「受益者代理人は信託行為の変更で選任できるかー信託監督人の選任と比較してみるー」、「第3回民事信託実務入門信託契約条項の起案」

 信託フォーラム[1]の記事、遠藤英嗣弁護士「家族信託への招待第18回相談室、受益者代理人は信託行為の変更で選任できるか─信託監督人の選任と比較してみる─」からです。

指図権者・・・信託業法

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=416AC0000000154

第四章 指図権者(指図権者の忠実義務)第六十五条、(指図権者の行為準則)

第六十六条

信託業法施行規則

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=416M60000002107_20221001_504M60000002055

第四章 指図権者(指図権者の行為準則)第六十八条

法第六十六条第三号に規定する内閣府令で定める取引は、次に掲げる取引とする。

一 取引の相手方と新たな取引を行うことにより自己又は信託財産に係る受益者以外の者の営む業務による利益を得ることを専ら目的としているとは認められない取引

二 第三者が知り得る情報を利用して行う取引

三 当該信託財産に係る受益者に対し、当該取引に関する重要な事実を開示し、書面による同意を得て行う取引

四 その他信託財産に損害を与えるおそれがないと認められる取引

2 法第六十六条第四号に規定する内閣府令で定める行為は、次に掲げる行為とする。

一 指図を行った後で、一部の受益者に対し不当に利益を与え又は不利益を及ぼす方法で当該指図に係る信託財産を特定すること。

二 他人から不当な制限又は拘束を受けて信託財産に関して指図を行うこと、又は行わないこと。

三 特定の資産について作為的に値付けを行うことを目的として信託財産に関して指図を行うこと。

四 その他法令に違反する行為を行うこと。

(2)一方、受益者代理人について、「信託行為においては、その代理する受益者を定めて、受益者代理人となるべきものを指定する定めを設けることができる」(信託法138条1項)と規定するのみで、裁判所による選任は認められていない。その理由は、受益者代理人については、その指定選任は、受益者の権利行使に重大な影響を及ぼすため、裁判所が受益者を代理するものを選任することはふさわしくないとされるからである(寺本昌弘『逐条解説新しい信託法』322-323頁)。

 なぜ、受益者代理人に信託法139条のような、大きな権限を持たせているのかについて、受益者代理人が利用される想定事例として、

・年金信託や社内預金引き当て信託のように、受益者が頻繁に変動するためにその固定生を欠くような場合

・単なる投資の対象として受益権を取得した受益者が多数存在する場合

・受益証券発行信託(第185条以下)において、無記名式の受益証券が発行され、当該証券が転々流通する場合等

が挙げられ、民事信託・家族信託が想定されていないこともあると思います[2]。なお、信託監督人は信託の機関であり、受益者代理人は、あくまでも一定の範囲の受益者の代理人としての地位、という違いもあると考えられます。

参考

一般社団法人信託協会 受益証券発行信託計算規則

https://www.shintaku-kyokai.or.jp/products/corporation/beneficiary_certificate.html

(3)このことからすると、信託行為の変更により新たに選任された信託監督人について、受益者代理人のように、これが特定の「裁判上の行為」を求められることもないし、もしそれが危惧されるのであれば、信託条項に、「信託監督人は信託法132条1項本文が定める一切の裁判外の行為をする権限を有するものとする」と定め、信託登記目録に搭載することもできる。

 特定の「裁判上の行為」を求められることがないのは、信託法132条記載の通り、信託監督人が自己の名で受益者のために使う権利であり、使わないことも可能であり、受益者の権利を奪うものでもないからだと思います。

 ただ、信託目録については第三者対抗要件、取引の安全などの要請があるため信託監督人が選任された場合には、その住所、本店、氏名、名称などを記録する方が望ましいと感じます。権限については、信託法に定める権限以外の定めがある場合には記録する方が良いと考えます。

(2)―中略―このような受益者の権限を奪う特殊な地位にある関係人を、信託行為の変更により、すなわち委託者の意思決定を経ずに、他の関係者が創成することができるかというのが、問題の核心部分といえよう。このような受益者の権限を奪う特殊な地位にある関係人を、信託行為の変更により、すなわち委託者以外の者の意思によって登場させることは、委託者が考えた信託スキームを大きく変更するものであり、一律制限するのが相当と考える。

 受益者の権限を奪う特殊な地位にある関係人を、信託行為の変更により、すなわち委託者以外の者の意思によって登場させることを、信託行為によって委託者が定めている場合に、制限できるという根拠が分かりませんでした。

・・・・・・・・・・・

金森健一弁護士「第3回民事信託実務入門信託契約条項の起案」からです。

信託契約の内容を一から起案し、当事者に対し一から説明した経験のある者であれば、契約書の定型化や説明のマニュアル化等による業務の効率化に対し、果たしてそこまでこの仕事が単純であるのか疑問を抱かれる方が多いと思われるが、読者の皆様はいかがだろうか。

 程度によると思います。

もっとも、このような条項(一文)があれば、信託契約が成立したと即断してよいかどうかについては、一考を要する。「必要な行為をすべき」という文言により受託者に対し課す義務の内容が信託法の許容する限界を超えてしまうと、それをもって信託の成立が否定されることになるからである。

 信託の成立の要否は、信託契約全体、及び第三者との関係(例えば信託法第10条の訴訟信託、事後的な取消しとして信託法第11条の詐害信託の取消し等)から総合的に判断するものであり、信託法3条1項に沿った条項のみで判断するということはあまりないのではないかなと感じます。

一方、民事信託の利用を勧める場面において、「財産を受託者に預けるだけ」、「単に形式的な所有権が受託者に移るだけ」、「権利は残る」などという説明がなされることがあると聞く。

まだあるのかなと思いました。

民事信託は、自分では行うことのできない財産の管理を受託者に用いられる。言い換えれば、民事信託の受益者は、財産管理能力が低下又は喪失した者である。

私が書くのであれば、次のようになります。

民事信託は、自分では管理を行うことが出来なくなる可能性がある財産の管理を、受託者に依頼する場合に用いられることがある。自益信託における受益者は、財産管理能力の低下、喪失に備える者であることが多い。また親なき後に備える民事信託の受益者は、財産管理能力を既に喪失している者の場合もある。


[1] vol.18、2022年10月号、日本加除出版、P105~

[2] 寺本昌広『逐条解説新しい信託法補訂版』2008、商事法務、P321、P323

昭和43年先例の照会文を読み解く

信託フォーラム[1]の渋谷陽一郎「昭和43年先例の照会文を読み解く」からです。

昭和43年4月12日付民事甲第664号民事局回答

照会

信託財産の所有権移転登記の取扱いについて

登記されている信託条項が、別記のように表示されている場合、受託者から、委託者又は受益者以外の者に対し、信託期間終了後であつても、信託期間終了前の日付でなされた売買その他の有償行為を原因として所有権移転登記の申請があつたときは、受理すべきものと考えますが、贈与その他の無償行為を原因として所有権移転登記の申請があつた場合は、登記されている信託条項に反するので、不動産登記法第49条2号又は同条第4号の規定により却下してさしつかえないと考えますが、いささか疑義もあるので、お回示を願います。

(別記)

信託条項

  • 信託の目的

信託財産の管理及び処分

  • 信託財産の管理方法

信託財産の管理方法(処分行為を含む)はすべて受託者に一任する。

  • 信託終了の事由

 本信託の期間は五カ年とし期間満了による外、受託者が信託財産を他に売却したるとき及び委託者が信託財産を委付したときはこれにより信託は終了する。

  • 其他信託の条項

 本信託は委託者が大阪市内に家屋を構築するための資金を得るため且委託者が現在第三者より負担する金銭債務を返済するための資金を得るために受託者をして信託財産を売却せしめんとするものにして現在借家人の立退要求、其他売却条件の困難のため売買が進捗しない場合に於ても委託者の要求あるときは受託者は自己の資金を委託者に融通し、又その金融のためには自己の責任に於て信託財産を担保に供することができる。

 前記による金融のため委託者が受託者に対し金銭債務を負うに至つた場合に於てその返済をすることが困難と思料するときには信託財産を委付してその債務を免れることができる。

 前項委付により委託者は受益権並びに元本帰属権(信託財産の返還請求権)を失うものとする。

 委託者及び受託者の死亡は本信託に影響を及ぼさないものとする。

 委託者と受託者との合意により何時でも信託条項を追加又は変更することができる。

 前記以外の事項に付てはすべて信託法の定めるところによる。

(回答)客年6月21日付登第429号をもつて照会のあつた標記の件については、前段、後段とも貴見のとおりと考える。ただし、後段の場合は、不動産登記法第49条第4号の規定により却下するのが相当である。

以上

 現在借家人の立退要求、其他売却条件の困難のため売買が進捗しない場合に於ても委託者の要求あるときは受託者は自己の資金を委託者に融通し、又その金融のためには自己の責任に於て信託財産を担保に供することができる。・・・現在借家人の立退請求は、受託者が行う、ということだと思います。判例による訴訟を目的とする信託禁止の適用条件は次の通りです[2]

・信託を為すこと

・訴訟行為をすることを主たる目的とすること

・訴訟行為は、破産申請・強制執行を含むが、更正裁判所に対する債権の届出行為を含まない。

・訴訟信託を特に正当化するような特別な事情がないこと。委託者との関係に基づき職務上債権などを譲り受けて取り立てに従事する場合や、差し迫った権利行使を可能にする手段として信託の形式をとった場合には、本条に触れない。

 以上を考えると、委託者との関係に基づき職務上債権などを譲り受けて取り立てに従事する場合や、差し迫った権利行使を可能にする手段として信託の形式をとった場合に該当し、照会文のみの事実からは、訴訟信託には当たらないように感じます。

しかし、あくまでも「登記されている信託条項」上、受託者の「自己の資金」を「委託者に融通」するとある。更には、登記された信託条項上、「自己の責任に於いて」とあるが、これは受託者の「自己の責任」という意味だろうか。

 自己の裁量で、という意味ではないかなと思いました。また受託者の固有財産を担保にすることは、信託原簿とは関係はないのではないかと思い、記載する意味が分かりませんでした。

要するに、上記の信託条項は、直前に記される受託者が融資した委託者に対する債務について、その債務を弁済することが困難であると思料されるときは、信託財産をもって、代物弁済できる、という意味なのであろうか。「免れることができる」とある。あくまで委託者の意思に基づいて、行われるのであろうか。あるいは、受託者の判断による担保の実行であろうか。

 免れる、ではなく免れることができる、なので受託者の裁量が入っていると考えられます。受託者が弁済を受けられなかった場合、当然に担保実行する、ということなのか分かりませんが、担保実行も受託者の裁量であり、選択肢の1つであるということだと読みました。


[1] Vol.18、2022年10月日本加除出版P114~

[2] 四宮和夫『新版 信託法 (法律学全集)』1989年有斐閣P142~

10月相談会のご案内ー家族信託の相談会その48ー

お気軽にどうぞ。

2022年10月28日(金)14時~17時
□ 認知症や急な病気への備え
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その他:
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1組様 5000円
場所
司法書士宮城事務所(西原町)

要予約
司法書士宮城事務所 shi_sunao@salsa.ocn.ne.jp

加工第22回弁護士業務改革シンポジウム第6分科会民事信託と後見制度

https://www.nichibenren.or.jp/document/symposium/gyoukaku_sympo.html

日本弁護士連合会2022.9.3(土)

基調講演 「民事信託・任意後見に関する公証実務」

金子 順一(元公証人・元裁判官)

パネルディスカッション前半 「民事信託・後見制度の比較、使い分け」

金子 順一 (元公証人・元裁判官)

伊庭 潔 (日弁連信託センターセンター長・東京弁護士会)

根本 雄司 (日弁連信託センター副センター長・神奈川県弁護士会)

八杖 友一 (日弁連高齢者・障害者権利支援センター 事務局長・第二東京弁護士会)

杉山 苑子 (日弁連信託センター副センター長・愛知県弁護士会)

清水 晃 (日弁連信託センター委員・東京弁護士会)

パネルディスカッション後半 「民事信託・後見制度の併用の実務的課題」

民事信託と任意後見に関する公証実務

金子 順一

1 高齢者の身上監護・財産管理・財産承継の方策

(生前の身上監護〈身上保護〉・財産管理)

・任意後見契約・・・・精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分な状況における自己の生活、療養看護及び財産の管理に関する事務の全部又は一部の事務についての代理権付与

・委任契約を加えた移行型任意後見契約

委任契約は、任意後見監督人の選任により終了する。

・法定後見制度

後見・保佐・補助(生前の財産管理・財産承継)

・信託

財産管理と財産承継

民事信託

受託者が信託銀行、信託会社等の信託業法の適用を受ける商事信託以外のもの。

・・・上の定義だと、営業として信託の引受けにあたるが、信託業法に基づく免許・登録が不要な信託(信託業法2条1項かっこ書き、3条、7条)は、民事信託に当たらないということになります。

主に家族間の財産管理・財産承継のために用いられる。

(財産承継・死後事務)

・遺言

・死後事務委任契約

2 任意後見契約の締結

件数 平成30年から令和3年までの作成件数

別紙記載2のとおり、年間1 万2000件程度

日本公証人連合会法規委員会によるアンケート結果の概要(平成30年11月~12月) 公証192号掲載

※日本公証人連合会が、任意後見契約締結の実態把握のために、全公証人に対して実施したアンケート結果の抜粋である。

・利用形態

移行型 75.5%

将来型 23.7%

即効型 0.7%

・本人(委任者)の性別・年齢

〔性別〕

男性 36.1%

女性 63.9%

・・・・・・・・女性が多い。

〔年齢〕

60歳~70歳未満 11.0%

70歳~80歳未満 27.0%

80歳~90歳未満 42.9%

90歳以上 14.1%

・依頼者

本人 24.8%

近親者 24.9%

司法書士 18.2%

行政書士 11.3%

弁護士 10.8%

・・・・・・依頼者とは、嘱託人と代行者(使者)を併せた、公証人と事前打ち合わせを行う者のことを指していると考えられます。

・申立ての動機

預貯金等の管理・解約 37.7%

身上監護(医療契約、施設入所契約等) 36.4%

・受任者

近親者 69.4%(子55.5%)

行政書士 5.7%

司法書士 5.6%

弁護士 4.6%

・同時に他の公正証書の作成(併用) 59.0%

内訳

遺言 79.3%

信託 2.5%

任意後見受任者が帰属権利者 81.5%

死後事務委任 42.3%

尊厳死 11.3%

契約手続の実態と留意点(公証人として)

