法制審議会信託法部会第33回会議 議事録









 
第1 日 時  平成28年9月6日(火)   自 午後1時29分
                       至 午後4時49分
 
第2 場 所  法務省第1会議室
 
第3 議 題  公益信託法の見直しに関する論点の検討
 
第4 議 事 (次のとおり)
 
議        事
○中田部会長 予定した時刻が参りましたので,法制審議会信託法部会の第33回会議を開会いたします。本日は御多忙の中を御出席いただきまして誠にありがとうございます。
  本日は,平川委員と岡田幹事が御欠席です。また,多少遅参される方がいらっしゃるということです。
  前回まで関係官でおられた溜箭調査員が在外研究に出られまして,交代で本日の部会から東京大学の藤谷准教授が加わることになりました。藤谷調査員,簡単に自己紹介をお願いいたします。
○藤谷関係官 法務省民事局調査員の藤谷でございます。租税法を専攻しております。どうぞよろしくお願いいたします。
○中田部会長 よろしくお願いします。
  それでは,本日の会議資料の確認を事務当局からお願いします。
○中辻幹事 お手元の資料について御確認いただければと存じます。部会資料33「公益信託法の見直しに関する論点の検討(2)」を事前に送付させていただきました。また,当日配布資料として,今回御欠席の平川委員から「『公益信託法の見直しに関する論点の検討(2)』に対する意見書」を頂いております。その内容をご紹介しますと,部会資料33で提案している事項についておおむね賛成とされている部分が多いのですが,何点か御指摘ないし別の御提案をされている部分もありますので,この後の部会資料の説明や御審議の段階で当方から補充の説明を行うことを予定しております。さらに,吉谷委員提供の「信託主要法令資料」平成28年9月版を席上にお配りしております。前回配布したものは平成27年9月版であり,今回改めて最新版をお配りしたということになります。
  以上の資料について,もしお手元にない方がいらっしゃいましたらお申し付けください。
○中田部会長 よろしいでしょうか。
  それでは,ただいまの部会資料33について御審議を頂きます。具体的には,このうちの「第1 公益目的の信託事務の定義等」と「第2 受託者に関する認定基準」をまず御審議いただきまして,午後3時頃を目途に適宜休憩を入れることを予定しております。その後,「第3 信託事務に関する認定基準」について御審議いただきたいと思います。
  それでは早速ですが,「第1 公益目的の信託事務の定義等」について御審議いただきます。事務当局から説明してもらいます。
○立川関係官 部会資料33のうち,まず冒頭の(前注)部分について説明いたします。
  (前注)部分では,公益法人制度において,公益法人認定法が規定する各種の認定基準が,公益認定の取消し等の監督上の措置を行う基準となっていることを参考にしまして,今後,公益信託の認定基準を検討するに当たりましては,それが単に公益信託の認定基準となるにとどまらず,認定取消事由となり得ることを前提にすることとしています。
  続きまして,第1の「公益目的の信託事務の定義等」のうち,1の「公益目的の信託事務の定義」について説明いたします。
  まず本文では,公益目的の信託事務の定義に関し,「公益目的の信託事務は,学術,技芸,慈善その他の公益を目的とするものであって,不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与するものとして,具体的に列挙されたものであるとすることでどうか。」という提案をしています。
  その提案の理由としましては,公益というものの概念につきまして,公益信託と公益法人とで異なるものとする理由はなく,公益目的の信託事務を定義するに際しても,公益目的事業の定義を参考にすべきと考えられることなどを挙げています。
  なお,公益目的の信託事務を提案どおりに定義した場合,不特定かつ多数の利益の増進に寄与するものであるか否かにつきまして,例えば,受給権者が特定の範囲の者に限られる信託について公益性がないとされるなど,認定実務におきまして形式的な判断がされる懸念があるかと思われます。しかし,公益法人の認定実務においては,受益の機会が特定の者に限定される事業であっても,公益目的の実現に直接貢献するといった合理的な理由がある場合には,不特定かつ多数の利益の増進に寄与するものであるとの認定をしているとされているところであります。こうした公益法人の認定実務を踏まえますと,公益目的の信託事務の定義を提案どおりとした場合でも,公益性について形式的な判断がされる懸念はないものと考えております。
  また,提案部分の(注)書きにも記載しましたが,本論点では,これまで説明したとおり,公益性の有無の観点から,公益目的の信託事務の外縁を画する定義について検討することとしております。
  前回第32回部会では,公益信託の受託者が助成事務以外の事務を行うことを許容するかなどといった論点を検討したところですが,これとは別に,公益性の有無の観点から,公益目的の信託事務の定義に関して御議論いただければと存じます。
  なお,平川委員御提出の意見書では,この定義に関しまして,公益法人認定法第2条第4号の定義と比較して,定義の順序が異なることに意味があるのか明かされたいとの指摘がされています。
  確かに,両者の記載内容は多少異なりますが,第1の1は,公益目的の信託事務の定義に関しまして,公益法人認定法第2条第4号の規定を参考に記載したものであり,両者に実質的な差異はなく,表現ぶりの違いがあるにすぎないとお考えいただければと存じます。
  続きまして,第1の2,公益目的の信託事務の種類について説明いたします。
  本文では,「公益目的の信託事務の種類として具体的に列挙するものは,公益法人認定法別表の掲げる公益目的事業の種類と同一とすることでどうか。」という提案をしています。
  第1の1の論点でも説明しましたとおり,公益の概念について,公益信託と公益法人とで別に解すべき理由はないことから,公益信託の公益の概念の明確化に当たっては,公益法人と同様の手法をとることが自然であると考えられることを根拠として,このような提案をしているところであります。
○中田部会長 それでは,ただいま説明のありました部分について御審議いただきたいと思います。1と2は関連いたしますので,特に順番は付けません。どこからでも御自由に御発言をお願いいたします。
○小野委員 それでは,ちょっと口火を切らせていただきます。取りあえず2点申し上げたいと思います。
  一つは,限定列挙といいますか,限定列挙して政令指定という形になっていますけれども,公益という概念は,今現在の想像力を超えるところが将来的にもあると思うので,政令となりますと,各関係省庁の合意ということが必要となりますから,やはり限定列挙ではなくてオープンといいますか例示規定という形がふさわしいのではないかと思いますし,そういう形で日弁連のバックアップチームにおいても議論いたしました。
  では,具体的に今現在何が欠けているのかというような観点で検討しましたが,例えば,基本的人権も一部表現の自由とか入っていますけれども,基本的人権絡みのものが決して全部列挙されているわけではないし,例示ということであればここで列挙をわざわざする必要があるのかという議論もあるかと思います。また,仮に9条改正反対とか何か平和運動とかについても,22項目に入っていないのではないかという議論もございました。ですから,そういう項目を入れてほしいというよりも,やはり公益性ということの広がりからすると,限定列挙ではない方がよりふさわしいと思います。また,公益法人改革のときは,既存の公益法人という枠組みといいますか,既存のものがあってその上での改革ということでしたけれども,公益信託の場合は既存のものがあるといっても,今は金銭給付型ですけれども,今後違う形で展開をしようとしているわけですから,新たに制度を構築するという観点から,やはり背景が異なるのではないかと思います。
  2点目は,不特定多数の議論でございまして,補足説明に書かれていることにもちろん賛同いたします。不特定多数については,従前の民法の議論とは違った意味で捉えられるということでふさわしいと思いますけれども,片や,実定法としての信託法を考えたときに,従前の民法の議論と異なる解釈ということをここで議論し,また将来的に一問一答等に入れていただくとかいろいろ進め方はあるかもしれませんけれども,解釈としてそれが将来またかなり限定的になるという懸念もあるのではないかという議論もございまして,ですから,できる限り条文に反映できるようにしていただくか,その他何らかの明文の規定に落としていただくことにより,不特定多数を限定的に解釈しない公益法人法と同じような方向性にしていただきたいと思います。
○能見委員 今の小野委員の御意見と重なるのですが,限定列挙のところについて一言述べたいと思います。
  この限定列挙について,一つは理論的な観点からの問題なのですが,なぜここで限定列挙されているかということの理由が,この文章,説明の中にもありまして,公益法人のときにも言われたことだと思いますけれども,公益性の認定をスムーズというのでしょうか,こういうものは大丈夫だということで明確化するということにあるのだろうと思います。しかし,ここに書いてあるものは,もちろんこれだけでは判断できませんけど,ここに書いてあるものは大丈夫だとしても,それ以外のもので公益性があるものは幾らでも社会の変化に応じて出てくるわけで,限定列挙という考え方がそういうものを排除するという趣旨でないのであれば,ここのは限定列挙ではなくて,先ほどオープンと言われましたが,オープンな形にすべきなのではないかと思います。政令で指定できるとはなっていますけれども,実際に政令指定があるのかどうか知りませんけれども,恐らくなかなか使いにくいのだろうと思うのです。
  もう一つは具体的な運用のレベルの問題ですが,私が前から気になっていたものに,動物愛護という活動があるのですが,動物病院とか,あるいは猫を去勢するとかいろいろな活動をしていると思いますが,これが現在の公益法人のところで限定列挙されている目的の中にうまく入らないのですね。私のうろ覚えですけれども,公益法人の新制度への移行期に,それまでは動物愛護目的が公益法人として認められていたのが,移行する際に公益性認定が難しそうだというので一般法人に移行してしまったものもあったと思います。しかし,他方で実際には動物愛護目的の公益法人もあるのだと思うのです。その場合に,公益性がどういうふうに認定されているか余り詳しく知りませんけれども,恐らく限定列挙されている目的の中のどれかに結びつけるような表現を定款の目的か事業のところに書いているのだと思うのです。それは非常に姑息なやり方だし,本来,望ましくないと思います。そういった意味で,先ほど言った理論的な観点からもおかしいし,また,実際にも不都合もあるので,ここはやはりオープンにいくべきではないかと思います。
  それから,これはむしろ樋口委員の方が詳しいと思いますけど,たしかイギリスのチャリティ法は公益目的として認められる目的を幾つか列挙していますが,イギリスでも何を公益目的とするかについて歴史的に大問題があったわけですが,最終的に2011年のチャリティ法では公益目的を列挙はしていますけれども,その他の目的でも公益目的と認められるようにオープンな形の規定になっていて,このような方式がこれからのあるべき公益信託の在り方ではないかと思います。ただ,公益法人と変わってしまっていいのかというところはやはり気になりますので,この信託法部会で限定列挙方式について問題提起をして,できれば公益法人の方も変えていただけると一番有り難いのですが,最後は余計なことかもしれません。以上です。
○中田部会長 ほかにいかがでしょうか。
○山田委員 具体的にどのような事業を追加すべきかどうかという議論ではないのですが,ここに書かれていることから少し外れることについてもし御検討されていたら,そこをお伺いしたいということであります。
  「学術,技芸,慈善その他の公益」ということでこのゴシックのところに書かれていまして,それが公益法人認定法に倣っているものであるという御説明はよく分かりました。それは,私は結論としてはそれでいいのだろうと思います。ただ,民法の33条2項というのを見ますと,学術,技芸,慈善,祭祀,宗教その他の公益になっています。現在の公益信託法も学術,技芸,慈善,祭祀,宗教その他の公益になっていて,この両者は符合しているのです。そうすると,現在の民法と公益法人認定法との関係では,明確に除外しているかどうかはともかく,祭祀と宗教を民法から公益法人認定法に移すときに落としているのですね。そして,では,信託をどちらで公益を考えたらいいかということが問題になるのだろうと思います。
  そのときに,宗教,祭祀については宗教法人法というのがあるのだろうと思うのです。したがって,公益法人認定法でどういう議論がされたか私調べておりませんし,関与していませんのでよく分かりませんが,個別の法人法があるものについては,排除するかどうかはともかく,正面からは取り込みにいかないというような判断があった可能性があると思うのです。それは恐らく社会福祉法に基づく社会福祉法人とか,更生保護事業法に基づく更生保護法人とか,そういったものについても似たような問題があるかもしれない。あるいは,この別表に社会福祉法人とか更生保護法人は当たるものもあるのかもしれませんが,別表には宗教,祭祀は正面からこれだろうというのがなさそうです。
  そうすると,信託の話ですが,信託については,社会福祉法人とか更生保護法人とか,あるいは宗教法人とかという特別法で法人格を与える分野というか領域がありませんので,法人と並びで考えていいかどうかというところは,やはり実質的に考えないといけないのかなという感じがします。
  そこで,よく分からないのですが,信託で公益信託のものというのは,期間を限って公益事業をすることを限定するわけではありませんが,そういうものができるスキームと考えると,民法33条2項から出発しましたから,そのうちの一定のものについてはそういう期間を限ってのスキームでの公益事業には必ずしもふさわしくない,あるいは,ふさわしくないとまで言うとまたいろいろ語弊があるかもしれませんので,ちょっと言い方は工夫しないといけないのですが,少し距離があるというふうなことで宗教,祭祀というのを今回外すというような議論を一度した方がいいのではないかなと思います。御準備のときにそのことを御検討されていたならば御紹介,御披露いただけると幸いです。
○中田部会長 関連する御意見ございますでしょうか。
○林幹事 基本的には御提案の方向付けには賛成ですが,問題意識として,現在の公益信託においては,公益性の認定が厳しくてなかなか成立し難いというところがあることから,少なくとも公益法人のような柔軟な形で公益性を認定してもらいたいという点があります。それは第1回の法制審でも出たところですので,そういう方向付けで御提案いただいていることには賛成したいですが,部会資料の中でも御説明いただいていることや,公益法人の実務で柔軟に解釈していることについて,そのとおり公益信託法の方で持ってこられるのかという問題があります。御説明では可能であろうとのことでしたが,そうできるか心配はしています。それについて何らか条文に取り込めればいいのですが,そうでなければ何らかの方法でそれを明確にするようにしていただきたいと考えます。公益法人の場合でも一問一答には入っていたようなので,少なくともその程度のそういうことはしていただきたいですし,ここでも議論に残していただきたいというのが1点です。
  それから,先ほど来の2の限定列挙のところです。既に22項目でも,それなりに広くカバーされているという認識もあるものの,先ほどの限定列挙でなくて例示列挙で進むべきだという議論のもそうですが,さらに改めて何かプラスできないのか,すべきものはないのか,あるいは特に今日的な問題についてきちんと22項目でカバーされているのかというのを考えていただけたらと思います。個人的には,例えば,災害の問題は,予防というのはあるのですけれども,災害が起こった後のことについては入っていないようにも,入っているようにも思えます。また,弁護士会の中ではLGBTの問題なども指摘がありましたが,こうした今日的な問題はたくさんあるはずで,そういうものが改めてカバーされているかどうか検討した方がいいと思います。これより狭める必要はないのでしょうけれども,プラスアルファするということを考えたらいいのではないかと思います。
○中田部会長 ありがとうございました。
○小幡委員 公益法人の方の認定に関わっている立場からすると,現在,公益法人の場合には,どこかに引っかかる,引っかける形で非常に広く「公益」を捉えているというのが実態ではないかと思います。
