2024/12/20沖縄県司法書士会「民事信託研修会」

2024/12/20沖縄県司法書士会「民事信託研修会」伊庭潔弁護士

・民事信託の契約書作成業務とコーディネーター業務がある。

・遺言信託も増えている。

民事信託を活用する事例中、将来の施設利用料の工面についての相談-不動産の処分(定期預金の解約)については、居住用不動産の売却許可審判を考慮しても、後見制度で対応できる可能性があると考えます。

 「親亡き後」の問題について、信託契約作成時点で残余財産の帰属先として寄付先と定める形になっており、信託当初から寄付先を決めることが出来るのか、分かりませんでした。

 積極財産しか信託できない、と法律には書いていない?

 信託財産の処分を認めないケースの信託の目的として、帰属権利者〇及び帰属権利者〇が信託財産を確実に承継すること。の記載がありますが、この記載で信託財産をその性状のまま承継することであり、処分(換価)を認めない、と解釈することにはならないのかなと思います。

 不動産の「瑕疵」について、委託者と受託者の内部取決めの条項(契約不適合責任(民法 562条以下)、土地工作物責任(民法717条))は、受託者が委託者に請求する権利があることになっています。委託者が亡くなっている場合は誰に請求するのか、分かりませんでした。

 委託者の権利と委託者の地位は異なりますが、基本的な条項例では(委託者の権利)となっており、分かりませんでした。委託者の地位は、民法の相続一般原則により、委託者の相続人に相続される。私人間の合意で「委託者の地位」の相続性は否定できない。とレジュメに記載がありますが、次の基本条項例では、委託者の地位は受益権を取得する者に移転する。という条項が示されています。

 沖縄県の三つの地銀では、信託口口座の開設が出来る、というコメントがありましたが、沖縄海邦銀行については、2024/12/20現在、口座名義に信託口と記載される屋号口座以上の効果はありません。

 レジュメでは受益債権の内容と記載があり、基本条項例では(受益権の内容)となっています。なぜ異なるのか分かりませんでした。

 東京高判令和6年2月8日(ウエストロー・ジャパン)は、被控訴人(受益者)による主張、立証が不十分であったことが原因。

 信託契約書の基本条項例を基に作成する場合、アレンジする箇所

 信託目的、信託事務、受益債権の内容、信託の終了事由、帰属権利者又は残余財産受益者。

 受益権は1個しかない、各不動産について1個の受益権を設定しておく、とのコメントについて・・・受益権は信託行為で何個でも設定可能です。金銭のみであれば、1円に付き1個、という受益権の定め方も可能です。

 民事信託と遺産分割協議。信託契約書において、委託者の死亡により受益権が消滅しないことを定める。

渋谷陽一郎『Q&A 家族信託大全』第13章家族信託の基本・関連知識と日弁連のガイドライン等

渋谷陽一郎『Q&A 家族信託大全』2023年、日本法令、第13章 家族信託の基本・関連知識と日弁連のガイドライン等

Q1001、家族信託を用いる際にあり得るリスク、信託設定の後、委託者の気が変わって、信託の終了などが生じてしまうリスク、について・・・信託行為が信託契約の場合、一方当事者の意思表示により契約終了となることは双務契約一般にあり得ることで、リスクといえるのか分かりませんでした。

Q1005、家族信託と信託会社等による信託の違い、例えば、弁護士や司法書士が就任する専門職後見人であっても、毎年、横領事件が報道されるわけであるから、専門職や信託会社といえども完全に信用することは難しい世の中なのかもしれない。について・・・(一社)信託協会発行の会報信託には、ほぼ毎号、信託相談所という項目があり、営業信託業務に関する相談・照会、それに対する回答や対応状況が記載されており、一定の参考になると思います。

Q1007、家族信託の基本的な形、自己信託は、それほどには利用されていないようであるが、それは、多くの家族信託が認知症対策であることからであろう(受託者が認知症となってしまったら、にっちもさっちもいかなくなる現状がある)。について・・・自己信託が利用されていない理由は、残余財産の受益者(信託法182条1項1号)が受益者として認められない法解釈・運用がされているからだと考えます。税務上、贈与税回避のためには、信託設定時には自益信託にする必要があり、受益者も委託者となります。受託者兼受益者は禁止事項(信託法8条)、その状態が一年間経過すると信託の終了事由となります(信託法163条1項2号)。よって、税務の特例を認めるか、信託法の解釈を変更することが必要だと考えます。受託者の認知症は、予備の受託者を定めることで対応可能です。

