企業の競争力を高めるリーガルリスクマネジメント

2022年3月18日(金)

日本組織内弁護士協会 LRM研究会 座長

渡部 友一郎弁護士(Airbnb Japan 法務本部長)

1: 共通の枠組みの必要性

2: リスク特定/分析/評価/対応

3: 5×5のリスクマトリクス法

Q:なぜリーガルリスクマネジメントを学ぶ必要がどこにあるのか           

A:組織経営と法務機能の統合、社会構造の変化(Society 5.0)、認知バイアスの点。

Q:ISO31022を読んでもイメージがわかない。

A:「リスク特定→分析→評価→対応」がコア・プロセス。

Q:鉛筆と紙があればできる「5×5のリスクマトリクス法」                 

A:事前課題を取り上げて、法律家や法務部門がどのように取り組めばよいか解説

リーガルリスクマネジメントのプロセス (第5.1-5.5)

1: 共通の枠組みの必要性

企業の競争力を高める=健全なリスクテイク=リスクテイクに共通の枠組みが必要

組織経営と法務機能の統合

組織経営と法務機能の統合、社会構造の変化  (Society  5.0)、認知バイアス

(1)    認知バイアス

●     確証バイアス:自分の先入観と矛盾する証拠を意識せずに排除

●     アンカリング:1つの情報を重視

●     損失回避:現状維持・慎重に傾く誤りを犯していることに気がつかない!

(2)    解決方法

●     「合理的思考によって他人の直感の欠陥を指摘し、その判断を改めることができる」

●     「さまざまな意見やスキルをプロセスに取 り入れること」

問題の所在

企業の競争力を高める=健全なリスクテイク。ところが、意思決定に有害な「法的リスクがあります(完)」というアドバイスが危険である。すべての法律の専門家の助言にあてはまる。

例:本件では○○法第○条に抵触する法的リスクが特定できます。この法的リスクを「起こりやすさ」と「結果の大きさ」の2つの横軸縦軸でリスク分析すると、XXXという高い発生の蓋然性と、YYY例えば刑事罰というリスクがあります。法的リスク評価を行うと、既存のリスク管理策ではXXXの点で十分ではなく、法務としてはこのままの状態では法的リスクは取れないと助言します。

しかし、リスク対応として、ZZZ及びAAAを同時に講じられれば残留リスクは許容できるレベルにまで低減できる可能性があります。ZZZとAAAのほかに取りうるリスク対応 策の選択肢がないか、この後お電話で相談できないでしょうか。法務も解決策を一緒に見つけたいです。

ISO31022の内容は抽象的な部分も多いが、まずリーガルリスクの特定 /分析/評価/対応から始める

Phase 1 リスク特定

●     リスクを発見し、認識し、記述するプロセス(ISO31000 6.4.2、ISO31022 5.3.2.1)

●     ISO31022の附属書A、附属書B、附属書Eが参考になる。

Phase 2 リスク分析

●     リスクの性質及び特徴(特質)を理解し、リスクレベル(=リスクの大きさ)を決定するプロセス

(ISO31000 6.4.3参照)。分析の成果は、後続の「リーガルリスク評価」及び「リーガルリスク対応」へのインプットととなる(ISO310222 5.3.3.1参照)。

●     「事象の起こりやすさ」および「結果の性質及び大きさ」の2要素が分析の中心となるが、これに限られない(ISO31000 6.4.3)。詳細は、渡部友一郎「リーガルリスクマネジメントの先行研究と新潮流」国際商事法務48巻6号(2020)795-796頁 Ⅲ 2 及び 3 を参照。

Phase3 リスク評価

●     リスク評価は、リスク及びリスクの大きさが、受容可能か又は許容可能かを決定するために、リスク分析の結果をリスク基準(=目安とする条件)とを比較するプロセス(ISO31000 6.4.4、ISO31022 5.3.4 参照)。

●     リスク評価は(組織の意思)決定を裏付けるものであり、どの部分に追加の措置を講じるかを決 定するために役立つ。

𐆑     例:さらなる活動を行わない、リスク対応の選択肢を検討する、さらなるリスク分析を続行する、既存の管理策(control)を維持する、(事業やプロジェクトの)目的を再考する。

Phase 4 リスク対応

●     リスク対応とは、リスクに対応するための選択肢を選定し、実施するプロセス(ISO310006.5.1、ISO31022 5.4参照)リスク対応の選択肢の選定、リスク対応の計画及び実施、 対応の有効性の評価、残留リスクが許容可能かの判断、許容できない場合、さらなる対応の実施(ISO31000 6.5.1.ISO31022 5.4.1参照)

●     リスク対応の選択肢:例として、活動を開始・継続しない決定をする、機会を追求するためにリスクを取る又は増加させる、リスク源を除去する、起こりやすさや結果を変える、リスクを共有する(契約、保険など)、リスクを保有するなど。

コミュニケーション、協議及び学習(ISO31022 5.5.2)

●     リーガルリスクマネジメントのプロセスの各段階でにおいて…ステークホルダによるリーガルリスク及び組織への影響の完全な理解のために、時宜を得た方法でコミュニケーション及び 協議をする。

●     組織全体でリスクマネジメント文化を築くための学習

その他にも、モニタリング及びレビュー(同 5.5.3)、記録作成及び報告(同 5.5.4)

リーガルリスクの特定

それはリーガルリスク??を自問自答する。

リーガルリスク vs. ビジネスリスクの区分をもっともっと徹底する。

クリスタルクリアな助言に するには、ビジネス的意見を分ける。

過大なリスク見積もりになっていないか

結果の起こりやすさ【1〜5】

X社が民事訴訟を構えて来る可能性は現実的にどれほどあるのか?制限条項違反の発生可能性はどれくらいあるのか?

リスクスコアの見積もり合計:◯〜◯リーガルリスクの評価

ビジネスにとってDigestableかつ自分のバイアスに特に留意する。

加工第二期成年後見制度利用促進基本計画

https://www.kantei.go.jp/jp/kakugikettei/index.html

成年後見制度利用促進専門家会議

https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000212875.html

~尊厳のある本人らしい生活の継続と地域社会への参加を図る権利擁護支援の推進~

令和4年3月25日閣議決定

目 次

はじめに………………………………………………1

1成年後見制度利用促進基本計画の位置付け………………………..1

2新たな基本計画の必要性……………………………….1

3第二期計画の対象期間…………………………..2

Ⅰ成年後見制度の利用促進に当たっての基本的な考え方及び目標………3

1成年後見制度の利用促進に当たっての基本的な考え方……………..3

(1)地域共生社会の実現に向けた権利擁護支援の推進…………….3

(2)尊厳のある本人らしい生活を継続できるようにするための成年後見制度の運用改善等…………………………………………4

(3)司法による権利擁護支援などを身近なものにするしくみづくり…….5

2今後の施策の目標等……………………………………6

(1)目標……………………………………………6

(2)工程管理………………………………………..6

Ⅱ成年後見制度の利用促進に向けて総合的かつ計画的に講ずべき施策……7

1成年後見制度等の見直しに向けた検討と総合的な権利擁護支援策の充実…7

(1)成年後見制度等の見直しに向けた検討……………………..7

(2)総合的な権利擁護支援策の充実…………………………….7

①成年後見制度と日常生活自立支援事業等との連携の推進及び同事業の実施体制の強化…………………………………………..8

②新たな連携・協力体制の構築による生活支援・意思決定支援の検討……8

③都道府県単位での新たな取組の検討……………………….10

2尊厳のある本人らしい生活を継続するための成年後見制度の運用改善等..11

(1)本人の特性に応じた意思決定支援とその浸透………………….11

①成年後見制度の利用促進における意思決定支援の浸透…………11

②様々な分野における意思決定支援の浸透…………………..12

(2)適切な後見人等の選任・交代の推進等…………………..13

①家庭裁判所による適切な後見人等の選任・交代の推進………….13

②後見人等に関する苦情等への適切な対応……………………14

③適切な報酬の算定に向けた検討及び報酬助成の推進等……………15

④適切な後見人等の選任・交代の推進等に関するその他の取組………..17

(3)不正防止の徹底と利用しやすさの調和等………………….18

①後見制度支援信託及び後見制度支援預貯金の普及等………………..18

②家庭裁判所の適切な監督に向けた取組……………………..19

③専門職団体や市民後見人を支援する団体の取組……………….19

④地域連携ネットワークによる不正行為の防止効果…………….19

⑤成年後見制度を安心して利用できるようにするための更なる検討…….19

(4)各種手続における後見事務の円滑化等…………………..20

3権利擁護支援の地域連携ネットワークづくり………………..21

(1)権利擁護支援の地域連携ネットワークの基本的な考え方

-尊厳のある本人らしい生活の継続と地域社会への参加-………21

①地域連携ネットワークの必要性と趣旨……………………21

②地域連携ネットワークのしくみ………………………….23

③権利擁護支援を行う3つの場面……………………..24

④市町村・都道府県・国と関係機関の主な役割………………25

(2)権利擁護支援の地域連携ネットワークの機能-個別支援と制度の運用・監督-…………..28

①地域連携ネットワークの機能の考え方………………..28

②権利擁護支援を行う3つの場面における「支援」機能と「運用・監督」機能29

(3)権利擁護支援の地域連携ネットワークの機能を強化するための取組

-中核機関のコーディネート機能の強化等を通じた連携・協力

による地域づくり-….34

①地域連携ネットワークの機能を強化するための取組の考え方……….34

②地域連携ネットワークの機能を強化するための取組(地域の体制づくり)..34

③中核機関のコーディネート機能の強化と協議会の運営を通じた連携・協力関係の推進……………………41

(4)包括的・多層的な支援体制の構築………………..46

①基本方針……………………………..46

②市町村による「包括的」な支援体制の構築………………….47

③都道府県による「多層的」な支援体制の構築………………..47

④国による「包括的」「多層的」な支援体制づくりの支援…………48

4優先して取り組む事項………………………………..49

(1)任意後見制度の利用促進…………………………….49

①基本方針…………………………………………49

②周知・広報等に関する取組…………………………….49

③任意後見制度の趣旨に沿った適切な運用の確保に関する取組……..49

(2)担い手の確保・育成等の推進……………………………..50

①基本方針……………………………….50

②市民後見人の育成・活躍支援……………………………..52

③法人後見の担い手の育成………………………………….54

④専門職後見人の確保・育成……………………………..56

⑤親族後見人への支援…………………………..56

(3)市町村長申立ての適切な実施と成年後見制度利用支援事業の推進……57

①基本方針………………………..57

②市町村長申立ての適切な実施…………………………….58

③成年後見制度利用支援事業の推進………………………..58

(4)地方公共団体による行政計画等の策定……………………….59

①基本方針……………………………………………59

②市町村による行政計画の策定……………………………59

③都道府県による取組方針の策定………………………….60

(5)都道府県の機能強化による権利擁護支援の地域連携ネットワークづくりの推進61

①基本方針……………………………………………….61

②都道府県の機能強化……………………………………62

③市町村への具体的な支援内容……………………………..62

④都道府県自らの取組の実施……………………………..63

別紙第二期計画の工程表とKPI

はじめに

1成年後見制度利用促進基本計画の位置付け

成年後見制度利用促進基本計画(以下「基本計画」という。)は、成年後見制度の利用の促進に関する法律(平成28年法律第29号。以下「促進法」という。)第12条第1項に基づき、成年後見制度の利用の促進に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るために策定するものであり、政府が講ずる成年後見制度利用促進策の基本的な計画として位置付けられる。

なお、促進法第14条第1項において、市町村は、国の基本計画を勘案し、当該市町村の区域における成年後見制度の利用の促進に関する施策についての基本的な計画を定めるよう努めるものとされている。

成年後見制度の利用の促進に関する法律

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=428AC1000000029_20180401_000000000000000

2新たな基本計画の必要性

基本計画は、平成29年度から令和3年度までを最初の計画(以下「第一期計画」という。)の期間として、利用者がメリットを実感できる成年後見制度の運用改善、権利擁護支援の地域連携ネットワーク(以下「地域連携ネットワーク」という。)づくり、安心して成年後見制度を利用できる環境の整備などを進めてきた。

これにより、本人の意思決定支援1や身上保護を重視2した成年後見制度の運用が進みつつあり、また、各地域で相談窓口の整備や判断能力が不十分な人を適切に必要な支援につなげる地域連携のしくみが整備されつつある。

1 「意思決定支援を踏まえた後見事務のガイドライン」(令和2年10月30日意思決定支援ワーキング・グループ)では、「意思決定支援とは、特定の行為に関し本人の判断能力に課題のある局面において、本人に必要な情報を提供し、本人の意思や考えを引き出すなど、後見人等を含めた本人に関わる支援者らによって行われる、本人が自らの価値観や選好に基づく意思決定をするための活動をいう」とされている。

裁判所「意思決定支援を踏まえた後見事務のガイドライン」について(意思決定支援ワーキング・グループ)

https://www.courts.go.jp/saiban/koukenp/koukenp5/ishiketteisien_kihontekinakangaekata/index.html

2 本人の財産の管理のみならず身上の保護が適切に図られるべきこと。

他方、成年後見人、保佐人及び補助人(以下「後見人等」という。)が意思決定支援や身上保護を重視しない場合があり、利用者の不安や不満につながっているといった指摘や、成年後見制度や相談先等の周知が未だ十分でないなどの指摘がされている。また、地域連携ネットワークなどの体制整備は、特に小規模の町村などで進んでいない。さらに、団塊の世代が後期高齢者となる令和7年を迎えて、認知症高齢者が増加するなど(いわゆる2025年問題)、成年後見制度の利用を含む権利擁護支援のニーズが更に多様化及び増大する見込みであり、こうした状況に適切に対応する必要がある。

そこで、新たな基本計画(以下「第二期計画」という。)を定め、更なる施策の推進を図ることとする。

3第二期計画の対象期間

第二期計画の対象期間は、令和4年度から令和8年度までの5年間とする。

Ⅰ成年後見制度の利用促進に当たっての基本的な考え方及び目標

1成年後見制度の利用促進に当たっての基本的な考え方

(1)地域共生社会の実現に向けた権利擁護支援の推進

近年の人口の減少、高齢化、単身世帯の増加等を背景として、地域社会から孤立する人や身寄りがないことで生活に困難を抱える人の問題が顕在化し、地域共生社会の実現を目的とした様々な福祉施策等が進められている。

地域共生社会は、制度・分野の枠や「支える側」と「支えられる側」という従来の関係を超えて、住み慣れた地域において、人と人、人と社会がつながり、すべての住民が、障害の有無にかかわらず尊厳のある本人らしい生活を継続することができるよう、社会全体で支え合いながら、共に地域を創っていくことを目指すものである。

一方、ノーマライゼーション(成年被後見人等が、成年被後見人等でない人と等しく、基本的人権を享有する個人としてその尊厳が重んじられ、その尊厳にふさわしい生活を保障されるべきこと。)、自己決定権の尊重( 障害者の権利に関する条約第12条の趣旨に鑑み、成年被後見人等の意思決定の支援が適切に行われるとともに、成年被後見人等の自発的意思が尊重されるべきこと。)等を基本理念とする成年後見制度は、認知症、知的障害その他の精神上の障害により判断能力が不十分な人の権利擁護を支える重要な手段であり、身上保護と財産管理の支援によって、本人の地域生活を支える役割を果たしている。また、その利用促進の取組は、市民後見人等地域住民の参画を得ながら、家庭裁判所、関係行政機関、地方公共団体、専門職団体、民間団体等の協働による地域連携ネットワークを通じて推進されるべきものである。このネットワークは、他の様々な支援・活動のネットワーク(例えば、高齢者支援のネットワーク、障害者支援のネットワーク、子ども支援のネットワーク、生活困窮者支援のネットワーク、地域社会の見守り等の緩やかなネットワーク等がある。)と連動しながら、地域における包括的・重層的・多層的な支援体制をかたちづくっていくことによって、地域共生社会の実現という共通の目的に資することになる。したがって、成年後見制度の利用促進とは、単に利用者の増加を目的とするのではなく、全国どの地域においても、制度の利用を必要とする人が、尊厳のある本人らしい生活を継続することができる体制の整備を目指すものでなければならない。

第一期計画では、地域連携ネットワークの構築を施策の目標の一つとして掲げた一方で、その中核的な概念である権利擁護支援については必ずしも明確に定義してはいなかった( 第一期計画では、地域連携ネットワークの役割の一つである「権利擁護支援の必要な人の発見・支援」において、権利擁護に関する支援の必要な人として、「財産管理や必要なサービスの利用手続を自ら行うことが困難な状態であるにもかかわらず必要な支援を受けられていない人、虐待を受けている人など」を掲げていた。)。

そこで、第二期計画では、これを明確にした上で取組を進めていくことが重要である。

権利擁護支援とは、地域共生社会の実現を目指す包括的な支援体制における本人を中心とした支援・活動の共通基盤であり、意思決定支援等による権利行使の支援や、虐待対応や財産上の不当取引への対応における権利侵害からの回復支援を主要な手段として、支援を必要とする人が地域社会に参加し、共に自立した生活を送る(障害者権利条約第19条を参照したもの。同条は、「この条約の締約国は、全ての障害者が他の者と平等の選択の機会をもって地域社会で生活する平等の権利を有することを認めるものとし、障害者が、この権利を完全に享受し、並びに地域社会に完全に包容され、及び参加することを容易にするための効果的かつ適当な措置をとる。」と規定している。)という目的を実現するための支援活動であると定義することができる。権利擁護支援の中でも重要な手段である成年後見制度の特長を鑑みると、基本計画における権利擁護支援とは、判断能力が不十分な人を対象としたこうした支援活動のことであるといえる。

なお、権利擁護支援は、成年後見制度を含めた総合的な支援として充実させていく必要がある。これは、誰もが判断能力が不十分となる可能性があるため、成年後見制度の潜在的な利用者を念頭に置いた支援を拡げていく必要があるからであり、さらには、多くの関係者の協働を必要とする支援が全国的に展開されることは地域共生社会の実現にも資するからである。

以上のように、第二期計画では、地域共生社会の実現という目的に向け、本人を中心とした支援・活動における共通基盤となる考え方として「権利擁護支援」を位置付けた上で、地域連携ネットワークにおける権利擁護支援策の一層の充実などの成年後見制度利用促進の取組をさらに進めていくこととする。

(2)尊厳のある本人らしい生活を継続できるようにするための成年後見制度の運用改善等

成年後見制度の利用促進は、上記のとおり、全国どの地域においても、制度の利用を必要とする人が尊厳のある本人らしい生活を継続することができる体制を整備して、本人の地域社会への参加の実現を目指すものである。

そのため、以下を基本として成年後見制度の運用改善等に取り組む。

①後見人等による財産管理のみを重視するのではなく、認知症高齢者や障害者の特性を理解した上で、本人の自己決定権を尊重し、意思決定支援・身上保護も重視した制度の運用とすること。

②法定後見制度の後見類型は、終了原因が限定されていること等により、実際のニーズにかかわらず、一時的な法的課題や身上保護上の重要な課題等が解決した後も、成年後見制度が継続することが問題であるとの指摘や、一時的な利用を可能として、より利用しやすい制度とすべきとの指摘などがある。これを踏まえ、成年後見制度を利用することの本人にとっての必要性や、成年後見制度以外の権利擁護支援による対応の可能性についても考慮された上で、適切に成年後見制度が利用されるよう、連携体制等を整備すること。

③成年後見制度以外の権利擁護支援策(成年後見制度以外の権利擁護支援策とは、意思決定支援等によって本人を支える各種方策や司法による権利擁護支援を身近なものとする各種方策のこと。これらの施策を充実させるための取組はⅡ1(2)「総合的な権利擁護支援策の充実」を参照。)を総合的に充実すること。

④本人の人生設計についての意思を反映・尊重できるという観点から任意後見制度が適切かつ安心して利用されるための取組を進めるとともに、本人の意思、能力や生活状況に応じたきめ細かな対応を可能とする補助・保佐類型(補助類型は、保佐類型より本人の意思に基づく選択の幅が広い制度である。)が利用されるための取組を進めること。

⑤安心かつ安全に成年後見制度を利用できるようにするため、不正防止等の方策を推進すること。

(3)司法による権利擁護支援などを身近なものにするしくみづくり

権利侵害からの回復支援を進める上での重要な核の一つが家庭裁判所や法律専門職である。身近な相談窓口を通じて、家庭裁判所の手続の利用を円滑にすることや法律専門職による支援などを適切に受けられるようにすることで、権利侵害からの回復支援の実質を担保することができ、尊厳のある本人らしい生活の継続と地域社会への参加が図られる。

したがって、地域連携ネットワークを通じた福祉と司法の連携強化により、必要な人が必要な時に司法による権利擁護支援などを適切に受けられるようにしていく必要がある。

2今後の施策の目標等

(1)目標

①1の「成年後見制度の利用促進に当たっての基本的な考え方」を踏まえ、障害の有無にかかわらず尊厳のある本人らしい生活の継続や本人の地域社会への参加等のノーマライゼーションの理念を十分考慮し、成年後見制度の見直しに向けた検討を行う。また、同様の観点から、市町村長申立て及び成年後見制度利用支援事業の見直しに向けた検討も行う。さらに、権利擁護支援策を総合的に充実するための検討を行う。

②1の「成年後見制度の利用促進に当たっての基本的な考え方」を踏まえ、成年後見制度の運用改善等や、地域連携ネットワークづくりに積極的に取り組む。

(2)工程管理

①(1)に基づく各施策について、工程表に基づき推進するとともに、施策の性質に応じて設定したKPI(KPIとは、Key Performance Indicator(重要業績評価指標)のこと。)10の達成に向けて取り組む(別紙参照)。

なお、成年後見制度利用促進専門家会議(以下「専門家会議」という。)においては、家庭裁判所における取組にもKPIを設定すべきとの意見もあった。最高裁判所は、成年後見制度の利用促進に関する各家庭裁判所の自律的な取組を支援するとともに、できる限り客観性を確保した形で定期的にその進捗状況を専門家会議に報告するなどして、取組を進めることが期待される。