  ここの1回目の議論のところで,むしろ公益信託の方は対象の範囲などで,むしろ狭いような御様子がございましたので,そうであれば,公益法人の方の,せめてそこの広い「公益」とあわせるというのは一つの姿ではないかと思います。
  ただ,やはり公益というのは,確かに本来限定するようなものではなくて,何が公益かというのは画一的に決まってこないし,時代,社会環境等に応じて当然変わるものですので,余り限定列挙にはなじまない,典型的なものの列挙ということはできるとしても,完全な限定列挙というのは実は難しいはずです。先般,内閣府の公益認定の方でも一つ,公益と言えるかどうか難しいということで,排除した例がたしかあったと思いますが,最終的にはここのどこかに引っかけるとしても,本当にそれが公益かという実質的な議論というのは必ず必要になるので,そうすると,結局は公益というものの内容,実質については常に考える必要があると思います。
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  あとはどのように書いていくかということだろうと思いますが,少なくとも今の公益信託の実態よりは公益法人制度の方が広い公益ですので,特に不特定多数のところがある意味広くなっている,柔軟になっているという実態があるということです。
○樋口委員 ちょっとこれまでの議論を伺っていて感じたことを三つ,できるだけ手短にしますけれども。
  まず,一番最初に,やはり限定列挙にするかどうかというのは非常に大きな問題だと思います。それで,例えばアメリカの場合,最後のところで,そこの例えば地方自治体というのかな,地方自治体が行うようなものをとにかく代わって行おうとするものは,だから税金でやらないといけないようなものを代わって自分が私的な資金を出してやろうというわけですから,そういうものはそれに当たるというような,これは相当に,つまり概念が広いのですね。だから,その他というのでそういう概念規定をしておくと,例えば一例ですけれども,ほかに書き方はあると思うのです。この23号の書き方で,わざわざ政令と書いてあるものだから,非常に限定という感じがするので,これを何とかするかという課題があると考えます。
  そのときに,私も一方では,公益法人法制というのがあるわけですから,これと並べて一緒にするのが当然かなというようなことにもすごい説得力を感じるのです。しかし,一方で,他方で制度間競争というのか,とにかく,やはり少し変えておくというのが制度的な知恵で,これで何か公益信託の方でこんな話が出てきたよという話が何か見えるような可能性を残しておくと,やはり後で,ああ,それは公益法人だって同じじゃないのという話が出てくるかもしれない。だから,わざとちょっと曖昧な形で,何も全く一緒にするという話にすると,やはり発展性が非常に乏しくなるので,やはり限定列挙ではなくて,これはあえて一つ何か緩めの条項を入れておくというのは一つの考え方として有力なのではないかなと思うのです,わざわざ二つ別の公益のための制度を作るためには。
  二つ目ですけれども,2点目は,今,小幡委員もおっしゃってくれて,ああ,そうだったのかとか,今日の説明でもあった,つまり日本の公益概念の中身のなさです。定義すると必ず,不特定かつ多数の者に利益を与えられるとかというので,この不特定かつ多数の者に,「かつ」ですからね,しかも。これをものすごく厳密に考えると本当に大変なことになって駄目になるわけです。
  昔からの例で言うと,私が知っているのでは,昔だと,例えば会津高校の卒業生に対して,自分は会津高校の出身者なのだという人がいて,会津高校の卒業生が大学へ行くときに,やはり貧しい人もいるから,とにかく奨学金を出したいと言えば,昔は公益性が認められたのです。ところが後になって,これでは「不特定かつ多数」とはいえないという議論が出てきてだめになったのです。ただ,それは完全に教育資金のための援助なので,英米ではそれが公益に反するとか,公益に当たらないなんて,これは誰も言わないのだけれども,日本ではそういう形になっている。そこまで今の公益の法人の方で緩やかにしているのかどうかは分かりませんけれども,先ほど林幹事がおっしゃったように,不特定かつ多数の者の利益と書いてあるけれども,柔軟に解しているのだよということをもう少し強調して明確な形として何とか残せないものかということが第2点です。
  3点目はこの別表,私は,公益法人法制は本当に知らないで言っているからあれなのですけど,3ページ目から4ページ目にかけて,23項目挙がっていますね。これ,公益法人法の解説本というのをきちんと読んでみると,これ一つ一つに例えば具体例があるものなのでしょうか。つまり,例えば21号,これは何でもいいのですけど,国民生活に不可欠な物資,エネルギー等の安定供給の確保を目的とする事業というので公益法人として何かこういうことはあり得るのだよということはきっとあるのだと思うのですけれども,こう書いてあるからには。どんなものがあるのだろうというのが一つ一つについて,ある意味では,抽象的だから,こんなもの本当にあるのだろうかという。しかし,ないようだったら別表にする意味はないわけですよね。何かのイメージ,典型的な例というのはあるはずなので,それは私が知らないだけでこういうのが一つ一つぐらいはみんな挙げられているのですよということなのか,それから,そのときに,やはり先ほどの動物愛護なんかがどうしてもどこにも入ってこないではないかというのでいえば,例えば,私なんかでもすぐ思い付くのは医療の関係で,医療もいろいろな話があって,例えば私ががん患者で,しかし,たまたま大金持ちだったとしますよね。公益信託を作って,同じがん患者のための何とかするというのがどこに入るのだろう。公衆衛生の向上にはちょっと,これががんの研究なら学術とか,もしかしたら公衆衛生の方にも入るかもしれないけれども。いやいや,見落としなのかもしれませんけれども,それは第1点の限定列挙のところへかかってきて,やはりちょっとそういうのだと,どうしても入ってきてしかるべきなのに入ってこないというのがやはり幾つでも出てくるのではないかなという気がしました。結局長くなって申し訳ありません。
○中田部会長 ありがとうございました。まだあると存じますけれども,大分御発言が続きましたので,事務局の方から少しコメントを頂きたいと思います。大きく分けて二つありました。一つは,小野委員,能見委員,林幹事,小幡委員,樋口委員からの御指摘ありました,別表で列挙するという方式をもっと緩めるべきではないか,とりわけ第23号に政令で定めるものとあるのは何とかならないかということ。また,不特定多数というのが現在の公益法人認定の実務では緩やかになっているのだけれども,それを何らかの形で明文に取り込めないだろうか,こういうことがあったと存じます。そのほか,最後に樋口委員から御発言のあった,具体的な例がどんなものがあるのだろうかということもございます。
  それからもう一つは,山田委員から御指摘いただきました点でして,祭祀,宗教をどのように取り扱うのか,規定においてどのように取り扱うのか,こういう御指摘がございました。以上について,今の段階で御説明いただけるところがあったらお願いします。
○中辻幹事 では,部会長におまとめいただいた順番でお答えします。
  1点目の限定列挙か例示列挙かというお話について,基本的には既に旧民法からの改正時に議論された上で出来上がった公益法人認定法における公益性認定の枠組みというのがあるわけで,仮に公益信託についてそれと異なる枠組みにする場合には十分な理由付けが必要であるように思います。ただし,それでは公益信託が利用者にとって使いにくくなる可能性がある,公益目的の信託事務の定義については例示列挙にすることも含めて考えるべきだという御意見をいただきましたので,これまで公益法人認定法2条4号別表23号に基づく政令は制定されていないことも踏まえ,こちらで引き取って検討させていただきます。
  2点目,不特定多数の要件ですけれども,皆様おっしゃっていたとおり,現行の公益法人の認定の実務では,不特定多数の要件について硬直的な運用はされていないと,私どもも理解しており,柔軟な運用が公益信託の認定においても望ましいと考えています。部会資料33における公益目的の信託事務の定義において,不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与するものという表現を使っておりますが,ここでは寄与するという言葉にポイントがあり,公益信託においても,不特定かつ多数の者が受給権者でなければならないということではなく,特定少数の受給権者を通して不特定多数の人々の利益の増進に寄与するものであっても許容される可能性があるということを含意しています。
  3点目,山田委員の御質問について,公益法人認定法における公益の意味は,旧民法における公益の意味と変わっておらず,公益法人認定法2条4号の別表では,認定基準の明確化という要請から,公益法人が行う公益に関する活動を具体的に整理したものが掲げられているものの,旧民法における公益の概念を狭めているというわけではないという説明が公益法人認定法の一問一答に立案担当者の見解として記載されています。したがって,旧民法の公益法人の規定の書きぶりと異なり,公益法人認定法における公益目的事業の定義から祭祀,宗教という文言が外れたことによって,それらが公益の概念から直ちに外れるということにはならないのだろうと思います。ただ,山田委員御指摘のとおり,法人の方では,宗教法人とか社会福祉法人などの別の入れ物が用意されているわけで,それがあるから大丈夫だというふうな説明がつきますが,信託の方ではそのような入れ物がありません。ただし,公益信託の枠組みを使って祭祀,宗教を目的とする信託事務を行うニーズがどれだけあるのかは疑問符が付くところで,あえて公益法人認定法と書きぶりを変える必要はないのかなと考えておりました。
○明渡関係官 この22項目につきまして,具体的な事例があるのかどうかというようなことで御質問がありましたけれども,具体的にどういうものをやっているのかというのは今手元にはございませんが,各公益認定の申請の際には,これのどれに当たるのかというのをお出しいただいております。今手元に件数がありますが,この1号から22号までに該当する法人は全てにございます。非常に多くなっているのは19号の「地域社会の健全な発展を目的とする事業」,あと7号の「児童又は青少年の健全な育成を目的とする事業」,あと1号の「学術及び科学技術の振興を目的とする事業」等の運営法人が多くなってございます。
  なお,動物愛護の話も出ましたけれども,動物愛護を目的とするような法人というのはございまして,具体的にどれに当たっているのかというのはもう一度申請資料を見れば分かりますけれども,恐らく16号の「自然環境の保護」のところ等で読んでいるのではないかなという気はいたしております。
○中田部会長 ほかに。
○新井委員 まず最初に,限定列挙か例示列挙かということについて発言をさせていただきます。
  私は,公益法人認定法と同じような形の限定列挙でよろしいのではないかと思います。私が現に今関係している公益信託で,成年後見の分野なのですが,成年後見人とか保佐人とか補助人が専門職であった場合,本人の財産から報酬を払えない場合に,公益信託から報酬を払うというものが公益信託として認可されています。この公益信託では毎年受託件数も増えています。これをどこで読むかというのは非常に難しいのですけど,既にそれが認められて動いているということがあるので,一応限定列挙であっても解釈を柔軟にすればいろいろなものに対応できると思います。例えば,先ほど宗教の問題がありましたけど,これは13の信教の自由というようなことでも読めると思いますので,私はやはり公益法人と公益信託との平仄を合わせるということで限定列挙にした上で,公益認定の解釈は柔軟にしていくということがよろしいのではないかと思いますので,原案を支持いたします。
  それから,不特定多数の問題ですが,これは5ページの一番最後に書いてあるのですが,「不特定多数とするけれども,特定の範囲の少数者に限られていても不特定多数の場合がある」という理解については私は賛成でして,前回,前々回に私なりの受益者の考え方を申し上げましたが,そういう立場からしてもこれは非常に親和的ではないかと思いますので,ここのところも賛成したいと思います。
○小幡委員 今の補足になりますが,新井委員がおっしゃいましたように,要するに,今の公益認定の別表は抽象的な文言がかなり多いので,そのどこかには当てはめられるというところが実態ではないかと思います。そうすると,あえて限定というほどでもないので,書き方が23号があるので逆にそう見えるのですが,実際上は,それほどの限定ではない,ということですね。ただ,最初に申し上げましたように,確かに限定というのは,余り良くないと私自身も思っています。ただ,現実にはほぼ限定ではない形で運用されています。
  それから,樋口委員の御質問にありましたように,例えば病院でも,今公益法人でもやっています。では,医療法人でやればよいのに,なぜ公益法人かということですが,多少特徴づけて,地域の医療に特化したとか,特に何かの専門が強いとか何か理由を付けては申請してきて,公益法人という形で実際上は病院もやっているということはありますし,幼稚園なども学校法人でなくて公益法人の形でやることもあるという実態があります。それから,大学の奨学金をあげるのが不特定かということですが,理屈としては,大学に入るのは誰でも機会は開かれている。したがって,そこに入った人だけに奨学金を与えても,それは不特定多数だというのが理屈かと思います。そこは正確ではありませんが,いずれにしても,奨学金の対象はかなり広く運用されているということだと思います。
○中田部会長 ほかに。
○深山委員 もう議論が尽きているような感じはするのですけど,皆さんおっしゃっている限定列挙かどうかということについては,私もやはり例示列挙という方がいいと思うのですが,若干見られた限定列挙でも不都合はないのではないかという御意見に対しては,むしろ限定列挙にしなければならない積極的な理由であるとか,あるいは逆に例示列挙にすることによる不都合というのがあるのかお聞きしたい。もしそういうことがないのであれば,何とかなるからという消極的な理由で限定列挙にする必要はなかろうというふうな印象を持ちました。
○中田部会長 大体この点についてはよろしいでしょうか。
○長谷川幹事 先ほど樋口委員の方から,この23項目にそれぞれ具体的な例があるのかというご指摘がございました。たしかガイドラインのようなものと公益目的事業のチェックポイントというようなものが作成されていて,それに基づいて実務が動いているのではないかと思っております。もっとお詳しい方おられると思いますので,その点は事実を踏まえて補足していただければと思います。
  その上でなのですけれども,私も深山委員と近い考えを持っておりまして,今でもできているからいいのではないかという消極的な理由というのはいまひとつ説得力がないと思っています。今でもできているのは,多分そういった具体的なマニュアルの蓄積があって,また,それを作る人的な蓄積があって初めて動いているということが実情であると思いますので,それも踏まえて御議論いただければと思います。
○山本委員 すでにほとんど御意見が出ていますので,一言だけ考慮すべき点を申し上げたいと思います。
  公益法人についても,現在のこの別表で問題なく全て対応できているという御意見に対しては,多分それで実際には対応できるのだろうと思いますが,やはりどれかに当てはめないといけないために,申請の際に,本来考えていたものに少し修正を加えたり補正を加えたりして,できる限りそれに近づくような工夫をせざるを得なくなっているのではないかと思います。それは実際に事業を行おうとする人たちからしますと,本来の意図とは少し違うものになってくる面もあるのではないかと思います。広い公益概念からすると,そういったものも当然カバーされるということになりますと,何か余計な工夫を要求していることになっているのではないかという気もします。その意味では,例示列挙の考え方は,そうした余計なコストを削減するという意味合いも持っているのではないかと思いました。考慮すべき点の一つになるかもしれませんので,申し上げておきます。
○吉谷委員 信託協会の議論では特に提案に反対するという意見はなかったのですけれども,今回議論で考慮するに当たって,実際に申請などの事務の余分なコストがかからないようにした方がいいという意見が総論でございました。ですので,ここに列挙されているような項目があるということによって,申請がやりやすくなるのであれば,それは列挙していただくべきだと思いますし,それが限定ではない方が早く審査や書面ができるとかいうような事情があるならば,そういうふうにした方がいいのかなとも思います。もし当てはめにすごく時間がかかって無駄な時間を費やすということであれば,限定されない方がいいと思うのですけれども,そこにそれほど時間がかからないということであれば,別に限定されていてもいいのかなと考えます。
