『市民と法No.142【特集】他士業からみた司法書士──さらなる連携に向けて──』

『市民と法No.142【特集】他士業からみた司法書士──さらなる連携に向けて──』2023年08月、民事法研究会

大論公論

 時代の動きに応える司法アクセス拡充の取組みを

 日本司法支援センター理事長 丸島俊介

2022年の法テラスによる情報提供件数、62万件を超える。

短期集中連載

 改正民事訴訟法は司法書士実務を変えるか(7)

 事件の終了(判決・和解)と民事執行手続

 司法書士 山田茂樹

登記が残されたままの古い仮差押登記について、

法制審議会民事執行・民事保全・倒産及び家事事件等に関する手続(IT化関係)部会第14回会議(令和4年12月2日開催)

https://www.moj.go.jp/shingi1/shingi04900001_00170.html

○小澤委員 ありがとうございます。その他の(3)の配当等の額の供託についてですけれども、この配当などの額の供託について、御提案の規律を設けることに賛成をいたします。司法書士として長年不動産取引に関する登記実務をしておりますと、取り分け古い時代の登記記録に抵当権等の仮登記がなされ、そのままとなっている物件に遭遇することが珍しくないのですが、御提案の内容は、競売により既に抹消された仮登記等について、配当留保された供託の帰趨についての規律を定めることにより、登記後放置されたとも言える仮登記権利者について、執行手続から除外する道が設けられるものと理解をしています。

民事執行手続からは外れてしまいますが、将来的には、登記されたままとなっている古い仮差押えについても、係属事件番号を公示するなど、登記権利者の保護と取引の円滑などとのバランスに配慮しつつ、検討されるべきだろうと思っておりますが、裁判IT化に関しては、まずは、この顕著な問題となっている配当等の額の供託についての規律を定めることが妥当であると考えております。

【論説/解説】

・司法書士による遺産承継業務の実務の課題と展望

 早稲田大学教授 山野目章夫

  一般社団法人日本財産管理協会副理事長・司法書士 佃 一男

               同副理事長・司法書士 小越 豊

                 同理事・司法書士 藤井里絵

司法書士が行う遺産承継業務の根拠規定・

司法書士3条か司法書士29から導かれる司法書士法施行規則31条か。

遺産分割協議成立への支援業務。

 遺産分割協議が始まった後。

 紛争性と特別受益。

 司法書士として、支援型と調整型・・・支援型は行き着くと代理行為となる可能性がある、との指摘。調整型は相続人間の認識の相違があり、司法書士が証拠書面や根拠法によって説明しても折り合いがつかない場合は委任契約を終了する、という整理。支援型について、私の認識(民事信託支援業務)と違い、そのような解釈もあるのだなと思いました。

 中立型支援業務、というのが、相続人全員に対して一定の要件の順守を求めることや、司法書士登録年数を求めることなど、初めてそのような実務を知りました。

・未成年後見実務における「身上保護」および「親権」についての省察

 公益社団法人佐賀県社会福祉士会・成年後見センターぱあとなあ・社会福祉士 江藤 渉

各専門職のチームによる意思決定支援の必要性の指摘。

・賃貸保証業者の保証契約書と適格消費者団体による差止請求の当否(下) ――最判令4・12・12が建物の賃貸借実務に与える影響――

 弁護士 升田 純

 消費者契約法10条に関する判決であること。

 適格消費者団体の提起に係る差止請求訴訟における判断であること。

 判決が判断していない、特約について議論、訴訟、賃貸保証業者による改定が予想されること。改正後の効力がどこまで及ぶか。

【特集】他士業からみた司法書士――さらなる連携に向けて――

[1]土地家屋調査士との連携

   土地家屋調査士 内野 篤

 表題部所有者の住所が変更されていない場合、既に亡くなっている場合など。相続土地国庫帰属制度を利用したい方がいた場合の、要件を満たしているかの調査。

[2]社会福祉士との連携

   認定社会福祉士 星野美子

成年後見制度を通じた連携。親子について、親に社会福祉士、子に司法書士が成年後見人に就任した事例紹介。

[3]行政書士との連携

   特定行政書士・主任介護支援専門員・宅地建物取引士 村尾和俊

 ケアマネジャーの資格を持っている行政書士と、専業の行政書士では、少し視点が異なるのではないかな、と感じました。P74、医療と介護の「上位」にあるみたいな感覚、というのは人により違うのかなと思います。私は、医師を司法書士、介護を行政書士、などと考えたことはありませんでした。医療でも、医師、看護師、看護助手などで異なると思いますし、介護でも、介護福祉士、介護助手、社会福祉士、介護支援専門員などで異なると思います。

士業とクリニック経営は似ている部分があると思います。

[4]介護支援専門員との連携

   主任介護支援専門員 上川清香

 保険外対応(無償)を多数行っていること。

簡裁民事実務研究101

 中古自動車売買における契約不適合責任

 神奈川簡易裁判所判事 丸尾敏也

 契約不適合に関する民法562条2項、541条、542条、563条、654条、415条、543条、564条、566条、166条、572条について。

現代家族の肖像と法律問題(30)

 弁護士 升田 純

 民法1012条、1014条と、最判平成7月1月24日判時1523号P81、最判平成14年6月10日判時1791号P59の変更。

すぐに使える! 資産税の豆知識44 令和6年1月1日以後の生前贈与と、それに関連する相続税について

 税理士 福壽一雄

 額面通りに7年間の生前贈与が適用されるのは、令和13(2031)年1月1日以後の相続開始から。

片岡武・村主幸子・日野進司・川畑晃一・小圷恵子/著『家庭裁判所における財産管理・清算の実務―不在者財産管理人・相続財産清算人・特別縁故者に対する相続財産分与―』

片岡武・村主幸子・日野進司・川畑晃一・小圷恵子/著「家庭裁判所における財産管理・清算の実務―不在者財産管理人・相続財産清算人・特別縁故者に対する相続財産分与―」2023年、日本加除出版

第1編 不在者の財産管理

・構成

 手続きの流れ、設例・解説、裁判例、書式、視点、参考、実務、注意点、裁判所書記官からの要望、などの項目に分かれています。

P7 不在者の財産のうち、特定の不動産のみを管理する必要がある場合の対応・・・所有者不明土地管理命令(民法264条の2)、所有者不明土地管理命令(民法264条の8)を利用する。不在者財産管理人は、選任されたとしても上の管理命令の申し立てを行うことになる。

書式で、家庭裁判所のホームページで公開されているファイル同じ種類の書式(不在者財産管理人の選任申立書など)と、どこが異なるのか、書籍に記載する必要があるのか、分かりませんでした。

 ~をする庁もある(P27)。~を求めない庁もある(P30)、などの記載があり、各家庭裁判所によって運用が違うということが分かります。

P38 管理経過一覧表の記載例では、費用立替がずっと続いていますが、P34の設例1-9の解説と異なるのではないかと思いました。

P54 帰来時弁済型の遺産分割協議が認められる要件は、とても狭いと考えますが、初めて知りました。

P60 不在者が被相続人より後に死亡していた場合には、相続財産清算人の選任を申し立てて相続財産清算人に引き継ぐこととなる。

P106 委任管理人と不在者の財産管理人との関係

P108の意義、の記載は、要件と読み替えました。

P113 警察への家出人捜索願提出の有無及びその結果について、家出人捜索願を提出したが、保管期間が終了している場合、警察官が再度、親族に対して事情聴取をして書類を作成してくれる場合があります。

P125 令和3年改正(家事事件手続法146条の2、147条

により、不在者財産管理人による金銭供託で失踪宣告を回避することも可能。

P123 相続財産清算人のパターン化(債務超過型、特別縁故型、国庫帰属型。)。

第2編 相続財産の清算

P143 相続財産法人に登記義務(例えば抵当権抹消登記義務)があると考えられる場合でも、債務超過の場合、特別代理人の選任による対処の可能性もある。

P149 割合的包括遺贈は、原則として、相続人があることが明らかでないとき、には該当しない。部分的包括遺贈の場合、原則として相続財産清算人を選任する必要はない。例外として、未登記建物の表示登記、保存登記をしたうえで受遺者名義の登記をしたい場合、相続財産清算人を選任する必要が生じることもある。

 清算型遺贈の場合、遺言執行者の指定があっても、相続財産清算人を選任する必要がある、との記載。

P157 遺言執行者が相続財産清算に就任することにつき、可能と記載。

P160 相続財産清算人の選任にかかる、予納金について、東京家庭裁判所では、100万円。

P222 不動産の売却代金を優先債権者に弁済するような事案の場合、解約手付けに関する条項を入れないことが多い(倍返しするための原資がないため)、との記述。気にしたことがなかったので、注意したいと思います。

P233 相続財産清算人の権限内行為として、株主総会出席、の記載。

第3編 特別縁故者に対する相続財産分与制度

P270 借地借家法36条との関係。

P277 親族関係の有無は、関係がない。

P282 法人、権利能力なき社団も、特別縁故者のなり得るかについて、肯定。

P295 平成元年11月30日民三4913号民事局長通達。

P297~特別縁故者への賃借権、借地権の分与について。

P341 特別縁故者に、全部分与を認めない理由・・・遺言が作成されていない(全部あげたいなら、遺言を作成しているはず、だという家庭裁判所の認識。)。

P349 昭和37年6月15日民事甲1606号民事局長通達。

 

加工_法制審議会担保法制部会第40回会議(令和5年11月7日開催)