②専門家会議は、進捗管理が特に重要な施策(Ⅱ1(2)の「総合的な権利擁護支援策の充実」など)について、ワーキング・グループを設置し、定期的に検討状況を検証する。

③専門家会議は、第二期計画の中間年度である令和6年度に、中間検証として、各施策の進捗状況を踏まえ、個別の課題の整理・検討を行う。国その他成年後見制度の利用促進に関わる関係機関・関係者は、中間検証の結果を踏まえ、第二期計画の取組を推進する。

Ⅱ成年後見制度の利用促進に向けて総合的かつ計画的に講ずべき施策

尊厳のある本人らしい生活の継続や地域社会への参加等のノーマライゼーションの理念のより一層の実現を図るためには、成年後見制度等が適切に見直される必要がある。さらに、同制度等が見直されるまでの間においても、総合的な権利擁護支援策の充実、現行制度の運用の改善等、地域連携ネットワークづくりを進める必要がある。

そこで、以下のとおり取り組むこととする。

1成年後見制度等の見直しに向けた検討と総合的な権利擁護支援策の充実

(1)成年後見制度等の見直しに向けた検討

成年後見制度については、他の支援による対応の可能性も踏まえて本人にとって適切な時機に必要な範囲・期間で利用できるようにすべき(必要性・補充性の考慮)、三類型を一元化すべき、終身ではなく有期(更新)の制度として見直しの機会を付与すべき、本人が必要とする身上保護や意思決定支援の内容やその変化に応じ後見人等を円滑に交代できるようにすべきといった制度改正の方向性に関する指摘、障害者の権利に関する条約に基づく審査の状況を踏まえて見直すべきとの指摘(「成年後見人等の権利の制限に係る措置の適正化等を図るための関係法律の整備に関する法律案」に対する衆議院内閣委員会及び参議院内閣委員会の附帯決議にも同趣旨が盛りこまれている。なお、政府はこれらの附帯決議を尊重して関連施策を実施することとしている。)、現状よりも公的な関与を強めて後見等を開始できるようにすべきとの指摘などがされている。

国は、障害の有無にかかわらず尊厳のある本人らしい生活の継続や本人の地域社会への参加等のノーマライゼーションの理念を十分考慮した上で、こうした専門家会議における指摘も踏まえて、成年後見制度の見直しに向けた検討を行う。

また、専門家会議において、市町村長の関与する場面の拡大など地方公共団体に与えられる権限を拡充すべきといった指摘や、成年後見制度利用支援事業の見直しに関する指摘もされている。国は、こうした指摘も踏まえ、これらの権限・事業についても見直しに向けた検討を行う(成年後見制度利用支援事業については2(2)③イ参照)。

(2)総合的な権利擁護支援策の充実

(1)の成年後見制度の見直しの検討をより深めていくためには、成年後見制度以外の権利擁護支援策を総合的に充実させていく必要がある。そのため、新たに意思決定支援(意思決定支援については、注釈1を参照。)等によって本人を支える各種方策や司法による権利擁護支援を身近なものとする各種方策の検討を進め、これらの検討や成年後見制度の見直しの検討に対応して、福祉の制度や事業の必要な見直しを検討する(市町村長申立て及び成年後見制度利用支援事業については(1)及び2(2)③イを参照。)。

①成年後見制度と日常生活自立支援事業等との連携の推進及び同事業の実施体制の強化

・日常生活自立支援事業は、専門員が作成した支援計画の下で、地域住民が生活支援員として本人に寄り添い、見守り、意思決定支援を行いながら適切な金銭管理等を支援することで、尊厳のある本人らしい生活の安定を図る互助のしくみであり、これにより地域福祉が推進されている。一方、地域によって同事業の待機者が生じていること、利用者数にばらつきがあることや同事業からの成年後見制度への移行に課題があることも指摘されている。

・国は、地域の関係者が個別事案において本人の尊厳保持のために適切な支援の組合せを検討することができるよう、日常生活自立支援事業等関連諸制度における役割分担の検討方法(「日常生活自立支援事業等関連制度と成年後見制度との連携の在り方等についての調査研究事業」(厚生労働省令和2年度社会福祉推進事業)で作成された「日常生活自立支援事業関連諸制度との役割分担チェックシート」の活用が考えられる。)について各地域に周知する。また、国は、成年後見制度の利用を必要とする人が適切に日常生活自立支援事業等から成年後見制度へ移行できるよう、市町村の関係部署や関係機関・関係団体との間で個別事案における対応方針の検討等を行う取組を進めるなど、同事業の実施体制の強化を行う。さらに、上記の指摘を踏まえ、生活困窮者自立支援制度等との連携も考慮しつつ、日常生活自立支援事業の効果的な実施方策について検討し、その結果を幅広く周知するなど、地域を問わず一定の水準で同事業を利用できる体制を目指す。

・家庭裁判所においても、日常生活自立支援事業を含む権利擁護支援に対する理解が進むことが期待される。そのため、最高裁判所においては、家庭裁判所の職員に権利擁護支援の理念が浸透するよう、研修を実施するなど、必要な対応を図ることが期待される。

②新たな連携・協力体制の構築による生活支援・意思決定支援の検討

・ 多様な地域課題に対応するため、公的な機関や民間事業者において、身寄りのない人等への生活支援等のサービス(簡易な金銭管理、入院・入所手続支援等各種の生活支援サービスをいう。以下同じ。)、公的な機関や民間事業者の本来の業務に付随した身寄りのない人等の見守り、寄付等を活用した福祉活動等の様々な取組が行われている。こうした取組については、公的な制度の隙間を埋めるものや公的な制度利用の入口として効果的であるとの指摘がある一方、一部の事業者については運営方法が不透明であるなどの課題も指摘されている。

・そのため、国は、公的な機関、民間事業者や当事者団体等の多様な主体による生活支援等のサービスが、本人の権利擁護支援として展開されるよう、意思決定支援等を確保しながら取組を拡げるための方策を検討する。

・その際、身寄りのない人も含め、誰もが安心して生活支援等のサービスを利用することができるよう、運営の透明性や信頼性の確保の方策、地域連携ネットワーク等との連携の方策についても検討する。

・生活支援等のサービスの提供における意思決定支援等の確保の検討の際には、意思決定支援の取組の推進において市民後見人の果たしてきた役割が大きいこと、ピアサポートの支援が効果的であることに鑑み、市民後見人養成研修の修了者や障害のある当事者等の参画方策の検討を進める。加えて、これらの人が、必要に応じて専門職等の支援等を受けながら意思決定支援を行う方策を、市町村の関与のあり方も含めて検討する。

・上記の検討の際、意思決定支援の場面において、権利侵害や法的課題を発見した場合、専門職等が必要な支援を助言・実施すること、行政の関与(虐待対応や消費者被害への対応、市町村長申立て等が考えられる。)を求めること、専門職による法的支援や成年後見制度につなぐことなど、司法による権利擁護支援を身近なものとする方策についても検討を進める。

・また、サービス等に関する丁寧な説明や本人の特性に合わせた説明が意思決定しやすい環境づくりに寄与することに鑑み、公的な機関及び民間事業者には、合理的配慮に関する取組を行うことが期待される。国及び地方公共団体は、これらの取組が進むよう、関係者に理解を促す取組を進めていく。

・身寄りのない人等であっても、地域において安心して暮らすことができるよう、国及び地方公共団体は、身元保証人・身元引受人等がいないことを前提とした医療機関の対応方法や、施設入所時や公営住宅入居時に身元保証人や連帯保証人を求める必要はないことなどについて、事業者等に理解を促す取組などを更に進めていく。

③都道府県単位での新たな取組の検討

ア寄付等の活用による多様な主体の参画の検討

・法人後見を実施している団体等は、支援の具体的な実践や課題、解決策について、地域住民や企業など広く地域社会に周知して資金を調達することで、公的財源では性質上対応困難な課題(例えば、あらかじめ予算上の措置がされていない、又は予算上の措置が困難な課題などが考えられる。)にも、柔軟な対応をすることが可能となる。また、地域住民や企業等が、権利擁護支援の実践への理解や共感をもち、寄付やボランティア活動などにより、権利擁護支援の取組に参画することは、地域における権利擁護支援の意識の醸成につながり、参画者の積極性を生み出す。

・国は、各地域(例えば、都道府県単位)で、こうした取組が普及するよう、必要な方策を検討する。その際、サービス提供者がサービス利用者から直接寄付等を受けることは利益相反のおそれがあることから、本人が不利益を被らないようなしくみ、資金の適切な管理方法・効果的な活用方法等も検討する。

イ公的な関与による後見の実施の検討

・虐待等の支援困難な事案については、専門職後見人や一般的な法人後見では対応が困難な場合があると指摘されている。こうした場合でも、尊厳のある本人らしい生活を安定的に支えることができるよう、国は、このような事案を受任する法人が都道府県等の適切な関与を受けつつ後見業務を実施できるよう、法人の確保の方策等を含め検討する。

2尊厳のある本人らしい生活を継続するための成年後見制度の運用改善等

(1)本人の特性に応じた意思決定支援とその浸透

意思決定支援は権利擁護支援の重要な要素であるため、意思決定支援の理念が地域に浸透することにより、成年後見制度を含む必要な支援に、適時・適切につなぐことができるようになるほか、尊厳のある本人らしい生活を継続することができる社会の実現にも適うことになる。

後見人等は、民法(明治29年法律第89号)第858条等の趣旨に基づき、障害特性や本人の状況等を十分に踏まえた上で、本人の意思の尊重を図りつつ、身上に配慮した後見事務を行う必要がある。これに加えて、後見人等が本人を代理して法律行為をする場合、本人の意思決定支援の観点からも、本人の自己決定権を尊重し、法律行為の内容に本人の意思及び選好(本人による意思決定の土台となる本人の生活上の好き嫌いをいう。以下同じ。)や価値観を適切に反映させる必要がある。

後見人等が意思決定支援を踏まえた後見事務を行うに当たっては、日常的に本人への支援を行う様々な関係者が、チームとなって意思決定支援の考え方を理解し、実践することが重要である。また、家庭裁判所職員における意思決定支援についての理解と、意思決定支援を踏まえた対応も重要である。

そのため、以下の取組を行う必要がある。

①成年後見制度の利用促進における意思決定支援の浸透

・都道府県等には、専門職団体の協力も得て、親族後見人や市民後見人等、日常生活自立支援事業の関係者及び市町村・中核機関(中核機関については、3(1)②ウ参照。)の職員に対して、意思決定支援に係る研修等を継続的に行うことが期待される。

・国は、都道府県で意思決定支援の指導者となり得る人材を育成するため、引き続き、「意思決定支援を踏まえた後見事務のガイドライン」に関する研修を実施するとともに、成年後見制度利用促進ポータルサイトで意思決定支援に関する最新の情報や知見を紹介するなどの取組を行う。また、国は、互助・福祉・司法の支援を効果的に行うため、権利擁護支援・意思決定支援に関する専門職のアドバイザーの育成を行うほか、地方公共団体における専門的助言についてのオンラインのしくみの活用支援などを行う。

・専門職団体は、4(2)④のとおり、専門職に対する研修等を実施する。

・「意思決定支援を踏まえた後見事務のガイドライン」の普及・啓発に当たっては、同ガイドラインが示す原則的な考え方や本人を支援する関係者によって構成されるチームによる支援の重要性のほか、本人の意思及び選好や価値観を記録し関係者が確認できるしくみの紹介などの実践につながる普及・啓発を併せて行うことに留意する必要がある。

②様々な分野における意思決定支援の浸透

・「障害福祉サービス等の提供に係る意思決定支援ガイドライン」(平成29年3月31日厚生労働省)、「認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン」(平成30年6月厚生労働省)、「身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン」(令和元年5月「医療現場における成年後見制度への理解及び病院が身元保証人に求める役割等の実態把握に関する研究」班)等について、引き続き研修等で活用するなど、幅広い関係者に普及・啓発を行っていく必要がある(普及・啓発の一環として、必要に応じて、具体的な実務に関する普及・啓発に取り組むことも重要である。例えば、予防接種についても、意思決定支援の考え方等を踏まえ、本人への丁寧な説明、本人の意思の確認、本人による署名又は代筆が原則となるが、接種に関する本人の意思確認が困難な場合には、本人のそれまでの意思、生活歴、選好、本人にとっての最善の方針が何かを踏まえた上で、家族、医療・ケアのチーム、成年後見人等で相談しながら判断する必要がある。)。

・国は、関係者等における各ガイドラインの理解状況等を把握した上で、各ガイドラインに共通する基本的な意思決定支援の考え方についての議論を進め、その結果を整理した資料を作成する。その上で、国や、地方公共団体を始めとする地域連携ネットワークの関係者は、意思決定支援の取組が、保健、医療、福祉、介護、金融等の幅広い関係者や地域住民に浸透するよう、意思決定支援の考え方を整理した当該資料等も活用し、研修等を通じて継続的に普及・啓発を行う必要がある。

・地域住民への意思決定支援の浸透においては、市民後見人の果たす役割も大きい。したがって、国は、市民後見人養成研修修了者が、地域で行われている身寄りのない人等への生活支援等のサービス提供の際に行われる意思決定支援に参画できる方策を検討する。

・意思決定支援を踏まえた支援が適切に実施されるためには、継続的な取組や定期的な見直しが必要である。国は、関係者における意思決定支援の取組状況や課題を踏まえ、必要に応じて、医療、福祉、介護等の幅広い関係者による支援が適切に実践される方策を検討する。

・家庭裁判所においても、意思決定支援に対する理解が進むことや、意思決定支援を踏まえた対応が図られることが期待される。最高裁判所においては、家庭裁判所の職員に意思決定支援の理念が浸透するよう、研修を実施するなど、「意思決定支援を踏まえた後見事務のガイドライン」を踏まえた必要な対応を図ることが期待される。

(2)適切な後見人等の選任・交代の推進等

全国どの地域においても、成年後見制度の利用を必要とする人が、尊厳のある本人らしい生活を継続できるようにするためには、本人の直面する財産管理や法的課題に適切に対応するとともに、本人の自己決定権を尊重し、身上に配慮した後見事務を適切に行う後見人等が選任される必要がある。また、本人の状況の変化等を踏まえ、後見人等の柔軟な交代が行われることを可能とする必要がある。さらに、適切な後見人等の選任・交代は、本人が納得した上で、後見人等に対して適切な報酬が支払われることにも関係するものと考えられる。

そのため、後見人等の選任・交代や報酬等のあり方などについて、以下の取組を行う。なお、以下の取組の中には、地域の連携協力体制がその基盤となるものがあり、これについては3の「権利擁護支援の地域連携ネットワークづくり」に記載している。

①家庭裁判所による適切な後見人等の選任・交代の推進

家庭裁判所は、本人の自己決定権の尊重や身上保護の充実といった第一期計画の方針を踏まえ、自主的な努力の積み重ねで、親族後見人の選任の推進など一定の成果を出してきた。裁判事項については、裁判所が個々の事案に応じて独立して職権を行使する性質であるものの、各家庭裁判所には、こうした成果も踏まえながら、事案や場面に応じた適切な対応ができるよう、以下の取組や権利擁護支援に関する研修の実施を含め、引き続き努力することが期待される。

なお、苦情等への対応については、②に記載している。

・市民後見人・親族後見人等の候補者がいる場合は、その選任の適否を検討し、本人のニーズ・課題に対応できると考えられるときは、その候補者を選任する。親族後見人から相談を受けるしくみが地域で十分に整備されていない場合は、専門職監督人による支援を検討する。

・必要に応じた複数選任や、本人のニーズ・課題や状況の変化等に応じた柔軟な後見人等の交代や追加選任を行う。

・補助の開始、代理権・同意権付与や、保佐の代理権付与の審判の際、その必要性についても適切に審査する。その際、意思決定支援に基づく本人による意思決定の可能性も適切に考慮する。

・後見類型についても、代理権行使の必要性が低下した場合、中核機関、専門職団体、日常生活自立支援事業の実施団体等と連携し、市民後見人等への交代や同事業の併用などにより、意思決定支援の観点を重視する。

・上記のような運用が適切に行われるようにするため、後見等の開始の審判時に、後見人等の職務に関する見直しの時期・観点について関係者間で認識を共有し、その後の状況を踏まえ、本人のニーズ・課題の状況や後見人等の適性を定期的に再評価する。

②後見人等に関する苦情等への適切な対応

ア基本方針

(ア)後見人等に関する苦情等には、後見人等の不適正・不適切な職務に関するものだけでなく、後見人等が本人・親族等や支援者の意向等に沿わないことへの不満、本人・親族等が成年後見制度・実務への十分な理解がないこと、本人や支援者とのコミュニケーション不足によって生じる意見の食い違いなど様々なものがある。

そのため、まずは、成年後見制度等に関する広報や事前の説明により、本人や関係者の制度に関する理解を促進することが重要である。

(イ)その上で、以下の役割を基本として、苦情等に適切に対応できるしくみを地域の実情に応じて整備していく必要がある。

・家庭裁判所には、後見監督の一環として、後見人等が本人のためにその職務を適切に行うよう、その職務全般(財産管理、身上保護、意思決定支援のほか、報告書作成等の後見事務)について、司法機関の立場から適切な助言・指導を行うことが予定されている。そのため、家庭裁判所には、不適正・不適切な後見事務に関する苦情等について、司法機関の立場から、専門職団体や市町村・中核機関と連携して対応することが期待される。

・専門職団体には、当該団体に所属する専門職後見人等に関する苦情等について、家庭裁判所などと連携し、その解決に向けて適切に対応することが期待される。また、そのための団体内のしくみの検討を進めることが期待される。

市町村・中核機関は、身上保護に関する支援への苦情等について、その解決に向けて関係者と連携した対応(福祉、医療等のサービスの調整を含む。)を行う。さらに、必要に応じて、専門職団体と連携して対応するほか、不適正・不適切な事案については家庭裁判所に連絡する。

都道府県には、国が都道府県における権利擁護支援等の助言の担い手として養成する専門アドバイザーを活用した市町村支援等の対応を検討することが期待される。

イ具体的な取組

・後見人等に関する苦情等を把握した機関(家庭裁判所、専門職団体、市町村・中核機関など)は、苦情等に関する事情を十分に聴取・確認し、本人の権利・利益の観点から、苦情として具体的な対応を必要とするものかどうかを検討する。その上で、具体的な対応が必要と判断した場合、上記ア(イ)の役割や各地域における対応体制の実情などを踏まえ、自らが主体となって調整すべきものかどうかを検討する。検討の結果、他の機関が調整することが適当な事案の場合は、適切な機関等に対応を引き継ぐ。

家庭裁判所には、後見人等に関する苦情等がある事案(解任事由がない場合を含む。)について、家庭裁判所、専門職団体、市町村・中核機関等が適切に連携することにより、本人のニーズと後見人等の適格性を評価し、必要性が認められる場合には、後見人等の追加選任や交代を実現できるよう努力することが期待される。なお、専門家会議において、家庭裁判所には、専門職団体に対して専門職後見人の不正の防止・早期発見に向けた適切な情報提供をすることが求められるとの意見もあった。

また、専門家会議においては、家庭裁判所が、必要に応じ、家事事件手続規則(平成24年最高裁判所規則第8号)に基づく後見人等への指示(例えば、後見人等が身上保護に関する事務や意思決定支援を行うに当たり、本人の意向を尊重する旨の指示や、本人の支援方針を検討するケース会議等に出席する旨の指示)や、家庭裁判所調査官による調査等を適切に活用することが期待されるとの意見もあった。

③適切な報酬の算定に向けた検討及び報酬助成の推進等

後見人等の報酬のあり方は、後見人等が選任される際に期待された役割を後見人等がどのように果たしたかという評価の問題であり、後見人等の選任のあり方とも密接に関係することから、適切な後見人等の選任・交代のあり方と併せて検討された。また、全国どの地域においても、本人の所得や資産の多寡にかかわらず、成年後見制度を適切に利用できるようにすることが重要である。そのため、後見人等の適切な報酬の算定に向けた検討と申立費用・報酬の助成制度の推進等については、併せて検討される必要がある。

なお、後見人等に対して適切な報酬が支払われるかは、後見人等の担い手の確保とも密接に関連することから、担い手の確保についても併せて推進する必要があり、その方策を4(2)に記載している。

ア適切な報酬の算定に向けた検討

・後見人等の適切な報酬の算定については、最高裁判所及び各家庭裁判所において、当事者団体や専門職団体の意見も踏まえ、後見人等の事務の内容や負担の程度、報酬額の予測可能性の確保の観点のほか、後見人等の報告事務の負担にも配慮する観点から検討が進められている。そして、財産管理事務のみならず、身上保護事務についても適切に評価し、後見人等が実際に行った事務の内容や負担等に応じて報酬を算定するという方向性(「成年後見制度利用促進基本計画に係る中間検証報告書」の1(2)アでは、「報酬の算定に当たっては・・・財産管理事務のみならず身上保護事務についても適切に評価し、後見人等が実際に行った事務の内容や負担等に見合う報酬とすること・・・が望まれる。」とされている。)について、最高裁判所から、適時に専門家会議に報告されてきている。専門家会議では、本人への丁寧な面談やケア会議などへの出席といった日常的な関わりに応える報酬設定とすることが望ましい、専門職後見人には専門性に応じた適切な報酬が支払われるべき、後見人等の質(地方公共団体や専門職団体等による能力向上のための研修の受講の有無)、属性(専門職か否か)、本人の財産の多寡、地域の状況も適切に評価すべきなどの指摘や、実態の把握を適切に行うべきなどの意見があった。

・現行制度において報酬付与は裁判事項であるものの、最高裁判所及び各家庭裁判所には、報酬の算定についての上記のような指摘も踏まえ、利用者にとっての予測可能性をできる限り確保し得る形で、考え方を早期に整理することが期待される。

イ成年後見制度利用支援事業の推進等

・低所得の高齢者・障害者に対して申立費用や報酬を助成する成年後見制度利用支援事業については、市町村により実施状況が異なり、後見人等が報酬を受け取ることができない事案が相当数あるとの指摘がされている。

