デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律案

 第204回通常国会に、2月9日、デジタル社会形成基本法案、デジタル庁設置法案、デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律案が提出されました。

https://www.cas.go.jp/jp/houan/204.html?fbclid=IwAR22CqmxpBk4PLkN9hr19COy0OFUk5XixMc6nIUYy29PwWinCsFrbLGMhAc

 今回は、デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律案について考えてみたいと思います。

概要

・個人情報の保護に関する法律を3法を1本の法律に統合し、地方公共団体を含めた全体の所管を、個人情報保護委員会に一元化。施行日:公布から1年以内→今年の国会で成立すれば、来年から実施。

・マイナンバーカードについて、郵便局での発行・更新、スマートフォンでの管理、引っ越しの際の転入届に活用。施行日:郵便局は成立日、その他は成立から2年以内に実施。

・押印・書面の交付等を求める手続を見直す(押印を廃止、または署名のみ、署名か電子証明書に変更)ための48法律の改正。施行日:令和3年9月1日(施行までに一定の準備期間が必要なものを除く。)→施行日しか記載していないということは、成立することが前提となっている?

 

・案文・理由から気になる項目を拾っていきます。

(民法の一部改正)

第一条民法(明治二十九年法律第八十九号)の一部を次のように改正する。

第四百八十六条の見出し中「交付請求」を「交付請求等」に改め、同条に次の一項を加える。

2弁済をする者は、前項の受取証書の交付に代えて、その内容を記録した電磁的記録の提供を請求することができる。ただし、弁済を受領する者に不相当な負担を課するものであるときは、この限りでない。

第九百八十四条に後段として次のように加える。

この場合においては、第九百六十九条第四号又は第九百七十条第一項第四号の規定にかかわらず、遺言者及び証人は、第九百六十九条第四号又は第九百七十条第一項第四号の印を押すことを要しない。

 

 例えば、支払った人がパソコンやプリンタを持っていたら、領収書をデータ(必要によって電子署名を付けたもの)で送ってもよい、ということだと思われます。外国にいる日本人が領事館で公正証書遺言や秘密証書遺言を作成する場合は、押印が不要になる。領事が立ち会っていること、外国にいることで印鑑証明書などの準備が難しいので、署名のみで足りる、という判断だと考えられます。

(戸籍法の一部改正)

第七条戸籍法(昭和二十二年法律第二百二十四号)の一部を次のように改正する。

第二十九条中「左の」を「次の」に、「署名し、印をおさなければ」を「署名しなければ」に改める。

第三十三条中「署名し、印をおさなければ」を「署名しなければ」に改める。

第三十七条第二項中「且つ」を「かつ」に、「署名させ、印をおさせなければ」を「署名させなければ」に改め、同条第三項ただし書中「但し」を「ただし」に、「乃至第七十二条」を「から第七十二条まで」に改める。

第三十八条第一項中「添附しなければ」を「添付しなければ」に改め、同項ただし書中「但し」を「ただし」に、「附記させて、署名させ、印をおさせる」を「付記させて、署名させる」に改め、同条第二項中「添附しなければ」を「添付しなければ」に改める。

第五十五条第一項中「署名し、印をおさなければ」を「署名しなければ」に改め、同条第二項及び第三項中「著いた」を「到着した」に改める。

 戸籍請求などについての押印廃止です。ただ、以前から押印がなくても発行されていたので、法令の整備に留まるという印象です。

(宅地建物取引業法の一部改正)

第十七条宅地建物取引業法(昭和二十七年法律第百七十六号)の一部を次のように改正する。

第三十四条の二に次の二項を加える。

11宅地建物取引業者は、第一項の書面の交付に代えて、政令で定めるところにより、依頼者の承諾を得て、当該書面に記載すべき事項を電磁的方法(電子情

報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法をいう。以下同じ。)であつて同項の規定による記名押印に代わる措置を講ずるものとして国土交通省令で定めるものにより提供することができる。この場合において、当該宅地建物取引業者は、当該書面に記名押印し、これを交付したものとみなす。

 

12宅地建物取引業者は、第六項の規定による書面の引渡しに代えて、政令で定めるところにより、依頼者の承諾を得て、当該書面において証されるべき事項を電磁的方法であつて国土交通省令で定めるものにより提供することができる。この場合において、当該宅地建物取引業者は、当該書面を引き渡したものとみなす。

