加工_法制審議会担保法制部会第40回会議(令和5年11月7日開催)部会資料37―1
法務省
https://www.moj.go.jp/shingi1/shingi04900001_00223.html
担保法制部会資料37―1
担保法制の見直しに関する要綱案のたた き 台 1⑴
目次
第1
定義 3
第2
譲渡担保契約に関する総則規定 4
1譲渡担保権の内容 4
2譲渡担保権の被担保債権の範囲 4
3譲渡担保権者による譲 渡担保財産の譲渡 4
4譲渡担保権設定者の処分権限 5
5同一の譲渡担保財産についての重複する譲渡担保契約 5
6譲渡担保権の不可分性 5
7物上代位 5
8物上保証人の求償権 6
9根譲渡担保契約の効力 6
第3
動産譲渡担保契約の効力 13
1動産譲渡担保権の及ぶ範囲 13
2動産譲渡担保権者による果 実の収取 13
3動産譲渡担保権設定者による譲渡担保動産の使用及び収益 13
4妨害の停止の請求等 14
5牽連性のある金銭債務のみを担保する動産譲渡担保権の対抗力 14
6動産譲渡担保権の順位 15
7動産譲渡担保権の順位の変更 15
8動産譲渡担保権と先取特権との競合 15
9動産譲渡担保権と動産質権との競合 16
10占有改定で対抗要件を備えた動産譲渡担保権の順位の特例 16
11牽連性のある金銭債務を担保する動産譲渡担保権の順位の特例 16
12転動産譲渡担保 16
第4
集合動産譲渡担保契約の効力 17
1特定範囲所属動産を一体として目的とする動産譲渡担保契約 17
2集合動産譲渡担保権についての対抗要件の特例 18
3集合動産譲渡担保権設定者による特定範囲所属動産の処分 18
4補充義務 19
5集合動産譲渡担保権に基づく物上代位等 19
6動産特定範囲に動産を属させる行為に関する詐害行為取消請求 20
第5
債権譲渡担保契約の効力 20
1混同の特例混同の特例 ………….. 20
2債権譲渡担保権の順位債権譲渡担保権の順位 .20
3債権譲渡担保権と先取特権との競合債権譲渡担保権と先取特権との競合 ………………. 20
4 債権譲渡担保権と債権譲渡担保権と債権を目的とする質権との競合債権を目的とする質権との競合 .21
5債権譲渡担保権の順位の変更債権譲渡担保権の順位の変更 .21
6転債権譲渡担保転債権譲渡担保 …..21
第6 集合債権譲渡担保契約の効力集合債権譲渡担保契約の効力 …………22
1 集合債権譲渡担保権設定者による債権特定範囲に属する債権の取立て集合債権譲渡担保権設定者による債権特定範囲に属する債権の取立て .22
2 補充義務の規定等の準用補充義務の規定等の準用 ..22
第1 定義
次の1から15 までに掲げる 用語の意義は、それぞれに定めるところによる ものとする 。
1譲渡担保契約 金銭債務を担保するため、債務者又は第三者が動産、債権その他の財産【財産の範囲についてはP】を債権者に譲渡することを約する契約をいう。
2譲渡担保財産 譲渡担保契約の目的である財産をいう。
3譲渡担保権 譲渡担保契約に基づいて譲渡担保財産の譲渡を受ける者が譲渡担保財産について取得する権利をいう。
4譲渡担保権者 譲渡担保権を有する者をいう。
5譲渡担保権設定者 譲渡担保契約の当事者のうち譲渡担保財産を譲渡する者(その者が譲渡担保財産について有する権利を他の者に譲渡した場合にあっては、その権利を現に有する者)をいう。
6動産譲渡担保契約 譲渡担保契約のうち、動産を目的とするものをいう。
7譲渡担保動産 動産譲渡担保契約の目的である 動産をいう。
8動産譲渡担保権 動産譲渡担保契約に基づいて譲渡担保動産の譲渡を受ける者が譲渡担保動産について取得する権利をいう。
9動産譲渡担保権者 動産譲渡担保権を有する者をいう。
10動産譲渡担保権設定者 動産譲渡担保契約の当事者のうち譲渡担保動産を譲渡する者(その者が譲渡担保動産について有する権利を他の者に譲渡した場合にあっては、その権利を現に有する者)をいう。
11債権譲渡担保契約 譲渡担保契約のうち、債権を目的とするものをいう。
12譲渡担保債権 債権譲渡担保契約の目的である債権をいう。
13債権譲渡担保権 債権譲渡担保契約に基づいて譲渡担保債権の譲渡を受ける者が譲渡担保債権について取得する権利をいう。
14債権譲渡担保権者 債権譲渡担保権を有する者をいう。
15債権譲渡担保権設定者 債権譲渡担保契約の当事者のうち譲渡担保債権を譲渡する者 (その者が譲渡担保債権について有する権利を他の者に譲渡した場合にあっては、その権利を現に有する者)をいう。
説明
1本文は、 譲渡担保契約に関する用語を定義するものである。所有権留保に関する定義については次回以降に改めて 提示する予定である。
なお、 譲渡担保契約及び所有権留保契約に関する規定を設けるに当たっては、 その効力、実行及び破産手続等の取扱いについての規定を含む新法を制定する方向で検討している 。
2「譲渡担保契約」の定義は、 部会資料 28 第1、 2と実質的な変更はない。 現在の譲渡担保権は譲渡することができればどのような財産であっても 目的 とすることができるため、新たに設ける規定においても 、その目的となる財産の範囲について、(不動産及びこれに関する権利を除くほか)特段の制限を設けないことが考えられる。しかし、動産であっても抵当権の目的となり得るものや物的編成主義による登記登録制度を有する財産については、非占有型の担保権に関する新たな規定を適用する必要性に疑問がある上、例えば譲渡担保権と抵当権との優劣関係をどのように規定するかという問題や、動産譲渡登記が対抗要件としての意味を有しないなどの特殊性があるため、譲渡担保権に関する新たな規定の適用対象とするかどうかについて、改めて検討する必要がある。
そこで、本文においては【P】としてとしており、別途その点を取り扱う予定である。
3 「譲渡担保権」のうち、「譲渡担保財産の譲渡を受ける者」は、譲渡担保契約によって譲譲渡担保権者となる者をいい、その具体的な権利の内容は、後記第2、1の「譲渡担保権の「譲渡担保権の内容」において示している。
