させることとしております。

  具体的には,46ページの別表に記載しましたとおり,デフォルト・ルールといたしましては,信託の監視・監督的権能としては,受託者,信託管理人,信託財産管理人の選任,解任,辞任に関する権利,すなわち委託者との合意あるいは裁判所に対する申立権など。

  それと,利害関係人にも認められる権利として,提案済み,あるいは今後提案予定である,別表に書いてある五つほどの権利。

  あとは,信託行為の変更,信託の併合,分割,終了など,信託の枠組み自体に重大な影響を与える行為については,信託目的に反しないことが明らかな場合を除いて,委託者にも同意権又は裁判所に対する申立権を付与するとしております。

  それから,31番の,信託終了時の残余財産につき指定された帰属権利者の存しない場合には,その帰続権利者となるということ,この点を提案しているものでございます。

なお,「第62の4(2)」と書いてありますが,「第62の5」でございますので,訂正させていただきます。

  なお,別表記載の個別の権利のうち,いずれを委託者に認められるデフォルト・ルール,ここで言うと丸というふうにするかということは,非常に重要ではございますが,更に,第2回会議でいただいた御指摘の関係で,次の2点について付言申し上げます。

  第1は,ただいま概括的に説明した別表の一番右の欄に丸とある権利につきましては,デフォルト・ルールとしてではございますが,原則として委託者に付与することとしている点でございます。すなわち,第2回会議におきましては,デフォルト・ルールとして委託者の権利をゼロとするところから出発してはどうかという御意見もありましたが,そのような考え方はとらないという提案でございます。

  第2に,別表にペケとある権利についても,委託者が信託行為によって留保すれば,その権利を委託者に認める,すなわちプラスする方向が認められることにつきましては,第2回会議で説明したところでございますが,第2回会議におきましては,これとは逆の方向の指摘といたしまして,別表に丸とある権利については,委託者に最低限度認められるべき権利とする趣旨なのか,それとも,これらの権利についても委託者が信託行為で放棄することができるのかについて質問がなされました。

  この点の検討結果が,42ページのアステリスク1,アステリスク2,それから45ページの(注6)に書いてあるところでございまして,委託者は,信託の監視・監督的権能,あるいは信託の基礎的な変更に関する権利としてデフォルト・ルール上認められている丸の権利につきましても,裁判所に対する申立権も含めて,信託行為の定めをもって放棄することができる,すなわちマイナスあるいはゼロとすることも可能であることを提案するものでございます。

  続きまして,第56の相続人の権利義務の方についての説明に移らせていただきます。

  これについては,甲案と乙案というのを,47ページで,対比しております。

  甲案というのは,委託者自身が信託行為の定めをもって相続人の関与を排斥しない限り,委託者の相続人は委託者が有していた信託法上の権利義務を承継するという考え方でございます。

  その根拠は,47ページから48ページに記載してありますとおり,委託者と受託者間の個人的信頼関係を重視して委託者の権利を一身専属的なものとまで考える必要はないということ,合併などの包括承継の場合との平仄,それから,先ほど申しましたとおり,委託者の信託法上の権利を現行法よりも縮小することを提案している上に,信託行為において,そもそも委託者の権利を放棄し,あるいは相続人の関与を排除する旨の定めを設けることも可能であるというようなことを理由とするものでございます。

  これに対しまして,乙案でございますが,委託者の相続人は,法定帰属権者としての地位と報酬支払義務について信託行為に別段の定めを置いた場合を除いて,委託者が有していた信託法上の権利義務は承継しないという考え方でございます。

  その根拠は,48ページに記載してございますけれども,主として,承継を認めると委託者の地位を有する者が多数になって法律関係が複雑化することを懸念するものでございます。

ただ,この考え方によるときは,委託者の相続人とはいいましても,委託者と無関係の第三者と異ならない地位を有するにとどまる,言ってみれば友達と変わらないということになりますので,例えば,信託債権者以外の者による信託財産に対する強制執行について,信託行為の定めをもってしても相続人に異議申立権を付与することができなくなってしまうのではないかというようなおそれがあり,不適当ではないかという指摘があり得るところでございます。

  なお,念のためでございますが,乙案によった場合でも,委託者に利害関係人として認められている権利につきましては一律に否定されるわけではなくて,権利の性質ですとか,その相続人の立場に応じた,利害関係を有すると言えるか否かについての個別的な判断によるものと思われることを付言いたします。

  最後に,第67の遺言信託についての説明に移らせていただきます。

  遺言によって遺贈はできることは民法964条に定めておりますが,信託では,財産権の名義の帰属と実質的な利益享受者とが分裂する点におきまして一般の遺贈とは異なるので,遺言をもって信託を設定することが可能であるか疑義が生じ得ないではないと言われております。

そこで,現行法2条の趣旨を維持して,契約による信託の設定のほかに,単独行為である遺言による信託の設定も可能であることを注意的に明らかにするものでございます。

  なお,ここで特に御審議いただきたいのは,遺言信託における遺言者の相続人に付与すべき権利義務についてでございます。

遺言は遺言者の死亡したときにその効力が生じますので,遺言信託におきましては委託者は当初から不在でございまして,委託者の地位の相続ということも観念し難いと考えられますので,遺言者の相続人が委託者としての権利義務を承継するとは言い難いと思われます。

そこで,契約による私益信託における相続人の権利義務の場合とは異なりまして,相続による承継ということではなくて,遺言者の相続人に原始的に権利義務を付与すべきか否かが問題となるわけでございます。

  もっとも,権利義務の原始的付与と申しましても,義務の方でございますが,これは,信託行為の定めをもって相続人に信託報酬支払い義務を課すか否かということでありまして,あくまで信託行為の定め方の問題であって,法律に基づく遺言者の義務の付与という問題ではないように考えられます。

  そこで,問題となりますのは,先ほど御説明いたしました,信託に対する監視・監督的権能及び基礎的な変更に関する権利並びに信託終了時の法定帰属権者としての地位を原始的に付与すべきであるか否かという問題であると思われるわけでございますが,ここでは,このような点に関しまして,甲案と乙案の両案を提示しております。

  甲案でございますけれども,遺言者の相続人に対し,生前信託の委託者が有する権利と同様の権利を付与するものとするものでございます。

これは,信託に関して委託者が有していた利害,例えば信託目的が達成されるか否か等を保護するためには,当初より委託者が不在である以上,かわりに,遺言者の相続人に委託者が存していたならば,有していた権利を付与することがふさわしい。

言いかえますと,委託者の有すべき権利を行使できるものがだれもいないとするよりは,委託者に最も近い立場にあるその相続人にこの権利を付与した方がベターであるというふうに考えるものでございます。

遺言者の相続人と受益者との間で利害が対立することによる弊害につきましても,資料に書いてございますような理由でさほど懸念するには及ばないか又は,対処可能ではないかと考えるものでございます。

  これに対し,乙案は,遺言者の相続人に対しまして,法定帰属権利者の地位を除いて,生前信託の受託者が有する権利と同様の権利を付与しないとするものでございます。

受益者と遺言者の相続人とは相対立する利害関係にございますので,遺言者の相続人に適切な権利の行使を期待することは困難であると考えるものでございます。

 なお,利害関係人につきましては個別の判断によるべきであるというところは先ほどと同様でございますが,付言させていただきます。

  以上で終わります。

● それでは,今の三つの点につきまして,いかがでしょうか。

● この問題はやはり非常に大きな問題だと思うのですね。これは,相続というものと信託というものをどう考えるか。今,余りないというか,ほとんどない民事信託というのの将来の発展可能性を残すのか,それとも残さないのかぐらいの話だと思うのですね。

  とりあえず,コメントというか,私の意見だけ申し上げますけれども,まず申し上げるのは,相続人との関係のところですが,生前信託と遺言信託とで取扱いを異にするのはおかしくて,簡単に言うと,乙案ですね。とにかく。

つまり,英米において信託はいろいろな理由で使われていると思いますが,民事信託のところで使われている理由の大きなものの一つは,相続人から切り離そうという話ですから,ここで,自分が死んだ後,相続人がまた出てくるというような話は,本当はそういう意味での信託の真髄に反するような話ですね。だから,やはりこれは全然切り離してしまうと。

ただ,もちろんこれはデフォルト・ルールですから,委託者が相続人の中でこの人だけは信頼しているという人がいれば,信託条項に何らかの形で,この人にはこういう権限を残しておきたいと書いておけばいいだけの話でありますから。

  それで,すぐにそういう形の信託がいっぱい出てくるかどうか分からないですが,ここでルールを決めてしまうのが将来の発展可能性を--特に甲案をとる場合ですけれども--閉ざすような気がするものですから,一言だけ,コメントします。

● 3点,続けて。

  まず1点目,第55の「私益信託における委託者の信託法上の権利義務について」ということですけれども,この部分につきましては,先ほど○○幹事の方からお話がありましたけれども,別段の定めで現行法における権利まで付加することもできるし,逆に引くこともできるというふうな形で御提案いただいておりますので,ファミリー・トラスト的なものから流動化の信託まで,幅広く利用しやすいものではないかということで,非常に歓迎しております。

  ただ,その場合のデフォルト・ルールの在り方のところなのですけれども,これについては,実際,ちょっと業界内で意見とかも分かれておりまして,多数派の方は,信託関係が錯綜するとかいうことから,基本的には原案の方がいいのではないかということなのですけれども,一部からは,ファミリー・トラスト的な信託の場合についてはやはり委託者の意向を非常によく聞かないといけないということもありまして,この別表の権利についてはすべてデフォルト状態で付与していただけないかというような意見も少数意見としてございました。

  次に,第56の相続人の権利義務のところですけれども,これにつきましては,やはり法律関係が錯綜するということもございますので,乙案と。

  第67のところにつきましても,遺言信託というのはそもそも相続人の意向を排除するというようなことが大きいと思いますので,これについても乙案ということで,受託者に対する監視のところにつきましてはまたこれから御提案があると思うのですけれども,信託管理人のところとかが大分整備されておりますので,そういう形で対応すればいいのではないかというふうに考えております。

● 私も,第67,第56についての甲案,乙案の話についてですけれども,○○委員,○○委員と同じく,乙案を支持するという立場から意見を申し上げたいのですが,つけ加えるのであれば,銀行において一番法律的な問題が出てくるのは預金の相続でございまして,かように日本において相続間の紛争というのは多いということでございます。

今現在,遺言信託というのは余りないと。

もちろん,民事信託ということもないわけですけれども,商事信託といいましょうか,銀行が行うこと,遺言信託もできる信託銀行はありますけれども,ただ,実際に量的には英米と比べたらもちろん余りないわけでございまして,実際にやっているとしても,遺言の作成であるとか遺産整理であるとか,狭義の遺言信託と言われるものでございます。

これを発展させていこうということであれば,やはりそういう事実上トラブルが生じるということを避けていきたい,安心して使えるような遺言信託を作るということであれば,やはり乙案を採用すべきではないのかなというふうに思っています。

  ○○委員がおっしゃるとおり,デフォルト・ルールということでございますので,当該委託者ないしは遺言者が特に望むということであれば,そのように設計すればいいということだと思います。

● ほかに,御意見いかがでしょうか。

  ○○委員は,要するに第56,第67とも乙案の方がいいという御意見ですね。

● はい,そうです。

● 別に甲案支持ということではないのですが,乙案をとった場合にどういう関係になるかということを確認したいのですが。

 第56の方が分かりやすいと思うのですが,第56で乙案をとった場合は,これは,しかし,一定の権利義務についてはなお相続人が取得するということになっていますね。帰属権利者としての地位等々。

そうしますと,それは何によって取得するのでしょうか。特定承継なのか,あるいは原始取得するのか,それと相続放棄との関係はどうなるのかと,そのあたりを確認させていただければと思います。

● 確かに,何によって帰属権利者の地位を取得するか。もしかしたら,極端な意見は--いや,○○委員が言われるのかもしれないけれども,それも与える必要はないという意見が出てくるのかもしれないけれども。

● いえいえ,そんなことは申しません。

  法定帰属権利者というのは,一番最後に終了してしまって,しかもだれもいない場合に仕方なくという形ですので,本当は信託の枠外みたいな話ですから。

復帰信託ですので,それはしようがないでしょうというだけの話ですから。まあ,それにどういう理屈をつけるかというのが難しいんだよと言われれば,それはそれまでのことですけれども,まあ大した問題ではないと私なんかは思うのですけれどね,向こうでもそうやっているんだし,というだけの話です。

● でも,やはり承継ではなくなるんでしょうね。信託法の法制の中で,もうだれも受益者あるいは先順位の帰属権利者がいないときに,最後は無主物にしないで,少しは関係ある委託者の相続人にと。

● そうですね。何十年もたって,何で国庫に帰属させないんだという感じもあるのかもしれませんけれども,英米でも。

まあ,向こうでは黙示の意思説というのをとっているのですけれども,結局のところは。だから,結局読み込むんですよね。そこのところだけは読み込む。

● 委託者の意思として。

● そうですね。

  まあ,でも,本当に擬制された,推定された意思という……。擬制と推定は同じなのかな。

  仕方がなくというだけの話なんですね。

● 擬制というか,委託者の意思だというふうに言えば,結局,信託行為の中で黙示的な意思として最後の帰属権利者だという考え方なんですね。

確かに,理論的な説明はしにくいところがあるけれども……。

  ○○委員も,御意見としては乙案の方が適当だという御意見ですか。

● いえ,甲と乙,どちらも相続によって承継するのかなというふうに思いまして,そうだとすると,あとは範囲を実質的に考えればいいにすぎないのかなという印象を持ったわけです。

● それはそうですが,しかし,甲案でいくと,排除するものを列挙していくわけですね。

● どの範囲で排除するかというのは,これは次の段階の問題で,まず,何によって承継するのかということがはっきりしませんと,議論しにくいなと思ったのです。

多分,そういうことを言うと,○○委員から,そんなことはないんだというような御批判をいただくと思うのですが。

● なかなか難しい問題ですけれども,何を承継するのか,何が最後相続人に行くのかというのは先に決めていって……。

● ただ,ここは,報酬支払義務も承継するというふうになっていますよね。

しかし,それは,相続人が相続放棄すれば承継しないことになると思うのです。

だとすると,承継するのはやはり相続によって承継するのではないかと思いまして,だとすると,結局は範囲の問題かなというふうに思ったわけですが。あるいは,そういう考え方自体が何か間違っているのかもしれませんけれども。 

● よく考えているわけではないのですが,相続で対象の一身専属性を広く認めるというような説明もできるでしょうし,政策的にこの部分についてはいわば特定の承継者を決めているのだけれども,その承継者自体が相続人という地位に依拠しているので,したがって,相続放棄をすればもはや相続人ではない以上,承継者たる資格もないという,いずれの説明も可能ではないかという感じはしておるのですが,説明としましては。

  それで,ちょっとまた違う話かもしれませんが,中身としては乙案でもよろしいのかなと思うのですが,その際気になりますのは,先ほどから,報酬支払義務だけは継承させるというところで,そういたしますと,報酬支払義務がかかっているときに,やはり相続人というのは,その義務者として,受託者がきちんと事務をやっているかということについてかなり利害を持つということが考えられるのですけれども,その際に,報酬義務だけは負って,あとは,一般の利害関係人としての職務の引受けの催告権とか,こういうことだけでいいのか,その部分も結局は委託者がそこまで考えて書くでしょうということに期待していいのかというのはちょっと気になるところです。

  もう一つ,これはむしろ前提事項として確認したいのですけれども,相続人に行くというような手当てがないとしますと,委託者としては,わざわざ自分にある程度監督権を留保したときに,自分が監督権を行使できなくなったときにどうなるだろうということを考えたときに,ほかの人に任せたいということがあるかと思うのですが,その際に,可能性としては,自分の権能を授権するような形にするというと,地位を移転するということが考えられるかと思うのですが,それはいずれも可能という前提でよろしいでしょうか。

個別に権限を授権していく,与えていくということも,まとめてこの監督権を含めた委託者の地位を移転する形で,自分の思う人に権限を引き継いでもらうということが可能であるという前提であるかどうかということなのですけれども。

● これも私の個人的な意見だけれども,相続の方は否定しても,その否定する理由が仮に一身専属性,委託者のところだけにとどまるという一身専属性だとしても,権限をだれかに引き継いでもらうというのはまた別なもので,本来,一身専属性といっても,相続と譲渡なんかはちょっと違うのではないかという感じがしていますけれども。

  しかし,○○幹事が言われたように,一つの問題であることは確かですね。

  まあ,ここは,どういう前提でもって全部が組み立てられているか,まだ余りそこまでは踏み込んでいないと思いますけれども,どうでしょうかね。

● 委託者の地位の移転はできると思いますが,複数の人にそれぞればらばらにということでございますか。例えば,Aの権利はこの人,Bの権利はこの人と。

そこは何か,一人の人ならいいけれども,ばらばらにそれぞれの権利を,代理ではなくて,地位の移転ができるかというと,ちょっとどうかな,難しいかなという気がいたしますけれども。

● 信託行為で定めておけばいいのでしょうか。委託者が留保できるような権限について,これは自分ではなく,Bに行くという。

● まとめてだれかに行くと。

● いえ,この権限はBというふうに,別々に。そこはやはりできないと。

● 例えば,生前,委託者の権限を幾つかに分散するということは信託行為でできるはずですよね。それは今だって,例えば指図権だけ取り出してだれかに与えるという形で。

● そうすると,その後の処分によっては,しかし,できないと。

● ただ,できるといっても何か限度があるかもしれないけれども。

例えば,取消しの関係の権限だけはだれだれとか,書類閲覧請求権はだれだれとか,そういうのはちょっと余りにナンセンスだと思うし,それはできないというか……。しかし,あえてそれをやれば,だめだとも言いにくいのかもしれませんけれどね。

  ですから,基本的には,委託者が信託行為で定めれば,その権限をいろいろ分散することも不可能ではないのではないでしょうか。

  いや,分かりません,私の個人的な意見ですけれどね。

  ほかに,何か。民法等の一般的な原則にかなり関係する問題かもしれませんので。

● 既に出ている話の繰り返しかもしれませんが,乙案をとった場合に,報酬支払義務のほかに,例えば監督是正権限をある程度パッケージにして相続人に与えるということを信託行為で決めるとすれば,有効というお考えでしょうか。

● それは有効だと思います。

● しかし,なぜそれができるかというところが,やはり乙案をとったときにはやや難しいかなと思います。

○○委員がおっしゃった,相続なのかどうかということなのですけれども。

相続財産の範囲を被相続人と第三者との間で自由に定めることができるということの一例になるのだろうと思うのですね。

それは,全部外に出してしまうのか,まだ少し手元に置いておくのかということだから,手元に置いておけば,相続の規律で被相続人から相続人に承継されるのかもしれないのですけれども,何か,相続財産の範囲を被相続人と第三者との間の契約でというか,法律行為で決めるというのはどうも余り例がないかなというふうに思います。

  あと,○○幹事がおっしゃったようなことは,あるいは指図を第三者に与えるというようなものは,その指図の権限を,受ける方との間の,そこでちゃんと権限の移転に関する当事者間の合意があれば,それはそれで一定の範囲では可能だと思うのですが,相続人の意思的な関与がないままに,相続人に,権利であれ,取得されるというのは,第三者のためにする契約とか,何かそういうのを使わないといけないのではないかなというふうに思います。

あるいは相続と言うか。相続と言うと,先ほど申し上げたような問題が残っているのではないかなと思います。

● 何か相続の根本原因にまで来て,意外と難しい問題になってきましたけれども。

  特定の人間に承継させるというのはいいんですかね。相続人という形で一般的に承継させるのが,相続の原理からするとおかしいということですね。

● 特定の人に承継させるというのは,遺贈で承継させることはできると思うのですが,信託行為で特定の人に承継させることが信託行為の当事者である委託者と受託者との間でできるのかというところに,私はまだ少しこだわりがあります。

● ここでは,恐らく遺贈という形をわざわざとらないでやるという場合は考えられるでしょうからね。

 なかなか理論的に難しいところがあるかもしれません。

  まあ,仮に甲案をとっても,実質上同じようなことができるのであればいいのですが。

● 実質的には乙案の方がいいのだろうなとは思いますが,乙案をとったときに,これはデフォルト・ルールであって,信託行為で変えられるという,そこの命題がほかのところの問題とは少し違うように思います。

● だから,先ほど方式と中身の話をしたけれども,中身としては乙案でねらおうとしているところがよさそうだと。だけどうまく説明できるかという問題ですよね。

● 今の○○幹事のおっしゃった点については,検討したいと思います。

  もう一つ,乙案で,乙案の方が大勢な感じでございますが,気になっておりますのは,このペーパーにも書いてございますが,裁判所に対する申立権みたいなものを相続人に付与すると勝手に信託行為に書いて,それによって申立権を付与する,言ってみれば訴訟提起権というのを第三者に契約で付与するということは難しいのではないかなという気がするのですが,そうしますと,乙案をとった場合にはそういう点でも何か難しい問題が生ずるのではないかと。

信託行為の定めによって,例えば第三者異議権を付与することができるのかというあたりが疑問があるところでございまして,その点からどのように考えたらいいのかというところを御教授いただければと思っておりますが。

  甲案でしたら,外せばいいわけですけれども,乙案ですと,さっき言いましたように,相続人というのは言ってみれば赤の他人と同じようなものであると。

それで,赤の他人に,あなたには訴訟提起権がありますよと契約で書いたら,じゃあ訴訟提起権があるということになるかというと,それはちょっと難しいのではないかということで,範囲の問題に加えまして,そういう付与できる権利も限定されてくる可能性があるのではないかというところが気になっておりますが,いかがでしょうか。

● これは,さっき○○委員がおっしゃったことを私が理解しているのかということなのですけれども,これは,例えば「信託管理人」という言葉が出ている。信託管理人に好きな相続人を入れ込んでおけば全然何の心配も要らないということになるのですか,今の話は。

もしそうなら,方法はある。相続人ということにこだわる必要はないのであって,相続人全部にこういう権限を与えようという人はないと思うのですね,デフォルト・ルールでこういうルールがあったときに。相続人の中のだれかだと思いますから,それを信託管理人にしておけばいい。

● そうやれば対応できると思います。

● いろいろ御意見が出ましたが,ちょっと法律構成,それから結論の点も含めて,ある程度皆さんの御意見の方向はそれなりに出ているようですけれども,なお詰めなければいけない点もあると思いますので,また第2ラウンドで御議論を……。

● 1点だけよろしいですか。

  これは今日がいいチャンスなのかどうか,よく分からないのですけれども,英米での民事信託の使われ方で典型的な形は,今,生前信託と遺言信託と両方ありますが--とにかく一つまず受益権を設定して,典型的には配偶者。

配偶者が生きている限りは,こうやって,受益権がありますよと。配偶者が死んだ後は,今度は息子ですよとか,娘ですよという話をつくりますね,こういう形で。

今度,こういう日本の信託法改正の中で,特に遺言信託の形でそういうような枠組みを作るということができるかどうかは,民法上のそれこそ相続法理でどういうことが認められているかということによって決まるので,直ちにそうはならないのか,あるいは……。いや,どういうことなのか,ちょっと教えていただきたいだけなのですが。あるいは,生前の場合もそうです,もちろん。

● 生前の場合で言えば,それは連続の受益者を定めるということですよね。それはできるということで。

● 遺言の場合は。

● 遺言といっても,遺言の信託ですよね。だから,信託として連続の受益者を定めるということは,少なくとも信託の問題としては構わないということになるのではないでしょうか。

それで,あとは相続法,要するに遺留分だとかそういう問題が関係してくれば,それはまた別の問題として……。

いや,分かりません,そこまで言い切っていいのかどうか。少なくとも,ここは,遺言信託という形で遺言で信託を設定することができるという話で,今のように,どういう形の受益者の決め方をしなくてはいけないのかというのは,またどこかで……,連続受益者はやるのでしたっけ。テーマにはないのですか。

● 受益者変更とか,そのあたりで。

● そこら辺と少し関係すると思いますけれどね。

  まあ,今ので結論が決まったわけではないと思いますけれども,お考えいただくということにいたしましょうか。

  では,特に御意見がなければ,今日はこのぐらいにしたいと思いますけれども,どうも長いことありがとうございました。

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2016年加工編

法制審議会信託法部会

                        第7回会議 議事録

第1 日 時  平成16年12月17日(金)  自 午後1時00分

                        至 午後5時10分

第2 場 所    法務省第1会議室

第3  議 題

   信託法の見直しに関する検討課題(5)について

第4 議 事   (次のとおり)

                              議    事

● それでは,法制審議会の信託法部会第7回の会議を開きたいと思います。

  お忙しいところお集まりいただきまして,ありがとうございました。

  それでは,いつものようにたくさんの論点がございますので,これを適宜幾つかに区切って議論していきたいと思います。その議論の区切り方も含めて,○○幹事の方から説明をお願いします。

● それでは,本日の議論の進行でございますけれども,テーマは全部で10項目ございますが,次のとおりに分けさせていただきたいと思います。

まず最初に,受益者の利益の享受と受益権の放棄の問題をあわせて行わせていただきます。

次に,受益者を指定又は変更する権利の問題を行わせていただきます。3番目に,信託管理人の問題を行わせていただきます。

この辺りで休憩かと思いますが,その後,第4番目といたしまして,信託行為の定めに基づく単独受益者権の制限,それから受益者が複数の信託の意思決定方法と受益者名簿の問題を行わせていただきます。

最後に,第5といたしまして,受益権の譲渡,有価証券化,受益債権等の消滅時効の問題というように,全体を五つに区切って進めさせていただければと思いますので,どうぞよろしくお願いいたします。

● それでは,最初のセッションから説明をお願いします。

● それでは,早速,受益者の利益の享受と,受益権の放棄につきまして御説明いたします。

  まず,第45でございますが,これは信託行為により受益者として指定された者の利益享受に関する提案でございます。

  現行法第7条は,信託行為により受益者として指定された者は,受益の意思表示をすることなく,その信託から生じる利益を享受する旨規定しております。

この規定は,契約当事者以外の者がその契約から生じる利益を享受するには,その者による受益の意思表示が必要であるという民法の原則を修正したものであると考えられております。

信託では,不特定の者や未存在の者が信託行為により受益者として指定されることがございますが,このような者に対して受益の意思表示を求めることは困難又は不可能であると考えられます。

また,例えば,重度の障害をお持ちの方のように,自ら意思表示をすることが困難な方が受益者として指定されている場合には,受益者が受益の意思表示をすることなく信託から生じる利益を享受できるとすることによって,その受益者の保護に資し,かつ,信託を設定した委託者の意思にもかなうものと考えられます。

  このような点にかんがみまして,1におきましては,信託行為により受益者として指定された者は,信託行為に別段の定めがない限り,受益の意思表示をすることなく,その信託から生じる利益を享受することができるものといたしまして,現行法第7条の規律を維持することとしております。

  もっとも,このように措置した場合には,自らの関与なく信託から生じる利益を受け,又は不利益をこうむる者が生じ得ます。

この点につきましては,次の受益権の放棄のところで詳しく御説明いたしますが,これらの受益者に対して受益権を放棄する機会を与えた上で,放棄の効果を遡及させることによりまして,自己の意思に反して利益又は不利益を強制されることがないような解決を図ることが可能ではないかと考えております。

  次に,2でございますが,これは受託者の通知義務に関する提案でございます。

信託行為により受益者として指定された者は,自己の意思によらずに受益者となることがあり得ます。

このような場合には,当該受益者に対して自らを受益者とする信託が設定されたことを認識させることが,受益者として有する各種の権利行使の機会を確保することにつながり,受益者の実効的な権利保護の観点からも相当であると考えられます。

  そこで,2におきましては,受託者が,信託行為により受益者として指定された者に対して,当該者を受益者とする信託が設定された事実を通知しなければならないとしております。

  もっとも,信託行為により受益者として指定された者が自らを受益者とする信託が設定されたことを知っているような場合にまで通知義務を課す必要はないと考えられますので,ただし書におきましては,このような場合においては受託者は通知義務を負わないということにしております。

  なお,ここで,受託者が受益者として指定された者に対して通知しなければならないのは,受益者として指定されたという事実,すなわち受益者となったという事実でございまして,受益権の内容などの信託行為の具体的内容等についてまで通知の対象とは考えておりません。

といいますのは,信託行為の内容等につきましては,別途,受益者が受託者に対して説明を求める権利などを認めておりますので,受益者がこれらの権利を行使することによって必要な情報を入手することは可能であると考えているからでございます。

  次に,3でございますが,これは,受託者その他の利害関係人が,信託行為により受益者として指定された者に対して,相当な期間を定めて,受益権を放棄するか否かについて意思表示をすべき旨を催告できるとしたものでして,遺贈義務者その他の利害関係人の催告権,民法第987条でございますが,これと類似の規律を受託者その他の利害関係人に対して認めることとしたものでございます。

  これも次に説明いたしますが,信託行為により受益者として指定された者は受益権を放棄することができまして,受益権を放棄した場合には,放棄の時点までに生じた原因に基づく責任も免れることを提案しております。

このように,信託行為により受益者として指定された者が受益権を放棄した場合の効果が遡及することとした場合には,当該受益者が受益権を放棄するか否かが確定するまでは,信託事務によって生じる責任を最終的にだれが負担することになるのかが判明しないことがあり,その場合には,当該信託に関して利害を有する者が不安定な地位に立たされるおそれがあるということになります。

  この点,遺言信託におきましては,遺贈に関する民法第987条の規定が準用されまして,利害関係人が受益者  --受遺者になりますが--に対して受益の承認又は放棄をすべき旨を催告することができるとの解釈が有力でございまして,遺言信託以外の信託の利害関係人にも同様の催告権を与えることが,受益の拒絶を認めることによって生ずる不安定な状態を除去するとの観点から相当であると考えられます。

 そこで,3におきましては,遺言信託,生前信託ともに,受託者その他の利害関係人が,信託行為により受益者として指定された者に対し受益権を放棄するか否かについて確認する手段として,催告権を与えることとしております。

  その上で,受益者として指定された第三者が催告に対して自己の意思を明らかにしない場合には,受益権を放棄することができなくなることとしております。

すなわち,このような第三者は受益の意思を要しないで受益者となっておりますので,受益者であるという現在の状況を拒絶する旨の意思表示をしない以上は当該状況を受け入れたものとみなすことが合理的であるとの考えに基づくものでございます。

  もっとも,このように措置することにつきましては,受益者への補償請求権等の行使が認められている場合がある信託におきましては,催告に対して意思表示をしなかったことから直ちに受益権の放棄ができなくなるとするのは当該受益者にとって酷であり,受益者への補償請求権の行使が認められているか否かによって効果に差異を設けてはどうかなどの指摘がされているところでございます。

そこで,この3の規律の要否やその効果の在り方については是非とも御審議をいただければと考えております。

  以上で受益者の利益の享受についての説明は終わらせていただきます。

  次に,第51の「受益権の放棄について」というところの説明に移らせていただきます。

  現行法の第36条第3項によりますと,補償請求権に関する第36条第2項の規定は受益者が受益権を放棄した場合には適用されないとしておりまして,受益者が受益権を放棄することができることと,受益者が受益権を放棄した場合においては補償請求権の規定の適用がないことを明らかにしております。

この現行法の規律に対しましては,受益権を放棄できる受益者の範囲が明確でないために解釈上疑義が生じているとの指摘や,受益者が受益権を放棄した場合の効果に関して,補償請求権の規定の適用がないというにとどまるために取扱いが定かではないといった指摘がされております。

そこで,このような指摘を踏まえまして,受益権の放棄に関する規律の整備を提案したものでございます。

  まず,1の(1)でございますが,これは,信託契約締結時におきまして委託者が受益者の場合,すなわちいわゆる自益信託の場合には,委託者兼受益者は,信託契約に別段の定めがない限り受益権を放棄することはできないとするものでございます。

委託者兼受益者は受託者との間で自己の意思に基づいて信託契約を締結した上で受益者となったのですから,委託者兼受益者が受益権を放棄して自由に当該信託から生ずる法律関係から離脱することを認めることは,受託者を始めとする利害関係人に対して不測の損害を与えることにもなりかねず,公平の見地に照らしても妥当ではないと考えられるところでございます。

そこで,委託者兼受益者は信託契約に別段の定めがない限り受益権を放棄することはできないとしております。

  次に,1の(2)でございますが,委託者兼受益者から受益権の譲渡を受けた者についても受益権を放棄することができないとするものでございます。

委託者兼受益者が受益権を譲渡したか否かによって受益権放棄の可否が左右されるとした場合には,受託者を始めとする利害関係人に対してやはり不測の損害を与えかねないものと考えられます。

そこで,委託者兼受益者から受益権の譲渡を受けた者も受益権を放棄することができないものとしております。

  次に,2の(1)でございますが,これは,いわゆる他益信託の場合には,信託行為により受益者として指定された者は原則として受益権を放棄することができるとするものでございます。

先ほど受益者の利益の享受のところで御説明しましたが,他益信託で信託行為の定めにより受益者として指定された者は受益の意思表示をすることなく受益者となりますので,自らを受益者とする信託が設定されたことを知らないまま受益者となることがあり得ます。

自己の意思に反して利益や不利益を強制されることはないという原則に照らしますと,このような受益者については信託から離脱する機会を与えることが相当であると考えられます。

そこで,信託行為により受益者として指定された者は受益権を放棄することができるものとし,例外としまして,信託から生ずる利益・不利益を十分認識した上で,受託者に対して受益の承認,すなわち言葉を変えれば受益権を放棄する権利の放棄ということになりますが,そのようなことをした場合には,当該者はもはや受益権を放棄することができないことを確認的に明らかにしております。

 また,前受益者が受益権を承認している場合にまで譲受人に放棄を認めることは,先ほど申しましたとおり,受益権の譲渡の有無によって受益権の放棄の可否が左右されることになりまして,信託関係者に不測の損害を与えることになりかねず,また,譲受人が自ら受益を承認した場合には受益権の放棄を認めないとしても,当該者は不測の損害をこうむることはないと考えられます。

そこで,2の(2)では,信託行為により受益者と指定された者から受益権の譲渡を受けた者は,前受益者が受益を承認し,又は自ら受益を承認した場合には,信託行為に別段の定めがない限り受益権を放棄することはできないとしております。

  最後に,3でございますが,これは受益権の放棄の効果に関する提案でございます。

  受益者が受益権を放棄できる旨の信託行為の定めを置いた当事者の意思としましては,受益権を放棄した受益者は,既に発生した信託債務に係る責任については責任を免れませんが,将来発生する責任については免れ得ることを意図していると考えるのが公平の見地から妥当かつ合理的であると考えられます。

そこで,(1)におきましては,信託行為に別段の定めがない限り,受益権を放棄した受益者は放棄の時点までに生じた原因に基づく責任を免れることはできないものとしております。

  他方で,先ほど申しましたとおり,信託行為により受益者として指定された者の中には,自らを受益者とする信託の設定に全く関与していない者もあり得ますので,そのような者が受益権を放棄した場合には,既に発生した信託債務に係る責任等についても免れるとすることが妥当であると考えられます。

このような観点から,(2)では,信託行為により受益者として指定された者が受益権を放棄した場合には,既に発生した責任も免れる,つまり何らの責任も負わないとしております。

そして,この場合には,受益者として指定された者には受益権は遡及的に帰属していなかったことになりますので,仮に当該者が信託から生じる利益を受領していた場合には,信託行為に別段の定めがない限り,不当利得として,受領した信託の利益を返還する必要があると考えられます。

なお,補足いたしますと,以上の提案は,受益権を放棄できる受益者の範囲及び放棄の効果につきまして,信託設定の時点においていわゆる自益信託か他益信託かによって明確に区別した規律を設けることを提案するものでございます。

しかし,これに対しましては,理屈としては理解し得るものの,経済実態としては自益信託,他益信託の間に相違がない場合が多い,例えば,いずれも実態は自ら出捐して利益も得ているわけですが,合同金信は自益信託で,証券投資信託は他益信託であるということになりますし,また,いずれも企業が委託者となって従業員の生活保障を図るものでございますが,厚生年金基金信託は自益信託で,適格退職年金信託は他益信託であるといった具合でございますが,このような状況にもかかわらず規律が大幅に異なるのは相当ではないのではないかという指摘もございます。

この点につきましてはなお検討したいと考えておりますが,何か実態を踏まえた適切な規律の在り方があるようでございましたら,是非とも御審議,御意見を賜れればと存じます。

● それでは,今の二つの問題につきまして御議論いただければと思いますが,いかがでしょうか。

● この問題はやはり非常に重要だと思うのですね。信託のイメージという,だれのための信託かということを常に私も繰り返し申し上げているので,この受益者の利益の享受で,受益権の放棄だという話ですから,そこに一番関係があるところなので,ここは重要だと。

これを前振りにして,まず第1点は,最後に○○幹事がおっしゃったことと密接に関係する話だと思いますが,第45の受益権の利益の享受の部分と,受益権の放棄の部分というのは,これは基本的に任意規定なのだろうか,強行規定なのだろうかという話がやはりあると思います。

原則は,「信託契約に別段の定めがない限り」というような文章が入っているのは,当然これは任意規定だという話になりますから,大体任意規定なのかなと思って--ちょっと問題を自分の頭の中で整理して,受益権の発生の話ですね。

受益者となるかどうかについては,そういうものが書いてないので。特に通知義務のところですけれども,ないですよね。

だから,これはやはり強行規定なのかなというふうに思って聞いていたのですが,強行規定にする必要があるのかどうかというのは,これは非常に大きな問題だと思います。これが第1点です。

  二つ目の方が本当は私にとっては重要なのですが,ダイコトミーの話がありましたよね。

いわゆる自益信託の場合と他益信託の場合というので,こんなふうにはっきりルールを異にしていることというのをどういうふうに評価しているかというと,一つの反論は,日本における経済実体として,自益か他益かというのは極めてテクニカルな話だけであって,実体をあらわしていない。

だから,こういうような概念的な装置を使っても意味がないのではないかと。これは一つ重要な点だと思います。

  これは英語にならないんですね,「自益信託」,「他益信託」というのは。それに当たる英語はないですから。

日本の学者の中には,これが一番重要な分類だというふうにおっしゃる人もいますけれども,英米では通用しない話だというのは,実際には,自益であり他益である場合が,民事信託の場合ですけれども,相当にある。

つまり,共同受益者の一人になっていてというケースが,生前信託の場合は典型的にはそうなんですね。

だから,今,私の頭の中では民事信託を考えているのですけれども,まず自分が受益者にもなり,しかし,その後,ほかの家族,配偶者,子供が受益者になる,それで連続的になっていくというような仕組みを考えた場合に,自分が受益権を放棄することができないというのは何だかおかしいのですね。

受益権を放棄することをすれば,ほかの人たちのためになりますから。だから,そういう自益か他益かというダイコトミーではなくて,それが複合される,自益アンド他益というケースの方を想定して彼らはルールをつくっているのです。

だから,そういう意味から言っても,この二つの区分というのは,日本での今ある経済的なというか取引のための信託ということを想定すれば,それはそうかもしれない。

しかし,将来起こるような,英米と同じような形の民事信託が発展するのかどうかというのはこれから見ないといけないけれども,そういう形の信託になった場合に,このようなことをやっているとちょっと困るんじゃないかというのが二つ目です。

  それに関連させて,結局,強行規定,任意規定のところに話を持っていこうと思っているのは,私は,こういったものを強行規定にする必要はなくて,それぞれがきちっとしたリスクの引受けが本当になされているような取引関係のところであれば,それはそれでいいと思うのです。

  ちょっと,最後,何か疲れてしまって,うまくまとまらないのですが。

  済みません,後でもう一回,発言の機会があればと思いますが,一言だけ。

いわゆる他益信託の場合で,私の考えは,とにかく本来は受益者にリスクを負わせるようなものは信託ではないと思っているのです。それが原則なんですね。

ただ,自益信託の場合については,こういうような定めをするということには理解できる部分があるのですが,いわゆる他益信託の場合で,○○幹事は,図らずもか,意識的にか分かりませんが,当該者が受益を承認した場合には信託行為に定めがない限り受益権を放棄することはできないものとするというのは,受益権の放棄の放棄だというふうにおっしゃった。

それだったら,この受益の承認ということの意味が,後の注のところでも問題になっていますよね,一体これは何なのだと。

という話なので,はっきり信託行為の中で受益者が受益権の放棄はもはやできないことにするということをうたって,そこへチェックして,それでリスクを引き受けるというならともかく。という形で,極めて限定した話にした方がいいと私は感じました。

● この問題は,○○委員が言われたように,だれが基本的にリスクを負うべきかという,簡単に言えば現在の36条みたいな問題ですけれども,そういう補償請求権の有無と密接に絡んでいるわけですよね。

少なくとも理論的には区別できますけれども,デフォルトのルールが何になるかによって大分意味が違ってくるので。

そういう観点から,今,御質問があったのだと思いますけれども,また後で議論させていただくとして。

● 私の方は,第45の「受益者の利益の享受について」という部分について申し上げたいと思います。

  ここの規律につきましては,1の「受益権の取得時期」というところの記載については,現行法を踏襲ということですので,まあこういうことだろうなというふうに思います。

 2と3につきましても,受託者が受益者について通知をするのだろうなというところはありますし,催告もするのだろうなと,そういう意味合いでは割と自然に入ってくるのですが,ただ,例えば2であれば,通知義務という形で義務化されているということと,催告権という形で催告したことによっての効果が生じると,こういうことになりますと,はたと考えるところが出てきまして,それに関して若干の質問と意見をということなのですけれども。

  まず,質問の方なのですけれども,これは非常に基本的な質問でお恥ずかしいのですけれども,ここで言う通知義務の相手方と催告の相手方なのですけれども,この受益者というものの能力といいますか,意思能力と行為能力というのはどういうふうに考えたらいいのかというのが一つあります。

例えば催告の方で考えますと,やはり行為能力がないといけないんじゃないかなと。

その場合に,ぱっと考えてよくある信託のパターンとして,民事的な信託で考えますと,おじいさんが孫に受益権を与えて給付しましょうといったときに,親に対して--済みません,行為能力というふうに考えると,未成年の場合は親に対して催告すると。

そうすると,親と子供との関係からすると利益相反関係になりますので,特別代理人みたいな形の選任が必要になってくると。何かここまで大掛かりなものが必要なのかなというのが一つ。

ただ,リスクがあるのであれば,これは仕方がないのかなと,自問自答ですけれども,そんな感じがいたします。

  ただ,通知義務というところで考えますと,果たしてこういうような義務というところまでのものが必要なのだろうかという気がいたします。

先ほどのシチュエーションでいきますと,多分おじいさんは親に対して教えたくないというのが普通ではないかなということですので,例えば未成年の子供の親が親権者であって,その人に対してしか通知できないとすれば--要するに通知したくないなというようなパターンというのは多いと思うのですけれども,そのときの対応ができないかなという感じがしまして,これが非常に異例なところだったらいいのですけれども,こういうような信託というのは割とよく考えられるのではないかと思いますので,ここら辺について通知義務というのはどうしても外せないものなんだよということであるとすれば,すべてデフォルト・ルールにしていただけないかなということです。

  ここの部分につきましては,後から議論の対象になります第46のところにも通じる部分がありますので,ここの部分についても同様の対応をお願いできればということでございます。

● 私の意見も○○委員とほぼ同じなのですけれども,それにつけ加えるという意味で,まず第45に関しての通知義務に関するお話と,それから第51についての若干の質問ということです。

  まず,第45につきましては,やはり通知義務というのはデフォルト化できないかということでございます。

  まず最初に,そもそも通知義務の有無ということについてのデフォルト化ということでございますが,これは,先ほど○○委員がおっしゃられたとおり,民事信託だったとしても,遺言信託で,先ほどは親に知らせたくないということもあったと思うのですけれども,そもそも本人に知らせたくないと。

例えば,私が死ぬまでは頑張って勉強してほしいと。もしこれが,実質上遺産が承継されるのであればもう努力することができないからということで,死ぬまで,ぎりぎりまで知らせたくないというニーズは意外と多いのではないのかなというふうに思っております。

そういったときにもあえて通知義務という形でしてしまえば,そもそもそういう遺言信託のスキーム自体が壊れてしまうことがあるのかなというふうに思っております。

  また,商事信託の場合でも,例えばエスクローにおいて,よく第1受益権,第2受益権という形で設定しておいて,ある条件が成就した場合に第1受益権の支払いがなくなって,第2受益権が発生するという場合がございます。

その第2受益権が多数の場合において,今度は受託者としての身勝手な話かもしれませんけれども,非常に事務コストが高い,かつ,そういうニーズが余りないという場合に,あえてそこまでする必要があるのかというような商事信託はあるのではないかというふうに思っております。

  そこで,これは質問もあるわけですけれども,ここで言う「指定された者」というものの概念自体が,一応受益権として確定している,特定しているという場合であったとしても,実質上経済的な効果があらわれたくないという場合においてもやはり知らしめるというのは不合理な場合もあるわけですので,そういう意味においても,通知義務というのはデフォルトとしておいた方がいいということもあるということでございます。

  それから,細かい話ですけれども,二つ目の通知義務者の任意化ということですけれども,特に当初,第46の問題は別として,最初の場合,仮に受益者保護の観点から何らかの通知が必要であるというふうにしたとしても,第45の,特に設定の場合においては,別に受託者がその指定された者に対して通知をする必要はないのではないかと。

委託者が直接通知した方がいいこともあるし,その方が便宜ということもあると思いますので,仮に通知義務は必ず必要であるというふうにしたとしても,通知義務者がだれであるのかということはなお検討の余地があるのではないかというふうに思っております。

  続きまして,第51の話ですが,これは質問ですが,先ほどの○○幹事の御説明及び部会資料の39ページから40ページにかけてのことでございますが,承認する場合に,「信託から生じる利益及び不利益を十分に認識したうえで受益を承認した場合」というふうに書いてございます。

最初の質問は,まずこれは要件なのかということです。次に,十分に認識していなかった場合に一体どうなるのかという話です。

3番目に,これが一番大事なのですが,だれがその説明責任を負うのかということです。

これは,まだ確定的に受益者になっていない者に対する受託者の善管注意義務ないしは忠実義務という話になるのか,そこら辺の理屈の話も含めて,ここの記述をなぜ「十分に認識」にしたのかということをお伺いしたいと思います。

仮にこれが例えば商事信託で,かつ金融商品云々ということであれば,それは業法の問題なのかなというふうにも思ったものですから,あえてこういう質問をいたす次第でございます。

● それでは,順次,可能な範囲でお答えいたしたいと思います。

  まず一番最初に,○○委員の方からございました,第45の規律が任意規定かどうかというところ,あるいは受益権の発生時期というところについてお答えしますと,受益権の発生時期は信託行為を設定したときであって,かつ受益の意思表示を要しないでというところは,これは基本的には任意規定でいいのではないかと。

○○委員もそれでいいのではないかとおっしゃっていただけたかと思いますが,任意規定でいいのではないかというふうに考えております。

もちろん,受益者の利益保護という観点もございますが,やはり信託を設定している委託者の意思にかなう,受益の意思を要しないで受益権を享受できるとする方が委託者の意思にかなうという点を重視しておりますので,委託者が受益の意思が必要だというふうに設定したのであれば,それを尊重していけばいいのではないかと考えているところでございます。

  もう一つの点は後で御説明するといたしまして,○○委員の方からございました通知の相手方につきましては,もしも相手方が能力が足りない方のような場合には,代理人ですとか,あるいは信託管理人に対して通知をするのであろうと思うところでございます。

  あと,○○委員とも重なりますけれども,デフォルト・ルールとできないかというところにつきましては,なかなか難しい問題がございまして……。

難しいというのは,できないという意味ではなくて,どちらがいいのかというふうに事務局では考えていると。

あくまで受益者の保護につながるという観点からすると,やはり強行規定的に考えた方がいいわけですが,しかし,今おっしゃったように,委託者の中には一定の時期が来るまで言いたくないというニーズは十分あるだろうと,それはやはり尊重する必要がある場合は幾らでもあるかと思います。

したがいまして,そのように信託行為で定めれば,基本的には任意規定ということで,通知義務を受託者に課す必要はないのではないかなという気がしているところでございます。

  ただ,その場合におきましても,全く通知しないでいいかどうかという点が一つございまして,これは○○委員からもございましたけれども,受託者がする必要はないだろうというのは,それはそうかと思いますので,その場合には委託者がすると。

更にそれを強行規定とするかどうかという点は問題でございますが,最初に私が言いましたところにかんがみますと,そこも委託者が信託行為で任意規定としているのであれば,必ず委託者が通知しなければならないというところまで強行規定にしなくてもいいのではないかというふうに,現時点では思っているところでございます。

  したがいまして,結論的には,全体的に任意規定であるということでいかがかと思いますが,もしも御意見があれば,是非とも,ここは受益者保護の観点にもつながりますので,伺いたいところでございます。

  それから,○○委員から御質問のありました(注1)の関係で,利益・不利益を十分認識した上でという点は,これは要件というか,それが前提条件だというふうに考えておりまして,認識しないでいた場合はどうかというと,それは結局,受益権の承認,いわば放棄権の放棄という効果が発生しませんので,また放棄できるというか,放棄の権利が奪われないということになると考えております。

  なお,だれが説明責任を負うのかという観点でございますが,これはやはり受託者ではないかと考えているところでございまして,確かに確定的な受益者にはなっていないとおっしゃられましたが,しかし,第45で説明しましたように,意思表示をしなくても,将来地位を失う可能性があるとはいえ,受益者になるわけでございますので,やはりそのような者に対して善管注意義務及び忠実義務を負う受託者が説明をするというのが筋ではないかと考えるところでございます。

  最後に,一番難しいのが,○○委員が御質問というかお話しになられました,自益・他益の区別の当否というところでございまして,実はこれは事務局としても困っているところでございます。

御承知のとおり,受益者に対して補償債務を負うかどうかという規律がどうなるかというのがやはり一番大きなところでございますので,それとの関係が決まらないと,ここについても議論がしにくいという点があるわけでございますが,私どもとしましては,自益・他益というのが確かに形式的な区別になってしまいかねないという点は懸念しているところでございまして,何か,例えば自ら利益を得ている者は放棄できないとか,そういう実態を踏まえた規律があれば,その方が本当は望ましいとは思うわけでございますが,なかなかそのような規律を明文的にすることもできないということもありまして,一応,自益・他益,しかも信託設定時で分けているというところで落ち着かせているところでございます。

ただ,ここは是非とも,ほかの先生方からも,よりよい規律の仕方があれば,御意見をいただきたいというふうに思っているところでございます。

  とりあえず,以上でございます。

● 先ほど○○委員が,生前は自分で,その後他人にという例を挙げられましたけれども,そういう場合をこれは必ずしも念頭に置いていないかもしれませんけれども,考え方によっては,自分を受益者にしている部分は自益信託であって,その後の2番目の,連続受益者の次のは他益信託だという形で適用することはできないわけではないかもしれませんね,形上は。

● 経時的にではなくて,同時的な場合ももちろんあるのですね。

  それで,○○委員がおっしゃってくださったように,これが問題になるのは,結局,受益権が権利的なところでだけであれば何の問題もなくて,もっと簡単な規律でできるところが,補償請求権という--補償義務というのですかね,逆に言えば,義務を伴う受益権だという話が日本ではあり得るので,そうすると非常に慎重にならざるを得ないということなんですよ。

だから,あそこのところが本当にクリアになって,補償請求権というのが,ほとんどの場合というか,本当にビジネスで,いわばジョイントベンチャーでやっているのだというような話,一種信託というスキームを利用しているだけであって,という話であれば,それはまたそれで別のスキームがちゃんとできると思うのですが,一般の信託においては補償請求権というのがどうなのかというのが根本的な疑問としてあるものだから,さっきのような話になる。

  もう一言だけ追加。第45の方が任意規定で,第51の基本のところは強行規定なのですね。第45についても,ほかの方と同じように私も確かめたかったので,2と3のところですね,さっきは言葉足らずで,通知義務と何とかについては,今おっしゃったように,これは任意規定だというふうにお考えだということですか。

● それは任意規定で……。

● 議論が残るけれども,一言だけ言うと,アメリカでも非常に大きな議論があって,ここで言うところの通知義務は米国統一信託法典では強行規定にしたのだけれども,採択した州ではそれを外している例が随分あるのです。ですから,非常に難しい問題だということはあるけれども,一応任意規定だと。

  第51の方は強行規定なんですよね。

● これは「信託行為に別段の定めがない限り」と,事務局としては任意規定だと考えておりますが。ですから,自益信託でも放棄できるということを信託行為に書いてあれば,放棄できるという形になります。

● これは任意規定でしょうね,恐らく。

● 分かりました。

● また議論があれば,後で伺うとして。

● 受益権の放棄の問題について,意見を述べさせていただきたいのですが。

  現行法に比して,今回の御提案の趣旨というのは,かなり費用償還請求が受託者の立場からしやすくなるという規定になっているというふうに受けとめております。

今,○○委員からありましたように,基本的に,規定の在り方が,間接的に受益者に無限責任を負わせる場面が増えるという規定になっているものですから,これは一般の人が商品として買う場合にはかなりのハイリスク商品になるのではないかというふうに受けとめられます。

そうするとすれば,もし一般の市民にこういったものが売られるということを想定されているのであれば,やはりこういった制度設計には慎重であるべきと考えます。

  それから,受託者の信託の運営という観点からも,信託の運営というのは信託財産の範囲内で行われるというのが本来的な在り方ではないかというふうに思います。

そうした運営が確保されるという観点からすると,制度設計の在り方としては,受益者に対して費用償還請求が行いやすい制度よりも,行いにくい制度を設計した方がいいのではないかというふうに思われます。

受益者の方に請求しやすいということになれば,どうしても管理が甘くなってしまうということは,これはあり得ることではないかということで,このような観点から,やはり受益者に対して簡単に費用償還請求ができるような制度設計というのはしない方がいいのではないかというような感想を持っております。

 このような観点からしますと,御提案になっておられますように,広く受益者に対する費用償還請求権を認めるような制度設計とか,あるいは将来的な受益権の放棄についても制限できるという制度については,やはりにわかには賛成できないものがあります。

仮にこのような制度をするのであれば,先ほど○○委員からも多少御意見があったやに思いますけれども,やはり受益者がリスクの負担といいますか責任の負担というものをきちんと認識できる形でないと,こういった責任を負わせるというのはまずいのではないかと。

そういった観点からしますと,受益権の放棄という形でこういった責任を課すよりも,やはりここはきちんと間接的な無限責任を課すのだというようなことを承諾するといいますか,そういった制度設計が本来あるべき形なのではないかというふうに思います。

● 今のも非常に根本にかかわる問題だと思いますけれども,若干私の理解を申し上げますと,第1には,デフォルト・ルールとして受益者に対する費用償還請求権というものを認めるのか認めないのかと。

仮に認める,多少この辺は認めた場合のことを考慮しながらできているルールがあると思いますけれども,いずれにせよ,認めるか認めないか。

 しかし,いずれもデフォルト・ルールですから,受益者に対する補償請求権を認めない場合にも,信託行為でもって認めるというタイプのもあり得るわけですね。そのときにこれらの規定がどうかというのが,また2段目で問題になる。

  恐らく今の○○幹事のは両方を念頭に置いておられると思いますけれども,両方ある意味では関連するものですから,先ほどから議論になっている,補償請求権のところのイメージが決まらないとなかなか議論がしにくいというところは確かにあるのですね。

ただ,補償請求権をどうするかについては重要な問題ですので,少し先延ばしして,皆さんの御意見をいろいろ伺ってから決めたいと考えていますので,ちょっと分かりにくい点があるのではないかと思います。

● 細かい点を2点と,一つ大きい点なのですが。

  細かい点は確認みたいなことなのですが,一つ目は,今お話がありました受益権の放棄の強行法規性ですが,第51の1は任意規定ですけれども,2は強行規定ですよね。

(注3)がある本文に書いてあるとおり,「これに反する信託行為の定めは許されない」ということですから,放棄しないというこの原案は,他益信託において放棄しないというふうに定めることはできないと。

これは確認です。それを前提に意見を申し上げます。

  二つ目の細かい点は,○○委員がおっしゃっているように,もう論点は出尽くしていると思いますけれども,私法のルールとしては,私の理解では,(注1)にある,利益・不利益を分かっていれば,いわばリスクが移転する,分かっていなければ移転しないということですから,それでいいと思いますね。

そういうふうに決まれば,業法などでは,説明しなければならないという義務を課すことがあって,それに違反すれば,行政処分とか,そういうものになるということです。

私法のルールでは,それはこうなる,こうなればああするというか,要は要件・効果ですから,ここでの考え方はそういう考え方,どういう考え方でどういうルールを定めるかということが問題だと思います。

  以上が小さな点です。

  大きな点は,○○幹事も○○委員もおっしゃっていることで,私は○○委員のおっしゃっていることに実質的には非常に近いのですけれども,多少違った表現で若干申し上げます。もう論点は出尽くしているかもしれません。

  私も,従来から,自益・他益というのは,そういう理屈は理屈として成り立ち得る理屈だとは思いますけれども,やはり非常に形式的でテクニカルではないかというふうに思ってきました。

  ○○幹事が既に御指摘されましたように,日本では,年金信託,運用型の信託,これらは,経済実態から言えば,年金であれ運用であれ,投資家というかお金を出す人がいて,その人へ運用益,あるいは年金の場合には年金の給付がなされる。

その仕組みをどう作るかというのは,必ずしも信託の仕組みだけが使われてきたわけではありませんで,年金の場合で言えば,保険会社も運用してきているわけですから,保険の仕組みも使われているわけです。

  いずれにしても,そういう中で,信託を使う場合に,自益という形を使うものもあれば,他益という形を使うものもある。

もう一つ違ったタイプとしてつけ加えるならば,流動化型と呼ばれているものでも,他益でつくっているものもありますし,自益でつくっているものもあります。

  例えば,証券取引法を適用するために,金銭債権信託と言っていますけれども,証券取引法2条2項1号という有名な類型がありますけれども,わざわざ自益にして,それはなぜわざわざ自益にするかというと,委託者兼当初受益者をもって証券取引法上のみなし有価証券の発行者にして,そこに証券取引法上のディスクロージャー義務をかけると,こういう構造をつくり出すために,言ってみればテクニカルに,本来なら他益でも自益でもいいはずなのですけれども,私法上の仕組みから言えば,それをわざわざ自益につくっているという例があるわけです。

  したがって--という言い方がいいかどうか分かりませんけれども,自益・他益という区別は,少なくとも今行われているものについては,この放棄という点について説明が非常につきにくい。もしルールを分けるとしますとですね。

  それで,実態はというと,よく外国で使われる言葉ですけれども,○○委員や私がよく使っている,「ディールかギフトか」という言い方をするのですけれども,信託の仕組みの原因関係というのでしょうか,「商事か民事か」と言ってもいいのかもしれませんけれども,これが,ギフトというか贈与であって,受益者が何かただでもらうというような類型のものと,私が言いましたように,商事の場合,多くは,受益者となる者というのは実質的な経済的出捐をしているのですね。

それを投資と呼んでもいいかもしれませんけれども。したがって,それに見合った利益なりリターンを受け取ろうとする。

年金の場合でも運用の場合でもそうです。これを分けた方がよくて,最初に,もし線引きが自益・他益以外の線引きだとすると,利益をどうこうという話があったのですが,私は,本質的なのはむしろ,もしも今の言葉を使うとすれば,ディールなのかギフトなのかという気がします。それが一つの区分の基準になるように思います。

  もう一つの区分の基準は,何度も出ていることですが,利益を受ける話なのか,マイナスの義務を負う話なのか。費用償還でも,信託財産でカバーされる範囲なら恐らくいいと思いますけれども,それを超えて追加出資義務を負うという話になりますと,放棄という意味はそれを追わないという意味ですから,単に増えるプラスをもう結構ですというのとは,少なくとも経済実態としては側面が違うということが言えるかと思います。

  そういうふうに考えますと,ではどうしたらいいかということなのですけれども,私の感想で自信はありませんけれども,実質論で言うと,ディール,すなわち,投資家というか受益者となる,譲受人の場合もありますけれども,実質的な出捐をするような場合には,これは先ほど○○幹事もおっしゃったことですけれども,いわゆる有限責任と我々が呼んでいる,つまり追加出資義務は負わないという線を引くのが基本的な考え方ではないかと思います。

ただ,例外的な類型として,例えば土地信託のような場合には,当事者間で,共同事業というのでしょうか,利益も分け合うしリスクも分け合いますと,そういう特約というか契約があってもいいと思いますけれども,一般的な運用型や年金型のものについては,基本的には,信託以外の法形式のものはすべて,匿名組合であれ,有限責任組合であれ,それから株式会社であれそうですけれども,出資者の有限責任というのは法律上のルールになっていますから,原則はそういうことでいいと思います。

