2023(令和5)年4月1日施行民法改正(相続放棄、940条)

施行日 2023(令和5)年4月1日

対象となる人

相続放棄の申述申立てを、家庭裁判所に対して行ったときに、相続放棄した財産を現に占有している人。

現に占有って?

被相続人名義の建物に住んでいる(下の土地も占有)、通帳を持っている、家具や遺品を持っているなど。Nintendo Switchなど。

観念的承継は含まないって?[1]

→被相続人名義が、自己名義の畑を耕していた場合、そのことは知っていたけれど、行ったことはないとき、など。


[1] 村松 秀樹 (著, 編集), 大谷 太 (著, 編集)『Q&A令和3年改正民法・改正不登法・相続土地国庫帰属法』、2022、P235

改正の効果

・次の順位の相続人が存在しない場合にも適用される。

・相続放棄の時点で、相続財産に属する財産を現に占有している人だけが、保存義務を負う。→相続放棄をした他の相続人は、義務を負わない。

・相続財産の保存義務を負う相手方

他の相続人、相続財産の清算人。

→近隣の人や、自治体からこの条文を根拠に責任を問われることはない。

保存義務が終わるとき

→相続人、法定相続人全員が放棄した場合は相続財産の管理人・相続財産の清算人などに対して当該財産を引き渡したとき。供託(民法494条、497条)が利用される可能性はあるか。現金?

改正の影響

・相続財産の清算人の選任請求(民法952条)の促進の可能性。

令和3年12月14日(火)定例閣議案件

民法等の一部を改正する法律の施行期日を定める政令(決定)

https://www.kantei.go.jp/jp/kakugi/2021/kakugi-2021121401.html

法務省  「民法等一部改正法・相続土地国庫帰属法の概要」【令和4年11月28日掲載】

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00343.html

民法

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089

改正前

(相続の放棄をした者による管理)

第九百四十条 相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない。

2 第六百四十五条、第六百四十六条、第六百五十条第一項及び第二項並びに第九百十八条第二項及び第三項の規定は、前項の場合について準用する。

改正後

(相続の放棄をした者による管理)

第九百四十条 相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は第九百五十二条第一項の相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない。

2 第六百四十五条、第六百四十六条並びに第六百五十条第一項及び第二項の規定は、前項の場合について準用する。

2023(令和5)年4月1日改正(共有制度)民法等の一部を改正する法律」(令和3年4月28日法律第24号

令和5年4月1日改正(共有制度)民法等の一部を改正する法律」(令和3年4月28日法律第24号

共有に関する改正・新制度

施行日 令和5年4月1日

令和3年12月14日(火)定例閣議案件

民法等の一部を改正する法律の施行期日を定める政令(決定)

https://www.kantei.go.jp/jp/kakugi/2021/kakugi-2021121401.html

法務省  「民法等一部改正法・相続土地国庫帰属法の概要」【令和4年11月28日掲載】

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00343.html

共有物の変更・管理

改正前

(共有物の変更)

第二百五十一条 各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない。

(共有物の管理)

第二百五十二条 共有物の管理に関する事項は、前条の場合を除き、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。ただし、保存行為は、各共有者がすることができる。

改正後

(共有物の変更)

第二百五十一条 各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。次項において同じ。)を加えることができない。

2 共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有者の請求により、当該他の共有者以外の他の共有者の同意を得て共有物に変更を加えることができる旨の裁判をすることができる。

(共有物の管理)

第二百五十二条 共有物の管理に関する事項(次条第一項に規定する共有物の管理者の選任及び解任を含み、共有物に前条第一項に規定する変更を加えるものを除く。次項において同じ。)は、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。共有物を使用する共有者があるときも、同様とする。

2 裁判所は、次の各号に掲げるときは、当該各号に規定する他の共有者以外の共有者の請求により、当該他の共有者以外の共有者の持分の価格に従い、その過半数で共有物の管理に関する事項を決することができる旨の裁判をすることができる。

