日本登記法学会 第7回研究大会

令和4年11月26日(土)

共催  日本司法書士会連合会、日本土地家屋調査士会連合会、日本登記法学会

http://www.toukihou.jp/event.html

後援  法務省

プログラム

テーマ「担保法制の見直しと登記」

        研究報告 青木 則幸氏(早稲田大学法学学術院教授)

        研究報告 本橋 寛樹氏(司法書士)

コメンテーター 白石 大氏(早稲田大学法学学術院教授)

テーマ「区分建物と登記」

        研究報告 藤巻 梓氏(国士舘大学法学部教授)

        研究報告 吉田 健氏(司法書士)

        研究報告 橋立 二作氏(土地家屋調査士)

        コーディネータ- 秋山 靖浩氏(早稲田大学法学学術院教授)

小西飛鳥「デジタル社会における不動産登記簿の公開」

今瀬勉「リモートセンシングデータの登記利用」

法制審議会-担保法制部会

https://www.moj.go.jp/shingi1/housei02_003008.html

 2022年9月27日に行われた審議会において、担保ファイリングを優先要件とする提案を廃し、対抗要件としての登記についてその優先順位(民法373条参照)を修正する形の登記優先ルールに基づく規律に一本化し、担保ファイリング案で提唱された問題のいくつかを登記優先ルールの中で具体化していく方針

法制審議会担保法制部会第25回会議(令和4年9月27日開催)

https://www.moj.go.jp/shingi1/shingi04900001_00158.html

U.C.C.§9-308(a)

https://www.law.cornell.edu/ucc/9/9-308

U.C.C.§9-322

https://www.law.cornell.edu/ucc/9/9-322

ファイリング登記における優先要件の機能・・・現在の不動産登記記録における受付年月日と受付番号の機能と同じ?

・コスト面から必要最小限の機能を充たす公示に担わせることができるという考え方をとる。

参考

19世紀の米国ニューヨーク州法における非占有型動産モーゲージ権者と差押え債権者の競合に関する規範形成 -アメリカ動産担保法における登記一元論の実相解明に向けて-

https://w-rdb.waseda.jp/html/100000543_ja.html

「動産譲渡担保の公示に関する考察~動産譲渡登記と占有改定の比較を中心に~」司法書士本橋寛樹

本報告の趣旨

動産譲渡登記と占有改定の制度間比較を通して、動産譲渡担保の公示レベル向上制度設計に関する考察

◆主な報告内容

1. 動産譲渡登記と占有改定の制度間比較

現行法上、動産譲渡担保における対抗要件は登記占有改定の間でその優劣はない (登記優先ルールではない)が、 設定者の範囲や公示の有無等の相違点が多数あり

2. 動産譲渡登記の改善点に関する検討

 設定者や公示の範囲等、レベル向上に関する方策して「法制審議会担保法制部会」における論点も射程

動産譲渡登記による第三者対抗要件具備

 動産譲渡登記ファイルへの記録(登記)により動産の譲渡について引渡し(民法178条)があったものとみなされ、第三者対抗要件具備に公示的機能あり

占有改定の課題

1.担保順位に関する予見可能性の低さ

 後日、動産を取得する者が現れ、占有改定の有無やその先後をめぐって紛争が生じるおそれがあるという不確定要素あり

2.担保権処分等の公示が不可

もとの順位が公示されないため、それを基にした順位変更等の公示が困難

3.設定者に依拠した調査

先行する占有改定の存否の調査では、担保を取得する者は、ゼロベースで設定者に対して問い合わせをする必要あり

対抗要件の優劣

「時刻」単位

登記間は時刻の先後で優劣

民法上の対抗要件と特例法上の対抗要件(動産譲渡登記)とでは、先後関係の証明手段について、「日付」と「時刻」で単位に相違あり

・・・登記の場合は、同日でも時刻単位で先後関係が明らか

「日付」単位(確定日付)

現実の引渡し(民法182条1項)

簡易の引渡し(民法182条2項)

占有改定(民法183条)

指図による占有移転(民法184条)

動産譲渡登記(特例法3条1項)

民法上の対抗要件

特例法上の対抗要件

動産譲渡担保の対抗要件・・・引渡し(民法178条)

・・・法人が動産を譲渡した場合において、動産譲渡登記がされたときは、当該動産について、民法178条の引渡しがあったものとみなす(動産債権譲渡特例法3条1項)。

・・・民法上の引渡しと動産譲渡登記が競合した場合には、その時点の先後によって優劣を決定

⇒現行法上、「登記優先ルール」は採用されていない(※)。

※「担保法制部会資料20」2,6頁では登記優先ルールの提案あり

◆主な報告内容

1.動産譲渡登記と占有改定の制度間比較現行法上、動産譲渡担保における対抗要件は、動産譲渡登記、占有改定の間でその優劣はない(登記優先ルールではない)が、設定者の範囲や公示の有無等の相違点が多数あり

2.動産譲渡登記の改善点に関する検討設定者や公示の範囲等、公示のレベル向上に関する方策に関して、「法制審議会-担保法制部会」における論点も射程

占有改定による第三者対抗要件具備

占有改定:意思表示のみで、占有の外観に変化なく第三者対抗要件を具備

※実務上、譲渡人と譲受人間で動産譲渡担保権設定契約書を作成し、確定日付を付与

占有改定の課題

1.担保順位に関する予見可能性の低さ後日、動産を取得する者が現れ、占有改定の有無やその先後をめぐって紛争が生じるおそれがあるという不確定要素あり

2.担保権処分等の公示が不可

もとの順位が公示されないため、それを基にした順位変更等の公示が困難

3.設定者に依拠した調査先行する占有改定の存否の調査では、担保を取得する者は、ゼロベースで設定者に対して問い合わせをする必要あり

動産譲渡登記による第三者対抗要件具備

 動産譲渡登記ファイルへの記録(登記)により動産の譲渡について引渡し(民法178条)があったものとみなされ、第三者対抗要件具備に公示的機能あり

設定者の範囲

◆設定者の属性(法人と個人)による対抗要件具備の比較

・設定者が個人の場合は、動産譲渡登記の利用が不可であり、占有改定一択

・占有改定では公示がなされず、個人による動産譲渡担保設定の有無はブラックボックス

・・・先行する占有改定の有無について担保を取得する者は設定者からの情報提供によって判断せざるを得ず、設定者の対応力次第

対抗要件具備の公示

◆実務上の取扱い

動産譲渡登記・占有改定の双方を活用:二重の対抗要件具備

・・・まず占有改定(実務上、確定日付の付与)によって動産譲渡担保の対抗要件を具備し、その後動産譲渡登記を具備することによって公示

対抗要件設定時のコスト

動産譲渡登記  被担保債権額にかかわらず、譲渡(設定)登記の登録免許税は、原則1件1万5,000円。ただし、租税特別措置法の適用により    1件7,500円

https://www.moj.go.jp/MINJI/dousanjouto.html#:~:text=%E5%8B%95%E7%94%A3%E8%AD%B2%E6%B8%A1%E7%99%BB%E8%A8%98%E5%88%B6%E5%BA%A6%E3%81%AF,%E5%8F%AF%E8%83%BD%E3%81%A8%E3%81%99%E3%82%8B%E5%88%B6%E5%BA%A6%E3%81%A7%E3%81%99%E3%80%82

占有改定

 被担保債権額にかかわらず、法令上必須のコストなし。実務慣例上法務局または公証役場で確定日付を取る場合1件700円

◆動産譲渡登記と不動産登記の担保権設定時における登録免許税の比較例:被担保債権額が1億円の場合

動産譲渡登記:7,500円・・・定額課税

cf.  不動産の(根)抵当権設定登記・・・定率課税

抵当権設定登記(原則)40万円(=被担保債権額1億円×0.4%)

根抵当権設定登記(原則)40万円(=極度額1億円×0.4%)

対抗要件抹消時のコスト

動産譲渡登記・・・抹消登記の登録免許税1件1000円

登記官による職権抹消・・・登記の存続期間満了による場合コストなし(担保抹消しているにもかかわらず放置する場合等)

占有改定・・・法令上必須のコストなし

※担保抹消しているにもかかわらず放置する場合等

見えないコスト(調査コスト)

動産譲渡登記

資料の保管・法務局・設定者

担保権設定の調査

・登記事項概要証明書によって 設定者の関与なく 調査可能

・動産譲渡担保権の設定・抹消有無が登記により画一的に明らか

調査可能時間

 インターネット登記情報(一般財団法人民事務協会)による概要記録事項証明書(1通142円)では、設定者に関する動産譲渡登記の有無確認が可能 設定者に関する動産譲渡登記の有無確認が可能 設定者に関する動産譲渡登記の有無確認が可能

インターネット登記情報の利用可能時間

(2022( 令和 4) 年10 月1日より利用時間拡大 )

・平日 :午前 8時30 分~午後 11 時

・土日祝:午前8時 30 分~午後6時

占有改定

資料の保管・法務局・設定者

担保権設定の調査

・設定者に問い合わせする必要あり

・設定者によって資料提供の対応差

調査可能時間・・・設定者の営業時間、担当次第

◆登記による調査コストの軽減

 先行する占有改定の存否の調査では、動産担保を取得する者がゼロベースで設定者に問い合わせする必要あり一方、動産譲渡登記では、登記事項概要証明書や概要記録事項証明書によってすでに設定された動産譲渡登記の存在を調査し、該当がある場合には、その「登記番号」に対応する登記事項証明書の提示を設定者に求めることで動産担保の対象等の把握が可能

 対抗要件具備の存続期間

動産譲渡登記・・・法定の存続期間は、登記受付日から10年

法定の存続期間超・・・「特別の事由を証する書面」 (10 年を超 える返済期間や償還を定めた契約書の写し等に当事者(設定者)が原本証明したもの )が登記の添付書面として必要

存続期間満了・・・登記官の職権により抹消

◆休眠担保の外観発生の予防

仮に休眠担保になっても、登記の存続期間の満了時に登記官の職権により抹消

・・・半永久的に休眠担保(カラの登記)が存続することを予防

cf.占有改定においては、当事者間で占有改定の解除を適切に行わなければ、担保権抹消の有無が不明瞭であり、「カラの」対抗要件具備が存在するおそれ

・・・占有改定をしたことを証する「動産譲渡担保権設定契約書」や「占有改定確認書」が存在するものの、それに対応する占有改定の解除に関する資料(「解除証書」等)がない場合

検討:設定者の範囲拡大

◆現状

設定者が個人の場合、動産譲渡登記の利用が不可であり、公示されず、先行する担保権の存否は設定者への問合せが必要

◆改善案

 商号登記(商法11条2項、商業登記法28条)を具備した個人事業主による動産譲渡登記の利用 (※)を許容することで、これから担保を取得する者からみて、先行する隠れた占有改定の存否に関する調査コストやリスクの軽減

◆個人の範囲を、商号登記を具備した個人商人とする理由等

1.事業資金融資の際における、個人事業主の担保提供の場面を想定

2.個人商人ではない個人の動産への担保設定の存否は生活財産等にかかわり、そのプライバシー保護の必要性

3.商号の登記では「会社法人等番号」が付されており、商業・法人登記と紐づけした検索や公示が可能

※「担保法制部会資料20」11頁

商号

ABC 商店

営業所

東京都新宿区〇丁目番号

会社法人等番号〇

商号使用者の氏名及び住所

東京都中野区〇丁目番号

司法太郎

営業の種類

1 衣料品、服飾雑貨日用の輸出入

2 食料品、茶清涼飲水ジュース類の輸出入

3 コンピュータとその周辺機器輸出入

登記記録に関する事項

新設

令和〇年月日登記

管理番号 〇 -〇 -

商号登記の登記記録例

管理番号 〇〇〇〇-〇〇-〇〇〇〇〇〇を紐づけして公示の強度を上げる。

商号登記に関する検討事項

◆商号新設登記の概要

・申請形態 :商号使用者による単独申請

・添付書類等:登記申請書、委任状(司法書士等の資格者代理人が申請する場合) 印鑑届書、印鑑登録証明書(発行後3か月以内)

