嵐⽥志保「〜コーディネートに関する事例報告〜」

(一社)民事信託推進センター 2020年12⽉5⽇⺠事信託実務⼊⾨講座

司法書⼠・⺠事信託⼠・⾏政書⼠ 嵐⽥志保

家族関係図 略

信託財産 現預⾦

⺠事信託の設計図 略

信託口口座を作ろうとした銀行から、

1)推定相続人全員の承諾を得ること

2)受託者は第三者でないこと

のいずれかの条件を満たすよう求められたため、以下の事項を検討しました。

 ここでいう第三者は、委託者兼受益者の信託行為時の推定相続人ではない人、という意味かなと思いました。

推定相続人の承諾を取らないための条件として以下を考えました。

 ① 信託契約では、財産の承継は目的としておらず、全部使い切る前提とし、残った場合には二男に渡すとの内容としました。

 ② 信託契約において、受益者への財産引渡し方法は、基本的に定期交付(月額)とし、本人が希望する場合には年間〇万円以内での 随時交付(交付の目的及び使い道を本人に書面で提出してもらう方法)としました。

 私だったらどういう提案をするんだろう、と考えてみます。

・遺留分に配慮した公正証書遺言を作成する。

・推定相続人の承諾を取る際に、過去の特別受益に加えて、遺留分相当額を前渡しする(交付は暦年など)。

2) 受託者は第三者でないこと → 第三者が受託者となる場合のリスクを検討しました

 ① 受託者報酬を受け取るかどうか

② 本人の死亡後、受託者に対し相続人が何らかの異議を言ってくるか

③略

→結果的に、銀行の承諾を得られず信託口口座が作れなかったため、信託を行うこと自体を断念した.

 第三者が受託者である場合の報酬が、推定相続人の紛争可能性を招くとすると、信託銀行・信託会社が受託者である場合にも同じような可能性があると考えられます。第三者が成年後見人に就任した場合の報酬を参考にして渡しても、不合理とはならないんじゃないかなと思いました。

 相続人が異議を言ってきた場合(「何でこれだけしか残っていないのか?」「使い道がおかしいんじゃないか?」とか?)に大まかにでも、受益者のために信託行為に基づいて使ったということをメモでも残しておくことは大切なんだろうなと感じます。昨日、「通帳に鉛筆で書いておいた方が良いんじゃないですか。」と受託者に言ったら、「通帳に書き込みとかしても良いんですか?」と訊かれました。分からない人もいるようなので、出来るだけ無理なく続けられるような方法を個別具体的に提案できると良いなと感じます。

 断念する判断を行うことも、無理やり実行するより難しく大切な判断だと思います。

家族関係図 略

信託財産 略

1)共有を解消する方法の検討

① 信託期間中に移転する方法

 受益権の一部譲渡を繰り返す方法

 →税務上の評価が高くなる。負担(アパートローン)付贈与をするとしても、評価が高額になることと(時価額評価)、負担部分の債務額の確定が難しいとの結論に至りました。

 アパートの賃料を受領してたまった金額を、受益権の行使として受領して、受領した金額から持分移転相当額を他方に渡して片方の持分を増やす方法も考えましたが、譲渡価格が高額になること、都度譲渡とするとタイミングが難しいこと、税負担も都度発生することなどから、実行は難しいとの結論に至りました。

② 信託終了時に移転する方法

 信託終了時に単有とする方法とすると、本件はアパートローンの終了時が信託の終了事由であったので債務がない状態で、2分の1部分について、受益者ではない帰属権利者に移転することとなり、多額の贈与税がかかることが見込まれました。よって、この方法も取れないとの結論に至りました。

  受益権の負担付贈与という方法も初めて知りました。税務をクリアすると、そのようなことも出来るのだなと思いました。私には難しそうなので、受益権を暦年贈与する方法を採るかもしれません。

ローン完済時に信託終了、という信託行為は初めて聞きました。