Q1010、家族信託が利用可能な場合とは、委託者の推定相続人全員の同意(協力)が得られる場合である。について・・・私なら、障害を持ち判断能力を喪失している方を除いて、と追加します。浪費者対策としても利用可能ですが、紛争可能性を考えると、司法書士ではなく弁護士が相談を受けるのが適切かもしれません。

P1234、家族内における高齢者虐待や遺棄の発生なども、決して珍しいことではなかろう。について・・・任意後見契約を締結していない場合、締結していても任意後見人選任審判開始の申立てが見込めない場合は、法定後見制度の利用で対応することになると考えます。

P1251、生前の契約信託の設定であれば、受託者と協力して調整しながら信託を設定できるが、死後の遺言信託では、そのようなわけにはいかない。について・・・信託期中のことをいっているのであれば、その通りだと思います。信託設定の場面においては、受託者と調整することが可能なので当てはまらないと考えます。

Q1025、家族信託と銀行借り入れ、□家族信託に対する融資を実行する際に、金融機関は、高齢者である委託者兼受益者の意思確認を行うので、既に認知症を発症し、判断能力が減退した状況では難しい、について・・・裁量信託で記載のようなことが行われているとすると、信託をする意味がなくなるのではないかと思います。金融機関が、融資実行時に高齢者である委託者兼受益者の意思確認を行う根拠が分かりませんでした。根拠があると仮定して、判断能力が減退した状況であれば任意後見制度、法定後見制度、受益者代理人の定めを利用することにより、対応可能ではないかと思います。

Q1070、濫用的撤回不能信託への対処、について。信託法165条1項による申立てを選択肢に入れても良いのではないかと考えます。信託の終了を受託者と受益者の合意とする場合の例外として、受益者が受託者に対して、宣誓供述書により信託の終了を告げた場合を入れる余地もあるように思いました。

Q1076、家族信託と債務、信託法21条1項3号の場合、士業者が間違わないように注意すべきことは、一旦、民法上の債務引受によって、受託者の債務にしなければならないという点であり、委託者の信託前の債務は、信託行為の定めをしただけでは信託財産責任負担債務とはならないという点である、について・・・債務引受は、免責的債務引受が望ましいと思いますが併存的債務引受が現実的なのかなと思いました(道垣内弘人編『条解信託法』2017年弘文堂P101)。

Q1095、「信託口」口座の申込みのタイミング、金融機関の提携する専門家が作った契約でないと受け付けてくれないような場合、について・・・記事の引用に同意です。

Q1127、日公連と日弁連の勉強会による受益者、また、勉強会は、受益者を特定する事項として、氏名、住所、生年月日があれば足りるとしているが、本籍も記載しておくほうが、他の者が、後に関係者を追跡するのに便宜であるとしているが、本籍の記載については、センシティブ情報であり、消極に解すべきとの金森健一弁護士による指摘がある。について・・・本籍を、親族以外の他の者が追跡する必要が場面として、どのようなケースがあるのか分かりませんでした。

Q1152、家族信託の組成時における確定測量の要否について・・・隣地が多数、隣地の所有者が多数で共有の場合もあるので、図面を確認することは必要だと思いました。

Q1161、自家用車の信託

自動車登録令

https://laws.e-gov.go.jp/law/326CO0000000256#Mp-Ch_3-Se_4

(信託の登録の申請書)

第六十一条信託の登録の申請書には、次に掲げる事項を記載しなければならない。

一委託者、受託者及び受益者の氏名又は名称及び住所

二受益者の指定に関する条件又は受益者を定める方法の定めがあるときは、その定め

三信託管理人があるときは、その氏名又は名称及び住所

四受益者代理人があるときは、その氏名又は名称及び住所

五信託法(平成十八年法律第百八号)第百八十五条第三項に規定する受益証券発行信託であるときは、その旨

六信託法第二百五十八条第一項に規定する受益者の定めのない信託であるときは、その旨

七公益信託ニ関スル法律(大正十一年法律第六十二号)第一条に規定する公益信託であるときは、その旨

八信託の目的

九信託財産の管理方法

十信託の終了の事由

十一その他の信託の条項

2前項の申請書に同項第二号から第六号までに掲げる事項のいずれかを記載したときは、同項第一号の受益者(同項第四号に掲げる事項を記載した場合にあつては、当該受益者代理人が代理する受益者に限る。)の氏名又は名称及び住所を記載することを要しない。