加工_法制審議会担保法制部会第40回会議(令和5年11月7日開催)部会資料37―1

法務省

https://www.moj.go.jp/shingi1/shingi04900001_00223.html

担保法制部会資料37―1

担保法制の見直しに関する要綱案のたた き 台 1⑴

目次

第1

定義 3

第2

譲渡担保契約に関する総則規定 4

1譲渡担保権の内容 4

2譲渡担保権の被担保債権の範囲 4

3譲渡担保権者による譲 渡担保財産の譲渡 4

4譲渡担保権設定者の処分権限 5

5同一の譲渡担保財産についての重複する譲渡担保契約 5

6譲渡担保権の不可分性 5

7物上代位 5

8物上保証人の求償権 6

9根譲渡担保契約の効力 6

第3

動産譲渡担保契約の効力 13

1動産譲渡担保権の及ぶ範囲 13

2動産譲渡担保権者による果 実の収取 13

3動産譲渡担保権設定者による譲渡担保動産の使用及び収益 13

4妨害の停止の請求等 14

5牽連性のある金銭債務のみを担保する動産譲渡担保権の対抗力 14

6動産譲渡担保権の順位 15

7動産譲渡担保権の順位の変更 15

8動産譲渡担保権と先取特権との競合 15

9動産譲渡担保権と動産質権との競合 16

10占有改定で対抗要件を備えた動産譲渡担保権の順位の特例 16

11牽連性のある金銭債務を担保する動産譲渡担保権の順位の特例 16

12転動産譲渡担保 16

第4

集合動産譲渡担保契約の効力 17

1特定範囲所属動産を一体として目的とする動産譲渡担保契約 17

2集合動産譲渡担保権についての対抗要件の特例 18

3集合動産譲渡担保権設定者による特定範囲所属動産の処分 18

4補充義務 19

5集合動産譲渡担保権に基づく物上代位等 19

6動産特定範囲に動産を属させる行為に関する詐害行為取消請求 20

第5

債権譲渡担保契約の効力 20

1混同の特例混同の特例 ………….. 20

2債権譲渡担保権の順位債権譲渡担保権の順位 .20

3債権譲渡担保権と先取特権との競合債権譲渡担保権と先取特権との競合 ………………. 20

4 債権譲渡担保権と債権譲渡担保権と債権を目的とする質権との競合債権を目的とする質権との競合 .21

5債権譲渡担保権の順位の変更債権譲渡担保権の順位の変更 .21

6転債権譲渡担保転債権譲渡担保 …..21

第6 集合債権譲渡担保契約の効力集合債権譲渡担保契約の効力 …………22

1 集合債権譲渡担保権設定者による債権特定範囲に属する債権の取立て集合債権譲渡担保権設定者による債権特定範囲に属する債権の取立て .22

2 補充義務の規定等の準用補充義務の規定等の準用 ..22

第1 定義

次の1から15 までに掲げる 用語の意義は、それぞれに定めるところによる ものとする 。

1譲渡担保契約 金銭債務を担保するため、債務者又は第三者が動産、債権その他の財産【財産の範囲についてはP】を債権者に譲渡することを約する契約をいう。

2譲渡担保財産 譲渡担保契約の目的である財産をいう。

3譲渡担保権 譲渡担保契約に基づいて譲渡担保財産の譲渡を受ける者が譲渡担保財産について取得する権利をいう。

4譲渡担保権者 譲渡担保権を有する者をいう。

5譲渡担保権設定者 譲渡担保契約の当事者のうち譲渡担保財産を譲渡する者(その者が譲渡担保財産について有する権利を他の者に譲渡した場合にあっては、その権利を現に有する者)をいう。

6動産譲渡担保契約 譲渡担保契約のうち、動産を目的とするものをいう。

譲渡担保動産 動産譲渡担保契約の目的である 動産をいう。

8動産譲渡担保権 動産譲渡担保契約に基づいて譲渡担保動産の譲渡を受ける者が譲渡担保動産について取得する権利をいう。

9動産譲渡担保権者 動産譲渡担保権を有する者をいう。

10動産譲渡担保権設定者 動産譲渡担保契約の当事者のうち譲渡担保動産を譲渡する者(その者が譲渡担保動産について有する権利を他の者に譲渡した場合にあっては、その権利を現に有する者)をいう。

11債権譲渡担保契約 譲渡担保契約のうち、債権を目的とするものをいう。

12譲渡担保債権 債権譲渡担保契約の目的である債権をいう。

13債権譲渡担保権 債権譲渡担保契約に基づいて譲渡担保債権の譲渡を受ける者が譲渡担保債権について取得する権利をいう。

14債権譲渡担保権者 債権譲渡担保権を有する者をいう。

15債権譲渡担保権設定者 債権譲渡担保契約の当事者のうち譲渡担保債権を譲渡する者 (その者が譲渡担保債権について有する権利を他の者に譲渡した場合にあっては、その権利を現に有する者)をいう。

説明

1本文は、 譲渡担保契約に関する用語を定義するものである。所有権留保に関する定義については次回以降に改めて 提示する予定である。

なお、 譲渡担保契約及び所有権留保契約に関する規定を設けるに当たっては、 その効力、実行及び破産手続等の取扱いについての規定を含む新法を制定する方向で検討している 。

2「譲渡担保契約」の定義は、 部会資料 28 第1、 2と実質的な変更はない。 現在の譲渡担保権は譲渡することができればどのような財産であっても 目的 とすることができるため、新たに設ける規定においても 、その目的となる財産の範囲について、(不動産及びこれに関する権利を除くほか)特段の制限を設けないことが考えられる。しかし、動産であっても抵当権の目的となり得るものや物的編成主義による登記登録制度を有する財産については、非占有型の担保権に関する新たな規定を適用する必要性に疑問がある上、例えば譲渡担保権と抵当権との優劣関係をどのように規定するかという問題や、動産譲渡登記が対抗要件としての意味を有しないなどの特殊性があるため、譲渡担保権に関する新たな規定の適用対象とするかどうかについて、改めて検討する必要がある。

そこで、本文においては【P】としてとしており、別途その点を取り扱う予定である。

3 「譲渡担保権」のうち、「譲渡担保財産の譲渡を受ける者」は、譲渡担保契約によって譲譲渡担保権者となる者をいい、その具体的な権利の内容は、後記第2、1の「譲渡担保権の「譲渡担保権の内容」において示している。

4 譲渡担保権を有する者は、必ずしも譲渡担保契約において譲渡担保財産の譲渡を受けた者に限定されるものではなく、被担保債権が譲渡された場合にはこれに随伴して譲渡担保者に限定されるものではなく、被担保債権が譲渡された場合にはこれに随伴して譲渡担保権も移転することになる。「譲渡担保権者」は、このような譲渡担保権の移転を受けた者も「譲渡担保権者」は、このような譲渡担保権の移転を受けた者も含まれる。

5 「譲渡担保権設定者」は、譲渡担保契約の当事者である譲渡担保財産を譲渡する者のほか、その者が譲渡担保財産について有する権利を他の者に譲渡(担保権付きの財産の譲渡)した場合譲渡を受けた者が設定者としての地位に立つため、「譲渡担保権設定者」をこのような譲渡を受けた者をも含むもの者をも含むものとして定義している。

6 動産譲渡担保契約及び債権譲渡担保契約についても、以上に倣ってそれぞれ定義規定を設けている。

第2 譲渡担保契約譲渡担保契約に関する総則規定

1 譲渡担保権の内容

譲渡担保権者は、譲渡担保財産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有するものとする。

(説明)

譲渡担保権の中心的内容が、譲渡担保財産に対する優先弁済権にあることを定めるものであり、部会資料28第第2、1と同様である。

2 譲渡担保権の被担保債権の範囲譲渡担保権の被担保債権の範囲

譲渡担保権は、元本、利息、違約金、譲渡担保権の実行の費用及び債務の不履行によって生じた損害の賠償を担保するものとする。ただし、譲渡担保契約に別段の定めがあるときは、この限りでないものとする。

(説明)

譲渡担保権の被担保債権の範囲を定めるものであり、部会資料28(第2、2)から変更はない。

3 譲渡担保権者による譲渡担保財産の譲渡

譲渡担保権者による譲渡担保財産の譲渡担保権者は、譲渡担保権の実行手続によらなければ、譲渡担保財産を譲渡することができないものとする。

(説明)

譲渡担保契約の効力は、債権を担保するために必要な限度で制限されており、譲渡担保権が、その実行手続によらなければ譲渡担保財産の譲渡をすることができない旨の性質を有することを定めるものであり、部会資料8第2、4から変更はない。

4 譲渡担保権設定者の処分権限譲渡担保権設定者の処分権限

譲渡担保権設定者は、譲渡担保財産について、その有する権利を第三者に譲渡することができるものとする。

(説明)

譲渡担保権設定者の処分権限に関し、設定者が、譲渡担保財産を担保権の負担付きで第三者に有効に譲渡することができる譲渡することができるか否かについて、これをすることができるとする旨の規律であり、部会資料33第3の【案3.1】を前提としたものである。

なお、設定者が有する譲渡担保財産についての権利が譲渡された場合の実行の場面における通知等については当初の設定者に対してすることができる等の規律を設ける予定である。

部会資料33第3第3の【案の3.1】においては、上記の譲渡について、譲渡担保契約により、禁止又は制限することができる旨の規律を隅付き括弧により示していた。

しかし、原則として譲渡することができる財産を当事者の合意によって譲渡することができないものとする(第三者への譲渡の効力を無効とする)ことについては疑問もある。そこで、実行手続において、担保権者が当初の設定者に対して通知等をすれば足りる旨の規律を設けることとし、担保権付きの譲渡を制限又は禁止する旨の約定を可能とする旨の規定は設けないこととしている。

5 同一の譲渡担保財産についての重複する譲渡担保契約

譲渡担保財産は、重ねて譲渡担保契約の目的とすることができる財産は、重ねて譲渡担保契約の目的とすることができるものとするものとする。

(説明)

同一の譲渡担保財産について後順位の譲渡担保権を設定することができる旨の規定であり、部会資料28第2、3から変更はない。

6 譲渡担保権の不可分性

譲渡担保権者は、被担保債権の全部の弁済を受けるまでは、譲渡担保財産の全部について、譲渡担保権を行使することができるものとする。

(説明)

譲渡担保権の不可分性は、部会資料28第3、6において動産譲渡担保契約の規律として提案していたものであるが、これは、動産譲渡担保契約に限られず、譲渡担保契約一般に妥当すると考えられることから、譲渡担保契約の総則規定として設けることとしている。

7 物上代位

(1) 譲渡担保権は、譲渡担保財産の売却、賃貸、滅失又は損傷によって譲渡担保権設定者が受けるべき金銭その他の物に対しても、行使することができるものとする。この場合においては、譲渡担保権者は、その払渡し又は引渡しの前に差押えをしなければならなものとするものとする。

(2)上記(1)前段の規定に基づいて譲渡担保権者が行使する権利は、その金銭その他の物の払渡し又は引渡しを目的とする債権を目的とする質権又は譲渡担保権であって、上記(1)後段の規定による差押えの後に対抗要件が具備されたものに優先するものとする。

(3)譲渡担保権の目的である財産について、その譲渡担保権に劣後する先取特権、質権又その譲渡担保権に劣後する先取特権、質権又は他の譲渡担保権を有する者(以下この(3)において「劣後担保権者」という。)は、その順位により、譲渡担保権設定者が支払を受けるべき帰属清算金、処分清算金又は債権譲渡担保権者が譲渡担保債権について受けた給付の価額と被担保債権の額の差額に相当する金銭若しくは残額に対しても、その権利を行使することができるものとする。

この場合においては、劣後担保権者は、その払渡し前に差押えをしなければならないものとする。

(説明)

譲渡担保権の物上代位に関する規律であり、(1)及び(2)は、部会資料28第2、5第から変更はない。

なお、(2)について、部会資料部会資料28第2、5については、公示性の低い占有改定による対抗要件具備を維持すること自体について検討が必要である。先取特権は対抗要件具備自体がなく、譲渡担保権の物上代位は追求効の観点から、抵当権と同様のルールとすることも考えられる、等の意見が出されたところである。

譲渡担保権の負担付きの財産が譲渡された場合、譲渡担保権の負担も移転することからすると、抵当権と同様と考えることもできるが、譲渡担保権につき占有改定の方法による対抗要件具備自体は残ることからすると、公示の観点からは本文の規律については維持することとしている。

本文(3)は、後順位担保権者による清算金等に対する物上代位の規定である。これは、(1)の規律からは直接導かれないと考えられることから、仮登記担保法第4条第1項の規定に倣い、これを明文で設けるものである。