ア 契約締結の動機

将来、認知症に罹患して、身上監護や財産管理に支障が生ずることへの不安の解消が主なもの。

・ネット・セミナー等による情報

・地方自治体からの勧め

社会福祉協議会

・金融機関(銀行)からの勧め、JAバンクの担当者から公証役場への依頼

・老人介護施設入居に当たり、施設からの要請

イ 公証人としての作成手続上の留意点

・委任者の意思能力及び契約意思の確認の重要性

 公正証書の作成に当たっては、本人の事理を弁識する能力及び任意後見契約を締結する意思を確認するため、原則として本人と面接するものとする。(平成12年法務省民一第634号民事局長通達。『民事月報』55巻7号P175)

法務省民総第151号

令和3年3月1 日

・代理人による嘱託手続

 委任者本人とどうしても面会できない場合、代理方式による任意後見契約を締結することができる。(令和3年の日公連の方針)

・・・代理方式による任意後見契約を締結を認めていることは意外でした。

ウ 嘱託人への説明事項

・後見制度の全般的な説明

法定後見制度(成年後見)との対比

・後見人の職務内容

後見人は後見監督人の指導監督を受けて職務を行うこと

・後見監督人に監督報酬が生じること

エ 親族間紛争に配慮

・親の財産管理を巡る子(兄弟)間の争い。特に移行型の場合にうかがわれる。

(実際にかかわった事例)

親の預金通帳などを事実上管理(出金)する兄弟に対抗するためとして、他の兄弟が親と図って移行型任意後見契約を締結するケース。

・任意後見契約を締結した側の親族(子)が親の実印、通帳などを事実上管理下に置いているとして、これに対抗するために、他方の親族が親に働きかけて、任意後見契約の解除・新たな任意後見契約の締結を嘱託してくるケース。

(弁護士による)親の成年後見申立て準備中に、他の兄弟が任意後見契約を締結するケース(公証人には作成後に事情が判明)。

3 民事信託契約の締結

件数 平成30年から令和3年までの各年の作成総数と内訳

別紙記載3のとおり、年間3000件程度

信託契約、遺言信託、自己信託の内訳件数 95%が信託契約

契約手続の留意点(公証人として気をつけている点)

ア 嘱託人の意思能力と契約意思の確認の重要性

遺言代用信託の類型もあり、特に委託者について注意している。

・代理人による嘱託手続き

公証人が委託者本人に信託契約締結の意思と代理人への委任の事実を明確に確認できれば、代理方式による信託契約を締結することができる。(令和3年の日公連の方針)

信託契約の内容の審査の基本的立場

 公証人の信託契約の審査の基本姿勢としては、私的紛争の予防を図るという公証制度本来の役割から法的に整合性があり、多義的な解釈がされない明確な契約条項の作成を目指しつつも、違法無効ではないことの審査(リーガルチェック)がボーダーラインとなる。

日本公証人連合会の信託への取り組み

・公証人への実務研修会の開催

平成30年からの取り組み

弁護士・金融機関の担当者を招いて、講演・パネルディスカッションなどを行っている。

・新任公証人研修(年3回、各3日行われる)で、信託の講義を設けた。

(昨年秋から)・日弁連信託センターとの継続的な勉強会の実施

「信託契約のモデル条項例(1)~(5)」 判例タイムズ1483号~1487号

4 信託と任意後見の併用事例

・公証役場全体としての統計はない。

本公証人の在任6年間の個人的な経験では、信託契約数約140件のうち40件が他の公正証書との併用事例、内26件遺言、20件任意後見、委任契約を併用12件、死後事務委任契約0件。

信託と任意後見の併用事例の特徴

・信託の受託者が任意後見受任者となるケース、受託者が帰属権利者となるケースもある。

・信託の受益者代理人が任意後見受任者となるケース

作成上の問題点

任意後見契約の代理権目録の記載方法

・任意後見契約の代理権目録の「不動産、動産すべての財産の保存、管理及び処分に関する事項

「信託財産を除く」などと記載する例が多いがその趣旨は必ずしも明確ではない。

・・・個人的に、権限を分ける記載方法を任意後見契約の代理権目録、信託契約書に記載しているのですが、どのような記載方法なら、信託財産に属する財産と分けることが出来るのか、指針があるのであれば示して欲しいかなとは思います。それとも個別具体的に、裁判所の決定に任せるという運用方針なのかもしれません。

5 結語

・任意後見契約と信託契約の選択

・信託契約と任意後見契約を併用した場合の留意点

(参考)拙著「公証役場からみた民事信託」 家庭の法と裁判35号24頁

パネルディスカッション

【はじめに】

第1 各制度の⽐較

1.法定後⾒・任意後⾒・⺠事信託の⽐較

令和2年(新規)

令和3年(新規)

後⾒開始25,029件

26,470件

保佐開始7,076件

7,741件

補助開始2,415件

2,693件

任意後⾒監督⼈選任612件

678件

任意後⾒契約締結11,260件

12,871件

⺠事信託(公正証書) 2,924件

3,200件

【法定後⾒・任意後⾒・⺠事信託の利⽤件数(新規)】

令和2年(利⽤者) 令和3年(利⽤者)

後⾒開始174,680件

177,244件

保佐開始42,569件

46,200件

補助開始12,383件

13,826件

任意後⾒監督⼈選任2,655件

2,663件

【出典】最⾼裁判所事務総局家庭局「成年後⾒関係事件の概況-令和2年1⽉〜12⽉-」最⾼裁判所事務総局家庭局「成年後⾒関係事件の概況-令和3年1⽉〜12⽉-」

【法定後⾒・任意後⾒・⺠事信託の利⽤件数(利⽤者)】

Q任意後⾒に関する相談を受けたことがありますか。

(愛知)

ある194件(60.6%)ない126件(39.4%)

Q⺠事信託に関する相談を受けたことがありますか。

(京都)ある126 件(39%)ない195 件(61%)

(愛知)ある130件(40.6%)ない190件(59.4%)

Q作成された任意後⾒契約書の委任者の年齢層はどれに当てはまりますか。

(愛知)

40歳未満0件(0.0%)

40歳以上50歳未満3件(1.3%)

50歳以上60歳未満7件(3.1%)

60歳以上70歳未満43件(19.0%)

70歳以上80歳未満96件(42.5%)

80歳以上77件(34.1%)

Q作成された信託契約書等の委託者の年齢層はどれに当てはまりますか。

(京都)

40 歳未満6件(2.5%)

40 歳以上50 歳未満6件(2.5%)

50 歳以上60 歳未満20件(8%)

60 歳以上70 歳未満54件(22%)

70 歳以上80 歳未満105件(43%)

81 歳以上53件(22%)

(愛知)

40歳未満6件(1.9%)

40歳以上50歳未満8件(2.6%)

50歳以上60歳未満9件(2.9%)

60歳以上70歳未満34件(10.9%)

70歳以上80歳未満126件(40.3%)

80歳以上130件(41.5%)

Q受任した案件において設定された任意後⾒受任者となったのはどれに当てはまりますか。

(愛知)

家族83件(39.0%)

友⼈5件(2.4%)

弁護⼠112件(52.6%)

NPO法⼈・社会福祉法⼈1件(0.5%)

その他12件(5.6%)

交際相⼿(1件)、内縁の夫婦(1件)、家族以外の親族(3件)⾎縁関係にないが親⼦同然に⽣活してきた者(1件)、弁護⼠法⼈(1件))

・任意後⾒の典型例・利⽤動機

Q受任した案件において設定された⺠事信託の受託者となったのはどれに当てはまりますか。

(京都)

 委託者の家族219 件(91%)

 委託者の家族以外21 件(9%)

(⼀般社団法⼈・法⼈(8件)、友⼈等(2件)、信託会社(1件)信託銀⾏(1件)、弁護⼠(1件)、税理⼠法⼈(1件))

(愛知)

家族421件(97.5%)

⼀般社団法⼈6件(1.4%)

株式会社等1件(0.2%)

信託銀⾏・信託会社2件(0.5%)

その他2件(0.5%)(会社代表者(1件)、友⼈等(1件)

・⺠事信託の典型例・利⽤動機

1.法定後⾒・任意後⾒・⺠事信託の⽐較

2.⺠事信託と任意後⾒

本⼈の判断能⼒なし→ 法定後⾒

財産管理、財産承継のいずれに関⼼があるか

財産管理のみ→ ⺠事信託、任意後⾒

財産承継のみ→ ⺠事信託、遺⾔

⾝上保護の要否

⾝上保護の必要性があり、家族等の⽀援なし→ 任意後⾒

⾝上保護の必要性がないか、あっても家族の⽀援あり→⺠事信託、任意後⾒

・・・身上監護(身上保護)の必要性がない人、というのがいるのか分かりませんでした。

信託財産に農地、年⾦受給権などが含まれるか含まれる→ 任意後⾒

含まれない→ ⺠事信託、任意後⾒

・・・問いの立て方が少し違うのかなと感じました。信託財産に、は委託者所有の財産に、でも良かったように思います。

【使い分けの指標】

2.⺠事信託と任意後⾒

借り⼊れ予定あり→ ⺠事信託

なし→ ⺠事信託、任意後⾒

裁判所の監督

希望する→ 任意後⾒希望

しない→ ⺠事信託。但し、監督の必要はあり

次世代以降への財産承継の希望あり→ ⺠事信託

なし→ ⺠事信託、任意後⾒、遺⾔

受託者候補の有無

あり→ ⺠事信託

なし→ 任意後⾒

・要求される意思能⼒の相違

・信託契約を作成する際の留意点

Q受任した案件において任意後⾒を設定した理由(動機)は何だったでしょうか。

(愛知)

⾼齢者の財産管理への不安178件(48.6%)

⾝上保護の必要性86件(23.5%)

法定後⾒のデメリットを回避するため87件(23.8%)

その他15件(4.1%)(信頼できる親族・⾝寄りがいない(5件)、特定の受任者を指定したい(2件)、親族関の紛争が⽣じている(2件)、交際相⼿に財産管理・⾝の回りのことを⾏ってもらうため(1件)

Q受任した案件において信託を設定した主な理由(動機)は何だったでしょうか。

(京都)

⾼齢者の財産管理への不安164 件(45.7%)

資産活⽤54 件(15.0%)

財産承継122 件(34.0%)

その他19 件( 5.3%)(「親亡き後」の問題への対応、未成熟⼦のための信託、養育費のための信託、株式の議決権の確保するため)

(愛知)

⾼齢者の財産管理への不安254件(46.4%)

資産活⽤24件(4.4%)

財産承継204件(37.2%)

法定後⾒のデメリットを回避するため59件(10.8%)

その他7件(1.3%)(「親亡き後」の問題への対応(4件)、事業承継(1件)

・使い分けのポイント

1.⾝上保護の必要性

2.財産の種類

3.借⼊れや運⽤

4.受託者の確保

5.後継ぎ遺贈

4.⼀時的な利⽤・裁判所の関与回避

【事例1】施設⼊所費⽤の⼯⾯

・A(80歳)

・財産としては⾃宅と預貯⾦(数百万)

・いずれ施設に⼊ることになった場合は⾃宅売却して施設費⽤に充てたい。

【事例2】収益不動産の管理

・A(70歳)

・年⾦収⼊が⽉に20万円ある。

・⾃宅のほか、アパート⼀棟(築30年)を所有し、管理会社を通じて8部屋賃貸している。

・アパートローンが数千万残っている。

・今後、⼤規模修繕に際し新たな借り⼊れも必要になるかもしれない。

【事例3】親亡き後への対応

・A(75歳)

・障害のある息⼦(45歳・後⾒相当)の将来に不安を感じている。

・A名義の⾃宅のほか、貸駐⾞場があり、管理会社に管理を委ねている。

・息⼦は⾃宅でAと同居しており、簡単な会話は可能だが、⼀⼈暮らしは難しい。

・息⼦の⾯倒は、娘(38歳)に看てもらいたい。

・資産は潤沢にあるので息⼦が困らないようにしてほしい。財産が残った場合は、最終的には娘に渡したい。

第2.⺠事信託と任意後⾒の併⽤

Q受任した案件において⺠事信託と任意後⾒を併⽤したことがありますか。ある場合、受託者と任意後⾒受任者との関係は、どれに当てはまりますか。

(愛知)

受託者と任意後⾒受任者は別⼈である15件(68.2%)

受託者と任意後⾒受任者は同⼀⼈である7件(31.8%)

・・・この設問に限らずですが、このようなアンケートを取り、答える弁護士が多数いて公表している弁護士会は凄いなと思います。

Q⺠事信託と任意後⾒を受任した案件において、⺠事信託と任意後⾒を併⽤した場合、その理由は何だったでしょうか。

(愛知)

信託財産以外に第三者による管理が必要な財産がある15件(46.9%)

⾝上保護が必要である10件(31.3%)

法定後⾒のデメリットを回避するため7件(21.9%)

その他0件(0.0%)

・・・信託財産以外に第三者による管理が必要な財産がある、とは受託者による第三者委託などでもない、年金受給権などを指しているのか、分かりませんでした。

Q⺠事信託と任意後⾒を併⽤しなかった場合、その理由は何だったでしょうか。

(愛知)

費⽤がかかる13件(3.2%)

適切な受託者が⾒つからなかった23件(5.6%)

併⽤する必要がなかった170件(41.7%)

併⽤を考えたことがなかった50件(12.3%)

その他4件(1.0%)(依頼者に理解させるのが難しそうだった(1件)、相談や依頼がない(2件)

⺠事信託・任意後⾒ともに受任していない148件(36.3%)

・・・回答を読んでいる限りでは、任意後見契約を締結して民事信託契約は締結しなかった場合と、民事信託契約は締結して、任意後見契約は締結しなかった場合の二つがあるのかなと思いました。

・併⽤が有効な事例

【事例1】

・⺟A

・⻑年有価証券の投資を⾏ってきたが、⼿続きが⾯倒になってきたので⻑男に任せたい

・⾝の回りの世話は⻑⼥が⾏っており、今後も⻑⼥にお願いしたい

【事例2】

・⽗A

・賃貸マンション経営

・Aの判断能⼒低下後も積極的な借り⼊れが必要

・メインバンクは、既存の借⼊⾦債務についてAと受託者の併存的債務引受を要求

2.併⽤を巡る問題1(代理権⽬録の記載など)

