マネロン・テロ資金供与・拡散金融対策政策会議

財務省 マネロン・テロ資金供与・拡散金融対策政策会議 令和3年8月19日開催

https://www.mof.go.jp/policy/international_policy/councils/aml_cft_policy/index.html

・マネロン・テロ資金供与・拡散金融対策に関する行動計画(令和3年8月30日)

P2、4.法人、信託の悪用防止

(1) 法人・信託の悪用防止

 法人及び信託がマネロン・テロ資金供与に悪用されることを防ぐため、法人及び信託に関する適切なリスク評価を実施し、リスクの理解を向上させる。

期限・令和 4 年春 担当府庁等 法務省、警察庁

(2) 実質的支配者情報の透明性向上

全ての特定事業者が、期限を設定して、既存顧客の実質的支配者情報を確認するなど、実質的支配者に関する情報源を強化する。

期限・令和 6 年春 担当府庁等 法務省、警察庁、特定事業者、所管行政庁

・株式会社の申出により、商業登記所が実質的支配者情報を保管し、その旨を証明する制度を今年度中に開始するとともに、実質的支配者情報を一元的に管理する仕組みの構築に向け、関係省庁が連携して利用の促進等の取組みを進める。

期限・令和 4 年秋 担当府庁等 法務省、警察庁、特定事業者、所管行政庁

実質的支配者リストについて

実質的支配者リスト制度の創設(令和4年1月31日運用開始)

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00116.html

(3) 民事信託・外国信託に関する実質的支配者情報の利用・正確性確保

信託会社に設定・管理されていない民事信託及び外国信託に関する実質的支配者情報を利用可能とし、その正確性を確保するための方策を検討し、実施する。

期限・令和 4 年秋 担当府庁等 法務省、その他関係省庁

 実質的支配者リストの対象法人は、株式会社(特例有限会社を含む。)となっています。民事信託における実質的支配者とは誰なのでしょうか。対策を読む限り、信託会社に設定管理されていない、とあるので一般社団法人が受託者の場合の民事信託について、受益者が一般社団法人の場合で指図権を持っている場合、などが思い浮かびましたが、実質的に信託を支配する者の判断は、信託行為により変わり得るのかなと思います。

(4) 法人・信託に関するガイダンス作成

道府県警や国税庁等の法執行機関向けに、法人及び信託の実質的支配者情報に適時にアクセスするためのガイダンスを作成する。

期限・令和 4 年秋 担当府庁等 警察庁、財務省及びその他関係省庁

FATF(金融活動作業部会)対日相互審査報告書令和3年8月30日財務省

概要部分の日本語版

https://www.mof.go.jp/policy/international_policy/convention/fatf/fatfhoudou_20210830_1.html

P3

日本は、リスクのある非営利団体(以下、NPO 等)についての理解が十分ではなく、そのため、NPO 等の テロ資金供与対策のための予防的措置を強化するために、当局がターゲットを絞ったアウトリーチを行うことができない。このため、日本の NPO 等は、知らず知らずのうちに、テロ資金供与の活動に巻き込まれる危険性がある。

P8 大規模銀行(より高いリスクを有するとされている GSIB 等)を含む一定数の金融機関及び資金移動業者は、マネロン・テロ資金供与リスクについて適切な理解を有している。その他の金融機関は、自らのマネロン・テロ資金供与リスクの理解がまだ限定的である。一定数の金融機関は、自らのリスク評価を開始しているが、その他の金融機関はリスクに基づいた低減措置を適用していない。これらの金融機関は、継続的顧客管理、取引モニタリング、実質的支配者の確認・検証等の、最近導入・変更された義務について、十分な理解を有していない。

P10

日本は、法人が悪用される可能性についてある程度理解しているが、この理解は深度を欠いており、様々な種類の法人に関連する脆弱性についての十分な理解が示されていない。法的取極めの悪用に関連するリスクについての理解はない。法執行機関の間では、捜査に役立つ基本情報や実質的支配者情報の情報源について、ある程度の理解が不足しているようである。