一 共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき。

二 共有者が他の共有者に対し相当の期間を定めて共有物の管理に関する事項を決することについて賛否を明らかにすべき旨を催告した場合において、当該他の共有者がその期間内に賛否を明らかにしないとき。

3 前二項の規定による決定が、共有者間の決定に基づいて共有物を使用する共有者に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない。

4 共有者は、前三項の規定により、共有物に、次の各号に掲げる賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利(以下この項において「賃借権等」という。)であって、当該各号に定める期間を超えないものを設定することができる。

一 樹木の栽植又は伐採を目的とする山林の賃借権等 十年

二 前号に掲げる賃借権等以外の土地の賃借権等 五年

三 建物の賃借権等 三年

四 動産の賃借権等 六箇月

5 各共有者は、前各項の規定にかかわらず、保存行為をすることができる。

・その形状又は効用の著しい変更を伴わないもの・・・砂利道のアスファルト舗装や、建物の外壁・屋上防水等の大規模修繕工事は、基本的に共有物の形状又は効用の著しい変更を伴わないものに当たると考えられる(村松 秀樹 (著, 編集), 大谷 太 (著, 編集)『Q&A令和3年改正民法・改正不登法・相続土地国庫帰属法』きんざい、2022、P59。)

・共有物を使用している共有者がいる場合でも、管理行為は持分の過半数で決定できる(民法252条)。

・連絡はとれるけれど、関心がない・関わりたくないなど、賛否を明らかにしない共有者がいる場合、裁判所の許可を得て、その共有者以外の持分の過半数で管理行為について決定することができる(252条2項2号) 。

・短期賃貸借の設定は持分の過半数で決定可能に(252条4項)。借地借家法との関係・・・原則として適用外。一時使用目的(借地借家法25条、40条)や存続期間が3年以内の定期建物賃貸借(借地借家法38条1項)、取り壊し予定の建物の賃貸借(借地借家法39条)については、契約において更新がないことを明記し、所定の期間内に賃貸借が終了することを明確にした場合、民法の範囲内となり、持分の価格の過半数の決定で設定可能。

・所在等不明共有者(必要な調査を尽くしても氏名等や所在が不明な共有者)がいる場合

共有物の管理者制度(民法251条2項、252条2項1号、252条の2条)

共有物の管理者

・共有者の持分の価格の過半数で選任・解任。

・単独で管理することができる。

裁判所の決定により、所在等不明共有者以外の共有者全員の同意により、共有物に変更を加える。

裁判所の決定をもらうために書くこと

共有に関する非訟事件及び土地等の管理に関する非訟事件に関する手続規則令和四年五月十三日最高裁判所規則第一三号

https://www.courts.go.jp/vc-files/courts/2022/kyouyuukanrihisyoukisoku.pdf

・申立ての趣旨、原因、申立てを理由づける事実

・当事者の氏名又は名称、住所並びに法定代理人の氏名及び住所

・申立てに係る共有物又は民法第二百六十四条に規定する数人で所有権以外の財産権を有する場合における当該財産権(以下この条から第七条までにおいて単に「共有物」という。)の表示

・代理人がいる場合、代理人(前項第一号の法定代理人を除く。)の氏名及び住所

・共有物の共有者(申立人を除く。)の氏名又は名称、住所、法定代理人の氏名及び住所

・申立てを理由づける具体的な事実ごとの証拠

・事件の表示

・附属書類の表示

・申立て年月日

・申立書を提出する裁判所の表示

・申立人又は代理人の郵便番号及び電話番号(ファクシミリの番号を含む。)

・その他裁判所が定める事項

申立書に添付する書類

・不動産に関する権利の場合・・・不動産の登記事項証明書

共有持分の取得

(所在等不明共有者の持分の取得)

第二百六十二条の二 1項、2項略

3 所在等不明共有者の持分が相続財産に属する場合(共同相続人間で遺産の分割をすべき場合に限る。)において、相続開始の時から十年を経過していないときは、裁判所は、第一項の裁判をすることができない

4項、5項略

共有持分の譲渡

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00343.html

(所在等不明共有者の持分の譲渡)