4 譲渡担保権を有する者は、必ずしも譲渡担保契約において譲渡担保財産の譲渡を受けた者に限定されるものではなく、被担保債権が譲渡された場合にはこれに随伴して譲渡担保者に限定されるものではなく、被担保債権が譲渡された場合にはこれに随伴して譲渡担保権も移転することになる。「譲渡担保権者」は、このような譲渡担保権の移転を受けた者も「譲渡担保権者」は、このような譲渡担保権の移転を受けた者も含まれる。
5 「譲渡担保権設定者」は、譲渡担保契約の当事者である譲渡担保財産を譲渡する者のほか、その者が譲渡担保財産について有する権利を他の者に譲渡(担保権付きの財産の譲渡)した場合譲渡を受けた者が設定者としての地位に立つため、「譲渡担保権設定者」をこのような譲渡を受けた者をも含むもの者をも含むものとして定義している。
6 動産譲渡担保契約及び債権譲渡担保契約についても、以上に倣ってそれぞれ定義規定を設けている。
第2 譲渡担保契約譲渡担保契約に関する総則規定
1 譲渡担保権の内容
譲渡担保権者は、譲渡担保財産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有するものとする。
(説明)
譲渡担保権の中心的内容が、譲渡担保財産に対する優先弁済権にあることを定めるものであり、部会資料28第第2、1と同様である。
2 譲渡担保権の被担保債権の範囲譲渡担保権の被担保債権の範囲
譲渡担保権は、元本、利息、違約金、譲渡担保権の実行の費用及び債務の不履行によって生じた損害の賠償を担保するものとする。ただし、譲渡担保契約に別段の定めがあるときは、この限りでないものとする。
(説明)
譲渡担保権の被担保債権の範囲を定めるものであり、部会資料28(第2、2)から変更はない。
3 譲渡担保権者による譲渡担保財産の譲渡
譲渡担保権者による譲渡担保財産の譲渡担保権者は、譲渡担保権の実行手続によらなければ、譲渡担保財産を譲渡することができないものとする。
(説明)
譲渡担保契約の効力は、債権を担保するために必要な限度で制限されており、譲渡担保権が、その実行手続によらなければ譲渡担保財産の譲渡をすることができない旨の性質を有することを定めるものであり、部会資料8第2、4から変更はない。
4 譲渡担保権設定者の処分権限譲渡担保権設定者の処分権限
譲渡担保権設定者は、譲渡担保財産について、その有する権利を第三者に譲渡することができるものとする。
(説明)
譲渡担保権設定者の処分権限に関し、設定者が、譲渡担保財産を担保権の負担付きで第三者に有効に譲渡することができる譲渡することができるか否かについて、これをすることができるとする旨の規律であり、部会資料33第3の【案3.1】を前提としたものである。
なお、設定者が有する譲渡担保財産についての権利が譲渡された場合の実行の場面における通知等については当初の設定者に対してすることができる等の規律を設ける予定である。
部会資料33第3第3の【案の3.1】においては、上記の譲渡について、譲渡担保契約により、禁止又は制限することができる旨の規律を隅付き括弧により示していた。
しかし、原則として譲渡することができる財産を当事者の合意によって譲渡することができないものとする(第三者への譲渡の効力を無効とする)ことについては疑問もある。そこで、実行手続において、担保権者が当初の設定者に対して通知等をすれば足りる旨の規律を設けることとし、担保権付きの譲渡を制限又は禁止する旨の約定を可能とする旨の規定は設けないこととしている。
5 同一の譲渡担保財産についての重複する譲渡担保契約
譲渡担保財産は、重ねて譲渡担保契約の目的とすることができる財産は、重ねて譲渡担保契約の目的とすることができるものとするものとする。
(説明)
同一の譲渡担保財産について後順位の譲渡担保権を設定することができる旨の規定であり、部会資料28第2、3から変更はない。
6 譲渡担保権の不可分性
譲渡担保権者は、被担保債権の全部の弁済を受けるまでは、譲渡担保財産の全部について、譲渡担保権を行使することができるものとする。
(説明)
譲渡担保権の不可分性は、部会資料28第3、6において動産譲渡担保契約の規律として提案していたものであるが、これは、動産譲渡担保契約に限られず、譲渡担保契約一般に妥当すると考えられることから、譲渡担保契約の総則規定として設けることとしている。
7 物上代位
(1) 譲渡担保権は、譲渡担保財産の売却、賃貸、滅失又は損傷によって譲渡担保権設定者が受けるべき金銭その他の物に対しても、行使することができるものとする。この場合においては、譲渡担保権者は、その払渡し又は引渡しの前に差押えをしなければならなものとするものとする。
(2)上記(1)前段の規定に基づいて譲渡担保権者が行使する権利は、その金銭その他の物の払渡し又は引渡しを目的とする債権を目的とする質権又は譲渡担保権であって、上記(1)後段の規定による差押えの後に対抗要件が具備されたものに優先するものとする。
(3)譲渡担保権の目的である財産について、その譲渡担保権に劣後する先取特権、質権又その譲渡担保権に劣後する先取特権、質権又は他の譲渡担保権を有する者(以下この(3)において「劣後担保権者」という。)は、その順位により、譲渡担保権設定者が支払を受けるべき帰属清算金、処分清算金又は債権譲渡担保権者が譲渡担保債権について受けた給付の価額と被担保債権の額の差額に相当する金銭若しくは残額に対しても、その権利を行使することができるものとする。
この場合においては、劣後担保権者は、その払渡し前に差押えをしなければならないものとする。
(説明)
譲渡担保権の物上代位に関する規律であり、(1)及び(2)は、部会資料28第2、5第から変更はない。
なお、(2)について、部会資料部会資料28第2、5については、公示性の低い占有改定による対抗要件具備を維持すること自体について検討が必要である。先取特権は対抗要件具備自体がなく、譲渡担保権の物上代位は追求効の観点から、抵当権と同様のルールとすることも考えられる、等の意見が出されたところである。