 宅地又は建物の売買又は交換の媒介の契約書について、依頼者(買主、売主、貸主、借主など)の承諾を得た場合は、書面ではなく契約データに電子署名を付けて渡すことが出来る。

 宅地建物取引業者は、依頼者(買主、売主、貸主、借主など)の承諾を得た場合は、宅地建物取引士の登録を証する書面の代わりにデータを渡すことが出来る。その他の自らが売主、買主となる契約などについて同じ。

(住民基本台帳法の一部改正)

第二十七条 住民基本台帳法(昭和四十二年法律第八十一号)の一部を次のように改正する。

第二十四条の二第五項中「前二項」を「第三項の規定による通知は、総務省令で定めるところにより、第一項又は第二項の規定による転出届を受けた市町村長の使用に係る電子計算機から電気通信回線を通じて相手方である転入予定地市町村長の使用に係る電子計算機に送信することによつて、前二項」に、「行う」を「、それぞれ行う」に改め、同項を同条第七項とし、同条第四項中「政令で定める」を「第三項に規定する」に改め、同項を同条第六項とし、同条第三項中「最初の転入届又は最初の世帯員に関する転入届」を「最初の転入届等」に、「は、その旨を当該最初の転入届に係る転出届又は当該最初の世帯員に関する転入届」を「が第三項の規定による通知を受けていない場合又は同項の規定により通知された事項を前項の規定により消去している場合には、当該転入地市町村長は、最初の転入届等を受けた旨を当該最初の転入届等」に改め、同項を同条第五項とし、同条第二項の次に次の二項を加える。

3 前二項の規定による転出届を受けた市町村長は、政令で定める事項を前条の規定により届け出られた転出先に係る市町村の長(以下この条において「転入予定地市町村長」という。)に通知しなければならない。

4 転入予定地市町村長は、第一項又は第二項の規定による転出届をした者が当該転入予定地市町村長に最初の転入届又は最初の世帯員に関する転入届(次項において「最初の転入届等」という。)をすることなく、前項の規定による通知があつた日から政令で定める期間が経過したときは、同項の規定により通知された事項を消去しなければならない。

 マイナンバーカードを持っている人(世帯主など)が市区町村役場に転出届を提出した場合、引っ越し先の住所の市区町村役場に対して、通知する。転入届時に、住所氏名や世帯員など、記入する項目が少なくなる、ということだと思われます。

(借地借家法の一部改正)

第三十五条借地借家法(平成三年法律第九十号)の一部を次のように改正する。

第二十二条に次の一項を加える。

2前項前段の特約がその内容を記録した電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。第三十八条第二項及び第三十九条第三項において同じ。)によってされたときは、その特約は、書面によってされたものとみなして、前項後段の規定を適用する。

第三十八条中第七項を第九項とし、第四項から第六項までを二項ずつ繰り下げ、同条第三項中「前項を「第三項」に改め、同項を同条第五項とし、同条第二項中「前項」を「第一項」に改め、同項を同条第三項とし、同項の次に次の一項を加える。

4 建物の賃貸人は、前項の規定による書面の交付に代えて、政令で定めるところにより、建物の賃借人の承諾を得て、当該書面に記載すべき事項を電磁的方法(電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であって法務省令で定めるものをいう。)により提供することができる。

この場合において、当該建物の賃貸人は、当該書面を交付したものとみなす。

第三十八条第一項の次に次の一項を加える。

2前項の規定による建物の賃貸借の契約がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは、その契約は、書面によってされたものとみなして、同項の規定を適用する。

第三十九条に次の一項を加える。

3第一項の特約がその内容及び前項に規定する事由を記録した電磁的記録によってされたときは、その特約は、同項の書面によってされたものとみなして、同項の規定を適用する。

 定期借地契約、定期建物賃貸借契約を締結する際の事前書面、取壊し予定の建物の賃貸借契約について、書面ではなくデータによって契約を締結することが出来る。

押印・書面の見直しに係る法改正事項について

https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/meeting/wg/seicho/20210212/210212seicho06.pdf