3運輸監理部長又は運輸支局長は、第一項各号に掲げる事項を明らかにするため、国土交通省令で定めるところにより、信託目録を作成することができる。

Q1168、日本で最初の家族信託の実態調査、一般社団法人が受託者となる場合は、委託者の親族だけではなく、専門家もその社員とすることで運営の適切性を確保しようとする例があるが、専門家が受託者の社員となる場合、その態様によっては専門家が受託者となっているのと変わらず、信託業に該当すると解されるリスクもあると考え、受託者の社員となるのを避ける専門家もいる。について・・・社員に加えて理事・監事についても同様にいえると思います。

P1459、信託口口座開設手数料の要否。・・・手数料不要が3割未満であるということが驚きでした。県内金融機関は今のところ無料ですが、今後は有料になる可能性もあるかもしれません。

参考 

「FATF 勧告25(法的取極)に関する調査」最終報告書

2024年3月26日 有限責任 あずさ監査法人

民事信託の形態および基本的特徴、基本情報および実質的支配者情報の取得プロセス

市民と法No.150/2024年12月号

市民と法No.150/2024年12月号、民事法研究会

http://www.minjiho.com/shopbrand/ct238/

 永代借地権の取引をめぐって

 九州大学教授 七戸克彦

法務省 最近の主な判決一覧 令和4年4月15日東京地裁所有権確認請求事件平成31年(ワ)第6071号

https://www.moj.go.jp/shoumu/shoumukouhou/shoumu01_00023.html

判示事項

1 不動産登記の表題部及び権利部甲区欄に所有者が明記されていない土地の登記簿上の地上権者が、国が元所有者であることを前提に、当該土地の地上権はいわゆる永代借地権であり、昭和17年に勅令によって所有権に転換した等として、国に対し当該土地の所有権を有することの確認を求める訴えにつき、国が、当該土地について、所有権等の法律上の利益の存在を主張しておらず、また、当該土地のかつての所有者であったとも認められないなどの事情の下では、確認の利益を欠くとされた事例

2 国を被告とする土地の所有権確認訴訟につき、国が、当該土地について、所有権等の法律上の利益の存在を主張しておらず、また、当該土地のかつての所有者であったとも認められない場合における当該訴訟の勝訴判決は、不動産登記法74条1項2号の確定判決には該当しないとされた事例

横浜地裁平成30年(行ウ)第69号 令和1年12月11日判決所有権保存登記申請却下処分取消請求事件

https://shoumudatabasep.moj.go.jp/hanreiSearch/HanreiSearchRusult?storage_valid_flg=true

行政事件 訟務月報第六六巻四号 四四六ページ

1 不動産登記法74条1項2号の「確定判決」の意義

2 不動産登記法74条1項2号の「確定判決」該当性の登記官の審査権限

帝国ノ臣民又ハ法人ニ於テ外国人又ハ外国法人ノ為ニ永久存続ノ意思ヲ以テ設定シタル地上権又ハ賃借権ヲ取得シタル場合ニ関スル件・御署名原本・明治三十二年・勅令第三百三十三号

https://www.digital.archives.go.jp/DAS/meta/Detail_F0000000000000018177

【特集】司法書士の可能性を探る(上)