・登録免許税:3万円

1.商号新設登記の登記審査(設定時) 登記申請者が商人であるか否かは登記審査の対象外

・・・個人商人以外の者に対する融資の際にその個人の生活財産等に担保設定するために、動産譲渡登記の前提として商号登記が利用される可能性があり、目的外利用によって、個人の住所や氏名等が公示されるおそれがある点につきプライバシー配慮の観点あり

cf. 占有改定では、個人商人ではない者に対して生活財産等に動産譲渡担保が設定されるケースは否定できないところ、公示がなされていないため、個人所有の動産に関する担保権の有無は明らかになりにくい

2.商号の変更・廃止登記における登記義務(変更時)

 登記事項に変更が生じたとき、又はその事項が消滅あるいは商号を廃止したときは、遅滞なく、その変更又は消滅の登記をする義務があるものの(商法10条、商業登記法29条)、株式会社のような登記期間の定め(会社法915条参照)はなく、過料の制裁がない(会社法976条1号参照)ため、登記記録上、実態と一致しない外観で放置されるおそれあり。

3.商号の廃止登記と動産譲渡登記との連携(抹消時) 商号登記を備えた個人商人が商号を廃止した場合には、動産譲渡登記の利用要件を満たさなくなるところ、商号の廃止登記と連動して動産譲渡登記も抹消されるとしたときには、商号の廃止登記は商号使用者からの単独申請によるため、担保権者が関与しないところで動産譲渡登記が抹消されるリスクあり。

検討:登記申請時における会社法人等番号の提供

◆現状動産譲渡登記の申請では会社法人等番号の提供は任意

・・・動産譲渡登記で登記名義人表示変更登記が認められていない現状下において、商号変更と本店移転を同時に実施した場合等には、会社法人等番号が動産譲渡登記に記録されていなければ、対象となる登記の検索が困難となるケースあり

◆改善案

 動産譲渡登記申請において会社法人等番号の提供を必須にした場合、登記名義人表示変更があった場合でも、法人、個人(商号登記済)ともに「会社法人等番号」による検索が可能

【参考:法務省「会社法人等番号の付番方法の変更について」】

 従前の登記記録に付されていた会社法人等番号がそのまま変更後の新たな登記記録に引継ぎされ、一度付された会社法人等番号は不変

・平成24(2012)年 5月21日~:株式会社等

・平成27(2015)年3月 2日~:外国会社・外国法人及び個人商人

cf.平成17年(2005)年10月1日動産譲渡登記の運用開始当時は、付与された法人の会社法人等番号がその後変更の可能性があったが、現行制度下では変更なし

検討:登記の種類の追加

◆現状

1.動産譲渡登記

2.延長

3.抹消(一部抹消)

・・・商号変更や本店移転の登記名義人表示変更/更正登記や、順位変更等の登記が一切不可

◆改善案

1.変更等の登記の許容

(1)   形式的な変更・・・登記名義人表示変更/更正登記事項証明書、登記事項概要証明書についても、概要記録事項証明書と同様に、商業・法人登記における商号変更や本店移転等の情報が連動した公示の実現

・・・対象となる動産譲渡登記の検索の利便性向上、私的実行通知の実効性の向上等

(2)   実質的な変更・・・順位変更等

順位変更や転担保、担保権の譲渡及び放棄等の許容

・・・各登記を関連づける関連担保目録の創設

2.登記の存続期間の短縮

延長登記との対比

検討:登記の存続期間の調整

◆現状

1.動産譲渡登記において法定の存続期間(動産:登記受付日から10年)を超える場合には「特別の事由を証する書面」が必要

2.延長登記でも、延長後の存続期間の満了日が法定の存続期間を超えるときには、「特別の事由を証する書面」が必要

3.法定の存続期間を超える場合には、最終弁済期が存続期間の満了日となるため、支払いが最終弁済期を経過する場合には無担保状態

◆改善案

1.法定の存続期間の伸長、無担保状態回避のための方策

cf. 登記の存続期間設定の背景登記の存続期間の制限を設けない場合、システム上への負荷が過大であり、検索等の作業に支障をきたすおそれ

2.登記の種類に存続期間の「短縮登記」の許容

過剰担保予防の観点から、登記後における登記期間の調整手段の創設

検討:関連担保目録による公示

◆現状

 動産譲渡登記は、設定者(譲渡人)ごとで独立して編成される「人的編成主義」で、各登記は関連しておらず、登記記録から順位を確認することが困難

◆関連担保目録(※)の導入に向けた検討

・・・動産譲渡登記の「人的編成主義」に「物的編成主義」の要素を加味

cf. 「物的編成主義」である不動産登記では登記記録から順位の把握が容易

※「担保法制部会資料20」6~11頁別添「関連担保目録のイメージ」

関連担保目録の機能

◆現状

各登記が関連しているかどうかは不透明

登記事項証明書 A

◆関連担保目録

(1)各登記の関連性について容易に把握可能

cf.不動産登記では「共同担保目録」による各登記間の紐づけあり

(2)関連担保目録と実行通知の範囲の紐づけ

先順位の他の新たな規定にかかる担保権が実行された際に実行通知を受けられるメリット

登記事項証明書A第一層

関連担保目録 第二層

登記事項証明書B第一層 

※「担保法制部会資料20」6,7頁第一層:既存の動産譲渡登記を記録していた部分で、これと並んで新たな規定にかかる担保権の設定の登記

第二層:新たな規定にかかる担保権の内容、新たな規定にかかる担保権相互の関連性及び新たな規定にかかる担保権の処分等を公示するための目録

関連担保目録の記載事項と検討事項

※「担保法制部会資料20」別添「関連担保目録のイメージ」を参照して作成

関連担保目録の記載事項

登記番号 2022ー01

譲渡人

【本店等 】東京都中野区〇丁目番号 東京都中野区〇丁目番号 東京都中野区〇丁目番号

【商号等 】株式会社 ABC 商事

【会社法人等番号 】〇 ー〇 ー〇 ー〇 ー〇 ー〇 ー〇 ー〇 ー〇ー

譲受人

【本店等 】東京都新宿区四谷〇丁目番号 東京都新宿区四谷〇丁目番号 東京都新宿区四谷〇丁目番号

【商号等 】株式会社 DEF 銀行

【会社法人等番号 】〇 ー〇 ー〇 ー〇ー

登記年月日時

令和4年 11 月14 日10 時10 分

動産の種類

衣料品 、日用雑貨その他一切在庫

関連担保目録

目録番号001

登記事項証明書 A:第一層

目録番号 001

関連登記1

2022ー01

備考

債権額 金1億円

関連登記2

2022ー02

関連事項

関連登記1と2 順位変更合意

関連担保目録:第二層

登記番号 2022ー02

譲渡人

【本店等 】東京都中野区〇丁目番号 東京都中野区〇丁目番号 東京都中野区〇丁目番号

【商号等 】株式会社 ABC 商事

【会社法人等番号 】〇 ー〇 ー〇 ー〇

譲受人

【本店等 】東京都新宿区〇丁目番号 東京都新宿区〇丁目番号 東京都新宿区〇丁目番号

【商号等 】株式会社 GHI 銀行

【会社法人等番号 】〇 ー〇 ー〇 ー〇

登記年月日時

令和4年 11 月17 日11 時11 分

動産の種類

衣料品 、日用雑貨その他一切在庫

関連担保目録

目録番号001

登記事項証明書 B:第一層

◆担保権の私的実行通知先

関連担保目録に記された全ての後順位担保権者に対して実行通知

・ 実行通知の効性を高めるには、 その前提として、動産譲渡登記に載譲受人の本店等や商号が実態と一致している必要性

・登記名義人表示変更正

登記事項証明書 B:第一層

登記番号 2022ー02

譲渡人 【本店等】東京都中野区中野〇丁目〇番〇号

【商号等】株式会社ABC商事

【会社法人等番号】〇〇〇〇ー〇〇ー〇〇〇〇〇〇

譲受人 【本店等】東京都新宿区新宿〇丁目〇番〇号

【商号等】株式会社GHI銀行

【会社法人等番号】〇〇〇〇ー〇〇ー〇〇〇〇〇〇

登記年月日時  令和4年11月17日11時11分

動産の種類    衣料品、日用品雑貨その他一切の在庫商品

関連担保目録  目録番号001

関連担保目録に関する検討事項

1.登記した場合にその効力(第三者への対抗力等)が確実に認められるものに限って登記できることとする方向性

2.全面的に登記できることとしたうえで、登記をしたとしてもその効力(例えば、担保権の順位の変更の有効性)が認められない場合が生じ得ることを許容する方向性

※「担保法制部会資料23」10~12頁

◆関連担保目録を導入する場合の方向性・コンセプト案

・・・上記1、2の融合型(両立できる点についてはそれぞれの要素を取入れ)

1.対抗要件的機能担保権の順位の変更、転担保、担保権の譲渡・放棄、担保権の順位の譲渡・放棄等

・・・関連担保目録中、「関連事項」に記載:第三者への対抗力あり

2.警告的機能・・・予見可能性の向上登記を一次的なインフォメーションセンターとし、その「人的編成主義」である登記情報をもとに二次的に設定者に問い合わせを行う判断材料としての役割

・・・関連担保目録中、「備考欄」に記載:第三者への対抗力なし

◆第一層の「備考欄」との区別第一層の「備考欄」では、それを記録することにより、譲渡にかかる動産の特定を更に明確にし、又は特定の範囲を更に限定することができるものである必要があり、当事者が記録することを望めばいかなる情報でも「有益事項」として備考欄に記録することができるとはいえないと解されており、第一層の備考欄と関連担保目録の記載事項について重複しないよう調整する必要性あり

例:後順位担保権者にとって有益な記載事項:被担保債権額を関連担保目録に記載

小括

1.設定者の範囲拡大と対抗要件具備の選択肢の増加

法人・個人問わず、ニーズやコストに沿って、動産譲渡担保の対抗要件具備の方法を選択(「登記優先ルール」により、動産譲渡登記が占有改定に優先する場合であっても)

(1)担保権者と設定者間の判断等に基づき占有改定を選択

(2)順位の先後関係の明確化、公示等を重視する場合は動産譲渡登記を選択

2.対抗要件具備のコストに関する視点担保設定前から担保抹消時までの一連の場面も想定

(1)額面で評価しきれない「調査コスト」の存在も加味

(2)登記の存続期間を活用した、実態のない公示(休眠担保)が発生しないような仕組み

3.公示のレベル向上の検討

「人的編成主義」である動産譲渡登記に、関連担保目録のような「物的編成主義」の要素を取り入れた公示の検討

4.債権譲渡登記制度の改善

動産譲渡登記と債権譲渡登記は、現行制度上共通している事項が多く、動産譲渡登記の改善点 (登記申請人・登記の存続期間等)は債権譲渡登記でも検討する余地あり

「建物区分所有法の改正と登記」

国士舘大学 藤巻梓教授

はじめに -現在の問題状況ー

❖建物の区分所有等に関する法律(区分所有法)

・昭和37年に制定、以降、幾度か改正を経る

・阪神・淡路大震災(平成7年)を受けた被災区分所有建物の改正等に関する特別措置法の制定、東日本大震災(平成23年)を受けた同法の改正(同25年)

・マンション管理適正化法、マンション建替え円滑化法

❖高経年のマンションの増加、住民の高齢化が加速

❖区分所有建物の所有者不明・管理不全の問題

❖災害の多発、大規模災害の発生可能性の高まり

2022年9月12日、法務大臣が区分所有法改正などの検討を法制審議会に諮問≪諮問第百二四号

参照:区分所有法制研究会「区分所有法制に関する研究法報告書」(令和4年9月30日公表)

https://www.kinzai.or.jp/uploads/houkoku_.pdf

検討の視点

1.区分所有建物の管理の円滑化・適正化を図る方策

 集会決議一般の円滑化(所在等不明区分所有者への対応、出席者の過半数による決議を可能とする?)