司法書士として

駿河台法学第34巻2号 司法書士による民事信託(設定)支援業務の法的根拠論について : (続)民事信託業務の覚書 : 「民事信託」実務の諸問題⑸

https://surugadai.repo.nii.ac.jp/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=2275&item_no=1&page_id=13&block_id=21

11月相談会のご案内ー家族信託の相談会その38ー

お気軽にどうぞ。
家族信託の相談会その38
2021年11月26日(金)14時~17時
□ 認知症や急な病気への備え
□ 次世代へ確実に引き継ぎたいものを持っている。
□ 家族・親族がお金や土地の話で仲悪くなるのは嫌。
□ 収益不動産オーナーの経営者としての信託 
□ ファミリー企業の事業の承継
その他:
・共有不動産の管理一本化・予防
・配偶者なき後、障がいを持つ子の親なき後への備え
1組様 5000円

場所 司法書士宮城事務所(西原町)
要予約   司法書士宮城事務所 shi_sunao@salsa.ocn.ne.jp
後援  (株)ラジオ沖縄

民事信託実務入門―業務の始まり―

信託フォーラム[1]の金森健一弁護士「第1回民事信託実務入門―業務の始まり―」からです。

そこで、民事信託の利用の入り口となる、民事信託契約書とこれに付随する業務(以下「民事信託セッティング業務」という。)を担う者もフィデュ―シャリーに他ならないとの認識の下に、その実務について論じることとしたい。

この記事では、民事信託セッティング業務という言葉が使われています。同じ信託フォーラムで記事を掲載している渋谷陽一郎先生は、司法書士が民事信託に関する業務を行う場合の名称を、民事信託支援業務[2]としています。この記事と同じ信託フォーラム16号「特集2民事信託をめぐる裁判例の動向」の座談会で、春口剛寛司法書士は「民事信託支援業務」としています。山﨑芳乃司法書士は、「民事信託支援業務」、「信託組成」という用語を使用しています。同じく信託フォーラム16号の高橋宏治「民事信託士協会と地域金融機関との連携について」では、「民事信託に関する業務」としています。また司法書士が民事信託に関する業務を行うことが可能である根拠を、司法書士法施行規則31条第1項第2号としています。

信託が欲しい(さらに、その信託で目的や希望を叶えたい)のであって、信託契約書そのものが欲しいわけではない。契約書を作って登記名義だけを移したいという者も稀にいる(それに呼応するように、名義変更のための登記代理のみを業務内容と考える者もいる)。

個人的な意見ですが、信託が欲しい、というよりは信託をしないことによって被るかもしれない不利益を避けたい、というのが大きいような気がします。そこも信託の目的や希望に入るのかもしれません。「契約書を作って登記名義だけを移したいという者も稀にいる(それに呼応するように、名義変更のための登記代理のみを業務内容と考える者もいる)。」に関しては、初めて知りました。

信託は、他の制度よりも、当事者において高度な意思能力を要求される。

初めて知りました。個別具体的な事案に拠るのだと思います。例えば子が親の依頼に応えて、収益不動産を適切に分別管理してきた場合などは、他の制度、任意後見制度などと同程度の意思能力で足りるのではないかなと思います。

参考:厚生労働省「人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン」

https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000197665.html

民事信託契約書の作成業務が「法律事務」(弁護士法3条)に当たることは争いの余地がない。弁護士であれば、依頼者との間で委任契約を締結する。

この文章には、注釈も付いていて、弁護士法72条との関係については検討しないとしています。司法書士は可能でしょうか(司法書士法1条、3条)。

現在の法制上、日本の民事信託の推進及び普及のトップランナーがマネーロンダリング・テロ資金供与リスク対策のループホールとなっている。

犯罪による収益移転防止法4条1項、別表・同法施行規令8条3項9号・同4項6号イロハ、についての言及です。私はこの指摘に関しては、受け止めて早めの対策が必要だと思います。個人として関係省庁に要望は提出しました。ループホールとは、抜け穴・逃げ道のことのようです。