[1]司法書士の可能性をめぐって

   大阪大学教授 仁木恒夫

 事務所経営。

[2]社会問題と司法書士

   甲南大学教授 早瀬勝明

 法令の趣旨まで考える。手続完了まで可能か。

[3]家族問題と司法書士

   新潟大学教授 田巻帝子

 成年後見制度。相続。

[4]消費者問題と司法書士

   中央大学教授 宮下修一

 簡易裁判所の管轄事件における司法書士関与率の減少。

[5]障害者支援と司法書士

   同朋大学教授 汲田千賀子

 司法書士と地域包括支援センターが関わるケース。

[6]若年者支援と司法書士

   関西学院大学准教授 橋場典子

 成年年齢引下げと消費者教育。

[7]被災者支援と司法書士

   専修大学教授 飯 考行

日本司法書士会連合会 災害対策

https://www.shiho-shoshi.or.jp/activity/rescue_fund

[8]生活困窮者支援と司法書士

   上智大学准教授 鏑木奈津子

 生活困窮者自立支援制度。

[9]外国人支援と司法書士

   埼玉県立大学准教授 保科寧子

 保科寧子「支援に困難を感じる外国人の相談援助事例からみた生活課題調査」2020年4月

https://researchmap.jp/hoshina-yasuko/published_papers/31543384

対談

 生成の司法の世界に対するインパクト

 アンティーユ大学教授 サミール・メラベ

 日本司法書士会連合会会長・司法書士 小澤吉徳

 立教大学教授 幡野弘樹〔訳〕

2024 年 6 月 7 日更新 フランス法務省 Data Just

https://www.justice.fr/donnees-personnelles/datajust

相続・今昔ものがたり(45)――事例で読み解く相続実務――

 法制史学会会員・司法書士 末光祐一

〔付録〕相続の欠格(その1)

事例44-5 家督相続(被相続人A男(沖縄県に本籍、住所を有する者))(沖縄)

論点・争点

 司法書士は民事信託契約書の作成業務ができるのか(1)

 司法書士 渋谷陽一郎

 新たな権利義務を発生させる案件、という記載がある裁判例の紹介。

すぐに使える! 資産税の豆知識51

 家族信託の事務から不動産譲渡の事務まで  税理士 福壽一雄

 税理士による信託契約書作成。信託不動産を売却する場合の譲渡取得税の計算について。

家族信託の相談会その70

お気軽にどうぞ。

2024年11月29日(金)14時~17時

□ 認知症や急な病気への備え
□ 次世代へ確実に引き継ぎたいものを持っている。
□ 家族・親族がお金や土地の話で仲悪くなるのは嫌。
□ 収益不動産オーナーの経営者としての信託 
□ ファミリー企業の事業の承継
その他:
・共有不動産の管理一本化・予防
・配偶者なき後、障害を持つ子の親なき後への備え

1組様 5,500円

場所

司法書士宮城事務所(西原町)

要予約

司法書士宮城事務所 shi_sunao@salsa.ocn.ne.jp

後援  (株)ラジオ沖縄

登記研究921号令和6年11月号

登記研究921号(令和6年11月号)、テイハン

https://www.teihan.co.jp/search/g17615.html

【論説・解説】

■民法等の一部を改正する法律の施行に伴う不動産登記事務の取扱いについて(登記事項証明書等における代替措置関係)(2)第2 関係法令と施行通達の解説

法務省民事局付 森 下 宏 輝

法務省民事局民事第二課補佐官 河 瀬 貴 之

法務省民事局民事第二課補佐官 太 田 裕 介

不動産登記規則

https://laws.e-gov.go.jp/law/417M60000010018#Mp-Ch_5-Se_2-Ss_4

(代替措置等申出)

第二百二条の四 1項から5項まで略。

6代替措置等申出書には、次に掲げる書面を添付しなければならない。

一申出人が代替措置等申出書又は委任状に記名押印した場合におけるその印鑑に関する証明書(住所地の市町村長(特別区の区長を含むものとし、地方自治法第二百五十二条の十九第一項の指定都市にあっては、市長又は区長若しくは総合区長とする。)が作成するものに限る。)その他の申出人となるべき者が申出をしていることを証する書面

二申出人の氏名又は住所が法第百十九条第六項の登記記録に記録されている者の氏名又は住所と異なる場合にあっては、当該者であることを証する市町村長その他の公務員が職務上作成した書面(公務員が職務上作成した書面がない場合にあっては、これに代わるべき書面)

三代理人によって代替措置等申出をするときは、当該代理人の権限を証する書面

7前項第一号の規定は、申出人が同号の書面(印鑑に関する証明書を除く。)を登記官に提示した場合には、適用しない。この場合において、登記官から求めがあったときは、当該書面又はその写しを登記官に提出しなければならない。

8第三十七条及び第三十七条の二の規定は、代替措置等申出をする場合について準用する。

9第五十三条の規定は、申出人が代替措置等申出書及びその代替措置等申出添付書面を送付する場合について準用する。

 印鑑証明書を提出する場合、作成期限はない。・・・申出人の置かれている状況により、最新の印鑑証明書を取得することができない事情などが考えられるから。

 代理によって申出を行う場合の委任状の記載条項例(私見)・・・代替措置等申出に関する一切の件。代替措置等の申出に不備がある場合に、当該代替措置等の申出を取下げ、又は補正すること。原本還付請求受領に関する一切の件