 区分所有建物の管理に特化した財産管理制度の創設

 共用部分の変更決議の円滑化(=要件緩和)

2.区分所有建物の再生の円滑化を図る方策

建替え決議の円滑化(=要件緩和、賃借権等の消滅)

建物・敷地一括売却制度、建物の取壊しの決議の制度の創設

団地関係にある区分所有建物の再生の円滑化

3.被災区分所有建物の再生の円滑化を図る方策

建替え・建物敷地売却決議等の要件の緩和

大規模一部滅失時の決議可能期間の延長

1.区分所有建物の管理の円滑化

(1) 集会決議の円滑化を図る仕組み

(2) 区分所有建物の管理に特化した財産管理制度

(3) 共用部分の変更につき多数決要件の緩和、共用部分に係る損害賠償請求権の行使の円滑化

(4) 区分所有者の責務

(5) 区分所有建物の管理に関する事務の合理化

(1)集会決議の円滑化

所在等不明の区分所有者を決議の母数から除外する仕組みの創設

・公的機関による所在等不明の認定の必要性

・所在等不明者・賛否不明者の権利保護の必要性、判断能力が不十分な所有者の意思表示等、課題

・対象行為から区分所有権の処分を伴うものを除外するか

・集会出席者の多数決による決議を可能とするか

・現行法は普通決議に限り出席者の多数決による決議を認める(39条1項)ただし、規約による定めが必要(標準管理規約47条1項・2項)

・定足数(頭数要件)を設けるか。意思決定の正当性の確保

・賛否不明の区分所有者を集会決議から除外するか

・対象を限定するか(規約の設定、共用部分の変更、普通決議)⇔規約は基本的規範、⇔変更による多額の費用負担のおそれ、⇔意義は小さい?

建替え決議、解消決議(検討中)は対象外とすべきという意見が今の所多い。区分所有権を奪われるという重大な不利益のおそれ

(2)区分所有建物に特化した財産管理制度の創設

■ 所有者不明の専有部分の管理制度

・区分所有者が所在等不明の場合⇒その専有部分の管理に特化した財産管理制度の必要性

・令和3年改正民法(所有者不明建物管理制度・民264条の8)との関係

区分所有建物には適用なし(6条4項)

・請求権者;利害関係人(他の区分所有者、管理組合・管理者、購入希望者等)。空き家の場合には地方公共団体(空家等対策の推進に関する特別措置法)

・管理人の権限;専有部分の管理・処分権

議決権の行使の範囲(全決議可 or 処分以外 or 全決議不可)

■ 管理不全の専有部分の管理制度 cf.管理不全建物管理命令(民264条の14)

・専有部分の管理が不適当で他人の権利を侵害 or 侵害のおそれあり

・管理人の権限;専有部分の保存・利用・改良、これを超える行為は裁判所の許可が必要

議決権行使は不可か、区分所有者の所在は判明

管理不全の共用部分の管理制度

・共用部分の管理が不適当であることにより近隣住民が被害を受けているような場合

・管理組合による区分所有権の取得、管理組合(3条)の目的の範囲内か?普通決議で決定可?

(3)共用部分の変更決議の要件の緩和

緩和の具体案

少数反対者の利益に留意しつつ、特別決議の要件を緩和

(A)  区分所有者および議決権の〔3分の2〕以上へ単純に引下げる

(B)  客観的事由の存在+区分所有者および議決権の〔過半数〕or〔3分の2〕以上へ引下げる

建物の経過年数、耐火性、外壁の剥落の危険、配管設備の劣化、建物移動円滑化基準への適合必要性

(C)  区分所有者の定数(頭数要件)に加え、議決権についても規約で過半数まで引下げ可とする⇔現行法:区分所有者および議決権の〔4分の3〕以上、

区分所有者の定数は規約で過半数まで引下げ可能(17条Ⅰ)⇔議決権要件の引下げは不可

共用部分に係る損害賠償請求権の行使

・現行法下での問題;共用部分につき損害賠償請求権が発生した後に区分所有権が譲渡された場合に、現行法下では、もはや区分所有者でなくなった者の請求権を代理行使できない?

・請求権の一括行使を可能にする方策

損害賠償請求権の発生後に区分所有権が譲渡された場合には、

(A)  譲渡人(元区分所有者)に帰属する請求権、管理者が代理人として行使できるようにする

(B)  現在の区分所有者に帰属する請求権を管理者が代理人として行使できるようにする

(4)区分所有者の責務/(5)管理事務の合理化

区分所有者が建物を適切に管理する責務を負う旨の規律を置くか

・共同利益背反行為の禁止(6条1項)との関係

基本的には行為の禁止のみ、建物の適切管理の義務まで含まず

・管理適正化法5条2項、標準管理規約20条、土地基本法6条

・改正民249条3項;共有者は共有物の使用につき善管注意義務を負う

・規定を置いた場合、違反の効果をどうするか

■管理事務の合理化

・集会におけるウェブ会議システムの導入

・・・現行法下でもハイブリッド方式の採用は可能(標準管理規約43条1項)多数決による完全ハイブリッド方式の採用は回避?

・事務の報告義務違反

・規約の閲覧方法のデジタル化、保管

2.区分所有建物の再生の円滑化

(1) 建替えを円滑化するための仕組み

・決議要件の緩和

・建替え決議がされた場合の賃借権等の消滅

賃借権・配偶者居住権・担保権

(2) 区分所有関係の解消・再生のための新たな仕組み

(3) 団地内建物の建替え等を円滑化するための仕組み

(1)建替えを円滑化するための仕組み

■現状:区分所有者及び議決権の〔5分の4〕以上の多数 ⇒厳格すぎる

■建替え決議の多数決要件の緩和

(A)  区分所有者及び議決権の各〔4分の3〕or〔3分の2〕以上へ単純に引下げ・・・要件該当性に関する紛争を生じさせない

(B)  客観的事由+区分所有者及び議決権の各〔4分の3〕or〔3分の2〕以上へ引下げ・・・建物の経過年数(50,60,70年等)/耐震性・耐火性の不足、外壁等の剥落の危険/被災区分所有建物

(C)  全員合意により多数決割合を〔4分の3〕or〔3分の2〕以上へ引下げ

・区分所有者による自治の尊重

 少数反対者の利益の保護、最判平成21年4月23日判タ1229号121頁が「過半数を相当超える議決要件を定めている」ことを指摘して団地内建物の一括建替え決議の合憲性を肯定したことへの留意

■建替え決議後の賃借権等の消滅

 マンションの老朽化が進むほど、賃貸化が進む傾向があり、決議をしても建て替えが実行できない可能性。

賃借権、配偶者居住権・・・建替え決議成立後、一定期間で終了させるか

・担保権 ⇒規律の必要性

賃借人・居住権者の利益保護。補償金を支払って賃借権消滅請求できるとする考え方もある

(2)区分所有関係の解消・再生の仕組み~多数決による区分所有関係の解消・再生~

◆現行法:(ア)~(オ)のいずれも規定なし⇒実施には全区分所有者の同意を要する

(ア) 建物敷地売却制度

多数決により、区分所有建物および敷地利用権を一括して売却する

(イ) 建物取壊し敷地売却制度

多数決により、区分所有建物を取り壊したうえで敷地を売却する

(ウ) 建物取壊し制度

多数決により、区分所有建物を取り壊す

(エ) 再建制度

区分所有建物が全部滅失した場合に、多数決により、敷地上に区分所有建物を再建する

(オ) 敷地売却制度

区分所有建物が全部滅失した場合に、多数決により、敷地を売却する

(ア)~(オ)議決要件は建替え決議と同様とするか。 ※少数反対者の利益への留意

(エ)(オ)建物が全部滅失すれば区分所有関係も消滅し、敷地につき民法上の(準)共有関係のみ残る。共有物分割請求の禁止期間を設けるか

■その他の論点

・多数決により、分筆された敷地の一部を売却することを可能にする制度の創設

・多数決による一棟リノベーション(専有部分を含めた建物の刷新)

(3)団地内建物の建替えの円滑化

団地内建物の一括建替え決議の多数決要件の緩和

・現行法の状況

 区分所有建物のみ、団地管理規約あり、土地が団地区分所有者の共有に属する場合⇒全体要件〔5分の4〕 かつ 各棟要件〔3分の2〕で一括建替え決議可(70条)

全体要件の緩和

(A)区分所有権及び議決権の〔4分の3〕or〔3分の2〕以上への引下げ

(B)客観的事由がある場合に区分所有権及び議決権の〔4分の3〕or〔3分の2〕以上へ引下げ

(C)全員の合意により、区分所有権及び議決権の〔4分の3〕or〔3分の2〕以上へ引下げ

各棟要件の緩和

(A)〔過半数〕へ引下げ or 各棟要件を撤廃

(B)客観的事由がある建物につき、〔過半数〕へ引下げ or 撤廃

(C)全員合意により、各棟要件を〔過半数〕へ引下げ or 撤廃

(D) 各棟につき、〔3分の1以上〕or〔過半数〕の反対がない限り一括建替え可能とする

前掲最判平成21年4月23日との整合性少数区分所有者の区分所有権への制約を強化することの正当性、合理性

団地内の建物の建替え承認決議の多数決要件(1棟単位の建替え)

(Aー1)議決権の〔3分の2〕以上 or〔過半数〕へ引下げるか

(Aー2)客観的事由がある場合に〔3分の2〕以上 or〔過半数〕へ引下げるか

(Aー3)団地管理組合の規約で〔3分の2〕以上 or〔過半数〕へ引下げるか

(B)〔4分の1〕以上の反対がない限り特定建物の建替えを可能とするか

団地の敷地分割

(ア) 多数決による団地の敷地分割

 特定建物につき客観的事由がある場合に団地管理組合等の集会の多数決で敷地分割を可能とする?