真の、正確、不正確、異なる特殊性、複雑なプロセス、


[1] 16号,2021年10月日本加除出版P97~。

[2] 「民事信託支援業務のための執務指針案100条(8)」市民と法2021年8月130号,民事法研究会,p21~

信託財産を受託者の固有財産とする変更登記の議論に潜む陥穽(かんせい)

信託フォーラム[1]の渋谷陽一郎「信託財産を受託者の固有財産とする変更登記の議論に潜む陥穽(かんせい)」から考えてみたいと思います。

その一方で、次のような声を聴く機会も増えた。司法書士の読者からの声だ。それは本誌「信託フォーラム」の記事及び執筆陣が、弁護士中心となりつつあり、かつ、司法書士関係の記事が減ってきたので、興味を持てる記事が少なくなってきた、という不満だ。

 

 司法書士の読者、という場合、不満を言っている司法書士が何名位いて、どのような地域に多いのかまでは、出しても良いのかなと思いました。民事信託の記事に関しては、主語の大きさや、ある士業が、という表現が大きいんじゃないかなと感じました。

 信託フォーラムの記事及び執筆陣が弁護士中心となりつつあるのは、著者が本記事で福祉型信託の提唱者とされている新井誠編集代表、編集委員に入っている大貫正男司法書士、佐藤純通司法書士の意向でもあると考えられます。

 司法書士自身が信託フォーラムの構成を決めている側面があるので、不満があったとしても、説得力があるかというと少し難しいような印象を受けます。著者についても、方向性の違う家族信託実務ガイドにも寄稿されており、市民と法・家族信託実務ガイド・登記研究・民事信託フォーム・金融法務事情では、それぞれ内容の根幹を替えているように感じます。司法書士のための、という場合、一番に提出する必要があるのは、下の紀要に関する受け止め方だと思います。そうでなければ、司法書士は民事信託に関する業務を行い得ないことになります。

司法書士による民事信託(設定)支援業務の法的根拠論について : (続)民事信託業務の覚書 : 「民事信託」実務の諸問題⑸

https://surugadai.repo.nii.ac.jp/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=2275&item_no=1&page_id=13&block_id=21

 また信託の学校に関しても、電話では民事信託推進センターや日本司法書士会連合会民事信託推進委員の文句を言いながら、信託の学校にとって邪魔だとなると、一転して陰で組織的に除名などしてくるのもどうなのかなと思います。

 リプが何なのか分かりませんが、事実を提出しているのみです。証拠が残らない電話で連絡してきて、除名した後は知らない顔というのは、法律上は上手い方法だと思います。

信託法改正の直後、司法書士の人々に対して信託に取り組む勇気を与え、信託熱に火をつけ、その後の民事信託普及の端緒を与えたのは、福祉型信託の提唱者の新井誠教授である。2007年から2010年まで、全国各地の司法書士会によって、度々、新井教授を講師に招いた信託研修会が催されたが、その頃の、新井教授の信託法の講義を聴く司法書士の人々の表情の真剣さと熱気は忘れられない。

 私にとって、民事信託に取り組むきっかけとなり、現在も尊敬しているのは大垣尚司教授です。大垣尚司教授を研修に招いたのは新井誠教授だと聴きました。その面に関しては感謝したいと思います。また2012年段階で大垣尚司教授は士業毎の出来ること、出来ないことについて具体的にコメントがありましたが、新井誠教授から司法書士法、弁護士法についてのコメントを聴いたことがありません。ここは私が知らないだけかもしれません。

不動産登記法

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=416AC0000000123

(権利の変更の登記等の特則)