細かいことを言えば,金融商品の世界には,追い証というのでしょうか,後から追加義務を負うものもあるし,私法上の法形態で言えば組合形式の出資組合もありますので,いろいろ例外はあり得ると思いますけれども,基本的な考え方としては,若干の例外的な場合を除くと,基本的には契約で定めるけれども,デフォルト・ルールは有限責任であり,場合によっては有限責任を強行規定とするという考え方ではないかと思います。

  これに対して,民事というかギフトの場合ですけれども,これは普通は利益が来るだけで,恐らくマイナスになって追加出資という話は,まあ費用償還がどういう場合になされるかにもよりますけれども,余りないとは思うのですけれども,しかし,この資料にも書いてあるのですけれども,全然知らないところで自分が物をいただくような場合であっても,やはりそれは放棄する自由はあるでしょう。

それは全くそのとおりだと私は思います。特に日本の場合には,余計なことですけれども,税制なども,他益ならば贈与,自益ならそうでないというのが基本的な考え方で,特定贈与信託でしたか,要するに特別な社会政策上の理由がある場合だけ免税にしているという,そういう影響もありますので,ですから具体的に言いますと,財産が他益で来ても,キャッシュ・フローはないけれども税金は納めなければいけないということになっていますので,まあそれは付随的な理由ですけれども,いずれにしても,利益を受けても,やはり受けたくないという事由は当然あってしかるべきだと思いますので,民事の方はやはり原則は放棄オーケーであろうという気がいたします。

  それで,そうだとしますと,どういうふうにルールを設けたらよいかということなのですけれども,いろいろなつくり方があるのですけれども,一つは,もちろん,放棄という概念を使わないで組み立てるということも,費用償還プラスなんかで考える,利益の放棄とかで考えるということもあるかと思いますけれども,もし現行法との連続性を重視するのであれば,放棄は原則できることにしておいて,先ほど言いました,商事のある種の類型のものについて実質有限責任を認めるような形でのみ線を引いておく,つまり,放棄はできるのが原則だけれども,制限もしていいけれども,その制限の限界をうまく書ければ書くというようなのも一つのアプローチだと思います。

一言で言えば,やはり自益・他益というのはちょっと,これは○○委員がおっしゃったことだと思いますけれども,見誤るおそれがあって,それを使って全部書いていくと,何かうその上にうそを書いていくと,最後はうまくおさまるようなルールが書けるような気もするのですけれども,まだこの段階で私も名案はありませんけれども,もうちょっと違った概念を使ってうまく妥当なルールが書けるような気がしています。

● たくさん重要な問題点が指摘されたと思います。

  ディールとギフトの区切り方の問題ですけれども,例えば,ある人が出資というのでしょうか,お金を出して,自分が受益者になる,自分が対価としての受益権からの利益を享受するという場合には,これは○○委員の言われたディールの方に当たるのですね。

その受益権を自分自身が享受しないで,だれか別な人間に与える,そうすると,他益信託の形ですけれども,そのときの受益者というのは,確かに自分自身は払っていないけれども,○○委員のあれだとギフトになるわけですね,そのときに。

● そうなのですけれども,例えば証券投資信託の仕組みなのですけれども,形の上だけ言いますと,委託業者と呼ばれている会社が,出資というか,信託受託会社にお金を渡すのです。

それによって投資信託が成立するのです。そして,その受益権を分割して,直接,いわゆる投資家に売るわけです。

しかし,委託会社はお金を出してギフトしているという実態はないのですね。

それはどういうことかというと,当初,他益信託というテクニックを使っていますけれども,投資家からお金を集めて,その集めたお金を委託会社は受託会社に渡しているのです。

ちょっと時間的な順序として,したがって,信託がいつ成立したか,信託が成立するそれまでどういうのか,いろいろ細かい法律問題は別途ありますけれども,それもそもそも他益信託と構成するから生じる法律問題なのですけれども,まあそれは立ち入りませんけれども。

  ですから,今,○○委員のおっしゃったあれで言いますと,私がディールと呼んでいるものというのは,だれかお金を出して人に利益を帰属させるという類型は含まなくて,それはそういう意味で答えはイエスなのですけれども,多くの運用型のものというのは,合同金信でもそうですけれども--合同金信というのはもちろん委託者兼受益者になっていますけれども--証券投資信託の場合でも,形はといえば委託会社がお金を出していますけれども,お金は自分が出して人に与えているのではなくて,実質的には受益者が出しているということなのです。

ですから,そういうものとギフトというのは,世代間承継が一番典型的だとは思いますけれども,お金を出すという類型はほとんどなくて,財産管理して,そのベネフィットを,伝統的な英米における民事信託だと思いますけれども,子供とか次の世代の人に承継するという,そういう類型です。

● 私は,この区別自体はそんなにたくさん議論しなくてもいいのかと思いますけれども,ちょっと十分私が理解していないせいもありますけれども,今のように,委託者に相当する人が自分の持っている財産というか,土地だとかそういうのをだれかに信託でもって与えると,これはある意味で一種の贈与の違った形だと思いますので,こういうのは典型的なギフトなんでしょうね。

  ただ,委託者が金銭でもって出資はしているけれども,金銭をいきなり受益者に与えるのではなくて,いったん受託者に信託という形で運用してもらって,その利益が別な人間である受益者に帰属するという形をとると,これは形上は,要するに自益信託の形でもって委託者が自分でその信託からの利益を享受するタイプと余り変わらないような気がするのですね。つまり,他人にその信託の利益を与えるか,あるいは出資した自分自身が享受するかというのは余り変わらないような気がして,だから,○○委員,むしろこういうのはディールでいいのですか。

● いや,もう同じことを言っていると思うのです。私は,自分が出資して他人に利益を与えるというのはないと思います。

したがって,結論は○○委員がおっしゃっているとおりで,ディールなのですけれども,ないというのはどういうことかといいますと,証券投資信託以外の例を例にとってもいいのですけれども,実質的な出捐をする人がいまして,年金の場合で言いますと,自益信託の場合でもいいと思いますが,厚生年金基金という仕組みがどうなっているかといいますと,受益者となる人,結局,年金基金が委託者兼受益者になるわけですけれども,それは基金に法人性がありますから,ですから,それが出していて,その利益はというと,これは自益信託という形ですけれども,実質的には受給者なのですけれども,しかし,お金はもともとどこから出ていますかと言われたら,それは受給者というか,加入者と企業がどのぐらいの割合を出すかという問題はありますけれども,実質的な出捐をしている人がそこにいるわけですね。

  では企業から見ればそれは寄付しているのかというと,もしそういう議論をしていけば,それはそうではなくて,それを企業と見るかどう見るかという問題はありますけれども,働いた対価として払っているわけですから。

ディールというジャンルにおいては,ある人が出して,そのベネフィットを自分ではなくて他人に帰属させるというのは,形式的にはあるのですけれども,実質的にはそういう類型はなくて,そういう意味で,ディールかギフトかというのは非常に--○○委員がおっしゃろうとしているのは,あの類型というのはすべてディールに含めていいというふうに私は思います。

● この区別は,区別自体に,ここでそれを延々と議論するわけにはいかないと思いますけれども,先ほど○○委員が言われたように,どういうルールをそれに結びつけるかということとつながるとなると重要な問題だと思いましたので,ちょっと言及しましたけれども。

● ○○委員も○○幹事も,私の思いをもっと上手に言葉に変えて下さっているので,本当に有り難い。

  それで,○○委員のおっしゃっていることは,今,ディールとギフトという話は出ましたが,ディールですら受益権を放棄することができるというのがデフォルト・ルールですよということをおっしゃっているので,そこが一番--つまり,余りディールとギフトというのをこの場合は区別しなくてよいというところの方が重要なので,その点だけは確認をしておきたい。

  もう一つ言うと,39ページのところで,そうじゃないよと。自益信託については,ここの真ん中の文章で,委託者兼受益者が自分で設定しておきながら自由に後から離脱することは,「受託者をはじめとする利害関係人に不測の損害を与えることにかねず」と。

不測の損害を与えることには絶対ならないでしょう。

受託者は信託契約の当事者なのですから。だから,これをこういう形でデフォルト・ルールだということにして,しかし原則はこうですよとうたってしまうのは,これが何より受託者のための信託だということをはっきり出したいということ以外のものではなくて,「公平の見地に照らしても妥当ではない」というのも,受託者サイドに立っているだけで。受託者は絶対に不測の損害にはならんのですよ。ということなんですね。

 だから,デフォルト・ルールはやはり受益権を放棄することができるということに商事の世界でも普通はなっているでしょうというところを○○委員が強調してくださったので,それは非常に私は共感するところです。いわんや民事をやという。

● 根本的な話ではないところで,かつ,私の単なる聞き逃しかもしれないのですが,第45の3の催告権で,その期間内に応じなければ受益権を放棄することができないという話と,第51の受益を承認するということとの概念の関係というのはどうなっているのでしょうか。

● これも非常に重要な問題ですね。

● 今の御指摘ですが,直接的な関係ではないのではないかと。

といいますのは,第45の3というのは,催告して返事がないと承認とみなすということでございまして,これは積極的な意思表示がないわけでございます。

第51の方は,自らがリスクを知った上でそれを承認するという能動的な意思表示がある場合ですので,両方はちょっと局面が違うのではないかという気がいたしますが。

● しかし,第45の3の効果は,受益権の放棄ができなくなるということですよ。

● 効果は同じになりますが。

● そうすると,催告に応じて,このときには内容のリスクとかの説明がなくても,答えなくても,受益権の放棄ができなくなると。

● 失礼しました。当然のことながら,その催告の中で,どういうリスクがあるかということは十分伝えた上で,その上で何も意思表示をしないと,この提案では承認とみなされるということですので,受託者としてやるべき,あるいは催告者としてやるべきことは同じ,リスクの提供というか説明ということにはなります。

それで,その効果も同じでございますが,受益者がやることが異なりまして,第65の3では,無視すると承認とみなされますということでございます。

● その議論には2点疑問があるわけでありまして,先ほど,受益者であることのリスクの説明義務はだれが負うのかという話につきまして,受託者という話が出たわけですが,第45の3は,受託者その他の利害関係人に与えられている催告権でありまして,受託者がその説明義務を負うという第51のところと必ずしも整合的ではないのではないかというのが,第1点です。

  第2点は,第51のところで述べておりますような,リスクを引き受けるというふうな,受益権を放棄する権利を放棄するという積極的な行為は,自益信託・他益信託の問題はともかくとして,リスクを十分に分かった上で受益権を放棄する権利を放棄するという意思表示をしたならば,それは放棄できなくなるだろうと私も思います。

しかしながら,それは,催告期間内に催告をしなければそういうサンクションを課すことができるかという問題とはやはりかなり違うのではないかという気がするのですが。

● 前段でおっしゃいました点は,御指摘のとおり,第51であれば受託者が説明義務があるのに,第45の場合はどうかというのは,確かにちょっと整合性を欠くような嫌いがありますので,そこは検討させていただきたいと思います。

後段でおっしゃいました点でございますけれども,正におっしゃるところを私が最初にちょっと申しましたが,我々として果たしてどちらがいいのかというふうに迷っているところでございまして,一応ここでは現状を追認するという形で,無視したら承認とみなす,放棄ができなくなるとしたわけでございますが,しかし,それはやはり受益者にとって酷ではないかと。

特に遺贈の場合であれば,あれはたしか遺贈の限度で責任を負うという形に,承認とされても,なるわけでございますけれども,こちらの方では,原則として,もしも補償債務を負うような信託の設定がされていれば,それによって受ける利益を超えてまで責任を負うということにもなり得るわけでございまして,より一層受益者に対しては酷ではないかという懸念もあるところでございます。

ですから,ここは果たして受益権を放棄することができないとするのがいいのか,それとも,この場合には,受益権を放棄した,あるいは受益権を承認しなかったものとみなすのがいいのかというあたりにつきましては,正に問題視しているところでございまして,御意見をいただければと思いますが,今の○○幹事の御意見は,どちらかというと,この場合にはむしろ受益権を承認しなかったとみなした方がいいのではないかというふうに理解させていただいてよろしいのでございましょうか。

● かつ,先ほどの説明義務者の問題もあるのですが,受益権を放棄する権利を放棄するというのと,期間を区切られて何かするというのとはかなり性格が違うものであって,受益しなかったことになるというのならまだよろしいのですけれども,その間に,大丈夫です,それじゃ受益者になりますというふうに言えば,受益権を放棄する権利を放棄するという効果まで導けるのかというと……。

もちろん,信託から生じる利益・不利益を十分認識した上でそういう承認行為を行うという要件を当てはめれば,それはそれでよいのかもしれませんけれども,私は,第51のところにこのような規律があるのであるならば,第45の3の規律自体が不要なのではないかという気がいたします。

● 今の点は非常に重要な問題ですね。

● 今までの御意見の単なる整理だけかもしれませんけれども,二つの問題があって,実態としてどういう信託の場合に無限責任を負わせるのかという問題で,その切り分け方として,自益か他益かとか,あるいはディールがギフトかとか,あるいは,今日の御提案の中では,49ページに証券化されている場合は別だというような切り分けもある。ということで,まず,どういう類型について認めるかという問題が一つあると思うのです。

  もう一つの問題は,リスクの移転をどういうふうにしてするかということがあると思います。

  そこでいろいろなのが出ているのですが,幾つかの違った問題があって,受益者の能力が限定されているから何らかの手続的な保護が必要だと。

それは,例えば意思表示の受領能力をどういうふうに考えるのかとかいうこととも関係しまして,民法第98条の適用だけでいいのか,それ以上必要なのかという問題があると思います。

それから,行為能力の問題とは別に,例えば消費者である場合に,消費者契約法4条の2項のような不利益事実の不告知というような発想もあり得るのではないか。

更に,いずれでもないとしても一般的に説明義務を課すということがあり得るのではないかと。どうも手続的にどの時点でリスクを移転するのかについてもいろいろな考慮要素があると思うのです。

  大きく分けてその二つの問題があるのですが,その根っこにあるのは,なぜ無限責任を負担させることができるのかということがどうもよく分からないのです。

何となくそれが前提になっているようなのですけれども。負担をさせることが可能であって,それを幾つかに分けたりして,一定の場合にはさせる,させないというような考え方ですが,むしろ,そもそもなぜ負担させることができるのかという,そこがもし明確になれば,ではこの場合には負担させようというような逆の発想になるんじゃないかなというふうに思います。

● 先ほどの議論にも関連することですが,まだ考えがまとまっていないわけなのですけれども,信託から生じる利益及び不利益を十分認識した上ということで,先ほどの○○委員のお話にもつながるのですけれども,要件・効果という話なのですが,仮に忠実義務ということで手続義務が発生しているということであれば,それを履行しなかったという場合は,単に債務不履行ということで,損害賠償というようなことで,受益者となった者が受託者に対して損害賠償請求をすればいいという話になるのではないのかなと思っています。

例えば,私法上の契約の中で,十分に利益を説明して認識した上で回答しなかった場合の効果として,効果があらわれないと,これは当然,同意を得たか得ていないかという,そういうレベルの問題はあるわけですけれども,説明義務をいったん与えておいて,それの効果を発生させないということが,ほかの法体系と比べてどうなのかというのがちょっと分からないわけです。

むしろ,先ほど○○委員がおっしゃられたように,それは例えば消費者保護法であるとか,又は業界の金販法であるとか,そういうところで整理されて,それなりのペナルティーを与えるというふうに整理した方がいいのではないかなというふうには思っているわけなのですけれども。

  余りまとまった考えではないわけですけれども,ちょっとコメントいたします。

● 非常に大きな枠組みとしては,どういう場合にどうするかは別として,デフォルト・ルールが受益者の有限責任になるか無限責任になるか。

もちろん,放棄はどっちもあり得るのですけれども,特に補償請求権との関係で言うと,無限責任の場合には放棄というのがセットになって,一定の場合に受益者が放棄すると,その利益が守られるというのでしょうか,要するに無限責任をどこかで打ち切ることができる,恐らくそういう構造がまず大きくあるわけですね。

そのときに,さっきからの繰り返しになりますけれども,どこをデフォルト・ルールにするかによって後の問題が微妙に変わってくるという問題があります。

ただ,いずれにせよデフォルト・ルールですから,仮に有限責任だというのがデフォルト・ルールになっても,無限責任を信託行為で設定する場合があり得て,そのときまた,放棄はどうするか,その放棄のための要件というのは,今問題になったように,どういうことを説明して放棄できるようにするかということにつながってくるのだと思います。

その全体の構造について今いろいろ御議論いただいているところだと思います。

● これは,端的にこの要件というのは明文化されるわけですか。それとも,当然,私法上の考え方として,こういう認識をした上でなければそのような効果が発生しないというふうに読み込むということですか。

● 仮に条文に書かなかったとしても,恐らくそういうことが読み込まれた要件になるのではないでしょうか。

● 条文化するかどうかということはともかくといたしまして,十分なリスクの説明をしない場合には,承認という効果を生じさせることはできないということで,書かなくても当然前提要件になるということでございます。

● 錯誤無効とか,そういう法理とはまた違った法理でやるということですか。

そんなことを知ってなかったからこうしたんだよと,そういうものではなく,正しくこういう規範があって,この規範に反したからその効果が発生する,発生しないという,そういうことですか。

● 錯誤無効というか,承認という効果が生じないという意味で言いますと,その承認自体が錯誤と言えば言えるかなと思いますが,いずれにいたしましても,説明義務に違反した場合には損害賠償責任が問えるか否かというような話ではなくて,やはり説明義務を果たさない場合には承認という効果を認めることはできないというふうに考えているところでございますし,その方が受益者の保護には資すると。

損害賠償責任を問えるということよりは,やはり放棄できるという方が恐らくはるかに受益者の保護には資するというように考えているところでございます。

● この第45の3ですけれども,私も先ほど○○幹事との間でもって議論になりましたけれども,○○幹事がさっき言われたのは,この段階での承認という問題と,放棄という問題は恐らく別な問題で,この催告期間が何も意思表示がなくして徒過したときに,受益権を一応承認したものとみなされるけれども,しかし放棄はまた別ですよと,放棄はまた後からできますと。最後に言われたのはそういうことでしたか。

● ○○委員がおっしゃった問題とも関係するのですが,結局,受益の承認というものをどこまでドラスチックなものとしてとらえるかということだと思うのです。

  これは,リスクを完全に理解した上で,マイナスが出たらそれは支払いますという意思表示であるというふうに言って,そしてそれはそういう意思が特別に表明されたからそういった効果を生むのだ,そういった義務を受益者が負うようになるのだと,こういうふうに解しますと,やはりなかなかそれは認められないという方向になってきて,そう催告をして,何日間以内に答えよというふうにせっつけるような話ではないだろうという感じがするわけですね。

  それに対して,そうではなくて,受益権の承認というものがあれば自然にそういうふうな効果が発生するんだよと。

もっと類型的な話で,場合によっては,それはこんなリスクがあるとは思いませんでしたというのは正に錯誤の問題として処理されるようになるかもしれないけれども,受益者になりますという定型的な意思の中に含まれているものとして一応は考えていくんだよというふうになりますと,非常に軽いものになって,こういう催告とかにもなじむ形になると思うのです。

  私自体は前者のように理解していて,かなり分かった上で,ここの場合は引き受けるというふうに言った場合にそういう義務を負うのだと考えていますので,そうすると,やはり催告などという制度にそもそもなじまないのではないかというふうに申し上げたわけであります。

● 恐らく,受益権を承認するというときに,少しレベルの違う承認というものがあるのですね。

● そういうふうに考えてもいいのかもしれませんけれども。

● これは,例えば,信託設定してすぐに最初の段階でもって放棄するかどうかということを催告して,信託設定の段階でもう既に受益権を放棄させるようなことができるという,そういうことになるんですかね。

● 設定の段階で催告することも,この規律を維持すれば,できるということになります。

  事務局としても,受益の承認というのは大ごとであると,○○幹事のおっしゃる前者の方の考え方だというふうには考えておりまして,それであるからこそ,十分な利益と不利益の認識が必要だと考えているわけでございます。

  それにもかかわらず,いつまでたってもそのような責任を負うのかどうかというのが分からないということになると,先ほどちょっと御批判もありましたが,関係者にとっては不安定であるということから,この催告という規律を設けたということでございまして,私が勝手に思うところでございますが,○○幹事の御趣旨からすると,催告は認めるけれども,意思を表示しないときは承認しなかったものとみなすということでは足りないということになるのでしょうか。

● むしろ承認じゃないの,単なる催告の場合には。

● いえ,承認してしまうと,放棄……。

● 放棄をできなくなるような承認というのは,もっとちゃんと内容を,リスクなどを与えた  ……。

● ○○委員の放棄二元論と,○○幹事の放棄一元論とのあれですが,放棄一元論の質問として回答いたしますと,おっしゃるように放棄とみなすということでもよろしいのかもしれません。

  それと,ついでに言わせていただければ有り難いのですが,今,自益信託,他益信託という切り口での問題点が指摘されているのですが,それも確かに問題だと思うのですけれども,仮に放棄する権利を放棄するということの受益権の承認というものを結構大ごとのことだととらえましたときに,自益信託で最初につくった人,当初受益者が承認をしたから,その後は当然に承認の効果が続いていくんだよと。

これは,他益・自益と分けているから何かすごく違和感がありますけれども,結局,当初受益者であろうが,途中の受益者であろうが,だれかが承認したら,その後はずっと承認になるというだけの規律だと私は思うのですけれども,そこが本当にそれでいいのか。

それは,本当に金融商品として受益権が販売されるというふうに考えたときには,金融商品の販売にかかわる規律だけで本当にいいのか,それとも信託の問題としてそこは考えていかなければならないのかというところが実際には問題なのではないかということを,ちょっと一言だけ申し上げておきます。

● ちょっと混ぜっ返すような話になってしまうかもしれませんが,受益者に対する補償請求権があるという前提でこの辺が考えられているので,それ自体がどうもやはり信託の議論としてすごくおかしい。

日本の信託法ではおかしくないのでしょうけれども,○○委員がいつもおっしゃっているようなことで,すごくおかしい感じがして,例えば,受益者が無限責任を負うのだというのを信託行為で設定できるという前提でずっと議論が来ていますけれども,それも私は実はついていけなくて,受益者が無限責任を負うことを承諾したら,その受益者は無限責任を負うという,そういうレベルで考えていただくと,それと今の承認とか放棄とか,もう一段上のレベルの意思表示がないと,やはり受益者は無限責任を負うのは酷ということになってしまうのではないかというふうに考えています。とりあえず私の考えはそういうことです。

● 先ほどから繰り返しているだけですけれども,仮にデフォルト・ルールでもって,原則として受益者に対する補償請求権がない,だけど信託行為で定めれば補償請求権が発生するという考え方は,これは恐らく○○委員も--私が勝手にそんたくしてはいけないかもしれないけれども--特約で定めれば,それはしようがないだろうというぐらいはお考えなのだと思いますけれども,これは確認しないと。後でまた議論します。

  そうすると,信託行為のレベルでもって補償請求権が書かれてしまうと,これは従来の議論は,それはしようがないといいますか,その場合には補償請求権は発生するでしょうということを一応前提に議論してきたのですね。

 それで,今の○○委員の御意見は,信託行為でただ書くだけでも足りないのではないかと。無限責任を負うというのであれば,そのこと自体についてのもっとはっきりした承諾がなくてはいけない,そういう御意見ということでしょうか。

● はい。

● いろいろ御意見をいただきました。まだもうちょっと詰めなくてはいけない問題,特に補償請求権との関係でまだ議論があると思いますので,また全体をどこかでまとめて議論できるチャンスがあるといいと思います。

● 議論を余り継続するつもりはないのですけれども,もともとこの放棄のところは,今回は私も意見を言わないでおこうと思ったのですけれども,それは基本的に,先ほど来出ておりますように,受益者に対する補償請求権というものがどう決まるかによって,例えば先生方がおっしゃるような形で,もともとデフォルト・ルールとして受益者に行けませんということであるとすると,変な話,せめてこれぐらいのことはやってくださいよという話になりますし,それが逆転すると,私どもの方は,やはりもっと手当てをお願いしますというような話になりますので,基本的には,やはりそちらの方を詰めていただいてということでないと,なかなか私どもの方としても意見が申し上げられないかなという感じがいたします。

● せっかく1回だけ機会をいただいたので,二つだけ。

  ○○委員のおっしゃるように,私は--○○委員は,こういう極端な場合というのですか,全部書いてあってというところまでは樋口は否定しないだろうとおっしゃる。

それはそうなのですけれども,それは英米的な感じで言うと本当は信託ではないのですね。パートナーシップですから。

共同事業だという話で,双方リスクを負いますよという,そういう枠組みになりますので。

受益者に無限責任を課しているような信託というのは本当はないと私は思っているのです,英米では。だから,○○委員のおっしゃるような感じの方が私は近いのです。

  それから,○○幹事がおっしゃった,いったん承認したら後どんどん行くというのも,これは本当に金融というかそういうのとして大丈夫なんだろうかという点についても共感します。

● 二,三点補足いたしますが,先ほどから議論を伺っていますと,事務局の提案は補償請求権を前提に,受益者に酷な規律を前提にしているのではないかというようなお話があって,気にしているところでございますが,事務局としてはあくまで中立でございまして,どちらがデフォルト・ルールになるかというのは,全くまだこれから議論したいと思っているところでございます。

 ただ,○○委員が何度もおっしゃっておられますように,いずれにしてもデフォルト・ルールでございますというのが一応の考えでございますので,そうすると,仮に原則補償請求がないとしても,デフォルト・ルールですので,特約で定められれば,そのときには当然このような規律は必要になるだろうということで提案しているということを,是非とも御理解いただきたいと思います。

  あと,いったん承認したら後ずっと放棄できないのは酷ではないかというのは,事務局としてもそういう問題意識は持っておりまして,以前には,そういう場合は担保責任の規定で当事者間で処理すればいいのではないかということも申し上げたことはございますが,それに対してはいろいろな御批判もいただきまして,そのような,担保責任であるのか,あるいは,先ほど○○委員がおっしゃったように,そういう場合は個別的に承諾したら責任を負うというふうに個々に決めるべきなのか,そこら辺につきましても,なお,今日いただきました御指摘を踏まえて検討したいというふうに思います。

● それでは,次のセッション,「受益者を指定又は変更する権利について」の説明をお願いします。

● それでは,続きまして,第46の「受益者を指定又は変更する権利について」を御説明いたします。

  信託行為により受益者として指定された者は,受益の意思表示を要することなく当然に受益者となる等につきましては,先ほど御説明いたしましたとおりでございます。

この規律によりますと,原則として信託設定後は委託者等が受益者を変更することは許されないということになります。

ただし,現行法や第45の提案におきましても,信託行為で別段の定めを置くことは許容しておりまして,これによりますと,信託行為で受益者変更権を自己又は第三者に与えている場合には,当該権利の行使によって受益者の受益権を失わせることができるものと解されます。

このような別段の定めは,遺言代用の信託を始め,主として民事信託において有効に活用することができると考えられますが,現行法のもとではその法律関係が明確ではありませんので,その明確化を提案するものでございます。

  まず,1及び2でございますが,これは受託者以外の者による受益者指定権等の行使を定めるものでございます。

  ここで,受益者指定権及び受益者変更権について特に定義を設けておりませんが,受益者指定権とは,受益者が受益権を放棄した場合,あるいは受益権が受益者の一身に専属していたときに受益者が死亡した場合,これらの場合において信託存続中に受益者が存在しない場合に,新たに受益者を指定する権利と考えておりまして,変更権というのは,受益者が存在しているにもかかわらず,その受益権を剥奪して別人を新たに受益者と指定する権利と考えております。

  まず,1でございますが,これは,受託者以外の者が受益者指定権等を行使する場合においては,受託者に対する意思表示によってするものとして,その行使方法を提案しております。

その結果,指定権等の行使の効果は,受託者に当該意思表示が到達したときに生ずることになります。

  次に,2でございますが,受託者以外の者が受益者指定権等を行使する場合におきましては,遺言によってもすることができることを提案するものでございます。

他方,遺言による受益者指定権等の行使の効果は,遺言の効力発生時,すなわち,受益者指定権等を有する者が死亡したときに生ずることになりますが,遺言は,相手方のない一方的かつ単独の意思表示でございますので,受益者指定権等を有する者が死亡してから受益者指定権等が行使されたことを受託者が知るまでに一定の期間を要し,その間に受託者が,これらの権利行使がされていないという前提のもとで,従前の受益者であった者に対して信託から生ずる利益を交付すること等が考えられるところでございます。

そこで,このように遺言によって受益者指定権等が行使された場合の特殊性を考慮しまして,この場合におきましては,その内容が受託者に通知され,又は受託者がこれを知っている場合でなければ受託者に対抗できないものとして,遺言の存在及び内容を知らない受託者の保護を図ることとしております。

  次に,3は,受託者以外の者によって受益者指定権等が行使された場合の受託者の通知義務に関するものでございます。

  まず,(1)は,受益者指定権が行使された場合における通知義務について提案するものでございます。

指定権が行使されることにより新たに受益者として指定された者は,信託行為により受益者として指定された者と同様に,信託の利益を共有することに関して意思表示を要しないということになります。

その場合におきまして,受益者として有する各種の権利,これは配当を受ける権利にとどまらず,受託者に対する監督権能なども含むわけでございますが,このような権利を行使する機会を確保するためには,指定された者に対して受益者であることを認識させることが必要であると考えられます。

そこで,第45,先ほど説明しました「受益者の利益の享受について」と同じように,受託者の通知義務を提案するものでございます。

  (2)は,受益者変更権が行使された場合の通知義務について提案するものでございまして,変更権が行使されることによって受益者としての地位を失う者は,受益者変更権が行使されるまでは,将来にわたって受益者としての信託の利益を享受し得ることについて期待を有していると考えられます。

そこで,受益権を失ったことについての通知義務を受託者に課すことによって,    この期待が実現しないことを認識させ,地位を失った者が不測の損害をこうむることを防止しようとするものでございます。

  なお,この場合におきましては,新たに受益者として指定された者に対しても通知をすべきことは,先ほど説明したところと同様でございます。

次に,4でございますが,これは指定権者又は変更権者が死亡した場合に関する提案でございまして,指定権者が死亡した場合におきましては,信託行為に別段の定めがない限り,信託は終了するものとしております。

  それから,(2)でございますけれども,変更権者が死亡した場合につきましては,現在受益者である者に確定的に受益権が帰属するとしております。

もっとも,信託行為において後継の受益者変更権者の定めをしている場合や新たな受益者変更権者の選任方法が定められている場合には,受益者は確定しないとしているところでございます。

  最後に,5でございますが,これは受託者が受益者指定権者又は受益者変更権者である場合の特則に関する提案でございます。

  まず,(1)は,受託者が受益者指定権等を行使する方法に関するものでございまして,これは,受託者が自己に対して意思表示をするという1の規律によることができませんので,これとは別に規律を設けることといたしまして,まず,受益者指定権等の行使につきましては,新たに受益者となる者に対して意思表示をすべきであるというのが①でございますし,それから,変更権の行使につきましては,②のとおり,地位を失うものに対して意思表示をするというふうにさせていただいたところでございます。

  (2)につきましては,原則として,先ほど言いましたとおり,指定権等の行使は遺言ではできるわけでございますが,受託者が指定権者等である場合につきましては,遺言によってはできないということを明記したものでございます。

  (3)でございますが,これは,受託者が受益者指定権等を有する場合において,その受託者が受益者指定権等を行使せずに死亡した場合に関する提案でございます。

このような受益者指定権等の行使というのは,信託事務処理の一環であると考えられますので,このように受託者が死亡した場合には,受託者の交代に関する規律に従いまして,新たな受託者がその受益者変更権を承継するというふうに考えられると思います。

したがいまして,この場合には,先ほどの受託者以外の者が指定権を有する場合と異なりまして,受託者が死亡したとしても信託は終了しませんし,死亡した受託者が変更権を有する場合においても,受益者はこれによっては確定しない,新たな受託者がまだ指定権ないし変更権を承継しているからであるというふうに考えるものでございます。

  最後に,(注)において書かせていただきましたのは,受益者変更権の濫用防止について検討したものでございまして,信託行為により裁量的に受益者指定権等を行使できることとし,その指定権等を行使することによって受益者となった者から対価を得ることは,受益権を分割して譲渡することと同様の経済的な利益を享受しているとも考えられます。

そこで,このような指定権等の行使によって経済的利益を得られるという地位をいかに捕捉するかという問題があると思われます。

  この点に関しましては,例えば米国統一信託法典を見ますと,委託者が撤回又は変更権を留保している場合のような撤回可能信託の財産は委託者の債権者の債権の引当てとなると規定されておりますが,この提案では,受益者指定権等を有する者がいる場合においても,あくまで信託が設定されております以上は信託財産は受託者の所有財産であって,これを指定権等を有する者の財産として取り扱うことは難しいのではないかと言わざるを得ないと思われます。

  そこで,受益者指定権自体を経済的価値のある権利と認めて,これを差し押さえることができるとするか,あるいは,このような考え方が困難であれば,受益者となった者から対価を得ることが容認されているような受益者指定権を有する者は,実質的には信託による利益を享受している者,すなわち受益者であると考えまして,そのような者が享受している利益を受益権と認めて,それを差し押さえるというふうに考えることもできるのではないかと。

そうしますと,それ以上に受益者指定権等の濫用的行使を制限する規定を設けるまでの必要はないのではないかというふうにも思われるところでございますが,この点について御意見をいただきたいというふうに考えているところでございます。

● それでは,今の第46の問題について,いかがでしょうか。

  それなりに合理的な内容であると,大体そういう御理解でしょうか。

● 細かい話で恐縮ですが,2点ございます。

  一つは,先ほどの第45と同じ話なのですけれども,ここにおける通知義務というのも同じようにデフォルト・ルールというふうに考えていいのかということです。

もっとも,これは受託者が意思表示を受けなければ発生しないという場合もありますので,そうしますと,当然のことながらということがあると思いまして,そこはちょっと確認ということで,これがデフォルト・ルールなのかということを御質問したいと思います。

  もう一つは,第三者として受益者指定権を受けた者というのは,濫用の話でございますけれども,先ほど債権者からの差押えということで濫用防止するというお考えの披露があったと思いますけれども,そもそもこの指定権者というものが何らかのそれ以外の義務というのをだれかに持っているのかどうかということです。

ちょっと観念しにくいのかもしれませんけれども,何かしらの忠実義務等を負っていて,よって,何らかの不当な,わいろ等の対価を得た場合にそれを罰せられる規律があるのかどうかと。

信託の信頼性を維持するという観点からは何らかの規律があった方がいいのかなというふうには思いますけれども,他方,そういうふうに指定したのが悪いということなのかもしれませんし,又は,先ほどの提案で十分な規律であるということなのかもしれませんけれども,この点,どうお考えなのかということをお尋ねしたいと思います。

● 3の通知義務につきましては,これもやはり同じように,デフォルト・ルールでいいのではないかなという気がいたしますけれども。

指定された者に対して通知をする義務という話は,先ほどと同じ平仄を合わせる考え方で書いておりますので,あちらも先ほど説明しましたようにデフォルト・ルールでございますので,こちらもデフォルト・ルールでいいのではないかという考えでございます。

● 次に,だれがその通知義務を負うかということですけれども,先ほど,第45の場合には,別に委託者でもいいのではないのかという議論があったと思うのですけれども,この場合はそれでもいいのかと。

● この場合も,信託行為でそのように定めていれば,委託者でもいいのではないかと思われます。

● 受託者が意思表示を得た,到達があったということをもって変更権の要件としているわけですけれども,その事実を確認するかどうかというのは別として,それは委託者が別途通知をすれば,それで足りるという話ですか。

● それは受益者の権利行使の確保という観点でございますので,いつこの効力が発生するかという問題とは別として,だれかが通知すればいいということで,デフォルト・ルールでいいのではないかというふうに考えているところでございます。

  失礼ですが,もう1点は何でしたでしょうか。

● 指定権者の規律として,何らかの義務を負っているのかどうかという話,だれかに義務を負っているかという話ですけれども。

● 個人的な考えですけれども,これは信託の枠組みの中で信託行為でもってつくられるので,そういう意味では,信託の目的とかそういうものにはやはり拘束されるのだろうと思うのです。

そういうことで,やはり一定の義務というのはあるのだと思います。いろいろな受益者指定権の指定の仕方というものも,かなり狭い枠をはめている場合もあれば,非常に広い裁量権が与えられている場合もありますけれども,最低限,信託目的というものには拘束されるだろうと。

  ただ,私の感じでは,そのときに指定権者がどういう義務を負うかというのはなかなか難しそうで。

これが,受託者が指定権を持っている場合であれば,恐らく受託者の義務の中で解決するのでしょうね。ところが,第三者だということになると,これはどうなるんですかね。

● だれに対してというところは,ちょっと今,○○委員の話の前としまして,事務局の考えとしては,これは変更権,指定権を有しているのは委託者であるので,委託者と委任の関係に立つのではないかということで,委託者に対して受任者としての義務を負うのではないかと考えております。

ただ,権利をどのように行使すべきかというのは,これは,その委任契約の中でどこまでの裁量権が変更権者ないし指定権者に与えられているかということで,一義的には決まらないのではないかと。

やはり譲渡した契約の定め方とか信託行為の定め方によって異なるのではないかなという気がいたします。

● 私の理解では,この第46というのは,英語で言えばパワー・オブ・アポイントメントというのを,初めて--多分初めてなんでしょうね--日本のこの信託法の中に入れてみようと。

どうも英米ではそういうものが信託と組み合わせて使われているらしいと。私も英米についてよく分からないところがいっぱいありますけれども,そのうちの一つでもあるのですね。

  今日出てきた中では,まず,自分にとっての課題ということですけれども,二つ。

  一つは,この5のところで,話で聞くと,どちらかというと,このパワー・オブ・アポイントメントを持っている人は受託者以外の人の方が多分一般的だと思うのですが,受託者であってはいけないかというと,きっとそうでもない。

そこで,この5のところで,受託者が受益者を指定したり何なりという話になると,すぐ問題になるのは,とにかく自分のかいらいを受益者にしておいて,こことここの間に正に信認関係があるのだけれども,結局受託者が好き勝手にできるわけですよね。

ここの信認関係,信認義務,フィデュシャリー・デューティーをどうやって担保するのかという課題が向こうだってあるはずだというのが一つ。

  二つ目が,今ちょっと話に出ていたのですが,そのホルダー・オブ・パワー・オブ・アポイントメントという人たちにどういう義務があるかという話ですね。

ここでは,「受益者となった者から対価を得ることは」なんていうことで,対価を得ることが前提となっているような感じでもあるのですけれども,一般的には,まあそういう表現ではないのかもしれませんが,やはり今のは委任契約があるでしょうという話なので,そういう委任関係は向こうでは大きな意味ではフィデュシャリーですから,フィデュシャリー・デューティーの一部であることは間違いなくて,フィデュシャリー・デューティーを負っていますよということは間違いないと思うのです。

その中身で,受託者の負うフィデュシャリー・デューティーと,このパワー・オブ・アポイントメントのホルダーが負っているところの信認義務というのがどの程度違うのかという話だと思います。

  最後にもう1点だけつけ加えて,今度は(注)のところで,これはちょっとあいまいな言い方で申し訳ないのですが,このパワー・オブ・アポイントメントを持っている人は,アメリカでは割に重い義務があるらしいのですね。

ここで全部当該者が享受している利益を差し押さえることができるかどうかというところまでは,ちょっと私,分からないのですが。

  それから,これから言うことも意味が分からない。税法上はもうパワー・オブ・アポイントメントのホルダーの間でも,税法上の何かの負担がかかってきてもしようがないように思われているという話をちょっと聞いたことがあるのです。これはもう伝聞だけなので。

  二つの課題ではなくて,三つ目の課題まで申し上げて,コメントとします。

● 受益者を指定又は変更するその行使の方法について,1点御質問させていただきたいと思うのですが。

  この第46の1では,受託者に対する意思表示によってするというふうに方法が厳格に限定されておりまして,4の(1)のところで,指定権を行使せずに死亡したようなときには信託は終了するという非常にドラスチックな重い効果と結びついております。

私がやや疑問に思いましたのは,受託者には通知していないのだけれども,指定権者の意思としては明らかである,だれかを指定するということが明らかである場合に,単に受託者への通知を対抗要件にとどめずに,効力要件としているかのように読めるのですけれども,そのようにした理由はなぜでしょうかということを1点お聞かせいただければと存じます。

● ここで効力要件というふうにいたしましたのは,まず一つは,もし対抗要件としますと,相手方のない意思表示のようなことになりまして,一体いつ効力が発生したか分からないという点が一つあります。

それから,対抗要件とすると,受託者は,利益を例えば変更前の受益者に給付してしまうような場合がありまして,そうしますと,受託者は対抗されないからよいのですが,前受益者と新受益者との間では紛争が生じ得ます。

そのような観点からも,一体いつ受益者の地位が交代されたのかということがはっきりすることが適当であり,受託者に対する意思表示ということをもって,いつ効果が発生したかを明確にするのが妥当ではないかということで,対抗要件ではなくて,効力発生要件という規律にしたわけでございます。

● よろしいですか,○○幹事。

● 御説明は分かりました。

● 先ほども少し議論に出てまいりましたが,9ページの一番下から10ページにかけての(注)について,質問なのですけれども。

  この指定権というのは一種の形成権だということになるのだと思うのですが,9ページの(注)の見出し,「受益者変更権の濫用防止について」,あるいは,10ページの中ほどの,「そこで,」で始まる段落に書いてある中身を読みますと,その問題意識は,指定権行使の濫用防止をどうするかというようにも読めますが,しかし,例えばその上の,「しかしながら,」で始まる段落,あるいは,最後の,「この点に関しては,」の段落を読みますと,指定権自体,あるいは指定権を有する地位というのでしょうか,これが経済的な価値のある権利なんだから差押え可能じゃなきゃおかしいじゃないかというようにも読める。どちらに焦点がある話なのかよく分からないなというのが質問の第1で,仮に後者としますと,その他財産権等差し押さえることになるのだと思うのですが,一体どういうふうになるのか,差し押さえた後どうなるのか,全然イメージがわかないので,もし何かお考えがあれば教えていただきたいというのが2点目です。

● まず第1点目は,確かにタイトルは濫用防止で,しかし,ねらいは差押えになっておりますが,一つ言えるのは,ここでやりたいことは,受益者変更権者が自らの利益を得るような,言ってみれば差押え対象となるような財産をつくり出すことによって不当な利益を得るようなことを防ぎたい,不当な利益を得られる地位を捕捉することができれば結局濫用も防げるのではないかということで,濫用防止のための方策としては,差押えができることであればいいのではないかと考えたわけでございます。

もちろん,濫用してはならないという規定を設ければ,それは一つの方法でございますが,それに違反した場合にどうなるかということがございますので,それよりはむしろ,そのような受益者変更権自体,あるいはそのような権利を有するという地位を差し押さえることができれば,結局濫用によって得られる利益がなくなりますので,濫用もされなくなるのではないかというように考えているところでございます。

● 第2点は第1点をクリアした後の話ですので,あれなのですが,そうしますと,今のお話は,受益者変更権を有する者に対してだれかが債務名義を持っている場合だけ濫用防止ができるということになるわけでしょうか。

しかし,お話を伺っていますと,そういうシチュエーションに限らず,一般的に広く,ここで言うところの濫用を防止する必要があるのではないかという気がいたしますが。

● 確かに,差押えとなると債務名義がないとできませんので,御指摘のとおり,債務名義がないと濫用防止はできないわけですが,債務名義がない場合については,結局そういう場合には受益者変更権者に対する債務名義をとればいいのではないかなという……。やや乱暴な言い方ですが。

● しかし,だれも債権を持っていなければ,債務名義のとりようもないわけですし,その債務名義の基礎になる権利というのは,信託とは全く関係のない債権なわけですよね,普通は。

何かないと裁量権をコントロールできないというのは,何かえらくターゲットの狭い話のような気がするのですが。

● 説明の中にも書いてございますが,ここでのねらいは,強制執行ができないような経済的価値のある権利を容認したくないということでございますので,債務名義もない,何ら債務を負っていないような変更権者であれば,それをどのように行使して利益を得ても,別にだれも害されないのではないかという気がいたしますが。まあ,一つの考えでございますけれども。

● 今の○○幹事の御質問との関係での関連ですが,「差し押さえることができると考えればよいと思われるが,どうか」というふうに締めくくっておられるのですが,法務省として何かしようと思っておられるのでしょうか。

● 受益者指定権自体がもしも差押え可能なその他財産権といえるとしますと,譲渡命令か何かで債権者が自分で譲渡を受けて,それで受益者変更権を行使して自分の債務者を受益者にして,その受益権を差し押さえていくというような方法があるのかなと。

● いや,そういう,方法としてどうこうというものではなくて,要は,何か立法的にこう解決しようというおつもりで書いておられるのか,こういうふうに解釈できるので裁判所はよろしくねというふうにおっしゃっておられるのかということなのですが。

● ただ,とりあえず濫用防止という観点から解釈論としてこういうことがということになられたわけですけれども,立法の形にならないということであれば,そこは全く闇の中ということで,だれがそういう解釈を伝えていくのかという問題で,結局この部会での内輪の議論で終わってしまうのではないかという気はいたします。

● 今のお話なのですけれども,(注)の意味自体が私自身は必ずしも分かっておりませんで,先ほどの説明やこの文案を読みますと,何が問題かというと,強制執行できない財産権をつくり出すということで,差押禁止財産をつくり出すことが問題ではないかというような問題意識のようにも思われ,そうであるとすると,信託行為によって与えられた指定権の適切な行使がされないという話とはやはり全然別ではないのかと。

それから,その後の方--後の方と申しますのは,差押禁止財産のようなものをつくり出すのが問題で,そうだとすると,差押えできるようにすればそれでいいじゃないかという点についてなのですが,○○幹事から御質問があった,差し押さえた後どうなるのかという話で,財産権として十分活用して,例えば売ってしまうというようなことになりますと,この指定権を行使する人は別の人が行使するということになるのかどうか,そういうような考え方をとった場合に,4で,この指定権を有する者が死亡したときというのは基本的に終了する,これは多分,個人的な信頼に依拠しているから,この人だけに行使させるのが適切だという考え方にのっとっているのだと思うのですけれども,差押えできて,ほかの人が権利者となっても構わないのだという説明はどう整合していくのかというのが疑問に思われますので,お考えをお聞かせ願えればと思います。

● こういうことができないかという意見なのですけれども。

このできる場合は,もしかしたらかなり限定されるのかという気がするのですけれども,例えば債権者が受益者指定権を代位行使するということがもし可能であれば,それを代位行使して受益者を確定した上で受益権を押さえるということはできないでしょうか。

● ちょっと関連している問題ですね。

● 代位行使という方法も考えたことがありますが,それよりはむしろ,代位行使される権利を持っている者の財産と認めて直接押さえていった方が簡明ではないかというような考えもありましたし,代位行使となると,もとの被代位債権が条件つきであるような場合については機能しないというような問題もありますので,そのような方法は直截的ではないだろうということで,それは落としています。

  あと,○○幹事のおっしゃった点は十分考えていないところでございまして,確かに死亡の場合には相続されないということですが,あとは変更権者が変わった場合,やはりちょっと……,変更権を与えられた趣旨にもよると思いまして,もしそれがある者の一身専属的なもの--通常はそうだと思うのですが--だとすると,譲渡命令というか,第三者が取得した場合は難しいかなというのが答えになりまして,そうすると,受益者変更権を押さえるというのは難しいということで,これはまた考え直したいというふうに思います。

考えたところといいますのは,受益権を行使して利益を得られるような者はもう受益者と同視できると考えて,受益権を差し押さえると。

事務局としては,そのような利益を得る地位を差し押さえたいという気持ちがあったわけでございますが,漠然とした地位ということでは執行の対象財産にならないので,受益権という形にすれば差し押さえやすくなるのではないかと考えられましたので,このような考え方も示したわけでございます。

あくまで,これが事務局の案というよりは,今,試行錯誤の過程でございますが,いかがでしょうか。

● もし御意見があれば,どうぞ。

● きちんと問題を把握していないかと思うのですが,受益権とみなして差押えができるとすることと,しかし,その内実が受益権そのものに転じるかというと,あくまで指定権ということで,かつ,指定権の行使者というのがこの個人に限定するというところが変わらないのであれば,その問題は残るように思うのですが。

● 形だけ受益権としていても,実は変更権であるとなると,最初におっしゃった問題が出てくるということですね。

● ですから,受益権とみなすということは,逆にそこを取り払って,別にだれが行使してもいいというふうにして,ただ相続だけは排除するという,そういう説明なのかと思いますけれども。

● もう一度検討したいと思いますが,むしろ端的に,受益者変更権を濫用してはならないというような規定を設けるしかないかなというところでしょうか。

● なかなか,ちょっと規定の仕方はまた難しい。また,今のような濫用してはならないという規定でどういう効果が生じるのかも,もうちょっと詰めなくてはいけないと思いますけれども,少なくとも指定権の問題として考えたときに,だれかほかの人間が強制執行を介して行使できるというのは,指定権の趣旨からするとちょっとおかしいような気がしますね。

  これはもうちょっと詰めて,また議論していただくということにしましょう。

● ちょっと今までの議論とは違いまして,第45の方でお聞きした方がよかったかもしれないのですが,共通するのですけれども,通知義務との関係でこの効果はどういうふうにお考えなのかということの確認です。

一つ考えられますのは,今日の資料の53ページの受益債権の消滅時効がいつから始まるかで,「受益者として指定された者が受益者となったことを知った後でなければ」とありますので,これと結びついているのかなというふうにも思ったのですが,そういう理解でよろしいのか,あるいはそれ以外にも何か効果をお考えなのか,確認ですが。

● いえ,ここは通知をすることによって受益者になったということを認識させるということをねらっているにとどまるものでございまして,それ以外に特に効果が生ずるというものではないと考えておりますが。

● 時効とは関係するという理解でよろしいのでしょうか。

● 時効の通知とはまたちょっと別でございます。時効の通知につきましては,あれは忠実義務の言ってみれば消極的な解除の必要性という観点から……。

● そのこととは違いまして,53ページの第54の1の(1)。

● 起算点の関係ですか。そちらにつきましては,起算点に絡む問題かというふうに考えておりまして,通知を受けて受益者と知った時点が起算点ということになります。

● そうしますと,通知を受ける側の資格とか能力とかというのは何かお考えになっていらっしゃいますでしょうか。

● もし能力に欠けるような者であれば,その代理人が通知を受けてということになるのではないかと思います。

● よろしいですか。

  このテーマについて,まだ御意見があれば。--よろしいでしょうか。

  それでは,ここで休憩をさせていただきます。

            (休     憩)

● それでは,再開させていただきたいと思います。

  それでは,信託管理人についてでございます。

● それでは,信託管理人についての説明に移らせていただきます。第47でございます。

  信託管理人とは,受益者のために自己の名をもって信託に関する受益者の権利を行使し,それにより受託者の職務執行を監督する者でございまして,現行法は第8条において信託管理人に関する規律を設けております。

この現行法の規律に対しましては,不特定又は未存在の受益者がある場合に限って信託管理人を置くことができるかのような規律となっているのは,受益者保護の観点から狭きに失するのではないかとの指摘ですとか,信託管理人の権限や義務等に関する規律が不明確ではないかなどの指摘がされております。

今回の提案は,これらの指摘を踏まえまして,信託管理人に関する規定の整備を提案するものでございます。

  まず,1ですが,これは信託管理人の選任に関する提案でございます。

  このうち,(1)は信託行為の定めに基づく信託管理人の選任,(2)は裁判所の決定に基づく信託管理人の選任,(3)は受益者の意思に基づく信託管理人の選任について,それぞれ提案しております。

  現行法の規律からの主な変更点といたしましては,まず,信託行為に定めを置いた場合には,受益者が不特定又は未存在の場合に限られることなく信託管理人を置くことができることを明らかにしたこと,2点目といたしまして,裁判所は,受益者の不特定又は未存在の場合に限らず,受益者を保護するために必要があると認められるときには,利害関係人の申立てによって信託管理人を選任できるとして,裁判所による信託管理人の選任の余地を広げたこと,他方で,裁判所が職権で信託管理人を選任するとはしないとしたこと,それから,資産流動化法の権利者集会によって受益者の中から代表権者を選任することが認められることを参考にいたしまして,受益者の意思に基づく信託管理人の選任を認めたことなどが挙げられるかと思います。

  このように措置した理由につきましては,資料の13ページ以下に記載しておりますので,説明は省略させていただきますが,受益者の保護という役割を果たす信託管理人の地位の重要性にかんがみまして,今回の信託法改正の一つの柱であります受益者保護の観点から,信託管理人を置くことができる局面を拡大していることを付言させていただきます。

  次に,2でございますが,信託管理人の権限等に関する提案でございます。

  (1)は,信託管理人が有する権限について検討しております。

ここでは,信託管理人は原則として,信託に関する受益者の権利のうち①から③までを除いた権利について,自己の名で行使できるとしております。

  なお,権利のうち①から③までの権利を除外しましたのは,資料の15ページ以下に記載したとおりですので,説明は省略させていただきます。

  次に,(2)は,信託管理人による権利行使と受益者による権利行使の関係について検討したものでございます。

  現行法のように受益者が不特定又は未存在の場合に限って選任を認めた場合には,権利行使の主体である受益者が存在しないことになると考えられますので,信託管理人が専属的に受益者の権利を行使するという提案は,当然のことを明らかにしたにすぎないことになると考えられます。

  これに対しまして,受益者が特定又は現存する場合にも当該受益者のために信託管理人の選任を認めるとした場合につきましては,信託管理人による権利行使と受益者による権利行使の競合・抵触という問題が生じ得ます。

ここでは,資料の16ページに記載しましたような理由から,信託行為に別段の定めのない限り,信託管理人が選任された場合には信託管理人が受益者の権利を専属的に行使するものとしております。

ただし,受益者に付与した権利のうち,帳簿等の閲覧謄写請求権,説明を受ける権利,検査役選任請求権,差止請求権,それから裁判所に対する各種の申立権につきましては,信託管理人に加えて受益者にも権利行使の機会を与えることとしております。

  なお,アステリスクの2に記載しましたとおり,信託行為の変更や信託の終了など,信託の基礎的変更に関する受益者の決定権限については,受益者が特定・現存する場合には,信託管理人ではなく,受益者が行使することが相当ではないかとの指摘がされております。

この点につきましては,契約自由の原則に照らしますと,信託行為の変更や信託の終了等に係る受益者の関与に関する規律も任意規定であって,これらの決定権限を第三者に対して委ねることも可能であると考えておりますことからしますと,信託管理人に対してこれらの決定権限を専属的に委ねることも可能ではないかと考えているところでございます。

もっとも,信託管理人がこれらの権限を専属的に行使することを認めますと,信託管理人と受託者とが通謀などをすることによりまして受益者の権利が害されるおそれがございます。

  そこで,受益者の保護をいかに図るかが問題となりますが,この点につきましては,信託管理人が信託の基礎的な変更に関する意思決定をする場合には各受益者に対して事前の通知を要するとした上で,決定に対して反対の意思を有する受益者に対しては受益権の取得請求権を認めることによって保護を図ることが可能ではないかと考えておりますが,このような考え方の妥当性につきましては是非とも御審議をいただきたいと思っております。

  それから,3は信託管理人の義務に関する提案でございまして,現行の非訟事件手続法によりますと,裁判所が選任した信託管理人について,民法の委任に関する規定が準用されるとしております。

ここでは,裁判所が選任した信託管理人については今の規定を踏襲し,更に,信託行為の定め又は受益者の意思に基づいて選任された信託管理人についても同様な法的地位に立つことを明らかにしております。

  ただし,アステリスクの3に記載したところでございますが,信託の基礎的な変更に関する決定権限について信託管理人に専属的に行使することを認めた場合には,信託管理人の義務は委任の受任者と比べて厳格なものとすべきではないかという考え方があることを踏まえまして,信託管理人の義務及び責任に関する規律の在り方については,信託管理人の権限の問題ともあわせて,なお検討したいと考えております。

  最後に,(注3)から(注5)でございますが,これは信託管理人に関するその他所要の規定の整備に関するものでございまして,(注3)は,現行法に規定のない信託管理人の不適格事由について,(注4)は,信託管理人の報酬等に関する規律について,(注5)は,信託管理人の任務終了事由に関する規律について,それぞれ検討しております。

  現行法の8条3項によりますと,裁判所は事情により信託財産の中から相当な報酬を信託管理人に与えることができるとしまして,更に,非訟事件手続法では信託管理人の解任及び辞任に関する規定を設けておりますが,これらは,規定の文言上,いずれも裁判所が選任した信託管理人に関する規定であると考えられます。

  したがいまして,信託行為の定めに基づいて選任された信託管理人についてはどのような規律が適用されるのか明らかではないと言うことができますし,また,今回の提案のように受益者の意思に基づく信託管理人の選任を認めた場合には,そのような信託管理人についても新たに報酬等の規定を設ける必要があると考えられます。

このような観点から,報酬等の規律及び任務終了事由等の規律につきまして,検討の方向性をお示ししておりますが,これらの点につきましても,御指摘があれば承りたいと思っております。

● それでは,信託管理人について御議論をお願いします。

● それでは,何点か申し上げます。

  まず,1点目は総論的なお話なのですけれども,現行法の信託管理人の制度と比較して適用範囲がかなり拡大されているということでございますので,この点については,受益者保護という観点から,また信託事務を円滑化するという観点からも非常にいい制度であるというふうに歓迎しております。

 ただ,何点か意見がありまして,まず,12ページのところのアステリスクの2,先ほど○○幹事からも御説明がありましたけれども,信託管理人が信託の基礎的な変更に関する意思決定をする場合に,各受益者に対し事前の通知を要するとした上で,反対した受益者に対して取得請求権を認める,それによって保護を図るというようなことが書かれておりますけれども,ここの部分につきましては,信託業界といたしましては,信託の基礎的な変更の内容が本当に重大なものである限りにおいてはやむを得ないなという少数の意見はあるのですけれども,やはり信託事務処理を円滑化するためには,こういう取得請求権というのを認めるのはいかがなものかというような意見が大勢を占めております。

  それと,先ほどの18ページの(注4)のところなのですけれども,この(1),(2),報酬と費用償還請求権のところなのですけれども,ここの部分については信託財産から支出すると。

報酬については,信託行為に定めがある場合というふうに書いていますけれども,信託財産から支出するというふうにされておりますけれども,この場合,これらの請求権といいますのは,基本的に信託財産に限定されるようなものなのか,それとも固有財産にもかかっていくというものなのか,それと,信託財産に対する他の請求権との優劣というのがあるのかどうかというようなことをちょっと考えまして,御意見をお聞かせいただきたいと。

基本的には受益者に関するものでございますので,受益者が得る権利と同列でいいのではないかなというふうに基本的には考えていますけれども,そこら辺のところはいかがでしょうかということです。

  あと,この場面での議論ではないのですけれども,この信託管理人の報酬と費用のところを検討するに当たって,信託財産管理人であるとか,検査役であるとか,後ほど出てきます受益者集会の費用,ここら辺のところについても同様の問題があると思いますので,この場というよりも,今御検討をされているところがあれば,お聞かせいただきたいということでございます。

● まず,取得請求権についての御意見ということですが,信託というのはあくまで,会社のような法人組織と違って,基本的には契約によって定められる,契約自由の原則が働くものであると,しかしながら,やはり受益者の保護の観点からは,契約自由の原則について一定の歯どめが必要ではあって,それは意思決定の方法等に関して強行規定を設けるというような解決の方法もあるとは思うのですが,そうではなくて,反対受益者の保護という点を確保することによってバランスをとっていこうというのが大きな方針でございますので,あらゆる変更というわけではないのですが,コアの部分については強行的に受益権取得請求権を認めざるを得ないというスタンスでございます。

  それから,債務の責任財産の問題でございますが,これは現時点では,いわゆる有限責任債権といいますか,信託財産に対して責任が限定されるものだというふうに考えております。

ただ,この場面ですが,受益者集会のところで触れておりますように,流動資産が信託財産にないような場合を考えまして,とりあえず受託者に費用を負担させて,受託者が求償するというようなスキームを設けるということも,選択肢としては,この信託管理の場面でもあり得るかなというところでございます。

 それから,優劣の問題につきましては,まだ十分検討しているわけではございませんのでとりあえずの感触でございますけれども,まず,信託管理人は受益者のために選任される者であるということにかんがみますと,信託債権者の債権と比べてはその優先性は低いというのが原則かというふうに思っております。

  なお,受益債権との関係でございますけれども,社債管理会社の規定なども参考にいたしますと,信託管理人の報酬は,受益者の受益債権よりは優先していいのではないかというふうに考えております。