・そのため、全国どの地域においても成年後見制度を必要とする人が制度を利用できるよう、市町村には、同事業の対象として、広く低所得者を含めることや、市町村長申立て以外の本人や親族による申立ての場合の申立費用及び報酬並びに後見監督人等が選任される場合の報酬も含めることなど、同事業の実施内容を早期に検討することが期待される。

・国は、上記の観点から、市町村の成年後見制度利用支援事業の取扱いの実態把握に努め、同事業を全国で適切に実施するために参考となる留意点を示すなど、全国的に同事業が適切に実施される方策を早期に検討する。また、上記アにより早期に考え方が整理されることが期待される適切な報酬の算定に向けた検討と併せて、市町村が行う同事業に国が助成を行う地域支援事業及び地域生活支援事業についても、必要な見直しを含めた対応を早期に検討する。

・国は、被後見人等を当事者とする民事裁判等手続を処理した法律専門職が、被後見人等の資力が乏しいために報酬を得られない事態が生じているとの指摘があること等を踏まえ、法律専門職を含めた後見人等が弁護士又は司法書士に民事裁判等手続を依頼した場合に適切に民事法律扶助制度が活用される方策を早期に検討する。

ウ成年後見制度の見直しに向けた検討に併せた検討等

・国は、後見人等の報酬の決定についてできるだけ予測可能性の高い制度にすべきなどといった指摘があること等を踏まえ、成年後見制度の見直しに向けた検討の際、報酬のあり方についても検討を行う。関係省庁は、成年後見制度を必要とする人が適切に制度を利用できるよう、報酬のあり方の検討と併せて、報酬助成等の関連する制度のあり方について検討する。

④適切な後見人等の選任・交代の推進等に関するその他の取組

ア本人情報シートの活用の推進

本人情報シートは、適切な医学的診断や適切な後見人等の選任にとって有益であり、後見等開始の審判において多くの事案で提出されている。他方、本人情報シートが、裁判所には提出されているが、診断書を作成する医師に提供されていない事案が一定数あることから、家庭裁判所には、専門職団体や市町村・中核機関等とも連携し、作成された本人情報シートが確実に医師に提供されるよう、申立人に対するわかりやすい説明や関係者への更なる周知などに取り組むことが期待される。また、最高裁判所には、本人情報シートの活用の状況や実態の把握に努め、本人にとって適切な後見人等の選任・交代が促進されるよう、専門職団体や福祉関係者(ここでの福祉関係者とは、「ソーシャルワーカー(社会福祉士、精神保健福祉士等)として本人の支援に関わっている人(介護支援専門員、相談支援専門員、病院・施設の相談員、地域包括支援センターや、権利擁護支援センターの職員等)」のことをいう(「成年後見制度における診断書作成本人情報シート作成の手引(令和3年10月最高裁判所事務総局家庭局)」27ページを参照した。)等の関係者と連携し、本人情報シートの更なる活用に向けた方策(例えば、申立後の本人情報シートの活用、「意思決定支援を踏まえた後見事務のガイドライン」の様式等の併用)を検討することが期待される。

イ後見申立等に関するその他の取組

最高裁判所・家庭裁判所には、本人にとって適切な後見人等の選任・交代が推進されるとともに、申立人・後見人等の事務負担の軽減や手続の迅速化にも資するよう、家庭裁判所への後見等開始の審判の申立てや後見事務の報告に関する書類などのあり方を含め、必要な方策を検討することが期待される。

(3)不正防止の徹底と利用しやすさの調和等

不正事案は、第一期計画に基づく取組により減少しつつあるが、成年後見制度をより安心かつ安全な制度とするため、引き続き不正防止の取組が重要である。したがって、監督機能の充実・強化が必要であるところ、家庭裁判所のみならず関係機関・関係団体は、不正事案の発生を未然に抑止するための方策を推進する必要がある。その際、成年後見制度の利用促進は、制度の利用を必要とする人が尊厳のある本人らしい生活を継続することができるようにするものであることを踏まえ、本人の意思の尊重や利用しやすさも考慮して進める必要がある。

また、利用者が安心して成年後見制度を利用できるようにするには適切な事後救済策も重要であり、そのために必要な方策を推進する必要がある。

なお、任意後見制度における不正防止については、4(1)に記載している。

①後見制度支援信託及び後見制度支援預貯金の普及等

後見制度支援信託及び後見制度支援預貯金(金融関係団体等による「成年後見における預貯金管理に関する勉強会フォローアップ会議」において、令和3年10月、保佐・補助類型を対象とする預貯金管理のしくみに関する方向性がとりまとめられた。)は、後見人等の属性を問わず、広く後見人等による不正防止に有用であるとともに、財産管理の負担が軽減されることで親族後見人の適切な選任にも資するものである。また、後見制度支援預貯金には、身近な金融機関でも導入が比較的容易であるなどのメリットがある。一方、その運用においては、財産の固定化によって本人の積極的な財産活用や日常生活への柔軟な対応に支障が生じないよう留意が必要である。

金融機関には、必要に応じ最高裁判所や関係省庁とも連携しつつ、これらのしくみの導入や改善を図ることが期待される。また、利用者の立場からの意見を聴く場を設けるなどして、本人等の具体的なニーズや利用者側から見た課題等、利用者側の意見を聴取することも期待される。

家庭裁判所には、後見人等の担い手となる団体等に対して、これらのしくみを導入している金融機関に関して把握している情報を適切に提供することが期待される。

国は、最高裁判所と連携し、金融機関における自主的取組等や専門職団体等における対応強化策の検討の状況を踏まえ、必要に応じ、より効率的な不正防止のための方策を検討する。

②家庭裁判所の適切な監督に向けた取組

最高裁判所・家庭裁判所には、引き続き、不正防止のため、後見制度支援信託・後見制度支援預貯金や後見監督人等の活用が難しい親族後見人等の事案を含め、適切な監督に向けた取組をすることが期待される。

③専門職団体や市民後見人を支援する団体の取組

専門職団体は各専門職に対して、市民後見人を支援する社会福祉協議会等の団体は各市民後見人に対して、それぞれ後見事務における不正防止の取組を受任前・養成の段階から進めることが期待される。また、後見事務について不適正な点を発見した場合は、家庭裁判所と連携し適切に対応する必要がある。

④地域連携ネットワークによる不正行為の防止効果

本人の意思を尊重しつつ、後見人等による不正行為の防止を含めた本人の権利擁護をより確実なものとするためには、後見人等を孤立させないよう、必要に応じた支援の下、権利擁護支援チーム(権利擁護支援チームについては、3(1)②ア参照。)の一員として後見人等が職務を行うことができる環境整備が重要である。したがって、3のとおり、地域連携ネットワークづくりを進めるほか、専門職団体は、各団体に所属する専門職後見人等に対し積極的に助言等を行う。

⑤成年後見制度を安心して利用できるようにするための更なる検討

・利用者が安心して成年後見制度を利用できるようにするには、不正防止策に加えて、後見事務に起因して生じた損害を補償する保険などの適切な事後救済策も重要である。そのため、専門職団体や、市民後見人を支援する社会福祉協議会等の団体には、保険会社とも連携し、後見人等の故意による被後見人の損害を補償するための保険を含め、適切な保険の導入に向けた検討を進めることが期待される。

・その上で、こうした保険の導入状況や成年後見制度の見直しの検討状況なども踏まえ、関係省庁、最高裁判所、専門職団体及び市民後見人を支援する社会福祉協議会等の団体は、保険会社とも連携し、必要に応じ、適切な事後救済策の普及方策を検討する。

(4)各種手続における後見事務の円滑化等

・市町村・金融機関等の窓口において、成年後見制度の利用者(後見類型だけでなく、補助・保佐類型の利用者もいることに留意する必要がある。)が、成年後見制度を利用したことによって不利益を被ることのないよう、国及び地方公共団体は、市町村の成年後見制度利用促進の担当部署以外の関係部署及び金融機関等の窓口担当者に対して、同制度の理解の促進を図る必要がある。

・国及び地方公共団体は、新たな行政手続を創設する場合、成年後見制度の利用者(注釈23参照)が、同制度を利用したことによって不利益を被ることのないよう、適切に対応する必要がある。また、国及び地方公共団体は、行政手続のデジタル化に当たり、成年後見制度の利用者(注釈23参照)が、成年後見制度を利用したことによって、同制度以外の代理人による手続利用の場合と比較して不利益を被ることのないよう、適切に対応する必要がある。

・金融機関には、本人以外から預金取引の申出や保険金等の支払請求を受けた際、当該申出等が本人の日常生活の支援という目的・範囲に照らして合理的なものであるかどうかの確認を行うだけでなく、本人の権利擁護の観点から、本人にとっての必要性や利便性とともに、権利侵害の防止も重視して対応することが期待される。上記の観点から、国は、金融機関に対して、成年後見制度や権利擁護支援の理解を促進するための周知等を行う。

3権利擁護支援の地域連携ネットワーク(権利擁護支援の地域連携ネットワークは、「はじめに」の2で、「地域連携ネットワーク」と読替をしている。また、第二期計画における権利擁護支援とは、意思決定支援等による権利行使の支援と、虐待対応等による権利侵害からの回復支援の両方を含む考え方である。詳細は、Ⅰ1(1)「地域共生社会の実現に向けた権利擁護支援の推進」の定義参照。)づくり

(1) 権利擁護支援の地域連携ネットワークの基本的な考え方

-尊厳のある本人らしい生活の継続と地域社会への参加-

①地域連携ネットワークの必要性と趣旨

ア地域連携ネットワークの必要性

・権利擁護支援を必要としている人は、判断能力等の状態や取り巻く生活の状況により、その人らしく日常生活を送ることができなくなったとしても、自ら助けを求めることが難しく、自らの権利が侵されていることに気づくことができない場合もある。そして、こうした状況は、全国どの地域においても必ず起こり得ることである。

・本人らしい生活を継続するためには、地域社会がこうした状況に気づき、意思決定の支援や、必要に応じた福祉や医療等のサービスの利用につなげることが重要である。虐待や消費者被害などが生じている状況では、行政の関与、法的な支援や成年後見制度の利用につなげることも必要になる。

・また、権利擁護支援を必要としている人の中には、身寄りがない、または身寄りに頼ることができない状態や、地域社会とのつながりが希薄であるなど、孤独・孤立の状態に置かれている人もいる。このことから、権利擁護支援を必要としている人に対し、住民同士のつながりや支え合い、社会参加の支援を充実することも重要である。

・以上のことから、各地域において、現に権利擁護支援を必要としている人も含めた地域に暮らす全ての人が、尊厳のある本人らしい生活を継続し、地域社会に参加できるようにするため、地域や福祉、行政などに司法を加えた多様な分野・主体が連携するしくみをつくっていく必要がある。

イ地域連携ネットワークづくりの方向性(包括的・多層的なネットワークづくり)

・第一期計画では、上記の地域連携のしくみを、地域連携ネットワークとし、全国どの地域においても、尊厳のある本人らしい生活を継続することができるよう、必要な人が成年後見制度を利用できるようにするという観点から、その整備を進めてきた。

・第二期計画では、地域連携ネットワークの趣旨として、地域社会への参加の支援という観点も含めることとする。具体的には、地域包括ケアや虐待防止などの権利擁護に関する様々な既存のしくみ(既存のしくみには、「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」や、「認知症初期集中支援チーム」、「認知症高齢者見守りネットワーク」等の地域支援体制などがある。)のほか、地域共生社会実現のための支援体制や地域福祉の推進などと有機的な結びつきを持って、地域における多様な分野・主体が連携する「包括的」なネットワークにしていく取組を進めていく必要がある。

「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」とは、精神障害の有無や程度にかかわらず、誰もが安心して自分らしく暮らすことができるよう、市町村が主体となり、保健所や精神保健福祉センターとの連携を図りつつ、精神科医療機関、その他の医療機関、地域援助事業者、居住支援法人等居住支援関係者、ピアサポーター、意思決定を支援する人などとの重層的な連携による支援体制を構築することである。

「認知症初期集中支援チーム」とは、複数の専門家が、認知症が疑われる人や認知症の人及びその家族を訪問し、観察・評価を行った上で、家族支援等の初期の支援を行うチームのことである。

「認知症高齢者見守りネットワーク」とは、認知症高齢者等の行方不明の防止や発見等の見守りに関するネットワークのことである。

・さらに、権利擁護支援を必要としている人の世帯の中には、様々な課題が生じていることもあり、このような場合には、個人ごとに権利擁護支援の課題を捉えた上で、その状況に応じて、家族の構成員同士の想いも尊重しながら、それぞれを同時に支援していく必要がある。こうした世帯内の複合的な地域生活課題(地域生活課題とは、「福祉サービスを必要とする地域住民及びその世帯が抱える福祉、介護、介護予防、保健医療、住まい、就労及び教育に関する課題、福祉サービスを必要とする地域住民の地域社会からの孤立その他の福祉サービスを必要とする地域住民が日常生活を営み、あらゆる分野の課題に参加する機会が確保される上での各般の課題」のこと。社会福祉法(昭和26年法律第45号)第4条第3項に規定。)としては、支援困難な虐待やネグレクト、未成年後見を含む児童の権利擁護などもあり、これらへの適切な支援が必要となる場合もある。

・地域連携ネットワークは、住民に身近な相談窓口等のしくみを有する市町村単位を基本として整備を進めてきたが、このような課題に対応するためには「包括的」なネットワークだけでは十分でなく、地域の実情に応じて権利擁護支援を総合的に充実することができるよう、圏域などの複数市町村単位や都道府県単位のしくみを重ね合わせた「多層的」なネットワークにしていく取組も併せて進めていく必要がある。

ウ地域連携ネットワークづくりの進め方

・イの方向性に基づいた具体的な取組は、(3)で記載しているが、これから地域連携ネットワークづくりを始める地域では、できるだけ早期に、以下に取り組む体制を整備するべきである。

・権利擁護支援に関する相談窓口を明確にした上で、本人や家族、地域住民などの関係者に対し、成年後見制度の内容など権利擁護支援の理解の促進や相談窓口の周知を図ること

・地域連携ネットワークのコーディネートを行う中核機関(②ウを参照)の役割をどういった機関や体制で担うのかを明らかにすること

・また、これらの体制を整備した地域では、後見人等の受任者調整等によって権利擁護支援チームの形成を支援し、その権利擁護支援チームが本人への支援を適切に行うことができるようにする必要がある。こうした地域連携ネットワークの機能を段階的・計画的に充実していくことで、尊厳のある本人らしい生活の継続と地域社会への参加を図ることができるようになる(充実が求められる機能や取組は、(2)②イ・ウ、(3)②イ・ウを参照)。

・なお、これらの体制整備には、市町村単独では取り組むことが難しい内容もあるため、広域的な見地から、都道府県が主体的に取り組むことも重要である。

②地域連携ネットワークのしくみ

地域連携ネットワークは、「権利擁護支援チーム」、「協議会」及び「中核となる機関(中核機関)」の3つのしくみからなる。

ア権利擁護支援チーム

権利擁護支援チームとは、権利擁護支援が必要な人を中心に、本人の状況に応じ、本人に身近な親族等や地域、保健・福祉・医療の関係者などが、協力して日常的に本人を見守り、本人の意思及び選好や価値観を継続的に把握し、必要な権利擁護支援の対応を行うしくみである。

既存の福祉・医療等のサービス調整や支援を行う体制に、必要に応じ、法律・福祉の専門職や後見人等、意思決定に寄り添う人などが加わり、適切に本人の権利擁護が図られるようにする。

イ協議会

協議会とは、各地域において、専門職団体や当事者等団体などを含む関係機関・団体が、連携体制を強化し、これらの機関・団体による自発的な協力を進めるしくみである。

各地域では、成年後見制度を利用する事案に限定することなく、権利擁護支援チームに対し、法律・福祉の専門職や関係機関が必要な支援を行うことができるように協議の場を設ける。なお、協議会は、地域の実情や議題等に応じ、個々の市町村単位、圏域などの複数市町村単位、都道府県単位など階層的に設置する。

ウ中核機関

中核機関とは、地域連携ネットワークのコーディネートを担う中核的な機関や体制であり、以下のような役割を担う。

・本人や関係者等からの権利擁護支援や成年後見制度に関する相談を受け(身近な相談機関を一次相談窓口にして、中核機関は一次相談窓口からの相談を受けている地域もある。)、必要に応じて専門的助言等を確保しつつ、権利擁護支援の内容の検討や支援を適切に実施するためのコーディネートを行う役割

・専門職団体・関係機関の協力・連携強化を図るために関係者のコーディネートを行う役割(協議会の運営等)

中核機関の運営は、地域の実情に応じ、市町村による直営又は市町村からの委託などにより行う。市町村が委託する場合等の運営主体については、業務の中立性・公正性の確保に留意しつつ、専門的業務に継続的に対応する能力を有する法人(例えば、社会福祉協議会、NPO法人、公益法人等)を適切に選定するものとする。

なお、国は、1(1)に記載した成年後見制度等の見直しの検討と併せて、中核機関の位置付け及びその役割にふさわしい適切な名称を検討する。

③権利擁護支援を行う3つの場面

地域において、成年後見制度の利用を含む権利擁護支援を行う場面は、以下の3つに整理できる。

ア権利擁護支援の検討に関する場面(成年後見制度の利用前)

・本人を取り巻く関係者(本人に身近な家族・親族等、医療・福祉・介護等の関係者、民生委員・自治会・民間事業者等の地域の関係者のこと。)が、権利擁護支援に関するニーズに気づき、必要な支援につなぐ場面。

・この場面では、成年後見制度につなぐ場合や、同制度以外の権利擁護支援(権利擁護支援チームによる見守りや意思決定の支援、日常生活自立支援事業の利用、虐待やセルフネグレクトの対応、消費生活センターの相談対応など)などにつなぐ場合がある。

イ成年後見制度の利用の開始までの場面(申立ての準備から後見人等の選任まで)

・成年後見制度の申立ての必要性、その方法、制度利用後に必要となる支援、適切な後見人等候補者などを検討・調整し、家庭裁判所に申し立て、後見人等が選任されるまでの場面。

・この場面では、制度利用後の支援方針を検討する。その中で、適切な権利擁護支援チームの体制も検討する。

ウ成年後見制度の利用開始後に関する場面(後見人等の選任後)

・家庭裁判所の審判により、後見人等が選任され、後見活動が開始されてからの場面。

・この場面では、権利擁護支援チームに後見人等が参加し、チームの関係者間で、あらかじめ想定していた支援方針等を共有し、本人に対して、チームによる適切な支援を開始する。

④市町村・都道府県・国と関係機関の主な役割

権利擁護支援は、地域や福祉、行政、司法など多様な分野・主体が関わるものである。また、第二期計画の期間内に、令和7年を迎えて認知症高齢者が増加するなど(いわゆる2025年問題)、成年後見制度の利用を含む権利擁護支援のニーズが更に多様化及び増大する見込みである。

このようなことに対応できるよう、地域連携ネットワークは、多様な主体が積極的に参画し適切な役割を果たすことで、持続可能な形で運営できるようにすることが重要である。家庭裁判所においても、地域連携ネットワークの中で、持続可能な形で、各関係機関と必要な連携を行いながら、成年後見制度の運用・監督にあたることが重要である。

ア行政(市町村・都道府県・国)

(ア)市町村

・市町村は、権利擁護支援に関する業務が市町村の福祉部局が有する個人情報を基に行われることや、行政や地域の幅広い関係者との連携を調整する必要性などから、協議会及び中核機関の整備・運営といった地域連携ネットワークづくりに主体となって取り組む必要がある。その際、地域の実情に応じ、都道府県と連携して、地域連携ネットワークを重層的なしくみにすることなど柔軟な実施体制も検討する。

・市町村の地域連携ネットワークづくりに対する主体的な役割は、協議会及び中核機関の運営を委託等した場合であっても同様であり、積極的に委託事業等に関わる必要がある。

・市町村は、権利侵害からの回復支援(虐待やセルフネグレクトの対応での必要な権限の行使等)など地域連携ネットワークで行われる支援にも、その責務に基づき主体的に取り組む必要がある。

・上記に加え、市町村は、市町村長申立てや成年後見制度利用支援事業の適切な実施、担い手の育成・活躍支援、促進法に基づく市町村計画の策定といった重要な役割を果たす(4(2)、(3)、(4)を参照)。

(イ)都道府県

・都道府県は、市町村単位では解決が困難な広域的な課題に対する都道府県自らの取組、国との連携確保など、市町村では担えない地域連携ネットワークづくりの役割を主導的に果たす。具体的には、担い手の育成・活躍支援、広域的観点から段階的・計画的にネットワークづくりに取り組むための方針の策定といった重要な役割を果たす(4(2)、(4)、(5)を参照)。

・また、人口規模が小さく、社会資源等が乏しい小規模市町村を始めとした市町村に対する体制整備支援の機能を強化し、地域連携ネットワークづくりを促進する。

(ウ)国

・国は、市町村や都道府県が進める地域連携ネットワークづくりを後押しする観点から、以下の役割を担う。

・成年後見制度利用促進ポータルサイトを活用した最新の情報や知見の共有

・都道府県等との連携や権利擁護支援体制全国ネット(K-ねっと)のしくみを通じた全国の取組状況や地域による格差などの継続的な把握と必要な助言の実施

・各取組の進捗状況等を勘案した必要な研修等の支援策の検討と実施

イ中核機関(再掲)

・中核機関は、②ウに記載した地域連携ネットワークのコーディネートを行う役割を担う。

ウ家庭裁判所

・Ⅰ1(2)の考え方のとおり、家庭裁判所には、尊厳のある本人らしい生活の継続を実現することができるよう、地域連携ネットワークの中で、成年後見制度の適切な運用・監督を行うことが期待される。

・こうした観点も踏まえ、家庭裁判所には、地域連携ネットワークづくりや成年後見制度の運用改善等に向けて、その支部や出張所を含め、地方公共団体、中核機関、専門職団体、協議会等と積極的に連携し、取組情報の交換や意見交換を図ることが期待される。

