月刊登記情報2024年6月号(751号)

月刊登記情報2024年6月号(751号)、きんざい

https://store.kinzai.jp/public/item/magazine/A/T

 法窓一言 

法人協の使命

一般社団法人全国司法書士法人連絡協議会理事長 荻野恭弘

特 集 法人協の歩みとこれからの活動

 所有者不明土地の相続人確定事業など、個の司法書士では対応しづらい社会課題への対応への早い取り組みと、法人としての倫理・法令順守、事業・経営の両立。

https://judgit.net/payees/3010005021244

全国司法書士法人連絡協議会の歩みと活動

司法書士法人キャストグローバル(一般社団法人全国司法書士法人連絡協議会理事) 窪田雅之

 2024年(令和6年)2月末現在の正会員数125法人。

http://houjinkyou.com/

 損害保険事業。各司法書士単位会で採用されている補償とは別で、損保ジャパンが提供。

 中小企業庁専門職員、大学への講師の派遣。

司法書士業務の生産性向上に向けて

司法書士法人トリニティグループ代表(一般社団法人全国司法書士法人連絡協議会理事) 磨 和寛

 生産性向上ワーキンググループ。家族信託の組成を軸とした資産承継対策のコンサルティング研修を動画、ロールプレイングなどにより提供。

 生涯顧客価値(一人の顧客からトータルでどのくらいの報酬をいただけるか。)を重視。複数回の受託が出来るようなシステムを提供。

不動産取引における日本版エスクローと司法書士の役割

司法書士法人キャストグローバル代表社員(一般社団法人全国司法書士法人連絡協議会副理事長) 上野興一

 権利とお金、物の流れとして、インタネットオークションのイメージ。不動産取引の非対面決済。信託を業として行える企業と司法書士が信託契約を締結し、司法書士自身が、(委託者・指図権者として)エクスロー機関になる。

商業登記規則逐条解説 第18回

土手敏行

 商業登記規則

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=339M50000010023

(代表取締役等の登記)

第六十七条 取締役の選任の決議の不存在、無効若しくは取消し又は判決による解任の登記をした場合において、その取締役が代表取締役、特別取締役、委員又は社外取締役であるときは、当該代表取締役、特別取締役、委員又は社外取締役に関する登記を抹消する記号をも記録しなければならない。

2 前項の規定は、監査役の選任の決議の不存在、無効若しくは取消し又は判決による解任の登記をした場合において、その監査役が社外監査役であるときにおける当該社外監査役に関する登記について準用する。

3 第一項の規定は、執行役の選任の決議の不存在、無効若しくは取消し又は判決による解任の登記をした場合において、その執行役が代表執行役であるときにおける当該代表執行役に関する登記について準用する。

 昭和55年法務省令第7号改正前は、取締役のみ嘱託登記の規定があり、代表取締役に関する定めがなかった。

(仮取締役又は取締役職務代行者等の登記)

第六十八条 一時取締役、監査等委員である取締役、会計参与、監査役、代表取締役、委員、執行役、代表執行役又は会計監査人の職務を行うべき者に関する登記は、取締役、監査等委員である取締役、会計参与、監査役、代表取締役、委員、執行役、代表執行役又は会計監査人の就任の登記をしたときは、抹消する記号を記録しなければならない。

2 取締役、監査等委員である取締役、会計参与、監査役、代表取締役、委員、執行役又は代表執行役の職務の執行停止又は職務代行者に関する登記は、その取締役、監査等委員である取締役、会計参与、監査役、代表取締役、委員、執行役又は代表執行役の選任の決議の不存在、無効若しくは取消し又は解任の登記をしたときは、抹消する記号を記録しなければならない。

 裁判所書記官による嘱託登記申請(会社法937条1項2号イ、ト、ヌ裁判による登記の嘱託、民事保全法56条法人の代表者の職務執行停止の仮処分等の登記の嘱託)。

 株式会社(特例有限会社を含む。)による、変更の登記申請(会社法911条3項19号、915条1項)。

 登記情報538号P24、2006年9月、相澤 哲:法務省大臣官房参事官 商業登記実務のための会社法Q&A(1) 会計監査人の欠格事由と一時会計監査人

 2006年9月4日日本監査役協会

 登記官の職権による登記、本条。

 登記上、一時取締役ではなく仮取締役として記録。

 登記情報673号P80、平成29・6・13民商第98号民事局商事課長通知 「職務執行停止の仮処分命令又は職務代行者選任の仮処分命令の申立てが取り下げられたことによる職務執行停止又は職務代行者選任の登記の抹消が嘱託された場合の受否について」・・・職務執行停止の仮処分命令申立てが取り下げられた場合、裁判所書記官による嘱託登記申請があったときは、抹消の登記をする。

(発行する株式の内容等の登記)

第六十九条 種類株式発行会社となつた場合において、発行可能種類株式総数及び発行する各種類の株式の内容の登記をしたときは、発行する株式の内容の登記を抹消する記号を記録しなければならない。

2 種類株式発行会社に該当しなくなつた場合において、発行する株式の内容の登記をしたときは、発行可能種類株式総数及び発行する各種類の株式の内容の登記を抹消する記号を記録しなければならない。

 登記官による職権登記、本条。

 登記情報534号P7、平成18・3・31民商第782号民事局長通達第2部株式会社第2の2株式及び新株予約権。

 商業登記規則別表第五(株式会社登記簿)株式・資本区、発行する株式の内容

 登記研究 740号P21~、2009年10月、塚田 佳代:法務省民事局民事第一課係長(国籍担当) 前法務省民事局商事課商業法人登記第三係長、前田 和樹:法務省民事局商事課供託係員「【論説・解説】商業・法人登記実務の諸問題(2)」・・・優先株式のような種類株式についても、株式の譲渡制限に関する事項は、発行可能種類株式総数及び発行する各種類の株式の内容ではなく、株式の譲渡制限に関する規定欄に登記する。

(新株発行の無効等の登記)

第七十条 第六十六条第一項の規定は、会社の成立後における株式の発行の無効若しくは不存在の登記、新株予約権の発行の無効若しくは不存在の登記又は資本金の額の減少の無効の登記について準用する。この場合において、同項中「関する登記」とあるのは、「関する登記(会社の成立後における株式の発行の無効又は不存在の登記をする場合にあつては、資本金の額に関する登記を除く。)」と読み替えるものとする。

 裁判所書記官による嘱託登記申請(会社法937条1項1号ロ、ハ、ニ、ホ、ヘ)。

 新株予約権の発行無効は、会社法制定時に新たに設けられた。

 登記情報534号P66~、2006年5、西田淳二:法務省民事局商事課法規係長、吉田一作:法務省民事局商事課法規係員 特集 会社法施行と商業登記 会社法の施行に伴う商業・法人登記事務の取扱いに係る関係政省令の解説

・・・株式の発行の無効の登記に当たり、資本金の額については回復しない。

(電子公告に関する登記)第七十一条 電子公告を公告方法としたことによる変更の登記をしたときは、会社法第九百十一条第三項第二十六号及び銀行法(昭和五十六年法律第五十九号)第五十七条の四各号(株式会社日本政策投資銀行法(平成十九年法律第八十五号)第十条第一項において準用する場合を含む。)に掲げる事項並びに株式会社商工組合中央金庫法(平成十九年法律第七十四号)第六十四条に規定する事項の登記を抹消する記号を記録しなければならない。

 会社法911条3項26号。

 会社法911条3項28号を定款に定めている場合には、本条の登記は実質的に同じ内容なので、不可能。

(解散等の登記)第七十二条 会社法第四百七十一条(第四号及び第五号を除く。)又は第四百七十二条第一項本文の規定による解散の登記をしたときは、次に掲げる登記を抹消する記号を記録しなければならない。

