渋谷陽一郎「裁判例・懲戒事例に学ぶ民事信託支援業務の執務指針」第6章

渋谷陽一郎「裁判例・懲戒事例に学ぶ民事信託支援業務の執務指針」、2023年1月、民事法研究会、第6章民事信託支援業務の法的根拠論

前提として、私の解説では、組成という用語を使わないようにしています。引用としては利用します。

P394からのグレーゾーン解消制度の回答の衝撃については、下の記事。

参考

『月刊登記情報』2023年1月号(734号)弁護士渡部友一郎「基礎からわかるリーガルテック第11回 規制改革推進会議における弁護士法72条と契約書自動レビューの議論(上)」2023年2月号(735号)弁護士渡部友一郎「基礎からわかるリーガルテック第12回 規制改革推進会議における弁護士法72条と契約書自動レビューの議論(下)」 一般社団法人金融財政事情研究会

https://store.kinzai.jp/public/item/magazine/A/T/731/

P397

離婚協議案の作成時点においては、協議離婚を行う夫婦間に紛争性ありというべきであろうか、あるいは、合意に向かうプロセスであるから、まだ紛争性はないというべきか。―中略―信託契約書の作成の場合との類似性はどうだろうか。

→協議が調わない場合の調停(家事事件手続法244条)、訴訟が準備されている離婚の場合、一般的に紛争性ありと評価されるのではないかと思います。

信託契約書の作成の場合の比較としては、協議離婚案の作成については紛争になる可能性があるところを、協議によって解決したいという当事者(一方)の意思により作成するのに対して、信託契約書は紛争性の有無を契約書作成時点で、一度確認することだと考えられます。

P400

この点、信託契約書作成業務は法3条業務には該当しないと主張する人々は、司法書士業務である限り、当然にして法3条が適用されることについて、どのように考えているのだろうか(民事訴訟の主張・立証責任という技術的レベルの感覚でいっているとすれば、弁護士法72条は罰則の構成要件であるから、刑事事件の構造からも検討済みなのか)。

→司法書士のプロボノ活動です。日司連民事信託推進委員の発言なので、公式に近い見解と評価されます。

P407

有償の信託契約書の作成業務や審査業務について、仮にグレーゾーン解消制度を利用したとしたら、どのような回答が出てくるのだろうか。さらにはAIによる信託契約書の作成、あるいは、諸条件を入力することで信託契約書の雛型が提示されるなどのサービスなどはどうだろうか。

→少し別の視点からです。

開会日2023年2月21日 (火)

会議名予算委員会第三分科会 (3時間36分)

https://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=54353

2:31:11

ありがとうございます。なるべく早く、このテーマについても、しっかり協議会の中で取り上げていただきますよう、よろしくお願いいたします。続きまして、相続登記の問題についてお伺いしたいと思います。毎年2月、これは日本司法書士連合会が定める「相続登記はお済みですか」月間とされております。これは、今増加する所有者不明土地問題、この解決に向けて、来年4月から相続登記申請が義務化されることになっておりますが、そういった観点でも非常に意義深い取組であると考えております。しかし、この関連で今、懸念がされているのが、資格を持たない事業者がオンラインで相続登記申請作成等のサービスを提供している、こういった問題があります。その中には、司法書士法への抵触が疑われるようなサービス、こういったものも散見されるため、本日は法務省の見解を確認をさせていただきたいと思います。別紙1をご覧ください。これが、一般的なオンライン事業者のサービスの流れでございます。この①、②を見ていただきますと、事業者らはまず、利用者からの委任に基づいて、相続登記申請に必要な戸籍等本などの公文書を収集することになります。そして③から⑤の手続きでございますが、利用者にフォームを提供して、オンラインのフォームに回答を入力してもらう。そしてその他の項目は、事業者がこれを埋めて、申請書や添付書類を完成させる、こういう流れになっております。そこでまずお伺いしたいと思います。この司法書士または弁護士、こういった資格を有しない事業者において、こうした登記申請書の作成に際して、例えば、相続人の住所であるとか、課税価格であるとか、本人がフォームへの入力操作をしていない複数の項目を、事業者が独自に入力して完成させていく。こういったことは、司法書士法第3条第1項、第2号に抵触するものではないかと考えますが、御見解をお願いいたします。