○中田部会長 よろしいでしょうか。
○道垣内委員 もしこのテーマが終わっているのならば発言したいのですが。
○中田部会長 今,まとめようかなと思っていたのですけれども。
○道垣内委員 まとめた後でも結構です。
○中田部会長 それでは,今頂きました御意見ですが,限定列挙か例示列挙かというと,ちょっと言葉の方が独り歩きしてしまうかもしれません。もう少し中身を言うと,列挙方式とすることのメリットと課題がテーマだと思います。とりわけ23号にありますようなバスケットクローズを置くということはどうしても必要になると思いますが,その在り方として,政令指定がいいのか,そうでない方がいいのか,それぞれ得失があると思いますので,更に検討するということになると思います。
  それから,それとは別に,22項目について具体的に不足があるのかどうか。もしあるのであれば,またそれも御指摘いただくということになろうかと思います。
  このほか不特定多数の点と祭祀,宗教については,先ほど中辻幹事からお答えいただいたようなことでございますけれども,更に検討を進めるということにしたいと思います。
○道垣内委員 すみません,議論の進め方について一言意見を申し上げたいのですが,先ほども小野委員,林幹事の方から,『一問一答』にこう書いてくれという話がありました。民法(債権関係)部会のときから,私はすごく気になっているのですが,『一問一答』に書かれたからといって,それが法制審議会の部会のコンセンサスであるということにはなりませんし,その叙述がその後の解釈等について拘束力を有しないことはもちろんだろうと思います。したがって,議論をまとめる際に『一問一答』に書くのであればよい,というまとめ方はおかしいのではないかと思います。ただ,たしかに,公益認定といった種類の問題は,裁判所で常に訴訟事件として争われるという性質のものではございませんので,『一問一答』に書かれているガイドラインが非常に強い意味を持つというのはよく分かります。したがって,この論点に関しては,『一問一答』でいかに補足するかが重要であると考えることは,さほどおかしくないのかもしれません。ただ,やはり最終的な要綱の文言として,どのような内容でみんなが納得をするのかということが重要であって,それについて,「これはこういう意味ですよ」と補足すれば納得するというのはおかしいということを,私としては,是非この段階で申し上げておきたいと思います。
○中田部会長 ありがとうございました。よろしいでしょうか。
  それでは,次に進ませていただきます。「第2 受託者に関する認定基準」につきまして御審議いただきたいと思います。事務当局から説明していただきます。
○立川関係官 第2の「受託者に関する認定基準」について説明します。
  本論点では,受託者の欠格事由について検討しておりますところ,本文では,「公益信託の受託者につき,公益法人認定法第6条第1号から第6号までと同様の事由を欠格事由とする規律を設けることでどうか(ただし,信託と法人の相違に応じて必要な修正を加えるものとする。)。」との提案をしております。
  公益法人認定法第6条は,公益認定に伴う法律上の効果を付与するにふさわしくない事由を欠格事由として規定し,これに該当する者を理事等から排除することとしています。このような公益法人認定法の趣旨は,公益信託の受託者にも妥当することから,基本的な考え方として,公益法人認定法第6条所定の事由を,公益信託の受託者の欠格事由とすべきとしています。
  もっとも,信託と法人の制度的な相違から適当な修正が必要なものがあったり,公益信託への援用が困難なものがあったりするため,検討に当たりましては,公益法人認定法上の欠格事由ごとに,公益信託の受託者の欠格事由とすべきか否かなどの判断が必要と考えられます。
  そうした個別の判断をした結果につき,本部会資料の末尾に,別表という形で提示いたしました。
  なお,別表の作成に当たりましては,受託者が自然人となる場合,法人となる場合に分けて欠格事由とすべきかを考え,さらに,法人が受託者となる場合に,当該法人の役員の欠格事由とすべきか否かについても検討し,それぞれ欄を分けてまとめております。別表を参考にされまして,公益法人認定法第6条所定の欠格事由を,公益信託の受託者の欠格事由とすべきか,また,欠格事由とすべきとして,別表記載の修正が適切か否か,更には,別表記載の事由以外に公益信託の受託者の欠格事由とすべき事由がないか否か等について御議論いただければと存じます。
○中田部会長 ただいま説明のありました部分について御審議をお願いいたします。御自由に御発言ください。
○吉谷委員 提案に対して基本的な方向感は賛成ですが,細かな点につきまして幾つかコメントをさせていただきます。
  まず,冒頭の(前注)との関係なのですけれども,信託法では,7条で受託者の欠格事由とされている成年後見,保佐の開始の審判というのが,受託者の任務終了事由になっている。ですので,公益信託でも受託者の欠格事由というのは,まずは受託者の交代事由と考えるべきではないか。交代で解決しない場合については,公益認定の取消し又は信託の終了と進んでいくという考え方がよろしいのではないかと考えております。
  あと,別表に関してでございます。別表の1号のイの(注1)のところで,イの公益信託の認定の取消し日から5年未満というのを受託者の欠格事由とするのであれば,受託者に帰責性のある取消しに限定すべきであると書かれておりますけど,少なくとも私どもも受託者に帰責性のある取消しに限定するべきであると考えます。ですので,認定の取消し事由のところについてコンセンサスが得られたところで,またこの論点に戻るということになるのではないかと考えました。信託銀行は,多くの公益信託を受託しておりますので,形式的にこの基準に該当してしまうということを懸念しているという次第です。
  あと(注4)の,別表でいいますと左側の2号の関係ですけれども,ここは(注4)に信託の欠格事由であると記載されておりますが,そうすると,ここの表に出ている受託者の欠格事由に当てはまらない場合や,受託者が交代した場合であるとかに,なお5年以内に公益認定の取消しがされた信託を認めるべきではないというふうな考え方になるのだろうと思います。そういう限定的な場合であることに加えて,信託は法人と異なりまして,清算して再設定するということは容易にできるものでありますので,実務上の意味というのは設けてもちょっと低いのかなとは考えました。これも受託者の欠格事由のところがまとまって,後でまた再度確認すべき事由かなと考えました。
○中田部会長 ほかにいかがでしょうか。
○小野委員 前回も議論させていただきましたように,弁護士,その他専門家たる個人が受託者になる場合の要件と法人が受託者となる場合の役員の要件と一緒に議論することがふさわしいかどうか,もちろん最低限の要件としては,こういう欠格事由に該当する方が受託者となるのはふさわしくはないと思いますが,それ以上に,この補足説明でも議論されているように,個人が受託者になる場合の受託者としての能力,適格性という項目を入れる必要があるのではないだろうか,そうでないと個人は誰でも欠格事由がなければなれますよといったところで,果たしてそれでいいのだろうかという議論につながっていってその結果,個人が受託者となる道が閉ざされてしまうことになるのではないか。今後引き続き検討する必要があると補足説明では述べておりますけれども,議論する余地のない欠格事由の他,個人が受託者の場合には,どういう適格性が必要なのかという辺りも,ここで積極的に議論してもよろしいのではないか,その場合には,別に弁護士に限る必要はありませんけれども,能力,信用力という要件もここで加えておく必要はないか,法人ならば,法人の個々の役員については定期的に変更されていくでしょうからその都度判断すればいいのであって,また,法人の場合には法人としての形とか在り方とか,そういう形の議論になるかと思うのですけど,個人受託者の場合は,積極的要件についても本来ここで議論するのはふさわしいのではないのか,という意見でございます。
○中田部会長 御指摘ありがとうございます。確かに,適格性についても関連するのはおっしゃるとおりだと思いますが,一応,部会資料32の「第3 公益信託の受託者」の範囲のところでその御議論は頂いておりまして,その上で受託者に法人だけではなくて個人も加えるか,あるいは個人だけでもいいのか,こんな議論がありまして,一応そこで御議論いただきました。また御議論いただく機会があろうかと思いますが,今日は欠格事由について取り分け御議論いただければと思います。もちろん排除する趣旨ではございませんけれども。
  ほかにいかがでしょうか。
○能見委員 細かい資料を丹念に読んでいないので,もしかしたら誤解している点があるかもしれませんけれども,法人が受託者になった場合に,その法人の役員が,公益法人認定法でいえば,禁錮以上の刑に処されるうんぬんとあるわけですが,こういう欠格事由に該当すると,公益法人の場合はもちろんそれでその法人は公益法人としては駄目だということになるのでしょうけど,公益信託の受託者の場合は,法人である受託者の役員の個々のそういう犯罪と,その法人受託者が実際に事務を行っている信託との関連性が公益法人の場合とはちょっと違う感じがするのです。公益法人ではその理事といいますか役員が全面的に責任を持って法人の事業を執行していくわけですけれども,信託の受託者,例えば信託銀行を考えた場合に,信託銀行の取締役などの役員が,公益信託事務と関係のない企業犯罪とかに関わりそれでもって刑に処せられたというときに,信託の事務自体はその役員とは関係なく実際には行われているのだと思います。そこら辺が,何か,公益法人の規律を公益信託に持ってくるときのちょっと違和感を感じるところでして,うまく理論的には説明できないのですけれども,とにかく違和感を感じるところがあります。そういう意味で,基本的な方向は公益法人とそろえるということでいいと思いますけれども,この本文の中にもありますけれども,実際に信託に持ってくるときに本当に同じになるのかどうかというところをもうちょっと詰めていただければと思います。
○樋口委員 今のお二人の意見に関連してですけれども,どこから話せばいいかな。いやいや,もう簡単にするべきですね。これは,つまり,この欠格事由に当たるということに,だから,それが当初の要件成就の話と,それから実際に公益信託が走り出した後で何らかの役員の交代であれ何であれですけれども,自然人の場合だったら,自然人が後で犯罪を犯すことだってあり得るわけだから,欠格事由に当たるということになった場合にどうなるのでしょうという話がやはり問題になると思うのです。
  それで,信託は公益信託に限らない話で,一般的な信託法理ですけれども,受託者は死亡することもあるし,思いがけず亡くなって,そのときに,受託者がいなくなったから信託は終わりですねという話はそもそもないのですね,英米では。裁判所に行ってかわりのきちんとした受託者を任命してもらって,その信託をできるだけ続けていきましょう。いわんや公益信託については,できるだけ永続させようという話になります。永久拘束禁止則も外して,とにかくできるだけ本当に公益信託ならですけれども,長く続けるというのが趣旨なので,その点を確認しておきたい。欠格事由というのに途中で当たるなり何なりというような場合に,それで,無効になってもう信託終わりという話ではない方がいいと思うのです。そういうようなことも考えた上でのここでの議論をしていただけないものかということです。
○中田部会長 それでは,ここら辺でちょっと切りまして,吉谷委員,小野委員,能見委員から頂戴しました御指摘について,もしコメント,御回答があればお願いします。
○中辻幹事 吉谷委員の御指摘は樋口委員の御発言とも共通するように感じておりまして,受託者が認定の後に欠格事由に該当した場合において,公益信託の終了や認定取消しの前に受託者の交代ないし変更によって対処する方法があり得るということは御指摘のとおりかと思います。それを踏まえて,更に詰めた検討をしていきたいと思います。
  それから,能見委員がおっしゃっていた,法人と信託との違いということですが,ここは私どもも悩ましいところだと思っておりまして,仮に公益法人認定法の仕組みを公益信託に持ち込むとしても,信託と法人の相違に応じて必要な修正を加えた上で持ち込むことが肝要であると考えています。
  公益信託の認定基準を検討する上で何が一番大きい違いかといいますと,公益法人の場合には,認定を申請した法人全体にフォーカスを当てて公益法人としての適格性を判断することになるのですが,公益信託の場合には,受託者にフォーカスを当てるのか,それとも信託自体にフォーカスを当てるのかというところで考え方の相違が出てきます。例えば,受託者が信託銀行という法人であれば,信託銀行は公益信託以外にも多様な業務を行っているわけであって,公益信託以外の私益目的の信託事務,銀行業務,さらにはこれら以外の業務まで含めて信託銀行という法人全体を見て公益信託としての適格性を判断すべきであるという考え方が存在し得る一方で,公益信託の信託事務を見て公益信託としての適格性を判断すれば良く,仮に受託者が不適格になればその任務を終了させて新たな受託者のもとで公益信託を継続させるという考え方もあろうかと思います。この点については今後も意識して検討していくつもりです。
○中田部会長 ほかに,この点についていかがでしょうか。
○樋口委員 これに関連して思うのですが,受託者に関する認定基準というときに,私が忘れてしまったのかもしれないのだけれども,やはり単独受託者しか考えていないのですか,公益信託について。例えば,共同受託者という形をとっておいて,片方が欠格事由に急に当たることになった。どうするかというと,普通は,先ほども言ったように,できるだけ公益信託を長く続けたいというのであれば,残りの受託者はいるわけですから,だから,その受託者でとにかく続けていってもらうという話になるので,そういう話なのですけれども,そういう理解でいいのかということです。共同受託ということももちろんあり得るし,だから,そうすると,同じようなことで,単独であっても,後継の受託者を誰かが作るような仕組みを作っておけばいいのですね,欠格事由に当たったとしても。受託者ではなくて,今,中辻幹事がおっしゃったことなのかもしれないのですけど,「公益」信託のところに正に焦点が当たるということであれば,受託者が交代したって構わないわけですから,欠格事由に当たるという話で議論する必要が少なくなるかもしれません。それとの連携で共同受託というような話のこともあるのかどうかみたいなことです。
○中辻幹事 おっしゃるとおり,単独受託者が欠格事由に該当した場合に受託者の交代という形で新たな受託者が引き継ぐという選択肢もあれば,共同受託者の一人が欠格事由に該当した場合に欠格事由に該当しない他の共同受託者が引き継ぐというような選択肢もあってしかるべきだと思います。
○中田部会長 いずれにしましても,当初の認定基準と,それから事後的にそれに当たるようになったときの対応と,この2段階あるのだということは御議論で明確になってきたのだと存じます。
  ほかにいかがでしょうか。
○明渡関係官 すみません,非常に細かな話で恐縮なのですけれども,別表の(注1)3行目以降に,公益信託の受託者から公益信託の,これは認定の取消しの申請がなされたと思うのですが,それに基づいて公益認定が取り消されたときはうんぬんというような記述がございます。実際公益法人に対する認定の場合に起こっている事例ではあるのですけれども,まず,認定を取り消すべきという勧告が8条機関の方から行政庁の方に出されたというようなことがございました。それから,不利益処分という形になりますので,聴聞等の手続を経なければいけない。その間に法人の方から認定取消しの申請が出てくるというようなことがございます。この場合,形式的に見ると,取消しの申請に基づいて取り消すというような形にはなろうかと思うのですけれども,実態としてはかなり問題のある法人であるということはあり得るかと思います。ここで認定取消しの申請がされて取り消された場合は,除外する必要はないという場合に,こういったケースは割り切ってもう除外とするべきなのか,それとも,何らかの対応を,別途の対応が必要なのかというのが論点の一つとしてあるのではないかと思います。
○中田部会長 ありがとうございました。また公益法人の例なども伺いながら詰めていく論点かと存じます。
  ほかにはいかがでしょうか。この「第2」についてほかにもしございませんようでしたら,予定した休憩時間までまだございますので,先に進ませていただきたいと存じます。具体的には,次の「第3 信託事務に関する認定基準」についてですが,まず御説明をしていただきまして,そこで休憩に入りたいと存じます。お願いします。