一 取締役会設置会社である旨の登記並びに取締役、代表取締役及び社外取締役に関する登記

二 特別取締役による議決の定めがある旨の登記及び特別取締役に関する登記

三 会計参与設置会社である旨の登記及び会計参与に関する登記

四 会計監査人設置会社である旨の登記及び会計監査人に関する登記

五 監査等委員会設置会社である旨の登記、監査等委員である取締役に関する登記及び重要な業務執行の決定の取締役への委任についての定款の定めがある旨の登記

六 指名委員会等設置会社である旨の登記並びに委員、執行役及び代表執行役に関する登記

2 前項の規定は、設立の無効又は株式移転の無効の登記をした場合について準用する。

 会社の解散により、置くことが適当ではなくなった機関の抹消登記は、登記官の職権による。

 裁判所書記官による嘱託登記申請(会社法937条1項1号イ、3項7号)。

境界紛争の解決手続における土地家屋調査士の役割第5回 訴訟

弁護士 井奥圭介、土地家屋調査士 山脇優子

 土地家屋調査士。原告被告創造の主張図面の作成、筆界調査委員、調停委員、分筆申告図と現況測量図の重ね合わせ、筆界特定手続の双方代理人

法律業務が楽になる心理学の基礎第9回 アサーション・トレーニング

弁護士(認定心理士) 渡部友一郎

記述、表現、提案、選択のステップ、という方法。

犯罪収益移転防止法の大改正と司法書士の実務(9・完)

司法書士 末光祐一

 取引を行う目的の確認、確認日付、職業・事業の内容の確認、法人の実質的支配者。

登記研究915号(令和6年5月号)

登記研究915号(令和6年5月号)2024/05、テイハン

https://www.teihan.co.jp/book/b10084677.html

【論説・解説】

■「遺言書保管事務取扱手続準則の一部改正について(令和5年8月31日付け法務省民商第168号法務省民事局長通達)」の解説

法務省訟務局訟務企画課予算係長(前法務省民事局商事課遺言書保管第一係長兼第二係長) 菅 野 裕 紀

1 はじめに

https://www.moj.go.jp/MINJI/12.html

 指定者通知を行う人の、範囲と人数を改正。

2 本通達の発出の背景

 ⑴ 指定者通知の対象者となる者の範囲の拡大について

 想定ニーズ・・・士業者、信託銀行、葬儀会社など。

 ⑵ 指定者通知の対象となる人数の拡大について

3 事務処理上の留意点

遺言書情報証明書の交付請求を出来る者かは、遺言の内容によります(遺言書事実証明書の交付請求をしてみてください。)、という注意書き。

■商業登記倶楽部の実務相談室から見た商業・法人登記実務上の諸問題(第121回)一般社団法人商業登記倶楽部代表理事・主宰者、公益社団法人成年後見センター・リーガルサポート理事、一般社団法人日本財産管理協会顧問、日本司法書士会連合会顧問 神 﨑 満治郎

242 登記手続において、組合等登記令の適用を受ける法人の種類及びその登記手続の概要について

1 登記手続において、組合等登記令の適用を受ける法人

組合等登記令別表

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=339CO0000000029

2 登記手続の概要

(設立の登記)第二条 組合等の設立の登記は、その主たる事務所の所在地において、設立の認可、出資の払込みその他設立に必要な手続が終了した日から二週間以内にしなければならない。

2 前項の登記においては、次に掲げる事項を登記しなければならない。

一 目的及び業務

二 名称

三 事務所の所在場所

四 代表権を有する者の氏名、住所及び資格

五 存続期間又は解散の事由を定めたときは、その期間又は事由

六 別表の登記事項の欄に掲げる事項

(変更の登記)第三条、(他の登記所の管轄区域内への主たる事務所の移転の登記)第四条、(代理人の登記)第六条、(解散の登記)第七条、(継続の登記)第七条の二、(合併等の登記)第八条、(分割の登記)第八条の二、(移行等の登記)第九条、(清算結了の登記)第十条、二週間以内。

 添付書面、商業登記法の準用、各登記の特則など。

■Q&A不動産表示登記(91)

(一社)テミス総合支援センター理事、都城市代表監査委員 新 井 克 美

第三章 建物(非区分建物)

 第二節 各種の登記の申請

  Q260 建物を取り壊した場合はどのような登記を申請するのか。

 不動産登記法

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=416AC0000000123

(建物の滅失の登記の申請)第五十七条 建物が滅失したときは、表題部所有者又は所有権の登記名義人(共用部分である旨の登記又は団地共用部分である旨の登記がある建物の場合にあっては、所有者)は、その滅失の日から一月以内に、当該建物の滅失の登記を申請しなければならない。

 滅失の判断・・・建物の同一性。建物の効用、売買の実例など。

不動産登記準則

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00465.html

(建物の再築)第83条 既存の建物全部を取り壊し、その材料を用いて建物を建築した場合(再築)は、既存の建物が滅失し、新たな建物が建築されたものとして取り扱うものとする。

(建物の移転)第85条 建物を解体移転した場合は、既存の建物が滅失し、新たな建物が建築されたものとして取り扱うものとする。

2 建物をえい行移転した場合は、建物の所在の変更として取り扱うものとする。

(附属建物がある主たる建物の滅失による表題部の変更の登記の記録方法)第102条 附属建物がある主たる建物の滅失による表題部の登記事項に関する変更の登記をする場合には、表題部の主たる建物の表示欄の原因及びその日付欄に滅失の登記原因及びその日付を記録し、当該表示欄に主たる建物となるべき附属建物に関する種類、構造及び床面積を記録し、当該原因及びその日付欄に「令和何年何月何日主たる建物に変更」のように記録するものとする。この場合には、当該附属建物の表示欄の原因及びその日付欄に「令和何年何月何日主たる建物に変更」のように記録して、当該附属建物についての従前の登記事項を抹消するものとする。

登記研究255号昭和43年12月23日民事三発第1075号民事局第三課長回答「建物の滅失登記申請における申請人について」

 取り壊しの場合は工事証明書など。

■商業登記の変遷(61)司法書士 鈴 木 龍 介(司法書士法人鈴木事務所)

 印鑑証明。直接証明方式→間接証明方式類似→コンピュータ方式→印鑑カード方式(間接証明方式)へ。

■民事信託の登記の諸問題(32)渋 谷 陽一郎

第228 信託法の条文の読み方

信託法

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=418AC0000000108

(受託者の権限の範囲)

第二十六条 受託者は、信託財産に属する財産の管理又は処分及びその他の信託の目的の達成のために必要な行為をする権限を有する。ただし、信託行為によりその権限に制限を加えることを妨げない。

第229 信託法26条の構造

 接続詞の読み方。

第230 信託法26条の解釈における見解の対立

 このように解した場合でも、この「管理又は処分」は、後段の「信託の目的の達成のために必要な行為」である必要があるのだろうか。・・・一定の目的の従う必要がある(信託法2条1項)。

第231 信託法26条における本文とただし書の関係

 信託の目的の達成のために必要な行為の中に、管理又は処分は含まれていると考えます。例示、具体化することによって、結果的に、受託者の権限を信託の目的に加えて更に制限することになる場合も出てくると考えられます。

第232 信託契約書の信託条項──目的と権限の関係

 目的が上位規範、権限が目的を第三者にも分かるように具体化したものだと考えます。

第233 信託条項間の整合性とは何か

 信託の目的と、受託者の権限(信託目録では信託財産の管理方法)が矛盾しないこと。・・・受託者、第三者が混乱する。

【資 料】会社法施行下で使える登記先例──実務の便覧──(8)

登記研究804号平成27年2月6日法務省民商第13号法務省民事局長通達 「会社法の一部を改正する法律等の施行に伴う商業・法人登記事務の取扱いについて」

登記研究804号2015年2月、南野 雅司:法務省民事局商事課法規係長 「商業登記規則等の一部を改正する省令の解説」

 株式の譲渡制限に関する定めの廃止・変更、株式の併合、合併。

登記研究 698号平成18年3月31日民商第782号民事局長通達「会社法の施行に伴う商業登記事務の取扱いについて」・・・発行可能株式総数、発行可能種類株式総数の変更には、定款変更の株主総会決議が必要。