【モデル1】

・Aの財産

⾃宅、収益不動産、預貯⾦数千万円

・Aの債務

収益不動産購⼊時の債務が数千万円

・Aの希望

収益不動産の経営が煩わしく感じてきた。銀⾏員でしっかり者の⼦Bに管理をお願いしたい。⾝の回りの世話は同居している⼦Cにお願いしたい。

・受託者の事務内容・任意後⾒⼈の事務内容

任意後⾒契約-代理権⽬録の記載事項

・財産管理に関する法律⾏為

預貯⾦の管理・払い戻し、不動産その他重要な財産の処分、遺産分割、賃貸借契約の締結・解除など

・⽣活療養看護(⾝上監護)に関する法律⾏為

介護契約、施設⼊所契約、医療契約など

これらの法律⾏為に関連する登記・供託の申請、要介護認定の申請等の公法上の⾏為

・(弁護⼠の場合)これらの事務に関して⽣ずる紛争についての訴訟⾏為の授権

参考

任意後⾒契約に関する法律3条

任意後⾒契約に関する法律第三条の規定による証書の様式に関する省令附録第1号様式、⽇本公証⼈連合会編著『新版証書の作成と⽂例-家事関係編〔改訂版〕第3刷123ページ「記載例Ⅱ」』

・受益権に関する代理権

受益権

・受益権とは

信託法2条7項

信託⾏為に基づいて受託者が受益者に対し負う債務であって信託財産に属する財産の引渡しその他の信託財産に係る給付をすべきものに係る債権(以下「受益債権」という。)及びこれを確保するためにこの法律の規定に基づいて受託者その他の者に対し⼀定の⾏為を求めることができる権利

受託者から給付を受ける権利(受益債権)

その権利を確保するための監督権

・既存⽂例の検討

「不動産、動産等全ての財産の保存、管理及び処分に関する事項」

・受益権に関する代理権

条項例

「信託契約に基づく受益権に関する事項」

・信託の変更や終了に関する代理権

・「不動産、動産等全ての財産の保存、管理及び処分に関する事項(信託財産を除く)」との条項

委託者の権利⾏使の可否

・既存⽂例の検討

「不動産、動産等全ての財産の保存、管理及び処分に関する事項」

3.併⽤を巡る問題2(受託者=任意後⾒⼈など)

・受託者と任意後⾒⼈の兼任の可否

信託法

第124条次に掲げる者は、信託管理⼈となることができない。

⼆当該信託の受託者である者

第144条

第124条の規定は、受益者代理⼈について準⽤する。

受託者は受益者代理⼈を兼ねられない。受託者は任意後⾒⼈を兼ねられるか。

3.併⽤を巡る問題2(受託者=任意後⾒⼈など)

【事例】

Bは受託者としての⽴場を濫⽤し、受益者であるAのために管理すべき信託財産のうち500万円をB⾃らのために使い込んでしまった。受託者Bによる使い込みが⾏われた場合、どのような対応を取るべきか。

・・・前提として、任意後見契約の未発効、信託監督人、受益者代理人は選任されていない場合で考えてみます。受益者による権限違反行為の取消し(信託法27条)・行為の差止め(信託法44条)、検査役の選任(信託法45条)、報告請求(信託法36条)による事実確認と、受益者の判断による信託の終了(信託法163条から166じょうまで。)や受託者の解任(信託法58条)その他の民事上の損害賠償請求など(民法709条。)。

1.受託者の義務違反⾏為

2.受託者への責任追及

3.任意後⾒監督⼈の対応

4.信託監督⼈の対応

3.併⽤を巡る問題2(受託者=任意後⾒⼈など)

・弁護⼠としての留意点

【事例】

信託終了時の残余財産の取得について、次の定めがあった。

A死亡による終了、帰属権利者B

A死亡以外の事由による終了、残余財産受益者A

Bは、信託を変更して、A死亡以外の事由による終了の場合も、帰属権利者をBとした上で、信託を終了させた。

・信託の変更・信託の終了ができる根拠

信託法

第149条

1 信託の変更は、委託者、受託者及び受益者の合意によってすることができる。この場合においては、変更後の信託⾏為の内容を明らかにしてしなければならない。

第164条

1 委託者及び受益者は、いつでも、その合意により、信託を終了することができる。

・任意後⾒⼈であるBの⾏為の問題

・利益相反⾏為

利益相反の効果

最判昭和45年5⽉22⽇「右無償譲渡については、後⾒⼈である訴外⼈は被上告⼈を代理することができないのであるから、未成年者たる被上告⼈の後⾒⼈である訴外⼈が被上告⼈を代理して訴外⼈の内縁の夫である上告⼈に対してした本件⼟地の無償譲渡⾏為は、無権代理⾏為である、とした原判決の判断は、正当」

⺠法

(利益相反⾏為)第826条

1 親権を⾏う⽗⼜は⺟とその⼦との利益が相反する⾏為については、親権を⾏う者は、その⼦のために特別代理⼈を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。

(利益相反⾏為)第860条

第826条の規定は、後⾒⼈について準⽤する。

任意後⾒契約に関する法律

(任意後⾒監督⼈の職務等)第7条

任意後⾒監督⼈の職務は、次のとおりとする。

四 任意後⾒⼈⼜はその代表する者と本⼈との利益が相反する⾏為について本⼈を代表すること。

外形標準説

最判昭和42年4⽉18⽇「⺠法826条にいう利益相反⾏為に該当するかどうかは、親権者が⼦を代理してなした⾏為⾃体を外形的客観的に考察して判定すべきであつて、当該代理⾏為をなすについての親権者の動機、意図をもつて判定すべきでない」

【事例】

受託者が受益者に適切な給付をしない場合

・任意後⾒契約に関する法律上の権限

報告徴求(7条2項)、解任(8条)、監督⼈による解任申し⽴て(8条)、審判前の保全処分として任意後⾒⼈の職務執⾏停⽌の申⽴て(家事事件⼿続法225条1項、127条)、職務執⾏停⽌中に急迫の事情がある場合は、任意後⾒監督⼈が必要な処分(7条1項3号)。

法定後⾒の開始審判の申⽴て(10条)

任意後⾒⼈の解任により任意後⾒契約は終了し、任意後⾒監督⼈は法定後⾒開始の審判を申し⽴てる資格を失うため、契約終了前に申し⽴てる必要あり。

利益相反⾏為についての代理権⾏使(7条1項4号)

5.任意後⾒監督⼈等による実効的な監督

・信託契約における⼯夫

【例】

信託法37条3項の別段の定め

報告対象者として任意後⾒監督⼈を加える。

信託法26条但書の信託⾏為

重要な財産の処分をする場合に「任意後⾒監督⼈の同意」を求める。

・任意後⾒監督⼈以外による監督

・信託監督⼈(受益者代理⼈)と任意後⾒監督⼈

1.併⽤を巡る問題

・アンケート結果について

・委託者の理解が不⾜しているまま信託が開始されている

・信託契約書の内容が不⼗分

・任意後⾒契約は締結されているのに監督⼈が選任されない

・成年後⾒⼈による調査

・信託終了時の帰属財産について、法定相続割合と異なる定めあり成年後⾒⼈Gは信託を終了させることができるか。

・・・成年後見人が信託を終了する根拠が分かりませんでした。

代理権⽬録(任意後⾒契約)

1 不動産、動産等全ての財産の保存、管理及び処分に関する事項

2 ⾦融機関、証券会社との全ての取引に関する事項

3 保険契約(類似の共済契約等を含む。)に関する事項

4 定期的な収⼊の受領、定期的な⽀出を要する費⽤の⽀払に関する事項

5 ⽣活費の送⾦、⽣活に必要な財産の取得に関する事項及び物品の購⼊その

他の⽇常関連取引(契約の変更、解除を含む。)に関する事項

6 医療契約、⼊院契約、介護契約その他の福祉サービス利⽤契約、福祉関係施

設⼊退所契約に関する事項

7 要介護認定の申請及び認定に関する承認⼜は審査請求並びに福祉関係の措

置(施設⼊所措置を含む。)の申請及び決定に対する審査請求に関する事項

8 シルバー資⾦融資制度、⻑期⽣活⽀援資⾦貸付⾦制度等の福祉関係融資制

度の利⽤に関する事項

9 登記済権利証・登記識別情報、印鑑、印鑑登録カード、住⺠基本台帳カード、

個⼈番号(マイナンバー)カード・個⼈番号(マイナンバー)通知カード、預

貯⾦通帳、キャッシュカード、有価証券・その預り証、年⾦関係書類、健康保

険証、介護保険証、⼟地・建物賃貸契約書等の重要な契約書類その他重要書

類の保管及び各事項の事務処理に必要な範囲内の使⽤に関する事項

出典:日本公証人連合会編著

    新版 証書の作成と文例-家事関係編〔改訂版〕第3刷

    123ページ「記載例Ⅱ」

10 居住⽤不動産の購⼊及び賃貸借契約並びに住居の新築・増改築に関する請

負契約に関する事項

11 登記及び供託の申請、税務申告、各種証明書の請求に関する事項

12 遺産分割の協議、遺留分侵害額請求、相続放棄、限定承認に関する事項

13 配偶者、⼦の法定後⾒開始の審判の申⽴てに関する事項

14 新たな任意後⾒契約の締結に関する事項

15 以上の各事項に関する⾏政機関への申請、⾏政不服申⽴て、紛争の処理(弁

護⼠に対する⺠事訴訟法第55条第2項の特別授権事項の授権を含む訴訟⾏

為の委任、公正証書の作成嘱託を含む。)に関する事項

16 復代理⼈の選任、事務代⾏者の指定に関する事項

17 以上の各事項に関連する⼀切の事項

出典:日本公証人連合会編著

    新版 証書の作成と文例-家事関係編〔改訂版〕第3刷

    123ページ「記載例Ⅱ」

利益相反に関する裁判例

1 利益相反行為の判断基準(最判昭和42年4月18日)

民法八二六条にいう利益相反行為に該当するかどうかは、親権者が子を代

理してなした行為自体を外形的客観的に考察して判定すべきであつて、当該

代理行為をなすについての親権者の動機、意図をもつて判定すべきでないと

した原判決の判断は正当であつて、これに反する所論は採用できない(昭和

三六年(オ)第一〇一三号同三七年二月二七日第三小法廷判決、最高裁判所

裁判集民事五八号一〇二三頁参照)。

2 利益相反行為に関する裁判例

遺産分割協議(最判昭和48年4月24日)-複数の子の親権者

民法八二六条所定の利益相反する行為にあたるか否かは、当該行為の外形

で決すべきであつて、親権者の意図やその行為の実質的な効果を問題とすべ

きではないので(最高裁昭和三四年(オ)第一一二八号同三七年一〇月二日

第三小法廷判決・民集一六巻一〇号二〇五九頁、同昭和四一年(オ)第七九

号同四二年四月二五日第三小法廷判決・裁判集民事八七号二五三頁参照。)、

親権者が共同相続人である数人の子を代理して遺産分割の協議をすること

は、かりに親権者において数人の子のいずれに対しても衡平を欠く意図がな

く、親権者の代理行為の結果数人の子の間に利害の対立が現実化されていな

かつたとしても、同条二項所定の利益相反する行為にあたるから、親権者が

共同相続人である数人の子を代理していた遺産分割の協議は、追認のないか

ぎり無効であると解すべきである。

遺産分割協議(東京高判昭和55年10月29日)-親権者と子

民法八二六条所定の利益相反行為に当たるか否かは、当該行為の客観的性

質で決すべきであって、親権者の意図やその行為の実質的な効果を問題とす

べきではない。したがって、共同相続人の一人である親権者が同じく共同相

続人である数人の未成年の子を代理して遺産分割の協議をすることは、仮に

親権者において数人の子のいずれに対しても衡平を欠く意図がなく、親権者

の代理行為の結果数人の子の間及び親権者と数人の子の間のいずれにも利

害の対立が現実化されていなかったとしても、その行為の客観的性質上相続

人相互間に利害の対立を生ずるおそれのある行為に当たるというべきであ

るから、右の場合には未成年者について各別に選任された特別代理人がその

各人を代理して遺産分割の協議に加わることを要するのであって、もし一人

の親権者が数人の未成年者の法定代理人として代理行為をしたときは、被代

理者全員につき民法八二六条に違反するものというべきであり、かかる代理

行為によって成立した遺産分割の協議は、被代理者全員による追認がないか

ぎり、無効であるといわなければならない。

相続放棄(最判昭和53年2月24日)

共同相続人の一人が他の共同相続人の全部又は一部の者を後見している

場合において、後見人が被後見人を代理してする相続の放棄は、必ずしも常

に利益相反行為にあたるとはいえず、後見人がまずみずからの相続の放棄を

したのちに被後見人全員を代理してその相続の放棄をしたときはもとより、

後見人みずからの相続の放棄と被後見人全員を代理してするその相続の放

棄が同時にされたと認められるときもまた、その行為の客観的性質からみて、

後見人と被後見人との間においても、被後見人相互間においても、利益相反

行為になるとはいえないものと解するのが相当である。

借入と抵当権設定(最判昭和37年10月2日)

親権者が子の法定代理人として、子の名において金員を借受け、その債務

につき子の所有不動産の上に抵当権を設定することは、仮に借受金を親権者

自身の用途に充当する意図であつても、かかる意図のあることのみでは、民

法八二六条所定の利益相反する行為とはいえないから、子に対して有効であ

り、これに反し、親権者自身が金員を借受けるに当り、右債務につき子の所

有不動産の上に抵当権を設定することは、仮に右借受金を子の養育費に充当

する意図であつたとしても、同法条所定の利益相反する行為に当るから、子

に対しては無効であると解すべきである。

親権者も子も連帯保証、抵当権設定(最判昭和43年10月8日)

(事案)

第三者の金銭債務について、親権者自ら連帯保証をするとともに、子を代

理して同一債務について連帯保証し、かつ、親権者と子の共有不動産につい

て抵当権を設定した。

(判旨)

債権者が抵当権の実行を選択するときは、本件不動産における子らの持分

の競売代金が弁済に充当される限度において親権者の責任が軽減され、その

意味で親権者が子らの不利益において利益を受け、また、債権者が親権者に

対する保証責任の追究を選択して、親権者から弁済を受けるときは、親権者

と子らとの間の求償関係および子の持分の上の抵当権について親権者によ

る代位の問題が生ずる等のことが、前記連帯保証ならびに抵当権設定行為自

体の外形からも当然予想されるとして、(親権者・子)の関係においてされ

た本件連帯保証債務負担行為および抵当権設定行為が、民法八二六条にいう

利益相反行為に該当する。

後見人の内縁の夫に対する土地の無償譲渡(最判昭和45年5月22日)