○立川関係官 それでは,第3の1,「当該公益信託の受託者等の関係者に対する特別の利益の供与禁止」について説明します。
  本文では,甲案として,「公益信託の受託者が,信託事務を行うに当たり,当該公益信託の受託者等の関係者に対し特別の利益を与えないものであることを認定基準とする規律を設ける。」,乙案として,このような基準に関する規律を設けないとの提案をしています。
  公益法人制度においては,公益法人の理事などが自らの地位を利用して不当な利益を得,又は与えるおそれを防止するため,このような基準が設けられていますところ,甲案は,その趣旨が公益信託にも妥当しますことから,同様の認定基準に関する規律を設けるとする案でございます。
  なお,甲案の外縁についてですが,適正な選考をした上で,公益信託の受託者が当該公益信託の関係者に助成する場合などは,この認定基準に反するものではないと考えられます。また,甲案を採用した場合,特別の利益の供与が禁止される関係者の範囲を画する必要がありますが,当然のことながら,公益信託の受託者が関係者として規定されたもの以外の者に対して特別の利益を供与した場合でも,受託者の善管注意義務違反などの問題は生じると考えられるところです。このように,甲案を採用した場合でも,利益供与が禁止される範囲が不当に広がったり,狭まったりすることがないと考えられることに留意した上で御議論いただければと存じます。
  これに対して,公益信託の受託者が関係者に対して特別の利益を供与した場合は,受託者の善管注意義務違反や損失填補責任の追及等により,すなわち公益信託内部の監督,ガバナンスにより対処すれば足り,これを禁止する旨の認定基準は不要という考え方があり,これを乙案として提示しています。
  なお,乙案を採用した場合,公益信託の受託者が関係者に対して特別の利益を供与した場合でも,そのことだけを理由として公益信託の認定監督機関がその監督権限を行使できないことになる可能性があり,この点について留意が必要と考えられます。
  続いて,第3の2,「営利事業を営む者等に対する特別の利益の供与禁止」について御説明いたします。
  本文では,甲案として,「公益信託の受託者が,信託事務を行うに当たり,株式会社その他の営利事業を営む者等に対し特別の利益を与えないことを認定基準とする規律を設ける。」,乙案として,このような基準に関する規律を設けないとの提案をしています。
  公益法人制度におきましては,公益法人の財産が営利事業等を行う者のために使用されることが適当でないことなどから,このような基準が設けられていますところ,甲案は,その趣旨が公益信託に妥当するとして同様の認定基準に関する規律を設けるとする案でございます。
  他方,そのような事態に対しては,公益信託内部の監督,ガバナンスによって対処すれば足るとの考えから,このような認定基準を不要とする考え方があり得るところで,これを乙案として提示しています。
  なお,甲案,乙案を採用する場合のそれぞれの留意点は,第3の1の論点で説明したところと同様でございます。
  続いて,第3の3,「社会的信用を維持する上でふさわしくない信託事務及び公の秩序若しくは善良の風俗を害するおそれのある信託事務の禁止」について説明します。
  本文では,甲案として,「公益信託の受託者が,社会的信用を維持する上でふさわしくない信託事務や,公の秩序又は善良の風俗を害するおそれのある信託事務を行わないものであることを認定基準とする規律を設ける。」,乙案として,このような基準に関する規律を設けないとの提案をしています。
  公益法人制度においては,公益法人が社会通念上明らかに不適当な事業を行い,公益法人制度全体の信用が失墜するのを防止する観点から,そのような事業を行うのを禁止する旨の認定基準が設けられていますところ,甲案は,この趣旨が公益信託にも妥当することから,同様の認定基準に関する規律を設けるとする案です。
  他方,公益信託の受託者が行う信託事務を公益目的の信託事務に限定し,それ以外の信託事務を除外するのであれば,収益事業等を行う公益法人と異なり,公益信託の受託者が社会通念上明らかに不適当な信託事務を行うことは想定しがたいことから,このような認定基準は不要とする考え方があり得,これを乙案として提示しております。
  続いて,第3の4,「収支相償」について説明します。
  本文では,甲案として,収支相償を認定基準とする規律を設ける,乙案として,収支相償や信託費用の支出に関する認定基準を設けない,丙案として,収支相償を認定基準とする規律は設けないが,公益目的の信託事務による収益の一定割合以上を信託費用として支出すると見込まれること等を認定基準とする規律を設けるとの提案をしています。
  公益法人制度においては,実費弁償を定めることで,公益法人が行う事業によって利益を享受する者の範囲を可能な限り拡大することを意図して収支相償を認定基準として設けていますところ,甲案は,その考え方が公益信託にも妥当することから,同様の認定基準に関する規律を設けるとする案です。
  なお,甲案を採用した場合,公益目的の信託事務に係る収支として,ゼロか損失を計上しなければならず,公益目的の信託事務を継続的に実施できなくなってしまうのではないかとの懸念があるところと思われます。しかし,収支相償を認定基準とする公益法人の実務では,単年度で必ず収支が均衡することまで求められているわけではなく,例えば,将来の事業の拡充等に充てるためのものとして,一定の要件を満たした資金への積立てをもって費用とみなすことなどにより,中長期では収支が均衡することが確認されれば,収支相償の基準を満たすと解されています。
  甲案を採用した場合でも,公益法人制度においてされているような柔軟な運用がされるのであれば,先ほど説明したような懸念は必ずしも妥当しないのではないかと考えています。
  他方,乙案は,収支相償を認定基準とした場合,公益信託の受託者が数値基準を満たすことのみを考えた結果,信託財産や寄附の受入れを謝絶するなどといった不当な事態が招来されることへの懸念から,収支相償を認定基準とせず,かつ軽量・軽装備であるとの公益信託のメリットをいかすべく,信託費用の支出に関する基準を設けないとする考え方です。もっとも,乙案を採用した場合,信託財産が不当に蓄積されることを防止する規律がなくなります。そのようなものを公益信託として存続させてよいのか,また,そのようなものに税法上の優遇措置が与えられるべきかという問題があるものと考えられます。
  最後に,丙案は,収支相償を認定基準としない一方,信託財産が不当に蓄積されることを防止するため,米国の税法で公益的な組織等に対して適用されているペイアウトルールを認定基準とすべきとの考え方です。
  なお,丙案の検討に当たりましては,ペイアウトルールを採用する米国において,その運用が硬直的になりすぎるなどの批判がされていることに留意すべきと考えられます。
  本論点につきましては,平川委員提出の意見書では,「19頁(注)の米国におけるペイアウトルールの説明中,ペイアウトルールの適用があるのは,Public Charity以外のPrivate Foundationとされているので,特定少数者に支配されている家族財団のみならず,それ以外のものも指すとされているので,それを補足説明されたい。」との指摘がされています。これは,部会資料の該当部分の記載がペイアウトルールの適用があるのは,特定少数者に支配されている家族財団に限定されているかのように読めるが,実際はこれに限定されるわけではないので,その趣旨を明らかにすべきとの指摘であったようです。もっとも部会資料では,ペイアウトルールが適用される飽くまで一例として,家族財団のように特定少数者に支配されているようなものを挙げておるところでございまして,これ以外にもペイアウトルールの適用があることは当然の前提としていますので,平川委員の認識と必ずしも齟齬はないのではないかと考えております。
  続いて,第3の5,「公益目的の信託事務以外の信託事務による公益目的の信託事務の実施への支障がないこと」について御説明いたします。
  本文では,「公益信託の受託者が公益目的の信託事務以外の信託事務を行うことによって公益目的の信託事務の実施に支障を及ぼすおそれがないことを認定基準とする規律は設けないことでどうか。」との提案をしております。
  公益法人制度においては,公益法人が収益事業等を行うことを前提にこのような認定基準が設けられています。そのため,公益信託の受託者が行う信託事務を公益目的の信託事務に限定するのであれば,こうした基準を設ける必要はないと考えられますので,本文のような考え方を提示しているところでございます。
  最後に,第3の6,「公益目的の信託事務の比率」について御説明します。
  本文では,「公益法人認定法の公益目的事業比率に相当する規律は設けないことでどうか。」との提案をしています。
  公益法人制度においては,公益法人が収益事業等を行うことを前提にこのような認定基準が設けられています。そのため,公益信託の受託者が行う信託事務を公益目的の信託事務に限定するのであれば,公益目的事業比率の趣旨は,公益信託には当然には妥当しないと考えられますので,本文のような考え方を提示しておるところでございます。
  なお,公益目的事業比率に関する認定基準を設けないとしても,公益信託の信託財産が公益信託の運営に必要な経常的経費のために過大に使用されることが望ましくないとの考慮から,経常的経費の比率が一定割合以下となると見込まれることを認定基準とする考え方があり得るかと思います。もっともこのような考え方に対しては,経常的経費のうち高額となる懸念があるのは受託者,信託管理人等に対する報酬だけであり,これに対しては別途報酬額が過大にならないような規律を設ければ足りるのではないかとの批判があり得るところでありまして,経常的経費としてどのようなものが想定できるかとの点に留意しながら,その採否を検討すべきと考えられます。
○中田部会長 少し早いのですけれども,この後議論に入りますとまた区切りがつきにくいかもしれませんので,一旦ここで休憩を挟ませていただきます。15分間の休憩を挟みまして,3時3分に再開いたします。
 
          (休     憩)
 
○中田部会長 それでは,時間が来ましたので再開いたします。
  部会資料33の「第3 信託事務に関する認定基準」について御審議いただきます。先ほど御説明を頂きましたので,1から6まで一つずつ検討したいと思います。
  まず1,「受託者等の関係者に対する特別の利益の供与禁止」について御審議をお願いいたします。
○小野委員 そもそも論のところでちょっとお伺いしたいのですけれども,今日の部会資料の一番初めの(前注)のところで,認定基準のところにも監督の趣旨も入っているのですという前提で議論してほしいというふうに書かれておりますけど,欠格事由,具体的な認定プロセスにおける認定事由,それから監督プロセスにおける監督基準,それから実際に退席を求めるまでのイエローカードを何枚切った後にレッドカードになるのかとか,大分局面は違うように思われますが,やはり今回のこの議論も認定基準イコール監督基準ということでの議論なのかどうかということと,次に認定基準イコール監督基準でも,項目としては少ないというか,特定されすぎているように感じます。恐らく公益法人の認定過程においても,もっといろいろな要素を見て認定し,なおかつ監督する際も,いろいろなポイントから監督をし,いきなり退席ではなくて,いろいろな指導をしたりとか業務改善命令があるか分かりませんけれども,そういうのを発したりとかするのではないかと思います。認定基準としてこれだけの議論なのか,今後ともいろいろな観点から議論していくのか,あともう一つ,法人の場合ですと定款,財団であれば寄附行為ということがあって,それに見合うというか,公益信託ですから信託契約がございます。信託契約に受託者は拘束され信託目的に沿って行動することが求められますが,受託者における信託契約違反の行為を監督上どう対応するのかということもあると思います。ですから,利益相反行為うんぬんというのは,信託法上の忠実義務とか,善管注意義務違反の問題ということで,認定というよりも実際に認定された後の問題なのかと思います。
  また,認定する際に信託契約だけではなくて,恐らく事業計画とかも提出することになるのではと勝手に想像しているところもあるのですが,恐らく公益法人においてもそういう規律があるかと思うのですけれども,認定するときに,その辺も含めて何をもって認定基準としているのかということも検討する必要があるかもしれませんし,あるいは公益信託ということで信託契約に絞って認定をしていくのかどうか,そのあたりについて考え方を教えていただければと思います。
○中辻幹事 今回の部会資料2頁の(前注)の,公益信託の認定基準は監督上の基準として認定取消し等の事由となり得ることを含意するという部分の記載は,仮に認定基準に違反した場合にイエローカードに当たる監督機関による勧告・命令等の事由となり得ることも意味しておりますが,今回の部会資料で取り上げた認定基準に違反したことをもって一発レッドで必ず公益信託の認定が取消されるわけではなくて,認定の取消しは任意とされる可能性もあるほか,その手前の段階で勧告・命令等の措置がされるにとどまる場合もあるでしょうし,そこはグラデーションがついていく話なのだろうと考えています。
○中田部会長 今回6項目挙げられているわけですが,ほかにもあるのではないかということでございますけれども,今の段階で例えばというのがございますか。最後におっしゃった信託契約違反の場合にどうなのか,これは認定基準の問題であり,内部でのコントロールの問題でもあり,そのどちらに振り分けるかということかもしれないのですけれども,ほかに認定基準として特に取り上げるべき項目というのがもしあるようでしたら。
○小野委員 あまり具体性はないのですが,この資料の中に,法人の場合には事業計画書を出すというようなことが書かれていたので,やはり公益法人のときは定款,寄附行為だけではなくて事業計画も出すのだなと,当たり前の議論かもしれませんけど思った次第でして,となると,公益信託の場合も,信託契約書1枚の議論ではなくて,もう少し詳細な内容のものが提出されるのではないかと思った次第です。ですから,認定基準のときには,それを利益相反という切り口だけでチェックしていくのではなくて,また公益という観点もありますけれども,何かもうちょっと幅広であったり,また逆に細かい議論をしていくのかなと思った次第です。特に利益相反だけであれば,信託では受託者に特に忠実義務という重い義務が課せられておりますから,ある意味では初めから利益相反行為はできない立て付けで,それだけではない議論をされようとしているのかなと思ったりしているところでございます。
○中田部会長 ありがとうございました。
○道垣内委員 第3の1からなのですが,どういうふうにして働くのかなということが気になるのです。監督基準ないしは取消基準として働くときの働き方というのは比較的イメージしやすくて,例えば忠実義務違反となり,監督権限が行使されたり取消権が行使されたりするということになるのだと思うのですが,認定基準として働くときに,例えば,信託財産から関係者に対して非常に多額なお金が渡るという仕組みが作られているというときに,それは公益性が否定され,信託の成立が否定されるのでしょうが,関係者の概念に入らない,第三者たる企業に丸投げをして,それに対して不当に多額な報酬を支払うという仕組みになっていても,それは公益性を認定してよいのかというと,それはよくないだろうと思います。それでは,その場合には,どこで話を切るのだろうか。つまり,公益認定はできないということになるのだろうかというのが,公益認定に関する法律の解釈というものに対しての私の無理解が背後にあるのかもしれませんけれども,よくわかりません。この基準の働き方について御教示いただければと思う次第です。
○中田部会長 今の御指摘は,例えば善管注意義務だとか損失填補責任というレベルにとどめないで,むしろ認定基準の方で論ずるべきではないかという御示唆も含まれているのでしょうか。
○道垣内委員 含めるべきか,含めざるべきかの判断がつかないのです。どうしてかというと,認定基準においては具体的にどういう働き方をするのだろうかということのイメージがわかないからなのです。
○中田部会長 では,今の点も含めていかがでしょうか。
○中辻幹事 認定基準についての働き方としては,第3の1のような要件を満たさない信託は公益信託としての適格性が否定されるということになりますけれども,その効果については先ほど述べたのと同様にグラデーションを付けていくことを考えています。