登記研究423号昭和57年11月13日法務省民四第6854号「民事局第四課長回答「株式の併合による会社が発行する株式の総数の変更について」

 株式の併合の割合に比例して、株主総会決議がなくても発行可能株式総数を減少する取扱い・・・廃止。

登記研究698号平成18年3月31日民商第782号民事局長通達「会社法の施行に伴う商業登記事務の取扱いについて」

 株式の消却と発行可能株式総数、発行可能種類株式総数。

登記研究143号昭和34年8月29日民事甲第1923号民事局長電報回答 「株式会社の新株発行について」

 発行可能株式総数の増加決議を条件とする新株の超過発行を行う取締役会の決議。

登記研究218号昭和40年11月13日民事甲第3214号民事局長電報回答 「新株発行を条件とする授権資本の枠増加の変更登記の受否について」

 新株発行の前後と発行可能株式総数、発行可能種類株式総数の変更決議・登記申請の可否。

登記研究273号昭和45年6月29日民事四発第468号民事局第四課長電報回答「枠外発行を条件とする授権資本の枠拡大の決議について」

 株主総会の条件付き決議の限界。条件決議自体が決議時点で定款、法令に違反しないこと。

登記研究423号昭和57年11月12日法務省民四第6853号民事局第四課長回答「授権資本の枠を超える新株発行による変更登記の受否について」

 新株発行の無効の訴え(会社法828条1項2号)は株主を守るためなので、株主全員が同意する株主総会決議がある場合は無効が治癒される。

登記研究731号平成20年9月30日法務省民商第2665号民事局商事課長通知「吸収合併に際しての発行可能株式総数を超えた株式の発行及び当該枠外発行の数を前提とする発行可能株式総数の増加に係る条件付定款変更の可否について」

登記研究344号昭和51年3月18日法務省民四第2157号民事局第四課長回答「株式の譲渡制限に関する規定の設定による変更の登記の受否について」

 株式の譲渡制限に関する規定の設定決議を行う株主総会に参加していない新株主は、株式買い取り請求も不可能であって、不利。

登記研究231号昭和41年12月23日民事四発第772号民事局第四課長電報回答「株式の譲渡制限に関する規定の登記事務取扱いについて」

 全株主から株券の提供がされている場合でも、法令に定める株券提供公告期間が満了していることが必要。公告期間中に株式の譲渡があった場合の譲受人保護。

登記研究707号2007年1月【質疑応答】〔七八四五〕株式会社の定時株主総会における株券を発行する旨の定款の定めの廃止決議と株式譲渡制限の定款の定めの設定決議について

登記研究 708号2007年2月【質疑応答】〔七八四七〕株式会社が解散した場合における株式譲渡制限規定の変更の登記の要否について

 当会社、株主総会、清算人会等へ変更。取締役会という機関がなくなるから(会社法477条)。

登記研究206号71頁昭和39年12月26日民事甲第4024号民事局長回答「後配株式を普通株式に変更するための手続について」

 普通株式も種類株式の一種だから。

登記研究725号平成20年3月21日法務省民商第990号民事局商事課長通知「端株発行会社が普通株式を分割する際に取得条項付種類株式の内容を変更する場合における会社法第一一一条第一項の当該種類株式の株主全員の同意及び同法第三二二条第一項の当該種類の株式を有する株主を構成員とする種類株主総会の決議の要否について」

 取得条項付種類株主が、その地位を知らないうちに奪われる可能性があるかないか。取得対価として受ける財産の種類等に変更があるか否か。

【法 令】不動産登記規則等の一部を改正する省令(令和6年3月1日法務省令第7号)

 相続人申告登記、ローマ字氏名の併記、旧氏の併記など。

【訓令・通達・回答】

▽不動産登記関係

〔6227〕信託財産を受託者の固有財産とする旨の登記の可否について【解説付】(令和6年1月10日付け法務省民二第17号法務局民事行政部長(東京を除く。)、地方法務局長宛て法務省民事局民事第二課長通知)

 登記義務者は原則受益者の法定相続人。信託の変更の登記は、受託者による単独申請(不動産登記法103条2項、98条2項、信託目録に定めがない場合、受託者作成の、利益相反行為を許容する定めのある報告的登記原因証明情報の提供。)。登記権利者を受託者、登記義務者を受益者の同一人として、信託財産を受託者の固有財産とする旨の登記申請。

▽商業・法人登記関係

〔6228〕商業・法人登記における印鑑関係事務取扱要領の一部改正について(令和5年11月10日付け法務省民商第202号法務局長、地方法務局長宛て法務省民事局長通達)

 印鑑記録の更生申し出の追加。

▽遺言書保管関係

〔6229〕遺言書保管事務取扱手続準則の一部改正について(令和5年8月31日付け法務省民商第168号法務局長、地方法務局長宛て法務省民事局長通達)

【質疑応答】

▽商業・法人登記関係

〔8010〕一般財団法人設立において、金銭による財産の拠出を設立者又は遺言執行者から委任を受けた設立時理事名義の口座に行った場合について

 口座名義人の範囲について。理事長でない設立時理事名義でも良い。

〔8011〕公証人による定款の認証前に財産の拠出を履行した場合の財産の拠出の履行があったことを証する書面について

 登記研究902号令和4年6月13日法務省民商第286号法務省民事局商事課長通知「株式会社の発起設立の登記の申請書に添付すべき会社法第34条第1項の規定による払込みがあったことを証する書面の払込みの時期について」について、一般財団法人にも適用できる部分は適用。

遺産分割調停調書の記載と異なる相続登記申請

遺産分割調停調書の記載と異なる相続登記

被相続人Aの相続関係図

相続人は、兄弟姉妹の3名。

相続財産は土地一筆と預金1,000万円。

遺産分割調停の内容(調停条項のうち、分割部分)

 相続人C及びDは、目録記載の土地を、持分2分の1の割合で共有取得する。

相続人Bは、目録記載の預貯金を取得する。

 遺産分割調停後、相続人C及びDは、土地を2筆に分筆。

その後、二つの土地(1番1と1番2)をそれぞれCが1番1、Dが1番2を相続登記することが出来るか。・・・出来ない。

登記研究567号P165

 甲地及び乙地を共同相続人A・Bの共有とする旨の遺産分割の調停調書及びA・Bが作成した甲地をA、乙地をBの所有とする遺産分割協議書を添付して、甲地の相続人をA、乙地の相続人をBとする相続による所有権移転の登記の申請はできない。

登記研究204号P17昭和29年12月27日民事甲第2759号民事局長回答

遺産分割の審判により各相続人の相続財産が確定した場合には、その後に、相続人全員の合意の下に、当該審判の内容と異なった分割の協議が調ったとしても、当該分割協議によって、確定した審判の内容を動かすことはできないことから、当該遺産分割の協議は、審判によりいったん確定した権利を、更に移転若しくは共有物分割をするという効力があるにすぎない。

なので、

一度、1番1と1番2の土地を、C、Dが持分2分の1ずつ相続登記。

その後、1番1をCの単独所有とするD持分全部移転登記申請。原因として共有物分割(による交換)。1番2をDの単独所有とするC持分全部移転登記申請。原因として共有物分割(による交換)。単独所有にする方法は、税理士さんへの事前相談をしてから決定。

加工内閣府第2回デジタル基盤ワーキング・グループ自筆証書遺言のデジタル化について

加工内閣府第2回デジタル基盤ワーキング・グループ自筆証書遺言のデジタル化について

令和4年3月1日(火)

https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/meeting/wg/2201_05digital/220301/digital02_agenda.html

議題1.自筆証書遺言のデジタル化について(SAMURAI Security株式会社、陰山司法書士事務所、法務省からのヒアリング)

議題2.公正証書の作成に係る一連の手続のデジタル化について(フォローアップ)(法務省からのヒアリング)

資料3-1【自筆証書遺言】論点に対する回答(法務省 御提出資料)