・・・耐震性・耐火性の不足、外壁・外装材等の剥落による危険

(イ) 団地の敷地に関する共有物分割請求

特定建物につき(ア)の要件を満たす場合に、敷地の共有物分割請求を可能とする制度の創設

団地内建物の全部について一括建物敷地売却制度

団地内建物がすべて区分所有建物、団地管理規約あり、土地が共有

⇒団地管理組合の集会で、区分所有者および議決権の〔5分の4〕or〔4分の3〕or〔3分の2〕以上の多数 かつ棟ごとに〔3分の2〕以上の多数の賛成で一括売却ができるものとするか

3.被災区分所有建物の再生の円滑化

被災した区分所有建物の再建等に関する多数決要件の緩和

大規模一部滅失時の決議可能期間の延長

被災区分所有建物の管理を円滑化するための仕組み・・・所在等不明区分所有者等の取扱い 

■被災区分所有建物の再建等に関する多数決要件の緩和

・現行法:建替えのためには区分所有者および議決権の〔5分の4〕以上の多数の賛成(62条Ⅰ)

・政令で指定された災害により大規模一部滅失した建物について、(ア)区分所有者及び議決権の各〔3分の2〕以上の多数で、建替え決議/復旧決議を可能とするか(イ)敷地売却決議、建物取壊し敷地売却決議、取壊し決議、敷地売却決議の多数決要件を各〔3分の2〕以上まで引下げるか(ウ)危険性の要件を設けたうえで、共用部分の変更決議を、区分所有者及び議決権の〔過半数〕or〔3分の2〕以上とするか

被災した区分所有建物の管理の円滑化

・被災区分所有建物においても、所在等不明の区分所有者を集会決議の母数から除外するか

※公的機関の関与が前提

・災害により全部滅失した場合に、敷地共有者が管理者を選任にあたり、出席者の多数決による決議を可能とするか

※区分所有法の建替え決議に係る多数決要件との均衡を図る必要

おわりに

本改正の方向性について

・全体として多数決要件の緩和の方向

・他方で、客観的要件の充足を前提とする選択肢も示される

⇒対象行為の重要性の程度に即した丁寧な整理が必要

・規約による要件緩和については実効性に疑問

所有者不明、管理不全の問題への対応について

・基本的には民法の令和3年改正を参照

・区分所有法における「管理者」と「管理人」の権限の整理が必要。団地関係について今後は団地関係の解消方法の探索の重要性が増すものと考えられる。

「所有者不明等マンションへの対応と課題」

埼玉司法書士会司法書士吉田健

法制審議会第196回会議(令和4年9月12日開催)

https://www.moj.go.jp/shingi1/shingi03500044.html

諮問第百二十四号

老朽化した区分所有建物の増加等の近年の社会情勢に鑑み、区分所有建物の管理の円滑化及び建替えの実施を始めとする区分所有建物の再生の円滑化を図るとともに、今後想定される大規模な災害に備え、大規模な災害により重大な被害を受けた区分所有建物の再生の円滑化を図る等の観点から、区分所有法制の見直しを行う必要があると思われるので、その要綱を示されたい。

区分所有とは

区分所有の目的となる区分建物の特質

区分所有法

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=337AC0000000069_20220401_502AC0000000008

第1条 一棟の建物に構造上区分された数個の部分で独立して住居、店舗、事務所又は倉庫その他建物としての用途に供することができるものがあるときは、その各部分は、この法律の定めるところにより、それぞれ所有権の目的とすることができる。

不動産登記法

第2条22号 区分建物 一棟の建物の構造上区分された部分で独立して住居、店舗、事務所又は倉庫その他建物としての用途に供することができるものであって、建物の区分所有等に関する法律(昭和三十七年法律第六十九号。以下「区分所有法」という。)第二条第三項に規定する専有部分であるもの(区分所有法第四条第二項の規定により共用部分とされたものを含む。)をいう。

第2条3号 この法律において「専有部分」とは、区分所有権の目的たる建物の部分をいう。

第3条 区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成し、この法律の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる。

第4条 数個の専有部分に通ずる廊下又は階段室その他構造上区分所有者の全員又はその一部の共用に供されるべき建物の部分は、区分所有権の目的とならないものとする。

2 第1条に規定する建物の部分及び附属の建物は、規約により共用部分とすることができる。この場合には、その旨の登記をしなければ、これをもつて第三者に対抗することができない。

(区分所有者の権利義務等)

第6条 区分所有者は、建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為をしてはならない。

2 区分所有者は、その専有部分又は共用部分を保存し、又は改良するため必要な範囲内において、他の区分所有者の専有部分又は自己の所有に属しない共用部分の使用を請求することができる。この場合において、他の区分所有者が損害を受けたときは、その償金を支払わなければならない。

第11条 共用部分は、区分所有者全員の共有に属する。ただし、一部共用部分は、これを共用すべき区分所有者の共有に属する。

2 前項の規定は、規約で別段の定めをすることを妨げない。ただし、第二十七条第一項の場合を除いて、区分所有者以外の者を共用部分の所有者と定めることはできない。

(共用部分の使用)

第13条 各共有者は、共用部分をその用方に従つて使用することができる。

(共用部分の持分の割合)

第14条 各共有者の持分は、その有する専有部分の床面積の割合による。

(共用部分の持分の処分)第15条 共有者の持分は、その有する専有部分の処分に従う。

2 共有者は、この法律に別段の定めがある場合を除いて、その有する専有部分と分離して持分を処分することができない。

(分離処分の禁止)

第16条 敷地利用権が数人で有する所有権その他の権利である場合には、区分所有者は、その有する専有部分とその専有部分に係る敷地利用権とを分離して処分することができない。ただし、規約に別段の定めがあるときは、この限りでない。

(共用部分の変更)

第17条 共用部分の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。)は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議で決する。ただし、この区分所有者の定数は、規約でその過半数まで減ずることができる。

(共用部分の管理)

第18条 共用部分の管理に関する事項は、前条の場合を除いて、集会の決議で決する。ただし、保存行為は、各共有者がすることができる。

区分所有建物の建替え

(建替え決議)

第62条 集会においては、区分所有者及び議決権の各五分の四以上の多数で、建物を取り壊し、かつ、当該建物の敷地若しくはその一部の土地又は当該建物の敷地の全部若しくは一部を含む土地に新たに建物を建築する旨の決議(以下「建替え決議」という。)をすることができる。

(区分所有権等の売渡し請求等)

第63条 建替え決議があつたときは、集会を招集した者は、遅滞なく、建替え決議に賛成しなかつた区分所有者(その承継人を含む。)に対し、建替え決議の内容により建替えに参加するか否かを回答すべき旨を書面で催告しなければならない。

5 (前略)建替え決議に賛成した各区分所有者若しくは建替え決議の内容により建替えに参加する旨を回答した各区分所有者又はこれらの者の全員の合意により区分所有権及び敷地利用権を買い受けることができる者として指定された者は、同項の期間の満了の日から二月以内に、建替えに参加しない旨を回答した区分所有者に対し、区分所有権及び敷地利用権を時価で売り渡すべきことを請求することができる。

司法書士業務とマンション

登記業務とマンション法

• 敷地権についての留意点①(申請情報)不動産登記令(申請情報)

第3条 登記の申請をする場合に登記所に提供しなければならない法第十八条の申請情報の内容は、次に掲げる事項とする。

11 権利に関する登記を申請するときは、次に掲げる事項

ヘ 敷地権付き区分建物についての所有権、一般の先取特権、質権又は抵当権に関する登記(法第七十三条第三項ただし書に規定する登記を除く。)を申請するときは、次に掲げる事項

(1) 敷地権の目的となる土地の所在する市、区、郡、町、村及び字並びに当該土地の地番、地目及び地積

(2) 敷地権の種類及び割合

•敷地権についての留意点(登録免許税)

⇒抵当権抹消の場合登録免許税法別表 1(15)登記の抹消 不動産1個につき 1,000円→建物+敷地権(所有権・地上権)の個数

区分所有建物に敷地権(所有権)7個の場合は8,000円となる。

•規約共用部分について(登録免許税)登記はされていないが、所有権移転に際して登録免許税の算定の対象となる。

成年後見業務とマンション~管理と売却~

(ケース1)

所有者が認知症のために施設入所後、首長申立てにより成年後見人が選任施設入所前は、マンションで生活。管理費等の滞納はない。生活費は赤字

(売却の考え方)

売却自体は居住用不動産の売却に該当するので裁判所の許可事項⇒本人の意思決定支援+売却の必要性と売却価格の相当性

(ケース2)

所有者が認知症のために施設入所後、成年後見人が選任施設入所前は、マンション以外の場所に居住し、マンションは親族に賃貸管理費等は滞納

(就任後の管理等)賃貸中の親族との交渉(管理費、固定資産税等の負担)→出ていってしまった残置物の処分(親族の同意書取得)売却(居住用不動作に該当しないので、裁判所に売却の上申のみ)

所有者不明とは

•「所有者不明土地」とは、「不動産登記簿等の所有者台帳により、所有者が直ちに判明しない、又は判明しても所有者に連絡がつかない土地」

(2019 所有者不明土地問題研究会 最終報告)

<サンプル調査:地籍調査(国土交通省)>

約2割の土地が所有者不明    2019所有者不明土地問題研究会 最終報告より

◼平成28年度地籍調査(563市区町村における計622,608筆)において、登記簿上の所有者の所在が不明な土地は20.1%。

(地帯別の所有者不明率は、DID14.5%、宅地17.4%、農地16.9%、林地25.6%)

<出所・注釈>平成28年度地籍調査における所有者追跡調査(国土交通省)

 なお、ここで示す「所有者不明」には、登記簿上の登記名義人(土地所有者)の登記簿上の住所に、調査実施者から現地調査の通知を郵送し、この方法により通知が到達しなかった場合を計上。

・大量相続時代の多死到(<将来推計:相続未登記率と死亡者数>)来が所有者不明土地に影響

◼土地の相続候補者へのアンケート調査の結果、2020~2040年に発生する土地相続のうち、約27~29%が未登記になる可能性。 また、高齢化の影響も伴い、死亡者数は160万人を超える見込。

所有者不明マンションの現状について

所有者不明マンションへの対応

空家特措法とマンション

• 空き室マンションには空家特措法が適用されるのか?空家等対策の推進に関する特別措置法

第2条 この法律において「空家等」とは、建築物又はこれに附属する工作物であって居住その他の使用がなされていないことが常態であるもの及びその敷地(立木その他の土地に定着する物を含む。)をいう。

・空家法では、マンションに空き住戸が多数存在していても、一部の住戸の居住している者がいる限り、空家特措法の適用はない

所有者不明不動産への対応~令和3年民法・不動産登記法改正~

民法改正

共有物の利用促進

・共有物の変更・管理に関する見直し

•共有物の「管理」の範囲の拡大・明確化

•共有物を使用する共有者がいる場合のルール

•賛否を明らかにしない共有者がいる場合の管理

•所在等不明共有者がいる場合の変更・管理

•所在等不明共有者の不動産の持分の取得・譲渡

⇒区分所有法は民法の特別法となるので、同様の区分所有法改正が必要

土地・建物の管理制度の創設

•所有者不明土地・建物管理制度

•管理不全土地・建物管理制度

既存の財産管理制度の見直し

•相続人不存在の相続財産の清算手続の見直し

•財産管理制度に関するその他の見直し

民法改正 相続制度(遺産分割)の見直し

•遺産分割に関する見直し

•具体的相続分による遺産分割の時的限界

•遺産共有と通常共有が併存している場合の特則

•不明相続人の不動産の持分取得・譲渡

不動産登記法改正

〇相続登記の未了への対応

•相続登記の申請の義務化、相続人申告登記の新設

•所有権の登記名義人の死亡情報についての符号の表示制度の新設

〇住所変更登記等の未了への対応

•住所変更登記等の義務化、職権による住所変更登記等の新たな仕組みの導入

〇公示機能を高める観点からの改正⇒外国居住者につき国内連絡先を登記事項に追加

区分所有法の改正へ検討の視点~区分所有法制研究会報告書から~

 (1)区分所有建物の円滑・適正な管理

•集会の決議一般を円滑化するための仕組み

•区分所有建物の管理に特化した財産管理制度

•共用部分の変更決議を円滑化するための仕組み

•その他の管理の円滑化に資する仕組み

(2)建替えの実施を始めとする区分所有建物の円滑・適正な再生

•建替えを円滑化するための仕組み

(ア) 建替え決議の多数決要件の緩和

(イ) 建替え決議がされた場合の賃借権等の消滅

•区分所有関係の解消・再生のための新たな仕組み

•団地関係にある区分所有建物の再生の円滑化

(3)被災区分所有建物の円滑・適正な再生

•建替え・建物敷地売却決議等の多数決要件の緩和

•大規模一部滅失時の決議可能期間の延長

•団地関係にある被災区分所有建物の再生の円滑化

1集会の決議を円滑化するための仕組み

(1) 所在等不明区分所有者を決議の母数から除外する仕組み

•所在不明区分所有者の認定⇒裁判所OR市町村

•決議の範囲⇒区分所有の処分を含む全ての決議を対象とするのか?