2:33:32

法務省金子さん、民事局長。

2:33:36

お答えいたします。サービス事業所の提供するサービス内容の法令適合性を、予断をもって答弁することは、差し控えるのが相当と思いますが、一般論として申し上げますと、司法書士ではない民間事業者が、登記申請書類の作成に必要な情報を依頼者にインターネット上で入力させて、登記申請書類の作成を可能とするサービスを提供するような場合におきまして、依頼者が入力していないような情報を入力したり、あるいは依頼者が入力した情報を加工修正するなどをして、その対応が民間事業者において依頼者に代わって登記申請書類を作成したと評価されるようなものであれば、司法書士法第3条第1項第2号に違反する恐れがあるものと考えられます。

2:34:28

塩崎貴司さん。

2:34:30

明確な答弁ありがとうございます。次に、オンラインの登記書類作成においては、法定相続人が誰かということを確定するというような非常に大事になります。例えば、戸籍謄本を代行取得した結果、当初想定していた法廷相続人とは違うかもしれない、こういったことが起き得るわけでございます。こうしたオンライン事業者においては、戸籍謄本を確認した上で、法定相続人が当初の想定と異なるかどうか、これを確認して、その結果次第で対応フローを変えるというふうになっております。しかし、ここで考えてみますと、相続登記申請において、被相続人との関係で法定相続人が誰か、これはまさに法的な評価ではないかということでございます。戸籍謄本の正確な読み取りと同時に、民法の各規定の解釈、そして個別な具体的な事案への正確な当てはめ、こういったことがなければ、正しい判断をすることはできないわけでございます。そこで、法務省にお伺いします。戸籍の記載から、親族関係を読み取って、民法に当てはめ、具体的に法定相続人を確定していく、こうした作業、これは法律事務に当たって、司法書士法に提触しないのか、お答えください。

2:35:51

法務省金子民事局長。

2:35:56

これも一般論としてお答えいたします。民間事業者がサービス内容の一部として、登記申請を行おうとする依頼者に関係する戸籍の記載から、法律上の親族関係を読み取った上で、民間事業者の判断で法定相続人を特定し、その判断を前提として登記申請書類を作成したような場合に、その対応が民間事業者において依頼者に代わって申請書類を作成したと評価されるようなものであれば、司法省司法第三条第一項第二号に違反するおそれがあるものと考えられます。

2:36:29

塩崎貴司さん。

2:36:32

ありがとうございました。もう一つお伺いしたいと思います。こうしたオンラインサービス事業者においては、往々にしてフォームに入力をしてもらうことに加えて、個別のフォローアップサービス、電話やメールでのフォローを行っているということでございます。資料にこちらをご覧ください。こちらはある事業者のホームページからの抜粋でございますが、このサービスを使ってみたユーザーからの声ということでユーザーレビュー、これが載っております。こちら少し紹介をさせていただきます。50代埼玉県の方でございます。電話するたび分かりやすく簡潔に解決できて本当に助かりました。こういうふうに書いてあります。60代東京都の方。法務局からの追加書類の相談で連絡した際にもすぐに対応していただきました。ありがとうございました。こういう記載があります。60代栃木県の方。書類の書き方の説明や付箋紙で印があったのでスムーズに書き方ができてよかったです。こういった話があります。静岡県の方。このたびは何もわからない私に丁寧に説明のメールをいただき、メールでわからない点を電話した際には丁寧に教えていただきありがとうございました。このような次第で、こちらのユーザーレビューの結果からしますと、まさに個別事案に基づく細かなフォローアップ、指導、アドバイスを行っていることが強く推認されるわけでございます。そこで法務省にお伺いしたいと思います。こちらのユーザーレビュー欄の記載にありますように、仮にこのサービス事業者が個別の登記申請書類の作成に関して、具体的な事案に関する利用者からの紹介に応じたり、サポートをしたりしているとすれば、これはまさに司法書士法3条5号に定める登記申請書類作成の相談に応じていること、この業務に当たることは明確ではないかと思いますが、こうしたサービスの提供は司法書士法に抵触しないかどうかお伺いしたいと思います。

2:38:57

金子民事局長

2:39:01

これも一般論としてお答えいたしますが、民間事業者側が個別具体的な事案を前提に、登記申請書類の作成に関する相談を受けて回答したり、助言したりして、その対応が民間事業者において登記申請書類の作成に当たって依頼者からの相談に応じたと評価されるようなものであれば、司法書士法第3条第1項第5号に違反する恐れがあるものと考えられます。