分野

自筆証書遺言のデジタル化について

省庁名

法務省

以下の論点について、下記回答欄にご回答ください。

 自筆証書遺言は、民法上、書面・自書(署名を含む)・押印が求められており、デジタル技術を活用して作成することができない。 デジタル社会の実現に向けた構造改革が進められる中、昨年12月には、デジタル臨時行政調査会において、構造改革のためのデジタル原則が提示されたところであり、自筆証書遺言についてもデジタル原則を踏まえた見直しを検討すべきものと考えられる。

【論点1】自筆であっても、遺言の有効性等について争いは生じるものであり、デジタル技術の活用や民間サービスの利用等により、本人確認、真意の確認、方式の正確性等が担保されている場合に、遺言を無効とする理由はないのではないか。遺言の方式を法律で一律に定めるのではなく、本人確認、真意の確認、方式の正確性等が担保されているかという実質に着目するべきではないか。 仮に何らかの規律を設けるとしても、リスクベース・ゴールベースの規律や、技術の進展等を踏まえて機動的に対応し得るような規律(法律には原則を記載し、詳細は政省令で規律)とすべきではないか。

【回答1】  民法上、遺言をするためには、同法が定める一定の方式に従うことが要求されています(注1)。その趣旨は、遺言の場合には遺言者の死亡によって効力を生ずるという特殊性があること等を踏まえ、一定の蓋然性をもって遺言者の真意に基づいて遺言がされたとの判断が可能となるような方式をあらかじめ定めておき、これを満たすもののみを有効とすることで、遺言の有効性に関する信頼を確保してその効力をめぐる紛争の発生をできる限り予防し、その法的安定性を図ることにあります。

 自筆証書遺言については、全文を自書すること等の方式を定めることで、遺言者がその内容を認識し理解した上で作成したものであって、遺言者の真意に基づくものであることを担保することとしています。

 このような趣旨に照らせば、デジタル技術の活用等によって自筆証書遺言と同程度の信頼性を確保することができるのであれば、遺言者の選択肢を増やす観点から、新たな方式を設けることはあり得るものと考えています。このような方向で検討する場合には、デジタル技術の活用等により、具体的にどのような形であれば本人確認やその真意の確認が適正に担保されるかといった観点や、遺言者の負担の軽減といった観点から、検討を進めることになるものと考えています。

 特に、遺言の場合には、その効力が発生する際には遺言者は既に死亡していることに加え、相続人や第三者が被相続人の判断能力の低下等につけ込んで自己に有利な遺言を作成させるというリスクがあるため、他の法律行為以上に、本人の真意の確認を慎重に行う必要があるものと考えています。

 これに対し、遺言について、一定の方式を定めることなく、真意の確認等が担保されているものであれば効力を認めるとの規律を設けるのは困難であるものと考えています。このような規律は、遺言の外部的方式の問題と、遺言という意思表示自体の成立・効力の問題との区別を失わせるものであり(注2)、個々の遺言について、真意の確認等が担保されたものであるか否かについて常に個別的・具体的判断を要することとなって、遺言者自身にとっての予測可能性が害されるのみならず、遺言者の最終意思の実現や円滑な遺産の分割が阻害される結果を招来するおそれがあるためです。

 また、遺言の有効、無効は、相続人だけでなく、相続債権者や被相続人に債務を有していた者など、多くの利害関係人に極めて大きな影響を及ぼすものであり、その信頼性の確保が重要であること等に照らしますと、遺言の方式を政省令で定めることについては、憲法第41条(国会は、国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関である。)の趣旨等に照らし極めて慎重な検討を要するものと考えています。

→遺言の方式変更は形式的な変更に留まらないので、政省令ではなく法改正が必要。

 いずれにしても、新たな方式を定めることの当否や具体的にどのような方式を定めるかについては、遺言者の真意により作成されたものであることの適正な担保等が図られるか、遺言を作成しようとする者のニーズを的確に把握した上で、当該方式によって遺言の有効性に対する信頼等を確保することができるか、とりわけ、前述のとおり、第三者等が遺言の作成に不当に関与するリスクを増大させることにつながらないかといった観点から、慎重に検討を進める必要があるものと考えています。

(注1):民法第960条は、「遺言は、この法律に定める方式に従わなければ、することができない。」と定めています。

(注2):遺言の方式とその成立・効力の問題は区別されるものであり、そのような法制は海外法制においても一般的です。このことは、遺言の方式については、我が国が昭和39年に批准したハーグ国際私法会議条約である「遺言の方式に関する法律の抵触に関する条約」及びその国内実施法である「遺言の方式の準拠法に関する法律」が適用され(なお、「法の適用に関する通則法」第43条第2項は、遺言の方式を適用除外とする旨を明定しています。)、遺言の成立・効力については「法の適用に関する通則法」(第37条第1項)が適用されることに端的に示されています。

遺言の方式に関する法律の抵触に関する条約(昭和39年6月10日-条約第9号)

http://www.pilaj.jp/text/yuigon_j.html

法の適用に関する通則法(平成十八年法律第七十八号)

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=418AC0000000078_20150801_000000000000000

(遺言)

第三十七条 遺言の成立及び効力は、その成立の当時における遺言者の本国法による。

2 遺言の取消しは、その当時における遺言者の本国法による。

【論点2】 自筆証書遺言の作成において、デジタル技術を活用することにより、方式不備の防止が期待されるほか、時間的・地理的・金銭的な制約から専門家のサポートを受けることができない者であっても、自筆証書遺言が無効となるリスクを減少させることができるものと考えられる。一定の規律が必要であるとしても、電子文書や映像等による遺言を認めるべきではないか。

 遺言者の真意の確認についても、デジタル技術の活用や民間サービスの活用等により、自筆以上の確実性が期待できるのではないか。

【回答2】 デジタル技術の活用によって御指摘のようなメリットが生ずることはあり得るものと考えていますが、そのような方向で見直しを検討するに当たっては、前述のとおり、遺言を作成しようとする者のニーズを把握した上で、当該方式によって遺言の有効性に対する信頼等を確保することができるかといった観点から検討を進める必要があるものと考えています。

【論点3】 令和2年7月から自筆証書遺言書保管制度の運用が開始されているが、遺言が不動産登記等の手続に活用されるものであることを踏まえ、そうした一連の手続のデジタル完結を目指すため、自筆証書遺言書保管制度に基づき法務局が保管している遺言について、データによる遺言書情報証明書等の交付を可能とするべきではないか。

 また、現在は、遺言書情報証明書等の申請について、法務局における対面での手続又は郵送によることとされているが、申請手続自体もデジタル完結を図るべきではないか。

【回答3】  遺言書情報証明書には遺言書の画像情報が印刷されており、相続人等は、関係者の戸籍や住民票等を添付して同証明書の交付申請を行った上、自筆証書遺言書の原本に代えて同証明書を用いて、不動産登記や預金解約等の各種手続を行うこととなります。

 そして、遺言書情報証明書は、制度の運用開始から令和3年12月までの約1年半の間に約750件交付されています。

 遺言書情報証明書につき、その申請手続のデジタル化やデータによる交付を行うことについては、国民からのニーズの程度、申請に際して必要となる添付書面のデータ化の進展状況、遺言書情報証明書のデータを用いて行うことができる各種手続の範囲、費用対効果等を踏まえて検討する必要があると考えています。

【論点4】 自筆証書遺言のデジタル化のニーズを検討するに当たって、平成30年の法改正により可能となった自書によらない財産目録の添付について、その活用実績及び効果について把握し、参考とすべきではないか。自筆証書遺言であっても、少なくとも、自筆証書遺言保管制度により法務局に保管されている遺言書については、自書によらない財産目録が添付されている件数を把握することができるのではないか。

【回答4】自筆証書遺言は、第三者が関与することなく作成することができる文書であることから、法務省において、自書によらない財産目録を添付した遺言書の利用実績等を把握することは困難です。

 また、自筆証書遺言書保管制度に基づき法務局に保管されている遺言書についても、法務局においては、自書によらない財産目録を添付した遺言書か否かを区別せずに保管しているため、直ちにその件数を把握することは困難です。