民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)の改正等に関する要綱案

     令和3年(2021年)2月2日、民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)の改正等に関する要綱案が発出されました。おそらくこの後、要綱案に関する補足説明が発出されるのではないかと思います。要綱案を基に考えてみます。

 

・民法等の見直し

相隣関係

209条 隣の土地を使用する目的が具体的になっています。

233条 根に関する記載が削除されるようです。竹林と土地の所有者が違う場合、竹林が共有である場合の対処方法が明確に定められることになりそうです。

継続的給付を受けるための設備設置権及び設備使用権の創設・・・水道管などライフラインが他の土地を通って設置されている場合は、修繕・新たに設置することが出来ることが、民法上の権利となります。

共有等

共有物に関して、使用している人としていない人との対価に関する定めと使用していない人も含めた共有者の使用に対する善管注意義務の創設。(民法249条)

共有物の変更・管理についての裁判の創設(連絡が取れない人がいる場合)。(民法251条)

民法252条 共有者のうち、連絡が取れない人がいる場合は、その人を外して共有物の管理を行うことが出きることの明記。共有者が短期賃貸借契約を締結することが出来ることを明記(民法602条)。共有物を管理する者(共有物の管理者)の規定の設定。

変更・管理の決定の裁判の手続の進め方(申立て・公告後1カ月の経過・裁判所による裁判。)。

民法258条 現物分割、全面的価格賠償(最判平成8年10月31日)の明記。相続開始の時から10年を経過したときは、相続人の異議がない限り、相続財産に属する共有物の持分について、民法258条の規律による分割請求をすることができる。

所在等不明共有者の持分の取得

要件

  • 共有者の中に所在不明の者がいる。
  • 裁判所へ持分所得の請求を求めて、裁判を行う。
  • 所在不明の者から異議が出ない。
  • 不動産に関する権利のうち、準共有(民法264条)についても準用する。

手続

1 共有者からの裁判の申立て

2 裁判所による公告(一定の期間(3か月以内)に異議を申し立てることが出来ること)

3 裁判所が所在が判明している共有者に対して、公告したことを通知。

4 申立人は、裁判所が定めた金額を供託。

所在等不明共有者の持分の譲渡

要件

・所在等不明共有者以外の共有者が、特定の者に対して持分を譲渡したときに、所在等不明共有者の共有持分を特定の者に対して譲渡する権利を与えることを内容とする(共有状態の解消)。

手続

・裁判所から、所在等不明共有者の共有持分を特定の者に対して譲渡する権利を与える裁判を得てから、原則として2か月以内に実行する必要がある。

所有者不明土地管理命令「等」・・・所有者不明建物管理命令を含む。(非訟事件)

裁判所は、利害関係人の請求により、1か月の公告経過後に所有者不明土地管理人を選任し、管理を命ずる処分(所有者不明土地管理命令)を行うことが出来る。命令の効力は、所有者不明土地の上にある動産(固定されていない倉庫など)に及ぶ。

所有者不明土地管理命令は、何度でも発令することが出来る。

所有者不明土地管理人の権限・・・管理、処分(売却など)。

所有者不明土地管理命令の登記の嘱託と、所有者不明土地管理命令の登記の抹消の嘱託・・・登記原因は?登記権利者、登記義務者?申請人?添付情報は?

所有者不明土地等に関する訴えについては、所有者不明土地管理人が原告又は被告。弁護士を想定?

所有者不明土地管理人の義務

・善管注意義務・忠実義務・公平義務。

・解任・・・利害関係人の請求により、裁判所が判断

・辞任・・・裁判所の許可を得ることが条件

・所有者不明土地管理人の報酬・業務上の費用・・・裁判所が定める。

・所有者不明土地から収益が出た場合(貸土地などの賃料)、供託可能で供託した場合は公告義務。

所有者不明土地管理命令の取消し事由

・管理すべき財産がなくなったとき(売却して、代金は全額供託したなど)。

・財産の管理を継続することが相当でなくなったとき・・・想像できません。

・所在不明だった所有者が、裁判所で自己に帰属することを証明したとき。

所有者不明建物管理命令

・所有者不明土地管理命令とほぼ同じ規律。マンション(建物の区分所有等に関する法律)は対象外。

管理不全土地管理命令及び管理不全建物管理命令

・管理不全・・・所有者による土地・建物の管理が不適当であることによって他人の権利又は法律上保護される利益が侵害され、又は侵害されるおそれがある場合。

・所有者は、裁判所の命令によって管理人が管理することに同意するのでしょうか?