エ専門職団体

・権利擁護支援を必要としている人は、成年後見制度の利用に限らず、権利擁護や意思決定に関し、福祉的又は法律的な支援が必要になる場合があり、各専門職には、各種場面において、専門分野に応じた役割を発揮することが期待される。

・こうした観点も踏まえ、成年後見制度の利用促進に関わる専門職団体には、地域における協議会等に積極的に参画することや、地域連携ネットワークにおける相談対応や権利擁護支援チームによる支援の活動などにおいて、本人の特性等に合わせながら、専門性を生かした積極的な役割を果たすことが期待される。その際、市町村や都道府県等との連携が円滑に進むよう、都道府県単位などで連絡窓口を整備することが期待される。

オ当事者等団体

・権利擁護支援を必要とする人が、同じような経験をしながら暮らしている仲間と出会い、尊厳のある生活の継続の実態を知ることは、本人にとって非常に大きな力となり、自分のことを自分で考え決めていくための基盤となる。

・こうした観点も踏まえ、認知症、知的障害、発達障害、精神障害等、成年後見制度を利用する可能性がある当事者等の団体には、本人へのピアサポートや、当事者の視点からの協議会や地域づくりへの参画などが期待される。

カ各種相談支援機関

・権利擁護支援を必要としている人は、自ら助けを求めることが難しい。したがって、各地域での見守りや支え合いの中で、早期に身近な相談窓口につなげた上で、成年後見制度の利用が必要かどうかなど権利擁護支援ニーズの精査を行う必要がある。

・こうした観点も踏まえ、介護や障害、生活困窮、子育てなどの各分野において地域住民等からの相談を受けている相談支援機関には、権利擁護支援に関する課題を含む相談を受けた場合、中核機関や専門職等と連携して、必要な情報の収集や集約、整理を行い、必要な支援につなげることが期待される。

・特に、従来より権利擁護業務を実施している地域包括支援センターや基幹相談支援センター等には、これらの業務に対する積極的な関わりが求められる。

(2)権利擁護支援の地域連携ネットワークの機能

-個別支援と制度の運用・監督-

①地域連携ネットワークの機能の考え方

第一期計画では、地域連携ネットワークの機能について、広報機能、相談機能、成年後見制度利用促進機能(受任者調整(マッチング)等の支援、担い手の育成・支援、関連制度からのスムーズな移行)及び後見人支援機能の4つを位置付けてきた。

今後は、権利擁護支援としての成年後見制度の適切な利用を通じて尊厳のある本人らしい生活の継続と地域社会への参加につなげていくようにすること、また、そのために地域連携ネットワークが、多様な主体の積極的な参画と適切な役割の発揮の下で、持続可能な形で運営できるようにすることが重要である。

このような観点から、上記の4機能について、本人中心の権利擁護支援チームを支えるための機能(②を参照)と、その機能を強化するための地域の体制づくりに関する取組((3)を参照)に大別した。

併せて、地域連携ネットワークが担う機能には、福祉・行政・法律専門職などの連携による「支援(専門家会議福祉・行政と司法の連携強化ワーキング・グループにおいて、「福祉や行政の関係者、中核機関が行う支援は、本人等の求めに対し、課題整理などを行い、本人自身の力を基にした解決を図るため、必要に応じ、支援や環境の調整を行うものであり、後見人等への指導や後見事務の適正性の判断・チェックを行うものではないこと」といった趣旨の指摘が多数あった。)」機能と、家庭裁判所による成年後見制度の「運用・監督(家庭裁判所の行う後見監督は、その一環として、後見人等の職務全般(財産管理、身上保護、意思決定支援のほか、報告書作成等の後見事務)について、司法機関の立場から適切な助言や指導を行うことが予定されている。ただし、司法機関である家庭裁判所においては、福祉的観点からの助言等は難しいといった実情もある。)。」機能があることを、権利擁護支援を行う3つの場面に対応した形で整理した。

②権利擁護支援を行う3つの場面における「支援」機能と「運用・監督」機能

福祉・行政・法律専門職など多様な主体による「支援」機能としては、(1)③で整理した権利擁護支援を行う3つの場面に応じて、それぞれ以下の3つが挙げられる。

・「権利擁護の相談支援」機能

・「権利擁護支援チームの形成支援」機能

・「権利擁護支援チームの自立支援」機能

また、家庭裁判所による「運用・監督」機能としては、同様に、それぞれ以下の3つが挙げられる。

・「制度利用の案内」機能

・「適切な選任形態の判断」機能

20220520追記

成年後見制度利用促進法ってさ、変に制度をいじらないで、「人権擁護のために首長申立を促進しよう」っていうだけで良かったのではないかな。

最初に理想を描いて国会議員に根強く働きかけてしまったのは弊業界だと思います。深く陳謝します。

加工 デジタル臨時行政調査会作業部会 法制事務のデジタル化検討チーム(第3回)

公開日 : 2022年3月16日

令和4年3月16日(水)16時から18時まで

https://www.digital.go.jp/meeting/posts/DExoduDe

議事

法令のデジタル原則への適合性確認のプロセス・体制について

法制事務のデジタル化・BPR(法令のベースレジストリ整備を含む)と官民分担の在り方(リーガルテック活用を含む)について

資料1 法令のデジタル原則への適合性確認のプロセス・体制について

資料2 法制事務のデジタル化について

資料3 法制事務のデジタル化についての提案 (構成員提出)

資料4 諸外国の法制事務のデジタル化に関する事例の調査について((株)ぎょうせい提出)

・改正後の条文・・・溶け込み文。

法令審査に回す改め文が、紙ということはないのではないかな、と思いました。

法令条文の意味的情報の充実、及び法令関連文書等との連携の充実

立案担当者は、成立後・改正後の条文データを直接編集することにより作業する

法案(特に改正法案)の形式は、読み手のわかりやすさ、作成の容易さ、必要な情報の表現可能性といった観点から今後決定する

改正法案については(改正前後の条文データの差分などから)システム的に自動作成するが、自動化できない部分については補助的に人的作業を行う

改正法案の形式については、新旧対照表のように読み手にとって分かりやすいものをベースとすべきであるが、具体的には今後行われる調査等を踏まえてさらに検討すべき

改正後の条文データの直接編集及び改正法案の自動作成については、そのような機能を有するXMLエディタの開発等を行うことを前提としており、二つが同時に行われる可能性もある

条文データのフォーマット

施行日、附則、定義語、委任関係、横書きへの移行、条文の形式、準用条文、別表等の扱い割り込み施行・複数法令の同時改正等の複雑な状況・時系列を適切に処理出来るデータの持ち方を要検討

改正法案の形式(フォーマット)

改め文の利点の多くはデジタルベースでは失われる新旧対照表は分かりやすいが、施行日・経過規定等につき単なる差分を超えた複雑な内容を表現しづらいわかりやすさと必要な内容の表現を同時に達成する方法について要検討

官報のフォーマット

将来におけるRule as Code自動化の難易度の実現も見据えたデジタル官報のあり方

ドイツ des Projektes E-Gesetzgebung

https://egesetzgebung.bund.de/

デンマーク

https://www.retsinformation.dk/offentlig/vejledninger/Retsinformation%20web%20service%20vejledning%20v3.pdf

加工 配布資料ガイドライン及び課長通知の体系的整理と透明化について2022年2月4日開催 第93回公文書管理委員会

配布資料一覧

https://www8.cao.go.jp/koubuniinkai/iinkaisai/2022/0204haifu.html

・ガイドラインは、各行政機関が文書管理規則を作成するにあたって必要な内容を掲載。

・課長通知は、公文書管理業務を遂行するにあたって、疑問が生じた場合などに都度参照することを想定。

課長通知は少なくなる。

ガイドラインの項目に沿った通知、デジタル化への対応に関する通知など通知の類型が整理される。

2-1 デジタル技術を用いた行政文書の作成・管理等について(案)

OCR(光学的文字読取装置)等を活用した文字データへの媒体変換

1 OCR等を活用し、紙媒体又は画像データから文字データとして読み取る場合には、認識誤りによる誤字等が生じる可能性があり、そのままでは必ずしも元の文書との同一性が担保されているとは言えない場合がある。元の紙媒体又は画像データを廃棄することが適当か否かは、当該行政文書の性質及び内容、OCRの性能、同一性を担保するための確認措置等を踏まえて、各行政機関において判断すべきである。

例えば、内部管理のための行政文書であって、様式に記載された一部分だけを読み取ればよいような場合には、当該部分についての読み合わせを行う、紙媒体は廃棄したとしても画像データは保存しておく等の措置を講じることにより、元の紙媒体を廃棄するという判断を各行政機関が行うこと等は可能であると考えられる。

2 紙媒体をスキャンしたPDFなどの画像データをOCRを活用して文字データへ変換することは、行政文書の検索性を高め、公文書管理のデジタル化への対応に有用である。

行政文書の検索性を高めるためにタグ付けを行う場合等には、文書の内容に影響するものではないため、厳格な確認措置等を行う必要はない。

3 紙媒体から読み取る場合には、(1)のスキャナ等での読取と同様、ページの脱漏や自動給紙装置による損傷などの防止などのための確認措置等を行う必要がある。

どのような電子メールが跡付け・検証メールに当たるかについては、課長通知2-4を参照の上、個別具体的に判断すべきであるが、次のような例が跡付け・検証メールに当たる蓋然性が高いとされている。

(例)

イ 法令案、基本方針案、複数行政機関による申合せ案等の立案の検討に際して行った学識経験者や民間企業からのヒアリング結果を記した電子メール

ロ 法令案や質問主意書に対する答弁案に係る内閣法制局審査における、内容に影響を及ぼす指摘事項を記した電子メール

ハ 法令案、基本方針案、複数行政機関による申合せ等について、他の行政機関に協議を行うために送付した電子メール

ニ 審議会等での持ち回り審議を行うため、審議会等の答申、建議、報告又は意見が記録された文書を送付した電子メール

2-3 共有フォルダにおける行政文書の電子的管理に関するマニュアル(案)

組織的な検討を経た行政文書の格納

部局や課室における組織的な検討を終え経る前の段階(意思決定過程や事務及び事業の実績の合理的な跡付け・検証の記録としては未確定の状態)では、個人的な執務参考資料は個人用フォルダにおいて、それ以外の文書は検討中フォルダにおいて作成・編集を行うが、当該組織において検討を経た後の行政文書については、記録用フォルダにおける適切な小分類フォルダに格納する。その際、当該行政文書の内容の同一性確保や参照時の便宜(資料をどの順序で編綴てつしたのか等)の観点も踏まえ、適切に格納する。なお補佐までの検討段階でも、跡付け検証の記録として必要な文書に関しては適切に記録用フォルダに格納する。

当面の措置として、既往のフォルダ体系に行政文書を格納しつつ、当該フォルダと大中小分類との紐づけを適切に行う(例えば、ショートカットの付与等により、大中小分類から既往のフォルダ体系にスムーズにアクセス)ことにより管理する方法も考えられる。

同一内容の行政文書(標題が同一となる行政文書)は、同じ名称体系によることとし、行政文書の性質により分別できるようにする。

  行政文書を作成又は使用した年月日を記載する。同一類型の文書間で年月日の表記が揺れることのないよう、「2018年11月19日」であれば「20181119」として桁数を揃えることが適当である。

  部局や課室における組織的な検討を終え経て作成した行政文書については、意思決定の段階に係る表示(例:課長了、局長説明)や、最終的に作成された行政文書である旨の表示(例:セット版)を付す。行政文書の用途(例:各府省に送付)により分別することが適当な場合は、その旨の表示を付す。

秘文書

2-3 共有フォルダにおける行政文書の電子的管理に関するマニュアル(案)

組織的な検討を経た行政文書(記録用フォルダ)、作成途中の行政文書(検討中フォルダ)、個人的な執務参考資料(個人用フォルダ)、組織参考資料など

2-5 スキャナ等を利用して紙媒体の行政文書を電子媒体に変換する場合の扱いについて(案)

(3)押印等がなされた行政文書を電子媒体に変換する場合の扱い

1 法令による義務付けに基づき押印又は自署が行われている文書の電子行政文書化については、当該義務付けの趣旨等を踏まえ、判断する必要がある。

例えば、厳格な本人確認のために実印を求めており紙媒体による管理が適当であると考えられる文書については、文書全体を紙媒体で管理するか、電子行政文書化した上で押印された文書の一部を紙媒体で管理しておくことが考えられる。

一方で、 慣行として押印が行われた文書については、電子行政文書化は可能である。

2 文書の作成・取得時点において、法令に基づき押印又は自署が義務付けられていたが、その後の法令改正等により当該義務付けがなくなった場合、当該改正等の前の法令により義務付けられていた趣旨や、義務付けをなくした際に文書の成立の真正の証明や本人確認のために取ることとした措置等を踏まえ、適当と判断される場合には、電子行政文書化することは可能である。

3 文書の成立の真正を証明する手段として押印を利用する必要がある場合には、電子行政文書化した文書(電子媒体)とは別に、押印された紙媒体の文書も保存しておくなどの対応を行うことも想定される。ただし、実際の裁判において、押印の有無によって文書の成立の真正に係る証明の負担が軽減される程度は、限定的であるところ、他の適切な立証手段が確保されている場合には、電子行政文書化した文書(電子媒体)とは別に当該押印が付された紙媒体の文書を重ねて保存する必要はない。

(参考)押印についてのQ&A(令和2年6月19日内閣府・法務省・経済産業省)

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00095.html

注)保存期間が1年以上の文書については、媒体変換したことが記録されるよう、電子媒体のファイル名の最後に「(スキャン)」「scan」「_scan」等を付す。なお、本通知以前に既にスキャンを終えているものについて、過去に遡ってファイル名の修正を行うことを要しない。

「違反行為等の防止に係る司法書士倫理」メモ

沖縄県司法書士会研修

日本司法書士会連合会 山本一宏先生

令和4年(2022 年)1月29日

 1.司法書士倫理 第3章 依頼者との関係における規律

 第19条(受任の趣旨の明確化)

 依頼の趣旨に基づき、その内容及び範囲を明確にする

 第20条(報酬の明示)

 受任に際して、依頼者に対し、報酬・費用の金額・算定方法を明示する。かつ十分に説明する (理解を得る)

 第21条(事件の処理)

 事件を受任した場合は、速やかに着手、遅滞なく処理する

 事件の経過及び重要な事項を必要に応じて報告する

 事件が終了したときは、経過・結果を遅滞なく報告する

 第23条(公正を保ちえない事件)

 職務を行ってはならない

 第24条(公正を保ち得ないおそれ)

 事情を説明し、職務を行うことができないことについて同意を得るよう努める

 第25条(不正の疑いがある事件)

 事件を受任してはならない

 第27条(受任後の処置)

 依頼者に対し速やかに事情を告げ、適切な処置をとる

 第30条(依頼者との信頼関係の喪失)

 信頼関係が失われ、回復が困難な場合、辞任する等の適切な処置ろとる

 第31条(預かり書類等の管理)

 事件に関する書類等は、善良な管理者の注意をもって管理する

 第32条(預かり金の管理等)

 預かり金を受領したときは、自己の金員と区別して管理する

 依頼者のために金員を受領した場合は、速やかに依頼者に報告する

 第33条(事件の中止)

 受任した事件処理を継続できなくなった場合は、依頼者に損害が被らないよう事案に応じた適切な処置をとる

 第34条(事件の記録)

 受任事件の概要、金品の授受その他特に留意すべき事項の記録を作成し、 保存する。

 第35条(係争目的物の譲受)

 譲り受けてはならない

 第36条(依頼者との金銭貸借等)

 正当な事由なく、依頼者と金銭の貸借・保証等はしない

 第38条(事件の終了)

 受任事件が終了したときは、遅滞なく金銭の清算、物品の引渡し、預かり書類等、返還する。

 重要事項

 ① その内容及び範囲を明確

 ② 報酬・費用の金額・算定方法を明示・十分に説明・(理解を得る)

 ③ 速やかに着手、遅滞なく処理・中間報告・終了報告

 ④ 善良な管理者の注意をもって管理

 ⑤ 自己の金員と区別して管理・速やかに依頼者に報告

 ⑥ 記録を作成し、保存

 ⑦ 遅滞なく金銭の清算、物品の引渡し、預かり書類等、返還

 2. 司法書士の懲戒処分

3 懲戒処分事例

1 公文書変造、偽造、公正証書原本不実記載

: 登記記録に不実の登記を記録させた

: 裁判所の決定書等の偽造等

2 私文書変造、偽造

例: 委任状等の改ざん

: 架空の契約書等の作成等

3 名義貸し、非司提携

例: 非司に対する名義貸し

: 非司に雇用される。非司との提携等業務等

4 他人による業務

例: 恒常的な補助者による業務(補助者任せ)等

5 職務上請求用紙の不正使用

例: 職務上請求用紙を目的外使用

: 職務上請求用紙で取得した戸籍謄本等を目的外使用等

6 報酬の不正受領等

例: 多額の報酬請求、報酬の不説明

: 登録免許税額を過大に請求し不正受領

7 業務上横領、預り金等の管理違反等

例: 過払金請求事案、債務整理事案における横領

: 後見、管理人等の業務における横領 : 預り金と報酬を区別せず管理

: 預り金や費用の精算ができていない

8 意思確認、本人確認義務違反 (本人確認等違反(悪意・重過失))

例: 意思能力等がないとの認識があった

: 本人確認等に重大な過失があった (不十分な本人確認等)

例: 意思確認、本人確認等が不十分

: なりすまし、替え玉を見抜けず

9 死亡者名義の担保権抹消等

例: 抵当権抹消の権利者が死亡していた

: 根抵当権元本確定登記の権利者が死亡していた

10 本人確認情報の提供等の違反

 (虚 偽)

例: 意思能力等を喪失しているが、あるかのように偽る

: 面談を全くしていない (家族に面談)

例: 家族と面談するが、本人と面談したと偽る

 (直接に面談なし)

例: 電話等で確認するが、本人と面談したと偽る (補助者が面談)

例: 補助者が面談するが、司法書士が面談したと偽る

 (その他)

 例 : 面談日時等を偽る : 本人確認の書類が適正でない

11 司法書士法3条等の業務の範囲外行為

 (土地家屋調査士業務を行った)

 例 : 建物滅失登記を行った

 (その他、他士業の法違反等になる業務を行った)

 例 : その他の弁護士法違反、行政書士法違反等

 (代理権を超える債務整理)

 例 : 140 万円を超え代理権なし(過払い事案含む)

 (簡裁代理等関係業務の認定を受けていない司法書士による債務整理)

 例 : 簡裁代理等関係業務の認定を受けていない司法書士が過払い受任通知発送等をおこなった

12 不当誘致行為

 例 : 登記、債務整理でのリベートの支払い : 無報酬による誘致行為

13 補助者の監督責任等

 例 : 補助者が無断で業務の受任、又は業務を進めた

14 未登録補助者の使用

 例 : 補助者登録を怠る

15 受託事件の放置等

 例 : 事件放置 : 請求債権を時効消滅させた

受託拒否

 (正当事由のない受託拒否)

 例 : 趣味嗜好により依頼を拒んだ

 : 正当事由なくいったん受託した事件を断った

調査拒否

 (綱紀調査の拒否等)

 例 : 施行規則42条4項の調査拒否

 : 正当事由がなく綱紀調査委員会の調査を拒む等

その他の不正行為、会則違反

 (複数事務所)

 例 : 2か所以上の事務所を設置していた

違法行為の助長、加担

 例 : 中間省略登記の書類作成に関わる : 不実登記に加担 : 違法、不正行為を助長

秘密保持義務違反

 例 : 司法書士法24 条違反 :

品位保持義務違反等職責違反

 例 : 知識不足、説明不足による損害発生 : 実態確認不足で書類作成

: 誠実、品位保持、実務精通義務違反

その他会則等違反

 例 : 業務外で領収書を発行した : 広告規則違反 : 本人確認記録を作成していない

その他

 例 : 脱税行為 :交通事故 : 飲酒運転 : 道路交通法違反等: 傷害事件、児童買春、盗撮、セクハラ、ストーカー行為等

司法書士による不祥事

(マスコミ報道又は会長声明がだされた主な事案)

 1 児童買春禁止法違反(出会い系で知り合った少女(16)が18 歳未満と知りなが ら、現金3 万円を渡しみだらな行為。逮捕) 業務停止3 か月

2 児童買春・ポルノ禁止法違反(買春)(少女(17)が 18 歳未満とを知りながら、 現金3 万円を渡してみだらな行為。逮捕) 業務停止3 か月

 3 業務上横領容疑(成年後見)(使途不明金300 万円。6/12 有罪確定)業務禁止

 4 司法書士・弁護士 申告漏れ

 5 道路整備特別措置法違反(不正通行)(バイクでETC突破容疑 高速不正通行、 ほぼ毎日>1,200 回超) 業務停止6 か月

6 私文書偽造・同行使(会社乗っ取り企てた司法書士ら、法務局に嘘の役員変更 登記申請。逮捕) 業務禁止

7 業務上横領容疑(成年後見)(被後見人の口座から1,920 万円を先物取引に流用)(自死)

8 強制執行妨害容疑(暴力団会長らが、金融機関からの差し押さえを免れるため、虚偽の土地登記申請をしたとされる事件。逮捕) 業務禁止

 9 業務上横領(債務整理)(200 万円を着服、総額1,000 万超の余罪を認め自首。 逮捕) 業務禁止

 10  業務上横領容疑(成年後見)(被後見人の口座から2,100 万円を着服、自首。 逮捕) 業務禁止

 12 業務上横領事件(成年後見)(被後見人4 人の口座から1 億 3 千万円を着服、自首。逮捕) 業務禁止

 13 警察暴力団担当幹部の戸籍不正取得>偽造有印私文書行使、戸籍法違反、住民 基本台帳法違反容疑。逮捕) 業務禁止

 14 所得税法違反容疑(7/9 在宅起訴・脱税額5,263 万) 業務停止 2 年

 15 迷惑行為防止条例違反(電車内で女子高生のスカートの中を盗撮。現行犯逮捕) 業務停止3 か月

 16 業務上横領容疑(成年後見)(被後見人の口座から640 万円を着服。逮捕) 業務禁止

 17 道交法違反(ひき逃げ)と自動車運転死傷行為処罰法違反(過失運転致傷)容疑(「衝突には気がつかなかった」と供述。逮捕)