【論点5】 書面による場合に、自書による署名がなされていれば、全文の自書は必要ないのではないか。また、印として実印が求められているわけではなく、「押印」を義務付ける必要はないのではないか。

【回答5】  民法第968条第1項が自筆証書遺言についてその全文(財産目録を除く。)の自書を必要としているのは、遺言が遺言者の真意に基づくものであることを担保し、第三者等が遺言の作成に不当に関与するリスクを低減させるなどのためであり、全文を自書することにより、文書の記載自体から遺言者が全文の内容を認識し理解した上で記載していることが明らかになります。

 そのため、書面による場合に、自筆証書遺言に署名がされているからといって、全文の自書を不要とすることには慎重な検討が必要であると考えます。  また、同項が自筆証書遺言に押印を必要としているのは、当該遺言が遺言者本人の意思によって作成されたものであることを担保することに加え、押印により文書を完成させるという慣行を踏まえ、作成途中の遺言書の下書きと完成した遺言書とを区別する意義も有しているものと考えられます。

 この点、自筆証書遺言が遺言者の死後に自宅等から発見されることが多い現状に鑑みると、近時の行政への申請手続における押印の見直しの状況等を踏まえたとしても、これを不要とすると、この点に関する紛争を増加させるおそれがあり、書面による場合に、自筆証書遺言の押印を不要とすることには慎重な検討が必要であると考えます。

 なお、ここでいう自筆証書遺言の見直しの当否及びその内容の問題と、デジタル遺言のような新たな方式を定めることの当否及びその内容の問題は、区別して議論されるべきものと考えられます。

【論点6】上記を踏まえ、自筆証書遺言の見直しについて、今後どのような体制で、いつまでに何を行うかを示していただきたい。

【回答6】 遺言の作成においてデジタル技術等の利用を可能とすることについては、それによるメリットが想定されることを前提としつつ、前述のとおり、遺言者の真意により作成されたものであることの適正な担保等が図られるか、相続の当事者や一般国民からの信頼が確保されるか、遺言を利用する者にとってデジタル化した遺言のニーズがどの程度あるか等の観点からの調査を行った上で検討していくことが相当であるものと考えています。

 また、諸外国等において、遺言の作成においてデジタル技術等がどのような形で遺言の作成に活用され、運用されているかを調査することは、我が国における遺言法制の在り方を検討するに当たっても有用ですので、諸外国等における遺言法制やその実情等を調査することが相当であると考えています。

 そこで、令和5年度中に、上記の各調査を行うなどの必要な検討を進めてまいりたいと考えています。

【論点7】取組を進めるに当たっては、「遺言」という閉じた世界だけで考えるのではなく、関連する仕組みも含め、社会全体の将来像を意識しながら取り組むことが重要である。

 現在、死亡・相続ワンストップサービスの実現に向けた検討が進められているが、遺言のデジタル化だけでなく、相続手続に必要となる戸籍謄本、除籍謄本、遺産分割協議書など一連の書類のデジタル化を進め、一連の死亡・相続手続のデジタル完結を実現することで、国民の利便性が高まると考えられる。 

 法務省においては、死亡・相続手続の将来像を見据えながら、関係省庁と連携して、必要な取組を積極的に進めるべきであるが、法務省の見解如何。 

【回答7】現行法では、相続の開始後、相続人が、相続の放棄・承認の選択をした上で、遺産分割協議等を経て被相続人の財産の承継を行うことが予定されており、また、遺言がある場合も、受遺者は遺贈を受けるかどうか選択することができます。

 このように相続による財産の承継については、相続人の自主的な判断が尊重されていることから、この場面における死亡・相続ワンストップサービスの実現に当たっては、それぞれの相続人の自主性との調和のとれた制度とすることが重要ですが、その実現については、関係する制度を所管する府省と連携して、引き続きデジタル庁における法定相続人の特定に係る遺族等の負担軽減策の検討に積極的に加わる予定です。

 なお、法務省においては、戸籍謄抄本の添付省略等に向けて戸籍情報連携システムを整備し、令和6年3月から稼動させる予定であるところ、これにより、戸籍謄抄本の請求者の負担軽減を図ることができるよう、デジタル庁等の関係府省と連携しつつ検討を進めてまいりたいと考えています。

→法務省 戸籍情報連携システムに関するお知らせ

https://www.moj.go.jp/MINJI/kosekirenkei.html

(公社)商事法務研究会

デジタル技術を活用した遺言制度の在り方に関する研究会報告書

2024(令和6)年3月

https://www.shojihomu.or.jp/list/digital-igon

資料2自筆証書遺言のデジタル化について

陰山司法書士事務所 司法書士隂山克典

司法書士業務と遺言の関連性について

➢ 不動産登記、商業登記をはじめとした各種登記申請の手続代理

➙ 遺言書を登記原因証明情報とする登記手続も多数

➙ 民法等の一部を改正する法律(令和3年法律第24号)により、相続登記の義務化が法制化されたため、遺言書の重要性は高まると思われる

➢ 地方裁判所や家庭裁判所等へ提出する裁判書類の作成

➙ 遺言の有効性を確認するための訴訟書類、遺言の検認申立書作成など➢ 成年後見人や遺言執行者等としての財産管理

➙ 遺言の内容に沿った相続手続の執行、内容に疑義がある場合の訴訟など➢ 遺言書の作成の支援

➙ 意思の実現のためのサポート

遺言書のデジタル化に係る諸外国の取組状況について第196回国会 参議院 法務委員会 第21号 平成30年7月5日元榮太一郎委員「紙の遺言書を必要としないで電子情報だけで完結するデジタル遺言ということがあるべき未来の姿ではないかなというふうに思っております」小野瀬厚政府参考人「アメリカにおきましては、一部の州においてビデオ録音や電子署名の付されたコンピューターファイルの形式の遺言が認められておりまして、また、韓国や中国におきましては、録音による遺言が認められているものと承知しております。」

アメリカの一例・・・アメリカ統一州法委員会(Uniform Law Commission)は、2019年7月、統一電子遺言法(UniformElectronic Wills Act)を承認

統一電子遺言法の制定状況等

州法による電子遺言

➢ Florida(2021年2月20日最終閲覧)Statutes732.523「Self-proof of electronic will.—An el ectronic will is self-proved if」

➢ Nevada Revised. Statutes133.085「Electronic will. 1. An ele ctronic will is a will of a testator that」その他、アリゾナ州、イリノイ州の規律が見受けられる

相続が発生した際、自筆証書遺言が原因で生じる紛争について

➢ 訴訟になる事案の多くは、判断能力を有していたか否かが争点になっていると思われる

➙ 東京地裁令和3年7月16日判決(令和元年(ワ)第30518号) 有効➙ 東京地裁令和3年4月22日判決(平成30年(ワ)第33173号・平成30年(ワ)第34196号) 有効

➙ 東京地裁令和3年3月3日判決(令和元年(ワ)第25537号) 無効など

➢ そのほか、本人の自書によるものであるか否かについても争われることがある

➙ 東京地裁令和3年6月23日判決(令和元年(ワ)第20063号) 有効

➙ 東京地裁令和3年4月28日判決(令和元年(ワ)第18640号) 有効

➙ 東京地裁令和3年3月4日判決(平成30年(ワ)第10423号・令和元年(ワ)第20888号) 無効など

  •  遺言書保管法に基づき保管された遺言につき、デジタル交付の可能性➙ 相続手続のデジタル化への第一歩とならないか・・・同意です。画像データに遺言書保管官が電子署名を付した遺言書情報証明情報あれば、印刷された遺言書情報証明書と同様の信頼性が確保されると考えられます。

→デジタル遺言作成が法改正により可能となった場合

□遺言者の本人確認情報が運転免許証、マイナンバーカードからマイナポータルから電子署名と併用、または変更。

1、司法書士が遺言書に付与された電子証明書の有効性確認などを行う

2,デジタル遺言に公的個人認証を付与

3、司法書士が本人確認及び意思確認を行ったことの記録として、電子証明書を付与。

・・・司法書士が公正証書遺言における公証人の役割のうち、本人確認及び意思確認を行う。収益の移転防止に関する法律により、特定取引時に司法書士が行っている本人確認などと類似。