・管理不全土地管理命令の対象とされた土地・建物について、保存行為・管理行為を超える処分を行うには、その所有者の同意がなければならない。

その他は所有者不明土地・建物管理命令とほぼ同じ。

相続等

民法918条2項、3項、926条、940条1項、2項。

・家庭裁判所が、利害関係人又は検察官の請求によって、相続財産の保存に必要な処分を命ずることができない場合(原則として可能。相続財産の清算人)・・・相続人が数人ある場合において遺産の全部の分割がされたとき又は民法第952条第1項の規定により相続財産の清算人が選任されているとき。

・不在者財産管理人(民法27条から29条まで)、限定承認をした人、相続放棄をした人についても同じ規律に揃える。

・相続放棄をした人が相続財産を占有している場合、管理する期間・・・相続人か相続財産の清算人に対して財産を引き渡すまでの間。

・不在者財産管理人、相続財産の清算人(管理する財産が全て金銭のとき)について、管理すべき財産の全部を供託・公告したときを取消し(退任)事由とする。

・相続財産の管理人から相続財産の清算人への名称変更(民法936条1項、民法952条)。

民法第952条第2項、957条。

・家庭裁判所は、相続財産の清算人が選任されてから、6カ月以内の公告。家庭裁判所の公告があった場合は、相続財産管理人も全ての相続財産債権者と受遺者に公告する義務。

民法第903条から第904条の2(特別受益、寄与分)

・原則・・・相続開始の時から10年を経過した後にする遺産の分割については、適用しない。

例外・・・相続開始の時から10年を経過する前(6か月の個別猶予有り)に、相続人が家庭裁判所に遺産の分割の請求をしたとき。

・遺産の分割の調停又は審判の申立て・申立ての取下げの要件・・・相続開始の時から10年を経過した後にあっては、相手方の同意を得ることが必要。

遺産の分割の禁止(民法907条など)

・共同相続人は、5年以内の期間を定めて、遺産の全部又は一部について、その分割をしない旨の契約をすることができる(相続開始の時から10年以内。)。更新の契約も同じ。

・民法第907条第2項家庭裁判所による遺産分割の禁止(相続開始の時から10年以内)。更新も同じ。

不動産登記法等の見直し

所有権の登記名義人に係る相続の発生を不動産登記に反映させるための仕組み

・不動産の「所有権」の登記名義人が「死亡」(自然人)し、相続等による所有権の移転が生じた場合における公法上の「登記申請」義務・・・自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から3年以内。相続人に対する特定遺贈・包括遺贈についても同じ。

「登記申請」・・・法定相続分、相続人申告登記(仮称)の申出も登記申請に含まれる。

・相続登記等の申請義務違反の効果・・・10万円以下の過料。

・相続人申告登記(仮称)・・・登記官にたいして、相続開始の事実と自らが相続人であることを申し出ること。添付情報は戸(除)籍謄本等。遺産の分割の日から3年以内に、所有権の移転の登記を申請する義務。→この仕組みが機能すると、所有権については、相続開始後13年以内に相続登記が行われる。

登記官は職権で付記登記を行う。登記の目的、登記原因は?

・遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)による所有権の移転の登記手続(不動産登記法60条)・・・登記権利者が単独で申請。

・法定相続分での相続登記がされた場合における登記手続(不動産登記法60条)・・・登記権利者が単独で申請(他の相続人の相続の放棄、特定財産承継遺言、相続人が受遺者である遺贈など。)。

・権利能力を有しない所有権の登記名義人についての符号の表示・・・登記官は職権で符号を表示することができる。どんな符号?

所有権の登記名義人の氏名又は名称及び住所の情報の更新を図るための仕組み

・変更があった日から2年以内の登記申請義務。5万円以下の過料。

・登記官は、職権(自然人は申出があったとき)で氏名若しくは名称又は住所についての変更の登記をすることができる。法人は職権。

登記所が他の公的機関から所有権の登記名義人の死亡情報や氏名又は名称及び住所の変更情報を取得するための仕組み

・所有権の登記名義人が登記官に、検索用情報を提供。住民票?