第二百六十二条の三 不動産が数人の共有に属する場合において、共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有者の請求により、その共有者に、当該他の共有者(以下この条において「所在等不明共有者」という。)以外の共有者の全員が特定の者に対してその有する持分の全部を譲渡することを停止条件として所在等不明共有者の持分を当該特定の者に譲渡する権限を付与する旨の裁判をすることができる。

2 所在等不明共有者の持分が相続財産に属する場合(共同相続人間で遺産の分割をすべき場合に限る。)において、相続開始の時から十年を経過していないときは、裁判所は、前項の裁判をすることができない。

20230425官報

・所有者が不明な土地・建物の管理命令の創設(民法264の2)

公告期間有

・管理できていない土地・建物の管理命令の創設(民法264の9条)

原則として、所有者の意見聴取が必要。

土地所有者の同意が必要。

20230318追記

裁判所 書式など

共有に関する事件(非訟事件手続法第三編第一章)、土地等の管理に関する事件(非訟事件手続法第三編第二章)

所在等不明共有者共有物管理・変更決定、賛否不明共有者の共有物管理決定、所在等不明共有者持分取得決定、所在等不明共有者持分譲渡権限付与決定、所有者不明土地(建物)管理命令、管理不全土地(建物)管理命令

https://www.courts.go.jp/tokyo/saiban/vcmsFolder_1958/vcms_1958.html

2023(令和5)年4月1日施行の民法改正(遺産分割の期限、新民法第九百四条の三関係)

令和3年12月14日(火)定例閣議案件

民法等の一部を改正する法律の施行期日を定める政令(決定)

https://www.kantei.go.jp/jp/kakugi/2021/kakugi-2021121401.html

令和3年4月28日制定法律第24号)附則第3条

(遺産の分割に関する経過措置)

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089_20230401_503AC0000000024

(遺産の分割に関する経過措置)

第三条 新民法第九百四条の三及び第九百八条第二項から第五項までの規定は、施行日前に相続が開始した遺産の分割についても、適用する。この場合において、新民法第九百四条の三第一号中「相続開始の時から十年を経過する前」とあるのは「相続開始の時から十年を経過する時又は民法等の一部を改正する法律(令和三年法律第二十四号)の施行の時から五年を経過する時のいずれか遅い時まで」と、同条第二号中「十年の期間」とあるのは「十年の期間(相続開始の時から始まる十年の期間の満了後に民法等の一部を改正する法律の施行の時から始まる五年の期間が満了する場合にあっては、同法の施行の時から始まる五年の期間)」と、新民法第九百八条第二項ただし書、第三項ただし書、第四項ただし書及び第五項ただし書中「相続開始の時から十年」とあるのは「相続開始の時から十年を経過する時又は民法等の一部を改正する法律の施行の時から五年を経過する時のいずれか遅い時」とする。

法務省

「民法等一部改正法・相続土地国庫帰属法の概要」【令和4年11月28日掲載】

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00343.html

新民法第九百四条の三

(期間経過後の遺産の分割における相続分)

第九百四条の三 前三条の規定は、相続開始の時から十年を経過した後にする遺産の分割については、適用しない。ただし、次の各号のいずれかに該当するときは、この限りでない。

一 相続開始の時から十年を経過する前に、相続人が家庭裁判所に遺産の分割の請求をしたとき。

二 相続開始の時から始まる十年の期間の満了前六箇月以内の間に、遺産の分割を請求することができないやむを得ない事由が相続人にあった場合において、その事由が消滅した時から六箇月を経過する前に、当該相続人が家庭裁判所に遺産の分割の請求をしたとき。

(遺産の分割の方法の指定及び遺産の分割の禁止)

第九百八条 1項略

2 共同相続人は、五年以内の期間を定めて、遺産の全部又は一部について、その分割をしない旨の契約をすることができる。ただし、その期間の終期は、相続開始の時から十年を超えることができない。