当時上告人と訴外人とは内縁の夫婦であり、相互の利害関係は、特段の事

情のないかぎり、共通するものと解すべきであるから、被後見人である被上

告人に不利益な本件土地の右無償譲渡は、上告人と後見人である訴外人とに

共通する利益をもたらすものというべきであり、したがつて、右無償譲渡は、

旧民法九一五条四号にいう後見人と被後見人との利益相反行為にあたると

解するのが相当である。

信託法

(定義)第2条

7 この法律において「受益権」とは、信託行為に基づいて受託者が受益者に対し負う債務であって信託財産に属する財産の引渡しその他の信託財産に係る給付をすべきものに係る債権(以下「受益債権」という。)及びこれを確保するためにこの法律の規定に基づいて受託者その他の者に対し一定の行為を求めることができる権利をいう。

9 この法律において「信託財産責任負担債務」とは、受託者が信託財産に属する財産をもって履行する責任を負う債務をいう。

(信託財産責任負担債務の範囲)

第21条 次に掲げる権利に係る債務は、信託財産責任負担債務となる。

三 信託前に生じた委託者に対する債権であって、当該債権に係る債務を信託財産責任負担債務とする旨の信託行為の定めがあるもの

(受託者の権限の範囲)

第26条 受託者は、信託財産に属する財産の管理又は処分及びその他の信託の目的の達成のために必要な行為をする権限を有する。ただし、信託行為によりその権限に制限を加えることを妨げない。

(受託者の注意義務)

第29条 受託者は、信託の本旨に従い、信託事務を処理しなければならない。

2 受託者は、信託事務を処理するに当たっては、善良な管理者の注意をもって、これをしなければならない。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる注意をもって、これをするものとする。

(忠実義務)

第30条 受託者は、受益者のため忠実に信託事務の処理その他の行為をしなければならない。

(利益相反行為の制限)

第31条 受託者は、次に掲げる行為をしてはならない。

一 信託財産に属する財産(当該財産に係る権利を含む。)を固有財産に帰属させ、又は固有財産に属する財産(当該財産に係る権利を含む。)を信託財産に帰属させること。

二 信託財産に属する財産(当該財産に係る権利を含む。)を他の信託の信託財産に帰属させること。

三 第三者との間において信託財産のためにする行為であって、自己が当該第三者の代理人となって行うもの

四 信託財産に属する財産につき固有財産に属する財産のみをもって履行する責任を負う債務に係る債権を被担保債権とする担保権を設定することその他第三者との間において信託財産のためにする行為であって受託者又はその利害関係人と受益者との利益が相反することとなるもの

2 前項の規定にかかわらず、次のいずれかに該当するときは、同項各号に掲げる行為をすることができる。ただし、第2号に掲げる事由にあっては、同号に該当する場合でも当該行為をすることができない旨の信託行為の定めがあるときは、この限りでない。

一 信託行為に当該行為をすることを許容する旨の定めがあるとき。

二 受託者が当該行為について重要な事実を開示して受益者の承認を得たとき。

三 相続その他の包括承継により信託財産に属する財産に係る権利が固有財産に帰属したとき。

四 受託者が当該行為をすることが信託の目的の達成のために合理的に必要と認められる場合であって、受益者の利益を害しないことが明らかであるとき、又は当該行為の信託財産に与える影響、当該行為の目的及び態様、受託者の受益者との実質的な利害関係の状況その他の事情に照らして正当な理由があるとき。

3 受託者は、第1項各号に掲げる行為をしたときは、受益者に対し、当該行為についての重要な事実を通知しなければならない。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。

4 第1項及び第2項の規定に違反して第1項第1号又は第2号に掲げる行為がされた場合には、これらの行為は、無効とする。

5 前項の行為は、受益者の追認により、当該行為の時にさかのぼってその効力を生ずる。

6 第4項に規定する場合において、受託者が第三者との間において第1項第1号又は第2号の財産について処分その他の行為をしたときは、当該第三者が同項及び第2項の規定に違反して第1項第1号又は第2号に掲げる行為がされたことを知っていたとき又は知らなかったことにつき重大な過失があったときに限り、受益者は、当該処分その他の行為を取り消すことができる。この場合においては、第27条第3項及び第4項の規定を準用する。

7 第1項及び第2項の規定に違反して第1項第3号又は第4号に掲げる行為がされた場合には、当該第三者がこれを知っていたとき又は知らなかったことにつき重大な過失があったときに限り、受益者は、当該行為を取り消すことができる。この場合においては、第27条第3項及び第4項の規定を準用する。

第32条 受託者は、受託者として有する権限に基づいて信託事務の処理としてすることができる行為であってこれをしないことが受益者の利益に反するものについては、これを固有財産又は受託者の利害関係人の計算でしてはならない。

2 前項の規定にかかわらず、次のいずれかに該当するときは、同項に規定する行為を固有財産又は受託者の利害関係人の計算ですることができる。ただし、第2号に掲げる事由にあっては、同号に該当する場合でも当該行為を固有財産又は受託者の利害関係人の計算ですることができない旨の信託行為の定めがあるときは、この限りでない。

一 信託行為に当該行為を固有財産又は受託者の利害関係人の計算ですることを許容する旨の定めがあるとき。

二 受託者が当該行為を固有財産又は受託者の利害関係人の計算ですることについて重要な事実を開示して受益者の承認を得たとき。

3 受託者は、第1項に規定する行為を固有財産又は受託者の利害関係人の計算でした場合には、受益者に対し、当該行為についての重要な事実を通知しなければならない。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。

4 第1項及び第2項の規定に違反して受託者が第1項に規定する行為をした場合には、受益者は、当該行為は信託財産のためにされたものとみなすことができる。ただし、第三者の権利を害することはできない。

5 前項の規定による権利は、当該行為の時から一年を経過したときは、消滅する。

(公平義務)

第33条 受益者が二人以上ある信託においては、受託者は、受益者のために公平にその職務を行わなければならない。

(信託事務の処理の状況についての報告義務)

第36条 委託者又は受益者は、受託者に対し、信託事務の処理の状況並びに信託財産に属する財産及び信託財産責任負担債務の状況について報告を求めることができる。

(帳簿等の作成等、報告及び保存の義務)

第37条 受託者は、信託事務に関する計算並びに信託財産に属する財産及び信託財産責任負担債務の状況を明らかにするため、法務省令で定めるところにより、信託財産に係る帳簿その他の書類又は電磁的記録を作成しなければならない。

2 受託者は、毎年一回、一定の時期に、法務省令で定めるところにより、貸借対照表、損益計算書その他の法務省令で定める書類又は電磁的記録を作成しなければならない。

3 受託者は、前項の書類又は電磁的記録を作成したときは、その内容について受益者(信託管理人が現に存する場合にあっては、信託管理人)に報告しなければならない。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。

4 受託者は、第1項の書類又は電磁的記録を作成した場合には、その作成の日から10年間(当該期間内に信託の清算の結了があったときは、その日までの間。次項において同じ。)、当該書類(当該書類に代えて電磁的記録を法務省令で定める方法により作成した場合にあっては、当該電磁的記録)又は電磁的記録(当該電磁的記録に代えて書面を作成した場合にあっては、当該書面)を保存しなければならない。ただし、受益者(二人以上の受益者が現に存する場合にあってはそのすべての受益者、信託管理人が現に存する場合にあっては信託管理人。第6項ただし書において同じ。)に対し、当該書類若しくはその写しを交付し、又は当該電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により提供したときは、この限りでない。

5 受託者は、信託財産に属する財産の処分に係る契約書その他の信託事務の処理に関する書類又は電磁的記録を作成し、又は取得した場合には、その作成又は取得の日から10年間、当該書類(当該書類に代えて電磁的記録を法務省令で定める方法により作成した場合にあっては、当該電磁的記録)又は電磁的記録(当該電磁的記録に代えて書面を作成した場合にあっては、当該書面)を保存しなければならない。この場合においては、前項ただし書の規定を準用する。

6 受託者は、第2項の書類又は電磁的記録を作成した場合には、信託の清算の結了の日までの間、当該書類(当該書類に代えて電磁的記録を法務省令で定める方法により作成した場合にあっては、当該電磁的記録)又は電磁的記録(当該電磁的記録に代えて書面を作成した場合にあっては、当該書面)を保存しなければならない。ただし、その作成の日から十年間を経過した後において、受益者に対し、当該書類若しくはその写しを交付し、又は当該電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により提供したときは、この限りでない。

(帳簿等の閲覧等の請求)

第38条 受益者は、受託者に対し、次に掲げる請求をすることができる。この場合においては、当該請求の理由を明らかにしてしなければならない。

一 前条第1項又は第5項の書類の閲覧又は謄写の請求

二 前条第1項又は第5項の電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧又は謄写の請求

2 前項の請求があったときは、受託者は、次のいずれかに該当すると認められる場合を除き、これを拒むことができない。

一 当該請求を行う者(以下この項において「請求者」という。)がその権利の確保又は行使に関する調査以外の目的で請求を行ったとき。

二 請求者が不適当な時に請求を行ったとき。

三 請求者が信託事務の処理を妨げ、又は受益者の共同の利益を害する目的で請求を行ったとき。

四 請求者が当該信託に係る業務と実質的に競争関係にある事業を営み、又はこれに従事するものであるとき。

五 請求者が前項の規定による閲覧又は謄写によって知り得た事実を利益を得て第三者に通報するため請求したとき。

六 請求者が、過去二年以内において、前項の規定による閲覧又は謄写によって知り得た事実を利益を得て第三者に通報したことがあるものであるとき。

3 前項(第1号及び第2号を除く。)の規定は、受益者が二人以上ある信託のすべての受益者から第1項の請求があったとき、又は受益者が一人である信託の当該受益者から同項の請求があったときは、適用しない。

4 信託行為において、次に掲げる情報以外の情報について、受益者が同意をしたときは第1項の規定による閲覧又は謄写の請求をすることができない旨の定めがある場合には、当該同意をした受益者(その承継人を含む。以下この条において同じ。)は、その同意を撤回することができない。

一 前条第2項の書類又は電磁的記録の作成に欠くことのできない情報その他の信託に関する重要な情報

二 当該受益者以外の者の利益を害するおそれのない情報

5 受託者は、前項の同意をした受益者から第1項の規定による閲覧又は謄写の請求があったときは、前項各号に掲げる情報に該当する部分を除き、これを拒むことができる。

6 利害関係人は、受託者に対し、次に掲げる請求をすることができる。

一 前条第2項の書類の閲覧又は謄写の請求

二 前条第2項の電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧又は謄写の請求

(受託者の損失てん補責任等)

第40条 受託者がその任務を怠ったことによって次の各号に掲げる場合に該当するに至ったときは、受益者は、当該受託者に対し、当該各号に定める措置を請求することができる。ただし、第2号に定める措置にあっては、原状の回復が著しく困難であるとき、原状の回復をするのに過分の費用を要するとき、その他受託者に原状の回復をさせることを不適当とする特別の事情があるときは、この限りでない。

一 信託財産に損失が生じた場合 当該損失のてん補

二 信託財産に変更が生じた場合 原状の回復

2 受託者が第28条の規定に違反して信託事務の処理を第三者に委託した場合において、信託財産に損失又は変更を生じたときは、受託者は、第三者に委託をしなかったとしても損失又は変更が生じたことを証明しなければ、前項の責任を免れることができない。

3 受託者が第30条、第31条第1項及び第2項又は第32条第1項及び第2項の規定に違反する行為をした場合には、受託者は、当該行為によって受託者又はその利害関係人が得た利益の額と同額の損失を信託財産に生じさせたものと推定する。

4 受託者が第34条の規定に違反して信託財産に属する財産を管理した場合において、信託財産に損失又は変更を生じたときは、受託者は、同条の規定に従い分別して管理をしたとしても損失又は変更が生じたことを証明しなければ、第1項の責任を免れることができない。

(受益者による受託者の行為の差止め)

第44条 受託者が法令若しくは信託行為の定めに違反する行為をし、又はこれらの行為をするおそれがある場合において、当該行為によって信託財産に著しい損害が生ずるおそれがあるときは、受益者は、当該受託者に対し、当該行為をやめることを請求することができる。

2 受託者が第33条の規定に違反する行為をし、又はこれをするおそれがある場合において、当該行為によって一部の受益者に著しい損害が生ずるおそれがあるときは、当該受益者は、当該受託者に対し、当該行為をやめることを請求することができる。

(信託行為の定めによる受益者の権利行使の制限の禁止)

第92条 受益者による次に掲げる権利の行使は、信託行為の定めにより制限することができない。

一 この法律の規定による裁判所に対する申立権

二 第5条第1項の規定による催告権

三 第23条第5項又は第6項の規定による異議を主張する権利

四 第24条第1項の規定による支払の請求権

五 第27条第1項又は第2項(これらの規定を第75条第4項において準用する場合を含む。)の規定による取消権

六 第31条第6項又は第7項の規定による取消権

七 第36条の規定による報告を求める権利

八 第38条第1項又は第6項の規定による閲覧又は謄写の請求権

九 第40条の規定による損失のてん補又は原状の回復の請求権

十 第41条の規定による損失のてん補又は原状の回復の請求権

十一 第44条の規定による差止めの請求権

十二 第45条第1項の規定による支払の請求権

十三 第59条第5項の規定による差止めの請求権

十四 第60条第3項又は第5項の規定による差止めの請求権

十五 第61条第1項の規定による支払の請求権

十六 第62条第2項の規定による催告権

十七 第99条第1項の規定による受益権を放棄する権利

十八 第103条第1項又は第2項の規定による受益権取得請求権

十九 第131条第2項の規定による催告権

二十 第138条第2項の規定による催告権

二十一 第187条第1項の規定による交付又は提供の請求権

二十二 第190条第2項の規定による閲覧又は謄写の請求権

二十三 第198条第2項の規定による記載又は記録の請求権

二十四 第226条第1項の規定による金銭のてん補又は支払の請求権

二十五 第228条第1項の規定による金銭のてん補又は支払の請求権

二十六 第254条第1項の規定による損失のてん補の請求権

(信託監督人の選任)