・登記官は、住民基本台帳ネットワークシステムに定期的に照会を行うなどして自然人である登記名義人の死亡の事実や氏名又は名称及び住所の変更の事実を把握。

登記義務者の所在が知れない場合等における登記手続の簡略化

・不動産登記法70条の条件追加

法務省令で定める方法により調査を行った場合

買戻しの特約に関する登記がされている場合において、契約の日から10年を経過したとき・・・登記権利者は、単独申請。

解散した法人の担保権に関する登記の単独抹消手続

1法務省令で定める方法により調査を行ってもなおその法人の清算人の所在が判明しない。

2被担保債権の弁済期から30年を経過

3法人の解散の日から30年を経過

その他の見直し事項

・所有権について、会社法人等番号が登記事項。

・所有権について、登記名義人の住所が日本でないときは、日本における連絡先と人の氏名住所その他の法務省令で定めるものが登記事項。

・外国に住所を有する自然人、法人についての住所証明情報

外国政府等の発行した住所証明情報か、住所を証明する公証人の作成に係る書面(外国政府等の発行した本人確認書類の写しが添付されたものに限る。)の2つに限定する。

所有不動産記録証明制度

・誰でも(自然人、法人問わず)登記官に対して、所有権(と法務省令で定めるもの)に関して名寄せの証明書請求が出来る。相続人は、被相続人に関する名寄せが出来る。

・所有不動産記録証明書の請求・取得は、「代理人」による交付請求も許容。

被害者保護のための住所情報の公開の見直し

不動産登記法第119条・・・登記官は、申出があったときは、法務省令で定める措置をする。

参考

https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_gyousei/daityo/dv_shien.html

土地所有権の国庫への帰属の承認等に関する制度の創設

共有の場合・・・共有者の全員行うときに限定

法務大臣が国庫帰属を承認する場合

  • 建物がない。
  • 担保権又は使用及び収益を目的とする権利が設定されていない。
  • 通路その他の他人による使用が予定される土地として政令で定めるものが含まれていない。
  • 土壌汚染対策法第2条第1項に規定する特定有害物質(法務省令で定める基準を超えるものに限る。)により汚染されていない

⑤ 境界が明らかでない土地その他の所有権の存否、帰属又は範囲について争いがない土地

⑥ 崖(勾配、高さその他の事項について政令で定める基準に該当するものに限る。)がある土地のうち、その通常の管理に当たり過分の費用又は労力を要しないもの

⑦ 土地の通常の管理又は処分を阻害する工作物、車両又は樹木その他の有体物が地上に存しない。

⑧ 除去しなければ土地の通常の管理又は処分をすることができない有体物が地下に存しない土地

⑨ 隣接する土地の所有者その他の者との争訟がない。

⑩ ①から⑨までに掲げる土地のほか、通常の管理又は処分をすることができる。

・承認は、土地の一筆ごと。

・承認申請者は、承認があったときは、国有地の種目ごとにその管理に要する「10年分の標準的な費用の額を納付」。

登記の目的、登記原因は?

参考

法務省 法制審議会―民法不動産登記法部会

「民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)の改正等に関する要綱案」

https://www.okinawa-shiho-shoshi.net/wp-content/uploads/9d75ff4ad984aa158df82f0d97986134.pdf

平成31年(受)第427号,第428号 遺言無効確認請求本訴,死因贈与契約存在確認等請求反訴事件令和3年1月18日 第一小法廷判決

 

[blogcard url=”https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=89956″]

事件番号 平成31(受)427号

事件名  遺言無効確認請求本訴,死因贈与契約存在確認等請求反訴事件

裁判年月日 令和3年1月18日 法廷名  最高裁判所第一小法廷

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小法廷と大法廷の違い 裁判所HP

[blogcard url=”https://www.courts.go.jp/vc-files/courts/file2/20915005.pdf”]

Q 最高裁判所の大法廷と小法廷とは,どう違うのですか?