譲渡担保権の負担付きの財産が譲渡された場合、譲渡担保権の負担も移転することからすると、抵当権と同様と考えることもできるが、譲渡担保権につき占有改定の方法による対抗要件具備自体は残ることからすると、公示の観点からは本文の規律については維持することとしている。
本文(3)は、後順位担保権者による清算金等に対する物上代位の規定である。これは、(1)の規律からは直接導かれないと考えられることから、仮登記担保法第4条第1項の規定に倣い、これを明文で設けるものである。
8 物上保証人の求償権
他人の債務を担保するため譲渡担保契約を締結した譲渡担保権設定者は、その債務を弁済し、又は譲渡担保権の実行によって譲渡担保財産を失ったときは、民法に規定する保証債務に関する規定に従い、債務者に対して求償権を有するものとする。
(説明)
物上保証人の求償権については、部会資料28第3、6において動産譲渡担保契約の規律として提案していたものであるが、譲渡担保契約一般に妥当すると考えられることから、譲渡担保契約の総則規定として設けている。譲渡担保契約の総則規定として設けている。
9 根譲渡担保契約の効力根譲渡担保契約の効力
譲渡担保契約は、債務者との間に生ずる不特定の債権を担保するためにも締結することができるものとする。
ア 上記(1)の債権を担保するために締結された譲渡担保契約(以下「根譲渡担保契約」という。)に基づく譲渡担保権(以下「根譲渡担保権」という。)を有する者(以下「根譲渡担保権者」という。)は、確定した元本並びに利息その他の定期金及び債務の不履行によって生じた損害の賠償の全部について、その根譲渡担保権を行使することができるものとする。ただし、当事者は、根譲渡担保契約において極度額(根譲渡担保権を行使することができる被担保債権の上限の額をいう。以下同じ。)を定めることができるものとする。
イ 債務者との取引によらないで取得する手形上若しくは小切手上の請求権又は電子記録債権を根譲渡担保権の被担保債権とした場合において、次に掲げる事由があったときは、その前に取得したものについてのみ、その権利を行使することができるものとする。ただし、その後に取得したものであっても、その事由を知らないで取得したものについては、これを行使することを妨げないものとする。
(ア)債務者の支払の停止
(イ)債務者についての破産手続開始、再生手続開始、更生手続開始又は特別清算開始
(ウ)譲渡担保財産に対する強制執行若しくは担保権の実行としての競売による差押え
(3)根譲渡担保権の被担保債権の債務者の変更
ア 元本の確定前においては、根譲渡担保権の被担保債権の債務者の変更をすることができるものとする。
イ 根譲渡担保権の極度額の定めがない場合における債務者の変更は、根譲渡担保権に劣後する譲渡担保権を有する者その他の利害関係を有する者の承諾を得なければ、することができないものとする。
(4)根譲渡担保権の極度額の変更根譲渡担保権の極度額の変更
根譲渡担保権の極度額の変更は、利害関係を有する者の承諾を得なければ、することができないものとする。
(5)根譲渡担保根譲渡担保権の元本確定期日の定め権の元本確定期日の定め
ア 根譲渡担保権の担保すべき元本については、その確定すべき期日を定め又は変更することができるものとする。
イ 上記(3)イの規定は、アの場合について準用するものとする。
ウ アの期日は、これを定め又は変更した日から5年以内でなければならないものとする。
(6)根譲渡担保権の被担保債権の譲渡等
ア 元本の確定前に根譲渡担保権者から債権を取得した者は、その債権について根譲渡担保権を行使することができないものとする。元本の確定前に債務者のために又は債務者に代わって弁済をした者も、同様とするものとする。
イ 元本の確定前に債務の引受けがあったときは、根譲渡担保権者は、引受人の債務について、その根譲渡担保権を行使することができないものとする。
ウ 元本の確定前に免責的債務引受があった場合における債権者は、民法第472条の4条第1項の規定にかかわらず、根譲渡担保権を引受人が負担する債務に移すことができないものとする。
エ 元本の確定前に債権者の交替による更改があった場合における更改前の債権者は、民法第518条第1項の規定にかかわらず、根譲渡担保権を更改後の債務に移すことができないものとする。元本の確定前に債務者の交替による更改があった場合における債権者も、同様とするものとする。
(7) 根譲渡担保権者又は債務者の合併根譲渡担保権者又は債務者の合併
ア 元本の確定前に根譲渡担保権者について合併があったときは、当該根譲渡担保権は、合併の時に存する債権のほか、合併後存続する法人又は合併によって設立された法人が合併後に取得する債権を担保するものとする。
イ 元本の確定前にその債務者について合併があったときは、根譲渡担保権は、合併の時に存する債務のほか、合併後存続する法人又は合併によって設立された法人が合併後に負担する債務を担保するものとする。
ウ ア又はイの場合には、根譲渡担保契約における譲渡担保権設定者(以下「根譲渡担保権設定者」という。)は、担保すべき元本の確定を請求することができるものとする。ただし、イの場合において、その債務者が根譲渡担保権設定者であるときは、この限りでないものとする。
エ ウの規定による請求があったときは、担保すべき元本は、合併の時に確定したものとみなすものとする。
オ ウの規定による請求は、根譲渡担保権設定者が合併のあったことを知った日から2週間を経過したときは、することができないものとする。合併の日から1月を経過したときも、同様とするものとする。
(8)根譲渡担保権者又は債務者の会社分割