第百四条の二 

2 信託財産に属する不動産についてする次の表の上欄に掲げる場合における権利の変更の登記(第九十八条第三項の登記を除く。)については、同表の中欄に掲げる者を登記権利者とし、同表の下欄に掲げる者を登記義務者とする。この場合において、受益者(信託管理人がある場合にあっては、信託管理人。以下この項において同じ。)については、第二十二条本文の規定は、適用しない。

一 不動産に関する権利が固有財産に属する財産から信託財産に属する財産となった場合

受益者

受託者

二 不動産に関する権利が信託財産に属する財産から固有財産に属する財産となった場合

受託者

受益者

三 不動産に関する権利が一の信託の信託財産に属する財産から他の信託の信託財産に属する財産となった場合

当該他の信託の受益者及び受託者

当該一の信託の受益者及び受託者

テーマ13 信託法183条6項の「みなし受益者」は、不動産登記法104条の2第2項の登記義務者としての「受益者」となり得るか。

信託法

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=418AC0000000108

(帰属権利者)第百八十三条

6 帰属権利者は、信託の清算中は、受益者とみなす。

不動産登記法(信託の登記の登記事項)

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=416AC0000000123

第九十七条 信託の登記の登記事項は、第五十九条各号に掲げるもののほか、次のとおりとする。

一 委託者、受託者及び受益者の氏名又は名称及び住所

二 受益者の指定に関する条件又は受益者を定める方法の定めがあるときは、その定め

2 前項第二号から第六号までに掲げる事項のいずれかを登記したときは、同項第一号の受益者(同項第四号に掲げる事項を登記した場合にあっては、当該受益者代理人が代理する受益者に限る。)の氏名又は名称及び住所を登記することを要しない。

104条の2第2項の「受託者の固有財産となった旨の登記及び信託登記抹消」の申請書には、「登記義務者として、受益者を記載する」として、その受益者の表示が「登記原因証明情報の表示及び信託目録に記録された受益者の表示に符合していることを要する」としている。要するに、同書では、104条の2第2項で規定する登記義務者としての受益者とは、不動産登記法97条1項1号で登記された受益者のことである旨、断言している。

 信託法上、183条の解釈として清算が終了することで、残余財産の帰属権利者は受益者となります。不動産登記法上、商業登記法のように信託の清算の登記がないため、登記記録上、手続の連続性が失われます。指摘されてみると、そうかもしれないと思いました。不動産登記法104条の2第2項で規定する受益者は、解釈が定まらない限り狭く範囲を取る必要があると思います。よって信託法上も不動産登記法上も受益者である必要があると思います。

今後、信託の終了の場合、

1 信託目録の受益者欄を残余財産の受益者または残余財産の帰属権利者に変更登記申請。

2 受託者の固有財産となった旨の変更登記及び信託登記の抹消登記申請。登記権利者は信託目録の受益者欄に表示されている者、登記義務者は受託者。

2件を連件申請する、という流れになるのかなと思います。


[1] 16号、2021年10月、P120~

民法・不動産登記法改正と信託の可能性

信託フォーラム[1]の特集から考えてみたいと思います。

司法書士川島真一「民法・不動産登記法改正が司法書士の民事信託支援業務に与える影響」

そして、この相続登記や相続人申告登記について、正当な理由なく申請を怠った場合、10万円以下の過料に処せられる可能性がある。正当な理由がどのような場合に当てはまるのか等、現時点で判明していない点もあるが、少なくともこの法改正は国民が相続登記手続を進める動機付けになるものと考えられる。

正当な理由について

相続が数次にわたって何度も発生して、相続人が数十人を超えるなど極めて多数に上る場合。戸籍謄本等の必要な資料の収集や他の相続人の把握に時間を要するケース。遺言の有効性、遺産の範囲等が争われているケース(第204回国会 衆議院 法務委員会 第6号 令和3年3月23日。)

https://kokkai.ndl.go.jp/#/detail?minId=120405206X00620210323&spkNum=3&single

不動産登記法 附 則 (令和三年四月二八日法律第二四号)