A 最高裁判所には,最高裁判所長官を含む15人の裁判官全員で構成する大法廷(定足数9人)と5人の裁判官で構成する三つの小法廷(定足数3人)があります。すべての事件は,まず小法廷で審理して,ほとんどの事件がこの審理及び裁判で終了します。小法廷で審理した事件の中で,法律,命令,規則又は処分が憲法に適合するかしないかを判断するときなどに限って,事件を大法廷に移して審理及び裁判をすることになります。

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裁判種別 判決

結果 破棄差戻

原審裁判所名     名古屋高等裁判所

原審事件番号     平成30(ネ)464号

原審裁判年月日 平成30年10月26日

判示事項           

 自筆遺言証書に真実遺言が成立した日と相違する日の日付が記載されているからといって同証書による遺言が無効となるものではないとされた事例

平成31年(受)第427号,第428号 遺言無効確認請求本訴,死因贈与契

約存在確認等請求反訴事件

令和3年1月18日 第一小法廷判決

主 文

 原判決を破棄する。

 本件を名古屋高等裁判所に差し戻す。

 理 由

平成31年(受)第427号上告代理人菊地隆太ほかの上告受理申立て理由及び同第428号上告代理人後藤武夫ほかの上告受理申立て理由(ただし,いずれも排除された部分を除く。)について

1 本件の本訴請求は,亡Aが作成した平成27年4月13日付け自筆証書(以下「本件遺言書」という。)による遺言(以下「本件遺言」という。)について,被上告人らが,本件遺言書に本件遺言が成立した日と相違する日の日付が記載されているなどと主張して,上告人らに対し,本件遺言が無効であることの確認等を求めるものである。

2 原審の確定した事実関係の概要は,次のとおりである。

(1) 被上告人らはAの妻であるX1及び同人とAとの間の子らであり,平成31年(受)第428号上告人ら(以下「上告人Y2ら」という。)はAの内縁の妻であるY2及び同人とAとの間の子らである。

(2) Aは,平成27年4月13日,入院先の病院において,本件遺言の全文,同日の日付及び氏名を自書し,退院して9日後の同年5月10日,弁護士の立会いの下,押印した。本件遺言の内容は,第1審判決別紙遺産目録記載の財産を上告人Y2らに遺贈し,又は相続させるなどというものであった。

(3) Aは,平成27年5月13日,死亡した。

3 原審は,上記事実関係の下において,次のとおり判断して,被上告人らの本

訴請求を認容すべきものとした。

自筆証書によって遺言をするには,真実遺言が成立した日の日付を記載しなければならず,本件遺言書には押印がされた平成27年5月10日の日付を記載すべきであった。自筆証書である遺言書に記載された日付が真実遺言が成立した日の日付と相違しても,その記載された日付が誤記であること及び真実遺言が成立した日が上記遺言書の記載その他から容易に判明する場合には,上記の日付の誤りは遺言を無効とするものではないと解されるが,Aが本件遺言書に「平成27年5月10日」と記載する積もりで誤って「平成27年4月13日」と記載したとは認められず,また,真実遺言が成立した日が本件遺言書の記載その他から容易に判明するともいえない。よって,本件遺言は,本件遺言書に真実遺言が成立した日と相違する日の日付が記載されているから無効である。

 

4 しかしながら,本件遺言を無効とした原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。

自筆証書によって遺言をするには,真実遺言が成立した日の日付を記載しなければならないと解されるところ(最高裁昭和51年(オ)第978号同52年4月19日第三小法廷判決・裁判集民事120号531頁参照),前記事実関係の下においては,本件遺言が成立した日は,押印がされて本件遺言が完成した平成27年5月10日というべきであり,本件遺言書には,同日の日付を記載しなければならなかったにもかかわらず,これと相違する日付が記載されていることになる。

しかしながら,民法968条1項が,自筆証書遺言の方式として,遺言の全文,日付及び氏名の自書並びに押印を要するとした趣旨は,遺言者の真意を確保すること等にあるところ,必要以上に遺言の方式を厳格に解するときは,かえって遺言者の真意の実現を阻害するおそれがある。

したがって,Aが,入院中の平成27年4月13日に本件遺言の全文,同日の日付及び氏名を自書し,退院して9日後の同年5月10日に押印したなどの本件の事実関係の下では,本件遺言書に真実遺言が成立した日と相違する日の日付が記載されているからといって直ちに本件遺言が無効となるものではないというべきである。