第131条 信託行為においては、受益者が現に存する場合に信託監督人となるべき者を指定する定めを設けることができる。

2 信託行為に信託監督人となるべき者を指定する定めがあるときは、利害関係人は、信託監督人となるべき者として指定された者に対し、相当の期間を定めて、その期間内に就任の承諾をするかどうかを確答すべき旨を催告することができる。ただし、当該定めに停止条件又は始期が付されているときは、当該停止条件が成就し、又は当該始期が到来した後に限る。

3 前項の規定による催告があった場合において、信託監督人となるべき者として指定された者は、同項の期間内に委託者(委託者が現に存しない場合にあっては、受託者)に対し確答をしないときは、就任の承諾をしなかったものとみなす。

4 受益者が受託者の監督を適切に行うことができない特別の事情がある場合において、信託行為に信託監督人に関する定めがないとき、又は信託行為の定めにより信託監督人となるべき者として指定された者が就任の承諾をせず、若しくはこれをすることができないときは、裁判所は、利害関係人の申立てにより、信託監督人を選任することができる。

5 前項の規定による信託監督人の選任の裁判があったときは、当該信託監督人について信託行為に第1項の定めが設けられたものとみなす。

6 第4項の申立てについての裁判には、理由を付さなければならない。

7 第4項の規定による信託監督人の選任の裁判に対しては、委託者、受託者若しくは受益者又は既に存する信託監督人に限り、即時抗告をすることができる。

8 前項の即時抗告は、執行停止の効力を有する。

(信託監督人の権限)

第132条 信託監督人は、受益者のために自己の名をもって第92条各号(第17号、第18号、第21号及び第23号を除く。)に掲げる権利に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。

2 二人以上の信託監督人があるときは、これらの者が共同してその権限に属する行為をしなければならない。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。

(信託監督人の義務)

第133条 信託監督人は、善良な管理者の注意をもって、前条第1項の権限を行使しなければならない。

2 信託監督人は、受益者のために、誠実かつ公平に前条第1項の権限を行使しなければならない。

(受益者代理人の選任)

第138条 信託行為においては、その代理する受益者を定めて、受益者代理人となるべき者を指定する定めを設けることができる。

2 信託行為に受益者代理人となるべき者を指定する定めがあるときは、利害関係人は、受益者代理人となるべき者として指定された者に対し、相当の期間を定めて、その期間内に就任の承諾をするかどうかを確答すべき旨を催告することができる。ただし、当該定めに停止条件又は始期が付されているときは、当該停止条件が成就し、又は当該始期が到来した後に限る。

3 前項の規定による催告があった場合において、受益者代理人となるべき者として指定された者は、同項の期間内に委託者(委託者が現に存しない場合にあっては、受託者)に対し確答をしないときは、就任の承諾をしなかったものとみなす。

(受益者代理人の権限等)

第139条 受益者代理人は、その代理する受益者のために当該受益者の権利(第42条の規定による責任の免除に係るものを除く。)に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。

2 受益者代理人がその代理する受益者のために裁判上又は裁判外の行為をするときは、その代理する受益者の範囲を示せば足りる。

3 一人の受益者につき二人以上の受益者代理人があるときは、これらの者が共同してその権限に属する行為をしなければならない。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。

4 受益者代理人があるときは、当該受益者代理人に代理される受益者は、第92条各号に掲げる権利及び信託行為において定めた権利を除き、その権利を行使することができない。

(受益者代理人の義務)

第140条 受益者代理人は、善良な管理者の注意をもって、前条第1項の権限を行使しなければならない。

2 受益者代理人は、その代理する受益者のために、誠実かつ公平に前条第1項の権限を行使しなければならない。

(委託者の権利等)

第145条 信託行為においては、委託者がこの法律の規定によるその権利の全部又は一部を有しない旨を定めることができる。

2 信託行為においては、委託者も次に掲げる権利の全部又は一部を有する旨を定めることができる。

一 第23条第5項又は第6項の規定による異議を主張する権利

二 第27条第1項又は第2項(これらの規定を第75条第4項において準用する場合

を含む。)の規定による取消権

三 第31条第6項又は第7項の規定による取消権

四 第32条第4項の規定による権利

五 第38条第1項の規定による閲覧又は謄写の請求権

六 第39条第1項の規定による開示の請求権

七 第40条の規定による損失のてん補又は原状の回復の請求権

八 第41条の規定による損失のてん補又は原状の回復の請求権

九 第44条の規定による差止めの請求権

十 第46条第1項の規定による検査役の選任の申立権

十一 第59条第5項の規定による差止めの請求権

十二 第60条第3項又は第5項の規定による差止めの請求権

十三 第226条第1項の規定による金銭のてん補又は支払の請求権

十四 第228条第1項の規定による金銭のてん補又は支払の請求権

十五 第254条第1項の規定による損失のてん補の請求権

3 前項第1号、第7号から第9号まで又は第11号から第15号までに掲げる権利について同項の信託行為の定めがされた場合における第24条、第45条(第226条第6項、第228条第6項及び第254条第3項において準用する場合を含む。)又は第61条の規定の適用については、これらの規定中「受益者」とあるのは、「委託者又は受益者」とする。

4 信託行為においては、受託者が次に掲げる義務を負う旨を定めることができる。

一 この法律の規定により受託者が受益者(信託管理人が現に存する場合にあっては、信託管理人。次号において同じ。)に対し通知すべき事項を委託者に対しても通知する義務

二 この法律の規定により受託者が受益者に対し報告すべき事項を委託者に対しても報告する義務

三 第77条第1項又は第184条第1項の規定により受託者がする計算の承認を委託者に対しても求める義務

5 委託者が二人以上ある信託における第1項、第2項及び前項の規定の適用については、これらの規定中「委託者」とあるのは、「委託者の全部又は一部」とする。

(関係当事者の合意等)

第149条 信託の変更は、委託者、受託者及び受益者の合意によってすることができる。この場合においては、変更後の信託行為の内容を明らかにしてしなければならない。

2 前項の規定にかかわらず、信託の変更は、次の各号に掲げる場合には、当該各号に定めるものによりすることができる。この場合において、受託者は、第1号に掲げるときは委託者に対し、第2号に掲げるときは委託者及び受益者に対し、遅滞なく、変更後の信託行為の内容を通知しなければならない。

一 信託の目的に反しないことが明らかであるとき 受託者及び受益者の合意

二 信託の目的に反しないこと及び受益者の利益に適合することが明らかであるとき

受託者の書面又は電磁的記録によってする意思表示

3 前2項の規定にかかわらず、信託の変更は、次の各号に掲げる場合には、当該各号に定

める者による受託者に対する意思表示によってすることができる。この場合において、第2号に掲げるときは、受託者は、委託者に対し、遅滞なく、変更後の信託行為の内容を通知しなければならない。

一 受託者の利益を害しないことが明らかであるとき 委託者及び受益者

二 信託の目的に反しないこと及び受託者の利益を害しないことが明らかであるとき

受益者

4 前3項の規定にかかわらず、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。

5 委託者が現に存しない場合においては、第1項及び第3項第1号の規定は適用せず、第2項中「第1号に掲げるときは委託者に対し、第2号に掲げるときは委託者及び受益者に対し」とあるのは、「第2号に掲げるときは、受益者に対し」とする。

(信託の終了事由)

第163条 信託は、次条の規定によるほか、次に掲げる場合に終了する。

一 信託の目的を達成したとき、又は信託の目的を達成することができなくなったとき。

二 受託者が受益権の全部を固有財産で有する状態が一年間継続したとき。

三 受託者が欠けた場合であって、新受託者が就任しない状態が一年間継続したとき。

四 受託者が第52条(第53条第2項及び第54条第4項において準用する場合を含む。)の規定により信託を終了させたとき。

五 信託の併合がされたとき。

六 第165条又は第166条の規定により信託の終了を命ずる裁判があったとき。

七 信託財産についての破産手続開始の決定があったとき。

八 委託者が破産手続開始の決定、再生手続開始の決定又は更生手続開始の決定を受けた場合において、破産法第53条第1項、民事再生法第49条第1項又は会社更生法第61条第1項(金融機関等の更生手続の特例等に関する法律第41条第1項及び第206条第1項において準用する場合を含む。)の規定による信託契約の解除がされたとき。

九 信託行為において定めた事由が生じたとき。

(委託者及び受益者の合意等による信託の終了)

第164条 委託者及び受益者は、いつでも、その合意により、信託を終了することができる。

2 委託者及び受益者が受託者に不利な時期に信託を終了したときは、委託者及び受益者は、受託者の損害を賠償しなければならない。ただし、やむを得ない事由があったときは、この限りでない。

3 前2項の規定にかかわらず、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。

4 委託者が現に存しない場合には、第1項及び第2項の規定は、適用しない。

民 法

(後見開始の審判)

第7条 精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、後見開始の審判をすることができる。

(利益相反行為)

第826条 親権を行う父又は母とその子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。

2 親権を行う者が数人の子に対して親権を行う場合において、その一人と他の子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その一方のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。

(成年後見人の選任)

第843条

4 成年後見人を選任するには、成年被後見人の心身の状態並びに生活及び財産の状況、成年後見人となる者の職業及び経歴並びに成年被後見人との利害関係の有無(成年後見人となる者が法人であるときは、その事業の種類及び内容並びにその法人及びその代表者と成年被後見人との利害関係の有無)、成年被後見人の意見その他一切の事情を考慮しなければならない。

(後見監督人の職務)

第851条 後見監督人の職務は、次のとおりとする。

一 後見人の事務を監督すること。

二 後見人が欠けた場合に、遅滞なくその選任を家庭裁判所に請求すること。

三 急迫の事情がある場合に、必要な処分をすること。

四 後見人又はその代表する者と被後見人との利益が相反する行為について被後見人を代表すること。

(委任及び後見人の規定の準用)

第852条 第644条、第654条、第655条、第844条、第846条、第847条、第861条第2項及び第862条の規定は後見監督人について、第840条第3項及び第857条の2の規定は未成年後見監督人について、第843条第4項、第859条の2及び第859条の3の規定は成年後見監督人について準用する。

(利益相反行為)

第860条 第826条の規定は、後見人について準用する。ただし、後見監督人がある場合は、この限りでない。

(後見の事務の監督)

第863条 後見監督人又は家庭裁判所は、いつでも、後見人に対し後見の事務の報告若しくは財産の目録の提出を求め、又は後見の事務若しくは被後見人の財産の状況を調査することができる。

2 家庭裁判所は、後見監督人、被後見人若しくはその親族その他の利害関係人の請求により又は職権で、被後見人の財産の管理その他後見の事務について必要な処分を命ずることができる。

(後見監督人の同意を要する行為)

第864条 後見人が、被後見人に代わって営業若しくは第13条第1項各号に掲げる行為をし、又は未成年被後見人がこれをすることに同意するには、後見監督人があるときは、その同意を得なければならない。ただし、同項第1号に掲げる元本の領収については、この限りでない。

第865条 後見人が、前条の規定に違反してし又は同意を与えた行為は、被後見人又は後見人が取り消すことができる。この場合においては、第20条の規定を準用する。

2 前項の規定は、第121条から第126条までの規定の適用を妨げない。

任意後見契約に関する法律

(定義)

第2条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号の定めるところによる。

一 任意後見契約 委任者が、受任者に対し、精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分な状況における自己の生活、療養看護及び財産の管理に関する事務の全部又は一部を委託し、その委託に係る事務について代理権を付与する委任契約であって、第4条第1項の規定により任意後見監督人が選任された時からその効力を生ずる旨の定めのあるものをいう。

二 本人 任意後見契約の委任者をいう。

三 任意後見受任者 第4条第1項の規定により任意後見監督人が選任される前における任意後見契約の受任者をいう。

四 任意後見人 第4条第1項の規定により任意後見監督人が選任された後における任意後見契約の受任者をいう。

(任意後見契約の方式)

第3条 任意後見契約は、法務省令で定める様式の公正証書によってしなければならない。

(任意後見監督人の選任)

第4条 任意後見契約が登記されている場合において、精神上の障害により本人の事理を弁識する能力が不十分な状況にあるときは、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族又は任意後見受任者の請求により、任意後見監督人を選任する。ただし、次に掲げる場合は、この限りでない。

一 本人が未成年者であるとき。

二 本人が成年被後見人、被保佐人又は被補助人である場合において、当該本人に係る後見、保佐又は補助を継続することが本人の利益のため特に必要であると認めるとき。

三 任意後見受任者が次に掲げる者であるとき。

イ 民法(明治29年法律第89号)第847条各号(第4号を除く。)に掲げる者

ロ 本人に対して訴訟をし、又はした者及びその配偶者並びに直系血族

ハ 不正な行為、著しい不行跡その他任意後見人の任務に適しない事由がある者

2 前項の規定により任意後見監督人を選任する場合において、本人が成年被後見人、被保佐人又は被補助人であるときは、家庭裁判所は、当該本人に係る後見開始、保佐開始又は補助開始の審判(以下「後見開始の審判等」と総称する。)を取り消さなければならない。

3 第1項の規定により本人以外の者の請求により任意後見監督人を選任するには、あらかじめ本人の同意がなければならない。ただし、本人がその意思を表示することができないときは、この限りでない。

4 任意後見監督人が欠けた場合には、家庭裁判所は、本人、その親族若しくは任意後見人の請求により、又は職権で、任意後見監督人を選任する。

5 任意後見監督人が選任されている場合においても、家庭裁判所は、必要があると認めるときは、前項に掲げる者の請求により、又は職権で、更に任意後見監督人を選任することができる。

(任意後見監督人の職務等)

第7条 任意後見監督人の職務は、次のとおりとする。

一 任意後見人の事務を監督すること。

二 任意後見人の事務に関し、家庭裁判所に定期的に報告をすること。

三 急迫の事情がある場合に、任意後見人の代理権の範囲内において、必要な処分をすること。

四 任意後見人又はその代表する者と本人との利益が相反する行為について本人を代表すること。

2 任意後見監督人は、いつでも、任意後見人に対し任意後見人の事務の報告を求め、又は任意後見人の事務若しくは本人の財産の状況を調査することができる。

3 家庭裁判所は、必要があると認めるときは、任意後見監督人に対し、任意後見人の事務に関する報告を求め、任意後見人の事務若しくは本人の財産の状況の調査を命じ、その他任意後見監督人の職務について必要な処分を命ずることができる。

4 民法第644条、第654条、第655条、第843条第4項、第844条、第846条、第847条、第859条の2、第861条第2項及び第862条の規定は、任意後見監督人について準用する。

(任意後見人の解任)

第8条 任意後見人に不正な行為、著しい不行跡その他その任務に適しない事由があるときは、家庭裁判所は、任意後見監督人、本人、その親族又は検察官の請求により、任意後見人を解任することができる。