•認定の効力⇒区分所有者が出現するまでか、期限を設けるのか?

(2) 出席者の多数決による決議を可能とする仕組み

•制度の導入の是非、決議の範囲

(3) 専有部分の共有者による議決権行使の在り方

(建替え決議等における共有者間の議決権行使者の指定)

区分所有建物の管理の円滑化を図る方策の検討

2区分所有建物の管理に特化した財産管理制度

(1)所有者不明の専有部分の管理制度

・創設の是非

・具体的内については、改正民法における所有者不明建物管理制度を参考

・区分所有者の集会における役割(行使できる議決権の範囲)

(2)管理不全の専有部分の管理制度

・創設の是非

・具体的内については、改正民法における管理不全建物管理制度を参考

・区分所有者の集会における役割(行使できる議決権の範囲)

3 共用部分の変更決議の多数決要件の緩和

【A案】多数決の割合を区分所有者及び議決権の【3分の2以上】に単純に引き下げるものとする

【B案】一定の客観的事由(築年数の経過・火災・大規模滅失)がある場合には、多数決の割合を区分所有者及議決権の【過半数】【3分の2以上】に引き下げるものとする。

【C案】区分所有者の定数だけでなく、議決権についても、規約で【過半数】まで減ずることができるものとする。

建替えを円滑化するための仕組みの方策の検討

・建替え決議の多数決要件の緩和

【A案】多数決の割合を、区分所有者及び議決権の各【4分の3】【3分の2】以上に単純に引き下げるものとする。

【B案】一定の客観的事由(築年数の経過等)がある場合には、多数決の割合を区分所有者及び議決権の各【4分の3】【3分の2】以上に引き下げるものとする。

【C案】区分所有者全員の合意により、多数決の割合を【4分の3】【3分の2】以上に減ずることができるものとする。

研究を通して

区分所有法制に関する研究会最終報告書では

•築40年を超えるマンションが114万戸を超えている

•区分所有者の相続を契機とした所有者不明問題や非居住化の進行

•大規模は災害の発生の可能性の高まり

を指摘されており、区分所有法の改正は待ったなしの状態です。所有者不明マンションの対応においては、その対策はもちろんのこと所有者としての保護の視点も大切なのかと感じました。

研究報告 橋立 二作氏(土地家屋調査士)

老朽マンション建て替え進まず

再生へ要件緩和検討 朝日新聞の記事

 大都市を中心に林立するマンションの老朽化が深刻になっている築40年以上の物件は10年後には倍以上に増加する見込み売却や立て替えを円滑に進めるため国は制度改正を重ねているがハードル高く、さらに踏み込んだ対応の検討を迫られる

敷地売却制度

 高層ビルなどの再開発が進む東京都の竹芝エリアで、新たなマンション「パーク・ホームズ浜松町」の建築工事が進んでいる。

 敷地面積600平方メートル、18階建て、総戸数102戸の物件が来秋完成予定。

JR浜松町駅にほど近い場所でもともとの建物は「浜松町ビジネスマンション」

 154戸の9階建て 解体時点で築47年の老朽物件立て替えか大規模耐震補強か10年近く前から検討するも、所有者は相当の費用負担を要す

5分の4の合意で売却

不動産会社のアドバイスを受け、マンションと敷地を一括して不動産会社に売却する「敷地売却制度」の活用

 2014年「マンション建替円滑化法」の改正により導入した手法老朽化した耐震性不足のマンションを売却しやすくする目的民法上ではマンションの売却には所有者全員の合意が必要だが、この要件が売却の進まない要因となっていた敷地売却制度では自治体が耐震不足と認定したマンションについては特例として所有者の「5分の4」の合意で売却ができる要件の緩和

分配金の受け取り

 浜松町ビジネスマンションも要件をクリアし三井不動産レジデンシャルに売却耐震性不足の物件の場合、新たに建てるマンションは容積率の緩和が認められ、延面積を増やし、より大きな物件に立て替えが可能となる今回もより高層の物件となり、もとの所有者は分配金を受け取る跡地のマンションへの入居も可能であり、そのままの建て替えより費用の負担を抑えることが出来る

震災に備え転換を急ぐ

 国交省によると2021年末時点の国内分譲マンションの戸数は686万戸このうち約15%の103万戸が旧耐震基準物件。築40年以上の物件は115.6万戸で、10年後には249万戸になる見込み一方、国交省の調査では建て替え済みマンションは今年4月時点で270件にとどまり、高額の費用負担が大きな壁となるマンションを建て替える場合、容積率に余裕のある物件が床面積を増やし、余剰分を販売して建て替え費用を捻出するケースがあるしかし、スペースが無く制限が多い都市部では困難で、立て替え費用を所有者が負担する必要がある平均の負担額は一人1、000万円以上になる。

再び法改正

 敷地売却制度も耐震性が不足する物件でなければ利用出来ない再びの法改正、昨年12月以降は「火災に対する安全性の不足」「外壁がはがれ落ち、周囲に危険がある」等の物件も対象に追加。4月には団地など複数の物件の一部を売る「敷地分割制度」を始め、老朽化マンションの売却と再生を促す。それでも、この制度の対象外の物件も多く、その場合は建て替えが迫られる区分所有法上は、建て替えには所有者の5分の4の決議が必要だが、費用や作業の負担を避けたい所有者もおり、合意形成のハードルは高い。

5分の4の要件緩和

国は5分の4の要件緩和について有識者や法務省、国交省が参加する研究会で議論を進めている。

・所在不明で立替え決議に不参加の所有者の除外

・要件を4分の3へ引き下げ

・22年度中のとりまとめを目指す

・1983年以来の大きな転換

・首都直下地震等の大規模災害が想定され

「早急な対応と制度の円滑化が必要」

マンション建替事業と登記手続

建替決議

  建替え参加者による建替不参加者への売り渡し請求(区分所有63条)建替組合設立認可

建替組合による建替不参加者への売り渡し請求書(円滑化15条)

権利変換手続開始の登記(円滑化55条)

(権利変換前の)住所変更登記(円滑不動産令2条)権利変換計画認可・権利変換期日権利変換の登記(円滑化74条)区分建物滅失登記

権利変換計画の変更による所有権更正登記

(円滑化82条登記前の)住所変更登記工事完了公告

  施行再建マンションに関する登記(円滑化82条)

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=414AC0000000078_20220617_504AC0000000068

1建替え参加者による建替不参加者への売渡し請求

建物の区分所有等に関する法律(区分所有権等の売渡し請求等)

第63条 建替え決議があつたときは、集会を招集した者は、遅滞なく、建替え決議に賛成しなかつた区分所有者(その承継人を含む。)に対し、建替え決議の内容により建替えに参加するか否かを回答すべき旨を書面で催告しなければならない。

2集会を招集した者は、前項の規定による書面による催告に代えて、法務省令で定めるところにより、同項に規定する区分所有者の承諾を得て、電磁的方法により建替え決議の内容により建替えに参加するか否かを回答すべき旨を催告することができる。この場合において、当該集会を招集した者は、当該書面による催告をしたものとみなす。

3第一項に規定する区分所有者は、同項の規定による催告を受けた日から二月以内に回答しなければならない。

4前項の期間内に回答しなかつた第一項に規定する区分所有者は、建替えに参加しない旨を回答したものとみなす。

5第三項の期間が経過したときは、建替え決議に賛成した各区分所有者若しくは建替え決議の内容により建替えに参加する旨を回答した各区分所有者(これらの者の承継人を含む。)又はこれらの者の全員の合意により区分所有権及び敷地利用権を買い受けることができる者として指定された者(以下「買受指定者」という。)は、同項の期間の満了の日から二月以内に、建替えに参加しない旨を回答した区分所有者(その承継人を含む。)に対し、区分所有権及び敷地利用権を時価で売り渡すべきことを請求することができる。建替え決議があつた後にこの区分所有者から敷地利用権のみを取得した者(その承継人を含む。)の敷地利用権についても、同様とする。

6前項の規定による請求があつた場合において、建替えに参加しない旨を回答した区分所有者が建物の明渡しによりその生活上著しい困難を生ずるおそれがあり、かつ、建替え決議の遂行に甚だしい影響を及ぼさないものと認めるべき顕著な事由があるときは、裁判所は、その者の請求により、代金の支払又は提供の日から一年を超えない範囲内において、建物の明渡しにつき相当の期限を許与することができる。

7建替え決議の日から二年以内に建物の取壊しの工事に着手しない場合には、第5項の規定により区分所有権又は敷地利用権を売り渡した者は、この期間の満了の日から六月以内に、買主が支払つた代金に相当する金銭をその区分所有権又は敷地利用権を現在有する者に提供して、これらの権利を売り渡すべきことを請求することができる。ただし、建物の取壊しの工事に着手しなかつたことにつき正当な理由があるときは、この限りでない。

8前項本文の規定は、同項ただし書に規定する場合において、建物の取壊しの工事の着手を妨げる理由がなくなつた日から六月以内にその着手をしないときに準用する。この場合において、同項本文中「この期間の満了の日から六月以内に」とあるのは、「建物の取壊しの工事の着手を妨げる理由がなくなつたことを知つた日から六月又はその理由がなくなつた日から二年のいずれか早い時期までに」と読み替えるものとする。

 趣旨

 建て替え決議の効果としてこの売り渡し請求を認めることにより、建替え不参加者(決議不参加者、決議に反対の意思表示をした区分所有者)を当該区分所有関係から離脱させ、以後の立て替えを円滑に進めることを目的としている。

解説

(1)売渡請求は形成権であり、行使の意思表示が相手方に到達すると、直ちに相手方の区分所有権及び敷地利用権を目的とする時価による売買契約が成立する。

⇒通常は内容証明郵便にて売渡請求の意思表示を行い、当該郵便の到達日を売買日付として所有権移転登記を行う。

(2)登記手続は通常の売買による所有権移転登記である。

「判決による登記」(不登63条)ではないため、登記義務者の登記申請意思の擬制はなく、登記の一般原則どおり共同申請によることを要する。

(3)建替参加者だけで不参加者の権利を買い取る資力がない場合がほとんどであり、建替え参加者全員が同意する場合は、第三者たる買受指定者が売渡請求をすることができる(区分所有63条4項)。

(4)売渡請求権行使後、請求権行使者が専有部分等について移転登記を受けるまでの問に相手方がこれを第三者に譲渡すると、請求権行使者は第三者と対抗関係にたつ(民177条)ことになるので、その恐れがあるときは、あらかじめ「処分禁止の仮処分」を得てその登記をしておく必要がある。