18  詐欺容疑(登録免許税を水増し請求し、差額(166,300 円)をだまし取った疑い。逮捕)

19  有印公文書偽造・同行使容疑(事件処理をしていないにもかかわらず、依頼者に対し改竄した登記事項証明書写しを送信。逮捕) 業務禁止

 20 業務上横領容疑(成年後見、遺産分割の業務による預り金着服。逮捕) 業務禁止

3.事 例 検 討

① 原 因

 犯罪にいたるまでの原因

 初歩的なミス(本人確認、業務報告等)

 ② 当事者の処分

 会長指導、戒告から業務禁止、欠格事由、再登録に対する拒否

③ 司法書士会及び会員への影響

 事件発覚 → マスコミ対応・会長声明・相談窓口設置

 司法書士の信頼の失墜

 市民からの法務局への相談増

 個々の司法書士の業務への影響

・預かり金の不正使用

【第1事案】

・犯罪行為 業務上横領

・会務歴 本会副会長

・事件の概要

  受任中の成年後見事件において、管理中の財産の定期預金を数百万円単位で次々と解 約し、預かり金の不正使用、総額約4500万円であった。

・事件発覚の経緯

  受任していた成年後見事件について、被後見人が死亡したが、財産の引継ぎがないと相続人からリーガル支部へ苦情申出があった。LS支部長が本人に事情説明を求めたところ、「 把握していなかった生命保険があり家庭裁判所への終了報告が遅れているので もう少しお待ちいただきたい 」との説明であったが、2週間後、相続人からリーガル支部に対して、家庭裁判所が当該会員に事実関係を聴取したところ、不正を認めたとの連絡が入った。そこで、リーガル支部長から司法書士会へその旨の説明報告があり、本会役員とリーガル支部長が当該会員に説明を求めたところ、預かり金の不正使用の事実を認めた。

  当時受任していた後見事件は本件のみであった。その後、会員は被後見人の相続人に対し、被害額全額を弁償した。

・犯罪行為の原因

 事務所経費、ギャンブル(競艇)、遊興費等に流用

【第2事案】

・犯罪行為 業務上横領

・事件の概要

  受任中の法定後見事件について、保管中の財産から1年間に1回につき5万円から20万円ずつ出金し、生活資金やギャンブル(競馬)に流用した。

  横領額は約550万円で、このうち競馬で儲けた際に約150万円を返金しており、実質的な被害額は約400万円である。

・事件発覚の経緯

  該当会員は、家庭裁判所に報告しなければならないのでいずれは発覚すると思い、自ら警察に自首した。警察署からリーガル支部に対し捜査協力要請があり、リーガル支部は横領の事実を認識した。司法書士会館に来館した当該会員に対し、司法書士会役員及びリーガル支部役員が事情聴取し、その後、警察署は業務上横領容疑で当該会員を逮捕した。

 会員は、横領した口座の通帳には記帳をしておらず、リーガル支部に対する報告書に添付した通帳の写しは事実と相違しており、横領の事実が発覚しないよう隠ぺいしていた。

・犯罪行為の原因

  初めは生活が苦しかったために生活資金として不正使用し、その後、不正使用した金額の穴埋め資金を得ることを期待してギャンブル(主に競馬)に使うようになった。

【第3事案】

・犯罪行為 業務上横領

・事件の概要

  任意代理契約に基づく財産管理事件について、3年3カ月の間に、保管中の預金から約2000万円を引き出していたが、その大部分は返金されていた。本人が死亡した時点での遺産総額は1361万円であるとして、相続人に対し1481万円が振り込まれた。その差額120万円はお詫び料であるとしている。

  法定後見事件について、保管中の預金から、1000万円、1000万円、2000 万円、1450万円、975万円、別の預金から320万円、合計6745万円を不正に使用した。

・事件発覚の経緯

  任意代理事件について本人の死亡による財産の引継ぎが遅いと相続人からリーガル支部に対して苦情があったが、いったんはその苦情が取り下げられた。しかし、返還された預金通帳及び収支決算書等に不明な点があると相続人からリーガル支部へ情報提供があった。リーガル支部役員が当該会員に対し、事情聴取を行い、この時点で未報告の法定後見事件が1件あり、その被後見人は死亡している旨が判明した。リーガル支部役員が相続人から預金通帳を預かり調査した結果、2000万円が引き出され、その大部分が返金されていることが判明した。当該会員に対し報告書と資料の提出を求めたが期限を過ぎても報告書の提出がなく、面談の申入れに対しても日程が合わないことや体調不良を理由に応ぜず、当該会員から委任を受けた弁護士が同席の上で面談した際に、預かり金の不正使用の事実を認めた。法定後見事件については、任意代理事件の財産管理に疑義があることを家庭裁判所に情報提供していたところ、家庭裁判所が会員を呼び出し面談したところ、約6700万円の不正使用の事実を認めた。

・犯罪行為の原因

  司法書士会役員及びリーガル支部役員による事情聴取に対し、着服金の使い道について「事務所の経費か」との問いに対して、当該会員は肯定したが、その後の事情聴取には応じていない。会員と面識のある別の会員から、会員が「子供の医大の学資が予想以上にかかる」と述べていたとの情報提供があった。

【第4事案】

・犯罪行為 私文書偽造、同行使、公文書偽造、同行使、業務上横領、ADR法違反(虚偽表示)

・会 務 歴 本会副会長、LS支部役員、LS支部執務管理委員

・事件の概要

  受任した登記業務について登記未申請にもかかわらず完了したとして、登記事項証明書の写し並びに登記識別情報通知を偽造して依頼者に交付した。

  受任した自己破産申立事件について申立をしていないにもかかわらず破産、免責が決定したとして破産決定書及び免責決定書を偽造し依頼者に送付した。

  受任中の法定後見事件及び遺言執行事件において、保管中の財産のなかから金員を不正使用(業務上横領)した。追起訴十数回ののち刑事事件の公判によって、明らかになった横領額は約5000万円超である。

  司法書士会において役員(現役副会長)として担当していたADR認証申請手続きにおいて認証申請をしていないにもかかわらず認証を得たとして司法書士会会長にその旨を公(マスコミ含む)に発表させ、司法書士会の活動としてADR手続き業務を行わせた。

・事件発覚の経緯

  登記事項証明書の写し偽造について依頼者が法務局にて確認したところ当該登記がされていないことが判明した。また登記識別情報通知等の偽造事件の発覚を受けて、受任していた成年後見人を辞任することとなり、後任者への事件引継等の確認中に横領事件が判明した。さらに、ADR認証申請手続きの未申請を自認した。

 LS支部への報告に添付していた預金通帳の写しを偽造して横領の事実が発覚しないよう隠ぺいしていた。

  当該会員の代理人弁護士、本会役員及びLS支部役員が家庭裁判所に出向き、横領の事実を報告し資料を提出した。また会員は地方検察庁に自首し、地方検察庁の取調べのなかで、破産決定及び免責決定書の偽造が判明した。

・犯罪行為の原因

 業務上横領行為については、「事務所の経営不振や土地購入で資金繰りに困り、資金不足の穴埋めに使うためだった。」と検察庁での取調べにおいて供述した。

 登記識別情報等偽造事件の検討

 依頼者 : 事務所に来所し、地役権抹消・所有権移転登記の依頼

 当該会員 : 受託(早急に準備し進める旨)

依頼者 : 数か月後、進捗状況の問い合わせ

 当該会員 : 調査を進めていると回答

 依頼者 : 再度、早急に進める旨依頼

 当該会員 : 了解

 その後放置(数か月)

 依頼者 : 依頼者から再度進捗状況の問い合わせ(依頼者は怒り、激しい口調)

 当該会員 : もうすぐ登記できるとウソの回答

 依頼案件について初めて調査した結果、地役権の抹消については承諾が得られないことから登記申請ができない状況であることが判明

 依頼者 : たびたびの問い合わせ

 当該会員 : 依頼者に対して今更できないと謝ることができず、識別情報、登記事項証明書を偽造し登記が完了した旨を依頼者に連絡

依頼者 : 費用を支払い、偽造した識別情報・登記事項証明書を受領数か月後、固定資産税納税通知が届いたことから、市役所、法務局に所有権移転している旨、確認したところ登記がされていないことが判明

法務局 : 偽造された識別情報・登記事項証明書を確認

 司法書士会へ通知

司法書士会: 識別情報・登記事項証明書偽造事件発覚

背景  同時期に成年後見事件や遺言執行における預かり金の不正使用、破産事件の決定書等の偽造等、精神的に追い込まれた状態にあった。

【第5事案】

・犯罪行為 道路交通法違反、業務上横領、公文書偽造・同行使

・会務歴 消費者委員会委員

・事件の概要

 深夜飲酒運転により人身事故。債務整理事件において受領した過払い金数百万円の不正使用、破産事件において破産申し立てをしていないにもかかわらず破産決定及び免責決定書を偽造した。

・事件発覚の経緯

 司法書士会の消費者委員会後に開催された忘年会において、当該会員はアルコールを相当量摂取し、宴席は深夜にまで及んだ。最終電車に間に合うように解散し、他のメンバーは当然当該会員も電車で帰宅したと思っていたところ、当該会員は泥酔状態であるにもかかわらず自動車を運転し、人身事故を起こしたため、道交法違反でその場で逮捕された。

 翌日、司法書士会へ警察から悪質な道交法違反である旨の連絡が入った。司法書士会では当該会員の事務所に赴き補助者と現在受託している業務の引継ぎに関する打ち合わせをし、依頼者等へ連絡した。

その後当該会員と打ち合わせをする機会を得、具体的な引継ぎの協議を行うとともにその調査に入ったところ、過払い金等の預かり金の不正使用や破産事件において、破産決定及び免責決定の公文書の偽造が発覚した。その後、当該会員は失踪し、現在も行方は不明状態である。

・犯罪行為の原因

 事務所経費、自家用車の購入等他遊興費等

公文書偽造に至るまでの経緯

 依頼者 : 市役所へ債務整理を相談し、司法書士会担当者の名簿から当該会員に連絡

 依頼者 : 同日、債務整理の依頼のため当該会員事務所に来所

 当該会員 : 1時間程度相談を受け、必要書類等の収集を指示

 依頼者 : 必要書類を持参し来所

 当該会員 : 必要書類を調査のうえ、債務整理事件として受任

 受任通知を債権者(12社)に郵送

 債権者から債権届が返送される都度、利息計算を行い債務整理を開始した

 依頼者 : 現在の状況確認を連絡

 当該会員 : 破産の方向で検討している旨を回答

その後、全債権者について債務が残るもの及び過払い金が発生しているものなど判明

全債務額以上に過払い金の返還金が約200万円程度上回った。

依頼者に報告並びに受領金の返還をする前に事務所の経費として少額であったが使用した。

その後依頼者に知らせることなく預かり金を使用した。

 依頼者 : その後どうなっているのか連絡

 当該会員 : 破産申し立てをしたことを回答

また、当該会員事務所に来るよう指示

  偽造した破産及び免責の決定書を渡し、事件が完了した旨報告した。また、一切の手続き 費用として報酬を受領した。

  当該会員の事務所で業務引継ぎのため当該会員立会いのもと、事務所にある資料等を調査中に原本のような破産及び免責の決定書を発見した。立ち会った全員が本物の原本と思い込み、依頼者本人に返却するべき意見を出したところ、当該会員はコピーを返却している旨回答した。しかし、よくよく書類を確認すると印影がおかしいことに気づき当該会員を問い詰めたところ偽造したことを自白した。

・ 暴力団絡みの事件

【第6事案】

・犯罪行為 業務上横領

・会務歴 綱紀調査委員

・事件の概要

  会員は、法定後見等事件を6件、不在者財産管理人事件を4件受任していたが、この うち、継続している2件の法定後見等事件及び終了した1件の法定後見事件に関する被相続人等の財産の中から金員を不正使用した。

  不正使用した金額については、継続中の案件について後任の保佐人の調査によると約610万円、別の継続中の案件について後任の後見人の調査によると約867万円、終了した事件について会員の言によると約770万円、不正使用の総額は約2247万円である。

・事件発覚の経緯

  後任の保佐人である弁護士からLS本部に対し身元信用保険代替金制度(リーガル法 人の被害者に対する見舞金制度)に関する問合せがあり、事件が発覚した。司法書士会 役員及びLS支部役員が会員事務所を訪問し、会員の手元にある資料の提供を受け、事 情を聴取した。また、司法書士会綱紀調査委員の辞任届の提出を受け、警察への自首を 促し、同日、会員は警察署へ自首した。しかし、身がらは拘束されず帰宅を許された。

  当該会員は、リーガル支部に対し、上記横領事件のうち継続中の1件の報告は行って いたが、その他の事件の報告はしておらず、リーガル支部は受託の事実を把握できてい なかった。報告のあった事件については、最後の業務報告後に預かり金から高額を払い 戻して現金の残高が高額になっていた(不正使用に着手した時期はこの時期と推測され る)。 そのため、その事実の把握ができなかった。

 また、家庭裁判所に対する報告については、当該会員の言によると、就任時の報告の みで、成年後見監督処分事件として立件されるまで未報告であった。

・犯罪行為の原因

  抵当権設定登記事案について依頼者から損害賠償の請求を受け、当事者間で一定の金 額を支払うことで和解した。和解金については自身の預金等から支払いをした。しかし、 その後相手方から和解したことなどを理由に再度金銭の要求を受けることになり、この 要求に対して断ることができず、再三にわたり要求を呑まされ、ずるずると支払うよう になっていった。やがて預金が底をつくに従って、自身が受任している成年後見業務に おける保管中の財産からその支払いに充てるようになった。

反社会的勢力との対応

 依頼者 : 当事者双方事務所に来所し、抵当権設定登記を依頼

 当該会員 : 権利証等必要書類等及び一連の抵当権についての説明

依頼者 : 数日後、当事者双方で権利証等必要書類を持参

 当該会員 : 権利者・義務者の確認及び債権額・利息・損害金等の確認

 ただし、担保物件については後日連絡する

 受託

 権利証等必要書類を預かる

 : 契約書等の作成に着手

 当該会員・依頼者

 : 担保物件欄は白紙状態の契約書等に当事者双方署名押印

 担保物件欄を除き必要書類すべて整う

 当該会員 : 電話にて、担保物件は権利証の物件を記載し、本日登記申請するよう指示の 連絡がはいる。

 担保物件を当該会員自身が必要書類に記入した

 すべての書類が整ったことで登記申請書作成し当該法務局へ登記申請

 後日登記完了

 依頼者に連絡

依頼者 : 当該事務所に来所し、登記完了証等全書類を受領

 当該会員 : 報告書に記録し保管

依頼者 : 後日当該事務所に電話にて、担保物件が間違っている旨問い合わせ

 翌日事務所に来所

 当該会員 : 依頼者との間で「言った 」「言わない」の問答となるが、当該会員は電話で あったために当事者に確実に確認したかの記憶があいまいとなり、また書面にも残していなかったこと、及び記入後、必要者類を当事者に確認を取らなかっ たことから、一部担保物件の抹消を提案し、債権者に問い合わせたが、言葉巧 みに当該会員の非を責めるばかりで応じてもらえなかった。

依頼者 : 抹消できないなら損害賠償として金銭の要求を提案した

当該会員 : 執拗にまた時には怒鳴りつけるなどして金銭の要求を繰り返えされ、恐怖心から精神的に追い詰められ、数百万円で和解した。

 その後、依頼者から本件における非及び和解したことなどをネタに幾度となく金銭の要求を繰り返され、断ることができず、応じるようになっていった。

 当初は当該会員自身の預金等から支払ったが、底をついたため消費者金融等で金銭を工面した。しかし、それも長続きはせず、申し訳ないと思いつつ預かり金に手を付けていった。

 当該会員は、何度か他の司法書士や司法書士会に相談しようと思い悩んだが、自身の保身もあり、依頼者からの脅迫等から逃れられず、勇気をもって相談することができなかった。

*「反社会的勢力」および「暴力的な要求行為等」

1. 反社会的勢力とは、次のいずれかの属性要件に該当する場合をいいます。

① 暴力団

② 暴力団員

③ 暴力団準構成員

④ 暴力団関係企業

⑤ 総会屋等、社会運動等標ぼうゴロまたは特殊知能暴力集団等

⑥ その他前①~⑤に準ずる者

2. 自らまたは第三者を利用して行う暴力的な要求行為等とは次のいずれかの行為要件に該当する場合をいいます。

① 暴力的な要求行為法的な責任を超えた不当な要求行為

② 取引に関して、脅迫的な言動をし、または暴力を用いる行為

③ 風説を流布し、偽計を用いまたは威力を用いて信用を毀損し、または庫の業務を妨害する行為

④ その他前①~④に準ずる行為

 なお、銀行等においては、平成19年6月19日に政府が公表した「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」の趣旨を踏まえ、平成22年より、融資取引における「取引約定書」、「金銭消費貸借証書」等の取引約款、契約書等の規定等に 「暴力団排除条項」を導入し、同日より適用している。

 「暴力団排除条項」とは、融資取引を申し込んだ本人、保証人、担保提供者が、 暴力団等の反社会的勢力に現在かつ将来にわたっても該当しないこと、また自らまたは第三者を利用して暴力的な要求行為等を現在かつ将来にわたり行わないことを表明・確約し、この表明・確約に関して虚偽の申告をなされたことが判明した場合には、金融機関の判断により融資取引を解除することを定めた条項です。

融資取引の際には、申込者が反社会的勢力でないこと等の表明・確約をお願いし、表明・確約をしない場合は、融資取引を断る。

反社会勢力からの業務依頼(アンケート)

普通に仕事した。その人に「反社勢力か」なんて聞けない。紹介した税理士を恨んだ。

反社かもしれないが断るのが怖くて引受けた。

監禁され,暴行を受け,傷害を負った。警察に被害届けをしたが,受理してくれなかった。

事件の処理方法について言いがかりをつけられた。事務所に乗り込まれて退去しない。警察対応をち らつかせ少額の金額で解決した。

依頼された内容が適切でない旨を伝え,その手続に係る取引を止めるように説明した。同人が反社会 的勢力の人間であると知ったのは後日のことであった。

これまで他の先生にやってもらった,というので,そこに行くようにと断った。

依頼され,業務を開始したが,登記申請にいたる前に警察に依頼者が逮捕された。

現在は反社会的勢力からの受託は断わるが,過去においては受託しないことができなかった。

面談で話をしている中で判明した。地元の人は知っている団体だが,他の市町村の司法書士であれば 分からないかもしれない。反社会的勢力から依頼は受託出来ない旨面談時に断わった。

知り合いからの紹介で受任。後日反社関係者関与の会社であることを知り,「多忙」を理由に受任を避 けた。

債務者所有の広大地の真中に簡易建物を建築し,駐車場を占拠する事により競売妨害をしたいが建物

 表示登記(当時)と保存登記可能な施工状況を教えて欲しいと相談されたので高い報酬を提示したと ころ,○○組本部から「その先生は高いからやめておけ」と向うから断わってきた。

組織暴力団の構成員から会社の登記を依頼されたが,業務繁忙を理由に体良く断った。

過去に反社会的勢力にいた方からの依頼はあります。

他の司法書士が断ったので是非やってほしいと言ってきた。

会社設立登記の依頼であったが,風貌,言動が明らかに,一般人とは異なる者であった(いわゆるチ ンピラ風,ヤンキー風)。(飛び込みで来所)手続を急がせるものであったが,本人確認を含め,きち んと手順を踏まなければならないことや,設立手続には時間がかかる旨をあえて説明すると,以後来 所しなくなった。

暴力団関係の人間から,建物明渡し事件(追い出し屋)の依頼をうけたが,契約書や賃料収受,敷金 預り証など,必要な書類の提出を,細かくいちいち求めていたら,面倒くさく思われ連絡してこなく なった。

後日めんどうな事に巻き込まれると考え,病気を理由に断った。

県の暴排条例に抵触するか否かをよく検討して手続きを進めることにした(抵触しないと判断した。)。

 その後,関係者が行方不明になったことから,業務は中止となった。

一般依頼人と同様に応対し,特に司法書士の業務に対する職責を明確に伝えて,受託の可否を判断した。

 それにより相手(依頼者)側で業務職責を理解して依頼が続き,現在まで苦情,問題は発生してない。

弁護士より事件の依頼があり,弁護士事務所にて本人確認を行ったものの,明らかに反社会的勢力の 疑いがあったが,一担受任し,法務局へ閲覧の上申請しようとしたところ,当該法務局にて事故(事件) 扱いされていて閲覧出来なかったようで,弁護士を通じて,受任できない旨を本人に伝えてもらった。

依頼者はマンション管理組合であり,反社会的勢力に出て行かせるため,専有部分の売買であったので, 受託した。所有権移転登記の義務者が暴力団関係。

売主から買主が反社らしいと言われた。売主が警察にその確認をとったが,警察は教えなかった。反 社の報告があれば受託拒否のつもりでいたが,確認がとれない以上,受託した。(結論)元反社であり, 現在はどうも関与していないらしい。

生活保護者の再就職支援をしているNPO法人の理事長の変更登記を依頼された際,新理事長候補者 が刑務所を出たばかり(欠格事由)であることが判明し,又,関係者に暴力団員がいるような噂をきき, 依頼を断った。

売買による所有権移転登記を受任した。反社会的勢力であるということだけが問題といえば問題だが, 他に受任拒否できる理由がなかった。

テレビ報道もされているような反社会的勢力からであったので,受託の可能性についてぼやかして回 答し,司法書士会と相談した。そのまま再度の依頼はなかった。

反社会的勢力者からの所有権移転登記及び抵当権設定登記については受任をし,手続を終了した。

反社会的勢力からの依頼であったが,実体上問題がないので通常どおり処理した。

幸い,事件内容が受託できない(違法)ものだったので,それを理由に受託拒否をした。

日頃から,きちんと本人確認をし,不正な事は,できない旨を受託前にハッキリと伝えた。その後, 依頼はなかった。 私の価値判断で決めます。「反社会的勢力」と表現することが差別です。何をもって「反社会的」と認 識するのでしょうか。今の社会はすべて「反社会」です。