2:39:27

塩崎晃君

2:39:29

こちらも明確なご答えありがとうございました。相談に応じたと言われる実態につきまして、かなり大胆にホームページにこうしたユーザーレビューの結果が表示されているわけでございます。言うまでもなく、司法書士法というのは、この司法書士という専門資格、これをもちまして、この登記に係る国民の権利を擁護し、もって自由かつ公平な社会の形成に寄与する、これが司法書士法第1条に定められているわけでございます。法務省におきましては、こうした司法処置法に抵触するような行為、こうしたものにつきまして、しっかりと指導力を発揮していただきまして、国民の権利、擁護が図られる社会の形成に、また指導力を発揮していただきますようお願いを申し上げたいと思います。―以下略―

→司法書士法3条違反と評価され得る行為

・民間事業者が、依頼者が入力していない情報を入力したり、依頼者が入力した情報を加工修正して登記申請情報を作成すること。

・民間事業者が、依頼者が取得した情報、または事業者が代行取得した情報に基づいて、法定相続人の特定を行い、登記申請情報を作成すること。

・民間事業者が、個別具体的な事案を前提に、登記申請書類の作成に関する相談を受けて回答したり、助言を行うこと。

上について少し考えてみます。相続登記申請サービスについて、司法書士法違反と評価され得る、という行為です。民事信託支援業務について考えると、少し異なります。

→有償の信託契約書の作成業務について

・依頼者が理解していない条項を契約書の中に作成したり、依頼者が希望している条項を、依頼者の同意を得ないで加工修正すること。

・依頼者の同意を得ないで、受託者の権限や受益権の内容などを決定すること。

→有償の信託契約書の審査業務(同業司法書士に対する業としての相談、助言を含みます。)について

・前提として、依頼者(委託者)と面談しているのか。面談しないで有償審査が出来るのか。

・依頼者(委託者)が審査業務で指摘した内容を理解しているのか、同業司法書士への確認や依頼者(委託者からの)書面等による同意。

などが論点になるかと思います。また、違法と評価される基準は、信託契約書作成の場合と比べて、低く設定されると考えられます。同じ司法書士が作成した契約書をさらに有償審査するという高度な判断を要する行為を行っているからです。

(P410)

民事信託初経験の司法書士が法務局提出書類として作成した信託契約書を、民事信託のエキスパートを称する他の司法書士が有償で審査(チェック)する場合があると聞くが、そのような審査(チェック)業務も法3条1項2号に該当するものなのだろうか。純粋な契約書の審査(チェック)業務は、法3条のどこに該当するのか、あるいは、規則31条の何に該当するのだろうか、元の作成者よりも、審査者の方が、弁護士法72条リスクを心配する必要はないのか否か、慎重に検討して欲しい。

→日司連民事信託推進委員が行っているので、日司連としても公にではないですが、認めています。その是非は分かりません。

家族信託の相談会その53

お気軽にどうぞ。

2023年3月24日(金)14時~17時

□ 認知症や急な病気への備え
□ 次世代へ確実に引き継ぎたいものを持っている。
□ 家族・親族がお金や土地の話で仲悪くなるのは嫌。
□ 収益不動産オーナーの経営者としての信託 
□ ファミリー企業の事業の承継
その他:
・共有不動産の管理一本化・予防
・配偶者なき後、障がいを持つ子の親なき後への備え

1組様 5000円

場所

司法書士宮城事務所(西原町)

要予約

司法書士宮城事務所 shi_sunao@salsa.ocn.ne.jp

後援  (株)ラジオ沖縄

渋谷陽一郎「裁判例・懲戒事例に学ぶ民事信託支援業務の執務指針」第5章

渋谷陽一郎「裁判例・懲戒事例に学ぶ民事信託支援業務の執務指針」、2023年1月、民事法研究会、第5章民事信託支援業務に関する懲戒事例と懲戒規範

前提として、私の解説では、組成という用語を使わないようにしています。引用としては利用します。

P346、P347

苦情が聞かれた、苦情も聞かれる、とも噂されるなどの記述について

→このような表現から結論が導いても良いのか、分かりませんでした。

P355

また、通常、子どもである受託者となるべき者の側から、本懲戒事例のように、自分たちのものにできないかとの旨の不法・不適切な動機を開示してくる場合は少ない。あくまでも、表面上、高齢の親のためであると言い張るだろう。そのような場合、司法書士は、どのようにして真の動機を知るのか、知りうべきか、知ることができるのか(そのメルクマークは何か)。