 登記されている氏名、住所に変更があった場合、前提としての氏名、住所変更登記申請は不要。現在の氏名、住所とつながりを証する情報の提供は必要。

 登記申請の添付書類を、代替措置等申出の添付書面として援用することは出来ない。→同じ書類が必要なときは、2通準備。

(立件)

第二百二条の五登記官は、代替措置等申出書が提出されたときは、これを立件しなければならない。

2前項の場合には、登記官は、申出立件事件簿に立件の年月日及び立件番号を記録しなければならない。

3登記官は、第一項の規定により立件をする際、代替措置等申出書に立件の年月日及び立件番号を記載しなければならない。

 色々な人から登記事項証明書などの請求がある度、登記事項証明書を公示用住所に書き換えて作成するという継続的な職権発動を伴うので、登記申請における受付ではなく、立件という言葉が用いられる。

(調査)

第二百二条の六登記官は、代替措置等申出があったときは、遅滞なく、申出に関する全ての事項を調査しなければならない。

2登記官は、前項の場合において、必要があると認めるときは、申出人又はその代理人に対し、出頭を求め、質問をし、又は文書の提示その他必要な情報の提供を求める方法により、申出人となるべき者が申出をしているかどうか又は法第百十九条第六項に規定する場合に該当する事実の有無を調査することができる。

3登記官は、前項に規定する申出人又は代理人が遠隔の地に居住しているとき、その他相当と認めるときは、他の登記所の登記官に同項の調査を嘱託することができる。

4登記官は、第二項の規定による調査をしたときは、その調査の結果を記録した調書を作成しなければならない。前項の嘱託を受けて調査をした場合についても、同様とする。

5前項後段の場合には、嘱託を受けて調査をした登記所の登記官は、その調査の結果を記録した調書を嘱託をした登記官に送付しなければならない。

 調査は原則として申出人に対して行い、代理人のみを出頭させて調査の対象とすることはない。

■商業登記倶楽部の実務相談室から見た商業・法人登記実務上の諸問題(第126回)247 一般社団法人の解散と基金の返還について

一般社団法人商業登記倶楽部 名誉主宰者兼最高顧問、公益社団法人成年後見センター・リーガルサポート理事、日本司法書士会連合会顧問、神 﨑 満治郎

一般社団法人及び一般財団法人に関する法律 第四章 清算 第四節 債務の弁済等(基金の返還の制限)第二百三十六条基金の返還に係る債務の弁済は、その余の清算一般社団法人の債務の弁済がされた後でなければ、することができない。は、清算一般社団法人に関する定めであり、第二章 一般社団法 第五節 基金第二款の基金の返還(基金の返還)第百四十一条、(代替基金)第百四十四条の適用はない。参考、熊谷 則一『【第2版】逐条解説一般社団・財団法人法』2021、全国公益法人協会、P466からP476

■Q&A不動産表示登記(97)

(一社)テミス総合支援センター理事、都城市代表監査委員 新 井 克 美

第四章 建物(区分建物) 第一節 登記事項

 Q268 規約の設定はどのようにするのか。

建物の区分所有等に関する法律

https://laws.e-gov.go.jp/law/337AC0000000069#Mp-Ch_1-Se_1

(区分所有者の団体)第三条 区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成し、この法律の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる。一部の区分所有者のみの共用に供されるべきことが明らかな共用部分(以下「一部共用部分」という。)をそれらの区分所有者が管理するときも、同様とする。

(書面又は電磁的方法による決議)

第四十五条 この法律又は規約により集会において決議をすべき場合において、区分所有者全員の承諾があるときは、書面又は電磁的方法による決議をすることができる。ただし、電磁的方法による決議に係る区分所有者の承諾については、法務省令で定めるところによらなければならない。

2この法律又は規約により集会において決議すべきものとされた事項については、区分所有者全員の書面又は電磁的方法による合意があつたときは、書面又は電磁的方法による決議があつたものとみなす。