当初は分らず途中まで仕事を引き受け,進めていた後なので断われなかった。登記事件だったので一 応最後まで済ませた。 受任した後で知ったのでそのまま事件を処理した。もちろん本人確認等は通常どおり面談にて行った。

暴力団員から貸借権仮登記の依頼を受け登記したが登記内容に誤りがあると脅迫を受けた。30年位 前の事で,現在はこのような事はない。

反社会的勢力と思われる人物から電話がかかってきた際,「信頼関係を築くことができないため受任で きません。」とお断りしました。電話でイロイロ言われましたが,その後はまったく何もありません。

反社会的勢力から会社の設立を依頼された。当時本人確認もきちんととれ,設立自体は適法に問題なく可能であったが,設立後の会社の使われ方がどのようになるのか不安だったが,断る理由がなく, 受任せざるを得なかった。

事件受託に至らない案件であったが,その件での警察への捜査への協力をした。ただ,守秘義務の観点や,逆恨みをされるのではないかと恐れを感じた。なお,そのお客様を紹介してきた税理士とは関 与を止めた。

登記義務者との面談意思確認を拒否された事案であり,受託を拒否した。依頼者からの事務所の前に 駐車を繰り返されるなどの嫌がらせを受けたが,所轄警察署が厳しく対応された。暴力団系の貸金業者であった。

私の依頼者を以前から脅迫していた者から,依頼者から受任した事件について私に手を引くよう脅かされたが,これに対し,こちらが刑事告訴すると応答して,以後,同様のトラブルは無くなった。

個人間の抵当権設定で利率が異常に高く,出資法違反。Aが貸主でBが借主,Cが物上保証でAとB がグルのようにみえた。貸金業登録等の確認等をしたら嫌がって帰った。

(オンライン)申請した直後に依頼者が反社である疑いが生じたことと,登記原因に無効原因があることが濃厚と感じたため,即刻登記を取り下げたことがある。当該依頼者からさんざんどなられたが, 前受金を全額直接返しに行き,書類も返し,事なきを得た。前受金受領のときに領収書を発行せず預 り証を発行するにとどめておいて本当によかった。

ある目的物引渡請求の相手方が反社勢力で,根拠のないいいがかりということで電話があり,後日知 人2名とともに当事務所に乗り込んで来た(電話の段階で,依頼者が前言を翻し,その後依頼者とは音信普通。)。最終的には警察対応。

Ⅲ 職務上請求書の不正使用

【第7事案】

・犯罪行為 職務上請求書の不正使用(戸籍法等違反)

・事件の概要

平成12年頃からプライム総合法務事務所の実質経営者らが、全国の探偵業者から公簿(戸籍謄本、住民票等)の入手依頼を受け、行政書士、弁護士、税理士の職務上請求書等により請求していたが、それぞれに懲戒処分や逮捕等の処分を受けたことから、公簿請求ができなくなったことから、司法書士を応募したところ、当該会員が応募し面談のうえ月給35万円で合意した。

 しかし、平成23年4月から司法書士会が当該会員への職務上請求書の配布を中止したことから、プライム総合法務事務所は司法書士の職務上請求用紙を偽造する等して、全国の市町村から戸籍謄本等を1 万件以上不正に入手した。

・事件発覚の経緯

 愛知県警が捜査員の戸籍等が不正取得された容疑で関係者を逮捕し、発覚した。

・犯罪行為の原因

 当該司法書士はアルコール依存等で司法書士業務を行わなくなり、他にタクシー乗務

員として収入を得ていたが、生活は乱れ、消費者金融等から生活費や遊興費のため借金

をしており、ピンポイントで当該司法書士に対し相手方から求人の依頼を受け、総合法

務事務所内に当該会員の司法書士事務所を間借りする形で業務を開始した。

年齢的なハンデを感じ、他の応募者に負けたくないと思ったことから、同社の業務に

 職務上請求書が使えないことを認識していたが、借金返済、遊興費等、又諦めていた司

 法書士として再度業務ができることなど。

・事件の概要図

4.司法書士会員の業務の適正化の推進と司法書士会の組織運営の強化について

 司法書士会員(以下「会員」という)による業務上の不祥事への対策として、連合会及

び司法書士会は、会員の不祥事の根絶のために最善を尽くすとともに、会員の業務の適正

化のための会員指導及び改善策について協働して取り組む必要がある。

 また、司法書士会の組織運営についても、執行体制及び事務処理等の見直しを図り、法

令順守の徹底、不適正な慣例を改めること等、組織体制の強化に取り組む。

 そこで、連合会では、上記の内容を推進するために以下の対応策を実施したい。

 1.問題の所在

 (1) 会員の非行が発見できない問題

 (2) 会員の執務環境等の問題

 (3) 会員への指導範囲の問題(会員の独立性・自立性の確保、個別業務への介入

 と守秘義務等)

 (4) 反社会的勢力の問題

依頼者(各地の探偵事務所等) 全国の戸籍謄本等の交付窓口

・司法書士(兼行政書士)

・元弁護士

・グラフィック・デザイナー

プライム総合法務事務所

ガルエージェンシー

地区代表

取得依頼

探偵事務所

集約 提供 不正請求

約1万件

16

 2.対 応 策

 市民窓口(苦情対応窓口)の機能強化

 (1) 趣 旨

 司法書士会における市民からの苦情又は要望についての窓口は、司法書士会の実情に

あった方法で対処していたが、苦情とまでは言い切れない情報が会員の非行の端緒とな

り得ることも認められることから、市民からの様々な情報を活用し対応していく必要が

ある。そこで、会員の不祥事の防止及び早期発見のため、各司法書士会に司法書士会市

民窓口を設置して、会員の執務への苦情又は要望を適切かつ迅速に処理する体制を整備

しておかなければならない。

 司法書士会市民窓口では、市民から寄せられる苦情について単なる情報提供から非司

法書士との提携や預り金の流用が疑われるといった迅速な対応が要求される重大かつ深

刻なものまで事案の軽重に関わらず対処し、これらの苦情情報を活用して不祥事の防止

や早期発見につなげる。

 これに伴い、「苦情対応窓口の設置に関する規程基準 」による苦情対応窓口は、司法

書士会の相談事業等に対する利用者からの苦情に対応するものとし、以下の規則等によ

り設置する。

 ① 司法書士会市民窓口設置規則基準(別紙②)

 ② 司法書士会市民窓口の運営に関する規程基準(別紙③)

 ③ 司法書士会が行う相談及び裁判外紛争解決手続の実施等の事業の苦情対応

 窓口の設置に関する規定基準(別紙④)

(2) 市民窓口における具体的方策

① 苦情情報への対応

 ア 司法書士会市民窓口設置規則基準の制定

 イ 司法書士会市民窓口の運営に関する規程基準の制定

 ウ 市民窓口運営委員会の設置

 委員長1人名 副委員長 1人

 委員3人以上(なお、原則リーガル支部役員1人以上選任する運用とする)

 エ 会員の業務に対する苦情又は要望の受付、対応及び会長への報告

 オ 苦情情報管理責任者を置く

責任者は全ての苦情情報を管理する。

② 苦情情報の受付

 ア 事務局職員が電話対応、予約受付をし、受付票(別紙⑤)に記載する。

 事務局職員は、市民窓口運営委員会に対し直ちに報告する。

 イ 市民窓口運営委員会の担当委員による苦情申出人との面談等(聴き取り)を行う。

 ウ 市民窓口運営委員会において上記イの情報を共有する。

 エ 市民窓口運営委員会は苦情情報管理責任者に対し直ちに報告する。

 市民窓口運営委員会の担当委員は、苦情を受けたその日に、責任者に対し、受付

 年月日・時間(時分)、苦情対象会員、内容等を詳細に報告する。

③ 苦情情報の分析及び活用

 ア 市民窓口運営委員会による苦情情報の整理

 苦情情報を文書・データ化して苦情内容を分析し、会員の非行につながるリスク

 をリストアップする。

17

 緊急を要する苦情から苦情とまで言い切れない情報までを分類する。

 ・苦情内容の濃淡による分類

 ・苦情申出人数又は回数による分類

 ・苦情対象会員別整理

 ・司法書士(同業)からの苦情は、その旨苦情情報として記録

 イ 苦情情報の積極的活用

 ・苦情情報及び内容についての研修並びに説明会の開催

 ・上記アに基づく会員指導のシステムを構築する。

 ④ 苦情対象会員への通知

 ア 苦情内容等により苦情対象会員へ通知、確認

 苦情内容、苦情回数、反社会的勢力との関係その他

イ 複数人からの苦情や法違反が疑われるような場合、会長(総務部等)は次のとお

 り措置する。

 ・苦情対象会員に対して、事務所、自宅、会館等において苦情内容の確認

 ・苦情内容の伝達、聴き取り、苦情対象会員からの説明を求め又は意見を聴取

 ⑤ 緊急対応

 「連絡が取れない」旨の苦情については、当該苦情対象会員の会費納入の遅滞等を確

 認し、その事実が存在する場合には、事務処理の遅滞や放棄、預かり金等の流用が懸

 念されるため、緊急に対応することを要する。

⑥ 公益社団法人成年後見センター・リーガルサポート支部との苦情情報の共有リーガ

 ルサポート会員の苦情情報を司法書士会情報管理責任者へ報告する(報告書未提出、

 会費未納その他のマイナス情報を含む)。

 2.会費遅延及び滞納情報の活用

 会費の納入が遅れた場合(数日或いは数週間後に支払われた)や滞納している場合は、

 それを見過ごすのではなく、苦情情報とともに会費遅延情報を詳細に記録する(苦情情

 報と常にリンクさせる。)。その上で会費の遅延・滞納が複数回発生している場合は、対

 象会員に連絡又は面談を実施する。

 3.苦情対応マニュアル等

 以下のマニュアル等の見直しを行う。

 (1) 不祥事発生時の司法書士会の対応の流れ

 (2) クライシスマニュアル

 (3) Q&A、会長声明

 4.警察等と司法書士会との連携

 会員が反社会的勢力とのつながりが懸念される場合もあることから、次の事業を行う。

 (1) 司法書士会が実施する反社会的勢力の排除等に関する研修会への支援

 (講師は連合会派遣)

 (2) 業務等における反社会的勢力からの影響を排除するために警察や都道府県暴力追放

 運動推進センターとの連携等(机上配布:反社会的勢力対策研究センター編著「暴力

 団の介入を防止するために」)。

18

 5. 研修会等の開催

 トラブルを未然に防ぐ取り組みの一つとして、司法書士会において研修会等(アンケ

 ート結果の検討)の開催

 6.司法書士会支部の機能強化

 本来の支部機能を取り戻し、司法書士会と支部の連携強化を図るための施策を検討する。

 7.会員への対応

 会員への直接の対応策として、次の事業を実施する。

 (1) 倫理研修の強化

 ① 会員の非違行為に対する意識改革の必要性を盛り込む。

 ② 各司法書士会において年間1回以上の倫理研修を実施する。

 倫理研修では、懲戒事例や窓口に寄せられた苦情情報も取り上げる。

 (2) 預かり金等の取扱いに関する諸規程の見直し

 8.司法書士相談窓口の整備

 会員の抱える悩み事に対して、次のとおりの相談窓口を設ける。

 (1) 司法書士会員サポート窓口の設置(連合会・司法書士会)

 ① 非行に巻き込まれ、現状を打破したいが相談相手がいない場合

 ② 反社会的勢力に関する相談

 ③ 訴訟等による紛争トラブル等による逆恨み等職業上の悩み

 (2) 会員を対象としたメンタルヘルス相談窓口の設置(外部機関)

 会員の業務は、会員個人が責任をもって行うべきものであるが、依頼者等との関係

 や紛争を取り扱うことによる心理的負担、事務所の問題等から生じるストレスが適正

 な業務執行に少なからず影響を与えると考え、会員を対象としたメンタルヘルス相談

 (平成27 年 4 月6 日より㈱ハートセラピー開始(別紙)。

Ⅲ 司法書士会の組織運営の強化について

1.問題の所在

 (1) 組織内の責任の不分明の問題

 (2) 役員単独による事業執行の問題

 (3) 規程に基づかない慣例による不適正な事務処理の問題

 (4) 不適正な経理処理の問題

 (5) 代表印等印鑑の管理体制の不徹底の問題

 (6) 不適正な文書発信事務等の問題

2.対応策

 (1) 組織における役割、権限、命令系統の明確化

 (2) 会則・規則・規程に基づく組織運営の徹底

3.司法書士会における外部理事及び外部監事の導入について

 司法書士会における外部理事及び外部監事の導入については、時期尚早との意見がある

19

 が、外部役員の活用方法や役割を検討し、導入の可否を協議する。

 なお、司法書士会においては、現状の組織体制についてチェック体制が機能的に働いて

 いるかを確認するものとする。

4.事務局体制の強化と事務局長の任命等

 司法書士会事務局については、時の執行体制を支えるとともに、日常業務を行い司法書

 士会の事業の継続性を確保している。また、司法書士会では、役員の常勤化は困難である

 と考えられることから、事務局体制の充実・強化を図ることが求められる。

そこで、司法書士会会則基準中に連合会会則第10章事務局と同様の内容を規定する

 こと等を検討する。

 また、事務局長を任命する場合は、その権限の明確化(日司連事務執行規則第6条事務

 局長の意見の表明)についても併せて検討する。

20

5.アンケート調査(平成29年度)による検討

 苦情申立ての有無等

 「依頼者(または相手方,第三者)から,執務に関して苦情を申し立てられたことがありますか。」という設

問に対し、「苦情申立 有 」の回答は全体の28%であり,「苦情申立無」は全体の72%である。

苦情を申し立てられ

たことの有無

回答数 割合

(%)

 有 796 28.2

 無 2023 71.6

不明(回答無し) 7 0.2

全体 2826 100.00

簡裁訴訟代理権の有無の別により苦情申立の有無を集計した表が下記の表である。簡裁代理権有りでは,「苦

情申立有」の回答は33.9%になり,簡裁代理権無しでは,「苦情申立有」の回答は15.3%にとどまっている。

 簡裁訴訟代

理権有

簡裁訴訟代

理権無

苦情申立有 643

(33.9%)

125

(15.3%)

苦情申立無 1246

(65.8%)

691

(84.6%)

不明 6

(0.3%)

1

(0.1%)

合計 1895 817

下記表は,司法書士経験別の苦情申立の有無を集計した表である。「苦情申立有」の割合は,20 年以上30 年

未満が36.5%,30 年以上が34.1%であり,司法書士経験が長くなると「苦情申立有」の割合が高くなる。

司法書士経験年数 苦情申立有 苦情申立無 回答無し

3年未満 31

(11.2%)

247

(88.8%)

0

(0%)

3年以上10 年未満 211

(23.7%)

678

(76.2%)

1

(0.1%)

10 年以上20 年未満 193

(31.3%)

420

(68.2%)

3

(0.5%)

20 年以上30 年未満 145

(36.5%)

242

(63.5%)

0

(0%)

30 年以上 204

(34.1%)

391

(65.4%)

3

(0.5%)

21

下記表は,年代別の苦情申立の有無を集計した表である。「苦情申立有」の割合が高いのは,50 代(36.3%)

であり,以下40 代(31.9%),30 代(29.0%),60 代(26.9%)と続く。

年代 苦情申立

 有

苦 情 申

 無

回答無し

20 代 11

(22.0%)

39

(78.0%)

0

(0%)

30 代 141

(29.0%)

344

(70.6%)

2

(0.4%)

40 代 169

(31.9%)

359

(67.7%)

2

(0.4%)

50 代 158

(36.3%)

277

(63.7%)

0

(0%)

60 代 216

(26.9%)

588

(73.1%)

0

(0%)

70 代

以上

95

(19.1%)

400

(80.3%)

3

(0.6%)

苦情の内容(複数回答あり)

 最も回答数が多かったのは①報酬に関して(314 件)であり,次に④処理が遅い・時間がかかりすぎる

(196 件)である。 ⑦その他(252 件)も多いので,その他の回答例を幾つか紹介する。

 【その他の回答例】

 その他の事例でも,子細に見ていくと,上記①から⑥に当てはまる事例が少なからずあるが,大きく分ける

と,登記に関するものが最も多く,以下,嫌がらせ・言いがかり的な苦情,本人確認等に関するもの,成年後

見業務に関する苦情,依頼者の相手方からの苦情,トラブル,書類の不備・紛失に関する苦情が続く。

苦情内容 回答数

①報酬に関して 314

②説明(報酬に関する説明を

除く)がない・不十分

127

③報告(途中経過の報告を含

む)がない・不十分

124

④処理が遅い・時間がかかり

すぎる

196

⑤依頼内容と相違した 108

⑥司法書士本人が対応しな

かった

18

⑦その他 252

⑧不明(回答無し) 15

22

① 相続登記における道路持分を申請していなかった。

② 登記の法務局側の誤記を見過ごして納品した。

③ 登記が数日おくれ,居住用の登録免許税の軽減の期間を徒過した。

④ 高齢の父から息子への贈与登記の依頼について,父と特養で面談後,父の意思能力不足を理由に依頼

 を断わったところ,息子から苦情を受けた。

⑤ 売主が免許証,権利証,印鑑証明書全てを偽造し,本人になりすまし,後日,所有権移転登記を判決

 で抹消されたため,その売買の立会責任を追及された。

⑥ 不動産売買取引後登記申請前,義務者が売買契約解除を主張して申請を中止するよう要求されたがこ

 れを無視して申請したところ登記抹消請求の訴えを提起された。(買主と代理人(私)を被告に)

⑦ 債権者に信用情報記載についての質問状を送ったが,A,B2社への通知を逆に発送してしまい,A

 社から個人情報の漏えいにあたるのではないかと苦情を受けた。

⑧ 相談内容を相手方に漏らした。

⑨ 家族に遺言書作成を秘密にしたい依頼者に請求書をFAXすることにより,家族に知られてしまった。

⑩ 納品書類に他の方の書類が混じっていた。

⑪ 夫婦からの過払請求で妻への返金を夫の口座にまとめて返金したため。

⑫ 中古住宅の売買で租税特別措置法適用の見積りをしたが,不適合物件につき取引前に買主に通知したが,

 差額は司法書士負担で登記するように主張された。

⑬ 商業・法人登記の登記懈怠で過料が来た。

⑭ 簡裁事件で当職が勝訴すると云ったから依頼したのに敗訴したとのクレーム。勝負(かちまけ)を絶

 対云わない様にしているので思い違いと思うが……。

⑮ 依頼者の求めに応じ,遺産分割協議書を相続人に送付したところ,相続人の1 人から,話を聞いてな

 いという苦情がきた。

⑯ 相手方である貸金業者からの処理が遅いとの苦情。

⑰ 成年被後見人の一方的な考えや思っている事を行わないということで後見人解任の申立てがされた。

⑱ 参考に作成し,(依頼者に)渡した返済予定表に誤りがあり,返済予定表では完済になったが,債務が

 残っており業者から未払金を請求された。

 【報酬に関する苦情の内訳】(複数回答あり)

 報酬に関する苦情の内容は,「報酬が高い」が211 件と最も多く,以下,事前の説明不足,算定の根拠が不明

確の順となる。

苦情の内容 回答数

報酬が高い 211

事前の説明不足 91

算定の根拠が不明確 38

その他 33

不明 7

【報酬に関する苦情のその他の事例】

① 本人訴訟支援で弁護士法72 条違反ということで,報酬につき不当利得返還請求された。

② 同業者によるインターネット上の広告に比して高額であるとの苦情。

③ 報酬の未入金の督促がおそいと反論された。

④ 端数が1 円単位まで付いているのが気にくわないと言われた。

⑤ 見積りと違うと言われた。

23

⑥ 税金の問題が伏在し,その説明がなかった。

苦情の申立て経路(複数回答あり)

 苦情申立の経路(どこに苦情申立てがなされたか)「直接申立てがあった」が最も多く(559 件),「本会に申

立てがあった」(213 件),「法務局に申立てがあった」(70 件)の順となる。

 申立ての経路 回答数

直接申立てがあった 559

本会に申立てがあった 213

法務局に申立てがあった 70

その他 66

【申立ての経路のその他の事例】

・裁判を起こされた。 ・成年後見で家裁に連絡。 ・リーガルサポートに申立てがあった。(後見業務)

・市の消費者生活センターを通じて。 ・事務所あてに内容証明郵便が届いた。

・中間の紹介者に申立てがあった。 ・弁護士から問い合わせがあった。

苦情申立てへの対応と話し合いをしなかった理由

 苦情申立てに対して話し合いをしたが588 件で全体の約70%,話し合いをしなかったが231 件で全体の28%

である。

苦情申立に対する対応 回答数

話し合いをした 588(70.3%)

話し合いをしなかった 231(27.6%)

不明(回答無し) 18(2.1%)

 【話し合いをしなかった理由】(複数回答あり)

話し合いをしなかった理由でもその他の回答事例が多いが,その主なものは,本会(司法書士会)が間に入

った(対応した),相手方の要求に従って処理したなどである。

苦情に根拠がないと思ったから 134(58.0%)

相手が話し合いに応じなかった 34(14.7%)

その他 78(33.8%)

不明(回答無し) 6(2.6%)

24

話し合いの結果について

話し合いをした結果、円満解決(282 件)が最も多いが,複数回答ありであるので,円満解決の中には,謝罪

することで解決等が含まれているものと思われる。

「その他の解決」の回答例では,説得(第三者の説得を含む)・説明,辞任・解任などである。

【話し合いの結果,物別れに終わった後の経路】

話し合いをしたが,物別れに終わった結果どうなったか、懲戒申立をされたが 18 件,訴えの提起が 10 件,

紛議調停の申立てをされた(紛議調停の申立てをした)が11 件と,紛争に至ったものが39 件に対し,紛争に

ならならなかったとする回答が41 件である。

物別れに終わった後の経路 回答数

① 懲戒申立てをされた 18

(17.6%)