  なお,公益法人認定法5条には「公益認定の基準」という表題が付けられておりまして,その基準を満たさない場合には,公益性が否定されると読めるように思います。ただし,5条に違反して公益性が否定されるというのと,公益法人としての適格性が否定されるというのは同じことを意味していて表現の違いに過ぎないような気もします。そうすると,第3の1の要件を満たさない関係者への利益供与を行う信託についても,公益信託としての適格性が否定されるのではなく,公益性が否定されるということもでき,関係者の概念に入らない第三者への利益供与の場合には第3の1の要件は満たすが不特定多数の利益の増進に寄与するものではないとして公益性が否定されるのと同じになるのかもしれません。
  それから,小野委員のお話に出てきた事業計画書について少し補足して説明しますと,現在の主務官庁制の下における公益信託の許可及び監督の手続は,許可審査基準のほかに,主務省庁それぞれの府省令で定められています。府省令はどれも同じような内容になっていて,それによれば公益信託の許可を申請する受託者が事業計画書等の書類を主務官庁に提出することが求められており,新たな公益信託の認定主体に対しても,おそらく事業計画書は提出していただくことになると考えています。
○道垣内委員 十分には理解できていないのですが,公益認定のときに働くということになったときに,例えば,当該公益信託の信託行為において,こういった業務はどこそこに委託すると書いているとします。そして,それが受託者の関係企業であり,それに対して支払われる報酬が非常に多額に設定されているとなりますと,これは受託者の関係者に対して特別な利益を与えるということになって,駄目だというのはよく分かります。しかしながら,私は個人的に全く無関係なのだけど,ある企業の窮境を救いたいと思っているところ,ある公益信託を設定する際に,当該企業に対して多額の報酬を与えるという仕組みの信託行為を定めて公益認定申請をしてきたとしますと,やはりこれも駄目なのだろうと思うのです。そうなると,問題は,信託の収入として上がってくるもの,当該信託の信託財産に属する財産の利用の仕方が,公益ではない形に大幅に利用されるという形になっているときには駄目ですよということだけなのであって,ここに関係者概念というものが出てくることの理由がよく分からないのです。
○中田部会長 公益法人の方では,悪い前例があったということを踏まえてそういう規律が設けられているのだと思いますけれども,純粋に理論的に考えた場合に,関係者であろうと第三者であろうと,信託財産の利用の仕方としては適当ではないのではないか,こういう御指摘かと思います。そうしますと,方向としては,公益法人とそろえるような形で第3の1についての規律を置くのか,それとももっと抽象化した形にするのか,あるいは第3の1を置くのに加えて一般的な認定基準を置くのか,こういった選択肢があろうかと思いますけれども,もし道垣内委員の方でこういうのがいいのではないかというのがあれば。
○道垣内委員 例えば監督基準として,悪質性が強い場合に公益認定の取消しを行うのであり,ほかの場合には,例えば損害賠償義務などにとどめる,という効果を措定して,悪質性が強い場合というのはどういう場合なのかというと,関係者に対して利益を流した場合は悪性の度合いが強く,ある企業の利益を図った,ある個人の利益を図ったというときに,その利益享受主体が関係者でないときは,それはいけないことではあるけれども,関係者への利益供与の場合に比べると,悪質性の程度が低いのであり,だから,その場合には公益認定の取消しにまでは至らず,損害賠償に留めるというのは,1つの判断としては理解ができるような気がします。したがって,監督基準ないしは公益認定の取消基準として受託者等の関係者という言葉を使うことには,一定の意味があるのだろうと思います。それに対して,当初の認定基準に関しては,この両者を区別することには基本的には意味がないように思います。したがって,当初の認定基準と後発的な監督基準ないしは取消基準というものとで働き方が随分違うので,統一にすることが本当にできるのだろうかというのが私の根本的な疑問です。
○中田部会長 ありがとうございました。小野委員,道垣内委員とも共通する御指摘があったかと思いますが,その上でそれぞれになるのか,あるいは別々になるか分かりませんけれども,この認定基準として,あるいは監督や取消しの基準として,関係者に対する特別の利益について更に御意見を頂ければと思います。
○林幹事 先生方と疑問は共通していますが,確かに一見当たり前のことのようであって,認定基準にあれば監督の根拠ともできるということは分かるものの,信託と公益法人の違い,特に公益法人認定法の場合は,一般社団法人・一般財団法人として動いているものについて公益認定するというものなので,その違いを理解した上で議論すべきでないかと思います。
  それで,この公益法人認定法の条文を見ますと,「その事業を」としているだけです。だから,「当該公益事業を」とは限定していないように思えます。社団なり財団法人は,いろいろな事業をしていて,公益事業になりたい事業もあれば,それ以外の事業,収益事業もいろいろあります。それの全体を見たときに,これこれこういうような事情があればと読めます。要するに,公益事業以外のところで,この後だと公序良俗とかもありますし,特定の者に利益を与えている,そういう場合はだめだというところまでも読めるはずなのですよね。中辻幹事も先ほど言われたとおり,公益法人の場合は,公益法人全体を見ているから,公益事業以外の部分も見ているはずと思います。これに対して,公益信託の場合は,そもそも委託者と受託者が分かれていて,信託行為があって,信託目的なり公益目的というものがあり,利益相反なりいろいろな制度があるという前提があります。そして,前回の議論で事業の範囲をどこまでと見るかにも関連するのでしょうけれども,公益に関連するものにある程度限定した形で見るとすれば,それ以外のところで何かあるということは基本的には余り想定していないはずです。対象としては公益信託というか公益事業的なものだけを見たときに,これらの提案がどう働くかというのを考えるのだと思います。ですから,そういう観点で見たとき,私としても,これがどう働くのか分かりにくいと思われ,この規定がなくても処理できるものではないか,あるいは当初の認定でなくても事後的な取消し等で対応できるのではないのかと思います。
  それから,公益信託は軽量・軽装備なものを考えていますから,入口に規制が多いと使いにくくなるのではないのかという懸念もあります。また,どの程度のものだったら公益認定を認めて,どの程度のものだったら否定するのかの問題もあり,若干怪しいというのだけで公益認定が否定されてしまうと,やはり入口は狭くなります。そう考えると,この規定がなくても,ほかのところで対応できるのではないのかなという考えに至ります。あえて特別の利益を与えないという基準を設けて,実務的にどういうふうに動くのかというのを考えると,申請のときにこれがためにいろいろなことがあって面倒くさくなると,やはり障害になるだろうと思います。弁護士会で出た意見・議論としては,念書か確認書みたいなもので関係ありませんと一言言えば足りるとか,申請書のどこかにチェックすれば足りるとすることも考えられるとすれば,そういうものであれば設けてもいいという考え方もあるのですが,それであれば意味がないという議論もありました。ですから,公益信託に対するものと理解したときに,この基準が認定の段階で必要なのか検討すべきだし,そうすると,必ずしも必要ではない,ほかのところで手当てすることにして,酷いものは,道垣内委員がご発言されたように,損害賠償だったり取消しであったり,そういうことで対応しても足りるのではないかと考えました。
○小野委員 先ほど信託契約とか信託法の忠実義務では十分賄えるのではないかと申し上げたのですけれども,考えてみれば,任意規定化されているので,信託契約の中で受託者の責任が軽減あるいは免責されていれば,ここでの議論が強行法規的に生きてくるのでは,その意味でもやはり必要なのでは,と思ったのですけれども,他方において,今の信託法は商事,民事,公益,全ての信託が賄える形で出来上がっておりますけれども,今回,公益信託を議論する際に,現在の信託法における任意規定をどこまで許容していいのかという別の議論もあるかと思います。先ほど中田部会長から,ほかに何がありますかという質問がありましたけれども,具体的項目としては,恐らく,信託法に書かれている受託者の義務それぞれについてどれだけ任意規定化が許容されるか,それが契約上そう規定されていれば,それ自体が認定基準としては特に引っかかることはないというような議論でよいかどうか。
  片や,信託業法の適用があれば,信託契約で任意規定化したところで,信託業法が強行法規として適用になりますけれども,一応今までの議論からも,信託業法が適用されない受託者も考えられ,その場合は信託業法の適用がないという前提ですから,そうすると,信託法の受託者の義務の緩和の是非というところに行き着く議論であるのか,任意規定化が許容されて,契約として許容されていても,認定基準でどこまでチェックするのか,認定基準が強行法規として適用されるという議論に行き着くのかなと思った次第です。
○中田部会長 ありがとうございました。ほかに第3の1について。
○樋口委員 この認定基準ということなのですね。今のここでの議論は,きっとそういうのが大半なのだろうと思いますけれども,委託者と受託者が結託して公益信託というツールを使って何かをという,それは認定基準のところで何とかしないといかんねという話を考えていると思うのですけど,シナリオとしては別のものも考えられます。原則として,委託者と受託者は別ですから,委託者は何しろこういう公益のために何とかしたいのだという,それで一族の中でも孤立しているわけですよ。それで,実は反対している人の中の誰か別の人が受託者になって,こういう関係者に利益相反的なことをすると,これがパアになるというのは,何だかやはり筋がおかしいような気がするのです。公益信託として認定しておいて,受託者の罪は罪,罪というのかな,犯罪ではないかもしれないけれども,それについての義務違反とその制裁というのはあってしかるべきなので,別のところで対処すべきものを,認定基準という話にしてしまうというのが何だかおかしいという感じがするということです,そもそも。
  それから,ついでにちょっとあれですが,11ページ目真ん中のところへ,認定基準とすることは,これによって「公益信託の認定・監督を行う外部の第三者機関がこれに違反した公益信託の受託者に対してその監督権限を行使できることを含意する。」。これは認定にしないと監督,つまり監督権限がある第三者機関が何もできないということになるのかというのがちょっと,私のこの文章が本当はよく分からないのですけれども,第三者機関は,もしそういうものがあるとしたら,認定基準にしなくとも,やはり何かはできるのではないだろうか,こういう受託者がいた場合に,と思うのです。
○深山委員 今の樋口委員の話にも通ずるように思うのですが,認定基準としてどういう基準にするのかということと,認定を受けた後の事後的な監督基準なり取消基準というのは,既に何人かから御指摘のあるように,働き方が違うと思います。認定基準違反に抵触することが事後的に発生したときに,当然,取り消したり監督の対象になるというところはいいのですが,その逆は必ずしも言えなくて,やはり分けて考えるべきだろうと思います。認定基準というのは,そもそもそういう構造の公益信託は認めるべきではないというような評価を与えられる場合であって,他方,構造的には必ずしも問題はないのだけど,実際の運用上よろしくないことがあったときに,それをチェックするということが必要になってくるのだと思うのです。そういう意味でも,認定の基準の問題と事後的な監督の対象になるかどうかというのとはやはり区別すべきだろうと思います。そういう目で,ほかの基準にも共通することですけど,今問題にしている1の特別な利益の禁止のところを考えると,実際に公益信託の認定をするときに,どこまで具体的な仕組みを説明するのか,どういう実務になるのか分かりませんが,最初から特定の人に,それが受託者等の関係者であれ,第三者であれ,こういう人に実はこうして,こういう利益を与えるのですと,具体的な利益の中身まで説明をして初めて審査を受けるなどということになるのだろうかと思います。そうではなくて,ある程度のところは説明するとしても,実際にどういうお金のやりとりがあるのかというのは,必ずしも最初の段階でチェックしないのであれば,余り認定基準として特別の利益というものを問題にすること自体が意味がないと思うのです。逆に言えば,最初から不当だと見えるような申請の仕方をする人は多分いないでしょうから。
  そういうふうに考えると,やはり認定基準をそういう意味で設けるのだとしたら,それは構造的に公益信託にふさわしくないというようなものが類型的に括り出せるのであれば,それはそれで基準として立てればいいのでしょうけど,恐らく多くは事後的な監督のところでチェックをきかせるべき事由で,それはやはり別のところで何らかのチェック項目として規定を設ける必要があるのかなという気がします。そこでは先ほど小野委員も指摘したように,一般的な受託者の行為規範的な規定を設けるかどうかとか,それは一般の信託法と違って強行法規にするとか,そういうところでむしろ中心的に議論すべきことなのかなという気がいたしました。
○中田部会長 ほかにいかがでしょうか。
○吉谷委員 本論に入ります前に,(前注)との関連ですけど,やはり信託事務に関する認定基準に違反した場合も認定の取消しとか受託者の解任とか信託の終了とか,そういう対処がありますということをまず確認しておきたいと思います。
  そして本論なのですけれども,この第3の1の提案に対しては,私どもとしては乙案賛成で,もし入れるのであれば,むしろ異なる基準を入れるべきではないかと思います。認定基準とその後の監督の基準が何らかのリンクをするということ自体は別におかしくないですし,その認定基準のところである程度判断されるということはあってもいいのかなと思います。
  そして,結論に至るまでのこの過程のところについて,ちょっと総論的なものになるのですけれども,お話ししたいと思うのですが,今回は信託事務に関する認定基準として,従来の公益信託よりも様々な規範を設けるという提案がされているということなわけですけれども,公益信託の認定基準が厳格で制限されたものになるということについてはそうなのだろうなと思いますけれども,なぜ厳格にしなければならないのかというところについてもう少し理由を考えた方がいいのかなと考えているところです。
  恐らく二つぐらいの理由がありまして,一つは,公益信託という看板を掲げる。そうすると,財産を拠出する人も安心して公益に貢献しているのだなということが分かるということだと思います。二つ目は,公益認定によって税制上の優遇が与えられているということで,不適切なものを優遇することがないようにと,税制の優遇という社会的なコストを払うだけの価値のあるものなのかというものを検討するということであります。
  ここの認定基準においては,結構税制上の優遇というのが大きな考え方の根拠を示しているのではないかと思いますし,私どもとしては,公益信託という類型を作るのは,やはり税制上の優遇があるというのが大きな要因であろうと考えているというところです。もちろん公益信託法の認定基準と税制上の基準をぴったり合わせることは法制審議会のテーマではないと思っておりますけれども,税の優遇のある制度ですから,範囲を厳格にしなければならないと思っております。
  ただ,もう一ついえるのは,範囲を厳格にすべきということは分かるのですが,軽量・軽装備という信託の特徴は維持するべきであろう。特に公益信託のモデルをどう考えるかというところがあると思うのですけれども,助成型モデルを念頭に置いて考える必要があるのではないかなと思います。
  その上で,この1番のところについて,乙案賛成でありまして,甲案については,公益法人で実際どのような実務が行われているかということがよく分かっておりませんので,その実態を教えていただけたらなと思うのですけれども,甲案の実質というのは,受託者等の関係者に助成し,取引関係に入ることは,受託者が適正な選考をしていれば可能ですということで,原則は禁止ではなくて,原則は可能なのだけれども,適正な選考が行われなくて特別な利益を与えるということになるのは不可というルールですと,これを実現するためには,公益認定監督を行う第三者機関が監督権限もこのルールに基づいて行使するのだという趣旨であると思います。
