信託フォーラム 2025年4月号 特集1 子どもの養育と信託/特集2 FATFに見る日本の信託の現状と課題 vol.23、日本加除出版
巻頭言 人生の集大成を未来へつなぐ~遺贈寄付と信託の可能性~
(一般社団法人全国レガシーギフト協会代表理事(共同代表)・弁護士●樽本 哲)
一般社団法人全国レガシーギフト協会
信託契約を締結し、遺贈寄付を行う方法もある。
対 談 公益活動のこれからと公益信託の役割
( 公益財団法人公益法人協会理事長●雨宮孝子× 中央大学研究開発機構教授●新井 誠)
2024年3月末の公益信託件数は、384件。
今井記念海外協力基金
信託宣言による公益信託を認めなかったことについて、アメリカではコミュニティ財団の設立はほとんどが信託宣言。
事業型よりも、地方自治体がお金を出すまちづくり公益信託が望ましい。
特集1 子どもの養育と信託
養育費不払い問題と令和6年民法等改正(早稲田大学名誉教授●棚村政行)
法務省「養育費不払い解消に向けた検討会議」
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00101.html
民法306条1項3号、308条の2、766条の3、879条。民事執行法167条の17,197条。
養育費債権信託の可能性と課題(東北大学大学院法学研究科准教授●今津綾子)
民法766条1項。
今津綾子「養育費の支払確保における信託の活用可能性」トラスト未来フォーラム、2023年
https://trust-mf.or.jp/books.html
養育を受ける側の親が委託者、第三者を受託者とする信託の検討。信託財産たる財産は養育費を請求する権利。第三者を受託者とする場合、訴訟信託の禁止(信託法10条)に抵触しないのかは、信託行為前の状況、信託行為を個別具体的・総合的に判断。
合衆国における養育費信託─ 子のための信託(早稲田大学教授●三枝健治)
裁判所の決定により養育信託が設定されることもある。養育費を支払う側に、資力の変動がある(プロスポーツ選手、離婚時に不動産を売却処分など)場合など。中立的な受託者として、信託会社、銀行、法律事務所、会計事務所など。
養育費の一括払いを確保するための信託の利用に関する一考察(弁護士●今里恵子)
英国や米国では、信託を利用して養育費の一括払いをすることは一般的な選択肢の一つ。
贈与税の対象とならない基準。教育資金贈与信託との比較。自益信託の検討。
未成年後見業務における信託利用の可能性(公益社団法人成年後見センター・リーガルサポート常任理事●久保隆明)
未成年後見業務終了後の選択肢。受託者を親族とする信託契約。信託監督人に司法書士。受益者が死亡した場合の残余財産は教育支援を行う団体へ寄附。
特集2 FATFに見る日本の信託の現状と課題
FATF第4次対日相互審査報告書における法的取極の透明性(勧告25)に関する指摘について(有限責任 あずさ監査法人●尾崎 寛・白田侑希)
金融庁 金融活動作業部会(FATF)
https://www.fsa.go.jp/inter/fatf/fatf_menu.html
FATFの勧告
https://www.fatf-gafi.org/en/publications/Fatfrecommendations/Fatf-recommendations.html
金融庁 「FATF(金融活動作業部会)による第4次対日相互審査報告書の公表について」令和3年8月30日、令和5年1月4日更新
https://www.fsa.go.jp/inter/etc/20210830/20210830.html
士業者が同一当事者から継続的に受任する場合を除いて、信託の設定のみでは、継続的な取引関係とはいえない。
金融庁「犯罪収益移転防止法に関する留意事項について」の一部改訂(案)の公表について、令和5年12月15日
https://www.fsa.go.jp/news/r5/sonota/20231215-3/20231215.html
商事信託における「実質的支配者」と悪用防止策(西村あさひ法律事務所・外国法共同事業 弁護士●有吉尚哉・五十嵐チカ)