(不動産登記法の一部改正に伴う経過措置)第五条

4 第二条の規定(附則第一条第二号に掲げる改正規定に限る。)による改正後の不動産登記法(以下「第二号新不動産登記法」という。)第七十三条の二の規定は、同号に掲げる規定の施行の日(以下「第二号施行日」という。)以後に登記の申請がされる所有権の登記の登記事項について適用する。

過料には、遅延損害金が発生するのか。

非訟事件手続法

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=423AC0000000051_20200401_429AC0000000045&keyword=%E9%9D%9E%E8%A8%9F%E4%BA%8B%E4%BB%B6%E6%89%8B%E7%B6%9A%E6%B3%95

(過料の裁判の執行)

第百二十一条 過料の裁判は、検察官の命令で執行する。この命令は、執行力のある債務名義と同一の効力を有する。

2 過料の裁判の執行は、民事執行法(昭和五十四年法律第四号)その他強制執行の手続に関する法令の規定に従ってする。ただし、執行をする前に裁判の送達をすることを要しない。

3 刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)第五百七条の規定は、過料の裁判の執行について準用する。

4 過料の裁判の執行があった後に当該裁判(以下この項において「原裁判」という。)に対して前条第三項の即時抗告があった場合において、抗告裁判所が当該即時抗告を理由があると認めて原裁判を取り消して更に過料の裁判をしたときは、その金額の限度において当該過料の裁判の執行があったものとみなす。この場合において、原裁判の執行によって得た金額が当該過料の金額を超えるときは、その超過額は、これを還付しなければならない。

東京裁判所「過料決定についてのQ&A」

https://www.courts.go.jp/tokyo/saiban/dai8bu_osirase/hisyokaryo_osirase/karyoketteiQA/index.html

破産法

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=416AC0000000075_20210301_501AC0000000071&keyword=%E7%A0%B4%E7%94%A3%E6%B3%95

(破産債権に含まれる請求権)

第九十七条 次に掲げる債権(財団債権であるものを除く。)は、破産債権に含まれるものとする。

六 罰金、科料、刑事訴訟費用、追徴金又は過料の請求権(以下「罰金等の請求権」という。)

その他の参考として、破産法253条1項7号。

大阪地方裁判所

債務名義に基づく預貯金債権等の情報取得手続の流れ

https://www.courts.go.jp/osaka/saiban/tetuzuki_minji14/yocyokinnsaiken_zyouhousyutoku_mousitate/index.html

民事執行法第二章強制執行第二節金銭の支払を目的とする債権についての強制執行、同法第四章債務者の財産状況の調査第一節財産開示手続。

https://elaws.e-gov.go.jp/document?law_unique_id=354AC0000000004_20200401_501AC0000000002

結論・・・遅延損害金は付く。

例:東京地方裁判所

債権執行に関する申立ての書式一覧表

https://www.courts.go.jp/tokyo/saiban/minzi_section21/mousitatesyosiki_saiken/index.html#21seimoku

徴収事務規程第4章強制執行。

https://www.moj.go.jp/content/000110754.pdf

また、改正法では、相続登記の促進を図るうえで登記漏れが生じることを防ぐ目的で、自ら又は自己の被相続人となる者等を登記名義人とする不動産の登記記録を証明する制度(所有不動産記録証明制度)が創設されることになった(改正後不登法119の2)。

改正後不登法119の2(所有不動産記録証明書の交付等)

第百十九条の二 何人も、登記官に対し、手数料を納付して、自らが所有権の登記名義人(これに準ずる者として法務省令で定めるものを含む。)として記録されている不動産に係る登記記録に記録されている事項のうち法務省令で定めるもの(記録がないときは、その旨)を証明した書面(以下この条において「所有不動産記録証明書」という。)の交付を請求することができる。