② 訴えを起こされた 10

(9.8%)

③ 紛争にならなかった 41

(40.2%)

④ 紛議調停の申立てをされた(紛

議調停の申立てをした)

11

(10.8%)

⑤ その他 32

(31.4%)

⑥ 不 明(回答無し) 1

(1.0%)

【その他の回答例】

① 本会に苦情の連絡が入った。

② 別の司法書士のところへ依頼された。

③ 暴言を吐かれたり恫喝したりして気が済んだようです。

④ 代理人弁護士との裁判外交渉になった。

⑤ 解任された。

⑥ 依頼の要請による処理で,当職に責任なしと説明し,不満があれば裁判しても良いと言ったが,結局

 紛争にはならなかった。

25

⑦ 債権者,設定者間訴訟となり債権者側から証人として出廷を依頼され,出廷した。当初,債権者から,

 金銭を請求されたが,断った。又当初懲戒をちらつかされた。-裁判は係争中らしい。

⑧ 報酬債権を放棄した。回収を断念した。

「話し合いをしなかった」後の結果どうなったか。

 苦情申立てに対して,「話し合いをしなかった」後の結果がどうなったかの回答が下記表である。紛争になら

なかったが最も多く107 件である。これは苦情内容が嫌がらせ・言いがかり的なものであったことによるもの

と思われる。他方で,懲戒申立て・訴えの提起もかなりの割合を占めている。これを,話し合いをしたが物別

れに終わった(以下「物別れ」という。)ケースと比較すると,懲戒申立てが「物別れ」では,17.6%だが,「話

し合いをしなかった」が20.3%であり,訴えの提起では,「物別れ」では9.8%だが,「話し合いをしなかった」

では7.8%である。

話合いをしなかった後の

結果

回答数

①着手金・報酬等の返

還・放棄

13(5.6%)

②何らかの金銭支払いで

解決

4(1.7%)

③懲戒申立てをされた 47(20.3%)

④訴えを起こされた 18(7.8%)

⑤紛争にならなかった 107(46.3%)

⑥その他 45(19.5%)

⑦不明(回答なし) 17(7.4%)

【その他の回答例】

紛争にならなかったと同様,その後の連絡なしが7件,解任請求が3件,謝罪したが3件 他の司法書士に

依頼が3件などである。

・金銭での謝罪を要求された(誠意を見せろ)。

・「訴える」と云われたが,理由なき訴えには逆に業務妨害で反訴する旨を伝えたところ連絡がなくなった。

「懲戒申立てをされた」後の結果どうなったか。

 懲戒申立をされた後の結果としては,一切の処分なしが46 件に対し,懲戒処分が7件,注意勧告が3件,会

長指導が1件である。懲戒処分の内容は,戒告が3件。業務停止が4件である。

懲戒処分の内容

懲戒申立をされた後

の結果

回答数

懲戒処分 7(11.3%)

注意勧告 3(4.8%)

会長指導 1(1.6%)

一切の処分なし 46(74.2%)

不明(回答無し) 5(8.1%)

戒告 3

業務停止 4

26

「訴えを起こされた」後の結果どうなったか。

 「訴えを起こされた」後の結果は,勝訴が14 件に対し,敗訴は0件である。ただし,和解の成立が8件(裁

判上の和解が7件,裁判外の和解が1件)である。

訴えを起こされた後

の結果

回答数

係争中 3(11.5%)

勝訴 14(53.8%)

敗訴 0(0%)

和解の成立 8(30.8%)

訴えの取下げ 3(11.5%)

不明(回答無し) 0(0%)

和解の成立の内容

裁判上の和解 7

裁判外の和解 1

苦情を申し立てられた原因について(複数回答あり)

 苦情を申し立てられた原因について,「申立人の誤解」が 328 件で最も多く,次に「全くの言いがかり」が

295 件であり,「自分にミスがあった」は,276 件である。

(注)複数回答ありなので,パーセントの

合計は 100%にはなっていない。割合は,

回答数の総計から算出している(以下同

じ。)。

回答者の年代別では,20 代・30 代では,「自分にミスがあった」が苦情申立ての原因の1位となっているのに

対し,年代が高くなるにつれて「申立人の誤解」や「全くの言いがかり」の割合が高くなる。これは,司法書

士経験年数でも同様である。簡裁代理権有無別では,簡裁代理権有りの会員の方が,簡裁代理権無しの会員に

対して,「自分にミスがあった」の割合が高くなっている。

【簡裁代理権有無別の苦情申立ての原因】(複数回答あり)

苦情を申し立てられた原因 回答数

①自分にミスがあった 276(34.7%)

②申立人の誤解 328(41.2%)

③全くの言いがかり 295(37.1%)

④依頼者の期待過多 181(22.7%)

⑤その他 171(21.5%)

⑥不明 26(3.3%)

簡裁代理権 自分にミス

があった

申立人の

誤解

全くの言い

がかり

依頼者の期

待過多

その他 不明

有 242

(37.6%)

275

(42.8%)

227

(35.3%)

154

(24.0%)

133

(20.7%)

18

(2.8%)

無 24

(19.2%)

42

(33.6%)

58

(46.4%)

21

(16.8%)

31

(24.8%)

7

(5.6%)

27

その他の回答例も,上記表の①~④に該当するものが多いが,「説明不足」が40 件あり,依頼者とその

相手方との間のトラブルや親族間のトラブルに巻き込まれたとの回答,多分に言いがかり的だが自分に

も書面化を怠ったなどミスがあるとの回答もある。

① 言いがかりだが,信頼関係がくずれたことによると考えると,当職のリードが上手くなかったのかも

 しれない。

② 事前に報酬に関して,承諾を得ていたが,書面でなく口頭であったため,苦情を申し立てられた。

③ 丁寧に説明したつもりでも,クレーマーにとっては,納得できないものであった。

④ 申立人の誤解を生んだことにこちらにも責任がある(説明したことを,書面で残すなどしていなかっ

 た等。)。

⑤ いろいろな人の考えがある。言葉遣いをゆっくり,丁寧にするよう気を付けている。

⑥ 長期間にわたっての受任だった為,互いに確認が不十分だった。

⑦ 依頼者の申出内容の確認が不十分であった。

⑧ 費用も同じなので,今まで何も考える事なく戸籍謄本を取り寄せていたが,中には知られたくない方

 もおられるので,必要最小限の範囲で取り寄せることにした。

⑨ ①時間的な面で当方に余裕がなく苦情を申し立てた相手につけこむ要素を与えた。②書面(確認書等)

 を作成し,相手方に署名押印をさせるなどして金銭はそれを受授してから渡すべきであった。

⑩ 自らの執務姿勢に過信があった。傲慢,不遜があった。

⑪ 処理にかかる時間の読み違い,連絡遅れ。

⑫ 依頼が多く処理しきれない。リピーター以外の人は,受託しないようにしているがそれでも仕事が多

 すぎて困っている。

⑬ 当時忙しかったため,後回しになった。

⑭ 報酬について十分説明しなかった。

⑮ 直接の原因は補助者のミス,補助者任せにしていたわけではないが,補助者が報告を怠る等ミスをす

 れば本職のミスとなる。

どうしていれば,その苦情を未然に防ぐことができたと思うか。(複数回答あり)

 苦情を未然に防ぐ方法としての回答数は以下の表のとおりである。「十分な説明を行う」,「こまめに報告する」,

「契約書の作成など契約内容の書面化」の順となっている。

その他の回答例は,言いがかり等の苦

情申立てであるため「防ぎようがない」

との回答が66 件と最も多く,「依頼を断

る・受任しない」が23 件,「確認の徹底」

が19 件,「相手をよく見て対応する」が

17 件である。

① 身に憶えがない争いにまきこまれた場合だから防ぎようがない。

② 未然に防ぐことは不可能,最近,常識が通用しない人が増えてきたため。

③ いくら冷静にふり返っても,こちらに非はなく,苦情申立人の性格に原因があるため,未然に防ぐこ

 とはできない。

④ その相手は確信犯的に苦情を申立ててきており(言いがかり),防ぎようがない。

苦情を防ぐ方法 回答数

契約書の作成など契約内容の書面化 124

十分な説明を行う 364

こまめに報告する 211

補助者任せにしない 40

その他 242

不明(回答無し) 103

28

⑤ もう少しなだめるように話せばよかったかも知れない 但し,先方があまりにも強引だったため,毅

 然とした態度も必要であったと思う。

⑥ 10年以上前の登記で証明資料が少なく,両当事者が死亡につき証明に難しい。

⑦ 相手の精神状態も十分配慮した対応が必要。

⑧ 依頼者から相手方は難しい気性の方だと言われていたので十分に注意すべきだった。

⑨ 相手の属性等を深く理解することや接客態度をもっと注意すべきだった。

⑩ 周辺知識を身につけ,リスク回避する。そのリスクを依頼者にも説明する。

⑪ 依頼者の望む内容と,当方の執る事務の明確化と情報の共有。

⑫ 確認の徹底と複数の人間で対応にあたり(1対1で会わない)、録音等記録を残す。

⑬ 司法書士としての立場として出来る処理と責任には限界があることを説明するべきであった。

⑭ 利益相反に対する認識不足で起きた為,知識,経験豊かな先輩司法書士に相談すべきだったと思う。

⑮ 自身の態度をはっきりさせ、聞き入れる事は聞き入れ,そうでない事ははっきり伝える。

⑯ 法令に精通すること。

⑰ 念書,立会人の書面,添付書面のコピーを取っていた為に未然に防げた。

⑱ 正しい情報,正確な説明をしない仲介者等とは付き合わない。

⑲ ①解決が困難な案件は受けてはいけない。情に流されてはいけない。②問題発生時の電話口での対応

 を適切にするため,補助者を教育する。

⑳ こまめに報告するように使用司法書士に徹底して指導する。

㉑ 補助者の言動等にもっと注意が必要であった。

㉒ 不当なクレームは毅然と突っぱねる。

㉓ 報酬の概算の告知と見積書の作成。

㉔ 処理能力が不足する事件は他の同職などを紹介する。

㉕ 本事案では手続が遅れているやむを得ない事情をきちんと説明して納得されたとの思い込みが当職に

 もあった。速やかに後任者を紹介すべきだったと反省している。

㉖ クレーマーの対応を事務所全体で検討する。

ヒヤリとした経験の有無

 日常業務でヒヤリとした経験の有無については,有の回答が全体の40.1%,無の回答が全体の53.4%である。

ヒヤリとした経験 回答数

有 1132

(40.1%)

無 1510

(53.4%)

不明(回答無し) 184

(6.5%)

29

 【年代別のヒヤリとした経験の有無】

【司法書士経験年数別のヒヤリとした経験の有無】

経験年数 経験有 経験無 不明(回答無し)

3年未満

55(19.8%) 210(75.5%) 13(4.7%)

3年以上10年未満

358(40.2%) 490(55.1%) 42(4.7%)

10年以上20年未満

290(47.1%) 292(47.4%) 34(5.5%)

20年以上30年未満

192(48.4%) 176(44.3%) 29(7.3%)

30年以上

220(36.8%) 318(53.2%) 60(10.0%)

年代 経験有 経験無 不明

20 代 24(48.0%) 24(48.0%) 2(4.0%)

30 代 244(50.1%) 231(47.4%) 12(2.5%)

40 代 275(51.9%) 235(44.3%) 20(3.8%)

50 代 208(47.8%) 189(43.4%) 38(8.7%)

60 代 275(34.2%) 471(58.6%) 58(7.2%)

70 代以上 99(19.9%) 349(70.1%) 50(10.0%)

年代別のヒヤリとした経験の有無で

は,40 代が「経験有」の割合が高く,

続いて30 代となっている。この二つの

年代は「経験有」の割合がいずれも50%

を超えている。50 代は「経験有」の割

合が50%を切っているものの,「経験

有」の数値が「経験無」の数値を上回

っている。20 代では,「経験有」と「経

験無」の数値が同一であり,60 代,70

代以上では「経験無」が「経験有」を

大きく上回っている。

30

 司法書士経験別では20 年以上30 年未満で「経験有」の割合が高く,「経験無」の数値を上回っている。

次に10 年以上20 年未満の割合が高く,以下,3年以上10 年未満,30 年以上と続く。

3年未満では,「経験有」の割合が20%を割っている。

【簡裁代理権有無別のヒヤリとした経験の有無】

簡裁代理権

の有無

経験有 経験無 不明(回

答無し)

907

(47.9%)

870

(45.9%)

118

(6.2%)

179

(21.9%)

580

(71.0%)

58(7.1%)

 簡裁代理権の有無別では,簡裁代理権有の「経験有」が「経験無」の数値を上回っている。

 【ヒヤリとした経験の具体的内容】(複数回答あり)

「登記識別情報(登記済証)・その他の書類の返却・受取りについて」が344 件と最も多く,次に,「送り

先・送付先のミス」が182 件,「説明等が不十分」が155 件,「処理の遅滞,進捗状況の問い合わせ」,「過

去の案件についての問い合わせ」,「登記の申請ミス等」が64 件と続いている。

◎ 登記識別情報(登記済証)・その他の書類の返却・受取りについて

① 登記完了後に,書類の原本還付がされていないと指摘された。依頼者には説明していたが,言った,

 言わないの問題なので,法務局と交渉し,どうにか還付できた。

② 登記識別情報をもらってないと言われた。郵便物が隣の家に届いた。

③ 移転済みの権利証を返還してほしいと言われていたのに,買主へ渡してしまった。

④ 仲介者を通じて登記識別情報を交付したが,本人まで届いていなかった。

⑤ 年末に,一部解除の完了証を銀行へ渡したのに,もらっていないと後日言われ,受取印をもらってい

 なかったので,立場が不利だった。間違いなく渡してある。それ以後,面倒でも受取印をもらうこと

 にした。

⑥ 裁判の証拠書類の原本を預けたと依頼者から言われたこと(依頼者の勘違いで事なきを得たが,受取

 書を作成していなかったため,ヒヤリとした。)。

◎ 送り先・送付先のミス

① FAXの送り先を間違えた。業務についての説明が不十分であった。

② 自宅送付不可の書類を自宅へ送付した。

③ 登記識別情報の送付先の間違い(第三者に送付してしまった)。マンションの多量事件であべこべに識

 別情報を送ってしまった。

④ 依頼者へ送った書類が,住所の記載ミスで隣のアパートの人に届いてしまった。

⑤ メールの添付ファイルが別の事件に関するものだった

31

⑥ ①登記識別情報(権利証)をもらっていない(見当らない)と言われた。②郵便物を使って,旧住所(

 住所変更登記前の住所)へ送ってしまった。③メールの「添付資料」に誤って,他社の情報が混在して

 しまった。

⑦ 郵便の宛名を間違えて,事務処理に信用がおけないと言われた。メールアドレスを間違えて他の弁護

 士に送信してしまった。

◎ 登記の申請ミス等

① 移転登記の直前に仮登記をされてしまった。その登記を見過ごすところだった。

② 不動産業者より指摘があった。A→Bが「売買」なのに,「贈与」と登記してある。

③ ①誤字俗字と当用漢字の間違いで登記してしまった。②氏名を間違えて登記してしまった。

④ ①二重売買(25年ぐらい前)で登記申請を取り下げた。②極めて精巧につくられた偽の実印による

 所有権移転(売買)(23年ほど前)で登記申請を取り下げた。③登記申請直前に入った仮差押の経

 験。二回(一度目は33年前,二回目は12年ぐらい前。一度目は売方の責任で解決。二度目は仲介

 業者と当職が分担して仮差解放金を支払った。約400万円。保険は使わなかった。)

⑤ 当日抹消出来ない事態になった。

⑥ 抵当権抹消で他管轄の物件を抹消するのを失念し,依頼者から問合せで判明し,すみやかに処理した。

⑦ 相続登記で一部物件の移転登記がされていないとの申出を受けたことがある。

⑧ 登記識別情報の受領項目を委任状に記載しなかった。

⑨ 登記申請が1日遅れて,先順位の抵当権が設定された。

⑩ 分譲地の売買に伴う所有権移転・抵当権設定登記を受任したが,前提として済ませておくべき通行地役

 権設定登記を失念してしまいました。

◎ うっかりミス

① 商業登記が完了しているのに気づかず,1か月放置していた。

② 一部移転を全部移転と勘違いし,旧権利証を破棄しそうになったとき。

③ 裁判期日を間違えたことがある(過払事件)。

④ 解除証書に物件表示をドットプリンタで印字する際に当該書面を毀損してしまった。

⑤ ①申請人氏名を間違えた。②印鑑証明書有効期限切れを受領した。

⑥ 決済後コンビニで印鑑証明書をコピーした際に,原本をコピー機に置き忘れた。FAXの送り先を間

 違えた。

⑦ 空の権利証と間違え処分しそうになった。

◎ 過去の案件

① 過去の申請が終了していないとの問い合せ

② 遺産分割協議書に記載ある不動産の一部を相続登記していなかった。10年後,なんでその登記をし

 ていないのか,質問された。資料がないので回答できなかった。抵当権抹消でも,共同担保の一部し

 か抹消しておらず,理由が不明な事があった。

③ 事件終結から長期間経過後,依頼者より原本還付書類の返還について問い合わせを受けた(返還時に

 受領書を徴求していたので納得してもらえた。)。

④ 30年前のこと。買主から「貴方に会ったことがないのにどうして登記ができたの?」と訊かれた。

32

⑤ 担保物件に漏れがあった。依頼を受けてから長期間が経過していた。

⑥ 数年前の件で記憶があやふやな点に対してのクレーム。

◎ 書類の紛失等

① 協議書を紛失し,再度もらい直した(もらい直しに行くまで半年くらい探し悩んだ)

② 遺産分割協議書を既に送ったと言われ,受領した記憶がなく,事務所中を捜した。結局は,依頼者の

 勘違いで送っていなかったので,こちらにミスはなかったが,書類を受け取っていないことの確信が

 持てなかった。

③ 事務所内で印鑑証明書を紛失。

◎ 処理の遅滞,進捗状況の問い合わせ

① 債務整理の債権者から内容証明で進捗伺いが届いた。

② 債権者から,「○○さんの件はどうなっているのか」と言われる事。

③ 業務の進み具合がおそいと言われた。遺言書作成の依頼で,こちらが遅かったわけではないが,遺言

 者が危篤になってしまった。

④ 登記を放置していた法人(6か月程)に,過料の可能性を示さず登記したところ,後日過料決定がされ,

 事務所に電話がかかってきた。

⑤ 事件処理に時間がかかっている(後回し,後回しにしているうちに結構時間がたってしまった等)。

◎ 報酬に関するトラブル

① 報酬についての説明が理解されていなかった。

② ①相続登記の報酬が高額と言われた。②請求書を誤発送した。③意思確認をしていないと言われた。

③ 見積りを作成する際に,課税価格を誤って,高く計算してしまった

④ 請求金額を誤って1万円多く請求し,指摘されたこと。

◎ 戸籍等

① 不要な戸籍を間違えて取得してしまった。

② 相続登記の依頼を受け,戸籍を収集したがある相続人の配偶者より戸籍謄本でなく抄本でいいのでは

 と指摘あり。その戸籍には相続人の配偶者の子供のプライバシーに関する記載があり何も疑問なしに

 戸籍謄本を取得したのでその配偶者よりクレームあり。

◎ 意思確認等

① 本人確認情報(保証書であったが)の意見確認の有無

② 訴訟を本人でやることで,納得されたと考えたが,勝手に提訴したと言われた。

③ 義務者が高齢のため,意思能力がなかったのではないか(という問合せ)。

④ 銀行から依頼者の意思能力の問合せ・本人の意思能力の確認をせず,31条業務を遂行中に銀行から問

 合せ。補助相当であった。

⑤ 死者からの抹消登記の委任状を金融機関から受領した

33

◎ 説明不足

① 当初の話と違うと言われた。

② 一つ一つは忘れてしまいました。最近あったことは,外国人発起人の株式会社設立で,「少なくとも一

 人は日本に住所を有する代取が1名は必要」と説明してしまった。

③ 説明をしたつもりであるが,当事者によっては理解していなかった。

◎ 秘密保持

① 問い合わせを自宅に電話したら奥様に内密な事であった。

② 依頼者に電話連絡したところ,本人不在のため,その配偶者に伝言した。その後,本人から連絡があり,

 「配偶者には内緒であるのに,ばれてしまった。守秘義務違反ではないか」と言われた。

③ 一度送ったFAX先の電話連絡なしにFAXをしたら,その時はFAXを自分がうけとれる状態にあ

 ったが,今回は他の人に見られたくない内容のFAXを見られてしまったとクレームを受けた。

◎ 税金関係

① 贈与の登記をしたら贈与税が100万円かかると言われた。相続時精算課税がつかえない案件。

② 税務に関する質問に対する回答で誤ったことを伝えてしまった。

③ 相続登記をする際に,二次相続発生時の相続税が少なくなるような遺産分割内容を司法書士に提案し

 てほしかったと言われたが依頼時にはそのような要請はなかった。厳密には司法書士の仕事ではない

 が,目配りが足りなかったので謝罪した。

④ 取得税の説明を事前にしてくれなかったと言われた。

⑤ 登記申請のタイミング(年末か,年明けか)によって,税金のとりあつかいが異なることに配慮が足ら

 なかった。

◎ その他

① 所有権移転登記の依頼があり義務者の認知症がひどく断わったが,他の司法書士が受けたので苦情が

 来た。

② 役員辞任の登記完了後,当該役員から「自分は辞任した覚えはない」と言われた。

③ 補助者の態度が悪く(本職不在の時)平謝りしたこと。補助者が閲覧ミスをしたこと。

④ 相続放棄手続をした後,申述人以外の無関係の親族から,「勝手に司法書士が放棄をさせた」としつこ

 く電話があり対応に苦慮した。単なる言いがかりではあるが,クレーム対応について考えさせられた。

⑤ 債務整理で貸金を完済しているとのことで過払いだと思っていたら,聞き取りをしていなかったクレ

 ジット債務があり,苦言を呈された。

34

司法書士の過誤や責任,懲戒などに関心があるか。

 司法書士の過誤や責任,懲戒などに関心があるかどうかについては,関心があるが 2550 件で全体の 90.2%

を占めている。

関心の有無 回答数

関心がある 2550

(90.2%)