8 物上保証人の求償権

他人の債務を担保するため譲渡担保契約を締結した譲渡担保権設定者は、その債務を弁済し、又は譲渡担保権の実行によって譲渡担保財産を失ったときは、民法に規定する保証債務に関する規定に従い、債務者に対して求償権を有するものとする。

(説明)

物上保証人の求償権については、部会資料28第3、6において動産譲渡担保契約の規律として提案していたものであるが、譲渡担保契約一般に妥当すると考えられることから、譲渡担保契約の総則規定として設けている。譲渡担保契約の総則規定として設けている。

9 根譲渡担保契約の効力根譲渡担保契約の効力

  • 不特定の債権を担保するための譲渡担保契約

譲渡担保契約は、債務者との間に生ずる不特定の債権を担保するためにも締結することができるものとする。

  • 根譲渡担保権の被担保債権の範囲

ア 上記(1)の債権を担保するために締結された譲渡担保契約(以下「根譲渡担保契約」という。)に基づく譲渡担保権(以下「根譲渡担保権」という。)を有する者(以下「根譲渡担保権者」という。)は、確定した元本並びに利息その他の定期金及び債務の不履行によって生じた損害の賠償の全部について、その根譲渡担保権を行使することができるものとする。ただし、当事者は、根譲渡担保契約において極度額(根譲渡担保権を行使することができる被担保債権の上限の額をいう。以下同じ。)を定めることができるものとする。

イ 債務者との取引によらないで取得する手形上若しくは小切手上の請求権又は電子記録債権を根譲渡担保権の被担保債権とした場合において、次に掲げる事由があったときは、その前に取得したものについてのみ、その権利を行使することができるものとする。ただし、その後に取得したものであっても、その事由を知らないで取得したものについては、これを行使することを妨げないものとする。

(ア)債務者の支払の停止

(イ)債務者についての破産手続開始、再生手続開始、更生手続開始又は特別清算開始

(ウ)譲渡担保財産に対する強制執行若しくは担保権の実行としての競売による差押え

(3)根譲渡担保権の被担保債権の債務者の変更

ア 元本の確定前においては、根譲渡担保権の被担保債権の債務者の変更をすることができるものとする。

イ 根譲渡担保権の極度額の定めがない場合における債務者の変更は、根譲渡担保権に劣後する譲渡担保権を有する者その他の利害関係を有する者の承諾を得なければ、することができないものとする。

(4)根譲渡担保権の極度額の変更根譲渡担保権の極度額の変更

根譲渡担保権の極度額の変更は、利害関係を有する者の承諾を得なければ、することができないものとする。

(5)根譲渡担保根譲渡担保権の元本確定期日の定め権の元本確定期日の定め

ア 根譲渡担保権の担保すべき元本については、その確定すべき期日を定め又は変更することができるものとする。

イ 上記(3)イの規定は、アの場合について準用するものとする。

ウ アの期日は、これを定め又は変更した日から5年以内でなければならないものとする。

(6)根譲渡担保権の被担保債権の譲渡等

ア 元本の確定前に根譲渡担保権者から債権を取得した者は、その債権について根譲渡担保権を行使することができないものとする。元本の確定前に債務者のために又は債務者に代わって弁済をした者も、同様とするものとする。

イ 元本の確定前に債務の引受けがあったときは、根譲渡担保権者は、引受人の債務について、その根譲渡担保権を行使することができないものとする。

ウ 元本の確定前に免責的債務引受があった場合における債権者は、民法第472条の4条第1項の規定にかかわらず、根譲渡担保権を引受人が負担する債務に移すことができないものとする。

エ 元本の確定前に債権者の交替による更改があった場合における更改前の債権者は、民法第518条第1項の規定にかかわらず、根譲渡担保権を更改後の債務に移すことができないものとする。元本の確定前に債務者の交替による更改があった場合における債権者も、同様とするものとする。

(7) 根譲渡担保権者又は債務者の合併根譲渡担保権者又は債務者の合併

ア 元本の確定前に根譲渡担保権者について合併があったときは、当該根譲渡担保権は、合併の時に存する債権のほか、合併後存続する法人又は合併によって設立された法人が合併後に取得する債権を担保するものとする。

イ 元本の確定前にその債務者について合併があったときは、根譲渡担保権は、合併の時に存する債務のほか、合併後存続する法人又は合併によって設立された法人が合併後に負担する債務を担保するものとする。

ウ ア又はイの場合には、根譲渡担保契約における譲渡担保権設定者(以下「根譲渡担保権設定者」という。)は、担保すべき元本の確定を請求することができるものとする。ただし、イの場合において、その債務者が根譲渡担保権設定者であるときは、この限りでないものとする。

エ ウの規定による請求があったときは、担保すべき元本は、合併の時に確定したものとみなすものとする。

オ ウの規定による請求は、根譲渡担保権設定者が合併のあったことを知った日から2週間を経過したときは、することができないものとする。合併の日から1月を経過したときも、同様とするものとする。

(8)根譲渡担保権者又は債務者の会社分割

ア 元本の確定前に根譲渡担保権者を分割をする会社とする分割があったときは、根譲渡担保権は、分割の時に存する債権のほか、分割をした会社及び分割により設立された会社又は当該分割をした会社がその事業に関して有する権利義務の全部又は一部をた会社又は当該分割をした会社がその事業に関して有する権利義務の全部又は一部を当該会社から承継した会社が分割後に取得する債権を担保するものとする。

イ 元本の確定前にその債務者を分割をする会社とする分割があったときは、根譲渡担保権は、分割の時に存する債務のほか、分割をした会社及び分割により設立された会社又は当該分割をした会社がその事業に関して有する権利義務の全部又は一部を当該会社から承継した会社が分割後に負担する債務を担保するものとする。

ウ 上記(7)ウからオまでの規定は、ア又はイの場合について準用するものとする。

(9)根譲渡担保権の譲渡根譲渡担保権の譲渡

ア 元本の確定前においては、根譲渡担保権者は、根譲渡担保権設定者の承諾を得て、その根譲渡担保権(極度額の定めがあるものに限る。イ及び後記(10)において同じ。)を譲り渡すことができるものとする。

イ 根譲渡担保権者は、その根譲渡担保権を二個の権利に分割して、その一方を前項の規定により譲り渡すことができるものとする。この場合において、その根譲渡担保権を目的とする権利は、譲り渡した根譲渡担保権について消滅するものとする。

ウ 前項の規定による譲渡をするには、分割する権利を目的とする権利を有する者の承諾を得なければならないものとする。

(10)根譲渡担保権の一部譲渡

元本の確定前においては、根譲渡担保権者は、根譲渡担保権設定者の承諾を得て、その根譲渡担保権の一部譲渡(譲渡人が譲受人と根譲渡担保権を共有するため、これを分割しないで譲り渡すことをいう。)をすることができるものとする。

(11)根譲渡担保権の譲渡又は一部譲渡の対抗要件

ア 根譲渡担保権の譲渡又は一部譲渡は、動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律(平成10年法律第104号。以下「特例法」という。)の定めるところに従いその登記をしなければ、これをもって第三者に対抗することができないものとする。

イ 債権を目的と債権を目的とする根譲渡担保権の譲渡又は一部譲渡は、当該譲渡又は一部譲渡及びその譲渡又は一部譲渡につき登記がされたことについて、譲渡人若しくは譲受人が当該債権の債務者に登記事項証明書を交付して通知をし、又は当該債務者が承諾をしなければ、当該債務者に対抗することができないものとする。

(12)根譲渡担保権の共有

ア 根譲渡担保権の共有者は、それぞれその債権額の割合に応じて弁済を受けるものとする。ただし、元本の確定前に、これと異なる割合を定め、又はある者が他の者に先立って弁済を受けるべきことを定めたときは、その定めに従うものとする。

イ 根譲渡担保権の共有者は、他の共有者の同意を得て、上記.アの規定によりその権利を譲り渡すことができるものとする。

(13)根譲渡担保権の元本の確定請求根譲渡担保権の元本の確定請求

ア 根譲渡担保権設定者は、根譲渡担保契約に基づく財産の譲渡の時から3年を経過したときは、担保すべき元本の確定を請求することができるものとする。この場合において、担保すべき元本は、その請求の時から2週間を経過することによって確定するものとする。

イ 根譲渡担保権者は、いつでも、担保すべき元本の確定を請求することができるものとする。この場合において、担保すべき元本は、その請求の時に確定するものとする。

ウ ア及びイの規定は、担保すべき元本の確定すべき期日の定めがあるときは、適用しないものとする。

(14)根譲渡担保権の元本の確定事由根譲渡担保権の元本の確定事由

ア 次に掲げる場合には、根譲渡担保権の担保すべき元本は、確定するものとする。

(ア)根譲渡担保権者が譲渡担保財産について強制執行、担保権の実行又は前記7(1)後段の規定による差押えを申し立てたとき。ただし、強制執行若しくは担保権の実行の手続の開始又は差押えがあったときに限る。

(イ)根譲渡担保権者が譲渡担保財産に対して滞納処分による差押えをしたとき。

(ウ)根譲渡担保権者が譲渡担保財産に対する強制執行(集合動産譲渡担保契約における第4、1の動産特定範囲に属する動産に対する強制執行を除く。)若しくは担保権の実行の手続の開始若しくは滞納処分による差押えがあったことを知った時から1週間を経過したとき又は譲渡担保財産に対する強制執行若しくは担保権の実行の手続について配当要求をしたとき。

(エ)根譲渡担保権者が帰属清算の通知等又は処分清算譲渡をしたとき。

(オ)後順位の動産譲渡担保権者(根譲渡担保権に劣後する動産譲渡担保権の動産譲渡担保権者に限る。)が先順位の動産譲渡担保権者の全員の同意を得て帰属清算の通知等又は処分清算譲渡権者が根譲渡担保権設定者に対して帰属清算の通知等又は処分清算譲渡をしたとき。

(カ)第4、1の特定範囲所属動産を一体として目的とする根譲渡担保権の根譲渡担保権者が根譲渡担保権設定者に対して帰属清算の通知等又は処分清算譲渡をしようとするときにおける集合動産譲渡担保権設定者に対する事前の通知をしたとき。

(キ)債権を目的とする根譲渡担保権の根譲渡担保権者が被担保債権の不履行があった場合に譲渡担保債権に係る債務の履行を請求したとき。

(ク)根譲渡担保権者が譲渡担保動産(集合動産譲渡担保契約における第4、1の動産引渡特定範囲に属する動産を含む。)について引渡命令を申し立てたとき。ただし、引渡命令が発せられたときに限る。

(ケ)根譲渡担保権者又は債務者について相続が開始したとき。

(コ)債務者又は根譲渡担保契約における根譲渡担保権設定者が破産手続開始の決定を受けたとき。

イ 上記ア(ウ)の強制執行若しくは担保権の実行の手続の開始若しくは差押え、同(カ)の通知、同(ク)の引渡命令又は同(コ)の破産手続開始の決定の効力が消滅したときは、担保すべき元本は、確定しなかったものとみなす。ただし、元本が確定したものとは、担保すべき元本は、確定しなかったものとみなす。ただし、元本が確定したものとしてその根譲渡担保権又はこれを目的とする権利を取得した者があるときは、この限りでない。