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最高裁昭和51年(オ)第978号同52年4月19日第三小法廷判決

[blogcard url=”https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/525/074525_hanrei.pdf”]

抜粋

・民法九六八条によれば、自筆証書によつて遺言をするには、遺言者がその全文、日附及び氏名を自書し印をおさなければならず、右の日附の記載は遺言の成立の時期を明確にするために必要とされるのであるから、真実遺言が成立した日の日附を記載しなければならない。

民法968条1項

[blogcard url=”https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089″]

(自筆証書遺言)

第九百六十八条 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。

 

5 以上によれば,本件遺言を無効とした原審の前記判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。この点に関する論旨は理由があり,原判決中本訴請求に関する部分は破棄を免れず,本件遺言のその余の無効事由について更に審理を尽くさせるために,これを原審に差し戻すのが相当である。そして,本件の反訴請求は,上告人Y2らが,被上告人らに対し,本訴請求において本件遺言が無効であると判断された場合に,予備的に,死因贈与契約の成立の確認等を求めるものであるところ,本訴請求について原判決が破棄差戻しを免れない以上,反訴請求についても当然に原判決は破棄差戻しを免れない。

よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 深山卓也 裁判官 池上政幸 裁判官 小池 裕 裁判官 木澤克之 裁判官 山口 厚)

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・上告って

 高等裁判所がした判決に対して,判決宣告があった日の翌日から起算して14日以内に最高裁判所に不服申立てをすることです。

裁判所HP

https://www.courts.go.jp/hiroshima-h/vc-files/hiroshima-h/file/202017.pdf

・破棄差戻しって

 憲法解釈の誤りがあるか、法律に定められた重大な訴訟手続の違反事由があるから、もう一回元の裁判所で審理してもらう。

https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_minzi/minzi_01_02_04/index.html

「現実軽視の過剰な規制が生み出す不動産登記実務の過酷な現実」

市民と法[1]の記事からです。

著者は司法書士歴40年、不動産登記の決済立ち合い年間1000件以上をこなしている方のようです。

・決済立ち合いにおいて、決済場所に着金確認まで司法書士が同席する必要はあるのか。

・オンライン申請した場合で、添付した登記原因証明情報のPDFに内容の誤りがある場合、それが軽微な誤りでも補正を許容しない法務局通達(通達変更により解決。)

2つの問題を提起されています。

 私は2つとも失敗談として経験しました。決済立ち合い場所は事務所から1時間、関係者の集合時間は10時。ここだけみると、余裕を持って決済を行えます。

売主様、遅刻。連絡が繋がらない(映画を観ていたということです。)。連絡が繋がったのが13時。14時に決済場所である金融機関到着。そこから押印、着金手続き(月末で、遅刻したため他の案件の着金手続きが終了するまで入金手続きが出来ず、遅れます。)

私は他の書類の確認を済ませて、12時頃から、15時までに金融機関を出ることが出来なければ、今日の申請は保証できません、ということを不動産仲介業者、金融機関に何度も伝えていました。

金融機関を出たのは15時30分。登記申請を行ったのは、17時20分頃。5分遅れています。16時50分頃から金融機関の職員が3度くらい「間に合いますか?」と電話をかけてきたので「今準備中です。」と対応しました。電話がなかったら間に合っていたかもしれません。

申請後、金融機関と仲介業者(兼買主)に電話で遅れた旨を伝え、登記申請の受付票(受け付けはしたけど、内容の確認は明日以降になります、という内容)を渡しました。

金融機関職員は怒っていました。司法書士を信頼して決済をお願いしているのに、というようなことを言われました。

仲介業者さんが間に入ってくれて、「登記の原因日付は今日で間違いないですか?」と確認されました。「間違いないです。受付の日付は明日になります。」と私は答えました。金融機関、仲介業者の認識は、私の失敗ということのようでした。売主遅刻、連絡が付かない時点で取引を流せば良かったと思いました。

 PDF化した登記原因証明情報に不備があった場合の補正不可については、登記官によって違いがありました。登記官は、新人でない限り決済関係の登記申請であることを知っています。知っていて取下げを命じるのは、何かの信念を持っている方かなと思います。一度取り下げたことがあります。金融機関に始末書を届けに行きました。