→信託設定時、外形上、明らかに子どもである受託者の利益のために設定されていると認められる信託でない限り(信託法8条)、結果として委託者・受益者に損害が出るかどうかになると考えられます。

P357

それでは、成年後見人事案でない場合で、親の財産の先取りや他の推定相続人からの囲い込みを意図した家族信託を組成した後、実際、信託財産を着服した場合、どの時点で犯罪の実行の着手と評価されるのだろうか、組成時だろうか、着服時だろうか。あるいは、家族信託だけの場合も、業務上横領罪であると評価されるのだろうか。

→犯罪の実行の着手と評価される時期について、外部に対して、明らかに受託者自身が自己の利益のために領得する意思を発現した場合を除いて、着服時だと考えられます。

家族信託だけの場合も、信託行為の内容によっては、法定後見制度、未成年後見制度と同様に業務上横領罪であると評価される可能性はあると考えられます。このような場合、公益信託の存在が評価に影響を与えるのではないかと思います。

最高裁判所第二小法廷平成24年10月9日決定

1 家庭裁判所から選任された成年後見人が業務上占有する成年被後見人所有の財物を横領した場合,成年後見人と成年被後見人との間に刑法244条1項所定の親族関係があっても,同条項は準用されない。

2 家庭裁判所から選任された成年後見人が業務上占有する成年被後見人所有の財物を横領した場合,成年後見人と成年被後見人との間に刑法244条1項所定の親族関係があることを量刑上酌むべき事情として考慮するのは相当ではない。

https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=82627

最高裁判所第一小法廷平成20年2月18日決定

家庭裁判所から選任された未成年後見人が業務上占有する未成年被後見人所有の財物を横領した場合,未成年後見人と未成年被後見人との間に刑法244条1項所定の親族関係があっても,その後見事務は公的性格を有するものであり,同条項は準用されない。

https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=35770

P358

会則違反について―中略―違法行為の射程は、信託組成支援業務の違法に留まると考えます。理由として、信託組成支援業務の違法により、信託の違法が生じているので、司法書士が実際に行った信託組成支援業務の評価に留めることが、妥当だと考えたからです。

P361

しかし、医師でもない司法書士に、認知症患者の積極的な意思能力の有無を判断する責任を負えるのか検討を要する。そのようなノウハウはあるのか。証拠保全方法はどうなるか。

→通院先のカルテや、施設・デイサービスの介護日誌などをコピーして保存する方法があるかと思います。

P365

他人の作成した信託契約書に対する有償でもって行う鑑定を法的根拠および公益意識なく反復継続し、それが不完全かつ悪質であり、かような鑑定により損害を生じたこと

→公益意識の有無、不完全かつ悪質、損害の有無が必要なのか、疑問に思いました。

P366

インターネットやSNS等を濫用し、公然と、書籍・資料等の無断転載等を行い、引用を逸脱し、違法となる著作権法違反(刑事罰)の行為

→多数決で、一方的に除名処分などをせず、根拠をもって立件や懲戒処分申立てをしていただきたいと思います。お互いに敬意があれば、メールでの議論で済むとは思うのですが。

P381

司法書士との長年にわたる継続的な依頼者の事案であるなどの特段の事情がある場合を除いて、医師でもない司法書士が、認知症患者の判断能力が戻ったなどの判断は容易ではない。

→前提として、認知症と診断されたことは、判断能力の喪失とイコールではありません。

なお、公証人が、判断能力ありと判定した場合は、司法書士の確認義務の程度はどうなるのか、などの応用問題がある。

→公証人が、判断能力ありと反転した場合、というのは、公正証書を作成した場合、と言い換えます。公証人が、この方には判断能力がある、と断定することを私は聴いたことがないからです。その場合でも、司法書士の確認義務は変わりません。司法書士と公証人は独立して仕事をしているからです。