3 前項の契約は、五年以内の期間を定めて更新することができる。ただし、その期間の終期は、相続開始の時から十年を超えることができない。

4 前条第二項本文の場合において特別の事由があるときは、家庭裁判所は、五年以内の期間を定めて、遺産の全部又は一部について、その分割を禁ずることができる。ただし、その期間の終期は、相続開始の時から十年を超えることができない。

5 家庭裁判所は、五年以内の期間を定めて前項の期間を更新することができる。ただし、その期間の終期は、相続開始の時から十年を超えることができない。

相続開始時期

~2018(平成30)年3月末日

・・・2028(令和10)年3月末日までに

2018年(平成30)年4月1日~2023(令和5)年4月1日

・・・相続開始から10年経つまでに

2023年(令和5)年4月1日~

・・・相続開始から10年経つまでに

原則として、期間内にやること

・遺産の分割。

・遺産の分割の請求(遺産分割調停の申立てなど。)。

・具体的相続分による遺産分割を受ける利益が消える→法定相続分か指定相続分(遺言)による。

例外(引き続き具体的相続分により分割)
(1)10年経過前に、相続人が家庭裁判所に遺産分割請求をしたとき
(2)10年の期間満了前6か月以内に、遺産分割請求をすることができないやむを得ない事由(※)が相続人にあった場合において、当該事由消滅時から6か月経過前に、当該相続
人が家庭裁判所に遺産分割請求をしたとき

※ 被相続人が遭難して死亡していたが、その事実が確認できず、遺産分割請求をすることができなかったなど。

参考

登記研究 890号 11頁  2022年4月30日 村松 秀樹:法務省民事局総務課長(前法務省民事局民事第二課長)、大谷 太:法務省大臣官房参事官、脇村 真治:法務省民事局参事官(前法務省民事局民事法制企画官)、川畑 憲司:東京地方検察庁検事(前法務省民事局付)、吉賀 朝哉:法務省民事局付、宮崎 文康:法務省民事局付、渡部 みどり:東京地方裁判所判事(前法務省民事局付)、小田 智典:弁護士(前法務省民事局付)、中丸 隆之:法務省民事局付、福田 宏晃:法務省民事局付 【論説・解説】 令和3年民法・不動産登記法等改正及び相続土地国庫帰属法の解説(5・完)

家事事件手続法

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=423AC0000000052_20230401_503AC0000000024

(家事事件手続法の一部改正に伴う経過措置)

第七条 第四条の規定による改正後の家事事件手続法(以下この条において「新家事事件手続法」という。)第百九十九条第二項及び第二百七十三条第二項の規定は、施行日前に相続が開始した遺産の分割についても、適用する。この場合において、新家事事件手続法第百九十九条第二項中「十年を経過した後」とあるのは「十年を経過した後(相続開始の時から始まる十年の期間の満了後に民法等の一部を改正する法律(令和三年法律第二十四号)の施行の時から始まる五年の期間が満了する場合にあっては、同法の施行の時から五年を経過した後)」と、新家事事件手続法第二百七十三条第二項中「十年を経過した後」とあるのは「十年を経過した後(相続開始の時から始まる十年の期間の満了後に民法等の一部を改正する法律の施行の時から始まる五年の期間が満了する場合にあっては、同法の施行の時から五年を経過した後)」とする。

遺産共有と物権共有について

 最高裁判所第二小法廷平成25年11月29日判決民集第67巻8号1736頁

https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=83773

遺産分割前の遺産共有の状態にある共有持分(以下「遺産共有持分」といい

最高裁判所第三小法廷昭和30年5月31日判決民集第9巻6号793頁

https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=57406

裁判要旨

一 相続財産の共有は、民法改正の前後を通じ、民法二四九条以下に規定する「共有」とその性質を異にするものではない。
二 遺産の分割に関しては、民法二五六条以下の規定が適用せられる。