  よく分からないのは,このルールを具体的に当てはめると一体何をするのかというところでありまして,三つぐらい考えられると思うのですけれども,もっとも穏やかな方法というのは,受託者が申請の際に,信託契約や事業計画で特別の利益は提供しませんというものを記載して宣言して,第三者機関が公益認定のときに受託者が宣言しているということを確認するということです。これは非常に簡単で,どれぐらい抑制効果があるのかよく分からないということだと思うのですけれども,もう少し実効性のあるものを考えるとすると,受託者が信託契約や事業計画で適正な選考が行われるのであるということを証明して,第三者機関が公益認定時に選考方法の適正性を確認して,その後は監督時に選考状況というのを確認するということであろうと思われます。
  更に厳しい基準というのが考えられて,受託者が関係者に対して助成や取引をというのを行うときに,それが関係者に該当するのかどうかというのを逐一洗い出して,個別に,この人は関係者だけれども,特別の利益を与えていないですねということを一個一個確認するというプロセスを導入する。そのようなプロセスというのを第三者機関がまた事後的に行われていることを確認すると,そういう三つぐらいの厳しさの程度があると思うのです。
  何でこんなことを申し上げるかといいますと,信託銀行というのは信託業法の適用があるわけです。資料の12ページにも記載がありますけれども,利害関係人との取引は原則禁止です。まず,信託契約で利害関係人との取引を認めるという説明をして,利害関係人と取引を行うときは,それを洗い出して適正な条件であるかを確認して,実行して,その後でどういう利害関係人との取引があるかということを一覧にして,受益者に,公益信託の場合であれば信託管理人に対して報告を行うというようなことを行うわけです。このようなプロセスを特別の利益の供与の禁止においても行うということが果たして想定されているのかどうかというところが私どもの方の疑問であります。
  これは,恐らく関係者の範囲によって左右されると思うのですけれども,11ページの中段で書かれているような関係者の範囲であるとすると,これはかなり広いのではないか。明確にこれだとされているわけではないのかもしれませんが,委託者であるとか受託者,信託管理人,運営委員の三親等の親族や生計を同じくする者というのがその対象で,それらが法人の場合には,それぞれの役員の三親等の親族の生計を同じくする者というところまで確認をするのか,禁止の対象に入るのかということです。
  私ども信託銀行のような立場から考えると,役員の三親等内の親族が公益信託の助成対象にたまたまなっていたか,なかったかというところまでいちいちチェックするというのはなかなか難しいということなので,そういう点で,もしこれが行為規制というものにもなるということであれば,確認のための事務負荷というのがかなり大変なものになってしまうということでありますので,そこまでいくのであれば,まず賛同はしかねるというところがあります。
  ただ,一方で公益信託の担い手拡大の議論というのが今されているということを考えますと,関係者の数が限定されているものであるとか,委託者と受託者が親密な関係にあるような公益信託であるとか,そういったものが今後認められる可能性があるのであれば,むしろ今お話ししたような三親等の親族とかまで一覧にして洗い出しをするというようなことをしていただいた方がいいのではないかなとも考える次第です。
  そのときには,利害関係人への助成,利害関係人との何らかの取引というものは,むしろ原則禁止というようなルールにして,それを信託契約の中で書いている場合には認定するというようなルールにするということも考えられるのではないかなとも思います。ただ,現時点では,そういう様々な受託者に応じたルールが作れるかどうかということがちょっと疑問でありますので,甲案ではなく乙案賛成で,直ちにこういうルールという特定まではできないというのが現状でございます。
○中田部会長 ほかにございますでしょうか。当初の認定の問題と,それからその後の監督の問題と2段階あるのではないかという御指摘は何人かの方から頂きました。最終的な規律がどうなるかというのはともかくとしまして,というのは,両者リンクしているのだという御発言もあったと思いますけれども,検討段階では一応両方それぞれ考えていくということになるのだろうと思います。
  それを前提としたときに,この第3の1については,当初の段階でこのような規律を基準とすべきかどうかについては実効性がないのではないかという御意見が多かったと思いますが,しかし,後発的なといいますか事後的な段階ではやはりこれは考慮すべきではないかという御意見が多かったように承りました。
  当初の段階で,そうすると乙案にするというのか,あるいはもう少し抽象化したような形で,つまり関係者に限らず,その信託財産の使い道についてこういうふうにしてはいけないというようなことを書くべきなのか,これは両方の御意見があったかと思います。
  それから,監督基準の在り方については,特に今,吉谷委員からるる御説明がありましたけれども,公益法人の場合と公益信託の場合とでは,受託者はほかの仕事でもしているではないか,だから,違いをもっと詰めて考えるべきではないかとの御指摘だったかと存じます。ということで,この第3の1については大体御意見いただけたかと思いますが。どうぞ。
○新井委員 信託の立ち上げのときの認定基準と,信託が動き出した後の監督の場面をきっちり分けるというのはそのとおりでいいと思うのですが,これ見ていると,議論が錯綜しているところがあるので,以後そういうところをきちんと分けて整理していただければ大変有り難いと思います。
  例えば,12ページで信託管理人による差止請求権の行使とありますが,これは事後的な監督の話になるので,やはり認定基準のところとは少し分けた方がいいのではないでしょうか。
  それと,これもやはり12ページでしょうか,なお書きのところで,信託業法29条2項によって,信託会社が利害関係人と信託財産との間における取引を行うということがあります。これはもちろん信託財産との取引,受託者と第三者が信託財産に関して取引を行うことがあるわけですが,もう一つ信託で重要なのは,本来の信託の給付として不当に利益を与えるということもあるので,この取引の場面と助成の対象とする場面とをやはりきっちり分けた方がいいような気がするのです。そこのところも注意していただきたいと思います。
  それで,結論のところで,立ち上げのときの認定基準として入れることかどうかということなのですが,私は甲,乙,丙を設けてもう少し抽象化した形で,やはり立ち上げのときの認定基準があってもいいのではないか。認定基準が事後の監督のところにも影響を及ぼしていくという考え方もあっていいのではないかと考えています。
○中田部会長 ありがとうございました。
○能見委員 すみません,今までの議論の方向は賛成なのですが,ただ,唯一懸念として残るのが,どなたかも言われましたけど,やはり当初の申請の段階で,その信託の仕組みとして,あるいはその信託において構造的に信託財産が特定の関係者の利益として行くような仕組みになっているときどうするかという点が認定基準の段階ではやはり問題になるのだろうと思いました。なかなか私もうまい,これはという解決が思い付かないのですが,ただ,私がそのとき懸念したのは,ここに書いてある基準が適当でないので,もっと抽象的な基準を設けたらどうかという案は必ず出てくるだろうと思ったのですが,それはそれでまた問題がある。抽象的な基準だと,認定の段階で裁量性を多く与えることになって,余り適当ではないということを私は感じていました。そういう意味で,いい代替案がないのですけれども,ただ,抽象的な基準の案を設けることについては,やはり慎重に検討しなくてはいけないということだけ言っておきたいと思います。
○長谷川幹事 改めて申し上げるまでもないのかもしれませんが,認定基準と監督基準で分けて考えるということには賛成です。
  その上で,これを監督基準的なものとして考えるにしても,関係者概念がなぜ出てくるかということについては,道垣内委員が言われた悪質性に加えて,そういう変なことが起こりやすいからという予防的な観点が多分あるのではないかと思っています。吉谷委員のご議論を伺っていると,もう前提のような気はするのですが,そこは明示的に議論されていなかったものですから確認的に申し上げたいと思います。
○中辻幹事 少し遡ってしまって恐縮ですが,道垣内委員からさきほど問題提起いただいた部分について,私自身の理解を整理したいという意味で質問させていただきます。
  道垣内委員が例として挙げられた,受託者等の関係者に対しての利益供与の場合と,関係者に当たらない全くの第三者に対しての利益供与の場合について,それぞれを区別して考えるべきだというのは分かりました。ただ,私の理解では,第3の1の認定基準は,公益信託の適格性に関する基準であると同時に,正に公益性があるか否かということに関する基準で,利益供与の相手方が関係者でも,それが全くの第三者であっても,公益性が失われるということでは一緒です。そうすると,監督の場面に絞って言いますけれども,そのとき採られるべき措置は同じであるべきだと考えられるのではないでしょうか。公益法人認定法29条では,公益法人が同法5条1号や4号の基準に適合しなくなったときには行政庁による任意的取消しの事由になると規定されており,両者の取扱いは変わらないと思われるのですが,そうではなくて,関係者への利益供与の方が第三者への利益供与よりも悪質であって,その場合は絶対的取消し事由として一発退場させるべきであると,他方,全くの第三者への利益供与というのは現実に起こる可能性は低いし,公益性の失われる度合いも少ないから,そこについては取扱いを区別して考えるべきであるとお考えなのか,お聞かせいただければと存じます。
○道垣内委員 私の発言に不文明なところがあったのをお詫びします。まず,次の12ページからの2との関係で,先ほど新井委員がおっしゃったように,取引というのと給付というものとをどこで分けるのかという問題があることとも関係してきまして,1のところに第三者という話を入れ込んでいいのかという問題は前提としてありますから,関係者については1,第三者については2という区分も合理性があります。もっとも,これは適用される条文というか,適用が予定される要綱項目といいますか,そういった問題です。その上で,中辻幹事のお話ですが,私が申し上げたのは,第3の1のように,関係者というのを特に括り出すということに正当化根拠を与えようとするならば,ということです。そして,後発的な場合においても,少なくとも取消しというのは不穏当で,受託者の解任ではないかというような樋口委員のおっしゃるとおりだと私も思いますけれども,いずれにせよ関係者と第三者を区別する必要はないのではないかということにつきましては,そうだろうと思います。
○中田部会長 よろしいでしょうか。
○小幡委員 1点だけ。先ほどから監督という話がよく出てくるのですが,後でまた議論するのですかね,監督というのは誰がどういう形でするのかということにもよると思うので,要するに,事後的にそのように本来の公益信託にそぐわないような場面が出てきたときに,どう監督するか。今の公益法人の監督は,かなりしっかりしたイメージで,3年に1回きちんと立入りを行って,まずいところをピックアップして指摘してと,こういう話になるわけですが,恐らくここではそんなことは考えていない,もっと軽装備と思われます。そうすると,事後的に何か不具合があったときには,ここの内部のガバナンスといいますか信託管理人とかそういうものが出てきて,善管注意義務違反などの話のチェックになるのかと初めは思っていたのですが。先ほどから監督でという話がよく出てくるのですが,イメージとして,どういう形で第三者機関が監督に出てくるのかという疑問があります。私は乙案あるいは基本的にもう少し非常に抽象化した形で,本来こうあるべきだということを示しておく方が良いと思うのですが,余り監督というところに,誰がどのようにするかというのはこれから詰める話だと思いますが,それほど重点を置きすぎない方がよいのではないかと思っています。
○中田部会長 ありがとうございました。監督についてはまた改めて御審議いただくことになろうかと思いますが,その実効性ということもよく考えておくべきだということの御注意をいただいたかと存じます。
  この第3の1についてはよろしいでしょうか。
○山田委員 第3の1も含むのですが,認定基準の位置付けについてお伺いしたいのですが,本日の部会資料33では,第2が「受託者に関する認定基準」で,これは公益法人の公益認定法でいうと欠格事由に当たるような議論でした。第3が「信託事務に関する認定基準」ですが,この後に,何々に関する認定基準というのが更に続くのかどうかというのが質問であります。ここまでで認定基準が終わってしまうと,乙案をずっととっていって,後ろの方は認定基準としないことでどうかというのがありまして,そうすると,公益性認定というのがどうなのかなというのを考え,そうしますと,今ちょっと旗色が悪いけれども,第3の1のところに立ち戻って,やはりこういうところで公益性を確保していくのかなというようなことも思いましたので,更に認定基準というのが法人の方の,公益認定法ではもう少しいろいろありまして,それが法人だから出てきているのか,信託事務に関する認定基準という形でスライドしなかったのか,その辺りの方針というのでしょうか,教えていただければと思います。
○中辻幹事 私どもの方で全体像を先にお示ししておくべきであり,申し訳ありませんでした。
  公益信託の認定基準については,参考資料の公益信託法改正研究会報告書の記載の順で御議論していただくことを予定しており,概ね四つの類型に分けています。一つ目が受託者に関する認定基準,二つ目が信託事務に関する認定基準であり,そこまでを本日の部会資料で取り上げています。さらに,三つ目として信託財産に関する認定基準,四つ目として受託者の報酬に関する認定基準もありまして,それらについては次回の部会資料で取り上げて御審議いただこうと考えています。現在の公益信託の認定基準である許可審査基準の内容を踏まえつつ,公益法人認定法の認定基準も眺めた上で,どのような認定基準が新たな公益信託において適切かを考える上で,この四つの区分けで整理するのが最も分かりやすいのではないかと判断し,このような区分けにしております。
○山田委員 大変よく分かりました。ありがとうございます。
○能見委員 今のことと関係することです。先ほどの発言もそういうことを意図していたのですが,山田委員が言われたように,場合によっては,信託事務に関する認定のところの基準というものは設けないという選択肢もあり得るわけですよね,この後の議論次第では。私は,それはもちろんあり得ると思っていましたけれども,先ほど発言しましたように,最初の申請の段階で,どうもこの信託の仕組みはちょっとおかしいのではないかというときに,それをはねるための基準というのはやはりどこかに必要なのかもしれないと考えます。その場合に,余り抽象的な基準にしておくのはどうも適当ではない。そこで,山田委員が言われたように,私は先ほど余りはっきり言いませんでしたけれども,場合によっては第3の1だけを残すというようなこともあるのかもしれないということを思っていましたので,ここで補足しておきたいと思います。
○中田部会長 それでは,ほかとも関係しますので,またこの第3の1に戻るかもしれませんが,次の2に進みたいと思います。「営利事業を営む者等に対する特別の利益の供与禁止」,これについていかがでしょうか。
○深山委員 今まで大分時間をとって1のところで議論した問題と2の問題というのは,ある意味共通するもので,つまり,公益信託において関係者かどうかはともかく,特定の人に特別の利益を与えることがよろしくないという,そのこと自体は余り異論がないのではないかと思いますけど,そのことを認定基準として設けるかどうかという意味で,同じ土俵の問題ではないかなと思います。なので,今までこの1時間ぐらい議論してきたことも踏まえて,1と2と併せて,幾つか出たように,やや抽象的な何らかの基準を設けるかどうかを中心に今後検討したらいかがかなと思います。
○中田部会長 ほかに。
○小野委員 全体の趣旨としては賛成といいますか,深山委員がおっしゃったことと同じなのですけど,株式会社に対する特別の利益という点については,特別であれば株式会社でなくても問題で,同じ目的の何か給付であっても,相手が株式会社であるといけないというのはなぜか,会社制度の選択というのは法人格の選択の問題であって,公益的目的のために活動していれば問題ないのではないか,会社制度のみをクローズアップしすぎているのではと思いました。ただ,深山委員が発言したように,1と2を含めて特別な利益というところが問題なのですよということにおいては,そのとおりだと思います。