(5)専有部分とその敷地利用権の分離処分が許容されている場合(区分所有22条1項ただし書)、には、敷地利用権のみを有し、専有部分を有しない者が生じうるが、その者は、区分所有者ではないため、区分所有者の集会で行った建替え決議に拘束されず、その者に対して売渡請求権を行使することはできない。この場合、任意の売買によるしかない。

一方、建替え決議後に建替え不参加の区分所有者が敷地利用権のみを譲渡した場合には、譲受人(又はその承継人)に対して敷地利用権の売渡しを請求することができ、不参加者による売渡請求の妨害を防止するための立法の手当てがなされている(区分所有63条4項後段)。

(6)売渡請求権を行使することができる時期は、63条2項による催告が到達した日から2か月を経過した後の2か月以内である(区分所有63条4項前段除斥期間)。

(7)区分所有法63条の売渡請求に基づく所有権移転登記の登録免許税は原則どおり課税される。後述の2(5)と対比(租特76条2項は建替組合が取得する場合に限る(令和元年10月現在、令和2年3月31日までに施行、登記したもの)。)。

後述の2(5)と対比(租特76条2項は建替組合が取得する場合に限る。

(令和元年10月現在、令和2年3月31日までに施行、登記したもの。)。

2 建替組合による建替え不参加者への売渡請求書(円滑化15条)

マンションの建替え等の円滑化に関する法律

(区分所有権及び敷地利用権の売渡し請求)

第15条 組合は、前条第1項の公告の日(その日が区分所有法第63条第2項、区分所有法第70条第4項において準用する場合を含む。)の期間の満了の日前であるときは、当該期間の満了の日から2月以内に、区分所有法第63条第4項(区分所有法第70条第4項において準用する場合を含む。)に規定する建替えに参加しない旨を回答した区分所有者(その承継人を含み、その後に建替え合意者等となったものを除く。) に対し、区分所有権及び敷地利用権を時価で売り渡すべきことを請求することができる。建替え決議等があった後に当該区分所有者から敷地利用権のみを取得した者(その承継人を含み、その後に建替え合意者等となったものを除く。)の敷地利用権についても、同様とする。

2前項の規定による請求は、建替え決議等の日から1年以内にしなければならない。ただし、この期間内に請求することができなかったことに正当な理由があるときは、この限りでない。

3区分所有法第63条第5項から第7項まで(区分所有法第70条第4項において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の規定は、第1項の規定による請求があった場合について準用する。この場合において、区分所有法第63条第6項中「第4項」とあるのは、「マンションの建替え等の円滑化に関する法律第15条第1項」と読み替えるものとする。

2 建替組合による建替え不参加者への売渡請求書(円滑化15条)

趣旨

建替え参加者による建替え不参加者への売渡請求(区分所有63条)と同様の目的であり、建替組合にも売渡請求を認め、マンション建替事業の実施主体として積極的に機能できるようにする趣旨である。

1項後段は、敷地利用権の分離処分は原則としてできないが、規約で例外を認める余地があり(区分所有22条1項ただし書)、敷地利用権の譲受人が区分所有者ではなく、建替え決議の拘束を受けないが、これではマンションの建替えの障害になるため、建替え決議があった後に当該区分所有者から敷地利用権のみを取得した者の敷地利用権についても売渡請求権の行使が認られている。

2 建替組合による建替え不参加者への売渡請求書(円滑化15条)

解説

(1)    売渡請求は形成権であり、行使の意思表示が相手方に到達すると直ちに、相手方の区分所有権及び敷地利用権を目的とする時価による売買契約が成立する。したがって、区分所有権及び敷地利用権が相手方から組合に移転し、相手方は専有部分の引渡・移転登記義務を負い、組合は時価による売買代金の支払い義務を負い、両者の義務は同時履行関係にたつ。

⇒通常は内容証明郵便にて売渡請求の意思表示を行い、当該郵便の到達日を売買日付として所有権移転登記を行う。

(2)登記手続は通常の売買による所有権移転登記である。「判決による登記」ではないため、登記義務者の登記申請意思の擬制はなく、登記の一般原則どおり共同申請によることを要する。

(3)売渡請求により組合が取得した区分所有権及び敷地利用権は、実質的に保留床として権利変換される。

(4)売渡請求権を行使することができる時期は、組合設立認可の公告の日から2か月以内に、かつ、建替え決議の日から1年以内に行使しなければならない。

(5)本条の売渡請求に基づく所有権移転登記の登録免許税は非課税となる(租特76条1項2号。令和2年3月31日まで)。

3権利変換手続開始の登記(円滑化55条)

マンションの建替え等の円滑化に関する法律

(権利変換手続開始の登記)

第55条 施行者は、次に掲げる公告があったときは、遅滞なく、登記所に、施行マンションの区分所有権及び敷地利用権(既登記のものに限る。)並びに隣接施行敷地の所有権及び借地権(既登記のものに限る。)について、権利変換開始の登記を申請しなければならない。組合が施行するマンション建替事業にあっては、第14条第1項の公告又は新たな施行マンションの追加に係る事業計画の変更の認可の公告

二     個人施行者が施行するマンション建替事業にあっては、その施行についての認可の公告又は新たな施行マンションの追加に係る事業計画の変更の認可の公告

2     前項の登記があった後においては、当該登記に係る施行マンションの区分所有権若しくは敷地利用権を有する者(組合が施行するマンション建替事業にあっては、組合員に限る。)又は当該登記に係る隣接施行敷地の所有権若しくは借地権を有する者は、これらの権利を処分するときは、国ヒ交通省令で定めるところにより、施行者の承認を得なければならない

3     施行者は、事業の遂行に重大な支障が生ずることその他正当な理由がなければ、前項の承認を拒むことができない

4     第2項の承認を得ないでした処分は、施行者に対抗することができない。

3権利変換手続開始の登記(円滑化55条)

マンションの建替え等の円滑化に関する法律

5 権利変換期日前において第38条第6項、前条第3項において準用する第49条第1項又は第99条第3項の公告があったときは、施工者(組合にあっては、その清算人)は、遅滞なく登記所に、権利変換手続開始の登記の抹消を申請しなければならない。 

円滑不動産令

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=414CO0000000367_20220401_503CO0000000265

(権利変換手続開始の登記)

第4条 法第55条第1項の規定による権利変換手続開始の登記の申請をする場合には、同項各号に掲げる公告があったことを証する情報をその申請情撮と併せて登記所に提供しなければならない。

2  法第55条第5項の規定による権利変換手続開始の登記の抹消の申請をする場合には、法第38条第6項、法第51条第3項において準用する法第49条第1項又は法第99条第3項の公告があったことを証する情報をその申請情報と併せて登記所に提供しなければならない。

趣旨

不動産取引の安全を図る

⇒マンション建替事業による権利変換の対象となっていることを知らないで施行マンションの区分所有権等が取引され、善意の第三者が不足の損害を被ることがないようにする。

権利手続の円滑な進行を確保権利変換手続が開始された後に、権利変換の対象となる施行マンションの区分所有権等が処分された場合、施行者としては、その処分内容を把握し、それを権利変換計画に反映させる必要があるため施行者が全く関知しないところで事由に処分されることを防止する。

解説

(1)    申請時期 組合設立認可の公告後遅滞なく (組合施行の場合)

(2)    対象

 施行マンションの区分所有権、敷地利用権、隣接施行敷地の所有権及び借地権、敷地利用権が借地権である場合又は隣接施行敷地の借地権である場合は、既登記のものに限る。

(3)    効果

 処分の当事者間では有効だが、施行者の承認を得ないでした権利の処分を施行者に対抗できない。

(4) 権利の処分に際しては組合へ権利処分承認申請書(印鑑鑑証明付)の提出が必要になる旨を組合の会報等で周知しておく必要がある(円滑化規30条)

 (権利変換登記前の)住所変更登記

円滑不動産令

(代位登記)

第2条 マンション建替事業(法第2条第1項第4号規定するマンション建て替え事業をいう。以下同じ。) を施行する者又はマンション敷地売却事業(同項第9号に規定するマンション敷地売却事業をいう。以下この条において同じ。)を実施するものは、それぞれマンション建替事業の施行又はマンション敷地売却事業の実施のため必要があるときは、次の各号に掲げる登記をそれぞれ当該各号に定める者に代わって申請することができる。

一     不動産の表題部の登記 所有者

二     不動産表題部に関する変更の登記又は更正の登記 表題部所有者若しくは所有権の登記名義人又はこれらの相続人その他の一般承継人

三     所有権、地上権又は賃借権の登記名義人の氏名若しくは名称又は住所についての変更の登記又更正の登記記 当該登記名義人又はその相続人その他の一般承継人四 所有権の保存 表題部所有者又はその相続人その他の一般承継人五 相続その他の一般承継による所有権その他の権利の移転登記 相続人その他の一般承継人

(代位登記の登記識別情報)

第3条 登記官は、前条の規定による申請に基づいて同条第4号又は第5号に掲げる登記を完了したときは、速やかに、登記権利者のために登記識別情報を申請人に通知しなければならない。

2 前項の規定により登記識別情報の通知を受けた申請人は、遅滞なく、これを同項の登記権利者に通知しなければならない

趣旨

権利変換の登記(円滑化74条)は移転登記の形式で行われるため、権利変換計画書記載の組合員の住所・氏名と施行マンション及びその敷地利用権の登記記録上の所有者の住所・氏名が一致している必要があるところ、各組合員の申請によっていたのでは、建替事業の円滑な遂行に支障が生じる。そこで円滑不動産令2条により、建替組合(敷地売却組合)による代位による登記が認められている。

5権利変換の登記

円滑化法

(権利変換の登記)

第74条 施行者は、権利変換期日後遅滞なく、施行再建マンションの敷地(保留敷地を含む、)につき、権利変換後の土地に関する権利について必要な登記を申請しなければならない。

2 権利変換期日以後においては、施行再建マンションの敷地(保留敷地を含む。)に関しては、前項の登記がされるまでの問は、他の登記をすることができない。

円滑不動産令

(土地についての登記の申請)

第5条 法第74条第1項の規定によってする登記の申請は、土地ごとに、一の申請情報によってしなければならない。

2 前項の場合において、2以上の登記の登記事項を申請情報の内容とするには、次に掲げる順序に従って登記事項に順序を付するものとする。この場合において、目的を同一とする2以上の担保権等登記(法第73条の規定により存するものとされた権利に関する登記をいう。以下同じ。)については、その登記をすべき順序に従って登記事項に順序を付するものとする。

5権利変換の登記

一 所有権の移転の登記の申請二 地上権又は賃借権の設定又は移転の登記の申請三 担保権等登記の申請

3      第1項の登記の申請をする場合には、不動産登記令(平成16年政令第379号)第3条各号に掲げる事項のほか、法第74条第1項の規定により登記の申請をする旨を申請情報の内容とし、かつ、権利変換計画及びその認可を証する情報をその申請情報と併せて登記所に提供しなければならない。

4      マンション建替事業を施行する者は、法律第74条第1項の登記の申請と同時に、区分建物に関する敷地権の登記がある施行マンション(法第2条第1項第6号に規定する施行マンションをいう。次条第1項において同じ。)について、敷地権の消滅を原因とする表題部の変更の登記の申請をしなければならない。

5      登記官は、法第74条第1項の登記をするときは、職権で、権利変換手続開始の登記を抹消しなければならない。

(登記識別情報の通知)

第12条 登記官は、第5条第1項又は第7条第1項の登記を完了したときは、速やかに、登記権利者のために登記識別情報を請人に通知しなければならない、

2 前項の規定により登記識別情報の通知を受けた申請人は、遅滞なく、これを同項の登記権利者に通知しなければならない。

租特法

(マンション建替事業の施行者等が受ける権利変換手続開始の登記等の免税)