法務局における遺言書の保管等に関する省令及び法務局及び地方法務局の支局及び出張所設置規則の一部を改正する省令案

法務局における遺言書の保管等に関する省令

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=502M60000010033

法務局及び地方法務局の支局及び出張所設置規則

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=413M60000010012

○法務省令第号

https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=300080390&Mode=0

法務局における遺言書の保管等に関する法律(平成三十年法律第七十三号)第四条第五項及び第九条第四項(同法第十条第二項において準用する場合を含む。)並びに法務省設置法(平成十一年法律第九十三号)第十九条第二項及び第二十条第二項、並びに関係法令の規定に基づき、法務局における遺言書の保管等に関する省令及び法務局及び地方法務局の支局及び出張所設置規則の一部を改正する省令を次のように定める。

令和五年月日法務大臣齋藤健

法務局における遺言書の保管等に関する省令及び法務局及び地方法務局の支局及び出張所設置規則の一部を改正する省令

・施行予定日 令和5年5月1日

・遺言書情報証明書の交付等の請求を行う際、遺言書情報証明書が交付等されている場合、遺言者の最後の住所・本籍等及び相続人の氏名・住所等の記載が不要

・遺言書の保管の申請書の添付書類について、相続人の住所を証明する書類の期限の見直し

・遺言書の保管に関する事務に対応する法務局を広くする。

(法務局における遺言書の保管等に関する省令の一部改正)

第一条法務局における遺言書の保管等に関する省令(令和二年法務省令第三十三号)の一部を次のように改正する。

次の表により、改正前欄に掲げる規定の傍線を付した部分をこれに順次対応する改正後欄に掲げる規定の傍線を付した部分のように改め、改正前欄及び改正後欄に対応して掲げるその標記部分に二重傍線を付した規定(以下「対象規定」という。)は、改正前欄に掲げる対象規定で改正後欄にこれに対応するものを掲げていないものは、これを削り、改正後欄に掲げる対象規定で改正前欄にこれに対応するものを掲げていないものは、これを加える。

改正後 

改正前

(遺言書の保管の申請書の添付書類) (遺言書の保管の申請書の添付書類)

第十二条[略]

[項を削る。

第十二条[同上]2 法第四条第五項に規定する同条第四項第二号に掲げる事項を証明する書類及び前項第一号に掲げる書類で官庁又は公署の作成したものは、その作成後三月以内のものに限る。

(遺言書等の返還の手続)

第二十七条[略]

2 遺言書保管官は、第十二条第二号の翻訳文を保存している場合において、法第八条第四項により遺言書を遺言者に返還するときは、当該翻訳文についても当該遺言者に返還するものとする。この場合においては、前項の規定を準用する。

(遺言書等の返還の手続)

第二十七条[同上]

2 遺言書保管官は、第十二条第一項第二号の翻訳法文を保存している場合において、第八条第四項の規定により遺言書を遺言者に返還するときは、当該翻訳文についても当該遺言者に返還するものとする。この場合においては、前項の規定を準用する。

(関係相続人等による遺言書情報証明書の交付の請求の方式)

第三十三条[略]

2 前項の請求書には、次に掲げる事項を記載しなければならない。

一請求人の資格、氏名又は名称、出生の年月日会社法人等番号(商業登記法(昭和三十八法律第百二十五号)第七条(他の法令において準用する場合を含む。)に規定する会社法人で準用する場合を含む。)に規定する会社法人等番号をいう。)及び住所並びに請求人が法人であるとき又は法人でない社団若しくは財団であるときはその代表者の氏名代表者若しくは管理人の定めのあるものであるときはその代表者又は管理人の氏名

[二~九略]

3 次の各号に掲げる場合は、当該各号に掲げる事項の記載を要しない。

一[略]

二第一項の請求に係る遺言書について、既に遺言書情報証明書が交付され又は関係相続人等による閲覧がされている場合

前号に掲げる事項及び前項第五号に掲げる事項

三[略]

(関係相続人等による遺言書情報証明書の交付の請求の方式)

第三十三条[同上]

2 前項の請求書には、次に掲げる事項を記載しなければならない。

 一請求人の資格、氏名又は名称、出生の年月日又は会社法人等番号(商業登記法(昭和三十八年法律第百二十五号)第七条(他の法令において準用する場合を含む。)に規定する会社法人等番号をいう。)及び住所並びに請求人が法人であるとき又は法人その代表者の氏名