○長谷川幹事 先ほど1のところで発言させていただいたことと共通するのですけれども,特定の人に特別な利益を与える行為というのは問題なのですが,それを特定の類型の人だけ取り上げて何か特別に規制するには多分何か理由が必要なのだと思います。関係者の場合には,多分そういったことが起こりやすいということが理由になるのではないかと思っていますが,それとの並びで,適当なものかどうか,あるいは別に特別な集団を類型化して何か規制する必要があるということを考えるのであれば,それは理由があった方がいいと思います。そういう観点から見ると,1と2が同じ並びで同じように規制されるべきかというのは,小野委員がおっしゃったように,少し疑問を感じます。
○中田部会長 ほかに。
○吉谷委員 特別の利益の供与をしてはいけないというのは当たり前のことなので,それ自体に反対するということはないのですけれども,そういう認定基準を置いたときに,一体何が起こるのかということが分からなくて,多分助成型であれば助成先を選定するプロセスがきちんとできていますということを認定のときに御説明するのだろうと思うのですけれども,それ以外の場合に一体何をするのだろうということが分からないので,そういうルールを設けることの意味がよく分からないなというのが現時点での印象です。そういう理由で元々協会では乙案ではないかなと思っていたところです。先ほど1のところについては,むしろ積極的に利害関係のある人に対する助成とか利益の供与とかは,直接禁止をするというふうな形であれば実効性があるのかなと思ったのですけれども,この2については,そういうこともできないのかなと思いますので,ルールを設ける意味がよく分からないというところです。
○中田部会長 ほかに,第3の2についてよろしいでしょうか。
  それでは,次に進みたいと思います。次が3,「社会的信用を維持する上でふさわしくない信託事務あるいは公序良俗を害するおそれのある信託事務の禁止」でございます。
○川島委員 1点意見を申し上げます。
  まず,公益信託は,広く社会全体の利益につながるような事業でなくてはならないという観点から,今回示されている中では甲案の方が良いというように考えます。その上で,受託者は信託事務のほかに何かしらの事業や副業を行っていることも想定されます。これらの事業が公の秩序などを害するようなものであってはならないというように考えておりまして,公益信託の受託者としてはふさわしくないと考えます。
  以上のことから,この点について検討する際には,信託事務に限るのではなく,受託者が行っているほかの事業も含めた規律を設けるべきだと考えます。
  今日欠席されていますけれども,平川委員の意見書に記載されております丙案というのが,今申し上げたようなことと問題意識も共通すると思いますので,その点について御検討いただければと思いますし,また,ここの部分で検討するべきものなのか,一つ前の受託者に関する認定基準の中であるいは検討いただけたらというように思います。
○中田部会長 ほかにいかがでしょうか。
○吉谷委員 この3につきましては,信託事務の範囲に関する規定だと思うのですけれども,元々公益で限定するのであれば,乙案ということになろうかと思われます。
○能見委員 私も,今の吉谷委員の御意見と同じですけれども,別な意見が出たので,ちょっとそれに反対するという意味で発言をしておきたいと思います。
  受託者が何をやっているかというのは,また別に受託者の資格のところで考えればいい問題で,ここはやはり信託事務に関する認定要件としてこういう規定を設けるかどうかに限定して考えるべきだろうと思います。そうだとすれば,公益信託としては公益事業しかやらないということにするのであれば,もうその段階で,そこでもって,ここで心配している事態については判断されますので,わざわざ甲案のような規律を設ける必要はなく,乙案でよろしいと思います。
○中田部会長 ほかにいかがでしょうか。
○明渡関係官 川島委員の方からお話がありましたが,実務をやっていく上で,確かにここの議論でするのか,ほかのところで議論するのかというところはありますけれども,この社会的信用というようなことを考えた場合に,受託者が行っているほかの事務をどのように見ていくのかということは検討しておいていただいた方が良いかと思います。
  変な例かもしれませんけれども,ここに挙がっているような性風俗関連特殊営業を行っている事業者が,例えば特定の病気に対する啓発事業を行うというような公益信託を受託するというのは,実際にあるかどうか分かりませんけれども,そこの事業ということで見ていかないと,こういうものを認めるのか,認めないのかというような問題は出てくるのかなと思います。もちろん能見委員おっしゃるように,ここで議論するのかどうかというような点ではありますけれども,論点として整理しておく方が良いのではないかと思います。
○小幡委員 ここの論点は,公益法人の場合は,公益事業ではない事業をやるので,収益事業をやるときに問題となるのです。そもそもこういうものは公益事業にはなり得ないわけですから,公益事業ではなくてほかの事業をやるときに問題になる話なので,したがって,ここでは信託事務としてこういう縛りをつける必要はないのではないかと思います。したがって,乙案ということになろうかと思います。ここは公益法人の場合と違うのではないかと思います。
○中田部会長 そうしますと,社会的信用の維持あるいは公序良俗というのを信託事務のところで規律する必要はないのではないかという御意見は,むしろ受託者の要件として考えるべきだという方向になっていくのだろうと思います。他方で,受託者の方は,欠格事由あるいは適格性というところで議論した上で,信託事務としてこれを置いておくという御意見と両方出てきたかと思いますが。どうぞ。
○川島委員 先ほど私が発言させていただいた中で,まずはここで挙げられているような課題について議論することが必要だという前提のもとで,そのことを正に今,部会長がおっしゃられたように,信託事務の認定基準で扱うべきなのか,最後に申し上げたのですけれども,そうではなくて受託者の認定基準のところで扱うべきなのか,私自身はこだわっておりませんので,全体の中でひとつ御検討いただけたらという趣旨で発言をさせていただきました。
○道垣内委員 信託事務の話としてここは論ずるべきだというのはおっしゃるとおりだろうと思います。ただ,受託者の資格要件のところではまた別途検討すべきであるという意見が大勢を占めているようですので,1点だけ申し上げますと,私個人としては,風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律に規定する性風俗関連特殊営業を行っていても,合法的なものである限りにおいて,そのことを公序良俗に反すると言って受託者の資格要件で外すことに納得がいきません。
○林幹事 こういう内容のものが信託事務としては当然認められないということと,公益信託の受託者についてどう考えるかとの問題があるのはそのとおりなのですが,一方で,甲案では善良の風俗を害する「おそれ」となっています。明確に公序良俗違反でなくても,それに近いと疑うものである場合と規定するという趣旨にも読めます。そうすると,「おそれ」というものをどの程度捉えるかによって違ってくるところで,恣意的な運用がなされてはいけないですし,過剰な規制となってはならないので,こうした問題があることは指摘しておきたいと思います。
○中田部会長 ほかに。
○小野委員 ほぼ同意見なのですけれども,信託銀行なら引っ掛かることはないでしょうけれども,それ以外の受託者の候補について公序良俗に反しているとか,そのおそれがあるということを,そもそもどうやって認定の段階で判断するのか,後に社会的問題が生じたときに,監督していけばよいように思います。先ほどの欠格事由の方で何か分かりやすいものを提案するということがふさわしいと思います。
○中田部会長 今の御意見は,信託事務として規律することはいいということになりましょうか,それとも,それも良くないという。
○小野委員 そもそも規律しなくても受託者の信託契約違反の問題になると思いますけれども,でも,確認的にそういうことを入れることは問題ないと思います。一方,欠格事由のところで公序良俗に反するおそれがある行為をする受託者はだめですというような一般的な規定の仕方というのは,ちょっと過剰な規制かもしれないし,監督不能,立証不能かもしれませんので,特別な配慮が必要と思います。
○中田部会長 ありがとうございました。信託事務の規律とするか,受託者の規律とするか,それぞれについての注意点を御指摘いただいたかと思います。それを踏まえて更に検討を進めるということにしたいと思います。
  ほかに,第3の3についてよろしいでしょうか。
○中辻幹事 川島委員に御紹介いただきました平川委員の意見書の丙案について若干コメントさせていただこうと思います。
  恐らく丙案の目指すところは,部会資料33の甲案と基本的には同一であるのだろうと思います。そして,先ほど申し上げました公益信託の信託事務に着目するのか,受託者に着目するのかということにも絡みますが,公益法人認定法5条5号は公益法人全体に着目して公序良俗に反する事業をその公益法人が行わないことを認定基準としておりますので,平川委員の丙案は,公益法人認定法の考え方に近いように感じます。もっとも,仮に新たな公益信託の認定機関を設ける場合において,その認定機関が受託者の行っている信託事務以外の業務についてまで審査することが現実的に可能なのか,またそれが仮に可能であるとしても本来的に適切であるか否かということが問題になると思われます。そうすると,甲案が妥当だと言うつもりは全くないのですが,甲案のように,公益信託の受託者が公序良俗に反する信託事務を行なわないことを認定基準とすることで足りるという考え方にもそれなりの合理性はあるようにも思います。この点は,まさに信託と法人の制度的な違いを踏まえて考え込まなければならない問題であり,貴重な御意見ですので,引き取って検討させていただきます。
○小野委員 公益信託事務と捉えて検討する場合ですが,いわゆる受託者による信託取引の議論になって,信託法の適用関係になり,もちろん公序良俗違反であれば無効ですけれども,おそれになると,無効にならなくて,相手方が善意無過失であれば,信託法上は保護されると思います。そうあるべきという議論ではなくて,そういうような信託取引についても今度の制度の中で公益信託の受託者と取引する第三者は,より注意義務を果たすべき,また,そういう取引をすべきではないという観点から検討するというような方向なのでしょうか。
○中辻幹事 第三者にそのような注意義務を課すことが必ず適切であるとまではいえないと思いますが,そこも含めて考えてみたいと思います。
○中田部会長 よろしいでしょうか。
  それでは,4,「収支相償」に進みたいと思います。御意見をお願いいたします。
○小野委員 収支相償という表現については,弁護士会には過剰反応なところがございまして,なぜかといいますと,信託業法で,信託業法の適用対象になる要件として,反復継続性と収支相償性というのが今まで議論されてきて,弁護士など個人が受託者になる場合,少しでも報酬を得れば,それは収支相償性に該当するということで,2回目になると反復継続性に該当しアウトですよという議論であったかと思います。今回は,この収支相償という言葉の甲案の中の定義といいますか捉え方が,そういう趣旨では捉えていないのですけれども,割と頻繁に使われる表現,法律上の概念であるということもありまして,この収支相償という言葉が,二つの意味で信託業法とは違う意味で使われているのだという趣旨を,当たり前ですけれども,確認したいことと,恐らく公益法人認定法でこういう表現を使われたから使っているのかと思うのですけれども,信託業法との整理もしていただければと思います。
○中辻幹事 御指摘を踏まえて検討させていただきます。
○深山委員 議論の前提として,この資料で挙げている収支相償の意味合いを確認したいのですけれども,ゴシックのところの表現は,公益目的の信託事務に係る収入がうんぬんということで,その信託事務による,言わば信託財産の運用収益的なものを表現しているようにも読めるのですけれども,補足説明を見ますと,18ページ辺りなどでも,収支相償を満たすために収入が増えるのを回避するようになって,その例として信託財産への寄附を拒むみたいなことが挙がっているところを見ると,いわゆる運用益的な収入ではなくて,寄附のような信託財産そのものを受け入れるようなものもここの収入に入っているようにも補足説明の方から読めるわけです。そうすると,同じく収入という言葉でも,運用益的な収入と,正に信託財産の受入れのようなものとは大分意味合いが違うと思います。立派な公益信託を作って賛同する人がどんどん現れて,私もそこに寄附という形で信託財産として拠出したいとなったという話は,これは大いに結構なことで,それを収支相償があるので受けられないなどというのはおかしな話だというのは誰も異論がないと思うのです。しかし,そういうことではなくて,ここで収支相償というのはもうちょっと違う意味なのかなという気もします。
  支出の方も同じなのですけれども,運用上の事務コスト的な費用,経費だけを指しているのか,助成型でいうところの助成金のような支出もこの支出に入るのかによって大分意味合いが違ってくるので,収支相償というものが,この場面で,収入の方も支出の方も,どの範囲を意味して問題にしているのか自体が非常に分かりにくいし,そこが分からないまま,あるいは共通認識のないまま議論すると,議論自体がかみ合わなくなるおそれがあるので,まず冒頭,その辺を整理していただければなと思います。
○中辻幹事 公益法人の認定実務については,明渡関係官の方がお詳しいでしょうが,私どもなりの公益法人制度の理解を前提として,それを公益信託に置き換えた場合の収支相償の認定基準における収入の意味内容について言えば,深山委員がおっしゃったように,公益信託の信託財産の運用益に限られるものではなく,寄附金や追加信託なども含めて収入としてとらえることになるものと考えています。
  また,支出の方についても,受託者が公益目的の信託事務を遂行するのに必要なコストだけではなく,公益目的の信託事務本体である助成金や奨学金の支給に充てられる費用も,収支相償の認定基準における支出に入るという考え方のもとに今回の部会資料は作成しております。
○能見委員 これは,今御説明がありましたように,公益法人のところで行っている収支相償の考え方を信託に当てはめていますので,今おっしゃったようになるのだろうと思います。ただ,いろいろな論点たくさん絡んでいますけど,まず寄附金をどう扱うべきかということに限定して話をしますと,信託だけ別扱いできるのかどうか分かりませんが,公益信託の場合の寄附金については,追加信託みたいな考え方も恐らくできるのだろうと思うのです。いわゆる収入としての寄附ではなくて,追加信託という形で信託財産が増える。したがって,信託においては収支相償のところでは寄附は別扱いにするというような扱い方もできるのではないかと思っています。
  それから,収支相償全体について言いますと,このルールが何を目的としているのかについても微妙に異なるいろいろな考え方があるのかもしれませんが,大ざっぱな言い方をすれば,公益法人なり公益信託なり,その財産がただ増えていくというのは適当ではないから,収入があったら公益目的のためにそれを使っていきなさいという考え方なのだろうと思います。それ自体はそれほどおかしくない考え方なので,何かの形でルール化するとすれば,丙案がいいのかなと思っています。けれども,これに対しては,収支相償原則のもとで単年度扱いではなくて数年度にわたって使うということもできると考えれば,甲案の収支相償の原則でいいではないかという考え方もあり得るとは思いますけれども,単年度ではなくて何年かにわたって使うことを許容するというルールは一方であっていいと思いますけど,やはりこれだけでは根本的な解決にはならない。根本的な解決というのは,やはり公益信託において継続的な事業,継続的な信託を行っていく上で,収支相償原則のもとで収入は寄附も含めて全部基本的に使いなさいというようなことでは,恐らく継続的な事業はできないのだろうと思うのです。単年度扱いではなくて何年かわたって計画を立てればいいというルールを設けたとしても,恐らく非常に苦しい。公益法人で何とかうまくいっているのは,収益事業がもう一方にあるからだと思います。収益事業の収入の半分は公益目的事業に当てる必要があるので,入ってきた分については収支相償原則のルールがかぶっていますが,残りの半分については,これは課税されるということなのですか,ちょっとよく理解していない部分もありますが,収益事業でもって公益事業に使わなかった部分はそのまま普通の収入として法人税がかかるのでしょうね。ただ,その分は,一応収益事業の収入として残りますので,公益法人の場合には,そういう意味では収益事業をうまく使っていくことで継続的に公益事業を行っていく収入を確保することができる。しかし,収益事業をやらない公益信託になりますとその道がないので,ここで収支相償という原則を強く守らなくてはいけないということになると,継続的な公益信託の事務の遂行というのは非常に難しい。どんどん資産が減っていくような公益信託にしかならない。今までの助成型のやり方というのはそれで構わないわけですが,これからは継続的な公益信託の事務として美術館だとか博物館とかそういうものも含めて事業型の公益信託をやっていくということも認めていこうというのであれば,やはりこの原則は適当でないと思います。そういう意味で収支相償原則は外した方がよい。ただ,このルールを外して,むやみに財産が増えるのを防ぐためにどうしたらいいかという問題がありますので,この部分は別の方策を検討した方がいいと思いますが,基本的には,この資料の中であれば丙案がよろしいのかと思います。