渋谷陽一郎「裁判例・懲戒事例に学ぶ民事信託支援業務の執務指針」第4章

渋谷陽一郎「裁判例・懲戒事例に学ぶ民事信託支援業務の執務指針」、2023年1月、民事法研究会、第4章東京地判令和3.9.17にみる民事信託支援業務と5号相談

前提として、私の解説では、組成という用語を使わないようにしています。引用としては利用します。

P274

司法書士は、医師と同様の受託強制主義の下、公益代表型の法律家として、そのような債務を負っている。

→受託強制主義は司法書士法21条を指しているものと考えられます。民事信託支援業務は、原則として、簡裁訴訟代理等関係業務ではないことが想定されます。司法書士法3条1項各号を根拠として民信託支援業務を行う場合、司法書士法21条の依頼は、相談から依頼の間に、時間を要します。相談の段階で法律整序事務であることを、司法書士が判断した上での依頼であることが必要となります。法律整序事務ではない相談は、依頼される前に断る、他士業を紹介することになります。依頼に応じた後(委任契約締結後)においても同じです。

 そして、司法書士法21条の存在によって、依頼を受けた以上、きっちりやらなければいけない、というような感覚を持つことが多いような気がします。きっちりやる、というのは、完了させるまで出来るだけミスなく、違法になりそうな場合は事前に通知したうえ、そのような事実が起きた場合、すぐ断ることも含みます。民事信託支援業務を行うにあたって、委任契約の範囲を具体的に決めることが出来れば、良い方向に向かう場面が多いように感じます。

P279

なお、本判決の事案において、分別管理された信託口口座が開設出来なかった主たる理由は、信託契約公正証書の作成(信託契約の締結)にあたって、司法書士が委託者を代理してしまったことにあったようだ。

→主たる理由は、司法書士が信託契約公正証書の作成前に、信託口口座開設予定の金融機関に、事前に信託口口座の開設要件を確認しなかったことです。

P285

それでは、司法書士は、司法書士法上の業務範囲であれば、すべての分野において情報収集義務を生じるのだろうか。どのレベルまで情報収集を行うべきなのか。

→結果論ではありますが、依頼者が通常想定していなかったような損害を与えない程度の情報集、ではないかと考えています。

P311

民事信託の専門家を自負する若い司法書士の人々には、地に足を付けた民事信託支援業務の地固めのためにも、金森コラムに対するさらなる反論を期待したい。

→私はしています。なお、反論ではなく批評です。

 司法書士の体質として、ある程度の地位を得てから、何名かで議論を固めてから組織名で、というのが多いと考えられるので、難しいのではないかと思います。沖縄県会ではそうです。著者についても、実務に就いている場合に同じことが出来るのか、金森弁護士と面識がなく、予め反論しますと断っていない場合、同じことが出来るのか、私には分かりません。

P319

あるいは、受託者ではなく、最大の利害関係者である受益者に対して、このような訴えを提起して信託財産を保全すること、を期待することができるのだろうか。

→知り得るのであれば、受託者より期待できる場合もあると考えられます。

P343

ところで、以上みてきたとおり、司法書士による民事信託支援業務の生成のプロセスは、成年後見業務や簡裁訴訟代理等関係業務などの他の司法書士業務とは全く異なる。

→似ている場面はあると思います。相談時に情報提供、リスク説明を行うことはあるのではないでしょうか。

道垣内弘人『信託法―現代民法別巻―』→『信託法〔第2版〕: 現代民法別巻』第6章委託者、第7章信託の変更・併合・分割、第8章終了・清算・倒産、第9章罰則

道垣内弘人『信託法―現代民法別巻―』2017年、有斐閣と、同氏著『信託法〔第2版〕: 現代民法別巻』2021年、有斐閣の比較です。

『信託法〔第2版〕: 現代民法別巻』2021年、有斐閣を基準にしています。

誤りなどがあれば、指摘願います。

第6章委託者

第7章信託の変更・併合・分割

P413 追加

 金融機関の信託業務の兼営等に関する法律に基づいて信託業務を行う受託者が、民法584条の4の定める方法による定型約款の変更を行う場合について、追記。

P416 変更

信託目的に反しない信託の変更(信託法149条)の効果について、曖昧な記述を削除。

P422 追加

委託者の地位を取得しない第三者による追加信託は、贈与と解釈することについて追記。

第8章終了・清算・倒産

P429 追加

 信託法90条1項各号に定める遺言代用信託が、自己信託のかたちで設定され、委託者が第1受益権を有している場合で、委託者の死亡時まで1年以上経過したとき、信託法163条2号に該当するか、整理。

P442 変更

信託法180条の正当性について、限定責任信託と、限定責任信託以外で区別することに変更。

P443 追加

 信託法182条2項の該当要件と、残余財産受益者または残余財産の帰属権利者の地位が相続される場合について、補足。

第9章罰則

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