3この法律又は規約により集会において決議すべきものとされた事項についての書面又は電磁的方法による決議は、集会の決議と同一の効力を有する。

4第三十三条の規定は、書面又は電磁的方法による決議に係る書面並びに第一項及び第二項の電磁的方法が行われる場合に当該電磁的方法により作成される電磁的記録について準用する。

5集会に関する規定は、書面又は電磁的方法による決議について準用する。

■逐条解説不動産登記規則(50)

元法務省民事局民事第二課地図企画官 小宮山 秀 史

第99条 地 目

第九十九条 地目は、土地の主な用途により、田、畑、宅地、学校用地、鉄道用地、塩田、鉱泉地、池沼、山林、牧場、原野、墓地、境内地、運河用地、水道用地、用悪水路、ため池、堤、井溝、保安林、公衆用道路、公園及び雑種地に区分して定めるものとする。

 地積は量的、地目は質的な特定の要素。

 田と畑の違い・・・工作に当たり用水を利用するかどうか。

 宅地については不動産登記事務取扱手続準則69条。

 用悪水路・・・用水路のうち、かんがい用・使用後の水をはいせつするための水路(不動産登記事務取扱手続準則68条16号)。

 公衆用道路・・・一般人が通行するために使われている土地(不動産登記事務取扱手続準則68条21号、登記研究177号P44、昭和37年6月20日民事甲第1605号民事局長回答「公衆用道路(個人所有)の地目の定め方について)

 農地について、登記研究405号P63、昭和56年8月28日法務省民三第5402号民事局長通達「登記簿上の地目が農地である土地について農地以外の地目への地目の変更の登記申請があつた場合の取扱いについて」、登記研究 429号P120、1983年9月30日質疑応答六三〇四「地目変更の時期について」、登記研究352号P104、1977年3月20日質疑応答五三四六「中間地目変更登記の可否について」

■商業登記の変遷(67)

司法書士 鈴 木 龍 介(司法書士法人鈴木事務所)

第9章 商業登記に関する文献等の歩み

 第1節 文 献

  4.先例集

  5.実務書

信山社『商業登記法釋義(電子書籍)日本立法資料全集別巻1327』2022

https://www.shinzansha.co.jp/book/b10083969.html?srsltid=AfmBOoorOxOrsLf5sygbHa8VA32D2x95ylJWr4SWy40HxvN1Id7qfL2t

■民事信託の登記の諸問題(38)

渋 谷 陽一郎

第260 信託監督人の表示は一般的な登記事項となり得るのか

 不動産登記法97条1項11号により、却下事由には該当しないと考えます。ただし、本記事は、信託監督人の表示を一般的な登記事項として、信託目録に積極的に登記できるか、という意味なのかもしれません。

第261 何が望ましい信託監督人の登記の表示なのか

 信託監督人、住所等、氏名・名称が特定という意味で望ましいと考えます。信託監督人になるべきものと指定された者、と登記することも可能だと考えます。根拠は信託法131条です。

 どちらの表示でも、取引に入ろうとする第三者は、信託契約書、変更があれば変更を証する情報による権利義務の確認と、信託監督人本人の本人確認、意思確認を行うことになると考えます。信託監督人と登記されていても、登記されている者は自身が信託監督人とされていることを知らない可能性があります。

第262 士業者の表記は可能なのか

 士業者の肩書については、登記できないという理由はないと考えます。法人が信託監督人になる場合、株式会社、一般社団法人等を登記することはできない理由がないのと同じ理由となります。士業者が強制加入団体に加入していることは、登記事項と関係ないのではないかと考えます。なお省略は信託監督人の意思により自由だと考えます。

第263 信託監督人の就任承諾前に登記できるのか

 就任承諾前に関しては、信託法131条の文言通り、信託監督人となるべき者、という表示になると考えます。

第264 受託者の処分行為に対する同意権者としての信託監督人の表示

第265 信託監督人の権限伸長の可否

 信託監督人の権限の伸長・拡大について、消極論も信託法132条1項の条文上、あり得ると考えます。実務が信託監督人の権限の伸長・拡大で今後も動いていき、信託不動産の取引に支障をきたすようなことがない場合、積極論に固まる方向になるのではないかと考えます。

【資 料】

■会社法施行下で使える登記先例──実務の便覧──(14)