記事に戻ります。

「期待される立ち合い業務に応えるためには、場面に応じて目的を遂げる手法を選択実行しなければならない」事態を招かないように「段取り八分仕事二分」を励行することこそが決済立ち合いの要諦(最も大切な所)である。


 この文章の言葉を借りるなら、段取りが職員(補助者)、段取りの確認と仕事が司法書士だと思いました。

本記事で一番びっくりしたのが、決済立会報酬が1万円ないし3万円で、5万円などとても請求できる金額ではないのが実情である、という記載があったことです。私は最低5万円以上の見積書を出すので、こんなにも違うんだなと感じました。

具体的には、「決済立会について決済立会場所に補助者のみを同席させることを許容する。ただし、関係当事者の同意を得たうえで、補助者に主体的・包括的に担当させることなく、司法書士として、通信機器等を活用して決済の状況を把握しつつ、信頼に応える方策を講じなければならない」等の趣旨の規範に改定すべきである。

 著者による不動産取引決済の方法の改定案です。補助者(職員)をロボットに置き換えることも可能な気がします。大きな事務所も大変なんだな、というのが感想でした。職員・有資格者が決済立ち合い場所に司法書士と同席して、司法書士の最終確認が済んだら、職員が登記申請に事務所に戻る、というような事案は良く聞きます。どの程度関与すれば良いのか、ミスがなければ何も言われない、普段から付き合いがある取引先ならミスしてもどうにかなる、ということもあると思いますが、初めて住宅を買う人が、初めて司法書士と会う人が、不快な思いをしない方法が良いのだろうなと感じます。具体的には司法書士が全ての業務をやっている(やっているようにみせることも含めます。)のが、納得のいく線だと考えます。金融機関や仲介業者の視点を外すと、そのような結論に至りました。

[1] 126号、2020年12月P10~民事法研究会

船橋幹男「AI社会における司法書士業務はどうあるべきか」

市民と法[1]の記事からです。

AI(人工知能を実装した機械)を操作する単なるオペレーターとしてなら一定の報酬は得られるかもしれない。

消極的な書き方に感じられましたが、有力な事業になり得ると思います。AIを操作するのは、簡単ではないと考えられるからです。建設業のロボット建機を適切にオペレーションするには、相応の知識と技術が求められるはずです。人の命に直接関わる場合があるため、緊張感も現在業務と同じかそれ以上になる可能性もあると思います。

土木研究所 技術推進本部 岩見吉輝「建設現場が無人化する日に向けて」

[blogcard url=”https://www.pwri.go.jp/jpn/about/pr/event/2020/1021/pdf/kouen6.pdf”]

 


AI時代にも司法書士が法律専門職として存続するか否かの判定の一つとして、テクノロジーによる代替行為が、依頼された業務の本質部分にまで及ぶのか、それとも業務の本質ではない部分での代替、言い換えれば本質的業務を効率化するためのものにすぎないのか、という見方もできるのではないだろうか。

おそらくそうだと思います。私には、各業務の何が本質部分なのか、分かりません。登記情報を取得することや、メールに対して適切な対応をすること、サムポローニアの使い方を覚えることなど、ほとんど全て本質部分に入ると思っています。私の認識がずれているのかもしれません。

たとえば、相続登記の多くは遺産分割など相続人間の法律行為を前提とするが、相続人の単独申請なので争いのない単純なケースでは、本人申請が増加するものと推測される。

本人申請のシステムを、日本司法書士会連合会で自前で作ってはどうなんだろう、というのが私の認識です。本職のエンジニアと法務局OBで司法書士登録をしている方の力も借りて取り組めば、出来ないことはないと思います。

既に大きめの事務所では開発が始まっているので、下のシステムが法務省などに認定されると、他の司法書士への影響は少なくないと思います。

[blogcard url=”https://www.meiseihoumu.jp/news/20200214.html”]

 

これに対し、司法書士は職域とその業務内容においても法律で厳格に制限されていて、自ら業務開発できる分野にも限界がある。

現在の職域と業務内容の中でも、自ら業務開発できる分野(計算機分野を含めて)で限界まではやり切れていないんじゃないか、というのが私の認識です。

[1] 126号、2020年12月、P3~

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