ア 元本の確定前に根譲渡担保権者を分割をする会社とする分割があったときは、根譲渡担保権は、分割の時に存する債権のほか、分割をした会社及び分割により設立された会社又は当該分割をした会社がその事業に関して有する権利義務の全部又は一部をた会社又は当該分割をした会社がその事業に関して有する権利義務の全部又は一部を当該会社から承継した会社が分割後に取得する債権を担保するものとする。
イ 元本の確定前にその債務者を分割をする会社とする分割があったときは、根譲渡担保権は、分割の時に存する債務のほか、分割をした会社及び分割により設立された会社又は当該分割をした会社がその事業に関して有する権利義務の全部又は一部を当該会社から承継した会社が分割後に負担する債務を担保するものとする。
ウ 上記(7)ウからオまでの規定は、ア又はイの場合について準用するものとする。
(9)根譲渡担保権の譲渡根譲渡担保権の譲渡
ア 元本の確定前においては、根譲渡担保権者は、根譲渡担保権設定者の承諾を得て、その根譲渡担保権(極度額の定めがあるものに限る。イ及び後記(10)において同じ。)を譲り渡すことができるものとする。
イ 根譲渡担保権者は、その根譲渡担保権を二個の権利に分割して、その一方を前項の規定により譲り渡すことができるものとする。この場合において、その根譲渡担保権を目的とする権利は、譲り渡した根譲渡担保権について消滅するものとする。
ウ 前項の規定による譲渡をするには、分割する権利を目的とする権利を有する者の承諾を得なければならないものとする。
(10)根譲渡担保権の一部譲渡
元本の確定前においては、根譲渡担保権者は、根譲渡担保権設定者の承諾を得て、その根譲渡担保権の一部譲渡(譲渡人が譲受人と根譲渡担保権を共有するため、これを分割しないで譲り渡すことをいう。)をすることができるものとする。
(11)根譲渡担保権の譲渡又は一部譲渡の対抗要件
ア 根譲渡担保権の譲渡又は一部譲渡は、動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律(平成10年法律第104号。以下「特例法」という。)の定めるところに従いその登記をしなければ、これをもって第三者に対抗することができないものとする。
イ 債権を目的と債権を目的とする根譲渡担保権の譲渡又は一部譲渡は、当該譲渡又は一部譲渡及びその譲渡又は一部譲渡につき登記がされたことについて、譲渡人若しくは譲受人が当該債権の債務者に登記事項証明書を交付して通知をし、又は当該債務者が承諾をしなければ、当該債務者に対抗することができないものとする。
(12)根譲渡担保権の共有
ア 根譲渡担保権の共有者は、それぞれその債権額の割合に応じて弁済を受けるものとする。ただし、元本の確定前に、これと異なる割合を定め、又はある者が他の者に先立って弁済を受けるべきことを定めたときは、その定めに従うものとする。
イ 根譲渡担保権の共有者は、他の共有者の同意を得て、上記.アの規定によりその権利を譲り渡すことができるものとする。
(13)根譲渡担保権の元本の確定請求根譲渡担保権の元本の確定請求
ア 根譲渡担保権設定者は、根譲渡担保契約に基づく財産の譲渡の時から3年を経過したときは、担保すべき元本の確定を請求することができるものとする。この場合において、担保すべき元本は、その請求の時から2週間を経過することによって確定するものとする。
イ 根譲渡担保権者は、いつでも、担保すべき元本の確定を請求することができるものとする。この場合において、担保すべき元本は、その請求の時に確定するものとする。
ウ ア及びイの規定は、担保すべき元本の確定すべき期日の定めがあるときは、適用しないものとする。
(14)根譲渡担保権の元本の確定事由根譲渡担保権の元本の確定事由
ア 次に掲げる場合には、根譲渡担保権の担保すべき元本は、確定するものとする。
(ア)根譲渡担保権者が譲渡担保財産について強制執行、担保権の実行又は前記7(1)後段の規定による差押えを申し立てたとき。ただし、強制執行若しくは担保権の実行の手続の開始又は差押えがあったときに限る。
(イ)根譲渡担保権者が譲渡担保財産に対して滞納処分による差押えをしたとき。
(ウ)根譲渡担保権者が譲渡担保財産に対する強制執行(集合動産譲渡担保契約における第4、1の動産特定範囲に属する動産に対する強制執行を除く。)若しくは担保権の実行の手続の開始若しくは滞納処分による差押えがあったことを知った時から1週間を経過したとき又は譲渡担保財産に対する強制執行若しくは担保権の実行の手続について配当要求をしたとき。
(エ)根譲渡担保権者が帰属清算の通知等又は処分清算譲渡をしたとき。
(オ)後順位の動産譲渡担保権者(根譲渡担保権に劣後する動産譲渡担保権の動産譲渡担保権者に限る。)が先順位の動産譲渡担保権者の全員の同意を得て帰属清算の通知等又は処分清算譲渡権者が根譲渡担保権設定者に対して帰属清算の通知等又は処分清算譲渡をしたとき。
(カ)第4、1の特定範囲所属動産を一体として目的とする根譲渡担保権の根譲渡担保権者が根譲渡担保権設定者に対して帰属清算の通知等又は処分清算譲渡をしようとするときにおける集合動産譲渡担保権設定者に対する事前の通知をしたとき。
(キ)債権を目的とする根譲渡担保権の根譲渡担保権者が被担保債権の不履行があった場合に譲渡担保債権に係る債務の履行を請求したとき。
(ク)根譲渡担保権者が譲渡担保動産(集合動産譲渡担保契約における第4、1の動産引渡特定範囲に属する動産を含む。)について引渡命令を申し立てたとき。ただし、引渡命令が発せられたときに限る。
(ケ)根譲渡担保権者又は債務者について相続が開始したとき。
(コ)債務者又は根譲渡担保契約における根譲渡担保権設定者が破産手続開始の決定を受けたとき。
イ 上記ア(ウ)の強制執行若しくは担保権の実行の手続の開始若しくは差押え、同(カ)の通知、同(ク)の引渡命令又は同(コ)の破産手続開始の決定の効力が消滅したときは、担保すべき元本は、確定しなかったものとみなす。ただし、元本が確定したものとは、担保すべき元本は、確定しなかったものとみなす。ただし、元本が確定したものとしてその根譲渡担保権又はこれを目的とする権利を取得した者があるときは、この限りでない。