[二~九同上]

3 次の各号に掲げる場合は、当該各号に掲げる事項の記載を要しない。

一[同上]

二請求人が遺言書情報証明書又は第四十八条第二項の書面の写しを添付した場合

前号に掲げる事項及び前項第五号に掲げる事項

三[同上]

(関係相続人等による遺言書情報証明書の交付の請求書の添付書類)

第三十四条法第九条第一項の請求に係る同条第四項の法務省令で定める書類は、次に掲げる書類とする。

一[略]

二相続人の住所を証明する書類

三請求人の氏名又は名称及び住所と同一の氏名

請求人の氏名及び住所と同一の氏名又は名称及び住所と同一の氏名又は名称及び住所が記載されている市町村長、が記載されている市町村長その他の公務員が職務上作成した証明書務上作成した証明書(公務員が職務上作成した書類あっては、これに代わるべき書類をいい、当該請求人が原本と相違がない旨を記載した謄本を含む。)

八請求人が法人でない社団又は財団で代表者又は管理人の定めのあるものであるときは、当該社団又は財団の定款又は寄附行為及び代表者又は管理人の資格を証明する書類

[四~七略]

(関係相続人等による遺言書情報証明書の交付の請求書の添付書類)

第三十四条法第九条第一項の請求に係る同条第四項の法務省令で定める書類は、次に掲げる書類とする。

一[同上]

二相続人の住所を証明する書類(官庁又は公署の作成したものは、その作成後三月以内のものに限る。)

2 [同上]

三請求人の氏名及び住所と同一の氏名又は名称及び住所と同一の氏名又は名称及び住所が記載されている市町村長、が記載されている市町村長その他の公務員が職務上作成した証明書務上作成した証明書(公務員が職務上作成した書類あっては、これに代わるべき書類をいい、当該請求人が原本と相違がない旨を記載した謄本を含む。)

[四~七同上]

[号を加える。]

2【同条】

(遺言書情報証明書の交付の方法)

第三十六条遺言書保管官は、次に掲げる方法によって遺言書情報証明書を交付しなければならない。

一第十三条各号に掲げる方法により請求人、その法定代理人又は請求人が法人又は法人でない社団若しくは財団であるときはその代表者又は管理人が本人であることを確認して交付する方法

二[略]]

(遺言書情報証明書の交付の方法)

第三十六条遺言書保管官は、次に掲げる方法によって遺言書情報証明書を交付しなければならない。

一第十三条各号に掲げる方法により請求人、その法定代理人又は請求人が法人であるときはその代表者が本人であることを確認して交付する方法

二[同上

(関係相続人等による遺言書の閲覧の方法)

第三十九条遺言書保管官は、第十三条各号に掲げる方法により請求人、その法定代理人又は請求人が法人又は法人でない社団若しくは財団であるときは、その代表者又は管理人が本人であることを確認して、法第九条第三項の規定による閲覧をさせさせなければならない。

2 [略]

(関係相続人等による遺言書の閲覧の方法)

第三十九条遺言書保管官は、第十三条各号に掲げる方法により請求人、その法定代理人又は請求人法人であるときはその代表者が本人であることを確認して、法第九条第三項の規定による閲覧をなければならない。

2 [同上]がない旨を記載した謄本を含む。)

(遺言書保管事実証明書の交付の請求書の添付書類)

第四十四条法第十条第二項において準用する法第九条第四項の法務省令で定める書類は、次に掲げる書類とする。

一[略]

二請求人の氏名又は名称及び住所と同一の氏名又は名称及び住所が記載されている市町村長、登記官その他の公務員が職務上作成した証明書(公務員が職務上作成した書類がない場合にあっては、これに代わるべき書類をいい、当該請求人が原本と相違がない旨を記載した謄本を含む。)

[三~六略]

七請求人が法人でない社団又は財団で代表者又は管理人の定めのあるものであるときは、当該社団又は財団の定款又は寄附行為及び代表者又は管理人の資格を証明する書類

2 [略]