(説明)

根譲渡担保契約の効力について、部会資料28第2、6、部会資料35第5などの内容を踏まえた規律としている。

根抵当権の規定と同旨又は類似の規定を設けるものを、下記表のとおり整理し、説明を加えている。

これに対し、根抵当権の規定と同旨の規定を設けないものは、下記表のとおりである。

第3動産譲渡担保契約の効力

1動産譲渡担保権の及ぶ範囲

動産譲渡担保権者は、動産譲渡担保権設定者が動産譲渡担保契約の締結後にその動産の常用に供するために附属させた他の動産であって動産譲渡担保権設定者の所有に属するものについても、動産譲渡担保権を行使することができるものとするものとする。ただし、譲渡担保契約に別段の定めがある場合及び譲渡担保権設定者の行為について民法第424条第3項に規定する詐害行為取消請求をすることができる場合は、この限りではないものとするものとする。

(説明)

部会資料28第3、1から実質的変更はない。

2動産譲渡担保権者による果実の収取

動産譲渡担保権者は、その被担保債権について不履行があったときは、譲渡担保動産の果実(収取されていないものに限る。)についても、動産譲渡担保権を行使することができるものとする。

(説明)

動産譲渡担保権の果実に対する効力に関する規律を定めるものであり、部会資28第3、2と実質的に同様である。設定者が既に収取した果実に動産譲渡担保権の効力を及ぼすことはできないため、括弧書きによりその点を明らかにしている。

3動産譲渡担保権設定者による譲渡担保動産の使用及び収益

⑴動産譲渡担保権設定者は、譲渡担保動産の用法に従い、その使用及び収益をすることができるものとする。

⑵動産譲渡担保権設定者は、善良な管理者の注意をもって、譲渡担保動産の使用及び収益をしなければならないものとする。

(説明)

動産譲渡担保権設定者による譲渡担保動産の使用収益権限及び善管注意義務に関する規律であり、部会資料28第3、3と基本的に同様である。

4妨害の停止の請求等

動産譲渡担保権設定者又は動産譲渡担保権者は、次の各号に掲げるときは、当該各号に定める請求をすることができるものとする。

⑴譲渡担保動産の使用又は収益を第三者が妨害しているときその第三者に対する妨害の停止の請求

⑵譲渡担保動産の使用又は収益を第三者が妨害するおそれがあるときその第三者に対する妨害の予防の請求

⑶譲渡担保動産を第三者が占有しているときその第三者に対する返還の請求

(説明)

 動産譲渡担保権設定者又は動産譲渡担保権者による妨害の停止等の請求を認めるものである。部会資料28第3、4では、譲渡担保権設定者について、目的である動産に関する権利を妨害されたときなどについて、設定が妨害の停止等の請求をすることができる旨の規律を提案していた。この点について、譲渡担保権設定者の譲渡担保動産に関する権利の中心は、譲渡担保動産の使用収益権限であり(3⑴)、賃借人に関する民法第605条の4を参考に、「譲渡担保動産の使用又は収益を第三者が妨害しているとき」等について、妨害の停止の請求を認める旨の規律とした。また、部会資料28第3、4では、「目的である動産の占有が奪われたとき」に、当該動産の返還の請求を認めることとしていたところ、詐取や遺失の場合にも認めるべきとの部会における議論も踏まえて、「譲渡担保動産を第三者が占有しているとき」とした。

部会資料28第3、4においては、動産譲渡担保権者の妨害の停止請求等の規律は記載していなかったが、動産譲渡担保権者もその権利が侵害される場合には、譲渡担保権に基づく物権的請求を認めるべきである(中間試案第1、5(補足説明)の注4)。動産譲渡担保権設定者についてのみ本文のような規律を設けると、動産譲渡担保権者はそのような請求権を有しないとの反対解釈を招くおそれがあるため、譲渡担保権者についても、譲渡担保権設定者がすることができる請求について、同様の請求をすることができる旨を定めることとしている。

5牽連性のある金銭債務のみを担保する動産譲渡担保権の対抗力

  • 次に掲げる債務(その利息、違約金、権利の実行の費用及び債務の不履行によって生じた損害の賠償を含む。11において「牽連性のある金銭債務」という。)のみを担保する動産譲渡担保権は、譲渡担保動産の引渡しがなくても、これをもって第三者に対抗することができるものとする。

ア譲渡担保動産の代金債務

イ譲渡担保動産の代金債務の債務者から委託を受けた者が当該代金債務を履行したことによって生ずるその者の当該債務者に対する求償権に係る債務

⑵上記⑴の場合には、6及び9から11までの規定の適用については、動産譲渡担保契約に基づく動産の譲渡の時に民法第183条に規定する方法(以下「占有改定」という。)以外の方法で当該動産の引渡しがあったものとみなす。

(説明)

狭義の留保所有権と同様の金銭債務のみを担保する動産譲渡担保権について、引渡しなくして第三者に対抗できることとし、担保権の競合の場合の優劣については動産譲渡担保契約に基づく動産の譲渡時に占有改定以外の方法により引渡しがあったものとみなすこととするもので、部会資料33第4、3から実質的変更はない。

6動産譲渡担保権の順位

同一の動産について数個の動産譲渡担保権が互いに競合する場合には、その動産譲渡担保権の順位は、その動産の引渡しの前後によるものとする。

(説明)

部会資料33第4、2から実質的変更はない。

7動産譲渡担保権の順位の変更

⑴動産譲渡担保権の順位は、各動産譲渡担保権者の合意によって変更することができるものとする。ただし、利害関係を有する者があるときは、その承諾を得なければならないものとする。

⑵上記⑴の規定による順位の変更は、特例法の定めるところに従いその登記をしなければ、その効力を生じないものとする。

(説明)

部会資料28第3、7から実質的変更はない。

8動産譲渡担保権と先取特権との競合

⑴動産譲渡担保権と先取特権とが競合する場合には、動産譲渡担保権者は、民法第330条の規定による第1順位の先取特権者と同一の権利を有するものとする。

⑵上記⑴の場合において、動産譲渡担保権者が数人あるときは、各動産譲渡担保権者は、同項及び民法第332条の規定に従ってこれらの者が弁済を受けるべき金額の合計額について、6、9及び10の規定による順位に従って弁済を受けるものとする。

(説明)

部会資料33第4、1では、占有改定劣後ルールを民法第330条の規定による第1順位の先取特権との関係でも適用するかについて2案を提案した。本文⑴は、適用しないとする部会資料33の【案4.1.1】を採用したものである。これは、占有改定劣後ルールは約定動産担保権同士の規律であり、その適用範囲を第1順位の先取特権との関係にまで拡張する必要はないとの意見を踏まえたものである。

なお、部会では、民法第330条第2項前段の適用除外に言及する意見もあった。しかし、各種動産抵当権についても本文⑴と同旨の規定が置かれており、民法第330条第2項前段の適用の有無については解釈に委ねられていることからすると、動産譲渡担保権についてのみ明文で適用を除外するとの規定を設けることは適切でないように思われる。そこで、本文⑴では、この点について解釈に委ねることとしている。

9動産譲渡担保権と動産質権との競合

同一の動産について動産譲渡担保権と動産質権とが競合するときは、その順位は、動産譲渡担保契約に基づく動産の譲渡についての引渡しと動産質権の設定の前後によるものとする。

(説明)

部会資料33第5、2から実質的変更はない。

10占有改定で対抗要件を備えた動産譲渡担保権の順位の特例

6及び9の規定にかかわらず、占有改定で譲渡担保動産の引渡しを受けることにより対抗要件を備えた動産譲渡担保権は、占有改定以外の方法で譲渡担保動産の引渡しを受けることにより対抗要件を備えた動産譲渡担保権(動産譲渡担保契約に基づく動産の譲渡につき動産譲渡登記がされたものを含む。)又は動産質権に劣後するものとする。

【P:占有改定劣後ルールの潜脱への対応については、改めて部会で取り上げる予定。】

(説明)

動産譲渡担保権と約定動産担保権が競合する場合に占有改定劣後ルールを採用するもので、部会資料33第5、2から実質的変更はない。なお、占有改定劣後ルールの潜脱への対応については、改めて部会で取り上げる予定である。

11  牽連性のある金銭債務を担保する動産譲渡担保権の順位の特例

6及び8から10までの規定にかかわらず、牽連性のある金銭債務を担保する動産譲渡担保権は、牽連性のある金銭債務を担保する限度において、競合する他の動産譲渡担保権、動産質権又は先取特権に優先するものとする。ただし、動産譲渡担保権者が次に掲げる時のうち最も早いものより後に譲渡担保動産の引渡しを受けたときは、この限りでないものとする。

⑴他の動産譲渡担保権(第4、1の特定範囲所属動産を目的とするものを除く。)の動産譲渡担保権者が譲渡担保動産の引渡し(占有改定による場合を除く。)を受けた時

⑵他の動産譲渡担保権(第4、1の特定範囲所属動産を目的とするものに限る。)の動産30 譲渡担保権者が第4、2の引渡し(占有改定による場合を除く。)又は譲渡担保動産が第4、1の動産特定範囲に属した時のいずれか遅い時

⑶動産質権の設定時

⑷民法第330条の規定による第一順位の先取特権の成立時

(説明)

牽連性のある金銭債務を担保する動産譲渡担保権についての特別の優先ルールを定めるもので、部会資料33第4、3から実質的変更はない。

12転動産譲渡担保

⑴動産譲渡担保権者は、動産譲渡担保権を譲渡担保契約の目的とすることができるものとする。

⑵⑴の規定による譲渡担保権の設定(以下「転動産譲渡担保」という。)は、特例法の定めるところに従いその登記をしなければ、これをもって第三者に対抗することができないものとする。

⑶動産譲渡担保権者が数人のために二以上の転動産譲渡担保をしたときは、これらの転動産譲渡担保の権利者の権利の順位は、登記の前後によるものとする。

⑷上記⑴の場合には、民法第467条の規定に従い、動産譲渡担保権の被担保債権の債務者に転動産譲渡担保を通知し、又は当該債務者がこれを承諾しなければ、これをもって当該債務者、保証人、動産譲渡担保権設定者及びこれらの者の承継人に対抗することができないものとする。

⑸動産譲渡担保権の被担保債権の債務者が上記⑷の規定により通知を受け、又は承諾をしたときは、転動産譲渡担保の権利者の承諾を得ないでした弁済は、当該者に対抗することができないものとする。

⑹上記⑸の規定は、動産を目的とする根譲渡担保権の転動産譲渡担保をした場合において、根譲渡担保権の被担保債権の債務者が元本の確定前にした弁済については、適用しないものとする。

(説明)

部会資料28第3、8から実質的変更はない。

第4集合動産譲渡担保契約の効力

1特定範囲所属動産を一体として目的とする動産譲渡担保契約

 動産譲渡担保契約は、その種類及び所在場所の指定その他の方法により定められた範囲(以下「動産特定範囲」という。)によって特定された動産(動産特定範囲に将来において属するもの(以下「特定範囲加入動産」という。)を含む。以下「特定範囲所属動産」という。)を、一体として、その目的とすることができるものとする。