恐らく一番関心のございます受託者との関係につきましては,受益債権が受託者の債権には劣後するということにかんがみますと,信託管理人の報酬も受託者の債権に劣後するという考えもあるかと思いますが,この受託者の債権と信託管理人の報酬との優先劣後関係というのはなお検討したいというふうに思っているのが今の状況でございます。

  とりあえず以上でございます。

● ほかに御意見,いかがでしょうか。

● 信託管理人の裁判所による選任というあたりについて,いろいろお聞きしないといけないことがあるかなというふうに思っております。

  先ほど,○○幹事の方からは,受益者の保護という,正にそのための制度であるというお話がありましたが,○○委員の方からは,信託の円滑な執行というお話がありました。

  この裁判所による選任というところで要件がありまして,「受益者の全員又は一部の権利を保護するために必要があると認められる場合」というふうにあるわけですが,全員なのか一部なのかによって実はこの制度はかなり色合いが違うのではないかという気がしております。

つまり,受益者の一部の権利を保護するためということであれば,当該受益者という感じがいたしますが,受益者が複数いる場合の全員ということになりますと,各受益者が本来行使し得た権利を受益者全員の利益のために制約して信託管理人を選任するということですので,当該個人である受益者の保護というところがむしろ落ちて,全体の利益あるいは信託の円滑な執行という,本当はそういう話なのではないかという気がしておりますが,その点いかがかということを含めて,そもそも,この「保護するために必要がある場合」というのは一体具体的にどういう場合を想定しておられるのかといったあたりをまずお聞きしたいと思っております。

● 現行法では,不特定・未存在ではありますが,ここは,特定・現存する場合であっても保護する必要性があるという例示といたしましては,例えば精神又は身体に重度の障害がある者が受益者として指定された場合とか,受益者が多数に上って受益者による円滑な意思決定が困難又は不可能である場合,このような場合を挙げることができると思われます。

● 今の○○幹事のお答えを前提として,このような場合に裁判所による選任というのが本当に必要なのか,あるいは法制度として相当なのかといったあたりについて,かなり疑問がありますので,御意見を伺いたいと思っている次第でございます。

  まず,例えば最初の,一部の権利を保護するためということで重度の障害というようなお話がありましたが,その場合には民法上の制限能力者の制度との関係がどのようなものになるのかという点について,学者の先生方を中心として御意見を伺いたいと思っている次第でございます。

  というのは,民法の原則としては,本来権利は自分で行使できるものだけれども,そういう民法上定められた一定の場合には,後見人なり保佐人がつくというような形でその権利をかわって行使するという前提になっているはずでございます。

そうすると,もし,例えばそういう本来成年後見によって図られるべきところについて信託管理人が選任されるということになりますと,そういう民法の原則から若干外れたところで信託固有のいわば法定代理の制度というのを認めることになりはしないかということでございます。

もしそうであるとすれば,裁判所としては,こういう事件が来たときにだれが扱うかということも含めて検討すべきということになるかもしれません。

そういう意味では,非常に民法の原則との関係でも大きな問題があるのではないかというふうに考えております。

  仮に,民法の原則よりもうちょっと広いところで,こういう一部の権利の保護のために必要があると,もしそういう議論であるとすれば,本当にそういうことが許されていいのかと。

例えば,民法では,重度の精神障害がある場合というところで成年後見というのが定められているわけですが,そこを超えて,例えば重度の身体障害がある場合に,裁判所が決定によって,この人は重度の身体障害があるから,この人が権利を行使するのは相当ではないと言って管理人を選任するというような制度が本当に今の民法の秩序の中であり得るのかというようなところが疑問であるということでございます。

  次に,多数の受益者がいる場合に,全員のために選任するという場合であるとしますと,受益者が多数であって円滑な意思決定ができないということであるとすれば,そこは受益者が多数の場合の意思決定の方法というところを後に定めて,法定多数決というような概念も取り入れて検討がされるところであるというふうに理解しております。

そういうところで裁判所が管理人を選任することによって問題の解決を図ろうとするというのは,ほかにそういった例があるのかどうかというのを私は存じていないということになろうかと思います。

何かありましたら,是非教えていただきたいなと思っておるところでございます。

言ってみれば,本来直接民主制でみんなでやっているところに,裁判所が突然,大統領みたいな人を置くというような制度なのかなと,資料だけ見ますと,そういうふうな理解もしてしまうところなのですが,そういう制度がほかにあるのかどうかといったあたりを含めて,教えていただければと考えております。

● なかなか難しい,根本的な問題を提起されたように思いますけれども,いかがでしょうか。

● 今のお話の横に並ぶような話だと思いますけれども,受益者が不特定・未存在の場合に信託管理人を必要とするというのはよく分かるのですが,受益者が特定して,現にいるという場合に,こういう形の人を選ぶことが果たして受益者の保護になるのかというところが疑問だと考えております。

 特に,受益者が選べるというところが一番抵抗のあるところですが,受益者が,いつでも,信託管理人の名前で裁判を起こせる人を選ぶことができるのだということになりますと,訴訟行為をさせることを主たる目的として信託管理人を選ぶこともできてしまいまして,訴訟信託と類似の問題が出てくるのではないかということを懸念いたします。

  それから,そういう場合に,具体的な例はちょっと想像しにくいですけれども,信託管理人と取引をした第三者が受益者に対する抗弁を信託管理人に対抗できるかとか,いろいろ複雑な問題が出てくるということが,とりあえず理屈の上では考えられます。

任意的訴訟担当の場合によく問題になる例ですが,そういう論点も出てくるというふうに考えております。

  資産流動化法第193条が,一部の受益者を代表権利者として権利の行使を委任することができるという制度を設けている,それをここで引いていますけれども,これは,とにかく受益者の一部の人が代表になる,しかもその権利の行使を委任するというものですから,こういう,その人の名前で何でもできる,受益者としての行為を受益者ではなくて信託管理人という名前で何でもできるというのを,現に受益者がいるのに設けるという制度というのは,受益者の保護という観点からもプラスになるとは思えないという意見です。

● 一連の議論に関連しまして,私も,裁判所の介入という観点で,これは基本的にはデフォルト・ローにしていただきたいという観点から,商事信託について言及したいと思います。

 個人に関しても,先ほど○○幹事がおっしゃられたとおり,やはり具体的なイメージとして権利制限者等の制度以外にどういう使い方があるのかなというのがよく分からなかったわけですが,私の場合は,それに加えて商事信託のことをお話ししたいと思います。

  つまり,複数受益者がいる場合で,例えば不動産信託で優先劣後がある場合において,一部の受益者のために信託管理人が裁判所の選任を受けて設置された場合にどういう問題が起こるかという話ですけれども,やはりこれは,利益がある意味で対立する場合がある判断について信託管理人が行うということになりますので,それは妥当なものなのかどうかということでございます。

一応,提案の中では,最低限の権利,帳簿閲覧権等は残しておくという話なのですけれども,商事信託の場合は指図権とか大きな権限というのも持っているわけですから,そういった場合に,かかる権限自体も一人一人に任せてしまうと,それも利益相反という状況であるのかどうなのかという問題があるわけです。

これに関して,この提案では,一応,管理人の規律というのは委任ということしか置いていないということですので,そもそも,委任というのは,利益状況が違う者両方からの委任ということでございますので,それはなかなかワークしないのではないかというふうに思っております。

  もう一つ考え得る話として,この提案にも,複数の信託管理人も可能であるというふうに書いてあるわけですが,具体的にどういう話になるのか分かりませんが,例えば優先受益権のための信託管理人と劣後人のための信託管理人ということが制度上認められるのかどうかというのも質問したいところでありますけれども,仮にそうだとしても,ここに書いていますように,実際の判断は過半数で決すべきという話になっていますから,そこで単純に頭数で決めていいのかどうかということも出てくるのではないかという話です。

● この信託管理人というのは,先ほどから問題になっているように,どういう理念のもとで考えるかと。

一方で,これは,受益者の方がいろいろ権利を行使する場合に不便な場合があって,そういう意味では受益者の利益を守るところもありますけれども,逆に,権利行使ができるような受益者が混じっているような場合,あるいは,先ほど○○幹事が言われたように,何らかの別な方法でもって受益者の利益を,法定代理人などを使って権利行使ができるような場合に,多少,受益者と信託管理人の間の利益の衝突というのでしょうか,そういうものもあり得るので,それがために非常に難しい制度なのですね。

  更にいろいろな御意見をいただけると有り難いと思いますが,いかがでしょうか。

  あるいは,これまでの問題について,幾つか……。

● それでは,とりあえず事務局で答えられる範囲でお答えしたいと思います。

 まず,○○幹事の方からあった,民法にかかわるという大きな問題でございますけれども,例えば,精神上の障害があることによって,法定代理人の制度,民法第7条のようなものがある場合があるではないかという御指摘でございますが,ここは選任権者が限定列挙されておりまして,それに比べますと,裁判所に対する選任というのは利害関係人ということで,やはりその実情に応じた柔軟な選定ができるのではないかというメリットが信託管理人にはあるのではないかという気がいたします。

  それから,身体に障害がある場合にはこのような法定代理人の制度というのが使えないと思われますが,例えば特別障害者扶養信託における受益者についても,なかなか自己の意思に基づいて信託管理人を選任することもできない,難しいのではないかと考えられますので,身体に重大な障害がある場合についてもやはり信託管理人の制度というのがあった方が機能するのではないかという気がいたします。

  それから,不特定の受益者が多数に上るという場合でございますが,実は現行法でも,受益者が不特定の場合にはどういうものが当たるかといいますと,例えば年金信託のように受益者が次々に変動するという場合も入るという解釈が有力でございます。

これは,しかし,ある一定の時点をとらえれば受益者は特定しているわけですが,その変動するということを見て不特定と言っているのではないかと。

その本質は何かというと,恐らく,そのように受益者が次々に変わるということになると,受益者の意思決定を円滑にし,受益者を保護するという観点から,信託管理人がいた方がいいのではないかという価値判断があるような気がいたします。

そうしますと,結局,不特定という中に,このように特定しているけれども受益者が変わるというような場合があることにかんがみますと,それは保護の必要性が高いからであると。

そうすると,受益者が多数に上っていて意思決定が困難で,保護の必要性が高いという場合も,実は現行法でも認められていると言えば言えるのではないかというような気がするところでございます。

  なお,信託管理人のような制度がほかにあれば御指摘願いたいということですが,たしかに指摘することは難しく,例えば,委任等の制度にはないのですが,それは信託というのが,御承知のとおり,受託者に名義まで移すという特性がありまして,だからこそ受託者の監視というのが非常に重大なテーマになっておりまして,であればこそ,委託者や受益者はもちろん,裁判所,あるいは信託管理人という制度がいろいろ設けられているのだと思われます。

そういう点にかんがみますと,実は,事務局の提案では,委託者の権限というのはどちらかというと縮小傾向で考えておりますし,報告書にございますが,裁判所の監督,現行法では非営業信託については信託事務の監督ができるわけですが,それについても後退させてはどうかという提案をしております。

そうである以上は,やはり信託管理人の制度をより一層充実させる必要があるわけでございまして,逆に言いますと,信託管理人の制度が軽微なものになると,それだけ,例えば委託者あるいは裁判所の監督をもっと強めるべきだという方向に回帰するのではないかとも考えられるところでございます。

  なお,法定代理人との間で権限が重複した場合はどうかという点は,事務局の提案では,権利を保護するために必要があるときには選べる,逆に,権利を保護するために必要がなくなれば裁判所は一種の選任決定の取消しができるというような案を提示しておりますので,権限が重複するというおそれはないのではないかと。

後で法定代理人が選ばれれば,取消し決定をすればいいし,初めに法定代理人がいれば,そもそも保護の必要性がないのであるから,そもそも信託管理人は選ばれないという問題になってくるのではないかという気がするところでございます。

  以上が,とりあえず○○幹事の御質問に対するお答えということでございます。

  それから,○○委員の御質問は,受益者による選任の問題でございまして,これは,我々といたしましても,受益者の意思に基づく信託管理人の選任というのが果たして必要かという点につきましては,11ページのアステリスク1のところに書いてありますように,疑問がないわけではない。

単に代理人を選べばいいのではないかと。

代理人を選べば,訴訟信託とかそういうおそれもなくなると思いますので,そのような点につきましては,なおこちらとしては検討したいというふうに思っているところでございます。

  むしろ気になりますのは,受益者間の争いに例えば裁判所が巻き込まれてしまうのではないかというようなおそれがあるところでございますが,それは選任のところで,選ばれる受益者の意思を聞くことによって,自分の意に反した信託管理人が選ばれるおそれはなくなるであろうというようなことによって担保することができるのではないかという気がしているところでございます。

  それから,最後に○○委員がおっしゃった,利益相反関係があるような場合があるではないかと。

確かにそのような場合もあり得るかとは思うのですが,そういう場合につきましては,例えば特別代理人を例外的に選任するというような方策によって対応することもできるのではないかと思われるところでして,例えば商法ですと,社債管理会社の場合に,社債権者と社債管理会社の利益が相反する場合には特別代理人が選べるというような規律がございまして,こういうものも参考になるのではないかと思いますが,なお御意見をいただければと思います。

  とりあえず,事務局としては,いろいろな議論をいただく前提としまして,とりあえずの考え方を述べさせていただきました。

● 若干だけ補足させていただきたいと思うのですが。

  今,○○幹事の方から,選任権者が違うというお話がありましたが,選任権者が違うからこそ,民法の原則との関係で大きな問題があるのではないかということが申し上げたいということでございます。

要は,契約上の利害関係人から,そういった法定代理人の選任を請求するというような制度を認めるということについて問題がないかという趣旨で御質問しているということになります。

  身体障害者についても,正に民法上は保護の規定はないのですが,それがないということは,基本的には民法は自ら意思決定するということを前提としていると。

福祉の問題等はあるかもしれませんが,それは,この信託法上の裁判所の信託管理人の選任というところでそこを考慮するということになるのかどうかといったあたりが問題になるのではないかと考えているということでございます。

● おっしゃるところはもっともなところもあるという気がいたします。

半面,確かに,法定代理人につきましては選任権者が制限されておりますが,これは恐らく,法定代理人というのは本人にかわってあらゆる代理権を取得するからだという気がいたしまして,それだけ権限が広い気がいたしますが,ここではあくまで信託の局面での管理人,いわば範囲が狭いわけでございまして,そう

いう観点からいたしますと,仮に選べる選任権者が利害関係人ということで広いといたしましても,やれる範囲が信託にかかわるものに限られている面で調和されているのではないかという気がするというのが1点でございます。

  それから,もう一つはどのような質問でしたでしょうか。

● 身体障害者というのは,正に違うところで,違う趣旨からのお話なのではないでしょうかということです。

● 確かに精神障害の場合とは局面が違いますが,やはりここは受益者の保護という趣旨をより強調しまして,こういう場合も一つの例として,裁判所による選任によって解決できるのではないかという気がしているというところでございます。

● 私,制度そのものに賛否ではないのですが,身体障害者の問題につきましては,成年後見制度の導入に際して,身体障害者を対象にしろという意見も一時期出たわけです。

それに対して,それは自己で代理人が選任できるのだからと,かえって裁判所等が介入するということに対しては,自己決定権の侵害の問題があるという話になった。そこでいったんそういうふうな価値判断がなされているわけなので,制度が悪いというよりも,身体障害者の問題を例として出されるのは適切ではないと私は思います。

● 分かりました。

● 考慮した方がいいかもしれませんね。

● はい。

● ほかに御意見,いかがでしょうか。

● 私は,一般論といたしましては,受益者が多数あるいは複数存在するような信託が我が国に現実にたくさんあって,しかも受益者に受託者のコントロールをする十分な能力あるいは時間があるとは限らないという状況のもとで,こういった,信託管理人制度を現行よりも少し拡充してガバナンスの観点から位置づけるということは,基本的には望ましい方向なのではないかと思うのですけれども,若干疑問点もございますので,その点について教えていただければと思います。

  まず第1点は,一部の受益者のために信託管理人を選任することができるということが,信託行為の定めと裁判所による選任においては可能とされているわけですけれども,信託全体,全受益者,あるいは非常に抽象化された全受益者のための信託管理人制度というのは,非常に分かりやすいと申しますか,理解できるところがあるのですけれども,一部の受益者のために,こういった権限を有する信託管理人制度が必要なのかどうかと。

やはり,信託全体を一つと見て,その信託全体,あるいは全受益者のために行動すると,こういう制度設計の方がむしろ分かりやすいような気がいたしましたので,一部の受益者のための信託管理人制度を御提案されている理由について教えていただければというのが第1点でございます。

第2点は,信託管理人の解任についての規律でございますけれども,特に受益者による選任がなされたときには,受益者がそれこそ変更される可能性もありますので,基本的には現在の受益者の意思を問うというのが,本当に受益者のための信託管理人制度であろうかと思います。

解任についての規律は,19ページのところで,まだ注の段階でございますけれども,例えばこの19ページの(2)の②を拝見いたしますと,信託行為等で別段の定めをすれば解任についても自由にルールを設定できる,そのような読み方ができますけれども,しかし,受益者が選任する場合には,やはり解任も受益者が,しかも合理的な,できる限り総意を反映するような方法で解任をしなければ,本当の受益者のための信託管理人制度とはなり得ない可能性があるのではないかということを懸念いたします。

第3点は,信託管理人の権限でございますけれども,重大な基礎的変更--基礎的変更も,確かに重大であるものとないものとあると思いますけれども,とりわけ重大な基礎的変更については,やはり信託管理人の権限から外しておく必要があるのではないかと。では重大な基礎的変更とは何かと言われると,直ちにはお答えできないわけですけれども,第47の2の(1)の①から③はやや狭いのではないかという印象を持っております。

  以上,3点について質問とコメントをさせていただきました。

● 一部のところをなぜ認めているかという点でございますが,これは,例えば,委託者の意思によって定められる信託行為の定めによる場合には,特定の受益者についてだけ特に保護の必要性が高くて,例えば複数受益者がいるけれども一人だけ未成年であるとか,そういうような場合を考えますと,その一人のためだけに選ぶという余地を認めてやってもいいのではないか,そこまで全員でなければだめだというふうに厳格に規律する必要はないのではないかと,信託の柔軟性という観点から一部を認めているというのが,(1)の趣旨でございます。

 それから,裁判所による選任につきましても同じような話でございまして,やはり複数受益者の中の一部についてのみ特に保護の必要性が高い者がいる場合において,それがいるのに全員のために選んで,かつ,我々の提案ですと,選ばれると権限が相当程度吸収されますので,そのような者を全員のために選ぶよりは,やはり保護の必要性が高い者についてだけ選ぶ方が,その受益者のためにもほかの受益者のためにもなるのではないかという観点で一部というのを置いているというのが,とりあえずのお答えでございます。

  あと,コメントということでございますけれども,19ページの(2)の②の解任のところでございますが,これは恐らく,選任行為に別段の定めがある場合は自分たちで決めているのだからいいのではないかとして,信託行為で解任を制限しているときもやはりそれはおかしいのではないかという御趣旨かと思いますので,それはそういうことも言えると思われる半面,これは前からの私の疑問でもあるのですが,信託行為に書いてあって,それを承知の上で受益者になっているのだから,それはある程度は仕方がないのではないかという気が前からしているところはございまして,確かに信託行為の設定には関与できない受益者ではありつつも,それを知った上で受益権を取得して,承認もしているということになると,それが制限されるということも甘受していると言えないのかなという疑問がございます。

もっとも,だからといって受益者を軽視しているわけでは全くないのですが,そのようなことも考えられるのではないかということでございます。

  あと,重大な基礎的変更についてはやはり信託管理人の権限から外すべきではないかというのは,これは我々も,どこまで信託管理人の権限とすべきかというのは,ここのアステリスク2のところにるる書いてありますとおり,前から非常に重要な問題かと思っているところでございまして,御指摘も踏まえて検討したいというふうに思っておりますが,とりあえずは,事前の通知と受益権取得請求権の強行規定化ということをもって,しかも契約の自由とのバランスという観点からはそのぐらいあればいいのではないかなと思っているところでございますが,それは御意見として承りまして,検討したいと思います。

● 先ほどの,一部の受益者を保護するために,いわば一部の受益者だけを代表する信託管理人を設けることができると。

私は,これは個人的な意見ですけれども,そういうのができるという方が本当はいいのではないかというふうに思っております。説明は,先ほど○○幹事が言われたとおりですが。

  信託行為でもって定める場合は余り問題ないと思いますけれども,特に裁判所の場合,全員についての信託管理人しか選べないと。

本当の理由は,一部の受益者が権利行使が十分できないというのが理由で,その当該受益者のためだけでなくて,全体について選ばなくてはいけないというと,これはまた先ほどの○○幹事の疑問にぶつかってくると思いますけれども,なかなか難しいのではないかという感じがちょっとしています。

 本当は恐らくその延長線上にある問題でしょうけれども,私も,受益者全員が一応権利行使はしようと思えばできるけれども,多数いるために意思決定などが不便だということから,裁判所にその中のだれかが信託管理人を選んでくれというふうな申立てができるという趣旨もこの案には含まれているのですか。

● そういうのも,保護の必要がある一類型ではないかという考えでございます。

● 多くの場合は,恐らく多数の受益者がいるときは,最初に信託行為の中でもって信託管理人を定めて,これは委託者の意向によって定めて,それによって機能するのだと思いますので,実際上は裁判所が選ばなくてはいけないという場面は余りないとは思いますけれども,今のような,全員が一応権利行使ができるという集団信託のときに事後的に裁判所がだれかの請求で選ぶというのは,なかなか難しい場面があるかもしれませんね,裁判所としては。まあ,これはもうちょっと検討させていただけると……。

  それから,効果のところも非常に難しい問題で,どの程度権限を吸収させてしまうのかということで,○○委員の先ほどの御意見もありましたし,○○幹事の御意見もありましたし,これもまだ少し検討の余地があるのではないかと思っています。

ただ,なかなか切り分けが難しいので,うまくこういうものを,つまり①から③まで,一応これを外したものがありますけれども,それに類するものとしてうまく切り分けるものがあれば,それは可能かもしれませんね。そんなところも少し検討して……。

● 事務局としては,重大な信託の基礎的変更が入るかどうかぐらい……。

あとはちょっと思い当たりませんが,そこのところが問題でございまして,○○幹事もおっしゃいましたように,なかなか切り分けが難しいという問題とかございますし,やはり契約自由の原則なのだというところを強調しますと,それを知って受益者は入ってきているわけであって,しかも信託管理人の選任も,信託行為にあれば受益者は分かっているわけで,裁判所が選任する場合は裁判所がそこら辺はおもんぱかってくれるでしょうし,受益者が選ぶ場合というのは,これは信託行為に定めがなければ受益者全員の合意ですし,信託行為で多数決がとられている場合にも特別多数でないと選べないというようなことになっておりまして,そのような慎重な手続で選ばれた信託管理人については,反対受益者には受益権取得請求権をもって手当てをするということで足りるのではないかというのが今の考えでございます。

● ちょっと細かい質問なのですけれども,この信託管理人というのは法人もなれるという理解でいいのかということです。

  具体的に言うと,この信託管理人というのはどういう人が就任するのかというイメージがわかないわけで,一部,現在でも,年金信託の場合にはどこかの人事部長がなるとか,そういうのはあると思うのですけれども,広く信託が使われた場合に,ある意味信託管理人のなり手,担い手というのが,専門業者なんかが出てくるとは思いませんけれども,継続的なことも考えれば法人が適当な場合もあると思うので,法人も認めるという余地を残すということの確認ということです。

 二つ目に,先ほどの,一部のためにということと,○○幹事からの特別利害関係人を選任してはどうかという議論につながるわけですけれども,いったん信託管理人になって,全員のために,ないしは一部のためにということであったとしても,その一部の中で利益相反があった場合に,その救済策として,先ほどのお話では社債管理会社の特別代理人のようにしたらどうかという御提案がありましたけれども,その者の身に立ってみれば,やめたいというのもあるのではないかなというのもあるのですが,ただ,この御提案を見ると,辞任に関しては,基本的には,裁判所の選任を経た信託管理人であれば,やめるということは想定されていないというような理解でいいのかということですけれども。

では仮に,やめないけれども,そうしたら特別代理人ということであるのであれば,例えば引いておられた社債管理会社の特別代理人と同じであれば,それによれば社債権者の集会の請求によりと書いてありまして,非常に困った判断を迫られても,自分だけでは特別代理人を選んでくれというふうには言えないという話ですから,そこは柔軟に,信託管理人の動きやすいように制度設計をお願いしたいということです。

● 法人は信託管理人になれると考えておりまして,これは,19ページのところなどを御覧いただきますと,例えば任務終了事由として,法人である信託管理人が解散したときは任務終了すると,我々もそのような前提でございます。

  あと,私の誤解かもしれませんが,裁判所が選んだ信託管理人は辞任できないというわけではなくて,これはあくまで注のレベルでございますが,正当な事由があれば,裁判所の許可を得て辞任できると。ほかのところに似たような規定があったかと思いますが。

● 許可を得てということですか。

● そのような要件はかかっておりますが,辞任ができないわけではないということでございます。

● 法人も可能なのだと思いますけれども,だれが信託管理人になるかという現実の問題というのは結構難しい問題があることは御承知だと思いますけれども,これは特別なルールは何も書いてありませんけれども,例えば,受託者と関係があるような者はやはり外れるとか,それから微妙なのは,年金信託などでもって,委託会社の総務部長だとかそういうのがなるタイプですね,これも一概に排せないところもあるけれども,果たして受益者の利益を代表する者としてはそれで適当なのかどうかというようなことは,これはなかなかルールが決めにくいので,条文にはなりにくいと思いますけれども,こういうルールを考える際の前提の問題としてはちょっと頭の隅に置いておかなくてはいけないのではないかという気はいたします。

  ほかに。

● 主として質問をさせてください。

  第47の1(3)の「受益者による選任」の性格についてであります。

  こういう規定を置くことについては,必要ないのではないかという指摘も御紹介されているところでありますが,私の意見としては,受益者が多数いるような場合に信託管理人を置くことによって信託全体が円滑に運営されることになり得るという点については意味があると思います。

そして,必ずしも(1)のように信託行為に定めがなくとも,受益者のイニシアチブで信託管理人を置けるという可能性が開かれるというのは,適切ではないかと思います。

 その上で質問なのですが,この(3)を置く意味なのですけれども,これがもしなかった場合には,仮に受益者が全員そろってある人を信託管理人に選びたいとしても,信託管理人選任の要件としては(1)と(2)の二つの制度しかないとすると,受益者だけの選任行為では信託管理人にはならないと。

せめて可能なのは代理人であって,要するに受益者の代理として権利行使をすることはできるけれども,2の権限のところに出ていますけれども,自己の名で受益者の権利を行使するということが私的自治の一般ルールの世界ではできないと,そういうことを意味していると考えたらよろしいでしょうか。

● (3)がない場合どうなるかということでございますが,まず一つは,(1)の信託行為の定めというところに関係いたしまして,そういう場合は受益者が信託行為の変更を合意する,あるいは請求して信託行為の変更によって信託管理人を定めてやるという手当てはあります。

しかし,それよりも直截的に受益者が選任できた方がよりストレートではないかと。

どういう場合に信託行為の変更ができるかという問題はさておくといたしまして,いったん信託行為という,そのような迂回路を通るよりは,ストレートに選べればいいのではないかというのが,1の(3)を置いた理由でございます。

あと,(2)でございますが,これは確かに,今,○○幹事がおっしゃった例,複数受益者がいるときに意思決定が円滑にいかない問題があるということをもって,保護の必要性と先ほど私ちょっと言いましたが,それと見れば,裁判所が選任するという手だてもあり得るわけでございますが,しかし,裁判所という経路を通らずに受益者自身が直接選ぶことができていいのではないかと,そういう観点から,ほかで代替できないわけではないのですが,やはりよりストレートに,受益者保護の観点から,自ら選ぶルートを残したというのが,(3)を置いた趣旨ということになります。

● 申し訳ありません,私の質問が必ずしもクリアでなかったわけですが,今のお話の前提に,次のような考え方があるかどうかという形で質問させてください。

すなわち,(3)がなかった場合に,受益者が信託管理人を選んで,そして2の(1)のような権限を与えたとしても,それは法的にはサポートされないという考えが前提にあるからこそ1の(3)を置き,1の(3)がなければ,今,○○幹事が御説明いただいたように,1の(1)か1の(2)を経由しなければならないと,そういうものとして信託管理人というのはあるのだということでしょうか。

● 今おっしゃった趣旨は,こういう(3)を置かなければ,でも受益者は全員で代理人を選べるではないかと。

ただ,代理人ですと,ここで言う自己の名をもってというようなことができませんので,やはり自己の名をもって権利を行使できるというのが信託管理人であると,一種信託の機関的な位置づけになってまいりますが,そのような信託管理人という制度を置く以上は,やはり受益者がこういう選任行為をもって信託管理人を選べるという規律がないと難しいのではないかということでございます。

 ただ,代理で足りるのではないかという御意見もあり得るとは思いますので,そこは1のところでどうされるかというのは,ちょっと……。

● 実質的には代理で足りるけれども,形式的には代理とは違うものとして信託管理人を置いていると。

● その点はもちろんそうですね。ただ,それを私的自治でもって,こういう規定がなくてできるかどうかということですよね。

● はい。

● 何かできてもよさそうな気がするけれども……。

● 今の点でございますけれども,受益権の中には,「共益権」というふうに会社法の者は言っておるのですけれども,いろいろ受託者を監督・是正するような様々な権利が認められておりまして,それらをごそっと代理人に出すことができるのかどうかということについては,そんなに簡単な話ではないと思います。

したがって,やはりこういった信託管理人の制度は代理だけでは非常に難しい部分があるのではないかというふうに,会社法の観点からは考えられるのですけれども。

● それはまた,要するにどの程度の権限を移すかという観点からの問題点ですね。

  ○○幹事が言われたのは,いわば自己の名をもって権利行使するような人間を,受益者たちが合意して自由に私的自治の範囲でつくれるかということですよね。

  恐らくそれは若干争いがあるのではないかという気がするのですね。

できるという考え方もあるかもしれないし,そういうものはできない,特に訴訟なんか自己の名でもって提起できるわけですから,そういうものは問題だという御意見もさっきありましたし,そういう意味で,(3)のような規定があった方が明確だということなんじゃないでしょうか。

● 細かなことなのですけれども,報酬ですとか費用償還なんかの規律も代理とは違ってくるということがありますが,そういうものをセットとして別途作るかということが問題なのかと思います。

● そうですね。

● 私,一つ感想と,ちょっと私の読み方が足りないのでしょうから,一つ質問を。

 感想の方は,信託管理人という制度は今まで公益信託等に日本で使われていて,これがまた英語で訳せない概念というか,「信託管理人」ってどう訳せばいいのかといっても,向こうにはないわけですよね。公益信託についてすらないわけで,だから日本特有なので,すごく面白い。それを今度,公益信託どころか,もっと広く拡充しようというわけですから,一層面白い話だと思うのですね。

  それは一体何のためなのか。今までも,信託管理人というのは何なんだという話がどうしてもあって,○○幹事がおっしゃったように,実はやはり受託者の方の便宜で,複数の受益者がいる場合に一人にまとめておくと本当に助かるねという部分が相当にあるのかなと。

それが結局は受益者全体の利益にもなるのだというふうにハッピーにつながればいいけれど,ということかなと思っています。かなと思っていますというのは,少し疑問が残っているという意味ですが。

  質問の方は,そういう背景のもとになのですが,受益者による選任のところが特にそうかな。

結局,これは一体どうやって選任するかというと,私が分かっていないのだと思いますが,24ページの表を見ると,受益者全員の合意,34ページを見ると特別決議ということですね。

かつ,信託管理人の権限としてはこういうものだという話で並んでいるので,24ページのところを見ると,各受益者単独で受益者は権利行使できますよというのがずっと並んでいますね。

そのうちの一部は信託管理人がいてももちろん単独でできますよということだけれども,ある部分については各受益者単独ではできなくなるということですよね,信託管理人を置くと。本当にそれでいいのかなという感じがあるということだけです。

  今の話で,14ページから15ページにかけて,とにかく受益者全員の合意が必要だというふうに,第48の別表の方の何とかという最初の方のところが維持されていて,それで,「円滑性の確保や受益者の一部による権利の濫用の防止」,全員で同意して選任しておいて,一部の権利濫用を阻止するためだというのが,私は--まあ,そういうこともあり得るのかなとは思いますけれど,理屈の上でこういう話になるのだろうかという……。

それは一番最初の感想のところへ戻ってきて,本来の目的は,やはり信託事務処理の円滑性の確保というところへ結局戻ってくるのかなというところへつながる話です。

  ちょっと私の理解が足りない部分だけ教えていただけますか,さっきのところで。

● ○○委員に私が教えるような能力はないのですが,どの点でしょうか。

● まず,全員なのですか。

● 全員ですが,しかし,これは,多数決がなければ全員ですね。しかし,多数決の制度を設ければ,原則特別決議。

しかも,それも,我々の提案ですとかなり自由ですから,過半数という制限はかかるにしても,2分の1とかでもあり得ると。少なくとも3分の2で選べますので,3分の1は反対しているということはあり得るわけでございます。

● あり得て,その受益者単独という権利の一部がなくなってしまうわけですか。

● なくなってしまうものがあります。それが吸収されるということになります。

● そこは,先ほどから問題にしている点ですね。

  また繰り返して申し訳ないけれども,裁判所が受益者全員のために選任するというときに,一応,例えば多数決を導入しているような集団信託というのでしょうか,そういうときには多数決でやる道はあるけれども--まあ,そういうときは裁判所は選ばないと思いますけれども--それを通らないで,一部の受益者が裁判所の選任を求めてくるなんていうのは,一応この制度に乗っかったときにも,やはりそれはだめだと。

● 請求はできますが,保護要件というところに引っ掛かってくるかと思います。

ですから,例としては挙げましたが,現実問題として,全員一致しかないときはともかく,多数決制度がある中で,更にこの信託管理人の請求があったときに,果たして裁判所が選ぶことになるかというと,それはケース・バイ・ケースでしょうが,なかなか難しい問題があるという気がいたします。

● 大分長い時間をとりましたけれども,やはり非常に重要な問題の一つですので,御議論いただきました。なお残っている問題については,更にいろいろ検討させていただきたいと思います。

  それでは,次の方に移りたいと思いますが,いかがでしょうか。

● では,第48から第50までを説明をさせていただきます。

  まず,第48は,受益者が複数の信託において,信託行為に定めを置くことを条件として,受益者が単独で行使できる権利について,単独行使の制限を認めることの可否について検討したものでございます。

  複数受益者による意思決定に係る事項としては,一つは受益者全員の合意を要する事項と,もう一つは各受益者が単独で意思決定できる事項とに分けられますが,全員の合意を要する事項につきましては後ほど説明することといたしまして,ここでは,単独で意思決定できる事項について,信託行為に定めを置くことにより単独での権利行使を制限することを認めるべきか否かを問題とするものでございます。

  資料の21ページ以下では,単独受益者権,すなわち,24ページの別表で,「受益者による権利行使の方法(原則)」欄におきまして,「各受益者単独」と記載したものにつきまして,単独行使の制限を認めるべきか否かについて,順次検討しております。

  結論的には,信託違反行為の第三者に対する取消権については,単独行使の制限を認めることも検討の対象となり得るのではないかという観点から,制限を認めるという甲案と,認めないという乙案の両案を併記しております。

 なお,信託違反行為によって信託財産に損失が生じた場合においては,受益者は原則として原状回復を請求するか損失てん補を請求するかを選択することができるわけですが,各受益者が受託者に対し単独でこれらの請求をできるとした場合には,例えば,ある受益者は原状回復を請求し,ある受益者は損失てん補を請求すると,このような場合には受託者としてどのような対応をとればよいのか判断に迷うこと,あるいは判決になればその内容が矛盾・抵触することが想定されますが,この問題につきましてはなお検討したいと考えているところでございます。

  続きまして,受益者が複数の信託の意思決定の方法について御説明いたします。

  第49でございますが,第2回会議の際にも申し上げましたように,現行法は,制定当時,主として受益者が単数の信託を想定していたと考えられますので,受益者が複数の場合の受益者による権利の行使の在り方について適切な規律を置いているとは言い難い状況にあると思われます。

他方で,現行の信託実務におきましては,受益者が複数に上る信託も多く見られますので,今回,受益者が複数の信託について適正な規律を設けることを提案しているものでございます。

  1の(1)でございますが,これは,複数の受益者がある場合においては,信託行為に定めを置くことを条件として,受益者全員の合意にかえて,受益者の多数決をもって意思決定をすることを認めたものでございます。

34ページの別表にありますとおり,受益者の権利というのは,単独で行使できるものと全員の合意を要する事項とに分けられますが,ここで問題になりますのは全員の合意を要する事項の権利行使についてでありまして,常に受益者全員の合意を要するといたしますと,複数の受益者による権利行使は困難なものになると思われます。

そこで,複数の受益者による合理的な意思決定の機会を確保しつつ,信託事務処理の円滑性も図るという観点から,信託行為に定めを置くことを条件として,受益者全員の合意を要する事項の全部又は一部について多数決をもって決定することを認めております。

  なお,いかなる事項を多数決の対象とするかは信託行為の定めにゆだねられることになると考えております。

  また,このように多数決での意思決定を認めた場合におきましては,どのような方法で決議を実施することを認めるかが問題となりますが,(2)におきまして,信託の特徴の一つであります柔軟性を確保するという観点から,決議の方法については,各信託の設計,すなわち信託行為の定めに委ねるものとしております。

  次に,2でございますが,受益者集会制度の創設に関する提案でございます。

  先ほど申しましたように,多数決制度のもとにおける決議の方法につきましては各信託の設計に委ねるわけでございますが,契約コストの削減等の観点からは,複数受益者による意思決定の方法及び手続についてデフォルト・ルールを明らかにしておくことが有意義であると思われます。

そこで,主要な方法の一つであると考えられます受益者集会についての規律の創設を提案しております。

  まず,(1)は受益者集会の招集に関する提案でございまして,招集権限は,信託行為に別段の定めがない限り,受託者と信託管理人が有するとしまして,また,受益者集会は,必要が認められた場合に随時招集されることとしております。

そのほか,正当な理由がないのに招集権者が集会を招集しない場合には,アステリスク1のとおり,受益者による集会招集請求権等に関する規律を設けることを検討しております。

  (2)でございますが,これは受益者による議決権の数及び受益者集会の決議方法に関する提案でございまして,①では,原則として受益者がそれぞれ1個の議決権を有することを定めております。

また,②では,受益者集会の決議方法を明らかにしておりまして,すなわち,受益者集会の決議方法につきましては,商法の規定なども参考に,いわゆる普通決議と特別決議を設けるものとしております。

  このように措置した場合におきましては,特別決議を要する事項と普通決議で足りる事項との振り分けが問題となりますが,これは,34ページ別表の「決議の種類」欄に記載しましたとおり,信託の基礎的変更に関する承認及び受益者にとって特に重要であると考えられる意思決定,具体的には信託管理人の選任に関する同意権でございますが,これについては特別決議を要するものとし,それ以外の事項は普通決議で足りるものと考えております。

  もっとも,先ほどより何度も御説明しているところにかかわりますが,信託におきましては,契約自由の原則から,信託行為の変更や終了など基礎的変更に係る承認権限につきましては特定の者に委ねることも可能であると考えられておりますので,信託行為に定めを置くことによって,特定の受益者に対してこれらの承認権限を与えることも可能であると考えられます。

このような信託の柔軟性にかんがみますと,特別決議事項と普通決議事項の振り分けですとか,あるいは定足数につきましては信託行為で自由に定めることができるとするのが相当ではないかと考えられるところでございます。

そして,このように決議の方法や定足数につきまして自由に定めることができるとした場合におきましては,少数派の受益者を適切に保護する必要が生じると考えられますが,この点につきましては,反対受益者の受益権取得請求権に関する規律を整備することによって妥当な解決を図ることが可能ではないかと考えているところでございます。

  もっとも,このように契約の自由を前提とした見解に対しましては,受益者集会という合議体での決議を法定する以上は,受益者保護の観点から,一定の限界,すなわち強行規定を設けることが必要ではないかとの指摘がまたあり得るところでございます。

そこで,アステリスク5に記載しましたとおり,決議要件等につきまして一部強行規定を設けることとするか否かにつきまして,なお検討したいと思っておりますが,契約自由の原則から自由に制度設計できるということの適否につきまして,是非ともこの場でも御審議を賜れればというふうに思っております。

次に,(3)は受益者集会の効力に関する提案でございまして,すべての受益者に及ぶということを明らかにしております。

ただし,信託におきましては,種類の異なる受益者が存在することがありますので,受益者集会で決議した内容によっては受益者集会の効力が特定の種類の受益者に損害を与えることがあり得ます。

この点につきましては,まず,種類受益者保護の観点から,受益者集会の決議は種類受益者には及ばないとすべきであるという考え方があり得ると思います。

もう一つは,契約自由の原則によれば特定の受益者に対して決定権限を委ねることも可能なので,異なる種類の受益者が存在する場合において,受益者による決議の効力がどのように発生するかについても信託行為の定めに委ねることとするのが相当であり,それに伴って生じ得る不都合につきましては,受益権取得請求権を一部強行規定として認めることで解決すれば足りるという考え方があると思います。

そこで,アステリスク7のとおり,種類受益者の保護に関して規律を設けるべきか否かにつきまして,なお検討するものとしておりますが,この点につきましても是非とも御審議をいただければと思います。

  (4)は,受益者集会の費用に関する提案でして,信託財産から負担すると,共益的な費用と見て,そのように考えているところでございます。

  次に,3は書面による決議に関する提案でございまして,受益者による多数決の方につきましては,信託行為で自由に定めることができますが,決議を必要とする事項によっては書面による決議が利用されることも多いのではないかと思われます。

そこで,書面による決議が採用された場合についての一つのサンプルとして,契約コストを削減するという観点も踏まえ,デフォルト・ルールを明らかにすることとしております。

  以上で受益者集会の説明を終わります。

次に,第50の「受益者名簿について」の説明に移らせていただきます。

  まず,1は受益者名簿の作成義務に関する提案でございます。現行法の39条,40条の規定では,受託者は受益者名簿の作成義務を課されておりません。

しかし,信託におきましては,受益者が複数となることがありますが,権利の行使に当たって受益者全員の合意が必要な事項については,各受益者は権利行使に当たって他の受益者の個人情報を知る必要があり,このような場合におきましては,受託者に受益者名簿の作成義務を課すことが,当該信託に関係する者,特に受益者にとって便宜であると考えられます。

そこで,1では,受益者が複数の場合におきましては,受託者が受益者名簿の作成義務を負うこととしております。

  なお,記載事項につきましては,アステリスク1のとおり,なお検討したいというふうに考えております。

 次に,2は受益者名簿の閲覧・謄写に関する提案でございまして,先ほど申しましたとおり,受益者に認められた信託法上の権利の中には,受益者が複数の場合においては全員の合意が必要となるものがありますので,受益者がこれらの権利行使をするに当たりましては,前提として,各受益者が他の受益者の正確な個人情報を知ることができるようにする必要があると考えられます。

このような観点から,受益者は,理由を明示して受益者名簿の閲覧・謄写を請求できるというふうにしております。

また,信託管理人は受益者を保護するために置かれるものですので,保護の対象である受益者の正確な個人情報を知ることができるようにするという観点から,受益者と同様の権利を有するものとしております。

  さらに,受益者集会制度や書面による決議の制度が採用されている場合におきましては,受益者集会の開催や書面決議の実施に当たりまして,決議を行う受益者に関する正確な情報を知ることができるようにする必要があると考えられますので,このような観点から,(2)では,受益者集会の招集権者又は書面による決議の実施権者は受益者名簿の閲覧・謄写請求権を有するとしております。

他方で,これらの者につきましては,集会の招集又は書面による決議の実施のために必要があると認められる場合に限って名簿の閲覧・謄写を認めれば足りると考えられますので,提案におきましては,その旨を明らかにしております。

  なお,受益者名簿の閲覧・謄写に関しましては,受益者の個人情報や受託者の営業秘密を保護する観点から,帳簿等の閲覧・謄写の場合と同様に,受託者は,①から⑦で列挙した正当な理由がある場合には受益者名簿の閲覧・謄写を拒むことができるとする方向で規律を整備する方向で考えております。

● それでは,今の範囲で御議論いただきたいと思いますが,いかがでしょうか。

● 今のところの最初の,「信託行為の定めに基づく単独受益者権の制限について」という部分なのですけれども,結局,ここの表だけを見ると,やはりそう簡単には制限できないよというふうなニュアンスで語られているのが--さっきの続きなのですけれども,信託管理人が選任された場合には,そのうちの幾つかについて,なしになるのですね。

それだとどうかなということなのですけれども,今の私の狭い経験で言うと,私は,ある公益信託の運営委員会の委員というのをやっておりまして,会議になると,そこへ信託管理人の方が出てこられます。

それは,その信託銀行の関係の弁護士さんなんですね。だから,これで新しい制度を拡充していくのはいいのですけれども,そうすると,私が受託者であれば,やはり信託管理人を置いておきましょうよということになりかねない,現状の実務を。

今のところ,それで問題があるかというと,何ら問題がないのですけれどもね。

誤解を生むようだと困りますから。そうなのですけれども,しかし,今はそうだけれども,これが広がっていってどうだろうかという話にはなるので,この各受益者単独というところを,この幾つかの点だけですから,信託管理人のところへ全部行ってしまうということにする必要が本当にあるのだろうかというのが私の疑問です。

● 御意見はよく分かりました。先ほどの問題と関連する問題ですね。

 それから,今言われた,信託管理人というのはどういう人間がなっていいかという問題も恐らく今の問題には本当は入っていて……。

  公益信託だから余り問題ないのでしょうね。まあ,それも問題はあるかもしれないけれどね。いや,ちょっと言い過ぎました。

  ほかに。

● 私は,第49の受益者が複数の信託の場合の意思決定方法について意見を申し上げたいと思います。

 今回,全員合意ということの現行法にかえて多数決制度を導入されるということについては,非常に賛成でございます。

  ただ,その中で,債権の流動化というところで考えまして,質問が一つと,要望が一つございます。

  一つは,この第49の2の(2)の「議決権の数・受益者集会の決議」というところで,「受益者は,信託行為に別段の定めがない限り,それぞれ1個の議決権を有するものとする」ということなのですけれども,別段の定めがあるということがあればまた別なのでしょうけれども,基本的に考え方をお尋ねしたいのは,債権の流動化では,すべての受益権が同じではない,幾つかの受益権のグループに分かれているというところがあります。

一般的には優先的受益権とか劣後的受益権,それからオリジネーターが持っている売主の劣後受益権というようなものがあると思うのですけれども,そういったときに,基本的にどういうふうに考えたらいいのかということと,これは後の取得請求権のところにもちょっとかかわってくるのですけれども,その際にどういうふうに考えたらいいのかなということがあります。

御承知のとおり,商法では,普通株式のほかに,優先株式,劣後株式があって,通常は普通株式のもとに意思決定がされるということになって,特定の場合に優先株式等が議決権を持つというつくりになっているのですけれども,債権流動化の場合は普通株式に該当するようなものがないということが一つあるので,そういった質問をさせていただきました。

  二つ目に,次の26ページに書いてございますアステリスク5のところなのですけれども,債権者集会や書面決議とは別に,そもそも決議の方法及びその要件についても信託行為で自由に定めることができるものとするということについては,非常に賛成でございます。

ただ,この場合,その反対として,自由に信託を設計する当然の少数の受益者の保護という観点から,何らかの強行規定をもって少数受益者を保護しないといけないのではないかという考え方が示されておりまして,それは一般的にはしようがないのかなというふうに思っております。

  しかしながら,先ほども申し上げましたけれども,債権の流動化のときに,受益権の種類がいろいろございますので,そういったときに,もともと差がある受益権があって,そのときまでそういった種類の受益権を保護する必要がないケースがあるわけですね。

したがって,そういうものまで強行規定という形になってしまうと,非常にスキームがつくりにくくなってしまう可能性はないのかなと。

  これについては全然詳しく検討しておりませんので,杞憂にすぎないのかもしれないですけれども,例えば,反対する受益者の受益権取得請求がされるという中で,幾つかの受益権がなくなってしまう,例えば優先部分がなくなってしまうとか,実際にある程度の時間がたっていきますと,だんだん劣後部分の方が極めて大きくなってしまって,優先部分は全体からすると受益権としては非常に少ない,劣後の部分だけがまだたくさん残っているとか,そういったものもありますし,また,劣後受益権もいろいろなパターンがありまして,スキーム自体の中で劣後という形で--その中では当然順番を決めたりはしているのですけれども,当社の例なんかでは,オリジネーターが持っている受益権,複数のスキームの中に発生している劣後受益権をまたまとめまして,それを更に優先部分と劣後部分に分けて売却するなどするわけです。

そうすると,またその中での関係もかなり複雑になってきますので,強行規定という形で一律の保護というものを決めた場合,そのあたりにかなり影響が来るのではなかろうかというふうに懸念をしております。

これについては,これから詳しく検討したいなというふうに思っておりますけれども,そのあたりはいかがなのかなということで,思いつきなのですけれども,受益権がすべて平等の場合はこれで構わないと思うのですけれども,受益権について差がある場合については別段の定めがあるというようなものがあれば,うまくいく可能性はあるのかなというふうな感想も持っております。

● これは○○幹事の説明の中にもありましたけれども,いろいろな種類で,かつ優先・劣後の関係があるような,そういう受益者の種類があったようなときにどういうやり方でやるかと。結構難しい問題なのだろうと思いますけれども。

● まず,一つは,それぞれ1個の議決権でいいか,受益権の種類はいろいろあるではないかという御指摘ですが,そこは30ページのところにも書かせていただきましたが,そのように受益権の内容が均一でないからこそ,細かな類型の違いに応じて議決権の数を法律で一律に調整するというのはなかなか難しいと。

それであるからこそ,デフォルト・ルールとしては1受益者1議決権というよう

にさせていただいて,あとは,微妙な違いに応じて議決権を変えるのは信託行為に任せたいというのが,ここでの考え方でございます。

  それから,受益権取得請求権につきましては,これは我々は強行規定と考えておりますけれども,先ほど言いましたが,あらゆる変更ないしは基礎的な変更につきまして常に取得請求権が認められるというわけではないと。

どういう場合に取得請求権が認められるかというのは,正にこれから検討したいと思っているところですが,恐らく,実質的な変更に当たるような場合というような,そんな感じの要件になってくるかと思いますが,そうすると,そもそもの受益権の中である程度劣後していたものについて,それが多少変わって劣後がもっと劣後するようになったとか,その程度の話であれば重大な変更には当たらないが,優先していたものがいきなり劣後するとか,それはさすがに重大な変更とか,そのような実質的な判断というのが可能になるのではないかというふうに考えておりますが,その点を,御指摘なども踏まえつつ,また,これについては次回会合以降で検討する点でございますので,御指摘があれば,また後日でもいただければというふうに思います。

● 第48,第49,第50,3点意見を申し上げたいと思います。

  まず,第48の単独受益者権の制限のところでございますが,これについては,甲案,乙案というふうに提示がございますので,基本的には,私どもの業界としての多数意見は甲案ということです。

それ以外は乙案かというと,そうではなくて,基本的には信託の柔軟性を確保するという観点から,信託違反行為の第三者に対する取消権だけではなくて,ほかの単独受益者権についても信託行為の定めによって制限ができないかと,そういう少数意見がございました。

  実際の多数派の甲案の方の理由なのですけれども,これは22ページのところにも書いてありますけれども,実際に受益者が多数いますと,当然,それぞれの受益者にとって得なのか損なのか,それはいろいろ評価が分かれるということでございますので,あと,濫用ということもやはりどうしても出てくるものでございますので,信託行為によって制限を認めてもらいたいということでございます。

  次に,第49の受益者が複数の意思決定方法のところでございますが,ここの部分につきましては第2回に意見を申し上げましたが,引き続き,受益者が複数の意思決定方法として,多数決が導入されたということと,その方法について,先ほど来出ていますけれども,信託行為の定めで自由に設計できると,ここの部分については従来から要望していた部分でございますので,賛成だということでございます。

  ただ,これも先ほど○○委員の方から出ていましたけれども,アステリスクの5のところで,それに伴う不都合についての対応につきまして,決議に反対する受益者に取得請求権を認めるという形のものであるとか,ほかの強行法規を求めるという点につきましては,信託の特色であります柔軟性をちょっと阻害するようなことも出てくるのではないかということで,業界の意見の大勢としては,それについても,強行法規化というのは勘弁していただきたいというところでございます。

ただ,一部の意見としては,とは言うものの,何らかの制限はやはり必要なのではないかというような意見もございました。

  あと,複数の意思決定方法につきましては,これは多分後で議論されることになりますけれども,合同運用の信託についても適用される部分があると思いますので,そのときにまた御議論いただければいいと思いますけれども,そういう問題があるということをテークノートしていただければと思います。

あと,第50の受益者名簿のところでございますが,これが最近になっていろいろと議論が錯綜していまして,意見としては,1の名簿の作成義務の規律と,2の閲覧・謄写請求,このいずれも基本的には強行規定であるということだろうと思いますが,これをデフォルト・ルールにしていただけないかということでございます。

  まず,1の方なのですけれども,第2回の会議のときにちょっと申し上げたのですが,例えば投資信託というものを考えた場合に,受託者は基本的には受益者を把握していないというようなことがございまして,これから先以降いろいろな信託が出てきたときに,把握できないものもかなり出てくるのではないかと。

ということは,受益者名簿というのは果たしてつくれるのだろうかというのが,ちょっと余り自信がなくて……。

例えば,投信ということで限定して考えますと,当然,投信法という特別の法律がありますので,そこで緩和するという方法が一つあると思います。

それと,無記名証券が大半でございますので,例えば無記名証券については名簿を設けないという方法もあるかもしれません。

あと,第53の提案5で言う甲案ですか,これをとればいいというようなお話かもしれませんけれども,それ以外に,信託業法も変わりまして,受益権の販売業者というのが出てきて,受益者との関係は専らその販売業者が相対する,そして受託者と受益者の距離があいていくというような種類の信託もあるのではないかと。

その場合に,どこまで受益者名簿というものを作成できるか,そこら辺のところは,今後の展開次第によっては,できないようなものもあるのではないかということがありまして,基本的にはここはデフォルト・ルールにしていただけないかということでございます。

2の閲覧・謄写請求のところですが,当然,名簿がないとできないというのが一つあります。

それと,よく株主名簿とパラレルに言われますけれども,株主名簿というのは基本的に社会的に閲覧できるのだということが認知されておりますが,信託の名簿につきましては,基本的には,現行法で言ったら見れませんので,見れないものだということを前提に組み立てられています。

その中で,法律が変わったら当然考え方も変えるのだというお話かもしれませんけれども,例えば私が個人的に考えても,横のつながりを重視して,権利行使するために横のつながりを知りたいということで名簿の閲覧をするのと,プライバシーの観点から自分のことを知られたくないというのと,そのどちらに重きを置くのかというところではないかと思いますが,今の一般のお客さん,受益者の方々に聞いてみたら,多分,知られたくないという方も結構いらっしゃるのではないかなと。

そういう観点から,やはり一律に決めてしまうのではなくて,信託ごとにデフォルトという形で対応していくのがよろしいのではないかなと思います。

  あと,ここの規律につきましては,基本的には賛成なのですけれども,強行規定ではなくて,デフォルト・ルールにというところでございます。

● 第49で,総論的な意見と,質問を二,三,それと第50で質問を一つお願いします。

  受益者集会に関する強行法規を採用すべきかどうかという話についてでございますけれども,これについては,第2回で私が申し上げましたとおり,基本的にはデフォルト化を追求すべきであるということでございます。

  その意見をもう1度繰り返したいところでございますけれども,もちろん,先ほど○○幹事がおっしゃられたとおり,信託の重要なところである信託の柔軟性であるから自由ということもありますけれども,考えてみますに,もう一つ,1の(2)で,そもそも多数決についての方法というのは,別に受益者集会に限らず,書面その他の方法によって行うことができるということが書いてあります。

そうしますと,書面その他の方法については別に規律がないということですので,ここで平仄を考えますと,受益者集会を選んだときに,勢い団体性の議論が入ってきて,かつ,ある意味セットとしてやってくると。仮に定足数であるとか特別決議ということの意思決定に関することだけであればいいとしても,先ほどから出ています反対者の取得請求権というのもセットで出てくるということを考えますと,その他の方法によって行うことと,受益者集会との乖離が非常に大きいのではないかと思います。

うがった見方をするのであれば,例えば,「その他の方法」というのを,自治的に,受益者集会の方法と同じようなその他の方法でやると,ただし反対者の取得請求権はないものとして,独自の受益者集会でない集会を行うというのも,1の(2)であれば可能なような感じがしますので,そうしますと,2の強行法規を維持する意味がどこまであるのかということを思います。

  あとは,仮に強行法規であるということを前提とした場合の若干の御質問なのですけれども,ではどこまでデフォルトなのかということでございますが,1の(1)の中で,基本的な決議事項の場合というのは,この表によって判断すべきだというふうになっているわけですが,これ以外の事項というのもあるとは思うのですけれども,この場合に,これはそもそも受益者集会の決議事項になるのかどうか,また,その場合にそれが普通決議なのか特別決議なのかということが判然としないわけなのですけれども,例えば,セキュリティー・トラストが出てきた場合に,では担保物を買いますというようなことがあると。

一つの考え方は,これはもう信託そのものの変更ということで,信託行為の変更ということで第57の規律によるというような形で出てくるのかもしれませんけれども,片や,例えば担信法で言う担保の変更ということで何らかの決議に付すという考え方もあるとは思うのですけれども,私が申し上げたのは単なる一例でございますけれども,このような,この項目に想定されないようなものがあった場合に,その会議体ではどういうふうに扱うのかということを御質問させていただきたいと思います。

  二つ目は,決議の方法なのですけれども,いわゆるみなし賛成ということが可能なのかどうかということでございます。

株式会社の場合では,御案内のとおり,例えば,賛否を問うて,何も書かなかった場合には賛成とみなすというのを書くというようなことが行われておりますけれども,それに加えて,非常に自由な会議体ということを目指すのであれば,例えば,極端な話,返送しなかった場合は賛成とみなすというようなことも可能ではないのかというふうにも思います。

先ほどの1の(2)の中での「その他の方法」という,いわゆる私的自治の,会議体でない場合にはそういうことも可能なのかなと。

契約法の考え方からしても,あらかじめそういうふうに決めておけば可能ではないのかなというふうには思うわけですけれども,では受益者集会の場合にそういう方法が認められるのかどうかということです。

  それから,議決権で何を1票とするのかということについて,これは余り絶対的な意見を持っているというわけではないのですけれども,質問があります。

やはり多様なニーズに応じるためにデフォルト化賛成ということで,ここに書いてありますとおり,基本的には一人1票でいいであろうと。

商事信託の場合にはいろいろなニーズがあるわけだけれども,基本的にはそういうのは信託行為で決められるわけだから,それで対応すればいいだろうということで,基本的にはデフォルト・ルールを前提とし,ただし原則は一人1議決権というふうに整理されていると理解しております。

  ただ,考えるに,その原則自体,本当に一人1議決権でいいのかどうかということがございます。

恐らく,民事信託の場合で特別な場合,どちらを--つまり,持分権に応じて1議決権と考えるのか,一人と考えるのかということについてはいろいろな判断があり得るとは思うのですけれども,私は,民事信託であったとしても,いろいろな金銭的な,経済的なことを目的とした信託ということが多いと思いますので,民事信託としても原則は何らかの持分ということを想起して,それを単位とするということが望ましいのではないかと。

  そこで質問なのですけれども,ここで一人1議決権とした理由といいましょうか,例えばこういう場合にはやはり一人1議決権にしなければ不便だな,また,当事者の意思からしてその方が合理的だなというような具体的なものがあるのかどうかということについて,最後の質問とさせていただきたいと思います。

  それから,第50の受益者名簿については,簡単な質問一つでございますけれども,基本的には,先ほど○○委員からお話がありましたように,これもデフォルト化ということを希望したいとは思うのですけれども,1点確認したいのは,正当な理由によって拒絶することができるということなのですけれども,これはどういう事項を名簿に載せるのかにもよりますけれども,仮に多様な情報を名簿に載せるということになった場合に,やはり理由によっては,開示の内容,また範囲を限定することもできるのではないかというふうに思っているのですけれども,それがそうなのかということについて確認したいというふうに思っています。