(後見、保佐及び補助との関係)

第10条 任意後見契約が登記されている場合には、家庭裁判所は、本人の利益のため特に必要があると認めるときに限り、後見開始の審判等をすることができる。

2 前項の場合における後見開始の審判等の請求は、任意後見受任者、任意後見人又は任意後見監督人もすることができる。

3 第4条第1項の規定により任意後見監督人が選任された後において本人が後見開始の審判等を受けたときは、任意後見契約は終了する。

民事信託及び任意後見に関する実態アンケートの最終集計結果

〇 2022年(令和4年)5月31日時点 回答総数320件

第1 民事信託についてお聞きします。

問1 直近10年間で,民事信託に関する相談を受けたことはありますか。当てはまる番号1つを回答してください。

ある 130 件(40.6%)  ない 190 件(59.4%)

問2 民事信託に関する相談を受けた際の相談者の属性は,以下のどれに当てはまりますか。件数を御回答ください。(任意後見と同時に相談を受けた場合は,問2と問21でそれぞれ1件とカウントしてください。)。相談が0件の場合は,「0」と回答してください。

 委託者となる本人のみ 84 件(16.3%)

 委託者となる本人とその家族 259 件(50.1%)

 委託者の家族のみ 118 件(22.8%)

 委託者となる本人とその家族以外の第三者 20 件(3.9%)

 委託者の家族とその家族以外の第三者 36 件(7.0%)

問3 直近10年間で,民事信託の契約書,遺言(遺言による信託),信託宣言(信託契約書等)(以下,合わせて「信託契約書等」といいます。)の作成業務を受任したことはありますか。

 ある 45 件(34.9%)  ない 84 件(65.1%)

問4 直近10年間に,信託契約書等を何件作成しましたか。

287 件

(内訳)

0 – 9 件 43 人

10 – 19 件 2 人

20 – 29 件 2 人

30 – 39 件 1 人

40 – 49 件 0 人

50 – 59 件 0 人

60 件以上 1 人

66 / 83

問5 直近10年間で,作成された信託契約書等の委託者の年齢層は以下のどれに当てはまりますか。それぞれについて,件数を御回答ください。0件の場合は,0と回答してください。

 40歳未満 6 件(1.9%)

 40歳以上50歳未満 8 件(2.6%)

 50歳以上60歳未満 9 件(2.9%)

 60歳以上70歳未満 34 件(10.9%)

 70歳以上80歳未満 126 件(40.3%)

 80歳以上 130 件(41.5%)

問6 直近10年間で,受任した案件において設定された民事信託の受託者となったのは,以下のどれに当てはまりますか。当てはまるもの全てについて,件数を御回答ください。0件の場合は,「0」と回答してください。

 家族 421 件(97.5%)

 一般社団法人 6 件(1.4%)

 株式会社等 1 件(0.2%)

 信託銀行・信託会社 2 件(0.5%)

 その他 ( ) 2 件(0.5%)

・会社代表者(1 件)

・友人等(1 件)

問7 直近10年間で,受任した案件において民事信託を設定した理由(動機)は何だったでしょうか。当てはまるもの全てについて,件数を御回答ください。受任した1つの案件で,複数の理由に該当する場合は,それぞれ1件とカウントしてください。0件の場合は,「0」と回答してください。

 高齢者の財産管理への不安 254 件(46.4%)

 資産活用 24 件(4.4%)

 財産承継 204 件(37.2%)

 法定後見のデメリットを回避するため 59 件(10.8%)

 その他 ( ) 7 件(1.3%)

・「親亡き後」の問題への対応(4 件)

・事業承継(1 件)

問8 直近10年間で,受任した案件において設定された民事信託の信託財産の対象財産の経済的規模はどの程度だったでしょうか。当てはまる全てについて,件数を御回答ください。0件の場合は,「0」と回答してください。

 3000万円未満 79 件(27.3%)

 3000万円以上1億円未満 113 件(39.1%)

1億円以上3億円未満 78 件(27.0%)

 3億円以上 19 件(6.6%)

 分からない 0 件(0.0%)

問9 直近10年間で,受任した案件において設定された民事信託の信託財産の種類はどのようなものだったでしょうか。当てはまる全てについて,件数を御回答ください。受任した1つの案件で,複数の選択肢に該当する場合は,それぞれ1件とカウントしてください。0件の場合は,「0」と回答してください。

 金銭 257 件(44.2%)

居住用不動産 123 件(21.1%)

 収益用不動産 139 件(23.9%)

 上場株式 5 件(0.9%)

 非上場株式 58 件(10.0%)

問10 直近10年間で,受任した民事信託案件において信託監督人を選任したことがある場合,誰を選任しましたか。①~⑤のうち当てはまるもの全てについて,件数を御回答ください。0件の場合は,「0」と回答してください。

 弁護士 23 件(42.6%)

 税理士 4 件(7.4%)

 司法書士 0 件(0.0%)

 家族 27 件(50.0%)

 その他( ) 0 件(0.0%)

問11 直近10年間で,受任した民事信託案件において受益者代理人を選任したことがある場合,誰を選任しましたか。①~⑤のうち当てはまるもの全てについて,件数を御回答ください。0件の場合は,「0」と回答してください。

 弁護士 1 件(7.1%)

 税理士 0 件(0.0%)

 司法書士 0 件(0.0%)

 家族 13 件(92.9%)

 その他( ) 0 件(0.0%)

問12 直近10年間で,受任した民事信託案件において信託監督人又は受益者代理人を選任したことがある場合,選任した主な理由(動機)は何だったでしょうか。受任した1つの案件で,複数の理由に該当する場合は,それぞれ1件とカウントしてください。当てはまるもの全てについて,件数を御回答ください。0件の場合は,「0」と回答してください。

 受益者が高齢者・障害者であるため 45 件(79.0%)

 受託者が受益者の任意後見人を兼ねているため 3 件(5.3%)

 公証役場・金融機関等からの要望があったため 4 件(7.0%)

 その他( )5 件(8.8%)

・委託者に助言できる人が欲しかったため

・受託者が受益者の成年後見人に選任される可能性があるため

・不動産を処分するにあたり、委託者兼受益者の意向を第三者が確認するのが適切であったため

問13 直近10年間で,受任した民事信託案件において信託監督人を選任したことがある場合,信託監督人にかかる報酬の定め方について,当てはまるもの全てについて,件数を御回答ください。0件の場合は,「0」と回答してください。なお,選択肢はいずれも消費税抜き価格で月額報酬制,タイムチャージ制の報酬の定めとなります。

 月額0円~5000円 27 件(57.5%)

 月額5001円~1万円 0 件(0.0%)

 月額1万0001円~2万円 5 件(10.6%)

 月額2万0001円~3万円 3 件(6.4%)

 月額3万0001円~5万円 1 件(2.1%)

 月額5万0001円以上 0 件(0.0%)

 1時間あたり0円~5000円 0 件(0.0%)

 1時間あたり5001円~1万円 9 件(19.2%)

 1時間あたり1万0001円~2万円 1 件(2.1%)

 1時間あたり2万0001円~3万円 1 件(2.1%)

 1時間あたり3万0001円~5万円 0 件(0.0%)

 1時間あたり5万0001円以上 0 件(0.0%)

問14 直近10年間で,受任した民事信託案件において受益者代理人を選任したことがある場合,受益者代理人にかかる報酬の定め方について,当てはまるもの全てについて,件数を御回答ください。0件の場合は,「0」と回答してください。なお,選択肢はいずれも消費税抜き価格で,①~⑥は月額報酬制,⑦~⑫はタイムチャージ制の報酬の定めとなります。

 月額0円~5000円 3 件(75.0%)

 月額5001円~1万円 0 件(0.0%)

 月額1万0001円~2万円 0 件(0.0%)

 月額2万0001円~3万円 1 件(25.0%)

 月額3万0001円~5万円 0 件(0.0%)

 月額5万0001円以上 0 件(0.0%)

 1時間あたり0円~5000円 0 件(0.0%)

 1時間あたり5001円~1万円 0 件(0.0%)

 1時間あたり1万0001円~2万円 0 件(0.0%)

 1時間あたり2万0001円~3万円 0 件(0.0%)

 1時間あたり3万0001円~5万円 0 件(0.0%)

 1時間あたり5万0001円以上 0 件(0.0%)

問15 直近10年間で,作成された信託契約書等は公正証書にしましたか。それぞれについて,件数を御回答ください。0件の場合は,「0」と回答してください。

 公正証書にした信託契約書等 199 件(73.2%)

 公証証書にしなかった信託契約書等 73 件(26.8%)

 公正証書にしたか不明な信託契約書等 0 件(0.0%)

問16 直近10年間で,信託口口座の開設等,金融機関の対応で苦労したことはありますか。当てはまる番号1つを回答してください。

 ある 9 件 (20.0%)② ない 36 件(80.0%)

問17 問16で「① ある」と回答した方にお聞きします。

金融機関の対応等で苦労した理由にはどのようなことがありますか。当てはまるもの全てついて,それぞれ件数を御回答ください。受任した1つの案件で,複数の理由に該当する場合は,それぞれ1件とカウントしてください。0件の場合は,0と回答してください。

 信託口口座の開設ができない 8 件(34.8%)

 信託契約書の文言の修正を求められた 1 件(4.4%)

 特定の弁護士が作成した信託契約書しか取り扱わない 1 件(4.4%)

 金融機関の理解が不足していた 12 件(52.2%)

 その他( ) 1 件(4.4%)

・信託口口座の開設はできないと考えて代理人口座を開設した

問18 直近10年間で,民事信託に関する紛争・裁判案件を扱ったことはありますか。

当てはまる番号1つを回答してください。

 ある 12 件(9.5%) ② ない 114 件(90.5%)

問19 問18で「① ある」と回答した方にお聞きします。

紛争等の内容はどのようなものですか。当てはまるもの全てについて,それぞれ件数を御回答ください。0件の場合は,「0」と回答してください。

 委託者の判断能力 5 件(26.3%)

 信託の変更 1 件(5.3%)

 信託の終了 4 件(21.1%)

 受益権の行使 1 件(5.3%)

受託者の解任 3 件(15.8%)

 受託者・信託監督人の選任 1 件(5.3%)

 課税上の問題 0 件(0.0%)

 その他( ) 4 件(21.1%)

・遺留分侵害額請求

・遺留分潜脱目的

・受託者から、委託者と同居する親族に対する不動産の明渡請求

・非士業者による信託契約書の作成

第2 任意後見についてお聞きします。

問20 直近10年間で,任意後見に関する相談を受けたことはありますか。当てはまる番号1つを回答してください。

 ある 194 件(60.6%)  ない 126 件(39.4%)

問21 直近10年間で,任意後見に関する相談を受けた際の相談者の属性は,以下のどれに当てはまりますか。それぞれについて,件数を御回答ください。(民事信託と同時に相談を受けた場合は,問2と問21でそれぞれ1件とカウントしてください。)。相談が0件の場合は,「0」と回答してください。

 委任者となる本人のみ 206 件(39.3%)

 委任者となる本人とその家族 166 件(31.7%)

 委任者の家族のみ 78 件(14.9%)

 委任者となる本人とその家族以外の第三者 53 件(10.1%)

 委託者の家族とその家族以外の第三者 21 件(4.0%)

問22 直近10年間で,任意後見契約書の作成業務を受任したことはありますか。

 ある 99 件(52.4%)② ない 90 件(47.6%)

問23 直近10年間に,任意後見契約書を何件作成しましたか。

225 件

(内訳)

0 – 9 件 105 人

10 – 19 件 1 人

20 – 29 件 0 人

30 – 39 件 0 人

40 – 49 件 0 人

50 – 59 件 0 人

60 件以上 0 人

問24 問23の件数のうち,民事信託と任意後見を併用したのは何件ですか。0件の場合は,「0」と回答してください。

19 件

(内訳)

1 件 4 人

2 件 4 人

3 件以上 2 人

問25 直近10年間で,作成された任意後見契約書の委任者の年齢層は以下のどれに当てはまりますか。それぞれについて,件数を御回答ください。0件の場合は,「0」と回答してください。

 40歳未満 0 件(0.0%)

 40歳以上50歳未満 3 件(1.3%)

50歳以上60歳未満 7 件(3.1%)

 60歳以上70歳未満 43 件(19.0%)

 70歳以上80歳未満 96 件(42.5%)

 80歳以上 77 件(34.1%)

問26 直近10年間で,受任した案件において設定された任意後見受任者となったのは,以下のどれに当てはまりますか。①~⑤のうち当てはまるもの全てについて,件数を御回答ください。0件の場合は,「0」と回答してください。

 家族 83 件(39.0%)

 友人 5 件(2.4%)

 弁護士 112 件(52.6%)

 NPO法人・社会福祉法人 1 件(0.5%)

 その他 ( )12 件(5.6%)

・交際相手(1 件)

・内縁の夫婦(1 件)

・家族以外の親族(3 件)

・血縁関係にないが親子同然に生活してきた者(1 件)

・弁護士法人(1 件)

問27 直近10年間で,受任した案件において任意後見を設定した理由(動機)は何だったでしょうか。当てはまる全てについて,件数を御回答ください。受任した1つの案件で,複数の理由に該当する場合はそれぞれ1件とカウントしてください。0件の場合は,「0」と回答してください。

 高齢者の財産管理への不安 178 件(48.6%)

身上保護の必要性 86 件(23.5%)

 法定後見のデメリットを回避するため 87 件(23.8%)

 その他 ( )15 件(4.1%)

・信頼できる親族・身寄りがいない(5 件)

・特定の受任者を指定したい(2 件)

・親族間の紛争が生じている(2 件)

・交際相手に財産管理・身の回りのことを行ってもらうため(1 件)

問28 直近10年間で,受任した案件において設定された任意後見の対象財産の経済的規模はどの程度だったでしょうか。①~⑤のうち当てはまる全てについて,件数を御回答ください。0件の場合は,「0」と回答してください。

 3000万円未満 50 件(22.7%)

 3000万円以上1億円未満 121 件(55.0%)

 1億円以上3億円未満 37 件(16.8%)

 3億円以上 9 件(4.1%)

 分からない 3 件(1.4%)

第3 民事信託と任意後見についてお聞きします。

問29 直近10年間で,受任した案件において民事信託と任意後見を併用したことがありますか。ある場合,受託者と任意後見受任者との関係は,以下のどれに当てはまりますか。当てはまるもの全てについて,件数を御回答ください。0件の場合は,「0」と回答してください。なお,併用したことがない場合は,問32へ進んでください。