(説明)

 動産譲渡担保契約について、動産特定範囲に属するものとして特定された動産(特定範囲所属動産)を一体としてその目的とすることができる旨の集合動産譲渡担保契約に関する基本的な規律であり、部会資料28第4、1と実質的な変更はない。

集合動産譲渡担保について担保権設定を可能とする規定を設ける意義は、設定後に構成部分が変動した場合でも、新たな設定行為を要せずに新たに構成部分となった動産に担保権が及び、また、初めに対抗要件を具備しておけば、以後集合動産に加入をした個別動産にもその効力を及ぼすことができる点にある。

 そこで、本文は、個別動産と集合動産の違いは、「範囲」によって特定されているか、シリアルナンバーその他の方法でそれぞれの動産が個別に特定されているかという特定方法の違いにあるのではなく、設定時にその目的動産を特定するための範囲に含まれていない動産が将来(設定後)においてその範囲に加入されるかどうかという点にあるという考え方に基づいて、集合動産譲渡担保に関する規定を設けている。

 本文の括弧書きにおいて、動産の集合体に関し、「動産特定範囲に将来において属するものを含む。」としているのは、この点を明らかにする趣旨である。このような理解に従えば、譲渡担保権設定契約において目的物を特定するための範囲が定められ、これに含まれる動産全部が担保権の目的とされた場合であっても、その範囲に新たな動産が将来において加入する可能性がない場合には、ここでいう集合動産譲渡担保には当たらない。

 なお、部会資料28第4、1においては、種類、所在場所のほか、「量的範囲の指定」についても、動産特定範囲を定める方法として例示していた。しかし、動産の種類や所在場所が動産特定範囲に属する動産を特定する要素として重要であると考えられるのに対し、量的範囲の指定について動産の特定性を欠くとされた判例もあることなどを踏まえ、動産特定範囲を定める「他の方法」の一つとなり得ると考えられるものの、「種類及び所在場所」と並ぶ要素としては列挙しないこととしている。

2集合動産譲渡担保権についての対抗要件の特例

 特定範囲所属動産を一体として目的とする動産譲渡担保契約(以下「集合動産譲渡担保契約」という。)における動産譲渡担保権者(以下「集合動産譲渡担保権者」という。)は、動産特定範囲に属する動産の全部の引渡しを受けたときは、特定範囲加入動産についても、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有することを第三者に対抗することができるものとする。

(説明)

 部会資料33第4、2⑶から実質的変更はない。個別動産譲渡担保権と競合する場合の優劣については対抗要件具備時説を採ることを前提としている。

なお、部会資料35第6、2で取り上げた設定者が異なる場合における対抗要件具備時説の修正の要否については、改めて部会で取り上げる予定である。

3集合動産譲渡担保権設定者による特定範囲所属動産の処分

⑴集合動産譲渡担保契約における動産譲渡担保権設定者(以下「集合動産譲渡担保権設定者」という。)は、特定範囲所属動産の処分をすることができるものとする。ただし、25 集合動産譲渡権設定者が集合動産譲渡担保権者を害することを知ってした処分は、その効力を生じないものとする。

⑵上記⑴本文にかかわらず、集合動産譲渡担保契約における別段の定めがあるときは、その定めるところによるものとする。

⑶上記⑵の別段の定めによる集合動産譲渡担保権設定者の処分権限の範囲(以下「権限範囲」という。)を超えて集合動産譲渡担保権者が動産特定範囲に属する動産の処分をした場合において、その処分の相手方は、集合動産譲渡担保権設定者の処分権限につき善意であったときは、その動産についての権利を取得するものとする。

⑷集合動産譲渡担保権設定者が集合動産譲渡担保権者を害することを知って特定範囲所属動産の処分をするおそれがあるとき、又は権限範囲を超えて特定範囲所属動産の処分35 をするおそれがあるときは、集合動産譲渡担保権者は、その予防を請求することができるものとする。

(説明)

 集合動産譲渡担保権設定者による動産の処分権限に関する規律であり、部会資料34、第2の規律と同様である。⑶の規律について、処分の相手方が、設定者の処分権限につき善意のみで保護されることとしている趣旨について、部会資料34では、処分の相手方が権限範囲の存在を認識するのが困難であるという点にあるものとしていた。この点については、本文⑴により設定者は担保権者を害することを知ってしたものでない限り動産の処分権限を有するとしていることに伴い、設定者の処分権限の存在に対する信頼を厚く保護して取引の安全を図るという観点から、相手方の保護の要件を緩和したものと説明することも可5 能と考えられる。また、このような考え方を踏まえ、処分の相手方の主観的要件としては、上記部会資料においては権限範囲の定めにつき知らなかったこととしていたが、設定者の処分権限につき善意(処分権限があることを信じていた)であったという表現に修正した。

4補充義務

 集合動産譲渡担保権設定者は、動産特定範囲に属する動産の売却その他の事由によって特定範囲所属動産の総体としての価値が減少したときは、その価値が相当なものとなるよう動産特定範囲に属する動産を補充しなければならないものとする。

(説明)

 集合動産譲渡担保権設定者の処分権限と補充・担保価値の維持は対になることから、処分権限について規定を設けることに伴って、集合動産譲渡担保権設定者の補充義務を定めるものである。担保価値維持義務自体は他の譲渡担保契約においても認められるところ、集合動産譲渡担保契約においては、設定者の処分権限と補充が対になるという点に特徴があることから、補充義務に焦点を当てて規律を設けることとしたものである。

 動産の売却等によって、特定範囲所属動産の総体としての価値が減少した際の補充義務の程度については、集合動産譲渡担保契約の内容や、動産の性質、取引上の社会通念等によって定まると考えられる。そこで、本文では、その価値が減少したときは、その価値が相当なものとなるよう補充しなければならないものとしている。

5集合動産譲渡担保権に基づく物上代位等

 第2、7にかかわらず、集合動産譲渡担保権者は、集合動産譲渡担保権設定者が4の義務(補充義務)を履行することができると認められる間は、特定範囲所属動産の売却、滅失又は損傷によって集合譲渡担保権設定者が受けるべき金銭その他の物に対し、集合動産譲渡担保権を行使することができないものとする。ただし、集合譲渡担保権設定者が集合動産譲渡担保権者を害することを知ってした行為又は権限範囲を超えてした行為によって受けるべき金銭その他の物に対しては、この限りでないものとする。

(説明)

 集合動産譲渡担保契約における物上代位に関する規律であり、部会資料28第4、6とその趣旨は同様である。集合動産譲渡担保権者による物上代位が制限される時期について、部会資料28第4、6は、「通常の事業を継続している間」としていたが、このような文言35 を使用せず、4の補充義務を基礎とした表現ぶりとしている。すなわち、集合動産譲渡担保契約においては、設定者においてその目的動産の処分と補充を繰り返して、事業を継続することが前提とされており、実質的にも、このような補充の義務の履行がされていると認められる間は、特定範囲所属動産の処分がされても新たに補充される動産によって担保価値が維持されることになるから、その売買代金への物上代位を認める必要はない。そこで、補充義務が履行することができると認められる間は、集合動産譲渡担保権者による物上代位を認めないこととするものである。

6動産特定範囲に動産を属させる行為に関する詐害行為取消請求

 集合動産譲渡担保権設定者が動産を動産特定範囲に属させた場合における民法第424条5 の3の規定の適用については、その動産を目的とする担保の供与があったものとみなすものとする。

(説明)

 設定者が動産特定範囲に動産を属させる行為が「担保の供与」として詐害行為取消請求の対象となり得る旨の規律であり、部会資料32第6、4と同様である。従来は否認と関連することから否認と併せて検討してきたが、詐害行為に関する規律は平時におけるルールであることから、倒産手続における取扱いではなく、集合動産譲渡担保契約の効力に関する規律として設けることとしている。

第5債権譲渡担保契約の効力

1混同の特例

 ある債権の債務者が当該債権を譲渡担保債権として譲渡を受けた場合には、民法第520条本文の規定にかかわらず、当該譲渡担保債権は消滅しないものとする。

(説明)

 通常の債権譲渡においては、債務者が自己の債務に係る債権について譲渡を受けた場合、その債務に係る債権は民法第520条本文により消滅すると考えられる。債権譲渡担保が担保目的での債権の譲渡であることからすると、自己の債務に係る債権について譲渡担保契約により譲渡を受けた場合も同様の効果が生ずるようにも考えられる。しかし、ある債権の債務者がその債権を担保に取る必要がある場合もあり(例えば、銀行が自らに対する預金債権を担保に取る場合)、現に、このような担保取引は、債権質権においては可能であると解されている。また、債権譲渡担保権の設定者は、被担保債権を弁済することによって当該債権を受け戻すことができるなど、目的債権について一定の権利を有している点で、民法第520条ただし書の「第三者の権利の目的である」という状況とも類似している。そこで、自己の債務に係る債権について譲渡担保契約により譲渡を受けても目的債権は混同によって消滅せず、有効な担保権設定が可能であることを定めるものである。

2債権譲渡担保権の順位

 同一の債権について数個の債権譲渡担保権が互いに競合する場合には、その債権譲渡担保権の順位は、民法第467条第2項に規定する確定日付のある証書による通知又は承諾の前後によるものとする。

(説明)

部会資料30第4、1⑴から実質的変更はない。

3債権譲渡担保権と先取特権との競合

 債権譲渡担保権と先取特権とが競合する場合には、当該債権譲渡担保権は、先取特権に優先するものとする。ただし、共益の費用の先取特権は、その利益を受けた全ての債権譲渡担保権者に対して優先する効力を有するものとする。

(説明)

債権譲渡担保権と先取特権とが競合する場合については、動産譲渡担保権と同様に、原則として債権譲渡担保権を先取特権に優先させつつ、共益の費用の先取特権には劣後させることとしている。

4債権譲渡担保権と債権を目的とする質権との競合

同一の債権について債権譲渡担保権と質権とが競合する場合には、その順位は、債権譲渡担保契約に基づく債権の譲渡又は質権の設定についての民法第467条第2項に規定する確定日付のある証書による通知又は承諾の前後によるものとする。

(説明)

部会資料30第4、3⑶から実質的変更はない。

5債権譲渡担保権の順位の変更

⑴債権譲渡担保権の順位は、各債権譲渡担保者の合意によって変更することができるものとする。ただし、利害関係を有する者があるときは、その承諾を得なければならないものとする。

⑵上記⑴の規定による順位の変更は、特例法の定めるところに従いその登記をしなければ、その効力を生じないものとする。

⑶上記⑴の規定による順位の変更は、当該順位の変更及びその順位の変更につき登記がされたことについて、いずれかの債権譲渡担保者が譲渡担保債権の債務者に登記事項証明書を交付して通知をし、又は当該債務者が承諾をしなければ、当該債務者に対抗することができないものとする。

(説明)