● 第48の単独受益者の制限について,信託違反の取消権について意見を述べさせていただきます。

  今回の御提案は,従前出ております取引の安全と,今回は少数受益者権の取消権の濫用に配慮して御提案されているかと思われますけれども,この制度を作るに当たっては,信託違反行為の抑止という点も是非御検討いただきたいというふうに思っております。

  すなわち,信託違反行為の効力が否定されにくい制度のもとでは,信託違反行為の抑止力が弱まるのではないかというふうに懸念しております。

もちろん,受託者の忠実義務等の規定は存するわけですけれども,抑止効果として一番効力を持つのは,やはり信託違反行為の効果が否定される現実的可能性があるという場合。

こうした制度のもとの方が抑止効果が働くのではないかと思います。

受益者の立場からしますと,信託違反行為の効果が否定されにくいということになりやすいという場合には,もともと受益者が信託目的を基本的に前提として受益権を享受するということにしたにもかかわらず,この範囲外の行為によって負担ないし損害を負わされることになりまして,これは,受益者の立場からすれば,不測の負担を負わされるということになってしまいます。

こうした観点ですとか,あるいは紛争の防止・予防や信託への信頼確保という観点からも,信託違反行為の抑止というのは重要な課題であろうと思われますので,是非,この観点からの制度設計をお願いしたいと。

  このような観点から,甲案,乙案提示されておりますけれども,乙案に賛成する意見を述べたいと思います。

  なお,個人的には,従前述べさせていただきましたけれども,悪意重過失の立証責任についても,制度設計に当たってあわせて考えるべきではないかというふうに考えております。

これとの組み合わせの中でこの単独受益権の制限をどうするかということについても検討すべきかと考えております。

● 今言われた点は,現行の信託法というのは,たくさん受益者がいる場合というのはいろいろな場合があるのでしょうけれども,取消権についてだけはわざわざ32条が入っているというのは,恐らくそういう趣旨でできたのだと思います。

ただ,この規定ができた当時は,そんなにたくさんの集団信託というのは考えていなかったので,集団信託についてはどうするかという問題はなおあるような気がいたしますけれどね。

  以上,幾つか質問等について,ここでちょっとまとめて,○○幹事から。

● では,可能な範囲でお答えいたします。

  まず,受益権取得請求につきましては,受益者集会であればかかるのに,書面その他の方法ではというお話があったかと思いますが,我々の考えでは,いかなる方法をとろうとも,取得請求権は強行規定としてかかるという理解でおりますので,受益者集会だったら取得請求権があるのに,ほかの方法だったらないということはあり得ないというふうに考えております。

 次に,書いていない事項があったときにどうなるかと。我々としては一応網羅しているつもりでございますが,もし漏れている事項があるとすれば,御指摘を是非,また後日でもいただきたいのですが,基本的に自由に信託行為で設計できるという前提をとりますと,そもそも受益者集会の事項にするかどうかが信託行為で定められればいいということになりますので,漏れている事項があるとして,それを受益者集会の対象とするかどうかというのも信託行為で決めていただければいいのではないかというふうに思っております。

それから,いわゆるみなし賛成で,これは,兼営法にあるものですとか,投信法とか,いろいろな法律があるかと思いますが,かねてより問題になっていたところでございましたが,現在の我々の考えといたしましては,そこをどのような方法をとるかというのも,あくまで多数決を前提として,そのもとでの方法というのは信託行為で定めればいいということですので,多数決の前提である上で兼営法のみなし承認のような規律を設けることも,信託行為で定めれば可能であるというふうに,現時点では考えているところでございます。

  それから,議決権について,一人1議決権よりは,受益権の持分で決める方がいいのではないかというような御指摘が,デフォルト・ルールの定め方としてありましたが,その不都合というのは,例えば受益者全員の一致が必要とされる場合,仮にその持分が,ほかの人は全部1万円だとして,一人だけ1円だという場合でも同一といたしますと,その1円の人がノーと言えば権利行使は認められないということになるとやはり不都合であって,一人1票とする方が合理的ではないかというような考え方に基づいたものであるという点を答えさせていただきます。

  あと,取消権の行使について,これは御質問というよりは御意見ということでございますが,確かに,なるべく違法な行為を取り消した方が監督権の行使に資するという観点も全くそのとおりかと思います。

ただ,監督権の行使の方法としては取消権が一番ドラスティックではございますが,その他に,例えば,利益吐き出しはともかくといたしまして,損失てん補ですとか原状回復というような方法もありますので,そのような方法は単独として認めております。

更にその取消権についてもプラスアルファ単独にすべきかどうかというところについては,いろいろな考え方があるかなという,直感的にですが,そういう気がしております。

いずれがいいかというのは,ちょっとまだ分からないというふうに言わせていただきます。

  あと,受益者名簿を一部隠していいかどうかというのは,余り検討していなかったところでございますが,少なくとも現在言えますのは,⑦の請求によって必要と認められる限度を超える請求が行われたときは,見せないことができますので,受益者ごとに区切って,Aの受益者の受益者名簿だけ見ればいい場合には,Bのところは目隠しをして,Aの部分だけ見せればいいということは可能というか,そうすべきであると。A,Bとも見せないのではなくて,少なくともAは見せなければいけないが,Bは隠すことはできるということになると思いますが,更にAで例えば名前だけ見せて住所は隠すとか,そういうのができるかというと,それでこの受益者名簿の閲覧請求権を認めた趣旨にかなうのかという点,疑問がないわけではございませんが,まだ未検討でございますので,御指摘を踏まえて,今後検討させていただきたいと思います。

● ほかに。

● その他の方法によってということが,取得請求権を逃れるようなことができるかという話を御質問したわけですが,それは強行法規だからできないという話なのですが,そういたしますと,例えば,31ページの(3)からの説明の中で反対受益者の取得請求権云々という議論というのは,これはいわゆる1の(2)の,「その他の方法」というところの記述でもあるということで,そうしますと,その「その他の方法」の中で,ほかの受益者集会の規範というのも,「その他の方法」の類型の自由な決め方の中にやはり強行法規的なものが入ってくる余地があるということでございますか。

● はい。どの限度で強行法規かというのはともかくとして,どのような方法をとったとしても,それはやはりそれによって,例えばその方法によって変更されて実質的に害される受益者がいれば,反対受益者が取得請求権を行使できるという点,コアの部分は強行法規であると。方法にかかわらないというふうに考えています。

● 一言で言うと,1の(2)の「その他の方法」というのは,完全なデフォルト・ルールではないと。

● そう定めることはデフォルト・ルールですが,その内実として,受益権や取得請求権がかかるというところは強行的であるという考え方でございます。

● そうすると,私の意見としては,それもデフォルト・ルールにしていただきたいというのがあります。

● 第49について発言させていただきたいと思いますが,受益者が複数の場合の意思決定方法として受益者集会制度を導入するということは,特にディールを中心とする日本の信託の現状を考えると,大変適切な方向ではないかと思うのですが,ただ,説明の中でも出てまいりますように,例えば,「契約自由の原則を踏まえて」という箇所が何か所か出ておりますけれども,この受益者集会による意思決定というのは本来契約の限界があるところから出てきているわけで,あらかじめ事前に決めることができないから,どう決まるか分からないけれども,こういう方法で決定しましょうという制度ですので,契約自由のアナロジーでこの集会制度を規律するというのは,やはり非常に疑問があると思っております。

  もう少し具体的に申しますと,例えば手続的な規定,それから情報に関する規定,それから,少数派あるいは反対派だけではなくて,そもそも出席しなかった人も拘束されるわけですので,そういう人も決議に拘束されるような合理的な手続,情報,それから少数派,反対派,あるいは参加しなかった者の保護について,かなりの強行法規がないと,逆に受益者保護のための受益者集会制度が本来の趣旨に反するものになってしまうのではないかという気がいたします。

特に,そういう観点からいたしますと,種類受益者集会制度のようなものはやはり強行規定として定めておく必要があるのではないかと考えております。

  逆に,会社法の方でも,株主総会の決議の瑕疵を争う訴訟というのは,会社法上争われている類型で最も訴訟が多い。

そういう意味では非常にトラブルになりやすい面があるかと思います。

そういうときには,やはりある程度きちんとルールを定めておいて,逆に決議の効力についてはある程度の効力を高めるという方向も一つあり得ると思いますので,強行法規性を認めるかわりに決議の効力について少し安定的な制度にするといった選択肢も一つあり得るのではないかと思っております。

  それから,受益権の取得請求権についてですけれども,これも本来,受益者による意思決定によって,より健全かつ効率的な信託の運営を目指していると思いますので,取得請求によってかえって信託の基礎が揺らいでしまったり,信託がうまくいかなくなるということになったのでは,これはもう元も子もない話ではないかと思います。

そういう観点からすると,やはり受益権の取得請求というのは,やはりよほど限られた限定的な場合にのみ認められるものであって,本来の趣旨,集団的な意思決定によって恐らく合理的な決定がなされるだろうと,こういう決定を可能にする限りにおいて限定的に認めるべきではないかと思っております。

  それから,第50の方の受益者名簿について,一言だけ申し上げさせていただきたいと思います。

  受益者名簿を必ず作成しなければならないということは,特に受益者集会制度を採用していない信託においてはないと思うのですけれども,そのときは,逆に,受益者に対して一定の情報を通知するための公告についての何らかのルール,あるいは信託についての何らかの情報を伝えるための仕組みについて検討する必要があるのではないかと。

逆に,受益者名簿を作るのはコストがかかると思いますけれども,そういった公告等もなかなか大変な場合もあるかと思いますが,最近はIT化の進展等で,ホームページ等も利用してそういった公告を行うということもあり得ると思いますので,その後には柔軟に考えることができるのではないかと。

受益者名簿は,そういう意味では必ずしもつくらなければいけないというものではないというふうに私も思います。

  以上,ちょっと長くなって恐縮ですけれども,3点についてコメントさせていただきました。

● この受益者集会というのは,確かに合理的な意思決定をするための制度としてつくられているので,そこが契約自由で何でも自由になって,かえって合理的な意思決定ではないということになると,意思決定自体が効力を争われる可能性が出てくると,そういう御発言だったと思いますけれども,それなりに重要な御指摘だと思いますね。

これもまだ幾つか検討すべき点が残っていると思いますので,今のような御指摘も踏まえて考えていきたいと思っています。

  それから,第48でしたか,甲案,乙案というのが出ていまして,これも,今までのところ,両方の御意見が出ております。

こういう二つの案が出ているところについては,いずれだんだん集約して決定していかなくてはいけないわけで,今日は時間が余りありませんので,皆さんの御意見を伺うということはいたしませんけれども,基本的には皆さんの御意見を伺いながら,それに沿いつつ決まっていくということだと思いますので。ここは審議会ですから。ということで,皆さんの御意見を積極的に御発言いただければと思います。

本来,もう一つセッションが残っているのですが,今日は途中でいろいろ時間をとってしまったために,全部予定どおりできませんでしたけれども,これで終わりたいと思います。

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2016年加工編   法制審議会信託法部会

第8回会議 議事録

第1 日 時  平成17年1月14日(金)  自 午後1時00分

                       至 午後4時44分

第2 場 所    法務省第1会議室

第3  議 題

   信託法の見直しに関する検討課題(5)(続き)について

   信託法の見直しに関する検討課題(6)について

第4 議 事   (次のとおり)

                              議    事

● それでは,時間になりましたので,法制審議会信託法部会を開催したいと思います。

  どうもお忙しいところお集まりいただきまして,ありがとうございました。

   (関係官の異動紹介省略)

● 本日は,具体的な議題に入る前に,事務当局の方から,当部会の審議スケジュールの変更について皆様にお諮り申し上げたいと思います。

  当部会の審議スケジュールにつきましては,昨年10月1日に開催されました第1回会議の冒頭におきまして,事務当局より,信託法の改正についての関係法案を本年の臨時国会に提出することを目途として,本年2月中に要綱試案を取りまとめた上でパブリックコメント手続を行い,その結果も踏まえて,本年7月までに要綱案を決定すること等をお諮り申し上げて,部会の御承認をいただきました。

  その後,当部会におきましては,このスケジュールに基づきまして,昨年は合計7回にわたり会議を開催いただきまして,多岐にわたる論点について,順調かつ精力的に御審議をお進めいただいてきたところでございます。

  もっとも,今般の信託法の全面改正に当たりまして検討を要する事項は,これまでの御審議からも明らかなとおり,極めて複雑かつ多岐にわたるものでして,実務界に与える影響の大きさにかんがみましても,拙速に陥ることなく,引き続き慎重かつ綿密な御審議をいただくことが適当であると考えております。

  そのほか,公益法人制度の見直し状況や関係法令の整備の必要性などにもかんがみまして,事務当局といたしましては,当初の審議スケジュールを改め,信託法の改正についての関係法案の提出時期につきましては,平成18年の通常国会を目途としたいと考えております。

  なお,このようなスケジュールの変更に伴いまして,当初のスケジュールでは本年3月に行うこととしていましたパブリックコメントの手続につきましては,私益信託部分を中心として本年6月ごろに行うこととし,その後も私益信託部分を中心に審議を進めまして,他方,公益信託部分につきましては,公益法人制度改革における作業の進捗状況をも踏まえまして,本年の秋以降に本格的な審議を行っていただくことを予定しております。

また,当部会における信託法改正要綱案の決定は本年の年末か年明けに,法制審議会総会における要綱の決定,法務大臣への答申は,来年2月ごろとなることが見込まれるところでございます。

  最後に,部会の開催頻度につきましては,これまでも月2回の審議をお願いしまして,相当の御負担をおかけしているところでございますが,信託法の改正項目が相当多数に上ることが見込まれることにかんがみますと,今後も差し当たり毎月2回の割合で隔週金曜日に部会を開催する必要があると考えております。そこで,当部会のとりあえず本年7月までの具体的なスケジュール案を,本日席上配布させていただきました。

  なお,具体的な審議事項及び本年9月以降のスケジュール案などにつきましては,今後の審議状況等を踏まえつつ,改めて提案申し上げていくこととしたいと存じております。

  委員・幹事の皆様には引き続き多大な御負担をおかけすることとなりますが,よろしくお願い申し上げたいと存じます。

  以上のとおり,お諮り申し上げます。よろしくお願いいたします。

● そういうことですので,半年延びたというようなところがありますので,大変でございますが,よろしくお願いいたします。

  ちなみに,9月以降の日程についてはこれから具体的に決まっていくのだと思いますけれども,曜日は大体金曜日というふうに理解してよろしいですか。

● はい。

● 皆様のいろいろな日程調整などあると思いますので,曜日は大体金曜日を中心とするというふうに御理解ください。

  それでは,ここで何か御質問等ございますでしょうか。--よろしいですか。

  それでは,本日の審議に入りたいと思います。

  今日も幾つかのセッションに分けて審議していただきたいと思いますので,その分け方等につきましても,○○幹事からお願いいたします。

● 本日も,大きく四つに分けて議論させていただきたいと存じます。

  まず最初に,前回積み残しました受益権の譲渡,有価証券化,消滅時効についての御審議をお願いします。

2番目に,信託行為の変更,併合,分割につきましての御審議をお願いしたいと存じます。

3番目に,反対受益者の受益権取得請求権についての御審議をお願いしたいと存じます。

最後に,信託の終了原因と信託の清算についての御審議をお願いしたいと存じます。

  なお,本日は所用がございまして,5時より少し前に終わるように見込んでおりますので,どうぞ御協力をお願い申し上げます。

● それでは,第1セッションからお願いします。

● それでは,早速,「第52 受益権の譲渡について」というところから御説明を申し上げたいと存じます。

  現行法上,受益権の譲渡に関する法律関係は明確ではございませんが,学説上は,受益権は指名債権に準ずるものと理解した上で,その譲渡性を原則的に承認し,対抗要件についても指名債権に準ずるものと解する見解が有力でございます。

  もっとも,受益者は権利のみならず補償債務や報酬債務をも負担し得べき地位にあることから,このような特殊性にも配慮しつつ,受益権の有価証券化に関する規律を整備する前提としても,受益権の譲渡に関する一般的な規律を明らかにすることが適当であると考えるものでございます。

 なお,以下におきましては,受益者が信託行為に基づいて有する権利義務の総体としての地位を「受益権」ということとし,他方,受益者がかかる受益権に基づいて信託の利益を受ける債権を「受益債権」と呼んで区別することとしております。

  まず,1でございますが,これは受益権の譲渡性に関する提案でございます。

1番目として,受益者は原則として受益権を自由に譲渡できること,2番目としまして,受益権の譲渡については受託者の承認とか承諾は必要としないこと,3番目に,ただし,受益権の譲渡がその性質に反するとき,信託行為に受益権の譲渡禁止の特約があるとき,あるいは受益権の譲渡が信託目的に反するときには,例外的に受益権の譲渡ができないことなどを規律したものでございます。

  次に,2でございますが,これは,受益権譲渡に関する対抗要件につきましては,ゴルフクラブ会員権の譲渡に関する判例なども参考といたしまして,指名債権の譲渡に関する民法467条の規律に準じまして,受託者に対する通知又は受託者の承諾をもって受託者対抗要件とするとともに,確定日付のある証書による通知又は承諾をもって受託者以外の第三者対抗要件とするものでございます。

  次に,3ですが,これは受益権譲渡における受託者の抗弁事由に関するものでございまして,受託者は,通知又は承諾があるまでに譲渡人たる旧受益者に生じた事由をもって譲受人たる新受益者に常に対抗できることとし,通知はもちろん,異議をとどめない承諾にも,民法468条のような抗弁事由喪失の効果を持たせないとするものでございます。

  次に,4でございますが,これは,受益権の譲渡に受託者の承諾を要しないこととしたことのいわば見返りといたしまして,受託者対抗要件たる通知又は承諾までに既に旧受益者に発生していた補償債務又は報酬債務につきましては,受益権の譲渡後も譲渡人が譲受人とともに併存的に債務を引き受け,弁済の責任も負うことを原則といたしますとともに,旧受託者の債務の負担につき信託行為に別段の定めのある場合には,受託者は,善意の譲渡人に対してはかかる特約に基づく不利益を負わせることはできないとするものでございます。

  なお,提案では,通知又は承諾があるまでに生じた債務につき併存的責任を負うということをデフォルト・ルールとしておりますが,例えば債務の発生直前に受益権の譲渡がなされる場合などを想定しますと,受託者保護の観点から,例えば通知又は承諾があるまでに生じた原因に基づく債務,あるいは通知又は承諾後一定期間内に生じた債務のようなものにつきまして併存的責任を負うことをもってデフォルト・ルールとすべきであるか,それとも,受益者の債務はせいぜい二次的債務であることや,受託者としては譲渡制限特約や併存的責任を広げる特約で対処できることなども考えますと,デフォルト・ルールとしてそこまで併存的責任を広げることはやはり適当ではないか,いろいろな考え方があり得るところでございますので,御意見があれば是非とも御教示を賜れればと存じます。

  なお,以上はいずれも受益権の譲渡に関する規律でございますが,一般の契約におきましては契約上の地位の移転と契約の一部である指名債権部分の譲渡とが別個に観念されますように,受益権の譲渡とは別に,受益債権の譲渡を観念すべきかについて検討を試みましたのが,44ページ以下の5の記述でございます。

  ここでは,考え方の一例といたしまして,甲案と乙案とを併記しております。

  このうち,甲案でございますが,これは,一般の契約を類推しまして,受益権が契約上の地位,受益債権が契約に基づく指名債権に相当するものと考え,受益権の譲渡とは別に,受益債権の譲渡のみ行うこともできると考えるものでございます。

 なお,この考え方のもとにおきましても,受益債権の譲渡の範囲には制限がないとする考え方と,個々の受益債権のすべて,あるいはこれに相当する受益債権の総体を譲渡することは,受益債権を有しない受益者を認めることになるから許されないとする考え方とがあり得るところでございます。

  これに対し,乙案でございますが,これは,株式についての考え方を類推いたしまして,受益権が株式に,受益債権が基本権たる配当請求権と支分権たる具体化した配当請求権に相当するものと考えまして,具体化した支分権たる受益債権を除いては,受益債権の譲渡のみを行うことはできず,常に受益権の譲渡として行う必要があると考えるものでございます。

  この点につきまして,資料47ページの(注6)におきましては,更に折衷的な考え方も示させていただいておりますが,受益権の譲渡と受益債権の譲渡の関係については,譲渡のみならず,差押えの局面におきましても問題となることが考えられますので,条文化の要否はともかくといたしまして,考え方をいかに整理すべきかにつきまして御審議をいただけると有り難いと存じます。

  以上が,受益権の譲渡についての提案でございます。

  続きまして,第53の受益権の有価証券化につきましての提案に移らせていただきます。

  資産流動化目的での信託など,信託を利用した金融商品の市場の活性化のためには,受益権の流通性を高める必要があるとの観点から,貸付信託法,投信法,資産流動化法などの特別法のみならず,一般法である信託法におきましても受益権の有価証券化を認める規定を設けるべきであるということが指摘されております。

そこで,必要的にではなく,あくまでも信託行為に定めた場合ではございますが,受益権についての有価証券--すなわち受益証券でございますが--を発行できることとした上で,受益証券の類型,譲渡の方法及び効力,受託者及び第三者への対抗要件などにつきまして規律の整備を図ろうとするものでございます。

  まず,受益証券の法的性質につきましては,権利の流通性を高めるという目的から,いわゆる講学上の無記名証券とすること,その上で記名式と無記名式の双方を発行できるとすること,株式と同じく有因証券でありまして,その表章する受益権の内容は証券の記載ではなく信託行為によって定まること,また,無記名証券であるという性質にかんがみまして,受益権の譲渡には譲渡の合意とともに受益証券の交付を要すること,受益証券の所持人にはいわゆる資格授与的効力が付与され,善意取得を認めること,以上につきましては第2回会議でも御説明したとおりでございます。

また,法律関係の複雑化を回避すべく,証券化された受益者の地位が譲渡された場合には原則として委託者の地位も移転いたしますが,委託者の地位を固定し,受益権のみを流通させるタイプの信託も考えられますので,信託行為をもってこの原則が適用されないものとすることも可能としていることも,第2回会議において御説明したところでございます。

  そこで,以下におきましては,第2回会議以降,事務当局におきまして更に検討を進めた事項につきまして,2点,御説明を申し上げたいと存じます。

  まず第1は,資料の5及び6に記載しておりますとおり,受益者名簿の作成の要否及び受益証券の譲渡の対抗要件につきまして,報告書に記載しておりました案を甲案といたしまして,新たに乙案というものも提示した点でございます。

  従来の甲案でございますが,これは,記名式の受益証券については株式に類似した取扱いをするものでありまして,無記名式の受益証券については無記名社債に類似した取扱いをするものでございます。

具体的には,記名式についてのみ受益者名簿の作成を要するものとした上で,対抗要件につきましては,受託者との関係では,記名式については受益者名簿の記載又は記録により,無記名式につきましては券面の占有によるものとし,他方,第三者に対しましては,記名式,無記名式を問わず券面の占有によるとするのが,甲案でございます。

  これに対しまして,乙案でございますが,これは,記名式,無記名式いずれについても受益者名簿の作成を必要とした上で,対抗要件につきましては,受託者に対しては,記名式,無記名式を問わず受益者名簿の記載又は記録によるものとし,他方,第三者に対しましては,記名式につきましては,受益証券の占有のほか,券面への氏名または名称の記載を要するものとし,無記名式については券面の占有によるものとするものでございまして,資産流動化法の174条1項・2項と同様の取扱いをするものでございます。

  この乙案というのは,受益者に対しましては,信託の類型を問わず,受託者に対する各種の監督権能や信託行為の変更・信託の終了に関与する権限が認められていることにかんがみますと,その権利行使の機会を確保することを重視して,記名式,無記名式を問わず,受益者名簿の作成を要するとするものでございます。

  これに対し,甲案でございますが,これは信託の類型によって,例えば投資信託など,基本的には配当を受領するにとどまり,それ以上に法律上認められている各種の権利の行使が実際にされることは少ないと考えられる社債タイプの信託商品と,配当を受領する以外に権利の行使もある程度想定できる株式タイプの信託商品とが考えられること,常に受益者名簿の作成を要するとした場合の受託者の負担への懸念,あるいは券面への氏名の記載を要求するのが手続的に煩雑であることなどを考慮しました上で,株式タイプの記名式と社債タイプの無記名式のいずれの受益証券を発行するかについては,受託者の合理的な選択に期待しようとするものでございます。

  次に,受益証券が譲渡された場合に原則として委託者の地位も移転することは先ほど申しましたとおりですが,証券の譲受人が証券発行者たる受託者に対する権利のみならず義務までも承継するのは相当でないと考えられることから,委託者の義務,例えば報酬支払義務などにつきましては承継されず,受益者が補償支払義務や報酬支払義務を負担することも認めないこととしまして,これらについては信託行為に基づく例外的な定めも許容されないことと結論したものでございます。

  なお,受益権の有価証券化につきましては,更に進めまして,受益権を振替制度の対象としてペーパーレス化を図る実務上のニーズがあることが第2回会議などで指摘されております。資料49ページのアステリスク3に記載しているところでございまして,一般の受益権も振替制度の対象とすることにつきましては,今後検討していきたいと考えているところでございます。

  また,同じく資料の52ページ,(注1)記載のとおり,実務上,信託財産を引当てとした債券発行を認めるニーズがあると言われておりまして,第2回会議におきましても,信託財産を引当てとする債券発行ができると好都合ではないかと考えているという御意見もございました。

この点につきまして,一体具体的なニーズがどういうものか,このような債券発行を認めることのメリットはどこにあるのか,受益権の複層化によって対応できないということがあるのか,などにつきましてもう少し御教示いただけると有り難いと存じております。

  以上が,受益権の有価証券化についての提案内容でございます。

  最後に,第54といたしまして,受益債権等の消滅時効についての提案に移らせていただきます。

  なお,あらかじめ申し上げますけれども,56ページの(注1)に記載したところでございますが,「受益権」とは,受益者の有する権利義務の総体,すなわち受益者の地位を言うものであると整理しておりますので,契約上の地位たる受益権自体ではなくて,そこから生ずる「受益債権」,すなわち信託の利益を受ける債権の部分が消滅時効にかかるものとして規律を設けることとしております。

そして,預託金会員制ゴルフクラブ  の施設利用権の消滅時効と会員権の消長に関する平成7年9月5日の最高裁判決も参考にいたしますと,消滅時効の援用によって受益債権が消滅した場合には,受益債権を基本的な構成部分とする受益権ももはや包括的な地位としては存続し得なくなると考えられまして,その結果,ほかに受益者がいるような場合ではない限り,受益権すなわち受益者が不存在となって,当該信託は目的不達成により終了し,その結果,行使可能となる帰属権利者の残余財産分配請求権もまた時効消滅した場合には,信託財産は信託の拘束から完全に解かれて,受託者の固有財産に帰属することになると整理していることをあらかじめ付言申し上げます。

  提案内容の1でございますが,これは,受益債権の消滅時効の時効期間とその起算点,それから受託者が消滅時効を援用するに当たっての手続的要件,更に受益債権の除斥期間に関する提案でございます。

  まず,(1)でございますが,受益債権の消滅時効に係る時効期間につきましては,受益権が民法167条2項の「債権又ハ所有権ニ非サル財産権」に当たる性質を有するものであるとしまして,20年とする見解もございますが,ここでは,資料54ページの①ないし③に記載した理由から,「債権」に係る消滅時効に関する規定に従うものといたしました。

その結果,例えば通常の民事信託における受益債権の消滅時効期間は民法167条1項によりまして10年となり,営業信託における受益債権の消滅時効期間は商法522条により5年となるというふうに考えられます。

更に,前回,受益者の利益の享受というところで申しましたとおり,受益者は特段の意思表示を要することなく当然に信託の利益を享受することになりますことを踏まえまして,受益者自身が受益者となったことを知らないままに消滅時効が進行してしまう弊害を回避するため,受益者として指定された者が受益者となったことを知った後でなければ消滅時効が進行しないこととしております。

  次に,受託者が受益者の受益債権について消滅時効を援用することは,その受益者の利益の犠牲のもとに他の受益者や帰属権利者が利益を得ることが考えられますので,受託者の負担する忠実義務に抵触することになることが考えられます。

そこで,受託者の忠実義務を確保する観点から,受託者が受益債権の消滅時効を援用するためには,(2)のとおり,原則として時効期間の経過後におきまして,一定の猶予期間を置いた上で,受益債権の存在等を受益者に通知することを要し,猶予期間内に受益債権の請求がなかった場合には,これをいわば消極的な同意とみなして,忠実義務が解除され,消滅時効を援用することができることとするものでございます。

  なお,このような受託者の通知義務につきましては,(3)のとおり,例外を設けることとしております。

 最後に,(4)におきましては,受益債権は,受益者がこれを行使できるときから20年の経過をもって除斥期間にかかり,消滅することといたしました。

これは,(1)のとおり,受益債権の消滅時効の起算点を受益者の主観的認識にかからしめておりますので,受益者が自己が受益者となったことを認識しない限り,いつまでたっても受益債権が消滅時効にかからないこととなる弊害を回避しようとするものでございます。

  なお,除斥期間の場合,受益債権は,受託者による援用の意思表示を要することなく,客観的な期間の経過をもって当然に消滅することとなり,援用が忠実義務に違反するかといった問題が生じませんので,忠実義務違反の解除の要件たる(2)の通知といったことも必要ないことになると考えております。

  次に,2でございますが,これは,信託終了後の残余財産の引渡請求権に関しましても,受益債権と同様に,一定の期間の経過をもって消滅時効又は除斥期間にかかること,受託者が消滅時効を援用するに当たっては原則として受益者に対する一定の通知を要することなどを規律したものでございます。

● それでは,受益権の譲渡から受益債権等の消滅時効のところまでの間で御議論いただきたいと思いますが,いかがでしょうか。

● 第53の有価証券化と第54の消滅時効のところについて,若干の御意見を申し上げたいと思います。

  まず,有価証券化のところでございますが,第2回の席上におきまして,受益権の有価証券化につきましては振替制度を利用できることを前提にしてお願いしたいということを申し上げていましたが,現在も当然同様の意見でございますので,是非ともお願いしたいということです。

  あと,各論的なところでですけれども,受益証券の受託者の対抗要件のところでございますが,第2回の席上におきまして,無記名のものについても受益者名簿のところを対抗要件にしていただきたいというふうに申し上げまして,なおかつ,前回の席上で,受益者名簿が作成できない場合もありますと,ちょっと矛盾したようなことを申し上げております。

実際,ちょっと困っておりまして……。ただ,特に受益者名簿についてはやはり作成できないということもあるのではないかということもかんがみまして,非常にわがまま的な話で言いますと,場合分けするような対抗要件というのができるのであれば,そういう形でお願いできないかということでございます。

  2点目は,先ほど○○幹事の方からもお話がありましたけれども,信託財産を引当財産とする債券の発行,これについても,現状,当然やっておりませんので,どこまでのニーズがあるかは分かりませんけれども,やはり大量な資金を調達する場合であるとか,複層化を明確にするような場合,そういう必要性からニーズはあるのではないかなと思います。

先ほど,何かそれ以上の理由はというようなお話がありましたけれども,もう想像にすぎませんので,なかなか明確なことは言えないのですけれども,やはり受益者の権利を要しないような債券というものができるというのは,そこは違うところではないかなというふうに考えております。

  次に,消滅時効のところにつきましては,総論的には,今は規定がございませんので,こういう規定を設けていただくということについては賛成ということでございますが,実務的なところに落として考えますと,これはひょっとしたら実務家の方が工夫してやらなければいけない部分ではないかと思いますけれども,2点ほど問題があるので,ちょっと申し上げたいと思います。

  1点目は,例えばという話ですけれども,貸付信託で15年間たったものがありますと。5年間が満期ですので,要するに消滅時効期間を過ぎたようなものがあって,その通知を持ってお客さんが来られたと。

そのときに,どうも残高がないようだと。

要するに,払い出しの伝票等については割と短期間でなくしてしまいますので,その人に払い出ししたかどうか分からないけれども,元帳については割と長期間残っておりますので,残高があるかないかというのは大体分かりますと。

ところが,その人に払ったかどうかは分からないという状況がありまして,こういうときに時効を援用して払いたくないというのが,時効制度を導入していただきたいというニーズのうちの一つ,大きなニーズのうちの一つなのですけれども,そういうことを前提にした上で,この規律に置きかえてみますと,ちょっと不都合がありまして,援用する際に,残高がありませんので,通知というのは当然しておりません。

ということになりますと,「受託者が受益債権が存在しないと信ずるに足りる相当の理由がある場合」というのが要件になっていますので,結局,その人に対して払い出しをしたような伝票類がない限りにおいて,なかなかそんな証明もできないと。

ということになりますと,実際には時効を援用するというようなことが非常にやりにくいのではないかというふうに思われます。

ここら辺については,何か実務上の工夫をして対応しろというようなお話かもしれませんけれども,法的な手当てで何らかの対応をお願いできるのであれば,御検討をお願いしたいということが1点でございます。

  もう1点ですけれども,55ページの一番下の「もっとも,」以下のところですけれども,ある受益権が消滅時効で消滅した場合に,「当該受益者へ給付されるはずであった信託財産は,他の受益者又は帰属権利者が存する場合には,これらの者へ給付されることになる」とされています。

この場合に,ある受益権の消滅時効の満了の時点と,援用して消滅したその間に受益者がその信託から出ていったときには,その受益者を追っかけていってもう一回分配しないといけないと。

時効の場合には遡及する形になるでしょうから,時効の満了した時点まで戻って考えると,そこから後に出ていった人に追加で分配しないといけないというような不都合があって,それはなかなか実務上厳しいのかなというふうに考えておりまして,これにつきましては,例えば「帰属権利者」というのを別に設けて対応するという実務上の対応もあるのではないかということですけれども,実際に,例えばそれを「受託者」というふうに書いて果たして書き切れるかというような問題もございますので,これも実務上対応すべき問題かもしれませんけれども,何らかの法的対応ができるのであれば,御検討いただければなというふうに考えております。

● ちょっと細かい問題ではあったかもしれませんけれども,一つは,この時効の方で言えば(3)のことですか。元帳はあるけれども,伝票はもう捨てられていて,そういうときに時効を援用したい,だけど支払ったということまでの証明はできないので,だから正に時効を援用したいわけですね。そのときに,(2)の方でもって通知をすれば,それでいいわけですね。

● いえ,通知をすれば,その人は残高があると思って来られていますので,じゃあ払い出ししてくださいというふうに多分言われるのではないかと。

● そのときに争いが生じるというのが困ると。

  それで,それに対して,証拠はもうないのでということですね。しかし,それは正に時効の機能みたいなものだという気もしますけれどね。

● 今おっしゃられていたところは,恐らく,(3)では,「(2)の通知をしなかったことについて正当な理由がある場合」というのが基本的な要件になっておりますので,そちらの方に果たして当たるのかどうかということなのだと思います。

先ほど,相当な理由があるかどうかというふうに言われましたけれども,この要件では,正当な理由があるかどうかというふうに考えるのだと思います。

  それで,残高については確認できるけれども,払ったかどうかは分からないというのが,果たして通知をしなかったことについて正当なのかどうかということで判断がされるということ……。

● 残高がその元帳上ない限りにおいては,その人に対して通知をするということはあり得ないと思うのですね。

● ということになりますと,通知をしなかったとしてもしようがないのではないか,つまり,その銀行の処理体制として相当なものであるという前提のもとで,残高しか分からない,それで残高がないということで通知をしないのはもうしようがないのだというふうに言われるのであれば,それが「正当な理由がある場合」と判断され得る可能性もあるのではないかという気はいたします。

 それから,私の方から言わせていただくのがよろしければ,後の方で言われた消滅時効についての問題ですけれども,恐らくは,他の受益者とか帰属権利者とかがいる場合にどうするかという話だったかと思うのですが,その場合は受託者が当然に取れるというふうにはやはり言い難いのではないかと。

つまり,例えば,100万円の債権が3人に,受益者が3人いますというときに,そのうち一人分が時効消滅しましたと。

そうすると,実質的には,100万円分の信託財産が余るわけですが,その100万円分はやはり帰属権利者に行くべきものと言わざるを得ないのではないかという気がいたします。

そうすると,ではその100万円分をその帰属権利者に渡さなければいけない,ところが帰属権利者は今どこにいるかよく分からなくなっているというようなことは,恐らく実務上はあり得ることだろうとは思うのですが,やはりそのあたりは,もしそういうことが問題になる,そういうタイプの信託であれば,契約の定め方の中で多少努力していただくということを考えざるを得ないのではないかなという気がしております。

● そこは再度こちらの方で検討したいと思います。

● ほかに,いかがでしょうか。

● 今の関連なのですが,今の御説明の中で,(3)の「正当な理由」の問題だというふうにおっしゃったのですけれども,先ほどの○○委員の御疑問は,弁済したというふうに思っているわけですから,弁済したと信ずるに足りる相当な理由がある場合だと理解していたのですが,そうではないのでしょうか。

と申しますのは,弁済した受託者がその後どういうことをすべきか,弁済の証明はしなくてよいけれども,債務不存在の相当理由の証明ができるという状態になっていれば,それで正当な理由があるというふうにつながるのかなと思ったのですが,そういう理解ではないのでしょうか。

● 債務不存在の相当理由の方も当たりますが,そのほか「正当な理由がある場合」というのが根本的な要件であるということを申し上げただけで,今,○○委員がおっしゃったように,「正当な理由」のうちの例示として,ここでは今二つ挙げておりまして,受益者の所在不明というものと,弁済したと信ずるに足りる理由がありますということを二つ例示しているわけですけれども,その例示の言うところは,結局は,「正当な理由」があるのかどうかというところだということを申し上げたかったということです。

今の局面で○○委員がおっしゃった話をどこに落ち着けるかということで言えば,「相当の理由がある場合」なのかもしれませんが。

● 最初に○○委員がおっしゃった点でございますが,無記名式の受益証券の場合については場合分けで対抗要件を認めてはどうかという,その場合分けというのは,無記名式の受益証券につきましても,場合によっては受益者名簿をつくっているし,場合によってはつくらなくて,つくっている場合は受益者名簿への記載を対抗要件とする,つくっていない場合はそれを対抗要件としないと,そういう場合分けという趣旨でございますでしょうか。

  そうすると,無記名式の受益証券につきましても更に2類型認めるということになりますと,例えば甲案をとると,記名式の場合と無記名式の場合二つということで,3類型の受託者対抗要件を認めるということになりますが,事務局としては,果たして3類型も認める必要があるのかなと。

むしろ,受益者名簿がつくりにくい場合があるのだったら,それは無記名式にして,受益者名簿を不要とする形にしていってしまえばより簡明ではないかと,そのような感じもいたしておりますので,御検討いただければと思います。

● ほかの点,いかがでしょうか。

● 先ほど御説明があった中で,第53の(注1)のところで,借入れを必要とするような場合,流動化なんかの場合でもあり得るとは思うのですけれども,その場合,債券発行を認めるニーズがあるのではないかということで,検討したらということで御説明があったかと思うのですけれども,先ほど○○委員がおっしゃられたように具体的にどういうものができるというのが念頭にあって申し上げているわけではないのですけれども,実際にこのようなものができることについては,選択肢が増えるということで大変賛成なわけですけれども,現実問題として,債券発行ということで,例えば社債を例にとりますと,株式会社など,当然,発行主体というのは法人格がないと我が国の法制では認められないと思うのですけれども,この場合については,どういうことを念頭に置かれて,これが可能ではないかというような意見があるのか,そのあたりをお知らせいただけたら有り難いなと思って,ちょっと質問させていただきました。

● 恐らくこれは,事務局の方がいろいろなお考えをお聞きしたいという部分だと思いますけれども。

● 学者の先生方に,もしよろしければ,お伺いしたい。

● 先ほど○○委員もおっしゃっていた,第53の(注1)に書かれていたような信託財産を引当てとした債券の発行ですね,これが認められたら,証券化・流動化の観点からはフレキシビリティーが高まって便利だなという気はいたします。

現に,信託財産のみを引当てに受託者が借入れを行う信託借入スキーム--ABL,アセット・バックド・ローンというふうに呼ばれる場合が多いですけれども--が広く用いられていることは御存じのとおりだと思いますけれども,ローンにかえて社債類似の債券という形をとれるということは,フレキシビリティーが増すのかなと。

  例えば中小企業金融であっても,中小企業であれば株式会社ですから,社債を発行できるわけですけれども,あえて融資せずに,私募債を発行させるというような方法もとられていますし,また,会社ですと一応株式会社と特定目的会社しか社債発行できないという形になっていますけれども,医療法人,学校法人といったところも,証取法上の有価証券にならない債券を発行して資金調達しているという現実もございますし,便利になるのではないかなという気はいたします。

○○委員のおっしゃっていた,ではほかの類型の債券は発行体が法人ではないかという,そこら辺のテクニカルな難しさというのはあるのかなという気はします。

  それと,第53の5と6のところ,受益者名簿と,有価証券の形にした受益証券の対抗要件についてなのですけれども,これも,既存の社債とか,あるいは株式との整合性を考えれば,5,6とも,何となく甲案の方がすっきりするような気がするのですけれども,かといって,乙案であれば絶対に困るというようなことはないのかなという気はいたしております。

● 先ほどの,信託財産を引当てにして受託者が債券を発行するというのですかね,これは,信託そのものとしては別にそれを制約するような理屈はないのだろうと思いますけれども,ほかのいろいろな法制との比較だとかいうことがネックになってくると,それなりに必要性が高いということが言えないと,そちらの方に働きかけが難しいという,そういう関係なのではないでしょうか。

ですから,いろいろそういう必要性があるのかどうかと。

  それから,(注1)にも書いてありますように,受益権の複層化ということでもって同じようなことができるのか,できないのかとか,そういうことを御検討いただければということだと思います。

  これについては,引き続き今後もいろいろ御意見をいただければと思いますが,ほかに,この譲渡の関係,消滅時効の関係はいかがでございましょうか。

● 若干細かくなるわけですが,第52と第53でコメントがございます。

第52については二つございますけれども,基本的に第52の規律というのは選択肢をふやすということもありますし,流通を円滑にするという点でも賛成な立場でいるわけなのですけれども,個別論として御質問があるのですが,この考え方で,基本的に受益権というのを指名債権とみなして,同じ規律を入れようというふうに考えておられるのですけれども,一つ,非常にテクニカルな話なのですけれども,譲渡登記によって対抗要件具備ということができるのかどうかということです。

これは立法論の話で,必要であれば,そのようにほかの--譲渡特例法を直すかどうかという話だと思うのですけれども,少なくとも現行法は指名債権というふうになっていますので,受益権の性質を指名債権と決めておかなければ,譲渡特例法というのは当然には適用にならないのかなというふうに思っておりますので,その点について,事務局として譲渡特例法を改正するところまで念頭に入れているのか,又は,そもそもそういう対抗要件具備というのは考えていないということなのかということをお伺いしたいということが一つ目です。

  二つ目は,同じく指名債権の規律ということで,善意の第三者に対する保護ということでございますけれども,流通性を確保するためにはかような規律が必要だということは分かるわけですが,これはちょっと難しいとは思うのですけれども,実務的なニーズに応じては,そういうことを必要としないというものもあるのではないかというふうに思っていることで,そこで御見解をお聞きしたいということです。

  すなわち,例えば,典型的な流動化スキームの場合に,不動産を信託に入れて,受益権をSPCに入れましたと。

それで,SPCが証券を発行するといった場合に,このSPCが有する受益権というのは,これはもう動かさないということが前提になっていると思うわけですが,そのときに,SPCの管理の関係でその受益権が第三者に移ってしまうといった場合に,ある意味,このスキームの安全装置,例えば,今までは受益権というのはそういう規律がなかった,善意の第三者の保護にあずかるという,そういう規律がなかったということで安心していたわけですが,この規律が導入されたことによってそのスキーム自体の安定性というのが若干落ちるのではないかなという懸念がしております。

もちろん,実務においては,そうさせないというような別途の手当てをすればそれで足りるという考え方もあるかもしれませんけれども,そういった規律というのは本来デフォルト・ロー的なこともできるのかなというような感じもいたします。

  もう一つは,これも細かい話になるわけですが,その対象について,第52の1の(2)を拝見しますと,「別段の定めをした場合又は受益権の譲渡が信託の目的に反する場合には,適用しないものとする」と。

「受益権の譲渡が信託の目的に反する場合」というのも,善意の第三者には対抗できないものの範ちゅうに入れているわけですが,ここは若干テクニカルな御質問になるかもしれませんけれども,現行民法466条の1項と2項との関係を見ますと,どちらかというと,「信託行為において別段の定めをした場合」というのは2項の柱書きの範ちゅう,「受益権の譲渡が信託の目的に反する場合」というのは1項の範ちゅうだというふうに思っておりまして,民法においては2項において第三者の保護手続があるということと私は理解しているのですけれども,間違いがあれば御指摘いただきたいのですが,ただ,この御提案を見ますと,両方とも第三者の保護規定があるというふうに読めるわけですけれども,この点はそういう理解でいいのかどうかということを確認したいと思っております。

  それから,第53について,有価証券化ということでございますけれども,これも非常にテクニカルな話でございますが,仮にこの有価証券化ということをなされていくと,他の法律との関係があいまいになるということがあるのではないかという点で,関連法規の見直しの必要性ということを申し上げたいと思います。

  すなわち,例えば,合同運用金銭信託の受益権というのは基本的には有価証券ということで,実務においては,有価証券化したいから現行法ではそういう投信法を使っているということ,特に委託者非指図型投資信託でございますけれども,ただ,この一般法規たる信託法において有価証券化ということが図られますと,この一般法規化ということで規律された有価証券なのか,投信法で言う有価証券なのかということが非常に見分けづらくなるのではないかと。

片や一方は基本的にはレギュレーションが低い,片やレギュレーションが高いというところで,そこのレギュレーターから見た規律というのがあいまいなのではないかという懸念を感じております。

ゆえに,この点について,関連法規の御検討も必要ではないかというふうには思っております。

● これも,すべて直ちに答えられるようなものなのかどうか分かりませんけれども,答えられる範囲で。

● まず,第1点目にお話しされました,譲渡特例法に乗るかどうかという点でございますが,ここでは,受益権につきましてはあくまでも指名債権に準ずるものと考えて,対抗要件については,ゴルフ会員権の場合と同様に民法467条などの規定によっていこうという考えにとどめているわけでございます。

受益権というのは,債権の部分のみならず義務なども含む一種の包括的な地位と考えておりますので,ここの債権譲渡特例法に乗るような指名債権ではないと考えております。

したがいまして,少なくとも現行の譲渡特例法を前提とする限り,登記をもって対抗要件とすることができるような債権には当たらないというのが,我々の理解でございます。

これを改正するかどうかというのは,まだそこまで考えておらないところでございますけれども,当面,ここまで対象にすることは考えていないというふうにお答えさせていただきます。

  それから,SPCの受益権の譲渡が第三者に対抗できないということについて,しかし善意の第三者には対抗できるという規律を設けているのは不都合だというようなお話だったかと思うのですが……。

● 不都合な場合もあるのではないかというコメントです。

● ここは,受益権の譲渡性を原則として我々は考えておりますので,やはり,仮に当事者間で譲渡制限の特約をしたとしても,それは第三者に対抗できないというのが一律にかぶってくるのではないかなと思うわけですが,もう少し,実務上,譲渡性があっては困るというような債権の切り出しとかが明確にできれば,それは「性質に反する」というようなことになってきて,そもそも譲渡性が奪われるということが言えると思うのですけれども,「性質に反する」ということまで言えないと,善意の第三者には対抗できないという規律から逃れるのはなかなか難しいのではないかという気がいたしております。

  もう一つ,目的に反するという点と,別段の定めという点,それと民法の関係でございますが,私の理解が間違いでなければ,民法の466条では,性質に反するときはできないと。

それは1の(1)の方で書いているところでございます。

(2)の方は,別段の定め又は信託の目的ということで,信託の目的に反する場合は,実質的にはほとんど譲渡禁止特約がある場合と解することができると思いますので,この二つにつきましては,466条の2項に準ずるものとして,それは第三者に対抗することができないというふうに考えているところでございます。

やはり,性質に反するときは譲渡できないというような規律,それは差押えも許されなくなるわけでございますが,そのような受益権というのもどうしてもあるだろうということで,ここで(注5)ですか,性質が譲渡を許さないような場合というものの例を挙げさせていただきましたが,こういうものも,譲渡禁止特約ですとか信託の目的に反する場合ではカバーし切れないものが残るだろうと。

こういう性質に反するものについては,そもそも譲渡もできないし,差押えもできない場合が残るだろうという考えに基づきまして,最終的には,466条と同じような二つの区分を設けているというところでございます。

 とりあえず,以上のとおりでございます。

● 受益権の有価証券化の話なのですが,有価証券化が必要な場合というのは確かにあって,実務上の需要はあるのだと思うのですけれども,先ほど○○委員が後半でおっしゃったことにも関係するのですけれども,いろいろな法律というのは,この場合にはこういう必要性とジャスティフィケーションの論理によって有価証券化というものを認めようというのがあって,それである種の法律によって,この場合は有価証券を発行できますとか,できませんとか,この場合はこういう権利を有価証券にできますというふうな,いろいろな法律があるわけですよね。

しかるに,信託である,そしてその受益権であるということが,有価証券化ということを認める包括的な正当化根拠になり得るのかというと,私は,何も発見できないような気がするのですね。

つまり,例えば,流動化でこういうふうな場合に有価証券化というものが必要である,だから有価証券の発行を認めましょう,受益権を有価証券化するスキームを認めましょうと,こういう論理はよく分かるのですけれども,およそ信託においては受益権は有価証券化できるのかというと,例えばおじいさんが孫を受益者として信託を設定する,そういうときにも有価証券化できるわけですよね,この条文で言えば。

しかし,なぜそこに,有価証券を発行できるという……。どうせその場合にはしないじゃないかと言われればそれまでなのですが,やはり有価証券を発行することによって様々な--まあ,流通性が高まるというのはいいことばかりではないわけで,やはり何らかの正当化があって初めて認められるというのが日本の法制度ではないかというふうに私は思うのですが,違うのかもしれませんけれども,そうすると,信託法の中に,およそ有価証券を発行できるという条文を置くのはいかがかという感じがするのですけれども。

● かなり根本的な問題提起がありましたけれども,いかがでしょうか。あるいは,ほかの委員の御意見も。

● 今,○○幹事がおっしゃられたように,一定のニーズがあって有価証券化が図られるというのが多いというのはおっしゃるとおりなのかとは思うのですが,一番典型的な有価証券というと,例えば手形とか小切手とか,あるいは金銭債権一般に認められているということで,そこから先,使うかどうかというのは選択にゆだねられるということになります。

信託の受益権についても同じような整理をすることが,美しくはないのかもしれませんけれども,一応は可能なのかなというような気もいたすのですが。

● 手形というのは金銭債権を証券化するのだというふうにとらえれば,確かに今のような説も可能であり,信託の場合も似ているではないかという,そういう説明だったと思いますが。

● これは私だけの理解だということです。だから,ひっきょう独自の見解であるという典型的なものなのですけれども。

  我が国において受益権というのは,通説としてというか,つまり債権ですね,結局のところは。

債権の譲渡というのはいろいろな面倒があって,債権債務関係を引きずっていますから。

しかし,英米では受益権というのはプロパティーですから,日本語で言えば物権ということになるのだと思いますけれども,つまり,自分のものなのですから,自分のものを譲渡するのは簡単だよという話になっているので,譲渡するかどうかはともかくとしてですが,非常に簡単なんですね。

ところが,日本ではそういうことはとれない。それで,せめて証券化という話にすると譲渡が容易になるのかなというのが,私の理解です。

● 金銭債権を手形にすればいいと言えば,それはそうなのかもしれませんが,譲渡一般を認めるということは,第52のところで出ているわけですよね。

私が問題としているのは,なぜ有価証券化を認めるのかという話であって。

手形小切手の場合もそうじゃないかというふうにおっしゃったわけですが,それはいろいろな歴史的な説明とか,金銭債権になっているとか,いろいろな手形小切手法の教科書にも書いてあるような説明とかできると思うのですね。

でも,受益権の内容というのは千差万別であり得るというときに,なぜ信託の受益権であるということから有価証券化が認められるというところで説明の論理が書けるのかというと,何か書きにくいんじゃないかなという気がするというだけで,別にそれで納得できるような論理があったり,論理はないかもしれないけれども必要なとき以外は使わないからいいじゃないかということの中でそうなるというのならば,それはそれで仕方がないのかもしれませんけれども,必ずしも納得はできないような感じがします。

● 有価証券化のメリットはいろいろ挙げられると思いますけれども,基本的には,有価証券化した場合には,証券の所持人に有価証券が発行されていなかった場合に比べてより強い保護があるという点には異論がないのではないかと思います。

例えば,権利の推定が働くですとか,譲渡の際の効力が強まる等々。そういう意味では,一言で言うと,受益者の保護という観点から見ると,受益権が有価証券化されていることは,もちろんマイナスになる場合も決してないとは言えないと思いますけれども,一般的に言えば有価証券化は受益者の利益に資するとい

うことは言えるのではないかと思われますので,私は,有価証券化を,選択的に,しようと思えば認めるというのは,特に受益者保護を中心的なテーマとする信託法においては充分に考えられることではないかと思います。

● ○○幹事の指摘された点は二つありまして,特別法ではなくて信託法に置くということの意味がどうかということと,具体的な場合以外に一般的に受益権の有価証券化を認めることがいいかどうかという2種類の問題が含まれていると思うのですけれども,一般的に受益権の有価証券化を認めるとして,その意味が受益者の保護であるという今の○○幹事のお話があったのですけれども,そのことは,逆に言うと,証券化されていない場合には受益者の保護がより少なくてよいというふうにならないかという懸念を若干感じます。

特に,例えば49ページの米印1のところで,証券化されている場合には,受益者に対する補償請求権,報酬請求権の行使を認めないということが出ているのですが,これは一体なぜなのかと。証券化から導かれることなのか。

だとすると,証券化されていない場合にはそういうことがなくてもいいのではないかという反作用があり得ないだろうかということが若干気になります。

としますと,○○幹事がおっしゃった受益者保護ということは,より一般的に考えるべきではないのかなという気もいたしますが,いかがでしょうか。

● この証券化,先ほど○○幹事が,受益者の保護になるのだという言い方をされて,そういう視点もあるかと思って感心して伺っていたのですけれども,やはり,どういう信託をここで想定するかとか,受益者の地位との関係,いろいろなことを考えながら,果たして証券化の道を開いていいのかどうかということを考えなければいけないのだろうと思うのです。

  最初の○○幹事の質問からは少し離れた視点かもしれませんけれども,例えば,不動産などが信託財産になっていて,受益権を発行して,それが証券化されて,これは積極的にそれを肯定する意見の方が多いかもしれませんけれども,その受益証券を転々流通することによって不動産という財産は善意取得が可能な財産に変わっていく,むしろそこにこそメリットがあるので,受益証券というものを発行させるべきだという意見もあるかもしれませんけれども,不動産というものがそういう形で変わってしまっていいのかという逆の考え方もあるかもしれないし,証券化というのは便利な面があることは確かだと思いますけれども,最終的にこういう一般的な形でもって認めていいかどうかということについては,やはりいろいろなことは考えなくてはいけないのだろうという気がいたしますね。

● 全く別の論点でよろしいでしょうか。

  第52の受益権の譲渡について,ゴシックのところではなくて,むしろ説明の部分に出てくる,「受益債権」という概念の中身について御質問させていただきたいと思います。

  具体的な例を挙げて御質問したいと思うのですけれども,そもそも,この受益債権というのは43ページの(注2)の前の部分で定義されておりまして,「受益者が信託行為に基づき信託の利益を受ける債権」,これを受益債権と定義されております。

  それで,46ページの【ケース1】を例に挙げて御質問させていただきたいと思うのですが,「受託者は,受益者Aに対し,10年間,毎年1月1日に,一定額の金銭を支払う」と。この,毎年1月1日に一定の金額100万円を受ける権利,これを10年間,例えば10人別々に譲渡すると。

そうすると,これが受益債権の譲渡というのでしょうか,例えば,もしそうした場合に信託財産が5年で全部なくなってしまったとすると,6年目以降にこの受益債権を受けた人というのは,だれに対してどういう権利を主張することができるのか。

すなわち,信託法の19条にございます,信託財産に受託者の責任の範囲が限定されるという信託財産との物的相関関係というのが受益権の非常に大きな特徴とされてきたと思うのですが,この「受益債権」という概念を持ってきたときに,物的相関関係との関係はどうなるのか,あくまでもその限定は付された特殊な債権として譲渡されていくというふうに理解されているのか,それとも,もうちょっと純粋な,受託者に対する債権として観念されているのか,これが具体的な一つの質問でございますけれども。

  要するに,私は,結論としては,この44ページの甲案の考え方を推し進めていくということは,今の受益権の物的相関性との関係で慎重に考えるべき側面があるのではないかと考えましたので,あわせて意見を述べさせていただきました。どうかよろしくお願いいたします。

● 受益債権を譲渡すると本来の受益権の譲渡以上のことができるというのは,何かおかしな気がしますから,私も,物的相関関係という枠は残るのではないかという気もしますけれども,どうですか。

● 【ケース1】で,10年分の各毎年払われるべき金銭債権を譲渡する,これは我々の考えで言うと受益債権の譲渡ということになるのは,おっしゃるとおりでございます。物的相関関係は残ると考えています。

  それで,5年たったところでなくなってしまったらどうなるかということでございますけれども,そこら辺,余り明晰に考えていたわけではないのですが,やはり受益権とは異なる,あくまで債権だということといたしますと,なくなってしまった場合には,もはやそれは履行不能ということにならざるを得ないのではないかという気がいたします。

そこはやはり受益権の譲渡と受益債権の譲渡との違いではないかなという気がいたします。

  そういう観点からすると,甲案が不適当であるということであれば,我々はまた,ここの甲案と乙案のどちらが適当かというところも是非ともお伺いしたいところでございますので,そこが甲案が不適当であるというのであれば,検討したいと思います。

● 空になってしまった場合には,受益権を譲渡した人に責任が追求できるのですか。

● そうですね,旧受益者に対して債務不履行責任なども追及していくということになるかと存じます。

● もちろん,信託財産が減ったことについて受託者に過失があれば,責任が追及できるような場合があれば,それはまた別の問題があるかもしれませんけれども。

  さっき○○委員が言われた,証券化との関係での補償請求権,あるいは受益者の方からすれば補償の義務の関係ですけれども,証券化する場合には,途中の受益者等に補償の義務だとか報酬支払いの義務がなくなって,証券を持っている者だけが責任を負うというのでいいのだと思いますけれども,その一般原則,証券化されていないときの一般原則である第52の方ですけれども,これもなかなか,自分で考えていて,どういうのが一番いいのかよく分かりませんが,受益権が証券化されないで何度も何度も譲渡されたときに,いったんでも受益者の地位にあった者は,その前の段階でもって発生していた補償請求権ないし報酬請求権については常に連帯的な責任を負うと,そういうことにこれはなるのでしょうね。

少なくとも,この文言からすると。例えば,補償の義務というふうに受益者の方から見たときに,途中いったんでも受益者になっていて受益権を享受したような人間についてはそれでもいいのかもしれないけれども,享受もしないでまた譲渡していったというような場合もあるかもしれないし,この一般原則はこれで本当にいいのかどうかというのは,さっきお話を聞きながら,あるいは○○委員の意見を聞きながら気にはなったのですが,まず,考え方として,ここではどういう前提で,今のような場合--転々されていった,第52の例えば4ですけれども--を考えていたのかなと。

● 転々流通したときに,各譲渡人,譲受人というのがどういう責任を補償債務との関係で負うかということですか。

● 特に途中のね。

● 一応,ここでは,途中の人も責任を負って,その後更に譲渡した場合でも責任は負い続けるほかないのではないかというふうに考えています。

  そのあたりはなぜかと申しますと,結局のところ,債務があるにもかかわらず,受託者,債権者の立場になりますが,債権者の同意を得ないで譲渡できてしまうというふうにしておりますので,その見合いとして併存的責任を課すほかないかということにしたものですから,残らざるを得ないということになると考えています。

  逆に言えば,譲渡するときに,受託者との間で合意をするというか,承諾を得て,補償債務部分については私はもう負いませんというようなことを個別にとるということで対処するほかないのかなというのが,とりあえずのここでの整理ということでございます。

● ここでの原案は,そういう考え方をとっているということですけれども。

● ○○委員のお話の続きで,繰り返す部分が多いかもしれませんが。

 これは,第35,第36をどう仕組むかにかかわりますし,それから受益権の放棄についてどうするかという,多分この三つが相互にかかわるので,どうもよく見えないのですが,しかし,すべてを受益者側に不利な形でこれが落ち着くとしますと,受託者の地位は相当強くなるだろうというふうに思います。