(遺言書保管事実証明書の交付の請求書の添付書類)

法第第四十四条法第十条第二項において準用する法九条第四項の法務省令で定める書類は、次に掲げる書類とする。

一[同上]

二請求人の氏名及び住所と同一の氏名及び住所が記載されている市町村長その他の公務員が職務上作成した証明書(当該請求人が原本と相違がない旨を記載した謄本を含む。)

[三~六同上]

[号を加える。]

2 [同上]

備考表中の[ ]の記載及び対象規定の二重傍線を付した標記部分を除く全体に付した傍線は注記である。

(法務局及び地方法務局の支局及び出張所設置規則の一部改正)

第二条法務局及び地方法務局の支局及び出張所設置規則(平成十三年法務省令第十二号)の一部を次のように改正する。

別表第二を次のように改める。

別表第二

―略―

附則

この省令は、公布の日から施行する。ただし、第二条の規定は、令和五年五月二十九日から施行する。

会報「信託」第293号「遺言代用信託における受益者の権利―予定受益者は惨事における受益権の取扱いを中心として―」、「後見制度支援信託の受益者雄死亡により終了した場合における残余財産の帰属」

会報「信託」第293号、令和5年2月、(一社)信託協会についてのメモです。

・商事信託研究会報告「遺言代用信託における受益者の権利―予定受益者は惨事における受益権の取扱いを中心として―」

裁判所HP

最高裁判所第一小法廷平成28年4月28日判決

破産手続開始前に成立した第三者のためにする生命保険契約に基づき破産者である死亡保険金受取人が有する死亡保険金請求権は,破産法34条2項にいう「破産者が破産手続開始前に生じた原因に基づいて行うことがある将来の請求権」に該当するものとして,上記死亡保険金受取人の破産財団に属する。破産法34条2項,保険法42条

https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=85854

遺言代用信託(信託法90条1項1号・2号)における予定受益者の破産時における受益権の取扱いについて

問・・・委託者の死亡前に予定受益者の破産手続が開始され、破産手続の終了前に委託者(兼当初受益者)が死亡した場合、破産者である予定受益者が受益者となり、受益権を取得する。取得した受益権は、破産手続開始の時点において「破産者が破産手続開始前に生じた原因に基づいて行うことがある将来の請求権(破産法34条2項)」に該当するか。

破産法(破産財団の範囲)

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=416AC0000000075

第三十四条 破産者が破産手続開始の時において有する一切の財産(日本国内にあるかどうかを問わない。)は、破産財団とする。

2 破産者が破産手続開始前に生じた原因に基づいて行うことがある将来の請求権は、破産財団に属する。

―3項以下略―

信託法90条1項1号の予定受益者と、信託法90条1項2号の予定受益者の権利の違い

信託行為における文言

信託契約日から委託者に相続が開始するまでの間は、委託者を受益者とする。委託者に相続が開始した時以後は、●●を受益者とする。

・・・1号に該当し、委託者が死亡した時から受益者となる。

最高裁判所第一小法廷平成28年4月28日判決との比較

最高裁判所第一小法廷平成28年4月28日判決

・判決の事実

受取人が保険金を受領し、保険金支払請求権は、すでに実現して権利となっている。

・判決の判断の枠組み

  • 破産手続開始前(保険契約の成立時)に、抽象的保険金請求権として成立しているか。
  • 抽象的保険金請求権の発生を認めた場合でも、「将来の請求権」に当たらず、破産者たる保険金受取人の自由財産(新得財産)になるか。

・裁判所の判断

破産手続開始時には現実化していない保険受取人の権利が破産財団に帰属することについて、肯定。

信託法90条1項1号の想定事例

1 委託者と受託者(信託銀行)が信託契約締結。委託者兼当初受益者。委託者に相続が開始した場合、指定する受取人(予定受益者)が、残余財産を一時金または定時定額払いの形で受け取ることが可能。