部会資料28第5、2から実質的変更はない。

6転債権譲渡担保

⑴第3、12の規定は、債権譲渡担保権者がその債権譲渡担保権を譲渡担保契約の目的とした場合について準用するものとする。

⑵上記⑴の規定による譲渡担保権の設定(以下この項において「転債権譲渡担保」という。)は、転債権譲渡担保及びその転債権譲渡担保につき特例法の定めるところに従い登記がされたことについて、上記⑴の譲渡担保契約の当事者の一方が譲渡担保債権の債務者に登記事項証明書を交付して通知をし、又は当該債務者が承諾をしなければ、これをもって当該債務者に対抗することができないものとする。

(説明)

部会資料28第5、3から実質的変更はない。

第6集合債権譲渡担保契約の効力

1集合債権譲渡担保権設定者による債権特定範囲に属する債権の取立て

【P】

(説明)

集合債権譲渡担保契約の取立権限に関する規律については、前回の部会における議論も踏まえて検討中である。

2補充義務の規定等の準用

集合債権譲渡担保契約について、第4、4(集合動産譲渡担保契約における補充義務)及び第4、6(動産特定範囲に動産を属させる行為に関する詐害行為取消請求)は、集合10 債権譲渡担保契約について準用するものとする。

(説明)

部会資料28第6、2(補充義務)及び部会資料32第6、4(詐害行為取消請求)と同様である。

「任意後見ハンドブック2014年版→2022年版」

(公社)成年後見センター・リーガルサポート「任意後見ハンドブック2022年版」が発行されました。「任意後見ハンドブック2014年版」と比較してみたいと思います。

基準は「任意後見ハンドブック2022年版」とします。見落としなどあるかもしれませんが、ご容赦ください。

・構成

追加

任意後見契約の相談から契約まで

任意後見等契約等の重要事項説明書

任意代理契約における当法人の監督に関する説明書

事前指示書

法人後見事務取扱標準報酬規程

削除

遺言公正証書

遺言書の保管等に関する約定書

・文言など

任意後見制度の仕組みについて、図の活用。

高松高判平成5年6月8日を題材としたQ&Aの削除。

意思決定支援と任意後見制度について、障害者の権利に関する条約[1]に触れる。

 任意代理との違い、の章において、持続的代理権[2]という用語を使用。任意代理契約と任意後見契約の併用の問題点について、法務省のアンケート実施を記載[3]

 任意後見契約における代理権目録に、契約の取消しなどについての代理権を予め付与することができることの記載。

 制度説明、動機の確認、制度選択の欄に、受任者のチェックポイントの記載。適切な後見事務が出来るか。受任者の心身の状態などについては削除。

死後事務委任契約についての記載の追加。

 令和4年法務省民事局「成年後見制度の利用促進に関する取り組みについて」アンケートによる、将来一定の公的機関等による監督、がなされる可能性について記載。

財産管理の監督の注意点として、原本確認を要することの記載を追加。

 未成年後見、障害のある子に任意後見任などがいるメリットについて、詳細な記述。注意点、メリットなど。老後の親の任意後見についての記載について、この章では削除。

 任意後見契約の登記について、数回の住所変更をしている場合の登記申請の回数について記載。

 任意後見契約書等作成のための業務委託契約書作成のために、委任者が遺言を作成していない場合、推定相続人の調査が必須、から、必ずしも必要ではない、に変更。

任意後見プランについて、即効型プランの場合は法定後見の利用を検討することを記載。

 任意後見等契約等の重要事項説明書において、報酬を決定する場合は根拠を示し、適正で、依頼者が納得するものであれば個別具体的な報酬で良いことの記載。

家庭裁判所が決定する任意後見監督人の報酬について、委任者に説明することを要することを記載。

 P85、私のライフプラン(案)について、孫の学費として―中略―ただし、私の将来の資産に不安があるときは、援助をやめても構いません。

→私の将来の資産に不安があるとき、が抽象的ではないかなと感じます。

 継続的見守り契約及び財産管理等委任契約書の欄で、(公社)成年後見センター・リーガルサポートでは、任意後見契約を伴わない任意代理契約は原則として締結しないことの記載。任意代理契約の代理権の範囲は、日常業務と一部の身上保護事務に限定することの記載。

任意後見契約書について、報酬規程の追加。

死後事務委任契約書について、費用の問題の記載追加。

参考

登記研究 667号 164頁 平成15年2月27日 法務省民二第601号 民事局民事第二課長通知 不動産登記申請における任意後見人の代理権限を証する書面について

登記研究 890号 145頁 令和4年1月31日 法務省民一第167号 法務省民事局長通達 後見登記等に関する省令の一部を改正する省令の施行に伴う「後見登記等に関する事務の取扱いについて」の一部改正について

入っているかなと思っていたけれど、入っていなかった項目


[1] https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/jinken/index_shogaisha.html

[2] ニッセイ基礎研究所総合政策研究部研究員坂田紘野「海外の「成年後見制度」を概観する」2023 https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=74251?pno=2&site=nli

[3] 法務省「任意後見監督人選任に関する御案内及び意識調査への御協力依頼について」令和4年12月5日https://www.moj.go.jp/MINJI/minji04_00014.html

20220719連発0541号 司法書士倫理の一部改正

新旧が見つからない。私が参照した会員必携の司法書士倫理が 古いかもしれません。

○司法書士行為規範

司法書士の使命は、国民の権利を擁護し、もって自由かつ公正な社会の形成に寄与することにある。

その使命を自覚し、自らの行動を規律する規範を明らかにするため、司法書士行為規範を制定する。

我々は、これを実践し、社会の信頼と期待に応えることをここに宣言する。

第1章基本倫理

(使命の自覚)

第1条司法書士は、使命を自覚し、その達成に努める。

(基本姿勢)

第2条司法書士は、その職責を自覚し、自由かつ独立の立場を保持して、司法書士としての良心に従い行動する。

(信義誠実)

第3条司法書士は、信義に基づき、公正かつ誠実に職務を行う。

(品位の保持)

第4条司法書士は、常に、人格の陶冶を図り、教養を高め、司法書士としての品位を保持する。

(法令等の精通)

第5条司法書士は、法令及び実務に精通する。

(資質の向上)

第6条司法書士は、自ら研鑚するとともに、その所属する司法書士会及び日本司法書士会連合会(以下「司法書士会等」という。)が実施する研修に参加し、資質の向上に努める。

(自治の維持及び発展)

第7条司法書士は、司法書士自治の維持及び発展に努める。

(法制度への寄与)

第8条司法書士は、法制度が国民に信頼され、国民が利用しやすいものとなるようにその改善及び発展に寄与する。

(公益的活動)

第9条司法書士は、その使命にふさわしい公益的な活動に取り組み、実践するように努める。

第2章一般的な規律

意思の尊重)

第10条司法書士は、依頼者の意思を尊重し、依頼の趣旨に沿って、その業務を行わなければならない。

2司法書士は、意思の表明に困難を抱える依頼者に対して、適切な方法を用いて意思の表明を支援するように努めなければならない。

(秘密保持等の義務)

第11条司法書士は、業務上知り得た秘密を保持しなければならず、又は利用してはならない。司法書士でなくなった後も同様とする。

2前項の規定にかかわらず、次に掲げる場合は、その必要の限度において、秘密を開示することができる。

(1)本人の承諾がある場合

(2)法令に基づく場合

(3)司法書士が自己の権利を防御する必要がある場合

(4)前3号に掲げる場合のほか、正当な事由がある場合

(不当誘致等)

第12条司法書士は、不当な方法によって事件の依頼を誘致し、又は事件を誘発してはならない。

2司法書士は、依頼者の紹介を受けたことについて、いかなる名目によるかを問わず、その対価を支払ってはならない。

3司法書士は、依頼者の紹介をしたことについて、いかなる名目によるかを問わず、その対価を受け取ってはならない。

(非司法書士との提携禁止等)

第13条司法書士は、司法書士法その他の法令の規定に違反して業務を行う者と提携して業務を行ってはならず、またこれらの者から事件のあっせんを受けてはならない。

2司法書士は、第三者に自己の名義で司法書士業務を行わせてはならない。

3司法書士は、正当な事由がある場合を除き、その業務に関する報酬を司法書士又は司法書士法人でない者との間で分配してはならない。

(違法行為の助長等)

第14条司法書士は、違法若しくは不正な行為を助長し、又はこれらの行為を利用してはならない。

(品位を損なう事業への関与)

第15条司法書士は、品位を損なう事業を営み、若しくはこれに加わり、又はこれに自己の名義を使用させてはならない。

(相手方等からの利益授受等)

第16条司法書士は、取り扱っている事件に関し、相手方又は相手方代理人等から利益の供与若しくは供応を受け、又はこれを要求し、若しくはその約束をしてはならない。

2司法書士は、取り扱っている事件に関し、相手方又は相手方代理人等に対し、利益の供与若しくは供応をし、又はその約束をしてはならない。

(広告又は宣伝)

第17条司法書士は、虚偽の事実を含み、又は誤認を生じさせるおそれがある広告又は宣伝をしてはならない。

2司法書士は、品位又は信用を損なうおそれがある広告又は宣伝をしてはならない。

(記録の作成等)

第18条司法書士は、受任した事件の概要、金品の授受に関する事項その他重要と考えられる事項に関する記録を作成し、保管しなければならない。

2司法書士は、前項の記録を保管するに際しては、業務上知り得た秘密及びプライバシーに関する情報が漏洩しないように注意しなければならない。廃棄するに際しても同様とする。

補助者に対する指導及び監督)

第19条司法書士は、常に、補助者の指導及び監督を行わなければならない。

2司法書士は、補助者をしてその業務を包括的に処理させてはならない。

3司法書士は、補助者に対し、その者が業務上知り得た秘密を漏洩し、又は利用しないように指導及び監督しなければならない。

第3章依頼者との関係における規律

(依頼の趣旨の実現)

第20条司法書士は、依頼の趣旨を実現するために、的確な法律判断に基づいて業務を行わなければならない。

(受任の際の説明)

第21条司法書士は、事件を受任するにあたり、その処理の方法その他依頼の趣旨を実現するために必要な事項について説明しなければならない。

(報酬の明示)

第22条司法書士は、事件を受任するにあたり、報酬及び費用の金額又はその算定方法を明示し、かつ、十分に説明しなければならない。

2司法書士は、その報酬については、依頼者の受ける経済的利益、事案の難易、その処理に要した時間及び労力その他の個別具体的事情に照らして、適正かつ妥当なものとしなければならない。

契約書の作成)

第23条司法書士は、事件を受任するにあたり、依頼の趣旨並びに報酬及び費用に関する事項を記載した契約書を作成するように努めなければならない。

(事件の処理)

第24条司法書士は、事件を受任した場合には、速やかに着手し、遅滞なく処理しなければならない。

2司法書士は、依頼者に対し、事件の経過及び重要な事項を必要に応じて報告し、事件が終了したときは、その経過及び結果を遅滞なく報告しなければならない。

(公正を保ち得ない事件)

第25条司法書士は、業務の公正を保ち得ない事由がある事件については、業務を行ってはならない。

(公務等との関係)