だれからでもというのですか,受益権の譲渡があると,それを奇貨として--という言い方はおかしいかもしれませんが,資力のある現受益者,前受益者,元受益者,だれかからか持ってくると。

それで,ずっとそれが信託会社に対して補償請求権が上回っていて,赤字の信託の受益権がずっと動いたのならば,それはそれで,そういうものを転々流通したという言い方もあるのかもしれませんが,補償請求権だけは請求権として残っていて,信託財産がずっと減っていくということもありますよね。

そうすると,ある段階での受益者が持っていたときは黒字の信託だったのが,それが赤字になったら,前の者も,まだ補償請求権として弁済されずに残っていたので,そこについてもある種の求償を受けてしまうというようなことにもなりかねない。

ルールの方もはっきりしていないし,今のようなケースはレアケースなのかもしれませんが,ルールの方がいずれも受益者に不利な形になって,そして考えられるケースを想定すると,何か受託者のための信託というようなものがこの局面においては想定できるような形になってきてしまうように思います。

 それで,どこで歯どめをかけていくかということになるのだろうと思うのですが,第35,第36をどう仕組むかというのが一つの大きな選択だろうと思いますが,ここで現行信託法に近い形で残すとすると,やはり別のところで手当てをしていかないといけないだろうと。

第35,第36で受益者の義務を現行法と原則・例外を転換するならば,こういう問題を置いておかれていても,そう困った問題は生じないのではないかと思います。

 したがって,全面的にはうまく答えられないのですけれども,一つだけ申し上げることができるかなと思うのは,この第52の中での話なのですけれども,受益権の譲渡は自由だと,ここから出発していて,これはそれでいいと思うのですが,しかし譲渡禁止特約も認められると。

したがって,4の問題が生ずるような,受益者に対する補償請求権を受託者が確保しておきたいと,それが意味のあるような信託であると,土地信託のようなのがその一つの例だというふうに多分比較的広く理解されていると思うのですが,そういうものについては,受益権について譲渡禁止特約を入れておいて,そして,受益者の側で,事業から離脱したいというようなときに,その受益権の譲渡をするときには正にそこで禁止特約がありますから,今,○○関係官が御説明になったように,受託者の承諾・同意を得ずして受益者が交代するということを防げますので,そこでまた更に既発生の補償請求権についてどう処理するかというようなことを取り決めるような形で解決できるのではないかなというふうに思います。

● 今,○○幹事が言われたように,第35,第36との関係が一番根本的に重要なのでしょうけれども,仮に第52の範囲で考えるときに,そう一般化できないかもしれないけれども,そんなに受益権を享受しないで譲渡したような人間というのは,受益権を放棄したようなものだという場合もあり得るかもしれないという気もちょっとしますけれどね。

これは無償で譲渡する場合もあるかもしれないし,対価を得て譲渡する場合もあって,いろいろなのがあるので,そう簡単に言えないかもしれないけれども,第52の範囲内でどんなことが考えられるかというときの一つの考え方になるかもしれませんね。

  ほかに,この三つについて,もしなければ。

● 細かい話になるかもしれませんけれども,確かに,受託者のサイドから見ると,連帯債務になったときに選択肢がふえてしまうと,これは受託者のためであるということはあると思うのですけれども,仮にその対案として,一つの規律として,最終的に受益者となった者にのみ補償請求権等を請求できるとなった場合に,今度は受託者は,ある意味チェリーピッキング的なことを受益者サイドからされてしまう。

例えば,受益者がいまして,実際にふたをあけてみて,これは信託財産がほとんどなくて補償請求権が出てくるというマイナスのものだと分かった瞬間に無資力の者に渡してしまえば,受託者は,そういうある意味詐欺的なといいましょうか濫用的なことによって,結局補償請求権を追及する手段を失ってしまうということもありますので,そこの点についてもし御検討されるのであれば,受託者サイドの問題としてもバランスをとった検討をする必要があるというふうに思います。

● 濫用的なのは,恐らくまたそれなりに対応の仕方があるのだと思いますけれども,やはり,一つの根本的な問題は,仮に補償請求権というのがあったときに,受益者がそういう支払いの補償をする義務の根拠が一体何なのかということも関係していて,信託の場合には,受益者であるという--つまり,補償請求権というのは,単純な普通の債権債務の債務みたいなのとはちょっと違って,受益者であるがゆえに負っている債務だというふうに考えると,現在の受益者が負うというのはそんなにおかしくないのだろうと思うのですね。

ただ,今のような濫用的なことがあれば,これはまた別途対応した方がいいと思いますけれども。まあ,途中の中間の受益者が全部負うというのはどうかなというのは,素朴な疑問としてあるような気がします。

  これは,第35,第36は非常に大きな問題なので,またそちらでもって総合的に,全体的な--恐らく一つ一つ取り出して議論すべきではなくて,やはり全体として議論しなければいけないと思いますので,そういう場を必ず設けたいと考えております。

  それでは,今の三つについてはこのぐらいでよろしいでしょうか。また時間がありましたら御議論いただきたいと思いますが。

  では,次に行きましょう。

● では,本日用にお配りした資料に基づきまして,まず,信託行為の変更,それから信託の併合,分割について,一括して提案内容の概略を御説明したいと存じます。

  まず,第57は,信託行為の変更についての提案でございます。

  趣旨でございますが,信託の設定後の事情の変更に対応して迅速かつ柔軟な信託行為の事後的変更を可能とすべく,委託者及び受益者の利益を適切に保護する内容のデフォルト・ルールを設けようとするものでございまして,このように,現実に即した具体的かつ詳細なルールを設けることの合理性については,第2回会議においても御支持をいただいたところと理解しております。

  まず,1でございますが,これは,私的自治の観点から,委託者,受託者及び受益者全員の合意があれば,裁判所の関与を必要とせず,信託行為を自由に変更できること,すなわち,信託財産の管理方法はもとより,信託財産の分配方法,更には,1ページから2ページのアステリスク1の乙案にあるような,信託の目的の変更ですとか,受益者にとって不利益な内容の変更も,三者の合意があればなし得るということを明らかにしたものでございます。

  続きまして,2でございますが,これは,変更の内容いかんによっては,常に信託当事者三者の合意又は裁判所に対する申立てを要するとした場合には無駄な手続的・時間的コストがかかるおそれがあることにかんがみまして,信託当事者の利益に配慮しながら,柔軟な変更手続を設けようとするものでございます。

  なお,アないしエ以外に,理論的には,委託者のみによる変更ですとか,委託者及び受託者による変更という場合があり得るわけでございます。

例えば,委託者の当初の目的は受益者に対する生活費の定額割賦給付であったものの,受益者の緊急ニーズから残額一括給付に変えるような場合が想定されます。

しかしながら,このような場合には受益者の側から信託行為変更の申出があると思われますので,あえて受益者の合意を不要とする特例を設けなくとも,1によります三者の合意ですとか、あるいは2のウによります委託者と受益者の合意によって変更を行えば足りるものと考えられますので,あえて委託者のみによる変更あるいは委託者及び受託者による変更という場合分けは設けなかったものでございます。

  なお,念のため,信託の目的を変更するというような場合に該当することになれば,委託者,受益者,受託者の合意を必要とするのが原則になると考えられます。

  ところで,この2につきましては,第2回会議において,何点か問題指摘がなされました。

  まず,「信託の目的に反しないことが明らかであるとき」ですとか,「受益者の利益に適合することが明らかであるとき」といった要件は,実務上ワークし得るだけの明確性を備えているかという御指摘がございました。

確かに,受託者としては,かかる要件を充足したと言えるかの判断に窮し,慎重を期して,念のため1の三者間の合意をとりにいくという事態も想定されるわけですが,事務局といたしましては,このような要件を充足していることが明白な場合もあり得る以上,少なくともその限度では変更手続の簡易・柔軟化に資していると考えられますし,法律上のデフォルト・ルールの規定としてはこれ以上の明確化を図ることは困難であり,あとは信託行為における別段の定めによる実務上の工夫をもって対処せざるを得ないと考えているところでございます。

  次に,この要件に違反した場合の効果でございますが,例えば,2の場合におきまして,複数受益者の一部の受益者の利益に反するにもかかわらず,受託者が信託行為を当該受益者に無断で変更したような場合には,かかる変更はすべての信託関係者との間で無効と言わざるを得ず,変更内容に不服のある受益者は,当該変更が無効であることを前提問題として,受託者に対して給付請求等をすることもできるでしょうし,また,確認の利益がある場合であれば,信託行為変更の無効確認訴訟を提起することもできるのではないかと考えております。

  さらに,より理念的な問題としまして,1において,信託行為の変更には受託者の同意を必要とし,更に2のウ,エなどにおきまして,「受託者の利益」を要件として前面に出すといたしますと,あたかも受託者が信託行為の変更に当たって自己の利益を顧慮することを容認するかのような印象を与え,不適当ではないかとの指摘もなされました。

しかしながら,原則として辞任の自由のない受託者としては,当初受託した信託行為の内容とは異なる新たな内容の信託行為について,善管注意義務や忠実義務のもとで受託者としての職務を適切に果たしていかなければならなくなるわけでございますので,そのような責務を十分に果たすべき受託者の同意ないし利益を信託の変更に当たって考慮することは,受託者による信託事務の適切な処理を期待する観点からも不合理とは言えないと考えるものでございます。

したがいまして,ここで言う「受託者の利益」とは,受託者の個人的な利益のことではもちろんなくて,受託者が善管注意義務や忠実義務違反に問われることなく適切に信託事務を処理し得る利益というようにとらえるべきものと考えております。

  次に,3でございますが,これは,2によりまして信託行為の変更に関与しないこととなる信託当事者に対して変更の内容をあらかじめ了知させることによりまして,変更の効力発生前における反対の意思表明の機会を保障し,あるいは変更の効力発生後における不服申立てや反対受益者の受益権取得請求権の行使の必要性があり得ることを予告しておこうとする趣旨でございます。

したがいまして,受益者に対する通知は,信託管理人が選任されていない限り,各受益者に対して個別になすべきことになると思われます。

もっとも,この通知は変更の効力発生要件ではございませんので,2の要件に合致している限り,通知を怠ったとしても変更自体の効力に影響があるわけではなくて,ただ,通知を怠った受託者の注意義務違反の責任が問われるにとどまることになるというふうに考えております。

  なお,通知の時期に関しまして,かつてお配りしました報告書におきましては,単に「あらかじめ」としていましたのを,ここでは,「信託の行為の変更の効力が生じる日の前日までに」というふうに改めております。

これは,通知を受ける者の利益保護の観点から,変更の正に直前に通知するようなこととなる事態を避け,通知から変更までに少なくとも1日間は猶予を設けようという趣旨でございます。

  次に,4でございますが,これは,1又は2にかかわらず,信託行為において,特定の者--これは委託者であり,あるいは受益者であり,受託者である場合もあるでしょうし,それ以外の第三者である場合もあると思うのですが,このような特定の者に変更権限を付与することも可能であるということを明らかにするとともに,この場合におきまして,変更権者としては,変更内容に従って信託事務処理をすることになる受託者に対して,変更の効力発生に先立って,変更内容をあらかじめ通知しておくことが必要になると思われますところ,このように通知を受けた受託者は,3の場合と同様の趣旨から,変更の効力発生日の前日までに受益者及び委託者に対して変更内容を通知すべきこととしたものでございます。

  ところで,このように変更権限を特定の者に付与することにつきましては,第2回会議の場におきまして,その者の変更権限に一定の制約を課すべきではないか,例えば受益者の保護ですとか信託の目的あるいは本質に反するような変更まではできないとすべきではないかといった指摘がされたところでございます。

そこで,ここでは,甲案といたしまして,信託行為が定めた変更権者が存することは,信託行為の当事者たる委託者と受託者はもちろん,信託行為の内容を了知しているはずの受益者にとっても明らかなのであるから,変更権限の内容に制約を設ける必要はないという甲案の考え方,これに対し,乙案といたしまして,変更権限を無制限とするのはやはり不適当であるという観点から,後ほど第60で説明しますが,反対受益者の受益権取得請求権が強行的に付与されるべき内容の変更まではできないとの制約を設けるべきであるという考え方,甲案,乙案を併記して御審議をいただきたいと考えております。

  なお,乙案というのはあくまでも制約内容の一例を示したにとどまりまして,これとは別の制約方法が適当であるならば,その点についてもあわせて御審議を願えればと存じます。

  次に,5でございますが,これは,信託当事者による信託の変更において,変更の内容が反対受益者の受益権取得請求権の発生原因となるような場合,したがいまして,2のイの受益者の利益に適合することが明らかであるときは当然除かれることになるわけでございますが,このような場合におきましては,変更の内容とあわせて,変更を中止するための条件をも合意するか,あるいは決定すべきものとしたところでございます。

 その趣旨は,反対受益者の受益権取得請求権の多寡,あるいは変更当時の経済情勢やファンドの運用状況によりましては,予定どおりに変更を実施することが信託の運用を著しく損ないかねないことになる事態も想定し得るわけですので,このような場合には,受託者は,いったんなされた合意又は決定にもかかわらず,善管注意義務及び忠実義務のもとで信託を存続させていくためには,あらかじめ設定された条件に従えば変更を中止し得ることとしまして,受託者が判断に窮する事態から救済しようという趣旨でございます。

  御参考までに,変更に当たって想定し得るプロセスを述べますと,例えば受益者から変更を打診する場合には,受益者側において変更内容と中止の条件とを決議した上で,受託者と合意するか又は受託者に通知するということになるでしょうし,一方,受託者から変更を打診する場合には,受託者側において変更の内容と中止の条件とを決定した上で,受益者と合意するということになると考えております。

  なお,以上はあくまでも1又は2の場合であることが前提でありまして,4の場合につきましては対象としておりません。

これは,信託行為でどのような定めがなされることになるかを予想することが不可能でありますので,変更時の中止の条件をあらかじめ信託行為に定めておくことですとか,あるいは受託者の善管注意義務の一般的解釈などによって対処せざるを得ないと考えているからでございます。

  6は,信託行為の変更に当たっての裁判所の関与の在り方について問題提起するものでございます。

ここでの事務局の当面の問題意識は,裁判所による変更の対象を,現行法のように信託財産の管理方法のみに限るか,それとも米国統一信託法典のように分配条項まで含めるべきかという点が中心でございまして,資料の5ページに詳細に示させていただきましたように,いろいろの考え方があり得るところでございます。

この点についての審議状況を踏まえた上で,更に手続的規定や判断基準の整備等も後に検討していきたいというふうに考えております。

  なお,信託財産の管理方法以外の変更が常に信託目的の変更に直結するわけではないと考えておりますが,信託当事者による合意の場合と異なりまして,裁判所が信託目的を変更するような変更をすることはできないという限界があるということ,裁判所に対する変更の申立てには信託行為の当時予見することのできない特別の事情があることが必要ですので,信託行為において事情変更に応じた手当てがされている限りにおいては,予見不能性,すなわち申立ての要件は欠けることになると思われるということを付言させていただきます。

  続きまして,第58の信託の併合についての提案でございます。

  ここに言う「信託の併合」でございますが,1の定義にございますとおり,ある信託行為に係る信託財産と,他の信託行為に係る信託財産とを新たな信託行為における信託財産とすることを言いまして,信託行為の変更の一形態と考えております。

このように,信託の併合は会社の合併に類似するものでございまして,信託の管理コストの削減ですとか,資本の集合によって効率的な投資が可能となり運用の自由度も増すといった,いわゆる規模のメリットが図られることなどの点で有益であると考えられます。

現行法には信託の併合に関する規定がないため,信託行為の変更と信託財産の併合の手続によらざるを得ないようにも考えられますが,ここでは,実務上のニーズにかんがみまして,信託の併合に関する独立の手続的規定を設けようとするものでございます。

  まず,2の(1)でございますが,これは,信託の併合に当たりまして各信託の受益者に対して提供すべき情報を明らかにしたものでございます。

総じて言いますと,受益者において,提案されている内容の信託の併合比率を始めとする併合条件を知ることによりまして,併合の利害得失を分析し,当該併合を承認するか否か,あるいは反対受益者の受益権取得請求権を行使するか否か等の判断材料を提供しようとするものでございます。

次に,2の(2)でございますが,先ほど申しましたように,信託の併合も信託行為の変更の一形態であることから,信託行為の変更に関する規律を準用するものでございます。

もっとも,極めて大規模な信託が極めて小規模の信託と併合される場合におきまして,信託行為の変更の特則として,第57の2のイで述べましたように,「受益者の利益に適合することが明らかであるとき」というふうな要件にはまって,大規模信託の受益者の同意は不要と言えるか,あるいはこの場合をもってこのように言うのは難しいかという問題がございまして,株式会社の簡易合併に類似するような特別な規定を別途設けるべきかにつきましては,なお検討する必要があると考えているところでございます。

  2の(3)以降は,信託の併合と信託債権者に関する提案でございます。

  まず,2の(3)でございますが,これは,併合対象となる双方の信託財産の運用状況によりましては,各信託の信託財産に対する債権者,殊に責任財産が信託財産に限定されている信託債権者にとっては多大な悪影響を受けることともなりかねないということにかんがみまして,会社の合併の場合と同様の債権者保護手続を設けることとするものでございます。

  これに対しまして,2の(4)ですとか,あるいは資料9ページの最後の(注)というところでございますが,これは,このような債権者保護手続が必要以上に重厚な手続となることを回避するために一定の例外を設けようとするものでご

ざいます。

  最後に,2の(5)でございますが,これは,信託の併合におきましては,会社の合併の場合と同様に,各信託に係る権利義務が併合後の新たな信託に包括承継されることを明らかにしたものでございます。

  続きまして,第59の信託の分割の提案でございます。

  ここに言う「信託の分割」でございますが,2類型考えておりまして,一つは,1の(1)にございますように,便宜的に「単純信託分割」と命名しておりますが,ある信託行為に係る信託財産の一部を,新たな信託行為における信託財産とするものでありまして,株式会社の新設分割に類似するものでございます。

具体的には,11ページ,12ページのケース1から4に相当するものと考えております。分割後において受託者が共通するか否か,それから,受益者が分割後の双方の信託財産の受益者となるか否かによりまして,ケース1からケース4までの4通りがあるかというように考えております。

  もう一つは,1の(2)の定義におきまして,便宜的に「吸収信託分割」と命名しておりますが,ある信託行為に係る信託財産の一部を,これは既に存する他の信託行為における信託財産の一部とするものでありまして,株式会社の吸収分割に類似するものでございます。

具体例として,13ページのケース5,6というものを挙げさせていただいております。

受益者が双方の財産に行けるか,それとも分かれるかという点で二つに分けて例示しております。

  信託の分割というのも信託行為の変更の一形態と言うことができまして,信託財産の効率的な運用を図る上で有用な場合があると考えられます。

現行法には信託の分割に関する規定がありませんので,信託行為の変更と信託財産の分割の手続によらざるを得ないとも考えられますが,信託の併合の場合と同じく,実務上のニーズにかんがみまして,信託の分割に関する独立の手続的規定を設けようとするものでございます。

  まず,2の(1)と3の(1)でございますが,これは,信託の分割に当たりまして信託の受益者に対して提供すべき情報を明らかにしたものでございまして,信託の併合の場合と同様に,受益者において,提案されている内容の信託の分割条件を知ることにより,分割の利害得失を分析し,当該分割を承認するか否か,あるいは反対受益者による受益権取得請求権を行使するか否か等の判断材料を提供しようとするものでございます。

  次に,単純信託分割に関する2の(2)と,吸収信託分割に関する3の(3),2の(2)を準用する3の(3)でございますが,これは,信託の分割も先ほど申しましたとおり信託行為の変更の一形態であることから,信託行為の変更に関する規律を準用するものでございます。

  それから,2の(3)と3の(2),(3)というのは,信託の分割と信託債権者に関する規定でございます。

まず,単純信託分割に関する2の(3)と,吸収信託分割の場合にこれを準用する3の(3)でございますが,いずれも,信託の分割におきましては,分割前の信託財産に対する債権者は,信託の分割後はいずれの信託財産に対してもかかっていけるということを明らかにしたものでございます。

  もっとも,その例外といたしまして,11ページのアステリスク1のところに記載しましたとおり,信託債権者を信託財産によって切り分けることに関する規定を設けるか否かについては,そのニーズを踏まえながら検討したいと考えておりますので,実務上このような切り分けをするニーズが存するか否かについて,是非とも御教示をいただきたいというふうに考えております。

 最後に,吸収信託分割のみに関する3の(2)でございますけれども,これは,吸収信託分割の場合におきまして,既に存する信託財産間で一部移転が行われる点において信託の併合の要素が含まれていることにかんがみまして,信託の併合の場合と同様に,分割前の双方の信託財産に対する債権者に対し,債権者保護手続とその一定の例外を規定したものでございます。

  以上で終わります。

● この絵の見方ですけれども,例えば11ページで言えば,小さい黒丸が受益者ですね。それから,白丸で中にAと書いてあるのが信託財産で,大きい四角が受託者ということですね。

● そういうことでございます。

● 併合,分割より前の,信託行為の変更というのも大きな話なので。

  私が前に申し上げたこともちゃんと取り上げていただいて,それに一定の配慮をいただいたというふうに今の御説明は理解しておるのですが,それでもなお十分分からないところがあって。

 この第57の1のところで,今まで私自身も全然不思議に思っていなかったのです。

委託者,受益者,受託者というのがとにかく信託の三者ですから,それで合意すればもちろん信託行為の変更もできるよ,終了もできるよと,当たり前の話だと思っていたのですが,2の方を見ていくと,翻って,どうなんだろうと。

委託者と受益者と受託者を,あたかも--これは結局のところは,もともと日本では信託も単なる契約だと考えているから,契約当事者としてこういうことに関与するのは当たり前だという発想でできているのだと私は思うのですけれども,やはり信託は違うのだというふうに考えていただいた方がいいと思うのです。

  だから,これも本当は,委託者と受益者が合意すれば受託者は信託行為の変更をすることができる,当たり前のことですよね,そこへ合意の当事者として受託者を出す必要は全くないような……。

受託者というのは信託財産を管理しているわけですから,その管理内容であれ何であれ,委託者と受益者がこう言ってきたのだと,そうすれば受託者はそれに従うというだけの話のものをこうやって三つ並べるというのは,やはりおかしいというような気がするのです。

  それが,2のところで,「受託者の利益を害しない」というような形で顕在化するものだから,この前も申し上げて,しかし,今日のお話では,この「受託者の利益」というのは受託者の個人的な利益ではないと。

そして,勝手に信託行為が変更されて,それでも受託者としてとどまらざるを得ないと--ちょっと私,全部書き切ることができないというか,覚えられなかったのですが,もう一回繰り返していただけると有り難いのですが,新たな信託のもとで善管注意義務や忠実義務を果たすのが難しくなる場合があろう,そういうものを受託者に課すのは酷ではないかと。

そういうものを果たせなくなれば,それは信託の不利益になりますよね。

  だから,私が例1としてまず考えたのは,変更された新たな信託では善管注意義務の内容が非常に高度であって,例えば私が受託者ですが,私が今まで投資したこともないようなところへ投資せよというようなことを言われても,私は困りますと。

そんなことを押しつけられたのでは本当に困るということなのですが,困らないかもしれないのですね。

  今のような例を考えておられないのかもしれないのですけれども,もう一回,ちょっと私の枠組みを……。

  今,善管注意義務の話が一つ,それから忠実義務を果たすことが難しくなる場合というのは,ちょっと私,想像ができなくて,これは教えてもらいたいのです。これは後の話です。

善管注意義務の方は,今のような形で私が想像するには,今までにないような,自分の能力を超えるような投資の方法とか何とかかんとかと言われたら,それは困りますねということなのですが,しかし,方法は二つありますよね,その場合ですら。

  第1の方法は,我々は自己執行義務の変更というのを大胆にやることに多分なるのですね。

そうだとすると,とりあえず,それでも,樋口,あんたやれよと受益者と委託者がおっしゃるのであれば,私は,自分の能力を超えているのだけれども,能力のある人を見つけますよ,それでそこへ委託してやってもらいますということで,善管注意義務の履行はできそうな気がするのですね。

  でも,そういうことがもしできないなら,第2の方法は,辞任のところでは,今のところは43条から46条  をそのまま残すというのですが,そのまま残すのの中には,「已ムコトヲ得サル事由アルトキハ受託者ハ裁判所ノ許可ヲ受ケ其ノ任務ヲ辞スルコトヲ得」と書いてあるのですから,そういう方法をとってやめることができそうなのですね。

あるいは,本当はもう少し辞任を容易にするという選択肢も,今立法作業をやっているのですから,あり得るような気がするのですね。

  だから,「受託者の利益」というのが,今日のお話では,この前,もしかしたら私がそもそも誤解していて,受託者の個人的利益をこんなにはっきりしてくるようでは信託の本質という点から問題なのではないかということを強く申し上げたのですが,そうではないというふうにおっしゃってくださったので,もうそこで満足すべきなのかもしれませんが,更にもう一歩,これは,私が「受託者の利益」の意味というのを十分分かっていないところがあって,ちょっと教えていただければ有り難い。具体的な例で示してくださると有り難い。

● では,「受託者の利益」という方があるいは答えやすいかもしれないので,まずは……。もう一つはもっと根本的な問題ですから。

● 「受託者の利益」というのも決して答えやすいわけではないのですが。

  ここで,例えばどういう場合に受託者は困るかといいますと,善管注意義務は,○○委員がおっしゃったとおり,自分の能力に余るような信託財産の管理運用方法の変更がなされたときに困るだろうという気がいたしますし,忠実義務は,確かに,まじめにやっていればいいんじゃないかということに変わりないと言われればそうなのですが,例えば,もともとは自分が投資していた先について,信託行為の変更によってそこに投資するというような変更がもしされたときには,投資先が競合して,忠実義務の問題というのは生じてくるのではないかなというような気がいたしております。

そういうときに義務に従った行動をとれなくなるということが,ここで言う「受託者の利益」に反する場合に該当するのではないかなというような感じがいたしております。

● 済みません,「受託者の利益」というのはこういうものだというふうにさっきおっしゃったものをもう1回読み上げていただくことと,それから,今の忠実義務の方は,正に委託者と受益者がそういうふうに言ってくれたのだから,忠実義務違反はもはやなくなるわけですね。

● 受益者が言ってきた場合で,受託者が従ったということですね。

● ええ,忠実義務にならない例外の典型みたいなものだから。

それでも,実際にやってみると,どうしたらというので困る例はあり得るとは思うのですけれども,一応大きな意味では,そこまでおっしゃるなら,もはや忠実義務違反は私にはありませんという話になるので,大丈夫なような気もするのですね。

  定義的な,「受託者の利益」とはこれだというのをもう1回だけ。

● 定義というか,私がいわば独自の見解を申し上げているだけなのですが,この点につきましては,「受託者の利益」は,原則として辞任の自由がないというのが我々の前提でございますので,当初受託した信託行為の内容とは異なる新たな内容の信託行為についても,善管注意義務や忠実義務のもとで受託者としての職務を適切に果たしていかなければならなくなる,そのような責務を十分に果たすべき受託者の同意ないし利益を信託の変更に当たって考慮することは,受託者による信託事務の適切な処理を期待するという観点からも不合理とは言えないと考えられる。

したがいまして,ここに言う「受託者の利益」とは,受託者の個人的利益のことではなくて,受託者が善管注意義務や忠実義務違反に問われることなく,適切に信託事務を処理し得る利益というふうに考えているというところでございます。

  あと,辞任の自由を認めた方がというお話は,これはかつてもいろいろ議論があったわけでございますが,ここでは,信頼というのは,別に受託者が受益者を信用しているわけではなくて,受益者が受託者を信用しているという,言ってみれば片面的な形になっておりますので,受託者に対するガバナンスなどの観点からも,委託者や受益者が受託者を自由に解任できるというのは,信頼をしている方からの解任なのでいいと思うのですが,逆に,信頼されている方が自分で自由にやめるというのはそれとパラレルにはいかないということもありまして,受託者には辞任の自由は原則ないということで通しているということも付言させていただきます。

● 今の問題と密接に関係しますけれども,○○委員の意見のもう一つ,いわば1に相当する部分ですか,根本的に,変更というものについて。

● 1の方でございますか。三者の合意としているのはおかしいという。

  ○○委員が先ほどおっしゃったのは,委託者と受益者の合意に基づいて受託者がやればいいじゃないかということですが,先ほど私申しましたけれども,二者がいいからといって,できないこともあるだろうと。

やはり,そういう能力という観点から,受託者の意向というのもこの場に反映させるべきではないか,それは当然,自己の利益というよりは,善管注意義務,忠実義務のもとで事務処理をし得るという自分の能力にかんがみて,誠実に合意に関与するということは認めていいのではないかということで,三者の並立にしているということでございます。

● 私,○○委員のおっしゃることに80パーセント賛成で,20パーセント反対なのですが,反対なのは,受託者が困る場面というのは結構あるだろうというところが反対であって,○○委員のおっしゃるような形では処理できないだろうと思うのです。

  ただ,そもそも三面契約としてでき上がっているわけではなくて,委託者が信託を設定して,受託者が引き受けるという形ででき上がっているわけですから,三者の合意と書くのはやはり余りよくないのではないかと思うのですね。

そうすると,やはり,委託者と受益者の合意による,そして受託者の同意を得なければならないというふうに書き分けるべきであって,本当に細かい技術的な話ですが,やはり精神は違うので,三者並立よりも,二人の人が受託者の同意を得て変更を行うという形の方が何かいいんじゃないかなという気がするということだけです。それが賛成の方の話です。

● 実質は,今の○○幹事のことは非常によく分かるわけですけれども,そもそも信託の構造が何かという観点からすると,なかなかそこは難しい問題があって,契約によって設定された信託のそもそもの当事者はだれかとか,形式的に考えるとこれはやはり委託者と受託者であるとか,そういうふうにもなりかねないので,なかなか単純にはいかないところもありますね。

ただ,実質は,○○幹事のような形でやればそんなに弊害はないと私も思いますけれども。

● おっしゃったように,委託者と受益者の合意をもって受託者が同意するというスキームというのは,正に理念的には我々が考えていたとおりでございまして,おっしゃるとおりかというふうに思っております。

  ただ,事務局の方として教えていただきたいのは,このように三者の合意としておりますのは,受託者から積極的に変更の提案もできるという趣旨も含まれているわけでございますが,もしも受託者は同意ができるとすると,消極的に同意はできるけれども,積極的に変更の提案はできないということになるのではないかと。

その点につきましての懸念というのがありますので,そういうことはないのか,それともそれでも構わないのか,この問題につきましての御見解を是非ともお教えいただければというふうに思います。

● 私が答える立場にいるとも思えませんが,受託者が,例えば,受託者の負う善管注意義務の範囲において,変更した方がよい,変更した方がより信託の目的を達することができると思うときに提案をすべきであるという義務を考えるというのは十分にあり得ることだと思うのですね。

しかし,提案をして,直した方がいいですねというふうに言うという話と,自らが直すことの当事者になるかというのは別問題なのではないかなという気がします。

  が,おっしゃることもよく分かりますし,それよりも,○○委員がおっしゃったこともよく分かりますので,単純に受託者の同意とすればいいじゃないかというふうに言ったのは,考えがまだ浅かったというふうに思いますけれども。

だから,○○委員がおっしゃったように,そもそもの信託の設定の在り方というのをどういうふうにとらえるかというところと平仄を合わせて書くようにしないといけない--まあ結論はないわけですが--ということで御勘弁をいただければと思います。

● いろいろと考慮しなければいけないような問題がありそうなので,これについては引き続き検討させていただいたらよろしいのではないでしょうか。

● 受託者の利益に関して受託者の同意が必要かという今の議論についての話で,受託者サイドの意見としてお話ししたいのですけれども。

 もちろん,この制度の必要性というのは,事務局がおっしゃられた,受託者の善管注意義務,忠実義務を真っ当に確保するためという点もあろうかと思います。

ただ,考え方にもよると思うのですけれども,受託者個人としての利益もある程度おもんぱかっていただくことはできないのかということでございます。

  これは理由が二つありまして,一つは,正しく実務的には契約というふうにとらえているわけですけれども,そうした場合に,契約を一方的に変えられてしまうということは,実務感覚からは非常にかけ離れているということでございます。

  二つ目は,これは補償請求権ということにも関係し得るわけですけれども,例えば,変更を求められましたと,やれるかやれないかというと,やれますと,ただし莫大な長期投資が必要ですと。

例えば,やれるのですけれども,人を新たに雇わなければいけないですよと,ただ,その信託自体はすぐ終わります,他方,人をいったん雇った場合にはなかなかやめられませんといったときに,結局,その補償請求権の金額いかん,どれぐらいでつけるかということにもよると思うのですけれども,信託が終わった後にそういう負担を受託者として負い続けてしまうことになる。

それで,もし補償請求権を全部負わなければ,結局は信託受託者の個人の損失になってしまうという場合もあろうかと思います。

そうした場合に,やはりそういうことは受託者の担い手として萎縮効果を及ぼしてしまうこともあり得ますので,そこら辺を考えますと,そういう御提案があったときに受託者の同意を得るということを原則としていただきたいというふうには思っております。

● ○○委員のお話とほとんどかぶってしまうのですけれども,非常にレベルの低い話になってしまうのですけれども,理念的に言いますと○○委員のおっしゃることというのは非常によく分かるのですけれども,本当に現実の問題として考えた場合に受託者として対応できるかという,先ほど○○委員からお話があったようなこともありますし,非常に困難な場合があります。

  例えば,信託行為,信託契約一つとってみても,当然,商品を開発してお客様に提供するということからすると,受託者のリスクというのはもちろんいろいろと勘案するわけですけれども,お客様にとってどういう効果があるのだろうかということをある意味どんどん練った上で何らかの対応をしていくということをやっていくわけですけれども,それで一つの商品ができ上がって,提供すると。

そういう中で突発的な形で変更を求められるということについて,どこまで対応できるかというと,そういうのはレベルの低い受託者なのだと言われてしまえばそれまでなのですけれども,なかなか対応は難しいのかなというのと,もう一つは辞任のところについて,確かにおっしゃるとおり辞任というのを緩めてという部分もあるかもしれませんけれども,これも現実の問題としてとらえた場合には,そういうところで辞任したときに,受けてくれるところが本当にあるのだろうかという--これも本当にレベルの低い話なのですけれども--ところがあるので,実務上からいくと,やはりかなりしんどい話かなと,そういうことを分かっていただきたいと。

● 今までのお話と少し関連しますが,若干異なると言えば異なる問題なのですが。

  第57の1,2を今お話しされていたのですが,その下の4に正にかかわる問題だと思いますが,「信託行為に別段の定めがあるときは,当該定めに従うものとする」と。

別段の定めの例としましては,3ページ以下に,特定の第三者等々に変更を委任するような定めも許容されると。

これは本当にいろいろなパターンがあり得るところだろうと思います。

当事者のだれかに委ねるという場合もあるでしょうし,第三者,それもいろいろな第三者があるだろうと思いますが,そのあたりについては最初の御説明の中でも御指摘されていたところです。

そして,これについては甲案,乙案というのがあって,甲案ですと,最初から別段の定めが分かってやっているのだから,どういうことになったとしてもそれは仕方がないでしょうと。乙案は,それではやはりまずいので,限定を加えようというようなお話だったと思います。

  これは,広い意味での契約といいますと,契約内容の変更権限を当事者のどちらかないしは第三者に委ねるというような契約がそもそも効力を認められるべきものかどうかということ自体からして既に大きい問題があろうかと思います。

特に,消費者契約に相当する場合,つまり,一方は事業者で他方は消費者だというような場合ですと,消費者契約法の10条,不当条項規制の一般条項ですが,その一般条項に当たる代表例の一つが,正に変更権限を他方当事者ないしは一方当事者と密接に関連する者に委ねるというような条項だろうと思うのですね。

そういう意味で,この4で,「別段の定めがあるとき」と,そしてその例として,一方当事者ないしは第三者に委ねるような定めがそもそも有効かどうかということ自体,やはり気にする必要があるのではないかなと思います。

 そして,いろいろあるうちの一つの例として,例えば受託者に変更権限を委ねるというような定めが最初からあるとしたような場合に,それが果たして有効なのかと。

有効だとして,もちろん受託者は善管注意義務,忠実義務を負っているわけでして,それを履行しないといけないわけですけれども,客観的に見ればその義務に違反しているような変更をした場合に,その変更自身は効力を認められるのか,認められるけれども善管注意義務違反,忠実義務違反の責任が問えるというふうに考えるのか,それとも,やはりそれはちょっと迂遠なことであって,そもそも変更の効力が認められない,ないしは,そもそもこういう定め,受託者に変更権限を委ねるような定め自体が無効なのだというような考え方もあり得るだろうと思うのですが,そのあたりはいかがお考えなのでしょうか。

● 私も同じ問題意識を持っていまして,契約で空白部分を第三者に委ねるということはあり得ると思うのです。

例えば代金を第三者に決定させるとかですね。それから,紛争が生じたときに第三者の判断に解決を委ねるということもあると思うのです。

ただ,ここは,積極的に合意したことを新たに第三者に変更させるという権限を与えるものですから,どうも今まであった例とは違うのではないかということで,○○幹事のおっしゃっていることと同じ問題意識を持っています。

● 非常に根本的な問題で……。

● 我々としては,正にそういう,権限を与えることはできるという前提のもとにどうするかというレベル,第2段階の議論をしていたところでございまして,そもそもそういう権限を与えることができるかどうかというところも正に皆様方の御議論もいただきたいというところでございまして,いろいろな文献などを見ておりましても,そこのところを書いたものは余りないという気がいたしております。

  ただ,そもそもそういう権限を与えるのは,いったん決めたものを変更して受益者の不利になるおそれがあるのではないかという観点からとられるのであれば,例えば乙案のようにするのであれば,仮に第三者に変更権限を与えていても,このような縛りがかかっているのであれば,それをあえて無効とまでしなくてもいいのではないかなというような感じがいたしますので,無効とするぐらいだったら,乙案というのも十分あり得るかなと。

  ただ,御指摘の趣旨からすると,甲案というのは問題が多いというような感じが,今のところ,事務局としてはいたしております。

● 甲か乙かというと,乙の方がもちろんいいと思うのですけれども,そもそもこういう変更権限を第三者あるいは当事者の一方に認めるということが可能なのかということが根本的な問題提起としてあるわけですね。

  そこで,むしろ,具体的にどういう場合を想定しておられるのかということから考えていった方が解決に近いのかなという気がするのですが。

大上段に第三者に変更権限を認めると言うと非常に大きな話になりますので,こういうことが問題なのだということをお教えいただいたらいいかなと思いますけれども。

● 少し考えてから答えた方がいいかもしれませんね。

  では,ちょっとここで休憩にしましょうか。

            (休     憩)

● それでは,再開の時間になりましたので,お席にお戻りください。

  それでは,先ほど非常に難しい問題を提起されましたので,それについて,○○幹事の方でお願いします。

● 休憩時間中に考えてみたのですけれども,例えばどういう例があるかといいますと,アメリカなどでは割と使われていると思うのですが,例えば,子供が3人ぐらいいまして,そのときの経済状況に応じて配分額を決めてくださいと。

それで,その変更権というのを受託者に与える。

これは,裁量信託になると思うのですが。もちろん,その子供たちのことをよく知る第三者に与えてもいいですけれども,そういう者がその時々の状況を見て適宜配分額を変更できると,このような変更権限を第三者に与えるということが一番想定される場合ではないかなという気がいたしております。

  今のは民事信託ですけれども,他方,商事信託でどういう場合があるかというと,これはなかなか我々としても適切な例というのが思い当たらなくて……。

仄聞したところによりますと,例えばポートフォリオを決めると。例えば投資先,運用先なんかを決めるときに,ある第三者がその時々の経済状況に応じてベストと思われるところを決定すると。

これは変更というよりは,その時々に信託行為の中身を決定していくというような形をとっているというようにも伺っておりますが,考え方によっては一種の変更とも言えるのではないかと思われるところです。

もちろん,それは無制限というわけではなくて,少なくとも,今言ったような,そのときの経済情勢を見て,受益者の利益に最も適合するとか,ある程度の縛りがかかっているのかと思います。

余り実務で使われているかどうかということはよく分からないのですが,商事信託でもそういうことは考え得るかというふうに思います。

  そもそも変更権限を与えていいのかどうかという問題になってまいりますと,しかし,契約の世界,あるいは信託のこれまでの使われ方などを見ましても,第三者に変更権限を与えること自体が許されないというのは,ちょっとそこまで言うのは一般的には難しいのではないか。

やはり,そのときの設定の状況とか周囲の状況などを見まして,変更権限の付与がそもそも公序良俗違反で無効になるとか,あるいは,ここで言いますと乙案的なもののように,無制限ではなくて,委託者の設定した目的とか受益者の利益という観点からの制限のかかった変更権限までは付与されるけれども,それ以上はできないというような,いったんオーケーとした上で絞るというようなやり方という方が現実的ではないかなというように考えられるところです。

● この点につきましては,更にもうちょっと考えていきたいと思いますけれども,今の○○幹事の答えに関して,何か更にもし御質問があれば。

● 先ほどの,商事で信託というお話ですけれども,当然,現行実務においてはありませんので,こういうことがありますよという御紹介はできないのですけれども,ぱっとイメージするに,やはり我々が持っているノウハウよりも高いレベルであるとか,特に,例えば知財の関係の信託等で,法的な問題であるとか,ほかに技術的な問題,そういったものについて我々では分からないような形で,もう完全に例えば弁護士さんなり弁理士さんとかにゆだねてしまった方がいいような場合というのが出てくるのではないかなというふうに考えております。

 そういうこともありまして,信託制度自体の柔軟性を確保したいという観点から見て,先ほどの甲案,乙案からいくと,やはり甲案を支持したいというふうに思っています。

  弊害というのは当然出てくるのだと思いますけれども,これについては,契約で書いているでしょうというのが一つと,これから先,第60のところで議論があると思いますけれども,反対受益者の取得請求権を強行規定として確保するというところでもって弊害を防止する,受益者救済を図るという手段があると思いますので,自由度を高めるという意味合いから,甲案ということでお願いしたいというところです。

● ○○幹事のおっしゃったようなことで,私,十分に理解できると思っていますが,この第57の4について言うと,○○幹事がおっしゃるような懸念にも非常に共感することがあって,これから申し上げることは今後何度か申し上げようと思っているので,もう二度と繰り返すなと言われても困るのですが。

  つまり,アメリカでは,信託行為に別段の定めというので,例えば受託者に変更権を認めている場合だってあるわけです。それが一番典型的な形では,裁量信託というようなものですから。

ただ,英米法の場合はやはり歴史的なバックグラウンドがあって,最後はエクイティーの裁判所。

つまり,何を言いたいかというと,この信託法の見直しで我々ずっとやってきていて,何度も耳にする言葉が,「デフォルト・ルール」というものですね。

基本的なものをここで書いておいて,しかしあとは契約でいかようにでもなるんですよ,別段の定めでいかようにでもなるんですよというので,その半面は非常にいいことだと思っているのです。

やはり信託の自由というのは契約の自由に通ずるところがあって,それでないと信託はいろいろな形で発展していかない。

しかし,今,アメリカの例えば統一信託法典で任意法規化ということが強く言われているのは,彼らの世界では,それでも後ろにエクイティーの裁判所が常にあって,例えば一つ判例を挙げるとすれば,ある信託条項で受託者にアブソリュート・ディスクレッションを上げると書いてあるのですね,はっきり。

それに対して何の制約もないとまで書いてあるのです。しかし,紛争になりますね。

それで裁判所に行くと,アブソリュート・ディスクレッション,絶対的な裁量と書いてあってもだめですよというようなことを言ってくれるわけです。

これは,信託というのは単純な契約ではないですからという話をやってくれるのですね。

  日本でそういうバックグラウンドがあるだろうかということを翻って考えると,やはり我々はそういうような何百年間の歴史というのは持っていない。

書いてあるからという話で,契約だという話で。完全な商取引のときは,私はそれでいいと思っているのです。

商人対商人,プロ対プロという話はそれでいいと思っているのですが,それが波及していって,先ほど例に挙がった消費者であれ何であれというところへ行って,信託というのはそんなものなのかというふうな風評,評価がなされるような事態が出てくることはやはり非常に問題だと思うのですね。

それは商事信託にとっても問題であると思うので,そういう意味で,日本としては,この4についても何らかの制約をつけざるを得ないような形になっても仕方がないのかなと思っていますが。

● この信託全体を通じて共通する問題ですけれども,一方で商事信託で,またその中でも,いろいろ最先端ので,いろいろ充当性といいますか,融通性を持たせた方がいいというタイプのものから,商事で信託はあっても消費者相手に使う信託であるとか,あるいは,現実にはまだそんなにないわけですけれども,ファミリー信託的なものと,いろいろなものを含んでいるために,なかなか,どこにデフォルト・ルール的なものを置いたらいいかというのを常に考えていかなくてはいけないのですね。

  この問題につきましても,先ほどいろいろ御意見が--多少両極端的な御意見がありますけれども,どこか中間的といいますか,それなりに合理性のあるところに落ち着くように,これからまた議論していきたいと思いますので,そういうことでよろしいでしょうか。

● 甲案,乙案ということで出ているのですけれども,議論の中では,この甲案,乙案については,要するに特定の者に権限を付与する場合の権限の限定ということで議論がされているようなのですが,私もどちらかというと,甲,乙で言うと乙の方がいいのではないかと思うのですが,この指示する場合だけの限定で足りるのかというのがちょっと気になっておりまして,特に,乙案に書かれている目的を変更する場合ですとか,あるいは第60の記載の内容の変更というのは信託の根幹にかかわる部分だと思いますので,これについては,基本的に1とか2とかの規律によるというふうにすることを検討するべきではないかと思うのですが,その点も含めて御検討いただければと思います。

● 今のは,もちろん三者が合意すればいいわけでしょうけれども,信託行為の別段の定めでもって例えば目的の変更ができるというのは困るではないかと。

つまり,特定の人に権限を与えた上での話ではなくて,一般的に,この変更できるときのその変更できる中身について,信託行為に別段の定めを設けて信託目的の変更もできるという形の規定を設けるのは問題があると,そういう趣旨ですね。

● 別のところですけれども,変更のところで2点,あと分割のところで1点です。

  変更のところの第1点目につきましては,これは3,4の通知義務のところでございますけれども,多分これは強行規定だろうと思います。

これの前の段階においては,通知義務だけだったと--「あらかじめ」という言葉が入っていたかもしれませんけれども,こういう形で「前日までに」というものが入りますと,やはりかなり窮屈な感じがいたします。

例えば,2とかでいくと,軽微な変更というのも結構あるんじゃないかなと。

軽微な変更の場合については,例えば,次の通知なり,お客さんに対して通知しているところの一部分に盛り込ませた方が費用面も非常に安く済むであるとか,非常に多数の受益者であったとしたら公告で済ますとか,そういうこともあっていいのではないかと。

もちろん,重要な変更である場合においてはそういうことはいけないと思いますし,原則としては,前日までにするということを普通はすると思うのですけれども,ただ,こういう形で強行法規で決められてしまうと,かなり窮屈な感じがします。

したがいまして,デフォルト・ルールにしていただけないかというのと,そういうことが難しければ,例えば前日という部分だけカットしていただくとか,そこら辺のところをちょっと御検討をお願いできないかなというのが1点目です。

  2点目につきましては,6のアステリスク2の裁判所の関与のところにつきましては,結構いろいろな問題があるということのようですけれども,実務においては,信託財産の管理方法以外でも,やはり当初予見できないような状況でデッドロック状態になるということも十分に考えられますので,最終的な救済といいますか,そういう手段として裁判所の関与というのを認めていただけたらなというふうに思います。これが2点目です。

  もう1点は,分割のところでございますが,併合と分割につきましては,現行法に規定のない中で結構実務上もやっておりまして,併合も受託者の合併とかに伴いましてやっていますし,分割につきましては,流動化のところで,不動産を一つの信託に入れて管理信託をやっておいて,その一つずつを物権化して流動化していくというようなことも結構ありまして,分割というのも割と盛んに行われつつあるというような状況です。

  そういう中で考えますと,ここのアステリスク1にも書いてあるのですけれども,その場合については,やはり信託債権というもの自体が,分割の場合,分割するもとの信託と,分割した先の信託,両方にかかっていくというところについて何らかの債権者保護手続をとることによってその片一方の方に寄せると,そういう制度というのは御検討されるということですけれども,ここら辺のところ,簡便に,なおかつ確実にできるような方法の御検討をお願いしたいということでございます。

● 同じことの繰り返しで恐縮ですけれども,ちょっと○○委員には恐縮なのですけれども,反対のことを申し上げたいと思うのですが。

  今日の議題の第57から第60は特にそうですし,前回の複数受益者の意思決定方法のところもそうなのですけれども,全体的に実務的な感覚からいきますと,今の信託法に対比しますと,非常に窮屈な,重い信託法になりつつあるのかなという面が否めないと思っております。

例えば分割とか併合とかいう点においても,今でも実務的に行っておりますけれども,後で御質問したいと思うのですけれども,この第58,第59の規律というのは強行法規のところが大きいとは思いますけれども,そうした場合に,現行対法とくらべて,デフォルト化というのがだんだん後退しているという面もあるのではないかなというふうな印象を持っております。

  もう一つの話としては,この場というのは信託一般法の在り方を議論する場であるわけですけれども,受益者への保護であるとか,特定の信託類型における保護の在り方であるとかいった場合には,やはりそれなりの法体系において別々に検討すべきところもあるのではないかと。

すなわち,信託一般法の場合もありますし,信託業法ないし資産流動化等の個別特別法とか,また,今議論されております投資サービス法等の一般規制法とかいうところで規律されるべきというところはあるとは思うのですが,私の印象からすると,本来ならそれら業法等で規制すべきものが,この一般法に入っているところもあるのではないかなというふうに思っております。

  この観点で個別論点についてのコメントを差し上げたいのですけれども,そういう意味で,第57の4に関しましては,甲案が妥当だというふうに考えています。

  あと,第58,第59の信託の併合等について,確認をしたいのですけれども,そもそもこの規定というのは強行法規であるのかということです。

  具体的には二つあるわけですけれども,一つは,例えば,そもそも信託の併合,分割を認めない信託というのはつくれるのかどうかということです。

つまり,信託契約において併合禁止,分割禁止を定めておくことは有効かと。

もっとも,考えてみますと,概念的には信託併合等も信託変更の一部であるということでしたので,手続を1回やるのか2回やるのかは別として,当該禁止を含めた信託行為自体も第57の規律によって変更することが可能であるということであるから,余り実務的に議論する実益はないのかなとも思いますけれども,第58,第59の在り方として,全体的に強行法規かどうかということをお尋ねしたいというのが一つです。

  二つ目に,仮に強行法規性が全体的にどうかということは個々具体的に検討すべきだということになった場合に,第58の2の「信託の変更手続」の例えば(1)でしたら,アからカまで開示しなければならないとか,いろいろありますけれども,これが強行規定なのかどうかということです。

実務においては,こういうある意味法定化されたものを意識せず,ある程度契約という概念の中でやっていたわけですけれども,その対比から言うと窮屈になっているのかなというふうには思っております。

もっとも,債権者の立場からすると,これだけの債権者保護手続ということがあるわけですから,非常にいい制度だということもあるわけで,ここは非常に矛盾したことを申し上げているわけですけれども,そもそも概念の整理として,個別の手続等についても強行法規なのかどうかということを確認したいと思っております。

● まず,○○委員がおっしゃった,通知が強行規定かどうか。これは,質問というよりは,そう理解しておられるというお話でしたが,これは,受益者の利益をどこまで図るかという制度的な観点から通知義務を義務づけたものでございまして,我々としては強行規定であるというふうに考えております。

  「前日までに」では厳しくて,「あらかじめ」にしてほしいというのは,どう違うのかよく分からないのですが。

● 「あらかじめ」というのではなくて,通知義務だけなら,例えば事後的なものとかいうのも認められると思いますので。

● ここの通知義務というのは,事前にすることによって初めて,変更自体に対して効力発生前に不服を言わせる機会を保障するという趣旨がございますので,「あらかじめ」であれ,「前日までに」であれ,それは我々としては特にこだわらないというか,まあ「前日までに」がいいと思っているわけですが,事後でもいいかというと,ちょっとそこは,そもそも通知をする趣旨に反してきますので,難しいのではないかなと。

事後に通知するのは,ある意味では当たり前といいますか,変更された中身を受託者や受益者に,こういう信託になりましたと言うのはむしろ当然の報告義務だというふうに考えておりますので。

ここは,通知というのはもう少し意味合いが違うのではないかというのが,とりあえず事務局の理解でございますが,御指摘を踏まえて考えてみたいとは思っております。

  それから,分割の場合の債権者保護手続につきましてはどのようなものにするか,これは,特に独自のものを考えているというよりは,普通の商法上の債権者保護手続の併合のようなものと,また個別催告のようなものを考えておりますが,具体的な手続につきましては,検討していきたいと思っております。

それから,○○委員がおっしゃった点,2点ですが,まず,そもそも併合,分割ができないような信託行為の定めをすることはできるかということにつきましては,それはいいのではないかと思っておりまして,御自身がおっしゃられましたように,そのような禁止の定めをそもそも三者の合意とかで解除した上で更に併合する,それもまた可能でございますが,もしも,いったん信託行為の中で,この信託は分割できませんよとか,併合できません,あるいは変更できませんもあるのでしょうが,そう書いてあったら,いきなりそれに違反して併合,分割,変更することはできない。

いったん解除してというプロセスを経るべきかと考えております。

  それから,併合,分割に当たっての受益者に対する併合条件の通知とかそういうところでございますが,ここも,受益者が要らないと言うのであれば,あえてしなくていいのではないかなと。

ちょっとそこはまだ十分検討しておりませんし,受益者の保護の観点からするともう少し強いものかなという気もしてはいる半面,受益者が要らなければ要らないのではないかという考え方もございまして,そこは御指摘を踏まえて検討したいと思っております。

●  ○○委員の先ほど言われた,非常に小さな変更で,明らかに利益に反することはないだろうというようなものについては,場合によっては通知の仕方の方でも解決できるのではないでしょうか。

さっきの,どこかに公示すればいいというのであれば,それはそれで解決するわけですね,事前であっても。さっきの御発言はそういう御趣旨ではありませんでしたか。

● そうですね。今は通信手段とか通知手段というのは結構いろいろとありますから。

● 個別にやれと言われると大変だけれども。

● そういうふうに前日までで個別にと言われてしまうと,結構困る部分というか,窮屈だなということで,そこも何らかの御配慮をと。

● ちょっとこれを見ていて,基本的にはこれでいいのだけれども,この通知の持つ意味というのは,事前に異議がある人がいるかもしれないから,事実上反対するというか,自分の意見を表明するチャンスを与えようということで,それはそれで結構なのですけれども,これは一応,第57の2のアからエまでの要件を満たされていた場合には,結局変更は効力を生じて……。

● 通知はしなくても。

● ですから,通知をしないで,効力が発生して,先ほど,通知をする義務の違反という問題は生じるかもしれないと言われたけれども,しかし,それも何か損害賠償とかいうものが生じるわけでもないでしょうね。

この要件が満たされて,変更ができるのだという前提で考えると。

● そうですね。結果的に不利益がなかったわけですから。そうすると,違反は違反ですけれども,損害がないという……。

● 私が最初にこれを読んだときには,そういう変更ができるかどうかの要件は第57の2に書いてあるので,この要件を満たせば変更はできるわけですが,その変更の効力が発生する時期を通知にかからしめているのかと思ったのですけれども,そうではないのですか。

● そうではありません。

● だとすると,さっきのように,通知をしなくても効力は発生し,その義務違反を問おうと思っても,実際上は余り何もないと。

● まあ,そういうことになりますね。

  あくまで受託者の判断が適正かどうかをチェックするという趣旨がありますので,結果的に適正であれば,それは別に構わない。例えば株式の場合でも,新株発行の場合に公告を怠っても,結局,差止事由がなければ有効になるのと同じような話になるかなという気がいたしますけれども。

● ほかに,よろしいでしょうか。

● 2点申し上げたいのですが。

  まず1点は,第58,第59の併合と分割に共通の問題だと思いますけれども,先ほど,株式会社の合併等になぞらえてというお話がございましたが,仮にそういうふうに考えますと,それぞれの無効の訴えみたいなものを仕組む必要が出てくるのではないかと。

形成訴訟として仕組んで,だれが原告で,対世効が出てというようなことまで考える必要があるのかどうか,御検討いただきたいというのが第1点です。

特に,受益権について有価証券化されて流通しているような場合には,対世的な,画一的な処理を行う必要が出てくるのではないかなという気がいたします。

  第2点は,第57の信託行為の変更の6の米印の2,先ほどから何回か出ていますが,裁判所が変更をするという話ですが,私は,ここについては,5ページのあたりに,もう少し広げられないかということが,最後の「しかしながら,」以下の段落で出てくるわけですが,慎重に考えた方がいいのかなという気がしております。

 現行の信託法は裁判所の関与というのを幾つか定めておりますけれども,多くは,何かをしようとするのに裁判所の許可が要ると。

つまり,何かしなければいけないことがあって,だれかから提示されて,それに対して裁判所が許可をするという形のものが多い。

8条でしたか,信託管理人を選ぶというときには,だれを選ぶかというので幅がありますけれども,しかし,信託管理人を選ぶかどうかということはオンかオフかしかないわけですが,この現行法23条というのは,そういう意味では随分幅の広い,裁判所がしなければいけない判断の幅が広いものではないかと。

更にこれを広げるというのは,非常に慎重であるべきだと思います。

  つまり,別の言い方をしますと,この私的な財産管理に許可みたいな形で公権的に関与するというのを超えて,積極的に内容を形成するということまで裁判所の権限あるいは義務とするのが適当なのかどうか。

更に別の言い方をしますと,財産関係で何かデッドロックに乗り上げるというのは,ほかのシチュエーションでは幾らでもあると思うのですが,信託についてだけそういうことを設けるのは果たして適当なのかどうかということです。

  先ほど○○委員から,最後はエクイティー・コートが控えているというのが英米の信託であるというお話がございました。

そういうことができないと,信託というのはそんなものかという風評が立つというお話がございました。

一面それは真実だと思いますけれども,その半面で,裁判所による変更によって不利益を感じる人にとっては,裁判所はこんなことにまで関与してくるのかという風評が立つという側面も必ずついて回るということも考える必要があるのではないかと思います。

それぞれの国で司法制度に伝統がございますので,もちろん,これで世の中を変えていこうということは議論としてはあり得ると思うのですけれども,踏み出すときには,二歩三歩踏み出すのではなくて,半歩ずつぐらい踏み出すという考え方もあると思いますので,それとの関係で23条の見直しを考えるべきではないかというのが私の意見でございます。

● 御指摘になりました無効取消しの訴えにつきましては,検討いたしたいと思いますし,裁判所の変更の範囲につきましては,是非ともまた皆様の御議論をいただきたいというふうに思います。

● そうですね。もうちょっと具体的に,どういう場合に必要なのかということも検討しながら考えていきたいと思います。

● 先ほどの○○幹事からの御意見と同趣旨でございまして,第2回の部会で申し上げたこととも重なることが多いということでございますが,非常に多様な形態がある信託において,一方,裁判所が信託に関与してきたという,そういった伝統においては非常に乏しいということがございます。

若干,統計などもざっとだけ見たのですが,平成11年から15年まで,裁判所が信託に関する非訟事件といたしまして--訴訟ではなくて,こういった信託行為の変更ですとか受託者の解任等全部含めまして,非訟事件の数と申しますと,全国で大体5件から10件程度という状態が続いているという状況でございます。

そういったことで,現在のところ,裁判所にとって信託というのは非常になじみが薄いというのが実情でございます。

  そのような中で,今回,信託について法改正ということで,信託行為の変更ということで裁判所が信託行為の変更をすることができる,変更後の信託行為というものを裁判所が定めることができるということになりますと,裁判所にとっては非常に不安が大きいということになります。

受託者から変更の請求があることもあれば,受益者から変更の請求があるということもあり得るものでございますし,裁判所はその当事者の主張に拘束されずに信託行為を変更することができるということが多分非訟事件の基本的な建前ということになってしまうと思いますので,そこを裁判所が決めてしまうということで本当にいいのかということに尽きてしまうのではないかというふうに考えておりまして,現在の裁判所,今までの裁判所の在り方からすれば,非常に消極的に考えざるを得ないのではないかというふうに考えているところでございます。

  したがいまして,現在ございます信託の管理方法の変更につきましても可能な限り要件を明確化していただきたい,判断基準を明確化していただきたいというのを第2回の部会の際にも申し上げたところでございまして,この点は,先ほど○○幹事の方から,今後検討するというお話がございましたので,是非お願いしたいというふうに考えているところでございます。

