THINK司法書士論叢会報第123号

THINK司法書士論叢会報第123号2025年03月

日本司法書士会連合会

https://www.shiho-shoshi.or.jp/gallery/think

不動産登記行政と司法書士の役割

京都大学法学部研究科教授 原田大樹

現行の不動産登記法は、民事法ではなく行政法。建築確認と比較して、不動産登記は一定の事実を公に証明するする意味を持っており、反証により覆すこともそうていされるから、登記官による審査の密度や登記という行政行為の存続に関する安定性への期待は大きくないから、登記官を行政庁とすることを許容。

 表示に関する登記の申請が義務。登記申請があった場合の諾否の応答義務あるいは審査義務に関する規定が、不動産登記法上明確でない。

 表題部に所有者を記載する行為は、所有権保存登記申請をなしうる地位が与えられるので行政処分。

 登記手続案内は、行政手続法でいえば、許認可等に係る行政指導、情報提供の一環。

 現実世界の情報を電子データ化し、多数のセンサーを配置してデータの入力を包括的に自動化するようなインターフェースのような役割が司法書士に求められる。

 

不動産登記の公開と個人情報の保護

平成国際大学法学部教授 小西飛鳥

 不動産登記法(個人情報の保護に関する法律の適用除外)

https://laws.e-gov.go.jp/law/416AC0000000123#Mp-Ch_7

第百五十五条 登記簿等に記録されている保有個人情報(個人情報の保護に関する法律(平成十五年法律第五十七号)第六十条第一項に規定する保有個人情報をいう。)については、同法第五章第四節の規定は、適用しない。

 

受付帳が開示される根拠・・・個人情報の保護に関する法律(保有個人情報の開示義務)第七十八条1項2号イ

 ドイツとの比較から、不動産登記情報の閲覧を、正当な利益を持つ者に制限することの検討。

世界の多様な家族法制と日本における渉外的相続の規律

一橋大学大学院法学研究科教授 竹下啓介

 どの法域の方が準拠法となるかの判断。

 当事者が実際に形成した関係と、相続準拠法が想定する同棲カップルに対して認める関係にずれがある場合の調整。

デジタル時代の不動産登記における司法書士の役割―複数の司法書士が一連の取引に関与する場合の問題点等―

司法書士総合研究所 不動産登記制度研究部会

 東京高判令和元年5月30日判時2440号

前件の登記申請手続を代理する司法書士がいる場合においては、前件の登記手続書類等の真否等の判断する義務・責任は、前件の登記申請手続を代理する司法書士が負う。後件の登記申請手続を代理する司法書士は、特段の委任を受けている場合を除き、前件の登記申請について判断する義務・責任を負わない。

 最判令和2年3月6日民集74巻3号P149

前件の司法書士の、後件の登記権利者に対する不法行為責任を認めている。

 不動産取引に複数の司法書士が関与する場合の委任契約の内容。依頼内容、

報酬、責任の範囲の明示。

 

合同会社の持分の一般承継についての定款規定に関する一考察

宮城県司法書士会 立花宏

 会社法608条の一般承継規定を、定款に定めるか否かの判断基準、定める場合の内容。

 民法の組合との比較。組合契約で組合員の地位の相続を認めている場合、有効。

 旧商法時代の合資会社の、代表権を有することが出来なかった業務執行権を有する有限責任社員との比較。有限責任社員の地位を当然に相続することが出来るが、業務執行権については、改めて相続人に業務執行権を与える旨の定款の定めを設ける決議が必要。

 代表権を有する無限責任社員がとの比較。無限責任社員の地位を相続するかは定款自治による。

 会社法施行後。原則は持分の一般承継を認めない。定款で許容する規定を設けた場合は認める。

 合同会社の定款に、持分の一般承継がない場合。資本金、資本剰余金、利益剰余金の会計・税務の取扱いと、それに伴う債権者保護手続。

登記研究135号P40、昭和34年1月14日民事甲第2723号民事局長回答「遺産分割と相続人の一部入社登記の可否について」

国税不服審判所令和4年6月2日裁決

https://www.kfs.go.jp/service/JP/127/05/index.html

合資会社の無限責任社員が死亡退社したことに伴い発生した持分払戻請求権の価額のうち当該社員の出資額を超える金額は、当該社員に対する配当とみなされるとして、所得税等の更正処分等を行ったことに対し、当該社員の相続人である審査請求人が、上記持分払戻請求権に係る金銭等の交付を受けておらず、配当とみなされる金額はないなどとして、原処分の全部の取消しを求めた事案

登記研究187号P71、昭和38年5月14日民事甲第1357号民事局長回答「有限責任社員の死亡と相続人数人中の一人のみによる入社登記申請の受否について」

登記研究767号P125、2012年1月30日【商業・法人登記のアクセスポイント】(1)

合資会社の無限責任社員の持分について遺言がある場合。

 定款の定め方により共同相続人全員の加入の登記を不要とする。社員が死亡した場合には、他の社員の承諾を得てその相続人が当該社員の持分を承継する、社員が死亡した場合には、その相続人(当該相続人間で決定した一名に限る。)が当該社員の持分を承継する。→共同相続人の全員に加入の登記を経る必要はない。

一般承継を認める相続人を特定しておく定款の定め→定款の定めを設けた時以後に相続人が変更になる場合に備えて。

合同会社の定款に、一般承継規定を設ける場合。一般承継規定を認める趣旨のみの意図か、遺産分割により決定された特定の相続人のみの承継を認める等の趣旨なのか明確に。

社員の数による一般承継の定めの必要性。社員ごとに定めるケース。清算人は社員である必要はない。始期付持分譲渡契約締結のケース。

民法262条の2と相続手続き~相続分の譲渡との対比を踏まえて~

神奈川県司法書士会 吉村比呂志

 相続分の譲渡の類型、譲受人は第三者か共同相続人か、譲渡の対象は相続分全部か特定の財産か。

 最高裁判所第二小法廷昭和50年11月7日 判決

https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=54192

共同相続人の一部から遺産を構成する特定不動産の共有持分権を譲り受けた第三者が当該共有関係の解消のためにとるべき裁判手続は、遺産分割審判ではなく、共有物分割訴訟である。

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