 受託者と任意後見受任者は別人である 15 件(68.2%)

 受託者と任意後見受任者は同一人である 7 件(31.8%)

問30 問29で「 受託者と任意後見受任者は別人である」と回答した方にお聞きします。対応した案件のうち,受託者と任意後見受任者の組合せで,最も多い組合せ(問30-1及び問30-2の中から1つずつ)を回答してください。

問30-1 受託者の属性は,以下のどれに当てはまりますか。当てはまる番号1つを回答してください。

 家族 7件(100.0%)

一般社団法人 0 件(0.0%)

 株式会社等 0 件(0.0%)

 信託会社 0 件(0.0%)

 信託銀行 0 件(0.0%)

 その他( ) 0 件(0.0%)

問30-2 任意後見受任者の属性は,以下のどれに当てはまりますか。当てはまる番号1つを回答してください。

 受託者とは別の家族 7 件(63.6%)

 友人 0件(0.0%)

弁護士 4件(36.4%)

 NPO法人 0 件(0.0%)

 社会福祉法人 0 件(0.0%)

 その他( ) 0 件(0.0%)

問31 直近10年間で,民事信託と任意後見を受任した案件において,民事信託と任意後見を併用した場合,その理由は何だったでしょうか。当てはまるもの全てについて,件数を御回答ください。受任した1つの案件で,複数の理由に該当する場合は,それぞれ1件とカウントしてください。0件の場合は,「0」と回答してください。

 信託財産以外に第三者による管理が必要な財産がある 15 件(46.9%)

 身上保護が必要である 10 件(31.3%)

 法定後見のデメリットを回避するため 7 件(21.9%)

 その他 ( ) 0 件(0.0%)

問32 直近10年間で,民事信託と任意後見を併用しなかった場合,その理由は何だったでしょうか。当てはまるもの全てについて,件数を御回答ください。受任した1つの案件で,複数の理由に該当する場合は,それぞれ1件とカウントしてください。0件の場合は,「0」と回答してください。

 費用がかかる 13 件(3.2%)

 適切な受託者が見つからなかった 23 件(5.6%)

 併用する必要がなかった 170 件(41.7%)

 併用を考えたことがなかった 50 件(12.3%)

 その他 ( ) 4 件(1.0%)

・依頼者に理解させるのが難しそうだった(1件)

・相談や依頼がない(2件)

 民事信託・任意後見ともに受任していない 148 件(36.3%)

問33 民事信託・任意後見に業務として取り組む場合に,障害と思われることがあれば教えてください(自由記載)。

・弁護士の理解不足、経験不足(25 件)

・適切な受託者の確保、信託業法の規制(19 件)

・民事信託・任意後見にふさわしい事案がない(10 件)

・民事信託・任意後見が知られていない、分かりにくい(10 件)

・民事信託の見通しが立てづらい、リスクがある(6 件)

・信託登記、任意後見監督人等の費用負担が大きい(4 件)

・任意後見人は事務所住所・職務上氏名での登記ができない(4 件)

・弁護士の業務と理解されていない、他士業・他団体の進出(3 件)

・金融機関等の協力が得られない(3 件)

・本人の制度利用への不安(3 件)

・信託税制に対する理解不足、課税上の課題等(2 件)

・その他

問34 民事信託の実務に関し,これまで研鑽のために取り組んだことはありますか。当てはまるもの全てについて御回答ください。

日弁連のライブ実務研修,e-ラーニングの受講 147 件

 日弁連の弁護士業務改革シンポジウム,勉強会,講演会などの企画への参加 81 件

 弁護士会の研修の受講 147 件

 弁護士会の勉強会,講演会などの企画への参加 124 件

 その他( ) 41 件

・書籍、DVDなど(21 件)

・金融機関、他士業、他団体のセミナー・勉強会(14 件)

・委員会内、事務所内、弁護士有志の勉強会(7 件)

・関連委員会・PTへの所属(3 件)

 特に研鑽の機会を持ってない 70 件

問35 民事信託の実務に関し,研鑽のためのこれまでの取組で有益だったものはありますか(自由記載)。

・日弁連・日弁連委員の研修・勉強会等(21 件)

・弁護士会の研修・勉強会等(15 件)

・書籍・雑誌(8 件)

・実務経験に基づく講義・ケーススタディ(5 件)

・金融機関主催のセミナー(3 件)

・研修(3 件)

・すべて(2 件)

問36 任意後見の実務に関し,これまで研鑽のために取り組んだことはありますか。当てはまるもの全てについて御回答ください。

日弁連のライブ実務研修,e-ラーニングの受講 94 件

 日弁連の弁護士業務改革シンポジウム,勉強会,講演会などの企画への参加 38 件

 弁護士会の研修の受講 123 件

 弁護士会の勉強会,講演会などの企画への参加 68 件

 その他( ) 25 件

・書籍、DVDなど(21 件)

・弁護士会以外の研修会(4 件)

 特に研鑽の機会を持ってない 116 件

問37 任意後見の実務に関し,研鑽のためのこれまでの取組で有益だったものはありますか(自由記載)。

・日弁連・日弁連委員の研修・勉強会等(4 件)

・弁護士会の研修・勉強会等(7 件)

・書籍・雑誌(3 件)

・実務経験を積む(3 件)

・研修(2 件)

問38 民事信託・任意後見を弁護士業務の一つとするために,日弁連に要望することがあれば教えてください(自由記載)。

・会員(弁護士)に対する研修、ガイドライン・契約書式・事例等の提供(21 件)

・弁護士こそが民事信託・任意後見を扱うに相応しいこと等の広報活動(17 件)

・受託者規制に関する信託業法の改正(7 件)

・金融機関・関係団体等との連携(6 件)

・事務所住所・職務上氏名での任意後見登記(4 件)

・市民向け相談窓口・名簿の整備(3 件)

・任意後見の研究(2 件)

・不祥事対策(2 件)

・単位会へのバックアップ(2 件)

・実務経験を積むためのバックアップ(2 件)

以上

愛知県弁護士会シンポジウム報告書

「思いを託す~任意後見・民事信託の活用~」

2022年7月28日(木)参加人数約180人

第4 内容

講演 「思いを託す~任意後見の活用~」

講演者:種谷 有希子 会員(日弁連高齢者・障害者権利支援センター委員)

(報告内容)⑴ 概説

任意後見制度の活用について、法定後見制度、死後事務委任契約、見守り契約、遺言との対比から説明を行った。

⑵ おひとりさま世帯の増加

昭和61年では、親と未婚の子のみの世帯及び三世代世帯が、全体の半数を超えていた。しかし、令和元年では、単身世帯及び夫婦のみの世帯が全体の半数を超え、「おひとりさま」世帯が現実のものとなっている。その中で、老後について、対策を取らなかった事例と対策を取ることができた事例を紹介した。対策を取らなかった事例としては、高齢者が詐欺被害に遭い、成年後見人が介入した段階では奪われた財産の回復が不可能であったという事例があり、対策を取った事例としては、余命1年の依頼者が、自分の希望を伝えた上で、その希望を反映した財産管理契約、任意後見契約、死後事務委任契約を締結して、遺言を作成し、自分の希望した終末期を迎えることができたという事例を紹介した。

⑶ ホームロイヤーの活用

ホームロイヤーの活用として、判断能力が十分なうちに、①見守り契約、②任意後見契約、③死後事務委任契約、④遺言を準備し、能力に問題がない時期には、見守り契約(①)、判断能力が低下したときは、任意後見契約の効力を生じさせ(②)、死亡の際には死後事務委任契約(③)と遺言(④)によって処理をしていくことを提案した。

⑷ 任意後見契約の利点

隣接制度である、法定後見制度と比較を行い、任意後見契約では、本人が十分な判断能力があるうちに、自分の希望を伝え、自分が信頼する人を後見人に選ぶことができるとの説明があった。

講演「思いを託す~人生の最終章を豊かに~」講演者:川名 紀美 氏(元朝日新聞社論説委員)

(報告内容)

⑴ 講演者の実体験

講演者は、もともと新聞記者として少子高齢化社会について、取材をしていた。自分の実経験として、高齢(90歳)を迎えた父が、付き合いのある保険会社から保険加入を不当に勧められて高額な保険料を支払ってしまったことや、叔母が、証券会社から投資信託の購入を勧められて購入してしまったことなどの経験があり、詐欺や悪徳商法でなくとも一人では適切な判断が出来なくなることを知って老後の問題について考えるようになった。講演者の子は、海外で暮らしており、現在は、おひとりさまに近い状態である。現在は問題ないとしても、今後、判断能力が衰えたときに、自分の生き方を尊重して自分を支えることができる専門家の必要性を考えるようになる。また、その後、父の死後に自宅の処分をしたり、叔母の死後に行政手続や各種の契約の解約などを行ったりしたことで、死後事務の煩雑さも知ることとなった。自分の死後に、これらの手続を海外で暮らす子に全て任せることは大きな負担となるため、死後事務委任契約を検討することとなった。

⑵ 人との交流

講演者は、人との関わり合いが重要だと考えている。平成20年から、仕事を持って働いてきたシングルの女性4人が同じマンションの1室をそれぞれ購入して住むようになり、相互に交流しながら生活を送っている。また、地域に根を下ろし、人との関わり合いの輪を外へ広げるため、「土曜サロン」を開催し、月1回、同じマンションの1室を利用して、ゲストを招いて、音楽会や後見制度の講習会などのイベントを開催している。ところで、上記の女性4人中3人は、同じ専門家に依頼をし、それぞれ任意後見契約、死後事務委任契約、遺言を作成している。うち1人について、令和2年にアルツハイマー型認知症と診断され、令和3年に任意後見を開始することとなった。このような知人に対する些細な変化は、近くで交流しながら一緒に暮らしているからこそ気付くことができた。

⑶ 孤独対策

近年、孤独対策は、大きな社会問題となっている。平成30年、イギリスでは、「孤独担当大臣」が任命され、昨年、日本でも「孤独・孤立対策担当大臣」が誕生し、孤独・孤立問題に取り組むNPOなどを支援する体制が構築され始めている。

講演 「思いを託す~民事信託の活用~」講演者:西片 和代 会員(日弁連信託センター副センター長)

(報告内容)

⑴ 民事信託の特徴

民事信託は、委託者(財産の所有者)の財産(預金や不動産)の名義を、受託者に移転して行う。民事信託は、財産を管理するという面で見ると後見制度と似ていて、誰かに財産を渡すという面から見ると遺言や遺贈と似ている。信託には、委託者と受益者が同一である「自益信託」と、委託者と受益者が異なる「他益信託」があり、自益信託では、贈与税(委託者から受託者への財産の移転の場面)は発生しない。

⑵ 信託の利用場面

信託の利用場面としては、不動産の売却の場面(将来、判断能力が低下して不動産を売却できなくなることを防ぐ)や、不動産の管理の場面(収益不動産の管理が煩わしいため、次世代に管理を任せたい)がある。

⑶ 他の制度との比較

後見と比較した民事信託の効用としては、財産の名義が受託者に移転するため、委託者が財産を詐取されることはない(守り)、また、受託者が委託者に代わって投資・運用できる(攻め)というものがある。また、信託では、委託者が死亡したあとも、財産の帰属先を指定し、数世代にわたって、財産を承継させることもできる。民事信託は、委任契約、後見制度、遺言と合わせて活用することができ、さらに、その先に発生する数次相続についてもカバーすることができる。

⑷ これからの民事信託

このような民事信託ではあるが、まだ発展途上の分野であり、税務面の検討も欠かせない。弁護士などの専門家と相談し、任意後見契約、死後事務委任契約などと組み合わせながら最適な選択をすべきである。

4 パネルディスカッション 「思いを託す~任意後見・民事信託の活用~」

パネリスト:種谷 有希子 会員(日弁連高齢者・障害者権利支援センター委員)

川名 紀美 氏(元朝日新聞社論説委員)

西片 和代 会員(日弁連信託センター副センター長)

コーディネーター:杉山 苑子 会員(高齢者・障害者総合支援センター運営委員会委員)

(報告内容)

⑴ なぜ今任意後見・民事信託なのか

任意後見の件数が増加している。おひとりさまが増え、子がいない世帯、子がいても頼れない世帯があり、老後の財産管理について不安に感じている人が多いことに起因すると思われる。民事信託については、平成19年9月に新信託法が施行され、それに先立つ信託業法改正と相まって信託銀行以外も信託の担い手になることができるようになり、また信託の自由度が高まった。超高齢者社会における信託活用への期待の高まりとともに、家族内での「民事信託」が身近な方法として注目されるようになった。

⑵任意後見

ア 法定後見制度と任意後見契約の比較

任意後見契約では、自ら後見人を選択することができる、つまり、自分の終末期の希望を直接伝えることができるという特徴がある。また、任意後見では依頼したい事項を選択できるが、法定後見では類型にもよるがそこまでの自由度はないという違いがある。一方、任意後見契約では、任意後見監督人が必ず選任される。また、任意後見人には、取消権がないので、取消権を行使する必要がある場合であれば、法定後見制度が適する場面もある。

イ 任意後見契約の流れ

任意後見契約は、裁判所が任意後見監督人を選任したときから効力が発生する、任意後見受任者が申立てをすることが多い。ここで、任意後見受任者と本人との交流が途絶えてしまうと、本人の状態を判断することができず、申立の時期を逸してしまう。

ウ 見守り契約の併用

任意後見受任者が本人の状態を適宜判断するために、見守り契約との併用が考えられる。任意後見受任者が、本人に、月1回面会をするなどの見守りを行う。

エ 費用

任意後見契約作成費用、任意後見人の報酬、任意後見監督人の報酬など。本人の身の回りの世話をする親族がいない場合には、任意後見契約が有効である。本人の判断能力が衰えた場合、後見人が施設と入所契約をすることもできる。

カ 川名氏の事例から見えること

法定後見制度の場合は、本人の判断能力が衰えてから後見人を選ぶことになるので自分の希望を伝えることができないが、任意後見契約の場合は、自分で任意後見人を選ぶことができ、自分の希望を伝えることができる。

キ 川名氏のご友人の事例から見えること

本人は、弁護士と見守り契約を締結していて、月1回、本人が、決まった日時に事務所に電話をするか事務所を訪問することになっていた。しかし、本人が電話をしないという事態が発生したり迷って事務所に来られないというようなことが発生して、本人の判断の能力の低下を確知された。任意後見契約の効力を発生させるためには、本人の同意が必要であるが、本人に説明するにあたっては、友人である川名氏の存在が大きかった。