民法・不動産登記法部会資料 53

民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)等の改正に関する要綱案のたたき台 (3)

https://www.moj.go.jp/shingi1/shingi04900001_00040.html

システムの構築及び運用に要するコスト等の事情を踏まえた将来的な検討課題ではあるものの、今後、表題部所有者などの所有権の登記名義人に準ずる者を対象とすることも考えられることから、この点については、将来的なシステム整備の状況等の事情を踏まえた対応が可能となるように、省令で定めることとしている。

・日本全国の土地建物について、可能か。・・・分かりませんでした。

改正法施行後はこれら自治体の税務関係の資料に加えて、不動産登記記録に立脚した所有不動産記録証明書も活用されていくであろう。そしてこの実務は民事信託支援業務として信託組成に着手するにあたり、委託者となる依頼者が所有している不動産を特定していくための手段として活用されていくものと考える。

 今までも委託者が所有している、債務者や設定者になっている、関係している不動産については把握するようにしていたので、実務が軽くなるという意味の文章でしょうか。委託者が相続人である不動産があるかもしれない、という調べ方はあるのかもしれないなと思いました。

一方、この相続登記申請の義務化と民事信託との関連性を考えると、生前対策として判断能力がある元気なうちに自己の所有する不動産を信託し、その不動産の所有権を次世代の受託者に移転すれば相続登記の申請義務を免れることになる。

 委託者兼受益者に関しては、記事記載の通り、結果として相続登記の申請義務を免れることになるのだろうなと思いました。受託者が亡くなった場合、所有不動産記録証明制度の対象となるのか、分かりませんでした。

そして、民事信託を取り組めば相続登記申請義務から免れるとしても、信託不動産は登記をしなければ当該財産が信託財産に属することを第三者に対抗できず(信託法14)、かつ受託者の分別管理義務の観点から信託の登記をする義務が定められている(信託法34)ところから、受託者の責任として信託登記の義務を免れることができないことはいうまでもない。

私は最近、登記申請が効力要件かと勘違いしていましたが、記事記載の通り対抗要件、受託者の義務でした。

相続土地国庫制度を利用しないならば、所有者が判断能力のある元気なうちに土地について民事信託を取組むという選択肢も入るだろうが、信託をはじめ生前贈与や死因贈与等を相続人に対して行った場合、その処分を受けた相続人はその土地について相続土地国庫帰属制度が利用できなくなる点は注意したい。

死因贈与について。

第204回国会 衆議院 法務委員会 第6号 令和3年3月23日

https://kokkai.ndl.go.jp/#/detail?minId=120405206X00620210323&spkNum=3&single

非訟事件手続法(令和三年法律第二十四号による改正)

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=423AC0000000051_20230427_503AC0000000024

(所在等不明共有者の持分の取得)

第八十七条 所在等不明共有者の持分の取得の裁判(民法第二百六十二条の二第一項(同条第五項において準用する場合を含む。次項第一号において同じ。)の規定による所在等不明共有者の持分の取得の裁判をいう。以下この条において同じ。)に係る事件は、当該裁判に係る不動産の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に属する。

2 裁判所は、次に掲げる事項を公告し、かつ、第二号、第三号及び第五号の期間が経過した後でなければ、所在等不明共有者の持分の取得の裁判をすることができない。この場合において、第二号、第三号及び第五号の期間は、いずれも三箇月を下ってはならない。

一 所在等不明共有者(民法第二百六十二条の二第一項に規定する所在等不明共有者をいう。以下この条において同じ。)の持分について所在等不明共有者の持分の取得の裁判の申立てがあったこと。