第26条司法書士は、公務員又は法令により公務に従事する者として取り扱った事件については、業務を行ってはならない。

2司法書士は、仲裁人として取り扱った事件又は裁判外紛争解決手続において手続実施者その他これに準ずる者として関与した事件については、業務を行ってはならない。

(公正を保ち得ないおそれ)

第27条司法書士は、業務の公正を保ち得ない事由が発生するおそれがある場合には、事件を受任するにあたり、依頼者に対し、その事由の内容及び辞任の可能性があることについて説明しなければならない。

(不正の疑いがある事件)

第28条司法書士は、依頼の目的又はその手段若しくは方法に不正の疑いがある場合において、合理的な方法により調査を行ってもなおその疑いが払拭できないときは、その事件を受任してはならない。

(特別関係の告知)

第29条司法書士は、事件の受任に際して、依頼者の相手方と特別の関係があるために、依頼者との信頼関係に影響を及ぼすおそれがあるときは、依頼者に対しその事情を告げなければならない。

(受任後の措置)

第30条司法書士は、事件を受任した後に前5条に該当する事由があることを知ったときは、依頼者に対し速やかにその事情を告げ、事案に応じた適切な措置をとらなければならない。

(利益相反の顕在化)

第31条司法書士は、同一の事件で依頼者が複数ある場合において、その相互間に利益相反が生じたときは、各依頼者に対してその旨を告げ、事案に応じた適切な措置をとらなければならない。

(他の司法書士の参加)

第32条司法書士は、受任している事件について、依頼者が他の司法書士又は司法書士法人に、相談又は依頼をしようとするときは、正当な理由なくこれを妨げてはならない。

(受任司法書士間の意見の不一致)

第33条司法書士は、同一の事件を受任している他の司法書士又は司法書士法人がある場合において、その処理に関して意見の不一致により依頼者に不利益を及ぼすおそれがあるときは、依頼者に対しその事情を説明しなければならない。

(依頼者との信頼関係の喪失)

第34条司法書士は、受任している事件に関し、依頼者との信頼関係が失われ、かつ、その回復が困難である場合には、辞任する等適切な措置をとらなければならない。

(預り書類等の管理)

第35条司法書士は、受任している事件に関し、依頼者から預かった書類等を、善良な管理者の注意をもって管理しなければならない。

(預り金の管理等)

第36条司法書士は、受任している事件に関し、依頼者から又は依頼者のために金員を受領した場合には、自己の金員と区別し、預り金であることを明確にして管理しなければならない。

2司法書士は、受任している事件に関し、依頼者のために金品を受領した場合には、速やかにその事実を依頼者に報告しなければならない。

(受任の継続不能)

第37条司法書士は、受任している事件の処理を継続することができなくなった場合には、依頼者が損害を被ることがないように、事案に応じた適切な措置をとらなければならない。

(係争目的物の譲受け)

第38条司法書士は、係争事件の目的物を譲り受けてはならない。

(依頼者との金銭貸借等)

第39条司法書士は、特別の事情がない限り、依頼者と金銭の貸借をし、又は自己の債務について保証をさせ、若しくは依頼者の債務について保証をしてはならない。

(賠償保険)

第40条司法書士は、依頼者を保護するために、業務上の責任について賠償責任保険に加入するように努めなければならない。

(事件の終了後の措置

第41条司法書士は、受任した事件が終了したときは、遅滞なく、金銭の精算、物品の引渡し及び預かった書類等の返還をしなければならない。

(依頼者との紛議等)

第42条司法書士は、依頼者との信頼関係を保持し紛議が生じないように努め、紛議が生じた場合には、協議により円満に解決するように努めなければならない。

第4章不動産登記業務に関する規律

(基本姿勢)

第43条司法書士は、不動産登記業務を行うにあたり、登記の原因となる事実又は法律行為について調査及び確認をすることにより登記の真正を担保し、もって紛争の発生を予防する。

(実体上の権利関係の把握等)

第44条司法書士は、不動産登記業務を受任した場合には、依頼者及びその代理人等が本人であること及びその意思の確認並びに目的物の確認等を通じて、実体上の権利関係を的確に把握しなければならない。

2司法書士は、前項の確認を行った旨の記録を作成し、保管しなければならない。

(公平の確保)

第45条司法書士は、不動産登記業務を受任した場合には、当事者間の情報の質及び量の格差に配慮するなどして、当事者間の公平を確保するように努めなければならない。

(登記手続の中止又は登記申請の取下げ)

第46条司法書士は、当事者の一部から、不動産登記手続の中止又は不動産登記申請の取下げの申出を受けた場合においては、他の当事者の利益が害されることのないように当事者全員の意思を確認し、適切な措置をとらなければならない。

(補助者による立会の禁止)

第47条司法書士は、不動産取引における立会を、補助者に行わせてはならない。

(複数の代理人が関与する登記手続)

第48条司法書士は、複数の代理人が関与する不動産登記業務を受任した場合には、依頼者の依頼の趣旨を実現するために必要な範囲において他の代理人と連携するように努めなければならない。

第5章商業・法人登記業務に関する規律

(基本姿勢)

第49条司法書士は、商業・法人登記業務を行うにあたり、登記原因及び添付書面等の調査及び確認をすることにより真正な登記の実現に努め、もって取引の安全と商業・法人登記制度の信頼の確保に寄与する。

(実体関係の把握)

第50条司法書士は、商業・法人登記業務を受任した場合には、会社若しくは法人の代表者又はこれに代わり依頼の任に当たっている者(以下「代表者等」という。)が本人であること、依頼の内容及び意思の確認をするとともに、議事録等の関係書類の確認をするなどして、実体関係を把握するように努めなければならない。

2司法書士は、議事録等の書類作成を受任した場合には、代表者等にその事実及び経過等を確認して作成しなければならない。

(法令遵守の助言)

第51条司法書士は、商業・法人登記業務を受任し、又はその相談に応じる場合には、会社及び法人の社会的責任の重要性を踏まえ、依頼者に対して、法令を遵守するように助言しなければならない。

第6章供託業務に関する規律

(基本姿勢)

第52条司法書士は、供託業務を行うにあたり、実体上の権利関係を的確に把握し、登記手続、裁判手続その他の関連する手続を踏まえて供託の目的を達成させる。

(供託が関係する相談)

第53条司法書士は、供託が関係する相談に応じる場合には、相談者が置かれている状況を的確に把握したうえで、供託手続の役割、内容及び方法について説明及び助言をしなければならない。

第7章裁判業務等に関する規律

(基本姿勢)

第54条司法書士は、裁判の公正及び適正手続の実現に寄与する。

(紛争解決における司法書士の役割)

第55条司法書士は、依頼者が抱える紛争について、正確な知識及び情報を提供し、最善の方法をもって業務を遂行することにより、依頼者の正当な権利の擁護及びその利益の実現に努めなければならない。

(裁判書類作成関係業務)

第56条司法書士は、裁判書類作成関係業務を受任した場合には、依頼者との意思の疎通を十分に図り、事案の全容を把握するように努め、依頼者にその解決方法を説明するなどして、依頼者自らが訴訟等を追行できるように支援しなければならない。

(簡裁訴訟代理等関係業務)

第57条司法書士は、簡裁訴訟代理等関係業務を受任した場合には、代理人としての責務に基づき、依頼者の自己決定権を尊重して、業務を行わなければならない。

(業務を行い得ない事件)

第58条司法書士は、裁判業務(裁判書類作成関係業務及び簡裁訴訟代理等関係業務をいう。以下同じ。)に係る次の事件については、裁判業務を行ってはならない。ただし、第4号に掲げる事件については、受任している事件の依頼者が同意した場合は、この限りでない。

(1)相手方の依頼を受けて行った事件又は相手方から受任している事件

(2)相手方の協議を受けて賛助し、又はその依頼を承諾した事件

(3)相手方の協議を受けた事件で、その協議の程度及び方法が信頼関係に基づくと認められるもの

(4)受任している事件の相手方からの依頼による他の事件

(5)受任している事件の依頼者を相手方とする他の事件

(6)その他受任している事件の依頼者と利益相反する事件

2司法書士は、かつて司法書士法人の社員等(社員又は使用人司法書士をいう。以下同じ。)であった場合は、裁判業務に係る次の事件(自ら関与したものに限る。)については、裁判業務を行ってはならない。

(1)社員等として業務に従事していた期間内に、当該司法書士法人が相手方の依頼を受けて行った事件

(2)社員等として業務に従事していた期間内に、当該司法書士法人が相手方の協議を受けて賛助し、又はその依頼を承諾した事件

(3)社員等として業務に従事していた期間内に、当該司法書士法人が相手方の協議を受けた事件で、その協議の程度及び方法が信頼関係に基づくと認められるもの

(受任の諾否の通知)

第59条司法書士は、簡裁訴訟代理等関係業務の依頼に対し、その諾否を速やかに通知しなければならない。

(法律扶助制度等の教示)

第60条司法書士は、依頼者に対し、事案に応じて法律扶助制度又は訴訟救助制度を教示するなどして、依頼者の裁判を受ける権利が実現されるように努めなければならない。

(見込みがない事件の受任の禁止)

第61条司法書士は、依頼者が期待するような結果を得る見込みがないことが明らかであるのに、あたかもその見込みがあるかのように装って事件を誘発し、受任してはならない。

(有利な結果の請け合い等の禁止)

第62条司法書士は、受任した事件について、依頼者に有利な結果を請け合い、又は保証してはならない。

(偽証等のそそのかし等)

第63条司法書士は、偽証又は虚偽の陳述をそそのかしてはならない。

2司法書士は、虚偽と知りながらその証拠を提出し、又は提出させてはならない。

(裁判手続の遅延)

第64条司法書士は、不当な目的のために又は職務上の怠慢により、裁判手続を遅延させてはならない。

(相手方本人との直接交渉等)

第65条司法書士は、受任している事件に関し、相手方に法令上の資格がある代理人がいる場合は、特別の事情がない限り、その代理人の了承を得ないで相手方本人と直接交渉してはならない。

2司法書士は、受任している事件に関し、相手方に法令上の資格がある代理人がいない場合において、相手方が代理人の役割について誤解しているときは、その誤解に乗じて相手方を不当に不利益に陥れてはならない。

第8章司法書士法第3条に定めるその他の業務に関する規律

(審査請求手続)

第66条司法書士は、審査請求手続を受任した場合には、審査請求の意義を依頼者に説明し、依頼者の権利が実現されるように努めなければならない。

(国籍に関する書類の作成)

第67条司法書士は、国籍に関する書類の作成を受任した場合には、その要件等を依頼者に説明及び助言をし、依頼者や関係者のプライバシー等の人権に配慮して、業務を行うように努めなければならない。

(検察庁に提出する書類の作成)

第68条司法書士は、検察庁に提出する書類の作成を受任した場合には、関係者の人権に配慮して、正義の実現に努めなければならない。

第9章成年後見業務等に関する規律

基本姿勢)

第69条司法書士は、成年後見業務等を行う場合には、本人の意思を尊重し、その心身の状態並びに生活及び財産の状況(以下「心身の状態等」という。)に配慮する。

法定後見等に関する相談)