あまり関心がない 175

(6.2%)

まったく関心がない 10

(0.4%)

不明(回答無し) 91

(3.2%)

【簡裁代理権有無別の関心の有無】

 簡裁代理権有無別の関心の有無については,簡裁代理権有の「関心がある」が92.1%であるのに対し,簡裁

代理権無では,「関心がある」は85.9%である。

 【簡裁代理権 有 】 【簡裁代理権 無 】

 ミスをしないために普段から心がけていることについて

ミスをしないために普段から心がけていることについての問いに対する回答は以下の表のとおりである。

普段から心がけていること 回答数

依頼者とのコミュニケーションを常にとる 2387(84.5%)

法令・判例・先例等の改正・変更に絶えず注意している 1603(56.7%)

事件管理について工夫している 1405(49.7%)

補助者の指導監督を徹底している 553(19.6%)

その他 239( 8.5%)

特に心がけていることはない 67( 2.4%)

不明(回答無し) 83( 2.9%)

35

その他の回答では,「確認を徹底する」が 64 件で,「記録を取る」が 29 件,「十分説明する」が 14 件,「注

意を払う」が14 件,「意見交換・情報共有」が13 件である。

【その他の回答例】

① 人,物,意思の確認の徹底。登記事項の反復確認。倫理に照らす。事前確認を何度も行う。

② 本人確認・立会は本職が専任で当たり,本人確認時点でアイホン等で写真を取っている。写真拒否の場

 合は受任を断わる。

③ 本人確認記録に住所氏名等全て本人に書いてもらい筆跡を残す。

④ 書類を作成したら,作成者以外の者がチェックしている。

⑤ 記録を残す。(電話での内容,メール,FAX等)また会話等細かなやりとりや電話の記録を残す。

⑥ 依頼者との世間話もメモにとっておく。依頼者の特徴を自分だけのメモに残しておく。後日,本人を

 思い出すのに役立っています。

⑦ 書類の授受については,必ずサインをしてもらって明らかにしておく。

⑧ 備忘録の作成,情報収集とまとめ。

⑨ 繰り返し説明をする。実際事件を依頼する相手に確認をとるように念押しする。司法書士ができるこ

 となのかを常に確認しながら業務に当たる。

⑩ 依頼者等がおいてけぼりをくわない様に十分な説明と結果への理解をしてもらう。

⑪ 事件が長期化しそうな時は,コンスタントに連絡する。

⑫ 二重チェック(他の人間との情報共有)。

⑬ 補助者とのコミュニケーション。特に取扱事件は共有意識をもっている。事務所内での報・連・相。

⑭ 事務所の他の司法書士との連携,スタッフとのコミュニケーション。

⑮ 事件処理は,後のこと(最悪の事態を想定)を考え受託している。(とくに,高齢者の本人確認は慎重に。)

⑯ 金銭管理は厳重にしている。

⑰ 執務の原点は実体法にあるので,疑問点等は実体法を原点にして解明している。

⑱ 同じミスをしないよう原因と対策を考える。

⑲ 実務をする中で気づいた事を,ミス防止マニュアルにフィードバックさせている。

⑳ 過去のヒヤリ事例を項目ごとに記録し,類似の事件の時には最初から読み直すようにしている。

㉑ 請求金額が多額になる場合は,こちらから見積書を提出して,説明・了解してもらっている。

㉒ 時間に余裕をもって作業する。

㉓ 一度に受任する件数に限度を設けている。(一定数以上の案件を同時進行で処理するのは危険だと気付

 いたので注意している)

㉔ スケジュール管理をし,業務が遅滞しないようにしている。

㉕ ゆとりとストレスをためない。仕事ばかりしないこと。

㉖ ①解決が困難な案件は,受任してもおそらく解決にならない,とはっきり言う。②弁護士を紹介する。

㉗ 明確な知識がないことは知らないと伝える。

㉘ 懲戒事例を欠かさず見ること。

㉙ 会の研修会に欠かさず出席する。会員との協力を密にする。

㉚ 周辺事務(税金等)の勉強。

㉛ 同業者の意見を聞いたり,話しあえる環境を作っている。

36

受託(受任)拒否の有無

受託(受任)拒否

の有無

回答数

有 1834(64.9%)

無 919(32.5%)

不明(回答無し) 73 (2.6%)

受託(受任)拒否の有無については,「拒否有

り」が1834(約65%)で,「拒否無し」が919(約

32%)となっている。年代別で「拒否有り」が65%を超えているは,50 代,40 代で,「拒否有り」の割合が最

も低いのは70 代以上である。

ただし,どの年代でも「拒否有り」が「拒否無し」を大きく上回っている。司法書士の経験別では,10 年

以上20 年未満が「拒否有り」の割合が約74%と最も高く,以下20 年以上30 年未満,30 年以上,3 年以上10

年未満と続き,逆に3年未満は「拒否有り」の割合が30%を割っている。

簡裁訴訟代理権を有している司法書士は,簡裁訴訟等代理関係業務については受任義務がないので,簡裁訴

訟代理権の有無別では受託(受任)拒否の有無の割合は異なってくる。

下記グラフが簡裁訴訟代理権の有無による受託(受任)拒否の有無の数値(割合)である。

【簡裁代理権 有 】 【簡裁代理権 無 】

受託(受任)拒否の理由(複数回答あり)

37

 受託(受任)拒否の理由の回答数は以下の表のとおりである。「本人確認または意思確認に問題があった」,

「経験がない,または自分には手に余る事件だった」,「違法の疑いのある事件だった」,「事件が輻輳し,新規

に受任する余裕がなかった」の順となっている。

その他の回答例を大別すると,「依頼者に問題・不審点等があったため」が89 件,「業務の範囲外」が38 件,

「理解・意思疎通が難しかった」が34 件,「報酬・金額的な関係」が30 件,「利益相反に該当」が14 件,「利

害関係人からの依頼」が8件,「時間的な都合」が10 件などである。

【その他の回答例】

① 言葉づかいが非常に悪く,受任したとしても到底信頼関係を築けそうになかった。

② 本人が虚偽を申立てていることが窺えたから。依頼者の態度に不信な点があった。

③ 元々クレーマーのような方だったから問題が発生する前に断った。

④ ①依頼者と信頼関係が構築できない可能性があった。②依頼内容が完現できそうもなかった。

⑤ 法的根拠のない主張,請求など。

⑥ 実体法上の権利変動を無視した依頼だった。依頼者自身そのことを承知の上で「無視してやってくれ」

 という依頼だった。

⑦ 本人との直接面談確認の事実の報告(電話)が融資条件であるにもかかわらず,仲介業者に虚偽の事

 実(実際は不在)の報告を強制されたため(いないのにいると報告するよう強制。)。

⑧ 客観的に浪費,無計画が起因の破たんによる破産希望だったが,態度が高圧的で全く反省の様子がな

 かったため。

⑨ 弁護士法72 条に抵触する事件等。

⑩ 過去に報酬の支払いをしないなどの問題がある依頼者であった。

⑪ 相手方が依頼者又は知人であった。利益相反に該当。

⑫ 見積金額の折合いが合わず低額を要求された。

⑬ 本人からの依頼ではなく税理士からの紹介で,キックバックを要求されたため。

⑭ 不動産業者から抹消費用につき安い報酬を言われたため。

⑮ 相続人が多数であり,全員の同意を得る見込みがなかった。分割協議がまとまっていない。

⑯ 必要書類や打ち合わせなど,長期間に渡って対応してもらえず,連絡してもなかなかつながらないの

 で期限を切って,お断りした。

⑰ とびこみの客で抵当権設定書類がすべてそろっていて,前金で支払うというが,所有者本人に電話し

 たところ止めてくれと言われたため。

⑱ スケジュール的に間に合わない依頼であった。

⑲ 反社会勢力からの依頼だった。

38

なりすまし等の場面に遭遇したことがあるか。

なりすまし等の場面に遭遇したことがあるかの

問いについては,「遭遇したことがある」が 489

件(17%)で,「遭遇したことはない」が2132 件

(76%)である。司法書士の6人のうち1人がな

りすまし等の場面に遭遇したことがあるというこ

とになる。

遭遇したことのある場面の内容は,「反社会性力

からの業務依頼」が最も多く,以下,「なりすまし」,

「その他の刑事事件」,「登記済証・印鑑証明書・

運転免許証等の偽造」の順である。

※遭遇したことのある場面について(複数回答あり)

遭遇したことのある場面 回答数

なりすまし 174(6.2%)

登記済証・印鑑証明書・運転免許証等の偽造 97(3.4%)

その他の刑事事件 145(5.1%)

反社会勢力からの業務依頼 229(8.1%)

いずれにも遭遇したことはない 2132(75.4%)

不明(回答無し) 205(7.3%)

なりすまし等に遭遇した場合の対応とその結果

 なりすまし等に遭遇した場合の対応等についての回答については,①反社会勢力からの業務依頼,②なりす

まし,③登記済証・印鑑証明書・運転免許証等の偽造,④その他の刑事事件,⑤その他に分類した。なお,回

答の掲載にあたり,それぞれが貴重な体験談であることからできる限り原文のまま掲載したが,意味不明な回

答(判読不能の回答を含む。)については修正している。

② なりすまし

① 委任状と印鑑証明書の交付を受けて受領したところ,当事者(義務者)は,海外に居る事が判明した。

 登記は行わなかった。

② 偽造した印鑑証明書を渡され,登記申請を行ったが,登記官が偽造を発見し,却下事案となり,幸い

 に登記済までいかなかった。

③ 決済まで売主会社社長に面会できず,当日不動産屋が連れてきたのは社長らしき人物で本人確認でき

 ないので決済は当事務所では中止。不動産業者も社長とばかり思っていて,ビックリしたが,どこか

 で決済したらしい。

④ 本人であることについて同席者の様子が変だったため問いつめたところ,兄弟だったので本人を連れ

 て来るようお願いしたところ,その後来なくなった。

39

⑤ 所有者本人と称する者が来所し,抵当権設定契約書並びに委任状に署名押印したが,登記済証を持参

 していなかったので,後日,登記済証を持参するよう言い,抵当権設定は保留。数日後,抵当権設定

 の債務者である娘が来所し,「登記済証は紛失した。保証書でお願いしたい」旨述べたので,再度,母

 親である所有者に面談する必要がある旨伝えたところ,当初,来所した者は,本人ではなく,なりす

 ましであったことが判明。

⑥ 妻による担保提供案件で債務者は夫。妻は中途で所要のため退席。写真付の身分証明書がなかったので,

 妻退席後,本人宅へ移動して家族写真で確認した。登記完了後の報告書を送付したところ,妻本人か

 ら電話があり「なりすまし」が判明した。夫とは離婚協議中であった。警察に被害届を出すように指

 示した。

⑦ なりすましに関して,詳細に本人確認したところつじつまが合わなくなり,問いつめたところ,遠方

 に住む兄弟の本人確認の手続が面倒に感じて代わりに本人確認を受けようとしていた。

⑧ 銀行の抵当権設定で,夫のなりすましで妻がつれて来た人は本人でなく,お金を借りてから妻とその

 愛人が逃げた。

⑨ 夫と紹介された人が妻の愛人であった。運転免許証を所持していなかったので,保険証で本人確認を

 した。権利書を忘れてきたので,法務局で待ち合わせしていたがなかなか姿をみせなかったので,自

 宅に電話したら本人(夫)がでて「なりすまし」が発覚した。

⑩ 母親が息子の土地を,無断で担保提供,抵当権設定の依頼。息子と称する男が来所。免許証の呈示を

 求めるが所持していなかったので,本人の自宅へ同行。パスポート等を探すふりをしていたが,不審

 な点が多く依頼を拒絶。後日,本人申請で登記をした,息子からの訴訟があり,当職が息子からの依

 頼により証人となり経緯を説明。事務所へきたのは別人だった。

⑪ なりすましを見抜けず,最終的に損害賠償事件の被告となり,敗訴し,保険の適用を受けた。

⑫ 債務者である息子が担保提供者である母親になりすました別の女性を連れてきた。身分証としてパー

 ト先の身分証明書(写真なし)を持参した。コピーを残していたので問題にはならなかった。

⑬ 本人確認をした際,どうしても本人であることの心証を得る事が出来ず,依頼人の承諾を得て受託を

 断った。

⑭ 要注意人物がブローカーとして仲介に入った事実(取引額5000万円)で,売主が高齢であったため,

 事前に売主の情報を調査し,取引決済前に本人確認の面談に臨んだ際,なりすましを見破り,受任を

 拒否した。後日,ブローカーから,他の司法書士事務所(私より20年以上先輩)で,取引が終った

 と報告があった。それ以来,この人物の相談や依頼は一切受けていない。

⑮ 5人(親子)共有の不動産売買で1 人が別人であった。取引日には4人出席で1人が欠席するとのこ

 とだったので書類を郵送,そして電話で本人確認を行った。運転免許証は持っていない,保険証は滞

 納のため市役所に返却したとのことだったので兄弟に確認を取って本人確認を終えた。その本人から

 2年後脅しの手紙,そして法務局への苦情申立がされた(本当の本人は行方不明とのこと)。

⑯ 所有権移転登記を受託。登記義務者の本人確認の質問中に,手が震えていたので,「あなたは誰か」と

 問うたところ,名義人の兄弟であるとのことであったので,手続は拒絶した。

⑰ 登記義務者が他者名義の保険証を提示し免許証は忘れてきたと言った。更に名前を間違えて記載した

 ので,翌日免許証の持参がないと登記できないと回答して決済を延期した。翌日事務所に来なかった

 ことからなりすましが判明した。

⑱ 当時は,運転免許証も偽造されたものではなく,全くの第三者になりすまして免許証を取得したもの

 を確認したため,今から考えても不自然な点は見当たらずどうしようもなかったと思う。後日警察か

 らなりすまし事件だったと聞かされ驚いた次第だった。当時の本人確認記録をしっかり作成の上保管

 していた為,警察から事情を聞かれたときも信頼してもらえた。

40

依頼者等の苦情申立て(クレーム),懲戒等について

①トラブルを防止するために心がけていることなど

① 初期の段階で自分の立場と対応できる範囲について,説明しておく必要があると思う。また,断定的

 な判断は原則として控えているが,何らかの関連書類があれば明確に答えるようにはしている。そう

 いう意味では,常に書類を中心に仕事をするように心がけている(記憶には限度があるので)。

② 依頼主に過度の期待を与えないよう,リスクや手続きがうまくいかないことがあることもよく説明し

 た方がよいと思う。報酬についても事前に通知して納得してもらってから業務を行うよう努めている。

③ 依頼者との信頼関係が一番重要なので,こまめに報連相を実行している。当事者の顔が見える案件を

 受任する様にしている。

④ 当然のことだが,常に法令遵守及び実務に精通に心掛けていれば懲戒等は心配ないと思う。依頼者と

 常に話し合いが大事だと思う。

⑤ ゆっくりとした事件進行の案件であっても一定期間内に(報告事項がない状況),「ない旨」を報告する

 ことが信頼関係の構築に重要と感じています。抱えている案件を細めにチェックすること+(プラス)

 報告の徹底で大分クレームは減るのではないでしょうか?

⑥ 依頼者には依頼を受けてできるだけ早い時点(時には最初の面談時)に費用報酬の概算額を伝える(

 余裕を見て高目に)・手続の時間も伝えられる範囲で伝える。また長い時は途中で連絡する(手紙・F

 AX・電話・メール等)。

⑦ 中には,クレーマーと呼んでよい依頼者もあろうが,数としては少数と思われる。コミュニケーショ

 ンが一番大切と考えているので,今後も意思疎通ができるよう努力してゆきたい。

⑧ 司法書士として社会的な信用,信頼があると考えるが,依頼者の意図しない方向で受託事件が進行し

 た場合にクレーム等に発展することから,常にコミュニケーションを密にしながら信頼関係等を築き

 業務を遂行したいと考える。

⑨ 案件が,重なって多忙になっても,依頼者の側に立って言い訳をしないで,処理のスピードを維持し

 ていきたい。

⑩ 公務員の場合,憲法遵守の宣誓をしますが,そのように登録,入会した当初時の初心に常にふりかえ

 るように常に自覚するのみです。

⑪ 依頼人に対して,「真摯」,「丁寧」,「毅然」を心掛けています。

⑫ まずは過誤が発生しないよう最大限の注意を払うべきだが,残念ながらミスはゼロにならない。大切

 なのはミスが発覚したあとの処理。まず謝罪,状況確認し,対応する。その後原因をさぐり,次回以

 降の仕事の中に生かす。

⑬ 依頼者にあいまいな返答しないこと。知らない,分からない等のことばは,はっきり伝える。

⑭ 依頼者との信頼関係保持には常に注意を払い,説明,契約書等の依頼事項の確認を怠たらない。常に

 メリット・デメリットを説明して安易な見込を述べないことを念頭に置くことで,トラブルを防止す

 ることにしている。それにしても苦情申立はあるが,毅然と対応する事にしている。懲戒については,

 是非,除斥期間の設定をお願いする(前会長は法務省の意向をお先棒かつぎの様な態度で,設定は流

 れにそぐわないと一蹴されましたから。)。

⑮ 依頼者には,必要書類の説明,署名押印の書類の説明,返還書類の説明等により疑問点がないように

 心配りしている。最後に質問をするよう促している。

⑯ 難しい事件については,はっきりと難しい旨を説明して,司法書士に解決する能力がなければ,その

 旨をよく理解してもらわなければいけない。例えば,これから相続人間で話し合いとなる相続事件は,

 相続人間で話し合ってもらい,司法書士は手続きのみに専念しなければいけない。話し合いがうまく

 いっていなければ,頑張らず,弁護士へバトンタッチするか,調停申立書を作成するか,辞任するか

 を情に流されず,すぐに決断しなくてはいけない。司法書士の能力については,きちんと依頼者に説

 明をし,理解してもらい,書面を取っておくことが必要。

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⑰ 依頼者に寄りそうように気持ちを持っていれば,苦情とはならないと思う。受託事件の重度・軽度,

 報酬の高い低いにかかわらず,ひとつひとつ丁寧な対応を心掛けていきたいと常々自分に命じています。

⑱ 反社ではなく,一般の市民相手のときは,とにかく報酬と実費の内訳の説明にかなり時間を費やして

 いる。とくに,書面で「見積り」を見てもらってからでないと原則として受けないことにしている。

⑲ 第三者が介入していても,直接,本人に説明することにより,苦情等はかなり減ると思います。

⑳ 登記手続の料金が高いという話をよく耳にする。これは報酬と免許税の合計だけが一人歩きしている

 と考えられることから,報酬と免許税の内訳をしっかりと説明する必要がある。

㉑ 辞任する際は細心の注意を払い,相手方に納得して頂くよう上手に流れを持っていくべきだと痛感し

 ています。

㉒ 「委任の意思を必ず確認し,自署させる。報酬の事前説明」を徹底させる必要を感じる。

㉓ 月報司法書士(以下「月報」という。)の懲戒,注意勧告事例を参考にして,そのような事例に嵌まら

 ないよう重々意を用いている。さらに会の行事(総会,支部総会等)への出席,また研修単位の取得

 にも極力努力している。

㉔ どのような執務姿勢であっても,依頼者側の問題(特質)からクレームにつながることはやむなしと

 考える。必要以上にクレームを気にしすぎるあまり,依頼者のペース(いいなり)で執務を行うこと

 があるとすれば,その方が問題である。依頼者に対しても,時として「NO」と言えるようにはしてい

 きたい。

㉕ 私達の仕事は信頼関係が大切だと常日頃考えている。相手の立場に立って考える事が大切かと。但し

 云う事もハッキリ云う事も大切だと。まず信頼関係をつくること。クレームも少なくなるのでは。

㉖ 受託時に依頼者との充分な打合せが大切と考えます。

㉗ 依頼者との会話,対応に細心の注意を払う。受託書類の処理,管理を厳重に注意する。

㉘ 地域性もあると思うが,記録を残しつつ,意思疎通を図るしか防ぐ方法がないと思う。それでもクレ

 ームを受けることはあるだろう。

㉙ 依頼者の誤解などがある場合もあると思うが,こちらも思い込みや説明不足の面があるということも

 考えて依頼者に安心してもらえる様にしていかなければならない。

㉚ ①依頼者に納得するよう説明に配慮している。②依頼者の質問,問合せなどの最初の応答に十二分に

 説明する等配慮している。(最初の応答で冷たい態度をとると,依頼者が勘違いしてくる場合がある。

 依頼者が,依頼内容を十分に理解していることもないかも知れないので,その点を頭に入れて十分,

 親切に,説明することだと思う。③補助者にも,以上の点を十分に理解してもらうよう指導する。

㉛ 司法書士の不正事件に関わるその原因として,①金銭的問題(報酬額),②補助者任せ,③事件の長期

 間の放置,④社会的な士業としての認識の欠如等を個人的に考えている。使い古された格言ではあるが,

 登録時の「初心忘るべからず」に尽きよう。

㉜ 自分の調査不足や思い込みでとり返しのつかない状況を招くことがないように気をつけていきたい(

 特に業務が集中している時など)。

㉝ 大半は説明と依頼者とのコミュニケーションで解決するのではないか。まずは依頼者の言い分をよく

 聴くようにすることを心掛けている。

㉞ 依頼者等からの苦情申立てを受けないために,①こまめな報告や説明をしっかり行う。 ②書類管理

 をしっかりしておく。受取ったり,預ったりした書類名や年月日,また持参したり送付したりした書

 類名や年月日を細かくすべて記載している。③気になる事は,常に再確認(相手方に嫌がられても)

 して,ミスを無いようにしている。④仲介業者等は,信頼のおける業者とのみ付き合うようにしている。

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