  一方,財産の分配についての変更ということになりますと,こちらはもう受益権の内容そのものを裁判所が変えてしまうということになりまして,そのようなことを,合意を前提とせずに裁判所が判断してしまってよいのかという意味では,やはり消極ということになるのではないかというふうに考えているものでございます。

● 現在の規定のもとでも大変な難しい問題があるということだと思いますけれども,確かにこれは,範囲を余り広げ過ぎるのには非常に慎重でなければいけないという点があると思いますけれども,少なくとも管理方法の変更については,先ほどの5件ですか--先ほどの5件というのは,必ずしもこの23条の関連ではなくて,もっと……。

● 要は信託に関する事件ということでございまして,信託に関する非訟事件全部を加えてということでございます。

ひょっとしたら,何かほかのものと一緒になっているとかいったことがあって若干数が増えるということもないわけではないと思うのですが,信託に関する事件として裁判所が統計をとっているものとしては,年間5件から10件ぐらいで推移しているというところでございます。

● ちょっと私の個人的な意見も入るので,申し上げるのが適当かどうか分かりませんけれども,ある種の事情変更の原則ですよね,これは。

事情変更の原則というのは,実体法のルールがあっても実際上はなかなかできなくて,要するに,変更されたということで当事者が変更してしまって,あとは裁判で争えというのも,これも本当は事情変更の原則としては余り適当ではないと私は思っているのですが,たまたま信託にはこういう形で裁判所が関与して事情変更の原則を行使できる規定があるので,本当はうまく使えればいいと思っているのですけれども,5件といいますか,更に実際には少ないのかもしれませんけれども,まあ,いろいろ問題点があることはよく分かっております。

● 簡単なことで,質問でございます。

  第58と第59の併合,分割ですが,だれがこれをするかという点についての質問です。

どちらも第57を準用しているので,先ほど議論があったところですが,原案のままですと,原則は三者の合意,そして,第57の2も当てはまるので,それぞれに当たると3人いなくてもいいということで,併合と分割はできると,こういうふうに理解しましたが,それでよろしゅうございますでしょうか。

● はい。

● あと,もう一つです。

  併合には債権者保護手続が入っておりますが,この債権者保護手続の対象債権者には受益者は含まれないということですか。

● 受益者は含まれないと考えております。自ら変更に同意しておりますし,かつ受益権取得請求権もありますので,入らないということで考えております。

● 分かりました。ありがとうございます。

● 第60のいわゆる証券化の58条リスクについて敷えんして述べようかと思ったのですけれども,今お話が出ましたので,一言だけ申し上げます。

証券化という,全体からすると非常に一部の部分かもしれませんが,その観点からすると,やはり同じ文脈において裁判所の介入リスクというのはできるだけ減らした方がいいと思います。

その観点からすると,このアステリスク2の中での検討ということで裁判所の関与の可能性を拡大しているということについては,やはり消極的に解すべきではないのかというふうに思っております。

現に,今お話にありましたように,そんなにニーズもないようでございますし,証券化の観点から,ちょっとどうなのかなというふうに思っております。

● この第57から第59までの,信託行為の変更,併合及び分割,この三つの規律の関係について,質問,あるいは意見を述べさせていただきたいと思います。

  基本的に,まず第57の1で,委託者,受益者,受託者の合意によると。恐らくこれは現行の信託法でも,解釈論においてはこのような考え方が通説であろうかと思います。

したがって,2以下で三者の合意がなくてもいい場合等があるのは,むしろ規制緩和になるというふうに理解しておりまして,先ほどの○○委員の,このルールが入るとむしろ規制が強化されるというのはどういう御趣旨なのか,つまり,今までの分割とか併合というのはどうやってやってきているのかというのをまず教えていただきたいというのが,第1点の質問でございます。

  それから,それとの関係で,信託の分割と併合につきましては,信託行為の変更についてのルールがそのまま適用されておりまして,いわばそれに上乗せする形で債権者保護手続がついていると。

これは,この債権者保護手続についてどう考えるかという点なのですけれども,確かに,会社法との対比で申しますと,定款変更については債権者保護手続はないのですが,合併,分割等については基本的には債権者保護手続があると。

  ところが,この信託行為の変更も,考えようによっては債権者を非常に害する信託行為の変更というのが十分に考えられるわけでございますし,特に資本制度による流出の抑制がありませんので,場合によっては,信託行為を変更して,受益者に全財産を一挙に分配してしまうことにするということすらできる可能性がある。

しかも,それを信託行為の変更という形でやられてしまうと,受託者は信託行為に従ったとおりにやっているだけだということにもなりかねないので,特に受託者の責任が有限となった場合には,債権者保護手続というのはむしろ信託行為の変更についても考え得るのではないかと。

そして,信託行為の変更について,もし仮に債権者保護手続が入れられるとすると,アメリカの統一信託法典等は,信託の併合と分割については一般的な信託行為の変更よりもむしろ緩やかにそれを認めてあげましょうと。

実務上のニーズも非常に多いということは,これはアメリカでもそうでありますので,むしろ信託行為の変更よりもやや受託者の権限を広げる形で,いわば更に規制を緩和するというのがアメリカ法の状況ではないかと理解しております。

それがちょうど第57から第59までの提案は逆になっておりますので,その点についてやや違和感があると申しますか,どのように考えたらいいのでしょうかというのが,質問ないしコメントでございます。

● 先ほど○○幹事の方から御質問がありましたので,お答えしたいと思います。少々言葉足らずのことがあるかもしれませんが,その点については釈明したいと思いますけれども。

  私の申し上げたのは,まず第1点に,御案内のとおり,信託の特徴というのは,信託の柔軟化ということを非常に重視すべきではないかということで,デフォルト・ローということをその点で追求すべきではないのかという話でございます。

  確かに,おっしゃられたとおり,現行法と比べますと,現行法ではかかる変更等の規律に関して規定がないという点で,今回,それをある程度,利害調整のバランスを考えつつ,可能とするという枠組みを立てたという点では非常に評価できることだと思います。

  ただ,この点は,実は次の第60,受益者取得請求権でコメントを差し上げようと思ったのですが,第58,第59の話で先ほど,○○幹事の方から御回答がありまして,必ずしも強行法規ではないというふうな御回答でしたので,よろしいのですけれども,例えば信託の分割ないしは併合において,私も現状というのをすべてを知っているわけではないのですけれども,基本的には,契約当事者の間で合意をしてかかる変更手続等を行うという話でございます。

そのときに,仮にこの第59の提案の中の手続として,2の(1)のように,「次に掲げる事項を明らかにしなければならない」というようなことを立てた場合には,その点においては,少なくとも現状と比べては規制強化--というと言葉がちょっと悪いかもしれませんけれども--になるのではないかと。

  ゆえに,もし緩和するということであれば,できるだけ,不要な,ないしは信託の内容に応じて必ずしも必要ないというものであれば,それは基本的にはデフォルト・ローというふうにして,もし内容によって規制が必要であれば,それは業法等で規制しておくべきではないのかという趣旨で申し上げたわけでございます。

● ○○幹事が最初,信託行為の変更においても債権者保護手続が必要な場合があるのではないかということを言われて,私も,責任限定特約なんかがついている場合にはそういうことが大いにあり得ると思います。

 ただ,仮におよそ一般的に信託行為の変更のときに債権者保護手続を設けるとしても,どういう場合に要求するかというのはなかなか難しくて,ちょっと今記憶がはっきりしておりませんけれども,これは責任限定特約のところに何か入れましたっけ。

● いえ,入れていません。

● あるいは,そこでそういうのが必要かどうかというのを検討するということはあり得るのではないでしょうか。

● 変更の場合にはやはり債権者保護手続が必要ではないかというのは,○○幹事のお書きになったもののみならず,いろいろなところで指摘がされているところでございますので,その点についての事務局のとりあえずの現時点の考え方をお示ししたいと思います。

もちろん,御指摘を踏まえて,なお再検討はしたいと思っております。

  ただいま○○委員もおっしゃいましたとおり,変更の場合というのは,変更によって重大な影響を受ける者もいれば,そうでもない者もいるのではないか。

例えば,物権的な引渡請求権を有する者であれば,変更されても特に影響を受けませんし,無限責任債権者であれば,受託者の固有財産も引当てになっておりますので,それが充実してさえいれば特段の影響はないであろう。

これに対しまして,今御指摘がありましたように,有限責任の債権者であれば,信託財産の状況次第によっては重大な影響を受けることがあるのではないかというふうに考えられます。

このように,利害関係人が影響を受ける場合というのが多様でありまして,その利益状況を完全に仕切るということがなかなか難しいということですとか,あるいは,この三者の合意で変更できるというルールを設ければ,利害関係人も契約で特に手当てをしない限り,自らの関与なく変更されるということが予測できるわけですので,そうであれば,必要であれば自ら個別の契約で,変更には自分の同意が要るとか,そのような手当てをすることもできるのではないかということも考えまして,デフォルト・ルールとしては,三者の合意のみでできるとしたということでございます。

  なお,株式会社との比較でございますけれども,これも,合併,分割,資本減少などの場合には債権者保護手続がございますけれども,変更と類似の定款変更の場合にはそういう手続がないということにも考慮しているところでございます。

  では,なぜ合併,分割の場合に保護があるのだということ,米国統一信託法典と比べて平仄が合わないではないかということで,そこも検討はしたいと思っているのですが,とりあえず,その理由といたしましては,ただいま申しましたように,信託行為の変更につきましては関係者に与える利害に多種多様なものがあって仕切り難いということに比べますと,併合,分割の場合というのは,我々の意識としては,相対的に利害関係人に与える影響が大きいのではないかというふうに考えられることですとか,それから,商法では,合併ではそういう債権者保護手続が必要とされていることなどとの平仄などにもかんがみまして,規律が逆転しているといいますか,提案のようになっているということでございます。

● この点,○○委員がおられると,一般の変更と合併等の場合とのバランスということでよくおっしゃっておりましたので,また御意見を伺えると思いますので,またいつか別な機会にでも御意見を伺うことにいたしましょう。

  それでは,次の問題にも関連いたしますので,少し先にいかせていただければと思いますが,よろしいですか。

  では,次の第60に。

● それでは,続きまして,第60の反対受益者の受益権取得請求権について説明させていただきます。

  まず,1の(1)でございますが,受益者の多数決をもって信託行為の変更に関する承認決議をした場合における,受益権取得請求権の成立要件等について検討したものでございます。

  今回の信託法の改正におきましては,信託行為に定めを置くことにより,受益者が多数決によって意思決定をすることを認めてはどうかとの提案をしたところでございます。

  このように,多数決をもって信託行為の変更を承認することができるとした場合には,自己の意思に反して変更された信託行為の内容に拘束される受益者が生ずることになりますが,信託行為の変更の中には受益者の利害に重大な影響を及ぼすものがありますので,そのような場合につきましては,変更に反対の受益者に対して受益権取得請求を認め,合理的な対価を得て当該信託から離脱する機会を与えることが,受益者保護の観点から相当であると考えられます。

  このような観点から,1の(1)のアにおきましては①から⑦まで挙げた,ここでは「特別決定事項」ととりあえず命名しておりますが,これにつきまして受益者の承認決議がされた場合には,決議に賛成した受益者以外の受益者,換言しますと決議に賛成の意思を表示しなかった受益者には,受託者に対して自己の有する受益権を公正な価格で取得することを請求できることとしております。

 ここでは,このように,主体を,決議に反対する旨の意思を表明した受益者ではなくて,「決議に賛成した受益者以外の受益者」といたしておりますのは,信託におきましては信託行為の定めにより多種多様な多数決の方法を採用できますので,信託行為で採用された多数決の方法によっては,受益者が変更に反対する旨を決議に先立って表明することが事実上困難な場合が想定できますが,このような場合にも反対の意思を表明しなければ取得請求できないとすることは,受益者保護の観点から相当ではないと考えたからでございます。詳細は,16ページのアステリスク4でも書いているところでございます。

 なお,受益権取得請求の規律は,その性質上,受益者に不利な形での別段の定めを置くことが許されないという意味での強行規定と考えておりますので,一体いかなる場合に受益権取得請求が認められるかを明らかにする必要があると考えております。

 この問題につきましては,とりあえず①から⑦の事項を挙げた上で,軽微な変更の場合にまで受益権取得請求権を付与する必要はないという考えのもとに,ただし書をもって,受益者を害するおそれのないことが明らかである場合を除外することを提案しておりますが,資料15ページの最後のアステリスク1に記載しましたとおり,いかなる事項について承認決議がされた場合に,受益者に対して取得請求を認めることとするか,例えば,受託者の忠実義務を解除するようなものについては,信託の本質に反するからそもそもできないと考えられますが,忠実義務を緩和するようなものについてはこの①から⑦には当てはまらないと思われますので,このようなものも取得請求権が発生すると考えるべきかなど,是非とも御議論をいただければと思っております。

  また,受益者による取得請求は,信託財産の規模の縮小をもたらすほか,受託者の信託事務処理の円滑を損なうおそれもございますので,その期間は合理的な期間に限定することが相当であると考えられます。

  このような観点から,(1)のイでは,反対株主の買取請求権の規律を参考といたしまして,受託者は,決議賛成者以外の受益者に対して,特別決定事項に関する信託行為の変更の効力が生ずる日の例えば20日前までに決議内容を通知しなければならないといたしまして,これを受けて,(1)のウでは,通知を受けた受益者は,効力発生日の20日前から効力発生日の前日までに取得請求をしなければならないとしております。

次に,1の(2)でございますが,これは「特別決定事項の変更権限を有する者」,多数決ではなくて,変更権限を有する者によって変更の決定がされた場合における取得請求権の成立要件を検討したものでございます。

  先ほど説明しましたように,信託行為に定めを置くことによりまして,特定の者に信託行為の変更権限を付与することができると事務局は現時点では考えておりますが,仮に先ほど信託行為の変更のところで申しました,変更権限に制限がないという甲案を採用しますと,特別決定事項につきましても変更権を付与できるということになります。

ちなみに乙案ですと,そもそも変更権限がないので,こういう問題は生じてこないということになります。

甲案をとった場合につきましては,承認決議がされた場合と同様に,自己の意思に基づかずに変更後の信託行為の内容に拘束される受益者が生じ得ますので,そのような変更に反対する受益者に対して受益権取得請求の機会を認めて,合理的な対価を得て信託から離脱する機会を与えることが,受益者保護の観点から相当であると考えられるところです。

  このような観点から,決定権者が特別決定事項について,受益者に不利益となる方向で変更する旨の決定をした場合につきましては,各受益者は受託者に対して受益権取得請求をすることができるとして,受益者の保護を図ることとしております。

取得請求期間に関するイ及びウにつきましては,先ほど説明した場合と同様の規律を設けることとしております。

なお,若干付言いたしますと,決定権者が変更決定をした場合には,受託者に対して変更内容及び効力発生日を通知することになりまして,通知を受けた受託者は更に,今度は各受益者及び,場合によっては委託者に対して,変更内容等を通知することになります。

  そこで,イでは,「受託者は,各受益者に対し,効力発生日の【20日前】までに,その決定の内容を通知しなければならない」としておりますので,決定権者が受託者に対して決定内容を通知する場合には,受託者が各受益者に対して当該期限までに通知することができるように効力発生日を定めなければならなくなると考えているところでございます。

  次に,「2 受益権の取得価格の決定等」でございますが,まず受益権の内容のことですけれども,これは原則として信託行為で自由に定めることができますので,受益権の取得価格について,客観的な決定基準を法定することは困難であると考えられます。

そこで,反対株主の株式買取請求権に関する規律を参考といたしまして,受益権の取得価格は,請求する受益者と,請求に応じて取得する受託者との間の協議によって決定するのを第一次としております。

  さらに,協議が調ったとしても,合理的な期間内に代金の支払がされなければ意味がないと思われますので,例えば効力発生日から例えば60日以内に代金の支払いをしなければならないとしております。

ただし,信託財産に流動資産がないような場合には,60日以内に代金の支払いをすることが困難な場合も想定されますので,そのような場合には,受託者が裁判所に対して相当の期限の許与の申立てができることとしております。

  以上のとおり,受益権の取得価格につきましては協議によって決定されることになりますが,協議が調わないことも考えられますところ,このような場合におきましては,受益者保護の観点から,公平な第三者が受益権の取得価格を決定することが適当であると考えられます。

そこで,2の(2)におきましては,受益権の取得価格の決定につきまして一定期間内に協議が調わない場合には,受益者は一定期間内に裁判所に対し価格決定の申立てをすることができるとしております。

なお,受益権取得請求権が行使された場合の原資でございますけれども,これを幾らまでは信託財産からか,幾ら以上は固有財産からとするか,固有財産からとする場合には信託財産に求償することとするか否かなどにつきましては,先ほど信託行為の変更のところで,御説明しましたとおり,受託者,受益者間で合意すべき事項になるものと考えております。

  最後に,「3 受益権取得請求権の失効等」でございますけれども,前段は「1の決議又は決定に基づく行為がされなかったときは,その効力を失うものする」としているわけでございまして,例えば信託行為の変更につきまして,受益者の決議があったものの,委託者又は受託者がその変更に反対した場合には結局変更ができなくなりますので,こういう場合が含まれると考えております。

  2の(2)につきましては,先ほど説明いたしました,取得請求の手続上の期間的な限定に違反した場合には,当然ながらそのような請求権は失効するということを記したものでして,これによって法律関係の早期の明確化が図られるものと考えております。

  以上でございます。

● それでは,御意見を。

● 先ほどの話に関連することですが,デフォルト・ルール化の推進化という観点から意見を述べたいと思います。

  まず,この第60という規律は,基本的には強行法規だと理解しています。

これは,アステリスク2の反対解釈からしてもそうだと理解しているのですが,それを前提にしてお話したいのですが,よろしいでしょうか。

 それならば,やはり信託の柔軟性ということを考えるのであれば,ここは強行法規とすることは疑問でございまして,先ほどの○○幹事のお話の延長ではありますが,私の立場からすると,どうせ緩和するのであれば利益調整のことも考えるけれども,信託行為の多様性を認める必要があるわけなので,基本的には任意化ということを推進すべきではないかと思っております。

 例えば不動産信託において,取得請求権ということが認められるのであれば,仮に取得請求権が一部であってもそれが行使されたときに,当該信託財産においては金銭というのはないわけですし,換価することが非常に難しい話であるわけですから,その場合,実質的には当該少数反対者のために,例えば全体の信託にとってはよい変更をしようとしていても,それができないということもあり得るのかなと思っております。

もちろん,これが全部の信託においてもそうなのかということではないわけですけれども,信託内容によっては取得請求権を認めない,又は自由なアレンジを認めるような信託というのを認めてもいいのではないかと思っております。

  これは総論ですけれども,個別の論点で二つございまして,一つは1の(1)のアの⑤でございますけれども,「受益債権の内容を変更する場合」の中身でございます。

  仮に,1の強行法規化を仕方がないとしたとしても,⑤を除いた①から⑦というのは非常に大きな変更であるわけですから,このような事項があってもよかろうということだと思いますが,⑤というのは「受益債権」と書いてあるわけなのですが,「受益債権の内容を変更」というのがどういうところを意味しているのかというのが,まず不明確であると思います。

また,その解釈によってそれが広がるのであれば,いかなる信託行為の変更であったとしても,結果として受益債権の変更に間接ないしは実質的に影響し得るのであれば,もしこの取得請求権が発生するという解釈を許すということであれば,実務上やはり大きな影響があるのではないかと思います。

  この点,投資家保護の観点からどうなのかということで申し上げたいと思うのですが,例えばデット投資ということであれば,このような保護まで必ずしも必要ないのではないかと思っております。

例えば法制度でいえば,担保附社債信託法の制度において,担保の変更を行うということを考えていきますと,確かに特別決議というプロセスは法定化されておりますけれども,では決議がなされた場合に,基本的には全体を拘束しているという話で,そこにおいては反対決議者の買取請求権,償還請求権になるのでしょうか,というものは認めていないという話でございますので,このバランスからするとどうなのかなと思っております。

  また,契約の世界,シンジケーションの世界も,これはセキュリティー・トラストもございまして,やはり信託法に設けないといけない話だと思っておりますけれども,それを例に取り上げますと,シンジケーションにおいてもエージェント行為,エージェントにおいてある程度の権限を与えているということがございます。

エージェントは,全債権者を代理していろいろな権限を行使するという場面がございますが,そういうアレンジは,基本的には自由な契約で決めているということでございます。

ただ,実際的には,日本ローン債権市場協会,「JSLA」と言われているのでございますが,そういうところで標準契約を出しておりますが,それを見ても,別に多数決のことが書いてあったとしても,反対があったからといって当該反対者に対して買取請求権等を付与しているというわけではございません。

  このような実務感覚からすると,必ずしも取得請求権というのを認めるということがミニマムな保護なのかどうかということについて疑問でございますので,よってこの点についてはデフォルト・ルール化ということを望みたいと思います。

  次に,1の(2)の特別決定事項の話でございますけれども,ここも同様の文脈の話になるわけなのですが,例えばファミリーの信託であったとして,おじさんに権限を与えていましたといったときに,こういう使い方もされるのではないか。

すなわち,おじさんが子供のためによかれと思って変更した,子供はそれに反対した,そうすると本当はおじさんは長期的に運用したかったのに,いきなり子供がそのときに大金をつかむということも,この規律からするとそういうことにもなりそうでございますが,やはり信託の設定においてそういうようなことを使われたくないということであれば,やはりそこは設定時において,こういう取得請求権は認めないというアレンジメントは認めていいのではないかと思っておりますので,強行法規化というのはどうなのかということでございます。

  それを敷えんして,実効性という観点から申し上げますと,2でございますが,実際に取得権が請求された場合に,こう言っては恐縮なんですが,本当に裁判所が対応していただけるのかというところがございまして,例えば非常に極端な話ですが,これは60日の期限を設定しておりますけれども,例えば不動産信託で処分に非常に時間がかかる,通常不動産流動化の場合はテール・ピリオドということが言われまして,実際に売ると決めてから2年ぐらいとか,いろいろと期間がございますが,長期間を設定しているわけですけれども,そうした場合に,59日目に延期しましょうという申立てをして,翌日裁判所が許可してくれるのかどうか,もし許可がおりなくて,あと1週間かかりますと言われたときに,その間,受託者はある意味で債務不履行の状況になるわけですけれども,そういう結果を生み出すようなことをこの規律が認めようとしているのかということを考えますと,やはりそもそもそういうものは取得請求権を認めなくてもいいのではないかということにもなると思っております。

● 根本的な問題なので,ここでも十分検討していきたいと思います。

● ○○委員のところとかなりかぶっている部分もございますけれども,4点ばかり意見を申し上げます。

  まず1点目は,受益権の取得請求権のところでございますけれども,これは先ほどの特別決定事項の決定権限を有する者のところで,それは自由度を認めてほしいということで,そのかわりに取得請求権というのは強行規定やむなしと申し上げましたが,ここの部分については,信託契約であるとか信託制度そのものの柔軟性というのはやはりできるだけ確保したいというのが一つありまして,ただその弊害というのが必ず出てくるということですので,その弊害を防止するための受益者保護策というのはどうしても強行規定で必要だろうということで,そこの部分についてはやむなしというのが,全体としてはやむなしという方向があります。

  あと,個別の問題として,先ほど○○委員からもありましたが,①から⑦のところの文をずらっと見て,⑤だけやはり異質かなということで,ほかの重要度からしますと余りにも一般的な書き方がしてありますので,この前に,例えば「重大な」とか,そういうのを入れていただいて,なおかつ説明文の中に,こういうようなものは含めませんよとか,もちろんただし書で「受益者を害しないことが明らかであるとき」と書いてありますが,こういう趣旨であるとすれば条文上の形の手当てもお願いしたい,解説上の手当ても,そこら辺のところをお願いしたいというのが2点目です。

  3点目につきましては,当初の御提案では,取得請求権を取得できる者につきましては「決議に反対した受益者」というところを,今回につきましては「決議に賛成した受益者以外の受益者」,これはどういうものかというと,「反対の意思を積極的に明らかにしていない受益者」と書かれておりますが,こういう受益者の中には,変更の内容を承知しているけれども意向を表明しなかったという人も当然いると思いますので,そういう人にまで取得請求権を与えるのだろうかという疑問が少しあります。そこは,ちょっと与え過ぎかなという感じがいたします。

  4点目につきましては,これはまた第57のところと同じなのですが,イのところの通知義務ですけれども,ここら辺については通知しなければいけないというのは,ここについては多分軽微なものは余りないと思いますので,通知はしないといけないと思うのですが,20日間とかいうふうに限定されますと,緊急を要するような場合というのは対応できないということもあるかもしれないので,デフォルト・ルールにしてくださいというお話ではないですが,何らかの対応をお願いできないかなということでございます。

  それと,一番最初に,受益権の取得請求権については方向性としては賛成だと申し上げましたけれども,それはそうなのですが,実務上いろいろと考えると,例えば信用補完をするための劣後受益権とか,そういうことを考えたら,それについて取得請求を認めてしまうと信用補完はどうなるのかなということもちらっと考えたりして,これは実務上いろいろと工夫して対応していくことかもしれませんけれども,方向性としては取得請求自体は強行法規ということでいいのですけれども,いろいろと法制度上の問題としても,又は実務上の工夫としても考えていかなければいけないのかなと思っております。

● 今,多少ニュアンスが違う点がありますけれども,二つ御意見をいただきました。

 ただ,先ほどの第57のところで議論したことと非常に関連していまして,やはり入口というのでしょうか,最初のところを自由にするのか,少し狭めるのかということに関係しているわけですね。これについては,いかがでしょうか。

● 最後に○○委員がおっしゃったこととは違うのですが,第60についてよろしいでしょうか。

 ○○幹事が口頭でおっしゃってくださった中に,取得請求権を受益者が行使した場合に,その取得請求権が固有財産に属するか信託財産に属するかという問題については,ルールを定める必要はないだろうということでまとめられたのだろうと思います。

その理由は,その前提に,広い意味での併合,分割を含む信託行為の変更が必ずあるから,その中で少数の反対者からの取得請求権が行使された場合には,どちらで買い取るかということを決めなければならないし,決めることによって対応できるだろうということと理解いたしました。

  そういたしますと,強い意見ではなくて,大丈夫かなという疑問を少し申し上げたいのですが,第57の1とか2のアとか,これでいったときには,おっしゃるように必ず受益者,受託者が変更の当事者でありますので,決め忘れるということはあるかもしれませんが,合理的な当事者であれば,それもあわせて決めるということが考えられますが,第60の特別決定事項というものの分類と,信託行為の変更についての2のところの分類とがうまくかみ合っているのかどうかがよく分かりませんで,これがすべて2のアに入るならばよろしいのだろうと思いますが,もしイやウやエになってしまって,信託行為の変更が受託者,受益者のどちらかが欠けてしまう形で行われると,もう一つ別個の合意が必要になってこないかなということが気になりました。

  既にうまく解決されているのかもしれませんが,いかがでございましょうか。

● そういうことも起こりそうな感じがしますね。

● 第57の5のところで,条件を決めると,この中で一体幾らを信託財産から出すか,幾らを固有財産から出すかということを決めることができるわけでございます。

そして,5では1又は2のア,ウ,エの場合をすべてカバーしておりまして,もちろん,今,○○幹事がおっしゃったように,1とか2のアの場合は合意で決めればいいと思うのですが,ウとかエの場合などにおきましても,この場合は受益者とかが決定して,受託者は決定自体には関与してこないわけでございますが,その中で別途,やはり合意しなければいけないということになってくるのではないかと私どもとしては考えておりまして,そうであればその中で決めていけばいいのではないかと思われるところでございます。

● 分かりました。

  5は,場合によっては変更の当事者だけでなくて,受託者も加わった形でこれを決めると。

● しかし,うまくワークするかどうか。

  もし,デフォルト・ルールが必要ということであれば,これは今おっしゃったような1とか2のアの場合以外の場合は,原則として「信託財産から」というのを書いておいて,ただしこういう合意ができる場合は合意によって決める,こういうのもあるなと思ってはおります。

● その方が安全かなという感じがいたしましたので。

● 5だけでいこうと思ったのですが,ちょっと検討してみたいと思います。

● 分かりました。

● ほかに,いかがでしょうか。

● まず第60で,反対受益者に受益権取得請求権を認めることについては,信託法の一般ルールとしては,私としては,やはり強行規定として必要なのではないかと考えております。

 その理由は,まず第一に,やはり第57の1が原則的なルール,つまり委託者,受託者,全受益者の合意が必要である,これが議論の出発点であると思いますので,いわばその原則を破って多数決原理を取り入れる場合には,少数派に対する公正な配慮が必要であると。

  私益信託を今念頭に置いているわけですけれども,私益,経済的な目的のために設定された信託においては,少数派に対する公正な配慮というのはこのような受益権取得請求権という形であらわれるのが当然ではないかと思われるのが,第1点であります。

  第2点は,確かに,全体にとって利益となる基礎的変更を行おうとしているわけですけれども,このときにやっぱりある種のハードルを課しておくことが,本当にプラスになる基礎的変更を行うためのチェックポイントとなり得る。

したがって,ある程度のコストはやはり覚悟していただいて,それにもかかわらずプラスがあるんだと。

そういう意味では,一定のハードルを課すというのは,私は,合理的な制度なのではないかと思っております。

  ただ,どんな信託においても反対受益者の受益権取得請求権が必須かというと,それこそ受益者がプロのような場合には,これは別途検討する必要があると思いますけれども,冒頭に申し上げましたように,信託法の一般ルールとしてはやはり強行法規として課しておくべきで,あと業法,特別法等で外すことはあり得べしということではないかと思います。

  長くなって恐縮ですが,もう一点だけコメントさせていただきたいと思うのですが,1の(1)のアの⑤,先ほど○○委員が御指摘された点なのですが,私も,受益債権の内容を変更する場合に,一律に反対受益者の取得請求権が認められるというのは,何か非常に違和感がありまして,みんなで我慢しようというときに,それで多数決原理を入れて決めたときに,自分は嫌だ,抜けるというのは,⑤については違和感があるわけです。

  これは,前回の部会のときに申し上げさせていただきましたが,やはり受益者集会制度の中に種類受益者集会制度のようなものを設けて,クラスが分かれていて,あるクラスの受益者が害されるときに当該受益者集会で反対をした者に対しては,こういった取得請求権を与えるという制度として仕組む方が合理的であって,⑤はやや一般的過ぎるのではないかという印象を持っております。

● ⑤については,私も,一体どんなものが具体的に入ってくるのかが分かりにくかったのですが,これはどんな場合を……。

● 例えば受益債権の期限を,半年後だったところを10年後にするとか,あるいは利率を大幅に下げるとか,具体的にはそういう場合を想定しておりまして,今①から⑦の中で,⑤だけ非常に広いような印象があるというのはおっしゃるとおりかと思いますが,そこはただし書で,多くの場合は外れていくのではないかという認識のもとに⑤を入れているところではございます。

● 典型的には,受益者の利益が絶対的に減るのかどうか分からないけれども,期限が延びるとか,そういう形の不利益をこうむる場合ですね。

  若干広過ぎる感じもしますが,議論の余地があるかなと。

● 1点だけ確認したいのですが,私が前に申し上げたことですが,受益債権に対して直接変更を加える場合と理解してよろしいのですか。

つまり,直接は加えないけれども,信託行為を変更し,結果として受益債権の弁済が変わり得るといった場合は含まないと,こういう理解でよろしいのですか。

● これは,受益債権で考える……。

● 直接,受益債権を変更すると。

● 受益権の内容が変わることによって受益債権が変わる場合は当然入ってきます。

● 区別は難しいですよね。

  例えば投資の対象を変えて,長期的には値上がりするかもしれないけど,現在配当に回せる利益が少ないというものに投資したときに,受益債権が減ると

いうような例ですよね。

● おっしゃるとおりです。

  そういう場合を想定しているのか,想定していないのかという話ですが。

● そういう場合も入ってくる……。

● 入ってくると。

● と,我々としては思っておりますが。

● ちょっと広範囲なのかなというのが私の意見です。

● これは,皆さんの御意見もあるので,少し検討させていただきましょうか。

  この受益権の取得請求権自体を認めるかどうか,これをデフォルトにするかという,そこがまずは一番大きな問題点ですけれども,先ほどから両方の御意見が出ておりますが,どちらかというと,こういう限られた範囲で一応必要なのではないかという御意見が多かったような気がしますけれども,ほかに何か御意見があれば。--よろしいですか。

● 通知をここで要求しているという点では先ほどと同じなのですが,通知をしなかった場合について何か私法上のサンクション等があるかというと,それはないという前提なんでしょうか。

通知しなかった場合の効果ですね,あるいは通知に遺漏があったとかおくれたとか,そういうことです。

● 十分な検討しておりませんが,一つは受託者の責任ということがあるでしょうし,あとは通知をしなければ,結局支払請求権の期限が到来せず,失効しないで,いつまででも行使できるような事態になるのではないかという気がいたします。

● ただ,第60の1の(1)のウ,「受益権取得請求は効力発生日の【20日前】の日から効力発生日の【前日】まで」という,通知にかかわりない書き方になっていますので。

● そこは,通知を当然しなければいけないと思います。

御指摘の書き振りだと客観的に時期が決まってしまっておりますので,検討したいと思いますが,私の個人的な理解では,やはり通知で当然効力発生日も明らかにされているので,その20日間という期間が設定されると思っておりますので,何も通知がなければ,このように期間を制限して受益権取得請求権を失効させるということはできないのではないかと思われます。

● そういう意味では,さっきの第57とちょっと違った点があるわけですね。

  それでは,まだ未了の意見が残っておりますので,いずれまた,もうちょっと詰めていきたいと思います。それでは,本日はこれで終わります。どうもありがとうございました。

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2016年加工編

                        法制審議会信託法部会

                        第9回会議 議事録

第1 日 時  平成17年2月8日(火)  自 午後1時03分

                      至 午後4時56分

第2 場 所    法務省第1会議室

第3  議 題

   信託法の見直しに関する検討課題(6)(続き)について

   信託法の見直しに関する検討課題(7)について

第4 議 事   (次のとおり)

                              議    事

● それでは,定刻になりましたので,始めさせていただきます。

  実は,今回は○○部会長が御都合でお出ましになれません。そこで,部会長代理という制度がありまして,部会長代理は部会長の指名によるということに規則上なっているそうでございます。

そこで,私が○○部会長から図らずもその指名を受けまして,本日,議長の役を務めさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。

   (委員の異動紹介省略)

  それでは,○○幹事の方から,本日の資料等についての御紹介をお願いいたします。

● 本日席上に配布しております「現行信託法第11条(訴訟信託の禁止)の改正についての意見書」という資料がございます。

これは日弁連の方から参考資料として本席で配布していただきたいという資料でございますので,その趣旨につきまして,○○委員の方から簡単に御説明いただければと思います。よろしくお願いいたします。

● 法務省作成の検討課題と題する資料を,その度に日弁連の方にはこちらから渡しておりまして,その中で,特に信託法第11条の改正の関係では日弁連が密接な関係があるということで,それを受けて検討されまして,その結果が,今,席上に配布されている,信託法11条の改正についての意見書です。

これについては,次回にこれがテーマの一つに入ってくると伺っておりますので,そのときに御覧の上,議論していただければと思います。今日は簡単に項目だけ御紹介させていただきます。

  まず,結論としては,信託法11条の関係で「正当理由ある訴訟信託」という例外を設けること,これについて反対をするという結論でございます。

  第2では,まず1で法務省作成の「検討課題(1)」と題する資料中の「説明」において示された見解の要約が書かれていまして,2がこの見解に対する日弁連の意見ということです。

 この日弁連の意見は全部で7項目ありまして,(1)から(7)までですが,(1)は,信託法第11条の立法趣旨の理解について,この資料中の見解に書かれている立法趣旨とは違うところがあるのではないかという指摘でございます。

  (2)は,このような正当な理由がある場合というのを訴訟信託の例外として設ける立法事実がそもそも存在しないのではないかということが書かれています。

  (3)では,この資料中の見解の方は,任意的訴訟担当が許容される場合があることを,正当な理由のある場合という例外を設ける理由にしているところ,その任意的訴訟担当が許容されることが,この正当な理由がある場合という例外を設ける理由にはならないのではないかということが書かれています。

そもそも次元が違うとか,あるいは,訴訟法上,任意的訴訟担当自体が未解決の困難な問題をたくさん抱えているので,それが許容されるからといって,そちらの方向からこの訴訟信託の許容される範囲を考えるというのは,アプローチの方法としては妥当ではないのではないかということ。

  (4)は,手続上の問題として,ちょっと複雑な事態になる場合というのを幾つか想定して書かれています。

  (5)は,信託法10条と信託法11条の関係について,資料中の見解の方では,信託法10条を総則的な規定,信託法11条を具体的事例に関する規定として位置づけているけれども,両者は並列的なものなのではないかと。

それで,信託法10条の方に例外的に認められる場合があるとしながらそういう例外規定を設けずに,11条の方にだけ例外規定を入れるというのはバランスを失するということが書かれています。

 (6)は,正当理由による例外を許容することの合理性がないのではないかと。

正当理由という例外を法律で書くという場合には,例えば判例の蓄積があるとか,あるいはそれなりの類型化が具体的になされているということが必要ですが,信託法11条の場合は,そういう具体的な類型化等まだ何もなされていないということ,それから,正当性ということが入ることによって概念の誤解あるいは拡張が見られて,実際上問題が起きるのではないかという,そういう懸念です。

  (7)が,信託法11条にこういうただし書をつけなくとも特に困らないということが書かれています。

  大体内容は以上のとおりです。

● ありがとうございました。

  では,このテーマにつきましては次回の会議で扱いたいと思っておりますので,よろしくお願いいたします。

● それでは,今日もまたいつものように幾つかに区切って進行したいと思います。

  それでは,進行も含めて,お願いいたします。

● それでは,本日の進行でございますが,前回積み残しました信託の終了原因と信託の清算の問題,それから,今回の資料に書いていございます,信託財産に係る倒産手続,裁判所の監督,営業信託の商行為性,合同運用,遺言代用信託の問題を順次やっていきたいと思います。

信託の終了原因と清算をまずまとめまして,その後は各項目について一つずつ順番にやっていくということとさせていただきたいと思いますので,どうぞよろしくお願いいたします。

● そういうことですので,最初は二つということになりましょうか,お願いします。

● それでは,第61と第62の問題につきまして,順次,資料の内容を御説明いたしたいと思います。

  まず,第61の信託の終了に関する提案でございますが,現行法にも定めのある信託の終了原因につきまして改めて整理を試みた上,一括して列挙するとともに,信託の終了に伴う信託の清算以外の効果について規律したものでございます。

提案内容は第2回の部会で提示した内容とほぼ同じでございますので,詳細な説明は割愛させていただきまして,第2回部会にて提示した内容から変更した点についてのみ説明をいたします。

  まず,1点目は,1の(1)の④というところでございまして,裁判所の命令による信託の終了というところでございますが,前回の提案におきましては,「信託行為の当時予見することのできない特別の事情により信託を継続することが受益者の利益に適合しないこととなった場合において」としておりました。

これを,「信託行為の当時予見することのできない特別の事情により信託を継続することが信託の目的に適合しないこととなった場合において」と変更しております。

  このように変更した理由でございますが,これは,26ページの末尾の(注)にも書いてありますとおり,例えば,ファイナンス目的の信託におきまして,この規定による中途での信託終了が認められる可能性をできる限り排除するためのものでございます。

  この規定は,現行法の58条に対応しまして,裁判所に対する信託終了の申立権を認めた規定で,当事者の合意等によって信託を終了させることができない場合におきまして,裁判所の判断で信託行為を終了させた方がよい場合があるという判断に基づきまして,現行法から申立要件,申立権者を変更して,信託法制研究会報告書に記載したとおり提案していたものでございますが,第2回会議における御意見を踏まえまして,申立要件を今回更に変更して提案したものでございます。

  報告書の記載におきましては,裁判所に対して信託の変更を求める申立要件と同じような要件として,「信託行為の当時予見することのできない特別の事情により信託を継続することが受益者の利益に適合しないこととなった場合」には裁判所が信託を終了し得るとして,受益者の利益に重点を置いた要件としておりました。

この要件におきましても,現行法に比べまして信託の終了が認められる可能性はかなり減じられていると考えられますが,更に裁判所の判断による信託終了のリスクを回避するには,信託行為にて想定し得る状況についての定めを設けて予見不能との要件を排除することが必要でありました。

しかし,今回の提案のように改めることによりまして,継続することが信託の目的にかなう場合,裏返しますと中途で信託を終了することが信託の目的に適合しないファイナンス目的の信託,あるいは資産流動化のための信託というようなものにつきましては,裁判所による信託の終了の要件を満たさないことになるのではないかと考えているものでございます。

  このように要件を変更することにつきまして,御意見をいただければと考えております。

  もう一つ,第2回会議で提案した内容からの修正点は,1の(2)と(3)の規定を追加した点でございます。

この規定は,1の(1)の⑥の信託行為の定めによりまして受託者あるいは受託者以外の者に信託の終了権限を付与する場合に,この終了権限の行使は相手方のある意思表示によることを定めるものでございます。

このように新たな提案をする理由は,信託の終了権限の行使による効力発生時期が明確になる規律とする必要があると考えたからでございます。

なお,規定として提案してはおりませんが,資料の25ページで⑥に関しまして問題提起をいたしましたとおり,信託の終了権限を信託行為の定めにより受託者又は受託者以外の特定の者に付与する場合に,これらの者に対して信託の終了権限を無制限に付与することは可能か否か,前回,信託の変更について無限定の権限を付与していいかどうかという問題を議論させていただきましたが,それと同様な問題が信託の終了の局面でもあるということを指摘したものでございます。

  この問題につきましては,一つの考え方は,信託行為において何ら制約のない終了権限を付与された者が存する限り,信託は終了権限を有する者の判断により終了する可能性があることは明らかであって,受益者の享受し得る利益はその限度で制限されるということは受益者に予見可能であるということ,しかも,信託の変更の場合には,いかなる変更がなされるか正に多様で,予見不能であるのに対しまして,信託の終了の場合には,信託はいつかは終了するものでございまして,その効果も一義的で明確であると考えられること,更には,信託の終了は,信託の変更の場合と異なりまして,受益者に対して新たな内容の信託に関与せざるを得ないという負担を負わせるものではないことなどを理由として,特段の制限を設ける必要はない,すなわち,信託の終了については制限不要という考え方があると思います。

もう一方,受益者保護の観点から,一定の場合には受託者又は受託者以外の者の終了権限について制限がかかるという規定を設ける必要があるという考え方もあるかと思います。

この点につきましても御意見をいただければというのが,ここの25ページに書いた趣旨でございます。

  続きまして,第62の信託の清算の説明に移らせていただきます。

  信託の終了事由が生じた後におきまして,その当時に存した信託財産に属する債務の弁済を済ませた上で残余財産が生じた場合には,これを受益者等に移転する必要がございます。

ここでは,このような信託のいわば清算手続につきまして,受託者,受益者その他信託財産に関して利害関係を有する者の権利義務の内容をより明確化・合理化する観点から,提案を行うものでございます。

  なお,信託終了の効果としまして,信託終了事由が生じた場合において受益者又は帰属権利者へ信託財産がいつ移転するかという問題があることは承知しておりますが,この提案におきましては,信託財産の移転時期を明確にする規定を設けることは困難であると考え,特段の規定を設けることとはしておりません。

したがいまして,所有権移転時期につきましては,現行法と同様に,解釈に委ねることになるものでございます。

  まず,提案の1でございますが,これは,信託の終了事由が生じた後も清算目的の範囲内において信託が存続することを規定するものでございます。

  現行法の解釈といたしまして,信託の終了事由が生じた場合において,信託終了事由が生ずる前の信託,すなわちいわゆる原信託が存続するという見解と,新たにいわば復帰信託が生ずるという見解とに分かれておりますが,ここでは原信託の延長と位置づけることとしております。

信託の終了事由が生ずることによりまして,信託目的遂行のための管理処分を中止し,信託財産を受益者又は帰属権利者に早期に引き渡す義務が生ずるという点におきまして受託者の職務内容に変化は生じますが,しかし,受託者又は受益者の権利義務等に関する信託行為の定めは従前と同様に効力を有することとするのが適当であると考えられたため,このように原信託の延長と位置づけたものでございます。

  なお,現行法では,信託の存続する期限につきまして,63条におきまして,「信託財産カ其ノ帰属権利者ニ移転スル迄」としておりますが,信託財産に属する債務を弁済し,残余財産の引渡しを行って,最終計算の報告を行うまで,受託者としての義務を負うべきものと考えられますので,信託財産の移転時期と信託存続の期限は切り離しまして,清算事務の結了,すなわち,残余財産の引渡しを行って,最終計算の報告を行うまで,信託が存続するものと考えているものでございます。

 次に,2でございますが,これは,信託の終了事由が生じた以後の受託者,この提案ではこれを「清算受託者」と命名しておりますが,この清算受託者の職務及びその権限に関する規定を提案したものでございます。

  まず,(1)は①から④までございますが,これは清算受託者の職務内容でございまして,法人の清算人の職務とほぼ同様のものとしております。

 次に,(2)でございますが,これは,清算受託者は,信託行為で排除されていない限り,清算目的に必要な権限を有することを確認的に定めるものでございます。

例えば,財産の管理のみを目的とする管理信託におきましても,清算手続における債務の弁済のために信託財産の処分が必要となる場合には,当然に清算受託者は信託財産を処分する権限を有することになるものと考えております。

  次に,3は,信託財産に属する債務の弁済に関するものでございます。

  清算受託者は,職務遂行のために債務の弁済等を速やかに進めなければならない場合があると考えられますが,清算受託者が弁済すべきこれらの債務の中には条件付債務も含まれると考えられます。

しかしながら,条件付債務につきましては,条件が成就するまでは当該債務を消滅させるのに妥当な金額が明らかではない場合があると考えられますので,商法125条4項などを参考にいたしまして,清算受託者が条件付債務等を弁済する場合におきましては,裁判所が選任した鑑定人の評価に従って弁済しなければならないとしたものでございます。

  なお,弁済期が未到来の債務につきましても,清算受託者は速やかに弁済しなければならない場合があると考えられますが,債権者との関係におきましては,期限の利益に関する民法第136条の規律によるべきものと考えまして,ここでは特段の規律を置くことはしておりません。

  次に,4でございますが,これは,受託者は信託財産に属する債務及び確定した未履行受益債務を弁済しなければ,残余財産の給付を内容とする受益債権を有する受益者又は帰属権利者に対して信託財産を引き渡すことができないとするものでございます。

信託財産に属する債務及び未履行受益債務を弁済しなければ,残余財産の給付を内容とする受益債権を有する受益者等の権利の内容が確定しないと考えられるからでございます。

  もっとも,これは信託債権者等の利益保護のための制限でございますので,弁済に必要な財産を留保した場合ですとか,あるいは,ここには明示的に記載していませんが,信託債権者の同意がある場合には,信託財産に属する債務の弁済前でも受益者に対する弁済等をすることができるものと考えております。

  次に,5でございますが,これは信託財産の帰属に関する提案でございまして,残余財産は,信託行為によって指定された残余財産の分配を受ける受益者又は指定帰属権利者に帰属するものと考えております。

ただし,これらの者の指定がない場合には,残余財産は,現行法と同様に,委託者に帰属することとしております。

  さらに,例えば,帰属権利者が有する残余財産引渡請求権が時効消滅するなどして帰属権利者が存しないこととなった場合には,残余財産は受託者の固有財産に属するものとしております。

現行法のもとでは,受託者の固有財産に帰属し受託者は完全権者になるという見解と,受託者が完全権者となるわけではなく無主物になるという見解がございますが,受益債権の消滅時効に関するところでも御説明いたしましたとおり,現行法は,信託財産は受託者の所有に属することを建前としておりまして,固有財産と信託財産の区分は,このような建前を前提としつつ,信託財産に関する対内的・対外的法律関係を律するために存するにすぎないものであるというふうに考えられますことからすれば,帰属権利者の不存在によって当然に残余財産が無主物になるとすることは困難と考えられますので,受託者が完全権者となると考えております。

  次に,6でございますが,これは帰属権利者の権利に関する提案でございます。

  (1)では,帰属権利者は,信託の終了事由が発生する前は受益者としての権利義務を有さず,信託の終了事由発生後に受益者としての権利義務を有するものとしております。

現行法のもとでは,帰属権利者は信託の終了事由発生前においても受益者としての権利の行使が認められるとする解釈もございますが,帰属権利者は,本来的に信託から利益を享受するものとされた受益者への給付が終了した後に残存する財産が帰属する者にすぎませんので,信託の終了後においてのみ,受益者としての権利及び義務を認めることとしたものでございます。

  (2)でございますが,これは,帰属権利者の利益の享受及び権利の放棄につきましては,受益者の利益の享受及び権利の放棄に関するのと同様の規律とするものでございます。

  なお,委託者が帰属権利者となる場合には委託者が受益者となる場合の規律,委託者以外の者が帰属権利者となる場合には委託者以外の者が受益者となる場合の規律それぞれに整合する内容となると考えております。

  ただし,放棄に関しましては,(3)のとおり,委託者が受益者である場合には,信託行為で別段の定めがある場合には受益権を放棄することはできるとしておりましたが,委託者が帰属権利者である場合におきましては,帰属権利者としての権利義務の放棄は認めないとしております。

これは,委託者は,法定帰属権利者として補償債務を負わないことを信託行為で定めることができますし,また,委託者自らについて残余財産の帰属先とすることを望まない場合には,信託行為で第三者を帰属権利者と指定することができるわけでございます。

そうだといたしますと,自らを帰属権利者として指定した場合,あるいは帰属権利者を指定しなかった場合には,帰属権利者としての権利義務の放棄までこの時点で認める必要はないと考えるものでございます。

  次に,7は,清算受託者の信託財産から補償を受ける権利に関するものでございます。

  信託終了後に受益者又は帰属権利者に対して受託者が交付した信託財産,ここで言う「信託財産」には受益者に交付する財産と帰属権利者に交付する残余財産を双方含むものと考えておりますが,この信託財産につきまして,受託者は補償請求権等を満足するために強制執行等ができるとするものでございまして,現行法第54条を準用する現行法第64条の規律を維持するものでございます。

先ほど申しました2と4の規律から明らかなとおり,受託者は補償請求権を有している場合には信託財産を留保することができるわけですが,例えば留保する財産の価値に比して補償請求権の額が極めてわずかであるというような場合には,受益者等に財産を移転することが合理的だという場合があり得ると考えております。

このような場合には,信託財産としての特定性が維持されている限り,補償請求権に基づく強制執行等を引き渡してもできるとするものでございます。

  なお,現行法第64条は,現行法第53条も準用しておりますが,これは,資料の33ページの(注5)に記載いたしましたとおり,この第53条を準用する規定,これは強制執行を開始していれば信託財産を引き渡しても続行できるという規定だと承知しておりますが,この規定はもう不要ではないかと考えております。

  それから,8でございますが,これは,最終計算の承認及びその効果に関する規定でございます。

  まず,(1)は,現行法第65条前段と同趣旨でございますが,現行法では,最終計算をして「受益者ノ承認ヲ得ルコトヲ要ス」とされておりますが,これでは,受託者として果たすべき注意義務を尽くして承認を求めているにもかかわらず受益者が承認しないという場合にも,なお承認を求め続ける必要があるというように考えられかねないという指摘がございます。

そこで,信託の終了事由が生じたときの受益者及び帰属権利者の承認を求めなければならないと,逆に言えば,承認を得ることまでは要しないとするものでございます。

  (2)は,最終計算承認の効果を定めるものでございまして,これは,現行法第65条後段において準用しております第55条2項と同趣旨でございます。

もっとも,受益者等が積極的に承認を行うことは期待し難い面もございますので,受託者が承認を求め,1か月を経過するまでに異議がなかった場合には,計算が承認されたものとみなすこととしております。

1か月という期間につきましては,商法第133条ですとか,破産法第89条第2項などを参考にしたものでございます。

  最後に,9の清算受託者の信託財産の競売権に関する提案でございます。

信託の清算におきましては,残存する信託財産を受益者等に引き渡すことになるわけですが,受益者の所在が不明である等の理由により引渡しを行うことができない場合もございます。

そこで,商事売買の売主あるいは倉庫営業者に認められておりますように,このような場合には,信託財産を競売して金銭化し,これを保管することを清算受託者に認めることによりまして,管理にかかる負担を軽減することを可能とするものでございます。

このような,清算目的の観点からではなく,管理義務軽減の観点から受託者に換価権限を認めることにつきましては,先ほどの2の(2)というところ,受託者は清算のために必要な一切の行為をする権限を有するという清算目的の規定で読み込むことは困難と思われますので,別途に明確に管理義務軽減のための処分権限の規定を設けたものでございます。

  なお,信託終了時には信託財産を金銭で返還することとされております金銭信託のような場合,あるいは,原信託において受託者に信託財産の換価権限があり,したがって原信託の延長である信託終了事由発生後の清算受託者にもこの換価権限が引き継がれるような場合におきましては,清算受託者はその権限に基づきまして信託財産を売却等することができると考えられますので,あえてこのような規定に依拠する必要はないということを念のため付言申し上げます。

● それでは,二つの項目がありますので,順に進めたいと思います。

  まず,信託の終了原因について,前の第2回に比べて幾つかの変更点があったということも含めまして,どうぞ御自由に御議論をお願いいたします。

● 第61の1の(1)の④のところなのですけれども,これは,私,以前も申し上げたことがあるかもしれませんが,こちらの説明資料の26ページの(注)のところに書いていただいたように,現状,現行法の58条があるがために信託の終了のリスクがある,裁判所が信託の終了を命ずる可能性があるということで,現状の58条は「受益者カ信託利益ノ全部ヲ享受スル場合ニ於テ」という条件がついておりますので,言いかえれば受益者が一人の場合においてということになっております。

したがって,証券化・流動化取引で信託が用いられる場合で,信託が終了しては困るような場合,例えば資産流動化法における特定持分信託であるとか,あるいは受託者が信託財産を引当てに借入れを行うアセット・バックド・ローンと呼ばれるような取引においては,形の上で二人以上の受益者を置くことによって58条の解除命令のリスクを排除しているというのが現状でございます。

したがいまして,こちらに書いておりますような方向で変更される,すなわち,要件のうち受益者が一人である部分がなくなるということは,かなり関係者の抵抗というものが予想されるのですが,一方,終了が認められる要件がかなり厳格化されている,すなわち,「信託を継続することが信託の目的に適合しないこととなった場合」というような要件を御提案されているということと,申立てを行える者を限定しているという,この2点から,この方向で改正されたとしても,それを前提に流動化・証券化取引を組成していくべきではないかなというふうに整理しております。

● この58条リスクというのは前から御意見をいただいていたところですけれども,ほかにございますでしょうか。

● まず,第61の全体観でございますけれども,おおむね御提案の方向で賛成ということでございます。

  特に2点ありまして,1点目は,先ほど○○委員の方からお話のあった,58条リスクというのが,前回御提案の「受益者の利益に適合しないこととなった場合」とかという,まあ,この場合でもかなりの部分排除できるのかなというふうに考えていたわけですが,今回の御提案で更に,「信託の目的に適合しないこととなった場合」というような記載になっておりますので,これについては歓迎すべきものではないか,若干①との関係が分かりにくいなというような感じはあるのですけれども,58条リスクという観点からいたしますと,歓迎できるものではないかというふうに考えております。

もう1点は,1の(1)の⑥のところでございますが,これは,先ほど○○幹事の方からも御説明がありましたけれども,25ページ上段のなお書のところに書いてありますように,「「信託行為に定める終了事由」には,信託の終了権限を信託行為の定めにより受託者又は受託者以外の特定の者に付与する場合を含む」ということでございまして,この権限を行使する場合においては受益者保護ということを考えないといけないのだろうと思いますが,これについては,先ほど御説明がありましたが,信託行為の変更と同様に,信託行為にもともと書いてある以上,当然終了する,ある権限を持った人がそういう意思を表示すれば終了させると,そういうことを予見できますので,その点については何らかの保護が図られるのではないかということと,あとは,変更と違って,これも先ほどお話がありましたけれども,新たな負担を強いられるというようなことがありませんので,これについては特段の制限を設けるべきではないというふうに考えております。

● 今の○○委員の御意見の中で,一つ御質問といいますか,第61の1の(1)の①と④の関係が少し分かりにくいという点がありましたけれども,その点,御説明いただけますでしょうか。

● おっしゃる趣旨は,恐らく,信託の目的に適合しなくなった場合というのと,信託の目的が達成不能の場合の食い違いというか,そこが微妙ではないかという御趣旨かと思います。

  二つほど例が考えられるかと思うのですが,確かに微妙ではございますが,例えば,会社の業績に貢献があった者に対して報奨金を付与するという信託があって,信託元本が1,000万円で,1回あたり褒美で50万円を与えますというようなことを決めていたとします。

ところが,非常にひどいインフレが起こりまして貨幣価値が100分の1になったと。そうすると,結局5,000円しかもらえないわけでして,5,000円でももらえれば有り難いということで,目的達成不能とまでは言えないと思うのですが,それを与えてより士気を高めるという目的に適合するかというと極めて疑問であるという意味で,目的達成不能とは言えないけれども,目的に適合しないとは言えるのではないかと,一つ極端な例ですが,考えられます。

  また,例えば,子供が大学に進学したときに学費に充当するために信託を設定していたとしたところ,子どもは大学に行かないで就職してしまったという場合があるかと思います。

こういう場合でも,子供は学校をやめてまた就職するかもしれないと,そういう可能性がある限りにおいて目的達成不能とは言えないのですが,信託設定の意図が,大学進学を望んで,その結果,卒業して職を得るということを考えていたのであれば,就職してしまったというのは,目的には適合しないということで言えるのではないかと。

  そういう意味で,目的達成不能と,目的の適合・不適合というのが若干の食い違いがあるのではないかと,二つほど,こんな例を考えているところでございます。

● ○○委員,よろしいでしょうか。

● はい。

● それでは,ほかに。

● いわゆる58条問題というかリスクについて,第2回の審議において発言したのでございますけれども,その発言の方向性の御検討をいただきまして,ありがとうございました。

  ただ,方向性については非常に御配慮も見られておるわけですが,かつ,また,私,そのときには,国家の介入を外すようなデフォルト化ということも考えられないかという趣旨のことを申し上げたのですが,考えてみますに,完全に国家の介入を回避するということは法技術的に難しいかなという気もいたしますので,このように制限していくということは一つの方向としてはあるのかなと思いました。

ただ,○○委員も議論されたわけなのですけれども,実際に証券化・流動化においてこの問題が本当に解決できるのかということで,○○委員はそれでよろしいのではないかという御発言と私は認識しているのですが,ただ,なお,やはり証券の流動化においてはプレーヤーがいろいろございますものですから,その実務のインパクトにかんがみて,格付機関等の意見を徴した上で,最終的に私としての考え方を整理したいかなというふうには思っております。

ちょっとこの段階では,これについて賛成かどうかということについて,発言は留保させていただきます。

  そこで,2点ほど御質問があるのですけれども。

  一つは,第2回においても発言したわけですが,やはりできるだけ申立ての事由を減らすという観点で,申立権者,これも現行法と比べて大分制限的になっているということはございますけれども,この御提案では,委託者,受益者,受託者が申立人と,三者が掲げられているわけです。

私は第2回のときに,委託者ということは不要ではないのかというようなことを発言した記憶がございます。

これは,今回の信託法の全体の流れの中で委託者の地位又は権限というのが全体的に低くなっているということでございまして,そういうことを考えますと,これはデフォルト化でも結構なのですけれども,物によっては委託者の申立権というのが不要又は不適当の場合があるのではないかということでございます。

よって,ちょっと御質問なのですが,委託者ということを外すということが検討の余地があるのかということが1点でございます。

  2点目は,これは非常に細かい話でございますが,○○幹事からの御説明にもありましたように,今回の修正として,「信託の目的」ということに変えましたという話なのですが,他方,ここの文章の書きぶりとしては,第57,この資料の2ページでございますが,現行法でもございますが,信託の管理方法についての変更の規範というのがございまして,ここでは,「受益者の利益」と書いてあります。

ここと第61との違いというのはこの整理でよろしいのかどうかということです。

逆に第57で議論すべきだったのかもしれませんが,第57の6のところも「信託の目的」に変える必要はないのかどうかということをいま一度確認したいということでございます。