二 裁判所が所在等不明共有者の持分の取得の裁判をすることについて異議があるときは、所在等不明共有者は一定の期間内にその旨の届出をすべきこと。

三 民法第二百六十二条の二第二項(同条第五項において準用する場合を含む。)の異議の届出は、一定の期間内にすべきこと。

四 前二号の届出がないときは、所在等不明共有者の持分の取得の裁判がされること。

五 所在等不明共有者の持分の取得の裁判の申立てがあった所在等不明共有者の持分について申立人以外の共有者が所在等不明共有者の持分の取得の裁判の申立てをするときは一定の期間内にその申立てをすべきこと。

3 裁判所は、前項の規定による公告をしたときは、遅滞なく、登記簿上その氏名又は名称が判明している共有者に対し、同項各号(第二号を除く。)の規定により公告した事項を通知しなければならない。この通知は、通知を受ける者の登記簿上の住所又は事務所に宛てて発すれば足りる。

4 裁判所は、第二項第三号の異議の届出が同号の期間を経過した後にされたときは、当該届出を却下しなければならない。

5 裁判所は、所在等不明共有者の持分の取得の裁判をするには、申立人に対して、一定の期間内に、所在等不明共有者のために、裁判所が定める額の金銭を裁判所の指定する供託所に供託し、かつ、その旨を届け出るべきことを命じなければならない。

6 裁判所は、前項の規定による決定をした後所在等不明共有者の持分の取得の裁判をするまでの間に、事情の変更により同項の規定による決定で定めた額を不当と認めるに至ったときは、同項の規定により供託すべき金銭の額を変更しなければならない。

7 前二項の規定による裁判に対しては、即時抗告をすることができる。

8 裁判所は、申立人が第五項の規定による決定に従わないときは、その申立人の申立てを却下しなければならない。

9 所在等不明共有者の持分の取得の裁判は、確定しなければその効力を生じない。

10 所在等不明共有者の持分の取得の裁判は、所在等不明共有者に告知することを要しない。

11 所在等不明共有者の持分の取得の裁判の申立てを受けた裁判所が第二項の規定による公告をした場合において、その申立てがあった所在等不明共有者の持分について申立人以外の共有者が同項第五号の期間が経過した後に所在等不明共有者の持分の取得の裁判の申立てをしたときは、裁判所は、当該申立人以外の共有者による所在等不明共有者の持分の取得の裁判の申立てを却下しなければならない。

 供託という制度が、決済手段として色々な場面で使えないかなと思います。使いやすさもありますが、キャッシュカードで振込みをする感覚で、相手がお金を受け取らない・受取れない場合などが日常生活でもちょこちょことあるので、軽い制度にならないかなと感じます。

弁護士平井信二・中祖康智「民法・不動産登記法改正が「財産管理」の実務に与える影響」

民法(令和三年法律第二十四号による改正)

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089_20230427_503AC0000000024

(共有物の使用)

第二百四十九条

3 共有者は、善良な管理者の注意をもって、共有物の使用をしなければならない。

建物の区分所有等に関する法律

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=337AC0000000069

(区分所有者の権利義務等)

第六条 区分所有者は、建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為をしてはならない。

民法(共有物の管理)第二百五十二条

3 前二項の規定による決定が、共有者間の決定に基づいて共有物を使用する共有者に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない。

民法(共有物の変更)

第二百五十一条 各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。次項において同じ。)を加えることができない。

建物の区分所有等に関する法律(共用部分の変更)

第十七条 共用部分の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。)は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議で決する。ただし、この区分所有者の定数は、規約でその過半数まで減ずることができる。

2 前項の場合において、共用部分の変更が専有部分の使用に特別の影響を及ぼすべきときは、その専有部分の所有者の承諾を得なければならない。

民法(共有物の管理)

第二百五十二条 共有物の管理に関する事項(次条第一項に規定する共有物の管理者の選任及び解任を含み、共有物に前条第一項に規定する変更を加えるものを除く。次項において同じ。)は、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。共有物を使用する共有者があるときも、同様とする。

民法(準共有)