第2章 株式会社の登記

 第12節 代表取締役 

1 選 定

登記研究221号P46、昭和41年1月20日民事甲第271号民事局長回答 「代表取締役の選住について」

登記研究529号P31、1992年2月29日発行 吉戒 修一:法務省民事局第四課長、門野坂 修一:法務省民事局付、渡部 房男:法務省民事局第四課補佐官、門田 稔永:佐賀地方法務局総務課長(前法務省民事局第四課補佐官)、片岡 貞敏:法務省民事局第四課係長、吉越 満男:法務省民事局第四課係長、植田 和男:法務 【論説・解説】「株式会社に関する先例をめぐって(40)」・・・取締役の予選も論点。予選をせざるを得ない事情も必要。

登記研究416号P133、1982年8月30日質疑応答【六一一九】「代表取締役の重任の日について」

 権利義務代表取締役の規定(会社法351条)は適用されるが、前提としての取締役の任期満了退任日は、原則として代表取締役の退任日。

  2 辞 任

登記研究808号P111、平成27年2月20日法務省民商第18号法務省民事局長通達「商業登記規則等の一部を改正する省令の施行に伴う商業・法人登記事務の取扱いについて」

登記研究809号P59、佐藤 真紀子:法務省民事局民事第一課総括係長(前法務省民事局商事課商業法人登記第一係長)【論説・解説】「平成27年改正商業登記規則等に基づく商業・法人登記事務の取扱いについて」

 辞任の登記の前提として、住所の変更登記が必要な場合。

  3 権利義務

登記研究91号P30、昭和30年4月26日民事甲第673号民事局長回答 九二八「商業登記事務の取扱について」

 取締役としての権利義務を有する場合と代表取締役としての権利義務を有する場合は一致しない。

登記研究 204号 46頁  昭和39年10月3日 民事甲第3197号 民事局長回答 ◎三〇四八 代表取締役の変更の登記について

 代表取締役としての権利義務を有する者が代表取締役を退任日とその原因について。

登記研究503号P189、平成元年9月5日法務省民四第3520号民事局長回答「代表取締役の変更登記申請の受否について」

 代表取締役としての権利義務を有する者の解任の可否。

  4 死 亡

登記研究182号P157、昭和37年6月28日民事甲第1650号民事局長一部変更指示◇登記官吏会同決議福島地方法務局本局直轄管内及び支局管内事務協議会決議

登記研究646号P117、2001年11月30日【商業登記の栞】(8・有限会社の代表取締役)

 特例有限会社の定款の定めによる代表取締役が死亡した場合の変更の登記の申請は、後任の代表取締役から申請。

 

 5 代表取締役の住所

登記研究808号P142、平成27年3月16日法務省民商第29号法務省民事局商事課長通知「内国株式会社の代表取締役の全員が日本に住所を有しない場合の登記の申請の取扱いについて【解説付】」

 代表取締役の全員が日本に住所を有しない場合の登記申請の受理の可否。

登記研究329号P67、1975年4月20日第六部質疑・応答五一五二「重任する代表取締役の住所が登記簿の記載と抵触する場合の登記の受否」

  6 印鑑証明書の添付省略

登記研究609号P166、平成10年2月10日法務省民四第270号民事局第四課長通知「代表取締役の変更の登記の申請書に添付すべき印鑑証明書の添付の省略が認められる場合について〔解説付〕」

登記研究270号P72、1970年5月20日第五部質疑・応答四八二五「同時になされた代表取締役の改印届と当該代表取締役の重任による変更の登記申請書の印鑑について」

登記研究241号P68、1967年12月20日第五部質疑・応答四五〇四「印鑑証明書の添付について」

 取締役会設置会社の株式会社で、代表取締役の就任による変更登記の申請書に添付されている取締役会議事録の印鑑と登記申請時に提出されている印鑑が同一の場合、就任する代表取締役個人の印鑑証明書の省略の可否。

【訓令・通達・回答】

▽不動産登記関係

〔6248〕民法等の一部を改正する法律の施行に伴う不動産登記事務の取扱いについて(所有権の登記の登記事項の追加関係)(令和6年3月22日付け法務省民二第551号法務局長、地方法務局長宛て法務省民事局長通達)

▽供託関係

〔6249〕出入国管理及び難民認定法第37条の2第2項の規定による領置物件等の公売に係る代金の供託に関する手続について(令和6年6月10日付け法務省民商第108号法務局長、地方法務局長宛て法務省民事局商事課長依命通知)

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