○中田部会長 ほかにいかがでしょうか。
○明渡関係官 公益法人の例で申し上げますと,能見委員は収益事業というふうなことをおっしゃいましたけど,これに加えて公益法人の会計につきましては法人会計という,いわゆる管理費部分というようなものを立てているのが普通でございます。この収支相償と言われるものがかかってくるのは,公益事業会計の部分についてのみということで,それ以外の会計が立っているというのが実態でございます。
  それに加えまして,毎年の収支を単に数字だけで出すというようなものではなくて,特定費用準備資金であったり,資産取得資金というような法人の中に積み立てておくようなものはその年において差し引くというようなこともありますので,単純に支出,収入だけの計算だけではないという形で見ているというものでございます。
○深山委員 先ほど質問させていただいたことを前提に申し上げると,この収支相償の基準を設けるかどうかについては,基本的には設けない方がよろしいのではないかと思います。基本的な考え方は,能見委員が先ほどおっしゃったのと同じような考え方で,継続的に公益信託を維持する場面を考えると,単年度でないにしても,継続的な信託を維持するためには,かえってこれが障害になるという懸念をいたします。
  唯一能見委員も懸念されていた,全く何もなくていいのかという部分について言えば,確かに,せっかく公益のために拠出された財産が当該公益の目的のために支出されずにため込まれてしまってはもちろんよろしくないわけですが,それは,この収支相償という基準ではなくて,後々提案があるかどうかは判りませんけど,遊休財産を持ってはいけないというような,そういう切り口での規制を別のところで設けることによって図る,すなわち,ため込んではいけないというのは,それはそれで別のところで規律を設ける必要もあるのだろうと思います。どうしても支出する方も,収入もそうですけれども,定期的に入ってくるものばかりではないし,支出する方も定期的に支出できるものばかりではないと思いますので,単年度ではなく数年度にしたところで,全て吐き出すというような考え方を強く出すことは,継続的な信託にとっての阻害事由になるのではないかという考え方であります。
○新井委員 前回の部会で議論したところですが,今までの公益信託の在り方というのは助成型ということでした。部会の議論としては,これからは事業型ということに拡張していったらどうかとの見解があります。例えば美術館の運営とか,外国人留学生のための寮を運営しようという議論がありました。それで,従来型の給付助成型については,これは信託財産を受け入れて給付していくだけなので,収支相償という考え方は私は当てはまらない,外していいと思うのです。
  問題は,部会で議論したような事業型の公益信託ということになったときに,これ,収益事業も一部含むということもあり得るので,そうしたときにこの収支相償をどうするかという議論があると思うのです。ですから,事業型の公益信託を入れたときにどうするのか。同じ公益信託であっても,収支相償原則の適用のあるものとないものというのも,いかがなものかという気もします。しかし,類型によって分けるということもあるので,その辺り更に検討していただいたらどうでしょうか。私は,基本的には収支相償を外す,そして,ここにある案でいいますと,丙案に賛成したいと思います。
○中田部会長 ありがとうございました。ほかに。
○吉谷委員 収支相償はやはり年度単位の収支というものを原則にしておりますので,やはり毎年一定の収入があるような事業というのを前提にしているのだろうと思います。新井委員がおっしゃられたように,少なくとも長期にわたって財産を取り崩していたり,助成型であったりというようなものについては,まず当てはまらないのだろうなと思いますし,原則としては,どちらかというと長期的な資金計画というのを今も作って認定していただいているわけでありまして,その資金計画の中で信託財産が信託目的に沿って利用されているということが分かれば,それでいいのではないかなと思います。事業型の方についていろいろな類型が出てくるかもしれないのですけれども,毎年一定の収入があるということは必ずしも言えないのではないのかなと思います。
  また,収支相償原則が採用された場合に,会計や資金計画上の事務手続として申請の段階であるとか信託成立後の事務にどのような負荷が加わるのかというのも明らかでありませんので,そういうことも単年度単位でなくても何らかの新たな事務負荷が加わるのであれば,それは提案されるときには教えていただきたいなと思います。
  事務負荷がかかるとどうしてもそれを回避しようとして,資料で記載されていますような数値基準を満たすために寄附の受入れを謝絶するであるとか,相当性に疑義のある費用に計上するとか,そういうことを誘発する懸念があるということは避けられないと思いますので,合理的な事務に限るべきだと思います。
  では,ペイアウトルールの方はどうかといいますと,これも取り崩し型の公益信託にはまず当てはまらないのだろうなと思いますし,様々な信託の類型に対応するような数値基準というものができるのかどうかということは現時点では疑問であります。ですので,乙案賛成です。
○中田部会長 ほかはいかがでしょうか。
○小幡委員 公益法人においても,収益をやっているようなところはよいのですが,この収支相償原則をなかなか満たしにくい業態があるので,なかなか厳しいところもありますし,今回,収益事業をやる形の公益信託を認めるのかどうか,そこはどうなったのか分かりませんけれども,大体は収益事業ではないと思われますので,不要ではないか。
  丙案は,要するに,余り財産が蓄積されないようにという,遊休財産規制のような感じですかね。もし,縛りがあった方が良いということであれば,丙案があっても良いのかなという程度で,収支相償自身は要らないのではないかと思います。
○中田部会長 一定の公益目的のための信託で,ただ漫然と財産をため込んでいくのは良くないというのは,これは共通の認識で,その上で,それをどうやって規律するか,収支相償原則プラス特定費用準備資金を活用するなどの方法で柔軟に対応するという公益法人と同じようにするのか,あるいは公益信託の特性を考えて,他の方法を考えるのかということだったと思います。他の方法として丙案,あるいは先ほど遊休財産についての御意見もございました。この遊休財産については次回にまた御審議いただくことになります。さらに,取り崩し型の場合には,この基準は及ばないのではないかと,こんな御指摘も頂いたかと存じます。これらを踏まえて更に検討するということで進めたいと思います。
  ほかに,この収支相償についてはよろしいでしょうか。
  それでは,次に進みます。5番,「公益目的の信託事務以外の信託事務による公益目的の信託事務の実施への支障がないこと」,これについて御意見を頂きたいと存じます。
  原案は,規律を設けないということでどうかということですが,むしろ規律を設けた方が良いという御意見があればお出しいただければと思いますけれども。
  特にないということは,設けないということでよろしいでしょうか。それでは,そのようなことで取りまとめたいと思います。
  それでは,最後6番です。公益目的の信託事務の比率について,公益目的事業比率に相当するような基準は設けないということですが,いかがでしょうか。
  これについても特に御意見がないということは,原案のようにこのような規律を設けないということでよろしいと承ってよろしいでしょうか。
○林幹事 原案に賛成ですが,一応,ここでいう信託事務に係る費用に,受益者に対し給付する金銭の支出などは含んでいないと読むのかどうか,確認させてください。この基準は,基本的には公益法人では公益事業とそうではない事業の話をしているのであって,ですから公益信託では不要だと考えていますが,議論の想定というか何と何を比較して50%以下ということを考えていらっしゃるのか,確認させてください。
○中辻幹事 公益法人認定法の仕組みを部会資料33の21ページの上の方に記載しておりますが,公益法人の支出としては,公益目的事業の実施に係る費用,収益事業等の実施に係る費用,公益法人の運営に必要な経常的経費の3つが存在します。これを仮に公益信託の方に置き換えた場合,公益信託の支出としては,公益目的の信託事務の実施に係る費用と公益目的の信託事務の運営に必要な経常的経費が入ってきます。ただし,公益信託の受託者が行う信託事務から収益事務を除いた場合には,公益信託の支出に収益事務の実施に係る費用は入ってきませんので,公益目的の信託事務の実施に係る費用の比率が50%以下となるような不適切な事態は起こらないであろうというのが私どもの考えでございまして,公益目的の信託事務の比率に関する認定基準は不要というご提案をしております。
○林幹事 そのような御説明でしたら,その上で賛成の立場です。
○中田部会長 ほかに,この第3の6について御意見はございますでしょうか。
  それでは,林幹事も含めて,この原案に賛成ということで取りまとめさせていただきます。
  冒頭,小野委員から御指摘がございましたが,信託事務に関する認定基準について,ほかにこういう点を考慮しておくべきではないかということがございましたら,お出しいただければと存じます。ただ,先ほど中辻幹事からお話のございましたように,認定基準というのは,これだけではなくて,また次回に続きますので,どこで取り扱うのが良いかという問題があろうかと思いますが,この段階でこういう点も考えたらどうかということがございましたら,御指摘いただければと存じます。
  特にございませんか。またございましたら,次に,ほかの認定基準のところでもまたお気付きの点がありましたらお出しいただければと存じます。
  ほかに本日の審議事項について補足的な御意見等はございますでしょうか。どうぞ。
○能見委員 まとめで結構なのですけれども,先ほど私は,3の1とか2に関して,余り抽象的な基準で認定の際の規律を設けるのは適当ではないということは申し上げたのですけれども,そして,1を残してもいいとは申し上げましたが,2も深山委員が言われたように同じような問題なので,1と2をまとめた上で,その程度で余り抽象的ではないような規制の認定基準ができるのであれば,御検討いただきたいと思います。これは第2ラウンドになるのでしょうか,それともこの後引き続き議論するのか,それはおまかせいたしますけれども,お願いしたい。
○中田部会長 恐らく第二読会になろうかと思いますが,今の御指摘も踏まえて更に検討することにいたします。
○山田委員 今の御発言にちょっと関連するのですが,今日は前半の方,認定基準とその後の監督あるいは取消しも含めた監督基準とは分けるという話がかなり大勢を占めたかと思います。ですが,それに対してやや慎重に考えたらどうかという発言をさせていただきたいと思います。
  公益法人認定法は全く同じ基準で,前の方に6条に認定基準がずっと並んでいて,そして後半の方に監督のところでそれを引用しながらしています。しかし,今日の議論のようなものは,恐らく公益法人のところにも当てはまるのだと思うのです。公益認定の申請をしたときには,これからどうしますということを事業計画とか,定款とか,収支予算案みたいなものを示して,実際に動き始めたら,現実何をやっているかというのを見て監督する場合によっては認定取消しというのに進むのではないかなと思います。そうだとすると,同じ基準で,同じ文言を使っても,実際に使うのは入口のところと走り始めてからとでは使い方というのでしょうかね,それが違うというか,それぞれの応じた形になっている可能性があろうと思います。ただ,それはやはりやや作為的な工夫をしてそうなっているのであって,そこは公益信託についてはきちんと違うのだから違うふうな書き方をした方がいいだろうという考え方はあろうと思うのですが,公益法人についての今の経験というのでしょうか,それを適切な形で教えていただいて,認定基準のところに書かれているものは,入口のところでどういうふうに,どういう書類でどういうふうに判断されているのかというのが,それぞれ認定庁は分かれていますけれども,国の認定の例などをお話しいただけると,あるいは今日の前半の認定と監督とは分けた方がいいだろうという議論に対して,いやいやそこまでしなくてもいいだろうという議論も出てくるのではないかなと思います。
○中田部会長 認定と監督を分けるということについては,最終的にそれが多数だったかどうかはよく分からないのですが,検討する上でまずは分けて考えた上で,しかし,両者はリンクするのだから,どのようにリンクさせていくかというのは,次の段階で問題になるだろう。山田委員はそれを踏まえた上で,やはり最終的な姿としても,結合した方がいいのではないかということでしょうか。
○山田委員 結合した方がいいと考えるという意見をより確実にするために,現在認定と監督のそれぞれのところでどういうふうにやっているのかということが分かると役に立つのではないかなと思います。
○中田部会長 ありがとうございました。
○山本委員 今日お話の全般に関わることですので,最後に一言申し上げたいと思います。
  今日の議論で何か決まったというわけではないですけれども,全般について,公益法人認定法で定められているものと少し基準で考えてはどうかということが出ていました。これを仮に実際に法律にしていこうとしますと,公益法人認定法は現状ではこのままになっていますので,両者やはり性格が違うというような説明をどうしても付け加えていくことになりがちではないかと思います。そして,実際に両者の性格は違うので,区別をすべき場合があるのは確かかもしれませんが,今も少し出ていましたように,実は,公益法人認定法の側もこのままで本当に良いのか,ここで議論していることが同様に当てはまるのではないかという面もかなりあるように思われます。ですので,過度に両者の性格の違いを強調して,今回の法律に関する提案を基礎付けるのは,慎重に,よく考えた上でないと問題が残るかもしれないということのみ申し上げておきたいと思います。
○中田部会長 ありがとうございました。
○吉谷委員 先ほど認定の基準と監督の基準はリンクさせるということはあり得るのではないかということを申し上げたのですけれども,特に,今回,事業型の公益信託みたいなものも考えられているとは思うのですけれども,従来型の簡単な仕組みの信託というものを念頭に置くと,認定のときにこういう形で計画でやりますと言われたものについて,そのとおりにやっているということであれば,監督の段階でそれほど精査する事項もないと思いますので,そこは信託で行う事業によって監督のところについてはまた軽重があってしかるべきなのではないかなと考えます。
○小野委員 吉谷委員が監督の話をされたので,思ったことなのですけれども,信託銀行の場合には公益信託を今現在でも今後行う場合でも銀行法上,兼営法上,金融庁の監督下にあって,それ以外の場合とで区別して考えていくと,こういう理解で私自身いるので,そういうことでよろしいのかどうかということを確認したいと思います。信託銀行が公益信託を行う場合,認定のところは認定機関が行うのかもしれませんけど,監督の方は認定機関から離れて現在の立て付けどおり,金融庁が行っていくということなのかどうかという辺りです。
○中田部会長 監督,ガバナンスについてはまた改めて,どこがどういうふうにするかということは御審議いただく機会があろうかと存じます。今日の段階では認定基準ということで御理解いただいた,今日はそこまでということにさせていただければと思います。
  ほかにはよろしいでしょうか。
  それでは,本日は少し早いですけれども,審議はこの程度にさせていただきます。
  最後に,次回の議事日程等につきまして,事務当局から説明していただきます。
○中辻幹事 次回は,公益信託の具体的な認定基準のうち,信託財産に関する基準及び受託者の報酬に関する基準を御審議いただくほか,公益信託の認定主体や,公益信託と目的信託の関係について御審議いただくことも予定しております。
  次回の日程は,平成28年10月4日(火曜日)午後1時半から午後5時半まで,場所は法務省20階第1会議室で開催します。
○中田部会長 それでは,本日の審議はこれで終了といたします。
  本日も熱心な御審議を賜りましてありがとうございました。
-了-