● 前者の,委託者は不要ではないかとおっしゃる点は,前,たしか,委託者の権限をどこまでにするかと,ゼロから出発してはどうかというようなお話もあったかと思いますが,事務局といたしましては,原則として,このような裁判所に対する申立権のようなのは,デフォルトルールではありますが,まず委託者にありとした上で,しかし信託行為において委託者の権利を外すことはできるということで,ゼロからは出発しなくて,原則与えますが,委託者が自分で信託行為で終了の申立権はないというふうに定めることはできると考えておりますので,そういう位置づけにとどまるといいますか,そこまではいけるということでございます。

  それから,第57と第61の関係というのは,第61の方で58条リスクの問題を可及的に回避する観点からどうしたらいいかということに知恵を絞った関係で,ちょっと平仄というようなところまでは思い至らなかったのですが,御指摘を踏まえて再検討いたします。

直感的には,続けていくものと終わるものとで要件が多少違うということはあってもいいのかなという気がいたしますが。

● まず,先ほど出ております58条リスクについて,私自身は流動化についてはかかわっておらないのですが,流動化にかかわっている弁護士の方から意見を聞いてきておりますので,お伝えしたいと思います。

  御提案の中で,提案内容で出されておりますけれども,(注)の中で一番最後のところに,「裁判所による信託終了の申立てが認容されることはないものとも考えられるが,どうか」と問われておりまして,ないというところまでは言えないけれども,裁判所により信託が終了される可能性というのは,御提案内容によれば,相当程度低まるのではないか,あるいはかなり低まるのではないかというのが,流動化実務をやっている弁護士の意見です。

そういった観点から,万全とは言えないけれども,提案の趣旨によれば,格付機関にもかなり好感されるのではないかというような意見が寄せられております。

  それから,1の(1)の⑥,終了権限の問題について,若干意見を述べたいと思うのですが。

  この御提案の文章の中で,受託者等へ終了権限を無制限に付与できるかということが提起されておるのですが,こういった規定がもし信託行為の中に盛られた場合に,仮にその信託行為あるいは信託法に制限規定がない場合であっても,果たして無制限な終了権限が認められることになるのだろうかということについては,若干疑問があります。

継続的な契約関係の中では,解除権留保がされている場合にも,やむを得ない事由を必要とするであるとか,あるいは信義則違反や権利濫用の法理によって一定程度限定解釈がされているというのが一つの解釈の行き方なのではないかと考えられます。

そうしますと,仮に制限規定がない場合でも,額面どおり無制限な終了権限が認められるということにはならないのではないかと思われます。

  それから,二つ述べられております,特段の制限を設ける必要があるかどうかという点についてですけれども,特段の制限を設ける必要がないという考え方の根拠として,受益者の予見可能性ということが述べられておりますけれども,受益者の予見という観点からしますと,一番重要なのは,信託に具体的にどのような事態が生じたときに終了ということになり,どのような事態が生じない限り契約関係が存続されるのかという点であろうかと思います。

権限者の権限行使にゆだねられると,いつそれが権限行使されるのか分からないということでは,やはり受益者の予見可能性という観点からは問題があるのではないかと思われます。

こういったことを考えますと,受益者の予見を何らかの形で確保できるような規律というのがやはり必要ではないかと考えられます。

  具体的にどういった規律が考えられるのかということは,ちょっと検討しなければいけないとは思うのですけれども,例えば終了事由について信託行為で定め得るとすることについては,これはいいと思うのですけれども,その定め方について,例えば,具体的な内容を定めるべきであるというようなことを要求するとかそういうことを盛り込めば,あるいは予見可能性を確保できるのではないかと考えております。そういった観点からの検討をお願いできればと思います。

  それから,前回出ておりました信託行為の変更のところでも,信託の柔軟性,デフォルト化ということが議論されておりましたけれども,このことについて一言申し上げておきたいと思います。

  信託の柔軟性という観点からすると,それを図ることは非常に重要な要請だというふうには理解しておりますけれども,信託を作る段階と,いったんできた信託の維持といいますか継続性の観点という段階と,おのずと柔軟性のレベルというのが違ってくるのではないかという気がしております。

つまり,信託の組成の段階で柔軟性は広く認められるべきであるけれども,いったんできた信託については,信託の安定性の確保といいますか契約の拘束力の確保という観点から,ある程度それを維持するという観点が必要になるのではないか,こういった観点からの配慮というのも必要になるのではないかと考えております。

個人的には,信託への信頼を高めるという観点からは,信託の安定性,契約の拘束性に配慮した制度設計が行われるべきではないかと考えておりますけれども,こういった観点からも御検討いただければと思います。

● 最後の点は,より大きな問題を御意見いただいたと思いますが,ほかにございますでしょうか。

  第61の1の(1)の④で,「受益者の利益」というのを「信託の目的」に変えることについては大体賛成意見が出ているようですけれども,あるいは,この第61に関しまして,ほかの点でも。

● 先ほどの○○幹事のお話とも共通した話なのですけれども,信託行為の変更と信託の終了のところで第三者に権限を委ねるというところのお話なのですが,ちょっとよく分からないところがありまして……。

  そのゆだねられた者は,だれのために,どういう観点から動くのかというのは,多分それは受益者のためだろうなというふうには思っているのですけれども,それが例えば受託者にゆだねられた場合については,受託者としての義務というのが課せられていますので,その受託者の義務の範囲内といいますか,義務を果たしてそれを履行していくということなのか。

それと,それが第三者の場合についてはその制限がないわけですから,そうすると,いわばだれから委託……。

委託というのもちょっと変な話だと思うのですけれども,そういった関係がちょっとよく分からないものですから,その辺のところをお教えいただければと思いますが。

● おっしゃるとおり,どちらの場合も,恐らく第一義的には受益者の利益をおもんぱかるということになるかと思います。

  ただ,「信託の目的に適合」というと,受益者だけではなくて,委託者の意思というのも考える必要が出てくるのかなというのが,まず一つ,ちょっと違うかなという気がいたします。

 それから,受託者が指定権者であれば,当然,忠実義務とかがかかってきますので,信託法上の義務を履行するという観点から,変更するについても相当程度の実質的な制限がかかり得るという気がしますけれども,第三者の場合には,委託した人との委任関係に基づいて,受益者の利益を図りつつ,委任の趣旨に反しないように変更するのかなと,抽象的にはそういう感じで考えております。

● そうしますと,信託行為にだれそれというふうに書かれた場合については,その信託行為から授権されているということですので,それは,その信託行為から来る信託目的的なことに拘束を受けてやるということなのでしょうか。

● 信託目的に従ってやるというのが委任の趣旨ということになるので,その信託目的も考慮してやるということになるのではないかと思いますけれども。

● 二つございまして,一つは,もう既に今のやりとりで大分分かってきたのですけれども,簡単な方から一つ確認させていただきたいことがございます。

  この終了原因についてということで,「信託行為に定める終了事由が発生したとき」の中には,第三者等に終了権限を付与したときが含まれるということなのですが,これは,委託者自身が撤回権を留保するという場合もこれで規律を対応するという趣旨でよいか。これは確認させていただきたいということです。

● そういう趣旨でございます。

● もう一つは,今ちょうどお話しになっております,第三者,だれかに終了権限を付与した場合にそれがどういう意味を持つのかということなのですけれども,記述自身は25ページに説明のあるところですが,私自身は,今のやりとりで既に明らかになったのかとは思うのですけれども,終了権限は信託行為によって付与されておりますので,権限としてどこまで与えられているかというのは,やはり信託行為の解釈によるのだろうと思われます。

どういう趣旨でこの人に権限が与えられているのかということになると思いますので,そうしますと,全く何も特に書かれていない場合に当然に,信託の目的に反しても終了させていいということを与える趣旨かというと,それはむしろそこまでは普通は与えないということになって,内在的制約というものが当然かかるのではないかというふうに思っております。

ですから,逆に,それを与える場合には,明示に,そういう場合でも終了させる権限を与えるというような記述があって初めてそれが可能で,それで,更にそういうものを認めてよいかという問題はあるのだと思いますけれども,これは実際にどういう場合に権限が与えられるのかというのは正直分からないのですが,例えば,信頼できる第三者に信託についてチェックをしてほしいと。

それで,具体的に何かを書きますと,例えば,信託目的に適合するかどうかというようなことをめぐって争いがあるようなときにこの人の判断でやってほしいというようなことはあり得るのかと思われまして,そうすると,かなり一般的な記述で終了権限を与えるような信託行為の定めも認めていいのではないかというふうに思っております。

その点,変更と終了はやはり違うという面はあるかと思いますので,それは25ページに関して意見ですけれども,申し上げます。

● そうすると,25ページのところでは一般的な書き方でよかろうということですね。

● はい。ただ,それが25ページに書かれているような完全無制限説と解釈されるかというのは,それはまた別の話で,もう一つハードルがあるだろうということです。

● ほかに,第61について,よろしいでしょうか。

● 御意見を伺って,2点ほど補足いたします。

  一つは,○○幹事がおっしゃった,変更といっても公序良俗とか限界はあるだろうということで,恐らく,終了であれ変更であれ,そういう一般条項的な制限というのはかかってくるだろうという気がしております。

  その上で,ここでは,信託の変更について,例えば,反対受益者に受益権取得請求権が生じるような場合については制限を課すという考え方もあり得ることを指摘しましたが,このような明示的な制限を果たして終了の場合にまで課すべきかどうかというところを問題提起しているというところでございますので,また御意見をいただければと思っております。

 それから,これは一般的な実務に疑問を呈するわけではないのですが,受益者を二人にして58条リスクを回避するという御発言がありまして,ただ,受益者というのは別に一人ではなくても,二人でも,その二人が全部の利益を合わせて享受していればいいというような解説をしているものもございまして,果たして受益者を二人にすることによって58条リスクを全面的に回避できるのかというところにつきましては,どうもよく分からないところでございます。

もしもこの疑問が必ずしもおかしくないといたしますと,現在の提案というのは,なるべくリスクを排除するという観点から,より実務には芳しい提案になっているのではないかという気がしておりますので,念のため,一言申し上げさせていただきました。

● それでは,第62に進みます。後でまた戻っていただいても結構ですが,第62の信託の清算について御意見をいただけますでしょうか。

● そんなに強い意見というわけではないのですけれども,まず,当然のことだと思うのですけれども,この「第62 信託の清算について」というのは基本的には強行規定ということだと思うのですけれども,これの3の「債務の弁済」のところで,常に裁判所の選任した鑑定人の評価に従わなければいけないというふうに書いてあるのですけれども,信託の場合についてはいろいろなものがありますし,かなり軽微なものもあるのではないかなという感じがしまして,そういう観点からいくと,ちょっと窮屈かなというような感想といいますか,そういった感じを持っています。

  あと,ちょっとお聞きしたいのは,こういうような規定があったとしても,要するに関係者全員が合意していれば,別にその合意した金額で清算してもいいということでよろしいんですよね。

● ほかの利害関係人というか,ほかの債権者の関係がありますので。関係者全員というと,委託者,受託者,受益者,当該債権者と……。全部ですか。

● イメージとしては非常に少人数のものをイメージしていますので,そういう場合については……。

● 全員が合意すればいいのではないかという気がいたしておりますが。

● それは,債権者全員が把握できているという前提ですね。

● はい。

● 関連してでございますけれども,1点だけ確認させていただきたいのが,ここの「条件付債権」や「存続期間が不確定である債権等」というのには,受益者が有する権利,受益者が例えば受益権の内容として数年後に幾らもらえるとか,そういった金銭的権利もすべてこの条件付債権等に含まれるという前提でこれを考えておられるのか,そういうものではなくて,ただ受益者は信託財産を信託行為等の定めによって返してもらうだけであると,そういう理解で書かれているのかというのを1点確認させていただきたいと思います。

  それから,○○委員がおっしゃったことは,裁判所としても,というか個人的には同感なところがあるのですが,多分,世の中,清算会社はいっぱいあるのでしょうけれども,鑑定人を選任した事件というのははるかに少ないというのが現実としてはあるのだろうなと。

裁判所がそういうことを言うのはちょっとよくないのですけれども,そういったこともあり得ようかなと。

ただ,信託の場合で説明がつくのであれば,任意的な規定とするということも一応考えられるのではないのかなという気はしたというところでございます。

● 第2点は御意見ということで,第1点について,いかがでしょうか。

● 期限が未到来の場合には,やはり条件付債権として,評価という方向に行くのではないかなという気がいたしますけれどね。

● ただ,受益者は,言ってみれば本来の債務が弁済された後の持分を最後に返還してもらうというような,株主的な立場にもあると。

● そういう人もいますね。

④に当たる人もいますし,③に当たる人もいますしということですよね。

残余財産の分配を受ける受益者と,そうではなくて普通に定期的に配当を受ける受益者と,両方のたぐいがいて。

残余財産の分配を受ける受益者というのは,残った部分を受けるだけですからよいとしても,前者もいる場合には,やはり評価ということになってくるんじゃないかなという気がいたしますが。

● 受益者に,帰属権利者的な受益者と,その前の受益者というのがあって,今の○○幹事の御質問は,従来の受益者ということですか。既に発生している受益債権。

● 受益債権の中で既に確定しているものがいわば信託債務として取り扱われるということは多分間違いないのだろうと思うのですけれども,それ以降将来にわたって例えば配当を受ける権利というのは,例えば株主であればそういう配当を受ける権利はあるわけですけれども,会社が清算されたときには,そういったものを債権として評価してもらって弁済されるというだけではなくて,残余財産から分配を受けるというのが株主であろうと。

そうであれば,受益者の取扱いというのはこの清算の中ではどうなるのかなというのがちょっと疑問に思ったというだけのことでございます。

● 今,○○幹事がお話しになっていることというのは,恐らく何回か前に,受益権の譲渡のところで少し事務局の方でペーパーにしたためたところと若干関係するのかなという気もしておりますが,恐らく,今までの実務上の考え方で一番強い考え方というのは,受益権と受益債権の関係というのは株式と非常に似ているというふうに理解するという考え方があったかと思います。

その考え方に沿って信託の受益権というのを作るのであれば,恐らく今言われたような,つまり株式と全く同じような結論になるということになるのかなという気が,事務局の方ではしております。

  ただ,必ず株式と同じように受益権あるいは受益債権の関係を把握するかというと,そうではなくて,信託も契約の一種ですので,いろいろな受益債権のつくり方というのはあるということではないのだろうかという気がしております。

つまり,信託契約の時点から給付の内容が確定した受益債権というのを作ることができる,その意味でちょっと株式と違うようなタイプのものもできるということではないかという気がいたします。

● 3点あるのですけれども。

  一つは,条件付債権とかいう,今話題になっているものなのですけれども,これは,当該債権が信託財産のみを引当てにするものに限られているのでしょうか,それとも,より一般的になるのでしょうか。

より一般的だと,私はおかしいと思うのですね。

受託者が個人で無限責任を負っているというものが,信託が清算されるというときに勝手に8割になったり9割になったりするというのは妙ではないかという気がいたします。

  2番目は,先ほど出ております受益債権の話なのですけれども,私は,3のところには当然に入らないのだろうと考えていたのですが。それは○○関係官のおっしゃったことと必ずしも矛盾するとは限らなくて,結局,当該受益権の内容が信託の趣旨に従ってどう決められているかという問題に尽きると思うのですが。

10年間給付を受けるというふうな受益権の内容であるというときに,そもそも7年でやめられるのかという問題があって,ところがもはや信託の目的を達成することはできないという話になって,7年で終わると。

それは致し方がないというふうな話でありますと,それは受益権は7年で終わってしまうだけなのではないかという気もいたしまして,10年もらえるはずだったのだから鑑定評価をしてというのがどういう場合に起こるのかというのは私にはよく分からなくて,これは一般の債権者の話ではないかというふうに思うというのが2点目です。

  3点目なのですが,これは今までとちょっと毛色が変わる問題でありまして,残余財産の帰属のメカニズムというものについてお考えがあれば,お聞かせ願いたいということでございます。

4のところを読みますと,そこには,「残余財産の給付を内容とする受益債権」という書き方がしてありまして,残余財産がそういう受益者ないしは帰属権利者に行くというメカニズムというのを,給付を目的とする債権だといえば,それはもちろんそうなのですけれども,何か給付行為というものがあって初めて行くという感じがするのに対して,5の(1)を見ますと,「残余財産は……帰属するものとする」と書いてありますね。

例えば,特定物が1個残っていて,かつ,帰属権利者が一人だけであるというときに,それは,信託の終了というものが起こって,清算,まあ債権者が先ですから弁済が済んでからということになるかもしれませんが,それで自動的にその帰属権利者に所有権なら所有権というものが帰属するというのか,それとも,そこで清算人ないしは受託者から帰属権利者に対する給付みたいなものがあって初めて帰属するのか。

もし仮に後者であるとしたときには,それは,日本民法が物権行為としての引渡しというのを観念していないということと整合的なのかという話について,もしお考えがあれば,お聞かせいただきたいということでございます。

● 第1の点につきましては,たしかに,信託の清算において8割になることによって受託者個人に対しても8割になるというのはおかしいというのは,おっしゃるとおりかと思いますが,反面,評価の対象はあくまで信託にかかってくる部分だけだというような分け方ができるのかどうかというのは一つ気になっているところでございます。御指摘を踏まえて検討したいと思います。

  それから,3点目の所有権移転時期の問題でございますが,これは,御意見が分かれているところでして,物権行為独自論に近いような,引渡しによって初めて移転するという考えもあれば,終了によって意思主義のもとで当然移転しているはずだという考えもあるところと承知しております。

  事務局といたしましては,給付行為ないし引渡行為という行為が必要であるということは前提としておりますが,それが所有権移転に連動しているかどうかという点につきましては沈黙しているわけでございまして,いつ移転するかという点につきましては,あえて規定を設けず,解釈にゆだねたいというところでございます。

● 今の整理というか確認なのですけれども,既発生の受益債権というのと,それから,33ページの下から5行目ぐらいに,「残余財産の給付を内容とする受益債権を有する受益者」というのと,それから,それと別に,受益者が帰属権利者と指定された場合というのとありそうな感じがするのですが,それぞれ違ってくるのでしょうか。

あるいは,今後もし整理していただくとすると,そういった点も整理すると議論が分かりやすくなるかなというふうな……。まあ,これは印象ですが。

 それから,所有権移転時期については解釈に委ねるということでよろしいでしょうか。

  ほかに。

● 1点質問させていただきたいと思います。今の点とも若干かかわるのですが。実質にかかわる問題というよりは,言葉だけかもしれないのですが。

  信託の存続と言われることの意味なのですが,現行法で言いますと63条が正にその規定でして,資料で言いますと29ページの真ん中あたりですけれども,「信託財産カ其ノ帰属権利者ニ移転スル迄ハ仍信託ハ存続スルモノト看做ス」という規定が置かれていると。

それが,この29ページの真ん中を見ますと,そうではなくて,信託の終了事由が生じた後でも存続し,結了までは存続するというふうに扱うと。

これは,現行法ですと,あくまでも財産の所有権なら所有権の移転,財産の所在に合わせて信託の存続というものを語ると。

そういう意味では,信託の中心的な効果といいますか側面を財産の帰属に見た上で信託の存続というのを語っているかなと。

その意味では,賛成するかどうかは別として,分かりやすいのですが,今回の御提案ですと,財産の所有権の所在とは別に信託が存続するというような形になっているのかなと思うのですね。

そうすると,存続するということの意味というのをどういう意味でとっておられるのだろうなというのがちょっとよく分からなかったもので,御説明をいただければということです。

 ちょっとぼやっとした質問で申し訳ないのですが,存続を語ることにどういう意味があるのかと。

● 確かに,信託というのは財産が中心だという意味で考えますと,財産がなくなったのに信託が残るというのはどういうことかという問題意識は当然おありかと思いますが,ここで事務局が考えておりましたのは,なお受託者として忠実義務,善管注意義務に従って,引き渡した後も,最終計算をして報告をするというところまでの受託者の義務が存続するだろうと。

信託が終了してしまうと,受託者の義務ということも観念しにくくなりますので,受託者をしてなお忠実義務,善管注意義務等に従った事務処理を最後までさせたいということもありまして,清算事務の結了まで信託の存続を認めているということでございます。

 私,現行法に疎いのですが,現行法ではどう解釈されているという前提なのでしょうか,その点は。

● 現行法は63条でございますが,条文そのままですと,移転したところで,あと何か残っていても信託自体は終了していると読まざるを得ないように,規定としては見えますので。

解釈としては,もちろん,我々と同じような,信託財産を引き渡した後もちゃんと受託者としての義務をもって報告まですべきだということになるのかもしれませんが,我々の提案では,それをより明確にするべく1の規定を持ってきたということもございます。

● 現行法の63条については解釈が分かれているということは共通の前提として,その上で新たに明確化したというのが事務局の御提案だと思います。

  もし,更に何か,○○幹事の方で,こうしたらどうかというふうな御意見がございましたら。

● 論理的には信託自身は終了するけれども,なお残る清算のための義務というのは存続するのだという説明はもちろん可能だろうとは思いますし,そうではなくて,「存続」という言葉を非常に広げて,財産自体はなくなっているけれども,その財産の取扱いを除く,財産の帰属を除く部分については効果はなお存続するということを含めて「信託の存続」と語っているのだと,そういう意味では,信託によってどういう効果が出てくるかということの理解をやや広げておられるのかなという気がしたというので,ちょっと質問させていただいたということです。

● 今の点でも,あるいはほかの点でも。

● ほかの点でございまして,非常に細かい点で恐縮でございますけれども,9の「競売の権利」というところでございまして,清算受託者は,受益者等が信託財産の受領を拒んだ場合には信託財産を競売することができると。

これは商法にある規定でございまして,その趣旨はよく分かるのですが,ただ,ここは清算というコンテクストであるということを考えると,保管し続けるか競売かという二者択一ではなくて,このような場合には清算受託者が信託財産を換価することができるという権限を与えてもよろしいのではないかなと思った次第でございます。

● 今の点に賛成ということで発言しようと思っていたのですけれども,やはり信託の柔軟性ということを考えますと,また実際の競売という手続の重さ,ないしはその競売の手続が本当に妥当かどうかということを考えると,清算受託者の適正な処分によって換価するということもできるのではないかと思います。

1点,そういう意味で確認なのですが,9のタイトル自体は「競売の権利」ということになっておりますけれども,9の(2)になりますと,「競売をすることを要するとともに」と書いてございますので,これはもう義務ということですよね。

そうであれば,やはりそういう処分をするということ自体の選択肢をふやしてほしいということです。

● 事務局といたしましては,競売手続は最近割と迅速・簡便になっていると思うのですけれども,それはともかくといたしまして,競売という手続でやることが一番公正な価格により処分できると考えまして,ここでは,ほかの規定の例にも倣って,「競売」という文言を書いているところでございます。

  ただ,御指摘を敷えんすれば,競売費用に満たないような価値のない財産とかいうものもあるかと思いますので,その点につきましては,商法の所在不明株主の株式の処分のように,原則競売,例外として,市場価格があるものは市場価格で,あるいは市場価格がないものについては裁判所の許可をもって競売以外の方法によって売却するというような方法というのもあり得るかとは思いますが,受託者限りで処分して果たして公正な処分ができるのかというあたりが……。

確かに忠実義務がかかっていますので,それに従ってやれば問題ないという考え方もあるでしょうが,果たして本当に競売じゃなくしてしまっていいのかというあたり,なお考えさせていただければと思います。

いや,絶対競売なんかよりも受託者に任せれば安心だというような御意見があれば,是非また御指摘いただければ有り難いと思いますが。

● 受託者に任せれば安心だというふうに私は思っていないのですが,ただ,9の競売の権利というのが働く場面というのが極めて狭いということは,もうちょっと解説中で書く方向の方がいいんじゃないかと思うのですね。

つまり,例えば,(3)に,「腐敗その他損傷しやすい物」というのがございますけれども,これは,仮に表面上は信託終了時には現物をもって交付するというふうに書いてあったとしましても,腐敗しやすいものを現物をもって交付するという義務が課されているというふうには普通は考えられなくて,これは,すぐに渡せないときには処分して金銭で渡すということは当然にその信託の終了時に予定されたことであって,できるのだという話になると思いますし,ほかのところでも,信託行為の解釈によって,現物ではなく,処分をして金銭で渡すことも可であるということは十分にあり得ると思うのですね。

それがどうしてもなくて,どうしても現物で渡すというふうにしか信託行為が解釈できない,しかし現物の保管にはなかなか費用がかかって耐えられないというときに処分をするということなのですが,ここの処分だって,非常に冷たく考えますと,例えば不動産が手元にあると,その不動産を引き渡そうと思うのだけれども相手が受領しないと-動産の方がいいですね-これは保管費用を取れるわけですから。

かつ,保管費用はその信託財産から取るしかないと仮定しますと,これは報酬を取得する度に売却だってできるんじゃないかと思うのですね。ほかの条文によって。

ですから,本当にこういう自助売却的なものが必要になる場面というのは狭くて,普通の場合には受託者が自らの裁量で売却して金銭で交付すれば足りるのだということは明らかにした方がいいのではないかと。

  はっきり申し上げますと,今までの御心配は誠にごもっともなんだけれども,その御心配が起こるような場面は,まあ本当はないんじゃないかなという気がするということでございます。

● ちょっと○○委員に教えていただきたいのですが,自分で処分するという場合,かえって不安ということはないですか。

どこかにオーソライズしてもらっていた方が安心だということにはならないですか。

● もちろん双方あると思いますけれども,受益者のためということを考えれば,競売という手続を待たずに処分した方がよいのではないかということだと思います。

もちろん,その一つの方法として,処分の方法をあらかじめ信託行為の中に定めておくと。

もって,それを続けていけば,もちろん別途の善管注意・忠実義務が出てきますけれども,原則としては,それに従えば受託者としては特段の責任を負わないというやり方もあるのではないかと。

もちろん,これは物の中身いかんによって,腐りやすいもの,腐りにくいもの,処分性のあるもの,いろいろあると思いますから,それはその当該信託の中で個々に決めていけばいいのではないかと。

  私の発言の趣旨というのは,ここの9に書かれているように,一元的に受託者の義務として定めてあって-もちろん①の場合においてはということですけれども-かつ,その方法が競売と。

実際にはその競売のやり方というのは実務においてはいろいろ簡易的なことが行われるということは私も認識していますけれども,それのほかにもいろいろなやり方を認めてはどうかという,そういう趣旨でございます。

● 信託行為の中に書いてある,あるいは解釈で相当程度賄えるのではないかという御発言もあったわけですけれども,この点については。

● もう1点だけ。

  義務というふうに書いてあるとおっしゃる点ですが,(2)で「要する」と書いてあるのは,これは競売をするには催告をすることを要するという趣旨でございまして,競売するかどうかは自由ということでございますので,決して競売を義務化しているわけではありませんので,そこは念のため付言させていただきます。

● ほかに,第62について。

● 先ほど議論になりました,28ページの9,「競売の権利」のいわば自助売却権ですが,細かい話なのですけれども,この競売のための手続費用の負担というのはどうなるのでしょうか。

● 手続費用は信託財産から取るということになると思います。

● 状況が違うのかもしれませんが,自助売却という点で言うと,民法の497条でしょうか,競売代金の供託という項目があって,このもろもろの費用については,非訟事件手続法の83条から81条に飛んで,81条の3項ですか,債権者負担だと書いてあるのですが,これとは違うという仕切りですか。

● やはり信託事務処理に必要な費用というふうに考えますので,費用の補償として信託財産から行くということになるかと考えております。

● 28ページの9の(1)の②の方は,まあそういうことかなと思うのですけれども,①でも同じですか。

つまり,特定の人間がわざわざ受け取らないというときに,全体に負担を課していいのかというのが疑問の実質なのですけれども。

 ②はしようがないですね。これはみんなで負担するしかないと思うのですが。

● 事務局としては,先ほど言いましたように費用の補償ということで考えておりましたが,受益者が複数いるときに一人の受益者のこういうことで全体の負担がおかしいと言われると,確かにそうですが……。

そうしますと,例えば特約で受益者に行けるとか,そういう特約次第になってしまいますね。

● 要するに,デフォルトは何だろうということですね,特約がなければ。

● 事務局としては,御質問には十分答えられないわけでございますが,デフォルトとしては信託財産というふうに考えてしまっておりました。

● こちらでも引き続き考えさせていただきます。

● これは,民法497条と,それから,さっき御紹介のあった商法524条と,少しずつ規律の仕方も違っておりますので,またそういう点も踏まえて御検討いただければと思います。

  ほかに,第62について,いかがでしょうか。

  それでは,第61,第62,特にございませんようでしたら,次に進みたいと思います。

● では,続きまして,第63の信託財産に係る倒産手続の問題につきましての御説明に移らせていただきます。

  現行法では,信託財産をめぐり倒産状態が生じた場合に備えた制度というのは設けられていないわけでございます。

しかし,第2回会議でも申し上げましたとおり,信託財産に責任が限定された有限責任信託債権を制度上も認めることとする場合には,信託債権者間の公平な弁済を確保するために,信託財産の倒産処理手続を整備する必要性は高まると言えます。

さらに,事業活動形態での信託の利用をより円滑に進める観点からも,信託財産に係る倒産処理手続を整備することが望ましいという指摘もございます。

これらを踏まえますと,信託財産に係る倒産処理手続を設けることが望ましいとも考えられるところでございます。

信託法制研究会の報告書では,以上のような諸点にかんがみまして,信託財産に係る倒産処理手続の整備を検討するものとしておりましたが,第2回会議におきましては,結論として,このような手続を設けることについては賛成する御意見が多かったと認識しております。

  もっとも,信託財産の破産手続を新たに創設するか否かを決定するに際しまして最も重要な要素は,言うまでもなく有限責任信託債権の導入にありますところ,御承知のとおり,有限責任信託債権の導入につきましては,事務局案として,一般信託と,有限責任を原則とする特殊な信託に分けることなどを提案しておりますが,現状ではまだ大方の一致を見るには至っておりません。

そのため,信託財産に係る破産手続を整備するといいましても,そもそもそれは有限責任を原則とする特殊な信託に限られるのか,それとも一般信託にも導入するのか,あるいは破産原因をどのように考えるかなどの,制度の正に入口論については議論を行いにくい状況にあると考えております。

  しかしながら,部会における議論を拝見しておりますと,現状では,何らかの形で有限責任信託債権の導入を行う方向での御意見が強いようにも思われたことから,信託財産に係る破産手続を整備することを提案しまして,また,入口論を一定程度棚上げにせざるを得ないものの,ある程度議論を進めていただく必要があると思われることから,資料の2ページ以降に記載しましたとおり,幾つかの論点につきまして一応の検討を試みたところでございます。

  まず,2でございますけれども,信託財産に係る破産手続を整備することを前提としまして,各論的な事項として問題となると思われる事項につきまして,順次検討を試みていったものでございます。

  まず,(1)の「破産手続の対象となる信託の範囲の限定の要否」についてでございますが,これは報告書や第2回会議におきましても,破産手続の対象を信託一般とはせずに,例えば事業目的とする信託に限定すべきか否かについて問題指摘していたところでございます。

この点につきましては,資料の3ページ上段に記載いたしました理由から,破産手続の対象となる信託の範囲を限定する必要はないという考え方を提案するものでございます。

  次に,(2)の「破産手続開始の原因」でございますが,これは,破産法15条,16条におきまして,いわゆる人的会社を含む一般的な破産手続の開始原因としては債務者の支払不能が得られ,ただし,いわゆる物的会社につきましては,債務者の支払不能のほかに債務者の債務超過をも破産手続開始の原因に加えられておりまして,それに対して,他方,破産法223条によりますと,相続財産については債務超過のみが破産手続開始の原因になっているというようなことの対比から,信託財産について破産手続の開始の原因をいかなるものとすべきかという問題を提起したものでございます。

  この点につきましては,資料の3ページから5ページに書いてありますアというところ,それから(注4)というところに関連してまいりますが,受託者の無限責任を原則としながらも,一定の事項を明示した場合には信託財産のみが責任財産となるとの規律を仮に設けることとした場合には,信託財産のみの債務超過をもって破産手続開始の原因になるとする見解と,信託財産の債務超過をもって破産手続開始の原因とならないとする見解との両様があり得ると考えられます。

これに対しまして,受託者の有限責任を原則とする新たな信託類型,言ってみれば「リミテッド・ライアビリティー・トラスト」というようなものを創設した場合におきましては,信託財産の債務超過をもって破産手続の開始の原因となることというのを書いてございます。

  それからもう一つ,4ページのイの「支払不能について」というところに書いてございますが,上のいずれの場合におきましても,相続財産と異なり,信託財産につきましては,財産以外の要素を考慮してその弁済能力をはかること,すなわち支払不能を観念することができ,少なくとも支払不能については破産手続開始の原因となると考えられるのではないかと整理しているところでございます。

  次に,(3)の「申立権者」というところですが,これは,信託財産を引当てとする債権者のほか,信託財産の管理処分を行う者として,受託者又は信託財産管理人等に破産手続開始の申立権を与えることとしてはどうかという考え方を提案するものでございます。

  次に,(4)の「申立期間」でございますが,これは,法人破産の申立期間に関する破産法19条の規定に準じまして,信託の終了後であっても,残余財産の引渡し又は分配が終了するまでの間は申立てができるとする考え方を提案するものでございます。

  次に,(5)の「破産財団の範囲」でございますが,これは,相続財産の破産に関し,破産財団の範囲を規定した破産法229条の規定に準じまして,信託財産に属する一切の財産をもって破産財団にするとの考え方を提案するものでございます。

  次に,(6)の「破産債権の範囲」というところでございますが,これは,破産法2条5項,すなわち,破産者に対し破産手続開始前の原因に基づいて生じた財産上の請求権であって財団債権に該当しないものとする規定に準じまして,信託債権であって財団債権に該当しないものを破産債権とすること,それから受益債権もこの定義に当たりますので破産債権に含まれること,これに対しまして,6ページの(注6)に記載しておりますとおり,帰属権利者又は受益者の有する残余財産分配請求権については,その性質上,仮に破産清算後に残余財産があれば,信託の清算手続において分配がなされることになること,すなわち破産手続外で分配がなされることになること,以上の考え方を提案したものでございます。

  それから,(7)の「信託債権者と受益者との間の優先順位」でございますが,これは,6ページの下段になりますが,そこに書いた理由から,信託財産の破産手続におきまして,受益債権は破産債権に含まれ,破産手続に参加できるものの,破産配当手続の中では信託債権に劣後させるべきこととなるとの考え方を提案するものでございます。

 次に,(8)の「受託者の権利」でございますが,まず,信託財産が破産したときに受託者と破産管財人との権限関係はどうなるのかという点につきまして,第2回会議でも議論が及びましたが,これは,7ページの(注7)というところに書かせていただきましたとおり,破産手続の開始によりまして,破産財団に属する信託財産の管理処分権は受託者から離れ,破産管財人に専属することになると考えられること,その上で,受託者が有していた信託財産又は受益者に対する補償ないし報酬請求権については破産管財人に移らず,受託者自身が破産財団につき破産管財人に対して請求できるということを提案しているものでございます。

  次に,(9)でございますが,受託者の債権者の地位というところでございますが,これは,全部の履行をする義務を負う者が数人ある場合等の手続参加に関する破産法104条などの規定に準じまして,信託財産に責任が限定されない信託債権者は,信託財産に係る破産手続及び受託者に係る破産手続の双方に対して,その有する債権の全額をもって参加することができるという考え方を提案するものでございます。

  次に,(10)でございますが,これは,破産手続におけるいわゆる否認権の行使に関しまして,信託財産の破産においては,相続財産の破産と同様に,破産者に当たる概念が存しないことから,受託者等がした行為をもって破産者がした行為とみなすとの考え方を提案するものでございます。

  最後に,(11),それから(注8),(注9)でございますけれども,これは,現行信託法27条の規定する受託者の損失てん補責任その他受益者の有する受託者に対する監督的権能につきましては,信託財産の破産手続が開始された場合には,破産管財人が専属的にこの監督的権能を行使するということになるとの考え方を示したものでございます。

  以上の諸点にわたる提案についての御意見のほか,他に検討すべき課題があれば,あわせて御指摘をいただきたいというふうに思っております。

  なお,冒頭に申し上げるべきだったかと思うのですが,委員・幹事の皆様からは,破産を簡易にした手続を設けることも検討に値するのではないかという御意見もいただいたところでございますが,ここでは,そのような御指摘は踏まえつつも,資料1Pの(注2)に記載した理由から,信託財産に関する破産手続を,法人格がないという点で共通していると見られます相続財産に関する破産手続に倣って整理することを試みたものでございます。

  最後に,3でございますが,これは,報告書や第2回会議でも言及いたしましたが,事業活動のビークルとして信託の需要が今後更に進展することも考えられますことから,信託を存続させつつ信託が営む事業活動の継続を図るべく,信託財産に係る再建型の倒産処理手続についてもこれを整備すべきかについて問題提起したものでございます。

もっとも,この点は,専ら再建型の処理手続まで整備する必要があるかというニーズの有無・程度にかかわる事柄であると考えられますものの,当該受託者のもとにおいて信託事業の再生を図ることにはこだわらず,ともかくも信託が営む事業活動自体の継続を図ることを重視するのであれば,あえて再建型の手続まで設けなくとも,信託財産に係る破産手続の中で営業の継続を図りつつ,事業の譲渡を行うことによって対処することができるのではないかと考えられるところでございまして,現状において果たしてどの程度のニーズがあるのかにつきまして,是非とも御意見をいただければというふうに思っております。

  とりあえず以上でございます。

● それでは,3時ぐらいをめどに休憩が入ると思いますので,とりあえず,まず御意見をいただきまして,休憩後にまた再開したいと思います。

  第63について,いかがでしょうか。

● まず,総論としてなのですけれども,今回の御提案のような破産の手続を導入するということについては,一足飛びに破産に至るのではなくて,例えば特別清算のようなものを入れていただけないかとか,もうちょっと軽目のものを入れてもらえないかというような意見もあったのですけれども,大勢は,やはり債権者から見た信頼性,安定性といいますか,そういう観点から,破産の手続を導入することについて賛成という方向でございます。

  あとは各論でございますが,破産手続開始の原因のアの債務超過のところなのですけれども,今回の御提案では,受益債務が債務超過の計算の際の債務に入るということですけれども,どうもここのところが若干違和感があるということでございます。

  このことに関しまして若干質問がありまして。ちょっとよく分からないので。

  簡単な例でいきますと,例えば,100万円を管理運用して毎月末に10万円ずつ10か月間給付するというような契約の信託を設定したとしますけれども,そのときに,例えば,1か月たったところで10万円の給付の時期は来ているのだけれども,まだ払っていませんというものと,その時点においてあと残っているのが,9か月間10万円ずつですから,90万円残っていますけれども,ただ,これは信託契約で約束された支払いということですけれども,この分と,あとは,全く支払いの時期とか金額とかが書いていないような,要するに利殖してくださいという形で渡されたようなもの,この三つについて,要するに債務超過の中の債務に入るのかどうかということをお聞きしたいのと,その三つが,先ほどの議論にちょっとプレイバックしてしまいますけれども,普通の信託債権に劣後するのかどうか,それをちょっとお教えいただきたいと思います。

● 先ほど言いましたように,受益債権は破産債権に入るということからいたしますと,確定未払いの10万円はもちろん入りますし,あらかじめ信託契約で発生して,ただ期限が到来していない90万円,これも入ると思います。

  最後におっしゃったのは,支払時期も金額も不明で,ただふやしてくださいというのですか,それは債権かどうかよく分からないのですが,それも残余財産分配みたいなものなんでしょうか。

これを受益債権と位置づけることができれば,評価をして,破産債権に入っていくのではないかという気がいたしますけれども。

● そこまで入るということになりますと,設定した段階でかなりの部分の債務があるという状況になってしまって,例えば,それが株式等の価格の変動を受けるようなものになっていた場合についてはすぐに債務超過になってしまうというようなおそれがありますので,ここの部分については,受益債務ということを債務超過の金額に入れるということについて御検討いただけないか。

  また,そういうことがちょっと位置づけとしてはおかしいということであれば,例えば,債務超過というもの自体が破産の原因になるということですけれども,そこら辺のところの御検討をいただけないかということでございます。

● 1点申し上げ忘れましたけれども,劣後かどうかという関係につきましては,受益債権は信託債権に劣後すると考えております。

● 完全に確定していても,支払時期が来ていてもということですか。

● 劣後すると考えています。そこは清算の局面でも同じでございますけれども,配当規制のようなものがない信託については,一般債権に比べて受益債権は劣後すると考えておりますので,その上で御指摘を踏まえて検討いたしたいと思いますが,受益債権が債務超過に当たってどのように評価されるかと。

請求額丸々考慮されれば破産に行きやすいということになりますが,その半面,破産手続によって受益債権の公平な弁済は図られる。

他方,信託の延命といいますか,終了させたくないということからいたしますと,例えば契約によって,受益債権の額は信託財産の額が縮減することによって縮まるのだというような契約を設けておけば,あるいは,その破産債権額,債務超過に当たって考慮する額の評価に当たって,劣後するという点を考慮して低く見積もるということができるのであれば,直ちに債務超過に至ることもないのではないかと思います。

  あと,受益債権と同額の信託財産しかないということは普通なくて,もうちょっとバッファーといいますか,余裕がある信託財産を持っていることが普通であって,多少債権があろうが,費用がかかろうが,それによって債務超過に直ちになるという事態は少ないのではないかというような気もするところでございますが,いずれにいたしましても,何をもって破産原因とするかというところも含めまして,御指摘を踏まえて今後また検討していきたいと考えております。

● 一番最初に○○幹事の方から御説明があったように,有限責任信託という新しい制度を認めるかどうかによって随分これの意味が違ってくると思うのですが。

  三,四年前に破産法改正のときに,やはりこの信託の破産というのを作るかどうかというのが議題になって,結局,有限責任という制度ができるかどうかが決まらないのでとりあえず見送ると,そういう経過があったと思うのですが,それとの関係でいくと,今回のこの御提案が,破産手続の対象となる信託の範囲を限定する必要性に乏しいと考えられるということは,もう全部を対象にした提案になっていて,私も,有限責任信託というものならば破産というのは観念できる,必要性もよく分かるのですが,受託者無限責任というのがある場合の破産手続というのは,大変難しい,いろいろな問題が生じてきて,果たしてうまく制度ができるのだろうかという懸念を持っております。

  それから,特に範囲の問題として言うと,当事者に明確な信託の合意がなくて,個別の事実関係というか契約関係を全部組み合わせるとこれは信託と評価できる,そういうような場合というのが現に判決で認められた例もありますけれども,そういうような場合もやはりこの破産手続に乗るのだということになってくると,そもそもそれが信託なのかどうかというところと,破産というところと,入口のところで大変な争いになってもめてしまうというおそれもありますので,とにかく範囲の限定の問題は非常に重要な問題だというふうに考えております。

● それはおっしゃるとおりで,もちろん,ここでは有限責任信託というのを前提とはしないで,御自由に御議論いただいてよろしいと思いますけれども,確かに一般的に言うと頭の体操みたいな非常に難しい問題がいろいろあると思いますが,今日はそれも含めて御意見を出していただければと思います。

● もちろん,有限責任信託を設ければより必要性が高いという問題もございますが,事務局として限定の対象とすべきかどうかと考えておりますのは,事業を目的とした信託に限るかどうかという視点からでございまして,結論的に,事業目的でなくても債権というのは幾らでも発生する可能性はありますし,入口のところでもめてはおかしいということで,事業目的の信託には限らないという切り口でございますので,有限責任信託かどうかという点で切り口を設けているわけではないというところは,念のため御留意いただければと思います。

● 第2回の会議において,簡易な手続が望ましいという発言をした立場から申し上げます。

  確かに,公平性の観点からは破産手続の一律的な適用が望ましいということもあるわけですので,ここら辺はなかなか議論が難しいところだと認識しております。

ただ,一律に本当に破産法の導入がいいのかどうかということについてはなお疑問があるところで,そこで質問が2点あるわけです。

  一つは,これも第2回で申し上げましたけれども,なかなか理論的には難しいかもしれませんが,破産制度の対象とならない信託ということを概念することができるのかどうかということです。

  例えば,信託行為の中でそういうことを定めていればできるのかどうかという話なのですが,そこはなかなか難しいかもしれません。

ただ,実務的な話としましては,例えば債務超過ということで破産が申し立てられて信託が壊れてしまい得る,それも一部の債権者から申立てがあったときに壊れてしまうということもあるわけですが,実際のいろいろな信託の中で,一時的に債務超過になったとしても,将来は通常の受益者に対する配当ができ得るというものもあるわけで,そうしたときに,大多数の受益者はよろしいけれども一部の債権者が壊してしまうということを認めるのかどうかという話を考えたときに,やはり破産手続とはならないような信託を設定するニーズがあるのではないかと思います。

  せめての話なのですが,例えば,商事信託法要綱を見ますと,これは全く違う解決方法だと思うのですけれども,そういったときに,一部の債権者に対して弁済をすることによって破産手続を回避することもでき得るというふうな理解をしておりますけれども,そういった,破産の手続を導入するとしても,出口みたいなものを検討する余地がないのかどうかということもあると思います。

  二つ目は,これも第2回で申し上げたところなのですけれども,DIPというような考え方があるのかどうかという話でございます。

  先ほどの○○幹事の御説明の中で,7ページの(注7)のところで,信託受託者の整理というのは,基本的には,破産管財人が管理処分権を専属するというところで整理したということでございますので,基本的には,受託者が処分権限を持つということは想定していないと認識しています。

DIPというのは,これは再生型にはある概念だと思いますけれども,破産についてはないと認識しているわけですが,なお,この前も申し上げましたけれども,信託の場合には,受託者がまだ正常に行為し得る能力がある場合もあるわけですから,また受益者の立場からしても,一番取引の内容を知り得る立場として受託者が引き続き権限を持ち続けるということが適当な場合もあるわけですので,やはり一つの選択肢としてDIPというのを検討されてもいいのではないかと思います。

もちろん,いろいろな,受託者の補償請求権の問題であるとか,忠実義務の問題であるとかあるわけですので,例外は認めてもいいわけですけれども,この点,やはり商事信託法要綱を見ますと,選択肢だということだと理解しているのですけれども,受託者は破産管財人となることができるということがそのときには提案されておりまして,それは検討に値するものだというふうに思っております。

● 休憩との関係がありますので,○○委員の御意見をいただいて……。

● 1点目は同じなので,よろしいですか。

● では,続けてお願いいたします。

● 私の方も,○○委員のおっしゃられますように,信託一般について破産手続を設ける必要が果たしてあるのかというところで同じような意見を持っておりますので,あわせて申し上げさせていただきたいと思います。

御説明にありましたように,信託が事業を目的とするものであれば,これはまあ必要なのかなというふうに思うわけなのですけれども,一般の信託,特に流動化の場合を想定しますと,従来,例えば特債法のもとでSPCを使って流動化しているときに,社債を発行するに当たって優先劣後構造とかを持ってやっておったわけですけれども,同じSPCに譲渡するときに,そこの中での個別の格付を維持するために,他の資産に強制執行できない,若しくはSPCの役員等に対しての,若しくは債権者の方に倒産の申立てをしないという条項を認めさせる,そういう特約を設ける形で対応しておったわけですけれども,今回,信託の方に,信託財産について破産手続が認められるような場合,先ほど○○委員がおっしゃられましたような倒産手続の申立てをしないという信託契約を有効にできるということであれば,これでも構わないのですけれども,そうではない場合については,かなり流動化の実務の中で混乱を生じせしめるのではないかという懸念があって,そういうものが可能かどうか,そういうところまで考えておられるのかどうなのかをまずお尋ねしたいと思います。

  特にそういうふうに申し上げないといけないのが,実際にそれができないということになって,破産手続に入った場合,先ほどから,信託債権の方が受益債権より優先するということですけれども,それ自体も若干問題があるのですが,更に,その受益権の中でも優先的受益権と劣後的受益権というふうに分かれて,かつ,その優先的受益権についても幾つかの,これは非常に大切で,どういう形で売っていくかということにも関係するのですけれども,様々な形で区別が設けられまして,その中で格付等もとっていっていると。

トリプルAのものもあるし,シングルA,トリプルB程度の,そういった優先の部分でもそういう区別があるわけですけれども,こういったものが破産手続の中で実際どういうふうな形で評価されていくのか,破産債権として評価されていくのかというところが非常に複雑になってきますし,法律で破産手続の中で決めることではなくて,実際は破産の手続の実務の中で決める形にはなるのでしょうけれども,非常にそのあたりが不安定になってしまうのではなかろうかと。

そういった懸念もありますので,先ほど冒頭に申し上げました特約みたいなものの有効性というのが考えられる余地がどの程度あるのか,そのあたりについてお尋ねしたいと思います。

● それでは,いったん休憩ということにいたします。

            (休     憩)

● それでは,再開したいと思います。

  休憩前に○○委員,○○委員からいただいていました御質問で,一般に破産を認めるとしても,商事信託法要綱の713条にあるような形での弁済を認める方法でなくすることはできないかとか,あるいは,そもそも特約を事前に設定しておくことはできないだろうかということ,それから,DIP型を選択肢として認め得るかといったような御質問だったと思いますが。

● では,順次お答えしていきます。

  まず,今ございました,一部弁済したら破産がとまるのではないかという点につきましては,いったん破産が始まった以上は,しかしながら破産債権者以外の全関係者の利益にもなるということが考えられますので,一部の債権者に弁済することによって破産手続がとまるということは難しいのではないかと考えております。

  それから,両委員から御質問がございました,破産手続の対象としない信託,換言すれば,破産申立てをしない特約の有効性という観点でございますが,  このような申立ての特約の有効性につきましては,法人についての破産と信託の破産を特に区別しているわけではございませんので,法人についての破産の場合の議論はこちらでも妥当するのではないかと考えております。

  最後に,DIP型というか,受託者が信託財産の破産手続を遂行するということはどうかという御見解でございましたが,事務局といたしましては,やはりそれは難しくて,信託財産が破産した以上は,信託財産破産についての破産管財人が必ず選任されて,受託者からその者に権限が全面的に移行するという手続をとるというところを現在考えているところでございます。

● 私の確認したいことは,それでしたら,確かに破産を一律に導入するということであればそういう結論になったとして,次の質問としましては,では,この信託の破産制度を作るときに,その破産制度の例外的な条項を入れることを検討する余地があるのかどうかということです。

通常の破産法を導入します,ただ信託においては破産法の何々は適用しないものとするとか,ないしは,例えば破産管財人は受託者が務めることができるものとするというような特別の規定ということを手当てすることができるのかどうか。法技術的にということですが。

● 今おっしゃったのは,破産法改正をここでやろうというわけじゃなくて,信託法の方で何か対応できないかということですね。

● はい。

● 今,○○委員がおっしゃいました,受託者を破産管財人に選任することができるというような明文の規定を設けるかどうかという話で,法技術的に難しいという話はともかく,その前の問題として,そういう条文を設けることによって本当に合理的な話になるのかどうかというのは一応はあるのだと思います。

つまり,受託者というのは一部の債権者のための立場ですし,恐らくは補償請求権みたいなものもございますので,利益相反的な立場に立ち得るという関係にございます。

そういう方を法律上明文で管財人になれるというふうに-破産法自体にそういう条文はもちろんないわけですけれども,そういうことをするのがいいのかどうかというのは,やはり慎重に考えないといけないのではないかというふうには思っておりますが。

● 一律に認めるというわけではなく,例えば,裁判所の関与によってそういう利害関係がないという場合において,かつ受益者のためになるのであれば,受託者が管財人になれるという余地を残すというような特約を検討する余地がこの場においてあるのかどうかという話なのですけれども。

もちろん,ある意味判断の話ですので,そういう規律を導入する必要があるのかどうかということはこの場で議論しなければならないわけですけれども,そういうことを前提に今後議論を続けていくということが可能なのかどうかという話なのですが。

● 済みません,特約を設けるというふうに今おっしゃったかと……。

● 特約というのは,信託法の特則として破産法の例外を認めることが立法的にできるのかどうかと。また,この場においてそれを議論する余地があるのかどうかという話です。

● 議論する余地は恐らくあるだろうと思います。問題は,それが可能かどうかという話で,今,○○委員がおっしゃった御意見についてもまた検討する必要はあるかと思いますけれども,直ちに可能であると申し上げるわけにはいかないと思います。

● 何点か申し上げたいことがあるのですが,とりあえず,今の受託者を管財人とする特約についてだけ申し述べ,それについて議論が収束したら,またほかの点についてお話を申し上げたいと思います。

  そもそも何で破産管財人が置かれるのかといえば,公平・中立な,裁判所が選んだ機関が財産を公平・適正に分配すると。

確かに手続的には軽くはないわけですが,先ほど出たDIP型とも関係しますけれども,そこで大事なのは,やはり公平・中立だと裁判所が判断をするという要素がありまして,最近非常に多いですけれども,特に会社更生なんかで顕著ですが,経営破たんをして,しかし経営破たんする直前にいわばターンアラウンドのために入った取締役なんかがいると。

これをそのまま管財人に据えたらいいじゃないかという議論は会社更生法のときも随分しましたが,やはり裁判所が選任し,裁判所が監督するという体制が大事だということで,会社更生法の67条3項ですが,裏から,責任がない人はなれますよということにしたわけで,あれは確認的な規定だと言われていますので,裁判所がこの受託者が管財人としてふさわしいと思えば管財人にすればいいだけの話で,それ以上の資格は,破産法の中で例えば弁護士でなければいけないとかですね。

冗談みたいな話ですが,破産者だって破産管財人になれるということですから,その人が適切だと思えばそれを選ぶだけのことで,ただ,それは,繰り返しますが,裁判所が適切であると判断したことが大事なのであって,あらかじめだれかとだれかの特約でできるということではなかなかないのだろうと。

それはほかの倒産手続における手続機関と同じで,裁判所が真っ白いところから判断しますよということにならざるを得ないのではないか,ここだけ外す理由はなかなかないのではないかと思います。

  とりあえず今の点についてはそれだけで,もし時間がありましたら,また別の点についてお話しさせていただきたいと思います。

● 今の点,御専門の○○幹事からのお話で,まあそういうことかなという気もするのですが,更に○○委員としてはまた御検討いただいて……。

● はい。

  特約ということにまだこだわっているわけではなく,結果として受託者が裁判所の判断によって管財人になれるという余地があるということをここで確認できれば,それでいいわけですが。

● それは,一般論としては特に限定はないということでしょうか。

● 今度,破産規則で,ふさわしい人を選ぶと。たしか会社更生における調査委員なんかと違って,利害関係がちょっとでもあるとだめということではないと。

適切な,わずかに利害関係があってもいいと。だから,そういう意味では,先ほど補償請求権の話が出てきましたけれども,それがいわば管財人としての公平・中立を奪わない程度の利害関係であれば,そこは排除しないということではないでしょうか。

● よろしいでしょうか。

● 今のは,私も現行破産法の解釈論を十分存じ上げないのですが,破産債務者も管財人になれるのですか。

● さっき○○幹事が,破産者も破産管財人になれると,冗談のようなとおっしゃった点ですね。

● そういうのはだめなんじゃないですか。

● それで,これは債権の債務者は受託者ですから,第三者性を持った人がなるという例を挙げてもだめなので,破産債務者そのものが管財人になれるかという問題ではないかと思うのですが。

● 確かに第三者なのかよく分からないですが,例えばへんぱ弁済を否認するなんていう場合は,自分がやった行為を否認しなければいけないわけですね。

もう利害関係の典型みたいな状況で,それはない。先ほど,一般的な資格の問題としては半分冗談で申し上げましたが,自分の事件はさすがに定型的に無理なんじゃないでしょうか。

● 無理ならば,受託者はなれないんじゃないでしょうか。つまり,この破産手続における破産債権者はだれに対して債権を持っているのかというと,債務者名義は受託者ですから。

● ○○幹事がおっしゃるとおりで,法律的には確かに債務者は受託者であり,それ以外の人であるというわけにはいかないのは確かなのですが,ここでは,信託財産をかなり独立のものというふうに取り扱うことができるという,そういう前提で特別に信託財産の破産制度というのを考えましょうという話でございまして,そういう意味では,受託者というのは,もしかすると,破産者自身というよりかは,連帯保証している立場にある人というような-実質論においてということで,法律的といいますか,法律行為の当事者としてはもちろん債務者と言わざるを得ないところはあるのですが,ここでは,破産者に類するような立場は,どちらかといえば信託財産であると言わざるを得ないところがございますので,そこを重視すれば,受託者が破産管財人になるということがおよそおかしい,議論の余地がないということではないのかなという感じで考えております。

● 説明の仕方には全く反対ですが。

というのは,保証人的立場とか,債務者は信託財産であるとかというふうな説明の概念はすべてに対して反対ですが,私は,具体的には,受託者が破産管財人になるということが認められておかしくはないというふうに思います。

ただ,それは当然に認められるんだよねという話ではなくて,本来は破産債務者だから認められないんだけれども,この例に関しては特別に破産債務者たる受託者も便宜の面等から破産管財人になれるという制度をあえて置いたのだというふうにすることは全然差し支えないのではないかと思っているのですが。

● この点が大きな問題になると思っていなかったものですから,余り深くは考えてこなかったのですが,破産手続の実務という点で言いますと,破産手続というのは,普通は管財人が選任され,一方,債務者側で説明義務を負う者がいて,管財人がその破産者から説明を聞いて,財産状況を調査し,債権を調査し,配当するというのが破産手続だと思っておりました。

そういう意味で,そういう説明をすべき破産者と,その説明を受けて調査をする破産管財人が同一人である破産手続を観念するというのは,今の破産手続の実務を前提とすれば,かなり違和感があると言わざるを得ない面はあるのではないかなというふうに思っております。

破産手続においては,債務者の側はもう破産してしまっているので,それから債権者の理解を得ようとか,そういったインセンティブというのは働かないというのが通常だと思います。

そういう意味で,第三者である破産管財人がついて,それが手続を遂行するというのが本来の姿ではないかなというふうに思っておりまして,今の議論で,○○幹事が,政策的にそういった新しい制度を設けることは不可能ではないとおっしゃったのですが,実務の観点から見ますと,破産手続の適正な遂行という面から言うと,かなり違和感があるのではないかというふうに思うということでございます。

● これは破産法の根幹にかかわるようなことでしょうから,ここでこれ以上議論を続けてもなかなか難しいかもしれませんが,欠格事由になるのか,特約が可能なのか,あるいは裁判所の選任というので配慮できるのか,いろいろ問題があるかと思います。

● 今の点について,一言だけ。

  先ほど,会社更生法の67条3項を挙げましたが,それは再建型の特質というのが大きゅうございまして,事業を再建するには,やはりかなり人に依存するというのでしょうか,今までの経過をよく知っている人を選ぶということであって,破産の場合には余りそういう配慮が要らないのかもしれないです。

ですから,質が違うのではなくて,いわば量というか,運用レベルの問題で,どっちがしっくりくるかといえば,再建型で従前の経緯をよく知っている,それを生かして今後の事業の再生をしていかなければいけないというような再建型については,まだ,いわゆるDIP型というのでしょうか,なじみやすいと思うのですが,破産の場合には,やはり厳格な公平性というのを追求するという方向で……。

  ただ,これは何か質が違うというか,だんだん色が濃くなったり薄くなったりというような話だと思いますので,理屈ですっぱり割り切れるのかどうかはよく分かりません。

  それから,先ほど出ている御意見について,幾つか,私が考えているところを申し述べさせていただきます。

 債務超過を信託財産の破産についての破産原因とすることについて幾つか御意見が出て,特に,立上げのときにお金が入ってきて,しかし立上げのために費用がかかって,立ち上げた瞬間は,じっと見たらそれは債務超過じゃないかという御指摘が冒頭ございましたけれども,それは資産評価の問題ではないかと思うのです。

つまり,動き出してすぐ,単にピースミールで財産の評価をするのではなくて,動き出した事業の将来収益なども勘案してゴーイングコンサーン・ベースで資産の評価をして,それでなお債務超過があったら,それはもうしようがないですね。

それはしばらくは様子を見なければいけないかもしれませんが,そういう傾向が強いというのであれば,それは破産に持ち込まざるを得ない。

それは,債務超過を破産原因にした趣旨,つまり,傷が広がらないうちに財産を解体し,弁済をして,その債権者の損失を防ぐということから言えば,ほかの制度との並びで言えば,ゴーイングコンサーン・ベースでも,レギュレーション・ベースでも,どう評価しても債務超過だったら,これはもうしようがないんじゃないかと。

そういうものとしてみんな物的会社を位置づけている以上は,ほかと並べるのであれば,債務超過も破産原因にせざるを得ないのではないかと思われます。

  それから,先ほど,無限責任という制度と破産という制度がなじむのかという御指摘がございまして,これはなかなか奥の深い問題だと私は思いますが,現行の中で見ますと,合名会社・合資会社について,無限責任の会社なのに破産というのが想定されているということを想起すべきだろうと思います。