第70条司法書士は、法定後見又は任意後見に関する相談に応じる場合には、本人のほか、親族、福祉、医療及び地域の関係者等の支援者(以下「支援者」という。)から、その意見、本人の心身の状態等を聴取するなどしたうえで、適切な助言をしなければならない。

(後見等開始申立書類の作成)

第71条司法書士は、後見等開始申立書類を作成する場合には、本人、申立人及び支援者の意見を聴取するなどしたうえで、本人の権利を擁護し、心身の状態等に適した内容になるよう配慮しなければならない。

(任意後見契約の締結等)

第72条司法書士は、自己を受任者とする任意後見契約の締結を依頼された場合には、見守り契約等の任意後見契約に関連する契約の必要性を検討したうえで、本人の権利を擁護し、心身の状態等に適した契約になるように配慮しなければならない。

2司法書士は、前項の任意後見契約及びこれに関連する契約を締結する場合には、本人の心身の状態等に配慮し、本人が理解できるように適切な方法及び表現を用いて契約内容を説明しなければならない。

3司法書士は、第1項の任意後見契約を締結した場合において、精神上の障害により本人の事理弁識能力が不十分になったときは、本人及び支援者の意見を聴取するなどしたうえで、任意後見契約の効力を生じさせるなど、遅滞なく適切な措置をとらなければならない。

(支援者との連携)

第73条司法書士は、成年後見人等に就任した場合には、支援者と連携を図るように努めなければならない。

2前項の場合において、司法書士は、本人のプライバシーに配慮しなければならない。

第10章財産管理業務に関する規律

(基本姿勢)

第74条司法書士は、他人の財産を管理する場合には、自己の財産又は管理する他者の財産と判然区別することが可能な方法で各別に保管するなど、善良な管理者の注意をもって行う。

(委任による財産管理)

第75条司法書士は、委任により他人の財産を管理する場合には、委任者が適切な手続を選択することができるように説明しなければならない。

2司法書士は、前項の場合には、委任者と利益相反する行為をしてはならない。

3司法書士は、財産管理の状況について、定期的に委任者に報告しなければならない。委任者から報告を求められたときも、同様とする。

(法律の定めによる財産管理)

第76条司法書士は、法律の定めにより他人の財産を管理する者に選任された場合には、その目的を達するため誠実に財産管理を行わなければならない。

(遺言執行)

第77条司法書士は、遺言執行者に就任した場合には、遺言の内容を実現するため直ちに遺言執行事務に着手し、善良な管理者の注意をもってその事務を遂行しなければならない。

2司法書士は、遺言執行者に就任している場合において、遺言者の相続財産(遺言が相続財産のうち特定の財産に関する場合には、その財産に限る。)に係る事件であって、相続人又は受遺者の依頼により、他の相続人又は受遺者を相手方とする裁判業務を行ってはならない。遺言執行者でなくなった後も、同様とする。

(遺産承継業務)

第78条司法書士は、遺産承継業務を受任する場合には、委任契約書を作成するなどして、依頼者に対し、受任事務の内容及び範囲を明らかにしなければならない。

2司法書士は、前項の場合においては、事案に応じて、依頼者に対し、業務の中断又は終了に関する事由を明らかにしなければならない。

(事件の終了)

第79条司法書士は、他人の財産の管理を終了したときは、遅滞なく、その管理する財産を委任者など受領権限がある者に引き渡さなければならない。

第11章民事信託支援業務に関する規律

(基本姿勢)

第80条司法書士は、民事信託支援業務を受任したときは、信託目的の達成に向けて、委託者、受託者、受益者その他信託関係人の知識、経験、財産の状況等に配慮して業務を行う。

(適正な民事信託の支援)

第81条司法書士は、民事信託の設定を支援するにあたっては、委託者の意思を尊重し、かつ、信託法上の権利及び義務に関する正確な情報を提供するように努めなければならない。

2司法書士は、民事信託の設定後においては、受託者の義務が適正に履行され、かつ、受益者の利益が図られるよう、必要に応じて、継続的な支援に努めなければならない。

第12章共同事務所における規律

(遵守のための措置)

第82条複数の司法書士が事務所を共にする場合(以下「共同事務所」という。)において、その共同事務所を監督する立場にある司法書士があるときは、当該司法書士は、共同事務所に所属する全ての司法書士(以下「所属司法書士」という。)が、法令、会則等を遵守するために必要な措置をとらなければならない。

(秘密保持の義務)

第83条所属司法書士は、正当な事由がある場合を除き、他の所属司法書士が業務上知り得た秘密を保持しなければならず、又は利用してはならない。所属司法書士でなくなった後も同様とする。

(共同事務所における業務を行い得ない事件)

第84条所属司法書士は、他の所属司法書士(所属司法書士であった者を含む。)が業務を行い得ない事件については、業務を行ってはならない。ただし、業務の公正を保ち得る事由があるときは、この限りでない。

(所属司法書士であった者が裁判業務を行い得ない事件)

第85条所属司法書士であった司法書士は、所属司法書士であった期間内に、他の所属司法書士が取り扱った裁判業務に係る事件で、自らこれに関与していた事件については、その事件の相手方の依頼を受けて裁判業務を行ってはならない。

(受任後の措置)

第86条所属司法書士は、事件を受任した後に第84条本文に該当する事由があることを知ったときは、依頼者に対し、速やかにその事情を告げ、事案に応じて適切な措置をとらなければならない。

(業務を行い得ない事件の受任防止

第87条所属司法書士は、共同事務所として、当事者情報の確認その他必要な措置をとるなどをして、業務を行い得ない事件の受任を防止するように努めなければならない。

第13章司法書士法人における規律

(遵守のための措置)

第88条司法書士法人は、その社員等が法令、会則等を遵守するための必要な措置をとらなければならない。

(秘密保持の義務)

第89条社員等は、正当な事由がある場合を除き、司法書士法人、他の社員等が業務上知り得た秘密を保持しなければならず、又は利用してはならない。社員でなくなった後も同様とする。

(司法書士法人が業務を行い得ない事件)

第90条司法書士法人は、裁判業務に係る次の事件については、裁判業務を行ってはならない。ただし、第4号に掲げる事件については、受任している事件の依頼者が同意した場合はこの限りでない。

(1)相手方の依頼を受けて行った事件又は受任している事件

(2)相手方の協議を受けて賛助し、又はその依頼を承諾した事件

(3)相手方の協議を受けた事件で、その協議の程度及び方法が信頼関係に基づくと認められるもの

(4)受任している事件の相手方からの依頼による他の事件

(5)受任している事件の依頼者を相手方とする他の事件

(6)その他受任している事件の依頼者と利益相反する事件

(司法書士法人が社員等の関係で業務を行い得ない事件)

第91条司法書士法人は、裁判業務に係る次の事件については裁判業務を行ってはならない。

(1)社員等が相手方から受任している事件

(2)第25条、第26条若しくは第58条第1号から第6号まで又は第92条第2項第1号から第3号までに掲げる事件として社員の半数以上(簡裁訴訟代理等関係業務に係る事件については特定社員の半数以上)の者が裁判業務を行ってはならないこととされる事件

(社員等が司法書士法人との関係で業務を行い得ない事件)

第92条社員等は、裁判業務に係る次の事件については、裁判業務を行ってはならない。ただし、第2号に掲げる事件については、司法書士法人が受任している事件の依頼者の同意がある場合は、この限りでない。

(1)司法書士法人が相手方から受任している事件

(2)司法書士法人が受任している事件の相手方の依頼による他の事件

2社員等は、かつて別の司法書士法人(以下「その司法書士法人」という。)の社員等であった場合は、裁判業務に係る次の事件(自ら関与したものに限る。)については、裁判業務を行ってはならない。

(1)その司法書士法人の社員等として業務に従事していた期間内に、その司法書士法人が相手方の依頼を受けて行った事件

(2)その司法書士法人の社員等として業務に従事していた期間内に、その司法書士法人が相手方の協議を受けて賛助し、又は依頼を承諾した事件

(3)その司法書士法人の社員等として業務に従事していた期間内に、その司法書士法人が相手方の協議を受けた事件で、協議の程度及び方法が信頼関係に基づくと認められるもの

(社員等が他の社員等との関係で業務を行い得ない事件)

第93条社員等は、他の社員等が業務を行い得ない事件については、業務を行ってはならない。ただし、業務の公正を保ち得る事由があるときは、この限りでない。

(受任後の措置)

第94条司法書士法人は、事件を受任した後に、第90条又は第91条の規定に該当する事由があることを知ったときは、依頼者に対し、速やかにその事情を告げ、事案に応じて適切な措置をとらなければならない。

2社員等は、事件を受任した後に、前2条の規定に該当する事由があることを知ったときは、依頼者に対し、速やかにその事情を告げ、事案に応じて適切な措置をとらなければならない。

(業務を行い得ない事件の受任防止

第95条司法書士法人は、業務を行い得ない事件の受任を防止するために、当事者情報の確認その他必要な措置をとるように努めなければならない。

(準用)

第96条第1章から第11章まで(第4条、第5条、第6条、第11条第1項、第26条第2項及び第58条を除く。)、第14章及び第15章の規定は、司法書士法人について準用する。

第14章他の司法書士との関係における規律

(名誉の尊重)

第97条司法書士は、他の司法書士(司法書士法人を含む。以下、本章において同じ。)との関係において、相互に名誉と信義を重んじる。

(他の事件への介入)

第98条司法書士は、他の司法書士が受任している事件に関して、不当に介入してはならない。

(相互協力)

第99条司法書士は、他の司法書士と共同して業務を行う場合には、依頼者とそれぞれの司法書士との間の委任関係を明確にして、依頼の趣旨の実現に向け、相互に協力しなければならない。

2司法書士は、事件処理のために復代理人を選任する場合には、依頼の趣旨の実現に向け、復代理人と十分な意思疎通を図らなければならない。

第15章司法書士会等との関係における規律

(規律の遵守)

第100条司法書士は、自治の精神に基づき、司法書士会等が定める規律を遵守する。

(組織運営への協力)

第101条司法書士は、司法書士会等の組織運営に積極的に協力する。

(事業への参加)

第102条司法書士は、司法書士会等が行う事業に積極的に参加する。また、司法書士会等から委嘱された事項を誠実に遂行する。

附則(令和4年6月23日・24日第87回定時総会承認)

この規範は、令和5年4月1日から施行する。

Tsuyoshi Taniguchi

これ見てる人全員アウトー!!

司法書士行為規範 (品位の保持) 第4条 司法書士は、常に、人格の陶冶を図り、教養を高め、司法書士としての品位を保持 する。

Tsuyoshi Taniguchi

非弁と言われる可能性は数年前まではかなり悩んでましたが、今はほとんど意識しなくなりましたかね。 「信託は魔法のツール」ってやりたい放題やってた時期はいつ誰が刺されるかとドキドキしてました。 司法書士行為規範に民事信託を盛り込んで、「目指すべき適正な形」を明文化したのは大きかった。

https://x.com/Hamuuuuuuuuuuu/status/1714521896757407774?s=20

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