(説明)
根譲渡担保契約の効力について、部会資料28第2、6、部会資料35第5などの内容を踏まえた規律としている。
根抵当権の規定と同旨又は類似の規定を設けるものを、下記表のとおり整理し、説明を加えている。
これに対し、根抵当権の規定と同旨の規定を設けないものは、下記表のとおりである。
第3動産譲渡担保契約の効力
1動産譲渡担保権の及ぶ範囲
動産譲渡担保権者は、動産譲渡担保権設定者が動産譲渡担保契約の締結後にその動産の常用に供するために附属させた他の動産であって動産譲渡担保権設定者の所有に属するものについても、動産譲渡担保権を行使することができるものとするものとする。ただし、譲渡担保契約に別段の定めがある場合及び譲渡担保権設定者の行為について民法第424条第3項に規定する詐害行為取消請求をすることができる場合は、この限りではないものとするものとする。
(説明)
部会資料28第3、1から実質的変更はない。
2動産譲渡担保権者による果実の収取
動産譲渡担保権者は、その被担保債権について不履行があったときは、譲渡担保動産の果実(収取されていないものに限る。)についても、動産譲渡担保権を行使することができるものとする。
(説明)
動産譲渡担保権の果実に対する効力に関する規律を定めるものであり、部会資28第3、2と実質的に同様である。設定者が既に収取した果実に動産譲渡担保権の効力を及ぼすことはできないため、括弧書きによりその点を明らかにしている。
3動産譲渡担保権設定者による譲渡担保動産の使用及び収益
⑴動産譲渡担保権設定者は、譲渡担保動産の用法に従い、その使用及び収益をすることができるものとする。
⑵動産譲渡担保権設定者は、善良な管理者の注意をもって、譲渡担保動産の使用及び収益をしなければならないものとする。
(説明)
動産譲渡担保権設定者による譲渡担保動産の使用収益権限及び善管注意義務に関する規律であり、部会資料28第3、3と基本的に同様である。
4妨害の停止の請求等
動産譲渡担保権設定者又は動産譲渡担保権者は、次の各号に掲げるときは、当該各号に定める請求をすることができるものとする。
⑴譲渡担保動産の使用又は収益を第三者が妨害しているときその第三者に対する妨害の停止の請求
⑵譲渡担保動産の使用又は収益を第三者が妨害するおそれがあるときその第三者に対する妨害の予防の請求
⑶譲渡担保動産を第三者が占有しているときその第三者に対する返還の請求
(説明)
動産譲渡担保権設定者又は動産譲渡担保権者による妨害の停止等の請求を認めるものである。部会資料28第3、4では、譲渡担保権設定者について、目的である動産に関する権利を妨害されたときなどについて、設定が妨害の停止等の請求をすることができる旨の規律を提案していた。この点について、譲渡担保権設定者の譲渡担保動産に関する権利の中心は、譲渡担保動産の使用収益権限であり(3⑴)、賃借人に関する民法第605条の4を参考に、「譲渡担保動産の使用又は収益を第三者が妨害しているとき」等について、妨害の停止の請求を認める旨の規律とした。また、部会資料28第3、4では、「目的である動産の占有が奪われたとき」に、当該動産の返還の請求を認めることとしていたところ、詐取や遺失の場合にも認めるべきとの部会における議論も踏まえて、「譲渡担保動産を第三者が占有しているとき」とした。
部会資料28第3、4においては、動産譲渡担保権者の妨害の停止請求等の規律は記載していなかったが、動産譲渡担保権者もその権利が侵害される場合には、譲渡担保権に基づく物権的請求を認めるべきである(中間試案第1、5(補足説明)の注4)。動産譲渡担保権設定者についてのみ本文のような規律を設けると、動産譲渡担保権者はそのような請求権を有しないとの反対解釈を招くおそれがあるため、譲渡担保権者についても、譲渡担保権設定者がすることができる請求について、同様の請求をすることができる旨を定めることとしている。
5牽連性のある金銭債務のみを担保する動産譲渡担保権の対抗力
- 次に掲げる債務(その利息、違約金、権利の実行の費用及び債務の不履行によって生じた損害の賠償を含む。11において「牽連性のある金銭債務」という。)のみを担保する動産譲渡担保権は、譲渡担保動産の引渡しがなくても、これをもって第三者に対抗することができるものとする。
ア譲渡担保動産の代金債務
イ譲渡担保動産の代金債務の債務者から委託を受けた者が当該代金債務を履行したことによって生ずるその者の当該債務者に対する求償権に係る債務
⑵上記⑴の場合には、6及び9から11までの規定の適用については、動産譲渡担保契約に基づく動産の譲渡の時に民法第183条に規定する方法(以下「占有改定」という。)以外の方法で当該動産の引渡しがあったものとみなす。
(説明)
狭義の留保所有権と同様の金銭債務のみを担保する動産譲渡担保権について、引渡しなくして第三者に対抗できることとし、担保権の競合の場合の優劣については動産譲渡担保契約に基づく動産の譲渡時に占有改定以外の方法により引渡しがあったものとみなすこととするもので、部会資料33第4、3から実質的変更はない。
6動産譲渡担保権の順位
同一の動産について数個の動産譲渡担保権が互いに競合する場合には、その動産譲渡担保権の順位は、その動産の引渡しの前後によるものとする。
(説明)
部会資料33第4、2から実質的変更はない。
7動産譲渡担保権の順位の変更
⑴動産譲渡担保権の順位は、各動産譲渡担保権者の合意によって変更することができるものとする。ただし、利害関係を有する者があるときは、その承諾を得なければならないものとする。
⑵上記⑴の規定による順位の変更は、特例法の定めるところに従いその登記をしなければ、その効力を生じないものとする。
(説明)
部会資料28第3、7から実質的変更はない。
8動産譲渡担保権と先取特権との競合
⑴動産譲渡担保権と先取特権とが競合する場合には、動産譲渡担保権者は、民法第330条の規定による第1順位の先取特権者と同一の権利を有するものとする。