第76条 マンションの建替え等の円滑化に関する法律第2条第1項第5号に規定する施行者、同法第58 条第1項第2号の施行再建マンションの区分所有権若しくは敷地利用権を与えられることとなるもの又は同項第5号の担保権等の登起に係る権利を有する者が、同法の施行の日から平成32年3月

31日までの問に、同法第2条第1項に規定するマンション建替事業(良好な居住環境の確保に資するものとして政令で定めるものに限る。)に伴い受ける次に掲げる登記については、財務省令で定めるところにより当該期間内に登記を受けるものに限り、登録免許税を課さない。ただし、第3号に掲げる登記に係る登録免許税にあつては、当該施行再建マンションの区分所有権若しくは敷地利用権を与えられることとなるものが取得する同号の土地に関する権利の価額のうち、同法第85条の差額又は同法第11条第1項に規定する隣接施行敷地の価額に相当する金額に対応する部分として政令で定めるものについては、この限りでない。

一     マンションの建替え等の円滑化に関する法律第5条第1項に規定する権利変換手続開始の登記

二     マンションの建替え等の円滑化に関する法律第5条第1項に規定する組合が同法第15条第1項又は第64条第1項若しくは第3項の規定により取得する同法第2条第1項第6号に規定する施行マンションの同項第11に規定する区分所有権又は同項第16条に規定する敷地利用権の取得の登記

三     マンションの建替え替等の円滑化に関する法律第74条第1項に規定する権利変換後の土地に関する権利(同法第17条に規定する参加組合員が取得するものを除く。)について必要な登記

租税特別措置法施行令

(マンション建替事業により取得する土地に関する権利のうち課税されるものの範囲等)第42条の3 法第76条第1項に規定する政令で定めるマンション建替事業は、マンションの建替え等の円滑化に関する法律第2条第1項第7号に規定する施行再建マンションの住戸の規模及び構造が良好な居住環境の確保に資するものとして国土交通大臣が財務大臣と協議して定める基準に適合する場合における当該施行再建マンションに係る同項第4号に規定するマンション建替事業(次項及び第3項において「マンション建替事業」という。)とする。

2 マンション建替事業においてマンションの建替え等の円滑化に関する法律第11条第1項に規定する隣接施行敷地(次項において「隣接施行敷地」という。)を取得しない場合の法第76条第1項ただし書に規定する政令で定める部分は、同項に規定する施行再建マンションの区分所有権又は敷地利用権を与えられることとなるもの(次項において「登記を受ける者」という。)に係るマンションの建替え等の円滑化に関する法律第58条第1項第4号に掲げる施行再建マンションの敷地利用権の価額の概算額(次項において「施行再建マンション概算額」という。)から同条第1項第3号に掲げる施行マンションの敷地利用権の価額(次項において「施行マンション価額」という。)を控除した残額に対応する部分とする。

3 マンション建替事業において隣接施行敷地を取得する場合の法第76条第1項ただし書に規定する政令で定める部分は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める価額に対応する部分とする。

一 登記を受ける者に係る施行再建マンション概算額から隣接施行敷地持分価額(隣接施行敷地のマンションの建替え等の円滑化に関する法律第58条第1項第13号の価額及び減価額の合計額に同法第2条第1項第7号に規定する施行再建マンションの同項第19号に規定する敷地利用権に係る登記を受ける者の持分を乗じて得た価額をいう。次号において同じ。)を控除した残額(同号において「権利変換前価額」という。)が施行マンション価額以上となる場合当該施行再建マンション概算額から当該施行マンション価額を控除した残額二 登記を受ける者に係る権利変換前価額が施行マンション価額に満たない場合当該登記を受ける者に係る隣接施行敷地持分価額

趣旨

権利変換期日において生じた土地に関する権利の得喪及び変更について必要な登記を権利変換期日後、遅滞なく施行者が申請すべきことを定めるこの登記がなされる前に他の登記がなされると、権利変換の登記に支障が生じるため、権利変換期日以降は権利変換の登記がなされるまでの問は、他の登記をすることはできない。

解説

⑴権利変換後の土地に関する権利について必要な登記(円滑化74条1項)

施行マンションが敷地権付区分建物である場合、区分建物表題変更登記(敷地権抹消登記)

施行再建マンションの敷地の所有権の移転の登記

施行再建マンションの敷地の地上権又は賃借権の設定又は移転の登記

保留敷地の所有権の移転の登記

保留敷地の地上権又は賃借権の設定又は移転の登記

施行マンションが敷地権の表示のない建物である場合、施行マンションの敷地利用権についての担保権等の抹消登記

施行再建マンションの敷地利用権についての担保権等登記

⑵円滑化74条登記の前提として、権利変換計画書の記載内容、作成基準、権利変換期日における効果について一通りの理解が必要である。

権利変換計画の内容

円滑化法

第58条 権利変換計画においては、国土交通省令で定めるところにより、次に掲げる事項を定めなければならない。

一     施行再建マンションの配置設計

二     施行マンションの区分所有権又は敷地利用権を有する者で当該権利に対応して、施行再建マンションの区分所有権又は敷地利用権与えられることとなるものの氏名又は名称及び住所

三 前号に掲げる者が施行マンションについて有する区分所有権又は敷地利用権及びその価額

四     第2号に掲げる者に前号に掲げる区分所有権又は敷地利用権に対応して与えられることとなる施行再建マンションの区分所有権または敷地利用権の明細及びその価額の概算額

五     第3号に掲げる区分所有権又は敷地利用権について先取特権、質権若しくは抵当権の登記、仮登記、買戻しの特約その他権利の消滅に関する事項の定めの登記又は処分の制限の登記(以下「担保権等の登記」と総称する)に係る権利を有する者の氏名又は名称及び住所並びにその権利

六 前号に掲げる者が施行再建マンションの区分所所有権又は敷地利用権の上に有することとなる権利

七 施行マンションについて借家権を有する者(その者が更に借家権を設定しているときは、その借家権の設定を受けた者)で、当該権利に対応して、施行再建マンションについて借家権を与えられることとなるものの氏名又は名称及び住所

八     前号に掲げる者に借家権(改正(令和2年4月1日)後、「賃借権」)を与えられることとなる施行再建マンションの部分

九     施行マンションについて配偶者居住権を有する者(その者が賃借権を設定している場合を除く。)で、当該配偶者居住権に対応して、施行再建マンションについて配偶者居住権を与えられることとなるものの氏名及び住所並びにその配偶者居住権の存続期間

十     前号に掲げる者に配偶者居住権与えられることとなる施行再建マンションの部分

十一   施行者が施行再建マンションの部分を賃貸する場合における標準家賃の概算額及び家賃以外の借家条件の概要

十二   施行マンションに関する権利又はその敷地利用権を有する者で、この法律の規定により、権利変換期日において当該権利を失い、かつ、当該権利に対応して、施行再建マンションに関する権利又はその敷地利用権を与えられないものの氏名又は名称及び住所、失われる施行マンションに関する権利又はその敷地利用権並びにその価額

十三   隣接施行敷地の所有権又は借地権を有する者で、この法律の規定により、権利変換期日において当該権利を失い、又は当該権利の上に敷地利用権が設定されることとなるものの氏名又は名称及び住所、その権利並びにその価額又は減価額

十四   組合の参加組合員に与えられることとなる施行再建マンションの区分所有権及び敷地利用権の明細並びにその参加組合員の氏名又は名称及び住所

十五   第四号及び前号に掲げるもののほか、施行再建マンションの区分所有権又は敷地利用権の明細、その帰属及びその処分の方法

十六   施行マンションの敷地であった土地で施行再建マンションの敷地とならない土地(以下「保留敷地」という。)の所有権又は借地権の明細、その帰属及びその処分の方法十七 補償金の支払又は清算金の徴収に係る利子又はその決定方法十八 権利変換期日、施行マンションの明渡しの予定時期及び工事完了の予定時期十九 その他国土交通省令で定める事項

2 施行マンションに関する権利若しくはその敷地利用権又は隣接施行敷地の所有権若しくは借地権に関して争いがある場合において、その権利の存否又は帰属が確定しないときは、当該権利が存するものとして、又は当該権利が現在の名義人(当該名義人に対して第十五条第一項(第三十四条第四項において準用する場合を含む。)若しくは第六十四条第一項(第六十六条において準用する場合を含む。)又は区分所有法第六十三条第五項(区分所有法第七十条第四項において準用する場合を含む。)の規定による請求があった場合においては、当該請求をした者)に属するものとして権利変換計画を定めなければならない。

3 区分所有法第63条第6項(第15条第3項(第34条第4項において準用する場合を含む。)において準用する場合を含む。)又は区分所有法第70条第4項において準用する区分所有法第63条第6項(第 15条第3項(第34条第4項において準用する場合を含む。)において準用する場合を含む。)の規定により、裁判所から建物の明渡しにつき相当の期限を許与された区分所有者がいるときは、第1項第18 号の施行マンションの明渡しの予定時期は、当該期限の日以降となるように定めなければならない。 

円滑化法

(権利変換を希望しない旨の申出等)

第56条 第14条第1項の公告又は個人施行者の施行の認可の公告があったときは、施行マンションの区分所有権又は敷地利用権を有する者は、その公告があった日から起算して30日以内に、施行者に対し、第70条第1項及び第71条第2項の規定による権利の変換を希望せず、自己の有する区分所有権又は敷地利用権に代えて金銭の給付を希望する旨を申し出ることができる。

2     前項の区分所有権又は敷地利用権について仮登記上の権利、買戻しの特約その他権利の消滅に関する事項の定めの登記若しくは処分の制限の登記があるとき、又は同項の未登記の借地権の存否若しくは帰属について争いがあるときは、それらの権利者又は争いの相手方の同意を得なければ、同項の規定による金銭の給付の希望を申し出ることができない。

3     施行マンションについて借家権を有する者(その者が更に借家権を設定しているときは、その借家権の設定を受けた者)は、第1項の期間内に施行者に対し、第71条第3項の規定による借家権の取得を希望しない旨を申し出ることができる。

権利変換計画書の作成基準

円滑化法

区分所有権及び敷地利用権等

第60条 権利変換計画においては、第56条第1項の申出をした者を除き、施行マンションの区分所有権又は敷地利用権を有する者に対しては、施行再建マンションの区分所有権又は敷地利用権が与えられるように定めなければならない。組合の定款により施行再建マンションの区分所有権及び敷地利用権が与えられるように定められた参加組合員に対しても、同様とする。

2     前項前段に規定する者に対して与えられる施行再建マンションの区分所有権又は敷地利用権は、それらの者が有する施行マンションの専有部分の位置、床面積、環境、利用状況等又はその敷地利用権の地積若しくはその割合等とそれらの者に与えられる施行再建マンションの専有部分の位置、床面積、環境等又はその敷地利用権の地積若しくはその割合等を総合的に勘案して、それらの者の相互間の衡平を害しないように定めなければならない。

3     権利変換計画においては、第1項の規定により与えられるように定められるもの以外の施行再建マンションの区分所有権及び敷地利用権並びに保留敷地の所有権又は借地権は、施行者に帰属するように定めなければならない。