2と3の順序が逆ではないのかなと思いました。

犯罪収益移転防止法施行規則6条1項1号ワに掲げる本人確認方法

3、登記に必要な書類を送信・・・委任状、住民票、被相続人の戸籍の附票など。委任状以外の官公庁が保管している書類については、デジタル遺言が実現した際、システム連携がどの程度進んでいるかによって紙かデータになる。

加工司法書士及び司法書士法人の業務のマネー・ローンダリング及びテロ資金供与に関するガイドライン

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00607.html

司法書士及び司法書士法人の業務のマネー・ローンダリング及びテロ資金供与に関するガイドライン

令和6年4月1日 法務省・日本司法書士会連合会

目   次 第1 本ガイドラインの目的等 …………………………………………… 2

1 本ガイドラインの目的 …………………………………………….. 2

2 本ガイドラインの基本的な考え方 …………………………………….. 3

  •  リスクベース・アプローチの位置付け ……………………………….. 3
  •  監督指導等の指針 ………………………………………………. 4

第2 司法書士に求められる取組み ………………………………………… 4

1 司法書士が取り組むべきリスクベース・アプローチ ………………………. 4

  •  リスクベース・アプローチの意義 …………………………………… 4
  •  リスクの特定及び評価 …………………………………………… 5
  •  リスク低減措置 ………………………………………………… 6
  •  リスク低減措置を講じてもリスクが許容される程度に低減されない場合の対応 … 8

 2 犯収法上の義務との関係 …………………………………………… 9

第3 監督指導等の対応 ………………………………………………… 9

1 基本的な考え方 ………………………………………………….. 9

2 司法書士会による監督指導等 ……………………………………….. 10

3 法務大臣等による監督 ……………………………………………. 10

第4 ガイドラインの実現に向けた取組み等 ………………………………… 11

 1 日司連による手引の策定 ………………………………………….. 11

2 司法書士会によるアウトリーチ等 ……………………………………. 11

 3 その他留意事項 …………………………………………………. 11 

第1 本ガイドラインの目的等

1 本ガイドラインの目的

 経済・金融サービスのグローバル化、暗号資産の普及といった技術革新により、資金の流れが多様化し、国境を越える取引が容易になっている中で、マネー・ローンダリングやテロ資金供与(以下「マネロン・テロ資金供与」という。)の手口も複雑化・高度化している。 こうした資金の流れを放置すると、不正な資金が将来の犯罪活動や犯罪組織の維持・強化に利用され、組織的な犯罪及びテロリズムを助長するとともに、これを用いた事業活動への干渉が健全な経済活動に重大な悪影響を与えるおそれがあり、我が国や国際社会にとっての大きな脅威につながる。

 このため、国際社会においては、不正な資金の移転が、国境を越え、脆弱な規制や不十分な対策の隙をついて行われるという認識のもと、金融活動作業部会(Financial Action Task Force(以下「FATF」という。))の多国間枠組みを通じて、マネー・ローンダリング、テロ資金供与、大量破壊兵器の拡散活動への資金供与への対策の国際基準(以下「FATF基準」という。)の策定・履行を協調して行い、世界全体での対策の実効性向上を図っている。我が国でも、犯罪による収益の移転防止に関する法律(平成19年法律第22号。以下「犯収法」という。)等を制定するなどして、FATF基準の履行を図っている。

 犯収法は、令和4年12月に改正され(国際的な不正資金等の移動等に対処するための国際連合安全保障理事会決議第1267号等を踏まえ我が国が実施する国際テロリストの財産の凍結等に関する特別措置法等の一部を改正する法律(令和4年法律第97号))、司法書士を含む一定の資格者に義務付けられる取引時確認事項が、犯収法第4条で規定する全ての事項に及ぶこととなった。司法書士及び司法書士法人(以下、両者を併せて「司法書士」という。)については、日本司法書士会連合会(以下「日司連」という。)が特定取引において果たすべき確認事項を示すチェックシートのモデルを作成し、これに基づいて司法書士が取引時確認の義務を果たすこととなる。また、司法書士は、犯収法第8条に規定される疑わしい取引の届出義務が課されないこととなったが、当該義務に代わる自主的な制度として、各司法書士会(以下、日司連と併せて「日司連等」という。)の会則において「特別事件報告」の制度が設けられた。

 しかし、社会情勢等が刻々と変化することに伴うマネロン・テロ資金供与のリスクの変化等に機動的に対応し、個々の依頼についてマネロン・テロ資金供与を目的とするものか否かを的確に判断するためには、これまで行われてきた、法令等の整備によるいわゆる「ルールベース・アプローチ」に基づく対策のみでは不十分であり、司法書士が直面するリスクに応じた柔軟な対応を取ることが不可欠である。

 そこで、本ガイドラインは、司法書士を対象とする「リスクベース・アプローチ」の枠組みを示し、これを遵守させることを目的とするものである(リスクベース・アプローチは、FATFによるマネロン・テロ資金供与対策に関する勧告における基本原則とされており、司法書士を含む特定非金融業者及び職業専門家(DNFBPs)に対しても遵守が求められている。)。リスクベース・アプローチは、自らの業務について直面しているマネロン・テロ資金供与のリスクを適時かつ適切に特定及び評価し、リスクに見合ったリスク低減措置(資産及び収入の状況の確認を含む。)を講ずることをいい、司法書士が業務を行う上での姿勢を示すものである。

 また、司法書士の業務におけるマネロン・テロ資金供与への対策を実効的なものとするために、法務省、日司連等が行うべき取組みや司法書士に対するモニタリングのあり方について明らかにする必要がある。法務省、日司連等が本ガイドラインを踏まえたマネロン・テロ資金供与対策への対応状況等についてモニタリングを行い、適切な是正措置を行うことで司法書士が果たすべき執務の一層の適正化を図るものである。

2 本ガイドラインの基本的な考え方

  •  リスクベース・アプローチの位置付け

 犯収法は、国民生活の安全と平穏を確保し、経済活動の健全な発展に寄与する上でマネロン・テロ資金供与の防止が極めて重要であること(犯収法第1条参照)に鑑みて、その防止のために特定事業者による措置等を規定している。このような法の趣旨及び目的並びに司法書士の職責(司法書士法(昭和25年法律第197号)第2条)に照らすと、司法書士は、自らの業務に関する依頼の目的がマネロン・テロ資金供与であると認めた場合には、その依頼を受けてはならないことになる。そのため、自らの業務に関する依頼を受けようとするときは、その依頼の目的がマネロン・テロ資金供与であるか否かについて慎重かつ的確に検討しなければならない。また、その検討の結果、依頼の目的がマネロン・テロ資金供与であることの疑いを払拭できない場合についても、その依頼を受けてはならない。

 リスクベース・アプローチは、依頼の目的がマネロン・テロ資金供与であるか否かを検討するための合理的な方法であり、司法書士は、自らの行う業務がマネロン・テロ資金供与に利用されないことが極めて重要な社会的責務であることに鑑みて、全ての依頼について、マネロン・テロ資金供与に関するリスク(以下単に「リスク」という。)の観点から、犯収法等の趣旨を踏まえ、リスクベース・アプローチに基づく対応を行わなければならない(リスクベース・アプローチに基づく検討を行うまでもなく依頼の目的がマネロン・テロ資金供与を目的とすることが明らかである場合には、当然、その依頼を直ちに拒否しなければならない。)。

  •  監督指導等の指針

 マネロン・テロ資金供与対策の実効性を確保するためには、司法書士会及び法務省が、司法書士によるマネロン・テロ資金供与対策の取組状況についてモニタリングを行う必要がある。また、司法書士によるマネロン・テロ資金供与対策が明らかに不十分であるなどの場合には、監督指導による是正が必要となる(以下、モニタリング及び監督指導を合わせて「監督指導等」という。)。 このような監督指導等の具体的な内容は、司法書士がマネロン・テロ資金供与に関わるリスク(以下「監督上のリスク」という。)に応じて決められるべきである(第3を参照)。

