信託財産を受託者の固有財産とする変更登記の議論に潜む陥穽(かんせい)

信託フォーラム[1]の渋谷陽一郎「信託財産を受託者の固有財産とする変更登記の議論に潜む陥穽(かんせい)」から考えてみたいと思います。

その一方で、次のような声を聴く機会も増えた。司法書士の読者からの声だ。それは本誌「信託フォーラム」の記事及び執筆陣が、弁護士中心となりつつあり、かつ、司法書士関係の記事が減ってきたので、興味を持てる記事が少なくなってきた、という不満だ。

 

 司法書士の読者、という場合、不満を言っている司法書士が何名位いて、どのような地域に多いのかまでは、出しても良いのかなと思いました。民事信託の記事に関しては、主語の大きさや、ある士業が、という表現が大きいんじゃないかなと感じました。

 信託フォーラムの記事及び執筆陣が弁護士中心となりつつあるのは、著者が本記事で福祉型信託の提唱者とされている新井誠編集代表、編集委員に入っている大貫正男司法書士、佐藤純通司法書士の意向でもあると考えられます。

 司法書士自身が信託フォーラムの構成を決めている側面があるので、不満があったとしても、説得力があるかというと少し難しいような印象を受けます。著者についても、方向性の違う家族信託実務ガイドにも寄稿されており、市民と法・家族信託実務ガイド・登記研究・民事信託フォーム・金融法務事情では、それぞれ内容の根幹を替えているように感じます。司法書士のための、という場合、一番に提出する必要があるのは、下の紀要に関する受け止め方だと思います。そうでなければ、司法書士は民事信託に関する業務を行い得ないことになります。

司法書士による民事信託(設定)支援業務の法的根拠論について : (続)民事信託業務の覚書 : 「民事信託」実務の諸問題⑸

https://surugadai.repo.nii.ac.jp/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=2275&item_no=1&page_id=13&block_id=21

 また信託の学校に関しても、電話では民事信託推進センターや日本司法書士会連合会民事信託推進委員の文句を言いながら、信託の学校にとって邪魔だとなると、一転して陰で組織的に除名などしてくるのもどうなのかなと思います。

 リプが何なのか分かりませんが、事実を提出しているのみです。証拠が残らない電話で連絡してきて、除名した後は知らない顔というのは、法律上は上手い方法だと思います。

信託法改正の直後、司法書士の人々に対して信託に取り組む勇気を与え、信託熱に火をつけ、その後の民事信託普及の端緒を与えたのは、福祉型信託の提唱者の新井誠教授である。2007年から2010年まで、全国各地の司法書士会によって、度々、新井教授を講師に招いた信託研修会が催されたが、その頃の、新井教授の信託法の講義を聴く司法書士の人々の表情の真剣さと熱気は忘れられない。

 私にとって、民事信託に取り組むきっかけとなり、現在も尊敬しているのは大垣尚司教授です。大垣尚司教授を研修に招いたのは新井誠教授だと聴きました。その面に関しては感謝したいと思います。また2012年段階で大垣尚司教授は士業毎の出来ること、出来ないことについて具体的にコメントがありましたが、新井誠教授から司法書士法、弁護士法についてのコメントを聴いたことがありません。ここは私が知らないだけかもしれません。

不動産登記法

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=416AC0000000123

(権利の変更の登記等の特則)

第百四条の二 

2 信託財産に属する不動産についてする次の表の上欄に掲げる場合における権利の変更の登記(第九十八条第三項の登記を除く。)については、同表の中欄に掲げる者を登記権利者とし、同表の下欄に掲げる者を登記義務者とする。この場合において、受益者(信託管理人がある場合にあっては、信託管理人。以下この項において同じ。)については、第二十二条本文の規定は、適用しない。

一 不動産に関する権利が固有財産に属する財産から信託財産に属する財産となった場合

受益者

受託者

二 不動産に関する権利が信託財産に属する財産から固有財産に属する財産となった場合

受託者

受益者

三 不動産に関する権利が一の信託の信託財産に属する財産から他の信託の信託財産に属する財産となった場合

当該他の信託の受益者及び受託者

当該一の信託の受益者及び受託者

テーマ13 信託法183条6項の「みなし受益者」は、不動産登記法104条の2第2項の登記義務者としての「受益者」となり得るか。

信託法

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=418AC0000000108

(帰属権利者)第百八十三条

6 帰属権利者は、信託の清算中は、受益者とみなす。

不動産登記法(信託の登記の登記事項)

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=416AC0000000123

第九十七条 信託の登記の登記事項は、第五十九条各号に掲げるもののほか、次のとおりとする。

一 委託者、受託者及び受益者の氏名又は名称及び住所

二 受益者の指定に関する条件又は受益者を定める方法の定めがあるときは、その定め

2 前項第二号から第六号までに掲げる事項のいずれかを登記したときは、同項第一号の受益者(同項第四号に掲げる事項を登記した場合にあっては、当該受益者代理人が代理する受益者に限る。)の氏名又は名称及び住所を登記することを要しない。

104条の2第2項の「受託者の固有財産となった旨の登記及び信託登記抹消」の申請書には、「登記義務者として、受益者を記載する」として、その受益者の表示が「登記原因証明情報の表示及び信託目録に記録された受益者の表示に符合していることを要する」としている。要するに、同書では、104条の2第2項で規定する登記義務者としての受益者とは、不動産登記法97条1項1号で登記された受益者のことである旨、断言している。

 信託法上、183条の解釈として清算が終了することで、残余財産の帰属権利者は受益者となります。不動産登記法上、商業登記法のように信託の清算の登記がないため、登記記録上、手続の連続性が失われます。指摘されてみると、そうかもしれないと思いました。不動産登記法104条の2第2項で規定する受益者は、解釈が定まらない限り狭く範囲を取る必要があると思います。よって信託法上も不動産登記法上も受益者である必要があると思います。

今後、信託の終了の場合、

1 信託目録の受益者欄を残余財産の受益者または残余財産の帰属権利者に変更登記申請。

2 受託者の固有財産となった旨の変更登記及び信託登記の抹消登記申請。登記権利者は信託目録の受益者欄に表示されている者、登記義務者は受託者。

2件を連件申請する、という流れになるのかなと思います。


[1] 16号、2021年10月、P120~