4     権利変換計画においては、第56条第3項の申出をした者を除き、施行マンションの区分所有者から当該施行マンションについて賃借権の設定を受けている者(その者が更に賃借権を設定しているときは、その賃借権の設定を受けている者)又は施行マンションについて配偶者居住権を有する者から賃借権の設定を受けている者に対しては、第1項の規定によりそれぞれ当該施行マンションの区分所有者に与えられることとなる施行再建マンションの部分について、賃借権が与えられるように定めなければならない。ただし、施行マンションの区分所有者が同条第1項の申出をしたときは、前項の規定により施行者に帰属することとなる施行再建マンションの部分について、賃借権が与えられるように定めなければならない。

5     権利変換計画においては、第56条第3項の申出をした者を除き、施行マンションについて配偶者居住権の設定を受けている者(その者が賃借権を設定している場合を除く。)に対しては、第1項の規定により当該施行マンションの区分所有者に与えられることとなる施行再建マンションの部分について、配偶者居住権が与えられるように定めなければならない。ただし、施行マンションの区分所有者が同条第1項の申出をしたときは、第3項の規定により施行者に帰属することとなる施行再建マンションの部分について、配偶者居住権が与えられるように定めなければならない。

6     前項の場合においては、権利変換計画は、施行マンションについて配偶者居住権の設定を受けている者に対し与えられることとなる施行再建マンションの部分についての配偶者居住権の存続期間が当該施行マンションの配偶者居住権の存続期間と同一の期間となるように定めなければならない。

(担保権等の登記に係る権利)

第61条 施行マンションの区分所有権又は敷地利用権について担保権等の登記に係る権利が存するときは、権利変換計画においては、当該担保権等の登記に係る権利は、その権利の目的たる施行マンションの区分所有権又は敷地利用権に対応して与えられるものとして定められた施行再建マンションの区分所有権又は敷地利用権の上に存するものとして定めなければならない。

2 前項の場合において、関係権利者間の利害の衡平を図るため必要があるときは、施行者は、当該存するものとして定められる権利につき、これらの者の意見を聴いて、必要な定めをすることができる。

(権利変換期日等の通知)

第69条 施行者は、権利変換計画若しくはその変更(権利変換期日に係るものに限る。以下この条において同じ。)の認可を受けたとき、又は第66条の国土交通省令で定める軽微な変更をしたときは、遅滞なく、国土交通省令で定めるところにより、施行マンションの所在地の登記所に、権利変換期日その他国土交通省令で定める事項を通知しなければならない。

権利変換期日以降は、権利変換の登記がなされるまでの間、他の登記をすることができないため、登記所に権利変換期日をしらしめる趣旨である。

(敷地に関する権利の変換等)

第70条 権利変換期日において、権利変換計画の定めるところに従い、施行マンションの敷地利用権は失われ、施行再建マンションの敷地利用権は新たに当該敷地利用権を与えられるべき者が取得する。

2     権利変換期日において、権利変換計画の定めるところに従い、隣接施行敷地の所有権又は借地権は、失われ、又はその上に施行再建マンションの敷地利用権が設定される。

3     権利変換期日において、権利変換計画の定めるところに従い、保留敷地に関しては、当該保留敷地についての従前の施行マンションの敷地利用権が所有権であるときはその所有権を、借地権であるときはその借地権を、施行者が取得する。

4     施行マンションの敷地及び隣接施行敷地に関する権利で前3項及び第73条の規定により権利が変換されることのないものは、権利変換期日以後においても、なお従前の土地に存する。この場合において、権利変換期日前において、これらの権利のうち地役権又は地上権の登記に係る権利が存していた敷地利用権が担保権等の登記に係る権利の目的となっていたときは、権利変換期日以後においても、当該地役権又は地上権の登記に係る権利と当該担保権等の登記に係る権利との順位は、変わらないものとする。

(施工マンションに関する権利の変換)

第71条 権利変換期日において、施行マンションは、施行者に帰属し、施行マンションを目的とする区分所有権以外の権利は、この法律に別段の定めがあるものを除き、消滅する。

 施行マンションが敷地権付区分建物である場合は「区分建物表題変更登記(敷地権抹消登記)を円滑化法74条登記の前件で申請する(円滑不動産令5条4項)。

理由

 権利変換期日において、施行マンションは施行者に帰属し(円滑化71条1項)、施行マンションの敷地利用権は失われ、施行再建マンションの敷地利用権は、施行再建マンションの敷地利用権を与えられるべき者に帰属する(円滑化70条1項)つまり、区分建物の所有者と敷地利用権の権利者が法律上異なることになるため、権利変換期日に分離処分の禁止の規定の適用が排除されるため、74条登記の前提として敷地権化を解いておく必要がある。

施行再建マンションに関する登記

円滑化法

(施行マンションに関する権利の変換)第71条 省略

2     施行再建マンションの区分所有権は、第81条の建築工事の完了の公告の日に、権利変換計画の定めるところに従い、新たに施行再建マンションの区分所有権を与えられるべき者が取得する。

3    施行マンションについて借家権を有していた者(その者が更に借家権を設定していたときは、その借家権の設定を受けた者)は、第81条の建築工事の完了の公告の日に、権利変換計画の定めるところに従い、施行再建マンションの部分について借家権を取得する。

(区分所有法の規約とみなす部分)

第72条 区分所有法第1条に規定する建物の部分若しくは附属の建物で権利変換計画において施行再建マンションの共用部分若しくは区分所有法第67条第1項の団地共用部分(以下単に「団地共用部分」という。)と定められたものがあるとき、権利変換計画において定められた施行再建マンションの共用部分若しくは団地共用部分の共有持分が区分所有法第11条第1項若しくは第14条第1項から第3項まで(これらの規定を区分所有法第67条第3項において準用する場合を含む。)の規定に適合しないとき、又は権利変換計画において定められた施行再建マンションの敷地利用権の割合が区分所有法第22 条第2項本文の規定に適合しないときは、権利変換計画中その定めをした部分は、それぞれ区分所有法第4条第2項若しくは第67条第1項の規定による規約、区分所有法第11条第2項若しくは第14条第4項(区分所有法第67条第3項において準用する場合を含む。)の規定による規約又は区分所有法第22条第2項ただし書の規定による規約とみなす。

(担保権等の移行)

第73条 施行マンションの区分所有権又は敷地利用権について存する担保権等の登記に係る権利は、権利変換期日以後は、権利変換計画の定めるところに従い、施行再建マンションの区分所有権又は敷地利用権の上に存するものとする。

(建築工事の完了の公告等)

第81条 施行者は、施行再建マンションの建築工事が完了したときは、速やかに、その旨を、公告するとともに、第71条第2項又は第3項の規定により施行再建マンションに関し権利を取得する者に通知しなければならない。

(施行再建マンションに関する登記)

第82条 施行者は、施行再建マンションの建築工事が完了したときは、遅滞なく、施行再建マンション及び施行再建マンションに関する権利について必要な登記を申請しなければならない。

2 施行再建マンションに関する権利に関しては、前項の登記がされるまでの間は、他の登記をすることができない。

(施行再建マンションに関する登記の申請)円滑不動産令

第7条 法第82条第1項の規定によってする登記の申請は、一棟の建物及び一棟の建物に属する建物の全部について、一の申請情報によってしなければならない。

2     前項の場合において、二以上の登記の登記事項を申請情報の内容とするには、同項の一棟の建物及び一棟の建物に属する建物ごとに、次に掲げる順序に従って登記事項に順序を付するものとする。

一 建物の表題登記の申請

二 共用部分である旨の登記の申請

三 所有権の保存の登記の申請

四 法第八十八条第一項の先取特権の保存の登記の申請

五 法第七十一条第三項の規定による借家権に関する登記の申請

六 担保権等登記の申請

3     第1項の登記の申請をする場合には、不動産登記令第3条各号に掲げる事項のほか、法第82条第1 項の規定により登記の申請をする旨を申請情報の内容とし、かつ、権利変換計画及びその認可を証する情報をその申請情報と併せて登記所に提供しなければならない。

4     第5条第2項後段の規定は、第1項の申請について準用する。

〈申請すべき登記〉

施行再建マンションについて必要な登記

・ 区分建物表題登記

・ 共川部分である旨の登記

施行再建マンションに関する権利について必要な登記

・ 所有権保存登記

・ 先取特権保存登記

・ 担保権等登記(移行担保権の登記)

〈実務上のポイント〉

 所有権保存登記の注意事項登録免許税は、各組合員の所有権保存登記、移行担保権の登記、先取特権保存登記の登録免許税の合計額を納付する。

移行担保権の登記の注意事項

 登録免許税は追加設定登記の扱いとなり、不動産1個につき金1、500円。権利変換の登記申請。(円滑化74 条)の際には非課税であったことと対比。

まとめ

 近年、巨大地震への懸念から、老朽化したマンションや耐震性に問題のあるマンションの建替えが求められています。しかし、マンションの建替えは非常に手間のかかる大事業です。マンションの所有者が多人数のため合意形成の段階で難航しやすく、建替え工事から再入居までの権利移転も煩雑で、なかなか事業が進みませんでした。そこで創設されたのが、「マンションの建替えの円滑化等に関する法律」です。

「マンション建替え円滑化法」の特徴

「マンション建替え組合」が法人として事業を進める

 「マンション建替え円滑化法」による建替え事業では、マンションの区分所有者のうち建替え賛成者で集まり、法人格を持つ「マンション建替え組合」を設立します。この「建替え組合」は、建替え反対者の所有権を買取ることができます。逆に、反対者がマンション建替え組合に対して、買取りを請求することも可能です。また、「マンション建替え組合」は法人として、建替え工事の契約締結や融資の借入れなども行うことができます。

工事中も区分所有権を移転しなくていい

 「マンション建替え円滑化法」を適用せずに建替え事業を行う場合、工事期間中の区分所有権は、一旦所有者から開発業者へと渡ります。再入居の際に区分所有権は戻りますが、登記手続きが煩雑になりますし、一度権利を手放すことに抵抗を感じる所有者も少なくありません。

 一方、「マンション建替え円滑化法」においては、法人である「マンション建替え組合」が組合員(区分所有者)の区分所有権を一括で管理し、登記手続きを行うことが可能です。

円滑化法によるマンション建替えの流れ

1「建替え決議」にて可決に必要な割合の賛成を得る。

 建替え賛成者の3/4以上の合意を得て、「マンション建替え組合」設立の申請をする(事業計画などの提出)。

2     都道府県知事の認可を得て、法人格を持つ「マンション建替え組合」を設立する。

3     建替え反対者の区分所有権を、組合で買取る。

4     建替えに必要な登記を「マンション建替え組合」が一括で行う。

5     建替え工事を行う。

6     組合によって新しい建物の登記をする。

7     「マンション建て替え組合」を解散する。2014年「マンション建替え円滑化法」の改正点マンション建替え事業のより円滑な運用を目的として、2014年に円滑化法の一部が改正されました。4/5以上の賛成で敷地売却も可能に。

資金面などの理由から建替え事業が困難な場合には、敷地売却という選択肢も選べます。

 これまでマンションの解体・敷地売却には、区分所有者全員の合意が必要でした。しかし、それでは建替え事業が円滑に進まないため、区分所有者のうち4/5以上が賛成すれば可能とする法改正が行われたのです。

 この場合も建替え事業と同様に「マンション敷地売却組合」を設立し、合意形成や売却手続き・売却利益の分配などを行います。建替え後の容積率を緩和建替え資金の調達方法として、建物の容積率を増やして新たに設けた住戸(保留床)を売却する方法が一般的です。しかし、容積率に余裕がない場合は、新たに保留床を確保できず、資金調達が難航します。

 そこで、耐震性不足で建替えが求められるマンションに限り、一定の条件を満たせば容積率が緩和されるよう改正されました。

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