ク 任意後見と親亡き後問題

障害がある子の面倒を誰が見るかという「親亡き後」の問題がある。この場合、親が弁護士と任意後見契約をして、代理権目録に子の法定後見の申立権を加えることで、将来、親の後見人が子の法定後見を申し立てるケースもありうるところであるが、ここまで備えをしているケースは非常に少ないだろう。

ケ まとめ

将来の不安がある場合には、任意後見契約、死後事務委任契約、遺言の作成をすること、そして、任意後見契約が開始するまでの間、任意後見受任者と本人が良好な関係を保つことが重要である。

⑶ 信託

ア 後見との比較

民事信託が後見と大きく違うのは、民事信託は、本人に十分な判断能力があるうちにスタートするということである。判断能力が低下した後に、民事信託か後見かを選択するというのは間違いで、判断能力が無くなる前に備えておく必要がある。

また、民事信託の場合、委託者が受託者に託す財産を選ぶことができる。さらに、後見の場合は、本人が死亡すれば終了するが、民事信託の場合は、委託者が死亡した後も続けることができる。

イ 民事信託が適するケース

自宅売却を目的とした信託で、自宅を信託し、預貯金は委託者が引き続き管理をするという例がある。他には、アパートを経営してきた高齢者が、子に信託をする例がある。アパートの経営は、入居者の交代や修繕工事などの対応など煩雑な手続があるためである。アパートの賃料は、高齢者の収入となる。

ウ 弁護士が受託者になれるか

信託業法の規制から、現時点では、弁護士が受託者になることはできない。今後の議論が待たれる。

エ 費用

組成時のイニシャルコストと、組成後のランニングコストを検討することが重要。

⑷ まとめ

ア 川名氏

自分で各制度の内容を理解して、自分で選ぶことが大切である。

イ 種谷会員

信託は弁護士でも難しい制度である。家族の方や支援者は、後見や信託について細かい内容を知る必要がないが、今日のシンポを通じて簡単な仕組みをご理解いただき、本人のために後見や信託が使えるのではと思った時にはぜひ弁護士に相談をしていただきたいと思う。

ウ 西片会員

制度は利用する人のためにあり、法律も変わっていく。法律家が制度を押し付けることはなく、利用者が役立つ制度を使うようにするのが良い。

以上

信託契約書のチェックポイント―金融機関―

・信託口口座の開設にあたり、受託者と預金取引が可能かにつき、信託契約内容の事前チェック

 チェックにおいては、形式面でのチェックのみならず、受託者が正しく信託事務を遂行できるかという観点。

・受託者に関するチェック内容

信託法に定める受託者の義務の免除の有無

自己執行義務

善管注意義務・忠実義務の免除、義務を軽くする規定の有無

信託事務や信託財産に関する帳簿等の作成の免除規定の有無

信託終了時の最終計算の承認を求める義務の免除規定の有無

受託者の辞任、解任規定

信託事務処理の第三者への委託

受託者が全ての信託事務処理を第三者に委託することは、信託の本質に反し信託の有効性に疑義が生じ得るとの見解があるため、信託事務の一部を委託する旨に修正すべき。

不可条文例(信託事務処理の第三者への委託)

受託者は、信託事務の全部を受託者の責任において選任する第三者に委託することができる。

信託法28 条

 「分業化・専門化が著しく進んだ現代社会においては、信託事務のすべてを受託者が自ら処理すべきことを前提とするのは現実的ではなく、むしろ、相当な場合には信託事務の処理を第三者に委託できることとした方が、より迅速に信託事務を処理できることになり、受益者の利益に資するもの。」と考えられる[1]。 2

善管注意義務

不可条文例(受託者の善管注意義務)

受託者の善管注意義務を全て免除する。

信託法29 条2 項ただし書

「信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる注意をもってこれをするものとする。」

 受託者の善管注意義務の規定が任意規定であるといっても、信託が、委託者および受益者の受託者に対する信認義務を基礎とする財産管理制度であることに鑑みると信託行為の定めをもってしても、受託者の善管注意義務を完全に免除することは、信託の本質に反し許されない[2]。受託者の注意基準としては原則として、「自己の財産に対すると同一の注意」では足りないという判断。

 忠実義務

(受託者の忠実義務) 信託法30条

 「受託者は、受益者のため忠実に信託事務の処理その他の行為をしなければならない。」と規定。信託の受託者が、受益者の利益のため行動すべき義務を負う。忠実義務は、受託者の最も基本的な行動指針であり「もっぱら受益者の利益を最大限に図るべし」[3]とされ、善管注意義務とともに受託者の義務の両輪であるとされる[4]。信託法31 条2 項、32 条2 項の規定は、忠実義務も善管注意義務と同様に任意規定として理解されている[5]

 分別管理義務

不可条項(公示義務の免除・省略)

受託者は、信託財産につき、信託の登記・登録または信託財産の表示・記載を省略する。

信託法34条2項は、信託財産と受託者の固有財産又は他の信託財産と分別して管理する義務を定めている。14 条の信託の登記又は登録をする義務は、これを免除することができない。

信託事務や信託財産に関する帳簿等の作成等、報告及び保存義務の免除

 帳簿の作成等、報告及び保存の義務   

 信託法37 条1項、2項は、強行規定として受託者による書類の作成義務に関する規定を定めている(強行規定。)。3項は受託者の受益者に対する積極的情報提供義務に関する規定で任意規定。別段の定めを設けることによって、報告義務を軽減または免除することも可能。

清算受託者の職務の終了等

(受託者の職務の終了等) 信託法184条1項は、清算受託者は、その職務を終了したときは、遅滞なく、信託事務に関する最終の計算を行い、信託が終了した時における受益者(信託管理人が現に存する場合にあっては、信託管理人)及び帰属権利者のすべてに対し、その承認を求めなければならないと規定している。 信託終了時の最終計算の承認を求める義務が免除されていることがあるが、信託法184 条は任意規定とされていないため、有効性に疑義がある。

受託者の辞任

不可条文例

(受託者の辞任) 受託者の任務は、下記の事由に該当したときに終了する。

(1)信託法第56条1項各号に掲げる事由

(2)後継受託者の同意を得て辞任したとき

 信託法57条1項本文では、受託者は、委託者及び受益者の同意を得て辞任できる旨規定されているが、信託契約にこれとは異なる規定がある場合、受託者は、委託者及び受益者の同意を得た場合には辞任できず、後継受託者の同意を得た場合にのみ辞任できるのか、それとも、委託者及び受益者の同意を得た場合だけでなく、後継受託者の同意を得た場合にも辞任できるのかが不明確。補足文言の追加を検討する必要あり。

参考:東京地裁平成30年10月23日判決

 委託者兼受益者の合意による信託の終了の主張が認められなかった事例。信託法164条3項により同条1項の適用は排除されたため、委託者兼受益者が任意の時期に同信託を終了させることができない。

受託者の解任

不可条文例

(受託者の解任) 受益者は、次の各号に定める事由に該当するときは受託者を解任することができる。

 (1)受託者が本契約に定める義務に違反し、受益者の是正勧告から30日を経過しても、相当の理由もなく是正されないとき。

 (2)受託者に破産手続又は民事再生手続その他これらと同種の手続の申立てがあったとき。

 (3)その他受託者として信託事務を継続しがたい重大な事由が発生したとき。

 信託法58条1項は、委託者及び受益者は合意によりいつでも受託者を解任できる旨規定されているが、信託契約にこれとは異なる規定がある場合、委託者及び受益者が合意した場合には受託者を解任できず、信託事務を継続しがたい重大事由が発生した場合にのみ受益者が解任できるのか、それとも、委託者及び受益者が合意した場合だけでなく、当該事由に該当した場合にも受益者が解任できるのかが不明確。補足文言の追加を検討する必要あり。

・受益者

チェック内容

受益者の特定・指定

不可条文例(受益者への給付)

 受託者は、受益者及びその被扶養者の生活に必要な資金として次のとおり実際の必要に応じて随時に、信託財産から受益者又は第三者に対し給付する。

 受益者との文言が用いられない場合でも、このような定めを前提にすると、その被扶養者も受益者と解釈される可能性が否定できない。給付の請求権限は受益者に限り有する必要がある。受託者は信託財産を受益者に給付するが、受益者の指示がある場合には、受託者は、受益者の親族等の第三者に直接信託財産の支払いを行うことができる等の規定であれば可。

 受益者連続型

チェック内容

 後継受益者の死亡の先後によって受益権の承継に不具合が生じないか(例:第三受益者が第二受益者より先に死亡していた場合の取扱いの規定がない)。→第三受益者が第二受益者より先に死亡していた場合の取扱いの規定がない場合、第二受益者死亡後、受益権がどのように承継されるかが不明確になる。

 信託契約に記載されている最終の受益者が死亡した後の受益権の承継について規定の有無

 終了事由の問題。受益者連続型の信託契約において、受益者死亡による信託終了の定めがない場合又は信託期間の定めがない場合に、半永続的に信託が継続することにならないか。受益権が相続され、受益者が数次にわたって登場し、権利関係が複雑化する恐れがある。

信託の終了事由

チェック内容

委託者の死亡が信託の終了事由

 法定の信託法163条に定める終了事由。民事信託では、受託者は一般の方であり明記することが望ましい。

帰属権利者

チェック内容

委託者死亡時に遺留分の侵害が生じないか[6]

例外的な取り扱い

残余財産の帰属

信託財産としての清算

信託不動産の取り扱い

 遺留分侵害

チェック内容

 遺留分を侵害していても信託契約は可能ではあるが、将来の紛争性が高いため、取り扱わない。ただし、信託財産以外の財産で遺留分が確保できている場合、遺留分被侵害者が当該信託の内容に明確に承諾していることを組成する士業が直接確認できている場合は、口座の提供を検討する。

 帰属権利者等

残余財産の帰属

不可条文例

(残余財産の帰属)委託者の死亡により本件信託が終了した場合、残余の信託財産については、委託者の一般財産たる遺産と同様に、委託者の遺言書が存在する場合は遺言書に委ね、委託者の遺言書が存在しない場合は法定相続人全員による遺産分割協議に委ねるものとする。

 信託財産は委託者の相続財産ではないため、遺言によって処分することができず、また遺産分割協議の対象にもならない。そのため、残余財産の帰属先は信託契約書上で明記することが望ましい。帰属割合等を信託契約書外の公正証書等で別途定めるような実務上の取り扱いを認めていない。

不可条文例

(残余財産の帰属)本信託が終了したときの残余財産の帰属権利者は、乙及び丙とし、本件信託金銭については、それぞれ2分の1ずつの割合にて取得する。本件信託不動産については、信託終了時に処分されずに残存していた場合、乙に取得させ、乙において信託不動産を売却換価の上、同換価金につき、処分に要する諸費用を控除した残余金を、帰属権利者にそれぞれ2分の1ずつの割合で取得させる。

 乙が一度取得した信託不動産の換価金を丙に交付することは贈与にあたると考えられるため、乙に帰属させることとするか、清算事務として信託不動産を換価処分した上で帰属させるなどの対応が必要となると考える。

・その他チェック内容

 残余財産の帰属についての定め

 残余財産の帰属について定めがない場合、信託法182条2項[7]が適用されることとなるが、不動産の移転登記等の問題もあることから、あらかじめ帰属を定めることが望ましい。

委託者兼受益者が存命中に信託が終了した場合の定め

委託者の意思に応じて、その場合の残余財産の取り扱いを明確にする。

・その他補足

チェック内容

停止条件付き信託契約(信託法4条4項)

 停止条件を手続上、明確にできれば、理論的には可能。しかし、例えば、判断能力低下を停止条件とする場合、不動産実務上、移転登記[8]・信託登記は困難である。また、銀行実務においても、長期での案件・顧客管理は困難。条件にもよるが、信託口口座開設は条件成就の時が現実的である。

信託内借入を伴う信託契約書(今回の範囲外、信託法21条)

東京地裁令和3年9月17日判決(家庭の法と裁判第35号(2021年12月)

 信託契約書内容の事前擦り合わせ(資格者専門職と金融機関) 。司法書士に対する損害賠償訴訟。

貸出実務について

• 自動送金関係

 最近、銀行において包括的な代理人による預金取引をするところもあるため、本人の意思能力喪失後も自動送金が継続される可能性がある。信託の追加は、新規の信託設定と信託の併合[9]。本人の意思能力喪失後の追加信託の設定は、問題あり。

自動送金取り扱い

 金融機関が、預金者が高齢等により意思能力を喪失したことを知った場合、預金口座は支払停止の措置をとるため、他行に自動送金しているもの、公共料金の引き落とし、クレジットカードの引き落とし等はできなくなる。ただし、一定の要件の下、預金者の生活に必須な公共料金等については、例外的な対応は可能。

 信託契約書は、委託者のご意向、関係者の想いに直接接している士業がサポートいただきたい。信託契約締結以降、金融機関への届出事項として、委託者の死亡、受益者の変更、受託者の任務終了、信託契約の変更、信託の終了等がある。信託契約の締結以降も、継続的なサポートが必要。

 手続きを行う主体としては、信託口口座を利用する受託者のみ。代理人による取引を希望される場合に、信託契約に第三者に信託事務を委託することができる旨の定めがあること、かつ金融機関の代理人取引ルール(委任状の提出、受託者本人への電話確認等)に則ってお手続きする必要がある。


[1] 寺本昌弘著 『逐条解説新しい信託法〔補訂版〕』(商事法務2008 年)P109

[2] 寺本昌弘著 『逐条解説新しい信託法〔補訂版〕』(商事法務2008 年)P113

[3] 新井誠 『信託法〔第4 版〕』P 256

[4] 井上聡編著『新しい信託30 講』(弘文堂、2007 年)P 59

[5]  「すべてが任意規定化されたからといって、完全に自由であるわけでなくて、…緩和の限界が存在するはずだ。」道垣内弘人「信託法改正と実務」『ジュリストNO.1322』2006 年 P 13

[6] 東京地裁平成30年9月12日判決。遺留分制度を潜脱する意図でされた信託の効力

[7] 委託者又はその相続人その他の一般承継人を帰属権利者とみなす。

[8] 不動産登記令16条2項、3項 3か月以内の印鑑証明書

[9] 道垣内弘人 『信託法(現代民法別巻)』(有斐閣,2017年)P398

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