⑵上記⑴の場合において、動産譲渡担保権者が数人あるときは、各動産譲渡担保権者は、同項及び民法第332条の規定に従ってこれらの者が弁済を受けるべき金額の合計額について、6、9及び10の規定による順位に従って弁済を受けるものとする。
(説明)
部会資料33第4、1では、占有改定劣後ルールを民法第330条の規定による第1順位の先取特権との関係でも適用するかについて2案を提案した。本文⑴は、適用しないとする部会資料33の【案4.1.1】を採用したものである。これは、占有改定劣後ルールは約定動産担保権同士の規律であり、その適用範囲を第1順位の先取特権との関係にまで拡張する必要はないとの意見を踏まえたものである。
なお、部会では、民法第330条第2項前段の適用除外に言及する意見もあった。しかし、各種動産抵当権についても本文⑴と同旨の規定が置かれており、民法第330条第2項前段の適用の有無については解釈に委ねられていることからすると、動産譲渡担保権についてのみ明文で適用を除外するとの規定を設けることは適切でないように思われる。そこで、本文⑴では、この点について解釈に委ねることとしている。
9動産譲渡担保権と動産質権との競合
同一の動産について動産譲渡担保権と動産質権とが競合するときは、その順位は、動産譲渡担保契約に基づく動産の譲渡についての引渡しと動産質権の設定の前後によるものとする。
(説明)
部会資料33第5、2から実質的変更はない。
10占有改定で対抗要件を備えた動産譲渡担保権の順位の特例
6及び9の規定にかかわらず、占有改定で譲渡担保動産の引渡しを受けることにより対抗要件を備えた動産譲渡担保権は、占有改定以外の方法で譲渡担保動産の引渡しを受けることにより対抗要件を備えた動産譲渡担保権(動産譲渡担保契約に基づく動産の譲渡につき動産譲渡登記がされたものを含む。)又は動産質権に劣後するものとする。
【P:占有改定劣後ルールの潜脱への対応については、改めて部会で取り上げる予定。】
(説明)
動産譲渡担保権と約定動産担保権が競合する場合に占有改定劣後ルールを採用するもので、部会資料33第5、2から実質的変更はない。なお、占有改定劣後ルールの潜脱への対応については、改めて部会で取り上げる予定である。
11 牽連性のある金銭債務を担保する動産譲渡担保権の順位の特例
6及び8から10までの規定にかかわらず、牽連性のある金銭債務を担保する動産譲渡担保権は、牽連性のある金銭債務を担保する限度において、競合する他の動産譲渡担保権、動産質権又は先取特権に優先するものとする。ただし、動産譲渡担保権者が次に掲げる時のうち最も早いものより後に譲渡担保動産の引渡しを受けたときは、この限りでないものとする。
⑴他の動産譲渡担保権(第4、1の特定範囲所属動産を目的とするものを除く。)の動産譲渡担保権者が譲渡担保動産の引渡し(占有改定による場合を除く。)を受けた時
⑵他の動産譲渡担保権(第4、1の特定範囲所属動産を目的とするものに限る。)の動産30 譲渡担保権者が第4、2の引渡し(占有改定による場合を除く。)又は譲渡担保動産が第4、1の動産特定範囲に属した時のいずれか遅い時
⑶動産質権の設定時
⑷民法第330条の規定による第一順位の先取特権の成立時
(説明)
牽連性のある金銭債務を担保する動産譲渡担保権についての特別の優先ルールを定めるもので、部会資料33第4、3から実質的変更はない。
12転動産譲渡担保
⑴動産譲渡担保権者は、動産譲渡担保権を譲渡担保契約の目的とすることができるものとする。
⑵⑴の規定による譲渡担保権の設定(以下「転動産譲渡担保」という。)は、特例法の定めるところに従いその登記をしなければ、これをもって第三者に対抗することができないものとする。
⑶動産譲渡担保権者が数人のために二以上の転動産譲渡担保をしたときは、これらの転動産譲渡担保の権利者の権利の順位は、登記の前後によるものとする。
⑷上記⑴の場合には、民法第467条の規定に従い、動産譲渡担保権の被担保債権の債務者に転動産譲渡担保を通知し、又は当該債務者がこれを承諾しなければ、これをもって当該債務者、保証人、動産譲渡担保権設定者及びこれらの者の承継人に対抗することができないものとする。
⑸動産譲渡担保権の被担保債権の債務者が上記⑷の規定により通知を受け、又は承諾をしたときは、転動産譲渡担保の権利者の承諾を得ないでした弁済は、当該者に対抗することができないものとする。
⑹上記⑸の規定は、動産を目的とする根譲渡担保権の転動産譲渡担保をした場合において、根譲渡担保権の被担保債権の債務者が元本の確定前にした弁済については、適用しないものとする。
(説明)
部会資料28第3、8から実質的変更はない。
第4集合動産譲渡担保契約の効力
1特定範囲所属動産を一体として目的とする動産譲渡担保契約
動産譲渡担保契約は、その種類及び所在場所の指定その他の方法により定められた範囲(以下「動産特定範囲」という。)によって特定された動産(動産特定範囲に将来において属するもの(以下「特定範囲加入動産」という。)を含む。以下「特定範囲所属動産」という。)を、一体として、その目的とすることができるものとする。
(説明)
動産譲渡担保契約について、動産特定範囲に属するものとして特定された動産(特定範囲所属動産)を一体としてその目的とすることができる旨の集合動産譲渡担保契約に関する基本的な規律であり、部会資料28第4、1と実質的な変更はない。
集合動産譲渡担保について担保権設定を可能とする規定を設ける意義は、設定後に構成部分が変動した場合でも、新たな設定行為を要せずに新たに構成部分となった動産に担保権が及び、また、初めに対抗要件を具備しておけば、以後集合動産に加入をした個別動産にもその効力を及ぼすことができる点にある。
そこで、本文は、個別動産と集合動産の違いは、「範囲」によって特定されているか、シリアルナンバーその他の方法でそれぞれの動産が個別に特定されているかという特定方法の違いにあるのではなく、設定時にその目的動産を特定するための範囲に含まれていない動産が将来(設定後)においてその範囲に加入されるかどうかという点にあるという考え方に基づいて、集合動産譲渡担保に関する規定を設けている。