第2 司法書士に求められる取組み

1 司法書士が取り組むべきリスクベース・アプローチ

  •  リスクベース・アプローチの意義

 リスクベース・アプローチとは、司法書士が、業務に関して依頼を受けようとする際及び依頼を受けた後に、自らが直面しているリスクを適時かつ適切に特定及び評価し、当該依頼を行うことが許容される程度にまで当該リスクを実効的に低減するため、当該リスクに見合った対策を講ずることをいう。

 リスクベース・アプローチの枠組みは、司法書士の業務に関する依頼の目的がマネロン・テロ資金供与にあるか否かを検討するための基本原則であることから、本来的には、その適用対象は犯収法上の特定取引(犯収法第4条第1項)に限定されるものではなく、司法書士の業務(司法書士法第3条若しくは第29条に定める業務又はこれらに付随し、若しくは関連する業務)のうち、依頼者のためにする行為又は手続に係る依頼全般に適用されるべきものである。

  •  リスクの特定及び評価

ア リスクの特定及び評価

  リスクの特定は、司法書士が、自らが依頼を受け、又は依頼を受けようとする行為や依頼者の属性等のリスクを包括的かつ具体的に検証し、マネロン・テロ資金供与に係るリスクを特定するものであり、リスクベース・アプローチの出発点というべきものである。

 リスクの特定について、司法書士は、司法書士の業務について依頼を受けようとする場合には、依頼者の属性、依頼者との業務上の関係、依頼内容及び依頼に関係する事実(例えば、不動産登記の代理申請の依頼においては、当該申請の登記原因に係る事実)等の事情を包括的かつ具体的に検討した上で、これらを総合的に考慮してリスクを特定しなければならない。

 また、依頼を受けたであっても、同様にこれらの事情について新たなリスクが判明した場合には、これを踏まえてリスクの特定を検討する必要がある。そして、司法書士は、特定されたリスクについて、自らへの影響度等を踏まえて総合的な評価を行い、その依頼について高リスクであるか否かの判断を行わなければならない。

 このようなリスクの特定及び評価は、リスク低減措置の具体的な内容を基礎付けるものであり、リスクベース・アプローチの土台となるものである。

 イ 高リスクの依頼

 高リスクとは、その依頼を受けようとする場合に、特定したリスクの評価の結果、司法書士会の会則(以下「会則」という。)で定められた依頼者等の本人であることの確認並びに依頼の内容及び意思の確認(以下「依頼者等の本人確認等」という。)の義務や犯収法で規定された取引時確認等の義務を履行するだけでは許容されない程度のリスクが残ることをいう。

 ここで、「許容されない程度のリスク」とは、依頼の目的がマネロン・テロ資金供与であることの疑いを払拭できないことを意味している。この場合には、後記⑶アのとおり、追加的なリスク低減措置が講じられなければならない。

ウ リスクの特定及び評価の具体的方法

 司法書士は、リスクの特定及び評価に当たっては、自らの有する情報のほか、後述するリスクベース・アプローチに関する解説や国家公安委員会作成の「犯罪収益移転危険度調査書」(以下「危険度調査書」という。https://www.npsc.go.jp/policy/)などを参照したり、法務省等の関係省庁から提供される情報や日司連等から提供される情報等を踏まえたりするなどして、高リスクであるか否かの判断を適切に行うように努めなければならない。

 また、特定の依頼者との関係で継続的に業務に従事する場合には、依頼を受けた後においてもリスクの特定及び評価が必要とされる場合がある。

  •  リスク低減措置

ア リスク低減措置としての顧客管理

 前記⑵で特定及び評価されたリスクを許容される程度に実効的に低減するための措置を講ずることは、マネロン・テロ資金供与対策の実効性を決定付けるものである。リスク低減措置のうち、特に個々の依頼者に着目し、自らが特定及び評価したリスクを前提として、個々の依頼者の情報や当該依頼者の依頼内容等を調査し、調査の結果をリスク評価の結果と照らして、講ずべきリスク低減措置を判断及び実施する一連の流れを、本ガイドラインにおいては「顧客管理」という。リスク低減措置の中核的な事項である。

 依頼者との個別的な契約締結を前提とする司法書士の業務において、リスク低減措置は、通常、個々の依頼者を単位として講じられることとなる。そこで、司法書士は、特定及び評価されたリスクについて、個々の依頼者に着目したリスク低減措置を講ずることが基本となる。 顧客管理は、依頼を受けようとする際の顧客管理(以下「依頼時の顧客管理」という。)と依頼を受けた後の顧客管理(以下「依頼後の顧客管理」という。)に分けることができる。

 一般的にいえば、単発的な不動産登記手続の代理申請業務の多くは、依頼時の顧客管理のあり方が中心的な問題となり、財産管理業務など依頼者との間で継続的な関係が予定される場合には、依頼時の顧客管理に加えて依頼後の顧客管理のあり方も問題となることが多い。

イ 依頼時の顧客管理の内容

  依頼時の顧客管理は、依頼者等の本人確認等を典型例とする。講ずべき措置の内容は、特定及び評価されたリスクの内容及び当該リスクが高リスクであるか否かに応じて決められるべきである。本ガイドラインにおいては、高リスクと判断した場合に講ずべき顧客管理を「厳格な顧客管理」といい、高リスクではないと判断した場合に講ずべき顧客管理を「通常の顧客管理」という。 (ア)厳格な顧客管理(高リスクの場合)

  高リスクと判断した場合には、依頼者等の本人確認等を行うだけではリスクを許容される程度に低減することはできないため、追加的なリスク低減措置を講ずることが求められる。追加的なリスク低減措置の具体的な内容は、犯収法第4条第2項に規定する取引(以下「ハイリスク取引」という。)における追加的な確認方法及び後述するリスクベース・アプローチに関する解説や危険度調査書に記載された取組内容等を参照しつつ、司法書士が直面する具体的なリスクの内容に応じて決められるべきである。なお、高リスクと判断した場合には、その判断根拠や講じたリスク低減措置の内容について記録化しておくべきである。

  • 通常の顧客管理

  高リスクではないと判断した場合には、司法書士の職責上求められる依頼者等の本人確認等の義務や犯収法で規定された取引時確認の義務を履行することで、リスクを許容される程度に低減することができる(後述する「簡素な顧客管理」は、「通常の顧客管理」の一態様として整理される。)。

ウ 依頼後の顧客管理

 依頼者との契約に基づく財産管理業務に従事したり、同一の依頼者から継続的に登記申請手続の代理業務に従事したりする場合など、特定の依頼者との関係で継続的に業務に従事するときには、依頼時の顧客管理によって低減されたリスクを依頼後も適切に管理しなければならない。これに加えて、業務に従事する過程で新たなリスクが判明した場合には、リスクの評価を行い、その内容に応じたリスク低減措置を講じなければならない。このように、依頼後の顧客管理は、継続的なリスク管理と新たなリスク等への対応に分けることができる。

  • 継続的なリスク管理

 継続的なリスク管理は、依頼時の顧客管理において取得した情報を更新していくことが想定されている。その更新の頻度については、高リスクであるか否かに応じて決められるべきであるが、依頼時の顧客管理を実行することにより許容される程度にリスクが低減されていることから、依頼後に新たなリスク等が生じたり、依頼時に行った適切な顧客管理をもってしても判明しなかった事情が事後的に判明したりしたといった場合を除いて、適切な顧客管理の実効性が妨げられない範囲で、取引の円滑な遂行等を考慮した顧客管理が許容される(以下、このような顧客管理を「簡素な顧客管理」という。)。

  • 新たなリスク等への対応

 特定の依頼者との関係で継続的に業務に従事する過程で新たなリスク等が判明したり、依頼時に行った適切な顧客管理をもってしても判明しなかった事情が事後的に判明したりしたといった場合には、依頼を受ける際と同様のリスク評価を行わなければならず、これによってその依頼が高リスクと判断された場合には、速やかに依頼時の顧客管理において取得した情報を更新するとともに、厳格な顧客管理として追加的なリスク低減措置を講じなければならない。その内容は、前記イ(ア)に記載したことが基本的には該当する。