2 予定受益者が破産手続の開始

3 委託者の死亡

・最高裁判所第一小法廷平成28年4月28日判決の判断の枠組み(1)の観点から

信託財産にかかる給付を受ける権利について、委託者の死亡時まで取得せず、かつ、信託法90条2項により委託者が死亡するまでは、受託者としての権利(受託者に対する監督上の権利等)を有さないものと理解されている。

よって、1号信託の場合、信託行為成立の時点では、抽象的な権利としての受益権を取得したと考えることは難しい。受益権の発生、帰属を分ける場合も同じ結論。判決における停止条件付請求権と評価することは、難しい。

2号信託に関して、受益権の取得を前提としている場合でも、受益権そのものを取得していない段階で、何らかの受益債権を取得していると考えることは難しい。

・遺贈との比較

遺贈と比較して、1号信託の場合は少なくとも信託行為(信託契約)の効力は発生しているので、予定受託者への受益権の将来における帰属可能性が高い。もっとも、信託行為の定め方によって、帰属可能性が低いと評価される場合もある。予定受益者が受け取る受益権(財産の額)が、予想しずらい定めになっている場合、委託者がいつでも単独で信託を終了することができる定めるがある場合(信託法164条1項本文、3項など)。遺言の撤回可能(民法1023条)の規定と同様の評価がされる可能性。

・結論

1号信託である想定事例の場合、当該権利は、破産法32条2項の将来の請求権として破産財団に帰属する。

・委託者が破産手続終了までに死亡していない場合で、処分が困難であるとき

破産管財人としては、一定の金銭を財団に組み入れる、権利を財団から放棄する、自由財産の拡張の対象とする、というような選択肢。

・予定受益者に、破産手続開始決定がされたときの受託者の対応

受託者において、受益者の破産手続開始決定を知ることが出来る仕組みが必要。

・遺言代用信託における委託者の意図の実現の方策

受益者の変更(信託法90条1項本文)。

信託の終了事由として、受益者の破産手続開始決定を定める(信託法163条1項9号)。

受益権取得の条件として、破産手続開始申立てをしていない場合、を定める。

「後見制度支援信託の受益者雄死亡により終了した場合における残余財産の帰属」

・後見制度支援信託の契約約款に、残余財産受益者、帰属権利者という文言を使用した規定がない場合に、残余財産の給付を受ける権利が本人である委託者兼受益者の相続財産に含まれるかについて

残余財産受益者、帰属権利者という文言を使用した規定がない場合でもあっても、専門職後見人と金融機関の信託契約締結時に、本人(成年被後見人)を残余財産受益者とする黙示の指定があったとみなされることによって、残余財産受益権が相続財産となる。

理由

・預貯金債権に類似していること。

・本人(成年被後見人)の意思決定に反する介在を極力減らすこと。本人(成年被後見人)に遺言を作成して残余財産受益者を指定する機会を残すこと。

・信託法181条1項1号の規定。

・明示的に残余財産受益者を指定する方法

特定の個人名、受益者、受益者またはその相続人その他の一般承継者に交付する。

・残余財産受益者権の相続

受益者(成年被後見人)による遺言の取扱い(民法966条、973条)。履行できるかの確認。

・共同相続の場面における、残余財産受益権の当然分割の有無

参考判例 裁判所HP

最高裁判所第二小法廷平成26年12月12日判決

https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=84688

共同相続された委託者指図型投資信託の受益権につき,相続開始後に元本償還金又は収益分配金が発生し,それが預り金として上記受益権の販売会社における被相続人名義の口座に入金された場合,上記預り金の返還を求める債権は当然に相続分に応じて分割されることはなく,共同相続人の1人は,上記販売会社に対し,自己の相続分に相当する金員の支払を請求することができない。

参照法条 民法427条,民法898条,民法899条,投資信託及び投資法人に関する法律6条3項

当然分割を否定することも可能。

相続人による残余財産受益権の行使方法

・遺産分割協議(民法909条の2、家事事件手続法200条3項)

「受託者の権限および義務に関する法的考察―第三者委託―」

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