本文の括弧書きにおいて、動産の集合体に関し、「動産特定範囲に将来において属するものを含む。」としているのは、この点を明らかにする趣旨である。このような理解に従えば、譲渡担保権設定契約において目的物を特定するための範囲が定められ、これに含まれる動産全部が担保権の目的とされた場合であっても、その範囲に新たな動産が将来において加入する可能性がない場合には、ここでいう集合動産譲渡担保には当たらない。
なお、部会資料28第4、1においては、種類、所在場所のほか、「量的範囲の指定」についても、動産特定範囲を定める方法として例示していた。しかし、動産の種類や所在場所が動産特定範囲に属する動産を特定する要素として重要であると考えられるのに対し、量的範囲の指定について動産の特定性を欠くとされた判例もあることなどを踏まえ、動産特定範囲を定める「他の方法」の一つとなり得ると考えられるものの、「種類及び所在場所」と並ぶ要素としては列挙しないこととしている。
2集合動産譲渡担保権についての対抗要件の特例
特定範囲所属動産を一体として目的とする動産譲渡担保契約(以下「集合動産譲渡担保契約」という。)における動産譲渡担保権者(以下「集合動産譲渡担保権者」という。)は、動産特定範囲に属する動産の全部の引渡しを受けたときは、特定範囲加入動産についても、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有することを第三者に対抗することができるものとする。
(説明)
部会資料33第4、2⑶から実質的変更はない。個別動産譲渡担保権と競合する場合の優劣については対抗要件具備時説を採ることを前提としている。
なお、部会資料35第6、2で取り上げた設定者が異なる場合における対抗要件具備時説の修正の要否については、改めて部会で取り上げる予定である。
3集合動産譲渡担保権設定者による特定範囲所属動産の処分
⑴集合動産譲渡担保契約における動産譲渡担保権設定者(以下「集合動産譲渡担保権設定者」という。)は、特定範囲所属動産の処分をすることができるものとする。ただし、25 集合動産譲渡権設定者が集合動産譲渡担保権者を害することを知ってした処分は、その効力を生じないものとする。
⑵上記⑴本文にかかわらず、集合動産譲渡担保契約における別段の定めがあるときは、その定めるところによるものとする。
⑶上記⑵の別段の定めによる集合動産譲渡担保権設定者の処分権限の範囲(以下「権限範囲」という。)を超えて集合動産譲渡担保権者が動産特定範囲に属する動産の処分をした場合において、その処分の相手方は、集合動産譲渡担保権設定者の処分権限につき善意であったときは、その動産についての権利を取得するものとする。
⑷集合動産譲渡担保権設定者が集合動産譲渡担保権者を害することを知って特定範囲所属動産の処分をするおそれがあるとき、又は権限範囲を超えて特定範囲所属動産の処分35 をするおそれがあるときは、集合動産譲渡担保権者は、その予防を請求することができるものとする。
(説明)
集合動産譲渡担保権設定者による動産の処分権限に関する規律であり、部会資料34、第2の規律と同様である。⑶の規律について、処分の相手方が、設定者の処分権限につき善意のみで保護されることとしている趣旨について、部会資料34では、処分の相手方が権限範囲の存在を認識するのが困難であるという点にあるものとしていた。この点については、本文⑴により設定者は担保権者を害することを知ってしたものでない限り動産の処分権限を有するとしていることに伴い、設定者の処分権限の存在に対する信頼を厚く保護して取引の安全を図るという観点から、相手方の保護の要件を緩和したものと説明することも可5 能と考えられる。また、このような考え方を踏まえ、処分の相手方の主観的要件としては、上記部会資料においては権限範囲の定めにつき知らなかったこととしていたが、設定者の処分権限につき善意(処分権限があることを信じていた)であったという表現に修正した。
4補充義務
集合動産譲渡担保権設定者は、動産特定範囲に属する動産の売却その他の事由によって特定範囲所属動産の総体としての価値が減少したときは、その価値が相当なものとなるよう動産特定範囲に属する動産を補充しなければならないものとする。
(説明)
集合動産譲渡担保権設定者の処分権限と補充・担保価値の維持は対になることから、処分権限について規定を設けることに伴って、集合動産譲渡担保権設定者の補充義務を定めるものである。担保価値維持義務自体は他の譲渡担保契約においても認められるところ、集合動産譲渡担保契約においては、設定者の処分権限と補充が対になるという点に特徴があることから、補充義務に焦点を当てて規律を設けることとしたものである。
動産の売却等によって、特定範囲所属動産の総体としての価値が減少した際の補充義務の程度については、集合動産譲渡担保契約の内容や、動産の性質、取引上の社会通念等によって定まると考えられる。そこで、本文では、その価値が減少したときは、その価値が相当なものとなるよう補充しなければならないものとしている。
5集合動産譲渡担保権に基づく物上代位等
第2、7にかかわらず、集合動産譲渡担保権者は、集合動産譲渡担保権設定者が4の義務(補充義務)を履行することができると認められる間は、特定範囲所属動産の売却、滅失又は損傷によって集合譲渡担保権設定者が受けるべき金銭その他の物に対し、集合動産譲渡担保権を行使することができないものとする。ただし、集合譲渡担保権設定者が集合動産譲渡担保権者を害することを知ってした行為又は権限範囲を超えてした行為によって受けるべき金銭その他の物に対しては、この限りでないものとする。
(説明)