ただ,非常に難しい問題が生ずることは確かなので,この点はかなり,リミテッド・ライアビリティー・トラストみたいなことを考えずに,もっと広げるとすると,いろいろな難問が出てきそうな気がいたします。

  それから,先ほどのDIP型とも若干関連しますけれども,破産法以外の簡易な清算方法は考えられないかということですけれども,これはもちろん考えられると思います。

政策でどこまでぎりぎりやるかということで,いろいろな仕組みはつくれると思いますが,もし破産法以外の簡易な方法という御意見のベースが,破産手続自体が遅い,あるいは無用に厳格であるということだとすれば,その懸念は大分減っているのではないかなと。

実務の運用は,例えば5年前と今と全然違って,改正前はここまで柔軟な解釈ができるのかと思うぐらいですね。

それを法律をかけたみたいなところもあるような気がいたしまして,そこはあとは立法事実の問題で,どこがどう不都合なのかということの各論もした方がいいのではないかという気がいたします。

およそ倒産手続と位置づける限りは,どんな手続であれ,債権の個別的な権利行使の禁止というのは要は倒産手続の本質ですので,手続を設ける以上はつくらざるを得ない。

先ほどSPC型の話が出ましたけれども,どっちみち1回はキャッシュフローがとまる話になってしまうのではないかと思います。

それすらない簡易なものというので,逆に,欠乏した責任財産に対する債権者の権利行使を個別にしないで,集団的にして公平に財産を分配するというのができるのかどうかですね。それを考えるべきなんだろうと思います。

  いろいろ申し上げましたけれども,以上でございます。

● その簡易な手続については,一体現行の破産手続のどこがネックになるということなのかまた具体的に御指摘いただければと思います。

  ほかに。

● 信託財産について破産手続が入ることに特段の反対ということではないのですけれども,ただ一方で,何かちょっとぴんとこないなという感じを持っているのですが。

  例えば,事業を目的とする信託という制度ができたときに,恐らく,信託を受けて事業を行っている者は受託者ということになるんじゃないかなと。

対外的には,すべてその受託者が行っている事業行為というふうに見えるのではないかなと思うのですね。

にもかかわらず,受託者とは別に切り離した信託財産の部分だけの倒産手続を考えるというふうにしたときに,事業として取引の相手方から見ると,恐らく受託者しか見えない。

いろいろな,例えば契約名義上も受託者としてしか登場しない。だから,当然,受託者という会社と取引をしていたと思っていたら,実は信託財産といいますか信託部分と取引をしていたというようなことにならないだろうかと。

そうすると,例えば,この取引の相手方から見ると,会社と取引するに当たっては,その会社が信用できる先かどうかというのは必ず事前に見るわけですね。

受託者のBS・PLを見て,ああ,この会社は立派だと思っていたら,実は自分が取引していたのは信託財産であって,それはぼろぼろだったということになっても,そこは全然公開もされ-まあ,それは今後の制度設計の問題かもしれませんけれども,信託財産というものが独自に何らかの公示をされるという制度というのは,多分,信託の枠組みの中ではつくりにくいかなと。

信託というのは,やはり受託者として対外的に行為をしているところに特徴があるように思うので。

  ですので,そういう観点で,例えばこの事業目的のものに倒産手続を入れるのはどうかということになっても……。何か理念としては分かるのですけれども,受託者と信託財産の区別というのはどんなふうに考えていくんだろうかというような観点から,ちょっとどうかなと思います。

● 確かにおっしゃるとおり,一般的な信託,受託者が無限責任を負って,受託者の信用というのもある程度関与されているものについてまで破産手続を入れるべきかどうかというのは大きな問題があると思いますが,他方,どのような信託類型について破産手続を入れるべきかという問題がございまして,いわゆる有限責任信託という特殊な類型を認めれば,それは受託者個人の責任財産とかいうものは基本的に度外視されて,かつ,信託財産について一種の公示制度というのも整える予定でおりますし,そのようなものになりますと,信託財産の法人格は認めるわけではございませんが,やはりそこは責任財産が限られるものとして何らかの公平な弁済手続が必要な気がいたしますし,あと,一定の事項を表示したときには有限責任になるというような制度を仮に入れたとしますと,それも相手にとっては,これは信託財産が相手だということが分かるわけでございますので,そのような形態のものを入れたときには,それについては,有限責任信託ほどではないにしても,何らかの破産手続というのを設けることは,少なくとも検討に値するのではないかという気がしております。

● もう1点追加して申し上げますと,信託財産の破産において,信託財産を換価して信託の債権者に対して弁済をするという手続はとりますが,これは,これまであった無限責任の債権者との関係で,その弁済が終わって,例えば100万円の債権なのに60万円しか信託財産からは配当がもらえなかったと。

そのときに40万円の部分が当然に債権として消滅するかというと,もちろんそういうことはございませんで,40万円の部分は,それはそれで残って,受託者に対して,つまり固有財産に対して強制執行できるという関係は残ると,そういうつもりで整理しておりますので,破産手続が入ったことによって相手方の信頼がいきなり害されるということはないのではないかという気がしております。

● その前提として,どういう信託を想定するかということともかかわっていると思います。

  ほかに。

● 債務超過の概念について私が触れたところ,○○幹事の方から,こういう考え方があるよという御紹介があったのですけれども,その点について,2点ほど,意見ではなくて,コメントなのですけれども。

  一つは,今,信託の会計というのがどうなっているのかといいますと,物の本なんかを見ますと,信託慣行会計と言われるものがあって,どういうことかというと,通常の法人が行っている会計とは違った,つまり,具体的なルールが明記的にはないわけですので,信託としては保守的に,それが慣行化しているわけですけれども,ある意味独自の会計をとっているということです。

とすると,通常の法人で観念している債務超過概念ということとまた違ってくるのではないかと。そこをどう考えるのか,今後,会計ということを見直す必要になるのかどうかということも含めて整理する必要があるのかなというふうに思いました。

  二つ目に,ゆえに,実際に破産申立てがあったときに,受託者の立場からするとどうしたらいいのかという話なのですが,一つの考え方としては,やはり信託受託者としては信託を守らなければいけないと。

確かに信託会計上はプラスになっているけれども,ひょっとして将来の収益とかいろいろ考えると債務超過かもしれないと,そう訴えられているといったときに,では受託者としてはどういうふうな立場で,どういうふうな方向で考えなければいけないのか。

ひょっとして,信託を守るためにこれは資産超過だよということを強弁すること自体が受益者に対する義務違反なのかもしれないというように思うわけでして,そうしたときに,これは枝葉の議論なのかもしれませんけれども,受託者はある意味板挟みになるようなことになるのではないかなというふうに思いました。

● ○○幹事,何かございますか。

● では,一言だけ。

  私も会計のルールはよく分かりませんけれども,技術的なところはともかく,本質的には債務超過の判断基準は多分変わらない。

申立て時に,そのときの財産状況を示す非常貸借対照表をつくらせて見るというのが筋だろうと思います。

どの資産をどう表現するのかについては各論がいろいろあると思いますが,本質的には多分変わらないものではないかと私は思います。

  それから,今おっしゃったのは多分債権者申立ての場合ですね。

債権者申立ての場合に受託者としてどう行動すべきかですが,これは多分一律には言えないのだろうと思います。

それは,今早く破産手続に入った方が結局債権者全体の利益を図れるということであれば,資産超過であることを無理やり証明するというのはかえって善管注意義務に反するでしょうし,本当にまだこの信託は,一般的な言い方をすると,破産させる意味がない,むしろその方が有害だと思ったら,それは債務超過ではないということを言うとかいうことになるのだろうと思います。

それは結局,今ここで自己破産の申立てをするかどうかというのと全く同じ判断構造ではないかと。

自己破産の申立てを今した方が債権者の利益が守れると思ったら,それをあえてしないことは善管注意義務違反になるのと同じことではないかと思います。

● このほか,事務局の方から幾つか,御意見をいただきたいという点が出ておりまして,7ページのあたりですが,受託者の地位に関して,受託者が補償請求権で破産手続に参加できるかとか,同じページの下の方ですけれども,否認権の適用についてどうかとか,それから8ページですけれども,損失てん補責任はどうかと,こういった点について御意見をいただければと思いますが。

● 7ページの(9)のところの②として書かれているところなのですけれども,全部義務者が複数いる場合になぞらえて問題を考えるというこの発想というのは,法人格はないけれども,やはり,信託財産という一つの全部義務者と,信託財産を除いた受託者の財産という全部義務者がいるという,こういった雰囲気なんじゃないかなと思うのですね。

しかるに,もし仮にこれを,債務者というのはあくまで受託者であると,しかし,ある債権者は特定の財産に対してしか執行できる地位を持っていない,他方,すべての財産について執行できる地位を持っている,他の財産に対しても執行できる地位を持っているという人がいるとしますと,この破産法104条とか231条の問題なのか,それとも民法の394条に近いシチュエーションなのかというのが,どちらかといえば,民法394条の,抵当権者がいるときにその抵当権の目的以外の財産について執行がなされた場合の抵当権者の地位というものに近いのかなという気もします。

ぴったりでないことは重々承知しているのですけれども,必ずしも全部義務者のことで考えるのが妥当とは限らないのではないかと。

 かつ,もう1点だけ申し上げますと,私,これは不勉強で恐縮なのですけれども,やはり責任財産限定特約の一般の場合と整合性を持った処理をする必要があると思うのですが。責任財産限定特約のある人について執行のときにどうなっているのかというのは,私,十分に存じ上げませんので,お恥ずかしい話なのですけれども,基本としてそういうことも考えなければいけないのではないかということだけ申し上げておきます。

● ほかにも,事務局からの御質問が6ページにあります。とりあえず清算型について御意見をいただきたいと思います。

● 今触れなかった点ですが,よろしいですか。6ページの(7)の優劣関係なのですけれども。ちょっと間が抜けた質問というか感想なのですけれども。

私,本当に受益債権が劣後するという整理でいいのかというのは,やや自信がないのですね。なぜ自信がないと思うかというと,その理由がよく分からないということもあるのですけれども,直感的に言いますと,例えば,多数の投資家から信託の仕組みを使ってお金を集めましょうと。

集めた投資家に,あなたの出していただいたお金に対して返すものは全部劣後しますと,こういう仕組みというのは余りほかにないと思うのですね。預金であれ,保険契約であれ。

  それで,なぜそうするとこういう理屈になっていくのかというのは,もちろん,多数の投資家からお金を集める器として信託を使う場合だけを考えているわけでは決してありませんので,ここは信託法の基本の議論をしているわけですけれども,先ほどの御説明ですと,例えば株式会社の場合には,株主に対する配当支払請求権というのが,必要な総会決議等を経て具体的に確定して,発生したと,その場合には発生したものについては劣後はしなくて,それはもう債権ですので同等なのだけれども,まだ未発生というか,そういうものについてはもちろん劣後するわけですけれども,そういう区別がこちらではできないので,受益債権については,既に発生しているもの,例えば毎月5万円ずつ払っていきますということが既に全部確定して発生していたとしても,株式会社の株主よりもより悪く,ここで言うと信託債権には劣後しますという御説明。

その理由はというと,配当規制がないというのが一つ挙げられたと思うのですね。

その配当規制がないというのはそのとおりなのですけれども,果たして配当規制に代替するものがないこととのいわば引換えが劣後ということになってしまうのかどうかというところは,論理的に必ずしも結びつかないように思うのですね。

(7)の①に書かれている理由というのは,信託事務に基づいて利益が行くのでしょうというのは,これは委任でも何でも同じだと思いますし,②が今の点に関係するのですけれども,そうすると,配当規制に代替するルールというのは,多分それは否認とか詐害行為取消しとか,そういうものであるように思うのですね。

②を厳格に言うと,というか,信託の受益者は,一遍も配当を受け取っていなくても,やはり劣後するわけですよね,今の御提案は。ですから,ちょっとそれでいいのか。

  ちょっと観点を変えて言いますと,私が例えば多数の投資家からお金を集めて何かやろうと思ったときにどうするかということですけれども,これですと,信託で,あなたは受益者ですというのでは,ちょっと集めにくいですよね。

その後,借入れとかいろいろなことをすることが仮に許容されているとしますと。

  そうすると,例えば,第1に,その集める受益債権に物上担保をつけますと。担保付社債みたいにですね。これはそういう根担保がつけられるかどうかという問題は別途ありますけれども,そもそも物上担保というものを受益債権につけられるということを前提にお考えなのか,その場合にこの優先劣後関係との関係はどうなるのかと。

  それから,2番目の例として,もしそれがうまくいかないなら,もう受益債権ではなくて,信託債というか,社債のように信託債権として投資家からお金を集めざるを得ないですよね。

さもないと受益債権ですから劣後してしまうわけですから。それでも,もちろん,受益権はだれかが持っていて,私なら私自身が持って,関係会社か何かが持っていてという仕組みになるとしても,どうも,せっかく信託が使われる話がおかしなところに行きそうな感じがある。

もう1点だけですけれども,間接的な影響ですが,もしこれが信託法のルールだということになりますと,投資家保護とかそういう観点から,特別法では,結局,借入れはもちろんのこと,債務負担というのを禁止していくことになると思うのですね。

さもないと,投資家,すなわち受益者の債務,投資家が受け取るキャッシュフローに対する権利というのは一番劣後してしまうということになるからなのですね。

それが信託の将来にとっていいことなのかどうなのかというのはやや疑問で,何か常識的にはこれでいいように私は思うのですけれども-これでいいという意味は,受益権というのはエクイティーだというのですか,余り表現はよくないのですけれども,最後残ったものはもらえるのだというようなことでいいように思うのですけれども,果たして発生したものも含めて全部劣後しますということを言い切ってしまっていいのかというのは,もうちょっと慎重な検討が要るように思うものですから,よく考えて物を言っているわけではないのですけれども,何となく,もう少し詰めてみた方がいいような気がいたします。

● 御指摘を踏まえて,また検討いたしたいと思います。

● それでは,清算型について,御意見……。

● 7ページの補償請求権のところと,先ほどの全部義務者のところも少し関係するかと思いますので。

  受託者が,補償等の請求権が既に発生しているようなものについて破産手続に参加することができるというのは,それでよろしいのではないかと。

強制執行等がかかったときにも,そこから取れる,そこに参加していけるような手続を講じるということだったと思いますので,同じような形でよろしいのではないかと思っております。

相続財産のときも,たしか相続人と被相続人との間で混同による消滅の例外規定が設けられていると思いますので,そういった処理も参考になるのではないかと思われます。

  こういう求償権的な-求償権という位置づけをすること自体問題なのですけれども,更に申しますと,少し私の方で気になっておりますのは,破産手続開始後にどうなるかということで,信託財産について破産が認められ,手続を遂行するとしますと,固有財産からの弁済にどういう影響を与えるかということで,強制執行等の禁止が固有財産に対しても及ぶのかどうかという点はもう一つ問題としてあるのではないかと思われます。

これが及ぶとしますと,任意の弁済はどうかという問題があり,いずれにいたしましても,固有財産から破産手続開始後に弁済を受けたというような場合には,本来的には信託債務であるということからしますと信託財産が最終的に負うものだということになると,いわば求償的な話が出て,受託者の固有の債権者のためにその部分を取り返してくるというような問題が生じます。

  そうしますと,先ほどの全部義務者のところの話にかかわってまいりますけれども,私自身は,信託というのはやはり受託者こそが法人格一つだということを強調すべきだとは思いますけれども,責任財産の独立性の面ではある程度二面を持つということを意識せざるを得ないのかなというふうに思っておりまして,およそ固有財産から破産手続開始後弁済を受けるという道が遮断されているのであれば,もうそこで問題は解決するかと思いますけれども,それが遮断されないのであれば,こういった処理が必要になってくるのではないかと思います。

  それで,不足額責任主義との,民法394条型の関係ですと,本来は信託財産から取るというのが信託債権者だとすると,正に信託財産の方からこそ取れるというような形にしなければいけないはずですので,ちょっと不足額責任主義とは違うような考え方になってくるのかと。

それから,責任財産限定特約付の処理との均衡というのも考える必要はあるとは思うのですが,責任財産限定特約の場合は,やはり固有財産と考えられるものも含めてまとめて倒産処理をするという局面ですので,固有財産的なものに当たる,本来は責任財産であるものとないものとがあって,両方から受けてくるということ,破産手続外にある財産から受けてくるというような問題が出てこないのかなというふうに思いますので,更に慎重に考える必要があるのではないかと思います。

● その点も,御指摘を踏まえてなお検討いたしたいと思います。

● それでは,8ページの3とあります再建型の手続の整備についてですけれども,もし御意見がございましたら。

● 先ほどの,再建型ではない方の破産手続とも関係するのですけれども,受益者に対してもこういった破たん処理手続へのトリガーを与えるということとの関係で,他方,信託契約の変更,受益者集会制度の導入等々,受益者については信託の将来,運命についてのある程度の意思決定権を与えて,それでいわば内部的といいますか自治的に解決する道も与え,それをむしろ広げていく方向にあると思うのですけれども,もし私の理解が間違っていなければ,例えば,約定どおりの弁済を受けられなかった受益者は,そういった信託契約の変更等の努力をするまでもなく,破たん処理手続を申し立てることができるということにもしなりますと,むしろこの再建型というのは非常に必要になってくるのではないかという気がいたしております。

  逆に言いますと,私は,やはりどうしても,受益者に対してトリガーを引く権利を与えるというのが,これはむしろ前半の論点にかかわりますけれども,やや分かりづらいところがありまして,そうすると,これまでの受益者に対しては,単なる債権ではないので,いろいろ,受託者に対する情報権を始めとして,意思決定等に参加する権利,いわばコントロール・ライツと言われるものをむしろ拡充する方向で話を進めてきたのではないかと思っておりまして,そのときに,6ページの説明で言いますと,ここだけ債権説が非常に顔を出してきて,受益債権も債権であるということが言われているのですけれども,むしろエクイティーとデットを区別して,信託債の発行を正面から認めることとするということも一つ考えられると思いますし,もしそうしないということであれば,この再建型の倒産処理手続は非常に必要なのではないかという気がいたします。

ちょっと誤解があるかもしれませんが,むしろ御教示いただければ幸いです。

● これは,理屈で信託財産に係る再建型手続が要るとか要らないという問題ではなくて,どこまで仕組むかということだと思います。論理的にあってはいけないとか,なければならないというものではないのだろうと思います。

  それを前提にして考えますと,まず結論から申しますと,私は,そうは言いながらこれは作る必要は余りないのではないかということなのですが,まず,再建型手続の整備の必要性というのが,事業の継続のためだということであれば,この(注11)に書いてあることが正しく当てはまるのだろうと思います。

実際,例えば民事再生手続でも,手続内で営業の全部又は重要な一部を非常に迅速に譲渡して事業の再建を果たしているというのが最近の倒産実務の傾向でございますので,営業譲渡を使った事業譲渡ができるのであれば,更にそれに加えて,論理的にはもちろん可能なのですけれども,そこまで仕組む,信託についても再建型手続を仕組む意味がどのぐらいあるのかなという気がします。

そんなにしょっちゅうあることなのかということですね,簡単に申しますと。

二つ目に,これは非常に細かい話ではあるのですが,6ページの(7)に書いてあるとおり,信託債権と受益債権について実体法上優先順位がついているという理解を仮に前提としますと,再生計画を決議するときに必ず組分けをしなければいけないことになります。

これは,民事再生の手続を作るときには,手続構造を簡易にするということで,組分けという仕組みは一切設けないという-その場の細かい例外はありましたけれども,常に組み分けが入ってくるというのは,再建型手続としては非常に重たいものになるんじゃないかなと。

あるいは,信託債権は全部満足される,100%弁済を受けるのだけれども,受益債権は100%弁済を受けないときに,そういう議決権を与えるかどうかとか,非常に細かい議論が必要になって,手続構造がいたずらに複雑になるような気がいたします。以上が第2点です。

  仮に再建型まで作る必要がないのだということを前提にしますと,次のようなことを考えないといけないことになろうかと思います。

株式会社については,その営業の全部又は重要な一部を譲渡するときには株主総会決議の特別決議が必要だということになっていますが,仮に,同じような営業譲渡をする場合に受益権集会の特別決議みたいなものをを仕組むということを考えるのであれば,さっき言ったような,上の方の債権者は全額弁済を受けられるけれども第2順位は100%弁済が受けられないという場合に,議決権はどうするかと。再生法の43条ですが,代替許可みたいな仕組みまで仕組むのか。

早く営業譲渡をするのが大事なわけですから,そういうことを考える必要があるのか。

あるいは,完全に破産に寄せてしまって,現行の破産法だと,営業譲渡するときに別に裁判所の許可だけでできて,債務超過なのか何なのか関係なしに,支払不能だけで入った場合でもなっていますが,あるいはそういう仕切りにしてしまうのか。

後者の方が,より今の破産の制度と親近性が高いと思いますけれども。

というわけで,破産で営業譲渡を早くするということができるのであれば,それに加えて別途再建型まで仕組む必要は,論理的にはないとは言いませんけれども,低いのではないかなというのが私の印象でございます。

● いずれも,受益権,あるいは受益者の位置づけということともかかわっていると思いますが。

  では,簡単に。

● 事務局の方は,どちらかというと○○幹事と同じような発想で考えていたわけでございますが,○○幹事がおっしゃられた,トリガーを受益者に与えるということから再建型を認めた方がいいというのが,ちょっと私にはいま一つぴんとこなかったところもあるのですが,できればもう少し……。

● これは私が誤解しているのかもしれませんが,例えば信託債権者がいないような場合であっても,非常に優先的に組成されている受益権に対する支払いが滞ったと,そしてその支払不能が破産原因になると,その受益者は申立てをできるのではないかと理解したのですが,それはそういうことはない……。

● そういう可能性もあるのではないかと思います。

● そうだとすると,外部の者はだれも迷惑を受けていないのに,その一人の優先受益者がもう破産だと言うと,破産手続に移行することになると思うのです。

ところが,その信託全体で見れば再建させられる可能性は大いにあると,そういうシチュエーションは出てくるのではないかというのが私の認識だったのですが。

● 恐らく,債務超過の判断は,これは先ほど少し話がございましたけれども,ゴーイングコンサーン・バリューで考えるかどうかというのも若干は影響するのかなという気がいたしますが,片や,仮に受益者についても公平弁済というのがやはり重要だということになるのだとしますと,破産は必要だというふうな……。

● ただ,そこで言われている受益者間の公平な分配というのは,何も破産だけではなくて,清算の場面でも妥当する話だと思いますので,そういう意味では,信託債権者と受益者との間の利益調整と,受益者間の利益調整との問題が二つあって,一応,私のエクイティーの理解だと,受益者の問題というのはむしろ後者の問題,受益者間の分配の公平の問題として処理されるべきではないかというふうに思いましたので。

  もしかしたら,ちょっと誤解をしているのかもしれませんけれども。

● そうしますと,受益者間の公平というのはエクイティーで,受益者同士で処理すればいいというのは,もうほとんど破産は要らないのではないかというのに近いと思ってもよろしいでしょうか。

● いえ,破産は,もし信託債権者がいなければ,それは清算手続で,信託の清算の中で行えばいいのではないかということですけれども。

● よろしいでしょうか。

● 再生手続の実務的なニーズに関しては,残念ながら網羅的な調査をしておらないので,確定的なことはお答えできませんけれども,ただ,これは内部での議論の話になるかもしれませんけれども,それほど実務的なニーズはないのではないかなということが,今のところの印象でございます。

  それはなぜかというと,先ほど○○幹事からも御指摘のとおり,(注11)のところで営業譲渡で対処できるのかという話もありましたし,また,考えてみますに,通常,再生,例えば銀行を再生させなければいけないというときには,その従業員であるなり周りの利害関係人なりを見て,やはり社会的に再生を起こすことが必要であるというようなことがおもんぱかられるわけですけれども,このような場合,通常の場合は従業員が独自に雇われていることも余り想起されないので,そういうことをおもんぱかる必要もないのではないかということでございます。

  ただ,さきの議論の中で事業信託ということが議論されましたけれども,そこでどのような広がりがあるのか,どのようなニーズがあるのかということが次のステップで議論が出てくるかもしれませんけれども,その中で,やはり必要であるということであれば,また別だと思いますので,そこは基本的には事業信託との絡みでニーズを勘案して考えていけばいいのではないかなというふうには思います。

● それでは,よろしいでしょうか。

● では,続きまして,裁判所の監督と営業信託を続けて御説明いたします。

  まず,第64でございますが,現行法第41条第1項で,非営業信託に係る受託者の信託事務は裁判所の監督に属する旨規定されております。

 この条項が置かれた理由につきましては,制定当時の信託法案説明書を拝読いたしますと,「信託事務ニ付テ特ニ裁判所ノ監督権ヲ認ムル所以ノモノハ固ヨリ信託ノ本質ニ起因シ受託者ノ権限ノ大,従テ濫用ノ弊代理,委任ノ比ニ非サルヲ以テナリ」ということが挙げられております。

更に,「信託の制度の運用に当たっては,裁判所の監視と判断のもとに置くことにより,信託の不正な利用を抑制することをねらったものと思われる。」との立法過程に関する研究成果も見られるところでございます。

  確かに,信託では,信託財産の所有権が委託者から受託者に移転しますので,非営業信託を裁判所の継続的な監督のもとに置くことは,信託な不正な利用の抑制や,受託者による権限濫用の防止のためには有用であるようにも考えられます。

  しかしながら,まず,裁判所は通常,信託設定の事実を認識し得ませんので,裁判所が継続的に受託者の信託事務を監督する旨規定しても実効性があるとは言い難いですし,また,裁判所による監督の実効性を確保する観点から当事者が裁判所に対して信託設定の事実等を適宜報告しなければならないとすることは,信託の自由な利用の阻害にもつながりかねないと思われます。

  そもそも,現行法が非営業信託を裁判所の監督のもとに置くとしたのは,信託の不正な目的のために利用されるなど,信託及び受託者に対する信用が低かったという制定当時の状況を反映したものであると考えられますが,このような要請は現在では相対的に低いものと考えられます。

そして,信託の不正な利用に対しましては,脱法信託や詐害信託の禁止等の規定の適用によって排除することができると考えられますし,今回の信託法改正においても,委託者,受益者その他の利害関係人に対して受託者の信託事務処理に対する監督是正権を付与することとしておりますので,受益者らがこれらの権利を適切に行使することによって受託者の監督は十分可能であって,これに加えて裁判所が非営業信託を継続的に監督するまでの必要性ないし合理性はなく,委任等の他の法制度とのバランスからも適当ではないのではないかと考えられるところでございます。

  また,現行法は米国等の扱いに倣ったものとされておりますが,米国での信託に対する裁判所の関与の在り方については近時変化が見られるようでございまして,例えば統一信託法典を見ましても,裁判所は,その管轄権が利害関係人により,また法律の規定により発動される限度で信託の管理に介入することができるですとか,信託は裁判所による命令のない限り継続的司法監督に服さない旨規定がございます。このような米国での変化は,我が国の信託法の改正においても参考になるのではないかと思われるところでございます。

  以上申し上げたような点を総合的に考慮いたしまして,今回の提案では,非営業信託に係る受託者の信託事務を裁判所が継続的に監督するとの規律を採用しない,すなわち,現行法第41条第1項の規定を削除することを提案するものでございます。

  なお,念のためでございますが,(注)にも書きましたとおり,この提案は,信託に対する裁判所の関与を全く認めないとするものではございません。

すなわち,受益者らの申立権の行使に基づく裁判所の個別的な関与は認めるわけでございますが,それを超えて裁判所の一般的・継続的な監督までは認めないということを提案するものでございます。

  続きまして,営業信託のところ,第65に移ります。

  第65は,信託の引受行為を商行為とする現行法第6条の趣旨を維持し,商法第502条に1号を付加するのと同様の効果を有するものでございます。

営業として信託の引受けを行った場合には,当該引受行為はもちろん,これに基づく信託の事務処理全体が商業的色彩を帯びると考えられるからでございます。

営業として行った信託の引受行為が商行為とされる結果,営業として信託の引受けを行った受託者は商法第4条によりまして商人となりますので,当該受託者には商人に関する規定が適用されまして,また,その受託者がその営業のためにした行為は附属的商行為となり,商行為に関する規定が商法第503条により適用されるということになります。

例えば,信託報酬の支払義務,受益債権の支払義務は,商行為によって生じた債務に該当し,商事法定利率,あるいは商事時効等が適用されることになります。

 なお,会社が営業として公益信託を引き受けた場合,実務上は,当該信託を営業信託と考え,商行為に当たると考えておりますが,公益法人が営業としてではなく信託を引き受けた場合には,どのような信託を引き受けた場合であっても商行為にはならず,受益債権の消滅時効等の扱いが異なるのは問題がないかといった指摘もございました。

しかしながら,同様のことは,同じ内容の売買等の契約を商人が行うか非商人が行うかでも生じ得るのでございまして,取引主体の違いによって結果が異なることは不合理とは言えないと考えているところでございます。

  以上が,営業信託についての説明でございます。

● 少し性格の違う問題ですので,順に御議論いただきたいと思います。

  まず,「第64 裁判所の監督について」ですが,いかがでしょうか。41条1項の規定は削除すると。もちろん,一切関与を認めないという趣旨ではないということですが。

● 結論に異論があるわけではないのですけれども,御説明の箇所について,2点。

  一つは,米国の状況ということでございまして,裁判所の関与の在り方が変わってきているというのは確かだと思いますけれども,信託というのは常に一般的・継続的に裁判所の監督のもとで行われる仕組みだという性質は変わっていないのだろうと思います。

ただ,現実に照らして,その具体的発現の仕方に変化が出ているということだろうと思います。

ただ,そういう状況がそのまま日本に当てはまるかというのはまた別の問題ですので,アメリカの理解の仕方について少し留保が必要なのかなというふうに思います。

  それから,当初の41条の規定の趣旨との関係での御説明で,信託の不正な利用を抑制することを目的としていたという点,現在ではそういう懸念はないだろうということなのですが,今まではなかったろうと思うのですけれども,他方で,信託業法の改正によっていろいろな主体が受託者として登場するということによって,むしろ懸念が復活するということも言われておりますので,この第64自体についてどうということではなく,一般的にはそういう懸念もありますので,例えば,特に個別の裁判所による監督の在り方のところでは,やはりそういう面は留意する必要があるのだろうと思います。

● 41条1項の削除自体はいいけれども,しかし,主体の多様化にかんがみて個別の手当てを更に検討すべきだと,こういうことですね。

この41条1項の削除自体について,御異論は特にございませんでしょうか。

  それでは,○○幹事の御意見を踏まえて更に検討するということで。

  続きまして,「第65 営業信託の商行為性について」,いかがでしょうか。

  これも特に御異論はございませんでしょうか。首を振っていらっしゃる委員・幹事の方が何人かいらっしゃるようですので……。

  では,特にないようでしたら,先に進めたいと思います。

● では,続けて,第66,合同運用の方に移らせていただきます。

 信託におきましても,信託財産の効率的な運用の見地から複数の信託契約に係る複数の信託財産について合同運用がなされておりまして,例えば,ある信託に属する金銭と他の信託に属する金銭とを合わせて第三者に利息付で貸し付けたり,あるいは収益を生ずる資産を購入し,あるいは投資目的で再信託契約を締結するなどの例があると聞いております。

現行実務で利用されているものとしては,貸付信託,合同運用金銭信託等が挙げられているところでございます。

  まず,1でございますが,これは,いかなる要件のもとで受託者が各信託財産を合同運用できるものとするかについて,甲案と乙案の2案を提示するものでございます。

このうち,甲案は,合同運用のためには信託行為においてこれを許容する別段の定めがあることが必要であるとする考え方でございます。

この考え方は,合同運用には分別管理義務と抵触を来す面があるものととらえるために,合同運用を行うためには信託行為において合同運用ができる旨の定めがあることを要すると解するものでございます。 

  このように甲案が合同運用を分別管理義務の問題と位置づけることの根拠は,分別管理義務の趣旨につきまして,信託財産の倒産隔離を図ることのみならず,各信託に属する財産について生じた損害は当該財産のみが個別に負担すべきことを確保することにもあるととらえているところにあると考えられます。

そして,各信託に属する財産につきまして,これが個別運用されている場合とは異なり,合同運用されている場合には,合同運用財産について生じた損害は各財産を拠出した各信託財産が案分して負担することになりますので,損害の個別負担ではなく案分負担という結果を招くことになる合同運用は分別管理義務の例外に当たるものであると整理することになると考えられます。

  これに対して,乙案でございますが,これは,合同運用のためには信託行為においてこれを許容する明示的な定めがあることは要しないとする考え方でございます。

甲案と異なり,合同運用をもって分別管理義務上の問題があるものとはとらえておりません。

  もっとも,別途受託者の権限の問題については検討する必要がございますが,合同運用を行うことが受託者の権限の範囲内であることは必要というわけでございますが,受託者の権限に関しましては,かつて第5回会議で扱われました「受託者の権限について」というところで,「受託者は……信託財産の管理又は処分その他信託目的の達成のために必要な行為を行う権限を有する」という幅の広い規律を提案しておりまして,このような柔軟な権限規定のもとでは,規模の利益を追求し,リスクの平準化を図ることができるという点において,受益者の利益に資する合同運用につきましては,信託行為にあえて明示的な定めを置かなくとも,「信託目的の達成のために必要な行為」に当たる場合には,当然に受託者の有する権限の範囲内に含まれるとするのが合理的であると考えられます。

そこで,結論として,合同運用を行うことができるとするためには特段の規定は要しないと解するものでございます。

  乙案が合同運用に分別管理義務上の問題がないと考えますのは,14ページの(注4)というところにも書きましたけれども,分別管理義務の趣旨は,究極的には信託財産の管理の局面において倒産隔離を図ることにありまして,信託財産を合同して処分することまで禁止する規範ではないととらえた上で,まず,各信託財産が合同運用財産について有する共有持分権,又は再信託契約に基づき有する受益権が計算上区別されていれば,倒産隔離は図られ,分別管理義務も果たされていると考えられることですとか,あるいは,合同運用は,信託財産と他の信託財産又は受託者の固有財産との場合に限らず,信託財産と第三者の財産との場合もあり得ますところ,この最後の場合,第三者の財産が入る場合については分別管理義務の問題として整理されてはいないと思われることにかんがみますと,そもそも分別管理義務の問題として整理することには疑問があると考えられることなどを理由とするものでございます。

以上の甲案,乙案につきまして,あるいはほかにより適切な考え方があれば,御審議をいただければと思います。

  次に,2でございますが,これは,複数の信託契約に基づく信託ではあるものの,各信託財産が合同して運用されており,実質的な一個の信託であるとの評価が可能である場合には,一つの信託契約に基づく信託に複数の受益者が存する場合と同様の取扱いをすることが合理的である,こういう指摘があることを踏まえたものでございます。

  仮にこの考え方が妥当としますと,実質的に一個の信託であるとの評価が可能である信託を選別するための要件はいかなるものか,あるいは,いかなる規定について一つの信託契約に複数の受益者が存する場合と同様の取扱いをすることが合理的であるのかということを踏まえつつ,このような考え方に基づく制度を設けることの当否について御審議をいただければと考えております。

 最後に,3でございますが,これは,理論的には,合同運用団をもってあえて複数受益者の存する一つの信託と同視する必要はなく,あくまでもその法形式どおりに,複数の信託契約に基づく複数の信託財産,受益者の束であるという前提をとったといたしまして,その上で,実務的に,この考え方に従った場合には不都合があると指摘されている場面について,本当に不都合があり,対処すべく何らかの規定を設ける必要があると言えるのかについて検討を試みたものでございます。

  まず,第1点の前段でございますが,これは,合同運用財産全体に関する信託帳簿の閲覧請求権を各信託の受益者に認めた場合には,信託事務の円滑な遂行の支障となったり,請求者以外の受益者の利益が害されかねず,かかる弊害に対処する必要があることにかんがみ,閲覧請求権については,合同運用団を単位とした一つの信託に複数の受益者が存するものと解する必要があるのではないかという問題指摘でございます。

これは,閲覧請求権を少数受益者権とする,例えば商法に倣って総受益権の100分の3以上を要するというようなことにするのであれば,合同運用団全体を一つの信託とみなすことによって分母を飛躍的に増大させることによりまして,受益権の保有要件を満たす受益者が著しく減少するという効果があると考えられます。

しかしながら,かつて提案いたしましたとおり,受益者の信託帳簿閲覧請求権を単独受益者権とするのであれば,結局,どのように分母をふやしましても,いずれの受益者も自由に閲覧請求権を行使できることに変わりはないので,このような考え方を維持する限りにおいては,実益の乏しい議論ではないかと思われるわけでございます。

  また,第1点の後段でございますが,これは,合同運用団全体を一つの信託と解することができない限りは,信託帳簿を一個作成するのみでは足りず,信託契約の個数に応じた複数の信託帳簿を作成しなければならなくなるのではないかという問題指摘だと思われます。

この点につきましては,15ページの(注5)に書きましたところですが,信託帳簿の作成義務については,合同運用財産全体についての帳簿は作成せざるを得ず,他方,これを作成すれば,この帳簿をもって各信託に係る信託帳簿とすることができ,各信託ごとに更に帳簿を作成する必要はないと考えられますので,実務上格別の不都合が生ずることはないと思われるということを書かせていただいたものでございます。

  次に,第2点は,例えば,合同運用財産につきまして,運営方法の変更,すなわち個々の信託契約における信託の変更を要する場合などを考えてみますと,合同運用団を単位とした一つの信託に複数の受益者が存するものと解すれば,受益者が複数の信託に関する規律,例えば多数決制度を導入することができて効率的ではないかという問題指摘でございます。

この点につきましては(注6)に書きましたが,かつて第8回会議で取り扱いました「信託行為の変更について」において提案しているところによりますと,信託行為の変更に関する方法を定めた規定は任意規定でございまして,例えば,各信託契約において,合同運用団の運用方法の変更は同一の合同運用団の受益者全員の多数決による決議に基づき行うものとするというような別段の定めを設けることによって対処可能であるようにも思われますが,このような信託行為における別段の定めに委ねることとした場合の不都合の存否も勘案して,この点はなお検討したいと考えているところでございます。

  最後に,第3点は,合同運用信託の受託者が受益権を取得したとしても,現行法9条に定める受託者の信託利益享受禁止の原則に抵触せず,信託が終了しないものとする実務上の要請がありますところ,合同運用団を単位とした一つの信託に複数の受益者がいるものと説明することができるとすれば,受託者が共同受益者の一人になった場合にすぎないと解することができ,9条に違反するものではないということになって,実務の必要性にかなうのではないかという問題指摘でございます。

この点につきましては(注7)に記載したとおりでございますが,第3回会議で取り扱いました「受託者の利益享受の制限について」で提案しているところによれば,単独受託者が単独受益者から受益権全部を取得したといたしましても,相当な時期に受益権の全部又は一部を処分すれば信託を終了しないということを明らかにするのであれば,合同運用団をもって一つの信託とみなさなくても不都合は生じないのではないかと考えられるところでございます。

  以上のような諸問題についての考え方,その他検討すべき事項があれば,あわせて御意見,御審議をお願いしたいと思います。

● それでは,合同運用について,大きく分けて三つの問題点があるわけですけれども,どこからでも御自由に御発言いただきたいと思います。

● それでは,2点。

  1点目でございますが,一つ目の丸の問題でございますが,これについては,乙案を支持ということでございます。

  一般に,利殖を目的とする信託の場合につきましては,合同運用を行うことが,規模のメリットとリスクの分散という二つの観点から,基本的には信託目的に合致しているということと,あと,当然,権限の範囲内であると考えられますので,信託契約に明示的な定めを置く必要はないのではないかと。

また,合同運用をしている場合については,それぞれの信託に,これは説明文の中に入っていましたけれども,共有持分権が帰属していると考えられますし,その共有持分権が計算上管理されていれば,言いかえますと帳簿により管理されていれば,分別管理義務というのは果たされているのではないかと思われますので,特段の規定は設けなくてもいいのではないかということで,乙案支持ということでございます。

  2点目は,二つ目の丸と三つ目の丸ということでございますけれども,私の方から,第3回の本席におきまして,「第6 受託者の利益享受の制限について」という部分と,第7回目の「第49 受益者が複数の信託の意思決定方法について」というところで,複数の信託契約ではあるけれども合同運用によって一つの信託であると評価できるものについては特別の規定をお願いできないかというような主張を行わせていただきましたけれども,その後いろいろと検討しました結果,ここについては考え方を変えております。

  実際,実務上懸念していましたのは,先ほど御説明がありましたけれども,受託者の利益享受の制限の部分について,新しい規律によりますと,受益権全部を取得したとしても相当期間保有できるというようなことであるとか,あとは,複数受益者の意思決定の問題につきましても,基本的には契約に書くことによって対応ができると。

逆に,書く・書かないというところでの自由度が増すというところがございますので,基本的には特別の規定を設けていただきたいというようなことを申し上げましたが,ここの部分については撤回いたしまして,こういう規定のないような形でお願いできないかということでございます。

● ほかに。

● 一番最初の甲案,乙案のところですけれども,これは甲案の方に賛成いたします。

  例えば,受益権の販売という形で多数の人からお金を集めるような場合を想定しますと,この受益権を買うという立場からすれば,買う段階でそれを買うかどうかを判断するわけですから,その段階では,信託行為で,将来はこういう規模でやりますよとか,これとこれが一緒になる可能性がありますよとか,そういうのが明示されていないと判断のしようがない。

受益権を買った後で,それが知らないところで,別のところと合同でこうやってこんな規模になっているという,そういう全くそれに対するリスクを負担する覚悟のないリスクがかぶってくることもありますので,信託行為の明示が必要と考えます。

● 今,甲案,乙案,それぞれ意見が出たわけですが,ほかにいかがでしょうか。

● 質問なのですが,仮に甲案となった場合に,例えばその甲案のとおりに履践しなかった場合の効果というのはどうなるのでしょうかということです。

  本件に関しては,ちょっと私の意見はないわけでして,ただ,実務においては信託の場合は書いているというわけですので,まあどちらでもいいのかなというふうには思います。

ただ,実際に○○委員がおっしゃったとおり,いわば投資家保護の観点もありますし,他方,自由な規律を求めるために,こういうものはあえて必要ない,必要なときに入れるべきであって,ないしは信託業法であるとか投資ルールの中で決めるべきであるという考え方もあろうと思うのですけれども,それを考える前に,そもそも,これを置いたとして,それを守らなかった場合の効果ということについてどうお考えなのかということをお尋ねしたいと思います。

● 今のは,甲案の考え方をとった場合に,その違反があった場合ということだろうと思います。

甲案というのは,結局,信託行為に定めを置きましょうというだけしか書いておりませんが,一応,ここに掲げましたところでは,その背景にあるのは,基本的には分別管理義務の問題が控えているからであるという考え方だろうかと思います。

その考え方によりますと,これは結局,分別管理義務違反そのものでございますので,分別管理義務に違反した状態で損害が生じたときにどういう責任を負うのかと。

今の信託法ですと,28条に俗に無過失責任といわれる規定があったかと思いますが,そういう規定がかかるような状態になるというようなことではないかと思います。

  あるいは,全く逆に,乙案のように権限の問題にも関係するのではないかという考え方も一応あり得るのかなという気はいたしまして,つまり,合同運用の権限がありますよと書かない限りは合同運用の権限はないという趣旨であるとすると,結局は権限違反の問題になりますので,取消しとか何とかという話になるのかなと。

 恐らく,○○委員がおっしゃったのは,どちらかというと権限の問題で整理した方が話はつながりやすいのかもわかりません。

それはよく分かりませんけれども,分別管理の問題というふうに考える,あるいは権限の問題として考える,一応両方あり得るのではないかなというのが……。

● そうしますと,私なりの整理をすると,一見甲案の方が受益者保護にたけているというふうに見えたとしても,今さっきの御説明によれば,甲案によれば受託者に対する損害賠償請求権にとどまって,本質的な,こんな信託は認められないという取消しまでは認められないと。

むしろ乙案の方が取消しができるということである-もちろん,いろいろな場合があって,どっちがいいか悪いかということは一概に言えませんけれども,乙案をとった場合に取消しができるという余地を残すという意味で,乙案の方がいいという考え方もあるという,そういう整理になるということですか。

● 一概にどうだというのは,今おっしゃったように言いにくいところではありまして……。

分岐点としては,まず,権限違反あるいは権限の問題として合同運用をとらえるかどうか,ここで一つ分岐点がございますし,更に分別管理上も問題があるかと,二つ分岐点があって,ここでは,もともとほかの研究会がございましたが,そちらの研究会の方で指摘された考え方ということで一応二つ挙げておりますが,分岐点は2掛ける2で4になるのかなという気はいたしますけれども。ですから,一概に甲案なら,乙案ならと言うと,ちょっと語弊があるかもわかりません。

● 確かに2種類の問題があって,それから更に,結果としてはどちらの方がどういう利益を保護できるかということとかかわってくるのだと思いますけれども,今の○○委員の御意見の中で,いずれにしても信託行為に書くのだから実務では余り影響ないというふうなことだったのですが,その点は,○○委員はいかがでしょうか。

● 基本的にはほとんど書いていると思いますので,実務上の影響はないと思うのですけれども,基本的な合同運用についての考え方というところからすると,やはりそういう-例えば利殖ということを目的にする限りにおいては,基本的に,それこそ規模を追求して,そのメリットと,リスクを分散するというような観点からすると,まあいい方向に行くのだろうと思いますし,そういう権限はそもそもあるのだろうということですので,あえてそこは書く必要がないのではないかということと,あと,合同運用の状態というもの自体を考えたときに,共有というものは今まで余り考えられてこなかったのではないかと思うのですけれども,共有状態というもの自体がそもそも認められると,そういうことを分かっていただきたいというか,そういう状態にしていただきたいというようなことで,乙案支持ということを申し上げた次第です。

● そうすると,実務上の便宜というよりも,むしろ考え方として認めてほしいということですね。

● 私も余り実益のあるコメントではないのですけれども,どちらをデフォルトにするかという問題で,実際は余り困らないでしょうということだと思うのですけれども,考え方ということで1点。(注2)に関連するのですけれども。

信信間を合同運用する場合はどうか,そして,しかし固有財産と合同運用するというのは,これは(注2)だけを読みますと,その合同運用を続けていった後の状況次第では忠実義務の問題が生じますよというふうに読めるのですけれども,固有財産と合同運用するということ自体がやはり忠実義務の問題ではないかと思うのですね。

したがって,例えば乙案のような考え方をとる場合には,もうこれは忠実義務の例外規定であって,合同運用に関する限りはこの法律の規定がそれを認めているのだという理解にすべきではないかと思います。

甲案をとる場合には,ここで言う信託契約に書いた,信託行為に書いたということをもっていわば忠実義務を解除するというふうに解釈できますので,そこの問題はないと思うのですけれども。ちょっとそういう点が考え方のレベルであるように思います。

  実際どうするかは,運用目的の場合には,実際問題としては合同運用しないと動かない話だとは思うのですけれども,デフォルトルールがどちらであるにせよ,恐らく実益はないので,そこは実務的に詰めていただければと思います。

  もう1点,ついでによろしいですか。甲,乙以外で。

  これは○○委員がおっしゃったことで,私,過去,大学の授業等で欠席してしまっていますものですから,大きな誤解をしているかもしれないのですけれども,先ほどの○○委員の御発言を伺っていますと,分割して多数の受益者がいる場合には,多数決というのでしょうか,前の方でやったようなルール,現在の信託法ではなくて,新しいルールを設けた方がいいけれども,ここで問題になっているような場合,すなわち信託契約が複数ある典型的な場合は不要ですと,なぜならばそれは信託契約で定めることによって対応できるからですというふうに聞こえたのですけれども,私がこの第66を読ませていただいた限りにおいては,二つ目の丸のような提案というのはどのように考えるべきかというか,提案ではないと思うのですけれども,確かに,14ページに書かれたように,どういうように線引きをするかというのは,仮にこういうルールを設けるとすると物すごく難しい問題はあると思うのですけれども,ただ,もし○○委員がおっしゃったようなことであれば私も心配はないのですけれども,本当にそうなのかというのがちょっと心配なのです。

  つまり,どういうことかというと,多数決等で定めてよろしいというのは,受益者が複数いるときに,その過半数とか3分の2とかで決めてもいいですということを議論しておられたのではないかと思うのですけれども,そうだとすると,今は受益者以外の人の意思で決めますというのがここの問題になるのですね。

例えば,100本信託契約がある場合に,受益者は一人なのですけれども,1本1本は,あなたの意思では決まりませんよと。

物事を決めるときには,ほかの67人か何かの意思で,内容はそれぞれいろいろありますけれども,あなたの信託契約も決まりますよということをここの信託契約で決めていいということを前提での御発言だと思うのですけれども,もしそうであれば私も心配はないのですけれども,果たしてそうなのかはちょっと疑問です。

  現在,例えば信託約款の変更というのが,兼営法の5条の3に基づく手続等ありますけれども,これは,1本1本あって,しかし集団的信託約款というか内容は全部同一であって,本来は一人一人の同意があって変更すべきものを特別法でああいうルールを設けているにすぎないと思うのですね。

ですから,信託行為で書いておけば,その受益者-一人しかいないわけですけれども-の割合に関係なく,ほかの人の意見で決めますということも議論されて,そういうものをもって多数決ということであったならばいいのですけれども,○○委員がおっしゃった前提のところが確認されているかどうかが,もし私が欠席していたときに議論されていたのだとすれば

申し訳ないのですけれども,一応発言させていただきます。

● 今,○○委員がおっしゃった,ほかの信託の受益者の同意というようなことも別の信託の信託行為で書けるかということでございますが,事務局の方のこれまでの提案では,例えば信託行為の変更などの局面でも,第三者,あるいはもちろん受益者でもいいですけれども,第三者に対して変更権を与えるということも信託行為で定めることができると。

  そういうことからいたしますと,第三者,例えば別の信託の受益者,A,B,Cという同じような運用をしている他の受益者の意思も合わせて信託行為の変更を定めることができるというように信託行為で定めれば,そういうことも許されるのではないかと考えられまして,結局,信託行為でそのような権限を与えられる者が,同一信託の中でなくても,外部の者であっても,信託行為でそういう授権はできるというところは,信託行為の変更一般の場合であっても,このような合同運用の他の信託がいる場合であっても,同じように信託行為で決められるのではないかということで,それとの並びで,我々としては,ある信託行為で他の合同運用に供されている信託財産の受益者との共通の意思決定で定めることができますというような規定を設けることは,可能ではないかと考えているところでございます。

● もう1点,先へ進めて,例えば利益相反行為があるものに同意をするような場合というのはどうなんでしょうか。

信託行為に,他の受益者の-他のというのはどう特定するのかよく分かりませんけれども,100本あるうちの他の67本の者-全部均等ではありませんけれども-が同意すれば,それで結構でございますというようなことでよろしい……。信託行為の変更は分かりましたけれども。

● ○○委員が今おっしゃった点に関しましては,これまでの部会での議論の状況について申し上げますと,少なくとも信託行為の変更だけでございましたので,忠実義務違反に対する同意というところはもちろん任意規定でという話はございますけれども,そこのところでの信託行為による別段の定めがどこまでという議論は恐らくまだこの部会ではされておりません。

● そうすると,もうちょっと考えなければいけないということかと思いますけれども,より一般的に言えば,まだいろいろな場合がありますよね。

今,二つ典型的な場合を挙げただけでして。多数決で決める必要があるのではないかと。

複数の場合に,分割されている場合に。ですから,そうだとすると,もうこっちは何も要らないよと○○委員のように言い切ってしまっていいのかどうかが私はかえって心配になってきまして……。

  もうちょっと,幾つかのケースというか,ひょっとするとすべてのケースについて詰める必要があるのではないでしょうか。どうも信託行為の変更は不要そうなのですけれども,今の御説明を伺いますと。

● 恐らくおっしゃるとおりで,受益者が同意をして意思決定をしますというようなのは幾つかパターンがございますし,あるいは委託者が入ったりというのを他のところで網罪的に整理しておりますので,そのあたりについてということかなというふうに思います。また検討するということかと思います。

  それから,今,こちらの考えとして申し上げましたけれども,まだ信託行為の変更の部分についても方向性が決まったということではもちろんございません。

● いずれまた変更のところでも御議論いただけると思いますが。

● 今の点に重ねて,一つ質問なのですが。

  そこで前提にされていますのは,実質的に1個の信託であるとの評価は可能であるということで,そして,そのような信託を選別するための要件を検討する必要があると。

正にそのとおりなのですが,必要がある,どう考えましょうということをお聞きになっているだけだろうとは思うのですが,大体どういうものを想定されているのかというのがちょっと分からないもので,議論のしようがないということもあろうかと思います。

  考え方といたしましては,いろいろあるだろうとは思うのですけれども,一番問題が生ずるかなと思いますのは,客観的に見て何か基準を立てて,これは同一だから1個のものとして扱うというのが何か外からふってわいてくる,それによって,個々の受益者としては,自分は1本だと思っていたところが,まとまった扱いを受けることになると。それが,今の○○委員の一番大きい問題を生む原因なんだろうと思うのですね。

  ですから,やはり,何が1個の信託であると評価するかという,その規準を語らないと進まないんじゃないかなという気がいたします。

何か想定されているものがあるならば,お教えいただきたいですし,それも全部オープンなのだということであれば,今後の課題かなというところですが。

● 具体的な例としては,ここの2のところに,例えば貸付信託とか合同運用金銭信託と,こういう実務でやっているものが典型的に想定しているものでございますが,こういう例は例といたしまして,ではどういう要件を設けるかというのは特に想定しているものはございませんで,そこについてオープンに議論をしていただければという趣旨でございます。

● 今の点につきましては,私自身は,契約に分かるように書いていればそれがそうなんだろうなというふうに思っていたのですが,そういうことでもないのでしょうか。

例えば貸付信託であってもそうですし,合同運用でもそうですけれども,それは契約があって,その契約に入ってくる人からすると,ある一定の範囲内のものは一つの運用団として運用されるのだろうなということが分かりますので。私はそんなイメージでいたのですけれども,そういうことではないのですか。

● 逆に言うと,信託行為に書いていないとだめだということですね。

● はい。

● 恐らくそういう切り口も-つまり,結局のところ当事者がどう思ったかにかからしめるという考え方かと思いますが,そういうのもあるのではないかという気もいたしますが,それは結局のところ,実は一つの信託であるという契約を結ぶのと変わらないか,あるいは,この2で言いますと,この考え方自体は,以前御指摘を受けてというところはございますけれども,当事者が1個の信託になりますというふうに書かなくても,一つの信託であるという扱いをすることに合理性がある局面というのは多いのではないかということでこういった発想が出てきているんじゃないかなという気がいたしますので,そういうふうに解しますと,当事者がどう書いたというよりは,先ほど○○幹事がおっしゃったような,外部的に客観的要件を決めてという方が,何となく発想自体からはなじみがあるのかなという気はいたします。

この提案をされる方からすればということかと思いますが。

● 今の点に関連して。

  余り細かい話はどうかと思うのですけれども,私も今の点は気になっていまして,もし線を引くとすると,合同運用だから特別だということなんですよね。

そうすると,それを合同運用しますと書いてあれば,実際にされなくてもこの中に入ってくるのか。

それから,乙案なんかをとると,仮に何も書いていなくても,勝手にといっては何ですけれども,必要の限りで合同運用できるわけですから,これは書いてあるものを基準にすることはできないわけですし,仮に一部だけ書いておくこともできるわけですから,やはり書いてあるものを基準には恐らくできない。

基準にしていいというルールを書けばいいのですけれども,書かない限りにおいては,現在提案されているような形での線引きは恐らくできないということだと思うのです。

  それから,全部書いたところでということだけで決められるかというと,これも,横の運用もあれば,並列的なものと,それから縦の再信託を含めての直列的なものもありますので,これまた書き方によってなかなかややこしい問題が出てくるような感じもするのですね。

  他方,もう実態でというのは,もうもともとの発想が,これは実態が合同運用ならそうじゃないですかという,実質から出発した提案だと思いますから,その意味では全く正しいのですけれども,それを法律にどう書くかという非常に難しい問題があるものですから,そうすると,どうしてもある程度,信託契約に書いてくださいというテクニックを使うとか,何かをやはり経由しなければいけないという,そういう問題だと思います。

  何か,全然意見もなくて,問題の所在だけ言っていて,大変申し訳ないのですけれども。

  それで,多数決のところの資料を拝見しますと,表があって,前の方の資料ですけれども,部会資料7か何かで,やはり,「多数決による意思決定の可否」が「可」と書いてあるのがたくさんありますよね,ほかにも。

先ほどの例以外にも。ですから,例えば信託の併合・分割の合意権,受託者の辞任に対する承諾権,受託者の解任……  。

私,表だけしか見ていませんので,何か間が抜けているかもしれませんけれども。ですから,全部やっていかないとまずいんじゃないでしょうかね。この合同運用の場合について今の問題をどう考えるかということを検討するためには。

● そうですね。更に具体的に,できるだけケースをすべて網羅するような形で検討するということが必要だろうと思いますし,それはまた今後,引き続き検討するということになると思います。

● 1点だけなのですが,当事者意思の問題が出ておりますので,一言だけ申し上げますと,当事者意思が合同運用にあったからといって,複数受益者の規律に関して適用されるという当事者意思があるというふうには言えないわけであって,合同運用されるという意思が,定型的に,すべてのものを一緒に持ってくる意思を持っているとは言えないわけですので,結論から申しますと,すべてのことについて書かないとだめなんじゃないかと思うのですけれども。

● 実体的にどういうふうに切るかということと,それから,それが外から見たときに明確に区別できるかと,多分,論理的には2種類あると思うのですが,それが実はもう切れないかもしれないということでしょうか。

  この甲案,乙案について,それぞれ御意見が出ておりまして,実務的にはそれほど変わらないかもしれないけれども,しかし投資者保護というようなことを考える必要があるのではないかと。

更に,忠実義務との関係,分別管理との関係を検討すると。更に,この一つ目,二つ目の丸を通じてより分析的に考えていくべきだというような御意見をいただいております。

  15ページに,具体的な問題として,信託帳簿の閲覧等々についての事務局からの質問もあるわけですが,もしこの点について御意見があれば。

あるいはほかの点でも結構ですけれども。もう時間が近づいておりますから,今日は合同運用までしかできませんけれども。

● もう1点だけ,よろしいでしょうか。

  かねがねから,私,疑問に思っていた点を,ちょっと今の点に関係するので,簡単に申し上げさせていただきたいと思います。

 今回,信託法の改正の方で手当てがされるのかもしれないのですけれども,それは信託業法とか-信託業法も今度変わりましたけれども,この部分は変わってないと思うのですけれども,兼営法とかがある部分でして,受託者-今で言えば信託銀行ですけれども-が合併をしたり分割をしたりする場合なのですけれども,こういう合同運用,例えば合同運用金銭信託が行われていたとしまして,そこで一人が文句を言うとどうなるかということがありまして,これはどうもよく分からないのですね。

  よく分からないというのはどういうことかといいますと,信託法の合併というのは解散と同じ扱いに現在はなっている。

受託者の更迭が起きるかどうかということなのですけれども,業法の方は特別規定になっていまして。ですから,原則は,引き継がれると。

A信託銀行さんがやっていた合同運用金銭信託は,A信託銀行がB信託銀行と合併すれば,B信託銀行が存続会社だとしますと,それはB信託銀行に引き継がれるというのが普通の,そういうふうに規定は書いてあるのですけれども,ただ,問題は,その中で一人の人が合同運用金銭信託で反対したらどうなるかというと,よく分からないのですね。

どうもその部分についてだけ受託者の更迭-今の言葉で言うと更迭というか,交代と言ってもいいと思いますけれども-が起きるというふうに読まざるを得ないのか。

しかし,それは余り現実的でないことは明らかですよね。1,000人いて,999人の部分についてはB銀行が引き続き受託者でございます,しかし残りの一人の分については,一体どうするのか知りませんけれども,新しい受託者を選ぶのか何か,とにかく合同運用しているからです。

  これはちょっと例として申し上げただけで,そういう場合も,契約であらかじめ決めておくことによって対応できるということであれば誠に結構だと思うのですけれども,もしそういう問題があるとすると,その線の引き方は非常に難しいのですけれども,少なくとも非常に典型的な合同運用の場合-というのでしょうか,うまい表現ができませんけれども-については,やはり何らかの知恵がないと,実際は分からないまま推移するということになるのではないか。

そういう意味ではちょっと改善が必要なのではないかと思います。ひょっとすると特別法の方の問題なのかもしれませんけれども。

● ほかにございませんでしょうか。   それでは,これで閉会いたします。