  •  リスク低減措置を講じてもリスクが許容される程度に低減されない場合の対応

 リスクベース・アプローチに基づくリスク評価の結果、その依頼が高リスクと判断され、リスク低減措置を講じてもそのリスクが許容される程度まで減ぜられなかったときには、依頼の目的がマネロン・テロ資金供与であることの疑いが払拭できない場合に該当するとして、司法書士は、その依頼を拒まなければならず、受任後であれば、辞任しなければならない。

 依頼の目的がマネロン・テロ資金供与であることの疑いが払拭できない場合であるかに関する判断過程は合理的なものである必要があり、前記⑴から⑶までのリスクベース・アプローチの手順に則ったものである必要がある。また、リスクが許容される程度を超えているかについては、リスク低減措置を講じた後に残るリスクの程度が、高リスクと同程度のものといえるかによって判断されることとなる。

 上記の枠組みは、依頼後に新たなリスク等が生じた場合についても同様に当てはまる。

 2 犯収法上の義務との関係

  前記1のリスクベース・アプローチは、司法書士の業務に関する依頼の目的がマネロン・テロ資金供与であるかどうかを合理的に検討する枠組みであり、これをもって司法書士が犯収法上の義務の履行を免れるものではないことに注意する必要がある。

  例えば、司法書士は、リスクベース・アプローチの枠組みに基づき依頼を高リスクではないと判断した場合であっても、犯収法上の取引時確認等を要する取引類型については、これを実施しなければならないのは当然である。

第3 監督指導等の対応

 1 基本的な考え方

  マネロン・テロ資金供与対策の実効性を確保するためには、司法書士に対する適切な監督指導等が行われる必要がある。監督指導等は、大きく分けて、司法書士会による監督指導等と法務大臣又は法務局及び地方法務局の長による監督(以下「法務大臣等による監督」という。)に区別することができる。司法書士によるマネロン・テロ資金供与対策には、犯収法上の取引時確認等や会則上の依頼者等の本人確認等のように、法令又は会則に基づいて司法書士による遵守が義務付けられている対策(以下「法令等に基づく対策」という。)と、リスクベース・アプローチのように、法令又は会則に基づいて義務付けられているものではないが、ガイドライン等によって取組みが求められている対策(以下「ガイドライン等に基づく対策」といい、法令等に基づく対策と合わせて「司法書士によるマネロン・テロ資金供与対策」という。)が存在する。

 司法書士会による監督指導等は、法令等に基づく対策とガイドライン等に基づく対策の双方について行われるのに対し、法務大臣等による監督は、特に法令等に基づく対策の不遵守等を対象として行われることが想定されている。 司法書士会による監督指導等や法務大臣等による監督の方法は、いずれも監督上のリスクの内容及び性質、当該リスクの程度等に応じて決められるべきである。

2 司法書士会による監督指導等

  司法書士会は、司法書士によるマネロン・テロ資金供与対策が十分であるかについてモニタリングを行う。司法書士会によるモニタリングは、司法書士から提出された特定事件報告書に基づいて行うこととなる(特定事件報告書は、司法書士会によるモニタリング等の基礎となるものであるから、その記載事項は、その時点での社会的情勢等に反映した適切なものとされなければならない。そのため、必要に応じて、記載内容は改定されることとなる。)。

 司法書士会は、特定事件報告書の記載内容を通じて司法書士のマネロン・テロ資金供与対策について確認を行う。特定事件報告書に記載された内容に照らすと司法書士が行うべきマネロン・テロ資金供与対策として不十分な措置がとられていると認めた場合には、当該司法書士から事情聴取をした上で、当該司法書士に対して適切な助言及び指導を行うこととなる。 特定事件報告書の性質やこれに基づいた司法書士会による助言及び指導の実効性を確保する必要性があることを踏まえると、司法書士が特定事件報告書の提出に全く応じない場合、特定事件報告書の内容に基づく司法書士会による助言や指導に従わず、執務の内容等に改善がみられない場合、特定事件報告書に虚偽の記載をした場合には、監督上のリスクが高いものとして、司法書士会による注意勧告等の的確な対応をとることが要請される。 日司連は、司法書士会に対し、司法書士会による監督指導等の対応指針を示し、助言及び指導を行うこととする。

3 法務大臣等による監督

 司法書士会は、その会に所属する司法書士に対する指導権限があることから、まずもって司法書士会による監督指導等によって改善が図られることとなる。 しかし、司法書士会による監督指導が功を奏しない事案、法令等の違反の程度が重大である事案、司法書士会による自治的な取組みに委ねることが相当でない事案など、監督上のリスクが特に高いと認められる場合には、法務大臣等による監督が検討されなければならない。

 法務大臣等による監督は、犯収法上の監督権限(犯収法第15条以下)及び懲戒権限(司法書士法第47条及び第48条)の行使を通じて行われる。

 法務局及び地方法務局の長は、犯収法上の監督権限として、報告等を求める権限(同法第15条)、立入検査等の権限(同法第16条第1項)、指導等の権限(同法第17条)及び是正命令の権限(同法第18条)を有している(犯収法第15条以下、犯罪による収益の移転防止に関する法律施行令(平成20年政令第20号)第35条。

 なお、罰則規定につき犯収法第25条、第26条及び第31条)。また、法務大臣は、司法書士法上、司法書士に対する懲戒権限を有しており、「司法書士及び司法書士法人に対する懲戒処分の考え方(処分基準等)」において、犯収法違反を伴う本人確認等義務違反が違反行為として明記されている(別表番号8及び15)。

  法務大臣等による監督は、対象となる事案の性質及び内容、法令等の違反の程度、それぞれの権限の性質や趣旨を踏まえて、どの措置をとるかが決定されるべきである。また、具体的な法務大臣等による監督の内容は、司法書士による法令等の違反の内容やその程度等から評価される監督上のリスクに応じて決定されるべきである。

第4 ガイドラインの実現に向けた取組み等

1 日司連による手引の策定

 司法書士がリスクの特定及び評価を適切に行い、実効的なリスク低減措置を可能とするためには、広くマネロン・テロ資金供与に関する最新の情報を収集し、分析することが有益である。そこで、日司連は、司法書士会と連携して参考事例を集積及び分析し、リスクベース・アプローチに基づく対応を行う上で参考となる事項をまとめた手引を策定し、司法書士に提供するものとする。

 リスクベース・アプローチに関する解説の内容は、社会情勢等が日々大きく変化することに伴うマネロン・テロ資金供与のリスクの変化等に機動的に対応するために、定期的に更新されることが想定される。

2 司法書士会によるアウトリーチ等

 司法書士会は、日司連及び法務省とも連携しつつ、リスクベース・アプローチその他のマネロン・テロ資金供与への対策に関する情報を、引き続き研修その他の機会を通じて司法書士に提供するものとする。また、日司連は、関係機関からの情報提供を受けたり、関係機関との間で意見交換等をしたりすることで、適時情報を把握して、司法書士会を通じて会員に情報提供をするものとする。

3 その他留意事項

 日本では、外国為替及び外国貿易法(昭和24年法律第228号)や国際連合安全保障理事会決議第1267号等を踏まえ我が国が実施する国際テロリストの財産の凍結等に関する特別措置法(平成26年法律第124号)に基づいてタリバーン関係者やテロリスト等に対し、資金その他資産の使用・資金の流れを防止するための資産凍結措置を実施している。司法書士においても、個々の依頼者に着目するほか、下記の対応をとることが求められる。

・取引の内容(送金先、取引関係者(その実質的支配者を含む)等)について最新の制裁リストと照合するなど、的確な運用を図ること

・制裁対象者が新たに指定された際には、遅滞なく、特定受任行為の代理等の依頼者に係る情報と照合するなど、国内外の制裁に係る法規制等の遵守その他リスクに応じた必要な措置を講ずること

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