集合動産譲渡担保契約における物上代位に関する規律であり、部会資料28第4、6とその趣旨は同様である。集合動産譲渡担保権者による物上代位が制限される時期について、部会資料28第4、6は、「通常の事業を継続している間」としていたが、このような文言35 を使用せず、4の補充義務を基礎とした表現ぶりとしている。すなわち、集合動産譲渡担保契約においては、設定者においてその目的動産の処分と補充を繰り返して、事業を継続することが前提とされており、実質的にも、このような補充の義務の履行がされていると認められる間は、特定範囲所属動産の処分がされても新たに補充される動産によって担保価値が維持されることになるから、その売買代金への物上代位を認める必要はない。そこで、補充義務が履行することができると認められる間は、集合動産譲渡担保権者による物上代位を認めないこととするものである。
6動産特定範囲に動産を属させる行為に関する詐害行為取消請求
集合動産譲渡担保権設定者が動産を動産特定範囲に属させた場合における民法第424条5 の3の規定の適用については、その動産を目的とする担保の供与があったものとみなすものとする。
(説明)
設定者が動産特定範囲に動産を属させる行為が「担保の供与」として詐害行為取消請求の対象となり得る旨の規律であり、部会資料32第6、4と同様である。従来は否認と関連することから否認と併せて検討してきたが、詐害行為に関する規律は平時におけるルールであることから、倒産手続における取扱いではなく、集合動産譲渡担保契約の効力に関する規律として設けることとしている。
第5債権譲渡担保契約の効力
1混同の特例
ある債権の債務者が当該債権を譲渡担保債権として譲渡を受けた場合には、民法第520条本文の規定にかかわらず、当該譲渡担保債権は消滅しないものとする。
(説明)
通常の債権譲渡においては、債務者が自己の債務に係る債権について譲渡を受けた場合、その債務に係る債権は民法第520条本文により消滅すると考えられる。債権譲渡担保が担保目的での債権の譲渡であることからすると、自己の債務に係る債権について譲渡担保契約により譲渡を受けた場合も同様の効果が生ずるようにも考えられる。しかし、ある債権の債務者がその債権を担保に取る必要がある場合もあり(例えば、銀行が自らに対する預金債権を担保に取る場合)、現に、このような担保取引は、債権質権においては可能であると解されている。また、債権譲渡担保権の設定者は、被担保債権を弁済することによって当該債権を受け戻すことができるなど、目的債権について一定の権利を有している点で、民法第520条ただし書の「第三者の権利の目的である」という状況とも類似している。そこで、自己の債務に係る債権について譲渡担保契約により譲渡を受けても目的債権は混同によって消滅せず、有効な担保権設定が可能であることを定めるものである。
2債権譲渡担保権の順位
同一の債権について数個の債権譲渡担保権が互いに競合する場合には、その債権譲渡担保権の順位は、民法第467条第2項に規定する確定日付のある証書による通知又は承諾の前後によるものとする。
(説明)
部会資料30第4、1⑴から実質的変更はない。
3債権譲渡担保権と先取特権との競合
債権譲渡担保権と先取特権とが競合する場合には、当該債権譲渡担保権は、先取特権に優先するものとする。ただし、共益の費用の先取特権は、その利益を受けた全ての債権譲渡担保権者に対して優先する効力を有するものとする。
(説明)
債権譲渡担保権と先取特権とが競合する場合については、動産譲渡担保権と同様に、原則として債権譲渡担保権を先取特権に優先させつつ、共益の費用の先取特権には劣後させることとしている。
4債権譲渡担保権と債権を目的とする質権との競合
同一の債権について債権譲渡担保権と質権とが競合する場合には、その順位は、債権譲渡担保契約に基づく債権の譲渡又は質権の設定についての民法第467条第2項に規定する確定日付のある証書による通知又は承諾の前後によるものとする。
(説明)
部会資料30第4、3⑶から実質的変更はない。
5債権譲渡担保権の順位の変更
⑴債権譲渡担保権の順位は、各債権譲渡担保者の合意によって変更することができるものとする。ただし、利害関係を有する者があるときは、その承諾を得なければならないものとする。
⑵上記⑴の規定による順位の変更は、特例法の定めるところに従いその登記をしなければ、その効力を生じないものとする。
⑶上記⑴の規定による順位の変更は、当該順位の変更及びその順位の変更につき登記がされたことについて、いずれかの債権譲渡担保者が譲渡担保債権の債務者に登記事項証明書を交付して通知をし、又は当該債務者が承諾をしなければ、当該債務者に対抗することができないものとする。
(説明)
部会資料28第5、2から実質的変更はない。
6転債権譲渡担保
⑴第3、12の規定は、債権譲渡担保権者がその債権譲渡担保権を譲渡担保契約の目的とした場合について準用するものとする。
⑵上記⑴の規定による譲渡担保権の設定(以下この項において「転債権譲渡担保」という。)は、転債権譲渡担保及びその転債権譲渡担保につき特例法の定めるところに従い登記がされたことについて、上記⑴の譲渡担保契約の当事者の一方が譲渡担保債権の債務者に登記事項証明書を交付して通知をし、又は当該債務者が承諾をしなければ、これをもって当該債務者に対抗することができないものとする。
(説明)
部会資料28第5、3から実質的変更はない。
第6集合債権譲渡担保契約の効力
1集合債権譲渡担保権設定者による債権特定範囲に属する債権の取立て
【P】
(説明)
集合債権譲渡担保契約の取立権限に関する規律については、前回の部会における議論も踏まえて検討中である。
2補充義務の規定等の準用
集合債権譲渡担保契約について、第4、4(集合動産譲渡担保契約における補充義務)及び第4、6(動産特定範囲に動産を属させる行為に関する詐害行為取消請求)は、集合10 債権譲渡担保契約について準用するものとする。
(説明)
部会資料28第6、2(補充義務)及び部会資料32第6、4(詐害行為取消請求)と同様である。