金融庁、令和7年1月22日、金融審議会「資金決済制度等に関するワーキング・グループ」報告書
https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/tosin/20250122.html
P18、Ⅲ-4 特定信託受益権(3号電子決済手段)におけるトラベルルールの適用
民事信託におけるマネロン等対策の展望(弁護士●吉森大輔)
今後求められる対応
・依頼者の本人確認。
・受託者に情報が集まる仕組み作りと、受託者に継続的関与が可能になるような体制作り。
・最終的に利益が流れている者は誰なのか、のチェック。
外国信託とFATFへの対応─ 我が国の現状と最新のFATFガイダンスを踏まえた今後の展望(アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 弁護士●山田智希)
外国信託・・・準拠法が日本の信託法によらない信託。
家族信託への招待 第23回家族信託の陥穽(その2)―受益者による具体的な給付請求はできないとする東京高裁令和6年2月8日判決―(弁護士●遠藤英嗣)
2017年(平成29年)6月15日 信託契約締結。受託者は委託者の子、受益者は委託者と受託者の姉。後継受益者・残余財産の帰属権利者は委託者の孫(受託者の子)。信託期間は委託者と受託者の姉が亡くなるまで。
2017年(平成29年)10月26日 委託者死亡。
受託者の姉の受益権の争い。裁判所の判断は、信託行為の条項通り受託者の広範な裁量を認める。
・当初受益者である受託者の姉の受益権を、委託者兼受益者の死亡に関わらない内容にすること。
P120、筆者が奨励する解決策は、信託法58条4項に基づく不誠実な受託者の解任請求である。について・・・最善なのか、信託行為の受託者の任務終了事由の定めを含めて、個別具体的に判断が必要だと考えます。
信託と税金 no.23(税理士●菅野真美)
当初受益者、第二次受益者死亡時における小規模宅地の特例適用の有無。租税特別措置法施行令40条の2第27項、相続税法9条の2第4項、第6項。委託者変更登記の要否。登記研究833号P171、2017年7月30日発行 【カウンター相談】(250)「信託目録の委託者の変更の登記について」。
民事信託と登記 第14回(渋谷陽一郎)
令和6年1月10日民二第17号法務省民事局民事二課長通知。利益相反行であると判定する時の基準点。信託法31条2項1号の定めを信託目録に記録。
ここからはじめる! 民事信託実務入門 第8回(弁護士●金森健一)
信託行為における清算受託者の指定。委託者兼受益者に成年後見人が就任した場合の成年後見人の権限と制約。
■信託のひろば
公益信託成年後見助成基金と未成年後見人の報酬助成について( 公益社団法人成年後見センター・リーガルサポート常任理事●野村真美)
信託目的に、未成年後見制度の利用に関する費用の助成、を追加する検討。
韓国における不動産登記法改正の動向─ 信託財産に属する不動産の取引に関する「注意事項の附記登記」を中心として(司法書士●長谷川清)
信託登記事務処理に関する例規一部改正予規案行政予告
・・・不動産登記法97条1項11号のその他の信託の条項に類似。
■論説 韓国における信託法制の動向と実務の動き( 全南大学校法学専門大学院教授●安成飽)
不動産登記における信託原簿に記録することにより、第三者対抗要件が認められると最高裁判所が認めた条項
・信託終了時に、信託財産に付随する債務は受益者が弁済しなければならないとする条項。
・信託契約の終了または解除後に、商業施設供給契約から発生する債務を受益者が負担するという条項。
・信託不動産の賃貸により発生した賃借人に対する賃貸保証金返還義務が、信託終了時に委託者に帰属するという条項。
・商業施設である信託不動産に関する管理費を、委託者が負担するという条項。
遺言代用信託の制度有り。
信託法8条の適用可能性と意義─ 民事信託との関係において(弁護士●今福 聡)
信託法
https://laws.e-gov.go.jp/law/418AC0000000108
(受託者の利益享受の禁止)