第二百六十四条 この節の規定は、数人で所有権以外の財産権を有する場合について準用する。ただし、法令に特別の定めがあるときは、この限りでない。

民法(所有者不明土地管理人の権限)第二百六十四条の三

2 所有者不明土地管理人が次に掲げる行為の範囲を超える行為をするには、裁判所の許可を得なければならない。ただし、この許可がないことをもって善意の第三者に対抗することはできない。

一 保存行為

二 所有者不明土地等の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為

三菱UFJ信託銀行リテール受託業務部 上級相続コンサルタント MUFG相続研究所主任研究員 弁護士 鈴木義弘「令和3年民法・不動産登記法等改正の信託銀行業務への影響について」

民法附 則 (令和三年四月二八日法律第二四号)

(遺産の分割に関する経過措置)

第三条 新民法第九百四条の三及び第九百八条第二項から第五項までの規定は、施行日前に相続が開始した遺産の分割についても、適用する。この場合において、新民法第九百四条の三第一号中「相続開始の時から十年を経過する前」とあるのは「相続開始の時から十年を経過する時又は民法等の一部を改正する法律(令和三年法律第二十四号)の施行の時から五年を経過する時のいずれか遅い時まで」と、同条第二号中「十年の期間」とあるのは「十年の期間(相続開始の時から始まる十年の期間の満了後に民法等の一部を改正する法律の施行の時から始まる五年の期間が満了する場合にあっては、同法の施行の時から始まる五年の期間)」と、新民法第九百八条第二項ただし書、第三項ただし書、第四項ただし書及び第五項ただし書中「相続開始の時から十年」とあるのは「相続開始の時から十年を経過する時又は民法等の一部を改正する法律の施行の時から五年を経過する時のいずれか遅い時」とする。

具体的相続分・・・相続開始後に相続人間で特別受益や寄与分を考慮した相続分。

遺産整理業務・・・信託銀行等は、遺言信託業務のほか、相続が発生して手続きにお悩みの相続人や遺族の方からの依頼により遺産相続手続きを代行する業務も行っており、これを「遺産整理業務」といいます。

 とかく煩雑で面倒な遺産の整理を、信託銀行等は迅速・確実に処理するために必要な知識と豊かな経験をもっていますので、ご多忙な方や財産管理に不慣れな方、相続財産が複雑な構成となっていることでお悩みの方は、遺産整理業務の利用をご検討されてはいかがでしょう。遺産整理業務の主な内容は、次のとおりです。

①相続人全員から遺産分割手続等の代行に関する委任を受けます。

主な委任事項は、相続遺贈財産の調査および相続財産目録の作成、納税資金計画立案および納付の代行(注)、相続債務の履行計画の立案および履行手続き、遺産分割協議書による遺産分割手続の実行、相続財産運用計画の立案等です。

(注)相続税申告書の作成、相続税の申告手続などの税務代理に関する事項は、別途相続人から税理士に委任することになります。

②受任者は、遺産分割手続について、次の事項を行うことができます。

不動産の相続手続き等、預貯金・信託・有価証券の名義変更、解約、換金、受領等の一切の処分、貸金庫の開扉、内容物の収受、貸金庫契約の解除ならびに保護預り契約の解約、保管物の収受等、その他遺産分割に関する一切の手続きなど。

信託協会

https://www.shintaku-kyokai.or.jp/archives/045/data04_01-4.pdf

共有物変更許可決定(民法第二百五十二条の二)にて、預金の払戻しが可能か。・・・可能だと考えますが、払戻し後の処理については、金融機関による供託が現実的かなと思います。

 民法906条の2の適用は、適用した結果が良い方向にいくのか、分かりませんでした。限定的に払戻しされた現金について準共有とする考え方は、払戻しが可能かについての答えになっているのかについて、分かりませんでした。代償財産にて調整する考え方は、現実的だと思いますが、預金の払戻しが可能になる根拠となるのか、分かりませんでした。


[1] Vol.16,10月2021年日本加除出版p13~

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