第八条 受託者は、受益者として信託の利益を享受する場合を除き、何人の名義をもってするかを問わず、信託の利益を享受することができない。
総則に規定されている意義、適用対象。
中原太郎「人の死亡を契機とする財産承継を実現する信託と財産管理―特に公平義務・利益相反等について」令和6年9月、(公社)トラスト未来フォーラム
P54、注98 民事信託・家族信託においても、前掲東京地判平成30 年9月12 日を素材として、信託法8条(受託者の利益享受の禁止)による信託の無効について論じる学説が見られる(当該事案において、受益者への経済的利益の分配を減じる目的で、受託者による信託財産の無償使用が認められていることを問題視する。佐久間・前掲注(38)134-135頁、福井・前掲注(16)139-140 頁、山下・前掲注(9)91-92 頁)。信託実務家からも、「受託者主導型の民事信託は、信託組成の際、委託者兼受益者である高齢者の意思能力や信託意思の欠缺や信託内容の不理解が生じている可能性があ」るものであって、「専らその者〔受託者〕の利益を図る目的で作ることが多いと思われ」、「このような事例が増えないことが強く望まれ」るとの指摘がされている(八谷・前掲注(14)21 頁)。
東京地判平成30年9月12日金法2104号78頁と信託法8条。
・受託者が信託不動産を無償利用することを希望したか。
・遺留分減殺請求を回避した結果として受託者が得た利益は、信託法8条の利益といえるのか。
信託法8条の適用が問題となり得る典型事例の検討
・受託者が信託の利益を享受しているか。
・受託者に利益享受させる目的が存在したといえるか。
東京地判平成30年10月23日金法2122号85頁と信託法8条。
・裁判例における信託契約の終了事由は、細かく事実認定していかない限り、受託者が利益享受する目的があると考えることは難しい。
沖縄弁護士会信託PTとの意見交換。
■ガバナンスの潮流 コーポレートガバナンスの潮流と展望(弁護士●太田 洋)
今後、会社法改正などを通して監督可能な取締役会による経営陣への規律付けの実効性を高めることが重要になってくる。
■信託事例紹介
海外居住の外国人が受託者となる民事信託について(司法書士・行政書士・民事信託士●山北悠介)
委託者 台湾国籍、日本在住
受託者 台湾国籍、台湾在住の委託者の姉
受益者 当初受益者は委託者。第二次受益者は受託者、第三次受益者は受託者の子。
不倒産登記 国内連絡先、登記名義人のローマ字氏名。
信託管理口座・・・信託財産の事務処理に係る費用は、委託者が支払う。その求償権について受託者の委託者に対する前払請求権と相殺することで、受託者が直接金銭を管理する必要がないようにした。
・・・受託者が、相殺の意思表示を定期的に行う(民法506条)?
相続の準拠法・・・台湾法
法の適用に関する通則法
https://laws.e-gov.go.jp/law/418AC0000000078/#Mp-Ch_3-Se_6
(相続)第三十六条 相続は、被相続人の本国法による。
台湾渉外民事法律適用法
第五十八條
繼承,依被繼承人死亡時之本國法。但依中華民國法律中華民國國民應
為繼承人者,得就其在中華民國之遺產繼承之。
遺言の準拠法・・・台湾の民法。
法の適用に関する通則法
(遺言)第三十七条 遺言の成立及び効力は、その成立の当時における遺言者の本国法による。
2 遺言の取消しは、その当時における遺言者の本国法による。
台湾渉外民事法律適用法
第六十條
遺囑之成立及效力,依成立時遺囑人之本國法。
遺囑之撤回,依撤回時遺囑人之本國法。
国税庁タックスアンサー No.4432 受贈者が外国に居住しているとき
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4432.htm
信託の準拠法・・・日本の信託法。信託契約書にも記載。
法の適用に関する通則法
(当事者による準拠法の選択がない場合)第八条 前条の規定による選択がないときは、法律行為の成立及び効力は、当該法律行為の当時において当該法律行為に最も密接な関係がある地の法による。
2項、3項略。